↓ 最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1 平成9年2月27日(木曜日)午後1時5分開会
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◯議長(松浦英一君) ただいまから,平成9年第1回
茨城県議会定例会を開会いたします。
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東南アジア地方行政視察報告
2 ◯議長(松浦英一君) 会議に入るに先立ちまして,報告をいたします。
先般,東南アジアの地方行政を視察されました
茨城県議会東南アジア地方行政視察団団長山口武平君外12名の議員には,2月5日,使命を果たし,無事帰国されました。
この際,新井昇君からその報告がありますので,暫時御清聴のほどお願いをいたします。
新井昇君。
〔17番新井昇君登壇,拍手〕
3 ◯17番(新井昇君) 自由民主党の新井昇であります。
私は,このたび
東南アジア地方行政視察団の副団長として,山口武平団長のもと,細田,木本,磯崎,小川,中田,半村,川津,田中,白田,飯塚,井手の各議員とともに,去る1月28日から2月5日までの9日間にわたり,アセアン4カ国,
インドネシア共和国,マレーシア,
シンガポール,
フィリピン共和国を訪問し,各国における日系進出企業の現況並びに政治,経済等について視察調査を行ってまいりました。
今回の視察団は,山口団長を中心に全員1期生でありましたので,各国の視察とともに,団員同士の交流も活発に行い,現在の政治,経済全般にわたり意見交換を行い,当初の目的を順調に達成することができました。
今,
東南アジア諸国は,「自由への行動元年」をうたった先ごろの
APECフィリピン会議は,各国の具体的な自由化策である
マニラ行動計画を打ち出すなど,APECが一体となって貿易,投資の自由化の実行段階に入ることを強く印象づけました。今やAPECは,EC・NAFTAと肩を並べる大経済会議となっております。これは,70年代に工業化に成功した韓国,台湾,香港,
シンガポールのNIES4カ国及び80年代のアセアンの発展が背景となり,欧州全体がECに結集し,米国もNAFTAを結成,世界の経済圏はブロック化されたのであります。このように,今や
アセアン諸国は,APECの中でも最も重要な地位にあり,世界じゅうからその動向が注目されております。
今回の視察に当たって,このアセアン4カ国を選定したのは,今の時期に見ておくべき必要な国々と考えたからであります。
今回の視察結果を一言で表現すれば,まさに「百聞は一見に如かず」であると感じた次第であります。
では,各視察地での概要につきまして,御報告させていただきます。
最初の
訪問国インドネシア共和国では,まず,大使館にて川村参事官,
豊国一等書記官,
渡辺一等書記官に出席いただき,
インドネシアの政治,経済の現況について説明を受けました。人口は1億9,000万人で,
アセアン諸国中第1位であり,約1万3,000という島々から成る群島国家であります。
政治は,1993年に6選された
スハルト大統領のもと,国政は安定的に推移しており,大統領が来年までの任期を全うすれば,実に,連続30年に及ぶ長期政権となります。
経済においては,多大な国際的債務を抱える中で,石油依存体質からの転換を図り,1994年に外資100%投資の容認を初めとする
抜本的規制緩和を発表し,貿易投資の自由化により,輸出産業の育成に政策転換を図っております。
日系企業の数は,ジャパン・クラブという日系法人の組織によると,約300から 350社,関連会社を含めると,400~500社であります。在留登録をしている日本人は,約1万人。この数は少ないように思えますが,単身赴任の者が多いのと,日本人1人分で,現地の数十人が雇えるためであります。したがって,1,000人規模の工場でも,日本人は5~6人が普通であります。
次に,大使館の現況示唆を踏まえて,進出企業である日立建機の日立・コンストラクション・マシナリー・
インドネシアを訪問し,松本社長の説明を受けました。
設立は1991年,会社は茨城県の土浦工場が母体となっており,従業員は600人,日本からの出向者は,社長以下10人。事業は,中小型の油圧シャベルの組立工場であります。進出の決め手は,まず,人件費の安さということであります。それから関税15%の問題,さらに,
インドネシア国内における建設機械の需要が挙げられます。
インドネシアは,日本の5.5倍の面積があり,資源も豊富にあり,これから
インフラ整備にどれほどの投資を必要とするか,はかり知れないものがあります。企業にとって大きな魅力を持った国に写っているようでありました。工場内の片隅には,昭和32年式の日本製の工作機械が置いてあり,日本では既に使用しないため,こちらへ移設したもので,
インドネシアでは,まだまだ活躍しているようでありました。労働集約型の工場でありますが,社長の説明を受けて見学した結果,これほど集約が進んでいるとは思いませんでした。また,作業中生気のない社員が目についたので理由を尋ねたところ,イスラム教のラマダン月に当たり,1カ月間,日の出から日没まで一切の飲食ができない断食のためでありました。会社として,断食をむしろ当然ととらえているのには,大変驚いた次第であります。
次の視察先は,日立製作所の現地法人で日立パワー・システム・
インドネシアで,日野社長の説明を受けました。
設立は1995年,従業員125人,日本人10人。日本人10人のうち7名は,軌道に乗るまでの応援体制であります。会社の母体は,
日立製作所国分工場で,製品は一般にはなじみの薄い電力会社のスイッチ・ギアを製造しております。
進出に当たっては,
インドネシアの政府と電力会社からの要請があり,
