平成25年 6月 定例会 第 2 号 (6月19日) 平成25年
熊本県議会6月
定例会会議録 第2号平成25年6月19日(水曜日
) ――――――――――――――――― 議事日程 第2号 平成25年6月19日(水曜日)午前10時開議 第1
一般質問(議案に対する質疑並びに県の
一般事務について)
―――――――――――――――――本日の会議に付した事件
知事提出議案の上程(第21号) 日程第1
一般質問(議案に対する質疑並びに県の
一般事務について) ――――――○――――――
出席議員氏名(46人) 甲 斐 正 法 君 橋 口 海 平 君 九 谷 高 弘 君 緒 方 勇 二 君 杉 浦 康 治 君 泉 広 幸 君 前 田 憲 秀 君 東 充 美 君 増 永 慎一郎 君 髙 木 健 次 君 髙 野 洋 介 君 内 野 幸 喜 君 浦 田 祐三子 さん 山 口 ゆたか 君 渕 上 陽 一 君 磯 田 毅 君 西 聖 一 君 早 田 順 一 君 松 岡 徹 君 田 代 国 広 君 森 浩 二 君 溝 口 幸 治 君 小早川 宗 弘 君 池 田 和 貴 君 佐 藤 雅 司 君 重 村 栄 君 中 村 博 生 君 吉 永 和 世 君 松 田 三 郎 君 井 手 順 雄 君 鎌 田 聡 君 藤 川 隆 夫 君 岩 下 栄 一 君 早 川 英 明 君 平 野 みどり さん 城 下 広 作 君 氷 室 雄一郎 君 大 西 一 史 君 荒 木 章 博 君 堤 泰 宏 君 岩 中 伸 司 君 前 川 收 君 鬼 海 洋 一 君 村 上 寅 美 君 西 岡 勝 成 君 山 本 秀 久 君
欠席議員氏名(1人) 小 杉 直 君
―――――――――――――――――説明のため出席した者の職氏名 知事 蒲 島 郁 夫 君 副知事 村 田 信 一 君 副知事 小 野 泰 輔 君
知事公室長 田 嶋 徹 君 総務部長 岡 村 範 明 君
企画振興部長 錦 織 功 政 君
健康福祉部長 松 葉 成 正 君
環境生活部長 谷 﨑 淳 一 君
商工観光労働 真 崎 伸 一 君 部長
農林水産部長 梅 本 茂 君 土木部長 船 原 幸 信 君
会計管理者 伊 藤 敏 明 君 企業局長 河 野 靖 君 病院事業 向 井 康 彦 君 管理者
教育委員会 委員長 石 原 靖 也 君
職務代理者 教育長 田 崎 龍 一 君
警察本部長 西 郷 正 実 君
人事委員会 北 川 正 君 委員長 監査委員 松 見 辰 彦 君 選挙管理 委員会 松 永 榮 治 君
委員長 ―――――――――――――――――事務局職員出席者 事務局長 長 野 潤 一
事務局次長 後 藤 泰 之 兼総務課長 議事課長 佐 藤 美智子 審議員兼 鹿 田 俊 夫
議事課長補佐 参事 小 池 二 郎 ――――――○―――――― 午前10時開議
○議長(
藤川隆夫君) これより本日の会議を開きます。 ――――――○――――――
知事提出議案第21号
熊本県知事等の給与の特例に関する条例の制定について
○議長(
藤川隆夫君) まず、お諮りいたします。
知事提出議案第21号が提出されましたので、この際、これを日程に追加し、議題といたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(
藤川隆夫君) 御異議なしと認めます。よって、
知事提出議案第21号を日程に追加し、議題とすることに決定いたしました。
知事提出議案第21号を議題といたします。
――――――――――――――――― 第21号
熊本県知事等の給与の特例に関する条例の制定について
―――――――――――――――――
○議長(
藤川隆夫君) 次に、ただいま議題といたしました議案に対する知事の説明を求めます。
知事蒲島郁夫君。 〔
知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(
蒲島郁夫君) 本日追加提案しました議案について御説明申し上げます。
熊本県知事等の給与の特例に関する条例の制定は、特別職及び一般職の職員の
給料月額等を、平成25年7月から平成26年3月までの間、特例的に引き下げるものです。
地方公務員の給与については、
国家公務員の
給与削減措置に準じて必要な措置を講じるよう国から要請があり、
地方公務員の
給与削減を前提とした
地方交付税法の改正等が平成25年4月1日に施行されました。 こうした取り扱いは、給与に係る地方の
自主決定権や地方固有の財源である
地方交付税の性格を否定するものであり、遺憾であると言わざるを得ません。 この考えに、いささかの変わりもありませんが、
地方交付税削減の影響を
県民サービスに波及させないため、職員給与の削減に踏み切らざるを得ないとの苦渋の決断に至ったところであります。 今回のような措置が二度と行われることがないよう、地方6団体と連携しながら、引き続き国に求めてまいります。 なお、一般職の
給与削減を踏まえ、特別職の職員については一般職以上の削減を行うこととしております。 本議案について、よろしく御審議くださるようお願い申し上げます。 ――――――○――――――
○議長(
藤川隆夫君) 次に、ただいま議題といたしました議案第21号につきましては、職員に関する条例案であり、
地方公務員法第5条第2項の規定により
人事委員会の意見を聞く必要がありますので、ただいまから
人事委員会の意見を求めます。
人事委員会委員長北川正君。 〔
人事委員会委員長北川正君登壇〕
◎
人事委員会委員長(北川正君) 本議会に追加提案されました議案第21号について、
地方公務員法第5条第2項の規定に基づき
人事委員会の意見を申し述べます。 議案第21号の
熊本県知事等の給与の特例に関する条例のうち、一般職の職員等の
給料月額等の特例については、
地方公務員の給与についても、
国家公務員の
給与減額支給措置に準じて必要な措置を講じるよう国から要請があったことに加え、
国家公務員と同様の
給与削減を平成25年7月から実施することを前提とした
地方交付税法の改正が平成25年3月末に行われるという異例の状況の中、本県財政への影響等を踏まえ、平成25年7月から平成26年3月までの間の特例として、職員等の
給料月額等を減額して支給しようとするものであります。 このような事情を考慮するとしても、本来、職員等の給与は、
地方公務員法に定める
給与決定の原則に基づき、
民間給与等との均衡などを踏まえて実施する
人事委員会の
給与勧告に沿った適正な水準が確保されるべきであり、今回の特例措置に至ったことは、遺憾であると言わざるを得ません。 今後は、職員の生活の安定及び士気の向上にも配慮し、
地方公務員法に定める
給与決定の原則に基づき、
人事委員会の
給与勧告に沿った職員等の給与水準が確保されるよう切に要望いたします。 ――――――○――――――
△日程第1
一般質問
○議長(
藤川隆夫君) 次に、日程に従いまして、日程第1、
一般質問を行います。 発言の通告があっておりますので、これより順次質問を許します。 なお、質問時間は1人60分以内の質疑応答でありますので、さよう御承知願います。
佐藤雅司君。 〔
佐藤雅司君登壇〕(拍手)
◆(
佐藤雅司君) 改めまして、おはようございます。平成25年6月定例議会、
一般質問初日であります。自由民主党・阿蘇市選出の
佐藤雅司でございます。 きょうの質問の内容は、知事にお尋ねする事柄が結構多いということでありますが、知事の答弁をきょうは楽しみにいたしております。どうぞよろしくお願い申し上げます。 それから、今議会からは、我が党は、登降壇の際に最初と最後だけおじぎをすると、こういうことになっておりますので、どうか、礼節をわきまえないとか作法を知らないとかあると思いますけれども、どうぞ御了承いただきたいというふうに思います。 時間もありませんので、早速質問に入らせていただきたいと思います。 長引くデフレや不況とも言える政治、経済を初め、
東北大震災や
九州北部豪雨災害、さらには3年半にも及ぶ決められない政治など、また、
福島原発事故以来の原発停止に伴うエネルギーの確保に伴う燃油高騰、貿易収支の赤字傾向、現下の諸状況は、副作用も含めて過渡期の微妙な状況にあるのではないかと思っております。 一般的な乱高下はありますものの、他方、昨年の衆院選挙、第2次
安倍政権発足後、久々に、円安、株価上昇により、これまで景気低迷の暗雲が漂っていた社会の空気が一変して、明るさを取り戻してきたのも事実であります。
アベノミクスの3本の矢、つまり、大胆な金融政策、機動的な
財政対策、民間投資を喚起する成長戦略を柱とする
経済対策によって、このところの景況感も大いに上向き、一時は1ドル100円を突破するなど、円安・株高、あのリーマン・ショック以前に戻り、トヨタを初め、企業の増収への大幅な予想を立てています。そして、これまで内向きだった政策から、
ゴールデンウイーク期間中にも見られましたように、ロシア、中東諸国への相次ぐ歴訪、G7、G20などへの出席とアクションを積極的に展開、一躍世界の注目度を印象づけました。このところの安倍内閣は、国民の高い支持を得ている状況にあります。 ところで、ことしの
ゴールデンウイークは、各地の行楽地で、お天気もよくて、どこも盛況だったようですが、いわゆる安近短から高近短への
アベノミクスによる収入増を見越した――まだ上がっておりませんけれども、
プチぜいたく旅行で国内の高級旅館の宿泊が人気を集めたと報じています。私の阿蘇も、予約でいっぱいだったということであります。 巷間、円安を背景に、原油や輸入小麦などが高騰、価格に転嫁するわけにもいかず、
生活必需品の値上げに困っているところもありますが、安倍総理は、一時的にはそうなるかもしれませんが、必ず賃金にはね返り、収入増につながると言い切っております。 自民党が、昨年12月、選挙に勝って以来、国会の党首討論では、総選挙前からたびたび景気回復の予兆はあったと、かの党の党首は、自信なさそうに気色ばんだ表情で言い返すのが精いっぱいで、見ていてかわいそうな気がしました。 私は、
県議会議員になって、ちょうどことしで10年目を迎えます。平成15年、当選当初の私は、選挙区の皆さん方に約束をしていた公約を実現すべく、大いに気を吐くつもりでいました。しかし、経歴と同じこの10年をさかのぼってみますと、県財政は非常に厳しい状況にありました。 当時の県財政は、平成4年度に1,180億円あった
財政調整用4基金の残高が56億円まで減少し、これに対処するため、
財政健全化計画が策定され、平成13年度から集中的な取り組みを行っている真っただ中でありました。 この取り組みの効果もあって、一時的に県財政も持ち直してきましたが、平成15年度からの国の三位一体の改革による
地方交付税の大幅削減により、再び、平成20年度には、
財政調整用4基金はわずか53億円となりました。これまで以上の対策を講じなければ、平成22年度には
財政再生団体に転落しかねないという危機的な状況に直面し、
蒲島知事は、就任早々、みずからの
給与カットで財政再建に取り組む強い決意を示され、歳入、歳出両面にわたる取り組みを進められました。我々
県議会議員も、独自に議員報酬をカットするなどして協力したところであります。 このような状況の中で、劇的なことが起こりました。平成21年度の
大型補正予算の801億円であります。国会議員の先生方、そして日ごろから、市町村からの要望、あるいは県民の要望、そして負託に応えるべく、課題と進むべき方向を県執行部がしっかり持っているからこそ、他県がうらやむような予算確保ができたものと思っております。日ごろからの地道な玉を準備してきたからこそ、当時、
経済対策の
補正予算としては過去最大となる規模が確保できたものであります。 そして、本年2月、再び
自民党政権の第2次安倍内閣のもとで、
アベノミクスの3本の矢の一つである機動的な
財政政策の具体化として、
緊急経済対策を盛り込んだ総額13兆円規模の国の
補正予算が成立いたしました。
自民党県連では、
衆議院選挙後、直ちに
くまもと経済再生本部を設置し、
チーム熊本として
経済対策に即応できる体制を構築した上で、政府・与党に対して積極的な要望を行ってきました。その効果もあって、平成21年度の
経済対策の補正を上回る過去最大の841億円、全国6位、この中には東北2県が入っておりますから事実上4位、もちろん九州1位の
大型補正予算となりました。まさに
チーム熊本の成果と言えましょう。 5月20日に発表されました内閣府の
月例経済報告では、我が国の景気は緩やかに持ち直していると、2カ月ぶりの上方修正をされました。
アベノミクス効果が、ここ熊本にも徐々に波及してくることが期待できます。 そこで、お尋ねをいたします。
アベノミクスの機動的な
財政政策としての国の
緊急経済対策を、本県ではどのように活用し、それによりどのような効果があらわれてきていると認識されているのか、また、今後県財政はどのように推移するとの見通しを持っておられるのか、以上2点について、
蒲島知事にお尋ねをいたします。 〔
知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(
蒲島郁夫君) まず、国の
緊急経済対策の本県での活用内容とその効果についてお答えします。 私は、国の
緊急経済対策を最大限に活用し、景気浮揚はもちろんのこと、新4カ年戦略を加速化するという決意のもと取り組んでいます。そして、2月定例会で、
経済対策の
補正予算としては過去最大規模となる841億円を計上しました。 さらに、今定例会においても、2月補正で創設した地域の元気基金の活用など国の
緊急経済対策を活用して、142億円の
補正予算を提案しております。 これらの予算により、県民の安全、安心の実現や熊本の百年の礎となる交通・産業基盤の整備など、県内経済のさらなる活性化を図っていきたいと考えています。 その効果については、現在事業の執行途中ではありますが、
日銀熊本支店の発表では、熊本県内の景気は緩やかに持ち直しつつあるとされるなど、実体経済にも波及してきていると感じております。 今後とも、全庁挙げて事業の早期発注に取り組み、できるだけ早期に効果があらわれるように努めてまいります。 次に、今後の県財政の見通しについてお答えします。 今回の
経済対策では、特別な措置として、地域の
元気臨時交付金が創設されました。この交付金は、
県単独投資事業の前倒しのための財源として活用できるという利点があり、財政面で非常に大きな効果を発揮します。このため、通常債の残高をふやさないとの従来からの
財政健全化方針を維持しつつ、幸せを実感できるくまもとの実現を図ることができます。 また、中長期的にも、今回の
経済対策や
アベノミクスの取り組みにより、国及び地方の税収増による財政の健全化が期待されます。 ただ、国、地方とも、毎年莫大な借金で収支の均衡を図っているという現在の財政構造を念頭に置く必要があります。 さらに、先日閣議決定された
経済財政運営と改革の基本方針である骨太の方針に、
地方交付税の
歳出特別枠1.5兆円を
経済再生に合わせて見直すことが言及されており、今後の動向によっては県財政が厳しい状況に陥ることも懸念されます。 しかし、長期化する景気低迷とデフレからの早期脱却なくしては、今後の持続可能な発展はあり得ません。そのため、国と地方がそれぞれ力を尽くし、相乗効果を発揮しながら取り組んでいくことが何より重要です。 県としては、国の交付金等を最大限活用することにより、景気、雇用の改善、
財政健全化の推進、そして新4カ年戦略の加速化という3つを同時になし遂げられるよう積極的に取り組んでまいります。 〔
佐藤雅司君登壇〕
◆(
佐藤雅司君) 知事は、厳しい財政運営には変わりないと、こういう話でありますが、機動的な
アベノミクスによって景気を全体的に上げていく、そのことも期待しているということでありますが、引き続き、厳しい局面には変わりないというふうに思いますので、しっかりと注視していただきたいと思っております。 それから、
経済対策分、それから自民党型の25年度の予算、あるいは、やがて、ひょっとしたら出るかもしれませんけれども、
補正予算と、いろんな――それから
プラス災害の部分もありますけれども、かなりの財政支出が期待されるということでありますが、非常に執行の面でどうなのかなということがちょっと懸念されているということでありますけれども、何とか執行していきながら、しっかりとした県財政、そして健全化も進めていく、こういう方向で頑張っていく、我々もそのことを注視したいというふうに思っておるところであります。 続きまして、次の質問のTPPの問題でありますが、これまでの県議会としての対応は、私が平成22年に
農林水産委員長をさせていただいたときに、臨時議会で最初の反対決議が行われ、また、その年には何と4定例議会全てにおいて反対決議を貫いてきたことは、いまだ記憶にとどまっているところであります。
農業関係者は、関税ゼロを原則とするTPPには、もちろん反対意見が大半でありますし、食料自給や地場産業、食の安全、医療など国民の暮らしに影響を与え、国のあり方を変えかねないとか、県民の中では失望と怒りの声が上がっていると、そういった認識であります。 TPPは、郵政改革よりはるかに国民生活への影響が大きく、与党の議論が少ないなどの声も聞かれます。これに対し、政府は、仮に交渉に参加する場合、米、乳製品、砂糖、牛肉は必ず死守する、あるいは、農業は国のもとである、国益とは農業を守ることであり、守れないようなTPPは認めるべきではないといった姿勢で臨むとしています。 このTPPの影響について、県において政府と同じ考えで試算されたところ、農業分野では、産出額3,113億円のうち854億円、率にしまして27.4%が減少するとされております。 4月28日夜の、ちょっと古くなりますけれども、報道番組でTPPの特集が組まれておりましたので、興味深く見ておりました。ごらんになった方も多いかと思いますが、私が覚えているだけでも御紹介を申し上げますと、平成の開国と言うが、日本は、これまでGATTやWTOに積極的にかかわってきており、決して鎖国をしているわけではない、TPPの趣旨は、原則10年以内に関税をゼロにしようということだが、農業の
