愛知県議会 2014-09-01
平成26年9月定例会(第3号) 本文
また、最近では、山梨の実験線で時速五百キロメートルを体験乗車しているテレビ報道などもありました。二〇二七年の開業を目指して、これまでの計画からいよいよ実現へと具体的になってまいりました。
リニア中央新幹線開業によるさまざまな影響をリニアインパクトと称してこれまで多くの議論がありましたが、ことし三月に愛知県がまとめましたあいちビジョン二〇二〇では、リニア開業による大交流圏の中で、産業革新、創造拠点としての役割を担いながら、人、物、金、情報を呼び込める存在感ある中京大都市圏を目指すとしております。
重要政策課題の一番に、中京大都市圏~五千万人リニア大交流圏の西の拠点となる大都市圏に向けてとして、主要政策の方向性を示されました。
その中で一番として掲げられているのが、リニア開業効果を高める交通ネットワークの整備であり、そして、リニア中央新幹線の整備促進と四十分交通圏内の形成、また、広域道路ネットワークの整備、総合的な交通ネットワークの検討と三つの項目が挙げられています。
今回の質問は、愛知県として掲げる計画のイの一番とも言える重要課題、四十分交通圏内の形成、広域道路ネットワークの整備、総合的な交通ネットワークの検討に関して、私が二〇一一年の六月
定例会で一般質問させていただきました愛知県の交通事情についてを踏まえてお尋ねいたします。
まず、道路でありますけれども、あいちビジョン二〇二〇に示されました愛知県幹線道路網図には、高規格幹線道路、地域高規格道路、広域道路、一般国道が色分けをされております。また、実線や点線で供用・事業・計画中と分けられ示されており、名古屋中心部から国際物流や交流拠点へのアクセスを進めようとするのがよくわかります。
これまでのリニアインパクト議論では、セントレア、小牧などの空港へのアクセスや、また、愛知県の主要産業である自動車産業の集積地への利便性の向上に関して多くの議論がされていると思います。
そこで、まずお伺いをいたします。
リニアインパクトを広域的に波及させ、愛知県がさらに経済的な躍進をするためには、現在検討中の内容にかかわらず、既存の広域道路ネットワークの充実は急務であると思います。とりわけ、国際物流、交流拠点へのアクセスとなる名古屋環状二号線や西知多道路の整備をスピード感を持って進めるべきと考えますが、現在の取り組み状況はいかがでしょうか、お伺いをいたします。
また、道路については、鉄道による四十分交通圏形成ということにあわせまして、名古屋市都心部へいかに早く到達できるかという問題に取り組むことが重要だと考えます。
名古屋市近郊のベッドタウンとも言える地域においては、全国的には人口減少が叫ばれる中でも、住宅用地開発が進み、特に私の地元である名古屋市の東部に位置します日進市、愛知郡東郷町では、区画整理事業がこれから立ち上げられる計画も含めて進められております。それに伴い、道路の整備も事業主体である組合、あるいは自治体がしっかりと進めていくと思います。
この春、供用開始されました岩作諸輪バイパスや、都市計画道路名古屋瀬戸道路など、バイパス整備も着実に進めていただいていることは、これまでより大変利便性がよくなり、感謝をしているところでありますけれども、こうした区画整理事業に伴う道路整備が名古屋市方面と自動車産業のまち豊田市方面への車でのアクセスを良好なものにするということになれば、主要課題に対してのダブルの効果であり、さらには、地域内に生じている渋滞緩和のためにも、それらの地域と連携を図った道路網整備を進めることが重要だと考えますが、名古屋東部地域における道路整備の状況と県としての今後の進め方をお伺いいたします。
続きまして、総合的な交通ネットワーク検討に関してお伺いをしたいと思いますが、広域道路ネットワークの整備という文言の中には道路とありますので、もう一方の交通ネットワークは地下鉄や鉄道を意味すると理解して、読ませていただきます。
あいちビジョン二〇二〇のこの項目の記載には、大都市圏の形成を見据えた都市圏内の道路網の充実、高速道路などの効率的・効果的な活用に向けた検討、また、鉄道ネットワークの充実強化など、総合的な交通ネットワークのあり方について、多角的見地から検討を進めていくと記述があるのみで、リニアインパクトを本当に有効に活用しようと考えているとは思えない記述に感じます。
私は、二〇一一年の一般質問で、東京の地下鉄または鉄道の充実している状況を数字で示させていただきました。
首都東京のような交通網整備とはいかないにしても、せめて平成四年一月の運輸政策審議会答申に基づいて、平成二十年までに新規に整備することが妥当であるとされたA路線のうち、笹島から高針橋に至るいわゆる地下鉄東部線、上飯田から丸田町に至る地下鉄上飯田線の一部などの整備について、改めて前向きに議論されていくべきものと考え、質問をさせていただきました。
その際の答弁では、利用動向、事業主体の経営状況の総合的な判断のもとに、改めて幅広く議論されていくべきものと考えているということでありましたけれども、名古屋市議会において、先日、リニアを見据えた圏域の公共交通についてという議論があったということは承知をしておりますが、県としてその後、議論はあったのでしょうか、お伺いをいたします。
東京圏に関しては、国土交通省が遅延対策などを軸としながら、企業の立地競争を強化、東京五輪・パラリンピックに向け、鉄道整備計画の見直しの議論を進めております。
また、大阪府においては、北陸新幹線やリニア中央新幹線等の東西二極を結ぶ広域インフラの早期整備に向けた取り組みにあわせて、これらの整備効果を最大限に発揮できるよう、官民一体による公共交通施策を加速するとして、公共交通戦略を掲げています。
そこでお伺いをいたしますが、愛知県では、このような公共交通に関する戦略は持ち合わせているのでしょうか。答申にあった計画を計画のまま放っているように見受けられますが、どのようにお考えかお聞きをいたします。
リニアインパクトに関して、これまでの県の主催であったり、あるいは民間によるシンポジウムや有識者講演会などでよく言われますのは、道路に関してもでありましたが、愛知県の強みでもある自動車産業の集積地と名古屋駅とのアクセス向上が挙げられます。
先ほど述べました新たな地下鉄、あるいは鉄道の整備は、現下の財政状況では難しいことは理解できますが、やはりそうした地域を四十分圏内にするためにも、既存の鉄道網を最大限に生かせるよう、鉄道の高架化、運行本数の増便、ICカードの導入など、乗り継ぎの利便性などを図るなどして、打てる手をしっかり進めることが必要と考えます。
もう少し具体的に議論を進めさせていただきますと、名古屋から豊田へのアクセスは、名鉄本線から三河線、あるいは名古屋市地下鉄鶴舞線から名鉄豊田線、名古屋市地下鉄東山線からリニモ、愛知環状鉄道といったルートが考えられますが、インターネットで名古屋、豊田市のルート
検索をしますと、鶴舞線、名鉄豊田線が最初に
ヒットをいたします。所要時間は五十三分、乗車時間で四十九分であります。料金は七百六十円。また、名鉄本線知立経由ですと、所要時間は五十九分、乗車時間は四十四分、七百九十円。あえて、遠回りであることを知りながら、リニモ、愛環利用で
検索をいたしますと、所要時間は一時間二十分、料金千六十円であります。
豊田市を名古屋からの四十分圏内にと考えるのは、距離的に無理があるのかもしれません。しかし、仮に八草を豊田であるとするならば、地下鉄東山線、リニモの場合、所要時間五十分であり、十分に活用に値する路線だと考えます。
リニモは、特に愛知県が大きく関与している路線であることから、踏み込んで質問をさせていただきたいと思います。
リニモの第二次経営安定化策については、県を中心として、沿線市及び主要株主企業を構成員とする経営支援会議において具体策が検討されており、二十五年度には、基本方針として、初期投資に伴う長期借入金返済負担を会社経営から切り離すとの考え方に基づき、会社が債務超過や資金不足に陥る前に金融支援で支えることなどを基本的な考え方として、支援額を二十五年度末までに、借入金残高である百六十三億円とした上で、県が二十六年度に先行して二十三億五千万円を出資し、さらに、民間企業に支援を呼びかけ、集まった額に応じて、二十七年度に県及び沿線市が残額を支援するといった方向で調整を進められるということを承知しております。
そこで、リニモの第二次経営安定化策について、民間支援の状況など、その後の進捗状況はどのようになっているかお尋ねをいたします。
さらに、リニモ経営安定化に向けては、抜本的には利用客の拡大しかないと考えますが、最近の大学の都心回帰による利用客の減少が懸念され、また、沿線に住宅、あるいは商業施設ができても、大幅な増加にはなりにくいと考えます。
来年は、全国都市緑化フェアが愛・地球博記念公園で開催となりますが、先日も新聞で取り上げられたように、モリコロパークの駐車場も大変渋滞をするなど、課題が指摘をされている状況にもありますので、こうしたイベントを開催する際に、いかにリニモを利用いただくか、また、モリコロパークのみならず、以前の一般質問でも提案をさせていただきましたが、例えば、展示会場の新設などで年間を通して利用客の確保をすることが重要だと考えます。
そこで、これまでリニモ沿線開発に関してそうした検討をされたことがあるかどうかお尋ねをいたします。
続いて、二項目の都市近郊農業について質問をいたします。
私は、一項目と同様に、二〇一一年にも農業に関しての質問をさせていただきました。そのときの都市農業の振興についての答弁では、農業従事者の減少、小規模な経営などの理由から都市地域の農地維持が厳しい状況であるため、産地直売施設、市民農園の整備など、都市農業を支援しているとした上で、農作業経験のない都市住民の方々がプロの農家に農作業を教わりながら、野菜づくりなどができる農業体験農園の開設支援、また、その地域の食材を使った料理を提供する農家レストラン、地域の特産物の開発などにおいて、商品開発や販路開拓にかかわる専門家の紹介や、関係事業者との仲介などの支援を行うとされました。
産地と消費地が近いという立地条件を生かした支援を行い、都市農業の振興が図られるように努めたいとのことでしたが、そこで、まず、これまで取り組みについてどのような成果があったかお聞かせをいただきたいと思います。
私の地元でも、若い就農者が市や県の支援をいただき、トマトの施設園芸に取り組んでおられることなども承知しておりますが、国の農業に関する施策が大きく転換する中、先日の新聞報道にもありましたように、耕作放棄地の課税強化として、農地を貸した農家の固定資産税をゼロに引き下げ、一方で、耕作放棄地については増税をし、農地の大規模化、農業の活性化を図る具体的な方向性が示されたと理解します。
私も、一二三会同期の議員の皆さんと秋田県大潟村へも視察をしてまいりました。確かに大規模農業による効率化が進み、コスト削減で農業者の所得を上げられる例も多く見受けられます。農地の大規模化への期待は大変大きいと言えます。
しかし、都市近郊では、そうした成功事例とは違い、まとまった農地とはならないという方も多く、新規就農が見られる畑作や施設園芸など野菜に関してはまだしも、昨今の突然の大雨、いわゆるゲリラ豪雨に対する急激な河川の増水を防止する保水の役割、あるいは住民や通行者の癒やしとなる景観、また、環境保全の機能を有している水田に関していえば、共同で農作業を行うなど効率化を図っても、一反当たりでの収穫量は小規模なときよりも、米価の下落などもあり、二〇一一年の答弁にありました他産業に引けをとらない所得の確保を目指すというところまでは至っていないと考えます。
もちろん、兼業農家の多い都市近郊でも農業従事者の高齢化は進む一方で、畑作、あるいは施設園芸に切りかえたり、転換できる農地にはある程度明るい光が見えるわけでありますが、畑作からさらに進んで市民農園としての利用を考えてみますと、先進事例でもあります東京練馬区の練馬方式も視察をさせていただきましたが、練馬区の場合、市街化区域であるため、上水道による水があります。また、農園利用者が公共交通機関で来られるため、駐車場の用意などが不要といったことがありまして、愛知県の都市近郊とは条件が若干違うと言えます。
とはいえ、私の地元の日進赤池でも、数年前にヨーロッパ風のキッチンガーデンとして農園を開設され、実践をしておられる方がいるように、やり方によっては見込みがあると言えます。
しかし、そうでない米作農地については、現在の農業従事者がお亡くなりになり、相続となり、またはその先代が長年使用された農機具が壊れるなどの悪条件が重なったりしますと、さらに耕作放棄地がふえることが危惧されます。
米作について、個人農家で耕作するよりも、私の地元でいえば、尾東農産、あるいは東郷農産など、専門の法人が主要作業を代行してくださることで農家の負担も減ってはいるものの、いかんせん、米価が安くて利益が伴わず、そこが解決策の見えない一番の問題点だと言えます。
このことはさておきまして、このような状況の中で、相続後に農業放棄を検討するといった話も多く聞かれ、まさに担い手の育成は非常に重要な課題であります。当局においても、農業振興を図る上でそうした課題を認識されていると考えますが、どのようにその育成、確保の取り組みをされるかお伺いをいたします。
二項目について質問をさせていただきました。理事者の明快な答弁を求めまして、壇上での質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
4:
◯建設部長(
平井雄二君) リニア中央新幹線を踏まえた愛知県の交通事情のうち、道路につきまして二点お尋ねをいただきました。
初めに、名古屋環状二号線及び西知多道路についての取り組み状況であります。
リニアインパクトを中京大都市圏全体に波及させる上では、名古屋を中心とした放射、環状の自動車専用道路ネットワークの充実が不可欠であります。中でも、都心部と圏域内の主要都市や空港、港湾など国際物流、交流拠点へのアクセスを強化することが喫緊の課題でありますので、名古屋環状二号線や西知多道路などの整備促進に取り組んでいるところであります。
名古屋環状二号線の西南部・南部区間につきましては、平成二十四年度より国土交通省と中日本高速道路株式会社との共同事業として工事着手され、現在、高架道路の下部工事が進められているところであります。
国には、昨年に比べて二倍以上の予算をもって強力に事業を進めていただいており、県といたしましても、名古屋環状二号線に唯一残された未供用区間でありますので、地元の名古屋市、飛島村とともにできるだけ早期に開通できるよう協力してまいります。
西知多道路につきましては、この四月十一日に都市計画の決定告示がなされ、本年度より国におきましても調査が進められるところであり、事業化に向けて一歩前進したものと考えております。
県といたしましても、事業化された際に速やかに工事着手ができますよう、国と連携を図りながら、地元として協力できる調査を進めるとともに、一日も早く国による事業化が図られますよう、引き続き国に働きかけてまいります。
次に、名古屋東部地域における道路整備についてであります。
中京大都市圏の中核である名古屋市とその近郊部から成る大都市地域におきましては、リニア中央新幹線開業のインパクトを受けとめ、地域の利便性を生かした質の高い快適な暮らしを支える基盤づくりが求められております。
中でも、日進市や東郷町を含む名古屋東部地域は、名古屋市の近郊にあって、丘陵地の特性を生かし、土地区画整理事業などによる宅地供給や、商業施設の集積により活発な都市活用が展開されており、今後とも交通量の増大が見込まれております。
こうしたことから、交通の円滑化を図るため、都市計画道路名古屋瀬戸道路や、名古屋三好線などのバイパス整備により、名古屋市、豊田市方面へのアクセスを強化するとともに、新市街地の形成とも連携した道路網整備を進めているところであります。
このうち、日進市内の名古屋瀬戸道路では、必要な用地がおおむね取得できましたので、今年度からは、まずは平面部の工事に取りかかってまいりたいと考えております。
さらに、東郷町では、役場付近で計画中の東郷中央地区土地区画整理事業の施行にあわせ、アクセス道路として期待されております都市計画道路名古屋春木線の整備に着手してまいります。
今後とも、名古屋東部地域におけるまちづくりや交通需要に的確に対応し、この地域の経済と暮らしを支える道路整備にしっかりと取り組んでまいります。
以上であります。
5:
◯地域振興部長(
植田昌也君) 続きまして、総合的な交通ネットワークの検討に関するお尋ねのうち、まず、地下鉄東部線など計画路線についての議論の状況につきましてお答えいたします。
東部線、上飯田線の未整備区間を含めた地下鉄の新線建設につきましては、事業主体である名古屋市交通局が平成二十二年三月に策定いたしました市営交通事業経営健全化計画におきまして、事実上、凍結の方針が示されております。現時点では推進が図られる状況にはございません。
同計画にございますように、検討に当たりましては、社会経済情勢の動向、需要及び採算性について慎重に見きわめる必要がありますとともに、名古屋市域内の地下鉄の整備状況や整備・延伸計画地域の開発動向、周辺道路の渋滞状況等を勘案しつつ、事業費の確保を初め、幾つもの課題を解決していく必要がございます。
いずれにいたしましても、名古屋圏の鉄道ネットワークの充実を図る上で重要な課題でございます。運輸政策審議会答申の位置づけを踏まえまして、諸課題について長期的に取り組んでまいります。
次に、愛知高速交通株式会社の第二次経営安定化策における民間支援の状況など、進捗状況についてお答えいたします。
まず、民間企業からの支援につきましては、開業時の民間企業全出資者二十八社を中心に、地元経済団体でございます中部経済連合会や名古屋商工会議所、また、リニモ沿線の商工会議所等の主な会員企業約二百社を対象として、県と会社から支援の要請を行い、八月末時点で約五億円の支援が得られる見込みとなっております。
また、昨年三月に会社が策定いたしました経営改善計画とその後の経営支援会議における支援策の検討内容につきまして、事業再生を手がける弁護士や公認会計士で構成される専門家チームに調査を依頼いたしましたところ、おおむね妥当との評価が得られており、その合理性、相当性が検証されたところでございます。
これら民間支援及び経営支援策等の検証の状況を踏まえ、今後は、十月末をめどに民間支援額の確定を見た上で、県と沿線市の現金出資額を固め、貸付金を株式化するDESとともに二十七年度に支援を実施する方向で調整を進めてまいりたいと考えております。
最後に、リニモ沿線におけます展示会場など、年間を通じて利用客を確保できるような施設の検討状況についてお答えいたします。
まず、リニモ沿線の開発につきましては、平成二十一年三月に県と沿線四市が共同で策定いたしましたリニモ沿線地域づくり構想に基づき、各駅の将来像、整備イメージに従いまして、開発、まちづくりを推進しております。
ただいま御提案いただきましたような展示会場の新設には、広大な敷地と大きな建設費が必要となりますが、この地域には現実的に開発可能な用地がないこともございまして、これまで検討したことはございません。
しかしながら、先ほど申し上げました構想の中で、県におきましては、モリコロパークの集客施設の拡充、沿線市におきましては、区画整理事業を活用した宅地開発及び商業施設の誘致などを中心に整備を進めているところでございます。
具体的には、長久手古戦場駅ではイオンモールが間もなく着工となります。公園西駅ではイケアの建設予定地の造成が始まっておりますので、私どもといたしましては、住宅地の開発とあわせて、今後の集客とリニモ利用客の増加に期待しているところでございます。
私からは以上でございます。
6:
◯農林水産部長(
中野幹也君) 都市近郊農業についてのお尋ねのうち、まず、これまでの取り組みの成果についてお答えをいたします。
都市近郊農業は、新鮮な農産物の供給のみならず、農地が持つ県土や自然環境の保全といった多面的機能の確保に重要な役割を果たしており、これを維持していくためには、生産地と消費地が近いという立地条件を生かした取り組みが重要であり、県としましては、地域における取り組みを支援してきたところであります。
まず、農家がみずから新鮮な野菜を出荷できる産地直売施設や、都市住民みずからが農作物を栽培する市民農園の整備につきましては、都市近郊を初めとして県内では、平成二十二年度から農産物直売施設が四十カ所増加し、市民農園についても五十七カ所増加するなど、取り組みが着実に進んでおります。
また、農作業経験のない都市住民の方が農家に農作業を教わりながら野菜づくりなどができる農業体験農園の開設につきましては、平成二十三年度から三年間、県独自に県内三カ所のモデル農園の設置と運営支援に取り組み、事例集の作成や研修会の開催などを行って、県内への普及に努めた結果、農業体験農園は現在九カ所に増加をいたしております。
さらに、農家レストランや地域の特産物の開発などにつきましては、商工業者との商談の場の提供に加えまして、六次産業化サポートセンターによる商品開発等に関する専門家の派遣を行うとともに、新商品の試作や市場調査の経費への助成も行っているところであります。
こうした取り組み等によりまして、農家レストランや新商品の開発、新たな販路の拡大など、六次産業化・地産地消法に基づく本県の事業計画の認定件数は六十五件と全国六位となっております。
県といたしましては、このような生産地と消費地が近い立地条件を生かした取り組みがさらに広がっていくよう、引き続きしっかりと支援をしてまいります。
次に、農業の担い手の育成、確保の取り組みについてお答えをいたします。
本県農業を将来にわたって発展させるためには、地域農業を支え、農業生産を安定的に継続できる多様な担い手を育成、確保することが重要な課題であるというふうに考えております。
お示しの都市近郊地域の水田農業におきましては、他産業に引けをとらない所得を確保でき、産業として愛知の農業を中核的に支える経営体、すなわち基幹経営体として、例えば、日進市、豊明市及び東郷町の二市一町では、三つの法人があり、地域の約六割の水田を請け負っております。
県といたしましては、これら法人の一層の経営安定を図るため、農業改良普及課の職員が現地に赴き、野菜栽培など水田の高度利用も含めた生産技術の改善や中長期経営計画の作成を支援いたしますとともに、制度資金の活用などについてもアドバイスを行っており、他の都市近郊地域においても同様の取り組みを行っております。
また、本県独自の取り組みとして、農業を志す方々の就農相談のワンストップ窓口であります農起業支援センターを平成二十四年度に県内八カ所に設置して、新規就農希望者の相談に応じるとともに、国の給付金制度を活用して就農前後の生活支援等を行い、これにより本県の新規就農者数は、食と緑の基本計画二〇一五の目標である年百六十人を大きく上回る年平均二百三十一人に達しているところであります。
さらに、企業やNPOなどを含め、他業種から新たに農業参入を希望する方に対しても、農起業支援センターにおいて相談、支援を行い、また、担い手の育成機関であります県立農業大学校では、新規参入者や中高年者を対象とした農業講座なども開設をいたしております。
県といたしましては、今後とも、都市近郊農業の振興に向けてさまざまな取り組みを進めるとともに、水田農業の担い手を初め、幅広く担い手の育成、確保にしっかりと取り組んでまいります。
7:
◯知事(
大村秀章君)
近藤ひろひと議員の質問のうち、私からは、公共交通戦略についてお答えをいたします。
本県では、自動車利用の多い交通特性を踏まえまして、県内の交通利便性の向上を目的といたしまして、バス、鉄道の確保、維持、エコモビリティライフの推進などの交通施策をこれまで展開いたしております。
その上で、二〇二七年度のリニア開業を生かした中京大都市圏の形成を重要政策課題に位置づけていることから、その実現に寄与する交通戦略の策定が必要であると認識をしているところでございます。
本年度、リニア時代を見据えました広域道路ネットワークの充実強化及び鉄道ネットワークの充実強化に関する調査を実施しておりますことから、これらの調査結果を精査した上で、あいちビジョン二〇二〇に示しております総合的な交通ネットワークの検討につなげてまいりたいと考えております。
8: ◯二十四番(
近藤ひろひと君) それぞれ答弁をいただきました。再度
発言をさせていただきます。
まず、建設部長から御答弁いただきました内容でありますけれども、愛知県としての物流拠点、あるいは交流拠点に対してのアクセス向上、西知多道路、あるいは名環、こうしたところの整備、私も都市計画審議委員の一員として西知多道路の計画決定には立ち会わせていただいたわけですけれども、ぜひともしっかりと進めていただくよう、また、国にも要望していただければというふうに思います。
