昭和58年 9月 定例会┌─────────────────┐│ 第 三 号(九月十六日) │└─────────────────┘ 昭 和 五十八年 熊本県議会九月
定例会会議録 第三号──────────────────────────昭和五十八年九月十六日(金曜日) ──────────────────── 議事日程 第三号 昭和五十八年九月十六日(金曜日)午前十時開議 第一 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について) 第二 休会の
件 ――――――――――――――――――――本日の会議に付した事件 日程第一 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について) 日程第二 休会の件 ――
―――――○―――――――出席議員(五十四名) 前 畑 淳 治 君 荒 木 詔 之 君 島 田 幸 弘 君 島 津 勇 典 君 大 西 靖 一 君 倉 重 剛 君 山 本 靖 君 野 田 将 晴 君 中 島 絹 子 君 中 島 隆 利 君 小早川 宗一郎 君 三 浦 哲 君 藤 川 俊 夫 君 花 籠 幸 一 君 舟 津 正 光 君 阿曽田 清 君 橋 本 太 郎 君 三 角 保 之 君 岩 永 米 人 君 堀 内 常 人 君 永 田 健 三 君 山 本 秀 久 君 深 水 吉 彦 君 八 浪 知 行 君 杉 森 猛 夫 君 鏡 昭 二 君 高 田 昭二郎 君 古 閑 一 夫 君 大 森 豊 君 魚 住 汎 英 君 柴 田 徳 義 君 林 田 幸 治 君 広 瀬 博 美 君 馬 場 三 則 君 木 村 健 一 君 平 川 和 人 君 北 里 達之助 君 金 子 康 男 君 米 原 賢 士 君 井 上 龍 生 君 久 保 一 明 君 宮 元 玄次郎 君 甲 斐 孝 行 君 今 井 洸 君 八 木 繁 尚 君 幸 山 繁 信 君 池 田 定 行 君 小 材 学 君 岩 崎 六 郎 君 水 田 伸 三 君 今 村 来 君 小 谷 久爾夫 君 中 村 晋 君 酒 井 善 為 君欠席議員(二名) 西 岡 勝 成 君 永 田 悦 雄 君 ────────────────────説明のため出席した者 知事 細 川 護 熙 君 副知事 藤 本 伸 哉 君 出納長 山 内 新 君 総務部長 原 田 富 夫 君
企画開発部長 田 谷 廣 明 君
福祉生活部長 常 川 清 君 衛生部長 清 田 幸 雄 君 公害部長 田 嶋 喜 一 君
商工観光労働 部長 蓼 沼 朗 寿 君 農政部長 伴 正 善 君
林務水産部長 江 副 尚 幸 君 土木部長 三 原 節 郎 君 公営企業 管理者 大 塚 由 成 君
教育委員会 委員長 本 田 不二郎 君 教育長 外 村 次 郎 君 警察本部長 漆 間 英 治 君
人事委員会 事務局長 樋 口 清 一 君 監査委員 緒 方 隆 雄 君 ────────────────────
事務局職員出席者 事務局長 衛 藤 成一郎
事務局次長 竹 下 郁 朗 議事課長 小 池 敏 之
議事課長補佐 岩 井 祐二郎
調査課長補佐 兼
議事課長補佐 山 下 勝 朗 主幹 光 永 恭 子 ───────○─────── 午前十時八分 開議
○副議長(甲斐孝行君) これより本日の会議を開きます。 ――
―――――○―――――――
△日程第一 一般質問
○副議長(甲斐孝行君) 日程に従いまして日程第一、一般質問を行います。発言の通告があっておりますので、これより順次質問を許します。 なお、質問時間は一人九十分以内の質疑応答でありますので、さよう御承知願います。深水吉彦君。 〔深水吉彦君登壇〕(拍手)
◆(深水吉彦君) おはようございます。自由民主党の深水でございます。一般質問の第一陣として機会を与えていただきまして本当にありがとうございます。 私どもは、八月十八日から日中議連の一員といたしまして日中友好の旅をさせていただいたわけでございますが、その折、細川知事はどのような知事ですかという質問をいただきました。また、前沢田知事が大変な努力をしていただいたことを評価していただいておりまして、今後の新しい細川知事に大変な日中友好の期待をかけているんだということでございました。知事もまだ中国から帰ってこられたばかりで大変だったろうと思いますが、今後とも県政のために、また日中友好のためにも細川知事の御努力をお願いしたいと思います。 私の地元は、県政の悩みでもあります重要課題を抱え、県議会のたびごとに、いや
年じゅうお世話になっており、県議会も水俣病解決とその対策一本にしぼられていると言っても過言ではないと思います。今回の質問は、その意味できわめてローカル的なことばかりでございますが、お許しをいただきたいと思います。 水俣病問題につきまして、地元議員としましてまずお礼を申し上げたいと思います。知事を初め県議会の諸
先生方並びに執行部におかれましては、世界に例を見ない未曽有の悲惨な出来事であるこの水俣病問題につきまして、患者救済や
ヘドロ処理などに大変な御心労と御尽力を傾けていただいておりまして、地元住民を代表しまして厚くお礼を申し上げたいと思います。 なお、
厚生委員会や
公害対策特別委員会の先生方の特段の御尽力に心から感謝を申し上げます。去る八月二十九日には現地へ入っていただき視察をされ、関係者からなまの報告を聞かれたり労苦をねぎらっていただき、関係者に自分たちがやらねばならぬという勇気づけをしていただき喜んでもらっております。地元住民も県へすがる気持ちで期待しております。よく遠い水俣まで実情視察に来ていただいたと感謝いたしておりましたことを申し添えておきます。 県の重要課題である水俣病問題に関しましては、すでにわが党の池田先生の代表質問の中で質問が行われているところでありますが、
地元出身議員として関心の深い認定業務の促進並びに
水俣湾ヘドロ処理事業について要望をいたしたいと思います。 まず、認定業務の促進でありますが、いわゆる待たせ賃訴訟の判決を契機にして再び
認定申請者が増加していることにかんがみ、今後一段と認定業務の促進が急務であろうと思います。
申請者団体等による
検診拒否運動や検診医師の確保等困難な状況であることは十分承知しておりますが、新しい細川知事のもと今後さらに英知を結集して、今後とも認定業務の促進を図られるようお願いしたいと思います。 次に、
ヘドロ処理事業についてでありますが、この事業は、改定計画案によると完成までに総額四百三十億円という巨額の投資をし、十六年間の歳月をかけることになるわけでございます。水俣湾の環境復元を目的として実施している事業でありまして、再生水俣を目指すこの事業にかける地元の期待も大きいものがありますので、可能な限り早期にこの事業を完成しなければならないと考えております。知事もすでに、わが党の池田議員の代表質問に対して、この
ヘドロ処理事業を継続するという決意を明らかにしていただきました。心からお礼を申し上げますとともによろしくお願いを申し上げます。 しかしながら、この事業を進めていくに当たっては、倍増する事業費の原資の確保、相当多額となるチッソの負担金の着実な納付、あるいは再建計画、現在利用されている港湾施設の円滑な移転など検討すべき問題が数多くあります。また、この事業により造成される約六十万平方メートルの土地の有効利用も真剣に考えていかねばならぬことでございます。 このようなさまざまな問題がありますが、大多数の地域住民が熱望し、国や県を頼りにしておりますので、工事の安全性や地場産業の活用について引き続き十二分の配慮をしながら、事業の早期完成のため国への働きかけなど一層の努力をお願いいたします。池田先生の代表質問で的確にとらえていただき、知事も今後努力を続けるとお答えいただきましたので、私はお礼を兼ねまして要望とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 県立高校の学区制についてお尋ねを申し上げます。 わが国は、国土も狭く資源にも乏しく、人だけが唯一の財産であり、したがって人づくりが国の命運を左右する重要な施策であることは論をまたないところでございますが、明治以後わが国は急激な発展を遂げましたが、それを支えたものは教育の普及と勤勉な国民性であり、まさに国家百年の大計は教育にあると言っても過言ではないと思います。 本県は昔から文教が盛んでありました。中世においては学問が盛んで、当時「肥の国たるや文あり武あり民は礼節を知る」あるいは「東鳳凰西麒麟あり」と言われ、重賢公をたたえ、江戸時代、細川藩は時習館などの藩校を設立して人材養成に努めました。また、多くの私塾や寺小屋がたくさん建てられましたが、寺小屋の数は全国でも上位を占めるほどでありました。 戦後は大きく変化し、急速な経済社会の発展や価値観の多様化などを背景に県民の教育に対する期待や要望がますます強まってきております。これにこたえるために、知、徳、体の調和のとれた教育の推進と、郷土並びに国家社会の発展に寄与できる人材の育成を目指すことが重要な今日的課題となっております。
県教育委員会におかれましても、あすを開く人づくりを目指し、青少年の健全育成と教育条件の整備のためにこれまで鋭意諸施策を進めてこられたことに対して深く敬意を表するものであります。しかしながら、本県における学校教育の実態を見聞するとき、さらに改善、充実を図っていかなければならない面があるように考えられます。 その一つに学区制の問題があります。
公立高等学校の学区制については、現在県内を八ブロックに分けて通学区域を定め、特例として学区外からの入学者の枠を定員の一定割合で認めるという調整措置がとられておりますが、この調整措置は、学校選択を行政側で一方的に規制することなく、ある程度の弾力性を持たせようとする趣旨で行われていたものと理解しております。
県教育委員会は、特定地区への
高校進学希望者の集中がその地区を圧迫することについて配慮するとともに、地元高校の育成を図ることとして、昭和四十年度から従来二〇%だった
学区外入学者の枠を一五%とし、さらに四十六年度には一〇%、五十五年度には七%、ついに五十六年度からは五%となりました。 このように
学区外入学率を削減してこられましたが、
県教育委員会が基本方針として打ち出した地元高校の育成ということについては、果たして所期の目的が達成されているのであろうかということであります。私は、
学区外入学率を抑えたことによって逆にいろいろな矛盾や弊害をもたらし、高校教育の振興を阻害しているように思うのであります。郡部においては、熊本市内の公立高校を目標に希望を持って勉強してきた小中学生が、同日試験のため安全策として、やむなく地元にとどまるか、あるいは他県の有名私立中高校や熊本市内の私立学校へ行かざるを得ないのが実情でございます。 現在、県内の公立高校には歴然と大きな格差があり、高校入学時すでに格差がついてしまって、競争力の差と重なり、
国立大学合格者数を見れば郡市間の格差は歴然としております。保護者は、
高学歴化社会の進展に伴って、わが子には十分な勉強をさせたい、できるだけ有名高校、有名大学に入学させたいと願っております。伝統校への強い志向、とりわけ
熊本市内高校への
進学希望者は根強いものがございまして、これは熊本市内の高校においても同じことだと思います。このことが必ずしも教育的に絶対正しいかどうかはわかりませんが、たとえば子供を将来医者にさせたい、あるいは一流大学へ入学させたいという親の切なる願いや子供の希望から、中学校へ進む段階ですでに県内外の私立中学校へ多数の生徒が流出しております。また一部には、小学校の上学年になると、家族ぐるみで熊本市へ移転していく実態を無視するわけにはいきません。 このように
学区外入学の規制が本県教育にいかに大きな影饗を与えているか、その弊害を懸念する一人であります。したがって、個人の希望が十分実行できない現行の学区側は、地元校の育成、
学校間格差の是正が不十分な現状では、郡部の有能な人材の開発を阻害し、高校教育にひずみをもたらしているため、学区制の撤廃あるいは
学区外入学の枠を拡大すべきであると思いますが、教育長の見解をお聞かせいただきたいと思います。 御答弁をいただきまして再登壇させていただきます。 〔
教育長外村次郎君登壇〕
◎教育長(外村次郎君) 学区制の問題につきましてお答え申し上げます。 御承知のように、
新制高等学校の発足以来、学区の問題につきましてはいろいろ変遷がございました。基本的には、このことにつきましては、法律上は
地方教育行政の組織及び運営に関する法律――まあ長うございますので、私ども俗に
教育関係者では「地教行法」とこう呼んでおる教育関係では基本的な法律でございますが、学区制につきましては、その第五十条に「高等学校の教育の普及及びその機会均等を図るため
」「高等学校を指定した通学区域を定める。」このように規定があるわけでございます。これに基本を置きましていろんな施策を施しておるところでございますが、最近では文部省の指導もございまして――最近と申しますか昭和四十年度からでございますが、本県では、ただいまお述べになりましたとおり、県下の全日制普通科は中学区制を基本といたしまして八つのブロックに分けておるところでございます。全国的にも本県のような形が大体大勢となっておるところでございます。九州各県と比べてみますと、他の五県が小学区と中学区の併用をいたしております。本県は、それらの県に比べますと比較的に学区が広く、一
学区当たりの学校数も多い方にはなっておるわけでございます。 学区外からの入学者につきましては、御質問の中にございましたとおり、
地元高校育成や特定地区の進学難を緩和するという趣旨から、現在各校の定員の五%以内ということにいたしておるところでございます。この点につきましては、文部省の調査によりますと、全国の四十七都道府県のうち
学区外入学率を定めております県が、本県を含めまして二十二道県でございます。九州各県の状況といたしましては、大分県など四県が本県同様五%という形をとっておるところでございます。なお、鹿児島県では、これまで
学区外入学を認めておりませんでしたけれども、九州他県あるいは本県の状況等も勘案されたことと思いますが、本年度から新たに
学区外入学率を導入いたしております。この場合も、本県同様五%という数値になっておるところでございます。 御意見の中にございました
地元高校育成の件につきましては、御指摘の点、私どもとして不十分な点の改善について、さらに努力してまいらなければならないと厳しく受けとめてまいりたいと考えます。 しかしながら、一方におきまして、まあ部分的でございますが、いろいろな面で地域の中心として地元から高く評価されておる学校もございます。また、大学進学におきましても、中央の学校に決してひけをとらず現役から多くの
