ツイート シェア
  1. 奈良県議会 2005-02-01
    03月08日-03号


    取得元: 奈良県議会公式サイト
    最終取得日: 2024-09-17
    平成17年  2月 定例会(第274回) 平成十七年        第二百七十四回定例奈良県議会会議録 第三号 二月    平成十七年三月八日(火曜日)午後一時開議                            由本知己・北中路子速記   --------------------------------    出席議員(四十三名)  一番 井岡正徳          二番 浅川清仁  三番 上村庄三郎         四番 奥山博康  五番 荻田義雄          六番 田中惟允  七番 藤本昭広          八番 山村幸穂  九番 田中美智子        一〇番 今井光子 一一番 上田 悟         一二番 山本進章 一三番 中野雅史         一四番 笹尾保博 一五番 神田加津代        一六番 森下 豊 一七番 畭 真夕美        一八番 上松正知 一九番 吉川政重         二〇番 高柳忠夫 二一番 欠員           二二番 岩田国夫 二三番 粒谷友示         二四番 菅野泰功 二五番 中辻寿喜         二六番 安井宏一 二七番 丸野智彦         二九番 吉川隆志 三〇番 岩城 明         三一番 田尻 匠 三三番 欠員           三四番 国中憲治 三五番 秋本登志嗣        三六番 小泉米造 三七番 飯田 正         三八番 米田忠則 三九番 松井正剛         四〇番 出口武男 四二番 小林 喬         四三番 服部恵竜 四四番 山下 力         四五番 山本保幸 四六番 中村 昭         四七番 梶川虔二 四八番 川口正志   --------------------------------    欠席議員(三名) 二八番 辻本黎士         三二番 大保親治 四一番 新谷紘一   --------------------------------    議事日程一、当局に対する代表・一般質問   -------------------------------- ○議長(米田忠則) これより本日の会議を開きます。   -------------------------------- ○議長(米田忠則) ただいまより当局に対する代表質問を行います。 順位に従い、三十番岩城明議員に発言を許します。--三十番岩城明議員。(拍手) ◆三十番(岩城明) (登壇)民主党奈良県会議員団を代表して質問をさせていただきます。質問の中で話が専門的に過ぎることがございますので、議場での資料の配布をお願いをさせていただきました。どうぞご理解とお許しをいただきますようにお願いを申し上げたいと思います。 人口減少の時代に私たちは何を準備しなければならないのかという質問をさせていただきます。 かつてこの奈良に政府があった時代、土地も民も国のものでありました。公地公民と学校で習ったとおりであります。そのころには確実に、お上という公がありました。飢饉などという生死にかかわることがあったとしても、お上は民のことを思い、政治を施していました。例外には、私腹を肥やそうとした権力者が世論から支持されず、さまざまな形をとって権力の座から滑り落ちていきました。天皇であれ、貴族であれ、武士であれ、結局のところ、力で押さえているように見えて、実のところ、世論からの支持というのは、権力の維持には欠くことのできないものでした。そこで、このお上には逆らわないという国民がつくられていくわけです。しかし、時代は変化し、民はこの国を自分たちのものだという意識に目覚めています。そこで、最近のお上はどうでしょうか。私は、世論の支持を得るためには、迷いも悩みも正直に訴えるべきだと思うのですが、最近のお上といえば、だらしのないことといえばこの上ないというのは言い過ぎでしょうか。果たして民のことを思っているのかという疑問すら感じるのです。 今、日本の有史以来三度目の危機ではないでしょうか。日本の歴史的な大きな変化とは、武士の登場とその政権、明治維新と第二次世界大戦での敗戦と民主主義の日本のスタートという数え方ができるかもしれませんが、外からの外圧という数え方をすれば、元寇と黒船と敗戦、しかし、今のこの時代も、この国の大きな曲がり角だと、多くの人たちが主張するようになりました。 BC・ACとは、ビフォー・クライシス、アフター・クライシス、キリストの生誕の前か後ろかという年数の数え方がありますが、さて、皆さんは、BG・AGという時代の区切り方をご存じでしょうか。BもAも、ビフォーとアフターと同じ意味を持ちます。では、Cはクライシス、キリストのことですが、Gとは一体だれでしょうか。実はビル・ゲイツです。ゲイツのGです。では、ビル・ゲイツはなぜキリストに匹敵するのか。インターネットが情報交換装置として時代を大きく変化させるという意味です。 東ヨーロッパ諸国の政変は、社会主義政治の行き詰まりという見方がありましたが、しかし、その変化のベースには、情報と公害という問題があったようです。公害という話はきょうはさておき、情報という話は、封鎖された社会が外からの情報が入ってきて、自分たちの社会、いわゆる国と外国を比べる。そうすると、その国の為政者たちのだめさが見えてくる。そして、一気に国の体制がひっくり返されたというのが東ヨーロッパの例であります。もちろん、ペレストロイカ、ゴルバチョフによってソ連の圧力からの解放も大きな役割を果たしたと思うのですが……。ソ連と東ヨーロッパの国々との関係を、この国の政府と日本の各地方に見ているのは私だけでしょうか。 自治省出身の柿本知事が、地方へのしわ寄せと最近の三位一体改革の進め方を批判なさっていることに、私は一種の驚きを感じています。お金と政治の話にだらしない、いつまでも続く金権政治、外国にはっきり物が言えないだらしなさ、変化を認識することや国際感覚、人権感覚が疎いこの国の戦後五十数年続いてきたお上は、しかし、言うことをきく地方には優しかった。まるで口をあけてえさを待っているひな鳥にえさを運んでくる親鳥のように、八兆九千億円しか生産していない農業に八兆円ものお金を運んできてくれたし、地方が高速道路だと言えばそうだし、橋だ、港だ、おまけには、新幹線に、各都道府県に空港も、米が余っているのに、海を埋め立てて農地までつくってくれる。そうしている間に、すっかり地方の自立心は損なわれ、厳しく激しい変化の時代に対応する市町村合併は、お上の力が強く加わっていない府県においては、みずから考え、みずから行動する能力が失われ、一向に進もうとしない。まだ政府が本気だと思っていないし、まだ親鳥がえさを運んできてくれると口をあけて待っているのか。一体この様子はどこから来ているのでしょうか。 元寇の襲来のときには、幸いにして、中国、朝鮮半島を手に入れたチンギスハンの息子フビライは、騎馬民族であったがために、船に乗って日本を攻めてこなければならないという条件のもとで、二度失敗を繰り返し、侵略の矛先を東から西へ変更します。では、なぜ蒙古は日本を攻めてきたのか。それは日本を平定した秀吉が朝鮮や中国に兵を進めようとしたことと同じ理由なわけですが、本題に戻りましょうか。 この国は、海に囲まれたという国防ということでは恵まれた条件で、一度は難を逃れます。しかし、いつまでもそうはいかない。元寇のときは、木造船の手ごきの船、しかも、侵略した朝鮮人に急ぎつくらせた粗末なものでしょうから、その場はしのげたのですが、黒船とはなぜ黒なのか。その答えは、鉄であるからです。丈夫です。なぜ鉄が水に浮いて、しかも動くのか。私たちはその答えを知っていますから、そんなことは当たり前と言うのでしょうが、当時にしたら大変です。予想も想像もできないことです。しかし、実際は、ペリー以前にロシアをはじめとするさまざまな外国の船が日本の近海にあらわれ始めていますから、政府の知るところとなっていたようですが、有効な手が打てなかった。その頼りない政府、お上に対して、優秀な人たちが登場します。そして、その人たちが外国を見て、その情報に触れて、当時の日本と対比して行動しているわけです。その人たちの手によって、全く異なる政治システムが別のところに準備されて入れかえられる、それが維新です。政権交代ではありません。同じシステムで別の人間がやるという手法ではなく、別のシステムを持ってきた維新です。 かつて、平成維新の会という呼びかけが大前研一さんによって行われました。まさか議会制民主主義というシステムを否定されていたわけではありませんが、中央集権から地方分権へ、道州制と提案されています。この訴えの基本は、個人の自立、地方の自立と連帯であるわけですが、話を戻します。 明治維新は優秀な人材によって日本が助けられましたが、外国との間に結んだ不平等な条件に象徴されるように、諸外国に追いつくために明治の人たちは大変な苦労をします。大したものです。三十数年余りであのロシアのバルチック艦隊をやっつけます。アジア諸国が欧米列強に植民地化されていく中、日本をどう守るのかという立場でいえば、そうなります。しかし、無条件に褒め上げるわけにもいきません。国内では差別と貧困、また、アジアへの侵略という側面、不吉なことを口にすればそれが現実になるという言霊信仰のあげくには、神国の日本が負けるはずがないと、軍部の暴走を許してしまうことになります。 私たちは答えを知っているがゆえに冷静に物事を見ることができるわけですが、二・二六事件を起こした将校たちは、東北行軍の際に見た、貧しさゆえに身売りされていく娘たちの姿を見て、その怒りを当時の政治家たちに向けたという話を聞いたことがあります。真意のほどは別にして、明治、大正、昭和の時代も、高度成長経済が始まるまでの人たちに、世の中のこと、公に対して、人の生き方として、二・二六事件の将校たちを動かしたまじめさというか、あるべき論に対するエネルギーのようなものを感じます。 さて、日本が外国から侵略される危機にさらされた元寇とペリー来航から明治維新に至るお話をしておきましたが、元寇にしたって、時の鎌倉幕府は北条執権政治に移行しているんですが、準備をしています。迎え撃つ準備をしているんですね。明治維新はというと、ペリーが一八五三年に日本に来て、明治維新は一八六八年ですから、十五年もかかっているんですね。ちょっと時間がかかり過ぎているという感じもあるんですが、今回の危機について考えると、危機の本質は、人口減少の時代を迎える、加えて世界で類例のない猛スピードの高齢社会への移行と、地図上の国境は実線なんですが、それがほとんど点線にかきかえなければならないほどの境目のない時代、自由に人と物とお金と情報が行き来するというボーダレス社会、自分たちの価値観だけで国を運営しようとしても無理なんだという話、さらには、そんな激変の時代に、これも質的に初めて経験したバブルの崩壊の後遺症にいまだに苦しんでいる、このことと結びつきがあるのですが、行政は、国も地方も、特殊法人という行政の附属組織も、返しようのない借金で苦しんでいるという状況です。 当たり前のことですが、今回のこの問題は、だれもまだ答えを知りません。しかし、いつからの変化なのか、後から考えれば、明治維新でも鎖国か開国かと十五年かかったと申し上げましたが、一体今回のこの危機はいつの時点で知り得ることができたのか。準備に入ることができたのか。その大きな転換点は、先ほど申し上げましたBG・AG、ビル・ゲイツ、そこにあったのではないかと私は思うわけであります。一九八五年、ニューヨーク、マンハッタンプラザホテルで開催された会議、G5、そしてプラザ合意と、くしくも同時に発表されることになるマイクロソフト社のウインドウズというソフト、ここが大きな転換点であったのではないかと。 後で詳しく述べますが、例えば後で問題にする少子化は、実は昭和の始めから起こっている問題なんですよ。実際、出生率二・〇一を切らなければ問題にならないわけですから、これまで大きな問題にされてこなかった。しかし、今はもう見えているわけです。そろそろ今回の日本の危機はみんなの目に見えるようになってきました。年金という制度がもたない。このままでは国の予算の三分の一以上になる額の二十九兆円という巨額な福祉や医療に関する予算が足りなくなる。公共事業を一切やめても、自衛隊をなくしても、この額は無理ですから。それから、これ以上国債や地方債を発行して借金することもできない。国民の資産でこれまでの借金を帳消しにするなら話は別ですが、アメリカの債権を買っているお金を回収でもしますか。それも日米関係からいえば非現実的な政策でしょう。 にっちもさっちもいかずに、知事がおっしゃるように、お上は地方をいじめるようになってきた。ただ、お上をこれまでと同じように考えると、そんな言い方になるわけですが、どうも、これまでのように悪口を言っているだけでは、国民の方が首が絞まってしまいそうだということを、そろそろ私たちも気づかなければならない。今回の危機に際しては、これまで公イコールお上であったものを、公を個が力を合わせてつくり上げることで賢くなるという作業がセットでないと越えられないのではないかと思うのです。 