名古屋東部のことでありますけれども、地元の要望のようで大変恐縮でありますが、予想される、毎回のように話の出ます地震や、あるいはこの夏の天候不順、あるいは豪雨による土砂災害、河川氾濫、こうした住民の生命と財産を守るという意味からも、想定される被害に対して、できる限り国土の強靱化を進めるということが重要な課題でありまして、国も県もそれぞれの自治体も計画された道路建設が、こちらに費用を使われるということもありまして、進まないという状況ではあります。
よく集中と
選択ということになると思いますけれども、しかしながら、都市計画図を眺めますと、そうした決定された道路が完成しますと、どんなに便利なことかということを思います。
毎回お話をさせていただきますが、名古屋市から周辺の市町に入った途端に渋滞をします。また、旧市街地へ入ると歩道が狭かったり、あるいはなかったり、子供たちが歩いて、あるいは自転車に乗って、大変危険な状況にもあります。一日も早くこうした近郊のまちのバイパス道路ができることを切に願うところであります。
もう少し具体的な事情をお話しさせていただければ、先ほどもお話が出たかと思いますが、現在、日進市で進めております赤池箕ノ手の区画整理事業によりまして、都市計画道路名古屋豊田バイパスの国道百五十三号線の赤池側がもう既に山は切り開かれ、道路の姿が見えてまいりました。
百五十三号線の反対側を見ますと、地下鉄鶴舞線の操車場の上を走ります道路の先がどうなっていくんだろう、そんな期待を市民の皆さんは考えているところだというふうに思います。もちろん、用地買収が済んでいるわけでもありません。しかし、この浅田地区で新たな区画整理事業などが進められるとすれば、そうした検討も当然していただきたいと思いますし、また、先ほども話のありました東郷町の中央土地区画整理事業における計画区域を抜ける名古屋春木線についても、ぜひとも接続の整備を進めていただきたいというふうに思います。
それから、農業でありますけれども、当局におかれましては、大変いろいろな努力をいただいて、また、知恵も出していただいている、そんなことを感じます。支援センターが八カ所とかいう話もお聞かせを願いましたし。
ただ、やはり根本的な問題は、お米を日本人がこれから食べるのかどうか、食料の問題についてしっかりと日本人としてどういうふうな方向で考えていくのかということを我々も個々で検討していかなければならない、そんな状況にあるのではないかというふうに思います。
人口減少とは言いますけれども、世界的に見れば人口は増加しておりまして、食料不足が言われるわけであります。少なくとも、愛知県はどのような食に対する考えを持つのか、しっかりと議論をする必要があると思います。
そうしたことはさておきまして、担い手のことで支援センターが八カ所というお話がありましたが、農学校が大変充実していることもお聞きをしております。先ほど話しました地元の若い就農者も、大変役立ってありがたかった、そういうような話を聞いております。
こういったものが、例えば岡崎に一カ所とかそういうことではなくて、サテライト的に職業を持ちながら学びに行ける、そうした地域に学校を分散していただけるようなことも御検討いただければなということをあわせて要望させていただきたいと思います。
それから、公共交通についてでありますけれども、知事からも御答弁をいただきまして、交通戦略を練っていただくということでありますので、大きな期待をしたいと思います。
リニモの件の話をする前に、公共交通の件で一つ話を進めたいわけですが、先ほど豊田に向かう路線ということで、地下鉄鶴舞線から名鉄豊田線というお話をさせていただきました。名鉄豊田線にあります日進の駅で米野木駅という駅があります。この駅のほど近いところに敷地面積が十二万五千六百五平米の愛知県の所有する土地があります。土地と申しましょうか、愛知県の教育総合センターでありますけれども、こういった場所、つい先日、私も視察をさせていただきましたけれども、お話によれば、六月議会で石井県議がこのことについても質問をされておりまして、教育委員会内でいろいろな施設利用ということを答弁いただいておりますけれども、例えば、このものも非常に重要な施設であることは認識をしましたけれども、ここでなければいけないかというとそうでもなかろうかという気がいたします。
せっかくこうした公共交通機関の駅に隣接する広大な土地であります。違った利用の仕方で愛知県の利に資するものであれば、それは御検討いただくことも可能ではなかろうかと思うところであります。
PFI手法といって民間の力をかりてという表現が最近よくされますけれども、そのPFIも、その土地で何々をつくるがためのという意味ではなくて、もっと広域でこことここが例えば愛知県の資産、用地がありますよ、それを有効に使い分ける、そういった発想も一つ必要ではなかろうかと思うところであります。
例えば、西尾にあります愛知こどもの国、こちらも大変いろんな議論がされておりますけれども、英語村というような万博跡地を使うという話もありました。そうしたことも改めて議論にのせていただいて、十分に愛知県の発展につながる議論をしていただけるようお願い申し上げまして、質問を終わります。
9:
◯議長(
三浦孝司君) 進行いたします。
浅井よしたか議員。
〔三十六番浅井よしたか君登壇〕(拍手)
10: ◯三十六番(浅井よしたか君) 通告に従い、順次質問してまいります。
まず初めに、オストメイトを取り巻く環境整備の促進について伺います。
御存じの方もいらっしゃると思いますが、オストメイトとは、大腸がんや直腸がん、膀胱がんなど、さまざまな病気や障害などが原因で、肛門や膀胱を切除し、腹部に排せつのためのストーマと呼ばれる人工肛門や人工膀胱を手術で取りつけられた方を呼んでおります。ストーマとは、ギリシャ語で口を意味するそうでありますが、そのストーマを持っているオストメイトの方は全国で十七万人とも言われております。
愛知県内のオストメイトの方の人数については、正確には把握されていないようでありますが、膀胱や直腸、小腸の機能障害により身体障害者手帳を保有する方は、本年四月一日現在、約九千九百人いらっしゃるとのことであります。
オストメイトの日常生活について触れさせていただきますと、日々、ストーマ装具の装着などの不便があることは確かですけれども、ストーマ装具を装着していれば、自宅では装着以前の生活とそれほど変わらない生活を送ることができるようであります。しかし、外出となると大変な苦労を伴い、行動範囲にも制約が出てきます。
ストーマは、肛門や尿道口のように括約筋がないため、排せつを我慢することができません。そのため、ストーマ装具を用いて排せつの管理を行う必要があります。オストメイトの方は、ストーマ装具を常時ストーマ部位に装着し、ストーマ袋、パウチに排せつ物を受け、それを便器に排出しなければなりません。その後、ストーマ袋、パウチの洗浄、取りかえや腹部を洗い流すなどの処置が必要で、汚物流し台や作業用カウンター、さらにはストーマ周辺の腹部を映すことのできる鏡や腹部洗浄のための温水シャワーなどを備えたトイレが必要になるわけです。
オストメイトの方からは、外出中に装具が外れてしまうなどのトラブルがあるともう自宅に戻るしかない。そのため、外出先で緊急の処置ができるオストメイト対応トイレがあるかどうかがとても心配ですという声や、障害者用のトイレといえば、車椅子対応のトイレが多く、内部障害者とも言われるオストメイト対応のトイレはまだまだ少ない、車椅子対応のトイレで緊急の処置をしても、どうしてもある程度時間がかかってしまうが、外見ではオストメイトとはわからないため、障害者用トイレから出てくるとにらまれることもあってつらい、そんな声も聞かれます。
このようなオストメイトが安心して暮らせる社会を目指して設立された公益社団法人日本オストミー協会では、平成十一年ごろから公共施設の障害者トイレや多機能トイレにオストメイト対応トイレの設置要望や対応トイレマークの普及啓発などの取り組みを進めてきています。
最近では、JRの駅を初め私鉄各線の駅、デパートやショッピングセンターといった民間施設など、国内に約一万カ所のオストメイト対応のトイレが設置されているそうです。全国の設置場所は、携帯電話やパソコンで
検索できるようになっており、オストメイトの方が活用できるようになっております。
そこで、私も、日本オストミー協会のホームページから
検索して、愛知県内のオストメイト対応トイレの設置状況について調べてみました。特に多くの市民が訪れる市町村庁舎の中で、現在オストメイト対応トイレの標準仕様となってきている腹部洗浄のための温水機能などを整備している自治体庁舎は、豊川市、蒲郡市、岡崎市、瀬戸市、安城市などの十自治体ほどにとどまっているようです。
本県でも、平成十四年ごろからオストメイト対応トイレの県有施設への整備が順次進められてきており、県庁本庁舎のトイレにもオストメイト対応トイレのマークが張りつけられてはいますが、実際には、し瓶洗浄機の設置にとどまっており、現在求められている水準である温水機能を初めとする設備等は、残念なことに十分整ってはいません。
また、県庁本庁舎以外の自治センターや西庁舎、議会議事堂など、三の丸地区にある本県関連施設においても同様の状況です。
県内のオストメイト対応トイレの整備促進や充実を図っていくためには、不特定多数の方が利用される県庁を初めとする県有施設が率先して、温水機能のみならず、汚物流し台や作業用カウンター等を備えたオストメイト対応トイレを計画的に整備していくことが必要であると考えます。
愛知県では、平成六年十月に人にやさしい街づくりの推進に関する条例を制定し、高齢者、障害者等を含む全ての県民があらゆる施設を円滑に利用できる人にやさしい街づくりを進めてまいりました。
さらに、平成十七年三月には、人にやさしい街づくりの推進に関する条例施行規則が改正され、同年七月からトイレ設備を含む建築物のバリアフリーについての整備基準が変更となり、庁舎や病院、ホテル、店舗など多くの人々が利用する建築物で、床面積の合計が二千平米以上の建物には基準の適用が義務づけされてきたところであります。
ただ、この二千平米という数字についても、埼玉県や神奈川県などでは、四分の一の五百平米以上の建物にオストメイト対応トイレの設置を義務づけるなど、整備促進の取り組みが進められているそうですから、本県としても、オストメイト対応トイレの整備促進に今後一層力を入れていくべきと思います。
そこで伺います。
オストメイトの方々の外出時の不安の解消を図るためには、現在のニーズを反映したオストメイト対応トイレの整備促進が必要であると考えますが、現時点での県有施設における整備状況についてお示しください。
また、人にやさしい街づくりの推進に関する条例の推進に取り組んでいる本県として、今後どのように県有施設を初めとする県内施設の整備促進に取り組んでいかれるのかお聞きいたします。
オストメイトの方々は、外出時の不安のほかにも、災害時のストーマ装具の確保や避難所生活での不安、さらには、老後に介護を受けるようになり、自分でストーマ装具の交換ができなくなった場合の支援体制の未整備や、認定看護師の不足など、老後についてもさまざまな不安を抱えています。
中でも、災害時の不安については、さきの東日本大震災で交通遮断などによりストーマ装具の供給がおくれたことから、備蓄や供給体制の確保の重要性が再認識させられました。また、避難所で装具を交換する場所がなかったり、装具の処理に時間がかかるため、長蛇の列のトイレを利用しづらい、装具交換のための水が手に入らないなど、大変な困難を強いられたとのことです。そのため、腹部のストーマを露出させて行う交換を野外で行った例もあったとお聞きしています。
本県においても、南海トラフ巨大地震等の発生が危惧される中、東日本大震災の教訓を生かし、災害時における要援護者への支援策が必要であると考えますが、平成二十三年三月に日本オストミー協会が実施した市町村別災害時の対策状況調査の結果を見ますと、福祉避難所の確保やストーマ装具などの供給整備状況の進捗には県内市町村においてもかなりの差が見られます。
また、災害時への対応だけでなく、障害者総合支援法に基づいて平成十八年十月に施行された日常生活用具給付等事業においても、一カ月の給付基準額や利用者の自己負担割合、さらに、給付品目などの面で県内市町村間で相当な違いがあります。
そこで伺います。
災害時に備えたオストメイトの方のストーマ装具の備蓄や供給体制の現状と今後の取り組みについて、まずお答えください。
また、避難所におけるオストメイトの方の生活について、どのように支援をしていく計画なのかお聞かせください。
さらに、オストメイトの方への支援内容が市町村によってかなり異なっているという現状については、県として詳細に把握しておられるのでしょうか。把握しておられるのであれば、その現状に関する御所見もお示しください。
さて、先ほど御紹介いたしました日本オストミー協会が平成二十三年三月に取りまとめたオストメイトの方への調査結果では、オストメイトのことが理解されていないため困ったことがあったかという問いに、三割の方があったと答え、その場面はやはり外出先が六割と一番多く、続いて職場、そして、病院や施設の順になっています。
外出先の中には、これまで御紹介したトイレに関するトラブル以外にも、本年八月十三日の読売新聞夕刊でも報じられたように、銭湯や温泉などでの入浴に関するトラブルもしばしば起きているようです。
もちろん、オストメイトの側の入浴マナーに全く問題がないわけではありませんが、銭湯等の経営者や利用客の側もオストメイトへの理解が十分でないために、入浴拒否をしてしまうケースも発生しているとのことです。
こういった事態を受けて、滋賀県や宮崎県、神奈川県などでは、関係先へ啓発チラシを配布するなどの対策を既に始めています。
本県でも、障害のある方がその能力や適性に応じて、自立した生活を営むことができるよう、愛知県障害福祉計画を策定し、その計画に基づいて障害のある方の地域生活への移行に向けたさまざまな支援を進めています。障害のある方が地域で暮らすには、地域にお住まいの方々に障害のある方に対する偏見、差別をなくしていただくことが重要ですので、今後さらに障害に対する正しい理解の促進を図っていく必要があると考えます。
とりわけ、オストメイトの方は、外見上は健常者と何ら変わりありませんので、そうした方への配慮、気配りは難しいわけですが、やはり少しでも多くの方にオストメイトの方の生活での苦労や不安について知っていただくための取り組みが大変重要だと思います。
以上、オストメイトを取り巻く環境についてさまざまな課題をお示ししてまいりましたが、こういった現状に対する本県の支援体制を見てみますと、関係する法令や行政分野が多岐にわたるため、残念ながら本県にはこうした課題に統一して対応する部署は存在していません。このことは、本年七月九日に健康福祉部障害福祉課のお骨折りで実施していただいた日本オストミー協会愛知県支部役員と県庁関係部局との意見交換会に約十五名もの職員が部局を超えて臨時に集まり、開催されたことからも明らかであります。
そこで伺います。
今後さらに本県としても、オストメイトを含めた障害のある方々に対するバリアフリー施策の推進が重要であり、県有施設の整備などを初め、県が率先して対応していくべきと考えますが、そのためには、健康福祉部を中心に、建設部、防災局など関係する部署による横断的な施策検討の場が必要であると考えます。県としてどのように取り組んでいかれるのか、お考えをお聞かせください。
続いて、食育推進と学校給食における地場産物の活用について伺ってまいります。
まず初めに、食育という言葉の意味を改めて確認いたしますと、食育とは、生きる上での基本であって、知育、徳育、体育の基礎となるものであり、さまざまな経験を通じて食に関する知識と食を
選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てることであります。
この食育という言葉の語源は古く、明治二十九年に軍医で薬剤師の石塚左玄が出版をした「化学的食養長寿論」の中で初めて使われ、その後、この言葉が世の中に広まったのは、吉田藩、すなわち現在の豊橋市出身のベストセラー作家、村井弦斎が明治三十六年一月から十二月まで報知新聞に連載した人気小説「食道楽」の中で、体育、徳育の根本は食育にあるという食育論を述べたことが契機となったようです。
ちなみに、この村井弦斎は、当時大変な人気作家で、彼の代表作である「食道楽」の単行本は、明治時代としては画期的とも言える十数万部のベストセラーとなったほどであります。
こういった経緯で誕生した食育が我々の生活、とりわけ子供たちの成長過程において極めて重要であることは異論のないところだと思いますし、食育推進のためには、子供たちの年間の食事の約五分の一の比重を占めるとされる学校給食の果たす役割は大きく、貴重な実践の場でもあるはずです。
そこで、本県の学校給食が児童生徒に提供されるまでの過程について、最も一般的な流れを例に挙げて御説明いたしますと、献立作成については、市町村の教育委員会が学校栄養職員や栄養教諭を中心に行います。その後、市町村ごとの給食会や物資選定委員会等から、主食の米やパンなどについては、公益財団法人愛知県学校給食会に発注されます。生鮮野菜などは、それぞれの地域の納入業者に発注され、その業者から複数の学校給食をまとめて調理する共同調理場に、あるいは学校ごとに調理を行う単独調理場などに直接納入されるという流れになっています。
ちなみに、本県では、本年五月一日現在、単独調理場方式が四百四十校で全体の三四・二%、共同調理場方式は八百四十八校で六五・八%となっております。共同調理場方式が多い本県では、地場産物の活用を推進するためには、大量調理にあわせて地元の生鮮野菜などを大量に一括して調達する必要があるわけです。このことを確認した上で、各自治体による地場産物の調達状況並びに食育への取り組みについて、その一部を御紹介いたします。
まず、私の地元の豊橋市では、毎年六回、とよはし産学校給食の日を実施し、豊橋産の食材を取り入れた学校給食を提供するとともに、栄養教諭の在籍する学校においては、食農教育として、当日の学校給食に使用されている豊橋産の野菜を育てている生産者を学校に招いて、子供たちに講話をしていただく機会をつくったり、定期的に生産者団体との意見交換会を開催したりしています。
豊田市は、ほかの自治体に比べ、市役所農政課との連携を緊密に行っており、農政課の協力を得て、市内の農家に学校給食用のタマネギの生産を依頼したり、加工食品として豊田市産の桃を使ったゼリーを給食で提供するなど、地場産物の使用割合を高める努力をされています。その結果、豊田市の平成二十五年度の地場産物の活用割合は四五・六%であり、平成二十三年度に本県が策定したあいち食育いきいきプラン二〇一五で掲げた、来年度までに県内産食材の活用割合を四五%以上とするという目標を上回る県内トップクラスの成果を上げています。ちなみに、この活用割合ですが、昨年度の数字を見ますと、下は二一・八%から上は六七・二%と市町村によってかなりのばらつきがあります。
昨年度の県平均は三八・七%で、平成二十二年度の三七・〇%からは若干増加しておりますが、平成二十三年度の三九・二%からは低下しており、足踏み状態にあります。数字が伸び悩んでいる要因を考えてみますと、まず、本県に多い共同調理場方式では、短時間で一括して大量調理を行うため、そもそも規格化されたものや冷凍食品、輸入食材などに依存しやすい傾向があります。
また、栄養教諭などが地場産食材中心の給食を行いたくても供給体制が十分に整っていないため、献立自体が地産地消を前提としたものになりにくいことなどの理由も挙げられます。
言いかえれば、現状の供給体制で良質な地場産物を大量に調達することはかなり困難な作業であり、このことは、平成二十五年十一月に県が実施した学校給食における地場産物の活用に関する調査においても同様の声が上がっています。
この調査でも、学校給食で生鮮野菜の使用量を確保することの難しさを課題に挙げる市町村が多く、規格やサイズが合わなかったり、仕入れ価格が割高となったり、価格が安定しないことなども、スムーズな調達に苦労する要因となっているようです。
また、これらのほかにも、現場の専門家から本県の学校給食が抱える課題を幾つか御指摘をいただきましたので、この際、御紹介をいたします。
まず、調理担当業者からの指摘によれば、生鮮野菜の大量調達に伴う品質の確保も見過ごせない課題だそうです。といいますのも、生鮮野菜は、雨量や気温などの不安定要素の影響を受けますので、献立作成時に予定していた野菜のできが納入時において必ずしも良好ではないというケースも当然起こります。しかし、献立で指定された地場産物の使用を優先する余り、民間飲食業界の基準に照らせば、返品される可能性のある品質の野菜がまじって納入されていても、地元産だからやむを得ないという理由で合格になってしまうケースも決してゼロではないようです。
続けて、現場の生の声をもう一つ御紹介いたします。
学校給食に食材を納入している県内の加工食品メーカーの方からは、市から提示される予算では、相当に品質を調整しなければ、予算に合わせて納入することはできない、もちろん、その商品でも全く体には害はないが、決して本物の味とは言えない、これで本当の食育と言えるのだろうか、食育推進を目指すなら、仮に納入回数を減らしてでも、本来のおいしさが味わえるものを使うべきであると思うし、実際、そういう姿勢の自治体も少ないながらも決してゼロではないという、そんな率直な御意見も伺ったところであります。
本県の学校給食に関して、このような御指摘を食の専門家からお聞きしますと大変残念な思いがいたします。
そこで伺います。
県内市町村の学校給食における地場産物の活用及び食材の品質の現状と課題について、食育推進の観点からどのように捉えておられるのかお聞かせください。
さて、これまでお示ししたように、私は、学校給食における地場産物活用の現状については、幾つかの改善すべき課題があると感じています。そして、同時に、食材の質は予算、すなわち給食費に大きく影響されることももちろん十分理解しています。しかし、その上で私は、本県が今後もあいち食育いきいきプラン二〇一五で掲げた県内産食材活用率の目標達成を初めとして、学校給食における地域の産物の活用割合の増加を目指すのであれば、給食費について議論する前に、市町村と協力して工夫や努力をする余地がまだまだ大いにあると感じておりますので、可能な限りの取り組みをぜひ本県としても行っていただきたいと思います。
具体的には、まず、年間を通じ安定的かつスムーズに県内全域から質のよい生鮮食品や加工食品を調達できるよう、本県がコーディネート役となって、農業生産者団体や食品メーカー、教育委員会や学校給食会、さらには流通業者や給食調理業者などの参加による全県規模の需要供給ネットワークの構築に取り組むべきと考えます。
さらに、万一県内で調達が困難な場合のために、例えば岐阜、三重、静岡、長野などの隣接県から食材を共同で調達する広い意味での地場産物の活用システムも研究すべきではないかと考えます。
もちろん、それらの取り組みと並行して、地場産物の活用を前提とした給食献立の研究開発にも一層力を入れるべきですが、安定した供給体制を確立せずに高い目標数字を掲げたり、献立の研究などを行っても、まさに絵に描いた餅であり、決して十分な成果は得られないのではないでしょうか。
加えて、こうした取り組みには、教育委員会だけではなく、地域で生産された農林水産物を地域で消費しようという地産地消の取り組みを推進している農林水産部との連携も重要です。学校給食の食材の調達に当たっては、農林水産物の生産、出荷の安定と流通の円滑化などを図る取り組みを進める必要がありますので、農林水産部の協力は欠かすことはできないものと考えます。
そこで伺います。
さらなる食育推進のため、良質な地場産物の供給体制の構築と地場産物活用の拡大に向けて、農林水産部との連携を含め、今後どのように取り組まれるのかお聞かせください。
以上、オストメイトを取り巻く環境整備の促進について並びに食育推進と学校給食における地場産物の活用についてそれぞれ伺ってまいりました。
県当局の建設的で前向きな御答弁を期待して、壇上での質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
11:
◯建設部建築局長(
祖父江隆弘君) 私からは、県有施設におけるオストメイト対応トイレの整備状況及び県内施設の整備促進への取り組みについてお答えいたします。
まず、オストメイト対応トイレとして必要な設備についてでございます。
