↓ 最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1 ◯議長(香原 勝司君) おはようございます。ただいまから本日の会議を開きます。
日程に従い一般質問を行います。順次発言を許可いたします。井上正文君。(拍手)
*井上(正)議員質問
2 ◯四十五番(井上 正文君)登壇 皆様、おはようございます。
自民党福岡県議団の井上正文です。通告に従い、福岡県
いじめレスキューセンターについて質問をいたします。
今年四月一日、全ての子供が個人として尊重され、基本的人権が保障されることや、その最善の利益が優先して考慮されることなどを基本的な理念とする
こども基本法が施行され、子供施策を総合的に推進するための司令塔としてこども家庭庁が設置されました。現在国では、今後五年程度を見据えたこども大綱の年内の策定に向け作業を進めており、九月四日に国の
こども家庭審議会の基本政策部会で中間整理案を公表。この中間整理案の中では、いじめの防止に向け、地方自治体に
総合教育会議等を活用した日常的な首長部局と教育委員会との連携促進や、首長部局でいじめ相談から解消まで取り組むことなどを求めております。いじめは被害を受けた子供に深刻なダメージを与え、自らの命を絶つなど、絶対にあってはならない事態の原因となるものであり、そのため二〇一三年に施行された
いじめ防止対策推進法では、子供の生命、心身または財産に対する重大な被害と、相当の期間学校を欠席することを余儀なくされる状態などを重大事態とし、いじめによってこうした被害が発生した疑いがある状況も含めて重大事態と定義しています。また、いじめによるこうした被害は回復までに多くの時間を要することもあり、いじめの後遺症で長期間にわたる療養生活を余儀なくされたり、ひきこもり状態となることもあります。
そのような中、国の方針案が示されたタイミングで、福岡県では、今回の補正予算で都道府県としては全国で初めて学校外の立場からいじめに悩む子供や保護者を支援するため、福岡県
いじめレスキューセンターを設置することを打ち出されました。このことはいじめに悩む子供や保護者にとって希望となるものであり、そうした保護者の方々から相談を受けていた私としても大いに期待するものであります。
その上で知事にお伺いします。まず、改めて今回の補正予算で県の知事部局において学校外の立場で福岡県
いじめレスキューセンターを設置する趣旨をお伺いします。また既に県の教育委員会においてもいじめに関する相談窓口がある中で、今回設置されるセンターは新たにどのような役割を果たすのかお尋ねします。
今回のセンターの事業には弁護士など外部の専門家が関わるということで、問題解決を学校側に頼るのではなく、いじめに悩む相談者の目線に立った取組が行われることが大きな特色であるかと思います。一方で、福岡県
いじめレスキューセンターの取組によって着実にいじめの解消につなげていくためには、今後協議を行うことが想定されている公立か私立かなどの区別なく、全ての学校関係者に対しこの事業の趣旨が十分に伝わらなければなりません。
そこでお伺いします。センターの運営に向けて、学校関係者に対しどのように事業の趣旨を伝え、事業に対する協力を求めていくのかお尋ねします。
最後に、今回の事業を通して、いじめに悩む子供たちの生活がしっかりと守られ、様々な面で成長できる機会を奪われないことが何より大切だと考えます。そのためには傷ついた子供の気持ちに寄り添うとともに、子供が自立できる支援につながっていくようなセンターでなければなりません。このようなことを踏まえると、センターの活動に当たって、学校や教育関係者だけでなく、地域で子供と関わる役割を担う市町村の子供担当課など市町村の首長部局とも連携を図る必要があると考えます。今回の事業を実施するに当たり、市町村の首長部局との連携についてどうお考えなのか、知事の見解をお伺いしまして質問を終わります。(拍手)
3 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。
*知事答弁
4 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 皆さん、おはようございます。御答弁を申し上げます。
いじめレスキューセンター設置の趣旨についてお尋ねがございました。県内のいじめの認知件数は、令和三年度は一万三千四百五十五件でございましたが、平成二十八年度の五千五十件と比べますと五年間で約八千件増加している状況にございます。一方、子供の命、心や体、財産に重大な被害が生じます、または相当期間にわたり不登校になるといった重大事態の中には、学校で認知されていなかった事例や子供や保護者が学校に相談することを迷う事例もございます。こうした中、国では、いじめの長期化、
重大化を防止しますため、学校外からのアプローチによるいじめ解消の仕組みづくりに向けて、自治体の首長部局においていじめの相談から解決まで取り組むモデル事業が今年度から開始されたところでございます。県では、このような国の動きを捉え、県内のどの地域にあっても子供が健やかに成長できるよう、いじめの相談をちゅうちょする子供や保護者を支援するため、国のモデル事業を活用しまして
いじめレスキューセンターを設置することといたしたところでございます。
この
いじめレスキューセンターの役割についてでございます。
県教育委員会では児童生徒の
悩み相談LINEと
子どもホットライン二十四の二つの相談窓口を設置いたしておりまして、児童生徒のいじめを含めた様々な悩みに対応いたしております。これらの窓口におきましては相談者の希望に応じて学校へその相談内容をつないでおりますけれども、いじめ解消を図るための相談者と学校との調整活動といったことは行っていない状況でございます。これに対しまして、
いじめレスキューセンターは、いじめに特化して対応し、相談だけではなく、子供と保護者の同意の下、社会福祉士や弁護士などが学校外の立場から学校に出向きまして、関係者間の調整とその後のフォローアップまでを行うことといたしております。これにより、学校への相談を迷ういじめや学校への相談後、第三者の支援を希望するいじめにつきまして早期発見、解消を図り、教育委員会や学校の取組と併せて、
重大化、長期化するいじめを一件でも多く減らしてまいります。
学校関係者に対する協力依頼についてでございます。
