平成57年 6月
定例会┌──────────────────┐│ 第 二 号(六月十一日) │└──────────────────┘ 昭 和 五十七年
熊本県議会六月
定例会会議録 第二号――
―――――――――――――――――――――――――昭和五十七年六月十一日(金曜日
) ―――――――――――――――――――― 議事日程 第二号 昭和五十七年六月十一日(金曜日)午前十時開議 第一
代表質問(議案に対する質疑並びに県の
一般事務について) ――――――――――――――――――――本日の会議に付した事件 日程第一
代表質問(議案に対する質疑並びに県の
一般事務について
) ―――――――○―――――――出席議員(五十二名) 西 岡 勝 成 君 深 水 吉 彦 君 阿曽田 清 君 橋 本 太 郎 君 松 家 博 君 岩 下 榮 一 君 下 川 亨 君 林 田 幸 治 君 三 角 保 之 君 岩 永 米 人 君 児 玉 文 雄 君 山 本 秀 久 君 古 本 太 士 君 渡 辺 知 博 君 八 浪 知 行 君 杉 森 猛 夫 君 鏡 昭 二 君 高 田 昭二郎 君 柴 田 徳 義 君 広 瀬 博 美 君 浜 崎 三 鶴 君 古 閑 一 夫 君 魚 住 汎 英 君 馬 場 三 則 君 木 村 健 一 君 平 川 和 人 君 北 里 達之助 君 金 子 康 男 君 荒 木 斉 君 井 上 栄 次 君 竹 島 勇 君 今 井 洸 君 米 原 賢 士 君 古 閑 三 博 君 井ノ上 龍 生 君 永 田 悦 雄 君 甲 斐 孝 行 君 八 木 繁 尚 君 幸 山 繁 信 君 池 田 定 行 君 小 材 学 君 沼 川 洋 一 君 水 田 伸 三 君 杉 村 国 夫 君 今 村 来 君 浦 田 勝 君 小 谷 久爾夫 君 橋 本 盈 雄 君 増 田 英 夫 君 倉 重 末 喜 君 中 村 晋 君 酒 井 善 為 君
欠席議員(二名) 宮 元 玄次郎 君 岩 崎 六 郎 君 ――
――――――――――――――――――説明のため出席した者 知事 沢 田 一 精 君 副知事 藤 本 伸 哉 君 出納長 松 下 勝 君
総務部長 原 田 富 夫 君
企画開発部長 岡 田 康 彦 君
福祉生活部長 山 下 寅 男 君
衛生部長 清 田 幸 雄 君
公害部長 山 内 新 君
商工観光労働 部長 八 浪 道 雄 君
農政部長 坂 本 清 登 君
林務水産部長 大 塚 由 成 君
土木部長 梅 野 倫 之 君
有明地域開発 局長 伴 正 善 君
公営企業管理者 松 永 徹 君
教育委員会 委員長 本 田 不二郎 君 教育長 外 村 次 郎 君
警察本部長 廣 谷 干 城 君
人事委員会 事務局長 下 林 政 寅 君
監査委員 井 輝 男 君 ――
――――――――――――――――――事務局職員出席者 事務局長 川 上 和 彦
事務局次長 衛 藤 成一郎
議事課長 小 池 敏 之
議事課長補佐 辻 璋 主幹 山 下 勝 朗 参事 光 永 恭 子 ―――――――○――――――― 午前十時二十五分開議
○議長(幸山繁信君) これより本日の会議を開きます。 ―――――――○―――――――
△日程第一
代表質問
○議長(幸山繁信君) 日程に従いまして日程第一、
代表質問を行います。発言の通告があっておりますので、これより順次質問を許します。 なお、質問時間は一人九十分以内の質疑応答でありますので、さよう御承知願います。
自由民主党代表永田悦雄君。 〔
永田悦雄君登壇〕(拍手)
◆(
永田悦雄君) おはようございます。
自由民主党の
永田悦雄でございます。六月の県議会におきまして、その先陣を承り党を代表して質問をいたします。あらかじめ通告をいたしておきましたので、通告に従いまして順次質問を進めてまいります。 さて、きょうは暦の上では入梅となっておりますが、ことしの梅雨は、気象庁の予報によりますと陽性型で雨が少ないと、このように予報されておることも御承知のとおりでございます。ことしは、特にわれわれ農家は期待と不安を抱きながら、ただいま農繁期に突入しておるわけでございます。知事、執行部におかれましては、ただいまよりの私の質問につきまして、適切、明快にお答えをお願い申し上げたいと思います。それでは早速質問に入らせていただきます。 まず質問の第一は、水俣病について申し上げます。
水俣病対策につきましては、県政の重点課題として議会並びに執行部が一体となり取り組んできたところでございますが、当面する問題のまず第一に掲げますことは、
チッソ県債の問題でございます。第二点は、水俣湾の
堆積汚泥処理事業の今後の見通しについて、三番目には、認定業務の促進といった点について質問をいたします。知事の所信をお尋ねいたす次第でございます。 まず第一に、
チッソ県債問題に関しましてお伺いをいたします。 本
会議冒頭での知事の
提案理由説明にもありましたように、本議会に提案されております補正予算は、
チッソ県債継続発行の第一回分二十二億八千四百万円でありますが、これをこれまでの七回分、計百六十七億二千九百万円の発行額と合わせますと累計百九十億一千三百万円の巨額に上るわけでありまして、県財政に与える影響は少なからぬものがあろうかと考える次第でございます。 この
チッソ県債問題につきましては、御承知のように、国は昨年十一月、
水俣病関係閣僚会議を開催し、チッソに対する
金融支援措置を今後も継続するものとし、県に対しては昭和五十九年度
補償金支払い分まで県債を発行してほしいとの要請を行ったところでございます。昨年十二月県議会におきましても、県財政の将来を左右するきわめて重要な問題であることから慎重かつ真剣に討議が重ねられたわけでございます。その結果、国及びチッソに対しまして今後の対応について最善の努力を重ねていくよう一定の条件を付した上で、国の要請を受け入れることは、チッソの経営の現状から見ましてまことにやむを得ないとの結論を得るに至った経緯がございます。 申し上げるまでもなく、昨年十一月のこの
水俣病関係関僚会議は、
チッソ県債問題に関して国の責任ある積極的な対応を求めた本県の強い要望を背景に開催されたものであることは御承知のとおりでございます。具体的には、
申し合わせ事項の一つとして、チッソの
経営基盤の
維持強化を図るための同社の子会社に対する日本開発銀行の融資について了解がなされたところでございます。この
開発銀行融資の実現につきましては、先ほど申し上げました十二月県議会で付された条件の第一番目に取り上げられておりまして、
県債継続発行の重要な
前提条件であるとして、県議会としてもその早急な実現を強く求める
旨意思表明がなされてきたわけでございます。 そこで、このような経緯を踏まえまして、当面の大きな課題である
開発銀行融資の実現についてお尋ねをいたします。 さきの
新聞報道によりますと、開銀は、チッソの
主要子会社の一つであります
チッソ石油化学に対し約四十億円の融資を行う意向を固め、またチッソの
関係金融機関も、これに合わせ
協調融資を行う方向で検討を始めたとのことでございます。知事の
提案理由説明によりましても、今回の
金融支援協議会におきまして、国側から
開銀融資が期待できる旨表明されたことも御承知のとおりでございます。 私どもは、チッソがその再建を通じて、
患者救済、
地域振興という
社会的責任を完遂できる日が一日も早く到来することを願うものであります。この観点から、
開銀融資の見通しについて御答弁をお願い申し上げます。 次に、このような
金融支援を受けているチッソの経営の現状、さらには今後の
再建見通しについてお尋ねをいたします。 御承知のように、
わが国経済は、個人消費や
民間設備投資の伸び悩み等の要因によりまして停滞を続け、景気は総じて低調に推移していることは御承知のとおりでございます。
石油化学業界におきましても業績の低迷が見られていると聞き及んでおります。このような状況の中でチッソは、去る二日、昭和五十六年度の決算を発表いたしました。
新聞報道等によりますと、
経常損益の部においては三千百万円余の黒字を生じておるものの、
累積赤字はさらにふえ六百五十億円余に達したとのことでございます。 チッソにおきましては、同社の
主要子会社も含め、昭和六十年度までに
チッソグループとして
収益基盤を徹底的に強化することをねらったいわゆる
再建計画を策定し、すでにこの計画に沿い
各種事業の合理化、
新規分野事業への
取り組みに着手しているということでございます。また、通産省や
日本興業銀行等は、六十年度までには一応再建のめどが立つとこの計画を高く評価しているとのことでございますが、今後、この計画の展開の見通しという観点からもチッソの
経営状況につきまして大きな関心が持たれるところでございます。 これまで本県におきましては、昭和五十三年六月の閣議了解に基づき
県債発行という方法によりチッソに対して
金融支援を行ってきたところであり、またチッソの
取引金融機関におきましても、同社に対して元本償還の凍結、金利の減免等という
金融特別措置を講じてきております。さらにまた、昨年十一月の
