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  1. 茨城県議会 2009-07-27
    平成21年環境商工常任委員会  本文 開催日: 2009-07-27


    取得元: 茨城県議会公式サイト
    最終取得日: 2024-09-09
    ↓ 最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1                   午後1時開議 ◯鈴木(徳)委員長 ただいまから,環境商工委員会を開会いたします。      ─────────────────────────────── 2 ◯鈴木(徳)委員長 初めに,本日の委員会記録署名委員を指名いたします。  飯泉委員石田委員にお願いいたします。      ─────────────────────────────── 3 ◯鈴木(徳)委員長 次に,本日の日程について申し上げます。  本日は,閉会中委員会重点テーマである「中小企業活性化雇用対策」及び「大規模災害等に対する危機管理」に関しまして,3人の参考人の方々から意見聴取を行いたいと思います。  なお,本日の執行部の出席説明者は,部長,次長ほか議題に関係する課長に限って出席を求めておりますので,あらかじめ御了承願います。  これより議事に入り,参考人の方から意見聴取を行います。  意見聴取の進め方でございますが,初めに参考人の方から御意見をいただいた後,意見交換を行いたいと思います。  それでは,まず初めに,合資会社ハンプティ代表宮田貞夫様より,「県内中小企業の現状と課題」をテーマに御意見を伺いたいと思います。  宮田様におかれましては,大変お忙しい中,本委員会に御出席いただきまして,まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  宮田様のプロフィールにつきましては,お手元にお配りしておりますが,平成11年に,それまで勤務されていた日興證券株式会社から独立され,経営ITコンサルタントとして,商店街活性化や企業のIT化などに関する助言や支援活動に御活躍されております。  本県におきましても,茨城県中小企業振興公社のコーディネーターや商店街活性化コンペ事業審査委員を務めていただくなど,中小企業振興に関するさまざまな御指導をいただいているところでございます。  それでは,宮田様,よろしくお願い申し上げます。 4 ◯宮田参考人 宮田でございます。よろしくお願いします。  私は,今,御紹介にありましたように,日ごろ,中小企業の経営のお手伝いをしている現場の人間として,その感覚でお話ができればということで参りました。  現場ですので,そこにも2番目に書いてありますが,基本的には,統計的にどうであるとか,それから,網羅的にどうであるというのではなく,私の意見として申し上げたいと思います。その辺は,私が少し断定的な発言をしましても,割り引いて考えていただければというのと,それから,きょうは,一応,用意としては,それぞれの産業についてどうという用意もしたのですけれども,恐らく時間がなくなってしまいますので,そこのところは時間があったら最後に戻ってまいりたいと思います。基本的には,全体的な話をということで,天気予報でいったら,きょうの天気というのではなくて,地球温暖化とか,そういうレベルの中小企業の本質的な問題について私の意見を申し上げられればというふうに思います。  それでは,まず,今の中小企業景況感ということですけれども,これは皆様もおわかりのように,今回のリーマン・ブラザーズ以降の景況感というのは,いつもの景気のリセッションとはちょっと違うなと感じています。何が違うのかというと,急激な在庫調整から始まっていますので,すぐに不景気になった企業群と,それから,半年間くらいおくれてリセッションが始まった企業群というふうな2つに分かれています。基本的には,茨城の中小企業は,部品製造業さんみたいなところはすぐにリセッションが始まりましたけれども,それ以外は,最初はけろっとしていた。だんだんだんだん,今,むしろ深刻になってきていると。世の中,OECDとかIMFが景気回復というか,底入れがした,これからはよくなっていくだろうと言っていても,茨城県はそんな状態ではないだろうなというような感じを日ごろ持っております。
     それから,実際の今の景況感というところなのですけれども,茨城県の中小企業の90%以上の企業は,実感はないよと。先ほど申し上げたような状態ではないかと思います。部品メーカー等,最初にリセッションが始まったところはだんだん戻ってきました。悪い時期よりはよくなって,ピーク時の5割,6割くらいに戻ってきましたよということなのですが,それ以外の主に消費材をつくっているような企業とか,それから,小売業,それから,今回,特にいつもより大変だなというのは,飲食業などはかなり深刻な状態に今なっている。資金繰りが大変な状態になっているのだなというような感じになっております。  ただし,今現在どうなのか。本質的に資金繰りは大変な状況なのですが,実際,去年の秋口くらいまでは,「お金が足りない」,「年末資金をどうやって調達したらいいかわからない」というような緊急の御相談みたいなものもあったのですが,国とか,県がお金をかなり出していただきましたので,今現在は何とか保っている。ただし,本質的にはこれは何の解決にもなっていないのだというのもきょう御説明させていただこうと思います。基本的に赤字が出る経営になっている限りは,ただ単に半年間大変な状態になるのを先延ばししたというようなのが現状なのです。  それから,あともう一つ,私は,日ごろ,中小企業の大体年間150から200社くらいの相談に乗らせていただいていますけれども,その中で大きな問題のもう一つとしては,新しいビジネスが見つからないことです。今のビジネスはとにかく全然だめなのです。ではどうしようと。それがなかなか見つからない。それが見つかっていれば,私は,補助金はもう要らないくらい,本来の状態にすぐに元気になるのだと思うのです。何をしたらいいかわからないというのが,今,本当は深刻な問題なのではないかなと思います。  個々のところは,最初は細かく申し上げようかなと思って,それぞれの業種ごと用意したのですが,時間がありましたら戻ってまいります。個々の細かいところを申し上げても基本的な問題とは関係ないものですから,後でもう一度。  時間がなくならないように,中小企業問題点というところをお話しさせていただければと思います。  とにかく,今,問題なのは,中小企業資金不足ということです。それではなぜ資金不足なのか。これは赤字決算だというのが一番大きくて,年々深刻化しております。今までは資産を食いつぶしてというような中小企業もありましたけれども,この資産もほとんどなくなってきた。赤字が出れば,その分だけ資金調達が必要になる。毎年毎年,それが重なっているのだという状況です。赤字決算中小企業のかなりの割合を占めている。6割くらい占めているのではないかと思うのですが,これは統計的な数字ではないのですが,それらの企業は,例えば,一年一年苦しくなっているということです。ですから,ここを解決しなくては少なくとも中小企業は元気にならない。  それから,決算は黒字でも借入金の返済ができないという企業もあります。こういう企業は本来は救いようがあるのです。後で申し上げますが,企業再生というある特別なやり方で,中小企業にもやりようがあるのですが,その特別なやり方をして,救います。実際,それを知らないがためにお金が足らないという状態で,ひょっとしてこれからあと数カ月でだめになってしまうかというような企業も存在している。そういう企業でも決算は黒字なのです。  次なのですが,もう一つは,茨城県でもかなり力を入れて対応していただいていますが,経営革新ができないということです。新ビジネスが開拓できない。今,経営がもうからなくなってきた。それは環境が変わったことなのですよという話をよく中小企業の社長に申し上げます。  どうやっても,もうからないという状態になったら,もう何か新しいビジネスということを,全く新しいことをやるのではなくて,今のビジネスから少し変えて,ビジネスを今風にしていかなくてはいけないのです。その努力をしなければいけないのですが,当然,どうやったらいいかわからない。また,やらなければいけないかどうかもよくわからない。でも,我々がそういう経営者と話をしていますと,今やらないとまずいですよねというような状況の企業さんがたくさんある。そういう企業さんの,こういうときには必要ですねというのは後で申し上げたいと思います。ぜひ委員の方も,そういう企業だったら身近にあるなというのをお感じになっていただきたいと思います。そこは何かをしなければいけない。今,とどまっていると,その企業自身が赤字がどんどん続いていくということになるよということです。  それから,もう一つ,新しいビジネス展開方法がわからないというような,何かやりたいのですが,どうやって進めたらいいかわからないというような問題点があるということです。  この問題点を解決する手段として,基本的には,我々はいつもこの2つを勧めております。  まず,財務の健全化というので,企業再生というものでございます。企業再生というのは,お聞きになったことがあるかどうかわかりませんが,民事再生とは違います。民事再生というのは倒産の処理です。企業再生というのは,倒産の前に企業を元気にする。よくリストラというような言葉で言われる,あの段階だと思っていいです。企業をばらばらにして,収益が上がる部分だけを残していく。そういう手法を企業再生というふうに言います。  ところが,実際,これをやらなければいけない企業が,今,どういうことをやっているのか。自己流で,社長さんが銀行に行って,例えば,「お金を返せないのだよ」と。お金が返せない。銀行が,「あっ,そう,ではしょうがないですね。では,今,月30万円返しているところ,月10万円にしてあげましょうか」というような話を銀行がしてくれます。ところが,何も考えずに銀行に行って,ただ,お金が返せないからちょっと減らしてくださいと言った企業は,ほぼ高い割合で,半年から1年後に,「全く返せないのですが」ということを銀行に言う。結局,銀行は2回目は信用してくれないのです。なぜか。1回約束したのに何でできないのですか。銀行さん,それを信用して,そうですか,ではお金を貸しましょうと言ったら,銀行さんにとって,そういう不確かな企業にお金を貸すということは背任行為になってしまいます。  ですから,本来は,銀行さんにまず1回目に言う前に我々と話をしてくださいねという話をしています。そして,計画を出す。「10万円だったら返せます」などということではなく,もっとしっかり足元を見て,「2年間とめてください」とか,そういうところまでもし必要なら入れて,経営計画を立てて,これだったら絶対自分でやれるのだと,せめて腑に落ちる計画を持っていってください。それが1年後にできなくても,銀行さんは,「あのときはしっかり立ててくれたけれども,環境が変わったのですね」という理解をしていただく可能性がある。でも,今,茨城県で残念だなと思うのは,当然,そんなことは全く経営者は知りませんので,銀行さんにお願いに行ってしまう。私が申し上げたいのは,まずここで相談に乗れる機能というのをぜひつくっていただければというふうに思っています。  それから,先ほども言いましたけれども,その後に,企業さんの経営革新,新たなビジネスの開拓というのが必要になってくる。それは何なのか。一言で言えば経営革新をするということなのですけれども,経営革新というお言葉は委員の方は耳にたこができるくらい何回も聞いていらっしゃると思います。でも,茨城県で何%の企業が経営革新をやったかというのはいかがでしょうか。委員の方は認識されていますでしょうか。茨城には大体9万1,000社とか2,000社くらいはあるのではないかと思うのですが,茨城県で経営革新をやった企業はまだ1,000件に満たないのではないかと思うのです。そうすると,1%程度しか経営革新をやっていない。全く経営革新というのは進んでおりません。県庁の勧めていらっしゃるところでは一生懸命やっていらっしゃるのはわかりますけれども,どの県も恐らくそんなに進んでいないと思うのです。  でも,そこでしっかり計画を立てて,自分の計画を見直すということをやって先に進んでいかない限り,今の中小企業というのはなかなか先に進めないというような状況になっております。これもまた申し上げたいと思いますけれども,経営革新というのを進める施策というのが,茨城には,お金を用意するよりも,補助金を出すよりも,融資をするよりも大事なのではないかというふうに思っております。  では,この企業再生経営革新というのについて少し御説明したいと思います。  企業再生というのはどういうものかというと,ここに書いてありますように,収益力のある事業以外を全部捨てて,収益力があるものだけにしていく。これだけ聞くと,これは中堅企業,大企業だけなのではないかというふうに思われるかもしれないのですが,これは定義を申し上げたのであって,中小企業でも活用できます。もうちょっと詳しく申し上げますと,企業再生というのは,2)の財務リストラ事業リストラ,それから,業務リストラと。このリストラという言葉は,委員の方は十分御存じかと思うのですけれども,リストラクチャリングですから,再構築ということで,決して人員整理とかそういう意味ではない。もう一度それを考え直して再構築しようということです。  財務リストラとは何かというと,まず,お金が自然に返せる状態の財務体質にしていこう。先ほど言ったような,30万円返せないのだったら10万円,10万円もだめだったら5万円,それもだめだったら2年間くらいストップして,もうちょっとしてから,まずは10%,その次の年に20%という形で返済額をふやしていきながら,何とか企業が延命できる,延命策をとるのを財務リストラと言います。  ところが,よくテレビなどで,企業の再生というと,これしかやらないのです。「企業を売却したり,自分の事業を売却したり,そういうことをしながら企業が生き残っています」で終わってしまうのです。でも,実際は,よく言うのですが,これはただの執行猶予ですからねと。財務リストラをやっただけでは,時間稼ぎなのです。でも,中小企業の皆さんは,先ほど言ったように,月々の返済額をまけてもらってよかった,これで何とか生きられると思ってしまいます。しかし,根本的な赤字が直っておりませんので,資金繰りの問題というのはそこから半年後,1年後にやってくる。そのためには,その後の事業リストラ業務リストラをやっていくのが重要なのです。  事業リストラというのは,不採算な事業はやめてしまうことです。それから,不採算なお客さんの場合はやめてしまおう。そういうようなのを稼働率を落とさない程度にどんどん切っていきます。そうすることによって不採算なものを削っていきますから,何とかプラスになる事業があれば企業全体がプラスになっていきます。  業務リストラというのは何かというと,一言で言えば,とにかく経費を削っていくのです。経費をどんどんどんどん削っていって,収支が均衡するまで削っていきます。私は,企業から何とか立て直していただきたいという依頼を受け,では,企業再生みたいな形でやっていきましょうかと,二,三人でやるようなときがあります。そのときに,最初に社長にお願いすることがあります。「いいですか,社長,今から,来年,再来年,売り上げが上がって会社が立て直すということはほぼないですからね。売り上げは下がりますよ。今から2割,3割下がると思ってください。下がり始めた売り上げというのは我々がやってもとまらないです。ではどうやってプラスにするのか。それは,2割下がったその売り上げでもプラスになるくらいコストをカットします。ですから,社長がお持ちのすべてのものをまず出してください。それから,大変なときは人員もある程度見直さざるを得ないです」というようなことを申し上げます。  それをやって,実は,大変おもしろいのですけれども,なぜと言っても,私もはっきり申し上げられないのですが,売り上げがこの程度です。コストがその上をいっています。これで赤字になってだめになっていくのですが,経費カットをずっとやっていきますと,ある時点で経費が下がっていって収支均衡になっていくのです。  収支均衡になった瞬間に,企業は,従業員が特に「ああつぶれない」と思うのです。「うちの会社は何とかやっていけるのだ」と思ったところで,従業員がみんな同じ方向を向いてくれるのです。そこから企業は潮目が変わったと我々はよく言うのですが,そこからはもう大丈夫ですよ,何とかやっていけますよというような状態になってきます。これを再現するのが企業再生という手法です。ですから,これはある程度自分が確信を持って進めないと,ではやってみようかといって企業の社長さんがやれるものではないのです。  それから,財務リストラですけれども,先ほど言ったように,これは中小企業ではできないのではないか。例えば,売却など,売却するものがないというのが中小企業です。しかし,我々も手は限られるのですが,財務リストラとして,例えば,リスケジュールという返済スケジュールの変更を,銀行さんにお願いすることがあります。それから,負債の一本化です。何本かある負債を一本にして,長くしていただいて,日々の銀行返済を減らしていくこともやります。  それから,私募債みたいな銀行さんと関係ないところで調達する方法を考えていきましょう。そういうことをやりながら,中小企業であってもやる方法はあります。ですから,ぜひ挑戦してみてくださいねとお願いはしております。  経営革新なのですが,企業再生が終わって,やっととりあえずこれで黒字に何とか少し少し上げていくことができるということができたら,または,そんな状況ではない場合は,すぐに経営革新ということをやっていかなければいけない企業はたくさんあるということです。それは,環境が変わって,今,黒字になかなかならないような企業です。  経営革新とはそういう企業に対して,今,自分のビジネスを変えることというふうに書いてあります。これは何かというと,客の求めるものと自分が提供している商品がちゃんと合っていますかということを見て,考えて,それで合わせていっていただくというのが経営革新ですよという話をしています。ですから,その結果,経営革新をやると企業の商品力というのは上がっていくのですよ。つまり,お客さんの求めに合わせていきますからということです。商品力が上がらないと,基本的にはだんだん粗利が下がっていって,そのうち赤字体質ということが起こっていくということです。これについては,後でまたグラフで御説明したいと思います。  使い分けが重要というところなのですが,実は,私はいろいろなときに申し上げているのですが,企業再生をしなければいけない企業に経営革新をやっていただいても,これは反対に倒産の時期を早めてしまうことがあります。それから,反対に,本当は企業再生をやらなくてもいいのに,企業再生のような事業の大改築などをやるのは不効率です。その時々によって実はやる手法が変わってきます。でも,いつもおもしろいですよねという話をするのですが,人間,病気のときにはお医者さんにかかって,医者にどうしたらいいかというのを聞くのですけれども,企業の病気のときにはなかなか聞かない。自己流で病気を治そうとしている。それがために余計悪化してしまうというようなことがある。  これは,横軸が時間の経過です。縦軸が企業の収益だと思っていただきたいのです。企業の収益が,本来,時間とともに上に上がっていくのが正常な成長,それに対して,環境が変わって,それに自分の商品が合わなくなってきた企業,その企業は,残念ながら,波は当然ありますけれども,下降トレンドに向かって進んでいきます。その段階が,私はいつも5つの段階がありますというふうに言っております。  5つの段階というのはどういう段階か。まず,兆候という段階です。兆候という段階は,今言ったように,合わなくなってきた最初です。だから,何かというと,例えば,お客さんの言うことが違った。お客さんが,今まで,「いい商品だね」とか「早く持ってきて」とか言っていたのが,「まけろよ」,それから,「ほかでもそんなの売っているよ」とか,「何だちょっと高いよね」とかいうような言っていることが変わってきたというのが兆候の段階です。それから,従業員が何か暇そうにしているよなというようなのが兆候。  当然ですが,ここではわからないです。我々経営コンサルタントにもわからない。わかったら,松下幸之助とか,そういうふうな呼び名になるのではないかと思うのです。通常はその先の段階に行ってしまいます。  先の段階というのはどういう段階かと申しますと,不作為の時期というふうに言うのですが,この時期には,粗利,委員の方は粗利と申し上げて大丈夫でしょうか。売り上げからコストを引いたものを粗利,そこから経費を引いて企業収益になってきますけれども,まず,売り上げから原価を引いた部分です。そこの部分が粗利がどんどん縮小し始めます。  縮小し始めると,経営者はどういうことを思っていくかというと,いや,だんだんビジネスがやりづらくなってきた。だから,同業者などで集まると,「何かしなくてはいけないね」という話はするのです。何かしなければいけないと思うし,みんなと話はするのだけれども何もしない時期,だから,不作為の時期というふうに申し上げています。  