令和5年 2月 定例会 第 3 号 (3月3日) 令和5年
熊本県議会2月
定例会会議録 第3号令和5年3月3日(金曜日
) ――――――――――――――――― 議事日程 第3号 令和5年3月3日(金曜日)午前10時開議 第1
代表質問(議案に対する質疑並びに県の
一般事務について
) ―――――――――――――――――本日の会議に付した事件 日程第1
代表質問(議案に対する質疑並びに県の
一般事務について) ――――――○――――――
出席議員氏名(47人) 堤 泰 之 君 前 田 敬 介 君 城 戸 淳 君 本 田 雄 三 君 南 部 隼 平 君 坂 梨 剛 昭 君 荒 川 知 章 君 西 村 尚 武 君 山 本 伸 裕 君 岩 田 智 子 君 島 田 稔 君 池 永 幸 生 君 竹 﨑 和 虎 君 吉 田 孝 平 君 中 村 亮 彦 君 大 平 雄 一 君 髙 島 和 男 君 末 松 直 洋 君 松 村 秀 逸 君 岩 本 浩 治 君 西 山 宗 孝 君 濱 田 大 造 君 前 田 憲 秀 君 磯 田 毅 君 河 津 修 司 君 楠 本 千 秋 君 橋 口 海 平 君 緒 方 勇 二 君 増 永 慎一郎 君 髙 木 健 次 君 髙 野 洋 介 君 内 野 幸 喜 君 山 口 裕 君 渕 上 陽 一 君 田 代 国 広 君 城 下 広 作 君 西 聖 一 君 鎌 田 聡 君 坂 田 孝 志 君 溝 口 幸 治 君 小早川 宗 弘 君 池 田 和 貴 君 吉 永 和 世 君 松 田 三 郎 君 藤 川 隆 夫 君 岩 下 栄 一 君 前 川 收 君
欠席議員氏名(なし
) ―――――――――――――――――説明のため出席した者の職氏名 副知事 田 嶋 徹 君 副知事 木 村 敬 君
知事公室長 小 牧 裕 明 君 総務部長 平 井 宏 英 君
企画振興部長 高 橋 太 朗 君 理 事 水 谷 孝 司 君 理 事 小金丸 健 君
健康福祉部長 沼 川 敦 彦 君
環境生活部長 小 原 雅 之 君
商工労働部長 三 輪 孝 之 君
観光戦略部長 原 山 明 博 君
農林水産部長 竹 内 信 義 君 土木部長 亀 崎 直 隆 君
会計管理者 野 尾 晴一朗 君 企業局長 竹 田 尚 史 君
病院事業 渡 辺 克 淑 君 管理者 教育長 白 石 伸 一 君
警察本部長 山 口 寛 峰 君
人事委員会 西 尾 浩 明 君
事務局長 監査委員 藤 井 一 恵 君 ――
―――――――――――――――事務局職員出席者 事務局長 手 島 伸 介
事務局次長 村 田 竜 二 兼総務課長
議事課長 富 田 博 英 審議員兼 濱 田 浩 史
議事課長補佐 ――――――○―――――― 午前10時開議
○議長(
溝口幸治君) これより本日の会議を開きます。 ――――――○――――――
△日程第1
代表質問
○議長(
溝口幸治君) 日程に従いまして、日程第1、
代表質問を行います。 発言の通告があっておりますので、これより順次質問を許します。 なお、質問時間は1人100分以内の質疑応答でありますので、さよう御承知願います。
自由民主党小早川宗弘君。 〔
小早川宗弘君登壇〕(拍手)
◆(
小早川宗弘君) 皆様、おはようございます。
自由民主党・八代市・郡選出の
小早川宗弘でございます。 今回、私にとっては2回目の自民党を代表しての質問というふうなことで、気合を入れて挑みたいというふうに思いますし、今日は、残念ながら
知事欠席でありますけれども、田嶋副知事が対応されるかと思いますけれども、知事に成り代わって、思い切った答弁をいただきたいというふうに思います。 また、今回は、10問用意をしておりますけれども、広く、浅くではなくて、広く、深く、でも簡単、簡潔な質問にしておりますので、執行部の
皆さん方におかれましても、分かりやすく簡潔に、そして前向きな答弁をいただきますようにお願いを申し上げて、
発言通告書に従って質問に入らせていただきます。 1番目の質問は、
姉妹提携40周年を迎えた
モンタナ州との交流について質問いたします。 去年、本県は、
米国モンタナ州との
姉妹提携40周年を迎えました。
モンタナ州では、40周年を記念して式典が開催されましたが、
知事訪問団とともに、県議会からは、
溝口議長、池田元議長、そして前議長の私が式典に参加をさせていただきました。
モンタナ州は、
アメリカ北西部に位置し、州の西側には
ロッキー山脈が縦断している大自然の中にあり、主要産業は農業と観光で、日本全体とほぼ同じ面積に人口約105万人の人々が暮らしています。 今回は、州都のヘレナ、別荘地として有名なボーズマン、
学園都市のミズーラの3都市を回りましたが、あいにく大寒波が訪れ、季節外れの大雪が降る中での滞在となりました。 バスでの移動においても、地吹雪に見舞われ、高速道路は一部区間が通行止め、また、横転しているトレーラーやスリップしている車などを横目に見ながら、緊張する場面もありましたが、
モンタナ州政府の方々が万全の準備をされていたこともあり、無事に日程をこなすことができました。
モンタナ州の皆様には感謝しかありません。 また、公式行事としては、
モンタナ州
知事表敬訪問や
ロッキー博物館の視察、
農業経営者との
意見交換会、また、ギターで有名な
ギブソン社への訪問、
マンスフィールドセンター、大学や
博物館主催の昼食会、夕食会など、非常に密度の高い視察でありました。
過密的スケジュールを組んでいただきました
溝口議長にも、心から厚く御礼をこの場でさせていただきたいと思います。 特に、
モンタナ州・
ジンフォーテ知事との会談では、
ジンフォーテ知事から、
姉妹都市の継続や今後企業なども含めた多くの分野で交流を進めたいとの挨拶があり、
溝口議長からも、
モンタナの起業家、研究機関、大学の皆さんともこれまで以上に交流を深めて、そして、いろいろと研究していけるような関係、世界に貢献できる
ビジネスパートナーづくりを考えていきましょうとの提案もなされたところです。 また、最終日は、熊本高校の留学生2人にも来ていただき、交流会が開催されましたが、2人とも勉学に励み、充実した生活を送っているとのことで、県の
留学派遣事業も意義深いものになっていると感じたところです。 11月6日から11日まで4泊6日の短い滞在でありましたが、様々な分野の方々と交流をすることができましたし、今後さらに
モンタナとの交流を加速し、双方にとって有益な交流を進めていくことが極めて重要だと実感したところです。 とりわけ、
モンタナ訪問中は、知事も、流暢な英語を話され、会議もさることながら、夕食会ではアルコールも入り、終始上機嫌で熊本をPRされていました。 私は英語は話せませんが、
坂口モンタナ州
政府駐日代表や執行部の方々から的確な通訳をいただき、言葉の壁はあるものの、心の通う有意義な交流ができました。 とにかく、今回の訪問で、より一層、
モンタナとの絆は深まったものと思いますし、今後は、さらに多くの県民にも
モンタナを訪れ、また、
モンタナからも熊本へ来ていただきたいと思います。 そこで、40周年を契機に、
モンタナ州との新しい交流を進めなければなりませんが、特に観光、
ビジネス分野での今後の展開、そして
教育分野では、教員の派遣を含めた
留学制度について、今後どのような取組をしていくのか、今回の視察の成果を含めて、田嶋副知事に質問いたします。 〔副
知事田嶋徹君登壇〕
◎副知事(田嶋徹君)
モンタナ州との交流についてお答えいたします。
モンタナ州との交流は、1979年、当時の駐
日アメリカ大使であったマンスフィールド氏の御尽力により、彼の故郷である
モンタナ州を推薦いただいたことに始まります。 以来、本県と
モンタナ州は、延べ86回を数える相互訪問や
モンタナクラブによる
民間交流、恐竜の化石や英語劇を通じた
文化交流など、40年もの長きにわたり、途絶えることなく交流を続けてまいりました。 ここ数年、コロナにより海外との往来に制限があった中、今回、
蒲島知事が直接訪問し、変わらぬ友情と絆をお互いに確認できたことは、今後さらなる
発展的交流を進めていく上でも、大変意義深いものとなったと、そのように思います。 今回の
モンタナ州訪問では、県議会からも御参加いただき、行政のみならず、州議会、また、
マンスフィールドセンターとも多角的な
意見交換ができました。今回の訪問をより実りあるものにできたことに、
溝口議長、
池田議員、
小早川議員に大変感謝申し上げます。 次に、今回の成果を踏まえた今後の交流の充実と取組の方向性についてお答えします。 まず、観光分野では、これまで恐竜の化石などを中心とした交流を行ってまいりましたが、今後は、さらに博物館の連携に向けて検討を進め、交流の裾野を広げてまいりたいと考えております。 具体的には、
モンタナ州立大学が開催する
イベント等において、伝統芸能や球磨焼酎をはじめ県産品の紹介をするほか、
くまモン・メタバースなどのデジタル技術を活用し、本県の魅力を
モンタナ州へ広くPRしてまいります。 次に、
ビジネス分野においてですが、
モンタナ州では、現在、
バイオサイエンスや光工学といった分野で
関連企業の集積が進んでいると伺っています。 今後は、本県が進める
半導体関連産業のさらなる集積や
ライフサイエンス分野を中心とした
UXプロジェクトなども含め、熊本と
モンタナ州の企業、団体間で技術等の情報共有や
企業経営者との交流を行うなど、
ビジネス面の
交流促進につなげてまいります。
教育分野では、
グローバル人材の育成に向けた取組の柱の一つが
モンタナ州との交流です。県内の3つの高校と3つの大学が
姉妹校提携を結んでおり、学校単位でお互いの文化理解や友好を深める交流を行っています。また、州内の3つの大学とは、
奨学金給付の覚書も締結しています。
議員お尋ねの
留学派遣、交流については、昭和57年からこれまで延べ800人を超える高校生及び教員を派遣し、語学研修や現地の人々との触れ合いなどを深めてまいりました。 参加した高校生はもとより、教員からも、熊本の子供たちの未来のために、英語という教科を通して、夢や元気を与えていきたいなどの感想が多く寄せられました。 今後は、これらの取組を充実させるとともに、コロナで中断していた現地との交流の復活を契機に、
モンタナ州との絆がさらに強固なものとなるよう、高校生及び教員の派遣や
留学制度の充実強化に努めてまいります。 本県と
モンタナ州とは、これまで育んできた固い絆を土台とし、これからも、人と人のつながりをより密にするとともに、お互いの地域の発展に向け、観光、
ビジネス、教育の各分野で交流を深めてまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁をいただきましたけれども、私も初めて
モンタナに行きましたけれども、本当に大自然に囲まれたところで、すばらしいところでありましたし、40周年を契機に、何か新しい交流が必要ではないかというふうなことを強く実感しました。 やっぱり、実際
モンタナに行って、そしていろんなものを見て、そして人と会って、そういうことをしていかないと、新しい局面は生まれないのかなというふうに思いますので、御答弁にありました取組以外にも、例えば、1年に1回、熊本空港から直接チャーター便で
モンタナに行く
県民モンタナツアーとか、そういうおもしろい企画をされるといいのではないかなというふうに思いますので、ぜひ御検討をいただきたいと思います。 それから、
モンタナ州知事からは、企業を含めた多くの分野で交流を行いたいというふうなことを言われておりましたし、また、
溝口議長からも、世界に貢献できる
ビジネスパートナーづくりに向けて取り組んでいきましょうというふうな発言もあっておりますので、答弁では、
ライフサイエンス、医療や薬品分野での交流を模索していくというふうなことでありますので、ぜひ新しい視点での
ビジネス交流を実現していただきたいと思います。 また、
モンタナに研修に行く
ビジネスマンに対して旅費の一部を補填するとか、そういった取組も有効ではないかなというふうに思っておりますので、そういったことも今後検討してください。 それから、留学生の派遣でありますけれども、熊高から留学生の方お二人にお会いしましたけれども、とても優秀で、非常に高い志を持っていらっしゃる生徒さんでしたし、留学を希望する生徒さんもかなり多いのではないかなというふうに思いますので、ぜひ予算を拡大して、この
留学派遣事業をもっと充実させていただきたいと思います。 また、最近、学校の教師が
モンタナを訪れるといったことがあまりないというふうなことで、まず教師が
モンタナのことを知って、そして生徒に留学のアドバイスをするというふうな流れも、そういったことも大切かと思いますので、そういった施策も充実させていただきたいと思います。 それでは、次の質問に移ります。 2番目の質問は、五木村及び相良村の振興についてです。 令和2年7月
豪雨災害から2年8か月が経過しようとしています。私の地元である八代市においても、大きな被害を受けた坂本町で輪中堤や宅地かさ上げが進められ、合志野地区や
中津道地区では、
災害公営住宅が建設されています。 また、先月は、坂本町中心部の整備方針を定めた
坂本支所等整備基本計画が策定され、新たな
まちづくりに向けて、今後具体的な取組が行われますが、地域住民にとっても、将来への希望が少し見えてきたのではないかなと思っております。
交通インフラでは、国道219の本格的な復旧工事が進んでおりますが、橋梁の復旧についても、崩壊した10橋のうち5橋の
下部工工事が着手され、抜本的な
治水対策についても、
球磨川水系流域治水プロジェクトに沿って、様々な
治水対策が進められています。 また、新たな
流水型ダムについては、去年8月に策定された
球磨川水系河川整備計画に盛り込まれ、現在、法と同等の
環境アセスメントの手続が実施されています。 このように、地元や関係者の方々の御尽力により、少しずつではありますが、
豪雨災害からの復旧、復興が着実に、確実に進んでいるものと感じております。 しかしながら、決して忘れてはならないのが、再びダム問題に直面することになった五木村の振興であります。 五木村の振興については、去年9月の池田先生の
代表質問で、また、12月には松田先生から
一般質問があり、県議会でも繰り返し議論されてきました。 特に、去年12
月定例会においては、
立憲民主連合、公明党、そして我が
自由民主党の3
会派共同提案により五木村
振興推進条例を改正し、県議会としても、五木村の振興を県政の最
重要課題として、これまで以上に強力に推進していく覚悟を示したところであります。 そして、本定例会の冒頭、
蒲島知事からも、条例改正を踏まえ、中長期的な
財政支援の枠組みと方向性を村に伝えたとの説明がありました。これは、五木村の再生にかける知事の決意の表れだと思っております。 これまでダム問題に翻弄され続け、そして過疎化が進み、地域が低迷する五木村の振興を、全力で進めていくことが極めて重要であります。 そこで、今回、五木村に対する中長期的な
財政支援の基本的な考え方と今後の五木村の振興の進め方について、どのように考えているのか。 また、
流水型ダムが建設されるのは相良村ですが、相良村の振興についても力強く進めていく必要がありますが、今後、相良村の振興をどう考えていくのか。 以上2点、田嶋副知事に質問いたします。 〔副
知事田嶋徹君登壇〕
◎副知事(田嶋徹君) まず、1点目の五木村に対する中長期的な
財政支援の基本的な考え方と今後の五木村の振興の進め方についてお答えします。 半世紀以上にわたり、川辺川ダム問題に翻弄され続けてきた五木村の振興は、県政の最
重要課題であります。 本年1月21日に、知事とともに五木村を訪問し、村及び村議会の皆様と新たな
振興計画の策定に向けて
意見交換を行いました。 その中で、知事から、計画の実効性と継続性を担保するため、おおむね20年間の中長期的な
財政支援を行うことをお伝えいたしました。 具体的には、
振興計画に基づく村の事業に活用していただく分と、村から強い要望がある宅地整備が可能な平場の造成など、国が
ダム関連事業として実施するものに対する県の
直轄事業負担金分を合わせまして、100億円規模の県としての
財政支援の枠組みと方向性をお示しいたしました。 このうち、村の事業に活用していただく分の50億円は、県から村に段階的に交付することとしており、来年度は、まず、そのうち10億円を一括して村に交付したいと考えています。 県からの交付後は、村の基金に積み立て、村の判断で基金を取り崩しながら、主体的に計画に基づく事業に活用していただきたいと考えています。 県としては、
