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  1. 佐賀県議会 2012-06-04
    平成24年有明玄海・環境対策特別委員会 本文 開催日:2012年06月04日


    取得元: 佐賀県議会公式サイト
    最終取得日: 2023-05-28
    最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1     午前十時二分 開会 ◯土井委員長=おはようございます。ただいまから有明玄海環境対策特別委員会を開催いたします。     ○ 会議録署名者指名 2 ◯土井委員長会議録署名者として、峰達郎君、桃崎峰人君江口善紀君、武藤明美君、以上四人を指名いたします。  閉会中の継続審査となっております、海洋環境の保全、水産資源の確保、環境対策に関する諸問題の調査に関する件を議題といたします。     ○ 参考人の出席について 3 ◯土井委員長=最初に、参考人の出席についてお諮りいたします。  海洋環境の保全、水産資源の確保、環境対策に関する諸問題の調査に関する件について、本日、特定非営利活動法人有明海再生機構理事長荒牧軍治氏を参考人として本委員会に出席を求め、別紙日程のとおりお手元に配付しています事項について意見を聞きたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 4 ◯土井委員長=御異議ないものと認めます。よって、そのように決定し、その旨議長に申し出ることにいたします。  暫時休憩します。準備が整い次第委員会を再開しますので、このままお待ちください。     午前十時三分 休憩     午前十時四分 開議 5 ◯土井委員長委員会を再開します。  それでは、本日御意見をお聞きする参考人を御紹介いたします。特定非営利活動法人有明海再生機構理事長荒牧軍治氏です。  荒牧参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわらず、本委員会のために御出席いただきまことにありがとうございます。  先生は、九州大学大学院工学研究科土木工学を専攻修了され、その後、佐賀大学理工学部土木工学科教授佐賀大学理工学部都市工学科教授佐賀大学副学長を歴任され、現在は特定非営利活動法人有明海再生機構理事長として、また、佐賀大学名誉教授として幅広く御活躍いただいております。  学外での活動も大変に幅広く、けさの新聞にも出ておりましたが、昨日の第二十八回鹿島ガタリンピックでも、有明海ぐるりんネットのブースを開かれ、みずから出向かれて、来場者に詳しく熱心に御説明をいただいておりました。
     以前よりボランティアで参加をいただき、幅広く現場の意見を現地に出向いてお聞きいただいておりますことに対し、心より敬意を表する次第であります。本当にありがとうございます。  本日は御多忙中にもかかわらず、本委員会のために御出席をいただいております。これより有明海の現状と再生機構取り組み状況について、これまでの有明海再生機構の研究の成果を踏まえ御意見を述べていただき、その後、委員の質疑にお答えいただくようお願いいたします。  なお、意見の陳述は着席されたままでも結構ですが、先生にお任せをいたします。それでは、よろしくお願いいたします。 6 ◯荒牧参考人=それでは、意見を述べさせていただきます。私、長いこと大学の教員をしていましたものですから、座って話す習慣がありませんので、ちょっと申しわけありません、立たせてください。  きょうここにお呼びいただいたこと、本当に心から感謝します。委員長の御尽力に対して心から敬意を表したいと思います。  私は長いこと、十年近く有明海のことをやってまいりました。その成果といいますか、集大成みたいなものを県を代表する皆さんの方々の前でお話ができることを非常に感謝しておりますし、ちょっと興奮もしています、うれしくてですね。そういうことだとお思いください。  きょうお話、テーマをいただきましたのは、委員長のほうから有明海再生機構の動きと、それから、最近の有明海の状況というものを教えてくださいということでした。少し取りまとめて資料をつくりましたので、資料に沿って話をさせていただきます。     〔資料を189頁から232頁に掲載〕 7 ◯荒牧参考人=まず最初に、有明海異変調査研究の流れについてお話をします。  皆さん御存じのように、諫早湾干拓締め切りからわずか三年後に大規模なノリの色落ち被害が起こりました。このことによって有明海環境問題が、いわば社会問題化したというふうに認識しています。  で、少し佐賀県の取り組みあるいは佐賀大学取り組みがおくれてしまいました。早速長崎大学の研究が始まり、国による調査も行われていました。それから、有明海ノリ不作等第三者委員会が行われていったのですが、佐賀大学も二〇〇五年、それから、我々がつくりました有明海再生機構設立も二〇〇五年と、異変が起こって五年後という非常におくれてしまったということが状況でした。  そこから今までの約七年間、それまで蓄積したものをきょう説明させていただくということになります。  再生機構設立時に目指した事業というのがありまして、それは定款にも書いていますし、こういうことをやりたいんだということをシンポジウムでも説明してきました。  まず、非常に混乱していた再生とは何かということに道筋をつけるには、まず目標を定めなければいけない。再生とは何のことを言うのかということを探そうとしました。  二番目に、調査研究成果を収集すること。  正会員を研究者だけにしましたので、研究成果を集めるというのが主たる任務だというふうに認識しました。そこで分科会活動をやって収集、整理して認識を共有化するということを行ったわけです。  それからもう一つ、そうは言っても再生を遠い目標に置いたところで、緊急にいろいろやらなければいけないことも出てくる。再生策というのは待ったなしの部分もありましたので、持続性を有する再生策、あるいは緊急避難的な再生手法を確立したいということがありました。  それから、佐賀県のほうから委託業務が我々のほうにやってきました。  一つは、何といっても有明海の特徴は干潟底質にあります。その干潟底質がほかの海域にない特徴ですので、そのことを科学的に少し長期的な視点で解明してほしいということがテーマでした。  その次、最近三年間は、何といってもいわゆる判決以降、非常に大きな社会問題に諫早湾問題がなってきましたので、諫早湾干拓有明海環境に及ぼす長期的な影響及び諫早開門による環境の変化ということについて調査研究をしてほしいということで、そういう活動に取り組んできています。  それから、何といっても調査研究の到達点をどうにかしてわかりやすく市民の皆様方に説明していきたいと。何といっても科学的なことが多過ぎます。ですから、そのことがこの有明海環境問題を難しくしてしまっているのではないかというふうに思っていましたので、できるだけ機会を設けて市民の人たちに解説をする、あるいはディスカッションをするということをやっていきたいと思いました。  その中で、青印というのは、ある意味で私たちの感覚では着実な成果を得てきたところ、緑色は今継続中のところというふうに理解しています。まだ継続中のところありますけれども、確定できなかったものが一つあります。それは、再生目標をまだ我々自身の中で機構としては確立できていません。我々はどこに有明海の再生の目標を置くべきなのかが、まだちょっと我々の中でもまだ混乱しているといったのが正直なところです。  これから以降は、私たち有明海再生機構が、あるいは私が今の有明海というのをどう認識しているかと。あるいは科学はどこまで解明してきて、どこがまだわかっていないのかということを少し説明させていただこうと思います。  そのベースにしたのは、環境省有明海八代海総合調査評価委員会、長いですけど、評価委員会と略称します。私も参加していまして、委員長代行を務めていましたので、この取りまとめには非常に大きなかかわりを持っていましたから、はっきり言ってめちゃくちゃ勉強しました。何が起こっているんだろうということをすべてのデータに目をもう一回通し直してやるということをやって、平成十八年、二〇〇六年にこの報告書を発刊しました。  私の認識では、有明海環境問題に関する基本的な集大成はここにあると思っています。どういうことを言っているかというと、ここに採択されたものはある意味で公的に認知されたもの、ここに採択されなかったものは、まだ学問的にはちょっと問題があるといって外したものがあります。ですから、いろんな説は出てくるんですけれども、その説の中で、ここまではよさそうだということについては、ここに載せたということです。  で、今回お話しするのは、それ以降の調査研究の成果を取りまとめたのは、はっきり言って私たち再生機構しかないと自負しています。それ以降、環境省委員会、私の委員会は、これを発刊した後、いわば中断してしまいました。政治的な駆け引きの中にちょっと翻弄されてしまって、委員が決まらないということでそういうことが起こってしまったので、その調査研究成果取りまとめるという役目をいわば放棄した形になってしまいましたので、私たち再生機構がそれを取りまとめるということになりました。  幸いなことに、ちょうど我々の再生機構の発足と時期を同じくして、佐賀大学佐賀大学総合研究プロジェクトを立ち上げました。これは私がプロジェクト長を仰せつかって進めていったわけですけど、これ非常に文部科学省から手厚い、いわば援助を受けまして、新しく研究者を雇い入れてやることができました。同時に、私の前の理事長を務めておられた楠田先生JSTプロジェクトという、これも科学技術庁系、いわゆる文部科学省の補助金を受けて、五年間にわたってこういうタイトルで研究をなされました。非常に大きな成果を上げられたと思います。  それから、環境省も同じように貧酸素に関する調査研究をスタートさせて、それに佐賀大学研究者も非常に深くかかわってきましたので、このデータを我々は使うことができるようになりました。  で、評価委員会報告書と、この時点との違いは何が進化したかというと、私はこのシミュレーションモデル有明海モデルと呼ばれる解析技術の進展が大きな変化だと思っています。ですから、環境省委員会になかったものというのは、この解析技術で求めてきたものということになるというふうに理解しています。  で、その成果を私が一人でと言ったらあれですけど、私の頭の中に入ってきたもの、私が理解したものを自分の手で書いてみることにしました。そこで、その有明海異変の科学的な解明ということを考えて科学的知見の収集、整理ということをやってみました。そして、それを私たちのメンバーである再生機構人たちに提示しました。これでいいだろうか、ここに載っているものの中で怪しげなのはないか、ここに載せていないものはないかということを、私一人ではできませんので、取りまとめてみました。  最後に、先ほど言った環境省の委員をなさっていた須藤委員長以下多くの方に来ていただいて、こういう取りまとめを私は出したんだけど、これをどう思われますかというふうにチェックをしていただきました。その結果、多分これでよいだろうと。これくらいでまとめるのが妥当だろうというふうにお墨つきをいただきましたので、平成二十三年、昨年の四月、一年前にこの冊子を取りまとめて発刊をした。印刷は最近でき上がりましたので、皆様方にきょうお配りをしていると思います。これが私たちの成果だというふうに認識しています。  まず、念頭に置いたものがあります。それは、私たちの地元の大学、研究機関ですから、やっぱり地元に密着したことを考えたいということで、一番最初に水産振興センター人たちにお願いしたのは、漁師さんたちの聞き取りをしてほしいと。それで、膨大な量の聞き取りをしていただきました。  その中で、ちょっと私個人で申しわけありません。私個人のいわば頭の中に残っているものを二つ挙げます。  一つは、二〇〇五年の聞き取りのときに、締め切り、一九九七年以降流れが遅くなりつつあるというふうな証言を得ています。このことは、環境省委員会で議論していた有明海異変のシナリオは諫早湾を締め切ったことによって潮流速が低下し、成層、いわゆる上下攪拌力が衰えて、そして貧酸素赤潮が増加したのではないかというモデルに一つの有力な証拠を与えていると思えました。  それからもう一つ、湾奥の谷部、特に西側のところ、一番環境が厳しい白石から太良にかけての西海岸のところに泥がたまり始めてべたついてきているという証言を得ました。