平成22年 11月 定例会(第300回) 平成二十二年 第三百回
定例奈良県議会会議録 第二号 十一月 平成二十二年十二月六日(月曜日)午後一時
開議 -------------------------------- 出席議員(四十四名) 一番 小林茂樹 二番 藤井 守 三番 井岡正徳 四番 岡 史朗 五番 大国正博 六番 尾崎充典 七番 藤野良次 八番 森山賀文 九番 松尾勇臣 一〇番 宮本次郎 一一番 浅川清仁 一二番 田中惟允 一三番 上田 悟 一四番 山本進章 一五番 畭 真夕美 一六番 奥山博康 一七番 森川喜之 一八番 高柳忠夫 一九番 中野明美 二〇番 山村幸穂 二一番 中野雅史 二二番 神田加津代 二三番 安井宏一 二四番 岩田国夫 二五番 荻田義雄 二六番 粒谷友示 二七番 丸野智彦 二八番 岩城 明 二九番 藤本昭広 三〇番 今井光子 三一番 田中美智子 三二番 国中憲治 三三番 辻本黎士 三四番 米田忠則 三五番 新谷紘一 三六番 出口武男 三七番 中村 昭 三八番 秋本登志嗣 三九番 小泉米造 四〇番 服部恵竜 四一番 田尻 匠 四二番 山下 力 四三番 梶川虔二 四四番
川口正志 -------------------------------- 議事日程一、
全国都道府県議会議長会自治功労者表彰伝達式一、当局に対する
代表質問 --------------------------------
△
全国都道府県議会議長会自治功労者表彰伝達式
○議長(出口武男) 初めに、
全国都道府県議会議長会自治功労者表彰伝達式を行います。
◎事務局次長(中井三治) 四十年以上在職議員として
全国都道府県議会議長会から表彰を受けられました
服部恵竜議員、二十年以上在職議員として表彰を受けられました国中憲治議員、辻本黎士議員、
秋本登志嗣議員、十五年以上在職議員として表彰を受けられました安井宏一議員、粒谷友示議員、丸野智彦議員、今井光子議員、田尻匠議員。 以上九名を代表されまして
服部恵竜議員、どうぞ前へお進みください。(拍手) (
議長出口武男、被
表彰者代表服部恵竜議員に表彰状朗読) 表彰状 服部恵竜殿 あなたは
奈良県議会議員として在職四十年以上におよび地方自治の発展に努力された功績はまことに顕著であります よってここにその功労を称え表彰いたします 平成二十二年十月二十六日
全国都道府県議会議長会 (表彰状及び記念品伝達、拍手起こる)
◎事務局次長(中井三治) 引き続きまして、知事より記念品の贈呈があります。 (知事荒井正吾、被
表彰者代表服部恵竜議員に記念品贈呈、拍手起こる)
◎事務局次長(中井三治) 次に、知事の祝辞があります。
◎知事(荒井正吾) (登壇)一言ご祝辞を申し上げます。 このたび
服部恵竜議員をはじめ九名の方々が、自治功労者として
全国都道府県議会議長会から表彰をお受けになりました。誠におめでとうございます。 受賞されました議員各位におかれましては、各地域住民からの多大なる信任のもと、多年にわたり
奈良県議会議員として県政発展のためにご精進いただいてまいりました。お一人お一人のご経歴、ご業績につきましては省略させていただきますが、各議員におかれましては、議長、副議長、常任委員会及び特別委員会の委員長、副委員長などとして、また監査委員として、県政のため今日までそれぞれ大変なご尽力をいただきました。 どうか今後とも健康にご留意いただきまして、引き続き
奈良県政発展のためご活躍いただきますようご期待申し上げまして、簡単ではございますが、私の祝辞といたします。 このたびは誠におめでとうございました。(拍手)
◎事務局次長(中井三治) 次に、受賞者を代表されまして、
服部恵竜議員より謝辞があります。
◆四十番(服部恵竜) (登壇)甚だ僣越でございますが、受賞者を代表いたしまして、私から御礼のごあいさつを申し上げたいと思います。 既にご披露いただきましたが、私たち九名の議員は、永年にわたり議員として在籍し、微力でございますが、県政発展のために努力をしてまいりました。それぞれが勤続年数の節目を迎えたということで、このたび
全国都道府県議会議長会より自治功労者として表彰の栄に浴しました。 ただいまは議長より表彰の伝達を賜りました。また、知事からはご丁重なる祝辞と記念品を賜り、身に余る光栄と感謝を申し上げているところでございます。 また、私たちのこのたびの受賞は、永年にわたって多くの県民の皆様方から賜りましたご支援は申し上げるまでもなく、同僚議員あるいは関係各位のご指導とご鞭撻によるものと深く感謝をいたしておるところでございます。 先般、第一回奈良県議会が開催されましたゆかりのご縁のある東大寺で、記念すべき第三百回定例県議会が開催をされました。初日の本会議で、
奈良県議会基本条例が可決をされましたが、地方自治の確立に向け、県議会の担う重責を改めて強く認識をしたものでございます。 ことしはまた、国のはじまり奈良に都が置かれて一三〇〇年、平城遷都一三〇〇年記念事業が県下各地で数々行われました。この記念すべき年に私たちが表彰を受けたこのご恩に感謝をしながら、さらなる県政の発展のために一層の努力をし、県民の負託にこたえていく覚悟でございます。 多くの皆様方のご厚情に重ねて感謝を申し上げ、引き続いてのご指導、ご鞭撻を心からお願い申し上げまして、簡単でございますが、受賞のごあいさつとさせていただきます。誠に皆様、ありがとうございました。(拍手)
○議長(出口武男) これをもちまして
全国都道府県議会議長会自治功労者表彰伝達式を終わります。
--------------------------------
○議長(出口武男) これより本日の会議を開きます。 会議時間を午後六時まで延長します。
--------------------------------
○議長(出口武男) ただいまより当局に対する代表質問を行います。 順位に従い、三十五番
新谷紘一議員に発言を許します。--三十五番
新谷紘一議員。(拍手)
◆三十五番(新谷紘一) (登壇)質問に入ります前に、先ほど
全国都道府県議会議長会から表彰をお受けになられました服部議員はじめ皆さん方に、まずもって心からお祝い申し上げておきたいと思います。どうぞ今後一層のご活躍をご期待申し上げたいと思います。おめでとうございました。 それでは質問に入ります。第三百回の記念すべき県議会におきまして、一番目として、同僚議員の配慮をいただき、自由民主党を代表いたしまして質問をいたします。 新しいタイプの博覧会、平城遷都一三〇〇年祭、我が国の象徴であります天皇皇后両陛下をはじめ、ご皇室のご来県、国の内外を問わず政財界の方々のご来訪、国際級の会議や全国クラスの諸大会がメジロ押しに記念事業として開催されました。特に、県下三十九市町村が特色を生かし、全力で取り組まれ、文化、宗教、
スポーツ界等各種団体、大人も子どもも、県民挙げて頑張ってくださいました。私の関係するイベントとして、奈良市の水がめである布目ダム湖の全国釣り大会、大極殿院前をスタートした
全国サイクリング大会、奈良市を会場として
全国お茶まつり、全国大闘茶会も開催いたしました。いずれにいたしましても、平城遷都一三〇〇年記念事業として、にぎわいのうちに幕を閉じようとしております。荒井知事が初当選された当時、質問いたしましたように、シルク博のように常設のパビリオンを設け、囲い型で入場券を発売して催す方法を私は想定していました。荒井知事のリーダーシップ、英断によって決定した平城遷都一三〇〇年祭を祝う節目の記念祭であっただけに、荒井知事には感慨ひとしおのものでありましょう。改めて敬意を表しておきます。本当によかったと思います。 さて、政治は世の中をよくするためにあります。筋の通った理論、誤らない判断、将来に対する責任とたぎる情熱を持って、しかも東大寺大廻廊で奈良県議会三百回記念本会議において、四十四名全員が、決議第一号のとおり地方自治の本旨に思いをいたし、奈良県議会の歴史に学びつつ、新しい時代を創造し、我が国、奈良県発展のためにその全力を尽くして、もって百四十万県民の負託にこたえることを誓ったところであります。知事並びに教育長には、そういう意味をもって質問をいたしますので、よろしく誠意あるご答弁を期待しておきます。 まず最初に、県民の皆さんも大変注目をしていると思いますが、来春の
奈良県知事選挙に臨む荒井知事の二期目に向かった意気込みについてお伺いをいたします。 知事は、今回の第三百回県議会開会日に東大寺大廻廊において、大仏様のお指図があれば意のあるところに従うつもり、微力だが光明をもたらすことができれば幸いと、二期目に向けた思いを表明されました。知事のこれまで三年半の県政運営を振り返りますと、特に医療、企業立地、観光振興などの面において、着実な成果を上げてこられたと思います。 例えば、知事就任直後、発生した
妊婦救急搬送事案では、みずから先頭に立って早急に対応され、
ハイリスク妊婦の県外搬送が激減いたしました。企業立地では、四年間で百社の目標を掲げられましたが、既に八十四件を誘致されたと聞いております。平城遷都一三〇〇年祭の大成功、平城宮跡の国営公園化など、一期目の大きな業績であります。私は、平成二十年二月県議会の
自由民主党代表質問で、平城遷都一三〇〇年記念事業としてのフルマラソンの開催を提案いたしましたが、それに対し、(財)奈良県体育協会の会長でもある知事は、前向きに検討するとの答弁をいただき、きのう、関係各位のご努力のもと、雲一つない天候に恵まれ、全国各地から約一万八千人の選手が参加され、第一回
奈良マラソン、第三十回奈良春日・
大仏マラソン全国大会が盛大に開催されました。まさに平城遷都一三〇〇年祭のフィナーレにふさわしいイベントとなりました。 知事就任三年余りでこのような成果を上げられたのは、知事の豊かな発想とすべてに前向きな姿勢、豊富な人脈や手腕によるものであると高く評価します。我が自由民主党といたしましては、新年度以降もその実行力に大いに期待いたします。しかし一方で、そういいながらも、例えば、
代官山iスタジオの売却、高級ホテルの誘致を目的とした県営プールの取り壊し、
県立医科大学教育部門の
学研都市高山地区第二工区への移転など、どちらかといえばトップダウン的に重要な事業案が発表されましたが、社会情勢の変化はあるものの、計画どおり進んでいない面もあり、即実行は評価できますが、もう少し検討を重ねる必要があったのではないでしょうか。今後は、県民の意見を十分聞きながら、経済社会情勢の動向を十分見通し、県政運営を行っていくことが重要であると考えます。 るる述べてまいりましたが、ここで、来春の
奈良県知事選挙に臨む荒井知事の二期目に向けた意気込みについて、まずお伺いをいたします。 次は、ポスト一三〇〇年祭に向けた観光振興についてであります。 二〇一〇年は、記録的な猛暑の夏となりましたが、奈良県にとっては、この猛暑を上回る熱い年となりました。知事は、平城遷都一三〇〇年祭の開始前より、一過性にしないと言ってこられました。私も同感であります。先月、国内外より当初の目標を大幅に上回る三百六十三万人という多くの方々をお迎えし、メーン会場の平城宮跡会場は幕を閉じたわけですが、全県で展開された
秘宝秘仏特別開帳や県内各地事業などの巡る奈良事業は、県内各地で大きな盛り上がりを見せ、奈良の奥深い魅力をアピールしたところであります。しかしながら、成功裏に終わるであろう平城遷都一三〇〇年祭の後はどうなるのか、来年以降、県はどのような取り組みをされるのか、期待をされている反面、本年のにぎわいが継続するであろうかという不安な気持ちもあることは事実であります。既に本年四月に、県はポスト一三〇〇年祭構想を公表し、観光振興を進める上での長期的な将来像を示されました。 大成功をおさめた巡る奈良事業等の承継を含め、今後の観光振興に向けて、どのような方針のもとに取り組もうとしているのか、知事の熱い思いとあわせてお聞かせください。 続いて、奈良県の医療体制の整備について伺います。 第一点目は、
県立奈良病院の建替え整備についてお伺いいたしますが、荒井知事は就任以来、平城遷都一三〇〇年記念事業など本県の観光振興や、特に医療の充実に向けた取り組みに力を注いでこられました。その中で、昨年十一月、
地域医療再生計画を策定され、体制充実のため、
県立医科大学附属病院と
県立奈良病院の県内二カ所を
高度医療拠点病院として整備すると表明されました。私も昨年の十一月県議会の代表質問で取り上げましたが、
県立奈良病院は、昭和五十二年に現在地の平松地区に移転し、以来三十三年が経過し、その間、地元の方々とはさまざまな関係を持ちながら、地域に愛され育った病院であります。そのことから、今となっては地域のまちづくりの核であり、地元にとってなくてはならない身近な病院として存在しております。このため、現在地で建て替えてほしいという地元の方々の思いが、一万七千余りの移転反対の署名に集約されたのではないでしょうか。また、私個人としても、いろいろな検査で
県立奈良病院にお世話になり、妻が病気に倒れたときも、この病院ならとの思いで治療を行ってもらった経緯があります。新病院の整備については、
地域医療再生計画の中で
高度医療拠点病院として
医療提供体制を構築するとされていますが、どのような病院にするのか、総合プランが示されないまま、あたかも移転ありきで検討が進んでいるように思えてなりません。このようなことから、今回の現地建替えの請願も、紹介議員として署名をさせていただいたところであります。 私は、北和の拠点病院として、老朽化した現病院を建替え整備しようと、知事が積極的に取り組んでおられることは、大賛成であります。進めるについては、地域の住民の方々と十分に相談し、整備を進める必要があるのではないかと考えます。現在検討されている新病院の機能、スペース、全体事業費等を考慮して、現在地で建て替えられないものかを、まず検討すべきではないでしょうか。新病院の整備場所について年内に決定するとのことでありましたが、十二月二日に開催されました新
県立奈良病院第二回の
整備検討委員会はどのような内容であったのでしょうか。知事の所見とあわせてお聞かせください。 次は、
県立医科大学教育部門の移転についてであります。
県立医科大学は、奈良県の医療の中核を担っており、附属病院は、中南和地域の拠点病院として機能充実を図るため、教育部門の移転が検討されたものであります。当初は、
学研都市高山地区第二工区への移転構想として示されました。教育部門の移転構想には大きな反響があり、私も昨年十一月県議会で代表質問において、移転候補地を幅広く検討する考えがないかを質問いたしました。知事からは、橿原市、御所市など中南和地域の候補地も含めて広く検討するとの答弁でありました。臨床医学の勉強を行う学生、臨床の指導を行う教員のことなどを考えると、教育部門は附属病院の近くに整備するべきであると考えますが、本年中に移転場所の考え方について示すとされていましたが、複数の候補地の中から、
学研都市高山地区第二工区への可能性が消えた今、知事のお考えをお伺いしておきます。 続きまして、将来に向けた奈良県の道路・交通体系の構築について、三点伺います。 一点目は、
京奈和自動車道についてであります。
京奈和自動車道は、奈良県にとって企業立地の促進、広域的な観光振興をはじめとした商業、産業の活性化、
医療提供体制の広域化など、奈良県の発展、繁栄を大きく左右する重要な社会資本であります。にもかかわらず、奈良県の
京奈和自動車道の供用率は三四%と低く、全国的な整備状況から見ても大きくおくれている状況であります。そこで、政府や国土交通省に対し、県議会や
京奈和自動車道建設促進奈良県民会議、さらには地元出身の国会議員が自由民主党も民主党も入り、要望を行い、整備の推進を応援してまいりました。
京奈和自動車道全線の完成は県民がひとしく望んでおります。既に供用した地域では利便性が向上し、沿道利用が活発化しています。全体事業費八千五百億円のうち既に四一%に当たる三千五百億円程度が投資されているところでありますが、巨額な投資に対して一刻も早く事業効果を発現させるのが政治、行政の責務であります。しかし、知事は、さきの九月定例県議会におきまして、(仮称)
奈良インターチェンジ以北のトンネル区間については、国に対し当面要望しないと表明をされました。一方、国において、本来はおくれている道路整備のための特定財源が一般財源化されたことは、私は納得できません。奈良県の道路整備率は全国でも最下位クラスであります。まだまだ、目的税として徴収した道路財源を他の目的に回す余裕はありません。 大和北道路のトンネル区間は、平成二十年三月に
京奈和自動車道大和北道路として都市計画決定されました。国において一日も早く事業化されるのが当然のことであります。今回、要望を見合せられた理由が、
直轄事業負担金が膨らみ、負担が困難になるというのであれば、直轄道路事業の予算の確保と、さらに、都道府県の直轄負担金の負担率を現在の約三〇%から例えば二〇%や一〇%に下げるといった整備促進方策の提言や要望をあわせて行い、早期の
大和北道路全線完成を図るべきと考えます。知事の所見を伺っておきます。 二点目は、
リニア中央新幹線の整備についてでございますが、
リニア中央新幹線については、奈良県議会としても去る九月定例会において、整備計画の決定等に当たっては地域の意見を十分反映されたい等の申し入れを、国に対し行ったところであります。私が調べたところによりますと、リニア駅は、ターミナル駅となる東京都、愛知県、大阪府を除くと、中間駅として神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、三重県、そして奈良県の六駅設置されると聞いております。先般私は
総務警察委員会で、神奈川県相模原市を訪問いたしました。神奈川県において相模原市がリニア駅となるようです。特に話題となったのが駅の建設についてであります。所要時間を例にとりますと、新幹線のぞみでは、東京-新大阪間で六駅に停車し二時間二十五分を要します。これが
リニア中央新幹線だと、奈良から東京まで一時間余りで結ばれます。奈良県経済の発展や活性化の面から、リニア奈良駅は必要ですし、必ず実現させなければなりません。 とはいえ、神奈川県と奈良県の駅は地下駅となるそうでございまして、約二千二百億円もの駅建設費は全額地元負担となるようであります。これが地上駅だと約三百五十億円で済むわけでありますから、実に六倍以上の負担となります。駅の公益性を踏まえますと、二千二百億円もの巨額を地元自治体にすべて負担させるべきではありません。相模原市との意見交換の中で、同じ地下駅同士、連携を密にして情報交換をしたいとの申し出がありました。地下駅については、神奈川県相模原市が先行整備され、この費用負担の考え方がリニア奈良駅の建設にも適用されることになります。この機会にぜひとも積極的に連携を図り、運動していくことが必要と思いますが、知事のお考えをお聞かせください。 また、JR東海は、東京-名古屋間を一期工事として平成三十九年に、また、名古屋-大阪間は二期工事として平成五十七年を目途に開業すると聞いております。
リニア中央新幹線の
高速輸送ネットワークを考えると、東京-大阪間を一本化して整備する必要があると考えます。リニア奈良駅の実現は、奈良県の将来の活性化に向けて不可欠であり、そこで、東京-大阪間の全線同時整備を図り、早期に完成させるため、関係府県が協調して国や
鉄道事業者等に強く要望すべきと考えますが、知事のご所見を伺っておきます。 三点目は、平城宮跡内を通過する近鉄線の移設について伺います。 私は、この件についても平成二十年二月県議会の代表質問において、大和西大寺駅や新大宮駅周辺のあかずの踏切による渋滞や生活圏の分断を解消するとともに、国営公園である
平城宮跡歴史公園の整備を進めるためには、平城遷都一三〇〇年祭を契機に、近鉄奈良線や京都線を地下化するなど移設に関する具体的な検討が必要と提案し、知事の考えを伺いました。このことに対し荒井知事は、歴代の知事で初めて積極的に取り組む姿勢を示され、それ以来、数人の議員がこの問題に対する質問を行うなど、議会でも活発な議論がなされてきました。私の質問から既に三年が経過しましたが、近鉄線移設の検討は、困難な課題を解決し早期に進めるべきと考えます。そこで、現在の検討状況と今後の取り組みについて、知事のお考えを聞いておきます。 続きまして、農業の振興についてお伺いをいたします。 近年の農業を取り巻く状況は大変厳しく、価格の低下や生産コストの高どまりなどによる農業所得の低迷、農業者の減少、高齢化などが全国的に懸念されているところであります。こうした中、最近はTPP、
環太平洋パートナーシップ協定への参加に対する話題が沸騰しております。農林水産省では、TPP参加で関税などが即時撤廃されれば、
農林水産物生産は四、五兆円程度減少し、食料自給率は現在の四〇%から一三%に低下、三百五十万人程度の就業機会が喪失される試算を公表するなど、危機感を募らせております。 私は、TPP参加は、小規模な兼業農家が大半を占める本県農業はもとより、我が国農林業の存亡、さらには国民の安全・安心な食生活、国土の保全などにかかわる重大な問題であり、安易な参加には賛成すべきではないと考えますが、知事のお考えをお伺いいたします。 また、県の特産品であります大和茶では、先日、奈良市において平城遷都一三〇〇年記念事業として開催された