本県では、平成六年に制定した人にやさしい街づくりの推進に関する条例の施行規則を平成十七年に改正し、病院、ホテル、店舗など、多くの方が利用する建築物の新築や増築などを行う際に、オストメイトの方が排せつ物を受けるパウチなどを洗浄する水洗器具を設置するよう義務づけました。
その後、より円滑に排せつ物の処理ができるよう、水洗器具に加えて専用の汚物流しや腹部洗浄のための温水設備などを備えていることが望ましいとされてきたことから、平成二十年には、条例の基準に加え、人にやさしい街づくり望ましい整備指針を定め、これらの設備の設置などを望ましい措置として提示をし、事業者や設計者などへ周知啓発を図ってまいりました。
このような望ましい設備の自主的な設置が広まってきたところで、平成二十五年には、有識者や障害者団体などからいただいた御意見を踏まえまして、水洗器具のほかに手荷物置き台、鏡、トイレットペーパーホルダーの設置を義務づける条例の基準の改正を行ったところでございます。
こうした基準の改正の経緯を踏まえまして、県有施設におけるオストメイト対応トイレの整備状況についてお答えいたします。
県有施設では、平成十四年からオストメイト対応トイレを順次進めてきておりますが、本年八月末現在で百九十六の施設に洗浄用の水洗器具が設置されております。また、水洗器具のほか、手荷物置き台、鏡、トイレットペーパーホルダーを備えたオストメイト対応トイレは九十四の施設に設置されており、このうち、温水設備も設置されている施設は六十二でございます。
次に、県有施設を初めとする県内施設の整備促進の取り組みについてでございます。
本県といたしましては、オストメイト対応トイレの機能の向上や社会環境の変化を踏まえつつ、本年度は、さきに申し述べました望ましい整備指針に衣類をかけるフックや高さ調整ができる汚物流しなどの措置を追加して行ったところでございます。
今後も、民間の事業者や設計者などに対して整備指針の説明会を開催するなど、広く普及啓発を行い、整備促進に努めてまいります。
また、県有施設につきましても、現在建築中の総合工科高校や改修予定の県庁大津橋分室など、温水設備を備えたオストメイト対応トイレの整備を進めております。
今後とも、施設や整備の改修、修繕などの機会を捉えまして、機能の充実を図り、より使いやすいオストメイト対応トイレの整備を積極的に進めてまいります。
12:
◯健康福祉部保健医療局長(
加藤昌弘君) オストメイトについてのお尋ねのうち、災害時に備えたストーマ装具の備蓄と供給についてお答えをいたします。
災害時におけるストーマ装具の安定的な確保は、オストメイトの皆様にとりまして非常に重要な問題であると認識しております。災害時に必要となるストーマ装具の確保につきましては、まずは市町村が対応することとなりますが、市町村のストーマ装具の備蓄状況等を確認しましたところ、一部の市町村において、個人所有のストーマ装具を自治体の倉庫で保管するなどの対応が見られるにとどまっております。
こうした中、本県では、ストーマ装具を含む医療機器等につきまして、昨年八月に愛知県医療機器販売業協会と災害用医療機器等の供給に関する協定を締結し、災害時に市町村からの要請に基づく県からの供給要請を受け、同協会がストーマ装具を含む医療機器等の要請を行った市町村に優先的に供給する体制を整備したところであります。
そして、今年度は、同協会に県が実施しております総合防災訓練に御参加をいただき、災害時の供給についての実働訓練を実施いたしました。
今後は、訓練で明らかになった課題を検証すること等により協定に基づく供給体制の実効性を高め、オストメイトの皆様の災害時の安心・安全の確保に努めてまいります。
13:
◯防災局長(
小林壯行君) 避難所におけるオストメイトの方の生活支援についてのお尋ねでございます。
東日本大震災では、被災者が長期間の避難所生活を余儀なくされたことから、心身の健康確保への対応等が課題となりました。このため、昨年六月の災害対策基本法の改正により、新たに避難所の生活環境の整備等に関する規定が盛り込まれました。
また、昨年八月には、内閣府から市町村が取り組むべき事項として、避難所における良好な生活の環境の確保や、要配慮者に対する必要な支援を実施することが示されたところでございます。
本県では、南海トラフ巨大地震等対策事業費補助金において、市町村が行う要配慮者の皆様の避難所生活に資する資機材整備事業に助成しており、オストメイト対応トイレの整備についても補助対象としておりますので、市町村に活用を促してまいります。
また、現在、本県として、市町村が避難所を開設、運営する際の参考としていただくため、年度内を目途に避難所運営マニュアルの改訂を行っているところであり、オストメイトの方を初めとする要配慮者の生活支援のあり方についても盛り込んでまいります。
以上でございます。
14:
◯健康福祉部長(
伊藤輝明君) オストメイトに関するお尋ねのうち、私からは、まず、県内の市町村におけるオストメイトの方への支援についてお答えをさせていただきます。
オストメイトの方への支援につきましては、市町村が認定する障害支援区分に応じて、障害者総合支援法に基づき、必要となる障害福祉サービスの提供を受けることができ、この点におきましては、市町村によって支援の内容に差がないものと認識をしております。
一方、ストーマ装具につきましては、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業に日常生活用具給付等事業として位置づけられておりまして、地域によって利用される方々の状況が異なることから、市町村の判断により事業内容が決められております。
今年度、県内市町村の状況を申し上げますと、例えば給付対象品目につきましては、日本オストミー協会が設定しているストーマ装具十四品目のうち、全てを対象としているところが三十八市町村、半数の八品目以上を対象とするところが八市町、半数未満の七品目以下が八市町村となっているなど違いがあることについては、県として把握しているところでございます。この違いは、各市町村において利用者の要望もお聞きしながら、適切に対応された結果と考えております。
県といたしましては、今後も適宜、県内各市町村におけるオストメイトの方への支援の状況について把握し、支援の検討の参考としていただけるよう、各市町村へ情報提供を行ってまいりたいと考えております。
次に、オストメイトの方も含めた障害のある方々に対する施策を横断的に検討する場についてお答えをいたします。
本県では、障害者基本法に基づき、関係行政機関の職員、学識経験者、障害のある方及び障害福祉サービス事業者等を構成員として、愛知県障害者施策審議会を設置し、障害福祉計画策定時に御意見をいただいたり、多岐にわたる障害のある方に関する施策の推進について調査審議をしていただきますとともに、関係行政機関相互の連絡調整を要する事項についても調査審議をいただいているところでございます。
また、この審議会の円滑な運営を図るために、愛知県障害者施策審議会条例に基づき任命されました県関係九部局の二十七課室長を含む幹事によりまして、幹事会を開催し部局間の連携を図っているところでございます。
例えば、既存住宅を活用し、グループホームの供給促進に向け、今年度四月から実施をいたしました建築基準法の規制緩和措置につきましては、健康福祉部が中心となり、建設部、防災局とこの幹事会を通じて検討、調査を行い、実施に至ったものでございます。
障害のある方に対するバリアフリー施策を推進するためには、今後ますます関係部局が緊密に連携、協力して対応していくことが必要になってくると考えておりますので、県有施設のバリアフリー化について幹事会で取り上げるなど、今後とも健康福祉部が中心となり、審議会及び幹事会を積極的に活用して取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
15:
◯教育長(
野村道朗君) 教育委員会には、食育推進と学校給食における地場産物の活用についてお尋ねをいただいたところでございます。
初めに、県内市町村の学校給食における地場産物の活用と食材の品質に関する現状と課題についてでございます。
学校給食に地場産物を活用することは、地域の食文化への理解が深まることなどから、本県の第二次食育推進計画では、学校給食において、県内の地場産物を活用する割合を平成二十七年度までに四五%以上とすることを目標にいたしておりますけれども、ここ数年、三九%前後で推移をしているところでございます。
伸び悩んでいる主な要因といたしましては、議員御指摘のとおり、地場産物の生鮮食品については、必要量が確保できないことのほか、規格やサイズが合わないこと、価格が高いことなどが挙げられておりまして、こうした課題の解消を図っていくことが地場産物の一層の活用につながるのではないかと、このように考えております。
そこで、まず、調達の面では、現在、市町村では、学校給食における地場産物について、当該市町村及びその周辺を中心として調達しておりますけれども、これを県内全域から幅広く調達できるようになれば、必要な量を確保できる可能性というものは高くなりますし、規格やサイズ、あるいは価格の不安定さといった課題も緩和され、地場産物活用の拡大が図れるものと、このように考えます。
また、良質な地場産食材を使った給食の提供も重要なことと考えておりまして、各市町村もその確保に努めているところでございますが、どうしても価格は高くなりがちでございます。しかし、そうした中にありましても、本物の味に配慮した給食が提供できるよう、献立作成力の向上などを図っていく必要があると、このように考えております。
次に、良質な地場産物の供給体制の構築など、さらなる食育推進のための今後の取り組みについてでございます。
学校給食における地場産物の活用を拡大することにより、地産地消の推進と地域の農林水産業に対する理解促進を図るため、現在、農林水産部では、各農林水産事務所単位で学校給食関係者や農業団体などで構成する地元農産物学校給食導入促進会議を開催し、地場農産物の旬の時期や入手先の情報の提供などに取り組んでいただいているところでございます。
また、こうした各地域での取り組みに加えまして、県内全域からの地場産物の調達促進ということを狙いといたしまして、現在、教育委員会では、農林水産部と連携をいたしまして、生産者団体や各市町村教育委員会に対して、県内産の農産物の出荷状況と県内の学校給食における食材の調達状況についての調査も行っております。
この調査によりまして、学校給食に供給可能な県内産の食材について、時期と量などを明らかにすることができますので、調査結果を各市町村教育委員会へ情報提供してまいりたいと、このように考えております。
議員お示しのような学校給食における県内産食材の農林水産部との連携による全県規模の需要供給ネットワークの構築とか、隣接県からの調達に関しましては、これらの取り組みを踏まえまして、今後検討してまいりたいと、このように考えております。
16: ◯三十六番(浅井よしたか君) それぞれ御答弁いただきましてありがとうございました。
持ち時間もそれほどありませんので、今回の質問を通じて感じたことを若干申し上げて、要望とさせていただきたいと思います。
まず、改めて感じましたのは、やはり現場の生の声をさらに吸い上げていく努力をしていただきたいなということであります。実態を知らずして適切な施策は実行できないと思っています。
それから、今回最も強く感じたことでありますけれども、できる限り役所の縦割りを超えていただきたい。そして、セクショナリズムに陥らずに、もっと部局間でのコラボレーションというものを進めていただいて、県民目線で理解のしやすい体制をつくっていただきたいということであります。
私の質問で申し上げましたけれども、例えばオストメイト対応トイレの県庁への設置についていえば、人にやさしい街づくり条例を所管されているのは建設部であり、そして建物自体を管理されているのは総務部であって、そして、障害者福祉法を担っているのは健康福祉部と多くの部局が関係をしておりますから、県民から見るとなかなかわかりにくい部分もあるんだろうというふうに思います。
そういう意味で、私は、部局横断的な場の必要性を申し上げたわけでありますけれども、答弁では、既に審議会や幹事会があるという御答弁をいただいたわけであります。ということであるならば、ぜひ健康福祉部が、余りよその部局に遠慮し過ぎずに、障害者福祉法、我々が中心となってやっていくんだという思いで幹事会でも取り上げていただける、テーマにも入れていただけるというさっきお話がありましたので、ぜひ議論をリードしていただいて、他部局にも賛同を得て、着実な成果を上げていっていただきたいなということを要望したいと思います。
このことは、学校給食についても同様でありまして、地産地消ということからすると農林水産部が所管だろうというふうに思うわけですが、やはり事学校給食に関しては、子供たちの食育推進という観点から教育委員会が責任を持って取り組んでいくんだという思いで、農林水産部と共同して、ぜひ子供たちのためによりよい質の高い学校給食の実現を目指してお取り組みをいただくことを要望して、
発言を終わります。
以上です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
17: ◯三十八番(
原よしのぶ君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
18:
◯議長(
三浦孝司君)
原よしのぶ議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
19:
◯議長(
三浦孝司君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午前十一時二十九分休憩
━━━━━━━━━━━━━━━━━
午後一時開議
20: ◯副
議長(
伊藤勝人君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
山本浩史議員。
〔八番
山本浩史君登壇〕(拍手)
21: ◯八番(
山本浩史君) 通告に従って、質問いたします。
今回は、本県の防災対策並びに農業用ため池の耐震対策について伺います。
未曽有の被害をもたらした二〇一一年三月十一日の東日本大震災から三年半が経過いたしました。被害状況は、本年三月の報道では、死者一万五千八百八十四人、行方不明者は二千六百三十三人、避難生活を送っている方は一年前に比べ四万七千人減少いたしましたが、二月の復興庁のまとめによれば、二十六万七千四百十九人となっております。また、仮設住宅での生活を余儀なくされている入居者も減少してはいますが、約十万戸と住まいの復興はさらなる時間を要する状況であります。
一方、被災地域における災害廃棄物処理については、この三年間で一千六百十三万トンに達し、福島県の汚染廃棄物対策地域を除けば、全体の九五%まで処理が進展いたしました。津波による堆積物も八百九十四万トンと全体の九四%の処理が完了しています。
しかし、産業の復旧・復興状況を見てみますと、大震災の前の水準を回復している割合の高い業種は、建設業六六%、運輸送業四二・三%に集中し、東北の地場産業である水産・食品加工業一四%や卸小売・サービス業三〇・六%と回復はまだまだ進んでいない状況であります。
また、被災自治体全体で事業所の減少や人口流出などにも直面しており、一度大災害が発生した場合、その復旧・復興は簡単ではないということを痛切に感じる次第であります。
今月の初旬、建設委員会県外調査において宮城県に伺い、宮城県社会資本再生・復興計画、仙台塩釜港港湾計画、災害公営住宅整備事業、高速道路の津波避難階段設置等について現地調査を行い、また、宮城県に派遣された復興に携わる本県の職員からもヒアリングを行ってまいりました。本県職員の活躍を大変心強く感じるのと同時に、改めて復興においてはまだまだ多くの課題が残されていることを実感いたしました。
本地域においては、発生が危惧されています南海トラフ巨大地震について、昨年五月に関連する三つの報告が相次いで発表されております。
中でも、五月三十日には、愛知県防災会議から国の被害想定結果に基づいて試算した愛知県東海地震・東南海地震・南海地震等(南海トラフ地震)における市町村別の被害予測が公表されました。その内容は非常に厳しいものでした。
そして、本県の被害予測結果が発表され、理論上最大モデルで三万七千百六十九ヘクタールにも及ぶ浸水区域を初め、建物被害は約三十八万二千棟、人的被害は二万九千人、経済的損失は過去地震最大モデルで約十三兆八千六百万円と、本県単独で東日本大震災の被害に匹敵するような大変厳しい数字が示されております。
こうした南海トラフ地震による被害を最小限にしていくためには、国、県、市町村がそれぞれの役割を認識し、直面する問題に迅速に対応していくことが大切であると考え、昨年の六月議会にて防災対策として次の三点について伺いました。
一点目は、愛知県の防波堤として機能を有する渥美半島の太平洋沿岸における防波堤の設置及び国道四十二号線のかさ上げについて。
二点目は、地震、津波、高潮から人々を守るための海岸堤防などの耐震化、かさ上げ等の整備促進。
三点目は、三河港の物流及び臨海産業活動、そして、非常時の緊急輸送路としての機能を補完する県道城下田原線の整備計画についてでありました。
これらを踏まえ、次の点について伺います。
一点目は、今回の県の被害予測調査結果に関して伺います。
今回の被害予測調査結果を拝見しますと、国の被害想定結果と比較し、浸水区域が大幅に増加しています。これは、濃尾平野、岡崎平野、豊橋平野といった低地部で顕著にあらわれています。特に濃尾平野は、ゼロメートル地帯が広がっているため、津波がおさまった後も潮位による浸水が継続するため、長期にわたって冠水することが予想されております。
この予測調査結果を踏まえ、特にゼロメートル地帯においてさらなる地震・津波対策の必要性が明らかになりました。
同じく、太平洋に面した豊橋市や田原市では、数分で津波が到達し、三十分ほどで高さ二十メートルを超える大津波が直接襲ってまいります。よって、その破壊的なエネルギーは本県でも最大であると考えます。
そこで、何としても命を守るという観点から、いずれの場合も早急に対策が必要であると考えますが、太平洋沿岸における津波対策の重要性について、本県の予測調査からどのように認識しているのか伺います。
次に、二点目は、昨年質問いたしました三つの事業の進捗状況について伺います。
まず、一点目の渥美半島太平洋沿岸の津波の危険性が高い地域の防波堤の設置につきましては、愛知県の被害予測調査結果を踏まえて、海岸付近の環境保全や日常の利用形態、費用対効果などを考慮しつつ検討するとのことでしたが、現在、海岸保全基本計画の見直しが行われております。
その方向性としては、お隣、静岡県の計画では、災害に強い海岸として計画の見直しが既に行われているのに対し、三河湾、伊勢湾沿岸では、静岡県同様、災害に強い海岸が提唱されているものの、遠州灘沿岸では、海岸地形の特性を生かした津波防護や海岸の防護、環境、利用のバランスを踏まえることを念頭に変更を検討にとどまっています。このような状態で適切な防護ができるのか、大変危惧いたしております。
大津波の襲来が危惧される渥美半島の赤羽根漁港や堀切ゾーンへの対策としては、既存の潮害防備保安林、道路のかさ上げ、補強等により安全度の向上を図る静岡モデルが有効と考えます。国道四十二号線につきましても、二線堤としてのかさ上げの可能性について検討するとのお話でした。
また、県道城下田原線の整備計画につきましては、通勤や物流の円滑化を図る上で重要な路線であり、未整備区間一キロメートルについても、防災面にも配慮した構造の可能性について検討していくとの答弁をいただいておりますが、現在の検討状況について伺います。
次に、海岸堤防の整備につきましては、ゼロメートル地帯で人家が密集するなど、大きな浸水被害が想定される区間を優先対策区間として、平成二十四年度末で四十・六キロのうち三十二・一キロが完了し、これとは別に、老朽化や沈下の著しい海岸堤防の補強、補修、水門、陸閘の改良等についても実施していくとの答弁でありました。
そこでお尋ねします。
今後、海岸堤防の耐震対策などを引き続き第三次アクションプランに位置づけて取り組んでいくことと考えますが、その検討状況について伺います。
最後に、三点目といたしまして、臨海部の防護について伺います。
本県は、三河港を初め、名古屋港、衣浦港を抱え、製造品出荷額等全国一を誇っており、全国屈指の物流の拠点となっております。
国は、東日本大震災の発生及び南海トラフ地震、首都直下地震、火山噴火等の大規模自然災害等の発生のおそれを指摘した上で、今すぐにでも発生し得る大規模自然災害等に備えて、早急に事前防災及び減災に係る施策を進めるためには、大規模自然災害等に対する脆弱性を評価し、優先順位を定め、事前に的確な施策を実施して、大規模自然災害等に強い国土及び地域をつくるとともに、みずからの生命及び生活を守ることができるよう、地域住民の力を向上させることが必要であるとして、平成二十五年十二月に強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法を公布、施行しました。
そして、これまでの大災害を教訓にさまざまな対策を講じてきたものの、甚大な被害により長期間にわたる復旧・復興を繰り返してきたことに対し、これを避けるためには、とにかく人命を守り、また、経済社会への被害が致命的なものにならず、迅速に回復する強さとしなやかさを備えた国土、経済社会システムを平時から構築するという発想に基づき、継続的に取り組むことが重要と考え、平成二十六年六月、全ての計画の上位計画となる国土強靱化基本計画を閣議決定しました。
強靱な国土、経済社会システムとは、私たちの国土や経済、暮らしが災害や事故などにより致命的な被害を負わない強さと、速やかに回復するしなやかさを持つとし、一番目に、人命の保護が最大限図られること、二番目に、国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず維持されること、三番目に、国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化、四番目に、迅速な復旧・復興を基本目標に、強さとしなやかさを持った安全・安心な国土、地域、経済社会の構築に向け、PDCAサイクルを繰り返し見直しながら、国土の健康診断を行い、国土の強靱化を推進するというものです。
また、災害時でも機能不全に陥らない経済社会システムを平時から確保し、国の経済成長の一翼を担うことも重要な目標に掲げています。
本県は、経済、物流のかなめとも言える重要な港と、そこに隣接する多くの企業を擁しています。南海トラフ地震などが起こった場合、臨海部を守ることは、日本経済の迅速な回復にとって不可欠な要因であることは誰しもが認めるところではないでしょうか。
さきに述べたように、ことし五月三十日に発表された愛知県東海地震・東南海地震・南海地震等被害予測調査結果によれば、理論上最大想定モデルでも三つの港湾区域への浸水はないと想定されております。これは、浸水対策により埋立地の海抜は高くなっており、地殻変動による地盤沈下、沈下量最大一メートル程度を考慮しても、結果として浸水しない想定となっているとのことです。
一方、液状化した場合には、最大で〇・三メートル程度沈下することが想定されますが、液状化危険度が高い地域においても液状化する箇所は部分的であることから、浸水、津波の想定において液状化による地盤沈下については考慮されていないとのことです。
しかしながら、液状化については、過去地震最大モデルにおいて、高いから極めて高いという予測が出されており、ゼロメートル地帯同様、液状化や地盤沈下等により浸水のおそれが十分にあるのではないかと危惧いたしております。
また、高潮につきましても、台風そのものも年々大型化してきており、平成二十一年十月、台風十八号による高潮により、豊橋市の神野ふ頭が浸水し、コンテナが流されております。
さらに、平成二十五年三月二十二日に開催された第四回愛知県沿岸部における津波・高潮検討会においては、室戸台風級の台風が襲来した場合、最悪TP六・七メートルにも及ぶ高潮が予想されるとの発表もございました。
国土強靱化基本計画の本旨に基づき、堤外地である臨海部の防災・減災対策は大変重要であると考えます。
本県では、この九月定例議会において補正予算案を提出し、今年度中に国土強靱化地域計画案を策定するとのことです。国土強靱化の観点からも、堤外地である臨海部の防災・減災対策は大変重要だと考えておりますので、この点につきまして県の御所見を伺います。
