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  1. 熊本県議会 2045-06-01
    06月15日-05号


    取得元: 熊本県議会公式サイト
    最終取得日: 2023-05-26
    平成57年 6月 定例会┌──────────────────┐│  第 五 号(六月十五日)    │└──────────────────┘ 昭 和 五十七年 熊本県議会六月定例会会議録   第五号―――――――――――――――――――――――――――昭和五十七年六月十五日(火曜日)   ――――――――――――――――――――   議事日程 第五号  昭和五十七年六月十五日(火曜日)午前十時開議第一 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について)   ――――――――――――――――――――本日の会議に付した事件 日程第一 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について)      ―――――――○―――――――出席議員(五十四名)                 西 岡 勝 成 君                 深 水 吉 彦 君                 阿曽田   清 君                 橋 本 太 郎 君                 松 家   博 君                 岩 下 榮 一 君                 下 川   亨 君                 林 田 幸 治 君                 三 角 保 之 君                 岩 永 米 人 君                 児 玉 文 雄 君                 山 本 秀 久 君                 古 本 太 士 君                 渡 辺 知 博 君                 八 浪 知 行 君                 杉 森 猛 夫 君                 鏡   昭 二 君                 高 田 昭二郎 君                 柴 田 徳 義 君                 広 瀬 博 美 君                 浜 崎 三 鶴 君                 古 閑 一 夫 君                 魚 住 汎 英 君                 馬 場 三 則 君                 木 村 健 一 君                 平 川 和 人 君                 北 里 達之助 君                 金 子 康 男 君                 荒 木   斉 君                 井 上 栄 次 君                 竹 島   勇 君                 今 井   洸 君                 米 原 賢 士 君                 古 閑 三 博 君                 井ノ上 龍 生 君                 永 田 悦 雄 君                 宮 元 玄次郎 君                 甲 斐 孝 行 君                 八 木 繁 尚 君                 幸 山 繁 信 君                 池 田 定 行 君                 小 材   学 君                 岩 崎 六 郎 君                 沼 川 洋 一 君                 水 田 伸 三 君                 杉 村 国 夫 君                 今 村   来 君                 浦 田   勝 君                 小 谷 久爾夫 君                 橋 本 盈 雄 君                 増 田 英 夫 君                 倉 重 末 喜 君                 中 村   晋 君                 酒 井 善 為 君欠席議員(なし)   ――――――――――――――――――――説明のため出席した者         知事      沢 田 一 精 君         副知事     藤 本 伸 哉 君         出納長     松 下   勝 君         総務部長    原 田 富 夫 君         企画開発部長  岡 田 康 彦 君         福祉生活部長  山 下 寅 男 君         衛生部長    清 田 幸 雄 君         公害部長    山 内   新 君         商工観光労働         部長      八 浪 道 雄 君         農政部長    坂 本 清 登 君         林務水産部長  大 塚 由 成 君         土木部長    梅 野 倫 之 君         有明地域開発         局長      伴   正 善 君         公営企業管理者 松 永   徹 君         教育委員会         委員長     本 田 不二郎 君         教育長     外 村 次 郎 君         警察本部長   廣 谷 干 城 君         人事委員会         事務局長    下 林 政 寅 君         監査委員    緒 方 隆 雄 君   ――――――――――――――――――――事務局職員出席者         事務局長    川 上 和 彦         事務局次長   衛 藤 成一郎         議事課長    小 池 敏 之         議事課長補   佐 辻   璋         主幹      山 下 勝 朗         参事      光 永 恭 子      ―――――――○―――――――  午前十時二十五分開議 ○副議長(井ノ上龍生君) これより本日の会議を開きます。      ―――――――○――――――― △日程第一 一般質問 ○副議長(井ノ上龍生君) 日程に従いまして日程第一、昨日に引き続き一般質問を行います。広瀬博美君。  〔広瀬博美君登壇〕(拍手) ◆(広瀬博美君) おはようございます。公明党の広瀬でございます。公明党を代表しまして一般質問を行います。知事初め執行部の明快なる答弁を期待しまして早速質問に入らせていただきます。 まず最初に、地熱発電所の立地促進についてお尋ねいたします。 わが国は、エネルギーの約七〇%を石油に依存し、その九〇%以上を海外から輸入しています。しかも、その輸入先は、イラン・イラク紛争で政情不安な中近東に偏っています。今後、一時的な石油の需給緩和はあっても、長期的には石油の確保はますますむずかしくなることが予想されます。このような厳しいエネルギー情勢に対処するためには、石油にかわるエネルギーの開発、特に純国産エネルギーの開発は、国、地方を問わず積極的に進めなければならない問題だと思います。 国産エネルギーの中で、特に原子力に次ぐ第四の火として注目されているのが地熱エネルギーの開発であります。地球の内部から地表を通って宇宙空間へ放射される地熱エネルギーの量は、太陽エネルギーの五千五百分の一で、人類の一年間に使用する総エネルギー量の五・五倍に相当すると言われております。地熱エネルギーは純国産で、しかも豊富なエネルギーです。わが国には六十五の火山があり、それを含め二百カ所以上の地熱地帯があります。地熱包蔵量に恵まれているわが国としては、地熱はきわめて有利な国産エネルギーであり、安定性もあり、利用率、経済性にすぐれています。 わが国における地熱開発の歴史は、大正七年、山内万寿治海軍中将が、動力、燃料の将来に備えるための地熱開発を企画、日本各地で火山や温泉の実地調査を行い、翌大正八年、別府市でボーリングに成功したことに始まります。その後、本格的な地熱の開発は、昭和二十三年に工業技術院が別府市で試錐に成功、これを利用して昭和二十六年には三十キロワットの発電に成功しております。 一方、本県の地熱開発は、昭和二十六年、小国地方を主体に、南阿蘇を含めた阿蘇全域の観測を通産省の指導で実施したのが始まりです。その後、本格的な地熱の開発は昭和四十年から行われました。その間十四本のボーリングに成功しております。その結果、小国町の岳の湯、はげの湯地区において地熱開発がきわめて有望であるという貴重なデータが得られたわけであります。 そのデータを紹介しますと、まず地熱発電についてでありますが、五十六年度に地熱発電所調査井掘削事業を行いました。この事業は、小国町岳の湯地域における地熱賦存の広がりを把握し、地熱開発規模決定等に資するため、約一億七千万円の事業費で千五百メートルのボーリングを実施したところ、坑底温度二百二十三度の優勢な蒸気熱水の存在が確認されたわけであります。四月十四日現在、蒸気量一時間に八・五トン、熱水量一時間に二十トンとなっています。 次に、GSR三号井の場合は、十年間も噴出を続けていましたが、蒸気の衰えは全く見られないとのことです。また環境に対しても特に問題はないと報告されているところであります。調査の結果は、この地域の発電規模としては一万キロから二万キロの発電所が立地可能だと報告されております。 次に、熱水の有効利用についてでありますが、水産養殖ではウナギとテラピアの養殖に成功、将来はアルゼンチンタニシの養殖をしたいとしています。農業では、桑苗の生産試験ハウス園芸に成功しています。そのほか、地域暖房として、老人憩の家に給湯を行っています。利用法は実に多岐にわたっております。 ここで、他県の地熱利用の実例を紹介しますと、岩手県の松川の場合、生産井からの蒸気を湧水と熱交換し、七十度の熱水を造成し、付近の旅館及び六キロ離れた旅館、別荘の暖房、浴用に利用されています。大分県の大岳、八丁原でも、やはり発電に伴って生産される熱水を河川水と熱交換し、七十度の熱水を造成し、一キロ離れた旅館街の暖房、浴用に利用されています。また、北海道の定山渓では、温泉街の市道約千二百メートル、八千五百平方メートルの地下にパイプを埋設し、道路融雪に利用されています。そのほか、北海道、鹿児島、静岡県では、ウナギ、コイ、アワビの養殖、ワニの飼育なども行われています。また温室暖房として、トマト、キュウリ、バナナ、メロン、パパイヤ等の栽培は日本各地で行われています。また外国においても、多くの国で地熱の直接利用が実施されています。アイスランドでは、全エネルギー需要の八割を地熱で賄っており、首都レイキャビクでは地熱による地域暖房と給湯が九九・五%まで普及していると言われています。太陽エネルギーの不足分を地熱でカバーしているということであります。地熱は、発電だけではなく、このように多目的に利用できるのが大きな特長であります。本県の場合も、地熱発電を初めとして、低温倉庫とかあるいは冷房、さらには観光事業等への利用など、温度の変化に応じて効率的な利用が期待できるところであります。 また、これまでの調査の総括として、地熱開発調査資料総合解析調査は、次のように結論を出しています。一、岳の湯、はげの湯地区においては有力な地熱貯留層の存在が確認された。二、生産井は深度八百メートル前後のもので比較的低廉な蒸気が得られる見通しである。三、当面一万キロ級の地熱発電を目指すのがよいとしています。 以上の点から考えても、岳の湯、はげの湯地域においては調査の段階からすでに開発の段階に入ったと思います。 地熱発電については、すでにアメリカを初め十七カ国、二百四万八千キロ、国内では大分県の八丁原発電所を初め八カ所、建設中を含めて二十一万五千キロと成功した実績があります。 次に、地熱発電の特色としては、まず稼動率が高いことであります。これは水力が四五%に対して地熱は九〇%と言われております。二つ目には、発電原価が石炭火力よりも安いことが挙げられております。石炭の場合は外国から輸入しなければならないが、地熱は純国産で、しかも豊富な資源であります。このように貴重な資源をいつまでもほうっておくのはもったいないと思うのであります。エネルギー開発は県政の重要課題であります。知事は、地元小国町の意見も十分聞きながら、地域振興電力自給率の低い本県のエネルギー確保対策という観点からも積極的に進めるべきだと思います。 企業局では、いままで確かに有料道路、工業用水をつくって赤字を出してきました。その関係で、知事もまた赤字になるのではないかという不安感があると思います。しかし、いままでの調査結果から見ても、地熱発電所の場合、失敗は少ない事業だと思います。すでにアメリカ、イタリア、ニュージーランド等商業地熱発電としてりっぱに成功しています。また国内においても、隣りの大分県の八丁原、大岳発電所を初め八カ所で成功した実績があります。さらに北海道では、現在第三セクター方式で建設中と聞いております。私は、これだけ成功した実績がある地熱発電所は十分県営でもやっていける事業だと思います。 これは参考まででありますけれども、この建設期間も、水力、火力になりますと十年から二十年はかかりますが、地熱発電所は五年ぐらいの短期間でできるのがまた特徴でもあります。