提出者
茨城県議会議会運営委員会委員長 白 田 信 夫
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日程第1 第97号議案=ないし=第114号議案,認定第1号,報告第3号
3 ◯議長(桜井富夫君) これより議事日程に入ります。
日程第1,第97号議案ないし第114号議案,認定第1号及び報告第3号を一括して議題といたします。
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会派代表による県政一般に関する質問並びに上程議案に対する質疑
4 ◯議長(桜井富夫君) これより,会派代表による県政一般に関する質問並びに上程議案に対する質疑を許します。
自由民主党新井昇君。
〔58番新井昇君登壇,拍手〕
5 ◯58番(新井昇君)
自由民主党の新井昇でございます。
党を代表いたしまして,県政の諸課題につきまして,通告に従い,橋本知事,教育長,警察本部長に質問いたします。
まず,質問に先立ちまして,6月14日に発生した岩手・
宮城内陸地震,7月24日に発生した岩手県沿岸北部を震源とする地震の被災者の皆様に対し,お見舞い申し上げます。
毎年のように大きな地震が起きており,被災者の大変な御苦労を見聞きするたびに,改めて,自然災害への備えはもちろんのこと,
国民生活全般にわたる安全対策の重要性をかみしめているところであります。
また,2週間ほど前に成功裏に閉幕した,アジアで3カ国目の
オリンピック,
北京オリンピックは感動の連続でありました。史上最多の204の国と地域から若者たちが北京に集い,歴史に名を刻む
スポーツドラマを繰り広げましたが,日本代表の若者たちが,そして,我が茨城県から参加した選手たちが,さまざまな競技で正々堂々と力の限り競い合ったシーンに感動を覚えました。
中でも,ロシアとグルジアの武力衝突直後の女子10メートル
エアピストルの表彰式において,両国の選手が肩を寄せ合って健闘をたたえあったその光景には大変感銘を受けました。見る者すべてに,平和の尊さや大切さを改めて認識させるものであったといえます。
さて,国家の本分は常に蒼生安寧を図るところにあります。国民が安心して生活を送れるようにする,これこそが政治のすべてであるという意味であります。政に責めを負う政治家は片時たりともこれをおろそかにしてはならないと思います。
しかし,国会は,歴史上まれなる混迷に陥り,国民の不安はもとより,国際的な信用をなくしかねない現況であります。
ここは県政壇上ではありますが,私は,あえて,今,国会議員の皆さんに声を大にして申し上げたい。政争の具にしてよいものと,すべきでないものとの区別をぜひともつけていただき,国家の大局を誤らぬよう,軽挙を謹んでいただきたいのであります。
国は,構造改革の名のもとに,歳出削減と規制緩和に取り組んできました。その結果は,
社会保障費の個人負担の増加と派遣労働法の改正による非正規雇用の増加でありました。これらの政策により,安心立命の余地が奪われたと感じた国民は,昨年7月の参院選において,その意思を我々
自由民主党に突きつけたと思うのであります。その結果,参議院で野党が多数を握り,議長職を手に入れた状況について,私はそれほど悲観すべきものではないと思っております。むしろ,歓迎すべきであろうとすら思っているのです。それは,我が
自由民主党は必ずやこの困難に耐え,みずからを鍛え直すからであります。そして,一回り大きく強くなって,いま一度,国民,県民の十全たる信を得ると信じて疑わないからであります。
このような国会の混乱の中,
地方分権改革の進展により,地方自治体の権限や機能が拡大してきており,地方議会の果たすべき役割と責任も,監視機能から
政策立案機能という分野にまで活動を広げてきております。
このような地方議会の実態等を踏まえ,山口武平元議長が
全国都道府県議会議長会の会長時代に,国に対して,地方議員の位置づけの明確化を要望しました。この要望が地方自治法の改正となり,さきの国会において,
衆参満場一致で可決されました。
また,
茨城県議会が国に対して提出しました,青少年に有害なサイトの規制についての意見書の趣旨を踏まえた法律も,同じ国会中に成立を見ました。
このように,議会においては,国に対して地方の意見を示し,成果をおさめているところであります。
地方においては,
地方財源対策や
社会保障制度の抜本見直しなど,みずからの努力だけでは解決できない問題が数多く噴出している状況にあります。
知事におきましても,県民福祉の向上のため,国から任された仕事を行政マンとしてこなすだけではなく,地方自治の専門家として培った豊富な経験と4期15年の間に知事みずからつくり上げてきたネットワークを生かし,国を動かすような行動を起こしていただきたいと期待する次第であります。
それでは,知事に対し,大きな期待を胸に秘めながら質問をさせていただきます。
初めに,格差社会についてお伺いします。
まず,参考として,米国の状況を一べつします。2006年の数字によれば,米国の上場企業,SP500の構成企業500社において,CEOすなわち社長たちは,1人平均1,478万ドルの報酬を得ております。円に換算して,1人の社長が1年間に約17億円を受け取っていました。それが
米国上場企業の平均的姿であります。しかし,日本においては,国中を探しても,これだけの年俸をもらっている上場企業の社長は皆無でありましょう。
また,米国において,ごく普通のCEOの年収と
平均的労働者の年収との格差は,2005年時点で411倍です。我が国の場合,おおむね10倍から20倍の範囲におさまります。近年,これがとみに拡大中だという実態もありません。したがって,米国の専門家からすれば,日本のどこが格差社会なのかと首をかしげるかもしれません。にもかかわらず,現実は,非正規雇用の増加等による格差拡大が声高に言われております。
ここが,政治に携わる者として肝に銘じておかなければならないところですが,印象というものは,やがて,それ自体が実態になるということであります。だとしたら,それは一つの確固たる
政治的リアリティー,有無を言わせぬ現実であります。
かような意味において,格差の現実を痛感しているのは,県内の
中小零細企業であって,そこに働いている主として高齢の労働者であり,都会の片隅で展望のない暮らしを営む,あすへの焦燥感にかられている県内出身の若者であるかもしれません。
そこで,格差社会についてどのように認識しているのか,知事にお伺いをします。
次に,財政再建の推進についてお伺いします。
毎年,
社会保障費は1兆円規模でふえております。しかしながら,保険料や医療費の個人負担をふやすやり方はほぼ限界に近づいており,消費税の増税が議論されなければならない状況となっています。
その増税に対して国民が不信感を持つのは,
道路特定財源で6,000億円,7,000億円という余剰金が出るとわかっていながら,
社会保障予算は2,000億円程度を習慣的に削減するという,常識では信じられないミスマッチがあるからであります。
その上,ねじれ国会のため,消費税の増税問題が政治の駆け引きに利用される状況にあります。
自由民主党は,高齢者や低所得者,家計を預かる主婦たちを感情論で揺さぶるばかりの野党に対し,財源の裏づけを持った政策を堂々と示すべきであります。有権者は,両党の政策論争を通じて,どちらに国を託すべきか理解できるはずであります。
私は,増税政策を語り切ることこそが大切であると思います。
しかしながら,国においては,選挙を意識し,増税論議を避ける傾向にあり,
交付税総額の確保は難しい状況にあります。
一方,国は,地方への税源移譲にあわせ,国,地方合わせて800兆円ある借金のうち,国の借金約600兆円の一部を地方に肩がわりさせようと考えているとの話を聞いております。
また,国の
地方分権推進委員会においては,地方が主役の国づくりに向け,地方の活性化を図るのが望ましい旨の提案をしております。
借金は地方に肩がわりをさせ,地方経済の活性化は各地域の独自の方策で推進しろといわれても,地方は,交付税の削減ばかりか,
少子高齢化による義務的経費の支出が増加しており,自由に使える財源はほとんどないのが現実であります。国のように,赤字国債の発行等による独自の収入確保策もほとんどありません。
私は,地方の活力を取り戻すためには,地方を身軽にしなければならないと考えております。国の思惑とは逆に,国と地方で持っている800兆円の借金のうち,地方の200兆円すべてを国が肩がわりして,地方の借金をゼロにし,そこから地域間競争による活性化を促していかなければ,地方の繁栄はあり得ないのではないかと考えているからです。さもなければ,なけなしの県民の貴重な税金は
