高知県議会 > 2020-03-10 >
03月10日-07号

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  1. 高知県議会 2020-03-10
    03月10日-07号


    取得元: 高知県議会公式サイト
    最終取得日: 2023-06-16
    令和 2年  2月 定例会(第352回)-----------------------------------        令和2年3月10日(火曜日) 開議第7日-----------------------------------出席議員       1番  土森正一君       2番  上田貢太郎君       3番  今城誠司君       4番  金岡佳時君       5番  下村勝幸君       6番  田中 徹君       7番  土居 央君       8番  野町雅樹君       9番  浜田豪太君       10番  横山文人君       11番  西内隆純君       12番  加藤 漠君       13番  西内 健君       14番  弘田兼一君       15番  明神健夫君       16番  依光晃一郎君       17番  梶原大介君       18番  桑名龍吾君       19番  森田英二君       20番  三石文隆君       21番  上治堂司君       22番  山崎正恭君       23番  西森雅和君       24番  黒岩正好君       25番  大石 宗君       26番  武石利彦君       27番  田所裕介君       28番  石井 孝君       29番  大野辰哉君       30番  橋本敏男君       31番  上田周五君       32番  坂本茂雄君       33番  岡田芳秀君       34番  中根佐知君       35番  吉良富彦君       36番  米田 稔君       37番  塚地佐智君欠席議員       なし-----------------------------------説明のため出席した者  知事         濱田省司君  副知事        岩城孝章君  総務部長       君塚明宏君  危機管理部長     堀田幸雄君  健康政策部長     鎌倉昭浩君  地域福祉部長     福留利也君  文化生活スポーツ部長 橋口欣二君  産業振興推進部長   井上浩之君  中山間振興・交通部長 川村雅計君  商工労働部長     近藤雅宏君  観光振興部長     吉村 大君  農業振興部長     西岡幸生君  林業振興・環境部長  川村竜哉君  水産振興部長     田中宏治君  土木部長       村田重雄君  会計管理者      中村智砂君  公営企業局長     北村 強君  教育長        伊藤博明君  人事委員長      秋元厚志君  人事委員会事務局長  原  哲君  公安委員長      古谷純代君  警察本部長      熊坂 隆君  代表監査委員     植田 茂君  監査委員事務局長   麻岡誠司君-----------------------------------事務局職員出席者  事務局長       弘田 均君  事務局次長      行宗昭一君  議事課長       吉岡正勝君  政策調査課長     織田勝博君  議事課長補佐     飯田志保君  主幹         春井真美君  主査         宮脇 涼君-----------------------------------議事日程(第7号)   令和2年3月10日午前10時開議第1 新型コロナウイルス感染症対策に関する報告の件第2 第1号 令和2年度高知県一般会計予算 第2号 令和2年度高知県収入証紙等管理特別会計予算 第3号 令和2年度高知県給与等集中管理特別会計予算 第4号 令和2年度高知県旅費集中管理特別会計予算 第5号 令和2年度高知県用品等調達特別会計予算 第6号 令和2年度高知県会計事務集中管理特別会計予算 第7号 令和2年度高知県県債管理特別会計予算 第8号 令和2年度高知県土地取得事業特別会計予算 第9号 令和2年度高知県国民健康保険事業特別会計予算 第10号 令和2年度高知県災害救助基金特別会計予算 第11号 令和2年度高知県母子父子寡婦福祉資金特別会計予算 第12号 令和2年度高知県中小企業近代化資金助成事業特別会計予算 第13号 令和2年度高知県流通団地及び工業団地造成事業特別会計予算 第14号 令和2年度高知県農業改良資金助成事業特別会計予算 第15号 令和2年度高知県県営林事業特別会計予算 第16号 令和2年度高知県林業・木材産業改善資金助成事業特別会計予算 第17号 令和2年度高知県沿岸漁業改善資金助成事業特別会計予算 第18号 令和2年度高知県港湾整備事業特別会計予算 第19号 令和2年度高知県高等学校等奨学金特別会計予算 第20号 令和2年度高知県流域下水道事業会計予算 第21号 令和2年度高知県電気事業会計予算 第22号 令和2年度高知県工業用水道事業会計予算 第23号 令和2年度高知県病院事業会計予算 第24号 令和元年度高知県一般会計補正予算 第25号 令和元年度高知県収入証紙等管理特別会計補正予算 第26号 令和元年度高知県用品等調達特別会計補正予算 第27号 令和元年度高知県会計事務集中管理特別会計補正予算 第28号 令和元年度高知県県債管理特別会計補正予算 第29号 令和元年度高知県国民健康保険事業特別会計補正予算 第30号 令和元年度高知県災害救助基金特別会計補正予算 第31号 令和元年度高知県母子父子寡婦福祉資金特別会計補正予算 第32号 令和元年度高知県中小企業近代化資金助成事業特別会計補正予算 第33号 令和元年度高知県流通団地及び工業団地造成事業特別会計補正予算 第34号 令和元年度高知県農業改良資金助成事業特別会計補正予算 第35号 令和元年度高知県県営林事業特別会計補正予算 第36号 令和元年度高知県流域下水道事業特別会計補正予算 第37号 令和元年度高知県港湾整備事業特別会計補正予算 第38号 令和元年度高知県高等学校等奨学金特別会計補正予算 第39号 令和元年度高知県病院事業会計補正予算 第40号 知事等の損害賠償責任の一部免責に関する条例議案 第41号 高知県無料低額宿泊所の設備及び運営に関する基準を定める条例議案 第42号 高知県犯罪被害者等支援条例議案 第43号 高知県個人情報保護条例の一部を改正する条例議案 第44号 職員の服務の宣誓に関する条例の一部を改正する条例議案 第45号 知事等の給与、旅費等に関する条例の一部を改正する条例議案 第46号 公益的法人等への職員の派遣等に関する条例の一部を改正する条例議案 第47号 議会の議員その他非常勤の職員の公務災害補償等に関する条例の一部を改正する条例議案 第48号 高知県高圧ガス保安法関係手数料徴収条例等の一部を改正する条例議案 第49号 高知県手数料徴収条例の一部を改正する条例議案 第50号 高知県後期高齢者医療財政安定化基金条例の一部を改正する条例議案 第51号 ふぐ取扱い条例の一部を改正する条例議案 第52号 高知県動物の愛護及び管理に関する条例の一部を改正する条例議案 第53号 高知県食品衛生法施行条例の一部を改正する条例議案 第54号 高知県公立大学法人に係る評価委員会及び重要な財産に関する条例の一部を改正する条例議案 第55号 高知県立県民体育館の設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例議案 第56号 高知県立紙産業技術センターの設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例議案 第57号 高知県漁港管理条例及び高知県漁港区域内における行為の規制に関する条例の一部を改正する条例議案 第58号 高知県浄化槽保守点検業者の登録に関する条例の一部を改正する条例議案 第59号 高知県の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例議案 第60号 高知県立都市公園条例の一部を改正する条例議案 第61号 高知県営住宅の設置及び管理に関する条例及び高知県特定公共賃貸住宅の設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例議案 第62号 高知県公営企業の設置等に関する条例の一部を改正する条例議案 第63号 公立学校の教育職員の給与その他の勤務条件の特別措置に関する条例の一部を改正する条例議案 第64号 高知県警察手数料徴収条例の一部を改正する条例議案 第65号 高知県よさこいピック高知記念基金条例を廃止する条例議案 第66号 高知県が当事者である仲裁の申立てに関する議案 第67号 公平委員会の事務の受託の廃止に関する議案 第68号 公平委員会の事務の受託の廃止に関する議案 第69号 権利の放棄に関する議案 第70号 県が行う高知県防災行政無線システム再整備事業に対する市町村の負担に関する議案 第71号 県が行う土地改良事業に対する市町村の負担の一部変更に関する議案 第72号 包括外部監査契約の締結に関する議案 第73号 和食ダム本体建設工事請負契約の一部を変更する契約の締結に関する議案 議発第1号 高知県歯と口の健康づくり条例の一部を改正する条例議案第3 一般質問(一問一答形式による)-----------------------------------   午前10時開議 ○議長(桑名龍吾君) これより本日の会議を開きます。-----------------------------------新型コロナウイルス感染症対策に関する報告の件 ○議長(桑名龍吾君) 直ちに日程に入ります。 日程第1、新型コロナウイルス感染症対策に関する報告の件を議題といたします。 ただいま議題となりました知事の行政報告を求めます。 県知事濱田省司君。   (知事濱田省司君登壇) ◎知事(濱田省司君) 新型コロナウイルス感染症対策の現在の状況及び今後の対策などにつきまして御報告を申し上げます。 本県におきましては、先月29日の第1例目以降、これまでに12例の感染が確認をされました。このうち、第1例目に関連する感染は終息の兆しが見られるほか、ほとんどの患者の方々が順次快方に向かわれ、昨日までに3人の方が国の基準を満たして退院されております。その一方で、感染経路が不明なケースも新たに生じており、現在国のクラスター対策班の支援を受けながら、感染ルートの解明などを進めているところです。また、国内外における感染拡大により、県内でも日々の経済活動や観光面などにおいて非常に厳しい影響が広がりつつあるものと受けとめております。こうしたことから、県では、既計上予算や予備費も活用し、全庁を挙げた対応を行ってきたところであります。 引き続き、国や高知市を初めとする関係機関との連携を密にし、感染拡大の防止に向けて取り組みを強化してまいります。あわせて、経済面における影響を最小限にとどめるべく迅速に対応してまいります。 県といたしましては、今月6日、「感染予防、感染拡大防止」、「情報発信、相談体制の整備」、「経済影響対策」の3つの柱から成る、高知県新型コロナウイルス感染症対策の第一弾を取りまとめ、公表いたしました。 その1つ目の柱であります「感染予防、感染拡大防止」につきましては、濃厚接触者など検査対象者の増加に対応するため、県の衛生環境研究所にPCR検査用の機器を増設したところです。これにより、あしたからは従来の約3倍となる1日当たり最大144件の検査が可能となります。また、患者を受け入れる感染症指定医療機関の病床についても、当初の11床から23床まで拡大するなどの対策を行っております。 今後は、帰国者・接触者外来における個人防護具などの導入や、感染症指定医療機関などに対する医療用マスクの安定的な供給など、適切な診療環境の整備をさらに進めてまいります。あわせて、受け入れ病床のさらなる拡充を図るなど、医療体制の強化に取り組みます。 こうした取り組みに加えて、休校中の児童生徒の居場所や障害児の受け皿の確保に向けた対策などもさらに進めてまいります。 2つ目の柱であります「情報発信、相談体制の整備」につきましては、高知市と共同で設置をしております、新型コロナウイルス健康相談センターの体制を強化し、これまでに3,000件を超える相談などをお受けしたところです。また、県のホームページでは、県内の発生状況や国及び県が実施する対策などについて、適時適切な情報発信に努めております。さらに、健康相談以外の問い合わせ窓口も設けるとともに、感染された方や御家族などの心理的ケアを行う相談窓口を本日より開設するなど、県民の皆様の不安や疑問にできる限り対応できる体制の整備を図っております。 あわせて、患者御本人や御家族、さらには医療従事者などへの誹謗中傷や人権侵害が決して行われることのないよう、引き続き県民の皆様に冷静な対応を呼びかけてまいります。 3つ目の柱であります「経済影響対策」につきましては、まず生活に困窮されている方への相談支援を行うとともに、休業により収入が減少した方への生活福祉資金の貸し付けなどによる支援を進めているところです。さらに、県の制度融資においては、新型コロナウイルス感染症に起因して売上高が減少している事業者を融資の対象に追加をするとともに、安心実現のための高知県緊急融資などの融資枠を、本年度に実行する分だけでも100億円以上確保しております。これらにより、県内事業者の事業活動をしっかりと支援してまいります。 あわせて、国においては、経営の安定に支障が生じている中小企業向けに保証枠の拡大を行うとともに、特に影響が大きい旅館業や飲食業について特別貸付制度を設けるなど、中小企業の資金繰りの支援を行っております。県としても、各種相談窓口を通じて、これらの周知を行ってまいります。 引き続き、本県経済への影響緩和に向け、国の緊急対応策なども最大限に活用し、補正予算の検討も含め、一連の対策のさらなるバージョンアップを図るとともに、スピード感を持って実行してまいります。さらに、事態収束後を視野に入れ、県産品の国内外向けのプロモーションの強化や、観光需要の早期回復を目指した対策などの検討も進めてまいりたいと考えております。 今後とも、県民の皆様の健康、生活を守ることを第一に考え、かつ県経済へのダメージを最小限に食いとめるという観点から、ありとあらゆる対策を総動員し、迅速かつ的確に講じることにより、この難局に立ち向かってまいります。 以上をもちまして、新型コロナウイルス感染症対策についての私からの御報告を終わらせていただきます。----------------------------------- △質疑並びに一般質問 ○議長(桑名龍吾君) 次に、日程第2、第1号「令和2年度高知県一般会計予算」から第73号「和食ダム本体建設工事請負契約の一部を変更する契約の締結に関する議案」まで及び議発第1号「高知県歯と口の健康づくり条例の一部を改正する条例議案」、以上74件の議案を一括議題とし、これより議案に対する質疑並びに日程第3、一般質問をあわせて行います。 質疑並びに一般質問は一問一答形式によることとします。 岡田芳秀君の持ち時間は40分です。 33番岡田芳秀君。 ◆33番(岡田芳秀君) 皆さんおはようございます。日本共産党の岡田です。通告に従いまして質問をいたします。 初めに、県内での新型コロナウイルス、また全国でのウイルスの感染者がふえております。皆様の一日も早い御回復を、心よりお祈りいたします。 専門家会議でも、爆発的な感染拡大を抑制できても、長期化の可能性もあるということも指摘をされております。濱田知事を初め執行部の皆さん、また医療関係者の皆さんには大変ですけれども、県民の健康を守るために引き続き御尽力いただきますようによろしくお願いをいたします。 それでは、質問に入ります。 まず、農政についてお聞きをいたします。 今、政府は、食料・農業・農村基本法に基づく次期基本計画の検討を行っています。おおむね5年ごとに見直しているものですけれども、審議会等の意見を集約して、今月中にも閣議決定をされることになります。この議論の中でJA全中の中家徹会長が、その骨子についておおむね評価するが、農業の多面的機能の発揮という項目を入れることが必要であるということ、また食料安全保障の確立や中小・家族経営といった重要なキーワードは明確に文言を記述すべきだということを述べています。今の農政の現状をあらわした、非常に大事なポイントだと思います。私は非常に共感をいたしました。 日本の農業は、担い手の減少と高齢化に拍車がかかり、農業と農村が次世代に継承できずに、存続の危ぶまれる地域が少なくありません。現在の推計では、何もしなければ20年で農業従事者は半減をし、農地は2割減るという厳しい状況にあります。 食料自給率については、歴代政府が目標を決めてきましたけれども、農産物の輸入自由化を促進し、国内の生産を犠牲にする道を歩んできたと言わなければなりません。とりわけ第2次安倍政権は、2015年に閣議決定した現行基本計画で、2013年に39%だったカロリーベース自給率を45%へ引き上げる目標を掲げる一方で、TPP11、日欧EPA、日米貿易協定と、空前の農産物輸入自由化を次々に強行してきました。農業に打撃を与える政策を続けては、自給率の目標の達成は図ることができないと思います。 さらに、企業が一番活躍できる国を公言し、財界代表が主導する規制改革会議などが打ち出した政策を官邸主導で現場に押しつけるような形で、大規模化や企業参入を強力に推進し、農政改革の名で、農地制度や農業協同組合法、主要農作物種子法などによって、戦後の家族経営や農村の暮らしを支えてきた諸制度も、矢継ぎ早に解体をしてきました。 こうした安倍官邸農政に対して、農村地域では不満と怒りの声もあふれております。