平成28年 11月 定例会(第358回) 第三百五十八回宮城県議会(定例会)会議録 (第一号)平成二十八年十一月二十五日(金曜日) 午後一時開議 午後五時二十一分散会 議長 中山耕一君 議長 中島源陽君 副議長 長谷川洋一君出席議員(五十九名) 第一番 大内真理君 第二番 角野達也君 第三番 内藤隆司君 第四番 高橋 啓君 第五番 鎌田さゆり君 第六番 遠藤伸幸君 第七番 庄田圭佑君 第八番 深谷晃祐君 第九番 遠藤隼人君 第十番 中嶋 廉君 第十一番 福島かずえ君 第十二番 天下みゆき君 第十三番 三浦一敏君 第十四番 佐々木功悦君 第十五番 境 恒春君 第十六番 太田稔郎君 第十七番 横山のぼる君 第十八番 渡辺勝幸君 第十九番 横山隆光君 第二十番 佐々木賢司君 第二十一番 守屋守武君 第二十二番 石川利一君 第二十三番 熊谷義彦君 第二十四番 渡辺忠悦君 第二十五番 遠藤いく子君 第二十六番 すどう 哲君 第二十七番 吉川寛康君 第二十八番 伊藤和博君 第二十九番 長谷川 敦君 第三十番 佐々木幸士君 第三十一番 村上智行君 第三十二番 細川雄一君 第三十三番 高橋伸二君 第三十四番 菊地恵一君 第三十五番 只野九十九君 第三十六番 佐々木喜藏君 第三十七番 石川光次郎君 第三十八番 佐藤光樹君 第三十九番 中島源陽君 第四十番 岸田清実君 第四十一番 菅間進君 第四十二番 坂下賢君 第四十三番 ゆさみゆき君 第四十四番 藤原のりすけ君 第四十五番 坂下やすこ君 第四十六番 庄子賢一君 第四十七番 本木忠一君 第四十八番 中山耕一君 第四十九番 長谷川洋一君 第五十番 安部 孝君 第五十一番 齋藤正美君 第五十二番 安藤俊威君 第五十三番 渥美 巖君 第五十四番 畠山和純君 第五十五番 仁田和廣君 第五十六番 藤倉知格君 第五十七番 相沢光哉君 第五十八番 中沢幸男君 第五十九番 渡辺和喜君
-----------------------------------説明のため出席した者 知事 村井嘉浩君 副知事 若生正博君 副知事 山田義輝君 公営企業管理者 犬飼 章君 総務部長 大塚大輔君 震災復興・企画部長 伊東昭代君 環境生活部長 佐野好昭君 保健福祉部長 渡辺達美君 経済商工観光部長 吉田祐幸君 農林水産部長 後藤康宏君 土木部長 遠藤信哉君 会計管理者兼出納局長 増子友一君 総務部秘書課長 横田 豊君 総務部参事兼財政課長 吉田 直君 教育委員会 教育長 高橋 仁君 教育次長 西村晃一君 選挙管理委員会 委員長 伊東則夫君 事務局長 清水裕之君 人事委員会 委員長 小川竹男君 事務局長 谷関邦康君 公安委員会 委員長 相澤博彦君 警察本部長 中尾克彦君 総務部長 岡崎 晃君 労働委員会 事務局長 正木 毅君 監査委員 委員 成田由加里君 事務局長 武藤伸子君
----------------------------------- 議会事務局 局長 今野 順君 次長兼総務課長 半沢 章君 議事課長 三浦正博君 参事兼政務調査課長 大浦 勝君 総務課副参事兼課長補佐 三浦 理君 副参事兼議事課長補佐 川村 満君 政務調査課副参事兼課長補佐 高橋秀明君 議事課長補佐(班長) 二上秀幸君 議事課主任主査 齋 真
左志君----------------------------------- 議事日程 第一号 平成二十八年十一月二十五日(金)午後一時開議第一 会議録署名議員の指名第二 会期の決定について第三 議長の辞職許可第四 宮城県議会(仮称)森林・林業条例検討委員会の設置第五 発議第二号議案 県議会議員の議員報酬等に関する条例の一部を改正する条例第六 議第二百七十一号議案 平成二十八年度宮城県一般会計補正予算第七 議第二百七十二号議案 平成二十八年度宮城県
流域下水道事業特別会計補正予算第八 議第二百七十三号議案 平成二十八年度宮城県
港湾整備事業特別会計補正予算第九 議第二百七十四号議案 行政機関設置条例の一部を改正する条例第十 議第二百七十五号議案 職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例第十一 議第二百七十六号議案 特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例第十二 議第二百七十七号議案 職員の勤務時間、休暇等に関する条例の一部を改正する条例第十三 議第二百七十八号議案 職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例第十四 議第二百七十九号議案 事務処理の特例に関する条例及び特定非営利活動促進法施行条例の一部を改正する条例第十五 議第二百八十号議案 事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例第十六 議第二百八十一号議案 県立都市公園条例の一部を改正する条例第十七 議第二百八十二号議案 学校職員の勤務時間、休暇等に関する条例の一部を改正する条例第十八 議第二百八十三号議案 公安委員会関係手数料条例の一部を改正する条例第十九 議第二百八十四号議案 当せん金付証票の発売限度額について第二十 議第二百八十五号議案 指定管理者の指定について(宮城県蔵王野鳥の森自然観察センター)第二十一 議第二百八十六号議案 指定管理者の指定について(宮城県クレー射撃場)第二十二 議第二百八十七号議案 指定管理者の指定について(宮城県県民の森)第二十三 議第二百八十八号議案 指定管理者の指定について(宮城県昭和万葉の森)第二十四 議第二百八十九号議案 指定管理者の指定について(宮城県援護寮)第二十五 議第二百九十号議案 指定管理者の指定について(松岩漁港の指定施設)第二十六 議第二百九十一号議案 指定管理者の指定について(日門漁港の指定施設)第二十七 議第二百九十二号議案 指定管理者の指定について(塩釜漁港の指定施設(物揚場、岸壁、護岸及び桟橋横泊地))第二十八 議第二百九十三号議案 指定管理者の指定について(塩釜漁港の指定施設(越の浦泊地))第二十九 議第二百九十四号議案 指定管理者の指定について(女川漁港の指定施設(南防波堤横泊地及び物揚場護岸横泊地))第三十 議第二百九十五号議案 指定管理者の指定について(仙台塩釜港仙台港区港湾環境整備施設(中央公園及びリバーウォーク))第三十一 議第二百九十六号議案 指定管理者の指定について(宮城県宮城野原公園総合運動場(宮城球場及び駐車場以外の施設))第三十二 議第二百九十七号議案 指定管理者の指定について(宮城県第二総合運動場(宮城県仙南総合プール及び宮城県長沼ボート場以外の施設))第三十三 議第二百九十八号議案 指定管理者の指定について(宮城県仙南総合プール)第三十四 議第二百九十九号議案 指定管理者の指定について(宮城県総合運動公園(宮城スタジアム、宮城スタジアム補助競技場、投てき場、総合体育館、総合プール、テニスコート及び合宿所並びにそれらの周辺の公園施設並びに宮城県サッカー場))第三十五 議第三百号議案 県道の路線認定について(一般県道美田園増田線)第三十六 議第三百一号議案 県道の路線廃止について(一般県道杉ヶ袋増田線)第三十七 議第三百二号議案 和解について第三十八 議第三百三号議案 和解及び損害賠償の額の決定について第三十九 議第三百四号議案 公立大学法人宮城大学の定款変更について第四十 議第三百五号議案 公立大学法人宮城大学が達成すべき業務運営に関する目標の変更について第四十一 議第三百六号議案
地方独立行政法人宮城県立病院機構が達成すべき業務運営に関する目標の変更について第四十二 議第三百七号議案 工事委託契約の締結について(
一般県道石巻女川線浦宿こ線橋新設工事)第四十三 議第三百八号議案 工事委託契約の締結について(八幡川護岸等災害復旧工事)第四十四 議第三百九号議案 工事請負契約の締結について(一般国道三百九十八号内海橋(仮称)災害復旧工事(その三))第四十五 議第三百十号議案 工事請負契約の締結について(一般県道石巻工業港矢本線定川大橋災害復旧工事(その二))第四十六 議第三百十一号議案 工事請負契約の締結について(皿貝川等護岸等災害復旧工事)第四十七 議第三百十二号議案 工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区航路等災害復旧及び浚渫工事)第四十八 議第三百十三号議案 工事請負契約の締結について(仙台塩釜港仙台港区防潮堤建設工事)第四十九 議第三百十四号議案 工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤建設工事(その十一))第五十 議第三百十五号議案 工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤建設工事(その十二))第五十一 議第三百十六号議案 工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤災害復旧及び建設工事(その二))第五十二 議第三百十七号議案 工事請負契約の締結について(雄勝港防潮堤等災害復旧工事(その一))第五十三 議第三百十八号議案 工事請負契約の締結について(雄勝港防潮堤等災害復旧工事(その二))第五十四 議第三百十九号議案 工事請負契約の締結について(
都市計画道路矢本門脇線大曲道路等災害復旧及び改築工事)第五十五 議第三百二十号議案 工事請負契約の締結について(宮城県
農業高等学校校舎等災害復旧工事(その六))第五十六 議第三百二十一号議案 工事請負変更契約の締結について(寒風沢地区海岸堤防災害復旧工事(その一))第五十七 議第三百二十二号議案 工事請負変更契約の締結について(寒風沢地区海岸堤防災害復旧工事(その二))第五十八 議第三百二十三号議案 工事請負変更契約の締結について(寒風沢地区海岸堤防災害復旧工事(その四))第五十九 議第三百二十四号議案 工事請負変更契約の締結について(五ヶ村堀排水機場建設工事)第六十 議第三百二十五号議案 工事請負変更契約の締結について(大谷工区農地災害復旧及び区画整理工事)第六十一 議第三百二十六号議案 工事請負変更契約の締結について(名取地区区画整理工事(その三))第六十二 議第三百二十七号議案 工事請負変更契約の締結について(名取地区農地災害復旧及び区画整理工事(その三))第六十三 議第三百二十八号議案 工事請負変更契約の締結について(磯地区区画整理工事)第六十四 議第三百二十九号議案 工事請負変更契約の締結について(廻館工区農地災害復旧及び区画整理工事)第六十五 議第三百三十号議案 工事請負変更契約の締結について(渡波漁港防波堤等災害復旧及び防潮堤新築工事)第六十六 議第三百三十一号議案 工事請負変更契約の締結について(五間堀川護岸等災害復旧工事(その三))第六十七 議第三百三十二号議案 工事請負変更契約の締結について(五間堀川護岸等災害復旧工事(その四))第六十八 議第三百三十三号議案 工事請負変更契約の締結について(
菖蒲田地区海岸堤防等災害復旧工事)第六十九 議第三百三十四号議案 工事請負変更契約の締結について(大川等護岸等災害復旧工事)第七十 議第三百三十五号議案 専決処分の承認を求めることについて(控訴の提起)第七十一 議第三百三十六号議案 専決処分の承認を求めることについて(調停案の受諾及び損害賠償の額の決定)第七十二 報告第二百八十八号 専決処分の報告について(寒風沢地区海岸堤防災害復旧工事(その三)の請負契約の変更)第七十三 報告第二百八十九号 専決処分の報告について(荒浜第一排水機場機械設備工事の請負契約の変更)第七十四 報告第二百九十号 専決処分の報告について(五ヶ村堀排水機場機戒設備工事の請負契約の変更)第七十五 報告第二百九十一号 専決処分の報告について(岩沼地区農地災害復旧及び区画整理工事(その三)の請負契約の変更)第七十六 報告第二百九十二号 専決処分の報告について(松島湾沿岸漁場整備工事の請負契約の変更)第七十七 報告第二百九十三号 専決処分の報告について(
石巻漁港雨水排水ポンプ場建設工事の請負契約の変更)第七十八 報告第二百九十四号 専決処分の報告について(波路上漁港防波堤等災害復旧工事の請負契約の変更)第七十九 報告第二百九十五号 専決処分の報告について(渡波漁港桟橋等災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第八十 報告第二百九十六号 専決処分の報告について(
渡波漁港防潮堤災害復旧工事の請負契約の変更)第八十一 報告第二百九十七号 専決処分の報告について(志津川漁港防波堤等補修工事の請負契約の変更)第八十二 報告第二百九十八号 専決処分の報告について(閖上漁港広浦橋架換(下部工)工事の請負契約の変更)第八十三 報告第二百九十九号 専決処分の報告について(
渡波漁港防潮堤災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第八十四 報告第三百号 専決処分の報告について(閖上漁港防潮堤新築工事(その二)の請負契約の変更)第八十五 報告第三百一号 専決処分の報告について(一般国道三百九十八号内海橋(仮称)災害復旧工事の請負契約の変更)第八十六 報告第三百二号 専決処分の報告について(
一般県道大島浪板線小々汐道路改良工事の請負契約の変更)第八十七 報告第三百三号 専決処分の報告について(一般県道石巻工業港矢本線定川大橋災害復旧工事の請負契約の変更)第八十八 報告第三百四号 専決処分の報告について(
主要地方道気仙沼唐桑線浪板橋災害復旧工事の請負契約の変更)第八十九 報告第三百五号 専決処分の報告について(一般県道石巻女川線浦宿橋(仮称)新設(下部工)工事の請負契約の変更)第九十 報告第三百六号 専決処分の報告について(
大島地区海岸護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第九十一 報告第三百七号 専決処分の報告について(
南貞山運河護岸等災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第九十二 報告第三百八号 専決処分の報告について(
南北上運河護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第九十三 報告第三百九号 専決処分の報告について(砂押川等護岸等災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第九十四 報告第三百十号 専決処分の報告について(
新井田川等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第九十五 報告第三百十一号 専決処分の報告について(沖ノ田川護岸等災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第九十六 報告第三百十二号 専決処分の報告について(長清水川護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第九十七 報告第三百十三号 専決処分の報告について(坂元川等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第九十八 報告第三百十四号 専決処分の報告について(
港川護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第九十九 報告第三百十五号 専決処分の報告について(
水戸辺川等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百 報告第三百十六号 専決処分の報告について(定川護岸等災害復旧工事(その五)の請負契約の変更)第百一 報告第三百十七号 専決処分の報告について(
大谷川地区海岸等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百二 報告第三百十八号 専決処分の報告について(戸花川護岸等災害復旧工事(その一)の請負契約の変更)第百三 報告第三百十九号 専決処分の報告について(中島川等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百四 報告第三百二十号 専決処分の報告について(面瀬川等堤防等災害復旧工事の請負契約の変更)第百五 報告第三百二十一号 専決処分の報告について(相川沢川護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百六 報告第三百二十二号 専決処分の報告について(南貞山運河(七北田川水系)等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百七 報告第三百二十三号 専決処分の報告について(坂元川等護岸等災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第百八 報告第三百二十四号 専決処分の報告について(定川護岸等災害復旧工事(その六)の請負契約の変更)第百九 報告第三百二十五号 専決処分の報告について(
津谷川等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百十 報告第三百二十六号 専決処分の報告について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤建設工事(その四)の請負契約の変更)第百十一 報告第三百二十七号 専決処分の報告について(仙台塩釜港塩釜港区桟橋等災害復旧工事(その三)の請負契約の変更)第百十二 報告第三百二十八号 専決処分の報告について(仙台塩釜港塩釜港区防潮堤等災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第百十三 報告第三百二十九号 専決処分の報告について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤建設工事(その六)の請負契約の変更)第百十四 報告第三百三十号 専決処分の報告について(仙台塩釜港松島港区胸壁等災害復旧及び建設工事の請負契約の変更)第百十五 報告第三百三十一号 専決処分の報告について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤建設工事(その九)の請負契約の変更)第百十六 報告第三百三十二号 専決処分の報告について(気仙沼港防潮堤等災害復旧工事の請負契約の変更)第百十七 報告第三百三十三号 専決処分の報告について(都市計画道路矢本門脇線新定川大橋(仮称)新設(下部工)工事の請負契約の変更)第百十八 報告第三百三十四号 専決処分の報告について(南三陸町
志津川西地区災害公営住宅新築工事(その二)の請負契約の変更)第百十九 報告第三百三十五号 専決処分の報告について(和解及び損害賠償の額の決定)第百二十 報告第三百三十六号 専決処分の報告について(県営住宅等の明渡請求等に係る訴えの提起)第百二十一 報告第三百三十七号 専決処分の報告について(交通事故に係る和解及び損害賠償の額の決定)第百二十二
大震災復興調査特別委員会調査結果報告第百二十三 人口減少・若者対策調査特別委員会調査結果報告第百二十四 いじめ・不登校等調査特別委員会調査結果報告第百二十五
産業振興対策調査特別委員会調査結果報告第百二十六
東北広域観光振興調査特別委員会調査結果報告第百二十七 議会運営委員の選任第百二十八 常任委員の選任第百二十九 予算特別委員会の
設置----------------------------------- 会議に付した事件一 日程第一 会議録署名議員の指名二 日程第二 会期の決定について三 日程第三 議長の辞職許可四 日程追加 議長の選挙五 日程第四 宮城県議会(仮称)森林・林業条例検討委員会の設置六 日程第五 発議第二号議案七 日程第六ないし日程第百二十一 議第二百七十一号議案ないし議第三百三十六号議案及び報告第二百八十八号ないし報告第三百三十七号八 日程第百二十二
大震災復興調査特別委員会調査結果報告九 日程第百二十三 人口減少・若者対策調査特別委員会調査結果報告十 日程第百二十四 いじめ・不登校等調査特別委員会調査結果報告十一 日程第百二十五
産業振興対策調査特別委員会調査結果報告十二 日程第百二十六
東北広域観光振興調査特別委員会調査結果報告十三 日程第百二十七 議会運営委員の選任十四 日程第百二十八 常任委員の選任十五 日程第百二十九 予算特別委員会の設置-----------------------------------
△開会(午後一時)
○副議長(長谷川洋一君) 第三百五十八回宮城県議会を開会いたします。-----------------------------------
△開議
○副議長(長谷川洋一君) これより本日の会議を開きます。 本日の議事日程は、お手元に配布のとおりであります。-----------------------------------
△会議録署名議員の指名
○副議長(長谷川洋一君) 日程第一、会議録署名議員の指名を行います。 会議録署名議員に、八番深谷晃祐君、九番遠藤隼人君を指名いたします。-----------------------------------
△議長発言
○副議長(長谷川洋一君) この際、謹んで申し上げます。 三笠宮崇仁親王殿下には、十月二十七日、にわかに薨去されましたこと、まことに痛惜の念にたえません。 ここに、ありし日の三笠宮崇仁親王殿下をしのび、衷心より御冥福をお祈り申し上げます。 二十二日の早朝、福島県沖を震源とした地震と津波が発生し、その後も地震が続いております。 漁業関係者を初めとして、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。-----------------------------------
△表彰状伝達
○副議長(長谷川洋一君) 御報告いたします。 十月二十五日に開催されました全国都道府県議会議長会定例総会において、議員在職二十五年以上及び十年以上の永年勤続功労者として表彰された方々がおられます。 心からお祝いを申し上げます。 ただいまから表彰状及び記念品の伝達を行います。
◎議会事務局議事課長(三浦正博君) それでは、表彰状と記念品の伝達を受けられる方々のお名前を申し上げますので、御登壇をお願いいたします。 初めに、在職二十五年以上の方々を申し上げます。相沢光哉殿。 〔相沢光哉君登壇〕
○副議長(長谷川洋一君) 表彰状 相澤光哉殿 あなたは宮城県議会議員として在職二十五年以上に及び地方自治の発展に努力された功績はまことに顕著であります よってここにその功労をたたえ表彰します 平成二十八年十月二十五日 全国都道府県議会議長会 (拍手)
◎議会事務局議事課長(三浦正博君) 藤倉知格殿。 〔藤倉知格君登壇〕
○副議長(長谷川洋一君) 表彰状 藤倉知格殿 以下同文でございます。 (拍手)
◎議会事務局議事課長(三浦正博君) 坂下やすこ殿。 〔坂下やすこ君登壇〕
○副議長(長谷川洋一君) 表彰状 坂下康子殿 以下同文でございます。 (拍手)
◎議会事務局議事課長(三浦正博君) 次に、在職十年以上の方を申し上げます。佐々木喜藏殿。 〔佐々木喜藏君登壇〕
○副議長(長谷川洋一君) 表彰状 佐々木喜藏殿 あなたは宮城県議会議員として在職十年以上に及び地方自治の発展に努力された功績はまことに顕著であります よってここにその功労をたたえ表彰します 平成二十八年十月二十五日 全国都道府県議会議長会 (拍手)
○副議長(長谷川洋一君) 以上をもって、伝達を終わります。-----------------------------------
△諸報告
○副議長(長谷川洋一君) 御報告いたします。 お手元に配布のとおり、宮城県議会会議規則第百三十条第一項のただし書きの規定により、宮城県議会議会改革推進会議の検討事項に関する調査に議員を派遣いたしました。 地方自治法第百二十一条の規定により、お手元に配布のとおり、議場出席者の通知がありました。…………………………………………………………………………………………… 議場出席者名簿 第358回県議会(平成28年11月定例会) 知事 村井嘉浩 副知事 若生正博 副知事 山田義輝 公営企業管理者 犬飼 章 総務部長 大塚大輔 震災復興・企画部長 伊東昭代 環境生活部長 佐野好昭 保健福祉部長 渡辺達美 経済商工観光部長 吉田祐幸 農林水産部長 後藤康宏 土木部長 遠藤信哉 会計管理者兼出納局長 増子友一 総務部秘書課長 横田 豊 総務部参事兼財政課長 吉田 直 教育委員会 教育長 高橋 仁 教育次長 西村晃一 選挙管理委員会 委員長 伊東則夫 事務局長 清水裕之 人事委員会 委員長 小川竹男 事務局長 谷関邦康 公安委員会 委員長 相澤博彦 警察本部長 中尾克彦 総務部長 岡崎 晃 労働委員会 事務局長 正木 毅 監査委員 委員 成田由加里 事務局長 武藤伸子-----------------------------------
△会期の決定
○副議長(長谷川洋一君) 日程第二、会期の決定についてを議題といたします。 お諮りいたします。 今回の会期は、本日から十二月十五日までの二十一日間といたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(長谷川洋一君) 御異議なしと認めます。 よって、会期は二十一日間と決定いたしました。-----------------------------------
△議長の辞職許可
○副議長(長谷川洋一君) 日程第三、議長の辞職許可についてを議題といたします。 議長中山耕一君から、議長の辞職願が提出されました。 お諮りいたします。 中山耕一君の議長辞職を許可することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(長谷川洋一君) 御異議なしと認めます。 よって、中山耕一君の議長辞職は許可されました。-----------------------------------
△議長の選挙
○副議長(長谷川洋一君) お諮りいたします。 議長が欠員になりましたので、この際、日程に追加して、直ちに議長の選挙を行いたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(長谷川洋一君) 御異議なしと認めます。 よって、日程に追加し、直ちに議長の選挙を行うことに決定いたしました。 議長の選挙を行います。 選挙は、投票により行います。 議場の閉鎖を命じます。 〔議場閉鎖〕
○副議長(長谷川洋一君) ただいまの出席議員数は、五十九名であります。 お諮りいたします。 宮城県議会会議規則第三十一条第二項の規定により、立会人に、二十八番伊藤和博君、三十四番菊地恵一君を指名いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(長谷川洋一君) 御異議なしと認めます。 よって、立会人に、二十八番伊藤和博君、三十四番菊地恵一君を指名いたします。 念のため申し上げます。 投票は、単記無記名であります。 投票用紙に被選挙人の氏名を記載の上、職員の点呼に応じ、順次投票願います。 投票用紙を配布いたします。 〔投票用紙配布〕
○副議長(長谷川洋一君) 投票用紙の配布漏れはありませんか。--配布漏れなしと認めます。 投票箱を改めます。--異状なしと認めます。 これより投票を行います。 職員に点呼を命じます。
◎議会事務局議事課長(三浦正博君) 一番。二番。三番。四番。五番。六番。七番。八番。九番。十番。十一番。十二番。十三番。十四番。十五番。十六番。十七番。十八番。十九番。二十番。二十一番。二十二番。二十三番。二十四番。二十五番。二十六番。二十七番。二十八番。二十九番。三十番。三十一番。三十二番。三十三番。三十四番。三十五番。三十六番。三十七番。三十八番。三十九番。四十番。四十一番。四十二番。四十三番。四十四番。四十五番。四十六番。四十七番。四十八番。五十番。五十一番。五十二番。五十三番。五十四番。五十五番。五十六番。五十七番。五十八番。五十九番。四十九番。
○副議長(長谷川洋一君) 投票漏れはありませんか。--投票漏れなしと認めます。 投票を終了いたします。 これより開票を行います。 立会人の立ち会いをお願いいたします。 〔開票〕
○副議長(長谷川洋一君) 選挙の結果を御報告いたします。 投票総数五十九票。有効投票五十八票。無効投票一票。 有効投票中、 中島源陽君 二十五票 藤原のりすけ君 二十二票 守屋守武君 九票 中沢幸男君 二票 以上のとおりであります。 この選挙の法定得票数は、十五票であります。 よって、中島源陽君が議長に当選されました。 議場の閉鎖を解きます。 〔議場開鎖〕
○副議長(長谷川洋一君) ただいま議長に当選されました中島源陽君が議場におられますので、本席から、宮城県議会会議規則第三十二条第二項の規定により、当選の告知をいたします。-----------------------------------
△議長あいさつ
○副議長(長谷川洋一君) 議長に当選されました中島源陽君からごあいさつがあります。 〔三十九番 中島源陽君登壇〕
◆三十九番(中島源陽君) ただいま議員の皆様方の御賛同を賜り、第四十一代宮城県議会議長に御推挙をいただきました。議長として果たさなければならない責任の重さと与えられた課題の大きさに改めて身の引き締まる思いをいたしております。皆様のお力添えをいただきながら、何としても議会改革をなし遂げなければならないという決意を強くしております。 今、宮城県議会は選出された議長が二代続けて政務活動費をめぐる問題を受け、辞任するという危機的な状況にあります。失われた県民の皆様からの信頼を取り戻す道のりは極めて厳しく困難です。 しかしながら、この問題を乗り越えなければ、議会が本来担っている役割を十分に果たすことは不可能であります。現在、議会改革推進会議の中で議論が進められておりますが、今後、私を初め全議員一人一人が覚悟をもって政務活動費における制度及び運用の改革を進めることが必要不可欠であると考えております。 その上で、最重要課題である東日本大震災からの復旧・復興の加速化に、もとより微力ではございますが、全力で取り組んでまいる所存であります。 議員の皆様、そして、村井知事を初め執行部の皆様方の、なお一層の御支援、御鞭撻をお願い申し上げて、議長就任のあいさつとさせていただきます。(拍手)
○副議長(長谷川洋一君) ここで議長と交代いたします。 〔副議長退席・議長着席〕……………………………………………………………………………………………
○議長(中島源陽君) 暫時休憩いたします。 午後一時三十一分休憩----------------------------------- 午後三時四十分再開
○議長(中島源陽君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。-----------------------------------