インドネシアにおける技術の伝承を図るためと,
インドネシアの電力需要の伸びが見込めるためであります。生産品については,当初,80%は
インドネシアの電力会社との計画でしたが,国情の違いで,正式発注が簡単に1年,2年のおくれが生じている現況であります。したがって,現在は,日本の親会社が受注したものを生産し,サウジアラビアなどへ輸出しております。
インドネシアの次は,赤道直下の国,豊かな自然,信仰厚い人々,古くから東西交易の中継地としてさまざまな文化が流入された
複合文化国家マレーシアの近代都市,クアラルンプールに移動いたしました。
マレーシア大使館では,
藤原一等書記官から,最近の政治,経済状況の説明を受けました。
人口2,000万人のマレーシアは,
マハデール首相の指導のもとで,
民主的政権交代のルールが確立されており,極めて安定しておりました。
経済面では,93年に国民総生産が,初めて3,000ドル台になるなど,2020年までに先進国入りという目標を掲げ,政策面,
インフラ整備についても,
アセアン諸国では充実した内容になっています。
1986年外資導入の規制緩和を行い,現在,100%外資導入を認めて成功していますが,労働力については極端に不足しており,マレーシア全体で,実に170万人の
イスラム系外国人労働者が働いております。つまり,就業者の5人に1人は外国人ということであります。
在留邦人は,登録上約1万人,実数は5割増しと言われているので,1万5,000人程度と考えられます。日系企業については1,346社であり,製造,非製造の割合は,約半々であります。製造の場合,特に電気,電子産業の関係が多く立地し,日本での競争がそのまま反映するようでありました。
マレーシアでの視察調査は,2社でありました。
まず,
東芝エレクトロニクス・マレーシアの訪問で,安島社長の丁重な説明をいただきました。
1973年創立,今年で操業24年,従業員数1,800人。日本からの出向は,社長以下15人であります。集積回路の生産工場で,商品は日本と同一のものを生産しております。製品の9割はアジアで,後はヨーロッパとアメリカへの輸出であります。技術者出身の社長らしく,よい製品を安く,早くということで進出したのであるから,日本よりもよいものをつくろうと,生産ラインの問題など,さまざまな研究や検討を行っておりました。
一番の問題は,日本のような優秀な下請企業が育たない点で,重要な部品については,日本からの輸入に頼っているのが現状で,日本からの中堅企業の進出を強く望んでおられました。
2番目が多民族国家のため,法律により社員の民族の比率が決められている点であります。これは部課長職にも適用され,余り厳格に適用されると,企業としては問題であると説明があり,日本では考えられないことであります。
次に,
日本ビクター関連の
JVCエレクトリック・マレーシアの訪問では,藤田社長の説明を受けました。
設立は1988年,従業員約2,700人,うち日本人29人。平均年齢は24.5歳。全く男女平等で,勤務時間も給与も格差は一切なく,24時間3交替でフル稼働している状況でありました。音響家電製品の製造が主体の工場で,輸出先はヨーロッパへ4割,南北米へ4割,アジアへ2割で,日本は数%であります。
また,マレーシアは転職が当たり前で,少しでも条件がよければ,すぐ転職するジョッブ・ホッピングが一般的であります。理由としては,労働力不足はもちろん,それ以外に退職金制度がなく,年金も政府が個人の通帳をつくり,そこへ個人,企業が各12%を振り込む個人年金制度であり,この社会保障制度の違いのためではないかと考えられます。
次の
訪問国シンガポールでは,週末となったため,企業,工場視察は行えないため,
住友金属シンガポール事務所との懇談を行いました。大石所長を初め,
日本人社員全員4名と意見交換を行いました。
この事務所は,住友金属の現地法人ではありますが,生産部門ではなく,東南アジアにおける自社製品の営業活動などを行っている会社であります。社員4名の職種は,事務2名,技術2名と半々で,それぞれ専門を生かしながら仕事を処理しております。営業活動の方法が,国により全く異なるなど,製造業主体の視察では考えられないことなどが数多くあり,実りある懇談ではありました。
最後の訪問国はフィリピンになります。
このころになりますと,さすがに全員疲労の色は隠せなくなっているようでしたが,気持ちも新たに大使館を訪問し,篠田二等書記官,先崎二等書記官に,現在の
フィリピン情勢について伺いました。
人口6,500万人は,
インドネシアに次ぐアセアン第2位の国で,大学の進学率も高く,労働者の質も非常に高い,賃金は
インドネシアとほぼ同じであります。
現在までの日系企業進出は377社を数え,そのうち50%が自動車産業,
コンピューター関係等の製造業であり,今後,
インフラ整備の問題,特に電力供給,水,道路整備と課題も多いが,世界共通語である英語を公用語としていることは,進出企業にとって最大の魅力であるのではないかと強く感じた次第であります。
フィリピンの企業視察は,
日立製作所関連の
現地法人日立コンピューター・プロダクツを訪れ,社長の佐羽氏より説明を受けました。
設立は1995年,小型ディスク・磁気ヘッドを製造している工場で,日本の小田原工場がベースであります。従業員2,000人を有し,日本人は13人であります。
進出の理由は,近年,政府が外資導入政策を始めたためと,投資後何年かは法人税や所得税などを免除する投資優遇制度が受けられたためでありました。その他に,
アセアン諸国と比べ,日本との距離が近い点と,空港から1時間の場所に工業団地がある点であります。きょう,日本に電話すれば,あすには必ず来られる場所であるというのは,製造工場では重要なことであります。政情,治安等の問題も,十分に検討したようであります。
