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2018-01-24 長崎市:平成30年雇用・人口減少対策特別委員会 本文
2018-01-24 長崎市:平成30年雇用・人口減少対策特別委員会 まとめ

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  1. 長崎市議会 2018-01-24
    2018-01-24 長崎市:平成30年雇用・人口減少対策特別委員会 まとめ


    取得元: 長崎市議会公式サイト
    最終取得日: 2021-09-09
    ↓ 最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1 (3) まとめ   長崎市の人口減少の主な要因は、10代後半から20代後半までの若者の市外への転出超過  であり、その理由として「仕事」の割合が高い状況であることから、若者の市外転出に歯  どめをかけ、市外からの転入の促進を図ることを目的として、各産業における雇用の現状  及び課題を把握するとともに、定住人口の減少に歯どめをかけるための諸方策について調  査検討する。   以下、調査の過程で出された主な意見、要望を付して、本委員会のまとめとする。 1 長崎市の人口減少の現状、経済状況雇用情勢(若年者の就職実態)について (1) 人口の推移及び将来推計    長崎市の人口は、平成27年の国勢調査時点においては42万9,000人であったが、国立   社会保障人口問題研究所が行った調査によると、平成52年には33万1,000人、約9万   8,000人減少することが見込まれている。その年齢構成については、老年人口が平成37   年ごろまで増加の一途をたどり、その後はほぼ横ばいで推移する一方で、年少人口と生   産年齢人口は平成52年まで減少し続けるとされている。    自然動態出生数-死亡数)の推移については、出生数が昭和40年頃から現在までの   約50年スパンで大きく減少し、人口減少が少子化に起因している状況である。また、平   成17年頃からの約10年スパンでは、出生数は3,200人から3,300人程度で推移しているも   のの、老年人口の増加に伴い、死亡数が増加傾向であることから、人口が減少している
      状況である。そのため、自然動態における人口減少対策としては、合計特殊出生率をど   のようにして上げて出生数を維持するかが重要となっている。    社会動態転入数-転出数)の推移については、高度経済成長期に造船を主体とする   製造業の隆盛等、雇用の受け皿が多かったことなどから、昭和40年頃までは転入が転出   を上回っていたが、昭和45年以降は転出超過の傾向が続いている。この主な要因は、男   女に共通して、大学進学や就職、結婚などの時期に当たる10代、20代の若者の転出が顕   著となっていること、30代以降でも一旦流出した若者が戻ってきていない傾向となって   いることである。 (2) 長崎市の経済情勢    平成24年と平成26年の経済センサスの比較によると、長崎市の産業構造については、   第一次産業から第三次産業の分類別における事業所数従業者数はほぼ横ばいで、また、   第三次産業における事業所数従業員数については、全国、中核市と比較すると割合が   高くなっている。売上金額(試算値)については、第三次産業における金融業、保険業   が3,117億6,300万円増と大きく伸びている。    また、平成26年の経済センサスによると、事業所規模別事業所数においては、10   人未満の事業所が全体の8割を占めているが、従事者数においては10人未満の事業所が   2割強で、100人以上の事業所が従事者全体の3分の1となっている。また、雇用者の   正規・非正規の割合は、第二次産業の建設業、製造業においては、正規雇用者の割合が   8割を超えているが、第三次産業の宿泊業、飲食サービス業においては、非正規雇用者   が8割を超えている。    次に、平成22年と平成27年の国勢調査の結果によると、主要産業における雇用者の男   女比では、建設業、製造業においては男性の割合が高く、卸売業、小売業、宿泊業、飲   食サービス業、医療、福祉については女性の割合が高くなっている。年齢別の構成につ   いては、すべての業種において39歳以下の割合が40代以上の割合に比べ低く、人材の確   保と事業・技術の承継がこれからの課題となっている。    なお、厚生労働省賃金構造基本統計調査によると、10人以上の事業所における県内   の常用雇用者年代別年間現金給与額を全国と比べると、30代から大きく差が開きはじ   め、特に男性の年収が、働きざかりの40歳ぐらいから約100万円以上の差が出ている。   さらに、新規学卒者初任給額も福岡や全国と比較すると全体的に低い状況であり、長   崎市における定住を促す上では、所得の向上が重要な課題となっている。 (3) 若年者の就職実態   ア 雇用情勢     長崎公共職業安定所管内では、人口減少に伴い有効求職数(仕事を求めている人の    数)は年々減っているが、有効求人数(企業が募集している人の数)は高まっており、    有効求人倍率が上昇している。