次に、農業用ため池の耐震対策について伺います。
農業用ため池は、降水量が少なく、流域の大きな河川に恵まれない地域などで、農業用水を確保するために水を蓄え、取水ができるよう人工的に造成された池であり、全国に二十一万カ所存在し、特に西日本に多く分布しています。
農林水産省によれば、ため池の約七〇%は江戸時代以前に築造され、築造に当たっては、各地域において試行錯誤を繰り返して得られた経験をもとにつくられたものと推測されるとしています。
また、ため池は、農業用水を供給するだけでなく、動植物の生息、生育の場所の保全、住民の憩いの場の提供など、多面的な機能を有しており、さらには、降雨時には雨水を一時的にためる洪水調節や土砂流出の防止などの役割や、地域の言い伝えや祭りなど、文化、伝統の発祥となっているものもあるとのことです。
農林水産省では、平成二十一年から二十二年にかけ、ため池百選選定委員会を設け、さらに一般投票等を実施し、ため池百選を選定いたしました。
本県では、犬山市の入鹿池、みよし市の三好池、田原市の芦ヶ池、同じく田原市の初立池の四カ所が選定されています。
また、ため池百選のうち、桜の美しいため池として、東海地方では唯一、田原市の初立池が農水省の特設ホームページで紹介されています。
渥美半島は、豊川用水が通水する以前は大きな河川もなく、また、年間の降水量も県内の他地域に比べ少なく、特に夏は晴天が長く続くため、毎年のように干ばつに見舞われてきました。
このため、雨水を有効に利用することが非常に重要であり、ため池の築造が古くから行われ、知多半島に次いで多くのため池が分布している地域となっています。
渥美半島のため池は、半島という地理的な条件から流域面積が著しく狭いため、規模の小さいものが多く、水不足を解消することができるほどのため池はありませんでした。そのため、干ばつに苦しめられた人たちの記録が多く残されております。
例えば、半島の先端寄りに雨乞山という標高二百三十メートルの山があり、そこの頂上に雨乞神社が祭られています。干ばつが続くと祈祷師が雨乞山に登り、天焼きをして雨乞い行事をとり行ったと言われています。
今は、豊川用水の通水により昔ほど干ばつに苦しめられることはなくなりましたが、豊川用水もまだまだ万全ではなく、昨年は、豊川用水の水源である宇連ダムが枯渇寸前となり、厳しい節水を余儀なくされました。
本年も、農繁期の七月四日には、宇連ダムの貯水率が三四・四%まで下がり、節水をいたしました。改めて、先人たちが残したため池のありがたさを再認識し、これからも貴重な水源として守る大切さを実感いたしました。
甚大な被害をもたらした東日本大震災では、農業用ため池も大きな被害を受けています。福島県の藤沼湖では、決壊により百五十万トンの水が下流の集落を飲み込み、七名が死亡、幼児一名はいまだ行方不明という大惨事となりました。
農林水産省の資料によりますと、岩手県、宮城県、福島県の三県の一万二千五百カ所のうち、約千八百カ所のため池に堤防のひび割れなどの被害があり、このうち、堤防が決壊したため池が藤沼湖以外に二カ所あったとのことです。
近年の自然災害によるため池の被害は、平成十六年の新潟県中越沖地震と、十回にわたる台風の上陸や、平成二十三年の東日本大震災による被害が顕著となっており、その内訳は、約九〇%が豪雨によるもので、約九%が地震によるものとなっています。
八月二十九日の新聞の一面に、全国で五百十カ所のため池が耐震不足、うち愛知県で百七十七カ所、岐阜県で五十三カ所という見出しと、ため池の多い道府県の点検状況の
一覧が掲載され、注目されました。
ため池が多い道府県ほど改修費用等の問題から事業進捗のおくれが心配されますが、農林水産省では、自治体のハザードマップづくりに補助金を出すなど、ハード、ソフト一体となった総合的な対策を推進し、災害に強い農村社会の形成を推進しています。
同省では、規模が大きく、周囲の人家に被害が出る可能性のある全国のため池約十一万カ所について、目視や簡易な現地調査による一斉点検を平成二十五年度から二年間で行うこととし、本年の去る八月二十九日には、平成二十五年度のため池一斉点検を取りまとめ、中間報告を行いました。
その内容は、平成二十五年度には、全国で受益面積二ヘクタール以上のため池について、約四万六千カ所を点検実施し、下流に人家や公共施設等があり、決壊した場合に影響を与えるおそれのある防災重点ため池のうち、約二千カ所が洪水流下能力や耐震性能などに関し、より詳細な調査を要するとの評価でした。
なお、本年度は、受益面積二ヘクタール未満、〇・五ヘクタール以上のため池約四万四千カ所を対象に実施されております。
冒頭申し上げたとおり、ため池は、農業用水として農地を潤すばかりではなく、生き物のすみかとしての自然環境の保全の場、地域住民の憩いの場、緊急時の水源など、地域の貴重な財産でありますが、万が一、決壊した場合、とうとい人命や大切な財産を一瞬にして奪い去る危険性を秘めており、ため池の耐震対策に加え、ハザードマップを作成し、地域住民に周知することは非常に重要なことであると考えます。
私が住んでおります田原市にも百五十カ所ものため池があり、そのうち、貯水量十万トンを超える規模のため池や、下流に人家や公共施設があるため池も幾つもあり、順次耐震点検が進められているところですが、そこで、田原市における農業用ため池の耐震点検の進捗状況とハザードマップの作成状況について伺います。
以上で壇上からの質問といたします。(拍手)
22:
◯防災局長(
小林壯行君) まず初めに、太平洋沿岸における津波対策の重要性についての御質問であります。
本県の被害予測調査結果によりますと、あらゆる可能性を考慮した理論上最大想定モデルの場合、渥美半島の太平洋沿岸では、人的被害の発生が危惧される高さ三十センチの津波が最短五分で到達するとともに、最大で二十一メートルの高さの津波が予想されております。あわせて、標高の低い赤羽根漁港近辺や堀切地区、日出地区を中心に浸水が想定されております。
こうした状況下で、本年三月に、南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に基づく津波避難対策特別強化地域に、太平洋沿岸では豊橋市と田原市が指定されたところであります。
この地域指定を受け、国の同意を得て作成することになる津波避難対策緊急事業計画について、両市とも現在検討中であり、今後、県としても意見を求められることになりますので、両市に対して適切に対応してまいりたいと考えております。
本県の被害想定とあわせてお示ししたように、津波から命を守る対策としては、地震発生後すぐに避難することが重要であります。このため、まずは住民の皆様の避難行動への意識づけを行うことが必要であり、引き続き津波避難訓練等を実施してまいります。
さらに、避難する際の障害にならないように、建物の耐震化や家具等の転落・落下防止措置の実施も重要であると考えております。
本県といたしましては、こうした取り組みについて、現在策定中の第三次あいち地震対策アクションプランにおいて、重点項目に位置づけてまいりたいと考えております。
次に、堤外地である臨海部における防災・減災対策についてのお尋ねであります。
本県の被害予測調査結果では、名古屋港、衣浦港及び三河港の堤外地である臨海部は、比較的浸水は限定的でありますが、液状化危険度が極めて高い地域となっております。
これらの臨海部は、物づくりを中心とした産業集積や国内外との物流ネットワークのかなめといった重要な機能を果たしております。
このため、これらの臨海部において、大規模自然災害等に対する事前の備えを行うことは、議員御指摘のとおり、国土強靱化の観点からも大変重要であると認識しております。
こうしたことから、今年度中に取りまとめる予定の本県の国土強靱化地域計画案におきまして、堤外地である臨海部についても、脆弱性の分析、評価を実施し、しっかりと対応策の検討をしてまいりたいと考えております。
以上でございます。
23:
◯建設部長(
平井雄二君) 防災対策につきまして二点お尋ねをいただきました。
初めに、国道四十二号及び県道城下田原線の現在の検討状況についてであります。
沿岸部に位置します道路の防災面での機能を検討する際には、津波による被害予測結果等を踏まえた上で、地元の皆様が道路に期待する役割を把握するとともに、道路構造を工夫することによりどのような減災効果が期待できるかを明らかにすることが第一歩であります。
本年五月に、愛知県防災会議におきまして、被害予測調査結果等が公表されたことから、国道四十二号と県道城下田原線に期待されます防災上の役割につきまして、地形や集落の状況等をもとに、具体的に田原市と意見交換を行いました。
引き続き、減災効果の予測手法や評価の方法、また、かさ上げした場合の周辺土地利用に与える影響などにつきまして研究しているところでございます。
今後とも、田原市と連携を図りながら、道路構造に応じた減災効果などの予測評価結果をもとに、地域にとって望ましい道路の姿やその実現性について検討を進めてまいりたいと考えております。
次に、海岸堤防の耐震対策などの検討状況についてであります。
海岸堤防の耐震対策や老朽化対策、水閘門の改良につきましては、これまで二次にわたるあいち地震対策アクションプランに位置づけ、重点的に対策を実施しており、第二次アクションプランの最終年度である本年度の完了を目標として、事業進捗に努めているところでございます。
海岸堤防の耐震対策などを第三次アクションプランへ位置づけるに当たりまして、本年の被害予測調査結果等を踏まえ、学識者の方々などの意見を伺いながら、耐震対策の基本的な考え方などの検討を進めているところであります。
その検討内容を受けまして、年内に取りまとめる予定のアクションプランには、液状化に対する海岸堤防補強や粘り強い構造への強化などを盛り込みたいと考えております。
災害から県民の生命、財産を守る強靱な県土づくりには、海岸堤防の耐震対策などが不可欠でありますので、今後ともしっかりと取り組んでまいります。
以上でございます。
24: ◯農林水産部農林基盤局長(山本信介君) 田原市における農業用ため池の耐震点検の進捗状況とハザードマップの作成状況についてお尋ねをいただきました。
初めに、農業用ため池の耐震点検の進捗状況でございます。
本県では、国が阪神・淡路大震災を教訓として、平成十六年度に創設した土地改良施設耐震対策事業を活用し、他県に先駆けて農業用ため池の耐震点検を進めてまいりましたが、東日本大震災における福島県のため池の決壊による災害を踏まえ、国は、農業用ため池の耐震対策をさらに全国的に推進するため、全額国費で耐震点検を実施する制度を平成二十四年度に創設したことから、本県では、この制度により点検対象となるため池を拡大して、耐震点検に積極的に取り組んでおります。
現在、県内には二千六百七十二カ所の農業用ため池がありますが、このうち、大規模地震により決壊した場合に想定される浸水エリアに家屋や公共施設などがある六百八十一カ所のため池を防災重点ため池と位置づけ、優先して耐震点検を進めているところであります。
これまでの点検の結果、耐震性不足が判明したため池は百七十七カ所ございますが、それぞれの重要性や危険性を勘案し、市町や管理者と調整の上、順次耐震対策工事を実施しております。
お尋ねの田原市の百五十カ所の農業用ため池につきましては、二十二カ所が防災重点ため池となっておりまして、そのうち、平成二十五年度までに十カ所の耐震点検を実施し、残る十二カ所についても早期に実施してまいります。
これまでの点検の結果、二カ所のため池について耐震性の不足が判明いたしましたが、このうち、島添池につきましては、既に耐震対策工事を完了しており、残る破岩池につきましても、現在工事を実施しているところであります。
次に、農業用ため池のハザードマップの作成状況でございますが、平成二十四年度に国が創設した補助制度を活用いたしまして、県と市町が協力し、平成二十五年度までに二百六十カ所のハザードマップを作成しております。
このハザードマップにつきましても、防災重点ため池を優先して作成することとしておりまして、田原市の二十二カ所を含む県内の六百八十一カ所全ての防災重点ため池のハザードマップを作成してまいります。
今後とも、ハード対策としての耐震対策工事とソフト対策としてのハザードマップの作成を組み合わせて実施し、農業用ため池の耐震対策にしっかりと取り組んでまいります。
以上でございます。
25: ◯八番(
山本浩史君) 要望いたします。
防災対策について、太平洋沿岸、遠州灘の百十七キロ、これ、静岡県側が七十キロ、愛知県側四十七キロでございますけれども、特にやっぱり対策が必要なのは、愛知県側四十七キロのうちでもごく一部でございます。
先ほど申し上げたとおり、赤羽根漁港、また、堀切ゾーンの一部でございます。こうしたところをやはり重点的に取り組んでいただいて、あと、多くの海岸線が海抜の結構高いところにございますので、静岡県側から愛知県側に入った途端に対策がとられていないと、そういうことのないように、ぜひとも着実に進捗を図っていただきたいと思います。
そして、農業用ため池につきましては、これまでも進捗を図っていただいておりますので、こちらのほうもおくれることのないように進捗をお願い申し上げまして、質問を終わります。
26: ◯副
議長(
伊藤勝人君) 進行いたします。
鈴木まさと議員。
〔十三番鈴木まさと君登壇〕(拍手)
27: ◯十三番(鈴木まさと君)
議長のお許しを得ましたので、通告に従い、質問させていただきます。
太陽光発電の普及に向けた課題についてであります。
平成二十三年三月の東日本大震災による原発事故をきっかけとして、資源が枯渇せず繰り返し使え、発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しないエネルギーとして、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが脚光を浴びて現在に至っております。
特に太陽光発電については、エネルギー源の確保や発電施設の建設が他のエネルギーに比べ容易であることや、平成二十四年七月に固定価格買取制度が始まったことから、日本全国でその設置数を伸ばしております。
一般的に太陽光発電とは、発電量を基準とした定義が一般的のようであります。経済産業省では、固定価格買取制度で決められておる十キロワット未満と十キロワット以上という境を基準に名称が決定しているようであります。というのも、その前後で買い取りの値段が変更するからであります。
そこで、事業用太陽光、メガソーラーに加え、太陽光発電を投資案件として考える者にとり、五十キロワット未満とそれ以上の境にも差がございます。発電量が五十キロワット未満は、電力会社の電線などの系統網への連結が比較的低コストで済む低圧契約になります。一方、出力が五十キロワットを超えると高圧契約となり、キュービクルと呼ばれる高価な受変電施設などの設置が発電所で必要となります。
したがって、五十キロワットの前後で初期投資の値段及び電力会社との事前打ち合わせなどの事務量の多寡が大きく異なるそうであります。
そこで、事業用太陽光発電の普及に際して、経済産業省資源エネルギー庁がつくった再生可能エネルギーをめぐる現状と課題からどんな問題点があるか調べてみました。
一つ目は、設備認定による問題であります。
買い取り価格が毎年度ごとに下がるため、事業者は年度ごとに設備の申請だけをし、運転開始を行わないというケースが発生しているようであります。
二つ目は、系列接続関係の問題であります。
五十キロワット以上の発電規模を持つ施設を五十キロワット未満に分割して電力会社に申請するという問題であります。五十キロワット以上の場合には、事業者が受変電施設などの設置をしなければなりませんが、五十キロワット未満の場合にはそういった負担がないため、事業者としては初期投資が抑えられる利点がありますが、一方で、電力会社にとっては過剰な負担の問題が発生します。地権者が曖昧な土地では、施設設置に係る権利問題も発生することがあるようであります。
また、送電網には容量の制限がありますが、おのおのの地域で状況が異なっており、現行のルールでは、送電網を増強する場合は電力の売り手側の負担となっているため、採算が合わないそうであります。
三つ目は、太陽光パネルの工事の施工についての問題であります。
パネル設置の工事の施工の際、架台を基礎に固定するために本来使うべきアンカーボルトがコンクリートの基礎から浮き出ている物件が出回っているとの事例があるそうであります。平時であれば問題はないが、強風時や地震などの際にパネルが飛んでいってしまうなどの危険性があります。
ここで、太陽光発電を含めた再生可能エネルギー促進にかかわる問題点を政策シンクタンクPHP総研主任研究員、佐々木陽一先生のトピックスから紹介いたします。
再生可能エネルギーで発電した電気の買い取りを電力
会社に義務づけた固定価格買取制度(FIT)の導入か
ら二年が経過しました。制度による発電容量の増大と電
気料金の上昇、設備認定だけをとって事業化に着手しな
い事業者への対策などが顕在化し、FITは大きな岐路
に立っております。現時点でFITは、電力消費者が負
担する賦課金を原資としており、国や自治体が補助金を
出さなくても事業成立する価格が設定されている。
とのことであります。
ここで、太陽光発電の設置に関する具体的な問題点をインターネットに掲載されていた事例から紹介いたします。
山梨県北杜市の歯科医でありますが、山梨自然エネルギー発電社長の大友さんは、約三十年間荒れていた同市白井沢の農地一千百平方メートルを借りて耕作しており、平成二十二年九月、その片隅約四十平方メートルに太陽光パネルを設置したとのことであります。
東京電力への年間売電額は一キロワット当たり四十八円換算で最大約三十八万円。実は、このパネルについては、設置の前月、パネルを農業施設として市農業委員会に届け出たが、農地法を理由に電気を農業に使っていないとして認められなかったため、農地転用許可手続が必要になったとのことであります。
また、横浜市の太陽光発電事業会社おひさま農場は、昨年、大友さんとコンサルティング契約をして北杜市に進出を試みました。同社は、昨年六月、農地の活用や再生、発電による農業収入の下支えをうたい、半導体製造装置メーカー、インターアクションの子会社として設立。大友さんから北杜市長坂町の農地を借り、石を取り除き、生い茂るササを払って農業ができるように整備して、一角にパネルを設置いたしました。
八月から売電を始めましたが、翌九月に県中北農務事務所と市農業委員会から、発電するなら農地の転用手続をするようにと口頭指導があり、パネルを撤去せざるを得なかったとのことであります。
おひさま農場の中瀧明男社長は、転用手続をしていなかったことについて、慎重を期すべきだったと語っております。この農地には結局ヒマワリを植えた程度で、発電の傍ら農業に取り組む計画も進んでいないとのことであります。
また、この農地は、農業振興地域の整備に関する法律、いわゆる農振法で定める農用地区域にあり、転用手続前にその指定を除外する必要があります。同社は、地主の承認を得て市に除外を申請したが、担当者から結果が出るまで一年かかると言われたとのことであります。市農政課によると、同様の申請が年間約百件寄せられ、同時に審査するため、時間がかかるということだそうであります。
ほかにもこういう事例もあります。
ある太陽光発電事業会社が山梨県北杜市農業委員会より、小尾平太陽光発電所の太陽光発電パネルを撤去するよう農地法に基づく指導があったそうであります。理由としては、太陽光発電パネルの設置されている場所は農地であるが、農地で売電目的の太陽光発電を行うことは認められないためとのことでありました。会社としては、行政当局からの明確な意思表示があったので、指導を受け入れることとしたとのことであります。
おひさま農場には、全国の農家から土地提供の申し出があるが、初期投資を同社で賄い切れず、転用手続などに手間もかかるため、事業化は困難と聞いております。
社長は、小規模な発電に向く休耕地は全国に多い。生産者や所有者が太陽光発電をするなら許可を得やすいといった仕組みは考えられないだろうかと提起しているそうであります。
ここで、国の減反政策廃止の方向性やTPP交渉の妥結に向けての動きを重ね合わせて、最もその影響を受ける農業の将来像を描く必要があると思っております。
今後は、農地集約とオペレーターの育成がさらに進むことが予想されます。大きな農地を耕すには、一千万円単位のトラクターを購入する必要が生じ、金融機関からお金を借りて、大きなトラクターを買うことが一般的になってくるのではないでしょうか。それに伴い、一年中いろんな農作物を生産、そして販売できる農業法人が農業の主力を担ってくる時代が来ると思っております。
そのためにも、大規模な区画に整備された集団的な圃場といった優良な農地については、農用地区域指定といった手段をとりながら、しっかりと守っていくことが極めて大切であると認識いたしております。
一方で、農林水産省は、山間部農地等についても、農地中間管理事業により企業等の新規参入を促進することや、中山間地域等の条件不利地域での農業生産活動の継続のための取り組みなども進めております。
農地は、食料生産の基盤であることのみならず、水源の涵養や自然環境の保全や美しい景観の形成など、多面的な機能を有しており、そういった観点からも農地の保全について考えていかなくてはなりません。
しかしながら、非効率的な山間部の農地等については、今後の農業施策を考え合わせた場合、どうしても耕作放棄地の増大が免れないことが十分に想定できます。
その場合、中山間地域の発展、活性化といったことを考えますと、耕作放棄地を農地規制のもとに置いたままにしておくのではなく、太陽光発電の普及促進による新産業を育成していく、そういう考え方もあるのではないでしょうか。
それから、話は変わりますが、太陽光発電施設を設置した場合、一般的な電気製品と同じように、配電部分や接続端子などから出火して火災となる危険性もあります。
実際に、東日本大震災では、津波被害を受けた住宅から太陽光発電施設から出火した事例もあると聞いておりますし、住宅の消防活動中に太陽光発電のパネルに触れて感電した事例もあると聞いております。
火災等で施設自体がその機能を失っても、太陽光発電のパネルの部分はそれだけでも発電し続けるため、消火活動中に感電する危険性が心配されております。
そこでお伺いします。
一つ目ですが、さきに紹介しました事例のように、農地に太陽光発電施設を設置することは農地法等の規制があるわけでありますが、農林水産省は、昨年三月、一定の条件を満たせば、営農しながら太陽光発電施設による売電を可能としたとも聞きました。
そこで、その内容も含め、現在の太陽光発電施設の設置に関する農地の規制はどのようになっておるのかお伺いしたいと思います。
二つ目、太陽光発電施設の設置を目的とした農用地区域の除外や農地転用許可は一年間にどの程度あるのでしょうか。
また、新産業の育成や耕作放棄地対策の観点から、例えば、中山間地の耕作放棄地に太陽光発電施設を設置して有効活用を図ろうとしても、農用地区域指定を受けたままの農地では、農地転用以外に農用地区域除外が必要になり、時間がかかってしまいますが、こうした土地の農用地区域規制を見直すことはできないのでしょうか。
三番目です。太陽光発電施設で火災が起こった場合、消火活動を行う上でどのような問題があり、どのような対応がとられておるのかお伺いしたいと思っております。
次です。土砂災害に関する緊急速報メールについてであります。
ことしの八月二十日、広島市で土石流などにより七十名以上の方がお亡くなりになるという甚大な土砂災害が発生し、その報道にくぎづけとなり、自然災害の恐ろしさを改めて思い知らされました。
この日の未明、一時間百二十ミリを超す局地的な豪雨となったが、十九日の降り始めから二十日の朝までの総雨量は、安佐北区で二百四十三ミリとなり、二十四時間の雨量としても観測史上最多を記録しております。
近年の気象状況を振り返れば、時間五十ミリを超すような異常な降雨は明らかに増加しております。つい最近も、昨年十月の伊豆大島や、ことし七月の長野県南木曽町での土石流災害のような土砂災害、八月九日には、三重県で台風十一号の影響により初めて大雨特別警報が発令されましたが、北海道でも九月十一日に大雨特別警報が発表されたことにより約九十万人に避難勧告が発令されました。
こうした土砂災害の中でも、広島市の例は特に悲惨なものでありましたが、実は平成十一年にも今回の被災箇所からほど近くの山裾に展開した新興住宅地で同様な土砂災害が発生しているとのことで、このときは二十名以上の方が犠牲になられております。報道でも盛んに取り上げられている土砂災害防止法は、この災害をきっかけとして制定されたものであるということであります。
