• "検診拒否"(/)
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  1. 熊本県議会 1984-06-01
    06月11日-02号


    取得元: 熊本県議会公式サイト
    最終取得日: 2023-05-26
    昭和59年 6月 定例会┌──────────────────┐│  第 二 号(六月十一日)    │└──────────────────┘ 昭  和 五十九年  熊本県議会六月定例会会議録   第二号──────────────────────────昭和五十九年六月十一日(月曜日)   ――――――――――――――――――――   議事日程 第二号  昭和五十九年六月十一日(月曜日)午前十時開議 第一 代表質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について)   ――――――――――――――――――――本日の会議に付した事件 日程第一 代表質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について)      ―――――――○―――――――出席議員(五十五名)                 前 畑 淳 治 君                 野 田 将 晴 君                 荒 木 詔 之 君                 島 田 幸 弘 君                 島 津 勇 典 君                 大 西 靖 一 君                 倉 重   剛 君                 山 本   靖 君                 中 島 絹 子 君                 中 島 隆 利 君                 小早川 宗一郎 君                 三 浦   哲 君                 藤 川 俊 夫 君                 花 籠 幸 一 君                 舟 津 正 光 君                 西 岡 勝 成 君                 阿曽田   清 君                 橋 本 太 郎 君                 三 角 保 之 君                 岩 永 米 人 君                 堀 内 常 人 君                 永 田 健 三 君                 山 本 秀 久 君                 深 水 吉 彦 君                 八 浪 知 行 君                 杉 森 猛 夫 君                 鏡   昭 二 君                 高 田 昭二郎 君                 古 閑 一 夫 君                 大 森   豊 君                 魚 住 汎 英 君                 柴 田 徳 義 君                 林 田 幸 治 君                 広 瀬 博 美 君                 馬 場 三 則 君                 木 村 健 一 君                 平 川 和 人 君                 北 里 達之助 君                 金 子 康 男 君                 米 原 賢 士 君                 井 上 龍 生 君                 久 保 一 明 君                 永 田 悦 雄 君                 宮 元 玄次郎 君                 甲 斐 孝 行 君                 今 井   洸 君                 八 木 繁 尚 君                 幸 山 繁 信 君                 池 田 定 行 君                 小 材   学 君                 岩 崎 六 郎 君                 水 田 伸 三 君                 今 村   来 君                 小 谷 久爾夫 君                 酒 井 善 為 君欠席議員(なし)   ――――――――――――――――――――説明のため出席した者         知事      細 川 護 熙 君         副知事     藤 本 伸 哉 君         出納長     山 内   新 君         総務部長    原 田 富 夫 君         企画開発部長  田 谷 廣 明 君         福祉生活部次長 木 原 章 三 君         衛生部長    清 田 幸 雄 君         公害部長    田 嶋 喜 一 君         商工観光労働         部長      蓼 沼 朗 寿 君         農政部長    伴   正 善 君         林務水産部長  江 副 尚 幸 君         土木部長    三 原 節 郎 君         公営企業管理者 大 塚 由 成 君         教育委員会         委員長     本 田 不二郎 君         教育長     外 村 次 郎 君         警察本部長   浅 野 信二郎 君         人事委員会         事務局長    樋 口 清 一 君         監査委員    緒 方 隆 雄 君   ――――――――――――――――――――事務局職員出席者         事務局長    衛 藤 成一郎         事務局次長   竹 下 郁 郎         議事課長    小 池 敏 之         議事課長補佐  岩 井 祐二郎         調査課長補佐         兼議事課長補佐 山 下 勝 朗      ―――――――○―――――――  午前十時二分開議 ○議長(小材学君) これより本日の会議を開きます。      ―――――――○――――――― △日程第一 代表質問 ○議長(小材学君) 日程に従いまして日程第一、代表質問を行います。発言の通告があっておりますので、これより順次質問を許します。 なお、質問時間は一人九十分以内の質疑応答でありますので、さよう御承知願います。 日本社会党代表柴田徳義君。  〔柴田徳義君登壇〕 (拍手) ◆(柴田徳義君) 日本社会党の柴田でございます。党を代表して県政の当面する諸問題について質問をいたします。知事並びに教育長の的確な御答弁を期待いたします。 昨年六月に発足した県行革審議会は、県職員の七%削減、業務の民間委託、出先機関の統合、再編など、重要な問題を盛り込んだ第二次中間報告を行いました。知事がこれにどう対処するかは今後の県政にとって重要な課題ですが、この問題については、明日長年県行政に携わってきた我が党の堀内議員が取り上げることにしておりますので、あすに譲るとして、まず第一に地方財政確立の問題についてお尋ねいたします。 今年度の政府予算は五十兆六千二百七十二億円、前年度対比〇・五%、昨年度は前年度対比一・四%で、昭和三十年の〇・八%以来二十八年ぶりの超緊縮予算と言われましたが、本年度はさらに厳しくなっております。そしてそのあおりで地方自治体の財政も厳しい状態に追い込まれていることは、その衝に当たられる執行部の皆さんが痛切に感じておられるとおりであります。 ところで、本県の当初予算は四千九百七十一億円、歳入を見ますと、自主財源は県税八百九十六億八千七百万円で一八%、分担金、使用料・手数料、財産収入その他合わせて八百九億二千八百万円、一六・三%、合計千七百六億千五百万円で三四・三%、これに対し依存財源は、地方交付税千二百四十九億四千六百万円で二五・一%、地方譲与税、交通安全対策特別交付金合わせて四十四億二千二百万円、〇・九%、国庫支出金千四百六十六億七千五百万円、二九・五%、合計二千七百六十億四千三百万円、五五・五%、それに県債が五百四億四千三百万円、一〇・二%となっております。ずばり三割自治であり借金財政であり中央依存財政となっているわけです。 歳入の五五・五%を国に依存する県財政が国の予算に影響されることは論をまちません。その中でも一般財源として使用できる地方交付税が県財政の中で大きなウエートを占めるわけですが、その地方交付税が政府の地方財政計画の中で最近伸び率が低下、昭和五十六年は前年度比七・九%、五十七年度五・三%、五十八年度はマイナス四・九%、本年度はマイナス三・九%と二年続きのマイナスになっております。そのため本年度の地方財政の不足額は一兆五千億となっております。この財源不足は昭和五十年からずっと続いていますが、国は当然交付税率を引き上げなければならないのです。地方交付税法第六条の三第二項に、引き続き著しく不足する場合は交付税率の引き上げないし制度の改正を行うことを国に義務づけております。ところが、政府は、財政危機を理由に交付税の引き上げを拒否し続けております。そしてその補てん措置として交付税特別会計による借入金と地方自治体による建設対策債、いずれも借金を充ててきました。しかも特別会計の借入金の償還については、元金の二分の一と利子分を国が負担し、残りはまだ地方に押しつけているのです。 政府は、地方に押しつけた分の返還は財政需要額で見るとは言いますが、このようないびつな対策が、国と自治体の財政関係、とりわけ財政調整制度としての地方交付税制度を大きくゆがめていることは言うまでもありません。特に建設地方債の増発は地方交付税地方債化ともいうべき状態を生じさせることになっております。実際、このことによって地方財政計画に基づく自治体の公債費の総予算に占める比率は、五十五年度以降、七・四%、八・三%、九%、一〇%、一〇・七%と年ごとに上昇しており、本県の場合も五・三%、六・七%、七・二%、八・六%、そして今年度は九・二%と上昇し、五十八年度末の現債高は三千百二十億に達しております。 さらに、政府は今年度から財源対策の見直しを行いましたが、その内容は、まずこれまでの交付税特別会計の借入金十一兆五千二百億円のうち、国が五兆八千三百億円、地方が五兆六千九百億円をそれぞれ負担することになっております。今後の財源不足についても、地方債の増額が押しつけられています今、政府に抜本的な施策の変更を求めなければ地方財政の危機は深まるばかりです。このような状態を憂えて、去る三月定例会では地方財政確立に関する意見書を満場一致採択、九州各県議会議長会でも同様の決議案を採択して政府に要請を行いました。 私は、時間の都合で地方交付税に関連する政府の財源措置の矛盾のみを取り上げましたが、意見書や決議に取り上げられているとおり地方税問題を含めて多くの問題があります。知事は、県財政の確立を図ると同時に県下各市町村の財政を守るため、若い意気で知事会の先頭に立つとの気概を持って政府に対する要請行動を行ってもらいたいと思いますが、知事の決意のほどをお聞かせください。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 地方財政確立についての所見いかんということでございますが、本年度の地方財政対策につきましては、御指摘がございましたとおり大幅な見直しが行われまして、特に地方交付税につきましては交付税特別会計における新たな借り入れは行わないで、これまでの借入金についても国、地方でそれぞれ応分の負担をするといった改正が行われたところでございます。このことは地方財政対策国家財政の状況と深くかかわり合うこととなって、特に今後の交付税を初めとする一般財源確保ということが地方財政にとって極めて重要になってくると考えるわけでございます。 申し上げるまでもなく、現下の地方財政は、国と同様巨額の借入金残高を抱え、地方財政の基盤を揺るがせかねない状況に立ち至っているわけで、県あるいは市町村におきましても、行政経費の節減を初め歳出の抑制を図りますとともに、税等の自主財源確保対策に鋭意努力を傾注しているところでございます。 今後とも、さらに地方財政の実情を国に訴えてまいりますとともに、県並びに市町村の財政確立を図るため最善の努力をしてまいりたいと考えておりますので、県議会におかれましても、一層の御支援、御協力を賜りますようにお願いを申し上げたいと存じます。  〔柴田徳義君登壇〕 ◆(柴田徳義君) 知事の答弁を聞いていますと、何やら裏に国の地方財源対策はやむを得ないんだ、申し入れはするが精いっぱい地方税の増収を図り節減も図るんだと、こういうふうに聞こえてなりません。もちろん地方税の増収を図り不要の歳出の節減を図ることはもちろんでございますけれども、今のような状態でいったらこれは地方財政は破綻するというふうに思います。やはりもう少し知事が中心になって国の政策の矛盾を追及すると同時に、先頭に立って対策を講じられるように強く要請をして次の質問に移ります。 次は、水俣病に関連する問題でございます。 私ども日本社会党県本部の代表は、去る六月四日水俣病問題について現地調査を行いました。水俣湾堆積汚泥処理の作業現場を視察した後、水俣市長、これには助役、担当部課長も出席されました。水俣市議会代表、これには全会派の代表が出席していただきました。患者代表、これも各団体の代表が参加されました。それに本部長以下、チッソの幹部、チッソの労働組合、水俣の地協の代表と個別に懇談をいたしました。私どもの要請にほとんど一〇〇%おいでいただいて熱心に発言され、今さらながらこの問題に対する地元の皆さんの関心の深さを見せつけられ、同時に、その熱意に頭が下がりました。私どもは、関係者の皆さんとの話し合いの中から、水俣病問題が深く広くそして深刻なものであることを改めて確認いたしました。 そこで、次の五つの項目について提言を行いました。一、水俣病認定業務の促進。二、チッソ県債に対する国の一〇〇%の保証。三、ヘドロ処理事業による二次公害の防止。四、水俣・芦北地域振興計画の充実拡大、国立国際環境大学の設立。五、水俣病問題総合調査法の成立。当面、水俣病問題総合調査の実施。以上の提言の早期実現を関係当局に訴えました。知事もぜひ真剣に取り組んでいただくことを要請いたしますが、当面、チッソ県債水俣病認定促進国立国際環境大学の設立の三点について知事のお考えを伺いたいと思います。 まず、チッソ県債について。 今次定例会の補正予算チッソ関連の県債のみとなっております。したがって、補正予算の面から今議会はチッソ県債議会ということになります。 ところで、今回発行する県債は二十三億七千二百万円、知事説明にもありましたように、チッソに対する県債発行による金融支援措置は、昭和五十二年十二月以降十二回、累計は二百八十六億六百万円となっています。