しかしながら、有効求人倍率は、最も低い事務的職業    が0.25倍、最も高い建設業が3.36倍と大きな差があり、雇用のミスマッチが生じてい    る。また、平成29年3月における長崎公共職業安定所管内の求人・求職希望賃金の状    況では、企業が提示する賃金の枠の中に求職者が希望する賃金はおさまっておりミス    マッチはないが、近年では休日がしっかり取得できることなど、求職者がワークライ    フバランスを重視する傾向にあることから、労働環境の面でのミスマッチが生じてい    る。     なお、長崎県内新規学卒者就職内定率は、高卒者及び大卒者とも平成22年から    徐々に伸びてきており、平成29年3月では高卒者で98.8%、大卒者で97.0%と、企業    が積極的に人材確保を行っている状況である。   イ 新規学卒者進路状況     平成29年3月における県内高校卒業者県内就職率は53.4%、長崎公共職業安定所    管内では61.7%となっている。平成27年度における市内高校卒業後の進路状況につい    ては、高校卒業者3,976人のうち就職が1,105人、大学等進学者が1,974人、専修学校    等進学者が679人と約3分の2が進学しており、大学進学者については、約1,200人が    県外の大学へ進学している。また、就職者数1,105人の内訳を見ると、県内就職者は    802人で、男性380人、女性422人、県外就職者は303人で、男性220人、女性83人とな    っており、女性は県内就職が多く、男性の県外就職が多い傾向がある。市内高校の産    業別における主な就職先は、建設業、製造業では男性の割合が高く、卸売業・小売業、    宿泊・飲食サービス、医療・福祉では女性の割合が高い。なお、県外就職者のうち、    主な転出先としては福岡県が89名、東京都が63名、愛知県が45名となっている。     また、平成28年度の市内大学卒業者進路状況では、卒業者2,751人のうち、大学    院等への進学者が426人で、そのうち90人が県外へ進学している。また、就職者は2,113    人で、その内訳を見ると、県内就職者は959人で、男性182人、女性777人、県外就職    者は1,154人で、男性492人、女性662人となっている。次に、就職先の状況は、市内    大学においては情報通信業や卸売業・小売業、教育・学習支援業、医療・福祉など挙    げられるが、いずれも県外への就職が多い。また、市内専門学校においては、就職先    が制限されることから、医療・福祉、公務関連に就職する傾向があり、就職者856人    のうち県外就職者は214人と4分の1程度であるが、年々その割合は増加傾向となっ    ている。     高校、大学、専門学校卒業後の進路を総じて見ると、県外への進学・就職の総数が    約3,000人となっており、社会動態の減の大きな原因となっていることがわかる。   ウ 新規学卒者地元就職UIJターンの状況     国、県、市の事業や長崎キラリカンパニーなどの参加企業に対して新卒採用状況に    ついてのアンケートを行った結果、平成29年卒では734人中、地元採用が488人、Uタ    ーン者が84人、IJターン者が162人で、そのうち725人が正規雇用となっている。ま    た、誘致企業においては就職者159人中、地元採用が77人、Uターン者が10人、IJ    ターン者が72人となっている。     また、平成29年卒に係るUIJターン者は、福岡県からのUターン者40人、IJタ    ーン者48人、熊本県からのUターン者6人、IJターン者18人と九州内のUIJター    ン者は多い状況となっていることから、九州内の移住希望者にターゲットを絞った効    果的な施策を高校、大学、産業界、国や県と連携して検討し、実施する必要がある。  以上、長崎市の人口減少の現状、経済状況雇用情勢(若年者の就職実態)について、本 委員会では次のような意見・要望が出された。 ○ 長崎市の人口が減少する理由、課題をしっかり検証し、長期スパンだけでなく短期スパ  ンでも具体的な対策を行ってほしい。 ○ 課税状況から事業所得などの分析を行い、集中的に支援を行う分野を絞って所得を向上  させる対策を講じてほしい。 ○ 企業誘致地場産業の振興は、行政だけで取り組むことは困難であることから、先を見  据えた上で官民一体となって進めてほしい。 ○ 中小企業は長崎市の事業所数のほとんどを占めているが、事業承継が課題となっている  ことから、融資制度などを含めて柔軟な取り組みをお願いしたい。 2 大学生の就職状況について(大学就職担当ヒアリング)   長崎大学及び長崎純心大学就職担当者を招聘し、大学生の就職状況に関しての説明を  受け、その後、意見交換を行った。 (1) 説明の概要    平成28年度の就職状況について、長崎大学では就職希望者の就職率が97.4%で、こ   こ数年は少しずつ上がっている。地区別の就職状況では、多いのが長崎県、長崎県を   除く九州、関東圏となっており、主な就職先は、製造、情報通信、金融、教育・学習   支援、医療、公務員となっている。    次に、長崎純心大学では、就職希望者の就職率は100%で、そのうち市内に就職し
