四日市市議会 2014-02-01
平成26年2月定例月議会〔附録〕
検索結果へ戻る 検索をやり直す (このウィンドウを閉じます) 使い方の説明 (新しいウィンドウで開きます) 平成26年2月定例月議会〔附録〕 2014-03-25 文書・発言の移動 発言 前へ 次へ ヒット発言 前へ 次へ 文字サイズ・別
画面表示ツール 文字サイズ 大きく 標準 小さく ツール 印刷用ページ(新しいウィンドウで開きます) 別窓表示(新しいウィンドウで開きます) ダウンロード 表ズレ修正
表示形式切り替え 発言の単文・選択・全文表示を切り替え 単文表示 選択表示 全文表示 発言者の
表示切り替え 全 11 発言 / ヒット 0 発言 すべての発言・ヒット発言の
表示切り替え すべての発言 ヒット発言 選択表示を実行・チェックの一括変更 選択表示 すべて選択 すべて解除 発言者一覧 選択 1 : 議会日程 選択 2 :
議会運営委員会決定事項 選択 3 :
議決事件一覧表 選択 4 :
代表質問通告一覧表 選択 5 :
一般質問通告一覧表 選択 6 :
議案質疑通告一覧表 選択 7 :
付託議案一覧表 選択 8 : 新聞の軽減税率に関する意見書 選択 9 : 北朝鮮による日本人拉致問題の早期解決を求める意見書 選択 10 : 常任委員会の
所管事務調査報告について 選択 11 :
決算常任委員会調査報告書添付資料 ↑ 発言者の先頭へ 本文 ↓ 最初のヒットへ (全 0 ヒット) 1: 平成26年2月定例月議会日程
2月 12日(水) 午前10時開議
議案説明
報告、質疑
13日(木) ┐
14日(金) │
15日(
土) ├ 休 会
16日(日) │
17日(月) │
18日(火) ┘
19日(水) 午前10時開議
代表質問
20日(木) 午前10時開議
一般質問
21日(金) 午前10時開議
一般質問
22日(
土) ┬ 休 会
23日(日) ┘
24日(月) 午前10時開議
一般質問
│議案第185号 四日市市
消防関係手数料条例の一部改正について
│原案可決│
│議案第186号 四日市市水道事業及び下水道事業の設置及び経営の基本に関する条例の一部改正に
│ │
│ ついて
│原案可決│
│議案第187号
市立四日市病院事業の設置及び経営の基本に関する条例の一部改正について
│原案可決│
│議案第188号 工事請負契約の締結について
-「市立博物館」及び「(仮称)四日市公害と環境未
│ │
│ 来館」
施設改修工事- │原案可決│
│議案第189号 契約の締結について
-「市立博物館」及び「(仮称)四日市公害と環境未来館」展
│ │
│ 示造作等業務委託- │原案可決│
│議案第190号 四日市市及び桑名市消防通信指令事務協議会を組織する普通地方公共団体の増加及
│ │
│ び四日市市及び桑名市消防通信指令事務協議会規約の変更に関する協議について
│原案可決│
│議案第191号 市道路線の認定について
│原案可決│
│議案第192号 平成25年度四日市市一般会計補正予算(第5号)
│原案可決│
│議案第193号 平成25年度四日市市国民健康保険特別会計補正予算(第2号)
│原案可決│
│議案第194号 平成25年度四日市市食肉センター食肉市場特別会計補正予算(第2号)
│原案可決│
│議案第195号 平成25年度四日市市土地区画整理事業特別会計補正予算(第1号)
│原案可決│
│議案第196号 平成25年度四日市市農業集落排水事業特別会計補正予算(第1号)
│原案可決│
│議案第197号 平成25年度四日市市介護保険特別会計補正予算(第2号)
│原案可決│
│議案第198号 平成25年度四日市市後期高齢者医療特別会計補正予算(第1号)
│原案可決│
│議案第199号 平成25年度
市立四日市病院事業会計第2回補正予算
│原案可決│
│議案第200号 平成25年度四日市市下水道事業会計第2回補正予算
│原案可決│
│議案第201号 平成26年度四日市市一般会計補正予算(第1号)
│原案可決│
│議案第202号 平成26年度四日市市国民健康保険特別会計補正予算(第1号)
│原案可決│
│議案第203号 四日市市国民健康保険条例の一部改正について
│原案可決│
│議案第204号 四日市市税条例の一部改正について
│原案可決│
│議案第205号 固定資産評価審査委員会委員の選任について │同 意│
│議案第206号 人権擁護委員の推薦について │同 意│
└────────────────────────────────────────────┴────┘
[議員提出議案]( 3件)
┌────────────────────────────────────────────┬────┐
│ 議案名 │議決結果│
├────────────────────────────────────────────┼────┤
│発議第 13号 新聞の軽減税率に関する意見書の提出について
│原案可決│
│発議第 14号 北朝鮮による日本人拉致問題の早期解決を求める意見書の提出について
│原案可決│
│発議第 15号 議決事件に該当しない契約についての報告に関する条例の一部改正について
│原案可決│
└────────────────────────────────────────────┴────┘
4: 平成26年2月定例月議会
代表質問通告一覧表
発言順序 氏名 会派 発言時間
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
代表質問
01 伊藤修一 公明党 60分
1.市長の所信表明と平成26年度当初予算について
02 三平一良 市民会議 60分
1.市長の所信表明と平成26年度当初予算について
03 杉浦 貴 創四会 60分
1.市長の所信表明と平成26年度当初予算について
04 川村幸康 政友クラブ 60分
1.市長の所信表明と平成26年度当初予算について
05 中森愼二 リベラル21 60分
1.市長の所信表明と平成26年度当初予算に関連して
5: 平成26年2月定例月議会
一般質問通告一覧表
発言順序 氏名 会派 発言時間
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一般質問
01 芳野正英 リベラル21 60分
1.四日市市の防災対策について
(1)「夕焼け小焼け」の聴こえる街
~防災行政無線の定時放送を実施せよ~
(2)保護者と高める防災意識
~学校等の引き渡し訓練の充実を図れ~
(3)防災活動の残された課題
~企業防災の意識を促進せよ~
2.「障害者優先調達推進法」施行1年目の実績について
3.「地域活動費」でPDCAサイクルを回せ!
02 村山繁生 リベラル21 30分
1.医療費削減:国民健康保険の負担軽減に向けての保険事業
(1)生活習慣病重症化予防(人工透析への移行を防ぐ)
(2)本気のジェネリック促進
(3)重複受診、頻回受診に対する指導
03 諸岡 覚 リベラル21 45分
1.朝鮮学校補助金の是非を問う
04 森 智広 リベラル21 45分
1.健康で生きられる四日市をつくる
(1)予防接種の考え方
(2)ABCリスク検診への支援
(3)医療改革を財政改革に繋げよ
2.スポーツ行政~子ども達に希望を~
(1)トップアスリート育成強化について
3.まだ終わっていない「内部・八王子線存続問題」
05 野呂泰治 リベラル21 60分
1.四日市市の農業の方向性について
(1)自立農業経営者(担い手)
(2)農地中間管理機構(農地バンク)
(3)農協、農業委員会
2.人口減少(少子高齢化)に伴う諸課題
(1)まちの将来ビジョンについて
(2)教育エリア(学校区)
(3)行政エリア
(4)都市計画マスタープラン(防災含む)
06 毛利彰男 リベラル21 60分
1.コンビナート災害の危険予知と未然防止
2.緑化推進条例の機能遂行を
3.当市における出生前検査の現状と対応
07 山本里香 無会派(日本共産党) 40分
1.デリバリー給食費と校外学習費の問題点
2.後期高齢者医療保険料は上がるの?
08 加藤清助 無会派(日本共産党) 40分
1.産業廃棄物・フェロシルトはどこへ行った
2.中小企業振興条例で地域をつくる
09 石川勝彦 無会派 60分
1.超高齢社会への広義の「福祉行政」について
(1)保健、医療、福祉の連携
(2)地域福祉の充実
(3)生活拠点の整備(コンパクトエリア)
(4)移動手段(福祉交通等)の対応
(5)健康高齢者の支援
10 豊田政典 政友クラブ 60分
1.「地域自治の未来のために」VOL.5
~市と“地域”との、哲学無き相互依存関係を超えて
(1)個別事業と具体事例から見えてくる、現状の課題
(2)市役所と“地域”との関係性についての、問題提起あるいは改革案
11 川村高司 政友クラブ 60分
田中俊行四日市市長による行政運営の体質を問う
1.平成26年市長の所信表明について
(1)「市民要望に心を砕き、市政の実績・成果を軽視する」ことによる弊害
2.四日市市の予算編成について
(1)「監査委員の審査意見を十分に踏まえ、過去からの経緯にとらわれず、
ゼロベースで見直しを行い、責任を持って予算要求を行うものとする」
とは、どういうことか
12 伊藤嗣也 政友クラブ 60分
1.~鹿化川から中核市や総合行政を問う~
(1)不法投棄を解決し、環境を守る
(2)土砂災害を防ぎ、環境を守る
13 小川政人 政友クラブ 60分
1.東海豪雨十四川水害原因と裁判所の判断について
(1)十四川はネック点で通過した水量でその上流で溢れるのか
(2)裁判所はネック点で溢れたと判断したが正しいのか
(3)裁判所は十四川の流域に北消防署で降った雨で検証書作成したのは合理
的と判断したが、本当に流域で北消防署で降った雨が降ったと考えるの
か
(4)通常は川の水位は潮位と同じになるが、十四川は一番下流にボックスが
あり、潮位がボックスの天端より高いときにはネック点で溢れなくても
ボックスの手前で溢れるならボックスがネック点となるが、二度と同じ
ことを繰り返さないためボックスを改修すべき
(5)十四川のネック点は改修計画済みのJRより上流の流量の1/2能力の流
量で溢れる。そのネック点で溢れなかったのに本当に十四川の流域で裁
判所の言う本件豪雨は予想外の猛烈なものと言えるのか、計画の1/2流
下能力でも溢れなかった理由は
(6)二度と同じことを繰り返さないためネック点より能力の低いポンプ能力
を増強すべきかポンプ能力にあった調整池を作るべきと考えるがいかが
か
14 笹岡秀太郎 政友クラブ 60分
1.改正動物愛護管理法から
2.四日市の食文化について
15 石川善己 創四会 60分
1.本市のバス交通について
2.子どもたちにとって本当に良い教育環境とは
16 荒木美幸 公明党 50分
1.安心して子どもを産める四日市市を目指して
(1)「不育症」の周知と啓発~その進捗状況~
(2)「不育症」患者が社会に望むこと
(3)「男性不妊症」について
(4)公費助成について
2.「顧客志向」の行政の実現~市政アンケートより~
(1)市役所の接遇状況と本年度の取り組みについて
(2)外部調査機関の活用について
(3)「市民窓口サービスセンター」の接遇
(4)患者満足のために~病院におけるホスピタリティ~
17 樋口博己 公明党 40分
1.災害に強いまちづくりを目指して
~「国土強靭化地域計画」の策定~
2.「おもてなし」の観光施設整備
(1)案内表示
(2)駐車スペースの確保
(3)トイレの確保
18 山口智也 公明党 60分
1.健康づくりの推進について
~健康マイレージ制度の活用~
2.高齢者の見守りネットワーク強化を
(1)認知症の方の徘徊見守り、SOSネットワークの再構築、強化
(2)詐欺被害への対策強化
3.母子保健の支援体制について
6: 平成26年2月定例月議会
議案質疑通告一覧表
発言順序 氏名 会派 発言時間
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
議案質疑
01 小川政人 政友クラブ 30分
1.議案第166号 平成26年度四日市市
一般会計予算
2.議案第181号
三重北勢健康増進センター条例の一部改正について
7:
付託議案一覧表
○
予算常任委員会
議案第166号 平成26年度四日市市
一般会計予算
議案第167号 平成26年度四日市市
競輪事業特別会計予算
議案第168号 平成26年度四日市市
国民健康保険特別会計予算
議案第169号 平成26年度四日市市
食肉センター食肉市場特別会計予算
議案第170号 平成26年度四日市市
土地区画整理事業特別会計予算
議案第171号 平成26年度四日市市
住宅新築資金等貸付事業特別会計予算
議案第172号 平成26年度四日市市
公共用地取得事業特別会計予算
議案第173号 平成26年度四日市市
農業集落排水事業特別会計予算
議案第174号 平成26年度四日市市
介護保険特別会計予算
議案第175号 平成26年度四日市市
後期高齢者医療特別会計予算
議案第176号 平成26年度四日市市
水道事業会計予算
議案第177号 平成26年度
市立四日市病院事業会計予算
議案第178号 平成26年度四日市市
下水道事業会計予算
議案第179号 平成26年度四日市市桜財産区予算
議案第192号 平成25年度四日市市一般会計補正予算(第5号)
議案第193号 平成25年度四日市市国民健康保険特別会計補正予算(第2号)
議案第194号 平成25年度四日市市食肉センター食肉市場特別会計補正予算(第2号)
議案第195号 平成25年度四日市市土地区画整理事業特別会計補正予算(第1号)
議案第196号 平成25年度四日市市農業集落排水事業特別会計補正予算(第1号)
議案第197号 平成25年度四日市市介護保険特別会計補正予算(第2号)
議案第198号 平成25年度四日市市後期高齢者医療特別会計補正予算(第1号)
議案第199号 平成25年度
市立四日市病院事業会計第2回補正予算
議案第200号 平成25年度四日市市下水道事業会計第2回補正予算
議案第201号 平成26年度四日市市一般会計補正予算(第1号)
議案第202号 平成26年度四日市市国民健康保険特別会計補正予算(第1号)
○
総務常任委員会
議案第180号 四日市市事務分掌条例の一部改正について
議案第184号 四日市市消防長及び消防署長の資格を定める条例の制定について
議案第185号 四日市市
消防関係手数料条例の一部改正について
議案第190号 四日市市及び桑名市消防通信指令事務協議会を組織する普通地方公共団体の増加及び
四日市市及び桑名市消防通信指令事務協議会規約の変更に関する協議について
議案第204号 四日市市税条例の一部改正について
○
教育民生常任委員会
議案第181号
三重北勢健康増進センター条例の一部改正について
議案第182号 四日市市
青少年問題協議会条例の一部改正について
議案第183号 四日市市子どもの医療費の助成に関する条例の一部改正について
議案第203号 四日市市国民健康保険条例の一部改正について
○ 産業生活常任委員会
議案第187号
市立四日市病院事業の設置及び経営の基本に関する条例の一部改正について
○ 都市・
環境常任委員会
議案第186号 四日市市水道事業及び下水道事業の設置及び経営の基本に関する条例の一部改正について
議案第188号 工事請負契約の締結について
-「市立博物館」及び「(仮称)四日市公害と環境未来館」施設改修工事-
議案第189号 契約の締結について
-「市立博物館」及び「(仮称)四日市公害と環境未来館」展
示造作等業務委託-
議案第191号 市道路線の認定について
8: 新聞の軽減税率に関する意見書
新聞販売店は、「国民の知的インフラとしての新聞を毎朝届けることで国力の維持
に貢献している」という誇りを持ち、戸別宅配制度を維持することで、国民の政治的・
社会的関心を喚起し続けることが使命と考えて日々の仕事に取り組んでいます。
政府は景気回復に向けて積極的政策を展開中ですが、国民の所得が順調にふえる保
証はありません。4月に予定されている消費税増税によって各家庭の経済的負担が増
せば、民主主義を支える社会的基盤である新聞の購読を中止する家庭がふえることを
懸念します。
そうなれば国民の知的レベルや社会への関心が低下することにより、日本の将来が
危ういものになるでしょう。特に社会的・経済的弱者にその傾向が出た場合は格差が
拡大し、社会的不安を招きます。
また、新聞販売店の経営が大幅に悪化すれば、全国36万人超の販売店スタッフの雇
用の場が失われる可能性があります。
政府は「消費税アップに例外はつくりたくない」と考えているようですが、多くの
国では品目別の複数税率が導入されています。そして民主主義という観点での先進国
では、以前より新聞・書籍等に軽減税率を適用しています。
政府には下記事項の実現を強く要望します。
記
1.消費税増税にあたり複数税率を導入すること。
2.新聞への軽減税率を適用すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成26年3月25日
四日市市議会
議長 土 井 数 馬
関係省庁宛
(内閣総理大臣、財務大臣)
9: 北朝鮮による日本人拉致問題の早期解決を求める意見書
1970年ごろから1980年ごろにかけて、北朝鮮による日本人の拉致が多発し、現在17
名が政府によって拉致被害者として認定されています。
平成14年9月に北朝鮮は日本人の拉致を認め、同年10月に5名の拉致被害者の帰国
が実現したものの、他の拉致被害者については、いまだ北朝鮮から納得のいく説明が
なされていない憂慮すべき状況にあります。
日朝の政府間協議は、拉致被害者の再調査に合意した平成20年8月の日朝実務者協
議以来途絶えており、北朝鮮は合意した拉致被害者の再調査を履行していません。
日本人拉致事件が発生してから30年以上が経過し、拉致被害者及びその家族の高齢
化が進む中、一日も早く拉致被害者が帰国することを願っている家族の心情を考える
と、拉致問題の解決は、もはや一刻の猶予も許されません。
よって、国において、北朝鮮に拉致された日本人全員の一日も早い帰国を実現する
ため、国際社会と協調して下記の事項の実現について取り組まれるよう、強く要望い
たします。
記
1.世界中の国々に対し、未帰国の政府認定拉致被害者及び拉致の可能性を排除でき
ない多くの失踪者の情報を提供するとともに、拉致問題の全容を正確に伝えること。
特に、北朝鮮に公館を持つ国に対しては、当該拉致被害者及びその家族の救出及び
安全確保に協力するよう早急に依頼すること。
2.国連決議の場においては、国連内部に北朝鮮の拉致問題を含めた人権侵害の調査
を行う特別調査委員会(事実調査委員会)の設置について、例年採択されている国
連総会での北朝鮮非難決議の中に盛り込むことができるよう、全ての国連加盟国に
対して積極的かつ早急に働きかけること。
3.全ての拉致被害者の救出及び安全確保は国政の最重要課題の一つと考える。今後、
あらゆる手段を用いて拉致被害者の所在及び安否確認を行うとともに、拉致被害者
の救出のために必要なあらゆる法整備を早急に進めること。
4.全ての拉致被害者を早急に救出するため、北朝鮮への送金停止と人の往来の停止
を断行するとともに、全ての直接的・間接的経済支援を中止し、米国等に金融制裁
の強化を促すことを求めること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成26年3月25日
四日市市議会
議長 土 井 数 馬
関係省庁宛
(衆・参両議院議長、内閣総理大臣、外務大臣、防衛大臣、法務大臣)
10: 常任委員会の
所管事務調査報告について
常任委員会の所管事務調査について、別紙のとおり報告します。
平成26年3月25日
産業生活常任委員長 加 藤 清 助
決算常任委員長 諸 岡 覚
四日市市議会
議長 土 井 数 馬 様
─────────────────────────────────────────
産業生活常任委員会
○多文化共生について
1.はじめに
本市における外国人の住民登録者数は、平成25年12月末現在で7,646人であり、リーマンショック以降減
少傾向にあるものの、市全体の人口に占める割合は2.4%と全国平均の1.6%よりも高くなっており、帰国
しない外国人市民による定住化が進行しています。
このような流れを受けて、平成25年11月定例月議会においては、現在、指定管理者が管理している四日
市市国際共生サロンについて、今後、日本語教室の充実や外国人市民の地域活動への参加等が今まで以上
に必要になるとの理由から、市が直営管理するよう条例を改正する議案が上程され、市議会として可決し
たところです。
このように、外国人市民の定住化が進めば、日本人市民と同じく、地域の構成員として共生していくた
めの施策や子供への教育など、今後、さまざまな施策を実施していく必要があると考えられることから、
本委員会としても再度、多文化共生を所管事務調査として取り上げることで、現状確認や課題の整理を行
うこととしました。
2.多文化共生の基本的な考え方
平成16年3月に「四日市市国際共生推進プラン」を策定後、総務省のガイドラインを基に本市の実情を
踏まえ、平成22年5月に「四日市市多文化共生推進プラン」を新たに策定。
○基本理念…国籍や民族、文化のちがいを豊かさとして生かし、すべての人が互いに認め合い、尊重し
合って四日市市民として共に支え合って暮らせる社会を実現する。
○基本の柱…I.多文化共生の地域づくり
II.コミュニケーションにかかわる支援
III.生活にかかわる支援
IV.共生推進のための体制整備
3.モデル地区について
(1)予算額(単位:千円) <H23:6,184 H24:7,047 H25:6,709>
(2)モデル地区における課題
1)集合住宅に居住する外国人市民は子育て中の若い世代が多く、一方、以前から居住している日本
人市民は高齢化が進んでおり、互いに交流を深めるとともに、住民同士が地域の対等な構成員と
して地域づくりに参画していく必要がある。
2)笹川で育った外国人の子供が将来地域社会の一員として活躍できるような環境づくりが必要で
ある。
(3)内容
I.多文化共生の地域づくり
1)外国人市民向け防災セミナーの開催等による「共助」についての理解促進
2)外国人リーダーの発掘、養成
3)ふれあい講座の開催等による地域活動や地域事業への参加促進
4)住民交流のための拠点施設の整備
II.コミュニケーションにかかわる支援
1)簡単な日本語の活用による通訳を介さないコミュニケーションの促進
2)日本語教室等の開催による日本語学習意欲の高揚と学習支援
III.生活にかかわる支援
1)就学前および学齢期の子供への取り組み
IV.共生推進のための体制整備
1)モデル地区地域関係者と行政等関係機関との推進会議の設置
(4)モデル地区における取り組みの今後の方向性
外国人市民の定住化に伴い、外国人市民と日本人市民がともに防災、防犯、環境などの地域活動
を担えるよう、多文化共生に係る課題について、地元自治会や関係団体等と調整を図りながら、モ
デル地区事業を推進していく。そのために、平成26年度から多文化共生サロンに名称変更して市
の直営とし、現場管理者や多文化共生モデル地区担当コーディネーター等を直接サロンに配置して、
より地域に身近な場所で柔軟な対応を図っていく。
4.全市的な取り組みについて
(1)予算額(単位:千円) <H23:7,097 H24:7,459 H25:7,753>
(2)課題
1)コミュニケーションの問題とともに、分散して住んでいることから、それぞれ住んでいる地域に
おいて、地域社会づくりに参画し、日本人市民とのつながりを持つことが必要である。
2)多言語、多国籍の外国人市民に行政やその他生活上必要なサービス等の情報を提供し、適正にサ
ービスが受けられるようにする必要がある。
(3)内容
I.多文化共生の地域づくり
1)国際交流センターの文化理解講座等による互いの文化の理解促進
2)市民懇談会を開催し、外国人市民や関係団体等から意見聴取
3)防災セミナー等の実施による外国人市民コミュニティーとの連携
II.コミュニケーションにかかわる支援
1)窓口や通知案内文書等の通訳・翻訳対応
2)外国人市民向け生活オリエンテーション等による多言語化情報の提供
3)行政窓口において、わかりやすい日本語で対応
4)国際交流センターや市民ボランティア団体による日本語教室の開催
5)日本語ボランティア研修の実施
6)地域社会への参画を促進するための企業内日本語研修支援
III.生活にかかわる支援
1)初期適応指導教室「いずみ」等による外国人の子供への教育の対応
2)市内の高校における外国人枠設置の要望
3)外国人世帯など特別な配慮を要する人の住まいの確保等住宅に係る支援
IV.共生推進のための体制整備
1)四日市市多文化共生推進本部の開催による庁内での横断的な連携
2)外国人集住都市会議への参加による外国人が集住する他都市との連携
(4)全市的な取り組みの今後の方向性
外国人市民に行政やその他生活上必要なサービスの情報を提供するため、窓口でのポルトガル
語・スペイン語による通訳対応や、行政からの通知・案内文書の多言語による翻訳、またポルトガ
ル語で説明する生活オリエンテーションの実施に加え、新たに外国人市民の核となるグループ(外
国人市民コミュニティー)との連携により、情報提供などネットワークづくりに取り組む。
さらに、各日本語教室において、外国人市民の日本語習得レベルを把握し、レベルに応じた学習
支援ができるよう、日本語学習支援のためのしくみづくりを進めていく。
5.委員からの主な意見
・外国人市民と共生していくためには、外国人市民の文化を日本人市民が理解できるように促す取り組み
が必要であり、外国人市民が主体となって企画するイベント等の実施も考えるべきである。
・外国人市民の文化や生活様式の違いについては、現地を視察しなければわからないことが多々あること
から、今後は市職員による海外視察を検討すべきであり、また、海外出張の多い民間企業の知恵を借りる
といったことも有効であると考える。
・日本語を習得した外国人市民に、日本語教室等の講師になってもらうような取り組みも効果的であると
考える。
・外国人市民に日本語をマスターしてもらう取り組みとあわせて、日本人市民が外国語を覚える努力も必
要であり、そのような取り組みを市として実施すべきである。
・市内には50カ国を超える多言語・多国籍の外国人市民が居住していることから、各国の言語を話せる職
員の育成も必要であると考える。
・外国人の子供への教育については、高等学校へ進学できる能力を身につけられるよう指導していくべき
であり、学校側も受け入れ人数の規模を拡大するなど、より具体的な施策を推進していく必要があると考
える。また、進学できない外国人の子供についても、就職の支援を行うなどの施策を実施すべきであると
考える。
・高校に進学した外国人の子供の卒業率や就職率等については的確に把握すべきであり、把握した上で、
支援できる体制づくりを目指すべきである。
・日本語研修などを実施する企業に対して報告書を提出させた上で補助金を出す等の施策も効果的である
と考えられることから、今後、企業側との協議が必要である。
・外国人市民が特定の地域に集中して居住してしまうと日本語に触れる機会が少なくなることから、ある
程度住居者の人数に規制をかけるなど、日本語により多く触れられる機会の確保に努めるべきであると考
える。
・外国人市民の母国との連携についても検討していく必要があると考える。
6.まとめ
日本では、1980年代以降の経済の拡大に伴って外国人の流入が増加しました。特に1989年に出入国管理
法が改正されたことにより、日系南米人を中心とするいわゆるニューカマーを迎えることとなり、多文化
社会への対応の必要性が加速しています。
多文化共生に係る事業については、外国人市民の規模や国籍の数、また、居住地区が集中しているかな
ど、外国人市民を抱える自治体によって状況は異なりますが、本市においては、全市的に外国人市民が居
住しており、かつ市内笹川地区に居住が集中していることが特徴であると言えます。また、リーマンショ
ック以降、外国人市民の人口は減少傾向にあるものの定住化が進行しており、外国人市民が日本人市民と
同じく地域活動へ参画していくことや教育の機会の確保が求められています。
行政としてもこれらの課題は認識しており、来年度より四日市市国際共生サロンを直営に戻すなど、よ
り外国人市民に身近な立場で施策を推進していこうとする姿勢については評価するところでありますが、
外国人市民が真に「市民」として生活していくためには、日本人市民と外国人市民の交流を始め企業との
連携など、より具体的な施策を推進していく必要があり、また、外国人の子供が高等学校教育を受けられ
る機会の確保はもちろんのこと、卒業までの支援や就職率の向上など、一歩踏み込んだ施策を推進してい
くことが必要であると考えられます。
現在は、外国人の居住が集中している笹川地区をモデル地区としてさまざまな施策が実施されてい
ますが、全市的に居住が広がっている状況に鑑み、いち早く全市的に有効な施策を展開していくこと
が重要です。今後、多文化共生に係る事業を実施するに当たっては、本委員会から指摘された事項や
課題を踏まえて施策を推進するよう望むとともに、市民一人一人の理解を得て、すべての市民、企業、
行政等が一丸となって問題解決に取り組むことを強く要望し、本委員会の報告書といたします。
----------------------------------------------------------------------------------
〔委員会の構成〕
委員長 加 藤 清 助
副委員長 樋 口 龍 馬
委 員 伊 藤 修 一
委 員 伊 藤 元
委 員 加 納 康 樹
委 員 小 林 博 次
委 員 笹 岡 秀太郎
委 員 早 川 新 平
委 員 村 山 繁 生
産業生活常任委員会
○農地バンクの取り組みについて
1.はじめに
農地は、農業において最も基礎的な資源であり、食料の安定供給を行う上で重要な基盤となります。しかし
ながら、農業者の高齢化や農業の担い手不足等により耕作放棄地が増加しており、TPP参加に向けて各国と
の交渉が進む中で、食糧需給率の低下が全国的な課題となっています。
本市においても、近年、耕作放棄地は増加傾向にあり、その防止が課題となっていることから、新たな取り
組みとして平成24年12月より農地バンク制度が導入されており、農地を「貸したい」方の情報を集めて「借り
たい」方へ提供することで両者の支援を行っています。
当該制度の導入により、耕作放棄地の未然防止や就農支援、農地の効率的な活用等が期待されますが、制度
導入から1年が経過した現在において、制度の運用状況の確認や課題の抽出を行うことで、より効果的な活用
が図られるよう、本委員会の所管事務調査として取り上げ議論することとしました。
2.制度導入までの経緯
┌────────┬─────────────────────────┐
│ │ 内 容 │
├────────┼─────────────────────────┤
│ 平成23年8月 │耕作放棄地の解消の取組事例について視察研修先を選定│
├────────┼─────────────────────────┤
│ 平成23年10月 │農地バンクの先進地(豊川市)を農業委員会にて視察 │
├────────┼─────────────────────────┤
│ 平成23年11月 │農地バンク導入に向けて検討開始(農業振興部会) │
├────────┼─────────────────────────┤
│ 平成24年6月 │制度案の作成(農業振興部会) │
├────────┼─────────────────────────┤
│ 平成24年7月 │修正案にて中間報告(農業振興部会) │
├────────┼─────────────────────────┤
│ 平成24年10月 │最終案の確認(農業振興部会) │
├────────┼─────────────────────────┤
│ 平成24年12月 │農地バンク制度を導入 │
└────────┴─────────────────────────┘