でも,実は,この時期に,既に,自分が提供している商品が,粗利が縮まってくるというのはどういうことかというと,世の中から,「あなたの商品とかあなたのビジネスは要りませんよ」と言われている時期なのです。だから,本当はそこで調整しなければいけない。どうやったら今の世の中に合っていくのかなというのを。それをそのままにほうっておく時期です。ほうっておくと,当然ですが,自分の商品が世の中から認められていない場合には,企業収益は残念ながらどんどん下がっていきます。お客さんがだんだん来なくなってくるということです。これが不作為の時期というふうに言われます。  これをほうっておくと,誤った行動というふうに我々は言うのですが,誤った行動の時期に入ってきます。誤った行動の時期というと何か。不作為の時期は粗利が下がっているだけで,売り上げは横ばいか,ないしはちょっと上がることができるのです。なぜかというと,値段をまけて売っていくということです。値段をまけて売っていくということをどんどんやれば,当然,売り上げは下がらない。でも,それにも限界がありまして,売り上げが下がり始める。そうすると,社長さん方,「まずいまずい,売り上げ下がってしまうよ,何かやらなければ」ということで何かやるのですが,やることが,経営革新を本当にここでやらなければいけないのです。やって,お客さんが求めているものは何,それに合わせて自分は何を提供するのということをやらなければいけないのに,でも,やるのは,営業頑張れ,従業員の尻をたたいて,売ってこい,それ自身が誤った行動なのですよということです。  今は何とか売り上げを上げる。後で改善の話をちょっとさせていただきたいと思うのですが,改善ということだけに終始して根本的な治療をやらない。つまり,経営革新ということをやらないと,それがだんだんだんだん危機的状況に陥っていきまして,危機の時期ということになっていきます。  これは何か。この時期になるとだれにも時期はわかります。社長さんは大体資金繰りに駆けずり回っているという時期になります。「3,000万円借りられました」,「よかったですね」という話をした。そこから1年後に,また社長は,「どうしようもないのです」と駆け回る時期になっている。それはそうです。当然,不作為の時期あたりから赤字体質が始まっていますから,全然返すものがないのです。よく社長さんに,過重債務者になってしまう個人というのがあって,それはなぜかわかりますよね。当然ですが,例えば,消費者ローンを借りるという場合は,収入に対してもっと費用の方が多いから,その差額を埋めに借りに行きます。でも,それはいつ返すのですか。これは収入と費用の関係がひっくり返らないと返せないです。これが,例えば,消費者ローンでいうお借り入れは計画的にというものなのです。返すあてがないのにお金を借りていると,結局はもっともっと突っ込んでいってしまいますよというような状況がこの危機的な状況。ですから,ここの最後の時期あたりになって我々に相談があった場合には,もう借り入れはやめてください。次は法律の専門家に来てもらいましょうというような話をすることがあります。  私はよく言うのですが,顧客に変化が起こったら兆候です。粗利に変化が起こったら不作為の時期になっています。それから,売り上げに変化が起こったら誤った行動の時期,資金に変化が出たら危機的な状況です。それをそれぞれ何とかもとに戻らないかというのは,最後の法的再生というのは民事再生みたいなものですから,社長さん自身はもとに戻るのはあり得ないのです。ただ,事業としては,ほかを切り捨てて生き残すという法的再生,それから,企業再生というのが,この危機的状況の入口あたりから企業再生,それから,経営革新はその前の段階。  今,宮田は作り話のように,物語のように話したではないかと思われるかもしれないのですが,我々,危機的状況とか倒産の寸前みたいな企業から,当然ですけれども,仕事ですから,よく相談を受けます。そのときに,この企業は本当は不作為の時期があったのだよな,そのとき経営革新をやればよかったとか,企業再生をやるチャンスがありましたよねというふうに思う。社長さんには過ぎてしまったことは言えませんけれども,そういうことを思うことがあるというか,ほぼ確実にあります。ここまで来る前にと。医者がよく言う,「何でここまでほうっておいたの」というような状況です。ですから,この前に気づくというのがいかに企業にとっては大事なのかということです。  負け組に陥る共通点というので,セミナーなどをやるときに社長さん方に申し上げるのですが,景気がいいという人が少し世の中に出てきたのに,自分が景気が悪いというような時期は注意してください。そこで負け組と勝ち組が決まる時期になっている可能性があります。  それはどういう時期かというと,負け組に陥る共通点,私は3つのPというふうに言うのですけれども,一番上がパフォーマンスのP,2番目がプロモーションのP,3番目がプロフィットのPというように,負け組の1),2),3)と言うのですけれども。パフォーマンスのPは,環境が悪いから,不景気だから,自分の事業は不景気だと思っていらっしゃる社長さんはいらっしゃいませんか。不景気だって元気な企業はいっぱいあります。それはよく考えてください。今,不景気だからだめだと思った瞬間から思考が停止します。つまり,そこの時点で,まず,自分の商品というのが一体世の中にちゃんと通用しているのか。粗利が下がってきたら,ひょっとしたら,いろいろな人が欲しい欲しいという商品でなくなっている可能性があるではないですか。  例えば,品質がいいということをクオリティーと言います。クオリティーというのはギリシャ語のクオリスというところから来ているらしいのですが,クオリスという言葉までさかのぼると,品質がいいとか悪いとかという意味ではないのです。お客さんの求めているものに合っているという意味になるのです。そういう意味で,自分のビジネスがお客さんの求めているものに合っているかどうかをしっかり考えてください。世の中,景気がいい人が出てきたが,自分は良くないということは,自分は合っていない可能性があるのですよという話をしています。  それから,プロモーションのPは,営業が頑張れば何とか事業は回復すると思っている社長さん,これも気をつけていただけませんかというような話をします。それはなぜかというと,我々,よくこういうときに申し上げるのですが,世の中に売る手法というのは,売るという営業みたいなセリングというものと,もう一つ,マーケティングというのがあります。  セリングというのはどういうものかというと,とにかく売っていくことです。100円ショップができたころ,100円ショップを経営をされている方がいたら大変失礼なのですが,決して悪口を言っているわけではないのですけれども,100円ショップができたころ,我々,100円ショップに入って出てくるときに,何でこれを買ってしまったのだろうというのがかごの中にいっぱいあるという状態です。あれは売る技術,お客さんの心理をうまくかき立てる技術がたくさんあるからです。  それに対して,マーケティングという技術がしっかりしている企業に行った場合は,そこで物を買った場合は,ああ,いい物が買えた。次に買うときはここに来よう。これを売れる仕組みというふうに我々は言います。売る技術に対して売れる仕組み,これをつくるのが中小企業にとって今一番大事なところなのに,それをすっかり忘れて,売ること,売ること,売ることとやっていると負け組になってしまいます。それは顧客ニーズとかそういうのをよく見ていきましょうということなのだと思います。  それから,プロフィットのPとして利益を求め過ぎる企業もまずいですよねという話をします。なぜかというと,こんなのではもうからないのだよと社長さんは言いますけれども,こんなのではもうからないのだよという話をするところから,お客さんがもうかることはすっかり忘れてしまいます。つまり,顧客に喜んでもらえて初めてそこからビジネスはいくものなのですけれども,それをすっかり忘れる企業になってしまう。  このようにパフォーマンスと,それから,プロモーションとプロフィットという3つのPに注意してくださいというような話をしています。  こういうのを起こさないようにするためには一体どうしたらいいのかと。ぜひ茨城県の中小企業の社長さんにやっていただきたいのは,経営革新というものをやっていただきたいと思います。唯一,これに気がついて,これから一歩踏み出せるのは経営革新だけなのだと,日ごろ,事業をやっていて感じております。  ちょっと時間もなくなってきましたけれども,もうちょっとだけ改善と革新という違いを申し上げますと,先ほどのセリングというのが改善というものです。何とか今の商品を一生懸命売り込もう。頑張って頑張って頑張っている。遊んでいるわけではないのです。でも,それを10年やっても自分のビジネスは変わらないというのを改善というふうに呼んでおります。それに対して,お客さんとか,生産とか,販売方法とか,商品とか,そういうもののどこかを変えていって今になじむようにしようというのが革新と呼ばれるものです。  改善の方がいいときがありました。革新などやらない方がいい。それは,高度成長期のように安定しているときには新しいことをやらない方が効率がいいですから,日本はこれで大きくなっていって,改善という言葉は英語でも通じる言葉になりました。  それに対して,今は環境がどんどん変わっているから,経営革新をしなければいけない時期なのです。  では,どのような中小企業経営革新というのをやる必要があるのかということなのですが,時間がなくなってきておりますので,上の3つくらいだけ御説明いたします。  要は,こういうときになったら経営革新を必ずやってくださいとお願いしています。それは何かというと,環境が変わってきて粗利が変わった。これは何度も申し上げています。何かというと,要は,企業の商品が世の中から見放されてきたというようなのが粗利が下がってきた。これが3年くらい続いてきて,なおかつ,ああ営業しづらいと思ったら,社長,経営革新をやらないと手おくれになりますよという話をしています。  それから,事業承継のとき,2代目にそろそろ譲ろうかなと思っているときです。どういうことかというと,例えば,屋のつく職業というのは今苦しいとよく言われます。例えば,八百屋さん,米屋さん,パン屋さん。なぜか。それは,屋のつく職業というのは今から30年も40年も前にビジネスモデルができ上がってしまったところです。それと同じことをやっていると何々屋さんと言われます。そこから一歩踏み出すと違う呼び名をされるようになります。  そういう屋のつく職業というのがだめになるのはなぜかというと,環境が変わっても,それに合わせてビジネスを変えていないからなのです。息子さんが事業を引き継ぐときに,このまま渡すと同じことが起こりませんか。事業承継は,今,国でもやっています。例えば,税金を100万円,150万円,200万円まけてもらおう。そういう取り組みもされていますけれども,税金を100万円まけてもらったって,2代目が事業がうまくいかなかったら,あっという間にそんなのは使ってしまいます。ですから,今,お父さんと息子で,次のビジネスをどうするのかを考えることをやってみてください。そうすると,息子さんが一人きりになり,環境が変わったときに,お父さんと同じに事業をもう一回変えられるのだという自信が,そのときには,あのときやったからという自信がついているのではないでしょうか。ですから,事業承継のときには経営革新をやりましょう。  それから,遊休資産があるとき,これは何かというと,人が遊んでいる,土地が遊んでいる,設備が遊んでいる。こういうのがあると企業は病気になってしまいますよという話をします。どういう病気かというと,糖尿病みたいな病気です。私も軽い糖尿病なのですが,糖尿病というのはほうっておくと大変な病気になるのだよとよく言われます。そういうようなのがこの遊休資産というものです。  何かというと,ある程度の売り上げが上がっているのに,それに対する利益が出なくなってしまう。そうすると赤字が起こりやすくなる。赤字が起こりやすくなれば,先ほど言った資金繰りという問題になっていくということです。  ちょっと前に,はげたかファンド,今でもドラマではげたかというのが出てきますけれども,はげたかファンドみたいなのが,だめになった企業を,日本人の社長が幾らやってもだめなのに,外国人が買って,元気にして,高く売っています。日産も,一時,ゴーンさんになって,V字回復をしております。  あれはなぜできたのですかというと,やっていることはみんな一緒なのです。不良資産,遊んでいるもの,そういうものをすべて捨てているのです。工場を閉鎖する。ラインを閉じる。それから,車の車種も減らす。稼働率は上げていく。遊休資産をなくしていく。全部が働く状態になると企業は元気になっていくのです。遊休資産はその反対を起こしているのです。どんどんどんどん元気がなくなるのは遊休資産なのです。ですから,企業で遊んでいるものがあったら経営革新をやってください。  それから,遊んでいるものを使って経営革新をやるとお金がかからないです。土地があり,遊んでいるからそれを使おうとしたら,土地を買う資金が要りませんから,コストが安くできる。イコールリスクが低い。だから事業には成功しやすいというプラスの面もあります。  こういうふうにずっと見ていくと,事ほどさように,どうでしょうか,委員の方が思いつくような企業で,この条例に当てはまらないという企業がどのくらいあるのかというようなことを考えていただきたい。恐らく茨城の企業で3分の2くらいは経営革新をやらなければまずいというのに当てはまっているような気がするのです。でも,経営革新をやっている茨城の企業の実態はどのくらいかというと,1%ちょっとだというようなことになっています。これで企業を元気にしようというのは難しいのではないでしょうか。  まず,みんなが,お客さんは何を考えているのだろう。お客さんが何を考えて,それに対して自分は何をしたらいいのだろう。そういうのを考えていただくというのが一番大事だと思っております。それを考えずに県がお金を投入しても,それはすぐにお金がなくなってしまう。余り効果の高い支援にならないのではないかというふうにいつも思っております。  その下にちょっとだけ書きましたけれども,経営革新が行えないときにはどうするのかというと,その前に,先ほど言いましたように,企業再生を行って,経営革新を行えるようにしていくのだということです。ただし,そこで,どうやっても,2年,3年頑張っても営業黒字にならないという場合はもう清算しかありません。私,20件くらい相談を受けると,1件くらい清算しかないかなと思うような企業があるという感じです。  最後に,これは私が申し上げるようなことではないのでしょうけれども,今の話から,ぜひ委員の方におわかりいただきたいと思う,茨城県で必要な支援というのはこんなのでしょうかというのを,意見として聞いていただければと思います。  基本的に,今,茨城県に必要なものというのは,例えば,企業再生計画を我々が企業のためにつくってあげます。つくってあげても,銀行さんでけんもほろろのときがあるのです。それは,企業さんが一回銀行さんにうそをついてしまったとか,そういうのがあったりもするのですけれども,それだけではなくて,銀行さんの方が貸したくないとか,銀行さんの方がリスクはとりたくないというようなのも多い。  それに対して,銀行さんにどうというのではなくて,再生計画を立てた企業に対して県の資金的な補助みたいなのがあれば,その企業は何とか立ち直ることができるのです。一本化をしてあげるような補助とか,そういう資金的な補助をやることによって,まず企業が息の根がとまるところを何とかできる。それを見分けるのは,再生計画をつくっているかつくっていないかなのではないかなと思います。  なおかつ,もう一つ,企業の経営革新の意欲を高める方法,そういう施策がないのか。例えば,何かというと,計画を立ててしっかり新しい事業に取り組もうと思ったら,ファイナンスがつくよ。そこにお金がつくよというのは,企業の背中を後押ししてくれるのです。企業はそれが見えた途端,やろうかと思っていただけるところはたくさんあります。でも,残念ながら,そういう計画をつくっているのにもかかわらず,その辺で何も考えていない企業で,資金繰りが足りないといって来た企業と全く同じ扱いを受けて,前向きの意欲というのがそがれている。何とかそういうのを支援するような,今,日本政策金融公庫あたりもお金は貸してくれますけれども,もっと資金的な補助というのを,もしほかに補助金として出すのなら,計画があるところに振り向けるというのをお願いできないかなというふうに思います。県の融資等も実際ありますけれども,ただ,なかなか中小企業者が使えないという状態になっているということです。  それから,もう一つ,その下です。先ほど申し上げましたように,企業を直す医者,それから,実際は病気になったらかかるべき病院というのが必要なのだというところで,今,茨城県に何があるかなというと,私は,個人的に,商工会議所さんとか商工会さんの機能だろうと思うのです。今,残念ながら,商工会さんがどんどんどんどん減っていってしまって,私は,企業の方たちがどこに相談しに行っていいのかというのは,恐らくない状態にもうすぐなってしまうのではないかと一番心配しております。  病院と一緒で,何かあったらそこで聞いてくださいというような相談ポイントをつくると,中小企業がもう一回頑張ろうという拠点をつくることができるのではないかと思っております。  ただし,そこにはそれに対応できる人材ということになると思います。普通,こういう相談の人材というと,我々経営コンサルタントがよく呼ばれて,お願いしますと言われるのですが,残念ながら,私が思うところ,私みたいに個人である程度そういう対応を日常的にやっている人間というのは茨城県に恐らく20人くらいしかいません。だから,私は今ものすごい忙しい状態で,12月まで,土日も入れて,スケジュールが書いてない日というのは2日くらいしかありません。ですから,少なくともコンサルタントがこれをやるのでは全然足りないのです。ではだれなのかというは,当然ですけれども,商工会や商工会議所さんにいらっしゃる経営指導員さんがある程度そういう役割を果たすという構想がつくれないか。ただ,彼らの能力がどうだといろいろ言われているのも聞いていますけれども,もし医者になれないのだったら看護師さんになることはできると思うのです。それで医者をもっと効率的に使ってやろうというような仕組みもできるのではないか。いずれにしろ,病院というのがなければ,今の茨城県のこの経済を活性化するのは難しいのではないかというふうに日ごろの活動を通じて思っております。  私が申し上げたいことは以上で,あとは産業別の私の意見というのを申し上げようと思いましたが,時間が来てしまいましたので,とりあえず,この大きいところだけを申し上げて終わりにしようと思います。  どうも聞いていただいてありがとうございました。 5 ◯鈴木(徳)委員長 大変ありがとうございました。  ここからは意見交換の時間とさせていただきます。  ただいまのお話につきまして,委員の方で何か御意見または御質問がありましたらお願いいたします。  石田委員。 6 ◯石田委員 石田と申します。  本日はありがとうございました。  最後のところで,私もいろいろ聞かせていただいておりまして,地元の商工会のあり方とか頭に浮かべながら,最後のページになったら,支援策の中で入っていらっしゃいましたので,私も同じことを考えておりまして,いわゆる経営指導員のあり方と,地元に密着している経営指導員の方も一生懸命やっている。汗をかいている方が大勢いるのですけれども,一つ,商工会議所に行かれたり商工会に行かれたりという中で,青年部活動とかいろいろな活動も商工会の中でやっておりますけれども,非常に意欲のある商工会議所,商工会と,何をやっても,例えば,祭りのイベント一つにしても,なかなか人が集まりにくくなっているという状況もあるように聞いているのですけれども,そういう面では,経営指導員の方がいろいろ手をかえ品をかえ魅力づくりというものをやっているというのが一つ実情としてあるわけだと思うのですけれども,そこに,知恵,いわゆる新しい経営支援,もしくは国の目指している,県の目指している情報をしっかりと伝えていくこと,そういうような役割も商工会議所,商工会には必要だと思っているのですけれども,経営指導員の方が,例えば,先生に来ていただいて,年間行事の中で,いわゆる地域の中の密着した経営指導というところになってきたときに,経費の問題が出てくるわけです。やろうと思ってもなかなか手だてが,いわゆるお金の問題が出てくるということで,そういう依頼を受けたことがありますか。例えば,年間を通してとか,数カ年の中で,私の町の商工会議所は特に若手経営者を育てていきたいというような依頼を受けたことは実際ありますか。 7 ◯宮田参考人 単会からそういう依頼を受けたことはありません。私は商工会連合会の応援コーディネーターですので,応援コーディネーターとして請われれば,それで単会に行くということはありますけれども,今の質問のように,ずっと同じところを見続けてということは時間的にやれない状況になっております。 