2019年10月4日に行った、日本農業新聞の世論調査では、農業者の67%が安倍農政を評価しないというふうに答えているのはそのあらわれです。 そこで、知事は、日本の食料自給率が下がり続けているというこの現状をどう受けとめておられるのか、所見をお聞かせください。 ◎知事(濱田省司君) 国のほうでは、食料自給率が長期的に低下している要因につきまして、食生活の変化によって、自給率の高い米の消費が減少する反面で、自給率が低い畜産物などの消費がふえたことという分析をいたしております。自給率の低下はこうした要因に加えまして、1つには外食産業を中心といたします、より安価な食材を求めるニーズが高まっていること、また他産業と同様の担い手の減少あるいは耕地面積の減少などによりまして生産力が低下をしているということ、こういったさまざまな要因の複合的な重なりが自給率の低下という形であらわれているというふうに考えております。 ◆33番(岡田芳秀君) 御答弁ありがとうございます。私は、やはりアメリカに追随をし、大企業の利益ばかり優先をして輸入自由化を進めてきたということに、大きな要因があるというふうに考えております。 平成30年度の食料自給率は、カロリーベースで37%まで、過去最低に落ち込みました。政府の議論の中では、自給率は意味がない、産業としての農業の稼ぐ力こそ目標にすべきだといった議論もあったようですけれども、食料自給率の向上は、食料安全保障の観点からも、地域社会や文化、環境の保全といった面からも、非常に重要だというふうに思います。 今、新型コロナウイルスがいろんな猛威を振るっておりますけれども、影響は、食品の分野にも及んできております。中国産の野菜の日本への輸入も急減をしております。世界では気候変動による不作、また国内での自然災害の多発など、やはり食料自給率を高く確保していくということが必要だというふうに思います。 食料の外国依存を改めて、少なくとも国民の過半数の食を賄えるような、日本の食料自給率の早期50%への回復を目指すべきだと考えますが、知事の御所見をお聞かせください。 ◎知事(濱田省司君) 我が国の食料自給率につきまして、国のほうでは、平成12年以降だと思いますけれども、この目標値を示すようになっております。ただ、これを見ましても、現状に対して一定の、数%の上積みを目指すということで推移をしてきておりまして、いわゆる絶対水準といたしまして、何%の食料自給率が適当であるという、具体的な数値を申し上げるのは困難であるというふうに思います。 ただ、自給率を回復させますことは、ひいては国内の農業の維持・拡大につながることとなります。生産拡大、消費拡大の両面の取り組みによりまして、食料自給率を1%でも引き上げを図っていくことが大切だというふうに考えております。 このため、国におきましては、新たな食料・農業・農村基本計画のもとで、持てる施策を最大限に講じることによりまして、自給率の回復を目指していただきたいと考えております。 ◆33番(岡田芳秀君) 資料を見ましたけれど、政府の次の計画では、引き続き45%の目標になるようです。半世紀前は、日本の食料自給率は60%ありましたので、それ以後ずっと減り続けてきているわけです。イギリスは、1960年代後半までずっと下がっていましたけれども、農業政策を見直して、その後挽回、回復をしてきております。そうしたことに比べても、先進国の中で一番自給率が低くなってきている日本の立て直しを図っていかなければならないと思います。 日本共産党は綱領で、農業を国の基幹的生産部門に位置づけ、食料自給率の向上、食の安全・安心の確保、国土の保全など多面的機能を重視し、農政の根本的転換を図ることを目指しています。この方向は、食料・農業・農村基本法の掲げる基本理念と多くの面で重なります。こうした農政の方向は、持続可能な世界への転換が迫られている国際社会に対する責任でもあると思います。 国連は、昨年から家族農業の10年を開始し、家族農業への抜本的、本格的な支援を呼びかけました。地球的規模での気候変動、貧困、飢餓などが深刻化する中、国連の定めた持続可能な開発目標、SDGsの達成も切実な課題です。そのためにも、これまで産業政策に偏重してきた農政を見直して、持続可能な農政へと転換することが必要だと思います。地域農業は、大規模の担い手だけでは成り立ちません。さまざまな経営体が支え合って成り立っています。高知県でも、ほとんどが家族経営体です。 今日における家族農業が果たしている役割についての御認識を知事にお聞きいたします。 ◎知事(濱田省司君) 本県におきましても、家族経営体の割合が約98%を占めているということでございまして、農業が産業として持続可能なものであるためには、家族経営体の経営発展を図っていくことが極めて重要だと考えております。また、生産条件のより厳しい中山間地域におきましては、産業の中心である農業を家族農業が守っているという実態がございます。さらには、地域そのものを守ることにつながっているというふうに考えております。 こうした中、国におきましては、食料・農業・農村基本計画の見直しの中で、農業の持続的発展などに向けまして、小規模農家や家族経営を重視するという方向を打ち出しているところでございます。本県におきましても、例えばIoPプロジェクトの推進によりまして農家所得の向上を図っていくということ、あるいは日本型直接支払制度によります生産基盤の下支えなどに取り組むことによりまして、家族経営体をしっかりと支援してまいります。 ◆33番(岡田芳秀君) 高知県でも農業従事者の減少と高齢化が進んでいます。これまでの推移を見れば、県が掲げる新規就農者の年間目標320人を達成したとしても、農業従事者の減少に歯どめがかからないのではないかと私は思っております。それは、農業のみならず地域社会の疲弊にもつながっていきます。後継者、担い手づくりとその育成に一層力を入れていかなければなりません。中心的に担っている基幹的農業従事者の減少が、この四、五年加速化してきております。本当にこの点をリアルに見て、後継者の育成に力を入れなければならないと思います。 地域で頑張っておられる方々を支援し、地域の実情に合った施策を地域の方々とよく相談して、地域の方々を主役にして進めること、地域農業を維持し地域社会を支えていける組織づくりに取り組むこと、また先端技術の活用で生産性の向上と省力化を図り、若い人たちにとって魅力ある農業にしていかなければならないと思います。稼げる農業にすることは大事ですけれども、同時に都会にはスローライフを求める人たちも多くいるといいます。そうした方たちにも間口を広げて、高知に来てもらえるようにすることも大切だと考えます。 新規就農は、新たに参入する方々への支援策をさらに拡充させるとともに、親元就農への支援も強めていかなければ後継ぎはできないというふうに思います。親が元気なうちに後を継げるということで取り組みを強めていくことが大切だと思います。 県として、地域の方々に寄り添った新規就農支援、とりわけ後継者づくりのための親元就農支援にどう取り組んでいくのか、農業振興部長の決意をお聞かせください。 ◎農業振興部長(西岡幸生君) 県では、各産地が受け入れ体制を整備して新規就農者の確保・育成を図る、産地提案型の担い手確保対策に取り組んでおります。中でも親元就農は、親の所有する農地やハウスなどを活用したスムーズな就農が可能であり、また後継者が地元に戻ってくることで地域でのさまざまな活動に参加するなど、地域の担い手としても重要であるというふうに考えております。 このため、今年度から親元就農の支援につきましては、地域で一貫して研修が可能となるよう研修要件を見直すとともに、親元の経営体を法人化する場合は支援期間を従来の1年間から最大3年間に延長し、支援水準も拡充をしております。また、これらの支援策をまとめたリーフレットを作成し、親世代の農家等に対するPR活動を強化するなど、引き続き親元就農の支援にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。 ◆33番(岡田芳秀君) よろしくお願いいたします。 また、担い手の皆さんが仕事をしやすくするために、農地の基盤整備、圃場整備もそうですけれども、重要な課題だと思います。基盤整備事業を今後どう進めていくのか、その考えを農業振興部長にお聞きをいたします。 ◎農業振興部長(西岡幸生君) 基盤整備は、農業の生産性の向上や担い手への農地集積の促進、高収益作物への転換など、効率的かつ安定的な農業を展開する上で不可欠な施策の一つでございます。このため、第4期産業振興計画では、農業全体を下支えする基盤整備の推進と農地の確保を新たに戦略の柱の一つとして位置づけまして、基盤整備を加速化することとしております。 具体的には、まず基盤整備の有効性や地元負担を軽減できる有利な事業の周知など、地域への啓発活動を強化し、意欲の醸成を図ってまいります。また、事業化に向けて、県、市町村、農地中間管理機構等によるプロジェクトチームを立ち上げ、推進体制を強化し、地域の合意形成や事業の計画づくりを支援してまいります。 これらの取り組みを重ねることで、早期の事業化を実現し、地域ニーズに応じた基盤整備を一層推進してまいります。 ◆33番(岡田芳秀君) ありがとうございます。 この項の最後に、種子の問題についてお聞きしたいと思います。種子は最も基礎的な農業資材であり、地域の特性に合った種子、品種の開発は農業振興にとって非常に重要な課題だというふうに思います。 県は種子条例をつくることまでは考えていないということですけれども、米の新品種の開発体制などをしっかり維持していかなければならないと考えます。どのように取り組んでいくのか、農業振興部長にお聞きします。 ◎農業振興部長(西岡幸生君) 本県の水田農業の振興や外商のさらなる拡大には、本県の気象条件に適した品質の高いオリジナル品種の開発が不可欠であると考えております。このため、農家の皆様や農業団体、実需者からの要望も聞きながら、これまで農業技術センターにおいて主食用の南国そだち、よさ恋美人、酒米の吟の夢、土佐麗といった品種を開発してまいりました。現在も、4名の研究員が、温暖化に対応できる高温に強い品種や収量性の高い業務用の品種、需要が高まっている吟醸酒の製造に適した品種などの開発を行っております。 今後も、引き続き人員と予算を確保しながら、優良な品種の開発体制をしっかりと維持してまいります。 ◆33番(岡田芳秀君) しっかり体制をとって、経験、知識が非常に大事だと思いますので、引き継いでいかれるようによろしくお願いいたします。 また、全国では種子条例を制定する県がふえてきております。日本の種子(たね)を守る会によると、ことし1月17日現在で、北海道、兵庫、富山、長野など15道県が種子条例をつくっております。農家の皆さんにとっては安心感にもつながりますし、意欲にもつながっていくというふうに私は思います。 種は皆の共有財産です。国民、県民の共有財産である種子が守られるように、本県でも種子条例をやはり制定していくべきだということを改めて要請しておきます。 今回の新型コロナウイルスによって、本県の経済活動にも大きな影響が出てきております。農業分野でも影響がありまして、給食がなくなったり行事やイベントなどが自粛されたりということで、花卉農家なんかも花の値段が下がったということで、本当に悲鳴が上がっています。医療が最優先ですけれども、経済活動への影響も把握されて--国が第二弾の緊急対応策を打ち出しましたけれども、国の支援だけでなく県独自の支援策も含めて、こういうときだからこそ県民の背中を押すという施策と手だてを県として十分とっていただけるように求めておきたいと思います。 次に、物部川流域の活性化と課題についてお聞きをいたします。 白髪山に水源を持ち、香美、香南、南国の3市を流れる物部川の流域では、豊かな水と森づくりのために、森、川、里、海にかかわる流域住民と多くの団体が手を結び、物部川21世紀の森と水の会を結成し、交流を図り課題を共有して、それぞれの団体が森や川の保全、環境学習などさまざまな活動を行っております。また、高知県では平成20年7月に物部川清流保全計画を策定し、物部川の清流再生を目指して、地域の住民の皆さん、また団体、事業者、行政などが連携・協働し、計画に掲げた取り組みを推進していくこととしています。計画には、「天然アユが湧き立つ川」という副題もついています。 県は、今後物部川流域の住民や自治体と連携をし、物部川清流保全計画の実現に向けてどう取り組んでいかれるのか、林業振興・環境部長にお聞きをいたします。
    ◎林業振興・環境部長(川村竜哉君) 物部川清流保全計画は、高知県清流保全条例に基づきまして、かつての天然アユが湧き立つ物部川の姿を取り戻すことを目指して策定しております。この計画の推進に当たりましては、流域全体で取り組むといった、住民の自主的な取り組みに重点を置くこととしてございます。 議員のお話にもありました、物部川21世紀の森と水の会を初め、環境活動団体、事業者、学識経験者、行政等で構成する物部川清流保全推進協議会を設置して、子供たちを対象とした環境学習会の開催、水田の代かきの際に発生する濁水の軽減対策などワーキンググループごとに課題解決に向けた協議を行って、さまざまな取り組みを実施しているところでございます。また、このワーキンググループのうち川本来の姿を取り戻すためのワーキンググループにおきましては、協議の結果をもとに物部川で工事を実施する際の配慮事項を取りまとめることといたしまして、令和2年度に必要な予算を計上しているところでございます。 引き続き、協議会メンバーと連携を図りながら、物部川が清流として再生していくよう取り組んでまいりたいと考えております。 ◆33番(岡田芳秀君) よろしくお願いします。森と水の会の方からいろいろお話をお聞きしましたけれども、ダムの関係で県の公営企業局にも、こういう集まりにぜひ参加してほしいというふうな声も寄せられておりますので、よろしくお願いをいたします。 ところで、物部川には3つのダムがあります。その一つが永瀬ダムです。永瀬ダムの土砂は、100年間でたまると想定していた1,350万立方メートルを2011年に超過しておりまして、建設から62年を経た昨年3月時点で約1,700万立方メートルに達しております。本県は毎年予算を組んで、約6,500立方メートルの土砂を除去しておりますけれども、堆積のスピードに追いついていないのが現状だというふうに思います。 土砂の堆積が進むと治水機能が低下します。総務省は、昨年10月の台風19号で河川氾濫の被害が相次いだことを受けて、ダムや河川の堆積土砂の撤去を財政的に支援する制度を設けることにしています。本県が事前の土砂撤去が豪雨対策に有効だと政策提言してきたことを踏まえて、濱田知事は、本県が進める防災・減災対策を力強く後押しするものだと高く評価をされております。 そこで、河川やダム、特に永瀬ダムの土砂撤去について、国の新たな施策を受けて今後どう具体的に取り組むのか、土木部長にお尋ねします。 ◎土木部長(村田重雄君) 新たに、緊急浚渫推進事業が創設されることを受けまして、来年度以降河川及びダムの土砂撤去に必要な予算に最大限活用していきたいと考えております。例えば、近年頻発する豪雨に伴う広域的な山腹崩壊の発生などによりまして大量の土砂が貯水池に流入している永瀬ダムでは、ダム貯水池への作業道が狭隘な上、土砂の仮置き場が限られるなどの制約があり、撤去できる量に限りがございます。新たに創設される事業を活用するなどしまして、仮置き場の増設や作業道の整備をあわせて進めることで、土砂撤去を加速させていきたいと考えております。 ◆33番(岡田芳秀君) 物部川は、一昨年7月の豪雨で堤防決壊の危険がありましたが、下ノ村の引堤工事が間に合っていたことが幸いして、大水害を免れました。ただ、堤防から漏水していたということも聞きました。堤防は裏側から決壊することもあります。今、各所で堤防の補強工事が進められておりますけれども、矢板を打つなどしっかりとした対策を求めたいと思います。 関連して、中小河川のハザードマップづくりも課題であると思います。災害に備えるために必要だと思います。既に高知市では、国が作成した物部川及び仁淀川並びに県が作成した鏡川及び国分川の洪水浸水想定区域図をもとにしたハザードマップをつくって公表しておりますけれども、このような取り組みを他の市町村でも進めるべきだと考えます。 国が管理する一級河川では、既に洪水浸水想定区域図が作成されているところですが、県が管理する河川における状況について土木部長にお聞きします。 ◎土木部長(村田重雄君) 水防法では、氾濫によって大きな被害が発生する河川については、水位周知河川などに指定するとともに、洪水浸水想定区域図を作成することになっており、県管理河川では、宇治川、鏡川、国分川、松田川の4河川が対象となります。宇治川は平成29年に、鏡川及び国分川につきましては昨年10月末に既に公表を行っております。残る松田川につきましては、来年度の公表を目指し作業をしているところでございます。 今後も、過去に浸水被害を受けるなど氾濫による被害が大きいと想定される河川につきましては、順次水位周知河川の指定と洪水浸水想定区域図の作成を進めていきたいと考えております。 ◆33番(岡田芳秀君) マップづくり、より一層のスピード感を持って取り組んでいただきたいというふうに思います。やはり、つくれば新たな発見といいますかね、防災対策のこともありますし、かさ上げ等の対策が打てるというふうに思いますので。 一方、物部川の町田堰、統合堰ですけれども、頭首工や水路など、水利施設がかなり老朽化をしてきております。一般的に、コンクリートの耐用年数は50年から60年と言われていますけれども、さまざまな水利施設が既に50年を過ぎてきています。老朽化の度合いや機能なども点検をしながら、計画的に設備の補強、長寿命化、更新を図っていかなければならないと思います。その際、操作がしやすいように、機械類、計器類などの自動化も大事だと思います。現地も見てきましたけれども、町田堰では増水時に海洋にブロックも流されておりまして、魚道の下も大きく掘れ込んで、機能が果たせないような状況になっています。 