3.農地バンクの仕組み
○ 農地貸し付け者(農地所有者)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(1)登録できる農地
農地所有者が良好な耕作をしていたが、管理できなくなった農地
(2)登録できない農地
・山林化した農地
・既に貸し出し中の農地 など
(3)貸借料など
当事者間で調整
○ 農地借り受け者(農地使用者)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
耕作を行っている農業者など
※原則、農地法第3条の権利移動の要件(経営面積が借り受け後50a以上になることなど)を準用
┌─────────────────────────────────────┐
│┌─────────┐ ┌─────────┐│
││農地を貸したい人
│ │農地を借りたい人 ││
││(農地貸し付け者)
│ │(農地借り受け者)││
│└─────────┘ └─────────┘│
│ ┌───────┐ │
│ ──農地登録──→│「農地バンク」│─貸付農地情報→ │
│ ←借受希望者情報─
│ │←─借受申込── │
│ └───────┘ │
│
│ │ │ │
│
│ 貸借条件等の │ │
│ └─────────→ 詳細は ←─────────┘ │
│ 当事者間で交渉 │
│ │ │
│ ↓ │
│ ┌──────┐ │
│ │貸し借り成立
│ │
│ └──────┘ │
└─────────────────────────────────────┘
4.農地バンクの実績
(1)登録状況
【登録済】 10,164m2 (13筆)
┌────┬────┬────────┬──────┬────┬──────┐
│ │ 面積 │ 登録地 │ 登録者 │登録理由│情報入手先 │
├────┼────┼────────┼──────┼────┼──────┤
│H24年度│ 2,889m2│三重地区 │東坂部町 │営農縮小│農業委員会 │
│ │ │(田3筆) │(75歳男性)│ │だより │
├────┼────┼────────┼──────┼────┼──────┤
│ │ │保々地区 │中野町 │営農縮小│農協支店 │
│ │ │(畑4筆) │(90歳女性)│ │窓口 │
│H25年度│ 7,275m2├……………………┼………………┼…………┼………………┤
│ │ │川島地区 │菰野町 │営農縮小│農協支店 │
│ │ │(保全管理6筆)│(70代女性)
│ │窓口 │
└────┴────┴────────┴──────┴────┴──────┘
【相談中】 2,495m2 (4筆)
┌────┬────┬────────┬──────┬────┬──────┐
│ │ 面積 │ 登録地 │ 登録者 │登録理由│情報入手先 │
├────┼────┼────────┼──────┼────┼──────┤
│H25年度│ 2,495m2│内部地区 │貝家町 │営農縮小│農協支店 │
│
│ │(畑4筆) │(71歳女性)
│ │窓口 │
└────┴────┴────────┴──────┴────┴──────┘
(2)契約状況
【契約済】 2,889m2 (3筆) 契約期間:H25.12.1~H35.11.30(利用権設定)
┌────┬────┬────────┬──────┬────┬──────┐
│ │ 面積 │ 借受地 │ 借受者 │借受理由│情報入手先 │
├────┼────┼────────┼──────┼────┼──────┤
│H25年度│ 2,889m2│三重地区 │馳出町 │新規就農│農協支店 │
│
│ │(田3筆) │(一般法人)
│ │窓口 │
└────┴────┴────────┴──────┴────┴──────┘
【相談中】 4,257m2 (4筆)
┌────┬────┬────────┬──────┬────┬──────┐
│ │ 面積 │ 借受地 │ 借受者 │借受理由│情報入手先 │
├────┼────┼────────┼──────┼────┼──────┤
│H26年度│ 4,257m2│保々地区 │東坂部町 │新規就農│市農水振興課│
│
│ │(畑4筆) │(45歳男性)
│ │窓口 │
└────┴────┴────────┴──────┴────┴──────┘
5.他市町における状況
農地バンク制度は、耕作放棄地の防止だけでなく、人・農地プランの実現に向けた農地の利用集積などにも
有効であることから、全国的に農地銀行を新設、再開する農業委員会が増加している。
また、最近では、貸付希望農地の情報をインターネットや看板、農業委員会だよりなどにより情報発信する
事例が増えてきている。
三重県内においては、県内29委員会のうち、実際に農地バンク制度を稼動させているのは本市と鳥羽市の2
市にとどまっていますが、愛知県内においては、県内54委員会のうち、導入済が17委員会、導入予定が8委
員会(平成24年度時点)となっている。
〔鳥羽市の状況〕 〔豊川市の状況〕
┌───┬─────────┐ ┌───┬─────────┐
│設置日│平成25年4月1日
│ │設置日│平成22年6月1日 │
├───┼───┬─────┤ ├───┼───┬─────┤
│登録数│ 1筆: 231m2
│ │登録数│ 256筆: 158,671m2│
├───┼───┼─────┤ ├───┼───┼─────┤
│契約数│ 1筆: 231m2
│ │契約数│ 79筆: 65,403m2│
└───┴───┴─────┘ └───┴───┴─────┘
(平成26年1月時点) (平成25年12月時点)
6.今後の方針
(1)「農業委員会だより」などの広報紙も活用しながら、引き続き農地バンク制度についての広報・周知に
努めるとともに、農業協同組合などの関係機関とも一層連携をとり、農地バンク制度の充実を図る。
(2)利用権設定(農地貸借)の更新時期(6月・12月)に合わせ、貸し手農家の掘り起こし作業を強化する
とともに、インターネット上での農地情報の提供など、新たな取り組みについても検討していく。
(3)優良農地復元化事業などの他事業とも連携を図りながら、また国が来年度より計画している「農地中間
管理機構」とも調整をとりながら、耕作放棄地の解消に取り組む。
7.委員からの主な意見
・農地バンク制度が導入されたことにより、貸し手の登録は自動的に増えていくと考えるが、借り手が借
りやすいように整備しなければ契約には結びつかないと考えるため、市としても明確な目標を持って利用
促進に努めるべきである。
・農地バンクに登録された農地は、借り手が見つかるまで農地の所有者が管理しなければならないとのこ
とであるが、そもそも管理が困難であるから農地バンクに登録するのであって、登録された土地の管理を
どうしていくのかということについても考えていく必要がある。
・来年度設置される予定の農地中間管理機構では、預けられた土地の管理についても当該管理機構が行う
とのことであるが、設置されるのは来年度であり、市としても登録された土地について、どのように管理
するかというところまでを含めて検討すべきであると考える。
・現状の農地バンク制度では、耕作しづらい農地が残ってしまう可能性が高く、そうした農地を耕作放棄
地にさせないためにも農地を保全管理していくという考え方が必要である。
・農地の貸し借りについては、かなり高額な料金でやり取りされている事例もあると聞いていることから、
農地の貸借にかかる基準単価等についてもあわせて整備すべきである。
・農地バンクの借り手を増やすための施策が重要であり、特に仕事を退職された方をターゲットに施策を
講じていくことも効果的であると考える。
・農地バンク制度を推進していくにあたっては、農家組合の協力が必要であり、農家組合が取りまとめを
している農地の状況等を含めて一元化していくべきである。
・農地バンク制度がまだまだ農家の方に浸透していないと感じているため、さらなる周知に力を入れるべ
きである。
・他地区の方が農地を借りるに当たっては、地域の農家組合との事前協議が必要であると考えており、農
業集落コミュニティーを崩さないよう運用していくといった姿勢が必要である。
8.まとめ
農地バンク制度については、冒頭で述べたとおり、農地を「貸したい」または「借りたい」といった情
報を集約することで、両者のニーズをよりスムーズに結びつけ、耕作放棄地の未然防止や就農支援、農地
の効率的な活用等を図ることを目的としています。
現在、増加傾向にある耕作放棄地については、農業者の高齢化や担い手不足が主な原因とされており、これ
らの課題を解決するためにも当該制度の効果が期待されています。しかしながら、当市においては、導入され
てから1年が経過してもなお、登録件数が3件で合計13筆、契約件数については1件で合計3筆にとどまっ
ており、より効果的な制度となるよう、今まで以上に周知に力を入れていく必要があると考えられます。
また、当該制度にかかる行政の役割については、単に農地の貸し借りを仲介するだけでなく、登録され
た農地の管理を含めて検討していくことが必要であり、現在実施している優良農地保全事業などと連携し
た施策を講じるなど、より「貸しやすい」または「借りやすい」制度までステップアップさせていくこと
が重要だと考えます。
現在、農林水産省においては、農地中間管理機構の設置に向けて検討が進められており、市で実施して
いる農地バンク制度とのすみ分けなど、整理すべき課題が多く残されています。しかしながら、耕作放棄
地は年々増加傾向にあり、その対策が急務となっていることから、その動向には引き続き注視しながらも、
本委員会から指摘された事項を踏まえて取り組みを行うよう強く要望し、本委員会の報告書といたします。
----------------------------------------------------------------------------------
〔委員会の構成〕
委員長 加 藤 清 助
副委員長 樋 口 龍 馬
委 員 伊 藤 修 一
委 員 伊 藤 元
委 員 加 納 康 樹
委 員 小 林 博 次
委 員 笹 岡 秀太郎
委 員 早 川 新 平
委 員 村 山 繁 生
決算常任委員会
○補助金調査について
1.はじめに
本市においては、「四日市市補助金等交付規則」(資料1)及び各補助金の要綱にのっ
とり、年間で234件、約41億円の補助金が支出されています(平成24年度決算)。さら
に「四日市市補助金等交付基準」(資料2)によりその適否について見直しが実施され、
補助金・負担金の見直し内容について当委員会などにおいて説明がなされておりますが、
基準不適合でありながら理由を付して見直しがなされていないものが散見され、また、交
付基準そのものについても実情に即しているとは言い難いのが現状です。支出科目が補助
金から委託料に変更された事業もあるなど、本市の事業実施にかかる費用支出のあり方に
ついて費用対効果や透明性などの観点から精査が必要な状況となっていることから、補助
金等交付基準の検証を中心とした調査を実施することといたしました。
【部局別 補助金・負担金・委託料(平成24年度決算)】 (単位:件・千円)
┌───────┬────────┬────────┬─────┐
│ │ 補助金 │ 負担金 │ │
│ 部局名 ├──┬─────┼──┬─────┤ 委託料 │
│ │件数│ 金額 │件数│ 金額 │ │
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 危機管理監 │ 5│ 293,118│ 6│ 3,515│ 115,352│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 政策推進部 │ │ │ 16│ 6,177│ 40,461│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 総務部 │ 3│ 31,146│ 14│ 1,383│ 387,939│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 財政経営部 │ │ │ 16│ 6,431│ 393,877│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 市民文化部 │ 19│ 274,436│ 13│ 3,643│ 492,934│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 健康福祉部 │ 46│ 656,666│ 29│ 63,752│ 1,769,950│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│こども未来部 │ 36│ 1,127,744│ 15│ 2,800│ 1,225,389│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 商工農水部 │ 78│ 1,372,328│ 51│ 1,637,503│ 1,428,169│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 環境部 │ 10│ 126,130│ 8│ 476,074│ 1,776,841│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 都市整備部 │ 9│ 58,380│ 22│ 3,222│ 894,145│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 会計管理室 │ │ │ 1│ 5│ 17,851│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 消防本部 │ 2│ 924│ 10│ 22,363│ 67,293│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 上下水道局 │ 6│ 129,818│ 14│ 2,782│ 3,227,322│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│市立四日市病院│ │ │ │ │ 1,882,639│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 教育委員会 │ 19│ 59,943│ 38│ 47,854│ 1,545,977│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 議会事務局 │ 1│ 21,215│ 9│ 1,785│ 15,115│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│選挙管理委員会│ │ │ 2│ 79│ 38,669│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 監査事務局 │ │ │ 3│ 113│ 170│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 農業委員会 │ │ │ 1│ 891│ 1,081│
├───────┼──┼─────┼──┼─────┼─────┤
│ 合計 │ 234│ 4,151,848│ 268│ 2,280,372│15,321,174│
└───────┴──┴─────┴──┴─────┴─────┘
【補助金、負担金、委託料とは】
補助金…補助金とは、特定の事業、研究等を育成助長するために地方公共団体が公益上
必要があると認めた場合に対価なくして支出するもの。
負担金…負担金とは法令又は契約などによって地方公共団体が負担することとなるもの。
例えば、特定の事業について、地方公共団体が当該事業から特別の利益を受け
ることに対して、その事業に要する経費の全部又は一部の金額を支出するもの
が挙げられる。また、一定の事業などについて、財政政策上又はその他の見地
からその事業等に要する経費の負担割合が定められているときに、その負担区
分により負担するものも挙げられる。
委託料…法令の規定または私法上の契約による行政事務実行上の委託に対する支出。
【本市の主な補助事業】
┌──────┬────────────────────────────────┐
│ 部局名
│ 主な事業 │
├──────┼────────────────────────────────┤
│危機管理監 │木造住宅耐震補強工事費補助金、地区防災組織活動補助金など │
├──────┼────────────────────────────────┤
│ 総務部 │職員共済会補助金、市民人権学習支援事業費補助金など │
├──────┼────────────────────────────────┤
│市民文化部 │防犯外灯新設維持費補助金、地域社会づくり総合事業費補助金など │
├──────┼────────────────────────────────┤
│健康福祉部 │社会福祉協議会補助金、認知症高齢者グループホーム建設費補助金など│
├──────┼────────────────────────────────┤
│こども未来部│学童保育事業費、民間保育所整備事業費補助金など │
├──────┼────────────────────────────────┤
│商工農水部 │企業立地奨励金、商店街活性化イベント事業費補助金など │
├──────┼────────────────────────────────┤
│ 環境部 │中小企業新エネルギー導入等促進事業費補助金など │
├──────┼────────────────────────────────┤
│都市整備部 │花と緑いっぱい事業補助金、市民自主運行バス事業補助金など │
├──────┼────────────────────────────────┤
│ 消防本部 │老朽化施設整備事業補助金など │
├──────┼────────────────────────────────┤
│上下水道局 │合併処理浄化槽設置整備事業補助金、共同住宅排水管設置費補助金など│
├──────┼────────────────────────────────┤
│教育委員会 │四日市市学校給食協会補助金、私立学校等運営費補助金など │
├──────┼────────────────────────────────┤
│議会事務局 │政務活動費 │
└──────┴────────────────────────────────┘
2.補助金調査の概要について
(1)調査の経緯
前述の補助金支出にかかる現状を踏まえ、平成24年8月定例月議会の当委員会におい
て、今後の厳格かつ実効性のある見直しに向け、補助金支出の適否及び交付基準の妥当
性について検証を行うことが必要であるとの意見があり、本市議会として補助金の見直
しを行っていくことについて、その手法も含めて検討を行うことが提案されました。
これについて、本議会内での検討を経たのち、平成25年6月24日の当委員会におい
て、地方自治法第100条の2に基づく専門的知見を活用し補助金に対する調査を行うこ
とが確認され、平成25年6月定例月議会において四日市市補助金等交付基準の検証及び
本市補助金支出の適否にかかる調査分析について、東京大学大学院法学政治学研究科の
金井利之教授に調査業務を委託することが全会一致で可決されました。
以上の経過を経て、平成25年7月から金井教授による議員及び関係部局に対するヒア
リングを含めた調査が実施され、平成25年10月4日、その結果が本市議会に対し「四
日市市の補助金に関する調査報告書」(資料3・以降「報告書」と記載)として提出さ
れました。
これを受けて当委員会では、「報告書」をもとに本市の補助金の新たな見直し基準等
について検討し市に提言することとし、関係部局に対する質疑を交えながら、議員間討
議を中心とした調査・研究を実施いたしました。
(2)調査の経過
┌────┬─────────────────────────────────┐
│ │・6月定例月議会において「専門的知見を活用した四日市市の補助金に関│
│6月28日│ する調査について」を議決 ※1 │
│
│  ̄ ̄ │
├────┼─────────────────────────────────┤
│7月25日│・議決内容に基づき東京大学金井利之教授と業務委託契約を締結 ※2 │
│
│  ̄ ̄ │
├────┼─────────────────────────────────┤
│ │・議員ヒアリング実施 │
│7月31日│ 事前調査を実施し、決算常任委員会理事会において意見を取りまとめ先│
│ 及び │ 方に提出の上、各会派および無会派について個別にヒアリングを実施 │
│8月1日│・理事者ヒアリング実施 │
│ │ 予算編成、補助金の交付基準、行財政改革プランなどについてヒアリン│
│ │ グを実施〔政策推進部、財政経営部〕 │
├────┼─────────────────────────────────┤
│8月13日│・理事者ヒアリング実施 │
│ 及び │ 議員ヒアリングにおいて意見があった補助金を中心に、関係する部局に│
│8月14日│ ヒアリングを実施〔健康福祉部、こども未来部、市民文化部、環境部、│
│ │ 商工農水部、教育委員会、財政経営部、政策推進部、監査事務局〕 │
├────┼─────────────────────────────────┤
│ │・「四日市市の補助金に関する調査報告書(資料3)」の提出、受理 │
│10月4日│ ※3 │
│ │  ̄ ̄ │
├────┼─────────────────────────────────┤
│10月16日│・決算常任委員会(計5回開催)において、「報告書」の内容をもとに │
│ ~ │ 「四日市市補助金等交付基準」の検証などを実施 │
│1月24日
│ │
└────┴─────────────────────────────────┘
※1 「専門的知見を活用した四日市市の補助金に関する調査について」の議決内容
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.調査事項
四日市市補助金等交付基準の検証及び本市補助金支出の適否にかかる調査分析につ
いて
2.調査期間
調査委託をした日から平成25年10月4日まで
3.調査を委託する者
金井利之氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授、東京大学法学部教授、東京大
学公共政策大学院教授)
4.調査報告
調査終了後速やかに本市議会に調査報告書を提出すること
※2 業務委託にかかる委託内容
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.「四日市市補助金等交付基準」の精査
現行の「四日市市補助金等交付基準」における補助金交付基準(14項目)について、
1)各項目の内容が適切であるか、2)新たに加えるべき項目はないか、3)補助金の性
質別に交付基準を定める必要性があるか、といった視点から精査を行う。
2.新たな補助金交付基準の策定
上記1の検討結果をもとに、新たな補助金交付基準(案)を策定する。
3.各補助金の支出の適否についての検証
上記2による基準に基づき、現在支出されている補助金について精査を行い、各補
助金の支出の適否について検証を行う。
※3 「四日市市の補助金に関する調査報告書」(資料3)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
上記委託内容に基づき調査が実施され、結果が調査報告書として本市議会に提出され
た。主な内容としては、補助金分析の視点、補助金等交付基準の総論的検討、補助金等
交付基準の各論的検討、新たな「補助金等交付基準」案などであり、本市の補助金の見
直し基準について問題点の分析や今後に向けての提言がなされている。
なお、委託内容のうち「3.各補助金の支出の適否についての検証」については、補
助金の見直し基準については市政当事者において決定されるものであり、その決定を待
たずに個々の補助金の適否について検証していくことは適切ではない等々の理由により
報告が留保された。
3.委員会での検討事項
「報告書」について、当委員会では、的確な調査・分析がなされていることから、これ
らの内容に沿って理事者に今後の補助金の見直しに向けた提言を行うことといたしました。
また、個々の補助金の適否の判断については「報告書」における意見を受け、当委員会に
おいても留保し、まずは理事者による取り組みを注視していくことといたしました。
「報告書」においてはさまざまな視点から現行の「四日市市補助金等交付基準」にかか
る検証がなされておりますが、当委員会においては以下の事項について重点的に検討を行
いました。
(1)四日市市総合計画における補助金の位置づけについて
□委員からの意見
・「報告書」では、補助事業が市の政策目的と合致しているかどうかの観点から、総合
計画との関連性、位置づけが大切であり、またそのようになっていない場合は総合計
画及び実施計画を見直すことも必要であるとの指摘があるが、今後検討していくべき
重要な視点ではないか。
・公益性の有無の判断基準として総合計画が取り上げられているのは画期的で分かりや
すい。全ての事業を総合計画に網羅する、また総合計画を今すぐ変えるというのは難
しいかもしれないが、せめて全ての補助金が総合計画における基本計画のどこに繋が
っていくのかについては説明できるようにするべきである。
□理事者からの意見
・総合計画は市民、企業、行政からなる地域全体における計画であることから、市民や
企業の活動に対して公費で支援するということについて、主なものを総合計画に記載
するということは、マネジメントの視点から重要であると考えている。
・総合計画は、議会においても特別委員会等で集中的に審議をしていただきながら、選
択と集中の観点から重点的に取り組むべき施策について位置づけがなされている。各
事業は5つの基本目標が示す分野のいずれかに包含されるものではあるが、重点的に
取り組むべきものを登載したことから、経常的な業務は記述されていない。
・総合計画に基づく実施計画である第1次推進計画において、主要な補助金は位置付け
られているものの、それ以外の補助金については一般施策の中で位置づけられている
ところである。
(2)委託料などの他の政策手段との関係について
□委員からの意見
・現在、行政が実施する事業と同等の高い公益性を有する事業(行政の代替的事業)で
あるという理由で見直されていない事業があるが、「報告書」では本来民間の活動で
ある補助金には「行政の代替的事業」というものはあり得ないとしている。この指摘
は重要であり、政策手段として目的に見合った手法について検討が必要である。
・補助金として扱われているが他の手段により実施すべきものがあるのか、また、ある
のであれば今後の取り扱いの方向性について検討すべきである。
・補助金から委託料に支出科目が変更された事業がある。補助金では領収書など事業実
施を証する詳細な書類の提出が必要であるが、委託料ではそのようなことはなく事業
内容の精査が困難になってしまう恐れがある。
・運営費補助について、「報告書」には運営費補助を組み立てるための基準がないまま
放置されているといった指摘があるがどのように考えているのか。
・「報告書」では運営費補助を行う場合は委託する場合よりも経済的でなければいけな
いという指摘がある。市の支援策は補助金のほか人的支援や現物支援もあるというこ
とで、本市において補助金を出しつつ人的な支援などもしている事業があるが、その
ところの精査はどのようになっているのか。
・「四日市市補助金等交付規則」では、補助金は「本市が相当の反対給付(*)を受け
ない給付金」とされている。「報告書」には「市は、民間の団体または個人の特定の
事業・活動に対して補助金を支出し、それによって≪反対給付≫としての公益の増進
を享受できる(後略)」とあり、補助金における反対給付のとらえ方について考え方
を整理すべきである。
*反対給付…支払った金額に見合った成果物。
□理事者からの意見
・委託料については反対給付ということで、委託金額に見合った成果物を確認すること
でチェックがかかっている。補助金については反対給付がないということで、実績報
告をしてもらうことで補助対象事業が実施されていることを確認することとしてい
る。
・運営費補助について、事業を実施するための人件費もあると思うが、事業の実施とい
う大きな目的に充当されるということをしっかりおさえていく必要があると考えて
いる。
・これまでの事業の中で、従来市職員で対応していたものを、事業の内容や目的から、
その内容に相当する費用相当分を補助金として支出し、地域や民間の手で行うことと
なった事業がある。その結果、市民がメーンの地区の住民自治のひとつとして前進が
見られたり、総人件費の抑制が図られたりするなどの効果があったと認識している。
(3)補助金の見直し・検証について
□委員からの意見
・PDCAサイクル(PDCA cycle、plan-do-check-act cycle)のうち、チェック・検証
にかかる基準が必要である。
・見直しの評価、総括を条例などにより義務付け、実効性を担保すべきである。
・現行の「四日市市補助金等交付基準」が不十分であることに加え、補助金見直しにつ
いて評価する仕組みがない。他市では第三者の委員による審議会で補助金の見直しを
徹底して行っている事例があるが、実効性ある見直しに向け本市においも評価制度を
設けるべきである。
・現行の「四日市市補助金等交付基準」は曖昧で例外も多いため、今後は原則を強く意
識した新たな基準を検討するとともに、例外の場合は「報告書」に書かれているよう
な公開の場における議論などの手続きについて留意すべきである。
・「報告書」では総合計画での位置づけが必要であるとされているが、過去からの補助
金については後で計画に位置付けることも可能であり、見直しにはつながらない。惰
性になっている補助金の見直しが必要である。
・行政のみでは成り立たない事業について、それを補完するという補助金行政で予算そ
のものが成り立っている現実もあり、補助金がないと成り立たない事業もあることを
念頭に議論を行うべきである。
・補助がなくなりそれでそれまでやってきた事業が頓挫してしまうような状況になって
は補助金を出した意味がなくなる。補助金には最終的には民間が自主的にやっていけ
るような仕組みをつくることが大切であると思うが、そのようなことも念頭に置いて
見直し基準を検討していくべきである。
□理事者からの意見
・ある一定年限の中で一旦総括するようにルール化することにより、一定の整理がしや
すい環境ができると思う。必ずしもそれによって全部だめということではなく、実態
がどうなのかをつまびらかにして理解が得られるのであれば継続することもあり得
るというように、透明感を増して事業を実施するいい機会になると思われるが、そう
いう取り組みに転換できたら、補助金の見直しは行政側にとっても非常にいい見直し
になるのではないか。
4.まとめ
当委員会における調査の内容と、それについての検討事項は以上であります。
まず補助金の位置づけについて、補助金は公益上必要があると認めた場合に支出するも
のと定義されていますが、どのような場合に公益性があると認められるのかについては基
準が曖昧であり、補助金の見直しにおいてもその判断がしづらい状況にあります。「報告
書」ではこの判断基準について、個々の事業が総合計画とその推進計画において記載され
ている事業の目的を達成するための手段として貢献するかどうかをもって判断するべきで
あるとの意見が述べられておりますが、このような考え方は補助金見直しの透明性を高め
