きょうまず最初にお話しすることを整理させていただきますと、まず一つには
環境ホルモンというのは一体どういう現象なのか、一体どういうことが言われてこれが問題になってきたのかということ、それともう既に
新聞等で出ていますけれども、いわゆる
環境ホルモンというのは一体どういう
化学物質で、それが一体どのような現象と
物質との間の確証がとれているのかということ、それと非常に簡単ですけれども、
環境ホルモンの
作用というのは一体どういうものかということ、それと
研究として今後何をやっていかなければいけないのか、調査として何をやっていかなければいけないのかということ、それで最後に
農水省も含めていろいろな各省庁で一体どういう取り組みをやろうとしているのか、あるいはやっているのかということをかいつまみながら御説明させていただきたいと思います。
きょうはレジュメを書いてまいりましてお手元にお配りしましたけれども、
OHPを使って御説明させていただきたいと思います。
〔
OHPに基づき
資料説明〕
ここに出しましたのは、昨年
コルボーンという女性の
研究者の「奪われし未来」という本が和訳されまして出てきました。その中にこういう
野生生物なり人に対する何らかの異常があるということが出てきまして、これが
日本でもマスコミが取り上げたことです。1991年ぐらいに既にこの
コルボーンさんらを中心としまして
WWF、
世界野生生物基金を中心としていろいろな
問題点が出されました。それは
ミンクやあるいはハゲワシとか鳥とかそういうものの数が非常に少なくなってきているということ、その数が少なくなってきた理由が一体何なのかということ、そのときに昔使っていた
DDTとかBHCとかあるいは
PCBとか
ダイオキシンとか、そういう
化学物質が何らかの形で
影響しているのではないかということが出ました。
それと、人間に対しましても
精子の数が減ってきたとか、あるいは
乳がんや
子宮内膜症とかがふえているのではないか。こういう
化学物質が原因しているのではないかということが出てきまして、
野生生物に一般に起こっているそういう生体の異常というものが、ひいては人の生存にまでも響いてくるのではなかろうかということで非常に問題になっているわけです。
人間に関しましては先ほど言いましたが、これはよく出されている
データですけれども、
デンマークの
研究者が出したものです。
精子の数が1940年代からもう半分ぐらいになっているんだということです。いろいろな
研究者がいろいろな形で
精子の数を測定していますが、これは世界中の61個の
報告文をまとめたのがこの結果であると。非常に精度が高いということを言われています。ただし、後から説明しますけれども、これについては非常に
精子数の
年次変化をとるのは難しいんだということも言われています。
精子に関しては、この数が減っているだけではなくて、その形がおかしくなったり、その活性が、非常に動きが鈍くなったりということで、非常に
生殖関係に問題があるんだということが言われています。これが人間に対する
影響です。
日本ではもう既にこれは確実に
環境ホルモンと言われるものだと報告されているんですけれども、
国立環境研究所の堀口さんたちがやられた仕事です。これは
イボニシという貝がございまして、その貝の雌に雄の
生殖器がついているということです。それでもう既に
新聞記事などで写真なんかも見られていると思いますけれども、この
日本中の
イボニシを集めたり、あるいは
イボニシのほかにもレイシガイとか
チヂミボラとかいろいろな貝があるんですけれども、そういう貝を調べていったときに、この数値が大きくなればなるほど雌に雄の性器がついている比率が高くなっているということです。ですから、数字が大きいものほど雄化が進行しているということです。本来は1対1であっていいと思われるものが、雌が雄化しているということを示しています。
このときに一体何が原因なのかということで調べられてきました。その調べられた原因がここに示されています。いわゆる雄の性器が雌についている
インポセックスということなんですけれども、船の底についている
防腐剤、底に
有機スズがついているわけですけれども、
トリブチルスズと
トリフェニルスズというものが非常にこの原因になるのではなかろうかということで、
実験室内で雌の貝にこの
トリブチルスズあるいは
トリフェニルスズというものを一緒に混ぜてやりますと、雌のところに雄の
生殖器がついたということです。これは体内での
ペニスの長さとその濃度を調べているところです。非常に高い相関がありまして、やはりこの
トリブチルスズとか
トリフェニルスズが原因になっているんだというようなことが言われています。
ただし、なぜ雄のものが雌についてしまうのかという根本的な理由のところがまだわかっていないのが実情です。今、
環境庁がまとめられました
環境ホルモン作用がある
化合物というものが67
化合物ございます。この2枚の
OHPでお示ししますけれども、67のうち約40が
農薬です。2枚目が
農薬になっているんですけれども、1枚目はここに出しておきました。非常に問題のある
ダイオキシンも、それとPCP、ペンタクロロフェノール、ここら辺は非常に分解が遅くて生体内に濃縮していくというような難物です。それと、先ほどの
インポセックスのところで出てきた
トリブチルスズ、
トリフェニルスズ、それとアルキルフェノール、
ノニルフェノールなんかがそうです。それと
ビスフェノールA、
給食器なんかに入っています樹脂の原料です。
あとフタル酸ジ-2
-エチルヘキシルです。それとスチレン、これも給食なんかの容器に入っているものだと思います。
そういうことで、ただここに印をつけておきましたものはもう既に
生産中止になっております。しかし、一番最後に出すつもりですけれども、
フタル酸エステル、こういうものは私たちの身の回りにいっぱいありまして、これがないものを見つけるのが難しいというぐらいもう私たちの生活にぎっちり溶け込んでしまっていると考えていいと思います。
ただ、ここに
内分泌攪乱作用が疑われるという
書き方をしましたけれども、この
化合物がすべて
環境ホルモン作用があるという確定があってここにリストアップされたものではございません。
WWFでまとめた何らかの
データをもとにして出したんですけれども、私たちが科学的なものを調べていくと、必ずしもこういう
化学物質が
環境ホルモン作用があるんだよというような説明がきちんとできるようなものはほとんどないと言えると思います。まだまだ
研究の段階であると言えると思います。
それと、ここに示しますのは
農薬です。ここの場所で
農薬を余り……という感じもするんですけれども、一種の
作物残留ということもございますので、あえてここで出させていただきます。67リストアップされたうちで40が
農薬でございます。この
アスタリスクマークをつけたものが未登録あるいは失効という形で、例えばヘキサクロロシクロヘキサンはもう使われていないものでございますし、
エチルパラチオンは非常に猛毒で昔昭和40年代にホリドールとして使われていたものですけれども、それももう昭和46年には
使用禁止になっています。クロルデン、こんなのも使われていません。ただし、
DDT、
エンドリン、こういうのは使われていませんけれども、先ほど言いましたとおり非常に
環境中で分解しないで残っているということで、今でも泥の中、
日本の
農耕地あるいは河川の底質の中から
DDTなり
エンドリンが検出されてくることは事実です。それで、
DDTについてはもう
環境ホルモン作用があるとはっきり言われているんですけれども、こういう
化合物に一体本当に
環境ホルモン作用があるのかどうかということです。私は
農薬の専門なので
農薬についてお話ししますと、ほかの
化学物質と比べますと
農薬については非常にいろいろな
問題点があるということが指摘されていましたので、毒性の試験が物すごくきちんとされています。
繁殖試験とか、
あと発がん性とか
催奇形性──いわゆる形態異常を起こすような、それを予知するような試験、いろいろな試験がされていまして、
かなりのきちんとした
データがあるんですけれども、
環境ホルモンということを視点にした
試験方法がそれでいいのかどうかというのが今問題になっております。そういうことでここに出した
農薬、まだ失効になっていない今使われている
農薬も20ぐらいあるんですけれども、これについてきちんと調べなければいけないということが言われています。
今、
内分泌攪乱という形で67品目についてお示ししましたけれども、そのほかにも鉛とかカドミウムとか水銀とか、そういう金属についても
内分泌攪乱があるのではなかろうかというような疑いがかけられています。