センシティビティー品目、米、麦、牛肉、豚肉、牛乳・乳製品、砂糖などを本当に守れるのか、聖域となっているのはそれだけの理由がある、日本はこれまでも関税をはがしてきている、補助金にしても、アメリカの額は、日本の比ではなく、半端な数字じゃない、農業は、日本の地域社会を形成している重要な要素で、単に経済性だけで整理される分野ではない、さりとて、産業としての日本農業を考えれば、もっと
国際競争力を身につけるべきである、いやいや、農業は、そもそもグローバリゼーションになじまない分野だなどの農業問題だけでも百家争鳴。また、TPPは、関税だけの問題ではない、さまざまな国際基準を変えていくもので、医薬品や知的財産、労務の問題など広範囲に影響は及ぶ、既に
TPP協議に参加している国々では、21の分野、食の安全やビジネスのルール化などで苦労して調整が続いている、各国では、守りと攻め、利害調整の行方が混沌としている、TPPのほかに、RCEP、日、中、韓、インド、オーストラリア、ニュージーランド6カ国とのASEANによる広域的な
包括連携協定も動き始めたようだが、そもそもFTAやEPAで1対1でやればいいじゃないかなど、すさまじい、かんかんがくがくの白熱した持論の応酬でありました。 こういう議論がもう2年早く始まっていてほしかったなという思いがありますが、いずれにしろ、交渉に参加する場合にしても、
農林水産分野の重要品目や国民皆保険制度などの確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は脱退も辞さないとした
自民党TPP対策委員会決議、
衆参農林水産委員会決議を信じ、政府に頑張ってもらうよう願うばかりであります。 そこで質問でありますが、知事は、TPPをどのように捉え、この現状にどのように向き合うおつもりか、また、本県の将来像を描くに当たり、交渉がどのような方向に進むことが望ましいと考えておられるのか。2つ目でありますが、直接の
TPP対策としてではないようでありますが、政府が打ち出そうとしている農業の
成長産業化構想について、県としてどう思われるか、以上2点、
蒲島知事にお尋ねをいたします。 〔発言する者あり〕 〔
知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(
蒲島郁夫君) まず、TPPに対する現在の私の考えについてお答えします。 我が国は貿易立国であり、私は、その基盤となる
自由貿易体制は必要だと思っています。 しかしながら、TPPについては、協定参加による経済発展を期待する声がある一方で、食の安全や国民皆保険制度など、国民生活に大きな影響を与えることが懸念されています。特に、多くの
農林水産業関係者が不安を抱えておられます。 私は、
自由貿易体制を維持しつつ、我が国の農業を守っていくためには、意欲ある担い手が将来の農業をしっかりと支え、豊かで美しい農村を築いていけるようなビジョンが示されなければならないと考えています。 また、今後、政府が交渉するに当たっては、一方の利益が他方の損失になるゼロサムではなく、お互いに利益を得るようなウイン・ウインの関係の構築が必要だと考えます。 県では、この問題に関し、3月の安倍総理の
TPP交渉参加表明を受け、私を本部長とした
情報連絡本部を直ちに設置し、
情報収集等に取り組んでおります。 また、今月10日には、議長、副議長とともに、我が国の
農林水産業のビジョンを早急、具体的に示すことや国民に対し十分な情報提供することを国に要望してまいりました。このビジョンの中には、目標だけではなく、経済的な余裕や誇り、農業者に夢をもたらす具体的な農業振興の手段、そしてそれに伴う財源措置が示されることが必要であると考えます。 県としては、引き続き、県議会と連携しながら、今後明らかになる情報を収集、分析し、効果的な行動をとってまいります。 次に、農業の
成長産業化構想についてお答えします。 さきに閣議決定された成長戦略では、経済成長の重点分野に農業が位置づけられています。そして、今後10年間で農業、農村の所得を倍増させるために、担い手への農地集積、6次産業化、農林水産物の輸出促進の3つを主要な柱としています。 これらについては、本県でも全国に先駆けてさまざまな取り組みを進めてきました。 まず、農地集積では、私が先頭に立って、市町村やJAなど関係機関と一体となって推進し、県独自の重点地区を指定して取り組んだ結果、平成24年には、前年の3割増しの1,780ヘクタールを集積することができました。 次に、6次産業化については、6次産業化法に基づく総合化事業計画の認定数が、本年5月時点で全国4位、九州最多となる55件となりました。農業生産法人やJA、集落営農組織、さらには水産業者等が、さまざまな農林水産品の特徴を生かして加工品を開発、販売するなど、6次産業化に向けた取り組みが急激に拡大しています。その中には、阿蘇で生産された牛乳やトマト、ハーブなどの地域食材を活用した商品の開発も進んでいます。 また、地元銀行による地域ファンドによる支援や、国の補助事業を活用した加工施設の整備に踏み出す動きもあります。 さらに、農林水産物の輸出促進についても、トップセールスの結果、23年度の輸出額は、農林水産物合計で約20億円に上り、木材輸出が活発化する動きも見られます。 今後も、国の成長戦略をリードする気概を持って、これまで私が進めてきた政策をさらに加速化させ、熊本農業の発展に邁進してまいります。 〔
佐藤雅司君登壇〕
◆(
佐藤雅司君) ただいま議場からも非常に不安になっているという声もありましたし、やっぱり飯が食えないような農業になっちゃだめだという話、それから知事のほうも、ビジョンをしっかりというふうに、議長、あるいは副議長と一緒になって要望してきたということであります。 もともとこれは菅政権の中でスタートされたものでありまして、安倍さんとオバマさんの会談の中でも、例外は必ずあるということをはっきりおっしゃっております。それから、国のほうの話でありますが、地方のほうも、しっかりとやっぱりそういったところを盛り上げていかないといかぬのじゃないかなという感じがいたしております。 いずれにいたしましても、TPP交渉は、7月の15日からマレーシアで始まるということになっております。日本の参加ができるというのは7月の23日と、参議院選挙後ということになって、少しタイムラグがあって、何といいますか、安心というか、そんなところもあるのかなという感じがいたします。また、国会決議文をアメリカの全議員に送ったということも大変効果があったのではないかなという感じがいたしております。 いずれにいたしましても、成長分野に位置づけていくためにどうやったことができるのかと、知事がおっしゃるような理想的なことができれば、まさに御の字でありますけれども、そのことを一生懸命、これから我々も一緒になってやっていく必要があるのだろうというふうに思っております。 それから次に、時間が押しておりますので、次の質問に入らせていただきます。 ネット選挙の周知についてでありますが、4月19日、インターネットを使った選挙運動の公選法改正案が可決、成立いたしました。反対する意見もあったようですが、最終的には議員立法で全会一致で決まりました。一般の有権者を含め、公示、告示後に、ブログや交流サイト・フェイスブック、短文の投稿サイト・ツイッターなど、ウエブサイトを利用した特定候補者への投票呼びかけが可能となっております。 インターネットを使った選挙運動が、7月4日公示、21日投票予定の参議院選挙から解禁されるということになります。 運動期間中は、ホームページやブログ、ツイッター、フェイスブック、SNS、ソーシャルネットワーキングサービスでありますが、を含むウエブサイトの利用が可能になります。政党、候補者に加え、有権者も利用でき、選挙期間中の最新情報を即座に入手できる。スマートフォンや無料電話アプリ・LINE、動画サイト・ユーチューブを駆使した選挙運動が展開されます。これにより、メール以外――メール以外というのがみそでありますが、SNSなどを利用して、政党や候補者を応援することができます。 応援する候補者のホームページアドレスをツイッターで拡散するなど、手軽に選挙運動に利用できるのが特徴であります。これにより、何々候補者の政策は間違っているから落選させようという落選運動もできることになり、候補者にとっては見えにくいところで反対運動が展開されるのもありということになります。この範囲は誹謗中傷には当たらないということでございます。 特に注意しなければならない点は、1つは、有権者は、メールの利用が引き続き禁止されるということであります。誹謗中傷の拡大や大量メールの受信の可能性があることによる日常生活の悪影響という理由だそうですが、これほど日常的に使っているわけですから、ここも心配されそうです。 2つ目は、候補者から受け取ったメールについて、転送したり、添付した公約やポスターを印刷して配布した場合も違反となります。 また、特定候補者を陥れようと、候補者本人を装ってツイッターでつぶやく、いわゆる成り済ましがあらわれることが予想されます。このため、この成り済まし防止のため、メールを送る者は、氏名やメールアドレスの表示が義務づけられています。怠れば、禁錮1年以下の公民権停止または罰金30万円以下の罰則を受けることになります。そのほかにも、それぞれ罰則が科せられることになっております。この点が重要ですが、実際に摘発されるかが問題ですが、具体的な事例に即して判断されるという総務省の実に心もとない回答のようですが、さてどうなるか、近々の選挙に臨まれる候補者、そして関係する私たちも、注意深く個別に対応するしかないというふうに思っております。 事は大事な選挙のことでありますから、ネット選挙の趣旨は、若者にも、現代のネット社会によって、広がりを見せる、関心を集めるといった点は大いに賛同するわけですが、一方で、候補者にあらぬ疑いをかけられたり、誹謗中傷のごときは、甚だ迷惑どころか、大きく票を減少したりすることになりかねず、地道に積み上げられた努力が報われず、正当な政策論争はそっちのけになりはしないかと大いに危惧しています。 ネット選挙解禁の周知は、まず、表示義務、表示目的、表示の場所、メールの送信制限、印刷頒布の禁止などが挙げられると思いますが、自民党を初め各党の責任者による各党協議会において、インターネットを使った選挙運動に関するガイドラインを策定しておりますので、ぜひ周知してもらいたいと思います。 そこで質問でありますが、県選挙管理委員会においては、法が成立したことにより、さまざまな諸準備を進められていると思いますが、また、過熱してくれば、さまざまなトラブルも予想されるかと思いますので、特に有権者への周知が重要です。そこで、これまでどのような周知を行ってこられたのか、今後どのような周知を実施する予定なのか、県選挙管理委員長にお尋ねをいたします。 〔選挙管理委員会委員長松永榮治君登壇〕
◎選挙管理委員会委員長(松永榮治君) 県選挙管理委員会委員長の松永でございます。御質問ありがとうございます。 インターネット利用による選挙運動につきましては、従来、公職選挙法142条等の文書図画の頒布に関する規定に抵触するとして禁止されておりましたが、本年5月26日に施行された改正公職選挙法により、7月にも予定されている参議院議員通常選挙から一部解禁されることになりました。 今回の解禁によって、候補者や政党等に関する情報が充実し、有権者の政治参加の促進、投票率の向上につながることが期待されております。 その一方で、誹謗中傷や成り済まし等により選挙の公正を害することがないように、候補者や政党のみならず、有権者も適正な利用に努めることが重要になります。 そこで、当委員会としましても、インターネット利用による選挙運動で、解禁される行為と引き続き禁止される行為を中心に説明を行い、広く注意を促しているところであります。 具体的には、有権者に対しては、国が作成した周知用のチラシを市町村等に配付するとともに、県選挙管理委員会のホームページ、テレビ、ラジオ等、あらゆる機会を利用して制度の周知を図っております。 また、市町村に対しましては、今月の17日に開催しました市区町村選挙管理委員会委員長会議において、私みずからも出席しまして、制度の説明を行いました。 さらに、明日20日には、参議院議員通常選挙の立候補予定者や政党関係者に対する説明会を開催して、制度の説明を行う予定としております。 これからも、さまざまな手段や機会を通じて制度を周知することで、県民の政治参加の促進と制度の認識不足による違反行為の予防に努めてまいります。 〔
佐藤雅司君登壇〕
◆(
佐藤雅司君) 県選管委員長、久々の御答弁ありがとうございました。4年ぶりだそうでございまして……。 選管委員長、まだまだ私たちの感覚の中では、ネット選挙についての周知が何となく、この参議院選挙の盛り上がりが欠けるというところもあるかもしれませんけれども、少し周知徹底がないなという感じがいたしております。その辺を、これからいよいよ佳境に入ってまいりますので、ぜひメディアあたりも使って大いにやってもらいたいと。 この件については、
警察本部長にもお尋ねしようかなと思いましたけれども、多分、法に基づいて厳正に対処するような話しかできないと私は思っておりましたので、もう、ちょっとそこはやめさせていただきました。 この4月の24日に自民党の勉強会をやったんですけれども、そのときの議員の皆さん方にインタビューを受けたことが出ておりましたので、とても興味深く見ておりましたので、ちょっと紹介させていただきますと、まず、若い順から申し上げます。 橋口先生、特に大学生はスマホ世代、選挙には無関心が多い、アップすると関心が広がり、PR効果が大きい、フェイスブックを通じ、友達にも広げてもらいたい、スマホ世代を積極的に活用していきたいと、優等生のお答えでしたね。 それから、溝口先生、ネットで票がふえると考えるのは間違い、やはり日ごろの地道な活動が大事だと述べられ、さすがの回答であります。 髙木先生、私の世代にはわかりにくい、興味はあるが難しい、そういう時代になっていくと思う反面、誹謗中傷が問題である、同世代の私としても、この部類に入るということであります。 そういうことで、お互いに研さんを積みながら盛り上げていければと。 要は、この参議院選挙自体がぐっと盛り上がれば、それによって選挙も盛り上がっていくのではないかというふうに思っております。皆さん頑張っていただきたいと思います。 次の質問に入らせていただきます。 あれからやがて1年を迎えようとしておりますが、昨年7月12日から14日にかけまして、九州付近に停滞した梅雨前線に向かって南から暖かく湿った大気が流れ込み、福岡、熊本、際立って北部を中心に大雨となりました。学者の間からは、1,000年に1度、あるいは300年に1度といった論評があったところでございますが、私どもの地元からいえば、平成2年古恵川の災害で死者11名、平成3年徳仏川、平成15年には水俣の宝川内川、平成17年には小国郷災害と、3年から10年スパンで大きな災害に見舞われている状況ですが、時間雨量や気象統計学上の数字のみで災害の大きさや頻度を比較することはできないと思っております。 この災害で、阿蘇地域は至るところで道路寸断、国道29カ所、県道147カ所、今もなお不通3カ所があり、全力で復旧に取り組まれている状況であります。 特に57号、大分県との県境に位置する難所、滝室坂は、山腹崩壊により道路を直撃、その後、応急的な架設橋、仮橋が設置され、そのため、大幅なスピードダウン、特に大型車は徐行運転を余儀なくされております。 御承知のように、大分県と本県を結ぶ大動脈であることはもちろん、大分県の経済、ひいては四国や瀬戸内地域の経済も誘引する本県経済の物流の潜在的な基盤となる道路であります。さらには、蒲島県政の最重要課題とも言える、全ての道は熊本に通じるというキーワードの中で大きな位置を占める道路でもあるわけです。さらに言えば、阿蘇は九州のほぼ中央、阿蘇くじゅう国立公園として、年間1,700万人の観光客を呼び込む地域でもあります。 滝室坂は、標高400メートルの一の宮町坂梨から標高800メートルの波野小地野を一気に登る山合いのつづら折りの道路で、片側には今にも崩れそうな崖が迫り、また一方には谷底と、極めて危険な道路で、麓に国道維持出張所があり、常に監視用カメラを設置し見張りを続けている道路で、しかも大きな事故が後を絶ちません。 昨年7月12日の九州北部災害後、九州横断道路建設促進議員連盟・前川会長では――以前は県境議連と言っておりましたが、大分、宮崎、熊本の3県で活動しておりますが、災害後、8月9日に九州地方整備局に要望活動を行った際に、道路局長から、トンネルでの整備を示唆されたことがきっかけだったと思います。 その後、熊本、大分両県知事、県議会議長が中心となって協議会が組織され、両県一体となった要望活動を知事及び当時の馬場議長が、数度にわたり熱い行動を示されたのが功を奏したと思っております。 この道路の概要を見てみますと、総延長6.3キロ、トンネル部分は4,620メーター、勾配を4%に抑え、トンネルの断面は2車線で幅12メートルとなっております。中九州横断道路として供用することになっております。 そこで質問でありますが、新規事業化までの一連の流れを県はどのように評価されているのか、また、県として事業促進に向けてどのようにかかわっていかれるのか、さらに、完成までおおむね10年と聞きますが、今後、どういうプロセスで事業が進み、工事着工がいつごろになるのか、以上、土木部長にお尋ねをいたします。 〔土木部長船原幸信君登壇〕