それから、ここに発電所を建設した場合の試算がございますが、建設をして六年までは、建設費、金利の返済で赤字になりますが、七年目からは黒字に転換をします。熊本県で仮に二万キロの発電所を建設した場合ですが、一年間に一億五千七百六十八万キロの電気ができます。これに一円の事業利益を見られたとして、一年間の利益は約一億五千万となるわけでございます。専門家も、地熱資源の開発は、これを発電に使用した場合、初めの投資は高額であるが、経済面について見る限り決して不利な事業ではない、むしろ有利な事業であると言っております。企業局にとってこんな有望な事業はないと、このように思います。 地元小国町からも、ぜひ県営でやってほしいという陳情も出ていますので、地熱発電所を建設する条件は整ったと思います。知事の率直な意見をお伺いしたいと思います。  〔知事沢田一精君登壇〕 ◎知事(沢田一精君) 代替エネルギーの開発は、国家的な大きな課題であり、県といたしましても積極的に国とタイアップして今後進めてまいらなければならない重要な課題だと受けとめております。 特に地熱開発につきましては、御指摘のとおり、ただ単に発電のみにとどまらず、発電によって生ずる余剰熱水有効利用による関連地域の開発、振興といういろいろのメリットがあるわけであります。したがいまして、県としましても、国産資源有効活用の観点から、他県に先駈けて地元の協力を得、また通産省との密接な連携のもとに今日まで調査を進めてきたところであり、わが国地熱開発に関する技術的進展にも大きく寄与してきたものであると自負いたしております。しかし、これを直ちに事業化するにつきましては幾つかの問題があると存じております。 第一に、調査ボーリングで成功いたしましても、生産井段階で成功するかどうかは、現在の技術では断言できず、相当のリスクを覚悟しなければならないと考えます。 第二に、生産井の経年変化に伴う寿命の予測がむずかしいと考えられておるようであります。一時的には成功いたしましても、果たしてどの程度永続性があるかという問題であろうかと思います。 第三に、熱水利用の段階におきまして、本地域特有の熱水中に含まれますシリカ、珪酸分が原因となる配湯管の目詰まり問題等、技術的に未解決の部分もあるわけであります。 次に第四点としましては、何と申しましても生産井のボーリング一本につきまして数億円の費用を要するということであります。発電所建設自体に相当多額の資金が必要でありまして、自治省ともよく相談をいたしておりますが、現在までこの種発電所の建設について起債の対象として取り扱われた例がない等の問題があるわけでございまして、今後解決さるべき問題だと思うわけであります。 また、御承知のように、周辺地域では国が大規模な深部地熱開発調査を目下急ピッチで進めておる現状でございます。この国が中心となって行っております大規模深部地熱開発調査の進行ぐあいを見ながら、その調査結果について総合的な調整を行う必要があると考える次第でございます。 いずれにいたしましても、このままほうっておくつもりはございませんが、いま申し上げました幾つかの問題点にめどをつけなければならないという問題と、国がせっかく大規模深部地熱開発調査をやっておるわけでございますので、その調査結果を見ながら総合的な調整のもとに今後この地熱開発は積極的に推進してまいりたいと考えております。通産省からも、調査を終結し開発体制への移行を求められておりますので、国の大規模深部地熱開発調査結果との調整、リスクヘの対応、資金調達の方法等の諸問題に一応の見通しをつけまして、その上で地元の意向も踏まえ、関係者と慎重な協議を行って、できるだけ早く開発についての結論を出してまいりたいと考えております。  〔広瀬博美君登壇〕 ◆(広瀬博美君) いま地熱発電について知事から慎重にというような答弁もありまして、確かに不安な材料も、いまおっしゃったようなこともあるわけですが、たとえばこういう方法もあるわけですね。蒸気だけを電力会社に売ると、こういう方式をとっているところも現に日本にございます。だから要は――慎重に対処したいということもわかりますが、消極的になってはいかぬと思います。いずれにしても結論を出すときだと思っております。地元小国町からもぜひ県営でやってほしいという要望も出ていますので、どうか地熱発電所の立地については今後もひとつ積極的な取り組みをお願いしたいと、このように思います。 次に移りますが、次の問題は、熟年一一〇番の設置についてお尋ねをいたします。 熟年という言葉は、毎日の新聞やテレビで耳にしない日はないというほど聞きます。熟年とは何歳から何歳までを言うのかはっきりしないようですが、四十から六十までと言う人もいれば、六十までが壮年、六十から八十までを熟年と呼び、八十歳以後を初めて老人と呼べばよいという説もあるようです。 家族制度の崩壊とともに、都市化現象の中で核家族化が進み老人だけの世帯が急増しています。昭和五十五年度厚生行政基礎調査によると、本県の高齢者世帯は、夫婦のみの世帯で二万五千六百十六世帯、また一人暮らしの世帯は五十六年四月一日現在で一万二千三十九世帯となっています。特に本県の場合、二年間で千四百人も一人暮らし老人がふえています。このように進む高齢化社会にあって老人問題が切実になってきています。 五十六年二月発表されました「熊本県民意識調査」によると、老後の不安について、六十歳以上の人で「不安を持っている」と答えた人が六五%を占め、そのうち一番多かったのは「健康が不安である」と答えた人が三八・七%、次いで「生活費が不安」が二五・四%、次に「住居が不安」の順になっています。この調査で示すように、三分の二近くの老人がこのような不安を持って生活を送っているということであります。 また、このような不安を反映して、最近全国的に熟年一一〇番という電話相談が繁盛しております。東京都の場合、一番相談が多いのは、家族間の人間関係のトラブル、年金、財産、生きがいの順になっております。また、感情をそのままあらわし、遠慮なく悩みをぶつけてくる老人もあるということでございます。一方、民間の熟年一一〇番で多いのは、夫婦問題、家族問題、法律相談、健康問題、経済問題の順になっています。 平均寿命が八十歳に近くなった現在、この熟年層は働き盛りであり、六十、七十代でもまだまだ現役。人生の中で最も活力にあふれ、思慮深く経験も豊かな年代であるべき世代に種々の問題が生じているわけであります。かつて不惑と言われた世代であったが、いまでは惑い多き世代、悩み多き世代と言える現在、そこに共通している問題は、人間関係の希薄化と自立心の欠如ではないかと思います。このような老人問題に対処していくためには、やはりきめ細かな行政の手だてがぜひとも必要だと思うわけであります。 そこで、質問の第一点は、人間関係の希薄化、家庭不和などで悩みや心配事があってもだれにも相談できないで困っている、そういうお年寄りのために、悩みや相談事を電話で気軽に相談できるような熟年一一〇番といったような老人相談電話をぜひ設置してほしいと思います。電話をかけたからといって問題がすぐ解決するとは思いません。しかし、少しでも不安が軽減されればそれは大成功だと思います。人間悩んでいることを人に話せば、すっきりして気が楽になります。また気持ちを持ち直すこともできます。いつでも困ったときに電話で気軽に相談できるという安心感があればまた生きがいも出てくると思います。どうか老人の不安を少しでも軽くし、熟年を楽しく生きていただくためにも、きめ細かな福祉行政をさらに進めなければならないと思います。 また、あわせて考えていただきたいのは、高齢化社会に対応するために老人相談員制度を設置して、各地の福祉事務所にこの老人相談員を配置し、各種の相談に応じられるような体制をつくってもらいたいと思います。 以上の件については福祉生活部長の答弁を求めます。  〔福祉生活部長山下寅男君登壇〕 ◎福祉生活部長山下寅男君) 老人福祉問題に関しまして二点についてのお尋ねでございます。いずれも、お年寄りの方々のいろいろな悩み、相談事にどう対応するかという関連する問題でございますので、あわせてお答えを申し上げたいと思います。 昨年の十一月、厚生省人口問題研究所が発表いたしました「将来人口新推計」によりますというと、わが国の六十五歳以上の老齢人口は、昭和三十五年の五百三十九万八千人に対しまして、五十五年の国勢調査時点におきましては一千五十七万四千人となっておりまして、二十年間に約二倍の増加になっておるわけでございます。さらに、二十年後の昭和七十五年におきましては、そのまた約二倍になるという見通しでございまして、この時点では二千万近く、老齢化率で見まして一五・六%に達するであろうというように推計をされておるところでございます。 このような中にございまして、全国に十年早い形で高齢化が進んでおります本県にとりましては、老人福祉問題はきわめて重要な課題でございます。このため、従来から、老人医療問題でございますとか、あるいは福祉施設の整備など各面にわたりまして、いろいろその施策の推進に努力をしてまいっておるところでございます。 御意見の、老人の方々が気軽にいろいろな心配事あるいは相談ができるような窓口体制の整備ということは、きわめて今後重要な問題になってくると考えておるところでございます。現在各福祉事務所におきましては、老人福祉担当専任職員を配置いたしております。各市町村とも緊密な連携をとりながら、ときには現地に出向きましていろいろな相談に応ずるなど、お年寄りの相談やお世話に当たっておるところでございます。このほか、御案内のように、市町村社会福祉協議会におきましても、窓口といたしまして、こういうような問題に対応いたしているところでございます。また、県の社協におきましては、熊本市に中央心配ごと相談所を、それから市町村の社会福祉協議会に現在五十四カ所でございますが、心配ごと相談所というのをそれぞれ設置をいたしまして、老人の相談あるいは悩み事につきましても適切な指導、助言が行えるようなそういう体制をとっておるところでございます。 また、御案内の寝たきり老人、一人暮らし老人の安否を確認をいたしましたり、ときにはいろいろの相談事にも応ぜられるような福祉電話でございますが、これは昭和四十八年度制度が創設になりましてから、ことしの三月末までの間、延べ四百四十四台を県内に設置をいたしておるところでございます。しかしながら、今後高齢化がさらに進んでまいりますというと、さらにこれらの体制整備の強化を図っていくことはきわめて必要なことだと存じております。御提言の熟年一一〇番の電話設置につきましても、今後そういう観点から前向きに検討してまいりたいと存じております。 次に、老人相談員制度についてでございますが、御指摘のこの相談員制度というのは、母子家庭の相談員あるいは児童についての相談員、これは家庭児童相談員と称しておりますが、そういうようなもろもろの相談員が設置をされております。老人問題につきましては、ただいまもお答え申し上げましたように、福祉事務所におきましては専任の県の職員がこれに当たっておるわけでございます。 しかし、高齢化の今後の進行を考えますというと、このような相談体制をさらに強化していくことが必要でございますので、当面、現体制下における福祉事務所老人福祉相談機能の充実について、どういうように充実が図れるかを目下検討いたしておるところでございます。また、市町村の社協あるいは心配ごと相談所等における相談機能につきましても、今後十分その機能が発揮できますようにさらに指導に力を入れてまいりたいと存じております。 御提言の老人相談員制度につきましても、国の方とも今後いろいろ相談をしながら検討させていただきたいと考えておりますのでよろしくお願いを申し上げます。  〔広瀬博美君登壇〕 ◆(広瀬博美君) ただいま福祉生活部長から、熟年一一〇番の設置については前向きに検討しますと非常に積極的な答弁をいただきました。この熟年一一〇番の設置については、ひとつ早く設置方をお願いしたいと思います。 それから老人相談員の制度については、いまいろいろ答弁がございまして、今後もひとつ充実をしていただきたいと、このように思っております。 次に、痴呆性老人対策についてお尋ねいたします。 痴呆性老人、いわゆる恍惚の老人は、高齢化社会を迎え次第にふえていると言われています。東京都老人総合研究所の柄沢博士の調査によれば、およそ老人人口六十五歳以上の五%前後、約二十人に一人の割合で発生している、ただし、より若い老人には少なく、七十五歳を過ぎたより高齢の老人に多く出現すると言っています。本県の場合、実態調査をしたことがないのではっきりした実態はわかりませんが、出現率の五%で計算してみますと、本県の六十五歳以上の老人が二十一万三百七十人ですから、痴呆性老人が約一万人はいると推定されます。 この病気が深刻なのは、まだ治療法が確立されていないということでございます。病気としての老化性痴呆には、大きく分けて二種類のタイプがあると言われています。その一つは、脳血管性痴呆と言われる病気です。これは脳の血管が破れるか詰まるかして、結果として脳実質がだめになり痴呆に至るという病気であります。この脳血管性痴呆の予防には、高血圧と動脈硬化の予防や治療が不可欠であるとされています。対策としては、早期発見、早期治療しかないと言われています。 このような脳血管性痴呆に対して、老年痴呆と呼ばれる病気がありますが、この病気は、有吉佐和子氏の「恍惚の人」で有名になりましたが、目下のところ高齢者に好発するというだけで、原因はほとんどわかっていません。