福岡県議会 > 2024-06-09 >
令和6年6月定例会(第9日) 本文
令和6年6月定例会(第9日) 名簿

  • "食料不足"(/)
ツイート シェア
  1. 福岡県議会 2024-06-09
    令和6年6月定例会(第9日) 本文


    取得元: 福岡県議会公式サイト
    最終取得日: 2024-09-08
    ↓ 最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1 ◯議長(香原 勝司君) おはようございます。ただいまから本日の会議を開きます。  日程に従い、一般質問を行います。順次発言を許可いたします。西元健君。(拍手) *西元議員質問 2 ◯五十四番(西元 健君)登壇 皆さん、おはようございます。自民党県議団の西元健です。今朝、起きますと、私の五歳の息子、歯が抜けておりました。あんな小さかった子供が、大人の歯が生えてくる、それぐらい成長していくんやなということを感じさせていただきました。そういった子供が、縁あって生まれてきた地元で暮らせる地域を守るため、そしてその子たちが巣立って、大きくなって戻ってこられるために、本日通告しております本県の人口減少問題について伺います。  知事は、県政運営の方針として、県民の将来を守るサステーナブル社会を実現していくためあらゆる手を尽くすと述べられます。本県における少子化の進行、これに起因した人口減少への対応は、サステーナブル(持続可能)な社会を実現していく上でも重要な課題であります。我が会派としても、人口減少、少子化、これらに起因する様々な課題への対応につきましては、質問等を通じ執行部の姿勢をただしてまいりました。さきの二月議会では、会派を代表し、浦議員から県内の人口減少の状況について知事の認識を求めたところであります。  さて、二月議会が閉会した翌四月、我が国の人口について世間の耳目を集める発表があり、一つは四月十二日に総務省から発表された昨年十月一日現在の人口推計です。総務省の発表によりますと、日本の総人口は一億二千四百三十五万二千人で、前年に比べ五十九万五千人の減少となり、十三年連続で減少、出生数が死亡数を下回る自然減は八十三万七千人で、十七年連続の減少、減少幅は拡大、十五歳未満人口が総人口に占める割合は一一・四%で、過去最低、といった暗たんたる内容が並んでおり、人口減少に歯止めがかからない状況が明確なデータによって示されております。  また、都道府県別の人口を見ますと、福岡県は五百十万三千人であり、四十七都道府県の中では北海道を抜いて全国八位となりました。しかしながら、人口が増加しているのは東京都のみであり、福岡県も含め四十六道府県は人口が減少しております。普通であれば全国ランキングが上がることは喜ばしいことですが、今回の総務省の発表をどう受け止めればよいのか悩ましいところです。  そこで、知事にお尋ねします。昨年十月一日時点で本県の人口が全国八位となった今回の総務省の発表について、知事はどう受け止められているのか。県内の人口動態の状況も含めお答えください。  二つ目の発表は、四月二十四日、民間の有識者でつくる人口戦略会議が公表した地方自治体持続可能性分析レポートです。このレポートは、全国千七百二十九の市町村について、二十代から三十代の女性の数、若年女性人口の将来動向、減少率に基づき、人口から見た全国の地方自治体持続可能性について分析されたものです。全体の四割に当たる七百四十四の自治体が消滅可能性自治体とされ、自立持続可能性自治体は全体の四%、六十五自治体にすぎないとされております。また、他地域から人口が流入し、出生数が非常に低い自治体をブラックホール型自治体と名づけており、センセーショナルな表現が用いられております。全国の知事の中には苦言を呈されている方もおられるようですが、こうした手法の効果がマスコミでも多く取り上げられております。  福岡県でも、若年女性人口が二〇五〇年までの間に五〇%以上減少する消滅可能性自治体に八つの市町村が含まれております。また、その他の市町村でも減少率五〇%とまではいかないものの、それに近い団体もあるようです。消滅といった表現はともかくとして、レポートの内容については国立社会保障人口問題研究所の推計を基礎としており、一定の方針の下で客観的な物差しによる推計を提示し、現状のまま人口が減少していくと日本という国がどういう社会になるか警鐘を鳴らしたものではないかと思われます。  この人口戦略会議レポートに対する知事の見解をお聞きします。  都道府県の単位で見れば、東京圏への人口集中という大きな流れがあります。県内に目を転じれば、各地域から福岡都市圏へという流れもあります。人口減少問題を考える上で、この二つの流れを認識する必要があります。  六月五日に厚生労働省が発表した二〇二三年の我が国の合計特殊出生率は過去最低の一・二〇、東京都は一を下回り、本県も過去二番目に低い一・二六となっております。私の地元の豊前市においては、人口は約二万四千人、昨年生まれた赤ちゃんは八十一人、三十年前の平成五年度の出生数二百二十八人と比べると三分の一の数となっております。豊前市で生まれた子供たちのうち、一体どれだけが三十年後地元に残ってくれるのか大きな不安を抱いております。学業のため、たとえ福岡市や首都圏に一度は旅立ったとしても、たくましくなり地元に戻り、自らの能力を発揮して働き子供を育む、そんな将来世代に魅力ある地域づくりを今の我々が進めていかなければならないと考えております。  人口減少対策は国全体で総力を挙げ対応すべき課題であり、一朝一夕に効果が出せるものではないと思います。しかし、先送りできない喫緊の課題であります。本県の人口減少対策を考える上で、特に福岡都市圏以外の地方部の人口減少に歯止めをかけていく必要があると考えております。このためには、地方部から東京圏はもとより福岡都市圏への転出をいかに是正していくかが重要と考えますけれども、今後どのように取り組んでいかれるのか、知事の考えをお聞きし、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手) 3 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。 *知事答弁 4 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 皆さん、おはようございます。それでは、御答弁を申し上げます。  総務省の人口推計に対する受け止めと県内の人口動態の状況についてお尋ねがございました。総務省によれば、昨年十月一日現在の本県の人口は北海道を上回る全国八位となりました。本県は人口が近接しております北海道と比べますと、自然増減では減少率が小さく、社会増減では増加率が大きく、結果、減少率が〇・二六%にとどまったことから、減少率が〇・九三%となった北海道と順位が入れ替わったものでございます。しかしながら、本県の人口は三年連続で減少しておりまして、人口減少に歯止めはかかっていない状況でございます。人口減少の要因を見ますと、転入等の社会増は〇・二八%の増加となっておりますが、自然減は〇・五四%の減少となっておりまして、社会増を自然減が打ち消す結果となっております。  また、本県の人口を県内十五の広域地域振興圏別に見ますと、福岡市及び糸島市以外の全ての圏域で減少をいたしております。減少している圏域の中でも、福岡市周辺の三つの圏域では〇・一%の減少にとどまっておりますが、それ以外の圏域では〇・四%から一・六%の減少となっておりまして、地域間において格差がある状況でございます。このことから、本県の人口減少問題を考えるに当たりましては、出生数の減少を反転させていくこと、地域間格差の解消を図ることが大きな課題であると考えております。  次に、人口戦略会議レポートに対する見解についてでございます。消滅とか、あるいはブラックホールといった言葉の使用につきましては様々な御意見があるところでございますが、このレポートは、若年女性の人口の減少に着目し、自治体の持続可能性という表現で人口減少対策の必要性を提起されたものと考えております。
     このレポートによれば、自立持続可能性自治体とされました全国六十五の市町村のうち、九つが福岡県内の市町村でございまして、福岡県は全国と比べますと若年女性人口の減少率が緩やかな傾向にある市町村が多い状況にございます。ただし、福岡市とその周辺の圏域を合わせた福岡都市圏の市町の減少率はおおむね二割以内にとどまっているところでございますが、そのほかの圏域では減少率四割を超える市町村がございます。若年女性人口の減少は出生数の低下、生産年齢人口の減少をもたらします。地域によりましては人手不足に拍車がかかり、地域間格差の拡大が懸念されます。県といたしましては、大変厳しい状況に置かれているということを改めて認識し、引き続き県内各地域の活性化に取り組む必要があると考えております。  県内の各地域から東京圏や福岡都市圏への転出を是正するということに向けた取組についてお尋ねがございました。全体では、転入超過にある福岡県でも、就職期に該当いたします二十代前半は千九百七十九人の転出超過となっております。これを地域別に見てみますと、九州一円からの転入超過が二千八百八十七人となっております一方で、東京都、神奈川県など一都三県の東京圏への転出超過は四千七百三十二人となっております。また、県内の人口移動を見ますと、福岡都市圏以外の地域は福岡都市圏へ二千五百九十二人の転出超過となっておりまして、福岡都市圏への人口集中による地域間格差の拡大が大きな課題であると認識いたしております。  東京圏や福岡都市圏への転出是正を図るためには、若い皆さんが自らの能力や関心に合った雇用の機会を得られるということが重要でございます。このため、各地域の経済と雇用を支える中小企業への支援、あるいは地域の基幹産業でございます農林水産業の振興、裾野の広い観光産業の振興、国内外からの企業誘致、産業基盤となる基幹的道路の整備を進めてまいります。  あわせまして、このたびの金融・資産運用特区の選定を追い風として、県内の成長産業に資金が供給され、付加価値を生み、還流した資金がまた新たな企業の呼び込みにつながるといった好循環(エコシステム)をつくることで、福岡都市圏の成長の果実を他の地域に波及させていく考えでございます。同時に、人口減少の幅が大きい豊築地域及び有明地域県境地域につきましては、大分県、熊本県とも丁寧に意見交換を行いまして、県境地域全体の浮揚を図ってまいります。  さらに、若い世代の女性の転出に対処するため、これまで女性の働き手が少なかったIT分野、建設分野、地域公共交通分野テクノロジー分野などにおきまして、女性が活躍できる就業の場を広げますとともに、創業、スタートアップにチャレンジする女性を応援していく考えでございます。同時に、女性が安心して働き、活躍できますよう、多様で柔軟な働き方を推進し、仕事と生活が両立できる環境を整備していく必要があると考えております。  このような考え方の下、各地域の実情に応じて施策を組み合わせまして、新たな魅力ある雇用の場を生み出し、本県の人口減少に歯止めをかけ、地域の活性化に全力で取り組んでまいります。 5 ◯議長(香原 勝司君) 新井富美子君。(拍手) *新井議員質問 6 ◯三十番(新井 富美子君)登壇 皆様、おはようございます。民主県政クラブ県議団、久留米市・うきは市選出の新井富美子でございます。本日は福岡県の文化芸術活動の推進について、服部知事寺崎教育長に、その重要性の認識と、そして福岡県の現状、今後の取組や意気込みなどについて伺ってまいります。  さて、近代日本は民主化、経済活動の自由化、科学技術革新をもって全ての人の豊かな暮らしの実現を追求してまいりました。衣食住や社会的インフラを充実させることで、私たちは肉体的な苦痛や不安、忙しさから解放され、自由で十分な時間を自分自身と、そして自分の大切な人たちのために使い、お互いにつながりを深めながら生きる意義を見いだし、心豊かに暮らすはずであったのではないでしょうか。しかし、実際には物質的な豊かさの先にあると思った生きる意義はいまだ明確には見いだせず、真の心の豊かさが何であるのかはっきりとつかめないまま今に至っているように思います。物質的に豊かになれば心もおのずと豊かになるというのは幻想であり、実際には心の豊かさを得るためには精神的な活動に関わる不断の努力が必要だったのでしょう。これは私自身も自戒を込めて申しております。しかし、単に悲観をするものではございません。これから心の豊かさを得るために精力的に取り組むことで大きく変わるものであると信じております。  そこで、精神的な豊かさを育む方法は様々あるでしょうが、文化芸術活動の推進を一つの大きな柱として精力的に取り組むべきとここで主張させていただきます。なぜなら、人間の本質として、自分の内面を表現したい、他者、ここでは人に限らず自然界の全てという意味の他者でございます、その他者を知りたい、他者とつながりたい、そして共に幸福感を得たいという欲求が存在し、これらはすなわち文化芸術活動の本質であり、この活動を通して個々の自己肯定感、他者との共感、理解の素養が育まれ、経済的損得や物質的な充足への欲求を凌駕した真の心の豊かさを知る手がかりとなると考えるからであります。例えばある芸術作品を鑑賞したときに、その表現者の人生そのものを追体験したり、自己の人生の振り返りの契機となるなどして深く精神に作用し、自分は人生に何を望むのか、自分にとっての真の幸福とは何かなどをおのずと考える、そういう経験を私たちは幾度もしたことがあるはずでございます。  また、文化芸術活動が人間の本質に関わる以上、私たちが生きる上でなくてはならないものであり、この活動がなければ健全な精神すら保てないと言っても過言ではないと思います。現代社会の根底に横たわる自己肯定感の喪失や人とのつながりの希薄さ、真の幸福感の欠如は、孤独、孤立、ひきこもり、いじめ、少子化など様々な社会問題と密接に関わっていることも論じられており、こういった意味で文化芸術活動は人間の活動の全てに関わる、言わば社会の体質改善を図る分野とも言えるのではないでしょうか。  現在、精神的豊かさの追求や文化芸術活動の推進は夜明けの段階かもしれません。今、行政に求められるのは、これらの重要性を認識した上で、全ての人々の文化芸術活動のためにさらに充実した環境を提供することであると考えます。  そこで、知事に質問をいたします。文化芸術の意義と重要性をどのように認識されているのかお伺いします。  二点目に、福岡県文化芸術振興基本計画の中で、年齢、障がいの有無、経済的状況または居住する地域にかかわらず、ひとしく、文化芸術を鑑賞・参加・創造することができる環境づくりを進めるとしています。福岡県では現在どのような取組が行われているのか伺います。  三点目に、福岡県の文化振興をさらに図るためには、文化芸術に携わる人材の専門性をさらに高めることが必要だと考えますが、どのように取り組んでいくのか伺います。  次に、教育長に質問をいたします。文化芸術活動は人間の本質的な欲求に関わるとはいえ、小学校の段階から文化芸術への関心を高め、その素養と理解力とをしっかりと育むことで後の子供たちの人生を豊かにする、このことが大きな鍵となってまいります。そこで、小学校における音楽、図画工作専門的指導の状況と今後の方針を伺います。  次に、公立学校における文化芸術教育についてですが、この点を充実させるために学校や国、本県が行う文化芸術事業を積極的に取り組んでおられると思いますが、国の主な事業の取組状況を伺いますとともに、それらの取組の蓄積を今後の子供たち文化芸術教育にどのように生かしていき、普及と活性化に努めるのかを伺います。  そして最後に、今後の文化芸術教育の充実に寺崎教育長はどのような思いで臨まれるか、その意気込みについて伺います。熱意ある御答弁をよろしくお願いいたします。