このことを頭の中に描きながら、これがどの程度本当だろうかということを一つのヒントにして私は取りまとめてみることにしました。  これは環境省委員会が出した、いわば有明海環境異変の変化の要因図です。言いたいことは、非常に複雑であるということです。  何を言っているかと、一番上に有明海異変の内容が書いてあります。例えば、アサリとかタイラギとかの二枚貝が減ってきましたよね。それから、ノリが不作しました。それから、魚類等の漁獲高が減少しています。それから、何といっても有明海の特徴である干潟域、あるいはそこに住んでいるベントスと呼ばれる生き物君たちが減っている、このことが大きいというのが異変です。  そして、それを支えているというか、そういうことを引き起こしたのが、この海域の環境。真ん中にあるこの貧酸素というのがどうやら一番のキーワードらしい。それから、ここにシャトネラという赤潮が出てきていますけど、これは殺し屋と呼ばれる、ある意味で非常にやっかいな代物です。これが最近起こってきたのはなぜだろうということです。  さらに、それを引き起こしたのが下の陸域・河川に人間が環境変化を与えたことがそういう海の海域の変化をもたらした。一番最初に思い浮かぶのは、当然諫早干拓締め切りということになると思いますが、そういうことが原因ではないかというふうに考えられるものを全部挙げてみました。それから、ここは考えにくいというものは消してあります。そして、環境省が一番頭のページにこれを書いて出したものです。  わかりやすく言うと、これは有明海異変は複数の要因が複雑に絡まり合って起こったものであるということは環境省委員会の認識だと理解しています。そういうふうに思ってください。  これがまずちょっと一番頭のところ、一番上のところ、異変が起こってから今はどうなっている、現況ですね。環境省委員会から進んできて今はどうなっているか。  特に佐賀のところで興味があるのは、この青の線を見てください。これはノリの生産です。一番下、ここの部分が生産枚数、ここが平均単価、その掛け算したのが生産額ということになりますが、まず佐賀のところで言うと、佐賀は生産枚数、それから、生産額ともほぼ高どまりをしている。高どまりというのは、いわば豊作が続いているという非常にラッキーな状態が続いています。そのことは間違いがありません。  それに対して、折れ線のほかのところは、福岡、熊本は生産枚数が横ばいですが、単価が落ちてきていますので生産額としては減少している、そういう状況にあります。非常につらいのは何かというと、兵庫とか香川とかいうところで、ここは生産枚数と単価が落ちてきています。  何でこういうことが起こるかというと、栄養塩不足です。すなわち、海がだんだんきれいになってくると、陸域からおりてくるいわゆる窒素とか燐の量が減ってきました。それは人間が汚したから総量規制をやって消していったわけですね。そのことによっておりてくる窒素の量が減ってきた、燐の量が減ってきた。  で、ここには大きな川がありません。筑後川のような母なる川がないので、供給されない。そうすると、栄養塩が落ちてきて、そして、もう一つはコンビニでのノリの生産が有明海産のほうに移ってきました。何でかというと、パラフィンをぴっとはがすと、ぺっとくっつくようなあの特許が切れましたので、ほとんどのコンビニであれが使えるようになりました。で、有明ノリはくっつけると溶けてしまいますので、おにぎりにはなかなか向かなかったんだけど、あの発明で、その場で香りの高い有明海産ノリが食べられるというので、非常に大量の有明海産のノリが使われるようになってきたというような、ある意味で言うと、そういう生産と消費の移動で佐賀県は高どまり、それから、ここら辺のところは質が佐賀県産より少し落ちて、そして生産額が少し減少と、こういう現象が起こっているわけです。  で、全体として見ると、ここが締め切りですけど、それから三年後に見てもらったらわかるように、ここは非常に落ち込んでいます。これが二〇〇〇年の落ち込みです。これだけ落ち込んでしまうと、もうもうけなんてのは全く考えられないし、むしろ借金がふえてしまうという状況になりますので、漁師さんたちがいわば異議申し立てをしたということは当然のことだというふうに私には思えます。  だけど、それからラッキーなことに、こういうふうに長期的に見れば、ノリの生産は比較的安定に推移している。これは有明海ですよ。有明海について見れば。これが事実です。  それから、興味のあるお話を一つだけします。  これは、ちょっと見にくい図で申しわけありませんが、縦のほうに年代が書いてあります。これは一九七二年から載っていると思いますが、一九七二年から二〇〇五年まで載っていると思いますが、これは佐賀県でノリの色落ちがいつ起こったかということを示したグラフが左に書いてあります。黒く塗りつぶした部分が有明海、特に佐賀県海域でノリの色落ちが起こったときです。こういう昔も起こっていましたし、最近もまた起こるようになってきました。  ところが、非常に幸せな時代がありました。それは、この一九九〇年から一九九六年まで、いわば締め切りの直前くらいまでは、ノリの色落ちが非常に少なかった時期があります。その時期は何だったのかというと、佐賀大学研究者は、二枚貝、特にサルボウ貝が非常に爆発的にとれた。特に西部海域でとれますので、そのときに非常にたくさん生存量があったことによってノリの色落ちがしにくい海域になっていたんだということを提起したわけです。  このことをいろんな委員会とか、それから勉強会とか、それからシンポジウムとかで発表したところ、赤潮とかいろんな専門家の人たちが、もしかしたらこのことが、すなわち貝類、二枚貝をふやしていくことがノリの色落ちをとめる一つの技術になり得るかもしれないというふうに言われました。このことを非常に印象深く残っているので、これをここに書いております。これを佐賀大学速水先生という先生が川村さんの論文に重ねるようにして載せたことによって、ノリの色落ちというちょっと技術的に非常に難しい問題とこの海域との環境が一つつながった。これは非常にラッキーな、余りたくさんはない例を示しています。  それから、二枚貝です。何といっても市場価値の高いのは二枚貝の中ではタイラギですから、タイラギの漁家が、漁師さんたちがちゃんと暮らしを立てられるというのは非常に大きな目標になると思います。評価委員会では何というふうに我々はレポートに書いたかというと、「タイラギは砂を好む」と書きました。そして、有明海が泥化したことによってタイラギが減少した。それからタイラギを食べるナルトビエイというのが出てきたので、ナルトビエイの食害で起こっている。それから二度、タイラギは非常に危機を迎えます。一つは、着底するとき。最近どうもうまく着底してくれない。それから、せっかく着底して年を越して夏になったときに、立ち枯れへい死といって、自分でひゅっと立ち上がってきて死んでしまうということを起こす立ち枯れへい死ということを起こしますけど、そういう二度の危機を乗り越えなきゃいけない。その二度の危機に両方どちらかでやられてしまってタイラギがとれていないんではないかというのがその考え方でした。  それを証明するものとして、一九八九年から二〇〇〇年にかけて、どうもここら辺のところ、ちょうどタイラギの漁区として非常にいいところの部分が泥化してきたことが原因ではないか。最後に残った漁場が大牟田の沖だけが残りましたので、そのことを支持しているように思えました。  ところが、実は二〇〇九年に西部海域で漁獲可能になりました。すなわち、これは稚貝がどこに立ったかということ。それから、これが漁ができた部分、二〇〇九年大漁になりました。三分の一はとりましたけれども、三分の二は残したままでした。すなわち、とれなかったんですね、人数が足りなかったのかもしれません。そういう形で残ったので、実は翌年もうちょっと大きなタイラギに育ってくれるということを期待したんです。ところが、残念ながら貧酸素でやられました。  このときに考えたのは、ここは泥っぽいところだよと、何でこの泥っぽいところにタイラギが立ったんだろう、環境省の言っていることは間違っていないかというふうに考えました。そこで調べてみたら、二〇〇〇年から二〇〇九年にかけて大部分で粗粒化している。すなわち泥化からもうちょっと砂っぽくなっているというデータが出てきていましたので、そのせいかなというふうに理解したわけです。  ところが、このことについて異論が唱えられました。すなわち、これは古賀さん、今の水産振興センターの所長さんですけど、彼が若いときに書いた論文の中に、実は砂っぽいところでも泥っぽいところでも両方ともちゃんとタイラギはとれていたということを論文に書いていたんだと、だから環境省考え方は間違っていますよということを言われたので、そこでもう一回見直してみることにしました。それで、どういうことを考えられるかというと、いわゆる一回着底するときに薄い浮泥ですね、浮泥が一センチぐらいたまっていると着底に成功しない。それがどこか飛んでいってくれていると、砂粒がちらっとでもあれば、あるいは貝殻がちらっとでもあればタイラギ君は着底できる、そういうことがだんだんわかってきたので、二〇〇九年はたまたま農水省が調べてくれていましたので、そのとき見てみると、浮泥が非常に薄いか、なかった、だから着底に成功できたんだということがわかってきました。そのころ消失したということがわかりました。  それからもう一つ、へい死の話です。へい死は夏場にタイラギがせっかく着底してある程度大きくなったのに、冬を越えて夏になったところでへい死してしまう。それが非常に問題ですので、それを何とか解明したいという研究者たちの努力で、大牟田の沖では硫化水素と呼ばれる人間も殺す殺傷能力を持っている硫化水素がここら辺のところですね、この二センチから五センチ、六センチのところあたりにちょうど硫化水素濃度の高い層があって、その硫化水素濃度が高いところからタイラギが横から吸い取ってしまってやられるんだという論文が出ました。これは博士論文としてユリモトさんという人が出したんですけど、そうすると、そのことを証明したのがこの図ですけど、タイラギは上から水を入れて上から出すんですけれども、この周りに色素を入れたやつを置いておくとここから吐き出すんですね、上のほうから。ということは、横から色素をとっているわけです。ということは、ここに硫化水素濃度が高い層があると、それを吸い込んでしまうということなのだよということを証明してみせたわけです。ですから、タイラギ立ち枯れへい死をするのは硫化水素のせいだというふうに言ったところ、実は佐賀の水産振興センター人たちから異論が出ました。それは何でかというと、ここは泥のところ、すなわち、先ほど大漁になったところでも硫化水素濃度は高かったんだと。何でこんなことが起こるんだと。じゃ、同じ実験をやってみようということで、今度は泥でやってみました。そうすると、ここから色素が出てきませんでした。何を意味しているかというと、泥のところは水が非常に通りにくいですから、上をぱくぱくやっても横から水が入ってこないわけですよ。だから透水係数が悪い。そういうことで両方とも成り立つことが理解されて、お互いの説が併存することになる。  じゃ、何でこの泥地区ではやられるかというと、佐賀の水産振興センターの解釈は貧酸素でやられている。だから、タイラギは二回危機があって、一回目が着底。それは今は彼らはサルボウガイの貝殻を砕いてそれをばっとばらまくことによって着底を促進していますし、それが成功しつつあります。それから、貧酸素硫化水素濃度、泥のところは貧酸素のほうが怖いですから、その貧酸素の少ないところで育てればもしかしたらタイラギが育つかもしれない。ということは、直まき養殖の可能性を示唆しているということになって、解決策の一つになっているのではないかというふうに理解されています。  それから、貝類ですけど、貝類の全体としては、ここにアサリが爆発した時期があります。これはほとんど熊本、福岡です。ここがサルボウが爆発した時期があります。これは佐賀県の海域です。ですから、この時代はどちらかの海域で二枚貝が非常にたくさんとれて生存していた時代ですので、この時代というのは、ある意味でいうと、環境がちょっと荒れていても二枚貝が復元する能力を持っていたのではないかというふうに解釈をしています。ですが、それが消えていったときにだんだん落ちついてきてこういうところにこうなってきたときに、いろんな変化が海の中で起こってくるということが起こったのではないか。