広島県議会 > 2016-03-07 >
2016-03-07 平成27年度予算特別委員会(第2日) 本文
2016-03-07 平成27年度予算特別委員会(第2日) 名簿

ツイート シェア
  1. 広島県議会 2016-03-07
    2016-03-07 平成27年度予算特別委員会(第2日) 本文


    取得元: 広島県議会公式サイト
    最終取得日: 2023-06-05
    トップページ 検索結果一覧 使い方の説明 (新しいウィンドウで開きます) 平成27年度予算特別委員会(第2日) 本文 2016-03-07 文書・発言の移動 文書 前へ 次へ 発言 前へ 次へ ヒット発言 前へ 次へ 文字サイズ・別画面表示ツール 文字サイズ 大きく 標準 小さく ツール 印刷用ページ(新しいウィンドウで開きます) 別窓表示(新しいウィンドウで開きます) ダウンロード 表ズレ修正 表示形式切り替え 発言の単文・選択・全文表示を切り替え 単文表示 選択表示 全文表示 発言者表示切り替え 全 5 発言 / ヒット 0 発言 すべての発言・ヒット発言表示切り替え すべての発言 ヒット発言 選択表示を実行・チェックの一括変更 選択表示 すべて選択 すべて解除 発言者一覧 選択 1 : ◯木曽参考人 選択 2 : ◯竹中参考人 選択 3 : ◯張参考人 選択 4 : ◯鹿嶋参考人 選択 5 : ◯河村参考人発言者の先頭へ 本文 ↓ 最初のヒットへ (全 0 ヒット) 1: 7 会議の概要  (1) 開会  午前10時30分  (2) 記録署名委員の指名        宮 崎 康 則        大 島 昭 彦  (3) 理事会決定事項の報告   1) 総括審査の日程   2) 配席について   3) 発言時間の計測    ア 委員長席及び質問席の残時間表示計により、持ち時間が終了すると、質問席のラ     ンプが点滅する。    イ 原則として、ランプが点滅したときをもって、発言を中止する。    ウ 持ち時間を超過した時間については、理事会に諮って、翌日以降の同一会派の持     ち時間から差し引く。   4) パネルや資料等の使用は、事前に申し出て理事会で了承を得ること。   5) 参考人発言順位  (4) 各常任委員会に調査を依頼した各会計予算の調査結果  (5) 休憩  午前10時33分  (再開に先立ち、委員長が、参考人に対し、挨拶を行った。)  (6) 再開  午前10時36分
     (7) 参考人意見 ◯木曽参考人 木曽でございます。ひとつよろしくお願いいたします。座ったままで発言させていただきます。  きょうは、国際社会で活躍できるグローバル人材の育成についてという観点で、30分ほど時間をいただいてお話をさせていただきたいと思っています。お手元のレジュメに沿ってお話をさせていただきます。  今回、グローバル人材の育成について、レジュメの4番目の最後にありますグローバルリーダー育成校について、私の考えを述べさせていただくわけでございますけれども、その前に私なりの考え方というか、そもそもの教育内容の問題、教育方法の問題等のお話をさせていただきたいと思います。  まず、背景でございますけれども、皆様御存じのように、世界を取り巻く環境、日本のみならず、世界中そうなのでございますけれども、急速にグローバル化していく社会・経済にどう対応していくかという大きな問題が背景にあります。企業、行政組織、そして学校も、小・中・高等学校から大学まで、この新しい大きな流れにいかに対応していくかということが課題になっているわけでございます。  グローバル化していく社会がどういう影響を現実にもたらしているかということでございますけれども、私が例に挙げていますのは、企業名は控えさせてもらいますけれども、日本の一部上場企業でございまして、7年前に経理部がほぼ消滅してしまったというものでございます。  実は、相当の数の経理部の仕事がインドのハイデラバードに行ってしまって、今は数人の担当者しか残っていないという状況です。相当数の経理部職員に仕事が来なくなってしまったということなのですけれども、大量の伝票をデジタル化してインドに送りまして、次の日にはきれいな形で本社に戻ってくるのです。コストも格段に安くなるということでそうされたようなのですけれども、怖いのはミスの部分ですが、よく話を聞いてみますと、エラーの部分も実は減っているということなのです。ですから、こういうことが現に起こってきているということです。  それは、経理だけの問題ではなくて、実際にはあらゆる分野で起きているのだろうと思います。グローバル化といった場合、人が移動するということをまず考えますけれども、人の移動ももちろんございますが、人は移動しないで仕事が移動していくということもあります。  その反対のことも起きるわけです。本来、よその国でやっていった仕事を日本で受けるということも当然考えられるわけでして、ある意味で非常に流動化してきている実態があるということです。  それから、私はもともと文部科学省におりまして、国際関係を長くやっておりましたけれども、企業の方々とお話しすると、日本に外資を導入する際にインフラの部分ができていないと言われるのです。それは住むところとか、食事とか、いろいろな意味があるのですけれども、実は教育もそのインフラの一部なのです。海外の人たちというのは、日本のように単身赴任で行くということはまず考えられないのです。そうすると、子供がいて、奥さんがいる。それを、地域の中で引き受ける受け皿がなければ、有能な人を日本に呼び込むことはできないという大きな問題があります。インターナショナルスクールというのが日本にもございます。それは外国人のこういうニーズに応えるためのものですが、偏在してしまっているのです。大阪とか、東京、神戸、横浜、この辺には結構あるのですが、例えば、この広島、あるいは中国ブロックで見た場合に、受け皿がないという大きな問題がございます。外資を導入したいという大きな問題にも、これは関連してくるということです。  次に、そういう背景の中で、日本の教育内容の問題についてです。私自身も文部科学省におりましたけれども、じくじたるものがございます。もっと大きく改革していかなければならない課題があると思います。  2つ問題がありまして、一つは、レジュメにスキルと倫理と書いておりますけれども、このスキルというのは技能のことです。グローバル化する21世紀の社会で生きていく技能を子供たちに与えなければならない。ここでのポイントは、まさにグローバルに通用する技能ということなのです。それは、多分、我々が受けてきた教育とは違う内容のものが求められているということだと思います。  それから、もう一つは倫理の問題です。新しい時代の倫理というものは、やはり子供たちにきちんと教えていかなければいけない。ある意味で、グローバルに通用する倫理を子供たちに与えていくということであろうかと思います。国内的な意味でのスタンダードを、徐々にグローバルスタンダードに置きかえていく必要があるだろうと思っています。この点については話せば長くなるので簡単にお話ししますけれども、いずれにしても教育内容については大幅な改革が求められているということであろうと思います。  それから、3番目に移りますけれども、教育方法の改革です。ここはかなり重要な問題だと思います。教育の内容というよりも、それをどう勉強するかというほうがもっと重要な問題でして、レジュメには、OECDの提言及びESDと書いております。  OECDの提言というのは何であるかということですが、知っておられる方もいらっしゃると思うのですけれども、OECDではピサというテストを実施しております。これは、世界レベルでどのくらいの能力が子供たちにあるかというテストです。日本は割といい成績をとっているのですけれども、分野によっては、やはり課題があるという結果になっております。  OECDは、今までのような教育方法ではなく新しい方法をとるべきであり、その一環として何を言っているのかというと、知識を詰め込んで、知識をふやしていくというよりは、その知識をいかに使うかという力を身につけさせるべきだと言っております。それは、英語でキーコンピタンシー──基本的な技能という言葉をOECDは使っておりますけれども、基本的には、考える力を養うということです。問題を発見する力をつけていく、問題は与えられるものではなくて自分で発見するものだということなのです。  考えてみますと、自分で問題が発見できない人というのは、子供だけでなくて大人も含めてたくさんいるわけです。まず、問題を発見できるかどうかというのは、その問題を解決する前に必要とされているものなのです。問題を発見する力をどうやってつけるのか、そして、問題を発見したら、それをいかに自分で考え、情報を集めて、その解決策を自分で考えるのかということだと思います。  そして、そこで終わるのではなくて、自分で考えた結論をほかの人にわかりやすく説明する力、コミュニケーションの力、あるいはプレゼンテーションの力というところまで、OECDの提言では求めております。この考え方に沿ってピサのテストは構成されているのです。  少し前になりますけれども、ドイツはこのテストで非常に悪い点数をとってしまったのです。  ドイツは大改革をしまして、知識の詰め込みだけではなくて、まさに考える力を子供たちにつけるというふうに教育方法を大きく改革してきております。教育方法の改善をどうやっていくかというのが、今、大きな課題になっております。  いずれにしても、OECDも新しい時代の新しい教育という目で物事を見ていることは間違いないわけでございます。  それから、ESDと書いておりますけれども、このESDも少し御説明する必要があるかと思います。これは、エデュケーション・フォー・サステーナブル・ディベロップメント──持続発展教育、あるいは持続的開発のための教育と訳されておりますけれども、ユネスコが推奨しております。これも新しいタイプの学校をつくっていこうという動きであります。  実は、広島県はこのESDについては非常に先進的に取り組んでこられており、ユネスコスクールという、これは世界に物すごい数があるのですけれども、日本にも1,000校近くありまして、ESDに取り組んでいこうという学校でございまして、広島県でも結構頑張っておられます。  このESD考え方も同じ考え方でございます。まさに、教育方法を改革していこう、そして、新しい時代に必要とされる能力を子供たちにつけていこうという大きな流れの中の一環でございます。  話が長くなって申しわけないのですけれども、今回の一番のポイントでありますグローバルリーダー育成校について、お話をさせていただきたいと思います。多分、県民の皆様方にもいろいろな意見があるのだろうと私は思っております。  一つは、必要性ということです。必要性については、これは私個人の意見でございますけれども、先ほど言いましたように、これからの時代にないと困るものということで、必ずつくっていただきたいと思っております。  2つの意味がございまして、広島県としてグローバルにいろいろな外資を導入していくとか、あるいは交流していくというときに、インフラとしてのそういう学校がないと困るのではないかというのが一つございます。  それから、県民のニーズという意味で、県民みんながこういう新しいタイプの学校に行きたいと思われるとは決して思っておりませんけれども、ただ、これだけ外部環境が変わっていく中で、やはり県民の10%ぐらい、あるいは5%ぐらいの親が自分の子供には従来型の教育ではなくて新しい教育を受けさせてやりたいというニーズも必ずあると思います。そういうニーズの受け皿をつくっていくというのも、県政の重要な課題の一つではないかと思っております。  また、新しいタイプの学校ができると、その周辺の学校、あるいはほかの先生方に大きなインパクトを与えると思っております。そういう意味で、このグローバルリーダー育成校というのは、一つの実験ではございますけれども、意味のある実験になるだろうと私は思っております。  それから、留意点を最後に書いておりますけれども、新しいものをつくるときというのは何でもそうでございますが、完全にリスクをなくしてからということでは、多分、全く進まないと思うのです。ですから、ある程度のリスクは考えた上で踏み切るということだと思います。  レジュメにはニーズ調査と書いておりますけれども、実際にこういう学校に対するニーズ、例えば、企業の場合は、ある意味で鶏と卵の関係ですから、ないから来ない、あれば来るという要素がありますので、実際にニーズを予測するのは、かなり難しい作業になると思いますけれども、ある程度はニーズを捉えることができるのではないかと思っております。  それから、県民の中でどれくらい、そういう学校に行きたいという子供たちがいるのか、また、留学生も考えておられるということなので、こういう学校ができれば日本に留学させたいというニーズが、東南アジアを中心にどのくらいあるかということを、難しい調査になると思いますけれども、実施していただきたいと思います。  それから、実際には、こういう新しいタイプの学校というのは、私学においても、相当数日本にでき始めています。皆さんと意見交換することがあるのですけれども、困っておられるのは教師の確保についてなのです。ですから、特にIB校──インターナショナルバカロレアの認定を受けて世界に通用する卒業資格を与えるコースを教える先生は、いい人材を確保するのはなかなか難しいということがございます。広島県は県立高校先生方がたくさんおられますので、人材はリクルートできると思いますし、しないといけないということであろうかと思います。人材がきちんと確保できるかということは非常に大きな問題でありまして、これが確保できなければ教育の質は確保できませんので、つくったけれども結果が出ないということになりかねないわけです。教師の問題というのは、大きな意味を持っております。  最後に、設置形態と書いておりますけれども、聞くところによりますと、AICJという、昔の大下学園でしょうか、もう大分前にIBの資格をとられて、実際に子供を受け入れておられるということです。それから、もう一つは、福山市の英数学館が準備されており、早ければ来年にもIBの学校を組織したいという意向を持っておられるということです。