製品については,磁気ヘッドは,ほぼ100%親会社の日本へ,小型ディスクは日本に限らず,世界各国へ輸出しています。
工場内の見学では,大勢の白衣を着用した女性工員が,大きな目を輝かせながらほほえみを浮かべた表情は,今でも心に残っております。英語が話せ,目がよく,手先が器用と三拍子そろった技術力は,フィリピン以外では得られないのでは,とまで佐羽社長は話されておりました。
以上,アセアン4カ国の視察は無事,事故もなく帰国の途についたのであります。
各国大使館及び進出企業の視察に際しましては,関係者と全議員が活発な質疑応答を交わしたのでありますが,それぞれ関係の皆様が,誠意ある対応をしていただき,感謝する次第であります。
アセアン諸国は,異なる国家体制,経済規模,民族,宗教とばらばらな国の集まりであります。このような国々が,統合に向かうのは極めて困難であります。政治的ではなく,自由経済が主導となり,地域交流に成功し,日系企業も経済活動の中でアジアの地域発展のため,共存共栄に向かって努力している現況に感激した次第であります。
視察団全員が,視察の意義を十分に認識し,目的をほぼ達成できたものと総括しております。
今後,この視察の成果を地元産業の空洞化問題や,商業,流通業の発展施策等に十分に生かし,なお一層の努力をしてまいる所存であります。
最後になりましたが,今回の視察に対しましては,その機会を与えていただきました議員各位並びに執行部の御高配に対し,感謝申し上げまして,御報告にかえさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
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新任出席説明者の紹介
4 ◯議長(松浦英一君) 続いて,新任の出席説明者を紹介いたします。
選挙管理委員会委員二井矢敏朗君を紹介いたします。
〔
選挙管理委員会委員二井矢敏朗君登壇〕
5
◯選挙管理委員会委員(二井矢敏朗君) ただいま御紹介いただきました
県選挙管理委員会委員の二井矢敏朗と申します。最善を尽くして,与えられた責務を全うする所存でございますので,よろしくお願いいたします。(拍手)
6 ◯議長(松浦英一君) 次に,
選挙管理委員会委員成瀬光朗君を紹介いたします。
〔
選挙管理委員会委員成瀬光朗君登壇〕
7
◯選挙管理委員会委員(成瀬光朗君)
選挙管理委員会委員に選任されました成瀬光朗でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
8 ◯議長(松浦英一君) 次に,
選挙管理委員会委員野口不二子君を紹介いたします。
〔
選挙管理委員会委員野口不二子君登壇〕
9
◯選挙管理委員会委員(野口不二子君)
選挙管理委員といたしまして再任されました野口不二子でございます。よろしくお願い申し上げます。(拍手)
10 ◯議長(松浦英一君) 次に,
選挙管理委員会委員菊池龍三郎君を紹介いたします。
〔
選挙管理委員会委員菊池龍三郎君登壇〕
11
◯選挙管理委員会委員(菊池龍三郎君) このたび,新たに
県選挙管理委員会の委員に選任されました菊池龍三郎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
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平成9年2月27日(木曜日)午後1時26分開議
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12 ◯議長(松浦英一君) これより本日の会議を開きます。
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会議録署名議員の指名
13 ◯議長(松浦英一君) まず,
会議録署名議員を定めます。
茨城県議会会議規則第118条の規定により,細谷武男君,飯野重男君,葉梨衛君,今橋孝行君を指名いたします。
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諸般の報告
14 ◯議長(松浦英一君) 諸般の報告をいたします。
まず,平成8年第4回定例会において議決されました
地方事務官制度の廃止等に関する意見書,私学助成の充実強化に関する意見書は,12月19日,内閣総理大臣外政府関係機関あて提出いたしましたので,報告いたします。
次に,閉会中における委員会の開催並びに各委員会の所管事務事業に係る調査等については,お手元に配付いたしました
委員会活動状況一覧表のとおりであります。ごらんおき願います。
次に,請願処理経過及び結果表をお手元に配付してあります。ごらんおき願います。
次に,2月17日までに受理いたしました請願は,お手元に配付の請願文書表第1綴のとおりでありまして,
所管常任委員会に付託をいたしましたので,報告をいたします。
次に,監査委員から,平成8年11月分及び12月分の出納長及び
企業管理者所管に係る現金出納検査の結果について報告がありました。その写しをお手元に配付してあります。
また,同じく監査委員から,
農地局農地建設課外90機関の定期監査結果及び財団法人茨城県開発公社外6団体の
財政的援助団体監査結果について報告がありました。それが登載されている県報を別途各位に送付してあります。
次に,知事などから通知のありました地方自治法第121条の規定に基づく出席要求による出席者につきましては,お手元に配付の印刷物により御了承をお願いいたします。
次に,知事から議案が提出されましたので,報告させます。議事課長。
〔
柳橋議事課長報告〕
財 第 81号
平成9年2月27日
茨城県議会議長 松 浦 英 一 殿
茨城県知事 橋 本 昌
議 案 の 送 付 に つ い て
平成9年第1回