(拍手) 7 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。 *知事答弁 8 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁を申し上げます。  文化芸術の意義と重要性についてお尋ねがございました。文化芸術は人々の心を豊かにし、生活の質を高め、潤いと活力に満ちた地域社会を実現するために欠かすことのできない重要なものであると考えます。文化芸術を創造し、享受することは、人々の生まれながらの権利でございます。県民の皆様が、その年齢、障がいの有無、経済的な状況あるいは居住する地域にかかわらず、ひとしく文化芸術を鑑賞し、参加し、創造することができるような環境の整備を進めなければならないと考えております。  文化芸術に親しむことができる環境づくりについてでございます。県では、県民の皆様の誰もが文化芸術に触れ親しむことができるよう、ふくおか県民文化祭というものを実施してまいりましたが、県民の皆様の認知度が低く、若い方の参加が少ないなどの課題がございました。このため、今年度からは、本県の文化芸術活動をより一層活性化し、次世代につなげたいという思いを込めて、ふくおか県芸術文化祭に改称し、開催をいたします。これまで参加が少なかった若者をはじめ、より多くの県民の皆様に、伝統芸能をはじめ多彩な文化芸術を楽しんでいただけるよう、これを発展させていきたいと考えております。  また、子供たちに優れた文化芸術に触れる機会を提供いたしますため、昨年度は、コロナの影響で鑑賞の機会が減少した小中学生を対象として、県立・市町村立の美術館、博物館等の常設展を無料といたしました。今年度は、劇団員、音楽家などを学校へ派遣する芸術体験講座の派遣先を小児医療施設児童養護施設にも拡大して実施することとしております。さらに、高齢者の生きがいづくり社会参加を促進するため、シニア美術展の開催や、短歌、俳句、囲碁、将棋等の文化交流大会を開催いたしております。加えて、障がいのある方の文化芸術活動を促進するため、障がい児者美術展を県内四地区で開催いたしますとともに、障がいのある方のアート作品のレプリカを官公庁、企業等へ有料で貸し出し、その料金の一部を制作者に還元する、まごころアート福岡ギャラリーを実施いたしております。  このほかにも、文化芸術を通じた地域振興及び若手芸術家の育成を図りますため、若手の芸術家を一般公募いたしまして、みやま市の廃校を活用したアトリエに一定期間滞在していただき、地域住民と交流しながら創作活動を行っていただきますアーティスト・イン・レジデンスなど様々な取組を実施しているところでございます。  文化芸術振興に必要となる人材育成についてでございます。県内各地域における文化芸術活動を活性化するためには、県民の皆様に一番身近な文化芸術活動の拠点でございます公立の文化施設や市町村におきまして、その中核を担う人材を育成する必要があると考えております。このため、今年度から新たに公立文化施設や市町村の職員を対象とした研修会文化芸術イノベーションアカデミーを開催することといたしております。この研修会では、文化政策に関する有識者をコーディネーターとして配置し、文化芸術の意義や必要性を学ぶ基本講座、地域や施設の特性を生かした事業の企画立案や運営手法を学ぶ実地研修等を実施いたしますことによりまして、職員の皆さんのさらなる専門性の向上を図ってまいります。あわせて、文化芸術事業を実施するための財源といたしまして、国や関係機関の助成金を申請するための指導助言を行うことといたしております。また、受講者間のネットワークを構築し、福岡県全体の文化芸術振興を図ってまいります。  この取組を通じ、全ての県民の皆様が文化芸術の力でゆとりと潤いを実感できる心豊かで活力のある、そんな福岡県の実現を目指しまして、県内各地で活発な文化芸術活動が行われるよう、しっかりと取り組んでまいります。 9 ◯議長(香原 勝司君) 寺崎教育長。 *教育長答弁 10 ◯教育長(寺崎 雅巳君)登壇 小学校における音楽、図画工作専門的指導の状況についてでございます。本県では、国の加配定数も活用し、専門性の高い教科担任による専科指導が高学年を中心に行われておりまして、六年生の音楽では約二割、図画工作では約一割の小学校で導入をされております。また、和太鼓演奏や陶芸など多様な専門分野で活躍する方を特別非常勤講師やゲストティーチャーとして招聘をしている事例もございます。  今後とも、小学校において専門性の高い教員等による音楽、図画工作の授業の充実を図るため、国に対して必要な定数要望を行ってまいります。  公立学校における文化芸術事業取組状況等についてでございます。昨年度、国の文化芸術事業を活用して、全国で活躍している劇団やオーケストラが学校に出向いて実技を指導し、児童生徒と共演する巡回公演を行った学校が二十一校ございます。また、舞踊や演劇等の芸術家が学校を訪問し、実演・指導を行う芸術家派遣を受けた学校が七校、障がいのある児童生徒も鑑賞しやすい公演を実施するユニバーサル公演を行った学校は九校でございました。また、和楽器の演奏の技能や絵画の描写技法等を学びます芸術担当教員等研修を昨年度は二十四名の教員等が受講しまして、研修内容を生かした質の高い授業が行われているところでございます。  今後とも、文化芸術教育の充実に向けまして、各学校で国や県の文化芸術事業が幅広く活用されるよう、市町村教育委員会や県立学校に対しまして周知を図り、事業の参加を促すとともに、国の教員研修の受講者が研修を通して学んだことを地域の圏域教員研修会等でほかの教員に還元できますよう促してまいります。  文化芸術教育の充実についてでございます。文化芸術は、人間が人間らしく生きるための糧となるものであり、他者に共感する心を通じて相互に理解し、尊重し合う土壌を育むものでございます。先端技術が高度化をし、変化が大きなこの時代にこそ、心の交流を深め豊かな情操を育むことができる文化芸術教育子供たちにとって大変重要であると考えております。  今後も、子供たちが楽しさや感動、精神的な安らぎや生きる喜びを味わうことができるよう、学校における文化芸術教育の充実をしっかりと図ってまいります。 11 ◯議長(香原 勝司君) 稲又進一君。(拍手) *稲又議員質問 12 ◯八番(稲又 進一君)登壇 公明党の稲又進一でございます。質問の機会をいただいたことに感謝申し上げ、通告に従い質問をさせていただきます。  本県は、未来を拓くイノベーションの創発を掲げ、明日の福岡の産業の米への重点投資、一千億円の人づくりの観点から未来を担う人材育成にも注力、半導体関連やIT企業などの産業振興が目覚ましい中ではありますが、物づくりのまちとして発展してきた北九州をはじめ、これまでも、専門的人材を育成し、高度な技術力をもって福岡の経済を支えてまいりました。技術を培った若者が県内企業に就職し住む流れを維持することは、本県のさらなる発展はもちろん、人手不足が叫ばれる各業界においても重要な取組であると考えております。  先日、私は県内の工業高校に同窓会の方からお声をかけていただき、実習機器の現場を拝見させていただきました。現場で感じたことといたしまして、今より約五十年前、昭和四十年代に納品している古い実習機器が多く使用されているということであります。教職員の方々が丁寧にメンテナンスを施し、令和の今でも使用可能なものもございますが、大型の実習機器が故障したまま置かれている現実も目の当たりにしてまいりました。教科書にはデジタル技術で記述されているものも、実際はデジタル化されていない実習機器で学んでいるものも中にはございました。  製造や工業の基礎や理論を学ぶ点として必要不可欠であることには変わりはございません。全ての実習機器が古いわけではなく、令和三年には国の補助金を活用し、一部だけではあるものの新規導入した実習機器もあります。しかし、現場にとってはほんの一部です。本県内には工業学科を有する県立高校は十二校あり、伺いますとどこも類似した状況であるとのことです。  実践的な技術を身につけるという観点では、高度な技術を持った企業の方から生徒が直接指導を受けたり、教員の方が企業で技術研修を受けたりしているともお伺いをしております。社会では技術が急速に進展をする中、本県の工業高校の卒業後の進路は就職が約七割であります。競争社会にもまれながら最新機器を備えた企業に就職し、高校で学んだことを存分に生かし、活躍するためには、スピード感を持って先端技術に対応した実習機器を整備することは急務であると考えております。  学校運営側も大幅な実習機器の更新の必要性を現場に触れる中で感じておられ、昭和四十年代当時のような実習機器一斉導入の予算を確保できることが本来は理想ではありますが、現在の予算枠を理解しているからこそ、なかなか現場の声を上げにくいのが現実ではないかと考えております。その上で、今まで以上に力を注いでいただき、現代に即した実習機器の導入を強く期待をされております。  また、本県には公共職業能力開発施設として、地域社会の要請する有能な人材を育成するための職業訓練施設、高等技術専門校も七校擁しており、伺いますと、こちらには比較的新しい実習機器がそろっていると聞いており、今後、同じ県立施設でもありますから、部署横断の連携を進めていくこともここで要望させていただきます。  本県の工業高校生は未来の産業界を担う宝の人材であります。将来日本の物づくりを支える若い人材のための職業訓練が実社会で役立つものとなるように、設備の充実に取り組んでいくべきと考えます。  そこで、教育長へお尋ねをいたします。各工業高校の実習機器の使用状況など実態調査をいただき、早期更新すべきものの洗い出しを進めていただきたいと存じますが、いかがでしょうか。また、その結果に基づき、デジタル化に対応した実習機器の導入の実施検討を早期に進めていただくとともに、国への予算要望も今以上に強くすべきと考えますが、御所見をお尋ねをいたします。  次に、若者薬物乱用防止対策についてお尋ねをいたします。大麻や覚醒剤、オーバードーズなど、若者による薬物乱用が大変危惧をされております。県警本部のまとめによりますと、県内では昨年、大麻による検挙者数が初めて覚醒剤の検挙者数を上回り過去最多を更新、本県においても若い世代への大麻の広がりが深刻な問題となっております。昨年一年間で薬物に関わる犯罪で検挙された人は、前の年より百二十五人多い九百二十二人、このうち大麻による検挙者数は前の年より百二十六人増えて過去最多の四百七十五人、覚醒剤は三百七十一人で、覚醒剤の検挙者数を大麻が上回るのは統計上初めてのことであります。  大麻所持などで検挙された人を年代別で見ますと、十代が百九人、二十代が二百七十二人の合わせて三百八十一人で、全体の八〇%を超えており、若い世代への大麻や薬物の広がりが浮き彫りとなりました。検挙者数が多いということは、県警本部が取締りを強化していただいていることの証左でもありますが、犯罪など薬物に関連した事件や事故による被害者を生まないためにも、未然予防策に力を入れることも重要であると考えております。  また、市販薬の乱用、いわゆるオーバードーズにおいては、二〇一二年から二〇二〇年にかけて依存症患者が約六倍に急増、薬物使用と生活に関する全国高校生調査二〇二一の中にあります市販薬の治療目的外使用の経験の有無のアンケートによりますと、六十人に一人が経験者との結果でありますが、実はこの数字は大麻使用率の約十倍の数値であり、こちらはさらに対策が急務であります。  薬物乱用の共通項である社会的孤立を防ぐ政策も根本的に重要でありますが、ここでは未然予防策として、教育分野において確認をいたします。薬物乱用防止教育においては、大学へは年に一回の新入生向けリーフレットを配付、公立中学校へは啓発DVDの配付を実施中とのことで、引き続き実態効果の確認は必要ですが、その中で、私は、成人一歩手前、高等学校での教育が最も重要ではないかと考えております。専門家の方からも、高等学校段階での教育が若者の乱用の大幅な抑止につながると指摘をされております。  それを踏まえ、県立の高等学校における薬物乱用防止教育の現状を伺いましたところ、各学校において外部講師を招いての教室を全学年の生徒を対象に実施し、実施率は一〇〇%、必修科目の保健学習においても薬物の体に対する影響の理解増進に努めておられます。  一方、県内の私立高等学校における令和四年度の薬物乱用防止教室の実施状況を確認をいたしますと、私立高等学校は六五・六%と全国平均よりは上回っているものの、未実施の私立高等学校がある状況となっております。また、既に実施されている私立高等学校においても、誰を対象にどのような内容で教室を実施したのか本県としても把握をしていくことが抑止につながると存じます。学習を通じて危険性を理論的に学び深め、誘惑や悪質な勧誘に対しても明確に断る勇気を持つことで、若者の未来を守ることにもつながりますし、被害を削減できるのではないでしょうか。  そこで、知事へお尋ねいたします。私立高等学校においては、薬物乱用防止教室にどのように取り組んでおられますか。また、県として、未然防止に重要な私立高等学校の薬物乱用防止教室の開催をどのように促進していかれるか御所見をお尋ねいたし、質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手) 13 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。 *知事答弁 14 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁申し上げます。  私立高等学校における薬物乱用防止教室についてでございます。国の第六次薬物乱用防止五か年戦略におきましては、全ての高校は、保健体育など通常の授業とは別に、薬物に関して専門知識を有する警察職員や、あるいは薬剤師などの外部講師を活用した薬物乱用防止教室を年一回は実施することとされております。このため、県では全ての私立高校での実施を目指しまして、国からの実施徹底に関する通知がございますたびにこれを直ちに周知をいたしておりますが、県内の三割を超える高校においては実施されていない状況にございます。  この実施していない学校にその理由をお聞きしますと、その多くが、薬物乱用防止教室は外部講師を活用しなければならないという認識がなかったとのことでございました。そこで、私が本部長を務めております福岡県薬物乱用対策推進本部から全ての私立学校に対し、福岡県薬物乱用防止講習会の講師団名簿を送付いたしますとともに、通常の授業とは別に必ず薬物乱用防止教室を実施するよう要請を行ったところでございます。  引き続き、こうした指導を行いますとともに、県私学協会が開催をいたします経営者の研修会や教員の研修会におきまして、薬物乱用防止教室の実施の徹底を要請してまいります。 15 ◯議長(香原 勝司君) 寺崎教育長。 *教育長答弁 16 ◯教育長(寺崎 雅巳君)登壇 工業高校における実習機器の実態調査についてでございます。早期に更新が必要と考えられる実習機器につきましては、毎年度、学校からの要望に基づき、その内容を精査した上で更新する実習機器を決定をしております。今後は、学校からの要望に合わせまして、必要に応じて実習機器の使用頻度や稼働状態に関する調査を実施をしたいと考えております。  デジタル化に対応した実習機器の導入と国への予算要望についてでございます。デジタル化対応実習機器につきましては、多種類の金属加工を連続で行えるマシニングセンタや、パソコンで入力した数値を基に金属等の加工品を作成する3Dプリンターなどを整備をしてまいりました。また、令和四年度には、半導体製造技術に関します実習を行うためシーケンス制御装置などを整備をしております。  今後とも、産業界の動向を踏まえまして、教育効果が高まるよう、実習機器の整備について検討してまいります。