8 ◯石田委員 私は,むしろ,単年度で終わってしまったり,一つのテーマで動いていくときに,商工会議所とか商工会にお願いしているのは,もっと腰を据えて,地元の特に観光産業との連携を念頭に置いた地域づくりであったりということを,よく商工会議所,商工会で言ったりしているのですけれども,いわゆる失敗を重ねてでもサクセスストーリーを描けるくらいタフな商工会議所,商工会でないと,地域の中で思いつきでやってもすぐ失敗,また,そういう中で知恵も入ってこない。やる気も起きてこない。成功事例もなかなか出てこない。その悪循環だと私は思っております。  ですから,先生方に,各地各地にもう少し緊密的にお願いできるような施策を県も商工会議所と検討して,例えば,経営指導員のレベルを上げるといってもそうはまいりませんので,先生のような方が,スケジュールがいっぱいのようでありますけれども,20人と言わず,都内からも,私,経営指導員の方,中小企業診断士の方も含めてお会いしているのですけれども,全国各地の成功事例を持ってきてもなかなか心が動かないときが多いのです。ですから,なるべく自前,いわゆる茨城県を育てていくというような形で,20人が200人ぐらいのスケールになっていかないと,本当に茨城県が,全国に先駆けて,地域振興型の県として成功事例におさめていくのは厳しいだろうなと思っていまして,この後,いろいろ県の方でも協議をしていただいて,足腰のしっかりとした企業を育てていくというのは複数年でやっていかないとうまくいかないと思っておりまして,その辺で何か御意見がございましたらお願いいたします。 9 ◯宮田参考人 同じことは我々もジレンマとして持っておりまして,1回だけ行って,それで,その後どうなったのかなというのはしょっちゅうあります。それを補っていただきたいのが指導員さんです。指導員さんは日常的にそういう企業とお会いになっておりますので,指導員さんは,今,結構失敗していらっしゃるという御意見を伺いましたが,企業一つに対して向き合ってやっていらっしゃる指導員さんは,割とちゃんと正確にやっていらっしゃるなと思うことがあります。ですから,指導員さん,今,一つの企業にずっとかかわるというわけにはいかないのでしょうけれども,幾つか重要な企業さんに指導員さんが年間を通して見ていく。その経過会議みたいなのに我々も入って一緒にやりましょうみたいなのはできないかという話もしたことはあります。 10 ◯鈴木(徳)委員長 ほかにありませんか。  飯泉委員。 11 ◯飯泉委員 中小企業の方から,信用保証協会に相談に行ってくれというような依頼を受けたことがございまして,信用保証協会では了解を得たのですが,金融機関が対応できないという状況の中で,信用保証協会と金融機関との関係というのはどういうふうに御認識をされていますでしょうか。 12 ◯宮田参考人 金融機関も信用保証協会もそれぞれ意思決定は別々にしますので,どうやら意思決定のポイントが違うときにそれが発生する。例えば,今は100%もありますけれども,信用保証協会が90%しか保証しないというようなことになると,特にそれが,これはプロパー融資と同じに扱えというふうに例えば融資の方から銀行の方で言われたりする場合もありますから,なかなか貸せないということが起こるのだという説明を銀行さんから受けることがあります。  それから,信用保証協会さんも危ないなと独自に判断することがあるみたいで,銀行さんとの話しまでではオーケーなのだけれども,信用保証協会さんがなかなかうんと言ってくれないのだというのもあります。それぞれのポイントが少しずつ違って,我々も何かの審査をするなどというときには,個人個人,評価が違っています。そういうのがあるのではないかというふうに理解しております。 13 ◯飯泉委員 信用保証協会の方の認識と金融機関の方の認識の違いといいますか,連携ができていないのかなという危惧をするのですが,非常にアンバランスなギャップを感じて,信用保証協会が了承をしても,金融機関が対応できないという形で融資が受けられないという状況になってしまうということが随分ありまして,特に製造業,サービス業,建設業の関係者の方々が非常に多いという実情がございまして,そういう状況が今現在あるということと,あと,もう一つは,今,県内に経営コンサルタントが20人というようにおっしゃった。 14 ◯宮田参考人 20人しかいないというわけではないのです。ただ,経営コンサルタントを専業でやっている者が20人くらいですよと。あとは,企業としてやっている企業もありますし,あることはあるのですが,ただ,例えば,先ほど言った商工会に来てもらう人間とかいったときに,恐らく思い浮かぶのはそのくらいしかいらっしゃらないのだろうなと。だから,同じような人が何回も何回も使い回しという状態になっているというふうに思います。  20人というのは,あくまでもそういう意味の稼動している人間という意味で,私が持っているような中小企業診断士という免許を持っているのは100人くらいいます。 15 ◯飯泉委員 そういう意味では,各相談者,コンサルタントの方々がオーバーワークにならないような連携できるような,商工会との連携ですとか,あるいは,さまざまな金融機関でも,その企業を救ってあげようというような金融機関もあるのではないかと思うのです。そういう中で,さまざまな企業の方々に融資が受けられる,救ってあげられるような取り組みというのは,今現在,一番求められているものはどういうものなのでしょうか。 16 ◯宮田参考人 先ほど申し上げましたように,自分の意思を持って計画をつくってきたそういう企業に対する融資というものを,今,委員がおっしゃったような銀行レベルとか信用保証協会レベルで判断するのではなく県の基準で判断する,例えば,会社でいったら,会社全体のポリシーがあって,そこにそれぞれ部署間の考え方がある。でも,会社のポリシーにのっとって大体意思決定されていきます。少なくとも計画をつくってきた企業に対して,そういう支援というのが一貫しているというような施策があるべきというふうには思うのですが。済みません,お答えにならないとは思うのですが。 17 ◯鈴木(徳)委員長 ほかにございますか。  足立委員。 18 ◯足立委員 きょうはありがとうございます。  先ほどのお話の中で,県内の対象中小企業というものが9万1,000社から9万2,000社存在している。実際,しかし,こういう経営的な支援を求めたり寄与するというのは1,000社,1%に満たないという話がございました。  これだけ国も地方もさまざまな制度をつくって,経営コンサルタントさんの数が少ないということはありますけれども,環境はかなり整ってきているように思うのです。それと,企業経営者の方々の意欲がないわけではないのだろうと思うのです。  ただ,しかし,今,こういう経営環境,国も世界も厳しい中で,現状でいった場合,淘汰というか,どんな見通しを立てられているかということとあわせて,もう一歩,先ほどありましたけれども,経営者の意欲の高揚策という,決して意欲がないわけではないのだけれども,直接的にもうちょっと何か必要なのだよという高める考え方がありましたらお教えいただきたいことが1点です。
     それから,もう一つ,今,日本社会全体が成熟化社会といういい言葉で表現されていますけれども,現実的には,昭和24年生まれの人がことしで60歳を迎えて,つまり,働く人,その地域の生産性とかというのは,これは働く人と機会と時間,機会も時間もほとんど世界は同じようになっていますし,人が少なくなるというのもその地域の致命的な課題だろうと思うのです。ですから,国民総生産も間もなく3位になるのではないかとか,一人一人の国民所得はかつての3位から19位に落ちている。そういう状況の中で,中小企業の現状9万1,000社から9万2,000社,本当にこれから維持できるのだろうか。どんなにやっても環境的に淘汰されてしまうのではないのだろうかという,どんなに行政が手を打ってもこれはもう物理的に不可能な状況と,日本社会はこれからどんどんとそういう環境になるのではないのかなという意識を私は持っているのですが,その辺のお考えを伺えればと思います。 19 ◯宮田参考人 非常に難しい質問で,私の意見くらいなのですけれども,まず,1,000社のお話は,経営革新計画をつくった企業が1,000社ということで,相談に来ている企業の数ではありません。それはもっとずっと多いと思います。それは違う数字,私,どのくらいの数字か把握しておりませんので。  ただ,意欲向上策ということ,それが今ほうっておくとどうなってしまって,どうやって意欲を向上したらというのが最初の御質問だったと思うのですけれども,かなり急速な勢いで,例えば,5万社とかそのくらいまでいってしまうのだろうとはよく我々は言っております。それが急速というのはどのくらいかというと,5年とか,そういう短期間に起こるのではないか。特に今回のリーマンショックから立ち直れないという飲食店とか小さい零細企業に満たないようなところ,事業所さん,ああいう事業所さんは本当にやめてしまおうという寸前の状況になっているのではないかなというふうに思います。  意欲向上策,では,そういうところに対してどうしたらいいのか。もうちょっと頑張ったらとよく話をするのですが,倒産したって事業は続けられるのです。事業をやりたかったら,それは幾らでもやれるのですという話をすることもあります。もうここでいいやと思った会社が倒産するわけなのですけれども,実際は倒産しようと思わなければ幾らでも企業はやっていけるのです。  まず,先ほど申し上げましたように,身近に相談できる人と相談する仕組みというものが一番そういう人たちを救ってくれるのではないかと思うのです。だからこそ指導員さんみたいなネットワーク,今あるネットワークを使えないかなというふうに思っております。ただ,指導員さんの皆さん,まだ行ってもなかなか話してくれないかなというようなところに戸惑っていらっしゃる方が多いものですから,県としてそういう施策でやっていこうというふうになってくると,皆さん,勇気を持って行っていただけるのではないかと思うのです。  それから,もう一つ,9万1,000社,こんなのは少子高齢化の中でそんなにあるわけにいかないだろう。実際,私,それが急速に下がるのではないかと申し上げておりますが,ではどうするのか。スムーズランディングだと思います。スムーズランディングというのは何かといったら,先ほど言ったように,とんでもない状況になる前に,「もうそろそろ清算しましょうよ」とだれかが言ってやる。それは相談相手ということになると思うのです。話をしていって,「そろそろ息子さんに迷惑かけるわけにいかないですよね」などと我々も言うことがあります。「息子さんの人生をめちゃくちゃにする前にやめましょうよ」という。それはある程度のところだったらやめられる。例えば,家,土地全部売ればこれでゼロになる。それが御先祖様の土地だと言う人もいますけれども,そのために御先祖様が残しておいてくれたのではないですか。だから,そこで終わりにして,息子さんには何にも残さないということを残してあげましょうというような話をすることがあります。  お答えとしてふさわしいかどうかわかりませんが。 20 ◯鈴木(徳)委員長 ほかにありませんか。  それでは,以上で,「県内中小企業の現状と課題」について,意見聴取を終了いたします。  宮田様には,貴重なお話を大変ありがとうございました。  本日,お話しいただいたことにつきましては,今後の委員会審査の参考にさせていただきます。  どうもありがとうございました。  ここで暫時休憩といたします。  なお,再開は,午後2時時15分といたします。                  午後2時6分休憩      ───────────────────────────────                  午後2時15分開議 21 ◯鈴木(徳)委員長 休憩前に引き続きまして委員会を再開し,参考人の方から意見聴取を続行いたします。  本日2人目の参考人といたしまして,茨城大学人文学部教授の清山玲様より,「今日の雇用・失業問題と雇用対策」をテーマに御意見を伺いたいと思います。  清山様におかれましては,大変お忙しい中,本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  清山様のプロフィールにつきましては,お手元にお配りしておりますが,社会政策,労働経済,人事労務管理を専門に研究されており,その豊富な知識と経験から,茨城県南地区労働問題懇談会座長を初め茨城地方最低賃金審議会委員など,国,地方公共団体の多数の委員会等に携わり,研究成果を紹介しながら労働行政の推進に貢献されておられます。  それでは,清山様,よろしくお願いいたします。 22 ◯清山参考人 ただいま御紹介いただきました清山と申します。  大学では,労働問題を中心に,社会政策論とともに教えております。  きょうは,皆さん,お忙しい中で呼んでいただいて,こうやってお話をする機会をいただいたこと,大変うれしく思っております。できるだけお役に立てるようにと思って参りましたけれども,少しでもお役に立てるといいなと思っております。  それでは,時間もありませんので,早速,本題に入りたいと思います。  まず,リーマンショック以降,茨城県内も雇用情勢が非常に悪化しております。レジュメの1枚目と,それから,A3の1)との1番,2番,3番あたりが雇用情勢が急速に悪化しているというものです。  まず,日本経済の状況が非常に厳しい,世界的な景気後退の中で,日本の経済も非常に影響を受けています。もちろん,茨城県経済,茨城県の雇用も例外ではありません。  今回,雇用・失業問題ということですので,雇用情勢について,まず,確認したいと思って数字を出しております。  有効求人倍率は,求職者と求人数との比率をあらわしたものなのですけれども,07年6月の段階で1.02倍,1を超えていたものから0.42倍に,08年の12月以降に急速に低下しております。新規の求人数も前年同月比で激減しておりまして,常用の新規求人が40%減,臨時54%減,パート22%減というような形で,求人が非常に出てこないということがその数字からわかると思います。  そして,雇用保険の受給者,つまり,雇い止めや,あるいはリストラ等で勧奨退職を受けたりして,あるいは一番激しい場合には解雇ですけれども,そういう形で失業した方たちが雇用保険を受給する,失業手当を受給する手続を取ったりとかなさいますけれども,その実人員が前年同月に比べると2倍以上になっているということで,この1年で急速に雇用情勢が悪化しているということが一般的な数字から見てとれます。  それから,次に,製造業派遣等を中心に雇い止めの影響が県内でも深刻に出ているということをお話しします。  これは茨城労働局が発表している県内での調査,2008年10月から2009年9月までの雇い止め等の実施済み,あるいは計画段階でわかっているものについて,6月に発表しています。この数値は,先ほど申し上げましたA3の1)の3の図表です。この3の図表から,ざっと言いますと,製造業を中心に雇い止めが急増した。中でも12月から3月にそれが集中している。年末年始と3月に集中しているということ。労働局の調査では96%が製造業で,全体の雇い止めの実施ないしは計画段階で6割弱が派遣労働者だったということが明らかにされております。  また,新聞報道などによりますと,土浦市等でも非正規雇用の雇い止めが2月の段階で相当程度出ているということが発表されています。そういうことも含めて,非常に非正規雇用,正社員でない人たちを中心に非常に雇用情勢が悪化しています。  多分,お聞きになりたいのかなと思ったので,ついでに出しているのですけれども,新規学卒について,高校卒業とか大学を卒業したという方たちを採用,つまり,4月入社の人たちですけれども,これについては,09年の4月段階では,それほど県内では影響が出ていないのではないかと思います。しかし,10年3月卒業予定者,つまり,10年4月入社の段階では多少影響が出ています。  実際に各大学で聞いてみますと,まず,就職活動開始が去年よりもかなり早かったのです。早く始まったにもかかわらず,内定が出始めるのが少なくとも1カ月は遅い。新聞報道でありましたけれども,ゼミの学生を見ていても,去年は3月時点で内定を持っている者がほとんどだったのではないかと思いますし,人によっては4月の上旬になると複数持っているということだったのですけれども,ことしは1カ月遅い感じで,全体としてそういう感じを受けました。  また,他大学等,学会等でもお話を聞いていますと,決まり方がかなり遅いし,分野によっては,5月末から6月段階で内定がとれていないのが半数いるというような地方の国立大学等も見られましたので,そういう影響は若干出てきていると思います。  ただ,それが団塊の世代の大量退職に伴う入れかえ需要というのは基礎としてあるので,総体的には影響の出方がちょっと弱いのではないかと思います。つまり,超氷河期のような事態にはならないのではないか。ただ,就職先については,従来と違ったところに決まっていくということはあり得るというようなことです。  そういう形で雇用情勢というものを概観いたしました。  次に,深刻化した背景です。ちょっとというわけではないですけれども,アメリカの不良債権が世界中に飛び火をして,その結果として,日本でいえば輸出産業,自動車を中心に非常に経済が悪化していくのですけれども,それは年末の段階で大量にリストラで失業という人たちが出てくるというような形で,短期間に非常に雇用情勢が悪化するという最近のこういう特徴というのは,90年代の半ば以降に日本の企業の雇用戦略が大きく転換しているといったことが背景にあります。  これは,皆さん御存じの方もいらっしゃると思うのですけれども,旧日経連,今の経団連が,新時代の日本的経営と称して,雇用のポートフォリオ論というのを強く提唱いたしました。それは,働いている人たち,雇用する人たちを3つのグループに分ける。一つは,正社員グループ,いわゆる長期蓄積能力活用型といって,将来的には幹部候補生にもなってもらうような人たちです。次が,専門能力活用型グループといって,この人たちはいわゆるディーラーとか,一部SEみたいな人たちも入ってくるのですけれども,専門職として遇する。場合によっては任期制も,期限つきの雇用にすることもあり得るし,退職金等よりは,どちらかというと,そのときの賃金の方にウエートをシフトする。そういうような働かせ方をするものです。  3番目のグループが今最も問題になるわけなのですけれども,雇用柔軟型グループと言われていまして,これがいわゆる一般事務ないしは販売職等を中心に,従来の女性の多くが一般正社員として入っていた人たちないしは製造ラインだとか現場の人たち,ブルーカラーと呼ばれるような職種の方たちが,従来は正社員で,期限つきではなく,ちょっと給料は総体的に低いかもしれないけれども,安定した雇用にいたという方たちが,期限つきの雇用で,時間給で,退職金なしのような雇用管理のグループに入っていったわけです。ここが非常にふえてきた。ということは,期限つきの雇用ですので,3カ月とか半年という形が多いわけです。場合によっては,今,非常に話題になっている日雇い派遣,一番ひどいパターンです。携帯電話のメールで連絡が来て,あした,どこどこに行ってくださいというような派遣まであるわけなのですけれども,そうした期限つきの雇用というものが非常に今ふえています。  特に若者を中心にふえているということが一つ問題になるわけなのですけれども,その例として,A3の1)の4番の図表に数字を出させていただきました。と申しますのは,ある一定の年齢層以上の方たちにとっては,非正規雇用で働くというのは,あるいは学校を卒業した時点で正社員になっていないというのは,とても特殊というとおかしいのですけれども,よほどできなかったのではなかろうかと思われたりすることがあるのではないかと思いまして,今の若者の現状を出すのにこれが一番いいかなと。  1988年,今から20年前に,25歳から34歳層の──なぜ25歳からかというと,これは各年齢を出してありますけれども,大学生の在学中を含むというのを除くためにそうしましたけれども,25歳から34歳という層で非正規雇用は10.7%でした。男性は3.6%でした。これだと皆さんの頭の中に,まあ,こんなものだろうなという感じで入ってこられると思うのです。これが2008年になりますと,25歳から34歳の段階で32%が非正規雇用なのです。つまり,3人に1人は非正規雇用です。男性で14.2%です。男性の場合,25歳から34歳で,大体6人に1人ぐらいの感じなのですけれども,これが20代後半というふうに限定しますともっとパーセンテージは上がります。30代前半でちょっと下がっている。  このようにフリーターと言われる,あるいは非正規雇用,こういう人々は労働条件は正社員と比べて著しく低い。皆さん御存じのとおりなのですけれども,中でも問題なのは,有期雇用であって,非常に解雇されやすい。したがって,失業のリスクが高いし,現実に失業する。失業と雇用とを反復するような感じなのです。失業者であり,また雇用者になる。  しかしながら,彼らは雇用圏から除外されていることが多いです。したがって,こうした非正規雇用の人たちが実際に失業したからといって,先ほどの雇用保険受給者に入ってこない場合が少なくない。今のセーフティネットの欠陥なのですけれども,従来型で来ていますので,ほとんど正社員だったときを引きずっているということもあるのですけれども,今の非正規雇用の人のセーフティネットがちょっと弱いということがそうした形であらわれており,失業しやすいにもかかわらず,失業手当からも漏れている人たちが少なくないのだと。