民主党の代表選挙が終わり、
改造菅内閣が発足しました。代表選挙では小沢、菅双方とも政治主導を強調するとともに、速やかな円高対策、景気対策を訴えました。内閣発足後、早速強力な為替介入が行われ円高は是正されました。
国家戦略室は
国家戦略局に格上げされ、司令塔役に回帰することになりました。補正予算も臨時国会への提出を目指して、編成作業がスタートしました。
民主党の代表選挙は、結果としてポジティブな役割を果たし、政治はダイナミズムを取り戻しつつあるようです。しかし、アジアや
ブリックス諸国の台頭と世界に網の目のように張りめぐらされた各国のFTA、EPA等の経済協定を見ると、日本の立ちおくれを痛感します。今私どもに求められているのは、政局絡みの議論ではなく、国民生活を優先した景気、雇用、農業などの国内対策とあわせた対外対策に、一丸となって取り組むことであるとの所感を申し述べ、以下質問をいたします。
平成二十三年度から本格実施される予定の
一括交付金について伺います。
民主党は昨年の総選挙に当たり、その
マニフェストや政策集において、
ひもつき補助金の廃止と
一括交付金化を約束しています。地方向けの補助金等は中央官僚による地方支配の根源であり、利権の温床になってきたとの現状認識で、真の地方自治を実現するために補助金等を廃止して、基本的に地方が自由に使える
一括交付金に改めるとしています。また
一括交付金のうち、現在の義務教育や
社会保障等に関する補助金に対応する部分は必要額を確保した上で、さらに現在の
公共事業等の補助金等に対応する部分は、格差是正の観点から、財政力の弱い自治体に手厚く配分するとし、中央、地方ともに補助金等にかかわる経費と人件費を大幅に削減して、
財政健全化にもつなげると主張しております。
これに対して、
全国知事会は
一括交付金の制度設計に当たっては、かつて地方における財源総額が大幅に削減され、地方の権限、裁量の拡大につながらなかった
三位一体改革の二の舞になることを強く懸念し、
一括交付金化が国の一方的な財源捻出の手段となってはならないと主張しています。我々もこの主張には賛意を表するものですが、なぜ
小泉政権時代にこのような主張が大合唱として沸き起こらなかったのか不思議でなりません。
このような中で、
一括交付金に対する伊藤知事の発言について、その真意をお聞きしなければなりません。知事の言動は
一括交付金への批判的なものが多いように感じるのでありますが、知事はひもつきと呼ぼうが呼ぶまいが、従来の補助金が制度としてすぐれている、続けるべきだとのお考えでしょうか、伺います。
次に、知事会の大原則の中にある
一括交付金化に当たって対象となる事業が滞りなく執行できるよう、必要な予算総額を確保するということについてであります。これには地方の意思を十分反映し、必要な予算総額を決定できる仕組みを確保するとの添え書きが書いてありますが、国や地方の財政状況が厳しさを増す中で、事業の選択もあれもこれもではなく、あれかこれかという選択を迫られていると思うのであります。知事会の言う必要な予算総額とはどのような意味なのか、伊藤知事の認識をお聞かせください。
三点目に、
一括交付金化に当たっては、地域における
県民ニーズの的確な把握に基づく将来のあるべき県土づくりを踏まえた総合的な視点の確立と、事業の優先度による選択と集中が不可欠でありますが、知事の考えと取り組みへの決意を伺います。
最後に、我々県民連合は、知事の
予算編成権を侵すつもりは毛頭ありませんが、現行の
二元代表制のもとで
住民ニーズの把握は首長と議会の両方に課せられていることからすれば、
一括交付金の予算編成に当たっては、県議会と協議の場を設けることが望まれます。知事の見解を伺います。
伊藤知事は、本県の危機的な財政状況の改革のために、
県政刷新大綱に基づく財政運営に努力されてきました。あるべき財政構造に向けた歳出削減は、平成十六年度から二十二年度までに人件費で二百三十二億円、
普通建設事業費で二百三十億円、
一般政策経費で百二十八億円であり、合計五百九十億円となっております。この五百九十億円は、平成十六年度の財源不足であった四百五十一億円を百三十九億円も上回る額であり、目標以上に削減されていることになります。それでも二十二年度に四十八億円もの財源不足が生じるのは、
後期高齢者医療や介護保険など制度の創設や改正等による地方への負担転嫁によって扶助費が増加したことによるものです。
刷新大綱では、扶助費は十六年度の水準を維持するとされたものが、二十二年度までに百七十五億円、三六・六%も増加しております。人件費、
普通建設事業費、
一般政策経費のいずれも削減の目標値を達成しています。人件費はこの間の県職員の千三十四名の縮減や二%、六%カットという多大な協力によって、本県財政の改善に大きく貢献してきました。また
普通建設事業費も
一般政策経費も、事業者や県民に大きな犠牲を強いてきました。これ以上の削減は限界であります。