現在わかっている予防法としては、気力を持たせる、頭を使う等の生活を心がけるということだけです。 いずれにしても、痴呆性老人の多くが寝たきりになったり、反対の方向もわからず出歩いたりして、家族の苦労も並み大抵のものではありません。出現率五%という数字は決して小さなものとは言えないと思います。入院も断わられたり老人ホームも引き受けてくれないなどから、家庭で在宅のまま介護しているケースが多く見られます。いまのところ治療方法、介護の仕方等もわからない状態で家族は大変困っています。どうか高齢化社会における老人対策の一環として、この問題に本格的に取り組んでいただきたいと思います。 質問の第一点は、痴呆性老人の保健、医療を初め、指導、介護の方法などについて総合的に調査研究するため、医療関係者など専門家による痴呆性老人対策研究会などを設置して取り組んでいただきたいと思います。 二番目には、痴呆性老人の実態がまだわかっておりませんので、ぜひこの際、実態調査を実施していただきたいと思います。 また三番目には、介護者が疾病、出産、事故等で介護が困難となった場合、一時的に特別養護老人ホームに保護してもらうような痴呆性老人のための短期保護事業をぜひつくっていただきたいと思います。これも福祉生活部長に答弁をお願いします。  〔福祉生活部長山下寅男君登壇〕 ◎福祉生活部長山下寅男君) お答えをいたします。 痴呆性老人対策研究会の設置についてでございますが、痴呆性老人の症状は、徘回、物忘れ、異食などで老人が正常な社会生活を営んでいくことが困難でございまして、その家族の方々の御苦労は御指摘にもございましたように大変大きいわけでございます。 一般に痴呆性老人の出現率は、お述べにもなられましたが、六十五歳以上の老齢人口の約五%程度と推計をされております。本県における昭和五十六年六月末の調査によりますというと、精神病院に在院をいたしております患者さんだけでも八百二十八名に上っているわけでございます。今後の老齢化の急速な進行に伴いまして、痴呆性老人はさらに増加をしていくものと考えておるわけでございます。したがいまして、今後の老人福祉問題を考えます場合、この痴呆性老人対策はきわめて重要な問題になってくると考えておるところでございます。 国におきましても、全国的な問題といたしまして、公衆衛生審議会におきまして、ただいま老人精神衛生対策の一環として専門的な調査研究がなされていると聞き及んでおりますので、それらの審議結果もにらみながら、今後県といたしましては、福祉、医療両面から、その対策につきましていろいろと研究、検討を進めてまいりたいと考えております。 次に、実態調査についてでございます。従来、この種の調査につきましては、人権問題などとの絡みもございまして、組織的な調査というのは実施をされていなかったわけでございます。現在国会で審議されております老人保健法案が成立をし、保健事業が行われることになりますというと、漸次この種の痴呆性老人の方々の把握もできていくのではなかろうかと考えておるところでございますが、ただいまも述べましたように、国におきまして痴呆性老人問題についての研究が進められておりますので、その結果も踏まえながら、衛生部とも今後相談をして検討してまいりたいと考えております。 次に、痴呆性老人の短期保護事業の創設についてでございます。 痴呆性老人の短期保護事業でございますが、介護しております家族の方々が病気をしたり、あるいは旅行に出かけたりいたしまして、一時的に介護が困難となります場合は、医療施設なりあるいは福祉施設のサービスが必要になってくると存じております。 現在、県内には二十八の特別養護老人ホームがございまして、自宅で介護が困難な二千五百名のお年寄りの方々をお世話いたしておるところでございます。この二千五百名の方々の中には痴呆性老人も含まれているわけでございます。また、昭和五十三年度から制度創設になりました寝たきり老人短期保護事業におきましても、痴呆性老人もその対象にするということになっておるところでございます。 しかしながら、この短期保護事業につきましては、必ずしも十分な活用がなされていないのが実態でございます。そこで、国におきましては、本年度から特別養護老人ホーム及び養護老人ホームに入所をいたしております痴呆性老人に対する処遇充実のため、精神科の専門医の嘱託制度を新たに設けたところでございます。したがいまして、特別養護老人ホームで対応してもらうことになります痴呆性老人の短期保護事業につきましては、今後積極的に、そうした関係の皆さん方、施設の皆さん方がこの制度を活用していただきますよう指導してまいりたいと考えておるところでございます。  〔広瀬博美君登壇〕 ◆(広瀬博美君) いま部長より答弁をいただきました。痴呆性老人問題は、老人福祉対策で最後に残された問題だと言われております。治療法、介護の仕方などまだわかっておりませんし、総合的に調査研究をする必要があると思います。ぜひ私が提案申し上げました痴呆性老人対策研究会といったようなものをつくって、ひとつ本格的な取り組みをしていただきたいと、このように要望しておきたいと思います。 短期保護事業については、いま寝たきり老人の短期保護事業がございます。これも制度ができてもまだPR不足もあってなかなか利用率が悪いわけでございます。こういった制度も、どうかひとつ多くの方に利用していただけるように今後もPR方をお願いしたいと、このように思う次第でございます。 次に、新設高校の開校問題についてお尋ねいたします。 熊本市及びその周辺地域における高校進学の生徒増加に対処するために、県教委は、熊本市清水町楡木に五十八年四月開校の計画を進めております。計画では、五十六年十二月までに用地買収を完了して、敷地造成を五十七年三月までに着工、五十七年度に校舎建物の第一期工事を完成させ、五十八年四月開校となっておりますが、聞くところによりますと一部用地買収がおくれていると、そういうことであります。五十八年四月の開校が心配されるわけでございますが、いまから順調に進んでも、基本設計に二カ月、実施設計に三カ月、本体工事に七、八カ月かかります。完成は来年の七月ごろとなり計画は大幅におくれることになります。 新設校については、すでに中学校では五十八年度高校進学の進路指導の中に入っているわけですから、仮設の校舎を建ててでも五十八年四月開校に間に合わせないと大変なことになるわけでございます。予定どおり五十八年四月開校は間違いないのか確認をしたいと思います。これは教育長の答弁を求めます。  〔教育長外村次郎君登壇〕 ◎教育長(外村次郎君) お答えいたします。 熊飽地区の高校新設の問題につきましては、ただいまお述べになりましたとおり、昭和五十五年に昭和五十八年四月開校の方針を定めまして、諸般の準備を進めておるところでございます。その後、当議会におきましても何人かの先生方から、この問題についての御質問がございました。これに関連しましてお答え申し上げましたとおり、既定方針すなわち五十八年四月開校の所存でございます。開校までにはいろいろと問題の処理がございますが、そのように考えておりますので御了承をお願い申し上げます。  〔広瀬博美君登壇〕 ◆(広瀬博美君) ただいま教育長から、五十八年四月開校間違いないと、こういう答弁がございました。ひとつよろしくお願いしたいと思います。 次に、住宅行政についてお尋ねします。 わが国には、ウサギ小屋からの脱出を夢見る住宅困窮者は、昭和五十三年住宅需要実態調査で全国に一千二百五十六万世帯、全世帯の三八・九%と言われております。熊本県の場合も十五万七千世帯、三〇・四%が住宅困窮を訴えております。最近、アパート、借家の空き家が多くなり、県民の住宅は満たされているのではないかという声が聞かれますが、これはとんでもない認識で、多くの人たちが三十平方メートルぐらいの狭い借家、アパートでがまんしているのが実情でございます。 最近の県営住宅における空き家の募集状況を見ますと、最近五年間の平均競争率は七・二三倍となっております。このように多くの方々が住宅に困っておるわけでございます。県は、こういう人たちが、いま何を求め何を援助してもらいたいのか、県民のニーズを明確にとらえた住宅政策を進めなければならないと思うのであります。 そこで、質問の第一点は、建てかえによる高額家賃問題についてお尋ねします。 県は老朽住宅の建てかえ計画を進めています。計画によりますと、昭和五十六年から六十年度までに、八島団地、帯山団地など合計五百七戸を建てかえる予定であります。この事業を進めるに当たって一番問題になってくるのが、建てかえ後の家賃の高騰であります。受益者負担の原則で、建てかえ費用を家賃に反映させるために高くなってくるわけであります。たとえば、建てかえ前に平均四千円だった八島団地の場合は、建てかえ後には七・五倍の二万六千円になっております。 県では緩和措置として、毎年二、三割ずつ上げ五年後に三万円とする傾斜家賃方式を導入していますが、それでも入居者にとっては大変な高負担になります。特に母子家庭、老人家庭、身障者家庭には、さらに大きな負担になります。たとえば母子家庭の場合を考えてみますと、本県の母子家庭の平均月収は九万円未満が約七割です。月収九万円の母子家庭の家計に占める家賃は二四%になります。これでは生活はできません。また、老人家庭、身障者家庭でも同じ状況でございます。 公営住宅における家賃負担の限度は一五%以下であると聞いております。低所得者の人が高額家賃を払うという住宅行政は不合理でありますので、ぜひ母子家庭、老人家庭、身障者家庭に対しては家賃の減免措置を考えていただきたいと思います。 また、最近新築された八反田住宅の場合も同じであります。母子家庭向け住宅の家賃は二種で二万一千円ですから、家計に占める家賃は二三%になります。これについても、あわせて減免措置を考えていただきたいと思います。そのほか、入居者の収入が著しく低額であること、入居者が疾病にかかったとき、入居者が災害により著しく損害を受けたとき、このような入居者に対しても減免措置を講じていただきたいと思います。 土木部長の答弁をお願いします。  〔土木部長梅野倫之君登壇〕 ◎土木部長(梅野倫之君) お答えいたします。 建てかえによる高額家賃の問題でございますが、公営住宅はもともと低額所得者を対象として、家賃は非常に低廉にしております。しかし、建てかえ後の家賃と被建てかえ住宅の家賃に差が生ずるため、被建てかえ住宅の入居者の家計に及ぼす家賃の負担を考慮いたしまして、お説のとおり五カ年の傾斜家賃制度を導入して軽減を図っているところでございます。 なお、身障者、母子並びに老人世帯に対しまして減免措置をとれということでございます。このことにつきましては、熊本県営住宅条例第十二条で、一つ、入居者の収入が著しく低額な世帯、それから入居者の方が病気にかかっている世帯、三番目に、入居者が災害により著しい損害を受けた世帯等につきましては、家賃の減免または徴収猶予ができるようになっておりますので、これに当てはまる身体障害者につきましても、これにより措置してまいりたいというふうに考えております。  〔広瀬博美君登壇〕 ◆(広瀬博美君) いま土木部長より、建てかえによる高額家賃問題について答弁がございました。いままで条例はあったけれども、こういった事例について適用があっておりません。どうかひとつ今後、条例もあるし、その実施要綱をおつくりいただいて、いま私が申し上げました母子家庭、老人家庭、身障者家庭について、ひとつ早く減免措置を講じていただきたいことを要望しておきます。 次に、入居制度の見直しについてでございます。 現在、入居方法は公募抽せんの方式で行われていますが、これは県民の困窮度等住宅ニーズを全く無視したもので実情に合っていないと思います。住宅困窮度、登録期間の長さに応じ入居できるよう、現行の公募抽せん方式を改め、ウエーティングリストに基づいて入居する登録入居制度をぜひ採用していただきたいと思います。  〔土木部長梅野倫之君登壇〕 ◎土木部長(梅野倫之君) 入居制度の見直しでございますが、県営住宅入居者の選考方法は、現在、公募の上、公開抽せん方式をとっているわけでございます。最近の募集状況は、年一回、新築住宅で七百名から八百名の募集でございます。それから、年二回の補充募集では千三百名から千四百名の申込者があっておりますし、いずれも倍率といたしましては三倍から四倍でございます。本県においては、公平が期されるという利点からこの方法を採用しておりますが、なお補充募集については、希望団地の選定ができるように要領を改正しており、申込者の要望に対応しているところでございます。 ただいま御提案の点数制度でございますが、短期間に相当数の実態調査を必要としますため、全国でも数県――たしか三県だったと思います――の事業主体が採用しているところでございます。しかしながら、公開抽せん方式は住宅困窮の実情が考慮されていない面もございますし、今後入居希望者の要望に対応できるよう十分検討してまいりたいというふうに考えております。  〔広瀬博美君登壇〕 ◆(広瀬博美君) 土木部長より答弁をいただきました。これはあくまでもやはり公平というのが原則でございます。ただ私が申し上げましたように、やはり困っておられる方、それから待っておられる期間が長い方、こういう人たちの気持ちもどうかひとつ取り入れた入居制度を今後ぜひ考えていただきたいと、このように思います。 次に、保健所医師の確保対策についてお尋ねをいたします。 県内に十四の保健所がありますが、現在、荒尾、宇土、菊池の三つの保健所で、所長が死亡、退職などで一年以上欠員が続いています。