さらに、毎年行っております全国都道府県教育長協議会などを通じての国への要望に加えまして、県教育委員会としても財政支援を要望してまいります。 17 ◯議長(香原 勝司君) 大塚絹子君。(拍手) *大塚(絹)議員質問 18 ◯七番(大塚 絹子君)登壇 新政会福岡県議団の大塚絹子です。質問の機会をいただきましてありがとうございます。通告に従い、消滅可能性自治体及び自然減対策への取組について質問いたします。  民間の有識者でつくる人口戦略会議が今年四月、日本の地域別将来推計人口に基づき、人口から見た全国の地方自治体持続可能性について分析したレポートを発表しました。日本創成会議が消滅可能性都市リストを発表してから十年がたち、当時の分析を踏まえつつ、今回、新たな視点として、人口の自然減対策から成る出生率の向上と、社会減対策となる人口流出の是正の両面からの分析も行われていました。  私が議員を志すきっかけが、地元八幡東区が二〇一四年に消滅可能性都市に指定されたことでした。若い女性やファミリー層から住みたい町、子育てしたい町と選んでもらえるようにすることが私の使命と思っています。ちなみに今回の分析レポートでは、八幡東区は北九州市全体としてのくくりとなり、消滅可能性自治体ではなく、自然減、社会減、両方の対策が必要なその他というカテゴリーになりました。福岡県内の状況は、消滅可能性自治体が八あるものの、自立持続可能性自治体が九、消滅可能性から脱却した自治体が十三となっており、他都道府県と比較して自立持続可能性自治体及び改善した自治体の多さが目を引きました。  そこで、まず今回の消滅可能性自治体分析レポートについて知事の見解をお伺いいたします。また、自然減対策となる出生率向上への取組についてお伺いいたします。  先日発表された本県の出生率は、九州・山口・沖縄で、最も低い一・二六で過去二番目に低い数値となりました。若い世代の経済的な不安が結婚や出産のハードルとなっている話を耳にすることが多く、若者が希望を持てるよう安定した所得により将来の不安を取り除くことが大切だと考えます。  そこで、知事にお尋ねします。若い世代の所得向上のため、これから仕事に就こうとする若者の就職支援や非正規雇用労働者の正社員就職の支援について県はどのように取り組んでいるのか、また今後どのように取り組むのかお伺いします。  次に、女性のキャリア継続と職場環境づくりについてお伺いいたします。女性の子育てと継続就業の両立に向けての雇用形態についても正規化を促すことが求められています。そのためには、パートナーとなる男性へ育児や家事協力を促したり、女性が結婚や出産などを機に離職や非正規雇用での就業を余儀なくされることなく、正規雇用で働き続けられる企業の職場環境づくりを支援していくことが重要であると考えます。  そこで、知事にお尋ねします。女性が出産や子育てと両立しながら働き続けることのできる職場環境づくりに、県としてどのように取り組まれているのかお伺いいたします。  また、県として少子化対策で行っている先進医療による不妊治療の助成について申請状況をお答えください。保険適用が開始され二年が経過しました。女性が仕事を継続しながら不妊治療を受けやすいよう、企業に対し県からも、職場での理解を進める働きかけをしていくことが必要ではないかと考えますが、知事の認識をお伺いいたします。  私自身が男女雇用機会均等法施行直後に社会人となり、総合職採用の女性が急速に増えた世代です。自身のキャリア継続のため出産の機会を逃したり、お子さんの体調不良による急な遅刻や早退で職場の理解を得るのに大変苦労した話、不妊治療の相談を職場にできなかったこと、数多く見聞きしました。現在、少子化対策で様々な施策がなされ、制度としては整い、大企業では導入が進んでいるように見受けられます。中小企業の多い本県では、制度の導入だけでなく職場での相互理解が得られる風土づくりが本当に重要だと考えます。本県での取組が進み、若者や女性が子供を持つことを前向きに捉え、出生率の向上と個々のよりよいキャリア形成につながることを願い、質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手) 19 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。 *知事答弁 20 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁を申し上げます。  人口戦略会議レポートに対する見解についてお尋ねがございました。消滅やブラックホールといった言葉の使用につきましては様々な御意見があるところでございますが、このレポートは、若年女性の人口の減少に着目し、自治体の持続可能性という表現で人口減少対策の必要性を提起されたものと考えております。  このレポートによりますと、自立持続可能性自治体、これは全国で六十五市町村あるとされておりますが、このうちの九つが福岡県内の市町でございまして、福岡県は全国と比べますと若年女性人口の減少率が緩やかな傾向にある市町村が多い状況にございます。ただし、福岡市とその周辺の圏域を合わせました福岡都市圏の市町の若年女性人口の減少率はおおむね二割以内にとどまっておりますが、他の圏域では減少率が四割を超える市町村がございます。若年女性人口の減少は出生数の低下、生産年齢人口の減少をもたらします。地域によりましては人手不足に拍車がかかり、地域間格差の拡大が懸念されます。県といたしましては、大変厳しい状況に置かれているということを改めて認識し、引き続き県内各地域の活性化に取り組む必要があると考えております。  次に、若者の就職支援についてでございます。県では、若者就職支援センターにおきまして、若者の安定就労に向け、正社員での就職を目指した支援を行っております。これから仕事に就こうとする若者に対しましては、正社員求人を計画する地元の企業を集めた会社説明会やウェブインターンシップを実施いたしまして就職につなげますほか、センターにおきましては就職後の個別相談等によるフォローアップを行いまして、就職から職場定着まで一貫した支援を行っております。また、県立高等技術専門校におきまして就職に有利な知識や技能を身につける職業訓練を行い、即戦力となる若者の就職を支援しております。  非正規で働かれている若者に対しましては、人材不足分野でございます介護、福祉、農林水産などの業界の魅力を知るセミナーや、紹介予定派遣の仕組みを活用したマッチング支援等を行っておりまして、令和三年度からこれまでに五百七十一人が正社員として就職をいたしております。今年度からは、中小企業で働く非正規雇用労働者を対象といたしまして、ITの知識や技能を習得できるリスキリングプログラムを実施し、受講した従業員を企業が正社員化した場合、受講料の全額を助成するということといたしております。今後とも、こうした取組を通じ、若者が安定した就労ができるよう支援してまいります。  次に、女性が出産や子育てと両立しながら働き続けることのできる職場環境づくりについてでございます。県では、企業のトップ自らが仕事と子育ての両立を応援するという取組を宣言し、実行する子育て応援宣言企業の登録制度を実施いたしておりまして、この五月末現在では八千五百八十九社に登録をいただいております。  昨年度からは、男性の育児休業の取得を促進いたしますため、テレビ番組や動画配信を通じ、人事労務管理制度や運用上の工夫などの先進的な企業の取組を紹介する事業を実施いたしております。  今年度からは、育児中の柔軟な働き方を進めますため、中小企業を対象として、始業・終業時刻の変更やテレワーク、短時間勤務などの制度導入に関するセミナーを開催いたしますとともに、社会保険労務士を無料で派遣をいたしまして、就業規則の改定等に関する助言を行う事業を実施いたしております。また、男性の五日以上の育児休業取得促進や、休業中の業務を代替する従業員への手当支給等に取り組む企業を支援いたします両立支援等助成金などの説明会を福岡労働局と共催で開催いたしております。  今後も、こうした取組を通じ、女性が出産や子育てでキャリアを中断することなく働き続けることができる企業の職場環境づくりを推進してまいります。  次に、不妊治療を受けやすくするための職場での理解促進についてでございます。県では、保険適用外である先進医療による不妊治療費に対しまして、出産・子育て安心基金を活用し、昨年度から県独自に助成を行っているところでございます。事業を開始いたしましてから今年四月までの申請件数、これは千八百七十八件、金額は六千十五万九千円となっております。  不妊治療を受けていらっしゃる方は、経済的な負担のみならず、頻繁な通院を要することや治療のめどが立ちにくいということから仕事の両立ができず離職するという方もいらっしゃいます。このため県では、保健所が主催をいたしまして、商工会議所や市町村等が参加をする会議におきまして、不妊治療の内容や職場における配慮のポイント、企業独自の休暇制度等の導入事例が記載されたハンドブックを配付し、事業主などへ周知いただくよう働きかけを行っております。  引き続き、こうした取組を通じ、より多くの企業に不妊治療に利用できる休暇制度の整備を進めていただくなど職場での理解の促進を図ってまいります。 21 ◯議長(香原 勝司君) 塩生好紀君。(拍手) *塩生議員質問 22 ◯四番(塩生 好紀君)登壇 皆様、こんにちは。日本維新の会福岡県議団の塩生好紀です。通告に従いまして、防災と自然保護を両立した河川整備について一般質問を行います。  県内の河川では、今般の気候変動や集中豪雨による災害に対応するための河川整備が進んでおり、福岡市西区でも県所管河川において、地域の声も踏まえ洪水対策や減災の取組を行っていただいております。人間の生活や命のための河川整備が最優先されることは大前提として、今回はEco-DRR、すなわち生物や環境を保護して、自然の持つ力によって災害による被害を防止または軽減させる取組や考え方を踏まえた河川整備について質問します。生物や環境の保護を行うことで人間社会にも還元されていく好循環を河川整備でもより一層目指していただきたいと考えております。  河川整備において、従来多く用いられてきたグレーインフラと言われるコンクリート等の人工構造物による整備は、機能の有効性が明確で、完成後すぐに目的の効果を発揮するというメリットがある一方で、環境負担が大きく、維持及び修繕にかかる費用も高額であることに対して、Eco-DRRは、グリーンインフラを活用した取組も含まれ、河川整備においても防災や環境のみならず、教育や観光の観点でも有意義であるという研究や報告も増えてきています。  福岡県生物多様性戦略の中でも、グリーンインフラについて、CO2 の吸収量も増え、温暖化対策や住民の心身の健康増進など多様な機能に期待できるとされています。福岡県も推進しているカーボンニュートラルに対しても重要な取組の一つになると考えております。ただ単純に町に緑を増やしたりグレーインフラと対立するのではなく、河川それぞれの生態系や地域の環境などに合わせて双方の特性や効果を踏まえ適切な組合せが必要であると考えます。  また、河川整備においては、地域の声や県民の要望と専門家が推奨する方針と異なることも生じていると聞き及んでおります。目に見えるハード面の活用も大切ですが、Eco-DRRの考え方や必要性について理解や情報を広げるためにも、日頃から分かりやすい情報発信と丁寧な説明が重要であると考えます。  福岡市西区を流れる室見川では、春の訪れを告げる風物詩シロウオ漁の漁獲量が近年減少し、二年連続で休漁となっていることは報道を通して皆様御承知かと思います。生きたまま口に流し込む踊り食いで有名なシロウオは、体長五センチほどのハゼ科の魚で、二月中旬頃から海から遡上し、川底の石の下に産卵します。資源量は全国的にも減少傾向にあり、室見川のシロウオの漁獲量は十一年間で二百五十キロから十分の一まで減少し、僅か二十五キロになったと聞いております。  室見川におけるシロウオ産卵場について研究をされておる九州産業大学伊豫岡准教授によると、河川の流水が流れる部分である河道の形状が変わったことや、河道の拡幅により川の流れが緩やかになると、本来海へ流れるはずの砂が堆積します。産卵する石が砂に埋もれてしまうため産卵場所がなくなってしまうと警鐘を鳴らされております。実際に砂州の撤去による低水路の単純断面化が進み、明瞭な流路が見られるのは僅かな区間となっており、本来河川が持っている機能を取り戻す必要があるとされております。
     二〇一一年から続けられている室見川のシロウオ産卵場造成プロジェクトにも参加し、私も実際に河川の中で人為的川床攪乱という作業を行いました。抜本的な解決策ではないものの、これまでの調査では、このプロジェクトで造成された礫に産卵されていることも確認できているとのことです。これはシロウオに対する取組ではあるものの、県民や地域に向けて持続可能な環境保全システムの構築や環境再生の重要性を啓発する機会にもなっているようです。一方で、温暖化による海水温上昇も問題になっており、河川だけの対策では漁獲量が回復するわけではないとのことで、シロウオのみならず様々な希少生物の保護や環境保全のためには、海域を含めた一体的な対策が求められています。  福岡県の希少野生生物が掲載されている福岡県レッドデータブック二〇一四では、室見川を含む県内河川に生息する魚類では八十二種と多くの希少種が掲載されており、さきに挙げたシロウオに関しても準絶滅危惧種に分類されております。日本ではなじみ深いニホンウナギに関しても絶滅危惧一B類に分類され、県内のウナギの漁獲量は最近十年間で半減しており、国内でも食用の九九・九%が養殖になっているようです。福岡県の代表的な地名が種名に含まれているハカタスジシマドジョウにおいても絶滅危惧一A類に分類されています。県内における生息河川は三水域のみで、生息域は人口の多い地域と重なっており、治水を目的とした河川改修による生息環境の悪化が懸念されています。ほかにも外来種の影響で絶滅リスクが高まっているニッポンバラタナゴや、九州固有亜種であるカゼトゲタナゴの保全意義は大きいため、対策が急務とされています。  河川整備において、防災の観点では洪水対策が大変重要であることは言うまでもありませんが、自然環境に目を向けると平時の流量も重要であります。人間の生活に必要な水資源でもあり、バランスの取れた河川整備や管理が大きな課題かと思いますが、今後、希少生物の生息に必要な流量について調査や管理が進むことを期待しています。  河川でしゅんせつされた土砂に関しても、多くはほかの公共工事などで有効活用されていると聞き及んでおりますが、河川の土砂が下流域や河口まで流れ着くことも汽水域の自然環境の保全にとっては大切なことのようです。汽水域では、塩分を含む環境でも生育できる塩生植物が見られ、光合成によりCO2 の固定に寄与することから、カーボンニュートラルな観点でも有益です。しゅんせつされた土砂の活用の一つの手段として、Eco-DRRの考え方も踏まえ、覆砂や置き砂を含めた汽水域や河口域への土砂還元について調査や検討も提案を受けております。  環境省の第六次環境基本計画においても、生物多様性の損失に対して、絶滅種が全国的にも急増しており、強く警鐘が鳴らされております。Eco-DRRの実装に当たっても、環境省は、市区町村をはじめ都道府県、河川管理者や地域住民、市民団体など様々な関係者の連携による横断的な体制の構築が望まれると説明しています。福岡県としても、庁内の関係部局間や自治体間の連携に加え、専門家や有識者の声をこれまで以上に大切にしながら県民への情報提供や理解の普及を強化することを要望いたします。  そこで、二点知事にお尋ねいたします。近年、生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)の考え方が注目されており、河川整備においても多くメリットがあり、Eco-DRRはグリーンインフラを活用した防災・減災の取組と言い換えることができると思います。