何といっても魚類は、魚たちはずっと減っていっていますけれども、これは瀬戸内海でも似たような減り方をしています。ただ、ちょっと有明海のほうが早いかもしれません。そういうことで裁判でいろいろ言われたんだと思います。  それから、魚たちにとって非常に大きな証言があります。これをどう解釈するかはちょっと人によって違うと思います。どういうことかというと、これは長崎大学の水産の人たちの成果ですけど、大体クルマエビ、コウライアカジタビラメ──いわゆるクチゾコと呼ばれているやつとか、シログチとか言われている一番大きな魚、多分量が一番多いと思いますが、そういう魚たちはここら辺で卵を産みます。そして、稚仔魚はどういう戦略をとるかというと、こういう泥っぽいところに移っていきます。何でかというと、見つかりにくい。それからもう一つは、粒々の泥にプランクトンがくっついている、それでえさもとれるという戦略です。ところが、ここもそういう点では非常に貴重な場所でした。それを締め切ってしまって水が流れなくなってしまったので、ここ透明度が増しました。泥の海ではなくなったわけです。ですから、魚、特にこういうものについて見れば、もう一つのいわば生育の場、産まれるではなくて生育の場を一つ失ってしまっている、そのことが非常に大きな影響を与えたのではないかと考えている研究者がいるということです。  このことについては、実は今度の農水省の環境影響評価委員会のところでもこれは認めています。こういう変化があったのではないかということを認めているということだと御理解ください。これは私は非常に大きな成果だと思っています。締め切りの影響がこういうところにあらわれている可能性がありますということを示唆しているのではないかと思います。  それから、海の環境のほうに移ります。  先ほど言ったように、この二つのテーマがありました。この二つのテーマの中で一番大きいのは上のほうだと思いますので、ここのところ、特にこの貧酸素というものが有明海の環境の変化を、死命を決しているんではないかと思っています。  そこで──ごめんなさい、赤潮のほうから先に行きます。まず、二〇〇〇年に発生した大規模な赤潮、リゾソレニアインブリカータという種ですけれども、これは外海に普通生息していて、この有明海ではほとんど見ることがないという種類のもの。低塩分の夏季には湾内への侵入が阻まれるというのは、普通有明海というのは塩分濃度が低いですから、上のほうから水がいっぱいおりてきますので、塩分濃度が低い、そういうときには育ちません。たまたまある冬の時期に、二〇〇〇年から二〇〇一年の冬の時期に非常に高い塩分濃度になってしまいました。それに日照が加わって、ふだん見ないリゾソレニアインブリカータという大型のプランクトンが湾内に侵入してきて、そしてずっと続いたわけですね。ですから、あれだけ大規模なノリの色落ちを起こしました。この種は非常に特殊ですので、この種が毎年来るということはほとんど考えられません。ですから、それ以降は一回も来ていませんので、大規模なのも起こしていませんから、確かに一種の天災的、天災だと言えるかもしれません。プランクトンの研究者は、あれは私は天災だと思う、いわゆる自然条件の影響が大きい、長期的な傾向ではないというふうに言われましたので、私はその説を信じています。  それから、何といっても、シャトネラと呼ばれるいわば有害赤潮、殺し屋と呼ばれる赤潮が発生してきたのが非常に有明海にとってつらいです。これは漁業資源に打撃を与えますので。問題は、これが昔は余り発生していなかったのにシャトネラ赤潮が最近ふえてきたということなんですね。その原因がはっきりいってまだわかりません。このことを研究者は相当突っ込んでいきましたけれども、残念ながらそのことの解明にまでは至っていません。件数、規模はここが締め切りですから、これは環境省委員会に載せたものですけど、明らかに件数も期間もふえていると私たちは書きました。赤潮は締め切り以降ふえているよということを書きました。有害赤潮、シャトネラも最近ふえてきたよね、これは非常に問題だよねということを環境省報告書には書きました。  それからちょっと時間が経過して今どう見ているかというと、確かに夏場高どまり傾向にあります。赤潮はふえたままになっている。ところが、秋から冬にかけて、いわゆるノリ生産時期には明らかに少し落ちてきています。特にこれは被害件数ですけど、この一九九七年から一時期物すごく大きく被害件数をふやしたものが少し減ってきて、被害件数自体は減ってきているという事実です。ですから一九九七年から十四年間やってきてみて、そしてデータを突き詰めてみると、大体こんなふうに変化しているかなと。ずっと増殖すると思われていた赤潮もどうやら落ちつきから減少の方向に動いていって、昔と変わらないぐらいになってくるのではないかというふうに思います。問題なのは、多分諫早湾内です。これはふえ続ける可能性があります。  次です。私が最も重要な環境指標と思っているのは、この貧酸素というものです。これは、まず貧酸素が起これば魚類とか二枚貝、ほかに非常に貴重な生物の宝庫である干潟の生き物君たちを殺してしまうこのベントスと呼ばれている底生生物を減らしてしまう可能性があります。理由は二つあって、硫化水素を発生させて殺す場合も、有害赤潮の引き金になって起こす場合も、貧酸素そのものが殺す場合もある。いずれにしろ非常につらい状況です。これは東京湾とか瀬戸内海でも当然起こっています。どういうことかというと、陸域から有機物、栄養塩の過剰流入があるとプランクトンが異常発生する、赤潮が発生して、そいつが沈んでいくと、そのいわゆるバクテリア類がそれを食いにかかりますので、異常繁殖します。そうすると酸素を大量に使ってしまいますので、貧酸素が起こる。いわば我々が、人間が下水道の中で、処理場の中でやっているようなことが海の中で起こってしまう。酸素が供給されていませんので、どんどん酸素がなくなっていってしまって魚類に影響が出る。この対策ははっきりしていて、人間が出したやつが原因ですから、ここを遮断してあげればいい。いわゆる総量規制と呼ばれているやつと、それから下水処理によりとってしまうということですね。この二つをやれば何とか切り抜けられる。そこで東京湾も瀬戸内海もこれでほぼ成功しつつあります。ですから、このことが貧酸素の原因であるというのであれば、それと同じ方策をとればよい。有明海の特措法は実は同じ発想法になっていますので、そういうニュアンスで書かれている部分があります。  ところが、有明海ではこの栄養塩、特に窒素とか燐と呼ばれているものは昔よりふえたかというと、むしろ減っているんです。じゃ、減っているのになぜ最近貧酸素が起こるようになってきたのかということを解明しなければならない。ほかのモデルでは使えないわけです。そこで考え出されたのが、こういうモデルなんです。すなわち諫早湾の締め切りを代表とするような干拓締め切りなどの陸域の変化、外海の干満の差の減少によって潮流速が落ちた。先ほど言ったように、漁師さんたちが締め切り以降流れが遅くなったよというふうに言われているわけだから、そのことを証明しているのではないかと。潮位・潮流速が低下して掃流力って巻き上げる力が悪くなって、上下攪拌する力が悪くなって、塩水の部分と真水の部分がきれいに分かれてしまって貧酸素を起こすようになったんだよというモデルが当然考えられました。これが有明海モデルとして多くの人たちに支持されたというか、提起されたわけです。  このことをチェックしてみようというのが、シミュレーションモデルでやろうというのが、この私たち佐賀大学、JSTのモデル、それから環境省のモデル、この三つとも基本的にはそこにテーマを置いていました。そこで出た結果についてここにあります。  まず、測定するモニタリングポストをたくさんつくっていただきました。ですから、連続量が計測できるようになりました。それから、佐賀大学でずっと百何点底質、泥の性質を調べ上げました。それがどういう力で巻き上がるのか、どういう分布をしているのかを調べていって基礎的なデータがそろってきました。それから、実際に起こっているデータがとれてきました。そのことがまず条件としてそろってきました。  そこで、まずモデルをつくります。今現在、今の状況を説明できるモデルができたかどうかをチェックします。現状分析と理解にこれが寄与している、できるというふうに自信を持ったら、それを地形変更であるとか気象変化であるとかベントスの増減が貧酸素二枚貝、ノリ生産にどういう影響を与えたかについて、過去、昔と未来、これから先に使うことができるというような問題だと思っています。ですから予知、予測に使われる、過去と未来についてこのモデルを使うことができるということになります。ですから、一番大事なことはこのチェックを厳重にやることです。やってみます。モデルを検証します。現在の結果と実現象がちゃんと説明ができるかということをチェックしておきます。現状表現できていないものを過去の解説に使ってもいけないし、未来の予測に使ってもいけません。そういう考え方です。  そこで、現状分析、定量的にやるには、このことをやらなければいけないということでやってみることにしました。  まず、こういうポイントのところで、モニタリングデータがこういうふうに時系列で得られてきました。こういうふうに時系列で、これは潮位です。潮位が得られています。赤と青で書いてありますが、計算値と実測値が載っています。ですから、これはほとんどパーフェクトに合っていると思っていいと思います。これができるようになるまでに、この海底地形のデータがちゃんととれることが条件でした。これがやっとそろいましたので、これだけの計算ができるようになりました。  それから、次に今度は、これが塩分です。塩分もちゃんと実測値と計算値がほぼ説明ができる程度に合っていると思います。それから、底層の流速、底のところ、底の部分の流速も、ほぼ妥当な計算結果が出ているというふうに自信を持てたということで、次のステップに動くことができました。  これは、二〇〇〇年から二〇〇六年にかけて、貧酸素が二〇〇一年に発生し、二〇〇六年に大量に発生しました。このことを、そのときの気象条件等を入れてみて、このことをちゃんと説明できるか、このことが説明できれば、貧酸素が起こらなかったときには起こらない結果が出て、起こったときには、ちゃんと起こった結果が出て、ボリュームがほとんど正しければ、ほぼ使えるということができます。  そこで、貧酸素という一番最大のターゲットについて計算をしてみました。二〇〇一年と二〇〇六年は、夏場に大きな筑後川を中心としたところから水が大量におりてきて、そのことによって、栄養塩が補給されて、それに夏場に日照が加わって貧酸素が起こりました。そのことは、ちゃんと二〇〇一年と二〇〇六年にそういう貧酸素が起こったことが計算できています。これはこちらの側は計算結果です。計算結果について、こういう計算ができるということがわかります。  それから、問題は二〇〇三年です。二〇〇三年にもここと同じような条件になったにもかかわらず、それほど貧酸素が起こりませんでした。これはどういう特徴があるかというと、河川からの出水と日照時間に強く依存していて、このときはたまたま日照が余り強くなかったので、同じように川から水が流れてきたにもかかわらず貧酸素が起こらなかったというようなことを説明できる。ということは、シミュレーションモデルで再現可能だというふうに我々は理解しました。  今、現状はどうなっているかというと、流れ、ほぼ時系列まで、時々刻々計算可能になったと思っています。それから、貧酸素と言われる定時生態系モデルについては、時系列、時々刻々まではなかなか合わないけれども、ほぼオーダー的には合うというので、そういう事態に来ている。ところが、残念ながら、生き物を表現する生物生活史モデルについては、まず、これが正しいのかどうかというのを検証するデータがないということなので、定性的にはどうやら合っているみたいなんだけれども、今のところはっきりとこれが使えるという状況にはありません。  潮位・潮流速、ここからがポイントです。先ほど言ったテーマに、一番大事なところです。これは潮位がどれくらい、最大と最小の潮位差がどういうふうに年代で変わってきたかというのを一九七〇年から二〇〇〇年にかけて記したものです。一番上が大浦です。真ん中のところが三角です。そして、ここが潮位差です。干満の差です。見てもらったらわかるように、明らかに年とともに変動しているのがわかります。