それともう一つ非常に厄介なことは、この
内分泌攪乱というのが一種の
化学構造的に言いますと、既存の植物とか
微生物とかに含まれているいろいろな
植物ホルモンとか、
微生物なんかに含まれている
ホルモン──
微生物の
ホルモンといったらおかしいんですけれども、そういうものと非常に構造的に似ているということが言われています。ここに出しましたのは、大豆の食品中の
植物性エストロゲン──これは四つぐらいあるんですけれども、今三つ出しましたが、その
化合物が既に入っているわけです。このAという
化合物は、アズキとかクローバーとかの中に入っています。そういう中に入ったものが豆腐とか
おしょうゆとかもやしとかみそ、こういうものにも
かなりの濃度が出されています。マイクログラムパーグラムですから、ppbのオーダーで検出されているということです。これが果たして
ホルモンとして、いわゆる
化学物質と同じような
作用があるのかどうかということがあります。1940年代にオーストラリアで羊が非常に大量に死亡いたしました。そのときに出てきたのがこの
植物エストロゲンで、これが原因しているんだということが言われています。そういうことで、合成
化学物質だけでなくて、天然のこういう
ホルモンも
生態系に
影響があるんだということが言われ始めています。
では、我々の食生活の上でこういう
大豆食品中の
ホルモンを気にするべきなのかどうかということなんですけれども、害になるのかあるいは益なのかということに関しては意見の分かれるところでございます。ただ非常に明確なのは、
東洋地域の女性の
乳がんの発生が、ほかの地域から比べますと非常に優位の差で少ないということが言われておりまして、やはり何らかの女
性ホルモン的な
作用をするのではなかろうかと言われています。それで、こういう
大豆食品を全然心配なく食べていいのかどうかということですけれども、今のところ大人にとっては問題はないだろうと。ただし、子供あるいは胎児がおなかに入っているとき、こういうことはめったにないことだと思いますけれども、お豆腐ばかりを食べるとか、
豆製品だけを非常に極端に偏った食べ方をするとかいうようなことは避けた方がいいのではないかというようなコメントがされております。
今、お示ししました
化合物もペーパーの中に入れておきました。いろいろな疑いがかけられていますけれども、本当にそれが
環境ホルモンとして断定できているのかどうかというのは非常に疑わしいところがございます。ここに出しました貝類については
インポセックスという現象が
トリブチルスズ、
トリフェニルスズと非常に関連が強いということが確定されているように思います。ただし、ここに出しましたアメリカの
五大湖の
サケ類が
甲状腺の形成異常で雄の二次
性徴期がおかしいと言われている、こういうものについて一体何が原因しているのかというようなことになりますと、非常に多くの
化合物が疑いがあるんだけれども特定はされていないというようなこと、あるいは
ホワイトサッカー、これも
五大湖──
五大湖というのは非常に有機
化学物質がたくさん濃縮されているところでして、そこで
生態系、
野生生物にいろいろな
影響があるんですけれども、特定できる
化合物があるのかというと、ここに示したとおり必ずしも特定されていないということがあります。
それと、イギリスのニジマスについて、ビテロゲニンというのは
卵細胞、卵になる
前駆体のたんぱく質ですけれども、それが雄に非常に多くなっているということがいわれています。これは
ノニルフェノールが疑いがあるんだけれども、必ずしも明確ではないというような
言い方もございます。
そういうことで、ここに出ているミシシッピーワニの
ペニスの
矮小化も
DDT、ダイコフォル──これも
塩素剤ですけれども、それについても必ずしも明確ではないというような話もあります。
それと、同じような比率ですけれども、哺乳類に来ますと
ミンク、カワウソも繁殖が激減しているということを言われています。それでこれは
PCBの
可能性が高いということが言われています。なお、
PCBについては、今
日本では
ダイオキシンには入れていませんけれども、
WHOの方では
ダイオキシンと同じ
作用をするんだということで
ダイオキシン類として入れようということが
厚生省で検討されています。そういうことで、
PCBも非常にこういうものの
可能性が高いということです。
それと先ほど言いましたが、これが大豆のものです。羊の死産の多発、奇形の発生、こういうものが先ほど示しました豆の
植物エストロゲンが原因しているんだということ。
あと、ヒトの男性については
精子数の減少と劣化があります。それと、ここのヒトのDES、これは
流産防止剤で出しましたお薬でございます。
化学合成的な
ホルモンをつくったものですけれども、これについては実際に飲んだ妊婦から生まれた女の子がこういう現象を起こすんだということで、成人になってから
化学物質に暴露されてもそれほど敏感ではないんだけれども、子供とか小さい赤ん坊のときにこういうものに対しては非常に感受性が高いということが言われています。
今、このように
野生生物への
影響が出ていまして、
化学物質との関係を見ましたけれども、必ずしも明確ではないということです。なぜ明確ではないかという一つの例としましてお示ししますけれども、例えば魚で示しますと、魚は水温だけでも雄、雌が変わるということが言われています。ここに示しましたのが、上が水温の
影響、こちらが
性ホルモンを投与した場合です。この白丸の方が雌だけの群です。この黒丸の方が雄と雌を1対1で入れた場合です。温度が低いところ、ここのときには雌のものなのに雄になっている、あるいはここの温度が二十二、三度より高くなると、本来雌だったものが雄に変わってしまうというようなことがございます。あと、
性ホルモンを投与した場合には、雌の
性ホルモンですから本来はきちんと雌になればいいんですけれども、濃度が低いときは必ずしも雌に転換することはないというようなこともございます。
そういうことで、
野生生物でいろいろな形態異常なんかが見られますけれども、それが
化学物質でなるかどうか、その見きわめが非常に難しいということがここに出てきています。
それともう一つの例としまして、先ほど
デンマークの先生の
研究で
精子の数が少なくなっているということをお話ししました。
日本でも慶応大学とか帝京大学とか、いろいろな大学の
先生方が
精子の数を調べたりあるいは形態を調べています。
精子の数というのを調べてみた結果、これが
WHOの出したものです。1人の人間、同一人間の
精子を2週間に一遍ずつこうやってとっていったものです。そうしますと、同じ人間なのに量が3分の1、4分の1以下になったりするわけです。本当に
精子の数が統計的に減っているのかどうかというのがとりにくいというのが現実です。つい最近も新聞で見ますと、減っているんだという方もいらっしゃいますし、必ずしも
日本人の場合に減っているとは言い切れないという方もいらっしゃいます。そういうことで、まだまだ今後の課題になっているのかもしれません。いずれにしても、こういうものは調査がしにくいものですので、それと調査したものの精度がどこまできちんととれるのかというところで、非常に難しい問題ではないかと思います。
ちょっと話を変えまして、今度は
環境ホルモンの
作用ということを非常に簡単にかいつまんでお話しさせていただきます。
今、簡単に
環境ホルモン、
環境ホルモンと言いますけれども、正式には
内分泌かく乱物質あるいは
外因性内分泌攪乱化学物質と言います。これは、いわゆる
内分泌攪乱というのは、人間、
哺乳動物あるいは動物の
内分泌系、いわゆる
ホルモンに何らかの
影響を与える外部から与えた
化学物質のことを言います。言葉が非常に難しいものですから、これを簡単に言うために
環境ホルモンと言っているわけです。これは国際的に全く認められておりませんので、
日本の造語です。横浜市立大学の
井口先生の提案された言葉です。今、簡単にもう広辞苑にも出たくらい一般的な名前になっておりますけれども、必ずしも当たっていないということです。
厚生省はかたくなに
外因性内分泌攪乱化学物質という言葉を言っていますし、
内分泌かく乱物質──
農水省は攪乱の攪という字も平仮名にしておりますし、非常にいろいろな
言い方をしております。
農水省の場合は
内分泌かく乱物質、括弧していわゆる
環境ホルモンみたいな
書き方をしております。それと、つい最近、この8月に学会が発足いたしまして、私もその中に入っているんですけれども、そこの学会の名前は
内分泌攪乱化学物質学会です。括弧して
略称環境ホルモンというような、非常にややこしいことを言っています。いずれにいたしましても、