さらに、チッソの水俣湾堆積汚泥処理事業に係る費用負担分の県立てかえ金は、本年度四十一億三千万円、昭和四十九年度からの累計は百六十一億四千万円、ことし十二月に予定される県債を合わせると、県債と立てかえ金の合計は、今年度分だけで九十億円に近くなり累計総額は四百四十七億七千万円に達します。そして本年度末の県の現債高は三千三百九十億円を突破して県財政を圧迫することになります。さらに、立てかえ金は計画の最終段階では二百七十億円となり県債も六十年以降も継続すればどこまで膨らむか見当もつかなくなります。 ところで、チッソの経営状態は御存じのとおり五十八年度の決算では五億一千七百万円の経常利益を計上しておりますが、同時に、四十九億六千二百万円に上る水俣病患者補償金を初め、チッソ県債償還金十七億二千七百万円、水俣湾堆積汚泥処理事業費負担金二十億二千二百万円など総額八十九億円に上る特別損失を計上しており、未処理損失は五十八年度末で八百二十億四千五百万円に上っているのです。さきにも申しましたように、私どもはチッソ水俣の本部長ほか会社幹部と懇談しましたが、会社の経営の急速な改善は期待できません。そこで、県債も事業費負担の立てかえ金も今のところ返還の見通しは立っておりません。 このような状態の中で、知事は本議会冒頭の説明の中で「県が融資を引き続き行うことも現状ではやむを得ないものと考える」としておりますが、六十年以降についても引き続き発行されるつもりかどうか。 なお、このことについては本会議場で繰り返し論議されたことですが、県債についても、立てかえ金についても、最悪の場合の完全な保証はなされておりません。環境庁長官の「いささかも迷惑をかけない」という発言で完全だとされているようですが、なぜ「一〇〇%保証する」と言わないのですか。それより政府が最悪の場合完全に保証するのであれば、なぜ国が国債を発行しないのか。どうしても県民として不安が残るわけです。県民の不安を解消するためには、何としても政府に一〇〇%の保証の確約をとるべきです。知事のお考えをお聞かせください。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 水俣病問題について、第一点、チッソ県債を六十年度以降も引き続き発行するつもりかというお尋ねでございますが、まず提案理由説明の中で、「県が融資を引き続き行うことも現状ではやむを得ないものと考え」ておりますと申し上げましたのは、これまでの発行に引き続いて今回も引き続き融資を行うことはチッソの経営の現状からしてやむを得ないと思うという意味で申し上げたものでございまして、昭和六十年度以降の問題につきましては、これまで申し上げてまいりましたように慎重に検討すべき問題であるとの認識に変わりはございませんので、よろしく県議会の御協力をお願い申し上げたいと存じます。 第二点目は、国の一〇〇%保証についてのお尋ねでございましたが、チッソ県債に係る国の保証措置につきましては、お尋ねにもございましたように、昨年の五月、関係八省庁から成る水俣病に関する関係閣僚会議におきまして、チッソに万一不測の事態が発生したときにおいても熊本県財政にいささかの支障をも来さないよう、国側において十分な対応策を講ずるという趣旨で国の対応策についての申し合わせがなされているわけで、この申し合わせは実質的には一〇〇%保証措置であるとの環境庁長官の発言もあっております。五十八年五月の県議会においてお答えを申し上げましたように、私はそれまで要望してきた国の一〇〇%保証措置がこういう形で約束をされたものと受けとめているところでございます。  〔柴田徳義君登壇〕 ◆(柴田徳義君) 継続発行については今後慎重に検討するということでございます。県議会、執行部一緒になってさらに検討を重ねなければならないと思いますが、それにしてもやっぱり絡んでくるのは国の一〇〇%保証の問題だと思います。知事が今のような答弁をなさることは無理からぬ点もあると思いますけれども、しかし、言葉の約束はこれはいつ破られるかわからないものなんです。繰り返し繰り返し要求して徹底的に一〇〇%保証を追及する、その上でもし継続するとすれば継続すると、こういうふうに考えなければならないと思います。そういう意味でも知事のひとつ慎重な今後の対応を要望しておきたいと思います。 次に、認定業務の促進についてお尋ねいたします。 この問題についても本議場で繰り返し論議されていますが、重複を承知であえて取り上げました。昭和四十五年に法に基づく水俣病の認定業務が開始されてから十四年、本年五月三十一日現在、水俣病認定申請者の数は一万二千五百五十三名、うち認定者数千九百八十七名、棄却者数四千八百六十三名、未処分者数五千七百三名となっています。この数字は、熊本県関係者と鹿児島県関係者を合わせた数字ですが、未処分者が五千七百三名と膨大な数に上っております。なぜこうなったのか。 御存じのように、昭和四十六年に「否定し得ない者は認定する」という次官通知が出て認定者がふえました。ところが、昭和五十一年に不作為違法の判決が出た後、昭和五十二年に判断条件が出され、昭和五十三年にそれに基づく次官通知が出て、その後認定者の数はぐっと減少しております。例えばこれは熊本県関係分ですが、昭和四十七年、四十八年の認定者数は、それぞれ二百四名、二百九十名ですが、昭和五十五年以降は五十名から七十名前後となっております。もちろん、この間、裁判の提訴や判決などがあって各年ごとに変化がありますが、傾向としては、さきに述べたとおりでございます。 ところで、昭和五十一年十二月に認定業務のおくれは行政の怠慢で違法だといういわゆる不作為違法の判決が出ました。この判決には控訴がなされず確定をしております。したがって、その後は国の怠慢、違法の状態が続いているというわけです。さらに、昨年七月にはいわゆる待たせ賃訴訟の判決が出たことも御存じのとおりです。この裁判の中で、国、県は認定業務の促進について最大の努力をしてきた、だから責任はないと主張しました。しかし、公正な裁判の結果、全面的に否定されたのです。現状は違法状態だから認定業務を促進するため抜本的な解決を図りなさいというのが判決の趣旨です。認定のおくれは県の怠慢であり、現状は違法状態であるということが再確認されたわけです。 そこで、現状打開の方策ですが、それは五十三年通知を四十六年通知に返すこと、これ以外に方法はありません。そうすれば認定申請者検診拒否もなくなるし、話し合いもスムーズにできるはずです。そうしなければ現在の不作為違法の状態はずっと続き認定業務はこれまで以上に行き詰まることは明らかです。知事だけの判断では難しい面もありましょうが、知事は環境庁長官の委任を受けた認定責任者です。実現のため御尽力をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 なお、認定申請後十年以上も保留になっている人が約三百人、二年以上の保留者は四千六百人にも達しております。病魔に苦しみながらそのまま放置され、せっかく待たせ賃訴訟で勝利しても国、県の控訴でまたお預け。申請者の心情を察してもらわなければならないと思います。そして長年保留になっている申請者は年限を切って認定する措置をとってもらいたいと思います。ぜひ認定責任者としての英断を期待しますが、いかがでございましょうか。知事のお考えをお聞かせください。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 第一のお尋ねの趣旨は、おくれている認定業務を打開するために五十三年の次官通知を四十六年の次官通知に戻したらどうかという御意見だったと思いますが、この件につきましては、すでに県議会あるいは国会等でも議論がなされておりますが、私どもとしては、四十六年次官通知と五十三年次官通知は同趣旨のものと理解をしているわけでございまして、五十三年次官通知は、それまでの医学的な知見というものを踏まえて、具体的に整理、集約されたものであって妥当なものであると受けとめているところでございます。 それから第二のお尋ねは、長年保留されている方々は直ちに認定をしたらどうかということでございますが、御承知のとおり、現行の認定制度のもとでは知事は認定審査会の医学的な意見を聞いて処分をするように法令等で定められているわけでございまして、したがって、長く保留になっているからといって医学的な判断を待たずに画一的に知事が認定をするというようなことは適当ではないと考えております。申請者の方々や御家族の御心労もよくわかりますし、現在保留者で長期にわたる方に特に配慮した検診審査を進めているところでございます。 なお、初めに御指摘になりましたように、本県の未処分者は現在五千人近くでございますが、そのうち三割の方は保留者であり、三割の方は再申請者、残りの四割が初回の申請者ということになっております。 今後ともいろいろな障害はございましようが、鋭意認定業務の促進に努めてまいりますので、申請者の方々にも一層の御理解と御協力をお願い申し上げたいというふうに考えております。  〔柴田徳義君登壇〕 ◆(柴田徳義君) 四十六年通知と五十三年通知は同趣旨のものだということは国会で環境庁長官も何回も繰り返して答弁しておるようでございます。しかし、通知の中身を見ると全く違ったものであるし、認定基準そのものが変更されたと、実質変更されているというふうに考えなければならない問題でございます。そこで、この問題を解決しない限り今の状態はどこまでも続くんだということを知事はやはりはっきり確認していただかなければならないと思います。それをやらないでどれだけ努力しても私は余り意味がないと思うんです。 さらに保留者の問題ですが、もちろん審査会の意見を聞いて判定する――審査会が判定するのでなくて意見を聞いて知事が判定するんです。実質保留者、本当の保留者が五千人のうち三〇%、三分の一おるということでしょう。そしたら千五、六百人いらっしゃるわけです。その中で年数の長い人は審査会の方でも何とも決しかねるということなんです。これがいつまでも続いていいんでしようか。そういう場合にはやはり認定責任者としての知事の判断で判定をしてあげなければならないと思うんです。その面についてひとつぜひお考えを願いたいと思うんです。 さらに、環境庁の発表によりますと、認定申請者の中で死後解剖を受けた人が全国で二百八十七人、熊本で二百六十二人おります。そのうち全国で百五十三人、熊本で百四十四人が認定されております。五十八年度だけでも県の場合解剖を受けた二十六人中十四人が認定されております。生存申請者の認定率が最近一〇%前後になっていることに比べると、解剖後の認定率は五四・五%になっているんです。これは認定基準が厳し過ぎる、五十三年通知が厳し過ぎるということ、認定業務が停滞しているということ、これがこのような状態を生んでいる原因です。認定基準を四十六年通知に返して認定業務を促進して、せめて生きているうちに認定できるようにしてほしいと思うんです。死ななければ認定されないのかという嘆きをなくするためにも知事の善処方を強く求めたいと思いますが、その点について知事の御所見をお伺いしたいと思います。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 今お答え申し上げましたとおりでございまして、重ねて申し上げることは特にございません。 認定の業務につきましても、今鋭意環境庁とも協議をいたしているところでございますし、県としてもできる限りの対応をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。先ほども申し上げましたように、申請者の方方にもぜひともひとつ御理解と御協力をいただきたいというふうに思っております。 県議会におきましても、いろいろな角度から御支援、御理解、御協力を賜れば幸いでございます。  〔柴田徳義君登壇〕 ◆(柴田徳義君) この問題について私の期待する答弁は得られませんが、しかし、実情はわかっていらっしゃると思います。ぜひ環境庁とも相談の上、とにかく認定業務が促進されるための最善の措置をとっていただくよう要望して、次の質問に移ります。 次は、国立国際環境大学の設立についてでございます。 この問題については、昨年九月定例会で地元水俣の深水議員と我が党の中島議員が取り上げましたが、改めて知事の意向を確かめると同時に積極的な取り組みを要請したいと思います。 環境大学の必要性については設立構想の中で述べられているとおりです。中島議員の質問にも詳しく述べられていますので避けますが、今環境問題は、かけがえのない地球の美しい自然、そしてこれを取り巻く豊かな環境を、人類共通の財産としてどのように後世に継承していくか大きな課題となっております。その解決には何よりも環境保全に関する科学技術の研究開発が不可欠であります。わが国は、環境汚染に多くの貴重な体験を持つ先進国として環境に関する学術振興に主導的な役割を果たすことが期待されております。そこで、世界の公害の原点である水俣に国立の国際環境大学を設立して環境保全の立場に立って国際社会に貢献できる人材を養成しようというものです。昨年九月定例会における知事の答弁は消極的なものでした。特に「昨今の経済財政状況のもとで早急に実現することは容易なことではない」と否定的ともとれる答弁がなされております。 ところで、私は昨年二月定例会で第二次ベビーブームの問題を取り上げました。その際、昭和六十四年の高校進学者が大幅にふえて県立高校の新設が必要になることを指摘しました。教育長も早急に対策を進める旨答弁を行っております。すると三年後は大学です。昭和六十七年度の全国の高校卒業生は約二百五万人、現在の進学率から推定すると、大学に進学できない高校浪人が八万五、六千人も生まれるということになるのです。そこで、文部省は急増対策として大学の新設や学部学科の増設を検討していますが、去る六月七日の各紙に文部省の大学審議会が「六十一年度以降の高等教育の計画的整備について」と題する最終報告をまとめ発表したことが報ぜられております。それによると、六十一年度から六十七年度にかけて大学、短大の定員を八万六千人ふやすというものです。環境大学の設立は急増対策の一環としてもまことに時宜を得たものと考えております。 さらに、国際環境大学は、特に世界の発展途上国の青年に門戸を開放しようとするものです。中曽根総理は途上国からの留学生の受け入れを約束していますが、日本の留学生の受け入れは現在約八千人、他の先進諸国に比較しますと、西ドイツやイギリスが五万人から六万人、フランスが十数万人、アメリカは三十数万人に上ると言われております。日本は留学に関しては砂漠状態だと言わなければなりません。首相の諮問機関である留学生懇話会でも、一九九〇年までには西ドイツ、イギリス並みに五万人、二〇〇〇年までにはフランス並みの十万人にするという答申を出しております。さらに国土庁は、高等教育機関のあり方として、地方に高等教育機関をつくれという答申を出しています。