黒田清信君に発言を許可いたします。
[黒田清信君登壇](拍手)
3 ◯黒田清信君 おはようございます。
私は、平成十八年第二回県議会定例会に当たり、公明党県議団として県政の重要課題等について一般質問を行います。
まず、イラク南部のサマーワに派遣している我が国の陸上自衛隊を撤収させることが決定いたしました。国際貢献策として我が国の自衛隊がイラクの
人道復興支援に貢献し、無事に任務が遂行されたことに敬意を表しますとともに、心から安堵いたしております。今後は、イラク人によるイラクのための民主的な国づくりが進むことを願うばかりであります。
国の
財政経済計画については、
経済財政運営の基本方針、いわゆる骨太の方針二〇〇六の七月初旬の策定に向けて、さまざまな議論がなされております。地方交付税の法定税率の引き下げや交付税総額の削減、人口、面積のみを算定基準とする新型交付税の導入の検討など、地方の厳しい実態を無視した動きが見られるところであります。財源保障機能と財源調整機能を有する
地方交付税制度は基本的に存続させなければ、地方が生き延びることは不可能になってまいります。知事を初め、我々も、地方の実態と状況をしっかりと訴えて、納得のいく解決をさせなければなりません。
早速質問に移りますが、
九州経済産業局は、「活力ある豊かな九州経済の実現に向けて」と題する九州の新しい
経済成長戦略を発表いたしました。全国平均を上回るスピードで人口減少が進む中、自動車や半導体などの九州の
リーディング産業のさらなる飛躍と環境・リサイクルや観光など、九州の潜在力や地域特性を顕在化させる施策を強化する戦略であります。二〇一五年までの九州の実質総生産を年平均二・五%成長させる具体的な目標が提示されております。自動車と半導体を九州経済の牽引役と位置づけ、そのための企業集積と地場企業の参入促進策を展開し、環境や燃料電池、ロボットやバイオなどの新産業創出を図り、農工連携や観光産業など、地域の自立を支える施策を展開することが必要であるといたしております。
そこで、
ライブドアやいわゆる
村上ファンドなど、株の取引により成長し、羨望のまと的存在であった企業が
インサイダー取引など、法を犯していた事件が発生をいたしました。私は決して
マネーゲームを否定するものではありませんが、知事はこのような風潮をどのように考えておられるのか、まず知事の考えをお伺いをいたしたいと思います。
また、我が国や県にとって、額に汗して働くものづくり産業、いわゆる足腰の強い二次産業の振興が重要であると考えますが、知事の考えをお聞かせください。
次に、新
経済成長戦略においては、地域産業の競争力強化と就業機会の増大を同時に達成する事業として、具体的に自動車と半導体を挙げており、知事も企業誘致としての自動車産業の振興を提案をされておりますが、本県におけるその振興策へ向けての具体的な取り組みについてお伺いをいたしたいのであります。
次に、景観行政については代表質問で既に議論が交わされましたので割愛をし、情報の流出防止策についてお伺いをいたします。
個人情報保護法の施行により、情報管理への関心が高まっております。急速なパソコンの普及とともに、民間企業、学校、警察、銀行等々、全国で情報の流出が多発いたしております。
ファイル交換ソフト「ウィニー」を介した情報の流出や
パソコン管理体制の不備から被害に遭っているケース等、情報の
流出防止対策が喫緊の課題となっております。
かごしま産業支援センターの調べによりますと、従業員十五人以上の中小企業の九五・四%が
インターネットを利用しており、「
セキュリティー対策を特に講じていない」との答えが二四・九%もあります。また、「
コンピュータウイルスの被害を受けたことがある」との回答が三〇・一%であり、
インターネットの急速な利用拡大の中で情報管理が無防備である実態が浮き彫りになっております。
そこでお尋ねする第一点は、本県における情報流出の現状についてであります。
次に、国においては、パソコンに関する
情報流出防止の行動計画「セキュアジャパン二〇〇六」を策定し、情報の漏えい防止に努めております。昨年十二月に策定をいたしました
情報セキュリティーのための統一基準に基づき、
ウイルス対策、情報の外部への持ち出しや
私物パソコンの業務利用の厳格化などでありますが、本県はどのような
セキュリティー対策をとっているのか。また、民間企業において三〇・一%の企業が
コンピュータウイルスの被害を受けたことがあるとのことでありますので、民間企業に対する
情報流出防止対策の啓発についてお聞かせをいただきたいのであります。
第三点は、学校における
セキュリティー教育についてお伺いいたします。
車を運転するときは試験に合格して初めて運転が可能になりますが、パソコンはだれでも簡単に利用できる利点があると同時に、思わぬ被害に遭うことがあります。その意味で、早い段階での
セキュリティー教育が大事でありますが、学校における
パソコン普及の現状と
セキュリティー教育についてお伺いをいたします。
第四点は、全国町村会が、自治体で個人情報の漏えいがあった場合に損害賠償金や訴訟費用などを補償する
個人情報漏えい保険を六月から導入するという報道がありました。情報管理を厳格に行うとともに、万一に備え、都道府県においても
個人情報漏えい保険制度の導入を働きかけていく必要があると思いますが、見解をお聞かせください。
次に、部長の
マニフェストについてお伺いいたします。
隣県宮崎県は知事部局の部長に、部長として重点的に取り組む目標を盛り込んだ
マニフェストの提出を求める制度をスタートさせました。九州では長崎県に次いで二番目で、県の最上級幹部である部長に管理意識、
目標達成意識の向上を促すのがねらいのようであります。各部長は、提出した
マニフェストの達成に努め、年度末には達成状況を検証し、知事に報告するものであります。
マニフェストによって、部長みずからの事業遂行責任に加え、事業を効率化させ、部全体の組織力を高め、結果として
県民サービスの向上に寄与することを目指している制度であります。
そこで、本県においても、事業の効率化や
県民サービスの向上に資するため、
部長マニフェストを導入することを提案いたしますが、知事の見解を求めます。
次に、職員の時差出勤についてお伺いをいたします。
大分県では六月から、業務が夜間に及ぶことが多い
農業改良普及員と
用地買収担当職員を対象に、出勤時間を最大四時間半遅らせることができる
時差出勤制度を試験的に導入すると報道されました。都市部で渋滞緩和策の一環としての
フレックスタイムやサマータイムを導入している自治体はありますが、職種を限定して制度を導入したのは九州では初めてのようであります。
農業改良普及員や
用地買収担当職員は、農業生産者や地権者との協議や会議が夜間に及び、残業が日常化しているのであります。時差出勤の導入で実質的な業務に合わせて勤務できることで、職員の負担軽減に加え、超過勤務手当の削減も図られることになります。