財政支援の枠組みに、今後の五木村の振興に向けた2つの思いを込めています。 1つ目は、五木村の皆様に、将来を見据えて、安心して村の振興に取り組んでいただきたいという思いです。 人口減少、さらには高齢化が加速し、県内で人口が最も少ない五木村の振興を図るためには、直面する課題への対応だけでなく、将来を見据えた
村づくりを進めていく必要があります。 そのため、中長期的な県としての
財政支援の枠組みを構築することで、安心して振興に取り組んでいただく環境を整備したいと考えました。 2つ目は、今後、新たな
振興計画の下、五木村の皆様が主体となって取り組んでいただきたいという思いです。 五木村には、美しく雄大な山や谷、清流があり、そこから生まれる豊かな恵みもあります。そして、新たな村の振興に挑戦する若い人材も活躍しています。 今後、五木村の振興に向けては、村の宝を磨き上げ、若い人材の発想を取り入れながら、村が主体となって新たな取組を加速させる必要があると考えています。 現在、新たな
振興計画の策定に向け、国及び村と最終的な調整を進めています。今月中には、国、県、村で今後の五木村の振興を協議する場を設け、新たな
振興計画について、3者の合意を得たいと考えております。 そして、計画策定後、できる限り早い時期に、
蒲島知事が直接村民の皆様にも御説明する、そのような機会を設けていただきたいというふうに思っております。 今後も、国と連携しながら、五木村の振興に全力を挙げて取り組んでまいります。 次に、2点目の相良村の振興についてお答えします。 相良村においては、
川辺川沿いの集落の多くが新たな
流水型ダムの受益地となる一方、
ダム本体の建設地となる上四浦地区では、60戸が移転を余儀なくされるなど、これまで
ダム事業に大きな影響を受けてこられました。このことについて、県としても重く受け止めています。 昨年7月、私自身、知事とともに相良村を訪問し、村民の皆様に、村が目指す
村づくりを積極的に支援していく考えをお伝えいたしました。 現在、昨年10月に
吉松村長から提案いただいた村の振興策の実現に向けて、今庁内に設置しております、私が会長を務めております相良村
振興推進会議において、県の支援策を取りまとめており、今月中には村にお示ししたいと、今鋭意作業を進めています。 五木村と同じく、相良村の振興も待ったなしの課題です。そのため、御提案のあった振興策のうち、重点項目については、優先的に検討を進め、その一部は既に着手しております。 例えば、国道445号については、四浦地区の冠水箇所の解消のため、道路のかさ上げに向けた設計に既に着手しております。 また、
農業生産基盤の整備に向けては、村と県において
プロジェクトチームを立ち上げ、事業化に向けた課題の整理や来年度の具体的な取組を共有し、連携して取り組んでおります。 さらに、
交流人口の拡大を目指し、県の補助制度を活用し、村において、廻り地区の
交流拠点の整備に向けた実証実験、さらには相良茶を活用した振興策に係る勉強会など、新たな取組も進められています。 あわせて、川辺川における国の新たな
流水型ダム事業や遊水地の整備とともに、県としても、
河川整備や遊水機能を有する土地の確保、保全に向けた測量を行うなど、相良村の安全、安心に向けた取組も進めております。 このような取組を村民の皆様に丁寧に一つ一つ説明しながら、村の復興の理念である未来につなげる
むらづくりが実現できるよう、国と連携し、村と一体となって、力強く相良村の振興に取り組んでまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁をいただきましたけれども、五木村への
財政支援、今回の100億円規模の支援というのは過去最大で、知事あるいは執行部の
皆さん方の覚悟、決意の表れだろうと思います。 ぜひ、これまで50年以上ダム問題に翻弄されてきた五木村には、単にお金だけの支援ではなくて、村と一緒に
地域振興策を成し遂げるというふうな熱意を持って、五木村の再生を進めていただきたいと思います。 また、ダムが建設されるのは相良村で、これまで大変な思いをされてきたのは五木村と同じでありますので、御答弁にありますように、今月、
振興推進会議を開催されるというふうなことで、幅広く村の意見を聴きながら、相良村の振興を進めていただきたいと思います。 なお、相良村の
吉松村長からは、五木村のように新聞一面に掲載されるような支援策が相良も欲しいというふうなことを漏れ聞いておりますので、私も同感でありますけれども、ぜひ村の大きな期待にも応えられるような振興策を進めていただきたいと思います。 それでは、次の質問に移ります。 3番目の質問は、
熊本都市圏交通の今後の展開についてであります。 熊本のさらなる発展を進めていくためには、空港への
アクセス改善や
熊本都市圏の渋滞解消など、都市圏を取り巻く交通問題の解決が不可欠であります。 これらの課題は、本会議の
一般質問でも度々取り上げられ、
特別委員会においても様々な議論が展開されてきました。 また、
空港アクセス鉄道については、12
月定例会において、
JR肥後大津駅からの分岐延伸が発表され、県議会でも決議がなされたところでありますが、鉄道と道路は、どちらも大切で、車の両輪として整備していくことが重要です。 また、
熊本都市圏の渋滞対策については、令和3年6月に策定された熊本県新
広域道路交通計画において、
熊本都市圏北連絡道路と南連絡道路、そして空港連絡道路の3つの高規格道路を整備し、熊本市中心部と高速道路を10分、同じく空港までを20分で結ぶ10分・20分構想が新たに位置づけられました。 そして、令和3年11月には、私も当時議長として参加しましたが、県・市調整会議において、知事や大西熊本市長、市議会議長とともに、3連絡道路の早期実現に向けて、有料道路の検討や県民の機運醸成などに連携して取り組むことを合意いたしました。 この合意に基づき、国の協力を得ながら、ルートや構造などの検討が進められ、また、去年8月に設立された
熊本都市圏3連絡道路建設促進協議会で、県民の機運醸成などが進められております。 ちなみに、私が暮らす八代市の住民も、熊本市中心部を訪れる際は、常に30分から1時間程度の余裕を持って移動しなければなりません。つまり、
熊本都市圏の渋滞解消は、都市圏だけの問題ではなく、県全体の課題であり、新たな高規格道路の整備は、県民の期待も高く、早期に実現化していかなければなりません。 そこで、
熊本都市圏の3連絡道路の早期実現に向けてどのように取り組まれるのか、田嶋副知事に質問いたします。 〔副
知事田嶋徹君登壇〕
◎副知事(田嶋徹君) 新たな高規格道路3路線は、喫緊の課題である
熊本都市圏の交通渋滞の解消に寄与するだけでなく、県民生活の利便性、安全性の向上など生活面でも、物流の効率化や観光の活性化など産業面でも、大きな効果が期待できます。 また、TSMCの操業開始や
関連企業の進出、阿蘇くまもと空港の新旅客ターミナルビルの開業など、熊本を取り巻く環境は、大きく変貌を遂げようとしています。 このチャンスを、将来にわたって熊本の持続的な発展につなげていくことが必要です。そして、この新たな高規格道路の実現は、
空港アクセス鉄道や中九州横断道路と一体となって、県勢発展の起爆剤となるものと確信しています。 計画の実現に向けては、県と熊本市がしっかりとスクラムを組み、ルートや構造など計画の具体化に向けた取組を進めていかねばなりません。また、県民の皆様の理解促進に努めるとともに、技術面や財政面などについては、国の最大限の支援を得ることも不可欠です。 そのため、
蒲島知事が会長を務める
熊本都市圏3連絡道路建設促進協議会では、今年の1月に、経済界の皆様とともに、国土交通省に強力な支援を訴えてまいりました。 国土交通省幹部の皆様も、
熊本都市圏の渋滞解消の必要性、緊急性については十分に認識されており、特に中心部へのアクセスを高めていくことの重要性について言及されております。 また、大西熊本市長は、さきの市議会で、任期中に環境影響評価や都市計画の手続着手を目指すことを表明されました。県としても、一日も早く都市計画の手続に着手できるよう、計画の実現に向けた取組をさらに加速させてまいります。 そこで、国の計画段階評価に相当する住民参加型の道路計画検討の着手に必要な予算は、今定例会に提案しています。 今後とも、
熊本都市圏の新たな高規格道路の早期実現に向け、国の絶大なる協力をいただきながら、関係自治体や経済界などの皆様と一体となって、全力で取り組んでまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁をいただきましたけれども、
熊本都市圏の渋滞問題、ずっと議論されてきておりますので、もう実現化に向けて取り組んでいく時期ではないかなというふうに思っております。 特に、10分・20分構想、これは渋滞緩和にはとても画期的で、とても有効な手段だというふうに思いますので、まあ、予算は巨額になるかと思いますけれども、渋滞が解消されることで得られる経済効果というのはかなり莫大ではないかなというふうに思いますし、また、県民の期待も非常に高いというふうに思いますので、ぜひこれからは目に見えるような形での都市圏交通の整備に取り組んでいただきたいと思います。 それでは、次の質問に移ります。 4番目の質問は、TSMC進出に関する今後の対応についてであります。 TSMCの本県進出が公表されました令和3年11月から1年しか経過していませんが、菊陽町では、目をみはる勢いで工場建設が進んでおります。 知事は、TSMC進出に伴う様々な諸課題に対応するため、半導体産業集積強化推進本部を立ち上げられ、部局を横断し、全庁が一丸となって対応するための体制を整えられました。 その結果、新工場周辺のインフラ整備や人材確保、育成など、具体的な動きが見え始めております。また、子供たちの教育環境については、インターナショナルスクールや私学における受入れ体制の整備など、行政だけでなく、民間レベルでの取組も進んでおります。 そして、1月は、知事や議長が台湾を訪問され、TSMCの幹部と面談されるなど、熊本と台湾の交流は今後ますます盛んになっていくものと、大きな期待をしております。 現在、新工場の状況を見ますと、今年の夏には台湾からも従業員が来熊され、12月からは試験製造に入るなど、いよいよ操業に向けた動きが本格化すると伺っております。 そこで、推進本部の設置から1年以上が経過する中、全体的に新工場の受入れは順調に進んでいるのか、また、1月の台湾訪問の成果はどうだったのか、そして今後の取組方針についてどういった考えをお持ちなのか、田嶋副知事に質問いたします。 〔副
知事田嶋徹君登壇〕
◎副知事(田嶋徹君) まず、新工場の円滑な操業開始に向けた取組の進捗状況についてお答えします。 TSMC進出決定以降、県では、半導体産業集積強化推進本部を中心に、国や関係機関とも連携し、スピード感を持って、様々な課題の解決に取り組んでまいりました。 まず、人材の育成、確保については、県立技術短期大学校における半導体関連の新学科設置、熊本大学における新学部設置に向けて準備が進められているほか、熊本高等専門学校で半導体に係る講義が開講されるなど、もう既に様々な取組が進められております。 渋滞、交通アクセスの対策については、県道大津植木線の多車線化や中九州横断道路へのアクセス道路など、半導体産業集積の拠点性を高める道路ネットワークの整備に向けて動き始めております。 さらに、台湾からの出向者と御家族の居住環境や子供たちの教育環境の整備についても、市町村や不動産会社、さらには教育機関と連携を図りながら取組を進めており、新工場の操業開始に向けた対応は総じて順調に進んでおると、そのように認識しています。 次に、台湾訪問の成果についてお答えします。
蒲島知事をトップとして、TSMCの幹部の方々と面談し、半導体人材の育成や
交通インフラ整備などについて、県が一丸となって取り組んでいることをお伝えしてまいりました。 100年に1度とも言うべきこのビッグプロジェクトの成功には、相互の信頼関係が必要不可欠であり、今回の訪問で、TSMCの幹部の皆様とお互いの状況や立場について理解を深められたことが大きな成果だったと認識しています。 最後に、今後の取組方針についてお答えします。 議員御指摘のとおり、今後、台湾から多くの出向者と御家族が熊本にお越しになるなど、工場の操業に向けた動きがいよいよ本格化してまいります。 そのため、これまでの人材育成、確保や供給、渋滞、交通アクセス対策をはじめ、地下水涵養など地下水保全の取組についても、さらに加速させていきます。 また、台湾から来られる方々に、安心して熊本で暮らしていただけるよう、昨年末に設置した生活サポート部会を中心に、引き続き、市町村や不動産会社などと連携し、きめ細やかに対応してまいります。 さらに、本県への半導体
関連企業のさらなる集積を図るため、台湾企業へのアプローチを強化するなど、国内、国外ともに効果的、積極的な企業誘致を推進してまいります。 県としては、このTSMCの進出の波及効果を最大限高め、その効果が県内の全域に及ぶよう、さらには50年後、100年後の熊本の発展につながるよう、全庁が一丸となって取り組んでまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁をいただきましたけれども、特にセミコンテクノパーク周辺の渋滞対策は喫緊の課題だというふうに思いますので、しっかりと対応していただきたいと思います。 また、台湾訪問については、これは
モンタナも同じでありますけれども、やっぱり実際行っていろんなものを見て、そして人と会って、そういうことが信頼関係を深めることにつながるというふうに思いますので、これからも積極的に相互交流をお願いしたいと思います。 それから、地下水保全についてでありますけれども、SNSなどでは、地下水が枯渇するとか、そういった様々なうわさ話が広がっておりますし、困惑する方も多いのではないかなというふうに思いますので、行政の役割としては、正確な情報を発信し続ける、これが大切だと思いますので、ぜひ地域に安心感を与えるような情報発信、これに努めていただきたいと思います。 また、今年の夏には、多くの外国の方が熊本に来られて生活をされるというふうなことで、答弁では、生活サポート部会を設置してきめ細やかな対応をしていくというふうなことでありますので、ぜひ、外国の方が熊本に来てよかった、住んで楽しいと思っていただけるような支援、サポートをお願いしたいと思います。 それでは、次の質問に移ります。 5番目の質問は、阿蘇くまもと空港の今後の展開と地域ビジョンについてで、1点目の阿蘇くまもと空港の機能強化と空港周辺の
地域振興策について質問をいたします。 熊本空港は、昭和35年4月、当時の健軍町にあった旧軍用飛行場を活用し開港されました。最初は、何と全日空の1日1便からのスタートだったようです。昭和46年4月に現在の場所に移転整備されましたが、当時の利用者は約50万人という記録が残っています。 その後、昭和58年には、国際線ターミナルビルが供用開始、利用者数は増加の一途をたどり、平成30年度には、国内線、国際線を合わせて過去最高の約346万人が利用する空港になりました。 途中、平成28年には熊本地震が発生し、ターミナルビルも大きな被害を受け、全面建て替えが決まりましたけれども、令和2年4月から、コンセッション方式での空港運営と建て替え工事が進められてきました。そして、いよいよ今月、3月23日に、新旅客ターミナルビルがオープンする運びになりました。 私も、内覧会で施設見学しましたが、非常に洗練されたデザインで、小国杉をふんだんに使うなど、熊本らしさを十分に感じられる見事な空港になりました。 特に、今回の新ターミナルビルは、国内線と国際線が一体となった施設で、これまでと違って国内線と国際線を容易に移動でき、利用者にとってはかなり利便性の高い空港となりました。 現在、コロナ禍でありますが、行動制限が緩和され、国内線、国際線も再開し、いよいよ国内外の旅行需要が本格化してきますが、より一層空港機能を強化しながら、県経済の復活にもつなげ、そしてTSMCの進出という追い風の中、空港周辺の活性化にも取り組んでいかなければなりません。 そこで、今後、空港の機能強化をどう考えているのか、また、空港周辺地域の活性化策をどのように考えているのか、田嶋副知事に質問いたします。 〔副
知事田嶋徹君登壇〕
◎副知事(田嶋徹君)
蒲島知事は、就任以来、阿蘇くまもと空港とその周辺地域を一体のものとして捉え、地域の可能性を最大化する大空港構想を提唱し、この構想に沿った取組を推進してきました。 そして、平成28年熊本地震の後、空港を創造的復興のシンボルと位置づけ、その効果を産業や暮らしの分野にまで波及させるため、大空港構想Next Stageを策定しました。 この構想の下、熊本国際空港株式会社による運営が開始されたほか、総合防災航空センターの整備、益城町の復興