特にそれが若者に多くて,男性か女性かといえば,女性に多いのですけれども,男性でも決して無視できるような存在では今やないということなのです。  そうしたことから,県内の数値を大急ぎで出してみたのですけれども,年収200万円未満の人々が25歳から44歳でざっと15万人います。うち男性は4万人くらいです。大体25歳になっていたら,年収200万円は正社員であれば超えているというふうに考えるので,そういうふうにしています。  年収300万円未満,よくワーキングプア──ワーキングプアをどうはかるかというのはいろいろあるのですけれども,年収300万円で区切ることはあくまでも便宜上なのですが,その数値で申しますと,30歳から44歳というちょっと若年フリーターではなくなった中年フリーターまで入れているのですけれども,若年フリーターというのは34歳までなのです。35歳以上になると若年フリーターから外れるのですけれども,今,そこの外れたフリーター層というのが結構問題になっていまして,少子化などのところでも,そこをいかに安定した雇用につなげるかということが課題になっていますので,少し年齢層を広げて30歳から44歳といたしました。  年収300万円未満の人々は県内でおよそ20万人はいるのではないかと思います。就業構造基本調査という2007年の調査で茨城県の数値をとっています。ざっとした数字なので,統計表によっても若干数字がぱっぱっと変わるのですけれども,大きく見てそう違いはないのではないか。年収300万円未満の男性に限ると,30歳から44歳で大体5万7,000人弱という感じがします。この数字をわざわざ申し上げているというのは,よく言われていますように,未婚率とか,あるいは子育て費用を負担できない人々が出てきているというのを,県内でも決して例外ではないということで,数字を挙げさせていただきました。  今の話と関連しまして,レジュメの2枚目に行きたいと思います。  これは社会問題としての雇用問題,昔から,雇用問題は,確かに失業者がふえると社会問題化するわけなのですけれども,最近のこの種の議論の特徴は格差社会論なのです。あるいは格差社会論の中で,ある意味で,どんなに格差があったっていいのだと。幾ら大金持ちがいたって,富裕層がいたって構わないのだけれども,一番下の層がある程度次世代まで再生産できるというか,次世代を育成できるような生活ができる。自分の一生を展望できるような雇用になっていれば,格差があったとしてもそれほど問題はないという考え方は結構あると思うのです。学者の中でもそういう考え方はあるのですけれども,その中でこの議論が話題になっているのは,貧困というものが表に出てきた。  テレビなどで,よく1,000円札を持っていない人たち,コインしか持っていない,ネットカフェ難民とかとよく出てきますけれども,そういうような形で,見かけではわからないのだけれども,お財布の中を見るとないし,お家も借りられない人たちというのがいるということで,この手の議論が非常にクローズアップされています。これは,その人たち個人がかわいそうという議論なのかというと,決してそうではなくて,次世代を再生産できないということは,将来の社会が展望できないという社会問題なのです。  それから,高齢者問題を深刻にする。これは,今,現実に税や社会保険料を払えない若者がふえるということは,今の高齢者を支えられない。逆に,親の年金で生活するような,親の勤労者所得と親の年金で扶養されるような人たちが若年層に出てきてしまったことが心配されています。  それから,税や社会保険を空洞化するということは,社会システムとして,今の年金制度であるとか,あるいは健康保険の制度であるとか,あるいは教育であるとか,そういったものを維持できなくなってしまうので,この問題をどうするかという観点から,非常に雇用問題についても議論されるようになっております。  それから,地域という問題です。地域社会の中で失業者が多い,あるいは非正規雇用で食べていけない人たちが多いということは,その地域の体力が非常に弱くなってしまう。茨城県は,ある意味,農業県でもありますので,農家とセットになっている場合には,住居と,それから,食料とか,そういったものには多少いいのですけれども,何と言っても,従来の日本に比べると,どこの地域でも自営業層というのは縮小しております。そうすると,勤労者所得で生活をしている層というのが非常に多くなっておりますので,この部分をどう生活していけるようにするのかという観点が大切になるということで,先ほど申し上げましたような年収200万円未満,あるいは300万円未満だと,結婚して子供を生み育てるということがなかなか難しいということになってまいります。その点で議論が結構出ています。  このことに関しまして,県の数字も出していたのですけれども,手元に今すぐ出ませんので,全国の数字でお話ししますと,皆さんも新聞報道でごらんになったことがおありだと思うのですが,非正規社員の既婚率というのは,20代後半だと正社員の半分です。30代前半でも半分です。男性で結婚率が50%を超えるのは,20代後半だと年収500万円を超える層,30代前半だと300万円以上というふうになっております。これは,すてきな配偶者になりそうな方が目の前にいたとしても,結婚しようという決断をすることに伴うハードルの高さというのが,経済的なものでちょっと違うのではないのかというふうに一般に説明されています。  また,就学援助というものを必要とする児童というものが増加したり,貯蓄ゼロ世帯が増加したりということがあります。この貯蓄ゼロ世帯というのは本当に増加していまして,これは貯金の額が平均で幾らとかという数字がよく出ます。ああいう数字はゼロの人たちを除いて平均しているので,ゼロの人たちの割合というのは結構今上がっているのです。  また,ゼロ世帯は多分2割を超えています。そして,年齢的に若い層の方が平均の水準よりも高い。それから,単身者で高い。単身者の貯蓄ゼロ世帯の比率は,恐らく4割近いのではないかと言われています。そういう意味で,先ほど雇用のところで200万円とか300万円という年収を出しましたのはそういう関係もあります。  それから,最近,何で失業問題が深刻化するか。さっき申し上げたように,確かに雇用のポートフォリオで失業しやすい人がふえたのだ。だけど,もし,それでもセーフティネットがきっちりしていれば,例えば,失業手当があったり,あるいは公共の市営住宅とか県営住宅で安い住宅があったりして,そこに住んでいられれば,少なくとも家を失うという形にはならなかったのです。あんなふうにホームレスがテレビでも,ちょっと衝撃的ですよね。あんなに毎日毎日テレビで流れたりとか,年末年始に寒い中でテントで過ごすというのは,私の学生たちも非常にショックを受けておりましたけれども,そういうふうに,失業したといっても,そこに目に見える形で出てこない可能性というのもあるわけです。そういうことができる人たちではないということが問題なのだと思うのです。  つまり,社会保険に未加入の人だったり未納だったりする。たとえ大企業に雇われていても,もしかしたらその人たちは非正規雇用で,彼らは雇用保険に入れていない可能性があるし,また,正社員は厚生年金に入れてもらっているけれども,非正規雇用の人は厚生年金に入れてもらっていないかもしれない。かもしれないといっても,結構高い確率でそうなのですけれども,そういうことがあるわけです。つまり,失業しやすいのに雇用保険がない。貯金ができないのに失業手当を受けられない,貯金ができないのに年金も受け取れない。貯金ができないからこそ持ち家がない。こういう状態で,とても雇用情勢が悪化すれば,従来に比べると一気に問題が非常に悪い形で表面化してくる。  総体的に,東京に比べれば茨城県の方が持ち家率が高かったりするので,親のところに一緒に住むという形で,ホームレスという形で若者がばっと出てくるかというと,出にくい部分はあるけれども,しかし,親もいつまでも健在ではありませんし,日本の年金受給者になった場合には,多くの場合は,経済的に子供を扶養するパワーはないです。したがって,この中高年フリーターというか,今の団塊ジュニア,第2次ベビーブーマーの人々が次世代を再生産できるような雇用に,それ以下がきちんとシフトしていかないとまずいなということが社会的に大きな議論となっています。  4番について,雇用問題と雇用対策ということですが,きょうは中小企業が特にお話のメーンテーマだとお聞きしたので,慌てて中小企業の方に少し論点をシフトしようかな思ってレジュメをつくってまいりました。  中小企業が競争力を維持し,また,強化するためには,高い能力を持つ多様な人々を確保,育成し,高付加価値商品,あるいはサービスをつくって労働生産性を上げるしかない。つまり,競争力の格差が今現実にある。その競争力の格差を縮小するためには,こういうふうに高い能力の人を採用するか,あるいは自前で育成するか,そして,高付加価値の商品やサービスを提供できるようにしていく。そういうふうにするということが目標になるということは一般によく言われています。  では,中小企業は雇用を簡単に確保できるかというと,既に皆さん,耳にたこの状態かもしれませんが,中小企業ほど,小さなところになればなるほど,いい人を採用をするということは難しい。採用,育成,定着を一貫して行う必要性というのを中小企業は認識する必要がある。しかし,認識しただけで採用できるかというと,なかなか難しい。  何で中小企業で人の確保が困難かと申しますと,言うまでもなく,知名度に弱い。そして,将来性の不安というのが受ける側に出てくる。また,賃金水準が,総体的に,大企業に比べると,日本はヨーロッパの国々に比べると規模間の賃金格差が大きいのです。契約の仕方で中小企業が若干損をしているのかなというところがあると思うのですけれども,規模間の賃金格差がEUなどに比べるとちょっと大きく出るときがあるので,そうした問題から,企業が採りたいと思うような人を確保するというときにちょっと困難がある。こうしたものを払拭しなくてはいかん。そうかといって,すぐ賃金を倍出せれば苦労はないよと言われてしまいそうなので,その辺をどうするかということについて少し私なりにお話をいたします。  一つは,まず,知名度ということに関しては,会社を地域に公開するということが必要だと思うのです。人を採用したいのであれば,学校に出張するとか,学校に対してインターンシップというものを働きかける。インターンシップも,3日とかではなくて,せめて1週間。1週間いると,何となくそこの会社の人たち,従業員の人とつながりができるのです。2日とか3日はお客さんです。丸5日間,会社の人と一緒に動いていれば,それなりにちょっとはつながりができて,お昼を一緒に食べたりしている中で,話を聞けたりとかすることもあるかもしれない。これは高校だけでなくて,実は,小さなところは,小学校,中学校などでも,それですぐ人が採れるかというのはないのですけれども,名前を知ってもらうということはすごく大切なことではないかなと思います。  次に,行政は,今,茨城県も含めて非常によくやってらっしゃる。以前に比べると相当され出したなというのは調べていてよくわかるのですけれども,それでもなかなか伝わらなくて,もどかしい思いを行政の担当者はされているのではないかなと思います。企業は何をアピールすべきかということに対して,企業で採用する人の方がどういうふうにアピールしないといけないのかとか,プレゼンをしないと人は来てくれないのかということについて,弱いところがあるのです。その辺について行政の方が示唆するというか,支援する,サポートするということが必要になるのではないか。資料の作成とか,会社や工場の見学会,こういうのはもう既にそれなりにされていると思うのですけれども,まだちょっと弱いのかなとも思います。  また,会社や工場見学等に関しても,高校の先生も含めてやるといいなと思うし,県立高校だけでなくて,キャリアに関するそれなりに話ができる方たち,そして,県内の企業立地,産業集積も含めて,あるいは雇用状況についてそれなりに精通していらっしゃる方が,県内中高校を回ってお話をされたりということがあったりすれば少し違うのかなと思います。県の高校の先生は大抵忙しいのです。そのことに研修をして,研修したら確かに勉強にはなると思うのですけれども,蓄積したりとか学生に対して時間を割けなかったりすると思うので,それようの時間というのをきちんと割くことが必要なのではないかなと思います。  それから,経済的不安に関しては,所得が少ない場合は共働きというものをしないと生活できないというのは余りにも自明のことではないかと思います。それにもかかわらず,共働きができないような,できにくいような雇用管理をしている中小企業が少なくないということ,大企業の場合,ワーク・ライフ・バランスを最近かなり意識して宣伝をしたりするのですけれども,中小企業は総体的に宣伝が弱いのです。こうしたところに関して意識している。もし賃金が片働きで苦しくても,支払い能力が若干弱かったとしても,妻が正社員として働き続けられるような職場であれば,世帯所得としては次世代再生産が可能なのです。なおかつ,大企業の場合には,場合によっては,事業所間異動,遠距離異動というのが結構あるのです。これに対して,県内中小企業の場合,それほどの遠距離異動をしないということが少なくありません。このことも県内の雇用を求めている人々にとってはプラスの情報なのです。違いますよとはっきり言った方がいいと思います。  それから,正社員プラス非正規雇用を今すぐなくせなどと言ってもなかなかなくならないと思うのです。その場合でも,非正規雇用に対して,期限つきでない雇用にできるだけしていく。つまり,日本の場合,人件費で正社員と非正規雇用で若干差があります。EUの場合は,ここで差をつけないということが法律で規制されているのですけれども,日本はそこまで強く規制されていないので,正社員と非正規社員の間で賃金がすごく大きな格差がある。ほとんど同じような仕事をしていても結構つくのですが,その場合でも,なるべく期限つきでない雇用にして,社会保険に加入させてあげる。雇用保険に加入させたり年金に加入させてあげる。しかも,日本の中小企業経営者の方はセーフティネットをちゃんとしていらっしゃる方は少なくないと思うのですが,でも,それを宣伝しない。1988年の段階では,どこの会社もやっていることなので,そのようなことを宣伝しても意味はないのですけれども,先ほど申しましたように,2008年,2009年の段階では,雇用保険や年金保険に加入させていない雇用というのが少なくありませんので,正社員はもちろんかけなくてはいけない。非正規雇用に関しても,自分のところはかけているよという場合には,ちゃんとそのことをアピールして,将来の年金の受け取り額がどれくらい違うかということぐらいシミュレーションでお話しすることぐらいでいいのではないか。  つまり,自分が貯金したって,毎月1万円貯金できるかどうかわからないでしょう。僕らがちゃんと人件費として間接賃金で1万円預金を出しているのだよ,そういうことまでお話ししてあげないと,若い人は結構知らないのです。特に高校ぐらいまでの教育では余りそのことは知らないということの方が普通なので,当たり前だと思われてもお話しされた方がいいような気がします。  また,中小企業は,小さいからこそ,働いている人たちの状況が目につきやすい。したがって,ワーク・ライフ・バランスということに関しても,この人は今こういうところで大変そうだから,ちょっとシフトのときに配慮しようとか,お互いに,少し体が弱くなっているから,以前に比べるとちょっと働き方を変えさせてあげようというような柔軟性というのを持ちやすかったりします。私もよく話を聞きに行ったりしますけれども,県内の企業でも,例えば,保育園で幼児保育で預かってもらえない。しかし,かわりはいない。どうしたかというと,経営者の方が,1歳の子供をおぶってこいと男性の社員に言いまして,男性の社員が会社に連れてきて,その人は仕事がありますから,そこに寝かしている。時々,ほかの社員が休憩がてら,ちょこちょことあやして,仕事をしながら,そういう場合もあるのです。病気といっても,死ぬほどの病気ではなくて,保育園が預かれないというケースもあるので,そういうことも含めて,いろいろなやり方があるので,ちょっと配慮をするということができればいいし,できれば,ポイントだし,そのことをしっかりアピールした方がいい。今の時代,そういうことかなと思います。  また,フリーターとかニート,失業者を減少させるためにどうしたらいいのかなということを考えました。それは,まず,先ほど来,ちょっと申し上げていますけれども,今の若者は,私たちのときもそうだったような気がするのですけれども,余り雇用戦略とか処遇格差ということについて社会科の授業で学んでいません。それが将来どういうふうに処遇とか生き方,働き方,働きやすさ,それから,生活の展望の見え方とかにつながってくるのかというのを,何となく知っているのだけれども,本当には知らないのです。  きょう,お配りしたA3の働き方格差という図表は,週刊ダイヤモンドが昨年出したもので,本当にこのイラストレーターはうまいなと思っているのです。フリーターさんは,何となくみんなが思っているフリーターさんのイメージの絵をかかれているし,生涯正社員の一番右端の方はスーツでネクタイだというような絵から,その後,生涯所得の違いから年金の違いまで書いてあるので,ざっとこういうことをある程度学校教育の場でも知っていた方がいいかなと。現実,外に出てからショックを受けるというよりは,先に知って対応できるという方がいいかなと思っています。  それから,新規学卒時に高校とか中学が会社を紹介したりいたします。だけど,それだけではだめなのではないか。つまり,今,フリーターになっている人の少なくない部分が正社員をやめて非正規雇用になっている方がいます。何でやめるかというと,必ずしも不まじめだからではないのです。例えば,正社員で,休みもなく,すごい働いているという人たちが中にはいるのです。休日,土日もなくて,週60時間,過労死してもおかしくないという労働時間で,夜中まで働くという,私の卒業生などもいるのですけれども,そうすると,体を壊すか壊さないかというところのぎりぎりの選択として,やめるということが起きているわけです。そういうものばかりではないですけれども,そういう人たちも中に少なくないということです。  そうしたことを考えますと,転職をするということは,今の時代,だれにでもあり得るのだと。そうしたときに,中学生,高校生の場合は,転職する際の活動の仕方を知らないと思います。つまり,履歴書の書き方すらろくに知らないし,就職活動に行くときに,襟のついたもの,大卒だったら大体スーツで行くと思うのですけれども,たとえブルーカラーといえども,常識として,Tシャツと短パンで行かないということぐらいは知っていなくてはいけない。でも,そういうことも含めて,知らないで大人になってしまう子がいる。しかも,親がそれを教えられない層というのもあるわけです。従来だったら,お父さんたちはみんな正社員だったので,「おまえ,そんな格好で就職活動に行ったら決まるものも決まらないぞ。履歴書ぐらいちゃんときれいな字で書け」と言われたと思うのですけれども,そういうことが伝えられない層というものがあるし,それから,履歴書も,転職の際に,ただ書くのではなくて,職業経歴についてプラス1枚つけるぐらいの迫力というのが必要になるわけなのですけれども,そうしたことを支援するようなことがあってもいいのかなと思います。  それから,次に,ちょっとはしょっていきますけれども,企業の正規雇用のニーズに合うようにスキルアップをするということが必要なのですが,高校生,あるいは,その後,職業訓練校などで職業訓練をしたりいたしますけれども,あるいは中小企業自体で,大企業でもしますが,その場合に,なぜスキルアップをすることが必要かということをはっきり伝えるということが非常に重要になっています。  なぜ必要なのか。しなかったらその職場でやっていけないのだということをきちっと伝えないといけない。  また,実際の就職に結びつけるために,企業の求めるコミュニケーション能力とか行動様式はどんなものかというのをちゃんと教えて,何が足りないかということを確認する必要がある。  今,実際に緊急対策などもあって,職業訓練に関しては予算がプラスでついていますし,県でもそういうことをやっていると思いますけれども,多分,なかなか難しいのだと思うのです。つまり,職業訓練はやったけれども,正社員になっていないケースというのが少なくないのではないかなと。そこにできるだけ結びつけるようなことを,担当者が県内の企業なり産業界を回って,どういうスキルを形成させるか。あと,信用保証をそこの職業訓練校等でやって,デュアルシステムなどでインターンシップで現場も行かせて,それで安心して向こうが再雇用に持っていけるようにということが必要になるかなと思います。その際には求人求職のマッチングというのはとても大事になる。  また,行政としては,最近,ちょっと出ていますが,労働CSRという企業の社会的責任を労働の分野でもやる。やっている会社に対して,行政も公契約を行っていく上で,行政が推進しようとしている政策に協力的な企業に対しては多少ポイントをつけてもいいのではないか。最近,そういう動きが全国でちらほら見えていると思います。そういう優遇措置というものは十分にあり得ると思います。  