◎土木部長(船原幸信君) 滝室坂トンネルは、異例の早さで新規事業化されるとともに、中九州横断道路の一部として整備されることとなりました。このことは、将来を見据えた創造的な復興につながるものであり、県としても大変うれしく思っています。御尽力をいただきました県議会を初め関係各位に感謝申し上げます。 御質問の着工時期についてですが、国は、去る6月7日に阿蘇市で事業概要説明会を開催いたしました。現時点で具体的な着工時期は明らかにはなっていませんが、国からは、調査等への立入説明会を本年8月に開催した後、測量や地質、地下水の調査、設計を進め、早ければ、来年度末には用地交渉に入る予定であると伺っております。 県としては、一日も早く着工できるよう、阿蘇市と連携しながら、地元説明会への参加や環境省などの関係機関及び地元との調整などに積極的に協力してまいります。 〔
佐藤雅司君登壇〕
◆(
佐藤雅司君) ただいま土木部長のほうから、来年度末には用地交渉に入ると、こういうことであります。もう既に6月7日には地元説明会があっとるということでありますが、実は大分県のほうが非常にこの件について喜んでおります。 実は、犬飼―千歳、千歳―大野、大野―竹田間を今やっておりますけれども、あと、竹田―荻間というのがあるわけですけれども、ここはまだ全然、事業化といいますか、話が上っておりません。これは、熊本県が1メートルぐらい進んでからということになっておるそうでございまして、そのためにも、大分はやっとつながるんだということで、非常に大分のほうがむしろ喜んでいるということであります。 また、中九州横断道路、これについては、もう今までも御努力いただいて本当にありがたいというふうに思っておりますけれども、これから私どもの望んでおります熊本―大津間、計画段階評価でありますけれども、ぜひともこれが整備区間に、あるいは古城―赤水5.3キロ、4キロがトンネルでありますけれども、ここは整備区間になっておりますけれども、今のところ民主党政権下では事業休止ということになっております。ぜひ事業休止を解除していただいて着工を早めてもらいたいと。この2つの区間を何とぞ――全ての道は熊本に通じるということでありますので、ひとつ御努力をいただきたいというふうに思っております。 次の質問に入らせていただきます。 6月の山肌にも新緑が美しく、いつもの阿蘇と変わらぬ原風景のようにも見えますが、まだ山腹崩壊の爪跡も生々しい地肌をさらしているところもあります。 農地470ヘクタール、発注率としては100%、完成はまだ時間を要するようでありますが、現在全力で頑張っていると思います。治山については46%の発注率、河川は平均で40%程度と聞いております。砂防工事は、工事発注が始まったばかりという状況になっております。梅雨の対策をしながらの工事ということになります。 死者、行方不明者25人、今でも不明者2人が出ておりますけれども、九州北部豪雨により、復旧は、阿蘇山から流れ下る幾筋からの中小河川沿いを中心に田畑への大量の土砂堆積があり、この土砂撤去から始めてきております。 本来であれば、阿蘇地方の農村部は、3月から4月にかけて田植えの準備が始まり、遅くとも5月の
ゴールデンウイーク明けには田植えが完了します。しかしながら、県農地整備課、市農政課、土地改良組合との綿密な復旧計画に基づいて予定を立てていただいたわけですが、事務手続のおくれ、請け負った建設業の手配や要領の不徹底などがあり、さらには、地権者、農家などの細かな要望に応えるための作業など、やはり通常の工事とは異なる現場での混乱も重なり、思うように進まない面が少なくなかったことも浮き彫りになりました。ぜひ、この経験を教訓に、今後に生かしてもらうよう要望していきたいと思います。 3月9日、10日、阿蘇市と、翌日熊本市の2カ所で開催されました河川工事の着工式も、国土交通省河川国道事務所長を初め、また、市主催の説明会にも、船原土木部長、さらに県議会震災及び防災対策特別委員会委員長の村上寅美先生など、多くの関係者の出席を仰ぎ、開催することができました。 河川では、熊本市へ流れ下る白川の上流、黒川の河川及び中小の河川は、平常時ではほとんど流れていない、かれ川であっても、一たびまとまった雨が降れば、火山灰を含んだ土石流が流れ下り、また、周囲の立木を巻き込みながら、強力な破壊力を伴って集落を襲う典型的な、変わりやすい山の天気を伴う山岳型の災害であったと思います。 一方、山腹崩壊も426カ所にわたり、治山工事発注のための保安林指定や、立木補償の山林地主の了解を得るため全力で当たられていることは承知しておりますが、やはり簡単には事は済まないなという印象を持っております。 その一つが、どの地域も一緒だと思いますが、森林が抱える経済上の問題、つまり、山では飯が食えないということから転売され、しかも県外へ所有権が移転しているため、同意をとるための多くの労力と経費を必要としている点に、おくれてくる原因の一つがあると考えております。 また、大規模な山腹崩壊や渓流保全のため、スーパー堰堤の設置やスリットダムの工事発注も徐々に明らかになってきております。 他方、ソフト面での対策も大変重要でございまして、これまで経験したことのないようなと表現された不測の事態に対処していくため、県議会震災及び防災対策特別委員会で議論を重ねてきた県地域防災計画に基づき、各市町村も、ソフト面での避難経路等、単なる机上での計画ではなく、現実に即した計画を立てられるようしっかりと取り組みを進めていただきたいと思いますが、県としてどのような姿勢で臨まれるのか、
知事公室長にお尋ねをいたします。 次に、昨年の7月12日の熊本広域大水害において、
蒲島知事の英断で、熊本広域大水害被災者生活再建助成金の措置がとられましたことについて、改めて感謝申し上げます。 被災者生活再建支援法の対象とはならない半壊や床上浸水の世帯に対して上限10万円の助成を実施され、多くの方から、非常にありがたかったという声を聞いております。 ただ、今回の措置は、熊本広域大水害に限った措置と聞いておりますが、災害は今後も起こる可能性があります。昨年、池田議員からも、新たな災害に対する支援策についての質問があり、支援のあり方について検討するとの答弁がありました。 そこで、
蒲島知事に、災害時における熊本県独自の支援策について、法律の対象とならない方への支援など、今後どのような対応を考えておられるのかをお尋ねいたします。 〔
知事公室長田嶋徹君登壇〕
◎
知事公室長(田嶋徹君) 災害復旧の進捗状況と検証についてお答えします。 県では、今回の災害からの復旧、復興に当たり、知事が示した、被災された方々の痛みを最小化すること、単にもとあった姿に戻すだけではなく、創造的な復興を目指すこと、復旧、復興を熊本のさらなる発展につなげることの3つの原則に基づき取り組みを進めております。 ハード面については、用地確保や関係者間の協議、調整を要する事案などの課題もありますが、引き続き市町村と緊密に連携し、住民の皆様が一日も早くもとの生活を取り戻せるよう、着実に、かつスピード感を持って早期完了に向けて取り組んでまいります。 一方、ソフト面については、県では、東日本大震災の発生を契機として取り組んできた県地域防災計画の見直しに当たり、広域大水害の検証結果を踏まえた視点も追加し、本年5月に計画を改定したところです。 また、計画改定と並行して、県及び市町村の災害即応体制を強化しております。 具体的には、昨年の水害時に、被害の全容把握や市町村の災害対応業務支援のために、県職員を被災市町村へ派遣した実績を踏まえ、派遣する県職員の事前登録制度をスタートさせました。これにより、被災状況や必要な支援内容を速やかに把握し、市町村への的確かつ迅速な支援に生かしてまいります。 さらに、県民に雨量や河川水位などの防災情報をリアルタイムに提供する統合型防災情報システムのアクセス容量を拡大いたしました。 加えて、昨年の水害で人的被害が発生した阿蘇市と南阿蘇村との連携のもと、深夜に大雨が予想される場合に、夕方、明るいうちから避難する予防的避難を実施いたします。 既に両市村においては、避難勧告等の基準の見直しを含む地域防災計画の見直しに加え、地域住民や県職員も参加した防災訓練を実施されており、梅雨期の大雨に対し、地元市村、住民、県が連携し、万全の態勢で臨むこととしております。 県では、今後とも、市町村の防災、減災に係る取り組みを支援するとともに、市町村の活動に積極的に参画し、地域防災力の向上に努めてまいります。 〔
知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(
蒲島郁夫君) 昨年の熊本広域大水害において、被災者生活再建助成金の措置を講じましたが、この助成金は、熊本広域大水害に限ったものとしておりました。 このため、予算については議会の承認をいただく必要がありますが、今回県独自の支援制度のスキームをあらかじめ定め、今後災害が発生した場合には、迅速かつ的確に対応できるようにしたいと考えております。 内容につきましては、災害救助法が適用される大きな災害が発生した場合に、被災者生活再建支援法を補完する制度といたします。 具体的には、第1に、支援法の対象とならない半壊、床上浸水の世帯に対して、熊本広域大水害の際と同様に、10万円を支給します。第2に、同じ災害で支援法の対象とならない全壊や大規模半壊の世帯が生じた場合には、支援法と同様の措置を行えるようにいたします。 これにより、法律の対象とならない方の不均衡の解消が図られ、被災者の痛みの最小化につながるのではないかと考えております。 〔
佐藤雅司君登壇〕
◆(
佐藤雅司君) ありがとうございました。 ソフト、ハードもありますけれども、両方ともしっかりやってもらわなきゃいかぬわけですが、特にソフト面の対策というのが、私は非常に重要なのかなというふうに思っております。明るいうちから逃げていくというこの視点は非常に重要だというふうに思っておりますが、地元でもこういう話があって、これまでの体育館に避難すると。しかし、その体育館までどうやっていくのかというところが、1日半、2日ばっかり私たちも我が家から出られなかったというところもありまして、そうしたこれまでの計画ではなくて、きめ細かな、いわゆる避難経路、あるいは、最近テレビでも言っておりますけれども、やっぱりそこにおる、2階なら2階で、もうかえって出ることのほうが危険なんだというところまで具体的な、きめ細かなところをやっていくというのが、ソフト対策で重要なのかなというふうに思っております。 また一方、支援法につきましては、阿蘇だけではなくて、これからも支援法を補完するものとして適用していきたいと、こういう話でありまして、池田議員が質問された内容が、今答えとしてできたということでありますが、それぞれ、やっぱり全壊とか半壊とか、いろいろと分けるべきだというお話も随分と伺ってきておりますので、それはこれからのまた議論にまちたいというふうに思っております。 それから、今回、阿蘇警察署が――
警察本部長にもちょっとお尋ねをしようかと思いましたけれども、時間的な制約がありましたのでしませんでしたが、阿蘇警察署が一時的に機能不全に陥りました。実は隣に――警察署はずっと国道57号の低いところに、低地にあるわけですが、横がかれ川になっておりまして、土石流が入り込んで、パトカーから何から一発でやられてしまったということであります。57号という地理的なものについては非常に遜色ないというふうに思っておりますけれども、やっぱり場所を、あそこで本当にいいのかなというふうに思っておりますので、ぜひ、
警察本部長、御検討いただきたいというふうに思っております。よろしくお願い申し上げます。 それでは、最後の質問でありますが、世界農業遺産についてであります。 5月29日の石川県能登の輪島で開かれました世界農業遺産国際会議、国際連合食糧農業機関、FAOが認定する世界農業遺産、通称GIAHSの総会が開かれ、阿蘇が国内3番目の世界農業遺産に選定されました。 GIAHSというのは、GloballyImportantAgriculturalHeritageSystemsということの頭文字だそうでございますが、このGIAHSの設立目的は、地球環境を生かした伝統的農法や生物多様性が守られた土地利用のシステムを世界に残すことが目的とされております。主に途上国に向けた支援策となっているのが特徴であります。 国内では、平成14年に、新潟県の佐渡と石川県の能登が選ばれております。世界では、チリのチロエ農業とかペルーのアンデス農業、それから、フィリピンの、ここは有名でありますが、フィリピンのイフガオの棚田、そのほか、インド、アルジェリア、チュニジア、中国などに及んでおります。 去る4月10日に、
蒲島知事もみずから出席して、世界農業遺産を考える集いが阿蘇の2カ所で開催されました。その中で、知事からのメッセージとして「世界農業遺産認定を契機に熊本県で取り組むこと」と題して御講演をされました。その一つとして、ホップ・ステップ・ジャンプを語られ、ホップは世界農業遺産、ステップはジオパーク、ジャンプは世界文化遺産への登録を目指すと述べられておりました。また、阿蘇の農業を考えるチャンスともおっしゃっております。 農業遺産として阿蘇地域の価値は一体どれくらいあるか。冷涼な高地、土地生産性の低い火山灰土壌など、もともと農業生産に適した土地ではなかった。それを長年にわたって先人たちが野焼きや農地の改良に努力した結果、県下有数の米作、畜産業、林業などで自然と向き合いながら生計を立ててきました。 また、世界的に見て、希有な半自然の草原と独特の生態系機能を持っていると言われております。例えば、古くから畜産業の振興のための野焼き、放牧、採草を繰り返したり、他方、サクラソウ、ハナシノブ、ヒゴタイなどの大陸に由来する植物が残っていたり、在来野菜の阿蘇タカナ、あかど芋、鶴の子芋、黒菜などがあります。 特筆すべきは、熊本市へ流れる白川を初め6本の1級河川があり、北部九州の水がめとなっていることが挙げられます。 ただ、認定されたことによる効果、すなわち、観光振興や農業振興、あるいは6次化などによる相互の連携といった漠然としたものは理解しておりますけれども、具体的にどう展開していくのか道筋が見えておりません。 世界農業遺産を阿蘇地域また本県にどう使っていくのか、具体的に何をしたらいいのか、何ができそうなのかを
蒲島知事にお尋ねをいたします。 〔
知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(
蒲島郁夫君) このたび、阿蘇が世界農業遺産に認定されたことは、私にとっても大きな喜びです。 民間の発意で始まり、地元市町村とともに取り組みの輪が広がり、小野副知事のFAO本部派遣を経て、私自身も、国際会議の場において、阿蘇のすばらしさを大いに世界にアピールし、認定という結果に至りました。 すばらしい草原と景観を長年にわたり維持してこられた先人たちへの称賛であり、改めて先人たちに感謝したいと思います。 また、今回の認定は、地元の農業者にとって誇りであり、これから農業を続け、草原を守っていかれる農家の方々に大きな夢を与えるものです。 今後は、阿蘇の農業が世界的に価値あるものと認められたことを地域とともに発信し、知名度を高めていくことで、農業や観光など、阿蘇地域の活性化に弾みをつけてまいります。 また、世界農業遺産認定の価値や意義をさらに浸透させていくことが重要です。 そこで、この夏には阿蘇で国連大学の関係者等を招いたシンポジウムを開催し、認定の意義を共有化するとともに、認知度を高めていきます。また、実効性のある推進体制について、地元の皆様とともに検討してまいります。 さらに、世界農業遺産の理念である生態系や景観、文化などを次世代へ継承していくという考え方は、県下各地域の農業、農村の多面的機能に焦点を当てるみどりの田園文化圏創造プロジェクトにも相通ずるものです。 そこで、先日、今回の認定を契機に、阿蘇地域での観光や地域振興策などに全庁挙げてアイディアを出し盛り上げていくことはもちろん、このプロジェクトを通じて、こうした取り組みを全県的に広げるよう指示したところです。 世界農業遺産の認定により、最終目標である世界文化遺産を目指した第一歩を確実に踏み出し、次のステップへと飛躍する百年の礎を築くことができたのではないかと考えます。 阿蘇の草原と持続的な農業が次の千年も残っていくよう、世界農業遺産を活用したさまざまな取り組みを支援し、県民の幸福量の最大化につなげてまいりたいと思います。
○議長(
藤川隆夫君)
佐藤雅司君。――残り時間が少なくなりましたので、発言は簡潔に願います。 〔
佐藤雅司君登壇〕
◆(
佐藤雅司君) ありがとうございました。 今思い出しましたけれども、知事の夢が、政治家になること、これは実現しました。2つ目が小説家になること、売れるか売れぬかわかりませんけれども、それは実現できるでしょう。3つ目が、阿蘇の麓で農業をやりたいと、畜産をやりたいという夢でございましたが、形は違うんですけれども、やっぱりその一つの夢が実現したという思いを、今答弁を聞きながらそのように思っておりました。 ただ、知事は、こうも述べておられます。認定後のデメリットとして、認定後の責務と置きかえられると。ちょっと違うかなというふうに私も思っておりますけれども、やっぱり責務、確かに、そうした世界遺産でも何でもですが、そうすれば、やっぱり枠ははまるということになります。そうなれば、必ずそれは地元の皆さん方にもしっかりと責任というものを認識してもらう、意識を浸透させていく、このことが大事なのかなと。いろいろと、木一本切っちゃいかぬとか、いろいろ出てきますけれども、そのことも、やっぱりこれからしっかりとやっていくことも必要だろうというふうに思います。 本当にありがとうございました。心から感謝申し上げます。 以上で質問を終わらせていただきますけれども、いよいよ、参議院選挙、佳境に入ってまいりました。日本を取り戻すために、お互いに頑張りましょう。 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
○議長(
藤川隆夫君) この際、5分間休憩いたします。 午前11時5分休憩 ――――――○―――――― 午前11時16分開議
○議長(
藤川隆夫君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 鬼海洋一君。 〔鬼海洋一君登壇〕(拍手)