まちづくりや
UXプロジェクトによる新たな産業づくりなど、様々な取組を進めてまいりました。 また、昨年12月には、
空港アクセス鉄道をJR豊肥本線の肥後大津駅から分岐する肥後大津ルートとすることを決断しました。 そして、いよいよ今月23日には、阿蘇くまもと空港の新旅客ターミナルビルがオープンし、50年、100年先の熊本の礎となる様々な取組が動き出します。 阿蘇くまもと空港の機能強化については、今後より多くの方に御利用いただくため、隣接する現在の国際線ビルを解体し、その場所に地域に開かれた広場を整備して、令和6年夏頃に供用開始する予定です。また、これに合わせて空港を訪れる全ての方が買物やお食事を楽しめる商業ゾーンも開業する予定であり、空港ににぎわいをつくる計画となっています。 さらに、国際航空貨物の輸送実現を目指し、実証事業に取り組む予算を今定例会で提案しており、今後も引き続き、空港のさらなる機能強化を進めることとしています。 空港周辺地域の活性化については、TSMCの進出によって、新たな、そしてこれまで想像していなかったような大きな環境変化が生じつつあります。このビッグチャンスを追い風として、さらに取組を加速させるため、現在、大空港構想Next Stageの改定作業を進めています。 これまで、熊本地震や令和2年7月豪雨の復興ビジョンの策定に当たって、日本が誇る賢人たちから哲学を与えていただきました。今回の新たな大空港構想に対しても、空港機能のさらなる強化や企業集積と
まちづくりといった観点など、大所高所からの御意見をいただき、その英知を取り込むための有識者会議を設置したいと考えています。 現在、有識者の人選を進めており、調整でき次第公表させていただき、秋頃をめどに新たな構想を策定する予定です。 大きな可能性を持つ阿蘇くまもと空港を核として、熊本の輝ける未来につながる構想となるよう、しっかりと取り組んでまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁をいただきました。 今後、空港機能の強化として、地域に開かれた広場あるいは商業ゾーンなど、空港機能の強化を図っていかれるというふうなことで、ぜひ、飛行機を利用する人だけではなくて、多くの県民が空港を訪れて、そしてそこで熊本のにぎわい、活気が感じられるような、そういうふうな拠点性のある空港を造っていただきたいと思います。 また、空港周辺の活性化策については、現在、大空港構想Next Stageの改定を始めているというふうなことで、そして有識者会議も設けて構想をつくっていかれるというふうなことですが、すばらしい活性化策ができるのではないかなというふうに期待をしております。ぜひ、ターミナルビルの開業効果、経済効果、これが県全域に大きく広がるような構想を目指して策定をしていただきたいと思います。 それでは、2点目の質問に移ります。 2点目の質問は、新しい地域ビジョンの策定についてです。 少し古い話になりますが、平成23年12月に、政令指定都市誕生後の県内各地域の将来像、通称地域ビジョンが策定されました。 当時2期目だった私でありますが、
蒲島知事が初当選され、県の最上位計画、くまもとの夢4カ年戦略に基づいて県政運営が行われておりました。しかし、残念ながら、その4カ年戦略には、圏域ごとの将来像や地域づくりの方向性は全く示されておりませんでした。つくるべきと思い、平成21年から平成23年にかけて、3回にわたって地域ビジョンに関する私なりの質問をさせていただきました。 ちょうど時を同じくして、平成23年に九州新幹線が全線開通、平成24年には熊本市が政令市に移行するといった時期で、政令市効果や新幹線効果を全県に波及させる狙いもあって、そして私のしつこい質問もあってか、地域ビジョンが策定されたと記憶をしております。 地域ビジョンがどのような役割を果たしてきたのか、的確に把握することはできませんし、まだ実現していないこともたくさんありますが、しかしながら、熊本には将来を見据えた地域のビジョンがあり、そして、個性ある県土の発展が進められているということが対外的にも分かるビジョンがあるというのは、とても重要なことではないかと思っております。 また、地域ビジョンを策定するプロセスの中でも、地域の新たな可能性や気づきも発見でき、その願いや思いも次の世代につなげていけることにもなります。さらに、市町村においても、まち・ひと・しごと総合戦略が策定されておりますが、この地域ビジョンが非常に参考になったというふうなことも聞いております。 地域ビジョンができてからもう10年の歳月が流れますが、熊本の状況は一変しつつあります。災害からの復旧、復興、空港新ターミナルビルの完成、TSMCの進出、
空港アクセス鉄道など、キーワード一つ取っても大きく前進する熊本のイメージが湧いてきますし、ここで、TSMCの経済効果や空港新ターミナルビルの開業効果を県全体にどう広げていくのかなど、圏域ごとに課題を整理し、そして、地域の将来像を定め、10年後、20年後の熊本の輝かしい姿を県民に示すことも重要かと思います。 そこで、夢と希望あふれる熊本づくりを行うためにも、新しい地域ビジョンの策定が必要かと思いますが、どうお考えなのか、田嶋副知事に質問いたします。 〔副
知事田嶋徹君登壇〕
◎副知事(田嶋徹君) 議員がただいま御紹介いただきました政令指定都市誕生後の県内各地域の将来像、通称地域ビジョン、これは、平成23年3月の九州新幹線の全線開業やその翌年4月の熊本市の政令市移行というビッグチャンスを県勢の発展につなげるため、平成23年12月に策定したものです。 これまで、この地域ビジョンに沿って、地域の優れた資源を生かしながら、持続的に安心して暮らせる社会づくりや地域振興に、県と市町村が連携して取り組んでまいりました。 その後、熊本地震、新型コロナウイルス感染症、そして、令和2年7月
豪雨災害という3つの困難に見舞われた本県では、これらの喫緊の課題に立ち向かい、熊本の発展につなげていくため、令和3年3月に、第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定いたしました。 この総合戦略では、3つの困難への対応に加え、将来に向けた地方創生の取組を4つの柱とし、地域ビジョンに掲げていたそれまでの各地域の取組についても、発展的に取り組んでいます。 現在、この総合戦略に沿って、誰一人取り残さないくまもとづくりに全力で取り組んでいるところであり、最終年度である来年度は総仕上げの段階に入ります。 このたびのTSMCの本県進出決定は、本県に訪れました100年に1度とも言うべきビッグチャンスです。県では、この経済効果や派生する様々な活力を県内全域に波及させていくため、先月、担当の
企画振興部長を中心に、県内全市町村長と
意見交換を実施いたしました。 この
意見交換を通じて、より具体的な各地域の課題あるいは振興策が見えてまいりました。 現時点で新たな地域振興ビジョンを策定することは考えていませんが、各地域がその特色を生かした振興策を実践し、地域の浮揚につなげることができるよう、引き続き、市町村と積極的に連携し、その取組を県としてしっかり支援してまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁をいただきました。 現時点では新たな地域ビジョンの策定は考えていないと。残念でありますけれども、実は、10年前、平成23年、この地域ビジョンができた当時、新幹線が全線開通したときも、そのときも100年に1度のビッグチャンスと誰もが言っていたんですね。そして、10年後の今も、TSMCの進出は100年に1度のビッグチャンスと。つまり、ここ10年で100年に1度のビックチャンスが2回も巡ってきたということになります。そういった意味では、知事、ここにはいらっしゃいませんけれども、この10年で知事は200年分の仕事をされた計算になりますので、知事がいらっしゃればよいしょしたんですが、知事の県政運営を高く評価したいと思います。 ただし、これからの10年がまた非常に重要な期間になりますので、そういったことも含めて、新しい地域ビジョンをつくるべきだと、私は申し上げたところであります。 私も、再びここに戻ってきて、再度この質問をしたいと思いますので、前回の地域ビジョン、3回やりましたので、あと2回ぐらいやれば地域ビジョンをつくってくれるのではないかなというふうに思いますが、とにかくそれまでによい答弁ができるように、地域ビジョンの研究を始めておいていただきたいと思います。 それでは、次の質問に行きます。 6番目の質問は、不適切な保育の対策についてです。 去年から、全国の保育施設において、園児への暴言や暴力など、不適切な保育の実態が相次いで報道されています。 例えば、静岡県裾野市の保育施設では、園児の足をつかみ宙づりにする、バインダーでたたく、刃物を見せ、脅すなどの行為があったとして、保育士3人が逮捕されました。また、同じく静岡県沼津市の保育施設では、0歳児の頬を引っ張ったり、園児の顔に水性ペンで落書きをするといったこともありましたし、熊本乳児院においても、虐待と疑われる行為があったとする報道があっております。 こうした不適切な保育が生じる背景には、保育士の認識の問題と職場環境の問題があると言われております。どのように子供に関わったほうがよいのか、職員が十分に理解していない、また、施設での職員体制が十分でないなどが不適切な保育を誘発する原因とされています。 ある知人の保育士さんからは、私たちは、一生懸命に愛情を注いで、子供や親御さんのために頑張っているのに、信じられない事件だということをお聞きしましたし、今後は、徹底的に原因を究明して、その対策を強化してほしいとの御意見もいただいたところです。 現在、国においては、全国で相次いでいる不適切な保育の実態を把握し、虐待を未然に防止できるような環境づくりに向け、各都道府県を通じて実態調査を行っていると聞いています。 今年4月にはこども基本法が施行され、「全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。」が基本理念として掲げられています。より一層、安心して子供を産み育てられる社会をつくっていかなければなりませんし、児童虐待などはあってはならないことであります。 そこでまず、本県における国の実態調査について、本県の保育所等では不適切な保育の実態はあったのかなかったのか、また、調査結果に対する県の認識はどういったことなのか、さらに今後、県として、不適切な保育に対してどう対処していくのか、
健康福祉部長に質問いたします。 〔
健康福祉部長沼川敦彦君登壇〕
◎
健康福祉部長(沼川敦彦君) 子供の安全、安心が確保されるべき保育所等において、子供の人格を尊重しない関わりや物事を強要するような関わり、脅迫的な言葉がけなどの不適切な保育は、決してあってはならないと考えております。 今般、国が全国の自治体に対し、保育所等における不適切な保育の実態調査を行いました。今後、調査結果を踏まえ、虐待等を未然に防止する体制を整備し、保護者等の不安に寄り添えるような支援につなげていくこととされています。 この調査では、県内の保育所、幼稚園、認定こども園などの幼児教育、保育施設において、昨年4月から12月までの9か月間に、不適切な保育があったと市町村が確認した件数が14件ありました。 県では、これまで、定期的な保育所等への指導監査による助言、指導や園児への虐待防止に向けた保育士等への研修など、職員の意識向上に向けた取組を行ってきました。 また、幼児教育、保育の質の向上が求められていることや特別な配慮を必要とする子供の増加等により、現場では保育士一人一人の負担が増加していることから、職場環境の改善のため、国に対し、職員配置基準の見直しに向けた要望も行ってきました。 今回の調査で明らかになった不適切な保育の実態を踏まえ、市町村との連携により、質の高い保育人材の確保や不適切な保育の防止に関する職員向け研修のさらなる充実強化、保護者や保育現場の職員等からのきめ細かな相談対応等に取り組んでまいります。 子供一人一人が健やかに成長し、保護者が安心して子供を預けることができる教育、保育の体制づくりにしっかりと取り組んでまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁をいただきましたけれども、不適切な保育と思われる事案、令和4年4月から12月の9か月間で14件というふうなことで、少しショッキングなデータでありますけれども、答弁にもありましたように、子供を傷つける、傷めつけるということは決してあってはならないことだというふうに思います。こういうことが絶対に起こらないように、市町村とも連携しながら、徹底した対策を行っていただきたいと思います。 また、保育施設に限らず、いろいろ新聞報道では、連日のようにニュースが流れておりますが、他県の例だと、先日は精神病院で患者に暴力を働いた職員が逮捕されるといった事件、それから、10日前でしたかね、これも他県でありますが、障害者施設で虐待行為があったとの報道もあり、保育施設以外でもこういった犯罪が起こっているのではないかと、非常に私は今心配をしているところであります。 ぜひ、県においても、様々な施設において、絶対に虐待を引き起こさない職場環境づくり、実態調査も含めてですけれども、あるいは職員研修などを十分に行っていただきたいと思います。 それでは、次の質問に移ります。 7番目の質問は、八代産アオノリの支援についてです。 八代の特産品といえば、晩白柚、イグサ、トマト、マジャク、ショウガなどなどありますが、今、私のマイブームは「青のり」であります。 最近、生産者の方々や物産関係者の方々と
意見交換をする機会がありました。現在、アオノリを生産する方も減少し、取れる量も以前と比べたらかなり少なくなったと聞いております。さらには、令和2年7月
豪雨災害直後から生育が悪くなり、特に今年に入ってからは収穫がゼロの生産者もいて、かなり窮地に立っているとのことであります。 八代アオノリは、球磨川の恵みによって育ちます。養殖は、10月下旬から2月の時期に、まずは淡水と海水が混ざり合う汽水域において、網にスジアオノリの胞子を付着させることから始まり、そして球磨川河口の養殖場に移動してさらに生育させ、収穫となります。長いもので2メーター近くまで育つものもあります。 また、種類も数種類ありますが、とりわけ八代で収穫されるアオノリは、スジノリと呼ばれ、美しい緑色と豊かな香りが特徴的で、海藻類の中では高級品と言われています。 (資料を示す)スクリーンを御覧いただきたいと思いますが、左側が「八代青のり」で、こういうふうにパッケージで売られております。また、右側は、御当地土産として、アオノリと煎餅を組み合わせた「八代青のりめんべい」という商品ですが、明太子で有名な福太郎という会社と地元DMOとのコラボ商品で、八代では人気商品となっています。 さらには、現在、アオノリの希少価値の高さとおいしさから、全国からも、また、海外からも問合せが多くなってきています。 アオノリ養殖は、本県において、河川で養殖されているのは八代のみで、全国では高知県の四万十川や徳島県の吉野川などの清流でしか収穫されず、今やアオノリは、とても貴重な水産資源となっています。 しかしながら、生産者も少なく、個人事業で経営が成り立っているため、公的支援の枠組みは狭く、衰退の一途をたどっています。 生産者からも、同じノリでも有明ノリについては様々な支援策があるので、アオノリについても、もっと支援策を打ち出してほしいとの声もあります。 2019年6月に「八代青のり」は、地域団体商標に登録され「青のり」のブランド化とともに、消費拡大に向けて全力で取り組んでおられますが、まだまだ課題は多く、県としても、アオノリ生産に対する認識を高め、積極的な支援とPRが必要だと考えます。 そこで、熊本の宝でもある八代産アオノリについて、どのような認識で、どのような支援策を考えているのか、田嶋副知事に質問いたします。 〔副
知事田嶋徹君登壇〕
