この間、さまざまな市政改革やまちづくりに取り組まれてきたところでありますが、質問の最初の項目として、市長選の際の公約に挙げられた事項に沿って、私なりの検証も加えながら、この4年間の幸山市政の姿を改めて振り返らせていただきますので、市長御本人の厳しい目でその成果だけでなく、結果として反省すべき点などについて、具体的な評価を含めみずから総括をしていただきたいと思います。
まず、情報公開と住民参加についてであります。これについては、市長みずから率先してすべての行動や考え方を市民に公開し、その上で職員の徹底した意識改革を実行し、市民との緊張感あるパートナーシップを築いていくとされており、具体的には交際費の支出基準の明確化と公開、要望相談の文書化、おでかけトークや地域説明会の開催、予算編成過程の公開など、積極的に取り組まれてきました。
また、ふた
バイバイキャンペーン、節水社会実験など市民の日常での取り組みが必要不可欠な環境問題への対応や、さらには
健康づくり活動などにおいて、
エコパートナーくまもと、あるいは健康くまもと21などNPOや
市民ボランティア団体と連携した取り組みを推進されるなど、市民との協働をまちづくりの進め方の基本姿勢とし、各種施策を展開されております。
市民にとっては、これらの取り組みを通じ市政を身近に感じられるようになるとともに、地方分権時代における自治の確立が図られていくものと大いなる期待を寄せているところでもあります。しかしながら、住民参加が最も必要な地域のまちづくりについて、現状では文書配布の見直しや
校区自治協議会の設立などを初め、市と町内会などの地域団体との間で意思の疎通がうまくいっておらず、混乱している面も見られます。
私自身、住民による自主自立の地域づくりの推進は分権社会の到来を見据える中で市政の最重要課題の一つであるととらえており、昨年第3回の定例会において、市民分権、行政分権の2つの側面からとらえた都市内分権について質問したところであります。加えて、市長みずからまちづくりの憲法と位置づけ昨年3月に提案された熊本市自治基本条例については、特別委員会での継続審議となっていますが、これらの議論や前回の質問の答弁等を見ても今後の自主自立の地域づくりに対する市としての基本的な方針や方向性がいまだ明確になっていないと感じております。
そこで質問いたしますが、情報公開と市民参加に関し、どこまで進捗しどのような点が不十分と思われているのか。いまだ継続審議となっている熊本市自治基本条例に対する現在の考えを含め、市長自身の4年間の総括をお願いいたします。また、昨年9月の都市内分権に関する一般質問に対し市長は「今年度じゅうに、これらを総合的に検討していく研究会を設置し、今後のあり方について整理していく。」とお答えいただきましたが、その後の進捗状況について御答弁をいただきたいと思います。
〔幸山政史市長 登壇〕
◎幸山政史 市長 ただいま議員より4年間の検証と総括・市政運営に対する評価ということで御質問をいただきました。公約25項目ございましたが、3つに分類させていただいております。その中での、まずは情報公開と住民参加というテーマで御質問をいただきました。その前に4年間早かったと、あっという間にという表現もございましたが、私自身もよく「早かったですね。」と、「もう4年たったのですか。」ということを言われますけれども、私自身早かったようで、長かったようで、毎日毎日が新たな課題に向けての挑戦の連続でございましたものですから、気がついたら4年が経過しておったという思いがあるわけでございます。そういう中で、しっかりとこの4年間を振り返りましてただいまの質問に対して順次お答えさせていただきたいと存じます。
まず最初に、情報公開と住民参加についてでございます。
私は、市民に信頼される市政を実現し、個性豊かで活力に満ちた地域社会をつくり上げてまいりますためには、積極的な情報公開、情報提供、そして丁寧な説明や意見交換を行いますとともに、市民の皆様方の御理解をいただくことが重要であるという考え方に立ちまして、市民参加の取り組みをこれまで進めてまいりました。具体的には、先ほど御紹介いただきましたほかにも
市政情報プラザの開設でございますとか、各種計画等における住民説明会や
パブリックコメントの実施、PI手法を取り入れました
地域コミュニティセンターの建設でございますとか公園の建設、さらには審議会につきましては、議事録のホームページでの公開、委員の積極的な市民公募などを実施してきたところでありまして、これらにつきましては一定の評価をいただけるのではないかと考えております。
また、
世界女性スポーツ会議における
市民ボランティアの皆様方の活躍でございますとか、市民によるみずあかりの企画運営でございますとか、さらには新町・古町地区における
城下町都市くまもとづくりでございますとか、そういった活動を目の当たりにいたしましたときに、市民の皆様の主体的なまちづくりの高まりを実感しておるわけでございますけれども、そうした取り組みを全市的に広げてまいりますためには、まだまだ課題もございます。
そうしたことから、これまで以上に市民の皆様や、その代表である議会の皆様と議論を交わしながら、自治基本条例の制定、(仮称)
市民公益活動推進のための基本指針の策定、そしてPI指針の策定など、できるだけ早く市民の皆様が自主的にまちづくりに取り組んでいただけることのできる仕組みを構築しなければならない、そして実践に移していかなければならないと考えております。
特に自治基本条例でございますが、その素案策定の経緯を振り返ってみましても、市民の皆様の積極的な参加をさらに推進し、分権時代の市政運営の原則や市民参画・協働に関する理念など、市民の皆様と行政とが共有していく基本となるルールでもございまして、ぜひとも必要なものと考えておりますので、早期成立をお願いしたいと考えております。
次に、都市内分権につきましてお答えさせていただきます。
住民による主体的な地域のまちづくりを進めるための地域分権、そしてこれを支援するための行政体制の整備や、住民にとって身近なところで行政サービスの提供を可能にする行政内分権、地域分権と行政内分権、この両面を持ちます都市内分権につきましては、
政令指定都市の実現を目指しております中、重要な課題ととらえているところでございます。
こうしたことから、これまでも
校区自治協議会の設立の推進や
まちづくり担当者の配置などに取り組んでまいったところでございます。そして、昨年10月には庁内に検討会議を設けまして、
地域コミュニティに期待する役割と分権のあり方、行政の支援体制などにつきまして検討を重ねているところでございまして、本年度中には、(仮称)地域の
まちづくり推進のための基本方針を取りまとめたいと考えております。
〔5番 大石浩文議員 登壇〕
◆大石浩文 議員 市長の言われるとおり、住民参加には情報の共有化が不可欠です。行政が積極的に自分たちの持つ情報を明らかにしていかなければ、主権者である市民の方々がみずからの判断と責任のもとに、市政に、また地域の課題解決の活動へと参画していくことは不可能なのです。住民参加については幸山市政のこの4年間で確かに進展いたしました。しかし、真の協働のまちづくりを進めるためにはまだまだスタートを切ったばかりであり、
パブリックコメント等の新たな制度も十分に機能していない面も否めませんので、引き続いての積極的な取り組みに期待いたします。
また、都市内分権とは、肥大化したこの市役所から
地域コミュニティへの分権を図るものであり、市民の生活に密着した行政サービスを身近な地域で提供し、かつ地域の課題を地域そのものの中で解決できるシステムを構築するものと私は考えます。
市長もその重要さは十分に御理解いただいているようですので、前回の質問で設置していただいた検討会議での成果をできるだけ早くお示しいただくことをあわせて要望しておきます。
次に、市民の視点を最重視した市役所の構造改革についての検証であります。
市長は、市民との新たな信頼関係を構築するため市役所の構造改革に向け、就任直後から総合計画、行政改革大綱、中期財政計画を一体的に見直す熊本市版三位一体改革を進められ、平成16年3月には「
まちづくり戦略計画」、「
行財政改革推進計画」としてまとめられました。市政改革については、ごみ収集など官民の役割分担に基づく業務委託等の推進や、職員の削減などスリムで効率的な行政への転換に努められております。加えてこの取り組みの中では、市民に負担をお願いすることとなるさくらカードや
児童育成クラブの有料化などについて、賛否両論あるものの決して議論を避けずに受益者負担の原則を導入されたわけであります。このような取り組みにより、国によって地方交付税が大幅に削減されるなど、全国的に他の地方自治体はさらに厳しい財政運営を迫られる中で、熊本市においては公債費比率など各種財政指標は確実に改善しており、将来のための財政健全化の確立に向けて確実に前進を果たしたことは高く評価されるべきであると思います。
しかしながら一方では、一部職員の不祥事が続き、一般市民から見た場合なかなか職員の意識改革が進んでいないように思われる現状でありますし、加えて学校給食、ごみ収集、保育園などさまざまな民間委託を進める中で、サービスの質や安全性の確保の問題、またPFI導入と地場産業の活性化の問題、さらには外郭団体の取り扱いなど、今後改革をさらに推進していく中で同時に解決していかなければならない問題が表面化しているのも事実であります。
そこで幸山市長に、市役所の構造改革について4年間の取り組みをどのように総括されているのかお尋ねします。また、特に市長は常々、この改革はやらされるものではなく、職員みずからの発案で進めるものだと言われているが、職員の意識、あるいは市役所の構造そのものが変わっているのか、その手ごたえについて正直なところをお聞かせいただきたい。加えて、官民の役割分担に基づく民間委託、PFIなどに取り組む中で改めて問われている公共サービスの質や安全性の確保、地場産業の活性化などについて、今後どのように対処していかれるのか、あわせてお答えいただきたいと思います。
〔幸山政史市長 登壇〕
◎幸山政史 市長 検証と総括の2項目めの市役所の構造改革につきましてお答えさせていただきます。
私は就任以来、市政改革に取り組んでまいりましたが、先ほど御紹介いただきました
まちづくり戦略計画、それから
行財政改革推進計画、この2つの計画を柱として市政改革に取り組んでまいりました。その中におきまして、行財政改革につきましては、先ほど御紹介もありましたが事務事業の見直し、職員数の計画的な削減などのほかにも、これまでの行政改革におきまして、取り組みがおくれておりました民間委託等の
アウトソーシングにつきましても積極的に進めてきたところでございます。
現在、計画期間の2年目が経過したところでございまして、これまでの取り組みの成果といたしましては、2年間で約55億円の経費効果、そして30億円を
まちづくり戦略の新規・拡充事業に投入してまいりました。そして、中核市で最低レベルといわれておりました各種財政指標につきましても、公債費比率、
起債制限比率ともに改善しているところでございまして、市債残高が着実に減少します一方で、財政調整基金は目標の100億円を達成いたしますなど、行財政改革につきましてはおおむね順調に推移しているものととらえております。
もとより、市政改革の推進に当たりましては