茨城県議会定例会に下記の議案を提出するため,説明書を添え
て別添のとおり送付します。
記
第1号議案 平成9年度茨城県
一般会計予算
=ないし=
第71号議案 霞ヶ浦常南,霞ヶ浦湖北,霞ヶ浦水郷,那珂久慈及び利根左岸さし
ま流域下水道の維持管理に要する費用に係る関係市町村の負担額に
ついて
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日程第1 会期の件
15 ◯議長(松浦英一君) これより議事日程に入ります。
日程第1,会期の件を議題といたします。
お諮りいたします。このたびの定例会の会期は,本日から3月25日までの27日間といたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
16 ◯議長(松浦英一君) 御異議なしと認め,会期は,3月25日までの27日間と決定いたしました。
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日程第2 第1号議案=ないし=第71号議案
17 ◯議長(松浦英一君) 日程第2,第1号議案ないし第71号議案を一括して議題といたします。
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第1号議案 平成9年度茨城県
一般会計予算
第2号議案 平成9年度茨城県
物品調達特別会計予算
第3号議案 平成9年度茨城県
競輪事業特別会計予算
そのような考えに基づき,平成9年度予算は,当面する重要課題のうち,特に次の諸点に留意しつつ編成いたしました。
第1は,少子・高齢社会に向けた取り組みの充実であります。
世界に例を見ない急激な高齢化が予想される中で,高齢者が,住みなれた地域で,健康で生きがいを持って,生き生きと生活できる地域社会づくりが必要となってきております。このため高齢者の就労対策,生きがいづくりを進めるとともに,地域ケアシステムの充実などの福祉対策や,人にやさしいまちづくり事業などを一層推進することといたしました。また,核家族化の進行や女性の職場進出など,子育てをめぐる環境の変化に対応して,子供を持ちたい人が安心して子供を生み育てられる環境づくりを一層推進してまいることとしております。また,県民だれもが身近なところでリハビリテーションが受けられるような体制の整備や,療養型病床群の確保などの施策を進めることといたしました。
第2は,教育,文化の充実であります。
今日のように急速に社会が変貌する時代にあって,社会の変化に柔軟に対応し,新しい時代を切り開いていくためには,学校教育活動の中で個性を尊重しながら,こころ豊かなたくましい人材をはぐくんでいくことが重要であります。そのため,新しいタイプの高等学校の開設の準備を進めてまいりますほか,高度情報化社会に児童生徒が対応していけるよう,学習環境の整備を進めていくことといたしました。
また,経済の成熟化や余暇時間の増大などを背景に人々の価値観は多様化し,ゆとりやうるおいといったものを求める傾向が,一段と強くなってきております。このような傾向に対応し,県民が生涯を通じて学びながらみずからを高め,充実した生活を営むことができるよう,生涯学習センターの整備を進めますほか,スポーツ施設や美術館の整備などを進めることといたしました。
第3は,安全で快適な生活環境の整備であります。
近年の都市・生活型の環境汚染や地球環境問題の解決のためには,大量生産,大量消費,大量廃棄型の社会経済活動や生活様式を見直すとともに,人間と自然との共生を図っていく必要があります。また,次の世代へ豊かな自然を引き継いでいけるよう自然環境の保全と創出に努めるとともに,環境への負荷の少ない地域づくりを進めていかなければなりません。そのため,「大好きいばらき県民運動」などと連携しながら,環境保全に関するさまざまな施策を積極的に推進していくこととしております。
また,霞ヶ浦の水質浄化は,本県にとって重要な課題であり,新たな視点に立った生活排水対策などを推進しながら,環境と共生した霞ヶ浦の周辺整備や利用の促進にも力を入れていく考えであります。
第4は,農林水産業や商工業の活性化であります。
経済のグローバル化に伴う国内外の競争の激化などにより,県内の産業は厳しい状況に直面しております。本県の農林水産業を取り巻く情勢は,担い手の減少や高齢化に加え,輸入農林水産物の増加や米の流通規制の緩和など,大きな変革期を迎えております。
このような情勢の変化に的確に対応しながら,若い人が将来にわたって魅力とやりがいを持って農林水産業に取り組むための施策を,引き続き推進していくこととしております。
また,県内の中小企業につきましては,国内外との価格競争や大企業の海外展開などが進む中で,依然として厳しい経営環境にありますので,創造性や自立性に富み,競争力のある足腰の強い企業の育成に,より一層力を入れていくことといたしました。
第5は,発展と交流のための基盤整備であります。
御承知のとおり,昨年末以来,百里飛行場の民間共用化や北関東自動車道,東関道水戸線,さらには圏央道の整備について,新たな方向づけがなされ,さらにワールドカップの鹿島開催の決定や,本県初の海外事務所の上海開設など,世界との交流促進と県土の基盤整備のための各種事業が順調に進展しております。今後とも,常磐新線の整備や首都機能誘致などを含め,21世紀に向けて本県の発展基盤の整備を,引き続き進めていくこととしております。
第6は,行政改革の推進であります。