いじめレスキューセンターにおいて相談を受けましたいじめを解消していくためには、その対応の協議先となります学校関係者の方の理解と協力が不可欠でございます。このため、公立学校につきましては県の
教育事務所長や市町村の教育長、県立高校の校長が集まる場において、私立学校については各校の事務長が集まる私学団体の会議において事業の趣旨を丁寧に御説明し、センターの取組への理解と協力、そして各学校への事業の周知徹底を求めてまいります。
市町村の首長部局との連携についてお尋ねがございました。いじめへの対応におきましては、被害児が長期間、不登校、ひきこもりになるケースや加害児の背景に貧困や虐待体験があるなど、いじめが解消された後も子供や保護者への支援が必要となる場合がございます。このため、
いじめレスキューセンターと学校が解消に向けた対応を協議する際には、子供の状況に応じて学習支援や居場所の提供、家庭の見守りなどの支援を行います市町村の
子供福祉部門の職員の方にも同席をいただきまして適切な支援につなげてまいります。また、県内には独自に権利救済機関を設置していじめに関する相談を受け、関係者との調整を行っていらっしゃる市町もございます。県といたしましては、これらの機関とも連携をしまして、いじめにより心に傷を負った子供がしっかり自立していけるよう、子供や保護者を支援してまいる考えでございます。
5 ◯議長(香原 勝司君) 嘉村薫君。(拍手)
*嘉村議員質問
6 ◯二十六番(嘉村 薫君)登壇 おはようございます。
民主県政クラブ県議団、嘉村薫でございます。通告に従いまして、高齢者や障がい者、生活困窮者など、住宅確保要配慮者に対する居住支援について質問いたします。
高齢者、障がい者、生活困窮者、一人親世帯、
刑務所出所者などの住宅の確保に配慮を要する方々が安心して生活を送るためには、生活の基盤となる住まいを確保することが重要です。このような住宅確保要配慮者に対して、居住の安定確保を図るための
住宅セーフティーネット制度や、生活困窮者などの自立を促進するための
生活困窮者自立支援制度などにより、住まいの確保や居住支援の取組が進められてきました。今後、
単身高齢世帯などの増加により、要配慮者の賃貸住宅への居住ニーズが高まる見込みであることに加え、収入が減るなどの原因で低額所得者や生活困窮者が増えるなど、居住が不安定な状況に陥りやすい方々が潜在的に多いことがコロナ禍で顕在化しました。このようなことを踏まえ、
住宅セーフティーネットの機能を一層強化する必要があると考えます。
そこでまず、県営住宅が果たしている役割と入居機会の確保の方法についてお答えください。また県営住宅において要配慮者が円滑に入居できるようにするためにどのような方策が取られているのかお示しください。
二〇一七年十月にスタートした住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律、いわゆる
住宅セーフティーネット法の一部を改正する法律に基づく
住宅セーフティーネット制度では、要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度、登録住宅の改修・入居への経済的支援、要配慮者のマッチング・入居支援が示されています。本県も新たな福岡県
住生活基本計画を策定し、二〇二一年度から二〇三〇年度までの十年間で目指すべき住生活の姿を目標に掲げ、取組を進めてきています。計画の中にも記載がありますが、要配慮者の多様化に対応するためには、公営住宅だけでなく、高齢者や低額所得者などの要配慮者の入居を拒まない民間の賃貸住宅、いわゆる
セーフティーネット住宅を増やしていくことも重要だと考えます。
そこで二点目にお尋ねします。二〇一八年(平成三十年)六月の
調査特別委員会では、障がい者の方が民間住宅の入居を拒否された趣旨の相談が五件あったとの説明があっています。まず県は直近三か年において同様の拒否された相談をどれくらい受けたのかお示しいただくとともに、入居を拒否されたことに対する知事の認識をお聞かせください。あわせて、このような事態をなくしていくために県はどのような取組を行ってきたのかお尋ねします。
次に、
日本賃貸住宅管理協会の
賃貸住宅管理業に携わる会員を対象に
アンケート調査を実施しまとめられた令和三年度
国土交通省調査によると、賃貸住宅のオーナーなどの賃貸人の一定割合が要配慮者の入居に対し拒否感を有している状況が明らかとなっています。その割合は、高齢者に対して約七割、外国人に対して約六割、障がい者に対して約七割という結果になっています。また入居制限の理由としては、ほかの入居者、近隣住民との協調性に対する不安、家賃の支払いに対する不安、居室内での死亡事故などに対する不安が主な理由となっています。本県でも
住宅セーフティーネット制度を開始し、要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度が進められており、県の指定を受けた法人は
居住支援法人として登録され、要配慮者の
居住支援業務を行っています。
居住支援法人の中には、日常生活の相談や支援、金銭や財産管理、電話や訪問などによる見守りなど幅広い支援業務を行い、要配慮者を支えています。今後、賃貸住宅のオーナーがこの
居住支援法人とつながることで、要配慮者にも安心して住宅に入居してもらうことができるようになると思われます。
そこで三点目にお尋ねします。今後、要配慮者が賃貸住宅に円滑に入居できるようにするためには、賃貸住宅のオーナーに対して
居住支援法人の取組をもっと周知する必要があると考えますが、そのために県は具体的にどのような取組を行っているのかお尋ねします。
現在、
居住支援法人に寄せられる住まいに関する相談件数は全国的に増加傾向にあり、その入居相談の理由は、病院や施設からの退院・退所、同居の解消、家賃負担や近隣トラブル、失業や収入減、現在の住まいの解体など多岐にわたっています。そのような相談内容に対応し、入居につなげていくためには、県だけではなく関係機関との連携が非常に重要となります。ある事例では、
生活保護受給者が賃貸住宅のオーナーに入居を認めてもらえず市町村の福祉部署に相談したところ、
居住支援法人を紹介してもらい、無事に入居につながった例があるとのことです。しかし、要配慮者の配慮事情は様々で、入居支援だけでは不十分であり、生活支援がなされることが必要だと考えます。現在、福岡県が指定している四十五の