さきに述べました大学審議会の答申も学生の地方分散を目指しているのです。 さて、この問題はもちろん国会でも再三取り上げられました。最初馬場代議士がこの問題を取り上げたとき、当時の鯨岡環境庁長官は、環境問題は人類のために学問として定着していかなければならぬ問題であって、それを専門とする学校が国の手によってできることは、時代の趨勢として当然起こり得る問題である、前向きに文部省などと考えてみたい、設立するとすれば公害の原点水俣・芦北地域が有力だと思う、また、我が国の経済進出に対して公害の輸出だとか環境破壊などと苦々しく思っている国も多い、国際環境大学は国際協力の一環として、特に開発途上国から数多くの留学生を受け入れる特色のある大学としてはどうか、開発途上国の志ある青年を招いて勉強してもらい、帰国して自分の国で活躍してもらう構想は非常によいことだなどと積極的な答弁を行っております。本年四月六日の環境委員会において上田環境庁長官も、ただいま総理は、学制の改革をやろうとしておられます、大学も新しい考え方のものをつくろうとしている時期です、こういう時期に環境問題の大学もつくってもらわねばならない、私はそう考えていますので、文部省のけつをたたいてやらしていただきたい、このように答弁しております。 私は、今条件はすべてそろっていると思います。問題は地元の熱意一つ。上田環境庁長官も答弁の中で、残念ながら地元からの十分な話は聞いていないと言っております。水俣のようなへんぴなところに国際大学は無理だという声も聞きましたが、国土庁も文部省も、教育機関、学生の地方分散化を考えていることはさきに述べたとおりです。それにお隣の鹿児島の鹿屋に体育大学ができたではありませんか。阿波の鳴戸に教育大学ができました。沖縄では芸術大学設立の運動が進められております。しかも、水俣は世界の公害の原点です。大義名分はそろっています。 そこで、知事に理想の大学を設立するため、一はだ脱いでいただきたいのです。水俣病の暗いイメージに悩む水俣・芦北地域の振興のためにもぜひ実現させましょう。そのために早急に県民一体となった誘致期成会を組織し、できればその会長に知事自身がなっていただきたいのですが、いかがでしょうか。  〔議長退席、副議長着席〕 なお、新聞紙上で地元の水俣に不協和音が聞かれるやの報道もありましたが、私どもが先日懇談しました水俣の代表の皆さんは、市長を初め極めて積極的でぜひ早急につくってほしいと要請されたことをつけ加えておきます。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 環境大学の意義についていろいろ御指摘をいただきましたが、環境問題への対応が今や国際的な課題となっていること、あるいはまた環境保全に関する技術の研究開発や発展途上国の子弟に対する教育援助が、今後の国際社会において我が国に期待される重要な任務であることにつきましては御指摘のとおりであると考えております。しかしながら、国立の国際環境大学を水俣に設立するという具体的な御提案につきましては、昨年九月の県議会においてお答えをいたしましたように、極めて厳しい国の財政状況を念頭に置きながら、実現の可能性につきまして今後とも周到に検討を重ねていく必要があろうと考えているところでございます。 御質問の期成会につきましては、国の対応、地元水俣市の体制、今いろいろお話もございましたが、そうしたものを勘案いたしますと、今直ちに県レベルでこれを組織し、要望活動を展開するだけの条件が整っているのかどうか。いずれにいたしましても、今後この地域の置かれました歴史的な背景というものを踏まえまして、地域振興計画を総合的に考えていく中で、何も環境大学だけではないと思いますし、そうした地域振興計画というものを総合的に考えていく中で、関係方面とも御協議をしながら、この構想についての検討を進めてまいりたいというふうに考えております。  〔柴田徳義君登壇〕 ◆(柴田徳義君) 知事は大変慎重な態度をとっていらっしゃいます。無理からぬ面もあるかと思います。しかし、環境問題が緊急な要件であるということは今も知事が認められましたとおりですし、国際環境大学を設立するということの趣旨についても了解をいただいていると思うんです。そうなればひとつぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思うんです。 ことし熊大の薬学部に大学院が設置されます。来年は理工学部一緒にした大学院が設置されると聞いております。この大学院設置にも四年以上の運動が続けられてきているのです。そしてまた、熱心に運動をすれば必ず実現できると、こういうことなんです。 先ほどから申し上げましたように、いろいろの条件は完全にそろっております。繰り返しますけれども、要は地元の熱意一つだと思います。このような教育の問題あるいは環境浄化の問題がいろいろな派閥関係やその他のことで運動が進まないと、こういうことであっては私は困ると思うんです。その辺も知事はお考え願ってぜひひとつ積極的に取り組んでいただくことを要請して、次の質問に移ります。 次は、障害児の進学問題についてでございます。 先日六月七日、熊日の社会面「さわやかさん ほのぼのさん」の欄に「健常児学級で頑張る車イス少年」という記事が出ておりました。お読みになった方もあると思いますが、お聞きください。 熊本市立竜南中三年。義彦君の両足は動かない。母親紀美子さんによればハイハイもせず、立ち歩きも経験せず、病名が分かったのは六歳の時だった。進行性筋無力症。以来、車イスの生活。小学三年まで、生まれ育った天草郡河浦町の富津小に通ったが、養護学校義務化と同時に、県立黒石原養護学校へ。父親の自営業康男さんは仕事で手が離せないため、母親とともに熊本市にやってきた。 しかし、義彦君は、健常児学級で勉強したくてしようがなかった。紀美子さんともども「どうせ実現しないだろう」とあきらめかけていた昨年、板見陽子さん(江津高一年)の話を聞いた。板見さんは重度身障児だったが小・中学校で健常児とともに学び続けていた。昨年八月、親子で板見さんの家を訪ねた。「よし、僕にもやれそうだ」。二日後には、転校の意思を養護学校に伝えていた。 九月、竜南中に転入した。十月には、広島への二泊三日の修学旅行に参加。心配した両親も同行したが、義彦君は級友と同じ部屋で寝た。「ホテルの夜は面白かったぁ」。その時のことを十一月、弁論大会で発表した。結果は、見事に学年一位だった。 毎朝八時過ぎ、義彦君を乗せた紀美子さん運転の車が校舎入り口に着く。同時に、二階教室から級友たちが駆け下りてくる。「そらっ、〝社長〟のお出ましゾ」。〝社長〟とは、いつもイスに乗っている義彦君に付いたあだ名だ。級友たちは、〝社長〟を抱きかかえて階段を上っていく、にぎやかに。 「木浦君が来る前は、グループに分かれていたのが、なんか一つにまとまった感じ」「彼は、クラスの〝接着剤〟です」―級友の言葉だ。日曜日には友人が義彦君の家にやって来て、勉強会を催すことも。 「こんなに楽しい日々が送れるなんて。支えてくれる湯浅先生(担任)にも友達にも感謝しています」と紀美子さんは声を弾ませる。 義彦君は来年、普通高校合格を目指す。 この木浦君のように、障害を持った子供が県内にたくさんおります。障害児の大部分が、養護学校や盲学校、聾学校、それに障害児学級で学んでおります。現在県内には養護学校が、国立、市町村立、そして分校を含めて十六校、盲学校が一校、聾学校が二校、合わせて十九校、そしてそこで学んでいる児童生徒の数は千三百五十一名です。さらに、普通学校に併設されている障害児学級が二百七十七学級、千五十七人、この中には学校に通学できず家庭や病院で先生方の訪問教育を受けている者が六十九人となっております。この数字は、指定統計の発表が今年度分が出ませんので、昭和五十八年の五月一日現在となっております。 養護学校の義務制が実施される前、昭和五十三年度以前には就学猶予あるいは免除ということで教育の機会均等を与えられない生徒が三百十八人もおりました。義務制が実施された後、毎年減少して、昭和五十二年二百七十二名、五十四年百二十九名おったのが、五十六年には五十名、そして昨年度は二十九名になっております。この二十九名はほとんどがドクターストップです。ということは、ほとんどの障害児が教育の機会を得ることができたことになったわけです。 ところで、障害児の中には普通学校で健常児と一緒に学びたいと希望する者がたくさんおります。しかし、障害児教育に対する考え方や施設の問題、不慮の事故に対する配慮など、市町村の教育委員会、学校、父母の間で意見が合わずうまくいかない場合が多いのです。 本県で最近象徴的だったのは、江津高校に入学した板見陽子さんの高校進学でした。竜田小学校から東部中学校と普通学校で学んできましたが、高校進学で障害にぶつかりました。普通高校では公立も私立も受け入れが無理だということで新聞にも取り上げられましたが、幸い定時制の江津高校を受験、合格し、入学することができました。この点については、県教委あるいは江津高校の先生方の配慮に感謝をしているところです。 さて、昨年熊本市の託麻西小学校に入学した宮岡慎治君という生徒さんがおりますが、この場合も入学決定までにはいろいろと問題がありました。当時「慎太君の入学」というタイトルで新聞に連載されましたことも御記憶の方もおありと思います。障害児にとって養護学校がいいのか、あるいは普通学校がいいのか、難しい問題だと思います。受け入れ側の学校の心配もよくわかります。そこで、私は宮岡君や木浦君や板見さんのように、普通学校に入学している幾つかのケースについて学校での状況を調べてみました。 託麻西小学校に入学した宮岡君は、現在父親の仕事の関係で愛媛県に転校していますが、一年間担任した先生に事情を聞きました。宮岡君はダウン氏症候群で、知能も三、四歳程度、最初は担任の先生も大変戸惑ったが、しかし、一年たってみると、プラスの面が多かったと言います。単語だけしかしゃべれないのでなかなか言葉が通じない、それでもみんなの子供が熱心に聞いてくれる。時間がたつにつれてクラス全体の雰囲気がまるで変わってきた。それに親たちの考えも変わっています。最初は冷たい目で見ていた親たちが、我が子の話や態度を通じて自分たちの子供が教科以外のことを学んでいるということをわかってくれたというのです。学年末の学級懇談で母親の発言を聞きながら、自分の学級に慎治君がいてよかったと、担任の先生はこう話してくれました。 木浦君のことは新聞記事のとおりです。担任の先生もぜひ高校も普通高校に入れてやりたいと言っております。 同じ熊本市内の西山中学校の米田裕喜君。小児麻痺で両足と右手が不自由で左手だけがゆっくりと動かせる程度。木浦君の場合と同じように、教室の移動、階段の昇降、給食の準備すべて友達が気軽に手伝っております。休み時間も廊下で車イスを押してみんなと遊んでいる。本人も毎日が大変楽しいと言っております。字がゆっくりしか書けないのでテストにハンディがあります。先生方から時間を延ばそうという話もあるのですが、母親が同じにしてほしいと要望して特別に配慮はしていないそうです。校内での不慮の事故だけが心配と担任の先生は言いますが、それでもいろいろ気配りはあると想像されます。 南関高校の猿渡幸子さん、二年生、脳性小児麻痺。松橋養護学校から普通高校を希望、地元の南関高校を受験、合格しました。教室の階段については、手すりがついているので何とか自分で昇降できるそうです。ただ、管理棟、図書室の階段に手すりがないので困っている、教育委員会に何とかしてもらえないかという話でした。トイレは別に移動式のものを各所に備えているそうです。本人の不自由な点は生徒たちが積極的に手助けをしております。校内の弁論大会でも、松橋養護の友だちは普通高校に行きたがっている、自分は普通高校に進学できてよかった、松橋の友達の分まで頑張りたいと、こういう内容で発表し、見事に優勝をしたということです。教頭さんの話ですが、私も審査をしましたが、文句なしの優勝でしたということでした。猿渡さんのいる学級は何でもよくまとまる、非行やその他の問題行動も起きない、猿渡さんが頑張っているから自分たちも頑張らねばということのようだ、他の生徒たちに大変よい影響を与えていると、これも教頭さんの話でした。 東海大学第二高校、伊藤里見さん。黒石原養護学校から本年四月入学の一年生。車いすで母親が付き添っていますが、教室の移動にはやはり生徒が手伝っております。入学を前に職員の間でもいろいろと論議があったそうです。絶対だめだという意見も強く出たそうです。無理もないと思います。しかし、みんなの意思で踏み切って受験を認めたわけです。最初大変心配したが、本人が明るくて母親もできるだけ特別な扱いをしてくれるなと言っております。成績も入学試験の際は中以下だったのが、先日の中間試験ではクラスで三番、学年で十六番の成績。養護学校の先生の話では、東海二高に受験が決まったときから物すごく勉強を始めたということです。学校でもいろいろと配慮をしていらっしゃるようです。四階の特別教室の使用は二日間にまとめるとかいろいろなことが配慮してありますが、特に黒石原養護学校の校長を招いて障害児教育についての学習会も開かれたそうです。頭の下がる思いです。入学後まだわずかな期間だが、他の生徒にもよい影響が出始めていると校長さんも喜んでおりました。悩みもあるようです。今申しました特別教室は四階。江津高校にはエレベーターができるそうでいいですなあと、これも校長先生の言葉でした。 江津高校、板見陽子さん。入学までのいきさつは御存じのとおりです。私は事前に校長、教頭にお会いしました。その際、定時制高校の普通高校と違った悩みをいろいろと聞かされました。そして、もし板見さんが入学したら学校側の苦労も大変だろうと私自身心配をいたしました。しかし、入学後二カ月、学校の話では当初心配したようなことはほとんどないということです。ここでも他の生徒がちゃんと手伝い、ずっと付き添う覚悟でいた母親も送り迎えだけで済んでいるとのことです。私も食事の様子を見せてもらいましたが、隣の生徒がごく自然に手伝っていて楽しそうでした。 このほかにも、高森高校に骨の形成不全症で歩行が少し不自由な、そして強い衝撃を受けると骨が折れるという後藤ちよみさん、中央女子高校には先天性難聴の高宮由香里さんなどがいますが、どちらも健常児と一緒に一生懸命頑張っております。 ただ、熊本市の壷川小学校に一年生の福田サチ子ちゃんがおります。先天性難聴児です。この場合は、先生の発言が聞こえないし、口を見てもまだくちびるの動きで読み取る能力がない。だから本当に理解できているのかどうか。今のところ余りおくれている様子はないが、上学年になった場合はどうだろうかと校長さんが心配しておりました。 以上、幾つかの事例について述べましたが、共通していることは、本人が普通学校に行くことでやる気を起こしていること、他の児童生徒が何の抵抗もなく受け入れてみんなで手伝い仲よくしていること、障害児がいることによって学級全体がまとまり、みんなの子供によい影響を与えているということです。