義務的負担分として支出されてしまうのみであり,
地域活性化に不可欠な事業に投資することはできず,元気な
いばらきづくりなど,単なる夢物語で終わってしまいかねません。
そこで,消費税の増税による
交付税総額の確保が難しい中,地方財政に精通している知事としては,どのように財政再建を推進していくのか,御所見をお伺いします。
次に,補助金のあり方についてお伺いします。
都市と地方のあり方を考える際,何が大前提,土台となるべきなのか。それは,「ばらまきでなく,経営を」に尽きると私は思います。
ばらまきには2つの弊害があり,一つは,無論,財政の累積赤字をふやすわけにはいかないという点であります。将来の世代を負債でがんじがらめにしてはなりません。第二に,ばらまきというと,いかにも地方に甘いとの印象がありますが,これは,地方の事情や独自性をほとんど無視し,結果として,無益な仕事しかできなくさせているという意味では,むしろ積極的に害悪になると考えております。
長野県栄村の例でありますが,この村は豪雪の地にあり,村長さんは,除雪作業が楽になるよう道路を広げたいと考えました。ところが,国の補助金でやろうとすると,道路の幅を6メートル以上にせよとか,規格を一律に守らなければなりません。除雪を楽にするには,3.5とか4メートルの幅があればいいので,村の単独事業でやることにしたそうであります。すると,補助事業の場合に比べ,費用は3割以下,工期は10分の1以下で済んだというのであります。地方自治体が十あれば事情も十あります。地域の事情に合った事業を進めてこそ経済効果が上がり,住民福祉につながるはずであります。すなわち,短期的には,
補助金交付のあり方を地方の経営感覚を促すインセンティブを持たせるようにすべきだと考えております。
また,地元の要望は,ひもつきの補助金ではなく,自由に使える財源を充実してほしいということであります。
三位一体の改革は大改革であったと思いますが,補助金を全廃できなかったことは,国と地方の財政再建を進めるためであったとはいえ,地方自治体は厳しい財政運営を強制されました。
かつて,私の持論,
独立国いばらきの気概を持てとの質問に,知事は,税源を移譲し,歳入の確保を図ると言い切りました。私も,知事の見解と同様,長期的には中央からの補助金を全廃し,その分を地方税に税源移譲するか,交付税に上乗せするか,どちらかにすべきであると考えております。
県としても,我々議会とともに,大きなうねりとして,補助金のあり方について,国に対して積極的に対応を迫るべきであると思います。
そこで,補助金のあり方がどうあるべきか,知事の御所見をお伺いいたします。
次に,
道路整備財源の確保についてお伺いします。
道路特定財源の
暫定税率維持を盛り込んだ
税制関連法案が再可決されたことにより,5月1日から暫定税率が復元されたとはいえ,地方を巻き込んだこの混乱を招いた政治の責任は非常に重いものがあります。総理を初めとする政府と与野党の双方に深い反省を求めたいと存じます。今後,このような国会の混迷を地方に持ち込まないようお願いする次第であります。
このような中,政府は,暫定税率分を含めた税率を今年の
税制抜本改革時に検討することや,
道路特定財源を一般財源化することについて閣議決定し,今後の
道路整備予算の確保が不透明になりました。
しかし,地方においては,いまだ道路の整備は道半ばであり,今後も道路整備が必要なことは言うまでもありません。特に,生活に重要な道路の整備は必要不可欠であります。
そこで,このように政治状況が混沌とする中,いまだに不十分な道路整備を進めるため,どのように財源確保に努めていくのか,知事の御所見をお伺いいたします。
いまさら申すまでもありませんが,
行財政改革に当たり,一瞬たりとも県政の空白をつくらず,知事としての職責を尽くそうとされる,その決意を支持しております。そこで,平成21年度予算編成に臨む知事の覚悟についてお伺いします。
平成20年度の予算編成に当たっては,平均で8%という大変厳しいシーリングの設定や徹底した歳出削減,
歳入確保対策を講じながらも,最終的には,
県債管理基金からの繰りかえ運用により,何とか予算を組むことができました。
平成21年度予算編成も,我が国の景気がこのところ弱含みであり,今後も,米国経済や株式,為替市場,原油価格の動向等によっては,景気がさらに下振れするリスクが存在することから,大幅な税収増の見込みはなく,
少子高齢化による
社会保障費等の経費は大きく増加が見込まれ,今年度の予算編成以上に大変厳しいものになるのではないかと憂慮しております。
平成20年度予算の
財源不足対策350億円を見てみますと,そのうちの30%,105億円を職員給与のカット分が占めております。この
職員給与カットについては,
行財政改革大綱にもあるように,平成19年度から当面2年間実施してまいりました。来年度も厳しい財政状況であり,職員給与のカットなしに予算編成を行おうとすると,非常に困難な作業になると見ております。
しかしながら,私は,あえて,来年度予算においては給与カットを実施せずに編成する決意を持っていただきたいと思うのであります。最近の県庁職員の方々を見ますと,職員削減の中で,一人一人の業務量が増し,日々の仕事に追われ,疲弊し,熱意を感じられないからであります。職員のやる気を引き出し,士気を高めることにより,この危機を乗り越えてもらわなければ,あすのいばらきは光り輝くものにはならないのではないかと考えるからであります。
そこで,平成21年度の予算編成に臨む知事の覚悟をお伺いいたします。
次に,基盤整備についてお伺いします。
人口減少時代にあっても,茨城の活力を維持していくためには,人,物,情報の交流基盤の整備を進めるとともに,商工業や農業の振興を図り,雇用の場を確保していくことが大切であります。このため,
北関東自動車道,常陸那珂港,茨城空港などの整備と活用の促進が何よりもまず必要であります。
そこで,まず,栃木県,群馬県との広域連携についてお伺いします。
栃木県,群馬県,茨城県の三県をつなぐ
北関東自動車道が平成23年度中に全線開通します。この自動車道が開通しますと,県内において整備が進む茨城空港や常陸那珂港などのインフラは,北関東全体の地域資源としてとらえることができます。
そこで,我が
自民党県連は,このインフラの利用促進に向け,栃木,群馬県との連携強化を目指し,両県の
自民党県連を訪ね,幹部県議らと懇談をいたしました。懇談では,観光ルートの開発や物流の活性化方策について意見を交わし,今後,三県が定期的に交流し,北関東の議員の連携を深めていくことを確認するなど,大きな成果を上げたところであります。
私は,
自民党県連が行ったような交流が,三県の各界各層において継続的に実施されていくことにより,産業ばかりではなく,観光,福祉,医療,環境,防災など,さまざまな分野での連携が可能になってくるのではないかと考えております。
そこで,北関東三県における官民一体となった連携をどのように進めていくのか,知事にお伺いをします。
次に,常陸那珂港の整備促進についてお伺いします。
常陸那珂港は,北関東地域の経済発展を支え,東京湾に一極集中している物流を大きく変える
国際流通拠点として重要な役割を担っており,また,本県が目指す産業大県づくりを支える発展基盤であることは論を待ちません。
これまでの常陸那珂港の整備状況を見てみますと,東防波堤や中央埠頭も整備が進み,本年度からは,中央埠頭の波除堤の整備に着手されるとお聞きしております。
常陸那珂港は,
北関東自動車道の全線開通により,
港湾周辺地域の
アクセス機能が飛躍的に高まりますので,東日本の新しい
国際流通拠点としての役割を果たすべく,整備をより加速させるべきであると考えます。
また,現在も,コマツや日立建機など
建設機械産業が進出しておりますが,
ひたちなか地区や
茨城中央工業団地などに
輸出入関連企業をさらに誘致し,
産業基盤づくりを一層進めるためにも,常陸那珂港の完成を急ぐべきと考えております。
そこで,常陸那珂港の完成に向けて,どのように工事の進捗を図ろうとしているのか,知事の御所見をお伺いします。
次に,茨城空港の就航対策についてお伺いします。
平成22年3月の開港まで1年半余り,航空会社から茨城空港への正式な就航表明はいまだ得られない状況にあります。茨城空港の1年前に開港する静岡空港を例にとりますと,この時期,既に,全日空や韓国の