水俣病関係閣僚会議の
申し合わせを踏まえ、今後もチッソに対し強力なる支援が続けられることが予定されているところではございますが、同社の
経営基盤の
維持強化を図るためには、このような
関係各界からの支援もさることながら、再建へ向けての
チッソ自体の
経営努力が大きな前提であることは申し上げるまでもございません。そこで、チッソの経営の現状並びに今後の見通しにつきまして御答弁をお願い申し上げます。 なお、
チッソ県債問題につきまして最後になりますが、昨年十二月県議会におきましては、先ほど申し上げましたように、
チッソ県債継続発行の
前提条件という形で、チッソに対しまして特に、一つ、
チッソ県債の償還について
主要子会社と一体となって責任を持つことを明らかにすること、二つ、
水俣工場を主体に地域の雇用の安定に努めること、この二点につきまして最善の努力を重ねるよう強く要望がなされ、県議会として今後の同社の対応を見守りながら対処することとされたところでございます。知事におかれても、チッソの
対応状況を十分見きわめながら、その監視を続行されますことを強く要望する次第でございます。 次に、水俣病問題に関しまして、水俣湾の
堆積汚泥処理事業、いわゆる
ヘドロ処理事業につきましてお伺いをいたします。 先月、新聞、
テレビ等におきまして報道されたとおり、第一工区の緑ノ鼻地区におきまして、
護岸堤防構築のための巨大な
鋼矢板セルの打ち込み工事が二十五日から開始されました。私も先日、現地を視察する機会を得まして、
ヘドロ処理事業は順調な進捗を見ているとの説明を受け、また現にこの目でつぶさに湾内のすみずみまで一巡をし、安全確認のための厳しい
監視体制等につきましてもあらかじめ承知しておりましたが、現地に行きまして、さらに厳重なその
監視体制があることを見まして非常に意を強くしたわけでございます。これまでの知事、執行部、環境庁、
運輸省等それぞれの
関係機関、特に本県の
出先機関であります現地の
水俣湾公害防止事業所の職員の皆さんが、大変厳しい
勤務状況の中でこの
事業推進のために真剣な
取り組みをしておられる姿を見まして、心から敬意を表した次第でございます。この場をかりまして、諸君の日ごろの
取り組みについて改めて敬意を表す次第でございます。 御承知のとおり、この
ヘドロ処理事業は、水俣湾一円の環境を浄化し、
地域住民の健康と安全を守ることを目的とした
公害防止事業として、昭和四十九年度から五十八年度までの十カ年計画で始められたものであります。総事業費は約二百三億円、このうち
公害防止事業費は約百九十三億円という巨額の事業でありまして、チッソは公害の
原因企業として百二十五億円余を負担するものとされているところでございます。 しかしながら、工事の安全性をめぐる工事の差しと
め仮処分申請がありましたため、一時工事が中断し、本格的な工事が開始されましたのは五十五年からでありますので、当然のことながら
工事期間の延長といった問題や
物価上昇等による事業費の増加といった問題が今後必ず生ずるものと思われます。この点につきまして、最近の一部報道によりますと、一つ、現在の計画が昭和五十八年度で期限切れとなるため、県は
計画期間の延長と事業費の見直しを検討している、二つ、総事業費は四百七十億円程度になるものと見られ、
うちチッソの負担額は三百億円程度となり、現在の負担額に比べ二百億円相当の負担増となる旨報道されたところでございます。 このような事業費の見直しは、県の負担増に直ちに結びつくものでありゆゆしき問題ではありますが、他方、水俣湾の環境浄化は、
地元住民はもとより県民ひとしく期待しているところでありまして、
ヘドロ処理事業の進捗を図るためにはやむを得ない面があろうかと思う次第でございます。 そこで、知事、執行部におかれましては、この点いろいろと御苦心があろうかと存じますが、事業費の見直しがいずれ必要となってくるものであるのか、そうであるとした場合、その内容はどのようなものになるのか。特に、チッソの負担額が増大することとなった場合に、チッソの
再建計画に何らかの影響が生ずることとなるのか。こういった点につきまして、現状を踏まえ知事の御答弁をお願いいたします。御答弁をいただきまして再登壇をいたします。 〔知事
沢田一精君登壇〕
◎知事(
沢田一精君) お答えをいたします。
チッソ県債の
継続発行につきましては、去る十二月県議会におきまして慎重に御審議をいただき深く感謝申し上げておるところでございます。いま御質問の中にもございましたが、十二月県議会におきまして付されました条件の中の
開銀融資について、その見通しはどうかとのお尋ねでございますので、まずお答えを申し上げます。 御承知のように、
チッソ株式会社は、すでに開銀に対しまして、昭和六十年度までの
設備投資に要する
融資期待額百三十億円のうち約五十億円の融資の申し込みを行っているところであります。今回融資の対象とされておりますのは、この五十億円のうち、
チッソ株式会社主要会社の一つであります
チッソ石油化学株式会社の
オクタノール製法転換工事に要する約四十億円についてでありますが、開銀はすでに実地調査も完了しておりますので、私といたしましては、この融資が近く実現されるのは間違いない段階まで来ているとの感触を得ており、近く決定されるものと考えております。 御質問の第二点は、
チッソ株式会社の経営の現状、再建の見通しについてでございます。 お尋ねの中にもございましたように、
わが国経済を取り巻く環境は非常に厳しいものがあり、中でも
石油化学工業界におきましては、昭和五十五年度以降、内需の低迷に加え、原料価格の高騰、
輸入製品の増加等の悪条件が重なりましたため減収減益を招き、昭和五十六年度におきましては多くの企業が
赤字決算を余儀なくされている現況のようであります。このような厳しい状況の中にありまして、
チッソ株式会社におきましては、昨年度の決算において、ともかく
収支ベースでわずか三千万円程度ではありますが黒字を出しているわけでございます。 この収益の内容を若干説明いたしますが、まず
水俣工場におきましては
製造部門で十七億五千万円の赤字を出しております。
電気部門で十二億八千万円の黒字となっております。
差し引き水俣工場におきましては四億七千万円の赤字となっております。それに
水島工場の赤字二億四千万円を加えますと、
チッソ株式会社の赤字額の合計は七億一千万円と相なるわけでございます。一方、
チッソ株式会社は
五井工場製品及び
他社製品を販売して得た利益が七億四千万円程度ございます。この結果、
チッソ株式会社は、ただいまお述べになりましたように三千万円余の経常利益を計上できたという内容になっておるようであります。 また、
チッソ株式会社からの説明を受けてみますると、
水俣工場におきます
赤字要因の大部分は
塩化ビニール部門の損失となっております。この
塩化ビニール部門につきましては、昨年十二月、
塩化ビニールモノマーの
生産部門を停止いたしまして安価なモノマーを購入することとし、また
塩化ビニールポリマーについては
新鋭設備に取りかえる等の
合理化対策が実施されたところでございますので、昭和五十七年度以降は、このように大幅な赤字を出さないでもよい体質ができ上がりつつあるというふうに考える次第でございます。現状のまま推移いたしますと、五十七年度におきましては
水俣工場部門におきましても、ある程度の収益が見込まれるというふうに考えております。 ちなみに、五十六年度中に、
チッソ株式会社が苦しい
経営状況の中から、その
合理化対策として、ただいま御説明申し上げました
水俣工場及びその関連施設に投資いたしました額をひっくるめて申し上げますと総額で八億三千万円になっております。その内訳は、
塩ビ樹脂関係が四億一千万円、
塩ビモノマー関係が二億四千万円、
液晶関係四千万円、発電所の水路等の補修費七千万円、
電子材料関係等七千万円となっております。苦しい
経営状況の中から、ただいま申し上げましたように、五十六年度単年度におきましても、このように八億三千万円に上る前向きの投資が行われ始めたことは評価してよろしいのではなかろうかと、このように考えるわけでございます。このような
チッソ株式会社の姿勢に対しまして、
通産省当局も、厳しい環境の中でよくがんばっていると現時点では一応の評価をいたしておるようでございます。 これらのことから、私も、
水俣工場につきましてはようやく再生の時代に入ったと受けとめております。
チッソ株式会社も、これら
合理化対策の効果が徐々にあらわれてまいりまして再建のめどが立つと言っておりますので、
チッソ株式会社に対しましては、今後とも
経営基盤の
維持強化を通じ、自前で
患者救済が図られますよう最大限の努力を傾注してもらいたいと強く要望を行っておる次第であります。 なお、御要望にございました、
チッソ株式会杜に対する条件の一つであります
県債償還に当たりましてオールチッソとしての責任を明確にせよとの件につきましては、現在ほぼ煮詰まってまいっておりますので、近く議会に御報告できるものと考えております。 御質問の第二点、