今日の本県の財政赤字の原因と責任は、国の財政運営とそれを認めてきた知事と我々議員にあり、県職員にも県民にも責任はありません。平成十六年度の
財源不足額四百五十一億円のうち、三百十五億円を占めた
地方交付税は地方からの復元要求にもかかわらず、十六年度の水準のままであり、交付税の振替分である
臨時財政対策債の措置によって県債残高がふえ、借金返済の公債費も高水準で推移しております。このように人件費、
普通建設事業費、
一般政策経費は
歳出削減目標を達成していること、扶助費は今後も増加する傾向にあること、県債の償還も高水準で推移すること等を踏まえれば、
県政刷新大綱に基づいたこれ以上の歳出削減は限界にあると言えます。知事はどのように認識されていますか、見解を伺います。
したがって、歳出削減を目的とした
県政刷新大綱を見直し、国と地方の
税財源配分の抜本的改革による歳入確保への努力とともに、その歳入に見合った事務事業しか実施しないという思い切った事務事業の凍結・廃止を行うべきと思いますが、見解を伺います。
県職員の月額給のカットは七年目になっており、職員の生活と士気の上から、これ以上のカットの継続は行うべきでありません。公表されている給料表と実際の支給額が毎年異なる中で、
人事委員会勧告がなされるというのは、人勧制度の形骸化につながります。働いた分の賃金はきちんと支給するという
給与支払いの原則に基づいて、本来の支給額に戻すべきであります。知事の決断を求めるものであります。
旧
農業試験場跡地の利活用方策については、六月議会における自民党の代表質問への答弁で、歳入確保の観点から、
開陽高校南側の二つの街区について、四十億円の目標額の確保に向けて重点的に売却手続を進める考えが示され、本年三月に病院、
老人福祉センター等の
サービス施設の誘導を図る必要があるとして、鹿児島市の都市計画の用途地域が変更されたこと等を踏まえ、医療・
福祉施設等の用地として
提案公募方式による売却手続を進めることが明らかにされました。その後、具体的な
スケジュールについても示されたところであります。
これら一連の動きは、谷山地域を初め
鹿児島市民や医療・
福祉関係者には唐突感と驚きを持って受けとめられました。何よりの驚きはそのスピードであります。六月に売却の具体的な考えが示され、八月には提案公募を行い、十一月に売却先を決めるという報道もありましたが、仮に当該土地を購入しようとする者がいたとしても、慎重な計画設計や資金計画が求められる大規模な事案であることから、余りにも拙速であるとのそしりを免れないのであります。
次に理解しがたいことは、当該土地が
鹿児島市街地に残された、一定規模を有する数少ない公有地であるにもかかわらず、その売却先の利用形態について、地域住民はおろか、医療・福祉の関係者すら何らの打診もなく、都市計画に責任を持つべき鹿児島市との協議もないことであります。さらに、医療・
福祉施設等の用地として売却したいとする根拠となった鹿児島市の都市計画の用途地域の変更については、必ずしも医療・福祉施設に特化したものではなく、現に
鹿児島市議会においては、県の売却方針やその推移を見守るべきであるとして、
谷山文教福祉地区の鹿児島市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例案を、
継続審査案件としているのであります。
以上の三点について、どのような見解をお持ちか、県の明確な答弁を求めます。
当該土地の十・八ヘクタールに及ぶ
鹿児島市街地に残された貴重な県民の財産であります。その利活用に当たっては歳入の確保の視点からだけではなく、県有財産を県民の利益のために還元するという本来の目的に加え、
鹿児島市域全体のまちづくりに資する対応が行われるべきであると考えます。本県においては、過去に埋め立てによって造成された鹿児島港本港区
ウォーターフロント開発計画を、
ポートルネッサンス21
事業推進協議会において、また
農業試験場跡地より面積の小さい県庁跡地については、県民共有の貴重な財産であり、その利用案は
鹿児島上町地区の発展に配慮しつつ、県勢発展に役立つものでなければならないとの基本理念のもとに、
跡地利用協議会で協議が行われたと記録されております。
まさに
農業試験場跡地の利活用は、このような考え方に立つべきであると信じるものですが、何らかの
利活用検討委員会を設置して、県民の意見を聴取するお考えはないか、お尋ねいたします。
[
知事伊藤祐一郎君登壇]
4 ◯知事(
伊藤祐一郎君)
県政刷新大綱による歳出削減の限界についてのお尋ねがございました。
本県におきましては、平成十六年度に策定いたしました
県政刷新大綱に沿って、これまで
歳入歳出両面にわた懸命の努力を続けてきたところであり、その結果、
普通建設事業費等につきましては、
一般財源ベースでおおむね
削減目標圏に入ってきておりますとともに、人件費につきましては、