      た学生が51.0%、市内以外の県内就職者が26.5%と全体の77.5%が県内となっている。   主な就職先は一般企業教育関係病院福祉施設であり、どの業種に関しても満遍な   く市内に就職している割合が高い状況となっている。    両大学とも就職支援として、キャリア支援センターを設置し、資格を持ったキャリ   アアドバイザーが学生からの就職等に関するキャリア相談を行っている。また、長崎   大学を中心として、長崎純心大学長崎国際大学、長崎県立大学、長崎短期大学等が   共に文部科学省の事業である「地方創生推進事業COC+」を実施しており、大学生   の地元定着率を平成26年度から10%上げることや観光、離島教育医療福祉、海洋分   野の4分野の人材育成を目指すことを目標としている。そのための具体的な5つの取   り組みとして、1つ目は地域志向性、長崎を愛する思いを高めてもらうこと、2つ目   は、就職する企業を学ぶ、企業を知る機会を提供すること、3つ目が、大学組織や入   試制度の改革、奨学金等による就学支援を行うこと、4つ目が、学生主体の地域活動   を支援すること、そして5つ目が、地方創生に関する講演会やさまざまなPR等を積   極的に行っていくこととしている。    そのため、両大学とも、長崎のことを理解し、地域に目を向けてもらうための講義   を行っているほか、学生が学外での地域活動へ積極的に参加するプロジェクトに取り   組んでいる。 (2) 意見交換の概要    両大学からは、県外出身の学生は県外に戻る傾向が高いことや、経団連が指針とし   ている採用活動開始のスケジュールより早く開始する企業も多く、指針と現実にギャ   ップがあり困惑していること、県外企業採用意欲が高まってきていること、受け皿   となる情報系企業が市内に不足しているといった意見や、市内企業PR支援、給与   水準の底上げや女性が働きやすい職場環境づくりについて行政からの働きかけをし   てほしいといった要望があった。   以上、大学生の就職状況について、本委員会では次のような意見・要望が出された。  ○ 大学と企業との橋渡しに力を入れるだけでなく、学生を長崎に定着させるため、大学   の枠を超えて学生が地域のことについての話し合いや活動ができるような場所の提供   を行うなど、地域との橋渡しについても検討してほしい。  ○ 給与水準の向上や女性が働きやすい環境への職場改善に取り組んでほしい。 3 産業の現状と課題(長崎市経済成長戦略の概要)について (1) 長崎市経済成長戦略の概要    この戦略は、長崎地域経済成長を促すため、長崎市の産業の固有の能力や強みを生   かし、その目指すべき方向性や地域一丸となっての取り組み方を示すもので、長崎市第   四次総合計画及び国、県の経済分野の戦略などを踏まえ、長崎市まち・ひと・しごと創   生総合戦略や水産、農業、観光などの計画と連携するものである。    これまで、平成20年度から3年ごとに見直しており、第一次戦略、第二次戦略の方向   性を踏襲した平成26年からの第三次戦略は、第二次戦略において活用を提示した長崎に   固有の他所に真似できない能力と強み(コアコンピタンス)である船(造船・造機製造   業)・食(食品加工・飲食)・観(観光関連産業)をさらに深く深化、新しく新化し、   あわせて企業誘致など未開拓分野への進出を図ることとした。    しかし、第三次戦略策定後に社会、経済情勢は変化しており、人口減少、景気回復な   どによる雇用のミスマッチが生じて労働力の不足が顕在化してきている。具体的には、   「船」では、大手造船所構造改革や方針転換など基幹製造業環境変化や若年者の定   着が難しくなっており、「食」では、域内需要の縮小により、域外市場への進出やさら   なる販路拡大戦略の必要性が増大し、「観」では、世界遺産や夜景などの観光資源強化   による観光客増加クルーズ客船寄港増加などに伴うインバウンド対策の充実や、新た   な顧客を創造し、都市ブランドを確立することが必要となってきている。また、企業誘   致についても、東日本大震災以降、地震が少ない、人口比で高等教育機関の数が多く人   材を確保しやすいなどの強みがあることから、本社機能の一部移転や事業継続計画に基   づく第二拠点の設置などによる立地が相次いでいるが、良質な立地用地やオフィス物件   が不足しているといった状況が生じている。    このような中、平成29年度からの第四次戦略の策定に当たっては、事業者へのヒアリ   ングやアンケートを実施したほか、類似都市や中核市の比較や分析、有識者と各企業・   団体の代表者等で構成する長崎市経済活性化審議会からの意見聴取のほかパブリック   コメントも実施している。関係団体へのヒアリング結果では、「船・食」ともに直面し   ている課題としては、人材の確保と育成となっており、「観」においても、人手不足が   大きな課題であるとの回答があっている。また、「船」からは研修機関に対する支援に   ついての要望や、「食」では事業承継自体が難しいことや販路の開拓、グローバル化へ   の対応などの回答があっている。