それから,実際の今の
景況感というところなのですけれども,茨城県の
中小企業の90%以上の企業は,実感はないよと。先ほど申し上げたような状態ではないかと思います。
部品メーカー等,最初に
リセッションが始まったところはだんだん戻ってきました。悪い時期よりはよくなって,ピーク時の5割,6割くらいに戻ってきましたよということなのですが,それ以外の主に消費材をつくっているような企業とか,それから,小売業,それから,今回,特にいつもより大変だなというのは,飲食業などはかなり深刻な状態に今なっている。
資金繰りが大変な状態になっているのだなというような感じになっております。
ただし,今現在どうなのか。本質的に
資金繰りは大変な状況なのですが,実際,去年の秋口くらいまでは,「お金が足りない」,「年末資金をどうやって調達したらいいかわからない」というような緊急の御相談みたいなものもあったのですが,国とか,県がお金をかなり出していただきましたので,今現在は何とか保っている。ただし,本質的にはこれは何の解決にもなっていないのだというのもきょう御説明させていただこうと思います。基本的に赤字が出る経営になっている限りは,ただ単に半年間大変な状態になるのを先延ばししたというようなのが現状なのです。
それから,あともう一つ,私は,日ごろ,
中小企業の大体年間150から200社くらいの相談に乗らせていただいていますけれども,その中で大きな問題のもう一つとしては,新しい
ビジネスが見つからないことです。今の
ビジネスはとにかく全然だめなのです。ではどうしようと。それがなかなか見つからない。それが見つかっていれば,私は,
補助金はもう要らないくらい,本来の状態にすぐに元気になるのだと思うのです。何をしたらいいかわからないというのが,今,本当は深刻な問題なのではないかなと思います。
個々のところは,最初は細かく申し上げようかなと思って,それぞれの業種ごと用意したのですが,時間がありましたら戻ってまいります。個々の細かいところを申し上げても基本的な問題とは関係ないものですから,後でもう一度。
時間がなくならないように,
中小企業の
問題点というところをお話しさせていただければと思います。
とにかく,今,問題なのは,
中小企業の
資金不足ということです。それではなぜ
資金不足なのか。これは
赤字決算だというのが一番大きくて,年々深刻化しております。今までは資産を食いつぶしてというような
中小企業もありましたけれども,この資産もほとんどなくなってきた。赤字が出れば,その分だけ
資金調達が必要になる。毎年毎年,それが重なっているのだという状況です。
赤字決算が
中小企業のかなりの割合を占めている。6割くらい占めているのではないかと思うのですが,これは統計的な数字ではないのですが,それらの企業は,例えば,一年一年苦しくなっているということです。ですから,ここを解決しなくては少なくとも
中小企業は元気にならない。
それから,決算は黒字でも借入金の返済ができないという企業もあります。こういう企業は本来は
救いようがあるのです。後で申し上げますが,
企業再生というある特別なやり方で,
中小企業にもやりようがあるのですが,その特別なやり方をして,救います。実際,それを知らないがためにお金が足らないという状態で,ひょっとしてこれから
あと数カ月でだめになってしまうかというような企業も存在している。そういう企業でも決算は黒字なのです。
次なのですが,もう一つは,茨城県でも
かなり力を入れて対応していただいていますが,
経営革新ができないということです。新
ビジネスが開拓できない。今,経営がもうからなくなってきた。それは環境が変わったことなのですよという話をよく
中小企業の社長に申し上げます。
どうやっても,もうからないという状態になったら,もう何か新しい
ビジネスということを,全く新しいことをやるのではなくて,今の
ビジネスから少し変えて,
ビジネスを今風にしていかなくてはいけないのです。その努力をしなければいけないのですが,当然,どうやったらいいかわからない。また,やらなければいけないかどうかもよくわからない。でも,我々がそういう
経営者と話をしていますと,今やらないとまずいですよねというような状況の企業さんがたくさんある。そういう企業さんの,こういうときには必要ですねというのは後で申し上げたいと思います。ぜひ委員の方も,そういう企業だったら身近にあるなというのをお感じになっていただきたいと思います。そこは何かをしなければいけない。今,とどまっていると,その
企業自身が赤字がどんどん続いていくということになるよということです。
それから,もう一つ,新しい
ビジネスの
展開方法がわからないというような,何かやりたいのですが,どうやって進めたらいいかわからないというような
問題点があるということです。
この
問題点を解決する手段として,基本的には,我々はいつもこの2つを勧めております。
まず,財務の健全化というので,
企業再生というものでございます。
企業再生というのは,お聞きになったことがあるかどうかわかりませんが,
民事再生とは違います。
民事再生というのは倒産の処理です。
企業再生というのは,倒産の前に企業を元気にする。よく
リストラというような言葉で言われる,あの段階だと思っていいです。企業をばらばらにして,収益が上がる部分だけを残していく。そういう手法を
企業再生というふうに言います。
ところが,実際,これをやらなければいけない企業が,今,どういうことをやっているのか。自己流で,社長さんが銀行に行って,例えば,「お金を返せないのだよ」と。お金が返せない。銀行が,「あっ,そう,ではしょうがないですね。では,今,月30万円返しているところ,月10万円にしてあげましょうか」というような話を銀行がしてくれます。ところが,何も考えずに銀行に行って,ただ,お金が返せないからちょっと減らしてくださいと言った企業は,ほぼ高い割合で,半年から1年後に,「全く返せないのですが」ということを銀行に言う。結局,銀行は2回目は信用してくれないのです。なぜか。1回約束したのに何でできないのですか。銀行さん,それを信用して,そうですか,ではお金を貸しましょうと言ったら,銀行さんにとって,そういう不確かな企業にお金を貸すということは
背任行為になってしまいます。
ですから,本来は,銀行さんにまず1回目に言う前に我々と話をしてくださいねという話をしています。そして,計画を出す。「10万円だったら返せます」などということではなく,もっとしっかり足元を見て,「2年間とめてください」とか,そういうところまでもし必要なら入れて,
経営計画を立てて,これだったら絶対自分でやれるのだと,せめて腑に落ちる計画を持っていってください。それが1年後にできなくても,銀行さんは,「あのときはしっかり立ててくれたけれども,環境が変わったのですね」という理解をしていただく可能性がある。でも,今,茨城県で残念だなと思うのは,当然,そんなことは全く
経営者は知りませんので,銀行さんにお願いに行ってしまう。私が申し上げたいのは,まずここで相談に乗れる機能というのをぜひつくっていただければというふうに思っています。
それから,先ほども言いましたけれども,その後に,企業さんの
経営革新,新たな
ビジネスの開拓というのが必要になってくる。それは何なのか。一言で言えば
経営革新をするということなのですけれども,
経営革新というお言葉は委員の方は耳にたこができるくらい何回も聞いていらっしゃると思います。でも,茨城県で何%の企業が
経営革新をやったかというのはいかがでしょうか。委員の方は認識されていますでしょうか。茨城には大体9万1,000社とか2,000社くらいはあるのではないかと思うのですが,茨城県で
経営革新をやった企業はまだ1,000件に満たないのではないかと思うのです。そうすると,1%程度しか
経営革新をやっていない。全く
経営革新というのは進んでおりません。県庁の勧めていらっしゃるところでは一生懸命やっていらっしゃるのはわかりますけれども,どの県も恐らくそんなに進んでいないと思うのです。
でも,そこでしっかり計画を立てて,自分の計画を見直すということをやって先に進んでいかない限り,今の
中小企業というのはなかなか先に進めないというような状況になっております。これもまた申し上げたいと思いますけれども,
経営革新というのを進める施策というのが,茨城には,お金を用意するよりも,
補助金を出すよりも,融資をするよりも大事なのではないかというふうに思っております。
では,この
企業再生と
経営革新というのについて少し御説明したいと思います。
企業再生というのはどういうものかというと,ここに書いてありますように,
収益力のある事業以外を全部捨てて,
収益力があるものだけにしていく。これだけ聞くと,これは
中堅企業,大企業だけなのではないかというふうに思われるかもしれないのですが,これは定義を申し上げたのであって,
中小企業でも活用できます。もうちょっと詳しく申し上げますと,
企業再生というのは,2)の
財務リストラ,
事業リストラ,それから,
業務リストラと。この
リストラという言葉は,委員の方は
十分御存じかと思うのですけれども,
リストラクチャリングですから,再構築ということで,決して
人員整理とかそういう意味ではない。もう一度それを考え直して再構築しようということです。
財務リストラとは何かというと,まず,お金が自然に返せる状態の
財務体質にしていこう。先ほど言ったような,30万円返せないのだったら10万円,10万円もだめだったら5万円,それもだめだったら2年間くらいストップして,もうちょっとしてから,まずは10%,その次の年に20%という形で
返済額をふやしていきながら,何とか企業が延命できる,延命策をとるのを
財務リストラと言います。
ところが,よくテレビなどで,企業の再生というと,これしかやらないのです。「企業を売却したり,自分の事業を売却したり,そういうことをしながら企業が生き残っています」で終わってしまうのです。でも,実際は,よく言うのですが,これはただの
執行猶予ですからねと。
財務リストラをやっただけでは,時間稼ぎなのです。でも,
中小企業の皆さんは,先ほど言ったように,月々の
返済額をまけてもらってよかった,これで何とか生きられると思ってしまいます。しかし,根本的な赤字が直っておりませんので,
資金繰りの問題というのはそこから半年後,1年後にやってくる。そのためには,その後の
事業リストラと
業務リストラをやっていくのが重要なのです。
事業リストラというのは,不採算な事業はやめてしまうことです。それから,不採算なお客さんの場合はやめてしまおう。そういうようなのを稼働率を落とさない程度にどんどん切っていきます。そうすることによって不採算なものを削っていきますから,何とか
プラスになる事業があれば企業全体が
プラスになっていきます。
業務リストラというのは何かというと,一言で言えば,とにかく経費を削っていくのです。経費をどんどんどんどん削っていって,収支が均衡するまで削っていきます。私は,企業から何とか立て直していただきたいという依頼を受け,では,