例えば、子どもが被害者になったり加害者になる事件のことを考えれば、あるいは、いじめ、不登校、学級・学校崩壊、あげくにはニートなどと呼ばれて働かない。これらの問題は、上からの強い力で強制しても解決しない。横と横で力を合わせて防いだり、守ったり、あるときにはしかったりしないとだめなんじゃないですか。富雄北小学校の事件なんか、だれも警察が悪いとは言わないし、警察、いわゆるお上の限界は知っているわけで、それでみんなで何をしたかといえば、安全を確保するために通学路に立ったりして、学校や子どもを守ったわけですよ。結局、力を合わせてみんなが守ったのは、私は公であったと思うわけですよ。これまでお上と考えられてきた。 さて、今回のこの国の危機を、この公を、富雄北小学校方式のように個人が力を合わせて乗り越えようと私は訴えたいわけです。それで、住民活動の共同事務局である県行政については知事に、公の教育に関しては教育長に、そして、安全な社会に関しては警察本部長に質問をさせていただきたいわけです。今回、予算の議会ですので、予算に関しては、細かな質問は、予算委員会に入らせていただきますので、そこでお尋ねをしたいと思っています。 私たちは今、どのような問題に苦しんでいるのでしょうか。簡単に言えば、いつまで続くのかという不況、仕事がない、あるいは賃金の低下、ますます進むであろう職場での能力評価と年功序列型賃金制度終身雇用制の崩壊への不安、年金や健康保険制度がもたないどころか、国や地方行政の制度が財政上維持することができるのか、維持されたとしても、国民には相当の痛みが強いられるのではないかという将来不安です。 では、その原因はどこにあるのでしょうか。一つは、バブル経済の崩壊の後遺症に苦しんでいるということでしょう。私たちはその結果を見ています。答えを知っていますから、簡単に批判することは厳に慎まなければなりませんが、宮沢首相が一九九二年ぐらいに不良債権の処理問題をおっしゃっているわけです。あの当時英断していれば、百兆円以上かかった不良債権の処理も十分の一ぐらいでおさまったのではないでしょうか。また、土地取引に関する規制や通貨の総量規制など、それを性急にやり過ぎてしまった。大変な国民の税金を使ったけれど、一九九七年には景気が上昇傾向に転じているわけですが、橋本内閣が国民負担九兆円増という政策で、これにブレーキをかける。これは野党にも責任があるわけですから、私はこの場で批判する気にはなれないんです。 しかし、知事、覚えておられるでしょうか。あのとき、この奈良県議会の本会議場で、景気は緩やかに回復してきたという議員の質問に、知事も同感だと答弁されるので、私は、それは本当ですか、私は、これからの時代は今までのように好景気と不景気が順に繰り返されるというような時代ではないのではないかと言わせていただいたんですが、以来、私は、経済問題に全くと言って素人ですし、落選しましたこともあって、今日このような質問をする機会がなかったんですが、知事が奈良県の長期ビジョンと言われ出した。しかも、どうやらこれまでの県の新総合計画の後継版としてではなくて、もっと二十年も三十年も先を見据えたという思いが伝わってくるわけですから、その問題意識を私は尋ねさせていただきたい。そして、それは県民の皆さんに多くの場で語られるべきだと強く思うんです。 話が専門的に過ぎるということで、資料の配布をお願いをしておきました。どうぞ皆さん、図二をごらんいただきたいと思うんです。この国の戦後の奇跡的は復興は、三つの恵まれた条件によって成功したと言われています。それは、大正時代の生めよふやせよという国家的な風潮です。戦争が終わって平和になると、この年代の人たちが豊富な労働力として生産現場を支えて大活躍します。もう一つは、国民の貯蓄率の高さです。日本では、ほかの発展途上国と対比して、設備投資に回すお金が外国に頼る率が低くて済んだ。もし外国からの借金をするならば、国際収支を赤字にすることになり、短期的にはよいとしても、ずっと赤字を続けるわけにはいかない。 もう一つは、皆さんがごらんになっている図二の四十歳から四十四歳の間にある人口の谷間であります。これは五年前の資料ですから、五を足していただくと、ことし四十五歳になる方から四十九歳までが一番低いところにということですが、私もちょうどこの年齢階層になります、四十六歳ですから。私もつい最近まで、知事が長期ビジョンとおっしゃって、それではとさまざまな資料を読みあさるまでは、私の世代が日本の高度成長経済の重要な秘密を握っているのだということは知りませんでした。ところが、この人口の谷間が今後のこの国の急速な高齢化と人口の減少の大きな原因となることは、いささかつらいという感じになります。この人口の谷間を外国人労働者で埋めろという議論がありますが、この人口の年齢です。私の年齢になって、外国に行って、工場で三交代で夜中まで働けと言われれば、生活のためにはやむを得なくても、労働力という点で単純に見たときには、やる気の問題は別にして、いささか不向きという感じがします。加えて、五十歳から三十歳、この二つの山の谷間を平均的にならすためには、二〇三〇年までに二千四百万人の外国人労働者が必要で、人口の二〇%という計算になります。いかがですか。可能ですか。意見は分かれることとなると思います。 いずれにしても、逆ピラミッド型の人口構造は、少子化とこの谷間がつくり出す日本の構造的な問題であると知っていただきたいと思うわけです。経済成長は続くのか。私の答えはノーであります。この谷間が消えてなくなり、二十代以降の左肩下がりの線の傾斜がもっと緩やかにならなければなりません。五十年かかるでしょうし、出生率が回復しなければなりません。 あまりにもひどい言い方をしましたので、この谷間がなぜ高度経済成長を実現したかというよい面の方を簡単に申し上げておきたいと思います。それは、発展途上国でよく起こる人口の爆発的増加を抑え込んだということです。必ずと言っていいほど起こる人口の爆発的増加が、日本の場合は昭和二十一年から二十三年--先ほど見ていただきました一番目の山ですね。右側の一番目の山--という短期間で収束したということです。これがもし十年でも続けば、多くの発展途上国と同様、平和と経済開発によって所得水準が上がると出生率が上昇し、人口の急増によって消費の需要が急激に拡大して、その結果、設備投資に回す資金が不足するため、国内生産が需要に追いつかず、輸入をせざるを得ない。輸入の増加から国際収支が悪化する。国際収支の赤字を放置することはできないから、需要を抑制せざるを得ない。せっかく伸びかけた国内生産の芽を摘んでしまうという、いわゆる国際収支の壁によって、途上国ではなかなか順調な経済発展の軌道に乗れないという問題があるようです。日本でも若干、一九六〇年代の後半にこの国際収支の壁というのを経験するようですが、それも大きな問題にはならず、乗り越えることができます。国際収支が問題になるころには、同時に貯蓄率が上昇し、外国の資金に頼らなくても、国民の預貯金を企業の設備投資に銀行を介して融資として回せるという状況が生まれます。これも高度経済成長を支えた好条件の一つです。 一九六〇年代初頭に日本の貯蓄率は欧米に追いつき、その後高水準を維持して、七〇年代初頭からは低下傾向にあるようです。この貯蓄率の高さも、近年、アメリカに追い越されるかもしれないところまで来ているということをご存じでしょうか。もっとも、これからの時代はどんどん設備投資をする時代ではありませんから、安心しておきましょうか。 また、戦後すぐ、朝鮮戦争やベトナム戦争など、アジアが戦場になっていたことや、アメリカやソ連が冷戦構造の中、軍備の拡大に力を注いだということも日本経済の奇跡的発展の条件でもあったことはご存じのとおりです。日本が世界の工場の役割を果たしたわけです。そのように考えると、今回のこの不況は、日本は早く、冷戦構造の崩壊とバブルの崩壊が持っている意味を知るべきであったんです。 話を戻しますが、つくれば売れるという状況の中では、生産設備をどれほど持つことができるのか、また、それに回せる資金、そしてその機械を動かす人がいるのかという条件が問われます。図五を見てください。生産年齢人口の比率というのは、全人口に占める十五歳から六十五歳までの人口の比率であり、幾らこの年齢階層が多いといっても、それ以外の養わなければならない層があると、需要の問題や社会負担の問題が生じるわけですが、働き手が多いということは貯蓄率も上昇するということであり、日本の貯蓄率が高いということは、単に勤勉であったということだけではなく、生産年齢人口の比率が高かったという面が大きかったということです。他国と比べて、皆さん、いかがでしょうか。非常に日本の場合、生産年齢人口の比率が高いというのが、この図五から見てとることができます。 しかし、「禍福はあざなえる縄のごとし」と、私の父はいつも晩酌をしながらひとり言を言っていました。毎度毎度、だれも耳をかさないから、だんだんひとり言になっていくんですが、しかし、小さいときについた癖といいますか、覚えているんですね。教育長には後ほどこのあたりを質問させていただきたいと思っているんです。今、子どもたちに何を知らせ、何を伝えなければならないのか。 さて、生産年齢人口の比率の高さが日本を豊かにしたわけですが、これからは同じことが原因で苦しまなければなりません。そんなことを言うと、おちおち生きていることもできないとおしかりを受けそうですが、私たちは、事実を知って、それに対処するという社会全体の能力が今問われているわけですから、お許しをいただきたいと思います。 人口の谷間は、今度は成長率を押し下げるわけです。図六をごらんください。また、同時に八と九をごらんください。労働時間の短縮を行わない、女性の就労率が向上する、外国人労働者を雇い入れる、いずれも全人口の三分の一を埋める政策を強力に行ったところで、消費者が減るという問題をどう解決するのか。見事に生産年齢人口の増減率が右肩下がりで日本の場合は減っています。そして、図八では、人口が二〇〇〇年少し後、ちょうど今ごろですね、二〇〇六年を境に右肩カーブで下がっています。同時に、労働力率も右肩下がりで、労働力の人口も右肩下がりで、生産年齢人口もすべて図八では右肩下がりになっています。 図九では労働時間を書いていますが、これも労働時間がますます二〇三〇年に向けて右肩下がりになっていっています。この労働時間をどう確保するのか。今も申し上げましたように、労働時間の短縮をこれ以上行わない。もっと長時間労働するのか。あるいは女性の皆さんにもっと働いていただくのか。あるいは、外国人労働者を受け入れるのか。外国人労働者という方針にのみ、その可能性がありますが、定期的に望む人数を送り込んでくれる国があるんですか。あるいはその人たちを差別していては話になりません。 国際競争力をさらに身につけて、貿易でもうけようという発想もあります。確かに、国内総生産、GDPの一〇%以上、五十数兆円が輸出によって達成されてきました。しかし、成長の時代なら、そのもうけを企業がストックして、さらなる投資に向けようという考え方は正しいと思います。しかし、将来は三〇%の人口の減少で、消費者が三〇%減る。国内総生産、GDPの六〇%が消費なわけですから、その三〇%が減るということは、一八%の減少でしょう。それを補う国際競争力なんていうものがあるなら、だれも心配はしないと思うんです。五百兆円の一八%減額ですから、九十兆円もGDPが減少するんですから、今に加えて、あと九十兆円もうける輸出なんてあるんですか。あるかもしれない。しかし、それが達成されても、年金あるいは健康保険制度など社会保障制度の需要の伸びという負担の問題は、今の制度では避けられないわけです。では、年金という制度をなくしますか。年金制度がなくなると、六十歳以上で何%の方が消費者でなくなるのですか。それは一体全人口の何%なのですか。 私は、この人口減少社会と経済縮小の時代に、個が公をともにつくり上げるという政治手法しかないんだと思うんです。縮小の時代をみんなが認識して、今から準備に入らなければならない。それは政府が悪いわけでもない。責任者を探しても解決しませんよ。みんなで乗り越えなければなりません。お上に頼っていても、悪口を言っていても、解決しないんです。しかし、そんな問題があるのに、どうして郵政民営化なんでしょうか。まあ、悪口を言わないと言いましたから、次に進みましょうか。 消費という問題に触れましたから、消費の源泉である賃金を見てみましょうか。図十三をごらんください。高さで見ていただきたいんですが、生産性の向上に対して賃金を引き上げる。賃金に回さないということは、企業がストックするか、投資に回すということです。企業がストックするとか、投資とか、七〇年代後半から八〇年代、この図で見ていただきたいんですが、七七年のところから八五年、それから九七年以降、明らかに意図的に賃金の抑制が行われているわけです。これが、私が先ほどから、冷戦構造の崩壊や人口の減少の時代を企業が見ていないという根拠です。次の時代の準備を全くしていない。賃金に回せば消費が拡大する。企業経営も、市場が拡大することは次のビジネスチャンスが生まれるという判断をしてこなかった。賃金をこれ以上上げれば、国際競争力が低下するでした。外にばかり目が行っていた割には、世界が変化している。まさかインドまでがと予想できなかったと思われるわけです。もっと国内に目を向けるべきだった。冷戦構造の終焉で、アジアが追いついてくる。