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平成28年有明玄海・TPP対策等特別委員会 本文 開催日:2016年12月14日
平成28年有明玄海・TPP対策等特別委員会 名簿 開催日:2016年12月14日

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  1. 佐賀県議会 2016-12-14
    平成28年有明玄海・TPP対策等特別委員会 本文 開催日:2016年12月14日


    取得元: 佐賀県議会公式サイト
    最終取得日: 2023-05-28
    最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1     午前十時一分 開会 ◯古賀委員長皆さん、おはようございます。ただいまから有明玄海TPP対策等特別委員会を開催いたします。     ○ 議 席 指 定 2 ◯古賀委員長=本日の委員会の議席は、会議規則第四条第一項の規定を準用し、委員長において指定いたします。  議席は、ただいま御着席の議席を指定いたします。     ○ 会議録署名者指名 3 ◯古賀委員長会議録署名者として、池田正恭君、坂口祐樹君、野田勝人君、稲富正敏君、以上の四人を指名いたします。  本委員会付議事件のうち海洋環境の保全、水産資源の確保及び環境対策に関する諸問題の調査に関する件を議題といたします。     ○ 参考人の出席について 4 ◯古賀委員長=最初に、参考人の出席についてお諮りいたします。  海洋環境の保全、水産資源の確保及び環境対策に関する諸問題の調査に関する件について、本日、特定非営利活動法人有明海再生機構理事長川上義幸氏を参考人として本委員会に出席を求め、別紙日程のとおり、お手元に配付しています事項について意見を聞きたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 5 ◯古賀委員長=御異議ないものと認めます。よって、そのように決定し、その旨、議長に申し出ることにいたします。暫時休憩します。     午前十時二分 休憩     午前十時四分 開議 6 ◯古賀委員長=それでは、委員会を再開します。  ただいまから、お手元の日程に従いまして、参考人から意見を聞くことにいたします。  それでは、本日、御意見をお聞きする参考人を御紹介申し上げます。  特定非営利活動法人有明海再生機構 副理事長 川上義幸氏です。
     川上参考人に一言御挨拶申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわらず、本委員会のために御出席いただき、まことにありがとうございます。  これより川上参考人には、有明海の現状と再生に向けた今後の方向性について御意見を述べていただき、その後、委員の質疑にお答えいただくようお願いいたします。  なお、参考人は、御着席のまま意見を述べられて結構です。  それでは、川上参考人意見陳述をよろしくお願いいたします。 7 ◯川上参考人皆さん、おはようございます。御紹介いただきました有明海再生機構の川上でございます。よろしくお願いいたします。  本日は、古賀陽三委員長から、「有明海の現状と再生に向けた今後の方向性について」という題をいただきました。現在、有明海再生機構もそういう方向で議論をやっているところでありまして、御理解いただきまして本当にありがとうございます。  有明海再生機構ですが、平成十七年に設立されまして十年が過ぎて、今、十二年目になります。十年間は、主に構成メンバーが大学の先生でしたので、有明海の環境の現状、実態、それと、それがどういうふうにして環境悪化になったかという要因分析みたいなことを中心にやってまいりました。その後、十年を過ぎて、いろいろ考えてみますと、学術ではいろいろ出ても、社会に貢献してないんじゃないかと、そういう反省をつくづくいたしまして、これからは科学をどう社会につなげていくか、こういう活動をしようということで、理事の方も、経済界の人だとか、首長経験者、一般の方も入れて、そして、できるだけ幅広い声をもとに取り組んでいこうというところでありました。  それで、きょうの題材で「有明海の現状と今後の方向性」ということで、まさにそういう議論をやっておりまして、その辺をいろんな方々にお話しする中で、やっぱりもっとたくさんの方に聞いてもらうべきじゃないかという意見をいただいております。あわせて、いろんな意見をまたいただかないといけない。議会からそういう話をいただきましたので、きょうはそういう話をさせていただきますが、逆に忌憚のない御意見をいただいて、厳しい御意見もいろいろいただいて、今後の活動にまた反映させていきたいと思いますので、きょうはよろしくお願いいたします。  座って説明させていただきます。  きょう、私が申し上げたいことは、一つは、我々はどういう現状認識をしているかということをお話しさせていただきたいと思います。そういう現状認識のもとに、じゃ、何を目指して今後活動すべきか、アウトプットを共有化しないといけないだろうと。そして、それに対して今、じゃあ、何をすべきかということを共通認識にして、できることからやっていかないといけないわけですけれども、それとあわせて将来に向けて、それがさらにいい方向に向かうように形、体制も必要になってくるんだろうと思います。そんなことをきょう申し上げたいと思います。     〔資料を295頁から313頁に掲載〕 8 ◯川上参考人=まず、一番目の現状認識ですが、今、我々が一番キーに思っているのは時間だと思うんです。時間が一番重要なファクターだと思っております。漁獲高ピークを迎えたのが、有明海の場合、一九八〇年ごろです。後で図が出てきます。それから三十五年がたっています。そして、ギロチンと言われていますけれども、閉め切りをやったのは一九九七年ですから、もう二十年近くたっているわけです。  しかし、現状を見たら、どんどん漁家数は減っています。今、いいと言われているノリの漁家数も減っています。そして、漁民の方々の高齢化も進んでいます。農業と同じような状態に今あると思います。  じゃ、今、有明海再生に向けて、「再生」という言葉は、有明海再生機構が十二年、その前から再生と言われています。その再生の取り組み有明海特措法という、予算をちょっと肉づけして、ふやしてやっていく事業等いろいろやってきましたけれども、具体的な進展はなしというのは、ちょっと言い過ぎかもしれないんですけど、しかし、顕著な形が見えないというのは、漁民の方も言われるし、いろんな方々が言われている。そういうこと、それで時間が三十五年、二十年たっていることを、どう受けとめて、今後どういう展開をしていくかということが重要な要素だろうと思います。  それと、有明海の環境の変化、実態解明が大分進んでいます。貧酸素がどのようにして起きるかだとか、赤潮がどういうふうなときにどうだというのはわかっていますけれども、じゃ、異変と言われている環境変化原因究明というのは、一〇〇%わからないところがあるんですね、限界があります。これをずっと科学的に追求しても時間がかかっていく。  具体的に申し上げますと、物理的な変動というか、水流の流れだとか、そういうことは大分わかってきていますし、あと科学的な変化も大分わかってきた。しかし、一番問題は生き物との応答ですよね、変化が。そこはなかなか難しいですね。そういうことをきちっとわかって対策をやろうと思ったら時間がかかるという側面があります。  三番目は、有明海再生、最近、私は「創生」と言っているんですね。これはちょっと脱線しますけど、そのままお話しさせていただきますと、有明海閉鎖性海域と言われています。閉鎖性海域は、東京湾瀬戸内海、伊勢湾、いろんなところがありますけど、東京湾だとか瀬戸内海は、大分、何といいますか、再生というか、環境に対する取り組みの体制が大分できているんですね。  瀬戸内海の環境が悪くなった。陸域から栄養塩、要するに汚濁物をたくさん出すから海が汚れてきたということで、窒素、リンを抑えようということで規制をし出したんですね。そしたら大分きれいになったらしいんです。しかし、今度はきれいになり過ぎて魚がすまなくなったと、漁獲が減ったという話になっていて、今度、瀬戸内法の改正で栄養塩の流出、規制をちょっと緩和する方向にあります。ですから、環境をよくするだけじゃだめ、やっぱり水産資源の回復が伴わないといけない。  もう一つ、有明海にとっては、水産資源が回復してたくさんとれても値段が下がればどうしようもないわけですよね。やっぱり豊かに、経済活動としてうまく回っていかないといけない。そうすると、沿岸域活性化沿岸域有明海水産資源を、一番わかりやすいのは、カキ礁で、カキ街道なんかで潤いましたね、一時期。ああいう形で経済活動と連動して地域を活性化させる。そういう環境をよくする、水産資源を回復する、それと地域を活性化する。これを総称して「創生」と。まさに地方創生ですよね。そういうことをやっていくべきだと。そういう意味で「創生」という言葉を使っています。  