町田堰や魚道の早期改修が必要だと考えますが、事業計画はどうなっているのか、農業振興部長にお聞きをします。 ◎農業振興部長(西岡幸生君) 町田堰は、築造されてから54年が経過し、老朽化が著しいことから、施設を管理する物部川土地改良区連合が施設の機能診断を実施し、改修計画を策定しております。工事につきましては、香南市が事業主体となって令和2年度に着手し、特に老朽化が著しい取水ゲートの改良は令和3年度までに、魚道の改良や堰本体の改修は令和6年度までに終える予定でございます。 県としても、円滑に事業が進むよう、予算確保も含めてしっかりと支援してまいります。 ◆33番(岡田芳秀君) 私は先日、物部川漁協の松浦組合長の講演を聞く機会がありました。本当に川を愛する思い、アユへの熱い思いがほとばしるお話でした。その中で、アユの成長のためには維持流量が毎秒1トンでは少ないと、ちょろちょろだというお話がありまして、別の方からは、少なくとも毎秒3トンぐらい必要だということもお聞きをしました。 適切なかんがい用水を確保するとともに、維持流量をふやす手だてが必要だとも思います。永瀬ダムの操作規則には、杉田ダム下流地点において確保すべき流量が期別に定められておりますけれども、河川の維持流量が少ないとやはり思います。 物部川の維持流量についての考えを土木部長にお聞きをします。 ◎土木部長(村田重雄君) 物部川の維持流量につきましては、平成19年3月に国が定めました、河川整備基本方針におきまして、将来目指すべき目標量が定められております。一方、永瀬ダムでは、治水や利水の目的を達成するために、目標の維持流量を流せる状況にはなっておりません。このため、物部川における農業水利権の更新時におきまして、かんがいに必要な水量が減少された際にはその量を活用するなどして維持流量を増加させる取り組みを行ってきたところです。 今後も、農業利水者である土地改良区や河川管理者である国土交通省の関係機関と連携しまして、基本方針で定められた維持流量に近づけるよう、さまざまな検討を進めていきたいと考えております。 ◆33番(岡田芳秀君) よろしくお願いいたします。 次に、再生可能エネルギーについてお聞きをします。 世界では、地球温暖化防止のために、パリ協定による温室効果ガスの削減の対策が進められておりまして、日本政府も中長期の目標を持って取り組んでいます。2011年、3・11の福島原発事故以来、再生可能エネルギーを利用する社会に早く移行すべきだと考える人がふえました。原発の危険性を身をもって知ったからです。一方、化石エネルギーの枯渇や地球温暖化という問題を考えて、代替エネルギーとして安全な再生可能エネルギーを重視すべきだという人もふえてきております。 高知県には、全国に誇れる豊かな森林や長い日照時間など、再生可能エネルギー資源が豊富に存在をします。この資源を生かして、地域が主体的に運営をし活用し循環させる、また他の地域とのやりとりを可能にするようにすれば、地域の再生にもつながっていくと思います。 梼原町では、自給率100%を目指す取り組みをされています。ホームページにも、「私たちの町、ゆすはら町では、森、水、風、光などの自然エネルギーを活かした取り組みによって、生き物にやさしい低炭素なまちづくりを進めています。2050年には温室効果ガス排出量70%削減、吸収量の4.3倍増(1990年)と、地域資源利用によるエネルギー自給率100%超を目指しています。」とあります。こうした先進事例をぜひ--そのまま当てはまるというわけではないと思いますけれども、県内に横展開をさせていくことも大切だというふうに思います。それは、脱原発社会へとつながっていくものだと思っております。 県は、梼原町のような地域に根差した再生可能エネルギーの促進を図る考えがあるのか、林業振興・環境部長にお聞きをいたします。 ◎林業振興・環境部長(川村竜哉君) 本県では平成28年3月に、高知県新エネルギービジョンを改定いたしまして、「高知産100%!自然エネルギーあふれる「こうち」の創造」をキャッチフレーズに掲げて、持続可能なエネルギーの活用、地域メリットの創出、地球温暖化対策への貢献、この3つの基本的な考え方のもと、豊富なエネルギー資源を生かした再生可能エネルギーの導入促進に取り組んでいるところでございます。 ◆33番(岡田芳秀君) 地方自治体でエネルギー政策を立ち上げて、地域住民の出資、地元資本で再生可能エネルギー導入を図っていくことができれば、地域住民、地元が売電収入を得ることができます。地域で取り組めば、地域の風土、文化に合った再生可能エネルギーを導入することもできるというふうに思います。 県としても、こうした構想を持って、1社が地域を独占する形ではない分散型のシステムを進めていくことも大切だと思いますけれども、林業振興・環境部長にお聞きをいたします。 ◎林業振興・環境部長(川村竜哉君) 高知県新エネルギービジョンにおきましては、学識経験者で構成する、高知県新エネルギー導入促進協議会を設置しておりまして、この場で来年度、この新エネルギービジョンを改定する議論をすることとしてございます。 現在、国におきましては、再生可能エネルギーの地産地消とともに、災害時のレジリエンス強化にも資する、分散型エネルギーシステムの構築を目指す方向性が示されているところでございます。この次期の新エネルギービジョンの見直しに当たりましては、こうした分散型エネルギーシステムの構築といった方向性や、再生可能エネルギーの地産地消といった観点を踏まえて検討してまいりたいと考えております。 ◆33番(岡田芳秀君) よろしくお願いします。 ところで、今全国各地で、再生可能エネルギー施設を設置する事業者と住民との間などのトラブルも起きています。この点にもしっかり目を向けて、対策をとらなければならないと思います。国や県は、再生可能エネルギー事業を進める上でガイドラインを設けていますけれども、住民の立場に立って常に見直しを行い、改善をしていくことが大切だというふうに思います。全国では、県や市町村で、法的拘束力のある条例を制定する動きも出てきています。 昨年持ち上がった、四万十川沿岸への大規模太陽光発電所の計画については、四万十市長が不許可にするということを決めまして、住民は安堵しているわけですけれども、事業者から提訴される可能性もないわけではありません。反対した住民からは、四万十川沿いに工作物をつくれないよう条例を見直してほしいといった声も上がっております。 県として、こうした声をどう受けとめているのか、林業振興・環境部長にお聞きします。 ◎林業振興・環境部長(川村竜哉君) 四万十川条例におきましては、四万十川流域における事業活動について、生態系、景観の保全と、流域の振興との調和を図ることが、特に重要だと受けとめております。ただ、一律の工作物の設置の禁止や住民同意を条例で義務づけることにつきましては、財産権を過度に制限することになりかねないというふうに考えておりますため、生態系、景観の保全と流域の振興という四万十川条例の趣旨に照らして、慎重な対応が必要と考えております。 他の法令に基づく規制のあり方とのバランスも考慮しながら、流域の市町や四万十川流域保全振興委員会の意見も聞きながら、見直しの必要性について検討してまいりたいと考えております。 ◆33番(岡田芳秀君) 住民の方たちの思いに寄り添った対応が必要だと思います。私も、中村の百笑町という、四万十川のすぐそばの赤鉄橋の近くで7年余り暮らしていた経験がありますけれども、そういった点で、幡多の皆さんの四万十川への思いというのは強いなということを非常に感じております。四万十川は、県にとっても重要な観光資源でもありますので、そこをしっかり守っていくような対策をとる必要があるということを指摘させていただきます。 そして、私の地元の南国市でも、今事業者と住民の間で対立が生まれております。下田川沿いの、周りに住宅がある約1ヘクタールの土地に、神奈川県の事業者ですけれども、太陽光発電を設置する話が持ち上がりまして、地元住民が組織を立ち上げて反対をしております。説明会を1度開かれておりますけれども、この事業者はパネルを設置した後すぐ転売をするという話でして、この点にも住民は不安を感じているところです。 以前、奈半利町と室戸市にまたがる羽根の山に太陽光発電ができたときには、住民の反対運動があって、県の立ち会いのもとで、事業者と奈半利町そして室戸市との間に協定が交わされているというお話です。途中で事業者がかわっても、その約束は次の事業者に引き継いでいかれるという内容と聞いております。 県外の事業者が、全国で土地を探して設置をしてすぐ転売をするということでは、地域住民は負担だけを押しつけられていくということになります。地域住民の合意のもとに進められていかなければならないと思います。住民にとっては、国の法整備が十分できておらず、国や県のガイドラインあるいは景観条例などに頼るしか手だてがありません。 NPO法人太陽光発電所ネットワークの調べによると、太陽光発電設備の適正な設置に関する条例や、太陽光発電の推進及び適正管理に関する条例を既に制定している市や町があります。そして、独自の条例制定や既存条例の改定を検討する都道府県や市区町村も生まれております。高知県でも、住民と事業者とのトラブルを防ぐために、条例の制定を初め設置可能なゾーンの制定だとか、また事業者に自治体や住民との合意協定を義務づけるなど、実情に沿った、住民の立場に立ったガイドラインの見直しが私は必要であるというふうに考えております。 県として、主体性を持ってトラブルを防止し、環境を保全するために条例制定など踏み込んだ対応が必要だと考えますが、林業振興・環境部長に考えをお聞きいたします。 ◎林業振興・環境部長(川村竜哉君) 事業者と地域住民との間で太陽光発電に関してトラブルが生じる事例というのは、本県に限らず全国で発生しているということで承知しております。こうしたトラブルを防ぐためには、事業者と住民との適切なコミュニケーションを確保することが非常に重要であるというふうに考えております。 しかしながら、FIT法では、事業者と住民との適切なコミュニケーションに関しましては、国のガイドラインで努力義務とされているところでございまして、認定基準とはなっていないという状況でございます。そのコミュニケーションについての実効性について、もう一段強化の必要性があるというふうに考えております。関連する既存の法令との整理なども考えますと、条例ではなく法律という形で全国的に規制を強化することが望ましいと考えておりまして、全国知事会として国に対して政策提言を行ってきたところでございます。 県といたしましては、地域との共生が図られた再生可能エネルギーの導入が促進されますよう、引き続き事業者に対しまして、国、県のガイドラインに基づいた事業活動というものを遵守していただく、またその地域とのコミュニケーションの中で、住民の要望に対しては誠意のある対応をしていただくということを求めてまいりたいというふうに考えております。 ◆33番(岡田芳秀君) ありがとうございます。国の法的な整備がおくれているというのが、やっぱり大きな原因だというふうに私も思います。そうした点では積極的に、より一層政策提言を国にしていただきたいということをお願いしておきます。 太陽光発電など再生可能エネルギーの推進は、そこで生活している住民の皆さんの納得と合意が前提でなければならないと思います。住民合意という場合に、住民の範囲がわからないというふうなお話もありますけれども、地域にはいろんな組織もありますし、自治会もあります。そういった住民の代表といいますか、住民としっかり意思統一しながら、合意のもとに進められていかなければならないと思います。そういう点では、県のガイドラインも拡充、充実をしていただきたいというふうに思っております。いろんな事業を進めていくためには、やはり地域の皆さんの協力、納得が大前提となると思いますので、その点では県としても一層御努力いただくことをお願いしたいと思います。 また、もとに戻りますけれども、農業振興については、今本当に農政は大きな曲がり角に来ているというふうに私は思っています。このままでは本当に、地域の衰退に歯どめがかからないと思います。特に中山間はそうですけれども、県政としても農業政策をさらに拡充し、住民の皆さんが地域を支えられると、元気に農業をやれるという形で施策の拡充に努めていただきますようにお願いを申し上げて、私の一切の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手) ○議長(桑名龍吾君) 以上をもって、岡田芳秀君の質問は終わりました。 ここで10時55分まで休憩といたします。   午前10時47分休憩-----------------------------------   午前10時55分再開 ○議長(桑名龍吾君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 一問一答による議案に対する質疑並びに一般質問を続行いたします。 下村勝幸君の持ち時間は40分です。 5番下村勝幸君。 ◆5番(下村勝幸君) 黒潮町区選出、自民党会派の下村です。議長のお許しをいただきましたので、早速質問に入らせていただきます。 冒頭、知事から新型コロナウイルス対策について力強い御報告がございました。対応される関係者の皆様には大変なことだと思いますが、どうか頑張っていただきたいと思います。 それでは、まずは外国人の雇用施策についてであります。 外国人の雇用施策につきましては、今議会でも多くの同僚議員が取り上げ、これまでの議論で、高知県の産業は外国人労働者抜きには考えられない状況になっていることが明らかとなりました。 私はこの質問を行うに当たり、外国人を技能実習生として受け入れている企業経営者の方々や、日本で学んでいる技能実習生、さらにはベトナムから実際に実習生を送り出している方に聞き取りを行ってまいりました。その中で、今紹介した雇用主が必要としている職場には、若い日本人はまず集まらないといいます。ハローワークを通じ、何年にもわたり求人を出しているが、全く応募すらないのが現実だと訴えております。 国内では、この技能実習制度の問題点も指摘されておりますが、雇用主が求める人材を集められるのは、この制度しかないのが現実であります。今は、この制度を有効に活用し、雇用する側も雇用される側もウイン・ウインの関係を維持する以外に、高知県の産業を維持する方法はないと私は思います。 そこでまず、雇用主が一番困っているのが、外国人労働者の住宅確保の問題であります。残念ながら、外国人には空き家等をなかなか貸していただけません。私は、この部分へのサポートが喫緊の課題であると考えております。雇用主の中には、法律で決められた専有スペースを確保できるようなプレハブを独自に用意したり、船主みずからが技能実習生のために家を建て、宿泊用として提供したりしている場合もあるとお聞きしております。 こういった外国人労働者の住宅確保のために県営住宅の空き室が活用できないか、土木部長の御所見をお伺いいたします。 ◎土木部長(村田重雄君) 基本的には、県営住宅は、外国人の方でも所得が低く、住宅に困窮していれば入居が可能であります。また、空き室となっている県営住宅の6割以上は世帯向けの住宅であり、制度上、世帯向け住宅には単身者が入居できません。 現在、一定期間空き室となっている世帯向け住宅につきましては、単身者でも入居できるよう制度の見直しを検討しているところでございます。これにより、単身者向けの県営住宅のない地域でも、外国人労働者の入居の可能性が広がると考えております。 ◆5番(下村勝幸君) どうも御答弁ありがとうございます。ぜひ、いろんな方法を使って、日本人が入っていない住宅等があれば、外国人向けにそういうふうに提供してあげる方法も一つだと思いますので、前向きな検討をよろしくお願いします。 それでは次に、サポートを必要としているのがやはり言葉の問題であり、地域住民への理解の場づくりであります。以前、集落活動センターやあったかふれあいセンターをコミュニケーションの場として活用する提案もいたしましたが、県としてさらなる独自施策の必要性を感じます。 例えば私の地元の黒潮町では、インドネシアの漁業実習生のために、町にある人工芝のサッカー場を利用し、スポーツイベントを開催いたしました。こうしたイベントに高知県外国人生活相談センターの職員も同行し、外国人漁業実習生との意見交換会を行ったとのことであります。青空のもと、人工芝に直接座っての意見交換会は、随分和やかなものになったことであろうと思います。 私は、こうした相談の環境づくりをすることも県の支援策の一つであろうと思います。さらに、こうした取り組みは、外国人労働者の高知県への満足度を上げるためにも、随分貢献していると思います。 今後は、こうしたイベントに対する財政的支援を含めた取り組みを実施すべきと思いますが、商工労働部長の御所見をお伺いいたします。 ◎商工労働部長(近藤雅宏君) 地域でのスポーツイベントやお祭り、異文化交流などは、外国人の方々にとって地域住民との交流を深める機会となり、地域での安全・安心な暮らしにつながるものと考えています。そうした取り組みの中には、高知県国際交流協会や市町村等が主催するものも多くありまして、県では積極的にサポートするとともに、高知県外国人生活相談センターにおいては、黒潮町や四万十市等での交流イベントに出向き、外国人の相談機会の拡大に取り組んでまいりました。 こういった場は、外国人の方々と接し、実際の声をお聞きすることのできる貴重な機会ですので、今後も支援の方法等につきまして市町村等の意見をお聞きしながら、交流機会の拡大に努めてまいります。 ◆5番(下村勝幸君) ありがとうございます。実際に外国人の方とお話をしてみますと、非常にやっぱり彼らはシャイで、なかなか自分のお話をする機会を持つタイミングがないようでありました。ですので、こういったイベントであったり、もっとフランクに話せる場所をつくってあげると、本音の部分が私はもっと聞き出せるんじゃないかなと、そういうふうに思いました。