この変動の周期が十八・六年という周期で起こっています。これは月と太陽との回るところが少し傾いていることによってこういうことが起こります。これは事実です。環境省委員会では両論併記しました。その原因は締め切りのせいであるとする人と、それから、締め切りの影響は少ないという人がいましたので、両論併記をした。これから先が環境省委員会以降の成果です。  まず、キーワードとして、M2分潮の十八・六年周期という言葉が出てきます。これは何を意味しているかというと、ここに潮位差、潮位のずうっと図があります。これを干満の差と呼ぶのはちょっとわかりにくいですので、これを数学を使ってこういうものに分けてしまいます。その中の一番大きいもの、月によって引き起こされているこのM2分潮というものを見ておいて、そのM2分潮というのが、長期的にどう変動しているかを見てみましょうという計算を科学者はします。  そのことをやってみたら、干満の差を調べてみると、見てもらったら、大浦はこんなふうに動いています。さっきの図と一緒です。それから、三角はこんなふうに動いています。この赤のところが諫早湾締め切りです。  潮位差が小さくなっていくということは、それだけ流速が遅くなるということです。ですから、漁師さんたちが言っているのは一定正しい。長期的にも落ちてきています。二つ理由があって、十八・六年で揺れるのと、それから、長期的にも入り口のところでどんどん潮位差が減ってきている。その影響が出てきている。  もう一つ、最後に締め切りです。この三つを調べてみることにします。  そこで、まず一九九七年以降、大浦験潮所の潮位は減少したのか。漁師さんたちが、流れが遅くなっていると言ったのは正しいか。イエスです。正しいです。明らかに一九九七年以降減っています。ただし、問題は、その割合です。田井さんはこういうふうに示しました。十八・六年、ずうっと上がったり下がったりする効果が七センチ、六八%。外側のところで、長期的に低下している割合が一・八センチ、一七%、締め切りによる影響が一・五センチ、これは平均ですけど、大きいところで三センチ、影響がないところはゼロセンチ。平均すると、こういう値になって、割合からすると、確かに減っているんだけれども、その中で一番大きいのは、この十八・六年周期によるやつ。ですから、二〇〇六年、七年に一番底を打ちました。先ほど見てもらったらわかるように、二〇〇六年に一回底を打ちますので、これから先はまたこう上がってくることになります。潮位差が復活してくる。ということは、今から先、流れが少しずつ回復してくる可能性があるというのが事実です。  そこで、こういうふうな計算をしてみて、基本的には漁師さんたちから我々が与えられたデータ、減ってきているよというのは事実ですよということはわかりました。それから、しかし、割合があって、いわゆる自然の現象、十八・六年周期という自然の現象が実は一番大きくて、これから先は復活する側に回る。だから、ゼロではありません。それから、これは流れです。これはシミュレーションで解析をしました。一九八〇年と二〇〇〇年ですから、ここはこの諫早湾の締め切りしか変化がありません。ここのところで変化しています。  太良の沖、大浦あたりのところでも少しだけ流速が落ちているのがわかります。しかし、この全体的なところには影響がありません。じゃあ、ここはどういうときに一番大きな変化を与えたかというと、実はここら辺のところ、締め切ったときに非常に大きな流速の変化を与えて、流速を落としてしまっている。ですから、湾奥部について見れば、ここの流速の変化をごく百年ぐらいの間で見ると、一番大きく変えたのは、佐賀平野のところにおける干拓が一番大きいということが言えると思います。そういうことが理解できます。  それから、これは最大と、先ほど言った十八・六年周期でM2分潮は、これだけ変化していきますので、今から先、ここら辺のところは流速が少しずつふえてくるということになるというふうに思っています。  こういうことを少しわかってきて、大体シミュレーションのモデルで解析が可能になってきたということを意味します。  同じような成果が出てきました。それは、この部分とここの部分に着目してみました。特にここ、ここの部分は佐賀にとって一番興味のあるところですので、ここの部分の混ぜる力がどれくらいになったかというのをやってみました。そうすると、ここの部分について見れば、十八・六年周期の潮位差によるものの四分の一ぐらい生み出す力が締め切りによって衰えている。四分の一を大きいと見るか、小さいと見るかはちょっと置いておいて、そういう事実です。ですから、十八・六年周期で下がって、上がってくるというのが非常に大きなことだというふうに理解しています。  で、主たる要因は、十八・六年周期、ただし、締め切りの影響はゼロではありません。特に諫早湾近傍と言われているところ、そこについては、影響があるということを認めます。  それから、先ほど言ったように、貧酸素というのが私の一番大きな環境の重要なテーマだと思っていますので、それにどういう要因が一番大きく寄与するかということを計算してもらいました。これは、DO、酸素の溶存量が二・一ミリグラム・パー・リットル以下、これ以下になると貝類が死に始めますという境目だと言われているところですね。そこになった容積を、これは二〇〇一年、二〇〇一年は非常に大きな貧酸素が発生していますので、この貧酸素をいろいろ条件を変えて計算し直してみます。ほかは条件はみんな一緒です。やってみますと何が起こるか。  まず行きます。今を一にします。今の貧酸素のボリュームを一にします。下に行くと減ります。上に行くと増加します。そこで、一九七〇年代の地形に戻してあげると、一九三〇年代まで戻すとここら辺、七〇年代だとこの辺に来て、地形の変化を受けていますよということ。  一番大きいのは、底生成物が昔、爆発したころ、二枚貝が爆発したころに戻してあげると、この貧酸素は二割ぐらいまでに落ちてくる。八割減少するということは、二枚貝を爆発させる場合、いいですか、そんなに爆発はしませんので、もう。だから、少しでもふやしていくということをやらないといけないということになります。  それから、Fの最大と最少、すなわち一九九七年が最大でした。それから、二〇〇七年が最少です。それだけ差をつけると、これだけ貧酸素、大体三割ぐらい変動するということになりますので、これは非常に大きいと思います。  それから、何といっても流入負荷量を今より一〇%減らすことができれば、貧酸素は半分以下になる。この非常に極端な貧酸素ですよ、これは非常に貧酸素濃度が低い、酸素濃度が低い、極めて貧酸素の強い状態は、今よりも一〇%流入負荷量を減らしてあげると、貧酸素は減りますということがわかります。ただし、有明海ではこの施策が採用できるとは私は思っていません。なぜなれば、ノリという非常に大きな水産資源は、この流入負荷量、すなわち栄養塩を使っているからです。そのことをどういうふうに考えるかというのは非常に重要で、環境だけを考えてやる立場ならば、これは選択できますが、そのことを直接選択はできないかもしれない。だから、少し知恵が要る。有明海らしい知恵が要ると思います。こういうものだと理解しています。  底質の泥化は進行したかというのは、イエスとノーが相半ばしているということを言っているので、それを書きました。先ほど言ったのと同じですので、ここは省略します。  一つの到達点として、どういうふうに考えているかというと、一番最初にイメージした、この諫早湾締め切りが、潮流速を低下し、成層強度を強くして貧酸素・赤潮の増加につながったと考えるモデルを有明海全体では成立しないというふうに思っています。そのかわり、諫早湾では成立するというふうに理解すべきだというふうに思います。  この仮説だけにこだわらないでいこうというのが今の立場です。湾奥部の貧酸素の発生は先ほど言ったように、有明海湾奥部の干拓が発端になって起こり始めてきて、そして二枚貝の減少、十八・六年周期を含む外海の振幅などの減少などによって引き起こされているのだというふうに理解しています。  今後の課題の解明は、生き物君たちの世界が余り十分ではありませんので、そこをちゃんとやりたいというふうに思って、何といってもこのためには人が要ります。すなわち研究者がいないと何にもできません。だから、残念ながら、佐賀大学、佐賀の近くには、生物の先生が不足している、研究者が不足している、そのことを書きました。  ちょっと時間がなくなってきましたので、開門問題について、少しだけ、ちょっと私たちの考え方を述べておきます。
     まず、諫早湾開門問題の中で、先ほど言ったように、諫早湾の締め切りが与えた影響というのは幾らか出てきていますけれども、それはある意味で言うと、具体的にどこに影響を与えてきたかということを考える必要があります。  まず、諫早湾干拓締め切りと、それから、環境問題の関係は、先ほど述べてきたとおりですので、その科学的な知見に立脚すべきだということ。それから、全長七キロ、それに対して開門できるのは二五〇メートル、そのことによって引き起こされることを過大評価してはいけないと思います。同一者が同じテーブルに着いて、冷静な議論をしてほしいというふうに思っています。  それから、再生機構は、ですから、この問題に逃げないで、正面から取り組もうということを決めました。  もう一つ開門問題と同時に、長期的な再生策についても議論したいということで、今取り組みを進めています。開門部会はこういう経過をやって、今検討中です。  開門の目標像について、私たちは成果が確実に望めるものをやりたい、やってはどうかというふうに考えています。どういうことかというと、まず、調整池については水質目標を達成していません。それから、底質は明らかに悪化しています。塩水を入れれば、明らかによくなる──よくなるという定義は問題ですけれども、環境を改善すると思っています。  諫早湾も潮流速の低下で底質が嫌気化、成層化、貧酸素・赤潮が増加しているということが起こっているでしょうし、先ほど言ったように稚仔魚の生育場が影響を受けた可能性があります。そのことを目標にして、開門することによって一つの改善される可能性を持っている。そのことを一つの目標像にしたらいいのではないか。  ただし、問題なのは、我々が住んでいる有明海湾奥部ですけれども、先ほど言ったように開門してすぐわかるのは、流速とかはすぐわかります。それはセンサーを入れれば流速が戻ってきたか、戻ってこないかわかります。ところが、湾奥のところに影響を与えたとすれば、それはじわじわとやられてきたんだと思います。生き物たちにしろ、底質泥化にしろ、いろんなものがじわじわとやってきたに違いない。そうすると、これから先の変化もじわじわとやってくるでしょうから、それを長期的に見ておかないといけない。じゃあ、五年の開門で何かわかるかということについては、非常に一生懸命今から考えなきゃいけないというふうに思います。急ぎます。  それから、道筋については、もう一つ、先ほど言ったように、開門問題と同時に長期的な視点に立って再生策を考えましょうということにすべきだというふうに思っていて、私は個人的に再生策、再生というのは、ノリ、貝類、魚類等の漁業資源が安定していて、持続的であること。言いにくいことを言うと、今、とり過ぎているのであれば、それが持続性を阻害するのであれば、少し避けてほしい。貝類に影響を与えているのであれば、貝類のことも考えてほしい、そういう持続的であることということを目標にしたい。  それから、貧酸素、底質悪化など、生物を取り巻く環境は明らかに今、必ずしもよくありません。ですから、これを直していきたい。そのことによって、有明海の多様で特異な生態系が持続的に保全されていくこと。ムツゴロウが死んではだめです。ムツゴロウが死ぬようなことはしてはいけません。いかに漁業が必要であっても、ムツゴロウがもし死ぬのであれば、やめてほしいと言おうということだと理解しております。  具体的に言うと、二枚貝がふえるとノリの色落ちが減るということを言いました。実はこの前、潮干狩りに行きました。広江の漁港から出たんですけど、ちょうどおりたところがカキ礁が非常にたくさん今復活していました。私はあれを見て希望がわきました。もしかしたら、今からカキ礁がふえてくるかもしれません。以前、カキ礁を人間の手でつぶしてしまいました。あれを逆に人間の手でふやすことができれば、ノリの生産安定化に寄与するのではないかというふうに思っています。