給与減額措置を講じた後の額で目標圏に入ってきている状況であります。
他方で、
社会保障関係経費につきましては増加傾向でありまして、県債の償還も高水準で推移すると見込まれること、また政府が六月に決定いたしました
財政運営戦略に基づく
歳出抑制策や、
国庫補助金等の
一括交付金化の具体の制度設計の動向等によりましては、今後の本県財政の見通しについては、全く予断を許さないと考えておりまして、現時点では
県政刷新大綱に基づく基本的なフレームに沿って、一層の
財政健全化に向けた取り組みが必要であると考えております。
県政刷新大綱におきましては、歳入面での取り組みも掲げ、国における地方歳出の大幅な抑制の中で、
地方交付税における
離島関係経費の充実など、一定の成果が得られるとともに、
地方税財源の充実確保につきましては、
全国知事会等とともに働きかけているところであります。また、未収債権の縮減や県有財産の売却などにも努めつつ、歳入に見合った歳出となるよう事業の峻別と重点化や、事務事業の見直しにも取り組んできたところでありまして、引き続き
歳入歳出両面にわたる一層の努力を行ってまいりたいと考えております。
職員給与の抑制につきましては、基本的には当該年度の
収支バランスや中長期的な本県の財政構造を踏まえ、職員団体との協議を経て行っているところであります。現時点におきましては、来年度の収支を具体的に見通すことは困難でありますが、来年度の職員給与の取り扱いにつきましては、依然として厳しい本県の財政状況を踏まえ、予算編成の過程で諸般の事情を考慮して検討してまいりたいと考えております。
5
◯総務部長(三橋一彦君)
一括交付金化につきましてのお尋ねがございました。
まず、従来の補助金等との比較でございますが、
国庫補助金等の
一括交付金化は地方の自由度の拡大を図るという点で、地方分権の推進に資するものでございますが、具体の財政需要を直接反映しなくなるということで、その総額の確保や配分に当たりまして、本県に必要な歳入総額が十分確保できるか懸念があるところでございます。
本年六月に閣議決定されました
地域主権戦略大綱におきましては、
全国知事会の提言等を踏まえ、総額は
一括交付金化の対象となる補助金、交付金等の必要額により設定するとの記述や、現行の
条件不利地域等に配慮した仕組みを踏まえた配分とするとの記述が盛り込まれたところでございますが、具体の制度設計につきましては、国の
予算編成過程を通じて決定することとされておりまして、今後の具体化の動きを注目していく必要があると考えております。
本県は、厳しい財政状況にあることに加え、離島や半島などの
条件不利地域を多く有していること、おくれた
社会資本整備の推進を図る必要があることから、必要な歳入総額が確保されることが何よりも重要だと考えておりまして、引き続きこうした観点から
全国知事会等とも連携しながら、必要な措置を行ってまいりたいと考えております。
知事会の言っております必要な予算総額についてのお尋ねでございますが、
地方公共団体は厳しい財政状況の中で、
公共事業等の
投資設計費を大幅に縮減してきておりまして、本県におきましても限られた財源の中で投資的経費を抑制しつつ、事業の峻別や重点化・効率化等を進めているところでございます。
このような中、離島や半島などの
条件不利地域を多く有し、社会資本の整備がおくれている地方におきましては、その整備を進めるため
国庫補助金等の確保に努めているところでございますが、
菅総理大臣も財務大臣当時、国会審議の中で、
一括交付金化すれば二割ぐらい減っても市民のニーズにこたえることができるという趣旨の発言をされておりまして、
一括交付金化により歳入総額が減少することになりますれば財源が確保されず、必要な各種事業の推進に支障が生じる懸念もあるところでございます。
全国知事会の提言は、こういった懸念をもとに、地方が必要とする予算総額が十分に確保されるべきことを、端的に主張したものであると考えております。
事業の優先度による選択と集中についてのお尋ねでございます。
国庫補助金等の
一括交付金化につきましては、その総額確保の仕組みや配分方法、
申請手続等の具体的な制度設計は、今後の
予算編成過程を通じて決定するとされているところでございますが、
一括交付金が制度化された場合におきましても、限られた財源の効率的な活用の観点に立ちまして、県民の安全・安心な生活を確保し、「力みなぎる・かごしま」を構築するため、県土をつなぐ陸・海・空の
交通ネットワークの構築、農林水産業の基盤の整備、魅力ある
観光かごしまづくり、県民の生活と暮らしを守る安全な国づくりを図る事業等を重点事業として、引き続きその集中的な整備に努めてまいりたいと考えております。
一括交付金の予算編成についてのお尋ねがございました。
予算編成につきましては、経済情勢を初め国の予算や
地方財政対策の内容、税収等の動向を踏まえつつ、総合的に調整する必要がございまして、当該団体の