職員一人ひとりが市政を取り巻きます厳しい状況を先ほど御紹介ありましたがみずからの課題として認識し、市政を担う一員としての使命感を持ちながら全庁一丸となり取り組んでまいりますことが必要であると申し上げてきたところでございますが、御質問いただきました職員の意識の問題につきましても、この4年の間で変化の兆しが見えつつあると感じております。例えば、先ほど申し上げましたような情報公開や市民参加の取り組みを重ねます中で、市民との協働に対する意識、これは徐々に進んでおりますし、行政評価制度の導入によりまして施策の成果を評価・検証するといった考え方でございますが、これまで以上に職員の中に広がってきているのではないかととらえております。また、経営戦略会議など政策形成過程におきまして、自由闊達な議論が行われますなど、職員の政策立案能力も向上しているのではないかと感じております。ただ、先ほど御指摘もございましたように、いまだ一部には公務員としての自覚の欠如によります不祥事が見られますなど、真の意識改革にはこれからも努力する必要があると考えております。このように、行財政改革はそのさなかにございまして、今後も不断の取り組みとして進めていかなければならない大きな課題だと考えております。
次に、行政改革を進める中で注意しなければならない課題といたしまして御指摘のありました公共サービスの質や安全性の確保、そして地場産業の活性化への対応につきましてお答えさせていただきます。御案内のとおり、本市におきましては、
アウトソーシング計画に基づきまして、ごみ収集を初めといたします民間委託や
指定管理者制度の導入などを進めているところでございますが、この際、コスト削減のみを推し進めるのではなく、サービスの質や安全性の確保に努めてまいりますことはその前提であると考えております。したがいまして、委託業務の実施に当たりましては、サービスの水準の維持に向けて現在ごみ収集業務においては定期的に業務遂行状況の調査を行っておりますし、指定管理者につきましてはこのほど全庁的な指針といたしましてモニタリングに関する基本方針を策定したところでございます。今後は特に安全性に係る事項につきまして、より的確な規定を設けてまいりますとともに、その履行状況を検証する仕組みにつきまして検討を進めてまいりたいと考えております。
最後に、地場産業の活性化についてでございますが、民間委託の実施に当たっては契約事務の公正性や透明性を確保しつつ、可能な限り地場産業に配慮し、地域経済の活性化につながるように努めてまいりたいと考えております。
〔5番 大石浩文議員 登壇〕
◆大石浩文 議員 私が、この
市役所構造改革のかぎを握るものであり、最も難しいとも感じていたのが職員の意識改革です。市役所には、長年、行政が政策の主体であり、住民は客体であるとの「統治行政の考え方」が染み込んでおり、「住民を下に見て、自身は現状維持的安定の行動様式をとる」との批判を否定できずにいたわけであります。職員みずからがこの過去の行政文化から抜け出し、自己革新のもと、市政改革の担い手としての役割を果たしていくことが最も必要なことです。
市長は、職員の意識の変化を着実に感じつつあるとのことですが、私も職員OBとしてそれは肌で感じております。今の市政改革を後戻りさせてはならないとの思いを特に中堅、若手職員からは感じることができるのです。しかし、やはり、先ほどの「現状維持的安定の行動様式」をとりたがる職員もいますし、一部職員による不祥事もなくなってはいないのです。これからは、単に職員の削減数にこだわるだけでなく、仕事のやり方、業務のプロセスをいま一度見直し、徹底的にむだを排除し効率性を高めるなど、数より質の向上をより一層図っていただきたいと思います。
また、連日報道される岐阜県庁の裏金問題や、福岡市職員の飲酒運転3児死亡事故など公務員への不信は広がるばかりです。市長も提案理由の中で触れられましたが、職員の非行に対する厳罰化は早急に進めるべきであり、さらには職員の給与制度への成果主義の導入に取り組むなど、今後も真の意識改革へ向け、不断の決意で取り組んでいただきたいと思います。
検証と総括の最後に、
政令指定都市の実現を初めとした新しい熊本づくりに向けた取り組みについてであります。
市長は、5年後に迫った九州新幹線の全線開通などをにらみ、九州中央の拠点都市にふさわしい都市機能の充実を図り、次代を担う子供たちの健やかな成長への支援、福祉の充実や地下水を初めとした環境保全などに重点的に取り組むとともに、喫緊の課題である雇用対策や地場経済の活性化に経済界と連携し取り組み、個性豊かで活気あふれる新しい熊本づくりを進めることを公約として掲げられました。その中で、少人数学級の実現、少人数指導の充実など教育環境の整備、さらには
子育て支援センターの設置、待機児童の解消など次代を担う子供たちの健やかな成長支援については、特に意を用いて取り組まれているのは周知のとおりであります。
また、新幹線開業までの事業完成に向け、タイムリミットが迫っていた熊本駅東A地区再開発事業について、民間施行から市施行へと切りかえ、事業の推進を図られたほか、県市協定の見直し、新たな
駅周辺整備計画の策定など、駅周辺整備の推進や
トップセールスによる
大型コールセンターの誘致、みずあかりなど民間との連携による新たな
にぎわいづくりなど、魅力と活力に満ちた新しい熊本づくりや地場産業の活性化に向けたさまざまな施策が展開されています。加えて、まちづくり三法見直しに伴う
中心市街地活性化基本計画の策定や、熊本城築城400年祭や水ブランドの展開などの新たな取り組みも進められつつあります。
しかし、このような実績が上がっている一方で、バス路線網の再編など長年の課題でもある公共交通網の再整備については、産交問題等があったとはいえ、いまだ具体的な成果はほとんど上がっていないのが現状であると言えます。加えて、
政令指定都市の実現においては幾つかの近隣町で実施された本市との合併協議会の設置に対する住民投票がすべて否決されるなど、新合併特例法の期限が刻々と近づく中で実現の見通しが全く立っていない状況も認めざるを得ません。
そこで、幸山市長にお尋ねします。新しい熊本づくりに向けたこの4年間の取り組みをどのように総括されているのか。特に手詰まりの状況を打破するために、本年1月には周辺の15市町村長を中心に組織された「熊本都市圏及び
政令指定都市に関する研究会」を設置し、都市圏の一体化を進める取り組みが始まったところであり、この研究会を中心とした
政令指定都市実現に向けての今後の取り組みについてもあわせてお答えいただきたいと思います。
〔幸山政史市長 登壇〕
◎幸山政史 市長 4年間の検証と総括の最後ということで、新しい熊本づくりに向けた4年間の総括、さらには
政令指定都市実現に向けた今後の取り組み等につきましてお答え申し上げます。
〔議長退席、副議長着席〕
まず、4年間の新しい熊本づくりに向けた総括でございますが、私は間近に迫りました九州新幹線の全線開業をにらみまして、九州中央の拠点都市にふさわしい新しい熊本づくりを公約の柱の1つに掲げさせていただいたところでありまして、その実現に向けまして、
まちづくり戦略計画を策定し、その方向性を提示させていただいたところであります。特に、「良好な環境を未来へと引き継ぐまち」、そして「子どもたちが健やかに成長するまち」、さらには「人々が集う元気なまち」、これを
ターゲット戦略として位置づけさせていただきまして、全力を挙げて取り組んできたところでございます。
具体的には、まず地下水保全でございますが、
白川中流域水田での湛水事業など地下水涵養量の増大を進めますとともに、市民の皆様との協力のもとで節水社会実験を実施いたしますなど、量の保全に努めてまいりますとともに、現在、
地下水保全条例の強化充実を図りますための改定作業を進めますなど、質の確保にも取り組んでいるところでございます。しかしながら、現時点におきましては
まちづくり戦略計画で掲げます目標の達成、地下水保全に向けた達成には厳しい状況でございまして、さらに積極的な取り組みが必要であると考えております。
次に、子供たちの健やかな成長支援につきましては、本年度から小学3年生での35人学級を実現いたしまして、小学校高学年での少人数指導の充実などに取り組んでいるところでございます。加えまして、新たに5カ所の
保育所設置認可を進めまして、待機児童の解消に努めておりますほか、
子育て支援センターの整備でありますとか
児童育成クラブの拡充、子育てしやすい環境づくりにも積極的な施策展開を図っているところでございます。これらの取り組みにつきましては、改めて申すまでもございませんが、これで十分というものではございません。さらなる取り組みの必要性を感じているところでございます。
続きまして、人々が集う元気なまちづくりについてであります。
新幹線開業を目前に控えまして、熊本駅周辺整備につきましては、県市共同におきまして昨年6月、県市協定を見直しまして、東A再開発事業の本格的着手など事業の着実な推進を図っているところであります。また、中心部におきましては、民間主体による四季折々の祭りの開催などとの連携を深めまして、みずあかりを初めとした城下町大にぎわい市や駅都心間協働のまちづくりなどを進めているところであります。加えまして、現在、熊本城域を含め約400ヘクタールを対象エリアといたしました
中心市街地活性化基本計画の策定に着手いたしておりまして、今後とも官民一体となった活力と魅力づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
こうした中、本市が九州内での拠点性を高めてまいります上で、だれもが利用しやすい公共交通網の整備はその基盤となるものであるととらえているところでございますが、市営バス路線の一部民間移譲等は実現いたしましたものの、本格的な再編の道筋を明確にするまでには至っておりません。そこで、今後民間事業者を含めました関係者による協議の場におきまして、共同運行体制や線から面への移譲による本格的な再編についての検討を進めてまいりたいと考えております。
また、
政令指定都市の実現につきましては、本市が九州中央の交流拠点都市としてさらなる発展を図ります上で最も重要な課題と認識いたしております。したがいまして、まず近隣市町村との連携による信頼関係を築くことが第一と考えまして、熊本中央広域市町村圏協議会に広域連携部会を設置いたしまして、具体的な連携方策を構成市町村と協議いたしますとともに、国・県に働きかけを行いまして、合併新法における新市町村合併支援プランに
政令指定都市の指定の弾力化を盛り込んでいただいたところであります。さらに、本年1月からは熊本都市圏及び
政令指定都市に関する研究会を立ち上げまして、熊本都市圏ビジョンの策定に取り組んでいるところでございます。先般は、この研究会におきまして熊本都市圏ビジョンの基本構想案が議論されまして、その中で、都市圏の基本戦略の一つとして
政令指定都市の実現を掲げることにつきまして研究会としての意見の一致を見たところであります。
今後は、基本構想の策定、そして本構想に基づく具体的な戦略を示す基本計画の策定に取り組んでまいりますとともに、都市圏住民の皆様にも都市圏発展のための
政令指定都市実現の必要性を御理解いただき、機運の醸成に努めてまいりたいと考えております。加えまして、富合町につきましては、既に任意協議会を設置し、合併に向けた具体的な協議を進めているところでございまして、今後広く市民、町民の皆様への情報提供に努め、合併の実現へと歩みを進めてまいりたいと考えております。
こうした取り組みを進めてまいりますことで、近い将来におきまして必ずや熊本都市圏においての
政令指定都市を誕生させたいと考えております。
〔5番 大石浩文議員 登壇〕
◆大石浩文 議員 熊本都市圏及び
政令指定都市に関する研究会において、都市圏の基本戦略の一つとして、
政令指定都市の実現を掲げることで一致したことは評価いたします。近隣町で合併協議会の設置に対する住民投票で否決されたという失敗を糧にして、実現に一歩動き出したということではないでしょうか。しかし、時間に限りがあります。都市圏に住む住民の方々にもこの思いをしっかりと共有していただき、この取り組みをより一層加速させ、お互いの信頼関係を築く中で、熊本市民の夢である