もちろん学校としても担任としてもいろいろと気配りも苦労も多いと思います。教育委員会としてもやはり心配があると思いますが、私は本人と父母の希望があれば原則として普通学校に進学させるべきではないかと思います。教育委員会のお考えをお聞かせください。  〔教育長外村次郎君登壇〕 ◎教育長(外村次郎君) お答えいたします。 障害を持つ子供さん方の教育につきましては、例えば学校教育法の第七十一条に盲学校、聾学校または養護学校の目的ということで、「幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施し、あわせてその欠陥を補うために、必要な知識技能を授ける」と、こういった定めがあるのを初めといたしまして、種々適切な教育を行いますよう法の定めがなされているところでございます。 教育委員会といたしましては、それらの法に従うことはもちろんでございますが、障害を持つ児童生徒がそれぞれの能力をできるだけ伸ばせるよう、学齢児童にありましては、市町村の教育委員会に適切な就学指導をお願いしておるところでございます。また、高等学校への進学問題につきましては、中学校における適切な進路指導を前提といたしまして、進学後の適用等につきまして慎重な検討を加え、その適否を判断するよう学校を指導しているところでございます。 御指摘のように、障害を持つ子供さん方が、普通学級、普通学校に学んでおられる例があるわけでございますが、それらの教育につきましては、学校教育法の施行規則第二十六条に従いまして、教科の学習を心身の状況に適合するよう特別に配慮をいたしておりまして、また、関係者の皆さん方の非常な御努力あるいは御配慮等もあって進められているものでございます。 教育委員会といたしましては、一層適切な就学指導を進めますとともに、相互理解を深める交流教育の推進を図るなど教育効果を高めるための努力を続けることはもとよりでございますが、他方、それらの教育は、その種類や程度に応じた指導法や教材等が必要でございますし、また、二次障害の予防あるいは障害の改善、生命の安全等を考慮しなければならないわけでございまして、実情に即し、総合的に考えまして、今後も慎重に対応しなければならないというふうに考えておるところでございます。  〔柴田徳義君登壇〕 ◆(柴田徳義君) 教育長の答弁極めて抽象的でよくわかりませんでしたが やはり教育委員会の立場ではああいう答弁しかできないものかなと思っているところです。 ところで、江津高校にはエレベーターをつけようということを決定してもらったと。この点については、教育委員会、さらに知事の配慮に深く感謝をするところです。 教育委員会は触れられませんでしたが、本県の場合、障害児の進学は他県に比べるといい方だと見ております。わりと理解ある措置を県教委はとってもらっておるというふうに思っております。その点は感謝したいわけですが、しかし、もっともっと進んでいる県もあるわけでございまして、これからもひとつぜひ努力を願いたいと思うんです。ただ、やはり受け入れ時には先ほどから申しておりますようにいろいろな悩みがあると思うんです。ですから、そういう面について適切なひとつ市町村教育委員会に対する指導が欲しいと思います。市町村の教育委員会ではなかなか障害児の教育問題が本質的にわかってもらえないで、ただ形式的に、おまえは障害児だから養護学校に行きなさい、おまえはこうだから障害学級に行きなさいと、こういうふうに決めてしまう、そういうのがあるわけです。そういう面についてはひとつぜひ教育委員会の適切な指導を願いたいと思うんです。 さらに、高等学校の入学試験には将来難聴児に英語のヒヤリングをやるというようなことも聞いております。書くことはどんどんできる、英語は十分理解できる生徒さんでも、耳が聞こえない難聴児にはヒヤリングは無理なんです。そういう点はやはり考えてもらわなければならないのではないかと、こういうふうに思います。 それに、わりと簡単にできるのはトイレの改修だと思います。今も障害児が何人かおるそこの学校でトイレには苦労している。東海二高の場合、そのためにお母さんがトイレはついているということで、近く何とかしなければならぬという話もあっておりましたが、ひとつ県立高校の場合、障害児の入ったトイレの改修の必要なところには直ちにトイレを改修する、あるいは南関高校で要望があっておりましたように階段に手すりをつける、これはもう簡単なことなんです。そういう小さいことから一つずつひとつやっていただきたいと思います。 私は、理想の姿は、国際障害者年の基本テーマでもありました「完全参加と平等」ということです。ですから、理想の姿としては、すべての障害児がすべて健常児と一緒に勉強する、これが正しいと思うんです。しかし、今のところいろいろな障害があります。そこまで行き着くためにはまだまだ障害児教育という学問的な研究も必要だと思います。だから、できるだけそれに近づける方途をとっていただきたいというのが私のお願いです。 さらに、養護学校もあるいは盲聾学校も特殊学級もやはり今のところは必要なんです。ですから、できるだけ健常児と一緒の普通学校へやってくれという希望はしておりますけれども、障害児学校の充実にも力を入れてもらいたいし、さらに、先般来陳情書も出ているようですが、障害児学級に高等部の設置をという強い願いがあります。普通学校にはどうしても今の段階では行けない、そういう子供さんたちのためにはぜひ各養護学校に高等部を設置してもらいたい。このことも強く要望して次の質問に移りたいと思います。 次は、国鉄高森線の存続問題についてでございます。 この問題については、これまで本会議において再三にわたって論議されました。そこで、私は単刀直入に知事にお伺いしたい。知事は高森線を存続するつもりですか、あるいはもう廃止やむを得ないと決意されるのですか。 知事は、本年三月定例会において我が党の林田議員の質問に対し、大要次のような答弁をされております。高森線を鉄道で存続させるとした場合、第三セクター方式によるほかはない、したがって、第三セクターで運営した場合の収支試算を検討資料として提出した、その内容は、巨額の赤字であり、利用の促進その他の施策を進めたとしても赤字の運営は避けられない、しかしながら、高森線と高千穂線を連結させて九州中部横断鉄道として実現することが地元からの強い希望で、現在第二次廃止対象路線として承認申請されている高千穂線の動向を見ながら、今後とも沿線町村あるいは宮崎県側と十分協議をして慎重に対応してまいりたい。一方、県議会側ではこれに呼応して、同じ三月定例会において高森線特定地方交通線に関する意見書を満場一致採択し、第二次選定線の高千穂線との時間差を考慮するよう政府に求めているところであります。 ところで、マスコミの報ずるところによると、知事は、さきに第三セクター鉄道としてスタートした岩手県の三陸鉄道の清水武志専務を招いて高森線の調査を依頼されたということです。さらに、六月一日開かれた知事の21世紀懇話会の席上、交通評論家の角本良平氏が高森線について、「テレビ時代のラジオみたいなもので、〝無用の長物〟。車の時代に鉄道を残せという政治の不条理な圧力がかかっている。高森線の赤字は道路の普及に使った方が効率的だ」という、まるで地元沿線住民の顔を逆なでするような発言を行っていますが、これに対し知事は、「政治は経済的合理性に対する戦いだけ、という気がする。まさに高森線はそのはんちゅう。そういうことは分かっているが、やりにくいところもある」と述べた」と報ぜられております。もちろん新聞の報ずるところで本当の意思と違っている面もあるかもしれませんが、一方、マスコミ関係でも、県側は第三セクターによる高森線存続には消極的な姿勢を見せていると言われています。このような一連の流れから、知事は、三陸鉄道の清水専務の調査結果をまって高森線廃止に踏み切るのではないかと心配していますが、いかがですか。 去る四月二十一日、高森小学校の体育館で、国民の足を守る会議が主催する「高森線存続を求める集会」が開かれました。集会には地元出身の今村議員も出席して決意を述べられましたが、地元高森町長を初め沿線の町村長、議長、商工会議所、老人会、婦人会、学生など千九百名の方方が集まりました。高千穂線を持つ宮崎県からも、廃止が決まった宮原線の大分県からもたくさんの代表が参加しておりました。私もこの会に参加しましたが、高森線をぜひ存続してほしいという訴えが続き会場に熱気があふれていました。また南阿蘇総合開発促進協議会は、本月五日熊本市で会合を開き、沿線町村外の西原村、蘇陽町を含め六町村で、第三セクター方式による運営の実現に向けて県に働きかけることで合意したと言われております。さらにその後の報道では、レールバスを導入、県の五〇%出資による第三セクター運営の方針を固め、十二日にも知事に半額負担を申し入れるということです。さらに、最近国鉄労働者の中に労働条件を犠牲にしてでも高森線を守ろうという動きが出て運動を始められていると聞いております。 高森線は、この七月で日本国有鉄道経営再建促進特別措置法に定める協議期間が満了します。協議期間の延長を国に求めていることはさきに申しましたが、一応のリミットが迫っております。県民は、この問題がどうなるか重大な関心を持って議会の動きを見詰めております。知事は、地元の切実な叫びにどうこたえるのか、高森線をどうするかお答えをいただきたい。と同時に、協議期間の延長の問題も知事の力がぜひ必要です。何とか実現させたいと思いますが、お考えをお聞かせください。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 高森線対策についての御質問でございますが、この問題につきましては、これまで鉄道で存続させるとするならば第三セクター方式によるほかないので、第三セクター方式による運営につきまして高森線特定地方交通線対策協議会でいろいろ論議を重ねていただいてきたところでございます。その後、地元町村でも予想される損失負担の問題など再三にわたって協議をされまして、その結果を持って明日、十二日でございますか、私のところへおいでになることになっておるわけでございます。 今後、これまでの経緯を踏まえまして長期的な視点に立って見た場合、地域住民の方々にとってどのような交通手段が適切であるのか、また、沿線地域開発等の面から考えまして、どのような地域交通のあり方が効果的なのか、当然地元の町村と詰めた論議を行いまして、できるだけ早く結論を得たいと考えております。 次に、協議会の協議期間の延長についてのお尋ねでございますが、御指摘がありましたとおり、七月十六日には法に定める協議期間の二年を迎えることになるわけでございます。高森線対策協議会の開始に当たりましては、高千穂線と結んで九州中央横断鉄道を実現することを含めて論議をすることとしておるわけでございますが、御承知のとおり高千穂線は、第二次特定地方交通線として現在廃止に係る承認手続の段階でございまして、現状では高森線の協議期間内に一体的に協議を行うということは事実上不可能であろうというふうに受けとめております。 今まで県議会ともども国に対しまして協議期間の弾力的な運用について申し入れをしてきたところでございますが、国鉄再建をめぐる極めて厳しい情勢の中で、どこまで許されるのか大変危惧をいたしているところでございます。このようなことを勘案いたしますと、高森線のみの方向づけも検討せざるを得ないのではないかというふうに考えております。  〔柴田徳義君登壇〕 ◆(柴田徳義君) 高森線の存続問題については、現在の知事としてなかなか答弁しにくいと思いますけれども、しかし、何としてもやはり地元のあるいは国民の足を守るための道として高森線を存続させてほしいと、こういうふうに強く訴えるわけです。そのためにはやはり県議会でも意見書を提出しているとおり、協議期間の延長をぜひ働きかけてもらいたいし、もちろん地元と相談の上いろいろな対策を講ぜられることも必要かと思いますけれども、並行してひとつぜひ努力をしていただきたい。しかも、この問題についてのやはり大きなウエートが知事の行動にかかっているということも否めない事実でありますので、ぜひひとつ先頭に立って御努力を願いたいと思います。 時間がございませんので、次へ移ります。次は、農薬残留米の処理についてでございます。 去る五月二十八日、新聞やテレビ等で外米の輸入問題が報道されました。農林水産省が米の減反政策を実施する中で、五十三年産の古米のうち、主食用として供給することにしていたものの中から一部に安全面で問題のあることが判明したというものです。五十三年産米は、本年五月の推定在庫量が約二十万トンとされております。この古米は毎年害虫駆除のため臭化メチル等の薫蒸剤で薫蒸処理をされていますが、農薬の残留調査を行った結果、臭化メチルの分解物である臭素が二ないし六八ppm、平均二五ppm検出されたというものです。 そこで、厚生省の諮問機関である食品衛生調査会残留農薬部会で検討の結果、「五十三年産米について五〇ppm以上のものについては主食用の売却を避ける」との見解を発表。そこで食糧庁は、本年度産の加工原料用米が出回り始める十二月末ごろまでの間に予定していた他用途利用米の供給が不足するおそれがあるということで、昭和四十年代半ばに韓国に貸し付けていた米の現物返還を求めるというものです。米の現物返還といっても実際には米の逆輸入ということです。 そこで問題が二つ。一つは、政府が保管している米が政府の手によって汚染されたという事実です。政府は国民に対して安全な食糧を供給する義務を負っているのです。このような結果を招いたずさんな管理の責任は当然追及されなければならないし、同時に、農薬の残留が確認された米はすべて主食用として売却することを直ちに停止すべきだと考えますが、知事の御意見をお聞かせください。 次に、米の生産が過剰であるとして農民の反対を押し切って減反政策を強行してきた政府が米の輸入を行うということは農政の基本にかかわる問題であります。特に最近政府の農政に対する不信が高まっている中で、今度の行為は政府が臭素を理由に今後米の輸入に突破口を開こうとするものではないかという疑いが持たれております。さらに、韓国はこれまでアメリカから米を輸入しており、今度の輸入は、名目は韓国から返してもらうことになっているが、実際はアメリカから来るのではないかとの疑いさえも持たれています。 ちなみに最近、農協の倉庫には米はほとんど入っていないと言われています、政府は、この際、単年度需給を基本とした減反政策を根本的に見直し、国産米の生産拡大を図り食糧自給率を高めることが必要であると考えますが、知事の見解と農業県熊本の代表としての政府への対応策をお聞かせください。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) お尋ねの第一点である農薬残留が確認された米の取り扱いについてでございますが、その管理は食管法に基づいて食糧庁において所管されている事項でございまして、この問題につきましては、六月五日付の山村農林水産大臣の談話によりますと、「先日の厚生省食品衛生調査会残留農薬部会の報告において、薫蒸剤の有効成分の残留は認められなかったが、その分解物である臭素の残留が認められ、米の残留臭素について暫定基準が示されたので、今後は、米の品質管理において安全性には念には念を入れた配慮を行うこととし、五十三年産米については、当該基準に適合するものであることを確認をした上で売却を行うこととした。」というふうに発表をされております。食糧の安全確保は極めて重要なことでございますが、既に五月二十九日以降出荷が停止されておりまして、今後におきましても暫定基準に適合していることの確認を行った上で売却されるということでございますので、それによって安全性は確保されるものというふうに判断をいたしております。 それから、お尋ねの第二点である単年度需給に関する問題につきましては、本県としても国に対しまして適正な備蓄を確保するように要望をしてきたところでございますが、五十九年度から実施されている水田利用再編第三期対策におきまして、各年平均四十五万トンの備蓄米を確保することとされておりまして、さきの大臣談話におきましても「国会における全党一致による食糧自給力強化に関する決議等の趣旨を体し、米の供給については、国内産で全量自給すべきものであるという方針は堅持している。」と発表され、さらに「本年産米の作況の推移を見て、来年度の減反については弾力的な対応を行う。」という方針が示されていることは御承知のとおりでございます。 県といたしましては、米需給の国内産による完全確保、食糧自給力の向上等、国に対しまして今後とも強く要望してまいりたいというふうに考えております。  〔柴田徳義君登壇〕