それに対する「関係者の主体的な取り組みの欠如」と書いていますけど、それを具体的に言うと、実際に有明海沿岸域で進んでいるか。ちょっと言い過ぎかもしれませんけど、裁判の開門の話一辺倒になっていて、本来、この地域の、いろんな問題があると思うんですね。そういったことをもう一回しっかり関係者が認識して、いわゆるチャンスだと捉えれば、その辺の活動が進んでいないのは確かに残念な気がします。  それと関連があるんですが、「有明海再生にあたって問題の所在の明確化が必要」だと書いていますけど、後で図をお見せしますけど、環境が悪くなったのは、誰かがと、誰かがいるところにどうしても焦点が行きがちです。一番のポイントは、有明海というのはすごく自然特性が特異なんですね。一番わかりやすいのは、干満差六メートルというのは日本一です。それによっていろんな変化があります。百年間で一キロ、これまでの経験からいくと陸化しております。アバウトな数字ですよ。そうなると、当然、水深が浅くなったりしますよね。そういうことをどういうふうに今後長期的につき合っていくかという問題もあります。  それと、二十年間に水温が一度上がっています。この一度上がるということは、生き物にとっては結構大変なことらしくて、それがどういうふうに影響するかということは、きちっと科学的には解明はされていませんけれども、その影響もあると。  要するに、有明海自然特性というのは、結構無視できない。  もう一つは、台風が全然来ませんよね、最近は。昔は台風が来てかき回していたと。かき回したら有明海らしい濁った海になって、それが今度は東シナ海に出ていったりとか、浮泥が閉鎖性海域から出ていったらしいんですけど、それがなくなりますよね、かき回しませんから。そうすると浮泥がずっと滞った状態になったりとか、そういうこともあるらしいです。ですから、そういう自然の話をしっかり受けとめつつ。  それともう一つは、今、陸域と海域の関係で、陸域には我々が住んでいますから、我々が悪さをしているわけですよ。汚いものを流すとか、河川の水の量をコントロールする、要するに、飲み水にたくさん使うとか農業に使うとかですね。そういうことによって変化を与える。それとか、土地が少ないから干拓でどんどん前へ出していく。まさに、陸に住んでいる我々がいろいろやってきたこと、これが有明海に対してどうかという話があります。  それと、海の中の話は意外とされていませんが、ノリ養殖がこの地域の一大産業で重要な産業なんですけど、養殖をするための技術的なこと、よく言われる酸処理だとか、施肥だとか、そういう話もあります。そういう海の中の話は、要するに、トータルとしてどうなっているかというところをもう少し見ないといけない。それを考えると、みんな被害者でもあるんですけど、加害者的な要素もあるわけですね。  ですから、みんながやれるところからやっていこうと、そこから考えていかないといけない。そこのところの問題がなかなかきちっと明確にしていないものだから、だから、三番目の「○」で書いているように、主体的な取り組みが進んでいないのではないかなと思ったりもします。  それと、有明海に対する関心の低さ、このことは、今、私は結構気になっていまして、時間が重要だと言ったのは、一つは、三十五年、二十年と時間がたっています。変わらないから漁民の皆さん不信感もあるでしょうし、なかなか進まないと将来の不安も出てくるでしょう。  そういった問題もありますし、もう一つ重要なのは、一般の方々の関心がどんどんうせているということがすごく心配なんですね。マスコミの方もおられるかもしれませんけど、今、マスコミで出る情報というのは裁判の話ししか出ないじゃないですか。本当はもっと、先ほど言った創生、いろんな課題があの地域はあるんですよ。それが動いてないがゆえに話題にならない。しかし、もっともっと動いてやっていかないと、特に、どこも地方創生で大変で、やらないといけないんですけど、沿岸域はもっと重点的にやらないといけない。  幸いに、今、有明海沿岸道路ができているじゃないですか。ああいうのもチャンスとしてうまく使って、沿岸域をどうにかする。そうすると、鹿島、大浦のほうがないと言われますけど、どう延ばすかという議論もしていいと思うんですけど、そんなことをしながらもっと関心を有明海に対して持ってもらう、有明海の環境ももっと知ってもらう。  こういう構図もあるんですね。有明海に川の水が一番多く流れ込むのは筑後川です。四〇%ぐらいと言われています。年間、筑後川の水が、少ないときで三十億トン、多いときで四十数億トンです。大体三十五、六億トンと見たときに、御存じのように、筑後大堰から福岡都市圏に上水が行ってますよね。年間どのくらい行っているかわかりますか。年間一億トンです。そうすると、三十五分の一、三%ぐらいです。これをどう見るか。だから、福岡都市圏にいろんな対応をしてくれという意味じゃないんですよ。そうじゃなくて、きちっと事実関係を認識しないといけない。ノリの養殖を考えたときに、栄養塩が足りないとき、松原・下筌ダムから要請して水を流してもらったでしょう。ですから、川の水というのは資源でもあるんですね。  ですから、もっと福岡都市圏の人に有明海のことを知ってもらいたい。水は山で育むだけじゃなくて、当然、流れて来る水が一億トン、向こうに行っているわけですから、その受益を受けている方は、有明海に対しても思いをはせていただきたい。そういうことも含めて、もっともっと関心を有明海に対して持ってもらう。そういうことによって、非常に大きなマーケットでありますから、有明海の産業とつながることがあると僕は思うんですね。そういうことをやっていくべきだろうと思います。  そこのところをデータでお示しします。こっちが有明海で、これは東京湾です。東京湾は一九六〇年代ぐらいにピークを迎えています。有明海は一九八〇年代に全体の漁獲量、個別の二枚貝漁獲量もそうですけど、ここから減っているわけです。よく言われるのは、一九八〇年代ぐらいから有明海ボディーブローで、いろいろ環境の変化があって、最後のカウンターパンチが諫干だったという人もいますけど、いずれにしても、一九八〇年代にこういう変化があるということをきちっと認識するべきだと思います。  ノリは、環境のことだけではなくて、ノリの技術を日々研さんされていますから、それによって生産高が、幾ら環境が悪くても、それを回復するような技術をされながらやっておられますけど、ただ、傾向的には、特に佐賀県側はすごく今いい、総じてですね。鹿島、大浦のほうは、まだまだ条件が悪いですから厳しい局面が年によってはあるということであります。  先ほど言った漁業従事者ですけど、一番上が長崎県ですけど、佐賀県も、これは単位があれですけど、結構減ってきているんですよね、ずっと、傾向的にですね。この辺をしっかり受けとめて、漁業をどうするかという問題は構造的な問題としてあるんです。農業も同じようですけど。  ノリの経営体も、佐賀有明は赤ですが、このようにどんどん、どんどん減っていると。いろんな事情はあると思いますけれども、そういうことで資源回復と合わせて、このなりわい、水産業をどういうふうにやっていくかという構造的な問題が、まさに農業と同じようにあるんですね。そこをこのチャンスにいろいろてこ入れをしていくということが一つあるんだろうと思います。  先ほど、有明海環境変化実態解明は進んでいますが、有明海異変原因究明は限界だと申し上げました。確かに、いろんなことがわかっています。海水温が高くなっているだとか、潮流が遅くなったとか、透明度が増しただとか、CODが高くなった、赤潮の発生件数の増加、貧酸素の多発、貝類、ごみの問題もノリ業者の方々にとっては結構深刻なようですけれども、そういう問題等いろいろあります。そして、実際、現象として昔とれていたアゲマキがとれないだとか、二枚貝のいろんな問題があります。しかし、そういう実態はわかっているんですけど、なぜそうなったのかというところがなかなか難しいということです。  どうしても原因究明ということで、ターゲットを決めて、あなたが悪いんでしょうという目標でやっていくと、言われそうな方は絶対守りますよね。自分は悪くない。もっと言えば、自分だけが悪くない、ほかに悪いのがいるはずだとかですね。そういうことをやっていきますから、どうしても時間ばっかりかかって長くなるという傾向があります。  よくこういう図が出てきますよね。貧酸素水塊だとか、赤潮がどういう因果関係でどうなるかというのは大分わかってきてはいますけど、あとはそれを、例えば、貧酸素水塊をどう予防するか、出そうになったときにどういうふうに回避するかだとか、そういう問題はあるにしても、じゃ、それをいつごろから、どういう原因で、どうなったかということはなかなかわからないところがあるわけです。  先ほど、問題の所在と言いましたが、先ほど、自然界の変化、温暖化による水温の上昇だとか、干潟がどんどん成長していくとか、台風が来なくなって海底の攪拌が減少している等言いました。それともう一つは、干満差は最大六メートルと言いましたけれども、月の引力は、十八・六年周期が変わる。