ぜひそういう方向で対応をよろしくお願いします。 また、今後も高知県で働きたいという外国人をたくさんつくらねばなりません。そのためには、今述べた外国人の満足度を上げねばなりません。しかしながら、世界中でその外国人労働者の獲得競争が始まっており、日本も待っていれば外国人が来てくれるという時代ではなくなっております。さらに、国内においては、外国人労働者の確保を急務としている地域が多数存在します。賃金等の条件だけを見れば圧倒的に都市部に負けており、高知県独自のアピールポイントが必要だと思います。そのアピールポイントの一つが、相談体制の充実であると私は思います。 高知県外国人生活相談センターが昨年5月31日に設置され、約9カ月が経過をいたしました。ことしの2月末までの現状をお伺いいたしますと、外国人からの相談が172件、事業者からの相談も108件と、徐々にふえてきているとお聞きをいたしました。さらに、その相談の多くが高知市のものであります。 そこで、私が個人的に相談を受けている体感といたしましては、郡部にももっと多くの潜在需要が埋もれているような気がしており、その潜在需要に応えられるようなサテライト的な機関のようなものが必要だと考えますが、商工労働部長の御所見をお伺いいたします。 ◎商工労働部長(近藤雅宏君) 高知県外国人生活相談センターでは、県内全域からの相談に応じています。しかしながら、事業者数の多い高知市在住の相談が全体の6割から7割と、県中央部からの相談がその多くを占めているのが実態でございます。 県としましても、中央部以外の相談体制の充実を図らなければならないという課題意識は持っております。そうしたことから、先ほど申し上げたような地域でのイベントなどにセンターの相談員が出向き、相談対応を実施してきたところでもございます。 現時点では、サテライトを設置するということまでは考えられておりませんけれども、市町村や各団体とも連携を図りながら、県西部、特に県東部地域でまだできておりませんので、出張相談会を開催するなど、県中央部以外の地域での相談体制の充実を図ってまいります。 ◆5番(下村勝幸君) ありがとうございます。いろんな相談があったときに、どうしても高知市は郡部からなかなか相談をしにくいという距離的な面もございますので、そういうサテライト的な機関とまではいかなくても、相談が簡単にできやすい体制をぜひ考えていただければと、そのように思います。 そして、この項の最後に、やはり雇用主の皆さんがタイムリーに外国人材を確保できる体制づくり、これを訴えておられます。私も、これは本当に重要なことだと思っております。 そうした相談にすぐに答えられる体制になっているのか、商工労働部長にお伺いいたします。 ◎商工労働部長(近藤雅宏君) 事業者の皆様が外国人の方々を雇用したい場合の相談先としましては、ハローワーク、高知県中小企業団体中央会、高松出入国在留管理局、また高知県外国人生活相談センターなどがございます。高知県外国人生活相談センターには、事業者からさまざまな相談が寄せられており、この2月末時点で雇用労働に関する相談は、事業者からの相談の約24%となっております。そのうち、人材確保に関する相談については、雇用したい分野や職種等によって、適切な対応機関に取り次ぎを行っているところです。 また、外国人生活相談センターの運営におきましては、国や市町村に加え、医療機関、福祉団体、金融機関、外国人にかかわるさまざまな団体等に参画をいただいておりまして、そのネットワークも生かしながら相談に応じているところでございます。 今後とも、事業者からの相談の解決につながるよう、対応力の向上に努めてまいります。 ◆5番(下村勝幸君) ありがとうございます。本当に大変な問題だと思いますが、対応のほう、よろしくお願いをしたいと思います。 それでは、次の質問に移ります。高知県が所有している土地に関する支援策についての質問です。 県内各地には多くの都市公園があり、県民の福祉向上や健康増進、さらには観光客誘致等による地域経済活動支援のために非常に有効に活用がなされていると、私は評価しているところであります。そこで、ここでは都市公園での支援のあり方についてお聞きをしたいと思います。 都市公園法の規定に基づき、都市公園内に公園施設を設置する許可を受けている事業者は、条例で決められた使用料を支払っております。また、その使用料は、ほとんどが施設の維持管理費用等に使われております。しかしながら、経済状況が大きく変化する中にあっても、その使用料はこの24年間条例で決められたままで、全く変更がなされておりません。言うまでもなく、この日本では、これまでの24年間で環境変化も含めて大きな社会変革が起こっております。 そこで、土木部長にお聞きをいたします。許可を受けている事業者の売り上げがそれほどふえていない中にあっても、水道光熱費や人件費等の経費のみが増大しておりまして、その経営を難しく感じている事業者も出てきております。そこで、地域産業を支えると同時に県が目指す施策を維持・遂行するため、でき得るならばその事業体の地域貢献度や県民評価等の査定を行い、使用料の減免等の施策が考えられないのか、土木部長の御所見をお伺いいたします。 ◎土木部長(村田重雄君) 都市公園の適切な維持管理を行っていく上で、土地の使用料や施設の利用料などの収入は貴重な財源でございます。 公園内の土地は、地域の活性化などに資する施設につきまして使用の許可をすることになっております。本県の条例では、基本的に使用料の減免の規定は設けておりません。このため、事業者に対する減免にかわる支援策がないか、他の自治体の事案の収集などを行い、検討していきたいと思います。 ◆5番(下村勝幸君) 今の状態では、なかなかすぐにはできないというお話もありました。しかしながら、南海トラフ地震の津波想定高が発表された後に、沿岸地域での土地の評価額も大きく下がっております。さらには、公園施設によっては、利用者の数が圧倒的に違うにもかかわらず、この使用料については24年間手つかずの状態が続いております。 今回の新型コロナウイルスの問題を契機に、その事業を断念するということなどは絶対にあってはなりません。こういったことを回避するためにも、部局を超え、さらには市町村との協議の上、何らかの手だてが早急に私は必要だと思います。事業体によっては、財務諸表等もぜひ調査いただいて、早急な対応をどうぞよろしくお願いいたします。これは要請としておきます。 それでは次、3つ目の質問に移りたいと思います。次は、漁業振興についてであります。 今議会の知事の提案説明で、若者が住んで稼げる元気な漁村の実現を目指し、高知マリンイノベーションの取り組みを漁業振興につなげると提案がございました。ここで提案されているデジタル技術の活用は、あくまでも現在漁業をなりわいとしている漁業者を守り育てることがメーンの考え方でなければならないと私は考えております。 そこで、今回提案されているこの高知マリンイノベーションの施策が、今の沿岸漁業者の生活をどう改善できる可能性があるのか、具体的なイメージについて水産振興部長の御所見をお伺いいたします。 ◎水産振興部長(田中宏治君) 高知マリンイノベーションは、水産物の生産・流通・販売において、デジタル技術を活用しまして生産量の増加や生産コストの削減を図る、またこのことによりまして漁業所得の向上につなげる、こういったことを目的としております。 具体的には、例えば漁船漁業では、メジカの漁場予測システムの開発に取り組むこととしております。この取り組みは、漁場を探す時間を短縮しますことで生産量をふやしますとともに、燃料費の削減につなげるものでございまして、今後ほかの魚種にも展開してまいりたいと考えております。また、養殖業では、大きな被害を引き起こします赤潮の発生予測に取り組むこととしておりまして、被害を未然に防止しますことで経営の安定につなげたいと考えております。 今後も、現場のニーズをしっかりと把握しながら、漁業者の皆様に所得の向上を実感していただけますよう、高知マリンイノベーションを推進してまいります。 ◆5番(下村勝幸君) ありがとうございます。今の御説明にあったとおり、漁業者の皆さんに、こういう取り組みをしたら具体的にこういうふうになるんだというアナウンスをぜひしてあげていただきたいと思います。やはり、どうしても言葉が、マリンイノベーションというと、自分たちとは違う世界というか、ちょっと遠い存在のように聞こえている部分もあるようでございますので、これが本当に漁業者の皆さんにとってどう変わっていくのかということを、またアナウンスする機会を持っていただければと、そういうふうに思います。 それでは、次の質問に移ります。ことしは、ここ二、三年の不漁がうそのように、シラスウナギが予想に反し多く採捕されております。その結果、県内各所でシラスウナギの密漁が横行し、正規に採捕許可を受け資源管理に取り組んでいる漁業者の皆様から、私にも非常に多くの非難の声が届いております。当然のことながら、責められるのは密漁を行っている人間なのですが、残念ながらそれを十分に取り締まれていない県の体制にも批判が集まっております。 新聞報道によれば、県警との合同捜査で、安芸市においてもシラスウナギ密漁グループの拠点を突きとめるなど、今年度だけでも20名を検挙したとのことであり、積極的な取り締まりの結果も見えますが、シラスウナギは高値で取引されることから、採捕期間の終了した現在においても密漁がやむ気配がありません。 私は、これまでの取り締まり体制では残念ながら不十分であると言わざるを得ないと、そのように思っております。SDGsの取り組みが叫ばれる中、資源保護意識を強く持ち、規則を守って採捕しておられる漁業者の皆様の忍耐がいつまで続くのかと非常に心配をしているところです。 このシラスウナギのことしの採捕期間は80日と伺っておりますが、その期間の前後も含めて、これまで以上の取り締まり体制の強化ができないか、今後を見据えた対応について水産振興部長の御所見をお伺いいたします。 ◎水産振興部長(田中宏治君) シラスウナギの密漁は、ウナギ資源を持続的に利用していく上で大きな課題と受けとめておりまして、80日間の許可期間に限らず、その期間の前後も含めて取り締まりを実施しております。 こうした中、近年の価格の高騰によりまして密漁者が増加し、また密漁行為は組織化、巧妙化しております。このため、県警察と連携し、取り締まりの回数の増加や、県警察の持つノウハウをもとに県職員の捜査能力の向上などに努めてきました結果、密漁者の検挙実績は増加してきております。 今後とも、県警察との連携を密にしまして、取り締まり時の体制も工夫しながら、新たな捜査手法を導入するなどしまして、取り締まりの強化を図ってまいります。 ◆5番(下村勝幸君) ありがとうございます。今議会では知事からも御説明がありました、SDGsでうたわれている持続可能な開発目標を目指すためには、やはり多くの県民の皆様の御協力なくして達成することはできないと思います。これからも、県内の漁業者の皆様の御協力が得られるような、積極的な対応をよろしくお願いしたいと思います。 最後の質問へ行きます。高知県の水産分野も、外国人の助けなくして成り立たない産業になっております。カツオの一本釣り漁業もマグロのはえ縄漁業も、さらには定置網漁業や加工業者に至るまで、外国人の助けがなければ高知県の産業として誇ることもできません。私は、この現実をしっかりと受けとめた対策をとらねば高知県の漁業の未来はないと、そのように思います。 しかしながら、定置網漁業の分野では高知県内の監理団体が決まらず、いまだ漁業実習生を迎え入れることができておりません。本件につきましては待ったなしの状況にもなっており、早急に受け入れ体制の整備に向けての関係団体との調整をお願いしたいと思いますが、これに対する水産振興部長の御所見をお伺いいたします。 ◎水産振興部長(田中宏治君) 外国人の技能実習生を受け入れます場合、監理団体は、実習の実施状況の確認や技能実習生からの相談などに適切に対応する必要がありますことから、漁船漁業では漁業協同組合が監理団体となることが定められております。 県内では、3つの漁業協同組合が監理団体として国の許可を受けまして、現在187名の技能実習生を受け入れております。しかしながら、3つの漁業協同組合は、カツオ一本釣り漁業やマグロはえ縄漁業、中型まき網漁業を対象として許可を受けておりまして、お話にありましたように、定置網漁業においては監理団体がなく、技能実習生を受け入れられない状況でございます。 このため、技能実習生の受け入れを希望されます漁業者や所属する漁業協同組合と協議を行いまして、早期に定置網漁業の監理団体が選定されますよう取り組んでまいります。 ◆5番(下村勝幸君) ありがとうございます。ぜひ本当にその方向で、早目の対応をよろしくお願いしたいと思います。 それでは次に、危機管理対策についての質問に移ります。 現在、日本中が、新型コロナウイルスの発生により、マスクや消毒液、さらにはトイレットペーパー等が店頭から消えるなど、少しパニック状態に陥っているようにも感じます。私はこういうときだからこそ、冷静に落ちついた対応が求められていると思います。関係者の皆様におかれましては、大変な状況でありお疲れのことと思いますが、県民の皆様へ適時、正確な情報を発信していただきますよう、重ねてお願いを申し上げます。 さて、あすで東日本大震災の発生から9年を迎えます。あの震災から我々は、これまで常識と考えていたことを超え、まさかを想像せねばならないということを学びました。さきに西森議員からも、現在の新型の感染症が発生している状態で、万が一南海トラフ地震が発生するなどの複合災害が発生した場合の対応についての御質問がありました。私もその点につきまして御質問したいと思います。 まず、複合災害の発生に限らず、避難所での感染症対策は非常に重要であります。これまでの災害発生時における避難所でも、ノロウイルスの発生などに対し感染症の対策は行われてきたと聞いておりますが、この質問で想定しているような複合災害では、当然通常の備蓄品では間に合わず、そういった場合は国からのプル型支援でカバーされると聞いております。 そのとき滞りなく必要物品が搬送できる体制になっているのか、危機管理部長にお伺いいたします。 ◎危機管理部長(堀田幸雄君) マスクやアルコール消毒液などの衛生用品につきましては、一部の市町村では備蓄を行っています。その上で、発災後不足する分については、協定事業者や国から調達することとなりますが、市町村がニーズを把握して県や国に要請をする体制や、物資を受け入れ避難所に配送する体制の整備が必要です。そのため、まず物資の要請については、内閣府が開発した物資調達・輸送調整等支援システムを導入することにより、円滑に実施できる体制を築いてまいります。次に、物資の受け入れや搬送については、県では4カ所の物資配送拠点で物流事業者の支援を受けながら、実施するためのマニュアルを策定しています。 一方、全ての市町村で拠点となる施設は選定されているものの、本年度末までにマニュアルの策定が完了するのは4つの市町にとどまっています。このため、第4期行動計画の期間中に全ての市町村でマニュアルの策定が完了するよう働きかけるとともに、県や市町村、物流事業者が連携した訓練を実施し、物資搬送の実効性を高めてまいります。 ◆5番(下村勝幸君) ありがとうございます。受援体制、どういうふうにそういうロジスティックを組んでいくか、本当にそこは大変だと思いますけれど、ぜひよろしくお願いします。 それから、土居議員への答弁の中で、今回の新型コロナウイルスのような感染症が発生した場合、感染症指定医療機関への対応はわかりましたが、県の感染症予防のためのマスクやゴーグル、さらにはアルコール消毒用薬品等の備蓄品は、感染症指定医療機関以外の公的また民間の医療機関向けへの支援はどのようになっているのか、現状を健康政策部長にお伺いいたします。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 現在、新型インフルエンザ対策として外来や入院に協力いただく予定の21の医療機関に、医療用マスクやゴーグル、ガウンなどの個人防護具を3,950人分整備しまして、各医療機関において備蓄をしていただいております。そのうち3,000人分は、感染症指定医療機関以外の医療機関用となっております。 一方、医療用マスクにつきましては、今回の新型コロナウイルス対策として国が新たなスキームを用意しましたので、県として申し込んだところ、本県備蓄分として国から優先供給をしてもらうことになりました。ただ、これは配付の対象が、感染症指定医療機関等に限定をされております。今のところ、一般の医療機関に対してはこのような支援する仕組みはございませんけれども、当然ながら一般の医療機関においても医療従事者を守り、安定的に医療を提供していかなければなりません。 そのため、国に対しましては、こうした医療機関での確保の見通しがついた段階での一般医療機関への配付対象の拡大などについて、安定的に確保できるよう要請をしてまいりたいと考えております。 ◆5番(下村勝幸君) ありがとうございます。本当にかなめであります医療機関を守るためにも、ぜひその体制をよろしくお願いしたいと思います。 それから、県の備蓄品が不足した場合のお話です。感染症予防の、今お話ししましたかなめでありますマスクやアルコール消毒品等の備品が、医療機関に優先的に直接、医薬品卸業者等の団体から供給される仕組みになっているのか、健康政策部長にお伺いいたします。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 感染症指定医療機関や帰国者・接触者外来を設置している医療機関において備蓄している個人防護具などが不足をした場合は、県内の医療品及び医療機器の卸売販売業者に対して、各医療機関に優先供給をしていただけるようお願いをしているところでございます。