居住支援法人について、賃貸住宅のオーナーに広く周知することも重要ですが、要配慮者は、住宅への入居時のみならず、入居後にも様々な支援を必要としている方がおられます。その場合、入居者に寄り添っておられる
居住支援法人が単独では解決できない問題でも、
福祉関係団体や市町村など幅広い分野と連携することで必要な支援策が見つかる可能性が出てきます。
そこで四点目にお尋ねします。
居住支援法人が
福祉関係団体や市町村などの関係機関と連携を図れるよう、県はどのような取組を行っているのかお答えください。また今後どのように取り組んでいくのか、併せてお答えください。
以上、知事の真摯な御答弁をお願いし、質問を終わります。(拍手)
7 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。
*知事答弁
8 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁を申し上げます。
まず、県営住宅が果たす役割と入居機会の確保の方法等についてお尋ねがございました。県営住宅は、公営住宅法に基づきまして住宅に困窮する低額所得者の方に低廉な家賃で住宅を提供しておりまして、住宅確保要配慮者への
住宅セーフティーネットとして重要な役割を果たしているものでございます。県営住宅の入居に当たりましては、入居の機会の公平を図るため、公募が原則となっております。その募集方法でございますが、年四回の抽せん募集と、それから先着順で随時申込みを受け付けます常時募集を行っております。令和五年度からは常時募集の団地数をそれまでの二十四団地から六十一団地に増やしまして、さらなる入居機会の確保を図っているところでございます。住宅確保要配慮者が円滑に入居できるようにするための方策として、抽せん募集におきましては、高齢者世帯、障がい者世帯、一人親世帯、多子世帯などを対象に、抽せん番号を二つ付与する倍率優遇措置を講じております。また新婚・子育て世帯への入居機会を確保するため、募集住戸に優先枠を設けているところでございます。
次に、障がい者に対する民間住宅への入居拒否についてでございます。県が設置をいたしております障がいを理由とする差別等に関する相談窓口に、入居拒否に関する相談が令和二年度は二件、令和三年度は二件、令和四年度は一件寄せられております。障がいのある方の賃貸住宅への入居につきまして、
宅地建物取引業者が賃貸人との交渉など必要な調整を行うことなく仲介を断るということは不当な
差別的取扱いに当たるものでございまして、あってはならないことでございます。県では、
宅地建物取引業務における不当な
差別的取扱いを防止するため、相談窓口の専門相談員が相談者の相手方である宅建業者に丁寧に法の趣旨を説明をいたしまして適切な対応を促しております。また
不動産取引分野に特化したガイドブックや動画を県のホームページに掲載いたしまして広く周知をいたしますとともに、宅建業者に毎年通知を発出し、注意を喚起しているところでございます。さらに昨年度からは福岡県
宅地建物取引業協会が実施をいたします研修会において、専門相談員が改めて
障害者差別解消法や国の対応指針について説明を行っているところでございます。
賃貸住宅のオーナーに
居住支援法人の取組を周知するための取組についてでございます。住宅確保要配慮者が賃貸住宅に円滑に入居できるようにするためには、居住者への家賃債務保証や見守りサービス等を行います
居住支援法人の取組を賃貸住宅のオーナーや仲介する
不動産事業者に知ってもらうことが重要であると考えております。このため県のホームページで県内の
居住支援法人の一覧を公表いたしますとともに、
宅建事業者団体が会員向けに行います研修会の場に県職員が出向きまして、
居住支援制度や
居住支援法人の活動の周知を図っております。今年度は、
居住支援法人の活動内容や関連した福祉関係の支援情報などを一元化して掲載したポータルサイトを開設することといたしております。またオーナーや
不動産事業者と
居住支援法人を直接マッチングするイベントを開催しまして
居住支援法人の活動を周知してまいります。
この
居住支援法人と
福祉関係団体や市町村等との連携に関する取組についてお尋ねがございました。県では、市町村や
居住支援法人、県の
社会福祉協議会、
宅建事業者団体などで構成されます福岡県
居住支援協議会を設置をいたしまして、住宅確保要配慮者が賃貸住宅へ円滑に入居するための課題や支援に関する情報共有や意見交換を行っているところでございます。また、住宅確保要配慮者からの具体的な相談にきめ細かく対応するためには、それぞれの地域で居住支援を行うことができるようにすることが重要でございます。このため県では令和元年度から、市町村や地域の
居住支援法人、
社会福祉協議会、
宅建事業者等が連携して住宅確保要配慮者を支援する体制をつくるモデル事業を行っております。これによりまして新たに六つの市町に
居住支援協議会が設置をされまして、現在は十の市町で運営をされております。今後もモデル事業の成果をまとめた報告書などを活用し、協議会の設立意向のある市町村に個別に助言を行っていくなど、地域における
居住支援体制の整備を支援してまいる考えでございます。
9 ◯議長(香原 勝司君) 嘉村薫君。
10 ◯二十六番(嘉村 薫君)登壇 御答弁いただき、ありがとうございました。
住宅確保要配慮者は、
少子高齢社会の影響だけではなく、社会の様々な問題や変化によって今後も増えていくことが考えられます。国では、住宅確保要配慮者の円滑な住まいの確保のため、
福祉介護分野、住宅分野及び刑事司法分野をそれぞれ所管する厚生労働省、国土交通省及び法務省の関係局合同によって住宅政策と福祉政策が一体となった検討会を設置をし、議論を進めています。その検討会では、入居後の生活支援まで含めた要配慮者に対する
居住支援機能の在り方を議論し、住まいと生活支援を一体的に提供する仕組みを推進しようとしています。住宅政策は地域とつながる居場所づくりの取組の推進でもあり、社会的な孤立状態にならないための互助、共助の地域づくりという重要な役割を持っています。要配慮者が入居後も安定的な生活を送ることができるよう、見守りなどの
居住支援サービスをはじめとする継続的な
居住支援活動が進むことが大事です。御答弁の中にありました福岡県