そうしたことがあって,最後に,こうした問題を考えるときに常に大事なのは,持続可能な地域社会というものをどうやってつくっていくのか,維持していくかということだと思います。地域においては,中小企業の雇用力抜きに雇用というのはあり得ません。大企業よりは中小企業の比重の方が高いのです。中小企業の競争力がなかったら雇用もできないということですから,中小企業の競争力維持・強化と働いている人たちの幸せというものの両立というのをやらないと,地域社会というのは将来展望が見えてこないので,ここをいかにするか。企業支援ということがすごく大事になるし,同時に,企業の側も,働いている人たちが展望を持てるものにしていくということが大切だということを認識していただくということになるかと思います。  あとは,働いている人たちに対して意識を変えてもらう部分というのはある程度あるのかなと思います。非正規雇用がこれだけふえてきたり,あるいは正社員でも,総体的に低い賃金部分の正社員がふえてきている現状では共働きというのをやる。  その場合に,意識として,若者意識がそちらの方にシフトすることが必要になりますし,また,企業は,働きたいという人たちが女性にたくさんいる。子育て中も働きたい。彼女たちの中には非常に能力の高い人たちも少なくないわけです。だから,従来型の働き方では続けることが難しい,あるいは働くことが難しいけれども,ワーク・ライフ・バランスさえすれば非常に有能な人を雇えるチャンスがあるわけです。これがダイバーシティ・マネジメントと言われるもので,多様な人々を雇うということが企業にとって非常に強い競争力につながる。つまり,スーパーに置いている商品をよく知っている人たちを雇えるか。働き蜂で料理もしたことがない人が,料理の香辛料その他を並べたりレイアウトをするよりは,よく知っている人たちがやった方がいいのと同じように,ウェブのデザインでも何でもいろいろなことをできる人たちがいるわけです。商品をつくったりサービスを提供したりという発想も含めて,いろいろな人がいたほうが今までにない発想が出てくる。  しかし,これまでの企業は,どっちかというと,同じタイプの人たちを非常にたくさん集めて大量に働かせてきたのだけれども,少し違う働き方をさせてみませんか。そうすることで競争力につながるのではないかということが言われています。これはEUのリスボン戦略でもすごく意識されていて,EUはIT化で競争力を持つ地域にするのだ,EUという地域をITで先進地域にする,競争力を持たせるということを決めているのです。  その中の雇用戦略でどうしたかというと,この多様な人たちを雇用の場に引っ張ってくる。摩擦的失業は,ある程度の失業率はどうしてもしょうがない。しかし,今,労働市場に出てきていない人たちの中に非常に可能性を持っている人たちがいるのではないかということで,労働市場に引っ張り出してくるということを意識しています。そのあたりのことも地域の中で意識できると,また発展していけるのかなと思ったりしています。  時間が来ていますので,ちょっとはしょりましたけれども,まずはこのくらいで終わりにしたいと思います。  お聞きくださってありがとうございました。 23 ◯鈴木(徳)委員長 どうもありありがとうございました。  ここからは意見交換の時間とさせていただきます。  ただいまのお話について,委員の方で何か御意見,質問がありましたらお願いいたします。  五木田委員。 24 ◯五木田委員 実は,私は物販の方の会社関係もしているのですけれども,今の話のとおりなのですけれども,ただ,ワーキングプア,フリーターの問題を先生は挙げてくれた。しかも,社会人文学とすると,こういうものについては全社会的な目で見てきてくれる。ただし,問題なのは,人材派遣会社,会社というより,そういうシステム自体が今社会に保険とかそういう問題まで生んでしまった。  実は,一つ聞きたいのは,このフリーターとワーキングプアの間の問題で,昔,こういうのは余りなかったのだよね。うんと金持ちの息子か何かでなくては。ところが,これがふえているというのは,ある程度余裕があって,自分で,要するに,社会的要件でこうなった人と,ちょうどいいから,ほどほど金があれば,あとはふらっと,今の人はそういうのが多いような気がするのです。そこらについてどんな見解を持っているかどうか。  それから,もう一つは,私は,社会的功罪をよく見きわめた方がいいと思うのだけれども,人材派遣の問題について,茨城県でなくてもいいのですけれども,特にこれのメリット,デメリットについてありましたらお教え願いたい。  以上です。 25 ◯清山参考人 まず,フリーターに関しては,先ほどちょっと申しましたけれども,高卒,あるいは高校中退の人たちがアルバイト市場に流れているわけですけれども,彼らは,その時点では,将来の生活というもの,あるいは家族を養うとかという責任まで考えてそういうところに流れ込んでいるわけでは決してありません。  しかし,現実に,中小企業白書や労働経済白書などでよく引用される調査があるのですけれども,フリーターのほぼ8割は正社員になりたいと思っている。特に20代後半ぐらいになってくるとその率が高くなる。30代前半ぐらいになるとちょっと下がってくるのです。下がるのはなぜかというと,あきらめてくるということがあるのです。だから,正社員になったことがない人たちに,正社員になりたいですかと普通に聞いても,自分の弱みを見せまいとして,「なりたいんだけどね」となかなか即答しないケースもあるのです。だけども,少なくない部分が,例えば,高卒,大卒の段階で,新規学卒で,最初からそれを希望するかというと,超氷河期のときに高卒求人がものすごく落ちていたのです。そういう中で,自分の将来というのを,何か頑張ってもなさそうだな,4月入社で正社員なさそうだなという感じで流れているという部分も少なくないのではないかと思います。  それから,派遣に関してですが,今,委員がおっしゃったように,すごく問題は多いし,製造業派遣や通常の派遣でも,実際に,今,2年11カ月で雇い止めをするというのは,3年たったら採用するという努力義務というか,義務が課されてくるからなのですけれども,さっき期限つきでないようにできるだけと申し上げましたのは,もし,事業所が閉鎖される事態になったら,どんな人たちだって解雇はやむを得ないわけです。ディズニーランドがつぶれたら,ディズニーランドで雇われている人たちが解雇されるのは十分あり得るわけです。というか,当然みんな想定する。ところが,ディズニーランドで働いている人ちのほとんどは非正規雇用で期限つきだったりするわけです。そういう意味で,スーパーの店舗が閉鎖にならない限りは,そこで雇い続けられるのであれば,何も半年契約にしなくたっていいではないか。1年契約でなくて,期限つきでないようにしていくということもいいと。しかも働いている人にちゃんとそのメリットを伝えるということが大切ではないかなと思うのです。 26 ◯五木田委員 ありがとうございました。大変参考になりました。
     実は,人材派遣の問題で,先生はもう御存じだと思いますけれども,医師が足りないというのは,ある部分では,医者を,人材派遣とは申しませんが,倍払うからうちへ登録してください。金のある方の病院へ全部行ってしまうわけだよね。まあまあより下の病院は医者を雇えないというのは,いないのではなくて,こういう部分も多いのです。だから,功罪のこれは罪だと思いますけれども,私も調査がまだ不十分ですけれども,この話は幾らでも出ています。ですから,茨城県,特に医療が今問題になっていますので,後でまた参考意見がありましたら,きょうは結構でございますので,よろしくお願いします。  ありがとうございました。 27 ◯鈴木(徳)委員長 ほかに。よろしいですか。  それでは,以上で,「今日の雇用・失業問題と雇用対策」について,意見聴取を終了いたします。  清山様には,貴重なお話をありがとうございました。  本日お話しいただいたことにつきまして,今後の委員会審査の参考にさせていただきます。  どうもありがとうございました。  ここで暫時休憩といたします。  再開は,午後3時時30分といたします。                  午後3時12分休憩      ───────────────────────────────                  午後3時30分開議 28 ◯鈴木(徳)委員長 それでは,休憩前に引き続き委員会を再開し,参考人の方から意見聴取を続行いたします。  本日の3人目の参考人といたしまして,群馬大学大学院教授の片田敏孝様より,「大規模災害に備えた行政の課題」をテーマに御意見を伺いたいと思います。  片田様におかれましては,大変お忙しい中,本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  片田様のプロフィールにつきましては,お手元にお配りしております資料の3ページのとおりでございますが,災害社会工学を専門とされ,災害への危機管理対応,災害情報伝達,避難誘導策のあり方等について研究されるとともに,住民とのワークショップを通じた地域防災活動を全国各地で展開されております。  本県におきましても,茨城県総合計画審議会の住みよい茨城つくり専門部会の専門委員として,元気いばらき戦略プランの作成に御尽力いただいたほか,いばらき防災大学の講師を務めていただくなど,防災行政に関するさまざまな御指導をいただいているところでございます。  それでは,片田様,よろしくお願いいたします。 29 ◯片田参考人 御紹介いただきました片田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  座って話をさせていただきます。  最初にお断りしておかなければいけないのは,今,御紹介をいただきましたとおり,防災の専門ということなのですけれども,とかく防災の専門といいますと,災害の専門と防災の専門はちょっと違いまして,僕は防災の専門です。災害の専門ということになりますと,例えば,地震の専門家とか,津波の専門家とか,洪水の専門家とか,現象が詳しいわけなのですけれども,僕はどちらかというと,今御紹介いただいたように,特に災害が起こったときの社会的な問題を中心にやっております。特に災害情報を伝えて,住民の方に避難していただくとか,それから,情報を伝えたときも住民が逃げない問題とか,要は,そういう社会的な対応の問題をやっております。  この辺の研究をやって,重要だと考えている理由は,例えば,アマゾンのジャングルで川が大はんらんをした。これは災害か。これは災害ではないのです。そこに人がいないからです。つまり,そこに人がいて,そこに社会があって,対応のありようによって被害の多寡が変わってくるということを考えると,ここの社会対応がどうあるのかというここの部分が非常に本質的に重要だという認識の中で研究をやっております。もちろん,災害そのものの専門家も必要ですけれども,私のような社会的な対応の部分で研究をする者も必要だというようなことで,そういうスタンスで研究をやっているわけです。  きょうは,そういった面で,災害の個別,具体のところについて聞いていただいても答えかねるところもあるかとも思いますけれども,そういう事情ですので,御容赦をいただきたいと思います。  それでは,早速,いただいているお題の「大規模災害に備えた行政の課題」ということで,ここのところ,僕はいろいろな災害にかかわってくる中で感じていること,特に防災行政,行政側の問題,あとは住民との関係の問題,こういったところでの問題意識についてお話をさせていただきます。  まず,前提条件なのですけれども,委員の方も認識されておられると思います。非常に災害が多いです。地震は多発期に入っているとも言われますし,それから,豪雨災害については,気候温暖化の影響は明確だということ,IPCCによっても明確に断言されている。ここ1週間くらいの間でも九州から山口のあたりで大変なことが起こっております。  こういう状況の中で,さあ,どうしていったものかということで,まずは豪雨災害を中心とした行政対応の問題について議論を進めたいと思います。  山口なのですけれども,今,まさに北九州の方がいろいろ動いているものですから,ちょっとその準備が間に合わなくて,山口の方で話をさせていただきます。  この問題も,これはいわゆるゲリラ豪雨とは違います。典型的な梅雨末期の雨の降り方でして,梅雨前線に向かって太平洋からの湿った空気が継続的に入り続けるという中で起こった災害です。  ただ,こういった災害も含めて,史上1位を更新するような降水量などという記録的豪雨というのは耳なれてしまったのですけれども,記録的豪雨,記録的豪雨と,今までとは全然雨の降り方が違ってきているという状況をまず我々は認識する必要があるように思います。  したがって,これまで茨城県において起こった豪雨災害,雨の降り方という形態と,今後,将来に向かっての雨の降り方は根本的に違うと言えますし,その認識を持つべきだろうというふうに思います。  この場合もそうだったのですけれども,特にここで問題になったのは,2つほどポイントがあると思うのです。一つは,この場合,避難勧告がうまく出せなかったという問題があります。ただ,この問題については,この後議論しますが,なかなか難しい問題をはらんでおります。ここの部分をどうするのかというのは,一つ,大きなポイントであるということと,行政の側からすれば,情報を出すという問題です。  それから,もう一つは,住民側にもわかってもらわなければいけないことがあります。これは災害にあった老人ホームです。テレビでしょっちゅう映りました。これは山からちょっと離れたところにある。平地にあるのです。ところが,土石流なものですから,山の斜面から相当離れたところなのですけれども,来てしまうのです。ここも多くの方が亡くなっているのですけれども,住民側に災害にかかわる知識というものがある程度あれば,これは2階に上がっていったら大丈夫だったのです。土石流ですから,全然山から離れているものですから,割と住民は安心しきっているところがある。ところが,土石流というのは来てしまう。こういう現象についての知識が住民側に欠如しているということ,この辺をどうするかというのは重要な問題だろうというように僕は思っております。  これも,雨を見てみますと,四,五十ミリの雨が数時間にわたって降っているわけです。四,五十ミリの雨というのは確かにすごい雨です。大体30ミリの雨というのが,車のワイパーを動かして前が見にくいイメージなのです。それぐらいのどしゃ降りという感じの雨が四,五時間降ると,こんなような現象がちょこちょこ起こり始めるという,これよりも前に起こることはありますけれども,こういう状況の中で現象が起こったということなのです。  ここで,情報がいかに出しづらいかという,これは,行政にとっては,災害情報を住民に伝えるということは非常に重要なことなのですけれども,これが相当難しい状況になっているということをまず御説明申し上げます。  昨年の8月末の豪雨なのですけれども,このときも愛知県の岡崎市で146.5ミリというべらぼうな雨が降りました。こんな雨が最近頻発しております。まず,こういう情報を気象庁が押さえられないという話,これをまずポイントとして押さえたいと思います。  平成20年8月末の豪雨なのですけれども,北海道から山口まで,日本全域で被害が出るような大雨でした。気象庁は,太平洋の湿った空気が日本列島全体に入り込み,いつ,どこで災害が起こってもおかしくないほどの雨が降るということまでわかるのです。ところが,それがどこかわからないのです。というのは,いつ,どこで起こってもおかしくないというのは,それほど深刻だということを気象庁は伝えようとします。ところが,受け手側からすると,いつ起こるかわからない。どこで起こるかわからない。こんなもので逃げられるかという話になるわけです。避難につなげるとか,住民の対応につなげるためには,ピンポイントで,例えば,水戸で今後一,二時間以内にというふうに言われると,水戸市民は対応することができると思います。ところが,これをもう少し広げて,茨城県で今後一,二時間と言われても,個別,具体の市町村の住民が対応をとれるかというと,これはとれないのです。時間と場所を特定して初めて避難情報に使えるのですけれども,それができないという中で,気象庁はなかなか予測ができていないということです。  このときに起こった豪雨なのですけれども,岡崎市で146.5ミリです。この雨のイメージは,先ほど言いましたけれども,日々,日常の生活の中で15ミリ,20ミリという雨は相当強い雨だなというイメージなのですが,30ミリでワイパーの前が見えないという感じです。都市下水の整備水準というのは大体50ミリ対応で考えております。この雨が一,二時間降ってくると,未整備のところ,もしくは低いところは徐々に内水が出てくるぐらいのイメージが50ミリなのです。その3倍の雨です。べらぼうな雨です。  これが夜の2時ぐらいに起こったのです。この2時の段階で146.5ミリという雨が降ったとき,僕の友人が岡崎におりまして,彼に話を聞くと,一晩中──一晩というのは,降り始めと同時に雷が鳴り続けて,懐中電灯が要らないぐらい明るいというぐらい光り続けているという状態らしいです。丘陵地なものですから,道路が川のようになって,歩くに歩けない。だから,避難勧告が出されたところでどうにもならないという状態になります。  このときに,この雨がいかに難しいかということを雨の分布図で見たものがこれなのですが,23時,12時,1時,2時と1時間置きに強い雨域を書いているのですが,これが夜中の11時です。ちょっとかかり始めている。ここが岡崎市です。12時,1時,2時,3時,4時,5時とずっとかかり続けています。特に2時をピークに,赤いところがずっとなぜか同じところにかかってくると,そこで災害が起こります。通常,赤い雨域というのは流れて動いていくわけです。ですから,我々,めちゃくちゃな雨というのはほんの数分であれば経験したことがあります。ところが,これがなぜか強い雨域が固定される。そうするとそこに災害が起こるということで,これがどこなのかが気象庁が予測できないということで,なかなか気象情報がうまく出せないという気象ニーズ的にも問題というのか,どうにもならないというところが実態です。  そんな中で,岡崎市が,夜中の2時10分に全市民37万6,000人に避難勧告を出しました。これをどう見るかということなのです。さんざん,僕もあちこちのマスコミからコメントを求められたのですが,これは難しいです。まず,本当に出すべきだったのかという問題があります。夜の2時,それも,さっき言ったように,道路は滝のように流れていて,そこに足を入れると,足を取られるぐらい流れているわけです。その段階で避難勧告とは,住民に自宅を出て避難所まで行ってくれということが避難勧告なわけです。それを求めるということがそもそも必要があったのか。逆に危なかったのではないのか。では,仮に全市民が避難したとして,岡崎市はその対応ができたのか。来られても困ったのではないのかというようなことすら言える。  それと,避難勧告というのはある地域に出します。そうすると,そこの平屋建ての人にとっては避難勧告は本当に必要です。ところが,そこのマンションの4階の人にも避難勧告が出ているわけです。そうすると,この人はマンションの4階からおりて,そこの道路を通って避難所に行かなければいけないのか。これはそうではないと思うのです。  そうすると,避難勧告というのは,ある程度地域にまとまって,首長権限ですから市町村長が出すわけなのですけれども,どちらかと言うと,この岡崎市の対応は,この雨の中で血相を変えて全市民に出してしまったというところが本当のところではないかなというふうに正直思うわけです。  でも,避難勧告を出すということが,もしこれが出されなかったらどういうことになっていたのだろうか。これはマスコミが多分袋だたきにしたのだろうと思います。不作為だ,避難勧告すら出ていなかった,こういうことになるのでしょう。  この避難勧告を出すというのは,今,非常に難しい状況になってきております。特に豪雨災害関係の避難勧告については,出していいものか悪いものか。出して,住民が逃げている途中で犠牲者になったらどうするのだというような問題の中で,この問題というのは,これからちょっと議論していかなくてはいけないところになってきているのだろうというふうに思います。  こんな中で,岡崎市役所の立場になるならば,これはどうしても出さざるを得なかったということが言えると思います。出さなかったら不作為になるからです。特にその中で災害対策基本法というものが微妙にかかわってきます。  災害対策基本法というのは,3条が国,4条が都道府県,5条が市町村なのですけれども,これを見てみると,あらゆる責務の所在というのが行政に定義されております。例えば,3条を見ますと,国土並びに国民の生命・身体及び財産を災害から保護する使命を有することにかんがみと,使命を有するというふうに断言された上で,それにかんがみ,組織及び機能のすべてを挙げて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有するという,責任の所在は,3条で国,ほぼ同様なことが4条で都道府県,5条で市町村ということで,防災の責務は行政にあるということになっておりますので,市民に対しての防災情報をしっかり出していくというのは行政上の責務になっているということなのです。