△宮城県議会(仮称)森林・林業条例検討委員会の設置
○議長(中島源陽君) 議事に移ります。 日程第四、宮城県議会(仮称)森林・林業条例検討委員会の設置を議題といたします。 お諮りいたします。 お手元に配布のとおり、宮城県議会会議規則第百二十九条第二項本文の規定に基づき、宮城県議会(仮称)森林・林業条例検討委員会を設置することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中島源陽君) 御異議なしと認めます。 よって、さように決定いたしました。…………………………………………………………………………………………… 宮城県議会(仮称)森林・林業条例検討委員会の設置 宮城県議会会議規則(昭和五十年宮城県議会規則)第百二十九条第二項本文の規定により、次の協議等の場を設ける。一 名称 宮城県議会(仮称)森林・林業条例検討委員会二 目的 林産業の振興等を目的とする条例案の協議三 構成員 各会派の推薦を受けて議長が指名する議員四 招集者 委員長五 期間 設置の日から平成三十年三月三十一日までとする。-----------------------------------
△発議第二号議案
○議長(中島源陽君) 日程第五、発議第二号議案、県議会議員の議員報酬等に関する条例の一部を改正する条例を議題といたします。……………………………………………………………………………………………発議第二号議案 県議会議員の議員報酬等に関する条例の一部を改正する条例 右の議案を別紙のとおり地方自治法第百十二条第一項及び宮城県議会会議規則第十五条第一項の規定により提出します。 平成二十八年十一月二十五日 提出者 議員 佐藤光樹 賛成者 議員 藤原のりすけ 庄子賢一 岸田清実 菅間 進 吉川寛康 宮城県議会議長 中山耕一殿……………………………………………………………………………………………
△県議会議員の議員報酬等に関する条例の一部を改正する条例 県議会議員の議員報酬等に関する条例(平成十二年宮城県条例第九十五号)の一部を次のように改正する。 第五条第三項中「百分の百六十五」を「百分の百七十」に改める。 附則 (施行期日等)1 この条例は、公布の日から施行し、改正後の県議会議員の議員報酬等に関する条例(以下「新条例」という。)の規定は、平成二十八年十二月一日から適用する。 (期末手当の内払)2 新条例の規定を適用する場合においては、改正前の県議会議員の議員報酬等に関する条例の規定に基づいて支給された期末手当は、新条例の規定による期末手当の内払とみなす。……………………………………………………………………………………………提案理由 人事委員会勧告に伴う一般職職員の勤勉手当の改定状況及び特別職職員の期末手当の改定状況を考慮し、議員の期末手当の支給割合を改定するものである。これが、この条例案を提案する理由である。-----------------------------------
○議長(中島源陽君) お諮りいたします。 本発議案については、提出者の説明を省略することにいたしたいと思います。 これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中島源陽君) 御異議なしと認めます。 よって、提出者の説明を省略することに決定いたしました。
○議長(中島源陽君) これより質疑に入ります。 本発議案に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。-----------------------------------
△議第二百七十一号議案ないし議第三百三十六号議案報告第二百八十八号ないし報告第三百三十七号
○議長(中島源陽君) 日程第六ないし日程第百二十一、議第二百七十一号議案ないし議第三百三十六号議案及び報告第二百八十八号ないし報告第三百三十七号を一括して議題といたします。 知事から提案理由の説明を求めます。知事村井嘉浩君。 〔知事 村井嘉浩君登壇〕
◎知事(村井嘉浩君) 本日ここに第三百五十八回宮城県議会において、平成二十八年度一般会計補正予算案を初めとする提出議案を御審議いただくに当たり、最近の県政の動きと議案の概要を御説明申し上げます。 説明に先立ち、先月二十七日、三笠宮崇仁親王殿下におかれましては、にわかに御容体が悪化され御快癒の祈りもむなしく薨去されました。ここに謹んで哀悼の誠をささげるものであります。 殿下は学術や文化を初めスポーツの振興など、さまざまな分野における幅広い御活動で国民の敬愛を受けてこられました。宮城県では、昭和六十二年に東北博覧会へ御臨席を賜るなど御来県の折には多くの県民と親しく触れ合っていただきました。ありし日の殿下のお姿を偲び、県民の皆様とともに衷心より御冥福をお祈り申し上げます。 先ほど御披露と伝達がありましたとおり、相沢光哉議員、藤倉知格議員、坂下やすこ議員、佐々木喜藏議員におかれましては、長年にわたり地方自治の発展に尽力された御功績により、全国都道府県議会議長会から晴れの表彰をお受けになりました。ここに、県民の皆様とともに心からお祝いを申し上げ、御功労に対し深く敬意を表するものであります。なお一層御自愛の上、県勢発展のため、今後とも御活躍いただきますよう御期待申し上げます。 二十二日の早朝に発生した地震と津波に係る県の対応について申し上げます。 県では、津波注意報の発令と同時に警戒本部を設置し、全庁挙げて警戒態勢を整えるとともに、被害状況や市町村の対応に関する情報収集に努めました。現在、漁業関係施設を初め被害の状況を取りまとめているところでありますが、被災された方々に心からお見舞いを申し上げるとともに、関係市町村と連携しながら、復旧に向けしっかり対応してまいりたいと考えております。 また、先月、鳥取県中部において最大震度六弱を観測した地震で被災された方々にお見舞いを申し上げます。 発災後、私から鳥取県知事に連絡をとり、要請に応じて直ちに応急危険度判定のための職員を現地に派遣いたしました。災害はいつどこで発生するかわからず、改めて防災意識の維持、向上の重要性が浮き彫りになったものと受けとめており、本県におきましても、市町村を初めとする関係機関との連携を一層強力にしながら、確実な災害対策の推進に努めてまいりたいと考えております。 それでは、御説明いたします。 初めに、東日本大震災からの復興に向けた取り組みの状況についてであります。 防災集団移転促進事業による宅地造成や災害公営住宅の建設など、生活再建に向けた基盤整備は着実に進んでおり、先月二十三日には、つばめの杜など山元町の二地区でまちびらきが行われました。町が掲げたコンパクトシティの理念を具現化するものであり、復興の象徴の一つとして感慨を覚える次第であります。その一方、仮設住宅にはいまだ二万六千人余りの方々が入居されている状況でありますことから、今後も被災された方々が一日も早く自立され、落ちついた暮らしに戻れるよう、他の地域においても鋭意整備を進めるとともに、被災者転居支援センターによる住まいの相談や地域コミュニティーの再生など、きめ細かな支援を継続してまいります。 放射性物質に汚染された廃棄物に関しましては、国及び県が四月以降に実施した濃度測定の結果を踏まえ、今月三日に開催した市町村長会議において、指定廃棄物を除く八千ベクレル以下の廃棄物について、県内の焼却施設での混焼による一斉処理を私から提案いたしました。早期の処理には市町村の分担、協力が不可欠であり、来月に再度、市町村長会議を開催した上で意見を集約し、速やかに試験焼却に着手できる環境を整えたいと考えております。 三陸縦貫自動車道は、先月三十日に志津川インターチェンジまで開通し、今年度中には南三陸海岸インターチェンジまで延伸される見通しであり、また、JR常磐線は来月十日に浜吉田駅から相馬駅の区間で運行が再開される予定となっており、いずれも早期復興と地域活性化に大きく寄与するものと期待しております。農地、園芸施設や漁港、加工場などの生産施設、設備の復旧は着実に進んでいるところであり、これにあわせ引き続き販路の回復や開拓、担い手の育成などにも注力してまいります。 東京オリンピック・パラリンピックへの対応につきましては、九月末に東京都の都政改革本部においてボート、カヌー・スプリント競技の会場を長沼ボート場に変更する案が浮上したことから、先月、小池知事や競技団体関係者に現地を視察いただき、本県での開催の利点や復興五輪の意義を強く訴えるとともに、私自身も率先して広く情報発信に努めました。開催地の検討は東京都や大会組織委員会などの四者協議で進められておりますが、県といたしましては、アピールを継続するなど必要な対応を行ってまいります。また、今回の長沼での競技開催に向けた取り組みに当たりまして、議員各位を初め多くの県民の方々から大変心強い御支援と励ましをいただいておりますことに改めて感謝を申し上げます。本県では、ひとめぼれスタジアム宮城においてサッカー競技の一部が行われる予定であるほか、仙台市及び蔵王町がホストタウンの登録を行い、更には事前合宿や聖火リレーの誘致といった動きもありますことから、引き続き議員各位の御協力をいただきながら市町村や関係団体と連携し、復興した本県の元気な姿と支援への感謝を全世界に発信できるよう積極的に取り組んでまいりたいと考えております。 次に、震災関連以外の県政の状況と主な動きについてであります。 このところの経済情勢についてですが、今月内閣府が発表した七月から九月期の国内総生産の速報値は、年率換算で実質二・二%増と三期連続のプラスになりました。個人消費や企業の設備投資に弱さも見られるものの、景気は緩やかな回復基調が続いております。県内においては、九月の有効求人倍率は一・四五倍と七カ月連続で一・四倍を超え、全国平均を上回る状況が続いているほか、生産は持ち直しの基調にあり、企業活動は総じて見れば好調を維持しているものと認識しております。 地域医療についてですが、まず、循環器・呼吸器病センターにつきましては、結核を初めとする医療機能を県北地域の基幹病院に移管する方向で栗原市等と協議を継続しているところであります。関係者や地域の皆様の御理解をいただきながら、円滑な移行のため必要となる結核病棟の整備や現施設の利活用など、移管に係る手続を引き続き着実に推進してまいりたいと考えております。また、ドクターヘリにつきましては、先月二十八日から運航を開始いたしました。早期の初期治療着手と搬送時間の短縮により、救命率の向上や後遺症の軽減に大きく寄与するものであり、今後、一人でも多くの救命救助が可能となるよう万全の体制で取り組んでまいります。 東北地方への誘致に向け、東北大学や東北経済連合会とともに国に強く働きかけてきた放射光施設については、今般、本格的な検討に着手されることとなり、今月七日には文部科学省の科学技術・学術審議会に置かれている量子ビーム利用推進小委員会が開催されました。実現に向けた大きな一歩ではありますが、検討は緒についたばかりであり、まずは国に施設の必要性を認めていただくことが肝要であると認識しております。期待の大きいこのプロジェクトが着実に前進するよう、しっかり対応してまいりたいと考えております。 本年産米の概算金については、需給バランスの改善により二年連続で上昇したものの、消費量の低迷や産地間競争の激化など、米を取り巻く環境は厳しさを増しております。本県では今年度、みやぎ米ブランド化戦略会議を設置したところですが、新品種「東北二百十号」や玄米食専用品種「金のいぶき」も含めた生産、販売戦略の構築に取り組み、米どころ宮城の復活を期してまいります。 なお、今月、TPP承認案と関連法案が衆議院で可決されましたが、農林漁業者の方々の不安や懸念を払拭するため、国には引き続き丁寧な説明を求めるとともに万全の対策を講じるよう働きかけを継続してまいります。また、県といたしましても、成長産業としての力強い農林水産業を目指し、国の対策事業も活用しながら収益性や競争力の向上に努めてまいります。 次に、今後の県政運営の基本的な考え方についてであります。 震災復興計画における再生期の最終年度となる来年度の予算編成に先立ち、先月末に公表した平成二十九年度政策財政運営の基本方針に示したとおり、来年度も迅速な震災復興を初めとした四つの政策推進の基本方向のもと、これまでの取り組みの進捗状況及び復興の進展に伴い顕在化した課題を踏まえ、被災者の生活再建や地域産業の再生など、引き続き復旧・復興に最優先で取り組むとともに、人口減少対策や地域経済活性化など地方創生の取り組みを推進してまいります。 また、来年度予算の編成に当たっては、国の支援や制度を最大限活用するとともに、県の独自財源も積極的に活用し、震災復興計画に掲げた施策の円滑な実施に万全を期してまいります。更に、通常の事務事業は引き続き徹底して見直しを行った上で、地方創生や公共施設の老朽化対策など新たな課題解決のための施策にも重点を置くなど、一層のめり張りによって将来にわたる財政の健全性確保にも留意した予算編成を図ってまいりたいと考えております。 今回御審議をお願いいたします補正予算案の主な内容ですが、先月成立した未来への投資を実現する経済対策に係る国の補正予算への対応としまして、三陸縦貫自動車道の気仙沼道路及び歌津本吉道路や北上川、仙台塩釜港石巻港区などの整備に係る国直轄事業負担金を追加措置し、道路橋梁、河川、街路、土地改良などの公共事業を増額しておりますほか、農業の共同利用施設の整備やリース方式による農業用機械の導入、木材加工流通施設の整備などのTPP対策を推進してまいります。医療福祉分野では有床診療所等におけるスプリンクラー整備や民間の障害福祉サービス事業所等の整備を促進してまいります。更に、塩竈市の小学校の空き教室を活用した特別支援学校の分校の施設整備を進めてまいります。 震災関連事業としましては、先月国に提出した第十六回申請分の復興交付金の全額を基金に積み立てるとともに、これを財源として気仙沼市や山元町における圃場整備や南三陸町内の国道三百九十八号の整備のほか、石巻南浜津波復興祈念公園及び岩沼海浜緑地の整備等を進めてまいります。また、復興交付金以外では、東北観光復興対策交付金を活用した東北連携による外国人観光客の誘客促進に取り組むとともに、仙台空港の運用時間の延長に係る基礎調査に着手いたします。 八月の台風十号等による災害については、被災した港湾、漁港などの復旧経費や被災養殖施設の復旧への助成費を計上し、早期の復旧に努めてまいります。また、県立の障害者支援施設及び児童福祉施設の防犯対策を強化することとし、所要の経費を計上しているほか、地方創生関係では国の交付金を活用し、水産物の販路拡大や外資系企業の県内への投資促進などに取り組んでまいります。 このほか地方財政法に基づいて平成二十七年度一般会計決算剰余金を財政調整基金に積み立て、また、不用額を関係基金に積み戻すとともに循環器・呼吸器病センターの医療機能移管に伴う結核病棟整備にかかる設計費、河川管理や道路の除融雪、区画線工事など、年度末から年度初めにかけて行う必要のある公共事業費、更に指定管理者制度による公共施設管理運営業務委託費などについて債務負担行為を設定しております。 なお、一般職の職員の給与については、先月、人事委員会から月例給、ボーナスともに引き上げることなどを骨子とする勧告があったところですが、その取り扱いを慎重に検討した結果、勧告どおり本年四月に遡及して改定することとし、これにあわせて知事等の特別職についても期末手当を引き上げることといたしました。これら給与の改定に関する条例改正は今議会に提案しているところでありますが、これに伴う人件費の増額分は、今年度の異動に伴う減額分と合わせて既決予算の範囲内で対応できる見込みであり、最終の補正予算で整理してまいりたいと考えております。 以上、補正予算案の主な内容について御説明申し上げましたが、今回の補正規模は、一般会計で六百七十六億八千九百余万円、総計で六百七十九億四百余万円となります。財源としては、国庫支出金二百五十三億四千七百余万円、繰越金百七十八億八千七百余万円、繰入金九十三億四千九百余万円等を追加しております。この結果、今年度の予算規模は、一般会計で一兆四千六百四十四億四千八百余万円、総計で一兆七千八百九十七億七千七百余万円となります。 次に、予算外議案については、条例議案十件、条例外議案五十三件を提案しておりますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。 まず、条例議案でありますが、議第二百七十五号議案及び議第二百七十六号議案は、先ほど御説明いたしましたとおり、一般職の職員の給与を改定するとともに、これに準じて特別職の期末手当の支給割合を引き上げようとするもの、議第二百七十七号議案及び議第二百八十二号議案は、育児・介護休業法等の改正に準じ介護休暇の分割取得を可能とするなど所要の改正を行おうとするもの、議第二百八十号議案は、民生委員協議会を組織する区域の設定等に関する事務を市町村が処理することなどについて所要の改正を行おうとするもの、議第二百八十三号議案は、道路交通法等の改正に伴い運転免許の試験手数料を新設しようとするものであります。 次に、条例外議案でありますが、議第二百八十四号議案は、平成二十九年度における自治宝くじの発売限度額について、議第二百八十五号議案ないし議第二百九十九号議案は、公の施設の指定管理者を指定することについて、議第三百四号議案及び議第三百五号議案は、学群・学類制への移行に伴う公立大学法人宮城大学の定款及び中期目標の変更について、議第三百六号議案は、循環器・呼吸器病センターの医療機能の移管に伴う
地方独立行政法人宮城県立病院機構の中期目標の変更について、議第三百九号議案ないし議第三百二十号議案は、工事請負契約の締結について、議第三百二十一号議案ないし議第三百三十四号議案は、工事請負変更契約の締結について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。また、議第三百三十五号議案は、石巻市立大川小学校における児童の津波被害に関する損害賠償請求事件に係る控訴の提起について、議第三百三十六号議案は、県立学校職員の職場での行為に係る調停案の受諾及び損害賠償の額の決定について、それぞれ専決処分を行いましたので、その承認をお願いしようとするものであります。 以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。
○議長(中島源陽君) 補正予算案に係る各部局長説明要旨は、お手元に配布のとおりであります。 ただいま議題となっております各号議案中、議第三百七号議案ないし議第三百二十三号議案及び議第三百二十五号議案ないし議第三百三十四号議案についての質疑に入ります。 質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。 議第三百七号議案ないし議第三百二十三号議案及び議第三百二十五号議案ないし議第三百三十四号議案については、お手元に配布の議案付託表のとおり、それぞれ所管の委員会に付託いたします。…………………………………………………………………………………………… 議案付託表 第三百五十八回宮城県議会(十一月定例会)平成二十八年十一月二十五日議案番号件名提出年月日委員会議第三百七号議案工事委託契約の締結について(
一般県道石巻女川線浦宿こ線橋新設工事)二八・一一・二五建設企業議第三百八号議案工事委託契約の締結について(八幡川護岸等災害復旧工事)同建設企業議第三百九号議案工事請負契約の締結について(一般国道三百九十八号内海橋(仮称)災害復旧工事(その三))同建設企業議第三百十号議案工事請負契約の締結について(一般県道石巻工業港矢本線定川大橋災害復旧工事(その二))同建設企業議第三百十一号議案工事請負契約の締結について(皿貝川等護岸等災害復旧工事)同建設企業議第三百十二号議案工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区航路等災害復旧及び浚渫工事)同建設企業議第三百十三号議案工事請負契約の締結について(仙台塩釜港仙台港区防潮堤建設工事)同建設企業議第三百十四号議案工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤建設工事(その十一))同建設企業議第三百十五号議案工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤建設工事(その十二))同建設企業議第三百十六号議案工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤災害復旧及び建設工事(その二))同建設企業議第三百十七号議案工事請負契約の締結について(雄勝港防潮堤等災害復旧工事(その一))同建設企業議第三百十八号議案工事請負契約の締結について(雄勝港防潮堤等災害復旧工事(その二))同建設企業議第三百十九号議案工事請負契約の締結について(
都市計画道路矢本門脇線大曲道路等災害復旧及び改築工事)同建設企業議第三百二十号議案工事請負契約の締結について(宮城県
農業高等学校校舎等災害復旧工事(その六))二八・一一・二五文教警察議第三百二十一号議案工事請負変更契約の締結について(寒風沢地区海岸堤防災害復旧工事(その一))同環境生活農林水産議第三百二十二号議案工事請負変更契約の締結について(寒風沢地区海岸堤防災害復旧工事(その二))同環境生活農林水産議第三百二十三号議案工事請負変更契約の締結について(寒風沢地区海岸堤防災害復旧工事(その四))同環境生活農林水産議第三百二十五号議案工事請負変更契約の締結について(大谷工区農地災害復旧及び区画整理工事)同環境生活農林水産議第三百二十六号議案工事請負変更契約の締結について(名取地区区画整理工事(その三))同環境生活農林水産議第三百二十七号議案工事請負変更契約の締結について(名取地区農地災害復旧及び区画整理工事(その三))同環境生活農林水産議第三百二十八号議案工事請負変更契約の締結について(磯地区区画整理工事)同環境生活農林水産議第三百二十九号議案工事請負変更契約の締結について(廻館工区農地災害復旧及び区画整理工事)同環境生活農林水産議第三百三十号議案工事請負変更契約の締結について(渡波漁港防波堤等災害復旧及び防潮堤新築工事)同環境生活農林水産議第三百三十一号議案工事請負変更契約の締結について(五間堀川護岸等災害復旧工事(その三))同建設企業議第三百三十二号議案工事請負変更契約の締結について(五間堀川護岸等災害復旧工事(その四))同建設企業議第三百三十三号議案工事請負変更契約の締結について(
菖蒲田地区海岸堤防等災害復旧工事)同建設企業議第三百三十四号議案工事請負変更契約の締結について(大川等護岸等災害復旧工事)同建設企業-----------------------------------
△
大震災復興調査特別委員会調査結果報告
○議長(中島源陽君) 日程第百二十二、
大震災復興調査特別委員会調査結果報告を議題といたします。 本件について委員長の報告を求めます。大震災復興調査特別委員長、五十三番渥美巖君。 〔五十三番 渥美 巖君登壇〕
◆五十三番(渥美巖君) 大震災復興調査特別委員会の調査結果について御報告申し上げます。 本委員会は、東日本大震災からの復旧・復興対策について発災以降、県議会として一元化を図って調査活動を継続してきた大震災復旧・復興対策調査特別委員会を受け継ぎ、被災地域や県民生活の再生に向けた活動策について調査検討するため、平成二十七年十二月十八日に設置されました。付議事件は、大震災復興に関する諸施策についてを受け、特に津波による甚大な被害を受けた沿岸被災地域を中心に県内調査を実施したほか、参考人からの意見聴取や県外調査を行い、復旧・復興に係る課題について重点的に調査を行うとともに東京電力福島第一原子力発電所事故に起因する被害の実態等について精力的に調査を実施してまいりました。また、これらの調査で把握した課題等を取りまとめ、現状の課題の解消に資するべき復興大臣を初めとした要望活動や意見交換等を通じ国及び東京電力等への働きかけを重点的に行ってまいりました。 その結果につきましては、お手元に配布の報告書のとおりでございます。本県の東日本大震災からの復旧・復興への厳しい道のりはこれからも続きます。時間の経過とともに顕在化、深刻化するさまざまな課題の的確な把握とその解消に向け、今後も同様の特別委員会を設置し、県議会として課題の解消に向けた国等への働きかけを継続し、本県の震災からの早期の復興に資するべき全力を傾注すべきものと考えております。 以上、今後の県議会における被災地に根差した、より効果的な調査活動を期待して、御報告といたします。…………………………………………………………………………………………… 大震災復興調査特別委員会報告書 大震災復興調査特別委員会の調査・検討結果について報告する。 本委員会は、東日本大震災からの復旧・復興の総合的な対策及び活動に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十七年十二月十八日に設置され、付議事件「大震災に関する諸施策について」を受け、調査活動を行った。一 はじめに 本委員会は、前身の「宮城県議会大震災復旧・復興対策調査特別委員会」の最終報告書の趣旨を受け継ぎ、県議会として、複合的な要因から劇的に変化する被災地の復旧・復興の状況に即応し、より精緻な調査活動により実態を適切に把握するとともに、現状の困難の解消に向けた国等への働きかけを機動的に実施するため、震災からの復旧・復興に係る諸課題について、県内市町村等を対象とした調査活動により実態の把握に努め、調査結果をもとに、課題の解消に資するべく、県担当課からの復興の進捗状況の聴取を手始めに、県内調査において沿岸被災自治体四市五町の現状と課題の把握を行うとともに、東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)に起因する被害状況の調査を一市一町で実施した。さらに、参考人として招致した東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)から意見を聴取したほか、他県の事例を参考にするため、兵庫県及び高知県において、施策及び取り組み状況などについて県外調査を行い、これらの調査活動で把握した課題等をまとめ、国等への要望活動や意見交換を行った。 その概要は、次のとおりである。二 活動内容 1 委員会の開催 本委員会は、活動方針に則し、調査活動に関する協議、検討を行うため、計十三回にわたり委員会を開催した。このうち主なものについては、次のとおりである。 (一) 執行部より復興の進捗状況について聴取 平成二十八年一月二十日に開催した委員会においては、本県の東日本大震災からの復興の進捗状況について、震災復興・企画部から説明を聴取した。 (二) 調査活動についての検討及び実施決定 平成二十八年一月十三日に開催した委員会においては、以後の調査活動についての検討を行い、特に沿岸被災地域が抱える震災からの復旧・復興に係る課題について調査するため、県内調査として沿岸市町及び県地方公所等を訪問し、現地視察を行うとともに意見交換を実施し、また、原発事故に起因する被害の状況についても調査の実施を決定した。 平成二十八年二月十五日に開催した委員会においては、沿岸四市五町並びに丸森町及び登米市を対象に実施した県内調査により把握した震災からの復旧・復興に係る諸課題について、調査状況を取りまとめた。 平成二十八年三月八日に開催した委員会においては、東京電力を参考人として招致すること並びに兵庫県及び高知県方面の県外調査を実施することを決定した。 平成二十八年六月二十日に開催した委員会においては、東日本大震災からの復旧・復興に係る諸課題について、長島忠美復興副大臣及び宮城復興局との意見交換の実施を決定した。 (三) 要望活動の実施決定及び要望項目の検討 平成二十八年七月二十日に開催した委員会において、沿岸市町及び本県地方公所等を対象とした県内調査、兵庫県及び高知県方面の県外調査並びに東京電力を招致して実施した参考人意見聴取等の調査を踏まえて取りまとめた、「震災からの復旧・復興対策に係る要望書(素案)」及び「風評被害に係る迅速かつ十分な損害賠償の実施及び原発事故の早期完全収束を求める要請書(素案)」について委員間討議を行うとともに、東京電力福島復興本社代表に対する要請活動の実施を決定した。 平成二十八年八月十九日に開催した委員会において、「震災からの復旧・復興対策に係る要望書(案)」及び「福島第一原子力発電所事故に起因する被害への迅速かつ十分な対応及び原発事故の早期完全収束を求める要請書(案)」の内容について委員間討議を行い決定した。 平成二十八年九月二日に開催した委員会において、今村雅弘復興大臣及び本県関係国会議員に対し、要望活動を行うことを決定した。 2 参考人意見聴取(東京電力) 平成二十八年四月二十日に東京電力福島復興本社新妻常正副代表ほか三人を委員会に招致し、原発事故に起因する損害賠償の進捗状況及び福島第一原子力発電所における放射能汚染水への対応などについて説明を聴取した。その概要は次のとおりである。 初めに、原発事故に伴う損害賠償については、確実な賠償を行えるよう原子力損害の賠償に関する法律に基づいて、原子力事業者である東京電力が、無過失・無限の賠償責任を負って取り組んでいること、原子力事業者の資金ショートにより円滑な損害賠償に支障を来さないよう、原子力損害賠償・廃炉等支援機構から資金援助を得て、迅速、公平かつ適正に賠償を進めることができるように文部科学省の所管する原子力損害賠償紛争審査会が、損害の範囲等を類型的に示す指針である「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」に基づいて賠償対応に当たっていること、国から資金援助を受けるに当たり、東京電力では、原子力損害賠償・廃炉等支援機構とともに特別事業計画を策定し、この認定をもって資金が交付される仕組みとなっており、三つの誓い(一、最後の一人まで賠償を貫徹すること。二、迅速かつきめ細やかな賠償を徹底すること。三、ADR(裁判外紛争解決手続)においては和解仲介案を尊重すること。)を掲げ、社員約二千三百人を含む約一万人の体制で取り組んでいることの説明があった。 次に、宮城県内における原発事故に起因する被害への損害賠償の進捗状況については、平成二十八年三月末までに一万三千件を超える請求書を受け付け、七百十七億円を支払っている。賠償の滞りの指摘に対しては、昨年からタケノコの賠償を開始したほか、水産物における出荷制限や漁船漁業及び養殖生産の風評被害について支払いを継続して行っているが、宮城県特産品のホヤについては現在、宮城県漁協を初め関係者と賠償について協議をしているところである。これ以外にも遊漁船漁業者及び水産物の加工流通業者に対し、風評被害による減収について賠償を継続しているとのことであり、引き続き丁寧に対応してまいりたいとのことであった。 