二〇〇〇年に大規模な色落ち被害が起きたときは潮流の振幅が一番小さいときだったみたいなんですね。今から三、四年前がまたピークでよくなっていて、今、どんどん悪くなりつつある方向らしいですけど、そういう影響も基本的に無視できない問題がいろいろあります。  それと、今、原因究明で一番言っているのはここですよね。海域と陸域との関係、要するに、陸域の人間が都合のいいことばっかりやってきたことによって海域の環境が悪くなる。干拓等によってどんどん前に出していった。最後のきわめつけが諫干だと、こういうふうな構図。それと人為的なこと、「各種物質循環変化等」と書いていますが、先ほども言いました汚いものを流すとか、川の水量をコントロールするだとか、土砂を、川砂をとってしまって、本来、川から流れてくるものが流れてこなくて浮泥ばっかりぐるぐる回るような構図になったとか、そういうふうなことをずっと今までやってきているんですけど、そのほかに海の中の問題もあるわけです。  だから、そういうもろもろの問題、誰が悪いというよりも、考えられる要因に関係する人たちが、少しでも有明海によくなることをしっかりやっていく。当然、私は裁判がどうのこうのは言ってないです。それはもう粛々と必要ならやられればいいです。それだけを待っているんじゃなくて、やれるところから何か行動を起こしていかないと、結局、漁獲が減って三十五年たつし、閉め切って二十年たって全く変化がない。これをまた同じように時間がかかっていって、このままでいいのかという問題提起なんですね。  それで、ちょっとおさらいをさせていただきたいと思います。皆さん方は御案内のとおりかもしれませんけど。この諫干事業の経過で今回のような混乱が起きているわけですけど、なぜ今のような状態になったかということを私なりに整理しました。  一つは、通常、こんな大規模な公共事業をやるときにはアセスメントというものをやります。アセス法というのが平成十三年ぐらいだったと思うんですが、法律でできるんですね。これは昭和六十一年ですから、その前ですから、どうしたかというと、それができる前、県の条例で事業アセスみたいなものをやっているんですね。そのときに有明海は影響ないということであんまりやってないんですよね。当時、今のような調査をやっておけば、二〇〇〇年の色落ちが起きたときにデータがいろいろありますから、もっと科学的な根拠に基づいて第三者委員会も意見が言えたんだろうと思いますが、当時はなかった。有明海はやってなかった。これが一つのスタートの混乱要因になっているんだろうと思います。  それと、平成元年に着手して平成九年、一九九七年に閉め切りをやるわけです。これが土木技術的にはすばらしい技術らしいですよ。一斉にバタバタ、バタバタと水門が倒れるのはですね。しかし、見ようによっては、何か絞首刑をやっているような感じで、それが淡水化することによって生き物が死にますから、これで、ギロチンで息の根をとめたような感じの印象、こういうふうなことで社会問題になりますよね。それと同時に、すごくセンセーショナルだったものですから、漁業の皆さん方は、関係者皆さんは、諫干に対して不信感とか、将来に対する不安がそこで出てきたんだと思うんですね。  それで開門をという話になっていくんですけど、その開門の位置づけは、どこで、どうなったかというと、有明海異変が平成十二年、二〇〇〇年に起きますよね。そうすると、第三者委員会というのが学識経験者漁業関係者を中心につくられた。その中で短期開門がなされた。中長期開門調査をやるべきという話になって、科学的にはなかなか実証は、その当時、データがないですからできてないんですけど、やっぱり気になる点は、やっぱり問題がありそうなので要検討だという話になるんですね。そういうことで開門すべきだという話になりますから、そこから開門という話になってまいります。そういうことで開門調査の動きが出るわけです。  当時はそういうことだったんですけど、中長期開門調査検討会議という、これは農林水産省技術屋集団の会議ができて、開門すると技術的にこんな問題があるとか、いろんな問題があるということで開門を否定するようなまとめに結果的になるんですけど、それを受けて当時の亀井善之大臣が、開門しないと。そのかわり有明海の再生に向けてやれることを我々はやりますということで、「有明海漁業関係者の皆様へ」というラブレターを書いて、こういうことで私らがやれる、皆さん方にとっていい方向は、こういう方向だから、これでやりますということを言うんですね。それで漁業振興予算という、今は基金の議論になっていますが、その前段の予算が平成十六年にスタートします。  しかし、そのときに科学的にいろいろやっているんですが、難しいんですよね、内容が。それと同時に農林水産省から出ていますから誰も信用しませんよね、反対だという関係になっていますから。  そういうことで、要するに、漁業振興予算で先に進むんですね。そのかわり開門調査棚上げ状態になっているんですけど。それでスタートして、その後、三年間たって事業が完了するんです。言ってみれば乱暴な進め方をここでやっちゃったわけですね。そうすると、漁業関係者皆さんは、そんなのはという話で裁判に発展して今のような状態になった。はっきり言って、私が言っているのは、ここの判断がちょっと強引過ぎたのではないか、農林水産省の進め方として。  しかし、当時、開門調査をしなくていいとは言っておられないんですけど、棚上げ状態で予算を獲得する、やってくださいという話は、漁連の内々のオーケーはもらっているんです、当時。そうしないと前に進みませんよね。なんかそれは似ている状況を思いつきませんか。今の基金の話と一緒ですよね。開門調査を棚上げして基金だけという、このまままとまれば同じような構図になるわけです。私はすごく危険だと思っておりまして、同じようなことをずっと繰り返しても、しっかり漁業関係者皆さんと議論して、開門をどうするかということを含めてしっかり議論してやっていかないと、都合のいいように棚上げ状態で水産予算だけという話になると、また後でもめますから、そういうことじゃなく、しっかりした議論をやっていく。  それで、そういうふうになったということで、ここで申し上げたかったのは、一つは、公共事業を進める上での手続の問題が、多少乱暴な部分が局面、局面であったんだろうと思います。そういうことで今のこじれた状態になっていますから、そこをきちっと修復しないとなかなか難しいというのが基本にあります。  それと同時に、先ほどから言っていますように、再生は待ったなし、時間が物すごくかかり過ぎているから、やれるところからきちっと関係者共通認識を持ってやっていかないと、裁判の結果を待つ、それとか諫干の原因究明があるかないか、科学的な結果を待つとか、そうやって時間ばっかりかかっているから、同時並行的にやっていかないと大変な状態になるんだろうと思います。  それで、有明海をこう見てみますと、佐賀県、福岡県、熊本県、長崎県、ここに国が管理する省庁が出てくるか。農林水産省が今かかわっておられますけど、本来、農林水産省は陸の仕事をやるところなのに、なんで海の仕事をやるのかという感じなんですよね。諫干があるからなんですけれども。未来永劫ずっとやってもらえるような話でもない。そうすると、海を管理する人って、いないわけですよね。唯一、関係しそうなのは、環境面では環境省、それと部分的に私がいました国土交通省なんか、河川との関係での話。港湾関係、港湾といっても熊本新港ぐらいしかない、三池港と。要するに、国がかかわるような今の状況にはないんですね。  そうしたときに、最初から申し上げていますように、今やるべきことをみんなで共通認識を持ってやっていくための中心になる人がいるわけです。それは誰か。僕は四県しかないと思うんですね。四県が連携してやっていかないと、誰がやってくれるか、この有明海の創生の問題を。  瀬戸内海東京湾の話は後で例として出しますが、東京湾は行政でも国が主導してやっています、港湾関係と陸域の下水が首都圏は結構多いですから、下水と二つが中心になってやっています。瀬戸内海は、兵庫県知事が音頭をとって、関係県が一緒になって枠組みをつくられたんですね。  今は、諫干絡みで農林水産省だけでやっていますが、何度も言いますが、農林水産省は海のことをやるセクションじゃないんですね。諫干だけの絡みだけですから、そこのところはそこでまた整理するとして、じゃ、後、何もしなくていいかということが私のきょうの問題提起なんです。  ぜひ四県が協調して何か枠組みをつくる。その枠組みも水産資源の回復だけじゃなくて、その前段としての環境をどういうふうに回復するか。それと、もう一つは地域の活性化。そういった創生と言っているもろもろの話に対して一体的に取り組んでもらうとすごくいいのかなと。  これに対して、今、農林水産省の水産基金が一部として入ればいいような気がするんですよね。使う金は水産と環境、それと地域振興。そのためには四県でまずは基金をつくって、四県で出資して有明海のことをみんなでやる枠組みをつくってやっていくということが一つ、それに諫干の関係で水産資源の回復のことをどういうふうに考えるかを組み込むということが一つあるのではないかと思ったりもします。  