政令指定都市実現への活路を見出していただきたいと思います。
答弁では余り触れられませんでしたが、地域経済の活性化については、築城400年祭を前に、特に観光面での施策の充実が必要だと考えます。推進体制を強化していく中で、公約にも掲げてあった民間人の積極登用など思い切った施策を実行すべきだと思います。財政健全化は必要ですが、将来に向けて必要なものには重点的な投資を図らなければなりません。検討から実行へと移しながら成果をできるだけ早く形にし、それを明るい展望へとつなげていく、そうした循環を生み出し、市民が新たな夢を持てる新しい熊本市へと邁進していただきたいと思います。
次の項目であります次期市長選に臨む基本的な考え方、具体的な公約に移りたいのですが、この1期4年間を振り返るときに、執行部と議会との関係については、やはり検証しておかなければなりません。
経営的な視点で市政を運営するために民間のノウハウを注入するため提案された任期付職員の採用、本市まちづくりの憲法と位置づけ制定を目指された自治基本条例、さらには家庭ごみ収集の有料化や市立産院の見直しなど重要な条例案件の幾つかが否決、修正または継続審議となっており、執行部と議会との溝はなかなか埋まらず、残念ながら一部においては今やかえって深まっているような状況も見られます。これらの条例案件については、我々の会派では市民の立場に立った改革を推進すべきとの視点でそれぞれに対応し、基本的には賛同の意を示してきたところでありますが、このような結果となった背景には改めて客観的な視点に立って考えてみても、やはり市長の議会と協調していこうとの姿勢、執行部の議会に対する説明が不足し、意思疎通がうまくいっていないことが大きな要因と思われます。
幸山市長は2期目の挑戦を表明されるに当たり、「これまで取り組んできた市政改革や新しい熊本づくりは4年間では終わらない。また終わらせてはならない。さらにステップアップして2期目に臨みたい。」と強い決意を表明されています。この強い思いを実現に移していくためには、特に今後の熊本市、あるいは地域の発展に大きくかかわるような案件では同じく住民の代表である議会への説明は不可欠であり、議案として議会に上程する以前の政策立案や形成段階において適宜説明し、意見調整や議論を行いながら相互理解を深め、同じ方向に向かって進んでいこうとする関係、いわゆるよき緊張とともによき協調の関係が不可欠であると私は強く思うものであります。これまで議会からも幾度となく指摘してきたように、この点について市長はまだまだ努力不足であったと思うわけであります。定例会ごとに意見交換させていただいている先輩議員の方は、よくこう言われました。「市長のおかげで確かに議会は活性化した。市長はこれまでの市長にないよさを持っている。だからこそ、もったいない。」また、ある方は、「議員は52人の中の一人だが、市長は1人しかいない。そこをもっと認識すべきだ。」
私は、市が新たに描くべき新幹線開通後の都市戦略とは、本市の市政運営及び市民活動の指針である総合計画において具体的に示されるべきであり、次期市長は就任後早々にその策定作業に取り組み、新たな時代へ向けた本市の将来像を示す必要があると思います。そのためにも議会と執行部がそれぞれの立場で切磋琢磨し、前向きな議論を重ね、その上で相互理解を深め、同じ方向に向かって進んでいくことが不可欠ではないでしょうか。
そこで、幸山市長にお尋ねします。2期目に臨むに当たって、特に議会との関係を含め市政運営に関する市長の基本姿勢について、お考えをお聞かせいただきたい。加えて、これまでの4年間の総括をしっかりと踏まえた上での2期目の具体的な公約について、市長の決意をお示しください。
〔幸山政史市長 登壇〕
◎幸山政史 市長 2期目の基本姿勢と公約につきましてお答えさせていただきます。
まず、2期目に臨むに当たりましての市政運営に対する基本姿勢についてであります。
私は、市政運営に当たりましては何よりもまず公平、公正、透明を旨としなければならないと考えております。その上で、市民の皆様から信頼される市政を実現し、次の世代に対する責任を果たしますために、市民の皆様とともに新しい熊本づくりを進めてまいりますことを市政運営の基本としてきたところであります。そこで、2期目に当たりましても、将来世代への責任を果たし、地方分権時代の受け皿としての体制を整えますために、行財政改革の取り組みを一層強化し、財政健全化を進め、市民に信頼される市役所を実現しなければならないと考えております。また、ただいま御指摘をいただきました、また先日も藤山議員からも御指摘のあったところでございますけれども、議会との関係についてでございますが、ただいまお述べになりましたように私といたしましても議会と執行部とがそれぞれの立場で切磋琢磨し、前向きな議論を重ね、よりよい緊張と協調の関係を築き上げていかなければならないと考えておりまして、先日もお答えいたしましたように政策立案や形成段階などのでき得る限り早い段階での説明に心がけ、そして御議論をいただき、これらを踏まえ、議案としてまとめていくよう努力しなければならないと考えております。まだまだ努力不足、反省すべき点があるのではないかといった指摘を真摯に受けとめまして、先ほど御指摘のありました緊張と協調の関係、これが構築できますように心がけ、精いっぱい取り組んでまいる所存でございます。
続きまして、具体的な公約についてであります。
私は、市長としてのこの4年足らずの期間の中で地域づくりに取り組む人、熊本を盛り上げようと活動する人、環境を守る運動に参加する人など、いろいろな人に支えられ新しい熊本が築かれていくことを目の当たりにし、まちづくりは何よりもまず人が基本であるということを痛切に感じております。また、私は家庭におきまして子供と過ごしますときには、人は子供を持ったときに親になるのではなく、子供とともに悩みを考え、そしてさまざまな体験を通して、子供とともに親として成長していくものと感じることがございますが、それを同じようにまちづくりに例えてみますと、まちづくりを支える人もまちづくり活動を通し、さまざまな人と出会い、体験をし、みずから成長していくのではないかと考えております。こうしたことから、私は2期目を目指すに当たりましては、人がまちを築き、まちが人を育てる、こうした思いでこれまでの4年間の取り組みをさらにステップアップさせ、市民の皆様方とともに新しい熊本づくりへの夢を共有し、挑戦してまいりたいと考えております。そして、その共有する夢とは、「日本一暮らしやすく住みやすいまち」であり、「九州のど真ん中から“熊本力”を内外に力強く発信していく」ことであります。
そこで、その具体的な取り組みといたしましては、まず新しい熊本づくりを担う人づくりに向けまして、少子化時代への対応を図りますため、乳幼児医療費の対象拡大や、多様なニーズに対応した保育環境の整備など、子育てしやすい環境づくりに取り組み、また子供たちの未来への可能性を引き出しますため、小学校での少人数学級、少人数指導のさらなる充実を図りますとともに、これらの取り組みを中学校にまで拡大したいと考えております。加えまして、ともに支えあう地域力の強化を図りますため、
校区自治協議会を中心とした地域団体、NPOやボランティア団体の自主的な活動を支援いたしますとともに、行政との協働の取り組みを進めてまいります。
また、日本一暮らしやすいまちづくりに向け、地下水涵養増進や市民との協働による節水社会の実現など本市の貴重な財産でもあります地下水の質量の保全に特に力を入れて取り組んでまいります。さらに、将来の高齢化社会を見据え、公共交通網の再編整備は特に重要な課題でもございまして、線から面への移譲による本格的なバス網の再編や共同運行体制の確立など具体的なアクションへつながりますよう関係者との協議などに行政みずからリーダーシップを発揮し、これまで以上に積極的に取り組んでいきたいと考えております。さらに、九州のど真ん中から“熊本力”を内外に力強く発信してまいりますため、新幹線全線開業を見据えまして本市の顔でもあります中心市街地の魅力と拠点性の向上に取り組んでまいります。
このため、玄関口となります駅周辺におきましては、現計画に基づく各種事業の着実な推進を進めますことはもとより、駅と市電との結節強化を初め、日本一乗り換え便利な駅の具体化を図ってまいりたいと考えております。また、熊本城を核とした観光の振興を図りますため、熊本城築城400年を契機にKUMAMOTOブランドを内外に発信してまいりますとともに、桜の馬場の有効活用など熊本城の利活用のさらなる推進に努めてまいります。加えて、古町、新町などにおける地域住民との協働による城下町の再生に向けたまちづくりや、商店街などによる
にぎわいづくりなどをさらに盛り上げていきますほか、オフィスなどの立地促進、新規創業支援などにも積極的に取り組みまして、本市のみならず九州の顔となるような中心市街地の活性化に取り組んでまいります。さらに、熊本都市圏及び
政令指定都市に関する研究会を中心に、都市圏の連携強化に努めまして、九州中央の拠点地域としての一体的な発展を図りますとともに、富合町を初め具体的な市町村合併についての論議も深め、現行の合併特例法の期限でもございます平成22年度末には合併・
政令指定都市を実現したいと考えております。
今、本格的な人口減少社会を迎えつつあります中で、地方にはみずからの責任と行動でまちづくりを進めてまいりますことがこれまで以上に強く求められてまいります。私は、公平公正な社会の実現と次代への責任を果たすことを基本といたしまして、67万市民の皆様との信頼関係に基づき、まちづくりを支える人や地域とのつながりを大切にし、九州中央の拠点都市としての新しい熊本づくりに邁進していくという強い思いと不退転の決意を持ちまして、2期目に挑戦してまいる所存でございます。
〔5番 大石浩文議員 登壇〕
◆大石浩文 議員 今御答弁いただいた中で、前の検証と総括の質問に関連して幾つか再度お尋ねをさせていただきます。
乳幼児医療費助成について、市長は質問初日の藤山議員への答弁で、市として義務教育就学前までの無料化へ取り組むと述べられました。実施時期については明示されませんでしたが、翌日の新聞では「本年度内実施は難しいが、できる限り早い時期に始めたい」と来年度以降の実施の方針を示されました。
私が知るところでは、国は今回の医療制度改革の中で乳幼児に対しての自己負担として、現在3割から2割に軽減しているものを、少子化対策の一環として平成20年4月からその対象を現行の3歳未満から義務教育就学前に拡大することを決めております。そうすると、以前の試算で就学前まで拡大した場合の4億5,000万円余りの事業費はかなり軽減できるのではないかと思うものであります。であれば、乳幼児医療費助成の就学前までの拡大の実施時期は平成20年度からということなのでしょうか。また、少人数学級については、市ではこれまで少人数学級と少人数指導の効果等について検証され、現在小学校3年生まで35人学級を実施されています。この少人数学級と少人数指導をそれぞれ充実させ中学生まで拡大すると言われましたが、具体的にどのようにそれぞれの効果を生かしていかれるおつもりなのでしょうか。
また、先ほど私は地域経済の活性化については築城400年を迎え、特に観光面での施策の充実が必要だと申し上げました。また、観光客により熊本を理解してもらい、熊本城により長く滞在していただくためにもこれまでの長い歴史の中で、この熊本をつくり上げてきた先達を紹介する偉人館や歴史資料館などの施設が必要だと過去の質問でも申し上げました。市長が今言われた場内プールの跡地である桜の馬場の利活用とは、そのような施設整備も含めてのお考えなのか、以上3点について再度お答えください。
〔幸山政史市長 登壇〕