居住支援協議会の取組において課題の洗い出しや解決、支援活動の充実に向けた具体的な議論と実践を要望し、私の質問を終わります。(拍手)
11 ◯議長(香原 勝司君) 塩出麻里子君。(拍手)
*塩出議員質問
12 ◯九番(塩出 麻里子君)登壇 皆様、おはようございます。公明党、小倉南区選出の塩出麻里子です。通告に従いまして、県営住宅についてお尋ねいたします。
令和三年二月に県営住宅課から出されている
県営住宅個別施設計画の中では、昭和四十年代後半から五十年代にかけて整備された中高層の県営住宅への老朽化対応や、居住性やアクセス性などが低い住棟についての機能向上の必要性とともに、中高層の住棟の建て替えを計画的に進めること、既存ストックの居住性や安全性等の確保のため、定期的な点検等の確実な実施や、その結果を踏まえた早期の修繕に加え、計画的な修繕による
予防保全的管理や長寿命化に資する改善事業に取り組むことが重要であり、長寿命化の視点を含めた効率的な更新計画の策定が不可欠となっていると書かれており、事業の実施方針についても、各団地の立地条件、築年数、需要等を踏まえ、建て替え、改善または修繕の事業選定を行い、原則として建設年代の古い団地、住棟から対策を講じていくものとするとあります。
そこで知事にお尋ねします。この
県営住宅個別施設計画の計画期間は令和八年度までとなっておりますが、現段階で事業の実施方針に基づいた対策がどの程度進められているのか、事業内容別にお教えください。またその進捗状況に対する知事の所見をお教えください。
令和五年四月時点での県内における県営住宅の世帯は、高齢者世帯が全体の五七・六%で、令和三年から徐々に増加。一方、子育て世帯は全体の一四・八%と、こちらは徐々に減少しています。また県営住宅の空き住戸数は年々増加をしており、このまま人口減少、少子高齢化の影響を受け続けていけば
団地コミュニティーの担い手不足となり、
コミュニティーの維持が困難になると考えられます。私の地元北九州市小倉南区には県営住宅の日豊団地があります。この団地は昭和四十八年に建てられたもので、老朽化が進んでいることに加え、最寄り駅からも遠く、高齢化が進むとともに入居者が減り、空き住戸が増えるという、まさに少子高齢化の影響をもろに受けている状況です。現在住んでいる方からも、入居者の減少により
団地コミュニティーを維持することの難しさや生活環境の悪化を心配する声をお聞きしました。日頃は助けを必要としない方でも、何かあったときに頼れる人、頼る場所がすぐ近くにあるということが安心を生み、心の支えになります。
先日、神奈川県の県営住宅における
コミュニティーづくりについて視察させていただきました。神奈川県では県営団地の空き家を地域包括支援センターの出張所や子供食堂、放課後学習の場として活用をしています。中でも日野団地は二十六棟七百七十二戸から成る団地で、全世帯のうち高齢者世帯が八〇%を超えている団地ですが、団地の空き住戸を憩いの家として自治会が使用できるようになっています。団地に住む皆さんがこの憩いの家に集まり、刺しゅうや手芸、工作などの活動やお茶を飲みながらおしゃべりをする団らんの場として活用されていました。また団地の皆さんが寄附した書籍を自由に借りて読めるよう小さな図書室を造ったり、生活支援相談室を設置し、社会福祉法人が団地住民の生活相談に応じていました。自治会長にも直接お話を聞かせていただきましたが、年齢を重ねると社会とのつながりが徐々に薄くなってしまう。その分、地域とのつながりを濃くしていくことが健康に長生きする秘訣であり、団地内に憩いの家があることで孤立する人を減らしていきたいとおっしゃっていました。
そこで県営住宅の空き住戸活用についてお尋ねします。本県内の県営住宅にも
団地コミュニティー活性化のために活用できる空き住戸があると思いますが、知事のお考えをお聞かせください。
福岡県
住生活基本計画の中で「子育て世帯等を対象とした公営住宅の優先入居等により、公的賃貸住宅への入居を支援します。」とあるように、県としても子育て支援に力を入れてくださっていると思いますが、例えば県営住宅にどんなに空き住戸があっても世帯収入の条件が合わなければ入居はできません。セーフティーネット住居としての役割は理解していますが、長く空室になっているような住戸は目的外の活用も考えていく必要があるのではないでしょうか。
京都市ではセーフティーネット住居としての戸数を確保した上で、若者、子育て世帯の住宅支援のため、本来は低所得者向けの公営住宅の整備困難な空き住戸を中心に民間事業者へ貸し付け、民間資金により若者、子育て世帯向けにリノベーションし、若者、子育て世帯であれば誰でも入居できるよう所得制限をなくし、民間事業者によるサブリースとして安価で提供するという全国初の仕組みをつくっています。民間事業者に若者、子育て世帯向け住宅の提案を出していただき、決定事業者に改修から賃貸まで全てを委託する仕組みのため、自治体からの予算は必要なく、逆に目的外使用料を事業者から自治体に納めるようになっています。また募集要項として自治会への加入を条件に入れており、
団地コミュニティーの担い手不足解消も期待されています。
先ほど申し上げた小倉南区の日豊団地は、建物こそ老朽化していますが、高台にあるため見晴らしがよく、海や北九州空港を眺めることができますし、最寄りの朽網小学校までは徒歩六分程度と子育て世帯には便利な環境です。京都市と同じような仕組みを福岡県でつくることができれば、県営住宅の空き住戸を有効活用しながら
団地コミュニティーを守り、県の増収にもつながるのではないかと思いますが、知事のお考えをお聞かせください。
以上、三点につきまして知事の御答弁をお願いし、質問を終わります。(拍手)
13 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。
*知事答弁
14 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁を申し上げます。
まず、
県営住宅個別施設計画の進捗状況についてお尋ねがございました。この計画は、それぞれの県営住宅の立地や築年数といった状況を的確に把握いたしました上で、財政負担の軽減や平準化を図りつつ建て替え、改善、修繕事業を計画的に実施していくため、建て替え事業は年間三百戸程度、改善事業は年間六百戸程度実施することを目標に定めております。現段階での進捗状況は、建て替え事業につきましては昨年度までの三年間で三百九十六戸が着手済みであり、今年度は二百九十五戸に着手をいたします。改善事業につきましては、年間五百戸程度実施をしております。また修繕につきましては、応急修理や予防保全の観点から必要に応じ実施をしているところでございまして、各事業ともおおむね計画に沿って進められております。