なお、観光などの商工業の法人や個人事業主に対する営業損害の取り扱いについては、平成二十六年六月に閣議決定された内容及びこれに基づく国からの指導による集中的な自立支援策の展開のために、将来的に発生する風評被害の損害を、直近一年間の逸失利益の二倍相当額とみなして一括して支払う取り扱いについての説明の中で、「農林漁業を営む方々や風評被害で影響を受ける農林水産物を扱う加工流通等の事業者については、当面、最長で平成二十八年十二月末まで現行の賠償を継続する」との発言をめぐって、説明後に質疑が相次いだ。 福島第一原子力発電所の汚染水対策については、三つの基本方針(一、汚染源を取り除く。二、汚染源に水を近づけない。三、汚染水を漏らさない。)に基づき、九つの対策(一、多核種除去設備(アルプス)等による汚染水浄化。二、トレンチ内の高濃度汚染水の除去。三、地下水バイパスによる地下水のくみ上げ。四、建屋近傍の井戸(サブドレン)でのくみ上げ。五、凍土方式の陸側遮水壁の設置。六、雨水の土壌浸透を抑える敷地舗装。七、水ガラスによる地盤改良。八、海側遮水壁の設置。九、タンクの増設(溶接型への置きかえを含む。))を引き続き進めている旨の説明があり、海域モニタリングの状況では、港湾外と港湾内の海水中の放射性セシウムの濃度の経年変化として、全体的に原発事故の直後から百万分の一程度まで低減しており、また、昨年十月の海側遮水壁の閉合工事終了後には、港湾内の海水中の放射性セシウムの濃度が低下した状態が確認されたとの説明があった。 加えて、冒頭で参考人から、廃炉作業中の福島第一原子力発電所の現況として、溶融した燃料と使用済みの燃料がまだ原子炉及びその周辺の区域にあるが、現在、冷温停止状態になっており、非常に安定した状況にあるとの説明があった。 なお、本委員会では、八月二十六日の県外調査の一環で現地視察を実施している。 3 県内調査 本委員会は、被災地域における震災からの復旧・復興に係る課題及び原発事故に起因する県内の風評被害の状況について調査するため、平成二十八年一月二十五日、二十八日、二十九日、二月八日及び六月二日の延べ五日間にわたり、沿岸四市五町並びに丸森町及び登米市と県地方公所を対象に県内調査を実施した。その実施状況については、次のとおりである。 ・一月二十五日 女川町、七ヶ浜町、県仙台塩釜港湾事務所 ・一月二十八日 石巻市、東松島市、県東部地方振興事務所、県東部土木事務所、県石巻港湾事務所 ・一月二十九日 岩沼市、亘理町、山元町、丸森町 ・二月八日 気仙沼市、登米市、県気仙沼地方振興事務所、県気仙沼土木事務所 ・六月二日 南三陸町 被災地域における震災からの復旧・復興に係る課題を把握するため、津波により特に甚大な被害を受けた沿岸市町を対象とし、当該市町内の主な震災復旧・復興関連の現地視察の後、首長及び震災復興担当部局から概要説明を受け、当該市町議会議員等と意見交換を行うとともに、石巻及び気仙沼管内の当該地方公所長から圏域等の復旧・復興の進捗状況の説明を受けた。また、原発事故に起因する被害の状況については、福島県に接する丸森町の状況と登米市の稲わらの保管状況の調査も実施した。 これら調査時に発言のあった主なものは次のとおり。 復旧・復興事業の進捗に伴って仮設住宅や仮設商店街の集約と撤去が課題になってきているとともに、生活環境等が変わることによる地域コミュニティの再構築や高齢者の生活支援、心のケア問題、店舗の再建などの課題が時間の経過とともに顕在化・深刻化していること。また、復興事業予算の十分な確保はもとよりその活用について、例えば、東日本大震災復興交付金の効果促進事業一括配分において、自治体における使途の自由度の一層の向上を求める意見などが多く寄せられた。 被災市町における産業再生については、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業(以下「グループ補助金」という。)に関し、用地等基盤整備の遅れを勘案し、制度を継続するなど、被災地の実態に即した柔軟な対応を可能とするよう求める意見が出された。 インフラの復旧、整備に関しては、津波襲来時に沿岸部から内陸に円滑に避難するための避難道路、復興まちづくりや地域産業再生の観点から地方主要道の早期整備について国の支援を求める意見が多く寄せられた。また、防潮堤の整備について県の柔軟な対応を求める声や被災したJR路線について、復興まちづくりとの整合を図りながらBRT(バス高速輸送システム)による早期復旧もやむを得ないが、住民は鉄路復活を諦めたわけではないなどの意見も寄せられた。 原発事故に起因する被害関係における調査において、丸森町では依然として風評被害が続いており、特にコメとイチジクが顕著で取引が復活する見込みもなく、賠償も勝ち取れず困惑している旨の意見や、町の損害賠償分をADRに申請したが、県でかち取れば町にも好影響が及ぶと思われるので一体的に対応してほしい旨の要望があったほか、鳥獣(特にイノシシ)による農作物への被害が広がっており、広域的な連携による効果的な対応が必要との意見も出された。 登米市では、放射性物質汚染廃棄物のうち、指定廃棄物の汚染稲わらの一時保管状況を視察したが、登米市からは、当初二年間という説明で市民の理解を得てきたが、線量が減少してきているとはいえ不安感が払拭できないため、県及び国に早期の処理を再三要望している状況が説明された。保管エリアの公有地は当該地のほかに三カ所あり、そのほかは二十カ所の私有地を借り上げている状況であり、一日も早く生産エリアを取り戻したいので力添えを願いたい旨の発言もあった。 以上のとおり、県内、特に沿岸被災地域においては、発災から五年以上が経過してなお、復旧・復興に係るさまざまな課題が山積しており、また、時間の経過とともに新たな課題も露呈され、当該市町において対応を求められる窮状がうかがえた。本委員会は、県内調査において寄せられた情報や意見等をもとに、国等への働きかけを行うための要望書(要請書)を作成し、現状の課題の解消に資することとした。 4 県外調査 (一) 神戸港震災メモリアルパーク、兵庫県、北淡震災記念公園、高知県、南国市 本委員会は、付議事件について調査に当たるため、平成二十八年五月二十五日から二十七日にかけて県外調査を実施した。その概要については、次のとおりである。 (1) 神戸港震災メモリアルパーク(兵庫県神戸市) 神戸港震災メモリアルパークでは、現地において、所管する神戸市みなと総局及び管理している一般社団法人神戸港振興協会の職員から説明を受けながら視察し、その現状等を調査した。 本パークは、阪神・淡路大震災で被災した神戸港メリケン波止場のうち、約六十メートルの区間を被災したままの状態で保存するとともに、神戸港の被災状況やその復興過程を中心に、大震災の教訓と港の重要性、さらに国内外の多くの人が一体となって港の復旧・復興に努めた様子を後世に伝えることを目的に、発災から二年半後の平成九年七月に整備されたものである。事業費は五億二千万円で、そのうち被災部分については、国(当時の運輸省)と神戸市が事業主体となり、災害復旧費等から約二億円を充てて整備し、被災部分以外は社団法人神戸港振興協会が各種助成金等を充当して整備した。 なお、整備後に、神戸市へ当該財産が寄附されている。維持管理費は、平成二十六年度で約二百四十万円とのことであった。 また、近接する神戸海洋博物館では、神戸港に関する震災の記録や復興の記録、その他関連資料が収集、保管されているとの説明もあったが、今回は視察を見送った。 (2) 兵庫県 兵庫県においては、災害復興公営住宅等における「高齢者自立支援ひろば」等の取り組みについて調査した。 兵庫県では、復興支援課長から次のとおり説明があった。 阪神・淡路大震災が発生して以降、その復興過程で転居が繰り返されるごとに高齢化率が高まるとともに住民同士のつながりが失われていくことに危機感を覚え、復興十年総括検証を機に、災害復興公営住宅の現状等を踏まえ、高齢者が安心し自立して生活できるための支援を、将来の超高齢社会に向けた先導的な取り組みとして進めるため、「高齢者が安心して暮らせるしくみづくり」事業を開始した。その一環として、平成十八年度から「高齢者自立支援ひろば(以下「ひろば」という。)」を順次開設し、災害復興公営住宅の空住戸やコミュニティプラザ等に、地域の見守りグループや自治会等と連携し常駐型の見守りを初めとした多様なサービスの提供を開始し、地域主体の新しい高齢者の見守りシステムの構築を図っている。また、この常駐型の見守りを始めたことにより、巡回型の見守りだけでは見えてこなかったさまざまな課題が見えてきたことから、これまで高齢世帯生活援助員等の支援がなかった高齢化率の高い被災地内の一般の公営住宅に、ひろばと連携して、ひろばと同様の機能を発揮する「ひろばブランチ」を平成二十一年度から開設している。これらの取り組みにより、緊急時の対応や近隣の災害復興公営住宅等への巡回、高齢者からの各種相談への対応といった「見守り機能」、ミニデイサービス、栄養指導教室等開催の「健康づくり機能」、入居者間や地域との交流事業実施の「コミュニティ支援機能」、高齢者支援事業等に係る情報交換や情報発信の場としての「支援者のプラットフォーム機能」が構築されているとのことであった。 さらに、ひろばのコミュニティ支援の業務指導とスタッフの相談対応を行う専門職が「コミュニティ支援アドバイザー」として配置されており、ひろば及びひろばブランチにおけるコミュニティ支援機能の充実・強化が図られている旨の説明もあり、終わりに、災害復興公営住宅は超高齢化社会の縮図であり、本事業は超高齢化社会を先取りした取り組みであることから、今後も被災高齢者の実情に配慮した見守りを継続していきたいとの意向が述べられた。 (3) 北淡震災記念公園(兵庫県淡路市) 北淡震災記念公園では、初めに宮本肇総支配人等から概要等の説明を受け、その後、野島断層保存ゾーンや神戸市内から移設された神戸の壁、震災体験館などの各展示施設等の説明を受けながら視察し、その現状等を調査した。 本公園は、阪神・淡路大震災のすごさ・恐ろしさを示している同地に生じた野島断層を、防災教育の場及び地域防災拠点としての震災記念公園とあわせて残すと、当時の北淡町長が宣言し、その後、兵庫県の復興記念事業に位置付けられたことから、保存館と物産館の建築費を県が負担し、平成十年四月に開園されたもの。運営は、物産館・レストランが併設されていることなどから、開園当初から第三セクターの株式会社ほくだんが行っている。 開園初年度は明石海峡大橋の開通もあり、約二百八十万人もの入館があったが、年々入館者は減少し、運営も厳しさを増している中、東日本大震災の発生で改めて注目されるようになったとのこと。 また、開園の翌年から震災の語り部活動が始まり、元教員や消防団員などが当時の被災体験などについて求めに応じて語り継いでいるとのことであった。 (4) 高知県 高知県においては、高知県南海地震による災害に強い地域社会づくりの概要と取り組み状況について調査した。 高知県では、南海トラフ地震対策課長から、今世紀前半にも発生すると言われている南海トラフ地震に備え、「高知県南海地震による災害に強い地域社会づくり条例」を制定し、平成二十年四月に施行したが、東日本大震災の教訓やそれに基づく新たな南海トラフ地震の想定を受けて、平成二十六年三月に同条例を一部改正し、同年四月から施行しているとの説明があった。また、東日本大震災の発災以降から条例改正までの間、今すぐできることなどを直ちに実行する傍ら、「一、人的被害を限りなくゼロに近づける。二、応急期の対策を充実させる。三、防災・減災対策を講じ、被害を最小化し早期復興を可能とする。」ことを掲げ、南海トラフ地震対策の行動計画の大幅な見直しを行い、平成二十五年六月に第二期行動計画を策定するとともに、三年後の本年三月には、第二期の総括により明らかになった課題を反映させた第三期行動計画を策定し、三つの方向性、すなわち、「一、幅を持たせた地震を想定し、対策を実施。二、「自助」「共助」「公助」が互いに連携し、県全体の防災力を向上。三、多重的な対策を講じることによる早期の復旧・復興。」のもとに取り組みを行っているなどの説明があった。 具体的には、南海トラフ地震の被害想定では、高い津波が短時間で襲来することが予想されることから、既に始まっている市町村の財政負担を実質ゼロにする県独自の取り組みにより、津波避難タワーや避難路・避難場所が順次整備されてきているほか、実効性を確保するために市町村と連携して、現地点検を行って避難経路を確保することや実践的な避難訓練の実施に努めるとともに、要配慮者施設の高台移転も進めてきた。また、発災時に助かった命をつなぐ対策としての応急活動体制の整備や避難者対策、総合防災拠点の整備などにも緊張感を持って積極的に取り組んでいると述べた。 終わりに、高知県では、南海トラフ地震と人口減少による負のスパイラルという二つの根本的な課題の克服に向けて、今後も果敢に挑戦を続けていく決意が述べられた。 (5) 南国市(高知県) 南国市においては、地震に強い都市づくりの推進状況について調査した。 初めに、南国市に設置された十四基の津波避難タワーのうち、大湊小南タワーの現地視察を行ったが、大震災発生後にも機能を維持できる構造と強度を持ち、当地で想定される五・五メートルの津波の波力等も考慮されているほか、避難階段と別にスロープが設けられ、逃げ遅れた人用の救難シェルターも配置されていた。また、最上階の三階からは、近郊に九基の避難タワーが見え、南国市の担当者から、三十七分と想定される津波到達時間内の避難は可能と説明された。 南国市では、危機管理課長から、同市の地震に強い都市づくり推進五カ年計画に基づく南海トラフ地震対策について説明があり、津波避難施設の概要や、高知工業高等専門学校との連携事業として、十四基の津波避難タワーと市役所を結ぶ安否確認システムを構築したこと、緊急情報を一斉に同時に伝達させるデジタル防災行政無線が平成二十六年四月から供用開始されたこと、強い地震揺れに反応して自動解錠する鍵箱を備えた防災備蓄倉庫を避難場所に順次整備していくことなどの説明があった。 なお、安否確認システムの構築に寄与した高知工業高等専門学校の学生四人が開発したスマートフォンアプリの実用性は極めて高く、完成度も高いことが評価され、昨年度のものづくり日本大賞の青少年部門で内閣総理大臣賞を受賞したことが紹介された。 (二) 東京電力福島復興本社及び福島第一原子力発電所(福島県双葉郡) 本委員会は、平成二十八年八月二十六日に東京電力福島復興本社を訪れ、「福島第一原子力発電所事故に起因する被害への迅速かつ十分な対応及び原発事故の早期完全収束を求める要請書」を県議会として福島復興本社石崎芳行代表に提出し、当該要請の内容等について、引き続き意見交換を行った。その概要は、「6 要望(要請)活動等」に記載のとおりである。 なお、本委員会は、今回の要請活動とあわせて、福島第一原子力発電所の現地視察を実施し、原発事故後約五年半が経過した現状と廃炉に向けた進捗状況を確認し、視察後は、要請内容の真摯かつ確実な実施について改めて強く要請した。 (三) 復興庁及び衆議院第一議員会館、衆議院第二議員会館、参議院議員会館 本委員会は、平成二十八年九月十二日に復興庁を訪れ、「震災からの復旧・復興対策に係る要望書」を県議会として今村雅弘復興大臣に提出し、当該要望の内容等について、引き続き意見交換を行った。その概要は、「6 要望(要請)活動等」に記載のとおりである。 5 意見交換会 平成二十八年六月二十日に、長島忠美復興副大臣及び宮城復興局長等関係職員を県議会に招き、意見交換会を実施した。 その概要は、次のとおりである。 (一) 東日本大震災復興交付金の予算確保及び運用等(効果促進事業一括配分の使途拡大ほか)に係る課題 東日本大震災復興交付金(効果促進事業)について、これまで被災地の実態に即した運用の柔軟化が図られ、予算の一括配分とともに被災自治体における使途の自由度の向上が図られるなど、その有用性が高められてきたが、各自治体においては、依然として活用が進んでいない状況が散見されることから、当該制度の有用性をさらに高めるため、要件の見直しや使途の拡大、使途協議についてはできる限り手続を簡素化するなど、活用に際して、自治体の自由度の一層の向上を図るよう求め、意見交換を行った。 (二) 被災者の心のケア対策の充実及び被災した子どもの心のケア対策の充実のための継続した財源等の確保に係る課題 本県では、東日本大震災の被災者のさまざまな心の問題を包括的に支援するために、みやぎ心のケアセンターを設置し、地域の課題に合わせて被災地域への支援体制の充実を図っているが、被災者の生活再建が本格化する中で、安定的・継続的・長期的に心のケア対策に取り組む必要がある。また、中長期的な子どもの心のケア対策事業の継続と拡充も必要であるため、引き続き国の負担による中長期にわたる安定した財源の確保を求め、意見交換を行った。 (三) 大震災津波防災ミュージアム及び復興祈念公園等の整備に係る課題 東日本大震災で生まれた各種の「絆」を育み、震災の経験と教訓を後世に伝えるとともに、世界の震災・津波対策の向上に貢献していくことを目的とする地震津波防災ミュージアム等の複合拠点施設を最大の被災県である本県に整備することや県・石巻市が整備する石巻南浜津波復興祈念公園内に国が一体的に設置する「国営追悼・祈念施設(仮称)」について早期整備を図ること等を求め、意見交換を行った。 (四) 原発事故への対応に係る課題 福島第一原子力発電所が立地する福島県に隣接している本県が、放射能汚染による農林水産物の出荷制限などの実害のほか、本県産品の買い控えや国内外の旅行者における本県への旅行の忌避など、原発事故に伴う風評による被害を依然として受けている中、県内の生産者、事業者がさまざまな要因から東京電力による迅速かつ十分な賠償を得られず大変苦慮している状況を重く受け止め、実害はもとより風評による被害を現に受けている全ての被害者が救済されるよう、東京電力への指導を強めるとともに、困難の解消に向け、確実・迅速な対策を講ずるよう求め、意見交換を行った。 6 要望(要請)活動 (一) 東京電力福島復興本社に対する要請活動 本委員会は、原発事故に起因する被害に対する賠償等の状況等について、東京電力を参考人として招致して意見聴取を実施したほか、農林水産物等の被害に関して県内調査等を実施し、課題の把握に努めてきたが、これらを踏まえ、「福島第一原子力発電所事故に起因する被害への迅速かつ十分な対応及び原発事故の早期完全収束を求める要請書」を調製し、その実現に関し、東京電力福島復興本社に対する要請活動を企画、実施を決定し、平成二十八年八月二十六日に県議会の要請活動として実施した。要請事項については、次のとおりである。 (1) 原発事故に起因する被害に係る迅速かつ十分な損害賠償の実施 イ 賠償金の迅速かつ十分な支払い ロ 請求手続の一層の簡素化 ハ 被害の実態に即した損害賠償の実施 ニ 自治体や生産組合等において風評被害防止のために要した経費の補償 (2) 原発事故の早期完全収束の実現 イ 放射能汚染水に係る抜本的対策及び緊急対策の確実な履行 ロ トリチウム汚染水の海洋流出の絶対阻止 ハ 発電所内におけるトラブル、周辺環境のモニタリング結果等の迅速な公表と丁寧な説明 当該要請の内容等について、引き続き意見交換を行い、その概要は次のとおり。 冒頭で石崎芳行代表から、原発事故で今なお福島県初め宮城県の皆様に、大変御迷惑・御心配をかけ続けていることに、改めておわびがあり、要請書の内容については早速真摯に対応することが述べられた。 初めに、損害賠償問題については、特に、宮城県特産のホヤについても大変な被害を与えてしまっていることを十分認識しており、損害賠償問題について関係者からしっかり丁寧に話を伺いながら協議し、賠償の支払いを進めていくこと、また、風評被害対策、風評被害払拭について、国による力も借りてさまざまな取り組みを官民合同で進めているほか、約百二十万人からなる応援企業ネットワークを組織化して風評被害払拭に取り組んでいる事例が紹介された。 次に、福島第一原子力発電所の状況について、陸側遮水壁(凍土方式)は、本年三月末の凍結作業以降しっかりと凍り始めており、一部凍らない部分は補助工法により確実に効果が上がっており、全体的な汚染水対策も国の方針に従って進めているところであること、廃炉に向けた作業については、ロードマップに一部遅れはあるが、国と同じ方針のもとで、原発事故直後の戦場のような職場環境から大分改善され一定の管理のもとに進展していることなどが述べられ、これからも緊張感を持って取り組むとのことであった。 (二) 復興大臣及び本県関係国会議員に対する要望活動 本委員会は、震災からの復旧・復興対策について、沿岸市町等における県内調査や県外調査、参考人意見聴取等を実施して課題の把握に努めてきたところであるが、これらを整理し、「震災からの復旧・復興対策に係る要望書」を調製し、その実現に関し、今村雅弘復興大臣及び本県関係国会議員に対する要望活動の企画、実施を決定し、平成二十八年九月十二日に県議会の要望活動として実施した。要望事項については、次のとおりである。 (1) 復旧・復興関連予算の確保 イ 復旧・復興関連予算の確保 ロ 「津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金」に係る支援の継続等 ハ 三陸沿岸部の山腹崩落等対策事業の創設 (2) 東日本大震災復興交付金の予算確保及び運用における効果促進事業一括配分に係る自治体の自由度の一層の向上 (3) 被災自治体における職員確保に対する支援 (4) 被災者の生活・住宅再建に係る支援の拡充 イ 被災者生活再建支援制度の拡充 ロ 応急仮設住宅の集約化等に伴う入居者の移転費用に係る支援 (5) 大震災地震津波ミュージアム及び復興祈念公園等の整備 (6) 被災した鉄道各線の復旧及び復興まちづくりへの支援 (7) 被災地の産業再生に対する支援 イ グループ補助金等における財政支援の継続 ロ 事業復興型雇用創出事業の拡充と十分な予算措置 ハ 二重債務問題対策に係る支援の継続 (8) 海中へ流出した震災ガレキの処理に対する継続的な支援 (9) 地域医療再生臨時特例基金の弾力的運用 (10) 被災者の生活・健康支援及び被災した子どもの心のケア対策充実のための継続した財源の確保等 (11) 原発事故に伴う被害への対応等 イ 原発事故に起因する風評被害に係る迅速かつ十分な損害賠償の実現 ロ 放射能汚染水に係る抜本的対策及び緊急対策の確実な履行 ハ 放射性物質汚染廃棄物の処理 当該要望書手交後に、今村雅弘復興大臣は、「できるだけ現地を訪問して皆さんのお話を伺いたい。大震災から五年半がたち、地域差はあるが、復興のステージは着実に進んでいると思っているが、せっかく今整備しても、なりわいの再生、さまざまな事業の再生などをしっかりやっていかないと本当の再生にはならず、後半(今後五年間の復興・創生期間)は、ぜひそちらのほうにも力を入れていきたい」と述べ、さらに、「状況は刻一刻と変化するので、それに応じた弾力的な対応も必要と考えている。これからも率直な意見をしっかり承って頑張りたい」との発言があった。 また、主な要望項目のうち、予算の確保については、総枠で認められているが着実な事業の推進に向けてできる限り確保していくこと、被災自治体のマンパワー確保に対する支援については、正規職員のみならず退職した職員の活用なども含めて、幅広く取り組むこと、被災者の心のケア等については、しっかりと諸事情を聞きながら、(中長期的に十分な財源が確保できるように)頑張っていきたいとの旨が述べられた。三 総括 本委員会は、県内外における調査活動や参考人意見聴取等を通じ、本県における震災からの復旧・復興に係るさまざまな課題について、把握に努めるとともに、これらを取りまとめ、現状の課題の解消に資するべく、国や関係機関との意見交換や働きかけを重点的に実施してきた。 発災から五年半以上が経過し、特に津波による甚大な被害を受けた沿岸市町においては、防災集団移転促進事業や被災市街地復興土地区画整理事業等のまちづくりに関わる事業が山場を迎え、徐々にではあるが、目指す復興の形が具現化してきているほか、災害復興公営住宅の整備などについても進捗が見られ、今後被災者の生活再建がなお一層加速するものと期待される。また、県内の産業についても、グループ補助金を初めとする各種支援施策が継続的に実施され、復興に向けた着実な歩みが進められているところである。 一方で、被災地においては依然として自治体における職員の不足、資材の高騰や労働者の不足等の要因から施工の確保が懸念される状況が見受けられるとともに、被災者の心のケアや地域コミュニティの再構築など、時間の経過に伴って顕在化・深刻化するさまざまな課題を抱えており、震災からの復旧・復興の進捗を阻害する要因となっている。また、防災集団移転促進事業の移転元地における有効的な土地活用など、復旧・復興に係る各種支援施策については、これまで被災市町の求めに応じ、国において柔軟な制度運用が図られてきたところであるが、被災市町においては、依然として事業実施に際しての各種要件の緩和や支援の拡充などを求める声も多く聞かれ、復旧・復興の加速化に向け、実態に即したさらなる運用の柔軟化が求められている。 また、原発事故に起因する被害に関しては、発災から五年半以上が経過した今もなお、廃炉に向けた作業上のトラブルの発生や凍土方式による遮水壁等の汚染水対策が難航していることが報じられ、農林水産物を中心に特産のホヤを初めとする本県産品に対する放射能汚染への不安が払拭されず、国の内外において、いまだ風評等の被害が続いており、今なお東京電力に対する不信は解消されていない。 こうした被害の払拭と再発防止に向けては、食品と放射能に関する正しい知識の涵養により、本県のみならず全国の消費者等において、安全性についての理解を増進することが極めて重要であり、本県はもとより国等による全国を対象とした継続的な取り組みが求められている。 本年は、国の定める復興・創生期間である五年の初年度に当たり、今後、復興まちづくり、被災者の生活や住宅の再建に係る支援、産業の再生に向けた支援などに関し、事業の一層の進捗、充実が求められる。 その他、津波対策としての防潮堤整備や、原発事故に起因する風評被害のうち関西方面以西における現状と対応などについて、県議会としても十分に議論を尽くすとともに、引き続き十分な対策を講じていくことが強く求められている。 このような現況のもと、本委員会では、刻々と変化する被災地の状況を把握するため調査活動を行ってきたが、本県の東日本大震災からの復旧・復興への険しい道のりは今後も続くことから、時間の経過とともに顕在化・深刻化するさまざまな課題の的確な把握とその解消に向け、県議会として、継続的に国等への働きかけを行うこととし、要望活動等に重点的に取り組む必要がある。このため、次期特別委員会においても、本県の早期復興に資する最も効果的な調査活動のあり方について絶えず検討を行うものとし、被災地の復旧・復興の進捗に対応し、多岐にわたる課題について、より精緻な調査活動を展開し、本県の早期の復興に資するべく全力を傾注するものとする。 以上、今後の県議会における、被災地に根差したより効果的な調査活動を期待して、活動の報告とする。 平成二十八年十一月二十二日 宮城県議会大震災復興調査特別委員長 渥美 巖 宮城県議会議長 中山耕一殿……………………………………………………………………………………………
○議長(中島源陽君) これより質疑に入ります。 委員長報告に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。-----------------------------------
△人口減少・若者対策調査特別委員会調査結果報告
○議長(中島源陽君) 日程第百二十三、人口減少・若者対策調査特別委員会調査結果報告を議題といたします。 本件について委員長の報告を求めます。人口減少・若者対策調査特別委員長、四十三番ゆさみゆき君。 〔四十三番 ゆさみゆき君登壇〕