全国お茶まつりには、大会会長の荒井知事をはじめ全国各茶産地の生産者、関係機関の皆様総勢で約一千人が集まり、一丸となって茶の振興に努めようと誓い合ったところであります。特に全国品評会におきましては、普通煎茶十キログラムと四キログラムの部門で、久保田正剛、井ノ倉光博、軽井隆大の三名の方が優勝され、はえある
農林水産大臣賞を受賞されるなど、大和茶の品質のよさ、生産技術の高さを全国に向け強くアピールすることができました。 県ではことし四月に、奈良の未来を創る五つの構想案の一つ、
ポストベッドタウン奈良の中に、マーケティング・コスト戦略に基づいた農業の振興を位置づけされ、意欲ある担い手と協定を締結し、
リーディング品目、
チャレンジ品目に重点化し、支援されると発表されました。そこで、本構想案の実現に向け、特に
リーディング品目のお茶の振興について今後どのように取り組まれようとしているのか、知事にお伺いをしておきます。 続きまして、森林環境税についてお伺いをいたします。 住宅建築様式の多様化や国産材価格の低迷、林業就業者の減少や高齢化などにより、木材生産に対する意欲は大きく減退し、その結果、間伐などの森林整備がなされず放置された人工林が増加し、森としての保水力や、災害を防止する機能等が低下しています。一方、地球温暖化や生物多様性の減少など、地球規模での環境危機が叫ばれる中、森林に対するニーズは、木材供給や災害防止、水源涵養などに加え、自然環境の保全や二酸化炭素の固定など、より多様化するとともに、その公益的機能が高く評価されています。このような状況にかんがみ、県におかれては、平成十八年度から奈良県森林環境税を導入し、放置されていた人工林の緊急間伐を中心に、荒廃している里山林の機能回復整備、社会活動や学校における森林環境教育など、幅広いライフステージにおける取り組みを展開してこられました。そのような中で、特に森林組合がこれまでに果たしてきた役割は誠に大なるものがあります。森は森としての機能を果たし、木は木として価値のある木材の育成に、人の文化的生活環境を維持することにも効果の高いこの事業を高く評価しているところであります。 現行の森林環境税は最終年度を迎えております。私は、この制度を継続するに当たり、重点的に実施すべき森林整備事業を拡大し、さらに充実させるためには、県民の皆様のご負担額を引き上げることも検討すべきではないかと考えますが、これについて知事のご所見をお伺いいたします。 最後になりましたが、教育長にお伺いをいたします。 平成二十二年度全国学力・学習状況調査の結果によると、本県の児童・生徒の学力は、これまで同様、全国平均に比べおおむね高い状況にある一方で、学校の規則を守っている、新聞やテレビのニュースなどに関心がある、今住んでいる地域の行事に参加していると答えた児童・生徒の割合は、依然として全国平均よりも低くなっています。さらに、平成二十一年度児童生徒の問題行動等生活指導上の諸問題に関する調査の結果からは、本県の小・中・高校生の暴力行為、とりわけ器物損壊等の件数の多さなどの課題もあります。また、体力についても、平成二十一年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果によると、本県の児童・生徒は多くの種目で全国平均を下回っております。私は、こうした調査結果から、比較的高い学力を身につけている一方で、体力や規範意識、社会性に課題が見られる本県の子どもたちの姿に憂慮しているところでもございます。 このような本県の子どもたちの課題解決に向け、県教育委員会ではさまざまな取り組みが行われていると承知しています。中でも、規範意識や社会性を身につけさせるための取り組みは、子どもたちを自立した社会人として育てるために重要であると考えております。そこで、教育長にお伺いいたしますが、本県の子どもたちの規範意識や社会性の向上のために、どのような取り組みを現在進めておられるのか、お伺いしておきます。 以上、少し風邪を引いておりまして、聞こえにくかったと思います。七点、知事に、あるいは教育長にお伺いをさせていただきましたが、趣旨をご理解いただき、簡潔でわかりやすい答弁を期待いたしまして、私の壇上からの質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○議長(出口武男) 荒井知事。
◎知事(荒井正吾) (登壇)三十五番新谷議員のご質問にお答え申し上げます。 最初の質問は、来年の
奈良県知事選挙への出馬に当たっての意気込みのご質問でございました。 私は、知事就任以来、地域のことは地域で解決するという気構えを持ち、直面する県政の諸課題に正面から立ち向かいながら、奈良の課題を分析し、オリジナルな知恵を出し、積極果敢に対応することを旨として、国の予算、情報等を活用し、財政の健全化を図りつつ、奈良のよき未来をつくるため、全力を尽くして県政運営に当たってまいったつもりでございます。この三年半を振り返ってみますと、まずは、平城遷都一三〇〇年祭を成功させることが最も大きな使命であると認識して取り組んでまいりました。幸いにして、県内全域に、予想を大きく上回る約千七百四十万人の方々に訪れていただきました。来場者消費額においても、試算値では一千億円弱の消費効果があり、来場者アンケートにおいても、おおむねよい評価をいただくことができました。また、就任直後の
妊婦救急搬送事案では、各種の対応策を短期間で取りまとめ、順次実行に移すことができ、
ハイリスク妊婦の県外搬送件数は、当時四十二件あったものがこの一年間では四件にまで減少し、逆に他県から十件の受入れをするまでになり、多少なりとも成果を上げることができたと思います。これらをはじめ、数多くの諸課題の解決に向けては、課題解決に直接かかわっていただいた方々のお力添えをはじめ、議員各位や関係者の方々に深いご理解と温かいご支援を賜ったことによるものであり、何とか順調に県政運営を推進することができましたことに感謝を申し上げたいと思います。 また一方で、残された課題もございます。一期目においても力を注いでまいりましたが、県経済の活性化、県民の暮らしの向上、南部地域の振興などが、本県の将来に向け、今後さらに追求していくべき政策課題であると考えております。県経済の活性化では、産業を振興し、県内雇用を増加させ、県内消費を活発にすることが重要であると考えております。そのためには、観光の振興も大きな要素になると思います。平城遷都一三〇〇年祭を一過性にせず、奈良にはまだまだ大きなポテンシャルがありますので、奈良らしい観光の売り出しを考え、奈良をよりすばらしい観光地として創造することが重要でございます。ことしは大変たくさんの方々に奈良を訪れていただきましたが、この成功体験を習熟し、来年以降につなげていきたいと考えています。県民の暮らしの向上では、県民一人ひとりが楽しみながら取り組める健康づくり、医療・介護・福祉の充実を目指す暮らしづくり、安全・安心、きれいで生き生きとしたまちづくりなどを進めていきたいと考えています。南部地域の振興では、南部地域及び南部地域と同様の課題を抱える周辺地域の振興を行いたいと思います。 二期目の出馬に当たっての意気込みというご質問でございますが、今後とも、県議会議員の皆様、県民や関係者の皆様方のご意見やご提案に十分に耳を傾け、先行き不透明と言われる社会経済情勢の動向を見きわめ、初心を忘れず、県政の諸課題に正面から立ち向かいながら、これまで育ててきた発展の芽を、大きな成果として結実させ、奈良のよりよき未来をつくってまいりたいと考えています。微力ではございますが、持てる力のすべてを県勢の発展に尽くしてまいる所存でございます。 ポスト一三〇〇年祭の観光振興についてのお問い合わせがございました。 平城遷都一三〇〇年祭は多くの人々の知恵と努力を結集した結果、平城宮跡会場が成功裏に閉幕しただけではなく、
秘宝秘仏特別開帳をはじめとする巡る奈良事業や、県内各地で開催されたイベントなどの賑わいとも相まって、各地で活況を呈してまいりました。この場をおかりして、県民の皆様をはじめ関係者に深く感謝を申し上げたく存じます。 私は、この平城遷都一三〇〇年祭の開始前より、賑わいを一過性のものとしないことを目標にしてきました。本年四月にはポスト一三〇〇年祭構想を公表し、平城遷都一三〇〇年祭の成果を今後に生かすため、多岐にわたる分野で将来像をお示ししたところでございます。その後、平城遷都一三〇〇年祭の成功の要因を分析しながら、これを持続していくための戦略を検討してまいりました。現在この検討結果を生かし、構想実現のための第一段階として、具体的取り組みと方針を示すポスト一三〇〇年観光戦略アクションプランを策定しております。今年度中をめどに取りまとめる予定でございます。このアクションプランでは、例えば、
秘宝秘仏特別開帳など寺社との連携により大きな成功をおさめた巡る奈良事業を継続すること、例えば、奈良本来の価値であります歴史そのものを展示するため、歴史物の展示から歴史展示へと転換すること、また、人気スポットとなった平城宮跡の整備の促進と利活用をすること、また、記紀・万葉を題材とした取り組みの展開をすることなどについて、具体的に考えをお示ししたいと思っております。今後とも、奈良の有する本来の価値を一層磨き、効果的な情報発信を心がけながら、世界に類を見ない魅力的な観光地奈良の実現を目指してまいりたいと考えております。
県立奈良病院の建替え整備についてのご質問がございました。 私の医療問題に対する取り組みは、振り返りますれば、知事就任直後に発生いたしました妊婦搬送事故から始まりました。その後、約二年間にわたり地域医療等対策協議会での議論を踏まえ、県内二カ所に
高度医療拠点病院を設置することとし、北和地域の拠点病院として
県立奈良病院を位置づけ、整備を進めていくこととしたものでございます。北和地域においては、脳卒中や心筋梗塞など治療を急ぐ重症な疾患や生死にかかわるがんの治療などについて、十分に対応ができていない実態が明らかになってきました。このことから、救急医療とがん治療を中心とした
高度医療拠点病院の整備を行い、できる限り早く北和地域の
医療提供体制をつくり上げたいと考えているところでございます。医師不足、看護師不足の現状の中、これらを実現するためには、新病院が、地域の病院・診療所と連携し、さらには北和医療の最後のとりでとして、核となる病院の役割を果たすことで、医療の充実を図ることができるものと考えております。 このような性格を持つ新病院の整備を考えた場合、重要な要素といたしまして、北和の拠点病院の機能を十分に発揮できる広い敷地を有していること、早期に新病院がオープンできることなどが考えられます。現在、現地の平松地区と移転の候補地として挙げている六条山地区のそれぞれについて、比較検討しているところでございますが、その状況を簡単にご説明したいと思います。 病院敷地面積につきましては、現地建替えの場合、既存建築物があるため、病院配置への制約を受け、将来の拡張性についても課題がございます。工事期間については、現地建替えの場合、既存の建物を解体して、その場所に新しい建物を建築し、病院機能を順次移していく段階施工になるため、工事期間が長期化し、約八年半になる見込みでございます。一方、六条山地区に移転する場合は、造成工事が必要となりますが、工事期間は現地建替えの約半分の四年で済みます。このことから、現地建替えを行う場合には、医療体制の整備におくれを来すことが懸念されるところでございます。さらに、事業費につきましては、現地建替えの場合、診療を続けながらの工事となるために、防音対策等の仮設費や工事中の病院利用者の安全対策費が高くなります。一方、六条山地区に移転する場合は、造成費や用地取得費が必要になります。このようなことを総合いたしますと、概算ですが、病院整備にかかる事業費については、現地建替え、移転のいずれにしても、大きくは変わらないものと見込んでいるところでございます。 比較検討の主な結果は以上でございますが、十二月二日に開催をいたしました新
県立奈良病院整備検討委員会において、委員の方々から幾つかの意見をいただきました。現地建替えの工事に八年半を要することは、今の医療状況から危機的であること、また、工事を行いながら診療を続けることは患者への影響が大き過ぎることなどから、移転が必要との意見が大勢でございました。 以上のような比較検討の内容や検討委員会での委員のご意見から判断いたしますと、現時点では、六条山地区への移転が望ましいと考えているところでございます。今後、さらに新病院の規模や内容を精査するとともに、シンポジウムを開催するなど、さらに県民の方々の声を丁寧にお聞きし、医療関係者の意見も踏まえた上で、議会でも十分に協議をさせていただきながら、最終的な整備場所の判断をしたいと思います。
県立医科大学教育部門の移転についてのご質問がございました。
県立医科大学の教育部門は、将来の本県医療を担う医師や看護師を育てる環境として考えましたときに、狭隘で、施設も老朽化しており、また附属病院についても、現在の敷地内では、中南和地域の拠点病院としてこれ以上の拡充整備を進めていくことは難しいと判断をしております。また、医科の単科大学でありますが、幅広い社会的見識を持った医療人を育成していくためにも、他の大学との交流など、教育内容の充実を図れる環境が必要であると認識をしているところでございます。このため、教育部門の移転が必要であると考え、ことし二月に、健やかに生きる構想案の中でもお示ししたところでございます。また、教育施設を移転することができれば、病院を中心としたまちづくりを進めることもでき、地域の活性化もできると考えたものでございます。 最適な候補地につきましては、これまで庁内のプロジェクトチームで条件と基準を検討してまいりました。その内容でございますが、四点ほどの評価のポイントがございます。一つ目は、教育施設の充実も考え、余裕のあるキャンパスとするため、現状よりも広い敷地を確保できること。敷地の面積でございます。附属病院から歩いて行ける距離にあり、鉄道主要駅からも近いこと。附属病院と教育部門のアクセスでございます。将来の附属病院の発展に寄与すること。附属病院の環境整備の点でございます。周辺のまちづくりも可能で、地元地域からも最大限の協力を得られること。県立病院でありますが、立地の地元地域からの協力の点でございます。このような四点の評価のポイントが高いと整理されてまいりました。さらに、臨床を学ぶ学生や指導教員の観点についても重要であると考え、検討を行ってまいりました。 これらの結果を踏まえて、移転を行う場合、地元地域のご理解とご協力というのがやはり前提にはなりますが、県農業総合センターは、約十ヘクタールの敷地があり、一定の面積が確保できることや、附属病院からも約一キロメートルの距離にあり、学生や教員が歩いて移動できることから、橿原市内の県農業総合センターの敷地を活用することが有力だと判断しているところでございます。県農業総合センターの敷地を活用するのであれば、
県立医科大学の敷地としてどれだけの広さが必要なのか、また、県農業総合センターの機能をどのように確保していくのかについても、今後十分に検討する必要があると考えているところでございます。
京奈和自動車道の整備についてのご質問、ご意見がございました。
京奈和自動車道は、重要性は議員お述べのとおりでございますが、全線が供用しネットワーク化することが必要不可欠であると認識しております。しかしながら、大和北道路の(仮称)
奈良インターチェンジ以北の工事費は特に大きく、厳しい財政事情の中、国においても県においても、大きな財政負担となることも事実でございます。このため、選択と集中の観点から、まずは大和北道路の(仮称)大和郡山ジャンクションから(仮称)奈良インターチェンジ間や大和御所道路の早期整備を国にお願いするとともに、県においても西九条佐保線など関連アクセス道路の早期整備を目指し、大和北道路のトンネル部については新規事業採択の要望を当面見合わせることにしたものでございます。また、トンネル部は、地域に被益する効果が低いということも考慮のポイントになっております。 一方、国の行政刷新会議における事業仕分けにおいて、社会資本整備事業特別会計、道路整備特別勘定について事業内容を見直し、予算要求を一〇%から二〇%圧縮するという一方的、一律的な評価結果が示されてまいりまして、必要な事業費の確保が厳しい情勢にあると認識しているところでございます。そのため、七月に続きまして十一月にも県の最重点提案・要望項目として、直轄道路事業の整備促進などについて国及び県選出国会議員に強く訴えてまいったところでございます。今後とも引き続き、県議会、市町村などさまざまな立場の方々と連携しながら、
京奈和自動車道をはじめとした直轄道路の必要性を訴え、予算確保を国に働きかけてまいりたいと思います。 なお、議員ご提案の直轄負担金の負担率引下げにつきましてでございますが、県負担の軽減としては有効であると思います。一方、国の厳しい財政事情の中で、このことにより直轄事業全体の予算額が縮小され、
京奈和自動車道などに充てる予算が少なくなることも懸念しているところでございます。
リニア中央新幹線の整備についてのご質問がございました。
リニア中央新幹線は、新しい国土軸を形成する高速輸送鉄道として、本県に駅が設置されれば、それは本県の地域経済の発展・活性化、観光振興、県民の生活向上に大きな効果をもたらすと思います。そのため、県では東京-大阪間の早期整備と奈良県内における駅の設置を強く要望しているところでございます。駅は地域の交流拠点施設であり、地域情報発信の場として、地域振興に大変重要な役割を果たすものでございます。国の基本計画におきましては、主な経過地の一つとして奈良市付近が選ばれております。駅の位置や構造、運行サービスの確保等については今後十分に検討を深めていくことが必要と考えております。駅の建設費につきましては、ターミナル駅となる東京、名古屋、大阪の各駅はJR東海が全額負担する、地元負担なしとされる一方で、本県内における駅は地下構造とした上で、建設費概算の二千二百億円の全額を地元負担とする考えがJR東海から示されておりますが、大変不公平感があるものと思っております。このため、地元負担額は、駅の整備に伴い地域に発生する受益、例えば停車する列車の本数などが基本的な指標になると思いますが、その受益の範囲内とすべきであり、国に対しても強く申入れを行ってまいりました。 また、
リニア中央新幹線の経済効果をより高めるため、早期に東京-大阪間を一体的に開業されることが望ましいと考えております。現在のところ、JR東海では東京-名古屋間の開設を優先される考えでございます。そのため、国に対して先行投資や建設費の償還等に関する税制上の特例措置、民間事業者からの資金調達手法等について検討されたらどうかということ、また、
リニア中央新幹線は超高速でございますので、追い越し駅やすれ違い駅を設置するなどいたしまして、一部区間において単線でも運行できる可能性を検討し、初期の建設コストの削減を図ることも検討されたらどうかなどのことを、七月の国の交通政策審議会で奈良県として主張したところでございます。JR東海は、本県と神奈川県の駅は地下構造としていることから、神奈川県下における取り組みは参考になると考えております。神奈川県や駅誘致活動を続けられている相模原市とは、よく情報交換するとともに、奈良県としても
リニア中央新幹線の開業に伴う経済効果等について調査・検討を実施したいと考えております。今後も引き続き、奈良における駅の設置や東京-大阪間の一体的な早期開業については、機会をとらえて国や
鉄道事業者等に対して要望してまいる所存でございます。 奈良県の道路・交通体系の整備の中で、平城宮跡内を通過する近鉄線移設についてのご質問がございました。 近鉄線の移設検討は非常に大きな課題で、まず困難な検討課題でございます。多大な事業費や文化財、景観への影響等といった課題を解決できる移設案の立案にはまだ至っていない状況でございます。これまでの検討内容といたしまして、比較的浅い地下に移設した場合の地下水の変動や、他の交通モードへの転換を含めた幅広い移設の可能性などを検討してまいりました。さらに、昨年より、近畿日本鉄道から鉄道技術に関する、より専門的なアドバイスをいただきながら、鉄道移設案についての検討を精力的に進めてきたところでございます。県といたしまして、移設検討について県民等とのコミュニケーションを深めるという面も大事かと考えまして、全国から多くの人々が来られている平城遷都一三〇〇年祭という機会をとらえて、本年十一月の一カ月間、県民や観光で奈良を訪れる来訪者等に対してアンケート調査を実施したところでございます。アンケート調査におきましては、近鉄線が現在平城宮跡を横断する形で運行していることなどについての意識や、移設に当たり配慮すべき事項を伺い、千名を超える方々から貴重なご意見をいただきました。現在、寄せられたご意見、また追加でいただきつつあるご意見についても整理を進めているところでございます。 近鉄線の移設検討は、容易に解決策が見出せない非常に大きく困難な課題でございますが、まずは、全力を挙げて県としての案を早期に立案したいと考えております。その上で県民や国の機関等からご意見を伺い、協議・調整等といった手続を行ってまいりたいと思います。 農業振興、TPPの参加についての所見をお問い合わせになりました。 国におきましては、環太平洋経済連携協定、TPPと言われるものの基本方針が閣議決定されまして、国内の環境整備を早急に進めるということと、関係国との協議を開始するということを表明されたところでございます。国の内閣府におきまして、TPPへの参加は日本経済を活性化するための起爆剤として、品目、分野によりプラス・マイナスはあるものの、製造業を中心に、全体としてGDPが増加すると試算されております。一方、農林水産省では、農産物について外国産との価格競争により大きなマイナス影響を受けると試算されております。このようなことから、現段階では、国における検討も集約されていない状況にあると推察しております。今後、国では、来年六月を目途に農業改革の基本方針を取りまとめるとのことでございますが、国全体に係る重要なことでございますので、国として日本農業の将来方向を示されることが先決と認識しております。県といたしましては、今後、国の動向を注視してまいりますが、一方、本県農業の足腰を強くしていくために、幾つかのことを先行的に当然実行していく必要がございます。例えば、マーケティング・コスト戦略に基づく農業の振興などを柱とし、大和野菜等の