水俣病堆積汚泥処理事業の今後の
見通し等についてお答えをいたします。 御指摘がございましたように、この事業は、
地域住民の健康と安全を守ることを目的として昭和四十九年度から十カ年計画で始めた
公害防止事業でありますが、遺憾ながら途中、
工事差しと
め仮処分申請による工事の中断、またこの間における物価の変動などの理由で、現時点での工事の
進捗状況から見ましても、
工事期間の延長と事業費の見直しが必要となっておることは事実でございます。 事業費の見直しに当たりましては、工事による二次災害を絶対に発生させないことが第一の課題でありますので、経済面ももちろん考慮する必要がございますが、日進月歩する技術革新の中で、第一工区のこれまでの施行実績を踏まえまして、詳細かつ慎重に今後の工法について
運輸省当局と協議を行っておる現況でございます。現時点ではまだ煮詰まってはおりませんが、工期については、あと七年ないし八年を要し、事業費については恐らく当初の二倍以上になると予想しているところであります。 また、見直しに当たりましての今後の見通しでありますが、
チッソ株式会社に対する
費用負担計画を変更する前提として、
公害防止事業費事業者負担法の規定により
県公害対策審議会の意見を聞く必要がございますので、煮詰まりましたならば、なるべく早くこの審議会に諮問し、その答申を得たいと思っております。なお、その間、同法の所管庁である環境庁を初め
関係省庁との協議も必要であることはもちろんでございまして、この面につきましても幾らかの時日を要するのではないかと考えております。しかしながら、事はきわめて重大なことでありますので、この問題を今後進めるに当たりましては県議会の御意向を十分に尊重してまいりたいと考える次第であります。 また、事業費の見直しが
チッソ株式会社の
再建計画に大きな影響を与えるのではないかという御懸念でございますが、今後の事業費の見直しに伴い同社に対する
費用負担計画も変更され、したがいまして将来的には同社の負担額もその分相当増加することとなり、将来の経営に影響が生ずることは否定できないものと考えます。しかしながら、当面は、
チッソ株式会社の
再建計画が昭和六十年度までとされており、また同社の負担額につきましては、この事業に関する限りは五年据え置きで三十年の
長期分割納付が認められておりますので、この面からは
再建計画に直接的に大きな影響は生じないものと考えます。 なお、
水俣湾堆積汚泥処理事業に要する事業費のうち
チッソ株式会社の負担分については、ほぼ全額を政府資金の起債によっているということでございます。また、この事業に伴い湾内に広大な造成地が生ずるということにもなりますので、この問題は、ストレートに考えますならば、いわゆる
チッソ県債とは幾分異なった面があることは否定できないと思う次第でございますが、いずれにせよ、私といたしましては、
チッソ株式会社が一日も早く健全な経営状態となり、あらゆる面でその社会的な責任を果たし得ることとなりますようこいねがうものであります。この面から、
チッソ株式会社の
再建計画の進展について、国、
関係機関に対しさらに強力な支援方を今後とも要請し続けますとともに、今後この事業費の改定がなされたとした場合におきましては、同社の分割納付等の条件につきましても特段の配慮がなされるよう国に対し要望しなければならないと考えております。引き続き議員各位の御指導、御支援、御協力を切にお願いいたします。 〔
永田悦雄君登壇〕
◆(
永田悦雄君) ただいま知事から質問に対しまして丁寧な御答弁をいただきました。私も、せんだって、申し上げましたように現地を訪れまして、水俣病の長い歴史と、これからさらにその地域発展につながるところのいろんな
事業推進等を見まして本当に心強く感じたわけでございます。
チッソ県債の問題、さらにはチッソの経営の現況と今後の見通しについてもるる御答弁がありましたが、チッソに言わせますならば、ここ数年は資金的な制約のため設備の維持のみがその仕事であった、しかし五十六年度以降今年度からは、
水俣工場の抜本的な合理化と、さらに新規事業の採択によりまして前向きの投資ができてまいりました、これも県議会初め
関係機関の御指導のおかげでありますと大変感謝をしておられました。そのチッソの県債並びにこれからの見通しにつきましては、開発銀行の審査も終わり近くその決定も届くようになっております。また、六十年度目標にチッソ工場の再建のめどが立ちましたと、きっぱり社長さんもおっしゃいました。 ただいま知事から御答弁いただきましたことにおおむね了解をいたしまして、今後の問題といたしまして、審議会の意向を十分踏まえながら県議会とも相談をし、慎重にこの問題解決のために前向きで対処してまいりますと、このような御答弁をいただきましたので、一応了解して次の問題に移ります。 次に、工事の安全性に関してお尋ねをいたしますが、これは要望に切りかえます。 知事、執行部におかれましては、
ヘドロ処理事業の実施に当たっては二次公害を絶対に発生させないように監視を徹底させる旨、いままで事あるごとに述べてこられました。また、その
事業推進には、綿密な監視実施計画にのっとり慎重な監視を続けておられることも十分承知をいたしております。しかしながら、工事もいよいよ本格化してまいりまして、海上での作業も多様なものとなり、工事用船舶の往来も頻繁になってまいりますと、思わぬところで不測の事態も起こりかねません。そこで、今後とも安全性の確保にはなお細心の注意を払っていかれますよう、この機会に改めて要望いたしておきます。 次に、
水俣病対策につきまして、最後に、その中心的課題でありますところの認定業務の促進に関しまして要望を申し上げます。 最近の報道や現地水俣の検診センターの職員のお話を聞きましても、水俣病認定申請者の方々の検診拒否が続いていることによりまして、審査の前提となる検診資料が整わず、今後の認定審査会の開催が危ぶまれているとのことでございます。認定業務の促進を図っていくことは、水俣病問題解決のための基本的な施策であり、県においては、これまで国に対し各般の要望を重ねてきたところであり、また熊本大学を初め医学部関係者、各
関係機関の御協力をいただきながら、さらには本県の
出先機関であります現地水俣病検診センター職員の日ごろのじみちな積み重ねも加えまして、認定業務の促進について鋭意努力をされているところでございます。県議会におきましても、制度の改善や国庫補助枠の拡大等につきましても、執行部ともども最大限の努力を傾け、国に対し要望をいたしておるところでございます。 このような状況の中で、一昨年九月以来、認定申請者の方々が県の再三の呼びかけにもかかわらず検診を拒否しているという事態が続いておりますことはまことに憂慮すべきことでございます。また、これらの方々が被害救済の道をみずから閉ざしていることをはなはだ残念に思う次第でございます。 すでに報道されておりますように、知事は、環境庁長官との会談あるいは申請者団体との話し合いを通じ事態の解決を図るべく最善の努力をしておられることも存じておりますが、今後とも
関係各界との話し合いを通じ正常な姿で認定業務が促進されることとなりますよう、なお一層の努力を要望いたす次第でございます。 次に、行政改革の問題についてお尋ねをいたします。 新聞、
テレビ等による報道も盛んに行われておりますように、国においては、第二次臨時行政調査会が七月の基本答申に向けて各部会からの報告を次々と徴してきたところであり、特に、われわれ地方自治を担う者として、その動きに対し注目しておりましたところ、第三部会の報告が去る五月二十四日に土光会長にあてて提出されたところでございます。もちろん、三公社五現業に関する第四部会報告を初め、一国民として国の行政改革については注意深く見守っていく必要があるわけでありますが、県議会といたしましては、まずもって臨調の意向なり国の改革なりが本県に対してどのような影響を及ぼすものであるかという点が最大の関心事でございます。 折しも、知事は、年頭より県独自の行財政改革に取り組む旨表明され、約半年の間検討を続けてこられたと承っております。まず、県自体で進めておられる改革との関連において、ただいま触れました臨調第三部会報告をどのように受けとめておられるのか。各地方団体においては、理念なりあるいは方向なりについては大方賛意を表しつつも、国の過剰関与や補助金の整理合理化につき具体的な指摘を欠く点を物足りないと見る向きがほとんどであるように思います。知事のこれに対するところの御見解をお尋ねいたします。 次に、県独自の行財政改革についてお尋ねをいたします。 知事が行政改革を本年の重要課題の一つとして本格的な