◆四十三番(ゆさみゆき君) 人口減少・若者対策調査特別委員会の調査結果について御報告申し上げます。 本委員会は、人口減少・若者対策に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十七年十二月十八日に設置されました。人口減少・若者対策に関する若者の定住促進に係る課題解決に向けた諸施策の充実強化について、県関係部局からの施策の概要、参考人からの意見聴取、東北福祉大学、宮城学院女子大学大学生とのグループワークによる意見交換、県内、県外調査を積極的に実施しました。その結果、最近の人口減少問題は、むしろ今をどう豊かに生きるかという私たち大人自身の生き方をも見詰め直すきっかけをもたらしたと言えます。 十七ページからあります報告書では今を生きる若者、女性が住み続けたいと思う魅力あるまちづくりについて若者、女性の意見を積極的に反映した必要な支援等の提言をまとめました。この提言が今後、県の政策に十分に反映されることを期待し、報告といたします。…………………………………………………………………………………………… 人口減少・若者対策調査特別委員会報告書 人口減少・若者対策調査特別委員会の調査・検討結果について報告する。 本委員会は、人口減少・若者対策に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十七年十二月十八日に設置され、付議事件「人口減少・若者対策に関する諸施策について」を受け、次の事項を調査項目とした。 人口減少社会における若者の定住促進に係る課題解決に向けた諸施策の充実強化について 以上の項目について、県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに、参考人として招致した東洋大学森田明美教授から意見を聴取し、さらに、県内の若者の意識・実態を調査するため、東北福祉大学及び宮城学院女子大学において大学生等からの意見聴取を行った。また、石巻市、女川町及び丸森町で各地域のまちづくりに関わる特定非営利活動法人や住民自治組織、民間会社等で活躍している若者・女性等を訪ね、意見を聴取するとともに、女川町及び丸森町の取り組み、施策などについて調査を実施した。さらに、他県の先進事例を参考にするため、東京都、島根県中山間地域研究センター、同県飯石郡飯南町、香川県及び特定非営利活動法人グリーンバレーの取り組みなどについて調査を行った。 その概要は、次のとおりである。一 現状と課題 1 本県における人口減少・若者対策への対応について 本県の人口減少社会における、今を生きる若者・女性が「住み続けたいと思う魅力あるまちづくり」には、若者・女性、誰もが排除されずに一人一人が力を最大限に発揮できる環境整備や子ども期の施策からつなぐ施策の継続性等抜本的な意識改革が求められており、そのためには、若者等が地域の中心となって新しいまちがつくられていくことを実感できる「暮らしやすさの創生」に向けた総合的な対策を講ずることが必要である。 2 最近の県内全市町村の人口動態について (一) 本県の総人口は、平成十六年の推計人口の約二百三十七万二千人をピークに減少し、その後、平成二十四年から平成二十五年には東日本大震災の発生による復興需要もあり微増したが、その後再び減少に転じ、平成二十七年の国勢調査(確定値)による本県の人口は、二百三十三万三千八百九十九人となっている。 (二) 仙台都市圏の人口は一貫して増加傾向にあり、東日本大震災発生後もふえ続けているが、仙台都市圏以外の人口は減少傾向にある。自然増減、社会増減においても、仙台都市圏以外の圏域においては減少傾向が定常化している。 (三) 本県の出生数は低下を続け、平成二十七年では、昭和三十年の半数を割り込んでおり、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると二十歳から三十九歳までの女性は今後大幅に減少し、平成五十二年には二十万人を割り込み、約十八万三千人程度になると見込まれている。 (四) 宮城県地方創生総合戦略において、今から約四十五年後の平成七十二年に本県の人口を百八十四万人とする目標を掲げている。 3 地方への移住・定住の推進について 沿岸被災地を中心に仙台都市圏以外での人口減少、人口流出が大きな政策課題となっており、国の取り組みとともに積極的に対応していくことが必要であることから、平成二十七年十月に「宮城県地方創生総合戦略」を策定し、地方創生の取り組みの推進を通じて、東日本大震災からの「創造的復興」の達成と「富県共創!活力とやすらぎの邦(くに)づくり」の実現の加速化及びその効果の最大化に取り組んでいる。本県における施策の概要は次のとおりである。 (一) 官民連携組織「みやぎ移住・定住推進県民会議」を設置し、移住者の受け入れ体制の整備や情報発信について、行政、関係団体、移住者を含めた住民等が連携・協力する体制を整備した。 (二) 平成二十七年七月にワンストップ相談窓口「みやぎ移住サポートセンター」を東京都内及び仙台市内に各一カ所設置し、移住希望者に対する相談対応や、県内企業・市町村とのマッチング支援等を行っている。 (三) パンフレット、ポスター等によるPR、専用ウェブサイトによる情報発信、メルマガやソーシャルネットワーキングサービスによるみやぎの魅力発信、首都圏での移住イベント開催等により、本県のPRと潜在的な移住希望者の掘り起こしを行っている。 (四) 市町村との緊密な連携を図るため、移住・交流市町村連絡会議を開催し、県の施策や市町村の取り組み事例等の情報共有と意見交換を行うとともに、移住推進に積極的な市町村のモデル地区にアドバイザーの派遣、受け入れ体制の整備支援を行っている。 4 少子化対策について 本県の平成二十六年の合計特殊出生率は一・三〇と前年値を〇・〇四ポイント下回った。全国平均も低下しており、こうした少子化の進行は、なかなか歯止めがかからない状況にあり、本県にとっても非常に大きな問題となっている。少子化の背景には、未婚化や晩婚化、晩産化があるが、結婚、出産に対する価値観の変化やライフスタイルの変化、子育てに対する負担感の増大、経済的不安定などさまざまな要因が影響していると考えられる。したがって、少子化には総合的な施策の展開が必要であり、「みやぎ子ども・子育て幸福計画」に基づき、子どもを産み育てやすい環境を整備するため、知事を本部長とする「宮城県次世代育成支援・少子化対策推進本部」を組織し、各施策を全庁的に推進している。本県における施策の概要は次のとおりである。 (一) 地域社会全体で子育てを支援する機運を醸成するとともに、子育てに対する不安感などを払拭するため、シンポジウムの開催や広報誌による情報発信などの啓発活動、また、県民総ぐるみで子育てを応援する県民運動を展開する。 (二) 市町村が実施する地域の実情に応じた結婚から妊娠、出産、子育てまでの切れ目のない支援や出会い・結婚に向けた支援などの少子化対策事業に対して、資金の支援を行う。 (三) 結婚等に対する意識啓発の取り組みとして、大学生等によるプロジェクトチームがセミナーの開催等を通じ、結婚・出産・子育ての楽しさを学生目線で発見し、同世代の若者に向けて発信していく事業を展開している。 (四) 子育て環境の充実を図るため、保育所等の整備、認定こども園の普及促進、認可外保育施設の認可施設への移行促進を図っている。 5 若年層に対する雇用対策について (一) 新規学卒者への対策 復興需要等に支えられ、高校生や大学生などの新規学卒者の雇用情勢は良好な状況が続いていることから、この状況を維持する必要がある。一方で、小規模企業者を中心に就職後の早期離職率が高くなっていることから、職場定着率の向上に向けた支援が必要となっている。県の施策として、新規学卒者を対象とした企業説明会、合同就職面接会の開催や、新入社員向けモチベーションアップなどのセミナーや異業種交流会の開催、個別カウンセリングの実施、新入社員を採用した企業担当者向けのセミナーや専門家派遣による個別支援など、新規学卒者へのマッチング支援及び職場定着支援に取り組んでいる。 (二) 若年求職者・若年無業者への対策 若年求職者や若年無業者は、キャリアやビジネススキル等の職業能力が不足していることに加え、高年齢化が進むなど、厳しい雇用環境となっていることから、若年求職者等の就労意欲の醸成や職業能力の向上を図るとともに、安定した就職先を確保する必要がある。県施策による若年者向けの支援として、みやぎ若年者就職支援センター(みやぎジョブカフェ)において、キャリアカウンセリング、各種セミナーや職場体験などにより若年者が就職できるようきめ細かな支援を行っている。また、安定して働けるよう企業を対象としたセミナーの開催、専門家派遣により国の助成制度の活用や正社員化のメリットの助言などを行い、正社員化に向けた機運の醸成に努めている。二 参考人からの意見聴取 1 東洋大学社会学部社会福祉学科 教授 森田明美氏 森田氏は、今を生きる若者が住み続けたいと思う魅力あるまちづくりに求められる取り組みへの提言として、現実の若者たち(子育て家庭や子どもたちを含む)の実態や思いを知るためには現場に出て、彼らにより近づかなければならないこと、子ども・若者施策を継続的・総合的・重層的に担当する部署が必要であること、計画づくりから当事者(子ども、若者、子育て世代)参加を具体化することが現場、当事者、支援者を育て、地域と結びつき合えるようになること、若者は保護されるだけではなく支援する側にも立つ存在であるという視点が大切であることなどを示した。また、若者には子ども期と支援者や地域づくりの担い手になる大人時代の両方をまたぐ支援が必要であり、これらの支援の質の違いは非常に大きく、国や県の施策と基礎自治体(市町村)の施策がかみ合わないと支援が有効に機能しないため、現状を把握し、総合的なネットワークの中で、継続的・重層的に施策をつくっていくことが大事であると述べた。三 県内調査 1 大学調査 東北福祉大学及び宮城学院女子大学(仙台市青葉区) 「住み続けたいと思う魅力あるまちづくり」をテーマに、各大学において少人数のグループワークにより、本委員会の委員がファシリテーターとなって大学生等から意見を聴取した。その概要は次のとおりである。 将来、大学卒業後、地元に帰りたい、地元に貢献したいという地元志向の学生が多かったが、それには当然ながら地元に雇用の場があるということが前提となっている。多くの学生が、住み続けるためには最低限必要な生活基盤があって安全であることを挙げていた。学校による違いや男女の違いを意識させる意見もあったが、総じて、地域住民・子どもが、治安、経済社会、文化教育、自然環境、防災減災等いろんな意味で安心して生活できるようなコミュニティづくり、人と人とのつながりを重視したまちづくりが「住み続けたいと思う魅力あるまちづくり」である、との意見であった。 2 若者の意識調査等 「住み続けたいと思う魅力あるまちづくり」をテーマに、各地域のまちづくりの現場を視察し、取り組みを調査するとともに、活躍している若者等から意見を聴取した。 (一) 特定非営利活動法人TEDIC代表理事 門馬 優氏(石巻市) 子どもの貧困対策といわれる子ども食堂の運営に取り組む団体である。門馬氏は、不登校や家庭の問題を抱える子どもを支援するための仕組みについて、地域住民と一緒に取り組める形は何かを模索する地域モデルにこだわっているという。子ども食堂をきっかけに子どもたちと地域が顔の見える関係に、地域が自主的に支え合える関係になることを期待する。一方で、自分もまた将来の生活(結婚、子育てができるのか)に対して経済的・時間的不安を抱えるが、TEDICは、そのような自分の子どもも育ててもらえるような地域にするための活動をしているともいえると述べた。 (二) 特定非営利活動法人アスヘノキボウ代表理事 小松洋介氏(牡鹿郡女川町) 産業振興を支援する非営利組織として女川町のまちづくりに参画している団体である。小松氏は、行政・民間・非営利という立場の違う三者が連携して地域課題の解決に取り組むべきであり、小さな町ほど地域内外の企業や人とつながる必要があり、地域が面白くなってくれば、若者が集まってくると述べた。同町のまちづくりが特化していると感じられることについては、同町長が自分たちと同じところを目指そうと言ってくれたことが大きいという。小松氏は、町長は行政にできないところは制度を作ったり変えたりすることで民間を巻き込めるようにし、自分たち非営利組織がその行政と稼ぐ民間とを結びつけているのでうまくいっていると説明した。 (三) 女川町長 須田善明氏 同町は、町長を筆頭に、まちづくりに関わる行政及び民間の若者たちで一緒に考え、まちづくりの計画をつくってきた。人口減少にあってもにぎわいのあるまちをつくっていくという意志のもと、人の流れを半強制的に集約し、もともと住んでいた住民も、町外から来た人も交わらせるような、経済活動をコミュニティで結びつける構造にするためのハード整備を行っている。住んでいる、住んでいないにかかわらず、まちを使って活動する人、いわゆる「活動人口」の増加がまちの力を作っていくというのが、まちづくりの基本的な考え方とのことであった。町長は、女川らしさを考えたとき「らしさ」はつくっていくものであるが、女川の人を受容する気質、文化は引き継ぐべき「らしさ」かもしれないと述べ、また、将来の定住につながるといわれる郷土愛を育むような地域教育は大切ではあるが、子どもたちの目に映る今を生きている大人の姿がより大切であると述べた。 (四) 石塚養蜂園代表 石塚武夫氏(伊具郡丸森町) もともと就農を希望していた石塚氏は、約二十年前に関東圏から丸森町に移住し養蜂園を始めたIターン移住者である。移住のきっかけは、東京池袋での移住フェアで移住の先例があった丸森町を紹介され、現地を見に行くことにし、当時の町役場は移住に積極的ではなかったが、その先輩移住者から話を聞くことができ、教えられた空き家にとりあえず住んでみたところ、そのまま住み続けたとのことであった。町に興味を持った人が来やすい環境であることが大事であり、多様性を認める地域であることが新しく来る人たちの居心地のよさになると意見を述べた。 (五) 耕野振興会耕野地区復興支援員 小笠原有美香氏(伊具郡丸森町) 学生時代の農業実習で丸森町を訪れたことがある小笠原氏は、その十年後、復興支援員として同町にIターン移住することを決めた。地域の魅力を発掘して発信することがこの地区の復興や地域への愛着につながると考え活動しているが、二十代、三十代の若者への働きかけに苦慮しているとのことだった。小笠原氏は復興支援員の任期満了後もこの地域に住み続けることを望んでいるが、その後の就労については、起業あるいはこの地域に即した働き方を模索しているところである。また、女性のひとり暮らしにとって集落の行事、会合、役職等は負担が大きく、やりたい地域活動ができない実情があり、この負担がなければもっと住みやすくなるという発言があった。 (六) 丸森町 町の移住施策を担当する子育て定住推進課は、昨年四月に子育て部門と移住定住を推進する部門が合体し新設された課であり、本年四月に開設したまるもり移住・定住サポートセンターについては、今は公設公営だが、いずれは民間に運営させたいとの説明があった。町民や移住者のための各種補助金は、それぞれのニーズに合わせて設けている。みやぎ移住・交流推進員会議は昨年実施した県のモデル事業であるが、同町大内地区がモデル地区となって、地区住民に移住者の必要性を考えてもらう中で、地域の将来図を真剣に考えてもらったという。移住希望者のための地域の教科書をつくろうという最終的な結論に至るまでの一連のプロセスを県関係者に見てもらえたことがとてもよかったとのことだった。住み続けたいまちづくりという視点では、移住者も大切であるが、まずは町の一万五千人弱の町民が住みやすく、自分たちの課題は自分たちで解決するという町民の考えや気持ちを支援しながら、新しい住民を迎え入れるという考えで進めているとのことである。 (七) 丸森物産いちば八雄館店長 安保和子氏(伊具郡丸森町) 関東で結婚した後、Uターン移住者として丸森町に戻ってきた安保氏は、当時の苦労体験から、その土地のしきたりなどを全くわからずに入ってくる移住者が困らないように、気づいたりしたことや、相談を受けたりすれば、助言をしてきたそうである。安保氏は、自分が今、家族と住んでいる家を守らねばならないのか、住み続けるのかということが課題であったが、この数年で、なんとかなるさ、自分が生き生きと暮らしていければよい、という心境に達したという。地元のためにも、自分のためにも、健康を優先によい時間を過ごしたいと述べた。 (八) 筆甫地区振興連絡協議会事務局長 吉澤武志氏(伊具郡丸森町) 二十年以上前から移住者を受け入れていた丸森町筆甫地区では、頑張る移住者に地元の若者も刺激を受けるという相乗効果が見えてきて、このままいけばよい雰囲気になるのではないかと地域が感じ始めた時に東日本大震災が起きたそうである。吉澤氏は、被災後、住民で話し合って、地域課題を解決するためならば何にでもチャレンジしようという気持ちで取り組んでいるという。当協議会の仕事と自身の役割は常にここで暮らす一人一人の住民力を高めるということに尽きると説明する。一人一人がこの地区をよくしたいと思う、自分に何ができるか考える、例えば体は動かせなくても意見だけは伝えられるような地域をつくってきたという。そして今は、地域の中の必要のない行事やリーダーの役割などを見直し、減らすことでリーダーが実際にやるべきことに注力できる体制をつくろうとしている。また、若い人たちが地域の中で動いていく仕組みをつくってきたが、今後は世代の違う層との縦のつながりをつくらなければならないと思っている。 吉澤氏は、人口減少・若者対策については、地元住民への対策と外から来る人の対策をどうするかを分けて考える必要があるとして、そこの住民が生き生きしてチャレンジしている魅力ある地域をつくり、それを外に発信することで、このような地域でチャレンジしたいという人はいずれまた来るのではないかと述べた。最近、筆甫地区にまた移住者が入ってきつつあり、再び地域を盛り上げようという雰囲気が出てきたとのことである。 最後に、吉澤氏は、やはり住民からすれば、住み続けていくためには道路や携帯電話が通じるなどの社会基盤の整備が最低限必要であると述べ、要望した。 (九) 特定非営利活動法人そのつ森代表理事 太田茂樹氏(伊具郡丸森町) 太田氏は、二十年以上前に就農を希望し関東からIターン移住した。移住当時は田畑も借りられず自身で桑畑を開墾したが、地道に農作業する姿を町の人に見てもらう中で地域に少しずつ認めてもらったと振り返った。丸森町は大きな幹線道路が通っておらずそのために産業が遅れたと言う人もいるが、移住者からすると落ち着いて暮らせて、町民の人柄も穏やかで人がよかったそうである。 東日本大震災後、太田氏は、避難所として活用された廃校が今度は筆甫の役に立つ、活性化にも役立つ施設になってほしいと思い、NPO法人を立ち上げデイサービスを開設した。本当は小規模多機能介護施設を希望したが、設備や二十四時間体制などのハードルが高く、デイサービスとしたため補助金がつかなかったそうである。宿泊所としての設備のハードルも高く、国土交通省等の補助金も受けられなかったため自己資金で改修したが、廃校利用には消防法や建築基準法の規制があって思うような改修ができなかった。以上から、廃校利用時の規制緩和について要望した。その他、行政に望むこととして、移住のサポートは人が変わると継続できないため、長い目で見た人事配置や別組織にした対応などを要望した。 (十) 丸森“こらいん”ツーリスト 所長 早川真理氏(伊具郡丸森町) 丸森町内の県内調査先を紹介してくれた早川氏もまた移住者である。十年前の移住当初は仕事がなくて同町に住めない時期もあったと振り返る。早川氏が他の移住者から聞くのは、子どもたちが住み続けられるように雇用の場をつくることが自分たちの使命であり、町に対する一つの恩返しであるということ。このような移住者の活動は地元の人たちの力なしでは考えられないものであり、地元民と移住者とがうまく連携している地域に元気な動きがあり、人が住み続けるのではないかと思っていると述べた。また、早川氏は女性ひとりが住んでも地域行事やつき合いが負担にならないような環境であればもっと気楽に移住できると言い、この人に頼めばなんとかなるという人が身近にいることが移住には大事ではないかと述べた。四 県外調査 1 東京都 東京都では、平成二十六年十二月に三カ年計画の「東京都長期ビジョン」を策定している。当時の知事が「働く人の三分の二が非正規であることは尋常ではない」との認識を示し、非正規雇用対策を重点的に実施しようと取り組んでいる。平成二十九年までの三年間で一万五千人の正規雇用化を目指す。これまでも非正規雇用対策としてさまざまな取り組みをしてきたが、今年度は非正規労働者の正社員化への動きを加速させるための助成金等の制度を拡充するとして、新たに六つの事業に取り組んでいるとの説明があった。 六つの事業うち、非正規労働者を正規雇用に転換した事業主や若者を正社員で採用した事業主に対しての助成事業は、国の制度に上乗せする形で支給するものである。それ以外は、正社員として実務経験や心構えが十分でないために正規雇用に至らない二十九歳以下の若者に対しての事業、就職氷河期対策として位置づけられた四十四歳以下の求職者が対象となる事業に分けられる。なかでも、就職氷河期対策事業の一つである東京しごと塾は、短期間就労を繰り返し職業人としての基本的スキルや職務経験が不足している非正規労働者が、正社員として働くための必要なスキルや心構えを身につけるため、実践型の疑似職場での実習を三カ月間体験し、さらに国の制度を使って三カ月実習するものである。この六カ月にジョブトレーナーというアドバイザーが企業とのやりとりを仲介するなどの支援をする。一定の支給要件はあるが、職務実習期間中は一日当たり五千円の就活支援金を支給する。半年という長期にわたって就業体験とジョブトレーナーという手厚い支援を行ってでも、正社員として就業してほしいという事業である。 東京都では、かつては職業訓練等、求職者側への支援に力を入れていたという。最近は経済がよくなってきたため、若者はハローワークなどの公的支援を利用せずインターネット等から自分でエントリーして就労するようになったが、非正規労働者は減っていないという状況である。そのため、一人一人の求職者への支援に加えて、企業の中で非正規を正社員に転換するという動きが非常に重要と感じているとのことだった。 2 飯南町(島根県飯石郡) 飯南町では、仕事の確保、住居の確保、子育て支援を移住推進の三つの柱と考え、各種施策を実施している。 今年度新設された地域振興課内に「飯南町定住支援センター」というワンストップの相談窓口を掲げた。定住専属職員を一人増員し、町内の事情に詳しい定住推進員という嘱託職員を一人配置した。各課の農業担当、広報担当、婚活担当、集落支援員などと日々連携しながら定住施策を進めているとのことだった。 飯南町では、山間部であるにもかかわらず企業を誘致し雇用が確保されている豊かな財政基盤を背景に、仕事や住居の確保について、町独自の助成金を創設しつつ、可能なものは県や国の補助金等を財源に充てている。また、今後はUターン移住推進に力を入れたいとして、移住者個人への助成金ではなく、移住者を受け入れる集落自身が移住を推進する機運を醸成するための助成金を創設した。移住後の定着率を上げるため、移住交流会等を開催するなど、移住者がネットワークをつくれるようなアフターフォローにも力を入れている。また、飯南高校の就職支援を町内事業所と連携し行っている。以上のような移住制度であるが、行政だけで移住相談に当たるのではなく、町民自らが移住相談者と接して、人が人を呼んでくるような形に整えているところであるとの説明があった。 また、飯南町総合戦略では、若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる政策として、結婚・出産・子育ての各段階で、「結婚し、子どもを産み、育てる喜び」を体感できる「まちぐるみ」での環境づくりを行っている。昨年度立ち上げた「ご縁の会」は、地域の仲人を養成しふやすことで出会いの機会を創出する、地元での結婚を希望する登録会員に婚活イベント情報を提供したり仲人に相談したりする、若者のコミュニケーション能力の向上を推進するため細かな指導をするという制度である。そのほかには、民間結婚仲介業者への登録費用の助成や結婚及び出産祝い金の支給、保育料の軽減や子育て支援に積極的に取り組む事業所への助成を実施している。財源については、婚活イベントは県の交付金で十分の十が補助されるが、結婚仲介業者への登録費用については、県が新たに創設した交付金で補助できるかどうか県と協議を重ねているとのことであった。 3 島根県中山間地域研究センター(島根県飯石郡飯南町) 同センターは、中国地方知事会中山間地域振興部会の共同研究機関であり、島根県、鳥取県、岡山県、広島県及び山口県が共同で、広域的な研究や共同事業に取り組んでいる。同センター地域研究部門では、今後のコミュニティがどのような運営体制でいくべきか、そのためにはどのように進め、何が必要か等、コミュニティを中心に研究し、その中で、経済循環、交通、農林地の資源管理などを研究している。さらに、そのようなバックデータを持った研究員が、実際の中山間地域の現場を支援するという体制がとられている。 地域づくりのポイントとしては、この地区の人口はこのままいくとどうなるかという推計人口を住民皆で共有することと説明する。子どもの数を重視し、どの程度の定住があれば人口を下げ止めできるかを見定める必要があるという。また、地域を運営する住民組織をつくることは難しいが、年齢、指向性、ニーズも違う住民たちがどういう地域になることを望んでいるかを把握することが大切で、最初にどうやって意見を出させるかが重要であるとのことであった。さらに、計画づくりには、住民と話し合いながら地域の問題点を出してもらい計画を立てると同時に、その計画の中で「最初にする行動」までを決めておくことが大切であると説明した。 人口が減少している中山間地域の今後の暮らしを支えるために、住民組織がベースになりながら、合わせ技で様々なことに取り組む必要がある。第一段階として人口減少・高齢化が進むことを背景に、集落より広域な地域運営の仕組みをつくること。そして、人口を推計し、子どもの増減数を重視し住民の話し合いを進め、高齢者の生活支援、放課後の預かり、地域学習、配食等をボランタリーでやっていく母体をつくることである。第二段階は、このような地域を運営する住民組織が事業団体となり、新聞販売店の運営や指定管理を受けたりしながら任意団体から合同会社や事業組合等になっていくことを目指すと説明した。 4 香川県 香川県知事は、重点目標に「女性が輝く香川」を掲げる。安心して子育てできる香川づくりなどを通して、女性の活躍の場を大きく広げ、地域の主要な担い手として、女性が輝く香川を目指すという。そのような知事の決意のもと、男女雇用機会均等施策を専門に計画立案する部局の位置づけが高められている。 男女共同参画の推進は、自分らしい生き方を選べ、男性も女性も生きやすく暮らしやすい社会をつくることであり、このためには一人一人の主体的な取り組みが重要であり、社会全体で推進していくことが必要である。昨年十二月に第三次かがわ男女共同参画プランを策定したが、これは平成二十八年度から五年間を計画期間とし、女性の活躍推進を前面に押し出すとともに、少子高齢化の進展や家族形態、ライフスタイルの多様化などの社会経済情勢の変化を踏まえつつ男女共同参画社会の実現に向けて三つの基本目標と十三の重点目標を掲げ、具体的な施策を取りまとめていると説明した。 香川県の出生数は平成元年以降、一万人を割って推移しており、平成二十六年は七千七百四十五人と過去最低となり、晩婚化の進行、未婚率の上昇を背景に、少子化が急速に進んでいる状況である。平成二十二年の出生動向基本調査によると、未婚者の九割が結婚の意欲はあるが適当な相手にめぐり会わないとしている。このような調査結果から、深刻な少子化を改善するためには、晩婚化、未婚化の流れを変えることが必要であると認識しているとのことである。しかし、結婚は個人の問題であることから、行政としての結婚支援はきっかけづくりとしての出会いの機会をふやす取り組みと考えており、未婚者に対して結婚を促し、出会いから、結婚、妊娠、出産、育児へとつなげていく必要があると考えているとのことであった。 そこで、平成二十八年度の新たな結婚支援事業として、結婚を希望する独身男女の出会い、結婚を仲人のように支援する拠点として、結婚サポートセンターを設置するとの説明があった。この事業では、ビッグデータを活用できるシステムを導入し、会員を対象に一対一の個別マッチングを行うほか、センターに登録した企業や団体が実施する婚活イベントの案内や申し込み受け付けを一元的に行う。結婚を希望する者に、より気軽に婚活への第一歩を踏み出してもらい、出会いから交際、結婚まで丁寧な個別支援につなげたいとのことであった。さらに、システムを活用した出会いやその後の交際をフォローするためには、いわゆる「おせっかいさん」という仲人的な人材が必要であるとの考えから、センターに配置する結婚支援員に加えて、「おせっかいさん」というボランティアを養成し、その協力をもらいながら効果的な事業になるような検討をしているとの説明があった。 5 特定非営利活動法人グリーンバレー(徳島県名西郡神山町) 神山町は、昭和中期の最大人口は二万一千人であったが、平成二十八年三月現在の人口は五千七百人強で高齢化率は約四七%である。同町で育った若者も高校、大学に進学すると他自治体に下宿しながら通学したり、県外に就職したりする人がふえており、町に若者が残らない状況となっている。 グリーンバレーでは、「創造的過疎」を提唱し、平成十九年から神山町の移住施策に関わっている。「創造的過疎」とは、過疎は日本全体に進んでおり止められないものであるから、過疎という現状を受け入れ、外部から若いクリエイティブな人材を誘致し、移住してもらうことで人口構成を健全化させ、多様な働き方を提案できるビジネスの場としての価値を高めようという考え方である。 また、神山町では、策定した地方創生戦略を「まちを将来世代につなぐプロジェクト」と称し、すまいづくり、ひとづくり、しごとづくり、循環の仕組みづくり、安心な暮らしづくり、関係づくりを循環させ、最後に見える化していくことをテーマに戦略を立てている。それらの施策を連続的に、拡張性と継続性があり、社会性を有した活動として展開するために、同町はグリーンバレーとともに新たに一般社団法人「神山つなぐ公社」を設立した。同時に、同町役場内に設けた課長級戦略会議「神山町つなぐ会議」を隔週ベースで開催し、これら二つの協働を通じ「まちを将来世代につなぐプロジェクト」全体を推進していくこととした。 グリーンバレーの移住施策だけではできない細かな部分を担うために設置された「神山つなぐ公社」では、次のように説明する。人は地域に可能性を感じて移住してくる。全く人がいないところに人は住まない。空き家をうまく回すなどよい住居があることが大事であり、若者世代を受け入れるときには、よい学校と教育が重要視される。また、大人が楽しそうに働いていることが見える地域が魅力的に感じられる。そして、地方創生では、富や資源が流出せず、地域内で循環することがとても大事である。さらに、地域に安全性があること。もう少し広域に捉え都会からの疎開地として考えると備蓄も必要となる。そして人との関係性が豊かで開かれていることも重要であると説明する。将来の世代がこの地域に可能性を感じられるように、もう少し長期的に考え、大人たちが諦めずに楽しく取り組んでいくことが肝要であり、その姿を子どもたちが見て将来につながっていくことが必要とのことであった。五 総括・提言 一連の調査活動を終えて、これまで国が主導してきた人口減少社会への対応や施策は、都道府県や市町村の実態を踏まえた検討が足りず、地域の特性や資源、人を生かした政策反映を行っていないのではないかという所感がある。人口減少は避けられないものであり、その現状を受け止めつつ、その地域の適正規模を検討し、見極め、落ち着かせながら、いわゆる「限界集落」の中でどうやって生きていくか、生きていける仕掛けをつくることが大切である。昨今の人口減少問題は、むしろ今をどう豊かに生きるのかという私たち大人自身の生き方をも見つめ直すきっかけをもたらしたと言える。そして、人口減少社会における若者対策については、危機感を持つ基礎自治体(市町村)では「まちづくり」として主体的に各施策を進めているが、東日本大震災で被災した沿岸地域では復興も道半ばである。そのような中、県はそれらの施策が効果的に実施されるよう環境整備等の側面的な支援を積極的に行い、地域課題をともに考え、ともに解決する姿勢で取り組むことが求められている。 以上から、これまでの調査結果を踏まえ、本委員会は、今を生きる若者・女性が「住み続けたいと思う魅力あるまちづくり」には、次の提言に沿った施策の推進が必要であると考える。 1 若者等の定住促進について (一) 県は市町村などと連携し、暮らしていくための基本となる新たな「なりわい」を生み出すための環境整備に取り組むこと。 (二) 県は、新卒・既卒にかかわらず若年者が良質な雇用環境で就労できるよう関係機関と連携し、県内雇用の八割超を支える地元中小企業・小規模企業への支援を拡充すること。 (三) 県は市町村などと協働し、若者等一人一人の生き方が尊重され、多様性を認め合うまちづくりを推進すること。 (四) 県は、若者等が出会い、結婚から妊娠、出産、子育てまでの切れ目のない支援を受けられるよう、市町村などとの連携を強化し、その他の必要な体制整備を図ること。 (五) 県は市町村などと協働し、地域の伝統文化の継承も含めて、地域に根づいて活動する若者等を育成する仕組みづくりを支援すること。 2 まちづくり支援について (一) 県は市町村などと協働し、地域のまちづくりの計画策定の段階から当事者である子ども、若者、女性、子育て世代の意見が反映されるような仕組みづくりを支援すること。 (二) 県は市町村などと連携し、各地域のニーズに合った生活基盤の整備(道路、情報通信、公共施設等)を推進し、安心して生活できる、人と人とのつながりを重視したコミュニティづくりを支援すること。 (三) 県は市町村などと協働し、地域で暮らす住民がその歴史、資源などを見直すことで地域の誇りや魅力を再認識し、住民自らがそれらの資源等を活用し発信することで、地域に関わる人をふやしていく取り組みを支援すること。 (四) 県は、それぞれの地域において特色あるまちづくりが進められるよう柔軟性のある財政支援を講ずること。 3 まちづくりを担う地域団体・NPO等への支援について (一) 県は市町村などと連携し、町内会、地元青年団、住民自治組織などの地域に根ざした団体等のまちづくり活動が充実し持続するような支援を講ずること。 (二) 県は市町村などと連携し、地域のまちづくりを支援するNPO等の活動が持続できるよう継続した支援を講ずること。 (三) 県は市町村などと協働し、NPO等の活動を受け継ぐ地域に根ざした団体・人材を育成する仕組みを構築すること。 4 「宮城の将来ビジョン」への位置づけ 県は将来ビジョンの見直しに当たり、若者・女性施策を継続的、総合的、重層的に担当する部署の設置または体制を整備すること。 以上、これらの提言が今後の県の関係施策に十分に反映されることを期待して、報告とする。 平成二十八年十一月二十二日 人口減少・若者対策調査特別委員長 ゆさみゆき 宮城県議会議長 中山耕一殿……………………………………………………………………………………………