インターネットの普及で、情報は一部の国だけでおさまらない。低賃金労働者に生産を任せるためにアジアを追いかけるという発想が間違っていた。適正に賃金を引き上げ、国内需要を喚起していれば、生産コストを下げるためにアジアに資本投資を行う必要はなかったのではないか。その資本投資によって、アジアが今、日本の強敵になるという問題提起を皆さんはどのように受けとめられますか。個人の賃金を引き上げるのではなく、将来を見据えたら、使い道のない企業のストックではなく、国としてストックして、次の時代に備えるということでもよかったと思うんです。ついに国際空港までつくった企業が出てきましたが、これが国民全体のためになるのかという検証はなされているのでしょうか。 いずれにしても、個人においても、企業においても、投資に回らない貯蓄超過は経済の縮小につながる。今、銀行がお金の貸付け先がないと困っている。土地担保制を守っていますから、バブル期より八〇%以上も担保価値が下がった土地に、今まで百円の値打ちのある土地には百円貸すことができたのに、今は二十円以下というのが銀行の姿でしょう。お金が動かない。デフレスパイラルになっていく。大幅な省力化のための投資も企業の財務体質を大幅に悪化させたことも見ておかなければなりません。企業が賃金を抑えてやったことは、徹底した省力化によって大幅な利益を出して、企業の存続を図ったということですが、結果は、全体で見ると企業の財務体質を極端に悪化させることになる。 さて、奈良県の話をさせていただきたいと思います。図二十二から二十四をごらんください。まず、図二十二は、労働力の年齢構成と労働生産性を都道府県別に対比したグラフであります。労働生産性イコール賃金とは見ないでいただきたいんです。先ほども申し上げましたように、賃金はこの労働生産性に基づくべきなんですが、日本ではなかなかそのようになってこなかったという話をさせていただいたところです。低く抑えられてきたんです。この表から、大都市圏やその周辺で比較的労働力が若く、同時に、その理由で労働生産性が高いと見ていただきたいんです。奈良県は比較的若い。沖縄、東京圏、福岡、阪神圏、滋賀県に次いで若いということです。そして、労働生産性も中位から少し上に位置しています。ちなみに、一九七五年から九八年の間まで、実質県民所得の成長率が最も大きかったのは、滋賀県であり、その次が奈良県です。そして、同期間の生産年齢人口の増加率を見ますと、やはり滋賀県が全国一で、奈良県が二番であります。生産年齢人口の増加率と県民所得の増加には密接な関係があるようです。もし仮に都道府県の財政や経済を国が平準化するという今日までの機能が失われていくとするならば、自前で地域の行政運営や経済運営を考えるとき、このことは十分に念頭に置くべきではないかと思います。 図二十三をごらんください。それでは、その労働力がいかに変化するのかという予測です。棒グラフの上が一九九五年、下が二〇三〇年の予測です。一番変化の激しい地域は、この幅が大きい地域は、大都市圏とその周辺になっています。奈良県も大都市圏の次に比較的大きな変化を示しています。 図二十四をごらんください。これまでのように人口が移動するという予測に基づいています。一番下のグラフをごらんください。労働力人口は軒並み減少しています。しかし、一方で、労働生産性は首都圏とその周辺ではあまり変化がなく、結果として、一番上のグラフでは県民所得の落ち込みを示していますが、奈良県の落ち込み方を皆さんはどのようにごらんになるでしょうか。 図三十四と三十八をつけておきました。三十四図は、もう見なれた人口構造の変化です。三十八図は、試算に基づいていますから、必ずこうなるということではなく、対策がなければ、都市ほど経済は厳しい方向が示されていると読んでいただきたいと思います。いわゆる生産年齢人口の減少の幅が多いか少ないか。要するに、その地域で生産活動があるのか。企業がもうけ、お金を使うか(投資)、賃金が支払われるか、地域が特化して、個性を見つけて準備を行うか、あるいは怠るかで、相当住民に影響が出てきそうです。加えて、足による投票ということもあるのではないでしょうか。飽きられた行政や地域からは引っ越しをして去っていくということです。 知事が長期ビジョンを策定されようとしているのは、今、随分時間を要して申し上げてきたところにあるのではないでしょうか。同時に、自治体の財政が厳しくなるだけではなしに、今までは財政力の弱い自治体を助けてくれた国が、助けてくれるどころか、三位一体改革で国の財政のしんどさを地方にしわ寄せしてこようとしている。この国の財政方針の転換は奈良県の今後にどのような影響を及ぼすのか、重要な問題です。しかし、その政府の財政方針の転換も、その根本的な原因は、今申し上げてきた構造的な問題からではないかと思うのです。また、地域が努力するということが非常に重要になってきたという問題もあると思います。 さて、柿本知事、人口減少社会における奈良県のありようについてお尋ねしたいと思います。私たちの奈良県は、今どのように変化しようとしているのですか。今、知事は、今後の奈良県をどのように創造していくべきだとお考えでしょうか。奈良のうまいものをつくるだとか、少子化対策としてプロポーズの言葉百選とか、東京に観光対策の拠点をつくるとか、特色ある高校をつくるとか、さあ、動き出したという感じが私はしております。わくわくしてくる感じがあるんです。ぜひ県民の皆さんに問題の提起をお願いしたいと思います。今、奈良県が抱えている問題を県民に伝えるという答弁をお願いしたいと思います。 次に、教育長にお尋ねします。 今のつたない話を聞いていただいていたと思います。子どもたちの将来こそ心配です。四十五年後、人口が三〇%減るなどといっても、私は九十一歳で生きていません。しかし、今学齢期にいる子どもたちは、高校三年生でも六十三歳、確実にその社会の中心に存在します。今後、文部科学省は、ゆとりの教育をやめるような動きをしています。今も申し上げました、これ以上の生産性を上げようという発想には限界があります。むしろ、時代の状況を正確に把握する国民が欲しいところです。簡単に言えば、賢く、単に批判を繰り返しても問題は解決しないという自立と連帯感こそ重要です。教育長、最近のゆとり教育の方針転換をどのようにとらえておいでになりますか。また、学校教育の中で子どもたちに今伝えなければならないことは何でしょうか。子育て中の親にどのような理解を求めていかなければならないのか、教えていただきたいと思います。 最後になりましたが、警察本部長にお伺いします。 ともにこの次の社会をつくっていこうという話を聞いていただいていたと思います。さて、今までにはなかったいろんな犯罪が起こります。社会全体が不安を感じています。嘆いているばかりでは県民の安全は確保されません。また、警察官を幾ら増員しても、県民の不安にこたえるような治安の維持というのは困難なような気がします。犯罪の減少に向けて、具体的に県民と連携していく警察行政をつくらなければならないと思いますが、いかがでしょうか。 また、香芝警察署が設置に向けて、より具体化していくようです。切望されてきた皆さん方の思いに立つとき、この時代に本当に喜ばしいなあと感じます。しかし、市や郡を単位に設置された警察署は、今後の市町村合併でどうなるのでしょうか。例えば、天理警察署管内の都祁村は奈良市となりました。しかし、奈良署からの駆けつけ時間と天理からでは相当時間が違います。もし、都祁村が奈良警察署管内となりますと、住民の不安が起こることになります。また、今後、市町村の合併が行われますと、合併された新市に、新しい市に一つの警察署となるのでしょうか。どのようにお考えか、教えてください。 これで演壇からの質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。(拍手) ○議長(米田忠則) 柿本知事。 ◎知事(柿本善也) (登壇)三十番岩城議員のご質問にお答えいたします。 私に対するご質問は、人口減少社会における奈良県のあり方と、こういう題でございます。 ご質問で数々の指標をもとにして克明なご指摘をいただき、ありがとうございました。世の中が大きく動き出していることは、多くの人々が気づき出していると思いますが、具体的にその先を予測することは非常に難しいことでございます。難しいけれども、冷静に、できる限りの挑戦をしていかなければならないことも事実でございますし、そのことは、ご質問の中にお触れいただきましたように、個--個人の個でございますが--が力を合わせて公をつくり上げる、そういうことに結びつくのではないかと、お聞きしながら感じました。 まず、お尋ねの第一は、奈良が今どのように変化しようとしているのかということでございますが、これを一概に答えるのはなかなか難しいと思います。議員がお示しいただきました各種の指標やグラフをとりましても、各様の分析があり得ると考えます。しかし、一概に答えが決まらないが、その周辺を丹念に可能な限り調べてみようというのが、実は、お尋ねにもございました新長期ビジョンの出発点であるとご理解を賜りたいと存じます。 なお、人口減少社会への変化は、非常に重要な時代の変わり目と感じましたので、小さなことですが、おおむね三年前、統計課を中心に、人口の動向に関係の深い庁内各課に呼びかけまして、人口構成や人口動態の将来予測の作業を試みてもらいました。関係課の関心と施策への反映を考えての作業でございましたが、こうした勉強が役立つのはこれからであろうと考えております。 さて、現在、新長期ビジョンの策定を目指して、激動の時代の渦中にあって、その変化の状況をできる限り情報収集し、分析して、大きくさま変わりする未来社会を予測しようと試みているところでございます。その中で、将来確実に訪れ、日本の社会のあり方に根底から影響を及ぼすものとして、次のような点が指摘されております。一つは、三十年間で一〇%以上日本の人口が減少し、三人に一人が高齢者になるという少子・高齢化、人口減少社会の到来でございます。もう一つは、二十一世紀の百年間で、最大で申し上げますと五・八度も上昇すると言われる地球温暖化、東南海・南海地震などの地震・災害の発生でございます。また、ユビキタス社会が到来すると言われる高度情報化、バイオテクノロジーやナノテクノロジーなどの科学技術の進歩がございます。これらの点を含めまして、実は二月に新長期ビジョンに関係する県民アンケートを実施いたしましたが、これを未来予測として県民の皆様方に資料添付させていただきました。 特に、お尋ねにも関係しますが、少子・高齢化、人口減少社会の到来は、未来社会を考える際の最大の大きな流れでございます。生産性の低下を招くだけでなく、需要・ニーズ自体が減少したり、日常の生活、医療・福祉、経済・交通、教育など、社会全般に幅広く影響を与えるものと予想されるところでございます。奈良県におきましても、これは数字でございますが、二〇〇〇年の国勢調査をベースにした国立社会保障・人口問題研究所の予測によりますと、二〇三〇年には約八%の人口減少が予測されておりますが、実際の人口推移は、ここ数年、数千人の社会減が続くとともに、合計特殊出生率一・一八、これは二〇〇三年の数字でございますが--に代表されますように、既にこの予測をさらに下回って推移しているのが奈良県の状況でございます。このような社会潮流の変化の中で、大都市近郊の住みやすさや歴史に恵まれた文化的求心力が特徴の奈良県にありましては、暮らしと交流の面で変化の影響をより強く受けるものと考えている次第でございます。 次に、ご質問で、奈良県を今後どのように創造していくべきかというお尋ねがございましたが、新長期ビジョンの策定に当たりましては、そのような県主導の発想ではなくて、例えば「このような社会をみんなでつくっていきませんか」というような視点で申し上げて、多くの人々に論議に参加していただきたいと考えております。その中には、日本全体として、未来社会では変わっていないと大変なことになる暮らし方や社会制度があると考えております。例えば、子どもを育てることに生きがいを感じるとか、家庭でのきずなを大切に感じる、汗して働くことに充実感を感じる、身近な生活環境に安心感を感じるなど、社会の中で生きていくことに充実感、満足感を感じることができることが大変大切ではないかというような点でございます。また、未来の奈良の姿としてこうあってほしいという点からいたしますと、歴史文化資源は言うに及ばず、人、県土、遺産あるいは資源を活用しながら、奈良の特徴・魅力を内外に発揮する、従来から申し上げている「世界に光る奈良県づくり」、豊かさの実感できる奈良県づくりが必要だと考えている次第でございます。 具体的にさらに申し上げますと、一三〇〇年を超える歴史文化、あるいは心休まる景観にさらなる磨きをかけて、さまざまな人々に憩いや安らぎを感じていただけるような県づくりとか、あるいは安心と誇りを持って、いつまでも住み続けたいと思えるような衣食住にわたる質の高い生活空間を形成する、そういう居住空間を目指す、住みやすい県づくりでありますとか、あるいは歴史資源の保存や積極的なもてなしの心など、数多くの人々にとって魅力ある郷土となるような取り組みなどが想定されるところでございます。これらはしょせん一例でございます。 