◎幸山政史 市長 それでは、再度の御質問に対しまして順次お答えさせていただきます。
まず、乳幼児医療費助成についてであります。先般の藤山議員にもお答え申し上げましたように、少子化時代に対応し、子育てしやすい環境づくりを進めますために、乳幼児医療費助成を就学前までに拡大したいと考えているところであります。その時期といたしましては、ただいま御紹介のありましたとおり平成20年度から国の制度改革が実施されますが、私といたしましては平成19年度中をめどに、できるだけ早い時期に始めたいと考えております。
次に、教育環境の充実につきましては、これまでモデル校での実証などを踏まえた検討委員会からの報告等におきまして、幼稚園から小学校、小学校から中学校へなど環境が変わる際には、学習はもとより生活面におきましてもよりきめ細やかに指導していく必要があること、また高学年におきましては進級進学に備え、特に学習面で少人数指導によるそれぞれの習熟度等に応じた学習指導が重要なことなど、低学年では少人数学級が、高学年では少人数指導が効果的であるとの検討結果が示されております。そこで、私といたしましては現在小学校3年生までの35人学級を4年生までに拡大いたしますとともに、小学校5、6年生での少人数指導を充実し、さらに中学1年生での35人学級の導入と中学2、3年における少人数指導の充実など、先ほどの検討委員会での報告をもとに、具体的な検討を進めてまいりたいと考えております。
最後に、桜の馬場の活用についてでございますが、私は観光立市くまもとを実現してまいります上で、シンボル熊本城の活用が最大のポイントであると考えております。現在、熊本城は毎年80万人近くの観光客が訪れておりますが、その大半は見学でございまして、せっかく来ていただいたのに足早に熊本を後に次の目的地へ移動されているのが現状でございまして、今後本市の中心市街地が九州の顔となりますためには、この80万人の方々を熊本城から熊本のまちへといざなうための仕掛けづくりが大変重要と考えております。そこでその一環といたしまして、現在駐車場として活用しております桜の馬場におきまして、議員御提案にもありました熊本城の歴史を学習する施設、あるいはここにしかないようなみやげ物を買えるような施設、さらには熊本のおいしい水と食べ物を堪能できるような施設など、熊本城ならではの魅力を引き出すような利活用を進めてまいりたいと考えております。加えまして、その整備に当たりましては、これまでも幾つか御提案をいただいているところでございますが、例えば地元提案型のPFIを活用させていただきますなどお城を愛するたくさんの市民や事業者の皆様の協力をいただきながら進めていきたいと考えております。
今後、これらについてさらに検証を加えました上で、新しい熊本づくりのビジョンを市民の皆様方に御提示申し上げる所存でございます。
〔5番 大石浩文議員 登壇〕
◆大石浩文 議員 我が会派もこの3年余りの間、真に市民が何を求めて、そして熊本市はいかにあるべきかということを考えて、価値の選択と判断というものを繰り返してまいりました。
先日、藤山議員も述べられましたが、率直に申し上げて本会議の採決を前に厳しい局面も幾度とありました。しかし、そのときそのときに今の世代、そして次の世代、将来の熊本市ということを考えて、何が大切なのかということを会派で議論し思い悩みながらも我々なりの判断を示してきたつもりです。1年生議員には未経験の厳しい局面において重い判断を下すという貴重な経験を幾度となくさせていただいた点については、ある意味、幸山市長には感謝を申し上げたいと思いますが、幸山市政の2期目がもし実現するものならば、繰り返しになりますが、執行部との間でまた議会内においても熊本市の未来について前向きな議論を重ねながら相互理解を深め、同じ方向へ向かって進んでいける、そのような議会との関係を実現していただきたいと思います。
今、市長がこの4年間を総括し、2期目に対する基本姿勢の中で自身の努力不足を真摯に受けとめ議会との関係についてはよりよい緊張と協調の関係を築くと明確に述べられたことは評価いたしますし、これも公約の1つと受けとめさせていただきます。さらには、先ほどの答弁を聞いて今後も市政の重責を担い、改革を継続させるとの市長の強い決意を感じました。
連日報道されます岐阜県庁の17億円もの裏金問題での前知事の「承知していたが関与していない」などという無責任な発言を耳にすると、首長の姿勢として何よりも公平・公正・透明が基本でなければならないことの重さを感じます。
私たち
改革フォーラムは、市民が改革の成果を実感しより一層深めていくには、さらなる改革の継続が必要であると考えており、今後も改革の方向性を共有し、ともにあすの熊本市を築くため、幸山市政の継続を支持するものであります。平成22年3月までの
政令指定都市の実現など今回お示しいただいた公約の一つ一つを必ずや実現していただくことを期待し、次の質問へ移らせていただきます。
それでは、引き続き本市が目指している九州中央の拠点都市としての発展に向けて不可欠な中心市街地の活力創出についてお尋ねします。
熊本市では、イオンモールからの佐土原地区での大規模商業施設の開発計画に対し、事前審査の結果、本年5月に不許可判断を示しております。その後イオンでは、みずから売り場面積を当初の7万平方メートルから5万平方メートルへと規模を縮小するなど、計画を変更し都市計画法第32条に基づく協議申請が提出されましたが、熊本市としてはこの協議に入る前に市独自で立地判断を行うための事前審査を実施し、先日この審査の結果が出され、前回同様本開発計画については本市の計画的なまちづくりに支障がないとは認められないとし、許可できない判断を示されたところであります。このことについては、都市マスタープランとの整合性はもとより、交通渋滞、環境問題など全庁的に幅広く調査検討された結果であり、また事務手続の円滑化と開発業者に必要以上の負担を求めない面でも、私は妥当なものと考えておりますが、今後は地権者を初めとした地域住民にしっかりとした説明を行うとともに、土地利用のあり方などについても住民の意向をしっかりと踏まえながら協議を重ねていただきたいと思います。
しかしながら、この一連の問題は単に佐土原地区の開発をどう取り扱うかということだけではなく、一方で、熊本市が今後九州中央の拠点都市として発展するために、熊本市の将来のまちづくりをどのように進めるか、特に本市の顔である中心市街地の活性化にどのように取り組んでいくかという大変重要な宿題を突きつけられていると思うものであります。
このような状況を踏まえ、熊本市では、現在、さきのまちづくり三法改正を受け、今後の中心市街地活性化の基本指針となる
中心市街地活性化基本計画の策定に取り組まれているわけであります。今回の
中心市街地活性化基本計画では、本市のシンボルである熊本城を中心に、駅、駅都心間、中心商店街を対象エリアとしてとらえていますが、私自身、本市の特性を考えた場合、中心市街地の活性化のためにはいかにこの熊本城を生かしていくかが最大のポイントであり、その上で九州新幹線開業効果を中心市街地活性化につなげていくかが重要な課題と考えており、この対象エリアの設定は的を射たものと考えております。
そこで、この対象エリアごとに私なりの提案を含め、お尋ねしていきます。
まず、駅周辺の整備についてであります。
駅周辺整備については、昨年6月新幹線開業の前倒しに対応し、新たな協定と駅周辺整備基本計画を県・市でまとめられ、この計画に基づき各種街路整備、西の区画整理事業、東の再開発事業など、新しい熊本の玄関づくりに鋭意取り組まれているところでありますが、しかしながら市長の公約として掲げられていた日本一乗り換え便利な駅の具体的な姿はいまだ見えてきておりません。新幹線開業までの期間ではソフト的な事業展開の余地はまだまだ残されていると思うものの、ハード事業については現計画の推進が基本であることから、今後詳細に詰めていくべきは10年後に予定されている東口駅前広場や高架下、0番線の利用など、駅直近街区の最終的な姿であると思うものであります。御存じのとおり、博多駅では駅ビルの建て替え工事が進んでいる中、九州第2の都市である熊本市の玄関とはまた大きな差がつくのではないか、そういう危惧を感じてしまうのです。
このような中、先日の記者発表によると、県、市、JR、経済界によるトップ会議を立ち上げ、1回目の会合を来月にも開催されるとのことであります。そこで、私としては物理的に工事に入れないこの10年間を逆にチャンスととらえ、幸山市長の公約であった日本一乗り換え便利な駅に向けた市電の駅前への乗り入れ、路線バスとの結節強化、あるいは高架下を活用した豊かな海の幸や山の幸、酒、温泉などの熊本の特産品を豊富にそろえた物産館など、この会議においてそれぞれのトップの思いを1つに集約し、九州の核となる都市にふさわしい、市民や県民に夢を与えるような10年後の熊本駅の姿を描いていただきたいと思うものであります。
そこで、お尋ねをいたしますが、このトップ会議の意義を市長はどのようにとらえ、何を期待されているのでしょうか。さらにどのような姿勢でこの会議に臨まれるのか、幸山市長の考えをお聞かせください。
〔幸山政史市長 登壇〕
◎幸山政史 市長 熊本駅周辺整備に関しますトップ会議につきましてのお尋ねにお答えさせていただきます。
このトップ会議でございますが、熊本駅周辺整備の主要な事業主体でもございます県、本市、及びJR九州の3者に加えまして、地元経済界の代表者の方々にも御参画いただき、意見交換を行いますことで、共通認識のもとに一体となって事業を円滑かつ効率的に実施しますとともに、魅力的な副都心の形成を図りますために開催するものであります。この会議におきましては、昨年6月に県市で策定いたしました熊本駅周辺地域整備基本計画を前提としながらも、熊本駅に降り立った方々がくまもとの魅力を感じ取ってもらえるようなまちづくりを進めますため、具体的な方策などにつきまして議論し、そして効果的な整備を図ってまいりたいと考えております。特に私といたしましては、日本一乗り換えの便利な駅に向けて市電の電停をもっと駅舎に近づけたいとの思いもありますし、また、バスに関しましても、長距離バスと路線バスの配置につきましてさまざまな御意見をいただいておりまして、この会議の中で議論させていただき、熊本らしい乗り換えの便利な駅を実現したいと考えております。
いずれにいたしましても、平成23年春の
九州新幹線全線開業まで残されました時間は余りございませんので、この会議による県、JR九州、経済界の御協力のもと、整備基本計画を着実に推進させますと同時に、熊本駅周辺のまちづくりをさらに魅力あるものにしてまいりたいと考えております。
〔5番 大石浩文議員 登壇〕
◆大石浩文 議員 このトップ会議は駅ビル、駅前広場の景色を大きく変えてくれる可能性を秘めております。10年後に熊本駅周辺がどのような姿を見せてくれるのか多くの市民が期待しています。市民に愛され、また他都市の駅ビル、駅前に負けない魅力あふれる駅周辺の姿を実現していただくよう情熱を持って取り組んでいただきたいと思います。
次に、駅と都心間にエリアを移し、駅都心間のまちづくりについてお尋ねします。改めて申すまでもなく、駅都心間は新幹線からの来熊者を熊本城や中心商店街へ誘うための大変重要なエリアであります。現在、市では駅都心間協働のまちづくり事業に着手され、地域住民の皆さんと一緒になって城下町の風情を生かしたまちづくりに必要なメニューを洗い出し、具体的な事業化に向けた取り組みを進められているところであります。熊本は、熊本城を中心として都市計画がなされた城下町で、明治10年の西南の役と昭和期の太平洋戦争の2回焼け野原になっておりますが、お城の外堀を兼ねていた坪井川の南側にある古町周辺と、北側の新町は戦禍を免れ、今なお往時の風情を残しています。その中で、古町は江戸時代、一辺60間の街区に分割し、中央に寺院を配置したいわゆる一町一寺制の町が建設されたところであり、今でも細工町、呉服町、鍛冶屋町、大工町などの町名が残るように、城下町の町人町が形成されておりました。戦後、商業の中心が新市街に移ったため問屋街に変わりましたが、坪井川に架かる古橋を渡ると黒漆喰壁の町家による古い町並みが見られるよき風情を残したまちであります。また、坪井川の北側の新町は、やはり城下町のときに計画されたまちで、長方形の短冊形の町割となっており、その街区には黒漆喰壁の重厚な商家「吉田松花堂」や近代和洋折衷風の「長崎次郎書店」などを初め、大変貴重な建造物等も顕在しているものです。