そこで、本県においても、職員の負担軽減のためにも、職種による時差出勤を検討する価値はあるのではないかと提案し、一回目の質問といたします。
[
知事伊藤祐一郎君登壇]
4 ◯知事(伊藤祐一郎君)
マネーゲームの
コンプライアンス等についてのお尋ねがありました。
最近、
ライブドアや
村上ファンドなどの関係者が
証券取引法違反の容疑で逮捕されましたことは、証券市場の健全性を損なうものとして憂慮すべきことと考えております。
証券市場は、株取引を通じまして企業の資金調達の場であり、今日の経済活動の大きな基盤であります。
インサイダー取引等、公正な取引のルールを逸脱いたしましたいわゆる
マネーゲームに陥った場合は、市場において到底受け入れられるものではないと考えております。
資源に乏しい我が国は、着実な経済発展を遂げてまいりましたが、製造業を中心とした第二次産業が基幹的な役割を担ってきたことによることが大きく、今後とも、ものづくりの分野の発展に取り組んでいくことは重要であると考えております。
本県におきましては、これまで、企業誘致や基幹産業である農林水産業、観光などの産業振興に努めてきておりますが、いまだに産業基盤が脆弱であり、地域間競争が激化する中、本県の産業振興を図りますためには、これからのアジアの時代を本県産業のさらなる発展を図る上での一つの好機としてとらえ、改めて、高い付加価値を生み出す第二次産業の集積を図っていく必要があると考えております。
このようなことから、県といたしましては、「産業おこしへの挑戦」を掲げ、次世代を担う
自動車関連産業、
電子関連産業、食品産業などにつきまして戦略的な産業振興に取り組んでまいりたいと考えております。
5
◯商工労働部長(時田光一君)
リーディング産業の振興についてでございますが、本県におきましては、産業おこしへの挑戦といたしまして、
自動車関連産業、
電子関連産業、食品産業につきまして戦略的な産業振興を図ることとしております。
このうち
自動車関連産業につきましては、近く
県内関連企業で組織する研究会を立ち上げるとともに、本年度から、付加価値の高い製品の開発に対する支援などを通して、将来に向けて集積の促進を図ることとしております。
電子関連産業につきましては、今後とも、関連企業等を対象とする技術セミナー、講演会の開催や産学官の共同研究開発の支援などを進めることとしております。また、
食品関連産業につきましては、本年度から、農林水産物を活用した機能性食品の研究開発を支援することとしております。
県としましては、このような取り組みを通しまして雇用の創出や技術の高度化を図り、本県産業の振興に努めてまいりたいと考えております。
民間企業への
セキュリティー対策についてでございますが、
本県中小企業の情報化につきましては、
インターネットの利用率が九五・四%で、電子商取引の割合も全国に比べ高い割合にあるなど、順調に進展しております。
県では、
かごしま産業支援センターを通して情報化支援を行っているところでありますが、同センターでは各種相談や専門家派遣、セミナー等を実施する中で
セキュリティー対策の指導・啓発を行っております。
今後とも、経営者を対象としたIT経営塾や
電子商取引実践研修会など、あらゆる機会を通して
セキュリティー対策の重要性を啓発してまいりたいと考えております。
6 ◯総務部長(原田耕藏君) 情報の流出対策についてでございますが、近年、県が保有する個人情報が流出した事例は発生しておりませんが、県におきましては、平成十五年四月に制定いたしました
個人情報保護条例に基づき、個人情報の漏えい防止や利用・提供の適切な運用に努めますとともに、職員に対しましては、毎年度研修会を開催し、個人情報の保護や適切な取り扱いについて周知徹底を図っているところでございます。
また、県庁における
情報セキュリティー対策につきましては、その基本方針や基準を定めた
セキュリティーポリシーの遵守や
ウイルス対策の重要性の周知、パソコン及びデータの
庁外持ち出し禁止等を職員研修や文書等により徹底させるとともに、
ウイルス対策につきましても、
最新プログラムを用いるなどさまざまな取り組みを行っているところでございます。
なお、御提案をいただきました
個人情報流出に関する保険制度につきましては、不測の事態に対応するための手段の一つとして認識しておりますが、当面は、引き続き職員の意識啓発や
情報セキュリティー対策の徹底に努め、個人情報の適切な取り扱いが図られるよう万全を期してまいりたいと考えております。
部長マニフェストの実施についてでございますが、効率的な行政運営を行いますとともに、大胆でスピード感あふれる改革を進めていく上では、部長初め、職員一人一人の意識の向上が必要であると考えており、現在、職員はそれぞれの持ち場で必要な改革に向けて取り組んでいるものと考えております。また、今年度から課長級以上の職員について実施いたします勤務成績の評定におきましても、あらかじめ業務目標を定め、その達成度を評価する仕組みを取り入れたところでございまして、これにより管理職員の一層の意識向上にもつながるものと考えております。
さらに、効率的で質の高い行政の実現を図ること等を目的に実施しております行政評価に外部有識者による評価の仕組みを導入し、制度の充実を図るなど、一層の業務の効率化に努めているところでございます。
今後とも、職員の意識啓発を図りながら、一層の行政サービスの質の向上と業務の効率化に努めてまいりたいと考えております。
時差出勤についてでございます。
大分県におきましては、公務能率の一層の向上を図るため、
農業改良普及所の普及員や
用地交渉担当職員の勤務時間を夜間業務の時間帯に移行するなどの時差出勤の試行がなされていると聞いております。
時差出勤制度の導入に当たりましては、公共交通機関の運行状況等を考慮する必要があるほか、業務体制の見直しや勤務時間の管理などの課題があり、今後、各県の動向等も踏まえながら検討してまいりたいと考えております。
7 ◯教育長(岡積常治君) 学校におけるパソコンの現状等についてでございます。
パソコンの整備状況は、平成十七年九月現在、小学校では七・九人に一台、中学校では五・八人に一台、高等学校では五・七人に一台であり、本県の整備状況は全体として全国よりも進んでいる現状であります。
セキュリティーに関する教育につきましては、例えば、
インターネット上のサイトに個人情報を書き込まない、ID、パスワードの管理をしっかりするなど、個人情報の保護や
セキュリティーの配慮について、小学校から発達段階に応じて指導を行っているところであります。
個人情報の流出が社会問題となっておりますことから、今後とも、その教育内容の充実を図ってまいりたいと考えております。
[黒田清信君登壇]
8 ◯黒田清信君 それぞれ御答弁をいただきました。
九州経済産業局の新
経済成長戦略は、自動車と半導体を基軸に据えて、環境とかバイオなどの新産業の創出を図り、農工連携あるいは観光産業の振興等、自立支援を行うという戦略であり、私も共感できるものとなっているところでございます。