チャレンジ品目や、お茶等の
リーディング品目を中心に、高品質化・高付加価値化によるブランド化などの施策を着実に展開し、意欲ある農家が将来展望を持って農業経営を営めるよう取り組み、奈良らしい農業振興の方策を追求していく所存でございます。 農業振興について、お茶の振興についての取り組みについてもお問い合わせがございました。 お茶につきましては、柿、イチゴ、菊とともに、今後とも本県農業を牽引する
リーディング品目に位置づけております。意欲ある担い手と協定を締結し、重点化して支援してまいる所存でございます。その内容でございますが、幾つかございます。一つ目は、大型自動荒茶加工施設や広域茶流通センターを整備することでございます。二つ目は、従来の複数人数による手作業から、車に乗って機械で刈り取ることのできるいわゆる乗用摘採機の導入の支援でございます。三つ目は、肥料高騰に対する助成でございます。四つ目は、茶生産履歴記帳によるトレーサビリティーへの対応でございます。五つ目は、空中大和茶カフェなど高級大和茶のPRなど、生産から流通、販売に至る各般の取り組みの展開でございます。さらに、昨年度より、樹齢四十年を超える老木園の若返りを図る改植事業を強力に推進しているところでございますが、荒茶加工施設の更新とあわせて、高品質化、低コスト生産に力を注ぐ予定でございます。また、平城遷都一三〇〇年祭で賑わう中、日本の心を嗜むをテーマに開催されました
全国お茶まつり奈良大会におきましては、全国の皆様に大和茶のすばらしさを認識いただき、PRの絶好の機会となったと思います。県といたしましては、
全国お茶まつりの成果を踏まえて、大和茶の名声をさらに高めるべく、マーケティング・コスト戦略に基づき、ブランド化と消費の拡大を図り、着実な振興を図っていきたいと考えております。 最後に、森林環境税についてのお問い合わせがございました。 森林環境税の導入は、平成十八年度でございますが、これまで、例えば、施業放置人工林の解消のため、約四千ヘクタールの強度な間伐の実施、また、都市住民が身近に接することのできる里山林の機能や景観を回復するため、約百カ所の里山林の整備、また、森林環境税を身近に感じられる取り組みの一環として、約一万五千名が参加した体験学習イベントなどを実施してまいりました。 今後の森林環境税のあり方などにつきましては、外部の中立的な有識者で構成される奈良県法定外税懇話会が開催されております。平成二十二年には三月と五月、七月、十月の計四回開催されましたが、その懇話会において、森林環境税使途事業の効果検証や森林環境税に関する県民アンケートの結果等に基づき、同税を利用した今後の取り組みの方向性や税制度のあり方についてご検討いただいてまいりました。同懇話会におきましては、森林の有する県土の保全や水源の涵養などの公益的機能の重要性をかんがみると、現在の取り組みを基本とした事業の展開及び事業量の確保が望まれるとされております。また、森林環境税の中身をより多くの県民に身近に感じられる取り組みの必要性などについても、議論がなされてきたところでございます。さらに、本年六月に実施した森林環境税に関する県民アンケートの結果において、約八割の方々から継続とのご回答をいただいておりますとともに、負担額は現状維持というご意見が約六割でございました。また、長期にわたる景気の低迷が続く中、本県の経済情勢は非常に厳しいものがあることなどを勘案した議論もなされてきたところでございます。県といたしましては、近々提出される予定の懇話会の報告内容を尊重して、税制度の継続と負担額について判断をしてまいりたいと思っているところでございます。 私に対する質問は以上でございます。残余は教育長に答弁をさせていただきます。ありがとうございました。
○議長(出口武男) 冨岡教育長。
◎教育長(冨岡將人) (登壇)三十五番新谷議員のご質問にお答えいたします。 私には、子どもたちを自立した社会人に育てるためには、規範意識や社会性の向上は重要な課題であるが、現在どのような取り組みを進めているのかのお尋ねでございます。 ご指摘の全国調査等の結果から、本県の子どもたちの規範意識や社会性の向上は喫緊の課題の一つと考え、自我の芽生え期となる幼少期からそれらの育成に向けた施策を展開しているところでございます。昨年度より実施しております、おはよう・おやすみ・おてつだい約束運動は、約束を守るという幼児期からの規範意識の芽生えを養うことを目標とし、本年度は、昨年度の三・九%増の二万百五十九人の幼児が約束カレンダーを提出してくれました。約束運動実施前と後の調査では、お手伝いする幼児が一四ポイント増の約二千八百人増となるなど、昨年同様に効果的な取り組みとなっております。 また、本年度からは、学校と家庭・地域とが協働して子どもの規範意識や社会性等の向上に取り組む、見直そう!家庭と学校協働プロジェクトを実施いたしました。県内小学校五校をモデル校に指定し、家庭との協力によるノーテレビデーや、地域で協働して推進するあいさつ運動などに取り組んでおります。さらに、学校支援地域本部事業やくらし創造部が実施いたします、なら通学合宿では、地域の力を学校におかりしたり、地域で子どもたちをはぐくむこととしており、学校支援地域本部事業を実施した市町村教育委員会へのアンケート調査では、子どもたちの学力や規範意識、コミュニケーション能力の向上について、七四%が効果が得られたと回答しております。また、通学合宿に参加した児童へのアンケート調査では、約七六%の児童が、今後、友達や地域の人に進んであいさつをしようと思うと答えており、所期の目的はおおむね達したものと考えているところでございます。 今後、このように学校、家庭、地域が協力して取り組むことで、子どもの規範意識や社会性の向上に一層の効果が期待できるため、学校支援地域本部事業のさらなる展開や、通学合宿の成果を広く伝えてまいる所存でございます。 以上でございます。
○議長(出口武男) 三十五番
新谷紘一議員。
◆三十五番(新谷紘一) 代表質問の関係上、質問が多岐にわたりましたが、知事には、具体的に多くの質問に対しまして誠意をもってお答えをいただきました。そしてまた、申し上げた質問の中で、あと四分ほどしかありませんが、再質問をさせていただきたいと思います。 まず一つは、
京奈和自動車道、いわゆる集中をして、あと約五千億円余り事業費が残っていると。これは国も大変、県も大変、当然のことだと思うんですが、この一時当分の間、予算要望しないということそのものが、これだけ長いこと都市計画審議会でもめにもめて審議をやっていただいて、計画決定を見たわけでありますし、これは道路がやっぱりつながらなかったら、橋をかけかけて途中でやめたということにもなりかねない。もちろん一連の、京都から和歌山、これも
京奈和自動車道としての機能を発揮するためには、ぜひとも大和北道路については、トンネル化を決定したわけでありますし、今の要求しないことが中止につながる可能性を心配するわけです。これが中止になってしまったら、今の現状の道路、この区間、大変な混雑を招くであろうし、奈良県の発展につながらない。知事がさっき気になることを言われたので、あえて申し上げたいのは、トンネル化だから地域のためになるかどうかというような答弁が返ってきました。これは、そんなことも含めて、トンネル化を図ることの決定を見ているわけですので、どうぞ、今申し上げたような懸念がないように、いかに予算が厳しい状況でありましても、早く完全開通を奈良県民がひとしく望んでいる奈良県内の
京奈和自動車道であろう、こう思いますので、そういうように要望しないことになっているとするならば、御所市や大和郡山市周辺のスマートインターチェンジ等々、こんな予算がついているところについては、早くたくさんの予算をつけてもらって頑張ってほしいと思いますし、いかに国がしんどかったとしても、先ほど申し上げましたように、道路特定財源五兆四千億円というこの予算があったものを、全部これ同じような税率で自由民主党の時代から一般財源化し、そしてまた民主党になりましても、暫定税率を外すと言いながら、これも外してない。そういうことを考え合わせましたら、このお金はすべてつぎ込んでもらって、奈良県の唯一の高速道路、名阪国道もあるんですが、
京奈和自動車道の整備については、先ほど申し上げたように、三〇%ぐらいの負担は、これは一〇%とか二〇%に負担をしてもらってでも、この財源を確保して、基本的な考え方の方策を考えてもらって、国のほうとしてその負担率を、全体事業を下げろと言っているわけではないわけですので、この財源は確保しながら国の負担を、他目的に使うんじゃないような形で今も税収を取っているわけですから、この財源は納税者の意思に反しないように、我が奈良県の場合は負担率を下げてでもやっぱり早期にやるべきである、こう思いますので、再度知事のお答えをお聞きしておきたいと思います。
リニア中央新幹線については、全く知事と同じ考えですので、私の申し上げたとおり、ぜひともこれは早く、もう一期、二期と分けずしてやらなかったら、恐らく今後、ルートの変更等々懸念されますので、どうぞ今の方針で頑張って進んでほしい、このように思っておりますので、我々も協力を惜しみません。 それから、教育長、どうぞ、やっぱり法治国家です、ルールを守らない子どもを育成しておったのでは、いかにすばらしい、できる子どもであっても、ルールを守らない子どもが社会に役立つはずはありませんから、今の考え方で強力に進めてください、お願いしておきます。 以上申し上げて、答弁をお願いをして、質問を終わります。
○議長(出口武男) 荒井知事。
◎知事(荒井正吾)
京奈和自動車道の大和北道路のトンネル部分について要望を見合わせることについての再質問がございました。 要望はしないわけでございますが、計画そのものは残っております。また、着工するということを見渡しても相当先になるということもございます。その間の事情の変化というものにどう対応するかという観点もございます。道路というものは、建設したらできるだけそこが早く効果を発現する、奈良県は、ある面有名でございますが、道路はつまみ食いでつくってきたというような逆の悪口を、道路をつくると、とにかく建設したところは開通するということが最優先であろうと、私は従来から考えてまいりました。そういう意味で、現在建設しているところの効果を早期に発現するということはまず最優先すべきだと思います。そこで、問題は財源ということになりますが、財源の配分が、道路建設財源が道路整備のおくれたところに優先されて配分されるという兆候はまだまだ見えないわけでございます。全国的に財源の配分について奪い合いの状況でございますので、三〇%の地元負担金、直轄の地元負担金というのは、千億円の工事費であれば三百億円、二千億円であれば六百億円の、それだけの負担金が、トンネルというのはどうかということでは、道路としてはトンネルでも道路でございますが、沿線の活用という意味では大変悲しいものがあるので、そのような点は多少ご理解もいただきたいと思います。諸般いろんな道路整備をめぐる環境を判断した上で、最優先すべきところを絞って要望していきたいという考えでございますので、ご理解を賜ることができればと思います。
○議長(出口武男) 三十五番
新谷紘一議員。
◆三十五番(新谷紘一) 時間がありませんので、これで質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(出口武男) 次に、二十八番岩城明議員に発言を許します。--二十八番岩城明議員。(拍手)
◆二十八番(岩城明) (登壇)地方自治法施行後すぐに開催されました奈良県議会は、今回で三百回目を迎えることになりました。奈良県議会の三百回目の開催を心からお祝い申し上げたいと思います。これまでの先人のご努力に敬意を表しますとともに、その営みを支えてきていただいた多くの皆さん方に改めて感謝を申し上げたいと思います。その記念すべき議会で、民主党
奈良県議会議員団を代表して質問をさせていただくこと、大変光栄であります。みずからの責務について非常に重いものを感じながら質問をさせていただきたいと思います。 去る九月議会で平成二十一年度の決算の認定についての議案が提出をされました。決算審査特別委員会でも部局別にさまざまな課題についてお尋ねをしましたので、重複を避ける意味で、幾つかの問題に絞ってお尋ねをしたいと思います。 平成二十一年度における主な取り組みについての評価・分析や、平成二十三年度に向けた課題については、重点課題に関する評価という冊子で整理をされています。既に関係者の皆さん方に配られておることと思いますし、この二冊の資料で整理をされています。マネジメント機能を向上させるのだという意思を強く感じますし、よりわかりやすく伝えよう、理解してもらおうと、県民の皆さん方に対する気持ちも伝わってまいります。これらの資料は、インターネットでいつでも県民の皆さんにごらんいただけるようになっていますし、この間の努力について大変評価をさせていただいています。 さて、その中身についてであります。県政の重点課題は、体系的に六つの項目に整理され、さらに二十四に細分化して、みずからの評価を示してあります。数値を示して分析し、今後の課題を平成二十三年度の予算編成に向けた課題として整理をして、今後の取り組み方針まで明記をされています。その幾つかについてお尋ねをさせていただきたいと思います。 まず、さきにも新谷議員のほうから質問ありました、ポスト一三〇〇年祭についてであります。 まだ事業は年末まで続いておりますが、この間のこの事業にかかわっていただいたすべての関係者の皆さん方にまずは心から感謝を申し上げなければなりません。また、きのうの
奈良マラソンについても、たくさんの皆さん方が参加され、それを支えられるボランティアの皆さん、警察関係者の皆さん、本当に大変な思いでこの取り組みを成功させていただきました。 重点課題に関する評価では、平成二十三年度に向けた課題として、平城遷都一三〇〇年祭を一過性のものとせず、奈良県の歴史文化・観光資源の活用や一層の盛り上がりを図るとされています。さらに、今後の取り組み方針では、さまざまな方針が挙げられていますが、その中に、国際機関と連携した奈良コスモポリタン賞というのがあります。奈良コスモポリタン賞とはどのようなものでしょうか。 国境や国籍にとらわれず世界をまたにかけて活躍する国際人を表彰する、そのことは大変結構なことなのですが、気をつけておかなければならないと思うのは、例えば、お隣の大阪府では山片蟠桃賞というものがあります。日本文化の海外への紹介に功績のあったすぐれた著作やその著者を顕彰して、あわせて大阪の国際都市としての役割と文化・学術の国際性を高めるという賞なのですが、いかがでしょうか、皆さんご存じでしょうか。ほとんどどなたもご存じないというふうに思います。この賞により山片蟠桃という方が有名になったのかというと、そうでもありません。奈良コスモポリタン賞、すごく気持ちはわかるんですが、いいなあというふうに感じるのですが、この奈良コスモポリタン賞で、真に奈良県の国際的感覚が養われるのでしょうか。 ポスト一三〇〇年祭の事業や国際化推進に資する事業については、県民参加を推進する方向にしてはいかがでしょうか。地域で県民が考える取り組みを提案していただき、その提案を県が採択して、財政的に支援していく、地域で県民が考え、行動する事業を検討すべきだと考えますが、知事のお考えをお聞きしておきたいと思います。 ポスト一三〇〇年祭に関して、もう一つ質問させていただきます。 平城遷都一三〇〇年祭の平城宮跡会場が十一月七日に閉幕して、当初の想定の二百五十万人を百万人も上回る三百五十万人を超える方に来場いただきました。さらに、平城遷都一三〇〇年祭を契機として、多くの人が奈良県を訪れていただきました。では、なぜ、こんなにたくさんの方が奈良に来られるのでしょうか。何を求めて奈良県に来られたのでしょうか。それを研究することが、私は、奈良学であると何度か申し上げてまいりました。平城遷都一三〇〇年記念事業の総括は、その奈良学を研究することから始めなければ、今後に生かせるものが出てこないのではないかと考えるのでありますけれども、ぜひ、奈良学の研究を始めませんかと、もう一度申し上げて、知事のお考えをお伺いしておきたいと思います。 次に、ホテルとプール、企業誘致、病院、
県立医科大学の移転、これまで知事が積極的に問題提起をされてきたことについてお尋ねしたいと思いましたが、すべてお伺いすることもとても時間的に許されませんし、さきの質問とも重複します。医療と病院の問題、中でも
県立奈良病院の建替えについてお伺いしたいと思います。
県立奈良病院を建替え整備するに当たり、役割や機能などの具体的な病院の概要や整備スケジュール等を検討するための検討委員会が設置をされていると思います。そして、その検討委員会において、現地建替えか新しい場所への移転なのかの結論が、十二月末までに出されようとしているとお聞きをしていました。両案について、現在どちらの案が有力なのでしょうか。先日、厚生委員会と地元奈良市選出の県議会議員に対し、現
県立奈良病院と移転候補地の視察を実施していただきました。病院長から、現地建替えのリスクとして、病院を運営しながら同じ場所で建設作業が行われることが現場の医療関係者の大きなストレスとなることや、新しい場所への移転に比べ、現地建替えは二倍の工期を要するなどの説明を受けました。 移転と現地建替えについては、それぞれのすぐれた点と劣る点を整理されている、そのことについては、先ほどの新谷議員の質問に対する答弁を私も自席で聞かせていただきました。近いうちに結論を出したいと、これまで我々がお聞きしてきたその結論を、先ほど知事は答弁でおっしゃったのでしょうか。もう少しその点について補足されることはないか、質問を変えてお尋ねをさせていただきたいと思います。 また、これまでの検討の進め方について問題はなかったのか。これまで、現地での
県立奈良病院の運営に理解と協力をいただいてきた地元の皆さんへの対応についてであります。現在の
県立奈良病院は、地元の皆さんにとっては既に愛着以上のものであり、生活の一部となっています。このことについて十分に理解して、意識した上で、建替え計画についてご理解をいただけるような取り組みがこの間なされてきたのでしょうか。先日、地元の自治会長さんがごく短期間で一万七千名の署名を集められ、知事に対して要望書を提出されました。この要望書にこれまでの経過に対する不満を述べられていたことに、私自身は非常に反省をさせていただいています。 今までの検討の経緯は、地元の皆さんの意識を十分配慮されたものとなってきたのでしょうか。その点についてお答えをいただきたいと思います。お答えいかんでは自席から再質問させていただきたいと考えています。 さらに、医療機能の充実についてですが、新
県立奈良病院の整備は、現地建替えで八年、移転であっても四年かかるということであります。知事は、関西広域連合が何をやろうとしているのかはっきりしていない、それが明確になってからの加入でも遅くないのではないかと繰り返し答弁されてまいりました。しかし、高度医療については、マグネットホスピタルである新