取り組みの姿勢をお示しになったことについては、県議会といたしましても高く評価をするところでございます。ただ、わが党も、行政改革を真に実りあるものとするためには、やはり単なるトップダウンの号令ばかりでなく、職員一人一人が意識改革をすることが一番大事なことだと思います。 そこで、このたびの行財政改革の推進に当たっては、このあたりに対する配慮、また実際にそれが仕事の上においてどのような結果を期待されたか、お尋ねする次第でございます。 第二に、行財政改革のスケジュールについては、さきの県議会でも、七月を目途にできるものからという決意のほどをお示しになりましたが、改革ということの性質上なかなか一朝一夕に片づくといったものではないと思うのでございます。したがって、七月から直ちに実行されること、さらに検討を続けられることもあろうかと思いますが、さしあたりどのような改革から手をつけられるのか。 行財政改革で通常取り上げられます項目として、事務事業の見直しとか組織の簡素合理化とかが検討されているであろうことは大体推察できるものでございます。具体的にはどういうことを実施していこうとされているのか。きょうの熊日のトップにも出ておりましたように、素案の一部は報道されておりますが、その内容についてそろそろ固まったものと思います。知事のお考えをお聞きしたいと思います。 また次に、当然ながら七月以降もこの改革運動をお続けになることと考えておりますが、そのように承知してよろしいのか確認しておきたいと思います。あわせて、七月以降の見通しも含めてお答えをいただきたいと思います。 最後に、行財政改革について、これが一番大切なことになると思いますが、改革実現への決意のほどをお伺いいたします。 国等においてもそのようでありますが、改革が具体化するに従って各論反対の声が強まり、実質的な改革が骨抜きにされる例が間々見られるようでございます。しかし、本気で改革に取り組まれるのであれば、県政全般の向上を図る観点から、多少の反対はあっても、なすべきことは断行するという気概が必要であります。いま国、地方を通じて行財政改革の機運がまさに高まったところでございます。この機を逸しては実のある行財政改革を実行する機会を失ってしまうのではないかと危惧するわけでございます。知事は、三期十二年の実績の上に立って、ひとつ勇断を持ってこのたびの行財政改革をお進めいただくよう、強い要望を兼ねて知事の決意をお尋ねする次第でございます。 御答弁をいただきまして再登壇いたします。 〔知事
沢田一精君登壇〕
◎知事(
沢田一精君) 行政改革問題についてお答えを申し上げます。 御質問の第一点は、国と地方の機能分担等のあり方に関する臨調第三部会の報告をどう受けとめているかということのようでございました。 私も、他の地方自治体関係者と同様、第三部会が地方分権推進の視点に立ちまして、住民に身近な行政はできる限り住民に身近な地方公共団体でという考えを採用したことについては一応評価するにやぶさかではありません。しかしながら、私どもが年来主張しております機関委任事務の問題、地方事務官制度の問題、補助金の問題等について、従来以上に踏み込んだ具体的な提言がなされていない点については大変残念に思っております。 これらの問題につきましては、地方制度調査会でもしばしば答申を行ってきているところでありまして、行政改革の一環として改めて国と地方の関係が諭ぜられるとすれば、まずこれらの点についてのより具体的な指摘がなされるべきであると考える次第であります。現状からいたしますと、七月の基本答申に、われわれ地方が望んでいる内容が織り込まれることが余り期待できませんけれども、今後の部会審議と最終答申に期待をいたしたいと考える次第であります。 第二点の御質問は、県独自の行財政改革についてであります。 まず、御質問の中で御所見を拝聴いたしましたように、職員一人一人の意識の問題について大変大事であると思うわけであります。今回の改革に当たりましては、当初から下からの盛り上がりを重視する方針を掲げた次第であります。現に、一月から去る三月にかけて行いました事務事業改善に関する各所属職員の提案の募集に際しまして、約四百件にも上る改善項目が提出されました。職員の意識改革のスタートとしてはまずまずのものではなかろうかと考えております。もちろん意識の改革といった問題は一朝一夕に成るものではございません。じみちな努力をさらに継続していく必要があると考えております。 次に、この七月から実施を考えております改革事項についてであります。項目的には相当数に上りますため、そのうち重立ったものについてだけ申し述べさせていただきたいと存じます。 まず第一は、事務の簡素合理化ということでございます。この事務の簡素合理化の観点からは、部長から課長あるいは
出先機関長への権限委譲に係るものや、財務会計事務のオンライン化への
取り組み等を含め、ただいまお答えいたしました約四百件の提案の中から六十件をさしあたり実施に移すことを考えております。 第二は、組織機構の見直しについてであります。
有明地域開発局を廃止いたしまして土木部等へ引き継ぐことを初め、本庁組織については各部局ごとに原則として一課を削減いたしますほか、
出先機関についても、住民サービスの低下を招かぬよう管理部門の見直しを中心とした合理化を進めることといたしたいと考えております。他方、昨今の経済情勢にかんがみまして、重要性が増していると考えられるたとえば企業誘致部門につきましては、専任組織を
商工観光労働部に設けることといたしたいと考えております。 第三に、県組織の活性化を図りますため、職員の民間研修派遣等を実施するなど研修体制の充実を図りながら、県の組織全体としての能力向上に資したいと考えております。 なお、七月以降の行財政改革の推進についてでございますが、事務事業の見直しに限って見ましても約二百件の継続検討事項が残されております。そのほか、各種審議会等のあり方や市町村との権限委譲の問題など、いま考えられるだけでも相当の課題が存在しております。また、冒頭お答えいたしました臨調第三部会の提言等が今後なされることとなれば、これらも加えまして県としての対応を考えていかなければならないことはもちろんでございます。したがいまして、七月以降も引き続き改革作業を進めていかなければならないものと考えております。 最後に、私の改革実現への決意についてお尋ねがございました。 御指摘のとおりでございまして、行政改革では常に、何をしようとするのかということ以上に、実行するのかしないのかということが大きな課題とされるものであります。改革という事柄の性質上、県組織の内部外部を問わず、だれもがもろ手を挙げて大賛成というぐあいにはなかなかいきがたいものばかりでございまして、十分な話し合いにより適切な合意を導きつつ改革を進めたいと考えておりますが、私としては、この際、これまでの日常的な改善努力のみではなし得なかったことを含めまして、時代の流れに即応した県行政のあり方を模索しながら勇断を持って今後の行財政改革を断行していく決意であることをお答えいたしたいと存じます。 〔
永田悦雄君登壇〕
◆(
永田悦雄君) ただいま知事から、行財政改革問題、特に臨調の第三部会報告に対するところの見解、これについて具体的な大綱をお示しになりました。先般、共同通信社の第三部会報告に対する九州各県知事の評価と、これについての意見の掲示がなされておりました。すでにもう御承知のことと思いますが、沢田知事は、まず一つ、具体性に欠け地方の実情をよくわかっていない、二つ目が、採点にはまだまだ至っておらないだろうと、このように手厳しい意見と評価をなされているのは皆様御承知のとおりでございます。ただいま知事の県行政改革に対するところの意欲と勇断を持ってやりますと力強い決意をいただきましたので安心をいたしまして、次の質問に移らせていただきます。 八〇年代県計画の推進につきまして知事にお尋ねいたします。まず質問の第一といたしまして、県計画二年目の知事の姿勢についてお尋ねするわけでございます。 県では昨年四月、昭和六十五年までの十年間を展望した長期計画、八〇年代熊本県総合計画を策定し公表されました。八〇年代という不透明で先行きの見通しがきわめて困難であると言われる時代を迎えるに当たりまして、あえて
県政推進の基本方向を示されたこの計画に対しましては、地方の時代にふさわしく、地方からの発想を重視した地域主導型で、しかも経済発展をすべての判断基準とした従来の考え方から脱却して、人間尊重、生活優先の理念に立脚したものであるとして各方面から評価されております。私といたしましても、沢田県政になって昭和四十八年の県基本構想策定以来初めてのこの総合計画が、県政を取り巻く社会経済情勢について十分な認識の上に立って、さらには県民の要望や価値観の変化等を踏まえ、地域の特性や課題を整理し、具体的な振興計画を示しながら、知事という重責を認識し、長期的な展望に立って政策運営に誤りのない