次に、
団地コミュニティー活性化のための県営住宅の空き住戸の活用についてでございます。県営住宅におきましては、戸数が少ないとか、あるいは隣地に地区の集会所などがあるとか、こういった団地を除きましてほぼ全ての団地に集会所を整備いたしておりまして、これらの集会所は団地の
コミュニティー活性化に寄与しているものと考えております。一方で、大規模な団地におきましては、自治会から集会所が遠いという御要望もございまして、空き住戸を集会室に転用することを認めた事例もございます。今後も、団地の自治会から要望がある場合には、事情をよくお聞きした上で、入居を希望される方の入居を阻害しない範囲で対応してまいります。
空き住戸における民間事業者の活用についてでございます。県では、多様な世代による
団地コミュニティーの維持を図りますため、平成三十年度から県営住宅の空き住戸を子育て世帯向けリフォーム住宅として改修をいたしておりまして、これまでに百六十六戸整備いたしております。また定期募集におきましては、新婚、子育て世帯の入居の優先枠を設定をいたしまして、若い世代の皆さんの県営住宅への入居を促進しているところでございます。
京都市の事例も御紹介をいただきましたが、民間事業者の活用よりも、まずはこういった取組を行いますことで県営住宅に若い世代の入居促進を図りまして、
団地コミュニティーの維持に努めてまいる考えでございます。
15 ◯議長(香原 勝司君) 塩出麻里子君。
16 ◯九番(塩出 麻里子君)登壇 御答弁ありがとうございました。
最後に一点御要望を申し上げます。重ねてになりますが、県営住宅の空き住戸は年々増加をしている状況です。空き住戸を減らし
団地コミュニティーを守ることは、地域
コミュニティーを守ることにもつながります。県営住宅は県民の共有財産でもありますので、県民の皆様にも喜んでいただけるよう、どうかより積極的な空き住戸の活用と対策の推進をお願いし、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
17 ◯議長(香原 勝司君) 新開嵩将君。(拍手)
*新開(嵩)議員質問
18 ◯三番(新開 嵩将君)登壇 日本維新の会、新開嵩将です。通告に従いまして、高校授業料及び施設整備費の無償化に向けて御質問をさせていただきます。
近年、日本では少子化が格段に進み、今年六月に厚生労働省が公表した人口動態統計では二〇二二年の合計特殊出生率は過去最低と並ぶ一・二六となり、出生数はついに八十万人を割り、七十七万七百四十七人となりました。また福岡県でも出生数は七年連続で減少し、二〇二二年は一九七〇年と比較して約半数近い三万五千九百七十人まで減少しております。さらに今年八月に厚生労働省が公表した二〇二三年上半期の出生数は外国人を含む速報値で前年比一万三千八百九十人減となっており、この傾向が続けば二〇二三年通年でも過去最少を更新することが予測されます。このような急速な少子化の要因は、婚姻数の減少や晩婚化、晩産化等の進行もありますが、最大の要因は子育てや教育に係る保護者の経済的負担であると考えております。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、妻の年齢三十五歳未満の夫婦が理想の子供数を持たない理由として、子育てや教育にお金がかかり過ぎると答えた割合は約八割に上ります。また、国民の平均年収はバブル崩壊以降横ばいで推移する中、国民負担率が約五割で高止まりし、円安や国際情勢等による物価高騰を反映した実質賃金が十五か月連続で減少する近年において、大学の授業料をはじめ、高校の授業料、施設整備費等の保護者の家計負担は計り知れないと考えております。
国は令和二年四月より、年収五百九十万円未満世帯の高等学校等就学支援金の最大年額を十一万八千八百円から三十九万六千円まで大幅に引上げを行いました。この国の引上げによって、福岡県で子供を私立高校に通わせる年収五百九十万円未満世帯の保護者の授業料負担が無償となったところは大きく評価をしているところでございます。しかしながら、保護者の授業料負担と施設整備費の総合的負担に対する公的支援は全国一律ではなく、大阪府や京都府のように国の就学支援金制度とは別に独自に上乗せ補助を行い、保護者の家計負担を大幅に軽減している自治体が存在することを私たちは認識しなければなりません。
そこで、福岡県と私立高等学校等授業料補助金を交付する大阪府を、保護者の家計負担について比較させていただきます。まず、五百九十万円未満世帯について比較いたします。文部科学省の統計では、令和四年度における福岡県の私立高等学校の平均年間授業料は三十九万五千六百十二円、施設整備費等は十八万六千七百五十五円で、合計五十八万二千三百六十七円となっております。このうち国の就学支援金制度により授業料は無償となりますので、福岡県の保護者の家計負担は施設整備費等十八万六千七百五十五円です。それに対し、大阪府の同年度の平均年間授業料は五十九万四千四百三十一円、施設整備費等は三万四千九百十九円で、合計六十二万九千三百五十円となっております。大阪府では施設整備費を含めて徴収する高校が多いため、授業料は福岡県に比べて約二十万円高くなっていますが、大阪府独自の授業料補助金二十万四千円の上乗せ支援によって、大阪府の保護者の家計負担は施設整備費等二万九千三百五十円です。
次に、年収五百九十万円以上九百十万円未満世帯について比較いたします。年収五百九十万円以上九百十万円未満世帯につきましては、国の就学支援金が年間十一万八千八百円になりますので、福岡県の保護者の家計負担は授業料二十七万六千八百十二円と施設整備費等十八万六千七百五十五円となります。しかし、大阪府では年収五百九十万円以上九百十万円未満世帯に対しましても扶養する子供の人数に応じて年額十八万一千二百円から最大四十八万一千二百円まで国の就学支援金に独自に補助金を上乗せしているため、大阪府の保護者の家計負担は大幅に軽減されております。