総括的代表者とされている首長に、一元的な編成権が認められているところでございます。その上で議会におきましては、常日ごろから予算編成に向け、
住民ニーズを踏まえたさまざまな御意見や御提言等をいただいているところでございまして、こうした御意見等を踏まえて長の責任で予算編成を行った上で、これを議会に御提案し、その審議の過程でも議会からさまざまな角度から御議論をいただくとともに、予算の執行段階におきましても、十分な議論が行われることを前提としているものと考えております。
したがいまして、
一括交付金が導入された場合における
住民ニーズの的確な反映につきましても、この過程の中で行われていくことになると考えているところでございます。
農業試験場跡地の売却についての県の見解についてのお尋ねがございました。
まず、拙速じゃないかという点でございますが、
農業試験場跡地につきましては、平成十七年度に
農業開発総合センターへ移転した後、本県の厳しい
財政状況等を踏まえまして、売却を含めて検討してきたところでございまして、県議会の御議論もいただきながら、平成二十年度に策定した
県有財産有効活用方策において売却する方針をお示ししていたところでございます。
さらに、本年三月に決定されました鹿児島市の
都市計画等を踏まえまして、当該跡地にかかります売却の考え方を六月議会でお示ししたところでございますが、その後県議会での御議論を初め、県に対しさまざまな御意見をいただいたところでございます。その中には、今回の県の方針にいまだ十分な御理解を得られていないと思われるものもありますことから、関係の方々に丁寧に説明する必要があると考えておりまして、当面これらの方々への説明に努めたいと考えておりますことから、現時点では必ずしも御指摘のような
スケジュールを念頭に置いているものではないところでございます。
利用形態につきましてでございますが、当該土地につきましては、平成二十年度に
県有財産有効活用方策において売却する方針をお示ししておりまして、また都市計画上の用途地域につきましては、昨年来住民への説明会や公告・縦覧、鹿児島市
都市計画審議会等の手続を経て決定されたものでございます。このような経緯を踏まえまして、県としては、同地域の都市計画の考え方に沿って、
提案公募方式により売却する方針を六月議会でお示ししたところでございますが、その後さまざまな御意見をいただいておりますことから、当面これらの方々への説明に努めてまいりたいと考えているところでございます。
農業試験場跡地の用途地域についてでございますが、法律上は医療・福祉施設のほか業務施設、
居住施設等の建築も可能とされておりますが、本年三月の鹿児島市の
用途地域変更計画書におきまして、病院、
老人福祉センター等の
サービス施設の誘導を図る必要があるとされたことなどを踏まえまして、医療・
福祉施設等の用地として、
提案公募方式により売却するものとしたところでございます。
なお、鹿児島市の条例改正につきましては、地区計画の決定を踏まえて必要な規定の整備を行うものであると伺っておりますが、市議会の審議状況につきまして、県としてコメントできる立場にはないと考えております。
利活用委員会の設置についてのお尋ねがございましたが、
農業試験場跡地につきましては、平成十七年度に現在の
農業開発総合センターへの移転が完了した後、普通財産として管理してきておりまして、開陽高校と
鹿児島盲学校の建設用地以外につきましては、県として特段の利用計画を有していなかったところでございます。これを踏まえまして、本県の置かれている厳しい財政状況のもとで、歳入確保を図る観点から平成二十年度に
県有財産有効活用方策を策定し、県として利用計画のない部分につきましては、売却する方針をお示ししているところでございまして、現時点で改めて利活用のための
検討委員会を設置することは考えていないところでございます。
[上村勝行君登壇]
6
◯上村勝行君 御答弁をいただきました。
一括交付金に関しましては、
条件不利地域の配慮の件は、民主党の
マニフェストにもしっかりうたってあります。知事から、本県は三百億円の削減とかいう数字がたびたび強調されますと、
一括交付金に反対との印象を受けるということを申し上げておきます。この
一括交付金を予算化するに当たっては、
二元代表制のもとでの
住民ニーズの把握は、首長と議会の双方に課せられている任務でありますので、ぜひとも協議の場が必要であります。その協議の場として県予算の概算要求が出た時期、十二月の第四回定例会で
予算特別委員会を前倒しして開催し、議論するのがよいのではないかとの提案をいたします。
県職員の
給与カットの復元については、知事は来年度の国の動向を見てと言われます。また来年度の収支を見通すことは困難と答弁されましたが、来年度政府予算の概算要求を見ると、交付税は本年度とほぼ同じ十六兆九千億円が確保され、一般会計からの別枠加算約一兆五千億円も二十二年度と同様に行われ、交付税率の引き上げは向こう三年間固定となり、二十四年度以降の