◎副知事(田嶋徹君) 清流球磨川で養殖される八代産アオノリは、極寒の中、手摘みにこだわって収穫されており、香りがとても豊かで、品質が良いと、消費者から高く評価されています。 このアオノリは、地域の大変貴重な特産品であり、八代地域の活性化のために、本県のブランド品として大切に育てていくことが重要であると考えています。 県では、平成27年度から、漁協や八代市と連携し「八代青のり」として、ブランドの確立に向け、販売促進のためのパッケージ化やPR動画の作成を支援し、平成30年度には地域団体商標に登録することができました。 これらの取組により、市場における引き合いは向上しましたが、近年の水温上昇などの養殖環境の変化により、天然での種つけが不安定であることや魚や鳥による食害により生産量に波があることから、需要に十分に応え切れていない状況です。 蒲島県政では、一貫して、農林水産物における価格、生産量、コスト、いわゆるPQCの最適化とブランド化を推進してまいりました。 「八代青のり」についても、まず、生産量の向上とコスト縮減を目指し、試験的に人工種網を導入するとともに、囲い網による食害対策に取り組んでいます。 加えて、価格の向上とブランド化をさらに推進するためには「八代青のり」の魅力を全国にPRし、広めていくことが重要です。 そこで、県としては、くまもと県南フードバレー協議会の事業者間のネットワークを活用した、県内外での販売機会を創出していきたいと考えています。また、商談会への出展やそれに必要となるポスターやのぼりといった販促資材の作成など、販路拡大に向けた取組も支援してまいります。 今後も「八代青のり」が地域の宝としてさらに発展できるよう、漁協、八代市と連携し、全力で取り組んでまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁をいただきましたけれども、八代産アオノリについては、生産者ももう10数軒しかありませんし、生産者からは、私たちのような小さな団体の声は行政には届かないんですよといった御意見もありましたので、どんな小さな声にも耳を傾けるのが我が
自由民主党の基本的な姿勢でありますので、今回、
代表質問で取り上げてみました。 御答弁にありますように、八代産のアオノリへの積極的な支援、PR、どんどんやっていただきたいと思います。 それから、令和2年7月
豪雨災害以降、アオノリが非常に取れにくくなってきている、生育が悪くなってきているというふうなことで、また、生産者からは、現在球磨川流域では復旧工事が本格的になっているということで、その影響で水質が悪くなっているのではないかというふうな懸念の声も正直なところありますので、ぜひ、これは国の意向も聞きながら、球磨川の環境保全の取組も、県として充実をさせていただきたいと思います。 それでは、次の質問に移ります。 8番目の質問は、木材資源の利活用促進についてで、1点目、県内における木材資源の現状について質問します。 本県は、県土面積の60%以上が森林で、全国4位の木材産出額を誇る、まさに林業県です。特に、人工林は、木材としての利用が可能なおおむね50年生以上の森林が多く、いわゆる成熟化が進んでいる状況で、その資源を有効活用することが熊本の新しい活性化にもつながります。 特に、国においては、2050年カーボンニュートラルを実現するため、令和3年6月に公共建築物等木材利用促進法が改正されました。通称都市(まち)の木造化推進法と呼ばれております。 とりわけ、今回の改正では、木材利用の対象が、公共建築物だけでなくて、民間を含む建築物全体へと拡大されたのが最大の特徴となっています。また、建築基準法も改正され、木造による高層建築物も可能となりました。 これにより、国を挙げて木材を利用しようという機運が高まっておりまして、都市部を中心に続々と木造高層ビルも建設されていますし、今後さらに、商業施設や事務所建築において木造化が進むのではないかと大きな期待をしているところです。 また、ウッドショックと呼ばれる木材の価格高騰が続いて、現在、国産材へのニーズが高まってきておりますが、県産材も高値で取引され、この価格が維持できれば、林業、木材産業も復活し、再生できると聞いています。 しかし、その一方で、木材の需要がどんどん増加すれば、材料となる丸太が不足するのではないか、山林が荒れるのではないかといった懸念の声もあります。 そこで、本県における木材資源はどういった状況か、また、森林を守っていくことも大切ですが、どういった視点で木材資源を利活用していくのか、
農林水産部長に質問いたします。 〔
農林水産部長竹内信義君登壇〕
◎
農林水産部長(竹内信義君) 本県の森林は、資源の成熟が進み、人工林24万ヘクタールの8割以上が利用できる時期を迎えております。特に、杉、ヒノキの木材資源量は、年々増加しており、現在、1億立方メートルの蓄積があります。 一方、木材生産量は、木材輸出や木質バイオマス発電に係る需要の高まりから増加傾向にありますが、資源量1億立方メートルに対し、令和3年度の生産量は127万立方メートルと、その1.3%程度であり、今後の需要増加にも十分対応できると考えております。 このような中、皆伐面積は、木材生産の増加に伴い、令和3年度に約2,000ヘクタールと、平成22年度のおよそ3倍となる一方、そのうち再造林面積は約4割にとどまっています。地域経済の活性化や県土の保全、水源涵養等の森林の有する多面的機能を発揮するためには、森林資源の循環利用が必要です。 そこで、県では、確実に森林の再生を図るため、事業者による再造林の拡大や担い手確保への支援などに取り組んでおります。 地球温暖化対策やSDGs推進の観点から、木材を利用する環境も大きく変化しており、耐震性や耐火性に優れた木質材料の開発により、高層ビルの木造化が全国各地で進んでおります。 このような動きを需要拡大の追い風と捉え、新たな技術や工法の活用事例などを検証し、木材業界と一丸となって、商業施設なども含め、新たな木材利用を促進してまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁をいただきましたけれども、現状では、木材資源、かなり豊富にあるというふうなこと、備蓄量が1億立米の備蓄量ということで、令和3年度の生産量が127万立米、その備蓄量の1.3%程度しか使っていないというふうなことでありますので、まあ、豊富に木材資源はあるというふうなことが分かりました。 県産木材をやっぱりどんどん使って、そしてCO2をよく吸収する新しい木を植林していく、造林していくということが非常に重要ではないかなというふうに思いましたし、2050年CO2排出実質ゼロを目指す本県にとっては、この木材の利活用促進こそが目標達成の原動力になると思っておりますので、ぜひ、様々な分野でこの県産木材が使われるように、取組を強化していただきたいと思います。 それでは、続いて、県産木材が使われるような観点から、2番と3番の質問に移ります。 2点目は、木材の利活用促進、モク活についてであります。 現在、くまもとアートポリスでは、発足当初から先進的な木造プロジェクトに取り組み、さらに最近では、木材の利活用を増やすために、木材利活用を活発にする活動、いわゆるモク活といったユニークな建築活動が展開されています。 特に、去年10月に開催されましたモク活シンポジウム2022では、若手建築士からも木材を駆使した設計の発表があり、また、会場には学生も多く、こういった木材の可能性や大切さを伝える取組は、非常に意義深いものであると実感したところです。 そこで、今後のモク活の取組について、さらに充実した取組にすべきと考えますが、今後どういったことに取り組んでいくのか、土木部長に質問をいたします。 続いて、3点目のくまもと型伝統構法を用いた木造建築物の普及について質問いたします。 令和2年12月「伝統建築工匠の技:木造建築物を受け継ぐための伝統技術」が、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。 伝統構法は、職人が木材の特性を十分に理解し、長い歴史の中で改良と工夫を重ねながら育まれた技術で、我が国独自のとても優れた構法です。 また、本県には、全国で唯一の伝統建築コースを持つ県立球磨工業高校もあり、伝統構法を支える人材が育成されてきました。 しかしながら、伝統構法による木造建築物には、高度な知識や技術が求められ、建築基準法の制約もあり、なかなか普及しにくいという大きな課題がありました。 そのようなことから、本県においては、簡易な構造計算で、また、手続も簡素化したくまもと型伝統構法を用いた木造建築物設計指針を、全国に先駆けて令和2年2月に策定しました。つまり、この指針に基づいて設計すれば、伝統構法による木造建築もオーケーということになります。 この取組は、建築界ではかなり先進的な取組として評価され、専門誌にも度々取り上げられ、他県からも多くの問合せがあると聞いております。 そこで、本県で全国に先駆けて指針を策定することになった背景やその取組の効果はどうなのか、また、せっかくつくった指針でありますので、伝統構法による木造建築物を普及していくことも大切でありますが、どのような取組を考えているのか、土木部長に質問いたします。 〔土木部長亀崎直隆君登壇〕
◎土木部長(亀崎直隆君) まず、2点目のモク活についてお答えします。 議員御紹介のとおり、くまもとアートポリスでは、県内の建築関係者と林業関係者が一緒になって、県産材の利活用促進のため、木造建築物の魅力を発信する取組をモク活と位置づけ、昨年10月にモク活シンポジウムを開催しました。 今回のシンポジウムは、高度な技術が求められる大規模木造建築物をテーマに実施し、併せて工事中のプロジェクトの現場見学会も行いました。 この中で、一般に流通している県産材を利活用する設計手法などについての議論が交わされ、木材の生産や加工から建物の設計や施工まで、関係者間の連携が必要であることを確認いたしました。 今後より一層連携を密にして、シンポジウムや現場見学会を開催するなど、アートポリスの知名度を生かしながら、様々な建物で県産材が利用されるよう、木造建築物の魅力を県民に広く発信してまいります。 次に、3点目のくまもと型伝統構法を用いた木造建築物の普及についてお答えします。 くまもと型伝統構法を用いた木造建築物は、大工の手刻みによる柱やはりを金物を用いずに接合し、伝統的な土壁や板壁を使用するなど、地震に対して粘り強く、倒壊しにくい建物です。また、ひさしを長くして夏の強い日差しを遮るなど、熊本の気候風土に適応してございます。 本県では、伝統構法を学ぶ教育環境は整い、専門家も活躍されています。その一方で、小規模な建物でも高度な構造計算が必要なことから、伝統構法による木造建築物は、近年は減少傾向にあります。 このため、簡易な方法で設計ができるように、産学官が連携して実物大の構造実験を行うなど、4年間の検討を重ね、くまもと型伝統構法を用いた木造建築物設計指針を策定いたしました。 これまで、この指針の講習会や現場見学会に1,000人を超える参加があり、くまもと型伝統構法を用いた木造建築物が徐々に建築され始めております。 この木造建築物に居住されている方からは、四季折々の暮らしを楽しんでいるという話を伺っております。 今後も、現場見学会やホームページ等でこの木造建築物の魅力や支援制度の情報を発信し、くまもと型伝統構法を用いた木造建築物を普及してまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁をいただきましたけれども、私らしいマニアックな質問をつくってきました。 モク活でありますけれども、先生方もモク活は初めてお聞きになったのではないかなというふうに思いますし、私も、こういうシンポジウムに参加して、いいネーミングだなというふうなことを感じましたので、今日は、御紹介を兼ねて質問してみました。 ぜひ、県におかれましては、今後は熊本はモク活で林業を活性化するというふうな意識を持って木材の利活用促進に取り組んでいただきたいと思います。 また、くまもと型伝統構法については、これは本県独自で編み出した設計指針で、先進的な取組でありますので、なかなか伝統構法で家を建てるというニーズは多くはないというふうに思いますけれども、そういうチャンスがあるというのは、伝統技術の継承にもつながりますし、若手職人の育成にもつながってくると思いますので、少しずつでもいいので、前へ進めていただきたいと思います。 それでは、次の質問に移ります。 9番目の質問は、みどりの食料システム戦略の認定制度についてです。 みどりの食料システム戦略につきましては、これまで、渕上先生、末松先生が質問されていますが、今回は、認定制度についての質問をさせていただきます。 近年、地球温暖化の影響が顕著であり、令和2年7月豪雨やこれまで経験がないような大型で非常に強い台風が襲来しています。加えて、私の地元である八代地域では、トマトの黄変果や梨のミツ症など、春夏の高温による品質低下や収量の低下も多く見られるなど、その影響は、今後も増加していくものと思われます。 これに対し、国では、農林水産業のCO2ゼロエミッション化などを掲げたみどりの食料システム戦略を策定し、令和4年7月には、戦略を進めるための法律が施行されたところであります。 この法律では、農林水産物の生産から販売まで、各段階で環境負荷を低減し、その農林水産物が広く流通、消費されることが重要であると示されています。 本県としても、農業が長く引き継がれ、我が国の食料の安全保障の一翼を担うことができるよう、環境負荷を低減した農業に取り組むことが重要です。 現在、県では、みどり戦略に取り組むための基本計画を策定し、今後、この計画を実践する農業者を認定していくと聞いております。 そこで、今後、農業者が環境負荷低減に取り組もうとする意識をどうつくっていくのか、また、消費者に向けてどのようにアピールし、購入に結びつけていくのか、
農林水産部長に質問いたします。 〔
農林水産部長竹内信義君登壇〕
◎
農林水産部長(竹内信義君) 県では、平成27年度に地下水と土を育む農業推進条例を制定し、くまもとグリーン農業を施策の柱と位置づけ、農薬や化学肥料の削減に取り組んでまいりました。 このような中、みどりの食料システム法の施行を受け、県と県内全市町村との共同により、稼げる農業のさらなる推進と環境に優しい農業との両立を目指した基本計画の策定を現在進めており、週明けの3月6日には決定できる見込みです。 この計画の実現には、農業者と消費者の意識や行動の変容が必要となります。 そこで、まずは農業者に対し、JAの部会での説明や広報などを通じて、環境負荷低減の取組の必要性や意義、取り組む際の補助事業などをきめ細かに周知し、理解と実践を求めてまいります。 あわせて、農業者の不安を払拭し、環境負荷低減に資する新たな生産技術を円滑に導入できるよう、新技術を実証する展示圃を各地域に設置し、生育データや費用対効果を明らかにしてまいります。 今回の法律では、基本計画に沿って環境負荷低減の取組を実践する農業者を対象とした認定制度が創設されました。この認定を受けますと、制度資金の償還期間延長や税制優遇措置、補助事業での優先採択などの支援が受けられることとなっております。 県におきましても、この認定制度がより多くの農業者に活用していただけるよう、来年度から、環境負荷を低減して生産した農産物に表示できる県独自の新たなマークを付与したいと考えております。 このマークは、環境負荷低減に取り組んでいる農産物を消費者が一目で区別できるようなデザインとし、あらゆる機会を捉えPRすることにより、消費拡大につなげてまいります。加えて、ホームページやイベントなどを通した消費者への情報発信など、消費者自らが環境を守る農業を育んでいるという意識を醸成してまいります。 このような取組を通じて、環境と調和の取れた熊本らしいみどりの食料システムを確立してまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁をいただきましたけれども、この基本計画が3月6日に決定されるというふうなことで、これまで以上に環境負荷低減型あるいは環境調和型の農業が展開されるのではないかなというふうに、大きな期待をしているところであります。 何よりもやっぱり重要なのは、農業者への理解を深めて実践してもらうことが何よりも重要だというふうに思いますので、市町村や、あるいは農業団体とも連携して、講習会や研修会、そういうのを活発に行っていただきたいと思います。 また、認定制度についても、一人でも多くの農業者が参加することが大切だというふうに思いますので、ぜひこの認定制度に対する理解も促していくというふうなことをしていただきたいと思います。 それから、消費者へのPRですが、認定マークを作られるというふうなことでありますけれども、今までもかなりいろんなマークがありますので、混乱するのではないかなというふうに思いますが、例えば、今回の認定マークを集めるとポイントあるいはマイレージがつくといった特典があると、この取組の認知度が上がるというふうに思いますので、ぜひそういったアイデアも入れながら、そして、多くの方々をやっぱり巻き込みながら、このみどりの食料システム戦略を展開していただきたいと思います。 それでは、次の質問に移ります。 10番目の質問は、私立学校における教員の確保対策についてです。 近年、公立、私立問わず、学校における教員志願者が減少し、教員の確保が非常に難しくなってきております。 例えば、文科省の令和3年度公立