    ◆(柴田徳義君) 米の需給について強い要請を行っていらっしゃることについても私ども承知いたしておりますが、しかし、やはり知事は同じ自民党の政府であっても正すべき点はもっとはっきり正すという強い姿勢に立ってもらいたいのです。今の農薬残留の問題についても政府がこう言うからこれで信用するんだと、米の問題についても政府が大丈夫と言うからそれでいいんだと、こういう発言が多うございます。これは今までの答弁に一貫してそういう姿勢がうかがわれます。やはり県民を代表する知事でございますので、県民にとってあるいは国民にとって都合の悪いことについては政府に対して強力な抗議も申し込むと、こういう姿勢が欲しいと思います。 時間がございませんので、最後の質問に移ります。除草剤の処理についてです。 愛媛県津島町の国有林に埋められた猛毒の2・4・5T系除草剤が土中に流出した事件で、林野庁は埋設廃棄した全国の追跡調査をしましたが、二十五日までに北海道から九州までの二十九営林署で通達に違反してずさんに廃棄されていたことがわかりました。熊本でも営林局の調査で、北部町と宇土市、芦北町の三カ所に埋設廃棄されていることが判明しましたが、いずれも林野庁の指示どおりの処置がなされておらず、特にこのうちニカ所は「一カ所に埋め込む量は原則として三百キログラム以内」という林野庁の指示を大幅に上回って、北部町では千二百九十五キログラム、宇土市では二千五十五キログラムが廃棄されております。 さらに、林野庁の指示は、処分箇所の選定について、飲料水の水源、民家、歩道、沢筋などから可能な限り離れた峰筋近くを選定することになっておりますが、宇土市の場合は、近くに水源やしょうけ池と呼ばれる吸水性の強い地もあると言われております。さらに、処理の方法についても、セメントや土壌とまぜ合わせてコンクリートの固まりとしてビニール底の上に埋め込むとなっているのに、穴の中にビニールを敷いてまぜ合わせたものを流し込んでおります。このように林野庁の指示に反した処置をしながら、熊本営林局は、埋設方法に問題はなく、三カ所とも現時点では土壌汚染の心配はないと発表しております。 ○副議長(米原賢士君) 柴田徳義君に申し上げます。残り時間が少なくなりましたので、質問を簡潔に願います。 ◆(柴田徳義君) (続) 特に水源池の近くで基準の七倍近くを埋設したと言われる宇土市では、心配した地元住民の要請で宇土市長が営林局長に対し、埋設物の撤去と埋設地付近及び下方地区の水質並びに土壌の調査を求める文書を提出しております。 私ども社会党の代表は、五月二十八日営林局長に面会を求めこの問題について追及しました。その中で林野庁の指示に反する処理が判明しましたが、私どもが要求した現場の掘り起こし調査と撤去、水質の検査に応じようとしませんでした。しかし、さらに追及の結果、撤去する方向で検討する、そのため納得する方法で掘り起こし調査するということを約束しました。しかし、この約束はまだ果たされていないようです。 なお、当日直ちに知事に営林局に対し、現地の掘り起こし調査と撤去について申し入れるよう要請しましたが、どのような措置がとられたか、どのような回答がなされたかお尋ねいたします。 さて、この2・4・5T系除草剤は四十五年を最後に散布は停止されましたが、他の除草剤は現在も散布が続けられております。熊本県内の各営林署で昨年度に使われた除草剤は千六百二ヘクタールに粒剤、粉剤合わせて一万八千七百九キログラム、Kピン、これはクズカズラなどに打ち込むものだそうですが、六十二万五千百八十本、本年度予定されている除草剤は千四百六十六ヘクタールに粒剤、粉剤二万一千百三十五キログラム、Kピン六十一万八千本となっております。現在使用中の除草剤は一応人畜無害となっていると思います。しかし、2・4・5TもBHCも最初は安全、無害ということだったのです。現在使用中のものも絶対無害という保証はありません。その証拠に薬剤散布の際には、手袋を使用せよ、マスクをせよ、その日は晩酌はするなと指導し、「一カ月間立入禁止」「牛馬を入れるな」の立て札を立てると聞いております。 薬剤の毒性には急性のものと慢性のものとあります。急性のものはすぐわかりますが、慢性のものはわかりません。わかったときにはもう手おくれです。だから絶対安全の保証のない薬剤は使ってはいけないのです。特に山林はそのまま水源涵養の役割を果たします。いわば水源です。そこに安全の保証のない薬剤が散布されることは大変です。知事は、県民の命と健康を守るため、営林局に対し、薬剤散布をやめるよう申し入れてほしいと思います。知事のお考えをお聞かせください。 ○副議長(米原賢士君) 知事細川護熙君。――時間がございませんので、簡潔に願います。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 熊本営林局が昭和四十六年に廃棄処分を行いました2・4・5T系除草剤の問題につきましては、去る五月二十九日、営林局の責任者の来庁を求めまして、県内における処分の実態と今後の対処方針につきまして説明を受けるとともに、住民の不安解消のため速やかに適切な措置を講ずるように要請をいたしました。営林局の方からは、とりあえず早急に水質検査と土壌検査を行いたいんで、科学的かつ公正に実施できる立場にある県の協力をお願いしたいということでございまして、県としても、住民不安の解消を図るため、これを受けることにいたしたところでございます。 それから、本県におきまして処理された除草剤は、四国等で問題になっている粒剤に比べまして2・4・5T含有量が少ない粒剤でございますが、環境汚染に関する問題で地元住民の不安も強いわけでございますから、水質、土壌検査の結果を見て慎重に対処したいというふうに考えております。 それから、営林局に対し申し入れをしてほしいというお話でございますが、林業の振興のために、現在のこの林業の不振が続く中で、適切な保育管理を進めてまいりますためにはやはり有効な手段の一つでございますし、農薬取締法に基づいて品質の適正化と、安全かつ適正な使用の確保が図られているというふうに考えますので、薬剤散布の中止を営林局に申し入れる考えはございませんが、しかし、どんな使い方をしても害が全くないということにはなりませんので、それぞれの使用目的に従って定められている使用基準に基づく正しい使い方等について、今後さらに周知徹底を図り被害の防止に努めてまいりたいというふうに考えております。 ○副議長(米原賢士君) 昼食のため午後一時まで休憩いたします。  午前十一時三十三分休憩      ―――――――○―――――――  午後一時二分開議 ○副議長(米原賢士君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 自由民主党代表井上龍生君。  〔井上龍生君登壇〕 (拍手) ◆(井上龍生君) 井上龍生でございます。私は、自由民主党を代表いたしまして、当面する県政の重要課題につきまして知事並びに執行部に対しまして御質問を申し上げるわけでございます。知事並びに執行部におかれましては、簡潔にして明快な御答弁をお願い申し上げ、通告に従いまして質問をいたしてまいりたいと存じます。 まず最初は、県民がひとしく待ち望んでおります知事の県政運営の指針につきまして御質問を申し上げるわけであります。 これからの時代は、まさに知事がふだんから力説をしていらっしゃいます地域間の知恵比べの時代であろうかと思います。そういう時代に差しかかったわけでありまして、厳しい財政状況のもとで、効率的かつ重点的な県政を運営していくことは極めて重要なことでございまして、同時に非常に難しい課題であろうかと存じます。 知事は、こういった情勢を十分に見極められまして、これからの県政運営の指針を策定しておいでになるわけでありますが、これからの細川県政に寄せる県民の期待というものはまことに大きいわけでございまして、今回策定をなさいます指針の基本的な考え方あるいはその概要についてお伺いを申し上げたいと存じます。 知事の御答弁をいただきまして再登壇をいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 県政運営の指針の基本的な考え方についてのお尋ねでございますが、御指摘のとおり、今日地域社会は、情報化、国際化あるいは国民意識の多様化などの流れの中で大きな変化の時代を迎えておるわけでございます。地方の時代とは、今やこのような大きな変化に地域社会がどのようにうまく対応できるかという意味で地域間が競い合う時代になっているわけでございまして、こういう認識に立ちまして、私は就任以来、活力のある県土をつくるということを第一の目標として積極的な県政を心がけてきたところでございます。 県議会を初め県民各位の御協力によりまして、最近、内外からいろいろと熊本が多少活発になってきたなという評価をいただくようになりまして意を強くしているところでございますが、お尋ねの県政運営の指針は、本県を取り巻く厳しい環境変化を踏まえまして、おおむね十年後をめどに本県のあるべき姿を展望して、これを実現するための課題と戦略を明らかにすることによって、県政の重点的、効率的な運営に資することを目的として、現在策定作業も最終段階を迎えているところでございます。 指針におきましては、これからの熊本県の発展方向を考えるに当たりまして、地域間競争に打ちかつ活力、第二には、より熊本的なものを追求する個性、第二には、生活の質を向上させる潤い、こうした三つの基本テーマのもとに県政上重要な七つの施策分野につきまして、それぞれこの基本テーマに沿った熊本の将来像を描き、その実現のための重点課題を整理することにいたしております。 第一は、熊本を将来の可能性に積極的に挑戦する農林水産業の基地にしたいということでございます。そのためには、基盤整備等の効率的な推進に加えまして技術革新への積極的な対応を、あるいはまた情報化時代にふさわしい流通の改善等を重視してまいりたいというふうに考えております。 第二は、熊本を活力に満ちた商工業の拠点としたいということでございまして、工業につきましては、熊本のベンチャー的なエネルギーというものを生かして創造的な産業コンプレックスの形成を目指してまいりたいと考えておるわけでございます。商業につきましては、県民の生活様式の変化と消費行動の多様化あるいは個性化というようなものに対応いたしまして、魅力のある商店街を形成していくことが大事なことでございましょうし、また、熊本を九州の物流拠点とすることを目指してまいらなければなりませんし、さらには、新しいニーズに対応して人材の確保と技能者の養成にも努めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。 第三は、熊本を国際的に開かれた技術情報都市としたいということでございます。本県の心臓部ともいうべき熊本市を中心とする地域におきましてテクノポリスの建設を推進いたしますとともに、情報資源の蓄積を図り、国際的に開かれた技術情報都市づくりを進めてまいりたいと考えております。 第四は、地域、保護者、自治体、学校、そうしたところと十分連携を保ちながら地域の核となる特色のある学校づくりを進めることなどによりまして、熊本を新しい時代をリードする個性と創造性の豊かな人材を育てる教育県としたいということでございます。 第五は、全国でも一番先進的な熊本高齢者社会参加計画をすでに打ち出したわけでございますが、熊本県におきまして、来るべき高齢化社会におけるモデルとなるような地域福祉を実現したいということでございます。 第六には、先ほども地方の競争の時代と申し上げましたが、それは同時に地方の個性化の時代ということを意味するわけでございまして、より熊本的なものを追求する熊本化計画を進めることによりまして、熊本を伝統と個性を生かした新しい文化の発進地として位置づけてまいりたいということを考えております。あわせて、緑の十カ年計画によりまして、全県公園化を進め、六十年には全国植樹祭、六十一年には全国都市緑化フェアを開催するなど、イベントを招致、開催し、知的な生産活動なり生活拠点の場づくりというものを進めてまいりたい、このように考えているところでございます。 最後に第七は、県内くまなく個性と活力ある地域として発展をさせたいということでございまして、くまもと日本一づくり運動を強力に展開をしてまいりたいと思っております。これは、県内の各地域がそれぞれに産品なりイベントなり、あるいはシンボルづくりなどに創意と工夫を凝らして取り組み、全国に誇れるような地域づくりを進める運動でございまして、こうした地域の取り組みには県としても総力を挙げて支援をしてまいりたいと考えているところでございます。 以上、現在策定作業を進めております県政指針の基本的な考え方について簡単に御説明を申し上げましたが、今後この七つの熊本像を実現するための具体的な施策につきまして、さらに検討を加えて、できるだけわかりやすい表現を用いた冊子として公表したいというふうに考えております。  〔井上龍生君登壇〕 ◆(井上龍生君) ただいま七つの柱を中心になさいましてるる詳細にわたって御答弁をいただいたわけでありますが、我々県民はひとしくその方向づけを待っているわけでありまして、特に各市町村におきましては、今後の対応がそれによって決まるわけでございます。非常にいい対応ができるものと確信をいたしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。 