これらを踏まえて、このグリーンインフラの考え方を活用し、自然環境に配慮した河川整備を進めるべきだと考えますが、今後策定する河川整備基本方針や河川整備にどのように取り入れていくのか知事の考えを伺います。  二点目に、絶滅のおそれのある野生生物の分布状況などを記載した福岡県レッドデータブックについては、今年度内をめどに改訂作業を行っていると伺っております。今年度改訂予定のレッドデータブック内容は、今後策定する河川整備基本方針の策定にどのように反映されるのか。また、県内の河川整備基本方針の策定状況も併せてお示しください。その上で、県内河川に生息が確認されているシロウオやハカタスジシマドジョウなどレッドデータブック掲載種に対するしゅんせつ時における配慮や対策がどのようにされているか知事の考えをお伺いします。  以上で質問を終わります。ありがとうございました。(拍手) 23 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。 *知事答弁 24 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁を申し上げます。  グリーンインフラの考え方を活用した河川整備についてお尋ねがございました。グリーンインフラとは、社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、生き物の生息の場の提供や気温上昇の抑制など、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土、都市、地域づくりを進める取組でございます。  各水系の河川整備基本方針は、生物の多様な生息環境の保全や自然と触れ合える水辺空間の創出など、グリーンインフラの考え方も取り入れて策定をしているところでございます。県ではこの方針に基づきまして、魚類が生息する浅瀬や深み、鳥類・貝類が生息する干潟や水辺などを保全し、さらには創出し、多様な生物が生息しやすいよう環境に配慮した河川整備を進めているところでございます。  次に、河川整備におけるレッドデータブック掲載種の取扱いについてでございます。既に策定をいたしております各水系の河川整備基本方針におきましては、最新のレッドデータブックの情報を基に希少種に配慮した整備の考え方を定めております。また、現在策定中の基本方針におきましても、今年度改訂予定でございますレッドデータブックの情報を反映することといたしております。この基本方針は、県が管理する五十二の二級水系のうち十九の水系で策定済みで、現在四つの水系について策定作業を進めております。  また、河川のしゅんせつは現地の状況や地域の皆様の御意見を踏まえて実施をいたしておりまして、特に希少種が生息する河川につきましては、その生息環境を損なうことがないよう、一様に平たんなしゅんせつを行わず、シロウオの産卵場となる礫底やあるいは水際の植生域など、現況の環境を残す、保全するなどの配慮を行っているところでございます。  今後とも、自然環境に配慮した河川整備また維持管理に努めてまいります。 25 ◯議長(香原 勝司君) 江頭祥一君。(拍手) *江頭議員質問 26 ◯四十八番(江頭 祥一君)登壇 自民党県議団の江頭祥一です。今回の質問は、県営公園筑豊緑地における、アーバンスポーツに関してではなく、インクルーシブ遊具の可能性についてただしてまいります。  私が住んでいる筑豊地区に位置する県営筑豊緑地において、インクルーシブ遊具の整備が着々と進んでいます。令和四年六月議会で我が会派の花田議員より、インクルーシブ遊具の整備について知事に質問し、知事からは、先進事例の情報収集を行うとともに、障がい者支援施設の職員さんや保護者の方などから整備に当たっての意見や要望をお聞きし、導入について検討するという前向きな御答弁をいただきました。また、先月末、公園内にインクルーシブ遊具の紹介や完成予想図が掲載された看板が設置されたことにより、公園を訪れた子供たち、特に障がいのある子供や親御さんから、開園が待ち遠しい、楽しみにしていますなどの意見や問合せが私にも入っており、老若男女、多くの方が大変楽しみにされています。  御存じのとおり、筑豊緑地は国際車いすテニス大会天皇・皇后杯が毎年開催されており、過去にも県が大会支援のためにテニスコートを国際規格に改修するなど、県としても積極的に障がい者施策に関わってきた歴史があります。その先頭に立たれていたのが現在の服部知事だとお聞きしており、今回のインクルーシブ遊具の整備においても、知事が先頭に立って必要とされている方に寄り添い、完成に向けて取り組んでいただいていると認識しております。  そこで、まず知事にお尋ねいたします。現在、整備が進んでいる筑豊緑地については、障がいの有無にかかわらず誰もが安全に利用でき、利用者のニーズに合った施設とするために、どのようなプロセスを経て整備を進めているのか、またどのような遊具や関連施設が整備され、いつ頃のオープンを予定されているのかお尋ねいたします。  私は、令和四年十二月議会において、障がい児保育に関する県の取り組み方について質問をさせていただきました。障がい児保育は、障がいがあるなしにかかわらず、インクルーシブ教育の観点からも今後ますます充実させていく必要があるものと思っておりますが、現在、整備中のインクルーシブ遊具を通じて、公園の利用促進だけでなく、県内市町村教育委員会と連携して、障がいの有無に関係なく全ての子供たちが互いに学べ、さらには担当教員の方が適切な指導と必要な支援を行えるようになるなどの専門性を身につけるための、いわゆるインクルーシブ教育の推進にもつながる取組をすべきであると考えますが、教育長の考えをお聞かせください。  インクルーシブ遊具の利用時において、例えば聴覚障がい者でいえば音による危険の察知が難しいといったことがあります。そのほか多様な障がいと、その特性の中にも様々な問題があると思われます。これらを解決し、あわせて、障がいのあるなしにかかわらず子供たちが互いに仲よく遊び、互いを理解しながら遊びを通じて学べるようなルールづくりやインクルーシブ教育につながる仕組みをもっと発展させ、今後のインクルーシブ遊具の活用のモデルとなるように、インクルーシブ遊具の活用を推進する組織を筑豊緑地に関して設置してはどうかと考えますが、教育長の考えをお聞かせください。  完成すれば、国内有数のインクルーシブ遊具や関連施設を兼ね備えた公園となり、全国でも突出したモデル公園が、私の住んでいる、愛してやまない筑豊地域に完成することを大変うれしく思い、期待が膨らみます。今後は、筑後広域公園や大濠公園などにおいてもインクルーシブ遊具が整備されるとお聞きしています。インクルーシブ教育の推進につながるこれらの取組を全国に先駆けて福岡県で行い、また、県内市町村がインクルーシブ遊具を整備するきっかけとなり、また、これらが福岡県方式として全国に広がっていくことを期待して、私の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手) 27 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。 *知事答弁 28 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁を申し上げます。  どのようなプロセスで県営筑豊緑地におけるインクルーシブ遊具の整備を進めているのかというお尋ねがございました。障がいのあるなしにかかわらず誰もが楽しめる公園といたしますためには、計画の段階から、公園を利用される方や障がい者福祉に関わる方など様々な方から意見や要望を聞き取り、計画に反映させていくことが重要であると考えております。このため、今回、筑豊緑地にインクルーシブ遊具を整備するに当たりましても、配慮すべき点について、筑豊地区の障がい者支援施設の職員の皆様を対象に聞き取りを行いました。その結果、駐車場やトイレから遊具までの距離、あるいは屋根のある休憩施設の必要性など配慮すべき事項が明らかとなりました。  また、筑豊地区の障がい者支援施設や小学校等の職員・児童のほか、公園を利用されている方を対象にアンケートを行いました。そのアンケートでは、どのような遊具を整備してほしいか、障がいがある人とない人が共に遊ぶことに対する不安がないかといったことについて意見を伺いました。意見といたしましては、トラブルやけがが不安であり、保護者による見守りが不可欠であるといった声を多くいただきました。このため、保護者の皆様への配慮として、複数のあずまやを配置することといたしました。  さらに、障がい者支援施設や小学校等の職員が参加いたしますワークショップを二回開催しまして、駐車場やトイレ、屋根のある休憩施設の具体的な配置などについて意見交換を行い、配置計画に反映させたところでございます。このように様々な意見を反映させるプロセスを経て整備を進めているところでございます。  次に、筑豊緑地に設置するインクルーシブ遊具とその関連施設の整備についてでございます。インクルーシブ遊具につきましては、アンケート結果などを踏まえ、車椅子に乗ったまま遊べるトランポリンや、体幹が弱くても楽しめるサポートつきのブランコなど十二基を設置いたします。  関連する施設につきましては、インクルーシブ遊具の利用が困難な方などが座ったり寝そべったりして遊ぶことができるよう、ゴムチップ舗装の広場を整備いたします。また、この広場には、体温の調節が困難な方も利用することができますよう、直径二十メートルの大屋根を設置いたします。あわせて、四か所のあずまやを設置し、保護者の皆様が見守りながら休憩できるよう配慮いたしております。さらに、遊具に隣接した場所に介助用ベッドを備えた多目的トイレや、駐車場を新設するなど、整備を進めております。  オープンの時期につきましては、早期供用を待ち望む公園利用者の方の声にお応えをしまして、今年の秋以降、利用可能なものから順次供用を開始し、令和七年春の完成供用を目指して整備を進めてまいります。 29 ◯議長(香原 勝司君) 寺崎教育長。 *教育長答弁 30 ◯教育長(寺崎 雅巳君)登壇 インクルーシブ遊具を通じたインクルーシブ教育の推進についてでございます。障がいのある子供とない子供が共に活動する取組を実施する際にこうした遊具を活用することは、インクルーシブ教育推進の観点から大変意義があり、また、指導に当たる小中学校教員の障がいのある子供に対する理解促進と実践的指導力向上につながるものと考えております。このため、市町村教育委員会とも連携をし、筑豊緑地に近い嘉穂特別支援学校と地域の小中学校が交流活動を行う際にインクルーシブ遊具の活用を進めてまいります。  インクルーシブ遊具の活用推進のための検討組織の設置についてでございます。筑豊緑地においては、他の県営都市公園に先駆けましてインクルーシブ遊具の整備が進められております。インクルーシブ教育の観点から、これらの遊具を安全・安心で効果的に活用するためには、まずはそのルールづくりや具体的な活用モデルなどが必要と考えます。そうした活用の在り方を検討するため、今後、県教育委員会、知事部局、市町村教育委員会等による協議会を設置してまいります。 31 ◯議長(香原 勝司君) この際しばらく休憩いたします。再開は午後一時四十分といたします。           午 後 零 時 二十六分  休 憩           午 後 一 時 四十一分  再 開 32 ◯副議長(佐々木 允君) 再開いたします。  休憩前に引き続き、一般質問を行います。順次発言を許可いたします。原竹岩海君。(拍手) *原竹議員質問 33 ◯七十一番(原竹 岩海君)登壇 皆さん、こんにちは。民主県政クラブ県議団の原竹でございます。通告に従いまして一般質問させていただきます。初めに、さきに国会で可決をしました改正食料・農業・農村基本法の関連法案でございます食料供給困難事態対策法案についてお伺いします。  我が国は、一九五〇年代から高度成長の時代に入り、多くの農業者が様々な産業の労働力として大量移動していくとともに全国各地の農業が衰退をいたしてまいりました。農業の危機が叫ばれるようになりました。これらのことから、一九六一年、農業者の生活の抜本的な改善と農業政策の目標と方向性を定めた農業の憲法とも言うべき農業基本法が制定をされたところであります。その後、農業基本法は、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉による米の部分開放をはじめ国内外の事情により機能をしなくなり、それから三十八年後の一九九九年に、国土や環境の保護など農業生産以外で農業や農村地域の持つ役割を高め、食料自給率を高めることなどを目的として、新たに食料・農業・農村基本法へと改正をされたところであります。それから時間が経過をし、今回、約二十五年ぶりの農業基本法の改正に、農業者の皆さんや関係団体は法改正と新たな関連法が制定をされるとして大変御期待をされていたのではないでしょうか。  法改正の主な内容としましては、食料安全保障の確保、環境と調和の取れた食料システムの確立、農業の持続的な発展及び農村の振興であります。しかし、大学の専門家や各種団体、一部の報道では、二十五年ぶりの法改正にしては、食料安全保障の強化を除けばほかの論点は曖昧で、法改正の意味と目標も曖昧であると、あまり評価をされていないのが現状のようであります。主な内容としましては、食料安全保障の定義において食料の安全性と十分な量が明記をされていない、コストの価格転嫁が適当な価格ではなく、従来のままの合理的な価格である、また、フードバンクなどへの支援、アニマルウエルフェアへの配慮がない、有機農業の促進などという重要な政策課題が抜け落ちている、さらには、国民全体の食の安全と安心の財産である法的根拠に基づく種子の確保の重要な政策が見当たらないという大変厳しい声であります。  また、私はこの農業基本法の関連法案にも注目をしております。関連法案といたしましては、食料供給困難事態対策法と農地法の改正とスマート農業があります。今回は食料供給困難事態対策法についてお伺いをします。本法案は、我が国で食料不足が生じた場合、どの程度の食料確保が可能かを把握するため、農家から政府に対して生産計画書を提出させるという義務を課し、これに従わないか、もし怠った場合は罰則を科すとしています。その内容は、農家に対して二十万円以下の罰金と氏名を公表するとしており、また、刑事罰ですから場合によっては警察も事件として対象農家などに捜査介入をしてくるという法律の内容にもなっております。  これは農家の皆様に対して極めて異例の法律であり、大変ゆゆしき制度であると思うのであります。政府は、食料安全保障が重要であるとしながら、その一方では、農業や畜産の生産に係る異常な物価高において経営危機にある、このような農家や業界に対して罰則を用いて食料の自給率の向上を図り、食料安全保障を維持、さらには向上をいたしていこうとしている政府の農業政策に対して憤るばかりであります。  そもそも食料自給率については、長年にわたり国策として政府の責任において現実的政策を用いて全国各地に適した農作物が少しでも多く収穫ができるようきめ細かく具体策を行使するべきものであり、農家に罰則を用いて食料の自給率を向上していくとした今回の農業政策は全くの愚策であると強く訴えるものであります。  これは農家の皆様方に対して大変失礼な法案だと思うのであります。顧みますと、かつての減反政策では、減反政策に協力をいただいた農家に対して補助金や助成金をもって一定の成果を上げたのであります。政府の生産農家に対する尊敬の念と配慮の心のなさ、この驚きの悪法に憤るばかりであります。  そこで、知事にお伺いします。