責務として,また,使命を有するというのは,これはこれでいいとは思うのです。公僕たるものとか,行政たるものというそのポリシーとしてはいいと思うのです。だけど,これは完全に破綻しております。相手は自然で,最近,とてつもない大きな災害というものが起こるような状況の中で,責務のすべてを行政に定義するということに対して,そもそももう無理が生じているというのが実態のように思います。  でも,こういう状況の中で,岡崎市役所は,至極当然,避難勧告を出すというのは行政の責務ですから,出しているわけなのですけれども,その対応という面で,すべて住民の安全を守れたのかというと,これは話は別物ということになってきていて,もう少しきめの細かいところでの行政のいま一歩の深い対応というのは必要になってきているとは思いますし,その一方で,住民側も,行政からの情報だけにゆだねた行動をとっていたのではもう命は守りきれないという状況が今生じてきていると思います。  こんな中で,災害対策基本法というのは,ことし,伊勢湾台風から50年なのですけれども,伊勢湾台風を契機につくられました。50年間にわたって日本の防災というのは行政を中心に進められてきたという背景があります。これはこれで大変大きな効果をもたらしました。というのは,伊勢湾台風のころというのは,毎年,1年間に風水害で亡くなる方が数千人規模でありました。ところが,ここ1年間に風水害で亡くなる方というのは100人に満たないという状況まで持ってこられました。これは,行政が中心となって防災を進めてきたところによる大きな大きな効果だったというふうに思いますし,それはそれでよかったと思います。ところが,この100人ぐらいのレベルからさらにこれをゼロに近づけようという努力をするときに,これは行政主体だと,それだけではもうどうにもならないという別なステージに入ったというふうに僕は考えるべきだろうというふうに思っております。  ただ,そんな中で大きな弊害があります。防災は行政がやるものというのが50年間続いてきた中で,住民側に完全に防災を行政にゆだねてしまうという心ができてしまっているということ,ここに大きな大きな問題点を感じております。そのあたりを御説明させていただこうと思うのですが。  それと,もう1点,非常に難しいことになってきたなと思うのは,これも昨年の神戸の都賀川の事件です。これは,現場を見ますと,神戸の町の真ん中にこういう川があります。大きな川のように見えますけれども,実はちょろちょろと流れている川でして,水をためて,子供たちが泳いで遊べるようになっている,親水公園のようになっているところです。  この川はわずか1,790メートルしかない小さな小さな川です。どこにでもあるような小さな小川です。この川の流域に,わずか10分間の間に21ミリの雨が降った。これを6倍すると時間雨量です。120ミリです。べらぼうな雨です。流域が1,790メートルしかないわけですから,うんと狭いわけです。これぐらいの空間にべらぼうな雨が降る。これは気象庁は押さえられない。  そして,なおかつ,10分間の間に134センチという水位の上昇があったというのですけれども,これは表現が正しくないと思います。あたかも134センチ水位が上がってきたみたいですけれども,違うのです。平時の水位に対して鉄砲水が押し寄せて,その高さが134センチだったと理解するべきです。  そのときのこの地域の流域で,実は60人の方々が流されました。この現地を見てみますと,三面張りになっておりますので,流されますと,手をかけるところがなくて,結局,55人の大人がはい上がったのですけれども,5人の子供が亡くなったという現場です。  ここの映像を見ていただきたいのですけれども,ここに神戸市のモニターカメラがありまして,ごらんのように晴れています。橋の影が映っています。親水公園のようになっていますから,人がこういっぱい集まってくるわけです。ここの映像は2分間隔でコマ送りになっております。そうしますと,この画面が,この後,一瞬,ばっと曇ります。その次の瞬間には鉄砲水が来ております。わずか2コマ,3コマの間に事態が終わってしまうという状況を見ていただくのですが,このように人がいっぱい来ております。現に晴れているという状況です。都市の限られた親水公空間なので,こうやって人がいっぱい集まってくるのですが,今,雨が降り始めて,もう来ている。これに流されてしまうわけです。わずか1,790メートルです。そうしますと,上流の雨を観測して,下流に伝えて,安全を守るというのはできないのです。上流の水位を観測して,下流に伝えて何とかする。これもできないのです。1,790メートルというわずかな区間です。  こういう狭い狭い空間に降るゲリラ豪雨というようなものも最近頻発してくる中で,さあ,どうやって県民の命を守るのかという問題を我々は突きつけられているということになります。  これは,この後,国土交通省で会議が持たれました。もちろん,行政としてなすべきことというのはいろいろあると思います。こういう事態,そうであってもできる限りの情報を伝えるということ,危ないときには赤色灯を回すなどという議論もありました。危ない箇所には看板を出すなどという議論もありました。行政としてやるべきこととして,当然,そういったアイデアは浮いてくるわけなのですけれども,僕はそれには反対はしなかったのですけれども,それはそれで大事なことなのだけれども,本当にそれだけでいいのだろうかという議論をこの会議ではいたしました。  といいますのは,赤色灯を回すということをやる。これは行政としてできることです。ところが,今の行政が防災をやるものというこの関係構造の中でそれをやると何が起こるかということなのです。赤色灯が回っているときは危ない。だけど,回ってなかったら安全だというふうに理解をしてしまうという構造ができ上がってしまうということをおそれております。  特に行政からの情報にゆだねた行動しかとれない住民である場合,そこのところというのは非常に顕著に出てくるのですけれども,一つの例をお伝えしますと,避難勧告が出たときには逃げてくださいと行政は住民に言います。これは3回ぐらい言っていると気づくのですけれども,避難勧告が出たら逃げてください,避難勧告が出たら逃げてくださいと言っておりますと,避難勧告が出たら,逃げてくださいとなっていくわけです。つまり,避難勧告が出たときだけ逃げればいいと言っているように聞こえるわけです。そうすると,裏側の情報としては,避難勧告が出なかったら逃げなくていいというふうに理解をしてしまう。こういう構造ができ上がってくるのです。  これはなぜこういう構造ができ上がっているかというと,情報待ちだとか,行政依存だとか,こういう受け身の防災をやっている限り,住民側はそう理解していってしまうという構造になるわけです。今,ここで問題が生じてきているわけです。  これは,50年間,行政主体の防災を進めてきた陰ででき上がってしまった住民側の中に出てくる必然的な受け身の姿勢というようなところがありまして,こういう構造の中で赤色灯をつけるといったときに,僕はこの議論をしたのです。赤色灯をつけることは大変結構なことだ。危ない限りにおいて,それを回すということは。だけど,今のままだと,回らなかったらイコール安全と理解をされたのではかえって危険を招くのではないのかということを申し上げたのです。  それから,危ないところに看板を立てるという議論もありました。では,神戸のこの町中,全部市街化されていて,都市の中に残された唯一の自然空間だから親水公園のようにしてあるわけです。この川沿いで危なくないところはあるのか。ないわけです。そこを危ないところには看板を出すというふうにおっしゃるのです。それはそれでいいのだけれども,出さなかったところは安全なのですかと思わず言いたくなってしまうような状況,こうなってくると,必ずしも行政だけの努力でどうにもならないような状況になってきているのではないのかなということをひしひしこの災害では感じたわけです。  そんな中で,法に裏打ちされたというのは災害対策基本法なのですが,それによって行政主導の防災というのが法的にもうたわれておりますので,これで頑張ってきたわけですけれども,それで確かに効果もあったのですが,その陰でできてしまった,災害情報はみずからとりにいくものではなくて,行政からもらうものである。だから,自分の家の周りで相当雨が降って,これはまずいぞという状況になってもそれに気づきもしない。だって,避難勧告出てないもんというような住民になってしまっていることに対して,僕は大変な危惧を持っております。  こうなってくると,これは,ある意味,災害過保護と言ってもいいかもしれない。つまり,過保護な母親が子供に厚着をさせる。その陰で子供はどうなっていくかというと,脆弱な子どもが育つというような,それと同じような構造をここに感じるのです。  僕は,行政がこれまで頑張ってきたことを否定するつもりはありません。現に,それによって災害犠牲者がうんと減ってきたということは,これはこれでよかったと思っています。だけども,ここから先,さらに減らそうと思ったら,この構造を変えないと無理だというところまで来てしまっているということは非常に重要なポイントとしてあるように思います。ましてや,今後,これからのことを考えますと,豪雨災害が極めて頻発するようになってきました。  最近起こっている山口だとか,北九州の例だとか,今のゲリラ豪雨の話なのですけれども,これは地球温暖化の影響で,今後,頻発するということが明確に世界の研究者によって保証されました。ほとんど保証されました。IPCCという地球温暖化に関する政府間パネルなどでも言われておりますし,現に,日本のデータを見てみますとこういうことになっております。50ミリ以上の雨というのが1年間に日本でどれぐらい降っているかという数字を見たものなのですが,昭和53年から昭和62年には1年間に平均206回でした。これが昭和63年から平成9年にかけてになると233回にふえます。そして,直近の10年間を見てみますと318回です。明確にふえております。100ミリ以上,これは1時間降ったらもうそれでよしです。こういう雨が同じく1.9回から2.5回,そして,最近では4.8回,もう明確です。  地球温暖化が進むとなぜ豪雨災害がふえるかということなのですけれども,感覚的にとらえるとこういうことです。こんな雨の降り方が熱帯のスコールの降り方です。もともと温帯の雨というのは,パリやロンドンでもそうですけれども,霧雨です。雨に歌えばとか,シェルブールの雨傘だとか,どちらかというと雨を楽しむような優しい雨というのが温帯の雨の降り方です。こんな熱帯のスコールのような雨の降り方というのはもともと日本で降るものでなかったものが,その北限がどんどん上がってきているという理解が一つできると思います。  それから,現象的に考えてもわかります。地球が暖まりますと,当然,水蒸気の発生量が多くなります。空気が暖まっていますから,空気の中に溶け込む水蒸気の量も多くなります。そして,暖まっていますから上昇気流も起こって,入道雲みたいなものができやすい。こう考えると,至極当然,温暖化が進めば豪雨が多くなるということも理解もできるわけです。  それから,もう一つはこれです。最近の典型的な台風の経路を見たものです。特徴が2つあります。まず,日本のごくごく近海で発生するようになっているということ,そして,勢力を保ったまま上陸して,北海道の方まで台風の輪が行ってしまうということです。  台風というのは,海水温が26度ないし27度で発生します。そうしますと,赤道のあたりで起こるというのがこれまでの常でした。これが貿易風に乗って台湾の方に向かって進みますが,このあたりは海水温が高いものですから,いわば,えさを供給されながら,大きくなりながら台湾に向かっていくわけです。台湾のあたりまで緯度が上がってくると,今度は偏西風が大陸から日本に向かって吹いておりますので曲がり始めます。曲がり始めるあたりから海水温が低くて,いわばやせ細って,ほどよい大きさになって日本に近づいてくるというのがこれまでだったわけです。ところが,最近は,このあたりで発生して,このまま来てしまうという形態が非常に多くなっている。  これは海水温を見てみたものなのですが,千葉の房総沖から横に出ているラインが海水温25度のラインです。それから,台湾から横に出ているのが30度のラインなのですけれども,この間が明らかに台風の発生源なわけです。室戸台風とかああいう巨大台風のルートを見てみますと,このあたりで発生して直進してくるという傾向が強いのです。このあたりの発生で,海水温が高いから,そのままの勢いで来てしまうということにおいて,いつ何時,茨城あたりも強い勢力を保ったままで来てしまうかわからないという構造になっている。これも非常に怖いことです。  現に,こういった傾向はこれから強まるということを明確に示すグラフがこれなのですけれども,これは西暦1000年から西暦2000年までの北半球の気温の動きを見たものです。西暦1000年から2000年にかけて,このあたりは,多少の上がり下がりはありますけれども,ほぼ横ばいできておりますが,このあたりから急に上がり始めます。これはいつかというと,大体1900年です。石炭を世界中で使い始めたころに大体対応しております。そして,ここでしばらく足踏みをするのですが,ここからまた上がり始めます。これはいつかというと,1960年,日本でいうならば高度経済成長期です。石油を使い始めたころです。このあたりから上がって,ここまで来て,今,2000年ですから,もうちょっと上まで来ているというのが現状なのです。我々,夏は暑いとか,冬は暖かいという感覚が非常にありますけれども,この感覚というのはこのグラフでも明確にあらわれているいうことなのです。  だけど,注意したいのは,では,何度上がっているのだということなのです。ここからここですから,マイナス0.5からプラス0.5ですから,平均気温がたった1度上昇しただけで我々はこれだけの異常気象を感じるわけです。  これが,福田さんが首相のときの洞爺湖サミットのときに出てきた資料なのですけれども,21世紀末にこのまま行くとどういうことになるか。無策で行くならば4度上がると言われています。これはえらいことです。本当にえらいことです。無策で行けばということなのですけれども,今,日々,テレビを見ていても,地球温暖化だとか,エコ何とかだとか,そんな話ばかりです。いろいろな対策が今行われておりますけれども,もちろん,世界中が危機感を持っているあかしであり,そのように世界が動いておりますけれども,これが功を奏したとしても2度上がると言われております。これはちょうど地球全体の気候という大きな気候の話なものですから,今,いろいろな万策をやっても,効果があらわれるのはちょっと時間がかかるということ,ちょうど大型船の船がかじを切るようなものなのです。2度ぐらいは覚悟しろと言われているわけです。  これは,1度上がってこんなにおかしいのに,2度上がるというのだから,僕はここを言っているのです。これからの雨というのは,これまで我々が持っている常識とは全く違いますよということをあえて申し上げなければいけないというふうに思っております。  それから,もう一つの心配は,熱帯低気圧の脅威が強まるという話です。熱帯低気圧とは,台風であり,ハリケーンであり,サイクロンであり,同じものです。これが強まると予測されております。  これは地球シミュレーターの予測結果です。現状,世界中で1年間に36個ぐらいの台風が発生しております。そのうち,最大風速が45メートルを超えるようないわゆる巨大台風というのが年間3つぐらい起こっています。これが21世紀末には6個に倍増すると言われております。ただ,台風の数は減るというふうに言われているのです。これは,地球温暖化になると全体が雨が降るというようにイメージしておりますが,違うのです。  例えば,オーストラリアは大干ばつです。要は,地球の場所場所によって気候が荒々しくなるというイメージなのです。日本は豪雨なのだけれども,オーストラリアは大干ばつ。それから,局所的に暑いところがあれば冷夏があるというような荒々しさになってあらわれる。そのあらわれだと思いますけれども,ただ,巨大台風が多くなっていることには注意が必要で,既にハリケーン・カトリーナ,これはアメリカを襲ったものですけれども,こんなものが起こっております。そして,これはハリケーン・カトリーナですけれども,基本的には,巨大台風がそのまま来てしまった高潮水害だったのですが,こんなことになっている。  これは,去年,ハリケーン・グスタフというのが同じくニューオーリンズを襲いまして,高速道路一方向で大変大騒ぎしました。こんなこともありましたし,同じく9月13日にはハリケーン・アイクというのがありまして,最近,しょっちゅう起こり始めているという状態になってきているのがハリケーンです。カリブ海です。  そして,インド洋においても,ミャンマーが高潮災害で13万8,000人亡くなった。これも大変な災害でした。  僕はJAXAの委員をやっているものですから,「だいち」の映像をもらったものなのですけれども,1回飛ぶとこれだけの幅で撮影しているのです。この幅は70キロメートルです。この色のつかったところなのですけれども,これが70キロメートルだとすると,この辺まで色がついていますから,内陸200キロメートルぐらいまで海水が行ってしまうぐらい高潮もえらいことになっているのです。  諸外国では,こういう本当に見るも無惨な巨大台風が起こり始めているという中で,日本ももう時間の問題だというふうに思います。本当にこれは台風だけ起こらないはずがないという観点から言っても,大変なことになるというふうに思っています。  ミャンマーは軍事政権下なものですから,余り情報が流れてこなかったわけですけれども,それでも,そこでの悲惨な光景というのがこのような形で報道されたということです。  実は,日本政府は既にこのような事態を明確に想定し始めております。具体的に僕がかかわっているもので紹介いたしますと,国土交通省の中部地方整備局がスーパー伊勢湾台風というものを想定しております。これは何かといいますと,史上最悪のルートで高潮災害をもたらしたのは御存じ伊勢湾台風です。ことし50年です。伊勢湾の西側を通ると,台風というのはこういう巻風なものですから,伊勢湾の中に風で潮がどんどん入るわけです。それで名古屋あたりが高潮災害でひどかったわけですが,この最悪のルートに,史上最大の台風というのは室戸台風です。上陸時の気圧が910ヘクトパスカルです。伊勢湾台風は929ヘクトパスカルですけれども,伊勢湾台風のルートに室戸台風を乗っけるという,一見,何事もなく聞くと,そんなめちゃくちゃな想定をするのかと言いたいような想定をしているのですけれども,いや,もう現実的かなというふうに僕は今思っておりますけれども,こういう台風が来たときの中京圏の危機管理行動計画を立て始めております。  ここは,国の各機関,それから,自治体,県と名古屋市と,あと市町村,それから,ライフライン関係だとか,道路,鉄道,46機関,52部局でやっております。このときの対応を本当に考えないとまずいというようなところまで,台風については,僕は,茨城についても,ぜひ巨大台風というようなものに対する検討というのは行っていただく必要があるのではないかなというふうに思っているのですけれども,あらゆる項目についても検討をやっております。  ところが,この検討をやっていても,これはどうにもならんわという,正直,そんな思いがしております。240万人の避難です。こうなりますと,この色のついているところがつかるところで,240万人の要避難なのですが,避難というと,これはもちろん,避難対応というのは自治体対応ですので首長権限です。市町村長が対応しなくてはいけない。ところが,例えば,ここらの町というのはどこに逃げればいいのだ。町の中で避難計画など立ちはしません。隣の町も立ちません。みんなこぞって行かなければいけないところは,こういう高台だとかこういう内陸だとかいうことになるわけですが,これは一つの自治体で対応できるような話にはならないということなのです。  そうすると,これまでの防災の枠組みという市町村対応ということからもう一段上の対応になるのではないかなというふうに思うわけです。ところが,この中京圏は結構面倒くさくて,三重県,愛知県,岐阜県とかあるものですから,県の対応というのも難しいなと。これは国かななどということで,だれが対応していいのかわからないような状態の中で,結局,主体がだれかわからないまま,対応がわからなくなっているという状態になってしまっております。ここの対応はこれからが正念場です。  そんな中で,こういうものを見ておりますと,大規模災害にどう対処するかということになってきますと,最近,自助という言葉が言われるようになっておりますけれども,これはこういうことです。公助に限界があるから,住民もお願いしますと自助を頼んできたわけです。ところが,これぐらいのレベルになってくるともう自助も限界です。公助も限界,自助も限界,では,これはどうするのだといったら,公助の限界を上げざるを得ないのです。  公助の限界を上げるとは何ぞやということになるわけです。そうすると,今,確かに災害対策基本法等々含めて,首長権限の中で市町村長に防災の第一線をゆだねているところはあるのですけれども,それを超える事態に対する対応をどうするのかというところは,県だとか,もう少し広域のレベルで考えておかなければいけない事態,これが大規模災害です,というふうに僕は考えております。  