る上で非常に有効であると思われます。現在、平成23年度からの10年間を対象とする総
合計画をもとに市のさまざまな事業が実施されておりますが、今後は市の政策目的との合
致の観点から、各事業が総合計画のどの部分に対応しているのかについて整理等も行い、
それを念頭に補助金の見直しについて検討するべきであると考えます。
次に委託料などの他の政策手段との関係について、当委員会において、行政が実施する
事業と同等の高い公益性を有する事業(行政の代替的事業)であるという理由で見直しが
行われていなかったり、補助金であったものが委託料へ支出科目が変更となり「四日市市
補助金等交付基準」によるチェックの対象外となったことについて指摘されておりました。
「報告書」では本来民間の活動である補助金には「行政の代替的事業」はあり得ないと述
べられていますが、このような事業については公開の場における支出の適否の精査や委託
料などの他の政策手段を検討すべきであり、また他の政策手段において実施されることに
なった場合においては、その手段に応じた適切なチェックが実施されることが必要である
と考えます。また「報告書」では、金銭的な支援にあわせて、行政による人的支援、物的
支援についても考慮の上、最適な政策手段の実施について検討されるべきであるとの指摘
もありましたが、個々の事業内容について、事業の目的、実施すべき主体、トータルコス
トなどについて精査し、効果的な政策手段の選択について考え方を整理すべきであると考
えます。
最後に補助金の見直し・検証について、現行の「四日市市補助金等交付基準」について
は曖昧で例外が多いため、今後は原則を強く意識した上で、新たな見直し基準について検
討すべきであると考えます。また、「報告書」においては、指定団体補助金(一定の指定
された団体にのみ交付される補助金)、地域的指定団体補助金(対象となる団体は市内に
複数存在するが、特定の地域・地区に限ってみれば1つしか存在しない団体に対して交付
される補助金)、公益的団体に対する運営費補助、補助金から委託料に支出科目が変更さ
れる場合など、特に透明性が必要となるケースについては、市民の目線に公開された場で
精査が必要であると指摘されています。新たな見直し基準の検討に際しては、基準の明確
化とともにこのような透明性の確保が非常に重要になってくると思われますが、多くの委
員から、補助金の見直しそのものに対する検証システムを設け実効性を担保する必要があ
るとの意見があり、検証にかかる基準の構築、条例による見直しの評価、総括の義務づけ、
第三者の委員による審議会の設置などさまざまな案が出されました。今後このような意見
を参考に、補助金支出における基準の明確化、透明性の確保に向け、現状の課題を整理し
改善に向けた取り組みを行うことが必要であると考えます。
このほかにも、「報告書」においては多様な視点から現在の「四日市市補助金等交付基
準」について検証が行われておりますが、それらの内容を十分留意の上、今後、新たな補
助金の見直し基準について整理・検討することを強く要望し、当委員会の調査報告といた
します。
----------------------------------------------------------------------------------
〔委員会の構成〕
委員長 諸 岡 覚
副委員長 早 川 新 平
委 員 荒 木 美 幸
委 員 石 川 勝 彦
委 員 石 川 善 己
委 員 伊 藤 修 一
委 員 伊 藤 嗣 也
委 員 伊 藤 元
委 員 小 川 政 人
委 員 加 藤 清 助
委 員 加 納 康 樹
委 員 川 村 幸 康
委 員 小 林 博 次
委 員 笹 岡 秀太郎
委 員 竹 野 兼 主
委 員 豊 田 政 典
委 員 中 川 雅 晶
委 員 中 村 久 雄
委 員 中 森 愼 二
委 員 野 呂 泰 治
委 員 日 置 記 平
委 員 樋 口 博 己
委 員 樋 口 龍 馬
委 員 藤 井 浩 治
委 員 三 平 一 良
委 員 村 上 悦 夫
委 員 村 山 繁 生
委 員 毛 利 彰 男
委 員 森 智 広
委 員 森 康 哲
委 員 山 口 智 也
委 員 山 本 里 香
委 員 芳 野 正 英
11:
┌──────────────────────────┐
│ │
│ ○添付資料 │
│ │
│ 資料1 「四日市市補助金等交付規則」 │
│ │
│ 資料2 「四日市市補助金等交付基準」 │
│ │
│ 資料3 「四日市市の補助金に関する調査報告書」│
│ │
└──────────────────────────┘
┌───┐
│資料1│
└───┘
○四日市市補助金等交付規則
昭和57年3月31日
規則第11号
改正 平成9年3月19日規則第1号
平成17年2月4日規則第2号
平成24年8月24日規則第54号
平成25年3月29日規則第32号
(目的)
第1条 この規則は、法令、条例又は他の規則に定めるもののほか、補助金等の交付
の申請、決定等に関する基本的事項を定めることにより、補助金等に係る予算の執
行の適正化を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 この規則において次の各号に掲げる用語の定義は、当該各号に定めるところ
による。
(1) 補助金等 本市が交付する補助金、利子補給金その他の本市が相当の反対給付
を受けない給付金(市長が指定するものを除く。)をいう。
(2) 補助事業等 補助金等の交付の対象となる事務又は事業をいう。
(3) 補助事業者等 補助事業等を行うものをいう。
(交付の申請)
第3条 補助金等の交付を受けようとする者は、補助金等交付申請書(第1号様式)
に次の各号に掲げる書類を添えて、別に定める期日までに市長に提出しなければな
らない。
(1) 補助事業等の目的、内容等を記載した書類
(2) 補助事業等の経費の内訳等を記載した書類
(3) 前2号に掲げるもののほか、市長が必要と認めた書類
2 市長は、前項第1号及び第2号に掲げる書類のうち、補助事業等の内容により必
要がないと認めたものについては、これを省略させることができる。
(交付の決定)
第4条 市長は、補助金等の交付の申請があった場合において、当該申請に係る書類
等の審査及び必要に応じて行う調査等により、補助金等を交付すべきものと認めた
ときは、速やかに交付の決定をするものとする。
(交付の条件)
第5条 市長は、補助金等の交付の決定をする場合において、補助金等の交付の目的
を達成するために必要があると認めたときは、条件を付することができる。
(決定の通知)
第6条 市長は、補助金等の交付の決定をしたときは、速やかにその決定の内容及び
これに条件を付した場合はその条件を、補助金等交付決定通知書(第2号様式)に
より申請者に通知するものとする。
(申請の取下げ)
第7条 前条の規定による通知を受けた者は、当該通知に係る補助金等の交付の決定
の内容又はこれに付された条件に不服があるときは、当該通知を受けた日から15
日以内に申請の取下げをすることができる。
2 前項の規定による申請の取下げがあったときは、当該申請に係る補助金等の交付
の決定は、なかったものとみなす。
(事情変更による決定の取消し等)
第8条 市長は、補助金等の交付の決定をした場合において、その後の事情の変更に
より特別の必要が生じたときは、補助金等の交付の決定の全部若しくは一部を取り
消し、又はその決定の内容若しくはこれに付した条件を変更することができる。た
だし、補助事業等のうち、既に経過した期間に係る部分については、この限りでな
い。
(補助事業等の遂行)
第9条 補助事業者等は、補助金等の交付の決定の内容及びこれに付された条件に従
い、善良な管理者の注意をもって補助事業等を行わなければならない。
(状況報告)
第10条 市長は、補助事業等を適切に執行させるため、必要に応じ、補助事業者等
に補助事業等の執行の状況報告を求め、又は必要な指示をすることができる。
(計画の変更)
第11条 補助事業者等が補助金等の交付決定通知を受けた後において補助事業等の
目的、内容、経費の配分その他の事項の変更(市長が定める軽微な変更を除く。)
をしようとする場合又は補助事業等を中止し、若しくは廃止しようとする場合は、
直ちに市長に補助事業等計画変更承認申請書(第3号様式)を提出し承認を受けな
ければならない。
2 市長は、前項の規定による計画変更承認申請書を受理したときは、変更内容を審
査し、第4条の規定による決定を変更することができる。
(一部改正〔平成24年規則54号〕)
(変更決定通知)
第12条 市長は、前条第2項の規定により当該補助金等の交付の変更を承認したと
きは、補助金等変更決定通知書(第4号様式)により補助事業者等に通知するもの
とする。
(一部改正〔平成17年規則2号〕)
(実績報告)
第13条 補助事業者等は、補助事業等が完了(廃止及び中止を含む。)したとき(以
下「完了等」という。)は、完了等の日から起算して30日を経過した日までに、
補助事業等実績報告書(第5号様式)に収支決算書を添えて市長に提出しなければ
ならない。
(是正のための措置)
第14条 市長は、前条の実績報告書の提出があった場合において、当該補助事業等
の成果が補助金等の交付の決定の内容及びこれに付した条件に適合しないと認めた
ときは、これに適合させるための措置をとるべきことを当該補助事業者等に命ずる
ことができる。
2 前条の規定は、前項の規定による命令に従って行う補助事業等について準用する。
(額の確定及び交付)
第15条 市長は、補助事業等実績報告書が提出されたときは、その内容を審査し、
適当と認めたときは交付すべき補助金等の額を確定し交付するものとする。
2 補助事業者等が補助金等の交付の目的を達成するため、市長において特に必要と
認めたときは、前項の規定にかかわらず、補助事業等の完了等の前に補助金等の全
部又は一部を概算払又は前金払により交付することができる。
(決定の取消し)
第16条 市長は、補助事業者等が次の各号のいずれかに該当すると認めたときは、
補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
(1) この規則又は補助金等の交付の決定をするときに付した条件若しくは市長の
指示に違反したとき。
(2) 補助金等を交付の目的以外に使用したとき。
(3) 補助事業等を中止又は廃止したとき。
(4) 補助事業等に関する申請、報告又は施行等について不正な行為があったとき。
(5) その他補助金等の使用が不適当と認めたとき。
(補助金等の返還)
第17条 市長は、補助金等の交付の決定を取り消した場合において、補助事業等の
当該取消しに係る部分に関し、既に補助金等が交付されているときは、期限を定め
てその返還を命じるものとする。
2 市長は、補助事業者等に交付すべき補助金等の額を確定した場合において、既に
その額を超える補助金等が交付されているときは、期限を定めてその返還を命じる
ものとする。
(理由の提示)
第18条 市長は、補助金等の交付の決定の取消し又は補助事業等の是正のための措
置の命令をするときは、当該補助事業者等に対してその理由を示すものとする。
(一部改正〔平成17年規則2号〕)
(検査)
第19条 市長は、補助金等に係る予算の執行の適正を期するため、補助事業者等の
報告に基づき、帳簿等関係書類及び物件、施設等を検査することができる。
(財産の処分の制限)
第20条 補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産で次
に掲げるものを、市長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、
譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、補助金等の交
付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して市長が定める期間を経過した場合は、
この限りでない。
(1) 不動産
(2) 船舶、航空機、浮標、浮さん橋及び浮ドック
(3) 前2号に掲げるものの従物
(4) 機械及び重要な器具で、市長が定めるもの
(5) その他市長が補助金等の交付の目的を達成するため特に必要があると認めて
定めるもの
(追加〔平成25年規則32号〕)
(補則)
第21条 この規則に定めるもののほか、この規則の施行に関し必要な事項は、市長
が別に定める。
(一部改正〔平成17年規則2号・25年32号〕)
附 則
この規則は、昭和57年4月1日から施行し、昭和57年度の予算に係る補助金等
から適用する。
附 則(平成9年3月19日規則第1号)
この規則は、平成9年4月1日から施行する。
附 則(平成17年2月4日規則第2号)
この規則は、平成17年2月7日から施行する。
附 則(平成24年8月24日規則第54号)
この規則は、公布の日から施行し、平成24年度の予算に係る補助金等から適用す
る。
附 則(平成25年3月29日規則第32号)
(施行期日)
1 この規則は、平成25年4月1日から施行する。
(経過措置)
2 改正後の四日市市補助金等交付規則の規定は、この規則の施行の日以後に交付す
る補助金等から適用し、同日前に交付する補助金等については、なお従前の例によ
る。
第1号様式(第3条関係)
年 月 日
四日市市長
申請者
住 所
名 称
代表者 印
年度 事業補助金等交付申請書
年度において 事業を実施したいので、四日市市補助金等交付規則第3
条の規定に基づき下記のとおり申請します。
記
1 補助金等交付申請金額 金 円
2 添付書類
(1) 補助事業等の目的、内容等を記載した書類
(2) 補助事業等の経費の内訳等を記載した書類
(3) その他
第2号様式(第6条関係)
四日市市指令 第 号
住 所
名 称
代表者
補助金等交付決定通知書
年 月 日付けで交付申請のあった 年度 事業補助金等につ
いては、四日市市補助金等交付規則第4条の規定に基づき、下記のとおり交付すること
に決定したので通知します。
年 月 日
四日市市長 印
記
1 補助金等の額 金 円
2 補助金等の対象となる事業
3 補助金等の交付の条件
第3号様式(第11条関係)
年 月 日
四日市市長
住 所
名 称
代表者 印
補助事業等計画変更承認申請書
年 月 日付け四日市市指令第 号で交付決定通知のあった事業につ
いて、下記のとおり計画を変更したいので、四日市市補助金等交付規則第11条第1項の
規定に基づき承認されたく申請します。
記
1 補助金等変更申請額 金 円
2 変更の理由
3 変更の内容
第4号様式(第12条関係)
四日市市指令第 号
住 所
名 称
代表者
補助金等変更決定通知書
年 月 日付けで申請のあった 事業の計画変更を承認したの
で、補助金等の交付決定を下記のとおり変更します。
年 月 日
四日市市長 印
記
1 変更決定額 金 円
2 計画変更の内容
3 条件
第5号様式(第13条関係)
年 月 日
四日市市長
住 所
名 称
代表者 印
補助事業等実績報告書
年 月 日付け四日市市指令第 号で補助金等の交付決定を受けた
年度 事業を完了(廃止・中止)したので、四日市市補助金等交付規則第13条の
規定に基づき、下記のとおり報告します。
記
1 事業実績及び効果
2 添付書類
(1) 収支決算書
第1号様式(第3条関係)
(一部改正〔平成17年規則2号〕)
第2号様式(第6条関係)
第3号様式(第11条関係)
(一部改正〔平成17年規則2号〕)
第4号様式(第12条関係)
第5号様式(第13条関係)
(一部改正〔平成17年規則2号〕)
┌───┐
│資料2│
└───┘
四日市市補助金等交付基準
I 補助金について
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1.交付基準
(1)市の政策目的との合致
特定の団体や個人によって実施される事業・活動が、下記の例に該当し市の
政策目的を達成することに貢献しているかどうかを判断し、そうでない補助金
は廃止する。
ア 住民自治、住民参加の推進に寄与するもの。
イ 地域経済、産業振興、雇用促進の分野で、市が積極的に普及・支援する
ことによって、新たな価値を生み出すもの。
ウ 社会福祉、環境、教育、文化・芸術・スポーツ等の推進に貢献するもの。
エ 上記のような施策分野において、行政では発揮しにくい先進的、独創的
なアイデア・発想・行動原理をもって、公共の価値を新たに生み出すこと
が期待されるもの、等
(2)行政の関与の必要性
補助事業を行ううえで、市と対象となる団体や個人との間で明確な役割分
担がなされているか、公共性及び公益性に欠けてはいないか、また、補助の
効果が特定の者に対する資産形成等に留まっていないかを視点に、行政の関
与の必要性が無いものは補助金を廃止する。
(3)社会情勢の変化との整合
社会情勢や市民ニーズの変化に対して、対象となる団体の活動や事業につい
て、その重要度や緊急性が高まっているか、また、社会情勢や市民ニーズの変
化に照らして、対象となる団体の活動や事業の役割がすでに終焉していないか
を視点に常に検証し、見直しあるいは廃止する。
(4)補助対象事業
補助金の交付は、本来事業費を対象に補助がされるべきものである。事業計
画が立てられ、予算が組まれ、事業目的の達成に向けて行政が資金的な支援を
していくことが必要であると判断された場合に、補助金が交付されるものであ
ることから、補助対象事業については、事業費に対して補助を行うこととする。
現在、運営費に対して補助を実施している場合は、早急に必要性を検討して、
補助対象経費を明確にして交付するかどうかを見極め、原則、事業費補助への
見直しを行う。
ただし、交付団体の設立時に際しては、その多くが初期の段階では組織力、
運営基盤が脆弱であるため自立できるまでの一定期間については、運営費に対
する補助も必要である。運営費補助のあり方については、補助の対象となる経
費の範囲を定めた上で、終期を設定し段階的に減額する。
(5)類似した補助金の統廃合
市以外の行政や民間に限らず内容の類似した補助金や同一対象への補助が
ある場合には、統廃合する。
(6)補助制度の透明性
ア 補助金の適正な交付のため、補助要綱等を整備するとともに、必ず実績
報告を求める。適宜、実績報告に基づき、帳簿等関係書類及び物件、施設
等を監査する。
イ 市が補助金を支出している補助事業の内容等を公開することにより、公
平かつ適正な公金の支出につなげる。
(7)個人給付的補助金の公平性
個人給付的補助金については、社会保障的なものを除き所得要件等の公平
性を満たす条件を設定する。
(8)補助対象経費の明確化
補助対象経費は、事業費とし、また、食糧費、交際費、親睦会費等の社会
通念上、公的支援の対象としてなじみにくいものには補助は行わない。
(9)補助率の明確化
高率な補助は、その補助を受ける団体等の補助金への依存体質を膠着化さ
せ、自立を促すことを阻害するため、補助率を1/2以下とする。ただし、行
政の代替事業として実施する場合やその他特別な事情のある場合については、
別途検討する。
(10)少額な補助金の廃止
補助金の額が少額なものについては、事業効果が現れにくいことから、1
件あたり原則5万円以上とする。
(11)定額補助の透明性
定額でもって補助を行う場合には、その補助金額の設定が、著しく社会経
済情勢と乖離していないか常に検証し、その算出根拠について明確に説明で
きるものであること。
(12)終期の設定
ア 補助制度の見直しを絶えず行うために、すべての事業について3年以内と
した終期の設定を行う。
終期を迎えた補助制度については、事業の評価を行い、必要性を十分検
討した上で継続できるものとする。
イ 国や県の制度による補助は、その制度の終了時に、原則補助制度を終了
させ、市単独で継続する場合は、新たな補助制度として見直す。なお、国
や県の補助金の減額があった場合は、その時点で見直す。
ウ 長期にわたり継続している補助金について、見直しを行い、年次的に縮
小する方向で見直す。
エ 団体の行う事業で大会運営、記念事業等については、対象年次のある場
合を除いて、単年度に限って交付する。
(13)過度な補助の停止
繰越金または剰余金等が、補助金額を上回っている団体については、その
団体の財政状況を勘案し、必要に応じて補助金の停止や削減を実施する。
(14)事業の評価
ア「事前の評価」
補助金の制度創設にあたっては、その制度の目的、求める効果を明確に
するのは勿論であるが、交付決定にあたり事前の評価として、団体等の行
おうとする事業が、補助制度の目的に合致し、かつ、その効果が十分得ら
れるものであるか、対象事業の範囲や、その内容、事業経費の適切性等に
ついて厳正に審査する。
イ「事後の評価」
補助金の額の確定にあたり、事後の評価として実績報告を求め、当初の
計画に基づき実施されたか、年度途中における計画変更は無かったか等、
補助対象事業の適切さからの検証を行い、補助の効果が発揮されているか
を確認する。
ウ 事前及び事後の評価を踏まえ、個々の団体への今後の補助の継続や停止、
あるいは補助制度そのものを廃止する。
エ 評価については、公益性の視点から具体的に判断し、また、補助金施策
の普及、浸透により補助目的が達成されたものは、補助金を廃止する。
II 団体等への負担金について
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
国または県が所管する上部団体や、県内市町村との連絡会議等への負担金につ
いては、下記の視点で必要な措置を行う。
1.団体等への加入の是非
団体の目的や団体への参加による効果を十分検討し、事業を進めるうえで、
その団体等から脱退をしても事業執行に影響がないか、他の市町村との関係保
持を検討し、近隣市町村との連携を密にし、真に加入が必要かどうかを十分検
討し、脱退すべきものは脱退すること。
2.負担額の見直し
負担金の額について、その負担割合の算出根拠が十分納得でき妥当性のある
ものであるか(均等割と人口割のバランス等)、その団体において多額の繰越金
等が発生していないか常に確認し、必要に応じ、負担の見直しあるいは停止を
求めること。
┌───┐
│資料3│
└───┘
四日市市の補助金に関する調査
報告書
東京大学教授
金井 利之
2013年10月4日
目次
1.はじめに
(1)経緯
(2)調査事項
(3)調査方法
2.補助金分析の視点
(1)補助金とはなにか
(2)民間側から見た補助金
(3)行政側から見た補助金
(4)「補助金」という横断的接近方法の特徴と限界
(5)補助金見直しと行政・民間関係論
3.補助金等交付基準の総論的検討
(1)位置づけ
(2)補助金等交付基準の問題点と改善の方向性
4.補助金等交付基準の各論的検討~調査事項(1)~
(1)市の政策目的との合致
(2)行政関与の必要性
(3)社会情勢の変化との整合
(4)補助対象事業
(5)類似した補助金の統廃合
(6)補助制度の透明性
(7)個人給付的補助金の公平性
(8)補助対象経費の明確化、および、(9)補助率の明確化
(10)少額な補助金の廃止
(11)定額補助等
(12)終期の設定
(13)過度な補助の停止
(14)事業の評価
5.新たな「補助金等交付基準」案~調査事項(2)~
6.現状の各補助金の適否~調査事項(3)~
7.おわりに
収集資料
1.はじめに
(1)経緯
1)議会での課題提起
四日市市では、1999(平成11)年より補助金の見直し、適正化に取り組んでいるところで
ある。しかし、2012(平成24)年8月の定例月議会決算常任委員会において、委員から、補
助金については過去から議会でさまざまな指摘がなされているにもかかわらず、なかなか
見直しが進まないことから、議会として調査機関を設置して見直しを行っていくことも視
野にいれるべきとの意見があった。これについて、他の委員からは、これに賛同する意見
や、議会として見直しを実施していく方向性については賛同するものの、その手法につい
てはさらに検討が必要という意見が出された。そこで、同委員会理事会で協議を行った結
果、今後議会として補助金の見直しを行っていくことについて、その手法も含めて検討を
行っていくことを決算常任委員会から議長に申し入れることになった。
10月5日の各派代表者会議において、決算常任委員会からの申し入れについて、議長か
ら報告があった。これを受けて、調査方法として、1)専門的知見の活用、2)調査機関の設置、
3)参考人制度、の3案を議会事務局が説明した。協議の結果、議会として実施目的を整理す
る必要がある、調査を依頼する前に議員間で論議する必要があるなどの意見が出された。
その後、各派での協議を踏まえて、11月1日の各派代表者会議を経て、11月22日の各派
代表者会議で、以下の点が確認された。すなわち、4常任委員会でそれぞれ所管の補助金
について精査するため、まず、決算常任委員会理事会においてガイドラインを作成するこ
と、また、精査ができたのちに専門的知見を活用(上記1)の調査方法)して調査を行うこと、
である。
2013(平成25)年4月22日の決算常任委員会において、委員長より、「補助金に係る調査
の進め方について」(案)の提案があり、それに基づき調査を取り進めていくことが確認され
た1。
2)補助金に係る調査の進め方(2013年4月22日)
2013(平成25)年4月22日の決算常任委員会において「補助金に係る調査の進め方につい
て」の配付があり、確認された2。6月の定例月議会に向けて、決算常任委員会全体会では、
1)補助金の分類、2)専門的知見による調査の依頼先・期間の決定、を行う。前者の補助金
の分類区分では、A「団体に対する補助金」、B「その他(小分類として個人給付的補助金、
記念行事事業費補助金、建設費補助金等に分類する)、という案が示された。ついで、6月
28日の定例月議会本会議において、専門的知見の活用について議決を行う。7月から9月
にかけて専門的知見による調査を依頼する。これを受けて、9月~10月の決算常任委員会
全体会において、専門的知見からの調査報告書をもとに、各補助金の今後の方向性につい
て議論し、委員会として調査報告書を取りまとめる、とされた。
──────────────
1 四日市市議会事務局「参考資料 補助金の調査にかかるこれまでの経過」2013年7月
2 四日市市議会決算常任委員会配布資料「補助金に係る調査の進め方について」2013年4
月22日
(2)調査事項
1)調査依頼意向
2013(平成25)年4月22日の決算常任委員会において「専門的知見に対して調査を依頼す
る事項」の配付があり、確認された3。
第1に、「四日市市補助金等交付基準」(以下、「現行基準」と略記する。)の精査である。
現行基準における補助金交付基準(14項目)4について、1)各項目の内容が適切であるか、2)
新たに加えるべき項目はないか、3)補助金の性質別に交付基準を定める必要性はあるか、
といった視点から精査を行う。例示として、現行基準(12)の「終期設定」が課題とし
て採り上げられている。現行基準では、補助要綱に終期が明記されていても継続可能とい
うルールであり、より一層の厳格な運用が求められる、とされている。
第2に、上記の検討結果をもとに、新たな補助金交付基準(案)を策定する。そこでは、前
述の通りの方向で補助金を、A「団体に対する補助金」、B「その他(小分類として個人給
付的補助金、記念行事事業費補助金、建設費補助金等に分類する)に分類し,それぞれに
新しい交付基準を策定するとされた。市議会としては、現行の一律の交付基準を細分化し、
議会が考える分類別の交付基準に細分化すべきという意向が伺える。
第3に、各補助金を仕分ける。策定した基準に基づき各補助金の不適合項目を洗い出し、
各補助金について、「継続すべき」「見直すべき」「廃止すべき」などの仕分けを行う。
第4に、上記の結果を報告書にまとめる。
2)調査事項の事前調整
それを受けて、同議会事務局を通じて、2013年6月7日の事前調整において、示された
調査依頼事項は、以下の4点である5。
第1に、「四日市市補助金等交付基準」(以下、「現行基準」と略記する。)の精査である。
現行の補助金等交付基準について、1)各項目の内容が適切であるか、2)新たに加えるべき
項目はないか、3)補助金の性質別に交付基準を定める必要性はあるか、といった視点から
精査を行う。
第2に、上記の検討結果をもとに、新たな補助金交付基準(案)を策定する。
第3に、各補助金の支出の適否について、上記の新補助金交付基準に基づき、現在支出
されている補助金について精査を行い、各補助金の支出の適否について検証を行う。
第4に、上記の結果について報告書を作成する。
第5に、調査期間は、2013(平成25)年8月定例月議会に間に合わせるために、同年7月
~8月を予定する。遅くとも10月の定例市議会に間に合うようにする。
市議会として、専門的知見を活用して調査研究を行うこととなった課題認識についても
説明があった。それによれば、四日市市では、執行部側が、現行基準により補助金支出の
適否について見直しを行っているが、基準不適合でありながらも理由を付して見直されて
いないものが多々あり、また、現行基準そのものについても現状に即しているとは言い難
いのが現状である、という。そして、今後の厳格かつ実効性のある見直しに向け、専門的
知見に基づき、補助金支出の適否および交付基準の妥当性について検証を行うことが必要
であるとされた。
──────────────
3 四日市市議会決算常任委員会配布資料「専門的知見に対して調査を依頼する事項」2013
年4月22日
4 「四日市市補助金等交付基準」は、「I 補助金について」および「II 団体等への負担
金について」と「補助金見直しチェックシート」からなる。このうち、「補助金交付基準14
項目」とは、前者の「I」のなかの「1.交付基準」のことである。
5 四日市市議会事務局「補助金にかかる調査依頼について」2013年7月
3)調査事項
2013年(平成25)年6月24日の決算常任委員会での確認を経て、6月28日に全会一致で
議決された。議決事項は以下の通りである、
補助金調査にかかる議決事項について
1.調査事項
四日市市補助金等交付基準の検証及び本市補助金支出の適否にかかる調査分析について
2.調査期間
調査委託をした日から平成25年10月4日まで
3.調査を委託する者
金井利之氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授、東京大学法学部教授、東京大学公
共政策大学院教授)
4.調査報告
調査終了後速やかに本市議会に調査報告書を提出すること
上記議決に基づき、7月25日に委託者である四日市市長と受託者との間で委託契約が締
結された。本調査は、締結された委託契約書に基づいて行った6。「調査業務委託仕様書」に
よれば、委託期間は、当初の意向および議決の通り、8月定例月議会に間に合わせるため、
10月4日までとされた。また、調査内容も、基本的には上記の調査依頼意向および事前調
整に沿ったものである。
具体的には、以下の通りである。
(1)四日市市補助金等交付基準の精査
四日市市補助金等交付基準における補助金交付基準について以下の視点などから精査
を行う。
・補助金交付基準の各項目の内容が適切であるか
・新たに加えるべき項目はないか
・補助金の性質別に交付基準を定める必要性があるか
(2)新たな交付基準(案)の作成
(1)の結果を基に現行の交付基準の見直しを行い、新たな交付基準(案)を策定する。
(3)補助金交付の状況についての分析
(2)の新たな交付基準(案)に基づき、現状の各補助金の交付の適否について分析を行う
(4)報告書の作成
以上を踏まえた報告書を作成する。
ただし、実際の調査研究過程の進行において、「専門的知見の活用」という特殊性(調査研
究の独立性・自律性・自発性など)から、調査事項の変動はあり得ることは、ある程度は受
託者の裁量に委ねられることも了解された。
──────────────
6 今回の専門的知見の活用に基づく調査研究は、四日市市議会が実質的な意味での調査の委