この土砂災害防止法は、伊豆大島や南木曽でも一定の減災効果があったと言われておる砂防堰堤などのハード整備が、その予算と時間が膨大にかかることから、避難することにより土砂災害から住民の生命を守ることを目的としたソフト対策の法律であります。
この法律の内容は、土砂災害のおそれのある区域についての危険の周知、警戒避難体制の整備、住宅等の新規立地の抑制、既存住宅の移転促進等の対策を推進するものとなっております。
具体的には、基礎調査を実施して、土砂災害のおそれのある区域をイエローゾーンと言われる土砂災害警戒区域、その中でも、住宅が損壊し、住民の生命または身体に著しい危険が生じるおそれのある区域を土砂災害特別警戒区域、いわゆるレッドゾーンに指定するものであり、イエローゾーンに指定された場合は、市町村がハザードマップを作成するようにも義務づけております。
土砂災害防止法が制定されるきっかけとなった広島においても、土砂災害のおそれのある場所にどんどん家が建てられ、最悪の結果を招いてしまったという現実を受けて、安倍内閣では、対策の強化に全力を挙げるとともに、土砂災害防止法の改正に取り組む考えを示しました。
しかしながら、土砂災害警戒区域が指定されていても、災害に遭われたケースもあるので、指定することだけで県民の皆様の安全が守れるというものではなく、指定という日常から危険なところを知っていただく取り組みにあわせて、豪雨時において防災情報の的確な伝達により危険なときをお知らせし、いち早く逃げていただくことが最も有効な減災対策である。そのために、広島市でも、携帯電話会社と契約し、避難勧告・指示などの情報を対象地域の住民の携帯電話に一斉に伝える緊急速報メールを配信する仕組みがあったということであります。
しかし、それが配信されなかったことがわかり、未配信の理由などを市が検証しておるという報道があります。
そこでお尋ねします。
本県においても、この緊急速報メールを既に配信しておるということでありますが、県民の皆様の安全な暮らしを土砂災害から守るため、緊急速報メールにどのように取り組んでおるのかお伺いいたします。
以上で一次質問を終了します。(拍手)
28:
◯農林水産部長(
中野幹也君) 太陽光発電の普及に向けた課題についてのお尋ねのうち、農地関係についてお答えをいたします。
まず、太陽光発電設備の設置に関する農地の規制についてでございます。
農地としての利用をやめて、太陽光発電設備を設置する場合につきましては、その農地について、農地法による転用許可が必要となり、また、その農地が優良農地を確保するために設定された農用地区域内にある場合は、あらかじめ区域からの除外が必要になります。
このような農地転用許可や農用地区域からの除外については、認められる場合の基準が法令で定められており、その基準により判断することになりますが、基本的な考え方として、整備された優良農地は、原則として転用などを認めないこととされております。
また、営農を継続しながら、支柱を立てて農地の上空部にソーラーパネルを設置する取り組みに関しましては、昨年三月に国から取扱方針が示され、パネルの下で作付される農作物の生産量が二割以上減少しないことなどの要件を満たせば、支柱部分について三年以内の一時転用の許可をすることができ、また、許可後も生産状況などの報告を毎年求め、問題がなければ、再度の許可により設置の継続を認めることとされております。
このように、農地における太陽光発電設備の設置につきましては、優良農地の確保という観点や営農継続という観点も踏まえつつ、農地としての活用との調整が図られているところでございます。
次に、太陽光発電設備の設置を目的とした農用地区域の除外や農地転用許可の件数及び農用地区域の設定の見直しについてでございます。
このうち、平成二十五年における太陽光発電設備の設置を目的とした転用許可等の実績についてでありますが、農用地区域の除外をしたものが十一件あり、また、農地転用の許可をしたものが農用地区域外を中心に百二十五件、そのうち、営農を継続する一時転用許可をしたものが二件となっております。
また、農用地区域の設定の見直しについてであります。
農用地区域は、市町村の農業振興地域整備計画で定められており、その計画の変更には、太陽光発電設備の設置のように、個々の開発要請に基づいて農用地区域からの除外を行う一般変更と、おおむね五年ごとに市町村が行う基礎調査の結果に基づき、農用地区域の設定全体について再検討を行う全体見直しがございます。
全体見直しの際には、例えば、中山間地域に存在し、公共投資がなされておらず、地形的な条件から効率的な営農に適していない農地などにつきまして、今後の土地利用の観点から農用地区域からの除外を検討するといったことも行われております。
県といたしましては、全体見直しの機会を捉えて、市町村が農業振興地域整備計画をより適正なものにし、優良農地を保全しながら、農地以外の土地利用との調整も図れるよう引き続き助言をしてまいります。
29:
◯防災局長(
小林壯行君) 太陽光発電設備の火災についてのお尋ねでございます。
議員御指摘のとおり、東日本大震災において、浸水した住宅の太陽光発電設備から出火した事例のほか、一般住宅火災の消火活動中に消防隊員が感電した事例もございます。
また、太陽光パネルは、一般的な家庭用でも五百キログラム程度の重さがあり、屋根に設置されている場合には、柱や屋根が火災の影響でもろくなっていると落下する危険性もあります。
このため、総務省消防庁において、火災事例の分析と安全対策の研究がなされており、消防活動上の留意点等が平成二十五年三月に通知され、県から市町村に周知いたしております。
その主な内容は、消火活動に当たっては、感電を防ぐため、絶縁性の高い手袋や靴を着用すること、放水する場合は、霧状の噴霧放水とすること、太陽光パネルの落下に十分注意することなどでございます。
県といたしましても、こうした安全確保の取り組みについて、機会を捉えて市町村に対し周知徹底を図っているところでございます。
以上でございます。
30:
◯建設部長(
平井雄二君) 緊急速報メールの取り組みについてであります。
県民の皆様が土砂災害から身を守るためには、危険が迫っていることを一刻も早く察知し、避難行動をとっていただくことが大変重要であると考えております。
このため、従来から行われておりますテレビやラジオのマスコミ報道などに加えまして、土砂災害警戒情報を素早く的確に、また、直接県民の皆様に伝達することのできる緊急速報メールの自動配信システムを本県独自に開発しまして、平成二十四年度から三河山間部の五つの市町村におきまして試行してまいりました。
昨年九月の豪雨時に、試行対象の市町村に警戒情報が発表されましたが、その後のアンケートでは、緊急速報メールが約二分で着信し、約六割の方がそのメールで発表を知ったということが明らかになり、また、メールの着信音が鳴るため、夜間就寝中でも気づきやすいといった意見も寄せられました。
こうしたことから、緊急速報メールの自動配信システムが大変有効であると判断しまして、本県では、今月九日から土砂災害危険箇所がございます全ての三十七市町村に配信エリアを拡大したところであります。
今後とも、県民の皆様に緊急速報メールなどでお知らせする土砂災害警戒情報を豪雨時における自主避難の判断材料として活用していただけるよう、市町村とも協力して啓発に取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
31: ◯十三番(鈴木まさと君) 一件要望させていただきます。
おおむね五年ごとに実施されております農業振興地域整備計画の全体見直しの中で、効率的、近代的な営農に適していない農地は農用地区域から除外することも検討すると、そういうふうに助言をしておるということでありましたが、新産業育成と耕作放棄地対策として太陽光発電の普及促進が進むよう、より柔軟な対応が図られるよう要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
32: ◯副
議長(
伊藤勝人君) 進行いたします。
犬飼明佳議員。
〔十四番犬飼明佳君登壇〕(拍手)
33: ◯十四番(犬飼明佳君)
議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、三項目について、順次質問いたします。
初めに、認知症対策についてお尋ねいたします。
認知症高齢者数は、国によりますと、平成二十二年が二百八十万人であったのに対し、団塊の世代が七十五歳以上となる平成三十七年には四百七十万人となり、約一・七倍増加すると推計されています。
また、警察庁によると、昨年一年間の認知症の行方不明者は一万三百二十二人に上るとのことです。そのうち、ことしの四月末時点で二百五十八名の方の所在が確認されておらず、この中には、愛知県の方が十二名含まれております。
全国各地で身元がわからないまま養護老人ホームで何年も生活されたケースもあります。高齢者の方の顔写真が公開され、身元が判明したとの報道もありました。
さらには、在宅の認知症高齢者については、老老介護やシングル介護などで家族が共倒れする危険性や、介護疲れによる事件も頻繁に発生しています。
このように、今や認知症は、テレビやマスコミ、また身近なところでも話題に上らない日はないくらい大きな社会問題となっております。
私は、平成二十六年二月定例県議会において、また、昨日は、我が党の代表質問でも認知症対策について取り上げましたが、対策を早急に強化する必要があり、以下、順次三点についてお尋ねをいたします。
まず、認知症サポーターについてであります。
認知症サポーターとは、認知症を正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守る応援団のことです。本県でも既に二十五万人以上の方々が養成をされています。
認知症サポーター養成講座を受講される方の多くは、認知症の方たちが住みなれた地域で自分らしい暮らしができるよう応援がしたい、あるいは自分自身や家族が認知症になるかもしれない、他人事ではないとの思いから高い関心を持って参加されています。
その一方で、核家族化が進み、若い世代は高齢者と生活する機会が減って、実体験による認知症の知識や理解が十分に得られないことがあります。
今後、認知症高齢者の増加が予想される中で、地域で支え合う仕組みをつくるためには、多くの世代を巻き込んでいかなければなりません。私は、子供たちを含めた若い世代への普及啓発を図ることが必要であると考えます。
先般、大阪府泉南市の取り組みを地元議員から伺いました。平成二十二年度から学校事業の一環として、毎年、各小中学校で認知症サポーター養成講座を開催しています。子供たちは高齢者を知ることで、自分たちにできることを考え、人の役に立つことを実感し、意識を高めることができます。同時に、学校教員やPTAへの啓発にもつながっているとのことです。サポーターとして地域を支え合う未来の担い手となることを目指しております。
また、最近の新聞記事によりますと、本県のみよし市でも、市内の小中学校、高校の授業に認知症サポーターの養成を取り入れており、若い世代に普及させていくことで認知症の理解者の裾野を広げています。
この結果、本年六月末時点で、市民の七人に一人に当たる八千三百五十九人が認知症サポーターの認定を受けています。これは、市内の六十五歳以上の高齢者数約八千八百人と比較すると、高齢者一人に対し認知症サポーターが一人いる計算となり、県内市町村別でもトップクラスとなっています。
取り組みの成果は徐々にあらわれており、二年前には、講座を受けた高校生が、帰宅途中に市内のショッピングモールで徘回していた高齢者に声をかけ、ゆっくり話を聞きながら住所を割り出し、タクシーに乗せて無事に帰宅させることができました。後日、家族から高校にお礼の電話があったとのことです。
これは一例でございますが、子供のうちから認知症を理解する機会をふやすことが大切です。私は、このようなサポーターの養成を教育現場である小中高校で積極的に取り上げることが必要であると考えます。
そこでお尋ねします。
県内小学校、中学校及び高等学校のうち、サポーター養成講座を取り入れている学校の数は現状何校あるのかお伺いをいたします。
また、全ての学校で取り入れ、点ではなく面で取り組むことが重要と考えますが、県及び県教育委員会の対応についてお伺いをいたします。
さらに、認知症サポーターの活用について、認知症サポーターの養成講座を受けた方々に対して、認知症についての理解を深めるだけでなく、例えば、徘回により行方不明となった高齢者の捜索に御協力いただくなど、より積極的なかかわりを持ってもらうべきと考えますが、県の対応についてお伺いいたします。
次に、二点目として、徘回高齢者の広域的な捜索ネットワークについてであります。
平成二十六年二月県議会におきまして、私は、広域的なネットワークの構築について質問をいたしました。健康福祉部長から、広域的な連携を推進するために、市町村間で配信する捜索情報における個人情報の取り扱いや、連携手段、内容、範囲など具体的な取り組み方法をまとめた要領を作成し、市町村とともに広域的な捜索ネットワークづくりに取り組むとの答弁がありました。
そこで、現在、県として、広域的な捜索ネットワークづくりについてどのように取り組んでいるのかお伺いいたします。
三点目として、認知症カフェについてお尋ねします。
認知症対策として、認知症高齢者の方々に対する支援とともに、在宅で認知症高齢者を支える家族に対する支援を進めていくことも大変重要です。
最近も、家を出て歩いていた認知症高齢者が線路に入って列車にはねられ、亡くなられた事故で、家族が損害賠償を求められた裁判や、行方不明になり、長期にわたり安否すらわからない事案が全国に多数あるとの報道がありました。
在宅におけるケアは、ホームヘルパーやデイサービスを活用しても、家族介護者にとっては、二十四時間片時も離れない、精神的に大きな負担が生じます。
家族介護者が不安な気持ちでいると、認知症高齢者の不安感も強くなるため、車の両輪のようにバランスがとれた対策を進めなくてはなりません。介護に疲れ果て、高齢者虐待に進行し、事件化していくことも懸念されます。
私は、介護者支援として、まずは認知症や介護について気軽に相談ができ、介護者が交流を深めることができる認知症カフェをふやしていくことが何よりも必要であると考えます。
そこでお尋ねします。
県においても、第六期の高齢者健康福祉計画において、この認知症カフェの設置促進に取り組まれるとのことでありますが、どのような方法で推進していかれるのかお伺いいたします。
次に、あいち健康マイレージ事業の推進についてお尋ねします。
厚生労働省の調査によると、平成二十二年の本県の健康寿命は、男性七十一・七四年、女性七十四・九三年で、男性が全国一位、女性は三位と大変喜ばしい結果となっております。
しかし、平均寿命と健康寿命の差は、男性で約八年、女性で約十一年であり、健康寿命、すなわち、より健康でいられる期間を延ばしていくことが望まれております。
平成二十五年の本県の死亡原因を見ますと、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患など、生活習慣病三疾患で死因の約五割を占めております。
また、本県の特定健診受診率を見てみますと、平成二十四年度は四七・六%と増加傾向にあり、全国平均よりは高くなっているとのことです。しかしながら、本県が目標と掲げる受診率七〇%には遠く及ばない状況となっております。
健康寿命をさらに伸ばしていくためには、県民一人一人が生活習慣を見直し、健診を受診するなど、自発的に健康づくりに取り組むことが必要であり、社会全体でその機運を高めていかなければならないと私は考えます。
さて、本県では、昨年三月に、県民の健康づくりを総合的に推進する健康日本21あいち新計画を策定しました。この計画は、基本方針の一つに、社会で支える健康づくりを推進することを掲げており、今年度、あいち健康マイレージ事業を県と市町村の協働事業として計画し、いよいよこの九月から事業がスタートしたところであります。
この事業は、県民の皆さんに特定健診などの健康診断やスポーツ活動への参加など、健康づくりの取り組みを実践してポイントをためていただき、一定以上のポイントを獲得した方に、県内の協力店でさまざまなサービスが受けられる優待カードを発行するというものです。
そこでお尋ねします。
まず、今月から始まったあいち健康マイレージ事業の実施状況についてお伺いいたします。
先般、私は、五年前から健康マイレージ事業に取り組んでいる北九州市にお伺いいたしました。四十歳以上を対象に、各種の健診受診を必須項目として一ポイント、健康体操やウオーキングなど健康づくりの催しへの参加を四から九ポイントとして加算し、ポイントに応じてワカメやふりかけの詰め合わせなど、地元企業とタイアップした景品と交換できます。
また、事業の特徴は、市が行うイベントだけでなく、仲間や地域のクラブやサークル、職場の健康づくり研修など、事前登録すれば対象事業となり、市民がより自主的かつ積極的に健康づくりができるように工夫されていました。
初年度の平成二十一年は、参加者四千五百九十名、マイレージ対象事業千八十九事業であったのに対し、平成二十五年度は、参加者二万五百六十名、マイレージ対象事業五千九百一事業へと着実に裾野が広がっております。
ちなみに、特定健診の受診率も、健康マイレージと各種施策が功を奏し、五年間で二二%から三二%に向上しているとのことです。
本県のあいち健康マイレージ事業も、今後、実施市町村を拡大し、県民の意識の向上を図っていく必要があります。
そのために、私は、重要な点が二つあると考えます。一つは、取り組みやすい対象事業をふやすこと、そして、もう一つは、ポイントをためて獲得した優待カードの魅力の向上です。
まず、マイレージ対象事業については、各市町村の特色を生かしたメニューに加え、県主催のイベントも対象事業として市町村に提示していただきたい。
例えば、あいち健康プラザや森林公園、モリコロパークなどで実施される県主催の健康イベントや健康教室などへの参加や、さらには、県有施設に出かけること自体も対象とするなど、健康づくりの幅を広げ、楽しく、無理なく参加できるものをポイント対象事業としてふやしていくことを提案いたします。
そして、優待カードの魅力に直結する協力企業、店舗の拡大については、県として、県内全域に展開している地元企業に対し、重点的に働きかけを行っていただきたい。
現在も、健康対策課の職員が企業訪問をして、粘り強く協力を呼びかけているところとお聞きをしておりますが、今後さらに県内に展開をするスーパーやドラッグストア、喫茶店やスポーツショップ、ジムなど、幅広いジャンルに拡大をしていただきたい。そのためにも、他部局とも連携を図り、協力店の拡大を推進していくことを提案いたします。
私は、このあいち健康マイレージ事業が県と全市町村と地元企業の連帯により、県民の皆さんが積極的に参加できる全県的な健康づくり運動の柱となっていくことを期待しております。
そこでお尋ねします。
県民参加の裾野を広げるため、実施市町村の拡大に向け、今後、県はどのように取り組んでいくのかお伺いをいたします。
最後に、交通安全対策について二点お尋ねいたします。
まず、一点目は、高齢者の交通安全について、県民生活部長にお尋ねします。
本県の交通事故死者数は、平成十五年から昨年までの十年間でほぼ半減し、ことしに入ってからも引き続き減少傾向にあります。
こうした中、事故死者を年齢別で見ますと、ことし八月末現在では、六十五歳以上の高齢者が全死者数の五六・五%を占めており、平成二十一年が四七・七%、平成二十五年が五三・九%であり、高齢者の占める割合が徐々に高まる傾向にあり、注視すべき点となっております。
高齢者は、歩行能力や視力、聴力などの身体能力の低下、また、運転免許がなく、交通知識が少ないといった人が多いことなどから、事故に遭うリスクが高くなります。同時に、同じような事故に遭っても、若い人たちに比べて、身体に受ける被害程度が深刻な状態になる傾向にあります。今後、高齢者人口がさらにふえていきますので、高齢者の事故死者が一段と増加することが心配されます。
本県において、交通事故死者数のさらなる減少を図っていくには、その半数以上を占める高齢者に対する対策が重要であります。
高齢者御自身がみずから安全の確保に努めていただくのはもちろんですが、ドライバーが高齢者を見かけたら、思いやりの心を持って配慮するなど、悲惨な交通事故を一件でも減らしていかなければなりません。
さらに、この九月議会においては、愛知県交通安全条例案が提案されており、一層の交通安全対策の推進が期待されるところであります。
そこで、今後の高齢者の交通安全対策にどのように取り組んでいかれるのかお伺いいたします。
次に、ゾーン30について、警察本部長にお尋ねします。
地域住民が日常生活に利用する生活道路においては、自動車の通行よりも歩行者などの安全確保が優先されるべきです。そのためには、通過交通が生活道路に入ってこないような幹線道路の円滑化対策や、生活道路における交通規制や、道路整備などによる速度抑制対策を推進する必要があると考えます。
この点につき、市街地の生活道路が密集した地域においては、警察と道路管理者が連携し、時速三十キロメートルの区域規制と道路整備を組み合わせ、歩行者等の安全を確保するゾーン30の整備が平成二十三年九月から推進されているところであります。
私は、生活道路における速度の抑制及び通過交通の抑制の対策としてゾーン30の整備を推進することは非常に有意義であり、今後もさらなる整備を推進していただきたいと考えています。
その上で、整備を効果的に推進し、かつ実効あるものとしていくためには、ゾーン30そのものを地域住民やドライバーに広く周知していくことが必要不可欠です。
毎月十日、二十日、三十日の交通事故死ゼロの日には、交通事故の抑止のために、警察官だけでなく、多くの県民が交差点に立って交通安全活動が行われており、ゼロの日はしっかりと県民に周知されております。
ゾーン30についても、提案ですが、毎月三十日はゾーン30の日とするなど、県民の皆さんが覚えやすく親しみやすい広報啓発活動を進めることにより周知を広げていくことが重要であると考えます。
そこで、愛知県におけるゾーン30の整備の現状についてお伺いします。
また、今後、ゾーン30の広報啓発をどのように行い、地域住民やドライバーにいかに周知していくのか、お考えをお聞かせください。
以上、三項目につきまして、私の壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
34:
◯健康福祉部長(
伊藤輝明君) 認知症対策についてのお尋ねのうち、まず、認知症サポーター養成講座を取り入れている学校数についてお答えをいたします。
認知症サポーター養成講座については、国が定めたカリキュラムに基づき、県などが実施している研修を受けたキャラバン・メイトという方を講師として開講することになっており、開催に当たっては、県、あるいは市町村を通じて国から委託を受けている全国キャラバン・メイト連絡協議会に登録することとなっております。
学校が認知症サポーター養成講座を実施する場合には、市町村を通して登録されており、その登録数によりますと、平成二十五年度に養成講座を開催した学校数は、国公立、私立を合わせまして、小学校が八十校、中学校は四十二校、高等学校は三十一校でございました。
次に、学校における認知症サポーター養成講座に対する県の対応についてであります。
学校で認知症サポーター養成講座を取り入れている目的は、誰にでも優しくする、礼儀と優しさを持ってお年寄りの方を守っていくなどと伺っており、こうした取り組みは、子供たちの思いやりの気持ちを育むためにも大切なことと考えております。
県としましては、今後より多くの学校で認知症サポーター養成講座を実施していただけるよう、県教育委員会とも連携を図りながら、市町村へ働きかけてまいりたいと考えております。
次に、認知症サポーターの活用についてお答えをいたします。
認知症サポーターの養成は、多くの県民の方々に認知症を正しく理解し、認知症の方やその御家族を温かく見守っていただく、まさに支援者となっていただくことを目的としております。
具体的には、日常生活の中で、認知症の方やその御家族が困っているのを見かけたときに声をかけるなど、御自身のできる範囲で活動していただくことをお願いしております。
一方、認知症サポーターの中には、より積極的な支援活動を行いたいという方も多数おられますので、県では、市町村に対しまして、養成講座修了後に徘回捜索ネットワークへの協力などの意向調査を実施し、積極的に認知症サポーターの活用を図っていただくようお願いしているところでございます。