アシアナ航空が就航を表明しており,日本航空も10月には就航を表明したような状況でありました。
航空業界を取り巻く状況も変化しておりますことから,単純に比較はできませんが,茨城空港が非常に厳しい状況にあることは間違いないと思われます。
さて,これまでの茨城空港の就航対策を顧みますと,国内線重視でありました。これは,国内4路線を就航予定先として需要予測を行っていることからもわかるとおり,国が茨城空港を
国内空港需要の受け皿と位置づけていたわけで,それに沿った就航対策であったといえます。
しかしながら,
国内航空会社の状況を見ますと,福島空港から日本航空が撤退を表明したことからもわかるように,燃料費の高騰がかなり経営を圧迫しており,採算性の悪い地方路線を中心に路線の見直しを行っている状況で,茨城空港のような新規空港への就航に極めて慎重な態度であることも当然なのかもしれません。
一方,国際線に目を転じますと,現在,成田空港への乗り入れを希望している国が40カ国あると聞いておりますし,今後の
国際航空需要の予測などを見ましても,羽田,成田両空港だけでは対応できるものではなく,首都圏において受け皿となる空港が必要なことは歴然としております。
県の就航対策も,昨年あたりから少しずつ,国際線誘致へ軸足がシフトしているようで,
ターミナルビルの設計に当たっても,
ローコストキャリアの誘致を視野に入れ,工夫を凝らしたと聞いております。
国際線,特に
ローコストキャリアの誘致は,茨城空港においてよい結果をもたらすと考え,4月に,
山口自民党県連会長を団長とする
自民党県議団として,東南アジアにおいて急成長を遂げているマレーシアの
ローコストキャリア,
エアアジアを訪問し,低コストでも安全対策がきちんととられているか確認し,その経営に共鳴して帰ってまいりました。
そのかいあってか,茨城空港に高い関心を持ち,7月には,
エアアジアXのCEOが来県しました。茨城空港の視察を行ったほか,知事や
自民党県議とも面談をしました。恐らく,
エアアジアに限ったことではなく,首都圏に茨城空港があることを知れば,多くの
ローコストキャリアが関心を持つことでしょう。そこに,今後の茨城空港を考えるヒントがあるように思われます。
そこで,開港時点などにはとらわれず,5年後,10年後というスパンで考えた場合,茨城空港をどのような空港にしていこうとお考えなのか,また,そのために予算措置等も含め,どのような就航対策を行っていくつもりなのか,今後の意気込みとともに,知事にお伺いをします。
次に,公共事業の整備方針についてお伺いします。
世界には建設業者が約200万社あると言われています。このうち52万社が日本に集中しているのが現状であります。多かれ少なかれ,地方経済は皆,公共事業に依存してまいりました。このような中,
行財政改革を推進し,国は,公共事業をこの9年間で半減させましたが,我が国の
公共事業依存体質の中で,一挙に公共事業を減らしてしまっては,痛みが鈍痛ではなく激痛として出てくるのは当たり前であります。財政再建の中長期的な解決策としては,歳出削減ばかりではなく,地方経営の革新と農業を初めとする地方産業の復興によるのが前提であり,現実に多くの建設業者がいることを考慮した対応も必要であると考えております。
また,公共事業については,談合や官僚の天下りなどの報道やむだな事業が目につくために,十把一からげに公共事業はすべて悪であるかのように言うのは大変早計な発言であると考えております。
しかしながら,これまでの公共事業は,効率的に事業を実施することなく,地元の要望に沿って,総花的に事業を実施し,供用開始までに相当の期間を要し,事業の効果が目に見えにくい等のために,むだであるとの指摘を受けた場合もあったのではないかと感じております。
以前のように,事業費が現在の倍もあった時代であればまだしも,財政が非常に厳しい現在においては,公共事業は,効果,効率を十分勘案し,優先順位をつけて実施していかなければなりません。
中でも,住民の利便性を考慮し,あとわずかな工事で供用開始ができるような事業や県のプロジェクト関連事業,老朽化の懸念される橋梁の補修工事や学校施設等の耐震対策等,緊急性の高い事業については重点的に推進すべきであります。
そこで,公共事業をどのように進めようとしているのか,その整備方針について知事にお伺いします。
知事は,今年3月の第1回定例会において,県政運営の基本方針をただした我が党の鶴岡議員の代表質問に対して,人が輝く元気で住みよい
いばらきづくりという目標を掲げ,不退転の決意を強く表明しました。そこで,県民が将来に夢の持てる社会をつくるため,活力ある
いばらきづくりについてお伺いをします。
まず,初めに,J-PARCの産業利用の促進についてお伺いします。
世界的な資源や食糧の高騰など,グローバルな競争が激化する中で,資源の乏しい我が国が今後とも世界の中で確固たる地位を保ち,現在の豊かな生活を続けていくためには,科学技術の発展を原動力として,国際競争力のある新たな技術や産業を創造していくことが大変重要になっております。
本県は,つくば,東海,日立,鹿島など,多くの科学技術や産業の拠点を有し,科学技術創造立国日本を牽引する重要な役割を担っているところであり,東海村に建設中の世界最先端の研究施設,J-PARCがいよいよ今年12月,供用を開始する予定となっております。
このような中,県は,J-PARC内に独自のビームライン2本を整備するとともに,J-PARCに近接する旧NTT茨城研究開発センター跡地に,研究者の交流や支援等の機能を有する,いばらき量子ビーム研究センターの整備を進めており,J-PARCの供用開始時期にあわせてオープンする予定とのことであります。
私は,これらの施設を,産業界のJ-PARC利用,あるいは,J-PARCに関連した新事業の創出を図る場として生かしていくためには,総合利用窓口としての機能を充実し,企業の技術相談に対応できる専門スタッフを充実するなど,ハード,ソフト両面の対策が重要であると考えております。
そこで,県は,どのようにJ-PARCの産業利用の促進を図っていこうとしているのか,知事にお伺いをします。
次に,中小企業支援についてお伺いします。
国の8月月例経済報告では,景気の基調判断を弱含みと表現し,景気後退を事実上認めました。また,景気の先行きに関しては,アメリカ経済や株式,為替市場,原油価格の動向等によっては,さらに下振れするリスクがあると警戒感を示しております。
中小企業は,これまでのいざなぎ景気を抜き,5年を超える戦後最長という息の長い景気回復局面においても,経済のグローバル化による価格競争の激化や大企業の生産拠点の海外移転,海外からの部品調達など構造的な問題等の影響を受け,景気回復を実感しにくいものでありました。景気後退局面を迎える中,このところの原油,原材料価格の高騰などにより,中小企業を取り巻く環境はますます厳しいものとなっております。
私は,本県の雇用の7割を担い,地域経済をこれまで支えてきた中小企業の活性化なくして,本県経済の回復はあり得ないと考えております。
そこで,現在の厳しい環境の中で,産業大県を目指す茨城としては,物流の動脈ともいうべき,トラック業界を初めとする中小企業の支援について,どのような対応を考えているのか,知事にお伺いをします。
次に,農林水産業の振興についてお伺いします。
まず,初めに,稲作農業の振興についてお伺いをします。
現在の世界の農業の状況は,とうもろこし等がバイオ燃料や人口増により需要が増加する一方,天候不順により供給量が低下し,需給状況が逼迫しており,穀物価格がかつてない高騰を見せております。
また,国は,食糧自給率の目標を現行の45%から50%に引き上げる検討に入り,抜本的な対応を実施すると聞いております。
このような中,茨城農業の中心であります稲作経営は,価格の低下と生産調整の拡大で依然として厳しい状況にあります。水田面積を3ヘクタールとして,モデル的に経営試算してみますと,生産調整を実施して,米を2ヘクタール,麦と大豆を1ヘクタール生産した場合,現在の収入額は,産地づくり交付金等の助成額を含めても約300万円程度。経費を差し引きますと,所得は100万円程度しかありません。この金額では食うや食わずの状況であり,農業従事者にとって魅力ある農業とはいえない状況であります。このままでは,農業を志す若者は就農を躊躇し,日本の米を食べられなくなる可能性もあります。