財源不足額は
臨時財政対策債で調整することとなっております。概してよい方向に向いております。加えて、本県の平成二十一年度実質単年度収支は三十九億円の黒字となっています。これらの状況を見ると、県財政は節度ある運営をしていけば好転していくものと思われます。したがって、
職員給与カットの復元はできると確信しますので、本来の支給額に戻すよう、ぜひとも検討をお願いいたします。
県農業試験場跡地利活用策については御答弁がありましたが、平成二十二年度に県有財産の活用方策を決めたとのことであります。しかし、紋切り型ではなく、地元や鹿児島市、医療・福祉団体の意見をさらによく聞いて取り組んでいただくよう要望しておきます。
次の質問に入ります。
川内原発三号機増設の問題については、九月県議会での陳情の取り扱いによって、知事が増設の是非を判断されることになると思います。この間、陳情者や
経済産業省、九電を参考人として意見聴取した結果等も踏まえ質問いたします。
まず、三号機増設を必要とする九電の
電力需給計画についてであります。
環境影響評価準備書が提出された平成二十年度の経営計画における
最大需要電力の伸びは、二十年度から二十一年度に十三万キロワット、二十二年度以降は毎年九万キロワット増で、三十一年度までの
平均伸び率は〇・五三%であり、二十一年度計画では毎年十五万キロワットの増で、
平均伸び率は〇・八九%、二十二年度計画では毎年十五万キロワットの増で、
平均伸び率は〇・八七%となっております。
九電は先般の
参考人質疑で、九州の世帯数は二〇二〇年まで横ばいで推移すると説明しましたが、
人口問題研究所の推計によれば、沖縄を除く九州管内では、二〇一〇年度と二〇二〇年比較で十一万七千世帯の減、二〇三〇年比較では三十七万七千世帯の減で、佐賀県全域の二十九万世帯以上が減少することとなり、このことを指摘すると、「毎年〇・一%の減である。減るというのか変わらないというのか」と答えました。
また、
経済産業省の長期エネルギー見通しにおいては、二〇〇五年を基準にした二〇二〇年、二〇三〇年時点のエネルギー消費量は産業部門、家庭部門、業務部門など、いずれも最先端技術の導入等によって減少するとしています。これに対して九電は、「最大限導入して以降、もしうまくいかなかったときにはどうするんだ」と答え、予測数値を正確に読もうとしない御都合主義の姿勢を示しました。
そこで、県としては今後の世帯数の伸び、エネルギー消費量の伸びをどのように見られるのかお答えください。
また、世帯数の減少やLEDなど省エネ製品の普及、太陽光発電や燃料電池等の普及拡大を考慮すれば、九電の
最大需要電力の年間十五万キロワット、〇・八%以上の伸びはあり得ないと思いますが、県としては確実に伸びると判断されるかどうか。伸びるとすれば、根拠は何か明らかにしてください。
二点目は、スマートグリッドの実用化と電力供給力についてであります。
国内の電力各社はスマートグリッドの実用化に向け、二〇二〇年ごろに国内全世帯の約五千万世帯をスマートメーターに切りかえるとし、国のエネルギー基本計画においても、二〇二〇年代の早い時期にすべての需要家に導入を目指すとしています。今後十年から二十年の間に太陽光や風力発電、燃料電池の普及拡大が急速に進み、スマートグリッドが実用化されれば、電力を安定して効率的に供給することが可能な社会が構築されます。九電もスマートグリッドの開発とスマートメーターの導入を始めており、国の太陽光発電出力データ収集実証事業にも参加しています。九電は平成二十九年度までに太陽光、風力、バイオマスなどで合計二百二十四万キロワットの設備量を見込んでいますが、太陽光、風力発電については、気象条件によって出力が左右されるとして、供給量に加算していないとの説明であります。
先般の
参考人質疑で、九電は「太陽光は何%かは見込める。燃料電池は低廉化で本格普及が進む」としているものの、九電の供給量には加算されておりません。これらを供給量に加算することがスマートグリッドの実用化によって可能になりますが、県としては何%ぐらいを見込めると思われますか。仮に三十二年度時点で一〇%を加算できれば、供給予備率は九%となり、九電が必要とする八%以上を確保でき、三号機増設の根拠はなくなると思いますが、見解を伺います。
三点目は、核燃料サイクルについてです。
青森県六ヶ所村の使用済み核燃料の再処理工場は、試験運転でトラブルが相次ぎ、ようやくことし十月から本格稼働を予定していましたが、高レベル放射性廃液をガラスに閉じ込めるガラス固化溶融炉の不具合でつまずき、本格運転の開始時期を二年程度延期することになりました。延期は十八回目で建設費は既に当初計画の約三倍の二兆一千九百三十億円に膨らんでおります。国内五十四基から出る使用済み核燃料は年間約一千トンであり、今年度末までには百七十トン分の受け入れ余地しかないと言われておりますが、県としては現状をどのように見ておられるのか。再処理の見通しがない中で、増設を認めることになるのか、見解を伺います。
