• 化学物質過敏症(/)
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  1. 仙台市議会 1998-11-20
    民生衛生委員会 本文 1998-11-20


    取得元: 仙台市議会公式サイト
    最終取得日: 2021-07-24
    1:                 ※会議の概要 2: ◯委員長  ただいまから、民生衛生委員会を開会いたします。  本日の日程は、前回の委員会でお話ししましたとおり、初めに参考人からの意見聴取を行いまして、それから参考人に対する質問等を行い、参考人の退室後、当局に対する質問等を願いたいと思います。その後、若干の休憩をとりまして、再開後は所管事項について当局からの報告及び質問等を願いますので、よろしくお願いいたします。              《閉会中継続審査について》 3: ◯委員長  それでは、これより審査に入ります。  「病院の運営及び環境ホルモンについて」であります。  本日は、「環境ホルモンについて」審査を行いますが、参考人として農林水産省農業環境技術研究所農薬動態科長上路雅子氏に出席をお願いしております。参考人からの意見聴取は1時間ぐらいを、質疑応答は30分ぐらいを予定しておりますので、よろしく御協力を願います。  なお、参考人には着席のまま発言していただくことにしておりますので、御了承願います。  それでは、参考人に入室していただきます。  御案内しておりますので、少々お待ちください。              〔参考人 上路雅子入室〕 4: ◯委員長  本日は、御多用のところ当委員会に御出席いただきまして、ありがとうございます。  初めに、私の方から参考人を御紹介したいと思います。  本日の参考人をお願いしました上路雅子さんは、宮城県第一女子高等学校東北大学農学部を卒業された後、農林省農業技術研究所農薬科に入所され、現在は農林水産省農業環境技術研究所農薬動態科長を務めておいででございます。また、厚生省生活環境審議会専門委員環境庁中央環境審議会専門委員なども務めておられ、まことにお忙しい中御出席をいただきました。  それでは、参考人より御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。 5: ◯上路雅子参考人  初めまして。農水省の上路と申します。  私は、今御紹介いただきましたとおり仙台市出身でございまして、20年近く仙台におりました。こういう場でこういう機会を与えていただきましたことを本当に感謝申し上げますとともに、非常に緊張いたしております。よろしくお願いいたします。  それでは、きょうは環境ホルモンについてお話しするということでしたので、早速簡単に御説明させていただきたいと思います。  環境ホルモンというのは通称名でございますけれども、それについては後ほど御説明させていただくといたしまして、もう既に新聞等あるいは研究会からいろいろな形で環境ホルモンについてのことが情報として出ていますので、皆さん方は何らかの形で御承知いただいているものと思いますけれども、一応私の研究者という立場を中心にして、一体今どうなっているのか、あるいは今後どういう研究をしていくのかということを少し御説明したいと思います。
     きょうまず最初にお話しすることを整理させていただきますと、まず一つには環境ホルモンというのは一体どういう現象なのか、一体どういうことが言われてこれが問題になってきたのかということ、それともう既に新聞等で出ていますけれども、いわゆる環境ホルモンというのは一体どういう化学物質で、それが一体どのような現象と物質との間の確証がとれているのかということ、それと非常に簡単ですけれども、環境ホルモン作用というのは一体どういうものかということ、それと研究として今後何をやっていかなければいけないのか、調査として何をやっていかなければいけないのかということ、それで最後に農水省も含めていろいろな各省庁で一体どういう取り組みをやろうとしているのか、あるいはやっているのかということをかいつまみながら御説明させていただきたいと思います。  きょうはレジュメを書いてまいりましてお手元にお配りしましたけれども、OHPを使って御説明させていただきたいと思います。              〔OHPに基づき資料説明〕  ここに出しましたのは、昨年コルボーンという女性の研究者の「奪われし未来」という本が和訳されまして出てきました。その中にこういう野生生物なり人に対する何らかの異常があるということが出てきまして、これが日本でもマスコミが取り上げたことです。1991年ぐらいに既にこのコルボーンさんらを中心としましてWWF世界野生生物基金を中心としていろいろな問題点が出されました。それはミンクやあるいはハゲワシとか鳥とかそういうものの数が非常に少なくなってきているということ、その数が少なくなってきた理由が一体何なのかということ、そのときに昔使っていたDDTとかBHCとかあるいはPCBとかダイオキシンとか、そういう化学物質が何らかの形で影響しているのではないかということが出ました。  それと、人間に対しましても精子の数が減ってきたとか、あるいは乳がん子宮内膜とかがふえているのではないか。こういう化学物質が原因しているのではないかということが出てきまして、野生生物に一般に起こっているそういう生体の異常というものが、ひいては人の生存にまでも響いてくるのではなかろうかということで非常に問題になっているわけです。  人間に関しましては先ほど言いましたが、これはよく出されているデータですけれども、デンマーク研究者が出したものです。精子の数が1940年代からもう半分ぐらいになっているんだということです。いろいろな研究者がいろいろな形で精子の数を測定していますが、これは世界中の61個の報告文をまとめたのがこの結果であると。非常に精度が高いということを言われています。ただし、後から説明しますけれども、これについては非常に精子数年次変化をとるのは難しいんだということも言われています。精子に関しては、この数が減っているだけではなくて、その形がおかしくなったり、その活性が、非常に動きが鈍くなったりということで、非常に生殖関係に問題があるんだということが言われています。これが人間に対する影響です。  日本ではもう既にこれは確実に環境ホルモンと言われるものだと報告されているんですけれども、国立環境研究所の堀口さんたちがやられた仕事です。これはイボニシという貝がございまして、その貝の雌に雄の生殖器がついているということです。それでもう既に新聞記事などで写真なんかも見られていると思いますけれども、この日本中のイボニシを集めたり、あるいはイボニシのほかにもレイシガイとかチヂミボラとかいろいろな貝があるんですけれども、そういう貝を調べていったときに、この数値が大きくなればなるほど雌に雄の性器がついている比率が高くなっているということです。ですから、数字が大きいものほど雄化が進行しているということです。本来は1対1であっていいと思われるものが、雌が雄化しているということを示しています。  このときに一体何が原因なのかということで調べられてきました。その調べられた原因がここに示されています。いわゆる雄の性器が雌についているインポセックスということなんですけれども、船の底についている防腐剤、底に有機スズがついているわけですけれども、トリブチルスズトリフェニルスズというものが非常にこの原因になるのではなかろうかということで、実験室内で雌の貝にこのトリブチルスズあるいはトリフェニルスズというものを一緒に混ぜてやりますと、雌のところに雄の生殖器がついたということです。これは体内でのペニスの長さとその濃度を調べているところです。非常に高い相関がありまして、やはりこのトリブチルスズとかトリフェニルスズが原因になっているんだというようなことが言われています。  ただし、なぜ雄のものが雌についてしまうのかという根本的な理由のところがまだわかっていないのが実情です。今、環境庁がまとめられました環境ホルモン作用がある化合物というものが67化合物ございます。この2枚のOHPでお示ししますけれども、67のうち約40が農薬です。2枚目が農薬になっているんですけれども、1枚目はここに出しておきました。非常に問題のあるダイオキシンも、それとPCP、ペンタクロロフェノール、ここら辺は非常に分解が遅くて生体内に濃縮していくというような難物です。それと、先ほどのインポセックスのところで出てきたトリブチルスズトリフェニルスズ、それとアルキルフェノール、ノニルフェノールなんかがそうです。それとビスフェノールA給食器なんかに入っています樹脂の原料です。あとフタル酸ジ--エチルヘキシルです。それとスチレン、これも給食なんかの容器に入っているものだと思います。  そういうことで、ただここに印をつけておきましたものはもう既に生産中止になっております。しかし、一番最後に出すつもりですけれども、フタル酸エステル、こういうものは私たちの身の回りにいっぱいありまして、これがないものを見つけるのが難しいというぐらいもう私たちの生活にぎっちり溶け込んでしまっていると考えていいと思います。  