私は、福岡県におきまして、国の就学支援金制度とは別に生活保護世帯、所得税非課税世帯、家計急変世帯等に対して就学支援のための追加支援を行っていることは承知いたしております。また高校無償化に向けては国が責任を持って全国一律に進めていかなければならないとも考えております。しかしながら、大阪府が百五十四億円をかけて独自に保護者の家計負担の軽減を実現していることを目の当たりにいたしますと、福岡県の保護者との家計負担の格差はあまりにも大きいと考えております。
国は現在、令和二年四月に行った高等学校等就学支援金の引上げ以降、さらなる支援拡大について示されておりません。また今年六月に異次元の少子化対策として策定したこども未来戦略方針においても、高校の授業料等に関する支援の拡大は言及されておりません。しかし、私は日本で少子化が格段に進み、福岡県の出生数は七年連続で減少し、二〇二三年の日本人の出生数が過去最少を更新することが予測されるのであれば、国の政策を待つだけではなく、福岡県独自で子育て世帯の家計負担の軽減に取り組むことは福岡県の少子化問題の解決策になると考えております。
そこで知事及び教育長に御質問させていただきます。福岡県におきまして、国の就学支援金制度とは別に生活保護世帯、所得税非課税世帯、家計急変世帯等に対して就学支援のための追加支援を行っていることは承知いたしておりますが、いよいよ大阪府では来年度から段階的に所得制限を撤廃し、二〇二六年度には年間三百八十三億円をかけて、全ての学年、全ての生徒を対象として、公立高校、私立高校ともに完全無償化の制度案を決定いたしました。この大阪府の高校授業料完全無償化(施設整備費を含む)を踏まえ、福岡県として高校生を持つ保護者の家計負担軽減に向けた決意を知事及び教育長にお尋ねいたします。
最後になりますが、日本の将来を支え、福岡県の将来を支えるのは子供たちです。私は、その子供たちと保護者に対しまして、たとえ財源の確保が極めて困難であるとしても、福岡県として独自に高校授業料完全無償化(施設整備費を含む)に向けて前に推し進めていくことは決して間違った道ではないと考えております。知事と教育長の答弁は極めて厳しいものになることが予想されますが、私は日本維新の会が掲げる教育無償化の看板政策である高校授業料完全無償化(施設整備費を含む)を受け継ぐ政治家にならなければなりません。最後の最後まで諦めることなく、高校授業料完全無償化に向けて状況が改善されることを望みます。
以上、一般質問を終わります。御清聴誠にありがとうございました。(拍手)
19 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。
*知事答弁
20 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁を申し上げます。
私立高校における保護者の家庭負担軽減についてお尋ねがございました。本県では、経済的理由によって教育の機会が失われるようなことがないように、世帯の所得に応じて生徒の授業料や施設整備費等の負担を軽減する施策を行ってまいりました。また教育の機会均等は国が責任を持って行うべきものであると考えております。このことから、毎年、県議会と連名で国に対し保護者の負担軽減を要望してまいったところでございます。国におきましては、こうした我々の要望を受け、支援額を引き上げるなど就学支援制度の拡充を図ってこられたところでございます。
大阪府におかれましては、来年度から所得制限なしで段階的に授業料等を完全無償化する制度案を発表されました。この制度は、保護者が大阪府に在住しておられまして府内や近隣の京都、滋賀、兵庫、奈良、和歌山の一府四県に通う生徒を対象といたしております。生徒一人当たりの補助上限額は国の就学支援金と合わせ年額で一律六十三万円としており、これを超過する部分は各学校が負担する仕組みとなっておりますので、近隣の一府四県の私立高校にも影響が及びます。これに対し、私学団体から、自らが決めた授業料を徴収できず学校負担が生じる制度には課題がある、あるいは大阪府から通う生徒とそれ以外の生徒で授業料負担に不公平が生じるといった御意見が出されており、今後、解決が必要な課題が残されていると考えております。県といたしましては、地域によって学校の経費負担や生徒間の不公平が生じることがないよう、全国一律での保護者の負担軽減策を実施することが適切であると考えておりまして、引き続き国に対し、その拡充を強く要望してまいります。
21 ◯議長(香原 勝司君) 吉田教育長。
*教育長答弁
22 ◯教育長(吉田 法稔君)登壇 保護者の家計負担軽減についてであります。
県教育委員会としましては、教育の機会均等は国が責任を持って行うべきと考えており、これまで国に対して保護者の家計負担軽減となるよう、就学支援制度の充実を要望してまいりました。また現行の就学支援制度につきましては、高校入学前から全ての中学三年生とその保護者に制度の詳細を記載したチラシを配付し、周知に努めてまいりました。引き続き様々な機会を捉え制度の周知徹底を図るとともに、就学支援制度の充実により家計負担が軽減するよう、国に対し要望してまいります。
23 ◯議長(香原 勝司君) この際、しばらく休憩いたします。再開は午後一時十分といたします。
午 後 零 時 一 分 休 憩
午 後 一 時 十 分 再 開
24 ◯副議長(佐々木 允君) 再開いたします。
休憩前に引き続き、一般質問を行います。順次発言を許可いたします。笠和彦君。(拍手)
*笠議員質問
25 ◯二十五番(笠 和彦君)登壇 自民党県議団、笠和彦です。通告に従い、福岡県の公共建築工事の入札不調への対策についてお伺いいたします。
昨年来、大阪万博の入札不調や不落について大きく報道され、国民の関心も非常に高くなっています。昨年十一月、主要なパビリオンや施設の工事入札が軒並み成立しない状況となっていると報じられました。そして今年の六月にも日本館の入札が不落となり、実施する国が緊急性から設計金額を増額し、随意契約に切り替えるといった報道もあったところです。また最近では、地方自治体が発注する公共建築工事についても入札不調や不落の報道がなされ、今月、新聞でも各社、福岡県での入札不調の報道がされております。入札不調とは、事業者の参加がなかったり辞退するなどで不成立となること、不落とは、入札があったものの予定価格を超えるなど、落札者が決まらないことです。