一方,農業には,国民が生きていくために必要な食料の確保という食の安全保障の機能ばかりではなく,地球温暖化を抑制する環境保全機能もあわせ持っており,農業を単に市場経済に巻き込むべきではないと考えております。
でき得れば,米については,現在の政策を見直し,60キログラム当たり2万円で補償するなどして,農業者を守り,国民の食料を確保し,環境保全を図るとの発想が必要ではないかと考えております。
すべての水田に米を作付けし,できた米すべてに2万円の補償等を行った場合に必要な金額は,全国で約2兆2,000億円,茨城県で800億円程度となります。この程度の金額は,食の安全保障や環境保全の観点から,支出してもよい金額であると思います。
私は,大胆な発想により,農業者の生活基盤をしっかり確保していくことが,知事のおっしゃる,元気で魅力のある茨城農業の確立と食料自給率の向上につながるものと考えております。
そこで,どのように稲作農家の経営安定を図り,水田農業を振興していくのか,知事の御所見を伺います。
次に,原油等の高騰に伴う農業,水産業の経営安定化策についてお伺いします。
昨今,世界的な食料の高騰や原油価格の急激な上昇が続いています。原油は,平成16年に1リットル当たり26円であったものが,平成20年には70.4円と2.7倍になり,とうもろこしの価格は,平成18年から20年にかけ,約3倍に上昇しております。これらの高騰を背景に,飼料や肥料,燃料など生産,出荷資材全般にわたり価格が上昇しており,農家等では,できる限りの生産コストの削減を図っているところであります。
しかし,もはや,農業者,漁業者だけの力では乗り越えられない状況にあり,このままの状況が続けば,本県農産物,水産物の安定的な生産供給ができなくなるばかりか,農村,漁村は崩壊してしまいかねません。
私は,現在の農業,漁業経営を維持し,安全,安心な農産物,水産物を全国に提供していくため,今,必死になって経営努力を行っている本県の農業者,漁業者がこの危機を乗り越えられるよう,県としても,早急に支援を行う必要があると考えております。
そこで,知事は,この異常ともいうべき原油などの高騰に伴う農業,水産業の経営安定化に県としてどのように対応しようとしているのか,お伺いをします。
次に,住みよい
いばらきづくりについてお伺いします。
まず,初めに,公立病院改革ガイドラインに対する対応についてお伺いします。
公立病院は,地域において提供されることが必要な医療のうち,救急,小児,周産期,災害など,採算性等の面から民間医療機関による提供が困難な医療を提供することにあり,地域医療の確保のため,重要な役割を果たしてきております。
一方,公立病院の損益収支を初めとする経営状況が悪化するとともに,医師不足に伴い,診療体制の縮小を余儀なくされるなど,その経営環境や医療提供体制の維持が極めて厳しい状況になっております。さらに,地方公共団体の財政の健全化に関する法律の施行に伴い,地方自治体が経営する病院事業は,事業単体としても,また,当該地方自治体の財政運営全体の観点からも,一層の健全経営が求められております。
このような状況から,国は,公立病院改革ガイドラインを示し,地域医療の確保のため,みずからに期待されている役割を改めて明確にし,経営の効率化や再編,ネットワーク化,経営形態の見直しなど,必要な見直しを図り,安定的かつ自律的経営のもとで,良質な医療を継続して提供できる体制を構築することを求めております。
県も積極的に公立病院の再編,ネットワーク化を進め,保健医療圏ごとの医療の充実に力を注ぎ,住みよい
いばらきづくりを推進すべきであると考えます。もちろん,むだな部分はこれからも削減していかなければなりませんが,公立病院は,民間病院で採算のあわない高度医療や救急等の医療を担うため,赤字になることもやむを得ない部分もあると考えます。このため,公立病院の存在意義を住民に十分説明し,理解を得ながら赤字の補てんをしていかなければならないと考えております。
そこで,国の公立病院改革ガイドラインに基づき,公立病院の改革プランの策定支援やネットワーク化について,どのように進めようとしているのか,知事の御所見をお伺いします。
次に,新型インフルエンザ対策についてお伺いします。
死んだ野生のハクチョウから,H5N1と呼ばれる毒性の強いウイルスが確認されるなど,世界中の鶏や野生の鳥などに大流行している鳥のインフルエンザウイルスが日本で次々に見つかっており,この鳥のウイルスには,これまで,アジアを中心に380人余りが感染し,約240人が死亡しておりますが,素手で病気の鶏を扱わない限り,現在のところは,簡単に人に感染する心配はないとのことであります。
しかしながら,このウイルスは,性質が変わりやすく,一たん,人に感染しやすい性質に変わると,人から人へと簡単にうつることになります。しかも,だれにも免疫がないため,パンデミックといわれる大流行の恐れがあります。この新型インフルエンザが発生すると,最悪の場合で,全国では入院患者が200万人,死亡者が64万人,茨城県でも入院患者が4万8,000人,死亡者が1万5,000人と見込まれています。
これまで,国は,海外から新型インフルエンザが入るのを防ぐ水際作戦や,入っても一定の範囲で封じ込める作戦を重点に行ってきました。しかしながら,新型インフルエンザは,これまでの感染症とは異なり,感染が一気に拡散するなど,感染性が非常に高いことから,国内外の人の行き来を考慮すると,新型が一たん国内に入ってくれば,全国への拡散は避けられず,水際作戦には限界があります。
今後は,新型インフルエンザが国内に入ってきた場合,新型インフルエンザ患者の診療を行う発熱外来の設置や病床の確保,医療スタッフ及び感染防御資材等の確保,治療薬の備蓄と医療機関への供給体制確保等について,具体策を練っておく必要があります。
そこで,新型インフルエンザが発生した場合に,発熱外来の設置場所や病床及び医療スタッフの確保等の見通しについて,知事にお伺いをします。
次に,地球温暖化対策についてお伺いします。
本年7月に,主要国首脳会議,いわゆる北海道洞爺湖サミットが行われ,成功裏のうちに終了されたことはまことに喜ばしい限りであります。
また,我が茨城県でも,今年度から森林湖沼環境税を創設し,県民の力をかりて自然環境の保全に邁進しているところでありますが,最近の地球温暖化をめぐる議論を見てみますと,どうもCO2削減の数値ばかりが自己目的化されている気がしてなりません。自動車や電気を思う存分使える今の便利な生活を変えずに何とかCO2排出量を削減したいという考えのように感じてならないのです。
しかしながら,地球環境問題が我々に問いかけているのは,表面的な数字の帳じりあわせではありません。石油や電気等を好きなだけ使って,便利さと物質的な豊かさを飽くことなく追求し,これで経済が拡大することを進歩とする社会が,今,原油を初めとする資源や農地,温室効果ガスの自浄能力といった地球の有限性に直面し,行き詰まっております。いつまでもこうした価値観でいいのか,この暮らしは本当に豊かな暮らしなのか,深刻化する一方の資源,食料,温暖化の3つの危機は,そのことを我々に問いかけているのであります。この課題に対して,全世界の国々,地方自治体,民間企業,そして,一人一人がそれぞれの立場で取り組み,解決していかなければならないと思うのであります。
知事は,世界湖沼会議において表彰制度を設けるなど,以前より環境問題に先進的に取り組まれ,今回は,サミットに先立ち,全国知事会のエネルギー・環境問題特別委員会の委員長として,地球温暖化対策に関する提言や地球温暖化対策の推進宣言をまとめ,国に提出されました。
そこで,今回の提言や対策の意義,効果はどこにあるのか,そして,また,今後,茨城においてどのような取り組みをしようとしているのか,知事にお伺いします。
次に,人が輝く
いばらきづくりについてお伺いします。
まず,道徳教育の推進であります。
思いやりと道徳心,責任感と創造性を持った青少年の育成は社会の責務であります。しかしながら,近年,子供たちの公共心や規範意識の欠如,問題行動の多様化,さらに,家庭や地域の教育力の低下,社会全般の倫理観の低下や責任感の欠如など,教育が抱える問題は多様化しております。
これらの状況を踏まえ,社会全体で教育の重要性を再認識し,学校,家庭,地域が一体となって教育に取り組むために,我が党においては,いばらき教育の日制定によって,学校,家庭,地域の連携による社会全体の教育力の向上に積極的に取り組むよう提言してきたところであります。
しかし,昨今,児童生徒の非行,問題行動や服装の乱れ等,若者の規範意識の低下は憂慮すべき状況にあります。