地方分権の進展に伴って,県の果たすべき役割や責任は,今後ますます大きくなっていくものと思われますが,それらを十分果たしていくためには,簡素で効率的な行財政運営システムを確立していかなければなりません。これまでの行政運営を根底から見直す行政改革を,是が非でもやり抜くこと,すなわち「行革なくして地方自治のあすはない」との決意で,行政改革に積極的に取り組んでいくことが必要であります。今後とも,最少の経費で最大の効果を挙げるという行政運営の基本原則にのっとり,事務事業の徹底した見直しや,組織機構の簡素効率化を図るとともに,親切な行政運営など行政サービスの質の向上についても,県庁全体が一丸となって取り組んでまいりたいと思います。そのため,総務部内に「行政改革・地方分権推進室」を設置することといたしました。
次に,予算について申し上げます。
まず,本県の予算編成の前提となる国の予算は,平成8年度末の公債発行残高が,約241兆円程度と見込まれるなど,危機的な財政状況にあることを踏まえ,平成9年度を財政構造改革元年と位置づけ,一般歳出の厳しい抑制,大幅な公債減額などに努めた結果,一般会計歳出総額の伸びは3%増,国債費や地方交付税交付金を除いた政策的経費である一般歳出の伸びは,1.5%増と緊縮型の予算となっております。
また,地方財政計画の規模は,前年度比2.1%の増と,実質的には,昭和59年度以来の低い伸び率となっております。その特色といたしましては,国同様,財政体質の健全化,行財政改革の推進といった観点に立ち,地方単独事業や一般行政経費の抑制などにより,地方一般歳出の伸びを0.9%増としたこと,さらに,地方債発行額あるいは交付税特別会計借入金の減額により,借入金依存度の引き下げを図ったことなどであります。
次に,本県の財政状況であります。
まず,歳入の中心であります県税収入でございます。平成9年度から地方消費税が導入されることとなっておりますが,まず,従来の税目による収入について申し上げますと,企業収益の回復等によりまして,法人二税や自動車税を初め主要税目が,前年度を上回る見込みであり,この結果,従来の税目での県税収入見込額は,総額で3,301億2,400万円,前年度当初比3.1%の増となります。それに,新たな税目であります地方消費税と地方消費税創設に伴う地方消費税清算金を加えますと,県税収入総額は3,494億6,700万円,前年度当初比9.2%の増になるものと見込んでおります。
しかしながら,消費譲与税の段階的廃止,地方消費税市町村交付金の創設など,地方消費税の創設に伴う減額要因がありますほか,地方交付税につきましても,市町村への傾斜配分が予想され,本県においても,前年度に比べ,約70億円の減となるものと見込まれます。さらに,消費税率改正に伴います歳出の増がございますので,それらの分を差し引きますと,実質的な一般財源の増は,40億円程度にとどまるものと思われます。
このように,県財政が極めて厳しい状況にありますことから,県民の生活向上に必要な諸施策を推進するため,県債や基金を活用することとした次第であります。県債につきまして,地方交付税による財政措置のある県債を中心に,5.4%増の1,566億4,200万円を計上いたしましたほか,基金につきましても,財政調整基金等を取り崩し,一般財源として569億7,900万円の繰り入れを行うこととし,所要の財源を確保したところであります。
歳出につきましては,行財政の簡素効率化を図るため,積極的に事務事業の見直しを行うなど,経費の節減に努める一方,新県計画を着実に進めていくための施策に重点的に予算を配分いたしました。
この結果,平成9年度の
一般会計予算は,総額で1兆1,022億500万円,前年度当初予算に比べ4.8%増となっておりますが,地方消費税の都道府県間の清算金や市町村への交付金を控除した実質的な伸び率は,3.2%となります。
また,特別会計は17件で,総額1,261億5,100万円となり,11.6%の増,企業会計は5件で,総額885億2,800万円となり,3.8%の減となっております。
なお,債務負担行為は,一般会計で新規59件,特別会計で新規10件,企業会計で新規5件であり,その内容は,建設工事の請負契約などであります。
次に,平成9年度の主な施策について申し上げます。
まず,第1は,だれもが健やかに暮らせるやすらぎに満ちた社会づくりについてであります。
人生80年時代に向けて,高齢者が安心して生き生きと暮らせる長寿社会づくりを積極的に進めておりますが,高齢者が,より適切なサービスが受けられるよう,新たに介護ふれあい体験事業に,家族介護者のための専門的な介護技術研修を加え,市町村に助成してまいります。さらに,公的介護保険制度の創設を前にして,要介護高齢者の福祉の充実と介護者の負担軽減のため,新たに24時間在宅ケアサービスの提供体制を整備してまいります。
また,急速な少子化の進行は,将来の社会経済全体に大きな影響を及ぼすことが懸念されており,子供を持ちたい人が安心して子供を生み,健やかに育てることのできる環境づくりは,県民全体で取り組むべき重要な課題であります。
このため,先般,平成9年度を初年度とする子育て支援総合計画「大好きいばらきエンゼルプラン」を策定したところであります。今後,この計画に示された子供の視点に立った明るい家庭づくり,子供がたくましく心豊かに育つ環境づくり,子育て支援のための地域社会づくりの3つの基本的な考え方に基づき,子育て支援策を積極的に推進してまいります。
さらに,児童の健全育成を図るため,新たに,放課後児童クラブ整備のための補助制度を設けるほか,通常の教育時間終了後も,引き続き,保護者の希望に応じて園児の預かり保育を実施する幼稚園に対しまして,その受け入れ体制を整備するための助成制度を,全国に先駆けて創設いたしました。
また,母子家庭への医療費の無料化につきましては,障害者や定時制高校等に在学する20歳未満の児童とその母を対象に加えることにより,負担の軽減を図ってまいります。
地域福祉の推進につきましては,高齢者や障害者等が,家庭や地域の中で安心して暮らすことができる福祉コミュニティーの形成を図るため,福祉・保健・医療が連携して,総合的なサービスを提供する地域ケアシステムの整備を積極的に推進するほか,ホームヘルパー養成のための研修を大幅に拡充し,県民の地域福祉活動への積極的な参加を促進してまいります。