そこで、第四次戦略では、サブタイトルを「競争優位   を備えた魅力ある企業群を創出」とし、魅力あるよい企業をふやすことを目指して、経   済界と一緒になった取り組みを進めるためによりわかりやすいメッセージを伝えるも   のとして設定している。 (2) 第四次長崎市経済成長戦略   ア 概要     第三次戦略からの主な変更点としては、まず、人は宝という意味を込めて「人材」    を「人財」としている点である。また、「船」においては、新たに人財の確保と育成    を掲げ、「食」においては、人財の確保と育成に加え、商品価値の向上による差別化    を追加し、「観」においては、顧客創造と価値創造による国際的な都市ブランドを確    立することを追加している。企業誘致についても、都市間競争が激化しており、企業    へのインセンティブ強化等を追加している。人財確保と育成の具体的な取り組みの方    向性としては、企業の成長を支える優良な人材の確保と育成を行い、技術・技能の継    承を支えることとしている。     「船」における人財確保としては、新卒者の採用増加中途採用者受け入れ支援    や外国人労働者の活用を図るとともに、業界の魅力のPRを図ることとし、人財育成    としては、指導者の確保や階層別・体系的な研修カリキュラムの実施、恒常的に使用    可能な研修場所の確保・構築を挙げている。     「食」における人財確保としては、労働環境の向上、伝統技術・技能や事業の継承    を図り、人財育成としては、マーケティングやブランディング、HACCP(原料の    入手から出荷に至るまでの間で、食品に潜む危害要因を、科学的に分析し、除去ある    いは安全な範囲まで低減できる工程を常時管理し記録する方法)など衛生管理等の専    門知識を有する人材の育成や外部の専門家の活用を図ることとしている。     「観」における人財確保としては、業界の魅力のPR、人財育成としては、外国人    観光客の多様なニーズに対応できる人材の育成、まちなかの商店街を支える人材の育    成、マーケティング人材の育成を図ることとしている。     なお、第四次戦略の対象期間については、総合計画との整合性を図るため、平成29    年度から第四次後期基本計画の最終年度である平成32年度までの4年間とし、第五次    戦略からは5年ごとに改訂することとし、経済活性化審議会進捗状況を管理し、経    済情勢の変化に合わせて適宜見直しを行うこととしている。   イ 定量目標     平成32年時点の定量目標を平成25年からの予想推移から設定し、「船」については、    製造業の売り上げのふえ方や競争力向上をはかる目的から、平成25年実績を維持する    との考え方のもと、製造品出荷額の目標値を3,980億円と設定し、また、補助代替指    標として、何も手を打たなければ、将来的に従業者数が平成25年よりも1,125人減の    7,008人になるという予測から、従事者数の目標値を7,852人としている。     次に、「食」については、食料品製造業売り上げのふえ方や競争力向上の度合い    をはかる目的から、平成25年実績を維持するとの考え方のもと、製造品出荷額の目標
       値を251億円と設定し、補助代替指標として、従業員一人当たりの粗付加価値額(生    産額から税、原材料費等を差し引いたもの)の目標値を平成25年実績の432万円から    25万円増の457万円としている。     また、「観」については、観光がまちにもたらす経済効果や、長崎観光の魅力向上    等の度合いをはかる目的から、観光消費額の目標値を平成25年実績の1,203億円から    397億円増の1,600億円と設定し、補助代替指標として、一人当たりの観光消費単価の    目標値を平成25年実績の1万9,796円から2,739円増の2万2,535円としている。     なお、企業誘致についても、雇用者数の累計を2,610人とし、年間給与総額80億円    を設定している。   ウ 推進体制     これらの目標値を実現していくために、主体となる民間企業とどのように戦略を共    有し実行していくかということが重要であるため、行政を含めた関係企業・団体等で    構成される「船・食・観」の各部門別の部会において進捗管理を行うこととしている。    また、平成28年9月に設置された、学識経験者及びその他関係団体代表者等で構成    する長崎市経済活性化審議会においても検証を行いながら、産学官での意識を共有し、    市民一人ひとりが当事者として意識を持てるよう戦略を推進していくこととしてい    る。   エ 若年者の地元就職・定着に係る取り組み     現在、産(事業者)が取り組んでいる、または今後、充実させていくべき項目とし    て、大学における就職支援取り組みと連携した学校訪問やインターンシップの受け    入れ、ホームページなどによる各企業が持つ独自の技術などの情報発信採用活動解    禁にあわせた早期の求人票の提出などの採用活動の充実がある。