企業再生みたいな形でやっていきましょうかと,二,三人でやるようなときがあります。そのときに,最初に社長にお願いすることがあります。「いいですか,社長,今から,来年,再来年,
売り上げが上がって会社が立て直すということはほぼないですからね。
売り上げは下がりますよ。今から2割,3割下がると思ってください。下がり始めた
売り上げというのは我々がやってもとまらないです。ではどうやって
プラスにするのか。それは,2割下がったその
売り上げでも
プラスになるくらい
コストをカットします。ですから,社長がお持ちのすべてのものをまず出してください。それから,大変なときは人員もある程度見直さざるを得ないです」というようなことを申し上げます。
それをやって,実は,大変おもしろいのですけれども,なぜと言っても,私もはっきり申し上げられないのですが,
売り上げがこの程度です。
コストがその上をいっています。これで赤字になってだめになっていくのですが,
経費カットをずっとやっていきますと,ある時点で経費が下がっていって
収支均衡になっていくのです。
収支均衡になった瞬間に,企業は,
従業員が特に「ああつぶれない」と思うのです。「うちの会社は何とかやっていけるのだ」と思ったところで,
従業員がみんな同じ方向を向いてくれるのです。そこから企業は潮目が変わったと我々はよく言うのですが,そこからはもう大丈夫ですよ,何とかやっていけますよというような状態になってきます。これを再現するのが
企業再生という手法です。ですから,これはある程度自分が確信を持って進めないと,ではやってみようかといって企業の社長さんがやれるものではないのです。
それから,
財務リストラですけれども,先ほど言ったように,これは
中小企業ではできないのではないか。例えば,売却など,売却するものがないというのが
中小企業です。しかし,我々も手は限られるのですが,
財務リストラとして,例えば,リスケジュールという
返済スケジュールの変更を,銀行さんにお願いすることがあります。それから,負債の一本化です。何本かある負債を一本にして,長くしていただいて,日々の
銀行返済を減らしていくこともやります。
それから,私募債みたいな銀行さんと関係ないところで調達する方法を考えていきましょう。そういうことをやりながら,
中小企業であってもやる方法はあります。ですから,ぜひ挑戦してみてくださいねとお願いはしております。
経営革新なのですが,
企業再生が終わって,やっととりあえずこれで黒字に何とか少し少し上げていくことができるということができたら,または,そんな状況ではない場合は,すぐに
経営革新ということをやっていかなければいけない企業はたくさんあるということです。それは,環境が変わって,今,黒字になかなかならないような企業です。
経営革新とはそういう企業に対して,今,自分の
ビジネスを変えることというふうに書いてあります。これは何かというと,客の求めるものと自分が提供している商品がちゃんと合っていますかということを見て,考えて,それで合わせていっていただくというのが
経営革新ですよという話をしています。ですから,その結果,
経営革新をやると企業の
商品力というのは上がっていくのですよ。つまり,お客さんの求めに合わせていきますからということです。
商品力が上がらないと,基本的にはだんだん粗利が下がっていって,そのうち
赤字体質ということが起こっていくということです。これについては,後でまたグラフで御説明したいと思います。
使い分けが重要というところなのですが,実は,私はいろいろなときに申し上げているのですが,
企業再生をしなければいけない企業に
経営革新をやっていただいても,これは反対に倒産の時期を早めてしまうことがあります。それから,反対に,本当は
企業再生をやらなくてもいいのに,
企業再生のような事業の大改築などをやるのは不効率です。その時々によって実はやる手法が変わってきます。でも,いつもおもしろいですよねという話をするのですが,人間,病気のときにはお医者さんにかかって,医者にどうしたらいいかというのを聞くのですけれども,企業の病気のときにはなかなか聞かない。自己流で病気を治そうとしている。それがために余計悪化してしまうというようなことがある。
これは,横軸が時間の経過です。縦軸が企業の収益だと思っていただきたいのです。企業の収益が,本来,時間とともに上に上がっていくのが正常な成長,それに対して,環境が変わって,それに自分の商品が合わなくなってきた企業,その企業は,残念ながら,波は当然ありますけれども,
下降トレンドに向かって進んでいきます。その段階が,私はいつも5つの段階がありますというふうに言っております。
5つの段階というのはどういう段階か。まず,兆候という段階です。兆候という段階は,今言ったように,合わなくなってきた最初です。だから,何かというと,例えば,お客さんの言うことが違った。お客さんが,今まで,「いい商品だね」とか「早く持ってきて」とか言っていたのが,「まけろよ」,それから,「ほかでもそんなの売っているよ」とか,「何だちょっと高いよね」とかいうような言っていることが変わってきたというのが兆候の段階です。それから,
従業員が何か暇そうにしているよなというようなのが兆候。
当然ですが,ここではわからないです。我々
経営コンサルタントにもわからない。わかったら,
松下幸之助とか,そういうふうな呼び名になるのではないかと思うのです。通常はその先の段階に行ってしまいます。
先の段階というのはどういう段階かと申しますと,
不作為の時期というふうに言うのですが,この時期には,粗利,委員の方は粗利と申し上げて大丈夫でしょうか。
売り上げから
コストを引いたものを粗利,そこから経費を引いて
企業収益になってきますけれども,まず,
売り上げから原価を引いた部分です。そこの部分が粗利がどんどん縮小し始めます。
縮小し始めると,
経営者はどういうことを思っていくかというと,いや,だんだん
ビジネスがやりづらくなってきた。だから,同業者などで集まると,「何かしなくてはいけないね」という話はするのです。何かしなければいけないと思うし,みんなと話はするのだけれども何もしない時期,だから,
不作為の時期というふうに申し上げています。
でも,実は,この時期に,既に,自分が提供している商品が,粗利が縮まってくるというのはどういうことかというと,
世の中から,「あなたの商品とかあなたの
ビジネスは要りませんよ」と言われている時期なのです。だから,本当はそこで調整しなければいけない。どうやったら今の
世の中に合っていくのかなというのを。それをそのままにほうっておく時期です。ほうっておくと,当然ですが,自分の商品が
世の中から認められていない場合には,
企業収益は残念ながらどんどん下がっていきます。お客さんがだんだん来なくなってくるということです。これが不作為の時期というふうに言われます。
これをほうっておくと,誤った行動というふうに我々は言うのですが,誤った行動の時期に入ってきます。誤った行動の時期というと何か。
不作為の時期は粗利が下がっているだけで,
売り上げは横ばいか,ないしはちょっと上がることができるのです。なぜかというと,値段をまけて売っていくということです。値段をまけて売っていくということをどんどんやれば,当然,
売り上げは下がらない。でも,それにも限界がありまして,
売り上げが下がり始める。そうすると,社長さん方,「まずいまずい,
売り上げ下がってしまうよ,何かやらなければ」ということで何かやるのですが,やることが,
経営革新を本当にここでやらなければいけないのです。やって,お客さんが求めているものは何,それに合わせて自分は何を提供するのということをやらなければいけないのに,でも,やるのは,営業頑張れ,
従業員の尻をたたいて,売ってこい,それ自身が誤った行動なのですよということです。
今は何とか
売り上げを上げる。後で改善の話をちょっとさせていただきたいと思うのですが,改善ということだけに終始して根本的な治療をやらない。つまり,
経営革新ということをやらないと,それがだんだんだんだん危機的状況に陥っていきまして,危機の時期ということになっていきます。
これは何か。この時期になるとだれにも時期はわかります。社長さんは大体
資金繰りに駆けずり回っているという時期になります。「3,000万円借りられました」,「よかったですね」という話をした。そこから1年後に,また社長は,「どうしようもないのです」と駆け回る時期になっている。それはそうです。当然,
不作為の時期あたりから
赤字体質が始まっていますから,全然返すものがないのです。よく社長さんに,過重債務者になってしまう個人というのがあって,それはなぜかわかりますよね。当然ですが,例えば,消費者ローンを借りるという場合は,収入に対してもっと費用の方が多いから,その差額を埋めに借りに行きます。でも,それはいつ返すのですか。これは収入と費用の関係がひっくり返らないと返せないです。これが,例えば,消費者ローンでいうお借り入れは計画的にというものなのです。返すあてがないのにお金を借りていると,結局はもっともっと突っ込んでいってしまいますよというような状況がこの危機的な状況。ですから,ここの最後の時期あたりになって我々に相談があった場合には,もう借り入れはやめてください。次は法律の専門家に来てもらいましょうというような話をすることがあります。
私はよく言うのですが,顧客に変化が起こったら兆候です。粗利に変化が起こったら
不作為の時期になっています。それから,
売り上げに変化が起こったら誤った行動の時期,資金に変化が出たら危機的な状況です。それをそれぞれ何とかもとに戻らないかというのは,最後の法的再生というのは
民事再生みたいなものですから,社長さん自身はもとに戻るのはあり得ないのです。ただ,事業としては,ほかを切り捨てて生き残すという法的再生,それから,
企業再生というのが,この危機的状況の入口あたりから
企業再生,それから,
経営革新はその前の段階。
今,宮田は作り話のように,物語のように話したではないかと思われるかもしれないのですが,我々,危機的状況とか倒産の寸前みたいな企業から,当然ですけれども,仕事ですから,よく相談を受けます。そのときに,この企業は本当は
不作為の時期があったのだよな,そのとき
経営革新をやればよかったとか,
企業再生をやるチャンスがありましたよねというふうに思う。社長さんには過ぎてしまったことは言えませんけれども,そういうことを思うことがあるというか,ほぼ確実にあります。ここまで来る前にと。医者がよく言う,「何でここまでほうっておいたの」というような状況です。ですから,この前に気づくというのがいかに企業にとっては大事なのかということです。
負け組に陥る共通点というので,セミナーなどをやるときに社長さん方に申し上げるのですが,景気がいいという人が少し
世の中に出てきたのに,自分が景気が悪いというような時期は注意してください。そこで負け組と勝ち組が決まる時期になっている可能性があります。