ですから、今からはノリの生産とカキ礁復活とを併存させるような施策を考えてみたい。本当に可能かどうか。  次に、タイラギは着底とへい死の二個、非常に危機を迎えますが、その危機は有明水産振興センターの努力で少しずつ解明されつつありますので、そのわざを使って、直まき養殖といって、かごに入れて養殖するのではなくて、つり下げて養殖するのではなくて、稚貝をどこかで立ったら、それを持ってきて、貧酸素の起こりにくそうなところに移して、そして、養殖をするという直まき養殖方式でやっていけば、何かチャンスがないだろうか。  次に、アゲマキはあと一歩で漁獲可能です。私はこれを楽しみにこの有明海問題にかかわっています。みんなに食べさせたくありませんので、市場に出すなと言ってあります。どこで食べさせろと言っているのかと、カキ焼き街道でこのアゲマキを食べさせてくれ。そして、観光資源にしようよ。向こうから二百七号線に人がいっぱい集まるようにしようということを私は考えています。  栄養塩の管理を科学的にというのは、実は佐賀市の下水最終処理場で、冬場は二次処理を行っていないで出しています。ということは、窒素と燐が出されているわけです。そのことによって、あの近傍はノリがとれやすくなったというふうにプロの人たちから聞きました。それを、大牟田とかいろんなところで今やり始めていますけれども、これはちょっと危険なところもあるので、ちゃんと科学的に調査を継続しながらやってほしい。そのことを否定しませんけれども、そういうことをやっていかないとちょっと危ないですよということもついでに申し上げておきます。  ちょうど今から開門が行われます。私は開門をしてほしいと思っている立場ですけれども、開門が行われる時期は、十八・六年周期でずっと流速がふえていく、いわば有明海が健康になっていく可能性のある時期です。その時期にいろんな施策を投じて、とにかく一回どんとよくしてあげるということをやっていけば、開門だけに限らずいろんな手を使ってやっていけば、有明海は一段環境のよい側に移行をしてくれないだろうかということを期待しているということで、好機を利用して開門調査と漁業と環境の改善事業に並行して取り組んでほしいということを申し上げて、私の発言を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手) 8 ◯土井委員長=ありがとうございました。  以上で参考人からの意見陳述は終わりました。  次に、ただいまの陳述に対し質疑を行いますが、本日の質疑は質問のある委員の挙手をお願いし、こちらから指名の後、指名された委員は自席から質問してください。  なお、全体の質問時間は、おおむね午前中いっぱいの十二時までを予定いたしております。多くの方が質問していただけるよう質問される方は簡潔明瞭にお願いをいたします。  それでは、質問のある方は挙手をお願いします。 9 ◯武藤委員=先生、きょうはありがとうございました。私は、ここの委員会に所属しております日本共産党の武藤明美と申します。  スタッフの皆さん方の研究と、そして先生の御研究等をこうやった形で聞かせていただいて、本当にありがたく思っております。なかなか大学やいろんな形でのシンポジウムを主催されておられますけれども、行く機会が、何かの行事とぶつかっていて、なかなか参加できにくいということもありましたけれども、きょうは委員長の取り計らいで、こういった先生のお話を中心にお聞きすることができて、ありがたく思っております。  私は、やはり二枚貝がふえること、それが酸素を供給できるということで、もう前から漁民の方たちからも言われておりましたし、本当にそうだなというふうに思っておりましたけれども、先生が先ほど、ノリの色落ちがなかったときが、やはり二枚貝がふえていたときなんだということで、調査の資料をお示しいただいて説明されたわけですけれども、本当にそのことが裏づけられたなということを思っております。それで、今、生態系が少しずつ変わってくる中で、カキ礁の場所も、前あったところから違ったところになっているんだというふうな話を漁民の方からもお聞きしておりますけど、生態系が変わった中でも、今あるカキ礁を大いに生かしつつ、そういう貧酸素が起きないような状況をやっぱりつくり出していくと。それが、ノリの生産もよくなっていくということを有効にしていけたらなというふうに思っているところです。  それから、冒頭というか、初めのころに先生が、この問題については考えられることは挙げてきたけれども、考えにくいのは挙げてはいないんですよというふうなことをおっしゃいました。考えにくいというのはどんなことがあるのか。例えば、私たちは、有明海諫早干拓のあの水門を開けてほしいというふうに思っています。ところが、開けたくない人たちは、いろんな条件を述べて、そして開けたらいかんというようなことを言うわけですけれども、そういうことにちょっと利用されてもいけないので、考えにくいことは自分たちは挙げていませんよというふうにおっしゃっておられるので、その辺がどういったことを示すのかお聞きしたいなというふうに思っております。  それから、もう一つお話の中で、三十五ページの資料の中で、一つの到達点ということで述べておられる中で、仮説だけにはこだわらないよという意味のことをおっしゃったと思います。それがちょっとどういうことを示しているのかをお聞きしたいなと思っています。  以上です。 10 ◯荒牧参考人=ここに載せなかったというのは、我々科学者ですので、いろんな仮説を立てることは認めます。しかし、その仮説をちゃんと何らかの証拠を出して、その証拠が科学的であるとみんなが認知したものについては掲載するけれども、ある自分の思い、ある立場に立った思いであるとか、何かそれを反対するための立場のための思いであるのかというのを、たくさん我々は論文で見る機会があります。だけど、それは採用しなかったという意味です。ですから、私が申し上げたかったのは、あの環境省委員会に出されたものは、たくさんの研究者の目を通して精査をして、そしてほぼ妥当であろうと思われるものについては掲載したけれども、少し問題がありそうなものは掲載を外しました。その中でも、どうしてもアイデアとしてもし本当ならば、それは非常に大きな解明につながる可能性があるというのは、まだ証拠が不十分だけどといって載せたものはあります。だけど、載せなかったものは、証拠が十分でなかったというふうに科学的にチェックをして、載せる載せないを決めたということだと理解しています。  それから、この三十五ページのモデルを、有明海全体では成立しないとして仮説にこだわらないとしたのは、今、どうも私たちの見るところでは、諫早湾締め切りによって流速が低下し、成層強化が起こって貧酸素・赤潮が増加したことが、唯一の原因であるかのように言う人たちがたくさんおられるということを述べたかったんです。そのことについて再生機構は、その説はとりませんと。だから、その仮説にはこだわらないで、一部ありますので、伏せるということではありませんけれども、諫早湾については有効だろうし、それから、太良沖のところでは、一部そのことが起こり得ますので、認めますけれども、湾奥全体、有明海全体がそれで環境が悪化したかのようにする仮説はとらないと。そのことについてはとらない。一部では認めますということを言いたかったわけです。 11 ◯土井委員長=ほかにございませんか。 12 ◯江口委員=江口善紀と申します。よろしくお願いいたします。  M2分潮の十八・六年周期ということを私は勉強不足できょう初めて知りまして、大変驚きました。これから流速が上がってくるそのタイミングに合わせて、それも考慮した上で今回の開門調査等も行うべきではないかというのは、非常になるほどと思ったところでございますが、先生のこの有明海再生機構のお立場として、開門調査については先生御自身としては賛成の立場であるというふうな言葉を先ほどいただきましたが、具体的にこれから十八・六年周期で潮流が上がっていくのと、それとちょっと裁判で決まった来年までの云々というのとをあわせると、大体いつぐらいの開門調査の着手、そういったものが先生としては望ましいと思われるのか。  また、その調査の仕方もいろいろ議論がございました、一部開門とか、七キロの中で二百五十メートルの幅で云々というのもありますが、それの開門調査のあり方について、もちろん最終的には再生というのが、いかに再生するための調査でございますので、開門調査について先生としてはどういうふうにお考えなのかをお尋ねできますでしょうか。 13 ◯荒牧参考人=私個人の考え方を言わせてもらうと、私個人は、佐賀県さんがお開きになった農水省の大臣が来られたときの、次官の方ですかね、来られたにも言いましたけど、本当は、こういう形で開門が決まるということは余り好ましくないと思っていました。何を考えていたかというと、あのときに私が陳述したのは、アセスメントで計算がずっと理解が進行してきている。そのことを受けて議論をした上で、どういう調査をやれば何がわかり、わからないかということを科学的にやってほしいということを私は申し上げたと思います。だから、こういうふうにある意味でいって政治決断で決まって、何月までですよと言われたときに、科学的に真っ当な調査としては何が起こり得るかということは、ちょっと疑問があります。  ただし、だから調査ということについて余り考えないで、これを開けることによって、もう開けること決まっていますので、開けることによって有明海がどの程度よくなっていく可能性のある場所はどことどことどこで、何についてか。それは、どういう調査をやれば理解可能か。ここは理解不能、すなわちさっき言ったように、十八・六年周期できている部分と開けた部分の差をちゃんととることができるかというようなことを冷静に考えて議論すればいいと思っているわけです。ですから、もう今、調査というものについて余り何か言うことが、本当に正しいだろうかということについては疑問があります。それをやるのであれば、もう少しきちっとしたやり方があったのではないかと。今言っても始まりませんので、今の時点、こういう決断がなされた時点、裁判で決着がついた時点というのは、やっぱり我々が有明海をよくしたいという思いを、今どこでそれで実現できるかを考えてやっていくほうが妥当ではないかというふうに思っているので、ちょっと調査として考えるかという問題と、そのいつの時期かということについては少し意見が分かれますけどね。今のところ、ちょっと私は発言できないという状況だと思ってください。 14 ◯土井委員長=江口委員、いいですか。  ほかにございませんか。 15 ◯篠塚委員=先生、どうも大変、かねがねいろんな研究をしていただいておりまして、たまに私もお伺いさせていただくんですけど、なかなか時間が一致しなくて、そういう意味で今回委員長が、先生にぜひおいでいただいたらということで提案があって、きょう先生においでいただいたわけでございます。  二〇〇五年にこの会が立ち上げられていらっしゃいます。実は私もリゾソレニアというのは、あの時一月七日でございますけれども、諫干の出口のほうまで若い漁協の青年部と一緒に船で見にいきました。初めて見まして、何かイカの小さいのが浮かんでいるのかなというような印象を持って実は帰ってまいりました。その後、先生方の研究をしていただきまして、今るるずっと成果についての御説明をいただいたわけでございます。  私も六十一年に東京から帰ってきた折には、タイラギと言えばトロッコいっぱいに、カキと言えばトロッコいっぱいに、アサリ貝と言えばいっぱい、アゲマキと言えばいっぱい実はもらっていたんですが、その後、ここ最近、諫干を締め切ってからのほうが顕著でございますが、本当にいなくなりました。アゲマキもほとんどいません。それから、今ウミタケも海外から輸入をいたしまして粕漬けの皆さん方は海外のものをされていると。もうまさしく有明海は食の文化であったんだろうというのがこういう状態になったのは、さまざまな要因があるだろうと思っております。  その中の一つに、私はやっぱり諫干が締め切られたこと。それによって、先生の今御説明ございますように流速がどんどん落ちてきた。その後、赤潮が非常に頻発に発生をする。ノリにつきましては、その後の色落ちがないものの、ことしの秋芽はもう全然だめでございました、先生御存じのごとく。冷凍は盛り返したんですが、鹿島、太良は、ここ数年非常にこの赤潮で苦労しているんですね。そういうことを考えてまいりますと、先生が今おっしゃいました有明全体に波及しないけど湾奥部に影響があるという、これは科学者としてのことでございますが、私は今、政治決断でこれを開けると決めたのは正解であったと思っております。