先ほどの駅都心間協働のまちづくりの事業では、若者によるベロタクシーの運行など具体的なものもあらわれつつありますが、このような独特の町割を生かし、例えば京都などで見られるようにお寺などと協力し、これを観光客の歴史散策や休憩所として活用し、このような地域のそぞろ歩きを経て、観光の本丸である熊本城へ、また、新市街を初めとした中心商店街へと誘う仕掛けづくりを早急に具体化していただきたいと考えております。そこで、駅都心間のまちづくりの今後の取り組みについて、都市整備局長にお尋ねいたします。
続けて、この問題の最後に、中心市街地の
にぎわいづくりについてお尋ねします。
西日本最大級の規模を誇るアーケード街を中心に、上通りから辛島に至る一帯は、特色ある小売店舗や飲食店街などが連なり、近年近隣町への大規模商業施設の出店や、ロードサイド店がふえる中にあっても、一定のにぎわいを保っておりますが、通行量調査等の現状を見れば、以前にも増して厳しい状況であることは否めません。一方、土蔵などを活用するなど、趣のある飲食店などで県外からも注目されている上乃裏通りのように、みずからの工夫と努力で活況を呈しているところも見られております。このような中、昨今では各商店街が連携し、お城の歴史と熊本の火のイメージをマッチングさせながら、春夏秋冬の季節に応じた民間主体の祭りなど、さまざまなイベントが開催され、まちのにぎわいを演出されています。
私は、このようなイベントが若者を中心にいろいろな人の手によって、四季折々常時開催されるようになれば、まさしく熊本は1年を通して観光シーズンということができるのではないかと思うものでもあります。
さて、今回の改正中心市街地活性化法は、旧法では商業の活性化に偏りがちであったとの反省から、民間のやる気をいかに引き出し、都市機能増進と経済活力向上を図っていくかが最大のポイントとなっております。熊本市としても、今後は環境整備に補助金を出すといった施策から民間をコーディネートし、意欲を盛り上げ頑張る民間を支援していくような取り組みや施策が重要であると考えております。
そこでお尋ねします。現在、民間主体に各種イベントが立ち上がる中、これを盛り上げ、さらに持続的な活動へと継承発展させるため、今後熊本市としてどのように支援していくおつもりなのか、経済振興局長の答弁をお願いいたします。
〔松本富士男都市整備局長 登壇〕
◎松本富士男 都市整備局長 駅都心間のまちづくりの今後の取り組みについてお答えいたします。
熊本駅都心間のまちづくりにつきましては、昨年熊本駅都心間協働のまちづくり協議会より提示がなされました、まちづくり計画書に基づき、まちの案内や観光客の休憩所として利用できるまちの駅をお店などに開設する準備が現在進められております。また、議員が申し述べられましたベロタクシーにつきましても、地域の足としての利用に加え、新たに観光コースの計画もなされております。さらに、昨年に引き続きまして実施しておりますワークショップでは新幹線開業を大きなチャンスとしてとらえ、計画書に掲げられました24事業の中から今後取り組むべき事業、特に地域の目玉となるものの検討が進められております。具体的には昔の城域の入り口となります場所に御門の復元や、民謡おてもやんの作詞・作曲者であります永田イネさんの出身地ということから、それにゆかりのおてもやん像の整備などを望む声が強く挙がっているところでございます。
この地区は、熊本駅から熊本城、都心部につながる重要なエリアであります。そして、協働によるまちづくりの進展は、来訪者にとりましても地域の方々の心温まるおもてなしや、歴史や文化に直接触れる機会となるなど、都市としての魅力を高めるものであります。このようなことから、今後、さらに地域との連携を図りながら、まちのシンボルとなるような事業の取り組みについて検討してまいりたいと考えております。
〔岡本安博経済振興局長 登壇〕
◎岡本安博 経済振興局長 中心市街地への支援についてお答えします。
今回改正されました中心市街地活性化法におきましては、市町村は
中心市街地活性化基本計画を策定し、認定を受けなければ国の支援を得られないこととなっております。そこで、現在、活性化基本計画を策定するため計画のエリアや、国が改正中活法で示しております市街地の整備改善、都市福利施設の整備、まちなか居住の推進、商業の活性化、公共交通機関の利便促進、このような事業について、現在庁内会議において洗い出しを行っているところでございまして、本年度中の策定を考えているところでございます。そして、これが認められますと、従来のアーケード改修やイベントなどに対する支援に加えまして、新たに病院・文化施設等の整備や空きビルの改修、マンション等の建設にも国が支援することとなっております。また、近年、本市におきましては「ゆかた祭」、「銀杏祭」、「イルミネーション事業」など中心商店街の連携によりますイベントが催されますとともに、本年8月には商店街、交通事業者、大学など14の団体や企業によりまして、中心市街地のまちづくりについて検討を行う「すきたい熊本協議会」が設立されるなど、民間における機運が盛り上がってきたところでございます。これまでもまちづくり事業には本市単独による助成を行ってきたところですが、このような機運を持続的な活動へと継承発展させるためにも、民間の連携によるイベントなどの活動に対しましては、重点的に支援を行ってまいりたいと考えております。
〔5番 大石浩文議員 登壇〕
◆大石浩文 議員 この駅都市間にある古町、新町は、複数の団体が自主的に積極的なまちづくりに取り組んでおられ、先ほど申し上げましたが城下町としての町割を今にとどめる個性豊かな趣のある地域であります。昨年まとめられた協働のまちづくり計画書という地域固有の財産を生かすための共通の目標像を決してむだにしないためにも、この地域を幸山市長が掲げられる本市の協働のまちづくりのモデル地区とし、計画の実現に向けて行政が強力に後押ししてはいかがと思います。町が一体感を持てるシンボルとなる御門などの復元は観光の目玉にもなり得るものであり、ぜひ実現に向け取り組んでいただくよう要望いたします。
中心市街地の活性化については、民間による取り組みについても12月までに策定し、国の認定を受ける
中心市街地活性化基本計画に掲げることにより直接国の支援を受けられることになっておりますし、また、厳しい状況の中にも精力的に展開されている商店街における民間主体のさまざまなイベント等を見ますと、行政がその意欲を盛り上げ、頑張る民間をしっかり支援していただきたいと思います。熊本市が今後、九州中央の拠点都市として発展するためには、特に本市の顔である中心市街地の活性化にどのように取り組んでいくかということについて、民間との密接な連携、協力が不可欠でありますし、さらには今まで以上に関係部局挙げての全庁的な支援体制を築いていただきますよう、お願いしておきます。
次に、障害者自立支援法への対応に移ります。
本年4月から障害者自立支援法が一部施行され、この10月からは本格的に実施されることとなっております。
そもそも、今回の障害者自立支援法制定の趣旨は、障害者の方々の地域での自立した生活を支援するため、障害者基本計画に示された自己選択と自己決定のもと、保健医療・福祉だけでなく、就労、教育、住まいなども含め幅広く自立と社会参加を進めることにあり、そのような取り組みを進めていくために新たに制定されたものと理解しております。これまでの支援費制度は、国の共通の制度としてサービス供給量を拡大させるなど、障害者福祉の向上に寄与したことは理解できますが、現行の障害保健福祉施策においては、さまざまな問題点が指摘されてきました。1つは身体障害者、知的障害者と精神障害者の三障害の障害種別によりサービスが異なっており、利用者にとっては複雑でわかりにくいものとなっております。また、障害者施策においては、できるだけ障害者の方々が社会でその能力に応じて活動できるようにすることがこれまでの中心課題の1つであったわけですが、実際には雇用に結びつくまでには至らないことが多く、就労等の実現はなかなか難しい現実があります。
このような問題について、自立支援法は、福祉サービスや就労支援等に関する制度的な枠組みについては、障害特性に配慮しつつも基本的に三障害共通の枠組みとしたこと、また就労支援についてはどう実行し実現するかという段階にあるとの考えから、障害者がその能力を最大限に発揮できる環境をつくるため、就職の際のマッチング、ジョブコーチ、環境整備等の支援を行うこととしています。確かに考え方としては、このような経緯の中で施行された新しい制度ではありますが、現実には現場において大混乱と言ってもおかしくない状況にあり、自立支援ではなく自立阻害法ではないかとやゆする声も聞こえてまいります。新聞によりますと、沖縄県では障害者自立支援法の施行で利用者の負担がふえたことで、県内で132人が居宅サービスの利用をやめたり、日数を減らすなど何らかの制限をし、利用をやめた人は64人もおり、そのうち50人は施行前の負担がゼロで、施行後に最大1万2,800円負担となるなど障害者にとって厳しい対応を迫られているとの実態が浮き彫りになっているようです。
そこで、お尋ねいたします。
本年4月から定率負担は始まっておりますが、本市においてもサービスをやめたり利用を制限したりしている方もいると聞いております。市では利用者の実態は把握しているのでしょうか。また、その対応はどうなされているのでしょうか。
また、障害者自立支援法について、今議会に補正予算が提案されておりますが、事業の実施に当たり、当事者である障害者の方々や施設設置者等への説明は行ってきたのでしょうか。今回の提案の中身はその実態を把握の上、障害者等の実情をしっかりと反映したものとなっているのですか。あわせてお答えください。
地方分権の大きな流れの中で、市町村がその地域の特性に対応していかに主体的に障害保健福祉行政を進めることのできる施策体系制度を整備するかが重要です。本市においては障害者が地域で安心して暮らせる社会の実現を目指すと言われますが、障害者、特に重度の方が在宅生活を維持するためには、多様で個々の障害に合ったサービスを受けていく必要があります。また、例えば、手話通訳や要約筆記などは、聴覚障害のある方にとってだけでなく、健常者にとってもさまざまな生活の場面で必要なコミュニケーションの手段で、一律負担にはなじまないものであり、私自身、地域生活支援事業等については一律負担を行うべきではないと以前から強く要望してきたわけであります。
そこでお尋ねしますが、本市としての地域生活支援事業等の独自の負担軽減策とは具体的にどのようなものでしょうか。また今回の提案では、現行のサービス水準は確保できるものとなっているのでしょうか。さらに、自立支援法は定率負担や食費等を求めることとなっており、この定率負担、実費負担はこれまでと比べるとかなり利用者の負担が重く、先ほど述べたようにサービスの手控えやサービスをやめるといった事態が生じかねないようであります。市として軽減策等を講じるつもりはないのでしょうか。また、このような新しい制度の導入に当たっては、特に障害保健福祉サービスの利用者負担については自治体の努力だけでは限界があるのも事実です。だからこそ、今後、国、県等の関係機関に対して、市の利用者の実態を踏まえての要望をしっかりと行うべきと考えますがいかがでしょうか。