このような発想で新長期ビジョンの策定の取り組んでいるところでございますが、従来から申し上げているとおり、このスケジュールといたしましては、新年度のできる限り早い時期にその素案をお示しし、県民フォーラム、あるいはパブリックコメントなどを通して、引き続き、県民の皆様、あるいは広く国民の皆様方のご意見をいただきながら、県民の皆様の積極的な参加をお願いしながら、より確実なビジョンというか目標という、そういうものを一緒につくり上げていきたいと、こういうふうに考えている次第でございます。そういういき方を可能な限りさせていただきたいと思っておりますので、ご理解賜りたいと思います。 以上でございます。 ○議長(米田忠則) 矢和多教育長。 ◎教育長(矢和多忠一) (登壇)三十番岩城議員のご質問にお答えをいたします。 私には、最近のゆとり教育の方針転換をどのようにとらえているのか、学校教育の中で子どもたちに今伝えなければならないことは何か、また、子育て中の保護者の皆さんにはどのような理解を求めていかなければならないのか、お尋ねでございます。 価値観が多様化をし、個人の自立が求められている現代にありましては、まず、子どもたちに基礎的・基本的な知識・技能や生活習慣をしっかりと身につけさせることが大切です。その上で問題解決能力や創造性の基礎をはぐくむことが重要であり、現在の学習指導要領はそのような時代の要請を踏まえたものと考えております。そうしたねらいを基本に、特に学力の問題につきましては、授業時間の確保とともに、指導方法を工夫・改善し、学ぶことの楽しさを実感させながら意欲を高め、同時に学習習慣を身につけさせることが大切であるとに認識をいたしております。その意味で、子どもたちに学習への動機づけを一層図ることが、県の教育委員会の現在の重要なテーマと考えております。 具体的な展開といたしましては、来年度の重点課題にキャリア教育の推進を掲げ、小学校から高等学校までの十二年間を通して、子どもたちに望ましい職業観や勤労観を系統的・組織的にはぐくんでいきたいと考えております。現在、その理念や内容をまとめました「奈良県キャリア教育プラン」を作成しております。年度内には各学校に配布する予定でございます。このキャリア教育では、職場見学や就業体験等を通して、子どもたちに自分の将来を思い描かせたり、的確な判断力、行動力、コミュニケーション能力などを培ったりして、社会人として自立できる力を身につけさせたいと考えております。 このような視点から、特に保護者の方々には、学校の教育環境づくりへの積極的な参加を呼びかけたいと考えております。また、家庭における生活習慣や学習習慣の確立に向けての取り組みを進めていただきたいと考えております。 以上でございます。 ○議長(米田忠則) 菱川警察本部長。 ◎警察本部長(菱川雄治) (登壇)三十番岩城議員のご質問にお答えいたします。 議員のお尋ねは、県民と連携した警察行政と警察署のあり方、この二点のご質問でございます。 まず、多くの県民の皆様が現在の犯罪情勢に不安を覚えていることにつきまして、治安を預かる責任者として重く受けとめているところでございます。犯罪抑止活動におきましては、警察活動を強化することはもちろん大切ではありますが、議員ご指摘のとおり、警察、行政、地域住民が連携して取り組むことが何よりも重要であるというふうに考えます。このため、県民一人ひとりが、みずからの安全はみずから守るという自主防犯意識を高めていただき、さらには、自分の地域の安全は地域で守るという観点から、これはまさに議員の言われる、個が公をつくり上げるということと同じような観点であるというふうに思われますけれども、こうした観点から地域での自主的な防犯活動に取り組んでいただけるよう、地域住民との連携を強化していきたいと考えております。 具体的には、犯罪発生情報の適時適切な提供、防犯リーダーを育成するためのセミナーの開催、自主防犯マニュアルの作成・配布、新規地域ボランティア団体の立ち上げ促進といった支援活動を推進するとともに、今般導入されました自動車に青色回転灯を装備してパトロールを行う、いわゆる青色防犯パトロールを地域ボランティアの方々に奨励するなど、県民と警察が連携し、一体となった犯罪抑止対策を展開していきたいと考えております。 次に、警察署のあり方についてであります。 警察署の管轄区域につきましては、警察法施行令第五条に「警察の任務を能率的に遂行することができるように、人口、他の官公署の管轄区域、交通、地理その他の事情を参しゃくして決定すること」と規定されておりまして、県警察といたしましては、常に県下全体の効率的な治安体制を確保するため、この基準に沿って、警察署のあり方について幅広く検討を行っているところであります。したがいまして、市や郡の区域というものは、警察署の管轄区域を決める一つの事情ではありましても、これのみをもって警察署の管轄区域を決定することはできないというふうに考えているところでございます。 本年四月一日に、月ケ瀬村、都祁村が廃され、その区域が奈良市へ編入されることに伴いまして、先ほど申し上げました警察法施行令の基準に基づき検討を進めてまいりました結果、都祁村の区域は、現時点では従来どおり天理警察署の管轄区域とすることが適当であると判断するに至りまして、本議会におきまして条例の改正をお願いしているところであります。 今後とも、効率的に地域住民の安全安心を守っていくため、市町村合併の動向はもとより、治安情勢、警察官の業務負担、人口動態等の諸情勢を勘案しながら、警察署の統廃合も含め、警察署のより適正な規模、管轄区域、位置等について幅広く検討を進めてまいりたいと考えております。 以上でございます。 ○議長(米田忠則) 三十番岩城明議員。 ◆三十番(岩城明) 時間がなくまりましたので、二点だけ指摘をさせておいていただいきたいと思います。 若い人たちの雇用の不安定化が、不況が原因だという議論があるんです。私はそれは二つ間違っていると思うんです。一つは、中核労働者はその企業は囲い込んで育てると。そして、これはエリートになっていくと。その周りは、派遣でもパートでも、単純労働はもうそういう形で任すと。この若者が、将来は十五、六万円の賃金が全然上がらない労働者になる。共働きしても月収三十万円という世帯がずっと続いていくというような心配があるんです。学校を卒業したら職場があった時代ではもうなくなっているんです。希望に対して格差が生まれているという社会が、若い人たちには今起こり始めているんです。それぞれ関係行政の方で今後の奈良県を展望して、行政、学校、警察、それぞれの担当のところでご奮闘いただきますようにお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手) ○議長(米田忠則) これをもって当局に対する代表質問を終わります。 しばらく休憩します。 △午後二時二分休憩    -------------------------------- △午後二時二十四分再開 ○副議長(吉川隆志) 休憩前に引き続き会議を開きます。 ただいまより当局に対する一般質問を行います。 順位に従い、四十七番梶川虔二議員に発言を許します。--四十七番梶川虔二議員。(拍手) ◆四十七番(梶川虔二) (登壇)議長のご指名をいただきましたので、質問をさせていただきます。 国民保護法についてお尋ねをします。 昨日は、代表質問で川口正志議員が護憲の立場で質問をなさいました。世界は、一つ一つ戦争を経るたびに確実に軍縮を進め、平和を追求してきました。戦争を放棄した平和憲法がありながら、戦争を想定した有事立法ができ、その一つに国民保護法ができました。去る三月四日には、同法の「国民の保護に関する基本指針」案が公表されました。A四版七十五ページにわたっております。新年度の県予算にも国民保護体制整備推進事業として四百五十万円が組まれたり、条例が提案をされております。今年度は国が指針をつくり、二〇〇五年度は都道府県が国民保護計画を、二〇〇六年度には市町村が国民保護計画をつくることになっております。武力攻撃があった場合、国民を保護するという議論には説得力がありますが、この法律により、武力攻撃を未然に防ごうという意識から、戦争はあり得るものだから、それに備えてという心理が強くなるのではないでしょうか。国の安全保障政策を平和憲法や国際法のもとに戻すべきだという意見もあり、県民の議論を期待して、質問をいたします。 国の国民保護基本指針は、武力攻撃の種類には、一つに日本への着陸・上陸侵攻、二つにゲリラや特殊部隊による攻撃、三つに弾道ミサイル攻撃、四つに航空攻撃があると記され、国民保護法はまさに戦争を想定した法律であります。そして、県や市町村は、今日行っている防災のためにできた自衛隊など関係機関との連携体制を活用して、NBC(核・生物・化学兵器)攻撃に対処せよ、知事が国民保護措置をきちんとしなかった場合は、国が直接執行することも明記をされております。 特に私が心配していたのは、県や市町村が現在行っている防災訓練、そして、地域で結成を呼びかけている防災組織や福祉ボランティアなどに一緒に戦争避難訓練をさせないかでありました。訓練実施は努力義務ですが、案の定、国はこの防災訓練に乗せて、国民保護法に基づいた避難訓練をするよう求め、訓練するに当たっては、「具体的な事態を想定し、自衛隊など関係機関でNBC攻撃等への対応訓練をせよ。広域にわたる避難訓練等については実際に資機材を用いて行うなど実践的なものにすること」としております。戦場の臨戦感を出そうとしているのでしょうか。そして、さらに、避難訓練は、必要と判断するときは、住民に対し、当該訓練への参加について協力を要請すること、時期、場所は住民が参加しやすいものにすることなど、住民参加を促そうとしております。 NBC攻撃まで取り上げて、どんな訓練、どんな備蓄をするのか、心配であります。国は化学防護服、放射線測定装置、安定ヨウ素剤、天然痘ワクチンなど備蓄すると言っております。殊さらにオーバーな事例を挙げておりますが、むしろ、ジュネーブ条約第一議定書にある「文民及び文民集団の保護」に規定されている攻撃の禁止条項こそ、国民保護のために罰則つきでこの法律に盛り込むべきだという意見もあります。自治会は、今日では地域の街灯の電力代を負担したり、行政だより等の配布を担ったりしております。この自治会を国防色を帯びた組織にすると、脱退する人も出てきて、地域が混乱することも懸念されますので、利用されないように特に要望しておきます。 また、戦時中、隣組ができたり、竹やり訓練をしたりして戦争を支えたという事実がありました。国民性は、昭和初期も今日も何ら変わっていないと思います。いつか来た道にしてはなりません。平和ぼけということが言われますが、みんなが平和ぼけから覚めて、国防意識旺盛というか、マインドコントロールされないかが懸念されます。そこで知事にお尋ねをいたします。 一点目に、昭和二十年までの戦争と、それを遂行するための教育、訓練、地域組織等をどう認識をされておられますか。 二点目に、国民保護と言いながら国防思想に重きを置くような国民保護計画策定や訓練は実施せず、国防色は排除した防災訓練の方に力を入れ、県民の安寧を保っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 三点目に、国民保護計画のありようは住民自治を問うことになると思いますが、県国民保護協議会はどのような人に委嘱し、訓練や備蓄品はどのようなものになるのでしょうか。知事にお伺いをいたします。 次に、ハンセン病療養所入所者(元患者)への対応についてお尋ねをいたします。 去る三月一日には、ハンセン病問題に関する検証会議の報告が尾辻厚生労働大臣に出されました。私たちは、昭和五十四年、「架け橋長島・奈良を結ぶ会」を結成しました。元當麻町の鈴木京子さんという人の努力によるところが多いのですが、ハンセン病療養所訪問を重点に活動し、この二十五年間に八十六回を数え、昭和五十七年には川本敏美衆議院議員を伴って長島に行きました。川本さんは、衆議院社会労働委員会で質問し、当時の森下厚生大臣の長島訪問を実現させ、「人間回復の橋・邑久長島大橋」の建設となりました。 昭和五十六年より、元患者の工芸作品を展示する「架け橋美術展」を県下各地で開催し、昨年十一月には宇陀郡で二十一回目を開催しました。地元町村、県当局、県議会、県下九市当局にはご支援を賜りましたこと、この場をおかりして厚く御礼を申し上げます。「架け橋美術展」には元患者も多数お越しになり、プロのアドバイスや、架け橋美術展現地実行委員会をはじめ県民との交流などをしてもらい、余剰金では車いすを寄贈してきました。その過程で元患者の家族との再開、遺骨の里帰りなど、さまざまなことを実現させました。 県の行う元患者県人会里帰り事業は、会員の故西阪善治県会議員の提起で、昭和三十九年、第一番目の鳥取県に続いて、昭和四十年に始まりました。この里帰り事業も、当初は天理教の母屋が宿泊所で、食事も天理大学生の手づくりで、極度に質素な状態でした。見かねて、長島を結ぶ会が上田知事に改善をお願いしましたところ、知事は奔走され、その年から一般旅館、国民宿舎、都祁のいこいの村などに泊まれるようになりました。さらにさかのぼれば、昭和四十年ごろ、奈良市中町に元患者の宿泊施設、「交流の家」(むすびのいえ)の建設が計画され、地元の反対を説得し、ボランティアの手で鉄筋二階建ての施設を完成させました。