県立奈良病院の整備は計画どおりに進んでも、奈良県の取り組みだけでは不十分なのではないでしょうか。 先週の土曜日、十二月四日、いよいよ関西広域連合が発足を見ました。奈良県を除いてであります。この間、私は何度も、奈良県は関西広域連合に参加しないのか、いろんな方からお尋ねをいただきました。一番お尋ねが多かったのは一般的な県民の皆さんからです。恐らく相当テレビでこの問題が取り上げられたからでしょう。そのように想像するのは、それなりの理由があります。いつも最近そうなんです。県民の皆さんが一番関心を示していただくのは、テレビや新聞が取り上げた問題であります。もっとほかに関心を示してもらいたいことがあるんだけどなと、いつも申し上げるんですが、それは岩城さん、我々の責任ではない、私たちはテレビや新聞以外からどのように奈良県のことを知ることができるのですかと、逆におしかりをいただきます。全くそのとおりだと思います。 県民の皆さん方は、政治や行政のことに関心がないのではありません。むしろ、私の周りには関心を持っておられる皆さん方がたくさんおられます。ただ、テレビや新聞のように簡単に情報を得る方法がほかにないということだと思うのです。だから、道州制への移行の諸問題や州都になり得るべき自治体の代表が積極的であることなど、知事がなぜ関西広域連合に慎重なのか、県民の皆さん方には伝わっているとは思えません。しかし、奈良県にとってさまざまな行政課題で広域連携は必要です。現在の広域連携でなぜだめなのかと、何度も荒井知事も繰り返し、現状の広域連携を深めていくことの大切さをおっしゃっています。 知事、むしろこの際、高度医療については、あるいはそれらのほかの課題も含めて、積極的に奈良県の立場から、府県を超えた取り組みについて逆に提案をすべきではないでしょうか。このことについて、知事のお考えをお伺いしたいと思います。 質問を次に移らせていただきます。日常生活で移動に支障を来しておられる方の問題であります。 現在、奈良県交通基本戦略の策定の作業が進められていると聞いています。ぜひその際、移動制約者を中心に置いてこの取り組みを進めていただきたいと思うのです。過疎化と高齢化が進展する中で、自動車を自由に利用できない県民のため、コミュニティバスなどの取り組みが市町村の努力で進められています。しかし、そこには、財政面だけではないさまざまな問題が横たわっているようであります。これこそ、明確な戦略性を持った政策とその実行が必要になっています。知事がよく言われる、奈良県はミッドフィルダーとしての県の出番ではないでしょうか。既に熟知されているようですから多くを申し上げませんが、鉄道を降りたらバスがある、バスを降りる前に乗り合いタクシーがバスの中から予約できる、そのような取り組みが必要なのではないでしょうか。必要に応じてサービスが提供されるとすれば、過疎地域は都市と再接近します。道路の建設費用や移動交通の社会的なコストの軽減になるとともに、環境面にも最適ではないでしょうか。私は、著しい高齢化と人口減少の高度成長経済時代の反動を最も受ける奈良県が全国に先駆けて、県民の移動を権利として保障していく取り組みに期待を寄せています。 移動制約者を中心に置いた奈良県交通基本戦略の具体化を強く要望するものでありますが、その上で、奈良県交通基本戦略を策定する上での問題意識と今後の進め方について、知事にお伺いをしたいと思います。 次に、議会基本条例のことについてお伺いをします。 時代はどんな変わりようをしていくのか、私には到底その結論を想像することはできませんが、起こっている現象として、世論がますますラジカルになっていくような感じがしてなりません。より根本的に問題を理解したい、把握したいという欲求とともに、急進的であって過激である意見が勢いを増しているという感じがします。私などもそのうちの一人だと、この本会議の関係者の皆さん方では思っておられる方もあると思いますが、今の行き過ぎた感じのあるマスコミの報道には、私は、注意をしておく必要はないかというふうに考えています。テレビのコメンテーターの話をうのみにして、私どものような者の話には全く聞く耳を持たない。時期的には小泉さんが総理大臣として登場されて以来、その傾向に拍車がかかったのではないかと感じるのは私だけでしょうか。それは自治体の運営とは全く関係のないことでしょうか。私は、ますます住民と行政の相互理解は重要になってきていると思います。このたびの議会基本条例の提案というのは、その意味では時宜を得ていると感じているところであります。後ほど知事にこの議会基本条例について、その立場からお尋ねをしたいと思います。 その前に一つ、新聞記事を皆さんと一緒に見てみたいと思いまして、先日の仙谷官房長官の答弁が波紋を呼んだ問題について、新聞記事をコピーして配っておいていただきました。私もこの報道を見て、はっとする思いになりました。その前の尖閣問題から感じていたことですが、感情が先行して事実が無視される傾向を私は心配します。軍隊や警察は、政治や行政や法律の世界では、括弧つきでありますけど、暴力装置として理解されるというのが、冷静に客観的に学問的な整理の上では定説になっていると、この新聞のコラムは述べています。私が申し上げるだけでは説得力がないと思いまして、新聞のコラムを今、議場に配布をしておいていただきました。なおかつ気になることは、私たちは、政治とは何かということについて、あるいは時々申し上げる地方自治ということについて、もう一度確かめ合うことが必要になっている時期に来ているのではないかと思います。 私どもは今、政治の場におります。政治の政という文字ですが、まつりごとと読んで、その意味は、主権者が領土・人民を統治すること、すなわち政治と辞書には出てまいります。政治の答えは一つではありません。政治は科学ではないということです。科学ならば、同じ客観的要件を与えれば必ず同じ結果が得られます。しかし、政治はそのようにはいきません。絶対という答えはありません。ということは、政治には常に二つ以上の答えがあるということであります。だから、最後には二つ以上の選択肢からどれを選ぶのかということになります。絶対にどちらが正しいということではありません。しかし、判断をする前には、客観的な事実だけはきちんと押さえておかなければなりません。 私たちは今、商品経済社会に住んでいます。自給自足というのは、よほどの方でない限り、普通の者にはそのような生き方は無理であります。生きるために必要なものは、働いてお金を得て、そのお金で商品を買い求めて暮らしています。その商品経済の基本は、まず、自分のものであるということが確定しなければなりません。所有権が確定しているから、これを相手に売るという商売が成り立ちます。それでは、その所有権を保障してくれるのはだれでしょうか。国や行政、法律や警察、裁判所が守ってくれているから成立をしています。では、最終的に争い事が生じた場合、何によって守られるのでしょうか。残念ながら社会のルールに従うことができない場合には、警察、裁判所、刑罰というルールが待っています。さらに逮捕や服役という、自由を奪われるという暴力が用意されていないと社会が成り立ちません。しかし、あくまでもそれは最終判断で、それが起こらないようにさまざまな努力を行わなければなりません。外交における努力ももちろんのことであります。ただ、そのことと、軍隊や警察が持っている機能の問題は全く次元の違う問題で、戦争は反対だから、軍隊は暴力装置ではないというのは間違いであります。改めて、社会を成立させてもらっている事実に目を向けて、自衛隊関係者や警察関係者の皆さん方にも感謝を申し上げなければなりませんし、ただし、蛇足ですが、それだけに、自衛隊や警察の皆さん方には思想的にも政治的にも中立であっていただかなければなりません。 長々と申し上げましたが、より根本的に理解したいという欲求を無視することはできない時代になってきているとすれば、基本的な事実についての共通理解は大変重要であります。共通認識がばらばらな上での合意など不可能であるからであります。 質問に戻ります。議会基本条例検討委員会では、二元代表制を追求するといっても、知事と議会の間には予算編成の権限と情報の格差において決定的な差があるのではないかという議論がありました。このことについて、この際、議会基本条例が制定はされましたが、絵にかいた餅にならないようにしなければならないと考えています。 まず、ラジカルに本質的に申し上げますと、財政は明治時代の造語であります。明治になって初めてできた言葉であります。イギリスではパブリックファイナンスと呼ばれています。とするならば、公のお金の準備とでもいう意味になるのでしょうか。わかりやすく言えば、公の財布ということになりませんか。そう考えれば、知事だけに予算編成の権限がゆだねられているという実態が、そもそもの意味から考えると、検討すべき時期に来ているのではないかと、そう思うわけであります。ただ、予算編成の権限の一部を議会や住民に移譲するといっても、すぐにはそうならないのが現実であり、そうかといって、いつまでもそのままでよいのかと私は考えています。もう一つは、情報の格差であります。知事と議会と住民の間で最大限にそれを埋める努力が不断に必要ではないかと考えます。私は、今後、議会がガバナンスを整え、シティーマネジャーとしての能力を高めていくことが求められており、議会改革の取り組みを進める必要があると考えています。 加えて、民主主義について県民全体が認識を深める取り組みが不可欠ではないでしょうか。デンマークでは、第二次世界大戦後の復興を民主主義の教育から始めています。十八歳以上の国民が行く民主主義の学校であります。フォルケホイスコーレと言います。実質上、世界で一番所得が高い国、個人の自立が一番進んでいる、ライフワークバランスや女性の社会参加や政治参加が一番進んでいる、世界で一番幸せな国と呼ばれています。地方議員の三〇%、国会議員の四〇%が女性です。一九八〇年代に少子化がとまっています。投票率は、どの選挙でも八〇%前後を記録します。ただし、収入の五〇%は所得税で、消費税は二五%であります。そのかわりに、教育費や医療費は無料で、障害児には約八〇%の給料が保証されます。食料自給率は三〇〇%です。 配布させていただいた資料の二枚目をごらんいただけますでしょうか。日本の税負担と社会保障費負担を諸外国と比べた表であります。私たちは同じことを望んではいけないというふうに思います。負担をしていないのであります。日本よりひどい国があります。今、アイルランドのことが非常に心配になっています。めぼしい収入がないのに社会保障制度はヨーロッパ各国をまねてきたアイルランドが、最近、大変厳しい財政状況になっていると報道されています。しかし、そのアイルランドも、やむを得なかった歴史があります。私たちはそのことについても全く学校で習ってきませんでした。しかし、何年何月に何があったということだけは習ってきました。イギリスのピューリタン革命、そしてクロムウェルがアイルランドにしたこと、私はつい最近、物の本で読んだわけですが、学校では事実について習いましたが、事の本質については習うことはありませんでした。 この表をごらんいただければ、日本の税負担というのは個人所得税で六・六%、スウェーデンでは二二・〇%であります。税を負担をしていません。また社会保障費負担などについても、極めて少ない比率というふうになっているのが見てとれます。 三枚目の資料、もう一つの資料は、スウェーデンの社会科の授業の資料を配らせておいていただきました。スウェーデンの中学生の選択という、スウェーデンの中学校では、社会科の時間に財政のことについて教えるようであります。学んでいます。日本では国会百二十周年、そして自治法施行六十三年目、奈良県議会は三百回目、議会基本条例が制定されて、いよいよ地方自治と民主主義の前進が具体的に図られようとしています。 そこで、知事にお伺いしたいと思います。知事は、今回の議会基本条例では、地方自治における二元代表制の一翼であると位置づけられています。その立場から、今回の
奈良県議会基本条例の制定についての評価をいただきたいと思います。 壇上からの質問は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(出口武男) 荒井知事。
◎知事(荒井正吾) (登壇)二十八番岩城議員のご質問が幾つかございました。 最初は、ポスト一三〇〇年祭につきましてでございますが、県民参加についてのご所見と、考えのお問い合わせがございました。 平城遷都一三〇〇年祭の成功の大きな要因の一つは、県民参加の量と質が予想以上に大きかったことによると私自身は考えています。その反面、参加の程度が低かった地域は、賑わいの程度は低かった面があるように思いますし、数多くありました国際会議については、国際会議参加者には奈良の魅力、特にその歴史の国際性を十分に感じていただいたように思いますが、国際会議の開催場所として魅力が多くあると評価もしていただいたと思います。しかし、県民の皆様には国際会議の内容などについては十分報道されなかったこともあり、理解が進まなかった面もあるように思います。 奈良コスモポリタン賞についての言及がございました。これは十六カ国共同で設立されました国際機関であります東アジアASEAN経済研究センターが平城遷都一三〇〇年祭を記念して提案し、創設が決定されたものでございます。東アジア域内での文化・経済面での格差是正、持続可能な成長に資するすぐれた活動に贈られる賞だと聞いております。国際機関の賞に奈良の名を冠して贈られることは、奈良の存在感や奈良県民の誇り、愛郷心を高め、かつ経済的な効果も期待しているところでございます。 また、議員お述べの、ポスト一三〇〇年祭の事業や国際化推進に資する事業について、県民参加を推進する方向については、私自身は大いに賛同するところでございます。県民の中には参加意欲の高い人も相当おられるように感じてまいりました。議員ご提案の、地域で県民が考える取り組みに対する支援につきましては、これまで行われてきたことを多少説明いたしますと、例えば、平城遷都一三〇〇年記念事業協会が行いました県民活動支援事業がまずございます。この事業は、平城遷都一三〇〇年祭に県民の皆様が主体的に参画し、主催者となって企画、実施する事業を支援するものでございます。わずかでございますが、一事業最大五十万円を限度に七十一事業を認定いたしました。総額三千万円を補助し、集客実績は約二十五万人にも上っております。 一例を挙げれば、今井町町並み保存会が五月中旬に実施いたしました今井町町並み散策には、二日間で三万人の集客があったなどと報告されております。この支援の成果としては、イベント等の開催を通じて平城遷都一三〇〇年祭への県民参加を促し、国際交流、まちづくり、人づくり、芸術・文化活動等が地域で活発化したことでございますが、また、平城遷都一三〇〇年祭の盛り上がりに大きな効果があったものと考えております。地域イベントの効果として認識をしております。 そこで、このような成果を今後に生かすため、県民活動支援の趣旨を継承し、県民の文化活動を広く支援することを目的にした制度の創設を現在検討しているところでございます。また、同趣旨のものといたしましては、平成二十年度から地域貢献活動助成というものを実施しております。これは、地域でまちづくり、国際交流、文化・芸術や環境保全などさまざまな分野の活動をされているNPOや自治会等からご提案をいただき、公開審査により事業採択し支援するものでございます。公開審査の中で、お互いのプレゼンテーションの内容をよく勉強できるというメリットがあることも発見されました。今後とも、県民の自主的、主体的参加や活動を促すため、議員お述べのように、県民の提案、県の採択、県の支援というスキームを基本に考え、地域で県民が考え行動する事業を積極的に支援してまいりたいと考えております。 次の質問は、なぜ、奈良に今回こんなに多くの人が訪れたのか、それを総括することが今後につながるのではないかというご所見、ご質問でございました。 ことし奈良を訪れた方々は、その数が多かっただけでなく、奈良に本当に興味を持って来られた方が多かったように感じています。どうして奈良に対する情熱がことし爆発したのでしょうか。議員お述べのように、その理由を研究し、奈良県民の我々がその理由を十分自覚することが、今後の奈良発展の出発点だと考えています。 これまで言われていることを多少述べてみたいと思いますが、奈良の魅力は歴史そのものだと思います。国家基盤が形成された地、仏教伝来の地、東アジアとの国際交流が盛んに行われた地という、日本の歴史の重要な部分についてその歴史を感じさせる証拠の品々にじきじきに触れ、現地で追体験したいと思い、来訪された方々も多かったと思います。また、平城宮跡には天平文化が花開いた奈良時代を彷彿とさせる大極殿院が、かつて存在した場所において復原整備され、さらに県内各地の社寺で実施された秘宝秘仏の特別公開等の新たな魅力も加わり、折からの歴史・仏像ブームも追い風となり、多くの方々を奈良に引きつけたものと思います。さらに、誘客のための周到な戦略も立て、結果的に功を奏した面もあったと思います。せんとくん効果も、広告換算額にして約二百二十五億円とも言われる露出効果も高かったと思います。 この平城遷都一三〇〇年祭での賑わいを一過性のものとせず、今後とも奈良の値打ちである歴史の価値のさらなる魅力発信に取り組むには、さらなる研究、探求が必要と思います。奈良の持つ歴史の価値を発掘・発見し、それを理解してもらえるような取り組みに結びつくような勉強を行いたいと思っております。
県立奈良病院の建替えについてのご質問が三つございました。 新
県立奈良病院の現地建替えと移転について比較検討した主な内容につきましては、先ほど新谷議員への答弁でも述べさせていただきました。病院敷地の面積、工事期間、事業費という面でございますが、それに加えて、アクセス性、工事中の影響の二項目についても改めてご説明申し上げます。病院の敷地面積については省略、工事期間、それと事業費については、重複いたしますので省略いたします。 救急のアクセス性についてでございますが、奈良医療圏からは現地建替えの平松地区がすぐれているが、西和医療圏からは移転候補の六条山地区がすぐれており、北和地域全体では、ほぼ同じであると考えられております。公共交通機関のアクセスについても、大差がないとされております。工事中の周辺地域への影響につきましては、平松地区では近隣に住宅が多く、道路の幅員も狭いことから、周辺地域住民の方々の安全確保が課題となるとされております。一方、六条山地区の場合は、富雄川沿いの県道枚方大和郡山線から工事用の道路を利用することになるため、影響は小さいと考えられております。また、現地建替えの場合は、工事場所に隣接して診療を続けていくことから、騒音や振動などが診療に与える影響が懸念されるとともに、看護学校の仮移転が必要となることから、看護師確保への影響についても懸念されております。 このようなことは、これまでの検討委員会での情報結果でございますが、二つ目のご質問の中で、これまでの検討の経緯は、地元住民の意識を十分配慮したものになっているかというご質問がございました。
県立奈良病院の建替え整備については、ことしの二月に、健やかに生きる構想の中で、北和地域の
高度医療拠点病院として位置づけ、現地での建替えの可能性と、候補地である六条山地区への移転の両面で検討してまいりました。その検討委員会の結果の概略は、先ほど申し述べたところでございます。 その間、平松地区自治会の方々には、奈良県の医療の現状や新病院の目指すべき機能、整備場所の比較検討状況など、県の考え方を六月、九月、十一月の三回にわたって説明させていただきました。さらに、平松地区周辺の都跡地区や平城地区、西大寺北地区の自治会にも説明を行いました。六条山地区の自治会についても、新病院の移転候補地になっていることや、新病院の目指すべき機能などについて、六月と十月に説明させていただきました。特に平松地区やその周辺自治会の方々からは、身近な医療機関としての
県立奈良病院が移転するのではないかという声や、昭和五十二年の開設以来三十三年にわたって病院とともに発展してきた地域への影響に対する不安の声をいただいております。 そのため、北和地域の医療関係者に集まっていただいて協議会を設置し、新病院と地域の医療機関との連携のあり方を検討するとともに、これまで現病院を利用されている方々への医療に支障がないように協議を進めてきているところでございます。地元関係者、とりわけ平松地区の方々への説明、ご理解は、これまで十分でないということでありますれば、それを補って、かつ、地域の方々に対して北和地域の実態や新病院のあり方をご説明させていただくとともに、地域の方々のご意見を丁寧にお聞き取りさせていただく必要があると思います。その上で、新病院は北和地域全体の中心病院でありますので、その設置場所についてのご理解を賜る努力をさらに続けていく必要があろうと思っております。 建替えに際して、府県を超えた取り組みについての提案をすべきではないかというご提言がございました。 新
