父母、子供2人の4人世帯、震災前は家賃3万円の
賃貸住宅に入居。住宅が被災し、震災後、5月より東区のみなし
仮設住宅4LDKに入居。期限の2年を迎え、
入居延長を希望しましたが、
賃貸住宅希望の条件である障がい者世帯、
ひとり親世帯、
高齢者世帯ではないため、
入居延長ができないとの決定を受けました。希望地域での物件は見つからず、震災前の家賃より1万5,000円高い家賃、4万5,000円の
賃貸住宅への引っ越しを余儀なくされ、これからの生活が不安とのこと。せめて震災前の家賃で4人の家族が過ごせる間取りを見つけることができるまで入居を認めてほしかったとのことでした。
また、別の世帯のケースです。お話を伺ったのは、小学1年生、4歳、2歳、ゼロ歳と4人の子供を育てながら、震災の苦難を乗り越えようと毎日過ごされているお母さんでした。7月に期限を迎え、
入居延長を希望するも、所得証明の提出を要請されている段階。市の担当者からは、月の所得が20万円以下なら
入居延長は可能と聞いた。
公営住宅ならば延長ができると言われたけれども、一番広くて3DK、6畳、4畳半、4畳半で子供の勉強机も置くことができないこと、小さい子供が泣くなど
近所トラブルも心配で、
公営住宅は希望できないということでした。延長ができないことも考え、現在子供が通う校区内の物件で
民間賃貸住宅を探したけれども、もとの住まいより3万円から4万円高い物件しか見つからなかった。夫の仕事はとび職であり、天候などで収入の偏りもあり、少ないときで20万円いかない月もあった。また、社会保険ではなく、国保料の月5万円、市民税4万円の支払いも大きな負担で、仮設退去後の生活の見通しが立たなくて、とても不安だとのことでした。上のお子さんは、ことし小学校1年生に上がったばかりで、通学区での物件が見つからなければ転校しなくてはならない。できれば今通っている校区で物件を探したいが、見つからない。今の収入で以前より3万円も4万円も高い
賃貸住宅では、生活が成り立たず不安。せめて希望する地域で子供4人とともに今後も住むことができる間取りで、震災前の家賃並みで暮らせる物件が見つかるまで入居を延長してほしいとのお話でした。
今回、県が
入居延長に当たって設けた条件は、以下の8つです。
まず、自宅再建では、契約した建築業者から示された工期などの関係で
仮設住宅の
入居期限内に自宅を再建できない。公共事業などに日数がかかり、
入居期限内に自宅が再建できない。そして、民間住宅での再建では、健康悪化などにより1階の物件または
エレベーターつきの物件を探しているが、見つからない。
高齢者世帯、障がい者世帯、
ひとり親世帯などで
公営住宅に入居する場合の収入基準に該当し、現在の物件より家賃の安い物件を探しているが、見つからないために、
入居期限内に退去できない。高齢者などで、かつ保証人となる人がいない場合で保証人を必要としない物件を探しているが、見つからないため、
仮設住宅の
供与期間内に退去ができない。そして、現在は被災時の市町村から他の市町村に転居している場合で、
仮設住宅の
供与期間内に退去できない場合。最後に、
公営住宅による再建では、
災害公営住宅に入居したいが、
災害公営住宅の工期の関係から、
仮設住宅の
供与期間内に退去できない。既存の
公営住宅に入居したいが、
公営住宅の補修などの工期の関係等から、
仮設住宅の
供与期間内に退去できないというものです。
東日本大震災の被災地で、最初の1年延長に条件を設けた例はありません。宮城県仙台市では、2年の入居期間を無条件で計3年間延長し、再延長に初めて条件を設けたのは入居6年目に至ってからです。
そもそも、この条件についても、法令上の根拠は存在しません。国の
災害対策特別委員会でも、政府は入居期間の延長の条件に関する法令の定めはないとはっきり答弁していますし、4月に行った
熊本地震に関する国への要望の中でも、内閣府は
入居延長に際し条件をつけるような指導を県に対して行っていないと明言しています。何ら根拠のない条件のもと、退去を強要され、一方で、被災者は
不服申し立てすらできません。
そこで、市長にお尋ねいたします。
国への要望でも、内閣府が述べたように、もともと
入居期限の延長に期限をつける必要はなかったわけで、市として、今後条件をつけずに
入居期限を延長できるように国、県へ要望すべきではないでしょうか。
〔
大西一史市長 登壇〕
◎
大西一史 市長
仮設住宅の
供与期間の延長について、液状化等による宅地復旧に時間を要することや、
災害公営住宅の完成時期の関係等から、被災者の方々の状況に応じた柔軟な対応をいただくよう、県を通じ国へ求めてきたところでございます。
これを受け、一定の要件のもと、最長1年間の延長が認められたということは、住まいの再建が難しい方や高齢者や障がい者世帯等の配慮が必要な方について幅広く延長が可能になったことと考えておりまして、被災地の実情を国に御理解いただいたものと認識しております。
本市といたしましては、引き続き、被災者の方々の一日も早い住まいの再建を目指し、各世帯の事情に寄り添った、きめ細かで効果的な支援を行うため、国、県へ要望してまいりたいと考えております。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 市政だより3月号によれば、大西市長は、大学生とのドンドン語ろうの場で、学生から、市長の考える復興の終着点はどのようなものですかと問われた際に、
仮設住宅にお住まいなどの方々が、恒久的な住まいで落ち着いた生活ができるようになることが、最低限必要なことだと考えていますと明言されています。しかし、1割もの人が延長を認められなかったということは、まさに市長が言う最低限必要な支援を絶たれる人たちがここにいるということではないでしょうか。
先月、市民団体の皆さんと行った市への申し入れの中で、市からは、退去された方は納得いただいた上で退去されているとの説明がありましたが、実際に退去された方からは、決して納得したわけではない、条件が出された時点で、その条件を押しつけられているのが現状。諦めて出ていったというのが本音のところだと話されていました。
市長は、先ほど幅広く延長が可能になったと答弁されましたが、
東日本大震災では無条件で、当然のこととして延長が認められています。しかも、国、内閣府は、
入居延長に条件をつけることを指導していないと言っているわけです。こうした根拠のない条件をつけて、1割もの人たちの
入居延長を認めないというのは、被災者の切り捨てにほかなりません。申請した人全てが延長できるように、国、県にしっかりと要望していくと同時に、市としても、国、県で決めたことだからというのではなく、もっと主体的に取り組まれることを求めます。
次の質問に移ります。
次に、
医療費減免の復活について伺います。
昨年9月末で医療費の減免制度が終了しました。制度終了後、
県保険医協会が行った医師への
アンケートでは、46%の医師が受診抑制があると回答しました。市の調査でも、
減免打ち切り後、
レセプト件数が1割減少していることが明らかになりました。
市議団が行った
アンケートでも、
減免打ち切りで受診抑制があったとの声が多数寄せられていました。直接お話を伺うと、大規模半壊で家を建てかえ、蓄えのあらかたを使った。今後さまざまな保険料や
固定資産税を払っていけるのか、とても心配。持病があるが、難病で医療費も高額。医療費の減免が終わってからは従来どおりの受診はできていない。体のことで大切だとは思うけれども、どうしても後回しにせざるを得ないと話されていました。
また、ある方は、地震により体調が悪化し、長らく療養していましたが、昨年10月、いよいよ手術を受けざるを得なくなりました。一番費用がかかった手術とその後の入院費が、
減免制度打ち切りのために、自己負担として重くのしかかってしまったとのことでした。
熊本県が昨年7月、みなし
仮設住宅などに住む被災者を対象に実施し、1万2,000人から回答が寄せられた調査では、震災による被災者への深刻な健康被害の実態が浮き彫りになっています。運動量が減ったとする人が38.9%、食生活が変化したは50.8%、過去1年のうちに健康診断をしなかった人は42.2%に上りました。健康診断をしなかったという人は、同じ時期に全件を対象に実施した同様の調査の結果の24%を大きく上回ります。余り眠れなくなったという人は33.4%で、同じように全件調査の約3倍に上り、わけても50代、60代の女性では4割を超えるという深刻な状況です。被災者は、医療機関にかかることを望んでいるし、健診の重要性もわかっているが、先の生活のための貯蓄や住まいの再建を優先させるために、受診を抑制している状況があります。
東日本大震災では、岩手県下の全ての市町村が、発災から6年以上たった今でも、一般会計からの繰り入れで
医療費減免を続けています。減免については、自治体が行う意思を示せば、国は8割を補助するとしています。要は、残りの2割を市が負担するかどうかにかかっています。