○議長(中島源陽君) これより質疑に入ります。 委員長報告に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。-----------------------------------
△いじめ・不登校等調査特別委員会調査結果報告
○議長(中島源陽君) 日程第百二十四、いじめ・不登校等調査特別委員会調査結果報告を議題といたします。 本件について委員長の報告を求めます。いじめ・不登校等調査特別委員長、二十六番すどう哲君。 〔二十六番 すどう哲君登壇〕
◆二十六番(すどう哲君) いじめ・不登校等調査特別委員会の調査結果について御報告を申し上げます。 本委員会は、いじめ・不登校等に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十七年十二月十八日に設置されました。付議事件、いじめ・不登校等に関する諸施策についてを受け、一、いじめ・不登校等子供たちを取り巻く現状について、二、いじめ・不登校等への諸施策について、以上を調査項目として県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに参考人からの意見聴取を行ったほか、県内、県外調査を実施し検討を重ねてまいりました。 その結果につきましては、お手元に配布の報告書のとおりでございますが、この報告が今後の関係施策に反映されることを期待して御報告申し上げます。…………………………………………………………………………………………… いじめ・不登校等調査特別委員会報告書 いじめ・不登校等調査特別委員会の調査・検討結果について報告する。 本委員会は、いじめ・不登校等に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十七年十二月十八日に設置され、付議事件「いじめ・不登校等に関する諸施策について」を受け、調査項目を以下の二項目とした。 一 いじめ・不登校等子どもたちを取り巻く現状について 二 いじめ・不登校等への諸施策について 以上の項目について、県関係部局から県内の現状及び県施策の概要を聴取するとともに、参考人として、東北福祉大学総合福祉学部教授阿部正孝氏、宮城教育大学保健管理センター所長関口博久氏、石井慎也法律事務所弁護士石井慎也氏及び特定非営利活動法人学校の底力理事長岩岡勝人氏を招致して意見を聴取し、さらに、県内の実情を把握するため石巻市立山下中学校、フリースクールだいと及び宮城教育大学の状況について調査を実施したほか、他県などの事例を参考にするため、文部科学省、福岡県、福岡教育大学、福岡教育大学附属福岡小学校、京都府及び京都市立洛風中学校の取り組みなどについて調査を行った。 その概要は次のとおりである。一 現状と課題 1 いじめ・不登校等子どもたちを取り巻く現状について いじめについては、平成二十六年度の問題行動等調査結果によると、小・中学校で認知件数が増加し、高等・特別支援学校では減少しているが、全国で三番目の認知件数となっている。また、いじめを認知した学校数は全ての校種で増加し、解消率については小・中・特別支援学校で高くなっているが、県ではこのような認知件数及び認知校数が増加したことについては、日々アンテナを高くし、早期発見・早期対応に努めている結果として肯定的に受け取とめている。 平成二十六年度における不登校の現状については、小・中学校では不登校児童生徒数が増加し、高等学校では減少しているが、中学校の千人当たりの不登校児童生徒数は全国で二番目に多い状況となっている。また、不登校児童生徒のうち約四割は学校でのさまざまな指導、支援によって学校復帰を果たせており、残りの六割のうち約一割は適応指導教室に通うことによって支援を受けているが、残りの子供たちは、まだ十分な支援が届いていないという状況である。さらに東日本大震災の影響については、平成二十六年度における不登校児童生徒の追跡調査の結果から、小学生の九・四%、中学生の五・七%に影響が見られており、減少傾向にはあるもののいまだ影響があることがうかがわれる。 なお、いじめ・不登校と児童虐待の関連については、これらを結びつけた調査は行っておらず、明確とはなっていない。 2 いじめ・不登校等への諸施策について いじめ問題への対策については、平成二十五年九月のいじめ防止対策推進法の施行を受け、宮城県いじめ防止基本方針を策定するとともに、いじめ問題対策連絡協議会等の組織を立ち上げ、校内体制の強化やネットいじめ等の諸問題の未然防止や早期発見・早期対応、電話相談や来所相談の整備、関係機関・団体等との連携など、さまざまな観点から施策を講じている。また、学校の教育活動全体を通じた道徳教育の充実や体験活動の推進等により、児童生徒の社会性を育むとともに、児童生徒がいじめに向かわない態度・能力の育成やホームルーム活動等での話し合いなどを通して、いじめは人間として許されない行為であり、根絶しようとする意識や態度を持たせる指導にも力を入れている。 いじめ問題に係る全体的な課題として、組織的な対応及び継続的な支援、いじめられた児童生徒の保護とともに、いじめた側の児童生徒・保護者への対応が課題である。 不登校への対策については、国の予算を活用するなどし、全ての公立中学校や市町村へのカウンセラーの配置、教育事務所等へのカウンセラー及び在学青少年育成員の配置、訪問指導員や児童生徒支援加配教員及び生徒指導支援員を配置することにより、相談体制などの充実を図っている。また、近年不登校対策のキーパーソンとして拡充に努めているのがスクールソーシャルワーカーである。福祉の専門家として不登校児童生徒を取り巻く環境に働きかけ、問題解決に導くスクールソーシャルワーカーは学校からの要望が多く、配置に積極的な市町村がふえているが、有資格者が少なく、確保が難しい状況である。そのため、引き続き大学や社会福祉士会、精神保健福祉士協会等と連携しながら、人材の確保に努めることとしている。 不登校に係る課題については、特に中学一年生で大きく増加する傾向があり、この点について一層の改善が必要と考えている。 そのほか、学校を卒業した後の引きこもりへの対応も重要なポイントであり、学校教育と福祉部門との連携、さらには情報共有のシステムづくりが今後の検討課題である。二 参考人からの意見聴取 1 東北福祉大学総合福祉学部教授 阿部正孝氏 阿部氏は、いじめ・不登校の現状及び対策について、次のように述べた。 現状として、いじめ・不登校がこれほどまでに社会病理問題として注目を集めているのは、日本だけの問題であり、その背景には、核家族化や学歴偏重の文化がある。 いじめについて、現在の法律におけるいじめの定義は極めて曖昧であるため、法律のいじめの定義だけでは判断せず、いじめられている子供に対し、反復的な攻撃がされていること、本人が身体的・心理的な苦痛を感じていること及び圧倒的な力の不均衡があるかを考慮した上で、いじめかどうかを判断しなければいけないと考えている。 いじめの対策について、道徳教育などは長期的な目標としてはよいが、それだけでは時間がかかり過ぎることから、短期的な予防策として、毎日起こるいじめ問題を見過ごすリスクを低くすることやマンパワーを補充することが必要であると述べた。 不登校について、不登校の子供たちに共通することは、仲間と交流を持つことが極めて苦手ということが挙げられる。また、不登校の定義が年度内に三十日以上学校を休んだ場合とあるため、不登校と判断するのは年度末まで待たなければならないことから、その時点では既に手おくれになっている場合がある。そのため、不登校の定義に必ずしも準拠することなく、その兆候を知り、早めに対応することが必要である。また、不登校における短期的な予防策としてもマンパワーが必要であると述べた。 いじめ・不登校に共通するマンパワー不足の解決には、教育以外の外部の専門家であるスクールソーシャルワーカーや弁護士、児童精神科医など、学校の中の対応機能を多職種多機能の分野で展開する必要がある。そのほか、課題の解決策として共通することは、学校、家庭及び地域との連携の橋渡し役であるスクールソーシャルワーカーが非常に活躍すると述べた。 このように、いじめ・不登校への対策としてスクールソーシャルワーカーの活用が必要であるが、その人数及び質の確保が課題である。人数については、中学校区域に一人は必要であり、質については、現状の不安定な勤務体系の改善及び大学を卒業した若者が週二、三回のスクールソーシャルワーカーの働き方で満足できるかどうかという問題の解決が課題である。そのため、東北福祉大学では、スクールソーシャルワーカー養成コースをつくり対応している。 そのほか、現在の子供たちが命のとうとさに対しての感覚が少ないことについては、社会全体で取り組まなければならない課題であると意見を述べた。 2 宮城教育大学保健管理センター所長 関口博久氏 関口氏は、不登校の現状及び対策について、次のように述べた。 不登校は、病理的なものや精神病に伴うもの、発達障害に伴うものなど多義的問題を含んでおり、特に発達障害に伴うものは不登校の現状として押さえておかなければならない一つの要素である。また、児童虐待に関わる不登校も無視できないものである。さらに、不登校になることは勉強がおくれたり、人間関係を学ぶことができなくなり、社会生活に適応できなくなるなどの非常にマイナスかつネガティブな要素を含んでいるが、一方で自分の心を守り、自分の道を見つけることや心を癒やしていくという側面もある。そのため、不登校とは、ある時期の一休みであり、不登校も選択肢の一つである。 また、不登校の児童生徒を無理やり登校させると、精神症状がさらに強くなり、自分の空間に閉じこもってしまう社会的引きこもりの状態につながっていくため、不登校臨床にかかわる者は、この社会的引きこもりの状態に持っていかせてはいけないということを大前提に考えている。 不登校の対策として、スクールソーシャルワーカーや弁護士、児童精神科医などの外部専門家が学校に入り、学校の中の対応機能を多面的なものにする取り組みも必要と考えている。また、専門的な相談機能や機関の充実を図ることも重要であり、例えば、宮城県の総合教育センターの不登校・発達支援相談室の機能を高めていくことも必要である。 そのほか、不登校への対応として、適応指導教室が選択肢の一つとして位置づけられていることはとても重要なことだが、設備的にも空間的にも多くの問題を抱えており、基盤が非常に脆弱であることやマンパワーの配置・拡充といった課題があると指摘した。 3 石井慎也法律事務所弁護士 石井慎也氏 石井氏は、いじめの現状及び対策について、次のように述べた。 学校現場のいじめの対応について、少し注意すれば避けられるポイントが実践されていないために自死という結果につながっており、特に次の点について対応できていないと指摘した。 (一) 被害児童生徒から相談を受けた時点で、予想される展開を説明しながら、どのように進めるか希望を確認すること。 (二) 保護者の意向を確認すること。 (三) 将来に向けていじめをやめさせようということであれば、必ずしも過去のことの真相究明は必要ではないことに注意すること。 (四) 謝罪の会によって一件落着にしたいという教員の心理が働いていないか注意すること。 (五) 再発防止に向け、被害児童生徒の保護者には経過観察、加害児童生徒の保護者には家庭内での指導を求めること。また、保護者と意見が対立した場合には、最後は見解の相違としてよいことを前提に、保護者に連絡をすること。 (六) 報復によるいじめの再発が起こらないように、一定の頻度による経過観察を行うこと。 (七) 被害及び加害児童生徒に寄り添った対応者をそれぞれ用意すること。 (八) 必要に応じて、出席停止措置もあり得ることを加害児童生徒に予告し、実際に措置を講ずること。 (九) いじめをしてはいけないという指導以外にも座席の配置や班分けなどに配慮すること。 次に、具体的な対応策として、次のような意見を述べた。 (一) いじめについての教員の研修の充実 (二) スクールソーシャルワーカーの活用 (三) 弁護士の活用 (四) 外部相談機関との連携 4 特定非営利活動法人学校の底力理事長 岩岡勝人氏 岩岡氏は、いじめ問題への取り組みについて、次のように述べた。 特定非営利活動法人学校の底力(以下「学校の底力」という。)は、日本全国の子供たちが笑顔で過ごせるように、特にいじめによる自死をなくしていくために、平成二十八年三月に設立した。 学校の底力では、メールによる相談を二十四時間体制で受け付けているシステムである「絆ネット」の全国展開などを目標として、子供たちが学校に相談しやすい体制づくりを進めており、宮城県内の全ての学校において絆ネットを導入してほしいと意見を述べた。また、相談があった場合には、必ず二人の教員で確認及び教頭先生への報告を行い、相談をした生徒に対し適切なアドバイスを行うものである。 そのほか、関係性づくりが非常に大事だと考えており、子供たちが社会に出て困らないように、学校で教えていく必要があり、教科や部活などはそのための手段の一つであると述べた。また、いじめによる自死をなくすためには、食事においてミネラルを取るように食生活を改善していくことも必要であると意見を述べた。三 県内調査 1 石巻市立山下中学校 石巻市立山下中学校(以下「山下中学校」という。)においては、山下中学校におけるいじめ防止への取り組みについて調査し、次のような説明を受けた。 まず、職員による取り組みについて、毎月一回の学校生活アンケート調査、生徒指導委員会の実施及びいじめに関する勉強会を実施しており、いじめの未然防止及び担任とほかの教員との連携を取り組みの成果としているが、外部との連携については難しい部分であるとの説明を受けた。 次に、生徒によるいじめ防止への取り組みについて、山下中学校においては生徒健全育成ボランティア団体シリウス(以下「シリウス」という。)を結成し、さまざまな活動を行ってきた。主な活動は、朝の挨拶運動やみやぎ小・中学生いじめゼロCMコンクールへの参加、いじめ心のメッセージの記入などである。特に、みやぎ小・中学生いじめゼロCMコンクールにおいて、最優秀賞を受賞するなど、その活動によって山下中学校の雰囲気がいい方向に変わってきたと生徒自身も感じており、今後はシリウスが主体となって、全生徒がいじめ問題を考えるシンポジウムを実施したいとの説明があった。 そのほか、震災や非行に負けない強い心を持った子供に育ってほしいとの願いを込め、宮城県警察が考案した非行防止の合言葉、「ま(万引きしない)け(ケータイあぶない)な(なぐらない)い(いじめない)よ(夜遊びしない)」を活用し、石巻警察署と連携しながら非行防止活動を行ったとの説明もあった。 2 フリースクールだいと(仙台市太白区) フリースクールだいと(以下「だいと」という。)においては、だいとの概要について調査し、次のような説明を受けた。 だいとが受ける不登校に関する相談では、不登校期間に授業を受けないことによる勉強のおくれや集団が怖いこと、自信がないことなどが多く、だいとではその中でも、どうせ私は何もできないというような学習された無力感を一番警戒しており、これらへの対応として、次の配慮を行っているとの説明があった。 (一) 空間・時間への配慮として、中学一年生から高校三年生までの年齢差のある集団をつくることで、自分の能力差をほかの人と比べる必要がない空間への配慮、放課後や土曜日に来る子供にも対応する時間への配慮を行っている。 (二) 学習に対しての配慮として、小集団授業と自主学習の組み合わせを行っており、さらに主体性を生んでいこうというねらいもある。 (三) 取り組み方への配慮として、遅刻・欠席の連絡を生徒自身が行うことや、自立した生活習慣を身につけるよう導くこと、そして、ボランティアを生徒自身が行うことにより、社会から必要とされている実感を持たせることとしている。 (四) 対人関係への配慮として、ソーシャルスキルトレーニング、異学年交流、推論する力の強化及びアニマルセラピーを行っている。 (五) 進路に関しての配慮として、高校一年生のときから三年生及び二年生と一緒にオープンキャンパスに行くことやセカンドキャリアについての指導を行っている。 (六) 保護者への配慮として、毎月一回の保護者の学習会を開催し、数多くの事例を提示している。 フリースクールなどの民間施設の公的認知に関しては、民間の学び場所の前に、コミュニティスクールのような公的な学び場所を設けるような抜本的な改革があったほうが、不登校の当事者に対しての教育サービスは格段に向上すると考えており、そのような公的な学び場所が整備された後に、フリースクールなどの民間施設が認められるのが筋ではないかと意見を述べた。 そのほか、運営においては利用者の費用対効果を意識し、常に危機感を持って行っているとの説明があった。 3 宮城教育大学(仙台市青葉区) 宮城教育大学では、宮城教育大学におけるいじめ問題への取り組みについて調査し、次のような説明を受けた。 初めに、BPプロジェクトとは、宮城教育大学を含めた四つの大学が連携し、いじめ問題に対する専門的知見を生かして、これまでより一歩進んだ支援を行うことが教育大学の社会的使命であるとして平成二十七年四月に始まった事業であり、教育委員会や学校への各種支援事業、いじめ問題に対応する教育・研究事業及び各教育委員会や教員を対象とした研修事業を行っているとの説明を受けた。 次に、宮城教育大学の取り組みとして、特別支援教育といじめをテーマに事業を進めており、学校現場で生じている問題の実態を把握するため、通常学級内の児童生徒間で生じるトラブルについてアンケート調査を実施したところ、衝動性が高く、多動な子供はトラブルに巻き込まれやすく、そのトラブルが結果としていじめにつながる可能性があることがわかった。そのため、いじめの予防・対策のために現場で求められている支援として、教員の事務作業などの軽減や教員などの増員によって、教室や部活中の子供の居場所を見守る教員あるいは大人を確保することが必要であると述べた。また、子供たちには、自分以外の他者を理解するような寛容さを身につけてほしいと考えており、それを身につけさせるのが教員の役割であると述べ、そのほか、いじめを受けたときに誰かに相談するスキルを身につけるための支援も、教員が行うことが可能であると意見を述べた。 さらに、いじめ防止やいじめを要因の一つとする自死を防ぐためには、明るい学校、楽しい学校をつくることが大切であり、それを実施する力を教員が持っていることや、学校と教育委員会などがチームで行動できることが必要であること、そして、いじめの傍観者を仲裁者に変えていくことが、いじめ防止において非常に近道になる方法であるとの説明を受けた。四 県外調査 1 文部科学省初等中等教育局児童生徒課(東京都千代田区) 文部科学省では、国におけるいじめ・不登校への取り組みについて調査し、次のような説明を受けた。 文部科学省としては、いじめの認知件数が多い学校は、いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けた取り組みのスタートラインに立っていると捉えていると説明を受けた。また、法律上のいじめに該当するものは広範囲であり、常に学校現場で起きているため、認知件数を減らすことは難しいと考えている。そのため、いじめの件数を減らすことよりも、いじめを細かく認知し適切に指導することで、重大な事案に発展することを防ぐという対応が重要であると意見を述べた。 不登校への対応として、不登校の一番初めの段階から切れ目のない支援を行うため、児童生徒理解・教育支援シートを作成することが有効であると考えていると述べた。また、適応指導教室に通うことによって、一定数の児童生徒が学校に復帰しており、その果たす役割は大きいと考えているため、国としても設置促進などのための財政的な補助を行っていることに加えて、これからは不登校児童生徒に対しても家庭訪問をするなど積極的な支援をしてほしいと考えていると説明を受けた。そのほか、不登校児童生徒を対象として、その実態に配慮した特別の教育課程を編成している不登校特例校の充実やフリースクールなどの民間施設に通う児童生徒の保護者に対する財政的支援の検討なども行っているとの説明もあった。 2 福岡県 福岡県では、福岡県におけるいじめ・不登校への取り組みについて調査し、次のような説明を受けた。 初めに、いじめへの取り組みについて、福岡県では、福岡県いじめ問題総合対策を策定し、さまざまな取り組みを行っており、特に平成二十八年度から、福岡県独自のいじめに特化したアンケート調査である学校生活・環境多面調査を実施している。また、その結果から、いじめの状況を把握するとともに学校や学級で実施しているいじめ防止などの取り組みの改善及び充実を図っていると述べた。そのほか、インターネットの普及に伴い、ネット上でのいじめもふえていることから、福岡県青少年インターネット適正利用推進協議会を設置し、小学生を対象とした参加型ワークショップの実施や青少年のネット利用を考えるフォーラムの開催などを通じて、青少年をネットトラブルから守るとともに適正なネット利用を推進しているとの説明を受けた。 次に、不登校への取り組みについては、国の委託事業を活用し、魅力ある学校づくり調査研究事業を実施している。この事業は、児童生徒が意見を交換し合う場面を必ず盛り込む授業づくりを中心に行うなど、人間関係づくりを重視しており、県内の一つの中学校校区において、不登校になる生徒数が若干減るとともに学力が上がるという効果があった。また、同じく国からの委託事業で、不登校児童生徒学校復帰支援事業を実施しており、県内の適応指導教室において個に応じた学習指導計画と支援計画などを作成及び研究し、コミュニケーションスキルの向上や不安の解消などが図れる適応指導教室づくりを目指しているとの説明を受けた。 さらに、いじめ・不登校両方に関連する事業として、スクールカウンセラー活用事業やスクールソーシャルワーカーの配置、研修講師としての弁護士の活用を通じたチーム学校推進事業を実施しているとの説明も受けた。 3 福岡教育大学(福岡県宗像市) 福岡教育大学では、いじめ根絶を目指すアクションプログラムについて調査をし、次のような説明を受けた。 福岡教育大学では、平成二十六年度に、いじめ根絶を目指すアクションプログラムを策定し、いじめ予防に資する次の取り組みを行っている。 (一) 県及び市町村教育委員会が設置するいじめ防止等を目的とした委員会へ委員を派遣しており、その任務に就いている大学教員同士の協議の場を設けることによって、情報共有を行い、委員会活動の中で有効な提案ができるよう取り組んでいる。しかしながら、自死などの重大事案について調査する第三者委員会については、守秘義務があり、情報共有の仕方及び委員の育成については検討課題である。 (二) 附属の小学校において、いじめ防止を意図した授業のあり方についての開発・研究を行っている。現在、授業の中にはアクティブラーニングが多く盛り込まれており、授業の中での子供同士の相互作用がふえていることから、授業中の発言における守らなければいけないマナーの設定や友達と一緒に勉強してよかったと心から思える授業づくりを進めており、体育などの技能系の教科では成功しているが、国語や算数などの認知教科では求めている水準に達しておらず、今後の課題となっている。 (三) 教員になる若い世代への教育として、学生たちには、日常的に起きているいじめをどのように把握し、程度の軽いうちに早期介入をしてとめていくのかという発想や知識、技術を示したいと意見を述べた。 4 福岡教育大学附属福岡小学校(福岡県福岡市) 福岡教育大学附属福岡小学校(以下「附属福岡小学校」という。)では、いじめ根絶を目指すアクションプログラムについて調査し、次のような説明があった。 初めに、いじめの原因は、利己主義を強め他者を軽視することで自分への肯定感を獲得する感覚である仮想的有能感を無意識的に身につけていることであり、その背景には希薄化する人間関係が存在し、他者との関係を自ら閉ざしてしまう閉じた個の存在が課題であると述べた。また、これまで行われてきたいじめ防止の取り組みについては、対症療法的なものが多く、授業の中においても、限られた機会でしか人間関係づくりが行われていなかったことが課題であり、なかなか効果があらわれていないのが現状であるとも述べた。 このことから、いじめ防止の解決策として、自分の力を最大限発揮しながら、仲間とともに協働し、ともに伸びていく開かれた個を目指すことが重要になり、授業づくりにおいても、全ての教科で人間関係づくりを視野に入れて行っていると説明があった。また、開かれた個をつくる授業づくりで身につけさせたい資質・能力として、人間関係形成力、基礎学力及び思考力・判断力を設定し、特に、人間関係形成力については、情緒的な発信力、意志的な発信力及び合意形成力を身につけさせることにより、仲間を支え合う子供、気持ちを伝え合う子供、価値をつくり合う子供を育てることができ、いじめを取り巻く傍観者に対しても、他者を思いやる温かい心や周りの人と協調すること、いかなる場合でも自立的に行動できることという点から効果を及ぼすことができると意見を述べた。 そして、これらの子供を育てる授業づくりは、教材や活動構成、シンキングツールなどの点から一工夫することにより可能となると述べ、成果として、児童同士のもめごとを引きずる姿が減ったことや仲間と協働して落ちついた雰囲気をつくろうという変化があらゆる場面で見られたことが挙げられるとの説明を受けた。しかしながら、国語や算数などの認知教科の授業づくりにおいては非常に難しいところがあり、福岡県に提案できるような授業づくりを、教員の創意工夫、教材開発力によって行っているとの話があった。 5 京都府 京都府では、京都府におけるいじめ・不登校への取り組みについて調査し、次のような説明を受けた。 初めに、京都府における平成二十五年度のいじめの認知件数は全国で一番多かったが、京都府としては、法に定めるいじめの定義に基づいて、小学校低学年の段階から嫌な思いをしたと感じた子供の声を幅広く丁寧に把握をした結果であると肯定的に捉えている。また、件数の多寡にとらわれることなく、いじめ問題に対しては、見逃さないこと、早期に発見・対応・解消することが最も大切であると考えており、今後もすべての児童生徒に対し、アンケート調査と聞き取り調査を実施し、丁寧に対応していきたいと説明があった。 次に、不登校への取り組みについて、京都府では、不登校及び不登校傾向の児童生徒を、「学校に登校できるが、教室に入りにくい児童生徒」、「外出できるが、学校には登校できない児童生徒」、「家庭に引きこもり傾向の児童生徒」の三つに分け、それぞれの状況に応じた施策を展開しており、特に、「外出できるが、学校には登校できない児童生徒」に対しては、フリースクール連携推進事業において対応しているとの説明があった。 フリースクール連携推進事業は、三つのステップを設定し、その取り組みの成果を評価しながら、それらをクリアした民間施設を認定フリースクールとして府が認定し、学校との連携を進めていくことが特徴的な取り組みとなっている。この認定制度により、フリースクールの質を担保できていることや学校と認定フリースクールが連携を積み重ねていく中で、お互いが一定の信頼関係の上に立って連携を進めていくという土壌ができてきたことで、出席取り扱いの問題や評価の問題に対する連携が深まってきており、不登校児童生徒の社会的自立への支援が進んできたという成果がある。しかしながら、京都府の財政事情は厳しく、フリースクール連携推進事業は平成二十六年度で終了しており、現在は国の委託事業を活用しながら連携をさらに進めているところであると説明があった。 そのほか不登校への取り組みとして、教育支援センター等の設置促進事業では、適応指導教室の機能の拡充として、適応指導教室にも来ることができない児童生徒に対する訪問型の支援など不登校児童生徒への対応における中核的機能を持たせていると説明があった。 6 京都市立洛風中学校(京都府) 京都市立洛風中学校(以下「洛風中学校」という。)では、洛風中学校の概要について調査し、次のような説明を受けた。 初めに、洛風中学校の開校の経緯として、国の事業を活用することにより、少人数学習、多様な体験活動、新たな教科・時間の設置及び年間総授業時間数を現行の千十五単位時間から七百七十単位時間にするなどの柔軟で特色ある教育課程が可能となることから、不登校を経験し学習面でも困っている子供の役に立とう、子供たちを一人ぼっちにさせない、社会につなげていくことができる新しい形の中学校を設置し、子供たちができるだけ学びやすい環境をつくろうということで開校したとの説明があった。 また、洛風中学校の教育目標として、「仲間とともに納得して学び直す、心を開いて遊び語り合う、自身を取り戻す学習の実践」を掲げており、決して個別対応しているわけではなく、可能な限り集団の中での人とのかかわりを通して、成長し直してもらおうということを考えているとの説明もあった。 さらに、適応指導教室と洛風中学校の違いは、適応指導教室の子供たちは、原籍校に戻る機会を残しているが、洛風中学校の場合は、原籍校には戻らず洛風中学校で卒業することを原則にしていることであるとの説明を受けた。 そのほか、洛風中学校を卒業した生徒の進路状況については、公立及び私立の全日制高等学校への進学が約五割、残りが通信制及び単位制の高等学校へ進学しており、未進学者は現在までの卒業生の中で一人か二人ほどであるとの説明を受けた。 最後に、学校としての取り組みとして、わかりやすい授業づくりと教員が大人げなく真剣に遊ぶことを大切にし、心をフル回転させて対応している。また、不登校への対応について、複数の目で判断できる体制づくりや一番困っている子供のことを考えての学校づくりのほか、子供たちは今を生きることとあわせて、将来に向かって成長するという二つの仕事をしているので、子供の立ちどまりを受け入れること、スクールソーシャルワーカーや児童相談所、警察などさまざまな人たちと連携して、子供たちを見守るネットワークをつくっていくことが重要だと考えている。