県立奈良病院は、北和地域の医療を支える中核病院として、地域の医療機関と連携して、県民に質の高い医療を提供することが必要と考えております。特に、脳卒中と心筋梗塞など生死にかかわる疾患については、手術・処置等に積極的に対応し、北和地域で確実に救急医療を行える機能を整備してまいりたいと思います。しかし、府県域を超えて連絡を図るべき医療サービスもあると思います。例えば、がんの最先端の治療法の一つで、炭素などの重たい粒子をがん細胞に当てて殺す重粒子線治療というものがございますが、効果はある反面、設備等に約百億円の費用を要する高額な医療でございます。数少ない疾患については、患者が少ないこと、高価な医療機器を整備、維持する必要があること、治療開始までの時間的余裕があることなどから、すべてを受け入れる体制を県内で整備するのではなく、広域的、例えば近畿を一つのエリアとして専門の医療機関が対応すべき治療分野もあるように思っております。今後とも、広域で取り組む医療やドクターヘリなどにつきましては、近府県で連携すべきと考えており、必要に応じて協力を提案していきたいと思います。その際、関西広域連合という組織は、参加する府県の合議制でございますので、全知事の同意が要るのが基本でございます。共通費用の負担もかかるわけでございますが、連携につきましては両県の知事、あるいは各部局の連携のマニュアルに従って協力を推進できるという、重さ軽さの議論もございますので、内容に応じて措置すべきものかと思っております。 奈良県交通基本戦略についてのご見解とご質問がございました。 現在、県内の日常の移動手段につきましては、依然として自動車利用が多いわけでございますが、急速に高齢化が進んでおりまして、今後は自動車を自由に利用することが困難になる、いわゆる移動制約者の増加が見込まれております。また、過疎化等により、バス路線の休廃止や減便が進むなど、地域公共交通は危機的な状況になることが危惧されております。日々の生活における移動手段の確保は重要な課題と受けとめております。また一方、観光をはじめ、奈良を訪れた方々へのおもてなしの面から県内の移動を見ますと、県北部地域は観光シーズンにおいて慢性的な渋滞が発生しており、さらなる来訪者の増加を図るためには、質の高い交通サービスの提供が必要と思います。このような人々の移動に関する課題や社会的要請等を踏まえて、これまでの取り組みや成果を生かして、移動環境の改善に向けて、今後の県における交通施策に関する指針として奈良県交通基本戦略を策定することにしたものでございます。 この基本戦略では、徒歩や公共交通を含めた人々の移動に必要な交通環境を一定のサービスを確保すべき社会基盤の一つとして、インフラとして位置づけ、三つの基本方針により重点的な取り組みを展開しようとするものでございます。三つの基本方針の一つ目は、だれもが安心して暮らせる、モビリティーと言われる移動の利便性の確保でございます。これは、日常生活における移動について、安全で安心な歩行空間の確保や過疎地域等における基幹的な生活交通の確保等に取り組むものでございます。二つ目は、奈良の魅力を一層高める交通環境の充実でございます。来訪者に対して、公共交通機関の利用促進や歩行環境及び自転車利用環境の充実等を図る分野でございます。三つ目は、持続可能な取り組み体制の構築でございます。地域交通の継続的な運行に向けて、行政や交通事業者のみならず、利用者である地域住民等も含めて、一丸となった取り組みを進めたいと考えております。この奈良県交通基本戦略の策定に当たりましては、今月中旬から県民へのパブリックコメントを実施し、幅広くご意見をいただきながら、年度内策定を進めてまいりたいと考えております。
奈良県議会基本条例についての所感をお求めになりました。特に、二元代表制の一翼である知事としての評価をご質問されたものでございます。 今回の
奈良県議会基本条例の策定に当たられては、本年二月に検討委員会が設置されて以来、計十三回にわたり、今後の奈良県議会のあり方について終始熱心にご議論されたと伺っております。同条例が、議員各位の総意のもと、議会の機能の強化、県民に開かれた議会運営、議会改革の推進を基本理念として、三百回の節目となる今議会において成立いたしましたことについて、ともに県政を担う者として大変心強く、お祝いを申し上げる次第でございます。 国の議院内閣制とは異なり、地方自治体の二元代表制の特色は、知事と議員の双方がともに県民の代表として選挙を経て、党派を超えて、真に有効な政策を実現すべく、それぞれの立場から県政に携わることと思います。条文の中でも述べられているところでございますが、議会が有する議決権と、知事等が有する執行権について、お互いの役割を尊重しつつ、共通の目標である県民の福祉の向上及び県勢の発展に向けて、精いっぱい努めることは、県政運営の基本だと考えております。とりわけ、本条例の一番の特色としておられる政策検討会議において、議員間の闊達な議論を通じて県政課題に関する論点等をより明らかにされ、これに寄せられる県民からのご意見等を踏まえて、政策提言いただけることに、大いに期待を寄せているところでございます。 また、議会との県政情報の共有化は、政策の立案にしろ、政策の評価にしろ、大変重要なものと認識をしております。今後とも、県の行財政運営の基本として進めているPDCAの各段階において、県政の現状や課題、その解消に向けた取り組み等について積極的にご説明申し上げ、県議会等の場で議論を深めるなど、ともに県政の進展に努めてまいりたいと考えているところでございます。 ご質問に対する答えは以上でございます。
○議長(出口武男) 二十八番岩城明議員。
◆二十八番(岩城明) もう一度質問をさせていただきたい点がありますが、まず、
奈良県議会基本条例ですが、知事、一括交付金が始まろうとしています。自由度の多いお金が国からやってまいります。その際、議員が、かつてあったような予算の分捕り合戦、自らの価値観に基づいて県政全体のことを考えずに、自らの立場を優先させるような議論が始まると困られるのは知事だと思うのです。ですから、今もご答弁にあったように、情報をいただくこと、共通認識をさせていただく場所を設けていただくこと、こういうやりとりだけではなしに、どんどん知事や部局長の皆様方と議員が全体会議を開いて、今、その問題についての論点や争点はどこになっているのか。そういう政策検討会議が開催されるというふうに思っているんです。そうだとするならば、私は、この
奈良県議会基本条例を自由民主党の中で積極的に推進されてきた井岡議員や浅川議員というのは、本当に奈良県政に名を残される議員さんになられるなというふうに、本当に最大限に評価をさせていただきたい。それを、本当にやさしく見守ってこられた自由民主党各会派の先輩議員の皆さん方も、よくぞ本当にこの
奈良県議会基本条例制定に向けてご理解をいただいたというふうに、議長、そのように本当に心から思っています。さあ、始めようではありませんか。その始める際に、客観的事実を押さえる作業をもう一度基本からやり直しませんかという話を、済みませんが、本当に大変生意気ですが、また三日間ほど私、うつ病になるんですよ、こんなことを申し上げると。口幅ったいことを申し上げましたが、るる申し上げたのは、そんな思いからでございます。 重粒子治療、あるいは関西広域連合の、観光の担当は京都府になったらしいじゃないですか。いいんですか、そういう先走り、先に走っていかれますよ。積極的に奈良県が提案していっていただくという諸準備をぜひ整えていただきたいと思います。
県立奈良病院の問題だけ再度、もう一度質問させてください。 一つは、六条山地区への移転というのは、きょう答弁なされたのは結論ですか。その点と、それから、
県立奈良病院の存在が生活や収入の基礎になっている皆さん方がおられるわけです。ぜひ、説得をする、説明をする、合意を得ていく、最大限の努力をすると答弁なさいましたけど、ぜひ、具体的な策を持って当たってくださいね。ただお願いしますの繰り返しでは、問題の解決に至らないというふうに思います。このことは強く要望申し上げておきます。
県立奈良病院の六条山地区への移転というのは結論ですか、もう一度お答えいただけますか。
○議長(出口武男) 荒井知事。
◎知事(荒井正吾) 六条山地区への移転については、結論ではございません。何度も申し上げておりますように、検討委員会が第二回目開かれまして、その内容は公表されておりますが、その内容と所見というお問い合わせがありましたので、現時点での私の考えを申し上げた次第でございます。なお、現地の方々の利害といいますか、例えば病院の駐車場を貸しておられるとか、そういう方もおられますので、これはどのように調整すればいいのか、なかなか考えあぐねているところでございます。
高度医療拠点病院と、今ある病院の駐車場を借りておられる方々、地権者の権利というのか、今までの経緯というのか、それはなかなか調整の難しい点だというふうには認識しておりますが、できるだけ理解を得られるように努めていきたいと思っております。
○議長(出口武男) しばらく休憩します。
△午後三時七分休憩
--------------------------------
△午後三時二十三分再開
○副議長(藤本昭広) 休憩前に引き続き会議を開きます。 次に、二十五番荻田義雄議員に発言を許します。--二十五番荻田義雄議員。(拍手)
◆二十五番(荻田義雄) (登壇)ただいま議長のお許しを得ましたので、知事はじめ理事者に質問通告をしております順序に従って質問させていただきたい、このように思うところでございます。 まずもって、今定例会は議会始まって三百回という記念すべきこの議会に、自由民主党改革を代表させていただいて質問の機を与えていただいた議員各位に厚く御礼を申し上げる次第でございます。 最初に、県税についてお伺いをいたします。 今日、我が国の経済状況は、円高・ドル安基調により自動車、電機等の輸出産業が非常に厳しい状況にあります。一方、本県においては、平城遷都一三〇〇年祭による経済波及効果が、平城遷都一三〇〇年記念事業協会の事前予測では約七百五十億円、県内雇用創出も約六千五百人を見込まれており、これが直ちに県税の増収につながりはしないと存じますが、一定の税収増に結びつくものと大いに期待をしております。 そこで、知事にお尋ねをいたします。法人関係税収など、今年度の県税収入はどのように見込んでおられるのか、そして、来年度の税収はどのような見通しになるのか、お聞かせください。 また、現在政府では、企業の国際競争力強化の観点から、法人税の税率を引き下げる方向で検討されていますが、これは地方税である法人県民税にも大きな影響を及ぼすと考えます。本県の法人県民税と事業税を合わせた税収は、景気の後退等により、平成二十年度の約二百七十五億円から昨年度では百五十七億円へと約百億円以上も減少をしている状況でございます。こうした中で法人税率の引下げは、平城遷都一三〇〇年祭の経済波及効果に伴って増加した税収以上の減収をもたらすのではないかと懸念をしています。現在、国において議論されている法人税制の改正により、税収にどのような影響があるのか、お聞かせください。 次に、奈良県の医療についてであります。 まず、救急医療の充実についてお尋ねをいたします。 本県では、平成十八年、平成十九年の妊婦搬送事案をはじめ、平成二十年には生駒市でも、意識不明の男性が受入れ先病院がなかなか決まらず、ようやく運ばれた病院で亡くなられたという痛ましい事案がございました。また、私の体験としては、先日ある集会に行った折、その中のお一人が急に胸が苦しくなり救急車を呼んだことがございました。そこでも、救急車は来たものの、受入れ先の病院が決まらないのか、動き出すまでかなりの時間を要しました。救急搬送に要する時間は全国的にも年々延びており、本県においても、平成十年には平均二十五・七分であったものが、昨年は三十八・八分かかっている状況でございます。これは全国ワースト五となっています。こうした中で、救急医療の分野では、最初の十分が最も重要であると言われており、他府県では、救急搬送時間の短縮に向けてさまざまな取り組みがなされているところでございます。例えば岐阜大学では、二市七町一村を対象区域として、救急隊に端末を装備させ、患者の血液型や病歴などの情報をICカードに記録しておき、急病時に救急隊員が携帯端末で読み取り、その患者情報と、医療スタッフや設備などの病院情報をマッチングさせることによって、患者に最適な病院をいち早く選択する仕組みづくりに取り組まれているところでございます。このシステムにより救急搬送にかかる時間が五分から十分短縮でき、救命率も上がっているとお聞きをしています。 そこで、知事にお伺いします。本県では、救急搬送時間の短縮など、救急医療の充実についてどのように取り組んでおられるのか、お聞きします。 次に、
高度医療拠点病院についてであります。まず、その整備については賛成であることを申し上げた上で、お尋ねをいたします。 現在の
県立医科大学附属病院、県立三病院の医師・看護師などのマンパワーや医療機器を含めた総合力としての医療力について、まず、医師・看護師不足は、県が計画している
高度医療拠点病院という施設ができたとしても、解消できるものではないと考えます。現在の
県立医科大学附属病院、県立三病院の医療力の現状では、新病院建設を北和、中和地域の二カ所で行うことは、私は無理があるのではないかと思います。例えば、どの県立病院でも、救命救急医は手薄の状態となっており、新病院が開設されて二十年余り経過しなければ、医師・看護師不足も解消されないのではないかと考えます。また、九月定例会に、
県立奈良病院の現地建て替えを求める請願書が提出されるとともに、先日は、一万七千四百四十名もの署名が提出されたところでございます。 そこで、
高度医療拠点病院は、新病院建設計画の中で、これまでと同じように何でも診ていただける、いわゆる総合病院としての整備をされることとなっているのでしょうか。もし外来患者を受け付けない病院となるのであれば、地域の方でこれまで
県立奈良病院を利用されていた患者は、どのようになるのでしょうか。仮に現地建替えが実現したとしても、今まで利用されていた外来患者は診療継続が可能なのか、知事にお尋ねをいたします。 これまで私は、病院関係者や外部専門家の方々と意見交換をしてまいりました。そこでのさまざまな意見の集約は、中南和地域に
高度医療拠点病院を一カ所整備するのがいいのではないか。そして北和地域には、現在の
県立奈良病院をこれまでと同じようにどんな患者でも診ていただける病院として、より一層充実をする。そしてさらに、救命救急センターをより一層飛躍発展させ、断らない救急病院を再整備することこそ、県
地域医療再生計画にかなうものではないかというものでございました。そこで、知事のご所見をお聞かせください。 次に、南和地域の医療についてお尋ねをいたします。 南和地域の医療の現状、課題を考えるとき、北和地域とは少し異なった状況になっています。南和地域には現在、五條市に所在する県立五條病院、町立大淀病院、国保吉野病院の公立の三病院がございます。しかし、人口の減少により患者さんが減少し、それに伴い医師、看護師が減少していく、その結果、さらに患者さんの病院離れが加速するという悪循環の現状にあります。また、救急の受入れも困難になってきています。南和地域は高齢化がどんどん進んでいる地域でございますが、これからの医療は、高齢者の方々が安心できる、ぬくもりのある医療を提供される体制が必要と存じます。安心して生活ができますと病になりにくいということも考えられます。この公立三病院の機能の見直しは、市町村間のトラブルにならないように十分注意をしながら、住民の意見に耳を傾け、南和地域の医療体制の充実に向けて協議をしていただきたいと考えます。 そこで、県と地元市町村により設置された協議会において、どのような協議が行われているのか、また、今後どのように進めていくのか、知事にお伺いをいたします。 次に、ホテル誘致についてお伺いをいたします。 平城遷都一三〇〇年のことしは、県下各地でさまざまなイベントが展開され、中でも平城遷都一三〇〇年祭の平城宮跡会場では、四月二十四日から十一月七日までの間、三百六十三万人の方々が国内外からお越しをいただきました。この賑わいを一過性のものとせず、県下各地の観光振興をより一層進めていただくことが、観光行政としての不可欠な要素でございます。本県へは年間約三千五百万人もの観光客が訪れておりますが、ホテル、旅館の客室数は全国で最下位でございます。本県は平城遷都一三〇〇年祭のおかげで多くの方々に奈良で宿泊をいただき、奈良が活気づいたことは大変喜ばしいことでもございます。また、昨日に開催されました
奈良マラソンは、約一万七千人のランナーが古都奈良を疾走されまして、多くのボランティアや、あるいは関係各界のご協力によって成功裏に終わることができ得ました。その大会の前日には、奈良市内の宿泊施設はほぼ満室でありました。かねてから知事は、経済の活性化や観光振興を推し進めるため、ホテルを核とするまちづくりをと、県営プール跡地及び奈良警察署用地へのホテル誘致に向け努力をされているとお聞きをしています。個別交渉型誘致活動を行われており、本拠点へのホテル誘致については、全国各地から多くの問い合わせがあったかと思いますが、現在どのような状況にあるのか、お聞かせください。 また、奈良公園の南側、高畑町裁判所跡地についてであります。鷺池、浮見堂等、奈良公園を代表する景観に近い位置にありながら、現在何ら活用が図られていない状況にあります。私は、この地域は落ちついた奈良の新しい名所になり得る可能性が大いにあると思っています。土塀に囲まれたこの地に、奈良らしい落ちついた低層の宿泊施設を誘致されてはいかがかと考えますが、知事のご所見をお尋ねいたします。 次に、企業立地についてお伺いをいたします。 知事は、就任以降の四年間で百件の企業誘致を図ることを目標の一つとして掲げられました。これまでの三年半、八十四件の立地の実現がございました。企業の誘致は、観光振興とともに、県税収入の増加と雇用の創出確保を図る施策として重要でございますし、これにトップセールスや施策の充実も含めて積極的に取り組まれ、一昨年来の世界不況の影響を受けながらも、目標に向けて企業立地が実現されていることは、一定の評価をするものでございます。 そこで、この三カ年間の企業立地によって、法人関係税収及び雇用創出の両面にどのような成果があったのでしょうか、知事にお伺いをいたします。 次に、奈良公園周辺の整備について、お尋ねをいたします。 奈良公園では、知事就任以来、来園者が快適に公園をめぐれるよう、環境整備が進められてきたところでございます。特に若草山ろくはこれまで、積み上げられた石垣が圧迫感を与え、ふもとにいながら山を見渡すことができない状況でもございました。このたびの整備によって、若草山が一望できるようになり、散策を楽しむ園地へと生まれ変わってまいりました。すそ野から広がる伸びやかな景観に、地域の方々や観光客が感銘を受けておられるとお聞きをしています。この点については非常に喜ばしい思いとともに、評価をするところでございます。しかしながら、奈良公園周辺には、渋滞対策をはじめ改善すべき課題が大いにあると思います。これまで県では、パークアンドバスライド等の施策により、奈良公園周辺への車の流入抑制に努めてこられましたが、私は、やはり観光バスの公園内への流入が渋滞の原因の一つとなっており、これら観光バスへの対策が必要であると考えております。 そこで、ことしの五月定例会では、県庁周辺の渋滞対策について質問をし、知事からは、観光バスの公園内への進入抑制対策として、県営登大路観光駐車場のバスターミナル機能の付加も必要と考えるとの答弁をいただいたところでございます。今後、スケジュールをも含めて、どのように整備を進めていかれるのか、知事のご所見をお聞かせください。 次に、本県の農業振興と戸別所得補償制度の取り組み状況について、お伺いをいたします。 我が国の農業は、農業所得の減少、さらに農業従事者の高齢化などに加えて、新たにTPPへの動きも活発化し、厳しい状況下にあります。こうした中で、国では、自給率の向上や、農業と地域を再生させていくために、戸別所得補償制度を創設いたしました。平成二十二年度では、平成二十三年度からの戸別所得補償制度の本格実施に向けて、戸別所得補償モデル対策として実施されたところでございます。本モデル事業は、水田の稲作部分と水田の転作部分への支援がセットで行われておりますが、この事業は、北海道や東北地域等の大規模農業地帯向けのものでございまして、必ずしも本県のような小規模・兼業農家の多い地域ではあまりメリットがない制度ではないかと感じています。 そこで、本県においても戸別所得補償モデル対策が実施をされましたけれども、現時点での実績はどうなっているのでしょうか、農林部長にお伺いをしたいと思います。 そして、先ほどから関西広域連合のお話を岩城議員もされておられました。私もよくよくいろんな地域地域へ行きますと、奈良県はなぜ関西広域連合にくみしないのかというようなお話をいろんなところで聞かせていただきました。関西広域連合には鳥取県と四国の一県が加入をされたようでございます。そういった中で、より一層広域的な連携を視野に入れながらも、荒井知事は荒井知事としての思いをしっかりと、県民の皆様方に理解を示す必要があるのではないか、こういったことを申し上げ、第一問とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(藤本昭広) 荒井知事。