本県では,昨年度から,すべての県立高等学校の1年生を対象に,総合的な学習の時間で道徳の授業を週1時間実施しております。私も授業の様子を見てきましたが,すばらしい授業を実施しており,本県教育行政の最大のヒット施策と高く評価するものであります。先日,文部科学大臣にお会いした際にも,本県の道徳教育の実施状況について説明し,評価を得たところであります。この道徳必修化については,全国で初めてのことであり,授業の内容や進め方など,実施については学校現場で大変苦労があったと思いますが,基本はでき上がりましたので,今後もぜひ,自信を持って継続していただきたいと強く要望するところであります。
そこで,高等学校における道徳教育について,これまでの成果と今後の進め方について,教育長にお伺いをします。
次に,学校裏サイトへの対応についてお伺いします。
子供たちは,携帯電話で電話をかけるだけではなく,携帯電話を活用してさまざまな情報のやりとりをしております。その中の一部には,同級生の悪口を書き込んだり,いじめを助長するような学校裏サイトというものがあります。このサイトは,生徒同士の口コミで広がっているので,親や教師はほとんど知らないのが実情であります。ここでは,その発信者の匿名性を利用して,生徒や先生の実名を挙げた誹謗中傷が頻繁に行われており,住所や連絡先,写真までも書き込まれる場合もあります。子供でありますので,その内容もどんどんエスカレートしていきます。他県では,サイトに書き込まれてしまったばかりに,ショックで学校へ行けなくなってしまった生徒や,自殺した生徒がいるとのことであります。
こうした状況にもかかわらず,学校裏サイトの規制については,いまだ何の手だてもされておりません。
本県においても,高校生に学校裏サイトについてのアンケート調査を実施した程度であり,実態調査すら現在実施中とのことであります。
私は,学校裏サイトが原因で不登校や自殺者が出るという状況を踏まえますと,一自治体の限られた権限の中で規制することは困難であると承知しておりますが,インターネットのサイトを取り締まる罰則つきの規制を条例化してでも,子供たちを守るべきであると思います。
さらに,それと並行して,教育の原点に立ち返り,人の悪口を言うことはいけないことであるということを学校で何度も繰り返し子供たちに教えるとともに,保護者への啓発が必要であると考えます。
そこで,教育長は,不登校児や自殺者が出ているようなこの実態をどのように認識し,どのような対応策を講じようとしているのかお伺いをします。
次に,警察行政についてお伺いします。
まず,初めに,振り込め詐欺対策についてお伺いします。
振り込め詐欺による被害が一段と深刻になっております。本県における今年1月から6月の被害は216件,被害総額は約2億9,500万円に上りました。昨年の同期と比べ,件数で12%の増となっております。被害者は,60歳以上の方が45%を占め,高齢者がねらわれている状況にあります。しかしながら,検挙率は1%台と極めて低い状況にあり,捜査も防犯対策も後手を踏んでいる状況にあります。
また,この振り込め詐欺は,次から次と新たな手口が登場してきます。子供や孫を装い,交通事故の示談金や高利の借金の返済名目で現金を振り込ませる手口も依然なくなりませんが,架空請求詐欺や融資保証金詐欺も出てきております。さらに,最近急増しているのが還付金詐欺であります。税務署や社会保険事務所の職員を装い,税金を払い戻す,医療費を還付すると電話で持ちかけ,キャッシュカードと携帯電話を持って現金自動預け払い機まで行くよう促し,携帯電話で指示を受けつつATMを操作すると,気づいたときには,自分の預金口座から犯人側の口座に送金されてしまっています。この詐欺の本県の被害額は,6月までに約3,200万円,件数は45件で,昨年の15倍という状況であります。
このような詐欺事件は,まず,一人一人が自衛することが一番大切でありますが,自動預け払い機や携帯電話など最新機器に不なれな高齢者が対象であることから,警察は,金融機関と携帯電話業界と緊密に連携を取り,お金を振り込む前に防止する方策を検討することが必要ではないかと考えます。
そこで,警察はどのようにして振り込め詐欺から高齢者を守ろうとしているのか,警察本部長にお伺いをします。
次に,暴力団対策についてお伺いします。
暴力団は,近年,伝統的資金獲得活動や民事介入暴力,企業対象暴力,行政対象暴力等に加え,その組織実態を隠ぺいしながら,建設業,不動産業,金融,証券市場への進出を図るなどし,企業活動を仮装した一般社会での資金獲得活動を活発化させています。
また,公共工事に介入した資金獲得活動や公的融資制度を悪用した融資資金,助成金等の詐欺事件等を多数敢行するなど,社会情勢の変化に応じた多種多様な資金獲得活動を行っております。
さらに,拳銃等の凶器を使用した凶悪な犯罪も後を絶たず,依然として市民社会にとって大きな脅威となっております。
このような情勢のもと,県民は警察に対し,暴力団犯罪の取り締まりの徹底,暴対法の効果的な運用,暴力団排除活動の強力な推進を期待しております。しかし,本県の暴力団総数は,若干ではありますが増加傾向となっております。
さらに,社会経済情勢を見ますと,非正規雇用やフリーター,ニートの増加等により,若者の将来への不安,孤独感,閉塞感が高まりつつあることや,60歳以上の高齢者の将来への不安感も増大してきております。このような情勢は,暴力団の活動しやすい環境であり,暴力団が今後さらにその活動を活発化させるのではないかと不安を抱いております。
このような不安を解消する暴力団取り締まり対策の決め手は,その資金源を断つことと銃器の取り締まりを徹底することであります。しかしながら,暴力団の資金獲得活動は悪質,巧妙化しており,取り締まりの強化が必要であります。また,全国の拳銃の押収状況は減少傾向にあり,その要因として,隠匿手段の潜在化等が挙げられております。犯罪組織の武器庫や密輸,密売事件等のなお一層の摘発が求められております。
そこで,暴力団の取り締まり対策にどのように取り組まれるのか,警察本部長にお伺いをします。
最後に,一言申し上げます。
北京五輪で金メダルを獲得した女子ソフトボールチームの若いエース,上野由岐子投手は,24時間ソフトボールのことばかり考え,いかに時間を使うかが結果につながると言っていたそうであります。我々も,県勢発展のために24時間頑張ることをお誓い申し上げまして,質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
6 ◯議長(桜井富夫君) 新井昇君の代表質問,質疑に対する答弁を求めます。
橋本知事。
〔橋本知事登壇〕
7 ◯橋本知事 新井昇議員の御質問にお答えいたします。
まず,格差社会についてであります。
日本は,これまで,格差の少ない社会,努力すればだれでも報われる社会として発展してまいりました。
ところが,近年,経済のグローバル化や規制緩和が急速に進む中で,企業の間には,競争を勝ち抜くため,いかにして総人件費を抑制するか,あるいは下請単価を引き下げるかといった動きが強く見られたところであります。
その結果,労働分配率が低下傾向を示してきただけでなく,コスト削減を求められ,厳しい経営環境に置かれている中小企業などにおいても,人件費が抑制され,今日,問題となっております所得格差が生じたものと考えております。
就職氷河期という厳しい雇用環境下で,正社員になれなかった若者がフリーターにとどまっていることはもとより,パートや契約社員といった雇用形態の変化などにより,現在,非正規雇用者の割合は雇用者の約3分の1を占めるまでになっており,正規雇用者との生涯賃金の格差の広がりや,雇用が不安定なことによる将来への不安などが大きな課題として指摘されております。
このような状況が続けば,低所得者層の増加による社会の不安定化,熟練労働者の不足,婚姻率の低下と少子化の進行等々により,社会全体の活力が失われていくことが懸念されます。
私といたしましては,格差が広がったと多くの国民が感じている状況は決して好ましいものではなく,これ以上,格差が拡大,固定化することのないよう,社会全体で取り組んでいく必要があると認識しております。
こうした中,先般,茨城県成長力底上げ戦略推進円卓会議が開催され,県内の経済界,労働界などの代表が一堂に会し,所得,生活水準の引き上げ,格差の固定化を防止するための効果的な取り組みなどについて協議がなされたところであります。