また、再処理の過程で発生する高レベル放射性廃棄物のガラス固化体は、三十から五十年間冷却貯蔵した後、地下三百メートル以下の岩盤に最終処分することになっておりますが、いまだに決定していません。調査に二十年、建設に十年かかり、二〇四〇年代後半に操業開始と言われますが、ここ数年で調査が始まらなければ四〇年代の操業開始はできません。最終処分場が決まらなければだれがどう責任をとるのか。県としては見通しのない中で増設を認めることになるのか、見解を伺います。
最後に、これまで述べたように世帯数の減少とエネルギー消費量の削減で、九電の見込む電力需要の伸びは期待できないこと、新エネの普及とスマートグリッドの実用化で電力供給量には余裕が出てくること、使用済み核燃料の再処理と高レベル放射性廃棄物の最終処分場の見通しが立たない中にあって、知事の意見としては三号機増設の必要性はないとの立場で臨むべきと思いますが、見解を伺います。
政府においては、国の財政状況が厳しさを増す中で、公共事業の選択と集中の考え方のもとに、全国の港湾整備のあり方が大きく変化しつつあり、今年度の国直轄事業費をめぐる全国の予算配分は、港によって明暗が分かれました。先月の鹿児島港の重点港湾の選定、志布志港の国際バルク戦略港湾への立候補がありますが、国内最多の百三十一もの港を抱える鹿児島県にとって、今後の港湾整備の行方は重要な課題であります。
県内の重要港湾五港のうち鹿児島、志布志、名瀬の三港を重点港湾に要望していましたが、鹿児島港一港が選ばれました。名瀬港については、離島の生活インフラ港の役割が考慮され、特別枠で最小限の新規直轄事業が担保されることになりました。鹿児島港新港区については、国の来年度概算要求において複合一貫輸送ターミナル改良事業、総事業費百八億円の新規事業化が盛り込まれており、県が目指す平成二十五年度の一部供用に向けて大きな弾みとなるものであります。既に本年度国の調査費が計上され、県においても旅客ターミナルや貨物上屋の基本設計など準備中であります。
そこで伺います。
新港区における今年度事業の進捗状況及び来年度以降の整備計画と、事業費確保の取り組みについてお示しください。
志布志港については、国が公募した国際バルク戦略港湾の選定を目指して計画書を提出し、八月二十日には第一次のプレゼンテーションがなされたと聞いています。バルク戦略港湾構想は資源や食糧の確保をめぐる国際競争力の強化のために、穀物、石炭、鉄鉱石の三品目を大量輸送できる港を整備しようとするもので、穀物拠点港には志布志港など六者七港が応募しています。選定されれば二〇二〇年までに世界最大の十万トン級の貨物船が接岸できる岸壁、停泊地等の整備に百億円規模の事業費が見込まれております。志布志港は後背地に大隅地域や宮崎など国内有数の畜産地帯を抱え、全国二位の飼料用穀物の輸入があり、バルク貨物を取り扱う流通業者や飼料生産工場が集中しています。
今回の応募は、九州からは志布志港が唯一であります。当時の前原国交大臣は、九月四日、バルク港に応募した山口県の徳山下松港を視察後、十三港の計画案は企業間の連携による効率的運用が不十分として、選定ゼロもあり得るとの考えを示したと報じられております。
そこで伺います。
今後、国交大臣の指摘や九州各県との連携など、選定に向けて志布志港の優位性、重要性をどのようにアピールし、官民一体となった取り組みを行うつもりか、明らかにしてください。
九州における物流拠点港としての志布志港の戦略性を高めるためには、アクセスとして東九州自動車道及び都城志布志道路の一日も早い完成が望まれます。戦略港としての機能強化の上から早期完成のために、集中的な投資を宮崎県とも連携して進めるべきと思いますが、見解を伺います。
霧島市霧島永水に豚房面積二十二万八千平方メートル、常時飼養頭数約十五万頭の養豚場建設計画があり、現在県環境影響評価条例に基づく
環境影響評価準備書作成に向けた調査が進められております。私どもの会派は、先日養豚場建設に反対する住民の皆さんから話を聞きましたが、ホテルやゴルフ場、別荘地から四キロメートル以内の近距離にあり、風向きによっては臭気が到達することが、他の大規模養豚場の事例からも容易に予測されるとのことでした。霧島といえば有名な観光地であります。十五万頭飼養の養豚場から臭気など連想されることから、観光客の足が遠のくことが予想され、観光推進に力を置く本県にとっても大きな痛手となりますが、大気や水質環境に少なからず負荷を与えると思われる大規模な養豚場が、観光地霧島に建設されることについて、県の見解を伺います。