◎知事(荒井正吾) (登壇)二十五番荻田議員のご質問にお答えいたします。 法人関係税収などの見込みについて、また来年度の見通しについてのお問い合わせがございました。 今年度の県税収入の当初予算額は一千六億円でございました。厳しい経済・雇用情勢を反映して前年度に対し百三十六億円の減収を見込んでまいりました。十月末の調定額と申します課税実績を見ますと、約九百三十九億円でございまして、前年度の同時期に比べますと約六・七%、六十七億円の大幅な減となっております。中でも個人県民税が、昨今の経済情勢の影響による個人所得の低下や全国的に厳しい雇用情勢により、約七・一%、三十九億円の減になっております。一方、法人事業税につきましては、国税である地方法人特別税の平年度化による影響で、前年度同期比約二四・二%、二十一億円の減となっておりますが、本県税収へのウエイトの高い電機、機械・金属、運輸関係などの業種の法人の業績は昨年度よりも持ち直していることから、全体では当初予算と大きく乖離することはないものと考えております。 来年度の県税収入の見通しにつきましてでございますが、現下の厳しい経済情勢や円高・デフレの影響による先行き悪化が懸念されるものの、四兆円を超える国の緊急総合経済対策や平城遷都一三〇〇年祭などによる経済波及効果が発現するものと期待しております。一方で、本県の税収の四割以上を占める個人県民税につきましては、給与所得の伸びが見られないことから増収が見込めず、税収全体では早急な回復が困難と見込んでおります。このように来年度におきましても、県税を取り巻く税収環境は厳しい状況にございます。本年度の税収の動向や地方財政計画をもとに、政府経済見通しなどの直近の各種経済指標や本県の経済動向、法人の業績予想などを注視しつつ、収入見込みの把握に努めていく考えでございます。 法人税制の改正についての言及がございました。企業の国際競争力を維持し、工場等の海外流出を防止する観点から、現在、政府税制調査会で法人税率の五%程度の引下げが議論されているものでございます。法人税率が引き下げられた場合の影響でございますが、法人県民税も連動して減少するため、本県では約四億円から八億円の間で減収になるものと懸念をしております。また、法人税率の引下げは、法人税の三四%を原資としております地方交付税の総額が減収になるということから、その交付税総額のはね返りが県税の収入に波及することも懸念しておるところでございます。かねてより本県では、国に対しまして、地方税財源の充実を図るように要望しているところでございますが、今後とも、国の税制改正の動向を注視して、県税収入の確保を図っていきたいと思います。 奈良県の医療につきまして、幾つかご質問がございました。 まず、救急搬送時間についてのご質問がございました。救急医療の充実についてどのように取り組んでいるかという大事なご質問でございます。 奈良県の救急医療搬送体制に課題があることは、時折報道されます救急搬送困難事案、いわゆる救急たらい回し事件ばかりではございません。消防庁発表の平成二十二年救急救助の現況においても、一一九番通報があってから医師の治療が始まるまでの時間、救急搬送時間は、議員お述べになりましたとおり、約三十九分と全国ワースト五でございます。 その原因として二つのことが指摘されております。第一に、奈良県の救急医療体制には、軽症患者を担当する、初期の救急を担当する休日夜間診療所の受入れ体制が十分でございません。重症患者を担うべき救急病院に軽症患者があふれており、重症患者を受け入れることができないという構造上の問題、役割の分担の問題が一つございます。第二に、重症患者を担う救急病院においても、医療の高度化、専門化が進むにつれて、内科や外科でも消化器、循環器、呼吸器など臓器別に対応できる疾患が限られております。そのため、救急隊が、どの医療機関で初見した病気が、患者が対応できるかについて、何度も医療機関に電話をして尋ねてみないと受け入れる医療機関が決まらないという、奈良県の課題がございます。これは患者と医療機関のマッチングの問題でございます。 奈良県のこれまでの歴史でございますが、戦後、地域のニーズに応じて身近な総合病院として、県立をはじめとする公立病院や
県立医科大学附属病院が整備されてまいりました。当時は医療機関ですべての患者の治療ができましたので、身近に医療機関があることが重要でございました。そのことは戦後の医療体制の充実として進んできた経緯がございます。しかし、昨今になりまして、医療の高度化、専門化が進むにつれ、どのように立派な病院であっても、一つの病院で対応できる患者・疾患は限られてきているのが実情でございます。近くに病院があっても、その患者様の病気の質あるいは緊急の性格によって受入れができないということが日常的に起きてございます。救急搬送時間が長くなっている原因のもう一つの点は、このようなことでございます。 特に全国の医療機関が、軽症患者を担当する医療機関と重症患者を担当する医療機関との役割分担を進めてきておりますが、その中で奈良県の医療機関におきましては、その役割分担と連携が十分に行われてこなかったというような経緯があると思います。結果として、軽症患者であふれる医療機関で重症な患者を断らざるを得ないという状況が日常化してきたものと思います。 これらの問題を解決するために、とりあえず二つのことは考えております。初期の救急医療を担当する休日夜間診療所の受入れ体制の充実が一つでございます。もう一つは、救急患者を医療機関に搬送するためのルールを策定することでございます。これは今年中に策定を完了したいと思っております。初期救急につきましては、主に市町村が運営する休日夜間応急診療所が担っておりますが、約七割を占める小児の、お子様の患者に対応する小児科医が常時いるのは橿原市だけでございます。その体制が十分でない地域がございます。そのため、県として市町村域を超えた連携により、休日夜間応急診療所の充実を図るべく、関係市町村と協議をしているところでございます。救急患者を医療機関に適切に搬送するためのルールの策定でございますが、二つの点が大事でございます。一つ目は、病院に対し、どのような救急患者の対応ができるのか、調査を行い、重症度や症状、時間帯別の対応可能病院のリストがぜひとも必要でございます。二つ目は、受入れ医療機関を踏まえて、救急隊が患者の症状や重症度を適切に判断し、搬送病院を選定するシステムの構築が必要でございます。この搬送するためのルールを適正に運用することで、適切な判断のもと、適切な時間内に対応可能な医療機関に救急患者を確実に搬送するシステムの構築がぜひとも必要だと考えております。 これらに加えまして、奨学金や、現在、
県立医科大学と構築に向けて準備を進めております医師配置システムなどにより、救急医療を担う医師確保などを図っていきたいと思います。さらに、救急隊からの受入れ要請は絶対に断らない、救急医療最後のとりでとなる救命救急センターを有する
高度医療拠点病院の整備がぜひとも必要だと思います。
県立奈良病院を整備することで、救急患者を断らない医療体制の確立を図る必要があると考えております。 次に、新
県立奈良病院の建替えの問題でございます。 奈良県の医療を抜本的に見直すため、二年間にわたり地域医療等対策協議会の中での議論を行ってまいりました。その結果や、百四十万人の人口を擁し、さらにへき地、山間部を抱える奈良県の状況から考えますと、県内二カ所の
高度医療拠点病院が必要と判断されてまいりました。昨年度策定いたしました
地域医療再生計画において、特に人口が多い北和地域の拠点病院として
県立奈良病院を位置づけ、整備を進めていくことにしているものでございます。特に、北和地域の生死にかかわるがんなどの医療状況を見ますと、県の北部から南部への患者の移動が少なく、多くの方が県内で治療を受けられずに県外で治療を受けられている実態がございます。このようなことから、北和地域の住民の医療の充実のためには、新
県立奈良病院を最先端のがんなどの治療を行う北和地域の
高度医療拠点病院とすることが必要と考えております。医師・看護師不足の現状において、地域医療を確保するためには、新
県立奈良病院が地域の病院・診療所と連携し、効率的な
医療提供体制を構築する必要があると思います。このような事情のため、北和地域の医療関係者に集まっていただいて協議会を設置し、新
県立奈良病院と地域の医療機関との連携のあり方も議論してまいりました。また、これまで現病院を身近な総合病院として利用されている方々への医療に支障が出ないような協議もその場で進めてまいり、解決策を確定していきたいと考えているところでございます。 次に、南和地域の医療についてのご質問もございました。 南和地域の病院として公立の三病院がございます。県立五條病院、町立大淀病院、国保吉野病院でございますが、それぞれ患者の減少、医師・看護師の退職、診療機能の低下、またこれにより患者が減少するという悪循環が生じてきております。公立三病院合計の入院患者及び外来患者を見てみますと、この五年間で約二五%減少しております。医師数は約二五%減少、看護師は約一〇%減少、救急車の受入れ件数は約二〇%減少しております。このままでは三病院とも共倒れし、地域医療が崩壊するというふうに思われます。そのような共通認識を持っていただき、本年七月、南和地域の一市三町八村と県が、南和の医療等に関する協議会を設置し、南和地域の
医療提供体制がどうあるべきか、検討してきております。 病気の治療には、病気の発症直後の急性期の治療を行う救急病院と、症状が安定して長期にわたり療養するなどの後方支援病院が必要でございますが、現在、南和地域の三つの病院は同じように救急病院として標榜し運営されているものでございますが、リハビリテーションを行ったり、療養を行ったりしたいという地域のニーズには十分対応できてない状況だと考えられます。検討に当たりましては、三つの救急病院を、一つの救急病院と二つの後方支援病院に役割分担を行い、体制を再構築することとしております。特に、三病院の運営形態、三病院の医療機能と地域との連携のあり方、受益と負担のあり方、拠点病院と後方支援病院の場所、住民への説明とコンセンサス形成について、市町村や医療の関係者による議論が行われているところでございます。最初に申し上げました一つの救急病院と二つの後方支援病院をつくるという基本的な出発点と、今申し上げました五つの点について結論を出すということについて、関係市町村による合意は既になされております。また、十一月には、南和の医療を考えるシンポジウムを開催し、住民の方々に南和地域の医療の状況について説明を行いました。 今後、来年二月中旬を目途に、南和地域の医療体制のあり方検討案を提示し、協議会で議論をしていく予定でございます。これらの議論を踏まえて、危機的な医療状況を一刻も早く解決するため、来年六月には、南和の医療体制のあり方について、協議会において関係市町村及び県で合意をしてまいりたいと思います。国からいただく予定でございます補助金も交付金も、このようなスケジュールで進めないと返還の可能性があるということで、このようなスケジュールを立てているところでございます。 ホテル誘致につきましてでございますが、県営プール跡地及び高畑町裁判所跡地についてのご質問がございました。 本年は平城遷都一三〇〇年祭が開催され、全国から多くの方々に奈良へお越しいただき、県内での宿泊者数も大幅に増加いたしました。奈良で宿泊できず京都や大阪に泊まられる状況が発生しております。また、国際会議も数多く開催され、VIPや関係者等が奈良で宿泊される際、セキュリティーやスイート性が不足し泊まられるホテルがない状況も生じております。宿泊施設数や選択肢の不足という課題を改めて認識をしているところでございます。 県営プール跡地及び奈良警察署用地へのホテル誘致につきましては、厳しい経済情勢の中、ホテル事業者や出資者などに個別に働きかけを行っております。奈良県へのホテル立地に強い関心を寄せていただいている事業者もありますが、経済情勢や不動産への投資環境は非常に厳しいものがございます。特に地方圏でのホテルの新規開発の企業マインドは非常に慎重であると感じております。現時点で具体的な検討を始めている事業者はいない状況でございます。現在、事業者、投資家、建築家等と意見交換を行うとともに、世界的なホテル団体の会合に私自身が参加いたしまして説明をしたり、関係機関や各事業者のトップの方々に対してセールス活動を展開しております。良質なホテルの立地が進むように引き続き取り組んでいきたいと思います。 奈良公園の南側にございます高畑町裁判所跡地につきましては、鷺池や浮見堂が眺望でき、新公会堂などの会議施設に歩いて行ける距離などの好立地条件にありながら、これまで十分に活用が図られてこなかったものでございます。近隣地におきましては、奈良公園の特性を生かし、料理旅館など幾つかの宿泊施設が古くから営業されている地域でございます。議員お述べのように、このような立地条件を生かしつつ、周辺地域の環境にふさわしい厳格な整備条件のもとで、交流、宿泊等の施設整備を行うことも有力な考え方と思っております。今後、地域特性、法規制、民間事業者の意向、周辺住民や県民の意見に配慮しつつ研究を行い、国内外の人々の交流に役立つ空間づくりを検討したいと考えております。 奈良は観光資源の豊かさと宿泊施設、食事環境の貧弱さのアンバランスが大き過ぎるというふうに言われてまいりました。また、冬の観光客の落ち込みが大きく、ピーク、オフピークの差が大きいという弱点も持っております。既存の宿泊施設の効率性を上げるためには、オフシーズン対策や食事の魅力向上を図るとともに、観光地への交通アクセスの改善や回遊ルートの整備を進めることなども必要があると考えておりますが、ホテル誘致を実現するためにも、これらの観光地としての基本条件の整備が必要だと思います。平城遷都一三〇〇年祭の開催により全国から注目を集めた観光地奈良は、平城宮跡の国営公園化により世界に比類なき大きな観光文化の拠点として飛躍するチャンスに恵まれたと思います。また、奈良公園を世界に誇れる公園として整備することとあわせて、奈良が超一流の観光地になることは十分可能だと思っています。その際、奈良を国内外の多くの上質な観光客にたっぷり味わっていただくためには、良質なホテルの誘致がぜひとも必要と考えているところでございます。 企業立地と税収、雇用のお問い合わせがございました。 企業立地につきましては、十月に平成二十二年上期分の工場立地動向調査が国から発表されまして、平成十九年から平成二十二年上期までの三年間半で、奈良県におきましては、この不景気の中でございますが、八十四件の立地が確保できたものでございます。関係者に感謝を申し上げるところでございます。企業は一たん投資されますと、通常何十年か活動が続くものでございますので、雇用、税収の効果が持続的であることが大変ありがたいと思っております。 雇用につきましては、平成十九年から平成二十一年に立地した企業七十四社のうち、既に操業を開始しております四十三社に対しアンケート調査を実施いたしましたところ、二十八社から回答がございました。その結果、立地に伴い新たに約五百六十人の雇用が創出されまして、さらに今後六十人以上の採用が予定されております。工場立地動向調査は暦年ごとの調査でございますので、本年に新たに立地した企業も含め、来年三月に追加調査を行い、実態を把握したいと思っております。 企業立地による税収についてでございますが、立地七十四社の不動産取得税は県に入りますが、合計一億二千百万円がございました。七十四社の法人県民税、法人事業税でございますが、平成十九年から平成二十一年までの申告額は合計二十六億四千六百万円でございます。ただ、法人県民税、法人事業税につきましては、創業当初は設備投資で初期投資がかさむこともあり、操業開始して生産が安定するまで数年かかること、また、個々の新規投資による効果と景気変動による売上額の増減の影響との区分けは難しく、税収効果とするにはさらに調査・分析を行う必要がございます。 引き続き企業誘致活動を進めながら、雇用効果につきましてはアンケート調査等により把握していきたいと思いますし、税収効果については引き続き、やり方、手法等についても検討を進めていきたいと思います。 奈良公園周辺整備、特に県営登大路駐車場のバスターミナル化のスケジュール、整備の進捗についてのお問い合わせがございました。 平城遷都一三〇〇年祭の開催等により、ことしの奈良公園周辺への来訪交通は増加しております。特に春・秋の観光シーズンにおける観光バスの駐車台数は、近年増加の傾向になっておるのは議員ご指摘のとおりでございます。現状では、県営大仏前駐車場の容量をオーバーする観光バスが道路に集中いたしまして、駐車場への入場待ちの観光バスの車列が延びて一般の通行の妨げとなるなど、観光バスが渋滞の一要因にもなっております。このため、公園内へ観光バスの流入を抑制するため、県営登大路駐車場のバスターミナル化が必要と認識しております。このような状況を踏まえて、観光バスの来訪状況についてデータの整理・分析を進めておりますが、来年十二月を目途にバスターミナルの基本計画を策定したいと考えております。具体的には、ターミナルに必要な乗降や乗り換えなどの機能について、既存の県営大仏前駐車場や県営高畑駐車場の取扱いも含め、整理するとともに、ターミナルの規模や出入口のあり方について検討したいと思います。この基本計画の策定に当たりましては、学識経験者や地元関係者などから成る、仮称でございますが、奈良公園地区
整備検討委員会を設け検討していただくことにしたいと思いますし、また、パブリックコメントも実施したいと思っております。 なお、来年度からは、公園内に周遊バスを運行させたいと思っております。また、郊外のパークアンドバスライド駐車場からシャトルバスも運行できるよう調整を進めており、県営登大路駐車場のバスターミナルができるまでは、県庁の玄関前を乗り換え場所として暫定利用したいと考えております。 私に対する質問は以上でございました。ありがとうございました。
○副議長(藤本昭広) 冨岡農林部長。
◎農林部長(冨岡義文) (登壇)二十五番荻田議員のご質問にお答えいたします。 ご質問は、戸別所得補償モデル対策の本県の実績についてでございます。 本制度は、水田農業の経営安定を図るために、恒常的に赤字に陥っている米に対して補てんを行う米戸別所得補償モデル事業と、自給率向上となる麦、大豆、米粉用米等の戦略作物の生産拡大を促す水田利活用自給力向上事業がセットで実施されております。本県では、昨年度より市町村、JA等と連携し、本制度の啓発、加入促進に取り組んできたところでございます。その結果、米のモデル事業は六千五百四十三件、交付金約二億四千万円の申請、また、自給率向上事業は四千五十九件、交付金約二億五百万円の申請がございました。現在、十二月末までの支払いを目途に事務作業を促進しているところでございます。 なお、米のモデル事業では、来年一月までの米の販売価格が、国が定める標準価格を下回った場合、その差額をもとに算出された単価で追加交付される見込みであり、その動向を注視しているところでございます。本制度の前身である産地確立対策事業の実績と比べますと、件数で二千六百九十三件、交付金額で約二億九千万円の増となっております。小規模・兼業の多い本県の水稲農家においても、制度に対する一定の評価が得られているのではないかと考えているところでございます。 以上でございます。
○副議長(藤本昭広) 二十五番荻田義雄議員。
◆二十五番(荻田義雄) 二問目は、自席からさせていただきたいと思います。 まず、一番に申し上げました県税についてでございますが、奈良県の財政という自主財源、非常に乏しゅうございます。そんな中でも観光振興、そして企業立地によって、それぞれ増収を図るべき知事としての努力を評価するのでございますが、この企業立地については、なかなかそれぞれ会社、誘致される会社、その会社が利益の追求をしていく中で、なかなか条件が整わないというようなところがございます。そんな中にあって、今も農業振興地域、あるいは調整区域内での工業地の、やはりこの指定を少しでも拡幅できるように、インターチェンジ周辺で検討されましたけれども、なかなかうまくいかないのが実情ではないかなと思っています。そんな中で、奈良県の財産であるそれぞれの跡地利用も含めて、種々これから、未整備にされているような土地も含めて再整備をされるようにお願いをしておきたいと思います。 それから、今、国では、国際競争力を強化する観点から、法人税の引下げなども検討されていますけれども、ある意味では、外国、国際間ではあまり効果はないのではないかとも言われています。一番経済波及効果があるのは、何としても消費税率を引き上げることではないかと言われています。そういった中で、それぞれの政府の様相も提示しながら、しっかりとした県税収入を得られるための施策を実施していただけたらありがたいと思います。 それから、奈良県の医療についてでございますが、救急搬送時間の短縮というのは、最初の十分間が命を守るということでございます。そういった中で、特に岐阜県では小倉教授という先生が中心になって救急隊と病院群のシステムの構築をされて、先ほど申し上げましたが、二市七町一村にわたって実施をされています。しかし、二〇一三年には、あと二年もしますといわゆる県下一円にこういったネットワーク化をしていく、これによって救急体制の確立を図っていくんだという強い意思を持って、知事を先頭にやっていただいています。こういった中でも、知事も、このシステムがいいということではなくて、先ほど申し上げられましたけれども、病院間、あるいはまた
県立医科大学、それぞれの教授連の方々とも勉強しながら対応方を進めていただけるよう、お願いしておきたいと思います。 それから、
県立奈良病院の建替えについて、私は一番危惧をしている点、例えば、新しい病院になれば何でも診ていただけるいわゆる総合病院として整備されることになっているのでしょうかと、それから、外来患者を受け付けない病院となるのであれば、地域の方々にとって、
県立奈良病院を利用されている患者はどうなるんでしょうかということを一問でいたしました。その結果の回答が、私には聞き取れなかった。再度お願いをしたい。 それから、仮に現地で建替えが実現したとしても、今まで利用されていた外来患者さんは診療継続が可能なのかどうか、この辺を一問でしっかりお答えをいただきたかったんでございます。改めてお願いをします。 それから、いろんな話の中で、