学校教員採用選考試験の実施状況によると、全国的に学校の教員志願者が減少しており、採用倍率も、令和3年度は過去最低となっています。 これは公立学校の調査結果でありますが、県内の私立学校においても、同様に教員の確保に大変な御苦労をされていると聞いています。 教員の志願者が減ってきている主な原因として、学校における授業以外の業務が多く、長時間労働や休日勤務などといった教員の負担が大きいことが指摘されています。また、公立と比べ、私立では、生徒数に対して教員が少ないというデータもあり、公立よりも私立学校の教員のほうが負担が重いのではないかとも言われております。 しかし、私立は、その建学の精神により、各校独自の教育方針を掲げ、特色ある教育を行っています。例えば、もう学校名は出しませんが、スポーツ分野では、バレーボール、剣道、ボート部などが全国優勝を果たしておりますし、また、文化活動においても、吹奏楽やバトントワリング、そして
ビジネスコンクールなどで最優秀の成績を収めるなど、多方面で輝かしい実績を上げ、熊本の教育界に大きな貢献をしています。 このように、将来にわたり私学の魅力ある学校運営を続けていかなければなりませんが、そのためには、教員不足を解消し、継続的に教員を確保する環境づくりや体制づくりが必要と考えます。 まずは、教員を確保するためには、教師になりたいという志願者を増やすことが大切です。そのためには、まず、長時間勤務や休日勤務の縮減など、教員の働き方改革をより一層進めていくことが重要と考えます。 そこで、私立学校における教員確保並びに教員の負担の軽減についてどのような考えなのか、総務部長に質問いたします。 〔総務部長平井宏英君登壇〕
◎総務部長(平井宏英君) 私立学校における教員の確保対策についてお答えいたします。 私立学校においては、それぞれの学校で、教員確保のため、新規学卒者の募集を行うだけでなく、公立学校の退職者などを対象にした採用活動が行われています。 また、熊本県私立中学高等学校協会では、教員求人案内をホームページに掲載し、志願者情報を取りまとめ、各学校に提供するなど、様々な工夫を凝らしながら教員の確保に努めておられます。 また、教員志願者を増やすためには、教師という仕事の魅力をアピールする必要があり、各学校では、教員の負担軽減など、働き方改革にも取り組んでおられます。 例えば、部活動や調査、統計等への回答など、必ずしも教員が担う必要のない業務について、外部指導者の雇用や事務職員との役割分担を見直すなど、そういった対策に取り組まれております。 県では、私立学校における教育環境整備のために、学校運営経費を支援しております。その中で、雇用する教員数に応じて、補助金も交付しております。 さらに、補助スタッフやICT支援員の配置、外部人材の活用などに対する補助金の交付、スクールソーシャルワーカーの派遣など、教員の負担軽減につながる取組を実施しております。 今後とも、これらの取組に加え、公立学校も含めた教員確保対策や働き方改革の好事例についての情報提供など、各学校を支援し、私立学校の教員確保、ひいては生徒が安心して学べる環境整備に努めてまいります。 〔
小早川宗弘君登壇〕
◆(
小早川宗弘君) 御答弁いただきましたけれども、公立もさることながら、私立の学校においても、教員不足は非常に大きな課題だというふうに思いますので、御答弁にありましたように、教員志願者を増やすための取組を重点的に行っていただきたいと思います。 特に、教師としての仕事、この仕事の魅力をしっかりと伝えていくというふうな取組、それから教師として本来の仕事に集中できるような働き方改革などにしっかりと取り組むということは、非常に重要なポイントではないかなというふうに思いますので、ぜひそういった施策を県として力強く、積極的に進めていただきたいと思います。 以上で私の質問は終わりでありますけれども、もう少し工夫すればよかったなと思う質問もあったかと思いますが、次回は、必ずまたこの場に立てるように、そしてさらにレベルの高い質問ができるように頑張りたいと思います。 また、執行部の
皆さん方には、いろいろと御指摘をしましたけれども、今後の施策の参考にしていただければというふうに思います。
皆さん方、御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(
溝口幸治君) 昼食のため、午後1時まで休憩いたします。 午前11時39分休憩 ――――――○―――――― 午後1時開議
○副議長(髙野洋介君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
立憲民主連合磯田毅君。 〔磯田毅君登壇〕(拍手)
◆(磯田毅君) 八代市・郡選出・
立憲民主連合の磯田毅です。今日は、午前中は小早川先生、そして答弁には、同じ八代市出身の田嶋副知事、そして午後は八代出身の私ということで、今日は何か八代デーみたいに思っておりますけれども、よろしくお願いします。 今回、科学的な考証が安心社会につながることを分かりやすくしようとの思いで考えてきました。政策を判断するとき、背景にある現実をどう捉え、どう将来につなぐのか、それは、考えることが最も重要だと思っています。質問は、その思いに沿って、政策や事業の科学的根拠について考えていきたいと思います。 この考えは、ドイツのワイツゼッカー大統領が、戦後40年の記念に、世界に感動を呼んだあの有名な演説「荒れ野の40年」で読まれた、過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となるから学んだものです。歴史について考えることが未来につながることを言われたものと思います。これを私なりに考えると、現実に目を閉ざす者は将来に盲目となるとも言えます。事業の背景をしっかり見つめ、将来への効果を正確に見通すことの大切さを伝えるものです。 また、もう一つの視点として、県が目指す幸福量の最大化は、不幸量の最小化によって実現しなければなりません。こういった視点を持ちながら、幾つかの課題について質問を始めたいと思います。 まず最初に、水俣病問題の解決に向けた取組についてお聞きします。 公害の原点と呼ばれる水俣病について、知事は、就任当初から、県が抱える最大の課題だと発言されました。公式確認から67年を迎えた今、いまだ解決とは言えない状況に、知事は、内心じくじたる思いをお持ちかと拝察します。原因企業はもちろん、国、県の責任については、司法判断でも歴然としていますが、水俣病は、命より利益を優先した結果であり、美しい自然の中で豊かに暮らされていた無辜の人々を苦しめた悲惨な公害事件として認識する必要があります。 水俣病問題の解決に向け、14年前に施行された水俣病特別措置法では、水俣病被害者を迅速に、かつ、あたう限り救済するとしていますが、県内では4万2,757名の方が申請され、うち3万7,613名の方が対象となりました。 しかし、特措法後も、救済を求める人々が出て、裁判も続けられています。いろんな事情があるものと思いますが、解決が遅れる原因に、特措法で定めた健康調査がなされず、67年たった今でも、被害の全容が解明できていないからです。水俣病は、行政の怠慢の歴史との指摘がありますが、健康調査でも、このことを指摘できます。 環境省は、昨年暮れになって、水俣病の客観的評価法を開発し、これを使った健康調査の検討を始めると発表しました。脳磁計とMRIを使った検査で、いわゆる客観的、科学的に評価できたと説明しました。 ところが、この手法のみでの個別判定は、精度上に課題があり、認定審査での活用はしないと想定、調査開始は見通せないとしました。13年もかけた末の発表に、関係する人たちは、遅過ぎる、検討が続く間にどんどん亡くなっていくと批判されています。 健康調査に用いる客観的評価法の開発という題目自体があり得ないと発言される専門家もいます。症状は患者自身の主観で感じるものであって、しかも感受性は人によってそれぞれ違うことから、水俣病の症状を客観的に評価するということ自体がおかしいと言えます。 昨年の10月、水俣病悲劇の歴史を自ら背負ってこられた水俣病互助会会長の上村好男さんが88歳で亡くなられました。水俣病の映画「MINAMATA」でも象徴的だったユージン・スミス氏が撮影した上村さん親子の「入浴する智子と母」の写真は、72年のタイム誌で発表され、世界に大きな衝撃を与えました。お母さんが智子さんをお風呂の中で抱き上げたこの写真は、水俣病の悲惨さを世界に伝えた見事なものですが、一時公開が封印されたこともあり、親の複雑な思いを考えさせられた写真でもありました。 21歳で亡くなられた胎児性患者の智子さんをしのび、そして水俣病で亡くなられた全ての命に祈りをささげる乙女塚が、隣の鹿児島県まで100メートルという県境近くにひっそりと建てられています。毎年5月1日には、行政が行っている慰霊式とは別に、水俣病互助会が主催する慰霊祭が執り行われています。 先日、私は、その思いに触れたくて、乙女塚を訪れました。その場所には、口を開け、あおむけの我が子を抱いた母親の像がありました。私は、この像が智子さん親子の思いや水俣病の悲しみを後世に伝える象徴的な姿に見え、二度と再びこのような歴史を繰り返してはならないと強くお祈りをしました。 水俣病の被害とその歴史を伝える歴史考証館は、国道のすぐそばにあるユージン・スミス氏とアイリーン・美緒子夫妻が住んだという家の前を通り、少し上った高いところにあります。水俣病資料館とは違った展示がしてあり、両方を見比べると、水俣病についての理解がもっと深まるかと思います。 考証館のところには、猫塚というお墓があります。水俣病の原因究明として実験に使われ、死んだ猫は、およそ900匹に上るそうですが、その猫たちを祭った塚から、命の貴さに寄り添う水俣の人々の気持ちに触れたようで、心打たれました。 さて、最近、水俣病をテーマにした映画が2本上映されました。有名な俳優であるジョニー・デップ氏が主演した「MINAMATA」や上映時間が6時間もある映画「水俣曼荼羅」です。映像には、責任を厳しく追及される
蒲島知事の姿や当時の県執行部の方々の姿があり、懐かしくも複雑な気持ちになりました。 「水俣曼荼羅」には、胎児性患者の坂本しのぶさんが、自分自身の実を結ばない恋物語を語るシーンがあります。重い症状にも屈しない、それでも強く明るく生きる彼女の人間性をしのばせるとてもいい雰囲気の場面です。彼女が作詞して歌になったのがありますが、それには「水俣病にならんば 私の人生は でもこれが私の人生 これからは自分自身で この道を歩いていきます」といった部分に、私は、諦めではなく、前を向いて生きようとする彼女の強さに引かれ、このドキュメント映像に感心しました。 さて、昨年の11月に、熊本学園大の高林秀明教授の研究グループが、特措法による救済対象地域ではない天草市倉岳町の住民へ聞き取り調査した結果、主な水俣病の症状である感覚障害が、いつもあると答えた住民が全体の3割以上に上り、熊本市などの同世代と比べ8倍以上多く、突然体がつるカラス曲がりも2割以上でいつもあると答えられ、対象とは26倍の差があったことを明らかにしました。高林教授は、衝撃的な結果に救済漏れの存在を問題提起できた、不知火海沿岸の住民健康調査と新たな救済策が必要と訴えられています。この調査結果からも、健康調査の必要性は、非常に高まってきたものと考えます。 そこで質問します。 環境省が開発した客観的評価法及び健康調査の早期の実施について、県としてどう考えているのか、副知事にお聞きします。 〔副
知事田嶋徹君登壇〕
◎副知事(田嶋徹君) まず、1点目の国の客観的評価法についてお答えします。 健康調査については、平成16年の最高裁判決以降、県から国に対し、要望や幾つかの提案も行っております。 その結果、県議会に多大な御尽力をいただき、県として成立を求めてきた特措法に、国が調査研究を実施し、県はそれに協力すると明記されました。 特措法の成立後も、
蒲島知事は、環境大臣とお会いする機会があるたびに、直接、健康調査に向けた取組の加速化を要望してまいりました。 昨年12月、国は、それまで開発を進めてきた客観的評価法について、評価法の精度として一定の段階には到達したとして、健康調査に活用できる可能性があると公表されました。 令和2年度に、当時の小泉大臣が研究成果の早期整理に向けた見通しを示されて以降、歴代大臣の目標であった整理が実現できたことは、取組の加速化を求めてきた県として、まずは前向きに受け止めています。 一方で、健康調査の実施に向けては、議員も御指摘ありましたが、様々な御意見があることも承知しています。 国は、今後、有識者の協力も得ながら、健康調査の在り方について検討を進めるとのことですので、そうしたプロセスを通じて、より納得性が高められるよう、これからも知事を先頭に、国に求めていく考えです。 次に、2点目の健康調査の早期実施についてお答えします。 健康調査について規定された特措法施行から、既に長い時間が経過しています。そのため、国には、健康調査の早期実施に向けて、スピード感を持って対応していただくよう、引き続き要望してまいります。 県としても、特措法の規定に基づき、必要な協力を行ってまいります。 〔磯田毅君登壇〕
◆(磯田毅君) 今回、私は、特措法の対象地域外である倉岳町の調査結果を取り上げましたが、これとは別に、不知火患者会などが編さんした「見捨てられた水俣病患者たち 救済を待つ人びと」という著書で、同じ倉岳町や芦北町黒岩地区、鹿児島県伊佐市でも、2011年の調査で未救済の患者がいたことを報告しています。対象地域外で救済が認められた方と、特措法に該当しなかった、あるいは申請しなかった方との神経所見異常が出現する頻度を比べたら、この3者間に全く差がなかったとあります。 当時の潮谷知事が健康調査を国へ求めたとき、環境省は、汚染から時間がたっており、正確な調査はできないと理由づけしましたが、2009年の特措法は、公式発見から50年以上もたってのことです。 水俣病の診断は、患者自身の主観的症状を数多く集めることで、客観的な判断につなぐことが可能です。 水俣病問題の解決は、科学的かつ客観的な裏づけが必要であり、そのためには、県が要望している健康調査の実施しかないと考えます。 県は、国に対し、健康調査の早期の実施を再び強く迫るよう要望して、次の質問に参ります。 2点目、川辺川ダムの科学的根拠と
環境アセスメントについてお聞きします。 まず、環境影響評価の手続についてお聞きします。 まず、川辺川ダムの環境影響評価について、副知事にお聞きします。 私は、以前、
蒲島知事に、その実施を国へ求めるよう質問をしたことがあります。 現在では、法と同等の環境影響評価が進められており、方法レポートが11月に公表され、住民説明会を経て、知事意見を述べる段階です。 次は、準備レポートの公表と意見聴取、そして同じく評価レポートの公表と、あと2つの段階が残っていますが、この流れについて私が感じたことを少し述べてみたいと思います。 一般に
環境アセスメントと呼ばれるこの手続は、国際的に第三者が行っている場合が多く、日本のように事業者自身が行うのは非常に珍しいと言えます。私が以前の質問でこの調査を求めたのは、ダムの建設根拠を科学的に検証する方法として、
環境アセスメントしかないと思ったからです。 先日、私は、方法レポートの要約版を見ましたが、気になる部分がありました。方法レポートの前段階である配慮レポートで示された試験湛水の部分です。ダムが完成してから、ダムに問題がないかチェックするために、貯留時の最高水位まで水をためる試験のことです。 貯留ダムの試験は、洪水時の満水水位まで水をためた後、最低水位まで放流し、
ダム本体や放流設備、あるいは貯水池周辺などの安全性を確認するものです。通常、半年から1年程度かかるのが普通ですが、場合によっては、数年に及ぶこともあるそうです。 先月、本体設置が4月に完了する立野ダムの試験湛水検討委員会の資料が公表されました。 九州地方整備局立野ダム工事事務所の資料では、11月に試験湛水を始め、満水から72.5メートルの差がある最低水位まで放流するそうです。水位が上がることで、貴重な阿蘇の北向谷原始林や柱状節理など、貴重な自然に影響がないか心配されますが、検討委員会は、可能な限りその期間を短縮する計画を示しています。開閉する装置がないため、鋼鉄ゲートをつけての試験になるそうですが、水をためて放流するまでの期間が問題になります。計画では、11月1日から湛水を実施した場合、日数は、平均14日、最長でも20日とし、その予測、評価の結果、樹木は維持されると考え、草本群落は枯死する可能性はあるが、後で回復できるとしています。私は、この楽観的な評価に疑問を感じ、注視する必要を感じました。 現在供用中の