◆(鬼海洋一君) おはようございます。民主・県民クラブ・宇城市選出の鬼海洋一でございます。最近、私の周辺では、水の足らぬ、これはどぎゃんすっとよかろかという、そういう会話が聞かれていたことでありましたけれども、きょうの天気予報では、熊本の北部方面は豪雨という報道がなされておりましたし、それからまた、あわせて、台風4号が接近するという大変な時期に差しかかりました。お互いに、改めて、先ほど佐藤議員のほうからもお話がありましたように、防災体制を強化していくということが非常に大事な時期になってまいりました。そういう中での質問でありますが、5点にわたって質問することにいたしておりますので、どうぞ皆さん方の、この議会の中における――耳を傾けていただきますようにお願い申し上げたいというふうに思います。 特に、今回は文化の問題を取り上げることにいたしました。余りこの議会の中でも議論の少ない話題でありますけれども、未熟な私がその文化問題を取り上げるということについては、甚だ、これでいいのかなという思いもありますけれども、今言っておかなきゃならない課題が山積していると思っておりますので、この文化問題について、知事、それから執行部の所見を伺いたいというふうに思っております。 せんだっての西日本新聞の、これは5月28日付朝刊でありました。掲載された「九響再生懸け闘う」の記事には、大変大きなショックを受けました。九州唯一のプロオーケストラとして活躍している九州交響楽団が、その経営の主要な寄附先である九州電力からの寄附が見込めず、苦境に立たされているとの内容でありました。 九州電力は、公的企業としての社会的責任を果たすため、九響以外でも、芸術家の外国への派遣事業など、各地での文化事業への支援を行ってきましたが、原発停止後の経営悪化、さらには、電気料金改定申請の中で社会支援への出費が著しく制限をされるなど、今日まで担ってきた支援の柱としての役割が果たせなくなっているわけでありますが、結果として、九響そのものの存続をかけての新たな取り組みを余儀なくされているとの報道でありました。 私は、この記事を読みながら、その現状に残念な思いがいたしましたが、それ以上に、現代社会における文化、芸術の継承と発展にとって極めて大きな危機に直面し、今まさに重大な岐路に立たされている、そう感じました。 古代から今日まで、人間社会では、生活の中で生活とともに文化が生まれ、その文化によって心の豊かさと社会の発展が促されてまいりました。古代文明の創造、そして中世ヨーロッパにおけるルネサンスの胎動と宮廷文化の開花などは、その後の歴史に彩りを添え、世界の今日の発展をもたらしました。 もう既に18年も前になりますが、その当時、統一会派「太陽」の仲間と、西岡県議を団長として、ヨーロッパ視察を行いました。立ち寄ったスペインのプラド美術館では、ベラスケスやゴヤなど、私たちにもなじみのある宮廷画家たちのまばゆいばかりの絵画と対面し、圧倒されました。 オーストリアのハプスブルク王家を中心として、さまざまの美術や舞台演劇、舞台音楽などのヨーロッパ全土への広がりは、モーツァルトや多くの音楽家、セザンヌやモネなどの美術家を生み、その文化は、さらに市民に広がりました。 織田信長や豊臣秀吉によって庇護された千利休による茶道の発展は、権力者をパトロンとしての日本における新たな文化の誕生でもありました。 近代において、パトロンとしての役割は、王族や貴族から経済的立場を強めた財閥や新興企業に担われることになりました。 日本におけるブリヂストン美術館、大原美術館、世界を驚かせた世界の名画を陶板として展示した大塚国際美術館、あるいは日生劇場など、彼らが、文化、芸術の振興にとって欠くことのできない役割を担ってきたことも正しく評価しなければならないと思います。 しかし、今日に至って、取り巻く環境は大きく変化しています。高度成長の時代には、多くの企業にその成果の社会的還元が求められ、社会的貢献事業としての文化支援など、つまり、メセナ活動が企業の評価でもありました。ところが、今日の経済環境の悪化は、企業の価値観を一変させ、経営効率主義のもとで、文化、芸術などの非生産部門への経費支出を抑制し、年々縮小されています。大変残念に思います。 一方、我が県の文化行政はどうでしょうか。昭和63年に熊本県
文化振興基本条例を制定し、その条例のもとで基本方針を策定し、文化振興行政の指針としての取り組みを続けてまいりました。特に本県では、文化団体とのパートナーシップを強固にして、永青文庫の創設などが行われてきました。 この間、新聞や放送局などのマスコミ各社、金融や九州電力などの大手企業、さらには地場企業からの財政支援を力としてのさまざまな文化事業の取り組みが行われ、多くの成果を上げながら今日に至っております。 しかし、全国的な趨勢は、ここ熊本も例外ではなく、文化振興行政を進める最大のパートナーとして数々の実績を上げてきた熊本県文化協会は、会員の減少傾向と高齢化、さらには外部からの財政支援の弱まりによって、事業予算は、平成5年度の9,130万円をピークに年々少なくなり、平成24年度決算では4,427万円までも減額せざるを得ないなど、これまでにない困難な問題に直面しているとお聞きいたしております。特に、県からの補助金が、平成4年度から12年度までは3,000万円であったものが、平成25年度には1,400万円に減額され、運営に深刻な影響を与えていることに心が痛みます。 私たちは、文化懇話議員連盟として、文化協会役員との協議を経て、平成23年12月に、文化振興についての要望書を提出いたしました。それぞれに積極的に取り組んでいただいていることに感謝いたしますが、まずは文化協会への積極的な支援を求めたいと思います。 今日までの人類の歴史は、時代時代の変遷を繰り返しながらも、そのせめぎ合いの中で新しい文化と歴史を創造してまいりました。そして、常にその時代の中では文化推進の主体がありました。 この時代に当たり、多くの企業にも、改めて文化、芸術の価値観を高めていただき、さらなる企業メセナ活動の協力を求めなければなりませんが、私は、今こそ県がその主体となって、その役割を担うべきだと考えますが、いかがでしょうか。 橋下大阪市長は、市の古典芸能への補助金をめぐって、集客人数によって補助額を決めるなどと発言をして、世の失笑を買い、トップリーダーとしての品位が問われましたが、熊本県の百年の礎を築く、その一時代を担う知事として、熊本県の文化、芸術を取り巻く現状と課題をどのように捉えておられるのか、文化県熊本の未来を築くその決意を込めてお答えをいただきたいと思います。 〔
知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(
蒲島郁夫君) 本県には、加藤、細川を初めとする歴史と文化、阿蘇の草原、豊富な地下水など、古くから守り継がれてきた世界に誇る自然や文化があふれています。このような宝を磨き上げ、生かし、100年後へと継承していくことが必要であります。 熊本県文化懇話会は、本年で設立50周年を迎えます。この50年間、後に設立される熊本県文化協会とともに、本県の文化振興の中核として、県との連携のもと、伝統芸能を初め、文化、芸術の保護、育成に取り組んでこられました。 また、近年、本県では「ONE PIECE」に代表されるアニメを素材とした新たなポップカルチャーを初め、ダンスや演劇などの文化芸術分野において、新しいムーブメントの台頭もあります。 文化への企業や行政のかかわり方は、時代とともに大きく変化しています。バブル経済の崩壊と、それに続く経済の長期停滞を経て、企業による文化貢献は縮小されております。また、県による文化活動への支援額も、厳しい財政状況の中で削減を余儀なくされております。その一方で、若手芸術家たちの海外へのチャレンジを促す事業や郷土熊本の季節の伝統や暮らしを見詰め直す事業など、新たな文化振興の施策を展開しております。 一口に文化といっても、さまざまな分野があります。私は、こうした多面的なツールも用いながら、文化の裾野を広げてまいりたいと考えております。 私は、文化の意義は4つあると認識しております。1つは、何よりも文化に接することによって人々が幸福になること、第2には、心が豊かになること、第3に、人生に余裕が生まれること、そして最後に、物事の本質を見きわめる観察眼ができることであります。このように、文化には、人生を2倍にも3倍にもその価値を高める力があると信じています。 私は、このような文化力を育てていくために、半世紀が過ぎ、今新たな歩みを始める文化懇話会や文化協会と引き続き連携を深めながら、文化、芸術を支援してまいります。また、100年後を見据え、次世代の文化を築く新たな動きに対する支援もあわせて行ってまいりたいと考えております。 以上のように多面的な支援を行うことで、私は、熊本における文化の総合プロデューサーを目指していきたいと考えております。 〔鬼海洋一君登壇〕
◆(鬼海洋一君) 新たな時代変遷といいますか、その中における文化活動そのものが大変厳しい時代に直面しているわけでありまして、今、知事は、そういう認識のもとに、文化の総合プロデューサーになるという、その決意表明をいただきました。グレン・ミラー音楽祭が玉名で中止になるという事態も発生しているわけでありまして、例えば九州交響楽団だとか、それぞれの文化団体の経営状況というのは極めて厳しい状況にあるわけであります。そういうものをいま一度、分析といいますか、洗い直していただきながら、総合プロデューサーとしての権勢確立を目指していただきますように、改めてお願い申し上げておきたいと思います。 続きまして、県立博物館についてお尋ねをいたします。 平成7年の4月、私にとっては、2期目の選挙で落選をして、4年間の苦闘の上にかち得た新たな県政活動への出発のときでありました。 落選中、その年の2月議会では、松橋自動車試験場の廃止が決まり、地元出身の議員として、残念な思いに歯ぎしりをかんだことを今鮮明に思い出します。試験場に張りついていた多くの業者の生活の担保のためにも、早期に、しかも試験場に匹敵する事業の誘致をとの思いで、知事を初め庁内各課に懇願して回りました。 当時の福島知事に現地視察をいただいての試験場跡地への県立博物館建設の決定は、天にも上らんほどの喜びであり、当時の松田松橋町長と手をとり合って喜びました。町民は、夢のような話に沸きました。早速、平成10年10月には、県立博物館基本計画が策定されましたが、壮大なその計画に驚き、大きな期待をかけました。 現地での建設範囲の確認、県と町の建設役割分担、地権者への買収説明など、極めて順調に推移しましたが、何が起こるかわからないのが世の常なのか、県の財政危機に伴う財政再建計画は、博物館建設事業を凍結し、待ち望んでいた現地の関係者は、まさに青天のへきれきとも言うべき事態に驚き、無念の思いで今日に至りました。 基本計画が策定され、既に15年が過ぎました。試験場事務所を収蔵庫として活用し、社会的にも高い評価を受けるものが大量に収集されており、現段階で64万点にも上り、その多面的な活用が望まれています。 平成23年9月議会では、氷室議員からも収集品の利活用と収蔵庫の整備に関する質問も行われました。今年度の当初予算では、収蔵庫の整備のための予算が計上され、その価値に対する取り組みが評価されています。 そうはいっても、現地宇城市民にとっては、博物館本体の建設が最大の願いであります。しかし一方で、県の財政事情を考えたときに、10年後または20年後にもそのめどを立てることができるかどうか、残念ながら極めて厳しい現実であります。 そのような中で、県は、博物館の収蔵物の活用のために、熊本市立博物館への共同展示を図り、市立博物館一部改造のための予算が提案されました。事実上の博物館基本計画の変更に値するものと考えます。 松橋収蔵庫における収蔵物活用事業との組み合わせによる博物館行政の展開だと考えられますが、基本計画の見直しが必要だと考えます。松橋の地における建設計画の将来の見通しについて、さらには基本計画の見直しについてお答えいただきたいと思います。 今回、2012年度の包括外部監査において、この土地を塩漬けと指摘し、地元の意向を含め、利活用を検討するよう所管部局に指示したと報じられました。監査では、早く建設すべきだとの指摘をしてほしかったわけでありますが、残念なことに、そういう状況にはなりませんでした。15年も現状のままで放置され、しかも近い将来にわたって建設の見込みが立たないとすれば、残念ながらそれもやむを得ないと考えています。 地元でも、収蔵庫事業に影響のない範囲で、さまざまな活用策が求められています。今春には、周辺の桜並木を活用して、敷地内での地元商工会による桜祭りが開催されました。また、海抜0メーター地帯を多く抱える宇城市にとって、総合運動公園的防災公園の整備などが強く要望されています。 15年にも及ぶ計画凍結の期間の中で待ち望んでいた計画が見直されるとすれば、地域の方々の納得できる活用策に取り組んでいただきたい。誘致に全力で取り組み、基本計画の実行を誰よりも待ち望んできた地元出身議員として、断腸の思いで、基本計画の見直しと建設予定地の利活用について、知事にお尋ねをいたします。 〔
知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(
蒲島郁夫君) 県立博物館構想については、平成8年に基本構想、平成10年に基本計画を策定し、平成11年に設置場所を旧松橋町に決定いたしました。しかしながら、平成13年に策定した
財政健全化計画に大型施設の建設凍結の方針を掲げて以来、実質的な凍結状態にあります。 このような中、平成19年、熊本県自然・人文資料活用検討委員会から、本県の貴重な宝を次世代に引き継ぐためには、県民を博物館活動の主体と捉え、そこに参加することにより、熊本の自然や文化への理解と愛着を深めることが必要との提言を受けました。この県民参加の博物館活動を推進するため、これまで、松橋収蔵庫では、64万点もの豊富な収蔵資料を活用し、数々の企画展示や学習講座、自然観察会などを開催してきました。 このような動きは、最近の我が国における博物館活動の潮流に合致したものであり、利用者からも高い評価を受けています。 一方、平成20年、24年には、県立美術館に永青文庫常設展示場を設置しました。また、議員御指摘のように、県、市連携により、平成26年秋には、熊本市立博物館への自然史を中心とした展示を予定しています。 このように、構想策定から17年を経過した今日、我が国における博物館に対する考え方や本県における博物館をめぐる環境も変わってまいりました。 この機を捉え、私は、貴重な収蔵資料のさらなる活用を図るとともに、県民の知的欲求にこれまで以上に応えたいと考えております。ついては、基本計画に示された次世代を支える人材の育成や、自然と文化の次世代への継承という博物館の理念を踏まえ、基本計画の見直しを視野に入れながら、博物館の新たなあり方の検討に着手することといたします。 具体的には、永青文庫常設展示場や装飾古墳館等の既存施設や、熊本市を初めとした市町村等の博物館との連携による、新たな建設を前提としない、時代の要請に応じた熊本タイプの博物館像を描きたいと考えています。 次に、収蔵庫の未利用地については、その活用策について現在検討を行っております。今後、地元とも密接に連携の上、有効な活用方法について、スピード感を持って検討を進めてまいります。 〔鬼海洋一君登壇〕
◆(鬼海洋一君) お答えいただきました今の知事の御答弁、私にとりましては、ある意味では極めて残念な状況になりました。この博物館の、つくったこの計画がなくなるわけでありますから。しかし、それも、現状を考えれば、ある意味ではやむを得ない状況ではないかというふうに実は思いながら、先ほど申し上げましたように、断腸の思いでこの質問をさせていただきました。ぜひ御理解をいただきたいと思いますし、そして、今後の利活用については、お話しのとおりに、スピード感を持って地元の意向に沿うような取り組みを続けていただきますように、改めてお願い申し上げておきたいと思います。 続いて、県立劇場の活用と条例の見直しについて――議長にお願いいたしたいと思いますが、教育と文化について、時間の関係で一緒に質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。 さきの質問で、私なりの見識に基づく文化、芸術を取り巻く現状と課題について申し上げました。今日的情勢の中で、県が主体となって引っ張る姿を見せてほしいとお願いいたしましたが、その具体的な先導役を果たすのが県立劇場だと考えます。 私は、かねがね、地方の文化会館や美術館に対して、ただ単に、貸しホールや作品展示だけの取り組みではなく、音楽、演劇、美術家の育成と地域の底辺を拡大するという任務を担ってほしいと訴えてまいりました。 と同時に、県立劇場や県立美術館には、各地の文化ホールや美術館の個性を生かしつつ、全県ネットワークの中心として、地方での文化ホール等の経営へのアドバイスや事業としての企画、支援を大変重要な任務として期待をいたしております。 翻って、今日までの各地の文化会館事業のその中核であるべき県立劇場において、それらの任務を期待するだけの活動の条件整備のために、私自身どれだけの責任を果たしてきたのだろうか。そのことを考えると、多くの反省とともに、現状の不十分さを痛感いたします。 県立劇場が指定管理者制度に組み込まれたのが7年前、県下における各地の文化ホール経営も、そのほとんどが同じような経営形態に移行いたしました。問題は、指定管理者制度に移行する議論の中心は、財政効率を上げるための、つまり経費を安く上げるための経営合理化が主たるテーマではなかったのか、そのように思います。 ほとんどのところでは、指定管理者制度も2周目に入りましたが、経営と求められる文化運動のはざまで、多くの良心的な管理者は、たくさんの悩みを抱えながら取り組みを続けていることを知らなければなりません。限定された短期間の中で成果を上げ、再契約に結びつけなければならない現状は、真に文化行政を進める仕組みとは違うのではないか、そうも考えます。 指定管理者制度が文化行政になじむかどうか疑問もありますが、私たちは、契約期間の延長を求めてきており、とりあえず、県立劇場にとっては、今回5年契約での2期目に入りました。グッドタイミングの感がありますが、今回、平成24年6月27日付で、劇場、音楽堂等の活性化に関する法律が施行されました。 この法律は、劇場、音楽堂を設置、運営する者、実演芸術団体等、国、地方公共団体の役割を明確にするとともに、これらの関係者等が相互に連携、協力することを明確にすること、国及び地方公共団体が取り組むべき事項を明確にし、劇場、音楽堂等を取り巻く環境の整備を進めること、劇場、音楽堂等の事業の活性化に必要な事項に関する指針を国が作成することとなっています。 いずれにしても、劇場や音楽堂への強い期待感の中で、任務を明確にしながら、一方で、地方公共団体が取り組む環境整備への責任が明確になりました。 この法律の施行によって、県立劇場の役割はさらに拡大され、名実ともに地方とのネットワーク化によるリーダーとしての責任が増すことになりましたが、県立劇場の活用と期待に応え、責任を果たすための熊本県立劇場条例の見直しについて、