また、企業としての    魅力を上げるため、給与・福利厚生の向上、正規雇用化などの待遇の改善や就職後の    キャリアパスを示すことや研修を充実させるなど人材育成に努め、企業の生産性や競    争力の向上につなげることも必要とされている。なお、長時間労働の改善や女性が活    躍できる環境の整備、高齢者・障害者など多様な人材の活用など、働き方改革につい    ても取り組むべき課題としている。     次に、学(大学)では、大学のCOC+事業がある。具体的には、地域志向性を高    める教育科目を導入し、卒業後、長崎で暮らすことの意識づけを行うための取り組み    が行われており、長崎大学においては、地元企業が必要とする人材を育成するため、    観光、地域医療、教員、海洋エネルギー海洋環境の4分野の教育プログラムを設置    している。また、学生への直接的な就職支援・促進だけでなく、大学の研究力や人材    育成力を地域へ還元するため、長崎の強みを生かした事業を創出する取り組みを進め    ることとしている。     次に、官(行政)では、「魅力ある企業の情報発信、長崎で暮らす魅力の発信」、    「受け皿の確保(企業誘致創業支援)、新しい企業・産業の創造」、「マッチング    のための環境整備システムづくり」、「人材育成支援経営力強化」の4つの方向    性を示している。国、県、市ではそれぞれの役割分担のもと事業を展開しており、国    や県は就職に直接結びつく合同企業面談会など職業紹介事業を中心に事業を展開し、    長崎市においては企業情報の発信を中心に取り組むこととしている。     具体的な長崎市の事業内容としては、魅力ある企業の情報発信として、地場企業知    名度アップ事業や大学生による地場企業紹介パンフレットの作成、性別にかかわらず    働きやすい環境づくりを実践している企業に対する男女イキイキ企業表彰などがあ    る。さらに、受け皿確保、新しい企業・産業の創造として、創業支援海洋再生エネ    ルギー産業集積推進事業挑戦型共同研究開発支援事業の実施、マッチングのための    環境整備として、UIJターン就職促進事業人材育成支援経営力強化として、長    崎造船造機研修センターにおける研修の支援、中小企業サポート事業、優れモノ認証    制度などを行っている。     また、学生が就職において重視することは、やりたい仕事、安定性、社風、収入(給    与)、福利厚生などが上位に挙げられており、特に収入や福利厚生については、5年    前の平成24年と比べ重視される傾向にある。そのため、長崎の魅力ある地元企業の情    報発信を初めとする学生と企業のマッチングに係る事業だけでなく、学生の受け入れ    先である企業の経営力強化や、長崎全体の経済成長を図り全体の底上げを行い、学生    に対して魅力ある企業を一つでも多くつくっていくことで、長崎で働く、暮らす魅力    の向上につながるため、具体的な効果を出すために産学官で連携しながら取り組みを    進めていくこととしている。   以上、産業の現状と課題(経済成長戦略の概要)について、本委員会では次のような意  見・要望が出された。  ○ 経済成長戦略は、4年や5年といった更新時期があっても、1年で見直さなければい   けないこともあるため、きめ細かなフォローをするべきである。  ○ 採用活動や研修の充実など産業界にお願いすることがふえていく中で、それらを実現   してもらうためにも、様々な機会を捉え、国・県と連携して取り組みを進めていくべき   である。 4 地元就職・定着に向けた取り組みについて (1) 高校生の就職活動    高校生の就職活動は3年生の6月から本格的に始まり、企業がハローワークで求人申   し込みをした後、ハローワークが発行した求人票を添えて7月1日より学校に求人票が   送付され、生徒に公開される。その後、企業見学や学校での3者面談を経て、9月5日   以降に企業へ応募書類を提出し、9月16日から選考が始まり合格者は内定となる。最初   の段階では1人1社しか応募できず、内定に至らなかった生徒は、10月15日から複数の   企業へ応募が可能となっている。    高校における取り組みとしては、学校内での企業説明会や職場見学、生徒の職業選択   に影響力を持つ保護者を対象とした県内企業説明会、インターンシップによる専攻科目   や将来就きたい仕事に関する就業体験を行っている。さらに、職業理解の講座として、   卒業して既に活躍している先輩や企業の担当者から仕事の内容について話しを聞くと   いった取り組みを行っている。学校以外の取り組みとしては、国・県が行う合同企業面   談会、県内企業人事担当者と高校進路指導者との情報交換等を実施しており、長崎市も   共催という形でかかわっている。    高校の進路指導者担当者にヒアリングした結果、学生が就職の際に重視していること   は、自分が専攻している学科との関連性、企業の知名度や労働条件、職場の雰囲気やイ   ンターンシップでの対応などの人間関係であり、学生の企業情報の収集方法については、   主に採用実績のある(卒業生がいる)企業からの求人や学科の担任と企業とのつながり   との回答があっている。