内分泌攪乱ということで、
内分泌作用を攪乱する
化学物質であるということを言っています。
その
内分泌攪乱とは一体何ぞやということになるんですけれども、これは何も今起きてきた問題ではございませんで、医薬、
農薬あるいは
化粧品とか
調味料とか、そういう
化学物質が生体に対する何らかの
影響を及ぼしている、これはもう昔から言われていたことです。ただ、そういう
野生生物に対する
影響とか、非常に大々的に
野生生物の
生殖機能とかに対する
影響、そういう見方をしてこなかったものですから問題になっているんですけれども、お医者さんの仲間ではこれはもう一般的なものとして使われていたということです。
そうしますと、
内分泌攪乱ということで
内分泌器から出ているということで、これは人の
データをもらってきたものですから非常に見にくいんですが、
甲状腺とかあるいは副腎とか
生殖器、こういう
内分泌臓器から
ホルモンが放出されるわけです。その
ホルモンがいろいろな人間の機能が正常な動きをするような働きをし、つかさどる、そういう動きをしています。この
ホルモンに対して、悪さをしていくわけです。その悪さの仕方ですけれども、いろいろな
作用メカニズムがございます。まだまだ必ずしもここは
クリアカットにわかっているわけではないんですけれども、そのうちの一つとして出しておきました。普通は、一般には本来この
ホルモンというものにはかぎと
かぎ穴の関係で
ホルモンの
受容体──レセプターというんですけれども、そういうものが非常にきちんとくっついて、それで必要に応じてこれが外れて正しい情報を発信していくということが言われています。そのときに、
化学物質がこの本来の
ホルモンと非常に類似した
化学構造でこの
かぎ穴にきちんとはまってしまいますと、これが本来の正しい情報ではなくて間違った情報を、あるいは非常にいつまでもいつまでも同じ情報を流し込むというような
作用を起こす場合があります。
それともう一つは、非常にここに似ているんですけれども、ちょっとすき間があったり、模式図的にいいますとこういうときになりますと、
受容体として本来の
ホルモンと結合するのを阻害する、例えばここに
男性ホルモンがくっつくときにこれが入ってしまうことによって
男性ホルモンの
作用を抑えてしまうとか、そういう
結合体との関係が言われています。これに関しましては非常に
研究がおくれておりまして、ここが一番
内分泌攪乱、いわゆる
環境ホルモン作用の大きなポイントになっていると思います。
今わかっている
物質として言われているのは、
エストロゲンという
女性ホルモン作用をするものに例えば
DDTがあったり、ディルドリンがあったり、アルドリン、こういうものはいわゆる
農薬です。これはもう30年近く前に
日本では中止になりましたけれども、まだ東南アジアでは使われているというようなものです。それと
ノニルフェノール、
ビスフェノールA、
フタル酸エステル、こういうものが
女性ホルモン作用がございます。ただし、その
作用がどれぐらい強いのかということになりますと、いささか問題でして、例えば、普通の女
性ホルモンエトスロゲンが1としますと、その1000分の1とか1万分の1の能力、結合性しかないと言われています。
それと抗
エストロゲン作用、これは先ほど言いました女
性ホルモンを阻害するような働きをする。これはTCDD、
ダイオキシン、それと除草剤のアトラジンです。
それと、これは
男性ホルモンに対して阻害するような
作用、これはp,p'-
DDT──
DDTにはいろいろな異性体がございますのでp,p'-
DDT、あとビンクロゾリン、これはつい最近ことしの4月まで使われていた殺菌剤ですけれども、そういうものがあります。
エストロゲンとか抗
エストロゲンとか、こういう
作用がわかっている方が非常にまれであると言えると思います。
それでは、
内分泌攪乱化学物質に対してどういう
研究をしなければならないのか、どういう調査をしなければいけないのかということを幾つかに整理しました。これは私なりに整理したものですから、まだまだ十分ではないと思います。
私も
環境ホルモンという言葉を簡単に使えばいいんですけれども、
農水省の中で
環境ホルモンという言葉を使うと非常に問題視されますので、
内分泌攪乱物質という形で言わせていただきます。
内分泌攪乱物質に関する
研究というのは、一体何があるのかということです。
化学物質、これは先ほど示しました有機合成
農薬の
化合物だけでなくて、先ほどの大豆なんかの本来の
性ホルモン、あといわゆる普通のいろいろな
ホルモンがあります。こういうものとどういうふうに仕分けしながら
内分泌攪乱という悪さをするものをとらえていくのか、この
作用を起こすものが
化学物質として非常に広範囲にあるということがまず1点です。
それと、有害な
作用というものが、奇形児を発生する催奇性、あるいは繁殖障害──これは子供を産まなくなったとか、卵の殻が薄くなったとか、あるいは繁殖行動そのものが起きないというようなこともある、そういう
作用ということ自体が非常にいろいろなものが出てきて、これをどういうふうに見ていくのかということがあります。
それと、その
化学物質自体がどういうふうに自然状態下において分布しているのか、あるいは移動するのかということもあります。先ほど示しました
DDTなんかは、東南アジアではまだ使われているということを言いましたけれども、この
化合物、今南極とか北極とかそういう極地に非常に高濃度で見つかっている。それで、それが人間のお乳の中に濃縮されてきたり、いろいろな家畜の中で濃縮されているというようなこともあります。そういうことで、実際に私たちの身の回りにあるものが
環境中でも非常に動きます。それと、生体内の中でもいろいろな形で動いていったりします。そういうものが非常にこの
物質と深く関係しているんだということが言えます。
それと、この中で生物種に与える
影響、これが
野生生物、家畜、哺乳類、いろいろな
内分泌系を持つもの、こういうものが生物種によって全く違った悪
影響を及ぼす
可能性がある。例えばですけれども、
哺乳動物とほかの魚を比べますと、どちらが敏感かということになりますと、人間はおおむねそういう
化学物質に対して非常に耐性を持っている、感受性が鈍いということが言われています。それはなぜかといいますと、同じ量の
化学物質が体内に入ってきた場合に、私たちが食物として取り入れた場合、体の中に入ってきたときに、肝臓とかそういう臓器でいろいろな
ホルモンの
作用点に行く前に代謝してしまう、肝臓なんかでいろいろな酵素で代謝してしまうということになると、
内分泌攪乱作用自体が起きにくくなってしまうということが言われています。そういうことで、
厚生省なんかがよく言っていることは、非常にいろいろな
内分泌攪乱作用があるんだけれども、人間に対しては心配があってもそれほど大きな問題ではなかろう、問題にするのはもちろん小さな子供とか胎児のときだというようなことも言っていますけれども、それよりも生物
環境全体としてどういう問題があるのかということが大きな問題になっています。
こういう
問題点に関して、実際にやらなければいけない
研究はどういうふうに対応すべきなのかということです。まず、
日本でも何万という数の
化学物質が世の中に入っています。その
化学物質が本当に
環境ホルモン、
内分泌攪乱作用があるのかどうかということを確認しなければいけないということが言われています。その確認の方法、検定の手法が全く確立されていない。今、確立しようということでOECDとかあるいはアメリカのEPAとかでいろいろな
卵細胞を用いたり、あるいは
卵細胞を使ってその
卵細胞の量のふえ方を見たり、あるいは子宮の重量が大きくなるのかとか、そういう
影響を見るとか、あるいは
ホルモンとの結合性を見たらいいのではないかとか、いろいろな検出方法が言われています。それがすべての
化学物質についてそういうことが言えるのかどうか、それを今検討の最中です。これが一番早くやらなければいけないだろうということです。
それと、
内分泌攪乱作用のメカニズムの解明ということを言いました。これはこの
内分泌攪乱作用があったとしても、では
作用がどういう形で出てくるのか。例えば発がん性がどうなのかとか、あるいは
生殖器が大きくなるのかとか、なくなるのかとか、そういう
作用、ここからここへ持ってくる
作用のメカニズムがどうなるのかということが全くわかっていないので、これを早くしなければいけないと言われています。
それと、ここに用量と反応性との相関関係の解明ということを出しました。これが非常に
環境ホルモンでは難しい問題です。これができれば
かなりの点ができるんだと思うんですけれども、一般に