一つはそういうことなのですが,大変心配なことに,これだけの気象災害が多くなってくるということになりますと,これまで安全であったということが全然守られなくなってくる。特に治水面などからも言えます。国土交通省が,今のまま行くと,100年後の降水量をおおむね1.1倍から1.3倍,つまり,10%ないし30%増しだというふうに言っているのですけれども,ひどければ5割増しを考えなければいかんなと言っているわけです。  ところが,国管理の一級河川の災害の対応というのはおおむね百年確率です。百年確率というのは,100年に1回降るか降らないかの雨に対する対応を考えているわけです。これが,雨が1割増しになっただけで,50年1から60年1に下がると言われております。もし2割増しだったら,この100年1というのが20年から40年に1回のレベルしか耐えられないということになってくる。  そうすると,これまで安全を担保してきたのは,治水だとかいろいろ批判はありますけれども,三面張りがどうのこうのとか,ダムがどうのこうのとか,いろいろなことが言われますけれども,現にこれだけの被害軽減をもたらしてきたのはこういう防災投資だったことは間違いないわけです。昔を思うと,水害の頻度は極めて少なくなったというのは,こういったものの投資が効果をもたらしたことは明らかだったと思うのです。だけど,それすらきかなくなってくるというこの状態に対してどうするのかということなのです。  では,防災のレベルを上げるといって堤防を高くすることができるのかといったら,これは全然できません。国管理の一級河川が100年確率で日本全国を整備し終わるのに向こう1000年かかると言われております。まだ全然できていないです。できたとしてもこんなことになってしまうということで,これから県民の安全というのをどう保っていくのかということは,もちろん,県としての対応も高めなければいけない。それと同時に,明らかに住民の方の対応も頑張って上げてもらわなければいけないということなのだろうというふうに僕は思います。行政がどうのこうの,住民がどうのこうのという,おまえがやれ,こっちがやれみたいな対立構造の話ではなくて,これだけの事態になったら,行政も住民も共同して,地域の防災力をどうすれば高められるのか。県民の命を一人も亡くさないためには,どうやれば,行政として,住民として,手を組んで頑張ればできるのかという根本のレベルで見直さなければいけないような時期に来ているのではないかなというふうに僕は考えております。  そんな中で,地域防災力の向上は喫緊の課題だというふうに書いたわけなのですが,現状の住民の状況を御紹介しておきます。  このあたりが僕の専門になりますので,僕は現場をとにかく歩いておりまして,被災直後の住民とよく話しをしております。そんな中で感じておることのお話です。  まず,2004年なのですけれども,平成16年,この年は防災行政の転換の年だと僕は自分で思っております。この年は新潟豪雨があった年です。そして,福井豪雨もありました。その後,台風が10個上陸するという特異年です。去年は,ちなみに,1つも台風は上陸しなかったのです。これも特異年なのですけれども,10個上陸した年というのもひどい年です。  新潟は一番はしりであったのですが,新潟はこのときは踏んだりけったりでして,この後,中越地震もありまして,とにかく新潟は踏んだりけったりでした。ただ,ちょっと誤解をおそれずに言うならば,新潟は不幸中の幸いがありました。それは豪雨災害が最初だったということです。変な話ですけれども,仮に地震が最初だったら何が起こっているかというと,堤防がみんな緩んでいってしまいます。そこに豪雨災害となったら,水害があんなもので済まなかったというふうに思うのです。そういう面では,幸いなどという言葉を使うのは不適切ですけれども,どうせ起こるなら,順番がこれでよかったということは言えると思います。  そういうことなのですけれども,この年は,それ以外に,インド洋津波で23万人などということで,清水寺の和尚さんが,毎年,ことしの漢字を書きますけれども,このときは災いという字を書いたのです。  僕は,このときに,群馬県に住んでおりますので,隣の新潟県のはしりのことで現場に入りました。この新潟豪雨を初め,このときというのはほとんど日本海側の河川がやられました。23号台風というのは兵庫の円山川が,豊岡がやられた災害ですけれども,ほとんど新潟豪雨を初め,福井豪雨を初め,日本海側の中小河川がやられております。そうしますと,中小河川がやられるということは,先ほどの都賀川ではないのですけれども,事態の進展が急展開です。避難勧告がなかなか出せないという状況の中で事態が進展します。  そんな中で,僕は新潟豪雨に入ったのですけれども,新潟,なかなかちゃんと情報が出せておりません。三条市は防災行政無線が十分に整備されていなくて,連絡がうまくいかなかったなどということが言われております。それから,長岡市の旧中之島町は避難勧告が出てから9分後に川が切れました。住民,怒る怒る。それはそうでしょう。避難勧告が出たと同時ぐらいに川が切れてしまうわけですから,住民はこうやって車をだめにするわけです。この怒りたるや非常に大きいものがありました。  三条市もそうです。浸水が進んでも避難勧告がなくて避難できなかった。水が来ているけれども情報は来ておらんぞというような状況の中で,市民は怒りまくっているわけです。
     このとき,僕は現地に入りまして,非常に印象深く覚えていることがあるのですけれども,これだけの住民の情報に対する怒りというのはすごかったものですから,これは日本中で声が挙がったのです。政府の対応は極めて早かったのです。まず,国土交通省は,社会資本整備審議会の中に豪雨災害対策緊急アクションプランというのをまとめる会議を持ちました。ここで議論したことは全部情報です。まず,送り手から受け手情報への転換を通じた情報提供の充実,つまり,これは,行政は情報を出せばいいというものではない。もちろん,早く出せと。それだけではだめだと。受け手がそれを受けてちゃんと行動できるような情報の出し方をしろという議論です。ごもっともです。  これは災害時です。でも,それだけではだめだ。平時から情報を出しておけ。つまり,これはハザードマップです。これを受けて,水防法の改正委員会で洪水ハザードマップの義務化が行われるというようなプロセスをたどって,情報の開示というのはうんと進んできたわけです。  内閣府もその検討をしました。特にここは高齢者等の避難支援,いわゆる弱者問題です。避難困難者問題です。水害のたびに亡くなるのは,7割方,高齢者です。避難困難者です。犠牲者をゼロにしたかったらここの対応は絶対に外せません。そんな中でここで議論したことは,避難勧告,避難指示ではもう遅いと。それまでに避難準備を出せということで,全部情報に関する議論だったのです。  ここで,僕は,この3つの委員会の会議なのですけれども,いずれも委員を仰せつかりました。この会議に出たわけなのですが,会議の冒頭で発言をあえて求めました。そこで紹介したことがあります。それは何かといいますと,これは先ほどのフリーアンサーなのですけれども,みんな情報が出なかったことに対して大変怒っていたのですけれども,僕にとってはあれっと思うことがあったものですから,その事例を御紹介いたしました。新潟豪雨での話です。  三条市は,市街地の真横で切れまして,町中が床上1.5メートルつかったのです。床上1.5メートルということになりますと大変な状況になるわけですけれども,まず,基本的に,下水に水が入るものですから,町中臭くて,破堤しているものだから泥だらけになって,泥の処理というのに大変苦労するのですけれども,ボランティアが相当頑張っておりました。日本のボランティアもこういう場面では相当戦力として非常に重要なものになってきたのですが,ここでも大変活躍をしておりました。  このときに,とある平屋建ての60代前半ぐらいのおばさんが一人で住んでおられるお宅に伺ったのですが,そのときの話を非常に印象深く覚えておりまして,今の3つの会議で御紹介いたしました。それはどういうことかといいますと,家に入ってきましたら,畳はもちろん外に出してありまして,床板は水を吸うものですから膨れ上がっておりまして,これはみんなはいであるのです。床下の泥をボランティアがかき出しているという状況だったのですが,そういう状態の中で家の中を案内されました。壁は,床上1.5メートルとなりますと,1.5メートルから下は土壁が溶けて落ちます。竹の骨が出ているという異様な状態の中で家の中に入っていったのですが,大変でしたねと声をかけたのですけれども,そのおばさんは,こんなことになっちゃってねというようなことで,涙ながらに家の中を案内されましたのですけれども,そのときに,「こんな状態になって,おばさん,逃げましたか」と僕は声をかけましたら,「私は逃げなければいかんと思って,リュックサックの中に全部荷物を入れて玄関先まで行っておった。川が危ないという話だったので,隣の家が自主防災の会長の家だったから,隣の家に行って,避難勧告出たと聞きに行ったら,いや,まだ出ていない。出たらすぐに教えてよと言って家に帰った」とおっしゃるのです。  そのうちに,川が切れそうだという話から,切れたらしいよという話が来たものだから,また慌てて隣に行ったというのです。そこで,「川が切れたらしいけれども,本当かね」というふうに聞いたら,「いや,切れたという話は聞いたけど,まだ避難勧告は来ていないよ」と言われたから,「すぐに教えてよ」と言ってまた家に帰った。玄関先ですぐに出られるように準備していたというのです。そうしましたら,水がさーっと入ってきて,破堤しているものですから,水のはい上がりがうんと早くて,あっという間に床上になったというのです。慌てて,平屋建てなものですから,自分の家の一番高いところは台所のテーブルの上だから,そこに大事なものを上げていった。そのうちにそこもいっぱいになり,今度は押し入れの2段目の買ったばかりの羽毛布団をおろして,そこにいろいろ大事なものを据えてということをやっていたらしいのです。でも,そこまであっという間に水が来てしまって,今度は自分がテーブルの上に上がって胸までつかっていた。もう一息で私は死んでいた。最後は念仏を唱えていたなどということを言いながら涙ぐんでおられるのです。「おばさん,そんなになるまで逃げなかったの」と聞いたら,「あんた,水が胸まで来るまでついと避難勧告は来んかった」と怒っておられるのです。  でも,避難勧告がなかったから逃げなかったというこの一辺倒,そのあたりから,僕はこれはまずいなと思ったのは,避難勧告がなかったから逃げなかったと言い張るこの姿勢の問題なのです。そこまで情報依存なのか。なかんずく,これはそこまで行政依存なのか。何でここまで行ってしまったのだろうかということに僕は非常に危機感を覚えました。  今の話を僕は先ほどの3つの会議で御紹介したのです。今,この会議では,いずれも情報がちゃんと出せなかったわけだから,ちゃんと出そうという議論をしている。そのものは大変いいことだ。  だけど,今やろうとしていることは,ちょうどキャッチボールに例えるならば,球を投げる。だけど,相手が球を取ってくれない。だから,もっといい球を投げようという議論をしている。でも,それはそれだけでいいのだろうか。相手をよく見ろ。相手はグローブを構えてないぞという状態なわけです。グローブを構えてないところに剛速球を投げようとしている。それはかえって危険なのではないのか。つまり,申しわけありませんでした,これからはもっとちゃんと出しますということだけを言うと,そうでなくても情報依存になっているのに,そうか,これからはちゃんと来るのかとしか住民は変わりようがないわけです。  僕は,住民が悪い,行政が悪いということは言うつもりはないのですけれども,災害情報をそれなりのレベルで出すならば,それなりのレベルの住民であることが必要であって,ここの間が同じレベルで向上していかないと,あくまで災害情報などというのはインフォメーションでなくてコミュニケーションだと思うのです。相手にもそれなりの状況になってもらわないと,これは本当に危険なことになるなという,この問題意識をお伝えいたしました。  そんな中で,もう一遍,さっきのこの住民の言ったことを読み返してみますと,改めて気づきます。先ほど,委員の方はお気づきになったかどうかわかりませんが,もう一遍読んで見ますけれども,浸水が進んでも避難勧告がなくて避難できなかった。これだけ見ると,これは住民の怒りももっともだなと思うのですけれども,これを読み方を変えてみます。水が来た。だけど,逃げろと言われなかったので逃げられなかった。市の責任は重い。こう読みかえたら,あれって思うわけです。住民のこの不満というのもごもっともという気もする一方で,それに対して,情報が出せなかった市役所の対応が悪かったということを指摘する一方で,水が来た。だけど,逃げろと言われなかったので逃げられなかったという市民も市民だという気もするわけです。  となってくると,防災というのは今何が必要かというのは,本当の意味での行政と住民との共同だろうというふうに思うのです。行政は今よりも高いレベルの防災のレベルをさらに目指すということは,これは防災の土木にかかわるところの行政も頑張ってもらわなければいかん。そして,消防防災の情報伝達の関係の方も頑張ってもらわなければいかん。ということの一方で,住民にも同じようなレベルで努力を求めていかない限り,大変危険なことになるのではないのかというのが僕の問題意識です。  そんな中で,ちょっと言葉がきついかもしれませんけれども,あえてこんな言葉で今の日本の防災の課題をまとめてみますと,現状,住民は余りにも過剰な行政依存状態にあり,そして,情報依存状態になっているというのは否めない事実だと思います。行政が住民を災害から守ってくれる,命を行政にゆだねるという状態が起こってしまっているということです。いわば災害過保護というのか,先ほども言いましたけれども,50年間にわたって全部サービスのベースで来ている。でも,そこで守りきれないところまで来てしまっているのだけれども,まだゆだねようとしているという,ここをブレークスルーするためには,行政の限界,対応の限界というのをしっかり教えていかなければいけない。そして,県民にもそのような対応をとってもらわなければいけないというのが今の現状のように思います。  では,こんな住民にだれがしたということになってくると,行政にも責任があると思います。というのか,このような住民になってしまったというのは必然性があると思います。それはなぜかといいますと,防災施設を中心にこれまで日本の防災というのは進んできました。例えば,国管理の河川でいうならば,100年確率というようなもので堤防の整備をします。ということは,確かにこれによって水害の頻度は低くなったのです。だから,防災施設を整えた土木を中心とした行政はとても悪かったとは言えません。現に,災害の頻度を低くしたわけですから,県民の福祉の向上という面においては役立ってきました。それを否定することは妥当ではないと思います。  だけど,はからずも奪ってしまったものもあります。それは何かというと,例えば,100年確率で堤防を整備するということをしますと,いわばそれ以下のちまちました水害は全部なくなります。それはよかったということの反面,一般に,県民は,こういう水害を経験していく中,もしくは災害を経験していく中で,ちまちました災害を経験していく中で,災いをやり過ごす知恵というものを昔は持っておりました。例えば,あそこは小さな水害でもよくつかる,あそこは湿り地だから家をつくってはいかんぞとか,それから,水が来たときにはこういう対応をしろとか,そういう知恵をいわば100年確率以下のちまちました水害の中で知恵を引き継いできたという側面があります。それを全部奪い去りました。その結果,完全無防備になった住民,そして,堤防ができたから昔と違うわなというような依存状態を高め,無防備になった住民,災いをやり過ごす知恵をなくした住民,それに対して襲いかかるのは100年確率を超えるような大きな災害のみという構造です。無防備になった上に,襲いかかるのは大きいもののみという構造の中で,さあどうするという構造になってきたわけです。  情報などについてもそうです。避難勧告等々,行政の責務であるということに基づいて情報をちゃんと伝えてきました。その結果,避難勧告が出たら逃げてねと言っている間に,避難勧告が出たら,逃げてねでして,避難勧告が出なければ逃げなくていいというようなさっきの新潟のおばちゃんのような状況というのがいっぱいでき上がってしまって,いわば過保護と言ってもいいような状態ができ上がってしまった。そこに大きな問題点を感じるわけです。  それは,これまでの防災というのは,法に裏打ちされたものとしてこういう状態にあります。自然災害に対してはあくまでも行政であって,その加護の下に住民がいるという構造です。これが破綻をしております。災害対策基本法はこういう構造を求めているわけですが,現実としてこれが破綻しているということです。  100年確率で堤防を整備する。確かに災害の頻度は少なくなるから,ハードができると違うねという依存状態も高くなる。だけど,相手は自然です。100年確率を時に超えてやってきてしまいます。何だ,守っていてくれるのではなかったのか。  それから,情報についても,避難勧告を出しますというふうに言っているわけですけれども,都賀川の例とか岡崎の例など見ているとわかるように,避難勧告が必ずしも出せる状態ばかりではありません。何だ,出してくれるのではなかったのかといって,ここでも行政に対する期待の大きさから,それが達成できなかったときの行政批判が生じます。  行政批判はそれなりに対応ができていなければ甘んじて受け取るべきだとは思いますけれども,問題なのは,このたびの災害,行政の対応が悪かった,以上,で終わっていることなのです。記者会見で市長あたりが頭下げて,このように市は反省しております,以後頼むぞというように,市民は行政の対応の改善だけにゆだねて,住民側の対応を改善しようということになっていない。これがずっと続いているということに,もうこれをやめなければいけないという状況が今だと思うのです。  だけど,地域の方々,住民の方々もそれは大体わかってきております。その証拠に,自助,共助,公助という言葉が受け入れられるようになってきているということです。これは大変重要な概念だと思いますが,ポイントはどこにあるかというと,自然災害に向かい合っているのは行政ではないということです。地域社会なのだということです。その中に住民という役割があり,行政という役割があるということ。それは並列であって,行政は行政としてやるべきことをやる。住民は住民としてやるべきことをやる。これがしっかりできて初めて地域の防災力というのが担保できるということなのだろうと思います。  住民のやるべきこと,自分の命は自分で守るという鉄則です。これの再確認です。行政がやるべきこと,今までどおり,100年確率なら100年確率,それなりの範囲で防災施設をつくっていくことはこれからも必要だと思います。その一方で,この範囲までは防災です。災いを防ぐ,防ぎ切ることを考えるのはこれのレベルまでです。それ以上のものがあり得るわけですから,そこの部分が減災なのです。最近,減災という言葉を使うようになってきましたけれども,防災と書くと,災いを防ぐと書くから,防ぎ切ることを考えるのが今までの公務員でありエンジニアだったわけです。技術者魂みたいなものがありまして,災いを防ぐと書くから防ぎ切ることばかり考えて,防ぎ切れないことは考えてはいけないかのごとく振る舞ってきたわけです。けれども,100年確率でつくっているということは,初めからそれを超えるものがあるということでして,それを認めろと。認めた上で,超えた場合は危機管理だと。だけど,ここは何となくやってはいけないような雰囲気,エンジニアとしての恥みたいなところがあるので,ちょっとおくれたのかなというような気がいたします。でも,これは明確に超えることを前提にした対策をとっていかなければいけない。これが減災であり,危機管理である。  それと同時に,住民に言わなければいけないです。行政は全部守り切れません。守り切れないということを明確に言わないと,住民は守るという心構えができないからです。ただ,自分の命は自分で守れと言い放っても,高齢者のひとり暮らしの人にそれを言い放ったところで,それはできませんので,間に挟んで,地域としてお守りするという体制を整えるということが自助,共助,公助という枠組みで,これが社会に受け入れられるようになってきているということだろうと思います。  だけど,この自助,共助,公助という考え方も,これだけでは固定的過ぎるかなというふうに思っております。といいますのは,公助ってだれがやる,こう言ったときに,行政だと言うのだったら,ちょっとこんな言葉はないのですけれども,あえて行政がやることを官助と言ってみよう。それに対して民助という言葉を定義するならば,僕は,民助の中にも自助,共助,公助というのがあるのではないのかなというふうに思います。  例えば,茨城で話すには不適切な例かもしれませんけれども,雪深いところでは雪おろしなどというのがあります。自分の家の雪をおろすのが自助である。隣のひとり暮らしのばあちゃんの家の雪をおろしてやる。これは共助である。おろした雪はどうするか。