また、市内企業と市(県)外企業の採用活動の違いについては、   近年の人手不足の影響で、県外の企業ほうが学校訪問をする頻度が高く、また学校側に   求人票を提出するタイミングも早いことなどが挙げられている。 (2) 大学生の就職活動    大学生の就職活動は、3月1日の企業の採用広報活動が開始となった後、就職サイト   の採用情報や大学のキャリア支援センター、就職課などを通して提供される求人票、民   間の人材広告企業や行政、大学で行われる企業面談会に参加するなどして情報収集を行   い、選考参加に申し込み、6月1日以降に企業における面接等の選考が開始され、合格   者は内々定となり、10月1日以降正式に内定となる。    大学における取り組みとしては、企業研究セミナー、全学年を対象に就職活動を行う   前の段階での企業・業界研究セミナーやインターンシップ、専攻している科目や将来就   きたい仕事に関する就業体験の実施、保護者への県内企業説明会のほか、OB、OG体   験発表会、大学の先輩から業界の現状・課題・展望や会社の概要・魅力などについて、話   を聞く機会の提供や、企業の採用活動と直接つながる学内における合同企業面談会や、   個別企業面談会などがある。
       学校以外の取り組みとしては、長崎県が提供している求人・求職情報を掲載したホー   ムページ「Nなび」や、国と県が就職活動を行う前の大学1年生から3年生を対象とし   て実施している合同企業面談会「NAGASAKIしごとみらい博」がある。    大学のキャリア支援センターヒアリングした結果、学生が就職の際に重視している   ことは、専攻する学部・学科との関連性、キャリアパス(キャリアアップの道筋)や人   材育成の方針、企業の知名度、労働条件(給与・労働時間・休日)が挙げられる。また   学生の企業情報の収集方法については、マイナビやリクナビといった大手就職サイトな   どを使い、個人で効率的に企業の情報収集をしていること、市内企業と市(県)外企業   の採用活動の違いについては、高校の進路指導者担当者にヒアリングした結果と同様、   県外の企業のほうが学校訪問の頻度が高く、求人票の提出が早いことなどが挙げられる。    なお、東京の私立大学関係者からは、保護者と学生がSNSなどを通じて頻繁に情報   交換を行っているとの情報があることから、地元に住む保護者向けに、地元企業の情報   や就活状況などを発信していくことは非常に重要であり、効果的であるとのアドバイス   もあっている。また、県が実施した大学のキャリア支援センターへのヒアリングにおい   ても、県外企業は求人活動が積極的で、県内の企業は県外企業に比べ動きが遅いといっ   た意見や、企業の採用情報を県内企業も積極的に提供してもらいたいといった要望、ま   た、情報発信の面で県内企業はテクニックがない、工学系の学部卒では初任給が20万円   はないと検討もしないなど、地元企業に対する意見も出されている。 (3) 地元就職に向けた課題と対策    採用が進んでいる地場企業及び誘致企業ヒアリングを行った結果、いずれも定期的   な学校訪問や学内・学外での企業説明会への参加、インターンシップの受け入れ、自社   のホームページの充実など積極的な活動を行っているほか、労働環境の整備にも積極的   に取り組んでいる。    そのため、地元就職促進に向けては、地場企業の知名度不足、企業情報や魅力の発信   力不足、学校訪問の頻度の低さ、保護者への情報提供不足、インターンシップの受け入   れに消極的、労働条件が十分でないといったことなどが地元企業が解消すべき課題とな   っている。    そこで、地元就職・定着の方向性として、短期的には、企業においては学校訪問促進   や求人票の早期提出、情報の発信力の強化に取り組み、行政においては企業に対する啓   発や支援を行うとともに、学生の就職先決定に影響力を持つ保護者へ向けた情報発信を   高校や大学と連携して進めること、さらに、大学進学の際の主な転出先である福岡都市   圏をターゲットとした効果的なUIJターン対策事業の推進に取り組む必要がある。ま   た、企業においてキャリアアップの過程や人材育成方針の明確化を図り、仕事のやりが   いの醸成に取り組むほか、行政において長崎の特性を生かした企業誘致の推進や創業支   援の強化による受け皿確保、長崎で暮らす魅力の発信に努め、長崎に若者を呼び込み定   着させる取り組み、またUIJターンを望む求職者に対しては長崎移住サポートセンタ   ーを積極的に活用していくとしている。    中期的には、企業において福利厚生などの労働条件の向上を進めること、行政におい   て情報系の企業誘致の推進、人材育成の支援を図ることが重要とし、長期的には、企業   において給与や労働時間などの労働条件の向上を進め、産学官一体での海洋再生エネル   ギーなど、新しい産業を創出することで企業の新分野進出や働く場の創出を進めていく   こととしている。   以上、地元就職・定着に向けた取り組みについて、本委員会では次のような意見・要  望が出された。  ○ 企業誘致にもっと力を入れるべきであり、企業とよく情報交換をしながら手遅れにな   らないように、市全体の計画の中において最重要課題として取り組んでほしい。  ○ ニーズの高いIT企業の誘致について、関係者と協議をしながら力を入れて取り組ん   でほしい。  ○ 地元企業の求人票早期提出の徹底を図るための方法を研究し、具体的な取り組みを進   めてほしい。  ○ 若者が長崎に定住するきっかけになるよう、祭りやスポーツなどを通じた一体感のあ   るまちづくりや、機運を高めることを検討してほしい。 5 移住の促進について (1) 移住希望者への支援・情報発信   ア 相談の状況     まち・ひと・しごと創生総合戦略において、平成28年度から県と県内21市町が協働    で「ながさき移住サポートセンター」を設置し、移住相談や各種PR等を行っており、    県全体の相談の状況においては、30代、40代のいわゆる働く世代の相談が多く、この    2つの年齢層でおおむね全体の2分の1以上を占めている。その中で、相談が多い項    目は就職で70.5%、住まいが28.7%、暮らしが14.2%となっており、仕事に関するこ    とが移住の際の大きなポイントとなっている。相談者の地域別では、東京や千葉、神    奈川などの関東地域が48.3%とおおむね半数を占め、続いて福岡、佐賀など九州地域    が23.5%、大阪、兵庫などの近畿地域が14.0%となっている。   イ ながさき定住支援センターの取り組み     長崎市では、平成18年度からながさき定住支援センターを設置し、支援を行って    おり、平成29年度からは専任の相談員を配置して、移住希望者への支援を行っている。    県外での相談会の開催については、ながさき移住サポートセンター等と連携し、大都    市において移住相談会を実施している。   ウ ホームページ・動画における情報発信     個々のさまざまなニーズを持つ移住定住希望者向けに、各支援策を初め、長崎市    の魅力や行政サービスの情報を総合的に発信するためのホームページ「ながさき人に    なろう」を平成28年12月に開設し、平成29年10月までに約8万1千ビューの閲覧があ    っている。長崎市の紹介、住まい、仕事、子育てなど、項目ごとに移住者が必要な情    報をまとめており、例えば、住まいに関することでは、空き家・空き地バンクの情報    や移住希望者に対する空き家リフォーム補助などの情報を掲載し、民間団体等の不動    産情報へも移動できるようになっている。また、仕事に関することでは、長崎市への    UIJターン就職を考えている学生、求職者、在職者の方を対象とした、国、県、市    が行っている事業や窓口等の情報を紹介するとともに、長崎の魅力ある企業の紹介を    行っているほか、子育てに関することでは、子育て応援情報サイト「イーカオ」のリ    ンクをはり、妊産婦健診の実施などの行政の取り組みや制度のお知らせだけでなく、    幼稚園や保育所などの施設情報や親子で楽しめるイベント情報などの掲載も行って    いる。     また、長崎市のさまざまな魅力や暮らし等を発信するため、移住定住希望者向け    プロモーション動画「西の国から」を作成し、長崎市のホームページ及び国や県のホ    ームページとの連携やソーシャルメディアを初め、さまざまな媒体を通じて長崎市の    魅力を発信している。平成29年3月の公開から10月までに2万1,242件の閲覧があっ    ており、国が運営する全国移住ナビの市区町村部門のアクセスランキングで全国第5    位となっている。   エ 学生向けの情報発信     長崎での進学や就職のきっかけづくりや長崎の暮らしやすさ、魅力等の情報を発信    するため、学生の視点や活力を生かした取り組みとして、大学生が地元企業の魅力を    収集してパンフレットを作成し、各大学や長崎市内外を含む中・高校へ配布しており、    平成28年度は2,900部を配布している。   オ 各地域の団体等とのネットワーク形成     市内の各地域で移住者を支援している団体等とのネットワークを構築し、定期的な    情報交換を行う取り組みを進めており、これをきっかけとして、移住後の暮らしにつ    いて、新たに民間団体が窓口を設立した事例もある。
    (2) ながさき移住サポートセンターとの連携等について   ア 連携状況     無料職業紹介事業による移住希望者と仕事とのマッチングを中心に、移住希望者の    県内企業への就職・転職支援を行っており、受け皿づくりのため人材採用意欲が高く、    長崎県で働きたい優秀な人材を採用したい企業の開拓を行っている。平成28年度末現    在で、求人開拓企業数は132社で、サポートセンターに登録がある求職・転職支援希    望者は237名、就職・転職支援を利用した就職決定者は42名となっている。   イ ながさき人材採用プロジェクト     このプロジェクトは、優秀な人材を採用したい企業とスキルを生かして活躍した    い人材のマッチングを行い、県内企業のさらなる発展に繋げていく人材採用支援機関    の連携プロジェクトで、ながさき移住サポートセンターは2つの機関と連携して取り    組みを進めている。