これしない限りは、恐らく開けなかっただろうと思うんですね。  そういう中で、来年がリミットでございまして、政府は開け方を段階的にというようなことを言っております。我々は、やっぱり全開に開けてやることが必要だろうと思いますし、以前、短期開門の調査の結果は余りいい結果が出なかったんですが、先生としては、開け方については、やっぱり全開でするほうが必要だろうというふうに科学者的な形からお考えなのか、そのことをちょっとお聞かせいただきたいと思います。 16 ◯荒牧参考人=今言われたことで、篠塚委員さんがそういうふうに思われていることはたくさんの方から意見を聞いていますので、そういう意見があることは認めます。  しかし、例えばアゲマキは一九八二年にもういなくなりました。それから、アサリ貝は、先ほど述べたように一九八〇年代にほぼピークを過ぎています。サルボウ貝が一回ふえて、締め切りの後ぐらいにずっと落ちてきたということは認めます。ですから、個別に一つずつ、どういう種類の漁業資源がどういうふうにふえて減っていったかということを冷静に見なきゃいけないと私は思っているわけですね。だから、例えばタイラギ締め切り前には相当減ってきていましたから。それに、最後に追い打ちをかけたというのは認めますけれども、すべて、例えば一番物すごくとれていた時代のものが締め切りによっていなくなったというふうには考えていません。ですから、一部影響があるということを、一番ピークの時代と今とを比較して諫早干拓のせいだというふうには理解していない。  だから、例えば熊本で主生産物はアサリ貝ですけど、アサリ貝は、大体今一万トンぐらいかな。八万トンぐらいとれていた時代がありますけれども、それを一万トンになったから、それが非常に有明海がだめになったとは思わなくて、大体これぐらいが実力だというふうに思います。有明海が持っている実力はこれくらいで、前にとれていた時代は必ずしも正常な状態ではないというふうに思うんですよね。ですから、先ほど言った持続的に可能な量というのは一体どの程度のことを言うのかということを我々は冷静に考えなきゃいけなくて、有明海はそれほどの実力は私はないと思っています。あれだけ爆発するようなものが持続できるとは思っていないんですよ。  ですから、例えば全開門をしたときに起こり得るものというのが、私にはまだ想像できない。だから、塩水を調整池に入れたことによって起こるであろういろいろなさまざまな変化が諫早湾に及び、諫早湾から有明海から長期的に及んでくる可能性は認めますけれども、開門したことによって起こるためには、どういうイメージで、何でそんなことが起こるのかということをやらないと、我々科学者は議論ができなくなってしまいます。  ですから、全開門をするか、部分開門をするかは、そのことによって何が起こるかということを冷静に考えるべきだというふうに思っていますので、この間農水省が出した、いわゆる環境影響評価というのは、計算としては、私は正しいと思っているわけですよ。ほぼこうなるだろうなと思います。そのことで期待できるものを、皆さん、我々が何を期待するか、そのことによって。例えば、貝類がまた爆発的にふえるということは、私は考えにくいと思っていますので、そこまではできないので、今、差し当たり部分開門をやって、一体何が起こるのかということを見ておくことは、私は妥当であるというふうに思っています。  そのことの最初の目標は、調整池と諫早湾でいいと、まずはですよ。そういうふうに理解しています。ちょっと意見が違うということは十分理解した上で私の意見を求められましたので、そういうふうに思っておるということです。 17 ◯篠塚委員=僕はちょっと科学者でございませんから、先生方は専門的なあれですね。今、アゲマキのお話が出まして、私も実は、私の地元で養殖したことがございます。十数年前、鹿島までございます。当時、熊本まで長靴を履いてアゲマキをとりに行って養殖をしたんですが、うまく定着できなかったんですね。韓国の木浦(モッポ)に、実は私どもの組合主催でしたので、とりに行きました。とりに行って移植したんですが、うまくいかなかった。なぜなのかなと、やっぱりとってきたのが弱っておるだろうということで、次は冷凍車を持ち込みまして、もう御存じと思うんですけど、冷凍車で私どものほうに養殖をして、その後鹿島もやったんですね。鹿島も実は残ってまいりました。そういう意味では、有明海がさまざま要素の中で力が落ちているというのもあるんでしょうが、先生、今はまずは開いていく、短期でも開門の幅を少なくということでございましたが、我々は全門というふうに思っているんですが、科学的にそうしてやれば、次のステップとして全開門調査をやって、そしてその結果を分析して、今、先生がここで述べていらっしゃるように、数年間やってその後も有明海に対する対策というものはしっかり私は踏まえていかなきゃならないだろうと思うんですね。ただ、そういうためには予算も要るでしょうし、それから今おっしゃいましたように、せっかく科学者の方々が、研究者が少ないということでもございました。そういうものに対しては、やっぱり県とか国に対しても、このNPO法人からしっかり意見を出してほしいと思うんですね。私たちとまた違う立場でおられるわけですから、これだけの長い、七年間にわたって研究をされてきましたので、それをぜひお願いしたいと思います。  それから、きょう大変詳しい説明をしていただきました。これは農水省なんかにも、環境省は当然でしょうが、農水省なんかにも、こういう御説明というんですか、そういうのをされているのか、その二つをちょっとお聞かせいただきたいと思います。 18 ◯荒牧参考人=最初のアゲマキの話ですけど、アゲマキは、先ほど言ったようにもう一歩手前まできています。もう既に立ち始めました。環境の要因とかがわかってきましたし、それから稚貝の養殖、大量に稚貝を養殖する技術と、それから予算を水産振興センターは獲得できていますので、そのことによってあと一歩で私はいけると思います。それは、もう地道にそういうことをやっていかないと、もう自動的に、自発的に立つ海では必ずしもありません。それから、タイラギもそうだと思います。ですから、戻していく方向に動くことについては賛成です。  それから、もう一つ御質問の全開門かどうかということについて、私は全開門であるか、部分開門であるかの差は、流速だと思っているわけですね。流速に差が出てくると。その流速の差がどの程度開門によってふえるかというのは、締め切りによって起こったことの何分の一しか起これないので、それほど大きな期待ができない。流速がふえることによる効果、それより潮水が入ることによる効果は確かに大きいですから、そのことは期待しますけれども、そのことによって起こるものというのはそれほど大きくないので、それはじっくりと経過を見てからでいいと、判断するのは。それを、私は全開門がなければと考える考え方は今のところしていません。そういうふうに思っていますけど。 19 ◯武藤委員=先生は科学者として、研究者としてのお立場で部分的な開門で調査はできる、研究はできるというふうに、その中から出たデータをしっかりと分析をしていけばいいというお立場であるということは、もう科学者としては当然のことだろうとは思います。  しかし、一方で、漁民の人たちの暮らしや、もう本当にせっぱ詰まって、有明海から漁民がいなくなるんじゃないかというような、自殺する方もいる中で、やっぱり思いとしては被害をなるべく抑えるためには部分開門から始まって研究をしつつ、そして、やがては全開へというようなことが地域の人たちの願いでもあり、本当に有明海を再生させていくためには、そういうステップを踏んだほうがいいんじゃないかという思いも、私たち漁民の皆さん方と接していく中で、あるいは政治的決断というか、そういう点では、やっぱりそこまで思っております。そこがいろんなデータを積み重ねて調べておられる科学的な、冷静な先生たちのお立場にまたプラスした住民の暮らしという部分での思いだろうというふうに思いますけれども。  それと、もう一つは、先生がおっしゃったアゲマキが大分いいところまで、もちろん佐賀の水産振興センターの努力があると思うんですけど、そういうところまで来ていると。それから、先ほどお聞きした十八・六年周期ですね。それと、ちょうどタイミング的に今回、開門に入れば合うし、いい材料がまた得られていくチャンスになるなというふうに思っているわけですよね。なかなか今政府が、裁判でのちゃんとした、やれという命令が出ているにもかかわらず、なかなか実行に移されないという漁民の人たちのもやもやした思い、そしてせっぱ詰まった思いというのがありますけど、本当にいろんな分野からやはり開けていくべきだという声を結集していかないと、本当に開くというふうには難しいなという心配も持っております。  ただ、科学者の先生たちとしても、やっぱり開けて有明海再生に何がこの研究で大事に、明らかになってくるのか、大事なことが明らかになってくるのかということも、やはり望みとしてお持ちだと思いますので、やっぱりその辺は、先生たちの研究も大いに、農水省だとか環境省だとか、あるいは強硬に反対をしておられる長崎県側にも、やっぱりその辺も御説明いただければ幸いだなというふうにも思っておりますけど、長崎県のほうにも、ぜひそういう先生たちのこれまでの研究や知見をお示しいただけるとありがたいと思っておりますが、どうでしょうか。 20 ◯荒牧参考人=先ほど篠塚委員さんからの質問を一つ答え忘れていましたので、申しわけありません。  農林水産省は、我々の再生機構については、どういう目で見ているかがちょっとよくわかりません。ただ、情報を収集していることは間違いありません。だから、シンポジウムごとにすべての情報が農林水産省に移っていって、私がどういう発言をしているかについても非常によく知っていると思います。  だから、そのことについては十分伝わっていると思いますが、残念ながら、きょうと同じように呼んでいただけることはまだありません。多分そういう目で見られているんではないかというふうに思います。  それから、武藤委員さんが言われたことについて否定しません。私は運動家でもありましたので、昔、違う意味でですよ。それは運動家の人がそう考えるのは間違いありませんので、私は何を夢見ているかというと、この有明海を瀬戸内海と同じようにしていきたいんですよ。  ということは、どういう状態かというと、そこでは行政、担当者の方、それから漁民の方、市民運動の方、それから研究者、それが一つの組織の中にちゃんと入っています。そこの中で、科学者は科学者としての考え方を述べるし、それから、皆さんたちは思いを述べられる。そうすると、必ずしも先ほど言ったように、瀬戸内海ではどんどん栄養を減らしていくと白砂青松が復活してきました。しかし、ノリの漁業については打撃を与えています。そういうふうな全体として見ていかないと、この有明海、あるいは瀬戸内海というのは語れないということを皆さんたちよく知っているから、兵庫県が幹事県になって全体に知事さんたち集まった会議をつくって、そこに科学者の会議も市民の会議も一つの円座、そういうふうなテーブルの上に着いたところで議論が可能なわけですよね。  だから、今言われたことをそのとおり受けないで、科学者はそこについて異論を言うと思います。そのことを理解してもらった上で、一体どういうふうな策に行くかということも政治の方々も、それから漁民の方も科学者もそういう形で行くのがいいと思うんですよ。そのことが残念ながら入り口の段階で対立が起こってしまいましたので、我々の再生機構は佐賀県の支援しか受けられていません、今。本当は全体、四県で集まったところのもと、いわゆる四県知事連合みたいなもとに我々が置いていただければ、そこにデータを出してみんなで今武藤委員さんが言われたみたいなことの思いと科学的な突き合わせができたはずだと思います。  ですから、私たちは今のところ、まだそこができ上がっていませんので、今言われた思いについて答える術を持っていなくて、科学的なことだけを今述べているわけですね。ですから、そのことではなくて、本当に合意に至って持続的な海にしていくには、やっぱり大きな枠組みというかな、四県が集まったような枠組みをつくってもらって、そこに科学者と、それから行政担当者と漁民の人たちとが集まってくるということができるようになることを夢見ています。  