県政推進を目指したものとして積極的に評価をしているところでございます。 さて、このような県計画がスタートしてから一年を経過しまして二年目を迎えた段階でありますが、わずかこの一年の間におきましても内外の諸情勢は著しく変化をし、ますます厳しさを増しているかに見受けられるのでございます。まさに不確実な困難な時代であります。昨年暮れ以来のポーランド問題や、ことし四月に入りましてから突発いたしましたフォークランド諸島をめぐる紛争を見るまでもなく、国際社会におきましては、多極化の進展と国際緊張の高まりが続いております。また、アメリカやEC諸国におけるインフレの進行とともに、一千万人を超す失業者の増大など世界的な不況が深まる中で、これまで輸出の拡大を続けてきた日本に対して貿易不均衡の是正が強く求められており、経済大国として世界経済に大きな責任を負っているわが国といたしましては、今後ますます激しい外圧を受けることが予想されるのでございます。このことが、農業を基幹的産業の一つとしている本県にとりましてもきわめて憂慮すべき問題となっていることは御承知のとおりでございます。 一方、国内経済を見ますと、消費の低迷による景気の停滞が長く続いております。このため、
新聞報道等によりますと、五十六年度の国の決算では三兆円にも上る歳入欠陥が伝えられております。 このように、わが国内外の社会経済情勢はきわめて厳しく、また今後とも大きく揺れ動きながら推移していくものと思われますが、このような時期であればこそ計画性と整合性を持った県政の展開が必要であると考えるのでございます。八〇年代熊本県総合計画は、まさにこのような時代的背景のもとにつくられ、本県の進むべき道を明らかにしたものであり、それぞれの施策が県計画で掲げられました基本方向と整合性を保っているかどうかは常に検証されていかなければならないと考えるものでございます。 そこで、お尋ねしたいことの第一は、県計画が目標として掲げているところの対比で、スタートの年である昨年度の県政の諸施策は総合的にどのような成果を見ていると考えておられるのか、このことについてまず第一点お尋ねをいたします。もちろん、十年の長期計画における初年度でありますので、計画の十分の一の成果を期待してのことではなく、今後計画を実施していくに当たっての素地がどのように固められておるのかということでございます。 次に、計画が公表された直後の昨年七月、国の第二次臨時行政調査会からの行政改革に関する第一次答申が出されて以来、行政改革が政治上の大きな課題となっており、行政の簡素化やあるいは補助金等の整理合理化等いろいろのことが言われております。また、国、地方を問わず財政事情はきわめて厳しいばかりでなく、今後これが早い時期に改善されるということを期待できる状況にはございません。 このような四囲のいわば試練のときとも言うべき時代を進むに当たって、県民の衆知を集めて策定されましたこの八〇年代熊本県総合計画を知事はどのような姿勢で推進していこうとされておるのか、また、計画に掲げられました目標達成についてどのような見通しを持っておられるか、知事の御所見をお伺いいたしまして再登壇をいたします。 〔知事
沢田一精君登壇〕
◎知事(
沢田一精君) 近年しばしば地方の時代ということが言われる中にありまして、かねてから私は地域社会の連帯感に基づく新しい豊かさを目指したふるさとづくりを提唱いたしてまいったところでありますが、不確実、不透明と言われる八〇年代を迎えるに当たりまして、このようなときにこそ県民が望む幸せは何であるかということを考え、求める新しい豊かさとは何かを真剣に考え、県全体として進むべき道を明らかにする必要があると考えまして、昨年、一九八〇年代の冒頭において熊本県総合計画を策定し、公表したところであります。 その後、これまで一年を経過する過程におきまして、国の内外の経済情勢を初めとするいろいろな情勢は以前にも増して不安定要因を増大させてきておることは、いま御質問の中でお述べになりましたとおりであります。内外の情勢の変化は、御指摘の農業についてはもちろんのこと、本県における経済社会情勢全般に対しましても直接間接に大きな影響を与えるものでありますが、幸い本県におきましては、一九七〇年代を通じ国全体が厳しい経済情勢のもとに推移してきた中にありまして、熊本県経済は総じて順調な伸びを見せてきており、福祉の充実や県民生活の向上等のためのいろいろの基盤も著しく強化されてきたと考えております。また、いま御質問の中にございましたように、国、自治体とも非常な財政難に陥っております中で、幸いにして本県は、五十七年度の県当初予算も御承知のような状態で編成することができた次第でございます。 八〇年代熊本県総合計画は、この一九七〇年代の県の成果を踏まえて策定したものでありますが、昨年度は特に計画の初年度でもあり総合計画に掲げられた施策の積極的推進に意を用いた次第であります。計画に掲げております主要な事業につきましては、現在全庁的に県計画の進行管理を行っておりまして、事業の
進捗状況を総合的に把握することといたしておりますが、総合計画を策定発表しまして以来約一年間の基本的な具体的な事項について、例示的に若干申し述べたいと存ずる次第でございます。 基本計画は、第一に、心触れ合う快適な地域づくりの推進、第二は、豊かな生活を支える産業の振興、第三は、健康で明るい社会の建設、第四は、あすを開く人づくりの推進、こういったことを基本的な柱として掲げておることは御承知のとおりであります。 その中でいろいろなことがなされてまいったわけでありますが、たとえば今年度から社会福祉振興基金が創設をされることになりました。また先般、御承知のように、私どもの長年の悲願でありました九州中央山地国定公園の指定がいよいよ本決まりになったわけであります。こういった将来へ向かっての快適な地域づくりのための基盤の整備ということがなされようとしております。 豊かな生活を支える産業の振興。外圧の中で、いかにして第一次産業を戦略的にさらに安定したものにしていくかということは、もちろん日常努力をいたしているところでございますが、本県の将来にとりましてやはり何としましても一番大きな期待を持つものは、熊本テクノポリス建設構想の推進であると思うわけであります。全国に先駆けまして熊本がテクノポリス建設構想の候補地点として名のりを上げ、基本計画が各方面の御協力によりまして策定され、中央におきましても相当の話題を呼んでおりますことは、県の将来にとりまして大変夢の多いことだと思うわけであります。あるいは先般、熊本国際空港ターミナルビルの着工を見たわけでございます。やはり何といたしましても将来の空の拠点といたしましての熊本空港の整備、今年度中には国際線ターミナルビルが竣工をいたすわけでございますが、さらに国際的にも門戸を開く基盤となるものと期待をいたしております。 健康で明るい社会の建設といったようなことと関連して若干申し上げますと、これも長年の私どもの希望であります南阿蘇大規模年金保養基地の建設計画がいよいよ具体的に推進をされようとしております。あるいは県で計画をいたしております総合保健センターの基本計画ができまして、その準備が進められていきつつある現況でございます。 あすを開く人づくりの推進。いろいろな観点から問題はあると思うわけでございますが、県の大型施設として建設を急いでおります県立劇場、あるいは県立総合体育館、あるいはその次に来る大型施設として県立図書館等の大型施設の建設が一応順調なテンポで進められておりますことは御承知のとおりであります。 最後に、国際的な視点から若干申し上げますが、中国あるいは米国、韓国等に対しまする友好関係の締結、これは県議会の全面的な御指導、御協力もございまして順調に進められようといたしておるわけでございます。 以上、若干のことについて具体的に申し上げましたが、このように内外の厳しい情勢のもとにありながら、七〇年代に築き上げました本県の成果を今後に向けてさらに継続発展させていく上で、計画の初年度としましてはかなりの実績を見ることができたものと考えておるところであります。しかし、今後さらに厳しい情勢が続くと覚悟しなければならない時期でございますので、あくまでも中長期的な展望に立って、この総合計画の基本的な精神に沿った整合的な施策の推進が必要であると考えておる次第でありまして、総合的かつ計画的な県政の運営を行っていきます中で、計画の実現に最大限の努力を傾注してまいりたいと考えております。 最後に、特に私の所信を申し上げておきたいと思うわけでございますが、この八〇年代熊本県総合計画の一つの大きな特色は、この計画の中に各地域の地域計画というものを織り込んだ点でございます。それぞれの地域の特色を十分に生かしまして、それぞれの地域に住んでおられる人々の発想を十分にくみ上げまして、それぞれの地域が八〇年代で何を目指すべきかということを、地域の皆さん方と一緒になりまして考えて策定をいたした経緯があるわけでございます。 こういった県民の衆知を結集して策定された経緯にかんがみまして、また特に私が今後大事なことであると考えておりますことは、この県の八〇年代総合計画を受けまして、各市町村におかれましてもそれぞれりっぱな計画の立案がなされたようでございます。また現になされつつあるようでございます。私は、県政の今後の一つの方向といたしましては、それらそれぞれの市町村の自主的な計画というものを十分に尊重いたしまして、この実現に手助けをするということが県政の果たすべき役割りの重要な部分ではないかと、こう考えておるわけであります。何も私が考え県が考えましたことを上から下に浸透させるというだけではなしに、地方がそれぞれの住民の生活に密着した計画を今後の構想として自主的に描かれます場合に、それをできるだけ尊重いたしまして、県と市町村が一体となってその実現に努力をするということが私は大変大事なことだと考えるわけでありまして、県民の総意による総合県政ということを目指してまいりたいと考えておるわけでございます。今後とも県議会各位の御指導と御支援をお願いいたしたいと存じます。 〔