企画振興部長にお尋ねいたします。 続きまして、教育と文化についてお尋ねをいたします。 文化、芸術の継承と発展にとって問題の一つは、それらの活動に子供たちがなれ親しみ、継承の主役として活躍してくれるかどうかにかかっていると思います。教育課程では、いわゆるゆとり教育等の中でも、文化、芸術との触れ合いをテーマにした授業を行ってきたと聞いていますが、現実の子供たちの姿は、上級学校への進学が最大の関心事であり、絵を描く子、歌に興じる子供、物語を読みふける子供などは少なくなり、むしろ心配される状況に立たされています。子供の時代に育まれる感性と文化を通しての情緒の発揚は、人間の成長過程の中で最も大切なことであり、そのために学校教育が存在します。 県や県文化協会等では、最近の若者の文化離れの動向を懸念しながら、今年度の主要事業として、くまもと子ども芸術祭を計画されました。ことし8月の天草市での開催を契機に、毎年各地持ち回りで開催されることになりましたが、教育課程での文化との触れ合い、さらには子ども芸術祭への協力体制についてお答えをください。 また、企業メセナでも明らかにいたしましたように、文化事業への取り組みが、余裕があればとの前提での取り組みになっていないか。つまり、私たちの全生活の中で、文化、芸術への取り組みへの価値観が低下しているのではないか。このことが気になってなりません。 県立高校の芸術関係の教員の配置状況を見てみると、音楽、本採22名、臨採8名、非常勤26名、美術、本採24名、臨採3名、非常勤23名、書道、本採13名、臨採5名、非常勤22名となっています。公立中学校においても、音楽、本採111名、臨採29名、美術、本採79名、臨採12名、非常勤5名となっています。臨採や非常勤講師の多さが非常に気になるところであります。県教委としての文化、芸術に対する認識のあらわれではないかと考えますが、是正する考えはないかどうか。 以上2点、教育長にお尋ねをいたします。 〔
企画振興部長錦織功政君登壇〕
◎
企画振興部長(錦織功政君) 県立劇場は、文化振興基本方針における県民の文化活動の拠点として位置づけられ、これまでも、音楽、舞踊、演劇等の実演芸術を中心とした文化活動の発表、鑑賞の場として、また文化芸術関係の人材育成の場として、本県の文化振興の拠点的役割を担ってきたところです。 他方、近年では、県立劇場等の公立文化ホールには、従来の実演芸術の発表や鑑賞の場としてだけでなく、住民が集い、交流する新しい広場として、地域の発展を支える機能やホール間の広域連携を支える機能など、地域の公共財として新たな役割も求められつつあります。 こうした状況を受け、昨年6月、劇場等の活性化を目的としたいわゆる劇場法が施行され、ことし3月、活性化に係る国の指針が示されました。この指針では、設置者である県に、長期的な視点に立った県立劇場の運営方針を定めることが求められております。 そのため、県としては、学識経験者や芸術文化団体等で構成いたします検討会を立ち上げ、先週、第1回目の検討会を開催したところです。 今後は、検討会において議論を重ねるとともに、シンポジウムを開催し、広く御意見を伺いながら、県立劇場に求められている役割を明確にし、その機能を果たすよう、全国に先駆けて、県立劇場条例の改正及び県立劇場運営方針の策定に向けた取り組みを進めてまいりたいと考えております。 〔教育長田崎龍一君登壇〕
◎教育長(田崎龍一君) 文化や芸術になれ親しむことは、子供たちの豊かな感性を育む上で大切なことであると考えています。 このため、各学校においては、児童生徒の発達の段階を踏まえ、各教科等で伝統や文化に関する指導の充実も図っています。 例えば、国語科での古文などの古典や音楽科での唱歌、琴や三味線等の和楽器の指導のほか、学習発表会や音楽鑑賞会等の行事、地域の伝統、文化に関する学習活動など、地域や学校の実態に応じた取り組みを行っています。 今後とも、各学校において、文化や芸術に親しみ、豊かな情操を育むようなさまざまな取り組みがなされるよう指導してまいります。 また、くまもと子ども芸術祭については、初めての取り組みとなりますが、子供たちが地域の伝統や文化に触れ合う絶好の機会であり、より多くの児童生徒の参加が得られるよう、県
教育委員会としても、地元の
教育委員会と連携し、可能な限りの支援を行ってまいります。 また、芸術関係の臨時的任用の教員数につきましては、普通教科の中でも本採の少ない世界史や化学などの科目と比較しても、特に多いということはありません。 ただ、週当たりの授業時数が10時間程度に満たない教科については、これまでも時間単位で勤務する非常勤講師で対応しています。このため、週当たりの授業時数が少ない芸術関係では、非常勤講師が多くなっている現状にあります。 なお、今年度実施する教員採用選考考査では、中学校の美術、音楽及び高等学校の音楽について採用を予定しており、今後も、必要な人材の確保に向け、適正な採用を実施してまいります。 〔鬼海洋一君登壇〕
◆(鬼海洋一君) 御答弁をいただきました。 特に県立劇場については、何回も申し上げましたけれども、これからの県内各地域におけるそれぞれの会館の運営とかあるいは文化事業の展開にとっても、これまでにない大変大きな役割を担うということになるわけでありまして、それに伴う条例制定についても、先ほどさまざまなことを申し上げてまいりましたが、ぜひ反映ができる内容にしていただきたい、改めてお願い申し上げておきたいと思います。 そしてまた、私どもにとりましても、これまでの県立劇場に対する予算等についても、さらに任務に見合うだけの予算措置しなきゃならないという責任を一方で負うということになったわけでありまして、このことにつきましても、私自身、肝に銘じて取り組んでいかなきゃならぬというふうに思っております。 それから、教育長からお答えをいただきました。 特に子ども芸術祭については、最大限取り組みを行うというお話でありましたし、それから、教員採用についても前向きな御答弁をいただきました。ぜひ、この文化、芸術に対する取り組みは、今後の子供たちをつくっていく非常に大きな仕事でありますので、引き続き御努力いただきますようにお願いをしておきたいと思います。 続きまして、水俣病問題について御質問したいと思います。 6月12日付熊日朝刊で特集された水俣病の記事、その中で、水俣病第1号患者、田中実子さんと初めてお会いしました。立つこともできず、24時間介護者がいなければ生活できないという方ですが、ことし還暦とのことで、赤いドレスを着て穏やかな表情で写っているその姿を拝見しながら、水俣病の公式確認から既に57年、この世に生を受けてからの長い年月をどのような思いで生きてこられたのだろうか。発病から今日までの家族を含めての苦闘の日々を推察するとき、胸が痛くなる思いに駆られました。 この間、水俣病認定をめぐる動きは、幾度かの節目を経過しながら今日に至りました。1956年の公式認定以来57年を経過した今日、今なお抜本解決に至っていない現状に、じくじたる思いに駆られます。 本年4月16日、熊本県に水俣病と認定するよう求めた2件の裁判で、最高裁は、水俣市の故溝口チエさんを水俣病と認めた福岡高裁判決を支持し、県の上告を棄却、水俣病の認定を命じました。大阪府豊中市の女性については、水俣病と認めなかった大阪高裁判決を破棄し、差し戻して審理のやり直しを命じました。 県の上告が棄却され、一方で大阪高裁への審理の差し戻しは、水俣病対策にかかわってきた国及び県行政のこれまでの対応を問われたものであり、改めて原点に返った見直しが求められることになりました。 知事は、早速会見で謝罪、速やかな認定と遺族への直接謝罪を表明されました。既に認定及び遺族への謝罪が行われましたが、執行部とともに歩んできた我々議会としても、責任を免れるものではなく、知事の謝罪の思いを共有しなきゃならないと考えております。 知事は、今回の判決結果を受けて、熊本県の責任者として、この判決をどのように受けとめておられるのか、この判決によって何が求められているのか、また、早期解決のためには、認定基準の見直しは避けて通れない課題だと考えますが、その姿勢と決意をまずお尋ねしたいと思います。 ところで、今回の判決要旨は、昭和52年の認定に係る判断条件の評価にかかわるものでありました。水俣病の最大の条件である、症状の組み合わせが認められない四肢末梢優位の感覚障害のみの水俣病は存在しないという科学的実証はないとし、症状の組み合わせが認められない場合にも、具体的な症状と原因物質との因果関係など、個別具体的な判断で水俣病と認定する余地を排除すべきではないと判示をいたしました。 平成16年10月15日のいわゆる関西訴訟の最高裁判決では、熊本県の被害防止策を怠った行政の法的責任が厳しく問われ、水俣病の病像についても、感覚障害は大脳皮質の損傷が原因とする原告団の主張が認められました。 この時期、認定審査会は、委員の任期が過ぎ、欠員になっていたにもかかわらず、認定業務のやり方に戸惑い、新しい選任が行われないまま、空白の期間がしばらく続きました。私は、この事態を受け、同年12月議会の
一般質問において、国に対し、待ち望まれる早期の認定への期待感の中で、判断基準の見直しを求めるべきであると提言をいたしました。 平成16年の関西訴訟の最高裁判決での原告勝訴以降の認定申請の急増、高齢化する患者への早期の生活支援の必要性、状況を打破したいと望む多くの期待感の中で、平成21年に水俣病特別措置法が成立し、平成24年7月の締め切りまでに、全国で6万5,000人の申請を数えました。そして今回の最高裁判決、事態は目まぐるしく変化をいたしています。 今までのお互いの解決への努力を認めながらも、新たな基本的な取り組みの課題が突きつけられた今、その課題に真摯に向き合い、何としても被害者目線で次への取り組みに進まなければならないと思います。 その第1の課題が、国の判断基準の見直しにあることは誰が見ても明らかであります。国からの受託事務だからといって消極的だとのマスコミ報道もありますが、今回最高裁から認定制度について課題が投げかけられたことで、審査会の業務は一歩も進まないでしょう。多くの被害者を抱える熊本県として、その思いを胸に、国に強く働きかけていただきたい、そう願いますが、知事のお考えをいただきたいと思います。 〔
知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(
蒲島郁夫君) 最高裁判決を受けての所感についてお答えする前に、改めて、水俣病問題に対する私の政治姿勢について申し上げます。 これまで何度も申し上げておりますが、水俣病問題の解決が私の最大の政治的使命であり、水俣病被害者の方々の目線に立つことが私の政治の原点であります。 このため、知事就任以降、多くの被害者の方々の声に直接耳を傾けてまいりました。そして、超党派による特措法の成立に尽力もいたしました。また、高齢化を迎え、将来の不安を抱えておられる胎児性・小児性患者の方々が、安心して暮らすことができる環境整備に積極的に取り組んでまいりました。 今回の最高裁判決を厳粛に受けとめ、県の上告が棄却された事案については、4月19日に認定を行いました。また、大阪高裁へ差し戻された事案については、熟慮を重ねた結果、高度な政治判断で控訴を取り下げ、5月7日に認定を行いました。 私は、今回の最高裁判決を最大限に尊重する必要があると考えております。最高裁判決のポイントは3つあります。1つ目は、一定の症候の組み合わせがあった場合には水俣病と認めるとする昭和52年判断条件は、多くの申請について迅速かつ適切な判断を行う上で合理性があると認められたこと、2つ目は、その症候の組み合わせがない場合にも、都道府県知事は、必要に応じた多角的、総合的な見地からの検討が求められたこと、3つ目は、こうした都道府県知事の判断の適否については、裁判所が個々の事情と関係証拠を総合的に検討して判断できるとしたことの3点であります。 私は、判決の当日、環境省にこのポイントを伝えた後、直接事務次官にお会いして、検討の具体化に対して積極的に関与したいと申し入れました。現在、事務方での協議を進めさせているところです。 次に、認定基準については、最高裁が示した多角的、総合的な見地からの検討に関して、環境大臣から、具体化を急ぐように事務方に指示をしたとの発言がありました。このため、環境省では、現在その作業を進めております。 県としては、認定業務を預かる立場から、環境省の決定に積極的にかかわり、具体化に向けた作業に協力してまいります。 〔鬼海洋一君登壇〕
◆(鬼海洋一君) 私は、この問題の基本的な構えといいますか、それは、圧倒的に多くの患者をこの熊本県は抱えているとすれば、それらの責任を地方自治体としてどう果たしていくのか、つまり、関西訴訟の中でも具体的に指摘された県の責任をどう果たしていくのか、そのための多くの患者を抱えているというこの重さを認識しながら取り組んでいく、このことがまず必要ではないかというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いしておきたいと思います。 続きまして、道州制について御質問したいと思います。 5月31日に開かれた九州地区町村長の臨時大会では、道州制反対を決議し、改めて、町村段階における道州制推進反対の意思を明確にいたしました。 県、市町村を問わず、今日まで強く主張し求めてきた地方分権の形が、道州制という具体的な姿となってあらわれた今、これからの日本の統治のあり方として、それぞれの思惑の相違が明らかになりつつある、そう感じます。 数年来、九州地方知事会や関西広域連合は、広域連合や広域行政機構を受け皿としての事務権限移譲を求めてこられました。昨年秋以降急速な動きを見せ、当時の民主党政権によって、地方整備局、経済産業局、地方環境事務所の3機関を特定広域連合制度として移譲することを決め、国会に提出する方針を固め、閣議決定まで行われました。 しかし、この段階での受け皿としての全国的な取り組みは極めて不十分であり、このまま進めば、一国二制度という国の統治のあり方が問われると懸念しておりましたが、直後の政権交代によって、移譲される事務権限、財政の仕組みが具体的に明らかになることもなく、白紙に戻りました。 新政権移行後の自民党は、それまで検討してきた道州制基本法案の骨子案をもとに、推進基本法を今国会に提出するとの方針が伝えられています。この骨子案では、道州制は、道州及び基礎自治体で構成される地方自治制度であると定義し、基本理念では、国の役割及び機能の改革の方向性の明確化を行い、国の事務を国家存立根幹にかかわるものに限定し、国から道州へ権限移譲をするなどを掲げています。 道州制の基本的な方向については、都道府県を廃止し道州を設置する、さらに、従来の市町村の区域を基礎とした基礎自治体を編成し、住民に身近な事務は、都道府県から基礎自治体へ大幅に継承させるとなっています。 町村会では、基礎自治体の新たな編成や事務の移譲のあり方等に対する不安と疑問が強く、拙速な推進に極めて大きな不満が生じています。 また、このことは、国の仕組みを変える革命的な出来事と捉えてもよく、廃止される都道府県にとっても現段階での理解は不十分であり、執行部、議会ともにさらなる研究が必要ではないか、そのように感じています。 新たな段階に入った今、もう一度これまでを振り返り、具体的に突きつけられている課題の研究をしなきゃなりませんが、九州地方知事会の中でも推進の旗振り役だと評価されている知事として、道州制基本法とその方向性、町村会との理解を生むための話し合いについて、以上2点について、お考えをお示しいただきたいと思います。 〔
知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(
蒲島郁夫君) まず、道州制基本法とその方向性についてお答えします。 道州制基本法案の骨子案は、国民的な議論を始める必要があるとの観点から、道州制の導入について具体的な検討を開始しようとするものです。私は、その姿勢を評価しています。 地方分権の究極の形である道州制は、それ自体が目的でなく、国民の幸福量を最大化するための手段であります。 日常の生活圏域の拡大、経済のグローバル化の進展等、私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。また、大規模災害等への広域的対応の必要も高まっています。 経済的な豊かさや安全、安心など、九州の人たちの幸福量を最大化するためには、九州が一体となって自立的に対応できる道州制のほうが都道府県制よりも手段としてすぐれていると、私は考えています。 道州制のあり方については、国の統治機構を根本から変えるものであるため、まずは、このような道州制の理念あるいはその懸念について、しっかりと議論を行い、共有していく必要があると考えています。 次に、市長会、町村会との話し合いについてお答えします。 道州制については、さまざまな意見があるのは承知しています。 これまでの道州制の議論では、住民に身近な基礎自治体が多くの住民サービスを担うとしつつも、基礎自治体のあり方について検討が十分ではありませんでした。そのため、市町村の間にさまざまな懸念があるのも当然のことと思います。 私は、違った考えを持つ方々が真剣に議論するのが大切であり、道州制は皆が幸せになるための一つの手段であるとの観点に立って議論していけば、共通の認識を持てるようになると考えています。 今後、市長会や町村会などと意見を出し合う機会を積極的に持つことで、道州制の課題や懸念について、地方の立場から議論を尽くしていきたいと思います。 〔鬼海洋一君登壇〕