託者である。しかしながら、委託契約の当事者となることができるのは、法人としての四
日市市の執行機関である四日市市長であり、議事機関としての議会や、その長である議長、
あるいは、議会事務局長が契約の当事者となることは、法制上、困難と考えられたため、
このような契約当事者となっている。しかし、市長をはじめとする執行機関による補助金
の立案・決定・執行に関する調査を、行政に対する議会の監視機能を発揮すべく、外部の
専門家に依頼するのに対して、調査される側に立つかもしれない市長を委託者とするのは、
必ずしも常識に叶うものとは思えない。二元代表制の議会による行政の監視機能の改善の
観点から、法制的にも、改善を要することと思料される。
(3)調査方法
1)作業計画
正式の議決および調査委託契約の締結と並行して、2013年6月後半から7月前半にかけ
て、四日市市議会事務局と受託予定者との間で、作業計画に関する事前調整を行い、6月
29日付で、以下のような作業計画を策定した。なお、作業計画および日程はあくまで調査
着手前のイメージ案であり、実際の作業の進捗は、相互の日程調整や、調査の進捗に応じ
て、適宜変更があり得ることも了解された。
1 基本方針
1)議決・契約・仕様書に基づいて行う。
2)調査の依頼者である議会のニーズを最大限に反映する。
3)必要に応じて、市と受託者の双方で、適宜、柔軟に協議を行う。
4)調査に際しては、執行機関・議会の全面的な協力を前提とする。
2 具体的計画
1)調査作業計画に関する協議(於:メールおよび東京) *7月初旬
2)議会議事録、監査報告、行政改革・行政評価関係報告書・審議会答申その他文書分析
(於:東京、議会事務局による資料収集が前提) *7月中
3)会派代表議員ヒアリング(於:四日市、例えば、7月31日または8月1日)
1)問題と思われている補助金を抽出し、5)6)7)のヒアリング対象の絞り込み
2)議会における決算・予算審議システムの調査
3)市政ステークホールダー調査
4)財政経営課一般ヒアリング(於:四日市、例えば、7月31日または8月1日)
補助金見直しの前提となる市政の管理運営システムの調査
1)予算編成メカニズム、2)予算執行メカニズム、3)決算メカニズム
4)中期財政見通し、5)行政改革、6)総合計画、7)行政評価 など
財政経営課以外の関係部課もヒアリング(政策推進課、会計管理室、監査事務局)
5)財政経営課個別補助金ヒアリング(於:四日市)
6)所管部課ヒアリング(於:四日市)
7)理事者ヒアリング(於:四日市)
*5)6)7)は、2日間の予定で8月中に実施(例えば、8月12日~14日のうち2日間)
*追加調査が必要になるときは、別途、議会事務局と協議
8)可能であれば、補助金受給者ヒアリング(於:四日市)
9)分析(於:東京) *9月半ばまで
10)報告書作成 *9月末まで
2)実際の調査経過
実際の調査は、ほぼ、上記の作業計画に沿って進められた。調査に当たっては、上記の
基本方針が遵守され、資料の提供・整理、ヒアリングにおける質疑など、四日市市議会議
員・各会派、議会事務局、執行機関の関係各課の全面的な協力のもとに調査は進められた。
この点に関しては、深く謝意を表するところである。
具体的な経過は以下の通りである。
(1)調査計画に関する協議を7月中に断続的に行った。具体的には、事前収集資料の調整、
議会関係者からのヒアリングに関する日程、質問事項、および事前の聴き取りに関する調
整などが行われた。
(2)議会事務局より、7月19日付で事前資料提供を受け、会派代表および関係各課ヒアリ
ングに向けて、7月中に文書の分析を行った。なお、事前に提供された資料の目録は、報告
書末尾Bの通りである。
(3)会派代表議員ヒアリングを行った(於:四日市市役所内第2委員会室、7月31日およ
び8月1日)。議会事務局を通じて、各会派には、「補助金調査ヒアリングにかかる事前調査
項目」7を7月5日に提示し、事前に各会派の意向を取りまとめて、ヒアリングに臨んでも
らった。この議会議員・会派ヒアリングの目的は、基本方針1 2)に従い、調査の依頼者
である議会のニーズを最大限に反映するため、議会の問題意識や関心などのニーズを把握
することにある。各会派ヒアリングの日程は、以下の通りである。
7月31日11:00~、市民会議
7月31日13:00~ 創四会
7月31日14:00~ 無会派(日本共産党)
7月31日15:00~ 政友クラブ
8月1日9:00~ リベラル21
8月1日10:00~ 公明党
8月1日11:00~ 無会派
──────────────
7 事前調査項目は以下の通りである。
1.補助金見直しの目的は何か
2.特に問題があると考えている補助金はどれか(理由も)
3.執行部における見直し作業は、なぜ期待通りでなかったのか
4.議会において補助金見直しに対しどのような取り組みをしてきたのか
5.補助金の見直しが進まない理由として何が考えられるか。
6.予算にはいろいろと項目がある中で、なぜ補助金を取り上げるのか
7.その他、補助金調査にかかるご意見等があればお書きください。
(4)執行部関係部課に対して、市政管理運営システム一般ヒアリングを行った(於:四日市
役所内第2委員会室、8月1日)。ヒアリングの目的は、四日市市における予算編成メカニ
ズムや行政改革・総合計画のシステムなど、補助金見直しの前提となる市政の管理運営シ
ステムを調査することにある。具体的な日程は以下の通りである。
8月1日13:00~ 財政経営部財政経営課
8月1日14:00~ 政策推進部政策推進課
なお、当初の作業計画で想定していた会計管理室は補助金見直しには直接に関わりがない
ために、行わないこととした。また、監査事務局に関しては、個別補助金に関わる観点か
ら、別途行うことに変更した。
(5)(6)執行部関係部課に対して、個別補助金を具体的な題材とする個別事項ヒアリングを
行った(於:四日市市役所内第2委員会室、8月13日14日)。ここでは、議会議事録・予算
資料など事前の文書資料の分析、および、議会会派代表ヒアリングにおける議員の関心に
基づき、ヒアリングの対象とすべき個別補助金を選定し、それに関係する部課の職員の出
席を求めた。
個別の補助金の抽出は、上記のような資料・ヒアリングにおいて、特に議論や争点にな
り、言及されているものに即している。それゆえに、一定の基準に従って抽出したもので
はなく、体系性を備えたものではない。また、この個別補助金を題材とするヒアリングは、
補助金交付基準などの一般的な基準の是非を検討するための視点や問題点を、具体事例に
即して把握するためのものであり、「事業仕分け」的に、当該個別補助金に関して個別的な
是非を論ずるためのものではないことには、充分な留意がなされた。
具体的なヒアリングの日程は、以下の通りである。
8月13日11:04~12:22 財政経営部
8月13日13:00~14:17 教育委員会事務局
8月13日14:20~15:30 商工農水部
8月13日15:38~17:08 市民文化部
8月14日 9:10~10:25 環境部
8月14日10:28~11:48 こども未来部
8月14日12:57~14:19 健康福祉部
8月14日14:30~15:03 政策推進部
8月14日15:07~15:48 監査事務局
(7)作業計画とは異なり、正副市長など、理事者に対するヒアリングは行っていない。
(8)作業計画とは異なり、補助金受給者に対するヒアリングは行っていない。
(9)その後、8月後半から9月中にかけて、事後的に提供を受けた資料とともに、分析を
行い、報告書を作成した。
3)留意事項
上記のような調査過程から、以下の諸点に留意する必要があると思われる。
第1に、議会会派ヒアリング、ヒアリング後の議員との非公式の意見交換、議長・副議
長への表敬訪問での意見交換、決算常任委員長への表敬訪問での意見交換などから、議員
の意向は実に多様であることが明らかとなった。本調査は、統一された議会の意思に基づ
いて専門的に確定的・断定的な調査結果を示すよりも、今後の議会での多様な意見を踏ま
えた議論の活性化に資するような、議論の「たたき台」を提供すべきと思料されるに至っ
た。
第2に、作業計画では市長・副市長など理事者に対するヒアリングも想定していたが、
上記のとおり、これは行わなかった。1つには、まず、執行機関の各部課へのヒアリングを
行っており、その結果を咀嚼することが先決であると考えたためである。基本的には、各
所管部課は、理事者の意向を充分把握して事務処理を行っているはずという想定のもとに、
第一義的には関係部課のヒアリングを優先させた。2つには、勿論、所管部課と理事者とで
は立場や権限・裁量の範囲や責任などが異なるため、両者の見解が同一であるという保証
はなく、理事者ヒアリングの独自の価値は小さくない。しかし、今回の調査は与えられた
期間が異例に短かったということもあり、断念した。この点は、今回の調査の限界である。
将来的に追加調査によって、さらなる深堀が必要な場合には、理事者ヒアリングは不可欠
と考える。
第3に、作業計画では、補助金の交付を受けている団体・個人に対するヒアリングも想
定していた。これは、補助金の是非を論じるに際しては、一般的な市民の代表であるが具
体的な事業当事者ではない議員や、交付する側の所管部課側からのヒアリングだけでは、
偏りが生じることも考えられたからである。しかし、現実的には、多数の受給団体・個人
に幅広く偏りなく聴き取りを行うことは困難である。特に、今回の調査は、10月4日まで
という短期集中的な作業を必要としていたため、時間的な余裕もなかった。そこで、今回
の調査では、受給者側のヒアリングは断念した。
今回の調査では、受給者側の意向や感触は、所管部課が日常的な接触を通じて、ある程
度は把握しているとの想定のもので進めている。しかし、将来的に追加調査によって、さ
らなる深堀が必要な場合には、受給者ヒアリングは不可欠と考える8。
──────────────
8 受託者が、別の機会に、ある基礎的自治体の第三者外部評価委員会の委員の委嘱を受けた
ときに、このような実感を強く持った。通常、外部評価委員会は、所管部課からの事業評
価に関するヒアリングは行うが、当該事業の相手方や対象者から直接にヒアリングをした
り、現地踏査をしたりすることは少ない。しかし、試行的に対象者からヒアリングしたと
ころ、所管部課からのみのヒアリングでは得られない、様々な事業に係る問題点や長所・
短所さらには改善希望などが把握できた経験があった。
2.補助金分析の視点
(1)補助金とはなにか
1)市の実務上の補助金の定義
一般的には、自治体(法制的には地方公共団体)では、「補助金」を、「特定の事業、研究等
を育成助長するために地方公共団体が公益上必要があると認めた場合に対価なくして支出
するもの」と定義している9。さらに、「補助金等」とは、「補助金、利子補給金その他本市
が相当の反対給付を受けない給付金(市長が指定するものを除く。)」としている10。
関連して、「負担金」「交付金」「委託金」に関しても定義がなされている。すなわち、「負
担金」とは、「法令または契約などによって地方公共団体が負担することとなるもの」であ
り、例えば、特定の事業について、地方公共団体が当該事業から特別の利益を受けること
に対して、その事業に要する経費の全部または一部の金額を支出するものや、団体への加
入によって発生する支出などが挙げられる。「交付金」とは、「法令または条例、規則等に
より、団体あるいは組合等に対して、地方公共団体の事務を委託している場合において、
当該事務処理の報償として支出するもの」とされる。「委託金」は、「法令の規定または司
法上の契約による行政事務執行上の委託に対する支出」であるため、「委託金」と「交付金」
との相違はわかりにくい。四日市市によれば、「交付金」は「専ら報償として、一方的に交
付される」点で、「委託金」と異なるとされる。
このような実務上の定義の特徴は、補助金(補助金等も)は、「反対給付を受けない」と
されることである。確かに、事務事業を委託する場合や、物資を購入する場合などは、反
対給付として事務事業の遂行や物資を市は受けることになるので、補助金との相違点とし
て重要である。しかし、このことは、補助金の支出目的を判りにくくすることに繋がって
きた。
すなわち、「公益上必要」であるが、直接的な「反対給付を受けない」ために、補助金の
支出によって、市は一体何を目的としているのかが不明確になりやすいのである。委託事
業や物資購入の支出であれば、事業完了や物資納入によって、一対一の関係で、市の支出
の目的は達せられることが確認できる。しかし、補助金の場合には、補助事業の実施の完
了報告や実績報告を受けても、「公益上必要」だったのかどうかは、明らかにはならない。
それどころか、「反対給付を受けない」ために、補助金の支出によって市が、いわば市民を
代表して、公益の観点から、何を得たのかを問わない構造になっている。もっと言えば、
補助金支出によって、市は「反対給付」を得てはいけないのである。
2)政策(事業)手段としての補助金
補助金を上記1)のように定義する限り、税金を負担する市民感覚とは乖離が避けられな
い。反対給付を受けないにもかかわらず市が支出をするのであれば、市は対象団体に対し
て「条件付き寄付」をしているようなものである。確かに、市として「寄付」あるいは「条
件付き寄付」をすべき事柄はあるかもしれない。しかし、補助金では「公益上必要」なも
のに限定されており、いわば、補助金の支出によって、比喩的な意味での≪反対給付≫と
して公益の増進を享受する必要がある。市は慈善団体ではないのであって、≪反対給付≫
なき支出は原則としてあり得ない。
市は、民間の団体または個人の特定の事業・活動に対して補助金を支出し、それによっ
て≪反対給付≫としての公益の増進を享受できるがゆえに、「公益上必要」あるいは「公益
性」を主張することができる。つまり、市民の公益にかなう特定の事業・活動が定義され、
それを促進する手段として補助金が構成されなければならない。前者が市の政策目的であ
り、後者の補助金は政策実現のための手段となる。補助金とは政策手段の一種である。
──────────────
9 四日市市『四日市市補助金等交付規則解説』2頁。
10 同上。四日市市補助金等交付規則第2条(1)号。
3)政策(事業)目的の確定~総合計画の重要性~
したがって、補助金の是非を論じるためには、まずもって、市が目指すべき政策目的が
明確に定義されなければならない。市の政策目的が具体的に決定されていないときに、補
助金の是非を論じることはそもそもできないし、見直しも不可能である。
市の政策目的は、多種多様であり、複雑である。簡単なスローガンや標語に集約されて
いることもあるが、現実には、多種多様な施策・事業として細分化されて、体系的に構築
される必要がある。こうした政策目的の体系は、法令や条例(自治基本条例・分野別基本条
例なども含む)、予算、総合計画・推進計画11、各種の分野別計画、行政改革大綱・実施計
画(行財政改革プラン)のように重層的に表現されている。しかし、現代日本の自治体の標準
装備となっている総合計画こそが、政策目的を最も体系的に表現したものであり、補助金
の検討も総合計画に立ち返る必要がある。
逆に言えば、いかに補助金等交付基準を精査しても、それ自体では補助金の是非は結論
付けられるとは限らない。あくまで、総合計画・推進計画などに掲載される各個別事業が
貢献することを企図している政策目的の観点からしか、政策手段(実際の大きさは事業手
段と呼んだ方が適切であろう)の判断基準は導くことはできないのである。
(2)民間側から見た補助金
1)民間の団体・個人の事業・活動
補助金という事業手段の特徴は、民間の団体・個人が行う事業・活動を促進することが、
期待されているところにある。このように、「補助金の交付の対象となる事務または事業」
を「補助事業」という12。補助金は、補助事業のための手段である。
通常の市の事業は、市が自ら予算や職員を活用して、事業・活動を展開する。その過程
では、民間企業から物資を調達したり、アルバイトを活用したり、あるいは民間企業に事
業を委託するなどして、民間の事業を必要とする。しかし、このようにして獲得した成果
物をもとに、市が責任をもって事業を遂行するのである。その意味で、推進されるのは、
あくまで市の事業である。しかし、補助金の場合には、あくまで主体性や主導性は、民間
の団体・個人にあり、事業・活動は民間の団体・個人のものである。そのため、以下のよ
うな諸点に留意する必要がある。
──────────────
11 総合計画の体系は、各自治体によって多様である。基本構想-基本計画-実施計画の三
層構造が一般的とされるが、必ずしも三層であるとは限らないし、名称も多様である。現
在の四日市市の場合には、「四日市市総合計画(2011年度→2020年度)」が、基本構想と基
本計画を含む「総合計画」とされ、これを受けて、「第1次推進計画(2011~13年度)」が実
施計画に相当するものとして策定されている。推進計画は3カ年計画であるが、毎年ロー
リングされている。推進計画の事業一覧は予算資料となる。政策推進部『平成25年度当初
予算資料 四日市市総合計画第1次推進計画(平成23~25年度)事業一覧』2013年。
12 四日市市補助金等交付規則第2条第(2)号。正確には、同号は「補助事業等」を「補助金
等の交付の対象となる事務または事業」として定義しているが、ここでは、「等」以外の部
分を抽出した。
第1に、民間の団体・個人の自主的な事業・活動を、公益性があると、市として公的に
認定することが必要である。このような市の政策目的に合致するという公益性の認定は、
各所管課での個別的な決定に委ねるべきものではなく、総合計画などで、体系的になされ
るべきである。したがって、市の責任を持った事務事業と同様、民間の事業・活動も、総
合計画などに体系化される必要がある。
第2に、民間の団体・個人の自主的な事業・活動であるがゆえに、民間が行わないと決
定した場合には、市としてはそれを受容する覚悟を持っていることである。民間が廃止や
縮小を決定したとしても、それは民間の自主的な判断であり、市としてはそれ以上の関与
はできない。判りやすく言えば、仮になくなっても構わないという水準での公益性であり、
市民にとって公益上、必要不可欠な事業・活動を補助事業に委ねておくことはできない。
それゆえに、「行政の代替的事業」などという補助事業はあり得ない。市は、民間の団体・
個人に当該事業・活動を止められないように事実上の強要をすることは許されない。
第3に、民間団体・個人の公益性のある自主的な事業・活動を促進することが補助金の
効果であり、補助金がないときと比べて、補助金の存在によって、こうした事業・活動が
増進される必要がある。もちろん、全く条件を同じにして、ある補助金の有無によって、
当該事業・活動が本当に増えたかどうかを、厳密な意味では比較対照で実証することはで
きないだろう。しかし、補助金を導入しても、単に民間団体・個人の自己負担分を代替し
ただけに留まり、結果として事業・活動が促進されないのであれば、補助金の効果は薄い
といわなければならない。
第4に、とはいえ、補助金が民間団体・個人の自己負担分を補填するだけに留まってし
まい、必ずしも事業・活動を増進しないとしても、一定の意義がある。なぜならば、こう
した民間団体・個人は自発的・自主的に公益的な活動・事業を提供することによって、結
果的には、多くの市民はそれを享受できるからである。いわば、民間団体・個人の自発的
な負担によって、多くの市民は公共的価値や福利を享受することになる。これは、負担と
受益の関係から言うと、必ずしも公平とは言えない。したがって、広く市民が結果的に享
受することになる公益的な活動・事業に対して、一定の負担として、補助金を支出するこ
とも充分に意味がある。ただし、これは「補助金」ではなく、当該団体・個人と契約した
うえで、「負担金」あるいは「交付金」として整理すべきかもしれない。
2)補助事業手段の多様性
補助事業を行う民間の団体・個人から見て、事業・活動遂行に必要な手段や資源は多様
である。補助事業には、資金を必要とすることも多いが、人員、施設・場所・器具、情報
ノウハウなども必要である。これは企業の事業経営に必要な資源である、ヒト、モノ、カ
ネ、情報などと同様であるし、行政が行政運営に必要な行政資源と基本的には同じである。
補助金とは、補助事業に必要な手段・資源のうち、資金の全部または一部を市が支援する
ことで、民間の団体・個人の補助事業を促進しようという発想に立つ。
この点は、委託事業と大きな違いである。委託事業にも、ヒト、モノ、カネなどの経営
資源が必要である。しかし、委託事業の場合には、市が支出する委託費によって、委託事
業に必要な経営資源の全てを賄うことが想定されている。なぜならば、委託事業は、本来
は市が実施すべき、市が責任を負う事業であり、委託事業者の持ち出しや自己負担によっ
て賄われるべきものではないからである。もちろん、個々の委託事業に対してのみ、事業
者の人員・施設・設備などは利用されるわけではなく、他の事業にも共通して使われる。
しかし、事業者は、当該委託事業を含めた様々な仕事の受注による収入によって、これら
の共通する経営資源も賄い、さらに、利潤を上げなければならない。したがって、委託事
業においても、必要な共通資源に関する相応の負担も含まれているとみるべきであろう。
3)全額補助金の意義
補助とは、民間団体・個人が必要とする資源・手段を市が支援するものである。したが
って、必要とする資金の全額10/10を補助したとしても、不思議ではない。なぜなら
ば、資金という資源・手段に関しては市が全部を負担しても、民間団体・個人の全ての資
源・手段を負担した「丸抱え」ではないからである。
むしろ、多くの非営利団体は、人員をボランティアに支えられて、いわば、ヒトを自己
調達している。このような場合の補助事業は、いわば、民間がヒトを、行政がカネを、分
担し合うという関係である。
また、高率・全額補助金が、団体の市への依存を招くというのは、一概には言えない。
資金だけに視野を限定するのではなく、当該補助事業にはいかなる資源・手段が必要とさ
れ、そのうちのなにを民間と市が分担するのが適切か、という視点から検討されなければ
ならない。
さらに、委託事業との比較をするとわかりやすいが、委託費では事業に必要なヒトも賄
われている。その意味では「丸抱え」のように見ることもできるし、実際にも「官公需」
からの受注に依存した事業者もある。しかし、本来、委託事業は「民間経営のノウハウ」
を活用するのが目的であり、受託事業者の経営の自律性は当然の前提である。ただし、事
業自体は市の責任のもとにあり、その限りで、市は発注者として受注者に様々な指示をだ
すことができる。
補助事業であっても、当該事業遂行に必要な資源であるヒトに関する費用が、補助金で
賄われることも、充分にあり得る。そのもっとも典型的なのが、団体の人件費を保障する
運営費補助である。しかし、事業費補助においても、職員雇用やアルバイトなどのヒトに
充当することもあろう。さらには、活動・事業に参加するヒトや、その団体そのものに対
しての、奨励的な資金の付与として組み立てることもできる。
このように、補助事業の組み立て方は、それぞれの事業目的やその促進に向けた効果な
どの観点から、多様であり得る。重要なことは、個別の補助事業の公益性という政策目的
に照らして、適切な補助方策を構築するである。
4)補助手段のベストミックス
また、補助は、資金(補助金)というカネの支援によらずとも、人員・労働力というヒ
トの支援、施設・設備・備品などモノの支援、情報やノウハウの提供などによる支援でも
可能である。また、これらの組み合わせもあり得る。要は、補助事業を効果的・効率的に
促進するという観点からは、いかなる手段のベストミックスがあるかを、総合的に検討し
なければならない。
かつては、民間団体の公益的活動を支援するために、市職員を派遣したり、団体職員の
給与を市が負担したり、あるいは、民間団体の事務局的任務を市の所管課・職員が行うこ
とが広くなされてきた。「補助金」ではなく、いわば「補助人」が存在していたのである。
さらにいえば、現在でも所管課・職員が、当該民間団体などにいかなる役務を提供するか
は、それが市職員の本務そのものであるにせよ、民間団体の事業・活動の促進には大きな
意味を持つ。また、公益的活動に対して、市の施設の優先的利用や低料金での利用などを
認めることで、支援をしてきたこともある。民間団体が独自の施設を建設・取得・賃借す
ることに対して補助金を支出する方法もあるが、市の施設を現物として支援する方法もあ
る。
(3)行政側から見た補助金
1)政策・事業の構成要素
市の政策目的に貢献するための政策体系は、大くくりの政策から、中程度の施策、小項
目である事業など、多段階に構成されている。このような政策体系のなかで、個別の補助
金は、一部の部分を構成するものでしかなく、補助金を単体で取り出して検討することは、
必ずしも適切ではない。また、個々の小規模の施策や事業は、特定の市民・業界・地域な
どを対象としていることもあるが、これは他の施策や事業と相互補完的に作用して、広く
市民全体の公益に資するように構成されることが求められている。この点からも、「補助金」
や事業を単体で取り出して、その是非を論じることには限界がある。「木を見て森を見ず」
ということになりかねないからである。
補助金の見直しに際しては、当該補助金が、
・いかなる事業の手段を構成しているのか
・同一事業を構成する他の手段とはどのような関係にあるのか
・当該事業はいかなる上位施策・政策に貢献する部分となっているのか
・類似・補完・相乗・競合・対立・重複・代替・支援など関連する他の事業やさらに
は関連する他の事業を包括する施策・政策とどのような関係にあるか
等の、総合的かつ体系的な検討を要する。もちろん、こうした視点は、行政評価(業務棚
卸)や監査においても踏まえられるべきであるが、総合計画の策定や実施計画(推進計画)
の改定、行政改革大綱・実施計画(行財政改革プラン)の策定、予算編成、などにおいて
も必要である。
2)行政による民間への影響手段の多様性
補助金は、市の政策目的に照らして「公益上必要」である民間の活動・事業に、促進・
誘導・奨励という影響を与えようという政策・事業の実行手段である。いわば、プラス方
向での影響を与える効果を目指している。一般に、現金を給付することは、相手側を喜ば
すものであり、一定の活動・事業をするという条件で補助金を交付することは、当該活動・
事業を促進する方向で作用するだろう。その意味で、補助対象者から公益に提供される≪
反対給付≫を求めているのである。
しかし、民間に対してプラス方向での影響をもたらす手段は、補助金だけではない。上
述のように、カネ以外にも、ヒト、モノ、情報などを提供することも考えられる。特に、
市においては、市民に広報・宣伝・周知したり、市民を啓発・説得・誘導・指導すること
は重要な影響手段である。民間の団体・市民によって自発的に公益的活動をすることを促
進するには、まずもって、公益性に働き掛けることが大前提である。補助金は、民間団体
や個人をカネで釣るのではない。自発的に公益的活動・事業をする団体・個人を資金面で
支援するのであり、その前提は、民間の団体・個人が公益的活動を自発的に行う意識が醸
成されることにある。
また、市から民間への影響手段には、マイナス方向でのものもある。禁止、制限、許認
可制、負担など、いわゆる法的規制がその代表である。市は、民間活動のうち望ましいも
のをプラス方向の手段で促進し、望ましくないものをマイナス方向の手段で抑制する、と
いうのが本来の姿である。「飴と鞭」の双方が全体として体系を構築していなければならな
い。したがって、補助金を検討する際にも、規制的手法との関係がどのようになっている
のかを、検討されなければならない。
特に、補助金の交付を受けることは、当該民間団体・個人には、補助条件に従った行動
を義務付けられるという意味で、規制的効果を持っている。もちろん、補助金の申請をし
なければ、そうした規制を受けないのであるから、一般的に禁止・負担などを課される規
制的手法とは同じではない。しかし、ひとたび、補助金という「禁断の実」を食べてしま
うと、それに伴う様々な制約や義務を受けることになる。補助金交付規則には、こうした
様々な規制が課されている。
市の公金を受給する以上、透明性や説明責任や公益性の観点から、当然といえば当然の
規制であるが、民間の団体・個人の自発性と自由の観点からは、こうした規制は最小限度
でなければならない。補助金に伴う規制の大きさが、補助金を受けることをためらわせ、
様々な追加的コストを民間に生み出し、結果として、市が促進したい民間の公益的活動・
事業の促進に抑制効果をもたらさないかの検討も必要である。
(4)「補助金」という横断的接近方法の特徴と限界
1)行政の膨大性と分業
補助金は、それが手段となっている事業を通じて、他の事業や、施策・政策と網目のよ
うな関係性を構築している。そして、基礎的自治体ではあっても、事業数は膨大であり、
その全体像をつかむことは容易ではない。したがって、市の全事業体系という「森を見る」
必要性は当然であるが、「森で道に迷う」危険性も非常に大きいと言わねばならない。個々
の補助金を検討しようとすると、市の全事業体系を総合的に勘案する必要があると反論さ
れる。
しかし、いざ市の全事業体系を総合的に勘案しようとすれば、あまりに膨大な内容を持
つため、どこから手を付ければよいかわからない。そもそも、理事者や財政・企画・行政
改革部局でさえ、全体像を把握しているとは限らないので、市行政側としても充分な手当
が施されにくい。こうして、市行政の全体像は不可知・不可触・不可侵の「リバイアサン」
になっていき、市議会や市民による統制はもちろん、市長や財政当局でさえ管理が困難に
なっていくのである。
そのため、行政は、部課という所管に分けて、各施策・事業に関する分業を行っており、
四日市市も例外ではない。したがって、事業の手段として、事業の一部を構成する補助金
も、当然ながら、各所管部課が最も内容を熟知し、その必要性も問題点も把握している。
また、補助金交付を受けるなどの関係する団体・個人との接触や交渉も、所管部課が中心
となって行っている。したがって、補助金の見直しは、当然ながら、各所管部課が主体的
に問題意識を持って、積極的に取り組まない限り、有意義なものにはならない。外部から
無理やりに「見直し」を求めても、決してそれだけではうまくいかない。
しかしながら、こうした所管部課を中心とする分業は、当然ながら、現状維持や既得権
や問題回避という病理現象を伴いがちであることもまた、経験から明らかである。補助金
の見直しは、所管部課が積極的に取り組まなければならないが、見直しの手間・負担・苦
闘・労力などは、所管部課が負うことになる。補助金は、相手方にプラスの給付を与える
ものであるがゆえに、その見直しによって削減などが検討されれば、当然ながら、関係団
体・個人からの反発が起きやすく、交渉の難しさは所管部課に集中する。そして、そもそ
も、必要性・公益性を立証できずに補助金の見直しを迫られることは、所管部課としては、
それまで不要な事業を行っていたことを自ら認めることでもあり、できれば回避したいも
のである。要は、所管部課は、既存の補助金を、そのまま正当化し、継続したいという、
傾向を持ちがちなのである。
ここに補助金に限らないが、行政の施策・事業を見直すことの難しさがある。約言して
言えば、行政の政策体系は膨大であり、施策・事業ごとに各所管部課での分業が不可避で
ある。しかし、そのような分業のゆえに、所管部課は既存の事業をそのまま正当化し、継
続しようという傾向が生まれ、補助金見直しも進みにくいのである。したがって、各所管
部課に、いかに主体的に補助金を含む事業を見直しする動機付けを与えるかが、問題なの
である。現行の補助金交付基準は、こうした動機付けのための工夫の一つでありその改善
が求められているのである。
2)予算と行政改革における補助金
予算という仕掛は、膨大で分業されている行政の全事業を、財政資金という側面から、