障害者福祉の推進につきましては,障害を持つ人々が,住みなれた地域社会で安心して生活ができるよう,新たに障害者施設の持つ知識や技能を活用した訪問指導や療育訓練を行うなど,在宅の障害を持つ人々に対する支援体制の充実強化を図ってまいります。また,障害を持つ人々が,日常生活において直面しているさまざまな問題や,財産管理などの権利擁護に関する相談などを行うため,障害者110番事業を実施してまいります。
平成10年に開催する「ゆうあいピック茨城大会」につきましては,選手の養成を図るとともに,平成9年11月にプレ大会を実施するなど,開催準備を進めてまいります。今後とも,県民の皆様の御理解と御協力のもとで,さまざまな県民運動を展開しながら,知的障害者のスポーツの振興と社会参加の促進に努めてまいります。
次に,医療の面につきましては,地域的にバランスのとれた医療体制を確保するため,筑波メディカルセンター病院における地域がんセンターの整備や,行方地域における中核病院の確保に努めてまいります。
また,昨年12月に開院いたしました県立医療大学付属病院を中心といたしまして,県民だれもが,身近なところで適切なリハビリテーションが受けられるよう,テレビ会議システムを利用して訓練指導などを行う地域リハビリテーション事業を,モデル的に実施してまいります。さらに,今国会に提出されております介護保険制度の創設もにらみながら,患者の療養環境に配慮した医療施設の整備充実を図るため,新たに融資制度を創設いたします。
第2は,ゆたかさを実感できる安全快適な生活環境づくりについてであります。
地球環境の保全につきましては,地球環境時代に対応した環境施策推進のための新たな枠組みとして,昨年6月に制定した環境基本条例を踏まえ,平成9年3月には環境基本計画を策定いたしまして,地球環境問題を初め,廃棄物の循環利用,緑の保全や河川の水質浄化など,環境の保全と創造のための幅広い施策を総合的,計画的に推進してまいります。
霞ヶ浦の水質浄化につきましては,平成9年3月に策定を予定しております第3期湖沼水質保全計画に基づき,下水道の整備など,これまでの浄化施策の拡充強化を図るとともに,第6回世界湖沼会議の成果などを踏まえ,新たな視点に立った生活排水対策や面源負荷削減対策,浄化啓発などを推進し,一層の水質浄化に努めてまいります。
また,霞ヶ浦を初めとする湖沼に関する幅広い調査研究や環境教育・学習,市民活動との連携などの機能を有する「(仮称)霞ヶ浦環境センター」の整備について,引き続き検討してまいります。
さらに,世界の湖沼問題の解決に寄与し,あわせて本県の国際協力を進めるため,本年10月にアルゼンチンで開催が予定されております第7回世界湖沼会議において論文を発表する,発展途上国の優秀な研究者等を表彰する「いばらき霞ヶ浦賞」を創設いたします。
また,快適で生きがいのある地域社会づくりを進めるためには,県民一人一人が環境問題や福祉問題など,地域社会の直面する課題に,自主的かつ積極的に取り組んでいくことが必要であります。このため,県内各地で展開されておりますさまざまな県民運動との連携を図りながら,やさしさとふれあいのあるいばらきづくりを目指す「大好きいばらき 県民会議」の育成,拡充を引き続き図りますとともに,県民会議が取り組む水質浄化,福祉,交通安全などの事業を支援してまいります。
また,県南地方総合事務所で行っております県南地区の旅券発給事務につきましては,利用者の利便を図るため,土浦駅前再開発ビルへ移転することとしたところであります。
ふだんの生活の中で,県民のだれもが豊かさを実感できる生活環境を整えていくためには,道路や下水道などの基礎的な社会資本の整備を一層促進していく必要があります。
生活道路の整備につきましては,平成6年度から実施しております生活関連道路緊急整備事業を推進し,交通危険箇所や交通不能区間の解消などにより,安全で快適な生活を実現する道路の整備を進めます。
生活排水対策につきましては,生活排水ベストプランに基づき,地域の特性に応じて,下水道や農業集落排水施設などの効率的な整備を進めているところであります。下水道につきましては,普及率の早期向上に向けて,平成8年度からスタートした小貝川東部など7カ所の流域下水道の整備を,積極的に推進してまいります。また,市町村が行う公共下水道につきましても,市町村下水道整備支援事業等による財政支援を図りながら,その整備促進に努めてまいります。
農山漁村地域では,農業集落排水事業などを積極的に推進してまいりますとともに,農業農村整備を通して,水路やため池などの機能保全と水質の浄化を図り,だれもが水と親しめる水辺環境の整備を進めてまいります。
次に,霞ヶ浦及びその周辺地域におきましては,現在,策定作業を進めております霞ヶ浦環境創造ビジョンに基づき,新たな魅力と楽しさのある霞ヶ浦づくりに向けて,新霞ヶ浦20景づくり事業を実施いたしますほか,霞ヶ浦湖岸道路など,その恵まれた自然条件を生かしながら,環境と共生した霞ヶ浦の周辺整備や利用の促進に力を入れてまいります。
また,本年の4月26日に国営ひたち海浜公園におきまして,第8回全国みどりの愛護のつどいの開催が予定されておりますが,これに伴い,並行イベントであります花と緑のフェスティバルいばらき '97を,4月27日から5月5日まで,海浜公園などを会場として開催することとし,都市緑化の一層の推進に努めてまいります。
また,道路利用者に休息の場や情報を提供し,ドライブがより安全で快適なものとなるよう,引き続き,道の駅「だいご」や道の駅「しもつま」の整備を進めますとともに,新たに道の駅「たまつくり」の整備に着手いたします。