ただ、ここに内分泌攪乱作用が疑われるという書き方をしましたけれども、この化合物がすべて環境ホルモン作用があるという確定があってここにリストアップされたものではございません。WWFでまとめた何らかのデータをもとにして出したんですけれども、私たちが科学的なものを調べていくと、必ずしもこういう化学物質環境ホルモン作用があるんだよというような説明がきちんとできるようなものはほとんどないと言えると思います。まだまだ研究の段階であると言えると思います。  それと、ここに示しますのは農薬です。ここの場所で農薬を余り……という感じもするんですけれども、一種の作物残留ということもございますので、あえてここで出させていただきます。67リストアップされたうちで40が農薬でございます。このアスタリスクマークをつけたものが未登録あるいは失効という形で、例えばヘキサクロロシクロヘキサンはもう使われていないものでございますし、エチルパラチオンは非常に猛毒で昔昭和40年代にホリドールとして使われていたものですけれども、それももう昭和46年には使用禁止になっています。クロルデン、こんなのも使われていません。ただし、DDTエンドリン、こういうのは使われていませんけれども、先ほど言いましたとおり非常に環境中で分解しないで残っているということで、今でも泥の中、日本農耕地あるいは河川の底質の中からDDTなりエンドリンが検出されてくることは事実です。それで、DDTについてはもう環境ホルモン作用があるとはっきり言われているんですけれども、こういう化合物に一体本当に環境ホルモン作用があるのかどうかということです。私は農薬の専門なので農薬についてお話ししますと、ほかの化学物質と比べますと農薬については非常にいろいろな問題点があるということが指摘されていましたので、毒性の試験が物すごくきちんとされています。繁殖試験とか、あと発がん性とか催奇形性──いわゆる形態異常を起こすような、それを予知するような試験、いろいろな試験がされていまして、かなりのきちんとしたデータがあるんですけれども、環境ホルモンということを視点にした試験方法がそれでいいのかどうかというのが今問題になっております。そういうことでここに出した農薬、まだ失効になっていない今使われている農薬も20ぐらいあるんですけれども、これについてきちんと調べなければいけないということが言われています。  今、内分泌攪乱という形で67品目についてお示ししましたけれども、そのほかにも鉛とかカドミウムとか水銀とか、そういう金属についても内分泌攪乱があるのではなかろうかというような疑いがかけられています。  それともう一つ非常に厄介なことは、この内分泌攪乱というのが一種の化学構造的に言いますと、既存の植物とか微生物とかに含まれているいろいろな植物ホルモンとか、微生物なんかに含まれているホルモン──微生物ホルモンといったらおかしいんですけれども、そういうものと非常に構造的に似ているということが言われています。ここに出しましたのは、大豆の食品中の植物性エストロゲン──これは四つぐらいあるんですけれども、今三つ出しましたが、その化合物が既に入っているわけです。このAという化合物は、アズキとかクローバーとかの中に入っています。そういう中に入ったものが豆腐とかおしょうゆとかもやしとかみそ、こういうものにもかなりの濃度が出されています。マイクログラムパーグラムですから、ppbのオーダーで検出されているということです。これが果たしてホルモンとして、いわゆる化学物質と同じような作用があるのかどうかということがあります。1940年代にオーストラリアで羊が非常に大量に死亡いたしました。そのときに出てきたのがこの植物エストロゲンで、これが原因しているんだということが言われています。そういうことで、合成化学物質だけでなくて、天然のこういうホルモン生態系影響があるんだということが言われ始めています。  では、我々の食生活の上でこういう大豆食品中のホルモンを気にするべきなのかどうかということなんですけれども、害になるのかあるいは益なのかということに関しては意見の分かれるところでございます。ただ非常に明確なのは、東洋地域の女性の乳がんの発生が、ほかの地域から比べますと非常に優位の差で少ないということが言われておりまして、やはり何らかの女性ホルモン的な作用をするのではなかろうかと言われています。それで、こういう大豆食品を全然心配なく食べていいのかどうかということですけれども、今のところ大人にとっては問題はないだろうと。ただし、子供あるいは胎児がおなかに入っているとき、こういうことはめったにないことだと思いますけれども、お豆腐ばかりを食べるとか、豆製品だけを非常に極端に偏った食べ方をするとかいうようなことは避けた方がいいのではないかというようなコメントがされております。  今、お示ししました化合物もペーパーの中に入れておきました。いろいろな疑いがかけられていますけれども、本当にそれが環境ホルモンとして断定できているのかどうかというのは非常に疑わしいところがございます。ここに出しました貝類についてはインポセックスという現象がトリブチルスズトリフェニルスズと非常に関連が強いということが確定されているように思います。ただし、ここに出しましたアメリカの五大湖サケ類甲状腺の形成異常で雄の二次性徴期がおかしいと言われている、こういうものについて一体何が原因しているのかというようなことになりますと、非常に多くの化合物が疑いがあるんだけれども特定はされていないというようなこと、あるいはホワイトサッカー、これも五大湖──五大湖というのは非常に有機化学物質がたくさん濃縮されているところでして、そこで生態系野生生物にいろいろな影響があるんですけれども、特定できる化合物があるのかというと、ここに示したとおり必ずしも特定されていないということがあります。  それと、イギリスのニジマスについて、ビテロゲニンというのは卵細胞、卵になる前駆体のたんぱく質ですけれども、それが雄に非常に多くなっているということがいわれています。これはノニルフェノールが疑いがあるんだけれども、必ずしも明確ではないというような言い方もございます。  そういうことで、ここに出ているミシシッピーワニのペニス矮小化DDT、ダイコフォル──これも塩素剤ですけれども、それについても必ずしも明確ではないというような話もあります。  それと、同じような比率ですけれども、哺乳類に来ますとミンク、カワウソも繁殖が激減しているということを言われています。それでこれはPCB可能性が高いということが言われています。なお、PCBについては、今日本ではダイオキシンには入れていませんけれども、WHOの方ではダイオキシンと同じ作用をするんだということでダイオキシン類として入れようということが厚生省で検討されています。そういうことで、PCBも非常にこういうものの可能性が高いということです。  それと先ほど言いましたが、これが大豆のものです。羊の死産の多発、奇形の発生、こういうものが先ほど示しました豆の植物エストロゲンが原因しているんだということ。  あと、ヒトの男性については精子数の減少と劣化があります。それと、ここのヒトのDES、これは流産防止剤で出しましたお薬でございます。化学合成的なホルモンをつくったものですけれども、これについては実際に飲んだ妊婦から生まれた女の子がこういう現象を起こすんだということで、成人になってから化学物質に暴露されてもそれほど敏感ではないんだけれども、子供とか小さい赤ん坊のときにこういうものに対しては非常に感受性が高いということが言われています。  今、このように野生生物への影響が出ていまして、化学物質との関係を見ましたけれども、必ずしも明確ではないということです。なぜ明確ではないかという一つの例としましてお示ししますけれども、例えば魚で示しますと、魚は水温だけでも雄、雌が変わるということが言われています。ここに示しましたのが、上が水温の影響、こちらが性ホルモンを投与した場合です。この白丸の方が雌だけの群です。この黒丸の方が雄と雌を1対1で入れた場合です。温度が低いところ、ここのときには雌のものなのに雄になっている、あるいはここの温度が二十二、三度より高くなると、本来雌だったものが雄に変わってしまうというようなことがございます。あと、性ホルモンを投与した場合には、雌の性ホルモンですから本来はきちんと雌になればいいんですけれども、濃度が低いときは必ずしも雌に転換することはないというようなこともございます。  そういうことで、野生生物でいろいろな形態異常なんかが見られますけれども、それが化学物質でなるかどうか、その見きわめが非常に難しいということがここに出てきています。  それともう一つの例としまして、先ほどデンマークの先生の研究精子の数が少なくなっているということをお話ししました。日本でも慶応大学とか帝京大学とか、いろいろな大学の先生方精子の数を調べたりあるいは形態を調べています。精子の数というのを調べてみた結果、これがWHOの出したものです。