それはどういう時期かというと,負け組に陥る共通点,私は3つのPというふうに言うのですけれども,一番上がパフォーマンスのP,2番目がプロモーションのP,3番目がプロフィットのPというように,負け組の1),2),3)と言うのですけれども。パフォーマンスのPは,環境が悪いから,不景気だから,自分の事業は不景気だと思っていらっしゃる社長さんはいらっしゃいませんか。不景気だって元気な企業はいっぱいあります。それはよく考えてください。今,不景気だからだめだと思った瞬間から思考が停止します。つまり,そこの時点で,まず,自分の商品というのが一体
世の中にちゃんと通用しているのか。粗利が下がってきたら,ひょっとしたら,いろいろな人が欲しい欲しいという商品でなくなっている可能性があるではないですか。
例えば,品質がいいということをクオリティーと言います。クオリティーというのはギリシャ語のクオリスというところから来ているらしいのですが,クオリスという言葉までさかのぼると,品質がいいとか悪いとかという意味ではないのです。お客さんの求めているものに合っているという意味になるのです。そういう意味で,自分の
ビジネスがお客さんの求めているものに合っているかどうかをしっかり考えてください。
世の中,景気がいい人が出てきたが,自分は良くないということは,自分は合っていない可能性があるのですよという話をしています。
それから,プロモーションのPは,営業が頑張れば何とか事業は回復すると思っている社長さん,これも気をつけていただけませんかというような話をします。それはなぜかというと,我々,よくこういうときに申し上げるのですが,
世の中に売る手法というのは,売るという営業みたいなセリングというものと,もう一つ,マーケティングというのがあります。
セリングというのはどういうものかというと,とにかく売っていくことです。100円ショップができたころ,100円ショップを経営をされている方がいたら大変失礼なのですが,決して悪口を言っているわけではないのですけれども,100円ショップができたころ,我々,100円ショップに入って出てくるときに,何でこれを買ってしまったのだろうというのがかごの中にいっぱいあるという状態です。あれは売る技術,お客さんの心理をうまくかき立てる技術がたくさんあるからです。
それに対して,マーケティングという技術がしっかりしている企業に行った場合は,そこで物を買った場合は,ああ,いい物が買えた。次に買うときはここに来よう。これを売れる仕組みというふうに我々は言います。売る技術に対して売れる仕組み,これをつくるのが
中小企業にとって今一番大事なところなのに,それをすっかり忘れて,売ること,売ること,売ることとやっていると負け組になってしまいます。それは顧客ニーズとかそういうのをよく見ていきましょうということなのだと思います。
それから,プロフィットのPとして利益を求め過ぎる企業もまずいですよねという話をします。なぜかというと,こんなのではもうからないのだよと社長さんは言いますけれども,こんなのではもうからないのだよという話をするところから,お客さんがもうかることはすっかり忘れてしまいます。つまり,顧客に喜んでもらえて初めてそこから
ビジネスはいくものなのですけれども,それをすっかり忘れる企業になってしまう。
このようにパフォーマンスと,それから,プロモーションとプロフィットという3つのPに注意してくださいというような話をしています。
こういうのを起こさないようにするためには一体どうしたらいいのかと。ぜひ茨城県の
中小企業の社長さんにやっていただきたいのは,
経営革新というものをやっていただきたいと思います。唯一,これに気がついて,これから一歩踏み出せるのは
経営革新だけなのだと,日ごろ,事業をやっていて感じております。
ちょっと時間もなくなってきましたけれども,もうちょっとだけ改善と革新という違いを申し上げますと,先ほどのセリングというのが改善というものです。何とか今の商品を一生懸命売り込もう。頑張って頑張って頑張っている。遊んでいるわけではないのです。でも,それを10年やっても自分の
ビジネスは変わらないというのを改善というふうに呼んでおります。それに対して,お客さんとか,生産とか,販売方法とか,商品とか,そういうもののどこかを変えていって今になじむようにしようというのが革新と呼ばれるものです。
改善の方がいいときがありました。革新などやらない方がいい。それは,高度成長期のように安定しているときには新しいことをやらない方が効率がいいですから,日本はこれで大きくなっていって,改善という言葉は英語でも通じる言葉になりました。
それに対して,今は環境がどんどん変わっているから,
経営革新をしなければいけない時期なのです。
では,どのような
中小企業で
経営革新というのをやる必要があるのかということなのですが,時間がなくなってきておりますので,上の3つくらいだけ御説明いたします。
要は,こういうときになったら
経営革新を必ずやってくださいとお願いしています。それは何かというと,環境が変わってきて粗利が変わった。これは何度も申し上げています。何かというと,要は,企業の商品が
世の中から見放されてきたというようなのが粗利が下がってきた。これが3年くらい続いてきて,なおかつ,ああ営業しづらいと思ったら,社長,
経営革新をやらないと手おくれになりますよという話をしています。
それから,事業承継のとき,2代目にそろそろ譲ろうかなと思っているときです。どういうことかというと,例えば,屋のつく職業というのは今苦しいとよく言われます。例えば,八百屋さん,米屋さん,パン屋さん。なぜか。それは,屋のつく職業というのは今から30年も40年も前に
ビジネスモデルができ上がってしまったところです。それと同じことをやっていると何々屋さんと言われます。そこから一歩踏み出すと違う呼び名をされるようになります。
そういう屋のつく職業というのがだめになるのはなぜかというと,環境が変わっても,それに合わせて
ビジネスを変えていないからなのです。息子さんが事業を引き継ぐときに,このまま渡すと同じことが起こりませんか。事業承継は,今,国でもやっています。例えば,税金を100万円,150万円,200万円まけてもらおう。そういう取り組みもされていますけれども,税金を100万円まけてもらったって,2代目が事業がうまくいかなかったら,あっという間にそんなのは使ってしまいます。ですから,今,お父さんと息子で,次の
ビジネスをどうするのかを考えることをやってみてください。そうすると,息子さんが一人きりになり,環境が変わったときに,お父さんと同じに事業をもう一回変えられるのだという自信が,そのときには,あのときやったからという自信がついているのではないでしょうか。ですから,事業承継のときには
経営革新をやりましょう。
それから,遊休資産があるとき,これは何かというと,人が遊んでいる,土地が遊んでいる,設備が遊んでいる。こういうのがあると企業は病気になってしまいますよという話をします。どういう病気かというと,糖尿病みたいな病気です。私も軽い糖尿病なのですが,糖尿病というのはほうっておくと大変な病気になるのだよとよく言われます。そういうようなのがこの遊休資産というものです。
何かというと,ある程度の
売り上げが上がっているのに,それに対する利益が出なくなってしまう。そうすると赤字が起こりやすくなる。赤字が起こりやすくなれば,先ほど言った
資金繰りという問題になっていくということです。
ちょっと前に,はげたかファンド,今でもドラマではげたかというのが出てきますけれども,はげたかファンドみたいなのが,だめになった企業を,日本人の社長が幾らやってもだめなのに,外国人が買って,元気にして,高く売っています。日産も,一時,ゴーンさんになって,V字回復をしております。
あれはなぜできたのですかというと,やっていることはみんな一緒なのです。不良資産,遊んでいるもの,そういうものをすべて捨てているのです。工場を閉鎖する。ラインを閉じる。それから,車の車種も減らす。稼働率は上げていく。遊休資産をなくしていく。全部が働く状態になると企業は元気になっていくのです。遊休資産はその反対を起こしているのです。どんどんどんどん元気がなくなるのは遊休資産なのです。ですから,企業で遊んでいるものがあったら
経営革新をやってください。
それから,遊んでいるものを使って
経営革新をやるとお金がかからないです。土地があり,遊んでいるからそれを使おうとしたら,土地を買う資金が要りませんから,
コストが安くできる。イコールリスクが低い。だから事業には成功しやすいという
プラスの面もあります。
こういうふうにずっと見ていくと,事ほどさように,どうでしょうか,委員の方が思いつくような企業で,この条例に当てはまらないという企業がどのくらいあるのかというようなことを考えていただきたい。恐らく茨城の企業で3分の2くらいは
経営革新をやらなければまずいというのに当てはまっているような気がするのです。でも,
経営革新をやっている茨城の企業の実態はどのくらいかというと,1%ちょっとだというようなことになっています。これで企業を元気にしようというのは難しいのではないでしょうか。
まず,みんなが,お客さんは何を考えているのだろう。お客さんが何を考えて,それに対して自分は何をしたらいいのだろう。そういうのを考えていただくというのが一番大事だと思っております。それを考えずに県がお金を投入しても,それはすぐにお金がなくなってしまう。余り効果の高い支援にならないのではないかというふうにいつも思っております。
その下にちょっとだけ書きましたけれども,
経営革新が行えないときにはどうするのかというと,その前に,先ほど言いましたように,
企業再生を行って,
経営革新を行えるようにしていくのだということです。ただし,そこで,どうやっても,2年,3年頑張っても営業黒字にならないという場合はもう清算しかありません。私,20件くらい相談を受けると,1件くらい清算しかないかなと思うような企業があるという感じです。
最後に,これは私が申し上げるようなことではないのでしょうけれども,今の話から,ぜひ委員の方におわかりいただきたいと思う,茨城県で必要な支援というのはこんなのでしょうかというのを,意見として聞いていただければと思います。
基本的に,今,茨城県に必要なものというのは,例えば,
企業再生計画を我々が企業のためにつくってあげます。つくってあげても,銀行さんでけんもほろろのときがあるのです。それは,企業さんが一回銀行さんにうそをついてしまったとか,そういうのがあったりもするのですけれども,それだけではなくて,銀行さんの方が貸したくないとか,銀行さんの方がリスクはとりたくないというようなのも多い。
それに対して,銀行さんにどうというのではなくて,再生計画を立てた企業に対して県の資金的な補助みたいなのがあれば,その企業は何とか立ち直ることができるのです。一本化をしてあげるような補助とか,そういう資金的な補助をやることによって,まず企業が息の根がとまるところを何とかできる。それを見分けるのは,再生計画をつくっているかつくっていないかなのではないかなと思います。
なおかつ,もう一つ,企業の