統一的に切り取って、体系的に管理しようというものである。施策・事業は、ヒト・モノ・
カネなどの多様な行政資源を組み合わせて遂行されるが、カネ(財源)を必要としないことは
少ない。したがって、財源の観点を統一的・体系的に管理すれば、行政の全事業を管理す
ることができるはずである。補助金はそうした予算のなかの一つの性質別項目である。
しかし、予算という財政資金に限定したものでさえ、膨大な内容を含むものである。そ
して、個々の予算事業の中身を精査しようとすれば、個別の施策・事業の個別事情に踏み
込んだ検討をせざるを得ず、全体的体系的に見直すことは容易ではない。
「補助金」という横断的接近方法は、予算のなかでも、さらにその一部である「補助金」
に限定して焦点を絞りつつ、各所管部課・所管常任委員会ごとの政策別縦割の接近方法で
では困難な、全庁的・統一的な見直しを目指す、行政改革の戦術である。
行政改革は、通常の所管部課別の縦割り的視点では見えてこない点を、横断的な切り口
に変えることで、各所管部課に見直しの契機を与えるものである。行政改革は、予算面だ
けではなく、例えば、人事管理や情報管理、市民対応、地域自治組織など、その他の横断
的な接近方法をも採用する。また、予算面でも、例えば、「使用料・手数料・自己負担の見
直し」「徴収率の向上」「委託の見直し」「施設マネジメント」など、多様な切り口がある。
逆に言えば、補助金に焦点を当てるということは、なぜ、他にも多種ある予算項目のなか
で、補助金に注目するのかという点を説明しなければならない。
地方自治法第216条および同施行規則第15条に基づき、歳出は款項目節に区分される。
政策分野別の縦割りの分業が基本であるように、款項目は予算を使用する目的に従って分
類される。例えば、土木費(款)、道路橋梁費(項)、道路維持費(目)というような具合である。
これに対して、節は支出内容の性質により28類型13の節に分けられており、「補助金」とは、
こうした性質別に分類した節の一種なのである。なぜ、節という性質に注目するのか、そ
して、他の27類型の節ではなく、なぜ補助金に注目するのかが重要である。後述するよう
に、補助金と委託料は、実質的には密接な関係を有し得るため、委託料に注目しなくて良
いのか、という論点などである。
3)マクロ予算編成での一律削減方式
補助金見直しを各所管課に動機付けることは、行政改革に位置付けたとしても、容易な
ことではない。各所管課に働き掛けても、各所管には施策・事業ごとの判断が必要であり、
また、過去の経緯や関係団体との関係など、統一的な状況は存在しないからである。横断
的全庁的に補助金見直しを働き掛けるためには、各所管課が直面する個別事情とは別個に、
全市的に共通する問題状況が必要である。この最も代表的なものが、財政危機である。
──────────────
13 他の27類型とは、1報酬、2給料、3職員手当、4共済費、5災害補償費、6恩給及び退
職年金、7賃金、8報償費、9旅費、10交際費、11需用費、12役務費、13委託料、14使
用料及び賃借料、15工事請負費、16原材料費、17公有財産購入費、18備品購入費、19負
担金、補助金及び交付金、20扶助費、21貸付金、22補償、補填及び賠償金、23償還金、
利子及び割引料、24投資及び出資金、25積立金、26寄附金、27公課費、28繰出金、であ
る。補助金は、こうしてみると、節そのものですらなく、節の一部である。
財政危機に直面すれば、各所管課が直面する事業ごとの事情とは別に、全庁を通じて歳
出削減が求められる。このように、総額の予算収支を合わせるというマクロ予算編成の要
請から、歳出削減のための要調整額が、個別施策分野、各所管部課、あるいは、各性質別
費目に割り振られるときに、各所管課は対応に迫られる。簡単に言えば、中期財政見通し
または単年度収支見通しにおいてマクロ的に財政危機であり、その対策が必要として、各
所管課や各費目に割当てることになる。これがシーリングである。
このとき、必要性・公益性の強弱を勘案して割り当てるシーリングに差異を設けること
もあるが、そのような差異を設ける説得的理由を構築することが困難なことも多い。この
場合には、「一律削減」という手法が採られる。補助金の一律削減に直面した各所管課は、
1)各補助金をそのまま一律削減するか、あるいは、2)所管する多数の補助金のうち一部を
廃止することで削減割当分を捻出するか、または、3)補助制度を組み替えるか、などによ
って見直しをすることになる。このように、マクロ予算編成上の要請は、各所管課に見直
しを迫る契機となる。実際、四日市市でもこのような「一律削減」が取り組まれたことも
ある。
しかし、こうした一律削減方式には、以下の留意点が必要である。
第1に、マクロ予算の収支状況が理由となっているため、逆に、一時的な財政削減策が
成功すると、再び復元する圧力が生じるということである。「お金がないから」見直しただ
けなので、「お金に余裕ができた」以上、見直し前に戻すことが正当だからである。補助金
の意義や効果を検証しての見直しではないからである。
第2に、したがって、このような一律削減方式を継続するには、中期財政見通しに基づ
き、常に厳しい予算運営を強力に構築する仕組みが必要である。というのは、一律削減を
行えば一時的には財政状況は緩和するのであり、そのような小康状態に抗して見直しを続
けるには、中期的な持続可能性に向けた理論構築が必要なのである。四日市市の最新の「中
期財政収支見通し」14によれば、決算や2013(平成25)年度の当初予算を含めた第1次推進
計画実施期間では収支はプラスの状況であり、このような観点からの一律削減方式での補
助金見直しは困難である。
とはいえ、一律削減方式は、所管課および財政経営課に、補助金見直しの目標額を付与
する点では、非常に重要な手法である。現在の補助金交付基準における終期設定や、サン
セット補助金と同様、行政や政策決定に携わる「人間の性」を熟知した手法である。サン
セット方式が、ある年限の次元を区切って、当該補助金に関して全額削減を求めるのに対
して、一律削減方式は、全ての補助金に対して一定比率での削減を求めるのである。この
ように強制的に「浮いた」財源は、財政健全化にも、他の予算項目にも、そして、新たな
補助金の創設にも活用できる。
補助金見直しという観点からは、一律削減によって浮いた補助金を、新たな補助金創設
に充当することは、充分に検討に値する。確かに、削減された側の個別補助金の所管課お
よび関係団体・個人からすれば、個別事情を勘案しない理不尽な取り扱いと映るかもしれ
ない。しかし、もし、当該補助金が、公益性の観点から優先度が高いものであれば、新た
な補助金が創設されれば、当該事業・活動またはそれに相当する事業・活動への支援がな
されるはずである。つまり、一律削減を恐れるのは、新たな補助金創設では認められない
ような公益性の低い補助金だからなのである。
行政改革に補助金見直しプログラムを位置付けても、現実には、空文化することも多い。
しかし、一律削減を義務付け、それによって浮いた財源を基に新たな補助金の創設に充当
するのであれば、補助金見直しは、充分に執行部の所管部課に埋め込むことが期待されよ
う。
──────────────
14 財政経営部『平成25年2月定例月議会 平成25年度当初予算追加資料 中期財政収支
見通し』2013年。なお、補助費は「過去の実績を基に推計」したという。なお、推進計画
期間(2011年度~13年度)つまり2013年度当初予算に関しては収支見通しがついているの
は、2013年度予算資料としては当然である。しかし、2014年度から16年度までの中期財
政収支見通しは、1100億円程度の規模の予算において、毎年10億円程度の不足が見込ま
れている。
4)スクラップ・アンド・ビルド方式
一律削減方式によって浮かせた補助金総額を、新たな補助金創設の財源プールとして活
用するのは、一種のマクロ的なスクラップ・アンド・ビルド方式である。スクラップ・ア
ンド・ビルド方式とは、ある新しい事業を創出しようというときには、それに相当する財
源を費消している既存の事業の廃止を提案することと、一体不可分とするものである。こ
うすることにより、新たな事業を立ち上げたい所管課に、既存事業の廃止を提案・納得さ
せるのである。
補助金に特化して言えば、所管課がある補助金を新設したいときには、別の既存の補助
金の廃止・削減などを、一体不可分として提案することになる。また、少し広く捉えれば、
ある補助金を新設するときに、補助金に限らず、別の既存の事業の見直しによって財源を
捻出することになる。もっとも、所管課という範囲で、新設と廃止・抑制・削減がうまく
一体不可分でできないときには、所管部などの大きな括りが必要になる。市全体あるいは
財政経営課の予算編成の観点からは、ある所管部課の補助金新設は、当該部課の事業・補
助金の削減を見合いでなくともよく、別の部課の事業・補助金の見直しとセットでもよい
はずである。しかし、これでは、所管部課に補助金見直しを提案・納得させるという、ス
クラップ・アンド・ビルド方式の理念は生かせない。やはり、所管部課のなかで、新設と
見直しを一体とし、所管部課が主体的に見直し提案をすることが肝要である。
5)補助金見直しと「看板書き換え」問題
補助金に見直しを求める圧力が強くなると、金額はほとんど変わらないまま、別の予算
科目として振替えられ、結果的には、市から支出される金額はほとんど変わらず、また、
市から受給する団体にもほとんど影響しない、ということがあり得る。いわゆる「看板書
き換え」問題である。こうした問題は、補助金見直しに限らず、ある特定の切り口から行
政改革を迫るときに、しばしば、発生する。
例えば、職員定数削減の圧力が強いと、職員を削減し、委託やアルバイトなどの非正規
雇用に振替え、結果的には市から労働に支払われる金額は抑制されないこともある。一般
会計への改革圧力が高まると、特別会計や基金、外郭団体、第三セクターなどを通じた支
出に振り替わることもある。外郭団体や施設の整理への圧力が高まると、統廃合と称して、
単に団体・施設を統合して数だけ減らすこともある。要するに、行政改革とは「もぐら叩
き」である。あるいは、行政とは「風船」のようなものであり、どこかを押して凹ませれ
ば、別のところに膨らみができるだけ、ということもある。
補助金見直しで特に留意すべきは、委託金との関係である。定義上は、補助と委託は全
く異なる。補助金の場合には、あくまで、主体性は民間の団体・個人にあるのであって、
民間側が当該事業・活動を行うか否かを決定する。委託金の場合は、行政の事務事業の執
行のために、資金を支払って、民間団体に遂行を委託するのであって、当該事業を行うか
否かを決定するのは行政である。
しかしながら、公益性のある活動・事業に対して交付されている補助金は、その公益性
が高ければ高いほど、行政としては廃止・中止・休止されては困るものなのであり、行政
の代替的性格を帯びてくる。このような境界領域では、事実上補助と委託は相互に類似し
たものとなる。そこで、補助金見直しの圧力が高まり、具体的に民間団体のいかなる活動・
事業に公益性があり、そのための資金支援がどの程度必要か、などが精査されていくと、
委託事業に切り替えられていくことになる。
もちろん、精査がきちんとされ、委託事業としての公益性・正当性が立証されれば、む
しろ、支出の理由付けが明確になったのであり、補助金見直しの改革成果が挙がったとい
うことができる。しかし、単に、補助金見直し事項の実績を出したい、名目的な補助金金
額を削減したい、というような場合には、実質的には「看板の架け替え」となることがあ
る。その場合には、委託事業の内容を示す契約書・仕様書の内容が漠然としたままという
ことになる。こうなると、補助金見直しは補助金のみで収束せず、必然的に、委託金にま
で戦線が拡大することになる。したがって、補助金から委託金への「振り替え」に相当す
る補助金見直し15に関しては、特に、「看板の架け替え」という疑念を招かないように、通
常の議会予算審議とは別個に、市議会や市民参加の場での公開の議論と理解が必要である。
(5)補助金見直しと行政・民間関係論
1)公益的活動の自発性と資金負担
補助金とは、大きく捉えれば、地域における公益性のある公共的サービスの提供につな
がる事業・活動を、市行政を含めた行政と、企業・非営利団体・地域団体や個人を含めた
民間とで、どのような関係で構成していくかという、行政・民間関係に関わる政策・事業
手段である。補助金とは、民間が行う自主的な事業・活動に公益性を認め、これに資金支
援を行政として行うという関係のなかに存在する。補助金を見直すに際しては、本来は、
行政・民間関係という大きな地域経営の文脈を踏まえる必要がある。補助金は、行政・民
間関係と繋ぐ一つの回路だからである。
行政・民間関係には、補助金をめぐる関係からは、【表1】のように整理できる。
【表1】
┌───────────────────┬───────────────────┐
│ │ 行政から民間への資金支出 │
│ ├─────────┬─────────┤
│ │ あり │ なし │
├──────────┬────────┼─────────┼─────────┤
│ 行政から民間への │ 義務付けあり │ 公用負担活動 │ 奉仕活動 │
│公益的活動の義務付け│(自発性なし) │(負担金・無償制)
│ │
│ (公益的活動への ├────────┼─────────┼─────────┤
│ 民間の自発性) │ 義務付けなし │ 公益的活動支援 │ ボランティア │
│ │(自発性あり) │ (補助金)
│ │
└──────────┴────────┴─────────┴─────────┘
以下では、説明を加える。
第1に、公共サービスは行政の責任で全うすべきであり、民間活動は私的活動として、
公共性・公益性を期待される必要はないし、また、行政としても関与をすべきではないと
いう考え方である。明確な公私二区分・峻別論である。この場合、「大きな政府」になるか
「小さな政府」になるか、双方ともあり得る。「小さな政府」の場合には、公共サービスは
最小限の精査されたものになる。当然、民間活動に公益性は基本的に認められないのであ
り、補助金は全廃が原則となる。この場合は、公と峻別された私の世界では、行政から民
間への資金支出はなく、また、反対に、行政が民間に対して公益的活動を義務付けること
もしないという、私的自治の「ボランティア」の領域が形成される(【表1】の右下欄)。
第2に、公共サービスは、行政と民間とで担われるという考え方である。民間活動の全
てが公共性を持つとは限らず、民間活動のなかに、私生活的・営利私益的・共益的な活動
と、公共的・公益的な活動が混在することになる。そのため、「政・公・私」三区分論とな
る。つまり、公共サービスや公共性・公益性は「政」(行政や政府)の独占物ではなく、民間
活動のうちに公共的・公益的な「公」の領域があるというものである。問題は、民間活動
が担う公益性を、どのように認定し、どのように担保するかである。
──────────────
15 もちろん、所管課および財政経営課などの執行部側の公式説明は、補助金と委託金は性
格が全く異なるものであり、「看板の書き換え」はあり得ないと述べるであろう。ある補助
金が廃止され、たまたま、別の委託金が創設され、補助金受給団体と委託先の受託団体が
同一または実質同一で、金額も同一または近似額だった、などである。しかし、そのよう
な説明が、市民や市民代表の市議会に対して説得的であるか否かが重要なのである。
1つは、結局、行政が民間活動の公益性を認定して義務付けるというものである。公益
性を認定されることは重要なことであり、必要不可欠ということになれば、民間に活動す
ることを義務付けることになる。いわば、行政が公共性を認定し、民間に活動への従事を
義務付けるものである。憲法は、勤労の義務、教育を受けさせる義務、納税の義務を課し
ているが、これらの民間活動に公益性を認定したうえで、国民に義務付けているのである。
このほか、保護者には子どもを扶養する義務を課している。納税の義務は、いわば、公私
二区分における政府の活動を基礎付けている負担であって、実質的な民間公益活動の義務
付けは、勤労、教育、扶養などということになる。これらは、いわば、人々を「ただ働き
の公務員」に位置付け、あるいは、金銭の納税の代わりに「体で払う」ことと求めること
である。これ以外でも、様々な法律・条例に基づく義務付けは、こうした側面を持つので
ある。当然、こうした義務付けは最低限にすることが期待される。この場合は、行政から
民間への資金支出はなく、しかし、行政が民間に対して公益的活動を義務付けられるとい
う、「奉仕活動」の領域が形成される(【表1】の右上欄)。
とはいえ、民間に公益性のある活動を義務付けるならば、無償の「奉仕活動」として「た
だ働き」をさせるのは不当だという考え方もあろう。その場合には、行政は資金や現物な
ど、一定の負担をすることも考えられる。例えば、義務教育は無償とされているのは、保
護者に子どもに教育を受けさせる義務(「義務教育」)を負わせた上で、行政が資金・現物を
負担するという役割分担である。また、義務付けた上で費用負担するという場合、これは
補助金とは言えない。あえて言うならば、「分担金」「負担金」とでも呼ぶべきものであろ
う。補助金は原則として廃止されるべきものである。この場合には、行政から民間への資
金支出が、行政が民間に対して公益的活動を義務付けたのと相対でなされるという、「公用
負担活動」の領域が形成される(【表1】の左上欄)。
「公用負担活動」は、公益的活動に従事するという負担を民間に強いる代わりに、その
対価としての補償を支出しているものである。その点で、従事する負担だけを強いる「奉
仕活動」が「懲役」的であることとは異なる。したがって、「懲役」とまでは行かなくとも、
「徴役」であるとはいえる。しかし、従事はする意味で、実質的には、民間団体は公務員・
行政組織に準ずることになる。また、契約によって、委託料を受けて、公益的活動に従事
する委託業者にも似る。もっとも、公務員は給与との対価で自発的に任用に応じているの
であり、委託業者も委託を受けるのは自発的な選択によるのであって、それよりは強制の
契機が強い。そもそも、これらは民間の活動ではなく、あくまで行政が責任を負っての活
動である。
2つは、公益性の認定は行政が行うが、民間に活動を義務付けることはせず、あくまで
支援・誘導に留まるというものである。補助金は、こうした行政・民間関係に適した手段
の一つである。民間は活動を義務付けられるわけではないから、支援や誘導が充分に効果
的でない場合には、民間は活動を休止・停止することも自由である。行政として、仮に民
間活動を維持させたいならば、それなりの支援をしなければならない。逆に、そこまで支
援をするに値しないと判断すれば、公益性があると認定できるものであるにもかかわらず、
当該民間活動が消滅することを甘受するということである。この場合には、行政から民間
への資金支出はあり得るが、行政が民間に対して公益的活動を義務付けることもしないと
いう、「公益的活動支援」の領域が形成される(【表1】の左下欄)。補助金とは、こうした
タイプに整合的な政策・事業の実行手段なのである。
2)民間による公益性の自律的な判断
3つは、行政が公益性を認定せず、民間の独自の世界による公益性の認定を行うという
ものである。この場合にも、行政が交付する補助金は原則として廃止される。もちろん、
民間の「自主規制」でしかないから、民間が認定した公益性を、民間が義務付けられるこ
とはあり得ない。むしろ、民間が認定した公益性を基に、それを支援・誘導するというも
のである。民間が公益性を認定したものを、民間活動に支援するための、民間からの補助
金を考えるとすると、民間基金の造成が必要である。実は、この「民間チャリティ活動」
の領域は、上記の【表1】の世界には当てはまらない、日本では新しい領域である。【表1】
の世界は、あくまで公益性を行政(あるいは、政治過程)が認定するという前提があった。し
かし、メセナ、企業の社会的責任、寄付、チャリティなどは、民間の自律的な世界での公
益性の認定があり得るということを意味している。この新しい領域は、【表2】で言えば、
下段に当たる。【表1】で示されるような旧来の領域は、【表2】の上段に当たる。
【表2】
┌───────────────────┬───────────────────┐
│ │ 行政から民間への資金支出 │
│ ├───────────────────┤
│ │ あり │ なし │
├──────────┬────────┼─────────┼─────────┤
│ 公益性の認定 │行政(政治過程)│ 公用負担活動 │ 奉仕活動 │
│(主体ないしは手続)
│ │ 公益的活動支援 │ ボランティア │
│ ├────────┼─────────┼─────────┤
│ │民間の自律的判断│行政による基金造成│ 民間基金 │
└──────────┴────────┴─────────┴─────────┘
民間基金が、民間からの自発的な寄付などによって造成され、民間の自律的な判断で、
補助金として交付されることが、民間の自律的な公益性の一つの姿である(【表2】の右下
欄)。そうでなくとも、基金の造成は、行政が税金で負担するとしても、その配分には行政
は関与しないという方策もある。いわば、例えば、住民税収の1%のように、基金総額には
公益性認定を行政が行うが、個別の補助金配分における公益性の認定は、行政が関与しな
いというものである(【表2】の左下欄)。
これらのタイプは、民間の自発的かつ自主的な意思や創意を尊重する点で、民間活動に
好意的である。しかし、問題となるのは、民間がいかなる基準と手続によって公益性を認
定するかである。行政の公益性の認定は、最終的には、選挙された民意に基づく、民主的
な政治過程による正統性が存在する。つまり、法令・条例・予算、要綱などの内規、各所
管課の交付決定など、行政の公益性の認定は、最終的には国または自治体の議会および首
長という代表者によって是認される必要がある。民主主義が公益性を判断する基準・手続
の正統性の根拠である。民間が、こうした政治家や行政から自立して公益性を認定する場
合、いかなる正統性を構築するかが、重要な課題となる。通常考えられているのは、公開
の場での提案説明と質疑・討論を踏まえた採択であるが、それだけで充分とは言えないか
もしれない。採択する審査員の選任が歪んでいるかもしれないからである。
3.補助金等交付基準の総論的検討
(1)位置付け
1)法令・条例・予算・附帯決議
補助金は、地方自治法の規定に基づき、公益性の認められるものに支出することが認め
られている。補助金の交付には、個別の法令または条例による根拠が存在するものもある
が、多くは予算によって認められている予算補助である。法令または条例で根拠付けられ
る補助金も、通常は、「予算の範囲内」という条件が付けられることが普通であり、法令ま
たは条例で補助金の支出が義務付けられることは少ない。また、法令または条例で義務付
けられているとしても、予算措置がされることが必要である。その意味で、補助金交付の
最も中心的な根拠は予算である。
これに加えて、四日市市では予算に伴う附帯決議という慣行が重要な意味を持っている。
附帯議決とは、予算の議決に際して、執行機関に付した様々な条件である。そして、当該
予算の執行に際しては、議会が当該附帯決議を解除することを認める必要がある、という
のが四日市市での運用慣例である。議会は、予算を減額修正することはできるが、附帯決
議の場合には減額修正をするものではなく、議決自体は予算案の通りになされる。しかし、
附帯決議が残る限り、当該附帯決議で条件付けられた支出事項に関しては、その款項目節
の如何に関わりなく、執行ができないという運用である。そのため、実質的な予算の執行
凍結の機能を持つ。このように、四日市市では、予算および附帯決議が補助金の交付のも
っとも根本的な根拠となる。
2)補助金等交付規則・補助要綱
予算措置された補助金は、四日市市補助金等交付規則によって運用が行われる。同規則
は、補助金等の予算の執行の適正化と効率的な運用を図ることが目的であり、補助金等の
申請、決定などに関し、必要な事項を定めている。
さらに、所管課による補助金の運用のためには、補助要綱が定められることが普通であ
る。補助要綱は、法的には拘束力のない事務処理上の内規ではあるものの、現実には補助
要綱に沿って、補助金の申請者である団体や個人は行動せざるを得ず、実質的には外部的
な影響力を持っている。そのため、補助要綱をあらかじめ定め公表することは、補助制度
の透明性の確保にとって重要である。しかしながら、補助要綱の策定と公表に関しては、
必ずしも法令・条例・予算・規則には明示されておらず、後述する補助金等交付基準に記
載されているに過ぎない。このような曖昧な位置付けは、透明性の観点から好ましいこと
ではない。したがって、補助要綱を必ず策定し公表することについて、交付規則に明文で
規定することが必要である。
3)補助金等交付基準
補助金等交付規則、および、実務的には補助要綱、に基づき、予算化された補助金の交
付決定などは為される。しかし、その前提として、いかなる補助金が交付されるべきかと
いう、補助金の予算編成・執行にわたる見直しの基準は、これらの交付規則・補助要綱に
は盛り込まれていない。見直された結果として予算措置が認められた補助金に関して、補
助要綱に基づいて交付がされるのであって、その大元である予算措置や補助要綱をどのよ
うに検討し見直して決定するかは、別の基準が必要である。このような補助金の適正化と
いう意思決定の基準となるのが、補助金等交付基準である。1999(平成11)年度に「補助金
の見直し基準」が策定され、2008(平成20)年4月に「補助金等交付基準」に見直し、統一
的な基準を策定しているところである。
現在の四日市市における、補助金等交付規則、補助要綱、補助金等交付基準の役割分担
は、大まかには【表3】のように整理することができる。
【表3】
┌───────────────────┬───────────────────┐
│ │ 基準 │
│ ├─────────┬─────────┤
│ │ 手続 │ 実体 │
├────────┬──────────┼─────────┼─────────┤
│ 予算過程 │編成(検討・見直し)│ なし │補助金等交付基準 │
│ における段階 ├──────────┼─────────┼─────────┤
│ │ 執行 │補助金等交付規則 │ 補助要綱 │
└────────┴──────────┴─────────┴─────────┘
(2)補助金等交付基準の問題点と改善の方向性
1)見直しの実体基準としての効果
補助金等交付基準は、補助金見直しに係る実体基準としての機能を期待されている。し
かし、予算編成における補助金制度の新設や見直しの際の実体基準として、必ずしも効果
的に機能しているとは認められないことである。補助金等交付基準、および、それを判り
やすくチャート図式化した「チェックリスト」に、個別具体の補助金が該当するかは、財
政経営課は一覧表を作って検討の俎上には載せている16。しかしながら、このような「チェ
ックリスト」に該当した補助金であっても、その多くは、個別の予算折衝を経るなかで、
個別の事情の検討がなされた結果、そのまま存続されることが多くみられる。その意味で、
見直しの実体基準としては、充分な力を持っていない。
──────────────
16 財政経営部『平成25年度当初予算 補助金見直し一覧表(見直し以外)』。核チェック項
目に該当する場合には「○」印が付いた一覧表である
そして、個別の補助金は、それぞれの事業を実現するための手段として構成されている。
当該事業に関して最も情報を有している所管課が、補助金を含めた見直しに着手しない限
り、補助金等交付基準は効果を持ちえない。ところが、実際の予算編成過程において、所
管課は補助金等交付基準を参酌することは、ほとんどないのである。なぜならば、補助金
等交付基準は、補助金の統一的な基準として策定されているがゆえに、個別具体の政策目
的に資するために構成された個々の補助金のそれぞれの事情をうまく勘案していないから
である。このため、補助金等交付基準は、個別の補助金の事情を所管課が勘案できるよう
に、工夫される必要がある。そのためには、補助金を統一的に把握して基準を策定するの
ではなく、いくつかの種類に細分化して、それぞれに即応した基準に精緻化する必要があ
る。
2)見直しの手続基準としての深化
補助金等交付基準が、見直しの実体基準として完璧なものであれば、当該実体基準に沿
って、所管課、財政経営課が予算編成過程で見直しを行えば、適正な補助金制度が構築で
きるはずである。実体基準を策定すれば、自動的に補助金が適正化するはずだ、という期
待もあり得よう。しかし、市の政策目的に照らして適切な事業手段を構成するという意思
決定は、総合的な衡量を要するとともに、政治的政策的な価値判断を含むものであって、
実体基準に即して自動販売機のように一義的な見直し結論が得られるものではない。むし
ろ、こうした見直しという市の意思決定過程をどのように構築するかという手続が重要に
なってくる。
ところが、【表3】にみられるとおり、補助金の見直しの手続基準は、実質的には空白で
ある。そこで、市の一般的な意思決定手続である、決裁手続、庁議手続、サマーレビュー、
推進計画の改定手続、予算編成手続、などに基づいて見直しの検討がなされることになる。
しかし、これらの意思決定手続は、補助金に即したものではなく、必ずしも補助金の見直
しが俎上に載るとは限らない。
補助金は予算措置されるものであるから予算編成手続が重要ではあるが、予算で検討・
決定すべき内容はあまりに膨大であり、補助金の見直しに割けるエネルギーは小さい。ま
た、推進計画の改定は、総合計画に基づく計画行政の仕組として極めて重要な位置を占め
ている。しかし、推進計画の事業は、必ずしも補助金という手段の単位にはなっていない
し、また、推進計画の事業に載らないような日常的定常的な補助金も多数存在している。
このように、既存の意思決定手続は、必ずしも補助金の見直しの手続基準としては、充分
とは言えない。
そこで、補助金等交付基準は、見直しの手続基準としての役割も含んだものに、深化す
る必要がある。そこでは、財政経営課はもとより、補助金という事業手段の見直しの中心
となるべき所管課を、補助金の見直し手続に有機的に組み込む必要がある。
3)基準としての実効性確保
補助要綱と同様に、補助金等交付基準に関しては、その策定根拠や効力に関して、明確
な位置付けがなされていない。特に、補助金の見直しに関しては、各所管課が主体的に本
題意識を持って、見直しに向けて積極的に検討をしない限り、実効的なものにはなり得な
い。そのための一助として、補助金等交付基準を規則または訓令に位置付けることで、各
所管課をも拘束する内規として明確に位置付けることが望ましい。もちろん、このような
形式的な根拠付けだけでは、実効性を確保することは叶わないのは言うまでもないが、実
効性を高めるための1つの契機である。
また、全庁的な計画である総合計画・推進計画や行財政改革プラン(一般的な自治体での
行政改革大綱・実施計画に相当)に、常に補助金等交付基準を位置付けることも重要である。
もちろん、このように計画や大綱に記載しただけでは、計画あるいは行政改革の所管課に
とっては重要であったとしても、各所管課に実効的になる保証はない。しかし、それぞれ
は微弱かもしれないが、様々な位置付けを重ね合わせることで、結果として、基準として
の実効性を高める工夫を進めるべきである。
4.補助金等交付基準の各論的検討~調査事項(1)~
(1)市の政策目的との合致
1)現行基準の問題点
補助金支出には公益性が必要であり、特定の団体や個人によって実施される事業・活動
が、市の政策目的を達成することに貢献することが求められるのは、当然である。しかし