それで、有明海再生機構では、今申し上げましたような有明海のいろんな問題をどういうふうに皆さんに関心を持ってもらって、先ほどから言っていますように、やれるところをどういうふうにやっていくかだとか、それを中長期的に着実な歩みをするための体制をどうつくっていくかだとか、そういうことを今考えております。有明海の問題を、先ほど言いましたように、原因究明の諫干絡みだけじゃなくて、いろんなやれるところはやれるような問題の所在の共通認識をつくるためにきちっと整理をして、皆さん有明海問題をこういうふうに考えていこうということをつくった上で、そして、当面の問題は開門調査をどうするか、それと有明海再生をどうするかという個別のテーマをやっていったらどうかなと思っています。  開門調査は、今、裁判でいろいろされていますから、裁判に委ねるしかありませんから裁判の状況を見守る。その中で関心があるのは、この有明海振興基金なんですね。これを先ほどから言っていますように、平成十六年の水産予算と同じような枠組みでうまくいくのかなということを私はすごく心配しています。ですから、これをもっと幅広い環境、水産資源回復、地域の活性化、これを三位一体でやれるような形の中にビルトインされるとすごくいいのかなと思っています。  有明海再生ですが、今、裁判の和解でも出ていますが、佐賀県は、当然、開門と再生は一体的であるという主張です。長崎県は別だと、別じゃないと一緒の会議に出ないと言われていますけど、そういう状況になっています。  この建前の世界は置いておいて、じゃ、再生をどうするかといったときに、一つは、今まで特措法だとか、先ほどから言っている有明海関連予算で今までやってきました。これが実際どうだったかという総括をしないといけない。  そういうことを含めて、今後は、この枠組みですが、「有明海再生に向けての取り組むべき課題(四位一体)」と書いていますけど、一つは、先ほどから言っていますように、瀬戸内海だとか東京湾と同じような枠組みで、有明海で体制をつくったほうがいいんじゃないか。これは行政が中心となられて、漁業関係者学識経験者、それとNPOだとか市民団体、みんなが一緒になって、先ほどから言っていますように、有明海の問題はみんなで認識を共有化してやれるところからやっていこうと。最近、ラムサールの取り組みがあるじゃないですか。あれなんかもやれるところから今やるいい事例だと思うんですけど、そういうことをやっていくには体制、組織が要る。それを位置づけするためにもなるんですけど、制度、法律、瀬戸内海瀬戸内法というのがあるんですね。有明海も特別法がありますけど、有明海は異変が起きて、それを対策として手厚くやる予算措置的なことが中心ですから、本来、有明海をどうするか、それに向けて管理の目標をどうするかだとか、これに裏づけされた法律みたいなものが要るんだろうと思います。  それと、冒頭で申し上げましたが、再生機構の問題でもあるんですけど、社会貢献できるような調査研究を、基礎的研究は大分できてきましたから、より社会に活用してもらえるような調査研究をやっていくべきだ。  それと、何をやるにしても予算が要りますから、予算を獲得しないといけない。そのときに、この予算がすごく気になるんですね。これをうまくやっていけば、いい方向にいく可能性がある。  それと、「有明海及び沿岸域の再生・創生を考える会」というのは、そうはいっても、今、関係県で一緒にやるということはなかなかできないですね。今、行政は裁判を抱えていますから動けない構図になっていますから、任意でそういうものをつくれないかということでちょっとやっています。これは後で紹介しますけど。  それと、ラムサール条約で、今、荒尾、東与賀、鹿島で進んでいますけど、こういうところも連携しながら、今、取り組みされつつありますので、こういうことに期待したいです。  もう一つは、再生機構も研究者の集まりですが、純粋に研究する研究者会議というのがありますので、この辺を活性化して社会貢献型の研究をどんどんやってもらおうと。  こんなふうなことを今やっております。  先ほどから言っていますが、瀬戸内海東京湾の事例をもとに有明海の体制をつくっていくべきだと思っています。行政が今なかなか動けないとすれば、任意でそういうものがつくれないかということで、第一段階、第二段階、第三段階、最終段階にはこうだということなんですけど、第一段階では、呼びかけてもなかなか大変なんですよね。実際は行政に声をかけても、これはどういう位置づけでやっているんだとか、そもそも論をずっと聞かれて、活動する前にもう息切れするような構図にすぐなるんですけど、そういうことではない、大学の先生を中心にコア会議みたいなものをつくって、共通認識をつくって、今、準備会的に、行政として国、県、それと漁協、NPO、数はまだ多くありませんが、準備段階でそういうことをやっています。任意でそういう組織がつくれないかなという話を今ちょっとやっております。  それと、有明海創生の取り組みということで、例えばという話で上げています。今、干潟の健全化ということでラムサール条約の指定の三地区が、この前、シンポジウムをやって連携してやっていこうという話になっています。それと、カキ礁の復活ということで、NPOもやっていますし、漁協の有志の方々もやられています。カキ礁をもう一回復活させようという取り組み。これがシンボル的な位置づけで干潟の健全化でできないかなと。  それと、健全な水循環系への改善。ちょっと言葉がかたいんですが、先ほどちょっと申し上げましたように、これは小さくて見にくいんですが、筑後川がこうありまして、上流から下流、有明海へつながっていますけど、有明海と河川のつながりというのが今までないんですよね。そういう連携を強める。それと同時に筑後川福岡都市圏に水が行っていますから、水共同域ということで、福岡都市圏と上流はつながりがあるんですけど、有明海を巻き込んで、こういう水の共同域みたいなものをつくって連携してやれないかなと思っています。  筑後川では、「筑後川フェスティバル」というものを市町村で当番を決めて回してやっています。三十回目を去年、大川市でやったみたいです。今度、三十一回目を福岡市でやります。域外でやります。ただ域外じゃなくて、これに有明海も参加してもらおうかなと今思っているんですけど、有明海を知ってもらういいチャンスだろうと思っています。こういう水の縁で関係者が一緒になっていい方向に持っていくような取り組みをやったらどうかなと。  それと、有明海にとって、後で出しますが、工夫することによって有明海と協調した取り組みができます。具体的にはノリの養殖に栄養塩が足りないとき、松原・下筌ダムから放流したりだとか、佐賀県の塩田川の上流のダムから放流したりだとか、いろんなことをやっています。そういうことですとか、佐賀市の浄水場で、冬場、栄養塩を落とさずに、栄養塩を多少多めに流している、処理能力をちょっと落としてですね。それによってノリの生産が回復する。言ってみれば、水の循環をうまく、皆さんがいい方向に使っていくようなこともやっているということですね。  それとか、環境修復・管理のためのコーディネーションということで、今、有明海再生機構では環境省に予算要求をしています。何をやろうとしているかというと、現状をいろいろシミュレーションしています。現状がどうなっているかということはシミュレーションできます。精度が悪いのは、生き物との応答のことはあんまりよくないんですけど、流れ場だとか、科学的変化というのは、条件をきちっと入力すればある程度わかるようになっています。それで将来をどうするかという推測もできる。しかし、問題は過去がわからないんです。  先ほど、一九八〇年に漁獲がピークだと言いましたけど、これはお金になる有用魚種だけです。有明海のいいのは、お金にならない多様な生物がすんでいる。そういった中で金になる有用魚種も豊かになる、そういう構図がある。要するに、生物の多様性があるということだと思いますけど、その実態がわかってないんですね。漁獲は統計資料で出てきますけど、金にならないいろんな生き物のことはわからない。それを生き物の死骸のDNA鑑定をやったり、貝殻の履歴とか、できるだけ推測して、過去をさかのぼって一九八〇年代が豊穣な海としますと、その海というのはどういう状況だったかということを推測しようと今しています。そういうことを推測することによって、要するに、生物の多様性を維持しながら有明海水産資源をどういうふうにしていくかという議論が一つ出てくる。そういう延長線上で将来をどういうふうにしていったらいいかというビジョンが出てくると思うんですけど、そういう予算要求をしております。  そんなことで、有明海の将来的な話も、健全化に向けて考えていったり、そういうことをやっていく。環境改善目標の設定みたいなことにつながっていくと思います。  それと、環境監視ネットワークの確立ということです。例えば、貧酸素水塊が起きそうになったときに、どういうふうに管理しながら、どういうふうに水産資源を避難させるかだとか、今後、科学技術によって水産資源がダメージを受けないようにすることの検討はいろいろ可能だと思います。  