◆(鬼海洋一君) 申し上げたいことはいっぱいあるわけでありますが、また総務常任委員会の中で、今回の取り組みについて、私なりの意見を申し上げておこうというふうに思っています。 そこで、また議長にお願いしたいんですが、熊本西域の取り組みと県民発電所の取り組み、一緒に質問させていただきますので、よろしくお取り計らいいただきたいと思います。 まず、熊本西域、これは宇城・天草地域振興の取り組みについてお尋ねをしたいと思います。 県は、政令指定都市誕生後の県内各地域の将来像を描くために、地域振興ビジョンを策定されました。県内を6ブロックに分け、共通テーマによる集中的な取り組みをなされ、既に1年が経過をいたしました。人吉・球磨、芦北・水俣、八代地域振興局では、フードバレー構想のもとに、県南広域本部という新たな組織での既に取り組みがスタートしたことは報道でも明らかであります。 一方、我が宇城地域は、県央東部地域、熊本都市圏地域、天草・宇土半島地域など3つのブロックとの連携を図りながら、トータルとしての効果を求めなければなりません。 宇城地域振興局では、フットパスランド宇城のプロジェクトの立ち上げや国道218号、266号の観光ルートとしての磨き上げなど、動きが開始されましたが、特に、宇城・天草ゾーンを主地域として、観光をテーマとした熊本西域振興の地域連携とそのための施策の具体化が重要だと考えています。 おかげさまで、三角地域の取り組みだとか、あるいはそれに伴う宇土市、宇城市、上天草市、こういうところの市間の連携、この付近が非常に盛り上がっているところでありますけれども、今後非常に重要な観光拠点でありますこの天草にかかわる宇土半島、このブロックの開発、つまり、西域の振興についてどのように考えておられるのかということをまず1点御質問申し上げたいと思います。 続きまして、県民発電所の取り組みと設置のめどについてであります。 新年の報道によって、県が民間から出資を募り、太陽光や小水力による発電事業を展開する県民発電所の創設を検討していることを知らされましたが、知事は、年頭の記者会見で、発電所構想を県民運動として実現させるという決意を示されました。 これを見てみますと、この県民発電所の中身がどういうものであるのか、そのためには、ファンドを立ち上げ、投資を募り、そして事業会社を設立して、具体的なその事業の中身を設定して、それから取りかかるというぐあいになってまいるわけでありますが、御承知のとおりに、買い取り価格が今年度3月31日まで、25年度と――26年度からさらに引き下げるという状況になってまいりました。まさにスピード感が最大の課題であるわけでありますが、この取り組みについて、現状どういうぐあいになっているのかということ、この2点お尋ねをしたいと思います。 〔
企画振興部長錦織功政君登壇〕
◎
企画振興部長(錦織功政君) 宇土半島・天草地域にしかない資源を活用するため、広域連携プロジェクト・スクラムチャレンジ事業により、宇土市や宇城市、天草2市1町が一体となり、観光ルートの開発やツアーの実施、都市部でのキャンペーン開催といった広域観光事業に取り組んでおります。 こうした広域観光事業の魅力づくりに貢献しておりますのが、三角東港を結節拠点としました「A列車で行こう」と天草宝島ラインでございます。 こうした観光ルートの利用者が増加していることを受け、県といたしましては、三角東港広場の景観整備に取り組むことといたしました。 今後とも、県といたしましては、県境連携も視野に入れた宇土半島・天草地域の振興について、積極的に取り組んでまいります。
○議長(
藤川隆夫君)
商工観光労働部長真崎伸一君。――残り時間が少なくなりましたので、答弁を簡潔に願います。 〔
商工観光労働部長真崎伸一君登壇〕
◎
商工観光労働部長(真崎伸一君) 県民発電所につきましては、県民による県民のための発電所を目指し、去る5月10日に、県内の経済団体や地場金融機関、学識経験者、市民団体等から成るくまもと県民発電所検討委員会を設置し、その中で、県民発電所のコンセプトの整理や、主に資金調達方法と利益還元並びに事業主体の3つの課題について、本年秋までに取りまとめることとしております。 また、県民発電所構想の実現につきましては、再生可能エネルギーの固定価格買取制度のいわゆるプレミアム価格が適用される平成26年度までのできる限り早い時期に事業化できるよう、スピード感を持って推進してまいります。 〔鬼海洋一君登壇〕
◆(鬼海洋一君) 「エスプレッソ」という本があります。(資料を示す)これで「宝島・天草大特集」というのが出されました。これを見てみると、まさにもう行かなしょんなかと、物すごく魅力ある場所であります。山口県議の出身の、仲のいい川端市長なんか、こういうぐあいに特集されているわけでありますけれども、ぜひこういうラインの開発、これは、上天草市、それから天草市が特集されておりますが、今度は、やっぱりこれに宇城市、宇土市も載るような、そういう一貫した取り組みが必要だというふうに思っておりますし、今、錦織部長のほうからもお話がありました、このラインの重要性というのを痛感して考えていると、積極的に開発をしたいというお話がありましたが、ぜひ特段の御配慮をいただきますように、この際、お願い申し上げておきたいと思います。 県民発電所も、時間がおくれればおくれるほど利益がなくなるんですね。26年というふうに言われましたけれども、プレミアム価格もすぐそこでしまうわけですから……
○議長(
藤川隆夫君) 所定の時間を超えていますので、終結を願います。
◆(鬼海洋一君) (続) 大変残念な状況ではないかというふうに思っています。ぜひ御努力いただきますようにお願いして、私の質問を終わります。 ありがとうございました。(拍手)
○議長(
藤川隆夫君) 昼食のため、午後1時30分まで休憩いたします。 午後0時17分休憩 ――――――○―――――― 午後1時31分開議
○副議長(中村博生君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 城下広作君。 〔城下広作君登壇〕(拍手)
◆(城下広作君) 公明党の城下広作でございます。私は、きょうの質問は5項目でございますけれども、答弁をしていただく方は、延べ9回でございますので、質問よりも答弁者が多いもんですから、答弁の方は簡潔に、1ラウンド2分ぐらいでやっていただきたいなというふうに思っております。3分やると、ちょっと時間がなくなるもんですから、1ラウンド2分と異例のラウンドで、ぜひ答弁を考えていただきたいというふうに思います。 最初に、7.12熊本広域大水害の復旧状況と今後の防災・減災対策についてお尋ねをいたします。 昨年7月12日に発生した熊本広域大水害から、やがて1年を迎えようとしています。23名のとうとい命を奪い、今なお2名の方は行方不明の状況にあります。改めまして、亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。 また、本年は、昭和28年6月26日、熊本市内の白川氾濫で死者、行方不明者537名を出した大水害、いわゆる6.26水害から60年の節目にも当たります。本県も過去の水害からたくさんの教訓を学んできましたが、やはり自然が相手、いつ、どのような形で災害に遭うかは予想しがたく、厄介なことに、時間がたつと、その時々の教訓も薄れてくるのが世の常であります。 しかし、本県は、梅雨の時期になれば大雨被害、夏から秋にかけては大型台風に見舞われることが多い地理的状況にあり、その都度とうとい人命や財産を奪われることがないよう、官民問わず、具体的な対策を講じることが求められ、これをリードしていくのが行政の使命だと思います。 そこで、昨年の熊本広域大水害の復旧状況やその過程で起こる問題点や今後の防災対策についてお尋ねをいたします。 まず第1点目ですが、県下の河川や道路、砂防や治山、農地や農業施設等、いわゆる国の災害復旧にかかわる業務について相当な被害が出たので、災害査定や設計の完成、工事発注の準備等、大変ハードなこの1年だったと思います。そうしたことも影響したのか、工事発注では1社1応入札と一部誤解を招く入札を取り沙汰されたり、阿蘇市では農政関係の工事入札で応札者がいなかったりと、何かと気になることを多く耳にしましたが、田植えや各種農作物の作業が大変忙しい時期、被害者からは、一日も早い復旧を望む声が多かったと思います。また、全国からたくさんの激励、義援金やボランティアの支援を受けたこともあり、その後の復旧を気にされる方も多いと思います。 そこで、今回の熊本広域大水害における県下の現時点での復旧状況についてお尋ねします。また、今回は大変大規模な復旧作業になると思いますが、復旧に当たり、特に問題になるようなことはないのか、お尋ねします。 第2点目の質問ですが、県は、今回の熊本広域大水害を教訓に、災害対応に係る検証等を行っていますが、大変大事なことと思います。この中で気になる点についてお尋ねをします。 今回の災害では、地域住民の避難のタイミングが非常に難しいと痛切に感じました。例えば、私は、昨年の7月12日午後より、龍田陳内4丁目に足を運びました。現場で目にした光景には、ただただびっくりで言葉も出ませんでした。せめてもの救いは、人命が失われなかったことです。その現地で住民の皆様が口々にされたのが、避難を呼びかけるものが何もなかった、あと数分逃げおくれていたら流されていた、あと1時間雨が降り続いていたら家ごと流されていた、生きているのが不思議なくらい等の言葉でした。あらかじめ避難できた方々は、偶然白川をのぞいてみると異常な水位の上昇に驚き、自主避難をした、隣近所の呼びかけや車のクラクションの音で異常を感じ、間一髪で車ごと避難し免れたと聞きました。しかしながら、高齢者や呼びかけや音に気づかなかった方々は取り残され、家屋の2階に上がり、濁流が上昇する恐怖を感じながら、ヘリコプターの救出を待っていたと聞きました。 阿蘇の土砂災害で多くの犠牲者を出した地域も、やはり明確な避難指示やそれを知らせる音が雷雨に消されるなどして逃げおくれたと聞いています。やはり住民にとっては、明確な伝達方法が不可欠と言わざるを得ません。 そこで、雷雨がすご過ぎて隣の方に呼びかけるのも困難な状況、停電で情報が途絶えてしまった状態、深夜で就寝中のため連絡がとれないなどの悪条件が重なることも想定した上での明確な伝達方法と避難のあり方等について、今後どのように対処されようとしているのか、お尋ねします。 第3点目の質問ですが、知事は、昨年の熊本広域大水害の復旧、復興に当たり、過去の対応にとらわれず、創造的復興に努めると被災直後から述べられ、陣頭指揮をとられてきました。災害といえば原形復旧が原則の中、知事の復旧、復興にかける思いが強いことに、どれだけの県民が勇気づけられたかしれません。あの国道57号線滝室坂の復旧も、本来ならば原形復旧で終わるところを、知事の再三の国土交通大臣への直談判が功を奏し、なかなか進捗しなかった中九州横断道路とも絡ませて、トンネル部分4.6キロ、総工事230億円という誰も予想できなかった予算を獲得することができました。また、熊本市白川の河道変更も同様であります。ここで、昨年の熊本広域大水害の復旧、復興に対する知事の対応を高く評価したいと思います。 このようにして、着実に復旧、復興の道は開かれていますが、またいつ、どこで起こるかわからない災害です。ことしは空梅雨と話題になっていますが、安心はできません。そこで、知事は、昨年の熊本広域大水害から多くのことを学ばれたと思いますが、本県における今後の防災・減災対策について、知事の御所見をお伺いいたします。 以上3点、第1点目から2点目は
知事公室長に、3点目は
蒲島知事にお尋ねをいたします。 〔
知事公室長田嶋徹君登壇〕
◎
知事公室長(田嶋徹君) まず、5月末時点の主な復旧状況をお答えします。 道路、河川、砂防の公共土木施設については、被災件数の8割に当たる1,032カ所の復旧工事に着手し、そのうち611カ所が既に完了しております。 また、県が復旧に取り組んでいる阿蘇谷の農地についても、今月末には、ほぼ全ての土砂撤去を完了する予定です。さらに、林地崩壊や治山、林道についても、約9割の工事に着手しております。 なお、現段階において、県外を含め、地権者が多数存在するなど用地取得上の課題や、河川を掘削した土砂の搬出先の確保の課題などにより、工事が発注できない箇所もあります。 さらには、復旧とあわせて、農地の集積や大区画化を進めたり、緊急避難路の機能をあわせ持つバイパスの整備を目指す中で、地域の皆様との協議を重ねている箇所もございます。 このような課題を克服し、できるだけ早期の復旧と将来を見据えた創造的な復興を同時になし遂げるため、引き続き全力で取り組んでまいります。 次に、避難指示等の伝達方法と避難のあり方についてお答えします。 広域大水害の災害対応につきましては、市町村とともに検証に取り組みました。その結果、避難指示等の伝達や実際の避難に関し、次のような課題があることが明らかになりました。 避難発令の判断を行う情報収集体制に問題があったこと、また、深夜の突発的な豪雨の中では避難サイレンの音が聞き取りにくかったこと、また、人を介した呼びかけなどの避難活動にも限界があったこと、さらに、住民の避難行動も現実的に困難であったことなどです。 このため、河川の水位状況を監視するカメラの白川流域への追加設置や、統合型防災情報システムの配信能力の向上、また、携帯メールサービスのエリア拡大や情報内容の充実にも取り組んでいます。 あわせて、自宅外への避難が困難な場合には、自宅内で、山の反対側、あるいは上層階へ避難することの必要性や有効性についても普及啓発しております。 さらに、深夜に大雨が予想される場合の夕方明るいうちからの予防的避難の実施に取り組むこととしています。 加えて、単独での避難が困難な高齢者などを含め、住民が円滑に避難するためには、お互いが協力して避難誘導などに取り組む自主防災組織がより重要です。 そのため、自主防災組織の設立、活動を促進する補助制度の拡充や指導員の新たな配置などにより、市町村が進める組織設立の取り組みを強力に支援してまいります。 〔
知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(
蒲島郁夫君) 昨年7月に発生した熊本広域大水害は、私が知事に就任して初めて経験した大きな災害でした。その被害は、甚大で、かつ広域的、多面的、重層的なものでした。 私は、この災害に直面し、職員に対して3つの原則で臨むことを指示しました。1つは、被災者の痛みを最小化すること、2つ目は、型どおりでなく、創造的復旧、復興を行うこと、3つ目は、この創造的な復興を通して、将来の熊本の発展につなげることです。 このため、被災者の痛みの最小化については、被災者の皆様ができる限り安らぎの中で生活できるよう、仮設住宅を木造で建設し提供しております。また、阿蘇市の仮設住宅敷地内に、癒やしと集いの場として、みんなの家も設置しました。 さらに、創造的復興については、今回の災害で、熊本―大分間の大動脈である国道57号が通行どめになりました。改めて幹線道路の必要性を強く感じ、国道57号の滝室坂について、単に復旧するのではなく、中九州横断道路にも活用可能な形で整備するよう国に要望してまいりました。今般、異例の早さで、国において滝室坂の新規事業化が決定されました。太田昭宏国土交通大臣を初め国会議員の皆様、そして議員を初め、要望をともに届けてくださった
県議会議員の皆様の御尽力に心から感謝申し上げます。 3つ目の将来の熊本の発展につなげる取り組みとしては、災害復旧とあわせ、農地の集積化、県産材等を活用した景観に配慮した治山・砂防堰堤の整備などに取り組んでいます。 また、防災・減災対策については、昨年12月に取りまとめた熊本広域大水害の検証結果を踏まえ、自助、共助、公助の3つの観点から、地域防災力の強化に取り組んでおります。 具体的には、自助の取り組みとして、テレビ、新聞など、さまざまな媒体を活用した広報事業を展開し、県民の防災意識を醸成してまいります。共助では、自主防災組織の設立促進を図る補助事業の拡充を行うなど、市町村が進める組織設立の取り組みを強力に支援しております。さらに、公助では、自衛隊や緊急消防援助隊等の集結拠点となる県民総合運動公園や県消防学校の広域防災活動拠点の機能強化の取り組みを進めてまいります。 あわせて、県域を越えた広域的な災害にも対応するため、これらの広域防災活動拠点の機能強化に加え、阿蘇くまもと空港において駐機場の整備を行います。これにより、災害時の受援、支援の対応能力の強化を図り、熊本の地理的優位性を生かした広域的防災拠点としてのポテンシャルを高めることが九州全体の安全度を高めるという認識のもと、取り組みを進めてまいります。 こうしたハード、ソフト両面でさまざまな取り組みを進め、大規模災害に負けない熊本づくりを目指します。 〔城下広作君登壇〕