その結果、平成二十五年度においては、十市町で認知症サポーターの方が徘回捜索ネットワークの協力者などとして御活躍いただいております。
県としましては、引き続き市町村に対して、認知症サポーターの養成並びに積極的な活用について働きかけてまいりたいと考えております。
続いて、徘回高齢者の広域的な捜索ネットワークづくりについてお答えをいたします。
徘回高齢者の捜索は、現在、発生した市町村のネットワークを活用した捜索が行われておりますが、時間の経過により広域的に捜索する必要が出てまいります。
このため、県では、今年度当初から、他県の状況を調査するなど、広域的な捜索ネットワークについて手順を示す要領の作成に取り組んできたところであり、現在、要領案を全市町村に示し、意見照会を行っているところであります。
さらに、この要領案を実際に検証するために、今後、複数の市町村と協力し、年内に県と市町村と合同で広域的な捜索模擬訓練を実施したいと考えております。
そして、この広域捜索模擬訓練の結果並びに認知症施策に関する学識経験者などにより組織する愛知県認知症施策推進会議の御意見を伺った上で、本年度中に広域捜索ネットワークに関する要領を定め、市町村にお示ししたいと考えております。
県といたしましては、認知症による徘回高齢者の生命、安全を確保するためには、早急に市町村ごとの捜索ネットワークと市町村域を超えた広域捜索ネットワークを構築することが必要であると考えております。
引き続き、徘回捜索ネットワークを整備していない市町村に対して働きかけるとともに、広域捜索ネットワークの構築に努めてまいりたいと考えております。
最後に、認知症カフェについてお答えをいたします。
認知症カフェは、認知症の方とその御家族、地域住民の方々など、誰もが参加でき、集うことができる場のことであり、認知症の方やその御家族が地域で安心して生活していただくために有効な取り組みであると認識をしております。
このため、県といたしましては、認知症カフェの設置に積極的に取り組んでおられる認知症の人と家族の会などの民間団体に協力依頼を行うとともに、市町村に対しては、県内で既に設置されている事例や他の都道府県の先進事例を紹介するなど、市町村において、認知症カフェの設置が促進されるよう働きかけてまいりたいと考えております。
以上でございます。
35:
◯教育長(
野村道朗君) 認知症サポーター養成講座への対応につきまして、教育委員会にもお尋ねをいただきました。
高齢化社会が進む中で、認知症の方を含め、高齢者が安心して暮らせるように地域社会全体でサポートしていくことが求められておりまして、児童生徒も地域社会の一員として、自分なりにできる役割を果たしていくということが大切なことであるというふうに考えております。
こうした中で、一部の小中学校では、市町村の協力を得て、認知症サポーター養成講座の講師を招き、総合的な学習の時間等において、認知症についての知識と認知症サポーターとしての対応を学んでいるところでございます。
また、福祉科や福祉に関するコース等を設けております高等学校では、授業の中で認知症について学んでおりますが、それらの学校を中心に、認知症サポーター養成講座を活用して学習している学校も見られます。
教育委員会といたしましては、児童生徒が地域の一員として役割を果たしていくということは意義のあることというふうに考えておりますので、今後、健康福祉部と連携しながら、認知症サポーター養成の取り組みが広がるよう、校長会等を通じて各学校に周知をしてまいりたいと、このように考えております。
36:
◯健康福祉部保健医療局長(
加藤昌弘君) まず、本年九月から事業がスタートいたしましたあいち健康マイレージ事業の実施状況についてのお尋ねでございます。
実施市町村の状況につきましては、事業開始初年度でもあり、四市でスタートしたところですが、今年度末までに新たに六市町が実施する見込みであり、来年度中にはさらに二十を超える市町村が実施する意向を示しております。
また、優待カードを提示した方にサービスを提供していただける協力店につきましては、地元のお米屋やそば屋といった地域に根差した店舗から県内全域にわたるチェーン店まで、現在、飲食店、レジャー・スポーツ施設など百二十店ほどの参加を得ております。
具体的なサービス内容といたしましては、お食事をされた方にワンドリンクサービスや、運動施設の利用料金の割引などを提供していただいております。
なお、年内には、県内全域にチェーン展開をしている小売店百店ほどの登録も予定されており、徐々に増加の見込みでございます。
次に、今後の実施市町村の拡大に向けた県の取り組みについてのお尋ねでございます。
議員御指摘のとおり、実施市町村の拡大のためには、ポイント獲得のための健康づくりメニューを幅広くふやすとともに、優待カードの魅力向上のため、協力店の拡大を進めていくことが大変重要と認識しております。
特に、いかに多くの協力店の参加が得られるかは、実施市町村拡大に当たっての鍵となるため、まずは協力店の拡大に向けた働きかけを産業労働部など他部局とも連携を図りながら、しっかり進めてまいりたいと考えております。
店舗側に対しましては、協力店の認定を受けることで、マイレージ協力店を示すステッカーが配布されますので、その店頭での掲示や県のホームページでの広報などにより、健康づくりを応援する店舗としてのイメージアップや集客効果も見込まれることなど、メリットをしっかりと説明し、PRに努めてまいります。特に、広域展開している企業や県有施設に対しては、重点的に働きかけを行ってまいりたいと考えております。
また、健康づくりメニューについてですが、御提案をいただきましたように、県の主催するさまざまな健康づくりのイベントをメニュー対象とするよう市町村に提示をし、県民の皆様が楽しく、無理なく参加できる事業にしてまいります。
県内全市町村での早期の事業実施、幅広い業種にわたる多数の協力店の参加に向けた働きかけをしっかりと進め、一人でも多くの県民の皆様に主体的に健康づくりに取り組んでいただき、健康長寿あいちが実現できるよう本事業を推進してまいります。
以上でございます。
37: ◯県民生活部長(寺澤義則君) 私からは、高齢者の交通安全対策についてお答えを申し上げます。
交通死亡事故のさらなる減少を図っていくに当たっては、議員御指摘のとおり、事故死者数の半数以上を占めます高齢者に対する対策が非常に重要であると考えております。
このため、これまで高齢者に交通安全を呼びかけるテレビコマーシャルの放送や、各種啓発イベントの開催、さらには、高齢者が集まる場所での反射材の配布、普及といいましたさまざまな啓発活動に取り組んでまいりました。
特に、毎年秋のこの時期には、本県が独自に位置づけております高齢者交通安全週間と、それに続きます全国交通安全運動におきまして、高齢者の交通事故防止を運動の基本に掲げまして、広報啓発を強化いたしております。
今年度の重点的な取り組みといたしましては、県民の皆様から募集をいたしました高齢者の交通事故防止をテーマとする交通安全川柳の優秀作品を活用いたしまして、ラジオコマーシャルで呼びかけたり、高齢者の交通事故が多く発生しております地域におきまして、広報車による重点的な巡回啓発、現在、実施中でございます。
また、高齢者の方々から好評をいただいております道路の安全な横断方法を体験・学習できる歩行環境シミュレータや、自転車の正しい乗り方を体験、学習できます自転車シミュレータ、こういったものを活用いたしました参加体験型の出張講座も県内各地で引き続き開催をしてまいります。
さらに、例年、交通事故が多発いたします年末に向けて、県内六つのブロックにおきまして、県、市町村、警察本部、警察署の交通安全担当者が一堂に会します交通死亡事故抑止対策ブロック会議を開催いたしまして、交通安全対策の情報共有を図りますとともに、地域ごとの高齢者の交通安全対策の強化などについても意見交換を行うことにしております。
こうした対策を効果的かつ継続的に推進いたしまして、高齢者の事故はもとより、交通事故の一層の減少を目指してまいります。
以上でございます。
38: ◯警察本部長(木岡保雅君) 初めに、ゾーン30の整備状況についてお答えをいたします。
ゾーン30は、地域住民や学校関係者の方々の御要望を踏まえまして、生活道路における歩行者等の安全を確保する施策として整備を推進しており、本年八月末現在、百二十八地区の整備をいたしておるところでございます。また、本年度末までにさらに約三十地区の整備が完了する予定でありまして、今後も順次拡充をしてまいりたいと考えております。
次に、地域住民やドライバーへの広報啓発についてお答えをいたします。
議員お示しのとおり、ゾーン30の広報啓発を積極的に行い、地域住民やドライバーの方々に広く周知していくことは、私どもとしましても、重要であると認識しているところでありまして、神奈川県警察において、毎月三十日をゾーン30の日に定めていることも承知しているところでございます。
私どもといたしましては、ゾーン30を整備する際には、広報チラシの配布、住民参加によるキャンペーンの実施、自治体広報紙への掲載、マスコミへの情報提供などによる周知のほか、ゾーンの各入り口にゾーン30の路面標示を設置するなどの対策も実施してきたところであります。
さらに、ゾーン30の実効性をより高めるため、ゾーン内における速度違反や通行禁止違反等の交通指導取り締まりも実施しているところでございます。
今後も、これらの活動を地区の実態を踏まえながら実施いたしますとともに、地域住民の方々と連携を図りながら、交通安全運動や新学期等の機会のほか、当県では、毎月三十日を高齢者を交通事故から守る日としておりますことから、これらの機会を捉えまして、ゾーン30の効果的な周知に努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
39:
◯知事(
大村秀章君) 犬飼議員の質問のうち、交通安全対策につきまして、私からもお答えを申し上げます。
今議会に提案をいたしました交通安全条例は、高齢者などいわゆる交通弱者の安全の確保や飲酒運転の根絶などにつきまして、県民、事業者の皆様方とも一体となって取り組みを進めることといたしております。
このため、県といたしましては、条例の議決をいただいた後、速やかに条例の周知と交通安全意識の一層の高揚を図る県民総ぐるみイベントを開催いたしますとともに、年末から年始にかけまして、県民に交通安全を呼びかけるテレビコマーシャルの放送とこれに連動した啓発イベントを県内各地で実施をいたします。
また、高齢者と子供の事故防止を呼びかけるステッカー一万枚をタクシーに張っていただくほか、飲酒運転防止を呼びかけるポスター八千枚を作成し、酒類を提供する飲食店で掲示をしていただくなど、さまざまな啓発活動を関係者と連携し、一体となって強力に実施をしてまいります。
この条例の制定を契機といたしまして、県民総ぐるみで一層の交通安全対策に取り組むことにより、交通事故のない安全・安心な愛知の実現を目指してまいります。
40: ◯十四番(犬飼明佳君) 種々答弁をいただきました。知事からも答弁をいただきました。交通安全対策、ぜひ進めていっていただきたいというふうに思います。
私からは、二点要望させていただきます。
まず、認知症対策についてでありますが、厚生労働省が先週の末、九月十九日に全国の自治体に対して、今後の認知症高齢者等の行方不明、身元不明に対する自治体の取り組みのあり方についての通知を出しました。これは、地域での見守り体制づくりや警察との連携強化など、こういったものを求める内容になっているということであります。
認知症の方が行方不明になった場合に、御家族は、市町村の窓口に相談をされる方もいれば、警察に届け出を出される方もおみえでございます。
したがいまして、徘回された認知症の方の捜索には、いわゆる徘徊・見守りSOSネットワークによる活動と、警察による行方不明発見活動が機能的に連携していくことが大変に重要となります。
そのためには、本人の身体的特徴や外見に関する情報など、自治体と警察との情報の集約と共有が不可欠ということになります。個人情報の保護など乗り越えなければならない課題もあると思いますが、ぜひ愛知モデルとして、県と市町村、そして警察とが連携した行方不明や身元不明の認知症の方を捜索する仕組みを構築していただくよう要望いたします。
もう一点は、あいち健康マイレージについてでございますが、本県の社会保障費の状況を見ますと、医療費は、平成二十三年度に総額で約二兆二百三十七億円、この十年ほどで約一・四倍となっているということです。また、介護給付費は、平成二十四年度に総額で約三千七百三十九億円、こちらもこの十年で約二倍となっておりまして、いずれも年々増大をしております。
健康づくりについては、運動、これを継続していくことが大事なことだということは誰でも知っていることだと思いますけれども、多くの人が習慣化できずに悩んでいます。
そうした中、日常生活で運動する仕掛けをつくるのが、今回のこの健康マイレージ事業だというふうに思います。ポイントがつくことでモチベーションも高まって、健診受診率の向上や健康づくりに励むきっかけになれば、先ほどのこうした医療費や介護給付費の抑制につながるほか、地域経済の活性化、こういったものにも期待ができると私は考えております。
県と市町村との協働事業ということでありますが、先ほどの答弁を聞いておりますと、様子を見ている市町村もあるようでございます。ぜひ県がリードして、全ての市町村で実施できるように取り組みやすい事業として展開していただくことを要望いたしまして、
発言を終わります。
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41: ◯三十九番(須崎かん君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
42: ◯副
議長(
伊藤勝人君) 須崎かん議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
43: ◯副
議長(
伊藤勝人君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午後二時三十八分休憩
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午後三時三十分開議
44:
◯議長(
三浦孝司君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
渡辺昇議員。
〔四十五番渡辺昇君登壇〕(拍手)
45: ◯四十五番(渡辺昇君) それでは、通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。
初めに、アジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区について質問させていただきます。
国産初の小型ジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)は、本県に拠点工場を置く三菱重工業が製造を行い、名古屋市に本社を置く三菱航空機が開発、販売等を担っており、まずは、月に十機の量産化を目標にその開発が推進されております。
また、本県を中心といたしました中部地域には、アメリカ・ボーイング社の最新鋭中型旅客機ボーイング787の機体構造部品のうち、三五%を分担製造する大手機体メーカーとして、先ほどの三菱重工業のほか、川崎重工業、富士重工業の拠点工場が集中しております。さらに、こうした工場に航空機部品を供給する多くの関連中堅・中小企業も立地するなど、航空宇宙産業が厚く集積しております。
航空機の部品点数は、自動車の百倍以上と言われ、さらに、安全性の確保はもちろんのこと、燃費性能の面などからも、構成部品や素材に対して極めて高い技術や信頼性が求められることから、航空機産業がもたらす技術波及効果は、自動車の三倍にも及ぶと言われております。
このように、航空宇宙産業は、まさに物づくりの頂点に立つ産業の一つと表現しても過言ではない高度な技術先端型産業であり、本県を初めとした中部地域の既存の集積を生かし、これを自動車産業に続く次世代産業として育成することが当地域の発展に向けて大いに期待されるところであります。
そうした中で、本県は、岐阜県や名古屋市などと共同で、平成二十三年に国に対し、国際戦略総合特区の申請を行い、この年の十二月にアジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区として国から指定を受けました。
この国際戦略総合特区は、成長分野を中心に、我が国の経済を牽引することが期待される産業の国際競争力の強化を目標として、全国の七カ所が指定されております。この特区への指定により、当地域は国内でただ一つ、航空関連産業クラスターとして発展する可能性を有する地域であると国から位置づけられたものと考えられております。
当初、平成二十三年十二月に指定を受けた際、アジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区は、大手機体メーカーである三菱、川崎、富士の三重工の工場を中心とした愛知県、岐阜県内の十地区でスタートいたしました。その後は、平成二十五年十月に、三重県を含めました三つの県内四十七地区、そして、ことしの六月には、長野県、静岡県を含めた五県六十七地区へと区域を拡大されております。
これに伴い、構成団体数につきましても、特区に指定された平成二十三年十二月当初は、企業等十社に関係自治体を加えた二十二団体であったものが、三重県への区域拡大時には、企業等八十六社に関係自治体を加えた合計百三十団体へ、そして、長野県、静岡県への区域拡大のときには、企業百七十四社に関係自治体を加えた合計二百三十九団体へと大きくふえていっております。
このように、区域や構成団体数を拡大することで、特区の目標に掲げるアジア最大、最強の航空宇宙産業クラスターを形成することをさらに加速し、アメリカのシアトル、フランスのトゥールーズに並ぶ航空宇宙産業の世界三大拠点の一つとなることを目指しているところであります。
アメリカやヨーロッパなどでは、航空宇宙産業の振興については国策として力が入れられており、ここ数年、小型、中型ジェット旅客機に関しては、中国やロシアも国家事業として市場参入を目指しているとの報道も出ております。我が国においても、航空宇宙産業は最も有望な次世代産業の一つとして、グローバルな競争に打ち勝つため、官民を挙げて戦略的に振興していく必要があります。
そこでお尋ねいたします。
国際戦略特区制度により、アジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区に位置づけられた当地域は、我が国の航空宇宙産業の発展をリードしていくことが期待され、他の地域にはない特例措置を講じることで、当地域への航空宇宙産業の集積が図られているところですが、その特例措置の中身は、県民にも余り知られていないところであります。
国際戦略総合特区に指定されたことにより、当地域の航空宇宙産業や自治体にとって、具体的にどんなメリットがあり、どんな効果が上がっているのでしょうか。
次に、県営名古屋空港についてお尋ねをいたします。
名古屋空港は、平成十七年二月に県営空港として再スタートし、来年の二月で十周年を迎えることになります。JALの経営破綻などさまざまな困難もある中、現在は、県営空港にただ一つ就航しておりますフジドリームエアラインズ、これが大変好調で、地域航空のインフラとしてしっかりとした役割を果たしております。
地元の自治体や経済界などのサポートもあり、昨年度は、かつて就航していたJALの実績を大きく上回る六十万人を超える旅客の利用があったと聞いております。地元地域の皆さんも、この空港に民間航空が定着してきたことに関し、少し安堵をされたのではないでしょうか。
そうした中で、県当局は、平成二十三年十二月に国の指定を受けたアジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区の中核プロジェクトとして、昨年度から県営空港及びその周辺地域で航空機の生産拠点誘致を進めてこられました。
昨年度末、国有地を取得し、その直後から立地企業を公募して、五月に三菱重工の誘致が決定し、国産初のジェット旅客機MRJの量産が、ここ県営名古屋空港を中心に行われることになったわけであります。
これは、本県を初めとするこの地域が我が国の発展を力強く牽引する次世代産業、そして、航空機産業の一大拠点を目指す第一歩となるわけです。まことになるわけです。
このプロジェクトは、地域産業の活性化につながることはもちろんですが、何より、日本でただ一つのMRJが見られる場所となるということで、この地域の注目度が大いに上がるのではないでしょうか。私は、これを地域の活性化に使わない方法はないと思うわけです。
一方、この地域の航空機メーカーが機体の生産の三分の一を担うボーイング787が中部国際空港に初めてフライトした平成二十四年七月には、この機体を一目見ようと約五万人の航空ファンでにぎわったという報道を聞いております。
今後、MRJが県営名古屋空港のエプロンに並び、この名古屋空港から飛び立つようになると、国内のみならず、外国からも多くの人が集まり、空港ターミナルビルやエアフロントオアシスなど、人であふれることが予想されます。今から受け入れ体制をしっかりしていく準備が必要ではないのでしょうか。
三菱重工業の副社長が五月に知事を表敬された際の報道だったと思いますが、国民に開かれた工場として、できるだけ皆さんに見ていただけるよう十分配慮しながら、工場を建てていきたいと
発言されており、三菱重工業におきましても、見学者の受け入れを前向きに検討されているようです。
そこでお尋ねいたします。
今後進められるMRJの量産工場を含め、こうしたニーズにどのように対応していくのか、そして、地域活性化といった観点を含めまして、県当局の考えをお伺いいたします。
続きまして、危険ドラッグへの対応につきましてお伺いいたします。
代表質問でもありましたが、近年、危険ドラッグに関する事件や事故がテレビや新聞をにぎわせております。
ことしの六月には、東京都池袋で危険ドラッグを吸入した男性の運転する乗用車が歩道に乗り上げ、八名が死傷するという交通事故が発生いたしました。この事故は、マスコミにおいて大きく取り上げられ、事故直後の現場を映した映像は本当にショッキングなもので、記憶に新しいところであります。
また、県内でも、同じ六月に名古屋市南区で、女性の危険ドラッグの吸入による死亡事例もありました。
特に、危険ドラッグの吸入が原因と見られる交通事故は、昨年と比較いたしまして急増しており、何の落ち度もない方たちが巻き込まれ、被害者になるということであり、大きな社会問題となっております。
危険ドラッグは、乾燥した植物の葉などと、興奮や幻覚を引き起こす作用があり、麻薬や大麻に似た薬物をまぜてつくられたものであり、お香やアロマとしてカラフルなパッケージに入れて、繁華街の店舗やインターネット等で販売をされております。
国は、薬事法において、幻覚や中枢神経系の興奮や抑制の作用を持つ物質を指定薬物として規制しており、平成二十六年九月十九日現在で千四百十四物質が指定されております。
また、県において、薬事法に先んじて、県独自に危険ドラッグ対策を実施するために、薬物の濫用の防止に関する条例を平成二十四年十月に制定し、これまで四十一物質を知事指定薬物に指定してきましたが、薬事法による規制対象となった物質もあり、現在は七つの物質が県の条例で規制されております。
しかしながら、乱用されている危険ドラッグが薬事法や条例で規制の対象となると、規制を逃れるために、その構造を少し変えた新たな薬物が次々とあらわれ、まさにイタチごっこの状況にあるわけです。
危険ドラッグは、その種類が多く、どのような薬物が含まれているかわからず、その使用により死に至る場合もあり、非常に危険であります。
県は、平成二十四年二月から、危険ドラッグの使用が原因として疑われる救急搬送事例を集計していますが、集計開始から本年の八月末までに三百十五件の救急搬送事例があったということであります。
その内容を見ますと、男女別では、男性が二百七十五名と九〇%近くの圧倒的多数を占めておりました。年齢別で見ますと、十代から二十代が百八十七件で、全体の約六〇%と過半数を占めており、これに三十代を加えますと二百七十件で、約八五%となり、未来ある若者の間で乱用されている傾向が見られ、憂慮すべき事態となっております。