知事の答弁にもありましたとおり、鹿児島としても、自動車など足腰が強く、雇用も見込める二次産業を振興するための具体的な取り組みを要請するわけでございますけれども、
自動車産業振興のための研究会も発足をさせるということでございましたが、戦略性を持った具体的な取り組みにつきまして、その産業が立地できるように積極的な今後の対応を要請するものでございます。
情報の流出防止策につきましては、海上自衛隊の秘密事項でございますとか患者の個人情報、あるいは犯罪被害者の氏名と刑務所の受刑者の情報でありますとか、原子力発電所の
耐震評価情報等々、情報流出は
ファイル交換ソフト「ウィニー」を介してさまざまな分野に広がっておりまして、調査によりますと、ウィニーの利用者はこの二年間で倍増したとも報道をされております。
ウイルス対策を厳重にすることは当然のことでありますが、職場の重要なデータを持ち帰ったり、私物のパソコンを業務に使用する際の情報の管理等、重要な情報を扱っているという自覚が希薄であると言わざるを得ないのであります。
警察本部では、捜査資料が
私物パソコンから
インターネット上に流出する事態が全国で相次いだことを受けて、公務用に使用している
私物パソコン約千三百台を一掃する方針を決定をされました。パソコンの取り扱いや公費による配備の問題も含め、今後の適切な対応を要請をいたしておきたいと思いますが、県におきましては、情報流出は決して対岸の火事ではなく本県にも起こり得ることであるとの自覚で、ハード、ソフト両面にわたる流出防止策の徹底をぜひお願いをいたしておきたいと思います。
部長マニフェストや職種によります時差出勤の実施につきましては、職員の業務の遂行責任やあるいは目的達成の意識変革、職員の職務の実態に即した効率化や負担軽減のためにも、今後、ぜひ何らかの形で検討し、実施されますよう要請をいたしまして、次の質問に移りたいと思います。
まず、少子化対策についてお伺いをいたしますが、初めに、ワーク・ライフ・
バランス社会の構築についてであります。
過去最低を記録し続けている
合計特殊出生率が一・二五になり、大きな衝撃を受けたところであります。政府が十年以上にわたって少子化対策に取り組んできたにもかかわらず、一向に成果が上がっていない格好になっております。少子化が進むことで最も影響を受けるのは、働く世代の負担で支えられている年金、医療、介護などの社会保障で、特に将来の人口推計などに基づき制度設計されている年金は深刻な影響を受けることは必至であります。
少子化の背景にはさまざまな要因が複合的に関連いたしておりますが、内閣府が四月に発表いたしました少子化社会に関する国際意識調査によりますと、「自分の国が子供を産み育てやすい国と思うか」という問いに対しまして、「そうだ」と答えた人は、
スウェーデンが九七・七%、米国が七八・二%に対して、日本は四七・六%と半数に満たない結果となっております。また、「子供をふやしたい」との回答は
スウェーデン、米国が八〇%を上回り、日本は四二・六%で、子育て世代が育児環境に不満を持ち、第二子以上の出産をためらっていることが証明された格好になっております。
子供をふやしたくない理由で、「子育てや教育に費用がかかり過ぎる」と回答した人は、韓国が六八・二%、日本も五六・三%で、フランスは一三・三%で、
スウェーデンは回答の上位にランクされておらず、教育費の問題についてはほとんど不満はないといううらやましい結果になっているのであります。
近年、若者のフリーターを初め、パートや派遣社員などの非正規社員がふえております。一般的に非正規社員は賃金が低く、社会保険も未整備であったりし、不安定な身分から、将来への不安を理由に結婚に踏み切れない人も多くなり、結果として未婚や晩婚化を促進しているという現状があるのであります。
また、働く女性がふえている中で、
中小零細企業では産休や育児休暇がとりにくい、あるいは出産すれば即失業という厳しい現実もあります。しかし、今や多くの女性が働く国の出生率が高くなり、女性に働きやすい環境が用意されている国の方が国際競争力もあるという調査結果も出ているのであります。国内でも、女性が活躍できる企業は競争力が高く、利益率も高くなってきているデータもございます。日本においても、だれもが仕事と結婚、育児を両立できる社会、つまり仕事と生活の調和─ワーク・ライフ・バランス─の実現が必要であります。
児童手当はことし四月から小学校六年生まで拡大され、所得制限も大幅に緩和されました。しかし、児童手当の実効性が上がっている欧州諸国では、額は日本の二倍以上、支給対象年齢は十八歳までが主流になっております。日本の将来を考えた場合、子育てを社会の中心に据え、社会全体で支援する
チャイルドファースト社会を築くことが求められております。
そこでまず、
合計特殊出生率一・二五への知事の率直な感想をお聞かせをいただきたいと思います。また、今後三十年間は人口の減少が続くと言われておりまして、現実を踏まえた
人口減少社会における行政運営が必要であると思いますが、見解をお聞かせください。
次に、
次世代育成支援対策基本法に基づく県や企業の
行動計画策定についてお伺いいたします。
官公庁や三百人以上の社員を抱える企業に対して、行動計画の策定が義務づけられておりますが、県の計画策定とその実施状況、特に育児休暇の取得状況についてお示しください。また、県内で対象となる企業の
事業主行動計画の策定状況をお聞かせください。
次に、少子化対策のための─仮称でございますが─、仕事と生活の
調和推進基本法の制定についてお伺いいたします。
ことし四月に私ども公明党が発表いたしました
少子社会トータルプランでは、仕事と生活の調和を実現する観点から、労働政策や税制、
社会保障制度、保育、育児、
キャリア形成支援などについて首尾一貫した政策を実施するための仕事と生活の
調和推進基本法の制定を提案をいたしております。
そこで、県としても、総合的な少子化対策の一環として、仕事と生活の調和を求める法律の制定を国に対して働きかける考えはないか、見解をお伺いをする次第であります。
次に、
マタニティマークの活用についてお伺いいたします。
妊産婦にやさしい環境づくりを推進するために、ことし三月に
全国統一マークが決定をされました。埼玉県では、このマークが入ったキーホルダーを希望する妊婦に配布いたしております。
マタニティマークは、妊産婦が身につけたり、ポスターなどで掲示して、妊産婦への配慮を呼びかけるものであります。外見だけではわかりにくい妊娠初期の妊婦に配慮した行動、例えば満員電車やバスで押されないそういうことや、あるいは席を譲るとか喫煙を自粛するとかのためには
マタニティマークの普及が望まれるところでありますが、本県においても、妊産婦を守るやさしい社会の実現のために、
マタニティマークの活用についての見解を求めるものであります。
次に、企業の協賛によります子育て支援についてお伺いいたします。
子育て中の家庭の負担を軽減しようと、買い物や施設を利用する際に料金割引や特典を受けられるサービスを提供する自治体が広がっております。経済的支援と地域における子育て支援の両面から、有効な支援策の一つと考えられます。