熊本地震の特徴として、直接地震が原因で亡くなられた人よりも、その後の
震災関連死が圧倒的に多いことが挙げられます。今現在、その数を見ても、震災直接死50人に対して
災害関連死は209人に上ります。未曽有の大地震でせっかく助かった命が、その後の体調悪化などが原因となり、亡くなられてしまうというのは余りにも痛ましいことです。
医療費の減免復活については、これまでの議会でも繰り返し質問してまいりました。その都度、市長からは、国や県からの
財政支援を行わなくなったため、県下の自治体が足並みをそろえてやめた、また一部
負担金免除措置の再開には国保料の引き上げや一般会計の繰り入れの増額が必要となり、再開は困難という答弁がなされてきました。
そこで、市長にお尋ねします。
国、県からの
財政支援がなくなったからとの理由ですが、しかし、決して支援がなくなったわけではなく、国が8割も補助してくれるわけです。岩手県では、自治体の判断で2018年度、ことし1年間、さらに
医療費減免の継続が決定されています。熊本でも、被災者の状況を踏まえ、市長の判断で医療費の減免を再開すべきと考えますが、いかがでしょうか。
〔
大西一史市長 登壇〕
◎
大西一史 市長
医療費減免についてお答えいたします。
医療費の一部
負担金免除措置等につきましては、国、県及び熊本県
後期高齢者医療広域連合からも特別な
財政支援が終了したことから、県内全
市町村保険者と同様に平成29年9月をもって終了と判断したものでございます。
本市独自の一部
負担金免除措置等の実施は、国が8割補助を行ったとしても、本市が2割を負担いたしますことから、
国民健康保険料率の引き上げや一般会計からの繰り入れが必要となりまして、一部
負担金免除要件に該当しない国保被保険者や国保被保険者以外の市民も含めて広く負担していただくこととなります。このため、一部
負担金免除措置の実施は困難であると考えております。
今後も引き続き、被災被保険者の個々の状況を踏まえ、丁寧な相談対応を行うなど、被災被保険者に寄り添った支援を行ってまいりたいと考えております。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 今の御答弁ですが、医療費の減免を行えば
国民健康保険料の引き上げが必要になるなどということを引き合いに出して、減免ができない理由にすることは、間違っていると言わざるを得ません。生活再建は、震災後、悪化した体調をもとに戻し、健康な体が担保されてこそです。被災者の置かれた状況を考えるならば、市として、医療機関と連携し、被災者の健康状態の実態把握に努めるとともに、
医療費減免の再開を早急に行うことを強く求めます。
次に、
罹災証明申請の
受け付け延長についてお尋ねします。
罹災証明の
申請受け付けが本年5月末で打ち切られました。しかし、打ち切りの直前まで、申請のために役所を訪れる人が後を絶ちませんでした。
市議団が行った
アンケートでも、
罹災証明を申請していないという声が寄せられました。すぐにお訪ねして被災状況を調査すると、壁が落ちているなど、かなりひどい被害でした。すぐに申請の手続を行い、罹災判定の結果は半壊でした。各種支援の手続を行い、さまざまな支援、経費の還付を受けることができる見込みとなっています。申請ができなかった理由を聞くと、高齢で地震後ずっと体調が悪く、申請ができないままにいたとのことでした。やむを得ない事情がある場合にのみということで、本年5月末までの
申請受け付け延長を行ってきたわけですが、それも終了しました。行政が想定する以上に、さまざまな事情で申請していない、できていない人がいることが想定されます。
昨年3月に、通常の
罹災証明の
申請受け付けが終了してから、本年度の4月までの間、新たに申請があったのが9,637件でした。うち、何らかの
公的支援が受けられる半壊以上の判定が1,296件もありました。申請に来ることができなかった理由としては、入院によりおそくなった、高齢で体調不良により提出できなかった、交通事故や長期出張など、さまざまでした。アパートや借家の場合は、大家さんが申請するものと思っていたという人もあり、中でも、大家さんの誤解から、
賃貸住宅の住人は
罹災証明の申請はできないと言われていたという例もありました。
そこで、お尋ねします。
まず、
申請受け付けを終了する根拠はどこにあるのでしょうか。4月に私たちが行った政府交渉で内閣府は、
罹災証明は自治体の事務であり、国がどうこう言うものではない、判定についても、申請者が納得するまで行ってもらうものであり、期限を切って打ち切るということはないと明言しています。
罹災証明がないということは、それこそ行政が被災者ではないとすることに等しいのではないでしょうか。今後、これまで何らかの理由で
罹災証明が申請できなかった人が出てきた場合、申請の受け付けをされるのかどうかお答えください。関係局長にお尋ねいたします。
〔
池田泰紀健康福祉局長 登壇〕
◎池田泰紀
健康福祉局長 罹災証明申請の受け付けについてお答え申し上げます。
まず、
申請受け付けを終了する根拠についてのお尋ねでございますが、
熊本地震から約2年を経て、住家等の被害が
熊本地震によるものか、その他の災害によるものか、また経年劣化によるものかの判断が困難な状況となりましたことから、終了とさせていただきました。
次に、何らかの理由で
罹災証明の申請ができなかった方に対する対応につきましては、5月31日をもって
申請受け付け終了としたところでありますが、特別な事情がある場合は個別に相談に応じてまいりたいと考えております。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 特別な事情がある場合には、今後も個別に相談に応じていくとのことでした。ぜひとも丁寧な相談に応じていただきますようにお願いいたします。
次に、一部
損壊世帯及び
在宅被災者への支援についてです。
一部
損壊世帯には
公的支援が何らなされておりません。一部損壊の定義は、居住するに支障がない程度の損壊とのことですが、実際には、修理に数十万円から、中には100万円以上もかかる世帯もあるのが現状です。多額の費用のために修理に手が出せず、いまだ壊れた住宅での生活を余儀なくされている、いわゆる
在宅被災者が数多くいる実態があります。
先日、地元紙で一部損壊の
在宅被災者の存在が報道されていました。記事では、半壊以上の世帯に比べて、生活再建や医療面での支援がほとんどなく、情報も届きにくいため追い込まれる一部損壊の被災者の苦しみが紹介されていました。仮設団地に入居することもできず、助けを求めたくても、支援も物資も情報も来ない。あちこちから支援が寄せられる仮設団地の人たちをうらやみ、いっそ家がつぶれてしまえばよかったのにと思うほど追い詰められていたとのことです。
また、記事では、
在宅被災者の支援を続けておられる熊本学園大学の高林教授の談話として、
在宅被災者は明確なカテゴリーがないために、これまで認識されにくかった。被災者として承認されていないという疎外感を感じる人は少なくない。孤立しやすい
在宅被災者は、同じ境遇の人や支援者と集まれる場所をつくる必要があるとの指摘が紹介されていました。記事は、私たち一部損壊の人も同じ被災者だということを伝えたかったと、取材に応じられた方の訴えで締めくくられています。
著しい住宅被害がありながら、修理もできずに住み続けている被災者の実態は深刻です。半壊の住宅に暮らす、ある高齢女性の住宅は、床は傾き、亀裂が入ったままです。地震当時に息子が入院していたため、1人で
仮設住宅に入居することをためらい、
応急修理制度を活用して屋根などを補修しました。しかし、収入は御自身の年金のみで、これ以上自宅を修繕したり、自力でアパートを借りたりする余裕はありません。こうした事例がまだ存在していることをしっかり認識し、事情を考慮した行政の対応が必要です。
また、一部損壊についても、決して被害は軽微なものではありません。しかし、何ら
公的支援制度はなく、
災害救助法の
応急修理制度も使えませんし、
仮設住宅にも入れません。さきに述べました
在宅被災者の、私たち一部損壊も同じ被災者だの言葉が象徴するように、被災者にこのような思いをさせるのは論外です。一部損壊の支援のあり方は、まさに
被災者支援制度の重大な欠陥だと言わざるを得ません。
仮設団地やみなし
仮設住宅では、定期的な見回りでフォローされていますが、
在宅被災者については、制度上でも見回りなどの支援がない状況です。そういう点で、まずは実態の把握が必要です。
そこで、お尋ねいたします。
こうした、今でも壊れた家に住まざるを得ない
在宅被災者の実態について、把握、調査はされていますでしょうか。また、実態把握の調査がなされていなければ、今後調査を行うべきではないでしょうか。
2点目、加えて一部
損壊世帯については、一部の世帯には義援金の配分がなされましたが、全世帯を対象にした
公的支援は一切ありません。また、半壊以上の世帯でも、住まいの再建に足る十分な支援がなく、住宅の修繕が滞っている世帯が多数存在します。一部