1人の人間、同一人間の精子を2週間に一遍ずつこうやってとっていったものです。そうしますと、同じ人間なのに量が3分の1、4分の1以下になったりするわけです。本当に精子の数が統計的に減っているのかどうかというのがとりにくいというのが現実です。つい最近も新聞で見ますと、減っているんだという方もいらっしゃいますし、必ずしも日本人の場合に減っているとは言い切れないという方もいらっしゃいます。そういうことで、まだまだ今後の課題になっているのかもしれません。いずれにしても、こういうものは調査がしにくいものですので、それと調査したものの精度がどこまできちんととれるのかというところで、非常に難しい問題ではないかと思います。  ちょっと話を変えまして、今度は環境ホルモン作用ということを非常に簡単にかいつまんでお話しさせていただきます。  今、簡単に環境ホルモン環境ホルモンと言いますけれども、正式には内分泌かく乱物質あるいは外因性内分泌攪乱化学物質と言います。これは、いわゆる内分泌攪乱というのは、人間、哺乳動物あるいは動物の内分泌系、いわゆるホルモンに何らかの影響を与える外部から与えた化学物質のことを言います。言葉が非常に難しいものですから、これを簡単に言うために環境ホルモンと言っているわけです。これは国際的に全く認められておりませんので、日本の造語です。横浜市立大学の井口先生の提案された言葉です。今、簡単にもう広辞苑にも出たくらい一般的な名前になっておりますけれども、必ずしも当たっていないということです。厚生省はかたくなに外因性内分泌攪乱化学物質という言葉を言っていますし、内分泌かく乱物質──農水省は攪乱の攪という字も平仮名にしておりますし、非常にいろいろな言い方をしております。農水省の場合は内分泌かく乱物質、括弧していわゆる環境ホルモンみたいな書き方をしております。それと、つい最近、この8月に学会が発足いたしまして、私もその中に入っているんですけれども、そこの学会の名前は内分泌攪乱化学物質学会です。括弧して略称環境ホルモンというような、非常にややこしいことを言っています。いずれにいたしましても、内分泌攪乱ということで、内分泌作用を攪乱する化学物質であるということを言っています。  その内分泌攪乱とは一体何ぞやということになるんですけれども、これは何も今起きてきた問題ではございませんで、医薬、農薬あるいは化粧品とか調味料とか、そういう化学物質が生体に対する何らかの影響を及ぼしている、これはもう昔から言われていたことです。ただ、そういう野生生物に対する影響とか、非常に大々的に野生生物生殖機能とかに対する影響、そういう見方をしてこなかったものですから問題になっているんですけれども、お医者さんの仲間ではこれはもう一般的なものとして使われていたということです。  そうしますと、内分泌攪乱ということで内分泌器から出ているということで、これは人のデータをもらってきたものですから非常に見にくいんですが、甲状腺とかあるいは副腎とか生殖器、こういう内分泌臓器からホルモンが放出されるわけです。そのホルモンがいろいろな人間の機能が正常な動きをするような働きをし、つかさどる、そういう動きをしています。このホルモンに対して、悪さをしていくわけです。その悪さの仕方ですけれども、いろいろな作用メカニズムがございます。まだまだ必ずしもここはクリアカットにわかっているわけではないんですけれども、そのうちの一つとして出しておきました。普通は、一般には本来このホルモンというものにはかぎとかぎ穴の関係でホルモン受容体──レセプターというんですけれども、そういうものが非常にきちんとくっついて、それで必要に応じてこれが外れて正しい情報を発信していくということが言われています。そのときに、化学物質がこの本来のホルモンと非常に類似した化学構造でこのかぎ穴にきちんとはまってしまいますと、これが本来の正しい情報ではなくて間違った情報を、あるいは非常にいつまでもいつまでも同じ情報を流し込むというような作用を起こす場合があります。  それともう一つは、非常にここに似ているんですけれども、ちょっとすき間があったり、模式図的にいいますとこういうときになりますと、受容体として本来のホルモンと結合するのを阻害する、例えばここに男性ホルモンがくっつくときにこれが入ってしまうことによって男性ホルモン作用を抑えてしまうとか、そういう結合体との関係が言われています。これに関しましては非常に研究がおくれておりまして、ここが一番内分泌攪乱、いわゆる環境ホルモン作用の大きなポイントになっていると思います。  今わかっている物質として言われているのは、エストロゲンという女性ホルモン作用をするものに例えばDDTがあったり、ディルドリンがあったり、アルドリン、こういうものはいわゆる農薬です。これはもう30年近く前に日本では中止になりましたけれども、まだ東南アジアでは使われているというようなものです。それとノニルフェノールビスフェノールAフタル酸エステル、こういうものが女性ホルモン作用がございます。ただし、その作用がどれぐらい強いのかということになりますと、いささか問題でして、例えば、普通の女性ホルモンエトスロゲンが1としますと、その1000分の1とか1万分の1の能力、結合性しかないと言われています。  それと抗エストロゲン作用、これは先ほど言いました女性ホルモンを阻害するような働きをする。これはTCDD、ダイオキシン、それと除草剤のアトラジンです。  それと、これは男性ホルモンに対して阻害するような作用、これはp,p'-DDT──DDTにはいろいろな異性体がございますのでp,p'-DDT、あとビンクロゾリン、これはつい最近ことしの4月まで使われていた殺菌剤ですけれども、そういうものがあります。  エストロゲンとか抗エストロゲンとか、こういう作用がわかっている方が非常にまれであると言えると思います。  それでは、内分泌攪乱化学物質に対してどういう研究をしなければならないのか、どういう調査をしなければいけないのかということを幾つかに整理しました。これは私なりに整理したものですから、まだまだ十分ではないと思います。  私も環境ホルモンという言葉を簡単に使えばいいんですけれども、農水省の中で環境ホルモンという言葉を使うと非常に問題視されますので、内分泌攪乱物質という形で言わせていただきます。内分泌攪乱物質に関する研究というのは、一体何があるのかということです。化学物質、これは先ほど示しました有機合成農薬化合物だけでなくて、先ほどの大豆なんかの本来の性ホルモン、あといわゆる普通のいろいろなホルモンがあります。こういうものとどういうふうに仕分けしながら内分泌攪乱という悪さをするものをとらえていくのか、この作用を起こすものが化学物質として非常に広範囲にあるということがまず1点です。  それと、有害な作用というものが、奇形児を発生する催奇性、あるいは繁殖障害──これは子供を産まなくなったとか、卵の殻が薄くなったとか、あるいは繁殖行動そのものが起きないというようなこともある、そういう作用ということ自体が非常にいろいろなものが出てきて、これをどういうふうに見ていくのかということがあります。  それと、その化学物質自体がどういうふうに自然状態下において分布しているのか、あるいは移動するのかということもあります。先ほど示しましたDDTなんかは、東南アジアではまだ使われているということを言いましたけれども、この化合物、今南極とか北極とかそういう極地に非常に高濃度で見つかっている。それで、それが人間のお乳の中に濃縮されてきたり、いろいろな家畜の中で濃縮されているというようなこともあります。そういうことで、実際に私たちの身の回りにあるものが環境中でも非常に動きます。それと、生体内の中でもいろいろな形で動いていったりします。そういうものが非常にこの物質と深く関係しているんだということが言えます。  それと、この中で生物種に与える影響、これが野生生物、家畜、哺乳類、いろいろな内分泌系を持つもの、こういうものが生物種によって全く違った悪影響を及ぼす可能性がある。例えばですけれども、哺乳動物とほかの魚を比べますと、どちらが敏感かということになりますと、人間はおおむねそういう化学物質に対して非常に耐性を持っている、感受性が鈍いということが言われています。それはなぜかといいますと、同じ量の化学物質が体内に入ってきた場合に、私たちが食物として取り入れた場合、体の中に入ってきたときに、肝臓とかそういう臓器でいろいろなホルモン作用点に行く前に代謝してしまう、肝臓なんかでいろいろな酵素で代謝してしまうということになると、内分泌攪乱作用自体が起きにくくなってしまうということが言われています。そういうことで、厚生省なんかがよく言っていることは、非常にいろいろな内分泌攪乱作用があるんだけれども、人間に対しては心配があってもそれほど大きな問題ではなかろう、問題にするのはもちろん小さな子供とか胎児のときだというようなことも言っていますけれども、それよりも生物環境全体としてどういう問題があるのかということが大きな問題になっています。  こういう問題点に関して、実際にやらなければいけない研究はどういうふうに対応すべきなのかということです。