ここで元患者は県民との交流や見学、観光をしたことを忘れてはなりません。奈良県はそうした活動の拠点でありました。 二〇〇一年には、らい予防法違憲国家賠償請求訴訟で、隔離政策は憲法違反の判決が熊本地裁で出ました。国敗訴の判決後、厚生労働大臣、無らい県運動をした都道府県知事の謝罪行脚があったように思いますが、奈良県は入っていなかったと思います。私は当時の担当職員に、「奈良県も国と一緒に隔離してきたのだから、謝罪の意を込めて長島を訪問しては」と持ちかけましたが、らい予防法が改定された昭和二十八年以降新しい患者もない、あえて出向かないということでした。が、それから二年後の二〇〇三年五月には柿本知事は長島を訪れられました。謝罪の言葉があったかどうか、今になってはわかりませんが、元患者の皆さんは、柿本知事さんにねぎらってもらったと、大層喜んでおられました。いずれにしても、県も国の進める違法と言われた隔離政策の片棒を担いだことは事実です。 そこで、質問の一点目ですが、らい対策の検証と反省なしに真の償いはできません。紀元二六〇〇年事業、橿原神宮、畝傍御陵の事業で多くの人々に犠牲を強いた歴史ある奈良県には、無らい県運動はなかったのでしょうか。ハンセン病実態調査をしていただけませんか。 質問の二点目としまして、元患者の社会復帰について、積極的に受け皿づくりをされたでしょうか。社会復帰とは何でしょうか。平均年齢七十八歳、今浦島の方々で、実家は親兄弟の時代ではなく、もう実家には居場所がない方々です。療養所を退所して社会復帰したら、再び療養所に帰れないのです。そんな勇気が持てると思われますか。障害者住宅、ケースワーカー、ホームドクター、固定したヘルパーなど体制を整えて、県人会の一人ひとりに社会復帰について丁寧に聞いてあげたのでしょうか。会長など主な人だけに聞いて、「もう年やから帰りたいと思いません」と言われたということになっておりませんか。完全な社会復帰は無理としても、あまり奈良県人にこだわらず、一月、半年、一年程度ならしたいと思う人もあるのではありませんか。この人たちに各種の形で社会の経験をさせてあげたいと思いませんか。健康安全局長にお尋ねをいたします。 次に、障害者問題についてお尋ねいたします。 厚生労働省は、昨年十月に障害保健福祉施策の「改革のグランドデザイン案」を発表し、二月十日には、それに基づく身体・知的・精神障害者の福祉を一本化した障害者自立支援法案を国会に提出しました。障害者の支援費制度で障害者の地域での暮らしが大きく前進するものと期待しておりましたが、この法案は、障害者が地域で暮らすことを押しつぶし、再び収容的施設に追いやるものであると言われております。例えば、グループホームは四人程度の障害者が共同で、世話人の援助を受けながら地域で生活をしていました。今度の改正で、重度の者は十人から二十人でケアホームというところに入れられ、軽度の方は六、七人で新型グループホームに入れられます。どちらも、今使えているようなホームヘルパーは使えなくなるのではないかと言われております。先日、高齢者の十四人の認知症グループホームで、やけどを負わせ、死亡させる事件がありました。この程度の規模の施設に起こりやすい事件ではないかと、テレビなどで放映をされておりました。 ガイドヘルプサービスは、地域生活支援事業として市町村に移され、障害の程度により利用料を決定することになりますが、国は標準的支給料を決めており、これ以上は市町村の負担になります。現行でも、夜間中学に通学する障害者のヘルパーの通学支援では市町村によりばらつきがあり、無償ボランティアの援助に頼っているのが現実です。国の標準的支給料は事実上の上限になると思います。利用者負担も応能負担から応益負担に変えられ、利用料は一割負担になると言われております。 一九七〇年から三十年かけて障害者は地域で自立して暮らせるよう訴え続けて、今ではノーマライゼーションという言葉を知らない人はなくなりました。県でもこれまで、障害者福祉に関する新長期計画に基づき、障害者福祉の前進のために取り組んできましたが、諸般の状況変化の中、このたび、将来にわたり持続可能で安定的な制度とする必要があるとして、福祉医療制度の改正案が示されました。ハンディのある障害者にも、通院五百円、入院千円の負担をかけ、県もこれで十五年や二十年は変えるものではないと決意をされたところであります。 そこで質問ですが、国の「改革のグランドデザイン」に基づく障害者自立支援法案と、今新しくつくっている県障害者長期計画や、このたびの福祉医療制度との整合性はどのように考えているのか、障害者の生活を地域で支えていく立場から、知事のお考えをお聞かせください。 次に、新緊急地震対策事業や新地震防災対策充実強化事業にかかわって、災害弱者と言われる障害者対策についてお尋ねをいたします。 阪神・淡路大震災から十年、そして昨年は新潟中越地震が発生しました。あまり遠くない将来、東南海・南海地震も発生すると言われております。一つ一つの地震の都度、災害対策を検証しなければなりませんし、災害弱者支援マニュアルなどもつくる必要があると指摘をしておきます。ここでは、新潟中越地震の際に県人工透析患者団体が受けた災害対策情報を参考にしながら、障害者の情報伝達、院外の透析患者など常時医療の必要な人の対策について、お尋ねをいたします。 まず、災害時における対策として、障害者の状況を素早く把握する必要があり、そのためには日ごろから情報ルートの確立に十分配慮しておかなければなりません。とりわけ聴覚障害者や視覚障害者への対応が重要です。そこで質問ですが、障害者の実態把握や、また障害者への情報の伝達を確保するために、県としてどのような取り組みをされておられるのでしょうか。 二点目に、新潟地震の場合の三人の透析患者のケースを検証してみますと、十日町のAさんの場合は、家は大丈夫で通信可能でしたが、マイカーで寝ていましたら、翌日の夜、町健康福祉課より電話があり、翌々日、医師、看護師が同乗したバス二台に分乗して近隣の診療所に搬送され、透析をされております。また、越後町のBさんの場合は、家は大丈夫で通信可能でしたが、マイカーで休んでいたところ、通院している診療所から翌日電話があり、透析を実施しております。小千谷市のCさんの場合は、家に入れなく、車上生活を余儀なくされました。翌日の夜、本人が病院に行って透析器具破損を知り、翌々日九時までにこの病院に集まり、ヘリコプターと救急車で他の病院に搬送され、透析をしました。これらはいずれも新潟県に透析医会--医師会を指しますが、透析医会があるため、とれた措置と聞いております。 ここには透析患者の問題を挙げましたが、ほかにも一日たりとも医療と離れられない人があると思いますが、災害発生時に、人工透析患者など在宅療養者の安否確認や医療の確保はどのように取り組まれようとしているのでしょうか。前者は福祉部長に、後者は健康安全局長にお尋ねをいたします。 次に、分譲マンションについてお尋ねをいたします。 分譲マンションは、ここ数年間は毎年全国で約二十万戸が供給されており、二〇〇三年末には約四百五十万戸、およそ千二百万人の人が居住をしていると推計され、マンションは都市型の居住形態として定着をしてきております。一つの建物を多くの世帯の人によって区分所有しておりますが、共同して住まいしている意識の希薄さ、多様な価値観を持った人たちのため、各種の意思決定の難しさ、建物に関する専門知識が必要なことなど、建物を維持管理していく上での多くの課題を抱えております。 このような中、二〇〇一年八月にはマンション管理適正化法が、二〇〇二年十二月にはマンション建替え円滑化法が施行され、これにあわせて建物の区分所有法も改正をされ、さまざまな方策が講じられております。本県におきましても、マンションは居住者の高齢化が進み、築後年数の経過したマンションの増加が考えられます。先日、マンション居住者のお話を聞く機会がありましたが、維持管理はもとより、管理費の効率的な積み立て、その積立金のペイオフ対策、集会所や公園など一般利用に供している部分のバリアフリー化や固定資産税の減免、エレベーター設置や専門家による建物・設備の調査診断等への行政の援助要望など、さまざまな課題を持っておられました。 そこで質問ですが、マンションを良好に維持管理するためには計画的な修繕が必要です。そのために、専門性を持った相談窓口設置やマンションの実態調査はどのようになっているのでしょうか。土木部長にお尋ねをいたします。 最後に、半日交通圏構想にかかわって、西名阪法隆寺インター近くの県道大和高田斑鳩線の大和川にかかる御幸大橋の改良についてお尋ねをいたします。 御幸大橋は、両詰めにそれぞれ町道交差点があり、渋滞の激しい区域になっております。ちょっと話は飛びますが、最近、国道二五号の斑鳩王寺にかかる昭和橋の東詰めで国土交通省が工事をいたしました。この工事は橋に右折レーンをつくっているのです。ここは車道橋と七十センチ離れて、平行して歩道橋があります。この七十センチのすき間を利用して、乗用車同士であればすり抜けられる右折レーン-右折レーンとも混合レーンとも言うらしいんですが、右折レーンをつけているとのことでした。私は、これはおもしろいことをやると思い、早速県道大和高田斑鳩線の御幸大橋を見比べることにしました。昭和橋幅員は、私の歩幅ではかりまして、歩幅で十二歩、約七・二メートルあり、先ほどの七十センチのすき間で七・九メートルの幅員があります。ところが、御幸大橋は、歩幅で十歩、約六メートル、歩道橋は車道橋に密着しており、すき間はありませんので、両者の幅員の差は一・九メートルあることがわかりました。これは昭和大橋のような細工はできないなと一瞬あきらめたんですが、待てよと考えまして、国にこうした知恵者が、技術屋がおるとするならば、奈良県にも劣らないすばらしい知恵者がおると考え、今回の一般質問で取り上げることにいたしました。この御幸大橋の右折レーンの設置を、公共事業予算のとれない時代ですが、簡易工法で考えていただけませんか。土木部長にお尋ねをいたします。 これをもちまして私の一般質問を終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。(拍手) ○副議長(吉川隆志) 柿本知事。 ◎知事(柿本善也) (登壇)四十七番梶川議員のご質問にお答えします。 私に対する質問の第一点は、国民保護法についてのお尋ねでございます。 これに関連して、まず、昭和二十年までのいろいろな経過についてのご質問がございました。私は、現在の我が国の平和と安定が過去の痛ましい犠牲の上に成り立っており、再びあのようなことがあってはならないと考えているところでございます。当時の教育、地域組織など社会のさまざまな面で、最終的に戦時下に備えたものとなっておったことはご質問のとおりだと思いますが、これは戦争という大きな時代の流れの中で変わっていったものと考える次第でございます。 次に、国民保護計画の根拠である国民保護法でございますが、これは、武力攻撃や大規模テロの際に、国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活や国民経済に及ぼす影響が最小となるように、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することを目的としております。また、国民の保護のための措置を実施するに当たりましては、憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならないと規定されているところでございます。 国民保護計画は、今月下旬に閣議決定が予定されている国の基本指針に基づきまして、国民の保護のための措置の実施体制、住民の避難や救援に関する事項、平素において備えておくべき物資や訓練等に関する事項などについて、具体的にあらかじめ定めておくべきものでございます。この国民保護計画を作成するに当たりましては、国民保護協議会の諮問・答申を経るものとされておりまして、国民保護協議会の関係条例案を今議会に提案申し上げているところでございます。なお、国民保護協議会は、国民の保護のための措置に関し、幅広く住民の意見を聞き、国民の保護のための措置に関する施策を総合的に推進するために設置されるものでございます。 次に、この国民保護法協議会の委員についてでございますが、任命される範囲が法律に示されておりまして、国の地方機関の長等、防衛庁長官が指定する自衛隊に所属する者、市町村長や消防長、指定された公共性や公益性の高い民間機関の役職員、それからいわゆる学識経験者等の中から選任することとされており、そういう選任をいたしたいと考えている次第でございます。 また、訓練につきましては、緊急時の対処について万全を期すため、国民保護法により、実際の訓練を行うように努めなければならないとされておるところでございまして、物資及び資材の備蓄についても、国民保護法により、住民の避難や避難住民等の救援に必要なものを備蓄しなければならないとされているところでございます。この訓練や備蓄につきましては、三月四日に公表された基本指針案に沿って、質問でもお触れいただきましたが、訓練や備蓄の具体的内容について、今後、国民保護協議会のご意見をいただきながら、平成十七年度中に作成する国民保護計画の中で詳細に検討してまいりたいと考えております。 