ただ、今回は全国的に医療用マスクが不足をしておりますことから、特別に国が一定流通に関与することになり、よって感染拡大が懸念され、備蓄量が一定数量を下回った都道府県への優先供給がなされる制度が創設をされたところでございます。 ◆5番(下村勝幸君) この件に関して、さきの西森議員の質問の中で、私もさきに述べたような、備品供給に関する事前の医薬品卸業者等の団体との協定が重要であると考えております。そうした事前協定をその団体側と結ぶ考えはないのか、健康政策部長にお伺いいたします。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 県では、南海トラフ地震などの災害時を想定しまして、医薬品、医療機器、衛生材料などの県への優先供給について、各卸売販売事業者等の団体と協定を締結しています。これらの協定書では、想定される事態が地震、風水害、その他の災害時として規定をされておりまして、必ずしも今般の新型コロナウイルス感染症など感染症のアウトブレークを想定したものとはなっておりません。 今後、そうしたものも含める形に現在の協定を見直す方向で関係団体と協議をしていきたいと考えております。 ◆5番(下村勝幸君) ぜひよろしくお願いします。 それから、今回の新型コロナウイルスが、万が一大きく広がって、感染症指定医療機関における対応がオーバーフローした場合、幡多医師会では既に対策を準備しているとお聞きをしておりますが、ほかのエリアはどのようになっているのか、健康政策部長にお伺いいたします。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 既に、感染症指定医療機関である高知医療センターに、新型コロナウイルス感染症患者が現時点で9名入院をされております。今後の患者の増加によって、重症患者の受け入れが困難になることに備えまして、幡多けんみん病院も含めて結核病床を活用し、両病院の受け入れ可能病床数を知事からも御報告いたしましたように、計11床から23床に拡充をしております。また、その他の病院に対して入院協力医療機関として協力していただけるよう、一定規模の一般病床を有する病院と調整をしておりまして、既に複数の医療機関から内諾を得ているという状況でございます。 ◆5番(下村勝幸君) ぜひ、万が一のときも対応できるようによろしくお願いをしたいと思います。 それから、今後感染がもしも広がり、重篤な患者が発生してしまった場合、人工呼吸器が不足する場合も考えられます。こういった対策はとられているのか、健康政策部長にお伺いいたします。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 現在、感染症指定医療機関や新型インフルエンザ対策での入院協力医療機関である計9医療機関に、29台の人工呼吸器を整備しております。今後、新型コロナウイルス感染症の患者が増加をする中で、重症患者も一定数発生することが見込まれますけれども、現時点では現在の整備台数で一定対応可能ではないかというふうに見ているところでございます。 ただ、今後仮に入院医療機関において人工呼吸器の不足が生じそうな見込みとなった場合には、速やかに近隣医療機関からの融通ですとか、医療機器卸売販売事業者への優先供給を依頼するなどの対応を検討してまいります。 ◆5番(下村勝幸君) 本当に大変だと思いますが、ぜひよろしくお願いします。 それでは、次の質問に移ります。交通安全対策についてお伺いいたします。 昨年10月23日、私の地元の黒潮町におきまして、信号のない横断歩道を横断中の御高齢の方が、直進してきた軽乗用車にはねられ死亡するという事故がありました。お亡くなりになられた方の御冥福をお祈りいたしますとともに、御遺族の皆様にはお悔やみを申し上げます。 さて、この事故原因につきましては、新聞報道によりますと、軽乗用車を運転中のドライバーが、横断中の歩行者の存在を全く意識していなかったということでありました。ドライバーに、信号のない横断歩道を歩行者が渡っているかもしれないという意識が少しでもあれば、防げた事故だったのかもしれません。 また、この事故のあった国道は、一般国道56号大方改良で、平成31年3月24日に開通したものであります。それまでの旧国道と違い、歩道も車道も広くなり、ここを通行するドライバーにとりましては、非常に走りやすい国道になったと評価を得ているのも事実であります。 しかしながら、この信号のない道幅13から15メーターの横断歩道を横断しようとする高齢者には、非常に危険な国道になってしまいました。地元黒潮町からは、信号機の設置要望も行われている箇所がありますが、いまだ設置ができていないのが現状であります。 ここで改めて道路交通法を確認してみましたが、言うまでもなく横断歩道は歩行者優先であり、運転者には横断歩道手前での減速義務や停止義務があります。これに違反した場合、三月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。 平成30年に、日本自動車連盟、JAFが、信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査を実施し、その結果が公表されております。この調査結果によりますと、高知県は停止率4.2%で全国35位、令和元年の調査でも7.8%で全国41位と低迷をしております。 そこでまず、1つ目の質問です。先ほどの平成30年のJAFの調査結果では、長野県が停止率58.6%と、全国平均が8.6%の中でも飛び抜けてよい結果をおさめています。この、本県との差についての解析がなされているのか、警察本部長にお伺いいたします。 ◎警察本部長(熊坂隆君) 御指摘の調査結果に関しまして長野県警察に確認しましたところ、本県と比べて特段新しい取り組みを行っているということはないということであり、ドライバー一人一人の歩行者を守る意識が当県よりも高いものと考えているところであります。 当県におきましても、ドライバー一人一人が歩行者を守るという意識を持つことが重要であると考えており、今後あらゆる機会を通じ、歩行者保護意識の醸成を図ってまいりたいと考えております。 ◆5番(下村勝幸君) わかりました。 次に、黒潮町の交通死亡事故のあった交差点では、事故後ドライバーに、より目立つように、もとの横断歩道を紅白に着色するなどの対策もとられておりますが、これまで高知県では、信号のない横断歩道を歩行者が安全に横断するためにどのような対策がとられてきたのか、警察本部長にお伺いいたします。 ◎警察本部長(熊坂隆君) 県警察では、ラジオ放送等あらゆる広報媒体を活用した広報啓発、運転免許更新時講習を初めとした各種交通安全教育の場におきまして、歩行者保護の重要性について広報を実施しております。あわせまして、横断歩行者等妨害違反に関する交通指導取り締まりを強化して、ドライバーに対しまして、歩行者を守る歩行者優先の意識づけを行ってきたところであります。 また、議員から御指摘がございましたとおり、死亡事故等重大事故が発生した横断歩道につきましては、道路管理者等関係者とも事故現場における調査を行いまして事故防止対策を検討し、必要なところにつきましては、道路管理者に要請しましてカラー舗装の導入などをしているところでございます。 ◆5番(下村勝幸君) 私、先ほど述べましたように、さきの道路交通法のとおり、横断歩道に横断しようとする歩行者がいる場合は、車両は歩行者のために停止しなければなりません。しかしながら、この国道の横断歩道に限らず県内の多くの横断歩道で、歩行者がいるにもかかわらず、停止しないのが普通の状態になっているように感じております。また、みんなが意識の薄い中で無理に停止しようとすると、後方からの追突が心配されます。 そこで、警察本部長に御質問をいたします。JAFの調査結果でも明らかなように、今後はドライバーの皆様に、横断歩道の前に横断の意思を持った歩行者がいれば必ず停止するという意識づけをする以外に、横断歩道での歩行者が犠牲となる交通事故を防ぐ方法はないと考えます。そのためには、県民への周知をこれまで以上に徹底していただくことと、悪質なドライバーに対しては取り締まりを強化していく以外に方法はないと考えます。 今後、どのようにこの状況を改善していかれるのか、警察本部長にお伺いいたします。 ◎警察本部長(熊坂隆君) 議員御指摘のとおりでございまして、県警察では、これまで行ってまいりました各種広報活動、安全教育を継続して実施していくほかに、本年1月にはJA共済連高知と連携しまして、「人にやさしい思いやり運転宣言者(車)」と命名した啓発用キーホルダー3,000個を作成し、ドライバーに配布するなどの取り組みを開始したところであります。また、今後県民に対して横断歩行者妨害の危険性を訴えるため、県警察ホームページ、SNS等で広く情報発信の強化を実施してまいります。 さらに、横断歩行者等妨害違反に対する交通取り締まりにつきましては、通常の交通取り締まりのほか、取り締まり強化期間を設定して集中的な取り締まりを行い、ドライバー一人一人の歩行者保護意識の周知徹底を図ってまいります。 ◆5番(下村勝幸君) ありがとうございます。ぜひ、横断歩行中の事故が今後発生しないように、前向きな取り組みをよろしくお願いしたいと思います。 それでは、最後の質問に行きます。最後に、未成年者における、私が考えるネット社会の弊害についてということでお伺いいたします。 今議会でも浜田議員が取り上げておられますように、スマホ等での依存傾向が社会問題になっております。IT大国の韓国では、ネット依存による子供たちへの悪影響が社会問題化しております。私も、子供たちへのネット依存による悪影響を気にする親の一人として非常に心配をしております。 さて、そうした中、昨年の全国学力テストの中学3年生の問題の中に、封筒の宛名を記入する問題が出題されておりました。簡単に申しますと、問題中にある宛名を封筒の表面に書き写すだけで正解となる問題であります。しかしながら、高知県ではその問題の正答率が何と51%、全国でも56.8%という結果が出ておりました。高知県の公立の中学3年生のうち2人に1人が、封筒の宛名を正確に書くことができないということであります。私は、ここにもネット依存の弊害が出ているのではないかと感じております。 最近では、年賀の御挨拶もSNSを利用し、簡単な言葉やスタンプで終わってしまいます。私が小学校低学年のころは、親から年賀状をもらい、お世話になっている先生方や同級生に年賀状を出しておりました。また、ある郵便局長さんのお話では、就職試験のための履歴書を送る宛名書きについてチェックを求められた経験があるとも伺いました。私は、せめて日本人としての最低限の文化やマナーを勉強するためにも、こうしたポイントにも力を入れた教育が必要ではないかと感じます。 GIGAスクール構想が叫ばれ、ネット社会への対応が求められている日本ですが、今後こうした最低限の日本文化の教育にどう力を入れていかれるのか、教育長の御所見をお伺いいたします。 ◎教育長(伊藤博明君) 我が国の伝統や文化についての学習は、来年度の小学校から順次、全国で全面実施されます学習指導要領でも、学校教育活動全体を通して組織的に取り組むこととされておりまして、小中学校ともさまざまな教科の中で学ぶ内容が位置づけられております。 封筒の宛名書きを含めまして手紙やはがきを書くことは、日本の伝統的な文字文化を学ぶことに通じるものであり、国語科の中での学びをもとに、例えば職場体験活動などの総合的な学習の時間の中で、経験的に学んでいくことになります。このように、理論と経験を結びつけて学んでいくことなどを通しまして、実生活に生かす知識や技能を身につけていくことが重要となってくるというふうに考えております。 県教育委員会では、この現代のネット社会においても日本や郷土の文化、伝統を大切にし、そうした知識をしっかりと身につける学習が適切に行われるよう、市町村教育委員会とともに、研修や教材の提供などにより、取り組んでまいりたいというふうに考えております。 ◆5番(下村勝幸君) ありがとうございます。 この質問の中で、私は決してネット社会に代表されるデジタル技術を否定するものではありません。これからの情報化社会を迎える子供たちは、デジタル技術にも十分に対応できるだけの能力を身につけねばなりません。しかしながら、日本人がこれまで築いてきた文化を継承し、次の世代に引き継ぐことも、教育という視点では大変重要なことであろうと思います。そのためには、学校教育のみならず家庭教育においても、こういった視点でサポートしていただけるような働きかけも必要ではないかと考え、取り上げさせていただきました。 今後とも、子供たちが自分の、例えば履歴書を送るときにきちんと送れるように、せめてそのあたりは今後も対応をぜひお願いしたいと思います。 時間も残り少なくなってまいりましたが、今回、新型コロナウイルス関連では、本当に高知県内いろいろなところで大変な状況にもなっております。対応される職員の皆さんは本当に大変だと思いますが、高知県民の皆さんが今後とも安心して、またこの高知県のために頑張っていただけるような施策をどんどん出していただけることをお願いいたしまして、私の一切の質問といたします。ありがとうございました。(拍手) ○議長(桑名龍吾君) 以上をもって、下村勝幸君の質問は終わりました。 ここで11時40分まで休憩といたします。   午前11時35分休憩-----------------------------------   午前11時40分再開 ○議長(桑名龍吾君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 一問一答による議案に対する質疑並びに一般質問を続行いたします。 大野辰哉君の持ち時間は30分です。 29番大野辰哉君。 ◆29番(大野辰哉君) 議長のお許しをいただきました。早速質問に入らせていただきたいと思います。 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっています。本県においても、ウイルス反応陽性者が昨日時点で12例確認されておりまして、患者さんの一日も早い回復をお祈りするものでございます。また、日々この新たなウイルスと闘っておられる医療関係者の皆様、体を張って対策に奔走されている政府関係者を初め県や市町村など関係の皆様方に、敬意と感謝を申し上げるものでございます。 そうした現場の一方で、政府の対策本部を欠席して新年会に参加する閣僚の行動は論外としても、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号への対応や、中国、韓国からの入国制限など、後手後手になっている感のある水際対策、イベントや大規模集会への参加自粛要請や全国の学校に対する突然の休校要請など、場当たり的にも映るこれまでの政府の対応や姿勢に、国民の戸惑いや不安は高まり、生活への影響や混乱が起きる事態ともなっています。 本県においては、けさほど知事のほうからさまざまな県の対策について報告もありましたが、知事を本部長とする対策本部が設置され、県民への情報発信を初め、医療や検査、相談体制の強化など、昼夜を問わずさまざまな対応に御尽力されておられ、県民の一人としても大変心強く思っております。 そこで、これまでの新型コロナウイルスに対する政府の一連の危機管理対応について知事の御所見をお伺いしたいと思います。 ◎知事(濱田省司君) 御質問の新型コロナウイルスに関しましては、現時点ではまだこのウイルスに関します科学的な知見が十分に得られていないという状況の中で対応が迫られているというところでございます。こうした中でありましても、これまで国や自治体は総力を挙げまして感染の蔓延防止対策に取り組んでまいりました。 ちょうど政府の専門家会議が、国内で急速に感染が拡大するかどうかの瀬戸際の期間であるという見解を示したこともありまして、現在非常に重要な局面にあると考えております。政府の一連の対応につきましてさまざまな御意見があるということは承知いたしておりますが、しかし対応に当たっております我々といたしましては、そうしたことよりは、現時点ではまずはこの感染の拡大防止に全力を挙げるべき段階であるというふうに考えているところであります。 事態が一定程度収束を見た後には、専門家の議論を経まして、しっかりと政府の対応も含めまして国全体の対応を評価、検証がされるというのが筋であろうと考えております。 ◆29番(大野辰哉君) 大変なときであります。よろしくお願いしたいと思います。 なぜ検査を受けられないのか、何をもって収束となるのか、感染の山場は何に基づくものなのかなど、根拠や裏づけが不透明でわかりにくい情報も多く、政府からの正しい情報の不足も不安を増幅させる要因の一つにもなっているのではないかと思います。 そこで、この間の新型コロナウイルス対策における国から県への情報の伝達はどのようになされてきたのか、健康政策部長にお伺いしたいと思います。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 中国・武漢市におけます新型コロナウイルス感染症の流行確認以降、国からは、国内外の流行状況に関する情報提供ですとか、国民からの相談、ウイルス検査、医療提供体制などの地方自治体が行うべき対策について、随時通知等により情報伝達をされてきたというふうに認識をしています。ただ、クルーズ船からの下船者に関する都道府県への情報提供がおくれ、本県を含めた都道府県等による下船者への対応にタイムラグが生じたり、小中学校等の臨時休業やPCR検査の保険適用などは、その目的や実施体制に関する事前説明が十分ではなく、自治体側の対応に混乱を来したことは否めないところでございます。 国におきましては、新たな方針や対策について、できればその検討段階から、地方自治体に対して、なお丁寧な説明と協議を行っていただければというふうに考えているところでございます。 ◆29番(大野辰哉君) ありがとうございます。 うわさやデマなどによる買い占めなど、パニック的な混乱も一部で発生しております。