経営革新の意欲を高める方法,そういう施策がないのか。例えば,何かというと,計画を立ててしっかり新しい事業に取り組もうと思ったら,ファイナンスがつくよ。そこにお金がつくよというのは,企業の背中を後押ししてくれるのです。企業はそれが見えた途端,やろうかと思っていただけるところはたくさんあります。でも,残念ながら,そういう計画をつくっているのにもかかわらず,その辺で何も考えていない企業で,
資金繰りが足りないといって来た企業と全く同じ扱いを受けて,前向きの意欲というのがそがれている。何とかそういうのを支援するような,今,日本政策金融公庫あたりもお金は貸してくれますけれども,もっと資金的な補助というのを,もしほかに
補助金として出すのなら,計画があるところに振り向けるというのをお願いできないかなというふうに思います。県の融資等も実際ありますけれども,ただ,なかなか
中小企業者が使えないという状態になっているということです。
それから,もう一つ,その下です。先ほど申し上げましたように,企業を直す医者,それから,実際は病気になったらかかるべき病院というのが必要なのだというところで,今,茨城県に何があるかなというと,私は,個人的に,商工会議所さんとか商工会さんの機能だろうと思うのです。今,残念ながら,商工会さんがどんどんどんどん減っていってしまって,私は,企業の方たちがどこに相談しに行っていいのかというのは,恐らくない状態にもうすぐなってしまうのではないかと一番心配しております。
病院と一緒で,何かあったらそこで聞いてくださいというような相談ポイントをつくると,
中小企業がもう一回頑張ろうという拠点をつくることができるのではないかと思っております。
ただし,そこにはそれに対応できる人材ということになると思います。普通,こういう相談の人材というと,我々
経営コンサルタントがよく呼ばれて,お願いしますと言われるのですが,残念ながら,私が思うところ,私みたいに個人である程度そういう対応を日常的にやっている人間というのは茨城県に恐らく20人くらいしかいません。だから,私は今ものすごい忙しい状態で,12月まで,土日も入れて,スケジュールが書いてない日というのは2日くらいしかありません。ですから,少なくともコンサルタントがこれをやるのでは全然足りないのです。ではだれなのかというは,当然ですけれども,商工会や商工会議所さんにいらっしゃる経営指導員さんがある程度そういう役割を果たすという構想がつくれないか。ただ,彼らの能力がどうだといろいろ言われているのも聞いていますけれども,もし医者になれないのだったら看護師さんになることはできると思うのです。それで医者をもっと効率的に使ってやろうというような仕組みもできるのではないか。いずれにしろ,病院というのがなければ,今の茨城県のこの経済を
活性化するのは難しいのではないかというふうに日ごろの活動を通じて思っております。
私が申し上げたいことは以上で,あとは産業別の私の意見というのを申し上げようと思いましたが,時間が来てしまいましたので,とりあえず,この大きいところだけを申し上げて終わりにしようと思います。
どうも聞いていただいてありがとうございました。
5
◯鈴木(徳)
委員長 大変ありがとうございました。
ここからは
意見交換の時間とさせていただきます。
ただいまのお話につきまして,委員の方で何か御意見または御質問がありましたらお願いいたします。
石田委員。
6 ◯
石田委員 石田と申します。
本日はありがとうございました。
最後のところで,私もいろいろ聞かせていただいておりまして,地元の商工会のあり方とか頭に浮かべながら,最後のページになったら,支援策の中で入っていらっしゃいましたので,私も同じことを考えておりまして,いわゆる経営指導員のあり方と,地元に密着している経営指導員の方も一生懸命やっている。汗をかいている方が大勢いるのですけれども,一つ,商工会議所に行かれたり商工会に行かれたりという中で,青年部活動とかいろいろな活動も商工会の中でやっておりますけれども,非常に意欲のある商工会議所,商工会と,何をやっても,例えば,祭りのイベント一つにしても,なかなか人が集まりにくくなっているという状況もあるように聞いているのですけれども,そういう面では,経営指導員の方がいろいろ手をかえ品をかえ魅力づくりというものをやっているというのが一つ実情としてあるわけだと思うのですけれども,そこに,知恵,いわゆる新しい経営支援,もしくは国の目指している,県の目指している情報をしっかりと伝えていくこと,そういうような役割も商工会議所,商工会には必要だと思っているのですけれども,経営指導員の方が,例えば,先生に来ていただいて,年間行事の中で,いわゆる地域の中の密着した経営指導というところになってきたときに,経費の問題が出てくるわけです。やろうと思ってもなかなか手だてが,いわゆるお金の問題が出てくるということで,そういう依頼を受けたことがありますか。例えば,年間を通してとか,数カ年の中で,私の町の商工会議所は特に若手
経営者を育てていきたいというような依頼を受けたことは実際ありますか。
7
◯宮田参考人 単会からそういう依頼を受けたことはありません。私は商工会連合会の応援コーディネーターですので,応援コーディネーターとして請われれば,それで単会に行くということはありますけれども,今の質問のように,ずっと同じところを見続けてということは時間的にやれない状況になっております。
8 ◯
石田委員 私は,むしろ,単年度で終わってしまったり,一つのテーマで動いていくときに,商工会議所とか商工会にお願いしているのは,もっと腰を据えて,地元の特に観光産業との連携を念頭に置いた地域づくりであったりということを,よく商工会議所,商工会で言ったりしているのですけれども,いわゆる失敗を重ねてでもサクセスストーリーを描けるくらいタフな商工会議所,商工会でないと,地域の中で思いつきでやってもすぐ失敗,また,そういう中で知恵も入ってこない。やる気も起きてこない。成功事例もなかなか出てこない。その悪循環だと私は思っております。
ですから,先生方に,各地各地にもう少し緊密的にお願いできるような施策を県も商工会議所と検討して,例えば,経営指導員のレベルを上げるといってもそうはまいりませんので,先生のような方が,スケジュールがいっぱいのようでありますけれども,20人と言わず,都内からも,私,経営指導員の方,
中小企業診断士の方も含めてお会いしているのですけれども,全国各地の成功事例を持ってきてもなかなか心が動かないときが多いのです。ですから,なるべく自前,いわゆる茨城県を育てていくというような形で,20人が200人ぐらいのスケールになっていかないと,本当に茨城県が,全国に先駆けて,地域振興型の県として成功事例におさめていくのは厳しいだろうなと思っていまして,この後,いろいろ県の方でも協議をしていただいて,足腰のしっかりとした企業を育てていくというのは複数年でやっていかないとうまくいかないと思っておりまして,その辺で何か御意見がございましたらお願いいたします。
9
◯宮田参考人 同じことは我々もジレンマとして持っておりまして,1回だけ行って,それで,その後どうなったのかなというのはしょっちゅうあります。それを補っていただきたいのが指導員さんです。指導員さんは日常的にそういう企業とお会いになっておりますので,指導員さんは,今,結構失敗していらっしゃるという御意見を伺いましたが,企業一つに対して向き合ってやっていらっしゃる指導員さんは,割とちゃんと正確にやっていらっしゃるなと思うことがあります。ですから,指導員さん,今,一つの企業にずっとかかわるというわけにはいかないのでしょうけれども,幾つか重要な企業さんに指導員さんが年間を通して見ていく。その経過会議みたいなのに我々も入って一緒にやりましょうみたいなのはできないかという話もしたことはあります。
10
◯鈴木(徳)
委員長 ほかにありませんか。
飯泉委員。
11 ◯
飯泉委員 中小企業の方から,信用保証協会に相談に行ってくれというような依頼を受けたことがございまして,信用保証協会では了解を得たのですが,金融機関が対応できないという状況の中で,信用保証協会と金融機関との関係というのはどういうふうに御認識をされていますでしょうか。
12
◯宮田参考人 金融機関も信用保証協会もそれぞれ意思決定は別々にしますので,どうやら意思決定のポイントが違うときにそれが発生する。例えば,今は100%もありますけれども,信用保証協会が90%しか保証しないというようなことになると,特にそれが,これはプロパー融資と同じに扱えというふうに例えば融資の方から銀行の方で言われたりする場合もありますから,なかなか貸せないということが起こるのだという説明を銀行さんから受けることがあります。
それから,信用保証協会さんも危ないなと独自に判断することがあるみたいで,銀行さんとの話しまでではオーケーなのだけれども,信用保証協会さんがなかなかうんと言ってくれないのだというのもあります。それぞれのポイントが少しずつ違って,我々も何かの審査をするなどというときには,個人個人,評価が違っています。そういうのがあるのではないかというふうに理解しております。
13 ◯
飯泉委員 信用保証協会の方の認識と金融機関の方の認識の違いといいますか,連携ができていないのかなという危惧をするのですが,非常にアンバランスなギャップを感じて,信用保証協会が了承をしても,金融機関が対応できないという形で融資が受けられないという状況になってしまうということが随分ありまして,特に製造業,サービス業,建設業の関係者の方々が非常に多いという実情がございまして,そういう状況が今現在あるということと,あと,もう一つは,今,県内に
経営コンサルタントが20人というようにおっしゃった。
14
◯宮田参考人 20人しかいないというわけではないのです。ただ,
経営コンサルタントを専業でやっている者が20人くらいですよと。あとは,企業としてやっている企業もありますし,あることはあるのですが,ただ,例えば,先ほど言った商工会に来てもらう人間とかいったときに,恐らく思い浮かぶのはそのくらいしかいらっしゃらないのだろうなと。だから,同じような人が何回も何回も使い回しという状態になっているというふうに思います。
20人というのは,あくまでもそういう意味の稼動している人間という意味で,私が持っているような
中小企業診断士という免許を持っているのは100人くらいいます。
15 ◯
飯泉委員 そういう意味では,各相談者,コンサルタントの方々がオーバーワークにならないような連携できるような,商工会との連携ですとか,あるいは,さまざまな金融機関でも,その企業を救ってあげようというような金融機関もあるのではないかと思うのです。そういう中で,さまざまな企業の方々に融資が受けられる,救ってあげられるような取り組みというのは,今現在,一番求められているものはどういうものなのでしょうか。
16