さらに,さきに国が示した安心実現のための緊急総合対策におきましても,非正規雇用対策の推進についてさまざまな対策が講じられようとしております。
県といたしましては,国の施策等を踏まえながら,引き続き,若者や女性,さらには中高年齢者等を対象としたきめの細かい就職支援サービスに力を入れてまいりますとともに,本県の持つ潜在力や優位性をより一層生かし,企業の誘致や産業の振興を図ることにより,正規雇用の場の確保に努めてまいりたいと考えております。
次に,財政再建の推進についてであります。
三位一体の改革により,本県におきましては,一般財源が単年度当たり約300億円,この5年間で約1,600億円も減少しましたことから,職員数の削減,公共投資の縮減・重点化,全事務事業の抜本的な見直しなど,国を上回る
行財政改革に取り組みますとともに,職員の給与カットまで実施しながら,この危機的な状況を回避するため,財政の健全化に必死で取り組んできたところでございます。
しかしながら,今後,さらに,医療,福祉といった社会保障関係費や退職手当などの義務的な経費の増大が見込まれており,県みずからの
行財政改革の努力だけでは財源を確保することが到底困難になることが予想される厳しい状況にございます。
議員御指摘のとおり,消費税増税についてはさまざまに議論が分かれているところでありますが,地方財政を再建していくためには,地方消費税の拡充や,三位一体の改革で一方的に削減された地方交付税の復元,充実を図っていくことが不可欠であります。
したがって,これらにつきましては,全国知事会におきましても特に重要な課題として位置づけ,通常の提案・要望とは別に,地方消費税の充実や地方交付税の復元,充実等に関する提言を,先月,国に対して強く申し入れたところであります。
一方で,地方消費税の拡充等とあわせ,県みずからの改革努力により,財政再建に向けた取り組みを進めていくことももちろん重要であります。人件費,公債費,扶助費といった義務的な経費が一般財源総額の約4分の3を占める硬直的な財政構造のもとで,財政運営はますます厳しさを増しているところではありますが,県単補助金や出資法人への財政支援の抜本的な見直し,公債費負担の抑制,出先機関の再編や公立小中学校の適正規模化,組織のあり方の見直しなどの歳出構造改革に取り組んでまいりたいと存じます。
また,企業誘致などを通じ,税源を涵養しますとともに,県税徴収率の向上や県有資産の活用などの歳入確保にこれまで以上に取り組んでまいります。
これらの取り組み方針やその行程などを明確にするため,財政再建等調査特別委員会の最終報告書等を踏まえた新たな財政集中改革プランを今年度中に策定することとしております。
今後とも,歳入,歳出両面にわたる徹底した改革に全力で取り組み,財政運営の健全化に努めますとともに,税源の涵養による力強い財政構造の確立を目指し,本県の財政再建を推進してまいります。
次に,補助金のあり方についてであります。
現在進められている
地方分権改革を実現していくためには,国と地方の役割分担の徹底した見直しを行い,地方が担う事務と責任に見合った地方税財政制度を確立し,国に依存せず,責任を持って行政を実施できるようにすることが必要不可欠であります。
県としましては,三位一体の改革において,所得税から住民税への税源移譲とあわせて実施された国庫補助負担金改革に際し,地方分権の理念に沿って国と地方の役割を再整理,明確化した上で,原則として廃止し一般財源化すること,財政面においても地方の自由度を高めるため,補助負担率を引き下げるのではなく,国庫補助負担金そのものを廃止し一般財源化することについて,国に対し,全国知事会等とともに強く求めてまいりました。
しかしながら,その結果を見ますと,地方の裁量の拡大につながるものは少なく,義務教育費国庫負担金のように,国の強い関与を残したまま単に国庫補助負担率を引き下げたものや,スリム化の名のもとに約1兆円もの補助金が削減されてしまうなど,改革と言うにはほど遠いものでありました。
加えて,その後も新たな交付金や補助金が創設されるなど,地方分権の趣旨に沿っているとは言えない状況にあります。
また,文部科学省の放課後子ども教室推進事業と厚生労働省の放課後児童健全育成事業のように,本来,一体的,あるいは連携して行うべきものでありながら,縦割りのまま,補助単価等を初め,実施条件の整合性がとられずに,現場を担う市町村が対応に苦慮している補助金なども見受けられます。
国庫補助負担金につきましては,住民に身近な行政は,地方がみずからの選択と責任のもとに行うことを基本として,国の役割を外交や防衛など国家としての存立に関する事務などに限定する中で,御指摘のように,将来的には全廃すべきであると考えております。
今後,
地方分権改革を進めるとともに,必要な税財源が間違いなく地方に移譲されるよう,引き続き全国知事会等と連携し,国に強く働きかけてまいります。
次に,
道路整備財源の確保についてお答えいたします。
本県では,高規格幹線道路ネットワークもいまだ完成されておらず,また,県が管理する国県道につきましても,急カーブや幅員が極めて狭いなど,改善を必要とする場所がいまだ3,000カ所以上もありますことなどから,道路の整備に対する県民からの要望は今なお非常に多い状況にあります。
しかしながら,議員御指摘のとおり,平成21年度以降,
道路特定財源が一般財源化されることとなり,必要な道路を整備するための財源が十分確保されるかどうか,見通しが極めて不透明となっております。
国と地方全体の本年度当初予算を見ますと,
道路特定財源関係の税収約5.4兆円のうち,税,譲与税,交付金,補助金を合わせると約3.4兆円が地方の財源として確保されておりますが,地方全体を見ますと,これらの財源だけでは道路関係歳出の約4割しか賄えていない状況にあり,本県でも道路関係歳出の約6割を賄うにとどまり,残り4割を一般財源と県債により補てんしている状況にあります。
このような状況を踏まえ,全国知事会では,交付金や補助金として地方に配分されている財源も含めて,地方枠として確保することや,暫定税率分も含め,現行の税率を維持することが必要であるとの提言を取りまとめ,政府・与党に申し入れたところでございます。
さらに,国から地方への財源の配分に当たりましては,自動車保有台数などの観点から,1人当たりで比較した場合,地方部の方が,大都市部と比べ,ガソリン税などを多く負担している実情を踏まえ,単純に人口等の指標により配分するのではなく,負担と受益の関係を明確に反映でき,納税者に理解が得られる制度にすべきであると考えております。
今後,県といたしましては,県議会の御支援や市町村の御協力をいただきながら,関東地方知事会や全国知事会などとも連携して,地方が必要とする
道路整備財源がしっかりと確保されるよう,国等へ強く働きかけてまいります。
次に,平成21年度予算編成に臨む覚悟についてであります。
議員御指摘のとおり,このところ,景気の下振れ懸念が強まっているため,県税収入については,今年度の当初予算計上額を確保できるか,全く楽観を許さない状況にありますし,来年度についてはなお一層厳しくなることが危惧されるところであります。
また,先月決定された今年度の普通交付税は,当初予算額を約26億円も割り込むこととなったところであり,来年度の地方
交付税総額については,原資である国税五税の現在の状況などを見ますと,さらに減少することが想定されます。このため,公債費が若干減少する見込みではありますものの,来年度以降の財源不足について解消できる見通しはいまだ立っていない状況にございます。
現在,直近の動きを織り込んで財政収支の見通しを鋭意精査しているところでありますが,来年度の地方財政対策いかんによりますものの,現時点では,給与カットを実施することなく来年度予算を編成できるかどうかについては見込みが立っていない状況にございます。
いずれにいたしましても,平成21年度予算編成に向けましては,今議会で取りまとめられる予定の財政再建等調査特別委員会の最終報告を十分に踏まえ,徹底した歳出削減や財源確保に取り組みますとともに,さらなる施策の選択と集中を図り,限られた財源を直面する課題への対応や将来の発展につながる施策に重点配分してまいる所存でございます。
次に,本県の基盤整備についてお答えいたします。
まず,北関東3県の連携についてでございます。
これまで,北関東3県に福島,新潟を加えた5県知事会議を設け,広域連携に取り組みますとともに,国土形成計画広域地方計画においても,北関東,磐越地域の連携を重視した計画の策定を進めているところであります。