最後には、有明海の干潟というのは資源としてすばらしいと私は思います。これを世界的にも、例えば、お隣の韓国もそうですよね、それとオランダだとか、そういうところで共通の干潟の価値を共有するところとネットワークを組んで、もっともっと有明海を世界にPRする。その結果、いろんなことが相乗効果で有明海にとっていい方向にいくことも考えられるのではないかと思います。  最後に、水循環ということを言いましたが、いろいろ工夫しながら、人間が勝手に水量をコントロールしたり、汚いものを流したりしてきたということで、それを改善しないといけないわけですね。先ほど言った流量を流した年ですけど、平成二十一年ですけど、一月末ぐらいに流しています。ほかの年に比べて流量が少ないのがおわかりだと思います。十二月、一月の流量が少なかったものですから栄養塩が少なくなって、この年に流しています。  それと、これは佐賀市の下水道処理場ですけど、アンモニア性窒素を処理せずに流す。そういうことによってノリの栄養塩をふやすということもやっています。  最後に、今お話しした内容とも絡みますが、こういうシンポジウムを二月十一日にやろうと考えています。タイトルは、仮題ですけど、「希望を育み、有明海再生・創生にどのように取り組むべきか ~歴史に学び、現状を冷静かつ的確に把握し、未来志向で考える~」ということで、基調講演は東京大学の経済学部の玄田先生という方にお願いしております。この方は「希望学」という学問をやられています。地方創生とかいろいろ取り組んでおられますけど、今後の主役は若者だと思うんですね。若い人たちが、地方創生と、雇用の話もあるでしょうし、いろいろありますけど、将来夢を持てない、これが大きな問題で、そういう中で希望の役割みたいなのもを、日経新聞の「やさしい経済学」でシリーズをずっと出されています。そういう縁でベースの議論としてこういうテーマでお話をいただきたいと思っています。  パネルディスカッションでは、調査研究、広域行政、地域行政、漁業、NPO、それぞれの専門家に出てきていただいて、先ほどから言っていますように、皆さんがやれるところからやっていこうと思ったときに、それぞれの分野の方々で、どういう現状になっているかということを出し合って、そして、それぞれがやれるところからやっていくということが一つ。それと、そういう個々の立場の活動をトータルとして連携してやっていくことが必要になってきますので、その辺をトータル的にどういうふうに取り組んでいくかみたいな話をやっていって、先ほどから言っておりますように、有明海の再生、創生に向けて、やれるところからどういう活動をしていくかということを議論したいなと思っています。  二月十一日、九時半から、「佐賀市ほほえみ館」で行いますので、ぜひ御関心のある方は参加いただければありがたいなと思います。  以上で終わらせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。 9 ◯古賀委員長=ありがとうございました。以上で川上参考人からの意見陳述は終わりました。  次に、ただいまの陳述に対し、質疑を行いますが、本日の質疑は、質問のある委員の挙手をお願いし、こちらから指名の後、指名された委員は自席から質問を行ってください。また、参考人におかれましても、発言の際は挙手にて委員長の許可を得て起立の上、お願いいたします。  なお、参考人は、委員に対して質疑をすることができないことになっております。  それから、本日は、おおむね十二時までを予定しておりますので、委員の皆様方の御理解をお願いいたします。  それでは、質問のある方は挙手にて発言をお願いいたします。 10 ◯定松委員=川上さんには、お忙しい中に、こうして当委員会参考人として来ていただいて本当にありがとうございます。  有明海の再生に向けての取り組みとしては、漁業者も一生懸命になって海洋の清掃、それから、みずからにも原因があるのではないかというふうなことでいろいろ考えて対策等もとっておられますが、今のところ、業種としてはノリだけがどうにか日本一を続けている。そのノリの日本一の原因は、これはもうやっぱり漁業者の努力であろうと思うわけであります。これはノリの品種改良等が進んでいるのと、アカグサレ病等の発生を即座に見つけて対応がきちっとできている、そういったことにあるのかなと考えるところであります。  ほとんどの魚介類については、先ほど資料でお示しいただきましたように、一九八〇年代をピークに減少傾向にある。これは取り組みによっては、また生息数がふえるのかどうか。これは川上さんの個人的な見解でもよろしゅうございます。それが一つ。  それと、平成十六年度に農林水産省の判断として、開門せず、そのかわりに有明海の漁業者の皆様に対して漁業振興予算をそのときにつくったと。こういった取り組みというのは、海底耕うんなり何なりというのは、それ以前にはなかったんでしょうか。それが二点目です。  それと、今回、農林水産省が示している基金案、きょう、何となく流れで聞いておりますと、川上さんの口からは、そっちも有効ではないのかなというふうな捉え方として私は聞いたんですが、それについてお聞かせ願いたいと思います。 11 ◯川上参考人=まず、一点目の二枚貝の復活ですが、これは私もよくわかりません。ただ、先ほど事例を出しましたけれども、カキ礁の復活は結構期待しています。あとは有明水産振興センターのほうでアゲマキだとかいろんなことをやられているから、その辺に期待したいと思います。専門家だけじゃなくて、一般の方々も参加しながら、ある目標を持って取り組む活動としてカキ礁の復活はすごく期待しています。量がふえることはもとより、ある目標に向けてみんなが一緒になってやるという、この取り組みに私は期待いたしております。  二点目は、平成十六年の話は一つのきっかけ、農林水産省が出す話ですが、その前から特措法というのがありましたね、二〇〇二年か二〇〇三年にできて、それは関係する省庁が有明海の再生のために貢献できるものに対して予算の上乗せ補助をするとかして、とにかく有明海の再生に向けて物事が進むように法律に位置づけされた。その中で海底耕うんだとか覆砂等が行われました。それは水産庁の予算だとか、県の単独予算だとか、そういうことで進められたように思います。  基金については、私は、開門を絡めたどうのこうのじゃなくて、再生、創生に向けてはお金が要りますよね。きれいごとで体制ができても、そのときにお金がなかったらどうしようもないわけで、それをいいきっかけとして、お金だけですよ、としてうまく活用するという意味合いで言っているだけで、これが条件に合うか合わないかによってどうかという話は私は判断をしてません。  ただ、心配しているのは、平成十六年と同じようなスキームでやってもうまくいかないんじゃないかと。創生という言葉を使いましたが、有明海の環境によくなることにも手当てが要りますし、水産資源の回復にも必要です。それと地域の活性。この目標の三つを一体的に取り組むべきですし、それと合わせて関係者がばらばらじゃなくて、やっぱり目標に向けて何が一番最適な取り組みかということをきちっと議論してやる。そのためには議論するための場が要りますから、今は水産資源回復のための場だけなんですね。水産関係者だけの場になっているから、そうじゃなくて、環境、それと地域の活性化を入れていいと僕は思うんですよね。経済活動だとか水産業のなりわいを、今後、若い人にとって魅力のある水産業にするためにはどうしたらいいか。六次産業という言葉が使われていますけれども、そういう取り組みもあっていいと思います。
     そういうものを、いい機会だから一緒になって議論をして、この有明海沿岸域、要するに、環境が悪くなったという負のイメージだけじゃなくて、それによっていろんなお金がおりているのは事実ですから、上手にそこを活用しながら、有明海沿岸域がよくなるような取り組みをぜひやっていきましょうというのがきょうの私のお話の主眼であります。 12 ◯定松委員=すみません、もう一つ聞き忘れておりました。きょうのお話の最初の辺で、漁業者が減少してきているんだけれども、これは南総開発のときはかなりの漁船が諫早湾周辺に大挙して、そして、新聞、テレビでも連日のように、空の上からでも報道がなされたことを覚えております。  漁民の減少とともに、県民、九州各県の一般の方の関心も薄れているというふうなことが危険視されているのかなというふうに考えましたが、この解決策といいましょうか、何かアイデアあたり持っておられたらお願いします。 13 ◯川上参考人=これまでの活動でシンポジウムとかやってきたんですね。いつも来られる方は大体一緒なんですよね。これは我々の広報の仕方の問題もあるんですが、もうちょっとやり方があると思います。  きょう、お声かけいただいて来たのも、議員の皆様方にいろいろこちらのお話をさせていただいて、いろいろ厳しい意見もいただいて結構ですが、そういういろんな場を通じて有明海の話題を出していかないと、それもわかりやすくですね。