次の質問は、地方財政対策についてであります。特に地方財政への厳しい財政環境をどう認識し、あるいは今後の対策あるいはその対処の仕方についてをお尋ねいたすところであります。 国におきましては、六十年度の予算編成に臨む基本方針を七月の上旬に決定する方針と聞いているわけであります。同年度における各省庁の概算要求枠、いわゆるシーリングは、五十九年度と同じように、原則としてマイナス一〇%あるいは一五%を上回るということでございまして、厳しいものになると言われておるところであります。 これは国の財政中期展望によりますと、六十年度の歳入不足額が四兆円にも達すると見込まれているところであります。それ以降におきましても歳入不足額が年々増大する見通しでございまして、このような厳しい方針が検討をされているものと考えられるのであります。他方、地方財政におきましても、自治省が国の財政中期展望に対応いたしまして六十二年度までの地方財政の収支を推計した「地方財政参考試算」によりますと、六十年度で約二兆円、六十一年度一兆六千億円、六十二年度一兆一千億円と引き続き大幅な財源不足額が見込まれているところでありまして、地方財政も依然非常に厳しい環境に置かれていると言わなければならないわけであります。 ところが、最近聞くところによりますと、国は六十年度で四兆円の財源不足があり、年々増大をしていくのに対しまして、地方は六十年度の二兆円の財源不足が二年後には一兆一千億円に減少しているということをもちまして、地方財政は国と違って財政的に余裕が出てきたのではないかという論議が政府や財界の一部に取りざたされているところであります。このような論調を背景にいたしまして、国におきましては来年度予算編成におきまして、地方から地方財源を一時的に借り入れたり、国庫補助率を引き下げる等による財源調達が検討されているところであります。 御承知のとおり、今日地方におきましても、増大した借金返済の財源あるいは地域振興のための財源確保を図るために、国に先んじて行政改革を推進し、事務経費の節減等に最大限の努力を重ねている中でございまして、このような論議が行われているということ自体非常に理解に苦しんでおるところでございます。また、地方の実情を全く無視した論議ではないかと私は思うのであります。まして本県の場合、今回の補正の予算案によりますと、発行残高が二百八十六億円にも上らんとしておりますチッソ県債、極めて特殊な財政上の不安要因を抱えておるところでございまして、私は、このような論議には一層の危機感を覚えているところであります。 知事は、このような状況をどのように認識をされているのか、どう対処をしようとお考えなのか、お伺いをいたしまして再登壇をいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 地方財政への厳しい財政環境をどう認識し、どう対処していくのかというお尋ねでございますが、御承知のように、県の財政は近年とみに厳しさを増しまして、事務事業の見直し等、行政経費の節減、合理化に努めてきているところでございます。しかし、公債費の急速な伸び等によりまして、現に五十九年度当初予算では義務的な経費にかかわる歳出が全体の五〇%を超えましたし、今後の財政運営上の大変頭の痛い問題になってきているところでございます。 お尋ねの中で触れられました国の財政の中期展望を見ますと、確かに国の財政が極めて異常な収支不均衡状態にあることは否めないといたしましても、一方で地方財政も程度の差こそあれ、やはり多額の財源不足を見込まなければならない状況であることも自治省の地方財政参考試算から明らかでございまして、さらに、我々地方財政を実際に運営している者の実感に照らして申しますと、昨今の社会経済情勢のもとで財政収支が次第に改善をしていくというような見通しは果たして本当なんだろうかと考えざるを得ないわけでございます。 ところが、このような実情にもかかわらず、一部にお話がございましたように、地方財政余裕論が出ていることはまことに遺憾な話でございまして、私としては、今後とも地方財源の安定的な確保を図り、累積した巨額の地方債借入金の償還にも耐え得る財政構造を確保するため、地方税の充実強化、あるいはまた地方交付税の安定的な確保でありますとか、そうした対策に万全を期してまいりたい。国に対しましても、今後とも全国知事会等あるいは地方六団体とも協力をいたしまして強く要望をしてまいりたいと考えております。  〔井上龍生君登壇〕 ◆(井上龍生君) 社会党の方々からいろいろお話が出ておりますけれども、いずれにいたしましても、地方財政の健全化というのは喜ばしいことであろうかと思います。地域のことは地域で決め地域で実行するという姿勢が県政の大きな柱ではないかと私は思っているわけであります。健全財政立て直しをお願い申し上げまして、次の質問に移りたいと存じます。 次は、行政改革についてであります。 県の行政改革審議会は、去る四日知事に対しまして第二次の中間報告を行われたのであります。時代の変化を的確にとらえ相当斬新な提言が行われたのであります。 行政改革の問題は極めて今日的問題でございます。我が国の経済社会が長期にわたり停滞を続ける中で、国、地方を問わず、財政は著しく逼迫していることは皆様御案内のとおりであります。国におきましても百二十兆円近くの借金を抱えております。老人、子供に至るまで一人百万円を借金している計算になるのであります。同時に、県や市町村におきましても、これとは全然別に借金を抱えているわけであります。本県におきましても三千百億円の地方債残高を抱えながら、昭和五十九年度予算は二・三%の伸びにとどまっているわけであります。一方、社会情勢は二十一世紀へ向かいまして大きなうねりをもって変革しているのでございます。長期的観点に立って熊本の浮揚を考えますときに、今日の大きな社会変革を的確にとらえ、二十一世紀へ向けた熊本の姿を描きながら努力を続けることこそ肝要ではないかと私は思うわけであります。 このように、熊本県が新しい地域社会の建設を目指している中で、行政改革にどのように取り組んでいくかということが、県民の注目するところであり期待をしているところであろうかと存じます、今回の第二次中間報告は、行政の組織、機能のあり方や職員の定数管理の改善等を中心としたものでございます。極めて斬新であり時代の流れを的確にとらえたものと私は高く評価するものでございます。 社会が複雑多様化していくこういう中で、縦割行政だけでは十分な対応ができなくなっている今日におきまして、総合性の確保を強調していることなど、まことに時宜を得たものだと考えております。また、具体的には国際交流の充実強化や、流通対策あるいは試験研究機関の整備充実によりまして、技術の改革時代への積極的な対応などがされておりまして、時代の流れに敏感に対応したものと私は評価をしているところであります。職員定数の七%削減など定数改善についても思い切った提言がなされているところであります。一人の職員の生涯賃金が二億三千万円ともあるいは二億五千万円とも言われる今日であります。画期的な提言としてその重みを私は感じるわけであります。 提言にもありますように、民間活力の採用と申しますか、民間と役所の役割などにつきましても十分考えていかなければならないと痛感をするものであります。これからは住民の利便性等も考えながら、不合理は整理し、そして新しいものをつくり出す活力を持っていくべきだと考えているところであります。 いずれにいたしましても、貴重な提言となっております第二次中間報告でありますが、細川知事はこの提言を受けられまして、今後どのように県政の中に生かしていかれるのか、所信をお聞きいたしまして再登壇をいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 行政改革についてのお尋ねでございますが、ただいまもお話がございましたように、地方財政の厳しさや社会全体が大きな転換期に差しかかっていることは御指摘がありましたとおりでございます。この厳しい環境の中で、熊本県の将来の発展の方向を考えますとき、行政改革は避けて通れない極めて重要な課題であると認識をいたしております。 お話がございました財政問題にいたしましても、国、地方を問わず借金への依存体質というものはそう急々に改まる状況にはないわけでございまして、百十兆円の国債残高も、また三千百億円余りの本県の地方債残高にいたしましても、今日の状況で推移すれば、ここ当分は好転の兆しはないわけでむしろ増加の方向にすらあるわけでございます。 一方、社会環境は、情報化、国際化が進む中で、県民のニーズも極めて多様化をしております。限られた財源の中で、このような社会の変化に伴う新たな行政需要への対応を図りながら二十一世紀を見据えた施策や備えを考えてまいりますとき、これまでの行政の見直しというものは必然であろうと思いますし、これからも一時的なものとしてではなく常に見直しを図っていくべきであると考えているところでございます。このような時期にこのたびの行政改革審議会の御提言いただいたわけでございますが、まことに時宜を得た貴重なものであると受けとめております。 報告の内容につきましては、政策調整機能の強化でありますとか、あるいは部、課、室の再編統合、出先機関の統廃合、職員定数の削減等々、新しい視点から多くの貴重な御提言になっておりまして、県としては十分尊重してまいりたいと考えているところでございます。 行政の組織機能の問題で実施できるものにつきましては七月の定期異動から早速実施に移してまいりたいと考えております。また、職員定数問題につきましては、行政みずから効率化へ立ち向かって改善をしていくことが肝要でございますし、そういう意味におきましても、定数問題に対する御提言の趣旨も当然尊重をしてまいりたいと考えているところでございます。 今後、県議会を初め広く県民の御理解と御協力をいただきながら、庁内におきましても、具体的な進め方を検討の上実施に移してまいりたいと考えております。  〔井上龍生君登壇〕 ◆(井上龍生君) ただいま御答弁の中にありましたように、行政改革はあくまでもあすを生き抜くための大きな手段でございまして、これにより足腰の強い熊本県ができるものと私は思うわけでございます。ひとつ勇気を持って実行に移していただきたいものだと思うわけでございます。時間がせっぱ詰まっておりますので、次に移らせていただきます。 次は、国際交流課あるいは室の設置についてお尋ねをいたしたいと存じます。 今日我が国は先進諸国の一員といたしまして、国際社会の中で応分の役割を果たすべく諸外国、とりわけ開発途上国から大きく期待をされてきておるところであります。このような中で、地方におきましても、ここ数年国際化への対応が進みまして、各地においてそれぞれの地域の特性に応じた取り組みが行われてきているところであります。本県におきましても、従前から取り組んでおります各種の国際交流事業に加えまして、特に一昨年から中国の広西壮族自治区を初めとする三つの外国の地方と姉妹関係を結んだことは皆さん方御案内のとおりでありまして、本県における国際化の環境醸成、国際人の育成等に努力が重ねられてきたところでございます。 地域における国際化は、改めて申すまでもなく、行政レベルにおける取り組み姿勢いかんによって決まるものであろうかと私は思うのであります。このような観点からいたしますと、今日本県におきます国際交流事業が順調な歩みを見ておりますことは、行政レベルの取り組みが極めて積極的に行われたことを示すものでございまして、国際交流に意欲的に取り組んでおられる知事の姿勢に敬意を表するものであります。 ところで、本県における国際交流事業は今後一層活発になると予想するものでございます。しかしながら、本県における国際交流行政を見てみますとき、既存の行政機構の中で各部門ごとに応急的に対応しているのが実態であろうかと思います。私は、将来を展望した国際交流行政を進めるためには、できればこれを専門的に取り扱う課あるいは室を新設していただき、可能な限り窓口の一本化あるいは情報処理の一元化を図り、効率的に国際化に取り組み得る体制が早急に確立さるべきであると思います。 国際交流が頻繁になってきている今日、行政機構の整備充実は火急の課題と考えますが、国際交流課あるいは室の設置につきましての考え方があるのかどうか、知事の英断を期待して御所見をお伺いいたします。 御答弁をいただきまして再登壇いたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 国際交流の取り組み体制についてのお尋ねでございますが、ただいまお話にもございましたように、今日国際間の相互依存関係がますます深まっていく中で、国際化への対応は地方レベルにおいても極めて重要な課題になってきております。 このような状況を踏まえまして、本県におきましても、これまで各般にわたり鋭意国際化への対応をしてまいったところでございますが、将来にわたって活力ある豊かな地域社会づくりを指向する上におきましては、より一層国際的な視野を広げて各分野にわたって積極的な取り組みをしていかなければならないと考えておるわけでございます。 行革審の第二次報告の中でも国際交流組織の充実について提言がなされておりまして、このようなことから、できれば七月の人事異動に合わせまして国際交流室といったものを設置することについて今検討をしているところでございます。  〔井上龍生君登壇〕 ◆(井上龍生君) この件につきましては、昭和五十六年三月の代表質問でも私は強く要望したところでございます。ただいまの知事の御答弁によりますと、近々にそういうふうなことにしようというお答えであったかと思います。厳しい行財政の中ではございますけれども、知事の英断に感謝をし、恐らくできるであろうことを期待して、次の質問に移りたいと存じます。 先ほど午前中に社会党の柴田先生から水俣病対策につきまして御質問がありましたけれども、私は私なりに違った観点から、避けて通れない問題でございますので、チッソ県債認定業務促進の問題につきまして御質問を申し上げたいと存じます。 水俣病対策につきましては、県政の重要な課題といたしまして、県議会、執行部一体となって取り組んでまいったところであります。水俣病認定業務の促進、チッソ県債の発行、ヘドロ処理事業等いずれも難しい問題でございます。今後とも、これら問題解決のために一層の取り組みが必要であろうかと存じております。 本議会におきましては、チッソ株式会社に対する貸付資金、いわゆるチッソ県債二十三億七千二百万円が提案されておるところであります。御承知のとおり、チッソ株式会社に対する県債発行による金融支援措置は、昭和五十三年十二月発行以来既に十一回を数え、今回の提案を含めるとその累計額は二百八十六億六百万円に上ることになるわけであります。 ところで、チッソ株式会社の昭和五十八年度決算につきましては、上半期は景気も停滞のまま推移をいたしましたけれども、下半期に及びまして景気も徐々に回復をしてきまして、それに伴い業績も好転し、経常利益五億一千七百万円を計上できたということでございます。