県立奈良病院、あるいはまたそれぞれの病院群の中でも、病院は建物が古い、だからお医者さんが集まってこないんだ、あるいは看護師さんが集まらないんだと、私はそういうことは絶対ないと思います。なぜなら、大阪府立成人病センターを見てごらんなさい。あれは大概病室も古いですが、だけど、きのうも私、あるところのミニ集会に行ってまいりました。そういたしますと、大阪府立成人病センターへ行っています、それはどういうことか、やっぱり医療力、医師の患者さんに対する説得、そして手術の施術法、さらに安心できるということが大きな要因でもありました。私は、
県立医科大学附属病院を中心とする県立病院がだめだということは言っていません。だけど、二時間もかかって頑張って行かれるという中には、そういった患者に対する説得力と安心感をもたらす病院である。また、その病院の中には、古い病院であっても先生を頼って若い先生方がついていく、これが今、
県立医科大学附属病院や県立病院のそれぞれの中には若干そういったものが見えないんではないかと思います。 だから、
県立医科大学附属病院を中心とする三病院についても、高度医療拠点は北和、中南和地域に二つという理想を私は思います。それは一番ありがたいことだなと思います。しかし、このソフト面のいわゆる医師・看護師力というものが果たして、大きな建物を建ててそういった形にスムーズに運営されるのか、これはしっかりとソフト面について、まずそれぞれの方々とご相談をいただいて、しっかりとした道筋を構築されることが大前提だろうと思います。それでなかったら、病院へ行っても、本当に先生を信頼して命を預けるわけでございますので、そういった点についてもう一度、今の
県立医科大学附属病院あるいは県立三病院、そういった中で医療力というのは安心して大丈夫なんだということ、このことについて知事は、私のこの意見に対してどう思われるのか、まずお答えをいただきたいと思います。
○副議長(藤本昭広) 荒井知事。
◎知事(荒井正吾) 医療サービスの提供の仕方というのは、救急の医療のことを考えると大変変わってきているということを、ご質問にお答えする形で第一問で申し上げました。どのように医療、救急医療体制を適時適切なマッチングをするかというのは、大変難しい課題で、医師の数だけではなく、その程度というのは大変課題になっていると思います。そのような
高度医療拠点病院の整備、一次、二次、三次ということのほかに、身近にある総合病院としての親近感というのは、長年続いていることも事実でございますので、議員のお尋ねの重要な点は、医療サービスの継続、診療継続が可能かどうかという点に大いにあると思います。この点の確保を特に地元の方中心に図っていくべきだと考えておりますが、その地元の人は軽症なのか、重症であれば広く高度の病院の程度を高めなければいけないということでございますので、今の新しい医療提供の連携の中で、とりわけ地元の方の医療継続、診療継続を図るというのは重要な課題として確立し、それをご理解賜るように努力を続けたいと思います。
○副議長(藤本昭広) 二十五番荻田義雄議員。
◆二十五番(荻田義雄) 今、知事さんからご答弁ありましたが、地域にとっては、やはり安心して医療が受けられる施設でなかったらいかんわけでございますので、その辺はしっかりとお酌み取りをいただきたい。 それから、現地の建て替え、あるいは移転の話がございました。そんな中でも、六条山地区、現、今の平松町の地での建替えの利便性、欠点のいろいろ披瀝をされました。しかし、住民あるいはまた地域の方々の合意形成なくして、私は、そういったものがなかなかスムーズにいかないところも一つあるかと思います。そういった中で、まだまだ時間もあるわけでございますから、私が申し上げました、今、総合病院として進め、なおかつ救命救急センターをより一層充実発展をさすことが、かえっていいのではないか、このように思いますので、その辺について、今まで三十二年間にわたって地域で医療形態をおとりいただき、まちづくりを進めてきていただいた地域でもございますので、その辺には十分地域の方々の思いを受けとめ、そして事務当局も、こういった思いを共有の思いとして今後努力をしていただきたい、このように思うところでございます。 それから、もう一点、ホテル誘致も、県営プールを取り壊しながら、なかなかスムーズにいかない、また、それを一つのいいものとしようということで、奈良警察署の移転もあるわけでございまして、県民にとって、県民の目線で考えていきますと、なかなか知事さんの思いには合致をしないところがあると思います。そういった中でも、ホテルの専門家は適地ではないのではないかという話もございます。ホテルを核としたまちづくりをしたいという思いはわかりますが、こういった点も今後やはりこの時代の流れとともに、ひとつしっかりと受けとめていただきながら県政を執行していただきますようお願いをいたしまして、私の質問を終わります。 以上です。
○副議長(藤本昭広) 次に、三十番今井光子議員に発言を許します。--三十番今井光子議員。(拍手)
◆三十番(今井光子) (登壇)日本共産党の今井光子でございます。先ほど十五年の表彰をしていただきました。これまで数え切れないほど多くの方々のご支援に支えていただきましたことと、心からお礼を申し上げます。それでは、日本共産党を代表して知事に質問いたします。 まず、知事の政治姿勢について伺います。 日本共産党
奈良県議会議員団では、県民アンケートに取り組んでいます。既に二千百通が返送され、切実な声がぎっしり書き込まれています。暮らしが悪くなったという人が六五%、収入が減った、七〇%、国民健康保険料や介護保険料・利用料、医療費の負担が重いと答える人は九三%です。県政に望むことは、一、安定して働きたい。二、負担を減らして子育てを応援し、高齢者・障害者の福祉、生活環境をよくしてが上位です。県民は暮らしと福祉を守ることを県政に求めています。また、県が行った平成二十二年の県民アンケートでは、八割の人が生活に不安を感じています。さらに満足度が低いと感じている点は、雇用や医療と並び、市町村の政治に住民の意見や要望が取り入れられていないことを挙げています。 知事は、五つの構想案を発表されました。この構想案については、知事はたたき台という考えのようですが、トップダウンではなく、十分に県民の声を聞いて進めるべきだと思います。荒井知事になってから県政のスピード感が増し、次々出る思いつき政策と、そこに寄せられる県民の声との間で幾つかの矛盾に直面してきました。就任早々のホテルを核としたまちづくりでは、県民の声も聞かずに県営プールをつぶしてしまい、いまだにホテルは来ていません。廃止された県営プールの移転先とされる第一浄化センターでは、フラワーセンターが廃止されるとのことで、フラワーセンターを利用されて山野草などを毎月展示して楽しんでいる趣味の会の方々からも心配の声が出ています。どのように考えているのか、お聞かせください。 奈良県の子どもの三分の一が利用してきた県立野外活動センターでも同じことが起きています。県は、四十年にわたって二百八十万人が利用してきた施設が老朽化して利用が少なくなったからと、宿泊管理棟をなくしてテントとロッジだけにするとしています。多くの関係者は、従来どおりの機能を持った新しい施設を望んでいます。テントとロッジのレジャー用のキャンプ場は各地にありますが、奈良県立野外活動センターが教育施設として担ってきた役割を残してほしいという県民のニーズと大きくずれています。管理宿泊施設の廃止の条例変更も、予算も何も議会には出ておらず、正式に決まってもいないのに既に来年から閉鎖のことがホームページで公開されるなど、議会軽視と言わざるを得ません。 奈良県立野外活動センターの宿泊施設が閉鎖された場合、曽爾高原自然の家の受入れ状況を聞きに行ってまいりました。やはり奈良県の学校から問い合わせが増えているとのことです。これまで第一、第二希望で受入れができておりましたが、秋以降の第三希望を聞かなければ受入れができなくなっているとのことでした。私は、地元の小・中・高等学校を回って意見を聞きました。安心して連れていける場所がなくなることを心配されていました。また、現場では、学校行事がずれ込むと今のサイクルでは野外活動はできなくなってしまう。テントやロッジの分散型では、引率の教師の人数が多く必要になるが、今の学校現場では現場から応援をもらえるような体制ではなく、センターの受入れ指導員に応援してもらえないと安心して子どもを連れて野外活動をさせることは困難など、いろいろな声を聞かせていただきました。 今議会に、野外での学校教育活動の補償に関する請願が上がってきています。詳しくは厚生委員会で議論しますが、九月予算審査特別委員会の総括質疑に私がこの問題を取り上げましたとき、知事は、体の弱い子どもたちのことも考えなくてはいけないと発言されましたが、トイレやお風呂、食事や車いすの対応など、その後どのように考えていただいたのでしょうか。一時のイベントに莫大な投資をしたことを思えば、管理宿泊棟を新しく建て替え、今後さらに四十年間、多くの子どもたちがかけがえのない体験ができる特色ある施設にすることは、未来に生きる投資だと思います。知事は、当選直後に、上司は県民だと言われました。県の施設は知事の私物ではありません。県民のものです。今回の県立野外活動センターのことに関しても、まず現在利用されている県民の意見を聞いて、新たな計画を進めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。 次に、平和について質問します。 私は、五月にニューヨークの国連本部で開かれたNPT核拡散防止条約世界会議の要請行動に、県下四十自治体すべての首長さんの賛同署名を持って参加しました。これは全国で奈良県が初めてで、日本から参加した千五百人の要請団と六百九十万人の署名は、核兵器廃絶を最終文書に書き込んだ大きな力になりました。ニューヨークでは、キング牧師がベトナム反戦演説をしたリバーサイドチャーチで公開シンポジウムが開かれ、参加しました。当時キング牧師は、アメリカがベトナム人の上で爆弾を落とすと、その爆弾は国民の上で爆発をする。意味のない戦争が死をもたらしアメリカの人々の希望を奪い続けると訴えたそうです。この教会で国連のバン・ギムン事務総長は、核兵器のない世界は必ずやってくる、そのときが来たら、世界はあなた方に感謝するでしょうとあいさつされました。私は、奈良から持っていった憲法第九条を各国の言葉に訳したリーフレットをバスの運転手さんに渡しました。彼はそれに目を通して深いため息をついて、オー、イエスと握手を求められました。憲法第九条は、多くの犠牲の上に立ち、どんな理由があろうとも二度と戦争は繰り返さないことを国の内外に誓った日本の宝です。 今、北朝鮮の韓国延坪島への砲撃、尖閣諸島沖の中国漁船追突問題、ロシアの北方領土問題と、沖縄の米軍基地問題など、日本を取り巻く情勢は緊迫しています。一つ間違えれば取り返しがつかないことになるのではないかと、多くの国民が心を痛めています。北朝鮮の武力攻撃は、どんな理由があろうとも民間人に対する無差別攻撃は許されるものではなく、日本共産党は直ちに抗議をするとともに、関係各国が外交的、政治的な努力で解決することを要請しました。 平和のために地方レベルで何ができるでしょうか。沖縄での米軍基地問題で、地元広陵町の平岡町長は八月に嘉手納町長と宜野湾市長に手紙を送りました。そこには、靴下生産日本一、古墳の数も全国一と広陵町の町の紹介をしてから、自身の戦争体験から、二度と戦争してはならないという平和の思い、基地面積が嘉手納町では町の面積の八三%が米軍基地、宜野湾市では市の面積の三三%が米軍基地であることに触れ、特に危険区域に学校や保育園などの公共施設や民家があるといった異常な事態を知るにつけ、両首長様がどのようなお気持ちで日々の行政に当たっておられるかを考えていると、いても立ってもいられない気持ちになります。一日も早い沖縄の現実の打開を願い、お便りをするものです。私たちにできることは小さいささやかなことでしょうが、そんな一歩が全国に広がれば、情勢を切り開くことができるかもしれません。とつづられています。これに対して嘉手納町長、宜野湾市長の感謝とお礼の手紙が届いています。 平城遷都一三〇〇年祭では、東アジア諸国と文化や歴史を通じたたくさんの交流が行われました。奈良県は、世界に平和を発信するふさわしいところであると思います。県下の自治体では、非核平和宣言の町という看板を立てるなど、その決意を住民や来訪者に知らせるなど取り組んでおります。平城遷都一三〇〇年祭の終わりを控えた今、奈良県として平和の取り組みをどのように進めようとしているのか、伺います。 次に、水と食と農、TPPについて伺います。 持続可能な社会は二十一世紀のキーワードです。その中でも、二十一世紀は水の世紀と言われています。ことし一月開かれた日本水フォーラムでは、現在、世界で九億人が安全な飲み水を得ることができず、国連世界水発展報告書によれば、今世紀半ばまでに二十億人から七十億人が水不足に直面すると予測されています。その一方、日本は、食料、木材、衣料の輸入を通じて間接的に世界中から大量の水を輸入して依存していることの警鐘が鳴らされました。ところが、菅内閣は、平成の開国だと十一月九日、環太平洋戦略的経済連携協定TPP参加の方向で、関係国との協議を開始する、包括的経済連携に関する基本方針を閣議決定いたしました。これは、自動車、電機など一部の大企業のために農業を犠牲にするもので、許されません。 これは日本の存亡にかかわる重大問題です。奈良県でも十二月九日、奈良県農業協同組合中央会・永田正利会長を実行委員長として、国会議員、県議会議員、農業者、消費者など、橿原万葉ホールにて、TPP交渉への参加に反対し日本の食を守る奈良県緊急集会が開かれる予定です。全国でも燎原の火のごとく反対の声が広がっています。実施されれば、食料の自給率は四〇%から一二%に落ち込み、その関連業者など三百四十五万人が仕事を失います。国土は耕作放棄地が増えて破壊されます。奈良県は農地の中で水田の割合が七五%と、全国平均の五四%に比べても高く、影響は甚大です。世界では十億人が飢餓で苦しんでおり、豊かな水と農地がある日本で食料の自給率を高め、食料の主権を守ることは、世界の水や食料、平和に大きく貢献することになります。食べ物がなければ人間は生きていくことができません。第二次世界大戦では、戦死者の多くは食べ物がないために死んでいった人でした。国連総会では、食料主権は世界の流れと決議に明記されました。 知事に伺います。TPPについて、政府に対し、参加はもとより協議も行わないように緊急に申し入れるとともに、TPPによる県内農業、関連産業に与える影響を試算して県民に明らかにし、広範な県民運動としてTPP参加を絶対に許さない取り組みを強化するべきと考えますが、いかがでしょうか。 次に、憲法第二十五条が暮らしに生きる県政について質問いたします。 ことしは、人間裁判として闘った朝日訴訟の判決から五十年がたちました。朝日訴訟とは、当時岡山の結核療養所で重症の結核で入院中の朝日茂さんが起こした裁判です。収入のない長期入院患者に対する生活扶助は一カ月六百円でした。福祉事務所は、中国抑留で長期に音信不通だった兄を探し出し、月千五百円の仕送りをするように要請しました。子どもを四人抱えて生活が楽ではなかったお兄さんでしたが、仕送りを始めたところ、福祉事務所は、千五百円のうちから六百円だけ残して、九百円は医療扶助の一部負担金として国に返還させることを決定したのです。朝日さんはもともと六百円では足りないと思っていたので、それだけ残して政府がそれを取り上げてしまうことは納得できないと感じました。それが当時の厚生省の生活保護基準に従った措置であることを知った朝日さんは、最初岡山県知事に、次に厚生大臣に不服申請をして却下され、行政訴訟を起こしたのです。六百円で買えたものは、肌着が二年に一着、パンツは一年一枚だけ、手ぬぐいが年に二枚、ちり紙が一カ月に一束、鉛筆が一カ月半本、これでは憲法第二十五条の健康で文化的な最低限度の生活を維持できない、これは憲法や生活保護法に違反していると起こした裁判でした。 憲法第二十五条を争った生存権裁判・朝日訴訟の判決は、健康で文化的な生活は国民の権利であり、国は具体的に保障する義務がある。それは予算があるなしで決められるものではなく、むしろ指導支配しなくてはならないとされました。このことは、政治の基本は国民の命と暮らしを守ることで、税金はまず社会保障に使い、その上でほかの予算を決めなさいということです。 こんな相談がありました。派遣切りが問題になりました一昨年、会社が倒産して、車に寝泊まりしてハローワークや訓練所に通っていた人がいました。緊急対策で住宅に入り、何とか仕事を見つけて自立をしたいと頑張りましたが、半年したら住宅を出なくてはいけません。半年では仕事が見つかりません。彼は生活保護を申請しました。車に乗らないことを約束すれば申請を認めるということでした。蓄えはなく、友人から借りるのも限界で、生きるためのぎりぎりの選択で車に乗らない誓約書を書き、申請できました。それでも仕事をして自立をしたいと頑張っていました。ハローワークから面接にすぐ来てほしいと連絡があり、車を使わなくては間に合わずに、帰ってきたところを生活保護のケースワーカーに見つかり、生活保護を停止されました。なおかつ、ハローワークで職業自立訓練のために借りていたお金を申告せずに保護費を不正受給したと言われて、逆に返済を求められたのです。彼は県に対して不服申し立てを行いました。その後、彼は再申請を行い、生活保護は再開になりましたが、不服申し立ては、法で定められた五十日が過ぎても判定が下りません。再三問い合わせをしましたが、県は急ぐ事案があるということで三十四日間もおくれて返事が届いたときは、その前日に既に亡くなっていたのです。どんなに無念だったでしょうか。仕事を見つけようと頑張っていたことを不当だと一方的に決めつけて、努力を踏みにじるような行政の対応は問題です。 本人の主張と福祉事務所の対応が合わないことは、この事例に限らずにたくさんあります。保護の必要な人に生活保護が認められていないのです。格差と貧困の広がりで生活保護世帯が過去最高になりました。保護が必要なのに、受けている率は一割から二割と言われています。生活保護以下で生活している人が四倍から九倍もいるのです。急増する生活保護世帯にケースワーカーの増員が追いつかずに、一人で百ケース以上も受け持つなど、ゆっくり耳を傾けて生きる叫びを聞くゆとりがないのです。 実態を伺います。生活保護のケースワーカーを大幅に増員するとともに、人権尊重の立場に立って、生活、医療、介護、住宅、教育などさまざまな扶助実態に合わせてもっと柔軟に適用し、自立へとつながるようにするべきだと考えますが、いかがでしょうか。 年末がもうすぐです。家も仕事もない人がとりあえず駆け込めるシェルターの確保などを要望しておきます。 福祉医療制度について質問します。 六十五歳以上から七十歳になるまでの非課税世帯を対象に実施してまいりました老人医療費助成制度は、ことしの七月三十一日で廃止になりました。この制度は、奈良県では平群町で最初に始まり、各地に広がり、奈良県は奥田知事の時代に国に先駆けて実施した制度でした。私が医療相談の仕事を始めたころは、奈良県のお年寄りは六十五歳になれば医療費は無料になることが当たり前になっていました。それが中曽根内閣の時代に、軍事予算がGNP一%以内という枠が外れ、軍事費が増え続けてきたころから福祉の負担が増えました。初めに月四百円の自己負担が導入されたとき、高齢化社会になるというキャンペーンがされて、お年寄りも、若い世代に負担をかけるのは大変だ、四百円ぐらいならと言っていました。その後、お年寄りでも負担しているのだからと健康保険の負担増が続き、今では国民健康保険も被用者保険も三割負担になりました。七十歳から七十四歳まで現在は一割になっていますが、来年からは段階的に二割の負担になることが検討されています。七十五歳以上の後期高齢者は、一割から所得によっては三割もの負担になります。高齢者の不安のトップが医療や介護の費用負担になっていますが、高齢者の医療費負担を軽減する県独自の福祉医療制度が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。 また、窓口で三割を払って、後から五百円以上が償還払いになっている県の福祉医療制度は、乳幼児、障害者、母子医療などですが、窓口負担をなくすべきだと考えますが、いかがでしょうか。 今、父子家庭が急増して、貧困化が進んでいます。しかし、何の支援もありません。今の時代のニーズに合わせて、母子医療を一人親医療に改め、父子家庭も支援できるように改善するべきだと思いますが、いかがでしょうか。 次に、中小企業高度化資金についてお尋ねします。 奈良県が平成元年、平成二年にヤマトハイミールに貸し付けた二十億円の中小企業高度化資金問題は、組合も破綻し、理事長も亡くなりましたが、いまだに県が貸した二十億円については回収されていません。この間の住民訴訟では、県がお金を貸し付けたにもかかわらず回収を怠ったのは違法であるとの判決が下りました。しかし、だれも責任をとる者がおらず、住民側はそれを不服として、一億七千万円も退職金を受け取って退任した元知事を最高裁判所に提訴しています。平成十九年、県はヤマトハイミール食品協業組合に対して返済請求を行い、このときに初めて連帯保証人にも請求を行いました。それによって初めて二十億円もの連帯保証人であったことを知ったYさんは、県を相手に保証人ではないという裁判を起こしましたが、昨年十二月二十四日、実印が使われていたということで敗訴しました。 ことしの二月定例県議会で私は、貸付けの契約関係を証明する公正証書において、県側の代理人が県の職員、組合側の代理人も県の職員というのは、そもそも貸付けの相手に委任するのは問題ではないかと質問しました。国の中小企業事業団にも直接聞きに行きましたが、そのような例はあまり聞いたことがないと答えております。民法第百八条には双方代理の禁止が決められています。この点を知事は調査をすると言われましたが、どのような調査を行い、その結果はどうであったのか、伺います。また、県は連帯保証人に対して、いつどのようにして公正証書で確認された保証の内容を知らせてきたのかを伺います。 最後に、水害対策で要望したいと思います。 天理王寺線の都市計画決定が行われました。河合町池部から長楽を、そして川西に抜ける道路計画です。これによって不毛田川から大和川への合流地にあります市場の地域では、今でも雨が降ると大和川への出口がしまり内水氾濫が起きて水害が繰り返されています。一年前から地元と県、町、また地元議員も入って協議会を行っております。地元の知恵を水害対策に生かすことの重要性を改めて感じております。市場から上流のところに、平成十七年広陵町沢につくられた不毛田川流域調整池、通称葛城ドリームグラウンドがありますが、調整池から下流三百メートルの区間、不毛田川が未改修のために本来の役割を果たしておりません。その連結も含めて実効ある水害対策を強く要望しておきます。 これによりまして第一問目を終わらせていただきます。答弁によりましては自席より質問させていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(藤本昭広) 荒井知事。