化学物質には──これは医薬についても
農薬についてもあるいは普通の一般的な
化学物質についても言えることなんですけれども、例えばあるAという
化学物質がありました。そのAという
化学物質がいろいろな生物に対してどういう
作用を起こすかということを調べたときに、Aという
化合物がこういう
作用を起こす場合、あるいはこういう
作用を起こす場合、その生物によって違うこともあるかもしれません。これは横軸に用量です。縦軸に反応を示しました。ある反応を起こすときに、こういう曲線を書いたり、あるいはもしかしたらこれが直線になるかもしれません。いずれにしましても、これが限りなくゼロに近づいてくるわけです。限りなくゼロに近づいたところ、そこが無
影響量として出てくるわけです。そういうことで、例えば
農薬ですとこのゼロになる点を閾値といいまして、この閾値以下にするようにいろいろな基準が定められているわけです。医薬でもそうですけれども、私たちが副
作用を起こさないためにはどの程度の量を飲んでもいいのかどうかというのがここの点になります。あるいは医薬の場合にその逆にどれだけの量を我々に入れた場合にそれなりの
作用が出てくるのかということになりますと、この曲線ですとこれぐらいだったら十分な
作用が出てくるだろうというような一つの目安としてこういう曲線を描くことができます。今までの
化学物質に関しましては限りなくゼロに近いということ、この閾値というところがあって、この閾値以下はもう見る必要がないということで来ました。今度の
内分泌攪乱作用に関しましては、こちらの微量な部分がどういうふうになっているのかが全くわからないわけです。ある一説によりますと、量が少なくなったところで山ができてくるということも言われています。ある非常に量が少ないところで、何らかの
作用を起こす。それでまたこれが下がってくる。それでまたこの
化合物がもっと量が多くなってまた別の
作用を起こすというようなことが起きます。微量なところでこの山があるのかないのか、これがこの
化学物質、いわゆる
内分泌攪乱物質の大きな問題です。これがあるかないかによって、
環境中で一体どの程度の量があればいいのかどうか、それを確認しなければいけないということでみんな調査をしているわけです。これが決まれば、基準値が定められるんですけれども、この量が定められないがために、
環境中で一体どれぐらい量があるんだとかないんだとか、一生懸命になってみんな調査するのはこの意味です。
ダイオキシンに関しても、pptレベルあるいは0.01pptレベルという非常に超微量のことをやらざるを得ないというのは、これがあるためです。そういうことで、この山を見つけなくてはいけないというのが今やられているんですけれども、試験法が難しいということで結論はなかなか出ていないみたいです。
そういうことで、今用量と反応性との相関関係の解明とお話ししましたけれども、いわゆる超微量で
作用が出るのか、あるのかないのかということを早くしなければいけないんだということです。
それとこれに関連しますけれども、この量というものをどの程度の量のところまで抑える必要があるのかということで、4番がかかわってくるわけです。今、どれぐらいの量があっても大丈夫だというところがわからないがために、みんな分布状態と量を把握するための調査に入っているということです。
それと、これをどこに入れるべきかと非常に悩んでいるんですけれども、
環境生物でいろいろな異常が起きた場合に、これが一体どういう
化学物質と関係するのかということの相関を調べなければいけないんだということがあります。
それと、さきにお話ししましたけれども、
内分泌攪乱物質というのは、いろいろな
環境の生物の中で違った
作用を起こすんだと。そのときにその生物種間で、あるいは
環境の土、水、大気の中でどういうふうに分解していくのかということを調べなければいけないんだということです。先ほどの
DDTなんかですと、
DDTという
化学物質の中にDDEもあり、いろいな異性体が入っていると。その異性体によって全く
作用が違うということも言われています。そういうことで、この代謝、分解のメカニズムをやらなければいけないということも言われています。先ほど殺菌剤のビンクロゾリンが
男性ホルモンの阻害
作用を示すということを言いましたけれども、ビンクロゾリンそのものが悪い
作用ではなくて、ビンクロゾリンの代謝物が悪い
作用をしたわけです。そういうことで、代謝
物質についてもきちんとやらなければいけませんよということです。
いろいろな省庁で
研究なり調査をやっていますけれども、平成11年度の要求項目、今手元にありましたものをまとめてまいりました。もちろん今年度からいろいろな関係省庁で
研究が行われておりますけれども、11年度に向けましてまた大きな試験項目が加わってきて、予算も非常に大きな額で出ています。多分100億を超えるのではなかろうかと思われます。
環境庁につきましては健康
影響等の調査ということで、
環境庁は常にいろいろな
化学物質が大気中あるいは水系、それと
野生生物にどういう形でどういう量存在するのかという分布を調べております。ことしも調べております。
農薬なんかも今年度2回調査しまして、その
データが来週あたり出てくるのではないかと思うんですけれども、あちこちでそういう調査をやっております。それと、
農薬の生殖毒性の調査をやっています。これは
農水省と仕事が非常にバッティングするんですけれども、お互いにここでも
農薬の
内分泌攪乱作用の判別技術を、いわゆる検定方法を確立するんだと。それによって
農薬の登録に必要な試験項目が変わってくるんだというようなスタンスで仕事が始まっています。
科技庁は、実はこの戦略基礎というのは非常に大型のプロジェクトでございまして、1課題5000万円ぐらいのが多分30課題から50課題ぐらいいくんだと思うんですけれども、この10月に課題の募集が締め切りになりました。主にどちらかといいますと大学の
先生方が応募──多分8割方大学だと思いますけれども、そちらの
先生方の
研究課題として、先ほどお話ししましたとおり、どういう
作用があるんだとか、あるいは超微量でどういう
作用があるのか、その検定方法をどうすべきなのかと、基本的なところが始まるはずです。
それと文部省は非常に小さくて金額が1億以下だったと思いますけれども、
内分泌攪乱作用というのは一体どういうものかという、いわゆる教育の現場での情報公開するというようなプロジェクトが始まっています。
それと
厚生省もヒトの健康
影響解明に関する総合
研究ということで、多分この
環境庁の
データを受けながら仕事が始まるのではないかと思います。それと
研究成果情報をどうやって
データベース化するかと、これは国内外に関して非常に先端的な
研究としていろいろな仕事がされているんですけれども、それをどうやって
データベース化するかということで
厚生省の仕事が始まっています。
私のおります農林水産省で、まだこれ以外にも二つぐらい入っていたと思いますけれども、この動態解明と
作用機構に関する総合
研究が今の予定では一応7億円という予定で始まっています。もう来月あたり大蔵省のあれが出ますので、どの程度に絞りこまれるかちょっと心配なんですけれども、今90課題ほどで
研究が進められる予定です。それと魚に対する実態把握調査、それと食品の安全性確保──これは食品の容器に関する
研究です。
それと運輸省は土砂、砂の中の
ダイオキシン類の分析ということが入っております。
建設省は今年度からもう既に事業が始まっておりますけれども、河川水中での
内分泌攪乱が疑われている
化学物質の微量分析の調査をやっております。それと同時に、超微量分析法の装置を整備するんだというようなことを言っております。それとこの流入実態調査ということもあります。
ついでながら、私どもの方も農林水産省として
環境ホルモンというキーワードのもとに第一次補正予算で5月ごろにも施設改修等につきましても億単位の
かなりのお金がついておりまして、今から非常に
研究が始まるというところです。
では、先ほど示しましたけれども、7億円の
研究課題のメーンといたしまして、皆様方のところに少し関係あるかどうかわかりませんけれども、いわゆる農林水産業における
内分泌攪乱物質の動態解明と
作用機構に関する総合
研究という課題です。今7億円で、試験課題が90課題ぐらい挙がっていますけれども、どういう
化学物質を扱うかというと、例えば大きいものとして
ダイオキシン、それと
内分泌攪乱が疑われている
農薬とかカドミウムとか水銀とか、そういうものが水生生物にどういう
影響があるのかとか、作物にどういうふうに取り込まれるのかとか、あるいはこれは畜産も絡んでいるんですけれども、畜産のミルクとかそういうところに