以上の点について、市長の考えをお示しください。
〔幸山政史市長 登壇〕
◎幸山政史 市長 障害者自立支援法に関します御質問に対しまして、お答えさせていただきます。
御質問の順番と一部前後いたしますことをお許しいただきたいと存じます。
まず、1点目の利用者の実態把握や制度の説明についてでありますが、障害者自立支援法はこれまでの制度と大きく変わりますために、本市におきましては、事業者につきまして新事業体系への移行ヒアリングを行い、あわせまして利用者の状況等につきましても把握してまいりました。また、市政だよりやパンフレットでの周知を図りますとともに、関係団体や施設に出向きまして、利用者や保護者等に対しての説明会の開催や10月からの制度改正に当たりましては、サービスの決定に必要な障害程度認定調査を実施する時点でお一人お一人に説明を行ってまいったところでございます。今回提案いたしました補正予算案におきましては、旧事業体系から新事業体系に移行することによる予算の組替えを行いますとともに、新規事業に係る経費等を計上させていただいております。
御質問の2点目の利用者負担軽減への取り組みでございますが、法の施行によりまして負担が重くなる方もおられますことから、地域生活支援事業のうちこれまで1割負担でございました移動支援事業、経過的デイサービス事業、日中一時支援事業及び新規事業でもあります障害者生活サポート事業につきましては、10月からの経過的な措置といたしまして、平成18年度中は利用者負担をいただかない取り扱いとすることといたしました。また、あわせまして、利用者負担の軽減のため、従来社会福祉法人のみに適用されておりました軽減措置をNPO法人等まで拡大適用できるよう県と協議をしているところでございます。議員が一律負担にはなじまないと述べられておりますコミュニケーション支援事業につきましては、本市ではこれまで無料で実施いたしておりますし、今後も無料で実施することといたしております。
自立支援給付事業の利用者負担軽減につきましては、先般、障害者団体から負担軽減を求めまして6万人を超える方々の要望書もお受けしたところでございまして、利用者の実態等についてもお話を伺ったところでございます。軽減措置を行っております他都市を見てみますと、上限額の引き下げや1割負担を引き下げる方法等が行われておりますが、今後とも利用者の声を十分に伺いながら、本市の利用者におきましてどのような方法が効果的であるかなど、利用者負担の軽減措置につきましてさらに検討してまいりたいと考えております。また、国の施策として負担軽減の拡充を実施するよう、引き続き全国市長会等さまざまな機会をとらえまして要望してまいりたいと考えております。
3点目の現行のサービスの水準が確保できるのかとの質問でございますが、本市におきましては、これまでも必要な方に必要な量のサービスが提供できますよう障害の程度、生活の状況、利用意向等の把握に努め、支給決定してまいりました。しかしながら、今回の国庫負担基準に照らし合わせますと、現在のサービスが基準を上回る方も多くいらっしゃいますことから、本市におきましては基準の1.3倍を支給基準といたしまして、これを超えて決定を行います場合は介護給付等の支給に関する審査会に諮りまして、必要なサービス料を決定するためのガイドラインを策定し、従来の水準をできる限り確保してまいりたいと考えております。
〔5番 大石浩文議員 登壇〕
◆大石浩文 議員 国は財政難の対策として医療と福祉に大なたを振るい、自己責任の名のもとにサービスに応じた負担を強いるシステムへの移行が加速しています。まさに国の巨額債務のしわ寄せは、結局社会的弱者をねらい撃ちしているかのようであります。その1つともいえる障害者自立支援法による新たな負担増が、障害者の方やその家族にとって予想以上に負担を強いるものとなっているのは事実です。本来はやはり国が負担のあり方を見直すべきことですが、現時点では国は3年後に見直しを講じるとしているだけであり、せめて見直しまでの当面の間だけでも負担軽減策など自治体独自の支援策が求められているのです。
今回の市が打ち出した軽減措置については、一定の評価はできますが、本質的な軽減策とはなっておりません。今後、自立支援給付事業の利用者負担軽減についても具体的に検討していくとのことですが、しっかりと利用者の現状を見つめ、その声に耳を傾けながらぜひ早期の実現に向けて努力していただきたいと強く要望いたします。
次に、県立高校の再編整備についてお尋ねいたします。
熊本県教育委員会では、今年3月に出された県立高校教育整備推進協議会の最終報告を受けて、県立高校の通学区域や再編整備などに関する基本計画の素案をまとめ、7月初めに公表し、地域説明会を実施されておりますが、この「戦後の新制高校発足以来」と評される県立高等学校再編整備等基本計画素案が、今、県内各地で大きな波紋を及ぼしています。その内容を大まかに申し上げますと、通学区域の大幅な拡大、郡部の小規模校を中心に20校以上が対象となる統廃合、地域拠点校への中高一貫教育導入などで、仮にこの素案がそのまま実施されれば、県内の高校地図はがらりとさま変わりしてしまうものだと言われております。
また今後、県の教育委員会としては、基本計画案の公表を当初の9月からは延期したものの、さまざまな意見の最大公約数を反映させ、11月には成案にしたいとのことであります。県の教育委員会がこのような大幅な再編整備を急ぐ背景には、進展する急速な少子化があり、また学習選択の幅拡大との流れによるものですが、それに加え、県の危機的な財政状況が今回の統廃合案に拍車をかけていると言われています。県は既に行財政改革の一環として本年度から5年間で4.7%の教職員の削減を決めており、今回の再編整備によって維持管理費や人件費などで年間十数億円を削減できるのではないかと試算しているとのことなのです。今回の素案に関し、既に統廃合の対象となった高校については存続への要望が町長や郡町村会、また各校同窓会などから相次いでおり、また県市長会の県幹部との意見交換会においても、参加した市長より「進め方が拙速である」などの批判が相次いだとのことであります。
しかし、当然そのしわ寄せや痛みは、結果として県内でも過疎化や少子化が続く地域だけでなく、通学区域の拡大と学区外入学の拡大による競争の激化によって、本市にとっても大きな影響が確実に予想され、現実に本市の中学生や保護者はこの再編整備素案について大きな不安を感じているのです。具体的な本市へ影響を及ぼすであろう点は、現在熊本学区として本市に合志市・菊陽町・益城町を加えた区域だったものが21年度より宇上学区と呼ぶ宇土市・宇城市・嘉島町・富合町・城南町・御船町・甲佐町・美里町・山都町の2市7町を加えた県央学区として拡大されるというものであります。さらには、学区外入学は普通科について現在の6.5%から20%に大幅に拡大され、また市内の済々黌・熊高・第二・熊本工業は学級数を現在の1学年10クラスから23年度以降減少させることを検討するとしています。
今回の学区拡大については、地元紙によると、市内の学習塾経営者は、「学区拡大で受験熱は確実に高まる。市場が広がるチャンス。」と歓迎の意向を示しているとのことであり、学区外枠の20%への拡大は「実質的な全県一区化である」と分析しているそうであります。また、熊本市内の高校に志願者が集中する結果、市内の生徒が不本意ながら市外の高校へ入学せざるを得ない逆流現象がふえ、ひいては高校中退者の増加につながるのではないかとの懸念が現場に携わる教師の間でささやかれているとのことであります。
そこでお尋ねいたします。
この「戦後の新制高校発足以来」と評される県立高等学校再編整備等基本計画素案なるものについて、本市の中学生への影響をどのようにとらえているのか。また、最初に申し上げた県立高校教育整備推進協議会には教育長も委員として協議の中におられたようですが、審議の過程でそのような影響についてどう議論されたのか。さらには、今後市教育委員会においてはどのような対応を図られるおつもりなのか。
以上の点について、教育長にお尋ねいたします。
〔永山博教育長 登壇〕
◎永山博 教育長 県立高校の再編整備計画素案に関しましての2点のお尋ねにお答えいたします。
まず、本市への影響についてでございますが、通学区域の拡大や学区外からの通学枠拡大が本市の子供たちへ与える影響は極めて大きいものがあるととらえております。生徒減少や受験生の志願動向、あるいは学級減の予定など確定しにくい要素もございますので、正確な試算は難しいところでございますけれども、概算で申しますと、学区外枠の拡大によりまして学区外から市内の県立高校普通科へ入学できる生徒の数は現行の150人程度から450人程度となり、およそ300人の増加となると予測いたしております。しかも、現在の宇上学区も学区内となり、今までの制限がなくなりますので、宇上学区の中学生2,000人弱の動向についても考慮する必要があると考えております。
現在、熊本市立中学校の卒業生の約7%前後の生徒が市外の高校へ進学しておりますが、この数字につきましても確実に増加するものと思われます。
次に、県立高校教育整備推進協議会における議論についてでございますが、協議会では高校の適正規模、通学区域、高校の再編整備など、今後の県立高校のあり方について協議が行われました。特に通学区域の拡大の問題につきましては、中学生の進路選択の観点から、全県一区への拡大を望む意見や、熊本市内の特定の高校へ志願が集中することやすれ違い通学の増加を懸念する意見など、賛否両方の立場からさまざまな議論が交わされました。私からは、「将来的には通学区域の撤廃の方向、つまり全県一区の方向に進むといたしましても、現段階での全県一区には反対であり、まずは各地域の拠点校を強化・充実することが必要であること。また、それがなければ、熊本市の県立高校への集中と高校全体の序列化が進行する」との指摘をさせていただいたところでございます。
最終的にはそれらの議論を踏まえ、全県一区を視野に置きながらも当面は段階的に学区を拡大するという協議会としての最終報告が示されたものと理解しております。
今後の対応といたしましては、県教育委員会において、県議会の審議や
パブリックコメントに寄せられる意見等を踏まえて、基本計画の策定が進められるとのことでありますので、本市教育委員会としまして、特に学区外からの受け入れ枠について意見を申し上げてまいりたいと考えております。
〔5番 大石浩文議員 登壇〕
◆大石浩文 議員 週5日制、ゆとり教育、公立校入試の前期・後期制などこの数年間に繰り広げられた教育改革に子供たちは翻弄され続けてきました。そういった中で出てきた県の財政難を背景とした今回の再編整備計画によって、子供たちはまた新たな環境変化の中で競争の激化、受験熱の渦に巻き込まれざるを得ないのでしょうか。先ほど述べました塾経営者のコメントを聞くと、だれのため、何のための再編なのか強く疑問を感じます。
教育長も明確に本市の子供たちへの影響の大きさを認め、競争の激化についても具体的にお答えいただきましたし、本市受験生の市外への流出も確実に増加するとの認識を示されました。この計画が熊本の次代を担う子供たちにとって、どのような高校教育環境を整えていくのが最もよいのかという、子供たちに対する教育効果の視点を最も重視するのであれば、教育長も言われたようにまずは各地域の拠点校の充実を図るなど、段階を踏んでその効果や影響について検証を加えながら進めるべきだと思います。県議会においても今後さまざまな面から議論がなされるでありましょうが、本市教育委員会としても学区外からの受け入れ枠だけでなく、今、市内の子供たちや保護者が感じている不安をしっかりと受けとめていただき、県に対し具体的な申し入れをしていただくよう強く要望いたします。