今回のように住民の命や生活に影響を及ぼす事象が発生した場合、住民に正確な情報を迅速に伝えることは大変重要であり、住民に一番身近な行政機関である市町村への情報伝達の重要性は言うまでもありません。 そこで、今回の新型コロナウイルス対策における国や県から市町村に対する情報の伝達はどのようになされてきたのか、健康政策部長にお伺いしたいと思います。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 地方自治体における新型コロナウイルス感染症対策につきましては、国から主にメールによって都道府県に通知がなされ、そのうち市町村の対応に関係するものについては、随時県から市町村に、これまたメールまたはファクス等によってお伝えをしてきております。また、新型コロナウイルス感染症患者が発生した際には、その公表情報について、事例を所管する福祉保健所管内の市町村にも情報提供しております。 ただ、先ほど申し上げましたように、国からの方針や対策の趣旨について具体的な説明が不足をしていたり、実行に移すまでの時間的余裕がないものが少なからずあり、県としても、市町村や県民の皆様に御不安を与えることがなかったのか、今後検証していきたいというふうに考えております。 ◆29番(大野辰哉君) ありがとうございます。 政府は、休暇や休業補償、助成金の支給などさまざまな支援策を打ち出していただいていますけれども、私も自治体で働いた経験から、住民の方々が制度を知り、理解し、申請して受給するまでには相当な困難が伴うことも理解しております。今後、支援の受付となる自治体においては、ワンストップ相談窓口の設置なども御検討していただけたらありがたく思います。また、政府からの情報を正確に自治体や住民に伝達や共有ができるよう、今回の事例を検証していただいて、今後につなげていただければと思います。 政府は、全国全ての小・中・高等学校、特別支援学校に対して、3月2日から春休みに入るまでの間臨時休校とするよう、各都道府県の教育委員会などを通じて要請をされました。安倍首相が最初に臨時休校の意向を表明されたのが2月27日の政府の感染症対策本部会議だったと思います。 安倍首相の表明から休校実施までの間、国から県に対してはどのような情報伝達がなされてきたのか、教育長にお伺いしたいと思います。 ◎教育長(伊藤博明君) 27日の夕方に報道によりまして総理の方針を把握した段階から、直ちに情報収集等を開始しまして、文部科学省からの通知を待ちながら、県教委としての対応方針の検討を行いましたところ、翌28日の午前9時半ごろ、文部科学省からの電子メールで休校要請についての通知が到着をし、卒業式や入試への対応、そして放課後児童クラブの開所などの方針が確認できましたので、3月4日からの県立学校の休校等について、28日の11時までに県立学校長それから市町村教育長宛てに周知を行っております。 ◆29番(大野辰哉君) ありがとうございます。 突然の表明と要請に、全国の学校や教育現場、子供を持つ家庭は混乱をすることとなりました。 そこで、政府からの休校要請は、国や県から市町村、さらには学校へとどのように情報伝達が行われたのか、教育長にお伺いしたいと思います。 ◎教育長(伊藤博明君) 今回、県教育委員会としては、一斉の臨時休業とそれに伴う卒業式や入学試験、それから部活動の取り扱いに関する通知を県立学校長に対して行うと同時に、市町村教育委員会に対しても同通知の写しと文部科学省からの一斉臨時休業についての通知の写しを添えまして、臨時休業等について検討するよう依頼を行っております。また、依頼文書の発出と同時に、全ての市町村教育長に電話で連絡を行いまして、同通知の内容の周知を図っております。 各市町村教育委員会は、国からの通知や県からの依頼、子供や保護者の状況等を勘案いたしまして、市町村の方針、それから休業期間を適切に判断、決定いたしまして、臨時の校長会などを開いて各学校に周知をしたと聞いております。 ◆29番(大野辰哉君) 今回は本当に急な要請であったことから、学校現場も親も相当大変な状況になっていると思います。特に、学校や家庭までの連絡体制についてはしっかりと検証されて、今後の情報連携の強化につなげていただければと思います。 次に、感染の拡大を防ぐための臨時休校の措置については意見の分かれるところでありますが、家庭では、子供たちの居場所の確保や保護者の休暇などの問題に直面し、また学校現場では、授業時間数の減少による学習のおくれや、進級や卒業など、さまざまな問題が生じています。また、子供たちにとっては卒業式や送る会といった一生の記念となる行事も中止や自粛となり、突然の学校やお友達とのお別れに悲しみ、涙する子供たちの姿を見たとき、正直かなり胸が締めつけられる思いがいたしました。 そこで、臨時休校によって教育現場で生じている混乱や影響について教育長にお伺いしたいと思います。 ◎教育長(伊藤博明君) 臨時休業に係る問題点につきまして市町村教育委員会に聞き取りを行った際に、子供たちの中には、突然に友達や先生と会えなくなることの寂しさや、県立高校の入学試験への不安、また学習内容が終了していないことへの戸惑いの声があったとの報告を受けております。教職員や保護者については、現状を考えると臨時休業は仕方ないと理解を示しつつも、休業中の子供たちの生活、居場所の確保、学力の保障などについて困惑の声が上がっているというふうに聞いております。 このため、市町村教育委員会を通じまして、県立学校の対応状況や指導要録の記録といったことに関します休業に伴う教育課程に関するQアンドAなど、国の通知をいち早く情報提供するとともに、各県立学校や各市町村教育委員会からの相談や問い合わせなどに対応をさせていただいております。 ◆29番(大野辰哉君) ありがとうございます。今後とも、教育現場等にも御支援のほうよろしくお願いしたいと思います。 休校によって、子供たちの栄養状態を下支えしている給食の停止も心配がされます。学校給食以外でそうしたところをフォローしてきたこども食堂も中止が検討され、また休校中の子供たちの居場所ともなっている放課後児童クラブでは給食が提供されないことから、特に厳しい環境にある子供たちへの栄養の確保が心配もされています。 そこで、厳しい環境にある子供たちに対する給食サービスの提供など、臨時休校中の対応策について教育長にお伺いしたいと思います。 ◎教育長(伊藤博明君) 今回の臨時休業に際しまして、保護者が昼間家庭にいない場合や休暇を取得することが困難な場合もあることから、放課後児童クラブや学校を活用した子供の居場所づくりについて各市町村に対応していただいているところでございます。 放課後児童クラブの昼食につきましては、弁当の持参が原則というふうになっておりますけれども、今回、文部科学省、厚生労働省から、家庭や地域の実情を踏まえ、学校給食調理場や調理員を活用して昼食を提供することなど、柔軟な対応の可能性も示されたところでございます。各市町村にも周知しており、実施については各市町村の御判断ということになっております。 そうした中で、黒潮町では、家庭の負担を減らす目的で、9日から希望する家庭に、学校給食の委託業者が給食センターでお弁当をつくり、ボランティアなどが届ける取り組みが始まっています。 ◆29番(大野辰哉君) ありがとうございます。養育不全や要保護家庭では、一日の食事のうち学校給食への栄養依存度も高い子供たちが少なくありません。市町村とも連携の上、厳しい栄養環境にある子供たちへのサポートにも気を配っていただけたらありがたいと思います。 次に、臨時休校の対象となっている特別支援学校には、病弱や身体虚弱などさまざまな状態の子供たちが通学しており、日ごろより感染に対してはより万全な対策を必要としています。また、休校対応においても、一人一人の特性に応じた児童生徒の体調管理や、放課後等デイサービスなど専門的な施設の受け入れ体制、保護者負担の増大など、特別支援学校ならではの多くの課題が生じていると思われます。 そこで、特別支援学校の臨時休校によって生じている混乱や影響について教育長にお伺いしたいと思います。 ◎教育長(伊藤博明君) 高知県では、家庭等での対応が難しくやむを得ない児童生徒は学校や寄宿舎で受け入れることとしまして、管理職が窓口になって個別に相談を受け付けて対応をしてきております。3月6日現在、本校、分校13校のうち6校で8名の児童生徒を学校で受け入れておりまして、スクールバスの運行も行っております。各学校の調査によりますと、県立特別支援学校に通う児童生徒の大半は自宅での対応となっておりまして、全体の約3分の1が放課後等デイサービスを利用しているというふうに聞いております。 また、医療的ケアが必要な子供につきましては、学校で受け入れできる体制を整えておりますが、現在のところ登校されている子供さんはいないということになっております。給食については、受け入れ人数が少人数となったことから弁当で対応しておりますが、弁当を持参できない場合は学校で弁当を調達しております。 今後も、混乱や影響の軽減に向けて、家庭の状況をお聞きしながら、柔軟な対応に努めてまいります。 ◆29番(大野辰哉君) ありがとうございます。よろしくお願いします。 ある親御さんは、急な休校の知らせに仕事が休めず困窮され、各方面に助けを求めた結果、最終的に福祉事業所の放課後デイサービスの臨機の対応で何とかその場をしのいだものの、今も先が見通せない状況に置かれています。寄宿舎での受け入れなど、今お話もありましたけれども、保護者や児童生徒の置かれている状況に寄り添った柔軟な対応を要望しておきたいと思います。 次に、新型コロナウイルスは、特に高齢者や基礎的疾患がある方については重症化しやすいと言われております。特に、高齢者介護施設や障害者施設においては、ウイルスを入り込ませない、施設の水際対策の取り組みも重要となっていると思われます。 そこで、県内の高齢者介護施設や障害者施設における新型コロナウイルス感染対策について地域福祉部長にお伺いしたいと思います。 ◎地域福祉部長(福留利也君) 高齢者介護施設や障害者施設の感染対策につきましては、国が示している施設向けのマニュアルと今回の国の感染拡大防止に関する通知に基づく対応が行われております。具体的には、職員や利用者、委託業者なども含めたせきエチケットや手洗い、アルコール消毒の徹底、職員の出勤前に体温を計測し、発熱等の症状が認められる場合には出勤を行わないこと、また緊急やむを得ない場合を除き面会を制限することなどの対応がとられているところでございます。 今後も、施設と連携して、徹底した感染防止対策に取り組んでまいります。 ◆29番(大野辰哉君) よろしくお願いします。現場ではさまざまな問題も生じていると思います。今後とも御支援のほど、どうかよろしくお願いしたいと思います。 新型コロナウイルスに関連して、県民の安全・安心のために必要な情報は開示すべきと考えますが、一方で、感染された方は過去の行動なども公表されることから、疾患の苦しみだけでなく、精神的にもつらい思いをされているのではないかと推察します。 知事からも、誹謗中傷や人権侵害がないよう対応していくとのお話もありましたが、感染者の人権やプライバシーなどに配慮した情報公表のあり方について健康政策部長にお伺いしたいと思います。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 新型コロナウイルス感染症患者の第1例目の公表以来、知事、高知市長の合同記者会見や毎日の定時の報告という形で、県民や報道機関の皆様に情報提供してきました。そこでは、患者さんや関係者の皆様の個人情報が特定されないよう、プライバシーの保護には最大限配慮をしています。ただ、その一方で、感染拡大を防止するため、患者さんに関係する施設名や学校名の公表が必要な場合は、患者さんや御家族その他関係者の皆様の多大なる御理解、そして悩まれた上での御承諾を得て公表いたしました。 しかしながら、残念なことに、患者さんの御家族の方々から、周辺の方々から浴びせられる声で大変苦しんでおられるということも伺っておりまして、濱田知事から、誤った情報に基づいた不当な差別、偏見、いじめというようなことはあってはならない、どうか冷静な対応をということをメッセージとしてお伝えしているところでございます。 県としましては、患者さんや御家族、関係者の皆様を苦しみのふちに陥らせないとの視点を持ちながら、今後とも正確かつ人権に配慮した情報提供を行ってまいりたいと考えております。 ◆29番(大野辰哉君) ウイルスには誰もが感染する可能性があり、感染後の重症化対策やプライバシーの保護など、感染された後のフォローこそ大切なことではないかと思っております。今後とも、患者さんやその御家族などに対する個人情報の保護や風評被害などへの対応、対策についてもどうかよろしくお願いしたいと思います。 新型コロナウイルスの課題は、感染拡大防止や重症化対策といった病気そのものへの対策のみならず、行動の制限や自粛による経済活動の停滞、臨時休校や情報デマなどによる社会の混乱など、対策の副作用への対策も必要という先の見通せない状況となっており、日常生活への影響は日を追うごとに大きくなっているように感じます。高知市内で飲食店を営む店主の方からは、これまで何とか経営を続けてきたけれども、自粛ムードの中客足が遠のき、この状態が続くと多くの店が経営できなくなると、地域の窮状を訴える悲鳴にも似た声が聞かれています。そうした声は氷山の一角で、今福祉の現場や零細商店の現場などこれまで厳しい中でもぎりぎり踏ん張ってこられた方々の多くが、このコロナウイルス対策の影響を受け、窮地に立っていると考えられます。 特に、本県はお酒文化の土地柄で、観光県でもあり、イベントや各種会合の中止や自粛による経済的な損失やダメージははかり知れないものがあると思います。制度融資の拡充や生活福祉資金の貸し付け等の支援も進められておりますが、特に日々の生活に大きく影響を受ける小規模零細商店や事業所、非正規やパートで働く方々、要配慮者など、厳しい環境にある方々や支援制度の谷間にある方々に寄り添った行政支援も必要と思います。 そうしたことも踏まえ、この項の最後に、コロナショックから県民生活を守る決意について知事にお伺いしたいと思います。 ◎知事(濱田省司君) 御指摘ございましたように、新型コロナウイルスによりまして、県民生活のさまざまな場面で悪影響が及んでいるのが現状だと思います。経済面、観光面が厳しい状況になっているという声も大変多く寄せられておりまして、県民の皆様、事業者の皆様が非常に不安に思われているという状況だと認識をいたしております。 こうした県民の皆様の不安なお気持ちを少しでも解消できるようにという考え方に基づきまして、県といたしまして、去る6日に3つの柱でこの対策をまとめて、発表いたしました。第1に感染予防、感染拡大防止、第2に情報発信、相談体制の整備、第3に経済影響対策、この3本の柱でございまして、今までに実施済みあるいは実施中の対策のみならず、今後の検討の方向性についてもまとめて、県民の皆さんにお知らせをしたところでございます。これらの対策は、県民の皆さんにわかりやすくお示しするとともに、特に経済対策に関しましては事業者の方々の御心配も高まっておりますので、スピード感を持って実行したいと考えております。 また、本日も国の緊急対応策第二弾が決定をされる運びでございますが、こうした動きに呼応いたしまして、国の施策は最大限に活用してまいりたいと思いますし、特に経済対策関連の部分はさらにバージョンアップをしたいと考えております。 県といたしましては、県民の皆様の健康、生活を守るということを第一にしまして、県経済のダメージを最小限に食いとめるという観点に立ち、ありとあらゆる対策を総動員いたしまして、この難局をしっかりと乗り切りたいと考えております。 ◆29番(大野辰哉君) 知事からの力強い決意をありがとうございました。県民生活を守るため、知事の力強いリーダーシップと行政手腕に県民は期待をしております。どうかよろしくお願いいたします。 私たちも、今は政府の対策、安倍総理の政治判断を信じて、一日も早い終息と、少しでも感染が広がらないよう一人一人が感染防止を徹底して、助け合い、お互いさまの気持ちで生活していくことが大切だと思います。今後とも皆様の御協力をお願い申し上げ、次の質問に移りたいと思います。 次に、不妊治療対策についてお伺いしたいと思います。 現在、多くの方々が、子供を授かりたいと、不妊治療を頑張られております。不妊治療は、肉体的にも精神的にも、さらには経済的にも負担が大きいことから、国では全国に不妊専門の相談支援センターを設置するとともに、配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成するなどの施策を行ってきていると理解しております。 そこで、本県の不妊治療対策の現状について健康政策部長にお伺いしたいと思います。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 県では、平成24年度から高知医療センターに不妊専門相談センター「ここから相談室」を設置し、不妊に関する専門的な相談や、不妊による身体、心の悩みなどについて、不妊症看護認定看護師や泌尿器科医師による専門相談を実施しています。また、経済的な支援としては、特定不妊治療に要する費用について、国の助成額への県単独での上乗せ、さらには助成対象年齢の上限の撤廃などを行い、不妊に悩む方への助成を行っています。加えて、タイミング療法や人工授精などの一般不妊治療についても、保険適用外となる人工授精に要する費用の一部を助成する市町村に対して、県単独で2分の1の補助を行っています。 ◆29番(大野辰哉君) ありがとうございます。 国は平成16年度から、医療保険が適用されず高額な医療費がかかる体外受精及び顕微授精のいわゆる特定不妊治療について、費用の一部を助成し、経済的負担の軽減を図っておられます。また、現在多くの市町村において、国の助成に上乗せする形で助成事業も行われてきております。