この養豚場建設予定地は、株式会社キリシマがゴルフ場建設を計画している場所で、工事は中断されたままですが、本年一月にはできるだけ早くゴルフ場を完成させたいと県に報告しております。土地利用協議や林地開発許可の面でも事業廃止や変更の手続はなされておりません。その同じ場所に昨年十一月、株式会社鹿児島農畜産研究公社が養豚場の建設申請をするというのは理解できません。このゴルフ場計画と養豚場計画の両会社は、経営者も所在地も全く同じであります。ゴルフ場と養豚場、どちらが本当なのか。県は事業者のこのような姿勢を容認されるのですか、見解を伺います。
また、この予定地三十一万七千平方メートルは、昨年十二月に南九州畜産興業株式会社、通称ナンチクとの間に所有権移転請求権の仮登記がされており、事業者がみずから養豚場を経営すると反対住民に話している言葉と矛盾します。ナンチクの四十九万株中九万株を出資している県は、その事実を把握しておられるのか。その経緯は何なのか御説明ください。
また、十一万頭ともいう多頭飼育は口蹄疫に限らず、家畜伝染病の危険性や環境対策に要するコスト、豚肉価格の低迷など、総合的に見てリスクが高いと思いますが、本県の畜産振興に責任を持つ県の見解を伺います。
現在、
環境影響評価準備書作成に向けた調査がなされているとのことですが、住民の皆さんからは、どの調査項目をいつ、どの時点で、どの地点でするのか、具体的に知らされていない。これでは調査が適正にされているか確かめようもないし、目隠しをされた状態で「環境への負荷はさほど大きくありません」という結論が出されかねない。もっと細かく丁寧に説明をして立ち会いや調査項目、調査地点、調査時期について、追加や変更の要望を受け入れてほしいとの切実な声があります。県は今からでも住民の要望を受け入れるよう、事業者を指導すべきでありますが、考えを伺います。
社会福祉法人北薩福祉会の事業運営について伺います。
北薩福祉会は、平成十一年四月、阿久根市脇本に施設名文旦保育園として開設されております。経営母体は大阪府の寝屋川福祉会であります。実質経営者である森川氏は、大阪で三保育園を運営していた寝屋川福祉会理事長時代の不正経理などで、業務上横領と背任容疑で大阪府から刑事告発されるとともに、理事長を罷免され、文旦保育園職員として勤務しております。森川氏は平成八年に廃業したテール書店を介した保育材料の取引で生み出した利益や、私的保育児の保育料を着服した疑いがもたれている人です。北薩福祉会は、阿久根市と出水市の公立保育園の民間譲渡先として決まっていましたが、いずれも議会で否決されております。
県は、北薩福祉会が経営する文旦保育園を、平成二十年二月二十二日に指導監査を実施し、不適切な支出があったと判断され、三月二十四日に費用返還等の改善指導を行っております。この案件は我が会派のくしげ勝美議員が、第二回定例会の環境厚生委員会で質問しています。指導に従って施設会計に入金されたとの答弁でしたが、これで指導は完結したとの判断なのか。指導監査の経緯等についてお聞かせください。
寝屋川福祉会と同じ手法で、実態のない会社を介した取引によって私的に利益を得たという案件については、法人が会計担当理事の不正経理によって損害を被ったということであるので、全容について過去にさかのぼって調査するという答弁でありました。私どもに、大阪の事件発覚後すぐに鹿児島にも捜査の手が及ぶかもしれないということで、早急にテール書店と思われる領収書を書きかえるように指示され、一人の職員によって書きかえが行われたとの情報が寄せられております。その後の調査結果と対応についてお聞かせください。
私どもの会派は、先日大阪府庁に出向き、寝屋川福祉会の不適正な会計処理にかかわる府の対応について調査をしてまいりました。平成二十一年十月九日付で大阪府警察本部に、前理事長を約二百九万円の業務上横領罪及び三十九万円の背任罪で、前理事を六十二万円の背任罪の共同正犯の疑いで告発しています。また、この法人には三人の仮理事を派遣して、全理事を解任し、新たな理事を選任して運営に当たっているとのことでした。
寝屋川福祉会の大阪での事業運営について、率直な感想を申し上げれば、社会福祉法人の経営資格の全くない人だと感じました。大阪府は少額でも犯罪であるとの厳しい姿勢で臨んでおり、本県の監査結果と比較してみますと、本県の甘さを指摘せざるを得ません。一時保育の十五日を超えた場合の保育料の行方がわからないとの情報も寄せられています。実態のない会社を介した取引で私的に利益を得たという案件とともに、たとえ少額であったとしても犯罪であると思いますが、見解と対応を伺います。
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知事伊藤祐一郎君登壇]
7 ◯知事(
伊藤祐一郎君)川内原子力発電所三号機増設の必要性についてのお尋ねがありました。
川内原子力発電所三号機増設計画につきましては、去る六月に薩摩川内市におきまして、市議会の賛成陳情採択及び市長の同意表明がなされ、いちき串木野市におきましても、市議会の賛成陳情採択及び市長の増設容認表明がなされたところであります。