この原因として大きく二つのことが言われています。まず建築業界の人件費の上昇、そして建築資材の高騰です。人件費については、既に数年前から東京オリンピック・パラリンピックに関連した首都圏の大規模工事の実施や各地で発生する大規模災害の復旧工事の影響により国内で建築土木技術者などの求人が増加し、人件費の上昇が続いています。近年では首都圏のみならず地方の新たな建設需要による求人の増加の影響も大きいと言われています。加えて、新型コロナウイルス感染症の影響から発した国内外における資材の供給や流通の変化、さらにはロシアによるウクライナ侵攻とその長期化といった複雑な情勢の中、原材料費及びエネルギーコストは世界的に上昇、加えて円安の影響もあり建設業界は資材価格の高騰に直面しています。
国や地方自治体が実施する工事の入札が成立しなかった場合、大規模な工事であるほど以降の計画の遅れに影響し、追加の費用が発生することにつながります。公共建築工事では、利用者への影響、特に学校の場合となると、使用開始時期が遅くなるほど児童生徒の教育環境の改善や維持に多大な影響があります。中でも事業者の不参加や辞退が相次ぐ入札の不調については、入札時に示した設計内容や条件、予定価格が適正であったかが問われ、事業者側では金額が大きいほど設計に多額の費用や時間がかかり、入札不調に終わっては多額の損害につながります。
公共建築工事はまず国の公共建築工事積算基準に基づき価格の積算が行われます。国による地方公共団体の入札を確実、円滑に実施するための方針を見ますと、予定価格や設計内容は、この積算に加えて、より取引が実現しやすい最新の価格である実勢価格と労働者の確保や資材供給の状況など現場実態を的確に反映することが必要とされています。また国は標準積算と、施工実態がかけ離れていると想定される場合には、想定される部分について入札参加者からも見積りを徴収し、その見積りを参考に積算を行う、いわゆる見積活用方式の運用も提案しています。もともと公共工事は立案から完成まで期間を要するため、金額や内容の見直しが必要と考えます。そして入札の不調、不落を防止するには、入札の段階、中でも一般競争入札では公告の期間を要すること、WTO案件ともなるとさらに公告期間が長くなるということですので、自治体はその期間の変動も予測しながら実勢価格や現場実態をしっかりと調査した上で設定することが必要です。つまり近年の労務単価、資材価格の変動も大きい状況では契約事務における最終段階においてのアップデートが非常に重要と考えます。
そこで知事に、福岡県が発注した公共建築工事の入札不調の状況についてお伺いします。令和四年度から本年八月まで知事部局で発注した大規模建築工事において、入札不調となった事案はあるのか、またあればその件数と不調の原因及びその影響についてお伺いいたします。
次に、全国的な入札不調の状況がありますが、大規模建築工事の入札において、県では適正な予定価格の設定のためにどのような対策をしているのかお伺いします。また入札不調が起こらないよう、今後どのように対応しているのかお伺いします。(拍手)
26 ◯副議長(佐々木 允君) 服部知事。
*知事答弁
27 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁を申し上げます。
まず、県が発注した大規模建築工事における入札不調となった件数と原因及びその影響についてでございます。予定価格が五千万円以上の大規模な建築工事や建築設備工事における入札不調は、昨年度は十二件、今年度は四月からの五か月間で十一件となっております。今年度、入札不調となりました主な工事には、仮称でございますが、宗像特別支援学校、これも仮称でございますが、早良特別支援学校の新築工事、県営壱岐団地の建て替えに係る機械設備工事がございます。入札不調となりました主な要因は、今年度の当初は民間の工事が好調なこともございまして現場に常駐すべき技術者が不足しているという理由によるものでございましたが、ここ二、三か月は原油価格の上昇に起因いたしますコンクリート価格の急騰や、職人不足により人件費が上昇したことによる型枠工事などの価格上昇によりまして業者の積算価格が県の予定価格と乖離をしたことが挙げられます。入札不調になりますと再度、入札を行うこととなります。このため工事の着工や建物の完成時期が当初の予定より遅れ、新設学校の場合では開校時期に、県営住宅の場合では入居開始時期に影響が生じる可能性がございます。
大規模建築工事の入札における適正な予定価格の設定についてお尋ねがございました。県が発注いたします建築工事及び建築設備工事につきましては、国の公共建築工事積算基準に基づいて積算を行いまして予定価格を設定をいたしております。予定価格の設定に大きな影響を与えますコンクリートや鉄筋等の資材単価につきましては、実勢価格を反映するよう毎月見直しを行っております。特に一般競争入札の予定価格につきましては、事前公表の際に最新の単価に入れ替え、設定をしているところでございます。
入札不調が起こらないための今後の対応についてでございます。現在、県が一般競争入札により建築工事や建築設備工事を発注いたします際は、確実かつ円滑な施工体制を確保いたしますため、入札に参加できる施工業者の所在地の範囲を地理的要件として定めております。また受注機会の確保を図りますため、県が発注しております建築工事や建築設備工事を施工中でないということを条件といたしまして、重複受注制限をかけております。しかしながら、入札不調になった場合は、施工業者の入札参加を促しますため地理的要件や重複受注制限を見直し、再入札を行っております。こういった対応により最終的には契約に至っているところでございます。今後は、直近の入札参加状況を踏まえまして、入札不調が懸念される場合はあらかじめ当初の入札のときから地理的要件や重複受注制限を見直した上で発注するなど、入札不調が起こらないよう努めてまいります。
28 ◯副議長(佐々木 允君) 豊福るみ子君。(拍手)
*豊福議員質問
29 ◯二十七番(豊福 るみ子君)登壇 皆様、こんにちは。
民主県政クラブ県議団、遠賀郡選出の豊福るみ子でございます。私からは、教職員の働き方改革について質問してまいります。
初めに、教職員の働き方改革への対応方針について伺います。八月二十八日、中央教育審議会特別部会は、教職員の働き方改革について、緊急的に取り組むべき施策を盛り込んだ提言をまとめ、教職員を取り巻く環境は国の未来を左右しかねない危機的な状況にあるとし、直ちに取り組むべき事項を掲げました。同時に、骨太方針二〇二三においても、質の高い公教育の再生に向け、二〇二四年度から三年間を働き方改革のさらなる加速化、処遇改善等の集中改革期間とすることなどが盛り込まれました。