そういう私学の取り組みと連携していただいて、ウィン・ウィンの関係をつくっていただきたいと思います。県としてどういう受け皿をつくるべきなのかということでありまして、食い合っても意味がないと思います。ですから、私学でそういうことを考えてやっておられる人たちと、新しくつくるグローバルリーダー育成校がうまく補完できる関係をつくっていただければと思っております。  繰り返しになりますけれども、まとめとして、国際社会で活躍できるグローバル人材の育成というのは、物すごく重要な課題であろうと思っております。そして、私自身の経験でございますけれども、国際機関、私はユネスコ大使を3年間やっておりましたけれども、ほかの機関に比べて、割とユネスコには日本人職員がおりますけれども、残念ながら幹部職員はほとんどいない状態なのです。今、アメリカは分担金を拠出しておりませんので、日本は断トツに大きな分担金をユネスコに毎年払っているわけですが、日本人の幹部職員がユネスコにほとんどいないという、非常にもどかしく、残念な状況になっています。ある意味で、ユネスコの幹部職員というのはエリートな世界ですけれども、日本人は優秀だと思いますので、そういう人がもっと出てきてほしいと思います。  もっと重要なこととして、エリートではなくて真ん中の部分が非常に難しい状況になっているということを最後に申し上げたいと思います。いわゆるエリートと言われる人口の10%ぐらいの人たちは、状況が変わっても、いかようにも適応していける人たちなのです。ですから、そういう人たちは一番先にグローバル化していくのだろうと確信しています。  問題なのは、真ん中の部分の人たち、最初に申し上げたように、労働市場が流動化していく中で、その仕事はほかの人でもできる、インドの人でもできる、中国の人でもできるということになると、人が移動するのではなくて労働そのものが移動してしまうということで、これは非常に深刻な問題だと思っております。  そういう意味で、一つのパイロットスクールになると思いますけれども、この学校をつくることによって広島県の教育が大きく変化する、いいほうに変わっていくことを期待していますし、そういう意味で、グローバルリーダー育成校は、ぜひ設置していただきたいと思っております。  考えている以上に世の中は変化しています。ですから、新しい教育を受けたいという子供と親の願いに対して、広島県として受け皿を用意するという意味合いもあるだろうと思います。1校だけではなくて、数校あってもいいのではないかと思いますけれども、まずは、パイロット的に実施して、ぜひ成果を出していただきたいと思っております。  時間ですので、これぐらいにしたいと思います。きょうは、御清聴ありがとうございました。(拍手) 2: ◯竹中参考人 御紹介いただきました竹中平蔵です。このような機会を与えていただきましたことに感謝を申し上げます。  私は、アベノミクスと日本経済の行方というマクロのテーマでお話しさせていただきたいと思います。今、安倍内閣の産業競争力会議、そして諮問会議のメンバーもさせていただいておりまして、そういう観点から広島県の施策に大変期待しておりますので、そういう思いを込めまして話をさせていただきたいと思います。  日本経済が今どういう状況になっているか、皆さんそれぞれに実感をお持ちだと思いますが、同時に日本経済が世界経済の動向から非常に大きな影響を受けているということも肌で感じておられるのではないかと思います。  1月末にダボス会議がありました。政府の仕事を離れてから、このダボス会議の理事をやらせていただいている関係で、毎年ダボス会議を見ているのですが、御承知のように、毎年1月末、スイスのダボスという村に世界の経済リーダー約2,500人が集まって経済の議論をします。それを追うことによって、世界経済の流れについての、いわば定点観測ができるというメリットがあります。そういう観点から、ことしのダボス会議がどういう会議であったかということをお話ししておきたいと思うのですが、IMF専務理事のクリスティーヌ・ラガルドさんらが中心になって行われた、ことしの経済がどうなるかという大きなセッションでの合意は、次のようなものでした。  「2016年の世界の経済の成長率は3.4%程度で、昨年の3.1%より少し高くなる。世界経済は緩やかな回復基調にある。ただし、3つないし4つのリスク要因に注意しなければいけない。1つ目は、中東の地勢学的なリスク、2つ目は、中国経済の減速に象徴される新興国の経済劣化、3つ目が、アメリカの金利引き上げに伴う株式市場、為替市場等の世界の資産市場の激変、この3つに注意しなければいけない。」  皆さんは、いかに思われますでしょうか。去年のダボス会議でどういうことが議論されていたかといいますと、次のように言っていました。「ことし、2015年の世界経済はその前の年より少しよくなる。世界は緩やかな景気回復の基調にある。しかし、3つのリスク要因がある。それは、中東と中国とアメリカである。」、つまり同じ議論をしていたということであります。多分来年も同じような議論をする可能性があります。これは、決して茶化すつもりで言っているわけではなくて、2つの重要なメッセージがあると思うのです。1つは、世界経済の流れそのものは、決してそんなに悲観するような状況ではないというメッセージ、うまくハンドリングさえすれば緩やかな景気回復が可能だというのが、第1のメッセージです。第2のメッセージは、しかし、中東の問題、中国の問題、どれをとってみても半年や1年で解決するはずのない問題であって、こうした問題に対しては引き続き、かなり長いスパンで私たちはつき合っていかなければいけないのだというメッセージがあるのだと思います。  そういう中で、ことし、安倍総理はダボス会議には行けなかったのですけれども、その当時はまだ在職中でいらっしゃった甘利大臣、塩崎厚労大臣、河野行革担当大臣、そして黒田日銀総裁の4人が政府のリソースパーソンとしていらっしゃって、ノーベル賞をとったスティグリッツさんとか、ジェフリーさんといったダボスのそうそうたるメンバーと議論しました。私は司会をさせていただいたのですが、日本経済に対する関心は極めて高く、日本のアベノミクスの改革がどこまで進んでいるのか、進んでいないのかということに関して、海外の識者の意見も分かれました。  具体的にどういうことかといいますと、中東、中国、アメリカのリスクについて、きょうは時間がないので余りお話できませんが、日本経済の話に入る前に2点だけ申し上げておくならば、今、中国経済は減速しているわけですけれども、最大の問題は、どれぐらい減速しているのか、統計そのものがよくわからないということであります。日本やアメリカ、中国もGDP統計を出していますが、日本のGDP統計は当該四半期が終わってから約1カ月半、6週間から7週間で出てきます。アメリカとイギリスは4週間ぐらいで出てきます。中国は2週間で出てきます。そして、中国は、7%成長すると政府が言えば、その統計数値が出てくるということで、そこの信頼性がないのです。一言で言えば、法の支配がまだ確立していないので、これ以上経済が発展するのは大変難しいのではないかという中期的な悲観論が出てくるということだと思っております。  ことし中国経済が大混乱することは避けられると思います。最近の報道でも明らかなように、いざとなれば、中国政府は財政政策、金融政策を発動して経済を安定させる余力はまだ持っています。しかし、中国に行ったらグーグルが使えない、ユーチューブも見られない、そういう自由がなくて法の支配も確立していない段階で、中期的な経済の成長力というのは、間違いなく下がってきます。  日本経済研究センターが去年予測した数字によりますと、今7%ぐらいと言っていますけれども、2020年には5%、2025年には4%以下の成長率になってくる。そういう中で、中国の減速と中期的にどうつき合うかということを、それぞれのマーケットで考えていかなければいけないということだと思います。  アメリカに関しては、リーマンショックの後、バーナンキ議長は、中央銀行が出す通貨の量、ハイパワードマネーと言いますが、これを何と5倍にしました。日本では今、黒田総裁が同じよう通貨をふやしていて、黒田バズーカと言いますが、黒田さんは2年で2倍にすると言ったのです。もちろん、これもすごい政策であるわけですけれども、アメリカはこれを5倍にしたわけで、その後始末をしなければいけないという状況で、金利を引き上げる段階になってきたのです。金利が上がるとどうなるのかといいますと、今まで新興国に流れていたお金がアメリカに集まるので、ドルが高くなって新興国の通貨が安くなる。現実に、ブラジルのレアル等が非常に下がっており、通貨が下がってインフレになるので世界経済が悪化するという矛盾に直面しています。そういう矛盾の中で、少しでも安全な通貨を買おうと考えるので、日本の円が買われて、円が少し上がってきている、円が上がるので日本の株価が下がってきている。ことしの初めから、そういうメカニズムが働いているのです。  中国とアメリカの直接的な影響の中に日本経済が置かれているということを踏まえて、アベノミクスがどこまで進んでいるかということを見ていきたいと思います。私は、アベノミクスの第1ステージ、去年の末ぐらいまでを考えると、これは極めて高い成果をおさめたと認めるべきであろうと思います。2012年11月の総選挙で政権交代が決まり、再び自民党が政権をとることが決まったわけですが、その時点での日本の株価は9,400円でした。それが2万円ぐらいまでいって、ことしは少し下がっているけれども、1万6,000円ぐらいです。去年の12月末までの時点で見ますと、このアベノミクス第1ステージの3年1カ月の間に、日本の株価は2.1倍になりました。アメリカも回復した、ドイツも回復した。しかし、ドイツの株価は1.5倍、アメリカの株価は1.4倍、日本の2.1倍というのは、実は断トツに高い成果なのです。株価が全てではありませんけれども、やはり企業収益や将来期待をあらわしているという意味で、これは評価されてよいと思います。  もう一つ重要なのは、労働市場で非常に大きな変化が起こりました。余りメディアはこういう書き方をしないのですが、実は日本は今、世界でただ一つ、完全雇用を実現している国であります。どの経済でも、どんなに景気がよくなっても、これ以下には失業率は下がらないというポイントがあります。そのポイントについて、専門家は今まで3.4%程度と考えていました。今、日本の失業率は3.3%、数カ月前は瞬間風速で3.1%まで下がりましたので、超完全雇用であります。これは有効求人倍率に端的にあらわれていまして、以前は0.4倍まで下がっていたものが、今、全国平均で1.3倍、東京は1.8倍、この地域も基本的には平均より高い地域であると認識しております。  そして、デフレの問題もようやく克服されつつあります。消費者物価ではかるわけですけれども、そこから食料品とエネルギーを除いたコアコア指数で見なければいけません。少し自慢させていただきますけれども、この指数は私が総務大臣のときにつくりまして、それ以前はこういう統計を総務省統計局ではつくっておりませんでした。しかし、社会で見ると生鮮食料品とエネルギーを除いたコアコア指数で見るのが常識だということで、10年前からつくり始めたわけであります。  これで見ますと、5年前に消費者物価上昇率マイナス1%だったものが、今プラス1%になっています。目標の2%にはまだ遠いでわけですし、現実に2%の物価目標を実現するのは大変だとは思いますが、事態は確実に変化してきている。これが、アベノミクス第1ステージの成果として申し上げてよいことなのではないかと思います。  例えば、先ほど雇用の話にしても、全体としては完全雇用で、働こうと思えば働ける状況にはなっていますが、それでみんなが満足しているかといいますと、そんなわけはないわけでありまして、雇用形態の問題もあり、賃金水準の問題もあり、変えなければいけないところはたくさんあります。しかし、第一義的な水準を一応満たすところまでは、アベノミクスの第1ステージで来ているということなのではないかと思います。  この中で、第1の矢、日銀の金融政策は非常に大きな影響を与えたわけでありますけれども、数週間前、ダボスで黒田総裁と御一緒して、お帰りになってすぐの日銀政策決定会合でマイナス金利を決めました。この議論が、必ずしもきちんと日本でなされていないのですが、なぜマイナス金利をとるかというと、これは欧州中央銀行のドラギ総裁もとっていますし、ヨーロッパでも数カ国でとっているわけですが、貯蓄と投資は均衡しないといけないわけですけれども、ある著名な研究結果として貯蓄と投資を均衡させるような実質利子率──自然利子率と言いますが、これが実は、既にマイナスであるという結果があります。  これが何を意味するかというと、それだけ投資機会がもうなくなっているということを意味しているのです。これをやるには2つのやり方があって、一つは、金利そのものを下げる、できることは当面それだと、それでマイナス金利になるということです。  しかし、一方で投資機会をふやす努力をしなければいけないのでして、投資機会をふやす努力は日銀の仕事ではなくて政府の仕事でありますけれども、実はここがまだ十分に行われていない。だから、マイナス金利は間違っていないと私は思いますが、それに伴う改革をしっかりして投資機会をふやす、必要ならば公共投資もふやす、民間資金を活用してでも公共投資をふやす努力がまだなされていなくて、政策は完結していないという状況なのではないかと思います。中央政府にとっても、地方政府にとっても投資機会をいかにふやすかというのは、極めて重要な課題であると言えます。  第2の矢は、財政政策です。当面、財政赤字を余り気にしないでお金を使いましょう、しかし、財政については、2020年までには基礎的財政収支を黒字化するという意味で財政再建を果たしましょうという、短期の財政拡大と中期の財政再建を行う2つが課題になっておりますが、短期の財政拡大は、たびたび補正予算でこれまでもやってきましたし、後で申し上げますが、経済対策をまもなく政府は打ち出す、新しい経済対策を打ち出さざるを得ないと私は思います。  つまり補正予算を目指した動きが始まると思います。  それはそこそこやってきているのですが、中期的に、2020年までに財政再建ができるかということについての道筋は、まだ十分に示されていない。