また、地区別では、名古屋市内が百七十三名と半数以上を占めておりますが、尾張地区が八十三名、西三河地区が四十一名で、東三河地区におきましても十八名が救急搬送されており、都市部だけでなく県内全体で危険ドラッグの乱用が広がっている状況となっております。
搬送されたときの主な症状は、気分の不良、そして、意識障害やけいれん等があり、一つ間違えば命にかかわる取り返しのつかない状況になることが危惧されております。
このような状況の中で、県民の命と健康を守るためには、危険ドラッグを根絶しなければなりません。危険ドラッグを根絶するための対策といたしましては、指導取り締まりと乱用防止啓発が重要な二本柱であると考えます。
まず、指導取り締まりにつきましては、県は、厚生労働省東海北陸厚生局麻薬取締部や県警本部と合同で危険ドラッグ販売店への立入調査を実施するとともに、販売されている製品を買い上げて、県衛生研究所で薬事法や条例に違反する成分が含まれていないか検査をして、その結果に基づいて指導取り締まりをしております。
国は、麻薬取締部が先月末に本県を初め四都府県の危険ドラッグ販売店舗に立入調査を行い、全製品の検査を命じるとともに、結果が判明するまでは販売を禁止する指導取り締まりを行っております。
次に、乱用防止啓発につきましては、政府は、七月十八日に薬物乱用対策推進会議を開催し、いわゆる脱法ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策を決定いたしました。そして、七月二十二日に、これまでいわゆる脱法ドラッグなどと呼ばれていたものにかわる新しい呼称名を、誰もが危険な薬物であることがわかる危険ドラッグとし、その危険性について社会への浸透を図ってまいります。
一方で、県は、七月二十八日に薬物乱用防止対策の関係者や教育関係者、市町村、経済団体、労働組合等の代表者を集めて、愛知県危険ドラッグ緊急対策会議を開催いたしました。
会議では、知事がみずから危険ドラッグの根絶に向けて、それぞれの立場でできることを最大限に行っていただくことをお願いし、県全体が一丸となって危険ドラッグを絶対に許さない社会をつくっていくというメッセージを発出され、県として姿勢を示されたところでございます。
そこでお尋ねをいたします。
危険ドラッグを根絶するためには、まずは、危険ドラッグが安易に手に入る現状を改善する必要があると考えますが、危険な薬物をどのように監視していくのか、県の対策を伺います。
次に、乱用防止啓発につきましては、特に乱用者が多い若い世代を対象として行うことが重要であると考えますが、どのように行っていくのかを伺います。
そして、危険ドラッグに関する質問の最後に、警察本部長にお尋ねいたします。
今議会には、薬物の濫用の防止に関する条例の一部改正議案が提出されております。主な改正内容といたしましては、警察職員が県職員と同様に、危険ドラッグの販売店への立入調査をすることができるようにするとのことであります。
この改正案をお聞きいたしまして、今までは条例で警察職員に立入権が認められていなかったこと自体に驚きを感じたのが私の正直な感想でございます。
そこで、もう一つお尋ねしたいんですが、今回の薬物の濫用の防止に関する条例の一部改正の内容を県警といたしましてはどのように評価し、また、危険ドラッグの対策に関してどのような効果を想定してみえるのかお示しください。
以上で私の質問を終了させていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
46:
◯知事政策局長(石原君雄君) アジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区の指定によるメリットと効果についてのお尋ねでございます。
本県を中心とした中部地域では、ボーイング787の大幅な増産やMRJの生産などに対応するため、関連する企業において、生産用地の確保や設備の増強を行う必要性が高まっており、工場立地や設備投資などをしやすい環境を整備することが求められております。
国際戦略総合特区では、工場等の新設、増設につきまして、市町村が条例で定めることにより緑地規制の緩和が可能となります。また、設備投資に係る法人税の軽減、さらには、金融機関から融資を受ける際の国による利子補給など、特区の特例措置、支援措置を活用できるメリットがございます。
これまでも、半田市初め六市町におきまして、工場立地に係る緑地規制を緩和する条例が制定され、このうち、三市において、規制緩和を生かした工場の規模拡大が進められております。
また、設備投資に係る法人税の軽減措置につきましては延べ三十の企業が、金融機関からの融資に対する国による利子補給につきましては延べ二十の企業が活用するなど、当地域における航空宇宙産業の集積や生産能力の拡充が進んでおります。
また、自治体にとりましては、関連する企業の立地や設備投資の拡大などによりまして、雇用の確保を初め、地域経済の活性化による財政基盤強化など、さまざまな効果が期待できるものと考えております。
今後も、航空宇宙産業のさらなる集積に向けまして、特区の特例措置、支援措置などのメリットを最大限活用しまして、経済団体や関係県、市町村と協力しながら、しっかり取り組みを進めてまいりたいと存じます。
以上でございます。
47:
◯地域振興部長(
植田昌也君) 私からは、MRJ量産工場を含めた名古屋空港周辺地域における見学者等への対応についてお答えします。
MRJの開発の進捗状況ですが、三菱重工業からは、飛行試験機の初号機が完成し、来月十八日にお披露目を、その後、地上試験を重ねた上で、来年の初飛行、平成二十九年度の量産機の引き渡しに向け、想定スケジュールどおりに進んでいくと伺っております。
空港隣接地では、平成二十八年一月の工場稼働に向けまして、現在、県が用地の造成を行っており、近々、三菱重工業へ引き渡した後、最終組み立て工場の建設工事が行われる予定となっております。
我が国初の国際ジェット旅客機であるMRJは、大変注目されており、この機体を見ようと国内外から多くの方々が来港されるものと思われます。
また、三菱重工業におかれましても、この工場を最先端の航空機生産工場として見学いただけるよう検討していきたいとの考えと伺っております。
そのため、今後、こうした量産工場と空港等における見学者の受け入れについて、三菱重工業、地元自治体を初めとする関係者と協議をしながら、アクセス手段や移動動線の確保など、さまざまな課題も含めて検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
48:
◯健康福祉部保健医療局長(
加藤昌弘君) 私からは、危険ドラッグ対策についてお答えをいたします。
初めに、危険ドラッグの監視指導についてでございますが、県内で発生した危険ドラッグ使用による初めての死亡事例を契機として、平成二十四年二月から危険ドラッグ販売店舗に対して立入調査を開始し、本年平成二十六年八月末までに九回の立入調査を実施しております。
特に今年度は、危険ドラッグが関係する事件・事故の増加により、これまでに三回実施をしており、東京都池袋の事故を受け、七月からは、厚生労働省東海北陸厚生局麻薬取締部及び県警本部と三者合同で実施をしております。
その結果、平成二十四年二月には三十四店舗ありました危険ドラッグ販売店舗が大幅に減少し、現在営業中の店舗は一店のみとなっております。
今後も随時立入調査を行い、監視指導を強化してまいります。
また、規制面では、薬物の濫用の防止に関する条例を七月に改正し、知事指定薬物の所持や使用について禁止するとともに、違反した場合の罰則を設け、九月一日から施行したところでございます。
さらに、本議会において、今まで立入調査権限がなかった警察職員について、県職員と同様に、危険ドラッグ販売店舗へ立入調査ができるよう、条例改正の提案をさせていただいておるところであります。
次に、乱用防止啓発でございますが、議員御指摘のとおり、救急搬送事例からは若者が乱用している傾向が見られるため、若年者への啓発が重要と認識しております。
そこで、七月の緊急対策会議において、教育関係者、経済団体、労働組合の代表者にも御参加をしていただき、知事から直接、それぞれの立場でできることを最大限に行い、危険ドラッグを絶対に許さないという社会風土を醸成していきましょうというメッセージを伝えております。
これを受け、緊急に八月二十三日から八月三十一日までを危険ドラッグ根絶キャンペーン実施期間と定め、県内各地で県警本部、市町村、保護司会及び麻薬協会等と協力を得ながら、街頭啓発を実施いたしました。特に、八月二十四日には、知事が出席して、金山総合駅で危険ドラッグの根絶を訴えました。
また、若年者への啓発といたしましては、従来の中学三年生の乱用防止啓発用リーフレットの配布に加え、県内の高校生も対象として配布することとしております。
さらに、若者が利用するコンビニエンスストアや大学等において、十一月を目途に作成する危険ドラッグ乱用防止を呼びかけるポスターを掲示していただく予定でございます。
これに加えて、例年十月から十一月にかけて実施する麻薬・覚醒剤乱用防止運動において、今年度は、危険ドラッグに重点を置いた啓発を実施してまいります。
こうした取り組みのほか、知事のメッセージを受け、春日井市では、危険ドラッグ追放宣言が行われたところであり、他の市町村や経済団体等におきましても、各種イベントや広報紙等を活用した啓発を行っていただいております。
今後も、危険ドラッグの根絶に向け、監視指導と乱用防止啓発の両面から、県全体が一丸となって危険ドラッグ対策を強力に推進してまいります。
以上でございます。
49: ◯警察本部長(木岡保雅君) 薬物の濫用の防止に関する条例の改正についてお答えをいたします。
危険ドラッグの販売店舗に対しましては、県及び厚生労働省東海北陸厚生局の麻薬取締部と連携した合同立ち入りを行い、販売実態の把握や販売自粛などの指導を行っているところでありますが、これまでは警察職員に対し、立入権限がないとして立ち入りを拒否する店舗があったところであり、販売実態が確認できないなど、危険ドラッグ対策に支障が出ていたところでありました。
今回審議をいただいております警察職員の立ち入りにつきましては、警察職員も、立ち入りによって危険ドラッグに関する帳簿書類等を検査したり、従業員等への質問を行うことが可能となりますことから、警察による調査の幅を広げるものと考えております。
警察職員に立入権限が付与された場合の効果といたしましては、定期的な立入検査を行うことで、危険ドラッグ販売店舗の実態把握が容易となって、知事指定薬物等の販売を抑止することや、知事指定薬物が原因と疑われる事件・事故が発生した場合、速やかに販売店舗に対する立入検査を実施して、県と連携して必要な措置をとることなど、危険ドラッグによる被害の未然防止や拡大防止といった効果が期待されるところであります。
本年七月の条例改正では、知事指定薬物の所持、使用が禁止されましたが、改正後、知事指定薬物の所持罪で危険ドラッグ店の店長ら三名を検挙するなど、条例を適用した危険ドラッグ対策を推進しているところであります。
今後も、関係機関と連携し、条例を初めとする各種法令を活用し、危険ドラッグの根絶に向け、取り組みを強力に進めてまいります。
以上でございます。
50:
◯知事(
大村秀章君) 県営名古屋空港のMRJ見学者受け入れにつきまして、私からもお答えをいたします。
航空機産業の一大集積地でありますここ愛知は、MRJの量産化が行われる唯一の地域となりまして、県営名古屋空港には完成した機体が、量産を始めれば、並び始めるということになります。
いよいよ、アジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区の目指す、シアトル、トゥールーズに並ぶ航空機産業の世界的な拠点という姿が現実のものになってくるというふうに思っております。
今後、この県営名古屋空港とその周辺地域は、このMRJの生産だけにとどまらず、次代の航空機産業を担う人づくりの場として、また、航空機をテーマとした産業観光の拠点といたしまして、本県のみならず、我が国の航空機産業発展の核となる地域だと考えております。
そうした将来の姿を見据え、例えば、航空機に関するさまざまな情報を発信していく拠点、MRJを見に来られる方に楽しんでいただけるような仕掛けなど、県営空港及びその周辺地域における見学者の受け入れ体制につきまして、MRJの量産機の引き渡しが始まる平成二十九年度当初を目途に実現できるよう取り組んでまいりたいと考えております。
51: ◯四十五番(渡辺昇君) ここで要望をさせていただきます。
国際戦略特区であるアジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区につきましては、これまでの取り組みと効果、さらに、将来に向けた航空機産業集積への展望について御答弁をいただきました。
この国際戦略特区に続いて、国家戦略特区の制度が昨年度創設され、本県を中心に、岐阜、三重、静岡の東海四県と政令指定都市であります名古屋、浜松、静岡の三つの市が共同で提案したモノづくり産業強靭化スーパー特区においては、次世代の自動車や医薬品、医療機器とともに、航空機産業の事業環境の整備の税制の優遇措置などを盛り込んでおります。
この提案においては、国際戦略特区を上回る国からの支援措置を求めており、その実現に向けて取り組みを一層強化していかなければなりません。
質問でも申し上げましたとおり、先進国を初め、BRICsなどと国際競争に打ち勝って、我が国の活力を将来にわたって維持するためには、産業競争力を強化していく必要があることは誰もが認めるところであり、愛知県もその役割を担っていかなければなりません。
先月末には、物づくりに特化した愛知総合工科高等学校専攻科の公設民営化という新たな提案に加えて、国家戦略特区の地域指定を受けるべく、再度の国への申請がなされたと聞いております。
これまでの実績と将来の可能性において、物づくりで我が国を牽引するというこの地域の役割を国にも十分に理解していただき、一層の航空機産業の振興につなげていかなければなりません。
国の地域指定に向けた県当局の一層の取り組みを要望し、質問を終了させていただきます。
52:
◯議長(
三浦孝司君) 進行いたします。
稲垣昌利議員。
〔二番稲垣昌利君登壇〕(拍手)
53: ◯二番(稲垣昌利君) 西尾市選出、民主党の稲垣昌利です。
議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして、質問をさせていただきます。
まず、一つ目に、南海トラフ巨大地震被害予測調査結果について質問いたします。
愛知県防災会議により五月三十日に示された被害予測調査結果のうち、理論上最大想定モデルによる被害想定は、国が二〇一二年八月に公表した南海トラフの最大想定モデルを反映しております。
理論上最大想定モデルは、マグニチュード九クラスの巨大地震で、愛知県沿岸部を中心に最大三十二市町村が震度七の揺れに見舞われ、渥美半島の外海に面する田原市では、最大二十一メートルの津波が発生すると想定しています。
津波によって深さ一センチ以上が浸水する面積は、名古屋市の最大七千六百四十七ヘクタールを初め、西尾市で五千百八十四ヘクタール、豊橋市で四千五百四十ヘクタールなどです。県全体では、最大約三万七千ヘクタールと国の最大想定モデルの三・七倍に広がりました。
これに伴い、浸水や津波による死者も国想定の二倍を超える一万三千人という大変厳しい数字が示されております。これは、防波堤やコンクリート構造物が震度六弱以上の揺れで全て倒壊、そして、盛り土の堤防は全て七五%沈下と想定したからです。
一方、これらの被害を未然に抑えるのが減災対策です。県は、過去地震最大モデルの被害想定に対して、建物の耐震化や津波避難対策等により揺れによる全壊棟数は約六割減少し、死者数は約八割減少すると想定しています。
そこで、現状八五%の建物耐震化率と現状五〇%の家具転倒の落下防止対策をそれぞれ一〇〇%に引き上げるとともに、六百五十九棟ある津波避難ビルの有効活用、全員が発災後すぐに避難を開始できるような訓練や啓発を進めているところです。
こうした減災対策が十分に引き上げられるためには、一人一人に災害に対しての意識を持っていただくことが大変重要であると考えますが、六月議会一般質問で我が党の鈴木純議員が示されたとおり、本年、県が実施した県民意識調査では、この南海トラフ巨大地震などに非常に関心があると回答した人は五〇・一%であり、東日本大震災発災後の二〇一二年の前回調査の六三・六%から一三・五%も落ち込んでしまうという現状が示されました。
幾ら減災効果を想定しても、実際にそれを現実のものとするためには、一人一人が防災意識を常に高く持ち続けていただくため、常日ごろからの啓発活動が大変重要であると考えます。あくまでも、まず一人一人に自分の命は自分で守るという行動をとっていただいた上で、行政としての災害・減災対策の効果が最大限発揮されるものと考えますので、啓発活動への投資を強く求めていきたいと思っております。
さて、それでは、行政の担う部分についてですが、私の地元であります西尾市を含め、知事の御地元であります碧南市などの西三河南部地域は、尾張西部、東三河と同様に、広範囲にわたる液状化や浸水被害が想定されており、命を守る対策が行政に求められております。
しかしながら、西三河南部地域は、こうした甚大な被害が想定されているにもかかわらず、現状では、緊急輸送道路や避難路が十分であるとは言えず、公表された被害予測に対して、どのように対処したらよいのかとの不安が高まっております。
そこでお伺いいたします。
浸水想定域として、西尾市、碧南市などは被害が大変大きいと予想されておりますが、西三河南部地域は、高速道路ネットワークの空白地帯となっており、緊急輸送道路、避難路となる命の道が望まれます。
そこで、愛知県の重要な計画路線でありながら整備が進まない、知多、西三河、東三河をつなぐ東西軸であります名浜道路を津波と瓦れきが内陸に侵入するのを防ぐ盛り土構造などで整備することなどが期待されますが、今後どのように進めていくのか、県の考えをお聞かせください。
さて、この被害予測調査結果の過去地震最大モデルを、県は、より発生頻度の高い東海・東南海・南海地震の連動クラスの地震として、実際の防災対策の軸としています。この場合、経済被害は約十四兆円、地震発生直後に約三百七十五万軒が停電し、電力の復旧には一週間程度かかるなど、ライフラインの被害も想定しています。
また、瓦れきなどの災害廃棄物は、東日本大震災で東北三県から発生した量に匹敵する二千万トンが発生すると見込んでおります。
実際に起き得る被害としてリアリティーのあるものと受けとめておりますが、西尾市にとっては大変深刻な予測であります。それは、過去地震最大モデルでは、愛知県内での死者数が約六千四百名と想定される中、そのうち約千八百人が西尾市であり、愛知県内で最も人的被害が大きいとの予測でした。
西尾市の地盤の多くは、背後地も低く、地盤自体も沖積層の液状化しやすく、弱いものです。このため、地震が発生した場合、河川・海岸堤防は沈下、崩壊し、ゼロメートル地帯では、津波到達前に海水が浸入して、住民避難が困難となり、さらには、津波で広範囲に浸水するなど、甚大な被害となることが想定されております。
西尾市としては、死因の六割以上を占める浸水・津波被害を減らすために、地震対策が行われていない河川・海岸堤防への支援強化を県にもお願いしている状況であります。
加えて、先ほども申し上げましたとおり、この地域は緊急輸送道路や避難路が十分ではありません。このままでは、避難もさることながら、西尾市は川に囲まれた地域でもあることから、発災後、物資の輸送や復旧作業等の車両が到着できるのかとの不安もあります。
そこでお伺いいたします。
過去地震最大モデルでは、愛知県内での死者数約六千四百名と想定され、そのうち西尾市は約千八百人と最も死者数が多いと想定されています。死因としては、約千二百人が浸水、津波によるものとされております。
災害時の物資の輸送や復旧作業には、第一次緊急輸送道路である国道二十三号から西尾市へつながる南北軸が重要であり、西三河南北道路、特に安城一色線部分が必要と考えますが、その現状と県の考えをお聞かせください。
次に、矢作川浄化センターの津波一時待避所としての活用についてお伺いいたします。
さきに申し上げたとおり、五月末に愛知県防災会議で公表された被害予測調査結果によりますと、西尾市は、浸水及び津波により県内で最も多い死者数が出ることが想定されております。
そのような中、西尾市では、津波による被害が予想される地域について、津波から緊急的に避難するための場所として、一部の小学校の校舎や民間のビルなど、津波一時待避所として指定しておりますが、矢作川河口部に位置する南奥田町というところは、近くにこのような場所がなく、また、周囲を矢作川、平坂入江、三河湾と水に囲まれた地域のため、津波発生時の避難が問題となっています。
そこで着目したのが、この南奥田町に隣接します県が管理する矢作川浄化センターです。
浄化センターは、津波による浸水被害がないとの調査結果が出ていることに加え、通信設備を備えているなど、津波一時待避所として適した条件を有していると思います。浄化センターは、海に向かう方向ではありますが、近隣にあることから、ここへ避難したいとの住民の意向もあります。
そこでお伺いいたします。
下水処理場であるため、いろいろな制約があるとは思いますが、津波一時待避所として矢作川浄化センターを活用することについて、県のお考えをお聞かせください。
続きまして、二つ目に、医療従事者の確保について質問いたします。
医療技術の高度化や専門分野の細分化等に伴い、医療従事者の不足が深刻な問題となっています。その傾向は、病院勤務医において特に顕著で、平成二十六年六月時点で、県内二〇・五%の病院で診療科の閉鎖や診療日数の縮小等、診療制限が行われている状況です。
こうした状況の中、県内の大学医学部は定数を増員いたしましたが、医師として活躍できるまでの間は、現在の医療資源を有効に使うことが重要で、県としては、ドクターバンク事業や女性医師の働きやすい職場環境の整備、地域医療奨学金給付事業等の取り組みによって医師の確保に努めています。
また、看護職員の再就業を促す研修や処遇の改善にも取り組んでいますが、一方で、コンビニ受診のような軽度の患者が救急医療を利用するケースもあり、利用者側の意識啓発も行いながら、社会全体で医療資源を確保していかなければなりません。
さて、公立病院等で勤務医師不足の最大の原因は、平成十六年から新医師臨床研修制度の導入が大きなきっかけとなっております。
これまでは、医師の多くは大学医学部の医局に属し、大学病院から、大学医局から公立病院等に派遣されておりました。しかし、新医師臨床研修制度により、研修医が臨床研修先として一般的な症例の多い病院を
選択し、大学医局への入局者が減少するという事態に陥りました。このことにより、医局の医師派遣機能が低下し、地域の公立病院などは医師確保に支障が生じ始めました。
このような状況は、地域の公立病院などにとって医師不足の大きな要因で、その影響により診療科によっては休診などの診療制限をせざるを得ない状況となってしまいました。
診療制限を行っている病院の地域に暮らす住民にとっては大変深刻な問題であり、地域全体で医師を育てるシステムを構築するということなども視野に入れていかなければならないと考えております。
公立病院は公立病院として、地域のために不採算部門や少人数では負担が重い救急医療なども担っていますが、医師不足や医療者の労働環境への配慮、専門性の要求などにより、これらを行うことは年々難しくなっております。特に、地方の二次病院においては、医師不足の中で救急医療を担わなければならないことがますます医師派遣を厳しくしていますが、人口の多い愛知県では、他の病院にそれらを委ねることも困難です。
現状においては、幾らかの病院で診療制限をせざるを得ない状況になっておりますが、地域住民の十分な同意が得られているわけではありません。
一つの地域の医療が崩壊すれば、隣接する地域にも影響が及んで負担が増すことから、さらなる医療崩壊を招きかねません。医師不足の問題は、地域医療や公立病院の経営に大きな影響を与えています。
そこでお伺いいたします。
県内三百二十二病院のうち、約二割に当たる六十六病院で医師不足のために診療制限が行われており、特に公立病院で顕著でありますが、どのように対策をしていくのか、県の考えをお聞かせください。
さて、県内各地の公立病院が医師不足で診療科を閉鎖する状況が広がり、お産ができない地域、小児救急に対応できない地域が発生して、地域住民の声が悲鳴に変わってきております。まさに私の地元であります西尾市は、今そのような大変深刻な状況となっております。