知事は農家に対して罰金や刑事罰、氏名の公表などを盛り込んだ食料供給困難事態対策法案をどのように認識をされ、どのように評価をされておられるのかお伺いします。  次に、食品の原料原産地の表示の必要性についてお伺いします。日頃、消費者の皆さんは、お店で、パンなど小麦粉を原料とした食品の原料がどこ産なのか、原産地の表示をしっかり確認されて、安全と思われる食品を購入されているのではないでしょうか。私の地元でも、大きなスーパーマーケットの食品コーナーでは、夕方にもなりますと消費者の皆さんで混雑をしております。また、コンビニやパン屋さんなどでも小麦粉を原料とした食品が多く店頭に並んでいます。私もパンなどを買うときは食品のパッケージに記入をされている原料の産地の表示をできる限り確認をしながら買っておりました。  私は最近まで、その原料の原産地の表示に小麦粉(国内製造)と明記をされており、私はその表示を見て一〇〇%国産品だと思っておりました。ところが先般、消費者団体から御指摘があり、我が国の小麦の国内自給率はカロリーベースで約一〇%、あとの九〇%が輸入に依存をしているのが現状であり、日本中の食料品店にパンなど一〇〇%国産の小麦を使用した多くの食料品が店頭に並んでいるのは考えられないとして、消費者庁に対して、消費者の皆さんが誤解をされないように、小麦粉を加工して商品化をした国や地域を表現した、例えば小麦粉(国内製造)という表示から、小麦粉ではない小麦の生産地を明記した小麦粉(カナダ産またはアメリカ産)と明快に原料原産地を表示させることにより消費者が判断しやすい表示制度にするべきとの意見が多く出されているようであります。私も消費者として実に真っ当な御意見だと思っております。  そこで、知事にお伺いします。これらパンなど小麦粉を使用した食料品で、輸入の小麦粉が使用されていても国内製造と記入できる現在の原料原産地表示制度では、消費者の皆さんは国内の小麦を使って製造された食料品と誤解をされる可能性が高く、事実、各消費者団体から国へこれらの表示制度を早期に改正すべきと意見、要望がなされております。これらのことから、消費者の皆さんが分かりやすい表示制度に改正をするべきであり、知事は県のトップリーダーとして、また一人の消費者として、国に対して要望すべきと考えますが、知事の御見解をお伺いします。────────(拍手) 34 ◯副議長(佐々木 允君) 服部知事。 *知事答弁 35 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁を申し上げます。  食料供給困難事態対策法についてお尋ねがございました。近年、世界的な食料生産の不安定化など、国内における食料の供給量が大幅に不足するリスクが拡大いたしております。このような情勢を踏まえまして、政府は食料の安定供給の確保に向け、米、小麦、大豆など、国民の食生活上、重要な食料について供給困難な事態が発生した場合、生産者に対し生産拡大の要請や生産計画の作成、届出指示を行うなどの措置について定めた法案を国会に提出し、本日、成立をいたしました。  この法律では、生産者がその指示に違反して届出をしなかった場合に罰則を科すことなどが盛り込まれております。国では、このような罰則は食料の供給確保対策を講ずる際の実効性を担保する上で不可欠なものであり、この法律と同様の措置を規定いたしております国民生活安定緊急措置法に照らしてみても妥当な水準であるとの見解を示しておられまして、私もそのように考えております。  しかしながら、生産者の方に不安を与えることがあってはなりません。今後、国におかれては、法律のその趣旨や内容について生産者の皆様に丁寧に説明していただきたいと考えております。  次に、加工食品の原料原産地表示についてでございます。加工食品の原料の原産地につきましては、平成二十九年九月以降、食品表示法に基づく基準によりまして、一番多い原料が、生鮮食品の場合はその産地を、中間加工原料の場合はその製造地を表示することとなっております。食品表示制度は消費者が安全に安心して食品を選ぶ機会を確保することを目的としたものでありますことから、県民の皆様が表示の内容を誤認しないことが重要であると考えております。  加工食品の原料原産地表示につきましては、内閣府の消費者委員会に対し消費者団体から改善を求める意見が出され、現在、国において対応を検討されておりまして、県といたしましてはその動向を注視してまいります。 36 ◯副議長(佐々木 允君) 原竹岩海君。 37 ◯七十一番(原竹 岩海君)登壇 先ほど知事から、本法案は可決成立をしたということでございます。だから、法案の「案」を取ってお話をさせていただきます。知事に対しまして、食料供給困難事態対策法に関しまして意見と要望がそれぞれございます。よろしくお願い申し上げます。  先ほど食料供給困難事態対策法のところで知事は、国民生活安定緊急措置法に照らして法案の刑事罰を用いた罰則制度は妥当と考えるとの答弁がございました。────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────  そこで、要望です。服部県政におかれましては、様々な環境に置かれている農業者に寄り添っていただきまして、農業の発展にさらなる御尽力をいただきますことを強く要望して、質問を終わります。どうもすみません。ありがとうございました。(拍手) 38 ◯副議長(佐々木 允君) 大塚勝利君。(拍手) *大塚(勝)議員質問 39 ◯六十八番(大塚 勝利君)登壇 公明党の大塚勝利です。通告に従いまして、初めに、強度行動障がいのある方の支援について質問します。  自閉症や重度の知的障がいによって自傷他害行為等が高い頻度で起こる強度行動障がいのある方の支援について、令和四年十二月議会代表質問でただしましたが、その後、多くの御家族から御相談があり、支援の必要性の高さがうかがえます。  知事の答弁の中で、国において強度行動障がいのある方の支援に関する検討会を立ち上げ、全国的に把握するためのルールに関する検討が始まっているところとし、強度行動障がいのある方への支援には支援者の高い専門性と落ち着ける空間の確保などの環境面での配慮が必要と答弁されました。その後、国においても、強度行動障がいにおいて環境調整が状態の改善に有効であるとし、令和六年度報酬改定で、施設入所や生活介護に加えグループホームについても環境調整を取り入れた初期のアセスメントへの報酬上の評価が盛り込まれたところです。こうした国の動きを受けて、支援者の高い専門性、環境面での配慮など、強度行動障がいの方への支援体制を充実させる必要があると考えます。  先般、私は、強度行動障がいの入所型施設志摩学園を視察しました。同施設には強度行動障がいの方が五十名、障がい区分は平均五・九と重い方を受け入れ、専門病院が満室で入院できない方やほかの施設を断られた方を受け入れられており、県内には同様の施設はありません。個室の壁は蹴破られ、二人で抱えていないとトイレの水を飲んだり異物誤嚥のおそれがあるなど、特別な対応を取らねばならず、入所者の生活介護を行う生活支援員は不足し、また、医療機関との連携など多くの課題を伺いました。  定員は常に満員で、待機者は約五十名、問合せを入れればそれ以上で、どこにも行き場のない方が潜在しており、御本人、御家族、施設事業者への適切な支援が必要であることを痛感したところです。ほかにも、支援員のノウハウが不足しているため、重度の強度行動障がいのある方が入所を断られるケースがあると聞いています。  そこで、質問です。県内の強度行動障がいのある方の人数や施設の受入れ状況を把握されているのか、県は今後、強度行動障がいの方の受入れが進むようどのように取り組まれるのか知事の所見を求めます。  次に、医療的ケア児者の支援について質問します。先日、福岡市博多区にある社会福祉法人あきの会虹の家を親の会の代表と視察しました。同法人は、重症心身障がい者の親たちから短期入所の受入先がないとの悲痛の訴えに応えるため、平成二十六年に療養介護事業所を開設。乳幼児から成人まで医療と福祉の一体的な提供により多くの重度者の地域生活を支えています。現在、六十八床で、五十六床を長期入所、十二床を医療型短期入所の単独病床とし、長期入所に空きがあれば短期で受け入れ、ショートだけで一日十四から十五床、ショート受入れは日本一です。それでも昨今、入所希望が多く、断らざるを得ない状況とお聞きしました。福岡市だけでなく近郊からの利用者も多く、重症者の割合が三割、生活介護も区分五、六が中心と、近年、重症者が多くなっています。  本県では、これまで重症心身障がい児者の実態調査を実施し、その結果、母親の負担が大きく、御家族が短期入所を希望しても受入先がなかったことから、圏域ごとに医療機関に加え老健施設を活用するなど受入先を拡充してきたところです。令和五年度医療資源調査結果によると、県内の医療機関で診療を受ける二十歳未満の医療的ケア児数は千三百七人と推測され、令和二年度の調査七百七十三人と比較し、算出方法が異なるため留意が必要ですが、医療的ケア児は増加傾向にある中、医療資源の整備が急がれます。  以下、現場の声から三点質問します。昨今、施設、圏域によって短期入所を希望しても受入先がない状況をお聞きしました。理由として、施設によってそもそも短期用のベッドが少ないこと、新規の受入れはリスクを伴うこと等が考えられますが、県として現状をどのように認識されているのか、受入れが進むようどのように対応されるのか知事の見解を求めます。  次に、親の会から、NICUから在宅に移行後、病状が悪化したときの相談先や乳幼児の医療的ケア児を受け入れるところがないとの不安の声や、施設からも乳幼児受入れの問合せが多いと伺いました。在宅移行後に受入れや相談を受ける医療機関が不可欠です。また、介護する家族の負担軽減(レスパイト)も必要です。本県では、在宅移行後に受け入れる医療機関を確保するためどのような取組がなされているのか伺います。また、一時的に預けることができる医療機関を確保するため、これまで取り組んできた医療型短期入所や小児慢性特定疾患児等レスパイト支援事業に加え、どのように取り組まれているのかお伺いします。  次に、障がい者施設の一番の課題は、受入れを増やしたくとも人手が足りないこと、福祉人材の確保です。昨今、社会福祉士など福祉系の分野で学んだ学生が他業種へ流出していることが課題となっており、それらの学生を福祉へ呼び込む取組が重要です。福祉分野で学んだ学生の確保に向けて知事の見解を求めます。  この項の最後に、医療的ケア児の学校への送迎について教育長に伺います。令和三年九月、医療的ケア児支援法の施行を踏まえ、北九州市では、肢体不自由特別支援学校に通う医療的ケア児のうち、スクールバスの利用が困難な児童生徒を対象に、希望された方へ令和五年七月から、看護師が同乗する福祉タクシーによる通学支援を週に数回実施し、家族の負担軽減にもつながっています。本県では、令和三年九月議会で教育長から、適切な通学支援の在り方について研究を進めてまいりたいとの答弁がありました。  そこで、質問です。研究の結果を踏まえ、通学バスの利用が困難な医療的ケア児の通学支援について教育長の見解を求めます。  次に、学校管理下で発生した子供の事故について教育長に伺います。学校管理下での事故に見舞金などを支払う日本スポーツ振興センターのデータベースでは、二〇一三年から二〇二二年の十年間に学校での重大事故で亡くなった子供は全国で五百三十八人、何らかの障がいが残った子供は三千七百四十五人に上っています。NHKがそのデータをAIで解析したところ、中学、高校の体育の授業での心臓系突然死、窓からの転落事故、ゴールポスト等の下敷きになっての事故、低学年に見られるミニトマトや白玉だんごなどを詰まらせた給食中の窒息死など、ある地域では数年に一度でも、全国で見れば毎年のように同じような事故が繰り返されており、教訓が十分に生かされていない実態が明らかになりました。  また、名古屋大学の内田良教授や子供の安全研究グループの専門家の方は、学校で起きている事故はコピペ事故のようなものとし、子供の事故は新しいものはなく、どこかで起きた事故の繰り返しであるとしています。同じような事故が繰り返し起きる理由は、一つは、学校の安全管理が専門家でなく教職員に委ねられており、再発防止には欠かせないはずの調査が十分に行われていないこと、もう一つは、自治体間の情報共有の難しさであると指摘しています。  こうした学校での重大事故をなくそうと、文部科学省は二〇一六年に学校事故対応に関する指針を策定し、重大な事故の際には学校が調査を実施し、必要に応じて調査委員会を立ち上げて詳細な調査を行い、国に結果を報告するよう求めていました。しかしながら、新聞報道によると、日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度により見舞金などが支払われた小中高校などでの死亡事故は、二〇一六年から二〇二二年度の七年間に少なくとも全国で四百五十六件あったところ、同期間にあった文部科学省への報告は百四十一件であり、約七割が未報告であったとのことです。こうしたことから、今年の二月に文部科学省は指針を改定し、学校事故の報告の徹底を図ったところです。  そこで、教育長へ質問です。まず、改定前の旧指針ではどのような事故を文部科学省へ報告するようになっていたのでしょうか。あわせて、指針が策定された平成二十八年度以降、旧指針に基づき県教育委員会へ報告された死亡事故は何件なのか、また、県教育委員会へ報告された重篤な事故はどのようなものがあったのかお伺いします。  次に、学校で事故が起こった際には、教職員がちゅうちょなくAEDを使用する等、適切な心肺蘇生法を身につけておくことや、子供たちも、将来対峙するかもしれない緊急時のために、心肺蘇生に関する基礎を中高生の段階から学んでおく必要があると考えます。そこで、公立学校の教職員を対象としたAEDを用いた心肺蘇生法に関する講習会の開催状況と、公立学校の生徒における応急手当に関する学習内容について教育長にお伺いします。  この項の最後に、今年の夏も全国的に気温が高いと予想されており、これからの時期、熱中症事故が大変心配されるところですが、NHKの報道によると、二〇〇五年から二〇二一年度の十七年間で、全国で二十一人が部活動中に熱中症やその疑いにより死亡、また、屋外での授業中や登下校中等の学校管理下においても熱中症が発生しているとのことです。  そこで、お伺いします。公立学校において熱中症事故を防止するためどのように取り組まれるのかお伺いします。また、改定された指針の内容を踏まえ、学校での事故を減らすため、県教育委員会としてどのように取り組まれるのか教育長にお伺いいたします。御清聴ありがとうございました。(拍手) 40 ◯副議長(佐々木 允君) 服部知事。 *知事答弁 41 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁申し上げます。  強度行動障がいのある方の状況及び今後の取組についてでございます。昨年度、県が実施いたしました市町村への調査では、障がい福祉サービスを受けていらっしゃる方で、奇声を発する、あるいは自傷──自らを傷つけるといった行動が高い頻度で起こります強度行動障がいのある方は約三千三百人おられまして、このうち約二千三百人がグループホーム等に入所しておられます。  県では、グループホーム等が強度行動障がいのある方に対し、適切な支援を行うことができますよう、今年度から新たに強度行動障がい支援コーディネーターを福岡地域の発達障がい者支援センターに配置しまして、グループホームに対し、行動障がいの原因分析の方法、あるいは一人一人の特性に応じた支援、また落ち着いて生活できる環境の整え方などに関しまして助言を行うことといたしております。  また、これまでの座学による支援者養成研修に加え、新たに県内二か所の施設におきまして、グループホームの中核職員を対象とした実地研修を行います。