国公立大学合格者を出している学校もあるわけでございます。ことに、一般的なことでございますが、郡部の多くの高等学校におきまして、熊本市内の高校と比べまして、高校進学時のいわゆる学力検査の成績と、それからその子供たちが三年後大学志願ということで共通一次試験を受けておるわけでございますが、その成績を比較してみますと、顕著な傾向といたしまして、地方いわゆる郡部の高校における生徒の成績の伸びが著しいという事実もございますので、こういった点も御理解いただきたいと思っておるところでございます。しかしながら、先ほど先生御指摘のように、それらがすべての学校、すべての地域に及んでいないというところは厳しく反省してまいらなければならないと考えておるところでございます。 学区制につきましては、深水議員の御意見も十分理があることでございまして、一方の有力な御意見と受けとめておるところでございます。しかしながら、ほかにもいろんな立場からのさまざまな議論がございまして、しかも、その決め方が及ぼす影響というのは非常に大きなものがございます。私どもといたしましては特に慎重に検討してまいりたいと考えておるところでございます。現在、その重要性にかんがみ広く各方面の御意見を伺いますために、
熊本県立高等学校教育整備振興協議会という組織を設けまして種々御検討をお願いしておるところでございます。今後ともよろしくお願い申し上げます。 〔深水吉彦君登壇〕
◆(深水吉彦君) 御答弁をいただきましたが、実は熊本市のある中学校の
高校入学進路指導という本を見せていただきましたが、それには熊本市のやはり歴然たる学校格差を先生方も認めておられる。たとえば、数字は申し上げませんが、どこどこには何番まで受けてよろしい、そのようなことが書いてあります。もちろんその中には「目標順位はあくまでも目標でありまして、足切り、希望校の制限はいたしません」というのがつけ加えてありますが、そのような足切り状態の中の学校格差がある中で競争力というのは大変な違いを生じてくるんだということを私は申し上げたいわけです。地方のまだ伸びるであろう生徒を、そういう競争力のあるところに入学させることができたならもっと実力がつくんじゃなかろうか。もちろん地元の高校でも先生方は大変な努力をしていただいておりますが、そういう能力のある人を引き上げることこそ広く人材を登用するのに大変有効な施策ではないかと思います。 実は、五十六年の十二月議会で杉森先生が格調高く教育長に同じ質問をしておられます。引用させていただきますが、「もちろん県下でも、学区制の強化に対する疑問点が特に郡部の父兄の間で論じられていることもまた確かであります。私が申し上げるまでもなく、生徒の能力は千差万別であり、したがって各人の進路がそれぞれに異なっても何ら不思議ではなく、むしろ当然のことだろうと考えます。自分に合った場所で、そして自己に合った方法で自分の個性や能力を伸ばさせることが、教育の基本であり真の教育ではなかろうかと思います。その意味でも、進学を希望する子供たちの学校選択の自由が保障されるべきであると考えます」云々と非常に強く迫っておられますが、教育長の答えは、私にいま御答弁をいただいた答えとそう余り変わっておりません。もう二年も経過をいたしておるわけでございます。審議会をおつくりになったそうでございますが、お話を聞きますと、まだ
熊本北高校の問題で手いっぱいのようなことも聞いております。どうかこの学区制の問題につきましても、いち早く手をつけていただきますようお願いをいたします。 地方の不満を本当にわかっておられるのかどうか、
教育委員会には生徒あるいは父兄あるいは先生というのは大変弱い立場で、本当に不満が
教育委員会に通っているんだろうかという疑問が強くなるばかりでございます。私の地元では、県下最大の市立病院を抱えておりますが、医師確保ということで大変困っておりまして、そのネックの一つは子弟の教育問題、とりわけ医師のコースの学校が問題となっております。
小学校高学年になりますと転出をしてしまいます。住民の不満や悩みが、先ほども申しましたように直接
教育委員会には伝わらず、その前に自衛手段として親子ともども異動するか私立のコースヘ入学させているのが実情でございます。もちろん地元校へしか行けない実力の生徒もおります。しかし、入学時の足切りに差がある以上、学生の競争力に差が当然出て、地方校では実力はあっても安全性を考えて、第一希望の一流校の受験を一ランク下げて受験しているのも事実でございます。 細川知事も教育立県を唱えておられますので、広く人材を求め、熊本へ帰ってきてくれることを楽しみにしての構想だと思いますが、やる気のある学生とやる気のない学生を一律化して効果が出るとは私にはどうしても考えられません。再考を強くお願いし、近い時期に何らかの変化を期待して、お願いを申し上げておきます。なお、細川知事さんも教育問題では地方の悩みを頭の中に入れておいていただきたいと思います。 次は、水俣・
芦北地域振興計画についてお尋ねをいたします。 水俣・芦北地域は、県内でもすぐれた海岸景勝と多くの温泉が湧出し、日本有数の甘夏ミカンの産地として自然環境に恵まれているところであります。しかしながら、水俣病発生以来、当地域に住む人々は物理的、精神的にも多大な影響を受けておりまして、地域経済の低迷が目立っております。水俣病の根本的解決は、県政の最大の課題として取り組んでいただいておりますが、低迷する当地域の振興を図ることもまた重要な問題であると思います。 このようなことから、県においては水俣・
芦北地域振興計画を策定され、当地域の振興に努力されているところでありますが、本計画も着手以来五年目を迎え、現在までの実施要望額に対する達成率は四年間の総合で九八%となっております。さらに、五十八年度もほぼ計画どおりの事業が進みつつあると聞いており、着実な成果をおさめておりまして、県におかれては、本計画の実現のため、地元市町ともども鋭意努力された成果であると深く感謝しているところであります。 当初計画について見てみますと、一部事業で大幅におくれているものもございます。それにはいろいろな理由もありましょうが、計画を達成することが活力ある当地域の将来の基礎となるものであります。いよいよ本計画も総仕上げともいうべき最終段階に差しかかっておりまして非常に重要な時期を迎えております。そこで、当初計画に対する現在までの進捗状況について
企画開発部長にお尋ねをいたします。 また、本計画は、御承知のとおり水俣病により社会的、経済的に脆弱化しております当地域の
再生、浮揚を図り、明るい豊かな魅力ある町づくりを目的としておりまして、地域住民の期待も大きく早期実現を願ってやまないことばかりでございますが、昭和五十九年度各省庁の概算要求を見ますときわめて厳しいものとなっております。計画遂行上大変憂慮しているところでありますが、五十九年度の予算の確保についていかように取り組んでおられるかもお尋ねをいたします。 南九州西回り自動車道建設促進について引き続き質問をいたします。 私の出身地である水俣市は、本県の最南端に位置し、温暖な気候や不知火海に面して港湾や美しい海岸線に恵まれ、幾多の自然条件に恵まれたところであります。これらを基盤として、明治の末ごろから日本窒素肥料株式会社を初めとする企業の進出が見られ、工業の町として栄えたのであります。また一方では、文化の豊穣な町として、徳富兄弟を初めとして多数の文化人が輩出しております。このように水俣地域は、古くから本県の城南地域の産業、経済、文化の拠点として、八代市とともに着実に発展を遂げてきたところであります。 しかしながら、昭和三十年代以降の産業経済構造の変化に伴い商工業が大都市中心に展開されてきた過程で過疎化が進展し、水俣病の影響等もあり、近年地域経済は著しく低迷している状況にあります。この地域一帯の振興を図るため、水俣・
芦北地域振興計画を策定され、県、市一体となって産業基盤や生活環境の整備が進められてまいっております。最近では、人口面で昭和五十年以降若干ではありますが増加に転じ、しかも観光面でも入り込み客の増等が見られますが、この疲弊した社会経済状況を脱することはきわめて困難でありまして、水俣市民にとって真に明るく豊かで住みよい町づくりが大きな課題となっております。 私は、地域振興を図るためには、いついかなる時代におきましても、その基盤として交通体系の整備は不可欠の要件であると考えるものであります。とりわけ近年の人や物の移動の激しい時代においては、広域高速交通体系の整備が最も重要な課題であり、当該地域と都市地域、大消費地域とがいかに短時間で結ばれるかが、当地域発展の可能性を左右すると言っても過言ではないと考えております。 わが国の高速自動車道の建設状況についてでありますが、北は岩手県の安代町から、東北縦貫自動車道、東名、名神、中国縦貫自動車道を経て、南は九州縦貫道の本県八代市まですでに結ばれておりまして、日本列島をほぼ縦断する約千九百キロメートルが完成しております。 さらに、九州域内においては、九州縦貫自動車道のえびの市と宮崎市及び鹿児島市間がすでに供用されておりまして、八代―人吉間が昭和六十二年度を目途に工事が進められているところであります。また、九州横断自動車道についても、昨年十一月には長崎県多良見―大村間を供用される等鋭意工事が進められておりまして、九州域内も着実に高速自動車網が整備されております。 このような状況を踏まえて将来の広域高速交通網を展望するとき、水俣・芦北地域を初めとする南九州西岸地域が取り残されることになるわけでございまして、今後さらにこの地域一帯の地域開発がおくれてしまうこととなり憂慮にたえないところでございます。交通網の整備を図るため、当面は三号線のバイパス等の建設促進をし、また九州縦貫自動車道とのアクセス道路の整備を進めながら、長期的展望に立った場合は南九州西回り自動車道の建設がどうしても必要であろうと考えます。この高速自動車道の完成により、九州地域はもとより、中国、京阪神も含めた交流が活発となり、農林水産物の輸送、観光面、さらには企業誘致等、南九州西岸部の地域開発に大きな役割りを果たすことが期待されることとなるのであります。 ところで、現在の制度のもとで高速自動車道を建設するためには、御承知のとおり国土開発幹線自動車道建設法により法定路線として指定を受ける必要があるそうです。現在の法定路線は、昭和四十一年に七千六百キロメートルが定められ、それに基づき整備が進められており、昭和五十七年度末までにすでに三千二百三十二キロメートルが供用されているところであります。この法定路線は、その後変更されないまま二十年近く経過しておりますが、このような中で昭和五十二年に策定された三全総の中では、高規格幹線道路一万キロ構想が提唱されておりますし、また、この間における社会経済情勢の大きな変化に伴い法定路線の見直しの要望が全国各地で強まっているのであります。 このような状況を踏まえて建設省において、いわゆる一万キロメートル構想について、第九次道路整備五カ年計画期間内にその路線、整備手法等に関する調査を進め、既定の七千六百キロメートルを含む一万キロメートルの高規格幹線道路網計画が策定されることとなっております。また国土庁においても、近く第四次全国総合開発計画を策定するため、現在三全総の見直しが進められていることもあり、私どもは、この取り扱いについて深く関心を抱いておるのであります。 現在、このように法定路線の見直しの時期を迎えており、南九州西回り自動車道を法定路線として追加指定を受けるための絶好のチャンスだと考えるものでございます。 この問題につきましては、城南地区の諸先生方、先輩の木村議員、山本議員などから何回も本議会で提唱されております。また、熊本、鹿児島両県の地元市町村では、沿線三十市町村で構成する促進期成会で活発な運動が展開されております。特に、この九月には、沿線各町村一体となって法定路線指定に向けて、建設大臣及び国土庁長官へ提出する意見書を決議することとなっておりまして大変な熱の入れようでございます。また可能性を示唆されたとも聞いております。 県土の均衡ある発展を図ることは県政の重要な課題であります。県においては、この路線の重要性を認識され、80年代熊本県総合計画並びに水俣・
芦北地域振興計画にも掲げられ、その実現のため、昭和五十六年度以降政府予算要望の重点事項として、また、九州各県の知事、議長等で構成する九州開発促進協議会等においても重点事業として関係各方面への働きかけがなされていることは十分承知しておりますが、今後、先ほど申し述べましたように、法定路線の指定をめぐる環境の変化を十分踏まえられまして、さらに積極的にしかも粘り強く取り組まれるよう要望する次第でございます。 地域問題について続けてまいります。農業の振興について。 水俣・芦北地域は、気象は比較的温暖ですが、地形は山がちで平たん地が少なく、農業を営むには概して不利な条件下にあります。従来、本地域には見るべき産地がなかったのでありますが、近年農家の努力と関係機関や団体の適切な指導が実って、甘夏ミカンを中心とする柑橘の大規模な産地が形成される一方、域内の各地に、小規模ながらそれぞれ条件を生かしたお茶、野菜、花卉、養蚕、畜産などの産地が育ちつつあります。私どもの地域の農業も、いまようやく本格的発展の足がかりをつかんでいるのでありますが、その生産性は、県全体と比較してみますと、いまだにかなり低く今後さらに発展させるため解決すべき問題点が多いのであります。 果樹について。 水俣・芦北地域は、西南暖地の特性を生かし、海岸に面する温暖な地帯を中心に柑橘を主とした果樹の産地化が図られてきたところでございますが、その結果、昭和五十六年度には面積が千八百四十ヘクタール、生産量が四万五千トンにも達する一大果樹地帯となったのでありますが、中でも甘夏ミカンは、面積千百ヘクタール、生産量三万五千トンという全国一の産地となっております。これは甘夏ミカンの持つ果実特性を十分調査研究し、全国に先駆けてその産地化に取り組まれた先輩農家の力に負うところが大きく、また一体となって産地づくりに努力された水俣・芦北地域の生産農家の力でもございます。全く新しい作物を導入して短期間にこれだけの産地化に成功した例は非常に珍しいことではないでしょうか。 しかしながら、甘夏の生産量は増加の一途をたどっており、また温州ミカンから中晩柑類への転換、輸入柑橘類の増加など甘夏ミカンの販売環境は年々悪化しております。全国で約三十万トンの生産があった昭和五十四年には価格が大幅に下落したことは記憶に新しいところでございますが、本年もこれに匹敵する豊作だと聞いております。このまま今後とも推移すると生産過剰は必至で、ようやく甘夏ミカンで経営安定を図ろうとする生産農家にとっては全くゆゆしい問題となっております。今後の甘夏ミカンの産地対策についてどのように考えておられるのか、お伺いをいたします。 お茶の問題についてお尋ねをいたします。 