まず、日本でも何万という数の化学物質が世の中に入っています。その化学物質が本当に環境ホルモン内分泌攪乱作用があるのかどうかということを確認しなければいけないということが言われています。その確認の方法、検定の手法が全く確立されていない。今、確立しようということでOECDとかあるいはアメリカのEPAとかでいろいろな卵細胞を用いたり、あるいは卵細胞を使ってその卵細胞の量のふえ方を見たり、あるいは子宮の重量が大きくなるのかとか、そういう影響を見るとか、あるいはホルモンとの結合性を見たらいいのではないかとか、いろいろな検出方法が言われています。それがすべての化学物質についてそういうことが言えるのかどうか、それを今検討の最中です。これが一番早くやらなければいけないだろうということです。  それと、内分泌攪乱作用のメカニズムの解明ということを言いました。これはこの内分泌攪乱作用があったとしても、では作用がどういう形で出てくるのか。例えば発がん性がどうなのかとか、あるいは生殖器が大きくなるのかとか、なくなるのかとか、そういう作用、ここからここへ持ってくる作用のメカニズムがどうなるのかということが全くわかっていないので、これを早くしなければいけないと言われています。  それと、ここに用量と反応性との相関関係の解明ということを出しました。これが非常に環境ホルモンでは難しい問題です。これができればかなりの点ができるんだと思うんですけれども、一般に化学物質には──これは医薬についても農薬についてもあるいは普通の一般的な化学物質についても言えることなんですけれども、例えばあるAという化学物質がありました。そのAという化学物質がいろいろな生物に対してどういう作用を起こすかということを調べたときに、Aという化合物がこういう作用を起こす場合、あるいはこういう作用を起こす場合、その生物によって違うこともあるかもしれません。これは横軸に用量です。縦軸に反応を示しました。ある反応を起こすときに、こういう曲線を書いたり、あるいはもしかしたらこれが直線になるかもしれません。いずれにしましても、これが限りなくゼロに近づいてくるわけです。限りなくゼロに近づいたところ、そこが無影響量として出てくるわけです。そういうことで、例えば農薬ですとこのゼロになる点を閾値といいまして、この閾値以下にするようにいろいろな基準が定められているわけです。医薬でもそうですけれども、私たちが副作用を起こさないためにはどの程度の量を飲んでもいいのかどうかというのがここの点になります。あるいは医薬の場合にその逆にどれだけの量を我々に入れた場合にそれなりの作用が出てくるのかということになりますと、この曲線ですとこれぐらいだったら十分な作用が出てくるだろうというような一つの目安としてこういう曲線を描くことができます。今までの化学物質に関しましては限りなくゼロに近いということ、この閾値というところがあって、この閾値以下はもう見る必要がないということで来ました。今度の内分泌攪乱作用に関しましては、こちらの微量な部分がどういうふうになっているのかが全くわからないわけです。ある一説によりますと、量が少なくなったところで山ができてくるということも言われています。ある非常に量が少ないところで、何らかの作用を起こす。それでまたこれが下がってくる。それでまたこの化合物がもっと量が多くなってまた別の作用を起こすというようなことが起きます。微量なところでこの山があるのかないのか、これがこの化学物質、いわゆる内分泌攪乱物質の大きな問題です。これがあるかないかによって、環境中で一体どの程度の量があればいいのかどうか、それを確認しなければいけないということでみんな調査をしているわけです。これが決まれば、基準値が定められるんですけれども、この量が定められないがために、環境中で一体どれぐらい量があるんだとかないんだとか、一生懸命になってみんな調査するのはこの意味です。ダイオキシンに関しても、pptレベルあるいは0.01pptレベルという非常に超微量のことをやらざるを得ないというのは、これがあるためです。そういうことで、この山を見つけなくてはいけないというのが今やられているんですけれども、試験法が難しいということで結論はなかなか出ていないみたいです。  そういうことで、今用量と反応性との相関関係の解明とお話ししましたけれども、いわゆる超微量で作用が出るのか、あるのかないのかということを早くしなければいけないんだということです。  それとこれに関連しますけれども、この量というものをどの程度の量のところまで抑える必要があるのかということで、4番がかかわってくるわけです。今、どれぐらいの量があっても大丈夫だというところがわからないがために、みんな分布状態と量を把握するための調査に入っているということです。  それと、これをどこに入れるべきかと非常に悩んでいるんですけれども、環境生物でいろいろな異常が起きた場合に、これが一体どういう化学物質と関係するのかということの相関を調べなければいけないんだということがあります。  それと、さきにお話ししましたけれども、内分泌攪乱物質というのは、いろいろな環境の生物の中で違った作用を起こすんだと。そのときにその生物種間で、あるいは環境の土、水、大気の中でどういうふうに分解していくのかということを調べなければいけないんだということです。先ほどのDDTなんかですと、DDTという化学物質の中にDDEもあり、いろいな異性体が入っていると。その異性体によって全く作用が違うということも言われています。そういうことで、この代謝、分解のメカニズムをやらなければいけないということも言われています。先ほど殺菌剤のビンクロゾリンが男性ホルモンの阻害作用を示すということを言いましたけれども、ビンクロゾリンそのものが悪い作用ではなくて、ビンクロゾリンの代謝物が悪い作用をしたわけです。そういうことで、代謝物質についてもきちんとやらなければいけませんよということです。  いろいろな省庁で研究なり調査をやっていますけれども、平成11年度の要求項目、今手元にありましたものをまとめてまいりました。もちろん今年度からいろいろな関係省庁で研究が行われておりますけれども、11年度に向けましてまた大きな試験項目が加わってきて、予算も非常に大きな額で出ています。多分100億を超えるのではなかろうかと思われます。  環境庁につきましては健康影響等の調査ということで、環境庁は常にいろいろな化学物質が大気中あるいは水系、それと野生生物にどういう形でどういう量存在するのかという分布を調べております。ことしも調べております。農薬なんかも今年度2回調査しまして、そのデータが来週あたり出てくるのではないかと思うんですけれども、あちこちでそういう調査をやっております。それと、農薬の生殖毒性の調査をやっています。これは農水省と仕事が非常にバッティングするんですけれども、お互いにここでも農薬内分泌攪乱作用の判別技術を、いわゆる検定方法を確立するんだと。それによって農薬の登録に必要な試験項目が変わってくるんだというようなスタンスで仕事が始まっています。  科技庁は、実はこの戦略基礎というのは非常に大型のプロジェクトでございまして、1課題5000万円ぐらいのが多分30課題から50課題ぐらいいくんだと思うんですけれども、この10月に課題の募集が締め切りになりました。主にどちらかといいますと大学の先生方が応募──多分8割方大学だと思いますけれども、そちらの先生方研究課題として、先ほどお話ししましたとおり、どういう作用があるんだとか、あるいは超微量でどういう作用があるのか、その検定方法をどうすべきなのかと、基本的なところが始まるはずです。  それと文部省は非常に小さくて金額が1億以下だったと思いますけれども、内分泌攪乱作用というのは一体どういうものかという、いわゆる教育の現場での情報公開するというようなプロジェクトが始まっています。  それと厚生省もヒトの健康影響解明に関する総合研究ということで、多分この環境庁データを受けながら仕事が始まるのではないかと思います。それと研究成果情報をどうやってデータベース化するかと、これは国内外に関して非常に先端的な研究としていろいろな仕事がされているんですけれども、それをどうやってデータベース化するかということで厚生省の仕事が始まっています。  私のおります農林水産省で、まだこれ以外にも二つぐらい入っていたと思いますけれども、この動態解明と作用機構に関する総合研究が今の予定では一応7億円という予定で始まっています。もう来月あたり大蔵省のあれが出ますので、どの程度に絞りこまれるかちょっと心配なんですけれども、今90課題ほどで研究が進められる予定です。それと魚に対する実態把握調査、それと食品の安全性確保──これは食品の容器に関する研究です。  それと運輸省は土砂、砂の中のダイオキシン類の分析ということが入っております。  建設省は今年度からもう既に事業が始まっておりますけれども、河川水中での内分泌攪乱が疑われている化学物質の微量分析の調査をやっております。それと同時に、超微量分析法の装置を整備するんだというようなことを言っております。それとこの流入実態調査ということもあります。  