ながら、市の政策目的は幅広く、また多種多様である。現行基準では、住民自治・住民参
加、地域経済・地域振興・雇用促進、社会福祉、環境、教育・文化・芸術・スポーツ、が
例示されているが、これはほとんど全ての活動を網羅してしまう。
したがって、所管課や財政担当課が補助金の交付の是非を判断する場合において、この
基準はほとんど具体的には役に立っていない。少なくとも、既存の補助金であれば、何ら
かの市の政策目的に貢献することは論証でき、また、新規の補助金の提案に際しても、何
らかの市の政策目的に貢献することは主張することができるからである。こうした政策判
断は、総合的な衡量を要するとともに、裁量的な判断であり、基準を定立することは著し
く難しい。
2)総合計画の事業手段としての位置付け
基礎的自治体の政策目的は、総合計画によって体系化されているのが通例であり、四日
市市でも同様である。したがって、市の政策目的は、総合計画がどのような採択基準で策
定されたかという問題は置くとしても、少なくとも、ある時点においては、総合計画に表
現されていることになる。したがって、市の政策目的との合致という基準は、総合計画へ
の記載の有無に置き換えられるべきである。すなわち、補助金を交付するためには、総合
計画に掲載されている事業の手段として、当該補助金を位置付けることが不可欠である。
もちろん、総合計画は通常は総花的な記載があり、ほとんど、考えられる施策領域は全
て網羅しているため、既存の補助金にせよ、新規に立案がされる補助金にせよ、総合計画
に掲載されている事業の手段として構成することは、さほど難しいことではないかもしれ
ない。したがって、総合計画に記載されていないという理由によって、直ちに廃止される
補助金はほとんどないかもしれない。しかし、仮にそうであっても、補助金を総合計画の
なかに体系的に手段として位置付けることは、市全体としての補助金の採否の透明化をも
たらすものである。すなわち、これまでのように、予算編成手続において、所管課と財政
経営課の一対一の内部折衝を中心として政策目的への合致が判断されていたのに比べ、す
でに市として決定され、公表されている総合計画に基づいて、当該補助金が市の政策目的
に合致していることを立証することになるからである。
3)総合計画の在り方の見直し
総合計画は総花的であることが普通であるが、自治体にとって必要不可欠な全ての事業
を網羅しているという保障はない。なぜならば、これまでの増分主義的な総合計画の場合、
必要不可欠ではあるが日常的・定常的な事業や、法律で義務付けされている事業などは、
必ずしも総合計画に掲載されるとは限らず、むしろ、当該自治体として新たに力を入れる
べき事業に特化して掲載を絞っていることもあるからである。したがって、そのような自
治体の場合には、総合計画が当該自治体の政策目的を体系的に表現しているとは限らず、
したがって、市の政策目的に合致する補助金であるにもかかわらず、総合計画に掲載され
た事業の手段を構成する形態にはなっていない可能性がある。
四日市市の総合計画が、このような意味で、市の政策目的を網羅的かつ体系的に示すも
のとして策定されているのか、それとも、それとは別の異なる形態で策定されているのか
は、本調査では明らかにすることはできない。なぜならば、四日市市の政策目的として何
が必要にして充分であるかは、市民をはじめとして市政関係者が判断すべきことだからで
ある。
仮に前者であれば、必要性があると考えられる補助金は、比較的容易に、総合計画に掲
載された事業の手段として位置付けることが可能である。仮に後者であれば、必要性があ
ると考えられる補助金であるにもかかわらず、総合計画に掲載された事業の手段として位
置付けることが困難であり、すなわち、総合計画に必要な事業が掲載されていないことが
明らかになる。この場合には、総合計画に市の政策目的を実現するに必要不可欠な事業を、
直ちに追加するべきである。このような、総合計画の掲載事業と、個別補助金とを突合す
る過程において、総合計画における必要事業の漏れを埋めつつ、補助金がいかなる手段と
して市の政策目的に貢献しているかが、見える化されることになる。
四日市市の総合計画の中身に関しての調査研究は本報告書の射程外であるが、多くの自
治体では、総合計画の策定においても、すべての事務事業・業務の体系分析から開始され
て積み上げて策定されるものではなく、各所管課から目玉になる事業を「球出し」的に持
ち寄って取捨選択しながら策定していることが多い。したがって、そのような所与の総合
計画・実施計画をもとに補助金の位置づけることは困難なことになろう。つまり、補助金
見直しを体系的に行う前提は、総合計画・実施計画の在り方の見直しと、並行せざるを得
ないのである。逆に、総合計画・実施計画を見直すための切り口として、補助金見直しが
使えるということである。
4)民間活動を包括する総合計画の必要性
総合計画は、原則として、自治体が行う事業を、自治体の政策目的に合致する形で取捨
選択して体系化したものである。したがって、自治体の計画行政の道具である。補助金も、
こうした自治体の事業の一手段として位置付けられている以上、自治体の事業の一部を構
成しているので、総合計画に示された政策目的に適合していなければならない。
しかし、補助金は、民間の団体や個人の活動を前提とした自治体の事業であり、自治体
の職員の活動のみで遂行されるものではない。むしろ、民間の団体や個人の活動のうち、
いかなるものが、市の政策目的の観点から促進するべきかどうか、という市の政策判断の
体系化が必要である。すなわち、総合計画において、民間の団体や個人の活動のうち、市
の政策目的の観点から、促進されるべき活動が明示されていなければならない。そして、
そのように促進されるべき民間の団体や個人の活動が網羅的に明示されて初めて、促進の
手段の一つである補助金を総合計画に位置付けることが可能である。補助金とは、自治体
の政策目的に合致する民間の活動に対して、初めて手段となり得るからである。
市の政策目的に合致する行政活動は、総合計画に事業として掲載され、予算措置がされ
ていくことになる。同様に、市の政策目的に合致する活動も、総合計画に事業として掲載
され、補助事業として、予算措置がされていくことになる。このように総合計画には、民
間活動が掲載されていなければ、補助金における政策判断の根拠として、総合計画は十全
には機能しない。したがって、総合計画において、いかなる民間活動が、市の政策目的に
合致していると位置付けられているか、網羅的に明示する必要がある。また、そのような
視野の広がりが欠けているならば、総合計画は補助金を政策目的の観点から公益性・必要
性を正当化することができないのであり、総合計画の内容を早急に見直す必要があろう。
(2)行政の関与の必要性
1)現行基準の問題点
現行基準における行政の関与の必要性は、雑多な内容が盛り込まれているが、その趣旨
が必ずしも明確ではない。したがって、実際に適用するときには、ほとんどがチェック項
目として判断しづらい。現行基準(2)においては、
1)市と対象となる団体や個人との間で明確な役割分担
2)公共性及び公益性は欠けていないか
3)補助の効果が特定の者に対する資産形成等に留まっていないか
と記載されているにもかかわらず、「見直しチェックシート」においては、「不特定多数の
市民の利益に供し、市が関与すべきである」と集約されており、その相互関係も不明確で
ある。特に、2)の公共性・公益性は、市の政策目的への合致と同じ内容であれば、基準(1)
と重複しているし、重複していないのであれば、何を意味するのかは判然としない。
また、現行基準(1)において、「エ 行政では発揮しにくい先進的、独創的なアイデア・
発想・行動原理をもって、公共の価値を新たに生み出すことが期待されるもの」という内
容もあり、これは、市の政策目的そのものへの合致というより、行政ができないものとい
う行政の関与の在り方を論じるものとなっている。このように、現行基準(2)は、行政
の関与の是非という大まかな方針は妥当であるにせよ、「行政の関与の必要性」と論じてし
まうと、それが基準(1)とどのように異なるのか、判然としない。
むしろ、現行基準(2)で大きな焦点となっているものは、何なのかは判然としない。
結局のところ、具体的にイメージされているのは、「見直しチェックシート」にある「不特
定多数の市民の利益」という点と、上記3)の「特定の者の資産形成」に留まってはならな
い、という点にあることが伺える。
2)行政の関与の適切性
現行基準(1)において、「エ 行政では発揮しにくい先進的、独創的なアイデア・発想・
行動原理をもって、公共の価値を新たに生み出すことが期待されるもの」という視点が盛
り込まれている。すなわち、「行政ができないから民間へ」という原則である。逆に言えば、
「行政でできるものは行政で」という原則になる。なぜならば、行政でもできるにもかか
わらず、敢えて、民間に対する過度な関与として補助金を交付することは、民間活動の自
由を阻害するからである。このように、「行政でできる活動」は、具体的な手法としては、
行政の直営事業となるか、民間委託事業になるかは、両方あり得るが、いずれにせよ、行
政の責任で事業実施することが適切である。
ただし、補助金を交付することなく民間でできることに対して、行政が関与する必要性
もまったくない。なぜならば、補助金なしに、民間の自律的活動が、結果的に、市の政策
目的に合致した公益的なものである場合には、そのままの状態に任せておけばよいからで
ある。したがって、行政単独ではできない活動で、かつ、民間単独でもできない活動に対
してのみ、補助金を交付するという行政の関与が認められるのである。
3)行政の関与の必要性=公益的公平性
行政の関与の必要性は、第一義的には、総合計画において、市の政策目的との適合性に
よって判断される。すなわち、公益性である。しかし、仮に市の政策目的に貢献する公益
性があるとしても、自治体としての事業である以上、全ての団体や住民を均しく公平に扱
うことも不可欠である。行政の関与に依怙贔屓や恣意性はあってはならない。これが公益
的公平性である。
この点を具体的かつ例示的に表現していたものが、現行基準(2)の「補助の効果が特
定の者に対する資産形成等に留まっていないか」や、「見直しチェックシート」においては、
「不特定多数の市民の利益に供し、市が関与すべきである」という表現である。しかし、
これらは例示に過ぎず、新たな基準としては、より広く、一般的な公平性を明示すべきで
ある。
総合計画に示される政策目的は、市の公益性に合致するものでなければならない。第一
義的あるいは直接的には特定の限られた者の利益(例えば、資産形成)に合致するように見え
ても、副次的あるいは間接的には、広く不特定多数の市民の利益に供するものでなければ
ならない。もっとも、このような副次的・間接的な効果をも含めて政策判断するのは、総
合計画の策定の際になされるべきものである。
また、補助金の公益的公平性は、総合計画に掲載される全ての事業の体系的な総体によ
って判断されるべきものである。仮に、事業Aおよびその手段としての補助金Aが、特定
の限られた範囲の市民にしか利益を及ぼさないとしても、それ以外の範囲の市民には、事
業B、事業C・・・事業Xが存在し、事業A~Xの総体として、不特定多数の市民の利益
に供することになっていれば、公平性は保たれていることになる。したがって、補助金の
見直しは、単体の補助金のみを採り上げて諾否を決定するのは不適切なこともあり、関連
する各種の補助金の総体のなかで判断されなければならない。
4)水平的公平性
補助金は、特定の団体や個人に対してのみ交付されることがあってはならない。全ての
団体・個人が、一定の要件に合致すれば、均しい取り扱いを受けるような、水平的公平性
が必要である。このように、補助金取得に際してアクセスが公平に保障されることが、行
政の関与においては不可欠である。
補助金を見直すに際しても、一定の要件を満たしているにもかかわらず、特定の団体を
狙い撃ちするような決定をすることは、行政の関与の公平性の観点から、厳に慎む必要が
ある。ある補助事業は、ある政策目的に即して、一定の補助の要件が設定される。その場
合には、そのような補助要件に即して、全ての団体または個人を均しく取り扱わなければ
ならない。特定の団体を想定した様々な条件を、事後的・事前的に、あるいは個別的に適
用し、特定の団体を補助の対象から排除するようなことは、水平的公平性に反することと
なる。補助金を見直す際に重要なことは、個別の団体や個人を想定することなく、一般的
な基準の制定改廃を通じて行うべきである。
5)指定団体への決め打ち的補助金(指定団体補助金)
補助金のなかには、特定の団体を想定し、または、指定して、補助金の交付を行ってい
るものもある。仮に、このような団体が、市の政策目的から見て公益性にかなう活動をし
ていると行政として判断しても、一般市民あるいは他の団体から見れば、こうした補助金
を受給する可能性が閉ざされている意味で、公平性に疑念あるいは不満が生じる懸念があ
る。このような事態は決して好ましいものではない。したがって、特定の団体を想定また
は指定した補助金は、原則として廃止されるべきである。広く団体・個人に開かれた要件
を設定した補助金を作れば、当然ながら、そのような要件に合致するであろう特定の団体
は、補助金を受給することができるからである。
また、上記4)で触れたように、特定の団体を想定または指定した補助金に関する検討や
見直しは、当該の特定の団体を狙い撃ちした議論とならざるを得ない。したがって、この
ような水平的公平性を害しやすい議論を誘発する、指定団体への決め打ち的な補助金は、
望ましいものとは言えない。
とはいえ、現実には、ある民間活動を実際に果たせるのは、特定の団体しか存在しない
という場合もあり得る。このようなときには、上記のように広く開かれた補助金制度を作
っても、実質的には、特定の団体しか応募要件を満たさず、他の団体や一般市民からの疑
念は解消しえない。そこで、特定の団体を想定あるいは指定する補助金の場合には、通常
の補助金に増して、公平性を担保する仕組が必要である。具体的には、以下のような諸点
に留意すべきである。
第1に、当該の特定の団体が、他の団体を排除して、補助金を交付されるに値する公益
性を有する活動をしていることである。いわば、補助金を受ける団体としての公益性の認
定が必要である。通常の場合、補助金を受ける団体または個人は、補助対象となっている
事業活動に関しては公益性を求められるものの、当該団体または個人の活動それ自体が全
体として公益性を有することは求められていない。しかし、特定の団体を想定または指定
する場合には、より強い公益性の確認が必要である。
第2に、当該の特定の団体が、補助金を受けるものとして指定される場合には、当該団
体を、特に優遇して取り扱うことになる。この場合、後述の垂直的公平性の観点から、仮
に当該団体が充分に強力な財務体質を持つ場合には、必ずしも補助を必要とするには至ら
ない。逆に、あまりに脆弱な財務体質の場合や、あるいは、会計経理が不適切な場合には、
補助の効果が得られにくいので、補助をする必要性が乏しくなる。このように、指定され
た団体の財務状況を詳しく精査することが必要となる。
第3に、当該団体は、市との関係においては、実質的に独占的な地位に立つことになる。
そのため、一対一の事実上の力関係によって、補助金の多寡が左右されるという懸念が生
じうる。この点、多くの団体・個人が広く応募する補助金の場合には、個々の団体・個人
は、補助金の多寡に関して市と交渉して、それを左右する余地はなく、単に応募するか否
かを選択するだけとなる。しかし、指定された団体の場合には、他に応募する団体または
団体類型がない以上、補助金の金額に関しては、市との間で事実上の交渉が可能となる。
上記第1の通り公益性を強く持つ活動をしている当該団体が応募を拒否すれば、市側とし
ては事業が実施できずに、難渋してしまうからである。そこで、この種の補助金の場合に
は、通常の補助金以上に、補助金の積算の妥当性が検討されなければならない。
第4に、このような精査や検討は、市の所管課や財政経営課の間で内部的に行われるだ
けでは不充分である。広く市民や団体にアクセスが保障されていない、特定の団体または
団体類型のための補助金に対する公平性を確保するためには、こうした検討が広く市民に
対して公開された場で行われなければならない。具体的には、市議会における審議や、市
民参加の会議体における協議などにより、透明性と説明責任を特に強く確保することで、
市民の公平感を増すことが重要である。
6)地域的指定団体補助金
5)のような特定の団体が指定されるわけでなく、補助金の対象となる団体は市内に複数
存在するが、特定の地域・地区に限ってみれば、1つの特定の団体しか存在しないタイプ
の補助金もある。このような補助金を、地域的指定団体補助金と呼ぶならば、これは水平
的公平性の観点からは、慎重な取り扱いが必要である。
第1に、地域的公平性の観点からは、市内の全ての地域・地区が公平に取り扱われるこ
とが、強く求められることになる。ところが、一般の補助金では、補助金の要件を満たし
た団体には交付し、そうでない団体には交付しないことが、水平的公平性にかなうであろ
う。したがって、地域の各団体間に取り組みや熱意の差異がある場合、この水平的公平性
を強く押し出せば、ある地域の団体には補助金を交付し、ある地域の団体には補助金を交
付しないことが、妥当な結論となる。しかし、これは地域的公平性と鋭く対立することに
なる。
この点に関しては、水平的公平性を重視するのか、地域的公平性を重視するのか、市と
しては明確に決断して、市民に説明して、納得を得る必要がある。そして、地域的公平性
を優先した場合には、取り組みや熱意の低い地域的団体に補助金を交付することの公平性
および公益性について、市民の理解を得なければならない。したがって、結局は、取り組
みや熱意の低い地域的団体に対して、どのように取り組みや熱意を上げるための対策をと
るのかを明示しなければならない。逆に、水平的公平性を重視した場合には、特定の地域
的団体には補助金を交付しないことになる旨を、当該地域での理解と納得を得る必要があ
る。もちろん、この場合にも、当該地域での取り組みや熱意が他地域のように増してくれ
ば、水平的公平性の観点からも補助金の交付が認められることになる。
したがって、どちらの決断をしても、最終的には、全ての地域で同様の取り組みをさせ
ることが、このような地域的指定団体補助金という事業を構築する場合には、必要になっ
てくる。
第2に、地域・地区に限定すれば、こうした地域的指定団体は、地域独占的な地位を持
つことになる。したがって、指定団体補助金と同様の対策が、地域レベルでは必要となっ
てくる。具体的には、地域的指定団体の活動の公益性の認定、財務状況の確認、補助金の
金額の積算の妥当性、公開の検討の場、である。
7)垂直的公平性
団体や市民の活動が、市の政策目的に合致して公益性を有するとしても、当該団体また
は市民が充分な資源を持っている場合には、必ずしも、そうした団体または市民に対する
補助の必要性は相対的には高くはない。こうした団体または市民は、経済力がないがゆえ
に、公益的な活動ができないというわけではないからである。貴重な財源からの補助は、
経済力が乏しいがゆえに公益的な活動を充分に展開できないような団体または個人に選択
と集中をすべきである。
むしろ、充分な経済力がありながら、市の政策目的から期待される活動に充分な協力が
得られない場合には、別途の行政の関与の方策を検討すべきである。簡単に言えば、財力
のある団体は、自前で公益的活動をすることが期待されているし、また、市は補助金以外
の方法で当該団体に働き掛けるべきである。例えば、広報、指導・誘導・説得、顕彰・表
彰など、様々な行政手法があり得るのであり、総合的に行政手段は検討すべきである。
また、貴重な財源からの補助が、受給する団体や個人の過度な資産形成になっては、垂
直的な公平性に適さない。そのように資産形成に資するような補助金を交付するくらいな
らば、より経済力の乏しい団体または個人に支援を行い、当該団体または個人による公益
的な活動を促進することに振り向けるべきだからである。
(3)社会情勢の変化との整合
1)現行基準の問題点
社会情勢や市民ニーズの変化に即応して、常に補助事業の見直しをするのは当然のこと
である。しかし、このような現行基準を定立しても、現実にはほとんど効果を持たない。
所管課が、社会情勢の変化との整合に疑問を持たなければ、既存の補助金は、社会情勢の
変化に適合していると主張されればそのまま存続する。財政経営課は、個別の事業内容に
関して、充分な情報を持たないために、所管課に充分に反証することはできない。所管課
が自らの事務事業を見直す契機となり得るのが行政評価であり、四日市市の場合には、業
務棚卸である。しかし、これも自己点検に過ぎず、所管課が自ら問題意識を持たなければ、
見直しの契機とはならない。
効果の乏しい現行基準ではあるが、しかし、書かれている内容は正論なのであり、いわ
ば訓示的な現行基準を存続させることは、必ずしも有害とは言えない。とはいえ、このよ
うな基準があることが、却って、社会情勢の変化との整合があることへお墨付きを、市と
して明示的に与えることになってしまっているので、廃止することも一考に値する。
2)総合計画・推進計画の改定への組み込み
(1-1)により、補助金は総合計画・推進計画に掲載される事業の手段として位置付
けられることになる。推進計画は、毎年度、予算編成に先立って、あるいは並行して、改
定作業が行われることが慣例化しており、そこにおいて、社会情勢や市民ニーズの変化へ
の対応を検討するのが最も適切である。もちろん、その過程においても、所管課が問題意
識を自ら持たなければ、そのまま、既存の補助金が存続することになろう。したがって、
推進計画の改定において、どこまでの範囲と深度をもって、検討がなされるかが鍵である。
3)不整合の認定
補助金が社会情勢の変化と整合していないという認定を、所管課や行政当局の内部以外
の第三者機関が行うことは、所管課や行政当局に、総合計画・推進計画の改定や予算編成
において、整合化に向けた対応を動機付けることになる。したがって、この(3)は、所
管課や財政経営課が利用する基準ではなく、第三者機関が利用する際の基準には有用であ
る。したがって、市議会、監査委員、外部評価委員会などが、補助金に対して、社会情勢
との不整合を認定する場合には、所管課に対応を義務付ける仕掛が求められる。
最も望ましいのは、社会情勢の変化との不整合を来している補助金に関して、予算減額
修正または附帯決議による執行凍結、または、決算不認定を議会が行うことである。ただ
し、このような議会の権限の行使は、公平性に留意しなければならない。「事業仕分け」的
に特定の補助団体を狙い撃ちするようなことがあってはならない。議会が行うべき行政へ
の統制は、一般的な基準の定立改廃に係るべきものである。
(4)補助対象事業
1)現行基準の問題点
現行基準は、3つの部分からなる。第1に、補助対象事業については事業費に対して補
助を行うべきとしている。団体によって、事業計画が立てられ予算が組まれ、事業目的の
達成に向けて行政が資金的な支援をしていくことが必要と判断されたときに、補助金が交
付されるものであるからという。第2に、既存の運営費に対しての補助である運営費補助
がある場合は、早急に必要性を検討して、補助対象経費を明確にして交付するかどうかを
見極め、原則、事業費補助へ見直しを行うとしている。ただし、第3に、団体の設立時に
際しては、初期段階での組織力・運営基盤が脆弱であるため自立できるまでの一定期間に
ついては運営費補助も必要であるとし、補助対象の範囲を定めたうえで、終期を設定し段
階的に減額するとしている。
このように、現行基準では事業費補助を原則とし、運営費補助を例外としている。これ
は、運営費補助は、補助金の交付を受ける団体が、市の政策目的に合致する事業・活動を
遂行するか否かにかかわらず、団体の存続を支援することになってしまう恐れがあるから
であろう。しかしながら、このような現行基準は、必ずしも効果を発揮しているとは言い
難い。
第1に、運営費補助は例外であるという位置付けであるにもかかわらず、現実には、「運
営費補助」とされる補助金が、少なからず見直されずに存続しているからである。これは、
個別の補助事業を検討すると、運営費補助にも妥当性が認められているからである。
第2に、運営費補助を例外として認める基準が、必ずしも明確または妥当ではない。第
2の例外扱いされて存続する運営費補助に関しては、基準が存在していない。第3の設立
初期の運営費補助は明確であるが、妥当ではない。なぜならば、団体が中期的には自立可
能であることが前提とされているが、非営利的・公益的団体の経営状況が簡単に好転する
とは、容易には認められないからである。
第3に、例外として認められた運営費補助に関して、どのような基準で検討すべきかが
書かれていない。運営費補助を例外と位置付けることで、かえって、運営費補助を適正に
組み立てるための基準がないままに放置されている。
2)運営費補助の基準
事業費補助を原則としながらも、運営費補助を認める場合、どのような基準で運営費補
助を許容するかが重要である。
第1に、現行基準においても、例外的に、団体の設立時の立ち上げ期の運営費補助が盛
り込まれている。このように自立できる可能性のある団体に関しては、時限的なサンセッ
ト方式の運営費補助は認められる。このような立ち上げ期運営費補助では、年次計画を立
案し、自立化に向けての中期的プログラムが、交付初年度から設定される必要がある。そ
して、終期が到来したならば、当該運営費補助は例外なく廃止されなければならない。終
期において団体が自立できない場合は、当初の補助金の交付という意思決定自体が不適切
であったことになる。逆に、開始当初から自立化への見込みに疑念があるならば、このよ
うな立ち上げ期に限定した運営費補助を採用するべきではない。
なお、立ち上げ期に運営費補助を認めるとしても、市の政策目的に合致すれば、すべて
の団体に補助するということには、当然ながらならない。補助金は公益性のあるすべての
民間活動に義務的に交付しているものではないからである。
第2に、運営費補助を認める団体は、団体の活動全体が公益的であることが認定されな
ければならない。運営費補助の場合には、特定の公益性のある事業・活動を特定して補助
金を交付するのではなく、いわば、団体全体に補助金を交付するわけであり、団体の全て
の事業・活動に補助金が及ぶことになる。したがって、団体の活動全体に関する公益性の
認定が必要であり、いわば、補助金を受ける団体としての公益性の認定が必要である。こ
の点は、決め打ち的な補助金を交付される指定団体補助金の指定団体と同様の扱いとなる。
第3に、運営費補助は、他の実現手法よりも経済的でなければならない。原則は事業費
補助である以上、個別の事業費補助に分解して交付することを検討しなければならない。
こうした事業費補助によることが、団体の事務を煩雑にしたり、人員の確保を困難にする
など現実的に経済的でないことが必要である。
さらに、市職員が当該団体の事務などを行い、あるいは、市が当該団体の施設などを支
援することで、運営費補助を交付しないこともあり得る。つまり、市の支援策は、資金支
援である補助金のほかに、人的支援や物的支援という現物支援もあり得る。したがって、
運営費補助は人的支援・物的支援よりも効率的でなければならない。
また、団体の活動全体が公益的である場合には、市にとっての不可欠な事業として市の
責任に移管することもあり得る。この場合、市が直営で実施するか、委託で実施するかは
ともかく、市は事業遂行に関して、一定の費用を負担することになる。したがって、運営
費補助を採用する場合には、市の責任に移管するよりも、例えば、市の責任に移管したう
えで当該団体に委託事業をする場合よりも、経済的でなければならない。
(5)類似した補助金の統廃合
1)現行基準の問題点
現行基準では、市以外の行政や民間に限らず内容の類似した補助金や同一対象への補助
がある場合には統廃合するとされている。重複した補助を行うことは、限られた財源の効
率的活用の観点から好ましくないから、当然の基準であると考えることができよう。しか
しながら、こうした一方的統廃合は問題を持っている。
類似性を持って補助金を廃止することを全ての行政・民間団体が行えば、結局のところ、
その補助金は消滅することになる。したがって、この発想に立てば、他の行政や民間団体
が補助金を存続してくれれば、市として補助金が廃止できるという、いわば、「ただのり(フ
リーライド)」の発想に立っている。こうしたことは、公共性を担うべき市としてとるべき
ではない。
本来は、関連する行政・民間団体との間で、いかなる役割分担をするのかの合意を行う
べきである。このためには、当該補助金で促進されるべき政策目的を明示したうえで、そ
れを市や市以外の行政および民間団体がどのように果たすかの、見取り図が策定されなけ
ればならない。このような機能を期待されるのが、民間活動を包括した総合計画・推進計
画の機能である。そのうえで、関係行政・民間団体と統廃合に向けて協議をしなければな
らない。
2)総合計画・推進計画による検討
類似した補助金の有無は、民間活動を包括した総合計画・推進計画を策定する過程で、
幅広く調査される必要がある。そのうえで、市の政策目的の実現のために、市および市以
外の行政さらに民間団体がいかなる役割を果たすのかについて、総合計画・推進計画にお
いて決定がされるべきである。それを踏まえて、類似した補助金の統廃合に向けて、関係
者間での協議を行うことが重要である。
このことは、逆の場合にも適用される。すなわち、市の補助金があることをもって、市
以外の行政や民間が補助金を廃止して、市に「ただのり」をしようとした場合には、市か
ら積極的に働き掛けて、統廃合に向けての協議を行うべきである。
(6)補助制度の透明性
1)現行基準の問題点
補助制度の透明性のために、補助要綱を整備し、実績報告を求め、監査を行うとともに、
補助事業の内容を公開するという現行基準は、妥当なものである。問題は、このような基
準が励行されているかである。例えば、過去には、補助要綱が整備されていないものや、
実績報告が不適切であったものなどがあったという。また、現実にも、限られた人員で監
査を網羅的に行うことは困難である。また、補助事業の内容が公開されていても、その情
報は膨大にならざるを得ず、情報公開と透明性が、必ずしも基準が謳うような「公平かつ
適切な公金の支出につなげる」ことができるかには、疑問が残る。つまり、現行基準に問
題があるというよりも、その励行の実現性に問題が残るのである。
2)補助要綱の整備と透明性の実現方策
このなかで、補助要綱の整備は比較的容易に行えるものであり、確実に実現する必要が
ある。なぜならば、補助要綱に記載するべき内容は、補助金の予算編成過程において、所
管課と財政経営課の間で検討が充分になされているはずだからである。
その裏付けとして、四日市市補助金等交付規則に補助要綱を位置付け、補助要綱のない
補助金の支出を認めないこととすることを明記するべきである。
監査を現実に行うことは限界があるため、周年的な補助金の選択的検討の機会などに併
せて、計画的に行うものとすべきである。
(7)個人給付的補助金の公平性
1)現行基準の問題点
この基準(7)は、団体レベルの基準(13)の個人版であり、広い意味では、垂直的
公平性に関わるものである。現行基準では、「個人給付的補助金については社会保障的なも
のを除き所得要件等の公平性を満たす条件を設定する」とされている。しかし、この基準
の意味するところは必ずしも明確ではない。第1に、社会保障的な資金提供は、補助金と
いうよりは、むしろ扶助費として整理されるべきものである。また、第2に、「公平性を満
たす条件」が必ずしも明確ではない。
推察するに、所得等が一定水準を上回る充分な経済力を持つ個人については、垂直的公