これの実施に当たりましては、より効果的な研修といたしますため、障がい者施設、医療機関、支援団体などで構成する協議会を立ち上げまして、効果的な支援方法、支援員の専門性の向上、環境面の必要な配慮など、その内容について協議することといたしております。これらの取組によりまして、強度行動障がいのある方の受入れを進めてまいります。  次に、医療型短期入所事業所の現状についてでございます。県内では、現在、三十七の医療機関などで医療型短期入所事業を実施しておりまして、一昨年度の実績では延べ約四千三百人の方が利用しておられます。利用者が希望する地域で必要なときにサービスを受けることができますよう、この受入れ施設を増やすことが望ましいと考えております。県といたしましては、医療型短期入所事業への理解を進めるため、実施を検討しておられます医療機関を個別に訪問し、事業の内容、サービスに係る報酬額、事業所指定の手続などについて説明を行っております。  また、医療的ケア児者の対応に不安があるとの声を受けまして、医療機関などの職員を対象に、医療的ケア児者とのコミュニケーションの取り方や保護者への支援方法、喀たんの吸引、誤嚥ケアの技術などを習得する実践的な研修を行っております。これらの取組により実施事業所が増えるよう努めてまいります。  在宅移行後に医療的ケア児を受け入れる医療機関の確保についてでございます。県では、NICU等からの在宅移行後に病状が悪化した医療的ケア児を受け入れますため、あらかじめ専用の病床を確保した医療機関を小児等地域療育支援病院として指定をいたしております。昨年度、福岡地域の二つの医療機関におきまして四床を確保し、今年度中には残る県内三地域でも、五つの医療機関で十床を加えまして、合計七医療機関十四床を確保することといたしております。  一時的に預けることができる医療機関につきましては、御家族の負担軽減を図りますため、議員御指摘の既存のレスパイト事業に加えまして、昨年度から既存事業の対象から外れている医療的ケア児を受け入れる病床を確保いたしております。昨年度、県内四地域の四医療機関で十二床を確保し、今年度中に一医療機関を加え、合計五医療機関十三床を確保することといたしております。これらの取組を通じ、引き続き医療的ケア児の在宅移行後の受入れや御家族の負担軽減に取り組んでまいります。  福祉人材の確保についてでございます。少子高齢化の進行や世帯構成の変化などによりまして、福祉サービスへのニーズはますます増大しておりまして、福祉人材の確保は喫緊の課題でございます。このため、福岡県福祉人材センターにおいて、福祉分野の就職支援専門員が行う無料の職業紹介あるいは就職面談会などを実施しまして福祉人材の確保に取り組んでまいりました。
     今年度からは、福祉を学ぶ学生が他分野に流出することを防ぎますため、新卒採用に係る広報活動が解禁されます三月に合わせ、福祉の就活フェスタを実施してまいります。より多くの学生の皆さんに参加していただくため、福祉系の学科を持っております県内の大学等を訪問し、学生に直接周知することとしております。  この就活フェスタでは、参加した法人による職場の魅力のPRとインターンの受付、福祉人材センターの就職支援専門員による自分に合った職場を探すためのアドバイスなどを実施いたしますことで、学生の福祉分野への就職意欲の向上を図りまして、福祉人材を確保していくことといたしております。 42 ◯副議長(佐々木 允君) 寺崎教育長。 *教育長答弁 43 ◯教育長(寺崎 雅巳君)登壇 お答えいたします。  通学バスの利用が困難な医療的ケア児の通学支援についてでございます。昨年度、通学バスの利用が困難などの理由で保護者が送迎をしております医療的ケア児の数は百十名となっております。県教育委員会において、通学支援に関する他県の取組状況を調査したところ、昨年度は試行も含めまして十五都府県で実施中であり、主な方法としては、福祉タクシーに看護師を同乗させる形態で通学支援を実施をしております。実施している県の課題としましては、費用面に加えまして、看護師や福祉タクシーなどの車両の確保が困難であること、当日の体調不良によりますキャンセルが多く、そのキャンセル料などで予算の見込みが立たないこと、また、車中での体調急変時の対応などがございます。  今後、これらの多くの課題を踏まえまして、医師、弁護士、保護者等で構成されます医療的ケア体制整備事業運営協議会におきまして、医療的ケア児の通学支援の在り方について研究をしてまいります。  改定前の学校事故対応に関する指針における事故報告についてでございます。平成二十八年三月に作成されました指針では、校内や登下校中に発生した児童生徒の死亡事故について国まで報告をすることとされておりました。また、死亡までは至らない長期の治療を要する重篤な事故については、国への報告は求められておりませんが、県教育委員会までは報告することとされておりました。  この指針に基づき報告されました死亡事故は、学校内の事故が四件、登下校中の事故が三件の合計七件でございます。また、休み時間に児童同士が接触して骨折した事例や運動中に靭帯を損傷した事例などが、長期の治療を要する重篤な事故として県教育委員会へ報告をされております。  なお、児童生徒の自殺や学校給食における食物アレルギー事故につきましては、個別に指針が整備をされておりますことから報告対象からは除かれておりまして、改定後の指針においても同様となっております。  AEDを用いた心肺蘇生法の講習等についてでございます。県教育委員会では、毎年、各学校の初任者や学校安全の担当者を対象にAEDを用いた心肺蘇生法に関する実技研修会を実施をしております。あわせて、各学校で行う校内研修においても、消防署等の協力の下、同様の研修を実施をしております。また、生徒に対しては、AED等を用いた心肺蘇生法について保健体育科の学習指導要領に明記をされておりまして、各中学校、高校において実習などを通した指導を行っております。  熱中症を含む学校事故の防止に向けた取組についてでございます。県教育委員会では、学校事故の防止に向け、毎年、学校安全の充実に関する通知を発出するほか、各種研修会での指導や施設設備の安全点検などの実態調査等を実施をしております。特に熱中症については、市町村教育委員会及び学校等に対しまして、児童生徒の小まめな水分・塩分補給や、暑さ指数等を活用して必要な場合にはちゅうちょすることなく計画の変更、中断を行うことなど適切な措置を講ずるよう通知をしております。また、保健主事研修会等におきまして、熱中症の起きる状況や症状と、これを防止するための具体的な方策について指導を行っているところでございます。  今後、類似の事故を防止するためには、学校間、市町村間の事例の共有が重要でございます。新たな指針においては、この点に鑑み、国への報告対象に、意識不明など死亡に至らない重大な事故が追加されたほか、県に報告された事案について、その原因、傾向、再発防止策等を取りまとめ周知することとされました。県教育委員会としましては、本県の事案や国から提供される具体的な再発防止策などを各種研修会の場において積極的に周知するなど、学校事故の未然防止に一層取り組んでまいります。 44 ◯副議長(佐々木 允君) 吉田浩一君。(拍手) *吉田(浩)議員質問 45 ◯四十七番(吉田 浩一君)登壇 自民党県議団吉田浩一でございます。通告に従いまして、今後の農業政策の在り方について質問いたします。  国においては、農政の憲法とされる食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案が先月二十九日に参議院で可決成立され、今月五日に施行されているところです。  旧基本法の制定から四半世紀を経て、我が国の食料・農業・農村は、制定時には想定しなかった、または想定を超えた情勢の変化や課題に直面しております。世界人口の増加に伴い食料需要が増大する中で、気候変動による異常気象の影響やロシアによるウクライナ侵攻による物流の途絶など、様々な要因により食料安全保障の強化は我が国における喫緊の課題となっております。  一方で、国内農業に目を向けると、農業者の減少・高齢化や農村におけるコミュニティーの衰退が懸念される中、二〇〇九年には総人口も減少傾向に転じ、国内市場の縮小は避け難い状況となっております。加えて、SDGsの取組意識が世界的に広く浸透し、自然環境を資本とした農業、食品産業に対しても、環境や生物多様性等への配慮、対応が社会的に求められ、今や持続可能性は農業、食品産業の発展や新たな成長のための重要課題として認識されるに至っているところです。  このように、我が国の食料安全保障などに関わる国内外の情勢の変化など様々な課題に対応していくため、国では令和四年九月から、食料・農業・農村政策審議会において基本法検証部会を設置し、旧基本法の検証、見直しについて合計十六回にわたる議論がなされ、今回、食料・農業・農村基本法の改正に至ったものであります。  このことについて、岸田総理は、世界的な食料需要の不安定化などを考えたとき、食料安全保障を中心に議論が深められ、その結果として法律が改正されることの重要性を感じていると改正の意義を強調したところです。また、私自身も、昨今の農業を取り巻く環境や情勢の変化について生産現場で実感しており、今回の法律改正は、本県農業のみならず日本農業の大きな転換点として大変注目をしております。  一方、農林水産業を取り巻く情勢の変化、多様な消費者ニーズに対応した生産や人材の育成、防災・減災対策などを総合的に進めるため、県では令和四年三月に、福岡県農林水産振興基本計画を策定しています。現在、本計画に基づき、県、生産者、市町村をはじめとする多くの関係者が連携し、各種目標を目指す施策を推進することにより、福岡県の農林水産業の振興を図っているものと認識しています。  そこで、知事にお伺いします。今回の食料・農業・農村基本法の改正についてどのように評価しているのか、また改正内容を踏まえ、県の農林水産振興基本計画の変更についてどのように考えるのかお聞かせください。  次に、今回の基本法の改正のポイントとして、環境と調和の取れた食料システムの確立が新たな柱として追加されています。これは、農業者、食品事業者、消費者などで構成される食料システムが、食料の生産、供給の各段階において環境に負荷を与える側面があることに鑑み、その負荷の低減が図られることにより環境との調和が図られなければならない旨を新たな基本理念として規定したものです。また、この基本理念を実現するための基本的施策としては、農業生産活動、食品産業などの事業活動における環境への負荷の低減の促進等に取り組むこととされています。  現在、我が国は、多種多様な農畜水産物、加工食品を海外から輸入している中で、食料の輸送量に輸送距離を乗じた手法としてフードマイレージという考え方があります。これは、一九九〇年代からイギリスで行われている生産地から食卓までの距離が短い食料のほうが輸送に伴う環境への負荷が少ないというフードマイルズ運動を基にした概念で考え出されたものです。このような考えに着目すると、国内生産、国内消費の拡大、つまり地産地消を推進していくことは環境負荷の低減に資する効果につながるものであり、今回の基本法の改正の中で新たな柱として位置づけられた環境と調和の取れた食料システムの確立を着実に推し進める取組であると考えます。こういったことを踏まえると、これまで福岡県が実施してきた地産地消の取組は改正基本法の理念に沿った重要な施策であります。  そこで、知事にお伺いいたします。福岡県において地産地消にどのように取り組んでいるのかお聞かせください。  以上で私の一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手) 46 ◯副議長(佐々木 允君) 服部知事。 *知事答弁 47 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁申し上げます。  食料・農業・農村基本法の改正と県の農林水産振興基本計画についてお尋ねがございました。改正基本法では、世界的に食料生産が不安定化していることや農業分野における環境への配慮に対応いたしますため、食料安全保障の確保と、環境と調和の取れた食料システムの確立、これが新たな基本理念として位置づけられております。この新たな基本理念を実現するためには、国は生産基盤の確保、食料の合理的な価格形成、農業生産活動における環境負荷低減の促進などを図ることとされております。  県では、生産力を維持し、食料の安定的な供給に資するよう、米、麦、大豆を組み合わせました水田フル活用や、米粉用米の生産拡大、輸出促進などに取り組みますとともに、経済団体と締結した協定に基づきまして、価格転嫁への理解を求めるための広報啓発活動を実施しております。  また、県で推進しておりますワンヘルスの取組の一つといたしまして、農林水産物のワンヘルス認証制度において環境負荷を低減する技術の導入などに取り組んでおります。  これらのことは、改正基本法における新たな基本理念の考え方と合致いたしておりますことから、基本法の改正は県にとっても重要で意義のあるものであると考えております。  次に、県の農林水産振興基本計画につきましては、国の法改正の理念に沿っておりますことから、現段階では直ちに変更する必要はなく、現行の基本計画に即した施策をしっかりと進めてまいります。  地産地消の取組についてでございます。改正基本法の新たな基本理念である環境と調和の取れた食料システムの確立に資する地産地消を進めるためには、県産農林水産物に対する県民の理解や積極的な支持が重要でありますことから、県では、学校や家庭における食育の推進や県産農林水産物の消費の拡大に取り組んでおります。  食育につきましては、子供の頃から県産農林水産物に親しみ食べてもらうことで将来の消費につながりますことから、小中学生を対象とした柿の皮むき体験でありますとか、県産米や福岡有明のりといった農林水産物を学校給食に利用する取組を行っているところでございます。また、農林水産業の応援ファミリーを対象として、家族で食を学ぶことができますよう、野菜の収穫やみそ造りなどの体験、あるいは八女茶、あまおうなどの生産者と交流する現地ツアーを実施いたしております。  県産農林水産物の消費の拡大につきましては、地産地消応援の店と共に県産食材を使ったメニューを開発しまして、食育・地産地消月間に合わせて提供いたしております。加えて、今年度からは新たに社員食堂の運営や設置型社食サービスの提供を行っております事業者と連携をいたしまして、企業における地産地消の取組を実施いたしております。県といたしましては、今後ともこうした取組を通じて地産地消を推進してまいります。 48 ◯副議長(佐々木 允君) 大田京子君。(拍手) *大田(京)議員質問 49 ◯三十九番(大田 京子君)登壇 皆様、こんにちは。民主県政クラブ県議団の大田京子です。通告に従って、本県におけるカスタマーハラスメント対策と、子供の権利を守るための取組について質問いたします。  近年、官民を問わずあらゆる職場で、顧客などが暴言や不当な要求を行ったり人格や尊厳を侵害する迷惑行為であるカスタマーハラスメントが社会問題となっています。また、教育現場においては、いわゆるモンスターペアレントと言われる保護者からの過剰な苦情や不当な要求が問題となっています。便宜上、今回はこれらをカスハラと表現し、以下カスハラ対策についてお伺いいたします。  国では、二〇二〇年に事業主がカスハラ相談に応じ適切に対応するための体制整備を行うことが望ましい旨の指針を示すとともに、二〇二二年にはカスハラ対策企業マニュアルや啓発ポスターを作成するなど対策を進めてきました。  本県においては、昨年全国に先駆けて福岡県警がカスハラ対処マニュアルを策定し、同年六月にはその運用に基づき、警察署に正当な理由なく居座り続けた男を全国で初めて逮捕しました。