損壊世帯を対象にした支援の実施、加えて、住まいの再建に至らず、
在宅被災者として壊れた住宅での生活を余儀なくされている世帯への支援拡充を行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。市長にお尋ねいたします。
〔
大西一史市長 登壇〕
◎
大西一史 市長 被災者の実態調査につきましては、平成28年10月、平成29年6月及び平成30年1月に
罹災証明発行世帯を対象に無作為抽出による2,000人
アンケート調査を実施しておりまして、
在宅被災者を含む被災者の生活再建や住宅再建の状況を把握し、これに基づいて必要な支援を行ってまいりました。
同様の調査につきましては、今年度も定期的に実施することとしておりまして、
在宅被災者を含めた現状及び課題の把握に努めてまいりたいと考えております。
また、一部
損壊世帯を含む
在宅被災者においても、今なお生活や住まいの再建に課題を抱えていらっしゃる世帯については、各区の
総合相談窓口や区ごとに開催いたします
個別相談会の実施などによりまして、個々の事情に応じたきめ細かな対応を図っているところでございます。
さらに、国に対しましても、
生活再建支援金等の拡充について、これまで一部
損壊世帯を含めた対象の拡大や支援金の増額等について要望してきており、これからも強く要望してまいりたいと考えております。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 答弁では、一部
損壊世帯を含む
在宅被災者にも区の相談窓口や
個別相談会で対応しているとのことでしたが、被災者が相談に出向かなくても、自宅の修理もままならず、いまだ壊れた自宅に住まわざるを得ない被災者の実態をしっかりと調査し、国に対して支援の拡充を求めるとともに、県下、他の市町村が行っているような、本市独自の支援制度の創設を改めて求めるものです。
次の質問に移ります。
災害公営住宅の
抜本的拡充についてお尋ねいたします。
市が昨年5月に発表した
被災者向け公営住宅の
入居意向調査によると、
入居希望者は推計で1,295世帯でした。また、提供できる住宅としては、新規に建設する
災害公営住宅が、追加分も含め310戸、市営、県営住宅の
ストック分で1,370戸、計1,680戸が提供可能であり、
入居希望分の住宅数は賄えると試算されています。
しかし、マッチングの問題が今後当然生じてくるでしょう。子供の小学校区に
公営住宅がなく、しかし、転校はさせたくないといったケース、また勤務先の関係や通院している病院の関係など、何よりも住みなれた地域を離れることを行政が強いることはできません。市の意向調査の結果でも、入居を希望する校区に県営、市営住宅がないとする校区が15校区もありました。
そこで、お尋ねいたします。
被災者向け公営住宅の
入居意向調査について、昨年5月に実施されて以来、現状は随分変わってきていると思われます。そこで、現時点での
入居意向調査を再度行い、希望者の把握をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
2点目、また、再調査により新たに把握された現状をもとに、復興住宅の建設戸数を必要数に見合ったものへと拡充すべきではないでしょうか。
3点目、何らかの理由により
民間賃貸住宅を選ばざるを得ない被災者には、
公営住宅並みに家賃の差額を補助する、みなし
災害公営住宅として提供し、
災害公営住宅の拡充を図るべきではないでしょうか。関係局長にお尋ねいたします。
〔
田中隆臣都市建設局長 登壇〕
◎田中隆臣
都市建設局長 災害公営住宅の
抜本的拡充に関し、順次お答えいたします。
議員お尋ねの市営住宅への
入居意向調査については、昨年2月に
災害公営住宅を含む市営住宅の提供戸数の把握を目的として実施したものでございます。
11月には、全ての
仮設住宅入居世帯を対象に住まいの再建に向けた意向確認調査を実施し、その中で、
公営住宅を希望される方については、12月から入居申し込みの受け付けを行っております。
〔議長退席、副議長着席〕
その結果、1,187世帯の申し込みがあり、現在整備中の
災害公営住宅を除く既存の
公営住宅について、本年5月より順次入居の案内を行っている状況です。
次に、
災害公営住宅の整備については、
被災者向け公営住宅の入居申し込みの希望を確認した上で、南区、中央区に合計160戸の追加拡充を決定したものであり、議員御提案の
民間賃貸住宅での補助等については想定しておりません。
今後も、被災者のニーズを細かく把握し、既存ストックや伴走型支援による
民間賃貸住宅のマッチングを丁寧に行いながら、被災者が一日も早く恒久的住まいへ移行していただけるよう対応してまいります。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 市営住宅入居についてのニーズ調査については、昨年2月と11月の2回行われたとのことでした。伴走型支援による
民間賃貸住宅へのマッチングを行っていくとのことでしたが、残念ながら、
民間賃貸住宅での家賃の補助は考えていないとの答弁でした。
市としては、ニーズに足るだけの戸数は準備できているとしても、まだ入居に至らない人たちがたくさん残されている状況もあるので、速やかな入居への対応をお願いするものです。
また、どうしても
災害公営住宅や既存ストック住宅とのミスマッチが生じてくることがあると思います。子供の学校の問題や地域コミュニティあるいは身体的な問題などによって、現状の施策ではカバーできない被災者に対して、
民間賃貸住宅への家賃補助は、全ての被災者が恒久的な住まいの確保のために当然必要となってくると思われます。ぜひ実施していただけますよう強く求めます。
続きまして、福祉の分野についてお尋ねいたします。
まずは、国民健康保険についてです。
本年度より、国民健康保険の県単位化が導入されました。国保会計を県が握ることにより、大きな権限を持つことになります。
本市では、県単位化導入の影響として、1人約4,300円の保険料の値上がりになりました。均等割、平等割の引き上げで低所得世帯ほど負担が重くなりました。
具体的には、所得400万円の40歳未満、夫婦2人世帯で2万7,843円の保険料が引き下げになるのに対して、所得50万円の40歳未満の夫婦と子供2人の4人世帯では、反対に1万5,357円の引き上げとなりました。加えて、所得がない世帯でも、40歳以上、夫婦と子供2人の4人世帯で、何と1万1,310円もの引き上げとなります。
本市の所得階層ごとの国民健康保険の加入者数を見れば、所得200万円以下の世帯が国保加入者全体の88%を占めています。まさに、本市の国保加入者数のほとんどが、そして所得の低い生活困難世帯ほど、ただでさえ政令市一重い国保料であるところに、さらに重い負担を強いられることとなります。これでは、受診はおろか、保険料の納付もままなりません。
国保の財政難は、加入者の貧困化、高齢化が進行する中で、国庫負担を引き上げようとしなかった国の失策により拡大、固定化したものです。だからといって、それを解消するという名目で国保料をさらに引き上げるのでは、制度の構造的な矛盾はさらに深まるばかりです。赤字削減と言うのなら、国保への公費負担、繰り入れを抜本的にふやし、国保料を引き下げることこそ、最大の財政再建策にほかなりません。
仙台市では、子育て世帯の国保料を減免する新たな制度を独自につくりました。18歳までの子供の被保険者均等割の3割を減額する内容で、所得制限はありません。国保条例の減免規定のうち、その他特別の理由があると市長が認めたときを適用し、規則に書き加える形で制度化しました。保険制度の矛盾がある中で、自治体が負担軽減のために創意工夫しているのです。
また、本市では、差し押さえの件数が、預貯金の項目において前年度比の約3倍近くに激増しています。なぜ預貯金差し押さえがふえてきているのでしょうか。年金や児童手当など、本来差し押さえ禁止債権であっても、一旦口座に振り込まれると預金としてみなされ、脱法まがいの差し押さえの事例も出てきています。
また、納付相談をやっている最中であるにもかかわらず、一方で差し押さえが行われたということも起こっています。
そこで、お尋ねいたします。
保険料について、熊本市が政令市の中で一番負担が重いことを考えれば、保険料を引き下げていくことや、仙台市の事例にあるように減免の拡充をしていくべきではないでしょうか。市長にお尋ねします。
2点目、差し押さえについては、高過ぎて払えないという根本問題を解決しないまま、幾ら差し押さえを強化しても、住民の貧困と健康破壊が深刻化するだけです。納付相談をやっている最中であるにもかかわらず、一方で差し押さえが行われるような現状があるところに、今回の制度改正を理由に、機械的な債権徴収強化が図られることを大変懸念するものです。