昨年八月にスタートした奈良県に続き、石川県、静岡県、島根県等で実施され、好評を博しております。奈良県では、県が支援する「なら子育て応援団」が、子育てを応援する企業や店舗等を応援団として認定し、認定書やステッカーを交付し、十八歳未満の子供が三人以上いる多子世帯の保護者に対して、市町村が「なららちゃんカード」を交付し、利用者は加盟店などでそのカードを提示することにより、商品の割引や特典などのサービスを受けられるものであります。割引や特典の事例として、飲食店や美容室等での一〇%割引あるいは子供の入園無料の遊園地、珍しいものでは定期預金の金利が通常の五倍の信用金庫もあります。入会金無料のパソコン教室等もあると報道されております。
全国で子育て支援割引等が拡大する中で、九州におきましても、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分の五県では連携して、広域で子育て割引を今年度中に実施する予定であると聞いております。
そこでまず、県が支援する子育て応援団の設置について伺うとともに、子育て支援策としての企業の協賛によるシステムの構築について、本県でもぜひ取り組んでほしいと思うのでありますが、見解をお伺いいたします。
次に、がん対策について伺います。
がん対策の一層の充実を図るためのがん対策基本法が今国会で成立いたしました。がん対策についての国や地方自治体の責任を明確化し、がん検診の受診率を向上させるとともに、全国どこでも同水準のがん治療を受けられるように、専門医の育成あるいは診断や治療法の研究の促進等がうたわれており、がん対策の大きな一歩が踏み出された意義は極めて大きいと評価いたしているところでございます。
日本における、一生涯のうちにがんに罹患する確率の推計値である生涯がん罹患リスクは、男性が二人に一人、女性は三人に一人とのデータがあります。年々がんの罹患率や死亡率は上昇を続け、一九八一年以降、死亡原因の第一位はがんで、年間の死亡者数約百万人のうち三十万人の死因はがんであり、三割にもなっているわけであります。十年後には何と二人に一人ががんで死亡するとも予想をされております。
国は、対がん十か年総合戦略を実施し、現在は第三次になっていますが、罹患率や死亡率は上昇し、一向に歯どめがかかっておりません。
そこでまず、今般成立をいたしました、がん対策基本法と本格的ながん対策推進への知事の見解についてお伺いをいたします。
次に、県がん対策推進計画の策定について伺います。
基本法によりますと、政府は、がん対策推進基本計画を策定し、都道府県においても、がん対策推進計画を策定することになりますが、県としての具体的な取り組みについてお示しください。
次に、県がん中核拠点病院や地域がん診療拠点病院の指定についてお伺いいたします。
国及び県は、がん患者がその居住する地域にかかわらず適切な医療を受けられるよう、県に一カ所のがん中核拠点病院、二次医療圏ごとに一カ所の地域がん診療拠点病院を指定し、医療従事者に対する研修やがん患者等に対する支援及び必要な情報の提供を行うサテライト相談室を設置することになっております。
我が県においては、このがんの医療水準の均てん化を図るために必要とされておりますこの指定がおくれていたのでありますが、指定の状況についてお聞かせをいただきたいのであります。
次に、終末期医療供給体制の整備について伺います。
がん治療の開始とともに、適切な緩和ケアが行われることが重要であり、緩和ケアに関する知識の普及、モルヒネ等の医療用麻薬の適切な使用により、がん患者の苦痛の軽減を図ることが求められます。がん患者がその人生の最後まで尊厳を保持することへの重要性にかんがみ、終末期において適切な緩和ケアを提供できる専門技術者や医療機関の整備等が必要であります。
そこで、外科手術や放射線治療でも治癒が困難な患者に対する終末期医療供給体制が不十分と言わざるを得ず、本腰を入れて取り組むべきであると思いますが、体制の整備について伺います。
次に、がん検診の精度向上のための県成人病検診管理指導協議会のあり方についてであります。
厚生労働省は、がんの早期発見に欠かせない検診の精度を高め、都道府県において差があるがん発見率や精密検査が必要とされる受診者の割合に基準値を設け、検診の効果や判定が適切かどうかを検証し、改善する体制整備を決定いたしました。
そこで、がん検診の精度向上に重要な役割を果たす県成人病検診管理指導協議会の開催状況をお示しいただくとともに、基本法制定を踏まえ、一層の充実が求められるところでありますが、対応をお聞かせください。
次に、がん検診の受診率向上策、特にマンモグラフィ検診の現状と今後についてお伺いをいたします。
がん対策は早期発見、早期治療が何よりも効果的でありますが、早期発見のための検診が重要であることは論をまちません。胃がんや肺がんなどそれぞれの検診を行っておりますが、受診率の現状をお示しいただくとともに、受診率の低いものに対する向上策についての取り組みをお伺いいたします。
特に乳がんの受診率が低いようでありますが、女性の受診者にとって乳房の視診や触診には抵抗があるのは当然であり、乳房X線検診すなわちマンモグラフィ検診が極めて有効であります。そこで、マンモグラフィ検診について、設備やマンパワーの現状と今後のマンモグラフィ検診の促進についてお示しをいただきたいと思います。
次に、訪問看護師の確保についてお伺いいたします。
在宅の末期がん患者などをケアする訪問看護師の確保のための研修が進んでいないという新聞報道がございました。厚生労働省は、二〇〇六年度から補助事業として二つの研修を盛り込んだ訪問看護推進事業を実施しております。痛みを和らげる技術や精神的ケアを身につける在宅ホスピスケア研修と、人工呼吸器患者の管理など最新の医療技術を磨く相互研修の二つであります。
医療制度改革による入院期間の短縮や在宅での看護推進などに加え、在宅の末期がん患者にとって、訪問看護師の役割は今後ますます重要になってくるものと思われます。全国的にこの研修が進んでいないようでありますが、本県の訪問看護師の数と在宅ホスピスケア研修と相互研修の実施状況を明らかにしてください。
また、医療制度改革による療養病床の削減等、今後、訪問看護師の必要性が高まるものと考えますが、マンパワーの充実、確保に向けた取り組みについてお伺いをいたし、二回目の質問といたします。
[
知事伊藤祐一郎君登壇]
9 ◯知事(伊藤祐一郎君) 少子化対策についてのお尋ねがありました。
平成十七年度の全国の
合計特殊出生率は一・二五と過去最低を更新し、本県におきましても一・四四と過去最低となっているところであります。
少子化の急速な進行は、今後の労働力人口の減少による経済成長の鈍化、税や社会保障における負担の増大をもたらし、さらには地域における子供たちの健全育成への影響も指摘されるなど、鹿児島の社会や経済、地域の持続可能性を根底から揺るがす深刻な問題であると考えております。