裁判は難し過ぎますよね。何か違約金が出てきたと思ったら、いろいろ専門用語が出てきてですね。有明海は、みんなが関心のあるテーマでいろんな議論をする必要がありますし、それが結果的に、やれるところからやっていくような運動につながるんだろうと思いますけれども、きちっとした、明快な方針は今まだ持ち合わせていません。 14 ◯稲富委員=こんにちは。久しぶりに。今、川上さんからお話を聞いていて、過去にわたっていろいろ思い出すことがあるとですよね。どういうことかといえば、そもそも諫干はなぜ始まったか。二十年か三十年前、私が餓鬼のころ聞いた話は、その原因は本明川の氾濫から始まったというふうに聞いていたわけですね。当時の建設省が、あのような大水害を起こしたらいかんというて、青写真を引きよったと。ところが、長崎県議会か地元からか知らんけれども、長崎県には低地が少ないと。農地として使うのも将来的にはよかけん、平地が欲しいんだというて、農林水産省が横取りして、あの諫干事業を起こしたのではないかと。だから、何といいますか、フライングというか、勇み足というか、農林水産省がやる公共事業は非常に県民に貢献しとうともあるばってんが、こんなところに、こんな道路を作るのかという物すごい設備投資をする農林土木の工事もあったんですよね。  そういう意味で、諫干がそもそも始まったいきさつ、その辺をちょっと教えてくれんですか。 15 ◯川上参考人=ちょっと私も事実関係を正確に申し上げられるかどうかわかんないですが、私の認識は、戦後、食料が足りなくなって食料増産、要するに、干拓があちこちで進み、開墾も青森とか進んでいますから、要するに土地がないということだったろうと思います。構想では、有明海全部を閉め切るような構想もある時期、書かれたように聞きますし、南総計画は諫早湾を全部閉める。それからどんどん後退して今の話になったということです。もともとは干拓事業、要するに土地をふやす。特に、長崎県の立場であれば土地が少ないですから、土地に対してすごく、佐賀県では考えられないような土地に対する思いがおありだと聞いています。そこで干拓事業が進んだものと私は思っています。  その後、公共事業が長くなっていくと、時代とのマッチングがどんどん薄れてまいりますから、先ほど委員が言われたように、防災の話が出ました。ただ、諫早の水害は昭和三十二年なんですね。あれは基本的には山に降った水が本明川に流れてきます、それがあふれたわけですから、山のほうで抑えないとどうしようもないです。  農林水産省が干拓事業で防災面を強調されているのは、そういう市街地の水害じゃないです。要するに、調整池の推移を低めにコントロールされるんですね。そうすると、雨が降ると内水被害といって周辺の調整池に面したところが、満潮と重なったら水はけが悪かったのが、常に低いわけですから、初期の内水防除になるわけですね。そういう効果があるということで、市街地の水害にきくとかいろんな話もありましたけど、そこは私が言うのが正しいです、防災に対する物の考え方は。  ただ、事業の目的は、正確かどうかわかりませんが、干拓、要するに、農業の事情で必要性が出てきたのではないかなというふうに私は認識しております。 16 ◯稲富委員=農林水産省の名誉を守るような答弁をいただきまして。諫干でがちゃがちゃしようとき、既に米は余りつつあったんですよね。それでも干拓をするのかという議論が確かにあったような気がいたします。  きょう、川上さんから、あっというような話をいろいろと聞かせていただきました。というのは、百年間で一キロも陸地化すると、これは大変なことですね、自然環境に及ぼす影響は。そういうこととか、福岡市の水に佐賀県もダムの負担金とか何とか払いよったとに一億トンも福岡市にあげていたとかさ、そういうのは全然知らんわけですね、僕らは。その一億トンの水が有明海にもし流れとったらどういうふうな環境変化を与えとったかとか、そういうことを考えさせる貴重な意見を聞かせていただきました。  有明海はこういうふうにしとって、筑後川があって、牛津川があって、六角川があって、塩田川があって流れてきようですね。長崎大学を出た医者の先生が武雄にいらっしゃったんですね。「稲富君、六角川の水はあんなに濁っとうばってん、塩田川の水は、なぜあんなに澄んどうか知っとうや」と言われたんですね。「おい、ちょっと知らんにゃ」と言うたです。なしでしょうか。 17 ◯川上参考人=六角川の管理者をちょっとやった時期もありますが、六角川は佐賀でいう江湖ですね。要するに、低平地で干潟が成長して、上から淡水が流れてきたら淡水のところだけ江湖ができますよね。あれが大規模にずっと武雄まで延びたということですから、いってみれば入退潮が有明海の影響が及ぶと。塩田川は従来の河川みたいな感じで勾配で流れていますから、河口付近は影響を受けるんでしょうけれども、その違いで、川というか、六角江湖みたいな感じですよね。その違いだろうと思います。 18 ◯稲富委員=その先生が言われたのは、六角川の水が流れている近くはノリの不作とかなんとかはなかばいと、塩田川の右、左でつくっているところはノリの不作はあるばいと。なぜかと言うと、泥の粒子が細かくて栄養をたくさん含んでいるからだというふうなことを、もう二十年ぐらい前に教えてもらったことがあるとですよね。  そして、さっき、干拓が百年間で一キロと言われたでしょう。それを私たちの町、武雄市で当てはめると、よくわかるんですよね。私の住所は佐賀県武雄市朝日町です。朝日というと太陽の朝日に関係してそうだが、本を読んでみると、「浅い潟」と書いてあります。あの辺りまで潮の満ちてきよったとですよ。だから、そもそも人間が住んではいけなかったわけたいね。「北方」て言うでしょう、あれ、「北の潟」と書いてある。あの辺りまで潮の満ちてきよったとやあもん。石丸さんの住んでるとこ、鳴瀬は、潮の満ち引きしてこうこうしよったとこやあもん。それを思い浮かべてみると、おもしろい名前がいっぱいある、潮見とかね、いっぱいあるとですよ、武雄に。結論は、海やったということです。その辺りまで有明海の潮見しよったと。それが一キロ、自然に干潟が陸地化して、おまけに人間が干拓して現状のような有明海にしてしまったというふうな感想を私は持っているのですけど、人間が有明海に負荷した原因というのは物すごい多大ということですね。それを一方的に諫干のせい、諫干のせいと言われる議論もいかがなものかと思いますけど、私の意見に反論をお願いします。 19 ◯川上参考人=反論はないんですけど、そういう議論をやっぱりやるべきだと。今まで一つの話題だけでやっていましたけど、いろんな物の見方というのは当然ありますよね。  きょう、私が提案したのも、自然界というのは、こんな変化があるということは意外と知られてない、あんまり言ってないですよ。それを強調すると、漁業被害を受けた方々は、じゃ、泣き寝入りせんといかんのかというふうな話になりますし。やっぱりそこのところはそうなんですけど、ただ、対策だとか、それを的確にやろうと思えば、諫早だけで解決するんだったら問題は時間をかけてもいいと思うんですけど、多分、原因究明もそう簡単にはいかない。諫早が悪いとは言ってないんですよ、やっぱり悪いんです、影響はあると思います。  ただ、それだけをずっとやっていたら、やっぱり物事は解決しませんし、地域がやっぱり、何といいますか、盛り上がったときにみんなでわっとやらないといけない。盛り上がりが今どんどん減っているものですから。盛り上がりのテーマが開門だけだったからですね。じゃ、開門が、はしごが外されたら何にも残らないということが一番怖いわけです。開門は開門で粛々やられたらいいと僕は思うんです。ただ、ほかのことも一緒になってやっていかないと、もう二十年、三十五年たって、また倍かかるといったら、これはとんでもないことですよね。だから、そこの時間というファクターをしっかり考えて我々はやっていかんといかんなということを強く感じます。 20 ◯定松委員=佐賀、福岡、熊本、長崎の四県が連携して主体的に取り組むことが重要というお示しをされました。それで、山口知事も四県のトップ会談というのを早く実現せんばいかぬというふうなことで言われておりますが、長崎を外すと三県はできるわけですよ、今でもあっているわけですから。四県で有明海全体のことを考えるための取り組み、できる方法が何か思い当たればお願いします。 21 ◯川上参考人=先ほどちょっと紹介しましたが、行政も入っておられるんですけど、今、担当者が来られています。大学の先生を中心に発起人になって、みんなで議論する場をつくろうねという任意の組織を準備会的にやっているんですね。各県にもいろいろお話に行って、長崎県にも行きました。「なかなか裁判もあるから厳しいよね」と言われましたが、一応オブザーバーで担当者をよこしてくれています。その準備会は四県の担当者の方々、水産の方が多いですけど、それと国も最初は水産庁も本省から来てくれたりとか、農林水産省、それと国土交通省、いろいろなところから来ていただいてやっていますが、どうしても事務レベルなんですね。  そうすると、ある一定何かやろうとした時に、トップを見て、上が動けなかったら、結局、そこでとまっちゃうんですね。