差し押さえをしないためにも、丁寧な納付相談をしていくことが大切です。納付者一人一人の実情にしっかりと寄り添った相談業務こそ必要だと考えますが、いかがでしょうか。関係局長にお尋ねいたします。
〔
大西一史市長 登壇〕
◎
大西一史 市長
国民健康保険料の引き下げや減免の拡充についてお答えいたします。
国民健康保険制度は、保険料収入と公費によって必要な保険給付費を賄う制度となっておりまして、平成30年度に実施された国保制度改革に伴いまして、熊本県が示す標準保険料率を参考に、本市の保険料を決定しているところです。
本市における医療費は、他の指定都市と比較して高いことから、現時点では保険料の引き下げは困難でございますが、引き続き、医療費適正化に向けた取り組みや収納率向上対策の強化などに努めてまいりたいと考えております。
次に、減免の拡充につきましては、本市独自の減免制度として、被保険者が3名以上で基準総所得が100万円以下の世帯については、保険料を1割減免しておりまして、低所得者世帯及び多子世帯を含めた子育て世帯への支援として取り組んでいるところでございます。
今後も、現行の減免制度の周知に努めてまいりたいと考えております。
〔
池田泰紀健康福祉局長 登壇〕
◎池田泰紀
健康福祉局長 私からは、
国民健康保険料の差し押さえや納付相談業務についてお答え申し上げます。
保険料滞納に伴います差し押さえにつきましては、財産調査の結果を精査し、納付能力があるにもかかわらず滞納している世帯について、電話や訪問、催告書の発送等により折衝を試み、それでも納付や連絡等がない方に対しまして、差し押さえ禁止財産を除く財産を対象に行っておりまして、機械的な差し押さえは行っておりません。
なお、納付相談の最中にありましても、状況によっては差し押さえを行うこととしており、このことにつきましては、当初の納付相談時に本人へ十分に説明を行っているところでございます。
今後も、公正公平な保険料負担を図るため、引き続き必要な行政処分は実施していかなければならないと考えております。
また、納付相談などの対応につきましては、滞納した一人一人の実情をお伺いし、生活困窮者等に対しましては、分割納付など、個々の状況を踏まえた丁寧な対応を行っているところでございます。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 答弁の中で、医療費の適正化、収納率向上対策の強化という文言がありましたが、適正化とは、ともすれば医療費の抑制を意味する形で用いられることがあります。
また、収納率向上の強化という点でも、納付相談中であっても、状況によっては差し押さえを行うと明言されていますので、これが強権的な差し押さえにつながりかねないのではないかと大いに懸念するところです。
本市の負担の限界を超えた保険料の問題は、国の制度の矛盾はありますが、何よりも、大西市長になって、赤字補填のための一般会計からの繰り入れが大幅に減額されたことにあります。前市長の時代の繰入額20億円から、本年度予算では7億3,000万円まで減額されました。繰入額を減らして、保険料の負担の限界を超える政令市一高い額にまで保険料を引き上げ、累積赤字を増大させた大西市長の責任は大変重いと言わざるを得ません。
今求められているのは、本市の国民健康保険が皆保険制度として、被保険者の立場に立った運用がなされること、保険料の引き上げでなく、赤字補填額の抜本的な拡充を行うことです。そのことを市長に指摘いたしまして、次の質問に移ります。
次に、介護保険制度についてです。
介護保険制度は、介護を家族任せでなく社会全体で支えるとうたい、2000年にスタートしました。しかし、制度開始から18年目の今、安心の介護保障どころか、国によるたび重なる制度改悪によって、市民には大幅な負担増と給付削減が押しつけられています。
家族の介護のために仕事をやめざるを得ない介護離職は、毎年10万人以上に上る中、2015年の改定では、特別養護老人ホームの入居要件を原則要介護3以上とし、年間の合計所得160万円以上の方は介護の利用料が2倍の2割負担に引き上げられるなど、介護が必要な人が十分な介護を受けることができない仕組みに改編されてきました。
高過ぎる保険料を容赦なく年金から天引きし、いざ介護サービスを受けようと思っても受けられない。こんなひどい制度はありません。第1号被保険者のうち、実際に何らかのサービスが受けられているのは全体のわずか17%で、残りの皆さんは保険料の掛け捨て状態です。
こうした相次ぐ給付削減は、介護サービスの利用がふえ、介護給付などが増大すれば、比例して保険料が限りなくふえるという、保険給付と保険料負担の連動という矛盾のもと進められています。これは、介護保険財政を公費50%、介護保険料で50%という割合で支えているという介護保険財政の構造的要因が大きいと言えます。
高齢者がふえ、介護ニーズが高まる中で、改定のたびに介護保険料は上がり続けています。本市の保険料の平均基準額は、制度が始まった第1期は3,250円だったものが、この18年で6,760円と2倍以上になっています。今後、さらなる介護サービスの給付削減をしても、2025年度の第9期には9,102円になるとの推計です。今回、第7期の保険料改定のもと、熊本県は保険料の伸び率12.1%と、全国で最も大きなものとなり、その熊本県の中でも、本市も10%を超える伸び率のもと、政令市においては第2位の高い保険料額となりました。
介護保険の生みの親とも言われる元厚生労働省老健局長の堤修三氏でさえ、保険料を納めた人には平等に給付を行うのが保険制度の大前提だが、給付抑制路線では、この前提が崩れつつあるとし、団塊世代にとって介護保険は国家的詐欺になりつつあるように思えてならないと言っています。
介護保険制度は、サービス利用がふえれば、直ちに保険料の負担増にはね返るという根本矛盾を抱えている現状のもと、保険料の高騰を抑えるためには、国の負担割合を大幅に引き上げることが必要です。
一方で、他都市では、保険料減額のために一般会計からの繰り入れを行っている事例があります。2016年3月の会計検査院の報告では、11市町が法定外繰り入れを行っているとのことです。
また、介護を提供する事業者や働く人たちには、報酬削減で経営が成り立たないと悲鳴が上がっています。総合事業への移行により、訪問介護から手を引く事業者がふえています。
そこでお尋ねします。
国は、保険料軽減のための一般会計繰り入れはできないとしていますが、先ほど紹介したように、他都市では一般会計からの繰り入れを行っている事例があります。保険料負担の軽減のために、市としても一般財源からの繰り入れを行うべきではないでしょうか。
2点目、今や介護保険は既に破綻状態で、現時点でも負担の限界を超えた保険料を強いられている現状があります。この現状を打開するためにも、国に対して、現行の公費負担20%を大幅に引き上げるよう求めていくべきです。
以上、市長にお尋ねいたします。
〔
大西一史市長 登壇〕
◎
大西一史 市長 保険料軽減のための一般会計からの繰り入れについてお答えいたします。
介護保険給付の費用の負担割合は、介護保険法において国が20%、県が12.5%、市町村が12.5%、国調整交付金が5%、保険料から50%と定められているところでございます。
法定負担割合を超えて一般会計からの繰り入れを行うことは、本来、第1号被保険者の保険料で負担することとなる費用について、制度上想定されていない市町村の一般財源を充てることになることから、費用負担の公平性を損なうおそれがあるものとして、厚生労働省は適当でないとしております。
また、平成28年3月の会計検査院の報告においても、厚生労働省の見解に基づいて、そのように報告をされております。
以上のことから、介護保険制度の趣旨を踏まえますと、法定負担割合を超える一般会計からの繰り入れは適当ではないと考えます。
次に、国庫負担20%の引き上げについてお答えいたします。
介護保険料につきましては、高齢化及び給付費の増大に伴い、全国的に年々増加傾向にありますことから、大都市介護保険担当課長会議においても、介護給付費の財源に占める国の負担割合を引き上げることにより、第1号被保険者の保険料の高騰を抑制する
財政支援措置を講じることを国へ要望しているところでございます。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 自治体が介護保険料軽減のために一般財源投入を行うことができないと断じるのは誤りです。介護保険法令上は、法定分を超える一般財源からの繰り入れを禁じる規定や制裁措置は一切ありません。このことは、厚労省の説明や国会答弁でも明らかです。
介護保険制度は、そもそも自治事務ですので、制度運用については、住民の立場に立った運用がなされるべきです。そういう考え方が市長には欠けていると思います。
共産党市議団は、どんどん上がり続け、もはや負担の限界となった保険料については、自治体の裁量で負担軽減のための繰り入れを行い、保険料を引き下げていかれることを強く要望いたします。
続いて、教育の分野についてお尋ねします。