いまのところ隣接の所長などの兼務でしのいでいるということですが、あとの所長の補充については現在のところ全く見通しは立っていないということです。このほか定年を間近に控えた所長も数人おられると聞きます。後継者難は五十九年度以降さらにひどくなりそうであります。治療医学から予防医学という第二の波が押し寄せている現在、一段と保健所の機能を充実強化していかなければならないときに所長がいないというのはまさに保健所の非常事態であります。 最近は保健所の業務も年々多くなっていると聞きます。所長は、一切の事業を指揮監督する責任者であると同時に、医師として検診業務全般についてみずから担当するわけであります。したがって、所長の欠員は、事務全般、さらには保健所本来の仕事である健診業務に支障を来すことになります。衛生部でも人選について努力をされていると伺っておりますが、なかなか見つからなくて困っておられるようであります。 所長になり手がない理由として、一つは給料が安いこと、二番目には自分の専門の研究ができないこと、三つ目には学会に出席できないこと等が考えられております。もっと職場環境を改善しないと医師の確保はできないと思うのであります。今後の医師の確保について衛生部長の考えをお聞きしたいと思います。  〔衛生部長清田幸雄君登壇〕 ◎衛生部長(清田幸雄君) 保健所に勤務する医師につきましては、いまお述べになりましたが、昭和三十五年三十二名、昭和四十五年には二十三名、昭和五十五年には十四名、現在では十一名と逐年減少しておりまして、現在十四保健所の中で、御指摘になりましたように三保健所は兼務で対応しております状況でございます。さらに、年齢的にも平均年齢が五十八歳と高齢化しておりまして、本庁勤務の医師を含めまして、公衆衛生に従事する医師の充足及び後継者の確保につきましては、日ごろから私も大変腐心しておるところでございます。 保健所医師の確保が困難である問題点としましては、医師を志す多くの人が最初から臨床医を目指していることが多く、また医師の教育につきましても、その方向が臨床医養成に偏っているというきらいがあります。したがいまして、卒業後も臨床医の道を選ぶ者が多く、加えまして公衆衛生に従事する医師に対します社会的な評価あるいは経済的な条件も必ずしも十分ではございません。さらに、公衆衛生の仕事は、疾病の予防、早期発見のための各種健診、健康管理業務と、近年その必要性が強調されてまいりました積極的な健康の維持増進のための技術の提供、行政の推進等でございますが、この仕事は医師として大変重要な業務であるということにつきましては異論がないわけでございまして、漸次これらの点につきましての認識が深まりつつあるわけでございますけれども、その使命感を強調するだけでは、前に申し述べましたような状況もありますほかに、価値観の多様化した現在の社会環境のもとでは、この道に医師を勧誘することはまだ大変困難な現状であると考えております。しかし、今後は医師数も年々増加していくことでもございますので、医師確保の条件整備ということにつきましては今後とも努力していかなければならないと考えておるわけでございます。 県といたしましては、これまでも、医師につきましては関係学会研修会への派遣、海外研修あるいは修学資金の貸与、処遇の改善等につきまして特に配慮してまいったほかに、公衆衛生医確保のためのパンフレットを作成しまして配布いたしましたり、大学医学部等関係方面への協力の依頼、縁故による勧誘等に努めてまいったところでございます。しかしながら、冒頭に述べましたような現況にあるわけでございますので、従来の施策に加えまして、新規卒業者を含めました医師の確保を図るための諸施策について、いまお述べになりましたような点も含めまして具体的な検討を進めてまいりたいと考えております。 また、現在建設を予定しております総合保健センターの建設に際しまして、中央保健所を併設することといたしておりますが、これはセンターと保健所を有機的に運営することによりまして医師の魅力ある職場といたしまして、医師確保の門戸としたいという考えを持っておるわけでございまして、今後とも実効が上がるように努力してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。  〔広瀬博美君登壇〕 ◆(広瀬博美君) いま衛生部長より答弁をいただきまして、なかなか医師の確保が困難であるという状況もよくわかるわけでございますが、若い先生方はやはり自分の専門の勉強をしたいと、そういう希望が強いそうでございます。現段階で、そういった先生が勉強あるいは研究できるそういう制度をつくって職場環境を改善し、そして保健所においても医師を充足していくと、そういう御努力をひとつお願いしたいとこういうふうに思います。 次に、小児がん対策についてお尋ねします。 正式な病名は神経芽細胞腫と言われ、小児がんの一種で、白血病、脳腫瘍に次いで多いと言われております。神経芽細胞腫は、主に腹部、特に副腎にできる腫瘍で、初期には腹部のふくらみ、貧血、関節部の痛みなどを起こし、病気が進むと肝臓や頭蓋へ骨転移するもので、死亡率はきわめて高いと言われています。沢田淳京都府立大助教授の研究例によると、一歳未満のうちに発見し、患部を摘出すれば七二%が二年間以上生存できるが、二歳以上になって発見されると、この率は一二%に下がることが判明しています。したがって、この病気を治す最大の決め手は早期発見にあります。 現在実施している神奈川県では、保健所で行う乳児の三カ月検診の際、保護者に尿検査用のろ紙を渡し、生後六カ月目にそのろ紙を尿に浸して、県衛生研究所に返送してもらい検査するという方法をとっています。すでにこの方式を導入している京都市では八年間に五人、名古屋では五年間に二人の患者が発見されています。また横浜市では、昨年四月以降に四人が発病し、五十六年十二月現在で十三人の子供が治療を受けています。 どうか本県においても、神経芽細胞腫を早期発見するために、六カ月児の集団検診をぜひ実施していただきたいと思いますが、衛生部長の答弁をお願いします。  〔衛生部長清田幸雄君登壇〕 ◎衛生部長(清田幸雄君) 小児がん、特に神経芽細胞腫につきましてのいまの問題提起につきましてお答えを申し上げます。 近年、がんによる死亡は、御承知のとおり年ごとに増加をいたしておりまして、死因別でも昨年からトップになってまいりまして、がん制圧は保健衛生上の大きな課題となっております。しかし、がんの発生等の本態がなお究明されていない今日、がん対策は早期発見、早期治療が最も有効な決め手になっておるわけでございますが、がんの種類や発生部位によりましては早期に発見することが困難なものも多くございまして、がん対策推進上の大きな障害となっておるわけでございます。 御指摘の神経芽細胞腫につきましては、お述べになりましたような症状でございますが、小児がんの中で約一割を占めておりまして、本県では昭和五十年から五十六年までの七年間に十六名の方が発生いたしておりまして、小児慢性特定疾患治療研究事業の中で治療を行ってまいってきたわけでございますが、その中で十二名の方が亡くなられております。 この疾患は、主としまして、お述べになりましたように副腎髄質を中心に発生いたします交換神経系のがんでございまして、大半がホルモンを分泌いたしまして、そのホルモンの代謝産物を尿から検出して診断する方法が京都府立医科大学によりまして研究、開発されておるわけでございます。すでにお述べになりましたように、一部の都道府県でこの診断方法を採用されておるわけでございますけれども、類似反応や検出漏れなどもございまして必ずしも一〇〇%の診断確立ではないようでございまして、なおいま少し検討の余地もあるのではないかと考えております。 本県におきましては、現在、これらの疾患を含めまして各種の障害児の発生を未然に防止し、早期発見、早期療育体制の確立を図りますために、関係機関によります協議会を設置いたしまして、乳幼児正常発達総合システムにつきましての調査研究を進めておるわけでございますけれども、その中で神経芽細胞腫対策につきましても早急に前向きに検討してまいりたいと考えております。  〔広瀬博美君登壇〕
    ◆(広瀬博美君) 小児がん対策について答弁をいただきました。前向きに取り組んでまいるとの答弁がございましたので、どうぞひとつよろしくお願いしたいと思います。いずれにいたしましても、この病気を直す最大の決め手は早期発見にあります。そのためにはやはり集団検診、こういったものを充実していかないと発見はなかなか困難であろうと、このように思う次第でございます。 次に、低塩普及対策についてお尋ねいたします。 近年、食塩の取り過ぎが高血圧及び心疾患などの循環器疾患に対して悪影響を及ぼす一要因となることが明らかにされています。昭和五十四年改定の「日本人の栄養所要量」では、十五歳以上の男女については、食塩の適正摂取量は一日十グラム以下とすることが望ましいとしています。 一方、日本人の食生活は食塩の取り過ぎと言われていますが、実際にどれぐらいの量を摂取しているかは必ずしも明らかではないわけでありますが、厚生省の調査で今回初めて食塩の摂取量が明らかになったのであります。五十四年度の国民栄養調査によりますと、国民の全国平均一人一日当たり食塩の摂取量は十三・一グラムで、日本人の栄養所要量に示されている一日十グラム以下が望ましいとする値よりも三・一グラム取り過ぎていることになります。本県の場合、摂取量は十五ないし十六グラムと県衛生部は推定していますが、厚生省の食生活改善目標摂取量が一日十グラム以下でありますから、県民は五ないし六グラムも塩分を取り過ぎているわけであります。 五十五年度の県内死亡者の原因は、一位ががんで二千八百人、二位が脳卒中で二千七百八十七人、三位が心臓病で二千四百九十九人の順となっており、いずれも成人病が占めております。これらは塩分の過剰摂取と関連が深いとされておりますので、成人病予病対策の上からも低塩普及対策を強力に進める必要があると思うのであります。 そこで提案でございますが、現在食塩濃度計は県内の保健所に十七台しかありません。これでは十分な対応ができないので、もっと食塩濃度計を配備する必要があると思います。二つ目は、保健所の栄養士はほとんどが一人体制です。これでは十分な対応ができないので――現在保健所に登録されている食生活改善推進員が二千二百人おられます。また熊本県栄養士会に八百人おられます。このような団体に協力をお願いして、食塩の適正摂取量を指導するような体制をぜひつくっていただきたいと思うのでございます。これも衛生部長の答弁をお願いします。  〔衛生部長清田幸雄君登壇〕 ◎衛生部長(清田幸雄君) 低塩普及対策についてお答えを申し上げます。 厚生省では、昭和五十四年の十月から、食塩の取り過ぎが高血圧、心臓病などに悪影響を及ぼしていると指摘をいたしまして、食塩の適正な摂取量をお述べになりましたように一日十グラム以下とするように指導をしております。これに基づきまして、県でも成人病予病対策の一環といたしまして、低塩普及対策を図りますために、食塩濃度計を昭和五十四年に栄養指導車二台に、昭和五十五年には各保健所に配置いたしまして、みそ汁の食塩濃度を測定いたしまして日常的な指導を行っておりますほか、特に昭和五十六年十月に熊本市で開催いたしました健康展におきましても、低塩を重要なテーマといたしまして、一万人を超えました参加者に対しまして低塩意識の高揚を図ってまいったところでございます。また保健所におきましても、栄養教室、健康教室などを通じまして低塩指導を行ってまいっております。 なお、一昨年より健康増進事業の一つといたしまして、医学的検査、体力測定、食生活状況などの実態調査を、都市、農村、山村、漁村、僻地の六地区に分けまして、二百八十世帯五百八十八名につきまして調査を行いまして、その中の一つといたしまして、みそ汁の塩分濃度の測定を実施してまいりましたが、その結果では、半数以上の方々が食塩濃度一・二%以上の辛いみそ汁を摂取しておりますことがわかりました。したがいまして、さらに低塩指導普及の推進が必要であるわけでございます。今後県といたしましても一層の指導普及に努力してまいりたいと考えております。 特に、現在県内には保健所の栄養教室を修了した方が二千二百名おられまして、食生活改善推進員としていろいろと御協力をいただいておりますし、また、そのほかに八百名の栄養士会員が地域におりまして、低塩普及対策の運動に御協力をいただいております。これらの方々は、食生活改善にボランティア活動として御協力をいただいておるわけでございますが、今後ともこれらの方々の御協力を得ながら積極的に低塩普及対策の推進に努めてまいりたいと考えております。  〔広瀬博美君登壇〕 ◆(広瀬博美君) ただいま衛生部長より答弁をいただきました。確かに私どもの日常生活を見てみますと、たくあんにさらにしょうゆをかけてというような食生活でもございまして、どちらかというとやはり塩分の取り過ぎではないかと私たち日常生活の中でそう思っておりますが、実際はどのくらい取り過ぎなのかというのはもうそれぞれわかっていないわけでございまして、どうかひとつ成人病予防をするという大きな観点から、今後もあらゆる機会を通じてひとつ県下に低塩運動を推進していただきたいと、このように思います。 次に、坪井川改修についてでございます。 ことしもまた梅雨と台風の季節を迎え、長雨と集中豪雨による被害が心配されます。