いずれにいたしましても、県民の生命、財産を守るべき重大な役目を担っている立場にある県といたしましては、国民保護法に定められた責務を適切に果たすことにより、こういう武力攻撃とか大規模テロが万一発生した場合には、県民生活に及ぼす影響が最小になるよう万全を期すべきものと考えている次第でございます。 私に対する質問の第二点は、障害者問題についてのお尋ねでございます。 お尋ねにございました、障害者自立支援法案は、障害者及び障害児が、その有する能力や適性に応じて自立した日常生活を営むことができるように必要な支援を行い、障害の有無にかかわらず、個性を尊重して安心して地域で暮らすことができる社会をつくることを目的として、本年二月十日に今国会に上程されております。現時点ではまだ実質的な審議が行われておりませんので、詳細につきましては、今後の審議とか、あるいはその他の政省令などによって運用の具体的な内容が明らかにされると考えている次第でございます。 なお、現在県で策定を進めております「奈良県障害者長期計画二〇〇五」は、障害のある人もない人も、安心して心豊かな生活を送ることができる、いわゆるともに生きる社会の実現を目指して、今後十年間の障害者の生活を支援するため、県における関係施策全般の基本的方向を示そうとするものでございます。この計画の趣旨といたしましては、平成十五年度からの支援費制度の施行や、昨年五月に改正された障害者基本法等、障害者を取り巻く環境の変化も考慮しながら検討を加えてまいりました。具体的な視点といたしましては、障害者がみずからの選択と決定により、地域で自立した生活を支援する、いわゆる利用者本位の取り組み、それから、身近な地域でいろいろな地域の力と協働して、ともに支え合う地域生活を実現すること、あるいは住みなれた地域において安心して心豊かな生活を送るための支援と、自由な社会参加を進めるための生きがいのある生活の支援等を進めると、こういうことにしております。 本県の障害者施策との整合性についてお尋ねでございました。今回の障害者自立支援法案において示されている、障害種別にかかわらないサービスの一元化や、住みなれた地域で普通に暮らすための支援という施策の方向は、本県の計画においても基本としてとらえているところでございます。なお、福祉医療制度をはじめ各分野における具体的な取り組みは、これらの基本的な方向に照らしつつ、法案の審議の経過も見守りながら、今後の対応を判断していくことが大切であると考えている次第でございます。 なお、県といたしましては、本県の障害者長期計画との関連も含め、国における今後の展開を注視しながら、必要に応じましては要望活動などの取り組みも進めてまいりたいと考えております。 以上でございます。 ○副議長(吉川隆志) 三上健康安全局長。
    ◎健康安全局長(三上貞昭) (登壇)四十七番梶川議員のご質問にお答えします。 私に対する第一点目は、ハンセン療養所入所者の対応に関するもので、その中の一点目は、奈良県には無らい県運動はなかったのか、また、ハンセン病実態調査を行うことはできないのかということでございます。 まず、国の隔離政策等によりまして、ハンセン病の元患者及びその家族の方々の尊厳が傷つけられ、多大な身体的・精神的苦難、苦痛を受けられたことは、誠に残念でございます。また、昭和の初めに愛知県から始まったと言われております無らい県運動につきましては、当時の記録は残ってございませんが、本県でも、国の政策としまして、らい予防法に基づき、ハンセン病を感染させるおそれがあるという名目のもとに、療養者への入所勧誘を行っていたことは、誠に遺憾でございます。 本県では早くから、社会復帰の一助となるように里帰り事業を実施しているところであり、平成十四年度の里帰りの際には、知事と懇談もしていただきました。また、毎年、県議会とともに療養所の入所者の方々を訪問しまして、ご意見・要望など伺う場を持たせていただいております。平成十三年のハンセン病国家賠償訴訟の熊本地裁判決があった際には、訪問時に、「不幸なことが二度と起こらないように、この問題を今後の教訓としていく」という知事のメッセージを健康局長が代読いたしました。元患者の方々の苦難、苦痛の歴史を風化させることなく、また、病気を正しく理解してもらうために、入所者の手記を登載した啓発パンフレットも作成し、県下の中学校等に配布しております。 実態調査に関しましては、現時点では改めて実施することは考えてございませんが、今後とも、入所者との交流を深めるとともに、ハンセン病についての理解、差別や偏見をなくすための正しい知識の普及啓発に努めてまいります。 なお、先日、ハンセン病問題検証会議の最終報告が示されまして、再発防止に向けた提言もなされております。今後の国の動きも見てまいります。 それから、ハンセンに関する二点目でございますが、元患者の人たちに社会の経験の件でございますが、今まで述べてきましたように、いろいろな機会を通じまして入所者の方々と直接話し合う場を持たせていただいております。その中では、療養所を退所してまではもちろんのこと、一定の期間、例えば数カ月でも本県に帰りたい、帰って社会の経験をしたいという声は現在のところ聞いておりません。しかし、入所者の方々にはいろいろな形で社会経験をしていただくことは必要でございます。その一環といたしまして里帰り事業を実施しておりまして、平成十七年度からは毎年実施する予定でございます。昨年の里帰りでは、実家への里帰りや墓参りをなされましたほか、県外の施設も見学していただきました。引き続きまして、入所者の方々とよく話し合いまして、要望に沿いながら、より多く社会経験を積んでいただき、社会復帰の一助としていきたいと考えております。 それから、私に対する質問の第二点目は、災害時における障害者や人工透析患者の対策の中で、人工透析患者等在宅療養者の安否確認や医療の確保、これにどのように取り組まれているのかということでございます。 災害時におきます医療救護活動につきましては、県の地域防災計画に基づきまして、県は、県の医師会、県の歯科医師会、県の病院協会等関係団体と連携し、医療救護班の派遣などを行い、発生が予想される多数の傷病者の治療等に当たることとしております。また、県の保健所では、災害時に迅速かつ的確に医療救護活動を行えるよう、「災害時における保健所活動マニュアル」を策定しております。災害時に県の保健所は、市町村等と連携いたしまして、人工透析患者、在宅人工呼吸器・在宅酸素療法者等の在宅療養者に対しまして、安否の確認や稼働病院に関する情報の提供を行うこととしております。さらに、必要な場合は、医療機関等の医療担当者と連絡をとり、入院等の対処を行うこととしております。県としましては、災害時にあっても、人工透析患者等の在宅療養者が適切に医療を受けることができるよう、今後とも、県の医師会、県の歯科医師会、県の病院協会等関係団体と連携を図り、医療の確保に努めてまいります。 以上でございます。 ○副議長(吉川隆志) 上森福祉部長。 ◎福祉部長(上森健廣) (登壇)四十七番梶川議員のご質問にお答えをいたします。 私に対しましては、障害者の実態把握や災害時における障害者への情報伝達などについてのお尋ねでございます。 身体障害者福祉法では、市町村は、身体障害者の生活の実情、環境等を調査し、更生援護必要の有無及びその種類を判断し、本人に対して更生援護に関する指導や福祉サービスを行うこととされております。このことから、市町村では、身体障害者更生指導台帳を備え、現状の調査・確認を行い、援護状況の記録や指導者などの経過を記載し、身体障害者の実態把握と更生援護に必要な体制の整備が行われているところであります。県では、身体障害者福祉法に基づきまして、この更生指導台帳の整理状況について毎年指導監査を実施いたし、障害者の実態把握などについて適切に処理されるよう指導を行っているところであります。 また、視覚障害者や聴覚障害者への情報伝達につきましては重要な課題であるというふうに認識をしております。点字や音声による情報提供事業や手話通訳者、要約筆記の奉仕員の養成・派遣事業などを実施してきたところでございます。こうした取り組みを着実に推進することが災害時等においても有益であると考えており、今後とも、情報提供体制の充実やコミュニケーション支援の拡充に努めてまいります。 以上でございます。 ○副議長(吉川隆志) 南土木部長。 ◎土木部長(南哲行) (登壇)四十七番梶川議員のご質問にお答えいたします。 私に対しまして、まず一点目でございます。分譲マンションを良好に維持管理するため、専門性を持った相談窓口の設置や実態調査についてでございます。 本県におきましては、立地のよい鉄道主要駅周辺におきまして新たなマンションが供給されてきております。その数は、平成十五年に実施されました住宅・土地統計調査では約三万八千四百戸、総住宅戸数の約八%となっております。今後、築後年数の経過により劣化したマンションの増加や、高齢社会を迎え、マンションの居住者も高齢化していくことなどが考えられますことから、マンションの維持管理に関する諸問題も増加してくるものと認識しております。 県としましては、個々のマンションの管理組合が適正にその維持管理を主体的に行うことが原則と考えますが、マンションや周辺地域の良好な居住環境を確保することは、地域社会にとっても大切なことであると考られまして、これを支援してきているところでございます。具体的には、平成十四年度から、県内の関係市町やNPO法人と連携しまして、マンション管理士などの専門家を活用したマンション管理の無料相談会の開催、あるいはマンション管理基礎セミナーの実施による情報提供に努めてきたところでございます。今後、これらの実績を踏まえ、より一層関係機関との連携を密にして、内容を充実していく考えでございます。 また、実態調査につきましては、ただいま答弁いたしましたマンション管理無料相談会、あるいは基礎セミナーの機会をとらえまして、その参加者へのアンケート調査を実施することで、その実態の把握に努めているところでございます。 続きまして、県道大和高田斑鳩線御幸大橋につきまして、簡易な工法で右折レーンができないかというご質問でございます。 ご質問の御幸大橋は、大和川にかかります延長百七十七メートル、車道幅員六メートルの二車線の橋りょうでございます。その南詰め交差点では、右折レーンが設置されていないことから、朝夕の通勤時を中心に慢性的に渋滞が発生していたところでございます。その対策といたしまして右折レーンの設置が有効と考えまして、平成十一年度までに橋りょう部以外について右折待ち車両のための拡幅を行いまして、県道北行き方面の渋滞が解消できたところでございます。しかしながら、南行き方面については、橋りょうの拡幅が必要なことから右折レーンが設置できず、最大で六百五十メートルの渋滞が残っているのが現状でございます。このため、現在、橋りょう拡幅に係る多数の技術的な課題について概略の検討を行っておるところでございます。今後は、これらの課題のうち特に困難なものについて解決の方法を探るための詳細な検討を進めることとあわせまして、関係機関と調整が必要な事項の把握も行うことにしております。 以上でございます。 ○副議長(吉川隆志) 四十七番梶川虔二議員。 ◆四十七番(梶川虔二) 時間もありませんので、要望程度にとどめたいんですが、今の答弁で、いい答弁やなと思ったのは最後の土木部長だけでございまして、まあ、よろしくお願いします。 それはそれとしまして、国民保護法の件、これからいろいろ計画を立てられるわけですが、いわゆる保護協議会のメンバーは、知事の方から法律に定まっておるという答弁もございましたが、たしか法律の中には教育長というのもあったかなというように思っているんですが、知事の答弁の中で教育長というのは具体的になかったかなと思うんですが、学校教育の場にやっぱりこういう戦争を前提とした訓練するでというようなことは持ち込まずに、戦争を起こさんようにせないかんという平和教育に徹していただきますように、特に知事あるいは教育長に要望して、私の質問を終わりたいと思います。 ありがとうございました。 ○副議長(吉川隆志) 次に、十六番森下豊議員に発言を許します。--十六番森下豊議員。(拍手) ◆十六番(森下豊) (登壇)議長のお許しをいただきまして一般質問に入らせていただきます。 まず、県立医科大学について、知事に質問いたします。 奈良県立医科大学は、昭和二十年に奈良県立医学専門学校として設立され、来年度、開学六十周年を迎えるように伺っております。その間、県立医科大学は、地域の医療・保健に携わる優秀な人材を養成するとともに、県民に高度で先進的な医療を提供し、本県医療の充実に大きく貢献されてきたところであります。ただ、昨今、大学をめぐる社会経済環境は著しく変化しています。そこで県立医科大学関係の問題について、数点知事にお伺いいたします。 まず、公立大学法人制度の導入についてであります。 国立大学は、平成十六年四月から国立大学法人化されました。公立大学の法人化についても、地方独立行政法人法が平成十六年四月から施行されたことにより、設置者の自主的な判断に基づき、透明で自律的・弾力的な業務運営が可能となる公立大学法人制度を導入できる道が開かれました。この制度は、行財政改革を一層促進していくための手法としても大いに注目されるところであります。 