続けてもう1点、要望事項として学校のフェンス化について述べさせていただきます。現在、教育委員会では学校施設の維持改良事業として耐震対策としての効果を高め、校内美化の向上を図るとともに、都市景観づくりに資するため、敷地境界のブロック塀のフェンス化を進められております。しかし、市内にはまだブロック塀のままの学校も多く見られ、例えば私の地元、託麻原小学校においては老朽化したブロック塀が周辺環境とのつながりを阻害しているだけでなく、ブロック塀が樹木とともにつくる死角が不審者の徘回、また夜間に校内に侵入した中高生などの喫煙やシンナー吸引等非行の場となっているなど、学校内のみならず近隣居住者にとっても防犯上の問題となっているのが現状であります。
学校施設については、アスベスト除去や耐震化問題など安全性を高めるのに多くの予算を費やす必要性は十分理解できますが、このような状況も十分に御理解いただき、敷地境界のブロック塀のフェンス化についてもより一層推進していただきますようあわせて要望いたします。
以上をもちまして、準備いたしました私の質問は終了となりました。
今回は、「幸山市政4年間の検証と総括、新たな市民との約束」をテーマに質問をさせていただきました。市長を初め関係局長の方々には誠意ある御答弁をいただきありがとうございました。市長の任期は残すところ3カ月、私どもの任期も残り8カ月となりました。これからも市民の方々に託していただいた任期1日1日を大切にしていかなければならないと今強く感じています。
私の好きな言葉の一つに、「一日一生 日々元旦」という言葉がございます。一日を一生のごとく大切にし、毎日が元旦の朝のように新たな気持ちで迎えて生きるとの意味ではないかと勝手に解釈しておりますが、まさにこの言葉のように残された任期の間、市政発展のため与えられた使命を一日一日精いっぱい果たしていきたいと思いますし、幸山市長におかれましても、ぜひまたこの議場でお会いし議論できることを私は楽しみにしております。心から御健闘をお祈りいたします。
最後になりましたが、寛大な心で御清聴いただきました先輩議員各位、並びに本日お忙しい中に傍聴席においでいただきましたたくさんの皆様に心からの感謝を申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。
皆様御清聴ありがとうございました。(拍手)
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○田尻清輝 副議長 この際、議事の都合により休憩いたします。
午後2時に再開いたします。
午前11時54分 休憩
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午後 2時01分 再開
○税所史熙 議長 休憩前に引き続き会議を開きます。
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○税所史熙 議長 質問を続行いたします。竹原孝昭議員。
〔31番 竹原孝昭議員 登壇 拍手〕
◆竹原孝昭 議員 自由民主党熊本市議団の竹原孝昭でございます。今回、一般質問の機会を与えていただきました議員各位に対しまして、心から厚く御礼申し上げます。
質問に先立ちまして、まず、お喜びを申し上げます。去る6日、国民がこぞって御注目申し上げる中、秋篠宮家に無事親王殿下が御誕生されましたことは、天皇・皇后両陛下にとって4人目のお孫さんの誕生であり、皇位継承権を持つ男子の御誕生としては41年ぶりの慶事であり、皇統の御安泰の上からも誠におめでたい限りであります。秋篠宮家はもとより、天皇・皇后両陛下、さらには皇室の皆様方にとりまして、さぞかしお喜びのことと自由民主党熊本市議団を代表して、衷心より祝福を申し上げます。今後、親王殿下の健やかなる御成長と、皇室のいやさかを心から祈念申し上げ、お祝いの言葉といたします。
それでは質問に移りますが、具体的なお尋ねをする前に、市長選挙もちょうどあと2カ月、本議会は幸山市長にとりまして1期目の最後の定例会でありますので、まずはこの4年間の幸山市政について私なりにその検証をしてみたいと思います。
つい先日の地元紙に、知事と市長が同日の記者会見で熊本駅前整備に関し、知事、市長、JR九州、地元経済界の代表などからなるトップ会談をこの10月に開催すると発表されました。新幹線開通をにらんだ熊本駅周辺の整備と、とりわけ駅前再開発は本市が抱える喫緊の最重要課題であるだけに大変結構なことと思いながらも、一方では今ごろという、ちょっと取り組みが悠長すぎはしないかという思いもしたところでございます。御案内のように、この問題は前市長時代から持ち越された懸案で、今後の本市の都市づくりの方向性に大きなインパクトを与えると考えられる事業でもあります。その整備計画の決定は、時間的制約もあって大変急がれてきたわけでありますが、それが任期終了間際の今ごろになってトップ会談とは、市民の目から見ればこの4年間一体何をしていたのかという思いではないでしょうか。事業の重要性を認識するならもっと早く市長がリーダーシップを発揮してほしかった、これが市民の率直な意見ではないでしょうか。
似たようなことはほかにもございます。例えば、10月に設立が予定されております阿蘇・熊本・天草観光推進協議会です。年が明ければ熊本城築城400年祭が始まり、復元工事も竣工します。そうなれば観光客の回復が期待されますが、西南の役など、熊本城とゆかりのある歴史的・文化的観光資源の広がりを考えたとき、阿蘇・天草のみならず、これからは周辺町との連携も当然必要となってくるわけで、そのためにももっと早くから協議を始め、周辺自治体と一体となった新たな観光ルートの開発など事前に振興策を立てて、本市観光の長年の課題である滞留率の向上やリピーターの拡大につなげていく、こういうことが必要だったと思うのであります。それが400年祭まであとわずか2カ月という段階でこうした協議会の立ち上げは、まさに場当たり的で泥縄的と言わねばなりません。日ごろ、戦略、戦略と言われておる割には、一向に戦略性が感じられません。ひょっとしてこれは、これまで成果が上がらなかったことを糊塗するための、選挙の無血選挙へ向けたパフォーマンスではないかと私は感じてしまいます。
市長就任直後に30人学級の調査費を市長交際費のカットを財源に計上されたこともそうでした。本当に教育の大切さ、少人数学級の必要性を思うなら、そんな姑息な手法を使わずに堂々と正当科目に予算計上して実施する意気込みがほしかった。また、パフォーマンスじみたうさんくさいやり方だと感じたのは私だけでしょうか。その後、交際費アレルギーみたいな空気が生じ、行政の正当な渉外活動を低調させ、その後の市長の施策にも十全の信を置けぬ感がつきまとう結果となったことは、本当に遺憾なことであります。
振り返ってみますと、幸山市長が誕生した平成14年は、平成9年度をピークに減少傾向にあった市税収入がとうとう850億を割り、しかも構成比のトップが市民税から固定資産税に取ってかわったことが示すように、地場の経済の冷え込みが一段と実感された年でありました。以来この4年間、熊本の活性化策と将来に向けた都市再生のビジョンづくりが市政の大きな課題として立ちはだかったのですが、残念ながらこの4年間の幸山市政は歳出削減に依存した財政改革や、自分の思い入れの政策の実施のみに性急で、例えば活性化として雇用や税収につながる企業誘致では、周辺町への進出ぶりに比べるとほとんど見るべき成果はありませんでした。観光振興策に至っては、復元待ちなのか、昨年度はとうとう観光入り込み客が過去40年間で最低となってしまいました。
確かに熊本城復元事業や
世界女性スポーツ会議の開催はありましたが、しかしこれはもともと前市長時代に決定されたもので、幸山市長のリーダーシップや
トップセールスによるものではございません。また、高齢者のさくらカードや
児童育成クラブへの受益者負担導入に見られるように、市民に新たな負担を求める一方で、朝鮮会館の固定資産税のように、税という厳正に対処すべき事柄でありながら、見直しされることもなく、しかも監査の改善勧告があったにもかかわらず減免措置の継続を決定されました。施策の一貫性や統一性という点では疑問の残る結果となったように思います。
このように見てきますと、幸山市長は、バブル崩壊後の空白の10年と言われたかじ取りの困難な時期に、別の角度から見ればやりがいのある時期に市長となられたわけですが、残念ながらその運営はみずからの政治的関心に執着するあまり、市民生活の現実を直視せず、人の意見には耳を傾けず、そのために短急軽量といった施策のプライオリティーを取り違え、活力づくりなど求められてきた施策では、見るべき成果を上げられなかったと断ぜざるを得ません。
今、市民の間からは福岡という言葉が余り聞かれなくなりました。かつてはライバル意識のニュアンスもあって語られた地名ですが、今はそれにかわって鹿児島という声を聞くことが多くなりました。このままでは鹿児島に追い越され、福岡と鹿児島の間に挟まれて、熊本は通過駅になってしまうというものです。さいたま、静岡、堺の各都市に次いで来年は新潟、浜松の両市が政令市への昇格が予定されています。さらに岡山、相模原の両市も近々70万を突破すると聞きます。かつて本市よりも人口規模の低かった都市が、次々と本市を抜いて政令市に昇格していくのを見るのは正直言って残念でなりません。その政令市昇格の特例期間まであと4年弱、九州新幹線の全線開通まであと5年弱、そうしたことを考えますと、次の4年間は本市にとって将来への岐路に立って極めて重要な時期になると思うのであります。この4年間、そのための基盤づくりに物足りなさが残るだけに、次の4年間は執行部にとっても議会にとっても市民からその真価が問われる正念場の市政となるでしょう。その認識を申し上げ、以下、通告に従って質問に入ります。
教育問題について、私は本議会に議席を得て以来、教育は、1つに生きる力の源である愛、すなわち家族を愛し、郷土を愛して国を愛する心をはぐくむこと、2つに人が生きていく上での規範となる人の道である道徳を身につけること、そして3つ目に、自然と触れ合い額に汗して働く労働の喜びを覚えさせること、このようなことを基本としなければならないという思いから、これまで教育問題を議員活動のライフワークとして取り組んでまいりました。しかしながら、新聞、テレビ等が伝える昨今の子供たちの実態、それを取り巻く環境、状況は幼児への虐待、親が子を、子が親をあやめる異常な事件、陰湿化するいじめや登校拒否、さらには教職員の不祥事など、一体この国はどうなっていくのだろうかと深い憂慮の念を覚えてしまうのは決して私ばかりではないと思います。
かつては厳然と存在した親子間の自制や規律といった秩序が崩れかかってきたような感じがしてなりません。ゆとり教育の反省を踏まえ、学力向上も大切ですが、子供たちの心をどうはぐくむかについても我々はもっともっと真剣にみずからのこととして考えていく必要があるように思います。教育環境の3つの場として家庭・学校・社会が挙げられますが、そんな中で家庭は子供がいち早く心の核をつくる場であり、家庭教育こそはもっと大切な教育の原点であろうと思います。
我が国ではもともとしつけは教育は子育ての第一歩であり、その役割は家庭だという暗黙の自覚が社会に共通してありました。今でもお年寄りなどのつぶやく言葉にそれをうかがうことができます。しかし、戦後の学歴偏重と相まった知育の重視や、核家族化など社会が変化する中で徐々に家庭教育の価値観が薄れるようになり、家庭内の教育力の継承も弱まってきたように思います。このため、近年では学校教育の場でいや応なくしつけ指導を行わなければならぬ状況が生まれ、教師に過度の負担を強いていると聞きます。そんな状況を踏まえ、本市では10年近く前から中学校で2年生を対象に社会体験学習、ナイストライ事業を展開し、中学生の社会性の習得に効果を上げているということは大変うれしいことであり、関係者の努力、御協力に敬意を表すとともに今後さらなる事業の充実を期待するものであります。