しかしながら特別損益におきまして、水俣病患者補償費を含めまして、水俣病対策費等のため八十九億七千万円の赤字を生じ、結果的には五十八年度の決算というのは八十四億五千万円の赤字であったということでございます。確かに、チッソ株式会社はみずからの経営努力によりまして、徐々にではあるけれども、収益の改善を図っていることはうかがえるわけでありますものの、累積赤字が八百二十億円にも上っている現実からいたしまして、同社を取り巻く環境は依然として厳しいものがあると言わざるを得ません。 県債の発行も、昭和五十六年十一月の関係省庁間覚書の改正によりまして、六十年六月までとされています。あとの方針につきましては、関係省庁間において検討するとされていることから、特に本年度は今後の方針を決定する上で重要なことであると考えているところでございます。 そこで、質問の第一点であります。 先月の新聞報道によりますと、環境庁は今国会の環境委員会におきまして、チッソ県債について六十年度以降も現行方式を継続させたいとの発言をしているようでありますが、国において検討した結果、定められた方針なのかどうか、県は国の言うとおりにしようと考えておられるのか、お尋ねをしたいと思います。 質問の第二点は、チッソ株式会社の昭和五十八年度の経営状況はどうか、また、経営改善のための努力はどのようにされているのか、これにつきましてお伺いをいたす次第であります。 次に、水俣病の認定業務促進についてお尋ねをいたします。 水俣病申請者に対する処分の促進を図るために、県は検診審査体制の充実を図るなど大変な努力を示されているところでありまして広く認識をしているところであります。しかしながら、現状を見た場合におきまして、このような県の努力にもかかわらず未処分者の数は一向に減る方向にはございません。依然として五千名近くの未処分者があることは、知事にとりましても、私たちにとりましても、大変な重さであろうかと存ずる次第であります。 このような状況下の中で、国においては、今回水俣病の認定業務促進に関する臨時措置法を向こう三カ年延長するなどしまして、未処分者で長期にわたっている方々の処分の促進を図ることとなったわけであります。県でもこのような状態にある者の個別事情等を把握しながら、認定業務を促進されていると伺っているわけであります。臨時措置法の期限延長の措置と相まちましてその成果に大変注目をいたしているところであります。 さて、このような状況下に、知事は認定業務の現状をどのように踏まえ、所要の施策を講じようとなさいますか。この点につきましてお尋ねをいたします。 御答弁をいただきまして再登壇をいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 水俣病問題について三点のお尋ねでございますが、まず県債についての問題につきましては、お尋ねにもありますとおり、その発行が昭和六十年六月までとされておりますことから、昭和六十年度以降の方針につきましては、関係省庁間覚書により本年度中に関係省庁間で検討することになっております。これを受けまして、国としては、近くこの問題の今後の方針について検討を始めたいと言ってきておりまして、県に対してはその段階で何らかの意向打診があるものと考えております。しかしながら、重要な問題でございますので、今後とも県議会の意向を十分伺いながら慎重に対処してまいりたいと考えているところでございます。 次に、チッソの経営状況についてはどうか、また経営改善のためどのような対策を講じているかということでございましたが、石油化学工業界におきまして、昭和五十八年度上半期の景気は、昭和五十七年度に引き続き低迷のまま推移いたしましたが、下半期に入って米国の景気の急速な立ち直りに伴いまして、安値輸入品の減少あるいは需要の増大、そうしたものに伴う在庫調整が進みまして、また製品市況も塩ビ共販会社の設立等によりまして若干好転をしてきたということでございます。 そのような中で、チッソとしては昭和五十八年度から営業部門の充実強化を図りまして、ほぼ全製品について販売量が増加し、前期比の売上高で約八十億円の増となっております。経常損益で五億一千七百万円の黒字を計上したところでございます。しかし、一方では、御案内のとおり、依然として多額の特別損失を計上しておりまして、当社の経営状況は依然として極めて厳しいものがあることは改めて申し上げるまでもないところでございます。 同社としては、今後の経営方針としてファインケミカルを柱とした新規分野への参入によりまして、より高い利益を上げるため努力を重ねていくと言っておりますが、特に水俣工場につきましては、昭和五十八年度にはメタルテープに用いるメタル系磁性粉の生産設備関係に十億二千万円、それからバイオテクノロジーパイロットプラント、これは医薬品の中間体生産設備関係のもののようでございますが、このプラントに一億六千五百万円、それからソルビン酸改善工事、これは食品の防腐剤関係のものでございますが、これに一億三千五百万円、計十三億二千万円の投資を行いまして再建のためいろいろ努力をしているようであります。しかし、今後ともさらに厳しい経営努力が必要であることは論をまちませんで、私は同社に対しましてその点を強く要請をいたしているところでございます。 それから第三のお尋ねは、認定業務についての問題でございましたが、御指摘のとおり、申請者の数は、いわゆる待ち料判決後増加をしておりまして、未処分者の数は依然として五千人に近い状態でございます。県としては、従来にも増して、検診医の確保や検診機器の整備など検診審査体制の充実を初めといたしまして、認定申請者の方々の理解と御協力を得るための努力をしていかなければならないと考えております。 今回、国におきましては、臨時措置法の期限を延長して従来どおり国においても認定業務を行うこととされたわけでございますが、これは業務の促進を図るために必要な措置でございまして、今後とも国、県一体となって水俣病対策を推進してまいりたいと考えているわけでございます。 なお、未処分者で長期にわたっている方々の認定業務の促進につきましては、環境庁とも協議をいたしまして、申請者の方々の都合に合わせて検診計画を立てるといったように、できるだけきめの細かい検診業務の推進を図っているところでございまして、その結果、各人のそれぞれの検診希望日とか、あるいは寝たきりの状態にある方々など、個別の事情もそれぞれ把握できてまいっておりますので、これらの方々につきましては、個別の事情に合わせた検診もすでに始めておりますし、また、今後とも鋭意認定業務の促進に努めてまいりたいというふうに考えております。  〔井上龍生君登壇〕 ◆(井上龍生君) 我が県の持ちます特殊事情を十分国に対しまして理解を求めながら、党派を超えて頑張っていかなきゃならない問題であろうかと思いますし、県民の不安を一日も早く取り除いていかなければならないことであろうかと思います。執行部に対しましても、その点強く要望を申し上げまして、次へ進みたいと存じます。 私は医者でございます関係上、十三年間の議会生活で農政の委員会になりたかったこともありましたけれども、一回もなることができませんで、厚生常任委員会の方に回されておりましたけれども、私は非常に農政問題が好きでございますので、農政問題につきまして、特に内外の厳しい食糧情勢下における本県稲作の重要性ということと、二番目に農業関係試験研究機関の整備についてお尋ねをいたしたいと思います。 我が国最大の農産物であります、かつまた、本県農業の極めて重要な作物でありながら、最近ややもすれば厄介もの扱いにもされかねない米の問題について、私の所見あるいは所信を交えながらお尋ねをいたしたいと存じます。 午前中の質問にもありましたとおり、このほど政府は韓国に対して貸し付けていた米を現物で返してもらうという、いわゆる米の緊急輸入の方針を明らかにいたしました。これまで政府の方針に沿い米の生産調整に全面的に協力してきました農家や農業団体は、恩をあだで返す行為であるとしまして強く反発していることは御案内のとおりであります。このため、農林水産大臣は、この緊急輸入措置を本年限りのものとするとともに、本年の作況いかんによっては来年度の面積も見直す用意のあることを表明いたしておるところであります。二度とこのようなことのないよう、我々といたしましても政府の動きを十分見極める必要があろうかと思います。 ところで、最近、国会を初め財界やマスコミなど広く各界におきまして、米に関する論議がにわかに高まってきておることは御承知のとおりであります。しかしながら、その大方は、我が国の主食である米が、国鉄や健康保険と同様に国の財政を大きく圧迫しているとして、財政を立て直すという視点からの議論でありまして、決して米を安定的に確保するための前向きのものでないのであります。私は、むしろ国家の基をなす農業と国民の食生活を守るという高い次元から、米がもっと論議され、見直されるときが来たのではないかと思うのであります。 去る三月、日米貿易摩擦の解消を図るために、農民の強い反対を押し切って、オレンジ、牛肉の大幅な輸入枠の拡大を政府が決定したことは関係農家に大きな衝撃を与えておるわけであります。しかし、関係農家の心配はそれだけにとどまっているわけではありません。政府は、今後さらに譲歩を迫られ、漸次輸入枠を拡大し、ついには自由化したのと同じ状況に追い込まれるのではないかと、その先行きも底知れない不安を私たちは感じているところであります。しかし、この不安は、かんきつや、あるいは肉牛農家だけのものではないわけであります。オレンジ、生肉の次には、アメリカは米を日本に輸出しようとしているのではないかと思うのであります。そのようなことが決してあってはならないし、また決してそうさせてはならないのであります。しかし、またそうならないという保証もないわけであります。 聞くところによりますと、アメリカの米は生産量が年間八百万トンとなっているわけでありまして、その価格は我が国の四分の一程度という安さでありますし、国際競争力は抜群に強いのでございます、今やアメリカにおいては、米が有力な輸出商品の一つになっていることは御案内のとおりであります。 我が国は、古くから「豊葦原の瑞穂の国」と言われまして、米はまた古くから主食として定着をしてきたところであります。近年、若者を中心といたしまして米離れが進みまして、次第にその消費量が低下するという厳しい状況下にございます。 このように、米をめぐる情勢は内外ともに極めて厳しいものがありますが、悪い材料だけではございません。米離れが進行する中で、うまい米を求める消費者の声は根強いものがございます、米を中心としました日本型の食生活はむしろ理想的なものと内外から再認識をされているところもあるわけであります。問題は、状況をいかに正確に把握し、適切な対策をとるかということでありましょう。輸入麦に圧倒されまして安楽死させられました国内の麦と同じ運命を米が再びたどらないようにするためには、今日適切な方向づけをすることが必要であろうかと私は思います。 このような厳しい状況のもとで、本県の米が生き残るためには二つの方法があると私は思います。長期的に見れば農業の国際化はさらに進むものと考えられるのでございます。その対策の一つとして、外国ではまねのできない日本人の好みに合ったうまい米をつくることが大事だと思います。第二には、他の産地に先駆けまして生産コストを徹底的に下げていくということではなかろうかと思っています。 ここで視点を変えて本県の実態について触れてみたいと思います。 知事も御承知のごとく、本県は古くから全国有数の米の生産県でございまして銘柄米の産地であったわけであります。もちろん、生産調整下の現在においても、本県農業の粗生産額およそ三千六百億円の中で、米は九百億円を占めておりますし、しかも、生産量の三分の一は県外に移出するという極めて重要な基幹作物であることにはいささかの変化もないのであります。 御承知のように、近年、米も商品といたしまして販売面での産地間競争が激化してきております。また、本県産米の評価はどうでありましょうか。結論から申し上げますと、流通業界では必ずしも高い評価を受けるまでには至っていないのでございます。 もちろん、このような事態を招来している要因は、本県の場合においても農業従事者の老齢化や兼業化によることを否定しないわけにはいかないわけであります。最大の原因は減反政策による農家の生産意欲の低下であろうかと私は思っております。本県の実態の中には、例えば良質米の代名詞とも言われております自主流通米の比率が全国平均の半分程度ということでございます。 近年、消費者の良質米志向に対応いたしまして、全国的にササニシキ、コシヒカリ等が急速に生産を拡大してきている中で、本県では天草地域のみがその作付にとどまっているというような状況下にあるわけでございまして、こういう状況がよいのかどうか問題であろうかと思います。 もちろん、県におきましては、従来から、うまい米づくり運動や、あるいは品質向上・コスト低下運動、生産の改善や流通対策等、それなりの努力はされてきておりまして一応の評価はしているところであります、しかし、本県の稲作はもっともっと改善の余地が多いように私は感じているところであります。 そこで、知事にお尋ねをいたしたいわけであります。知事は、就任以来、農業面におきましても、本県の将来像を展望した生産性の高い農業を確立する重要性を強調されまして、そのモデル事業といたしましてパイロット地区農業を推進する等、意欲的な取り組みをなさったことは私たちの知っているところであります。 近年、本県は、畜産や施設野菜、果樹等比較的に順調な伸びを示してきていると存じておりますが、農業経営の根幹をなしているものはやはり稲作であろうかと思っております。他の作物をさらに円滑に進展させるためにも、そのキーポイントとなるのはやはり稲作ではないかと私は考えております。 さきに申し上げましたとおり、稲作は、生産意欲の低下等もあるし、作柄等不安定な状態にあることからいたしまして、このままでは本県稲作の安定的な進展について憂慮を禁じ得ないところがあるわけでございます。 最近の新聞報道によりますと、国においては、四年連続米の不作等作物が不安定化していることを踏まえまして、「たくましい稲づくり」をスローガンといたしました新稲作運動を展開するということであります。知事におかれましては、このような客観情勢の機が熟した状況の中で、本県の稲作に対しても見直しをされるお気持ちはないか。さらに、長期的に本県稲作が生産面あるいは流通面におきまして安定的に確固とした地位を確立するため、どのような施策をお考えになっているのか、率直な御答弁をいただきたいものでございます。 次に、農業関係試験研究機関の整備についてお尋ねをいたしたいと思います。 私は、ただいま申し上げました本県稲作の地位の確立とも関連をしますけれども、他県の産地との競争に打ちかち、我が国の食糧供給基地としての地位の向上を図るには、他県に先駆けて革新技術の開発、それと同時に普及を図ることが必要であろうかと思うわけであります。 