熊本気象台の予報によると、ことしの梅雨は、初めのうちは晴れの日が多い見込みだが、六月下旬から七月初めにかけては局地的に大雨の降るおそれがあると発表しています。これら梅雨季における災害に対して万全の体制を整備することが強く求められているところであります。 そこで、お尋ねしたい点は、坪井川しゅんせつ工事についてであります。県は、当面の雨季対策として、小沢橋から寺原地区まで平均一メートルの河床を下げる工事を完了したと聞いておりますが、どのくらいの効果が出るのか、またどのくらいの雨量に耐えられるのか、そういった面についてお尋ねをしたいと思います。 次に、寺原遊水池事業の推進についてであります。 この事業は、上流部で洪水を貯留し、下流の河川負担を軽減しようとするものです。現在までの進捗率は、五十六年度までの実施額で激特事業が三六%、治水緑地事業が六九%、多目的遊水池事業九%で、全体としての進捗率は四一%となっていますが、ここに来て一つ困った問題が出てきたわけでございます。それは遊水池計画区域の中心に位置するところに自動車学校があります。この自動車学校の面積は一万五千八百三十二平方メートルで約四千七百九十七坪ありまして、市内で二番目に生徒数の多い学校です。 県は、これまで五十七年の四月二十二日と五月二十二日の二回交渉を行っていますが、交渉は難航していると聞いております。自動車学校側は、県に対して計画の見直し等を要求していると聞いております。県の対応がこれ以上おくれるようなことになれば五十九年度完成がむずかしくなってくるわけであります。 いずれにしても、県の手の打ち方はやはりまずかったと思います。早々に移転先を探すことは大変困難です。私が言いたいのは、県が早い時期に計画を知らせていれば、移転先用地を事前に安く確保することもできたと思うんです。この自動車学校は洪水対策のかなめに位置していますし、もし用地買収ができない場合、学校が計画の中心にあるために、遊水池の貯留効果に影響が出てくるなど計画自体が中途半端になってしまうわけであります。この事業は、坪井川流域の抜本的な改修事業の一つでありますから絶対におくらすわけにはまいりません。何としても五十九年度までに完了いただきたいと思いますが、この問題について県はどのような決意をされているのか、お尋ねしたいと思います。  〔土木部長梅野倫之君登壇〕 ◎土木部長(梅野倫之君) お答えいたします。 まず、坪井川のしゅんせつ工事でございますが、坪井川、井芹川は御承知のとおり激特事業の三年目に当たっております。すでに六十五億円を投じまして、護岸、根継ぎ工並びに橋梁の改築工事を行っております。その進捗率は、激特事業が約六〇%となっております。昭和五十七年度は主といたしまして橋梁の改築を行っております。なお、これにあわせまして、護岸の根継ぎしたところ、あるいは橋梁に差し支えない程度、一メーターほど掘削を行っております。それは御承知のとおり小沢橋から上流寺原の区間でございます。これによりまして、従来の流下能力が約八十トンでございましたが、六〇%程度のアップ、約百三十トン程度にはなるというふうに確信しております。 それでは現掘削後で何ミリぐらいの雨量に耐え得るかというふうな御質問でございました。しかし、洪水は、出水の到達時間とか雨量強度、それから時間分布等、いわゆる雨の降る型によっていろいろ異なるものでございます。一概に何ミリぐらいの雨まで耐え得るかということは、非常にむずかしい質問でございまして答えにくいわけでございますが、ただ言えることは、本川の流量が百三十トンでございますので、大体五年に一回程度の確率ということは言えます。まあこの辺で御了解願いたいと思います。 次に、寺原遊水池事業の推進でございますが、これにつきましては、当初一期計画地域より用地買収を実施してきましたが、地権者の土地所有の関係から二期計画地域まで含めて用地買収を行っている状況でございます。全体面積が七十ヘクタールに対しまして、通路とか水路等の公有地を除くと五十四・一ヘクタールで、そのうち昭和五十六年度までには三十四・二ヘクタールを買収済みでございまして、大体六三%の進捗率になっているというふうに考えております。昭和五十六年度までの投資額は四十七億七千七百万円でございます。 お尋ねの自動車学校の用地でございますが、これは何と申しましても治水緑地事業の全体計画の中にありまして、これはやらなければならない仕事でございます。そこで買収の方向で交渉を進めております。しかし、現在営業中で、一・五ヘクタールと比較的広い用地面積を持っておりますし、移転先の確保等の問題も残っているので、かなり難航し日時を要するものと考えております。しかしながら、これはさっき申しました坪井川改修事業の一環でございまして、改修事業を進めるためにはなくてはならぬものでございまして、今後とも継続して鋭意交渉を進めてまいりたいというふうに考えております。  〔広瀬博美君登壇〕 ◆(広瀬博美君) ただいま土木部長より積極的に進めていくとの答弁がありました。地元私どもといたしましても非常に期待をしているわけでございます。この坪井川改修ということについては、もう私たち住民の悲願でございます。雨季になりますと、もう休んでおっても、また上がるんじゃないかなということで、梅雨になりますといつも頭を痛めておる問題でございます。社会党の中村先生も私も、登壇のたびに坪井川問題は執念のごとくやっておりますが、私どもも、いつも住民から強力な陳情を受けておりますので、ひとつ御了解をいただきたいと思います。 時間も参りましたので、私の質問はこれで終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手) ○副議長(井ノ上龍生君) 昼食のため午後一時まで休憩いたします。  午前十一時五十分休憩      ―――――――○―――――――       午後一時四分開議 ○議長(幸山繁信君) 休憩前に引き続き会議を開きます。平川和人君。  〔平川和人君登壇〕(拍手) ◆(平川和人君) 自由民主党の平川でございます。質問戦、今議会五日目に入るわけでございまして、議員の皆さん方大変お疲れのところ、しかも午後からの質問でございます。しばらく時間をかしていただきまして質問をお聞きいただきたいと存ずるわけでございます。 私、農協長もいたしておる関係で、特に農業問題を第一番に質問をいたしたいと思うわけでございます。 申し上げるまでもなく、本県の農業は県経済の基幹をなす重要な産業でありまして、わが国の食糧供給基地として確たる地位を築いておりますことは異論のないところでございます。しかしながら、最近、本県農業の発展を阻害するような多くの困難な問題がまた生じてきております。とりわけ農業の生産性向上対策のてことなる農地の流動化について農政部長にお尋ねをいたす次第でございます。 御承知のように、外的には欧米諸国からの農産物輸入自由化攻勢が強まる一方で、内的には景気が低迷する中で、国民の食生活が高い水準に達したことから農産物の需要が伸び悩み、米を初め温州ミカン、牛乳、豚、鶏卵、たばこ、イグサなど本県の多くの重要な農産物が生産過剰にありまして、農家はそれぞれに厳しい生産調整を強いられている状況にあるわけでございます。加えて、このような需給動向を反映しまして、農産物の生産者価格は、米価に見られるように実質据え置きか、または対前年度の価格を下回るといったようなものまで出ている始末でもあります。さらに、第一次から第二次の石油危機以来、肥料、農薬、機械などの農業生産資材価格や運賃等の流通コストが上昇しているため、農産物の生産コストは上昇し、したがって農家の手取りは目減りし、農業所得が伸び悩み、農家の生活は次第に苦しくなっているというのが実態であるわけでございます。 そこで、今後、本県の農業、農家がこのような苦しい状況を打開していくためには、どのように農政を展開していけばよいかという課題について考えてみたいと思うのであります。 本県の農業が、わが国有数の食糧供給基地として発展を遂げ、農家生活の安定向上と農業所得の維持増大を図っていくためには、これまでに進めてきた生産の量的拡大から、今後は品質とコストを重要視する方向へ農政を転換することが必要であると考えるのであります。 ちなみに、今年度の国の農林予算の説明を見ましても、「生産コストの低減、農産物の品質向上等を図ることが重要課題である」という表現が出ているわけでありますが、本県では、これに先駆け、いち早くこの課題に着目し、一昨年来この方、市町村、農業団体と一体となって、農産物の品質向上、コスト低下対策を農政の基本に据えて推進されておりますが、これは時宜を得た適切な施策であると評価申し上げる次第であります。そういう意味で、今後ともこの施策を引き続き強力に推進していただくよう要望する次第であります。 ところで、農産物の品質を高めコストダウンを図るということは、いわゆる農業の生産性向上を図るということにほかならないと思うのであります。農業の生産性向上という問題は、これまで主として施設園芸や養豚、養鶏等の資本集約型の農業部門を中心に進められてきており、米麦作や飼料作などの土地利用型の農業部門におきましては、農地の資産的保有傾向が強いことや兼業農家の稲作志向が強いことなどによりまして、農地の活用化が停滞し、経営規模の拡大に結びつきにくいという状況があり、結局、生産性の向上が立ちおくれてきているということが問題点として指摘されるのであります。 最近、農政に関する提言が各界から相次いでなされておりますが、先般の経済審議会の提言では、二十年後の農業の姿を、中核的農家への農地の利用集積が進むよう各般の施策を講ずることにより、一戸当たりの経営規模は、稲作で十から十五ヘクタール、酪農で二十から三十五ヘクタール程度に拡大すべきだとしておりますし、民間の研究機関からも、農地の流動化を進めることにより将来は十ヘクタールの稲作経営が成立し、輸出産業になり得るとの提言がなされるなど、いまや農地を流動化し、経営規模の拡大を促進することによって農業の生産性の向上を図ることは、当面する農政の重要な課題となっているのであります。したがいまして、今後、農業の生産性向上の一層の推進を図っていくためには、限られた農用地の有効利用と、意欲のある農家などに農地の流動化を促進し、規模拡大を図るということが決め手となるわけであります。 このような情勢の変化を背景に、県下においても、一昨年の農用地利用増進法の成立、施行を契機として、簡単な手続で安心して貸し借りができるという農用地利用増進事業の趣旨が浸透しつつあり、これまでに約三千ヘクタールの農地の流動化が進んでいるようでありますが、これは全農地のわずか二%にすぎず所期の目的を達成するためには、これからが本当の正念場であると思うのであります。今後、本格的に県下全域にわたり農地の有効利用、流動化を促進していくためには、市町村長の十分な理解を得ながら、市町村段階における貸し手、借り手の掘り起こし活動をいかに強化していくかということが重要となろうと考えるのであります。 そこで、以上のような観点に立って農政部長にお伺いしますが、農業の生産性向上を図る上で最も重要である農地の流動化対策を今後どのように進めようとされているか、具体的に答弁をお願いする次第でございます。 次に、今後の農業振興を考えるに当たり絶対に欠かせない農産物の流通に関して農政部長に重ねてお伺いをいたします。 本県農業の状況については、さきに述べたとおりでありますが、基幹となる米を初め、ミカン、イグサ、牛乳、一部の野菜あるいは葉たばこ等、いずれもその生産は過剰か需給緩和傾向にあります。さらに、今後増産を必要とする転換作目の主力である麦、大豆、飼料作物等については、他の作目に比べ相対的に価格や生産性が低いことから生産は停滞しており、現実的には価格、販売、技術面にわたりいろいろな問題が生じていることは周知のとおりであります。 一方、農産物の需要の伸びが余り期待できない状況下で、産地間競争は激化する傾向にあり、また価格の上昇による農業所得の増大が期待できない現状では、農産物の生産及び流通面におけるコスト削減策がこれまで以上に重要であると考えるのであります。特に、農産物の供給県で、しかも大消費地に遠隔な本県としては、従来にも増して販路の開拓と有利な販売戦略を講ずることが重要でありましょう。 このようなことから、特に農産物流通改善に関して、過剰及び緩和傾向にある作目については、価格変動の防止策を講ずるとともに、価格の持つ需給調整機能などの施策を通し、高い生産性を維持し、農業の安定化を図ることが特に重要かと考えます。この点、農畜産物価格安定制度の充実強化と、特にイグサ、野菜、果樹、畜産など過剰化傾向にある作目について、需給均衡を図り、価格と所得の安定を図るための貯蔵及び出荷調整施設など、流通関係施設の整備拡充を通じ需給調整機能を重視した対策が重要と考えられますが、どのような対策を講じておられるか、お伺いする次第であります。 また、本県の農産物は、その生産が大規模、専門化し、産地の大型化が進みました結果、販路は主として北九州、京浜及び阪神など大消費地市場への傾斜を強めております。この遠隔地、長距離大量輸送を進め需要に即した計画的な供給を図るためには、特に産地体制を強化しながら系統組織による共販流通体制を整備することが急務となっております。 一方、この広域的流通の整備とともに、県内生鮮食料品流通の重要な担い手である卸売市場については、県内農産物の販路開拓と消費者への安定供給の面からきわめて重要な機能を担っていると考えます。この重要な役割りを担う卸売市場に関する県の考え方をお尋ねいたします。 