一つは長崎県プロフェッショナル人材戦略拠点で、地場企業が求    める高いレベルの人材、企業の成長を具現化していくために必要なトップマネジメン    ト人材などの採用支援を行っている。もう一つは、公益財団法人産業雇用安定センタ    ー長崎事務所で、事業の整理・縮小を伴う人員削減を検討している企業と事業の拡大、    欠員の発生に伴い必要な人員を確保したい企業のマッチングを行うなど、出向・移籍    を促して雇用を流動化させるための支援を行っている。これら連携機関から寄せられ    る情報は、ハローワークの求人で募集の出にくい重要ポストや専門職などの求人を主    な対象としており、長崎市は、このプロジェクトと連携し、企業と求職者のマッチン    グを進め、特に首都圏で一定のスキルや専門能力を持っている移住希望者は、これら    の取り組みにより移住に踏み切った成功例も出てきている。   ウ 相談・移住実績     長崎市内への相談件数、UIターン者数のいずれも増加傾向にあり、特に市となが    さき移住サポートセンターが連携を開始した平成28年度から移住者数が大きく増加    している。移住実績として、平成27年度は6世帯、15人だったものが、平成28年度で    は41世帯、75人と大きく増加している状況にあり、平成29年度においても9月末まで    に21世帯、32人となっていることから昨年度と同程度の移住者数が見込まれている。   以上、移住の促進について、本委員会では次のような意見・要望が出された。  ○ 長崎市への移住者に対してアンケートなどを行い現状把握やフォローまでしっか   り行うとともに、今後のアピール材料としての活用も検討してほしい。  ○ 長崎市全体の空き家を調査するのはかなりの期間と労力を要するが、UIJターン   を推進するには住まいはとても重要であるため、特に不動産業者と連携しながら進め   ることにもっと力を入れてほしい。  ○ 空き家バンクのホームページへのアクセス方法や掲載情報についてもっと充実さ   せてほしい。  ○ イーカオなどのホームページで保育料の計算ができるように工夫するなど、子育て   に関する情報発信の充実を検討してほしい。 6 委員会からの提言   以上、本委員会の調査項目についてまとめたが、全国的に人口減少は避けることのでき  ない大きな課題となっている。そのような中、長崎市において、平成22年から28年の転  入転出差の平均をみると、特に15歳から29歳の若年者の転出超過が約1,000人になるな  ど顕著で、その歯どめをかけるための施策を推進していくことが最重要課題となっている。  若年者の雇用を重視した都市間競争に負けないための他都市にない、独自の一歩踏み込ん  だ施策を研究し、取り組むことが必要である。   そのために、製造業の誘致が少ないこと、就職希望者の多い情報系企業が不足している  こと、市内企業のPR不足や採用活動への動き出しが遅いこと、県内の雇用者の年収を全  国の水準と比較すると低く、40歳ごろからは100万円以上の差が生じていることなどの  課題に対する有効な手だてを行うことが求められている。   特に、企業誘致については、有効な用地不足などの地形的な悪条件を踏まえ、めりはり  の効いた行政支援に努めること、現在計画がない公共用地への企業誘致については、あら  ゆる機会を捉えて可能性を求めて取り組むこと、また、県外へ流出する企業の情報収集に  も努めて迅速な対応策を取ることを強く要望する。   なお、長崎市では中小企業がほとんどを占めていることから、人材を確保して若年者の  流出を防ぐためにも県外企業に負けない採用力や経営力向上へのサポートにしっかりと  取り組んでいただきたい。   また一方で、人口減少対策は、行政だけで進めることは困難である。そのためには、タ  ーゲットを絞った効果的な施策について、高校、大学、産業界、国や県と連携して検討を  進め、全国との所得格差の縮小を図りつつ、住まいや子育て支援などの充実により若年者  の経済的負担を軽減させることについても十分配慮するよう努められたい。   以上の要望に加え、長崎市の財政は厳しい状況であることから、人口減少に歯どめをか  けるために必要な施策をリストアップするとともに、根拠となるデータや成果指標、予算  などの数値的な裏付けを具体的に示しながら、どこを削りどこに充てるかを含めた検証を  進め、第四次経済成長戦略に掲げている平成32年度までに企業誘致件数累計を17件、そ  れに伴う新規雇用者数累計を2,610人にすることや、まち・ひと・しごと創生総合戦略で  掲げている平成31年度までに県内大卒者の県内就職率を51%にすること、地場企業の新  卒採用調査におけるUIJターン就職者数累計を870人にすることなど具体的な目標の  確実な実現に向けて取り組んでいただきたい。   理事者におかれては、委員会における調査の過程で各委員から出された意見を踏まえ、  スピード感を持って最善策に取り組んでいくとともに、施策を進めていくPDCAサイク  ルの中で、市民の声もしっかり聞いて検証することを念頭において取り組みを進めてほし  い。 長崎市議会 ↑ ページの先頭へ...