永田悦雄君登壇〕
◆(
永田悦雄君) 御答弁をいただきまして、時間もございませんので次に移りたいと思います。ただ、ただいま知事から御答弁がありましたように、地域の性格を特別配慮し、その地域の発想を取り上げながら県計画を強力に推進する、県はその手助けに惜しみなく努力すると、このような力強い御答弁をいただきましたので安心をいたしました。 次に、熊本平野総合開発の促進について、加勢川流域の排水対策について
土木部長にお尋ねをいたします。 今日、農政の中で最も緊急を要する課題の一つに、水田利用再編対策の効率的な推進があります。御承知のとおり、米は、先般発表されました農業白書によりますと、昭和五十六年度におきまして四百四十万トンの古米を抱えております。過剰傾向にあります米の生産を調整しながら、需要の動向に見合って大豆、麦等の作物を導入し、その生産の拡大と農業経営の安定化を図ろうとするこの対策は、農家の不安を伴いながらも着実に推進されているところでございます。 古来、稲作のために先人達が営々と築いてまいりました水田に、他の畑作物の栽培が可能な状態にするためには、何を申しましても排水条件の整備改良を早急に実施することが最も重要なことは、いまさら私がここで申し上げる必要もございません。このため、国の要請を受けました農家におきましては、県を初め農業団体などの関係当局と一体となって土地基盤整備、とりわけ排水改良に積極的に取り組んでまいってきたところでございます。 近年、農産物の過剰に伴います価格の低迷と生産資材の高騰から農業所得が伸び悩み、苦しい農業経営を強いられております農家にとりまして、圃場を整備し、冠水の被害から守るため、湛水防除のためにポンプの設置をしております。その負担金を考えますとき、その償還には大きな苦労が伴うものでございます。私自身、農業者として、また土地改良区の責任者をしておりますだけに、痛いほどその気持ちはわかるのでございます。国、県の指導により基盤整備に
取り組み、水田利用再編対策に取り組んでこられた農家の後継者は、豊かで開けゆく熊本平野の将来を見詰めながら精いっぱいの努力を続けており、積極的に手を差し伸べてやることがわれわれに課せられた大きな使命であり責任でもございます。 さて、本県農業は、水田八万六千ヘクタール、畑六万三千ヘクタールの約十五万ヘクタールとなっております。その中心となります水田は、干拓により造成された水田を中心に、標高の低い平たんなところに立地しております関係から、排水には特に悩まされてまいったのでありますが、幸い稲作やイグサなど水に強い作物が主流であったため比較的に整備がおくれていたものであります。しかしながら、作物の生育時期によっては湛水によって壊滅的な打撃をこうむるほか、転作が強化される情勢になった今日、いやおうなく排水の整備を急がなくてはならない必要に迫られております。ところが、水田の排水対策は、地域の河川とのかかわりがきわめて強く、土地基盤整備事業でせっかく排水の整備を進めましても、河川との一体性がなければ宝の持ち腐れに終わるわけでございます。 このような中で、本県水田のうち重要な位置にあります熊本平野は約一万二千ヘクタールの広さがあり、米だけでもおおよそ百五十億円の粗生産額を上げております。緑川の支川であります加勢川、木山川、矢形川、浜戸川などの中小河川に排水されておりますが、近年、都市化の進展とハウス栽培の増加などに伴いまして排水状況にもまた大きく変化を来し、その対策が急がれております。特に加勢川流域は、加勢川の改修のおくれから、一たび大雨、長雨が続けば、嘉島町、熊本市の南部水田地帯、益城町の広い地域に白波が立ち、地図にない湖ができるありさまでございます。加勢川の改修は住民の悲願でもあります。このため、過去、本会議におきましてもたびたび論議されてきたところでございます。 御承知のとおり、加勢川は建設省直轄の河川でございます。都市近郊の河川のため、用地費のかさむことも、莫大な事業予算を必要とすることも十分わかっております。昭和四十七年ごろから始まった改修は、全長十一キロにわたるうち、残念ながら野田ぜき及びその下流一部だけしか完成しておらず、遅々として進まずとしか言わざるを得ません。川尻の元三排水機場も、加勢川の水位が四メートル以上になりますと運転ができません。秋津・木山・飯野地区において基盤整備でつくりましたポンプもフル運転ができない状態であり一〇〇%の効果が発揮できません。嘉島町に至りましては、堤防がないばかりにポンプを据えつけることもできないのが現状でございます。 加勢川の改修のおくれによって被害を受けるのは、この地域に住む五十二万の
地域住民であり農家であります。県ももろもろの問題はありましょうが、建設省だけにげたを預けないで、もっと本腰を入れて取り組んでいただかなければ住民は安心して暮らすことができません。また、われわれ農家も営農意欲がわいてまいりません。また、流域の水田利用再編対策の効率的な推進も、この加勢川改修の進度にかかっていることは明白であります。 そこで、加勢川改修についてお尋ねいたします。改修の完成はいつをめどに進められておるのか。また改修のおくれの原因は一体どこにあるのか。用地交渉の難航が原因であるとするならば、高速道路のように県が用地交渉に対応するといった強力な推進体制はとれないものか。
土木部長の御所見をお伺いいたします。 〔
土木部長梅野倫之君登壇〕
◎
土木部長(梅野倫之君) お答えいたします。 熊本平野総合開発の促進、特に加勢川の排水対策でございますが、加勢川は昭和四十三年から河川改修に取り組んでおります。現在まで約五十四億円を投資しております。これまでに野団ぜきや新町橋の改築等が完了し、下流の六間ぜきの改築と、新町橋から下流の拡幅工事が残っているところでございます。 改修の完成は何年ぐらいかかるかとのお尋ねでございますが、実際に工事に携わっている建設省熊本工事事務所に問い合わせたところでございますが、厳しい公共事業の伸びの中でございますが、地元の協力を得て早期完成を図りたいということでございます。なお、県といたしましても、その早期完成に努力を惜しまないところでございます。 次に、改修のおくれた原因は何であるかという御質問でございますが、加勢川は低地を貫流する緩勾配の河川でございますし、莫大な費用と用地の確保が必要でございます。この用地の確保に年月を要し、過去数回、改修費を他の個所に回さざるを得なかったこともあり、用地の確保が先決というふうに考えております。 次に、用地交渉に対応するといった強力な推進体制をとれとのことでございました。この地域の用地を確保するためには、どうしても圃場整備事業と一緒にする必要があるという認識に立ちまして、国、県、地方が一体となりまして昨年運動をしたわけであります。昭和四十七年度の新規事業として中美登里地区の圃場整備事業の獲得に成功したところでございます。現在、建設省において地権者代表と交渉を重ねているところでございますが、問題は買収価格にあると聞いております。県といたしましても、町と一体となり建設省と地権者の仲に入り、一日も早い交渉妥結に努め、加勢川の改修の促進を図りたいと考えております。
◆(
永田悦雄君) 自席からお許しをいただきます。 ただいま
土木部長から加勢川改修の計画について御答弁をいただきましたが、この地域におけるところの
地域住民、そして地方の時代と、さらにまた地域農政を発展するために、この河川改修は地域の積年の悲願でございます。知事のこれに対するところの決意のほどをお尋ねいたします。 〔知事
沢田一精君登壇〕
◎知事(
沢田一精君) 加勢川の改修は、熊本平野総合開発の基幹をなす公共施設でありまして、これが早期改修なくしては、この地域の総合開発が成り立たないとの認識におきましては永田議員と全く同感でございます。 ただいま
土木部長が申し述べましたように、加勢川の改修促進につきましては、その規模、困難性等からしましても、国、県並びに市町村の
関係機関が文字どおり一体となって取り組む必要があると考えております。いまもお答えいたしましたが、最大のネックが用地確保の問題であります。どうぞ関係住民の皆さん方も大局的な見地に立ちましてできるだけ御協力をいただきますよう特にお願い申し上げますと同時に、県も建設省と地権者との交渉に積極的に参加いたしまして、その調整に努め早期妥結を図ってまいらなければならぬかと考えます。 なお、政府に対しましては、このように財政再建で非常に厳しい時期ではございますが、必要な予算確保等について強く要望してまいりたいと考えます。 〔
永田悦雄君登壇〕
◆(
永田悦雄君) ただいま