県立医科大学においては、これまで附属病院のB病棟、C病棟の整備とあわせ、感染症センター、高度救命救急センターの設置や教育開発センター、先端医学研究機構等を相次ぎ設置され、医科大学としてのさらなる教育・研究・診療の活性化、充実に努めてこられました。また、経営面においても、平成十二年度に経営改善計画を作成され、その計画に沿って積極的に経営改善に努めてこられた結果、一般会計からの繰出金も、平成十七年度予算案では四十六億円程度まで減少し、努力された結果があらわれていると思います。今後もこれまで以上により効率的な運営を行い、医科大学が地域医療を担う人材を育成し、確保するという大学の使命を果たし、県民の期待にこたえていくためには、大学みずから一層の変革を図っていくことが重要であると考えます。このような時期に知事は、県立医科大学の一層の大学改革の手法として公立大学法人制度の導入を選択されたことは、大いに評価するところであります。 そこで、公立大学法人制度の導入に関して知事にお伺いします。一点目は、県立医科大学に公立大学法人制度を導入するねらいはどこにあるのか、また、二点目として、制度導入のための推進体制はどうか、あわせてお伺いいたします。 次に、二点目として、県立医科大学医学科における入学定員の地元枠の設定についてであります。 昨年四月から新しい臨床研修制度が実施されました。従来、新卒者の大半が大学病院で研修を受けていたものが、新制度の実施に伴い、大学病院離れが如実にあらわれ、また、都会志向、大病院志向の傾向が強くあらわれてきました。そのため、全国の大学病院では、研修医の不足により、地域の医療機関での医師の引き揚げによる医師不足の問題が再三新聞報道等にも取り上げられております。現実に、県立医科大学の卒業生についても、県外の臨床研修病院を選択し、その多くが本県に戻ってこないといったことも予想されております。一方、毎年の県立医科大学への入学者の状況を見ますと、本県以外の出身者が約七割以上を占め、県立医科大学を卒業後、一時的に本県に残ったとしても、いずれは出身地に戻るといったケース等により、卒業生の県内定着率が減少し、今後、本県での医師確保が困難になるのではないかと危惧するところであります。 平成十四年度の厚生労働省、医師・歯科医師・薬剤師調査によれば、奈良県の人口十万人当たりの医師数は百九十五人、全国平均の二百六人を十一人下回っております。また、隣の和歌山県と比較すると四十五人も少ないという状況であります。県立の医科大学を設置しながら、医師不足を生じかねません。少子・高齢化が一段と進展する中で、いつでも、だれもが高度で良質な医療サービスを受けられる体制整備が求められ、地域医療を担う医師の養成・確保は重要な課題であり、県立医科大学としても何らかの対策が必要ではないかと考えます。 近年、卒業後の県内定着率が高い地元出身学生をふやすことで医師不足解消につながることをねらい、入学定員に地元枠を設ける病院がふえております。既に国立では、信州大学、滋賀医科大学、佐賀大学、公立では、札幌医科大学、福島県立医科大学、和歌山県立医科大学が実施しております。奈良県立医科大学においても、地元に根づいてくれる医師を養成し、地域の医療の質を地域の責任において確保するために、入学定数に地元枠を設けてはどうかと思いますが、知事の所見をお伺いいたします。 次に、農林部長に、環境に配慮した森林整備の推進と県産材の需要拡大策についてお伺いします。 二十一世紀は環境の世紀と言われておりますが、その象徴的出来事として、去る二月十六日に世界百四十カ国が批准した京都議定書が発効いたしました。地球の温暖化が進みますと、二一〇〇年には、二〇〇〇年と比べて平均気温が約五・八度、海面は八十八センチ上昇すると言われております。そうなれば、海没する島や都市も出てくるし、絶滅する動植物も出てまいります。また、台風の大型化による災害の多発、紀伊半島などのブナ林の減少など、深刻な状況をもたらすと言われております。 議定書は、平成二十年から平成二十四年の五年間の温室効果ガス平均排出量を、平成二年度の排出量と比べて先進国全体で少なくとも五%削減しようという国際的な取り組みであり、ご承知のように、京都会議の議長国でもあった我が国は、国内排出量の六%の削減を約束しました。しかし、世界最大の二酸化炭素排出国であるアメリカは不参加を表明しております。議長国の責任において、日本はアメリカの参加を促すべきと考えております。 政府は、京都議定書目標達成計画を策定し、約束実現に向けた取り組みを具体化することとされております。その中で、温室効果ガスである二酸化炭素の排出抑制対策と並んで重要な柱となるのは、森林による二酸化炭素の吸収源対策であり、政府は六%のうちの三・九%を森林の吸収効果で確保する方針を打ち出しております。この三・九%の削減確保のためには、より一層の森林整備の推進が重要と考えています。もはや森林の保全・整備の推進は、林業関係者だけの課題ではなく、国民的な課題となっています。 一方、日本は木材需要の約八割を米材や南洋材などの輸入材で補っております。しかし、輸入木材の中には違法伐採された木材が数多くあると聞き及んでおります。例えば、生産される木材の五〇%以上が違法伐採木材であるということを公式に認めているインドネシアからは、多くの合板が輸入されております。これらの合板にも違法伐採木材が使用されていると思われ、シックハウス症候群にもつながると考えられております。違法伐採は、輸出国の持続可能な森林経営を阻害し、結果、森林の地球温暖化防止機能を著しく低下させるだけでなく、輸入国である我が国にとっても、戦後植林された杉やヒノキが伐期に達しているにもかかわらず、安価な輸入材に押され、売れない状況を引き起こしております。このことが、ひいては人工林の維持管理に必要不可欠な間伐等の森林整備の推進にも悪影響を及ぼしています。 こうした中、特に本県は木造建築物や森林を主体とした「法隆寺地域の仏教建築物」、「古都奈良の文化財」、「紀伊山地の霊場と参詣道」の三つの世界遺産を有し、これらの遺産を後世に引き継いでいく責務を背負っています。さらに、先人たちのたゆまぬ努力によってはぐくまれてきた吉野林業が、山村地域の重要な基幹産業である本県であればこそ、伐採した跡地に植林されず、地球環境の破壊につながる違法伐採を見過ごすことができません。会場が京都だったからということで京都議定書と呼ばれていますが、その京都、奈良から直ちに違法伐採木材の排除に向けた行動を起こすべきであると考えますが、農林部長、いかがでしょうか。 また、本県林業を代表する吉野林業は総じて成熟期を迎えており、適正な維持管理とともに需要拡大に向けた取り組みを積極的に進める必要があると考えますが、平成十七年度の新規事業である奈良県地域材認証支援事業による取り組みもあわせてどのように考えておられるのか、農林部長にお伺いいたします。 三点目、少子・高齢化時代における住宅政策について、土木部長にお伺いいたします。 年末に政府から発刊されました少子化社会白書によりますと、我が国は世界で最も少子化の進んだ国の一つとなっており、一人の女性が生涯に生む子どもの数とされている合計特殊出生率は、過去三十年間、人口を維持するために必要な水準とされる二・〇八を下回ったまま、ほぼ一貫して下がり続け、平成十五年には一・二九と、過去最低を記録しました。ちなみに奈良県は一・一八と、東京、京都に次いでワーストスリーであります。こうした少子化の急速な進行は、社会や経済、地域の持続可能性を基盤から揺るがす事態をもたらしており、経済成長の鈍化、税や社会保障における負担の増大、地域社会の活力低下など深刻な問題を引き起こすことが危惧されております。 県におかれましては、平成十三年度以降、「結婚ワクワク子どもすくすくプラン」に基づき、県民運動の展開を含め、総合的かつ先進的に少子化対策に取り組んでこられました。そして、今年度は、次世代育成支援対策法に基づく奈良県次世代育成支援行動計画を、協議会で活発な審議等を重ね、県民の意見を反映しながら策定中と聞いております。また、来年度はこの計画に基づき、次代の社会を担う子どもたちが健やかに生まれ、かつ育つ環境の整備を図るため、「子育て不安ゼロ作戦」の展開や、地域が一体となって結婚や子育てを応援する「なら結婚応援団」、「子育て応援団」の設置など、画期的かつ意欲的に少子化対策に取り組まれておられることに敬意を表したいと思います。 さて、我が国の地域の現状を見ますと、昭和四十年から五十年代の人口増加時期に開発された郊外の大規模なベッドタウンにおいて、地域全体の高齢化が進行し、地域活動の停滞などの課題を生じ始めております。高齢者の中には、加齢による身体状況の変化などから、より利便性の高い、まちの中の比較的管理が容易な住宅へ住みかえたいという意向をお持ちの方もおられます。一方で、比較的狭い賃貸住宅などに居住している子育て世帯は、子育てに適した環境の広い住宅を求めております。私は、特別養護老人ホームなどの施設を運営している立場から、老人ホームなどへ入所を希望されている高齢者の方々から、今住んでいる住宅を賃貸したい、あるいは売却したい、そしてそれを施設への入居資金としたいので、賃貸や売却のお世話をしてほしいという相談をよく持ちかけられます。また、別の高齢者からは、今住んでいるところから駅前の便利な賃貸住宅に移り住みたいといった声もよく耳にします。 こうした状況の中、先般、建設委員会で福岡県の住宅政策を視察する機会がありました。その際、「福岡県あんしん住替え情報バンク」と高齢者向け優良賃貸住宅制度への取り組みを見聞きいたしました。まず「福岡県あんしん住替え情報バンク」とは、高齢者世帯、子育て世帯それぞれの意向をマッチングし、住みかえを円滑に行うため、住みかえに関する各種情報の提供や相談に応じるとともに、住みかえを予定している住宅に関する情報を登録・公開する仕組みとなっており、県が制度を創設し、財団法人が各種相談や情報バンクによる登録、閲覧、情報提供を実施しています。こういった住替え情報バンクの活用による住みかえの円滑化により、高齢者世帯や子育て世帯のニーズに合った住みかえの実現、オールドタウン化した地域の活性化、中古・リフォーム市場の活性化などの効果が期待できると考えられます。あわせて、福岡県では、高齢者が安心して生活できるバリアフリー化され、緊急時対応サービスの利用などが可能な住まいづくりを推進するための、民間活力による高齢者向け優良賃貸住宅の提供の促進を積極的に行っております。 県では、これまで特別養護老人ホームなどの施設整備に積極的に取り組んでこられたところですが、施設整備にも限界があり、今後は、在宅で高齢化に伴い身体機能が低下したときに必要な介護やデイサービスが受けられるよう、福祉部局との連携や民間活力を活用した住宅政策が必要ではないかと考えております。県下では、高齢者向けの賃貸住宅として、独立行政法人都市再生機構が既存の賃貸住宅をバリアフリー化することにより、約五百戸の供給が行われていますが、県民の期待にはこたえておらず、空き室が目立っております。国や自治体の補助を受けて、駅やスーパーマーケットや病院に近い、高齢者が生活しやすい環境の整った場所に民間事業者が建設する高齢者向け優良賃貸住宅で、県が認定しているものがないのが現状です。 そこで土木部長にお伺いいたします。高齢者向け優良賃貸住宅制度についての積極的な取り組みや、高齢者と子育て世代の住宅ニーズのマッチングにより、まちの活性化を図るなど、少子・高齢化時代に対応した住宅政策が必要と考えますが、県の考え方をお伺いいたします。 以上です。(拍手) ○副議長(吉川隆志) 柿本知事。 ◎知事(柿本善也) (登壇)十六番森下議員のご質問にお答えいたします。 私に対しては、県立医科大学に関するご質問でございます。一つは、公立大学法人制度の導入について、そのねらい、それから推進体制がどうなっているかと、こういう二点でございます。 この法人制度のもとになっております地方独立行政法人法は、平成十六年四月から施行されております。適用される業務の範囲は、試験研究機関、大学、公営企業等の一定の業務とされておりまして、この地方独立行政法人制度の大きなメリットは、一つは自律的・機動的な運営が可能になること、もう一つは、経営責任が明確になり、地域社会等への説明責任の履行が可能になることとされております。この公立大学の法人化に当たりましては、教育研究の特性への配慮等の特例措置が設けられており、こうなった場合の教職員は非公務員となることなどが大きな特徴でございます。現在、平成十九年四月を目途に、今後二年間で各種の制度設計を行っていくことになりますが、制度設計に当たりましては、先行している国立大学等の情報を十分収集し、法人化のメリット、デメリット等の分析を行い、よりよい法人制度を目指すことが必要と考えております。 また、法人化を行う前に、大学運営部門と病院経営部門を二本柱といたしまして、経済性、計画性、合理性を考慮した六年間の中期目標の策定を県が行い、地方独立行政法人評価委員会の意見を聞くとともに、議会の議決を経ることになります。この中期目標に基づきまして医科大学が策定する中期計画や各年度ごとの計画によりまして、魅力のある大学づくり、あるいは地域への貢献等の具体的な計画内容とその実績がより一層明確になり、その意味で大学改革がより強力に推進されるものと期待している次第でございます。 