防災体制の整備につきましては,災害情報の収集,伝達をさらに迅速かつ的確に行うため,衛星通信を活用した防災行政無線の整備や,災害対策の拠点となる防災センターの整備を推進してまいります。また,自主防災組織の育成強化など,各種の震災対策を積極的に推進してまいります。
次に,安全な交通社会づくりについてであります。
依然として多発する交通事故を抑止するため,各年齢層に応じたきめ細かな交通安全教育を引き続き実施してまいりますほか,交差点やカーブなどの交通危険箇所の整備や歩道の段差解消,わかりやすい道路案内標識の設置など,総合的な交通安全対策を実施してまいります。
第3は,個性と創造性に富むこころ豊かな人づくりについてであります。
学校教育につきましては,児童生徒一人一人の個性を生かす教育の充実が重要となっております。このため,高等学校におきましては,選択制を大幅に取り入れた新しいタイプの学校として,全日制単位制高校と総合学科を平成10年度に開設いたします。普通科の全日制単位制高校としては,牛久栄進高校を,総合学科としては,八千代高校を改編した上で開設することとしており,それに伴う施設,設備の整備を平成9年度から行いたいと考えております。また,生徒や地域の実態を踏まえ,個々の実情に応じた学習指導の充実等による特色ある高校づくりを推進するため,新たにサンライズハイスクール推進事業を実施いたします。
次に,子供を取り巻く環境が大きく変化する中で,いじめや登校拒否の増加などが,社会問題となっております。このため,新たにモデル市町村を指定し,学校,家庭,地域社会が連携しながら,市町村を挙げて生徒指導に取り組む体制づくりを進めますとともに,フォーラムの開催や研究指定校による実践研究を通しまして,こころ豊かでたくましい児童生徒の育成に努めてまいります。
また,高度情報化に代表される社会の変化に対応し,児童生徒がコンピューターを活用できる能力を育成するため,インターネットを学校教育において利活用できるよう,県立学校への計画的整備を他県に先駆けて進めてまいります。
また,障害児教育の推進につきましては,県立勝田養護学校大子分校を県立大子養護学校として独立させ,地域との連携をより密接にした学校運営を図ってまいりますほか,社会の一員として立派に生活するために必要な知識,技能等を身につけられるよう,水戸市下大野地区に高等養護学校の整備を進めてまいります。
私学教育の振興につきましては,私立高校について,教育条件の維持向上と保護者の経済的負担の軽減,学校運営の健全化等に資するため,新たに生徒減少対策を講じるなど,私立高等学校等の経常費に対する助成の充実に努めてまいりますほか,学校法人立専修学校の運営費に対する助成の拡充を図ってまいります。
生涯学習の推進につきましては,県民が身近なところで学習できるよう,各地区に生涯学習センターの整備を進めているところであります。
平成9年度は,麻生町に仮称鹿行地区生涯学習センターを,土浦市に仮称県南地区生涯学習センターを,それぞれ開所する予定でございます。また,県北地区につきましては,整備に向けた構想を策定してまいりたいと考えております。
なお,県立婦人教育会館につきましては,仮称鹿行地区生涯学習センターの併設や開設10周年などを契機といたしまして,名称を茨城県女性プラザに変更したいと考えております。
スポーツ・レクリエーション活動の推進につきましては,県民の多様なスポーツニーズや平成14年に本県で開催されます予定のインターハイなどに対応できるよう,笠松運動公園等県営体育施設の整備を進めますとともに,新たに市町村の体育施設整備に対する助成制度を創設いたしまして,市町村のスポーツの振興を支援してまいります。
また,日韓共同開催となる2002年ワールドカップサッカーにつきましては,国内では10会場で行われることとされ,昨年末に,本県が国内開催自治体の一つに決定されました。本県鹿島での開催決定に至るまでの関係各位の御尽力に対しまして,深く感謝を申し上げます。
今後は,大会開催に向け,スタジアム整備を初め,道路等の基盤整備や宿泊対策,観客輸送対策などを行い,大会開催準備に万全を期してまいります。
文化活動の推進につきましては,茨城県近代美術館が,本年4月に開館10周年となりますので,それを記念しまして,「ミレーとバルビゾン派の画家たち」展を開催いたしますとともに,新たに移動ハイビジョンを導入して,教育普及の充実を図ります。
また,天心記念五浦美術館につきましては,本年11月8日の開館に向け,最終的な整備と開館記念展開催などの準備を進めてまいります。
さらに,笠間芸術の森公園におきまして,「伝統工芸と新しい造形美術」をテーマとして仮称アート館の建築に着手し,平成11年秋の開館を目指して整備を進めてまいります。
第4は,新しい魅力と活力あふれる産業社会づくりについてであります。
まず,農林水産業でございますが,ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施,新食糧法の施行,消費者ニーズの多様化など,本県の農林水産業を取り巻く環境は,大きく変わりつつあります。
このような情勢変化に的確に対応し,魅力とやりがいのある農林水産業の実現と,快適に暮らせる農山漁村づくりを進めるため,新しい農業,林業,水産業の各振興計画に基づく各種施策の着実な推進を図ってまいります。
まず,担い手の確保,育成対策といたしましては,経営感覚にすぐれた担い手を育成するため,高度な機械,施設の整備に助成しますとともに,新たに認定農業者などを対象に,スーパーL資金を補完する借りやすい小口低利資金を設けるなど,総合的な担い手対策を講じてまいります。
さらに,生産性向上対策として,本県独自の新品種の開発や新技術の実用化を進めますとともに,大規模で低コストの水田農業を確立するため,農地の流動化と大区画のほ場整備を一体的に進めてまいります。また,新食糧法のもとでの米の産地間競争の激化に対応するため,本県産米のイメージアップとブランド化を図ってまいります。