ついでながら、私どもの方も農林水産省として環境ホルモンというキーワードのもとに第一次補正予算で5月ごろにも施設改修等につきましても億単位のかなりのお金がついておりまして、今から非常に研究が始まるというところです。  では、先ほど示しましたけれども、7億円の研究課題のメーンといたしまして、皆様方のところに少し関係あるかどうかわかりませんけれども、いわゆる農林水産業における内分泌攪乱物質の動態解明と作用機構に関する総合研究という課題です。今7億円で、試験課題が90課題ぐらい挙がっていますけれども、どういう化学物質を扱うかというと、例えば大きいものとしてダイオキシン、それと内分泌攪乱が疑われている農薬とかカドミウムとか水銀とか、そういうものが水生生物にどういう影響があるのかとか、作物にどういうふうに取り込まれるのかとか、あるいはこれは畜産も絡んでいるんですけれども、畜産のミルクとかそういうところにダイオキシンだったらダイオキシンが取り込まれてしまうのか、あるいは牛肉の中に出てくるのか、そういう研究をやろうではないかと言われています。  それと出口としましては、そういう環境中にばらまかれた内分泌攪乱物質を何らかの形で制御していくといったらおかしいんですけれども、分解していくとか、あるいは土壌に吸着するためにはどうしたらいいかとか、あるいは食品ですと先ほど示した食品の容器の開発とか、そういうような仕事が一連の仕事の中に入っております。そういうことで来年の4月から6年計画で始まることになっておりまして、私たちも何をやったらいいのか非常に疑問を持ちながら、あるいはすぐ答えが出るのか心配しながらやっているところです。  今私の方の研究まで幾つかのお話をしましたけれども、現在わかっております、今ここの場で少しお話ししておいた方がいいと思います化学物質を三つほど取り上げました。関係しておりますいわゆるビスフェノールAというものです。これはお尋ねしましたら、もう仙台の方では解決済みだというお話ですけれども、いわゆる給食用の食器とか哺乳瓶とか歯医者さんのいろいろな材料の詰め物とかあるいは缶詰のコーティングしたところからビスフェノールAが出てくるんだということが言われています。このビスフェノールAというものが容器から溶出するんだということ。それで、どれぐらいの溶出があるかといいますと、大体哺乳瓶ですと95度のお湯で一晩放置すると5ppbという単位を出していました。温度が低くなれば溶出が非常に少なくなるだろうということです。実際にそういう内分泌攪乱作用というのは微量のという書き方をしましたけれども、非常に弱いエストロゲン作用があると言われておりますが、厚生省といたしましては、これは体内に吸収されても非常に排泄されやすくて分解が早いものですから、それほど問題がないだろうという言い方をしています。ただし、これはもちろん赤ちゃんとか小さな子供の場合にはどういう作用を起こすかということは非常に心配なものですから、気をつけなければいけないという書き方をしておりますけれども、この容器からの溶出に関しましても厚生省基準で2.5ppmという基準がございまして、これから比べますと非常に量が少ないし、今すぐに規制をしなければいけない問題ではないのではなかろうかというのが厚生省の考え方だと思います。これが一つです。  それとフタル酸エステルも非常に大きな問題だと思います。これはポリ塩化ビニールの可塑剤とか農業用のフィルムとか染料とか、もうあらゆるところに使われていまして、内分泌攪乱作用が非常に弱いんですけれどもあります。ここのR1、R2にいろいろな異性体、ベンジルブチルとかジエチルブチルとかいろいろな化学物質があります。御存じの方もいらっしゃるかと思いますけれども、このフタル酸エステルはことしの7月ごろにアエラに取り上げられまして、アエラの中で埼玉県の農業試験所の方が10年ほど前にやられたデータ──この中に土壌中にこのフタル酸エステルがあって、それが作物に吸収されるんだというようなデータがそのアエラで取り上げられまして、農水省としましてもこれを取り上げざるを得なくなったという形のものです。この化合物をではどうやって分析するのかということがございます。この物質は、我々化学分析屋が分析するにしても非常に難しい問題でして、例えばいろいろな試験をするためのフラスコなんかの中にもフタル酸エステルが入っております。あるいはいろいろなものを抽出してくるためのメタノールとかあるいはアセトンとか一般の有機溶媒の中にもこのフタル酸エステルが入っております。そういうことですと、実際に私たちがサンプルとして持ってきたときに、そのフタル酸エステルがどれだけ入っているのかというものが測定できないのではなかろうかということで、非常に難しい。私たちの身の回りに、我々のこういうところにいっぱいあるということで、今の環境中のフタル酸エステルをどういうふうにシャットアウトすることができるかと、もう分析屋泣かせのものです。これをやれる人は本当に日本でも数人しかいないのではなかろうかというような感じがします。フタル酸エステルについては苦しいものですけれども、こういう疑いがかけられた以上、何らかの方法で測定していかなくてはいけないのかもしれません。  それと最後の化学物質はポリスチレン、これも既に仙台では処置済みというお話でした。このポリスチレンの樹脂をつくるときに、これがモノマーですけれども、これにいろいろな形で二つついたり三つついたりという形でいろいろなダイマーとかトリマーとかついていくんですけれども、こういうものに対して、ではエストロゲン作用があるのかないのかということです。これはカップめんの業界がないんだというような新聞広告を出しましたけれども、オランダではあるんだとか、学説的にまだそこがきちんとした作用が確認されていないと言われています。それと、果たして容器から溶出されるのかどうかということになりますと、温度が高くなると出てくるとか、あるいは油で抽出してやると出てくるとか非常に微妙なところでして、まだ確実にどれだけの量があったら危ないよとか、そういうことまではいっていないように思います。ただし、これもやはり危険性がわからない以上は何らかの措置をとらなければいけないのかもしれませんけれども、すぐにやめなければいけないとかというような代物ではなさそうに思います。  最後に1枚だけお話しします。これは例えば非常に怖いのは何でかといいますと、これがDDTの調査の結果です。これは環境庁で毎年調査をやっているんですけれども、1971年にDDTは農業用では禁止されました。そのほかにちょっと使われていた経緯があるんですけれども、1971年ですから25年以上前にほとんど禁止されているんです。水の中でND、ノット・ディテクティド、全く検出されていないんですけれども、河川敷の底質の中に74年にも検出され、95年にもそれぐらいの量が出てきている。ミリグラムキログラムですからppmの単位です。それが魚の中にも非常に量が少ないんですけれども出てきているということで、こういうDDTあるいはダイオキシンあるいはPCB、そういう化学物質の中でも分解のしにくい化学物質についてはきちんとやはり目を光らせておかなくてはいけない問題だと思います。  それと、私たちの生活に非常に簡単に入ってきた化学物質について、いついかなるときにどんな悪さをするかということが知られないままに入ってきてしまったということ、それについてはやはりきちんとそのリスクを管理しておかなければいけないのではなかろうかというのが今私たちの反省の中にあります。  それと同時に、もう一つリスクとベネフィットという関係がございまして、リスクをできるだけ小さくしていかなければいけないことは当然なんですけれども、我々の生活の中で一遍便利になってしまったものの利便性をどこまで認めることができるのか。リスクとベネフィットの関係は、その時代なりあるいはその人によって感じ方なり考え方が変わるかもしれませんけれども、リスク、ベネフィットの関係、リスク評価ということで、科学的にどこまでが許容できてどこまでが許容できないのかということ、こういうことに対しての教育を初め、もう少し日本人はきちんとやらなければいけないのではないかというのが私たちの考え方です。  以上、今わかっていることあるいは問題点になっていることあるいは各省庁の取り組み等を非常に簡単にお話しさせていただきました。そういうことで、非常にまとまらない話でしたけれども、一応の話とさせていただきたいと思います。 6: ◯委員長  ありがとうございました。  それでは、皆様から参考人に御質問等はありませんか。 7: ◯八島幸三委員  どうもありがとうございました。  二、三お伺いしたいんですけれども、一つは今ダイオキシン類がもちろん内分泌攪乱物質としてわかっていますし、大変大きな問題になっていますけれども、いずれそのほかの先生からきょうお話しいただいた67種類、ひょっとするともっとふえるかもしれませんけれども、こういったものが一定毒性が特定されて、それなりの対応が求められてはくると思うんですが、当面例えばダイオキシンならダイオキシン類に限定したとしても、もう既にいろいろな形で例えば大気中の濃度についてはこれ以下でないとだめですよというような規制ができています。