県といたしましては、「力みなぎる・かごしま」を創造し、本県の未来を明るいものとするためには、ふるさとを担う人材であります子供たちの育成が不可欠であり、少子化対策は本県にとりまして極めて重要な課題でありますことから、本年度、児童福祉課の機能を強化した上で「子ども課」に改組するなど、組織体制の整備を図ったところであります。
今後、未婚・晩婚化対策や仕事と子育ての両立支援など、各般の少子化対策の充実に努めてまいりたいと考えております。
また、少子化により到来する人口減少時代におきましては、多様な主体が公共サービスを提供する共生・協働の地域社会づくりを積極的に推進いたしますとともに、その時々の行政需要に対応した組織機構の見直しを行うなど、簡素で効率的な行政運営に努める必要があると考えているところであります。
がん対策基本法についてのお尋ねがありました。
我が国のがん対策は、これまでの取り組みにより一定の成果をおさめてきておりますが、がん患者数はふえ続け、毎年三十万人以上が死亡するなど、国民の疾病による死亡の最大の原因となっており、がんが国民の生命及び健康にとりまして重要な問題となっております。今回、がん対策の一層の充実を図るため、がん対策基本法が制定されたところであり、高齢化の進展等を勘案いたしますと時宜を得たものであると考えております。
がん対策基本法に規定されましたがん予防の推進やがん医療の均てん化の促進などの基本的施策につきましては、いずれも重要なものであり、県としてもその趣旨にのっとり、今後とも、県民の自助努力を基本としたがんの予防、早期発見の一層の向上に努めますとともに、医師会や鹿児島大学医学部等との連携のもと、二次医療圏ごとに地域がん診療連携拠点病院を中心とした医療及び相談体制を整備・充実させるなど、総合的ながん対策を推進し、安心・安全な郷土づくりに努めてまいりたいと考えております。
10 ◯総務部長(原田耕藏君) 次世代育成支援対策推進法に基づく特定
事業主行動計画につきましては、知事部局におきましては、平成十七年三月に作成をいたしております。同計画では、子供と接する時間をふやすなどの観点から、平成二十一年度までの数値目標として、配偶者の入院の付き添い等のための出産補助休暇の年間取得者数割合を一〇〇%とすること、年次有給休暇の平均年間取得日数を十五日とすることを掲げているところでございます。
平成十七年度は、出産補助休暇の取得者数割合八〇%、年次有給休暇の取得日数十二・一日となっているところでございます。また、育児休業につきましては、平成十七年度に希望した職員六十一人全員が取得しているところでございます。
11 ◯教育長(岡積常治君) 県教委におきましても、平成十七年三月に次世代育成支援対策推進法に基づく特定
事業主行動計画を策定したところであります。計画における休暇の取得については、知事部局と同様の数値目標を掲げているところであります。
平成十七年度は、出産補助休暇の取得者数割合六七%、年次有給休暇の取得日数十三・〇日となっております。また、育児休業については、平成十七年度に希望した職員七十人が取得しております。
12 ◯警察本部長(久我英一君) 県警察では、平成十七年三月に策定した特定
事業主行動計画におきまして、仕事と家庭の両立を支援するなどの観点から、平成二十一年までの数値目標として、出産補助休暇の年間取得者数割合を一〇〇%とすること、職員一人当たりの年次有給休暇の年間取得日数を十日とすることを掲げております。
平成十七年中は、出産補助休暇の取得者数割合は五六%、年次有給休暇の取得日数は五・三日となっております。また、育児休業につきましては、平成十七年中に希望した職員四人全員が取得しております。
13
◯商工労働部長(時田光一君) 企業の行動計画の策定につきましては、子育てを行う労働者の職業生活と家庭生活との両立を支援するための一般
事業主行動計画としまして、従業員三百一人以上の事業所が策定を義務づけられておりまして、平成十八年三月末現在で対象となる事業所数は百二十三社となっております。昨年十一月までにすべての事業所が同計画を策定し、鹿児島労働局に届け出がなされております。
なお、鹿児島労働局では現在、従業員三百人以下の事業所に対しましても
行動計画策定の働きかけを行っておりまして、県としましても、同局と連携を図りながら、広報誌や各種会議等を通しまして、多くの事業主が計画策定を行うよう普及啓発に努めることとしております。
14 ◯保健福祉部長(吉田紀子君) 少子化対策のための仕事と生活の
調和推進基本法の制定についてでございますが、現在、国におきましては、長時間労働の是正など、御提言の働き方改革を含む新たな少子化対策を
経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六に盛り込む方向で検討がなされていると聞いております。
県では、本県の少子化対策や子育て支援に関する総合的な指針であります「かごしま子ども未来プラン」におきまして、子育てしやすい職場環境づくりを推進しているところであり、今後、国の動向等も注視しながら、引き続き、男性の育児休業取得率の上昇など、子育てと仕事を両立させやすい環境づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
マタニティマークの活用についてでございます。
本県の母子保健計画におきましても、「妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保」を主要課題の一つとして掲げているところでありますが、特に妊娠初期の妊婦に対する受動喫煙の防止及び交通機関における優先的な席の確保等について、
マタニティマークの普及啓発は社会的配慮を喚起するための方策として有効な手段と考えております。本県におきましても、県内の全市町村及び保健所と連携し、その普及啓発に努めているところであります。
県といたしましては、今後とも、このマークの普及啓発に積極的に取り組み、社会全体が妊産婦にやさしい環境づくりに努めてまいりたいと考えております。
企業の協賛による子育て支援でございます。
民間企業の協賛による子育て支援事業につきましては、経済的負担の軽減といった観点から一定の効果があるのではないかと考えております。
県といたしましては、今年度、鹿児島県少子化対策懇話会を開催することとしておりますが、こういった子育て支援事業につきましても、各界各層から具体的な御意見、御提言等をいただけるものと考えております。今後、関係機関との協議を進めながら、官民一体となって本県独自の子育て支援事業の推進に努めてまいりたいと考えております。
県がん対策推進計画の策定についてでございます。
がん対策基本法において、都道府県は、国が策定するがん対策推進基本計画を基本とし、がん医療の提供状況等を踏まえ、医療計画や健康増進計画等と調和の図られた県がん対策推進計画を策定することとされております。