◯宮田参考人 先ほど申し上げましたように,自分の意思を持って計画をつくってきたそういう企業に対する融資というものを,今,委員がおっしゃったような銀行レベルとか信用保証協会レベルで判断するのではなく県の基準で判断する,例えば,会社でいったら,会社全体のポリシーがあって,そこにそれぞれ部署間の考え方がある。でも,会社のポリシーにのっとって大体意思決定されていきます。少なくとも計画をつくってきた企業に対して,そういう支援というのが一貫しているというような施策があるべきというふうには思うのですが。済みません,お答えにならないとは思うのですが。
17
◯鈴木(徳)
委員長 ほかにございますか。
足立委員。
18 ◯足立委員 きょうはありがとうございます。
先ほどのお話の中で,県内の対象
中小企業というものが9万1,000社から9万2,000社存在している。実際,しかし,こういう経営的な支援を求めたり寄与するというのは1,000社,1%に満たないという話がございました。
これだけ国も地方もさまざまな制度をつくって,
経営コンサルタントさんの数が少ないということはありますけれども,環境はかなり整ってきているように思うのです。それと,企業
経営者の方々の意欲がないわけではないのだろうと思うのです。
ただ,しかし,今,こういう経営環境,国も世界も厳しい中で,現状でいった場合,淘汰というか,どんな見通しを立てられているかということとあわせて,もう一歩,先ほどありましたけれども,
経営者の意欲の高揚策という,決して意欲がないわけではないのだけれども,直接的にもうちょっと何か必要なのだよという高める考え方がありましたらお教えいただきたいことが1点です。
それから,もう一つ,今,日本社会全体が成熟化社会といういい言葉で表現されていますけれども,現実的には,昭和24年生まれの人がことしで60歳を迎えて,つまり,働く人,その地域の生産性とかというのは,これは働く人と機会と時間,機会も時間もほとんど世界は同じようになっていますし,人が少なくなるというのもその地域の致命的な課題だろうと思うのです。ですから,国民総生産も間もなく3位になるのではないかとか,一人一人の国民所得はかつての3位から19位に落ちている。そういう状況の中で,
中小企業の現状9万1,000社から9万2,000社,本当にこれから維持できるのだろうか。どんなにやっても環境的に淘汰されてしまうのではないのだろうかという,どんなに行政が手を打ってもこれはもう物理的に不可能な状況と,日本社会はこれからどんどんとそういう環境になるのではないのかなという意識を私は持っているのですが,その辺のお考えを伺えればと思います。
19
◯宮田参考人 非常に難しい質問で,私の意見くらいなのですけれども,まず,1,000社のお話は,
経営革新計画をつくった企業が1,000社ということで,相談に来ている企業の数ではありません。それはもっとずっと多いと思います。それは違う数字,私,どのくらいの数字か把握しておりませんので。
ただ,意欲向上策ということ,それが今ほうっておくとどうなってしまって,どうやって意欲を向上したらというのが最初の御質問だったと思うのですけれども,かなり急速な勢いで,例えば,5万社とかそのくらいまでいってしまうのだろうとはよく我々は言っております。それが急速というのはどのくらいかというと,5年とか,そういう短期間に起こるのではないか。特に今回のリーマンショックから立ち直れないという飲食店とか小さい零細企業に満たないようなところ,事業所さん,ああいう事業所さんは本当にやめてしまおうという寸前の状況になっているのではないかなというふうに思います。
意欲向上策,では,そういうところに対してどうしたらいいのか。もうちょっと頑張ったらとよく話をするのですが,倒産したって事業は続けられるのです。事業をやりたかったら,それは幾らでもやれるのですという話をすることもあります。もうここでいいやと思った会社が倒産するわけなのですけれども,実際は倒産しようと思わなければ幾らでも企業はやっていけるのです。
まず,先ほど申し上げましたように,身近に相談できる人と相談する仕組みというものが一番そういう人たちを救ってくれるのではないかと思うのです。だからこそ指導員さんみたいなネットワーク,今あるネットワークを使えないかなというふうに思っております。ただ,指導員さんの皆さん,まだ行ってもなかなか話してくれないかなというようなところに戸惑っていらっしゃる方が多いものですから,県としてそういう施策でやっていこうというふうになってくると,皆さん,勇気を持って行っていただけるのではないかと思うのです。
それから,もう一つ,9万1,000社,こんなのは少子高齢化の中でそんなにあるわけにいかないだろう。実際,私,それが急速に下がるのではないかと申し上げておりますが,ではどうするのか。スムーズランディングだと思います。スムーズランディングというのは何かといったら,先ほど言ったように,とんでもない状況になる前に,「もうそろそろ清算しましょうよ」とだれかが言ってやる。それは相談相手ということになると思うのです。話をしていって,「そろそろ息子さんに迷惑かけるわけにいかないですよね」などと我々も言うことがあります。「息子さんの人生をめちゃくちゃにする前にやめましょうよ」という。それはある程度のところだったらやめられる。例えば,家,土地全部売ればこれでゼロになる。それが御先祖様の土地だと言う人もいますけれども,そのために御先祖様が残しておいてくれたのではないですか。だから,そこで終わりにして,息子さんには何にも残さないということを残してあげましょうというような話をすることがあります。
お答えとしてふさわしいかどうかわかりませんが。
20
◯鈴木(徳)
委員長 ほかにありませんか。
それでは,以上で,「
県内中小企業の現状と課題」について,
意見聴取を終了いたします。
宮田様には,貴重なお話を大変ありがとうございました。
本日,お話しいただいたことにつきましては,今後の
委員会審査の参考にさせていただきます。
どうもありがとうございました。
ここで暫時休憩といたします。
なお,再開は,午後2時時15分といたします。
午後2時6分休憩
───────────────────────────────
午後2時15分開議
21
◯鈴木(徳)
委員長 休憩前に引き続きまして
委員会を再開し,
参考人の方から
意見聴取を続行いたします。
本日2人目の
参考人といたしまして,茨城大学人文学部教授の清山玲様より,「今日の雇用・失業問題と
雇用対策」をテーマに御意見を伺いたいと思います。
清山様におかれましては,
大変お忙しい中,本
委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。
委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
清山様のプロフィールにつきましては,お手元にお配りしておりますが,社会政策,労働経済,人事労務管理を専門に研究されており,その豊富な知識と経験から,茨城県南地区労働問題懇談会座長を初め茨城地方最低賃金審議会委員など,国,地方公共団体の多数の
委員会等に携わり,研究成果を紹介しながら労働行政の推進に貢献されておられます。
それでは,清山様,よろしくお願いいたします。
22 ◯清山
参考人 ただいま御紹介いただきました清山と申します。
大学では,労働問題を中心に,社会政策論とともに教えております。
きょうは,皆さん,お忙しい中で呼んでいただいて,こうやってお話をする機会をいただいたこと,大変うれしく思っております。できるだけお役に立てるようにと思って参りましたけれども,少しでもお役に立てるといいなと思っております。
それでは,時間もありませんので,早速,本題に入りたいと思います。
まず,リーマンショック以降,茨城県内も雇用情勢が非常に悪化しております。レジュメの1枚目と,それから,A3の1)との1番,2番,3番あたりが雇用情勢が急速に悪化しているというものです。
まず,日本経済の状況が非常に厳しい,世界的な景気後退の中で,日本の経済も非常に影響を受けています。もちろん,茨城県経済,茨城県の雇用も例外ではありません。
今回,雇用・失業問題ということですので,雇用情勢について,まず,確認したいと思って数字を出しております。
有効求人倍率は,求職者と求人数との比率をあらわしたものなのですけれども,07年6月の段階で1.02倍,1を超えていたものから0.42倍に,08年の12月以降に急速に低下しております。新規の求人数も前年同月比で激減しておりまして,常用の新規求人が40%減,臨時54%減,パート22%減というような形で,求人が非常に出てこないということがその数字からわかると思います。
そして,雇用保険の受給者,つまり,雇い止めや,あるいは
リストラ等で勧奨退職を受けたりして,あるいは一番激しい場合には解雇ですけれども,そういう形で失業した方たちが雇用保険を受給する,失業手当を受給する手続を取ったりとかなさいますけれども,その実人員が前年同月に比べると2倍以上になっているということで,この1年で急速に雇用情勢が悪化しているということが一般的な数字から見てとれます。
それから,次に,製造業派遣等を中心に雇い止めの影響が県内でも深刻に出ているということをお話しします。
これは茨城労働局が発表している県内での調査,2008年10月から2009年9月までの雇い止め等の実施済み,あるいは計画段階でわかっているものについて,6月に発表しています。この数値は,先ほど申し上げましたA3の1)の3の図表です。この3の図表から,ざっと言いますと,製造業を中心に雇い止めが急増した。中でも12月から3月にそれが集中している。年末年始と3月に集中しているということ。労働局の調査では96%が製造業で,全体の雇い止めの実施ないしは計画段階で6割弱が派遣労働者だったということが明らかにされております。
また,新聞報道などによりますと,土浦市等でも非正規雇用の雇い止めが2月の段階で相当程度出ているということが発表されています。そういうことも含めて,非常に非正規雇用,正社員でない人たちを中心に非常に雇用情勢が悪化しています。
多分,お聞きになりたいのかなと思ったので,ついでに出しているのですけれども,新規学卒について,高校卒業とか大学を卒業したという方たちを採用,つまり,4月入社の人たちですけれども,これについては,09年の4月段階では,それほど県内では影響が出ていないのではないかと思います。しかし,10年3月卒業予定者,つまり,10年4月入社の段階では多少影響が出ています。
実際に各大学で聞いてみますと,まず,就職活動開始が去年よりもかなり早かったのです。早く始まったにもかかわらず,内定が出始めるのが少なくとも1カ月は遅い。新聞報道でありましたけれども,ゼミの学生を見ていても,去年は3月時点で内定を持っている者がほとんどだったのではないかと思いますし,人によっては4月の上旬になると複数持っているということだったのですけれども,ことしは1カ月遅い感じで,全体としてそういう感じを受けました。
また,他大学等,学会等でもお話を聞いていますと,決まり方がかなり遅いし,分野によっては,5月末から6月段階で内定がとれていないのが半数いるというような地方の国立大学等も見られましたので,そういう影響は若干出てきていると思います。