ただ具体的に国民感情からすれば、例えば母乳の問題だとか土壌の問題とかショッキングなデータも報告されておりますし、そういう意味からすると単に大気の問題だけではなくて、そういったところに非常に関心が強まっている。  一方、なかなかそういったところの基準が出てきていないものですから、私の印象では国もそうですけれども、全体的に地方も含めて大気以外の測定に対してはまだ基準がないからということで少し対応がおくれているのではないかなと思うんです。いずれその基準ができてくるとしても、事前の実態調査をしておくことが必要ではないかなと思っていますけれども、先生はその辺はどのようにお考えなのかをまず1点お伺いしたいと思います。  それから、この攪乱物質が阻害作用と促進作用と両方があるということですけれども、もう一つ私が問題視するのは、さっき先生から話があったように、長期に体内に滞留するものも結構ある。その関係でちょっとくだらない質問なんですけれども、いずれにしろ受容体とこういうものが結びついて──ホルモン作用をするのかあるいは阻害作用をするのかは別として、結びつくわけです。結びついた内分泌攪乱物質はまたそのままいずれ体内に蓄積されるのかどうか、その辺の代謝というか、分解、そういったところの関連があるのかについても教えていただきたいと思います。  最後ですけれども、催奇性とか発がん性とか生殖異常とか、そういったところがどちらかというと注目を集めているんですが、一方では免疫毒性という問題もあるんだろうと思いますし、近年アトピーとか食物アレルギーとか、そういうアレルギー疾患が非常にふえてきている。一方では今度はもっともっと微量な問題で化学物質過敏症なんていうものも出てきている。そういったような今の実態を考えると、場合によってはなかなか解明は難しいとしても、推測の域を出ないわけですけれども、ひょっとするとかなり微量の化学物質がそういったような働きをしている可能性もあるのかなと思うわけですけれども、その辺のことについて先生のお考えをお伺いしたいと思います。 8: ◯上路雅子参考人  3番目はお医者さんの枠に入ってしまいますので、私はちょっときちんとした答えができないと思います。  まず一つ目のダイオキシンに関してですけれども、これは私たちの生活の中で体内に取り込む量の約95%は食品経由です。その食品経由の中で約6割が魚です。今WHO、FAOが中心になりまして、1日当たり1ないし4ピコグラムパーキログラム、キログラム当たり1ないし4ピコグラムという形で基準値を厳しくしようということが行われています。日本厚生省の基準値は10ピコグラムですから少し大きいわけです。これを1から4に検討し直そうではないかというような動きが出ているんですけれども、それが本当にできるのかどうか。  それと日本の場合に非常に取り組みが遅くて一番問題になっているいわゆる処理場、焼却場からの大気への放出、ダイオキシンの排出の95%以上が煙から出ているわけです。大体の移行からいってそれが土壌中に落ちていくんだと思うんです。では、その土壌中のものがどういう形で我々の体の中に入り込むのか、そこの基準値を定めなければいけないというので、土壌中にどれだけ落っこちた場合にそこが農作用のいわゆる農耕地に適しているのかどうか、その土を入れかえる必要があるのかどうか──ドイツなんかかなり厳しいですけれども、そういう必要があるのかどうかということがまず1点とされています。これは環境庁を中心にして検討がされているんですけれども、まず一つ大きな問題としまして、非常に日本ダイオキシン研究がおくれていまして、作物に吸収するのかどうかということが──これは一般に土壌中から根を通していわゆる食べるところの部位までに移行するということはほとんどないと言われているわけです。作物にあるダイオキシンというのは、いわゆる巻き上がり、土から巻き上がってそこに付着したり、あるいは大気から煙の中に入ってきたものが落ちてそこに付着して作物についていくと。そういうものについては比較的問題ないんだけれども、では牧畜、いわゆるミルクなんかには入ってこないのかという心配があります。私もこの前調べたら、北海道の帯広畜産大学の先生が出されたデータというのが、このミルクの値はほぼヨーロッパと同じレベルなんです。1けたピコグラムパーグラム、pptのオーダーで、そういうところの心配はあるんですけれども、まだまだ十分ではないというので、ダイオキシンが入っている土壌から作物にどういう形で移行するのかをきちんと調べようではないかというのを環境庁でやり始めています。先ほどお示ししました来年度から走り出していく私どもの研究の90課題の中にも20課題ほどダイオキシンの課題が入っているんです。それはやはり作物あるいは魚に入っていくのかどうかを確認しようではないかという研究が入っています。  先ほどお話しされました実態調査をどれぐらいしなくてはいけないのかといいますと、やはり日本にそういう作物への吸収試験とかの実態調査のデータがないがためにヨーロッパのデータを使わざるを得ないと。そうすると、一番厳しいデータ、一番危険率の高いデータを使う。そうすると、実態よりも濃度が高い状態のものを使ってしまう。実態よりも非常にきつい状態のものを使ってしまう。そこで自前のデータが必要ではないかということで、今データをつけ始めたばかりです。ただし、ここについては今お話しいただきましたように、私たちが分析するから作物をくださいと言っていただいて、すぐにやれるものではないんです。というのは、それは私たちの分析の能力も非常に難しいものがあります。それと、これは非常に言いにくいことなんですけれども、実は去年私もお米の実態調査をやれと言われまして何カ所か集めたんですけれども、各市町村、各県レベルの地方自治体の協力が残念ながら得られないんです。それはやはりもし見つかってしまったときに、そこから出てしまったということになりますとできないということで、どうせやるんだったら全県一斉にやらなければいけない事業ということなものですから、そういう難しさがございます。そういうことで、もし実態調査をやっていただくという機運になれば、やはりやっていただくのが一番ではないかと思います。  ということで、ダイオキシンについては非常に難しいと。だけれども、やらなければいけない問題だと思います。それと、今213ほどのダイオキシンがあって、それが対象になってやっていますけれども、今後PCBダイオキシンの中に入りますし、どんどんダイオキシンの数がふえていくわけですから、やはりそれなりの実態調査をやらなければいけない。あと、つい最近に厚生省の食物の実態調査が出てきましたけれども、これは日本の3カ所ぐらいの地域からいただいたサンプルですので、まだまだ全体をカバーしているものではないと思います。そういうことで実態調査は必要です。  それと、先ほどお話ししました塩素系の化合物が蓄積するかどうか。一説によりますと、母乳の中のダイオキシン類というのはだんだん減っているということが言われています。1975年ぐらいをピークにいたしまして、だんだん減っているというデータが国内のデータとしてあります。ただし、先ほど一番最後に示しましたとおり、それがゼロになるということはほとんど不可能に近いのではないかと思います。その濃度がどの程度になったときに先ほどから言っている内分泌攪乱作用を100%心配しなくていい濃度なのかどうか、それがまだわかっていないということですので、できる限り蓄積性の高いものについてはモニタリングを続けていかなければいけないのではないかと思います。  それと化学物質過敏症、アトピー、これについてはもういろいろな意見がございまして、私も何とも──畜産関係なんかでもそういう化学物質過敏症、アレルギーみたいなことをやられておりますので、何らかの作用があると思います。ただし、では100%その化学物質だけが原因なのかどうかということにはちょっと私も疑問があります。私はつい最近食物栄養学の先生方とお話しする機会がありまして、それによりますと余りにも我々の食生活が満腹状態になり過ぎていると。そういうこと自体で腸の免疫機構が落ちているのではないかというような指摘もされましたので、必ずしも化学物質だけではないように思います。 9: ◯岩崎武宏委員  二、三お伺いしたいんですけれども、先ほど先生からOHPを使っての御説明がありましたし、いただいている資料の中にイングランドの河川のコイとかニジマスという生物について内分泌攪乱作用というようなものが認められ、そしてそれはノニルフェノール可能性を否定できないというようなところがございました。私がお聞きしたいのは、ノニルフェノールという物質というのは私たちの生活の中のどんなものの中に含まれて、それが溶け出してこういう物質が出てくるのか、それを教えていただきたいと思います。  2番目に、これはイングランドの河川ということでありますが、仙台市も汚水の排水処理等をして近海に放流をしているわけでありますけれども、このノニルフェノールというものが排水処理場の放流水の中に含まれているような記述でございます。