◎知事(荒井正吾) (登壇)三十番今井議員のご質問が幾つかございました。 まず、フラワーセンターのご質問でございます。 フラワーセンターは、昭和四十九年に開設し、その敷地に花壇、庭園などを配置しております。ガーデニング教室など県民セミナーの開設で年間延べ千人程度の参加者がございまして、ボランティアの自主活動の場として機能してきたものでございます。一方、花にかかわる施設といたしましては、本年九月十八日から十一月十四日の五十八日間、馬見丘陵公園で第二十七回全国都市緑化ならフェア、やまと花ごよみ二〇一〇が開催され、目標を上回る四十三万人の入場者がございました。本県の特産で球根生産量日本一のダリアを用いた花壇をはじめ、ドライフラワーリースづくりなどの体験教室、みんなで作ろう!ダリア花じゅうたんなどのイベントを通じ、多くの方々に花に親しんでいただき、成功裏に終了したものでございます。県といたしましては、この二つの施設を見まして、都市緑化フェアを一過性のものとせずに、ボランティア等の参加も得ながら、県下全域において花と緑のまちづくりを推進していきたいと考えております。このため、現フラワーセンターを馬見丘陵公園内に移し、花と緑のまちづくりを推進する活動拠点とする方向で検討してまいりたいと考えております。 なお、今後、具備すべき機能や規模等の検討を行うとともに、移設に当たって現フラワーセンターの利用者の活動に支障が生じないよう、あわせて検討してまいる所存でございます。 野外活動センターについてのご質問が、これまでも何度もございましたが、本日ございました。 野外活動センターにつきましては、平成十九年度の包括外部監査において、施設のあり方を抜本的に見直すべきとの指摘を受けました。これを踏まえまして、教育委員会を含む関係課で構成する、あり方検討委員会を設置し、平成二十年十月から本年、平成二十二年十一月にかけて二年間検討を重ねてまいりました。具体の検討に当たりましては、平成二十一年度に県内小学校二百十三校、中学校百七校、高等学校五十六校へのアンケート調査や、平成十九年度からは毎年、団体利用された方へのアンケートを実施してきております。アンケート調査では、子どもさんたちからは、直接自然と触れ合えるロッジやテントといった非日常的な経験が深く印象に残っているとのご意見、ふだんの生活とは異なる飯ごう炊さんやキャンプファイアーなど、野外で自主的に行う体験での満足度が高いという声が寄せられました。また、県民からは主に、安全確保、衛生管理、食事提供についての意見が寄せられました。それらの意見についても検討を行って十分な対応をとることにしてきたものでございます。以上のことから、ロッジ、テントサイトを中心として、自然の中で生活することで青少年の社会性をはぐくむという本来の野外活動の目的に沿ったセンターの運営をしていきたいと考えております。 九月の予算審査特別委員会の総括質疑でも取り上げられましたが、体の弱い子どもたちのことも考えなくてはいけないという点でございます。 体の弱い子どもさんたちにつきましては、学校から提出される指導計画を踏まえ、個々の状況に応じたプログラムを工夫していきたいと思います。なお、新管理棟には車いすでの利用が可能な温水シャワールームやトイレを設けるほか、ロッジ等へのアプローチも改修する予定でございます。 平和問題についてのご質問がございました。平和への取り組みを奈良県としてどのように進めていこうと考えているのかというご質問でございます。 国家間の平和への取り組みも重要だと思いますが、国を超えた地方政府同士の交流は平和の醸成につながる、意味のある活動と認識しております。その意味で、東アジア地方政府会合は、今後重要な意義を持ってくるものと思っております。また、先月、東大寺鑑真和上像揚州里帰り事業として、県議会の皆様とともに民間と行政が一体となった訪問団で、鑑真和上のふるさと揚州市を訪問いたしました。日中関係が不透明な状況の中、熱烈な歓迎を受け、さらにその認識を深めたところでございます。本県では、昭和六十三年に国際文化観光・平和県を宣言し、本県の有する歴史文化遺産などの特性を活用して、奈良と歴史的にゆかりの深い中国や韓国などの東アジアの国々との交流を推進しているところでございます。特に中国陝西省とは、奈良県として初めてとなる友好提携の締結を目指して交流を進めてきております。また、百済の地でございました韓国忠清南道とは、文化観光交流協定を締結して、平城遷都一三〇〇年祭、忠清南道二〇一〇世界大百済典への相互出展をするなど、交流を実施してきております。このような東アジアの地方政府との交流そのものが、平和で安全な世界の実現に向けての奈良県らしい取り組みであると認識しております。今後、恒久平和の実現に向けて、一歩でも前進する契機となるよう、平城遷都一三〇〇年祭を通じて養った東アジアの地方政府との交流をさらに推進してまいりたいと考えております。 TPPについてのご質問がございました。 先ほど新谷議員に答弁した内容にもなりますが、国の内閣府では、TPPへの参加は日本経済を活性化するための起爆剤として、製造業を中心に、全体としてGDPが増加すると試算されておりますが、一方、農林水産省では、農産物について外国産との価格競争により大きなマイナス影響を受けると試算されております。現段階では、国の機関においての意見の集約がされていないように思います。 なお、農林水産省の試算基準は、全世界を対象に直ちに関税を撤廃した場合の試算であり、TPPに参加した場合の試算でないというような報告も受けております。 本県農業のことでございますが、兼業稲作農家が大半を占め、貿易自由化による影響が少ない野菜、花き、果樹などの園芸農業が主でございますが、県としてどのような影響があるか算定することは極めて困難な事情がございます。先ほどご答弁申し上げましたように、国として日本農業の将来方向を示していただくことが先決だと思っております。県といたしましては、今後、国の動向、特に意見の集約化の行方を注視しておりますが、本県農業の足腰を強くしていくことは、その帰趨のいかんにかかわらず重要だと思っております。マーケティング・コスト戦略に基づく農業の振興施策を着実に展開し、意欲ある農家が将来展望を持って農業経営を営めるよう取り組み、奈良らしい農業振興の方策を追求してまいる所存でございます。 憲法第二十五条の関係で、生活保護に対するソーシャルワーカー、ケースワーカーの事情についてのご質問がございました。 奈良県の生活保護世帯数は、平成八年以降毎年増加しております。平成二十一年度では一万二千四十五世帯でございますが、五年前の平成十六年度と比べまして二割、約一・二倍に増加しております。全国とほぼ同様の傾向になっております。生活保護のケースワーカーの数は、社会福祉法に標準数が規定されておりますが、郡部町村の福祉事務所では保護世帯六十五世帯に一人、また市部福祉事務所では八十世帯に一人の割合で配置することになっております。県下の保護世帯数の増加が続く中で、各福祉事務所ではケースワーカーの人員確保に努めておりますが、本年四月一日現在では、県下十五福祉事務所中、標準を下回っておりますのは奈良市、大和郡山市、桜井市の三市でございます。大和郡山市、桜井市はここ数年の保護世帯数の急増に伴い、それぞれ二名の不足が生じたものでございますが、奈良市におきましては恒常的に不足しており、四月現在で十四名の不足となっておるものでございます。 なお、生活保護の適用に当たりましては、生活保護世帯の生活状況を十分把握した上で、その世帯のニーズに応じ、生活、住宅、教育、医療等の各扶助を適切に組み合わせて給付するとともに、ハローワーク、学校、病院等の関係機関と連携して自立支援を図っていくことが重要であると思います。近年では、厳しい経済・雇用情勢を踏まえ、ハローワークと連携して職業相談・紹介や職業訓練の受講あっせんなどの個別支援を行ってまいりました。平成二十一年度では百七十五人を支援いたしましたが、うち五十一人が就職に結びつきました。また今年度から、ハローワークへの同行を行う就労支援員を配置することとし、六福祉事務所七人を配置したところでございます。的確な生活保護行政を展開していくためには、ケースワーカーについて、量、質ともに充実させていく必要があると思っております。県といたしましては、各福祉事務所に対し事務監査等の権限がございますので、それを通じて、引き続き、ケースワーカーの必要数の確保とともに、失業者に対する就労支援、貧困家庭の低学力の子どもに対する進路指導、病状に応じた療養指導など、受給者の多様な課題に対応した効果的な支援を行っていただくよう、助言・指導してまいりたいと考えております。 福祉医療制度、高齢者の医療費負担等についてのご質問がございました。 六十五歳から六十九歳の低所得者の方を対象といたしました県独自の老人医療費助成制度につきましては、平成十六年の福祉医療検討委員会において、地方が単独で助成を実施する意義が既に希薄化しており、また、全国的にも制度廃止が相次ぐ中、時代の流れとして、経過措置を設けて廃止することは相当という提言を受けまして、平成十七年八月に見直しを行い、当時の受給対象者が全員七十歳に到達する本年七月末日をもって制度が完了したものでございます。現在、国において、高齢者医療制度のあり方について検討がなされております。保険料の設定、窓口負担も含めた高齢者医療全体について、高齢者の所得状況も踏まえ、議論がなされているところでありますが、本県としても、国の制度の枠組みに沿って対応していきたいと思います。 次に、医療費の窓口負担につきましては、窓口払いの原則が国民健康保険法等に規定されており、この原則に反する場合には国庫負担金の減額措置が課せられることになることや、現行の窓口で一部負担金を払った後、助成金が自動的に振り込まれる方式、いわゆる自動償還方式が定着していることから、現行方式を継続したいと思っております。 また、父子家庭、男親とお子様の家庭に対する支援につきましては、これまで母子家庭に比べ父子家庭は経済的支援の必要性が低かったため、医療費助成の対象とせず、ホームヘルパー等の派遣による生活援助、保育サービスなど生活面において支援を優先してきたところでございます。しかし、昨年実施いたしました奈良県ひとり親家庭実態調査によりますと、前回調査時に比べ、父子家庭の平均年収が低下しており、経済的支援へのニーズが高まっていると認識しております。母子家庭に対する児童扶養手当が本年八月から父子家庭にも拡大されました。また、既に、今後五年間のひとり親家庭の自立支援策について、外部の有識者等による委員会を設置し、年度内を目途に取りまとめを行う予定でございます。この中で、医療費助成も含めた父子家庭への支援のあり方についても充実させる方向で議論していただく予定でございます。それを受けて、今後の対応の方向を出していきたいと考えております。 中小企業高度化資金、ヤマトハイミールの問題についてのお問い合わせがございました。 今回の公正証書作成に当たっての代理行為が、民法第百八条に係る双方代理に該当するか否かについてでございます。先般のご質問の後を受けて、弁護士や公証人に確認いたしましたところ、代理人はともに県職員であっても、別人であれば双方代理には当たらないとの回答を得ました。また、そもそも双方代理であれば、公正証書の作成は受け付けられないものであるとのことでございました。 連帯保証人へいつどのように報告したかにつきましてのお問い合わせがございましたが、記録が残っていないため正確な日時は確認できませんが、本事案につきましては、県職員たる代理人が連帯保証人から契約条項付き委任状により委任され、その条項どおりの内容で公正証書を作成したものでございます。したがって、委任状が真正に成立している以上、報告のいかんにかかわらず、公正証書による保証契約の有効性が認められていることは、判決文に書かれているとおりでございます。 なお、今般の判決で、連帯保証承諾書、設立趣意書、加入申込書及び出資引受書などを証拠として、原告の保証意思の存在も推認されております。さらに連帯保証人である原告が判決を不服として控訴していないことから、県としては手続に誤りはなかったものと考えております。 ご質問は以上でございました。
○副議長(藤本昭広) 三十番今井光子議員。
◆三十番(今井光子) 答弁ありがとうございました。今いろいろと聞かせていただきまして、フラワーセンターについては、馬見丘陵公園のほうに持っていこうと県が今、検討中であるというようなことですけれども、それにつきましてもやはり十分に、今、利用されている方のことは意見を聞いて進めていっていただきたいと思います。それは意見として述べておきたいと思います。 県立野外活動センターですが、基本的には、初めて野外活動を体験するという、そうした子どもたちを集団で連れていっても心配なく使えるという、そういう施設の条件が必要ではないかと思っております。確かにアンケートで、ロッジとかテントでは、大変子どもたちにとってはよかったという、そういうアンケートの回答があるということですけれども、この前、国立の曽爾高原のところに行ってお話を聞きましたときにも、いろいろやっても、もしそこで事故が起きたら元も子もないということで言われております。そういう意味では、県が管理棟を規模を変えてつくるということですけれども、そのあたりのところを十分に検討いただきたいと思いますので、その点でご意見ありましたら、ぜひお尋ねしたいと思います。 それから、憲法第二十五条にかかわる問題ですけれども、亡くなった後に届きました県の結論、これはどういう結論が届いたのか、その中身をちょっとお尋ねしたいと思います。 それから、父子家庭の関係ですけれども、本当に今、父子家庭の方々のところも、やっぱり残業ができないとかいろんな条件がありまして、仕事が続けられないということが出ております。ぜひ、医療費でも、これについては父子家庭の医療費を前向きにしていただくようなニュアンスで受けとめたわけですけれども、それについてはぜひ実現できるようにお願いをしたいと思っております。 それから、公正証書の関係ですけれども、双方代理には当たらないということで県のほうは言われております。公正証書の場合に、私は、連帯保証人になった方が平成十九年のときに初めて知ったというところに大変驚きと、何でかという疑問を感じました。県の話では、いろいろな委任状が作成されているので、もう本人は十分知っているはずだというのが県の言い分だと思いますけれども、公正証書の場合に、債権の取り立てをするには公正証書の謄本が、やはりこういうふうになったということがきちっと送られるという、そういう必要があるということでございます。送達証明書ということのようですが、大体正式に交付をしてから一週間後ぐらいに交付をされる内容ですけれども、これが連帯保証人のところに届いていなかった。公証役場でもこれを届けたという記録が残っていないわけです。そしたら、公証役場のほうでは連帯保証人の方にそれは直接知らすという形をとっていなかったということになるのではないかというふうに思います。 それと、委任をする場合ですけれども、両方とも県の職員ということですが、委任状を見ましたら、一枚の紙に、奈良県が県の職員の方を委任をしている。それから、ヤマトハイミール食品協業組合につきましても、別の県の職員の方を代理として委任していると、それが一枚の紙に委任状があるということ自体が、やはり双方代理になるのではないかと思うわけですけれども、この点で、印鑑だけ使われたんだということで裁判で言われて、結局実印が使われているのでそれは認められなかったということになっておりますが、いろいろな資料を見たりお話を聞いたりいたしますと、やはりちょっと普通ではないなという感じを受けるわけです。こうしたずさんな委任状でも県では当時認められていたのかどうか、その点について私は、当時のことをご存じの副知事にぜひご意見を伺いたいと思っております。
○副議長(藤本昭広) 荒井知事。
◎知事(荒井正吾) ご要望とご質問がございましたが、一つは、野外活動についての考えに変わりはないかということでございますが、変わりませんです。お答えしたとおりでございます。 それから、生活保護に関する、大和高田市の事案でございましょうか、十一月に亡くなられた、病死された方の裁決の内容でございますが、ご質問の中身にもございましたが、就職活動における車の利用は認められない、生活保護の廃止の要件に当たるという県の判断と裁決が出ております。それから、融資について収入との認識がなかったので、これは不正受給によるということで判断されておりますが、融資について収入として申告義務がございましたが、それを怠られたということでございます。生活保護の方は全体として事情は大変厳しいものと思いますが、法の執行という観点では、生活保護をもちろん悪用するお考えはなかったと思いますが、適正な執行というのは行政の側でも求められるものでございますので、今申し上げましたようなことを正当だと思います。 それから、公正証書の委任状が双方代理かどうかということでございますが、双方代理ではなしに公正証書の委任が適正に成立しているかどうかというのは、判決文のとおり関係する別人の県職員のことでございますが、委任状の記載が同じ文書に書かれていることでございますが、それぞれ委任状については、本人の名前が自筆されております。また、その中で、連帯保証人の名前も自筆されておりますので、この委任をされた方は自筆でかつ実印を押されたということで、適正な委任状だというふうに思います。
○副議長(藤本昭広) 今、知事が答弁された内容は、副知事に答弁をということを知事が答弁しているんですね。
◎知事(荒井正吾) はい、そうでございます。
○副議長(藤本昭広) 三十番今井光子議員。
◆三十番(今井光子) 適正だということで言われておられるわけですけれども、通常の公正証書は一週間以内にその方のところに送達をするという、そうした記録も残っていない。普通は、双方代理でなければ、県は県で委任をする、また組合側、保証人のほうは保証人のほうで委任をするというのが、普通私たちが考える委任状のやり方だと思うんですけれども、そうした、言ってみれば横着な感じの手続、しかも金額は二十億円というようなお金でございますので、やり方としては非常にずさんではないのかなというふうな印象を持つわけです。この点で、どういう形で、だれが、あなたは連帯保証人になっていますよということを直接会ってきちっと話をしているのか、その中身を、そこの点を私はぜひ県として調査をしていただきたいと思います。代理人の方に聞くなり、県としていろんな手だてを尽くしてぜひ調査をしていただきたいと思います。その点だけ一点お尋ねしたいと思います。
○副議長(藤本昭広) 荒井知事。
◎知事(荒井正吾) 委任の内容が公正に成立したかどうかという点に法的な有効性を問われているものと思います。それは議場で問われても、法的な裁判所で問われても、疑義があればただされるべき課題だと思いますが、だれが行ったか、いつ行ったかと、平成三年の話でございますが、私はそのようなことを調査する必要性があるのかどうか、ちょっと直ちに返答しかねるように今、思うところでございます。
--------------------------------
○副議長(藤本昭広) 六番尾崎充典議員。
◆六番(尾崎充典) 本日はこれをもって散会されんことの動議を提出します。
○副議長(藤本昭広) お諮りします。 六番尾崎充典議員のただいまの動議のとおり決することに、ご異議ありませんか。 (「異議なし」の声起こる) それでは、さように決し、明、十二月七日の日程は当局に対する代表質問とすることとし、本日はこれをもって散会します。
△午後五時十三分散会...