ダイオキシンだったら
ダイオキシンが取り込まれてしまうのか、あるいは牛肉の中に出てくるのか、そういう
研究をやろうではないかと言われています。
それと出口としましては、そういう
環境中にばらまかれた
内分泌攪乱物質を何らかの形で制御していくといったらおかしいんですけれども、分解していくとか、あるいは土壌に吸着するためにはどうしたらいいかとか、あるいは食品ですと先ほど示した食品の容器の開発とか、そういうような仕事が一連の仕事の中に入っております。そういうことで来年の4月から6年計画で始まることになっておりまして、私たちも何をやったらいいのか非常に疑問を持ちながら、あるいはすぐ答えが出るのか心配しながらやっているところです。
今私の方の
研究まで幾つかのお話をしましたけれども、現在わかっております、今ここの場で少しお話ししておいた方がいいと思います
化学物質を三つほど取り上げました。関係しておりますいわゆる
ビスフェノールAというものです。これはお尋ねしましたら、もう仙台の方では解決済みだというお話ですけれども、いわゆる給食用の食器とか哺乳瓶とか歯医者さんのいろいろな材料の詰め物とかあるいは缶詰のコーティングしたところから
ビスフェノールAが出てくるんだということが言われています。この
ビスフェノールAというものが容器から溶出するんだということ。それで、どれぐらいの溶出があるかといいますと、大体哺乳瓶ですと95度のお湯で一晩放置すると5ppbという単位を出していました。温度が低くなれば溶出が非常に少なくなるだろうということです。実際にそういう
内分泌攪乱作用というのは微量のという
書き方をしましたけれども、非常に弱い
エストロゲン作用があると言われておりますが、
厚生省といたしましては、これは体内に吸収されても非常に排泄されやすくて分解が早いものですから、それほど問題がないだろうという
言い方をしています。ただし、これはもちろん赤ちゃんとか小さな子供の場合にはどういう
作用を起こすかということは非常に心配なものですから、気をつけなければいけないという
書き方をしておりますけれども、この容器からの溶出に関しましても
厚生省基準で2.5ppmという基準がございまして、これから比べますと非常に量が少ないし、今すぐに規制をしなければいけない問題ではないのではなかろうかというのが
厚生省の考え方だと思います。これが一つです。
それと
フタル酸エステルも非常に大きな問題だと思います。これはポリ塩化ビニールの可塑剤とか農業用のフィルムとか染料とか、もうあらゆるところに使われていまして、
内分泌攪乱作用が非常に弱いんですけれどもあります。ここのR1、R2にいろいろな異性体、ベンジルブチルとかジエチルブチルとかいろいろな
化学物質があります。御存じの方もいらっしゃるかと思いますけれども、この
フタル酸エステルはことしの7月ごろにアエラに取り上げられまして、アエラの中で埼玉県の農業試験所の方が10年ほど前にやられた
データ──この中に土壌中にこの
フタル酸エステルがあって、それが作物に吸収されるんだというような
データがそのアエラで取り上げられまして、
農水省としましてもこれを取り上げざるを得なくなったという形のものです。この
化合物をではどうやって分析するのかということがございます。この
物質は、我々
化学分析屋が分析するにしても非常に難しい問題でして、例えばいろいろな試験をするためのフラスコなんかの中にも
フタル酸エステルが入っております。あるいはいろいろなものを抽出してくるためのメタノールとかあるいはアセトンとか一般の有機溶媒の中にもこの
フタル酸エステルが入っております。そういうことですと、実際に私たちがサンプルとして持ってきたときに、その
フタル酸エステルがどれだけ入っているのかというものが測定できないのではなかろうかということで、非常に難しい。私たちの身の回りに、我々のこういうところにいっぱいあるということで、今の
環境中の
フタル酸エステルをどういうふうにシャットアウトすることができるかと、もう分析屋泣かせのものです。これをやれる人は本当に
日本でも数人しかいないのではなかろうかというような感じがします。
フタル酸エステルについては苦しいものですけれども、こういう疑いがかけられた以上、何らかの方法で測定していかなくてはいけないのかもしれません。
それと最後の
化学物質はポリスチレン、これも既に仙台では処置済みというお話でした。このポリスチレンの樹脂をつくるときに、これがモノマーですけれども、これにいろいろな形で二つついたり三つついたりという形でいろいろなダイマーとかトリマーとかついていくんですけれども、こういうものに対して、では
エストロゲン作用があるのかないのかということです。これはカップめんの業界がないんだというような新聞広告を出しましたけれども、オランダではあるんだとか、学説的にまだそこがきちんとした
作用が確認されていないと言われています。それと、果たして容器から溶出されるのかどうかということになりますと、温度が高くなると出てくるとか、あるいは油で抽出してやると出てくるとか非常に微妙なところでして、まだ確実にどれだけの量があったら危ないよとか、そういうことまではいっていないように思います。ただし、これもやはり危険性がわからない以上は何らかの措置をとらなければいけないのかもしれませんけれども、すぐにやめなければいけないとかというような代物ではなさそうに思います。
最後に1枚だけお話しします。これは例えば非常に怖いのは何でかといいますと、これが
DDTの調査の結果です。これは
環境庁で毎年調査をやっているんですけれども、1971年に
DDTは農業用では禁止されました。そのほかにちょっと使われていた経緯があるんですけれども、1971年ですから25年以上前にほとんど禁止されているんです。水の中でND、ノット・ディテクティド、全く検出されていないんですけれども、河川敷の底質の中に74年にも検出され、95年にもそれぐらいの量が出てきている。ミリグラムキログラムですからppmの単位です。それが魚の中にも非常に量が少ないんですけれども出てきているということで、こういう
DDTあるいは
ダイオキシンあるいは
PCB、そういう
化学物質の中でも分解のしにくい
化学物質についてはきちんとやはり目を光らせておかなくてはいけない問題だと思います。
それと、私たちの生活に非常に簡単に入ってきた
化学物質について、いついかなるときにどんな悪さをするかということが知られないままに入ってきてしまったということ、それについてはやはりきちんとそのリスクを管理しておかなければいけないのではなかろうかというのが今私たちの反省の中にあります。
それと同時に、もう一つリスクとベネフィットという関係がございまして、リスクをできるだけ小さくしていかなければいけないことは当然なんですけれども、我々の生活の中で一遍便利になってしまったものの利便性をどこまで認めることができるのか。リスクとベネフィットの関係は、その時代なりあるいはその人によって感じ方なり考え方が変わるかもしれませんけれども、リスク、ベネフィットの関係、リスク評価ということで、科学的にどこまでが許容できてどこまでが許容できないのかということ、こういうことに対しての教育を初め、もう少し
日本人はきちんとやらなければいけないのではないかというのが私たちの考え方です。
以上、今わかっていることあるいは
問題点になっていることあるいは各省庁の取り組み等を非常に簡単にお話しさせていただきました。そういうことで、非常にまとまらない話でしたけれども、一応の話とさせていただきたいと思います。
6:
◯委員長 ありがとうございました。
それでは、皆様から
参考人に御
質問等はありませんか。
7: ◯八島幸三委員 どうもありがとうございました。
二、三お伺いしたいんですけれども、一つは今
ダイオキシン類がもちろん
内分泌攪乱物質としてわかっていますし、大変大きな問題になっていますけれども、いずれそのほかの先生からきょうお話しいただいた67種類、ひょっとするともっとふえるかもしれませんけれども、こういったものが一定毒性が特定されて、それなりの対応が求められてはくると思うんですが、当面例えば
ダイオキシンなら
ダイオキシン類に限定したとしても、もう既にいろいろな形で例えば大気中の濃度についてはこれ以下でないとだめですよというような規制ができています。ただ具体的に国民感情からすれば、例えば母乳の問題だとか土壌の問題とかショッキングな
データも報告されておりますし、そういう意味からすると単に大気の問題だけではなくて、そういったところに非常に関心が強まっている。