流水型ダムである山形県の最上小国川ダムや島根県の益田川ダムなどの試験湛水後の状況についても、調査が行われています。このような先行例などを参考に、確かな科学的検証を
環境アセスメントに求めたいと思います。 川辺川ダムの場合、立野ダムの容量1,010万立方メートルに比べ、その規模が13倍近くあり、その大きさゆえに、試験湛水の影響はかなり大きいと考えられます。 具体的には、満水までにかかる期間の長さ、あるいは放流の速度や強さ、そして濁りなど、環境への大きい影響が予想されます。知事も、配慮レポートの知事意見で、この試験湛水のことを6か所で意見を述べられていますので、きっと私と同じ懸念をお持ちかと推察いたします。 そこで質問です。
環境アセスメントは、科学的検証を踏まえながら進めていかなければなりません。今後、環境影響評価方法レポートに対して、どのような知事意見を述べるお考えなのか、副知事にお尋ねします。 〔副
知事田嶋徹君登壇〕
◎副知事(田嶋徹君) 環境影響評価の手続についてお答えします。 新たな
流水型ダムについては、事業主体である国において、アセス法に基づくものと同等の環境影響評価が実施されております。昨年3月の配慮レポートに続き、11月には方法レポートが公表されており、今後、知事意見を述べることとなります。 この方法レポートは、国が設置する各分野の専門家から成る
流水型ダム環境保全対策検討委員会における専門的見地からの議論と配慮レポートに対する知事意見などを踏まえて作成されたものです。 新たな
流水型ダムの環境影響評価の手続においては、国は、環境への影響の最小化を目指し、ダムの構造、運用等の検討の進捗に応じ、改善を試みながら深化させていく旨を表明しています。 このことから、今後、試験湛水の方法についても、先行事例の知見等も参考にしながら、環境への影響が最小限となるように検討が進められていくものと認識しています。 なお、議員から御指摘がありました同じ
流水型ダムである立野ダムについては、専門家から成る試験湛水検討委員会が新たに設置されました。 委員会では、科学的な見地から、環境への影響を極力低減することが可能な手法について検討されています。また、試験湛水実施後も、この検討委員会により、客観的かつ科学的な検証が引き続いて行われると伺っています。その検討内容や検証した内容については、新たな
流水型ダムの検討にも生かされていくものと考えております。 また、議員御質問の方法レポートに対する知事意見を述べるに当たっては、既に県が設置している、専門家から成る
流水型ダムに係る環境影響評価審査会から意見を聴くこととしています。 この審査会は、方法レポートを審査するに当たり、昨年12月に立野ダムの現地視察を行い、試験湛水についても、その具体的方法などの説明を受けました。 また、本年1月に会議を開催し、立野ダムの現地視察も参考に、専門的見地から活発な意見が交わされております。 今後、方法レポートに対しては、審査会や市町村長、住民の意見を踏まえながら、新たな
流水型ダムが命と環境を守るものとなるよう、試験湛水も含め、適切な知事意見を述べてまいります。 なお、県としても、独自に設置した事業の方向性や進捗を確認する仕組みの中で、
流水型ダムの進捗状況を踏まえながら、環境への影響等について、流域の皆様とともにしっかりと確認し、県民の皆様に広く周知してまいります。 〔磯田毅君登壇〕
◆(磯田毅君) 方法レポートに対する知事意見は、間もなく出されると聞いています。環境への影響を科学的に正確に予想するのは、とても難しいかと私も思います。しかし、
ダム事業に関する有識者会議や環境影響評価審査会、あるいはほかの検討会とされる会議の内容が、流域住民の意見や反対される住民に対し、真摯な検討や反論がなされたのか、疑問を感じる人は多いと思います。しかも、人口減少や高齢化が進み、経済の縮小が著しい球磨地域において、基金の創設や予算で地域の振興を図る県の思惑が実るという可能性は少ないと私は感じます。 地域の振興は、ほかの対策にあると思います。ダム建設の予算は2,900億円とも言われ、県の負担は大丈夫なのか心配します。コスト上昇が確実に見込まれる今の状況に、負担額は相当膨らむだろうと見込みます。 2000年にできた地方分権一括法では、各地方自治体は、自らの判断と責任により、地域の実情に沿った行政を展開していくことが大いに期待されるとあります。ダム建設は国家事業ですので、一概にそうとは言い切れませんが、この調査が、清流球磨川を守る担保になるよう努力は続けていただきたいと要望して、次の質問に行きたいと思います。 2番目に、川辺川ピーク流量の推定値についてお聞きします。 川辺川ダムが
流水型ダムとして不死鳥のようによみがえってきたのは、令和2年7月に起きた豪雨被害がきっかけでした。ダム建設の根拠として、国は、豪雨時に川辺川のダム建設予定地より下流のつり橋がある区間を流れた最大流量が3,000トンだったとしました。 県は、私の以前の問合せに対し、簡便的な計算を示し、ダム下流のつり橋地点で3,200トン程度の流下が可能と推定されると説明しました。県が独自に現地測量を実施した結果と聞いて、私はそのとき納得したのですが、実は、その後、清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会の方から、あなたの理解は間違っているとの指摘を受けました。実際は、国の言うピーク流量3,000トンより少なく、その下流の中流域にある四浦地点ではおよそ2,190トンだったと推定し、その根拠を示されました。根拠として、豪雨後の四浦にある水位観測所の水深を示す量水標が2.7メートル近く土砂に埋まった写真を示されました。 県が示した簡便的な計算は、洪水時の最高水位と量水標のゼロ点との差を深さとして断面積を割り出したものですが、手渡す会は、四浦地点の川底は、それより2メートル近く土砂で浅くなっていたと指摘されています。もし四浦地点が手渡す会の言われる2,190トンなら、四浦より上流にあるつり橋地点の流量3,000トンとの整合性が取れないように感じます。この点を県はどう判断されるのか、土木部長にお尋ねします。 〔土木部長亀崎直隆君登壇〕
◎土木部長(亀崎直隆君) 川辺川のピーク流量の推定についてお答えします。 国が検証委員会で示した令和2年7月豪雨における川辺川のピーク流量は、県が以前議員にお示しした簡便的な計算ではなく、川辺川流域の国土交通省、気象庁及び県の雨量観測所の降雨データと全国的に採用されている国の河川砂防技術基準に基づく流出解析の手法を用いて計算され、つり橋のある区間では毎秒3,000立方メートル、それより下流の四浦水位観測所の区間では毎秒3,100立方メートルと推定されています。 県では、この推定流量を基に川辺川の県管理区間の氾濫解析を実施し、その計算水位と現地の洪水痕跡がおおむね一致していること、柳瀬地点の流量観測結果をおおむね再現できていることを確認しております。 議員が言及されました2,190トンについて、詳細は把握しておりませんが、検証委員会でお示しした流量は、客観的な事実の確認と科学的な検証に基づく結果だと考えております。 〔磯田毅君登壇〕
◆(磯田毅君) 私がこのことを問題としたのは、ダム建設の大きな根拠である川辺川のより正確なピーク流量について、科学的データに加え、流域の方々の経験された多くの事実を組み合わせて推定することが重要だと思っているからです。 国土交通省の推定は間違っていないという判断を県は繰り返しましたが、そのことにさらに反論する声もあります。国のデータは、標高を基にした水位から得られたものであり、実際の深さを示す水深より深くなっている可能性があり、根拠となる断面積が過大に計算されているといった声も出ています。 川底近くをゼロ点とする基準は、堆積した土砂で浅くなっている現状からすると、大きな誤差が出ると言われます。そもそも、このゼロ点がいつ測ったデータなのか不明だと指摘されます。いつも川を近くで見ている住民の方は、四浦地点の河原の石は、10年以上前に壊れた上流の板木ダムから堆積土砂が流れたもので、石で浅くなった河原からすると、国が示した流量は流れていないと断言されます。いずれにせよ、国は、こういった住民の指摘に対し、科学的考証を使った反論はしていません。こういった論争は、ダム建設が進み出した今、無意味なことのように思えます。 また、スタートした公共事業は誰にも止められず、止まった例もないと聞きます。しかし、こういった大きな事業には、国と住民との議論を基にした科学的考証が必要です。 今回の場合、それがなかったから、まだ紛糾が続いている原因だと私は思います。もし科学的反論があるなら、今でも遅くありません。国は反論すべきです。 県にとっても、こういった論議は、次の事業を検討する上で貴重な参考例となります。人口や経済も含め、全てが減少する社会に入った今、その科学的考証の必要性はますます高まっていると考えます。 県執行部におかれましては、それを十分認識され、誰もが納得でき、そして科学的考証に耐え得る事業になることをお願いしまして、次の質問に入ります。 3番目、県立高校の在り方について質問します。 人口減少や超高齢化といった我が国の課題に対し、それぞれの地域は、特徴を生かした持続的な社会をつくるという、まち・ひと・しごと総合戦略に取り組まれています。しかし、都市部への集中と地方の過疎化は一向に止まらず、地方は衰退の一方です。私は、その原因の一つに高校の在り方も影響しているのではないかと考えます。 そこで、これまで取り組んでこられた高校再編整備等基本計画の実施後のことについて考えてみたいと思います。 2019年3月で完結したこの計画は、通学区域や適正規模、特色ある学校づくりや県立高校の再編整備などが検討された末、8学区から3学区へ通学区域が拡大され、学区外枠も倍増されました。 さらに、定員割れが続いていた高校を再編統合し、その結果、数で10校の高校が姿を消しました。しかし、実施後も、生徒は熊本市に流れ、郡部の定員割れは一向に収まらず、生徒数の地域バランスは大きく崩れた状態です。 これに対し、教育委員会は、県立高校あり方検討会を設置し、再編整備後の現状と課題を踏まえ、「今後の県立高校のあり方と取組の方向性」についてといったテーマで協議を進め、2021年3月にその提言をまとめました。 提言のポイントは、学年4ないし8学級とした適正規模を一旦留保し、再編統合は行わないなどとし、高校の魅力化に徹底的に取り組むとしています。そして、地域との連携、協議を進めていくとし、課題の一つだった大規模校、1学年10学級ですが、この大規模校の削減は、人間関係の希薄化や学校行事への支障といった課題は見られないとして、引き続き検討とし、通学区域と学区外枠の拡大は、定員割れの続く郡部を懸念し、検討を続けるとしました。 大規模校は、優秀な生徒が集まりやすいという特徴があります。高校卒業後は県外の大学に進学し、大学を卒業しても熊本に帰らないことが多いため、大規模校は、意図しないながらも、人材の県外転出に加担しているとも言えます。この問題は、結果的に、まち・ひと・しごと創生総合戦略が意図した方向ではなく、地方創生にはつながらないおそれがあります。 この提言は、郡部の小規模校について検討されてはいますが、はっきりした方向は示されていません。生徒の熊本市への集中と郡部の定員割れについて、解決には至っていません。 生徒数が偏る原因として、少子化が進んだことや都市部と地方の経済格差が進んで人口が集中したこともありますが、教育の選択幅を広げるとして学区拡大、学区外枠を拡大したことが、都市部への集中につながっているのではないかと考えます。 一般的に、教育の目的は、知識量を増やすのではなく、その知識を使って考える力を伸ばすことにあります。過度の集中は、知識量の競争を促し、格差をつくり、結果的に弱肉強食の社会をつくり出すと考えます。 このままだと、生徒の熊本市内への集中がさらに進み、郡部の高校では、存立さえ危ぶまれることになりかねません。郡部に高校を残すには、小規模であっても、教育効果が高く、地域の若者の拠点になるような高校の在り方を探ることが大切です。 ここで、九州各県の小規模校の様子について考えてみましょう。 1学年が1ないし3学級の小規模校数の割合を見ると、佐賀、長崎、鹿児島の3県は、4割から5割に達しており、熊本のおよそ2割より高いことが分かります。小規模校を増やせば、先生の確保や施設の維持などに課題があり、予算の確保は難しいと思いますが、今政府は、子育て支援として予算を倍増させる計画ですので、その可能性は十分あると思います。 県立高等学校入学者選抜制度検討委員会では、入試の方法や入試の時期について、改善の検討をされていると聞いています。少子化が進む中、入試制度を変えるだけで高校の課題が解決に向かうのかが注目されますが、入試制度を変更することで県立高校にどのような影響が及ぶのか、不安に思います。 そこで質問です。 生徒の熊本市への流れが進んでいることと郡部の存続に関わる小規模校について、また、入試制度改革の進捗状況について、以上2点を教育長にお聞きします。 〔教育長白石伸一君登壇〕
◎教育長(白石伸一君) まず、1点目の生徒の熊本市への流れと郡部の小規模校に対する考え方についてお答えいたします。 議員御指摘のとおり、生徒が熊本市へ流れることは郡部の定員割れの一因と捉えておりまして、定員割れの状況を示す充足率については、令和4年度では、熊本市内は97.3%であるのに対し、熊本市以外の地域では64.0%と、かなり差が生じています。 そのほかにも、少子化や過疎化の進行、私立高校への進学率の増加などが影響していると考えておりまして、定員割れの是正はもとより、小規模校であっても地元で進学や就職が実現できる学校づくりは、喫緊の課題であると認識しています。 そのため、県教育委員会では、令和3年3月の県立高校あり方検討会の提言に基づき、高校の魅力化に積極的に取り組んでいます。 例えば、小規模校では、教員数が限られ、多様な科目を設定することは難しい状況にありますが、小国高校や牛深高校では、生徒が履修できる科目を増やすため、第一高校など他地域の高校からの授業配信など、ICTを活用した遠隔授業に関する実践研究を行っています。 また、高森高校では、高森町によるエンターテインメントによる
まちづくりとの連携の下、来月には公立で全国初となるマンガ学科がスタートするなど、地域と一体となった魅力ある高校づくりに取り組んでいます。 今後とも、小規模校ならではの特色ある学校づくりを進めてまいります。 次に、2点目の県立高校の入試制度改革の進捗状況についてお答えいたします。 魅力ある学校づくりの取組の一つとして、現在、外部有識者の方々に、現行の前期(特色)選抜と、後期(一般)選抜の在り方や高校の特色を生かした新たな選抜方法、さらには生徒の学びの充実に向けた入試の実施時期等について議論を行っていただいています。令和3年10月からこれまで6回の検討委員会が開催され、本年度末に提言として取りまとめていただく予定としております。 県教育委員会としましては、今後、検討委員会からの提言を踏まえ、受験生一人一人の強みと各高校の特色を生かせるような入試制度の設計に努めてまいります。 引き続き、小規模校における学びの充実を図るとともに、全ての高校生が夢に挑戦できる魅力ある学校づくりに向けて、全力で取り組んでまいります。 〔磯田毅君登壇〕