また、運用を開始して僅か三か月で七十件ものカスハラ事案があったことがマスコミでも報じられました。こうした県警の取組を評価しつつ、昨年六月定例会の我が会派の代表質問では、県職員、教職員についても、対応のマニュアル化などカスハラへの組織的対策を求めました。さらに、一般事業者に対してもカスハラ対策を浸透させ、安心して働くことができる環境をつくることの大切さを主張しました。  中でも教育現場においては、今議会の代表質問で我が会派の岩元会長が再登壇し、教員の働き方改革の今後の取組について教育長をただした際、長時間勤務や保護者対応などにより心身の疲労感を強く感じている教員もあり、教員の心のケアを含めた働き方改革は喫緊の課題であると認識していると答弁されています。この保護者対応には、学校が対応すべき範囲を超えた要求や業務に支障を来すものが含まれていると想像します。  そこで、一点目の質問です。知事部局、県教育委員会、県警察それぞれのカスハラ対策における進捗状況をお答えください。また、この間、具体的にどのようなカスハラがあったのか、代表的事例をお示しください。  次に、カスハラ防止に向けた条例制定の考えについてお聞きします。東京都は、今年二月、全国初となるカスハラ防止条例を制定する方針を固めました。条例ではカスハラの禁止を明記し、労働者をカスハラから守る企業側の責務を規定することも検討するとしています。本県議会では、二〇一九年に、「顧客からのハラスメント」の抜本的な対策を求める意見書を全会一致で可決しています。そこには労働者や事業者を守るための法整備のみならず、倫理的な消費行動を促すための啓発や教育の視点も盛り込まれています。  二〇二二年に日本労働組合総連合会がカスハラを受けたことのある労働者千人を対象に実施した全国調査では、現場の録画や電話の録音といった顧客対応の記録や、カスハラを禁止する社内規定の制定に加え、刑事告訴を含めた警察機関との連携を求める声がありました。また、小売や外食などの労働組合が加盟するUAゼンセンが組合員を対象に約三万人から回答を得た調査では、直近二年以内でカスハラの被害に遭った人が約半数の四六・八%に上ることが分かっています。具体的な事例としては、女のくせにと暴言を受けた上に再来店時に木刀を持ってこられたり、うるせえ、てめえぶっ殺すぞとどなられたなど深刻な被害の声が寄せられています。  こうしたことを総合的に勘案し、業種業態に応じひとしく人格や尊厳が守られるために、県が旗振り役となり、関係機関が連携してカスハラ対策を全県下で実施することが重要であると考えます。  そこで、二点目に、本県においてもカスハラ防止に向けて、企業の責務や、消費者つまりは県民全体に倫理的消費行動を喚起する条例の制定など必要な取組を検討すべきだと考えますが、知事の考えをお聞かせください。  次に、子供の権利を守る取組についてお伺いします。子供の権利に関しては、世界中の全ての子供が持つ権利が定められた子どもの権利条約が一九九〇年に国際条約として発効され、現在、締約国・地域は百九十六に及びます。条約では、子供を単なる保護の対象ではなく権利の主体として認めており、例えば第六条では生きる権利・育つ権利、第十二条では意見を表す権利、第三十一条では休み、遊ぶ権利など具体的な権利が明記されています。日本は一九九四年にこの条約に批准していますが、世界で百五十八番目と決して早くない上に、批准してからの約三十年、子供の権利に関する法整備は積極的に行われてきませんでした。  こども家庭庁発表の二〇二二年度の児童虐待対応件数では、二十一万九千百七十件、厚生労働省と警察庁が公表した同じく二〇二二年度の小中高生の自殺者は五百十四人となるなど、ともに過去最多を記録しています。こうした状況を鑑みると、子供自身が自分の権利を知ることはもとより、子供を育てる親や子供と関わる機会が多い大人も含めた全ての人が子供の権利を正しく理解することが重要であると考えます。  この間、いち早く本格的に子供の権利を大切にする教育を始めたイギリスでは、自治体に子供の気持ちや意見を代弁する専門員であるアドボケートの配置を定めたり、政府の施策において子供の権利が守られているか調査をする独立機関である子どもコミッショナーを国に置くなど具体的な取組が進んでいます。子どもNPOセンター福岡のふくおか子ども白書二〇二一では、子どもの権利条約が日本社会に十分に浸透するには、子供の権利に関する包括的な法律をつくり、これに基づいた包括的な施策が必要であると指摘しており、昨年四月ようやく日本でも子供の権利を包括的に認める法律であるこども基本法が施行され、同時にこども家庭庁が発足したことは大きな一歩であると思います。本県でも、国の動きに合わせて福祉労働部門にこども未来課を新設し、子供の権利を守る動きが活発になっています。  そこで、一点目に、子どもの権利条約の意義について知事の見解をお答えください。その上で、子供の権利が県民に広く理解され、全ての子供の意見が尊重される社会を実現するために、現在どのような取組を行っているのかお示しください。  次に、子供の権利を守る条例の制定に向けた考えについてお伺いします。さきに述べたように、こども基本法が制定されたことは評価できますが、法律では、子供の権利はうたわれているものの、子供が権利の主体であることは明記されていません。一方、昨年十二月に策定された国のこども大綱では、こども・若者は権利の主体であるということが明記されています。この理念を深く浸透させていくためにも、子供が権利の主体であることをはっきりと明記した条例を制定し、行政施策に根拠を持たせることが必要であると考えます。他の都道府県では、既に東京都や徳島県において子供が権利の主体であることを明記した条例を制定しており、県内でも宗像市など四つの市町で同様に条例を制定しています。  そこで、知事にお伺いします。本県において、子供が権利の主体であることを明記した条例を制定するなど、法的根拠を持って子供の権利を保障することが必要だと考えますが、知事の考えをお聞かせください。  以上、知事の真摯な答弁を求めます。(拍手) 50 ◯副議長(佐々木 允君) 服部知事。 *知事答弁 51 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁を申し上げます。  知事部局におけるカスタマーハラスメント対策の進捗についてお尋ねがございました。昨年の六月議会におきまして、カスタマーハラスメントに関する職員向け対応マニュアルを作成するということを御答弁いたしました。その内容の検討に当たりまして、各所属の現状を把握するため、同月、不当な申出・要求等に関する調査を実施いたしました。その結果、令和二年四月から令和五年六月までの間に、長時間の拘束あるいは暴言、過度な要求などの事案が、全所属のうち約三割の所属において合計百六十八件発生しておりまして、深刻な状況であるということが明らかとなりました。この調査結果や県警の対応マニュアルを参考としまして、カスタマーハラスメントの定義や判断基準、その対応策などについて取りまとめたマニュアルを今年三月に策定いたしました。  また、対策の実施に当たりましては、県民の皆様に御理解と御協力をいただくことが重要でございますことから、事前に周知を行いました上で四月から全庁的な対策を開始したところでございます。これ以降、カスタマーハラスメントに該当すると判断した事例は一件でございます。これは、県には指導権限がない機関が行った措置に対する苦情が長時間、複数回行われましたため、対応を終了した事案でありました。このほか、一部の自治体において、名札から氏名を検索されたり、インターネット上に氏名が公開された事例がございますことから、職員が安心して職務を遂行できますよう、これでございますが、この職員の名札の表示をフルネームから名字のみに見直しております。これらの対策により職員の過度な負担の軽減を図り、本来職員が取り組むべき職務に注力することで、より多くの県民の皆様に行政サービスを提供し、県民の皆様の多様なニーズに対応を図ってまいります。  カスタマーハラスメントの防止についてでございます。国では、企業においてカスタマーハラスメント対策を行う上での指針やマニュアルを策定いたしております。  県では、事業主に対し、社内対応ルールの設定や労働者からの相談窓口の設置など、国の指針などを踏まえたカスタマーハラスメント対策の導入が進みますよう、社会保険労務士による相談支援を行っております。  また、一昨年度開催をいたしましたカスタマーハラスメント対策導入セミナー、その内容を基に作成いたしました優良事例の動画を福岡労働局と共催する企業への説明会で紹介しているところでございます。  さらに、今月七日には、カスタマーハラスメントが起こりやすい在宅の医療介護現場で働く方からの相談に応じるため、九州では初めて福岡県在宅医療・介護職員カスハラ相談センターを開設いたしました。消費者には、事業者に適切に意見を伝えられるよう、行き過ぎた言動を取ると場合によっては犯罪として処罰されることなどが記載された啓発チラシを県の消費生活センターのホームページに掲載しているところでございます。  また、県庁では、本庁や各出先機関において、カスタマーハラスメントに該当する行為などを例示したポスターを掲示し、県民の皆様に理解を求めております。さらに、消費者が目にする機会が多い場所でございます店頭や事業所などに、国が作成しておりますカスタマーハラスメントの抑止を目的としたポスターを掲示することを事業者に対して働きかけてまいります。  国では、労働法、社会学、産業衛生の学識経験者やシンクタンクの研究員で構成する検討会におきまして、カスタマーハラスメントの防止に係る企業の責務や消費者の倫理的な行動等につきまして、労働施策総合推進法の改正なども視野に議論が行われているところであると承知いたしております。このようなことから、県としては、まずは国の動向を注視いたしますとともに、事業主の取組や消費者に対する啓発をしっかりと進めることによりましてカスタマーハラスメントの防止に努めてまいります。  次に、子どもの権利条約の意義及び県の取組についてでございます。この条約は、子供を権利を持つ主体と位置づけ、大人と同様、一人の人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子供ならではの権利も定めているものであり、批准している我が国におきまして、子供の権利の尊重及び保護の促進に重要な役割を果たしているものと考えております。  国では、この条約の精神を踏まえたこども基本法を令和四年に制定し、この法律に基づき、子供施策に関する基本的な方針などを定めたこども大綱を策定いたしております。また昨年四月には、子供施策を一元的に策定、実施いたしますこども家庭庁が設置されました。  県では、昨年度、こども家庭庁のカウンターパートとして、こども未来課を福祉労働部に新設をいたしまして、こども福祉課と子育て支援課の三課体制とする組織体制の強化を行いました。このこども未来課におきまして、条約にうたわれております子供が権利の主体であることを、県の広報紙やホームページを活用して県民の皆様に広く発信しております。あわせて、県内の市町村に対しても積極的な広報啓発を行うよう働きかけを行っておるところでございます。  今年度、一時保護所や施設等に入所する子供の権利擁護の一層の推進を図りますため、こども意見表明支援センターを設置しまして、児童相談所から独立した第三者でございます意見表明等支援員を施設などに派遣することによりまして、入所する子供の処遇に子供自身の意見が反映されますよう取組を開始したところでございます。  また、子供施策の柱や方向性を盛り込んだ県こども計画を策定することといたしておりまして、計画の策定に当たりましては、テーマ別のグループ討論やウェブアンケート、子供食堂、児童福祉施設などでの意見交換などを通じ、様々な環境、年齢の子供から幅広く意見を聞くこととしております。  子供の権利を保障するための行政施策の根拠についてでございます。こども基本法に基づき、国が全ての子供が権利を保障され、健やかに成長し、幸福な生活を送ることができる社会づくりを目的に策定いたしましたこども大綱におきましては、子供施策に関する六つの基本的な方針の一番目の柱として、子供が権利の主体であるということが明記されております。また、こども基本法においては、都道府県は、このこども大綱を勘案して、こども計画を策定することとされております。県では今年度、子供施策を総合的に推進する福岡県こども計画を策定することとしておりますが、この計画において、子供が権利の主体であることを基本的な方針として明確に位置づけ、具体的な子供施策に取り組んでまいる考えでございます。 52 ◯副議長(佐々木 允君) 寺崎教育長。 *教育長答弁 53 ◯教育長(寺崎 雅巳君)登壇 お答えします。  学校現場での不当な要求等への対策についてでございます。県教育委員会では、学校現場における対応マニュアルを令和二年に改定をし、周知を図るとともに、管理職研修の実施や、弁護士、県警OBであるスクールサポーターの活用など、関係機関の協力を得ながら学校支援体制を構築してまいりました。昨年度も弁護士による具体的事案を用いた管理職研修を実施したところですが、今後、学校現場における対応マニュアルに対応事例を追加するなど、具体的な場面で活用できるよう改訂をしまして、引き続き各学校の組織的対応力を高めてまいります。  なお、不当な要求等に弁護士にも相談した例としましては、学校外の保護者間のトラブルについて、その解決を学校に求め、人格否定や脅迫的な言葉を伴う電話が連日一時間を超えて保護者からなされた事例や、学校の対応について一時的に不満を持った保護者が長時間学校の教室に居座り、暴力的な言動でもって教員を脅かした事例などがございます。 54 ◯副議長(佐々木 允君) 岩下警察本部長。 *警察本部長答弁 55 ◯警察本部長(岩下 剛君)登壇 県警察におけるカスタマーハラスメント対策の進捗状況についてお答えをいたします。県警察では、昨年五月、適切な市民応接を含むカスタマーハラスメント対策の組織的な対応指針を策定し、以後、先月までの一年間でカスタマーハラスメントと判断した件数は百四十七件となっております。対応別では、執拗に同じ申出や要求を繰り返す反復・時間的拘束型が約七割、大声を出し脅迫めいた言動をする暴言・威嚇・脅迫型が約三割などとなっております。時間帯別では夜間、休日などの執務時間外の対応が約六割となっております。  次に、具体的なカスタマーハラスメントの事例についてお答えをいたします。具体的な事例といたしましては、深夜に警察署を訪れ、職員を一方的に罵倒するなどの言動を約一時間にわたって繰り返したもの、警察活動に対して正当な理由もなく謝罪や上位階級者による対応を一日に何度も要求したものなどの取扱いがございました。これら事案は警察として対応できる範囲を超えたものとして、対応を打ち切るなどしております。さらには、以後の対応をお断りしたにもかかわらず、数時間にわたって警察署内に居座るなどしたため逮捕に至った事案もあります。  県警察といたしましては、引き続き適切な市民応接を徹底するとともに、カスタマーハラスメント対策を推進し、本来警察が取り組むべき事象に注力することにより、県民の安全・安心の確保に努めてまいります。 56 ◯副議長(佐々木 允君) 笠和彦君。(拍手) *笠議員質問 57 ◯二十五番(笠 和彦君)登壇 自民党県議団笠和彦です。通告に従い、金融・資産運用特区について質問いたします。  今月四日、金融・資産運用特区実現パッケージが日本政府から発表され、特区の対象地域として、福岡県・福岡市が指定されたことを大変うれしく思います。           