そうなってきますと非常に心配が出てくるんですけれども、イングランドの話ではなくて、日本において汚水の排水処理場の放流水の中からそういうような物質が検出された例があるのかどうかということを2番目にお伺いしたいと思います。  それから3番目には、今そういう汚水を最終処理場で処理をして、安全だということでそれを近くの海に放流しているわけですが、その安全基準というのの中には現時点では恐らく内分泌攪乱物質云々というような考慮はなされていないのではないかと思うんです。先ほどの御説明を聞きますと、先生は科学者ですから非常に厳密なお話だったかと思います。いろいろまだ内分泌攪乱物質作用にしてもその他のことにしてもわからないところが非常にたくさんあって、研究者が今日夜その解明に取り組んでいるということですが、そのあたりが解明されてこないと安全基準というものもつくり変えられないだろうと思います。今の安全基準で内分泌攪乱物質の危険性とか疑いが指摘されている中で、現在毎日のようにかなりの量の放流水を近くの海に放流し、そこからとれる魚介類を私たちは食しているわけですけれども、そのあたりについては科学者としての先生はどんなふうにお考えになっておられるのか。 10: ◯上路雅子参考人  まず最初にノニルフェノールですけれども、これは界面活性剤です。例えば、洗剤の中の界面活性剤とか、あるいは農薬なんかも界面活性剤が使われております。ですからいわゆるアルキルフェノール──ノニルというのは炭素が九つあるものですけれども、アルキルフェノールの中のノニルフェノールということで界面活性剤ということです。ですから、比較的一般的なものと思われます。  これが日本の生活雑排水の中に入っているかどうかということになりますと、多分これは建設省と環境庁がことし調査している最中だと思います。もうそろそろデータが出てくると思います。ですから、そんなに難しい分析ではないと思います。多分ppbの単位で出てくると思います。それで、ではそういうものが安全基準としてどうかということですけれども、今生活の飲料水の関係で原水、浄水での安全基準というのは、どちらかというと発がん性あるい催奇形性を中心とした安全基準の決め方です。それで特に最近また項目がふえましたけれども、ノニルフェノールなんかは入っておりません。確かにそうです。先ほどお話ししましたとおり、内分泌攪乱化合物というものが、超微量のこういう山がどこまでいって、この濃度だったら人間にとって危ない、いわゆる哺乳動物にとって危ないよという閾値というものが出てきたら、多分基準値が決まるんだと思います。ただし、まだ超微量のところの基準が出ていないということ、わからないものですから決まっていないというところだと思います。  ですから、本来は決めて──しかし、私も科学者として、まだまだ明確でないにしてもそういう危険性があるものに対してきちんと対応しなければいけないという考えではあるんですけれども、ある一面では私も産業官庁の人間ですので、やはり行政の立場として、科学的な根拠はともかくとして、やはりそれをきちんと取り締まるということにはそれなりの基準、科学的なデータがなければ取り締まれるものではないと思います。ですから、疑いを持った以上すべてに網をかけるということが必ずしもいいのかどうかということには非常に難しいところがある。やはり先ほど一番最後にお話ししましたけれども、リスクとベネフィットの関係がございますので、どこまで危険があって、どこまでその危険を認めながら生活の利便性を求めていくのか。逆に言えば、どこまで利便性を落とすことができるのかどうか、あるいは科学的なそういう危険性というものを100%保証するならばやめてしまえばいいということになるんですけれども、それが果たしていいのかどうかというのは別な問題だと思います。そういうことで、大学の科学者と私の立場はちょっと違うものですから、そういうお答えをさせていただきたいと思います。 11: ◯青野登喜子委員  中身の研究研究の専門家の方々にお任せしてやっていただきたいと思いますし、一日も早く研究が進んであらゆることが解明されてほしいし、リスクに対しての規制の基準なども早く確立して、環境とか人体が本当に安全に守られるような方向に進んでいただきたいと思うわけです。きょうお話を伺っていて、私たち地方政治の場にいる者として、地方自治体としてなすべきことは何なのかなということもあわせ考えていたんですけれども、地方議会ですと国に向けていろいろな意見書なども出していける機能も持っているわけなんですが、先ほどのお話の中で11年度の予算要求が既に出されておられるということでして、それがちゃんと要求どおりいくかどうかがこれからだということなんですけれども、国の研究に対しての財政が本当に積極的に措置されていくということが何よりも大事なことではないかなと思うんです。7億円が先生のところで今必要な予算ということですけれども、考え方というのは国がこの枠内でやるということではなくて、必要なんだということで予算要求をされていくし、それを通していく必要があるだろうと思うんですけれども、その辺のところはどんなふうになっているものなのか。必要に応じては地方議会等で、地方自治体の中でその辺のところの物を言うような中身は何が求められているのか、その辺あたりもし御所見などありましたらお聞かせいただければなと思います。 12: ◯上路雅子参考人  今お話を聞いていますと、私たちの責任というのは非常に大きいんだということを改めて感じるんですけれども、確かにこの問題に関しましては、私たち研究者サイドもさることながら行政サイドの方が非常に積極的に動きまして、私たちが二の足を踏むといったら非常につらいところがあるんですけれども、難しいところもあるわけです。例えばダイオキシンの仕事にしましても、これは研究者の健康も考えなければいけないものですから、100%保証しながら研究していかなければいけない。そうするとかなり無理をしながら研究をしていくというところもございます。ですけれども、やはれこれは行政の立場として絶対に必要なんだということがありまして、行政の方がすごいリードをしたということもあります。第一次補正予算も終わりましたし、今度第三次補正予算が大蔵省に出ると思うんですけれども、そこの中でもかなりこの環境ホルモンを意識した予算の立て方がされていると思います。ですから、非常にある面では日本は出おくれはしましたけれども、国際的に言っても非常に燃え上がっているというか──冷めなければいいと思っているんですけれども、そういうふうに私たちも期待したいところですし、そうやらなければいけないと思います。  それと、非常に僣越な言い方をさせていただきますと、地方自治体で非常に積極的にこういう化学物質に対しての取り組みをされている場所もございます。むしろ国の研究機関をリードするような研究成果をおさめていただいているようなところもございます。それはやはりその自治体の特徴なのかなと思っておりますし、やはり問題が起きた段階よりも先に何らかの考え方が出されていかなければいけないのではないかと思います。例えばダイオキシンの問題は一番怖い問題ですけれども、内分泌攪乱作用もございますし、この化学物質については魚に非常にたくさん入っているわけです。そうすると魚の中にも近海魚が多いわけですから、そのモニタリングをするとかというような仕事もされていますし、そういうものが今度逆に厚生省の基準値なんかに反映されていくのではないか──健康基準という形で魚をどれだけ食べたら危ないよとか、こういう魚のとり方はこうですよなんていうことにもなってしまうのかもしれません。確かに遠洋の魚は心配ないんですけれども、近海のイワシとかメヌケなんかが一番多いとかという調査結果もございますので、やはりそういう地域性なんかもあって調べていくということも必要なのかもしれません。 13: ◯郷湖健一委員  このダイオキシン、現在我々の生活にも切っても切り離せないような状態でかかわりを持っているということで、むしろその方のことで人間の心が攪乱するといいますか、要するに大変心配をするわけです。私の地区にもこれから焼却場が建設される予定になっているんですけれども、焼却場イコールダイオキシン、住民はそういう考え方を持っているのが多分でございます。ですから、焼却場をつくったらダイオキシンがばらまかれるんだと、住民の方々の心の中の根底にはそういうものが潜在していると。ですから、だめですよという反対運動が起きる。この辺をはっきりしていただかないと、例えばダイオキシンというのは猛毒だということはだれでもわかっています。しかしながら、その中でこれだけ摂取すれば人間の人体に大きな影響があって、生命の存続も危ぶまれるという基準が、焼却場については何ppmと基準がありますよね。そういうことで、そうすると何かこの世に生存できなくなるような錯覚すら覚える国民、市民が多いわけです。ですから、子供を持ったら哺乳瓶を使わないで何を使ったらいいのか、そういうことで非常に心が攪乱するといいますか。ですから、そういうことできちんとした基準をやっぱり早くに設けまして、ここまでは許容範囲だと、これ以上はだめだよというようなことを──余りにもマスコミに左右されまして、むしろ反対に人間の心の方が攪乱されているというような状況でございます。