平性の理念から、補助金による支援は行政の関与として適切ではないという判断に基づく。
つまり、経済力のある個人は、補助金を受けることなく、公益的な活動を行うことが期待
されているということになる。しかしながら、こうした考え方は、個人に広く一律に適用
するには、問題がある。
第1に、事業費補助という原則は、個人の経済状態とは切り離して、当該活動に限定し
て市が関与するという意味も持っている。個人の経済状態は、課税や保険料・使用料の徴
収などにおいて考慮されており、補助金の交付に際してまで衡量する必要があるとは限ら
ない。
第2に、個人が経済力の多寡に限らず、当該活動が市の政策目的に照らして公益性があ
る場合、市として補助金で促進を図るものである。場合によっては、経済力のある個人が
率先して、こうした活動を展開することが、公益性の観点からも望ましいこともあろう。
2)著しく経済力の高い個人に限定した適用
この基準は、(2-3)の理念をもとに、個人一般ではなく、特に著しく経済力の高い個
人に限定して適用されるべきである。したがって、所得要件あるいは資産要件などの条件
は、9割以上の市民が到達しないような、非常に高い水準に設定すべきである。
これらの所得要件等が低く設定され、大半の市民が享受できないようなものである場合
には、政策目的を達成することが困難である。そのような補助事業は、「市として対策をや
っています」という弁明以上の意味を持たないからである。
(8)補助対象経費の明確化、および、(9)補助率の明確化
1)現行基準の問題点
現行基準では、事業費補助と運営費補助という考え方を前提にしている。しかしながら、
こうした補助事業の組み立ての発想は、自治体から団体または個人に対する補助に必ずし
もなじむとは限らない。なぜならば、事業費補助にせよ、運営費補助にせよ、補助を受け
る団体または個人は、事業または運営に金銭的費用が掛かるが、その一部に補助を受け、
残りの部分を自己負担あるいは自己調達するということが想定されている。簡単に言えば、
団体または個人の公益性のある事業・活動は、最終的には金銭だけで成立可能であるとい
う発想に立っている。例えば、事業・活動にマンパワーや土地・資産・器具などが必要だ
としても、いずれも金銭で入手すればよいのであって、結局、事業・活動を成り立たせて
いる資源は金銭という事業・活動観である。そして、こうした団体または個人は金銭の自
己負担、すなわち、「補助裏負担」をすることが、想定されている。
このような事業・活動観が当てはまる団体・個人の営為もあるが、必ずしも当てはまら
ないものもある。特に、団体・個人の様々な活動は、個人の自発的な活動に支えられてい
るが、こうしたマンパワーは必ずしも金銭で取得されるというわけではない。むしろ、団
体・個人が人力という資源を持ち寄り、行政が補助金という形で金銭という資源を持ち寄
り、両者の総合によって補助対象の事業・活動が営まれるということもある。この場合、
事業費に対して10/10の補助をしたというより、実態としては、行政が資金を補助し、団
体または個人が自前でマンパワーを調達したというように理解するのが適切である。
現行基準では、一定の補助対象経費が存在し、それに対する補助率を適用するという、
事業費補助を想定している。このような形態の事業費補助が代表的な補助事業の設計であ
ると考えられるが、現実には多様な形態の事業費補助事業の類型がある。実際、現行基準
(11)にもあるように、補助率の適用される比率補助ではなく、定額補助も想定されて
いる。したがって、事業費補助の類型ごとに基準が設定されなければならないが、現行基
準は、必ずしも整理されていない。
2)事業費補助の類型
事業費補助は、それぞれの補助事業の目的に照らして、効果的な補助事業としての設計
を行う必要があり、一律に類型を決めることはできない。以下では、補助基準を検討する
上での代表的な類型を例示することにする。
1)定率補助:事業対象経費に補助率を乗じる。
2)定額補助:対象となる事業・活動に対して、定額を補助する。
3)算式補助:対象となる事業・活動に関係する原単位数に、単価を乗じる。なお、原単
位数が金額で示される場合には、単価ではなく比率を乗じる。
定率補助の場合には、10/10の補助率でなければ、補助裏負担が必然的に発生することに
なる。しかし、定額補助の場合には、定額の多寡によって、補助裏負担がどの程度発生す
るかは変わってくる。また、算式補助の場合には、算式で計算される補助金額の範囲内で
事業・活動経費を抑えれば補助裏負担は発生しないし、逆に、事業・活動経費を拡大して
いけば、相当の自己負担をしなければならない。団体・個人の場合には、財政力・経済力
に応じて、どの程度の補助裏負担(自己負担)が可能かは、非常に重要な問題である。
これらの基本的な類型は、さらに、多様な変種を構成することができる。代表的なもの
は
a)予算の範囲内にとどめるための調節のための上限額の設定
b)それ以外の一般的な上限額の設定
c)補助率・単価・比率などを、様々な理由によって変動(割増し・割落し)させる
などがある。いずれにせよ、個々の補助金の目指す政策目的に即して具体的に検討される
べきであり、一般的な補助基準を適用することは、必ずしも妥当な結論を生むとは限らな
い。
以下では、事業費補助の基本形態である定率補助を念頭に置いて基準を検討し、定額補
助および算式補助に関しては、(11)で検討する。
3)補助充当経費の範囲
現行基準(8)では、補助対象経費の透明化として、対象を事業費とすることを前提に、
食糧費・交際費・親睦会費など、社会通念上、公的支援の対象としてなじみにくいものに
は補助は行わないとされている。これは、定率補助に限らず、定額補助・算式補助にも共
通する補助充当経費の妥当性に係る問題である。
たしかに、公益的活動がないままに、親睦会などの飲食が自己目的となる場合は、単な
る宴会に過ぎず、補助金で公的支援をすることは適切とは言えない。飲み食いは自己負担
で行うのが筋である。しかしながら、団体での市民活動の実態を想定するに、参加した市
民の活動に対して、一定の慰労的な支出をすることは、社会通念に即しているものと思わ
れる。
例えば、草刈りの作業に参加した人に対して、飲み物や弁当を支給することは必ずしも
不適切とは言えないだろう。しかし、現行基準では、草刈りの作業に必要なハサミやごみ
袋や軍手を補助金で買うことはできても、冷たいジュースやお茶、お菓子、さらには、お
にぎりなどの弁当を支給することさえできない。過度な萎縮は、団体の公益的活動の拡大
を阻害し、また、無用な器具・装備のみが団体に蓄積されることにつながるであろう。
また、考え方としては、ボランティアで活動や作業に参加した人に対しても、一定の参
加謝金を支払うことも考えられなくはない。ボランティアは無償とは限らず、労働の市場
的対価にははるかに及ばない水準ながら、一定の謝金を払うという有償ボランティアもあ
り得る。現金支給ではなくとも、「買物券」「地域通貨」のような形態で慰労することもで
き、そうした協力を商店街などから得るために、商店街に一定のお礼を支払うこともあり
得る。要するに、団体・個人の公益的活動を促進するためには、いかなる手法が最も効果
的であるかを、幅広く柔軟に検討することが重要なのであって、「飲み食いに使ってはなら
ない」というような教条的なスタンスをあらかじめとるべきではないのである。
4)定率補助の補助対象経費
定率補助で最も重要なのは、補助対象経費が過不足なく適切に設定されているかである。
補助対象経費の範囲があまりに狭い場合には、いわゆる「超過負担」が発生することにな
り、実質的な補助率が引き下げられ、補助金による事業・活動の促進効果は減殺される。
補助対象経費の範囲があまりに広い場合には、政策目的の達成から見て、過度に重厚な事
業・活動にまで公的支援が及ぶことになり、最小の経費で最大の効果を目指すべき補助金
の使い方としては、無駄が起きていることになる。こうした検討は、個別の補助金に即し
て、具体的に検討されなければならない。
5)定率補助の補助率
現行基準(9)は、高率な補助は、補助を受ける団体等の補助金への依存体質を膠着化
させ、自立を促すことを阻害するため補助率を1/2以下とすることを原則としている。
すなわち、高率補助金に対して否定的である。しかしながら、現行基準にはいくつかの問
題がある。
第1に、基準自体が、行政の代替事業として実施する場合や、「特別の事情」があるとき
には、高率補助金も認めるとしている。現実には、このような例外的取扱いによって、高
率補助も多く存在しており、基準として機能しているとは言い難い。すなわち、行政の代
替事業とは何であるか不明であるし、そもそも、行政を代替するような事業であれば、民
間の自主性に委ねる補助金にはなじまず、行政が責任を負うべき委託事業等に振替えるべ
きである。また、それ以外の「特別の事情」が明示されていないために、高率補助金を認
める条件が明らかではない。
第2に、高率補助は、団体の依存体質を生み、自立を阻害すると想定されているが、必
ずしも妥当な推論とは言えない。確かに、民間企業のように、自らの収益活動によって資
金(売上・利益)を目指す営利団体が、永久に補助金に依存することは問題があろう。し
かし、多くの公益的団体は、必ずしも事業・活動によって、活動経費を半分程度は回収で
きるような資金を獲得することがなされるとは限らない。それぞれの事業・活動の性格に
よるからである。資金を自己調達することのみが、団体の自立のメルクマールではないの
である。
第3に、高率補助は、市が政策目的の急速かつ強力な遂行を目指すための政策手段とな
り得るものである。市が強力に補助対象の事業・活動を推進しようとするのであれば、高
率になって当然である。また、補助金の予算総額が一定としても、高率補助で狭く厚く支
援するのか、低率補助で広く薄く支援するのかは、あくまで政策目的の効果的効率的な達
成という観点から、柔軟に決定されなければならない。
第4に、高率補助よりは、極端な低率補助の方が問題である。というのは、あまりに低
率の補助では、政策目的の顕現にとっての現実的な効果が期待されない。にもかかわらず、
補助事業の行政管理に掛かる行政側の費用も、受給団体・個人側の費用は減らない。加え
て、そのような過度の低率補助は、行政側として「対策をとっている」という市民や議会
に対する弁明にしかならないのであって、市の政策目的に照らしては効果的ではない。
こうした補助率の検討は、個別の補助金に即して、具体的に検討されなければならない。
(10)少額な補助金の廃止
1)現行基準の問題点
現行基準では、補助金の額が少額なものは、事業効果が表れにくいことから、1件当たり
原則5万円以上とするとし、少額補助金を廃止するとしている。しかしながら、このよう
な一律の基準は、必ずしも適切ではない。少額で効果が生じるような、1つ1つの補助対象
の規模は小さいものはあり得る。また、1件あたりは少額でも、広く薄く補助金を交付する
ことで、市全体としては政策目的に資する大きな効果を発揮することもあり得る。したが
って、個々の補助事業に関して、政策目的を実現するのに必要充分かを検討することは、
それが少額か多額かにかかわらず、必要なことである。
むしろ、財政再建や行政改革の観点からは、規模の大きな補助金こそが、集中的かつ優
先的に検討されなければならない。ところが、現行基準や「チェックシート」に引っ掛か
るのは少額補助金であり、こうした網に引っ掛かった少額補助金に関しては個別に必要性
が検討され、結果として必要性に応じて少額補助金が存続されるが、多額補助金に関して
は、このような検討課題の俎上に上る機会がなく、個別の必要性の検討の機会が与えられ
ていない。しかし、仮に政策目的に効果を発揮していないのであれば、少額補助金よりも
多額補助金の方が、市および市民への負担が大きいのである。
2)多額な補助金の選択的検討
多額な補助金こそ、廃止・縮小などを含めた検討を、選択的に行うべきである。行政改
革においても、補助金の再検討は掲載されているが、漫然と全ての補助金の再検討をする
ことは現実的ではなく、検討対象を絞り込む必要がある。このときに、金額の大きさは極
めて重要な基準となる。
第1に、補助金の金額・規模が大きいといことは、政策手段として、それだけ強力であ
ることが想定されている。したがって、多額補助金が事業効果を実現するか否かは、市の
政策目的の推進の成否に大きな影響を与えるものである。したがって、政策手段として微
力な少額補助金に比して、その成否に関する検討の必要性は高いと言わねばならない。
第2に、補助金の金額・規模が多いため、より少ない割合・金額で事業効果が実現でき
る可能性がある場合、効率化・節約できる金額が大きいことを意味する。したがって、市
財政の健全化や行政改革の観点からも、市民への負担の観点からも、多額補助金の在り方
は大きな影響がある。
集中的な検討の俎上に載せるべき多額な補助金の範囲は、あらかじめ一般的に決めるこ
とは困難である。市の財政状況や中期財政見通し(中期的にどの程度の予算金額を削減す
る必要があるか)、集中的に検討できる補助金の件数の限度、などを総合的に勘案する必要
がある。多額補助金を政策目的の観点から抜本的に検討するためには、スプリングレビュ
ーや総合計画・推進計画の改定の段階から俎上に上げるべきである。また、政策目的とい
う大方針ではなく、金額の抑制などの手法に係るものであれば、予算調整の段階で俎上に
上げるべきである。
(11)定額補助等
1)現行基準の問題点
現行基準では、定率補助を原則としながらも、例外的に定額補助を認めている。しかし、
すでにふれたように、補助金の設計には個別具体に多様な形態があり、定額補助のほかに
も算式補助という類型もある。しかし、現行基準では、なぜ定率補助ではなく、定額補助
や算式補助という類型を採用するのかの基準は明示されていない。
また、定額補助の場合、「補助金額の設定が著しく社会経済情勢と乖離していないかを常
に検証」することが求められているが、この検証は基準として明確ではない。
2)補助類型の設計
定額補助・算式補助など、定率補助以外の類型を採用するのは、個別の補助事業の効果
的・効率的な形態を検討するなかで、定率補助の設計との相互比較を踏まえながら、決定
されなければならない。そして、その際に、いかなる定額が設定されるのか、あるいは、
いかなる算式で補助金額を算定するのかも、政策目的に照らして、推進計画の改定の一環
として、検討されるべきものである。
定額補助は、適切に設計されれば、受給者に支出対象の選択に関する大きな裁量・工夫
の余地を与えるとともに、節約へのやる気を与える。支出対象経費の確認も不要であるた
め、経理の事務も煩雑ではない。また、定率補助では不可避な補助裏負担の発生を抑える
工夫が可能になり、相対的に経済力のない民間主体にも効果を発揮する。低率補助は、金
額が大きくなればなるほど、補助裏負担が大きくなり、結果的に、経済力大きな民間主体
に、より多くの補助金が流れるという、垂直的公平性に反しかねない問題が起きうるので
ある。このように定額補助には利点もある。しかし、そうでない場合には、公益的活動に
必要な費用に比して、ほとんど意味のないくらいの少額という可能性もある。
算式補助の場合は、算式に使われる指標が、民間への動機付けに繋がる。例えば、古紙
回収量に比例して補助金が増額されれば、民間団体はより一層、古紙回収量を増やそうと
努力するようになる。しかし、その場合には分別などの質を問わないことになるから、悪
い、動機づけになっている可能性もある。とするならば、質を加味した指標、例えば、売
価、などに基づく算式補助という考え方もあり得よう。
同様に、太陽光発電への補助金も、発電設備の購入・設置費用に係る定率・定額補助で
はなく、実際の発電量に比例した算式補助にすれば、実際の太陽光発電の拡大を促進でき
る。太陽光発電機の設置への定率・は定額補助では、実際に発電されてもされなくても補
助金が支出されてしまうからである。とはいえ、発電量に応じたインセンティブは固定価
格買取制度でなされているとすれば、むしろ、市の補助金は太陽光発電設備の初期投資に
集中すべきという考え方もあろう。
これらの議論は、あくまで政策論議の例示である。重要なことは、個別の補助金の設計
に関して、最適な類型を目指して検討すべきということである。
(12)終期の設定
1)現行基準「ア」の問題点
現行基準の「(12)ア」では、補助制度の見直しを絶えず行うために、全ての事業につ
いて3年以内とした終期を設定し、終期を迎えた補助制度は、事業評価を行い、必要性を
十分検討したうえで継続できるとしている。建前的に言えば、補助制度の見直しは毎年度、
予算編成・審議のなかで行うべきであり、予算が単年度議決である以上、補助金も終期は1
年のはずである。しかし、これは現実的ではない。全てを毎年度に見直しを行おうとすれ
ば、かえって、全ての補助金の再検討が甘くなり、結果的にはほとんどの補助制度が継続
することになりかねない。そのため、3年程度の終期を設定することで、少なくとも3年に
1回の検討とすることで、再検討の件数を絞り込んで、精査を行うことを可能にしようと
いうものである。
また、3年というのは、初年度の補助金の効果が2年度目から発現を始めるので、3年度
目にその事業評価を受けて再検討の着手を行い、4年度目からの補助金を継続するかどうか
を、3年度目後半の予算編成過程で決定ができるということである。逆に言うと、3年未満
の終期であれば、事業評価に基づいた検討が行えない以上、補助金の終期は3年以上では
ないと意味がないと言える。この点からも3年終期という現行基準には充分の根拠がある。
終期があるか否か、また、「3年終期」という客観的基準は、「チェックシート」の項目に
おいても一見明白であり、基準としては明確である。しかし、それゆえに、3年終期にもか
かわらず、継続されている補助金が大半であるという観点から、現行基準が機能していな
いという不満も多い。もちろん、現行基準でも「3年で必ず補助制度を終わらせる」という
意味での、厳格な「サンセット(時限)方式」を採用しているわけではない。終期を迎え
たときに事業評価を行い、必要性を十分に検討したときには、継続できるとされている。
しかし、これは、逆に言えば、現行基準それ自体が「抜け道」を用意しているのではない
か、という疑念を生むことになっている。つまり、市民や市議会を納得させるだけの基準
として、現行基準「ア」は機能していないのである。
しかしながら、個別の補助金としては、むしろ、一定の年限を区切って集中的に行うこ
とが適切なものもあり得る。例えば、ある活動を市内に短期間での一定の普及を目指す補
助金などは、当該活動の普及に向けた年次計画を含めて、制度的に時限を区切るべきであ
る。また、例えば、団体が自立するまでの立ち上げ期に限っての運営費補助などは、補助
金制度としては恒久的であったとしても、個々の団体が可能な受給期間は時限的であるべ
きである。このように、狭義の「サンセット方式」の補助金の設計は充分にあり得る。し
かし、現行基準における3年「終期」は、一般的な補助金の3年毎という「周期」的な再
検討の機会を提供することを想定しており、必ずしも、「サンセット方式」を念頭に置いた
ものとなっていない。
2)サンセット補助金と周期補助金の区分
現行基準における「終期」という表現は誤解を与えるので廃止する。そのうえで、サン
セット補助金と周期補助金に区分する。「終期」ではなく、一定期間ごとに見直しが繰り返
されるという意味での「周期」である。
サンセット補助金とは、厳格な意味での終期を設定する補助金である。一定の限られた
期間内に、市の政策目的に照らして望ましい事業・活動を展開することを期待する補助金
であり、漫然と望ましい事業・活動の推進を目指すものではない。このサンセット補助金
では、時間との勝負が重要である。したがって、サンセット補助金が期待している事業効
果は、年次計画としてあらかじめ設計されなければならない。
サンセット補助金には、補助制度としてのサンセットと、受給資格としてのサンセット
とがある。前者のサンセット補助制度とは、例えば、太陽光発電設備の設置、下水施設の
整備、住宅の耐震化など、ある時間を区切って集中的に取り組み、それがある程度まで市
内で普及すれば、当該政策目的は達成され、補助制度も不要となるものが、代表的なイメ
ージである。後者のサンセット受給とは、例えば、団体や事業・活動の立ち上げ期・初動
期における設備・建物・人件費・事業費などに関する補助であり、団体や事業・活動が軌
道に乗って自立化すれば、おのずと不要となるようなものが、代表的なイメージである。
サンセット補助金とは、補助の政策目的が実現すれば、おのずと当該補助金が不要となる
ようなものであり、逆に、いつまでも補助金が必要とされる状態が継続することは、当該
補助金が効果を発揮していないことを意味するものである。
これに対して、通常の補助金は、補助金の政策目的が実現したからといって、当該補助
金が不要になるとは限らないものである。補助が必要であるというのは、対象となる団体・
個人の事業や活動が、市の政策目的に照らして必要性があるが、団体・個人の独力ではそ
の事業・活動を維持しえない状態にあることを意味する。したがって、このような補助金
は、政策的に効果を発揮すればするほど、補助金の継続的な必要性が高まるという性格の
ものである。それゆえにこそ、いったん開始された補助金は、見直されることなく継続す
るという圧力や慣性が働きやすいものである。
とはいえ、補助金は常に、市の政策目的の変化や社会情勢の変化に合わせて、絶えず見
直される機会が与えられるべきものである。建前的には、毎年度の予算編成がその機会と
なるはずである。しかし、膨大な補助金の全てを、限られた毎年度の予算編成期間で精査
することは現実的ではない。また、ある年度の補助金の効果は、3年後に初めて評価でき
る段階になるのであって、あまりに早すぎる再検討は、かえって時期尚早として見過ごし
の原因となる。そこで、3年から5年の周期をもって、全ての補助金を定期的周期的に見
直すような中期的プログラムを構築すべきである。自動車における「法定車検」のような
ものである。
3)現行基準「イ」の問題点
現行基準の「(12)イ」では、制度終了時に原則補助制度を終了させ、市単独で継続す
る場合は、新たな補助制度として見直すとされ、また、減額があった場合もその時点で見
直すとされている。しかし、この基準「イ」は、事後的で場当たり的な対応を市に求める
ものであり、あらかじめ終期を設定するという発想と相容れるものではない。
終期をあらかじめ設定するのは、補助金はいったん開始されると、補助金を受けている
団体・市民との関係や、市内部での再検討に要する意思決定の難しさなどから、なかなか
廃止・見直しが困難であるという実態を踏まえたものである。国・県の補助制度に歩調を
合わせて補助金が開始されてしまった場合、なかなか、団体・市民との関係から、市とし
ては見直しを行うことは容易ではない。国・県の補助金と市の関係は、国・県の補助制度
が廃止・減額されてから対応を検討するのではなく、あらかじめ計画的に方針を決めてお
くべきである。
4)国・県補助制度との関係
一般に、自治体は、国・県からの補助金が交付されている事業に歩調を合わせて、漫然
と補助金を交付することが多い。これはいわば、政策目的の設定を、市が自ら行うことを
放棄して、国・県に委ねていることを意味する。しかし、市の政策目的との合致が必要で
あり、国・県の補助があるからといって、漫然と「お付き合い」で補助金を予算化するこ
とはあってはならない。したがって、市の総合計画・推進計画に事業として主体的に掲載
され、その事業の手段として補助金が位置付けられる必要がある。この場合、以下の点に
留意する必要がある。
第1に、政策目的に関する市の主体的な採否の判断が必要である。市の裏負担をするこ
とによって、国・県の補助金が一攫千金的に獲得できるという「予算最大化」という観点
から決定するべきものではない。市の総合計画の目的に照らし、どのような事業が求めら
れているか、その実現のために補助金が有用かを判断する必要がある。
第2に、国または県からの補助金が打ち切られたときの市の対応を、あらかじめ決定し
ていく必要がある。すなわち、1)国または県の補助金が廃止されたときには、市も歩調を
合わせて廃止するか、2)国または県が廃止されても市の補助金はそのまま継続するか(つ
まり、補助金を受ける団体または市民の負担は増える)、3)さらには、国または県の補助金
が廃止されたときにはその肩代わりを市が補助する(つまり、補助金を受ける団体または
市民の負担は変わらない)か、の決定である。あらかじめ決定していた方針を基に、社会
情勢を勘案して対応することが重要である。
国または県の補助金は、ときには、立ち上げ期の数年のみに交付され、その後は市の全
額負担になることがあり得る。そうでなくとも、国・県の財政再建の観点から、補助金が
廃止・削減されることはよくある。このようなときに最も不適切なのは、本来は廃止した
いものの、始めてしまった補助金のゆえに、また、補助金を受ける団体または市民の観点
から、直ちに廃止することができず、結果的に市の財政に大きな負担となってしまうこと
である。逆に、国または県の補助金がなくとも、市の主体的判断として望ましいという補
助金ならば、国または県の補助金が廃止されても、市の負担が増えるということではなく、
むしろ、立ち上げ期に市の負担が軽減されていたと位置付けることもできる。国・県の補
助金に歩調を合わせるときに、市の主体的な政策判断が損なわれていないかどうかが最も
重要である。
第3に、国・県の補助金のメニューが決定されるのが、年度直前の国・県の予算編成の
過程であり、さらに、それが具体化するのは、年度途中の予算執行の段階であることもあ
る。このようなときには、市の総合計画・推進計画の策定・改定のタイミングとは合わず、
総合計画の政策体系に照らして事業を位置付ける時間的な余裕がないことがあり得る。こ
のようなときに、機敏に国・県の補助金を獲得するべく行動するかは、難しい問題である。
しかし、市の職員が対応すればよい補助事業であるならばともかく、団体または市民に市
から交付すべき補助金は、このような拙速は避けるべきである。
もちろん、市が機敏に対応することは望ましいことであるから、このような国・県の補
助メニューを受けるときには、臨時的に推進計画に位置付けるような改定をすることも考
えられる。しかし、これは恣意的・場当たり的な計画の改定であり、計画行政とは言えな
い。普通に考えるならば、むしろ、総合計画・推進計画には、国・県の補助メニューに関
わりのある市として掲載事業が存在しているはずである。事前に総合計画・推進計画に掲
げなければ、やはり公益性はないのである。そのような計画掲載の事業の手段として、急
遽、国・県の補助金が活用できるようになったというときこそ、市の主体的な公益性の判
断がなされていると言うべきである。
5)現行基準「ウ」の問題点
現行基準の「(12)ウ」では、長期にわたり継続している補助金については、見直しを
行い、年次的に縮小する方向で見直すとされている。しかしながら、長期継続補助金に関
して、年次的に縮小するような工程表が明示的に策定されているわけではなく、現行基準
「ウ」は実質的には形骸化している。
そもそも、長期にわたり継続しているということは、既得権益が確固として構築され、
公益性がないにもかかわらず見直しが政治的にできない、あるいは、見直すという機運や
課題意識すら登場しない、という意味とは限らない。むしろ、長期的に必要性・公益性が
確認され続けているとみることもできる。したがって、あらかじめ、年次的な縮小を予定
することもできない。それゆえに、基準では年次的な縮小を謳いながら、実態としては、
長期継続する補助金が残存し、現行基準への信頼性を損なう可能性もある。
6)長期継続的な補助金の選択的検討(長期継続補助金)
長期継続する補助金に、廃止・縮小などを含めた検討を、選択的に行うことは重要であ
る。漫然と全ての補助金の再検討をすることは現実的ではなく、検討対象を絞り込む必要
がある。このときに、長期継続性は極めて重要な基準となる。
第1に、市の政策目的に照らした公益性が低いにもかかわらず、長期継続しているとい
う行政側の慣性・惰性や、既得権への「当然」の期待が団体・市民の間に蔓延し、通常の
総合計画・推進計画や予算編成の過程では見直しが困難な政治状況になっている可能性が
あるからである。
第2に、長期継続しているということは、それだけ所管課や対象団体・個人から見て必
要性が高いという可能性もある。ということは、市の政策目的に照らして言えば、他の補
助金にもまして、大きな影響があるということである。したがって、このような長期継続
補助金の効果をより一層高める方向で見直しを行うことは、極めて重要である。
集中的な検討の俎上に載せるべき長期継続的な補助金の範囲は、あらかじめ一般的に決
めることは困難である。市の財政状況や中期財政見通し(中期的にどの程度の予算金額を
削減する必要があるか)、集中的に検討できる補助金の件数の限度、などを総合的に勘案す
る必要がある。長期継続的な補助金を政策目的の観点から抜本的に検討するためには、行
政評価(業務棚卸)など、各個別の事業の成果を評価することから、多年度の工程表を作
って検討を開始すべきと言える。また、こうした事業評価の結果を受けて、政策目的から
抜本的に見直すためには、スプリングレビューや総合計画・推進計画の改定の段階から俎
上に上げるべきである。また、政策目的という大方針ではなく、金額の抑制などの手法に
係るものであれば、予算調整の段階で俎上に上げるべきである。
いずれにせよ、選択的に検討するべき長期継続的な補助金の見直しのプログラムを策定
する必要がある。まず、対象となる補助金の範囲を指定する。次いで、それぞれを、事業
評価、総合計画・推進計画、予算編成の各段階で、どのように検討を行うのかの工程表を
構築する必要がある。こうした長期継続的な補助金の見直しプログラムは、行財政改革プ
ランに、具体的に補助金の名称と年度を明示されたうえで、位置付けられるべきである。
現在の『行財政改革プラン2011(2011年度~13年度)』では、改革事項No.29として、
「補助金・負担金の適正化」が掲げられ、「平成21年度に策定した交付基準やチェックシ
ートに基づいた補助事業の適正化を図る」とされ、改革目標期間の3カ年を通じて「適宜
実施」するとされている。これは、あまりに漠然と一般的に規定されており、いつでも、
全ての時期に、全ての補助金を、全ての関係部課が、適切に見直すということであり、何
も具体的には位置付けられていないのと同じである。これでは見直しプログラムとなって
いない。そうではなく、行財政改革プランに、何年度に具体的にいかなる補助金を対象と
するのか、明記する必要がある。現在の『行財政改革プラン2011(2011年度~13年度)』
で、個別の補助金が明示されているのは、改革事項No.2「提案公募型委託制度の導入」の
説明における「個性あるまちづくり支援事業費補助」、No.3「地域社会づくり総合事業費補
助金の見直し」、改革事項No.30「市税の前納報奨金の見直し」の説明における「前納報奨
金」のみである。
なお、このように行財政改革プランに明示されていても、地域社会づくり総合事業費補
助金は、見直し実施がされなかった17。したがって、単に行財政改革プランに登載するだけ
では不充分であり、より具体的で明確な工程表が必要である。
これまでの運用では、行財政改革プランの俎上に載せるか載せないかは、その事業に課
題があるかないかで判断してきたようである。しかし、それでは、俎上に載せる前に問題
があるか否かの判断がなされているということであり、いわば判断過程が矛盾してしまう。
かといって、バスケット条項的な「補助金・負担金の適正化」ではプログラムとしての具
体性を欠く。したがって、周期的に補助金をすべて載せてから、行財政改革プランのなか
で課題があるかないかを判断するのであり、これのやり方と異なることを目指すべきであ