土木部長並びに知事さんから決意のほどをお伺いいたしまして、まだ安心はなりませんけれども、これからが問題の出発だと、このように私は認識をいたします。地方の時代であり、さらにまた地域農政のためには、この加勢川改修はぜひとも実現させなくてはならない問題でございます。
地域住民の念願をかなえさせていただきますように、特に国、そして地元の関係者の方々との間に県がじっくりひとつ入っていただいて、この問題の橋渡しをしていただきたい。特に、この問題で昨日私も参りましたが、やはり地権者の方々の協力の問題が一番問題になっておるようでございます。地権者の方々の御理解をいただくとともに、また県に対しては国の予算獲得に積極的な御努力をお願いしたいと思います。 長時間にわたる私の質問を以上で終わります。一つ国際交流問題も準備しておりましたが、先ほど知事の方から国際交流のいろいろな問題にも若干触れられましたので、そのことにつきましては後日各委員会等でもまた討議がなされることと思います。 以上をもちまして私の
代表質問を全部終了いたします。御協力ありがとうございました。(拍手)
○議長(幸山繁信君) 昼食のため午後一時まで休憩いたします。 午前十一時五十三分休憩 ―――――――○――――――― 午後一時四分開議
○副議長(井ノ上龍生君) 休憩前に引き続き会議を開きます。日本社会党代表中村晋君。 〔中村晋君登壇〕
◆(中村晋君) 日本社会党を代表いたしまして、それぞれ県政の重要課題につきまして、特に今回はすべて知事にお伺いしたいと思います。 昨日は、来年の知事選挙を想定されまして、沢田知事の後援会が盛大に発足したという
新聞報道を見させていただきました。ずいぶんとあわただしい環境の中だと思いますが、ここで、県民から真に敬愛され尊敬される知事としての残された期間の中における最大の努力をお願いいたしますとともに、まず行政改革の理念についてお伺いをいたします。 知事は、本年年頭から県独自の行財政改革に取り組まれる旨表明をされまして、約半年にわたって検討を進めてこられたところと存じますが、その結果を踏まえ、この七月には改革の第一段階に着手されるとのことでございます。きょうの新聞発表等でも拝見をいたしておるところでございますが、行財政改革につきましては、さきの三月県議会におきまして、わが党の竹島議員が詳しく質問したところでございますので、本日は、それらの具体的な事項についての質問は省略をいたしますが、行財政改革の推進に際して最も重要な一点、すなわち知事が行財政改革に取り組むに当たっての理念についてだけ、ここで再確認の意味で質問をしておきたいと思います。 行財政改革は、基本的には行政の簡素効率化を図り、限られた財源の有効な活用を図るものとされておりますが、行政のあり方を論ずるに当たっては、やはり住民の立場というものを最も第一に考えていく必要があると思うのであります。効率化の名のもとに、安易なサービス水準の低下を生ずるようなことがあってはならないと考えます。伝えられるところによりますると、この七月には県庁組織の各部一課削減を図るというようなことが行われるようでございますが、行財政改革は、本来、画一的な、あるいは小手先の細工に終わってはならないのであります。住民サービスに手落ちのないようにするためにはどうしたらよいか、おくれた県政の水準をさらにどう引き上げていくかということを常に念頭に置いて推進していかなければならないと思うのであります。 ここで再度、知事がどのような理念に立って本県の行財政改革に臨んでおられるのか、お尋ねしたいと思います。 第二の課題として、公債費についてお伺いをいたします。 五十六年度末決算の本県公債費の現債高は、普通会計分で二千百九十億四千八百万円、
水俣湾堆積汚泥処理事業の八十一億千百万円、チッソ貸付金百六十七億二千九百万円となっております。これらの合計額は二千四百三十八億八千八百万円であります。その償還額は、五十七年度から調べてみますと、五十七年度は三百二十三億八百万円、五十八年度は三百四十五億五千七百万円、五十九年度は三百八十七億二千九百万円、六十年度は三百七十三億五千百万円と毎年約四百億円近くの償還額が継続されて行われることになっていきます。県の財政運営にとっては大きな重みとなっていくことは自明の理でございます。 このような財政の中で、本県はさらに、水俣病公害の患者援護対策、水俣湾の堆積汚泥除去事業、水俣・芦北地帯の環境浄化、産業開発による関係住民の生活の保障など最も重要な課題を解決するための努力を今後積み重ねていかなければなりません。 ここで、本議会に予算関係としてはただ一つ提案されました
チッソ株式会社に対する
金融支援措置に伴う県債等について知事の考えをお伺いいたします。 先ほど永田議員の質問にもございましたが、
チッソ株式会社に対する
金融支援措置については、昭和五十三年十二月二十七日の貸し付けが三十三億五千万円、これを皮切りにして以来七回にわたって措置され、合計額は百六十七億二千九百万円となっておるのであります。これに今回予定されている二十二億八千四百万円を加えますと、実に百九十億一千三百万円となるのであります。そのほかに
水俣湾堆積汚泥処理事業費百九十三億三千四百八十二万円があり、そのうち事業者負担の百二十五億六千八百十三万一千円がそっくり県債となる仕組みであり、この事業費は、その後の工事費上昇により、完成費用が現時点では四百億円ないし五百億円が必要であるとも言われております。これを単純計算した場合、チッソに関する県債は約五百億円以上になることが予想されるのであります。熊本県の財政事情では余りにも過重な金額ではないでしょうか。果たして完済可能なものでありましょうか。全県民の立場に立って非常に心配するものでございます。これに対して政府の態度はまことに消極的であり、肝心の最終責任は熊本県に押しつけて、信用せよの一点ばりで逃げ回っているのが現状であります。熊本県政としては、これ以上政府に対して甘い顔はできないと思います。そのような立場に立って、以下四項目について質問をいたします。 第一点として、
チッソ株式会社の経営現況と将来にわたっての県債返還能力についてお伺いをいたします。 第二点、チッソと主要関連各社が一体となった
県債償還責任の明示はどうなっているのか。 第三、国が最終責任を明示しないことに対する知事の態度について。 第四点、県議会が了解する前提として決議をいたしました昭和五十三年十二月県議会での附帯決議、昨年十二月県議会での決議と現在時点における認識について、知事の確たる御見解をこの機会にお伺いいたします。 〔知事
沢田一精君登壇〕
◎知事(
沢田一精君) まず、行政改革の理念についてお尋ねでございます。 このたびの行政改革の主眼は、臨調第一部会報告にも示されておりますように、近年の内外の環境変化のもとで、行政の機構や制度等を含めた包括的な見直しを行い、長期的な展望に立って今後の行政需要への対応を図っていくことにあると考えております。そしてそのための基本的な考え方としましては、第一に、社会経済情勢の変化に対応して行政の簡素効率化を進め、限られた人員と財源をできるだけ有効に活用できる体制づくりを行うことにあると考えます。第二に、これからの時代を見通して、新しい行政需要にいかに対応するかという体制づくりを行うことが必要であると考えております。もちろん、簡素化、効率化を進めるに当たりましては、ただいま御指摘のとおり、住民へのサービスに絶対手落ちがあってはならないことでございまして、これは当然のことでございます。そのために十分な配慮を行いながら、いま申し上げました二つの目的を達成できるように努力をしなければならないと考えております。 第二に、県債、特に
チッソ県債等についての御質問にお答えをいたします。 御質問の第一点は、
チッソ株式会社の経営の現況についてでございます。 午前中の永田議員の
代表質問にもお答えいたしましたとおり、
石油化学工業界を取り巻く厳しい状況の中で、
チッソ株式会社は、経常
収支ベースで、わずか三千万円ではありますが利益を計上したようでございます。 これまで
チッソ株式会社に対しましては、県としましては
県債発行により、また
チッソ株式会社の
取引金融機関においては元本償還の凍結等により、さらには
チッソ株式会社主要子会社に対する
開銀融資が近く決定されることとなる等の
金融支援措置により、
チッソ株式会社再建の道が講じられてまいっておることは御承知のとおりであります。その結果、
チッソ株式会社は、昭和五十六年度からの
再建計画を実施できるようになり、五十七年度にはある程度の収益が見込まれるという状態になってまいったと考えております。 しかしながら、御質問にもありますとおり、
水俣湾堆積汚泥処理事業の見直しが必要となるなど、
チッソ株式会社が現在進めております昭和六十年度までの
再建計画には直接的には影響はないといたしましても、同社の将来の経営に大きな影響を与えることは否定できないと思われるわけでございます。 そこで、今後の
取り組みにつきましては、午前中の永田議員にお答えいたしましたとおりでございますが、私としましては、
チッソ株式会社の経営の