まずは、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、心のサポート相談員の配置についてです。
今回、教育の分野の質問をするに当たって、現場の先生方からいろいろとお話を伺いました。その中で多く聞かれたのが、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、心のサポート相談員が圧倒的に足りないということでした。全校に常時配置できるような体制が現場の先生方から強く求められています。
ある小学校では、震災後、スクールカウンセラーの重点校に指定され、その配置の頻度が上がったそうですが、それでも月に2回程度の配置だそうです。一方で、スクールカウンセラーの重点校になったために、心のサポート相談員が廃止されてしまいました。
サポート相談員は、専門資格を持ってはおられませんが、一方で、児童の話をしっかり聞いてあげるという役割があり、また週に一、二回という頻度で配置されていたので、継続して児童に寄り添うことができるという強みもありました。児童の中には、担任などになかなか話をすることができずにいる子供が、サポート相談員なら話ができると、相談員の配置日を待ちわびている児童もいたとのことです。定期的に来られるので、職員間とも情報の共有ができ、信頼関係も築けていました。廃止となった今、残りの先生方でどうにか対応しているけれども、とても大変、ぜひ復活させてほしいとのお話でした。
現在、スクールカウンセラーの配置状況は、
熊本地震対応ということで、国から全活動時間の9,650時間のうち、半分近い4,310時間分の補助が出ています。それでも、小学校では各校に月2回くらいの配置しかできず、まだまだ足りない現状があります。4月に出された県、市の教育委員会の発表では、この2月から3月に行った調査において、震災で心に傷を受け、スクールカウンセラーのケアが必要な児童・生徒が1,700人台おり、依然高い水準であることが示されました。発災から2年を経て、いまだ心の傷の癒えない子供たちが多くいます。
そこでお尋ねします。
現在、
熊本地震対応で、国よりスクールカウンセラーの配置の補助がなされていますが、この措置はいつまで行われるのでしょうか。いまだケアの必要な児童・生徒が多くいる中、引き続きの措置はもとより、配置拡充のためのさらなる補助を国に求めていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。
2点目、心のサポート相談員については、学校からのニーズが高い現状があります。心のサポート相談員については、全校配置に向け、国への補助率の引き上げを求めることとあわせて、市としても予算の拡充など、真剣に検討すべきではないでしょうか。教育長にお尋ねいたします。
〔遠藤洋路教育長 登壇〕
◎遠藤洋路 教育長 スクールカウンセラー等の国庫補助の期限及び配置の
抜本的拡充についてお答えいたします。
熊本地震に伴うスクールカウンセラーの配置に係る国庫補助については、いつまで措置されるかは未定となっております。
しかしながら、
熊本地震に伴う心のケアが必要な児童・生徒は依然として多いことから、国に対し、引き続き長期的な
財政支援を要望してまいります。
また、今年度2つの中学校区でスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーを週3日配置するモデル的な取り組みを行っているところであり、その成果を踏まえ、今後の配置を検討してまいります。
次に、心のサポート相談員の全校配置に向けた予算の拡充についてお答えいたします。
今年度は40名の心のサポート相談員を雇用し、1つの学校に週2回、1回当たり3時間の体制で配置しています。
心のサポート相談員については、スクールカウンセラーとは別に、学校からのニーズも高く、必要に応じて配置できるよう取り組んでまいります。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 今回、モデル事業でスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置拡充がなされることは評価すべきことです。
まだまだ高い水準で心のケアを必要とする子供たちが多い現状です。今後も、モデル事業ではなく、正式な配置拡充となるよう、国への長期的な
財政支援の要望をお願いいたします。
心のサポート相談員については、現場の先生方から高いニーズがあります。本年1月に行われたタウンミーティングでも、現職の相談員の方から、震災対応で現場の先生方も親も大変忙しい。だからこそ、自分たちのような心のサポート相談員が必要ではないかとの提案がなされております。ぜひ全校配置への取り組みをお願いいたします。
続きまして、教職員の働き方についてお尋ねいたします。
学校の教職員の働き方について、本市では2018年3月に教員の時間創造プログラムが策定されました。
プログラムの冒頭において、目標の項目では本市が行った調査が示されており、平成29年4月から30年2月までの期間で正規職員の勤務時間外の在校時間が、いわゆる過労死ラインとされる1カ月80時間を超えた教職員が793人、全教職員の19.5%に上ったとし、教職員の長時間労働の実態が示されています。
また、巻末に添えられた勤務実態
アンケートでは、過酷な勤務実態の中で、教員の子供たちの指導への時間の余裕がなくなっていることが読み取れます。先生方の1日の休憩時間でも、小学校は16分、中学校で19分しかとれていない結果が出ており、1日の勤務時間が11時間近い中で、ほとんど休憩がとれていない状況が恒常化しています。多くの教職員の皆さんは、非常に厳しいもとで、何とか子供たちと向き合って、よい授業がしたいということで、時間の確保に苦労している実態です。
国は、昭和33年の義務標準法制定の折、教職員の定数を算定するに当たっては、1時間の授業については、1時間程度の準備の必要がある、つまり授業時間と同等の時間を要するとの考えのもとに、教員の定数積算の根拠としています。この方針は、現在も変わっていません。これに照らして、今回の市の
アンケート結果を見ますと、小学校の授業時間3時間48分に対して、授業準備は1時間17分、わずか3分の1しかありません。このことからも、現在の教員の定数が全く足りていないことがわかります。
現場の先生方からは、とにかくマンパワーが足りない、そのために市としてしっかり国に要望してほしい。授業の準備をする時間を在校時間内にとれたためしがない。ほかの校務で手いっぱいで準備の時間はとれない。ICT活用導入などで時間がない中、新しいことを覚えなければならないことの負担が重い。英語や道徳の教科化で、教材研究もふえて大変。時間短縮などの工夫だけでは、もうとても乗り切れない。現場の教員はとても疲弊しているなどの声が上がっています。
ある小学校の教頭先生は、自分の1日の仕事の80%は、こうした先生方の声を受け、とにかく効率的に進められるように、パズルのピースを動かすように先生方の業務の割り振りに追われているのが現状。プリント作成の苦手な先生がいたら、その分を得意な先生にお願いしたりするなど、細かい事務作業の繰り返しですと訴えておられました。
また、今回策定されたプログラムの中身についての感想として、教員の時間創造と銘打たれているとおり、マンパワーをふやすより、現体制でいかに仕事を減らすか、効率化を図るかに主眼が置かれている。一方で、それができない現実が厳然としてあり、どこまで実現できるかが見通せない。特に、今後の検討課題として提案されている児童・生徒の休み時間の対応、校内清掃時の対応に至っては、全ての教員が毎日、児童・生徒の休み時間、校内清掃に対応するのではなく、地域ボランティアなどに任せて教職員の負担を軽減するとの提案に、とても現実的な提案とは思えず、果たして現場の教職員でこんな発想を誰がするのだろうかと驚かれていました。
そこでお尋ねいたします。
まず、国の教職員の定数積算の基準、1時間の授業については1時間程度の準備の必要がある、授業時間と同等の準備時間を要するとするものと、現状との乖離、その実態について御説明ください。
2点目、このプログラムの策定に当たってのプロジェクトメンバー全22名のうち、現場の教諭は、小学校、中学校それぞれ1名しか入っていません。現場の教諭の声や保護者の声をどれだけ聞かれたのでしょうか。
3点目、プログラムでは、さまざまな取り組み方針、検討課題が示されています。仕事の総量を減らす、マンパワーの充実、教員の休憩時間の確保、持ち帰り業務の削減など、そして児童・生徒への休み時間における対応の負担軽減や校内清掃指導の民間委託の検討に至るまで言及されています。しかし、こうした取り組み、課題を解決するためには、抜本的な人員拡充が不可欠です。市が責任を持って予算を確保し、教員の増員を図るべきではないでしょうか。