る。
──────────────
17 財政経営部「補助金見直し一覧表(行財政改革プラン関係)」
7)現行基準「エ」の問題点
現行基準の「(12)エ」では、団体の行う事業での大会運営・記念事業等については、
対象年次に限定し、単年度限りとするとされている。事業のない年次に補助することはあ
り得ない以上、現行基準は当然であるとともに、言わずもがなである。その意味で、基準
として不要である。とはいえ、それだけでは、存在しても有害というわけでもない。
しかし、このような「イベント補助」はそれ自体として、大きな問題を孕むと言えよう。
第1に、イベントである大会や記念事業は、仮に市の政策目的に合致するとしても、公益
性・公共性の観点からは、付加的なものに過ぎない。市が税金で賄うべきものとしての優
先順位は一般に低いと言わねばならない。財政状況が余裕があるならばともかく、今後と
も厳しい財政状況が見込まれるなかで、不要不急と言えよう。
第2に、イベントが市民にとって必要性が高いものであるならば、団体や市民からの協
賛や寄付あるいは入場料などが多く集まるはずである。団体・市民がお金を提供したくな
いというようなイベントは、残念ながら、市民ニーズに応えていないことを意味する。実
際、多くのイベントは、民間の興業として成立しているが、それは市民のニーズを的確に
つかんでいるからである。市が補助金で関与すればするほど、イベント主催団体は市民ニ
ーズを的確に反映しなくなり、「官製イベント」になってしまう危険が強い。
第3に、イベント補助が設定される場合には、所管課と対象団体との一対一の密接な連
関が存在していることが懸念される。団体のイベントを補助する一般制度が存在し、毎年
度、各団体が申請をして、そのなかから採択されるという一般的なイベント補助である場
合には、一般的なまちづくり活動への事業補助で充分である。しかし、本基準「エ」で暗
黙の裡に想定されているのは、市内に唯一ある対象団体が大掛かりな大会・記念事業のよ
うなイベントを開催するイメージである。このようなイベント補助は、場当たり的な事業
設計となりやすく、政策目的が厳格に精査されることが難しいのである。
8)イベント補助の原則禁止
特定の団体が行う特定の大会運営・記念事業などのイベントに関する補助金は禁止され
るべきである。イベントは、主催団体が、市内外の団体・市民から、協賛・後援・寄付な
どを募り、また、入場料や売上収入などで賄うべきである。ただし、市は、政策目的の観
点から公益性があると判断すれば、総合計画・推進計画の掲載事業に位置付けたうえで、
後援などの名義貸し、人的・物的支援や許認可などでの配慮、広報・宣伝など、補助金以
外の手法で協力することは充分に可能である。
また、例えば、観光施策を目的に、大きな大会を誘致すれば補助を出すというような補
助金は数多く存在している。これを一律に禁止することは、現実的に難しいという見解も
あろうと思われる。しかしながら、この場合にも、イベントとしての大会誘致ではなく、
観光施策を構成する事業として、費用対効果を分析して事業を設計することができる。
ただし、イベントによる経済効果に伴う収入(税収や入場料など)増加分が、投入する
金額よりも大きければ、独立採算の特定目的事業的にイベント補助事業を構築できる。費
用対効果分析をせずに、漠然と「にぎわい」「活性化」と称してイベントを開催するのでは
なく、費用対効果の実のあがる事業に設計することで、従来のイベント補助の政策目的を
よりよく達成することが可能であろう。
(13)過度な補助の停止
1)現行基準の問題点
この基準(13)は、個人レベルの基準(7)の団体版であり、広い意味では、垂直的
公平性に関わるものである。現行基準では、繰越金または剰余金等が補助金額を上回って
いる団体については、その団体の財政状況を勘案し、必要に応じて補助金の停止や削減を
実施するとしている。これは、垂直的公平性の理念から、すでに充分な財政力を持つ団体
には、補助金による支援は行政の関与として適切ではないという判断に基づく。しかしな
がら、こうした考え方は、一般的な団体に広く適用するには問題がある。
第1に、補助金を受給するときには、当該団体は財政状況について、補助事業に関わり
のない部分まで、市に情報開示を行うことを意味する。これは、行政の関与として過度に
過ぎる。民間団体は基本的には行政から自律的であるべきで、補助金を申請するからとい
って、補助事業に関わりのない財政・資産状況まで、市から関与を受けるのは適当とは言
えない。
第2に、そもそも、事業費補助という原則は、団体の運営全般とは切り離して、当該事
業に限定して市が関与するという意味も持っている。
第3に、団体が財政力の多寡に限らず、当該活動・事業が市の政策目的に照らして公益
性がある場合、市として補助金で促進を図るものである。場合によっては、財政力の充分
な団体が率先して、こうした活動・事業を展開することが、公益性の観点からも望ましい
こともあろう。
2)指定団体・運営費補助受給団体への限定適用
この基準は、(2-3)の理念をもとに、団体一般ではなく、指定団体・運営費補助受給
団体に関してのみ適用する。
指定団体は、一般の団体に比べて、団体の公益性が期待されるとともに、様々な意味で、
優越的な地位にある。したがって、指定団体に関しては、財務・資産状況を市に開示させ
ることは、過度な行政の関与には当たらない。むしろ、適切な「公の支配」(憲法第89条)
として望ましいことである。
地域的指定団体も同様である。むしろ、地域的指定団体の場合には、団体間で財政・資
産状況に大きな差異がある場合もある。このような場合には、財政・資産状況のより厳し
い地域的指定団体に、より手厚い支援を行うことは、全市的な公益性の観点からは重要で
ある。
運営費補助受給団体の場合には、事業費補助と異なって、市の補助金が団体活動の全般
に及ぶことになる。したがって、補助対象事業に限定して市の関与が限界付けられるわけ
ではなく、結果として、団体の運営全般に及ぶことになる。したがって、そのような運営
費補助受給団体の場合には、財政・資産状況の全般を加味して、補助の在り方が検討され
るのは適切である。
(14)事業の評価
1)現行基準の問題点
補助金に限らず、市の施策・事業は常に事前・事後の評価を行い、継続・見直し・廃止
などの意思決定につなげることが、PDCAマネジメントでは必要であり、現行基準はそれ
を表現したものである。したがって、現行基準の文言それ自体は適切である。しかし、現
実には、行政評価(業務棚卸)などでも、補助金はこうした評価がされているとは限らず、
また、行政評価(業務棚卸)をしても、所管課が問題意識を持たなければ見直しにはつな
がらない。また、全ての補助金を毎年度に評価することは現実的には困難であり、仮に評
価を網羅的に行うのであれば、広く薄いものになってしまう。そのため、現行基準は、内
容的には妥当であるが、ほとんど空文化しているのが実態である。
2)現行基準の廃止
現行基準は、それ自体としては訓示的・理念的には意味がある。したがって、廃止をす
る必要はないとも言えるが、しかし、空文化した基準が存在することで、かえって、現存
する補助金があたかも事業評価の精査を経たかのごとき、お墨付きを与えられたという間
違った印象を与える危険もある。
現実的な事後評価は、対象を絞って集中的に行うほかはない。また、事前評価は、それ自
体として独立で行うことには意味がなく、むしろ、政策目的に照らした検討の場が重要で
あり、総合計画・推進計画との関連付けが重要である。そのため、本基準(14)は廃止
する。
5.新たな「補助金等交付基準」案~調査事項(2)~
(1-1)市の政策目的との合致
特定の団体や個人によって実施される事業・活動が、総合計画・推進計画に記載されて
いる事業の目的を達成するための手段として、貢献するかどうかを、推進計画の策定・改
定過程において判断し、そうでない補助金は廃止する。
(1-2)行政の関与の適切性
補助金を交付することによって、先進性・独創性・効率性・機動性・柔軟性など、行政
では発揮しにくい効果を民間の団体や個人が発揮し、行政だけで達成できない公共の新し
い価値を生み出すかどうかを判断し、そうではない補助金は廃止する。行政だけで達成で
きる公共の価値は、行政が責任を持って遂行し、補助金は認めない。民間だけで達成でき
る公共の価値は、民間の自由で自律的な活動に委ねるべきであり、補助金は認めない。
(2-1)行政の関与の水平的公平性
補助金の交付は、全ての団体や市民に対して、一定の要件を統一的に適用することによ
り、水平的に公平な機会を保障するものでなければならない。補助金の検討や見直しに際
しても、特定の団体や市民を狙い撃ちする検討を行ってはならならず、一定の要件をどの
ように制定改廃するかを検討するものでなければならない。
(2-2)指定団体への行政の関与の公平性(指定団体補助金、地域的指定団体補助金を
含む)
一定の指定された団体に対してのみ交付される補助金は、全ての団体や市民に対して、
水平的な公平な機会を保障するものとはなっていないため、このような補助金は原則とし
て認めない。
しかし、指定された団体への補助金(指定団体補助金)が、市の政策目的と合致するな
ど公益性があり、行政が関与することが適切であると認められる場合には、市民の公平性
の観念に照らして許容されるか、議会や市民参加の協議会など、広く市民の目線に公開さ
れた場で、下記の諸点に照らして、毎年度別途の精査を行う。
ア 指定された団体の活動の公益性(総合計画ににおける市の政策目的との合致)
イ 指定された団体の財務・資産状況
ウ 補助金の金額の積算の妥当性
特に、繰越金または剰余金等が補助金額を上回っている指定団体や、多額の価値を持つ
資産を有する指定団体については、その団体の財政状況を勘案し、市民の垂直的公平性の
理念(2-3)に照らして、補助金の停止や削減を実施する。
なお、地域的指定団体補助金も、基本的には同じ考え方によって、毎年度の精査を行う。
(2-3)行政の関与の垂直的公平性
補助金の交付は、全ての団体や市民において、それぞれの資産・収益・収入など活用可
能なさまざまな資源を適切に勘案することによって、より資源の乏しい団体・市民に厚く
配慮するという、垂直的な公平の機会を保障するものでなければならない。
(3)≪廃止≫(社会情勢の変化との整合)
この基準は、内容的には(1-1)に統合される。
なお、議会などの第三者機関による不整合の認定に関しては、本基準(3)の内容は有
用である。
(4)運営費補助
補助金の交付は本来事業費を対象に補助がされるべきものである。したがって、運営費
補助は原則として認められない。ただし、以下の場合には、例外的に運営費補助を認める
ことができる。
1)立ち上げ期運営費補助
交付団体の設立時に際しては、自立できるまでの一定期間に関しては、最小限度の運営
費補助をすることができる。なお、この場合には、自立化までの年次プログラムを事前に
定め、段階的に減額し、終期を迎えるとともに例外なく廃止する。
2)公益的団体運営費補助
当該団体の活動が、市の政策目的と合致するなど公益性があり、個別の事業費補助に分
解して補助することが不適切であると認められる場合には、運営費補助が例外的に許容さ
れるか、議会や市民参加の協議会など、広く市民の目線に公開された場で、下記の諸点に
照らして、毎年度別途の精査を行う。
ア 当該団体の活動の公益性(総合計画ににおける市の政策目的との合致)
イ 当該団体の財務・資産状況
ウ 補助金の金額の積算の妥当性
(5)類似した補助金の統廃合
市の政策目的の実現の観点から、市、市以外の行政、および、民間団体のそれぞれ役割
について、総合計画・推進計画において位置付け、その役割分担に基づいて、類似した補
助金の統廃合を、関係者と協議をして決定する。
(6-1)補助要綱
補助金の交付に際しては、必ず補助要綱を整備して、公表する。補助要綱のない補助金
は例外なく認めない。この点を、四日市市補助金等交付規則に明文で規定する。
(6-2)補助制度の透明性
ア 市は、補助金を受け取った団体・個人から、必ず実績報告を求める。
イ 市は、実績報告に基づき、帳簿等関係書類及び物件、施設等を監査する
ウ 市は、補助事業の内容等を、全てまとめた資料にして公表する。
エ これらの情報を、市は選択的な検討の機会に、特に効果的に活用する。
(7)個人給付的補助金の垂直的公平性
垂直的公平性の観点から一定の所得要件などを付す必要がある場合も、市の政策目的の
実現への貢献という観点から、9割以上の市民が対象者となり得るように、高い水準で設
定すべきである。
(8-1)補助充当経費の明確化
食糧費・交際費・親睦会費など、社会通念上、公的支援の対象としてなじみにくいもの
には補助は行わない。ただし、実際に公益的活動や作業に市民が従事した際に、慰労とし
て全参加者(役員などの特定の個人に限定されるものは除く)に対してなされる飲食や謝
礼・粗品の提供は、実動時間との見合いで、一人当たりの金額が社会通念上、常識の範囲
内であれば許容される。
(8-2)定率補助における補助対象経費の明確化
補助対象経費の範囲は、補助事業の目指す政策目的に照らして、必要最小限かつ充分で
なければならない。
(9)定率補助における補助率の明確化
補助率は、補助事業の目指す政策目的に照らして、必要最小限かつ充分でなければなら
ない。補助率は1/2以下であるという原則は廃止する。また、行政の代替的事業は、補
助金ではなく委託によって行われるべきであり、補助金としては認めない。
(旧10)≪廃止≫(少額な補助金の廃止)
この基準は廃止し、むしろ、多額補助金に関する基準に改変する。
(新10)多額な補助金の選択的検討(多額補助金)
補助金の額が多額なものについては、事業効果が実現するか否かで、あるいは、より少
ない金額で事業効果が実現できる可能性があるか否かで、市の政策目的の推進の観点から
も、市財政・市民への負担の観点からも、大きな影響があることから、毎年度、選択的に
検討を行う。
集中的な検討の俎上に載せるべき多額な補助金の範囲は、市の財政状況、補助金の件数
などを総合的に勘案し、行財政改革プランに中期的見直しプログラムを定めた上で、毎年
度、スプリングレビューにおいて指定する。
(11)定額補助・算式補助の透明性
定額または一定の算式に基づいて補助を行う場合には、総合計画・推進計画に掲載され
た事業の政策目的の実現に向けて、効率的かつ効果的であるかの検証を踏まえて、その設
定根拠を明確に説明できるものでなければならない。
(12-1)絶対的終期の設定(サンセット補助金)
一定の期間を区切って政策目的を果たすための補助金は、あらかじめ終期を設定したサ
ンセット補助金とする。サンセット補助金には、補助制度としてのサンセットと、受給資
格のサンセットと、2種類が存在する。サンセット補助金の場合には、予定されている期
間でどのような政策目的を達成しようとするのか、あらかじめ年次計画を策定しなければ
ならない。サンセット補助金の場合には、終期が来たら、補助金は確実に停止され、例外
は認められない。
(12-2)集中検討周期の設定(周期補助金)
一般の補助制度は、あらかじめ集中的な再検討を行う時期(3年から5年程度)を明示
して、運用されなければならない。補助制度は、数年の周期で集中的に、補助事業に関す
る事後評価を踏まえて、再検討が行われる。全ての補助金は、数年周期で1度は集中的な
再検討がなされるように、中期的見直しプログラムが行財政改革プランに、具体的な補助
金名称と具体的な工程年度が、位置付けられなければならない。
(12-3)国・県補助制度との関係(国県補助金)
国・県の補助制度と歩調を合わせた補助金に関しては、仮に国・県の補助が廃止・縮小・
減額などをされたときに、市としてどのように対応するか方針をあらかじめ決定したうえ
で、採否を決定する。
なお、事前の方針決定がなされていない場合は、国・県の補助制度の廃止・縮小・減額
が起きた場合には、当該補助制度は終了させる。廃止された補助金制度に代わるものとし
て、市単独の補助制度を新たに構築することも認めない。
(12-4)長期継続的な補助金の選択的検討(長期継続補助金)
長期継続的な補助金は、市の政策目的の推進の観点から大きな影響があることから、多
年度にわたる見直しプログラムを行財政改革プランに、具体的な補助金名称と具体的な年
度ごとの見直し作業を位置付け、補助事業に関する事後評価を踏まえて、中期的な工程表
のもとに検討を行う。
(12-5)イベント補助の原則禁止
特定の団体が主催する特定の大会運営・記念事業などイベントに係る補助金は、禁止す
る。なお、従来、イベント補助が目指してきた政策目的が、(1-1)に該当するような、
市の政策に合致するものであるならば、その目的を実現すべく、イベント補助以外の事業
手段を検討することが重要である。
ただし、イベント補助によって、イベント補助の金額を上回る税収などの市の直接的な
収入が見込まれる限りにおいて、イベント補助をすることは可能である。なお、この場合、
イベントの結果として市の直接的な収入が初期の金額に達しない場合には、市の直接的な
収入をイベント補助の交付の上限金額とし、それを上回る補助金をすでに交付した場合に
関しては返還を求めるものとする。
(13)過度な補助の停止
繰越金または剰余金等が補助金額を上回っている指定団体・運営費補助受給団体や、多
額の価値を持つ資産を有する指定団体・運営費補助受給団体については、その団体の財政
状況を勘案し、市民の垂直的公平性の理念(2-3)に照らして、補助金の停止や削減を
実施する。
(14)≪廃止≫(事業の評価)
この基準は、内容的には(1-1)および(12-1)(12-2)(12-3)(12-
4)に統合される。
6.現状の各補助金の適否~調査事項(3)~
以上のように、新たな補助金等交付基準(案)に関しては、本報告書でたたき台は示したと
ころであるが、当該補助金等交付基準(案)に基づいて、個別の各補助金の適否に関して報告
をすることは、以下の理由で差し控えたい。
第1に、新たな補助金交付基準は、仮に決定されるとするとすれば、執行部(特に予算執
行権限のある市長)において策定されるものとなるか、あるいは、議会も関わって策定され
るものになるのかはともかく、市政当事者が決定すべきものである。したがって、市政当
事者による決定を待たずに、いわば、シミュレーションとして行うことは、あまり適切と
は言えない。なぜならば、新たな基準が適用すると個別の補助金にどう影響するかを考え
て、新たな基準を決定することになり、いわば、個別補助金への「狙い撃ち」的な思考を
内在させざるを得ないからである。
第2に、上記とも関わるが、執行機関・議会も含めて、予算の決定・執行は公平でなけ
ればならず、補助金も同様である。したがって、個別の補助金を念頭に議論する前に、ま
ずは、基本的な方針や統一基準を検討すべきである。本調査事項(1)(2)は、まさにそのよう
な観点から依頼されたものであり、まずは、その報告を先行させるべきものと思われる。
仮に、専門的知見の活用によって、個別の補助金の適否に関して、第三者の専門家として
報告をするとするならば、市政当事者より、ある程度の統一基準が示されたのちの作業と
なろう。
第3に、今回の調査は、実質2か月という極めて限られた期間しかないものであり、個
別補助金の適否に踏み込むには、充分な調査を為し得ていない。個別補助金の所管からか
らもヒアリング調査を行ったが、これは、あくまで統一的な補助金交付基準を調査研究す
るための具体的素材を得るという位置付けであり、当該補助金の適否を判断するための調
査として行ったものではない。そのため、全ての補助金を網羅的にヒアリングもしていな
いし、特定の統一的基準に従って抽出しているわけでもない。さらに、補助金を受給して
いる民間団体・個人や、あるいは、申請した民間団体・個人という関係者からのヒアリン
グもしていない。また、補助金の効果に関する独自の評価分析なども行っていない。以上
に鑑みるに、個別の補助金の適否を報告するだけの段階には至っていない。
第4に、本報告で記載の通り、新たな補助金等交付基準(案)においては、公益性あるいは
市の政策目的への合致という観点で、総合計画・推進計画の内容が非常に重要となってい
る。しかるに、現在の総合計画・推進計画が、補助金の適否を判断する際の基準として利
用されることを想定して策定されていない場合には、必ずしも妥当な結論が得られない場
合もある。この点に関しては、調査期間も限られていたため、総合計画・推進計画の中身
に関して、調査研究はしていない。したがって、個別の補助金の適否の判断をするだけの
材料が、充分に揃っていない。
第5に、新たな補助金等交付基準(案)においては、様々な意味での、意思決定過程での手
続が盛り込まれている。交付基準において実体基準が中心で、手続基準を包含していない
ときには、新たな基準が策定されれば、誰が判断しても同じ適否の結論が得られると想定
して、調査研究をすることも不可能ではない。しかし、現実には、実体基準であっても誰
がどのような手続で判断するかで、相違が生じるものである。さらに、本報告書での新た
な交付金等基準案では、所管課が総合計画・推進計画や行財政改革プランの策定・実施過
程や予算編成で占める役割や、市民に公開された場における検討の意義を重視した手続基
準も盛り込んでいるため、個別の補助金の適否の判断は、これらの手続過程に委ねられる
べきものと考えられる。
以上の諸点から、現状の各補助金の適否に関する報告は保留することとする。
7.おわりに
以上をもって、専門的知見を活用しての補助金調査に係る報告を終えることとする。今
回の調査は、調査期間が限られていたため、大掛かりな調査を行うことはできなかった。
また、それに合わせて、調査の作業計画は、特別の補助者や補佐者を動員することなく、
受託者個人で行える小ぶりの範囲のものとした。そのため、包括的で詳細な調査はするこ
とはできなかった限界はある。
しかしながら、市議会・執行部双方の関係者の最大限の支援と協力を得ながら、効率的
に補助金交付基準に係る問題点と改善策を検討することができたものと考える。あくまで、
本報告書およびそれに含まれている新たな補助金等交付基準(案)は、今後の補助金見直
しを四日市市政関係者が議論するためのたたき台に過ぎない。報告書の一部をつまみ食い
的に引証して議論もなく運用を迫ることや、あるいは、反対に、四日市市のこれまでのや
り方と大きく異なるので、非現実的であるとして真摯に受け取らないことは、本報告書と
しては望むところではない。むしろ、報告書を全体として読み込んだうえで、その精神を
もとに新たな補助金等交付基準(案)に至った経緯を踏まえつつ、四日市市の実情に即応
した新しい補助金等交付基準を策定すべく、公論が展開されることを期待したい。
市議会および執行部の関係者が、今後とも補助金の在り方のより良い姿を検討するなか
で、本報告書が多少なりとも貢献することができれば幸いである。
【了】
収集資料
A 事前協議時の提供資料
(1)四日市市「四日市市補助金等交付基準」2012年4月改定
(2)四日市市議会決算常任委員会配布資料「補助金に係る調査の進め方について」
2013年4月22日
(3)四日市市議会決算常任委員会配布資料「専門的知見に対して調査を依頼する事項」
2013年4月22日
(4)四日市市議会事務局「補助金にかかる調査依頼について」2013年7月
(5)四日市市議会事務局「参考資料 補助金の調査にかかるこれまでの経過」
2013年7月
B 事前送付資料
1.市の概要に関する資料
(1)四日市市のあらまし(四日市市発行)
(2)四日市市のあらまし(四日市市議会発行)
2.市の計画に関する資料
(1)四日市市総合計画
(2)四日市市総合計画第1次推進計画(平成23~25年度)事業一覧
(3)四日市市行財政改革プラン(平成23~25年度計画)
(4)業務棚卸表
3.予算に関する資料
(1)平成25年度当初予算のポイント
(2)平成25年度予算の概要
(3)平成25年度当初予算資料
(4)四日市市予算の編成及び執行に関する規則
(5)平成25年度予算編成年間スケジュール
(6)中期財政見通し
(7)補助金負担金見直し一覧表(補助金のみ抜粋)
※四日市市補助金等交付基準についても資料中に記載
4.決算に関する資料
(1)平成23年度決算状況
(2)平成23年度決算の概要
(3)平成23年度決算に基づく健全化判断比率の状況
(4)平成23年度主要施策実績報告書
5.監査に関する資料
(1)財政援助団体にかかる監査結果報告書
6.議会関連の資料
(1)委員会の会議録(補助金に関する部分を抜粋)
(2)四日市市議会の議会改革について
(3)補助金評価調書<周期を迎える補助制度の効果を検証する長所>(様式1)
(4)補助金の効果チェック(様式2)
C ヒアリング時提供資料および事後送付資料
1.議員
(1)平成24年度全国ファミリー音楽コンクール実行委員会収支決算書
(2)第1回全国ファミリー音楽コンクールinよっかいち<事業報告書> 平成25年1
月29日 全国ファミリー音楽コンクール実行委員会
(3)補助金見直しに関する意見(120918)(政友クラブ・豊田議員提出資料)
(4)補助金の現状についての問題点整理(130731)(同上)
(5)イベント系補助金一覧表(同上)
(6)スワビ・アミューズ(イベントのチラシ)
(7)商店街空き店舗活用支援事業
(8)空き店舗への新規出店支援事業の変遷について 平成25年6月26日商業勤労課
(9)平成24年8月6日
予算常任委員会全体会所管事務調査資料(指定管理者制度に
ついて) 財政経営部
(10)平成25年市議会定例月議会
予算常任委員会資料(産業生活分科会長報告・質
疑の際の請求資料) 企業立地奨励金 申請関連書類(MCJエネルギーサービス(株)
について 商工農水部
(11)平成24年11月7日 市民協働条例調査特別委員会資料 市民文化部
2.財政経営部
(1)四日市市補助金等交付規則解説
(2)補助金一覧表(平成25年度当初予算)
(3)補助金・負担金見直し一覧表(平成25年8月定例月議会資料)
(4)平成25年7月16日
予算常任委員会協議会資料「本市の予算編成について」財
政経営部・政策推進部
(5)四日市市行財政改革プラン2011(平成23年度から25年度) 財政経営部
(6)平成25年2月市議会定例月議会 平成25年度当初予算追加資料 補助金・負担
金見直し一覧表
(7)補助金見直し一覧表(四日市市総合計画第1次推進計画関係)
(8)補助金見直し一覧表(行財政改革プラン関係)
(9)平成25年度当初予算 補助金見直し一覧表(見直し以外)
3.教育委員会事務局
(1)公益財団法人四日市市学校給食協会補助金交付要綱
(2)平成25年度給食協会要覧 公益財団法人四日市市学校給食協会
(3)公益財団法人四日市市学校給食協会定款
(4)平成25年度第1回評議員会要項 公益財団法人四日市市学校給食協会
(5)四日市市私立学校運営費補助金交付要綱
(6)四日市市私立外国人学校運営費補助金交付要綱
4.商工農水部
(1)平成24年度商店街活性化イベント事業補助金
(2)商店街魅力アップ事業補助金
(3)商店街空店舗活用支援事業補助金の商店街別支出状況表
(4)製造品出荷額の推移等
(5)地場産業振興(四日市萬古焼除く)
5.市民文化部
(1)委託契約書(自治会事務委託(連合自治会研修等)
(2)個性あるまちづくり支援事業費補助金交付要綱(平成23年度)
(3)同上(平成24年度)
(4)同上(平成25年度)
(5)平成24年度個性あるまちづくり支援事業助成団体一覧表
(6)個性あるまちづくり支援事業費補助金実績報告書(個票)
(7)四日市市自治会連合会事務局運営事業費補助金交付要綱
(8)四日市市自治会連合会事務局運営事業実績報告書(個票)
(9)地域社会づくり総合事業費補助金交付要綱
(10)平成24年度地域社会づくり総合事業費補助金実施事業一覧表
(11)××地区地域社会づくり総合事業補助事業実績報告書(個票)
(12)四日市市防犯外灯推進事業補助金交付要綱
(13)四日市市防犯外灯推進事業補助事業実績報告書(個票)
(14)ささえあいのあるまち創造基金のご紹介
(15)個性あるまちづくり支援事業費補助金助成団体(地区別活動状況一覧)
(16)委託契約書(自治会事務委託)
(17)防犯外灯設置等補助金交付要綱
(18)防犯外灯設置等補助金交付取扱基準
6.環境部
(1)資源集団回収事業について
(2)四日市市資源集団回収助成金交付要綱
(3)資源集団回収活動状況集計 平成25年4月30日
(4)四日市市家庭用新エネルギー等普及支援事業費補助金交付要綱
(5)四日市市家庭用新エネルギー普及支援事業運用要領
(6)四日市市中小企業新エネルギー導入等促進事業費補助金交付要綱
(7)四日市市中小企業新エネルギー導入等促進事業費補助金交付要領
(8)公害医療対策事業等委託
(9)四日市医師会公害対策事業費補助金交付要綱
(10)四日市医師会公害対策事業実績報告書
7.こども未来部
(1)私立幼稚園就園者(保護者)に対する保育料補助制度
(2)平成24年度学童保育所概要一覧
(3)放課後子どもプラン推進事業の国庫補助について
(4)放課後子どもプラン推進事業の実施について
(5)四日市市放課後児童健全育成事業補助金交付要綱
(6)三重県放課後児童クラブ活動事業費補助金交付要領(改定後)
(7)四日市市学童保育所常勤指導員確保支援事業補助金交付要綱
(8)四日市市学童保育所利用支援補助金要綱
8.健康福祉部
(1)四日市市・四日市医師会等連携推進事業実施要綱
(2)四日市医師会への連携推進事業補助金支出の基準
(3)四日市歯科医師会連携推進事業補助金支出の基準
(4)四日市薬剤師会連携推進事業補助金支出の基準
(5)平成25年3月1日
予算常任委員会教育民生分科会 健康部健康総務課 四日市
医師会等連携推進補助金の見直しについて 健康部健康総務課
(6)四日市医師会地域医療等推進補助金交付要綱
(7)四日市歯科医師会地域医療等推進補助金交付要綱
(8)四日市薬剤師会地域医療等推進補助金交付要綱
(9)四日市医師会及び四日市医師会員への委託事業にかかる事務委託に関する契約書
(10)四日市医師会への依頼業務にかかる事務委託に関する契約書
(11)四日市歯科医師会及び四日市市歯科医師会員への委託業務に係る事務委託に関
する契約書
(12)四日市歯科医師会への依頼業務にかかる事務委託に関する契約書
(13)四日市薬剤師会及び四日市薬剤師会員への委託事業にかかる事務委託に関する
契約書
(14)四日市薬剤師会への依頼業務にかかる事務委託に関する契約書
(15)社会福祉法人四日市市社会福祉協議会補助金交付要綱
9.政策推進部
10.監査事務局
11.議会事務局
(1)市議会便覧(平成25年度版)
(2)補助金調査ヒアリングにかかる事前調査における意見(総括表)
(3)補助金調査ヒアリングにかかる事前調査票(個票)
(4)補助金調査ヒアリング対象部局について
(5)平成25年度予算 予算書及び予算説明書修正箇所
(6)平成24年度補正予算(第7号) 予算書及び予算説明書修正箇所
(7)平成25年2月市議会定例月議会(平成25年3月14日)
予算常任委員会全体会資
料 私立学校等運営費補助金(朝鮮初中級学校関係部分) 教育委員会
(8)平成25年2月市議会定例月議会(平成25年3月14日)
予算常任委員会全体会資
料 (仮称)大矢知中学校新設事業について(当初予算分) 教育委員会
(9)平成25年2月市議会定例月議会(平成25年3月13日)
予算常任委員会全体会資
料 (仮称)大矢知中学校新設事業について 教育委員会
(10)平成24年6月市議会定例月議会(平成24年6月25日)
予算常任委員会全体会
資料 (仮称)大矢知中学校新設事業について 教育委員会
(11)よっかいち市議会だより 2月定例月議会・3月緊急議会合併号(平成25年5月)
(12)平成21年度三師会関係部分の委員会会議録
以上
発言が指定されていません。 Copyright © Yokkaichi City Assembly, All rights reserved. ↑ 本文の先頭へ...