ですから、今、壁にぶち当たっています。できれば、トップでばっと、今言われたように四県の知事で開門、裁判は置いておいて、やれるところから一緒になってやっていこうというのがまとまれば、号令をかけていただければ、我々は汗をかけることがたくさんあるんですね。  だから、ぜひともそういうふうにしていただくと、前座の仕事は我々がやりますので、ぜひそういう前さばきを知事さんか、もしくは県議会でもいいと思うんですね。四県の県議会が連携しながら、とにかくやれるところからやるといったときに、長崎が出てきやすいような環境でまずやって、そしてまた、裁判の行方で開門の話がホットになれば、そこで長崎とまたやればいいわけです。いろいろやり方はあると思います。  いずれにしても、構造的に上が動かないと、なかなか前に進まないという構図になっていますから、ぜひ行政か県議会でも何か連携が進むとありがたいなと思います。 22 ◯定松委員=私ばかりすみません。諫早湾干拓の計画で、もともとはもっと壮大な計画をつくっていらっしゃった。それが計画の段階でどんどんどんどん後退して、今のところに堤防道路をつくりましたよね。堤防道路をつくって内水の部分がまだかなりあるわけですよ。内水部分というのは、先々、干拓になる可能性もあるとですか、それとも内水湖として未来永劫そのまま残すのか。あれを残したがゆえにいろいろ漁業問題も出てきているのではないかと私は思うんですが、そういった内水湖のための工事とかいろんなことを考えられていましたよね。初めは、あれをきれいな水になして流してくれとか、そうした文言もつけていたと思いますが、そこら辺に関しての御意見が何かございましたらよろしくお願いします。 23 ◯川上参考人=干拓の今後の伸長がどうなるかというのは事業者じゃないとあれでしょうが、常識的に考えて、稲富委員も言われましたように、今、米余りで農地が要るということは説明しづらいですよね。ですから、事業目的として新たに起こすことはなかなか難しいんじゃないかなと私は思います。  それと、調整池の問題は、こういう複式干拓の宿命ですよね。八郎潟もそうですし、児島湾でもそう、みんな水質は悪いですよね。ですから、それはもう前々から水質が悪くなるということは皆さんが心配していて、やっぱりそうなった。ですから、これとどうつき合うかというのは、こういう干拓をやったときの重要なテーマだろうと私は思います。これは長崎県が一番身近でありますから強く関心を持っておられると思います。それに今度は有明海のほうが心配になってきたわけですね。  ですから、あの調整池の水をどうするかという話は、本来は長崎も、三県も同じ土俵でよくする方向は、ベクトルは一緒のはずなんですよ。それを結局、裁判だとか、何か勝ち負けの世界に引用されるということでお互い気を使っているんだと思うんですけど。純粋に考えれば、あの調整池の水というのは、あの複式干拓をやった結果として宿命的につき合わんといかんわけです。どうするかという方向は一緒だと僕は思うんです。そこが何となく裁判だとか今までの経過で、なかなか建前の世界でしっくりいってないんでしょうけど、その先の事業者は農林水産省なんです、一緒なんです。農林水産省に対する調整池の水をどうするかというのは、本当は地域の対応のはずなんですよね。それがなかなかうまくいかないのは、やっぱり今までの経過の糸のもつれみたいな感じになっているような気がします。 24 ◯定松委員=最後に、私は、一般質問とか委員会質問のときに、調整池からの排水、これは汚れた淡水ですが、それを排水するときに、ニキロ先ぐらい先まで行けば海水と混ざっているんですよ、ですから影響がないんですよという言い方を農林水産省がされます。県の執行部あたりも農林水産省がそういう分析をしているんだから、影響があるのかないのかと私が聞いても、「影響があるとは言えない」という答弁なんですが、参考人はどういった考えをお持ちですか、影響があるかないか。淡水が流れていく過程において、そこに生息している二枚貝あたりへの、淡水の連続的な流入によって死滅しているのではないかなという気がしているんですが、そこら辺の見解を、これは個人的な御意見でもよろしゅうございますので、お願いします。 25 ◯川上参考人=調整池の排水問題は、直接ではないんですが、新聞情報等でよく話題になっているように私は聞いています。農林水産省がいろいろ検討されているのも内々に聞いております。多分、すごい金をかけてやっておられると思います。  いずれにしても、有明海の問題は、漁民の皆さん方が指摘されたいろんな話題がありますよね。それに十分応え切れないまま先に進んでいますから、ずうっと課題が残っていますよね。そういうのを一つ一つ御懸念を払拭するような取り組みをしたらどうかなと思っています。  有明海再生機構もそういうことで、例えば、排水が、「汚悪水」という言葉が使われますよね。それが蛇のように波打って行くと。これに対してどうかということで、いろんな検討を佐賀大学でもやられたりしているんですけど、どういうことなのかということを科学的にきちっと整理する必要があると思っております。  今の時点で影響があるかないかというところは、ちょっとコメントは差し控えたほうがいいかなと思いますが、ただ、そういう整理を、疑念に思われるようなことを一つ一つ潰していかんといかぬという認識は持っていまして、できればそういうことも有明海再生機構で取り組めればやっていきたいなと思っています。 26 ◯坂口委員=自由民主党の坂口祐樹でございます。二点、お伺いをさせていただきたいと思います。  一点目は、有明海再生機構の今後の使命、二点目がナルトビエイ対策についての御所見というか、なかなか難しい問題ですけれども。  まず、一点目ですが、平成十七年にこの機構が設立されて、今、十一年が経過しています。きょうの資料の二枚目によく記されているんですね、「本日、申し上げたいこと」と。確かにごもっともなんですね。水温が一度上昇した、台風が来ない、酸処理、そして生活排水等々の問題があって、そういう基礎的な研究はされているけれども、なかなか原因究明は難しい。やっぱり自然界ですから、なかなか難しいんですね。有明海の異変の原因は何だろうということは、僕たちもやっぱりよくわかりません。そういう中で関係者皆さんたちが模索をされている。当事者の漁業者、行政でいうと佐賀県、沿岸の市町、恩恵をあずかる旅館業、飲食業、加工業者、それぞれの方が、それぞれ努力をされているんですね。しかし、なかなか成果を出すことができない。そういう中で、有明海再生機構は、今後どういう使命を果たさなければならないかということについてお伺いしたいというのが一点。  もう一つ、アカガイ、モガイですね、モガイがとれなくなった。クマサルボウか、大きなアカガイがとれなくなった、アゲマキがとれなくなった、タイラギがとれなくなった。そういう中でそれぞれ努力をされて、小さなモガイはとれるようになって、アゲマキも今順調に試験養殖されています。アサリも去年、何となく兆しがよくなった。しかし、タイラギ、有明海の異変の象徴がタイラギにあると私は思っているんですね。  タイラギについては、ことしの春先は稚貝が立っていたけれども、結果、ナルトビエイが食い尽くしたという話なんですね。これまで立ち枯れへい死とか、赤潮の発生、貧酸素水塊の長期的な発生の中で立ち枯れへい死という話でありましたけれども、ことしに限ってはナルトビエイという話なんですね。もう九割方、ナルトビエイの食害ですよというお話なんですね。  有明海再生機構原因究明を大分されてきた。そういう中でいかに社会貢献をするというと、いかに漁獲に結びつけるかということが有明海再生機構の今後の使命だと僕は思っているんですね。  そういう中で、象徴であるタイラギに対して私たちはどういう取り組みをすればいいかということで僕は悩んでいるんですよ。例えば、有明海の出入り口というのは、南島原と天草の、たった五、六キロですよ。あそこに網を張ればナルトビエイは、今、温暖化で一度上昇しましたという話の中で、これからも基本的に温度は上がっていくんですね、水温は上がる。すると、本来いるべきはずのないナルトビエイが水温が上がる五月に入ってくるわけです。水温が低くなる十一月、十二月に出ていくわけですね。そしたら五月の時点で網を張り尽くせばナルトビエイは来ないんですよ。それとか、はえ縄をそこに張るわけですよ、たった五、六キロですから。そしたら五月の時点でナルトビエイを一網打尽にすると、ナルトビエイの食害はないんです。すると、今回、タイラギ漁ができたという話なんですね。現実的にどうかというのはわかりません。いろんな話を僕たちはあちこちでやるわけですけれども、そういう具体的な策を有明海再生機構が発することができれば、今後、世の中に対する使命感を果たしたということになり得ると私は思っているんですね。  今後の使命、そしてナルトビエイについて、これは答えることはなかなか難しいかと思いますが、御所見をお伺いできればと思っています。 27 ◯川上参考人=冒頭にもちょっと申し上げましたが、科学の蓄積が、いろんな社会の関心事、社会問題にどう貢献するかということをやっていきたいと。