また,3県で構成する北関東広域連携推進協議会におきましても,広域観光や新たな物流ルートの構築などに取り組んできたところでございます。
一方,商工会議所連合会などにおきましても,3県で情報交換等を行っております。
また,経営者協会においても交流会を行っており,昨年は,その場を利用させていただいて,本県として,茨城空港のPRを行うなど,民間とも一体となった連携に努めてきているところであります。
このようにさまざまな団体において取り組みを進めておりますが,いよいよ
北関東自動車道の全線開通を間近に控え,3県の連携がこれまで以上に重要となってまいります。
このような中,
自民党県連の皆様により,北関東の議員間の連携を強化していただいたことは,まことに時宜を得たものと考えております。
今後は,これまで進めてきた観光や物流面の取り組みを一層強化することはもとより,幅広い分野での連携に取り組む必要があるものと考えております。
観光や物流面での取り組みといたしましては,今年度,茨城空港を発着点とした新たな国際観光ルートの検討や,観光資源のデータベースの作成を行いますとともに,常陸那珂港の活用を促進するため,民間企業に対し,講演会やヒアリング調査などを通じた働きかけを強化していくこととしております。
また,今年度中には,
ひたちなか地区と東北道が
北関東自動車道によって接続されますことから,このタイミングをとらえ,東京でPR活動やシンポジウムを行うなど,3県で連携して,北関東地域の物流面や観光面での優位性を全国に大いにアピールしてまいりたいと考えております。
一方,今後,連携の強化が必要な分野といたしましては,例えば,J-PARCなどの産業利用の促進,県境地域における救急医療への対応,食の安全・安心の確保,エコライフ運動の展開による地球温暖化対策,北関東地域全体のイメージアップなどが考えられます。
これらの連携を推進しますためには,官民挙げての対応が必要になると考えておりますので,各種団体の交流会議の場を積極的に活用させていただきますとともに,団体との意見交換の場を設けるなどして,これまで以上に官民一体となった幅広い連携に取り組んでまいります。
次に,常陸那珂港の整備促進についてでございます。
常陸那珂港は,北関東地域の
国際流通拠点であり,本県が目指す産業大県づくりを支える発展基盤としても重要な役割を担っており,これまで重点的な整備に取り組んでまいりました。
この結果,平成10年度に北埠頭が概成し,その後,北米コンテナ航路などの定期航路も開設され,取り扱い貨物量も順調に増大しております。
また,臨港地区においては,コマツや,先月29日に工場が本格稼働した日立建機など,世界的企業が進出しております。
さらに,今年度中には
北関東自動車道が東北自動車道まで開通し,港湾への
アクセス機能が飛躍的に向上いたしますことから,栃木県や群馬県に立地する企業を初め,各方面から港湾利用への期待がこれまで以上に高まってきております。
このようなことから,私は,今後,常陸那珂港を一層発展させるため,増大する貨物に対応する埠頭機能の拡充,船舶航行の安全や効率的な荷役作業を行うための静穏度の向上,企業誘致のための港湾関連用地の確保の3点を中心にその整備を推進しているところであります。
具体的には,埠頭機能の拡充として,中央埠頭地区の水深9メートル岸壁の整備を来年夏ごろの供用開始を目指し,進めてまいります。
また,静穏度の向上につきましては,東防波堤の延伸に加え,今年度からは中央波除堤の整備にも着手しております。
さらに,企業の進出ニーズに的確に対応できるよう,中央埠頭地区における新たな埋め立てにも取り組んでまいります。
このように,引き続き,港湾整備の推進を図りますとともに,荷役とあわせ,ゲートの24時間フルオープン化,港湾手続の簡素化などの港湾サービスの向上,さらには,ポートセールスを積極的に進め,国内外に広くアピールできる港になりますよう,より一層機能強化に取り組んでまいります。
次に,茨城空港の就航対策についてお答えいたします。
近年,経済社会活動のグローバル化と各国の生活レベルの向上により,世界の航空需要は飛躍的に伸びております。
加えて,単なる移動手段として,安くて速くて安全であればよいというニーズの高まりから,LCCと言われる格安航空会社が急速に台頭してきており,新たな市場も広がっております。
我が国におきましても,
国際航空需要の伸びは首都圏を中心に著しく,2010年に羽田,成田両空港の発着枠が拡大されても,翌年には再び不足することが予測されております。国策として,ビジット・ジャパンキャンペーンを展開しながら,そうした需要にこたえていけないということでは,観光客などを受け入れられないだけでなく,ビジネスチャンスを失うことにもつながりますことから,首都圏における受け入れ体制の整備が急務となっております。
このため,茨城空港は,北関東地域の国内航空需要を担っていくことはもとより,首都圏3番目の空港として,増大する
国際航空需要の一翼を担う空港にしてまいりたいと考えております。
国際線が就航することにより,海外へ手軽に行けるようになるだけでなく,外国から多くの観光客が来県することにより,地域振興にも大いに寄与するものと考えております。
また,世界中で活発に利用されるようになっておりますプライベートジェットにつきましても,複数の運航会社が大きな関心を示されておりますことから,受け入れを検討してまいります。
具体的な就航対策といたしましては,LCCを初め,首都圏に乗り入れを希望する航空会社に対して,茨城空港が1時間圏域に340万人の人口を有し,潜在需要が大きいこと,周辺にゴルフ場や温泉,ショッピングセンターなどが数多くあり,観光にも適していること,成田に比べ都心からのアクセス時間では多少劣るものの,空港内での移動が極めて短く,実質的な移動時間はさほど変わらないこと,さらには,
ターミナルビルの工夫により低コストで運航可能であることなどを積極的にPRし,航路の誘致につなげてまいりたいと考えております。
また,航路を早期に誘致し,定着させていくことは容易なことではありませんので,開港後何年間かは,航空会社と連携したプロモーション活動の実施や,運航コスト低減のためのハンドリング体制に関する支援等,就航のために必要な対策を講じていかなければならないと考えております。
今後とも,県議会の御協力もいただきながら,一日も早い就航表明が得られるよう,引き続き航空会社への働きかけを積極的に行ってまいります。
次に,公共事業の整備方針についてでございます。
公共事業は,さまざまな産業活動や日常生活を支える社会資本を整備する上で大変重要な役割を担っております。
このため,本県におきましては,元気いばらき戦略プランのもと,競争力あふれる産業大県づくりや,県民が安全・安心で快適に暮らせる環境づくりに向けた社会資本の整備を進めているところであります。
これまで,陸・海・空の広域交通ネットワークの整備を着実に進めてきたことが,県外企業の工場立地件数3年連続第1位などの成果にあらわれてきているところであります。
今後,企業間の国際競争がますます激しくなる中で,本県において企業の活動環境を整えていくことは,日本の経済の発展にもつながるものと考えております。
一方で,議員御指摘のとおり,厳しい財政状況や公共事業全般に対する御批判の声などを踏まえますと,事業の透明性を確保しながら,これまで以上に重点化や効率化を図っていく必要があると認識しております。
具体的には,北関東道や圏央道,常陸那珂港,茨城空港などのプロジェクト,あるいはその関連事業につきましては,広域交通ネットワークを早期に構築すべく,今後とも最大限努力してまいります。
また,議員御指摘のように,完成の見通しが立った事業につきましては優先的に予算を配分し,整備効果の早期発現を図ってまいりますとともに,老朽化の懸念される橋梁の補修や,学校施設の耐震対策などにつきましては,将来の財政負担の軽減も視野に入れつつ,施設の長寿命化など,必要な対策に取り組んでまいります。
いずれにいたしましても,公共事業を進めていくに当たりましては,限られた予算の中で,県勢の発展を目指しながら,県民の安全・安心な生活を確保していくために,より一層の重点化と効率化を図ってまいります。
次に,活力ある
いばらきづくりについてお答えいたします。
まず,J-PARCの産業利用の促進についてでございます。
J-PARCの産業利用を促進するためには,当面,県の中性子ビームラインを広く企業に活用していただくことが中心になるものと考えられますが,そのためには,まずは,産業界が利用しやすいシステムを構築することが重要であると考えております。