そこで教育長に伺います。中央教育審議会の緊急提言や骨太方針二〇二三の提言を受け、本県としてどのように取り組まれようとお考えでしょうか。教育長の所見をお聞かせください。
次に、県立学校の教職員の超過勤務の実態についてお伺いをいたします。昨年六月定例会で我が会派の佐々木允議員の一般質問に対する教育長答弁で、二〇二一年度超過勤務が年三百六十時間を超えた教職員が全体の約四八%、過労死ラインである月八十時間を超えた教職員は月平均三百九十二人となっていることが明らかとなりました。これに対し、吉田教育長は、学校のICT化や部活動に関する負担軽減などを進めたことにより一定の改善は図られているものの、さらなる取組の強化が必要であるとの認識を示されました。
そこで質問です。県立学校の二〇二二年度の超過勤務実態をお示しいただいた上で、その現状について教育長としてどのように評価されているのかお聞かせください。
次に、教員が担うべき業務についてお伺いをいたします。教職員の働き方改革取組指針では、教職員が子供と向き合う時間を十分に確保し、学校教育の質を維持向上させることを指針の目的の一つに掲げており、教員が担うべき業務の明確化と適正化が求められています。しかしながら、学校現場では本来教員が担うべき標準的業務以外の業務により児童に十分に向き合う時間の確保が厳しいという現状をお聞きしています。例えば、小中学校で環境施設整備などの業務に従事している用務員は新規採用停止などとする自治体が増加し、その業務の一端を教職員が担わざるを得ない学校も増え、教職員の業務負担につながっているとの声をいただいています。施設整備の点検、修理、修繕といった業務を専門的知識や経験のない教職員が担うことは、教員の業務負担が増えるだけではなく、児童生徒の命と教職員の安全に関わることであり、教員が担うべき業務のみに集中でき、子供と向き合う時間を確保することが重要だと考えます。
我が会派では、二〇一七年の代表質問の中で教員の業務アシスタント制度の導入について教育長にただし、当時の城戸教育長からは、教員が必ずしも行う必要のない業務について、他のスタッフ等に代替させることができれば教員の子供と向き合う時間の確保につながると考えると答弁されています。
そこで教育長に伺います。子供たちが健康に学習し、生活できる安全で衛生的な環境整備や施設環境の充実のためにも、その業務に従事する専門の人員補充に対する市町村自治体への助言が必要ではないでしょうか。また授業の準備や事務作業をサポートする業務アシスタント、いわゆる教員業務支援員の全小中学校への配置を目標に取り組んでいくべきと考えますが、教育長の見解をお聞かせください。
最後に、学校給食における外国人児童生徒への対応策についてお伺いをいたします。二〇二一年文科省の調査によると、指定都市を除く本県の日本語指導が必要な児童生徒の数は、小学校で二百七十六名、中学校で百十二名と急速に増加しており、日本の学校で学ぶ際の条件を整備することが求められています。とりわけ学校給食における食物アレルギー対応では、栄養教諭の皆さんは、アレルギーに対応する除去食のため、アレルギー児童とその保護者に対し献立表や成分表の確認を行うことで安全で安心な学校給食を提供していますが、アナフィラキシーショックの際は児童生徒の生命の危険もあり得ることから、多言語化への対応は急務だと考えます。しかし、本県の学校給食においては献立表や成分表についての多言語化への対応が図られていないことが一般的であり、現状では、担任教諭や栄養教諭は自らの努力によって既存の翻訳機やアプリ等を使用したり、校内の英語教諭などにお願いし英語に翻訳するなどの対応を取っている学校も存在するということです。結果、教員の業務負担の一因となっている状況にもあると考えます。
七月に我が会派で視察に伺った多くの外国人が暮らす新宿区では、外国人とのコミュニケーションを図るツールとして、十五、六か国語の通訳の派遣やタブレットを介してリアルタイムに画面越しに通訳するシステムを構築しており、今後は八か国語対応の翻訳アプリを開発予定とのことで、外国人児童生徒とのコミュニケーションを確保していくという先進的な取組をお聞きしたところです。また、福岡県警では、外国人観光客や外国人在住者の増加に伴い、三十か国語を翻訳する多言語化対応タブレットを各警察署に導入しているとのことです。
そこでお伺いをいたします。外国籍の保護者、児童生徒が直面する課題は言葉の壁です。今後、国際化が加速する福岡県において、学校給食の実施に当たっても外国人児童生徒への対応策が急務と考えますが、教育長の認識をお聞かせください。
とりわけ外国人の児童生徒へのアレルギー対応策の一つとして、献立表や成分表などの多言語化を早急に進めていくことは学校教育現場においての危機管理対応策にも通じる取組だと考えますが、県教委としてどのように取り組んでいかれるのかお聞きいたします。
以上、教育長の真摯な答弁をお願いいたします。(拍手)
30 ◯副議長(佐々木 允君) 吉田教育長。
*教育長答弁
31 ◯教育長(吉田 法稔君)登壇 中央教育審議会の緊急提言等を受けての取組についてでございます。中央教育審議会の緊急提言におきましては、教員勤務実態調査の結果などを受けて、教師を取り巻く環境整備のためにできることは直ちに行うという考え方の下、国及び教育委員会や学校が緊急的に取り組むべき具体的な方策が示されております。また経済財政運営と改革の基本方針二〇二三に、教職の魅力向上と優れた教師を確保するための施策が盛り込まれたことにより、国の予算編成等において重点的に取り組む方向性が示されたものと考えております。
県教育委員会としましては、こうした国の動きも踏まえ、働き方改革の取組をより一層推進してまいりたいと考えております。
県立学校における超過勤務の現状についてでございます。昨年度、超過勤務が年三百六十時間を超えた教職員は三千三百五十六人で全体の約四七・三%となっており、また月八十時間を超えた者は月平均で二百三人となっております。各学校で取組を強化したことによりまして月八十時間を超えた教職員は一昨年度と比較して大幅に減少しておりますが、依然として全体の半数近くが年三百六十時間を超えており、さらなる改善に向けた取組が必要であると考えております。