次に、この制度導入のための推進体制でございますが、この法人化をよりよい制度とするためには、相当な日数と人材の投入が必要でございます。健康安全局と医科大学にそれぞれ法人化を担当する組織を新設いたしたいと考えております。具体的には、まず、県として実施しなければならない事項である法人の基本制度設計、条例、規則等の改正、中期目標の策定、評価委員会の設置とその運営、医科大学運営費交付金交付基準の作成などを担当するため、二名体制の係、独立行政法人係を健康安全局の医大・病院課内に新設したいと考えております。また、医科大学におきましては、組織、人事、財務等の具体的な制度設計、大学の規則・規程等の改正、中期計画の策定、資産調査・評価などを担当する四名体制の法人化準備室を新設いたしたいと考えております。 また、こういった法人化への円滑な移行を行うための総合的な調整を行う機関として、関係者で構成する、仮称でございますが、法人設立準備委員会を県庁内に設置したいと考えております。法人化の準備事務につきましては、専門的なノウハウも必要とするところから、国や先行する公立大学の支援実績のある専門家の技術的支援も受けていきたいと考えている次第でございます。以上が推進体制でございます。 県立医科大学についての三点目、昨今の医科大学の合格者並びに定着状況に関連して、入学定員に地元枠を設けてはどうかというご質問でございます。 県民に高度で良質な医療を安定して提供するために、地域医療を担う医師を養成・確保することは、もう申すまでもなく、県立医科大学の重要な使命でございます。そのため、医科大学では、入学料においては県内生と県外生で格差を設けておりまして、県内生の入学に配慮しているところでございますが、それでも、入学生は県内生が約三割、県外生が約七割という現況になっております。一方、卒業後の就職状況を見ますと、これまでは県内医療機関に約七割、県外に約三割が就職しておりましたが、平成十六年度は約五割が県内就職となっている次第でございます。 こうしたところから、医科大学では、地域に貢献できるすぐれた医師を養成・確保するため、学内に入学者選抜方法検討部会を設置いたしまして、入試制度の検討、優秀な学生の確保策などについていろんな角度から検討しているところでございまして、ご質問の地元枠についてもその中で検討されるものと考えている次第でございます。 以上でございます。 ○副議長(吉川隆志) 林農林部長。 ◎農林部長(林洋) (登壇)十六番森下議員のご質問にお答えいたします。 私には、環境に配慮した森林整備の推進と県産材の需要拡大策について、二点お尋ねをいただいております。 第一点目は、違法伐採木材の排除に向けた行動についてのお尋ねでございます。 森林の違法伐採につきましては、平成十年にイギリスで開催されましたサミット以来、毎年のサミットでも議題として取り上げられているところでありまして、違法伐採された木材が我が国に輸入されていることについても承知しているところであります。我が国では、社団法人全国木材組合連合会が、平成十四年十一月に「森林の違法伐採に関する声明」を発表しまして、傘下の木材業界に対し、明らかに違法伐採された木材は取り扱わない等の勧告を行ったところであります。 こうした中で、ことし七月にイギリスで開催が予定されておりますサミットにおきましては、この違法伐採問題がより具体的な形で取り上げられる見込みでありまして、これに向けて、先月、林野庁に違法伐採対策検討室が設置されたところであります。林野庁では、具体的な対策としまして、特に違法伐採木材の特定が難しいことから、木材に係るトレーサビリティー、生産履歴情報提供技術の開発等の検討を行っているところと聞き及んでおります。県としましても見過ごすことのできない問題と認識しておりますが、全国的、国際的なレベルの問題でありますことから、県下の木材業界や他県とも連携しながら、違法伐採木材の排除に向けて、国への働きかけ等の対応を行ってまいりたいと考えております。 次に、第二点目は、県産材の需要拡大に向けた取り組みについてのお尋ねでございます。 お述べのように、本県の県産材につきましては、安価な輸入木材との競合等により、厳しい状況にありますことから、需要拡大に向けた取り組みを積極的に進める必要があると認識しております。このため、業界みずからの認識のもとに、森林組合の広域合併等により林業経営基盤を強化して、原木の安定供給と生産原価の低減を図るとともに、売れる県産材づくり、すなわち市場ニーズに合った製材品を供給することが肝要と考えております。 具体的には、来年度新たに、奈良県木材協同組合連合会及び奈良県森林組合連合会が中心となって、県内で生産された材であることを証明する産地認証と、木材の含水率など品質を保証する品質認証を推進する地域材認証支援事業に取り組むこととしております。また、杉の販路拡大に向けて、乾燥材として供給を進める必要がありますことから、乾燥施設の導入を図っておりまして、来年度は新たに高田木材協同組合に助成をすることとしております。さらに、用途の開拓につきまして、強度にすぐれた県産材の特性を行かした中断面構造用はり材の実用化や間伐材の利用促進などに取り組みますとともに、間伐方式の見直しや流通経路の多様化等によるコストの低減にも取り組んでまいります。また、県産材の利用が環境の保全など多様な公益的機能を有する本県の森林整備に貢献することに対して県民の方々の理解を深めていただくため、PR等を行ってまいります。こうした取り組みを進めるため、来年度新たに、担当の林政課に木材振興グループを設置することとしておりますが、今後とも、関係の方々との連携のもとに一層の取り組みに努めてまいりたいと考えております。 以上でございます。 ○副議長(吉川隆志) 南土木部長。 ◎土木部長(南哲行) (登壇)十六番森下議員のご質問にお答えいたします。 私に対しましては、少子・高齢化時代における住宅政策として、高齢者向け優良賃貸住宅制度についての取り組み、それから、高齢者と子育て世代の住宅ニーズのマッチングなど、少子・高齢化時代に対応した住宅政策ということでいただいております。 県の住宅政策につきましては、平成十三年度に策定しました新・住宅マスタープランの中で、良質な住宅ストックの形成と活用、それから、少子・高齢社会に備えた環境整備、安全・安心で快適な住宅市街地の整備などを主要な目標に挙げて取り組んでいるところでございます。 お尋ねの少子・高齢化に関する具体的な住宅政策といたしましては、これまで民間の賃貸住宅においては、高齢者であることをもって入居を拒むことがなく、安心して住み続けられることのできる住宅の情報提供を行っております。また、県営住宅におきましては、バリアフリー化を推進しまして、高齢者にとって住みよい住宅の提供を行っておるところでございます。現在、平成十六年三月末現在で千百七十三戸のバリアフリー化をしたところでございます。一方で、平成十四年度から高齢者向けの優良賃貸住宅制度を新たに創設しまして、民間事業者、それから市町村に理解と協力を求めてきたところでございますが、これまでのところ供給計画の認定に至ったものはない状況でございます。つきましては、この制度の社会的ニーズ等について、改めて市町村の意見を聴取しながら検証してまいりたいと考えておる次第でございます。 また、情報提供の観点からは、ご提案の高齢者と子育て世代の住宅ニーズに沿った住みかえに資する仕組みの構築と運用につきましては、課題も多くあると考えておるところでございます。そこで、福岡県の取り組み事例などを広く収集などして、多方面から研究してまいる所存でございます。 以上でございます。 ○副議長(吉川隆志) 十六番森下豊議員。 ◆十六番(森下豊) 知事にお答えいただきました医科大学の件なんですけれども、地元枠、検討していただけるという答弁をいただきまして、実は、去年から臨床研修制度が新しく始まりまして、地域の中堅クラスの病院なんかは非常に苦労しているところなんです。というのは、以前は八割以上の卒業生が研修医として大学に残ったんですけれども、新しい研修制度が始まってから、もう半分か半分以下の卒業生しか残ってくれなくなっています。おまけに、今までは大学病院で研修生が手足になって働いてくれていたという、非常に労働力の部分で大切な役割をしていただいていたんですけれども、それもなくなった。おかげで、地元の病院から、それこそ中堅クラスの先生方が大学病院に引き揚げてしまうという形になってしまって、ちょうど地域の病院では医師の空洞化みたいな形になりつつあります。ある病院では、ちょっと医療の質も低下したのと違うかなというようなご指摘も受けるぐらい、実は新しい研修医制度の中で、病院関係者の間では非常にちょっと困ったような状態になっているのも事実やと思います。 それが二年の研修期間が終わった後、またもとに戻るのかというと、実は、先ほどから言っているように、そうでもなくて、やっぱり大病院志向、そしてまた大都市志向になってきている分、ほとんど戻ってきてくれないだろうなという予想すら立っているのが現状なんです。だから、ぜひとも地元枠について、各公立病院、国立病院でも検討されているように、かなり先々、非常に地域において医者が少なくなる、開業医が減ってくるという現状が考えられますので、どうかご検討いただきますようにお願いいたします。 それと土木部長に。先ほどの土木部長の答弁なんですけれども、高齢者向けの優良賃貸住宅、奈良県では民間事業者がやっている分がなぜないのかということなんですけれども、一応、国土交通省の補助もあります。そして、県なり市町村の分担の補助率の部分もあるんです。まあ、補助といっても建物全部の補助じゃなくて、みんなが利用する部分に対しての補助なんですけれども、奈良県だけが県で補助を持ってもらってないんです。ということは、市町村がそのまま全部その補助の分を負担しなきゃいけないということで、とまっているような気もするんです。 国土交通省は来年度までに約十一万戸の高齢者優良賃貸住宅をつくりたいということで予定していたんですけれども、全国的に見ても二万五千戸そこそこしかできてないのも現状ですし、まだ皆さん方に、民間事業者がやる賃貸住宅は、どういう評価があるのかなというような程度でしか見られてないと思うんですけれども、私、先ほどから言いましたように、駅前で、あるいはまた便利なところでお年寄り夫婦が住めるような、そういう賃貸住宅。だから、今まであったような団地の中で県営住宅がつくっているようなバリアフリーしているようなところでの住宅ではなくて、駅にも近い、それから、買物へ行くにも、病院へ行くにも便利なようなところで、今まで住んでいた、子育て世代に住んでいたような広い住宅はちょっと必要じゃなくなった。逆に、広い家を年寄り二人で掃除するのも大変やし、庭の世話するのも大変やしということで、できればもう少し小ざっぱりした便利なところに住みたいなと。今まで住んでいた広い庭つきの家には、また若い子育て世代の皆さん方に賃貸で貸せるような、そういうマッチングを、実は福岡県は県主導でやっていただいていたということなんです。そのためには、お年寄りが-お年寄りというか、高齢者が便利に過ごせるようなそういう賃貸住宅、駅前の賃貸住宅をまずつくることが受け皿として大事ではないのかなということで質問させてもらったんです。奈良県ではそれが進んでない。ということは、県側のもう少しご理解をいただきたいということで質問させてもらいましたが、その点について、もう一度土木部長に答弁をお願いしたいと思います。 ○副議長(吉川隆志) 南土木部長。 ◎土木部長(南哲行) (登壇)今再質問いただきました駅前の非常に便利なところにつきましては、かなり、高齢者以外の方にとっても非常に便利なところでございまして、なかなか、できるのかどうかなというところが実際のようでございます。それで、福岡県なんかに今情報をかなりもらいつつあります。そういった面でいくと、今度、駅前に移る人と来る人の間で、家賃の関係というんですか、具体的に言いますと、そういうものでかなりまだ違いもあるようなので、そういった面で、先ほど申しました具体の実際にするときになると、かなり課題があるようでございますので、そういった面を勉強させていただこうというところでございます。 以上でございます。 ○副議長(吉川隆志) 十六番森下豊議員。 ◆十六番(森下豊) やっぱり、この住宅問題に関しては、少子・高齢という大きな問題の中で、子育て世代には子育て世代の住宅が必要やし、家が広いと子どもをつくってくれるかもわかりませんしね。やっぱりお年寄りには、安全で、安心で、そして便利なところに住んでもらいたい。それをうまくマッチングしてもらえるのが、やっぱり少子・高齢にとって一番いいのではないかなというふうに思いますので、その検討も含めてよろしくお願いしたいと思います。 以上です。   -------------------------------- ○副議長(吉川隆志) 二十四番菅野泰功議員。 ◆二十四番(菅野泰功) 本日はこれをもって散会されんことの動議を提出します。 ○副議長(吉川隆志) お諮りします。 二十四番菅野泰功議員のただいまの動議のとおり決することにご異議ありませんか。        (「異議なし」の声起こる) それでは、さように決し、明三月九日の日程は当局に対する一般質問とすることとし、本日はこれをもって散会します。 △午後三時五十七分散会...