お茶の振興対策についてでありますが、全国的なお茶の需給動向は、昭和五十一年以降、栽培面積は横ばいで需給はほぼ均衡し、価格も比較的堅調に推移していることは御案内のとおりでございます。本県の茶園面積は二千二百ヘクタールで全国第五位でございますが、わが水俣・芦北地域における茶園面積は百二十八ヘクタールで本県の六%でございまして、主な産地は私の出身地水俣でございます。 本県のお茶の生産が本格化したのは昭和四十五年ごろからだと聞いております。特に全国的に高い評価を得るに至ったのは、昭和五十六年に本県で開催された全国茶品評会で多数の上位等級の入賞を獲得した以降であり、その後も毎年高い入賞率を維持しております。当地域でも、この全国品評会で五十六年に一等一点、三等三点を、次いで五十七年には三等一点が入賞するなど県全体の一四%を占め、これを契機に生産者の栽培意欲も向上し、また昨年は水俣市農協におきまして茶の共販一億円突破記念大会が行われました。この上昇ムードに乗って、より堅実な安定した茶園経営を誘導することが今後の重要な課題であると考えます。 したがって、当地域の問題点であります晩霜による品質の低下並びに火山灰による地力の低さ等から上質茶の生産が阻まれておりますので、これに対して緊急な対策を講ずる必要があります。また水俣のお茶は、鹿児島に次いで早期出荷ができる県下唯一の早場地帯であります。これらの特徴を生かすことも重要な課題であると考えますが、産地の活性化を図るため、生産組織の育成強化はもとより重要と考えておりますが、これらに対する御所見を農政部長にお尋ねいたします。 続きまして、農業生産基盤の整備促進について。 当地域は、農業生産に適した温暖な気象条件に恵まれておりますけれども、甘夏ミカンの生産を初め、米、野菜、花、茶、養蚕、畜産などを組み合わせた複合経営を行ってきている小規模農家が多くあります。海岸及び中小河川沿いに点在する水田と、その背後の傾斜地に広がる樹園地を生産基盤としているため、生産性の低い農業経営でございます。 現在県では、広域農道整備事業を初めとする県営農道整備事業、団体営土地改良事業、第三期農業構造改善事業などの農業基盤整備事業の促進に努めておられますが、近年における農産物自由化の外圧、需給の不均衡に伴うミカン価格の低迷、生産資材の高騰、さらには水田利用再編第二期対策に引き続き来年から実施される第三期対策などの厳しい農業情勢の中で、産地間競争に打ちかつ農業構造の確立を図る必要がございます。 このような状況の中にあって、当地域は中山間地帯という厳しい土地条件のために、たとえば水田の圃場整備状況は、現在までの県平均の四二%に対しまして芦北地域は一三%、水俣市にありましては一%と大きく下回っております。農業経営の安定的向上を図るには土地基盤整備が必要不可欠でありますが、県当局の水俣・芦北地域における整備促進についての基本姿勢をお尋ねいたします。 以上の諸点について各部長の御答弁をお願いいたします。 〔
企画開発部長田谷廣明君登壇〕
◎
企画開発部長(田谷廣明君) お答えいたします。 深水先生の御質問の第一点は、水俣・
芦北地域振興計画の現在までの進捗状況についてでございましたが、この振興計画は、昭和五十四年から六十年度までの七カ年間に総額千三百九十五億五千万円の事業を実施することといたしておりまして、本年度で五年目を迎えております。 これまでの当初計画に対します達成率は、五十四年度が七三%、五十五年度六二%、五十六年度八〇%、五十七年度七一%というのが実績でございまして、四年間の平均達成率は七二%程度となっております。と申しますのは、本振興計画は五十四年の時点で、五十四年度から六十年度までの七カ年間を見通してつくりましたものでございますが、その後の事情の変化でございますとかあるいは事業の実施段階におきまして、国や地方の財政状況あるいは用地買収の困難等の事情から、事業の実施に当たりまして変更が生じましたのが実態でございます。事業の主な内容としましては、水俣港の公害防止事業及び日奈久バイパス等がございます。 なお、当計画の運用に当たりましては、実施計画の段階におきまして、社会情勢の変化による地域の実情や要望を取り入れるため、各市町及び関係機関と十分協議を行いまして取りまとめ推進を図ってきたところでございます。 先ほど申し上げましたように、当初計画に対します達成率は平均七二%程度と非常に低い率となっておりますが、実施計画の段階での毎年の実施要望額に対する達成率を見ますと、五十四年度から五十七年度の実績で九八%となっておりまして、幾つかの事業を除きましては全体的にはおおむね地元の御要望を満たしているものと考えております。 なお、本計画に掲げられております事業は、いずれも当地域の振興にとって重要な事業でございまして、速やかに実施されなければならないものと考えておるところでございますので、地元の関係者及び県議会の御協力、御支援を得ながら計画の実現に向けて県といたしましても今後最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。 それから御質問の第二点は、本振興計画の五十九年度事業予算確保についての取り組み方についてでございましたが、水俣・
芦北地域振興計画の昭和五十九年度予算の確保につきましては、各省庁の概算要求のスケジュールに歩調を合わせまして、本年五月から地元市町と精力的に協議を重ねてまいりまして、国に対する概算要求書を作成してございます。その主な内容としましては、交通ネットワークの整備三十億三千八百万円、国土保全と水資源の確保十二億七千二百万円、保健医療体制及び生活環境の整備八十七億三千三百万円、教育文化施設の整備十九億七千七百万円、農林漁業及び観光の振興等二十二億八千八百万円となっておりまして、その事業費の総額は百七十三億八百万円で前年度と比較しまして二〇%の伸びとなっております。 県といたしましては、この要求内容をもとに、八月上旬地元の市町長及び市町議会の議長さんとともに、国土庁を初め関係各省庁に対しまして各種事業の完全採択を陳情いたしますとともに、県選出の国会議員の方々にも御協力を要請したところでございます。 さらに、県の昭和五十九年度政府予算等に関する要望書の中でも、主要事業としての位置づけを行いまして重ねて要望いたしているところでございます、現在各省庁におきましては、御承知のように概算要求書を取りまとめられて大蔵省と折衝に入ったところでございますが、もうその内容は新聞等で報ぜられておりますようにきわめて厳しいものとなっておりまして、本計画の関連予算につきましても必要な予算の確保が容易ならざる事態も懸念されますので、先般といいますか昭和五十三年六月の「水俣病対策について」の閣議了解の趣旨にかんがみまして、事業の完全採択に向けて県といたしましても今後一層の努力を重ねていく所存でございます。 以上でございます。 〔農政部長伴正善君登壇〕
◎農政部長(伴正善君) 水俣・芦北地域の農業振興についてお尋ねでございますので、順次お答えいたします。 第一点といたしまして、甘夏ミカンにつきましては、御指摘のように全国的な量産化の進展と競合果実の増加等で経営環境が年々悪化している状況下にありますが、県といたしましては、このような状況を踏まえまして、今後とも甘夏ミカンの主産地としての地位を維持し発展させるため次のようなことについて産地対策を講じたい所存でございます。 第一といたしまして、適地適作の原則に沿った甘夏ミカン産地の地帯区分を明確にいたしまして、適地におきます高品質果実の生産を図るようにするため、甘夏本来の品質が発揮できる産地に園地を集約いたしまして、不適地の甘夏ミカンにつきましては、より特徴の出せる他の作物等への転換を図るようにすること。 第二といたしまして、不良系統園につきましては、新しく発見された系統で品質のすぐれた商品価値の高いものへの更新を推進すること。 第三といたしましては、栽培管理の徹底指導でございます。御承知のように、甘夏ミカンは同じ立地条件下でありましても、栽培技術の良否によりましては、その生産性に大きな格差を生じるものであります。したがいまして、生産農家の技術水準の高位平準化について今後とも一層徹底した指導をしていきたいと思っております。 第四といたしましては、土地基盤の整備による省力化の推進と低温貯蔵庫の整備等を計画的に進めてまいります。 これらのことを総合的に指導する拠点といたしまして、五十八年度から三カ年にわたりまして、田浦町を対象に約二億七千万円の事業費で果樹高度モデル団地設置事業を実施しておりまして、今後産地の再編成と活力ある甘夏産地の育成を図ってまいる所存でございます。 第二点目といたしまして、茶の振興について申し上げます。 水俣地方におきます茶は普通、せん茶を中心として生産が行われまして農協共販の主力産地となっております。近年品質の向上が目覚ましく、地域特産物として農家経営上きわめて重要な地位を占めるに至っています。また、当地域におきます十アール当たり生葉の収穫量は千八十四キログラムで、県の平均五百七十四キログラムに対し抜群に高い生産量となっておりまして、上質茶生産のための基本をなしております。 県といたしましては、これらの実情を踏まえまして、土づくりを初めとして堆厩肥の増量投下を図り、施設の拡充など十分配慮しますとともに、早期出荷と品質向上の阻害要因となっております晩霜害対策につきまして、防霜ファンの設置事業を五十七年度は石飛地区十一ヘクタールに実施し、五十八年度は薄原地区十八ヘクタールを計画し、推進しているところでございます。 次に、生産組織の育成対策についてでございますが、従来、共同製茶工場を中心といたしまして石飛地区に一集団、薄原地区に一集団の生産組織がありましたが、今回新たに防霜ファンの維持管理を中心といたしました組織化がなされたところでございます。また、後継者の育成を図るため、県茶業青年団水俣支部を昨年結成いたしまして、活発な活動を展開しているところでございます。水俣茶の品質向上対策を初め地域茶業の活性化を図るための重要な組織でありますので、今後とも活動の手助けをしてまいる所存でございます。 なお、水俣茶は、御承知のとおり県下有数の早場地帯として、収益性も高く安定した茶業経営を維持しております。ちなみに、県経済連の販売実績によりますと、五十八年度五月五日までの早期出荷は、水俣茶の全出荷量の三二%が出荷されまして、価格の最高はキログラム当たり八千円、また平均で三千二百七十一円となっておりまして、県下の一番茶の平均価格が二千二百五十円でございますので六〇%高となっております。五十八年度防霜ファン施設設置が実現いたしますれば、さらに前進出荷が進みまして生産性の向上が期待されるところであります。 このように当地域の茶業は立地的に優位性を持っておりまして、今後予想される産地間競争に対しましても、その強みを発揮できるものと思われます。県としては、今後水俣茶が県下唯一の特色ある早場産地として、産地銘柄が確立されるよう十分配慮して対処してまいる所存であります。 次に第三点目といたしまして、土地基盤の整備についてでございます。 水俣・芦北地域の土地基盤につきましては、当地域の大部分を占めます中山間地帯を中心に広域営農団地整備計画を策定し、その基幹事業として芦北地区広域農道整備事業を五十五年度に着手し、その他団体営事業として農道整備事業、圃場整備事業、農村総合整備モデル事業、ため池等整備事業等が実施されているところでございますが、県平均から見ますと、地形的条件の制約からいたしまして確かに他地域よりおくれていることは事実でございます。今後は、継続中の各種事業の早期完成を図りますとともに、特に五十七年災害の経験にかんがみまして、急傾斜地帯であります樹園地の農地保全事業を含めた新規事業の掘り起こしに努めてまいります。また、国の制度に乗らない小規模な団地につきましては、単県土地改良事業で対応する所存でございます。 なお、当地域を含む中山間地帯の基盤整備促進のため、団体営圃場整備事業につきましては、今年度から県費補助率を五%かさ上げして受益者負担の軽減を図ったところでございます。しかしながら、何と申しましても基盤整備事業は、関係地元農家の意欲と関係市町村、土地改良区の前向きの姿勢があって初めて計画実施されるものでございますので、県は、今後なお一層地元農家の啓蒙のため、関係市町村、土地改良区を強力に指導し、将来の事業促進を図ってまいります。 〔深水吉彦君登壇〕
◆(深水吉彦君) 御答弁をいただきましてありがとうございました。 振興計画につきましては、当初計画の道路網の整備が取り残されておるという状態でございます。どうか今後ともよろしくお願いをいたします。 農政の件では、基盤整備等の直接の推進役は市や農協でございますが、どうか不言実行型の伴部長に地元は期待しておりますので、小規模基盤整備についてもお力添えをお願いしたいと思います。 水俣・
芦北地域振興計画の今後の対応について知事にお尋ねをいたします。 水俣・芦北地域振興について関係各部長の答弁を聞かせていただきましたが、県が当地域の振興に並み並みならぬ御努力を払っておられることについて重ねて感謝を申し上げます。 水俣・
芦北地域振興計画に関する質問の総括といたしまして、昭和五十四年度から推進してこられた水俣・
芦北地域振興計画の成果については評価できますものの、当地域振興の主要事業である基幹道路や公害防止事業につきましては諸般の事情からおくれていることは否めません。今後とも、これが推進に積極的にお取り組みいただきますことを要望いたしますとともに、昭和六十年度で期限が切れます水俣・
芦北地域振興計画の昭和六十一年度以降の計画につきましては、どのように対処されるおつもりなのか知事の御所見をお伺いいたします。 〔知事細川護熙君登壇〕
◎知事(細川護熙君) 水俣・
芦北地域振興計画の今後の対応についてのお尋ねでございますが、振興計画につきましては、五十三年六月の閣議了解事項の一環として、水俣病により社会的、経済的にも脆弱化している当地域の現状を踏まえて、必要な施策を重点的に実施することによって、新しい活力のある社会への再生を目的として計画を策定し、推進をしてきたところでございます。 現在まで各種の事業を実施して、それなりの成果をおさめてきているわけでございますが、なお水俣病による重圧は解消されませんで、当地域の活性化を見るまでには至っていないのが現状でございます。 水俣・
芦北地域振興計画は昭和六十年度までとなっておるわけでございますが、一部の事業につきましては当初計画より大幅におくれているものもございますし、これらを含めまして今後の計画につきましては、地元の要望、実情等を取り入れて、国に対して引き続き措置を講じていただくように要望してまいりたいと思っております。 なお、先ほど御要望がございました南九州西回り自動車道の建設につきましても、水俣・芦北地域の地域開発と経済浮揚のためきわめて重要なものであると認識をいたしておりますし、鹿児島県側、それから沿線市町村とも一体となって、また県議会各位の御協力もいただきながら、国なり関係機関に粘り強く要望をいたしてまいりたいと思っております。 〔深水吉彦君登壇〕