〔佐々木副議長退席 香原議長着席〕  この特区は、昨年九月、岸田首相がアメリカ・ニューヨークで投資家向けに創設を表明したもので、政府が掲げる資産運用立国の実現に向けた主要施策として位置づけられております。金融・資産運用特区は、対象地区に特別な規制緩和や支援策を実施することで、国内外の金融・資産運用業を集積させ、地域の成長分野の発展を図ることを目的としています。  我が会派が先日の代表質問で半導体拠点構築に向けた知事の思いをお尋ねしたところ、知事は、福岡県には半導体をつくる側、使う側の優れた企業、理工系大学や高専など高度人材を育成する機関が集積し、福岡半導体リスキリングセンター、三次元半導体研究センターという、他に例を見ない公的支援機関を有している。今回選定された金融・資産運用特区を活用して半導体産業のエコシステム形成を図ると述べられました。  TSMCの進出により、成長分野である半導体産業の福岡・九州への集積が加速しており、設備投資をはじめ投融資の資金ニーズが高まる中、金融・資産運用業の集積を図る本特区に福岡県が指定されたことは時宜を得たものであり、知事が述べられたエコシステムの形成を大きく前進させるものと考えます。  そこで、知事にお尋ねします。今回発表された特区実現パッケージにおいて、福岡が提案し認められた主な規制緩和などについてお答えください。また、今回の特区は福岡市との共同提案によるものでありますが、この規制緩和などについては、他の福岡県内市町村においても活用できるのか、併せてお答えください。  また、我が会派において、本年二月の定例会の代表質問において、福岡へのさらなる国際金融機能誘致に向けた取組方針についてただしたところ、知事は、金融分野の規制緩和や税制優遇措置などを求める提案を福岡市と共同で行っており、これを実現させ、国際金融機能の集積にさらに弾みをつけたいと答弁されました。  一方で、今回の特区実現パッケージでは、税制の優遇措置が見送られました。競合するアジアの国際金融センターであるシンガポールとの税率を比較しますと、法人税は、日本が三〇%であるのに対しシンガポールは一七%、給与所得等は最高税率約五五%に対し二四%、相続税は最高税率五五%に対し非課税、株式譲渡所得は二〇%に対し非課税となっております。やはり、この税負担の重さは日本・福岡への国際金融機能誘致への大きな障壁であると考えます。また、提案した項目の中には、今後検討とされている項目もあると認識しております。  そこで、知事にお尋ねします。今回の特区指定を受けて、国際金融機能誘致に向けた知事の取り組まれる姿勢を改めてお聞かせください。(拍手) 58 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。 *知事答弁 59 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁申し上げます。  金融・資産運用特区で認められた規制緩和等についてお尋ねがございました。今回の提案では八項目の規制緩和等が認められております。主な項目を申し上げますと、これまで海外の資産運用会社が日本に進出する際は、コンプライアンス業務や経理事務、いわゆるミドルバックオフィス業務でございますが、これらは外部委託が認められておりませんでした。これが弁護士事務所などへの委託が可能となります。また、海外法人の日本進出時に必要な商業登記や定款認証といった開業手続につきまして、日本語での手続が必要でございましたが、全て英語で手続ができるようになります。これらの規制緩和により、海外から本県へ進出する企業の皆様の負担が軽減されることになります。さらに、ベンチャーファンドを組成する際の資金につきましては、エンジェル投資家からのベンチャーファンドへの出資額がファンド総額の二分の一未満に制限されておりましたが、これが撤廃されます。また、スタートアップ企業等が投資型クラウドファンディングを利用して資金調達を行います際、これまでこの調達上限額は一億円未満とされておりましたが、これが五億円未満に引き上げられます。これらの規制緩和によりスタートアップが成長に必要な資金を調達しやすくなります。
     今回の特区は県と福岡市の共同提案となっておりますことから、規制緩和や国の支援策の多くは県内全ての市町村においても活用できるものでございます。ただし、先ほど申しました英語での開業手続やエンジェル投資家のベンチャーファンドへの出資制限撤廃といった一部規制緩和につきましては、国家戦略特区に指定されていることが要件でございます。このため、県内で申しますと北九州市につきましては、内閣府に申請を行った上で認定されれば、福岡市と同様の規制緩和を受けることができるものでございます。  国際金融機能誘致に向けた取組姿勢についてお尋ねがございました。私は、本県に集積をしておりますスタートアップや半導体、自動車、水素、バイオ、宇宙などの成長産業に新たな資金が供給され、付加価値を生み、そして還流した資金がまた新たな企業の呼び込みや県内企業の成長につながっていく、このような好循環、いわゆるエコシステムを構築強化してまいりたいと考えております。このためには、国際金融機能のさらなる集積を図っていくことが不可欠でございます。この特区の指定を追い風に、チーム福岡が一丸となって、近接するアジア地域や北米地域に集積いたします金融・資産運用業などの国際金融機能の誘致に取り組んでまいります。さらに、国際金融機能誘致の推進に必要な税制の改正や、さらなる規制緩和につきましても、福岡市とも連携し、粘り強く国にその実現を働きかけてまいります。これによりまして、本県に国際金融拠点を形成し、世界から選ばれる福岡を実現してまいります。 60 ◯議長(香原 勝司君) 渡辺美穂君。(拍手) *渡辺(美)議員質問 61 ◯四十一番(渡辺 美穂君)登壇 民主県政クラブ県議団の渡辺美穂です。皆さん、お疲れでしょうが、最後までどうぞよろしくお願いいたします。それでは、通告に従いまして、妊産婦への支援についてお伺いをいたします。  二〇二一年、母子保健法の改正によって産後ケアが市町村の努力義務となり、加えて二〇二二年、支援が手薄なゼロ歳から二歳の低年齢期に焦点を当て、妊娠から産後に至るまで一貫して相談や経済的支援を行う伴走型支援事業の創設について閣議決定がなされました。これらに伴い、現在、国、県、市町村では、妊産婦に関して多くの施策が始まっています。そこで今回、妊娠初期及び産後ケアについて、県の考え方や施策についてお伺いをいたします。  まず、昨年度より低所得の妊婦に対する初回産科受診料支援が始まりました。立ちっ放しの重労働や激しい運動の抑制など妊娠初期に注意が必要なことを知る上でも初期診断は大切ですが、妊娠がまだはっきりしていない段階で受診する初回受診料は保険適用外診療で高額であるため、特に生活が厳しい家庭では早期に診療を受けない方もいました。この初回受診料支援は、市町村が実施主体となり伴走型相談支援事業と一体的に行っていることが条件です。  初回受診料支援について、昨年度は、まだ県内十二の市町でしか実施されていませんでしたが、今年度の当初予算を経て県内ではどれくらいの自治体が始めたのか、また、伴走型相談支援事業を行っている自治体の数と併せて県では初回受診料支援未実施の市町村に対しどのように周知を行っているのかお聞かせください。  次に、妊産婦の精神的フォローについてお伺いをいたします。日本産婦人科医会の発表によりますと、我が国では二〇二〇年以降、妊産婦死亡理由の第一位が自殺となっています。特に産後一年以内の自殺が最も多く、妊娠中の六倍に上っています。その多くはいわゆる産後鬱と言われる精神疾患が原因とされ、精神科を受診して二日以内に自殺される方が一番多く、精神科の受診だけでは妊産婦の自殺防止につながっていない現状が明らかとなっています。自殺理由で一番多いのは夫、パートナーとの問題で、次いで育児や早産による不安となっており、これらを解決するためには、当該妊産婦の話を傾聴し、対応することが求められるとしています。  さらに子供への虐待件数も増加傾向にあり、本県の最新のデータである一昨年度は、ゼロ歳児への虐待件数三百五十九件中百七十五件が母親によるものとなっています。この虐待にも母親の精神状態が影響していることは想像に難くありません。この傾向は全国的なものであり、国では、二〇二三年補正予算で、妊産婦のメンタルヘルスに関するネットワーク構築事業を都道府県主体で行うことを求めています。  一方、市町村主体事業である産後ケア事業ですが、その基礎となる産後二週間、産後一か月などに行う産婦健診について、三菱UFJリサーチ・アンド・コンサルティングの調査によりますと、二〇二〇年、全国で実施している市町村は全体の半分程度しかなく、残りは実施していないと回答しています。  そこで、お伺いします。産婦健診について、本県で実施している自治体はどれくらいあるのかお聞かせください。また、国の助成制度の周知を含め産婦健診を広げていくため県としてどのように取り組んでいるのかをお聞かせください。加えて、この事業は市町村単独ではなかなか困難なことが多いという声も聞きますが、産後ケア事業ではどのような支援が行われているのかお聞きするとともに、市町村から県に対しどのような意見が寄せられ、どう対応されているのかもお聞かせください。  厚労省の調査発表によりますと、市町村が課題としているのは精神疾患の場合への対応となっています。前述したように、自殺原因で最も多いのが、精神科を受診するだけでは解決が難しい産後鬱、つまり精神疾患であり、多様な関係機関と連携が求められます。これが国の求める妊産婦のメンタルヘルスに関するネットワーク構築だと考えます。  そこで、お尋ねします。妊産婦の自殺や子供への虐待を減らす最も有効な手段は妊産婦のメンタルヘルスを良好にすることだと考えますが、メンタルヘルスに関するネットワークについて、県としてどのように考えているのかお聞かせください。また、母親の変化に気づきやすい夫や家族など、そばにいる方が母親のメンタルヘルスについて相談できる窓口の周知を行うなど、母親と子供を守るために取り組んではいかがかと思いますが、知事のお考えをお伺いいたします。  以上で一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手) 62 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。 *知事答弁 63 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁申し上げます。  まず、低所得の妊婦に対する初回産科受診料支援事業についてでございます。この事業は、経済的な理由から産科の受診をためらうことがないよう、低所得の妊婦に初回受診料を助成するものでございます。市町村に対する補助事業として、昨年度、国により創設をされました。本県におきましては、これまで十二市町で行われておりましたが、今年度は五つの市町がこの事業を始めまして、計十七の市町において実施をされております。  また、実施に当たっては、受診後も家庭の状況等を把握しながら、保健師による訪問支援などにつなげるため、伴走型相談支援事業と一体的に取り組むことが国の補助要件となっております。現在、県内の全ての市町村では伴走型相談支援事業を実施しておられますので、この初回産科受診料支援事業を併せて実施していただきますよう、市町村の母子保健担当者を対象とした研修会などにおきまして、この事業内容や先進事例を紹介し、未実施の市町村に対する働きかけを行っているところでございます。  次に、産婦健診の実施市町村の拡大についてでございます。産婦健診は出産後の身体的回復状況や精神状態等を把握し、心身の不調や育児不安があるとされた産婦を産後ケアや育児のサポートなどの支援につなげていきます重要な健診でございます。県内においては現在二十六の市町で、国の補助を活用し自己負担のない産婦健康診査事業が実施されております。県では、市町村の母子保健担当職員を対象といたしました研修会などにおきまして、国の制度を活用して産婦健診を実施されるよう促しております。引き続き、産婦健診を実施する市町村が広がるよう働きかけを行ってまいります。  産後ケア事業の支援内容と市町村からの意見についてでございます。この産後ケア事業は、令和二年に示されました国のガイドラインにおいて、短期入所型、通所型、居宅訪問型、この三つの実施方法が明記され、助産師などが母親の身体的ケア及び保健指導、栄養指導を行う、また母親の心理的ケアを行う、適切な授乳が実施できるためのケアを行う、育児の手技についての具体的な指導や相談を行う、こういった支援を行うこととされております。  市町村からは、これまで、国の利用者減免制度活用は財政負担が大きいとか、短期入所を実施できる施設が地域にはない、あるいは広域で事業を実施する事業者から市町村ごとに報告書が異なるため様式の統一を求められており、県で調整してほしいといった意見が寄せられておりました。  このため、県といたしましては、今年度から新たに、市町村が実施する産後ケア事業の利用者負担を軽減する県独自の補助制度を創設いたしました。また、市町村に対し、運営費の補助を行うことも始めまして、減免制度を導入する市町村を増やすことといたしております。短期入所施設がない市町村に対しましては、近隣の市町村で産後ケア事業を実施している施設の情報を提供し、広域の利用を促しております。また、様式が違うと言われておりました報告書につきましては、県医師会や県助産師会の御意見を聞きながら、市町村との調整会議を開催し、様式の統一に向けて取り組んでいるところでございます。  妊産婦のメンタルヘルスに関するネットワークについてでございます。妊産婦の方の心身の健康を守るためには、妊娠期から行政、医療機関等が連携して支援を行う体制が必要であると考えております。このため県では、医療機関、助産所、保健福祉環境事務所の連携の下できめ細かな支援を行います妊娠期からのケア・サポート事業の仕組みをつくりまして、市区町村ごとに実施をいたしております。  この事業では、市町村が不安を抱えているなど支援が必要な妊産婦の方を、妊娠届出のときや医療機関を受診したときに行われますアンケートにより把握をいたしまして、医療機関、保健福祉環境事務所等の関係機関と連携の下、妊娠期から早期介入を行い、出産後の養育支援まで切れ目なく支援しているところでございます。その中で、市町村の保健師等が家庭訪問などの際に、必要に応じてエジンバラ産後鬱病質問票を活用し、精神科医療機関につなげるなどの支援を行っております。  引き続き、妊娠期からのケア・サポート事業の取組によりまして、市町村と関係機関との連携を図ってまいります。  夫や家族が母親のメンタルヘルスについて相談できる窓口の周知についてでございます。県では、子育てに関する悩みや不安、母体の心身の不調などに関しまして、子育て支援電話相談を市町村と共同で開設をし、その相談に助産師が電話とメールで対応いたしております。  この電話相談の相談者別では、全千百二件のうち、母親からの相談が千七十三件と、そのほとんどを占めておりまして、夫や御家族の方などからの相談は二十九件という状況でございます。このため、子育て支援電話相談のホームページにおきまして、夫や御家族の方もこの電話相談を利用できるということを分かりやすく事例を用いて周知しますとともに、出産、育児を学ぶ両親学級の開催、あるいは出生届の提出などの際に夫や御家族に直接周知するなど、工夫されている好事例を市町村に紹介をいたしまして、実施を働きかけてまいります。 64 ◯議長(香原 勝司君) 本日の一般質問はこれまでとし、残余は、六月十七日、取り進めることにいたします。  本日はこれをもって散会いたします。           午 後 三 時 二十六分  散 会 Copyright © Fukuoka Prefecture All Rights Reserved. ↑ ページの先頭へ...