今、教育現場では非正規教員がふえている現状があります。本市の教員の非正規率は、小中学校合わせて、20ある政令市の中でも第3位という大変高いものです。職員の非正規率の改善を進めて、子供としっかり向き合っていく条件づくりを進めるべきです。
以上、教育長にお尋ねいたします。
〔遠藤洋路教育長 登壇〕
◎遠藤洋路 教育長 教職員の働き方改革について4点お答えいたします。
まず、定数積算の基準と現状の乖離についてですが、教職員の定数については、昭和33年のいわゆる義務標準法制定当時、1時間の授業に対し1時間程度の準備時間が必要であるという考え方で積算をされております。
質の高い、きめ細かな指導を行う上で、授業準備は重要であり、その時間を確保することは不可欠ですが、本市の
アンケート結果によれば、確保できた授業準備の時間数は3分の1程度となっております。
昭和33年と比べて、ICTの普及などによって授業準備に要する作業の省力化・効率化が図られているとは考えますが、義務標準法制定当時の考え方からすると、本市の実態として、授業準備の時間は不足している状況にあります。
そこで、本年3月、学校改革!教員の時間創造プログラムを策定し、仕事の総量の削減、マンパワーの充実、時間を意識した働き方の徹底を取り組み方針としております。
今後、このプログラムに掲げる具体的な取り組みを着実に推進することにより、教職員が授業や授業準備等に集中し、ゆとりを持って子供と向き合う時間を拡充してまいります。
あわせて、学校における働き方改革の推進に向け、専科教員や加配定数の確保等について、国に対して要望してまいります。
2点目、プログラムの策定における現場の教職員及び保護者の意見反映についてお答えします。
学校現場等のさまざまな職種の代表者によるプロジェクト会議を昨年10月に立ち上げて、プログラムの策定を行いました。
その際、学校現場の意見、要望を広く把握することが重要なことから、プログラムの対象となる全教職員等に対し、時間創造のタネというタイトルで、働き方に関する要望や意見をネット上の
アンケートシステムで募ったところ、授業のほか、教頭業務の補佐、プリント作成補助等、さまざまな業務を担当する教員の配置、SSWの拡充、部活動のあり方や外部指導者の導入など、480件を超える声が寄せられております。私も全て読んでいます。これらの提案や意見をもとに、半年間のうちに十分な議論を重ねて策定したものです。
3点目、教職員の増員についてお答えいたします。
プログラムの取り組み方針の一つに、マンパワーの充実を掲げており、再任用短時間教員の活用や小学校における外国語専科教員の配置など、より教育効果を高めながら、効率化も進めていく計画としております。
このうち、外国語専科教員については、既に本年4月から10名を配置しており、その効果を検証しつつ、国の加配を活用して拡充を図ります。
また、再任用短時間教員については、学校現場のニーズに応じた最大の効果が出るよう、職務内容の明確化などの課題もあるため、今後さらに具体的な制度設計に向けて検討を進めます。
最後、4点目ですが、非正規教員の処遇改善についてです。
教員の定員に対する臨時的任用教員の割合、いわゆる欠員率については重要な課題と考え、これまでも改善に取り組んでおります。
平成30年度においては、小中学校合わせて約8.7%となっており、最も欠員率が高かった平成27年度は約12.1%であったため、一定の改善は進んできた状況です。
平成31年度は、今年度よりも新規採用数をふやすこととしており、小中学校教諭として145名、全校種・職種合わせて165名の採用を予定しています。
これにより欠員率はさらに改善が進む見込みですが、今後の退職者数の推移を踏まえ、次年度以降も一定数の新規採用者数を維持し、適正な教員配置に取り組んでまいります。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 現場の先生方が何よりも求めておられるのは、マンパワーの充実です。その点で、外国語専科教員の配置の実施や再任用短時間教員の検討はぜひ拡充していただきたいと思います。
また、依然高い水準にある本市の非正規率については、新規採用の増員など、さらなる改善を図っていただきたいと思います。先生方が雇用の任期期限を心配することなく、地に足をつけ、子供たちとしっかり向き合う環境の確保に努めていただきたいと思います。
続きまして、学校給食の無償化についてお尋ねいたします。
給食費の無償化については、前回の質問でも取り上げました。子供にとって一番普遍的な制度である学校という場においては、選別的な救済ではなく、みんなが等しく支援が受けられる制度にすることが必要である。そして、学校給食は、学校給食法で食育として教育課程の中に位置づけられており、その意味で、教育課程の中にある以上、義務教育においては無償提供すべきというものでした。
これについて教育長からは、学校給食法の規定により、設備費、人件費は学校負担、食材費は保護者の負担となっており、無償化の予定はないとの答弁でした。
しかし、この件については、文科省の見解でも、給食法の規定はあくまでも負担のあり方を示したものであり、自治体が補助金を出すことにより給食費を実質無償化にすることを禁止するものではないということが示されています。
加えて、教育長からは、経済的に援助が必要な世帯には生活保護費や就学援助で給食費を全額補助しているので、問題はないとの見解も前の質問で述べられましたが、現在、生活保護費の捕捉率はわずか2割程度とされており、8割もの人たちが、貧困でありながら生活保護を受けられない実態があります。
熊本市が行った調査でも、本市の子供の貧困率が14.0%との結果が出ており、OECD加盟国の水準と比べても高い貧困率にあります。子供の貧困自治体熊本市、それが現状です。
平成32年度には、本市でも学校給食費の公会計化が予定されています。公会計化は、学校給食の実施主体である自治体が財政面でも責任を負うという、法律にのっとった本来あるべき姿を具現化したものです。学校給食費の無償化とは、給食費を全額公費で負担することですので、公会計化は給食費無償化への第一歩と言えます。
給食費の公会計化に当たっては、債権管理強化のためといった方向ではなく、ぜひ給食費無償化への道筋として整備していただきますよう求めるものです。
そこでお尋ねいたします。
このような状況を鑑み、子供の貧困対策という側面と、憲法が定める、義務教育は、これを無償とする、その理念に立ち返り、食育として教育課程の中に位置づけられている学校給食は、義務教育においては無償提供とすべきであると改めて教育長に求めますが、いかがでしょうか。
〔遠藤洋路教育長 登壇〕
◎遠藤洋路 教育長 学校給食費の無償化についてお答えいたします。
学校給食は、教育課程の中で食育として位置づけられており、義務教育においては無償提供すべきであるとの御指摘でしたが、学校給食は食育の生きた教材であるという役割と同時に、適切な栄養摂取による健康の保持増進という役割も担っておりまして、食材費に係る経費のみ、保護者に負担をいただいております。
今後も、学校給食を通して行政と保護者が協力して子供たちの成長を支えていくことが重要だと考えており、現行制度を維持し、安全で安心な学校給食の提供に努めてまいります。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 学校給食費の無償化については、ぜひとも子供の貧困対策として捉えていただきたいと思います。例えば、子供の医療費については、命にかかわることだからと多くの方が助成制度に賛成されると思います。給食についても、子供の貧困に対して、食事という現物を支給する制度として有効です。
現代社会においても、なお経済的理由によって生じる子供の食生活の格差は大きく、学校給食にはその格差を縮小する機能があります。給食費無償化は、子供を選別することなく、全ての子供の食のセーフティネットを確保する手段として、学校をプラットホームとした総合的な子供の貧困対策の展開を掲げる子供の貧困対策に関する大綱にも合致するものです。せめて第2子、第3子への補助からでも取り組みを始めるべきです。
続いて、子供食堂についてお尋ねいたします。
子供食堂が現在、全国2,286カ所で開かれていることが、運営者団体の調査で明らかになりました。2年前の調査では300カ所程度でしたので、短期間で7倍もの増加となっています。
背景には、これまで見えにくいとされてきた子供の貧困が具体的に身近で可視化され、例えば給食以外にほとんど食事がとれていない、部活動の遠征費が出せない、制服が買えないなど、その解決のために地域で自発的に行動を起こす人がふえてきたことがあるのではないでしょうか。
また、子供食堂は、貧困対策だけではなく、地域での交流の場として機能している側面も、この間、取り組みが広がってきた要因だと思われます。
しかし、運営面では、運営費用、食材調達、会場の確保など、苦労が多いのも現状です。