◆(深水吉彦君) 粘り強く今後とも努力するという知事の御答弁をいただきましてありがとうございました。 次の質問は、道路網の整備についてでございますが、時間の関係で次へ回させていただきまして、環境大学誘致構想についてお尋ねをいたします。 去る九月六日、続いて十日と各新聞は、国際環境大学構想に触れ、紙面を飾った感があり、地元芦北・水俣地区では馬場代議士構想への反響が大きく、いまにもすぐ政府の対応が始まるようになるのではないかと思うほどの期待感が沸き始めていろいろと取りざたされております。 世界的水俣病発生以来もろもろの施策を提案し、あるいはお願いをする中で、早くから園田代議士、三木代議士など歴代の環境庁長官が、水俣病を一日も早く解決しなければと政府を動かし、また地元熊本県の衆参両院の先生方が党派を超えて活動をしてこられ、その中で患者救済や原因物質除去などに御苦労をかけてまいりましたが、芦北・水俣地域が疲弊していく中で何とか立ち直りたいとする住民の願いを込めて、国や県に地域の振興策をも含めて国の諸施策をお願いすることが先決であるとして、最初にできたのが水俣病研究センターであります。引き続き、もっと地域を活力あるものに、あるいは貴重な体験を生かした国立の何かを誘致していただきたいという願いは、早くから地元を動かし、水俣市議会は幾度となく大学誘致あるいは研究陣の拡充、また資料の収集など集大成の施策、施設をと陳情してまいりました。それも国の力をかりた国立でなければというのが地元の声の集約でありました。 幾度となくいろいろの方々の、これはどうだろう、あれはどうだろうという発想、指導の中に、環境大学や博物館構想もありましたが、今回の国際環境大学構想は各方面のスタッフを動員しての構想であり、特に馬場代議士は「暗いイメージを変え水俣・芦北地域に明るい夢をつくり出すため練ってきたものである」と談話の中で述べておられ、地元住民の願いと公害問題解決への国の対応を積極的なものとする展望をつかむ糸口にし、県や地元住民が熱意で燃えてほしいし、将来具体化してほしいと言っておられます。地元としては、国立でありまた公害の原点に設立するこの構想に、本当に夢を成就させたい気持ちでいっぱいでございます。 細川知事は、就任早々から水俣病対策に大変御苦労をされ心痛されており、全くお世話になりますの一言でございますが、水俣病諸問題の解決は一時にして成るものとは思いませんが、国際環境大学構想も含めて夢と希望の持てる施策を国に具申される必要があると思いますが、いかがでしょうか。知事の御答弁をお願いいたします。 〔知事細川護熙君登壇〕
◎知事(細川護熙君) 環境大学誘致構想についてのお尋ねでございますが、水俣・芦北地域の振興のためには、既定の振興計画に沿って着実に事業を進めていくということももとより大切なことでございますが、この地域の歴史的な背景というものを踏まえた上で、従来の発想のからを破る新しい施策につきましても十分に吟味をする必要があろうと考えております。たとえば、水俣地域が経験をしたような不幸な事件を再び引き起こしてはならないという基本的な考え方に立って、国際的なシンポジウムをやるというようなことも一つの考え方であろうかと思いますし、公害防除技術に関する高度な研究機関を設置することなども一つの案であろうかと思います。 お尋ねの環境大学構想も、そういう提案の一つとして検討を進める意義のあるものであると思いますが、しかし、おっしゃる意味がいわゆる学校教育法による大学ということであるならば、それはやはり財政上も多額の負担を伴う話でもございますし、昨今の経済財政状況のもとで早急に実現することはなかなか容易なことではないというふうに受けとめておるわけでございます。 いずれにいたしましても、この地域の経済の浮揚に真剣に取り組む中から生まれました構想でございまして、そうしてみんなでアイデアを出すことこそ大事なことであって、さきに申し上げましたようないろいろな案とあわせて関係方面とも今後協議をしながら検討してまいりたいというふうに考えております。 〔深水吉彦君登壇〕
◆(深水吉彦君) ただいま知事から息長く研究する必要があるというお話でございましたが、私どもの方で調査いたしました結果でも、文部省あるいは環境庁あるいは国連大学の関係者のお話も、耳は傾けてくれますが大変むずかしいことだという答えが返ってまいります。しかし、何としても水俣の将来あるいは地域の開発、水俣病の克服という問題で何かをしてほしいという気持ちは、住民はずっと変わっていないと思います。今後ともその点留意をしていただきたいと思います。 次に、主要地方道人吉水俣線の整備状況についてお伺いいたします。道路の整備促進についてでありますが、特に水俣、芦北地区の整備状況について土木部長にお尋ねいたします。 地域住民にとりまして待望久しかった国道二百六十八号線の整備につきましては、その願いが成就されるかのように、日増しに近代化された道路がみごとな線形を描き、山野に現代の息吹を送り込むごとく全貌を整えつつありまして、昭和六十二年には喜びを分かち合える日を迎えることができると聞き及んでおります。今日までの関係者の皆様方の御努力と今後なお続くであろうもろもろの困難な条件に立ち向かわれる御労苦に対しまして、地元住民各位とともに深く感謝を込めて期待いたしているところでございます。 このように国道二百六十八号線は――二百六十八号線と申しますと水俣から大口を越えて宮崎へ通じる道路でございますが、整備の終盤を迎えんとしておりますが、私は主要地方道人吉水俣線の整備状況につきましてお尋ねするものでございます。 この路線は、御承知のように、地域全住民を初め地元関係各位の熱烈なる願いにこたえて五十七年度に主要地方道に昇格していただいた地元期待の重要な路線でございます。いまさら申し上げる必要もないかと思いますけれども、水俣・芦北地区と人吉・球磨地区とは国見山地により隔てられておりますけれども、古来から人々は、この峻険な山地もいとわず交流を続けているものでありまして、今日におきましても、この地方の海岸地帯と山間地帯に生活を営む約十九万人の人々の心の中には親密な連帯感が秘められているものと確信しております。この路線は、単なる道路の機能のみならず人々の心をもつなぐまことに重要な幹線道路ではなかろうかと思います。 県におかれましても、この路線の重要性はつとに認識されているわけでありまして、すでに部分的には改良を実施していただいておりますけれども、何をいいましても鹿児島県との協議が重要な課題であります。この路線の今後の見通しにつきまして御答弁をお願いいたします。 河川改修について。 水俣川の河川改修につきましては鋭意御努力をいただいているところでありますが、何といいましても改修延長が約七キロメートルと非常に長く全体事業費も約三十六億円と聞いております。しかしながら、現在の財政環境を考えますと相当な年月を要することは明らかであり、当面、狭窄部等の水害防除上最もネックとなっております個所から順次、効果的、計画的な施行が必要であります。 幸い、昨年度に最も懸案でありました江南橋の改築が完成し、一応の進展が図られたものと思いますが、地域住民にとりましては水害に対する不安感はまだ強いものがあります。とりわけ江南橋直下流の平上ぜきにつきましては、これまで洪水時の水位の上昇を惹起させ、上流地域において堤防をあふれ、家屋への浸水を繰り返しております。早急な平上ぜきの改築が必要と思いますが、当せきの実施計画についてお尋ねします。 さらに、河川改修の護岸工法につきましてあわせてお尋ねいたします。 河川には、治水、利水、環境の三機能がありますが、現在の河川改修事業は、洪水防御のため、ただ治水ということだけに全神経が集中されてしまって、古くからの河川らしい自然性に富んだ面を保全するという視点は失われているように思います。川は、魚が住みホタルが飛ぶ清流こそ住民が願っているところでありまして、以前は自然石を使ったじゃかご工法等があり、かご間には柳を植え込むなど自然が生かされておりました。また、河床には転石があり、魚などの生息に役立っていましたが、ほとんど河川改修時に除去されてしまいました。これは、発展する経済社会の状況、毎年の激甚な災害をこうむっている事態、さらには昨今の財政事情を考慮して、治水事業を緊急かつ計画的に推進するためにはやむを得ないものとは思いますが、前回私がお願いをいたしました、少なくとも魚の生息に必要な程度の護岸工法等の実施について、あわせて土木部長にお尋ねをいたします。 〔土木部長三原節郎君登壇〕
◎土木部長(三原節郎君) 道路の整備と河川改修についてのお尋ねにお答えいたします。 まず、人吉水俣線でございますが、御指摘のように、県議会の御協力と地元関係者の熱心な御要望により昨年四月主要地方道に昇格したものでございます。 この路線は、起点の人吉市から球磨村、鹿児島県大口市を経由し、終点の水俣市深渡瀬で国道二百六十八号と交わる実延長四十九・二キロメーターの二県にまたがる道路でありまして、人吉・球磨地区と水俣・芦北地区とを結ぶ産業流通の上からも重要な連絡道路でございます。 今日まで主に隘路区間の解消に力を注ぎながら路線の整備に努力してまいりましたが、大口市地区におきましてはなお未開通区間が約二・五キロメーターありまして、路線全体の改良率は約一八%程度であります。 現在の工事の状況は、水俣市久木野地区におきまして特殊改良一種事業で延長一・二キロメーターを昭和五十四年度から着工していますが、すでに用地買収は完了しておりまして、この工事の進捗率は約七〇%でございます。 また、球磨村字黒白地区から大口市地区にかけての未開通区間のうち黒白地区から県境までの一・三キロメーターは、昨年開通し舗装を残すのみとなっていますが、大口市地区につきましては、その工事の施行につきまして鹿児島県の理解を得ておりまして、昭和六十二年ごろまでには開通の計画と聞いていますが、なるべく早く開通できるよう今後とも十分協議しながら対処してまいりたいと考えております。 このほかに、水俣市大川地区につきましても、単県事業で昭和五十三年度より継続して約一キロメーターの改良を進めているところでございます。 申し上げるまでもなく、道路の整備には多額の費用と地権者を初めとする地元の方々の御理解と御協力が必要でございます。国、県ともに厳しい財政事情下にはありますが、本路線の重要性にかんがみ重点的に整備を促進していくつもりでございます。 次に、水俣川改修についてでございますが、これまでの局部改良事業に引き続き昭和五十五年度から中小河川改修事業を実施しておりまして、昭和五十七年度には江南橋が完成したところでございます。平上ぜきは、現在コンクリート固定ぜきでございますが、治水上問題の取水ぜきと認識しておりまして、本年度から二カ年で、高さ一・九メーター、長さ三十八・四メーターの自動転倒ぜきに事業費約一億一千万円をもって改築することにしております。またあわせて河床の掘り下げも行うつもりでございます。 次に、環境護岸の工法についてでございますが、河川の水質浄化の努力はもちろんのことでございますが、河川構造物の形状や材質への配慮が必要であるとの考え方から、生物の生息に適した魚巣ブロックを本年度までに県下九河川に施行または施行予定でございまして、水俣川、湯出川におきましても、御要望を踏まえ、本年度魚巣ブロックの使用を試験的に施行することとしております。また、御指摘の自然石の利用も、流下能力の減少につながらない限り配慮したいと考えております。 いずれにしましても、先ほども申しましたが厳しい財政状況下にありますので、公共投資の一層の重点化、効率化を図りながら、水俣川改修の促進、魚巣ブロックの使用につきまして努力いたす所存でございます。地元関係者の御協力をお願いする次第でございます。 〔深水吉彦君登壇〕
◆(深水吉彦君) ありがとうございました。土木行政は何といいましても財政が優先をいたします。どうぞ予算獲得の折には一層の御努力をお願いしたいと思います。よろしくお願いを申し上げておきます。 以上で私の質問を全部終わりますが、この場をかりまして、水俣病対策にお力添えしていただいております県議会の諸先生方へ住民の一人として心からお礼を申し上げます。 長い間きわめてローカル的な質問ばかりでございましたが、御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(甲斐孝行君) 昼食のため午後一時まで休憩いたします。 午前十一時二十六分休憩 ――
―――――○――――――― 午後一時二分開議
○議長(小材学君) 休憩前に引き続き会議を開きます。中島隆利君。 〔中島隆利君登壇〕(拍手)
◆(中島隆利君) 日本社会党の中島でございます。初めての質問でございますが、日本社会党を代表し一般質問を行います。質問事項を欲張りましてかなり多うございまして、時間が不足するかもしれません。後早口になりますのでお許しを願いたいと思います。早速質問に入らせていただきます。 質問の第一点は、自治体職員の採用についてお尋ねいたします。 玉名市の地方自治体職員の採用をめぐる収賄事件について、まず警察本部長の決断に心から敬意を表します。この種の事件は、立証の困難と常に権力者が介在しているので大変であったろうと思います。徹底した解明を心からお願いいたします。 最近の首長汚職としては、本年一月の飽託郡北部町の小学校建設工事に絡んでの高岡千秋町長が業者から五百万円を収賄した事件、五十五年五月、牛深市の西村武典市長の談合汚職事件、五十七年春、飽託郡飽田町の内田町長の学校建設工事汚職事件、続いて竹原阿蘇町長、白河部天明町長が汚職事件で摘発されています。県内においても、このように汚職事件が頻繁に起こっています。国の政治だけでなく地方の政治まで金権腐敗の政治がはびこっています。 今回の川原玉名市長逮捕をめぐる容疑は、玉名市職員採用試験に関して受験者の父親から採用の便宜を図ってもらう目的で百万円を受け取ったことと、特別公共団体有明消防組合の職員採用試験に関して、五十八年二月中旬、試験合格を依頼され、百万円を受け取ったものであると新聞は報じています。 有明消防組合は、荒尾市、玉名市、岱明町、天水町、菊水町、南関町、横島町、玉東町、長洲町、そして三加和町の二市八町の構成であります。川原市長は、その組合の副管理者であります。この試験は、熊本県地方課を通じ、五十七年十一月七日、山鹿市、本渡市を初めとする三十七町村広域消防組合六組合などが参加したものであります。試験問題作成は東京都の日本人事試験研究センターで行い、試験結果も東京に送り、コンピューター採点により個人の成績を県が受け取り、各団体に県より送付するというものであります。この試験は相当公正なものであり、県は他の自治体などにも共同試験を呼びかけているのが実態であります。 有明消防組合は、採用予定者を八名とし公募を行ったが、約二百名の者が参加していると言われます。この試験について社会党に寄せられた情報によると、筆記テストの結果は何ら参考とならず、権力者の推薦した者のみが合格しているということであります。最初八名であった者が、最終的には十名合格採用となっているとのことであります。しかも、組合参加の市町より一名あて合格しているということでありますが、試験順位が、参加市町各一名、計十名ということは偶然の一致としては余りにもでき過ぎであります。これでは共同テストという美名に隠れた実際はテスト無視の行為であり、川原市長の収賄事件もこのあたりに不正試験との関連があるものと言われても仕方がないと思います。世間では、市町などの談合採用という話がもっぱらであります。私どもが入手した情報がすべて真実としたら大変なことであろうと思います。 今回の事件は、まず公募に参加した多数受験者に対する重大な詐欺行為であり、公正を期するために県が奨励している共同試験の信頼を失墜せしめる行為であり重大問題であります。しかも地方公務員法その他の法に抵触する違法行為であります。 以上について、行政の信頼回復のためにも、県は、問題を明らかにして各市町村に啓蒙活動を行う必要があるとともに、共同試験の意義、地方公務員法の職員任用の規定について再度認識を新たにして、厳正、公正な職員採用試験制度の確立を図るよう十分指導と対策を講じる必要があると思います。警察当局は、捜査の過程にある問題とはいえより一層法適用を厳正にして県民の期待にこたえていただきたいと思います。 以上の諸点について知事、警察本部長の所見を求めます。 〔知事細川護熙君登壇〕