県におきましては、今後、がん対策を総合的かつ計画的に推進いたしますため、法の基本理念や本県におけるがんの予防、早期発見、がん医療の均てん化などの実態を踏まえて、国や関係団体等とも連携を図りながら、県民が県内のどこに住んでいてもひとしく適切ながん医療等を享受できるよう、本県の特性に応じたがん対策推進計画を策定してまいりたいと考えております。
がん診療拠点病院の指定についてでございます。
がん診療拠点病院につきましては、本年二月国から新たな整備指針が示され、地域がん診療連携拠点病院の指定要件等の見直しとともに、新たに、各都道府県において中心的ながん診療機能を担う県がん診療連携拠点病院の整備を図ることとなりました。
県といたしましては、県医師会等を通じてこの整備指針の周知を図り、医療機関等と協議を進めてきており、県がん診療連携拠点病院及び地域がん診療連携拠点病院が今年度中に整備されるよう、国の指定に向けて必要な手続を進めているところであります。
終末期医療供給体制の整備についてでございます。
末期がんの患者さんがその終末期のQOL─生活の質─を高めることができますよう、痛みの軽減や精神的サポートなどのケアを行っていくことは重要な問題であります。
本県におきましては、今回のがん対策基本法の趣旨を先取りする形で、平成八年度から終末期医療への取り組みとしてターミナルケア懇話会を設置し、末期医療に対する県民意識調査、医療従事者研修会や県民フォーラムなどを実施するとともに、医療機関の協力を得て、緩和ケア病床の開設や在宅終末期医療に取り組む医療機関の整備などの取り組みを進めてきているところであります。
県といたしましては、これまでの取り組みを踏まえ、引き続き、関係機関の協力を得ながら、がん患者が自宅や施設において適切な医療や緩和ケアを受けることのできる体制の整備に取り組んでまいりたいと考えております。
県成人病検診管理指導協議会の充実についてでございます。
成人病検診管理指導協議会は、がん検診などの精度管理を行うため、県保健医療協議会の専門部会として設置し、このもとに大腸がんや乳がん部会など七つの部会を置いております。平成十七年度におきましては、成人病検診管理指導協議会及び各専門部会を合計三回にわたり開催したところであります。
県といたしましては、がん対策基本法にもありますように、がんの予防、医療の質の向上を図ることが重要であると考えており、その観点から、本協議会は検診の精度管理はもちろんのこと、今後は、検診後の受療及び治療状況、さらには五年生存率などを把握・評価し、本県における保健医療の総合的協議の場であります県保健医療協議会でのがん対策全般の充実強化に関する協議に資することができるよう、その機能強化に努めてまいりたいと考えております。
がん検診の受診率向上対策等についてでございます。
本県のがん検診の最近の受診率は、肺がんと胃がんが約一七%、子宮がんが約一八%、大腸がんが約一九%で推移してきております。マンモグラフィによる乳がん検診の平成十六年度の受診率は七・〇%であり、国の四・六%と比較して高い状況にあります。
県といたしましては、がん検診の実施主体であります市町村に助言・指導を行いますとともに、医師会や県民総合保健センター等と連携して普及啓発を行うなど、受診率の向上に努めているところであります。
乳がん検診につきましては、昨年、補助金による検診車を一台追加整備し、県全体といたしましては、検診車三台にマンモグラフィ五台となる一方、県内の各医療機関にも四十七台のマンモグラフィが整備され、また県内におきましては、マンモグラフィ検診精度管理中央委員会の認定による読影医師六十一名、撮影技師二十九名が検診に携わっております。
県といたしましては、増加傾向にある乳がん対策は女性の健康づくり上重要でありますことから、本年度から、「乳がん死ゼロ促進」をスローガンとして、乳がんに対する正しい知識の普及と早期発見、早期治療を促進するための強化月間として、十月を「ピンクリボン月間」として新たに設定し、啓発キャンペーンを実施いたしますとともに、乳がん講習会の開催、さらには認定読影医師等の専門家養成のための研修会開催など、乳がん対策の充実に努めることとしております。
訪問看護師の確保についてでございます。
訪問看護ステーションの訪問看護師等の数は、平成十六年十月一日現在、常勤換算で三百八十五人となっております。
本県におきましては、訪問看護師の資質向上を図りますため、国庫補助事業の在宅ホスピスケア研修及び相互研修事業としては実施しておりませんが、県単独事業といたしまして、県看護協会に委託して実施をしております訪問看護師養成講習会において、訪問看護師及び医療機関の看護師を対象に、在宅におけるターミナルケアに係る看護技術を習得させるための取り組みを実施しているところでございます。
訪問看護師の養成につきましては、今後、がん末期患者等の在宅におけるニーズを見きわめながら、関係団体とも連携を図り、訪問看護師養成講習会の内容を充実するなどして、必要な訪問看護師の養成、確保に努めてまいりたいと考えております。
[黒田清信君登壇]
15 ◯黒田清信君 それぞれ御答弁をいただきました。
少子化対策にかける費用を比較いたしますと、フランスが国内総生産─GDP─の二・八%、
スウェーデンが二・九%であるのに対して、日本はわずか〇・六%であります。
児童手当にしても、先ほど述べましたとおり、日本では小学校六年生までで、第一子、第二子が五千円であるのに対し、
スウェーデンは十六歳まで一万四千円、ドイツは十八歳まで二万一千円となっております。
出生率の低下を招いている原因の一つとして教育費の負担の大きさが指摘されております。特に大学教育にかかる負担割合は、OECD─経済協力機構─加盟の先進諸国の平均が二一・九%で、日本は五八・五%と極めて高くなっております。
少子化対策につきまして、企業支援による子育て支援策についても質問をいたしました。
少子化対策は一つの政策で解決する問題ではございません。小手先で解決できる問題ではなく、本腰を入れた複合的にして総合的な少子化対策の必要性を痛感をしているものであります。
次世代育成支援対策推進法に基づく育児休業制度等、形の上ではかなり進んでいると言えますが、問題はその実態であります。利用率が低く、単なる名目的な支援制度になっている懸念があります。例えば育児休業につきましては、育児休業の取得の状況についてただいま答弁もございましたけれども、希望する者の全員が取得したとかそういう答弁でございました。出産や育児に該当者の中で何名がその出産や育児休暇をとったかということが課題にならなければならないというふうに思うわけでございます。
民間企業への先導役として、警察や教育委員会を含む県職員が率先垂範して利用しやすい環境づくりに努めていただきますよう要請をするものであります。
仕事と生活の
調和推進基本法の制定については、現時点における見解をお伺いをいたしました。骨太の方針二〇〇六にも盛り込まれる見込みであり、国の今後の動向を見ていきたいということではございましたが、仕事と生活の調和については、我が国が直面している喫緊の課題であり、ライフスタイルとしてごく近い将来に必ず実現するものと確信をいたしております。