一方、なかなかそういったところの基準が出てきていないものですから、私の印象では国もそうですけれども、全体的に地方も含めて大気以外の測定に対してはまだ基準がないからということで少し対応がおくれているのではないかなと思うんです。いずれその基準ができてくるとしても、事前の実態調査をしておくことが必要ではないかなと思っていますけれども、先生はその辺はどのようにお考えなのかをまず1点お伺いしたいと思います。
それから、この攪乱
物質が阻害
作用と促進
作用と両方があるということですけれども、もう一つ私が問題視するのは、さっき先生から話があったように、長期に体内に滞留するものも結構ある。その関係でちょっとくだらない質問なんですけれども、いずれにしろ
受容体とこういうものが結びついて──
ホルモン様
作用をするのかあるいは阻害
作用をするのかは別として、結びつくわけです。結びついた
内分泌攪乱物質はまたそのままいずれ体内に蓄積されるのかどうか、その辺の代謝というか、分解、そういったところの関連があるのかについても教えていただきたいと思います。
最後ですけれども、催奇性とか発がん性とか生殖異常とか、そういったところがどちらかというと注目を集めているんですが、一方では免疫毒性という問題もあるんだろうと思いますし、近年アトピーとか食物アレルギーとか、そういうアレルギー疾患が非常にふえてきている。一方では今度はもっともっと微量な問題で
化学物質過敏症なんていうものも出てきている。そういったような今の実態を考えると、場合によってはなかなか解明は難しいとしても、推測の域を出ないわけですけれども、ひょっとすると
かなり微量の
化学物質がそういったような働きをしている
可能性もあるのかなと思うわけですけれども、その辺のことについて先生のお考えをお伺いしたいと思います。
8:
◯上路雅子参考人 3番目はお医者さんの枠に入ってしまいますので、私はちょっときちんとした答えができないと思います。
まず一つ目の
ダイオキシンに関してですけれども、これは私たちの生活の中で体内に取り込む量の約95%は食品経由です。その食品経由の中で約6割が魚です。今
WHO、FAOが中心になりまして、1日当たり1ないし4ピコグラムパーキログラム、キログラム当たり1ないし4ピコグラムという形で基準値を厳しくしようということが行われています。
日本の
厚生省の基準値は10ピコグラムですから少し大きいわけです。これを1から4に検討し直そうではないかというような動きが出ているんですけれども、それが本当にできるのかどうか。
それと
日本の場合に非常に取り組みが遅くて一番問題になっているいわゆる処理場、焼却場からの大気への放出、
ダイオキシンの排出の95%以上が煙から出ているわけです。大体の移行からいってそれが土壌中に落ちていくんだと思うんです。では、その土壌中のものがどういう形で我々の体の中に入り込むのか、そこの基準値を定めなければいけないというので、土壌中にどれだけ落っこちた場合にそこが農
作用のいわゆる
農耕地に適しているのかどうか、その土を入れかえる必要があるのかどうか──ドイツなんか
かなり厳しいですけれども、そういう必要があるのかどうかということがまず1点とされています。これは
環境庁を中心にして検討がされているんですけれども、まず一つ大きな問題としまして、非常に
日本の
ダイオキシンの
研究がおくれていまして、作物に吸収するのかどうかということが──これは一般に土壌中から根を通していわゆる食べるところの部位までに移行するということはほとんどないと言われているわけです。作物にある
ダイオキシンというのは、いわゆる巻き上がり、土から巻き上がってそこに付着したり、あるいは大気から煙の中に入ってきたものが落ちてそこに付着して作物についていくと。そういうものについては比較的問題ないんだけれども、では牧畜、いわゆるミルクなんかには入ってこないのかという心配があります。私もこの前調べたら、北海道の帯広畜産大学の先生が出された
データというのが、このミルクの値はほぼヨーロッパと同じレベルなんです。1けたピコグラムパーグラム、pptのオーダーで、そういうところの心配はあるんですけれども、まだまだ十分ではないというので、
ダイオキシンが入っている土壌から作物にどういう形で移行するのかをきちんと調べようではないかというのを
環境庁でやり始めています。先ほどお示ししました来年度から走り出していく私どもの
研究の90課題の中にも20課題ほど
ダイオキシンの課題が入っているんです。それはやはり作物あるいは魚に入っていくのかどうかを確認しようではないかという
研究が入っています。
先ほどお話しされました実態調査をどれぐらいしなくてはいけないのかといいますと、やはり
日本にそういう作物への吸収試験とかの実態調査の
データがないがためにヨーロッパの
データを使わざるを得ないと。そうすると、一番厳しい
データ、一番危険率の高い
データを使う。そうすると、実態よりも濃度が高い状態のものを使ってしまう。実態よりも非常にきつい状態のものを使ってしまう。そこで自前の
データが必要ではないかということで、今
データをつけ始めたばかりです。ただし、ここについては今お話しいただきましたように、私たちが分析するから作物をくださいと言っていただいて、すぐにやれるものではないんです。というのは、それは私たちの分析の能力も非常に難しいものがあります。それと、これは非常に言いにくいことなんですけれども、実は去年私もお米の実態調査をやれと言われまして何カ所か集めたんですけれども、各市町村、各県レベルの地方自治体の協力が残念ながら得られないんです。それはやはりもし見つかってしまったときに、そこから出てしまったということになりますとできないということで、どうせやるんだったら全県一斉にやらなければいけない事業ということなものですから、そういう難しさがございます。そういうことで、もし実態調査をやっていただくという機運になれば、やはりやっていただくのが一番ではないかと思います。
ということで、
ダイオキシンについては非常に難しいと。だけれども、やらなければいけない問題だと思います。それと、今213ほどの
ダイオキシンがあって、それが対象になってやっていますけれども、今後
PCBも
ダイオキシンの中に入りますし、どんどん
ダイオキシンの数がふえていくわけですから、やはりそれなりの実態調査をやらなければいけない。あと、つい最近に
厚生省の食物の実態調査が出てきましたけれども、これは
日本の3カ所ぐらいの地域からいただいたサンプルですので、まだまだ全体をカバーしているものではないと思います。そういうことで実態調査は必要です。
それと、先ほどお話ししました塩素系の
化合物が蓄積するかどうか。一説によりますと、母乳の中の
ダイオキシン類というのはだんだん減っているということが言われています。1975年ぐらいをピークにいたしまして、だんだん減っているという
データが国内の
データとしてあります。ただし、先ほど一番最後に示しましたとおり、それがゼロになるということはほとんど不可能に近いのではないかと思います。その濃度がどの程度になったときに先ほどから言っている
内分泌攪乱作用を100%心配しなくていい濃度なのかどうか、それがまだわかっていないということですので、できる限り蓄積性の高いものについてはモニタリングを続けていかなければいけないのではないかと思います。
それと
化学物質の
過敏症、アトピー、これについてはもういろいろな意見がございまして、私も何とも──畜産関係なんかでもそういう
化学物質過敏症、アレルギーみたいなことをやられておりますので、何らかの
作用があると思います。ただし、では100%その
化学物質だけが原因なのかどうかということにはちょっと私も疑問があります。私はつい最近食物栄養学の
先生方とお話しする機会がありまして、それによりますと余りにも我々の食生活が満腹状態になり過ぎていると。そういうこと自体で腸の免疫機構が落ちているのではないかというような指摘もされましたので、必ずしも
化学物質だけではないように思います。
9: ◯岩崎武宏委員 二、三お伺いしたいんですけれども、先ほど先生から
OHPを使っての御説明がありましたし、いただいている資料の中にイングランドの河川のコイとかニジマスという生物について
内分泌攪乱作用というようなものが認められ、そしてそれは
ノニルフェノールの
可能性を否定できないというようなところがございました。私がお聞きしたいのは、
ノニルフェノールという
物質というのは私たちの生活の中のどんなものの中に含まれて、それが溶け出してこういう
物質が出てくるのか、それを教えていただきたいと思います。
2番目に、これはイングランドの河川ということでありますが、仙台市も汚水の排水処理等をして近海に放流をしているわけでありますけれども、この