◎知事(細川護熙君) 市町村職員の採用についてのお尋ねでございますが、職員の採用は、公務に必要な人格、知力、体力等を備えているかどうかということを総合的に評価をして決定されるべきものでございましょうが、その処理に当たりましては厳正、公正に行われなければならないことは改めて申し上げるまでもないことでございます。 現在の市町村等職員採用共同試験は、昭和四十年度から知力を評価するための一次試験すなわち筆記試験を地方公共団体が共同で実施するために始められたものでございまして、昭和五十四年度からは、試験の専門機関である財団法人日本人事試験研究センターに試験問題の作成と採点が委託をされておりますが、試験の実施主体はあくまで個々の地方公共団体になっておるわけでございます。 今回の玉名市の事件は、現在取り調べが進行中でございますが、容疑が事実とすれば、結局はモラルの問題であって採用試験そのものの否定に直接つながるものではございませんが、近年共同試験に対する県下の地方公共団体の関心も高まっておりまして、年々参加地方公共団体も増加の傾向にありましただけに、県としてもまことに残念な事件であると受けとめております。 県下の地方公共団体に対しましては、職員の採用が地方公務員法の趣旨に沿って厳正、公正に行われますよう、これまでも機会あるごとに指導してきたところでございますが、今後とも不祥事の防止を含めまして職員の採用が厳正公平に行われますように、さらに趣旨の徹底を期してまいりたいと考えております。 〔警察本部長漆間英治君登壇〕
◎警察本部長(漆間英治君) 公正であるべき公務員の職務が金品の授受等によってゆがめられるというようなことがあってはならないことは、いまさら申し上げるまでもございません。この観点から、警察といたしましては、御質問の事案の全容の解明に全力を尽くすことはもとよりでございますが、今後とも、この種の事案に対しましては、強い関心を持ちつつ厳正に対処してまいる所存でございます。 〔中島隆利君登壇〕
◆(中島隆利君) ただいま知事及び警察本部長より御答弁いただきましたが、知事は、さらに厳正、公平な今後の共同試験採用について徹底をしたい、こういう決意を述べられております。さらに警察本部長においても、今後厳正に強い関心を持って行うということでありますが、今回の問題は、人事任用権の問題で県には直接責任はないと思いますが、都道府県知事の普通公共団体に対する助言、指導の任として、公正を期するために県が奨励している共同試験に参加した自治体で、しかも地公法の職員任用規定を逸脱した事件であり、県としても一定の責任を免れ得ない問題であると思います。県としても、警察の捜査の段階を見ながら、共同試験、職員採用、任用のあり方等について問題を明らかにすべきだと思います。現在推進されている臨調、行革によって、全国民が公務員や自治体に強い関心があり、失業、倒産の雇用不安の中で自治体職員採用には重大な関心と期待がかけられています。各自治体とも職員採用には十倍から三十倍という競争率であります。このような全県民の期待と関心にこたえ、二度とこのような問題が起こらないよう、この際、全県下市町村自治体職員採用試験のさらなる厳正、公正化を期し、優秀な人材を確保するために共同試験の意義徹底を図っていただきますよう重ねて強く要望いたします。 次に、第二点の水俣病問題について質問いたします。代表質問並びに午前中の深水議員の質問がありましたが、私も別な観点から質問をさせていただきたいと思います。 さきの七月の臨時県議会では、水俣病待たせ賃訴訟の一審判決で、申請時から約二年を経過しても何ら処分をしないのは、知事の故意による不作為行為であるとして原告主張を全面的に認めた判決を全く無視して控訴を決定されたわけでありますが、予想しておりましたように、患者団体との関係、水俣病認定業務の促進に大きな影響を及ぼすこととなっています。控訴された以上、今後再び二審において審理されるわけでありますが、そこで知事は、控訴後の水俣病問題に対する対応、取り組みをどのように考えておられるか、お尋ねいたします。 また、認定業務については、
認定申請者の団体の方々の検診拒否が続けられており、さらに水俣病被害者の会では潜在患者の掘り起こしの検診が行われています。今後さらに潜在患者の掘り起こし検診が地域で続けられるということでありますが、
認定申請者はますます増加をするだろうと思います。このように周辺地域にいまもって多くの認定申請対象者がおられるということであれば、国、県としても、一刻も早く周辺地域住民への一斉健康診断を実施し、実態把握の取り組みが必要であろうと考えますが、この点についてどのようにお考えか、お尋ねをいたします。 また、裁判でも指摘をされました、二年以上たっても医学的判断の困難さで処分がおくれたり保留になったりしている現認定制度は、抜本的に再検討しない限り水俣病認定業務は促進しないと考えますが、知事は認定業務促進対策をどのように考えておられるか、お尋ねをいたします。 次に、チッソ県債問題についてでありますが、さきの五月定例県議会では、チッソに万一不測の事態が生じた場合は国の一〇〇%保証措置を行うということで、第十回目のチッソ県債二十三億一千万円を決定したわけでありますが、六十年六月の県債発行の一応の期限までには何らかの国の抜本的対策を求めるよう確認されています。 チッソ県債は現在高二百三十六億円となり、
ヘドロ処理事業費の県債百二十億円を含めますと三百五十六億円となります。今後の認定患者補償費は、四千六百名以上の未処分者がおられ、どれくらいになるかわからない状況であります。
ヘドロ処理事業費も、見直しにより当初の二・二倍、四百三十億円となり、今後このまま推移しますと、患者補償費のチッソ県債、
ヘドロ処理事業費の立てかえ県債、合計すると八百億円以上の膨大な額になると予想されます。 先日、わが党の中村議員が財政問題で指摘をしましたように、昭和五十七年度末の一般会計、特別会計の県債残高は二千八百二十九億円という一般会計一年間の予算の六八%にも達しており、県財政の大きな負担となり深刻な問題となっています。チッソ県債の元利償還は五十七年度からすでに十三億七千八百万円が始まり、チッソ県債問題は一刻の猶予もできない状況にあります。国の抜本的対策が早急に図られる必要があります。 去る八月二十三日、知事は環境庁首脳と会談され、認定業務促進と
ヘドロ処理事業について協議をされておりますが、その結果と今後の見通しについてお尋ねをいたします。 〔知事細川護熙君登壇〕
◎知事(細川護熙君) 水俣病問題について幾つかの点でお尋ねがございましたが、第一のお尋ねである控訴後の水俣病問題に対する対応、取り組みにつきましては、去る七月の臨時県議会においても申し上げましたとおり、控訴したからといって今後の水俣病対策の基本的な取り組みの姿勢について変わることはないわけでございまして、従来同様認定業務の促進に努めてまいりたいと考えております。 第二のお尋ねは、地域住民への一斉健康診断による実態把握についてでございますが、この問題につきましては、県として昭和四十六年から四十九年にかけまして水俣湾周辺地域住民の健康調査を実施してきておりまして、また関係市町との連絡会議を定期的に開催いたしまして情報の交換に努めておりますほか、保健婦の巡回指導等の際、地域住民の健康状態について特に留意するように努めているところでございます。そのほか、水俣市におきましては昭和五十年から五十六年にかけて全市民を対象に健康調査を実施されまして、その結果、異常の訴えのある人には医師による精密検査を行い、水俣病の疑いのある人に対しては認定申請の指導をした経緯があると承知をいたしております。 なお、現行の申請制度は、水俣病の疑いのある者に対して広く開放されておるわけでございまして、申請者に対してはいつでも相談に応ずることができるように現地水俣市に県相談事務所を設置しているわけでございますから、現時点では一斉健康診断を行うことは考えておりません。 第三のお尋ねは、今後の認定業務の促進策についてでございますが、去る七月の県議会でも申し上げましたとおり、現行制度のより円滑な運営を図るため環境庁とも協議を重ねているところでございます。そのためにも、申請者の方々の検診に対する協力が業務促進の前提条件であるということをぜひ御理解いただきたいと考えているところでございます。 第四のお尋ねは、環境庁との協議はどうなっているかということでございますが、認定業務と
ヘドロ処理事業の昭和五十九年度政府予算要望を中心に話し合ってきたところでございます。 まず、認定業務の促進につきましては、マイナスシーリングの厳しい予算枠の中にあって、申請者医療費の財源確保について特段の配慮を要望いたしましたほか、寝たきり申請者の往診体制の整備でございますとか検診医師の確保等につきましても協力を要望したところでございまして、今後とも要望が実現するように努力をいたしてまいりたいと考えております。 また、
ヘドロ処理事業につきましては、工事差しとめ仮処分申請による工事中断による工期のおくれと物価上昇等の要因によりまして費用負担計画を変更せざるを得なくなったわけで、事業を遂行するための原資の確保につきまして国の配慮を要望してきたところでございます。 今回の事業費の見直しによりましてチッソの負担金が二百七十億円程度にふくらんでおりますことから、PPPを維持しながら事業の継続を図ってまいりますためには、負担金の納付条件等につきまして国において特段の配慮がなされるように要望いたしますとともに、環境庁が関係省庁との調整に取り組んでいただけるように強く要望をしてきたところでございます。しかし、御承知のようにこの問題は大変むずかしい問題でございまして、今後とも議会の御協力を得ながらさらに努力を重ねてまいる所存でございます。 〔中島隆利君登壇〕
◆(中島隆利君) ただいまの知事答弁の第一点の控訴後の水俣病問題の対応につきましては、従前と変わらぬ精いっぱいの努力をいたすと、そういう決意をお聞きいたしまして了解をいたしたいと思います。 第二点の地域住民一斉健康診断の実施については、これまで何回かは調査をされてきております。しかし、いまの検診拒否の問題、さらにはこの判断のむずかしさ、その点等々を含めますと、この実態把握についてはもっと政府と協議をしていただきながら対策をひとつ検討していただくことを要望いたしておきたいと思います。 特に、水俣病問題の解決は、患者や未処分申請者の信頼と理解を回復しない限り進展しないと思います。それには話し合い以外にありません。幾多の困難な問題がありますが、粘り強い話し合いで問題点を明らかにし、その解決のために政府に対し強く求めていただきたいと思います。 水俣病問題は、認定業務、患者救済、チッソ県債、
ヘドロ処理事業、すべて一体のものであります。便宜的な県債依存の事業を抜本的に改善するため、国の責任において法改正を早急に実施させる以外に方法はないと思います。チッソ県債も六十年六月まで先送りすることでなく、
ヘドロ処理事業と一体のものとしていまから検討を始めていただきたいと思います。 次に、教育問題についてお尋ねをいたします。 質問の第一点は、教育荒廃に対して、父母、教師、行政が一体となって取り組む体制について教育長にお尋ねをいたします。 教育の荒廃が叫ばれて久しいわけでありますが、増幅こそすれ立ち直りを見ていません。日本人のだれもが、いまの教育を何とかしなければならないと心配していると思います。最近は、少年非行や校内暴力、家庭内暴力がふえる一方であり、心配がいら立ちとなって教育問題への関心を一層高めているのが現状であります。文部省が昭和五十七年度一年間の中学校、高校を対象にして行った校内暴力事件調査によると、対教師暴力千四百四件、生徒間暴力二千三百四十件が起きています。中学校で七校に一校、高校で十校に一校の割合で起きているわけであります。熊本県でも二十一校で起きています。 非行や暴力に走る青少年の行為の根は深く、荒廃した教育や大人社会に対する告発でもあると思います。この告発を抑え込むことだけでは真の解決にはならないと考えます。ましてや当面を糊塗する管理主義教育に走ったり治安対策的発想では事態の解決にはつながらないと思います。このような教育の荒廃は、長年にわたる学歴社会と結びついた能力主義の政策、選別と競争主義の教育政策によってもたらされていると思います。各種調査を見ても、教師に暴力をふるう生徒の八割は授業についていけない子供だと言われます。一クラス四十五名という子供たちで、教師が一人一人の子供の多面的な個性や能力を尊重した教育ができず、点数中心の教育が、その背後にある受験競争、上からの管理強化とともに今日の教育をゆがめ、授業についていけない子供を生み出し、非行、暴力の温床をつくり出していると思います。 また、今日の非行、暴力は、こうした能力主義に基づく教育の荒廃に加え、さまざまな要素が絡み合っていると言えます。家庭の教育では、核家族化、過保護、しつけの欠如、かぎっ子、愛情の履き違えによる放任主義や家庭不和等、また地域社会では、児童や青少年の本当に楽しめる健全な遊び場所が不足し、自分の子供以外には無関心な親のエゴと連帯を欠いた地域社会の冷たい人間関係も事態を深刻化している原因の一つであると思います。さらに、ロッキード事件や今回の玉名市の職員採用に絡む汚職事件等、金権腐敗政治が子供の純粋な心に与える影響ははかり知れないものがあると思います。 このような子供たちを取り巻く教育や社会環境をわれわれ大人が正さない限り、子供たちに信頼され希望の持てる教育はできないと思います。いま何よりも重要なことは、子供一人一人が人間として尊重され、家庭と学校を通じて社会の規範を身につけ、真理や真実を学び、平和で民主的なよりよい豊かな社会をつくる人間を育てるという教育の目標を、家庭でも学校、地域でも改めて確立しなければならないと思います。このため、新しい家庭、学校、地域づくりに、住民とりわけ父母と教職員、行政が一体となって教育の立て直しに立ち上がらなければならない事態であると思います。 しかし、非常に残念であるのは、教育立て直しの重要な時期に、熊本県教育行政が委員会と教職員組合との対立関係にあることであります。昨年の七月から教職員の研修問題に絡んで裁判闘争にまで発展していることであります。さきに述べた子供の非行、暴力、教育の荒廃の現状を見るとき、子供に信頼される教師が必要であります。それは、現場教師の自己研修はもちろん、あらゆる教師集団、グループの研修活動の中から生まれてくると考えます。その研修活動に水を差すような賃金カットの処置は余りにも行き過ぎであろうと考えます。いまこそ少年非行、校内暴力など教育荒廃を克服するため、父母、教師、