◆(城下広作君) 先ほど、午前中の佐藤県議のときの話にもあったんですけれども、昼間のうち逃げる、早く逃げるという話も答弁でありましたけれども、例えば、夏は、早く明るいうちに逃げるといっても、避難場所が体育館であれば大変蒸し暑くて、大変、ある意味では、そこの空間として不適合と。そうすると、早く逃げるとしても、その場所が、なかなか環境が劣悪であれば、逃げる人がなかなか行きたがらないということもあるから、避難場所の改善も考えないと、昼間から逃げるといっても、なかなか暑い場所にさあ行きましょうかというと、できにくいんではないかと。このこともちょっと私は今感じております。ですから、本当に、ある意味では、合理的にといいますか、本当に早く逃げるんだったら、逃げる場所というのは、ある程度の環境も整えないと、やっぱりそこに簡単に誘導できないというようなこともあるんじゃないかというふうに思います。 また、答弁の分も、2分ということですけれども、知事は、防災、減災にかける思いが多くて、2分以上答弁していただいたことは大変ありがたいなというふうに思っております。 次に、2点目でございます。 大変話題になっておりますTPPの問題と県下の今後の農業のあり方についてお尋ねをしたいと思います。 この問題は、午前中も佐藤議員が取り上げられておられました。私も農業政策には関心を持っており、農業なくして国家なし、熊本県も農業あってこそ成り立っていると思っています。当然、林務水産業も同様であります。 政府は、過日、成長戦略の第2弾として、農家所得を今後10年間で倍増させると発表されました。今のところ明確な財源の裏づけはないようで、そう簡単にいくのか心配です。一部では、7月中旬から下旬にかけて予想されるTPP交渉参加にあわせて、反対の立場をとる
農業関係者に理解を求める予防策として捉える意見も少なくありません。いずれにしても、日本の農業の現状からすれば、所得倍増は高いハードルに間違いはありません。 しかし、TPP交渉参加を決定する時期も間近に迫っており、政府は、まず先に、聖域がないTPPに聖域を持ち込み、かち取ろうとしている重要5品目、米、麦、牛肉、豚肉、乳製品・甘味資源の獲得に集中するのが先決だと思います。しかし、この条件が受け入れられなければ交渉参加の撤退もあり得ると政府が述べていることや、県議会も、重要5品目や国民皆保険制度などの聖域が確保できないと判断した場合、脱退も辞さないとすることの意見書を決議した経緯を踏まえれば、そのときは参加の辞退を迫るしかないと思います。 今後、政府は、TPP交渉参加に当たり、なお一層国民に対して正確な情報を公開し、約束したことは必ず実行するとの決意で臨んでいただきたいと思います。その決断のもとで、国民は、それぞれの分野で今後のとるべき道を決定することになります。 そこで、3点ほど、本県の今後の
農林水産業の取り組みについてお尋ねします。 まず初めに、県の今後の農業振興策の切り札として言われる県南振興のフードバレー構想について伺います。 この事業は、小野副知事が陣頭指揮をとられ、獅子奮迅の闘いをされていることはよく存じています。このフードバレー構想は、県南地域の豊富な農林水産物を生かし、食品、バイオなどの研究開発機能や企業を集積、推進することで、地域の活性を目指す構想と伺っています。 ただ、問題は、県南地域の農産物は、国が目指す聖域の重要5品目に入る品目は米ぐらいで、仮に日本が主要5品目を認められ、TPP参加を決めた場合、米以外の主要農産物が多い県南地域は、守られる農産物がほとんどない状況です。逆に、他の参加国から、農産物が県南にも大量に入り込むことが予想されます。例えば、トマト生産は日本の19倍のアメリカ、4倍のメキシコ、タマネギは日本の3倍の生産のアメリカ等が、関税の撤廃によって大量に輸出されれば、影響を受けることが十分に考えられます。 また、フードバレー構想では、売り込み先も、アジアとの貿易拡大、首都圏等への販路拡大としていますが、御案内のとおり、最大のマーケットの中国との輸出は不透明で、首都圏等への売り込みは、他県との競争はもとより、外国との競争が大きくなる可能性があります。 このような状況を見据えてフードバレー構想を推進されていると思いますが、どのような影響を想定されているのか。また、中国などをターゲットにされていると思いますが、今後の関係を心配する声も少なくありません。具体的な販路拡大の戦略について、小野副知事にお尋ねをします。 次に、第2点目の質問ですが、県下の就農対策について伺います。 県下の農業従事者で販売農家の平成22年度の年齢構成を見てみますと、一番多いのが70歳以上で41%、次いで50歳から59歳で16.6%、3番目が65歳から69歳で13%、この合計で70%を超えます。また、主業農家で見てみますと、一番多いのが50歳から59歳で25.1%、次いで70歳以上が22.4%、3番目が60歳から64歳で16.4%、この合計が約64%になります。 この数字を見れば、いかに農業従事者の年齢構成が高いかは言うまでもありません。特に驚くのは、販売農家の40%、主業農家の22%以上が70歳以上であるということです。確かに、日本人の寿命は世界トップクラスで元気な方が多いのですが、あと5年もしくは10年すれば、現役をやめることが十分考えられます。そのうちに次の世代も70歳の仲間入り、ここ10年以内で半数の農業従事者がいなくなるのは遠い先の話ではありません。TPP参加が仮に決まっても、参加猶予が10年間あります。しかし、農業従事者の後継がうまくいかなければ、TPPの影響を受けるより後継者問題が先に起こり、農業に壊滅的被害を受ける可能性が考えられます。 本県は、全国的に見ても農業県であり、高齢化率の高い県であります。言いかえれば、最も影響を受ける、高い県となります。そこで、県も、企業の農業参入や新規就農者を受け入れる施策を、国の支援や県独自の支援で進めて効果を出していますが、この数字を補うには到底及びません。そこで、今後ますます厳しさが予想される本県の就農対策について、より実効性のある対策は打ち出されるのでしょうか、お尋ねをします。 次に、第3点目の質問ですが、国は、農家の所得倍増を図る上で、農作業を効率化し、生産コストを下げる策として、農地集積を打ち出していますが、期待が持てる策だと思います。ただし、その効果を享受できるのは、比較的平たんな優良農地が集積する場所に限定されることです。そして、作付品目も、国は、米、麦、大豆を想定していることから、過日、中山間地を持つ首長さんとの懇談で、また中山間地の農家の方々が切り捨てられると心配する声も聞かれました。 県は、農地集積を国が出す昨年度から独自の取り組みを開始しており、今回の国の取り組みを歓迎していると思いますが、中山間地の対策も必要だと思います。 そこでお尋ねしますが、農地集積をするに当たり、やはり一番苦労するのが土地所有者の協力だと思います。しかし、農家では土地に対する思いが強く、なかなか手放さない傾向があります。そこで、県が先駆けて実施した本県独自の農地集積の取り組みはどのような状況か、お尋ねします。 また、国は、農地の貸し借りを仲介する新機構、仮称でございますけれども、農地中間管理機構を都道府県につくるとしていますが、新たな役人の天下り先になるとの心配する声も上がっていますが、先駆けて実施した経験のある県として、どのような形態、もしくは機関がより効果を発揮すると思われるか、お尋ねします。 以上、フードバレー構想における販路拡大の戦略については、最近髪型を変えまして、きりっとされた小野副知事に、そして就農対策と農地集積については
農林水産部長にお尋ねをいたします。 〔副知事小野泰輔君登壇〕
◎副知事(小野泰輔君) まず、TPPの本県農業への影響でございますが、県では、3月に、国の影響試算の考え方に基づきまして、米、肉牛など7品目について、影響額を854億円と試算し、公表いたしました。 しかし、TPPについては、交渉自体が外部に公表されておらず、不透明な部分が多くあります。本県農業への影響について見通すことは非常に難しい状況にあります。さらに、本県では、多様な産物がさまざまな経営形態のもと生産されており、それぞれへの影響を現時点で正確に予測することは難しいというふうに考えております。いずれにいたしましても、今後明らかになってくるであろう情報の収集に努め、本県農業への影響を見きわめてまいります。 次に、フードバレー構想の4本柱の一つである農林水産物の販路拡大戦略について、国内向けと輸出に分けてお答えをしたいと思います。 国内向けには、2つの視点から戦略を講じる必要があると考えております。 1点目としまして、トマトやデコポンなど、既に全国的にも産地ブランドが確立しているものにつきましては、選果場の再編統合による効率化や一層の高品質化を図り、競争力をさらに高めてまいりたいと思います。 具体的な取り組みとしましては、トマトをくまもとの赤ブランドのシンボルとして打ち出し、くまもとの宝試食会や大手量販店と連携した熊本フェアなどにおいて、県南産品を積極的に販売展開していきます。 さらに、八代のショウガや芦北のサラダタマネギなどを、くまもと「食」・「農」アドバイザーの小泉武夫氏の紹介により、全国のデパートなどで展開する大手加工食品メーカーに売り込むとともに、全国規模のネット通販企業とも連携を広げていきます。 2点目として、非常に魅力的であるものの、なかなか流通に乗るに至っていない小ロットの産物につきましては、課題となっている流通コストの低減や販路開拓、ブランド力の向上を進めてまいります。 県南地域にあるチヂミホウレンソウやジャンボニンニクといった、ロットが小さくても食味がすぐれる多くの産物については、生産者と消費者を結びつけることが肝要だと考えております。このため、これらの県産品を紹介し商談につなげる熊本県売り込みネットワークなどを活用して、積み合わせ輸送によるコスト低減を図りながら、首都圏の消費者やホテル、レストランなどに直接届けることで、新たなブランド化を進めてまいります。 次に、輸出対策のほうですけれども、中国は輸出品目が限られるなど課題もございますので、チャイナ・プラス・ワンとして、アジア・ASEANの発展を取り込む販路開拓に積極的に取り組んでまいります。 そこで、本年4月にシンガポールでの活動をスタートした熊本県アジア事務所をフルに活用し、全国初のインドネシアハラール認証を受けた錦町の牛肉処理場からイスラム圏への輸出などにも挑戦をしてまいります。 また、韓国産などとの競争力を高めるため、県南地域の野菜や果物などを、八代港も使いながら、船便で輸送し、物流コスト低減や新たな品質保持技術の実証実験を行います。 さらに、香港やシンガポールに常設している熊本産品コーナーで、くまもとの赤のトップランナーでもある日本一のトマトを前面に出しながらアピールし、新たな取引につなげてまいります。 いよいよ7月30日には、くまもと県南フードバレー推進協議会が設立されます。この協議会において、販売や物流に加え金融などさまざまな参加者の間で、業種を超えた新たな取り組みが始まるよう全力で取り組んでまいります。 〔
農林水産部長梅本茂君登壇〕
◎
農林水産部長(梅本茂君) 次に、後継者を確保する就農対策についてですが、生産者が高齢化する一方で、本県の新規就農者は、ここ数年約300名の水準にあり、これに加えて、農業生産法人や農業参入企業への雇用就農も増加しています。 また、45歳以下の青年就農給付金の受給者も、北海道に次いで、全国で2番目に多い状況です。 本県農業の担い手は、米、麦、大豆などの土地利用型農業では、平均1ヘクタールと経営規模も小さく、高齢農家や兼業農家が大半を占める一方で、施設園芸や果樹、畜産などでは、若くて意欲ある担い手が多く、平均所得も高いなど、農業形態によって大きく異なるという特徴があります。就農対策に当たっては、このような農業形態に応じ、実効性のある対策に取り組む必要があると考えます。 米、麦、大豆などの対策としては、高コストで小規模な個別経営から脱却するため、地域営農組織への集約化に取り組み、リーダー育成セミナーの開催やアドバイザー派遣を行い、組織の法人化を加速させます。 一方、施設園芸や果樹、畜産などの対策としては、熊本新規就農支援センターが核となって、親元就農者の事業承継や法人、企業への就農相談などにきめ細かに対応したり、県外でも新規就農者を対象とした相談活動を行います。 さらに、くまもと農業経営塾で、農業経営者としてのトップレベルの知識を学ぶ機会を提供するとともに、昨年度応募者が1,000名を超えましたくまもと農業アカデミーでも、最先端の技術や知識を学べる講座を用意してまいります。 このように、就農相談から定着までの各段階に応じた総合的かつ切れ目のないサポート対策を講じてまいります。 続いて、農地集積については、平成32年までに、県内の全農地11万ヘクタールの約8割を認定農業者及び地域営農組織に集約するという目標を掲げて取り組みを進めてまいります。農地集積のマスタープランである人・農地プランは、本年度内には全市町村で532地区を対象に作成を終える予定でございます。 取り組みを開始した平成24年度は、前年比で3割増の1,780ヘクタールを集積できました。これは、知事が、直接農家に、農地を安心して供出するように呼びかけたり、平たん地だけでなく中山間地も対象にして重点地区を指定し、農地集積専門員を配置するなど、貸借と売買の両面から取り組んだ成果だと考えます。 国の農地中間管理機構の構想は、このように、国に先駆けて取り組んでいる本県にとって、大きな追い風になると期待しています。 県としては、今後、県農業公社を中間管理機構として位置づけ、その機能強化を一段と図ってまいります。また、農業公社が利用権設定をしながら農地を保有していくために必要となる基金の創設を国に提案してまいります。 〔城下広作君登壇〕
◆(城下広作君) さまざまな就農対策は手がけていますけれども、それでも高齢でやめる方の数に追いつくか、同じとは――それはいくことはどだい無理でしょうけれども、今の農業の規模をできるだけ守る、食糧維持をできるというのが、本県でどういう形で育成していくかということは大変課題だというふうに思います。やっぱり知恵を絞りながら、今やっていることは着実にやりながら、さらにまた、新たな施策が必要であればというふうに思います。 そこで、具体的に、では、その農業後継者になり得るというふうに考えられる県立農業高校と県立農業大学校の進路状況について質問をさせていただきます。 先ほどの農業問題の農業後継者問題に大きくかかわってくるのが、県立農業高校と県立農業大学校の進路状況にあると思います。この2つの学校の特徴は、何といっても、農業に関する知識や経験を授業や実習で習得できるということに尽きると思います。 私も、県下の幾つかの県立農業高校と県立農業大学校を訪問したことがあり、広い敷地内での水田や畑、学校によっては酪農施設も備えた高校もあり、さすが県立農業高校と感心し、この環境で学ぶと、ある程度農業の基礎は学べるだろうと想像できました。また、県立農業大学校に至っては、県立農業高校とはまた違った雰囲気があり、学内も一回り広く充実した施設が多いようで、即戦力を養う雰囲気が学内中に漂っている感じがしました。 こうした環境で学ぶ生徒や学生は、やはり実家が農業にかかわっていて、将来実家の農業を継ぐ生徒や学生がほとんどだと先入観を持っていましたが、今回県下の県立農業高校と県立農業大学校の進路状況を詳しく調べてみますと、その結果は、まず、県立農業高校の入学者では、必ずしも実家が農家でない人が多いという実態、県立農業高校の進路状況を見てみると、就農者はわずか1.8%、農業大学校への進学が5.6%、普通大学や専門学校への進学が29.6%で、一番多いのが、農業と全く関係のない一般企業への就職が37.2%という状況であります。また、県立農業大学校の入学状況では、農業高校からの進学者の割合が66%、そのうち農家の子弟の割合が56%、非農家子弟の割合が44%となり、卒業後の進路も、平成24年度では、就農する者と農業関係に就職する者の割合が76%で、23%は農業関係外に就職しているという結果でした。 こうした状況が続くのであれば、県立農業高校から農業後継者が育たないという結果になってしまいますし、県立農業高校の使命や設立の意義まで問われかねません。また、県立農業大学校においても県立農業高校と同じような傾向が見られ、せっかく専門知識を身につけても、農業の専門知識を社会の中で貢献できない結果となってしまいます。 そこでお尋ねしますが、県立農業高校の進路で、約4割の生徒が農業とは一切関係ない分野に就職する現状をどのように捉えておられるのか。また、さきの質問でも述べましたが、今日、就農従事者が減少する中、県立農業高校を卒業する生徒が就農者になることを期待する関係者は大変多いと思います。そこで、今後の県立農業高校の就農者の育成と使命について、教育長にお尋ねします。 また、県立農業大学校にしても、卒業者の23%、約4人に1人が農業以外の分野に就職する状況にあるのですが、これは、県立農業高校とは別の次元で問題があると思います。せっかく農業の専門知識を大学校で学んでも、それを生かす職場がないのか、選ばないのか、このあたりの進路状況の分析を行うべきと思います。そして、今後の農業大学校の使命についても検証する必要があると思いますが、農業大学校のあり方について、
農林水産部長にお尋ねいたします。 〔教育長田崎龍一君登壇〕
◎教育長(田崎龍一君) 農業高校の進路についてですが、本県の農業高校では、農業や園芸、果樹等の後継者を養成する学科以外に、食品科学や環境工学等の農業関連学科があります。いずれの学科においても、各学科の特色に応じたスペシャリストの育成とともに、農業教育を通して、地域を支える人間性豊かな職業人を育成することを目指しております。 卒業生の中には、農業分野以外の企業に就職する生徒もおり、農業教育で学んだことを生かし、地域で活躍しておりますが、今後は、農業に関連の深い企業の求人開拓にもなお一層努めてまいります。 また、県立農業高校の就農者育成と使命についてですが、農業高校は、将来の地域農業を担う人材の育成と確保を大きな使命の一つとしていると考えています。このため、地域との連携を強化し、新規就農者の育成を図るとともに、将来就農可能な人材の育成にも努めています。 そのための具体的な対策としては、本県農業の担い手の確保、育成を目的に、就農教育連携支援事業に取り組んでおります。この事業では、外部人材を活用した講習会や先進農業経営者等の視察研修を行っており、昨年度までの研究指定校であった阿蘇中央高校では、イチゴの品種登録や全国農業高校お米甲子園金賞受賞、南稜高校では、耕作放棄地を活用した牛の放牧と耕作地の拡大など地域の農業に貢献し、地域社会から評価されるプロジェクトも生まれております。今年度は、これらの取り組みを県下の農業高校13校に広げ、地域性を生かした就農教育プログラムにより、就農者育成を図ることとしております。 今後とも、県立農業高校で学ぶ生徒が、高校卒業後、本県の農業を支える有為な人材として、地域社会の中で生き生きと活動できるように農業教育を推進してまいります。 〔