また,日本一の園芸県を目指して高品質な園芸作物を,年間を通して安定的に生産出荷できるよう,鉄骨ハウス等の施設化を促進しますとともに,高品質,高生産性のカンショづくりを進めるため,ウイルスフリー苗の普及促進を図るほか,広域銘柄産地の育成や,生産,販売体制の整備強化を推進してまいります。
畜産の振興につきましては,畜産試験場の移転整備を,引き続き進めてまいります。
林業の振興につきましては,奥久慈グリーンライン林道の整備を,引き続き進めますとともに,株式会社いばらき森林サービスが行う高性能林業機械の技術者の確保,養成や,森林の管理などの活動を支援してまいります。また,きのこと人の暮らしとのかかわりを学ぶ「きのこ博士館」を整備してまいります。
水産業の振興につきましては,新栽培漁業センターを中心としたアワビやヒラメなどの種苗増殖,放流によるつくり育て管理する漁業を一層推進してまいります。
激しい産地間競争に打ち勝ちますためには,本県の良質で豊かな農林水産物を統一的に売り込んでいくことが必要でありますので,キャッチフレーズ「うまいもんどころ」のもと,関係者が一丸となって,消費者等へのPRやイメージアップ,販売体制の整備などを積極的に推進してまいります。
経済のグローバル化に伴って,産業構造の転換や生産拠点の海外移転などが進展する中で,本県の中小企業をめぐる情勢は,非常に厳しいものがあり,競争力のある先進的な産業を育成していくことが強く求められております。
そのため,中小企業テクノエキスパート派遣事業による新製品,新技術開発に対する指導などを,引き続き実施していきますとともに,特に構造変化の影響を強く受けている県北臨海地域の中小企業対策を重点的に推進するため,新たに大学や大手企業の特許などを活用した中小企業の新製品開発に対し助成するなどの特別対策を実施いたしまして,当該地域の活性化を図ってまいります。
また,将来の産業の発展を支える有望なベンチャー企業の育成につきましては,資金面での支援に加え,新たに実践的な経営戦略セミナーを開催したり,マネージメントエキスパートの派遣などを実施いたしますほか,投資家との出会いの場を提供するため,ベンチャーテクノフェアを開催いたします。
さらに,中小企業の製品開発から生産,販売段階に至るデザイン活動を総合的に支援するため,テクノデザインセンターを設置しますとともに,特許情報の有効活用や,大学,試験研究機関の研究成果の実用化促進を図るため,知的所有権センターを拡充してまいります。
また,企業経営を支える金融対策の推進につきましては,中小企業の厳しい経営環境にかんがみ,中小企業パワーアップ融資を,引き続き実施しますとともに,創業活動支援融資について融資要件を緩和するなど,その拡充を図ってまいります。
商業の振興につきましては,にぎわいのある商店街づくりを推進するため,新たに活性化のモデルとなる商店街を育成することとし,商店街が意欲的に取り組む組織強化や,販売促進事業などの先進的な事業に対する助成制度を創設いたします。
また,流通業の振興につきましては,高速交通網や港湾の整備を踏まえた本県物流機能の強化を図るため,平成8年度より用地買収に着手いたしました総合流通センターの整備を推進してまいります。
さらに,地場産業の振興につきましては,昨年3月に策定しました茨城県地場産業振興指針に基づき,後継者育成や需要開拓などの産地振興施策を展開してまいります。
特に,海外から安価な石材が大量に流入するなど,厳しい経営環境にある石材業の振興につきましては,国の支援制度を積極的に活用するため,石材業が集積する筑波西部地域の産地実態調査に取り組んでまいります。
産業活動の国際化の推進につきましては,中小企業の海外展開を支援するため,上海事務所を活用し,国際ビジネス情報を提供してまいります。
観光の振興につきましては,官民一体となった漫遊いばらき観光キャンペーンを,引き続き展開してまいります。
特に,平成10年1月から3月にかけまして,常磐線全線開通100周年を契機として,全国のJR6社と連携し,本県のすぐれた観光資源を全国に紹介しますとともに,本県を対象とした新たな旅行商品の企画,販売の促進や話題性のあるイベントを展開してまいります。
また,このたび,来年のNHK大河ドラマが「徳川慶喜」に決定したことは,本県のイメージアップに大きく貢献するものと考えられますので,観光キャンペーンとあわせて,観光客の誘致促進を積極的に図ってまいります。
さらに,魅力的な観光施設の整備も重要でありますので,本年4月29日にオープンする国民宿舎「鵜の岬」を核とする「鵜の岬観光レクリエーション拠点づくり」を進めてまいりますほか,市町村の大規模な観光拠点施設整備に対し助成するとともに,新たに民間の大規模観光施設整備を対象とする「漫遊空間いばらきづくり融資制度」を創設いたしまして,本県の観光施設の魅力アップに努めてまいります。
また,近年の自然志向ニーズにこたえるとともに,県北地域の振興を図るため,新たに久慈川の清流を活用した参加体験型の親水性レクリエーション拠点の整備構想を策定してまいります。
産業の活力を支える人材の育成につきましては,急速に進展する産業構造の変化や技術革新に対応した多様な職業能力の開発を図るため,平成10年4月の移転開校を目指して,水戸産業技術専門学院の建設を進めてまいります。
また,雇用情勢は,依然として厳しい状況にありますので,引き続き,企業の雇用動向に係る情報収集機能を強化するほか,特に求人,求職の状況が悪化している特定地域において,新たに求人,求職情報誌の発行や一般及び高卒者の合同面接会を実施し,雇用の維持,確保を図ってまいります。
第5は,いばらきの発展と交流を支える基盤づくりについてであります。