その辺の指針を早くに関係機関あるいは学者の先生方に整備してもらうといいなと思うんですけれども、先生はどうでしょうか。 14: ◯上路雅子参考人  ごもっともだと思います。基準値に関しましては、今環境庁厚生省ダイオキシンについてやっておりますし、いろいろな形で基準値づくりを始めなければいけないということです。ただ先ほど一番初めにお話しされました焼却炉に関しましては、今排出されるダイオキシンの90何%は確かに焼却炉でございます。ただし、今焼却炉の炉の構造なりによってほとんど100%近く、すべてゼロということは言えませんけれども、もう100%近くカットされるはずです。やはりそういう新しいシステムの焼却炉が設置されていかなければいけないと思いますし、それと一番大切なのはごみの分別、そういう基本的なところから皆さん方の協力を、私たちも含めて市民の協力を得なければいけないのではないかと思います。  一般に今800度以上と言われていますけれども、800度以上になればダイオキシンの発生がほとんどないと。学問的に言いますと1,200度になると──1,200度でもできる場合もあるというような言い方もされますけれども、ほとんどの場合は800度で大丈夫だということ。それと、24時間操業をずっと続けるというような形で温度を下げないとか、いろいろな焼却場の設置について方法が考えられていますので、そういう方で周辺住民への協力を得ていくよりほかないのではないか。といいますのは、私どもの方も実はダイオキシンの施設がことし今度の予算で通りそうなんです。これはやっぱり住民説明をしなければいけないものですから、そのときに実験施設としてダイオキシンを排出しないんだと言い切れるだけの施設をつくらなければいけないわけです。そういうことでやはり同じようなことが起きてきていますので、やはりきちんとしたもので対応していかなければいけないのではないかと思います。  基準値については、国としてやらなくてはいけない大きな問題だと思います。 15: ◯菅原敏秋委員  私はよくわからないんだけれども、十分に研究はしていかなければならないと思うんですが、先生のところは農水省、それから厚生省とか環境庁とか。環境の先進都市というのは、環境局がありきなんですよね。環境局が最終決定をすると。ですから、例えば焼却炉をつくるにしても、建物をつくるにしても、木の伐採にしても、道路をつくるにしても、最終的には環境局がその認可をおろすというような制度の確立がなされているわけです。日本の場合には全然制度の確立がなされていないで、個々の言い分の予算をもらって調査研究をして、いろいろな形でやっているわけです。その辺のことをきちんと省庁の再編とか、新しいものを本当に確立しなければ、ヨーロッパの一部だけを資料として参考にしたのでは私は始まらないと思うんです。  ドイツに行ってもびっくりしたのは、仙台市ですと例えば都市整備局が最終的に建築確認をおろすようなものも環境局が最終的な許可をおろすとか、そのために化学産業というのがドイツからもう全部逃げ出していっている部分もあるわけです。ですから、やっぱりそういう国の省庁の決定機関みたいなものを抜本的に変えないと、私は個々に研究されても矛盾だけが発生してきて、なかなか世界のリーダーになっていけないような気がするんです。 16: ◯上路雅子参考人  確かにごもっともです。これは行政改革のこともありますので、非常に頭が痛い。それで、厚生省あるいは環境庁農水省といろいろな部門でそれぞれの仕事をやっています。先ほど示しました研究の上から言いますと、科学技術庁が非常に各省庁を取りまとめた形の環境ホルモンに関するプロジェクトをやろうとして動いていますし、連携が進んでいるということ。それと、いろいろな先ほど来話している基準を決めるとか、そのときの専門委員会の中には例えば環境庁ダイオキシンに関する専門委員会だったら厚生省農水省も全部入っているというような横の連絡の取り合いは常にやって、意見交換しながら進んでいると。もちろんその出身母体のそれぞれの得意分野がございますので、やはりそれなりの言い方はあるんですけれども、ほかの省庁との意見を交換しながらというふうに進んでいます。ただし、先ほどのお話にありましたような一つのものに対して1カ所の大きなくくりの中で──確かにこの環境ホルモンについては連絡会と称して各省庁の話し合いが進んでいます。そこの中で、特に研究者のレベルは研究者のレベルで別なんですけれども、行政の方は行政の方で連絡会、そこに必要に応じて研究者が入っていくというような体制をとっているんですけれども、なかなか御指摘のように見えない部分もあるかと思います。まだまだドイツなんかと比べますと甘いということは御指摘のとおりだと思います。  やっぱり基準というものと、先ほどからお話ししている私の方の産業官庁としての立場という、そこら辺が一番苦しいところではないかと思います。 17: ◯田中芳久委員  先ほどの各省庁の方のことに関して伺いたいんですけれども、研究がいろいろ出ていますよね。一つ足りないなと思ったのは、社会学的な視点が全く欠けているのではないかなという気がしました。それに対してどういうふうなことを考えていらっしゃるか。もしくは、それに対しての何らかの予算が出ているのであれば教えていただきたい。  あともう一つは、環境ホルモンというのはもう既に現実地球上すべてにあるわけですよね。それがどの程度あるかとか、人体に対してどういう影響があるかという勉強も非常に大事だと思うんですけれども、先ほど一部でちょっと出ていましたけれども、代謝によってどういうふうにして環境ホルモンを分解していくかといったような対策、対応策といったような視点も少し欠けているのかなという印象を持ちましたので、その辺について教えてください。 18: ◯上路雅子参考人  社会システムに関しましては、いわゆる経済効果も含めて社会科学的な分野に対する研究が進んでいるのかどうか、これはゼロではないと思いますけれども、私の目には余り入ってこないというところだと思います。こういう化学物質のリスクアセスメント、そういう研究が一番最後に出なければいけないはずなんです。ですから、当然これは最終的な出口として研究課題があると思います。私がちょっと見逃しているのかもしれません。もし取り上げていなかったら済みません。そういうことで、それに関してはちょっと私自身は見落としています。  それともう一つ対応策、これはバイオリメデーションといいまして、一番簡単なのが──簡単というのは、一番研究がされているのは、微生物によってものを分解していくという働きがあります。それが農水省で行われている例えば長期間残留するようなものを微生物的に土壌中にそういう微生物を──それも土壌中に微生物をまた入れるんですから、そこで環境に対する負荷ということもあるんですけれども、そういうことを考えながら適用できる技術をつくろうではないかというのが一つあります。  それともう一つ、これは通産省関係がやっている仕事ですけれども、特にダイオキシン関係は灰を、フライアッシュを1カ所に集めてこれを何らかの形で燃やそうと、1,600度以上の高温で燃やそうという技術を今確立しようということで研究が進んでいますので、多分そういう形ができると思います。ただ、非常に超微量に地球環境中にばらまかれてしまったものを集めるということはほとんど不可能に近いものですから、今からできるということは難しいと。ただ、先ほど来お話しされている焼却炉の灰を集めておいて、それを何らかの形で処理する、これは可能だと思います。 19: ◯田中芳久委員  それも大事なんですけれども、私のニュアンスとしてはもうちょっと違って、今大体環境ホルモンというのは基本的に受容体が受け取ってしまうためにほとんどの障害というのが起きていますよね。例えば受容体に対して何らかの対応策を考えてあげるというような方法論というのは、今まだ考えていないんでしょうかということです。
    20: ◯上路雅子参考人  それは受容体自体はもう全部ホルモン系を持っているものですから、そうすると今度は化学物質を変えていくということですね。 21: ◯田中芳久委員  その化学物質を受けとめるための疑似受容体のレセプターをつくってあげるというような方法論は考えられないのかなと思ったんです。 22: ◯上路雅子参考人  どうでしょうね。そこまでいくか、ちょっとそれは生体反応になりますので、ちょっとわかりかねます。うまくいくかどうかわかりません。だから、くっつかないような形にしなくてはいけないのかもしれませんね。ちょっとまだそこまでいっていないと思います。 23: ◯委員長  参考人からの意見聴取を終了いたします。  上路参考人、本日は大変ありがとうございました。              〔参考人 上路雅子退室〕 24: ◯委員長  それでは、当局に対して何か質問等はありませんか。              〔「なし」と呼ぶ者あり〕 25: ◯委員長  これをもって委員会を閉会いたします。...