◆(磯田毅君) 郡部の県立高校の存続を考えた場合、この問題は、教育委員会だけで解決できるものではないと考えます。地域の存続につながる大きな問題ですので、社会全体で考えることが求められます。格差が広がる今の状況は、教育だけに限らず、全てにおいて一極集中を容認してきたことが拡大につながったと私は思っています。 ところが、驚いたことに、熊本市は、24年度から、市立の本荘小、中緑小、山本小の3つの小学校で、通学区域にかかわらず、市内全域からの転入学を認める小規模特認校の導入を検討していることが分かりました。郡部にある小規模校をこういった特認校として残すことができれば、適正な学校規模や40人の学級定員にとらわれることなく、弾力的な学校運営ができ、高校存続も可能になると思いますので、執行部には、その検討も強く要望しておきます。 一方で、生徒が熊本市に集中する原因に、公立と私立の生徒数の比率が関係していると思っています。以前の比率が7対3だったのに比べ、現在6対4となってきています。公立と私立の生徒数を10年間の変化で見た場合、定員数の減り方では私立のほうが公立より少なく、充足率も私立のほうが高く、差が開いているのです。このままだと生徒数が逆転しかねない状況も考えられます。郡部の高校に直接影響するこの問題は、公教育の在り方が強く問われる重要なものと考えますが、このことについて、突っ込んだ議論はされていません。 郡部の高校存続は、地方創生に関わる重要な問題だけに、教育委員会だけで解決できる問題ではありません。都市部と郡部の格差は、これまでの政策が関係したものであり、高校の在り方とは別に考える必要もありますが、いずれにしても、郡部の高校の定員割れが続く現状に、県庁一体となって取り組んでいってほしいと要望します。 4番目、農産物輸送の課題についてお聞きします。 2024年4月から、罰則つきで時間外労働の上限規制が適用され、運転手の年間総拘束時間は、これまでより216時間減って、3,300時間になります。持続可能な物流を目指して、課題だった労働環境を改善しようとするものです。 ただ、今回の改正は、農産物輸送をはじめ、国内物流の9割を担ってきた運送業に大きな影響を与えることが予想されます。いわゆる2024年問題と呼ぶ問題が出てきたのです。特に、農産物等を運ぶ長距離輸送は、積込みや荷待ちによる長時間の拘束などで運転手が不足し、厳しくなると思われます。 民間シンクタンクのNX総合研究所の試算によりますと、影響は輸送能力で最大14%不足し、4.1億トンの荷物が運べなくなるとしています。地域別に見ると、長距離輸送が多い九州地方は、中国地方に次いで大きく、業界別だと、農産物輸送が33%と最も影響を受けます。野村総研が行った予想でも、2025年には荷物総量の28%、そして2030年には35%が運べなくなると予測しています。本県の場合、それぞれ30%、38%が運べなくなるそうです。 本県の農産物輸送は、鮮度が要求される野菜や果物が多く、大型トラックによる長距離輸送がほとんどです。都市部にある市場での荷待ち、荷下ろしの時間も長いことから、影響はかなり大きくなると思われます。 私の知る横浜市にある市場は、荷下ろしの関係で、朝の早い時間帯での騒音と夜間の照明に苦情が集まり、施設を改造することにしたそうです。こういった問題も含め、事業を撤退する会社も出てきており、本県の場合、熊本県トラック協会の会員約780社のうち、24社が昨年休廃業されたそうです。 燃料価格は、ピーク時より幾分か下がったとはいえ、1年前の1.3倍の水準です。人件費の大幅アップが迫る中、車両価格の値上がりや軽油引取税の取扱い、あるいは高速道路の料金改定問題を含め、様々なコスト削減が図られようとしています。 国土交通省は、コストが転嫁できて適正な運賃になるよう、標準的な運賃を荷主などに示し、その推進を図っています。県も、公契約条例によって、事業を受けた業者の労働環境に配慮することを求めていますので、こういった流れが広がることが期待されます。 この問題は、運送事業者やトラック運転手だけでなく、輸送園芸地帯とされる本県の農産物輸送に直結します。 農産物輸送は、農業県である本県を支える重要なインフラです。12月補正予算で運送業者に燃料費高騰への支援があって、影響は幾分緩和されたようですが、高止まりするコストに対抗できるものではありません。 そこで質問です。 本県にとって、農産物輸送は、県内産業に関わる重要なものです。2024年問題と言われる課題に対し、県はどういった対応を考えておられるのか、
農林水産部長にお尋ねします。 〔
農林水産部長竹内信義君登壇〕
◎
農林水産部長(竹内信義君) 本県は、全国有数の食料供給県であり、主要品目であるトマトやナスなどは、出荷量の4割から5割程度が本県から約1,200キロ離れた関東へ出荷されております。 また、農産物の輸送の99%にトラックが利用されており、関東へは輸送に2日間を要し、出荷後3日目に販売されております。そのため、大消費地から遠隔地となる本県にとって、いわゆる物流の2024年問題への対応は、議員御指摘のとおり、重要な課題と認識しております。 国におきましては、国土交通省、経済産業省及び農林水産省の3省合同により、持続可能な物流の方策を検討するため、有識者、関係団体及び関係省庁から成る検討会が、令和4年9月に設置されております。 この検討会では、本年1月、荷主企業や消費者の意識改革、法律に基づいた計画的な物流改善を促す措置の検討などを内容とした中間報告が行われ、5月から6月をめどに、最終報告が取りまとめられる予定です。 県では、平成30年度から、JA熊本経済連と県内トラック業者で構成される熊本県農協青果物輸送改善協議会と連携し、トレーラーの荷台だけを運ぶRORO船やフェリー、鉄道を活用したモーダルシフトや農産物を一時的に保管する産地ストックポイントの利用、関東向けの4日目販売などについて検証を進めております。 また、国に対して、輸送体系の効率化に向けた支援の強化を継続的に要望しており、県議会におかれましても、平成30年3月に、首都圏への持続可能な輸送体系の構築に向けた支援を求める意見書を国に提出していただいております。 また、安定的な輸送の維持に向けては、トラック輸送の発注元である荷主の理解と協力が必要です。その一環として、例えば輸送運賃の適正化につきましても、国が告示した標準的な運賃を関係団体に重ねて周知するなど、啓発に努めているところです。 物流の2024年問題に対応し、持続可能な輸送体系を構築するためには、運輸、労働に係る制度を所管する国、農業団体等の荷主、トラック業界などの関係者が連携して対応していくことが不可欠です。 県といたしましては、国の動きも注視しながら、引き続き、関係者への啓発を行うとともに、これまでの検証を踏まえた農業団体やトラック業界による安定的な輸送体系の構築を支援していくことで、食糧供給県としての役割を担ってまいります。 〔磯田毅君登壇〕
◆(磯田毅君) ただいま部長から、輸送方法をめぐる様々な取組について説明を受けましたが、現場をよく知る私にとって、こうした取組が効果を上げてほしいと思います。 しかし、最大の問題は、今、国会でも議論があっているように、上昇するコストを価格に転嫁できるのかといったことです。私の知るある事業者の方は、料金上昇の部分が農産物価格に反映されるべきであり、生産者に負担が行くのは間違いだと強く話されておられました。価格転嫁は、記録的な物価が続く中に、大変厳しいかと思われます。 そういう中にあって、公正取引委員会は、1日、中小企業が原材料や人件費などの上昇分を価格転嫁できているかどうかに関する大規模な調査を実施すると発表しました。発注側の企業と下請の中小企業の計11万社を対象に実施した昨年の緊急調査に続くもので、今回は、さらに規模を拡大して実施するそうです。調査結果を基に、注意喚起の文書や企業、団体名の公表も、前回に続いてあるようですので、その効果が期待されます。執行部には、こういった国や公取の動きに注視し、その対応に取り組んでもらいたいと思います。 次、生活保護制度における自立支援の取組についてお聞きします。 この質問は、昨年5月の熊本地裁の生活保護費減額の取消しを求めた訴訟と、同じく10月に生活保護廃止の取消しを求めた訴訟で、いずれも自治体が敗訴した判決がきっかけとなりました。 5月の訴訟は、大阪地裁の判決に続く2例目で、2013年から2015年にかけて、低所得者世帯の消費水準やデフレを理由に、政府が最大10%という大幅な引下げに対し、生存権を保障した憲法25条などに違反すると提訴したものです。判決は、保護費の引下げに対し、裁量権の逸脱または濫用で違法とし、原告勝訴となりました。 今年の2月、宮崎地裁でも全国5例目となる同じような判決が出され、引下げには合理的理由がないと認めました。 昨年10月の訴訟は、同居する孫が准看護師になり、収入が増えたことで、世帯分離を解除し、祖父母と同一生計であると判断、生活保護を廃止した県の対応に、生活保護廃止処分の取消しを求めたものです。 熊本地方裁判所は、世帯の自立という長期的な視点に欠け違法だと、原告勝訴となりました。これを受け、県は、国との協議を経た上で、これまでの世帯認定にそぐわない部分が含まれているとして、控訴に踏み切りました。 私は、県の控訴は、自立を助ける生活保護法の精神や、貧困の連鎖を教育で断ち切るといった県の方針からすれば、控訴はやめたほうがいいと考えます。 知事も、この控訴について、東京からオンラインの記者会見で、担当者からは、お孫さんの就学が継続できるよう、必要な経費もしっかり確認し、世帯が自立できると判断した上で生活保護を廃止したと聞いていますと答えられた上で、高裁の判断を仰ぐとして控訴したものと発言されました。 しかし、その一方で、控訴回避の道を必死に探ったが、国の判断には応じざるを得ず、断腸の思いだとも述べ、厚生労働大臣政務官に対し、生活保護の運用に当たり、社会の実態に沿った見直しを行うよう申し入れたとあります。 このときの知事のお気持ちはよく理解できますが、ただ、控訴の判断がどうだったのか、私は疑問に思います。病気を抱え、高齢になられる祖父母の方は、裁判が続くことになり、つらい、県の控訴に腹立たしく感じますとコメントされています。 生活保護制度の運用に際して、保護の受給条件が厳しく、車の所有や扶養照会の件、あるいは収入と貯金が最低生活費を下回ること、また、学費の蓄えを資産とみなすなど、そういった条件が壁となり、申請をちゅうちょする人もあり、生活が行き詰まらないと利用できないという課題があります。 全国保険医団体連合会の資料によれば、生活保護支給額の対GDP比について国際比較すると、イギリスで4.1%、アメリカ3.7%、ドイツ、フランスがそれぞれ2%などに対し、日本は、先進5か国の中で最低の0.8%しかありません。さらに、生活保護を受けられる基準を満たす人で、実際に生活保護を受けている人の割合を示す捕捉率は、日本弁護士連合会の資料によりますと、2010年には、先進諸外国は、軒並み50ないし90%と高いのに比べ、日本は、僅か15ないし18%と著しく低いのです。日本では、8割近い人が、生活保護を受けることができるのに、受けていないということになります。 私は、こういった方々は大変苦しい生活を送られているのではないか、さらに生活保護世帯の子供たちが大人になったときに、再び生活保護を受給するという状況が生じないかという心配をしたとき、県が基本方針に掲げている、誰一人取り残さない、貧困の連鎖を教育で断つといった方針と矛盾するのではと思います。 そこで質問します。 生活保護制度における自立支援に県はどのように対応していくのか、
健康福祉部長にお尋ねします。 〔
健康福祉部長沼川敦彦君登壇〕
◎
健康福祉部長(沼川敦彦君) 生活保護は、生活に困窮する方々の最後のセーフティーネットとなる重要な制度です。 この生活保護の事務は、国が定める基準に従い実施する法定受託事務であり、制度の運用に当たっては、生活保護を受ける方々の間で不公平とならないよう、適切に実施することが求められています。 県では、この基本原則にのっとり、支援が必要な方々に対し、制度内容の丁寧な説明に努めるとともに、健康で文化的な最低限度の生活の保障と自立に向けた支援を行っているところです。 一方、生活保護法は、昭和25年の法制定以来、その運用ルールと社会の実態を照らし合わせ、必要に応じて改正が行われてきました。 例えば、かつて生活保護を受けながら高校に進学することは認められませんでしたが、高校への進学率が高まったことに伴い、現在は、生活保護世帯からの高校進学が認められています。 県としても、生活保護制度が社会の実態に合ったものとなるよう、昨年秋には、知事自ら、世帯認定の考え方について国に申入れを行ったところであり、今後も引き続き、必要な見直しを働きかけてまいります。 さらに、県では、貧困の連鎖を教育で断つとの知事の強い思いに基づき、大学進学を目指す生活保護世帯の子供に対して、自立に向けた独自の手厚い支援を行っています。 具体的には、知事就任直後から、全国に先駆けて、生活保護世帯から大学等に進学する子供が安心して就学できるよう、「夢」応援資金貸付制度を創設しました。また、県立大学においては、成績優秀で勉学意欲の高い生活保護世帯における進学希望者で、学校から推薦された生徒の入試枠を設けています。 これに加えて、複数の福祉事務所に学習支援員を配置し、生活保護世帯の子供を対象に、日々の学習や進学に向けた支援も取り組んでいるところです。 今後も、県民一人一人の生きる権利を尊重し、生活に困窮される方々の支援や自立の助長をしっかり取り組んでまいります。 〔磯田毅君登壇〕
◆(磯田毅君) 岸田首相は、就任当初、新しい資本主義の実現を目指し、分配なくして次の成長なしと声高に述べられました。その後、その分配のことは忘れられたみたいで、資産所得の倍増へと大きくかじを切りました。 今、日本は、先進国の中で最も経済の成長を忘れた国と言われており、事実、賃金は下がり続け、成長どころか、明日の食事に事欠くような事態も出ています。生活保護受給者は、高齢者の単身世帯が多く、今回のような例も珍しくありません。 世界各国では、社会保障制度の重要性が認められており、その捕捉率から見ても、人の尊厳は保障されていると思います。5割近い国民負担率からしても、先進国並みの社会保障予算は、十分に確保できるはずです。 県も、県民総幸福量の最大化を目指すなら、私が言う不幸量の最小化こそが達成につながります。誰一人取り残されることなく、安心して住める熊本の実現は、それを支える生活保護制度にあり、県は、適正な運用について、国や市町村へしっかりとつないでもらいたいと思います。 次、コロナ禍で影響を受けた事業者の再建についてお聞きします。 4年目を迎え、終息の見えない新型コロナ感染症は、私たちの生活や経済に大きな打撃を与えました。政府は、その対策に、3年間で100兆円を超すというかつてない予算を講じ、手厚い支援をしています。 特に、金融支援は、特例貸付けと呼ばれる無利子、無担保の生活支援1.4兆円や、中小企業の経済再生につなぐ支援として、新たに無担保、無利子のいわゆるゼロゼロ融資を設け、件数で245万件、融資額で43兆円の実績につながり、大きな効果を生みました。このゼロゼロ融資は、3年が過ぎた今年の春から秋にかけて、返済のピークを迎えます。 中小企業は、コロナ前の水準に戻った業種が少なく、エネルギーなど物価の高騰で、依然として厳しい状況が続いています。県内の企業の休廃業も3年連続で増え、昨年は過去最多の563件でしたので、影響が心配されます。 一方、コロナ禍による影響が長引くことから、返済を迎えた融資を新しく借り換える制度が1月からスタートしました。県は、国に先んじて、この借換えを見据えた伴走支援型の融資に早くから取り組まれていましたので、県内への影響は少ないようです。ただ、これも返済が先伸びされただけで、いずれは返済しなければならず、不安は残ります。 実質的に経営破綻しているのに金融支援で生き延びた会社をゾンビ企業と言われているそうですが、現在、その比率は約13%を占め、企業数も18万社を超えていることが帝国データバンクの調査で分かりました。地方の雇用を守ってきた一面も無視できませんが、経営が長引くことで、産業の新陳代謝に悪影響を与え、時代に沿った新しい産業の育成につながらないおそれもあり、見えにくい課題となっています。 企業倒産を回避して企業の延命を図るのも大切ですが、一定の条件を満たせば、倒産しても連帯保証人である経営者の保証債務が免除されるという制度改革も考えられます。そうすれば、思い切った事業展開や事業継承がよりしやすくなって、企業の新陳代謝を後押しするものと考えられます。ゼロゼロ融資を受けている事業者は、それ以外に通常の融資も抱えている場合があり、低迷している企業にとって必要な制度かもしれません。 そこで質問です。 今後の経営者保証の改革やコロナ禍で影響を受けた事業者の事業再建に向けて、県はどのように取り組まれるのか、
商工労働部長にお聞きします。 〔
商工労働部長三輪孝之君登壇〕
◎
商工労働部長(三輪孝之君) まず、今後の経営者保証の改革についてお答えします。 議員御指摘の経営者保証は、経営者に対する金融機関の信用を補完するものであり、資金調達につながりやすくする面がある一方、スタートアップの創業や円滑な事業承継、早期の事業再生を阻害する要因となるなどの課題が指摘されています。 そのため、国においては、昨年12月に、経営者保証改革プログラムを策定し、金融機関に対し、経営者保証に依存しない融資を促進するよう要請していますが、現時点では、必ずしも国のガイドラインが十分に浸透しているとは言い難い状況にあります。 こうした状況を踏まえ、県としては、今後、国の経営者保証改革の動向を注視しながら、必要に応じ、金融機関等連絡会議の場などを活用して、金融機関に対し、国の方針への協力をお願いしていきたいと考えています。 次に、コロナ禍で影響を受けた事業者の事業再建に向けた県の取組についてお答えします。 物価高騰等の影響もあり、今後、採算の合わない事業の廃止や経営の抜本的な見直しを余儀なくされる事業者の方々が増加することが懸念されます。 そのため、事業者の事業再生計画等の作成を後押しする中小企業者事業再生等支援事業を、今年度に続き、来年度も実施してまいります。 また、事業再生に当たっては、既存の債務の見直しを迫られるケースも想定されます。 このため、昨年12