このため,受け付けから相談,実験支援などをワンストップで行う総合窓口を設置しますとともに,中性子に関し,高度な専門的知見を有するコーディネーターを配置し,企業からのさまざまなニーズに迅速に対応してまいります。
加えて,企業の秘密保持に関しては特に配慮し,安心して使っていただける体制を整備してまいります。
また,産学官が連携して具体的な研究成果をできるだけ早い時期に創出し,中性子利用の有効性を広く産業界に示していくことも,産業利用を促進していく上では大変重要な取り組みであると考えております。
このため,これまでの中性子利用促進研究会を再編強化し,新薬開発を目指したたんぱく質の構造解析や,燃料電池開発のための材料の構造解析など,より有望な研究を重点的に支援いたしますとともに,J-PARCのパワーユーザーとして期待される全国の有力企業等による中性子産業利用推進協議会とも緊密に連携し,早期の研究成果の創出に努めてまいります。
こうした産業利用の促進を図る拠点として,いばらき量子ビーム研究センターを整備しているところでありますが,この施設に,ただいま申し上げましたようなJ-PARCの総合窓口機能を整備いたしますとともに,大学,研究機関やJ-PARCを利用する企業に御入居いただき,産学官連携の拠点としてまいりたいと考えております。
さらには,企業への支援策として,中性子利用の経験のない企業でも,ビームラインを無料で利用し,その有効性を実感できる茨城県版トライアルユース制度の導入を検討してまいりますほか,特に県内企業に対しては,中性子を活用した新技術,新製品開発に対する助成やビームラインの利用料金の優遇など,手厚い支援策を実施してまいります。
このように利用者の意向を的確に踏まえたさまざまな取り組みを講じて,J-PARCの積極的な活用を促進し,本県を科学技術創造立国日本を担う枢要な拠点としてまいりたいと考えております。
次に,中小企業支援についてでございます。
議員御指摘のとおり,原材料価格の高騰などによりまして,県内中小企業を取り巻く経営環境は極めて厳しい状況にあると認識しております。
このため,資金繰り対策といたしまして,中小企業パワーアップ融資やセーフティネット融資といった低利の融資枠を十分に確保しているところであります。
また,県中小企業振興公社では,下請かけこみ寺を設置し,苦情相談や下請ガイドライン説明会の開催などを通じ,下請取引の適正化を促進しているところであります。
また,中小企業が厳しい経営環境の変化に的確に対応していけるよう,テクノエキスパートや工業技術センターによる技術支援,あるいは,いばらき産業大県創造基金の運用などにより,中小企業の生産効率の向上や,新製品,新技術の開発,販路拡大などを支援してまいります。
特に原油高の影響を強く受けているトラック業界につきましては,運輸事業振興補助金の中で,コスト削減に向けた省エネ車の導入などを支援いたしますとともに,新たに信用保証料や自家用燃料タンク設置費につきましても助成の対象にしたところであります。
また,燃料サーチャージ制度の普及を図るため,制度説明会の開催経費を助成しますとともに,荷主,事業者と行政とのパートナーシップ会議に参画し,適正な取引の促進に努めてまいります。
さらに,今般,政府の経済対策の一環として,原材料価格高騰に対応する新たな信用保証制度の導入や,下請事業者保護の強化といった中小企業対策も決定されましたので,これらの活用についても今後検討してまいります。
次に,農林水産業の振興についてお答えいたします。
初めに,稲作農業の振興についてでございます。
議員御指摘のとおり,国際的には,穀物需給が逼迫し,価格も高騰している中で,我が国では,米価の下落等により,稲作農家の経営は大変厳しい状況にあるものと認識しております。
米価を安定させるためには,米需給の均衡が必要でありますが,食生活が多様化し,パンやめん類の消費量がふえる一方で,1人当たりの米の消費量は,ピーク時であります昭和37年度に比べて51.9%と半減をしている状況にございます。
仮にすべての水田で米をつくると,1,265万トンの生産量となり,全国の消費量815万トンに対し,450万トンもの米が余ることになり,需給バランスが崩れ,米価の下落を招くことから,これまで,生産者団体が主体となって米の生産を計画的に減らし,米価と農家経営の安定に努めてきたところであります。
しかしながら,今後の水田農業の方向といたしましては,水田の持つすぐれた生産力を最大限に活用し,我が国の食糧自給率の向上と稲作農業の振興を図っていくことは極めて重要ではないかと考えております。
そのためには,麦や大豆,園芸作物の導入といった従来の取り組みに加え,現在は利用されていない水田にも,米粉や飼料用といった新たな用途向けの米が作付され,水田が余すことなく利用される仕組みを確立していくことが重要であると考えております。
県といたしましては,先般,主食用米に加え,新たな用途としての米粉や飼料用米の一層の消費拡大を図り,生産者と加工,販売業者の連携を進めるため,米消費拡大推進会議を設置したところであります。
また,米粉や飼料用米の生産拡大に当たっては,主食用米との著しい価格差が障害となっておりますので,その価格差を補てんする助成措置を講ずるよう,国に対し強く働きかけを行なっているところであります。
あわせて,米価下落時にも,稲作農家の経営が成り立つよう,標準的収入額を固定化する等,水田経営所得安定対策の充実も国に対して引き続き働きかけてまいります。
これら制度の見直しに関する提案を含め,積極的に稲作農家の経営安定と本県水田農業の振興を図ってまいりたいと考えております。
次に,原油等の高騰に伴う農業,水産業の経営安定化についてでございます。
議員御案内のとおり,昨今の原油等の急激な高騰により,農業者,漁業者の経営は大変厳しい状況にあります。このため,県では,本年7月,国に対して,農業,水産業の経営安定のための助成措置等を要望してまいりました。
国では,こうした県の要望や団体の要請活動などを受け,畜産では,畜種別の経営安定対策の拡充を図りますとともに,漁業では,燃油価格の上昇分の9割を補てんする等の緊急対策を講ずることとしております。
県といたしましては,国が打ち出しました支援策や,県の補助,融資制度を,市町村やJA,漁協などを通じて周知し,活用を推進しているところであります。
さらに,今般,省エネ設備導入に対する助成や運転資金の融資など,約29億円の事業規模の緊急対策について補正予算をお願いしているところであります。
具体的には,施設園芸では,保温性を高めるための栽培ハウスのビニールの多層化や,温度むらを解消する循環扇の導入などの支援,漁業では,人工衛星の情報をもとに,県が漁場探索を行い,的確な漁場予測情報を提供できる体制の構築や,省エネに取り組む漁業者が必要とする資金の借り入れ利子の助成,畜産では,急激な飼料価格の高騰に対応するため,水田を活用した飼料用稲の利用拡大への支援などであります。
県といたしましては,今後とも,関係団体と連携をとりながら,これらの対策を進め,農業者,漁業者の経営安定が図られるよう努めてまいります。
なお,現在,国においても,省エネ設備導入に対する助成など,新たな対策が検討されているところでありますので,詳細が明らかになり次第,速やかに対応してまいります。
次に,住みよい
いばらきづくりについてお答えいたします。
まず,公立病院改革ガイドラインに対する対応についてでございます。
病院を設置している地方公共団体においては,昨年12月に総務省から出された公立病院改革ガイドラインに基づき,今年度中に公立病院改革プランを策定することとされております。
このため,市町村に対する研修会の開催や,関係市町村間の意見交換の場の提供,さらには,策定経費に係る交付税措置などについての周知を図りながら,プランの策定が円滑に進むよう支援をしてまいります。
また,公立病院改革を進めるに当たっては,経営効率化,再編・ネットワーク化,経営形態の見直しの3つの視点に立って推進することが開設者である市町村に求められておりますが,このうち,特に再編・ネットワーク化については,県が主体的,積極的に参画することとされております。
医師不足などに見られる本県の医療の現状を考えますと,再編・ネットワーク化を進めることにより,限られた医療資源の有効活用と医療機能の適切な分化,連携を図り,地域全体で必要な医療サービスが提供できる体制を再構築することが急務であります。