ただ,それが団塊の世代の大量退職に伴う入れかえ需要というのは基礎としてあるので,総体的には影響の出方がちょっと弱いのではないかと思います。つまり,超氷河期のような事態にはならないのではないか。ただ,就職先については,従来と違ったところに決まっていくということはあり得るというようなことです。
そういう形で雇用情勢というものを概観いたしました。
次に,深刻化した背景です。ちょっとというわけではないですけれども,アメリカの不良債権が世界中に飛び火をして,その結果として,日本でいえば輸出産業,自動車を中心に非常に経済が悪化していくのですけれども,それは年末の段階で大量に
リストラで失業という人たちが出てくるというような形で,短期間に非常に雇用情勢が悪化するという最近のこういう特徴というのは,90年代の半ば以降に日本の企業の雇用戦略が大きく転換しているといったことが背景にあります。
これは,皆さん御存じの方もいらっしゃると思うのですけれども,旧日経連,今の経団連が,新時代の日本的経営と称して,雇用のポートフォリオ論というのを強く提唱いたしました。それは,働いている人たち,雇用する人たちを3つのグループに分ける。一つは,正社員グループ,いわゆる長期蓄積能力活用型といって,将来的には幹部候補生にもなってもらうような人たちです。次が,専門能力活用型グループといって,この人たちはいわゆるディーラーとか,一部SEみたいな人たちも入ってくるのですけれども,専門職として遇する。場合によっては任期制も,期限つきの雇用にすることもあり得るし,退職金等よりは,どちらかというと,そのときの賃金の方にウエートをシフトする。そういうような働かせ方をするものです。
3番目のグループが今最も問題になるわけなのですけれども,雇用柔軟型グループと言われていまして,これがいわゆる一般事務ないしは販売職等を中心に,従来の女性の多くが一般正社員として入っていた人たちないしは製造ラインだとか現場の人たち,ブルーカラーと呼ばれるような職種の方たちが,従来は正社員で,期限つきではなく,ちょっと給料は総体的に低いかもしれないけれども,安定した雇用にいたという方たちが,期限つきの雇用で,時間給で,退職金なしのような雇用管理のグループに入っていったわけです。ここが非常にふえてきた。ということは,期限つきの雇用ですので,3カ月とか半年という形が多いわけです。場合によっては,今,非常に話題になっている日雇い派遣,一番ひどいパターンです。携帯電話のメールで連絡が来て,あした,どこどこに行ってくださいというような派遣まであるわけなのですけれども,そうした期限つきの雇用というものが非常に今ふえています。
特に若者を中心にふえているということが一つ問題になるわけなのですけれども,その例として,A3の1)の4番の図表に数字を出させていただきました。と申しますのは,ある一定の年齢層以上の方たちにとっては,非正規雇用で働くというのは,あるいは学校を卒業した時点で正社員になっていないというのは,とても特殊というとおかしいのですけれども,よほどできなかったのではなかろうかと思われたりすることがあるのではないかと思いまして,今の若者の現状を出すのにこれが一番いいかなと。
1988年,今から20年前に,25歳から34歳層の──なぜ25歳からかというと,これは各年齢を出してありますけれども,大学生の在学中を含むというのを除くためにそうしましたけれども,25歳から34歳という層で非正規雇用は10.7%でした。男性は3.6%でした。これだと皆さんの頭の中に,まあ,こんなものだろうなという感じで入ってこられると思うのです。これが2008年になりますと,25歳から34歳の段階で32%が非正規雇用なのです。つまり,3人に1人は非正規雇用です。男性で14.2%です。男性の場合,25歳から34歳で,大体6人に1人ぐらいの感じなのですけれども,これが20代後半というふうに限定しますともっとパーセンテージは上がります。30代前半でちょっと下がっている。
このようにフリーターと言われる,あるいは非正規雇用,こういう人々は労働条件は正社員と比べて著しく低い。皆さん御存じのとおりなのですけれども,中でも問題なのは,有期雇用であって,非常に解雇されやすい。したがって,失業のリスクが高いし,現実に失業する。失業と雇用とを反復するような感じなのです。失業者であり,また雇用者になる。
しかしながら,彼らは雇用圏から除外されていることが多いです。したがって,こうした非正規雇用の人たちが実際に失業したからといって,先ほどの雇用保険受給者に入ってこない場合が少なくない。今のセーフティネットの欠陥なのですけれども,従来型で来ていますので,ほとんど正社員だったときを引きずっているということもあるのですけれども,今の非正規雇用の人のセーフティネットがちょっと弱いということがそうした形であらわれており,失業しやすいにもかかわらず,失業手当からも漏れている人たちが少なくないのだと。特にそれが若者に多くて,男性か女性かといえば,女性に多いのですけれども,男性でも決して無視できるような存在では今やないということなのです。
そうしたことから,県内の数値を大急ぎで出してみたのですけれども,年収200万円未満の人々が25歳から44歳でざっと15万人います。うち男性は4万人くらいです。大体25歳になっていたら,年収200万円は正社員であれば超えているというふうに考えるので,そういうふうにしています。
年収300万円未満,よくワーキングプア──ワーキングプアをどうはかるかというのはいろいろあるのですけれども,年収300万円で区切ることはあくまでも便宜上なのですが,その数値で申しますと,30歳から44歳というちょっと若年フリーターではなくなった中年フリーターまで入れているのですけれども,若年フリーターというのは34歳までなのです。35歳以上になると若年フリーターから外れるのですけれども,今,そこの外れたフリーター層というのが結構問題になっていまして,少子化などのところでも,そこをいかに安定した雇用につなげるかということが課題になっていますので,少し年齢層を広げて30歳から44歳といたしました。
年収300万円未満の人々は県内でおよそ20万人はいるのではないかと思います。就業構造基本調査という2007年の調査で茨城県の数値をとっています。ざっとした数字なので,統計表によっても若干数字がぱっぱっと変わるのですけれども,大きく見てそう違いはないのではないか。年収300万円未満の男性に限ると,30歳から44歳で大体5万7,000人弱という感じがします。この数字をわざわざ申し上げているというのは,よく言われていますように,未婚率とか,あるいは子育て費用を負担できない人々が出てきているというのを,県内でも決して例外ではないということで,数字を挙げさせていただきました。
今の話と関連しまして,レジュメの2枚目に行きたいと思います。
これは社会問題としての雇用問題,昔から,雇用問題は,確かに失業者がふえると社会問題化するわけなのですけれども,最近のこの種の議論の特徴は格差社会論なのです。あるいは格差社会論の中で,ある意味で,どんなに格差があったっていいのだと。幾ら大金持ちがいたって,富裕層がいたって構わないのだけれども,一番下の層がある程度次世代まで再生産できるというか,次世代を育成できるような生活ができる。自分の一生を展望できるような雇用になっていれば,格差があったとしてもそれほど問題はないという考え方は結構あると思うのです。学者の中でもそういう考え方はあるのですけれども,その中でこの議論が話題になっているのは,貧困というものが表に出てきた。
テレビなどで,よく1,000円札を持っていない人たち,コインしか持っていない,ネットカフェ難民とかとよく出てきますけれども,そういうような形で,見かけではわからないのだけれども,お財布の中を見るとないし,お家も借りられない人たちというのがいるということで,この手の議論が非常にクローズアップされています。これは,その人たち個人がかわいそうという議論なのかというと,決してそうではなくて,次世代を再生産できないということは,将来の社会が展望できないという社会問題なのです。
それから,高齢者問題を深刻にする。これは,今,現実に税や社会保険料を払えない若者がふえるということは,今の高齢者を支えられない。逆に,親の年金で生活するような,親の勤労者所得と親の年金で扶養されるような人たちが若年層に出てきてしまったことが心配されています。
それから,税や社会保険を空洞化するということは,社会システムとして,今の年金制度であるとか,あるいは健康保険の制度であるとか,あるいは教育であるとか,そういったものを維持できなくなってしまうので,この問題をどうするかという観点から,非常に雇用問題についても議論されるようになっております。
それから,地域という問題です。地域社会の中で失業者が多い,あるいは非正規雇用で食べていけない人たちが多いということは,その地域の体力が非常に弱くなってしまう。茨城県は,ある意味,農業県でもありますので,農家とセットになっている場合には,住居と,それから,食料とか,そういったものには多少いいのですけれども,何と言っても,従来の日本に比べると,どこの地域でも自営業層というのは縮小しております。そうすると,勤労者所得で生活をしている層というのが非常に多くなっておりますので,この部分をどう生活していけるようにするのかという観点が大切になるということで,先ほど申し上げましたような年収200万円未満,あるいは300万円未満だと,結婚して子供を生み育てるということがなかなか難しいということになってまいります。その点で議論が結構出ています。
このことに関しまして,県の数字も出していたのですけれども,手元に今すぐ出ませんので,全国の数字でお話ししますと,皆さんも新聞報道でごらんになったことがおありだと思うのですが,非正規社員の既婚率というのは,20代後半だと正社員の半分です。30代前半でも半分です。男性で結婚率が50%を超えるのは,20代後半だと年収500万円を超える層,30代前半だと300万円以上というふうになっております。これは,すてきな配偶者になりそうな方が目の前にいたとしても,結婚しようという決断をすることに伴うハードルの高さというのが,経済的なものでちょっと違うのではないのかというふうに一般に説明されています。
また,就学援助というものを必要とする児童というものが増加したり,貯蓄ゼロ世帯が増加したりということがあります。この貯蓄ゼロ世帯というのは本当に増加していまして,これは貯金の額が平均で幾らとかという数字がよく出ます。ああいう数字はゼロの人たちを除いて平均しているので,ゼロの人たちの割合というのは結構今上がっているのです。
また,ゼロ世帯は多分2割を超えています。そして,年齢的に若い層の方が平均の水準よりも高い。それから,単身者で高い。単身者の貯蓄ゼロ世帯の比率は,恐らく4割近いのではないかと言われています。そういう意味で,先ほど雇用のところで200万円とか300万円という年収を出しましたのはそういう関係もあります。