ある子供食堂の運営者は、コミセンを借りてやっているけれども、昼食の提供をしているので、調理室と会議室のそれぞれを午前と午後の2こまずつ借りなければならない。地域の団体でなく個人でやっているので、使用料が1日3,000円以上もかかる。また、使用料の面だけではなく、既存の団体が既に年間スケジュールとしてコミセンの各部屋を押さえているので、なかなか部屋をとることができない。地域住民のサークルや団体の会議であるなら、まだ仕方ないとも思うが、営利目的の民間業者までもがすき間なく入っているので、せめて非営利で行っている子供食堂については、何らかの配慮があればと訴えられていました。
また、食材の調達の面では、従来のフードバンクと並んで、家庭に余った食材を持ち寄って提供するフードドライブという取り組みも広がってきています。民間が主流の取り組みではありますが、千葉県、東京都世田谷区、調布市、名古屋市など、自治体主導の動きも広がってきています。
自治体の取り組みでは、食品ロスの削減という環境面に主眼が置かれています。本市でも、環境審議会などで食品ロスの削減への意見がたびたび出されています。
大阪府堺市では、このフードドライブを子供食堂に連携させ実施しています。堺市は、平成29年7月、さかい子ども食堂ネットワークを開設し、子供食堂の運営に必要な情報提供や研修会の実施、開設準備の経費の補助などを行ってきました。その流れの中で、市は社協と共同して市庁舎の一部を開放、子供食堂への取り組みの一環としてフードドライブを行っています。
そこで、お尋ねいたします。
まず、会場の確保、とりわけコミセンなどの公共施設の使用については、地域の自治会やコミセンの運営委員会などへ行政として働きかけなど、運営者と地域の連携構築を図るべきではないでしょうか。
2点目、また、子供食堂の取り組みについては、会場の確保や、例に挙げたフードドライブの取り組みを初めとする食材調達など、さまざまな課題や要望に対しては、担当部局単体だけでなく、関係局と連携した横断的、総合的な支援の取り組みが求められると思いますが、いかがでしょうか。関係局長にお尋ねいたします。
〔萱野晃市民局長 登壇〕
◎萱野晃 市民局長 私からは、子供食堂の会場確保に関するお尋ねについてお答えいたします。
地域コミュニティセンターは、各地域団体等で構成された運営委員会が指定管理者となり、市からの指定管理料と利用料金収入で施設の管理運営を行っております。
また、施設の予約や利用料金の減免につきましては、センターの設置条例において、地域づくり活動や地域福祉活動の促進に関する利用について配慮できるとしており、各運営委員会の判断により対応しているところでございます。
議員御提案の運営委員会等への働きかけにつきましては、地域福祉活動など、地域コミュニティセンターの設置目的に合致し、公共性の高い事業の取り扱いにつきまして、改めて管理運営マニュアル等により周知してまいります。
〔
池田泰紀健康福祉局長 登壇〕
◎池田泰紀
健康福祉局長 私からは、子供食堂につきまして、関係部局との横断的、総合的な支援の取り組みについてお答え申し上げます。
子供食堂を運営します団体の情報共有や課題解決、ネットワーク化を図るため、平成27年度より、熊本市子供食堂関連のワークショップを開催するとともに、結婚・子育て応援サイトによる子供食堂の開催告知などの広報を行うことで、運営団体の主体的な取り組みが図られるよう支援してきたところでございます。
これまで、運営団体からは、ワークショップなどを通じ、子供食堂が子供の貧困対策だけではなく、地域での交流の場として重要であるとの御意見をいただいていることから、区役所におきましては、まちづくり活動の観点からも子供食堂の活動を側面から支援しており、今後、これまで以上に連携を強化してまいりたいと考えております。
さらに、子供食堂に対する支援を希望する企業とフードバンクとをつなぐ新たな仕組みづくりを検討してまいりたいと考えております。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 子供食堂の取り組みについては、まず区役所単位で、その地域に根差した取り組みを強化していくとのこと、また食材の調達では、支援を希望する企業とフードバンクとをつなぐ新たな仕組みづくりを検討すると、これまでにない具体的な提案がなされました。ぜひとも子供食堂運営者の皆さんと行政とのこれまで以上の連携を構築していただくことを期待いたします。
続いて、立野ダム問題についてお尋ねいたします。
この間、この問題については繰り返し取り上げてまいりました。
異常気象に伴う想定外の災害が、昨年の九州北部豪雨災害を例に挙げるまでもなく、近年多発しています。従来のような災害規模の想定のもとでの対策で大丈夫なのか、それを補う二重、三重のセーフティネットを備えた防災対策の構築が求められます。
そういう意味では、立野ダムの場合、一定の雨量、流量の想定のもと建設されるものであり、想定を超える雨が降り、または放流口が塞がり、ダム湖が満水のときにダム上流斜面の大規模崩落が起こった場合には、かえって危険な構造物になります。
立野ダムの建設による最大受益地は、熊本市とされています。しかし、立野ダムの重大な欠陥により、逆に多大なる被害を受けるのも、また熊本市です。
そういった懸念、リスクに対し、流域住民を初めとする人たちが声を上げ行動を起こしています。昨年から、南阿蘇村、大津町、菊陽町、そして熊本市内の各流域で自発的にダムを考える学習会を開き、その流れの中で住民の会が立ち上がっています。
マスコミの論調も、説明責任を果たそうとしない国の姿勢に疑問を呈しています。昨年6月、地元紙に掲載された記事では、立野ダムをめぐっては、賛成反対の構図とは別に、安全性の不安や、復興を優先してほしいなどの意見が出されたことに対し、国交省はホームページで回答していると繰り返すけれども、誠実さに欠けてはいないかと、国の姿勢を厳しく指摘しています。
しかし、そうした課題や市民からの疑問に対して、国はわずか3回の会合で安全性に問題なしと結論づけた立野ダム建設に係る技術委員会の決定を錦の御旗に、課題や疑問に対して真摯に答えようとする態度を示していません。
立野ダム貯水池周辺の斜面は、柱状節理のある立野溶岩の上に火山灰が堆積する、とても脆弱なものです。ダムに水をためる、つまり湛水に伴う地滑りや斜面の崩壊が発生する懸念が大いにあります。
これに対し、国は、
熊本地震の後、技術指針に基づき調査を行い、湛水の影響により斜面が崩壊するおそれがある16地区の対策工事を実施していくとしています。しかし、その16地区は、多くの土砂が崩壊した場所のほんの一部にすぎません。技術委員会自身が一昨年の審議会で用意した第3回資料83ページ、84ページにも、
熊本地震に加えて、その後の洪水で崩壊した箇所が大きく広がっていることがしっかりと示されています。
その一方で、国は、直接水につからない斜面の上部の周辺山腹や山頂の崩落については、湛水の影響がないので、技術指針に基づいて、国交省としては直接関与しないとしています。しかし、水につからない斜面でも、地震や大雨の影響を受けるのは当然です。ダム堤予定地の上流左側の左岸は杉植林地であり、今後集中豪雨などで大量に崩落する危険があります。そうした危険性がありながら、湛水による影響は受けないと断じ、責任ある対応をしないというのは、余りにも無責任な態度ではないでしょうか。
湛水時に大規模な斜面崩落が起これば、ダムからの越水とともに、下流域では大規模な被害が出ます。立野ダムの最大の問題点、ダムをつくってはならない理由がここにあります。最大受益地が一転、被害地になるばかりか、ダム推進の立場に立つ熊本市の責任も問われかねません。
こうした疑問に対し、市民がこれまで9回にわたって提出した公開質問状についても、国から責任ある回答が寄せられたことは一度もありません。何よりも大きな問題は、このことに国が一切まともに答えようとはしないことです。
その上でお尋ねをいたします。
市長は、こうしたダムの危険性についてどのような認識をお持ちでしょうか。国の説明に対して疑問をお持ちになりませんでしょうか。
また、これまでも市長は国に対して、流域住民にしっかり説明するよう要望を繰り返し出されてきましたが、しかし一方で、国は住民の疑問や住民説明会開催の要請に全く応えておりません。このことは、言いかえれば、国が市長からの要望をもないがしろにしているということにほかならないと思いますが、こうした国の対応に納得されていますでしょうか。大西市長にお尋ねいたします。
〔
大西一史市長 登壇〕
◎
大西一史 市長 立野ダムに関する国の対応等についての認識ということについてお答えいたします。
立野ダムにつきましては、事業主体であります国土交通省が
熊本地震後に立野ダム建設に係る技術委員会を設置し、技術的な確認、評価を行い、その結果、立野ダム建設に支障となる技術的な課題はなく、ダム建設は技術的に十分可能であるとの結論が出されたものと承知しております。
一方、立野ダム建設については、地震後、住民の方々の不安の声もありますことから、丁寧な説明を行っていただくよう、国土交通省に対し、さまざまな機会を捉えて働きかけを行い、その結果、昨年、御案内のとおり現地見学会等が複数回開催されたところです。