ただ、残念ながら、私たちが再生機構を立ち上げたときには、もう既に対立が始まっていましたので、そこには至りませんでした。それは非常に残念だと思います。ですから、今言われたみたいなことを思いとしては理解しますので、それを議論できる場ができることを私は夢見ていますけど。 21 ◯峰委員=どうも、峰といいます。きょうはありがとうございました。  単純に、私は唐津選出でございまして、陽と陰の海といったら陰の海、先ほど瀬戸内海の話をされましたけど、やはり奥まったところで一番心配するのは、ギロチンがおりた後に十五年たっているわけですよね。その中で、大変諫早湾内というか、開発のところも大変汚れていると僕は思っています。それを確かに開門してもともとの有明に戻していただきたいのは切なるお願いなんですが、そこで十五年たったやつをあけるときに、やはり一番心配するのは、今までの十五年の汚泥みたいなものが流れ込む可能性ありますよね。すると、そのときに、最初のうちは大変それがいろんな影響を及ぼすんじゃないかというような心配というんですかね、これは素人的考えですよね。それが一番最初は、ただ流速が早まってくるので、そうすると、その後にきちっと浄化をされていくのかとか、そういったところが不安の材料というんですかね、が一つあるんですね。  ですから、そういったところを、あけることに関して先生方はどういうふうに判断されるのかなというような点が一点と、それとあと一つは、普賢岳の噴火がありました。奥まった湾なので、その影響というのが、先ほど硫化水素とかいう話をされていましたけど、そういった影響というのは全然なかったのかなというようなところを、あれはたしか十九九一年ぐらいの噴火ですよね。それがだーってやっていますので、その後閉めたでしょう。というようなところも考えて、湾内がもしかして汚れたのかなという思いもありますので、あわせてお願いいたします。 22 ◯荒牧参考人=最初の質問ですけど、十五年間たまってきたものが調整池ないしは諫早湾にたまっていて、それがあけることによって拡散していく危険性がないかと言われれば、あります。明らかにあります。ですから、そのことのために環境影響評価があるわけですね。農林水産省はそのことがどういう影響を与えるかということを計算であったり推測であったり、いろんなことをやっていくわけですね。  で、今のところ、例えば、調整池にたまっているものがどんなものがあって、そのことを、例えば、開門するとどういうふうに起こっているかというシミュレーションが出てきていますけど、一番私個人として心配しているのは、調整池の中にある底質、いわゆる汚れた底質と言ってもいいですけど、硫化物の濃度が高い、有機物濃度が高いものがゆっくり最初部分開門で入れていったとしても、やっぱり攪拌されて出てきますので、それが具体的にどの程度どういうことを起こすかということについては、やっぱり慎重に議論しておいたほうがいいと思います。  ですから、例えば、調整池の中を一回しゅんせつをするとかという考え方は十分あり得る。だから、そういう対策をとった上でないと危険だよという意見があり得ると思います。ですから、そのことは農林水産省、あるいは環境省が多分意見書を出すと思います。その意見書の中にどういう意見がつけられるかというのはよくわかりませんけれども、そういう懸念、今峰委員さん言われたみたいな懸念を述べる可能性はありますので、そのことを対策としてとる必要があるかもしれませんね。  それから、もう一つ、例えば、今言われた普賢岳のことですけど、大量の火砕流でおりていきました。だから、火山性のものがおりてきたということは十分考えられます。  例えば、環境に因子として悪いことを与える硫化物というのは硫黄です。で、硫黄が非常に嫌気的な状態、酸素が少ない状態になったときに硫化水素を発生させるという仕組みになっています。で、硫黄は実はふんだんに海にあるんですよ。別に普賢岳から供給されなくても日常的にありますので、どこでも貧酸素状態ができると硫化水素濃度、卵の白身が腐ったようなにおいがするのは、貧酸素の状態にするとそういうことが起こってきますので、それは硫黄は必ずしもどこかから供給されてふえたということではありません。 23 ◯土井委員長=よろしゅうございますか。  ほかにございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕 24 ◯土井委員=それでは、私のほうからも質問を行いたいと思います。  先生には御説明の中で、一つの到達点の中で、仮説だけにこだわらないということで、いわゆる諫早湾の締め切りを潮流速が低下をして成層が強化されて攪拌力が弱くなったということで、貧酸素・赤潮の増加と。それは割合が出ておりましたですけれども、この仮説について言えば、やっぱり漁民の方のふだんの感覚に非常に合致をしていたということで、非常に説明がしやすかったというのがあると思います。  ただ、それに十八・六年周期とかいうことがわかってきて、二枚貝との関係もわかってきたわけでありますけれども、ただ、最近有明海全体を見ていると、どうも有明海の湾奥部と諫早に近いほうの、例えば、私がいます鹿島、太良沖ですね。と、ノリが豊作だといっても、その部分については決して豊作ではないという状況が続いているところから、諫早湾の影響はやっぱり少しそちらのほうと分けて考えてみなければいけないんじゃないかなという気がしているんです。  データとしてのとり方も、湾全体ではなくて部分的にそこら辺をちょっと分けて、例えば、生産額にしても何にしても見なければいけないんではないかと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。 25 ◯荒牧参考人=おっしゃるとおりだと思います。我々が議論をするときに少しくくり過ぎだと思います。例えば、有明海湾奥部というと、例えば、島原半島の北のほう、太良の下ですかね、諫早湾の北側から、長崎のほうから北のほうを言いますけれども、それもくくり過ぎだと思います。今、土井委員長さんおっしゃったように、明らかに西部海域と中部海域と、それから佐賀県でいう東海域というのは、やっぱり非常に性質も違いますし、今動いている状況も違うと思います。  ですから、例えば、今変動が起こっている、今ノリがこの前秋芽のノリがうまくいかなかったのは、多分いろんな病気、それと、水温の上昇、そのことによって起こったんだと思いますけど、出方が必ずしも同じではない。それから、栄養塩のバランスも同じではない。ですから、同じように議論するときには、西部海域と中部海域と東海域というのを分けて考えていかなきゃいけないということはよくわかります。なぜかというと、もともと例えば六角川から西側のところ、南側に向かっては非常に泥っぽいところで、太良のところだけ砂っぽいところだったわけですよね。だから、そういう非常に有明海独特の海域のところというのは、そこはもともと流速も遅くなっていてという、それから、泥がたまりやすい場所というところですね。ただし、攪拌力が非常にたくさんあったので健康な状態が維持できてきた。それがいろんな状態で流速が下がってくると、不健康な部分があらわれる。そのあらわれ方は、多分土井委員長言われるみたいに、微妙なバランスの西のところのほうが厳しいかもしれないということはよくわかります。  ですから、おっしゃったように、プランクトンがわいて赤潮が起こってノリの色落ちが起こりやすい海域に西のほうがあることは事実ですね。ただし、諫早湾で発生した赤潮が南から上がってきたという証拠は今のところないんです。この前のあれも塩田川海域で起こってそれが広がっていったというのは、つい二年前のときは起こりました。ですから、そういうのは具体的に一つずつ追っかけていって事象を調べ上げていかないと、必ずしも正確に議論することにならないと思います。  それからもう一つ、先ほど最初に言われた、漁民の意見としてわかりやすいという点というのは、そのとおりだと思います。私もそう思っていました。だけど、結局科学者がやるべきことは、その原因が実は三つある。すなわち十八・六年と、それから外海、外側のところの潮位自体が下がっているということと締め切りと。この三つの影響をどれくらいであるかということを定量的に分けるのが私たちの仕事ですから、ですから、そのことをやったところ、こういう割合になりますと。特に諫早湾と調整池は確かに締め切ったことの影響が物すごく大きい。しかし、それから、太良のところ辺りの近傍までは明らかに及んでいる。しかし、それ以外のところで流速ということに関しては、余り大きな変化はなかったというふうに見ています。  ですから、そのことは、おっしゃることを私たちも理解して、だからスタートを切りました。こういうのが原因だろうと思って。しかし、それを十八・六年とあれと分けていくと、こういうふうな格好で理解すべきだというふうに私たちは今結論づけています。 26 ◯土井委員=わかりました。流速が遅くなったという意味で、よく漁師さんが、潮だまりがたくさんできるようになって潮が動かなくなったというところが出ているというふうなことをよく言われるわけでありますが、私が聞いているのは、七浦とか浜とか、あるいは北鹿島の漁業者の方々ですけれども、それぞれ締め切りとちょうど時期的に同じように、そのころからそういうのはよく見られるようになったということでありますので、流速が遅くなったというのは非常にその辺で感じておられるのではないかと思うんですよね。その理由が一体何なのかというふうなこともぜひ調べていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 27 ◯荒牧参考人=今土井委員長言われたことは貴重なことでして、私たちは流速計を持ってはかりに行くのはモニタリングポストのところ、それから、自分たちが船で行ったその日の出来事です。だけど、今委員長言われたのは、漁師さんたちが毎日つき合っている海のことです。ですから、その証言を集めるというのは非常に重要なことなんですね。だから、問題なのは、それがいつどの場所でそう感じられたのかということを知りたいわけです。それは非常に貴重なデータになります。ですから、ぜひお願いしたいのは、それを聞かれたときに、どの場所の、どういうところで、いつごろそれがそういうふうに感じられたかということの証言をぜひ聞いていただけると、我々としては、それを追っかけていきたいと思います。  なぜそういうふうに感じられるんだろうかと。それから、それは事象としてどういうことを意味しているんだろうかということを理解したいと思います。  私たちは漁師さんたちと数少ないんですけれども、議論をしました。この前この話もさせてもらいました。十八・六年周期の話もしました。今、二〇〇七年から上がってきていますけど、少し流速が早くなってきた、あるいは潮位が上がってきたという感覚はありますかというふうにこちらから質問したところ、確かにそう言われてみると上がってきているように思うけれども、底潮と言われたと思いますけど、下が下がり切れない、干潮のときに。上には上がってきているみたいだけど下が下がり切れないねという証言を得ました。そういうのは非常に貴重なことで、どうやら平均水位は上に上がってきているようだというようなことは、データからも今度はチェックしていける。そういう貴重な証言になるんだろうと思っていますので、ぜひそういうことをできればいろいろ議論をしていければなというふうに思います。  そういうのは非常に貴重なことで、どうやら平均水位は上に上がってきているようだというようなことは、データからも今度はチェックしていける、そういう貴重な証言になるんだろうと思っていますので、ぜひそういうことをできればいろいろ議論をしていければなというふうに思います。  我々もやっと、ある意味で言うと漁師さんたちの感覚につき合えるぐらいのデータとか考え方が少し出てきましたので、それまでは我々はもうデータを持っていないと何も言えないという感覚で、議論すらできませんでしたけれども、これからは少しそういう議論ができる科学的にはこう思いますということを言う議論ができますので、できればそういうチャンスをたくさんもらえればですね。これはこう思いますけどどうですかとか、ここはどうですかとかいうことが議論できるかなという感じがしていますけど。 28 ◯土井委員=はい、ありがとうございました。  