さらに、一部自治体では、特定不妊治療だけでなく、医療保険が適用されるいわゆる一般不妊治療に対しても助成を行っているとお聞きしております。 そこで、県内市町村の不妊治療対策の現状について健康政策部長にお伺いしたいと思います。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 県内の市町村では、一般不妊治療費については24市町村、特定不妊治療費については県の助成に上乗せをする形で21市町村が助成を行っております。助成内容や対象とする治療などは市町村により異なりますけれども、助成金額は、一般不妊治療が1年度につき3から6万円、特定不妊治療が1回につき5から15万円という状況でございます。 ◆29番(大野辰哉君) 居住する市町村によって助成額や助成の対象などが異なる現状がわかりました。 日本一の健康長寿県づくりの目指すものに、誰もが住みなれた地域で安心して結婚・妊娠・出産・子育てができるという目標があります。そこで、市町村が行う不妊治療対策への支援の拡充について健康政策部長にお伺いしたいと思います。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 先ほど申し上げましたとおり、県では、一般不妊治療の助成事業を実施する市町村に対して2分の1の補助を行っておりますが、助成事業を実施していない市町村もありますので、今後も引き続き制度の周知を図っていきたいと考えております。 他方、国においては、ことし4月以降に不妊治療に係る実態調査を行った上で、助成額や所得制限の見直しを検討することとしておりますので、県としましても、国の検討結果などを見ながら、今後県単独での市町村に対する支援の拡充についても検討したいと考えております。 ◆29番(大野辰哉君) ありがとうございました。今後、市町村とも連携・協議の上、高知県全ての市町村において高いレベルでの助成制度の平準化、拡充がされるよう御支援をお願いしておきたいと思います。 不妊に関する方々のお悩みや相談については、全国に設置された不妊専門相談センターにおいて、医師や助産師等の専門家による相談対応を初め、医療機関などに関する情報提供を行うなどの支援が実施され、本県においても高知医療センター内に「ここから相談室」が設置され、不妊に悩む方々への相談支援や情報提供などを行っております。「ここから相談室」では、電子メールでの相談受け付けなど電子媒体を使った先進的な対応や、男性に特化した相談も実施されるなど、相談体制の充実が図られてきております。そうした支援があることも県民に広く知っていただくための周知活動、広報活動も大切ではないかと考えます。 そこで、不妊治療相談支援窓口の周知、広報をどのように行っていくのか、健康政策部長にお伺いしたいと思います。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 県ではこれまでも、不妊専門相談センターを紹介するリーフレットや、センターの電話番号、QRコードを掲載したカードを作成しまして、企業向けセミナーなどで配布をするとともに、県内の産婦人科医療機関や市町村で活用していただいております。また、県独自としまして、県のホームページやツイッター、テレビやラジオを通じて広く相談窓口を知ってもらう取り組みなども行ってまいりました。 今後とも、市町村とも連携をしながら、例えばより効果的な啓発資材になるような工夫なども行って、相談窓口の周知に取り組んでいきたいと考えております。 ◆29番(大野辰哉君) 不妊に悩むカップルがどこに相談してよいのかわからず、また相談をちゅうちょしている間に、結果として適齢期を逃してしまい子供を授かることを諦める、そうした判断をされることのないよう、また子供たちを授かりたいと不妊治療を頑張られている方々に寄り添った支援の充実、拡充をお願いしておきたいと思います。 次に、令和2年度国の地方財政対策についてお伺いいたします。 令和2年度の地方財政対策については、地方の一般財源総額は前年度を0.7兆円上回る63.4兆円が確保され、地方交付税も、地方税収が伸びる中、前年度を0.4兆円上回る16.6兆円が確保されております。特に、地方法人課税の偏在是正措置による財源を活用して新たに創設された地域社会再生事業費は、本県のような少子高齢化が進み、地域社会の維持・継続が困難となっている自治体に重点的に配分されるとのことであり、大変ありがたい財政措置となっております。 そこで、地域社会再生事業費の創設の趣旨を踏まえ、この新たな財政措置をどのように生かしていくのか、総務部長にお伺いしたいと思います。 ◎総務部長(君塚明宏君) 地域社会再生事業費ですけれども、普通交付税と算定されますから特定の事業に充当する性質のものではございませんけれども、一般財源が確保されますことで、本県の来年度当初予算では、移住施策の充実、ICTを活用した遠隔教育の拡充といいました中山間地域の活性化を初めとする地方創生に資する取り組みの強化につながったと認識しております。県内市町村におきましても、普通交付税の増が見込まれますことから、地域社会の維持・再生につながる取り組みを一層進めていただくことを期待しております。 ◆29番(大野辰哉君) せっかくの財政措置ですので、移動手段や生活用品の維持・確保など、誰もがどこに住んでいても安心して生活できる地域の維持・再生につながるような取り組みに期待をしておきたいと思います。 最後になって時間がちょっと厳しくなってきたんですけれども、緊急浚渫推進事業費が、同じように地方財政対策で創設されます。国の財政措置による事業費の創設は、本当にありがたく思っております。 事業の推進に当たっては、市町村や住民との連携・協議の上、緊急性の高い、危険性の高い箇所から計画的な事業の実施に努めていただきますようお願い申し上げて、以上で私の一切の質問とさせていただきたいと思います。済いません、質問をところどころ省いてしまいまして申しわけございませんでした。ありがとうございました。(拍手) ○議長(桑名龍吾君) 以上をもって、大野辰哉君の質問は終わりました。 暫時休憩いたします。   午後0時10分休憩-----------------------------------   午後1時10分再開 ○副議長(弘田兼一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 一問一答による議案に対する質疑並びに一般質問を続行いたします。 上田貢太郎君の持ち時間は50分です。 2番上田貢太郎君。 ◆2番(上田貢太郎君) 自由民主党の上田貢太郎でございます。それでは、議長のお許しをいただきましたので、早速質問に入らせていただきます。 まずは、外国人材の受け入れ拡大について、特に私からはベトナムに関連した質問を中心にお伺いさせていただきます。執行部の皆様、よろしくお願いいたします。 さて、私は、ことしの1月10日から14日にかけまして、日越友好議員連盟の会長であります二階俊博自由民主党幹事長を団長といたします日本ベトナム文化経済観光交流団の一員として、尾崎正直前高知県知事や黒潮町の大西町長、そして土森県議ら各界約1,000名の方々とともに、ベトナム第3の都市ダナンに行ってまいりました。 ベトナムは、アジアの中で最も成長率が高い国でありまして、人口は毎年90万人から100万人のペースでふえており、国民の平均年齢は31歳と、エネルギーあふれる国であります。また、ベトナムは、皆さん御承知のとおり大変親日的で、ベトナムが成長、発展すれば、日本にとって大きなマーケットになるばかりではなく、必ずやベトナムはアジアの大国の一つとなり、日本の労働力を支えてくれる、そういう国でございます。県内でも丸和林業さんなど数社がことし新たにベトナムに進出するようでございまして、県内企業においても関心は非常に高まっていると考えます。 今回の交流団の目的は、日越間の交流人口の拡大、地方への誘客、そして日越政府間の連携の強化であります。御存じのとおり、日本には既に日越両国の未来を担う数多くのベトナム人材がいまして、その数は留学生で8万人、技能実習生で19万人に上ります。その19万人という数字は、外国人技能実習生全体の実に半数以上に上ります。また、高知県においては3,141人の外国人の方々が就労しており、そのうちベトナム人は最も多い1,238人となっています。 そうした中、昨年4月に政府は、外国人労働者の新たな在留資格、特定技能を創設し、受け入れの門戸を広げました。現地で行われたシンポジウムでも、参議院議員で外国人労働者等特別委員長の片山さつきさんから、政府の方向性として、14業種に門戸を開いて34万5,000人を受け入れる特定技能枠に関して報告がございました。現在、公表されている特定技能の外国人は、昨年12月末現在で1,621人と増加傾向は見られますが、まだまだ少ないのが現状であり、本県は4名にとどまっております。 そこでまず、本県において特定技能の人材確保が進んでいない原因について商工労働部長にお伺いいたします。 ◎商工労働部長(近藤雅宏君) 特定技能につきましては、国は今年度に最大4万7,550人の受け入れを見込んでおりましたが、お話にありましたとおり、昨年12月末時点で在留しているのは1,621人、そのうち本県は4名にとどまっています。 これまで進んでいない原因としましては、技能水準を確認するために国内外で実施をされる各産業分野の技能試験等の開催地や実施回数が限られていたこと、またベトナムを初め送り出し国側のルール整備のおくれなどが挙げられています。また、県内の問題としましては、受け入れ企業の委託を受けて外国人の生活や就業面でのサポートをするいわゆる登録支援機関の登録が2月末時点で11件と、受け入れに向けた支援体制がまだ十分とは言えないことが挙げられます。 しかしながら、いずれも徐々に昨年末あたりから整ってきておりまして、今後特定技能での就労がふえてくるものと考えています。 ◆2番(上田貢太郎君) ありがとうございました。特定技能についてはこれから伸びる段階に入るだろうということですが、先ほど申しました特定技能の外国人1,621人のうち半数以上となる901人がやはりベトナム国籍となっており、また65%が首都圏でない地方圏で働いています。そういうこともあって、今政府は、ハノイやホーチミンなどの都市部だけではなくベトナム全域に日本語を習得できる環境づくりの予算化を検討しておりまして、我々のほうが教える側を探すのが大変なくらいまでやろうじゃないかということで、例えば今までは短大、大学だったのを、高校、あるいはジュニアハイスクールまで下げるということも検討したいとのことです。 日本経済を現状のまま維持するには、外国人労働者なしでは成り立たなくなっていると言えます。また、少子高齢化が進む本県は、かなり先の未来にわたって若い労働力の増加は見込めないことを考えますと、こうした国からの受け入れ拡大は大変重要になります。 本県としても、例えばベトナムからの技能実習生及び特定技能での積極的な受け入れは労働人口拡大に向けて必要不可欠だと考えますが、商工労働部長の御所見をお聞かせください。 ◎商工労働部長(近藤雅宏君) 昨年10月末の全国の外国人労働者は約166万人、うちベトナムは2番目に多い約40万人、全体の24%です。対前年では26.7%の増となっています。本県では、一番多い1,238人であり、対前年比49.2%増と、年々増加傾向にございます。ベトナムは、国の方針として国外に多くの労働者を送り出しており、その数は年間数十万人と言われ、その有数の送り出し国が日本となっています。 ベトナムには県内企業が進出をするなど、経済的なつながりがあり、昨年度から、県も含めた県内企業等による現地自治体や大学等との交流も始まっているところです。本県にとって、ベトナムは送り出し国として有力な相手国であり、今後現地自治体との協定等の締結も視野に入れた取り組みを展開してまいりたいと考えています。 ◆2番(上田貢太郎君) よろしくお願いいたします。 ただ、外国人労働者を受け入れる際にはさまざまなリスクもございます。その一つが、技能実習生の失踪問題です。一昨年1年間において、約9,000人が失踪しています。そのうち約5,800人が、残念ながらベトナムからの技能実習生です。また、そうしたベトナム人失踪者の不法残留者が1万3,000人に達しているという現実もございます。 日本が好きで来てくれた方が、なぜ一定の給料が支払われているということになっているのに逃げなければならないのか。その裏側には、来日前に多額の借金を背負わされ、働いても働いてもお金が残らない、そこにはいわゆる悪質ブローカーが介在するということが一般的に言われています。 冒頭に申しました交流団の訪問においては、二階俊博自由民主党幹事長とフック首相との間で、こうした悪質な企業や受け入れ機関を徹底的に排除しようと、12の覚書が交わされたところです。そして、日本とベトナムの就労をさらに拡大させることで一致したとお聞きしております。 私は、高知県においてもそうした不正を排除する仕組みを構築し、安心して高知に来て働いていただける環境づくりが必要だと考えます。その策として、高知に来ていただけることを条件とし、語学習得にすぐれた能力を持つ人材に対し、介護には奨学金制度がありますが、ほかにも本県独自の奨学金制度を創設することや、あるいは安価に日本語が習得できるサポートを行うことも有効かと思います。また、本県への渡航費に関しても貸し付けるなどの仕組みも考えられるところです。 そこで、外国人労働者の受け入れの環境づくりに向けどのように取り組むか、商工労働部長の御所見をお聞かせください。 ◎商工労働部長(近藤雅宏君) 受け入れ環境づくりにつきましては、これまでも高知県外国人生活相談センターの設置や日本語学習支援、異文化交流会などに取り組んでいるところです。また、技能実習生への日本語教育に加え、次年度からは受け入れ事業所を対象とした易しい日本語などの日本語支援も実施する予定でございます。 また、来年度は技能実習制度や特定技能の対象となる業種を中心に、県内企業を対象とした外国人雇用実態調査を実施したいと考えています。調査では、県内企業の外国人材の雇用状況や受け入れに関する課題、要望などを把握することにより、県内企業のニーズを踏まえた今後の外国人材の確保、活用に向けた施策につなげてまいりたいと考えております。
    ◆2番(上田貢太郎君) 人口減少が進む地方都市にとって、ベトナムから来てくれるやる気のある人材はまさに日本の宝です。本県としても、他県にない独創的な受け入れ環境を整えて、加えて、ネーティブな土佐弁を御理解いただき、安心できる職域環境のために、国の方向性に準じた組織、仕組みづくりが必要だと考えます。本県に来られた外国人の皆さんが、高知に来てよかった、高知に住み続けたいと思ってくれるような仕組みづくりにつなげていただきますよう、ぜひお願いいたします。 この項の最後になりますが、外国人材の受け入れ拡大については、先ほど申しましたように、選ばれる国、県にならなければならないと考えております。そのためには、民間・地方政府レベルでの交流や議員同士の交流も有効だと考えます。二階俊博幹事長も、ベトナムへの出発式において、この混迷する世界情勢だからこそ国民一人一人の交流が何より大事となるとおっしゃっておりました。 本県には、よさこいという、交流の一策となり得るツールがございます。ベトナムでは、よさこい踊りを踊られているチームもあり、既に高知県でも、よさこいアンバサダーの認定を通じた交流を展開されているとお聞きします。こうしたツールを積極的に使い、日越、いや土越相互交流を継続して行っていけば、そこからベトナムの若者が高知に行ってみたいと思うような関係が生まれるのではないかと思います。 今後、こうしたよさこいを通じたベトナムとの交流を本県のインバウンド誘致にどのように生かしていくのか、観光振興部長にお伺いいたします。 ◎観光振興部長(吉村大君) 県では、ベトナムの2チーム、6名をよさこいアンバサダーに認定いたしまして、地元や近隣国での普及に取り組んでいただいております。この取り組みを契機に、ことしのよさこい祭りには、アンバサダーの皆様のリードによって、2チーム、100名を超える踊り子が参加をされる予定でございます。こうして海外のチームが発祥の地高知に踊りに来てくださることも、よさこいを通じたインバウンド誘致の事例の一つだと思います。 また、踊り子の皆さんには、本県自慢の食や高知城などの魅力を体感していただき、SNSなどで発信していただくことをお願いしたいと考えております。 こうしたよさこいを通じた取り組みによりまして、観光地としての本県の認知度も高めながら、ベトナムからの観光客誘致につなげてまいりたいと考えております。 ◆2番(上田貢太郎君) ありがとうございました。 私は、今回の視察を振り返って、いかにその国と親密な関係を築くか、そのためには、国レベルの外交だけではなく、自治体や県民一人一人の交流がいかに大事かということを感じました。そうすることで相互理解が生まれ、次の若い世代につなげていくことになるのだと思いました。 私は、そういう意味でも、高知県議会には日中・日韓・日台議員連盟などがございますが、ぜひこの機会に日越議員連盟を立ち上げ、高知県とベトナムとのさらなる交流が図られますよう、議員の皆様にも御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。 次に、観光振興についてお伺いいたします。 昨年2月にスタートした「リョーマの休日~自然&体験キャンペーン~」は、本県の強みである食や歴史に加え、自然を生かしたさまざまな取り組みが展開され、昨年1年間の県外からの観光客数は438万人となり、大きな成果につながりました。2年目のセカンドシーズンは、「あなたの、新休日。」という新コンセプトでスタートしたところです。 新しいポスターでは、カレンダーにはない新しい休日ということで、高知の山曜日、川曜日、海曜日という3つのテーマで、それぞれ旅行マインドをくすぐるビジュアルが用いられています。