農林水産部長梅本茂君登壇〕
◎
農林水産部長(梅本茂君) 熊本県立農業大学校は、昭和53年の開校以来、昨年度までに2,920人の卒業生を輩出し、その8割が農業関連の職業に従事しています。さらに、このうちの9割の1,870人が就農され、県内各地で本県農業をリードして活躍いただいています。 農業大学校の就農者数は、ここ数年、北海道、鹿児島県と並んで、全国でもトップクラスであり、こうした実績を踏まえると、農業大学校の使命は果たしてきたと言えると思います。 一方で、平成24年度卒業生の中で、民間企業7名、福祉施設3名、公務員3名など、18名が農業関連以外の他産業に就職しています。これらの中には、農業の基礎知識を生かして他の分野に挑戦する者もいますが、独立就農や農地、営農資金の確保に不安があって、農業関連以外の職業を選択されるケースもあります。 今後の農業大学校のあり方としては、多様な学生一人一人にこれまで以上にきめ細かに対応して、将来の農業の担い手に導いていく必要があると考えます。 このため、農業高校などとも連携しながら、オープンキャンパスなどの機会に、農業の魅力ややりがい、全寮制のもと仲間と2年間寝食をともにするという特徴、希望者には青年就農給付金によって生活費の支援を受けられるなどの情報を発信し、強い意志で農業を目指す学生の確保に努めます。 また、新たな技術や加工などの講座についても充実を図るとともに、進路相談に当たっては、農家で働きながら独立を目指したり、農業経営塾など、技術や経営力を高めるさまざまな機会が用意されていることを説明し、希望を持って就農できるように導いてまいります。 このような取り組みを通じて、農業大学校の使命をこれからもしっかりと果たしてまいります。 〔城下広作君登壇〕
◆(城下広作君) 県下で高校再編が進む中で、農業高校の生徒が、いわゆる一般企業にどんどん割合が多くなるとすれば、農業高校として必要なのかという論議もまたその中でしなきゃいけなくなる、県下で13校今あって、農業という大事な分野で育成していこうというもともと本来の県立農業高校、そしてそのまた上である農業大学校という部分、この役割をしっかり位置づけておかないと、結果的には、もっと学校の今度は存在ということまで問われかねませんので、しっかりと農業後継者を育てる学校として大事にしていただきたいという考えでおりますので――どちらというと、こっち向かにゃいかぬだったですね。そういうふうな形の分で、しっかり教育長、よろしくお願いをしたいというふうに思います。 では、4番目でございます。 阿蘇中岳火口の見物の推進について質問させていただきます。 先月は、阿蘇に関して2つの朗報が飛び込んできました。1つは、午前中話題になった阿蘇地域の世界農業遺産の登録であります。もう一つが、阿蘇中岳火口東登山道が、今月1日、3年ぶりに規制解除されたというニュースであります。 いずれにしましても、この2つの話題は、今後の阿蘇振興、ひいては熊本県の観光をさらに飛躍させる起爆剤になると思いますし、そうしなければならないと思っています。それには当然県の支援も大きくかかわってきます。 今、阿蘇地域は、田植えもほぼ終わり、豊かな水田には淡い緑色が映え、山々は、野焼き後の褐色から、まばゆいくらいの新緑に変わり、我々の目と心を和ませてくれます。これが阿蘇の魅力であり、観光客を引きつける大事な要素でもあります。残念なのは、昨年の大雨で、ところどころ山肌をむしばまれ、無残な姿になったことであります。あとは、自然の力を信じて、緑の山に蘇生することを祈るばかりであります。ただ、心配することは、仕方なく災害復旧で山肌がコンクリート色に塗りかえられることが大変残念で、技術者の英知によって、でき得る限り自然と同化した復旧に努めてもらいたいと思います。 また、もう1つ阿蘇に欠かせない観光の見せ場として中岳火口があります。今ちまたでは空前の登山ブーム、その火つけ役として話題になっているのが若い女性の登山者、山ガールの言葉はよく耳にすると思います。また、登山といえば、やはり世界を代表する三浦雄一郎さんです。先月末、80歳でエベレスト登頂の偉業は、世界中の人々に勇気と希望を与えてくれました。心から敬意を表したいと思います。 今回の東登山道の規制解除は、エベレスト登頂とまではいきませんが、仙酔峡から中岳火口東展望所を経由して、中岳、高岳を結ぶ主要な登山道で、登山者には人気の高いコースと聞いています。これを機に、阿蘇の魅力がさらに拡大することを期待します。 ところで、本格的な登山とは無縁でも、やはり阿蘇の観光といえば中岳火口見物、初めての阿蘇観光客はもちろんのこと、リピーターでも、地の底から湧く原始の鼓動と白煙、火口が宝石箱に見えるエメラルドグリーンの湯だまり、観光客は皆立ち寄ると思っていました。しかし、火口を訪れる観光客の実態は右肩下がりで、30~40年前と比べますと激減状態で、山頂の店舗は、当時の勢いをなくしています。 4月18日、私は、30年ぶりに、この質問の調査のために、火口見物をしました。山頂に着いた瞬間、火口の地層の模様に感動、映画のジュラシック・パークと重なり、火口の底をのぞくと、エメラルドグリーンの湯だまり、温泉としては最高だろうと余計なことを想像しましたが、ただただ感動の連続でした。小学校の修学旅行でも見学しましたが、当時の記憶とは全く違い、その時々に新たな感動を与えくれるところだと改めて認識しました。 このように、見れば誰もが満足するはずの阿蘇火口見物が、意外なことに、阿蘇観光のツアーに必ずしも入っていないようです。済みません、机のほうにカタログを持ってきたんですけれども、ちょっと忘れてしまいました。そういうカタログにも書いてないということを言いたかったわけです。意外なことに、観光ツアーに入っていません。大手旅行会社が販売する旅行商品の中には、火口見物がなくなったり、オプションになっているものも見られます。これでは、熊本が誇る阿蘇観光、火口を見て感動してもらうことが一番の売りだと思っていましたが、現実は違っており、残念でたまりません。私は、熊本の阿蘇観光で火口見物がないのは画竜点睛を欠くとしか思えません。 では、なぜ火口見物が避けられるようになったのか調べてみましたら、いろんな原因が考えられるのですが、重立った意見として、限られた観光時間の中で火口見物は時間がかかる、温泉や食事に重きを置いている、そして、火口見物を希望してもガス規制があり、当日見られるかわからない等の理由が挙げられました。 ここで気になるのがガス規制の理由なのですが、確かに、この6年間の火口見物の実績を見てみますと、約3割の方が、ガス規制を初め、濃霧、大雪閉鎖の規制等で火口見物ができない状況にあります。大げさかもしれませんが、一生に1回阿蘇火口見物に来て、たまたまガス規制に遭遇したことで、せっかくの火口見物を逃す人が多いということです。3人に1人ということで。外国から来た観光客の中には、ガス規制が解除されるまで2~3時間周辺をうろうろしながら待たれる方も多いと聞きました。この阿蘇火口、一般の観光客が活火山の火口を間近で見られるのは世界でも非常に珍しいとされており、その価値を外国の方はよく知っており、意外と知らないのが日本人で、身近過ぎてその価値に気づいていないのかもしれません。 県は、熊本の観光を語るとき、必ず阿蘇をPRされます。火口見学をなるべく避けようとしている現状を踏まえ、県ではどのようなイメージで阿蘇観光をPRされているのでしょうか、火口見物への誘客に対する思いを含め、知事にお尋ねいたします。 また、せっかく火口見物を希望しても、約3割の方がガス規制等で見られない状況にありますが、ガス規制は、ぜんそくや心臓疾患等の方を対象として厳しめに設けられているとも聞いています。過去に火口見物で亡くなられた方も、ぜんそくや心臓病の疾患があった方だったそうです。とうとい命を守るため規制を厳しくすることは当然理解しますが、持病のある方とそうでない方の対応を区別する規制のかけ方を検討する余地もあるのではないかとの声も上がっていると聞きますが、このような意見に対して知事はどのように考えておられるか、お尋ねをいたします。 〔
知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(
蒲島郁夫君) まず、阿蘇観光のPRと火口見物への誘客についてお答えします。 私は、世界最大級のカルデラを擁し、約5万人もの人々が火山と共生する阿蘇は、世界に誇るべき日本の宝であると考えております。 そこで、阿蘇を世界中に広く知っていただくために、地域の皆さんとともに、世界文化遺産や世界ジオパーク、世界農業遺産の登録に向けた取り組みを進めてまいりました。その結果、先日、世界農業遺産の登録を果たしたところです。 阿蘇は、1,000年以上に及ぶ悠久の歴史の中で、人の手で守り続けてきた草原と、世界的にも珍しい火口見物ができる中岳火口の大きく2つが阿蘇の魅力であると考えております。 御質問にある中岳火口は、地球誕生の息吹を実感できる世界的にも貴重な資源であるというイメージを、国内だけでなく世界に向けてPRしてまいりました。 私は、国内外を問わず、熊本はもとより、九州においでになる観光客には、中岳火口にぜひ立ち寄っていただきたいと考えております。 引き続き、中岳火口を日本の宝として国内外にPRし、熊本・阿蘇への誘客に努めてまいります。 次に、火口ガス規制についてお答えします。 阿蘇は、本県の貴重な観光資源であると同時に、現在も活動を続けている活火山というもう一つの顔を持っています。 過去には、死亡事故も発生したことから、ガスの濃度が高い場合には、地元市町村、国、県などで構成する阿蘇火山防災会議協議会において、火口周辺の立入規制が実施されております。 現在のガス規制の基準や方法については、協議会と環境省が共同で設置した阿蘇火山ガス安全対策専門委員会の専門的知見を踏まえて策定されています。 火口見物に来られる方々は、子供から高齢者まで、また、さまざまな持病をお持ちの方もいらっしゃいます。見物に訪れた方がみずからの持病を御存じない場合も考えられ、持病の有無で対応を区別する方法は、課題も多く、実施困難と考えます。 観光客に気軽に、かつ今後も継続的に火口見学をしていただくためには、安全は大きな要素と考えており、現在のガス規制はやむを得ないものと思います。 私も、国内外からより多くの観光客を阿蘇・中岳火口にお招きし、エメラルドグリーンの湯だまりをごらんいただきたいという思いは同じであります。 今後も、火口周辺のガス規制を適切に運用し、観光客の皆様が安全に火口見学を楽しむことができる阿蘇を維持、PRしてまいります。 〔城下広作君登壇〕
◆(城下広作君) ありがとうございました。 (資料を示す)このようなのが、大体阿蘇をPRするようなパンフというか、旅行会社のものです。大体これもやっぱり火口はもう入らないと、絵にも出さないという、せいぜい出しても草千里と、あと、温泉と食事という部分で、観光で阿蘇の火口が大事だというのは、ほとんどPRは前面的に出すことはないと。だから、行くことが大事だというふうに伝わらないというのが、結果的にはこういうのにも出てくるんじゃないかなと。やっぱり阿蘇といえば火口を見せたいという形の分には、こちらも仕掛けるというのは大事じゃないかなという感じがします。先ほど知事の決意もありましたので、ぜひ期待をしたいというふうに思います。 最後の質問でございます。 せっかく私も珍しくきょうはパネルを持ってきましたので、これを見せないとつくった意味がございませんので、こういう感じで……(パネルを示す)この写真を見てもらって話をちょっとだけ聞いていただきます。 これはグリストラップで、いわゆる旅館とか飲食業から――油物が多いから、一旦こういう油をためる槽があって、そして下水道があるところはそのまま下水道に流れる、下水道がない地域は、浄化槽に一旦流して、そこでまたきれいにして川に流すという分なんですけれども、この管理の問題で、いわゆるこのたまった油を一旦とることによって浄化槽の負担はなくなる、下水道に流れるのも負担がなくなる、管も詰まらないというふうになるんですけれども、現状はどうかといいますと、これをいわゆる回収する収集運搬業者は――現実にその施設に行きますと、1回でとる量が少ないものですから、結果的に料金は高くいただけない。ところが、実際にそれは産業廃棄物になるから、例えば天草の業者は一旦――1カ所から集めた量では到底――例えば菊池のほうにある民間の施設に持っていくとお金がかかるわけで、ですから、ある意味では、効率よく安く排出者からいただくためには、一旦回収したものを仮置きする場所があれば非常にありがたい、ある程度たまった段階で大量に持っていくとなれば、コストも合うということになるんですけれども、現実は、その仮置き場を県としてはなかなか認めてこなかったという歴史がございます。 ですから、業者の皆さんはどうするかといいますと、少ない量で仕方なしに高いコストをかけて搬出、いわゆる産業廃棄物場に持っていくと。こういう状況であれば、結果的に事業者からそのことを言っても理解しないから、事業者が仮に絶対やらなきゃだめですよと言った場合には、この方たちは、結局委託をしない、頼まないという形で、そのままある意味では流してしまう。また、浄化槽によっては、これをそのまま、逆に撹拌して、そのまま流すこともできるもんですから、そういうふうな形で処理をされるということもあっております。 そこで、私は、県の今まではなかなか一時仮置きを認めなかったことを、現実に対応して、しっかり仮置きをする対応を、逆に言えば、業者にしっかりと説明をして、こういう基準だったら大丈夫ですよというような明確な指針を出すべきではないかというふうに思います。その考えについて、県の考え方を伺いたいというふうに思います。 また、これは、一般廃棄物のいわゆるし尿とか浄化槽の汚泥も一緒でございます。例えば、くみ取りが山奥の遠いところにあったと。そうすると、くみ取りをとった部分のとが、結果的には距離が遠いから、一回一回その場所に持っていくことができないけれども、仮置きしておけばできるという状況もありますので、仮置きの分も、し尿のほうも一緒に考えていただきたいと思います。 それと、最後ですけれども、下水道管、これも、こういう状況で流されると、結構下水道のところでも、ある意味、詰まったりとかするようなことがございます。そういう状況を詳しく調べるというようなことも大事なんですけれども、いわゆる下水道管の長寿命化計画、この辺もしっかり県としては取り組んでいるのか、この辺の状況をお尋ねしたいと思います。 以上、2点でございます。 〔
環境生活部長谷﨑淳一君登壇〕
◎
環境生活部長(谷﨑淳一君) 廃油の一時保管の取り扱い、いわゆる産業廃棄物の積みかえ保管は、収集運搬の効率が悪い場合等、収集運搬業の業務の遂行上、積みかえ保管を行わざるを得ないと判断できる場合には、施設の構造や維持管理の基準に照らして、許可できることとしております。ただ、積みかえ保管は、廃棄物の長期間放置につながり、悪臭発生等の原因にもなることから、極力行わないよう事業者に対して協力を求めてきたところでございます。 しかしながら、御指摘のとおり、事業者及び保健所への許可基準等の周知が不足していたために誤解を与えてしまっていると感じております。今後、許可基準をよりわかりやすい内容に改め、事業者等への説明会を開催して、しっかりとその周知を図ってまいります。 また、市町村が所管しております一般廃棄物のし尿及び浄化槽の汚泥の積みかえ保管につきましても、市町村から相談があった場合は、同様に、適切に助言を行ってまいります。
○副議長(中村博生君) 土木部長船原幸信君。――残り時間が少なくなりましたので、答弁を簡潔にお願いいたします。 〔土木部長船原幸信君登壇〕
◎土木部長(船原幸信君) 油水分離槽は、浄化槽などの機能維持のために必要な施設であり、浄化槽取扱要項等において設置を規定し、普及に努めております。 下水道の長寿命化計画につきましては、5市町で策定済みであります。他の市町村においても順次調査に着手されております。 〔城下広作君登壇〕
◆(城下広作君) 逆に時間がないから急いでしまったら余ってしまいました。もう少しゆっくりしゃべればよかったなというふうに思いましたけれども、言いたいことは、現実に沿った形で一時保管ということを、とにかく認めてこなかったという現実、しかし、回収する側としては、非常にそれが現実にそぐわないということですから、明確に絶対だめだということはないわけですから、先ほど答弁があったように、どういう基準でやればオーケーです、どういう基準であれば罰則になりますということを明確にやっていただきたいというふうに思います。 また、下水道の長寿命化計画でございますけれども、やはりこういうものが、とにかく機械でまぜられて、そのまま下水道に流されてしまえば、人間の血管と一緒で動脈硬化になるというのは間違いないわけでございまして、それはお金を、公金をかけて下水道処理しても、地下に入った管が詰まることによって、陥没とか、いろんな形で災害的にまた引き起こす原因になるということで、これはしっかりと長寿命化計画、そして調査をやる、調査をやっているのは、まだ5市町村しかないということでございますので、これは、まだまだしっかりと、やっぱりそういうふうな形でやっていくというふうな形でございます。 大体予定した質問で、ちょうど残り時間1分となりましたので、質問を終わりたいと思います。 本当に御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(中村博生君) 以上で本日の
一般質問は終了いたしました。 明20日は、午前10時から会議を開きます。 日程は、議席に配付の議事日程第3号のとおりといたします。 本日は、これをもって散会いたします。 午後2時31分散会...