下手すると,今ですと,住民は役場に電話して,おい,家の前の雪片づけろぐらいのことを言ってくるわけです。でも,地域の生活道路の雪ぐらい,みんなで何とかしようよと,昔ながらそういうのはやることでした。そうなると,住民がやるべき公助みたいなところもあると思うのです。つまり,民助力が高いとは,自分のことはもちろん自分で,そして,隣のばあちゃんのことをちょっと気遣ってやる気持ちがあること,そして,地域の安全,地域の快適性といったものをみんなで守ろうというコミュニティの意識があるようなこと,住民側の民助の中の自助,共助,公助がそろって民助力なのではないかというようにも思うわけです。  最近のコミュニティの動きの中でこの辺が大分厳しいなという状況を思うわけなのですけれども,だからといって,ここの部分をみんな官助でやるというのは無理があるなというのも正直なところなのです。  そんな中で,今,地域防災力というのが非常に重要だということはわかっていただいたと思うのですが,これが非常にうまく機能したという例を2つぐらい御紹介したいと思います。ここは茨城県ですけれども,私は群馬に勤めておりますので,群馬のお国自慢をちょっとさせていただくのですが,平成19年の9号台風というのが群馬県を久しぶりに襲いまして,昭和22年のカスリーン台風以後,最大の被害をもたらしました。  南牧村という村があります。これは,高齢化率日本一です。60%ぐらいです。何と日本一の高齢化率の村が群馬にあると僕も知らなかったのですけれども,じいちゃん,ばあちゃんばかりです。山の中の長野県境のところなのですが,ごらんのように山の中ですからV字谷です。谷があって,その谷沿いに道があるということなのですけれども,こういうところですから,すぐにあふれかえって石がごろごろ流れる。ここは決壊しておりますけれども,すぐに孤立ということになるわけです。  こんなところですから,新聞は孤立孤立と書き立てるのですけれども,山の中のV字谷というのはこんな状態になるわけです。どっちが川かというぐらいなのですけれども,こっちが道でこっちが川です。これも流れた後。これもそうです。こっちが川でこっちが道なのですけれども,ほとんど一緒になってしまう。これもV字谷のこういうところに人が住んでいる。茨城でも山合いの方ではこういったところもあると思うのですけれども,こんなところで日本一の高齢化率という状態だったのですけれども,高齢化率日本一の中で犠牲者はゼロだったのです。  僕は,この災害の後,現地に入ったのですけれども,まず,村に近づいて村に入ったら,全部あっちこっちが崩れておりまして,道はこういうふうに決壊はしているし,家はこんな状態になっているし,相当犠牲者が出てもおかしくないなという実態の中で,犠牲者はゼロでした。理由はどこにあるかというと,役場の対応が極めて見事だったということと,住民の対応が極めて見事だった。さっきの言うところの官助,民助がともにすばらしかったというところにあります。  まず,官助の方から御紹介をいたしますと,これは南牧村です。川沿いに道がありますから,主要な河川イコール道路と言ってもいいです。主要な谷が入っていて,そこに林道みたいなのが入っていて集落がある。崩れるものですから,この色のついたところが孤立化するわけです。新聞はこれを孤立と書き立てるわけですけれども,それは孤立もするわなというような状態なわけです。ここで土砂災害警戒情報というものが出ました。これは県の砂防部局と地元の気象台が連名で出す,市町村単位で出す土砂災害警戒情報というものがあります。暗にこれが出たときには,避難勧告をお出しになったらいかがですかぐらいの意味合いがあります。それぐらい厳しい状態です。  さっきの山口の例でも,この土砂災害警戒情報が出ていたのに避難勧告が出ていなかったという状態なのです。ところが,ここの村は,土砂災害警戒情報が出た後,迷いなく避難勧告を出しませんでした。出せなかったのではなくて,出さなかったのです。理由は,これは小さな村です。市町村合併をしていないものですから,役場の職員は村人のことをよく知っております。ここの沢のこのじいちゃんは,最近,若い者に免許を取り上げられて免許の更新をさせてもらえなかった,今,すねているなどということまで知っているぐらい役場の職員が村人のことをよく知っております。それぐらいの役場の職員ですから,この人たちに避難勧告を出すということは,あの道を通ってここまで出てこいというのが避難勧告です。とても避難勧告など出せっこない。あの道を,あのじいちゃん,ばあちゃんにここに出てこいということはあり得ないということで,そのかわり,役場の職員は,非常に早い段階から,これから役場も行けなくなります。地域の中で何とかこの難局を乗り切ってくれ,低いところの人は高いところに上げてもらってくれ,こういう呼びかけを何度も何度もしたのです。  僕はこの対応は見事だった思います。霞ヶ関からはおしかりを受けました。でも,僕はこの役場の対応は見事だった思います。  それにこたえた住民もいました。このおばあさんの家は,ふだん,隣は空沢で,水が流れていないのですけれども,谷があるのです。そこがいっぱいになって家の中に水が流れ込んできたのですが,このおじさんは,群馬はこんにゃくの産地なものですから,こんにゃく芋を入れる麻袋を持ってきて,土のうをつくって防いでくれた。ご近所の底力ではないけれども,ありがたかったと言っております。  このおばあちゃんは谷沿いに住んでおりまして,裏にがけがあって,そのがけの上にこのおじさんの家があって,この人が軽トラで迎えに来てくれたのです。まだいいというのを無理やり連れて上へ上がって,下を見たら家の中を水が流れていた。命の恩人だと言っているわけです。  この村は日本一の高齢化率ということは,自助という面で言ったら日本で最低です。だけど,こういった地域の力,コミュニティの力,共助の力が日本最低の自助力を補って余るほどの,そして,犠牲者をゼロにすることができたというあかしなのです。住民の力というのが,最後,本当に大きいのだということをまざまざと見せつけられた災害でして,これは群馬のお国自慢として,あっちこっちで講演をするのですけれども,この話はすることにしています。  それから,もう一つ,新潟豪雨なのですけれども,これもそうなのですが,これは旧中之島町です。これは被災前,被災後です。ごらんのように被災後の方は茶色くなっておりますけれども,刈谷田川というのが流れておりまして,一番危ないところは,川が蛇行しておりますので,ここになります。水衝部,水が当たるところです。ところが,切れたのはここです。  僕は,この後,現場に入っておりまして,あれっと思いました。まず,切れたのは何でここなのだということです。向こうを見ると,このように土のうを積んであるのです。僕は橋を渡って,ここの集落に行って話を聞いてきたのです。これは旧中之島町なのですが,飛び地で,猫興野という一つの集落だけがここに飛び地であります。  ここの自主防災の会長のお宅へ行って話を聞いてきて,大変に感動いたしました。どんな話をされたかというと,ここの自主防災の会長さんは,自分たちは,昔からここはよく切れる危ないところだと知っている。じいさん,ばあさんからよく聞いておった。危ないということがわかっているから,おれは自主防災の会長としてすぐ川の堤防に上がってみた。そうしたら,近所の衆がみんな上がってきていた。みんなで川を見ておったのだけれども,余りにも水の上がりが早いということと,濁り方がおかしいぞということで,おれは自主防災の会長として,ここに来ている人たちみんなにすぐに帰ってくれと言って家に帰ってもらった。帰って,近くの年寄りと子供は避難所にやってくれと。地域に残っている若い者には,みんな出てきてくれと頼んでくれと言って,みんな出てきて土のう積みを始めたのです。みんなで土のうを積んでいたのですが,水の上がり早くて,これは相当長い距離積んだものですから大変なのです。なかなか追いつかないのです。そのうちにこれがあふれ出したのです。越流が始まると堤防が切れる可能性が高まります。堤防から向こうに水が落ちると根元を洗うのです。堤防がやせ細っていって,最後,ばーんと破堤するという構造が多くなって,非常に危険な状態になるものですから,いよいよ撤退しなければいかんということで相談をし始めたやさきに,水位がふっと下がったというのです。見たら向こうが切れていたということなのです。  こういった中で,ここの地域は,自分たちの地域の危険を知り,そして,自分たちの力で対応し,自分たちの地域を守り抜いたのです。  僕は調査をしてみました。そもそも川の右岸の猫興野地区と左岸でどれぐらい危険があると思っていたのかというのを聞いてみますと,右岸は,半分以上の方が,家が押し流されるとか,1階の半分以上がつかってしまうというような思いが半分ぐらいあります。こっちは30%ぐらいです。この数字が,そのまま,その日,川を見に行った人が右岸が50%,左岸が30%なのです。危ないと思っているから自分たちで見に行っているのです。さらに,土のう積みに参加した人は,水防団として参加した人が10.5,10.9で同じようなものなのですが,右岸は個人として参加したというのは3割ぐらいあります。そうすると,4割の世帯が土のう積みに出ているのです。こっちはそれが十五,六%しかないのです。残りの6割というのはほとんど高齢者世帯でして,土のうが積めないような世帯ですので,こっちはみんな出てきて土のうを積んだのです。これは自主防災力が高いというふうに言えないでしょうかと思うわけです。  この中に行政に対する依存というものは見えないし,それがなくて頑張っていたところが被害を免れているという例を見ていると,僕は,自分の思いとして,行政もやるべきことをしっかりやる一方で,さっきの民助力,住民の側の対応力をいかに上げていくのかというのが,今,本質的に重要なのだと。脆弱な住民をつくってしまったのも,いわばこれまでの行政主体の防災の影響なのだというようにも思うわけです。  とかく県民サービスの一環として防災行政というのはあるわけですので,そこのレベルを高めるということ,そこに目が行きがちなのですけれども,本当にそれだけでいいのか。防災というようなものは,手をかければかけるほど子供が脆弱になっていくような構造がそこにはありまして,今,本当にわかってもらわなければいけないのは,限度がある。これからは違うぞ。これからは地球温暖化の影響等々で大変厳しい状態になる。そうすると,もう追いつかないよということも含めて県民に広く周知し,住民の自助力というものを高めておくことの必要性を,こういう事例を見ながら,本当にひしひし感じました。  もう一つ,事例はあったのですけれども,時間なのでこれでやめますが,もう一つは,地震のことを申し上げておくならば,地震も多発期に入っております。この岩手・宮城の内陸型地震も隠れ断層で起こっておりますし,新潟の中越地震も隠れ断層でした。わからないのです。ある断層だけでの議論をしていてもしようがないと思います。これを見ているとわかるように,地震によってがけが崩れるのではないのです。山体崩壊です。ここはたまたま人がそんなに多くなかったものですから,犠牲者がべらぼうな数にならなかったからよかったようなものの,これが都市部の近郊で起こっていたらえらいことになっていたなと思います。  地震も,特に海溝型については津波を伴いまして,これは,ここのところ10年間ぐらいの被害をもたらした地震の分布を見たものなのですけれども,全国どこでも起こっているような状況になってきております。特に海溝型については,100年から150年の間隔で確定的にやってきます。ここらあたりでかかわりそうなものだと,マグニチュード6.8というような想定のもとでなのですが,向こう30年の間に9割,90%だというふうに言われております。  こういうのもあくまで単なる想定でして,マグニチュード6.8でとどまるという保証は何もありません。向こう30年というふうに確率表現されますけれども,特に南海などというと50%で,来るも来ないも半々などというふうに住民は思うのですけれども,この期間をちょっと延ばしたら100%なのです。プレートが年間に8センチぐらい潜り込んでおります。これは10年たつと80センチメートルです。100年たつと8メートルです。これぐらいになってくると耐えられなくなって,ぽきんと折れるとか,びゅんとはね上がるとか,こういう形で100年から150年間隔で必ず津波を伴うような大きな地震というのは起こります。それがいつなのかという話になっておりますので,これに対する備えというものもやっていただく必要があるということです。  ちょっとつけ足しのようになりましたけれども,最後に,一つ,委員の方にぜひ御紹介したい言葉がありまして,居安思危という言葉をぜひ覚えておいていただきたいなというふうに思います。これは,安きに居りて危きを思うと読むのですが,この言葉というのは余り知られておりません。ただ,三段論法の三段目は委員の方も御存じです。これは何て書いてあるかというと,備えあれば憂いなしです。これは余りにも有名です。だけど,備えあれば憂いなしというのは言ってみれば当たり前なのです。備えておけば憂いなどなくなるのは決まっているのだけれども,備えられないのが人間で困っているわけです。  それはなぜかというと,安きに居りて危きを思う。幸いにもまだ起こっていない,安き今です。本当にそのときのことを思えるかどうか。思えばすなわち備えありとつながるわけです。備えあれば憂いなしと当然の形でつながるわけなのですが,日本の首相あたりは,この備えあれば憂いなしと国会で言うのですけれども,中国の温家宝首相は全人代でこの居安思危を言います。これは孔子の春秋の中の注釈書がありまして,左丘明という人の左氏伝というのがあります,その中に書かれております。春秋そのものに書かれているわけではないのですけれども,大変中国では有名な言葉なのですが,日本ではなぜか三段目だけが知られているということなので,危機管理の基本は,幸いにも起こってない今,本当にそのときのことが考えられるかどうかというところに大きな大きなポイントがあって,これぞ危機管理の基本かなというふうに思っておりまして,この言葉を最後に紹介して,私の話を終わらせていただきます。  雑駁な話で恐縮です。以上で終わらせていただきます。 30 ◯鈴木(徳)委員長 どうもありがとうございました。  これからは意見交換の時間とさせていただきます。  ただいまのお話について,委員の方で,何か意見,また,質問がありましたらお願いいたします。  五木田委員。 31 ◯五木田委員 五木田ですけれども,これは全部大変参考になったから,意見も何もないのですけれども,この考え方,今,言ったように,自分のことを自分で守らないで,全部責任は行政だとか,そういう系統の問題は,その前に,最近あった旭岳のトムラウシの遭難,私も山を散歩のようなことをやっていましたけれども,自分が人のせいにして,遭難したのは,死ぬのも自分なのです。  それから,もう一つは,生物の方が専門なのですけれども,毛虫は嫌いだけれどもチョウチョウは好きだと。あれは親子関係なのだよね。みんなそう。日本人に聞いて,毛虫を持ってくれというとだれもやらない。あれはきれいとチョウチョウのことを言っている。この感覚は日本人特有なのです。  だから,政治で言えば,小泉さんがあの調子で出たときは,よくても悪くてもあそこへ行ってしまって,今回はその反対。これは答えなくてもいいけどね。みんな流されてしまう。そうすると,社会人文学的災難の教育というのが一番不足しているのではないかと思う。ここは環境商工委員会だから,一番そのもとをつくるし,本当は教育委員会の方でもちょっと考えてもらわなくてはならないのだと思いますけれども,その辺のトムラウシを含めて,日本人のちょっと甘いところ,人にゆだねる。さっき,いいところを報告いただきましたけれども,南牧,下牧,上牧,あの近くだと思いますけれども,だから,そこら辺についてお考えがもしありましたら,ひとつお聞かせ願いたい。 32 ◯片田参考人 ありがとうございます。  非常に委員の御指摘のとおりでして,日本の構造というのは何も防災だけではないというふうに思っております。例えば,学校で事故が起こる。そうすると,その責任はだれが負うのだ。これは全部学校の先生だと。そうすると,先生は責任を負わされるのは嫌だから,川には近づくなという教育をいたします。そうすると,子供たちは,より川の流れる水というものの恐ろしさというのを知らない。事故がいっぱい起こるような脆弱な状況ができ上がってしまうわけです。責任をどこかに持っていく,責任をだれかに持っていくという構造が非常に強くて,また,こんなことを申し上げていいのかどうかわからないのですけれども,裁判をやっても,やはり学校の先生が悪いという判断をしてしまうわけです。こんなものまで含めて考えると,自己責任とか,そういったことに対する考えが非常に弱いのが日本社会の特徴かなというふうに思います。  アメリカの防災対応を見ていて非常に感心することがあります。フロリダですとハリケーンの大きいのが来ます。カテゴリー5ですから,瞬間風速70メートル以上というすごいのが来ます。そうしますと,フロリダは高速道路を一方通行にしてみんな外に出すわけです。でも,あれはエバケーションオーダーと英語で言いますので,日本語で言うならば避難命令で強制力を伴っております。なのに,逃げない人がいます。そうしたときに行政はどういう対応をとるかというと,ここは日本と根本的に違います。まず,最終通告に自治体の職員が回ります。避難命令です。最後に通告いたします。逃げないと言うのです。わかったと。そうすると,左手を出せといって手を出させて,ここにタグをぱちんとはめます。これは,「最後に,おれは通告をしたぞ。このまま死んだらおまえの責任だぞ」。それから,最後に言うことがしゃれています。「おまえが水死体で発見されたときに遺体判別がすぐにできるようだ」と言って行くわけです。  ここで明確に自分の命に対しての責任というものが,行政としての責任は,避難命令をちゃんと伝えるということ,責任はちゃんとやったというあかしにタグをはめるわけです。住民はそれでも逃げないというのだったら,おまえの責任だということ,自分の責任においてそこにいるのだということ,それを認めるというのか,死ぬのも自由な国なのです。こういうのを思うと,だれに責任を転嫁するでなく,そこの厳しさというのは極めて明確にあると思います。  アメリカというのは確かに自由な国なのですけれども,グランドキャニオンなどに行っても,柵が張ってあるところなどどこにもありません。ここから先は危ないとは書いてあります。けれども,その向こうにおりた後がいっぱいあります。毎年,たくさんの人が向こうにおりて死んでおります。自殺ではないです。事故で死んでおります。でも,危ないと書かれているにもかかわらず,自分で向こうに行って落ちて死んだのであれば,それはその人の責任であるということ,こういう自由であると同時に,そのとった帰結というものに対する責任も自分のものだという考え方がしっかりしているところにこの社会が成り立っているように思います。  山だけは自己責任というのは徹底できています。さすがに厳しい状況ですから,山へ行って死んだら自分のせいだという話になります。だけども,そのほかの問題については,とかく管理者はだれだという話になっていく。この辺のところというのは,単に社会システムが悪いと言い放って終わるだけではどうにもならなくて,教育だとか,そういったことも含めて取り組んでいかなければいけない問題だろうというふうに思いますし,これまで築き上げてきた日本の社会を一朝一夕に大きく変えるということはできるとは思いませんけれども,少なからずとも,防災については,これからそういった社会にしていくための非常にいい材料になると思います。  どうにもならない強烈なものが来るわけですから,昔,星飛馬という漫画がありまして,星一徹というめちゃくちゃなおやじがいました。ああいうおやじがいるところでは兄弟は仲いいです。とてもけんかしている余裕はありません。それは,べらぼうなおやじに対してどう対処するかという相談をしなければいけないからです。優しいおやじですと兄弟げんかというのはよくあるわけです。  これから自然災害,すごいのが来るぞ。そこで行政だ住民だと言っていられないのだ。ともに手を組んで何とかここに向かい打とうというものの中で解決していくような方向性というのを探っていく。そんな教育も,学校教育なども含めてやっていっていただく中で解決をしていただきたいなというふうに思います。 33 ◯鈴木(徳)委員長 ほかに。  なければ,それでは,以上で,「大規模災害に備えた行政の課題」について,意見聴取を終了いたします。  片田様には,貴重なお話を大変ありがとうございました。  本日お話しいただいたことにつきましては,今後の委員会審査の参考にさせていただきます。どうもありがとうございました。  以上で意見聴取を終了いたします。  「中小企業活性化雇用対策」及び「大規模災害等に対する危機管理」につきましては,今後も閉会中の委員会等で審査を進めてまいりたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。  これをもちまして,委員会を閉会いたします。  長時間,御苦労さまでした。                  午後4時46分閉会 Copyright © Ibaraki Prefectural Assembly, All rights reserved. ↑ ページの先頭へ...