それに尽きるんですけれども、具体的には先ほどちょっと申し上げましたように、問題の所在が偏っていると。要するに、みんな参加型でやろうとしたときに認識の共有化が要ります。これは私だけが言ってもどうしようもなくて、その考えにみんなが同調してもらわないと動きが出ないじゃないですか。  ですから、そういう輪を広げていくような科学的知見をベースにしたわかりやすい資料を提供したり、そういう認識を共有化できるような場面設定をして何かやるとか、そういうことをやっていかなければいかんなと思っています。  それと、具体的な話は、一番は再生策がすごく皆さん関心があるということで、先ほど、みんなで考えていこうということで考える会をといったときに、一つは再生策を一般の人に呼びかけて、民間企業なんかにも提案型でやってもらうと。一時期、特措法ができたときは、そういう動きが結構あったんですよね。しかし、マーケットがあんまりないなと思ったらみんな関心が薄れて、今、研究だとか投資をしようというところは減っているように思います。  だから、そういうことをプロポーザル方式で公募して出してもらうということも考えたんですけど、内部でいろいろ議論があって、その前にまだやるべきことがあるだろうということです。  そんなふうなことも今後やっていって、総合力ですよね。知恵が一〇〇%、この人が正しいというのはないから、いろんなアイデア、それとか科学的に蓄積して、さらに深めた知見のもとにやるとか、そういうことを考えながら、おっしゃるとおり、再生で何か実績を上げないと、なかなか評価もないし、また、関心も高まらないのかなということを強く思っています。今の段階でどうするかというところはこれからなので、具体的な話はちょっとできない状況です。  ナルトビエイの話は、私も委員と同じように、あるときは二酸化硫黄がどうだとか、あるときは貧酸素がどうだとか、なんかよくわからないんですよね。結局、タイラギだけは生態系と環境とのマッチングがよくわからない、何でそうなったかというのはですね。一時期は貧酸素みたいな話で、貧酸素対策を特に大浦寄りの漁場ですよね、貧酸素は。そういうことの議論があったんですけど、なかなかその先が進んでないですよね。究極的にナルトビエイと言えば一番わかりやすいんですよね。何かこう悪い人がとってきて、いつの間にか盗まれたという世界ですもんね。それは意外と原因究明の、ある面では究極的な世界に入っていて、もっと本当は根本的なところをもう少し勉強せんといかんところがあるんですよね。  私は専門家じゃないのでよくわかりませんが、確かにおっしゃるように、タイラギが象徴的だということはよく理解できます。しかし、現実的には今のような話でなかなか難しいからですね、どうするか。やっぱり最初は、わかりやすいのはカキ礁だろうなと思っています。みんなが有明海に対して少しずつ関心を持つ。二枚貝をふやしていく。究極的にはタイラギですけど、そういうことでやれるところからやっていくということで、タイラギは有明水産振興センターが中心にいろいろやっておられますから、その辺の成果なんかも期待したいと思っています。  お答えになっていないかもしれませんが、すみません。 28 ◯古賀委員長=ほかに質問はございませんか。 29 ◯藤木委員=僕も、委員会で審議というか、議論に参加することがここ何年かの間に何回かありましたが、佐賀県も魚種別にというか、随分対策を講じておられます。なかなか成果が上がっていない。さっきの坂口委員の話では、それなりの成果ということなんでしょうけれども、全体的に見るとあんまり上がっていない。  それは川上さんのほうから見て、佐賀県の漁政課というか、漁業振興策の足らざるところというんですか、佐賀県の漁業に関する政策について足らざるところはどういうところがあるのかということをまず一点お伺いしたい。  今度、改めて魚種別にまで対策を講じてやっていて、成果が上がったり、上がらなかったりですが、今度、有明海の振興基金の創設なんていう話もあっておりますけれども、そのことは結果的に対策にどのような大きな変化があって、どういうような結果を狙っておられるのか、目標というか、そこら辺のビジョンを教えていただければと思います。 30 ◯川上参考人=漁業政策について、一つは、ずっと前から有明水産振興センターが中心になって、これは四県ともそうですけど、漁業資源回復に向けていろんなことを技術的にやられている。それで成果が上がっている。佐賀県での一番の成果はノリだと思うんですね。ノリの生産がここまでこうなったのは有明水産振興センターの力が大きいんだと思うんですね。  今回のように有明海の環境と水産資源と考えたときに、環境と水産資源をどういうふうにつなげるかという話ですよね。私は、一つは幅広い分野の、水産中心であっていいんですが、環境分野をもっと取り入れて、いろんな分野の人と交流しながら総合的な検討をすることが一つだと思います。  もう一つは、先ほどから言っていますように、水産資源がたくさん回復しても、漁業者の収益が上がらなかったらいかんですよね。流通でお金があちこちいって、漁業者の懐に入らないというのはまずいわけで、やっぱり水産業のなりわいをどうするかということの業のありようもなかなか難しいと思うんですけど、それを根本的にやっていく、農業を想定されるとわかると思うんですけど。  そういうことを幅広くやっていって、結局、アウトプットは何かというと、漁業者の幸せだと思うんですね。もっと言えば、若い人たちがその延長線上で水産業を仕事にできるような環境をどうつくるかということがアウトプットでありますから、水産資源の回復は一義的にはいいんですけど、そのために環境をどうするかという話も出てきます。資源だけではなくて、業として、もうかる水産業をどうするかだとか、そういう話もあると僕は思うんです。  ですから、そういうものをトータルとして、ゴールは水産業関係者の幸せを求めるとすれば、そういう方向に、難しい問題だということは十分わかっているんですけど、そういう方向に幅広く取り組んでいただけるとありがたいなと思ったりもします。  あと一点は何でしたかね。 31 ◯藤木委員=有明海の振興基金ということの、こういうことをやったらどんなふうになっちゃうんですかねという話です。 32 ◯川上参考人=振興基金というか、聞くところによると、長崎地裁の裁判長が開門にかわる対策をということで出ていますが、開門という意味合いが、直接、水産資源が回復するところもありますが、やっぱり環境をよくするための主張になっていますね、そのかわりですから。ですから、水産資源だけじゃなくて、何度も言いますが、環境をよくするだとか、幅広い意味。僕は、もっと広い意味で捉えているのは、水産業のなりわいがうまくいく、地域の活性化まで入れていいんじゃないかと思ったりもするんですね。  そういうふうな基金に、開門調査、裁判とは別ですよ。それは全くつながりを持たずに言っているんですけど、そういう幅広い基金に使えるのであれば非常に評価したいと僕は思います。  ただ、何度も言いますが、平成十六年のような、諫干事業の対価として水産資源だけという、漁業者だけとの関係のお金の積み方と執行は今まで経験していますから、うまくいかなかった。だから、同じようなことはちょっとやるべきではないなと僕は思います。 33 ◯古賀委員長=ほかに質問はございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕 34 ◯古賀委員長=それでは、川上参考人には、御多忙中、長時間にわたり貴重な御意見を述べていただき、まことにありがとうございました。  本日の委員会において参考人から述べられました意見につきましては、今後の委員会審議に十分反映させたいと存じます。  以上で川上参考人に対する質疑を終了いたします。     ○ 継 続 審 査 35 ◯古賀委員長=お諮りいたします。  海洋環境の保全、水産資源の確保、環境対策及びTPP交渉に係る影響やその対策に関する諸問題の調査に関する件につきましては、重要な問題が残されておりますので、閉会中もなお継続審査に付する必要がある旨を議長に申し出ることにいたしたいと思います。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 36 ◯古賀委員長=御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたします。  なお、本日の委員会での説明及び質疑応答などにおいて、数字または字句の誤り及び不適切な表現などがありました場合は、適宜、委員長の手元で精査の上、訂正などを行うことに御承認を願っておきます。  これをもちまして有明玄海TPP対策等特別委員会を閉会いたします。  どうもお疲れさまでした。皆さん、ありがとうございました。     午前十一時三十五分 閉会 Copyright © Saga Prefectural Assembly Minutes, All rights reserved. ページの先頭へ...