月定例会で関連条例改正案を御承認いただき、県の制度融資を利用した事業者の事業再生を支援しています。 具体的には、事業者が国のガイドラインに基づく事業再生計画を策定し、知事がその計画を事業再生につながると認めた場合に、県が債権の一部を放棄することが可能となりました。 今後とも、金融機関や商工会、商工会議所などの関係団体と連携を図りながら、県内事業者の方々の経営状況を的確に把握してまいります。そして、事業の再建を必要とされる事業者の方々への支援を含め、引き続き、県経済の維持発展に向け、必要な施策をしっかりと実施してまいります。 〔磯田毅君登壇〕
◆(磯田毅君) かつて経験したことのない未曽有とも言える影響を社会に与え続けているコロナ感染症は、もう4年目になって、やっと落ち着いた対応ができるようになったようです。しかし、新しい変異株の不安は残っており、油断はできません。私たちに以前のような日常が戻ってくるのか分かりませんが、私たちは、一日も早く生活と経済を取り戻し、感染症の克服につないでいく必要があります。 経済は、人の安心から生まれます。コロナ禍から脱出する中小企業にとって、事業再建につながるよう、県には取り組んでいってほしいと願い、次の質問に入ります。 学校給食の有機農産物活用についてお聞きします。 私は、これまで数回にわたり、学校給食に地元産農産物を利用するよう求めてきました。特に、県産小麦を含めた国産小麦の活用を強く求めましたが、前回の質問で、執行部からは、前向きな答弁を得ることはできませんでした。 ところが、県の学校給食会とパン協同組合、そして熊本製粉株式会社の民間3者が連携し、2学期から使用する小麦を、県産を5割以上含む国産100%に切り替えました。この思い切った展開は、食材の量と質を求める関係者へ民間が県に先んじて応えた画期的な動きに、私は大変うれしく思っています。 ところで、既に1年が過ぎるロシアの軍事侵攻は、世界の国々に対し、食料の安全保障を見直す大きな契機を与えました。地元で取れた食材を地元の人たちが食べるといった、ごく当たり前とも言える食料自給の大切さに気づくと同時に、より安全な有機農産物の活用を考えるよい機会となりました。 政府も、みどりの食料システム戦略で、2050年までに化学肥料を3割、農薬を半分に減らし、有機農業の面積を耕地の25%にする目標を掲げています。進展が期待されますが、私は、1月から始まった国会で、特に学校給食を含む食料安全保障の議論が深まるのか、注目しています。 世界でも、これと同じ動きが学校給食で始まっています。子供の健康促進や温暖化防止につながる有機農産物を活用した学校給食が広がってきました。 EUでは、有機農産物を使用したオーガニック給食の割合を、前倒しで2030年に20%にすることを決めました。フランスは、法律によってオーガニック給食の割合を50%にします。 アジアでは、隣の韓国が、2年前から全ての小中学校で有機農産物を60%使う給食に変えました。有機農産物を使った給食は、高校でも始まるそうです。こうした動きに加え、ソウル市では、全部の小中高校が無償化となったそうですので驚きです。 こういった取組に比べると、日本は大変遅れていると感じます。政府は、異次元の少子化対策に取り組むと言っていますが、異次元対策と言うなら、今世界中で進む学校給食の有機化と無償化は、何よりも早く取り組むべきです。 学校給食における有機農産物の活用に、日本はどう取り組んでいるのか考えたいと思います。 千葉県のいすみ市では、2015年に初めて有機米4トンを学校給食に導入した結果、有機栽培に取り組む農家が増え、僅か3年で全量を有機米に変えることができたのです。 先駆けた兵庫県豊岡市は、市内全小中学校で、給食に使うお米の全量を有機栽培米に切り替える予定だそうです。 新潟県の佐渡島は、天然記念物のトキと共生する里山として、日本で初の世界農業遺産に認定されていますが、今では、水稲面積5,000ヘクタールのうち4,000ヘクタールを超す面積で、農薬や除草剤を減らした特別栽培になっています。 政府は、みどりの食料システム戦略で有機農産物を増やす方針を立てていますが、それを増やすには、まず需要が先行しなければなりません。学校給食に限ると、有機農産物の活用が先で、供給はそれに合わせて増やしていくというのが本来の順序です。 有機農業は、細かい配慮と観察が必要ですので、大規模な農業には向かない面があり、高齢の生産者や小規模な家族農業に向いています。小規模な有機農業は、規模の大きい給食センターには向きませんが、子供の健康のほかにも、地域の経済循環に貢献し、食材も距離が短くて済み、環境に最も優しい農法なのです。 子供の貧困が叫ばれる中、現在、子ども食堂の数は、2022年には7,363か所と、この6年間で20倍以上に増えたそうです。こういった取組は、子供の健康を支える上でとても大事なことですが、応急的な対症療法であって、私は、もっと持続的な取組が必要だと思います。学校給食に地元農産物や有機農産物を増やすことは、子供たちの健康や地域社会の経済循環につながるとても大事な取組かと言えます。 そこで質問です。 学校給食に有機農産物を含む地場産物をどうやって増やしていくのか、その取組について、教育長にお尋ねします。 〔教育長白石伸一君登壇〕
◎教育長(白石伸一君) 学校給食において、地域の有機農産物を含めた地場産物の活用を推進することは、子供たちに新鮮な食材を提供することができるだけでなく、子供たちの郷土理解、郷土愛の育成、地場産業の振興にもつながると考えています。 本県には、米、野菜、肉類等多種多様な地場産物が豊富にあり、程度の差はあるものの、全ての学校で地場産物を使った給食が提供されています。令和3年度の文部科学省調査では、本県の金額ベースの地場産物活用率は、64%で、全国平均56%を上回っています。 また、有機農産物については、現在、山都町や南阿蘇村で、農林水産省の事業を活用して、地域ぐるみでの有機農業を支援する取組が行われています。 例えば、山都町では、学校と有機農業協議会が定期的に会議を行い、有機農産物の利用拡大に取り組むことにより、有機米や有機ホウレンソウなどが学校給食に活用されています。また、南阿蘇村では、生産者のリストを村の学校給食センターに情報提供することで、地元で生産した有機米が学校給食に活用されています。 一方で、有機農産物の給食への活用は、必要とされる量が十分に確保できず、急遽発注先を変更することがあるなど、供給が不安定であり、通常の農産物に比べコスト高になるといった課題もあるため、活用が広がっていない状況があります。 今後、有機農産物を含む地場産物の給食への活用が促進されるよう、市町村の担当者を対象に実施している学校給食関係者会議や栄養教諭の研修会等において、学校給食で有機農産物を含む地場産物を活用した好事例の紹介や情報交換などを行ってまいります。 引き続き、市町村及び庁内関係部局との連携を図りながら、地場産物を活用した学校給食の充実を図ってまいります。 〔磯田毅君登壇〕
◆(磯田毅君) 実は、今一番求めたいのは、学校給食の無償化ですが、予算を伴うだけに、国の責任をもっと明確にする必要があります。そのためには、学校給食法の改正が求められます。 全国では、物価高騰を受け、全国市町村の約3割で無償化したことが、日本農業新聞の調査で分かりました。政府に無償化を求める要望書も、51自治体に及んでいます。異次元の少子化対策がこの無償化につながることを強く期待しています。 全国の学校給食を無償化した場合、およそ4,500億円が必要だとされますが、本県の小中学校全部を無償化した場合、40億円近い予算が必要だということですので、執行部はそこをためらっています。 しかし、来年から、県内の宇城市が学校給食の無償化を始める予定です。球磨郡や阿蘇郡など小規模な自治体でも給食費の補助が始まっており、無償化の動きは進む一方だと思います。 ほかにも、兵庫県明石市では、中学校の給食全部を無償化したら人口増につながったそうですし、大分県の豊後高田市でも、地元産食材を100%使用したところ、転入する人が上回り、全国700過疎市町村の中で、転入率トップになったそうです。 このように、給食の無償化は、地域への貢献がとても大きいのです。学校給食の有機農産物活用と同時に、この無償化も強く要望しまして、次の質問に入ります。 最後の質問ですけれども、米生産の対策についてお聞きします。 ロシアの軍事行動は、日本の食料安保を考える上で、大きなきっかけとなりました。日本の食料自給率がカロリーベースだと38%しかなく、四方を海に囲まれた我が国は、海上輸送が止まれば、多くの人が生存の危機に陥る危険性をはらんでいます。 その上、生産を支える化学肥料や種子もほとんどが輸入ということから、非常に脆弱な状況にあります。自給に不安がないと思われている主食のお米も、実は年間消費量の1割以上を毎年外国から輸入しており、大豆や小麦などほかの重要な穀物も、ほんの僅かしか生産できていません。 食料自給が問題となったにもかかわらず、今年度のお米の生産者価格は、1俵約1万円からのスタートでした。この衝撃的な価格に、私は驚きました。この低価格は、稼げる農業を目指した大規模、単作化の農家に打撃を与えると思われます。なぜなら、今年のお米の販売価格には、歴史的な肥料、農薬、資材の値上がり分が入っていないからです。販売農家にとって、この影響は特に大きく、自給が中心の小規模な農家にとっては小さいものと思われます。 お米の生産は、種まき、育苗から田植、そして大切な毎日の水管理や観察が必要です。実りの秋には、刈取りと乾燥作業、それからもみすり、袋詰めなど、出荷作業が続きます。 ところが、今、その米作りが大きく変わってきているのです。米価の低迷が続いたせいで、田植機やコンバイン、それに乾燥機やもみすり機などの設備投資ができなくなり、ほかの農家に作業を委託するようになってきたのです。 県には、このような農家が営むミニライスセンターのデータがないため、その状況がどうなっているのか分かりませんが、このようなお米作りの受託、委託がこのまま続くのか、米農家が安心して生産を続けられるのか考えたいと思います。これは、農家だけの問題ではなく、国の食料安全保障に関わる、そして日本の原風景である農村の存続にも関わる重大なことなのです。 大きな貯蔵タンクを持つカントリーエレベーターは、品種や作型の変更がしにくい面があり、米の後作に露地野菜を導入する農家が増えた現在、より自由度のあるミニライスセンターを利用する農家が増えてきました。 刈取りと乾燥、調製、さらに販売まで手がけるミニライスセンターは、米作り農家本人が経営されている場合が多く、私の知る限り、規模は小さく、20戸前後の農家から委託を受け、面積も平均で20ヘクタール程度を引き受けられている場合が多いようです。 先日、経営されている方から、自分は高齢になり、作業がつらくなった、機械設備の更新も控えており、経営を継続するのが難しいとお聞きしました。そして、やめたいけれども、やめると委託されている農家が大変困るので、やめるにやめられないと、困っていらっしゃいました。 実は、こういった事態は、今県下各地で起きていると予想します。食料の自給が叫ばれる中で、主食の米作りにこんな状況が迫ってきているのです。消費量が減り続けているとはいえ、貴重な田園風景を守ってきた米作りを持続できるのか、農村は今、その瀬戸際にあると心配しています。 そこで質問します。 持続可能な米作りについて、今後県はどう取り組んでいくのか、
農林水産部長にお聞きします。 〔
農林水産部長竹内信義君登壇〕
◎
農林水産部長(竹内信義君) 持続可能な米作りのためには、1点目に、需要に応じた生産、2点目に、省力・低コスト化の推進、3点目に、県産米のブランド化による需要拡大が必要です。 まず、1点目の需要に応じた生産につきましては、全国の米消費量は、毎年10万トン程度減少しており、適正な米価の維持のためには、全国的に需要量に見合った作付が行われ、需給バランスが保たれることが重要です。 県では、生産者等が主体的に作付を判断できるよう、全国の需要状況を踏まえた主食用米の作付目安を提示するとともに、麦、大豆など需要の高い作物や野菜など高収益作物への転換支援に取り組んでおります。 引き続き、市町村や農業団体等と連携しながら、米の需給安定に向けた取組を進めてまいります。 次に、2点目の省力・低コスト化につきましては、県では、これまで、スケールメリットを生かした低コスト生産に向け、農業機械の共同利用化や担い手への農地集積、集約化、米、麦、大豆の組合せによる大規模化等を推進してまいりました。 その結果、生産コストの3割削減を達成した農業法人も生まれております。 引き続き、スマート農業技術や多収性品種等の導入による省力栽培技術の普及、資材費等の低減による生産コストの削減など、さらなる生産性の向上を図ってまいります。 最後に、3点目の県産米のブランド化による需要拡大につきましては、大消費地での産地間競争が激化する中、本県の米を消費者に選んで購入してもらうためには、知名度を向上させる必要があります。 そこで、県が育成し、生産面積がこの3年間で5倍に急拡大しております「くまさんの輝き」をリーディング品種に位置づけ、昨年度新たに販路開拓した首都圏等大消費地への販売拡大に重点的に取り組んでまいります。 また、米の消費量が低下する一方で、簡便性や時短ニーズを捉えたパック御飯が堅調に増加しております。 そこで、高齢者や共働き世帯、さらには炊飯をしない若年層に対して、今年度、県事業を活用し、農業団体が開発した商品の需要拡大を図ってまいります。 米は、唯一国産で賄うことのできる作物であり、日本人の主食であることから、食料安全保障の要と言えます。 今後とも、産地、関係団体と一丸となって、生産者の所得確保に取り組み、西日本有数の米生産県として、日本の食料安全保障の一翼を担ってまいります。 〔磯田毅君登壇〕
◆(磯田毅君) 私が就農した頃、といっても半世紀ほど前のことになりますが、その頃のお米の値段は、2万円近くしていました。 リンゴ台風と呼んだ1991年の19号台風は、日本列島を縦断し、各地に甚大な被害をもたらしました。そして、米生産にも広範囲で収穫量の大きな落ち込みになりました。自主流通米は、1俵2万3,000円近くに値上がりしました。当時の物価からすると、恐らく今の3倍以上の価値になるかと思います。半世紀前と今年の米価の違いを比べると、今年は、再生産につながるような状況ではありません。 農村の持つ緑と水とお米を中心とした食は、大切な私たちの命をつなぎ、安らぎを与える日本の原風景です。 お米を生産する現場がこんなに脆弱になったのは、皮肉にも、稼ぐことばかりを追求したことが背景にあると考えます。農政が、利益を目的に効率を重視して、コストを下げることばかりに目を向け、本来の米作りにある農業の持続性を軽視し、所得の向上につながらなかったことにあります。 お米の値段がコストを反映し、再生産につながるようにならないと、米生産は衰退が続き、地方の衰退も止まらないでしょう。しかし、食料安全保障の重要性にやっと気づいた国も、食料自給率の向上に努めると言っていますので、県には、農家の米生産が持続できるよう、その対策を強く求めたいと思います。 私の議会質問は、今回で最後となります。 議長、副議長をはじめ議員の先生方、そして知事、副知事はじめ執行部の方々、本当にお世話になりました。ありがとうございました。 古希を迎えた私には、これから、無農薬の野菜作りや米作りといった楽しみが待っています。もう少し農業で頑張ってみたいと思います。 最後になりますが、熊本県のさらなる成長と県議会の発展を御祈念しまして、降壇したいと思います。 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)
○副議長(髙野洋介君) 以上で本日の
代表質問は終了いたしました。 明4日及び5日は、県の休日のため、休会でありますので、次の会議は、来る6日午前10時から開きます。 日程は、議席に配付の議事日程第4号のとおりといたします。 本日は、これをもって散会いたします。 午後2時34分散会...