さらに、偏見や思い込みによって子供を傷つけない配慮とつながりを切らない配慮を大切にしているとの説明があった。五 総括・提言 これらの調査結果を踏まえ、本委員会は、いじめ・不登校等に関する諸施策について、次のとおり取りまとめた。 いじめは人間として絶対に許されない行為であり、本県においてはいじめ根絶を目指すことを子供たちにかかわる全ての人々が強く決意して、各種取り組みを実施していくことが大変重要である。そのため、学校現場では、いじめの未然防止やいじめが発生した場合においても、適切に対応及び解消し、それが子供たちの成長の糧となるような教育を行うべきである。 また、不登校についても、不登校になる児童生徒をなくしていくことや不登校になった場合においても、社会的引きこもりの状態にまでいかせないという考え方のもとで、各種取り組みを行っていくべきである。 さらに、宮城の将来を担う子供たちが、安心して通うことのできる魅力ある学校づくりや子供たちの成長・発達を支える学校づくりが、いじめ・不登校に共通する最大の対策であり、学校現場での校長先生を初めとした全ての教職員が、いじめをなくしていくという強い決意のもとに行う取り組みに加えて、家庭や地域社会などの子供にかかわる全ての人々が緊密に連携し、いじめ・不登校の問題解決に向けて取り組んでいかなければならない。 これらを前提とした上で、今後、取り組みが期待される施策は次のとおりである。 1 いじめについて (一) いじめをなくしていくための取り組み (1) 安心して通うことのできる魅力ある学校づくりといじめを許さない児童生徒の関係づくりを進めるため、学校現場と教育委員会などの関係機関が連携してその環境づくりに努めること。 (2) いじめの認知については、件数の多寡にとらわれることなく、これまでと同様に幅広く丁寧に把握をし、早期発見・早期対応に努めること。 (3) いじめの早期発見・早期対応に努めるため、いじめ実態調査の早期公表など公表のあり方について検討を行うこと。また、いじめ実態調査の結果から、いじめの実態把握及び対策のため、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態の発生件数について、児童生徒のプライバシーに最大限配慮しつつ情報の公開を検討し、速やかに学校現場において対応できる体制づくりに努めること。 (4) 教職員配置を改善充実するなど、いじめのない学校づくりに向けた教育環境の整備を進めること。 (5) 児童生徒健全育成ボランティア組織が、県内の全ての小・中・高等学校で結成できるよう、学校や教育委員会、県警察が連携して推進すること。 (6) 大学との連携や他県の先進事例を参考とし、いかなる場合でも自立的に行動できる子供を育てるため、人間関係づくりに重点を置いた授業づくりを推進すること。 (7) いじめの察知や初期対応への取り組みを強化するため、メールなどを活用した気軽に相談できる窓口の設置を検討すること。 (二) いじめが要因と疑われる自死事件が発生した場合の対応について (1) 学校や教育委員会、地域社会などは、児童生徒の命を何よりも大切にするという原則に立って対応すること。また、報道機関においても同様の対応を期待する。 (2) 事件の事実調査は十分に行われるようにし、被害者遺族がその内容を知る権利を可能な限り尊重すること。 (3) いじめた児童生徒が自覚と反省を持って人間的に立ち直ることができるよう、徹底した措置を行うとともに、ケア及び学習を保障し、更生と教育が進められるようにすること。 (4) 教育委員会においては、被害者遺族に最大限配慮しながら適時適切な情報発信に努めること。 2 不登校について (一) 不登校にならないようにするための取り組み (1) 学校現場においては、不登校の定義にとらわれることなく、その兆候を把握し、早期の対応を行うこと。 (2) 切れ目のない支援及び連携を支えるツールとして、支援を要する全ての児童生徒に対して個別の指導・支援計画を作成すること。 (3) 子供たちのボランティア活動への参加を充実させること。 (二) 不登校になった場合の取り組み (1) 学校とフリースクールなどの民間施設が、一定の信頼関係の上に立って連携を進めていけるような事業を行うとともに、児童生徒がフリースクールなどの民間施設に通う場合の支援のあり方について検討すること。 (2) 適応指導教室については、多様なニーズに対応できる教育環境を整備するため、施設の拡充や人的配置の充実を図るための支援を行うとともに、引きこもりまたは引きこもり傾向のある不登校児童生徒に対する家庭訪問などのアウトリーチ型の支援も積極的に行うことができるような中核的な機能を果たせるよう支援すること。 (3) 十分な支援が行き届いていない不登校児童生徒をなくしていくため、他県などの事例を参考として、不登校を経験した児童生徒を対象とした特別な教育課程を編成している不登校特例校の設置を検討すること。 3 いじめ・不登校に共通する取り組みについて (一) いじめ・不登校への対応については、現在もさまざまな観点から多くの事業を行っていることから、それらを引き続き継続しながら事業の成果などについて検証し、さらに市町村や関係機関との連携・調整に努め、常によりよい改善を行うとともに、他県などの先進事例も参考とすること。 (二) いじめ・不登校への対応などに関する教職員の資質向上のため、大学などと連携し研修の充実を図ること。 (三) マンパワー不足の解決については、学校以外の外部の専門家であるスクールソーシャルワーカーや弁護士、児童精神科医の活用など、学校の中の対応機能を多職種多機能の分野で展開できるような環境づくりに努めること。 (四) スクールソーシャルワーカーの確保については、各中学校区域に最低一人は配置できるよう、引き続き大学や社会福祉士会、精神保健福祉士協会等と連携するとともに、現状の不安定な勤務体系の改善を図ること。 以上、これらの提言が今後の関係施策に十分に反映されることを期待して、報告とする。 平成二十八年十一月二十二日 宮城県議会いじめ・不登校等調査特別委員長 すどう 哲 宮城県議会議長 中山耕一殿……………………………………………………………………………………………
○議長(中島源陽君) これより質疑に入ります。 委員長報告に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。-----------------------------------
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産業振興対策調査特別委員会調査結果報告
○議長(中島源陽君) 日程第百二十五、
産業振興対策調査特別委員会調査結果報告を議題といたします。 本件について委員長の報告を求めます。産業振興対策調査特別委員長、二十二番石川利一君。 〔二十二番 石川利一君登壇〕
◆二十二番(石川利一君) 産業振興対策調査特別委員会の調査結果について御報告申し上げます。 本委員会は、産業振興対策に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十七年十二月十八日に設置されました。付議事件、産業振興対策に関する諸施策についてを受け、一、農林水産及び地域産品の輸出による販路拡大と産業振興施策の展開について、二、TPPの影響と対策等について、以上を調査項目として県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに参考人からの意見聴取を行ったほか、県内、県外調査を実施して検討を重ねてまいりました。 その結果につきましては、お手元に配布の報告書のとおりでございますが、この報告書が今後の関係施策に反映されることを期待して御報告申し上げます。…………………………………………………………………………………………… 産業振興対策調査特別委員会報告書 産業振興対策調査特別委員会の調査・検討結果について報告する。 本委員会は、産業振興対策に関する諸施策について調査検討するため、平成二十七年十二月十八日に設置され、付議事件「産業振興対策に関する諸施策について」を受け、調査項目を以下の二項目とした。 一 農林水産及び地域産品の輸出による販路拡大と産業振興施策の展開について 二 TPPの影響と対策等について 以上の項目について、県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに、五人の参考人を招致して意見を聴取し、さらに、農業生産法人株式会社GRA、有限会社耕谷アグリサービスにおいて取り組みの状況について調査を実施したほか、岡山県、四国タオル工業組合、愛媛県、福岡県、株式会社クロスエイジを訪問して調査を行った。 その概要は次のとおりである。一 現状と課題 1 農林水産及び地域産品の輸出による販路拡大と産業振興施策の展開について 県では、みやぎ国際戦略プラン(第三期)及び食材王国みやぎ農林水産物等輸出促進基本方針に基づき、農林水産物及び地域産品の販路拡大等について戦略的に各種施策を実施している。 このうち地域産品の販路拡大については、このプランの中でも売れ続ける仕組みづくりを掲げた上で、本県企業の海外販路開拓・拡大を目指しており、具体的には県が以前から取り組んできた中国及び韓国を引き続きターゲットとしつつ、成果が期待できる台湾や今後有望と考えられる東南アジアを中心としたプロモーションを強化するとともに、県内企業の国際競争力を高める商品開発を支援しながら、輸出促進の機会を創出することとしている。 農林水産物等については、香港及び台湾を中心に宮城県食品輸出促進協議会やジェトロなどと連携して輸出に取り組む県内事業者を支援している。 昨年度からは海外市場でのより実効的な販路開拓に向けて、東南アジアなどの新興国を対象に水産物や牛肉などの基幹となる輸出品目の重点的なプロモーション活動を展開している。 国では、平成二十五年八月に農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略を策定し、平成三十二年までに農林水産物・食品の輸出額を一兆円規模に拡大するとの目標を打ち立て、オールジャパンとして輸出事業に取り組むこととしており、国や他県等との連携方策を検討する必要があると考えている。 さらにTPP協定の合意を踏まえ、品質のすぐれた県産農林水産物等の一層の輸出拡大に向け、輸出品目の選定や対象国等の絞り込みを行い、より効果的な輸出戦略を策定する必要がある。 課題としては、中国及び韓国の食品等を中心とした輸入規制が継続している中で、中国国内の需要をどのように本県の成長につなげていくか、また、台湾の半導体や精密機器を初めとした製造業やハイテク企業と県内企業のマッチング等の実効性のある方策をどう実行していくかということが挙げられる。 また、新たなマーケットとして期待される東南アジアについては、富裕層を中心に高くても買ってもらえる県産品を探求しつつ、中間層に受け入れられる商品の開発や価格設定等をしっかり行っていく必要がある。 農林水産物についても、人口減少に伴う国内消費市場の縮小や震災で失われた販路の回復が急務となっており、海外市場に新たな販路を求める必要性が高まっているほか、県内事業者の国際競争力の強化や県産農林水産物等の認知度向上を図る必要がある。 2 TPPの影響と対策等について TPP協定は、アジア太平洋地域において物の関税だけでなく、サービス、投資の自由化を進め、幅広い分野でのルールを構築する経済連携協定となっている。平成二十七年十月にアトランタで開催された閣僚会合において大筋合意に至り、今後は各参加国において国内承認手続が行われる予定である。 物品市場アクセスについて、日本の関税に関しては全貿易品目の関税撤廃率は品目数ベースで約九五・一%、うち農林水産物の関税撤廃率は約八二%となっている。全貿易品目のうち関税を残すものは四百五十九品目あるが、全て農林水産物となっている。一方、ほかの交渉参加国十一カ国の関税に関しては、全貿易品目の関税撤廃率が品目数ベースで九九%から一〇〇%となっている。 物品以外の市場アクセスについては、原則全てのサービスと投資が自由化の対象となっている。 ルール分野については、投資、税関当局及び貿易円滑化、ビジネス関係者の一時的入国、電子商取引、政府調達、知的財産等の項目において基本的なルールが規定されている。 TPP協定が発効した場合の影響については、平成二十七年十二月二十四日に国から農林水産物の生産額への影響が公表されたところである。県ではこの結果をもとに本県農林水産業への影響額を算出し、本県独自の要因・背景等についての分析を踏まえた影響評価を行った結果、本県農林水産業への影響額は、トータルで七十八億円と試算した。試算の対象品目数は、農産物八品目、林産物一品目、水産物十三品目となっており、それぞれの影響額は、農産物三十七億円、林産物十八億円、水産物二十三億円となっている。 今後の対策については、農林漁業者等の不安が軽減されるよう、農林水産業の体質強化策等にしっかりと対応するほか、国が実施する農林水産業の体質強化対策等も十分に活用しながら、対策の具体化を通じて本県農林水産業の発展に努めていくこととしている。二 参考人からの意見聴取 1 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏 農業に影響の大きい農産物は一年以上前にほぼ決着がついていて、七年後に日本だけが再交渉することを約束させられている。日本にメリットがあると思われる自動車の関税は三十年後に撤廃とアメリカに対してかなり譲歩している。これがTPPの現状である。 TPPによってビジネスチャンスが拡大し産業振興のてこ入れになると喧伝されているが、チャンスがあるのはグローバル企業の経営陣にとってであり、大部分の国民には利益はない。輸入価格低下による消費者のメリットが強調されているが、関税収入の減額と相殺されるのではないかと見られている。 アメリカのタフツ大学の試算では、アメリカでは失業者がふえてGDPが減ると推定されていて、ヒラリー・クリントン氏はこの点を問題視してTPPに反対している。 問題なのはISD条項で、学校給食における地域食材の利用拡大が外国企業の利益を損ねるとして損害賠償請求の対象になり得る。さらに添加物や遺伝子組み換え、農薬等の安全性の問題もある。 さらに問題なのは影響額の過小試算である。国が提示した計算方法に基づく宮城県の農業生産減少額は三十七億円だが、当方の試算では最低限に見積もっても県試算値の約七・三倍の二百七十億円となる。米や牛肉の価格が下落するが、補填財源の関税収入がTPPにより入らなくなり差額が補填できないおそれがある。 また、米と牛肉に関する問題点として認識が必要なのは、収入保険の議論である。政府は農業者戸別所得補償制度を廃止したが、それにかわる現制度は金額的にセーフティネットにならない。 このままの政策体系では、日本の食と農を持続的に守るのは困難である。セーフティネットをなくして生産調整をやめれば、米の生産量は減り消費量がさらに減る。飼料米に回すにも酪農や畜産の生産量が減少するので米は余り続ける。政府は今の日本の安全基準よりも低い国際基準に合わせなければならなくなる。現場の疲弊は進み、輸出を考える以前の問題であることを深刻に考える必要がある。 このような現状においては、食に安さだけを追求するのではなく国民の命や環境、国家を守る産業はみんなで支えるという当たり前のことを前提に議論するべきである。農業を振興していくためには、安さを重視する消費者の意識改善が必要なのはもちろんだが、欧米のような補助金の割合を高くしたり補償金を手厚くする農業保護政策が必要である。 日本では、食品関連産業の規模が約二倍に拡大したにもかかわらず、農家の取り分は減少しシェアも落ち込んでいる。他国では、きちんと小売価格が上がって自分たちの基礎食料を支える社会システムが構築されていて、農産物に込められた価値を指標化しみんなで負担するシステムが政策として作り上げられていることから、消費者も政策に同意し、生産者も誇りを持って生産できる。 現在、産業としての農業は土台が崩れかけており、TPPに絡んで食料の位置づけを考え直し、農業がこれ以上衰退しないような基盤をつくり上げた上で余剰分を輸出するという考え方を持つ必要がある。 食料政策というのは国民の命を守る安全保障政策であるということを原点に、欧米の政策を参考に議論し直すべきである。 2 株式会社庄内こめ工房 齋藤一志氏 株式会社庄内こめ工房は、山形県庄内地方を中心とした専業農家や若手農業後継者のグループである。 生産者は百二十人おり、八百ヘクタールの耕作面積となっているが、そのうち庄内こめ工房に出荷されるのは、約三百ヘクタール・三万俵だけで、残りの五百ヘクタールは自由に販売してもらっている。 全ての米を庄内こめ工房に集めて同一価格で販売するということはあえて行わない。その理由は、特別な栽培方法で品質のよい米ができたら高く売りたいと思うのが農家の本音だからである。そのような達成感があるから若い生産者が規模を拡大していこうと思うし、農業の未来がある。農協の場合は、幾ら頑張っても自分のつくった米がどこへ出荷されて誰が食べているのかもわからない。 日本農業の現状は、今はまだ米が高値を維持しているが、そのもうけが農家の懐に入らないのが問題である。また、平成二十九年に減反政策が終了すれば平成三十年には間違いなく米価は暴落する。米はもはや聖域ではなくほかの一般食品と同じであり、低コストで良質な物を安く売るという産業構造にするしかない。ブランド米はあってもいいが、基本は業務用などの安定的な顧客をイメージした安い米づくりにするというのが、今後の稲作の生きる道ではないか。 農業の未来を考えると、現在の農業政策では農業だけで食べていけないことから後継者が育たない。TPPが発効すれば日本の農業は崩壊すると言う人がいるが、今のままだとTPPが発効するころには既に農業は崩壊している。後継者が育っているのは新潟県魚沼地域だけで、この地域ではしっかりした顧客があり単価も高いため、生産計画を立てて給料もきちんと支給できる。そのような状況をほかの地域でも作り出すべきである。 これからの農業にとっては、企業参入が大きな鍵になると考えているが、今は成功例がない。企業が大規模な農場を持ち、プロの農業者が作業を受託して効率的に作業を行い、収量をふやすような形の参入が望ましい。価格変動や天候のリスクを企業が負う形であれば安定的な収入を確保できる。 輸出の現状として、各県の知事が先頭になってトップセールスをしている香港や台湾の現場で起きていることは、各県のたたき合い、安売り競争である。海外の展示会等では、同じフロアで日本の県同士がのぼりを立てて売り込みをやっているが、ジェトロなどを中心として米だけではなく牛肉や水産物と一緒にプロモーションするとか、同じスーパーマーケットだけを狙うのは避けるなどした方がいい。また、TPPによって海外の安い米が入ってくると心配する声があるが、短粒種だとあまり価格は変わらない。逆に言うと、日本の米は海外に比べて高くはないので海外でも対抗できる。しかし、やはりコスト削減は必要なので、農機具補助金を廃止して肥料や農薬を直接メーカーから購入できるようにすればいい。他国では流通の簡素化が当たり前だが、日本は中間に入る業者がたくさんいる。そのようなことはなくすべきである。 韓国では、農業は日本よりはるかに進歩している。米韓FTAが発効して肥料、農薬及び農機具に対する補助を撤廃したが、それらの単価は日本よりもはるかに安い。米も単価が基準を下回ればその八五%を国が直接支払いで補填し、耕作面積も着々と拡大している。日本農業もこのような仕組みを目指すべきである。 3 宮城大学教授 三石誠司氏 一般財団法人農政調査委員会が発行している「日本の農業・食産業とTPP」という報告書がある。これは、TPPがほぼ合意される一年前にアメリカ側が示したものであり、アメリカ側の視点から日本の農産物貿易の構造、将来的な変化、TPP協定により起こり得る変化等について書かれている。 日本では、農産物の多くは国内向けだが、食品産業は急速に海外向けに変化した。日本の代表的な企業の収益を調査すると、国内営業利益よりも海外営業利益が多い企業は多数ある。国内需要減少への対応として海外需要を取り込みたい食品企業の戦略が明確にあるといえる。 また、日本の農産物貿易の構造も変化しており、輸入の相手先はアメリカ等ではなく中国や韓国やタイなどアジアがふえている。アメリカ側では、貿易構造の変化による付加価値の高い最終製品の輸出でもうけようとしたら、日本はアメリカからではなくほかの国から買うようになっていると分析している。 日本市場は大きく成長するとは考えられないが、国外からの労働者や外国人観光客の増加、地元産がよいというホームグッド選好がプラス要因としてあるとアメリカは分析している。農産物輸出については、今後日本がその気になって進めれば、それなりに良好な見通しがあるのではないかと考えられている。 TPPによる影響については、消費者の選択肢は拡大し、牛肉、オレンジ、米、チーズ等の価格低下が起こり得るということと、短粒種米と有機米、小麦粉や砂糖を含む加工製品の輸入が増加すると見ている。 また、アメリカ農務省は、供給制限を無視した日本政府の仮定は非現実的であり、差別化されている米や和牛の市場は維持されるため、日本の米が全て輸入品になるとは思っていないと見ている。 この報告書を考える上で大事なことは、守る側ではなく攻める側から見たターゲットは何かということである。アメリカの視点で考えると、日本産の品質と同等か近い商品である小麦、牛肉、砂糖、粉乳、バター、あるいは付加価値商品としての有機米を攻めてくるということが見えてくる。 米に対する日本とアメリカの視点の違いについてだが、アメリカは間違いなく中粒種の米を売りたいと考えている。ところが、単なる米だと日本で売れるとは考えにくいため、HACCPやグローバルギャップという基準で、有機認証を受けた米なら売りやすくなるに違いない。戦略的な視点で考えればアメリカは、日本の有機農業生産者がつくる最高級品の次のマーケットを狙って仕掛けてくるだろうと感じる。 私は食肉輸出こそがTPPの本音ではないかと思っている。アメリカ農務省は「TPP下の農業」というレポートの中で、TPPが大筋合意された十年後である平成三十七年の農産物貿易増加額について試算している。農産物貿易による輸出増加額は八十五億ドルで、分野別では、食肉が三十七億ドル、乳製品が十六億ドル、穀物が十億ドルで全体の七四%に当たる。この試算によれば、TPPによる輸出増の半分弱が食肉と見ていることが明確である。対する輸入は、日本だけが輸入増と見られていて、分野別では食肉が二十八億ドル、穀物が十億ドル、乳製品が八億ドル等である。 TPPがなぜ必要とされたのか。貿易構造が原料から高付加価値商品にシフトしていく中、アジア諸国との競争と食の安全・安心への高まりによって輸出が伸び悩んでいるため、新しいルールをつくればよいと考えたからである。そして、健康・安全志向に合致し、生産工程履歴を明確にする。また、大量生産できる工業的製品のような商品の国際基準をつくり、日本もこの基準に沿った生産体制を構築すべきとしたのである。 今、日本の農業が世界市場においてどういう立場にあるかということを冷静に捉える必要がある。 以前の日本は世界市場に対して強大な影響力を持っていたが、その影響力は既に中国にシフトしている。 我々は往々にして、日本の農業や食料が抱える問題とTPPに関する問題を全て一緒にして考える傾向にあるが、目先の変化だけにとらわれず世界市場の中でTPPがどのような影響を及ぼすかを考え、関税撤廃までの十年の間にどのように対策を行っていくかが重要である。 4 ジェトロ東北地域統括センター長兼仙台貿易情報センター所長 寺田佳宏氏 ジェトロは海外展開の支援を重点政策として、農林水産物・食品輸出と対日投資の促進に力を入れている。 今なぜ海外輸出かという話だが、日本のGDPは平成七年以降伸び悩みが続き、国内市場はほとんど成長せず総人口も減っていく一方で、世界では経済成長が続いており、それを日本の企業が取り込めれば非常に大きなビジネスチャンスになるということである。特に世界の食市場は、平成二十一年に比べて平成三十二年には二倍から三倍になると考えられているため、無視できないものがある。 政府目標は、平成三十二年までに農林水産物・食品輸出を一兆円規模にすることであり、その中でも加工食品が五千億円、水産物が三千五百億円規模を目指している。特に水産物は伸びが顕著で、ジェトロにおいても重要性が高まっている。 海外の日本食レストランの数も飛躍的に増加している。現地の輸入業者が割高なものを買っているわけではなく甘い状況ではないが、現在は近隣のアジア諸国のGDPの急激な成長と日本食ブームの相乗効果により、非常に日本食を輸出しやすい環境になっていると言える。 また、新輸出大国コンソーシアムという事業で、県や各地域の商工会議所、信用金庫、中小企業基盤整備機構などと協力し、専門家を大勢雇って中小企業の海外輸出を支援している。コンソーシアムの中で一番の成功事例は、石巻市の「日高見の国」という企業グループで、被災した企業が集まって水産物輸出グループを結成し、経済産業省のJAPANブランドに認定されて活動費の補助を受け、海外に輸出している。 仙台空港民営化における運営グループの中の豊田通商株式会社が、空港が輸出実務を代行して物流コストを低減させる事業協同組合の仕組みをつくることになり、東北農林水産物・食品輸出モデル検討協議会の第一号案件として支援されることになった。東北の小さな事業者が単独で輸出することは非常に大変なので、この組合の仕組みを上手に利用して少ないコスト、少ないリスクで成功するようになるといいと考えており、ジェトロにおいても中小企業の海外輸出に対し引き続き支援を行っていく。 5 本田技研工業株式会社 佐藤孝之氏 自動車は、約百年前の発明以来我々の生活に大きな変革をもたらした反面、大気環境の汚染や気候変動のほかエネルギー問題等、幾つかの地球規模の重要な問題も発生させている。国際エネルギー機関の試算によると、二〇五〇年における温度上昇を現在より二度以内に抑えるためには、全世界の自動車割合で、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車に加え、電気自動車(EV)と燃料電池自動車(FCV)のゼロエミッション車のいわゆる次世代自動車の比率を九〇%以上とする必要があるとされ、各国の自動車燃費規制は年を追って厳しくなっている。 大気環境、気候変動、エネルギー供給という課題に対し、弊社の解としては燃料電池自動車が本命だろうと考え、研究開発に注力するという方針をとっている。国においても平成二十八年三月には経済産業省から水素・燃料電池戦略ロードマップ改訂版が発表されている。 燃料電池自動車は水素を燃料として車内で発電するので、その電気を一般家庭の家電で使えるよう、直流電流を交流電流に変換できる外部給電器も同時に開発している。両者を使えば、水素が満タンの場合、一般家庭一軒が一週間使う電力を供給することが可能であり、節電すれば家庭三軒分ほどの電気を一週間供給することも可能となるため、災害時などの停電時に役立つ。燃料電池自動車は走るだけではなく、給電装置としても使用できる利点がある。 燃料電池自動車の車両価格と燃料となる水素価格を合算したコストは、今は高額だが将来的には量産効果で値段が下がっていくものと思われる。また、水素・燃料電池関連市場としては、燃料電池コージェネーションシステムや燃料電池自動車だけではなく、水素発電や水素ステーションを初めとする水素供給インフラを含め、二〇五〇年で約八兆円規模になると見込まれている。 水素の経済的価値として、従来のエンジン車とは違った部品や材料等を使用するので、この部分で産業の創出、経済振興や雇用促進を期待できるのではないか。地元のメーカー等も体質を変え、新しいものにチャレンジすることが必要となる。従来のガソリンエンジンにない素材や部品を生産するため、県内の中小メーカーがどのように体質転換をして参入できるかが宮城県における産業振興の鍵になるのではないか。 まとめとして、燃料電池自動車と水素の普及が今後の社会にもたらす価値は、産業競争力の確保、新たなビジネスの創出、エネルギーセキュリティーの強化及び二酸化炭素の削減効果という四つのポイントについて大きな貢献ができることだと考えている。三 県内調査 1 農業生産法人株式会社GRA(山元町) 株式会社GRAは、最初はNPO法人として山元町で東日本大震災の復興を手伝っていたが、雇用の創出を望む声が多かったことから、イチゴ農家の支援を始めて五年になる。 我々が行っているのは、イチゴ営農のIT化や養液栽培による産業振興の取り組みである。 現在、環境制御といわれるものを駆使して、主に温度や湿度、日射、二酸化炭素等をPCで一元管理して、植物にとって非常にいい環境を保つということを行っている。ベテラン農家は勘とか経験でイチゴ栽培ができるが、我々のように素人で参入した者はハウスに入っただけではどのような状況になっているのかわからない。そういうものを数値化しようということで、多くのデータを収集してフィードバックするために、地域の二十五、六軒の農家にも参加してもらっている。最初、年配の農家などはIT化に抵抗があったが、一緒になって取り組みを行ううち、みんなでデータを共有するという状況が確立されてきている。 また、農林水産省の受託事業で、先端プロ研究施設において二十以上の研究機関や大学等が実証実験を行っている。我々は栽培の確立と流通販売を担っており、この研究結果を地域のイチゴ農家に普及させるのが目的である。 海外展開としては、平成二十五年にJAPANブランド育成支援事業の認定を受け、インドやサウジアラビアで養液栽培を導入したイチゴ栽培を行っており、高評価を受けている。 2 有限会社耕谷アグリサービス(名取市) 名取市の耕谷地区は、昭和五十八年から始まった県営ほ場整備事業を契機として地区の転作を担ってきたが、担い手の高齢化や兼業化が進み、施設装備の老朽化等から農業を継続することへの不安が感じられるようになったことから集落営農を推進するために推進部会が設けられ、その中の担い手組織として有限会社耕谷アグリサービスが設立された。 現在は水稲・麦・大豆の水田農業を基本に営農しており、農地は利用権を設定して集積化を図り、規模拡大を進めている。利用権の取得は年々拡大しており、平成二十二年からの五年間で二倍近くになっている。 さらに、収益の向上と余剰労働力の活用のためイチゴなどの施設栽培に取り組むほか、正月用の切り餅「耕谷もち」を販売するなど多種多様な複合経営を展開している。 近年は米価の下落や転作の増加により年々農業所得が減少し、転作麦・大豆に加えてイチゴ・枝豆といった高収益作物の栽培や農産加工に取り組んで集落ぐるみの農業によるコスト低減や所得拡大を目指しているほか、水稲直播栽培を導入し、稲作の省力化や低コスト化に取り組んでいる。 