それから,最近,何で失業問題が深刻化するか。さっき申し上げたように,確かに雇用のポートフォリオで失業しやすい人がふえたのだ。だけど,もし,それでもセーフティネットがきっちりしていれば,例えば,失業手当があったり,あるいは公共の市営住宅とか県営住宅で安い住宅があったりして,そこに住んでいられれば,少なくとも家を失うという形にはならなかったのです。あんなふうにホームレスがテレビでも,ちょっと衝撃的ですよね。あんなに毎日毎日テレビで流れたりとか,年末年始に寒い中でテントで過ごすというのは,私の学生たちも非常にショックを受けておりましたけれども,そういうふうに,失業したといっても,そこに目に見える形で出てこない可能性というのもあるわけです。そういうことができる人たちではないということが問題なのだと思うのです。
つまり,社会保険に未加入の人だったり未納だったりする。たとえ大企業に雇われていても,もしかしたらその人たちは非正規雇用で,彼らは雇用保険に入れていない可能性があるし,また,正社員は厚生年金に入れてもらっているけれども,非正規雇用の人は厚生年金に入れてもらっていないかもしれない。かもしれないといっても,結構高い確率でそうなのですけれども,そういうことがあるわけです。つまり,失業しやすいのに雇用保険がない。貯金ができないのに失業手当を受けられない,貯金ができないのに年金も受け取れない。貯金ができないからこそ持ち家がない。こういう状態で,とても雇用情勢が悪化すれば,従来に比べると一気に問題が非常に悪い形で表面化してくる。
総体的に,東京に比べれば茨城県の方が持ち家率が高かったりするので,親のところに一緒に住むという形で,ホームレスという形で若者がばっと出てくるかというと,出にくい部分はあるけれども,しかし,親もいつまでも健在ではありませんし,日本の年金受給者になった場合には,多くの場合は,経済的に子供を扶養するパワーはないです。したがって,この中高年フリーターというか,今の団塊ジュニア,第2次ベビーブーマーの人々が次世代を再生産できるような雇用に,それ以下がきちんとシフトしていかないとまずいなということが社会的に大きな議論となっています。
4番について,雇用問題と
雇用対策ということですが,きょうは
中小企業が特にお話のメーンテーマだとお聞きしたので,慌てて
中小企業の方に少し論点をシフトしようかな思ってレジュメをつくってまいりました。
中小企業が競争力を維持し,また,強化するためには,高い能力を持つ多様な人々を確保,育成し,高付加価値商品,あるいはサービスをつくって労働生産性を上げるしかない。つまり,競争力の格差が今現実にある。その競争力の格差を縮小するためには,こういうふうに高い能力の人を採用するか,あるいは自前で育成するか,そして,高付加価値の商品やサービスを提供できるようにしていく。そういうふうにするということが目標になるということは一般によく言われています。
では,
中小企業は雇用を簡単に確保できるかというと,既に皆さん,耳にたこの状態かもしれませんが,
中小企業ほど,小さなところになればなるほど,いい人を採用をするということは難しい。採用,育成,定着を一貫して行う必要性というのを
中小企業は認識する必要がある。しかし,認識しただけで採用できるかというと,なかなか難しい。
何で
中小企業で人の確保が困難かと申しますと,言うまでもなく,知名度に弱い。そして,将来性の不安というのが受ける側に出てくる。また,賃金水準が,総体的に,大企業に比べると,日本はヨーロッパの国々に比べると規模間の賃金格差が大きいのです。契約の仕方で
中小企業が若干損をしているのかなというところがあると思うのですけれども,規模間の賃金格差がEUなどに比べるとちょっと大きく出るときがあるので,そうした問題から,企業が採りたいと思うような人を確保するというときにちょっと困難がある。こうしたものを払拭しなくてはいかん。そうかといって,すぐ賃金を倍出せれば苦労はないよと言われてしまいそうなので,その辺をどうするかということについて少し私なりにお話をいたします。
一つは,まず,知名度ということに関しては,会社を地域に公開するということが必要だと思うのです。人を採用したいのであれば,学校に出張するとか,学校に対してインターンシップというものを働きかける。インターンシップも,3日とかではなくて,せめて1週間。1週間いると,何となくそこの会社の人たち,
従業員の人とつながりができるのです。2日とか3日はお客さんです。丸5日間,会社の人と一緒に動いていれば,それなりにちょっとはつながりができて,お昼を一緒に食べたりしている中で,話を聞けたりとかすることもあるかもしれない。これは高校だけでなくて,実は,小さなところは,小学校,中学校などでも,それですぐ人が採れるかというのはないのですけれども,名前を知ってもらうということはすごく大切なことではないかなと思います。
次に,行政は,今,茨城県も含めて非常によくやってらっしゃる。以前に比べると相当され出したなというのは調べていてよくわかるのですけれども,それでもなかなか伝わらなくて,もどかしい思いを行政の担当者はされているのではないかなと思います。企業は何をアピールすべきかということに対して,企業で採用する人の方がどういうふうにアピールしないといけないのかとか,プレゼンをしないと人は来てくれないのかということについて,弱いところがあるのです。その辺について行政の方が示唆するというか,支援する,サポートするということが必要になるのではないか。資料の作成とか,会社や工場の見学会,こういうのはもう既にそれなりにされていると思うのですけれども,まだちょっと弱いのかなとも思います。
また,会社や工場見学等に関しても,高校の先生も含めてやるといいなと思うし,県立高校だけでなくて,キャリアに関するそれなりに話ができる方たち,そして,県内の企業立地,産業集積も含めて,あるいは雇用状況についてそれなりに精通していらっしゃる方が,県内中高校を回ってお話をされたりということがあったりすれば少し違うのかなと思います。県の高校の先生は大抵忙しいのです。そのことに研修をして,研修したら確かに勉強にはなると思うのですけれども,蓄積したりとか学生に対して時間を割けなかったりすると思うので,それようの時間というのをきちんと割くことが必要なのではないかなと思います。
それから,経済的不安に関しては,所得が少ない場合は共働きというものをしないと生活できないというのは余りにも自明のことではないかと思います。それにもかかわらず,共働きができないような,できにくいような雇用管理をしている
中小企業が少なくないということ,大企業の場合,ワーク・ライフ・バランスを最近かなり意識して宣伝をしたりするのですけれども,
中小企業は総体的に宣伝が弱いのです。こうしたところに関して意識している。もし賃金が片働きで苦しくても,支払い能力が若干弱かったとしても,妻が正社員として働き続けられるような職場であれば,世帯所得としては次世代再生産が可能なのです。なおかつ,大企業の場合には,場合によっては,事業所間異動,遠距離異動というのが結構あるのです。これに対して,
県内中小企業の場合,それほどの遠距離異動をしないということが少なくありません。このことも県内の雇用を求めている人々にとっては
プラスの情報なのです。違いますよとはっきり言った方がいいと思います。
それから,正社員
プラス非正規雇用を今すぐなくせなどと言ってもなかなかなくならないと思うのです。その場合でも,非正規雇用に対して,期限つきでない雇用にできるだけしていく。つまり,日本の場合,人件費で正社員と非正規雇用で若干差があります。EUの場合は,ここで差をつけないということが法律で規制されているのですけれども,日本はそこまで強く規制されていないので,正社員と非正規社員の間で賃金がすごく大きな格差がある。ほとんど同じような仕事をしていても結構つくのですが,その場合でも,なるべく期限つきでない雇用にして,社会保険に加入させてあげる。雇用保険に加入させたり年金に加入させてあげる。しかも,日本の
中小企業の
経営者の方はセーフティネットをちゃんとしていらっしゃる方は少なくないと思うのですが,でも,それを宣伝しない。1988年の段階では,どこの会社もやっていることなので,そのようなことを宣伝しても意味はないのですけれども,先ほど申しましたように,2008年,2009年の段階では,雇用保険や年金保険に加入させていない雇用というのが少なくありませんので,正社員はもちろんかけなくてはいけない。非正規雇用に関しても,自分のところはかけているよという場合には,ちゃんとそのことをアピールして,将来の年金の受け取り額がどれくらい違うかということぐらいシミュレーションでお話しすることぐらいでいいのではないか。
つまり,自分が貯金したって,毎月1万円貯金できるかどうかわからないでしょう。僕らがちゃんと人件費として間接賃金で1万円預金を出しているのだよ,そういうことまでお話ししてあげないと,若い人は結構知らないのです。特に高校ぐらいまでの教育では余りそのことは知らないということの方が普通なので,当たり前だと思われてもお話しされた方がいいような気がします。
また,
中小企業は,小さいからこそ,働いている人たちの状況が目につきやすい。したがって,ワーク・ライフ・バランスということに関しても,この人は今こういうところで大変そうだから,ちょっとシフトのときに配慮しようとか,お互いに,少し体が弱くなっているから,以前に比べるとちょっと働き方を変えさせてあげようというような柔軟性というのを持ちやすかったりします。私もよく話を聞きに行ったりしますけれども,県内の企業でも,例えば,保育園で幼児保育で預かってもらえない。しかし,かわりはいない。どうしたかというと,
経営者の方が,1歳の子供をおぶってこいと男性の社員に言いまして,男性の社員が会社に連れてきて,その人は仕事がありますから,そこに寝かしている。時々,ほかの社員が休憩がてら,ちょこちょことあやして,仕事をしながら,そういう場合もあるのです。病気といっても,死ぬほどの病気ではなくて,保育園が預かれないというケースもあるので,そういうことも含めて,いろいろなやり方があるので,ちょっと配慮をするということができればいいし,できれば,ポイントだし,そのことをしっかりアピールした方がいい。今の時代,そういうことかなと思います。
また,フリーターとかニート,失業者を減少させるためにどうしたらいいのかなということを考えました。それは,まず,先ほど来,ちょっと申し上げていますけれども,今の若者は,私たちのときもそうだったような気がするのですけれども,余り雇用戦略とか処遇格差ということについて社会科の授業で学んでいません。それが将来どういうふうに処遇とか生き方,働き方,働きやすさ,それから,生活の展望の見え方とかにつながってくるのかというのを,何となく知っているのだけれども,本当には知らないのです。