これを行うためには、まず経済を正常化して、経済成長を高めていくということ。2番目に、社会保障改革をして歳出の増加を抑えていくということ、これはつらいけれどもどうしてもやらなければいけない課題でして、まだそこには至っておりません。  そして、増税はその後に来る問題であって、にもかかわらず増税をどうしても先にしなければいけないという動きが常にありまして、2014年に増税した結果、逆に経済が悪くなって財政再建が難しくなった、それは避けなければいけないことだと思います。  私の認識する限り、総理、官房長官は、やはり経済が先だということを極めて明確に認識しておられると思います。  そして、やはり重要な点は第3の矢、成長戦略ということになります。第1、金融政策、第2、財政政策、第3、成長戦略、この中で成長戦略が非常に弱いというふうに内外から言われています。アメリカの名門、イェール大学に浜田宏一先生という大変立派な先生がいらっしゃいます。浜田先生は安倍さんの家庭教師役──メンターでもいらっしゃるのですが、最初の成長戦略が出たとき、浜田先生は次のように成績をつけました。第1の矢はよくやっているからAだ。第2の矢は、まあ半分ぐらいやっているからBだ。しかし、第3の矢は非常に弱いからEだ。A・B・Eで安倍だというふうに言われたわけで、先生、そんなことを言っている場合ではないでしょうということなのですが、ただ、第1の矢、第2の矢は、経済の需要側の政策、お金を使う側の政策です。  しかし、第3の矢は企業や産業の体質改善ですから、つまり、経済の供給サイドの政策であって、これは同じ次元で比べられません。第1、第2の政策は比較的早く成果が出ますが、第3の政策は体質改善ですから、何年もかからないと成果が出ないのです。そういう目で、ある意味でのペイシャンスを持って見ていかなければいけないことではないかと思います。  この中で、できたことと、できていないことがあります。海外の投資家が日本の成長戦略の中で最も評価していることの一つは、コーポレートガバナンスが強くなったということです。コーポレートガバナンス、つまり成績の悪い会社は、やはり社長にやめていただかなければいけない。しかし、日本の大手株式会社の取締役会は、社長とその弟分みたいな人が取締役になっていて、耳ざわりのよいことしか言わない。したがって、利益率の低いまま企業が生き延びている。株主から見ると、とてもこういう会社には投資できないということになるのです。  この議論を3年前初めて産業競争力会議で出したときに、経団連の方々は大反対しました。  恐らく、社長はもっと居心地のよいところにいたいということであろうかと思います。しかし、御承知のように去年6月にコーポレートガバナンス行動というのが示されて、これはあくまでもルールではなくて、ガイドラインではありますけれども、独立した社外取締役を最低2人は入れるということで、そのチェック機能が高まりました。これは、まだ不十分ではあるかもしれないけれども、非常に大きな進歩であって、これが実は日本の株価を支えている非常に大きな要因になっております。株価が全てではないと申し上げましたけれども、今株式取引の7割は外国の投資家です。先物の株式の取引の9割は、海外の投資家です。それだけ、まさにグローバリゼーションで海外から評価されるような存在でなければいけないということなのだと思います。  できたことの2つ目が、国家戦略特区であろうかと思います。広島県もこの国家戦略特区として、これからぜひ大活躍していただきたいと期待しているところであります。この特区は、今までの特区とは違います。何が違うかというと、国家戦略特別区域会議という新しい組織がつくられて、国の代表としての特区担当大臣、地方の代表としての知事、そして、民間の代表としての主たる企業が集まって区域会議がつくられて、そこがさながらミニ独立政府のようにいろいろなルールを決めていけるという、非常に新しいルールが適用されております。  これをぜひ活用していただいて、先ほど申し上げたように投資機会をつくる、投資機会は幾らでもあるはずなのですけれども、さまざまな規制で、妨げられている。もっと公共投資ができるはずなのだけれども、そこに民間の活力や資金を入れる仕組みがまだ不十分である、その活路をぜひ開いていただきたいと思っています。  わかりやすい事例を申し上げておきますと、過去37年間、この国では新しい大学医学部は一つもつくられておりません。1番新しい医学部は、1979年につくられた琉球大学医学部です。  多くの若者が医者になりたいということから、医学部をつくろうという大学が幾つもあったのですが、全てお医者さんのアソシエーションがすごい政治力を発揮して、それを押しつぶしてきました。  しかし、この特区の枠組みを使って、来年できます。できるということは、去年12月に承認されて、大学病院と医学部が成田空港のすぐそばにできることになりました。これは38年ぶりの医学部になりますけれども、同時に、成田空港ですから、メディカルツーリズムの新しい拠点にもなり得るということであります。こういう新しい試みをぜひ続けていただきたいと思います。  3番目に、評価されているものの一つが、コンセッションと言われるものであります。これは、インフラの所有権は公的部門に残したままで、その運営権を民間に売却するというものです。例えば、デンマークにはAPMターミナルズというおもしろい会社がありまして、この会社は世界68カ国で港湾の運営をしております。フランスには、世界40カ国で水道事業の運営をしている会社があります。日本にはそういう会社はありません。それは、なぜかといいますと、公的部門が仕事を取り込んできたからです。したがって、コンセッションの最大のテーマの一つは、官業の民間開放です。官業の民間開放をやることによって、民の知恵で新しい投資機会が生まれます。  わかりやすい例で言いますと、オーストラリアの空港では、民間に空港を任せたところ、すごい活力が生まれて、世界中のエアラインと交渉して、空港に飛んでくる飛行機の数が3倍になったという事例があります。空いている土地にビジネスパークをつくって、キャッシュフローが2倍にふえたというヨーロッパの空港もあります。  さらには、これもオーストラリアの例ですけれども、空港のすぐ隣に大学を誘致したのです。そうすると、シドニーやメルボルンの有力大学から先生方が飛行機で飛んできて、教えて帰っていける。  地方活性化の拠点として空港が使えるという事例を参考にしながら、コンセッションを活用しようとしたところ、仙台空港が対象になりました。そして、関空も対象になりました。  両方とも、もう引き受け手が決まりました。入札の結果、仙台空港は東急電鉄と前田建設工業のグループが引き受ける。関空は、これは世界最大規模のコンセッションになると言われていますけれども、オリックスとフランスのバンシーという会社が引き受けるということで、その準備が進んでおります。  これを見て、千歳空港や福岡空港でも、そういう方向を考えておられるわけで、さまざまな活用の仕方をぜひ広島県の皆様にも考えていただきたいと思います。  そういう意味で、できたことはありますけれども、できていないことをしっかりとやっていかなければいけないというのが、アベノミクスの第2ステージだと思います。できたこともあるけれども、できていないことの大きな問題として、今世界で起こっている第4次産業革命──インダストリー4.0に対する対応が、まだほとんど手についていないということだと思います。  ダボス会議の話を冒頭しましたけれども、ことしのダボス会議のサブテーマは、第4次産業革命をマスターしよう、インダストリー4.0というものでありました。  どういうことが起こっているのか、全てのものがインターネットでつながるIoTについては御存じだと思いますけれども、もう一つ、今までとは違うデジタルな手法を使ったシェアリングエコノミーが非常に大きなテーマになってくると思います。このシェアリングエコノミーは間もなく日本でもどうするかということが本当に問われると思います。例えば、私のマンションがきょうは空いているから、このマンションに泊まっていいよ。これは友達同士でやるわけですけれども、これをネットワークを使って、スマホで泊まれるようにする。これは、エアビーアンドビーという会社が世界的に広めていて、エアビーアンドビーは世界190カ国、つまりほとんど全ての国で営業しているわけでありますけれども、これは旅館業法との関係がどうなるのかという非常に微妙な問題が出てきます。  同じように、私がこれから福山まで車で行くから乗っていっていいよ、そのかわり何千円かちょうだいね、これもやっていいのかもしれません。これをやっているのが、ウーバーという会社で、タクシー業界から見ると、これは何だということになります。しかし、世界では、これはもう現実に進んでいます。このウーバーという会社は企業価値7兆円です。企業価値7兆円といいますと、日本で企業価値が一番大きな会社であるトヨタ自動車が20兆円ですから、わずか5年ぐらいでトヨタの3分の1の企業価値の会社ができてしまって、世界中でそれが広がっているという事実、これは民泊とか、白タクとかいろいろなことを日本では言われていて、本当にどうするか。問題点があるというのもよくわかります。私のマンションで、隣に知らない外国人が毎日出入りしていたらどうかとか、問題点がたくさんあるというのもわかりますけれども、問題があるから何もやらないということでは済まされなくて、問題があるけれども、こういう形でクリアしようというふうに問題を解決していくという姿勢が、この第4次産業革命では非常に強く求められていると思います。  民泊に関して、政府は旅館業法を少し広げて、簡易宿泊所のような形で対応しようとしていますが、私の認識から申し上げると、旅館業法に閉じ込めてはいけないということだと思います。彼らは、それぞれ旅館業とかタクシー業とは言っていません。彼らはみずからのことを、ソーシャルネットワーキング業という全く違うコンセプトで議論しているということなのです。非常にハードルの高い問題ですけれども、対応していかなければいけないと思います。  同じようにハードルの高い問題でこれから考えていかなければいけない問題は、移民の問題です。2030年を過ぎますと、毎年100万人の単位で日本の人口が減っていきます。私は和歌山県の出身ですけれども、和歌山県の人口が大体100万人ぐらいです。ですから、イメージとしましては、毎年和歌山県の人口が消えていくようなイメージになってくるのです。それで本当にやっていけるのか。移民にはいろいろな問題があるというのは百も承知です。それで問題を起こしたヨーロッパの国もたくさんあります。  しかし、一方でシンガポールという国は、住民の37%が移民です。かつ、シンガポールの犯罪率は日本よりも低いのです。ですから、犯罪が起きるからだめだというのではなくて、どのようにしたら、きちんとした労働力を確保しながら安定した社会をつくれるのかとかという、先ほどと同じような、どうしたらできるのかという前向きな議論が求められているということなのだと思います。  安倍総理もこの問題に関しては、大変神経を使っておられて、国民には、やはり心情的な反発がありますから、移民はやらない、しかしゲストワーカーを受け入れようという言い方をします。そして、ようやくこのゲストワーカーの受け入れが、ことしから特区で始まります。  家事労働や家事支援、いわゆるメードさんです。そこにフォーカスして受け入れる。受け入れるときには会社が責任を持って管理するという仕組みをつくった上で受け入れるということが、特区で始まります。この特区は、神奈川と大阪で始まりますけれども、このような枠組みをどのように自分たちの中で前向きに生かしていくのかということが、多分問われていくのだと思います。  最後に、短期の見通しだけ申し上げておきたいと思います。今、経済は、残念ながら踊り場にあります。特に、個人消費がほとんどフラットで、伸びない状況にあって、その一つの大きな背景としては、やはり中国経済に対する不安があります。中国は、世界で第2番目の輸入大国、そして、中国の輸入の半分はアジアから来ています。中国に一番輸出している国は韓国、2番目が日本です。韓国経済は影響を受けると思います。そして、日本も影響を受ける、そういう状況の中で、消費者心理が萎縮している。今、GDPギャップが大体2%ぐらいです。  500兆円の2%ですから10兆円のGDPギャップがあります。ことしの1月に補正予算を通しましたけれども、その規模は3兆円ですから、GDPの0.6%です。これでは明らかに少ないわけで、選挙もありますから、恐らくその前に経済対策を見せるという、これは政府の見解でも何でもなくて私の見解でありますけれども、そういうプロセスに入っていくのであろうと思います。そのときに、どのように、そのお金を使うのか、今申し上げたようなインダストリー4.0等を意識したお金の使い方ができるかどうかということが問われるのではないかと思います。  先ほど、木曽先生が新しい教育の必要性についてお話をされましたけれども、マサチューセッツ工科大学──MITでよく使われる方針があります。これは、企業経営にも教育にも政策にも重要な標語だと私は思いますけれども、コンパス・オーバー・マップスという言葉があります。地図は重要ではない、地図よりもコンパスが重要なのだということなのです。地図はすぐ使えなくなります。第4次産業革命の中では、今までの産業地図は使えない。今までのマッピングではない、そういう意味では、地図に頼るのではなくて、コンパスに頼っていろいろな政策や経営をやっていかなければいけないということなのではないかと思っております。  ちょうど30分、話をさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)  (8) 休憩  午前11時33分  (9) 再開  午後1時 3: ◯張参考人 初めまして、福山大学の張と申します。このたびはお招きいただきまして、心から御礼申し上げます。  私は、1993年に来日し、留学生として日本の近代化、そして近代化における伝統産業ですとか、在来産業、今で言うと地場産業の歴史的な役割に関する研究を進めております。そういう中で、15年前から備後地域とかかわりを持つようになりました。そして、現在、私の研究分野は日本経済史、日本経営史、そして地域産業史です。そういう立場から、きょうは主に歴史的な観点で、地域経済の集積というものに関して、私の考え方を申し上げたいと思っております。  日本経済の歴史としましては、2017年で開国からちょうど150年になります。日本経済を振り返ってみますと、日本の地域経済構造は、明治、大正時代、地方が日本の近代化を下支えしていました。そして、日本経済は、特に大正時代になりますと、徐々に地域経済構造が大きく変ってまいります。  どういう方向に変わったかというと、皆さん御存じのとおり、中心的な構造、垂直的な分業構造、もっとはっきり申し上げますと、東京一極集中構造に向かっていくわけです。これは別に明治期からそういうふうになったわけではなく、主に大正後期以降、1920年代に入ってから東京一極集中構造に向かっていき、戦後になって、急速にそういう構造になっていくわけです。大都市においては、大企業の本社、地方都市においては、現場機能としての工場が分散して立地するというものでした。  そういう中で、とりわけ戦後に言われてきたのは、そういう階層的な地域経済システムや経済構造の中で、特に地方経済の断片的な経済化というものが非常に深刻化してくるということです。