教育関係者を含めた国民的運動の取り組みが必要なときです。一日も早く県教委と教職員組合との正常化を図っていただきますよう心からお願いをいたします。 そこで、教育長にお尋ねいたしますが、教育荒廃の克服に向けて、父母、教師、行政が一体となって取り組む体制づくりが必要だと思いますが、教育長のお考えをお尋ねいたします。 第二点は、臨採講師の実態と対策についてであります。 去る五月二十三日の新聞に掲載されました「増え続ける臨採講師」という見出しで、県下公立高校の臨時採用講師が二百名近くに上っていると熊本県高教組の調べで明らかになっています。臨採講師は、出産、育児、病気等長期休暇を必要とする教師の一時的補助としての役割りを担って採用されると考えますが、現時点での臨採講師の数及び臨採の理由は何なのか、理由別の数はどうなっているのか、また臨採講師の任用はどのようになっているのか、お尋ねをいたします。 現在では、臨採の目的に該当する採用はほんのわずかで、大部分が、異動の結果後任が見つからないために採用をされていると聞きます。いわゆる欠員補充の形で採用されていると聞きます。しかも、一年間の契約で採用され、夏休み等の長期休暇中は任用が切れ、一切の賃金の保障もなされていないということであります。そのために、夏休み中の課外や補習等の指導、部活動の指導が全く対応できていないということであります。高校教育という一番重要な講師が、長期にわたって二百名近くが臨採講師で充てられていることはまことに遺憾なことであろうと考えます。早急な正規の職員に切りかえるべきだと考えます。そこで、来年度の教師採用の予算計画及び来年度の臨採講師の見通しは何名ぐらいになるのか、お尋ねいたします。 三点目は、障害児の普通高校入学についてお尋ねをいたします。 七九年から養護学校が義務制になったわけでありますが、就学の猶予免除や判定委員会、施設整備や人的条件等で障害児の希望する教育が受けられず、健常者と一緒に学ぶことが許されず、差別されている事例が非常にあると言われています。憲法によってすべての国民にひとしく教育を受ける権利が保障されています。私たちは、障害児の教育権をあらゆる場で保障しなければならないと思います。最近、県内の中学校に通学している障害児が高校受験を前にし、進学できないのではないかと悩んでおられるということであります。障害児が健常者と一緒に学校生活を送ることで、障害児と多くの健常児が結びつきを深め、すばらしい発展を遂げることは、何にもかえがたい教育だと思います。何よりも大事なことは、障害児本人が中学校で学んだ経験と自信をもとに、高校、大学へと進学しようという意欲と、この障害児の教育を受ける権利を保障することだと思います。現在、県内公立高校における障害児入学がどのようになっているのか、また入学希望者についてはどのような対応をなされているのか、教育長にお尋ねをいたします。 第四点目は、図書館司書の削減についてであります。県立学校の図書館司書が財政難を理由に削減されるということでありますが、その真偽についてお尋ねいたします。 県立高校の場合、
公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律により、十八学級以上の学校には図書館司書を一人配置することとなっています。しかし、県では、学校図書館の充実を目指すため、県単費により十八学級未満の学校にも司書の配置を進めてきました。昭和五十五年九月に全校に図書館司書一人の配置を完了したわけでありますが、せっかく配置を完了した図書館司書を、臨調、行革路線の財政難を理由に退職不補充の方針を打ち出されました。図書館司書が退職した場合、補充を行わず、十八学級未満の小規模校には司書を配置しないということであります。県内には十八学級未満の県立高校は現在十八校で、すでに司書が二校削減されていると聞きます。十八校すべてが退職不補充という形で順次司書が削減されていくということであります。 教育の荒廃が叫ばれる今日、子供たち一人一人を人間として社会愛を持つ健全な子供に育てることがいま一番重要な課題であります。文字から遠ざかりつつある現代の子供たちに、本に親しみを持たせ、その人間の心を育てる一番重要な図書活動を指導し補佐する図書館司書を、財政難だからといって、しかも十八学級未満の学校だけを削減するということは、教育行政の後退であり子供に対する差別の行政であると考えます。 今後、学校教育の中で図書館活動は最も重要な課題であろうと思います。今回の
教育委員会の図書館司書の削減方針は非常に問題があると考えますが、教育長の御所見をお尋ねいたします。 〔
教育長外村次郎君登壇〕
◎教育長(外村次郎君) 教育問題につきまして四点お尋ねでございました。逐次お答え申し上げます。 まず第一点、父母、教師、行政が一体となって取り組む体制づくりについてでございますが、教育のいろいろな問題につきまして種々御提言をいただきました。その中でも、児童生徒に信頼される教師が必要であり、そのためには教師の研修が大切であるという御意見につきましては、
県教育委員会といたしましても同感でございまして、研修の充実にはさらに努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。 しかしながら、その中でお触れになりました件でございますが、教師の自主研修につきましては、それが職員団体活動として行われます場合には、その服務取り扱いは当然それなりの法の規定に従って対処せざるを得ないわけでございます。今回の賃金カットは、服務監督権者が特別休暇願を不承認としたにもかかわらず、そのまま教育研究集会に参加され所定の勤務に服さなかったので、その部分につきまして給与条例の規定に基づいて減額したものでございまして、やむを得ない措置として御理解いただきたいと存ずるところでございます。 父母、教師、行政が一体となって教育に取り組む体制づくりが大切であるという御意見につきましては、もとより御意見のとおりと考えます。そのように努めてまいりたいと思います。さらに、関係者の御協力をいただきながら本県教育の振興に努力をしてまいりたいと考えるものでございます。 第二点の高等学校の臨採講師の問題でございますが、これはもう御承知のことと存じますが、地方公務員法第二十二条の規定によりまして「緊急の場合、臨時の職に関する場合又は任用候補者名簿がない場合においては、」「六月をこえない期間で臨時的任用を行うことができる。」という規定がございまして、これに基づいて措置をしておるところでございます。産前産後休暇であるとか、あるいは育児休業、国内留学の補充、休職や長期私傷病休暇者の補充等がございます。 高等学校の現在の臨時採用講師の数は、ただいま申し上げました休職あるいは産休等の補充などが二十四名でございます。また、欠員補充が百三名、計百二十七名という数字になっております。これは九月十四日現在の数字でございます。これらの臨時的職員の任用につきましては、当該教科の免許状を持っております、すでに退職しました元教師あるいは過年度の大学卒業者で臨時的職員を希望する者などの中から任用しておる実情でございます。 期間につきましては、産前産後休暇あるいは育児休業、国内留学、休職、私傷病休暇者の補充等につきましては、それぞれの該当期間のみ補充いたしております。また、欠員補充につきましては、地方公務員法の先ほど申し上げました六カ月以上の任用ができないという規定がございまして、夏季休業中等は発令いたしませんで、年間をほぼそれぞれの学期、つまり三つの学期に分けて発令しておるのが実情でございます。しかし、たとえば農業高校におきます実習担当あるいは家畜飼育等にかかわるようないわゆる学校運営上支障があります場合には、校長の要望に基づきまして休業中においても発令しておるケースもございます。 教員の確保につきましては、そのほか年度中途におきます個人的理由による退職者の補充、あるいは学校の教育計画の変更、教育課程の変更等による教科科目の切りかえなどによる影響もあるわけでございまして、総括的に申しまして、高等学校においては、各教科科目が非常に細分化され専門化されておるわけでございます。 以上申し上げましたいろいろな要因あるいは年度末の自己都合による一般退職者の予測、そういったものを踏まえて、それぞれの教科科目単位に前年度の採用試験で見通しを立てて採用候補者を確保するということが大変むずかしい状況にあるわけでございます。できるだけ臨時採用が少ないような見通しを立てなければならないわけでございまして、今後さらに努力してまいりたいと考えます。 お尋ねの来年度の教員採用予定数は、少なくとも現在の欠員補充の数はぜひ確保したいと考えておるところでございます。 ただ、もう一つつけ加えさせていただきますが、来年度の退職予定者数の見込みにつきましては、特に昭和六十年三月の定年制施行に伴います移行措置をどのようにするかという問題もございまして、正確な把握が特にむずかしい状況がございます。 いずれにいたしましても、臨採者が多いということは好ましいことではございませんので、御指摘を踏まえまして少しでもその数を減ずるよう最大の努力を払ってまいりたいと考えるところでございます。 第三点の障害児の普通高等学校の入学についてでございますが、これは本県では毎年高等学校入学者選抜要項を定めて入学者選抜を行っておるところでございますが、これにも記載をいたしておりますが、その選抜に当たりましては、身体については修学不可能と認められる者を除くほかは選抜に差等をつけることはしておりません。現に、特殊教育諸学校からも、あるいはその他の障害を持たれる生徒の入学もあっております。 しかし、中学校に存学する障害を有する生徒の進路指導に当たりましては、やはり進学後の適応について特に慎重な配慮が必要でございまして、希望する学校の実態や教育活動を事前に十分理解した上で受験されるよう指導いたしておるところでございます。そのために、中学校、高等学校の相互の連携を密にいたしますとともに相談活動を充実いたしまして、適正な進学指導がなされるよう努力をしてまいりたいと考えております。 最後の高等学校図書館司書の問題でございますが、学校図書館が学校教育に果たす役割りは大変重要なものでございまして、その点については十分認識しておるつもりでございます。しかしながら、厳しい財政事情もございまして御批判があるところでございますけれども、現在法律上義務づけられた学校図書館事務職員の数以外につきましては、学校規模等を勘案いたしまして見直しを進めておるところでございます。 今後とも、そのことによりまして図書館の機能が落ちないように、学校全体の職員の協力を得まして、また学校の図書委員の積極的活動等を図るなどの工大をこらしまして、図書館の教育的機能が所期の目的を達するよう努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。 〔中島隆利君登壇〕
◆(中島隆利君) 第一点の、父母、教師、行政が一体となって取り組む体制づくりについてでございますが、その基本的な活動の視点、それについては十分理解をし、今後もさらにその体制をつくるように努力をしたい、こういう決意を述べていただきまして了解をいたします。 しかし、教職員の研修の問題、これにつきましては、経過を聞いてみますと、以前この種の研修につきましては、教職員組合と
教育委員会との覚書によってこれらの研修については認められてきて実施されてきた、それが急遽この法に基づいて賃金カットの発令がされたと、こういう経緯を聞いているわけであります。特に、前段でも申し述べましたように、教育とは、やはり現場の教師と
教育委員会のこの行政とが一体となった信頼を持つ教育でなければ目標を達成することはできないと思います。その意味におきまして、この研修問題については特に今後