最後に、生産、流通、秩序が多様化していく中で、本県農産物の販路を開拓し、産地間競争に有利な条件をつくり出すためには、物的流通の効率化を促進することが重要なことであります。特に、本県が消費地から遠隔地にある立地からして、輸送手段のウエートがきわめて高くなることに照らし、航空機、鉄道、自動車、船舶などの輸送手段のきめ細かい選択のもとで、輸送コストの低減と輸送の円滑化を図り、市場への安定供給を図ることがまたきわめて重要なことでもあります。それらに対する対策をあわせてお伺いいたす次第でございます。 以上、農産物流通の課題について、特に重要と考えられる需給、価格対策、流通体制の整備及び輸送対策についてよろしくお答えを願いたいと存じます。 さらに、横島干拓における農業経営の安定対策について引き続いて御質問をいたします。 御承知のとおり、横島干拓地については、終戦直後、昭和二十一年に国営干拓事業として総面積六百二十三・八ヘクタールの干拓が着工され、三十年の歳月と七十二億余円の巨費を投じて昭和五十年二月に完工したものであります。入植は昭和四十七年十一月から始まり、現在八十九戸の農家が四ヘクタールの耕地の配分を受け、畑作営農を中心に血のにじむような努力を積み重ねてきております。しかしながら、すでに入植後十年を経過した今日でも、なおかつ経営の基礎条件が悪く、ことに塩分濃度が高いのに加えて、排水不良等干拓地特有の土壌条件の劣悪さに起因する生育障害が発生するなどで、きわめて多くの不安定要素を抱えております。 このような横島干拓の実情については十分御理解をいただき、その対応についても、さきの十二月県議会における地元橋本議員の質問に対する答弁に見られるように、十分なる御配慮を願っているところでありますが、農業の変動が大きく経営基盤が確立されていないという両面からの圧迫から、農家の中には不安と戸惑いが見られるのであります。したがって、これらを理解し勇気づけてやるためにも、重ねて今後の具体的な営農改善対策についてお尋ねいたすわけであります。 また経済的にも、昭和五十七年度からは、国営土地改良事業地元負担金六千二百六十万一千円、県営地区内整備事業地元負担金四千六百六十九万三千円の償還期に入り、あわせて短期の営農資金の貸し越しが一億四千九百三十二万円あるので、昭和五十七年度における償還金額は約二億五千八百六十一万円余の多額に上りまして、この問題は農業経営を維持する上において憂慮すべき事態になっていると存ずるわけでございます。 このような現状を踏まえ、昭和五十四年度以来、県単資金の農家経営安定資金や畜産特別資金、さらには自作農維持資金等の御配慮をいただき、関係農家も大変助かっており、この席から私も感謝を申し上げる次第でございます。ただ、いままで申し上げたように、干拓地特有の経営的な経過内容を十分御賢察いただき、農業者が経営を維持し、希望をつなげるよう資金対策について今後さらに特段の御配慮をお願いする次第でございます。 続いて、干拓地の排水対策について質問をいたします。 御承知のように、背後地の流域開発が進み、干拓地への雨水の流入量の増加によって、干拓地周辺の排水能力は減退し、排水条件はますます悪化している現状にあります。このことが農業近代化の著しい妨げになっているわけでありますが、現在実施中の県営菊池川左岸地区五百七十五ヘクタールに及ぶ湛水防除事業が五十七年度に完成すると、干拓地上流部における効果が十分発揮できるものと受益者は期待をいたしているのであります。 しかしながら、下流部干拓地周辺被害区域の甲申川、明辰川、唐人川流域の事業の見通しについて、県では現在までどのように進めておられるのか。総需要抑制下の現在、今後どう対処して農業者の要望にこたえて行かれるのか。今後の事業の進め方についても重ねて質問をいたします。 以上申し上げたように、営農資金、排水対策等については、総合的な対応がなされなければその効果は期待できないのではないかと思われますが、今後の具体的な取り組みについての見解を農政部長にお伺いいたします。  〔農政部長坂本清登君登壇〕 ◎農政部長(坂本清登君) お答えいたします。 まず、農地の流動化対策についてでございますが、御指摘のとおり、土地利用型農業の振興のためには農地の流動化を進め、農業経営規模の拡大により生産コストの引き下げを図ることが必要であると考えます。本県農業は、兼業農家が七七%で、その中には農地を有効に利用できず、適当な相手がおれば農地を貸してもよいという農家もありますので、中核農家に農地を集積して規模拡大が図られるならば、農業の生産性を飛躍的に高めることができると期待しているところでございます。 県といたしましては、農地の流動化を農業構造政策の中心に据え、農用地利用増進事業により積極的に進めているところでありますが、まだ農地に対する資産的保有傾向が強いため、売買による流動化は多くを望めず、貸し借りによる流動化を強く推進したいと考えております。しかし、農地を貸したら返ってこないとの意識がまだ強く、これが貸借による流動化推進の隘路となっており、今後ともパンフレット、新聞、広報紙、会議等のあらゆる機会を利用して啓発を強めながら推進したいと考えております。 具体的方策といたしましては、現在、県段階に県と農業団体で構成する農用地利用増進部会を設置いたしまして、市町村でも同様の構成のもとに農用地利用増進推進協議会を設置して推進をしているところでございます。農地の貸し手に対しましては十アール当たり一万円から二万円の流動化奨励金を交付することとなっておりますが、現在県下に二千人の農地流動化推進員を設置いたしまして、農地の貸し手、借り手の強い掘り起こしに努めておるところでございます。さらに、本年度は県下三百地区の集落に農用地利用改善団体を育成することとし、話し合いによる組織づくりを進めることとしております。また、五十六年度から各市町村に農地銀行の設置を呼びかけておりますが、本年度は全市町村に対する設置と十分な活動を行うよう強力な指導をしてまいりたいと存じております。 なお、農地流動化を促進するためには、圃場整備や農村での就業の場を確保するための工業導入もあわせて推進することが重要であると考えております。農地流動化を促進するためには、御指摘のとおり地域住民と密着した市町村の十分な理解と積極的な活動が不可欠でありますので、市町村と協議を重ねながら、昭和六十五年度の目標を、利用権設定面積二万四千ヘクタール、農用地利用改善団体の育成を二千集団とし、農業の組織化による地域農業の確立を目指してまいりたいと存じております。 次に、農産物の流通改善についてでございますが、需給、価格、流通、輸送関係についてのお尋ねだったと思います。 まず、価格安定対策につきましては、現在、果汁及びかん詰め用ミカン、果汁用夏ミカン、野菜類、子牛、母豚、鶏卵等の価格安定基金制度及び牛肉、豚肉等安定帯価格制度並びに加工原料乳、大豆、なたね等の交付金制度等がございますが、これらの価格安定対策事業につきましては、それぞれの対象品目について価格補てん金の造成や助成等を行い、これらの制度の拡充強化を図ってきたところでございます。 昭和五十七年度におきましては、肉専用子牛の保証基準価格が二十六万五千円から二十九万二千円に、乳用雄子牛が一頭当たり十二万二千円から十三万四千円に引き上げられ幾分の改正を見ましたが、これらの価格安定制度の適用には国レベルの課題とすることが多いので、今後とも農家の生産意欲が高揚され経営が安定するよう、引き続き国に対し保証枠及び保証基準率などの引き上げなどを要望し、その実現と円滑な運用を推進していきたいと考えております。 次に、需給調整対策に関しましては、農産物が過剰傾向に推移する現状にありましては、需要に見合った計画的、安定的供給を図ることが今後の重要な課題でありますので、これら農産物につきましては生産調整を行っているところでございます。また、野菜、果樹、畜産、イグサ等本県の基幹作目については、末端流通を担う系統組織の機能の強化を図りながら、国の制度の活用とあわせ、需給調整のための貯蔵及び出荷調整基地施設の設置など流通関係施設の計画的整備を推進しているところでございます。昭和五十六年度におきましては、県の果実連が山梨県に設置しました果汁の貯蔵加工施設及び県経済連が実施した畳表の需給調整に所要の助成を行い、それぞれ効果を上げているところであります。また、昭和五十七年度から県酪連が行う生乳需給調整のための施設整備事業に対して助成することとしております。このほか、生鮮農産物の流通のみでなく、需給調整効果をもたらすためには農産物加工対策が必要でありますので、これらにつきましても今後十分検討を進めてまいりたいと存じております。 流通体制の整備に関してでございますが、現在本県の主要農産物の生産者系統共販率は、果実、畳表、子牛及び牛乳を除き十分な実績を上げておりませんので、生産体制を整備しながら産地銘柄を確立し、有利な販売ができるよう共販体制の整備について引き続き生産者、団体等を指導してまいりたいと考えております。 また、県内流通の拠点となっております生鮮食料品の卸売市場につきましては、昭和四十七年以降卸売市場整備計画を策定し、適正な配置に留意して市場整備を推進しており、今年度から第三次整備計画として、さらにその整備の実現を図ることとしております。現在までに熊本市、八代市、玉名市、球磨郡市など県内の拠点となる市場が整備されました。昭和五十七年度におきましては、牛深市関係市場の整備と、さらに熊本市関係市場整備を行うマスタープラン作成のための予算措置を講じたところでございます。 輸送対策に関しましては、本県は大消費地から遠隔地で不利な条件にありますので、県農協生果物輸送改善協議会等と連携をしながら、今後一層生産物の種類に合った輸送手段の合理的選択を行い、輸送コストの低減に努めることにしており、具体的には、本県の一大特産物でありますスイカ、メロン及びミカン等について、ウリ類の全農号並びにミカン列車等の特別仕立てによる貨車輸送を講ずるなど輸送コストの低減を図っているところであります。さらに、低温輸送技術の導入などの検討を行い、総合的な輸送の体系化を推進することにしております。また、航空機利用に関しましては、熊本空港の拡充と物流センターとしての整備のため、本年度企画開発部を窓口として実施する航空貨物流通実態調査の一環として、農産物の航空貨物利用の実態と開発の検討を行うこととしております。 また、農産物の鮮度、品質、価格等に対する消費動向を踏まえ、計画的供給を図るためには的確な流通情報を把握する必要がありますので、農業団体等との連携を図りながら体制の整備に努めてまいりたいと考えております。 最後に、横島干拓における農業経営の安定対策についてお答えいたします。 横島干拓における営農対策につきましては、十二月議会で答弁を申し上げましたが、その後、玉名事務所を中心に、関係市町、農協、農家代表などと十分協議しながら取り組んでまいっているところであります。 まず、夏季不作付地に対する土づくりと除塩対策のための湛水性作物の栽培につきまして、本年度は青刈りヒエを中心として約二十三ヘクタールの栽培を進めることとしておりますが、地元から要望の強い飼料用青刈り稲の栽培に関しましては、遅植えで外国稲栽培による三ヘクタールの試作圃について、九州農政局に対し法的手続に基づいて承認を得るよう申請中であります。次年度以降は、本年度の結果を見た上で対策を検討し、積極的に進めてまいる所存であります。 次に、横島干拓の営農につきましては、入植以来、冬春作を中心に進められてきましたが、十年を経過した現在、農業者間に所得格差を生じつつありますので、全農家の個別経営診断を実施し、内容の見直しと営農類型別所得目標の設定を行い、干拓営農振興への方策を進めておる次第でございます。特に、栽培面積七十ヘクタール、生産額一億九千万円を占めるイグサにつきましては、主産地に比べて質、量ともに劣りますため、その原因を解析し、個別ごとに地力差の解消、水管理等の対策を講ずることとしております。 なお、個別農業経営改善計画につきましては、定期的に営農相談日を設けて意欲の啓発を行い、新しい集落づくりへの指導を進めてまいりたいと考えております。 また、資金対策につきましては、昭和五十四年度より農家経営安定資金、畜産特別資金、自作農維持資金等一億八千万円程度を融資し、農業経営の維持安定を助長してきたところでございますが、さらに五十七年度におきましても、農家経営安定資金と自作農維持資金の再建整備資金の借り受け希望が出ており、その再建につきましては総合的に検討し、必要な資金については十分対応してまいりたいと考えております。 最後に、排水対策につきましては、地区内圃場整備を昭和五十二年に完了しましたが、畑作による農業経営の安定には排水条件の整備がきわめて重要な用件であります。現在、地区内には、農林水産省が施行した三カ所の排水ポンプによって排水されておりますが、地形的条件や社会的変化から背後地流域の影響が増大し、その機能に不足を来している状況であります。したがって、県といたしましては、まず干拓地へ流入する水をできるだけ上流地域でカットすることとし、本年度完成を目途に工事を実施中であります。 さらに、五十六年度に単県防災事業調査費で干拓地周辺の明辰川、唐人川流域の全体的な見直しを実施したところでありますが、引き続き本年度は、干拓に最も関連する横島町中心部の甲申川と横島干拓地内を含めた湛水防除事業計画を樹立し、横島町、玉名市、天水町とも十分協議の上、昭和五十八年度新規採択地区として国に要望してまいりたいと考えております。 答弁を終わります。  