     近年、安倍政権で地方創生を打ち出されており、新しい言葉のように聞こえますが、実は戦後からずっと取り組まれてきた古い問題で、なかなか改善は難しいというのが現状なのです。  そうした日本の地域経済構造を踏まえて、きょうは主に備後地域に着目して、備後地域のものづくりのダイナミズムについて、主に私の歴史研究の成果を紹介しながら話を進めさせていただきます。  備後地域のものづくりのダイナミズムに注目すること、近年私が申し上げている備後モデルの意義について申し上げますと、先ほどお話ししました東京一極集中の中で、いわゆる地方経済、地域経済は、他律性が非常に強く志向されているわけです。これは戦後からずっとですが、そういう中にあっても、備後地域では自律性が失われていないということなのです。自律性を失わず、持続的なイノベーションを志向している地域企業は、非常に高い革新性を持っているわけです。そして、それを基盤に、独自の地域産業集積が形成されてきて、非常にダイナミックな展開を見せてきています。これは、ここ10年、20年の話ではなく、戦前からの動きなのです。  私は100年スパンで分析しておりまして、基本的に備後地域は明治末期からずっとこういう持続的なイノベーションが続いておりました。そして、そこには高い革新性と独自性の基盤があったわけです。  では、ここで他律性について申し上げますと、例えば、千葉経済大学の安東誠一教授は、戦後の日本地域経済構造について、発展なき成長という言葉であらわしています。他律性に対する強い志向というものは、備後地域も免れるものではなく、他律性に対する強い志向が見られます。その典型的な例として挙げられるのが、日本鋼管の現在の福山進出です。  資料の出荷額の表を見ていただきますと、1960年にはまだ日本鋼管はなかったのですが、1975年になりますと、日本鋼管福山製鉄所を中心とする鉄鋼業によって出荷額が一気に高まり、15年間で122倍に拡大していくわけです。これは全て日本鋼管の影響です。そして、1975年から2013年の38年間では1.4倍しか拡大していないわけです。  いずれにしても、日本鋼管を中心とする戦後の量的拡大の追求、これは別に日本鋼管を批判しているわけではなく、地方経済が日本鋼管に依存しているところに大きな問題があるということです。  もう一つは、日本鋼管は、地元企業とのつながりが極めて弱いということなのです。そこにも大きな問題があります。  例えば、もう古い話になりますが、日本鋼管の所在地である福山市が1984年に財政危機に陥りました。多分皆さん御存じだと思いますが、1984年度に財政健全化5カ年計画を打ち出しました。そこから徐々に回復に向かっていったのですが、そこで打ち出された政策は、この日本鋼管への依存から脱却して、経済構造、地域構造をつくり直すというものでした。残念ながら脱却できていないというのが現状なのですが、これは、また後で申し上げますが、こういう他律性に対する強い志向が続く中で、どこを見て地域経済の政策を実施するかといいますと、この自律性の部分をより重視するということです。この自律性の部分は、先ほど申し上げたように、地域企業の持続的なイノベーションへの志向と高い革新性を基盤とする独自の地域産業集積の形成が見られたということです。  私は、こういう独自の地域産業集積を縁の下の力持ちの集積と名づけたいと思います。これはどういう意味かといいますと、備後地域の企業は知名度が極めて低いのです。若い層も含めです。例えば、私は福山大学で教鞭をとっているのですが、学生に聞いても日本鋼管の名前しか出てこないわけです。そんなことではだめなのです。  詳細は後で申し上げますが、私はフィールドワークを重要視しておりまして、地元の中小企業や大企業100社以上を回らせていただいております。そこで感じたのが、縁の下の力持ちの集積という言葉が一番適切なのではないかということであります。  つまり、この地域の多くの企業は、明治・大正以降の大衆消費社会をずっと下支えしてきたのです。  そして、グローバル時代に入ってからも、グローバル経済を下支えしているにもかかわらず、ほとんど知られていない。そういった知名度の低さを逆手にとってあえてこの名前をつけたわけです。  例えば、下の表を見ていただきますと、これは集積の一般的な指標の一つとしてよく使われる従業員数特化係数です。1.01あるいはもうちょっと高目に見ていきますと1.1以上ですが、余り詳細に御紹介できないのですけれども、1975年以降になりますと鉄鋼がずっと第1位なのです。  では、日本鋼管しかないのかというと、実はそうではないのです。例えば、日本鋼管が進出する前の1956年から、造船業を中心とする輸送用機械が、これは今でもあるわけですが、ずっとランキングには出てくるわけです。それから衣服、アパレル関係、それからもう一つは木材、家具、これは府中を中心とする高級婚礼家具のことです。そして、もう一つは機械関係です。実は、このように多様な地域産業が登場してきているということなのです。残念ながら、こういう多様性が全て日本鋼管の背後に隠れてしまって、非常に見えづらい構造になってしまっている。したがって、そういう意味からも、縁の下の力持ちという言葉を使っております。  15年ぐらい私が取り組んでいる研究を御紹介申し上げます。木工それから機械工業の2つにつきまして、簡単に御紹介させていただきます。  まず、木工産業のダイナミックな集積ですが、この研究の集大成として資料の下に図がありますが、基本的に備後地域の木工産業というのは、松永の塩業から副次的に発生したものなのです。そこから下駄産業が始まって、そして、明治後期から戦後の昭和30年代までずっと伸びてきたわけです。これらは大衆消費社会をずっと下支えしてきたという意味でも非常に重要なのです。  ここで注目していただきたいのは、下駄産業において育成されてきた関連産業です。この関連産業とは何かというと、木材加工、製材加工、それから、木工機械メーカーでして、全国でも非常に有名なメーカーが次から次へと出てくるわけです。  例えば、正木鉄工、この会社は明治後期の創業なのですが、主に松永の下駄産業に機械を供給しております。それから、クラステックという会社もそうです。それから、シーケイエス・チューキ、これは昔の中国機械製作所です。もう一つ有名なのは桑原製作所です。残念ながらこの2つの会社は、バブル崩壊後に倒産しました。倒産はしたのですけれども、シーケイエス・チューキは、福山熱煉工業が見事に再建しました。それから、桑原製作所に関しては、もともとここの下請だった企業が特許等の全ての権利を買い取りまして、これが今の西丸工業です。こういうふうに、下駄産業にかかわる産業が、後の機械工業につながっていくわけです。  昭和30年をピークに下駄産業が衰退していくのですけれども、そこから台頭してきたのは、府中の高級婚礼家具でした。先ほど申し上げた機械工業のメーカーも、下駄産業が衰退していく中で、府中の家具産業に向けてつくるようになっていきます。  もちろん、府中だけではなく全国に向けて、明治、大正、昭和の戦前期から高度成長期、安定成長期にかけて、これは備後地域に限ったものではなく、木工産業が、広島県、福岡県、大分県、静岡県、徳島県を巻き込む形でダイナミックに展開していったという部分に、非常に大きな歴史的な意味があるということなのです。そして、現在でも大きな資産や経営資源が残っている。バブル崩壊以降、集積規模は大きく縮小しましたけれども、経営資源は全て健在なのです。この転換についてはまた後で申し上げます。  次は、機械工業です。機械工業に関しては、オンリーワン、ナンバーワン企業が注目されていますけれども、オンリーワン、ナンバーワン企業が備後地域で創業、立地していることには関心が向けられていないのです。そうなると、地域経済の底上げが実は非常に難しいということなのです。  資料の下の表を見ていただきますと、備後地域の知名度が低いのは、備後地域のものづくりがだめだということなのか、それとも、ただ不当に扱われてきたのかということなのです。長岡、諏訪、浜松地域と比較しながら見ていただきますと、1960~2006年の間に事業所数、従業員数、製品出荷額、付加価値額の全てが増加しています。機械工業1)と機械工業2)に分けているのは、日本鋼管を中心とする鉄鋼業による影響を除外して、客観視したいということです。そこで、機械工業の右側を見ていただきたいのですが、事業所数、従業員数、製品出荷額、付加価値額が増加しているわけです。  そして、最も注目したいのは付加価値生産性です。いわゆる労働生産性が極めて高いのです。とりわけ1975年以降、地方の機械工業地帯、長岡、諏訪、浜松を大きく凌駕しているというところに大きな意味があるわけです。それから、出荷額に占める付加価値額の比率ですが、これも非常に高い水準なのです。これは、精密機械を中心とする諏訪地方と並ぶ非常に高い水準を見せているわけですが、備後地域は知名度が低いことから、こういう非常にすばらしいところが余り強調されないことは極めて残念です。  では、備後地域の機械工業が著しく成長してきた要因はどこにあるのかということなのですが、日本鋼管を頂点とする企業城下町の論理、あるいは日本鋼管の誘致のみにその原因を求めることはできないということなのです。どこに原因があるのかというと、地域中小企業、中堅企業を中心とする労働生産性の向上と高付加価値製品の創出に対する長期的・持続的な取り組みを支えている、地元で独自に形成されたメカニズムが強く作用してきたという部分に原因を求める必要があるということが示唆されているわけです。  どういうメカニズムかというと、丘陵型分業構造という言葉なのですが、その前にまず5ページを見ていただくと、これは立地の変化をあらわしたものです。主に福山地区の立地の変化ですが、私は先ほどから申し上げているように100年スパンで見てきているのですが、これは1909~2010年にかけての100年間です。その間の立地の変化なのですが、基本的に1950年代までは、機械・金属工場の立地の中心地は三之丸町、野上町、草戸町のあたりです。つまり、今の福山市の中心市街地です。1950年代、60年代まで工場が極めて多かったのですが、そこから徐々に分散していくわけです。どこに分散するかというと、山手町とか、千田町あるいは御幸町、箕島町や箕沖町といったところに分散していくのです。もう一つは、表の下のほうですが、1970年代になりますと東部地域は大門町とか鋼管町が急速にふえてくるわけです。その多くは、日本鋼管の関連企業の進出や創業なのです。それが現在まで続いているわけです。  簡単に紹介しましたが、こういうふうに地域の工場が中心市街地からダイナミックに分散していきました。しかし、分散が進んだからといって、企業間関係、ネットワーク、取引関係が弱くなったかというとそうではなく、むしろ強化されていくわけです。それを支えるのは何かというと、歴史的に形成されてきた分業構造なのです。丘陵型分業構造という言葉は私が名づけたものなのですが、この分業構造という言葉がどこから来ているかというと、慶應義塾大学の渡辺幸男教授が1990年ごろに山脈構造型社会的分業構造という言葉をつくられました。資料の図を見ていただくと、従来のような完成品生産企業を頂点として、その下に、1次下請、2次下請、3次下請という、いわゆるピラミッド型の下請取引構造とは違うものなのです。つまり、頂上がたくさんあるというところに大きな特徴があるのです。  例えば、頂上に巨大企業、大企業が位置づけられ、その下には頂点にある巨大企業、大企業に部品を供給する部品メーカーがあって、山腹部分に中小零細企業が幅広く位置づけられているわけです。とりわけ下の部分というのは、底辺産業と言われる部分なのです。この渡辺教授の構造図というのは、基本的に八ヶ岳連峰をイメージしていただけるとわかりやすいと思います。そういったものをイメージしてつくられた構造図でありますが、問題点もございまして、この構造図は京浜地区、はっきり申し上げますと大田地区を中心とした構造図なのです。したがって、この図で地方企業や地方経済を見るというのは問題なのです。地方経済、地方企業、地方の機械工業もこの構造図で捉えるとなると、全て京浜地区の一部として認識されてしまうということなのです。そうすると、地方経済の独自性はどこにあるのかということが非常に不明確になってしまいます。もう一つは、地方機械工業集積の構造的な特徴や独自性が見えにくいということです。主な問題点はこの2点です。  備後地域を見る場合は、備後地域の地方企業、地域企業が主体であるということで、この丘陵型分業構造を申し上げました。つまり、八ヶ岳ではなくて丘陵なのです。  考えてみますと、地域で一番大きな企業は日本鋼管ですけれども、日本鋼管は地域企業との関係が非常に弱いのです。シャープも今、非常に厳しい状況に置かれていて、従業員数は非常に少ないのですが、それでも3,000億円ぐらいの規模です。それ以外には、三菱重工三原製作所があります。