西尾市は、現在、人口十七万人でありますが、人口十万人当たりの病院勤務医の数は、全国平均百四十八人、愛知県は百二十八人に対して、西尾市は四十五人と全国平均の三分の一しかおらず、第二次救急医療を担当している西尾市民病院の医師の負担は大きく、疲弊しております。特に、産婦人科医師の不足により、現在、西尾市民病院では子供が産めません。あわせて、小児科医の不足により夜間の小児救急を休止している状況です。
そこで、西尾市は、医師不足を解消し、地域医療を守るために、昨年十二月から本年二月まで、四百の町内会が協力をいたしまして、西尾市における緊急医師確保についての署名活動を精力的に展開し、西尾市在住、在勤の皆さん十七万七千五百四十人もの人たちから署名が集まりました。現在の苦しい状況を訴える西尾市民の総意であると申し添え、本年三月、大村知事に届けさせていただきました。
西尾市は、医学生を対象とした奨学金制度を創設し、自治体として医師確保の努力もしております。
こうした状況は、西尾市に限ったことではありません。二〇一四年六月末現在、愛知県内では、医師不足による診療制限を実施している病院のうち、診療科別に見ると、最も多いのは、産婦人科が二〇%で、小児科も九・二%と高い割合であり、少子化対策に逆行するような状況が起きていると言えます。産婦人科に関しては、二〇〇七年から毎年最高であり、県による対策を特に強く求めたいと考えます。
そこでお伺いいたします。
人口十万人当たりの病院勤務医数は、全国平均百四十八人であるのに対し、西尾市は四十五人しかおらず、西三河南部西医療圏の第二次救急病院で災害拠点病院でもある西尾市民病院の負担は大変大きいです。
医師不足のため、小児救急の夜間診療制限をしており、また、産科を休止しているため、年間約千五百人生まれる子供のうち、約六割は市外で出産をされております。
十七万の市民が安心して産み育てられるまちづくりをするために、医師の増員のための協力をいただきたいと思いますが、県としてどのようにお考えであるか、考えをお聞かせください。
続きまして、三つ目に、公衆無線LANの整備について質問をいたします。
今回は、その必要性を二つの視点から考えてみたいと思います。
まず、一点目は、観光による視点です。
外国人観光客の利便性向上に向けた取り組みとして、地方自治体が中心となり、無料公衆無線LAN、いわゆるFree Wi─Fiの整備、運用が進められております。
二〇一三年三月に観光庁により公表された訪日外国人旅行者に対するアンケートでは、旅行中最も困ったこととして、無料公衆無線LAN環境が二三・九%で一位となっております。
現状の我が国では、民間事業者による公衆無線LANサービスは、自社のサービス会員向けとしているものがほとんどで、非会員の外国人観光客はほとんど利用できません。
自治体による公衆無線LANサービス拡充は、そうした外国人観光客の不満を解消し、彼らの利便性、満足度の向上につなげようという狙いがあるわけです。
外国では、旅行スタイルとして日本以上に普及しているスマートフォンやタブレットなどを持参し、旅行先でもネット経由で現地の観光情報を収集したり、SNSを通じてリアルタイムに旅行記を発信する人たちが多いのです。そのため、無料で使用できるWi─Fiスポットのある場所には外国人観光客が集まりやすい傾向があります。
ここで、既に運用が始められている地方自治体のFree Wi─Fiを少し紹介します。
自治体主導による公衆無線LANサービスの元祖は、二〇〇八年二月にサービスを開始した岡山県による、おかやまモバイルSPOTです。そして、その後、二〇一二年に福岡市、京都市が相次いで公衆無線LANサービスを開始。二〇一三年には、広島、静岡、那覇の三市もサービスを開始するなど、サービスを提供する自治体が増加しています。
中でも、スポット整備に注力しているのが、山梨県が提供するやまなしFree Wi─Fiスポットです。NTT東日本や山梨県内のシナプテック株式会社の協力を仰ぎ、二〇一二年一月にサービスを開始して、およそ二年間で県内に千四百以上のアクセスポイントを設置いたしました。現在では、千六百九十四アクセスポイントを設置しております。
山梨県は、Wi─Fi接続に必要なIDとパスワードを記したカードを外国人観光客に無料で配布をしております。富士山周辺の観光施設、宿泊施設、飲食店など二十カ所のWi─Fiスポットで外国人の方がスマートフォンやタブレットでWi─Fi接続すると、自動的に食のサイトが表示されます。また、外国人観光客の好みに合った食事の体験施設での楽しみ方や、体験ルールを英語、韓国語、中国語、日本語で案内するものです。
続いては、Fukuoka City Wi─Fiです。
外国人観光客の利便性向上や情報発信をするため、福岡市と企業が始めた無料Wi─Fiサービスです。
訪日外国人に対して、渡航前から福岡市は無料Wi─Fiサービスが充実していることをPRするため、日本語、英語、韓国語、中国語など五言語対応の専用ウエブサイトも用意しております。専用サイトでは、地図を活用して、Fukuoka City Wi─Fiが利用可能なエリアの情報を表示しております。
そして、大阪観光局も、二〇一四年一月から十二月にかけて、無料Wi─Fiの環境を整備するとのことです。二〇二〇年、大阪に外国人旅行者六百五十万人を呼び込むことを目標に、大阪観光局も達成のため、外国人旅行者に便利な無料Wi─Fiの整備に乗り出したのです。
しかしながら、このような状況にあるにもかかわらず、愛知県はもちろん、東京など日本の大都市には、外国人観光客を含め、短期滞在者が手軽に使える無料のWi─Fiスポットがまだまだ足りません。例えば、外国人の方が旅行先を日本とタイで迷っていて、日本ではネットがつながらないことを理由に、Free Wi─Fi整備が整っているタイに行くということも十分にあり得ます。それほど外国人観光客にとって、無料のWi─Fiが利用できるということは、次に行く土地について調べたり、旅行仲間同士、SNSで情報交換するためには大変重要なことなのです。
本県も、知事が言われる国際観光都市を目指し、外国人観光客の誘客や国際会議等を開催するなど、海外の活力を取り入れる姿勢は大変よいことだとは思いますが、PRに力を入れる一方で、来訪された外国人の方の利便性も考慮して初めて愛知県に来てよかったと感じていただき、次につながっていくものだと考えます。
そこでお伺いいたします。
外国人観光客を中心に、無料公衆無線LANの充実に対する要望が強く、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、国内外の観光客が手軽に情報を入手できるよう、観光拠点における公衆無線LAN環境の充実が求められています。
観光庁により公表された訪日外国人観光客に対するアンケートでは、旅行中最も困ったこととして、無料公衆無線LAN環境が二三・九%で一位となっております。
昇龍道プロジェクトの推進やFIFAフットサルワールドカップ二〇二〇の招致などで外国人観光客の増加を目指している本県としては、必要な整備であると考えますが、県として、公衆無線LAN整備にどのように取り組むのか、県の考えをお聞かせください。
さて、別の目的で公衆無線LANサービスを整備する自治体もあります。
栃木県足利市も公衆無線LANサービスを開始しましたが、アクセスポイントを設置しているのは、市役所や学校、公民館などの公共施設です。外国人観光客が訪れるような場所ではありません。
実は、足利市は、公衆無線LANサービスを整備する目的は、大地震などの大規模災害発生時に通信手段を確保することなのです。すなわち、二点目は、防災による視点です。
大規模災害が発生したときには、安否確認や救助要請などのため、一時的に電話回線がパンク、不通になることは珍しくありません。そこで、そういった事態になったときでも、インターネットを経由して災害関連情報を収集できるよう、アクセスポイントを設置することになったということです。災害時には誰でも無料で利用できるほか、平時でも一日一時間までは利用可能となっております。このように、災害時における緊急通信手段の位置づけとしても、重要な役割を果たします。
東日本大震災では、東日本全域にわたって未曽有の被害が発生し、その際のインターネット通信基盤の確保は大きな問題となりました。基地局等の停電によりインターネットにアクセスするための通信基盤が著しく減少しました。
災害時のインターネットアクセスの確保に向けて、公衆無線LANを含めた多様な通信基盤の確保が重要となると考えられます。
そこでお伺いいたします。
内閣府の調査によれば、東日本大震災の際、津波警報や避難に関する情報の入手先として、約半数の人が防災行政無線によるとの回答がある一方で、岩手、宮城、福島の東北三県の沿岸市町村では、津波・地震による倒壊破損や、バッテリー・発電燃料切れなどの電源断により、防災行政無線が利用できなかった例が報告されております。
また、災害時においては、電話が混み合うため、通信事業者による発信規制や接続規制といった通信制限が行われ、一般の電話の使用は著しく不便となりますが、公衆無線LANについては、こうした通信制限の影響を受けることなくインターネットに接続できることから、住民による有効な災害情報の入手手段の一つとなり得るものと考えられます。
災害時において、住民の皆さんや他の地域から来訪された方がみずから災害情報や交通機関の運行情報などを容易に入手する方法として、避難所、避難場所など防災上の拠点に公衆無線LANを整備することが重要であると考えますが、県のお考えを聞かせてください。
以上、三議題についてお尋ねしましたが、明快な答弁をお願い申し上げまして、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
54:
◯建設部長(
平井雄二君) 南海トラフ巨大地震被害予測調査結果について三点のお尋ねをいただきました。
初めに、名浜道路の今後の進め方についてであります。
名浜道路は、知多地域と三河地域を結ぶ新たな東西軸として計画された全体延長四十キロメートルの地域高規格道路であります。
このうち、碧南市から西尾市の旧幡豆郡を経由して幸田町に至る約二十一キロメートルが平成十九年度に調査区間に指定されており、これまでルートの概略検討や費用対効果分析などを進めてまいりましたが、整備効果につきましては、さらなる調査、検討が必要となっております。
このため、一昨年度からは、通常の費用対効果分析では評価対象とならない防災とか観光とかいった多面的な側面から関係市町の御協力もいただきながら、検証を進めてきております。
今年度は、五月に防災会議におきまして、被害予測調査結果等が公表されましたので、これを受けて、防災面における役割、構造などにつきまして、さらに掘り下げた検討を行ってまいります。
大変大規模な道路であり、事業化に向けては多くの課題がございますが、今後とも多面的な検証を積み重ねつつ、少しでも前進できるよう努めてまいりたいと考えております。
次に、西三河南北道路の現状と県の考え方についてであります。
西三河南北道路は、豊田市内の東名高速道路から国道二十三号バイパスと交差し、西尾市に至る西三河地域の重要な南北軸であります。
このうち、国道二十三号バイパスより南につきましては、都市計画道路安城一色線を整備することとしており、全体約十三キロメートルのうち二・九キロメートルの整備が完了しております。
現在は、西尾市内の二カ所で事業を進めているところで、上町及び下町地内の県道蒲郡碧南線より北側一・二キロメートルの区間につきまして、平成二十四年度から用地買収に着手しておりまして、これまで約四割の用地を取得しております。
また、旧一色町地内では、諏訪神社の北側百五十メートルを西尾市で、南側三百メートルを県にて事業を進めており、現在、全体で約四割の用地を取得したところで、引き続き事業進捗に努めてまいります。
西三河南部地域の経済発展や防災機能の強化のためには、西三河南北道路を国道二十三号バイパスにつなぐことが大変重要と考えておりますので、まずは市街地部の渋滞緩和に向けまして、現在着手している区間の早期完成にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
最後に、津波一時待避所として矢作川浄化センターを活用することについてであります。
矢作川浄化センターは、下水処理場であるため、施設内には、高圧電気設備やポンプ設備などの危険箇所が数多くある上、一部の建物で耐震性能が不足しているなど、現状では、多数の人々が津波の一時待避所として場内の施設を利用するには制約があります。
一方で、浄化センター及びその周辺にはグラウンドなどがあり、日ごろより多くの方々が利用されていることから、これらの方々の一時的な避難も想定し、その避難場所や誘導方法も含めた災害時の事業継続計画、下水道BCPを作成したところであります。
今後は、建物の耐震補強を進めるとともに、近隣住民の皆様の御要望を踏まえた津波一時待避所としての利用も想定し、市と調整を図りながら、施設の再点検や避難誘導方法の検討を行うなどにより下水道BCPの充実に努め、一人でも多くの方々の命を守るために、矢作川浄化センターのさらなる活用に向け、取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
55:
◯健康福祉部保健医療局長(
加藤昌弘君) 診療制限が行われている公的病院に対する対策についてお答えをさせていただきます。
県が平成十九年度から毎年実施しております県内病院における医師不足の影響に関する調査の推移を見ますと、県内の診療制限を行っている病院数の割合は、平成二十三年度まで毎年増加し、その後、横ばいとなり、今回、二十六年度の調査でやや持ち直したものの、現在でも二割以上の病院で医師不足を原因とした診療制限が行われており、依然として厳しい状況が続いていると認識しております。
このような中、県では、当面の勤務医不足の影響を最小限とするため、県内の代表的な医療関係者が集まる地域医療連携のための有識者会議や、地域の中核的な医療機関も参加する地域医療連携検討ワーキンググループの協議を踏まえ、平成二十年度から医師が不足する病院への小児科医や産婦人科医の派遣など、主に公的病院間の連携による医師派遣に取り組んでおります。
今年度は、豊橋市民病院から厚生連渥美病院への小児科医の派遣など、八つの病院へ医師を派遣し、一定の成果を上げていることから、今後も継続して実施をしてまいります。
また、医師の確保が難しい地域の中核的な公的病院への支援策として、平成二十一年度から医学部一般入学定員とは別に地域枠として、県内三つの大学に各五名、計十五名の定員を毎年確保しており、現在、在学中の地域枠学生の総数は六十九名となりました。この地域枠で養成された初めての医師の勤務が平成二十九年度から始まりまして、平成三十七年度には地域枠医師の勤務総数が百名に達しますので、地域の中核的な公的病院の勤務医不足の解消に大きく寄与するものと考えております。
次に、安心して産み育てられるまちづくりのための医師の増員への協力についてお答えをいたします。
先ほど申し上げました県内病院における医師不足の影響に関する調査の結果によれば、診療科別の診療制限をしている割合では、議員お示しのとおり、産婦人科で特に高い割合となっており、小児科でも引き続き高い割合が続いております。
一方、二年ごとに実施しております医師・歯科医師・薬剤師調査の推移を見ますと、病院に勤務する産婦人科医の数、小児科医の数ともに、平成十八年十二月末以降は上昇傾向にありますが、産婦人科医については、平成二十四年十二月末時点で平成十二年十二月末の数を下回っている状況にございます。これは、産婦人科では当直回数が多いこと、訴訟リスクが高いこと、そして、女性医師の割合が高く、出産、育児等を契機に職場を離れる者も多いことなどがその背景にあると言われております。
県では、小児科や産婦人科に進む医師を少しでも多くするため、地域枠学生のうち、小児科または産婦人科を志望する五・六年生に対して、奨学金月額十五万円に五万円を加算して貸与する制度を設けております。
また、医学部を有する県内の大学に小児医療及び周産期医療に関する寄附講座を設置し、将来これらの診療領域に進む人材を確保するとともに、寄附講座を通じた周産期医療機関への医師の派遣などを行っております。
今後とも、女性医師の勤務環境を改善する取り組みを引き続き進めるなど、女性医師の割合が多い産婦人科医、小児科医の確保を初め、医師の確保に積極的に努めてまいります。
以上でございます。
56: ◯産業労働部長(小山和久君) 私からは、外国人観光客向けの公衆無線LAN環境の整備についてお答えいたします。
無料で利用できる公衆無線LANは、外国人観光客のニーズも多く、その環境の整備を促進することは、外国人観光客の増加につながるものとして重要であると考えております。
現在、県内でその環境が整っているところは、通信回線や無線機器の設置、維持管理に費用がかかることもあり、中部国際空港、名古屋国際会議場、一部の博物館、商店街、店舗にとどまっております。
国では、六月に取りまとめた観光立国実現に向けたアクション・プログラム二〇一四において、無料で利用できる公衆無線LAN環境の整備を促進することを盛り込んでおります。
これを受けて、先日二十九日には、環境整備の促進、利用できる場所のわかりやすさ、利用手続の簡素化などの取り組みをさらに促進するため、総務省、観光庁、関係事業者等による無料公衆無線LAN整備促進協議会を立ち上げ、各種の取り組みに着手したところです。
県といたしましては、無料で利用できる公衆無線LAN環境の整備について、市町村、観光協会、商工会議所、商工会の今後の取り組みに役立てていただくため、七月に名古屋、岡崎、豊橋の三つの会場で勉強会を開催し、国の動きや全国的な取り組み事例、県の支援制度などを紹介いたしました。
今後も、市町村に対して観光施設費等補助金で支援する制度の周知を図る一方、ホテル、店舗など民間事業者の方々へも、外国人観光客のニーズを伝え、公衆無線LAN環境整備を働きかけるとともに、国の動きも注視しながら、観光施設の公衆無線LAN環境の整備に取り組んでまいりたいと考えております。
57:
◯防災局長(
小林壯行君) 防災上拠点となる施設への公衆無線LANの整備に関するお尋ねであります。
東日本大震災においては、通信が集中し、ふくそうしたことから、固定電話では最大八〇%から九〇%、携帯電話では最大七〇%から九五%の通信規制が実施されたところでございます。
こうしたことを踏まえ、総務省では、平成二十五年度補正予算で防災情報ステーション等整備事業を創設し、避難所等に公衆無線LANの整備等を行う事業に対し助成をしており、県内では、大治町及び豊橋ケーブルネットワーク株式会社の事業が採択されております。
本県といたしましても、被災者への情報提供や被災者相互が安否確認を行う場合において、避難所での通信環境を確保することは極めて有効であると考えております。
現在、本県では、南海トラフ巨大地震等対策事業費補助金により、市町村が行う災害時の情報伝達円滑化事業に助成しており、公衆無線LANの整備の取り組みについても、この補助事業の対象としておりますので、市町村に活用を促してまいります。
以上でございます。
58:
◯知事(
大村秀章君) 稲垣議員の御質問のうち、医療従事者の確保につきまして、西尾市民病院の支援策につきまして、私からもお答えをいたします。
県内病院における医師不足の影響に関する調査の結果を見ますと、特に公的病院での医師不足は深刻な状況にあります。この状況は、西尾市民病院でも同様でありまして、私も大変危惧をいたしております。
医師不足が深刻な公的病院への支援策といたしまして、私は、医師が不足する病院へ赴任させる地域枠の制度に期待をいたしております。
この地域枠の一期生五名が今年度六年生となりました。医師免許取得後、二年間の初期の臨床研修期間を経て、平成二十九年度から医師不足病院に赴任することになりますので、西尾市民病院につきましても、赴任先の対象病院として位置づけてまいりたいと考えております。
いずれにいたしましても、全ての地域におきまして、安心・安全な医療が今後も継続して提供されるよう、県として有効な対策を引き続き検討し、実施してまいりたいと考えております。
59: ◯二番(稲垣昌利君) それぞれ御答弁いただきましたので、私からは、また一つ一つに対して少し御要望させていただきます。
一つ目の、南海トラフ巨大地震の被害予測調査結果についてですが、先ほども申し上げましたが、やはり、まず、一人一人が防災意識を常に高く持ち続けていただくために、防災局さんを通じて、やはり啓発活動というのは常に行っていただきたいと考えております。
また、被害が大きい地域で浸水、津波から守る行動のため、先ほど緊急輸送道路、避難路などということで、名浜道路や西三河南北道路のお話をさせていただきましたが、やはり前向きに、今、御検討いただいていることで大変ありがたいなと思いますが、そうした面も含めて、やはり避難ということ、また、整備状況がなかなか道路は難しいと思いますので、それとはまた違う対策というのを同時に考えていかなければならないかなと考えております。
現在、第三次あいち地震対策アクションプランを策定中であると思いますが、例えば、今回の被害予測調査の結果、西尾市で千八百人が犠牲になりますよというデータが公表されますと、被害のことは公表されたんですけれども、それに対して、今までよりも大きく被害がふえたということに対して、非常に対応が、被害の大きさが目に見えてしまって、対策というものが余り見えてこないことに対して不安を覚える方もたくさんおみえになると思います。
これは、西尾市に限ったことではありませんので、県下全域で、やはり不安に思われている方のために、改めて、これまでと違う、被害が大きくなったということに対しての計画、今まで以上の、それを超えた取り組みを御検討いただきたいなと思っております。
また、矢作川浄化センターのことを今回例に挙げさせていただきましたが、他の地域で、県有施設でも、本来の利用の仕方とは異なっても、同じように対策をとれるというものがあるのではないかなと考えております。
緊急時には、県だとか市だとかそういったこともなく、一丸となって命を守るという対策を、行動がとれるようにあらゆる可能性を御検討いただきたいと思います。
二つ目の、医療従事者、特に病院勤務医の確保についてです。
知事からも西尾市民病院に対して、大変心強いお言葉をいただきましたので、地域も皆頑張っているところでございます。
どうか、愛知県に限らず、医師の確保というのは非常に困難なことであると思いますが、御努力をいただきたいなと思います。
また、先ほど増員ということに関して質問させていただいたんですが、一方で、退職をしないというフォローが必要だと思います。
公立病院の大変厳しい勤務状況に耐え切れずに、一人、二人と医師が退職して、残った医師が地域医療を守るために一生懸命働くんですけれども、結局つらくてやめてしまうということがあると思います。そうしたことがないように、そうした病院勤務医のドクターの先生方に対しての処遇というものも見直していただきたいなと思います。
また、無線LANサービスについてでございますけれども、これは私に限ったことではありませんが、やはり海外へ行こうというときに、そうしたWi─Fiサービスが整っているところというものは、今、自然と調べるかなというふうに思っております。
こうしたことは、観光面、災害面、両面を含めまして、さまざまな面で有効な策だと思っておりますし、県民の皆さんの便益にもつながることだと思っておりますので、今後とも積極的な整備を進められることをお願い申し上げまして、三点御要望させていただきましたが、私の
発言を終わらせていただきます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
60: ◯三十八番(
原よしのぶ君) 本日はこれをもって散会し、明九月二十六日午前十時より本会議を開会されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
61:
◯議長(
三浦孝司君)
原よしのぶ議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
62:
◯議長(
三浦孝司君) 御異議なしと認めます。
明九月二十六日午前十時より本会議を開きます。
日程は
文書をもって配付いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後四時四十六分散会
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