〔平川和人君登壇〕 ◆(平川和人君) 農政部長から答弁をいただいてありがたい気持ちでございますが、特に農政部長は今月いっぱいで熊本県を退職されるわけでございます。私は、きょうの答弁を遺訓として農政部の部下に伝えていただいて、ひとつぜひ実現できるようにお願いをこの席からいたすわけでございます。大変ありがとうございました。 続いて、これまた第一次産業の中で非常なウエートを占めます漁業の問題につきまして質問を申し上げたいと思います。浅海干がた漁業の振興について、特に林務水産部長に二、三お尋ねしたいと思います。また、この問題につきましては私の毎回の質問にも入れておるわけでございます。またかというようなことでなくて、ひとつこの問題につきましては、それだけ問題を抱えているという認識をいただきまして御答弁を特にお願い申し上げたいと思います。 有明海は、大小の河川から搬入される土砂によって広大な干がたが発達し、これら多くの河川から流入する栄養塩により生産力豊かな海域であり、古くからノリ養殖が発達し、全国有数のノリ生産地であることは御承知のところでございます。 昭和五十五年のノリ生産は、佐賀、福岡、熊本の三県で対全国シェアも三九%に達しておりますが、その中で後発県である佐賀県では、うまいノリづくり運動の展開や、漁場利用の細分化防止等の産地経営自立化政策が地域ぐるみで強力に推進された結果、相当の成績を上げていると聞いています。これに対して、先進県の本県の場合は、佐賀に立ちおくれはしたものの、ノリ養殖漁家の減少に伴い経営規模の拡大が進行したため、養殖ノリ産地の再浮揚に成功しているところであります。 しかしながら、ノリについては、最近の生産過剰による需給のアンバランスと病害の発生、漁場管理の不徹底等から、品質が低下し価格は低迷している現状であり、下級品を主とする繰越在庫も全国規模で約四十億枚に達しているやに聞き及んでおり、産地間競争は今後ますます激化するものと思われます。また一方においては、燃油の高騰を初めとする漁業用資材の高騰、全自動製造機械などの大型機械の導入の返済等、ノリ養殖漁家の経営は逼迫している現状にあります。 五十六年の県全体では、生産枚数は前年を上回ったものの生産金額で下回り、特に玉名地区では、生産枚数、生産金額とも前年を大幅に下回る不作に見舞われたため、養殖業者の中には、ことしの建て込み資金の準備に不安を抱く者も相当ある現状であります。 一方、採貝業についてみますと、転業したノリ養殖漁家を吸収する過程で発展し、アサリの生鮮需要の拡大する中で価格も大幅に上昇し、熊本県はアサリの一大産地となり、昭和五十五年には五万四千トンを生産し、対全国シェアも四二%に達しましたが、玉名地区では九千八百トン、二十七億円の生産を上げるまでに発展を見ております。 採貝、特にアサリについては、玉名地区の経営体数千七百九十七体のほとんどの千七百七十九体が採貝を営み、漁業の就業面から見ても、その依存度の高さが御認識いただけると思いますが、その生産量も県全体で五十二年の六万五千七百三十二トンをピークに下降傾向にあります。漁場環境の変化や、アサリにとって有害生物と見られているアナジャコの異常発生等が関係しているものと思われますが、来年以降の生産が心配されておるところでございます。 このような現況を踏まえ、本日はノリ養殖と採貝アサリに焦点をしぼり、今後の振興事業をお尋ねしたいと思うものでございます。 まず、ノリにつきましては、漁場管理の徹底と粗殖化により量から質への転換と、厳格な検査と選別の徹底により品質の均一を図るとともに、需要に見合った計画生産まで考える必要があるものと思いますが、ノリの品質向上対策についての指導のあり方及びことしのノリ養殖の建て込み資金等の手当について、県としてどう対策を講じていくつもりであるのか、お伺いする次第であります。 次に、アサリについては、先ほど申し上げましたとおり、ノリ同様、地区の沿岸漁業者の大きな収入源の一つであり、アサリのその年の豊漁、不漁が地区の沿岸漁家の経営の動向を左右する重要な魚種でありますが、ここ数年、アサリの天敵とも見られるアナジャコが異常繁殖し、アサリの生息漁場の減少が心配されております。 荒尾、玉名地区では、県のり研究所等の指導のもとに、漁協等が独自で合板及び防虫網を使用し、アナジャコの駆除試験、影響調査を実施しておりますが、その結果に注目しているところでございます。アナジャコとアサリの因果関係は複雑でむずかしい問題とは思いますが、今後の対策についてお聞かせいただきたいと存じます。 続いて、アサリ漁場の環境改善、老化防止対策とアサリ資源の維持培養対策でございますが、この地区の一部の漁場については、昨年秋の水害に伴う貝類の死殻、カキがらが堆積し、漁場としての生産力が低下しており、堆積物の除去等による漁場の生産力の回復と同時に、アサリ稚貝の保護育成を図るための人工干がたの造成等、漁場改良によるアサリ漁場の一層の拡大を図る必要を痛感するものでございます。 県におかれては、各種公共事業等の導入を図り、生産基盤の整備には積極的に取り組まれ、地域の漁業振興に御努力をいただいており、その成果には関係漁業者ともども期待しているところでありますが、今後の具体的な施策についてお尋ねする次第であります。 最後に、アサリの密漁防止対策についてでございますが、漁協においては、監視員及び監視船を配置し、県等の取り締まり機関の指導協力を得ながら密漁防止には日夜努力しているところでありますが、違反者は後を絶たない現状であります。しかも、最近の漁業違反の内容は、悪質化、暴力化し、漁協独自ではとても対応できない状況でありますので、今後のアサリ貝密漁防止対策について、その具体策を重ねてお伺いするものであります。 以上につきまして林務水産部長の御答弁をお願いいたします。  〔林務水産部長大塚由成君登壇〕 ◎林務水産部長(大塚由成君) 有明海の浅海干がた養殖漁業の振興策につきまして、特にノリとアサリについて二、三点ずつ御質問がございましたので、逐次お答え申し上げたいと思います。 ノリについての第一点は、ノリの品質向上対策についてでございますが、御指摘のとおり最近のノリ業界はきわめて厳しく、生産量は近年の養殖技術の進歩に支えられまして高い水準を維持し、その生産量も全国で八十三億枚を超える現状であります反面、ノリの需要は停滞ぎみで、供給過剰から価格も低迷ぎみでありますが、今後大幅な消費拡大はむずかしい現状でございます。この価格の低迷は今後とも持続するものと考えられるわけでございます。五十六年度の本県の共販実績を見ましても、枚数で六億三千三百万枚と昨年を上回っておりますものの、金額では九五%の六十四億七千四百万円にとどまり、一枚当たりの単価も前年に比較して二一%安の十円二十三銭という安い結果になっております。 県では、これらの現況を踏まえ、今後のノリ養殖につきましては、品質の向上を第一義に、県漁連とノリ関係漁協で組織します県ノリ養殖生産安定対策推進協議会の中で指導方針を定め、漁業者への指導の徹底を図っているところでございます。 品質向上のための指導方針としましては、建て込み冊数とノリ網の持ち網数を削減し、病害の早期発見と早目の生産に努めますとともに、冷凍網の計画的入出庫、漁期前半のノリ網の一斉撤去等を主な内容といたしております。さらに、需要の動向に見合いました自主的計画生産と下級品の出荷見合わせ、製品加工段階における品質向上対策、検査体制の充実と厳重な選別についても、御指摘のとおりあわせて指導しているところでございます。 このうち、漁期前半のノリ網の一斉撤去につきましては、昨年初めての試みとして地区ごとに実施を指導しましたが、一部の漁場を除き順調に実施され、その後の入札価格にもその効果があらわれており、一斉撤去については漁業者の大方の御理解は得られたものと思います。そのため、ことし以降も引き続き指導してまいりたいと考えております。 計画生産につきましては、御指摘のとおり需給のバランスから考えるべき問題で、県としましても常日ごろからその指導をしておりますが、実行がなかなか伴いませず、五十五年度についても計画生産枚数四億四千万枚を大幅に上回る結果になっておりますので、今後とも漁業者の十分な御理解が得られますよう努めてまいりたいと思います。 ノリの第二点は、不作に対する建て込み資金等の金融対策でございますが、五十五年、五十六年と二年続きの販売単価の低迷のため、ノリ漁業者の収入は大幅に減少しております。 本県におきましては、数年前から大型機械の導入が盛んに行われ、ノリ漁業者の中には、その支払い資金に不足する者もあらわれてまいりましたため、関係金融機関等と協議して、制度資金の償還困難な者には償還を繰り延べるとともに、資金繰りの苦しい漁業者には低利資金のあっせんで対応してまいりましたところでございます。 漁業者のための金融制度としましては、漁業近代化資金及び農林漁業金融公庫資金並びに沿岸漁業改善資金等がございますが、ノリ漁業者の作付に要します建て込み資金につきましては、生産用機材として漁業近代化資金の貸付対象者には、この近代化資金によって対応するよう本年も計画しているところでございます。 アナジャコ対策の第一点は、従来からアサリとの困果関係、影響調査を実施しておりますが、本年もアサリ等資源増殖対策試験事業の中で、干がたに試験区を設定し、アナジャコの発生地にアサリが育たない原因、すなわちアナジャコの穴に稚貝が落ち込んだり、アナジャコの吹き出す浮泥によって沈着初期の稚貝が埋没して死滅するのかなど、その因果関係を調査いたしているところでございます。アサリとアナジャコとの関係は、御指摘のとおりきわめて複雑で、その解明はなかなかむずかしく、アナジャコが発生したためにアサリが少なくなったのか、あるいはアサリが少なくなったためにアナジャコが異常繁殖したのか等の問題もあわせて現在調査中でございます。 また、アナジャコの有効利用ということで、魚類養殖のえさとしての活用の面について検討中でありまして、この見通しがつきますと、漁業者もアナジャコをよけいとるようになり一石二鳥になるものと期待しているところでございます。 いずれにしましても、早急に解決策を見出すべく引き続いて研究、努力していきたいと考えております。 アサリに対する第二点は、アサリ漁場の生産基盤の整備の問題でございますが、玉名地先の干がたの活用はきわめて重要な課題でありまして、またその潜在生産力もきわめて高いものがございますので、漁場づくりによる生産増大を第一義に考えております。 まず、漁場環境の改善につきましては、カキがら、アサリ貝がら等の堆積により、本来産卵場、成育場としてすぐれた条件を有しておりながら現時点では生産力の低下している漁場について、これらの堆積物の除去を行うことにしておりまして、五十七年度につきましても玉名地先を対象に実施する計画でございます。また、大規模な漁場環境改善策として、菊池川の河川水の影響による漁場の縮小に対処するため、水産土木的手法を用いまして漁場を復旧する計画でありまして、昨年一年間の調査を経て、五十七年度から五カ年計画で、岱明地先を対象に大規模漁場保全事業を実施する計画でございます。 さらに、漁場環境改善から一歩進んだ積極的振興策として、現在菊池川じりで大規模な漁場づくりを実施中でございます。このアサリを対象とした漁場づくりは、全国的にもその例が少なく、本県におきましても初めての試みでございますので、地元漁業者の積極的な御協力を得る形の中で最大限の努力を行っているところでございます。 最後の御質問の、アサリ貝の密漁防止対策についてでございますが、これは第一義的には、共同漁業権を管理しております漁協が密漁防止に努めることがまず前提でございます。しかしながら、漁協段階では能力的にも権限的にも限界があること、また漁業違反者を摘発する場合には漁業権の侵害罪を適用することになり、しかも漁業法に「告訴を待つて論ずる。」と親告することになっておりますので、漁業権者であります漁協との共同体制がぜひ必要になるわけでございます。 県としましては、現在まで海上保安部、県警本部の格別の御協力を得まして、さらに関係漁協と連携をとりながら精力的に取り締まりを実施しているところでございます。今後も、アサリ価格の上昇に伴い違反情報も増加の傾向にありますので、漁協の監視員の研修会や、県漁連の部会を単位として結成されておりますアサリ貝密漁取締対策協議会を通じて関係機関の連絡協調体制を強化し、密漁防止及び違反者の撲滅に努める所存でございます。どうぞ今後ともよろしく御指導をお願い申し上げます。  〔平川和人君登壇〕 ◆(平川和人君) ただいま部長からいろいろ御答弁をいただいたわけでございますが、現実的にことしのノリの不作、アサリの不作、大変厳しい年になっております。特に資金対策につきましては、いまお聞きしましたわけですが、特段の配慮をひとつお願い申し上げたいと思います。いま現在でも、私の農協にも、その金を何とかしてくれぬかという漁協からの相談があっております。地区として何とか対応するわけでございますが、そういうことが要らないようなひとつ長期の低利資金を特にお願い申し上げて、来年に備えることが大事じゃなかろうかなと存ずるわけでございます。よろしくお願いを申し上げたいと思います。 それから密漁につきましては、これは県警本部長にもお願いしたいと思うんですが、有明海は広域水域でございます。ですから、もう長崎からも佐賀からも、どこからでも入ってきます。アサリを目がけて入ってくるわけでございまして、広域の防備体制、こういったことが特に必要ではなかろうかと存じます。だから熊本県だけでできる問題でもない。