結局、中心となる大企業として非常に多様な地域企業、地元企業を位置づけることができるわけです。簡単に紹介させていただきますと、ホイストやクレーンについては日本ホイスト、工作機械となると広島県内では広島地区よりも多いのです。例えば、ホーコスであったり、シギヤ精機製作所、元久保工作所やファースト技研、山陽マシン、それから福山産業などが挙げられます。大体年商で言いますと5億円から200億円ぐらいまで、丘に例えると非常に小さい丘でほとんど見えない程度のものです。200億円の丘でも、3兆円のマツダから見ると、もう全然何とも思われないし、目立ちません。もちろん日本鋼管から見ても非常に低い丘です。  しかし、そのほかに、例えばポンプだったらテラル、印刷機械だったらリョービと三菱重工が出資した企業もあります。建設機械では北川鉄工所、平盤打抜機では、これは非常に特殊なものですが、三和製作がございます。食品機械となりますと、フジイ機械製作所や備南工業、光陽機械製作所ですが、こういった企業は、全て10億円前後の売り上げです。このように売り上げは高くないけれども、実は、大手企業にとって欠かせない企業なのです。先ほど申し上げた工作機械もそうですし、ポンプや印刷機もそうです。それから、農業機械となると、佐藤農機鋳造があります。木工機械では、先ほど申し上げた企業がまだ現存しています。それから半導体の搬送装置となるとローツェ、あるいは包装機械になると古川製作所があります。  では、そういった企業は100%全部自分の企業の中でつくり上げているのかというと、実はそうではないのです。この備後地域の丘陵型分業構造の大きなダイナミズムは、まさにそこにあって、丘の中腹部分、それから丘の山腹部分には、鋳物であったり板金であったり溶接、メッキ、熱処理、塗装、鍛造、プレス、機械加工といった非常に広い裾野が広がっているわけです。これは全て明治、大正以降、徐々に形成されてきて、その上に、この丘陵型分業構造が形成されてきて、それがこの地域の多様性を支えているということなのです。  最後に、少し視点を変えて備後地域全体の状況を俯瞰してみたいと思います。備後地域の経済を支える独自のシステム、独自の構造が歴史的に形成されてきて、それが現在どういう状況にあるのか、そして、これからどういうふうにしていくべきかということを考えてみたいと思います。  備後地域全体の地域構造を俯瞰して見ますと、資料の下の図を見ていただくとわかりますように、全体として集積規模は縮小に向かっていて、これは当然なのですが、事業所数も従業員数も大きく減っているのですが、実は出荷額は上昇しているのです。  ここで注目したいのは、付加価値額全体、あるいはその付加価値率です。地域を支える付加価値そのものは90年代以降急落している状態です。その最大の原因は何なのかということなのですが、先に少し付言しておきますと、長岡、諏訪、浜松と比べた資料がありましたが、これには2006年までしか出していないのですけれども、2013年について申し上げますと、備後地区の付加価値生産性額は1,030万円です。長岡地区は853万円、諏訪地区は1,187万円、浜松地区は1,416万円、全国は1,366万円で、付加価値率は、備後地区は32%です。そして、長岡地区は37%、諏訪地区52%、浜松地区は46%、全国は34%です。つまり、リーマンショック以降ずっと回復し切れていない状況なのです。主要機械工業地帯と比べても著しく低い水準にあり、全国平均も下回っているということなのです。最大の原因は福山市における付加価値額の激減にあるということです。備後地域全体出荷額の約6割を占めてきたわけですが、付加価値額は激減している現状なのです。  そこで、どういう対策が考えられるかということですが、私は専門外なのですけれども、歴史的に蓄積された資源の観点から申し上げますと、こういった縁の下の力持ちの集積がある。しかし、それを見える化しないとだめなのです。つまり、日本鋼管などの大企業の後ろに隠れて支える存在を見える化し、さらに強化していく、例えばデータベースを構築する、あるいは研究調査、人材育成、産学官連携、これは一般論になるのですけれども、いずれにしても縁の下の力持ちの集積という産業構造そのものをもっとアピールし、見える化してさらに強化していかないと、人材は流出し、定着しないわけです。そして、創業も活発化しない、高付加価値産業も創出されないということです。さらに、グローバル展開もおくれてしまうという悪循環を食いとめるためにも、こういった縁の下の力持ちの集積に着目し、政策を重点的に打ち出していただきたいというのが私のお願いでございます。  ありがとうございました。(拍手) 4: ◯鹿嶋参考人 皆さん、こんにちは。お招きいただきまして、ありがとうございます。  昨年の12月3日、総理はCOP21でパリにいらっしゃって不在でしたが第4次男女共同参画基本計画を答申いたしました。この基本計画は男女共同参画基本法に基づいて5年ごとに見直しを行っているものです。  そして、12月25日に閣議決定していたただいたということです。第4次計画は、来年度から2020年度までの計画でして、2020年度といいますと東京オリンピックの年ですが、もう一つ私どもの専門分野で言うと、202030と言いまして、2020年までに指導的地位の女性が3割になるようにする、これは厳密に言うと期待するということなのですけれども、そういう年であります。  そのようなことも含めて、私どもは第4次計画を策定したわけですけれども、第1次から第3次と比べると大分違っているところがあります。私自身は第1次計画から策定に携わっております。第1次計画は1999年に、当時の小渕総理から諮問を受けたものです。第3次計画は諮問と答申の相手が違っております。諮問を受けたのは、当時与党だった自民党の麻生総理で、答申は民主党の菅総理でした。第4次計画については、安倍総理から諮問を受け、安倍総理に答申したということです。  いろいろと流れを見ていますと、やはり一番厳しかったのは第2次計画です。第2次計画のあたりは、男女共同参画に対するいわれのない反発といいますか、多分これはイデオロギーと結びついていたのだと思うのですけれども、男女共同参画は家族を否定するとか、結婚を否定するとかというようなこと、それからジェンダーフリーのジェンダーという言葉が批判の対象となり、フリーセックスといったものと結びつけられたりして、それを打ち消すのに私たち委員は大変な苦労をしたところですが、第4次計画につきましては、女性の活躍を主流にしていますので、そういう意味で策定しやすかったです。  ただ、女性の活躍と男女共同参画とは全く別物ですので、そのあたりの違い、逆に言うと、女性活躍推進法が成立したことによって、男女共同参画は援護射撃を受けているわけです。そこがどうなっているのかといった話をしたいのですが、もう一つの問題は、どの計画においても底流に流れているのは、男女共同参画の視点というものなのです。これはいろいろな訳語が出まして、男女格差の是正や、いわゆる女だから男だからといった性別による取り扱いをしないとか、いろいろなポイントがあるのです。  第4次計画にもこの男女共同参画の視点が入っているのですが、第3次計画までと大きく違う点は、男性中心型労働慣行の変革というところに最もポイントを置いたということです。要するに、第4次に至るまでの中で、計画期間が5年ですから20年目に入るものを我々は策定したわけですけれども、男女共同参画社会が本当に形成されたのかどうかといったことを考えると、私どもの議論の中では、道まだ遠しという印象でした。  では、どうすればいいのかということで、男性中心型労働慣行を変えざるを得ないということと同時に、固定的な性別役割分担意識も解消すべきだということで、その一つが資料に赤で示しておりますように全政策分野の横断的視点に位置づけたということです。これは初めてのことです。政策は全部で第4次計画は12分野あるのですが、今回被災地の復興の問題なども独立した分野で取り上げ、さらに全てにわたって男性中心型の労働慣行という視点を入れております。  男女共同参画の視点についてもう少しお話しします。非常にかたく言うと、社会的・文化的に形成された性別、これをジェンダーというわけです。ジェンダーに対抗する概念としてはセックスという概念があり、これは生物学的な性別です。それにとらわれずに、男女が自分の個性、能力を十分発揮できることだと、これは1998年に中央省庁再編前の男女共同参画審議会が答申したものです。  この言葉を説明するには何が一番いいかと思って考えたのですが、私は内閣の監視専門調査会、すなわち政府の男女共同参画行政をチェックする役目を担っている調査会の会長をしているのですが、災害時の問題について被災地でヒアリングを行いました。そのとき、非常に印象に残っているのは、被災地にたくさんの男女が来るのですけれども、ある人が大きな声でこういうことを言ったのです。「こういうときは男も女もない、人間としてみんなで助け合おう」ということで、仕切りなどをみんな取ってしまうのです。そして人間として皆助け合うということなのですが、これは言葉としてはなかなかいいわけですけれども、男と女は生物学的に違うのです。例えば、お母さんの中には授乳する人もいる。それから、男であったら上半身裸になって、てぬぐいで汗を拭いてもそれは許される。ところが、女性の場合には生理もあるということで、やはり男性と女性の違いというのはどうしてもあるということなのです。  ところが今、ああいう中で大きな声を出せる女性の自治会長は5%ぐらいなのです。私どもはそれを10%にするということで、今回目標の中に入れております。被災地の問題一つとっても男女共同参画の視点が大事であって、そのためには、やはり女性の自治会長がもっとふえるべきだという考えです。  男女共同参画の視点という言葉は、古くは1996年に男女共同参画ビジョンを男女共同参画基本法をつくる前に出しているのですけれども、その中に入ったものです。ここまで基礎知識として紹介しました。  男女共同参画と女性活躍推進の関連についてですが、このあたりは皆さんも御承知のとおり、なぜ女性活躍推進なのかということなのですが、これは昨年9月に閣議決定された文書の引用です。  一つは、これからの、労働力の不足について、政府もかなり懸念しているのだろうということです。2060年になると、我が国の人口は1億人を切り、9,000万人弱になってきます。そうなってきますと、だれが労働力としてこの日本という国を担っていくのかということなりますけれども、大きくは3つあります。  一つは高齢者、それから外国人労働力がいます、それからもう一つは、女性だと思うのですけれども、高齢者につきましては、私も昨年で古希を迎えましたが、自分の体調を考えても、労働力としてこれから支えられるかどうか余り自信がありません。そうなってきますと、高齢者を中心とした労働力は、いま一つだという問題があります。それから、外国人労働力というのも、やはりまだ外国人が来て日本で労働力として定着することについての定見がないような気もします。  そうなってきますと、やはり女性の労働力が、今後この国を支える大きな存在になるのではないかということで、今、政府が女性活躍推進を大きく標榜しているわけです。  では、その女性活躍推進の性格は何なのだということですが、少し前までさかのぼって分析したのが、資料の6ページのところです。女性活躍推進とは経済施策です。これは、安倍政権で言い出したわけではなく、2012年6月に、民主党政権が、働くなでしこ大作戦を始めます。女性の活躍推進による経済活性化行動計画といいまして、ポイントを3つ挙げております。男性の意識改革、思い切ったポジティブアクションと、それをまず公務員からやるのだということなのですけれども、民主党の働くなでしこ大作戦は12月まででした。11月に衆議院が解散され、12月の衆議院議員選挙で政権交代しましたので6カ月間のものでしたが、ここでのポイントは、経済政策だということでございます。  現政権はどうなのかということなのですけれども、安倍政権も女性の活躍推進は経済政策であるとしています。これは総理自身が2014年の文芸春秋で、はっきりとお書きになっている。すなわち、女性活躍は経済政策なのだということを私どもは理解しておく必要があるのです。  安倍政権がいつごろから女性活躍を言い出したのかということなのですが、2013年に日本再興戦略を発表されましたけれども、日本再興戦略の中に、雇用制度改革、人材力強化、その一つに女性の活躍推進という項目を設けました。これは一つのパーツだったのですけれども、2014年の改訂版ではこの女性活躍推進を前面に押し出してきます。この時点で女性活躍推進法が念頭にあったということが言えると思うのですけれども、要するに我が国最大の潜在力である女性の力を最大限発揮する効果とはということで、資料に3つ書いてあります。人材の確保、それからいわゆる多様な価値観、男性だけで企業活動するのではなくて、そこに女性がまじることによって新しい価値観、それに伴うイノベーションもあるだろうということです。3番目として、家庭や地域の価値を大切にすることで社会全体に活力を与えるのだということです。  そういう中で、昨年8月に女性活躍推進法が成立するわけですが、女性活躍推進法と、私がずっとかかわってきた男女共同参画社会基本法の関係ですけれども、これは親子の関係だと言えると思います。ちなみに男女共同参画社会基本法の制定は1999年です。それから、女性活躍推進法は全面施行が、この4月1日ということになるわけですけれども、その第1条に、なるほどと思うことが書いてあります。この法律は、「男女共同参画社会基本法の基本理念にのっとり」と書いてあるのです。  ということは、女性活躍というのは男女共同参画社会基本法がそのベースにあるのだということになります。そして、みずからの意思によって職業生活を営むことの大切さというのは改めて後で説明したいと思いますが、では、その基本理念とは何だということになります。  女性活躍推進法に基づく事業主行動計画策定指針に、男女共同参画社会基本法にのっとりとは何かという説明があります。これは、男女共同参画社会基本法の第3条から第7条を指すのだそうです。第3条から第7条というのは、男女共同参画社会基本法の基本理念を書いた部分です。第3条は、いわゆる人権の部分で、男女の個人としての尊厳です。