ノニルフェノールというものが排水処理場の放流水の中に含まれているような記述でございます。そうなってきますと非常に心配が出てくるんですけれども、イングランドの話ではなくて、
日本において汚水の排水処理場の放流水の中からそういうような
物質が検出された例があるのかどうかということを2番目にお伺いしたいと思います。
それから3番目には、今そういう汚水を最終処理場で処理をして、安全だということでそれを近くの海に放流しているわけですが、その安全基準というのの中には現時点では恐らく
内分泌攪乱物質云々というような考慮はなされていないのではないかと思うんです。先ほどの御説明を聞きますと、先生は科学者ですから非常に厳密なお話だったかと思います。いろいろまだ
内分泌攪乱物質の
作用にしてもその他のことにしてもわからないところが非常にたくさんあって、
研究者が今日夜その解明に取り組んでいるということですが、そのあたりが解明されてこないと安全基準というものもつくり変えられないだろうと思います。今の安全基準で
内分泌攪乱物質の危険性とか疑いが指摘されている中で、現在毎日のように
かなりの量の放流水を近くの海に放流し、そこからとれる魚介類を私たちは食しているわけですけれども、そのあたりについては科学者としての先生はどんなふうにお考えになっておられるのか。
10:
◯上路雅子参考人 まず最初に
ノニルフェノールですけれども、これは界面活性剤です。例えば、洗剤の中の界面活性剤とか、あるいは
農薬なんかも界面活性剤が使われております。ですからいわゆるアルキルフェノール──ノニルというのは炭素が九つあるものですけれども、アルキルフェノールの中の
ノニルフェノールということで界面活性剤ということです。ですから、比較的一般的なものと思われます。
これが
日本の生活雑排水の中に入っているかどうかということになりますと、多分これは建設省と
環境庁がことし調査している最中だと思います。もうそろそろ
データが出てくると思います。ですから、そんなに難しい分析ではないと思います。多分ppbの単位で出てくると思います。それで、ではそういうものが安全基準としてどうかということですけれども、今生活の飲料水の関係で原水、浄水での安全基準というのは、どちらかというと発がん性あるい
催奇形性を中心とした安全基準の決め方です。それで特に最近また項目がふえましたけれども、
ノニルフェノールなんかは入っておりません。確かにそうです。先ほどお話ししましたとおり、
内分泌攪乱化合物というものが、超微量のこういう山がどこまでいって、この濃度だったら人間にとって危ない、いわゆる
哺乳動物にとって危ないよという閾値というものが出てきたら、多分基準値が決まるんだと思います。ただし、まだ超微量のところの基準が出ていないということ、わからないものですから決まっていないというところだと思います。
ですから、本来は決めて──しかし、私も科学者として、まだまだ明確でないにしてもそういう危険性があるものに対してきちんと対応しなければいけないという考えではあるんですけれども、ある一面では私も産業官庁の人間ですので、やはり行政の立場として、科学的な根拠はともかくとして、やはりそれをきちんと取り締まるということにはそれなりの基準、科学的な
データがなければ取り締まれるものではないと思います。ですから、疑いを持った以上すべてに網をかけるということが必ずしもいいのかどうかということには非常に難しいところがある。やはり先ほど一番最後にお話ししましたけれども、リスクとベネフィットの関係がございますので、どこまで危険があって、どこまでその危険を認めながら生活の利便性を求めていくのか。逆に言えば、どこまで利便性を落とすことができるのかどうか、あるいは科学的なそういう危険性というものを100%保証するならばやめてしまえばいいということになるんですけれども、それが果たしていいのかどうかというのは別な問題だと思います。そういうことで、大学の科学者と私の立場はちょっと違うものですから、そういうお答えをさせていただきたいと思います。
11: ◯青野登喜子委員 中身の
研究は
研究の専門家の方々にお任せしてやっていただきたいと思いますし、一日も早く
研究が進んであらゆることが解明されてほしいし、リスクに対しての規制の基準なども早く確立して、
環境とか人体が本当に安全に守られるような方向に進んでいただきたいと思うわけです。きょうお話を伺っていて、私たち地方政治の場にいる者として、地方自治体としてなすべきことは何なのかなということもあわせ考えていたんですけれども、地方議会ですと国に向けていろいろな意見書なども出していける機能も持っているわけなんですが、先ほどのお話の中で11年度の予算要求が既に出されておられるということでして、それがちゃんと要求どおりいくかどうかがこれからだということなんですけれども、国の
研究に対しての財政が本当に積極的に措置されていくということが何よりも大事なことではないかなと思うんです。7億円が先生のところで今必要な予算ということですけれども、考え方というのは国がこの枠内でやるということではなくて、必要なんだということで予算要求をされていくし、それを通していく必要があるだろうと思うんですけれども、その辺のところはどんなふうになっているものなのか。必要に応じては地方議会等で、地方自治体の中でその辺のところの物を言うような中身は何が求められているのか、その辺あたりもし御所見などありましたらお聞かせいただければなと思います。
12:
◯上路雅子参考人 今お話を聞いていますと、私たちの責任というのは非常に大きいんだということを改めて感じるんですけれども、確かにこの問題に関しましては、私たち
研究者サイドもさることながら行政サイドの方が非常に積極的に動きまして、私たちが二の足を踏むといったら非常につらいところがあるんですけれども、難しいところもあるわけです。例えば
ダイオキシンの仕事にしましても、これは
研究者の健康も考えなければいけないものですから、100%保証しながら
研究していかなければいけない。そうすると
かなり無理をしながら
研究をしていくというところもございます。ですけれども、やはれこれは行政の立場として絶対に必要なんだということがありまして、行政の方がすごいリードをしたということもあります。第一次補正予算も終わりましたし、今度第三次補正予算が大蔵省に出ると思うんですけれども、そこの中でも
かなりこの
環境ホルモンを意識した予算の立て方がされていると思います。ですから、非常にある面では
日本は出おくれはしましたけれども、国際的に言っても非常に燃え上がっているというか──冷めなければいいと思っているんですけれども、そういうふうに私たちも期待したいところですし、そうやらなければいけないと思います。
それと、非常に僣越な
言い方をさせていただきますと、地方自治体で非常に積極的にこういう
化学物質に対しての取り組みをされている場所もございます。むしろ国の
研究機関をリードするような
研究成果をおさめていただいているようなところもございます。それはやはりその自治体の特徴なのかなと思っておりますし、やはり問題が起きた段階よりも先に何らかの考え方が出されていかなければいけないのではないかと思います。例えば
ダイオキシンの問題は一番怖い問題ですけれども、
内分泌攪乱作用もございますし、この
化学物質については魚に非常にたくさん入っているわけです。そうすると魚の中にも近海魚が多いわけですから、そのモニタリングをするとかというような仕事もされていますし、そういうものが今度逆に
厚生省の基準値なんかに反映されていくのではないか──健康基準という形で魚をどれだけ食べたら危ないよとか、こういう魚のとり方はこうですよなんていうことにもなってしまうのかもしれません。確かに遠洋の魚は心配ないんですけれども、近海のイワシとかメヌケなんかが一番多いとかという調査結果もございますので、やはりそういう地域性なんかもあって調べていくということも必要なのかもしれません。
13: ◯郷湖健一委員 この
ダイオキシン、現在我々の生活にも切っても切り離せないような状態でかかわりを持っているということで、むしろその方のことで人間の心が攪乱するといいますか、要するに大変心配をするわけです。私の地区にもこれから焼却場が建設される予定になっているんですけれども、焼却場イコール
ダイオキシン、住民はそういう考え方を持っているのが多分でございます。ですから、焼却場をつくったら
ダイオキシンがばらまかれるんだと、住民の方々の心の中の根底にはそういうものが潜在していると。ですから、だめですよという反対運動が起きる。この辺をはっきりしていただかないと、例えば