また、東日本大震災により農地は大きな被害を受けたが、塩害があっても綿ならつくれるかもしれないと東北コットンプロジェクトに取り組み、綿花の露地栽培を行っている。四 県外調査 1 岡山県 岡山県ではもうかる産業としての農林水産業の確立を目標に、県産品の強みを生かしたマーケティング戦略展開やブランディング推進等の各種施策を実施している。 ブランディングの推進については、首都圏及びアジア地域をメインターゲットとして岡山の一番の強みである最高級果物のブランド力を生かして、供給力と販売力の強化を図ることとしている。高品質・最高級をアピールするためのプロモーションとして、首都圏において世界的トップブランド等とのタイアップや老舗果物専門店または百貨店でのPR等を行うほか、海外においても「おかやまブランド」定着に向けて台湾や香港といった海外重点市場におけるトップセールスや広域連携による共同PR、海外メディアやSNS等を活用した情報発信の強化等を行っている。また、マーケティングの力で農業振興を行うという知事の考えのもと、マーケットイン体制の強化や海外バイヤー招聘による商談会の開催等を通じて県産品ブランドの強化を図るほか、販路拡大事業を行う団体の支援や商談会へ出展する事業者の支援などを行うこととしている。 さらに、首都圏に対する販売力強化の一環として、東京の大田市場に職員を一人駐在させ、市場関係者と信頼関係を構築して一緒にプロモーションを展開するなどといった効果を上げている。 岡山県では倉敷市が国産ジーンズの発祥の地であり、染色・縫製・洗い加工・仕上げまでジーンズ関連の企業が集積して高品質・高付加価値のデニム生地やジーンズを製造している。すぐれた技術は海外で高評価を受け、海外市場での取引を確立している企業も存在し、パリやニューヨークなどの展示会へ出展する企業が増加している。この動きを支援するため、海外の出展経費を補助する「岡山デニム世界進出支援事業」を立ち上げ、県内企業のブランド力引き上げのほか販路拡大による売上高の輸出比率上昇等の効果を上げている。 海外ビジネス展開への支援としては、業務委託により設置した上海事務所及び海外ビジネスサポートディスクを通じて現地の経済・法律・税制等の情報を収集し提供するとともに、商談先企業の紹介等を行い県内企業を支援するほか、国際ビジネス関連情報提供事業として新興国の市場動向や投資環境、販路拡大、海外人材活用などに関する各種セミナーの開催やミッション派遣などを実施している。 さらに、全国的な知名度の向上や「岡山県」地域のブランド化を通じた産業振興を目指し、鳥取県と岡山県の両県で共同アンテナショップを設置し、県産品の展示販売やイベント開催、観光・移住相談など、さまざまな情報受発信事業を行っている。共同で運営することにより、経費的なメリットのほか両県の産品を同時に紹介できる、イベントの集客力アップ等のメリットがあり、今後は集客推進や販路開拓、岡山県内へのフィードバック、外国人客への対応等に取り組んでいきたい。 2 四国タオル工業組合(愛媛県今治市) 今治タオルは、平成三年頃に国内需要のピークを迎えたのち安価な海外製品の台頭により需用が減少し、国にセーフガード導入を要請したが却下されたことから生き残り策を求め、経済産業省のJAPANブランド育成支援事業に「今治タオルプロジェクト」として申請した。 平成十八年にそれが採択され、クリエイティブディレクターに佐藤可士和氏を迎えて「本質をしっかり見きわめ、その価値をうまく伝える仕組みを構築する」等の助言のもとさまざまな努力を行い、三年程度で成果が出始め、生産量は平成二十一年を底にして現在までに二十数%増加するという回復を見せている。 生産量の伸びは国内シェアでいうと四%弱だが、わずか四%伸びただけで今治は非常に元気になった。 その理由はタオルの生産量がふえ、しかもブランド化したことで販売単価が上がり、周囲の加工場や機械関係などの関連産業が活性化してきたためである。今治タオルのような小さな地域産業が頑張っているイメージは非常に大きく、いろいろなところでメディアに取り上げられる。 海外展開に関しては、海外の展示会への出展も行っているが、言葉の壁もありウェブサイト等のインフラ整備が十分ではなく、また、ギフトとしてのタオル贈答といった生活習慣がないことや水質が日本と異なること等からなかなか実需にはつながっていない。価格勝負では海外産にはかなわないので、品質の良さをどれだけブランディングできるかが重要となってくるが、そこはやはり佐藤氏の教えである「本質がしっかりしたものの価値をうまく伝える」必要があると感じている。 そのためには、SNSの活用やインバウンド、影響力を持つ来日著名人等を活用したPR等、来日した人たちによさを伝えるために国内の売り場等もきっちり整備していく必要がある。 また、国内向けにはタオルソムリエ制度を設け、現在全国二千数百人のタオルソムリエに日本だけでなく世界各国で今治タオルを広めてもらっていると説明があった。 3 愛媛県 愛媛県では地域経済の着実な活性化を図るためには地域のすぐれた産品の販路開拓や拡大を通じて具体的な需用イコール実需を創出することが重要であることから、行政組織に県内事業者・生産者の営業活動を後押しする役割を担う「営業本部」を設置し、地元金融機関や市町の職員、関係団体等を含めた六十三人でオール愛媛体制を構築し、生産者・事業者と一緒に民間企業の営業と同様の活動を行っている。 活動の基本方針として、トップセールスを突破口とした営業活動の強化と、新規販路の開拓に向けた未開拓市場への積極的な営業展開を掲げ、一方で既存販路へのフォロー営業も強化し、継続取引の維持拡大を図っている。またブランド産品、ミドルレンジ、加工用など商品レベルに応じて、ターゲットを絞った営業戦略を採用している。 また、地域ブランド「愛媛」の確立に向け、ブランド認定証や県産品PR用の統一ロゴ等により愛媛県産品が継続的に支持される仕組みづくりに取り組んでいる。 海外戦略については、営業活動を取り巻く環境が日本と違うことを踏まえ、国別ターゲットゾーンを設定し、台湾等の重点国における商談会の継続的開催やトップセールスによる人脈の重層化、東・東南アジア地域の市場ニーズに即した商品供給体制構築による着実な取り組みを進めている。 営業本部は、民間企業の営業と同様の意識を醸成するため成果指標だけではなく成約金額についても目標を掲げ、成約実績は平成二十四年度末で八億四千万円だったのが、平成二十七年度末には八十九億五千万円まで到達している。 営業本部が最も重要視しているのは、実需の創出により地域経済を活性化することであり、数字は一つの目安であって通過点であるという認識のもと、あくまでも主役は県内の生産者事業者であり、県はそれを強力にサポートするという役割をしっかりと果たしていくことが大事だと考えている。 4 福岡県 福岡県では生産者の生産安定と所得向上を目指し、県産農産物の販路拡大や輸出ルートの確保または販売促進支援等の輸出拡大に向けた施策の効率的な推進とTPP等に対する新たな対策のため、平成二十八年四月から輸出促進課を発足させている。 取り組みについては、県農協中央会、全農県本部、県農業新興推進機構、県酪、花き農協、森林組合連合会などそれぞれの品目毎の専門農協、商工会議所、商工会連合会、福岡貿易会、物産協会など、加工品工芸品関係の組織、それからジェトロ福岡、ジェトロ北九州という、福岡県ほか十九団体から構成される「福岡県産品輸出促進協議会」という協議会の中で進めている。 協議会としてのベースとなる取り組みは、販売促進フェアの開催、商談会への出展、海外のバイヤーを招聘して産地を見学して取引を拡大してもらう取組の三つが大きな柱となっていて、それに加えてその時々の情勢に合わせて新規の事業を組み込んでいくという形で、特産品のイチゴ「あまおう」ほか博多和牛や八女茶等の県産農産物を香港、台湾等に輸出している。ほかには、輸出に対する関心が非常に高い中、意外と輸出の実態を知らない人が多いことから、輸出の実態を知らせる「輸出促進セミナー」を定期的に開催している。 販売促進フェアについては、新規開拓国に対しては知事と県議会議長にトップセールスをかけてもらっている。新規の取り組みである「和食」をコンセプトとした取り組みについては、著名なバイヤーの招聘を行っており、県内の魚市場や青果市場の見学、六次化商品の提案、農家見学などを行っている。 また、アジア地域においては「福岡」よりも「九州」の方が認知度が高いことから、九州一体となった輸出拡大に取り組んでおり、各県に声をかけて「九州産品フェア」として販売促進フェアを開催している。福岡県議会からも九州一体となった取り組みを進めるようにという指示を受けていると説明があった。 5 株式会社クロスエイジ(福岡県春日市) 株式会社クロスエイジは農業分野のマーケティングを行っている会社である。独自の「中規模流通」というコンセプトを通じて、農業を地域のもうかる産業、魅力ある職業にしたいと思っている。 中規模流通とは、農産物を農協や市場に卸したり地元の直売所に販売するのではなく、各地の農産物の生産量等を勘案しながらそれを組み合わせ、農産物の価値にふさわしい販売先に直接供給することであり、我々はそれをプロデュースしていく立場である。 企画コンサルティング事業を通じ、農家の収益向上と規模の拡大を図ることを目的として、農家の補助金獲得や計画作成等の支援、企業の農業参入支援、それと自治体向けの支援を行っており、この三つの事業が一体となって「地域商社」というビジネスフォーマットをつくっている。 地域商社とは、地域の農産物等をプロデュースして全国に届ける機能を強化するため経済産業省が「にっぽんe物産市プロジェクト」という事業の中で地域商社的機能の検証を始めた際、六次産業化や農商工連携のための農家育成だけではなく、それを間でつなぐプロデューサーが必要だということで、そのような機能を持つ団体を全国各地から採択したもので、福岡九州エリアではクロスエイジが採択された。 我々の地域商社としてのコンセプトは、「スペシャリティー農家」を育成するというものである。 我々が考えるスペシャリティー農家とは、「ねぎ農家」や「バジル農家」等、単一品目生産で収量や生産技術を上げたり、コスト軽減ができる農家である。品目を特化してある程度の規模でつくっていると、ブランド化が図れてきて産品の特徴があればあるほどブランディングが容易になり、農産物のブランド力と低コスト化により安定的に農産物を出荷できれば、農商工連携や六次産業化も容易に行えるようになる。 農業経営そのものの海外展開としては、最終的には生産から選別やカット、物流のコールドチェーンを海外で展開する、それ全体で輸出産業とするのが一番いい形ではないかと思う。 そのような農家のスペシャリストが生産に集中できるよう、地域商社が支援することが必要となる。 農家が個人で販売先とじかに取引をしていると、取引数が多くなってきた時に現場が回らなくなるというのはよくあるパターンで、その場合は農家がもっと勉強して販路を開拓するというよりも、地域商社等が適切につないでいく方がはるかに効率がいい。地域商社が間に入った場合、農家が個人で取引するときと比べ農家の収入はマージンの分単価的に低くなるが、我々はほかよりも高い値段で農産物を仕入れて多様な販路を開拓し量をさばいていくため、結果として農家の収入は上昇する。 地域商社が販路開拓の間に入ってうまくコーディネートやプロデュースがされないと地域産品はなかなか売れていかないし、地域商社のおかげで生産業務に集中できる環境ができあがると、農家は自分たちで次の段階を考え、補助金を活用した事業や農商工連携、六次産業化等さまざまなことをやっていくようになる。 今後は、九州を中心とした農産物の中規模流通のプロデューサーとしてのクロスエイジと、全国を代表する九州の地域商社としてのクロスエイジ、この二つを突き詰めていきながら、設立当初から目指している「農業の産業化」を追求していきたいと説明があった。五 総括・提言 これらの調査結果を踏まえ、本委員会は、産業振興対策に関する諸施策について、次のとおり取りまとめた。 1 地域ブランドの確立とそれを核とした産業振興施策の推進について 地域ブランドの確立については、これまでも県及び関係団体等が連携して取り組み、一定の認知と評価を得ているが、今後はより知名度の高い「みやぎ」ブランドの確立と維持及びそれを核とした総合的な地域産業活性化戦略を推進することが重要となる。 そのためには、さらなるブランディングの強化と認知度の向上及び販売力の充実強化が必要となることから、JAPANブランド育成支援事業の活用やストーリー性を持たせた独創性のあるブランドイメージの構築などのほか、SNS等において発信力や影響力の強い人物の分析とそれに対するアプローチ等をプロモーションに活用するなど、これまで以上に国内外に向けて強力に情報を発信する施策を充実させ、あわせて販売ルートの開拓や拡大について着実に支援していくことが必要である。 また、新たな地域ブランド産品を育成するため、地域資源をブランド化し生産・加工から販売まで一貫してプロデュースする地域商社等を活用して品質のすぐれた商品の開発や新規事業者の掘り起こしを重点的に行うなど、ブランド化に値する商品生産に対して支援を行うことが必要である。 また、農業を取り巻く環境が大きく変わりつつある中、時代の変化に対応した施策を推進することが必要であることから、企業が農業参入する際に農作業をプロの生産者に委託して作物の収量増加と作業の効率化を図る事業や、農業協同組合や直売所への流通とは別ルートの流通を担う地域商社の育成のほか、農業協同組合や市場を通さない取引を志向する生産者への支援策として、苦手な部分の業務代行に応じる機関を支援するなど、生産者の多岐にわたる要望に対する支援を充実させていくことが重要である。 2 地域産品及び農林水産物の輸出拡大策について 震災により販路を失った事業者を支援し、かつ品質のすぐれた地域産品や農林水産物の輸出を拡大して地域産業の振興を図るため、東北あるいは被災県が一体となった知事や議会によるトップセールスにより戦略的なPR活動をする必要があるとともに、海外向けブランディングやメディアへの情報発信の強化が重要である。 県内中小企業の海外輸出を支援するため、仙台空港等の物流拠点において設置される輸出実務を代行する事業協同組合やジェトロ等と連携して企業の物流コストやリスクを低減させる取り組みを支援するとともに、ターゲット国を明確にしたレンジ別商品開発を推進し、貿易業務に精通した関係機関と連携して輸出相手国に対する営業力の強化を図り、輸出規模の拡大を支援していくことが必要である。 輸出拡大の推進については、県が事業者に対して強力にバックアップを行うことが重要であり、組織力の強化及び関係機関との連携が不可欠なことから、部局横断型の独立した輸出専門組織を設置してマーケティング体制を強化し、あわせて関係機関等と密接に連携できるよう職員の相互交流を行うなど、思い切った組織体制の見直しを検討することが重要である。 輸出業務等に係る地域間連携については、隣接県及び東北地域だけではなく幅広い観点から見た共通項のある他自治体等との連携を推進し、拠点事務所の共同運営や商談会・展示会等の開催、海外での共同PRを行うなど、海外展開に係るコスト削減等の共同事業を検討することが重要である。 3 TPPの影響と対策について TPPについては、批准・発効を巡る情勢についてはまだ先行きが不透明であるが、県内の産業、とりわけ農業に与える影響は大きいと思われることから、県においても関連する分野については、情勢に応じて関係者等の意見・要望を受ける場を確保するなど、実効のある対策を検討することが重要である。 以上、これらの提言が今後の関係施策に十分に反映されることを期待して、報告とする。 平成二十八年十一月二十二日 宮城県議会産業振興対策調査特別委員長 石川利一 宮城県議会議長 中山耕一殿……………………………………………………………………………………………
○議長(中島源陽君) これより質疑に入ります。 委員長報告に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。-----------------------------------
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東北広域観光振興調査特別委員会調査結果報告
○議長(中島源陽君) 日程第百二十六、
東北広域観光振興調査特別委員会調査結果報告を議題といたします。 本件について委員長の報告を求めます。東北広域観光振興調査特別委員長、五十八番中沢幸男君。 〔五十八番 中沢幸男君登壇〕
◆五十八番(中沢幸男君) 東北広域観光振興調査特別委員会の調査結果について御説明申し上げます。 本委員会は、東北広域観光振興に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十七年十二月十八日に設置されました。付議事件、東北広域観光振興に関する諸施策についてを受け、一、東北広域観光連携による観光の現状と振興策について、二、インバウンドによる観光振興について、三、仙台空港及びその周辺地域の環境整備について、以上を調査項目として県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに、参考人からの意見聴取を行ったほか、県内、県外調査を実施して検討を重ねてまいりました。 その結果につきましては、お手元に配布の報告書のとおりでございますが、この報告が今後の関係施策に反映されることを期待して御報告といたします。…………………………………………………………………………………………… 東北広域観光振興調査特別委員会報告書 東北広域観光振興調査特別委員会の調査・検討結果について報告する。 本委員会は、東北広域観光振興に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十七年十二月十八日に設置され、付議事件「東北広域観光振興に関する諸施策について」を受け、調査項目を以下の三項目とした。 一 東北広域観光連携による観光の現状と振興策について 二 インバウンドによる観光振興について 三 仙台空港及びその周辺地域の環境整備について 以上の項目について、県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに、東北観光推進機構より参考人を招致して意見を聴取し、さらに、松島町、一般社団法人松島観光協会、仙台国際空港株式会社及び国土交通省東北運輸局において取り組みの状況について調査を実施したほか、中部広域観光推進協議会、国土交通省中部運輸局、岐阜県、岐阜県白川村及び石川県を訪問して調査を行った。 その概要は次のとおりである。一 現状と課題 東北地方の人口は全国の減少率を上回って減少しているとともに高齢化が進展しており、これに伴う労働人口の減少や消費の縮小による経済規模の縮小が懸念されることから、地域を挙げて観光の魅力を高め、観光客を呼び込むことで交流人口をふやし、その消費によって観光が産業として成り立ち、もって地域の活性化につなげる観光振興の重要性が高まっている。 県内における国内観光客入り込み数については、東日本大震災の影響で大きく落ち込んだが、平成二十七年は約六千万人となっており、震災前の平成二十二年と比較すると約九九%と震災前の水準まで回復しているが、さらに観光客の誘客を強化するため、観光資源の磨き上げや接遇の向上の取り組みとともに、東日本大震災で被災した沿岸部の石巻・気仙沼圏域では、震災前の約七割の回復にとどまっていることから、沿岸部への誘客促進が課題となっている。 本県を訪れる観光客を地域別に見ると、本県を含む東北地方が五割、次いで関東地方が三割となっており、中部以西からは一割にとどまっていることから、中部以西からの誘客が課題となっている。 県内における広域連携として、松島湾エリアの三市三町と県が連携して「松島湾ダーランド構想」を掲げ、地域の活性化を目的にさまざまな事業に取り組んでいるが、広域連携は行政だけではなく、地域住民を巻き込んだ取り組みが重要であり、地域づくりの中心となる人材や民間主体の組織の育成が課題となっている。 訪日外国人について、平成二十七年は円安やビザの大幅緩和などが後押しとなって、前年比四七%増の一千九百七十四万人、外国人延べ宿泊者数は四十四%増の六千五十一万人とともに過去最高となったが、そのうち外国人延べ宿泊者数では、東北地方は全体の約一%にとどまっている。また、震災前の平成二十二年との比較でも、外国人延べ宿泊者数について、平成二十七年は、宮城県が十六万一千人で約一〇一%、東北六県が五十二万六千人で一〇一%と震災前の水準まで回復しているものの、全国では二三三%の伸びとなっていることから、東北地方を訪れる訪日外国人は少ない状況にある。 その最大の要因が東京電力福島第一原子力発電所事故による風評被害の影響であることから、風評を払拭していくとともに、東北観光推進機構を中心に各県が取り組んでいる広域観光周遊ルートについては、それを充実させていくとともに、東北のブランドイメージを確立し、広く魅力を発信していくため、各県がさらに連携して、東北全体が一体となった取り組みの実施が課題となっている。 さらに、海外からの誘客促進のため重点市場としている台湾、中国、韓国及び香港については、国際旅行博覧会への出展やパワーブロガー招請事業などの取り組みのほか、特に、最重点地域として位置づけている台湾については、全庁挙げて受け入れ体制を整備し、仙台空港を利用した教育旅行やインセンティブツアーの誘致とともに、情報発信・収集機能の強化が課題となっている。 平成二十八年七月一日に仙台空港が国管理空港として全国で初めて民営化されたが、運営権者である仙台国際空港株式会社によって、民間の資金と経営能力を生かした空港及び空港ビルなどの施設の一体的な運営により、東北地方のゲートウエーとして、ひと・ものの交流拡大による空港の振興や、空港を核とした周辺地域の活性化への取り組みに多くの期待が寄せられている。また、県では、将来目標として、仙台空港の乗降客数六百万人、貨物取扱量五万トンを実現するため、各種施策に取り組んでいる。 現状として、運航路線については、平成二十七年にはホノルル便の運休等、一部航空会社の撤退により、国際線、国内線とも便数が減少したが、民営化を機にソウル便が増便となりデイリー化され、また、台北便に新規航空会社が就航したため、国際線については全体として増便となっている。 旅客数については、東日本大震災の影響により平成二十三年度は百八十五万人と、それまでと比較して大きく減少したが、その後、復興需要やLCCの新規就航により、平成二十五年度には三百万人の大台まで回復している。しかしながら、平成二十七年度は、一部航空会社の撤退の影響により、三百万人台は維持しているものの、平成二十六年度と比較してやや減少している。 貨物取扱量については、東日本大震災の影響を受けた平成二十三年度は約三千トンとピーク時の一割程度まで減少したが、平成二十四年度は震災前の六割程度となる約六千トンまで回復している。しかしながら、平成二十五年度以降は、被災した施設が再建されているが、震災後のソウル便の減便や機材の小型化等により、同程度の水準で推移している。 航空旅客や貨物取扱量の増大に向けた課題として、航空旅客については、国内線では新規路線の開設や既存路線の拡充が、国際線では主に東アジアの航空会社に対して、運航便数の拡大、運休路線の再開、新規路線の開設が課題となっている。貨物については、コンテナ貨物が搭載可能な大型機材による国際ハブ空港との路線充実が必要となっている。 東北広域観光のため重要となる二次交通については、その充実とともに、東北の交通体系の中心である仙台駅と仙台空港を結んでいる仙台空港アクセス線の利便性の向上が課題となっている。 仙台空港周辺地域は、高速道路網や鉄道路線が充実し、仙台塩釜港へのアクセス性も高く、より一層の発展が期待されているが、その土地利用等の将来における方向性については、今後予定されている仙塩広域都市計画の定期見直しに合わせて、地元市とともに検討する予定となっている。二 参考人からの意見聴取 1 東北観光推進機構専務理事 紺野純一氏 東北観光推進機構では、平成二十八年度に東北六県と新潟県での外国人宿泊者数を百万人泊とする目標を掲げていたが、政府において、平成二十八年度を東北観光復興元年として、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される平成三十二年までに、東北六県の外国人宿泊者数を百五十万人泊とする目標を掲げたことから、東北地方の現状を踏まえて、政府目標の達成に向けて各種事業に取り組んでいる。 東北のインバウンドが少ない理由として、東日本大震災により、震災後、一年目及び二年目はインバウンド誘致がほとんどできない状況下でスタートしているとともに、風評被害があること、また、仙台空港からの直行便が他のエリアに比べて少なく、一地域に偏っていたこと、さらに、基本的には各県ばらばらの取り組みが多かったため、東北全体としてのブランド構築やプロモーションが弱かったことが挙げられると述べた。 平成二十七年六月には、広域観光周遊ルートとして観光庁から「日本の奥の院・東北探訪ルート」が認定され、今年度に入って、仙台・松島や鳴子温泉など十六の拠点都市をベースに、七県にまたがる三つのモデルルートを策定しているが、東北のインバウンド需要の拡大と国内での流動活性化を図るため、受け入れ体制の整備とともに、地域の特産などのコンテンツを充実させて、海外に向けて情報発信していくとともに、東北ブランドを向上させて、海外に向けてPRしていくことが重要となる。また、外国人目線を加えた東北ならではの広域観光周遊ルートを形成し、東北各県等関係団体が連携して、東北全体が一体感を持ってプロモーションに取り組む必要がある。さらに、仙台空港を東北のゲートウエーとしてハブ空港化するため、官民一体となった取り組みにより便数をふやし、青森空港や秋田空港を観光拠点化し、新幹線や高速バスのネットワークやフェリーの利用も含め、首都圏や北海道と連携して、東北全体での立体観光を推進していくことが重要であると述べた。三 県内調査 1 松島町 松島町では、計画期間を平成三十四年度までの十年間とした「松島町観光振興計画」に基づき、各種施策を展開している。 松島町の観光客数は、昭和六十二年の五百六十四万人をピークに、その後、震災等の影響によりさらに減少していることから、その回復のためインバウンド誘客に取り組んでおり、平成二十七年度には観瀾亭や駅前案内所等五つの公共施設と高城地区の十四の民間施設に公共無線LANを整備するなど、受け入れ体制の整備を進めている。また、町では、今年度から、小学五年生から中学二年生までの子供たちを対象として、町の国際交流員や外国語指導助手といった地域の人材を活用して、訪日外国人を英語でガイドすることを目標に、松島こども英語ガイド事業に取り組んでいる。さらに、広域の取り組みとして、松島湾エリアの三市三町と県が連携する「松島湾ダーランド構想」による事業を展開していくとともに、震災以降滞っていた世界遺産平泉との連携について考えていきたいと説明があった。 松島リブランディング事業として、民間を中心とした協議会において、既存の松島観光ブランドに加えて、今まで見つけられなかった松島の魅力を加えた松島ブランドの再構築に取り組んでおり、将来的には、この組織が日本版DMO(観光地域づくりの舵取り役を担う団体)に育てばいいと考えている。加えて、観光が松島にどれだけ経済効果があるのかを数値化する経済波及効果測定分析業務を行うこととしている。松島の産業と言えば観光になるが、農業などの第一次産業に携わっている方もおり、その方々も一緒になっての観光だということを数値であらわし、それを町民にお知らせすることによって、町全体を底上げしていきたいと考えていると説明があった。 松島町では、平成二十七年五月に閉館したマリンピア松島水族館跡地の利活用と、町内にあるJR駅にエレベーターを設置するなどの駅のバリアフリー化を課題と考えており、関係機関と協議するなどして解決していきたいと話があった。 2 一般社団法人松島観光協会(松島町) 松島観光協会は昭和二十五年に設立され、平成三十年には創設七十周年を迎える。現在の会員数は百六十六事業者となっており、松島町内のほか、東松島市、塩竈市、利府町及び多賀城市の事業者が加入している。年間の予算額は一億円で、収入の内訳としては、会費や松島町からの補助金のほか、観光協会が独自で運営しているかき小屋の収益となっている。事業としては、八月十五日と十六日の松島流灯会海の盆、十月から十一月の紅葉ライトアップ、二月の松島かき祭りの三つのイベントをメインに運営していると説明があった。 インバウンド誘客の主な取り組みとして、平成二十七年度は五カ国語のパンフレットを一万五千部作成しているほか、JR松島海岸駅前にある日本政府観光局の認定外国人案内所であるV(ビジット・ジャパン)案内所の運営管理をしており、英語対応スタッフ三人、韓国語対応スタッフ一人、中国語対応スタッフ二人を案内員として配置している。また、インバウンド誘客のため、海外テレビ局の日本を紹介する旅番組の撮影に、町とともに協力していると説明があった。 さらに、町に観光客を呼ぶ仕掛けとして、音楽イベントである「松島パークフェスティバル」を開催しており、平成二十八年度で三回目になるが、松島の海や瑞巌寺などを背景に演奏してみたいという方が非常に多く、外国人も含めて百十七組、四百五十人の出演があった。より多くの人が松島に足を運ぶきっかけとなり、そして松島を知ってもらうため、継続して取り組んでいきたいと説明があった。 3 仙台国際空港株式会社(名取市) 仙台国際空港株式会社は、仙台空港を運営するため設立された特別目的会社であり、平成二十八年七月一日から、航空管制以外の空港運営全般について業務を開始している。 仙台国際空港株式会社では、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の目的が交流人口の増加と地域経済の活性化であることから、旅客数をふやすことを切り口にして、仙台空港民営化の目的を達成することとしている。また、仙台空港の将来イメージとして「プライマリー・グローバル・ゲートウェイ」というスローガンを掲げており、東北を発着する旅客に一番に選ばれ、東北で最も重要な航空貨物の拠点として、「東北の玄関口」という打ち出しをしている。旅客数については、需要予測に努力目標を上乗せして、五年後に四百十万人、三十年後に五百五十万人にするという目標を掲げており、加えて、旅客数の増による空港経営の健全化により、県が掲げる目標である乗降客数六百万人、貨物取扱量五万トンを早期に達成していきたいと説明があった。 そのための三つの施策を掲げているが、一つ目として、「路線を増やし、航空需要を増やす」ため、国際線については、四時間圏の直行便の拡充や東アジアのハブ空港との路線の増便、機材の大型化を、国内線については、フルサービスキャリアの路線維持と機材の大型化、LCCの誘致による新規路線の拡充を重点課題としている。