個人としての尊厳の上に男女とつけてあるのは、特に、性に起因する人権侵害を想定しております。これはセクハラとか、いわゆる男性から女性に対するバイオレンスの問題が想定されています。  男女が性別による差別的取り扱いを受けないことというのは、直接差別と間接差別の両概念が入っております。  男女が個人として能力を発揮する機会が確保されるということ、これは第3条です。  第4条は、我が国の制度・慣行が、たとえば共働きの増加に対して十分に対応できていない、社会中立的でないということなどで、これは、いわゆる配偶者控除の問題とか、社会保障制度の問題の部分が想定できると思います。  第5条は、国もしくは地方公共団体における政策、または民間の団体、企業における方針の立案・決定過程への女性の参画ということで、この目標の一つとして、202030──2020年までに指導的地位の女性を3割程度にするということが言われるわけです。  基本法で一番画期的だったのは第6条です。第6条は、家族を構成する男女が、相互の協力と社会の支援のもとに子の養育を行うということなのですが、それまでのイメージですと、家庭は女性の役割だということがよく言われたわけですけれども、それを真っ向から否定したのがこの第6条です。家族を構成する夫婦ではなくて男女としているのは、事実婚を想定しているわけです。ですから男女という言葉が使われております。  この第3条から第7条が、女性が活躍する上でのベースになるということを、ぜひ理解していただければと思っております。  この第4次計画の目指すべき社会ですけれども、この目指す社会というのは第2次計画から入れているのですが、この第4次計画では次の4点を掲げました。  冒頭に、男女がみずからの意思に基づいて、個性と能力を十分発揮できる云々ということですが、これが第4次計画の中の一つのポイントであると思っています。みずからの意思ということの大切さ、これは基本法の第2条にある文言ですけれども、私が冒頭に申し上げましたように第2次計画の策定のとき、いわれのない批判を受けたこともありました。今は、女性活躍推進の時代ですが、女性はみんな社会で働けと言っているのではないかなど、いわれのないようなことをまた言われかねませんが、これは違うのだと、みずからの意思でということで、例えば、私はしっかり働くけれども、子供が産まれたら一旦家庭に入り、そして手が離れたらまた就職したい、それがみずからの意思であれば、それはそれでいいのです。  それからもう一つ、例えば、私は結婚はまだいい、それよりキャリア形成で全力投球したい、それもみずからの意思であればそれでいいと、やはりそのあたりをきちんとしたいということで、資料1)にあるような「男女が自らの意思に基づき」ということであれば、多くの人が自分の意思に基づいた、ライフ設計ができるわけです。そのような時代でなければまずいのだと思うのです。  女だからとか男だからということで、性別によって生き方を固定化されることは、相当つらいことだろうと思っております。  それから、男性中心型労働慣行の変革が全施策の横断的視点として基本計画の中に盛り込まれているということ。この男性中心型労働慣行とは何かということですが、長時間労働を想定しています。長時間労働と全国転勤、いわゆる正社員型の労働です。今、正社員型の労働は、ほぼ男性の独占状態です。総務省の調査では、非正規雇用率は、男性は2割です。男性の8割は正社員なのです。女性の55%ぐらいは非正社員ですから、女性の正社員は、5割を切って、45%ぐらいです。  そうなってくると、男性中心型労働慣行の社会というのは、女性活躍とは言いながら、女性が活躍するのはパートで、非正規で活躍するのだという誤解も与えかねません。そうなりますと、長時間労働等をベースにした男性正社員型労働と、その結果出てくる女性非正規雇用を中心とした女性の労働のあり方自体を見直す必要がある。それが働き方の改革になるのです。その前提になるのが、ワーク・ライフ・バランスの問題だろうと思います。と同時に、固定的性別役割分担についても解消していく必要があるということなのです。資料は、第2次計画と第3次計画の目標を書いたものですが、これは、参考にとどめておいていただければと思います。  まとめになりますけれども、男性中心型労働慣行にメスを入れたということで、それは何かということの説明がそこに書いてあります。根っこに固定的性別役割分担意識があるのですが、この固定的性別役割分担意識の解消ほど難しいものはないと、私は思っているのです。  固定的性別役割分担というのは、男が外で働き、女が家庭という概念なのです。これについての支持率の歴史的変遷を見ますと、昭和40年代は、支持率がどのぐらいだと思いますか、男女ともに8割です。当時の総理府の調査を見ると、男女ともに支持率が8割なのです。1999年に男女共同参画社会基本法が成立しますが、2000年にその支持率がどのぐらいかというと、2割に落ちました。そして、今どのぐらいかというと、4割です。男女ともに支持率は4割で、これは欧米先進国に比べて極めて高いです。要するに、固定的性別役割分担意識というのは、経済状況によってかなり変動するということです。  今急に高くなってきているのは、2008年のリーマンショック等の経済不況があった中で、今、非正規雇用がかなり多くなっているわけですから、やはり女性は稼ぎのある夫を見つけなくてはいけないという意識がどこかにあるのでしょう。女性はサポート役という印象が多分あるのだと思うのです。そうなってくると、固定的性別役割分担意識の解消は難しくなってきます。やはり男女共同参画型の社会というのをつくらざるを得ないのだろうと思っております。  そういった社会が本当にできるのだろうかということなのですが、内閣府の調査などを見ますと、20代、30代ではむしろ女性のほうが保守的な考え方をする割合が高いのです。子供ができたら一旦家庭に入ることへの支持率は、男性よりも女性のほうが多いのです。やはりそのような不況等を乗り越えていく中で、男が外、女が家庭という役割分担を全否定することはないと思う女性たちもいるのです。  ですから、これは経済状況などによって大きく変わってくる可能性がある。ただ、それも変えざるを得ないということで、この資料は事業主行動計画の指針から引用しました。これは私が携わった男女共同参画基本計画ではございません。事業主行動計画で女性活躍について定義をしておりますが、その中で非常に画期的なのは、なぜ男女間に事実上の格差が残っているのかということについて、固定的な性別役割分担意識を冒頭に挙げていることです。女性活躍推進法が、そして長時間労働の働き方、これは私どもが今回たどり着いた結論と全く同じです。私ども内閣府と厚生労働省の女性活躍推進チームが合同でこの問題を協議したということではありませんが、結局たどり着くのはここなのです。ここで、やはり問題なのは固定的な性別役割分担意識をどう考えていけばいいのか、そして現状を見るとどうかということです。  これは全部、政府文書からのデータですが、採用では約4割の企業が男子のみを採用している。私も昨年まで女子大で教鞭をとっておりましたが、あそこの会社は、最初から女子はとらないのではないかというようなことを訴える学生が結構いました。  それから、資料5、3割から4割に上る男性管理職が、男女の区別なく評価して昇進させるという基本的なことができていないということです。ということは、やはり企業で女性を昇進させるということに対して、もう少し客観的に、ニュートラルに判断できるような人材、特に役職者を育てていく必要があるのだろうと私は思っております。  そのほかにもいろいろありまして、資料7ですけれども、これはもうよく出る数字なのですが、女性の約6割が第1子出産を契機に退職しているという現実がございます。労働力不足が懸念される中で、これはやはりもったいないです。できれば、働きたい人には働いてほしい。ただし、先ほどから言っているように、みずからの意思で私は一旦家庭に入りたいという人は、それはそれで結構だと思います。  女性活躍推進に関する基本方針として、今回はこのようなことが言われていますが、特に資料の下の黒い四角にトップが先頭に立って意識改革を図るとありますけれども、このトップの意識が変わるということは非常に大事です。  実はことしになってから、神奈川県がかながわ女性の活躍応援団をつくって、トップは知事で、あとは各大企業の経営者が入っているのですけれども、基調講演してくれということで、引き受けました。強調したのはトップの意識改革です。この件については、最後にいろいろなデータを用意していますが、トップが今回の活躍推進においてのキーワードなのですけれども、そのトップに認識のない人がまだいるのではないかと思うのです。  この資料は、官邸で開かれた輝く女性応援会議を契機にした、輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会の行動宣言ですが、いいことを言っています。いいことを言うだけではなく、実行性を伴ってほしいと思っていますけれども、ようやくこういうことを、トップが言う時代になってきたということは進歩だと思います。  どのような課題が待ち受けているのかというと、女性の活躍推進法というのは女性のキャリア志向を順調に育てるということですが、実は、女性の非管理職志向というのは、民間の調査で、9割を超えているのです。要するに肩書がつくのは嫌だという女性が結構多いのです。特に、役所関係、地方自治体、私は都内で幾つかの区の会長をしているのですけれども、やはり昇進希望者が少ないのです。これはなぜかというと、固定的性別役割分担によって、家事・育児が女性の肩にのしかかっており、さらに役職もとなると働き続けられないということで、それならば偉くなる必要はありませんという人が多いのだと思います。  それから、いろいろな調査を見ますと、女性の意識がもっと変わってほしいというのですけれども、これも女性たちから言わせるとむしろ男性に変わってもらわないと困るということです。これもよくわかるような気もいたします。  次のような課題も噴出しているということで、資料にまとめています。男女共同参画は女性を優遇することなのか。私がいろいろなところで話すと必ず男性からこういう質問が出ますが、そうではないのだということです。格差是正の取り組みというのは、政府が認めていることなのです。  それから、女性が時間短縮勤務をとるようになって、負担が全部男性にかかってくるが、これは何とかならないかという不満も、実は男性から多く出ております。では、どうするのかというと、私はいつもお互い様意識ということで説明しています。お互い様意識というのは、男性自身もいずれ介護で休むようなこともある、であればお互い様だろうということで、基本は、固定的性別役割分担意識を変えるということなのですけれども、これも一朝一夕には行かない問題ではあります。  最近、トップの女性観というのをいろいろな雑誌等を集めて調べております。これは「をんな」という明治34年に出た雑誌ですが、明治・大正期の知的エリートであった添田壽一さん、台湾銀行頭取や大蔵次官とかやった人なのですけれども、女性と男性が同一でない理由として4つ挙げています。  まず、身体上の差があるということがあります。2番目には知力上の差があると、これはおもしろいのですが、脳の重さが異なるというのです。女性の脳みそというのは357匁3分3厘、1匁を3.75gで計算しましたら、約1,340gです。それから、男性の脳みそは373匁3分3厘で、これが1,400gです。この60gの差が男と女の知的能力の差で、紫式部や清少納言は例外だというのです。  それから、精神上の差があるということは、いまだに言われています。女性は感情的で、起伏に富みやすい、冷静な仕事ができないということを言う人がいまだにいます。  最後に、任務上の差です。女性は分娩という一大任務を要すると、ですから独身の女性が多いのは歓迎すべき現象ではない、こういうことを言う人は今もなきにしもあらずなのですけれども、結局この中の添田さんの結論は、男子と女子は天然の相違があるものだと、それから、男子にできることは女子にもできるというのは誤りだと、女子の知力を過度に用いるのははなはだよろしくないということなのです。添田壽一さんの名誉のために言っておきますが、添田さんが変わっているのではなくて、明治・大正時代の女性感が反映されているのだろうと思います。  では、男女雇用機会均等法をつくった当時はどうなのかということで、これは当時の事務局のトップだった赤松良子さんが書いた本に、上司の労働大臣の発言があります。「女性は外で働いたりせず家庭にいるのが幸せ、職場に出ても、きちんと保護法で守ってやらなければならないかわいそうな弱い存在なのだ。それなのに、男女平等とかなんとか言って保護をやめるなんてばかげている。自分の回りにいる女性はみんな結婚したら家にいたいと言っている」というのが、均等法をつくった当時の労働大臣の発言だったわけです。  では、最後に、今はどうかということで、これはある財界トップが、ある座談会で、こういう趣旨のことを言っていました。「男女に能力差はない」、これはそのとおりだと思いますが、ここからが違います。「ただ性による役割の違いはあり、女性に向いている仕事、男性に向いている仕事はある」という、ここなのです。これが、先ほどから言っている固定的性別役割分担の問題になってきます。  皆さんがこうお考えになるのは御自由です。ただ、それは、プライベート、家庭内にとどめていただきたい。家庭内で紛争が起きるかもしれませんけれども、これは、パブリックな場で言うことではない。女性に向いている仕事があって、要するに性による役割の違いがある、結局女性は感情の起伏に富んでいるから余り高いポストの管理職はできない、受付のような優しい感情で対応できるような仕事がいいとか、結局そういうことになるのです。それで、決断を要するような重い仕事というのはどうしても男性のほうにいってしまうということなのです。  私の結論ですが、性に基づいて、仕事に適・不適があるという発想をしている限り、女性活躍などありませんということなのです。ですから、この問題はぜひプライベート、御家庭の中で解決してください。ただし、その場合離婚されても私は知りませんけれども。今の女性たちは、こういうトップ、上司の考え方を、すぐに見抜きますので、やはりそこまで突っ込んで、考えていただきたいと私は思っております。  今回、冒頭に申し上げましたように、男女共同参画基本計画の中で、いわゆる企業中心社会を変えていくということは、結局男女平等なんて、企業のあり方を変えないとだめなのだということ、それから固定的性別役割分担の問題も何とかしようということは、やはり私たちがこの20年間で、基本法が制定されてからは17年ですけれども、その中でたどり着いた一つの結論であると思っております。男女共同参画がようやく認知されたのは、喜ばしいことだと思っていますし、それは一つにやはり女性活躍が主流化したためだと思っています。  私のかかわっている自治体では、男女共同参画関連の予算が6倍にふえました。その大半は、女性活躍推進関連予算です。男女共同参画自体が、この社会の中に徐々に定着していく、要するに男性優位の社会自体が、崩れているような気もいたします。  皆さんは、私と同じような年代だと思います。私はたまたまこういうことをなりわいにしているからこういうことが言えるのであって、家に帰ればまた別の発言が出るかもしれませんが、ただ、皆さんもパブリックな場では、ぜひ、男女共同参画の視点を持っていただいて、広島県からまずそれを日本に広めていただきたいとお願いして、私の話を終わります。(拍手) 5: ◯河村参考人 ただいま御紹介いただきました、横浜市政策局共創推進室の河村と申します。よろしくお願いいたします。  本日は私ども横浜市の公民連携の取り組みを御紹介させていただく機会をいただきましたことを皆様にお礼申し上げます。  本日は、30分という時間でございますので、私どもの取り組みのほんの一部になってしまうのですが、横浜市は公民連携を長年続けておりますので、その位置づけや体制、また、考え方をお話しさせていただいた上で、特徴的な取り組み事例を中心に御紹介できればと思っていますので、よろしくお願いいたします。