ダイオキシンというのは猛毒だということはだれでもわかっています。しかしながら、その中でこれだけ摂取すれば人間の人体に大きな
影響があって、生命の存続も危ぶまれるという基準が、焼却場については何ppmと基準がありますよね。そういうことで、そうすると何かこの世に生存できなくなるような錯覚すら覚える国民、市民が多いわけです。ですから、子供を持ったら哺乳瓶を使わないで何を使ったらいいのか、そういうことで非常に心が攪乱するといいますか。ですから、そういうことできちんとした基準をやっぱり早くに設けまして、ここまでは許容範囲だと、これ以上はだめだよというようなことを──余りにもマスコミに左右されまして、むしろ反対に人間の心の方が攪乱されているというような状況でございます。その辺の指針を早くに関係機関あるいは学者の
先生方に整備してもらうといいなと思うんですけれども、先生はどうでしょうか。
14:
◯上路雅子参考人 ごもっともだと思います。基準値に関しましては、今
環境庁、
厚生省で
ダイオキシンについてやっておりますし、いろいろな形で基準値づくりを始めなければいけないということです。ただ先ほど一番初めにお話しされました焼却炉に関しましては、今排出される
ダイオキシンの90何%は確かに焼却炉でございます。ただし、今焼却炉の炉の構造なりによってほとんど100%近く、すべてゼロということは言えませんけれども、もう100%近くカットされるはずです。やはりそういう新しいシステムの焼却炉が設置されていかなければいけないと思いますし、それと一番大切なのはごみの分別、そういう基本的なところから
皆さん方の協力を、私たちも含めて市民の協力を得なければいけないのではないかと思います。
一般に今800度以上と言われていますけれども、800度以上になれば
ダイオキシンの発生がほとんどないと。学問的に言いますと1,200度になると──1,200度でもできる場合もあるというような
言い方もされますけれども、ほとんどの場合は800度で大丈夫だということ。それと、24時間操業をずっと続けるというような形で温度を下げないとか、いろいろな焼却場の設置について方法が考えられていますので、そういう方で周辺住民への協力を得ていくよりほかないのではないか。といいますのは、私どもの方も実は
ダイオキシンの施設がことし今度の予算で通りそうなんです。これはやっぱり住民説明をしなければいけないものですから、そのときに実験施設として
ダイオキシンを排出しないんだと言い切れるだけの施設をつくらなければいけないわけです。そういうことでやはり同じようなことが起きてきていますので、やはりきちんとしたもので対応していかなければいけないのではないかと思います。
基準値については、国としてやらなくてはいけない大きな問題だと思います。
15: ◯菅原敏秋委員 私はよくわからないんだけれども、十分に
研究はしていかなければならないと思うんですが、先生のところは
農水省、それから
厚生省とか
環境庁とか。
環境の先進都市というのは、
環境局がありきなんですよね。
環境局が最終決定をすると。ですから、例えば焼却炉をつくるにしても、建物をつくるにしても、木の伐採にしても、道路をつくるにしても、最終的には
環境局がその認可をおろすというような制度の確立がなされているわけです。
日本の場合には全然制度の確立がなされていないで、個々の言い分の予算をもらって調査
研究をして、いろいろな形でやっているわけです。その辺のことをきちんと省庁の再編とか、新しいものを本当に確立しなければ、ヨーロッパの一部だけを資料として参考にしたのでは私は始まらないと思うんです。
ドイツに行ってもびっくりしたのは、仙台市ですと例えば都市整備局が最終的に建築確認をおろすようなものも
環境局が最終的な許可をおろすとか、そのために
化学産業というのがドイツからもう全部逃げ出していっている部分もあるわけです。ですから、やっぱりそういう国の省庁の決定機関みたいなものを抜本的に変えないと、私は個々に
研究されても矛盾だけが発生してきて、なかなか世界のリーダーになっていけないような気がするんです。
16:
◯上路雅子参考人 確かにごもっともです。これは行政改革のこともありますので、非常に頭が痛い。それで、
厚生省あるいは
環境庁、
農水省といろいろな部門でそれぞれの仕事をやっています。先ほど示しました
研究の上から言いますと、科学技術庁が非常に各省庁を取りまとめた形の
環境ホルモンに関するプロジェクトをやろうとして動いていますし、連携が進んでいるということ。それと、いろいろな先ほど来話している基準を決めるとか、そのときの専門
委員会の中には例えば
環境庁の
ダイオキシンに関する専門
委員会だったら
厚生省も
農水省も全部入っているというような横の連絡の取り合いは常にやって、意見交換しながら進んでいると。もちろんその出身母体のそれぞれの得意分野がございますので、やはりそれなりの
言い方はあるんですけれども、ほかの省庁との意見を交換しながらというふうに進んでいます。ただし、先ほどのお話にありましたような一つのものに対して1カ所の大きなくくりの中で──確かにこの
環境ホルモンについては連絡会と称して各省庁の話し合いが進んでいます。そこの中で、特に
研究者のレベルは
研究者のレベルで別なんですけれども、行政の方は行政の方で連絡会、そこに必要に応じて
研究者が入っていくというような体制をとっているんですけれども、なかなか御指摘のように見えない部分もあるかと思います。まだまだドイツなんかと比べますと甘いということは御指摘のとおりだと思います。
やっぱり基準というものと、先ほどからお話ししている私の方の産業官庁としての立場という、そこら辺が一番苦しいところではないかと思います。
17: ◯田中芳久委員 先ほどの各省庁の方のことに関して伺いたいんですけれども、
研究がいろいろ出ていますよね。一つ足りないなと思ったのは、社会学的な視点が全く欠けているのではないかなという気がしました。それに対してどういうふうなことを考えていらっしゃるか。もしくは、それに対しての何らかの予算が出ているのであれば教えていただきたい。
あともう一つは、
環境ホルモンというのはもう既に現実地球上すべてにあるわけですよね。それがどの程度あるかとか、人体に対してどういう
影響があるかという勉強も非常に大事だと思うんですけれども、先ほど一部でちょっと出ていましたけれども、代謝によってどういうふうにして
環境ホルモンを分解していくかといったような対策、対応策といったような視点も少し欠けているのかなという印象を持ちましたので、その辺について教えてください。
18:
◯上路雅子参考人 社会システムに関しましては、いわゆる経済効果も含めて社会科学的な分野に対する
研究が進んでいるのかどうか、これはゼロではないと思いますけれども、私の目には余り入ってこないというところだと思います。こういう
化学物質のリスクアセスメント、そういう
研究が一番最後に出なければいけないはずなんです。ですから、当然これは最終的な出口として
研究課題があると思います。私がちょっと見逃しているのかもしれません。もし取り上げていなかったら済みません。そういうことで、それに関してはちょっと私自身は見落としています。
それともう一つ対応策、これはバイオリメデーションといいまして、一番簡単なのが──簡単というのは、一番
研究がされているのは、
微生物によってものを分解していくという働きがあります。それが
農水省で行われている例えば長期間残留するようなものを
微生物的に土壌中にそういう
微生物を──それも土壌中に
微生物をまた入れるんですから、そこで
環境に対する負荷ということもあるんですけれども、そういうことを考えながら適用できる技術をつくろうではないかというのが一つあります。
それともう一つ、これは通産省関係がやっている仕事ですけれども、特に
ダイオキシン関係は灰を、フライアッシュを1カ所に集めてこれを何らかの形で燃やそうと、1,600度以上の高温で燃やそうという技術を今確立しようということで
研究が進んでいますので、多分そういう形ができると思います。ただ、非常に超微量に地球
環境中にばらまかれてしまったものを集めるということはほとんど不可能に近いものですから、今からできるということは難しいと。ただ、先ほど来お話しされている焼却炉の灰を集めておいて、それを何らかの形で処理する、これは可能だと思います。
19: ◯田中芳久委員 それも大事なんですけれども、私のニュアンスとしてはもうちょっと違って、今大体
環境ホルモンというのは基本的に
受容体が受け取ってしまうためにほとんどの障害というのが起きていますよね。例えば
受容体に対して何らかの対応策を考えてあげるというような方法論というのは、今まだ考えていないんでしょうかということです。