きょう,お配りしたA3の働き方格差という図表は,週刊ダイヤモンドが昨年出したもので,本当にこのイラストレーターはうまいなと思っているのです。フリーターさんは,何となくみんなが思っているフリーターさんのイメージの絵をかかれているし,生涯正社員の一番右端の方はスーツでネクタイだというような絵から,その後,生涯所得の違いから年金の違いまで書いてあるので,ざっとこういうことをある程度学校教育の場でも知っていた方がいいかなと。現実,外に出てからショックを受けるというよりは,先に知って対応できるという方がいいかなと思っています。
それから,新規学卒時に高校とか中学が会社を紹介したりいたします。だけど,それだけではだめなのではないか。つまり,今,フリーターになっている人の少なくない部分が正社員をやめて非正規雇用になっている方がいます。何でやめるかというと,必ずしも不まじめだからではないのです。例えば,正社員で,休みもなく,すごい働いているという人たちが中にはいるのです。休日,土日もなくて,週60時間,過労死してもおかしくないという労働時間で,夜中まで働くという,私の卒業生などもいるのですけれども,そうすると,体を壊すか壊さないかというところのぎりぎりの選択として,やめるということが起きているわけです。そういうものばかりではないですけれども,そういう人たちも中に少なくないということです。
そうしたことを考えますと,転職をするということは,今の時代,だれにでもあり得るのだと。そうしたときに,中学生,高校生の場合は,転職する際の活動の仕方を知らないと思います。つまり,履歴書の書き方すらろくに知らないし,就職活動に行くときに,襟のついたもの,大卒だったら大体スーツで行くと思うのですけれども,たとえブルーカラーといえども,常識として,Tシャツと短パンで行かないということぐらいは知っていなくてはいけない。でも,そういうことも含めて,知らないで大人になってしまう子がいる。しかも,親がそれを教えられない層というのもあるわけです。従来だったら,お父さんたちはみんな正社員だったので,「おまえ,そんな格好で就職活動に行ったら決まるものも決まらないぞ。履歴書ぐらいちゃんときれいな字で書け」と言われたと思うのですけれども,そういうことが伝えられない層というものがあるし,それから,履歴書も,転職の際に,ただ書くのではなくて,職業経歴について
プラス1枚つけるぐらいの迫力というのが必要になるわけなのですけれども,そうしたことを支援するようなことがあってもいいのかなと思います。
それから,次に,ちょっとはしょっていきますけれども,企業の正規雇用のニーズに合うようにスキルアップをするということが必要なのですが,高校生,あるいは,その後,職業訓練校などで職業訓練をしたりいたしますけれども,あるいは
中小企業自体で,大企業でもしますが,その場合に,なぜスキルアップをすることが必要かということをはっきり伝えるということが非常に重要になっています。
なぜ必要なのか。しなかったらその職場でやっていけないのだということをきちっと伝えないといけない。
また,実際の就職に結びつけるために,企業の求めるコミュニケーション能力とか行動様式はどんなものかというのをちゃんと教えて,何が足りないかということを確認する必要がある。
今,実際に緊急対策などもあって,職業訓練に関しては予算が
プラスでついていますし,県でもそういうことをやっていると思いますけれども,多分,なかなか難しいのだと思うのです。つまり,職業訓練はやったけれども,正社員になっていないケースというのが少なくないのではないかなと。そこにできるだけ結びつけるようなことを,担当者が県内の企業なり産業界を回って,どういうスキルを形成させるか。あと,信用保証をそこの職業訓練校等でやって,デュアルシステムなどでインターンシップで現場も行かせて,それで安心して向こうが再雇用に持っていけるようにということが必要になるかなと思います。その際には求人求職のマッチングというのはとても大事になる。
また,行政としては,最近,ちょっと出ていますが,労働CSRという企業の社会的責任を労働の分野でもやる。やっている会社に対して,行政も公契約を行っていく上で,行政が推進しようとしている政策に協力的な企業に対しては多少ポイントをつけてもいいのではないか。最近,そういう動きが全国でちらほら見えていると思います。そういう優遇措置というものは十分にあり得ると思います。
そうしたことがあって,最後に,こうした問題を考えるときに常に大事なのは,持続可能な地域社会というものをどうやってつくっていくのか,維持していくかということだと思います。地域においては,
中小企業の雇用力抜きに雇用というのはあり得ません。大企業よりは
中小企業の比重の方が高いのです。
中小企業の競争力がなかったら雇用もできないということですから,
中小企業の競争力維持・強化と働いている人たちの幸せというものの両立というのをやらないと,地域社会というのは将来展望が見えてこないので,ここをいかにするか。企業支援ということがすごく大事になるし,同時に,企業の側も,働いている人たちが展望を持てるものにしていくということが大切だということを認識していただくということになるかと思います。
あとは,働いている人たちに対して意識を変えてもらう部分というのはある程度あるのかなと思います。非正規雇用がこれだけふえてきたり,あるいは正社員でも,総体的に低い賃金部分の正社員がふえてきている現状では共働きというのをやる。
その場合に,意識として,若者意識がそちらの方にシフトすることが必要になりますし,また,企業は,働きたいという人たちが女性にたくさんいる。子育て中も働きたい。彼女たちの中には非常に能力の高い人たちも少なくないわけです。だから,従来型の働き方では続けることが難しい,あるいは働くことが難しいけれども,ワーク・ライフ・バランスさえすれば非常に有能な人を雇えるチャンスがあるわけです。これがダイバーシティ・マネジメントと言われるもので,多様な人々を雇うということが企業にとって非常に強い競争力につながる。つまり,スーパーに置いている商品をよく知っている人たちを雇えるか。働き蜂で料理もしたことがない人が,料理の香辛料その他を並べたりレイアウトをするよりは,よく知っている人たちがやった方がいいのと同じように,ウェブのデザインでも何でもいろいろなことをできる人たちがいるわけです。商品をつくったりサービスを提供したりという発想も含めて,いろいろな人がいたほうが今までにない発想が出てくる。
しかし,これまでの企業は,どっちかというと,同じタイプの人たちを非常にたくさん集めて大量に働かせてきたのだけれども,少し違う働き方をさせてみませんか。そうすることで競争力につながるのではないかということが言われています。これはEUのリスボン戦略でもすごく意識されていて,EUはIT化で競争力を持つ地域にするのだ,EUという地域をITで先進地域にする,競争力を持たせるということを決めているのです。
その中の雇用戦略でどうしたかというと,この多様な人たちを雇用の場に引っ張ってくる。摩擦的失業は,ある程度の失業率はどうしてもしょうがない。しかし,今,労働市場に出てきていない人たちの中に非常に可能性を持っている人たちがいるのではないかということで,労働市場に引っ張り出してくるということを意識しています。そのあたりのことも地域の中で意識できると,また発展していけるのかなと思ったりしています。
時間が来ていますので,ちょっとはしょりましたけれども,まずはこのくらいで終わりにしたいと思います。
お聞きくださってありがとうございました。
23
◯鈴木(徳)
委員長 どうもありありがとうございました。
ここからは
意見交換の時間とさせていただきます。
ただいまのお話について,委員の方で何か御意見,質問がありましたらお願いいたします。
五木田委員。
24 ◯五木田委員 実は,私は物販の方の会社関係もしているのですけれども,今の話のとおりなのですけれども,ただ,ワーキングプア,フリーターの問題を先生は挙げてくれた。しかも,社会人文学とすると,こういうものについては全社会的な目で見てきてくれる。ただし,問題なのは,人材派遣会社,会社というより,そういうシステム自体が今社会に保険とかそういう問題まで生んでしまった。
実は,一つ聞きたいのは,このフリーターとワーキングプアの間の問題で,昔,こういうのは余りなかったのだよね。うんと金持ちの息子か何かでなくては。ところが,これがふえているというのは,ある程度余裕があって,自分で,要するに,社会的要件でこうなった人と,ちょうどいいから,ほどほど金があれば,あとはふらっと,今の人はそういうのが多いような気がするのです。そこらについてどんな見解を持っているかどうか。
それから,もう一つは,私は,社会的功罪をよく見きわめた方がいいと思うのだけれども,人材派遣の問題について,茨城県でなくてもいいのですけれども,特にこれのメリット,デメリットについてありましたらお教え願いたい。
以上です。
25 ◯清山
参考人 まず,フリーターに関しては,先ほどちょっと申しましたけれども,高卒,あるいは高校中退の人たちがアルバイト市場に流れているわけですけれども,彼らは,その時点では,将来の生活というもの,あるいは家族を養うとかという責任まで考えてそういうところに流れ込んでいるわけでは決してありません。
しかし,現実に,
中小企業白書や労働経済白書などでよく引用される調査があるのですけれども,フリーターのほぼ8割は正社員になりたいと思っている。特に20代後半ぐらいになってくるとその率が高くなる。30代前半ぐらいになるとちょっと下がってくるのです。下がるのはなぜかというと,あきらめてくるということがあるのです。だから,正社員になったことがない人たちに,正社員になりたいですかと普通に聞いても,自分の弱みを見せまいとして,「なりたいんだけどね」となかなか即答しないケースもあるのです。だけども,少なくない部分が,例えば,高卒,大卒の段階で,新規学卒で,最初からそれを希望するかというと,超氷河期のときに高卒求人がものすごく落ちていたのです。そういう中で,自分の将来というのを,何か頑張ってもなさそうだな,4月入社で正社員なさそうだなという感じで流れているという部分も少なくないのではないかと思います。
それから,派遣に関してですが,今,委員がおっしゃったように,すごく問題は多いし,製造業派遣や通常の派遣でも,実際に,今,2年11カ月で雇い止めをするというのは,3年たったら採用するという努力義務というか,義務が課されてくるからなのですけれども,さっき期限つきでないようにできるだけと申し上げましたのは,もし,事業所が閉鎖される事態になったら,どんな人たちだって解雇はやむを得ないわけです。ディズニーランドがつぶれたら,ディズニーランドで雇われている人たちが解雇されるのは十分あり得るわけです。というか,当然みんな想定する。ところが,ディズニーランドで働いている人ちのほとんどは非正規雇用で期限つきだったりするわけです。そういう意味で,スーパーの店舗が閉鎖にならない限りは,そこで雇い続けられるのであれば,何も半年契約にしなくたっていいではないか。1年契約でなくて,期限つきでないようにしていくということもいいと。しかも働いている人にちゃんとそのメリットを伝えるということが大切ではないかなと思うのです。
26 ◯五木田委員 ありがとうございました。大変参考になりました。