     まず、基本的なところで、横浜市は日本最大の基礎自治体で、国勢調査で、およそ人口373万人、世帯数165万世帯、予算規模としては特別会計、企業会計と合わせておよそ3兆4,000億円という状況でございます。借入金残高は大分減ってきておりますが、それでもかなりあるというところです。市内総生産は12兆5,000億円というのがGDPベースの数値で出ております。  私は、初めて広島県に来たのですが、横浜市庁舎と広島県庁舎の形が非常に似ているので親近感があったのですが、このようなところで仕事しております。  まず、横浜市の現状をお話ししないと公民連携のお話もできませんので、簡単にお話しいたします。私も政策局所属ということで、いろいろと計画を策定しておりますが、横浜市の中期4カ年計画2014年の中から抜粋して大まかにお話しします。  まずは、横浜市を取り巻く状況として、人口構成バランス、全国的に同じような状況ではございますが、2025年までに子育て世代が25万人減る、就業者も5万人減る、高齢者人口が子育て世代とひっくり返るぐらいにふえまして、およそ100万人になるだろう、300何十万人のうちの100万人が高齢者ということで、私どもとしても大きな課題だと思っております。  また、都市を取り巻く環境の大きな変化がございまして、横浜市は高度経済成長期に100万人、200万人と一気に人口がふえましたので、都市インフラ老朽化がこれから一気に来ます。ですから、そちらが最大の問題の一つ、また、都市間競争力、横浜市は、北部のほうは人口がふえているのですが、南部のほうは人口が減っている状況で、郊外の活力が低下している。こちらも少子・高齢化につながっております。あとはやはり自然災害の備え等、非常に課題が多いという状況であると認識しております。  そのような中で、横浜のまちづくり戦略としましては、こうした状況への対応として、人も企業も輝く横浜ということで、企業、民間の皆様に輝いていただくという目指すべき姿を持って戦略を立てております。  この戦略の中身を逐一御紹介はできませんが、このようなことをやっていくという中期計画の特徴としまして、未来・創造・進化という3つの特徴を持っています。  未来は、未来を見せましょう。進化は、PDCAをやっていきましょう。当然のことなのですが、まさに特徴的なものが、創造です。中期計画のこの部分は、私が相当書いているのですが、オール横浜で、つまり民も官もあわせて横浜に携わる全ての皆さんの力を結集して新たな価値を創造、イノベーション、クリエーションしていく、そうしないと横浜は成り立たないだろうという認識のもとで計画を立てたという状況になっております。  中期計画の冊子の最初のほうに載っているのですが、これが2025年のイメージ図です。ここで御理解いただきたいのは、今までどおりの公共的な発注であるとか、官だけでやる仕事というのも大量にございますが、真ん中の細い矢印を見ていただくと横浜市の認識としては、行政のみでやった場合には、2025年までにここまでしか上がらないだろうというものです。本当はその上を目指したいわけです。この間の部分をどうするのかというと、全ての施策において民間の皆様と連携しない限り、達成はあり得ないという認識を持っておりまして、それが福祉であろうが、まちづくりであろうが、全ての施策において民間と連携することによって、不可能なものが可能になるのではないかという発想を持っています。  横浜市は日本最大の待機児童のまちだったのですが、新聞報道等でごらんいただいていると思うのですけれども、一時的にゼロになったのも、まさに民間の力を取り入れて3年間で一気にやったという形でございまして、まさに代表的な取り組みだと思っております。  それをするに当たり、私も所属しております共創推進室という公民連携の推進役となる部署をつくりました。ごらんいただいているとおり、さまざまな公民連携制度や手法を一括して所管しております。民間や行政内部からの相談、提案を受けてのマッチングやコーディネート、コンサルティングを行う公民連携のハブの役割をしています。  この部署のミッションが、既存の手法にとらわれない対話です。ここがポイントです。  民間と行政との対話を通じてイノベーションを生み出し、新しい価値をつくることをミッションとしてやりなさいということでつくられた組織でございます。平成20年に立ち上げておりまして、私はその当時からいるのですが、政策局の共創推進室という部署でございまして、17名のメンバーでやっております。  横浜市では、公民連携のことを共創と呼んでおります。これはどういう定義かといいますと、企業、NPO、その他民間の皆様との対話を通じて連携することで、アイデアや資源を出し合い、課題に対して新たな価値や解決策をともに見出していくことと定義しております。公民連携というのはあくまで手段であり、我々の目指すべきところは、新たな価値をともにつくることだと思っておりますので、その目的をあらわした形で共創推進室としております。  私どもが目指す姿、こちらが理想形です。民間の皆様がいろいろな形でサービスを地域に提供されたり、新しいビジネスチャンスができたり、横浜が活性化されていく、そういうものが対話によって、関係者のウイン・ウインの関係になっていくというものです。  みんながハッピーになる形で新たな価値ができていけば社会がよくなるのではないかということを、果たしてできるかどうかは難しいところだと思うのですが、目指しているところでございます。  そのような中、我々共創推進室では公民連携制度手法を全体としてやっておりますが、個々の事業については各事業や施設等の所管部署にやっていただいております。そのバックアップやコンサルティング、コーディネートをやって、いろいろな制度や手法を開発し、導入し、運用していくのが我々共創推進室の役割だと捉えていただければと思います。  我々が行っているのは、まず、PFIなどのハード系、いわゆる建物、土地、まちづくりの公民連携手法の研究や運用・導入です。  あるいはSIB、これはイギリスで数年前に取り入れられた仕組みなのですが、この話をしてしまうと30分ぐらいすぐたってしまうので飛ばしますけれども、そういう民間資金を公的な事業に入れていく取り組みでして、そういうソフト系の連携手法の研究なども行っております。  公有資産の活用においても、単に土地を売るだけではなくて、サウンディング調査という仕組みを横浜市独自に作成しております。その他、指定管理者や広告ネーミングライツなど、広島県でも取り組んでおられるものもやっております。  また、共創フォーラム、共創フロントといいまして、後ほど詳細に御説明しますが、我々独自のものにも取り組んでおります。その他、公民連携に関する情報の収集や提供、調査研究、人材育成、意識啓発などを一手にやらせていただいている部署でございます。  では、そのような中で具体的なお話や特に変わった取り組みなど、少しでも皆様のお役に立てるようなものをピックアップして御紹介したいと思います。  PFIにつきましては、広島県でもたくさんやられておりますので、ある程度飛ばしますが、横浜市でも現在動いているものが8件ございます。  こちらは、学校や上下水道、庁舎から商業施設までいろいろなものをやっておりますが、先ほど竹中教授のお話にもございました、みなとみらいのコンベンション施設の床面積が足りなくなってきましたので増床する計画になっております。  多分、空港以外で導入しようとしているのは初めてだと思いますが、コンセッション──公共施設等運営権制度を導入予定で、現在、手続を進めております。予想図は、このような形でございます。  その他に、北部汚泥資源化センターの汚泥処理の有効利用につきましても、汚泥を使って商品をつくって売るという民間ビジネス的な仕事ですので、こういうものであるとか、横浜文化体育館再整備事業についても、PFIの手続を進めているところで、まだ外にお出しできないのですが、幾つか動いているものがございます。  ただ、誤解のないようにお伝えしておきたいのですが、我々は何でもかんでもPFI、民間優先というわけではなく、例えば横浜市の新庁舎は数年後に新築移転するのですが、そちらは直接工事発注でやっております。  あるいは、区役所でも、直工とPFIを混ぜてやっております。こちらは、やはり地元企業の方々への発注の問題であるとか、あるいはその他の問題がございますので、経済性の問題と地元企業の皆様への配慮のバランスをとって、何がPFIに向いているのか、何が直工に向いているのかというバランスもとって、両方を混在させて進めているところでございます。  PFI以外に何をやっているかといいますと、まちづくりや建設系ですと、横浜市は昔からたくさんやっておりまして、例えば、横浜アリーナ、皆さんも名前はお聞きになったことがあると思いますが、それを負担つき寄附という仕組みを使って整備するというようなこともやっております。  また、ここにあるように、敷地分割、定期借地権を活用して市営住宅を民間の方につくっていただく、あるいは官民合築して、あるいは民間のビルの床を取得することによって保育所や高齢者施設を整備していく、このように公金をなるべく使わないでものをつくるというのは、昔からかなり取り組んでいるところでございます。  あとは、ネーミングライツです。施設に名前をつけるというものですが、こちらも小規模なものから取り組んでおりまして、例えば、新横浜駅前の公衆トイレですが、改修費用がなかったのですけれども、このビフォーの写真を見ていただくとあまりきれいとは言えない和式のトイレだったのですが、地元のトイレ会社にネーミングライツをとっていただくことによって、右側のアフターの写真のようにその企業が全て無償で改修してくれているわけです。  ネーミングライツの対価として現金は要らない、地元中小企業ですので現金は厳しいということで、ただ、いろいろなノウハウ、あるいは倉庫に材料がありますので、そういうものを使ってトイレをきれいにする技術は、民間企業、中小企業の皆様はたくさん持っておられるわけです。  ですから、ネーミングライツの対価として、中身を改修してきれいにしていただく、こういうものを小規模の施設に入れていくようなことも、ハード系の公民連携の取り組みとして進めているところでございます。  それから、特徴的な取り組みとして、サウンディング調査、こちらは公有資産の有効活用を対話を通じてより効率的なものにしようという取り組みです。これは横浜市で開発した調査ですが、この説明をさせていただきます。  横浜市の開発したサウンディング調査というのは、現在、他都市からの視察が多くございまして、先日も経済財政諮問会議で説明させていただいたところなのですが、徐々に広まっているところでございます。  これは、市場調査のやり方ということでございます。ある事業をやるときに話し合いの相手方を公募した上で、公平性・透明性を確保しつつ、民間事業者に個別にお話を聞いて参考にする、あるいは民間の皆様のビジネスの参考にしていただくというものです。そのようなヒアリングの仕組みが、サウンディング調査でございます。平成22年に立ち上げまして、現在いろいろな事業で行っております。  なぜこういうサウンディング調査で、民間企業の話を公平性・透明性を確保しながら聞かなければいけないのかということなのですが、保有資産の活用で非常に悩みがあったわけです。  まず、役所の中だけで土地をどうしようかといろいろと考えを巡らせても、アイデアが不足しているわけです。あるいは、民間と行政との間で市場性に関する情報量が乖離しておりますので、どうしても市場と乖離した公募条件を設定してしまうという問題点もございました。  そのような中で、市場を把握する、あるいはその土地・建物、建物の改修も含めてアイデアを集める、参加しやすい公募条件をつくることが必要なのですが、当然、参加する意向を持った民間事業者に直接聞くのが効果的です。  ただ、それを恣意的にやってしまうと、特定の事業者に有利になってしまうことがあるので、そこには配慮が必要である、行政としての公益性・透明性が大事だということなのです。どういう仕組みにするかということで、私どもで制度設計しまして、対話への参加事業者を公募しましょう、その話し合いの内容は事前に提示しましょう、対話の結果で企業秘密に関するもの以外は公表いたしましょうというポイントによって制度設計したものが、横浜市のサウンディング調査です。  