がん対策につきましては、今般の対策推進基本法の制定に当たって、公明党ではがん対策推進本部プロジェクトを立ち上げ、まさに国民病とも言うべきがん対策のためさまざまな調査・検討を行ってまいりました。緩和ケアの充実、放射線治療医などの専門的スタッフの育成と並んで重要な三本柱と位置づけておりました「がん登録制度」が、プライバシーの問題で先送りされたことは残念でありましたが、将来は国民の二人に一人ががんで死亡すると予想されている中で、確実で大きな第一歩が踏み出されたことを評価するとともに、県としても、県がん中核拠点病院の活用等により、今後はより積極的に取り組んでいただきますよう切に要望するものであります。
がん検診の受診率は、我が国はおおむね二〇%前後であります。欧米諸国は何と八〇%から九〇%となっております。がん対策の決め手は早期発見であり、早期治療であります。そのためには検診がいかに重要かがわかるわけであります。
特に乳がんの受診率が低くなっておりますが、女性にとって視診や触診に抵抗があり、低くなっているものと思われます。そのため乳房X線─マンモグラフィ─の有効性が評価をされておりますが、マンモグラフィ検診の推進につきましては、乳がん撲滅は女性である吉田保健福祉部長の重要な使命なのではないかと私は思っているところであります。検診率と期間を明示した
部長マニフェストを自主的に作成し、鹿児島県はマンモグラフィ検診によって乳がんが激減したと言われるような御奮闘を願ってやみません。
以上、私は今回、知事の政治姿勢に加え、少子化対策とがん対策に絞って質問をいたしました。骨太の方針二〇〇六で地方交付税のあり方が議論されている最中に、北海道の夕張市が財政再建団体に転落するということが伝わってまいりました。地方にとっては衝撃的なニュースであります。地方財政が全国でパンク寸前にあり、ぎりぎりの土俵際で粘ってきたにもかかわらず、ついに力尽きた例であります。
地方交付税の総額削減などが継続し、地方の財源保障や財政調整機能などの地方財政好転への打開策がないままだと、今後、第二、第三の夕張市が出てくることは目に見えているからであります。
知事におかれては、夕張市をよき警鐘として、地方が生き延びていけるような財政力強化に向けて、国に対してより強力に働きかけていただくことをお願いをいたしておきたいと思います。
先ほど、景観行政につきましては重複を避けるために質問をいたしませんでしたけれども、我が国は欧州等に比べますと、この景観行政、大変おくれていると言わざるを得ません。ヨーロッパに行きますと、歴史や文化、伝統に裏打ちされた誇らしげな建物や、まち全体が本当にすばらしい気品の漂うまちづくりになっているところでございますが、国におきましても、県におきましても、時の試練に耐え得る、気品の漂う風格あるまちづくりを推進をするために、県としてもより具体的なこの景観哲学、理念を持ち、景観条例あるいは景観計画の策定にもぜひ積極的に取り組んでいただきますように御要請をいたすところでございます。
私ども公明党は、少子・高齢化社会において、長年にわたって社会貢献をしてこられたお年寄りを大切にする社会、子供の幸せや子育ての安心が確保される社会こそ、国民すべてにやさしい社会であるとの考え方に立ち、今後とも、子育てを社会の中心軸に位置づけ、社会全体で支援する
チャイルドファースト社会の構築を目指してまいります。
少子化対策は一つの政策で打開できる筋合いのものではありません。まさに複合的で総合的な少子化対策を国民的な運動にまで昇華させなければ、この難問は克服しがたいと思っております。我が国や県の当面する重要課題である少子化対策とがん対策の今後の拡充を心から願いつつ、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
16 ◯議長(
金子万寿夫君) 次は、与力雄君に発言を許可いたします。
[与 力雄君登壇](拍手)
17 ◯与 力雄君 おはようございます。
平成十八年第二回県議会定例会に当たり、奄美群島における地域課題について質問いたしてまいりたいと存じます。
質問に入ります前に、一言申し上げます。
戦後日本の平和と防衛に極めて深いかかわりを堅持してきた米国と日本、米国の世界的な基地の広がりの中で四十二に及ぶ主な基地の再編計画の一環として在日米軍再編問題も決着がつき、地元協議が課題であると考えます。
通常国会も終わり、政治の舞台は、九月の自民党総裁選に話題が集中するものと考えますが、この五年間の小泉改革の格差社会の是正と地方を大切にする日本の平和と安全を基本とした品格ある国づくりを選択の一つとしたいと思います。
初めに、海辺の再生と景観創造についてお伺いいたします。
海洋国日本は、四方を海に囲まれた国土であります。四季を通して浜辺や砂浜の変化は、自然界の芸術とも言うべき表情が見られます。私たちの先祖や海辺の近くに住む人々は、悠久のときとともに生活の中に一体的に位置づけられており、かつて海辺は貝をとり、海藻を拾い、生き物を見つけたり散歩をしたり、海を眺め精神的な開放感を得、子供たちの遊び、伝統的な祭りや行事、また、我々の先祖は漁労を通して日々の食糧を調達し、塩で物量の交換、経済の交流を行い、暮らしを支えてきた深いかかわりがありました。
第二次世界大戦前後、津波や高潮、高波によって毎年のように海岸災害があり、昭和三十一年度に海岸法が制定され、この法律は、海岸を保護することが目的で、海岸保全施設や護岸、堤防の建設がされ、堤防の前面には消波ブロックが置かれ、海と陸の仕切り線となって陸に住む人間や海や砂浜への行き来を妨げられ、ところによっては海を見ることさえできないところもあり、このように海と陸が切り離されては、そこに根づきすむ動植物や陸からアダン群生林と海辺を往来する生物にとっては致命的となっております。海辺は陸と海をつなぐスロープの役割を果たし、生き物や人々の生活を支える役割があります。特に、最近まで経済性優先で人や生物、自然、環境に配慮された事業推進ではなかったと思います。
一九九九年新海岸法が改正され、新しい世紀は、自然、環境、人、生物との共存共栄をもとに、海岸法が改正されたものと考えます。とりわけ本県は、東西が海に面し、南北六百キロに及ぶ四方を海に囲まれた奄美群島は最初の海岸法制定前に祖国復帰を果たし、当時の海岸法のもと、振興開発事業と相まって海岸災害を防ぐことが目的とされた事業が進められ、各集落海岸には、護岸、堤防、消波ブロックなどが建設されてきました。
近年、自然環境が地球規模で考えられるようになり、特に奄美群島の自然、環境、豊富な固有種の動植物の生態系など希少価値が高く、国内外から注目を浴びており、県においては県内二つ目の世界自然遺産登録を目指しており、奄美群島における海辺の再生は、生物との共存、自然環境の保全という観点から避けて通れない問題であると考えます。これまで建設されてきた護岸、堤防、消波ブロックなど今後も残すべきもの、海辺や海浜の再生をすべき地域などの調査を行い、奄美群島の海辺の再生と保全に取り組んでいただきたいと存じます。