維持強化について引き続き、国、
関係機関に強く要請を続け、国に対しては特に特段の配慮がなされるよう要望いたしたいと考えております。 第二の御質問にお答えをいたしますが、これまた午前中の永田議員にお答えをいたしたところでありますが、
県債償還に当たってオールチッソとしての責任を明確にする件につきましては、近く結論を得て議会に御報告できるものと考えております。 第三の御質問にお答えをいたします。国の最終的な責任を明示するようにしなければならぬと思いますが、これについての現在までの経過と私の考えいかんというお尋ねでございます。 御承知のように、
チッソ県債問題につきましては、昭和五十三年十二月の第一回
県債発行以来、県議会、執行部一体となって、県選出国会議員の御支援、御指導も得ながら国に対しいろいろの要望を重ねてきたところであります。このいわゆる保証問題につきましては、県民の不安を払拭いたしますためにも、ぜひ国に明確な方針を出してもらうよう要望を続けてまいりましたことも御承知のとおりであります。特に、昨年十一月に開催されました
水俣病関係閣僚会議の席上におきまして、万一チッソに不測の事態が生じたときは県財政にいささかの支障をも来さないよう国側において十分対策を講じていただくよう重ねて強く要望したところであります。しかしながら、国の対応は、原因者負担の原則を堅持するという立場から、昭和五十三年の閣議了解、昭和五十五年十一月の関係閣僚会議の
申し合わせの域をいまだ出るに至っていないのが実情であります。 しかしながら、申し上げるまでもございませんが、私は多額の県債を発行している県の立場からいたしましても、今後とも議会の御協力を得て粘り強く要望を重ねてまいらなければならないと決意いたしておりますので、よろしくお願いをいたします。 御質問の第四点にお答えを申し上げます。
県債発行の前提として付された昭和五十三年十二月県議会における八項目の附帯決議、さらに昨年十二月県議会において付された条件に対しましては、現在に至るまで国の対応は必ずしも十分とは言えない、むしろ不十分であるというふうに考えるが、その点についての私の認識はどうかとのお尋ねであったかと思います。 私としましては、これまでしばしばお答えしてまいりましたとおり、これらの諸条件の実現については、県議会及び執行部一体となって繰り返し強く要望してまいったところでございますが、その中で今回の
チッソ株式会社主要子会社に対する
開銀融資などがだんだんはっきりしてまいりましたことは一応評価できるものと考えております。しかし、ほかにつきましては、お話しのように必ずしも明確な方針の明示はなく、現在までいろいろと要望を重ねてまいりましたが、国の壁は厚かったと申し上げざるを得ないことはまことに残念に思っております。私といたしましては非常にむずかしい問題を含んではおりますが、今後とも議会の御協力を得ながら要望を続けてまいる所存でありますので、何とぞよろしくお願いをいたしたいと存じます。 〔中村晋君登壇〕
◆(中村晋君) 行財政改革、県債問題、それぞれ重要な課題でございますが、知事が答弁いたしましたように、今後それぞれの問題解決のために精力的に働いていただきますように要望をいたしまして、特に、これらの課題はそれぞれの関係委員会において詳しく論議をされるところでございますので、以上で終わりまして次にまいります。 第三の質問として、不況下における中小企業対策についてお伺いをいたします。
わが国経済は、二度にわたる石油危機を克服し、自律的成長過程をたどってきましたが、昭和五十五年ごろより石油価格の上昇によるデフレ効果があらわれ始め、経済の拡大は鈍化し、いわゆる景気にかげり現象が見られるようになりました。最近では景気の足踏み状態が続くなど、不透明で複雑かつきわめて困難な局面に立ち至っていると言わねばなりません。とりわけ中小企業を取り巻く経営環境はまことに厳しく、資金需要は減退し、金融の緩和策はとられても選別融資がふえるなど、中小企業を取り巻く不況は一段と深刻化しているところであります。昭和五十六年の全体を顧みましても、個人消費、住宅投資などの個人部門の需要を中心として停滞ぎみで推移いたしておりまして、内需回復のおくれが、ひいては景気回復のおくれとなっているようであります。 本県におきましても同じ動きを示しておりますが、素材産業のウエートが高い本県では、とりわけ中小企業の不況感が強いものと考えられます。このように総じて伸び悩み傾向にある中小企業に対しては、今後ともより一層振興に努めなければならないと考えております。 私は、先般の三月議会におきましても不況問題を取り上げ、企業の積極的な誘致、既存企業の経営健全化対策等についてお尋ねいたしましたが、今回は、依然として続く景気停滞の中にあって、県の倒産防止対策及び融資制度の充実並びに高度化事業の推進及び高年齢層の就労開拓等についてお尋ねをいたします。 まず、倒産防止対策についてお尋ねいたします。 県内における企業倒産の状況を調べてみますと、五十二年度には二百十三件で百三十七億八百万円、五十三年度には百四十九件で百十七億六百万円、五十四年度では百二十九件で百三十六億一千四百万円、五十五年度では百五十六件で二百十五億七千八百万円、五十六年度は百七十五件で百八十三億八千七百万円となっております。この数字が示しておりますように、まことに不況の状況を如実に物語っております。 このうち昭和五十六年度の倒産企業を原因別に見てまいりますと、売り上げ不振が七十七件、放漫経営が四十二件、こげつき連鎖倒産が十八件、手形操作が十五件など不況型倒産が目立ってまいりました。また業種別では、建設業の七十三件で四一・七%、小売業の五十五件で三一・四%が大半を占めて、現下の長期化する不況を反映しているところであります。 本県の商工業では、中小企業が九九・三%を占めており、不況下における中小企業の振興はきわめて重要な課題であります。このような倒産の実情に対し、県ではどのような倒産防止のための対策を講じておられるのか、お伺いをいたします。 第二点は、中小企業向け融資の充実についてお尋ねいたします。 国においては、中小企業が民間機関からの融資がむずかしいもの、たとえば設備資金とか長期運転資金などについて、商工組合中央金庫等いわゆる政府系中小企業の金融機関を通じて中小企業に対する融資を行いつつ民間の中小企業金融の補完を行っているところであります。同時に、県におきましても、地域の実情に即した独自の融資制度を設け、その助成を図っておられますものの、本県におきましては、昨年の中小企業向けの総貸出残高は十四億八百六十八万円で、前年に比較して約一〇%以上も利用率が低くなっております。長引く景気の停滞から、金利の低下傾向にもかかわらず、せっかくの設備資金等前向き資金に伸びが見られなかったというのは問題ではなかろうかと思います。 そこで、このような状況のもとで、中小企業向け金融の充実について、特に零細企業に対しては今後どのような施策を進めていかれる所存か、お尋ねをいたします。 第三点は、中小企業に対する高度化事業の推進についてお尋ねをいたします。 先ほどより申し上げましたように、低成長時代にあっては、個別企業への金融面における制度の充実も必要でございますが、同時に長期的展望に立った不況に負けぬ体質の強化を図ることが最も必要ではなかろうかと思うのでございます。すなわち、個々の中小企業者が工場や店舗を集団化したり、あるいは事業部門を共同化するなど、名実ともに中小企業の経営体質を改めていく必要があるわけであります。 県においても、これらの事業については、いわゆる高度化事業として積極的な展開を図っておられることと思いますが、今後ともより推進を図る必要があろうと考えております。そこで、高度化事業について今後どのような構想と推進を図っていかれるのか、お尋ねをいたします。 いずれにいたしましても、中小企業が現在置かれている状況の中で、今後とも力がついていくような方向で県の積極的な対応を望む声はしきりでございます。 第四の問題といたしまして、高年齢層の就労対策についてお伺いをいたします。 現在、労働力人口の急速な高齢化が進展しつつある中で、本県におきましては全国平均を上回るテンポで進展している状況であります。このような状況の中で、高齢者を取り巻く雇用情勢はきわめて厳しく、雇用の安定と職場の拡大を図ることは社会の重要な課題となってまいります。 現在、六十年に向かって六十歳定年の一般化の実現を目指してその推進が図られているようですが、本県の昭和五十六年六月一日現在における六十歳以上の定年制を実施している企業は、百人以上の規模を調査いたしましたところ、わずかに二五・八%にすぎません。また高年齢求職者も、労働力人口が高齢化するに伴いまして、今後も増加の傾向が予想されています。 このような情勢の中で、高齢者の雇用の場が確保され、雇用安定のための定年延長の推進等がどのように進められていくかということは重大な課題でございます。このような諸問題に対しまして県はどういう対策を考えているのか、この機会に知事の見解を御発表いただきたいと思います。 〔知事
沢田一精君登壇〕