何をどういうふうにやるのかと申し上げますと、何かの事業、例えば、この土地をどうするかというときに、そのときのアイデアなどを把握するわけです。地域にある課題、その土地のさまざまな地域課題を事業者に先に伝えることによって、よりすぐれた事業提案が促されるという効果も期待しております。  また、企業の皆様の参加意向を事前に把握することで、より参加しやすい公募条件をつくり、入札不調にしないという目的もございます。  こちらを見ていただくと、2段階ございまして、事業を検討する段階で聞くという段階、その聞いた上で活用案をつくる、活用案ができている場合は、公募の前に聞く、この公募要件について皆さんはどう思われますかという形で、両方やる場合もありますし、どちらか一方という場合もございますが、2回のタイミングがあるということです。  その上で公募を実施し、土地の賃貸や売却、建物の改修などを行っていくという形を考えております。  何がよい点かといいますと、公募として企業をお呼びして、一定の時間で順番にいろいろとヒアリングさせていただく仕組みでございますので、民間の皆様と堂々と接触できるわけです。これは、公務員にとって心理的効果が非常に大きいものだと思います。  そして、調査結果として判断材料にしたことをオフィシャルにお伝えできるわけです。  議会の皆様に御答弁申し上げるときにも、しっかりと資料として、お伝えできるということです。  あとは、想定していなかった民間の方がいらっしゃったり、早目に情報が出せるので民間の方の準備ができたり、あるいは、地域の課題を事前に伝えることで、公募するときに、よりすぐれた提案が来るというメリットもございます。  具体例を見ていただかないとわからないと思うので、最後に具体例をお話ししますが、こちらは戸塚区吉田町という場所でございます。JR東海道線の戸塚駅です。ここに、駅前再開発事業の代替地としての用途が不要となった横浜市の土地がございました。こちらを活用する際に、役所の中だけで考えるとどうしたらいいのかわからないのです。マンションが最適なのか、ショッピングモールがいいのか、その辺がわからないわけです。  そこで、私どもはサウンディングを行いまして、こういうことを聞きました。まず事業方式について、土地は買ってもらえるのか、それとも定期借地でないと厳しいのかというところです。これらは公務員にはわからないことです。あるいは、この地域では保育所を非常に欲しがられているのだけれども、そういう施設を民間ベースでつくっていただけますか、などのお話をしました。18社の申し込みがありまして、サウンディング調査を行いました結果、まず土地の売却については、ほとんど会社が定期借地ではなく売却で可能だという意見が出てきました。  また、認可保育所の設置は、100名規模はいかがですかと話をしたところ、60名規模ならいけるという企業が非常に多く、また、地域交流スペースを地域の方が求めているのですが、民間の方の費用負担でスペースとして地域に提供していただけるかと聞きますと、これは大丈夫という意見が多く出ました。  そこで、私どもとしましては、公募する前にこちらが聞いた条件を考慮しまして、公募いたしました。その結果、三菱地所レジデンスが買われまして、マンションという形になりました。マンションの中には民間の資金で認可保育所と学童保育スペース、また、地域の方のコミュニティースペース、防災用の空地といった地域のニーズを全部踏まえていただいた上で、行政はお金を出さず、全てマンションを建てる資金の中で出していただきました。これはサウンディング調査を行わなければ、恐らくマンションが建って終わりになっていると思います。つまり、このような効果があるのです。  事前に企業と対話することによって、こういう形で民間の資金を地域のために出していただく、それがビジネスにつながっていくという、非常にいい循環ができるという事例でございます。  現在、我々は先ほどの吉田町を初め、さまざまな事業でサウンディング調査を行っています。土地の活用から、建物の活用、この事業はどうしましょうという形のものまでやっております。  最近では、中学校の配達弁当事業の例がございます。横浜市は、中学校給食を行っていないものですから、民間の弁当を安く買えるような事業を来年度からやろうとしているのですが、配達弁当について教育委員会が全部わかるわけではない、それは当然のことですので、事業を構築する際に、民間企業の皆様のさまざまなノウハウをサウンディング調査により聞いた上で公募を行いまして、現在準備中ということで、非常によい応募があったということだけお伝えしておきます。  このように、我々は対話の仕組みをつくってきたところでございます。指定管理者制度などは皆さんもやられておりますので飛ばしますが、新たな取り組みとして、指定管理者のアイデアをより評価しようというモデル事業を現在進めているということは、トピックスとしてお伝えしておきたいと思っております。  また、広告事業、これはネーミングライツも含めてですが、これも横浜市が全国に先駆けて部署をつくった事業でございます。行政の資産を民間の方に広告として使っていただいてお金を稼ぐという事業でございますが、こちらは平成16年度に横浜市がチームをつくったのですが、これを立ち上げたのは私でございまして、それ以来、63億円という非常に大きなお金が市に入っておりますので、何かしら、事業の足しになったのではないか、立ち上げてよかったと思っているところでございます。  最後、駆け足で大変申しわけないのですが、共創における独特の仕組みが2つございますので、お伝えしたいと思います。  一つは、共創フォーラムという仕組みでございます。こちらは、民間と行政の対話の場ということです。まさにフォーラムなのですが、職員の方に対話を進めるよう指示しても、そのような場はない。個別に企業と話をしても、公務員にはコンプライアンスといったこともございまして、いろいろと厳しいですので、我々が民間の皆様との対話の場を定期的に設定しております。それがフォーラムというものなのですが、さまざまなテーマで、民間の方と行政が話し合うことで新たなイノベーションが生まれる場をつくっています。  今後は、そういう場を課題解決するための、海外ではフューチャーセッションと言っていますが、ある地域で見守り活動が重要だという場合に、企業と行政が話をして、こういうアイデアがあるというように、どんどんつくり上げていくような、小規模のフォーラムを設定していく仕組みとして、民間と行政の対話の場をつくっていくというのが、共創フォーラムという取り組みでございます。公務員は民間の皆様と対話する場がなかなかないものですから、これは積極的に行っていきたいと思っております。  最後に、非常に特徴的な取り組みをお伝えしたいと思います。それは、共創フロントというものでございます。どのようなものかと申し上げますと、対話の窓口、橋渡しでございます。こちらも対話の場なのですが、フロントというのはホテルのフロントをイメージしていただければと思うのですが、皆様が旅行に行かれたとき、何か困ったときにはフロントに相談されますが、そのようなものです。  民間企業の皆様、あるいは民間団体の皆様が横浜市と何か連携したい場合、今までは各部署に個別に話をしていたわけですが、それがなかなかうまくいかなかったわけです。行政がどのような仕事をしているのか、民間から見るとなかなかわからないところがあるからです。  そこで、横浜市としては平成20年に共創フロントという仕組みをつくりまして、公民連携に関することは全てこの窓口一本でやりましょう、その上で、各部局につなぎ、コーディネートしますという形で、まさにホテルのフロント機能をつくったわけでございます。何が大事かといいますと、民間提案の機会の公平を担保しているというのが非常に重要なところでございます。ホームページから24時間365日、いつでも民間の方が提案できるようになっております。常時公募しておりますので、なぜこの企業かという話になったときに、この公募に提案したのだという形をとることができます。  なかなか難しいところもございますが、最低限の機会の公平性をこちらで確保することによって、連携のための理屈がつけやすくなるというメリットがございます。窓口を一本化するという機能と最低限の機会の公平性を提供するという仕組みと考えていただければと思います。  この図にあるように、いろいろな企業、団体の方から提案があったものをつないでいくわけですが、どういうことをやっているかという話を最後に申し上げたいと思います。  昨年度末までに450件程度の提案がございました。そのうち185件の実現実績がございます。皆様にお配りしている資料に表がございますが、そちらが実績でございます。ちょっと細かいので本当に恐縮なのですが、後ほど見ていただければと思います。  代表的な事例をお見せしたいのですが、例えば、企業と連携のベースとなる契約を締結するというのがございます。包括連携や個別の連携がございますが、例えば、こういう形をとっています。広島県でもたくさんやられているのを拝見しておりますが、我々も、フロントという窓口を通していろいろな提案を受けて、企業との連携協定を積極的に結ぶことで実績をつくっております。  包括連携以外で最近多いのが、特定目的、例えばアクセンチュアですと、オープンイノベーションについて連携しましょう。日清食品ですと、都市ブランド向上について連携しましょう。保険会社ですと、リスクと安全、健康づくりに関してやりましょうという形で、個別の事業目的に対して、企業のノウハウを生かしていただける協定を結び、具体的な事業を行うというような協定や提案がふえているという状況でございます。これは一部でございまして、本当に多様なものがございます。  このほかに、具体的な事業連携というのもございます。こちらは代表的な事例を一つ持ってまいりましたが、ゼンリンは御存じの方も多いと思いますが、地図の企業です。ゼンリンと横浜市は防災という事業に関して協定を結んで事業を行っています。地図の提供と地図商品の開発というお互いのメリットを生かしながら、防災に関して包括的な連携をしております。防災訓練に参加していただいたりして、非常にお互いにメリットのある連携だと思っております。  ここで大事なのが、対話をどんどん続けていく中でさらに発展しまして、ことしの国土交通大臣賞を取らせていただいた取り組みがありまして、私もバックアップしていたのですが、ゼンリンは住宅地図の電子データやその他のデータをたくさん持っています。  横浜市は下水道の管路データなどを持っているのですが、それぞれの情報が中途半端だったのです。住宅地図は住宅の情報だけ、下水道の管路図は地面の中の図が中心という形なので、そのデータを重ね合わせて、タブレットで見られるようにしたらどうなるかという話が出まして、ゼンリンにコスト負担していただいてモデル的にやってみました。  そうしましたら、防災訓練とか災害の状況調査などがスピーディーに、効率的にできるようになりまして、非常にいいイノベーションが起きました。これは、インターネットを使っておりますので、災害状況のリアルタイムな報告や、職員が今まで紙の地図を持って下水道に入っていたものが、タブレットでできるということで、非常にいいイノベーションにつながりまして、国土交通大臣賞をいただきました。つまり、対話によって企業や行政の持っている資源を結び合わせて、新たなイノベーションを生み出したという事例でございます。  また、ゼンリンのような大企業だけではなく、これは地元の中小企業の提案ですが、平仮名と絵から成る幼児向けの防災教材が横浜市にはなかったものですから、子供が絵を見て、机の下に潜るということがわかるようなものがつくりたいと地元企業から提案いただいたので、我々が監修あるいはスポンサー調整、保育園などへの配布の調整なども協力しまして、子供たちの命が一人でも助かるよう、民間の資金、民間のノウハウで冊子をつくりました。このような防災の取り組みも、地元の方たちと一緒にやっていく、大きなものから小さなものまで、この共創フロントという窓口を通して連携を進めているという状況でございます。  もう一つだけ御紹介したいのですが、例えば、先ほど竹中教授のお話にもございましたが、さまざまなICTの新技術がございます。そのような新技術を、横浜というエリアで実証実験したいというお話がフロントにございます。公益性が見出せるのであれば、場を提供して一緒に実証実験をやっていくような取り組みですが、そのような提案があった場合に、一緒になって進めていくことによって、我々も民間企業の皆様もメリットをとっていく、そして横浜市の発展につなげていくというような取り組みをやっております。  あとは、こちらも読んでいただければと思うのですが、映画やアニメは、観光振興するのに非常に強力なコンテンツでございますので、このようなものとタイアップしようという提案がたくさんございます。民間企業がイベントをやりたいという場合は積極的に受け入れさせていただいて、公益性さえ見出せれば、どんどん協力して、集客力を図っていくという取り組みをしております。  こちらは、おととしと昨年やった、町なかに真っ黄色のキャラクターがいるというものなのですが、1週間強で数百万人の人が来られます。非常に経済効果がございますので、私どもとしては、こういう提案も積極的に受け入れて、実現していきたいと考えております。経済効果は本当に莫大なものがございます。  最後は時間がなくなってしまうと思いましたので、後で読んでいただけるように資料を幾つかつくってきました。人材育成のところもございますが、我々が行っている人材育成について記載してありますので、お読みいただければと思います。  我々も、公民連携ということで、本当に小さな取り組みではございますが、このように取り組んでいるところでございます。  本日は、本当に駆け足、雑駁で大変申しわけなかったのですが、これが多少なりとも皆様のお役に立てればと思いまして、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)   (閉会に当たり、委員長が、御礼の挨拶を行った。)  (10)閉会  午後2時36分 発言が指定されていません。 広島県議会 ↑ 本文の先頭へ...