奄美群島振興開発事業の自然環境配慮型公共事業実施の中で、多自然川づくり事業同様の観点での取り組みは考えられないか、お伺いいたします。
次に、奄美流域の木材産業の振興についてお伺いいたします。
奄美地域の林野面積は八万二千六百八十七ヘクタールで、民有林七万四千七百四十二ヘクタール、国有林七千九百四十五ヘクタールとなっており、国有林の占める県本土の二六・五%に比べれば低く、これらの森林は大島本島と徳之島に多く存在しております。
奄美流域の樹種は、シイを主体とする天然広葉樹が七二%を占めており、リュウキュウマツ二〇%、杉・ヒノキ一・六%と極めて低く、ほとんどが標準伐採期に達しているとのこと。平成十六年度林業生産総額は四億六千三十七万円で、素材生産が五千六百五十三万円、特用林産一億六千九十九万円、シャリンバイ四千八百四十三万円となっております。
奄美の林業は、天然広葉樹やリュウキュウマツなどを主体としたパルプチップ用素材の生産が主でありましたが、ほとんどのチップ工場が閉鎖をしております。近年国外産の木材やパルプチップの低価格輸入などにより国内チップの需要回復が見込めない現在、奄美産木材の需要拡大を図るため、建築内装材や家具などへの利用を促進するとともに、木工技術者の育成、木材の乾燥技術や製材技術の向上、木材加工施設整備など、奄美の木工の里づくり事業などを活用した総合的な取り組みが必要と考えられます。
奄美地域における林業経営は、本土の杉・松を主体とした林業経営とは根本的に樹種の要素が異なり、製品の曲がり、反り、ひねりが生じ、技術の向上と改善の必要があります。
奄美地域における林業振興や奄美木材の活用、改善の必要な課題について、どのように把握し取り組まれてこられたのか、お伺いいたします。
二点目は、奄美の木材は、加工を施し公共施設などの素材として、また、家具、学校教育現場の机、いすなど多くの活用方法を考えられますが、庁内ではどのような連携がとられておられるのか、お伺いいたします。
次に、奄美近海のサメ対策についてお伺いいたします。
近年奄美近海の沖合漁業や沿岸漁業の一本釣り漁業者の漁獲高が年々減少しており、漁業者の漁業離れ、専業漁業従事者の減少、後継者不足、長い間の赤土流出などの影響と思われる藻場の減少、沿岸域の磯枯れ、燃費の高騰、特に最近奄美近海における一本釣り漁業へのサメ被害は、漁業者の収益や生活に深刻な打撃を与えております。
平成八年度の名瀬漁協の水揚げ高は、七億七千六百五十六万一千円でありました。年々減少傾向にあり、平成十七年度は三億四千六百九十四万六千円と半減いたしており、サメは漁具のえさに食いつき、また釣れた魚に食いつき、漁具そのものを食いちぎり、何度漁具を海中におろしても繰り返しで、ときには魚の頭だけ上がってくることもあり、漁業者の意欲を失わせるものであります。
サメ対策は、喫緊の課題であります。過去奄美群島水産振興協議会の事業として、サメ対策は平成十年から平成十一年までの二年間に限ってサメ駆除事業が実施されておりますが、その後、事業の実施は見送られております。当時キロ当たり五百円で二年間の水揚げ量は一万七千九百三十七キロ、金額にして七百六十九万七千円の実績がありますが、この金額は、漁業中に時折釣れたサメの水揚げ額であるとのこと。平成十二年度以降サメ駆除事業がなくなり、サメは奄美近海に蔓延していると考えられております。
そこで、お尋ねいたします。
奄美地域の漁業振興と漁業従事者の生活を守り育てるためにも、奄美近海におけるサメ対策については、限られた資源の有効活用、離島の漁業の再生を図る上にもサメ対策は喫緊の問題であると考えます。県としてどのように取り組まれようとされておられるのか、お伺いいたします。
二点目は、他県のサメ対策などが把握されておりましたら、その実態をお伺いいたします。
次に、DV防止及び被害者支援対策についてお伺いいたします。
ドメスティック・バイオレンス法─配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律─この法律が制定されたのは二〇〇一年であります。アメリカでは、一九七〇年代からDVに対する本格的な取り組みを行い、社会全体が広く認識を共有していたと聞いております。
日本では、ようやく法的な制約が科せられましたが、これまでは配偶者からの暴力があっても、女性の場合顕在化しないままに我慢をするという風潮がありました。法制定後は、本人からの申し出や周囲からの通報などで顕在化した事案については、対策や支援がなされているものと考えます。しかしながら、専門家の不足や離島での適切な保護支援施設などが不足していると伺い、地域間の格差があると考えます。県においても配偶者からの暴力の防止及び被害者支援計画を策定をし、暴力を許さない安心・安全な社会を目指して、平成十四年四月には県婦人相談所、平成十八年度には県男女共同参画センターを配偶者暴力相談支援センターとして指定を行い、県警本部生活安全企画課、鹿児島市男女共同参画センター、各市町村福祉事務所や担当課、県下警察署などが相談機関として位置づけられております。
暴力には、配偶者からの家庭内暴力、親子、兄弟、姉妹、祖父母、インテイメット、パートナーバイオレンス、男女の親密なパートナー間における暴力、介護者による老人虐待などがあります。加害者の暴力には一定のサイクルがあり、初期の第一段階では加害者にさまざまなストレスがたまっている時期、第二期段階では加害者がたまったストレスを何らかのきっかけで怒りのエネルギーに変えて被害者への暴力として爆発させる時期、加害者は第二期の後、被害者を初め肉親関係者に謝罪をし、二度と暴力を振るわないと誓い、時には被害者を取り戻すため誓約書を書くこともあるとのこと。第三期段階は戻ってきた被害者との間に蜜月期が生まれ、被害者に対してしばらくは何もなかったかのように優しく振る舞う時期、被害者も余りの優しさに翻弄され、きずなが深まったと錯覚の時期があり、やがて二度目の暴力サイクルが起こり、このサイクルが幾度となく繰り返され、サイクルの時期が早まることによって被害者には危険度が増し、重大事件に発展していくことがあると、専門家の人たちは言われております。
大切なことは、被害者本人の危機予知能力と思慮深さの醸成であるが、一たん事が起きたときの被害者の安全確保と自立支援には個人支援と組織支援があり、組織支援には、都道府県、市町村、警察、裁判所、教育機関、企業、寺院、教会、宗教団体、児童相談所、女性センター、行政の被害者支援機関、シェルター、カウンセリングセンター、民間の支援機関などが考えられます。自立支援についても、母子生活支援施設、健康保険、生活保護、児童扶養手当、就労などがありますが、一時期の保護、安全を確保する施設、保護期間中の生活費、就労支援と就労対価までの金銭的支援などさまざまな支援とアドバイスがあります。心身ともに痛み、命の危険性を内包している被害者への対応は、援助者も言葉遣い、態度、事情を聴取する場所など被害者に二次災害を与えないためにも細心の注意が必要と考えます。