教育委員会としても考えていただきますよう切にお願いをしたいと思います。 臨採講師の実態と対策についてでありますが、この問題につきましては、産休あるいは休暇等による代替二十四名、欠員百三名という報告がありましたが、この欠員百三名――いろいろ状況はあるかと思うんですが、欠員が百三名の事態にあると、この点については重大な問題だと思います。特に、この職員採用については、新年度の職員採用において十分なる数の把握によって対応されると思うのでありますが、それが百二十七名にも欠員が達しておるということについて、今後新任の採用計画については十分検討していただいて、こういうことが一日も早く解消するようにお願いを申し上げたいと思います。 障害児の普通入学についてでありますが、これにつきまして今後努力をしていきますということでありますが、これにつきましての意見をお聞きいたしますと、高校入学に際して各高校の施設が、身障者の入学、通学に設備そのものが非常に整っていない、こういうことで入学がなされていない、あるいは拒否をされていると、こういうことを父兄の方々から聞いております。中学あるいは義務制の中で能力と実績を得た障害児の教育を保障するために、ぜひ全高校での設備の完了あるいはそういう体制についての取り組みをお願いしておきたいと思います。 高校図書館司書の削減についてでありますが、これは先ほども述べましたように、五十四年から十八学級未満のすべての学校に司書を整えたやさきに、行革、臨調による財政事情によって削減をされる。このことについてもっともっと財政の問題を含めて検討していただいて、せっかく配置をした司書を、ぜひとも今後全校に配置をとどめるためにひとつ御努力、検討方をお願い申し上げたいと思います。 特に、最初の点で申し上げましたが、教育の荒廃、教育の立て直しについては、一番重要なことは、子供と教師、教師と父母、それから教師と行政の信頼関係を確立することであろうと思います。ぜひ今後も教職員組合と県教委の対立を一日も早く解消していただくよう切にお願いをしておきたいと思います。 第四点の質問でありますが、県土の均衡ある発展についてであります。 知事は、去る二月の定例県議会において知事就任後初めての所信表明の中で「本県の持つすぐれた条件を基礎として、先進的な産業技術を積極的に導入し、特色ある地域経済の確立を図る」と述べられ、そのために「県下各地域の自主的な発意と努力を前提としつつ、市町村、関係団体と一致協力して県土の均衡ある発展を図る」と述べられています。そしてさらに、五月定例県議会の中では「県内外の御意見を広く拝聴し、県民の意向も十分に踏まえて、二十一世紀へ向けての熊本県のあるべき姿を描きながら、当面取り組んでいかなければならない本県の重点事項についてなるべく早く取りまとめるとともに、できることから着実に実行してまいる」と述べられていますが、今後の重点政策づくりと現在策定されています80年代熊本県総合計画とはどのように今後関連づけて進められるのか、お尋ねいたします。 五十八年度の予算では、これまで細川知事の基本的な政策を織り込んだ活力ある熊本をつくり上げるための県政として、五つの目標に即して幾つかの新規事業、重点事業を打ち出しておられます。一方、80年代熊本県総合計画は、前沢田知事時代の昭和五十六年四月を初年度として昭和六十五年度を目標年次とする十年間にわたる定住構想として、雇用の場の確保と基本的な生活環境施設、身近な文化体育施設等の整備を図り、人口と産業の適正配置を進め、熊本県としての均衡のとれた定住の実現を図る基本計画として策定されています。そして熊本都市圏を九州における中枢管理機能を持つ拠点都市として位置づけ、環境の整備、行政、文化、教育、流通、観光等すべてにおいて九州の中心としての役割りを分担する拠点として施策を積極的に推進するとしています。すでに基本計画策定後二年半経過いたしていますが、熊本都市圏には県立美術館、博物館、総合運動公園、県民文化センター、総合体育館等々が整備され、そしていま県立図書館建設の計画が進められています。さらに、テクノポリス建設、熊本新港建設等大型のプロジェクトが計画、着工され、九州の中枢管理機能を持つ熊本都市圏が着々と整備されつつあります。 しかし、その反面、80年代熊本県総合計画や細川知事の中心的課題である県土の均衡ある発展の地域別振興計画の推進が非常に立ちおくれていると言わなければなりません。産業構造や経済基盤の大きな変動のもとに、失業、雇用不安、人口流失等々県内の不均衡はますます拡大しつつあります。中小企業の倒産、失業者は増大の一途をたどり、労働者の有効求人倍率は極端に悪化し、若者の働く場所さえない深刻なものとなりつつあります。地域振興は一朝一夕に果たせるものではないと考えますが、その主体である市町村自治体の活力をいかに引き出すかであろうと考えます。そのためには、みずからの地域、生活圏の住民総意の施策の選択による都市建設プランを明らかにし、県、市町村、自治体が一体となり取り組む体制が必要だと考えます。知事は、重点政策づくりのために、いま数多くの審議会、懇話会等を設け、県内外各階層の意見を吸収されていますが、そのことも必要であろうと考えます。しかし、繰り返し申し上げますが、一番大事なことは、地域振興の主体であるその地域の住民や市町村自治体の意思結集をいかに図るかであろうと考えます。 そこで、知事は、それぞれの地域振興の重点政策指針づくりのためどのような対応をなされようとしているのか、また県土の均衡ある発展に向けて80年代熊本県総合計画の見直しをどのようにお考えか、お尋ねをいたします。 〔知事細川護熙君登壇〕
◎知事(細川護熙君) 県土の均衡ある発展についてということで二点ほどお尋ねでございました。 第一は、80年代熊本県総合計画と現在作業を進めております県勢発展の方向と県政運営の指針との関係についてのお尋ねでございました。 80年代熊本県総合計画は、御指摘のように昭和六十五年度を目標年度とする長期計画でございまして、県政のあらゆる分野の施策を体系的に整理した総合計画でございます。一方、県政運営の指針の方は、県勢発展の基本方向につきまして県内各界のコンセンサスを確保いたしますとともに、今日の厳しい財政事情を踏まえて施策の重点的な運営に資する観点から、将来の熊本のあるべき姿を描きながら、その実現のため特にここ数年のうちに努力を集中しなければならない重点施策を取りまとめようとするものでございます。したがいまして、指針策定作業に関連して長期計画としての総合計画を見直すことにつきましては現在考えておりません。 第二点目は、県土の均衡ある発展を確保するため、特に地域振興計画をどう推進するかというお尋ねでございました。 かねてから明らかにいたしておりますように、活力と個性ある地域づくりの推進につきましては、県政の最重点課題として取り組むことにいたしておるわけでございますが、基本的には、それぞれの地域において創意をこらし、地域の将来像を描き、みずからの手でその実現に努力をするという機運の盛り上がりが何よりも大切なことであろうと考えております。今日は地域間競争の時代といいますか知恵比べの時代になっておるわけでございますが、国におきましても、テクノ構想に象徴されますように、地域の自主的な努力というものを前提として各種のモデル事業というものを展開し、地域開発を推進するという考え方が一般化してきているわけでございまして、県としても、このような考え方に沿って、国の施策というものを積極的に導入しながら地域の発意と努力というものを助長し、各地域の振興計画を推進してまいりたいというふうに考えております。 〔中島隆利君登壇〕
◆(中島隆利君) ただいま県土の均衡ある発展についての知事の基本姿勢を述べていただきまして了解をいたしますが、総合計画見直しは考えていない、今後は重点施策づくりについて地域の活力、意欲を十分取り入れて進めていきたい、こういう決意を述べていただきましたので、ぜひひとつ県土の均衡ある発展に向けての基本姿勢をもとに取り組んでいただきたいと思います。 最後に、県南の地域振興について四点お尋ねをいたします。 さきの五月定例県議会と過去の議事録を拝見させていただきましたが、県南のそれぞれの地域振興について、これまで多くの先輩議員があらゆる意見を述べられ提言がなされています。そうしてこれまで幾つかの政策が取り組まれていますが、再三にわたる提言、地域要求にもかかわらず遅々として進まない課題もあります。五月定例県議会では、八代市郡の代表である小早川、岩永両先輩議員より、県南の人口格差、企業誘致、イ業振興等々の問題について述べられていますが、私も初めての質問でありますので、若干実態を述べさせていただきまして、県南の振興について私なりの考えや提言も含めて申し上げ、県土の均衡ある発展の立場に立って質問をさせていただきたいと思います。 県南北の人口格差は三十三万人となり、その差が地域の経済にどのように影響を及ぼしているかであります。県南の産業別就業者の数を見てみると、第一次産業九万四千人、全体比二九・八%、第二次産業七万八千人、全体比二四・八%、第三次産業十四万二千人、全体比四五・三%であります。これを県全体の割合と比較しますと、第一次産業で六%の増、第二次産業で一・五%の増、第三次産業では七・六%も低いわけであります。ちなみに全国と比較をしてみますと、第一次産業では一八・九%の増、第二次産業では八・七%の減、第三次産業では一〇・三%も低いわけであります。この数字からも明らかなように、県南地域は第二次産業、第三次産業が伸び悩み、第一次産業の農林漁業による経済の依存が非常に大きくなっています。このことは、企業誘致が進まず、低成長による素材型産業がことごとく縮小、合理化され、人口が増加しないことが第三次産業そのものの拡大につながらない大きな要因だと思います。 しかも、第一次産業の農業所得を見てみますと、熊本県は百四十一万四千円で全国第五位でありますが、農外所得を入れた農家所得では三百九十四万八千円で全国三十八位という状況であります。農業県と言いながら非常に低い位置にあります。中小零細企業も厳しい状況にあり、昭和五十七年度の倒産も百七十六件に達し、完全失業者は全県下で二万七千八百三十七名に上り、八代市郡の八代安定所管内では五十八年七月現在で過去最高の三千八十九名に達しています。五十九年度新卒の就職シーズンを迎え若者の働く場所がなく深刻な問題になっています。 このような県南の現状を見るとき、県南地域の総合的対策が緊急な課題であると言えます。特に、県土の均衡的発展を目指す施策として、熊本県の中核都市熊本市と地方の中心都市八代市を配置し、それぞれを核とした近隣市町村への有機的結合を図った総合的な都市建設を行うことが必要であると考えます。九州では福岡県の北九州市と福岡市、長崎県では長崎市と佐世保市、大分県では大分市と別府市、宮崎県では宮崎市、都城市、延岡市とそれぞれの市を核とした地域都市の建設が進められ、県土の均衡ある発展を果たしつつあります。 熊本県においても、県南の中核としての八代地方中心都市として八代市を位置づけ、近隣の地方都市と交通網、地域産業、教育、交通、文化等、身近なところで働き、学び、憩うことのできる地方都市の総合的建設が必要だと考えます。このような現状を見るとき、知事は、地方中心都市八代の建設と県南の振興についてどのようにお考えか、お尋ねをいたします。 次に、県南地域振興の具体的課題についてお尋ねをいたします。 まず第一点は、水俣・芦北地域振興についてでありますが、御承知のとおり昭和五十三年六月二十日の「水俣病対策について」の閣議了解の一環として、水俣病により社会的、経済的にも脆弱化している当地域の現状を踏まえ、必要な施策を重点的に推進することによって新しい魅力ある社会への再生を図っていくことを目的として、昭和五十四年から六十年までの七カ年計画として進められています。総事業費一千三百九十六億円を投じて、交通綱の整備、福祉施設の整備、生活環境の整備、教育文化施設の整備、農林漁業の振興、観光の開発等々地域要求に基づく環境整備、産業振興の整備が計画どおり着実に実施されており喜ばしいことであります。 私も、この地域環境整備が水俣・芦北地域の重要な振興計画であろうと思いますが、これを推進すると同時に、水俣病患者の一日も早い完全な救済と水俣湾ヘドロの除去事業の早期完成は一体のものであり、この解決なくして水俣・芦北地域の再建はありません。そして経済を回復させるために、チッソの再建はもちろん若者の働く場所として、企業誘致や新たな地方都市として脱皮する水俣・芦北地域の整備が必要であろうと考えます。 その一つの柱として、先日社会党の馬場昇代議士が提案された国際環境大学設立の誘致は最適ではないでしょうか。その構想によりますと、環境、医学、教育の三学部と付属機関の環境総合研究センター、付属病院で組織し、入学定員は環境学部三百人、医学、教育学部各百人の四年制で総定員二千二百人の規模のものです。外国人特別留学生や特別委託生の制度も設け、大学院も置くというものであります。第一段階として、熊大の環境学部を水俣地域に設置し、環境学部が軌道に乗った段階で熊大から分離、独立させ、国立の国際環境大学を設立するというものであります。 国際環境大学設立の目的は、いま世界的に人口の増加と人間活動の規模の拡大を背景として、大気中の炭酸ガス濃度の増加、熱帯雨林の減少、砂漠化の進行、海洋汚染、酸性の雨等の地球的規模の環境問題が発生しています。現在の傾向が放置されたまま続くならば、気象の改変、土地の生産性の低下、貴重な動植物の絶滅などを通じ、人類の将来に重大な影響を与えるおそれがあります。いまや環境問題は、かけがえのない地球の美しい自然や、これを取り巻く豊かな環境を、人類共通の財産としてどのように後の世代に継承していくかという大きな課題が問われていると言われます。その解決には、何よりもまず関係する科学技術の進歩が不可欠と言われます。そのために、学問的領域としての環境学を確立し、総合的な研究体制を整備するとともに環境保全の立場に立って国際社会に貢献できる人材を養成するために、国立の国際環境大学を設立するというものであります。 この大学には、外国人留学生等の受け入れを行い、学生の卒業後の進路は、官公庁の下水道、廃棄物処理、公園緑地、海上保安、都市計画等の部門、大学、高校、中学等の教職員、官公庁及び民間の試験研究機関の公害研究所、衛生研究所、農業試験場、保健所等々現在一番求められている環境衛生すべての分野の技術者を養成する大学でもあります。もし実現すれば、世界で初めての国際環境大学として、全国各地から、また、全世界各地から有能な若い学生が集まり、大学や病院に関連する地元事業が発展し、公害の水俣を一掃し、学問研究都市として地域の振興に大きな役割りを果たすと考えられます。そしてこの国際環境大学を核として、水俣・芦北地域の不知火沿岸を国際環境福祉都市の建設としても展望できるのではないかと思います。 知事も、この馬場昇代議士の提唱された国際環境大学建設に賛意をあらわしておられますが、水俣・芦北地域振興、水俣病問題解決促進のため、県、市町村一体となって誘致運動に取り組む絶好の機会であると考えますが、知事の御所見をお尋ねいたします。 三番目に、八代臨港線及び八代東幹線の早期完成についてお尋ねをいたします。この問題につきましても、地元先輩議員が再三にわたって指摘、要望がなされていますが、私も重ねて質問させていただきたいと思います。 八代港、大島臨海工業用地、八代臨港線の早期完成は、県内の振興、八代市の都市再生の重要な課題となっています。八代港は、昭和四十六年に重要港湾に指定されて以来、第四次港湾整備五カ年計画、第五次港湾整備五カ年計画で整備され、現在第六次港湾整備五カ年計画の三年目として工事が実施されています。これまで投資された港湾整備事業費は約百四十一億円に上り熊本県を代表する港湾となりました。港湾取扱貨物量は、昭和五十六年に三百三十六万トンとなり、十年前の約一二・三%と増加しています。現在の取扱貨物は、鋼材、鉄鋼、原木、セメント、石油、石材、パルプ等工業港となっています。しかし、長期不況による工業製品の貨物輸送が低下し、港運関係事業者は厳しい状況にあります。 そこで、港運業者の方々から県に再三陳情されております。