また、本年5月にも白川改修・立野ダム建設促進期成会の意見交換の場におきまして、住民の不安の声に対して、改めて私の方から、多くの流域住民にさらに丁寧な説明を行うよう申し入れを行ったところでございまして、これに対して、昨日も答弁をいたしましたとおり、国土交通省からは、今後も流域住民の皆様に理解が深まるよう、さまざまな機会を捉えて取り組んでいくという回答を得たところでございます。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 答弁にありました現地見学会についてですが、開催されたのはわずか5回、それぞれ十数名の参加で、一方的に国の見解を説明するだけ。参加者からダムに関する疑問を尋ねても、ホームページを見てくださいと、ちゃんと説明してくれないというものでした。そのようなアリバイづくりとも言える現地見学会の一方で、本体着工は着々と進めている現状です。
これまで繰り返し行ってきた質問への答弁で、市長は、国に対してダムの安全性など、流域住民にしっかり説明してほしいと要請していくと何度も言ってこられました。しかし、一方で国は住民の疑問に答えず、本体着工を進めている。こうした状況は許されるものではありません。
住民の疑問、懸念が解消されるまでダム工事は一旦ストップして、住民からの疑問に答えるよう、流域自治体の責任者として国にしっかり求めるべきです。そのことを改めて指摘して質問を続けます。
この間、立野ダム建設を考える住民側の動きも活発になっています。流域住民の会も、上流は南阿蘇村から大津町、菊陽町、熊本市内までと次々に発足し、独自に学習会を開く、自治体に対し要請書を提出するなどの行動を起こしています。市民団体が開く集会は、いつも会場いっぱいの参加で、昨年10月に行われた決起集会は、全県からの参加で成功裏に終了。その輪は着実に広がってきています。ことし2月には、自治会長、元自治会長、老人会長など地域の有力者が名を連ねる流域住民連絡会も組織され、立野ダムは工事を一旦中止し、地域ごとの住民説明会を求める趣意書も採択されました。
国が説明責任を果たさない中、各住民の会は、国を交えての自治体主催による説明会開催を求めています。そうした動きの中、南阿蘇村、大津町では、国と住民側双方がダムに関して意見を交換する場が確保されました。南阿蘇村では、2度目の説明、討論会が予定されています。
そこで市長にお尋ねいたします。
本市でも、ことしの3月、市内流域住民の会4団体より、熊本市主催による国を交えた説明会開催の要望書が提出されています。しかし、この要請に対する市の回答は、国の責任において、立野ダムを含めた白川水系河川整備計画への理解を深める取り組みを要望していくとし、改めて立野ダム推進の立場を明らかにする一方で、市としての説明責任については一切明言しない大変残念なものでした。
ダム推進の立場をとっている以上、市にもその妥当性をしっかりと住民に説明する責任があると思います。市長の責任で、国を交えた住民説明会を開くことを強く求めますが、いかがでしょうか。
〔
大西一史市長 登壇〕
◎
大西一史 市長 国を交えた本市主催による立野ダムに関する住民説明会の開催というお尋ねについてお答えいたします。
昨年の九州北部豪雨など、近年の気象状況を踏まえますと、白川の治水安全度の向上は市民の生命財産を守る上で本市の喫緊の課題であると認識しております。
そのようなことから、河川改修、黒川遊水池と立野ダムの建設を含めた現行の白川水系河川整備計画に基づく総合的な治水対策の推進を流域自治体による期成会を通じて強く要望させていただいているところでございます。
また、この事業推進に当たりましては、先ほど申し上げましたように、流域住民の不安の声に対しまして、事業主体である国土交通省の責任において、今後もより多くの方々へ丁寧な説明を行っていただくよう、引き続き働きかけをしてまいりたいと考えております。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 昨日の田上議員の質問にもありましたが、流域住民の皆さんは、何をおいてもダムは反対だということで行動されているのではありません。流域に住まう者として、立野ダムの受益者となるのか、それとも被害者となるのか、それを判断するためにも説明してほしいと。その責任を果たさない国や、あるいは市に対して、ある意味、やむにやまれず行動を起こしておられるわけです。
我が国では、これまで政官財で好き勝手に公共事業を行う歴史が長く続いてきました。しかし、公共事業は、専門知識や財力を持つゼネコンや行政が行うものではなく、まさにその利益を受け、これを利用する住民みずからが決定すべきものです。住民のみずからの意思決定で行う、その判断のためにも、流域自治体であるこの熊本市でも、行政の責任で住民に対して説明会を行うよう強く求めるものです。
続いて、地域の課題について何点かお尋ねいたします。
まず、市営住宅の改修についてです。
北区の市営楠団地は、建物が古く、外壁を中心に老朽化が著しい状態にあります。特に、外壁の傷みは、塗装が浮き上がり、剥がれ落ちて、下地のコンクリートが露出している部分が多く見られます。一部の剥がれ落ちたコンクリートのコンクリ片が、下を歩いていた住民の頭をかすめるなどの事案もあり、事故につながりかねません。剥がれ落ちた部分については、発生時にその都度応急的に対処している状況です。
また、団地敷地内駐車場も、白線がほとんど消えてしまっており、アスファルトの舗装も経年劣化で表面がでこぼこしている状態です。高齢の方がつまずくなどの事案も発生しており、大変危険です。
計画補修で団地全25棟のほとんどが終わりましたが、一番北側に位置する5棟が手つかずで残っています。震災前、団地住民による申し入れでは、担当課から、2015年には調査を終え、随時設計に入ると回答がありました。しかし、震災で予定がおくれているのが現状です。本年度ようやく調査のための予算がつきましたが、実際の工事となると、まだまだ時間を要することがわかりました。
先日、団地住民の皆さんと改めて早期改修を求める申し入れを行いましたが、担当課の説明では、外壁の補修が約5年後、駐車場の舗装のやりかえ、白線のやり直しは10年後を見ないといけないとの説明がありました。団地管理人のお一人は、駐車場の補修が10年後なんて、私はもう生きていないかもしれない。駐車場には毎月2,500円管理料を払っているのに、そのお金は一体何に使われているのだろうかと訴えておられました。
そこでお尋ねいたします。
既に建設されて50年近くになる団地です。残りわずか5棟の駐車場の改修に10年かかるとは、時間がかかり過ぎではないでしょうか。
外壁の補修についても、今もコンクリート片の崩落が起こっています。事故が起こってからでは間に合いません。
不要不急の開発を見直して、団地補修の優先順位を上げ、速やかに補修に着手していただくことを求めますが、いかがでしょうか。
都市建設局長にお尋ねいたします。
〔
田中隆臣都市建設局長 登壇〕
◎田中隆臣
都市建設局長 市営楠団地の維持改修工事に関するお尋ねについて順次お答えいたします。
まず、外壁の劣化対応についてでございますが、楠団地では、昭和40年代に建築された住棟22棟を対象に、平成27年度より順次、外壁の補強改修工事を実施しており、今年度までに17棟の改修が完了する予定です。
残りの5棟については、今年度1棟を工事発注する予定であり、その他の棟についても順次実施していく計画としております。
次に、駐車場の維持改修の計画についてですが、全市営住宅を対象とし、舗装の劣化状況と白線の状態を確認しながら改修工事を順次実施しているところであり、楠団地については、昨年度までに22棟のうち5棟分の工事を完了しています。
このように、状態の悪いものから順次、計画的に改修工事を実施しているところであり、楠団地の残り17棟についても、引き続き改修工事を実施していく予定としております。
〔5番
山部洋史議員 登壇〕
◆
山部洋史 議員 市営住宅は、この楠団地に限らず、老朽化が著しく進んでいます。維持管理、補修の予算をしっかりととっていただいて、適切な管理を行っていただきますようお願いいたします。
次の質問に移ります。
龍田西小への通学路の整備についてです。
立田山東側にある北区龍田ニュータウン三光団地、さきの震災では著しい被害を受けました。道路が地割れを起こし、波打つ。また、各家の擁壁が崩壊する。そして、大規模な地滑りも発生し、それは今現在、公共事業のもとで改修が行われております。
このような大きな被害を受けた龍田ニュータウンの一帯の住民から、約50人いる児童が遠回りをせず龍田西小へ通えるよう、道路整備の要望が出されています。今の通学路は、高台にある団地から一旦北バイパス側道へとおり、再び龍田西小があるビオトープ立田の杜を登るという高低差と距離のあるルートであり、子供の足で約40分かかります。