幸い、知事は、農業関係試験研究機関の整備の重要性を認識されまして、今後の整備の方向につきましては、熊本県行政改革審議会あるいは農業試験研究部会に調査研究を依頼されまして、さきにこの結果の報告を受けられたわけであります。そこで、今回の意見具申を踏まえながら、今後どのように取り組まれるのか、知事の御所見をお伺いしておきたいと思います、 御答弁をいただきまして再登壇をいたします。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 今、米問題につきまして、あるいは稲作問題につきましていろいろお話がございましたが、私も全面的に同感でございます。本県が全国有数の農業県であり、今後とも本県産業の主軸をなすものであるという立場から、日本一の産地づくりや生産性の高い農業の確立等を目指して、関係各位の御理解と御協力を願っているところでございます。 なかんずく、米問題につきましては、本県は古くから良質米を大量に他県へ供給してきた歴史と伝統を有する米の生産県でございますが、十数年に及ぶ減反政策の実施等によりまして、農家の生産意欲の低下が心配をされていることは今お話があったとおりでございます。しかし、依然として米は本県農業の基幹をなす重要な作物でございますし、今厄介者扱いというお話もございましたが、私もかねて畜産とか果樹とか、あるいは野菜とかというものも大事だけれども、しかし、米というものをもっと戦略物資として大いに力を入れていかなきゃいかぬのじゃないかということを担当部の方にも指示をしているところでございまして、そうした観点から長期展望に立脚をした対策を講じてほしいということを申しているところでございます。 当面の対策といたしまして、熊本県新うまい米づくり運動というものを展開して、土づくりを初め、農地の流動化なり、あるいは機械の共同化等による生産の集団化、効率化等による質の高い稲づくりを実現していくために、市町村、農業団体等と一体となって運動を展開し、成果を期してまいりたいと考えております。 また、消費者の良質米志向に的確に対応して、ニーズに合ったコシヒカリ等のうまい米づくりを推進していくために、五十九年度から新規に県単事業を実施することにいたしているところでございます。特にコシヒカリは全国的に急速に生産が拡大をしている品種でございますが、本県では天草地域だけに限られておりますために、今後適地に生産を拡大いたしまして銘柄米としての地位の確保に努めてまいりたいと思っております。 さらに、近年健康食品の見直しがなされているわけで、現在本県の主力品種であるミナミニシキが胚芽米としての特性を備えておりますことから、胚芽米としての販路の拡大を図ってまいりたいというふうに思っておりますし、また海岸地帯ではモチ米の生産団地をもうすでに育成を始めておりますが、本県の地域的な特性というものを生かした良質米の生産団地の育成等にさらに努めまして、農家のあるいはまた消費者の方々の御要請にこたえてまいりたいと考えているところでございます。 それから第二のお尋ねは、農業関係試験研究機関の整備についてでございましたが、本県農業の地位の向上を図るためには、いかにして他県に先駆けて革新技術の開発と普及を図るかということが特に重要であると、かねて申し上げているわけでございます。 現在、農業の面では、かねて申し上げますように、まだ技術革新が緒についた段階でございまして、今後は品質の高い多収穫の品種のものをつくり出していく、そういう技術革新の開発にいかに取り組むかということが農業県として非常に重要なことであろうと考えているところでございます。しかしながら、率直に申し上げまして、本県の農業関係試験研究機関の現状を見ますときに、施設、研究体制等の面での立ちおくれは否定できませんで、今後の革新技術の開発という面で心配をいたしているところでございます。 幸い、試験研究機関の整備の方向につきましては、行革審の農業試験研究部会から貴重な御意見の具申を受けたところでございまして、県といたしましては、部会の意見を十分尊重しながら、可能な限り早急に整備を行うつもりでございまして、当初予算で二千四百万円の予算を計上してその推進体制の整備を図ってまいりますとともに、マスタープランの策定等を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。 また、試験研究機関等で開発をされました革新技術を中心とする農業技術情報というものが、普及組織を通じまして末端農家段階まで系統的に速やかに提供され、活用できるようなシステム、いわゆる農業技術情報システムというものの確立にも取り組んでまいりたいと思っております。 いずれにいたしましても、試験研究機関の整備というものは十数年来の懸案事項でございますので、早急に時代の要請にこたえられるように整備ができるよう、県議会を初め関係各位の御協力を切にお願い申し上げたいと存じます。  〔井上龍生君登壇〕 ◆(井上龍生君) ただいま御答弁をいただきましたように、私は、農業ミニテクノポリス構想といいますか、人材の養成あるいは高度な農業技術の集蓄積と申しますか、農業技術情報の収集あるいは生産加工の一元化というような日本農業が直面しております、そういうすべての問題と真っ向から取り組むならば農家にとりましても夢と希望がかなえられるものと私は思っているわけでございます。 時間もございませんので、次へ進んでまいりたいと思います。 我が党におきましても命がけでこの問題に取り組んでいらっしゃいます先輩議員でございます今村議員に関係がございますので、避けて通ることのできない問題でありますローカル線、特に高森線対策につきましてお尋ねを申し上げたいと存じます。 高森線対策につきましては、午前中に行われました社会党の柴田議員から質問がございまして、これに対しまして細川知事は、地元町村とも十分協議しながら、できるだけ早く結論を得たい旨の答弁をなさったわけであります。地元町村からは、赤字の二分の一を負担するので、第三セクターで鉄道を存続してほしいとの強い要望があるようでございます。 過日、六月六日の新聞報道によりますと「第三セクター方式による存続かバス転換か県の出方が注目される。」とありました。私は、これまで第三セクターによる鉄道存続については確かに論議されていますが、バスに転換した場合について一体どうなのか、通勤通学の輸送は可能なのか、利便性はどうか、あるいは将来の交通体系から見た場合、地域開発の面からどうなのか、総合的に検討をし、長期的視点に立って将来に禍根を残さないように対応すべきであると考えるものであります。 私は、もちろん第三セクターによる鉄道存続を否定するものでは絶対ありません。この重大な課題の結論を得るためには、あらゆる角度から代替輸送の手段を考えてみるということから、バス転換の場合も十分論議すべきではないかと考えるものであります。 この点につきまして知事の所見を承りまして、再登壇をいたしたいと存じます。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 高森線にかかわる代替輸送についてのお尋ねでございますが、これまで協議会では地元町村から鉄道として存続をしてほしいという強い御要望があり、第三セクター方式による鉄道輸送について検討をしてきたところでございます。その結果につきましては、すでに御承知のとおり、巨額の赤字を生じ、将来的にも好転する見込みは極めて乏しいと予測をされているところでございます。 御指摘のように、協議会におきましては、代替輸送についてあらゆる角度から幅広く論議をすることになっておりまして、バス輸送にした場合につきましても、今後十分論議をし、第三セクター方式による鉄道輸送の場合と、そのメリットなりデメリットなりというものを冷静に比較考量し、地域住民はもとより県民の御理解が得られる選択をすべきであろうと考えているところでございます。 近く協議会が開催されると思いますので、その際、バス輸送につきましても御検討いただくように御提案をし、今後十分論議を尽くしてまいりたいというふうに考えております。  〔井上龍生君登壇〕 ◆(井上龍生君) この高森線につきましては、私たちの先輩議員で地元でいらっしゃいます今村議員が本当に命がけでこの問題に取り組んでいらっしゃいますので、知事におかれましても、またローカル線の問題というのは、今後私は高森線のみに限らず大きな課題として論議をされていくべきものであろうかと存じております。知事は、町村のニーズを十分見極めながら、しかも冷静に対応していくべきではなかろうかという感じがするわけであります。 最後になりましたが、川辺川ダム立村計画につきまして、地元議員であります井上は、どうしても避けて通れない問題でございますので、最後になりますが、川辺川ダム立村計画につきましてお尋ねを申し上げたいと存じます。 川辺川ダムは、昭和三十八年から四十年にかけましての三年連続の球磨川水系の大災害と、過去幾多の異常出水等の経緯を踏まえ、建設省が球磨川水系の抜本的な治水対策を最大の目的として、あわせて従来開発のおくれていました球磨・人吉地域における農業開発と電源開発とを行う多目的ダムとして、昭和四十一年のダム建設発表以来今日まで十八年を経過し、人吉・球磨地域にとりましても、また県政にとりましても、長年にわたる重要な課題であったことは皆さん御案内のとおりであります。 申し上げるまでもございませんが、川辺川ダムの建設は、五木村の中心部及び相良村の一部が水没をしまして、特に五木村にとりましては、全世帯の半分、しかも主要な公共施設がほとんど水没をするという全国にも例のない大きな影響を水没地域に及ぼすものでございます。このような状況にかんがみまして、昭和五十一年一月の臨時議会における「川辺川ダム建設に伴う基本計画」の承認に当たって、建設大臣に対して水没地域に対する特段の配慮等の六項目の意見を付しまして議会の議決がなされたところでございます。 ところで、川辺川ダムの一般補償基準は昭和五十六年四月に妥結をし、五十八年度末までには、五木村、相良村合わせまして五百六十七世帯のうち、半分以上の二百九十三世帯がすでに個人補償の妥結をしております。相良村では六十三世帯の水没者全部が妥結済みになっているわけであります。そして移転地で新しい生活を始められておるところでございます。 しかしながら、五木村におきましては、五百七世帯の水没者のうち二百三十三世帯と四六%の方が妥結をされておりますが、代替地の造成がおくれまして、これまで補償を受けた方々はそのほとんどが村外へ転出されておるところであります。このまま推移しますと五木村の立村に重大な支障が生じかねない状況にあります。また、我が党といたしましても、このような事態を憂慮しているところでもございます。 幸いに、今回、知事を初め関係各位の御努力によりまして、ダム建設に反対し訴訟を行っていました五木村水没者地権者協議会の理解が得られ、ダム建設に全面的に協力をいただくことに相なったわけであります。つきましては、この際、川辺川ダム建設に伴う水没地域対策、特に五木村の村づくりに対する知事の基本的姿勢をお伺いいたしまして再登壇をいたしたいと思います。  〔知事細川護熙君登壇〕 ◎知事(細川護熙君) 川辺川ダム建設問題は、県としても長年の懸案事項でございまして、今回解決の運びになりましたが、これもひとえに関係者の御理解と御協力のたまものであると心から感謝をいたしているところでございます。 お尋ねの五木村の村づくりにつきましては、大きく分けますと、代替地の造成、公共補償、それから水源地域の整備計画の三つの重要課題があるわけでございます。 まず、水没者の方々の生活再建と立村計画の基盤となる代替地の造成、特に五木村の中心部をなす頭地代替地につきましては、これまで造成のめどが立ちませんで、ダム建設後の立村計画樹立に心を痛めていたところでございますが、今回の訴訟問題の解決によりまして村内の合意形成ができましたので、今後は五木村と一体となって代替地の造成が円滑に推進できるように予算の獲得等について努力をしてまいりたいと思っております。 それから、村づくりの一番の柱であります公共補償につきましては、昭和五十六年四月の一般補償基準妥結時に村と建設省との間で大筋の了解ができておりますので、今後は公共補償の細部と具体的な金額等につきまして、県としても村と建設省の話し合いが円滑に進展するように側面から御協力をしてまいりたいというふうに思っております。 また、水源地域整備計画につきましては、これまで村とも事実の内容なりあるいは財源問題等について協議をしてきたところでございます。 今回の解決に当たりましては、こうしたものを踏まえた上で、村づくりの基盤となる水源地域整備事業の実施に当たり村の財政運営に支障が生じないように、水源地域対策特別措置法第十二条の規定に基づき、他の下流受益者の協力のもとに総額十六億九千五百万円を措置することにしたところでございます。 なお、相良村に対しましても、同様の考え方によりまして二億一千百五十万円を措置することにいたしました。 いずれにしても、県といたしましては、こうした施策を中心とした立村計画が早急に樹立をされて、水没関係者の一日も早い生活再建と五木村の新しい村づくりができますように、県議会初め関係機関の御協力を得ながら最善の努力を傾けてまいりたいというふうに思っております。  〔井上龍生君登壇〕 ◆(井上龍生君) 十八年もの長い間、川辺川ダムの件につきましては日にちを経過しているわけでございまして、このたび調印ができ、地元の方々は一日も早い立村計画を期待し希望しているわけでございます。どうかひとつ力強い御支援を賜りたいと存ずるところであります。 私、自由民主党を代表いたしまして、八つの課題で御質問を申し上げ、特に国際化が進む中で、国際交流課あるいは室をつくるという知事の前向きなしかもお約束をいただきまして非常に感激を覚えているところであります。 長時間にわたりまして議員の皆さん方には御協力まことにありがとうございました。個性ある地域をつくろうという、この力強い我々の考えをよく理解していただきまして、執行部におかれましても努力をしていただきたいものだと思います。 最後に、党を代表いたしまして、ロスオリンピックまであと四十八日間になってまいりました。日本選手団もすでに発表されました。我が熊本県から柔道の山下選手を初め七人がオリンピック選手として代表者に選ばれたわけでございまして、日本選手団の活躍はもちろんでございますけれども、本県選手のロスでの活躍を祈念いたしまして、私の代表質問を終わりたいと存じます。長い間御清聴ありがとうございました。 (拍手) ○副議長(米原賢士君) 以上で通告されました代表質問は全部終了いたしました。これをもって代表質問を終結いたします。 明十二日は午前十時から会議を開きます。日程は、議席に配付の議事日程第三号のとおりといたします。 本日はこれをもって散会いたします。  午後二時二十二分散会...