八代港を、工業製品だけでなく食物、加工品物の輸送ができるよう、八代港埠頭に対する上屋の建設、食物薫蒸倉庫、重量物荷役の機械等の設置が強く要望されています。 また、大島臨海工業用地第三工区は八十一万三千平方メートルで、昭和五十八年度で二十九万一千平方メートルが工業用地として造成が完了し、今年度からいよいよ企業誘致に取り組まれるわけであります。さきの五月定例県議会でも、知事は、この第三工区に波及効果の大きい中核企業を誘致すると決意を述べられていましたが、この基地と八代インターとをつなぐ産業道路八代臨港線は、昭和五十六年より県と市が分担して実施することになり、いま工事が進められているわけでありますが、総延長八千七百九十メートルのうち、八代市の分担が二千九百七十メートル、県が担当するのが五千八百二十メートルとなっています。現在完了しているのが八代市担当分のわずか六百九十メートルであります。県の担当分六百八十メートルが昭和五十六年から昭和六十一年までの計画で、いま買収交渉が進められていますが、現在計画中の区間が予定どおり実施されましても、昭和六十一年まで完成するのは二千百メートルであります。昭和六十一年には八代港の第六次港湾整備も完了し、第三工区の八十一万三千平方メートルの造成も昭和六十年には完了するわけであります。八代港、大島臨海工業用地を活用した企業誘致、地域振興は、この八代臨港線の完成にかかっていると言っても過言ではありません。現在の計画進捗状況では、残り六千七百メートルの八代臨港線工事は何年かかるかわからない状況にあります。 さきの五月定例県議会での土木部長の答弁では、県と市と協力してできるだけ事業の推進を図ると答弁されています。県南振興、八代の経済浮揚策の最重要課題として、県、市の一体となったより緊密な取り組み体制が必要ではないかと考えますが、早期完成に向けての土木部長のお考えをお尋ねいたします。 次に、八代東幹線建設促進についてでありますが、これについても再三取り上げられ要望がなされておりますが、用地交渉が難航して思うように進まないということであります。 御承知のとおり、この八代鏡宇土線は、国道三号線に次ぐ県南を縦断する重要な幹線道路であります。朝夕の交通ラッシュ時は車の渋滞が続き、歩行者の横断もできない状態であり、地元住民から魔の道路と言われています。特にこの八代東幹線は、県道八代鏡宇土線のバイパス工事として、野上旭中央通りから海士江沖までの総延長千五百十メートルの工事であります。昭和四十一年から着手され、最初の五カ年間は八代市による野上地区の区画整理事業によって五百メートルが施行されました。そして引き続き昭和四十五年から、大手町から大村町までの八百八十メートルの区間に着手されたわけでありますが、事業変更を繰り返し、昭和五十六年にやっと四百七十メートルが開通いたしました。昭和四十一年に着手された八代東幹線バイパス工事が、十一年かかってようやく九百七十メートル、総延長の二七%完了したわけであります。あと二千百七十メートル、総延長の六二%が残っているというのが現状であります。用地交渉が進まないからといって、県南の主要幹線道路工事がこのような状態にあることは非常に問題だと思います。県事務所担当課では少ない人員の中で精いっぱい努力されていると思いますが、何らかの対策、検討が必要ではないかと思います。 八代東幹線道路は、八代臨港線と同しく県南八代の経済を浮揚させる重要な幹線道路であります。臨港線の工事促進と同じく、県、市一体となったより緊密な取り組み体制の確立と、かえ地のあっせんはできないにしても、事業計画の浸透、かえ地の情報等、できる限りの指導、援助を行う中で、用地交渉、事業の推進を図っていただきたいと思います。土木部長の今後の事業推進、対応についてお尋ねをいたします。 最後に、八代興人の離職者並びに八代地域の雇用対策についてお尋ねいたします。 御承知のとおり、昭和五十四年以来、会社再建中の株式会社興人が、去る六月二十三日、四百名に上る従業員削減案を組合側に提案していましたが、八月二十五日、興人会社で三百八名、八代工場で二百十名の希望退職募集が労使によって合意されました。今回の希望退職募集は、昭和五十一年、興人倒産以来二度目の人員削減合理化提案であります。興人再建がまたもや労働者を犠牲にしてなされることはまことに遺憾であります。 八代市は、紙パ、繊維業種が特定不況業種に指定されたのに伴い、現在特定不況地域に指定されています。それによって地場企業に対する緊急融資が実施されていますが、農家のイグサ市況等の不振や四大工場に依存度の高い八代地域の経済は非常に厳しいものがあります。そのような中で今回の興人の二百九名の人員削減合理化は、関連企業はもちろん、八代地域全体の経済に大きな影響を及ぼすことは明らかであります。 さきにも述べましたように、八代管内の雇用情勢は史上最悪の状況にあります。八月末の有効求職者、いわゆる完全失業者は、過去初めて三千人台を突破し三千六十九人となっています。それに対し有効求人数はわずか九百五十人で、求人倍率も過去最低の〇・三一であります。八月度の就職者数は二百十六名で、求職者に対する就職率はわずか七%であります。しかも、失業者三千六十九名中、四十五歳以上の中高年齢者が千六十七名おります。そのうち八月度就職できた中高年齢者はわずかの十二人であります。 このように八代地域の中高年齢者の雇用情勢は最悪の状態にあり、興人離職者の再就職は非常に困難な状況にあります。現在希望退職者募集中でありますが、会社側は離職者あっせん委員会を発足させ、八代公共職業安定所、八代市などの協力で離職対策の検討が始められています。特に中高年齢者の再就職には職業訓練制度の対応が必要であり、求人開拓等県も早急に何らかの対策が必要であろうと考えますが、
商工観光労働部長に興人の離職者並びに八代地域の雇用対策について、その対策と取り組みについてお尋ねをいたします。 〔知事細川護熙君登壇〕
◎知事(細川護熙君) 県南の地域振興についてのお尋ねでございますが、県南の中心都市である八代市には古くから大企業が立地をして、本県最大の工業都市として発展をしてきたわけでございます。また、周辺地域は県下でも有数の生産性の高い農業地帯として県南地域振興の牽引的な役割りを担ってきたところでございます。しかし、主要な工業の一部が構造的に停滞を余儀なくされまして、地域の雇用環境に深刻な影響を及ぼしていることは御指摘のとおりでございます。 八代地域の発展は本県全体の発展にきわめて大きな意義を持つものであって、企業誘致活動や地域産業の活性化方策を通じて魅力のある雇用機会を創出することが大きな課題であることは私も同感でございます。この点につきましては、本年度国土庁が新産都市建設計画見直し作業の一環として、全国でただ一カ所、八代地域をモデル調査地区として取り上げることといたしておりますので、八代市と協力してこの調査に積極的に取り組んで産業振興の具体的なプログラムづくりを進めてまいりたいと考えております。 それから、このような地域産業活性化のための施策と並行して、地域の文化なり、あるいは福祉、都市環境の整備といった地域の中心都市としての総合的な魅力づくりが重要なことも御説のとおりでございます。特に都市機能の充実につきましては、今後、八代市を初めとする地方中心都市がそれにふさわしい条件を整えられるように、各般の施策の展開を図ってまいりたいと考えております。 それから、水俣・芦北地域の振興対策についてのお尋ねでございましたが、五十三年六月の閣議了解事項の一環として、五十四年度から地域振興計画を策定し、基礎的な条件の整備なり社会環境の整備なり産業の振興対策等を推進することによりまして、新しい活力のある地域社会を再生するように努力をいたしているところでございます。 御提案の環境大学構想につきましては、さきに深水議員への答弁でもお答えを申し上げましたように、現下の財政事情に照らして早急な実現は困難とは思いますが、新しい発想に立った意義のある御提案でもございますので、関係方面とも協議をしながら検討を進めてまいりたいと考えております。 〔土木部長三原節郎君登壇〕
◎土木部長(三原節郎君) 八代臨港線と八代東幹線の早期完成についてという御質問にお答えいたします。 八代市の都市計画道路八代臨港線は、昭和四十一年九月二日計画決定されたものでございまして、八代市東片町の国道三号を起点とし、郡築五番町市道郡築堤防線に至る延長八千六百五十メーターの道路でありまして、八代都市圏の骨格幹線として位置づけられている非常に重要な道路でございます。 本路線の整備につきましては、県、市協力して推進しているところでありますが、その内訳としましては、県の施行分が延長五千六百八十メーターであり、市及び土地区画整理組合の施行分が延長二千九百七十メーター、合計八千六百五十メーターを実施しているものであります。 事業の概要を申し上げますと、延長六百九十メーターを昭和五十三年度に完了し、現在用地買収を含めて施行中のものが県、市合わせて延長約千四百メーターとなっておることは御案内のとおりでございます。 本路線は、幅員三十二メーターと広い上、家屋の密集地帯でもあり、本路線の開通後は沿道地域の開発が急速に進むものと考えられますので、地域の町づくりと事業の促進を図るため、街路事業のみならず区画整理事業を併合しながら現在事業を進めています。 次に、八代東幹線につきましてですが、国道三号の旭中央通りを起点とし、八代市海士江町で主要地方道八代鏡宇土線に接続する延長三千五百十メーターの路線でございます。現在の整備状況は、延長約九百七十メーターが完了し、残区間のうち四百十メーターについて用地補償交渉を進めているところでございます。事業の進捗につきましては鋭意努力していますが、御承知のとおり人家密集地を通る路線でもあるため用地交渉が難航しているのも事実でございます。 八代臨港線並びに東幹線は、八代市の縦横を貫く重要路線であることは御指摘のとおりでございまして、十分承知しておりますが、国、県ともに厳しい財政状況のもとで対応しなければならないわけでございますので、今後ともさらに地元八代市と緊密な連絡をとり協力を得ながら用地買収など事業の推進に努めてまいりたいと考えております。 〔
商工観光労働部長蓼沼朗寿君登壇〕
◎
商工観光労働部長(蓼沼朗寿君) 興人八代工場における希望退職者の再就職対策及び八代地域における雇用対策についてお答えいたします。 まず、興人八代工場におきましては、去る九月五日から九月十五日までの予定で二百九人の希望退職者の募集が行われております。現段階における会社の計画によりますと、十一月一日に百四十九人、来年二月一日に六十人の退職が予定されているということでございます。 これに対しては、すでに九月七日に、興人、八代市、八代商工会議所、興人労働組合及び公共職業安定所の五者による興人離職者対策委員会の設立準備委員会を結成し、その対策の協議を始めたところでございます。対策といたしましては、特定不況業種、特定不況地域労働者の雇用の安定に関する特別措置法に基づきまして、職業訓練に関する特別の措置、特定不況業種離職者求職手帳の発給による就職指導及び失業給付の延長等の対策を講じまして、離職者の再就職について最大限の協力をしてまいりたいと考えております。 次に、八代地域におきます全般的な雇用対策の問題でございますが、お話のように、八月未の有効求人倍率は〇・三一倍というかなり厳しい情勢にあるわけでございます。こうした状況に対処していくためには、長期的には企業誘致も含めまして総合計画に沿った振興対策を計画的に推進していくことが最も重要であろうかと思いますが、短期的には特定業種関連地域中小企業対策臨時措置法に基づく特定地域振興指針の策定とその事業の実施あるいは、さきに申し上げました地域雇用安定法の積極的な活用によりまして、雇用情勢の悪化の防止、求人開拓の積極的な推進、さらには就職相談等きめ細かな配慮をいたしまして雇用対策に努めてまいりたいというふうに考えております。 〔中島隆利君登壇〕
◆(中島隆利君) 八代臨港線並びに東幹線の問題につきましては、前回五月議会の答弁と変わりませんが、しかし、後段では部長の今後の取り組みの決意なりを述べていただきました。聞くところによりますと、八代市長、担当課も陳情されて、市、県一体でやる決意を見せておられますので、ぜひ一体の体制をつくっていただいて早期完成に向けて努力方をお願いいたします。 興人の問題についても、それから八代地域全体についても、雇用対策については十分総力を挙げての取り組みをお願い申し上げます。 ただいま知事の県南の地域振興に対する力強い決意をお聞きしました。県南七十四万県民も非常に安心をいたし、今後知事の県南地域振興の取り組みに大きく期待が寄せられると思います。もちろん、地域振興、町づくりは、その都市の自治体や住民が主体になるべきであります。その主体である住民や自治体の要求や活力を引き出すためにも、今後知事を初め執行部は積極的に市町村に出かけていただき、県民の手づくりによる県南の地域振興計画、重点政策づくりを行っていただきますよう心からお願いをいたします。 県南の状況は、申し上げましたように重大な局面を迎えています。働く場所をつくり地域の経済を高めるためにも、企業の誘致、地場産業の振興、地方都市の建設のための道路網、文化施設、体育施設、社会福祉施設、多くの課題があると思います。知事の主張される、できることから積極的に取り組んでいただきたいと思います。地方中心都市八代に、まず核となるようなすばらしい県営野球場を八代につくっていただきますよう心からお願いを申し上げ、私の一般質問を終わらせていただきます。ローカル的問題が非常に多うございましたけれども、県全土の発展を前提にして発言いたしましたので、よろしくお願いをいたします。ありがとうございました。(拍手)
○議長(小材学君) 以上で本日の一般質問は終了いたしました。 ――
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△日程第二 休会の件
○議長(小材学君) 次に日程第二、休会の件を議題といたします。 お諮りいたします。明十七日は議案調査のため会議は休会いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(小材学君) 御異議なしと認めます。よって、明十七日は会議は休会することに決定いたしました。 なお、十八日は日曜日のため休会であります。 ――
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○議長(小材学君) 以上で本日の日程は全部終了いたしました。 明十七日及び十八日は休会でありますので、会議は来る十九日午前十時から開きます。日程は、議席に配付の議事日程第四号のとおりといたします。 本日はこれをもって散会いたします。 午後二時三十分散会...