それらを実現するため、官民連携のもと、関係団体とともに取り組むとともに、地域一体となった航空利用の促進や、就航路線のPR等によりエアラインを支援していくこととしている。また、エアラインと協働のもと、旅客数が減ったときにエアラインの負担を軽減する利用料金体系や新規就航時の割引制度の導入など利用を促進させる料金体系や施設の整備を行うとともに、仙台空港が、航空ネットワークと複数の交通ネットワークが結集し、円滑に接続される結節点である「マルチモーダルハブ」となるよう、仙台空港アクセス線のダイヤ改正等の利便性の向上やバスやレンタカーの充実、駐車場の利便性の向上に取り組むこととしている。加えて、東北観光推進機構等の関係団体と連携して東北ブランドを発信し、東北の認知度を高めていきたいと説明があった。 二つ目は「空港活性化と設備投資」として、「安心」、「快適」及び「ホスピタリティ」を向上させるため、旅客搭乗施設の新設やターミナルビルの改修として、東北ブランドを発信する物販や飲食店等の商業店舗等の拡充や保安検査場通過後エリアでの店舗拡充のほか、案内所機能の増強により、国内最高レベルの旅客満足度を実現していきたいと説明があった。 三つ目は「高いサスティナビリティ(事業継続性)の実現」であり、事業の継続性が重要であることから、空港の安全・保安体制の確保を最優先とし、グループ内企業については、株主の株式長期保有や相互牽制が効く議決権比率とする仕組みとしている。また、空港は地域と共生し、地域とともに成長し発展していくことが重要であることから、空港周辺の騒音対策とともに、地域住民との相互理解のための取り組みを継続して実施していきたいと説明があった。 4 国土交通省東北運輸局(仙台市宮城野区) 国では、平成二十七年七月に、外国人旅行者を受け入れるための環境整備の促進や広域観光周遊ルートの形成・発信、観光旅行消費の一層の拡大と観光関連産業の拡大のため、全国に九つある運輸局に観光部を設置して取り組みを強化し、各種施策に取り組んでいる。 東北運輸局では、広域観光連携によって外国人観光客を地方に誘客するため、東北観光推進機構が観光庁から認定された東北奥の院・東北探訪ルートの形成・発信として、マーケティングや受け入れ環境の整備、プロモーションに取り組んでいるほか、国と地方が都道府県の枠を超えて広域に連携して取り組む訪日プロモーションなど、地方にインバウンドの誘客を図っていくビジット・ジャパン地方連携事業に取り組んでいる。 これらの事業を進めるに当たって、東北ブロックとして、平成二十八年度は四つの方針を掲げている。一つ目は「対象市場の絞り込み」であり、風評被害の払拭を念頭に置き、最重点市場を台湾、香港及びタイに、重点市場を中国、香港、オーストラリア、マレーシア及びシンガポールとしている。二つ目は「ターゲットに即したプロモーションの展開」であり、訪日リピーターを対象として、台湾については、ハイシーズンであり、かつ東北への来訪がまだ少ない夏場のPRを、韓国については、トレッキングなど特定のテーマに基づいた観光魅力のPRを展開することとしている。三つ目は「東北ならではを意識した素材の活用」であり、冬であれば樹氷と温泉、春であれば桜と雪の回廊、夏であれば祭りと自然景観、秋であれば紅葉と果物など、東北の質の高さを分かりやすく訴えていくこととしている。四つ目は「広域組織、計画や地域と連携した事業展開」であり、広域の連携や地域との連携といった「連携」によってより効果を高めていく取り組みを行っていると説明があった。四 県外調査 1 中部広域観光推進協議会(愛知県名古屋市) 中部広域観光推進協議会は、各地域の自治体、観光団体、経済団体等による「中部広域観光圏」の形成を目指して平成十七年十月に設立され、観光広域ネットワークの形成と魅力ある地域づくりの原動力となるべく活動を行っている。 中部・北陸エリアでは、それまで各県のトップセールスが単発的に行われるなど、エリア全体としてPRが不足しており海外における知名度が低かったことから、行政区域の枠を超えて、エリア一体となってインバウンド観光を推進するため、平成二十四年三月に、中部・北陸九県の産官が広域的に連携する昇龍道プロジェクトが立ち上がった。昇龍道プロジェクトによって、より効果的なプロモーションが可能となることにより、地域の一体感を高め、みずから受け入れ体制を整備していく環境をつくることを狙いとしており、その結果として、昇龍道の認知度が高まり人気の旅行地となっていくことで、外国人観光客のうち特にリピーターをふやしていくことを目的としている。平成二十七年六月には、昇龍道が広域観光周遊ルートとして観光庁に認定され、平成二十八年度には、四つのモデルコースを策定している。また、外国人観光客に多様な楽しみ方で広域周遊をしてもらうため、平成二十七年度から、広域共通の観光テーマをストーリー化して結びつける事業に取り組んでおり、「昇龍道サムライ街道」、「昇龍道日本銘酒街道」、「昇龍道山車・からくり街道」及び「昇龍道ものづくり街道」の四ルートを設定していると説明があった。 当初目標として、外国人延べ宿泊者数を四百万人泊としていたが、平成二十六年にはその目標をクリアし、その後、平成二十七年には七百五十一万人泊となったことから、平成二十八年三月に、平成三十一年までに一千百万人泊という新たな目標を立てている。そのため、二大方針を掲げており、海外向けとしては、「一環したプロモーション」の展開ということで、ミッション団の派遣、海外旅行博・物産展などへの出展、現地旅行会社や海外メディアの招聘、現地で情報発信力のあるブロガーの招請や日本滞在外国人によるSNS等を使った情報発信を一連で実施している。国内向けとしては、受け入れ側での「観光力及びホスピタリティ強化」であり、訴求力のある観光地を選定し、「昇龍道春夏秋冬百選」など、現地の旅行会社がツアーを企画する場合に使ってもらうためのパンフレットを作成しているほか、エリア内の約六百の観光施設、宿泊施設、飲食店等で特典を受けられる枠組みや、スマートフォン向けの観光アプリの開発などに取り組んでいる。また、二次交通についても、鉄道についてはジャパンレールパスとして、複数の「エリア周遊きっぷ」を用意しているほか、レンタカー利用者を対象に、エリア内の高速道路を一定期間自由に乗り降りできるパスを、高速バスについては、パスポートを提示して購入する切符を二種類用意している。加えて、中部国際空港セントレアと名古屋中心部を結ぶリムジンバスについて、利用者数の増加を受けて、平成二十八年三月に、一日四往復から八往復に増便していると説明があった。 昇龍道は県域を越えた九県三政令指定市の連携となるが、それぞれが目的を持って観光事業に取り組んでおり、広域としてやっていくという価値観を共有化するのは難しい部分がある。インバウンド誘客は一県単独でできるものではなく、広範囲に連携して初めて外国人観光客に満足してもらえるので、それぞれの思いと、また同時に一緒にやらなければならないという思いがある中で、問題点を共有化して、しっかりと合意形成していくということが一番大事だと考えていると話があった。 2 国土交通省中部運輸局(愛知県名古屋市) 中部運輸局観光部では、昇龍道の知名度を海外で向上させることを重点戦略とし、特に中国、台湾及び香港といった中華圏からの誘客に力点を置き、中部・北陸九県が一体となって強力なプロモーションを行うとともに、ホスピタリティと受け入れ環境のレベルアップを図るため、ビジット・ジャパン地方連携事業など各種事業に取り組んでいる。また、昇龍道については、平成二十八年四月に四つのモデルコースを策定しているが、これらのさまざまなプロモーションに取り組むこととしていると説明があった。 各種取り組みのうち、観光地域ブランド確立支援事業については、地域の関係者が連携して、国内外から好んで選ばれる国際競争力の高い魅力ある観光地域づくりを促進するため、地域独自のブランドの確立を通じた滞在交流型観光の推進に向けた取り組みを支援しているものであり、管内では、静岡県浜松市と湖西市が「浜名湖観光圏」として取り組んでいる。主な滞在プログラム実施の取り組みとして、ぐるっと浜名湖トレイル「ハマイチ」推進事業がある。これはサイクルツーリズムを促進するものであり、将来的には、サイクリングコースにおける多言語での情報発信やサイクルイベントを開催していくこととしている。将来的には、サイクリングが盛んな台湾など、インバウンドでも体を動かすことが目的で来られる方々を対象にセールスしていこうと考えていると説明があった。 また、地域資源を活用した観光地魅力創造事業については、各地域にある歴史的景観や美しい自然などの観光資源を、世界に通用するまで磨き上げ、それを生かした地域づくりに支援していくものであり、平成二十七年度には、福井県のまちづくり小浜推進協議会による「若狭湾の食と寺社の町並みを生かした小浜市の地域活性化事業」、岐阜県の西美濃サイクルツーリズム推進部会による「西美濃再来る天国」、愛知県のGOGO三河湾協議会による「三河湾観光振興」及び三重県の伊勢志摩キャンペーン実行委員会による「観光立国伊勢志摩経済圏の活性を目指して」の四事業を実施していると説明があった。 3 岐阜県 岐阜県では、平成二十五年度に岐阜県成長雇用戦略を策定しており、特に観光分野においては、観光産業の基幹産業化という位置づけの中で取り組みを進めているほか、観光交流拡大に向けた施策展開として、平成二十八年度は、三つの柱を立てて各種施策に取り組んでいる。 一つ目は、観光資源のさらなる魅力向上と観光地域づくりであり、関ヶ原古戦場など県内の主要観光地の魅力を向上させ、近隣の市町を含めた周遊観光につなげる取り組みを強化しているほか、岐阜はものづくり産業が盛んであることから、産業観光やスポーツ観光など分野別の観光資源のブラッシュアップに取り組んでいると説明があった。 二つ目は、世界に誇る遺産等を活用した国内外からの誘客強化であり、市町村と連携して、遺産を活用した取り組みについて支援するとともに、積極的な誘客プロモーションを図っている。また、海外からの誘客の拡大のため、イギリス、フランスを中心に、飛騨・美濃じまん海外戦略プロジェクトとして、知事のトップセールスなどの取り組みを行うこととしていると説明があった。 三つ目は、広域観光ネットワーク構築による周遊観光の促進であり、昇龍道プロジェクトの取り組みに加えて、県としては、JR各社やNEXCO中日本といった大手交通事業者と連携したプロモーションや旅行商品の造成に取り組んでいる。また、地域に埋もれている魅力的な観光資源を発掘して磨き上げる取り組みとして、平成十九年度から「岐阜の宝もの」プロジェクトを展開しており、県内外から募集した中から、全国的に通用する観光資源となることが期待される「岐阜の宝もの」を五件、それに次ぐ「明日の宝もの」を十一件認定している。代表的な取り組みとして、地歌舞伎と芝居小屋がある。地歌舞伎は約三百年に及ぶ伝統的文化であり、県内には全国最多となる二十九の保存会が存在しており、昨年度からこれを観光資源化する取り組みを強化している。年一回の定期公演のほか、外国人を意識した英語通訳付きの地歌舞伎解説のほか、芝居小屋の見学や記念撮影といった体験プログラムをパッケージ化しており、岐阜で地歌舞伎が見られるということで一定の定着が図られつつある。この取り組みにより、地歌舞伎の伝統の保存が難しい中で、保存会の活動資金調達の仕組みを構築したいと説明があった。また、観光資源の活用・市場化に向けた展開として、地域みずからがマーケティング機能を持ちながら自立した観光地域づくりに取り組む団体を重点的に応援しているほか、ストーリー性のある地域をつなぐ取り組みの支援として、観光庁が進めている日本版地域連携DMOの候補法人となる団体を中心として、長良川流域と下呂・中津川地域の二地域をモデル的に支援していると説明があった。 4 岐阜県白川村 白川村は、岐阜県の北西部に位置し、富山県、石川県と県境を接している。明治八年に現在の白川村となり、平成元年頃までは二千人いた人口が、少子高齢化により現在では一千七百人を切っている。 村内にある合掌造り集落が、富山県の五箇山地域とともに、平成七年に「白川郷・五箇山の合掌造り集落」としてユネスコの世界遺産に登録された。以降、観光客が急激にふえており、登録された当時は年間七十七万人であったが、平成二十年の百八十六万人をピークに、平成二十七年は百七十三万人となっている。最近は外国人旅行者が多くなっており、特に台湾の方が一番多く、そのほか中国、タイ、シンガポールなど、アジアが中心となっている。村全体として宿泊施設のキャパシティが六百人と少ないことから、年間の宿泊人数も八万五千人と日帰り観光が多いという状況であり、宿泊施設の誘致のほか、豪雪地帯であることを逆に利用した冬のライトアップなど、滞在型、体験型の観光地となるべく取り組んでいると説明があった。 世界遺産は状態を保存するのが原則となるが、白川村には、地域の住民たちの助け合いである「結」というつながりがあり、移住者とのあつれきもあるが、白川郷の景観を保存していくため、それをしっかり継承していくとともに、防火施設や下水道の整備及び電線の地下埋設を実施している。また、百年前の景観に戻すという取り組みを行っているほか、白川郷地区内への観光車両の進入を制限しているなど、観光客の誘致につながるよう世界遺産の価値の向上に取り組んでいると説明があった。 一方で、観光地化され、観光客がたくさん来ることによってさまざまな問題や課題が出てきている。観光業を営む方がふえることによって競争が生まれ景観が悪化するなどの世界遺産の保存意識の希薄化や休耕農地の増加、人口減少による合掌造り集落での空き家増加といった問題が出てきている。 なお、空き家対策として、移住者に対する購入費や改修費の補助制度はあるが利用者は少ないため、地域おこし協力隊を含めて、都市部でのイベントに出向くなどして、白川村のPRに取り組んでいると説明があった。 5 石川県 石川県では、観光を将来にわたって石川の活力を牽引する基幹産業として飛躍・発展させるため、北陸新幹線など交通基盤の整備の進展や二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催などの環境変化を見据えて、今後十年間の観光の指針として、平成二十八年三月に「ほっと石川観光プラン二〇一六」を策定している。 石川県では、県内観光入り込み客数の目標を三千万人と設定している。その推進体制として、観光関連事業者や観光団体、市町とも緊密に連携していくとともに、このプランを柔軟かつ着実に推進するための財源として、住民参加型の市場公募債を活用し「ほっと石川観光プラン推進ファンド」として二百億円を創設することとしており、石川県観光連盟がその運用益をもって、能登・加賀・金沢での魅力づくりや国内誘客に向けたプロモーション、海外誘客の促進などに取り組むこととしている。また、平成二十五年度には、北陸新幹線開業に向けて、また、観光の取り組みについて戦略性を持って実需につなげるという知事の考えで、県庁の担当部署を、それまでの商工労働部観光交流局から観光戦略推進部に昇格させている。 平成二十七年三月に北陸新幹線が金沢まで開業し、その効果により観光客入り込み数は前年と比較して増加したが、開業効果を持続させるため、平成二十七年十月から十二月まで、JRとタイアップして北陸三県が一丸となった北陸デスティネーションキャンペーンを実施した。今後も年間を通じて各種誘客キャンペーンを実施することとしているが、それをベースにしながら、各種イベントを開催しており、特に今年度から開催することとしている石川ロックサミットについては、石川県観光総合プロデューサーである早川和良氏の関係から、石川県観光ブランドプロデューサーに就任した松任谷由実氏の発案で開催することとなったと説明があった。 新幹線の開業により、首都圏からの誘客が伸びると想定していたが、東北からの来県もあることから、東北も新たな重点エリアと位置づけて誘客促進に取り組んでいる。仙台と金沢は、大宮での乗り換えはあるものの、おおむね三時間半でつながっており、小松空港に仙台便もあることから、本年一月から三月には、宮城と福島の民放全局での石川県を取り上げた番組の放送やタウン誌への掲載のほか、仙台の百貨店で例年開催している観光物産展にあわせて、観光PRを行っていると説明があり、加えて、宮城県と石川県で連携を取ることができ、それを通じて、東北と北陸の相互交流につながればいいと話があった。五 総括・提言 これらの調査結果を踏まえ、本委員会は、東北広域観光振興に関する諸施策について、次のとおり取りまとめた。 1 東北が一体感を持った東北広域観光の推進について 東北広域観光の推進については、これまでも東北各県や国、東北観光推進機構等が連携して取り組んできたが、広域で連携した事業を行う場合に、総論では賛成であっても、各論部分になると、各自治体それぞれの考えがあり、また、行政区域を超えた取り組みとなるため、合意形成に時間を要してしまうなど、事業実施が必ずしも円滑でない部分があった。外国人観光客の東北への誘客を図るためには、各県が連携して、東北全体が一体感を持って取り組むことが重要であり、本年八月に、東北観光推進機構主催の、東北各県知事等が一同に参加して行われたトップセールス事業である「台湾・日本東北交流懇談会二〇一六」など、東北が一体となったセールス活動を、継続的かつ戦略的に行っていく必要がある。また、その実施に当たっては、東北観光推進機構が担うべき役割は非常に大きいことから、東北観光推進機構がリーダーシップを発揮していける雰囲気づくりとともに、発言力が強まるよう県として積極的に支援していく必要がある。 東北観光推進機構が中心となって推進している広域観光周遊ルート「日本の奥の院・東北探訪ルート」について、本年四月に三つのモデルコースを策定したが、取り組みは緒についたばかりであり、各県等のほか関係団体がより一層連携・協力して、海外への情報発信や旅行商品の造成を促進するとともに、歴史や文化、美しい自然、花や食、酒などといった魅力ある観光資源を東北ブランドとして早期に確立させる必要がある。また、嗜好に応じて多様な楽しみ方で広域周遊をしてもらうため、共通の観光テーマをストーリー化した広域周遊ルートの形成について、東北観光推進機構を中心に、各県連携のもと確立していく必要がある。あわせて、東北エリア内の観光施設や飲食店等で特典が受けられる共通のクーポンや観光ガイドアプリについて、その整備・充実に取り組んでいく必要がある。 2 仙台空港民営化を契機としたインバウンド誘客等への取り組み強化について 仙台空港民営化のメリットを最大限に生かして、仙台国際空港株式会社とも連携し、各種事業に機動的かつ戦略的に取り組んでいくことが重要となる。 航空路線の新規開設及び既存路線の拡充や機材の大型化については、知事のトップセールスを含めて、エアポートセールスを継続して展開していく必要があるとともに、初めて乗り入れる航空会社に対するインセンティブ付与について、仙台国際空港株式会社や関係団体とともに検討していく必要がある。また、航空路線維持のためには、インバウンドはもとよりアウトバウンドの確保が重要であり、仙台空港民営化を応援するため本年度実施した、新規パスポート取得者に対する取得費用の一部助成事業など、アウトバウンドをふやすとともに東北地方のパスポート取得率をふやすため、今後も継続して実施していく必要がある。 仙台空港を利用した県立高等学校の海外への教育旅行を推進するとともに、海外からの教育旅行やインセンティブツアーの誘致に積極的に取り組む必要があり、特に最重点市場として位置づけている台湾については、引き続き全庁を挙げて教育旅行の誘致に取り組んでいく必要がある。 広域観光の推進において不可欠となる二次交通については、仙台空港から東北地方の各都市や観光地を結ぶバス路線の充実が必要であり、また、仙台空港と東北全体の交通の中心となる仙台駅を結ぶ仙台空港アクセス線について、ダイヤ改正による利便性の向上や仙山線の乗り入れについて検討していく必要がある。さらに、航空機や新幹線も含めた東北全体の二次交通のネットワークを充実させ、加えて、外国人観光客を対象としたフリーパスの導入を推進していく必要があることから、東北運輸局や東北観光推進機構等の関係団体との連携のもと、早期の実現に向けて、JR東日本など関係交通事業者への働きかけを強化していく必要がある。 外国人観光客の誘客のためには、東北以外の地域との連携も必要であり、東北は北海道と首都圏の間に位置していることから、北海道や首都圏と連携して、新幹線や既存の航空路線を活用した東北のエリアを越えた旅行商品の造成を旅行会社に働きかけていくとともに、海外に向けての情報発信等に一体となって取り組んでいく必要がある。また、国内観光客の誘客についても、北陸新幹線金沢開業や北海道新幹線函館開業により北陸地方や北海道からの観光客の誘客も期待できることから、北海道や石川県などと連携して、観光キャンペーン等の取り組みを行っていく必要がある。 根強く残る東京電力福島第一原子力発電所事故の風評被害の払拭については、国際旅行博への出展や海外メディア等の招聘のほか、国と連携して正確な情報を継続的に発信していくとともに、一部の国・地域においては日本からの食品等の輸入が規制されていることから、風評被害の払拭と輸入規制の撤廃・緩和について、国や関係団体等と一体となって取り組んでいく必要がある。 3 観光資源の磨き上げと魅力ある観光地域づくりについて 外国人観光客の誘客を促進するため、県内観光地におけるフリーWi‐Fiの整備や多言語観光案内表示の整備に対して引き続き支援していくほか、県内観光地の所在市町村や関係団体が行っているおもてなし人材の育成や観光地の景観保全等の取り組みに対して、県として積極的に関わりを持つとともに、必要に応じて支援していく必要がある。 既存の観光資源のさらなる磨き上げはもとより、地域における埋もれた東北ならではの観光資源を発掘し磨き上げていくことが重要であり、市町村や関係団体等における取り組みに対して、県が支援していく必要がある。また、観光地域づくりにおいては、地域が一体となって取り組む必要があることから、中心となる人材や日本版DMOとなり得る団体の育成に関する市町村の取り組みに対して、県として積極的に支援していく必要があるとともに、外部の専門家等によるプロデュースやアドバイスを受けられる体制整備について、検討していく必要がある。 ルートやコースを回る周遊型観光に加えて、一カ所に滞在して、その中でさまざまな体験をする滞在型観光の充実を図ることも重要であることから、地域における取り組みに対して、県として積極的に支援していく必要がある。 海外に向けての情報発信については、外国人目線を第一に、外国人が興味を持つような素材を見つけて、ブロガーや留学生等のSNSやブログ等を通じて情報を継続的に発信していく必要がある。 沿岸部への国内外からの観光客の誘客を促進するため、被災した観光施設の再建を引き続き支援していくとともに、食をテーマにしたイベントの開催などにより継続的に魅力を発信していく必要がある。また、沿岸部を防災・減災の学びの場として、来て、見て、感じてもらい、そして将来に語り継ぐため、復興ツーリズムの取り組みをより強力に推進していくとともに、その拠点施設として「防災・減災ミュージアム」の設置を国に強力に働きかけていく必要がある。さらに、宮城県での国際会議や国際スポーツ大会等の開催を積極的に誘致し、その機会を捉えて、宮城や東北の魅力はもとより、復興の状況や防災・減災対策などの取り組みについて積極的に発信していく必要がある。 また、教育旅行については、みやぎ教育旅行等コーディネート支援センターの取り組みの充実・強化を図るとともに、貸し切りバスを利用した教育旅行等に対する経費助成を検討していく必要がある。 4 仙台空港周辺地域の環境整備について 民営化後の仙台空港において、今後、利用促進の取り組みが進むにつれて便数の増加や運用時間の延長も想定されることから、地元住民等関係者の合意を前提として、仙台国際空港株式会社が行う騒音対策等の周辺環境対策や地元自治体等と連携した周辺の環境整備について、民営化以前と同等以上の実施内容を確保するとともに、それらを協議する地元自治体や地元住民等との意見交換の場の設置とその運営について、県が積極的に関わっていく必要がある。 仙台空港周辺は、高速道路網や鉄道路線が充実しており、仙台塩釜港へのアクセス性も高いことから、東北各県の特産品などの貨物を集積し、それを仙台空港から国際ハブ空港を経由し海外へ輸出することにより仙台空港の取扱貨物量の増加を図るため、仙台空港周辺に物流拠点を形成する必要があり、その体制構築とともに、国際ハブ空港との路線の充実や機材の大型化に東北各県や関係事業者が一体となって取り組んでいく必要がある。 以上、これらの提言が今後の関係施策に十分に反映されることを期待して、報告とする。 平成二十八年十一月二十二日 宮城県議会東北広域観光振興調査特別委員長 中沢幸男 宮城県議会議長 中山耕一殿……………………………………………………………………………………………
○議長(中島源陽君) これより質疑に入ります。 委員長報告に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。-----------------------------------
△議会運営委員の選任
○議長(中島源陽君) 日程第百二十七、議会運営委員の選任を行います。 議会運営委員の選任につきましては、宮城県議会委員会条例第七条の規定により、お手元に配布のとおり指名いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中島源陽君) 御異議なしと認めます。 よって、さように決定いたしました。…………………………………………………………………………………………… 議会運営委員名簿 平成二十八年十一月二十五日(金) 角野達也君 三浦一敏君 太田稔郎君 熊谷義彦君 伊藤和博君 佐々木幸士君 村上智行君 石川光次郎君 ゆさみゆき君 渥美 巖君 相沢光哉君 渡辺和喜君-----------------------------------
△常任委員の選任
○議長(中島源陽君) 日程第百二十八、常任委員の選任を行います。 常任委員の選任につきましては、宮城県議会委員会条例第七条の規定により、お手元に配布のとおり指名いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中島源陽君) 御異議なしと認めます。 よって、さように決定いたしました。…………………………………………………………………………………………… 常任委員名簿 第三百五十八回宮城県議会(十一月定例会)平成二十八年十一月二十五日総務企画委員会(十人)
遠藤いく子君
菊地恵一君
佐々木喜藏君
佐藤光樹君
菅間 進君
坂下 賢君
藤原のりすけ君
長谷川洋一君
安藤俊威君
渥美 巖君環境生活農林水産委員会(十人)
高橋 啓君
中嶋 廉君
佐々木功悦君
佐々木賢司君
熊谷義彦君
長谷川 敦君
中島源陽君
安部 孝君
畠山和純君
藤倉知格君保健福祉委員会(九人)
大内真理君
庄田圭佑君
天下みゆき君
境 恒春君
渡辺勝幸君
石川利一君
村上智行君
庄子賢一君
仁田和廣君経済商工観光委員会(十人)
深谷晃祐君
福島かずえ君
太田稔郎君
横山のぼる君
渡辺忠悦君
すどう 哲君
佐々木幸士君
細川雄一君
中山耕一君
中沢幸男君建設企業委員会(十人)
内藤隆司君
三浦一敏君
横山隆光君
伊藤和博君
只野九十九君
石川光次郎君
岸田清実君
坂下やすこ君
齋藤正美君
渡辺和喜君文教警察委員会(十人)
角野達也君
鎌田さゆり君
遠藤伸幸君
遠藤隼人君
守屋守武君
吉川寛康君
高橋伸二君
ゆさみゆき君
本木忠一君
相沢光哉君----------------------------------- 予算特別委員会の設置
○議長(中島源陽君) 日程第百二十九、予算特別委員会の設置を議題といたします。 お諮りいたします。 県予算を審査又は調査するため、議員全員で構成する予算特別委員会を別紙要綱案により設置することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中島源陽君) 御異議なしと認めます。 よって、さように決定いたしました。……………………………………………………………………………………………
△予算特別委員会設置要綱(案) 第一条 県予算を審査又は調査するため、宮城県議会に予算特別委員会(以下「委員会」という。)を設置する。 第二条 委員会は、議員全員をもって構成し、委員長及び副委員長は、委員会において互選する。 第三条 委員会の円滑な運営を図るため、委員会に理事会を置く。 2 理事会は、委員長、副委員長及び理事をもって構成する。 3 理事は、委員会で選任し、十二人とする。 4 理事会は、委員長が招集する。 第四条 委員会に六分科会を置く。 2 分科会は、現に設置されている常任委員会の委員をもって構成し、県予算のうちその所管事項に関する部分を審査又は調査する。 3 分科会に主査、副主査及び主査職務代行者を置くものとし、主査には常任委員長、副主査には同副委員長及び主査職務代行者には同委員長職務代行者をもって、それぞれ充てる。 第五条 委員会は、設置の日から翌年の最後に招集される定例会の開会日の前日まで存続し、閉会中も審査又は調査を行うことができるものとする。 第六条 この要綱に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、理事会に諮って委員長がこれを定める。……………………………………………………………………………………………
○議長(中島源陽君) あらかじめ会議時間を延長いたしておきます。 議会運営委員会、各常任委員会及び予算特別委員会の委員長及び副委員長互選のため、暫時休憩いたします。 午後四時十五分休憩----------------------------------- 午後五時二十分再開
○議長(中島源陽君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。 御報告いたします。 議会運営委員会、各常任委員会及び予算特別委員会の委員長及び副委員長は、互選の結果、次のように決定いたしました。 議会運営委員会 委員長 石川光次郎君 同 副委員長 佐々木幸士君 総務企画委員会 委員長 佐々木喜藏君 同 副委員長 菊地恵一君 環境生活農林水産委員会 委員長 長谷川 敦君 同 副委員長 佐々木賢司君 保健福祉委員会 委員長 石川利一君 同 副委員長 天下みゆき君 経済商工観光委員会 委員長 すどう 哲君 同 副委員長 横山のぼる君 建設企業委員会 委員長 只野九十九君 同 副委員長 三浦一敏君 文教警察委員会 委員長 高橋伸二君 同 副委員長 ゆさみゆき君 予算特別委員会 委員長 本木忠一君 同 副委員長 坂下やすこ君 以上のとおりであります。-----------------------------------
△散会
○議長(中島源陽君) 以上をもって、本日の日程は全部終了いたしました。 十一月二十八日の議事日程は、追って配布いたします。 本日は、これをもって散会いたします。 午後五時二十一分散会...