ひとつ管区の問題としても特に警察本部長にこの問題をお願いをいたす次第でございます。よろしくお願いいたしたいと思います。 続きまして、観光の振興につきまして御質問をいたしたいと思います。 県では、県政の重要施策の一つとして観光産業の振興を取り上げられ、その推進に鋭意努力されており、観光関係業界を初め他の産業界においても、これまでにない、やる気と期待が高まってきております。これは、日ごろから知事が観光振興へ積極的に取り組んでおられる成果のあらわれであると私も高く評価しているところであります。特に、経済が安定成長期に入った現在、産業界全体としては高い成長が期待できない情勢でありますが、その中にあって観光産業は最も成長が期待でき得る産業であると私は確信しているところでございます。 観光産業は、いまさら私が申し上げるまでもなく、非常にすそ野が広く、その経済的波及効果が大きい産業でありますので、本県の基礎産業であります農林水産業等の連携を強めていくなら、その経済的波及効果は大きく、本県経済の発展にとって最も期待できる産業の一つであると考えます。県が公表しております観光統計によりますと、本県観光の消費額は千二十六億円を超えておりますが、さらに県民所得の向上、雇用機会の増大のためには、あらゆる産業が一体となって積極的に取り組んでいくことが必要であります。 また、今六月議会での岩永議員の質問にもありましたが、商工業の立地が困難である農山漁村で過疎化の激しい地域にあっては、その地域が持っているすばらしい観光資源や、都会からすでにすたれてしまった古い風俗、習慣などを活用した観光開発を行い、観光産業を中心とした雇用の場をつくり出し、所得の確保を図り、人口の流出に歯どめをかけるならば、これまで所得格差が開いているこれらの地域にも若者たちが定着し、活力ある豊かな地域づくりが推進され、均衡ある地域の発展が図られてまいるのであります。 これからの観光振興は、観光的側面からとらえるだけでなく、あらゆる産業との連携を強めながら推進するとともに、地域住民の参加を得た地域づくりの一環としてとらえ、地域住民の所得向上を図り、そこに住む人々の福祉の向上に役立つ観光地づくりを行うことによって初めて、望ましい観光地がつくり出されるのではないかと思いますので、今後の観光振興をどのように行っていくのか、基本的な問題について商工観光労働部長にお尋ねいたす次第でございます。  〔商工観光労働部長八浪道雄君登壇〕 ◎商工観光労働部長(八浪道雄君) お答えいたします。 観光資源に恵まれました本県にとりまして、観光は、今後とも発展が期待できる産業であり、発展さすべき産業でございますので、県政の重要施策の一つとして積極的に取り組んでいるところでございます。特に、観光産業が持つ経済的効果を県内全域に及ぼし、雇用の場の確保と所得の向上を図りますため、魅力ある観光地づくりを推進し、観光客の増加とその滞留性の向上に努めているところでございます。 現在取りまとめを行っております五十六年の観光統計によりますと、五十一年以来減少を続けておりました本県の宿泊客数が増加に転じてまいりました。この増加傾向を定着させまして今後ますます発展させますためには、何と申しましても他県に負けない魅力ある観光地づくりと、積極的な誘客宣伝にこれまで以上に力を注ぐ必要があると、このように考えております。 魅力ある観光地づくりを進めますためには、県下の主要観光拠点ごとに「創る会」を組織し、自然の観光資源はもとより、地域の歴史、文化、行事など特色のある人文資源や、全国屈指の農林水産業を初めとします地域産業の活用、連携を進めますとともに、特色ある料理の開発、それから心のこもった接遇など、観光客が心から満足できる観光地づくりに取り組む必要があると、このように考えております。 次に、誘客宣伝につきましては、従来から取り組んでおりますテレビ、ラジオなど宣伝媒体等を用いる広報等に加えまして、特に本年は、八月一日から実施します大型観光キャンペーンに取り組んでいるところでございます。このキャンペーン事業は、御承知のとおり、観光業界はもとより農林水産、商工業の諸団体、国鉄、県、市町村など官民が一体となりました組織で実施をいたすことにしております。これは、これまでになかった画期的な事業として県下を挙げて推進しているところでございます。この事業をぜひ成功させまして、今後この組織や経験を積極的に活用する方向で、民間が主導となり、すべての関係者が一体となりました観光振興を強力に推進してまいりたいと、このように考えます。 本県にとりまして観光産業は重要な産業であり、特に観光地の住民の方々は何らかの形で観光と直接間接に結びついております。観光産業の好不況は、当地域の住民生活と産業に大きな影響を及ぼし、ひいては地域全体の浮沈にかかわる問題でもあると思いますので、観光振興により地域の活性化を促進しますとともに、雇用の拡大を図り、住民の方々が生きがいをもって地域づくりに励んでいただけるよう今後とも積極的な施策の展開に努めてまいる所存でございます。  〔平川和人君登壇〕 ◆(平川和人君) ただいま八浪部長から答弁をいただきましたわけですが、私も観光をあちこちいたすわけでございますが、一番印象に残るのは、物を見るとか、そういうことじゃないわけでございまして、その地域の心の触れ合いができるかどうか、私はその辺に観光の一番真髄があるんじゃなかろうかと思います。ですから、日本全体ももちろんそうですけれども、熊本県だけは、よそから来たお客さんに熊本の心が通うような、そういった温かみのある観光行政、またそれが目的でなければならないと、このように存じます。どうぞひとつ、大変気の長い話ですけど、がんばっていただきたいと存ずるわけでございます。 次に、最後の質問になりますが、これは地元のことで大変恐縮でもございますが――代表質問その他でずっと質問がなされてきておりまして、用意しました質問が非常に重複しております。そういう関係で二、三抜かした面もございますが、特にこれはお願いを申し上げておかなければならないという私の地元関係の質問をただいまから申し上げたいと存じます。 県北地区の開発、すなわち有明地区新産都市の中核となっております長洲港の港湾整備について、今後どう対処されていくのか、土木部長にお尋ねをいたします。 さきに県が発表した総合計画の「交通基盤の整備」の中で、「本地域における流通及び観光拠点港湾として重要な役割を果している長洲港の港湾機能の拡充をはかり、今後の産業の発展、観光客の増加等に対応し、海上輸送の量的、質的増大に備える必要がある。」という基本的な方針が出されていますが、私なりに所見を申し上げお尋ねをしたいと存じます。 長洲地区は、有明・不知火地区新産都市の一環として昭和三十九年四月に指定を受け、新しい都市づくりの母体となって今日に至っておりますが、幸いにして当地区へは、日立造船を初めとして関連企業十七社が進出し、都市形成の基盤が整備され、これに加えて陸上交通体系として基幹道路整備がなされるなど、地域の発展が始動してまいっていることは御承知のとおりであります。 このような現状の中で、県北唯一の港として、また有明海の玄関口としての長洲港は、有明地区における発展の中核と言っても過言ではありません。聞くところによりますと、隣県の三池港は、昭和六十五年完成を目標として、一千億円の費用をもって約三百ヘクタールを埋め立て、十四バースの岸壁を造成し、中国との貿易を計画していると聞いていますが、完成した場合、長洲港はどうなるだろうかと、私はもちろんのこと地域住民も真剣な疑問を抱いているのであります。また、長洲港の現況を見ますとき、港湾の用地造成は完了していますが、船舶の航行入り口が狭く、加えて水深が浅くて大型船の接岸ができない状況にあり、さらには漁船の船だまりは土砂の堆積がひどく、漁船の航行にも支障があり、加えて本年も台風期に来ており、関係者の不安は一層積もりつつあるところであります。 以上、長洲港の現状を申し上げましたが、今後の港湾整備について土木部長の答弁をお願いいたすわけでございます。 次に、同地域の陸上交通についてお尋ねします。 陸上交通の中心である幹線道路網の整備につきましては、議会のたびごとに論議される問題でございますし、前回登壇のときもお尋ねいたしましたが、有明臨海工業地帯の開発には欠くことのできない問題であり、その後、関係当局により幹線道路の整備が進められていますが、円滑な交通の確保にはさらに事業の促進が必要であると考えられます。 当地区と熊本都市圏を結ぶ国道二百八号線のうち、交通渋滞の著しい玉名市内につきましては、その対策として玉名バイパスが計画され、五十七年には都市計画決定がなされ、事業に着手されると聞いております。また、臨海工業地帯を縦貫する主要地方道大牟田熊本宇土線のうち、長洲港から岱明町、玉名市を経て横島町京泊までは改良が終わり、今年九月には舗装も完了すると聞いており、県の御努力に対し地元民とともに深く感謝しているところであります。 しかし、これに接続し、長洲港から荒尾市に至る区間については、都市計画道路荒尾海岸線として計画決定されているものの、完成までには相当の年月を要すると思われますが、有明地域における道路整備の現況と今後の整備計画の見通しについて、あわせて土木部長の答弁をお願いいたします。  〔土木部長梅野倫之君登壇〕 ◎土木部長(梅野倫之君) お答えいたします。 まず、長洲港についてでございますけど、昭和二十八年九月に港湾法による地方港湾として指定を受けて今日に至っております。特に、有明・不知火地区の新産業都市の指定後は、文字どおり県北部の拠点として港湾整備を進めていたところでございます。 今日までの整備状況は、昭和四十六年から五十六年までに約十七億円をもって、岸壁、物揚げ場、防波堤の建設並びに泊地、航路のしゅんせつ等を実施してきたところでございます。しかしながら、貨物量の増加に伴い現有施設では不足を生じていること、また上流河川からの流入による土砂の堆積により出入船舶に支障を生じていること、その他特に台風時における対応施設の問題等があることは御指摘のとおりでございます。県としても、これらの問題については十分承知しているところでございまして、その対応策といたしまして、現在第六次港湾整備五カ年計画を策定し、計画的に整備を進めていくことにしております。 具体的に申しますと、まず大型貨物船の出入を容易にするため、北防波堤を移設し、狭い泊地を広げること。次に、漁船の出入に支障がないようにするため、船だまりに堆積している土砂をマイナス二メーターまでしゅんせつすること。また台風対策といたしまして、港内に二カ所の船だまり施設及び消波堤防を設けるとともに、漁船の避難施設として船揚げ場を設けるなどの事業を計画しております。幸い長洲町当局におかれましても、これら港湾整備のための期成会ができておりますし、また具体的に行動していただいておるところでございます。県といたしましても整備計画が一日も早く進められるよう積極的に努力してまいる所存でございます。 次に、陸上交通問題でございますが、国道二百八号線玉名バイパスについては、昭和五十六年度九州地方建設局で作成いたしましたバイパス計画案について、建設省都市局と都市計画決定の協議が完了しました。したがいまして、昭和五十七年七月の都市計画審議会に諮るよう手続を進めているところでございます。したがいまして、県といたしましては、都市計画決定が終わり次第、本事業の早期着工が図られるよう国に対して強く要望してまいる所存でございます。 次に、主要地方道大牟田熊本宇土線でございますが、長洲港から岱明町、玉名市を経て横島町京泊に至る約十二・四キロメーターにつきましては、昭和五十七年度までに事業費約四十八億円を投入し、現在供用開始しているところでございます。なお、横島町の約二キロメーター区間については、舗装工事を進めており、本年九月には完了する予定でございます。この道路の完成によりまして長洲港と熊本都市圏を結ぶ輸送力が増大することはもちろんのこと、当地域の発展に大きく寄与するものと考えております。 また、長洲港から荒尾市に至る区間のうち、都市計画道路荒尾海岸線は、大牟田市境界から南へ約二・一キロメーターを街路事業として着工し、昭和五十七年度には約一キロメーターの区間の供用開始をする見込みでございます。残りの延長約六・五キロメーターについても事業計画を進めてまいる所存でございますが、特に長洲港に隣接する区間は、人家が密集しており、道路、港湾、住環境等総合的な検討が必要である地域と考えられますので、今後関係者と十分協議を重ねながら早急に事業化への促進を図ってまいりたいと考えております。  〔平川和人君登壇〕 ◆(平川和人君) ただいま土木部長から積極的にという言葉を聞き出したわけでございますが、有明新産都市のあの埋立地がございます。日立造船があるあの埋立地が、まだ十何万坪か全然工場が入っておりません。これはやはり港湾整備がおくれ道路整備がおくれているからでございます。これはだれの責任でもなく、それができていないから私はここに工場が余り来ないんだというふうに思いますので、早急よりももっと早くひとつやっていただきたいと、このように要望を申し上げて質問を終わりたいと思います。非常に議員の皆さん方おつき合いいただきましてありがとうございました。これをもって終わりたいと思います。(拍手) ○議長(幸山繁信君) 以上で本日の一般質問は終了いたしました。 明十六日は午前十時から会議を開きます。日程は、議席に配付の議事日程第六号のとおりといたします。 本日はこれをもって散会いたします。  午後二時十五分散会...