また、国におきましては、第一次公開ヒアリングが実施されますとともに、県議会におきましては陳情者、国及び九州電力に対する参考人招致がなされ、県におきましても先月二十七日、専門家の知見に学ぶ会を開催したところであります。増設の問題につきましては、徹底的な情報公開とともに、県議会や地元の御意見を十分に踏まえながら、判断をしてまいりたいと考えております。
8 ◯企画部長(六反省一君)原子力発電所の増設計画に関連して、九州の世帯数やエネルギー消費量の減少についてでございます。
国立社会保障
人口問題研究所の将来推計によりますと、九州七県の世帯数は平成十七年度から二十二年度にかけて増加し、その後は減少に転ずるとしておりまして、平成三十二年度は平成十七年度より七万四千世帯減少し、この十五年間の減少は一・四%となっております。一方で、長期エネルギー需給見通しによりますと、平成三十二年度の我が国のエネルギー消費量は、御指摘のとおり約四十九兆円のコストで最先端技術を最大導入するケースにおいて、平成十七年度に比較して約九%減少すると試算をしておりますが、このケースでも電力量はこの間約六%伸びると試算をされております。
また、本年六月に改定されましたエネルギー基本計画におきましても、電気につきましては民生部門を中心に電化のさらなる進展が見込まれ、エネルギー供給の中心的役割を担っていくと考えられるとしております。県といたしましても、当面は引き続き電力需要は伸びていくのではないかと考えております。
九州電力の
最大需要電力の伸びについてでございます。
九州電力は、日本電力調査委員会の需要想定に基づき、毎年度供給計画を策定しており、同委員会の九州地域の平成三十一年度までの最大電力の伸び率年平均〇・六%に対しまして、九州電力の供給計画では伸び率は年平均〇・五%となっております。国によりますと、電気事業者は足元の電力需要の動向や最新の経済見通しをもとに行った需要予測に基づいて、電源開発等の設備形成を行っていくこととしておりまして、こうした観点から九州電力の需要想定は、現時点では適当なものと考えているとしておりまして、県としてもそのように理解しているところであります。
なお、九州電力によりますと、平成二十二年度の供給計画では、太陽光発電について余剰買い取り制度導入等による増加傾向を踏まえ、平成三十一年度には現状より三倍増の約十億キロワット時の発電量を見込んでいるとのことであります。一方、家庭用燃料電池は平成二十一年度から販売が開始されておりますが、販売台数がまだ少なく、今のところ需要想定に見込んでいないと聞いているところでございます。
スマートグリッドに関する供給力への加算についてでございます。スマートグリッドにつきましては、国は現在、天候と太陽光発電の発電量との関係を把握するために、全国三百カ所においてデータの収集を行っており、この結果等を踏まえてどの程度太陽光発電が安定的な供給力として見込めるのか、今後検討していきたいとしております。また家庭用燃料電池につきましても、本格的な実用化普及を図るためには、耐久性、経済性を初めとした乗り越えるべき課題が多く、導入支援や研究開発等を進め、引き続き燃料電池の開発に努めたいとしております。
県といたしましては、スマートグリッド関連の技術は実証試験や研究開発等の段階にあると認識をしておりまして、現時点で太陽光発電や燃料電池を安定的かつ確実な供給力として見込むことは、困難ではないかと考えております。
使用済み燃料再処理工場についてでございます。
六ヶ所再処理工場につきましては、日本原燃株式会社が九月十日に、竣工時期をことしの十月から二〇一二年十月まで二年間の延長を発表いたしております。その理由として、温度計の追加設置工事などの設備改善やガラス固化試験を慎重に進めるためとしております。一方、川内原子力発電所一、二号機は、使用済み燃料の貯蔵庫の容量を広げるリラッキング工事を、平成二十二年三月に完了しておりまして、使用済み燃料は平成二十二年六月末で管理容量の約六六%となっております。九州電力によりますと、川内原子力発電所においては再処理工場への計画的な搬出がない場合でも、二〇二〇年ごろまでは対応可能とのことでございます。
高レベル放射性廃棄物についてでございます。
高レベル放射性廃棄物最終処分施設は、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づき、原子力発電環境整備機構が処分施設の建設地の選定、建設、埋設、管理等を行うこととなっておりまして、建設地の選定については最終的には国の責任において決定されるところでございます。最終処分地につきましては、平成二十年三月の閣議決定により、最終処分地建設地を選定後、平成四十年代後半を目途に最終処分を開始するとしているところでございますが、現時点では候補地を決めるに至っていないところでございます。