ただ、子供は日々心身ともに成長しており、その発達段階に応じた適切な道徳を行うことは大切なことであります。家庭自身が行わねばならんことを学校に任せ、学校がしなければならんことに教師の腰が引けていては話になりません。そこでお尋ねでございますが、本市では
まちづくり戦略計画の中で、「子どもたちが健やかに成長するまち」、まちづくりの重点ターゲットの1つとして掲げ、少人数学級など個をはぐくむ学校教育の推進などに取り組んでおられます。しかしながら、心の教育の問題を置き去りにしては今の教育の荒廃を止めることはできません。心の教育は最も基本的で、大変重要な問題であると思います。そこで、心の教育について、市長の基本的な認識をお聞かせ願います。
さらに、学校における道徳教育と、低下したといわれる家庭の教育力の回復を支援するため、どのような取り組みが行われているか、その現状と今後の事業展開について、基本的な考え方とあわせ教育長の御答弁を求めます。
〔幸山政史市長 登壇〕
◎幸山政史 市長 心の教育の問題につきまして、私の基本的な考えを述べさせていただきます。
私も子を持つ親の一人として、ただいま議員お述べになられましたようなさまざまな憂いを感じておりますとともに、人として最も基本的なことを身につけさせる心の教育の重要性、思いをめぐらせながらお聞きしておったところでございます。
私は、生まれ育ったふるさと熊本を日本一住みやすく、そして暮らしやすいまちにしますために「
まちづくり戦略計画」を初めさまざまな施策に取り組んでまいったところでございます。そのまちづくりの推進に当たり、大切にしなければならないことは人であり、人と人との豊かな心の触れ合いを通じましてまちづくりが進み、そしてそれが地域の活力につながると感じております。午前中にも申し上げましたが人がまちを築き、そしてまちが人をはぐくむ、そんな思いを実感しているところでございます。
一方では、先ほど御紹介もございましたが、今日の社会に目を向けてみましたときに、御指摘のように心を痛めるようなさまざまな青少年の事件があとを絶たないわけでございまして、大きな社会問題ともなっております。この背景には人と人とのつながりが希薄になりますなど、子供たちを取り巻く急激な環境の変化が考えられるかと存じます。また、子供の問題とは申しますものの、これまでに大切にしてきた「心の豊かさ」でありますとか「心のゆとり」、そして「心の潤い」とかが私たち大人社会におきましても薄れてきているのではないかと感じざるを得ません。そこで、これらの問題解決のためには、お考えのように学校、家庭、地域社会が他に責任転嫁することなく、きちんと連携して心の教育を推進していくことが必要であると考えております。そのためにも、私たち大人自身も含めまして、人と人との結びつきを強め、失われつつあると言われます地域の力を取り戻さなければなりません。
また、社会全体といたしましては、大人が自己を見つめ直し、ときには厳しく、ときには温かく、今までにも増して真剣に子供の教育に取り組んでまいりますことが大切であると考えております。次の世代を担う子供たちは熊本市にとって大事な宝でもございますし、活気ある熊本市の象徴でもございます。その子供たちがいつまでもそのひとみの輝きを失うことなく、みずからの持つ可能性を信じ、未来を切り開く基盤となるのはやはり人として生きていくために必要な社会性や道徳性であり、それをはぐくむのは子供のころの心の教育であると認識いたしております。
今回、心の教育に対する質問をお受けするに当たりまして、一つの出来事を紹介させていただきたいと存じます。先般、信愛女学院高校俳句同好会の皆さんたちが、松山市で行われました高校生による俳句大会、俳句甲子園大会だったでしょうか、それで見事に優勝されました。その5人の高校生たちが先般優勝報告に来ていただきましたし、また、優勝の祝賀会にも参加させていただきました。その高校生たちを拝見いたしましたときに、はきはきとした態度でありますとか、きれいな言葉遣いでございますとか、常に笑顔であるとか礼儀正しさでありますとか、そういった状況を見ながら、豊かな感性というものを、心の豊かさというものを垣間見ることができました。優勝報告においでになられましたときに、校長先生の方から俳句ということを学ぶ中で、言葉が心を磨き、そして心が言葉を磨いていくというお話を伺いまして、その言葉に深い感銘を受けたことを覚えております。ただいま俳句のことを例に挙げましたけれども、俳句だけではなくてさまざまな機会、何かできるだけ若いうちに熱中できるようなそんな機会を子供たちに、若いころに機会を与えていくことが学校においても非常に重要なことではないかということを感じた次第でございます。
今後とも、希望に満ちた明るい地域社会を創造いたしますためにも、まちづくりは人づくりであるという認識のもとに、学校、家庭、社会の連携、決して他人任せにすることなく、きちんとした連携を深めることによりまして、心の教育を充実させていくことができればと考えております。
〔永山博教育長 登壇〕
◎永山博 教育長 私の方からは道徳教育や家庭教育支援の取り組みと今後の事業展開の基本的な考え方についてのお尋ねにお答えいたします。
まず、家庭教育支援の取り組みといたしましては、親としてのあり方やしつけなどの学習機会を提供します出前講座「乳幼児ママパパ教室」、乳幼児を持つ保護者同士の交流の場を提供いたします公民館での「子育てサロン」の開催、また望ましい生活習慣づくりのための就学時健診時における「ピカピカ1年生ガイド」の配布などを実施しております。さらに今年度からは、3歳児の保護者を対象とした「家庭教育ガイドブック」を作成するなど、特に幼児期の保護者に焦点を当てた家庭教育への支援に取り組んでいるところでございます。
意見を伺うこと、取り入れることは別でございます。もちろんすべて取り入れてもらおうとは思いませんが、その中でも最大公約数を把握し、これを踏まえて、初めて民意の反映は住民の代表である市議会との議論であるはずです。今回のごみ有料化については、私ども市議会との十分な議論が尽くされないまま提出されたことが最終的な否決につながったことと重く受けとめていただきたいと思います。特に、これまで担当職員は地域説明会など一生懸命頑張ってきたわけですから、このような努力が報われるように、市長初め幹部職員の皆様には、議案として提出する以上はこれを市議会で認められるように、議会への説明や議論に対する不断の努力を強く求めます。
また、初日の藤山議員、きょうの大石議員の質問に対し、乳幼児医療助成制度の就学前までの拡大については、実現に向けて取り組むと答弁なされましたが、このことについては私たちも委員会でずっと提言してきたことでございます。しかしその中で、私は現在は3歳、ですから4歳まで引き上げてくださいということでずっとお願いしてまいりましたけれども、なかなかそれが認めてもらえませんでしたけれども、幸い今議会で市長が6歳までの乳幼児医療の無料化については取り組むと、そしておまけには期限まで切られました。大変ありがたいことでございます。そこで、このような市長の姿勢に期待いたしまして、もう1点要望させていただきます。
それは障害者の方々に対するさくらカードの無料化でございます。皆さん御承知のとおり、障害者自立支援法が成立し、障害者に一定の自己負担が求められるようになりました。障害者の方々の死活問題となっております。このような障害者の方々の自立を支援することは大変重要な課題であり、法の制定趣旨は理解できるものの、実際の運用により障害者の方々が生活に困窮するようなことになっては何のための法律制定か分からなくなると危惧しております。このような中、幾つかの自治体では、既に自治体みずからの判断で、自立支援法の施行に伴う障害者の負担増に対し独自の軽減策を講じているところでございますが、そこで早急にできる本市の対策として障害者のさくらカードの無料化について、ぜひ実施していただきますようお願い申し上げ、また、経費につきましては当局の試算では1,000万円程度と聞いておりますので、先ほど述べましたように、乳幼児医療助成制度の拡充についてはいわばあっさり認められたところでありますので、市民感覚を大事にした政治運営の観点から、さくらカードの無料化についてもぜひ実現していただきますよう要望いたします。
そして、市長に最後に議会と執行部の信頼関係なくしては市政運営は難しいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
御清聴いただきました議員各位、傍聴席の皆様に心から感謝を申し上げ、答弁いただきました市長初め執行部の皆さんにお礼申し上げまして終わらせていただきます。(拍手)
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○税所史熙 議長 本日の日程は、これをもって終了いたしました。
次会は明12日(火曜日)定刻に開きます。
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○税所史熙 議長 では、本日はこれをもって散会いたします。
午後 3時35分 散会
〇本日の会議に付した事件
一、議事日程のとおり
平成18年9月11日
出席議員 52名
1番 税 所 史 熙 2番 田 尻 清 輝
3番 澤 田 昌 作 4番 高 島 和 男
5番 大 石 浩 文 6番 田 尻 善 裕
7番 白河部 貞 志 8番 倉 重 徹
9番 廣 瀬 賜 代 10番 有 馬 純 夫
11番 満 永 寿 博 12番 三 島 良 之
13番 齊 藤 聰 14番 津 田 征士郎
15番 鷲 山 法 雲 16番 上 野 美恵子
17番 東 美千子 18番 村 上 博
19番 日和田 よしこ 20番 藤 岡 照 代
21番 坂 田 誠 二 22番 藤 山 英 美
23番 田 中 誠 一 24番 下 川 寛
25番 重 松 孝 文 26番 東 すみよ
27番 中 松 健 児 28番 佐々木 俊 和
29番 田 辺 正 信 30番 鈴 木 弘
31番 竹 原 孝 昭 32番 牛 嶋 弘
33番 古 川 泰 三 34番 落 水 清 弘
35番 北 口 和 皇 36番 田 尻 将 博
37番 家 入 安 弘 38番 大 江 政 久
39番 上 村 恵 一 40番 島 田 俊 六
41番 江 藤 正 行 43番 荒 木 哲 美
44番 主 海 偉佐雄 45番 嶋 田 幾 雄
46番 紫 垣 正 良 47番 島 永 慶 孝
48番 矢 野 昭 三 49番 鈴 木 昌 彦
50番 宮 原 政 一 51番 益 田 牧 子
52番 磯 道 文 徳 53番 西 泰 史
説明のため出席した者
市長 幸 山 政 史 副市長 三 嶋 輝 男
収入役 川 上 憲 司 総務局長 寺 本 敬 司
企画財政局長 今 長 岳 志 市民生活局長 原 幸代子
健康福祉局長 谷 口 博 通 環境保全局長 小 牧 幸 治
経済振興局長 岡 本 安 博 都市整備局長 松 本 富士男
建設局長 上 田 謙 一 消防局長 中 山 賢 三
交通事業管理者 石 田 賢 一 水道事業管理者 東 軍 三
教育委員会委員長 黒 澤 和 教育長 永 山 博
人事委員会事務局長 嶋 村 早 人 代表監査委員 中 原 謙 吉
農業委員会会長 森 日出輝 市長室長 木 村 正 博
財務部長 宮 崎 健 三
職務のため出席した事務局職員
事務局長 松 本 豊 事務局次長兼議事課長
山 田 利 博
議事課長補佐 木 村 建 仁...