あと、有明海全体についていろんなお話しいただきましたけど、ただ、部分的に言うと、塩田川の河口域が非常に淡水化してアステリオネラ菌が発生をしたということで、これがちょっと今までになかったような状況で、そういう対策も必要ではないかなとか、あるいはあの近郊で随分水流が変わったというのが、例えば、白石漁港が、新漁港ができましたけども、あの影響があるのかとか、あそこのしゅんせつ作業がありましたが、それによって潮の流れが少し変わったとか、そういったいろんなことが絡んではいるのでしょうけれども、そういったところにも目を向けていただいて、どの部分がどういう影響なのかということが、やっぱり少しずつ地域によって違うのかなという気がします。何かカモ対策を盛んに言われる漁民の方もいらっしゃいまして、カモが大変多いときにノリの半分ぐらいカモが食べてしまうと、網をですね。で、半分ぐらいしか生産ができないというようなことも言われまして、そういうこともあるのかなというふうなことをちょっと感じた次第でありますが、そういったいろんな要件があるんだなということを改めて感じております。  それと、魚介類を主にしている業者の方とノリを主にしている、また両方やってある方いらっしゃいますけれども、ノリを非常に長くやると、魚介類をいわゆる肝心なときにとれなくなるということで、早くやめてほしいと、その辺のせめぎ合いも少しあるわけなんですよね。そこが先ほど先生が言われたバランスではないかなと思うんですけれども、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。 29 ◯荒牧参考人=もう今、土井委員長言われたことに全く賛成します。これを仕上げていくというか、科学的なもののデータが少しずつそろってきましたし、有明海が少しずつ科学的にはわかるようになってきました。しかし、それでは十分ではないから、先ほど言ったように当事者の方々に集まってもらって議論を深めたい。と同時に、未来に向かってどういう海にするかということを考えたときに、やっぱり貝類がきちっと育っている海になってくれるとノリも安定できるけどなとか、それから、どうせ自然は非常に今から荒れ始めますので、その荒れたときのために、今はちょっとノリは幸福な、幸せな状態が続いていますけど、暴れ始めたときに一体何を施策としてとっておかなければいけないのか、科学的に、あるいは自然条件を克服するというのはできないでしょうから、社会的に何かその保証をとっておくと。例えば、救済制度とか保険制度とか何とか制度とかというふうなものも含めて持続的にやっていけるものを目指すべきではないかと。  佐賀県がおやりになった施策の中で、協業化というのは非常に有効に動いています。ですから、ああいう社会的な施策をちゃんととっておくと、例えば、一つの漁家だけで、何か不作のときに借金がどんと重なってしまうとかというふうなことを避けるような施策をしないと、もう一回の不作で漁家がつぶれてしまって、それでどんどん先細りしていくというふうなことが起こらないように、いろんな仕組みをつくっていく必要があると思っているわけですね。  ですから、経営のこと、それから自然環境のこと、それから漁師さんたちの思い、いろんなものを全部一つのグループの中で議論して、そして、持続可能なもの、続けられるもの、そういうふうなものを目指していくべきだろうと思います。  先ほど委員長が言われたみたいに、ノリの漁期がどうも後ろに下がり過ぎているのではないかという意見を言う人がいます。だから、ちょっと早目にとめてもらって、そしてプランクトンがわいた分を二枚貝のほうに渡して、そして二枚貝がふえることによってノリが安定してくるという、そういう図式も思い描いている研究者もいるわけですね。ただ、今のところそれ報告書に載せていませんけど、それはまだ科学的なデータがそろっていませんので、そういうことも議論の俎上にのせてやってみる価値があると思うんですね。  ただし、残念ながら、これを実現していくためには、福岡県、佐賀県、熊本県といった県境を超えたような協力がないとうまくいかないわけですね。佐賀県だけでやってもなかなかうまくいかない。だから、そういうことをやっていくためには、先ほど言ったように瀬戸内海と同じように、できれば広域のものをつくっていって議論をするという場が欲しいというふうに思います。 30 ◯竹内委員=竹内と申します。きょうはありがとうございました。  二枚貝が海の浄化能力があると、ポテンシャルがあるというのは言われて久しいんですが、その影響がノリに好影響を与えて、ノリが育つと。で、ノリの炭酸同化作用によって、また二枚貝の溶存酸素がふえて貝も育つと。そういうふうな好循環を私はしているんじゃないかなと思っているんですが、となると、そのノリにとって二枚貝がキーポイントなんですが、やはり二枚貝とノリにとって一番のキーポイントは溶存酸素じゃないかなというふうに思うんですね。  そしたら、具体的なやり方として、海の溶存酸素をどうふやすかということが一番大事なことになってくると思うんですが、小さな範囲ではエビの養殖なんかでは水車を回していると、あるいはエアレーションをしていると、そういうふうなことが、あの大きな有明海でまだ、もちろん先ほど先生がおっしゃったように、熊本県、福岡県、長崎県、佐賀県とある中で、全体でやらないと意味がないでしょうから、そういう施策といいますか、対策があると思うんですよね。ですから、本当に流れが遅くなっているならちょっと水車を回してみるとか、あるいはそれは溶存酸素にも好影響を与えますので、そこら辺の具体策が少しずつやっていくべきではないかなというふうな、まあ実験でもいいんですが、そこら辺について先生どういうふうにお考えか、ちょっと関連がございましたのでお願いします。 31 ◯荒牧参考人=エアレーションといって、酸素を海水に注入するという方法は、私は養殖場とか、ここで養殖をきちっと育てたいねというところでは有効だと思いますので、そういう施策をとっていいと思います。
     ただし、有明海全体にするということは非常に量が大きいですから、ですからそれが有明海の環境全体をよくする手法として使えるかというとちょっと疑問があります。  ただ、非常に有効な手法だと認められていますので、養殖場とかではぜひ使っていきたいなというふうに思うんですよね。  私は、今非常につらい時期ではあるけれども、二枚貝をじわじわとふやしていくには養殖という手法でしか、人間がやっぱり手を加えていかないといけないと思っていますので、そこを施策としてきちっとしていく。それから最低限、前と同じような間違い、すなわちカキ礁をつぶしてしまった、ノリの養殖のために。あの間違いだけはもう二度としたくない。だから、もしノリとカキ礁との間が今バランスがうまくいかない、あるいはそれが対立するのであれば、何とか技術とかいろんなもので克服していきたいと思うんですよね。そして、カキ礁とノリとが共存できるようなもの。できればカキ礁からカキをちゃんととってというようなことを一つの仕組みの中につくっていくようなことが、最低限ですよ、それは必要だと思います。  漁師さんたちも、ある意味でそれはわかっておられて、もう一回失敗したと、おれたちは、それはカキ礁をつぶしたことだと。それは、その当時は当然なんですよね、あの竹の大きなものを刺し込もうとしてもカキ礁があるととても刺せませんから。今だったら技術的な開発、例えば、ウオータージェットであるとか、それからこういうボーリングマシンに近いような、ゴリゴリッとするようなのを船に簡便に取りつけて刺すとか、いろんな工夫をしてできたら共存してほしいと。そのことによって、もしかしたらノリの色落ちを克服できる一つの手法、だからいろんな技術として使っていくものの一つとしてやっていってほしいなというふうに思いますけど。 32 ◯篠塚委員=先生がおっしゃるように、四県でやっていくのが僕も一番理想と思うんですね。しかし、これにはさまざまな要素が絡んでいるものですから、なかなかこの問題が解決できればそういう土俵になれるだろうと思うんですね。  今の現状の中では、そう言えども、水産試験センターも研究していますけど、また違った意味で先生方はこういうふうに県の委託事業をもって、さまざまな科学的知見をもって研究していただいております。  ところで、予算的に足りておるのかというのが一つですね。じゃあ予算、何をするかによって予算もふえていくんだろうと思うんですけども、素直な気持ちで、先生の気持ちは、ここはせっかくの勉強会でございますので出していただきたいというのが一つでございます。  それからもう一つは、カキ礁は以前国が予算つけまして、私たちも予算つけて取ってくれと運動してきました。それが一時期から、ここがやっぱりいかんじゃないかということで、予算がついたのを辞退するような運動もしたんです。かなり水産庁から県も怒られたんですね。しかし、我々も実際やってみるとカキ礁がいい機能があるから、漁家の皆さんも頭下げてでも行くからということで、水産庁に予算返上をしまして、その後、もう数年ぐらいとっていないんですね。で、やっぱりそれ効果があるというのは事実だろうというふうに思っております。  予算のことを先生、遠慮なく聞かせていただきたいと思います。 33 ◯荒牧参考人=お金を欲しいというのは、人が欲しいです、正直言って。研究者が欲しいです。研究者が持続的に研究できる空間が欲しいです。  今、佐賀大学は幸いなことに、私が五年間、その後三年間、実はあと六年間可能性があると聞いていますので、これから先しばらくの間は佐賀大学有明海の研究をトップに上げてくれています。それで、文部科学省から結構大きなお金、人を雇えるぐらいのお金をもらってきていますので、一応研究者は続けられているということなんですよね。だけども、最終的には、夢としては四県ですけど、四県で有明海研究所をつくって、持続的に若い研究者を育てていきたいというふうに私は思っていますので、そのための人を雇うためのお金が欲しいということは、本当にそう思います。  だから、長期的な視点に立ってやっていきたいので、差し当たり不足する分というのは、先ほど言った生き物の研究者が足りていませんので、生き物の研究者を雇いたいというふうに思っています。ですから、そのための支援をしていただけるのであれば、もうあしたにでも私は陳情書を二十枚ぐらい平気で書き上げる意欲があります。そういうふうに思っています。  それから、これから先どうやっていけばいいかというのは、篠塚委員さんに賛成で、この問題がここののど仏に刺さった骨ですので、こいつを抜いてあげて、そしてどこかのところで決着がついたら、私もこの貴重な有明海が皆さんにとってそんな対立するような海ではなくなるというふうに思っているわけですね。これだけ貴重なのに、それを目の前にしてけんかするとは何事だというふうに思いますから、それは篠塚委員さんのおっしゃることに大賛成です。  ですから、この問題を冷静にみんなで議論して、長崎県、熊本県、佐賀県、福岡県、それから農水省、環境省、それから国土交通省は出てこないでしょうけど、そういう人たちの参加を得て、この問題を何とか切り抜けたら、次の時代としてこの貴重な有明海を残すために、またみんなが知恵を出すのではないかと。どうも我々の時代といいますかね、少し間違えたのかもしれませんので、次の世代に託して、佐賀大学が続けてくれるのであれば、佐賀大学の持続的な研究の仕組みを使ってもらって、有明海がよくなっていってもらえばいいなというふうに思います。 34 ◯土井委員長=はい、ありがとうございました。  ほかに質問ございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕 35 ◯土井委員長=質問者もないようですので、これで荒牧参考人からの意見聴取及び参考人への質疑を終了いたします。  荒牧参考人には御多忙中、長時間にわたり貴重な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。  本日の委員会において、参考人から述べられました意見につきましては、今後の委員会審議に十分反映させたいと存じます。  なお、本日の委員会での説明及び質疑応答などにおいて、数字または字句の誤り及び不適切な表現などがありました場合は、適時委員長の手元で精査の上、訂正などを行うことに御承認を願っておきます。  これをもちまして、有明玄海環境対策特別委員会を閉会いたします。どうも御苦労さまでした。     午後零時一分 閉会 Copyright © Saga Prefectural Assembly Minutes, All rights reserved. ページの先頭へ...