折しも、新型コロナウイルスの感染拡大による観光、あるいは経済全体への影響を心配するところであり、一日も早い終息を願いますが、セカンドシーズンの取り組みには大いに期待するところです。 私からは、このセカンドシーズン「あなたの、新休日。」のうち、高知の海曜日の取り組みについてお伺いさせていただきます。海曜日の目玉としては、やはり新たにリニューアルオープンする県立の足摺海洋館だと思います。県内外の多くの皆様に親しまれ、県西南地域の観光を牽引してきた県立の足摺海洋館は、先日惜しまれながらも、その45年の長きにわたる幕を閉じました。そして、いよいよことし7月には、新足摺海洋館SATOUMIとして生まれ変わります。地元の皆様もオープンを大変心待ちにされていると思いますし、高知県観光全体を盛り上げる施設になることを大いに期待しているところです。 高知市にはユニークなキャラクターを活用した取り組みで人気の桂浜水族館や、また東部にはノスタルジックな雰囲気で多くの観光客を集めるむろと廃校水族館といった、個性的な水族館が県内にございます。間もなく香川県に新しく四国水族館もオープンいたします。 この新足摺海洋館のオープンを機に、四国内の水族館と連携した取り組みを展開することで、本県に多くの観光客を呼び込むことができないか、観光振興部長にお尋ねいたします。 ◎観光振興部長(吉村大君) お話にありました四国水族館は、四国各地の水の景色をテーマにした企画展示を中心に演出をされると伺っております。また、四国の観光振興のため、新足摺海洋館を初め各県の水族館と連携して、四国各地への送客にも取り組みたいとの御提案をいただいております。 議員のおっしゃる四国内の水族館と連携することは、この提案とも合致しております。このため、四国各県の水族館との連携を深め、各館の持つネットワークも生かした集客を図る取り組みによりまして、新足摺海洋館を初め本県に多くの観光客を誘致したいと考えております。 ◆2番(上田貢太郎君) よろしくお願いいたします。 次に、高知の海曜日でお伺いしたいのが、高知市の地域アクションプランにも位置づけられている新高知市観光遊覧船、浦戸湾のんびりクルーズの取り組みでございます。この遊覧船は、高知港桟橋を発着場所とし、浦戸湾内の月見台、袂石など龍馬ゆかりのスポットをめぐり、沖合から桂浜や龍馬像を眺めた上で再び湾内に戻ってくる、高知ならではの体験プログラムです。「志国高知 幕末維新博」で、高知市は、坂本龍馬先生、武市先生といった幕末の志士や、高知城、高知城歴史博物館や自由民権記念館といった史跡、歴史文化施設などを押し出しながら、歴史観光に重点的に取り組んできた印象がありますが、自然&体験キャンペーンに合わせた、地域ならではの自然を生かした観光振興の取り組みも重要であると考えます。 関係者の皆様の御努力もあって、第4期産業振興計画では、この高知市の地域アクションプランを拡充し、多くの観光客から要望のあった、遊覧船の桂浜への寄港について取り組む予定だと聞いております。こうした新たな魅力を生かしながら、観光客の皆様にさまざまな体験や学びを伴った浦戸湾、桂浜を楽しんでいただければと思うところであります。 今後の浦戸湾を活用した観光振興への期待について観光振興部長にお伺いいたします。 ◎観光振興部長(吉村大君) 観光遊覧船は、桂浜に船を着けることや、土日、祝日の定時運航へと見直されることで、観光客の利便性の向上につながり、浦戸湾を活用した観光振興においてとても有意義な取り組みだと思います。浦戸湾周辺には、桂浜や龍馬像、坂本龍馬記念館、さらには牧野植物園、卸売市場のグルメや桂浜沖での釣り体験などさまざまな観光資源があり、遊覧船と連携したコースづくりも可能です。 県としましても、浦戸湾エリアで高知市が行う、自然、歴史、食、体験を組み合わせた観光地域づくりが進んでいくことを期待しておりますし、この取り組みを支援してまいりたいと考えております。 ◆2番(上田貢太郎君) 私も市議会議員のときに、桂浜で船をおり、帰りは桂浜や浦戸からの陸路コースを設ければ、この遊覧船観光はさらに発展するのではと提案してきましたが、令和4年の桂浜の再整備に向けて、ただ単に見る観光だけではなく、こうしたさまざまな体験や学びを伴った観光資源の磨き上げに期待するところであります。よろしくお願いいたします。 次に、フィルムコミッションに関して質問いたします。今や、日本のアニメーション産業の市場規模は2兆円産業となり、10年前に比べると約6割増加しています。また、まんが甲子園の開催地でもある高知にはコンテンツを生み出す土壌があり、高知からはすぐれた漫画家が多く輩出され、アニメ化された作品もたくさんあります。 高校生を主人公に描かれた長編アニメ「君の名は。」は、大変な人気を博しました。アニメを見た多くの若者が、主人公に等身大の自分を重ね、物語の舞台となった岐阜県などの各地をめぐる聖地巡礼という現象が話題になりました。以後、現在まで聖地巡礼のブームは続いており、アニメや映画を見たファンが遠く国外からも舞台となった日本各地を訪れており、こうした流れを呼び込むことは本県の観光振興にも寄与するものと考えます。 今、黒潮町の出身で日本を代表する私小説の作家、上林暁先生の作品を映画化しようとする動きが始まっています。上林先生は、昭和7年に発表したデビュー作「薔薇盗人」が川端康成に高く評価されたことで脚光を浴び、先生の作品が1994年と2019年の大学入試センター試験の問題にも採用されるなど、まさに知る人ぞ知る作家であります。 ことし、先生の没後40年を迎えることから、これをきっかけに地元有志が、上林暁作品の映画化を推進する会を立ち上げ、署名活動などを行っております。上林先生は、深くふるさとを愛し、その作品の中でも入野の海岸など地元の魅力を独特の表現力で紹介されていますので、映画化が実現されれば、聖地巡礼のブームにも乗って、多くの観光客が現地を訪れることが期待できます。今回、私はこの映画の制作には直接かかわっておりませんが、本日は黒潮町に深く御縁のある県議会の先生方も御参会されておりますので、映画化の実現に向けてぜひ地元の皆様と御一緒に取り組みを盛り上げていただきたいと考えます。 今後、上林先生ゆかりの映画化が進んだ際、フィルムコミッション活動としてどのような支援ができるのか、観光振興部長にお伺いいたします。 ◎観光振興部長(吉村大君) 発信力のあります映画やテレビドラマを観光振興のプロモーションに活用することは、大変有効であると考えています。そのため県では、主に観光コンベンション協会の高知フィルムコミッションを通じまして、さまざまな支援を行っております。 具体的には、県内の撮影場所や宿泊施設などに関する情報提供、関係団体や地元の方々との調整、エキストラの募集や手配などを行っており、この点でのノウハウも蓄積をしております。映画化の際には、こうしたノウハウを活用しながら効果的な支援を行いますとともに、観光プロモーションにも生かしたいと考えております。 ◆2番(上田貢太郎君) 映画は、地域に新たなエネルギーや活力を与える非常に大きな力を持っていると私は思っております。高知県観光のもう一段飛躍のためにも、ぜひよろしくお願いをいたします。 また一昨年、牧野富太郎先生を慕う有志の皆様が、日本の植物分類学の父とも呼ばれる偉業を全国に伝えるため、「「朝ドラに牧野富太郎を」の会」を発足させました。有志の皆様は、牧野富太郎先生生誕160年の節目となる2年後に、NHK連続テレビ小説、いわゆる朝ドラでのドラマ化を目指されています。 本県は、高知から東京に上京したヒロインが描かれた昭和63年の「ノンちゃんの夢」以来、久しく朝ドラの舞台となっていません。牧野富太郎先生を主人公にしたドラマ化が実現されれば、リニューアルしたばかりの牧野植物園の利用者増加はもちろん、観光面でも大きな効果が期待できるのではないでしょうか。こうした活動は、地元任せにするのではなく、県も一緒になって高知家として応援していくことが必要と考えます。 また、朝ドラは、東京のNHK放送センターと大阪放送局が交互にドラマを制作していると聞いております。折しも、知事は大阪府の副知事を歴任された御経験もあります。そのため、ドラマ化をNHK大阪放送局にも直接働きかけていくことも必要ではないかと思います。 そこで、ドラマの誘致活動に対する御所見を知事にお伺いいたします。 ◎知事(濱田省司君) 御質問いただきましたように、本県出身の牧野富太郎先生を描きますテレビドラマが実現するといたしますと、先生の偉業が全国に広く知られることとなりますし、また舞台となる地元のPRにも大変効果があると考えます。その意味で、県の観光振興にも追い風になるものと考えます。 この「「朝ドラに牧野富太郎を」の会」は、署名活動を通じまして地元の機運を高めますとともに、昨年は東京のNHK放送センターを訪問いたしまして要望書を提出されるといった形で、活発な活動を展開されております。県としても、この要望活動には御一緒させていただいたという経緯もございます。 大阪放送局への訪問について御提案がございました。この「「朝ドラに牧野富太郎を」の会」の皆様にもこの御提案はお伝えをいたしますし、この会が要望活動を次に実施いたします際には、私もぜひ同行したいと考えております。 ◆2番(上田貢太郎君) ありがとうございます。先ほど御紹介させていただきました上林先生の映画化も、関西御出身の著名な作家の方が脚本家として候補に上がっていると伺っております。映画化とNHKのドラマ化、この2つを実現するには、大阪とのつながりがキーワードになるかもしれません。引き続き、これらの取り組みに御尽力いただければと思います。 続きまして、議員活動17年目にして初めて農業問題について御質問させていただきますが、IoPプロジェクトについてお伺いいたします。 本県及び高知大学、高知工科大学、高知県立大学におけるIoPプロジェクトは、一昨年夏から地方大学・地域産業創生交付金という内閣府の競争的資金が公募され、尾崎前知事をトップに、研究推進部会、人材育成部会、IoP推進機構検討部会の3つの専門部会を立ち上げ、IoPプロジェクトとして申請を行い、これまでの次世代型こうち新施設園芸システムの普及実績も認められ、その年の10月に正式に採用され、スタートした取り組みです。全国で7カ所、本県は唯一、1次産業である農業を課題にし、高知大学を中心に産官学連携のもと、一昨年からスタートしたのがこの事業です。 櫻井学長によりますと、高知大学は威信をかけて取り組んでいるとのことであり、また実際に研究開発がスタートしてちょうど丸1年がたったところでありますが、改めて濱田知事に、このIoPプロジェクトに対する思いをお聞かせください。 ◎知事(濱田省司君) 本県の施設園芸農業は、これまで高知の農家の皆様が培ってこられました高い技術力と、そしてオランダに学び進化をさせてきました次世代型の施設園芸の取り組みによりまして、全国一の生産性を誇っていると、こういう土壌がまずベースにあると思います。その上で、IoP、いわゆるインターネット・オブ・プランツでございますが、このプロジェクトは、産学官の力を結集いたしまして、本県の強みであります施設園芸農業にAIあるいはIoTなどのデジタル技術を融合させて、さらに進化をさせる革新的な取り組みだと考えております。これにより、本県の施設園芸農業の飛躍的な発展、そして関連産業群の創出を実現いたしまして、最先端の農業あるいは新たな産業を担う若者たちが高知に集まり、そして高知で育つ、そうした姿を目指していきたいと考えております。 IoPプロジェクトを通じて、農業分野での高知版Society5.0を実現いたしまして、ここ高知から未来の農業を切り開いてまいりたい、こういう気持ちでございます。 ◆2番(上田貢太郎君) ありがとうございます。 お話のとおり、このプロジェクトは超未来型次世代施設園芸のモデル構築とも言える事業で、農業従事者が減少する中、高知の施設園芸農業の飛躍的発展と施設園芸関連産業群の創出を実現させるための取り組みです。また、農業現場では作物の光合成や生育状況の可視化、出荷量や出荷時期の予測、農作業の効率化などを実現するとともに、それらの情報をクラウドに蓄積し、そのビッグデータをもとに次世代農業を実現していく試みで、尾崎前知事の思いによって国を動かし、実現に向けて多方面の方々の協力のもと進められております。尾崎前知事も、これができれば高知県農業がもう一つ飛躍できる、そして日本の中でも最先端の県になるんだという思いで取り組んでいくと述べられておりました。 国の支援が残り3年となりました。このプロジェクトは間もなく実践段階に来ていると伺っておりますが、そうなりますと、プロジェクトに参画する農家がもっと必要になってまいります。また、施設整備も同様に、プロジェクトの情報収集に必要なセンサーであったり、クラウドとリンクさせる情報通信機器などの設備投資が必要になってきます。 そこで、県としてどのように支援していくのかが課題となります。具体的には、補助金であったり低金利の長期貸し付けであったり、あるいは県が購入し農家に貸与するということになろうかと考えますが、今後プロジェクトに参加する農家にどのような支援ができるのか、農業振興部長にお聞きします。 ◎農業振興部長(西岡幸生君) これまで、環境制御技術の取り組みにおきまして、実証段階では、農家の皆様のハウスで試験を行うためのセンサー類や炭酸ガス発生装置等の費用を県で負担して技術を確立し、普及段階では、国や県の補助事業により導入を支援してまいりました。IoPプロジェクトにおきましても、現在農家の皆様のハウスでの実証試験を行っておりまして、そのために必要な機器の整備や通信等の経費につきましては、国の交付金を活用して推進をしているところでございます。 今後、研究開発がさらに進みまして、IoPによる新たな制御機器やシステムが製品化され、本格的な普及段階となれば、現在活用いただいている補助事業を見直すなど、具体的な支援策についても講じていきたいと考えております。 ◆2番(上田貢太郎君) ありがとうございます。 とはいえ、農業となりますと、JAの存在、そしてJAがプロジェクトにどのようにコミットメントしていただけるのか、ここが重要なポイントになろうかと考えますし、そこの参加がなければ実現は困難ではないかと考えます。また、JAとしても、このプロジェクトに参加することにより、全く新しいJAのビジネスモデルともなり得るものですが、JA側にも集出荷場の人員の問題であったり施設の拡充問題であったりと、人手不足や財源不足などの課題もあり、営農指導体制の充実や購買事業の効率化、販売の強化など、合併したメリットが十分に発揮できていないという声があります。 医療分野で、患者さんのカルテを電子データ化することでさまざまなサービスが大幅に進化したように、IoPプロジェクトにおいて、ハウスの環境データに加えて出荷データや生産履歴等も含めてさまざまな情報を電子データ化することは、JAの営農や販売サービスそのものが飛躍的に進化し、そのことが個々の農家さんの所得向上、ひいては次世代の高知農業につながるのではないかとも考えます。 IoPプロジェクトにおけるJAが果たす役割について農業振興部長の所見を伺います。 ◎農業振興部長(西岡幸生君) 高知県の農業の未来を切り開くIoPプロジェクトを成功に導くためには、研究開発から普及に至るまで、農家の皆様とともにそれぞれの産地を支えているJAの協力が欠かせません。そのため、研究開発や人材育成など3つの専門部会にそれぞれJAから参画をいただきまして、県と一体となってプロジェクトを推進しているところでございます。 IoPプロジェクトにおけるJAの果たす役割といたしましては、研究開発段階では、現場の課題やニーズの把握に加え、農家の皆様のハウスでの実証実験やさまざまなデータ収集への支援などが求められることになります。また、普及段階におきましては、この取り組みが農家の皆様の所得向上に着実につながりますよう、IoPクラウドに集積されたさまざまなデータや知見を活用した営農指導の推進や流通・販売等の強化を期待しております。 ◆2番(上田貢太郎君) 私としては、JAの将来の構想にこのIoPが明確に位置づけられて、そして高知県の農業の進化がこのIoPの進化と一体化するような、そんな連携をJAとさらに模索していっていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 最後に、IoPプロジェクトでは、IoTやAIの活用といった最先端の研究が注目されますが、農家さんにとっては、これまでより難しい技術ではないか、パソコンが使えないとできないのではないかといった不安があるのではないかと思います。 IoPプロジェクトが広く普及し、目的とする農業分野のSociety5.0を実現していくためには、農家の皆さんにもっと身近な技術として取り組んでみたくなるメリットが必要だと考えますが、農業振興部長のお考えをお伺いいたします。 ◎農業振興部長(西岡幸生君) 農家がIoPを導入するメリットといたしましては、例えばハウスの開閉や水やりなど、経験と勘により手動で行っている毎日の農作業を、データに基づいて最適に自動化できるようになるということが考えられます。また、その際には、集出荷場のモニターや自宅のテレビ画面等でも必要な情報が得られるシステムもあわせて開発するなど、パソコンやスマートフォンが苦手な方でも簡単にできるようにしたいというふうに考えております。また、ハウスがインターネットにつながりますことで、自宅や外出先からハウスの状態を確認し、遠隔で管理することができるなどの大幅な省力にもつながるのではないかというふうに考えております。 これらの機器やシステムを農家の皆様にとって身近なものとして導入できるよう、これからも取り組んでまいります。 ◆2番(上田貢太郎君) ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。 それでは最後に、南海トラフ地震に関連する質問を行わせていただきます。 まず最初に、スロースリップについてお伺いいたします。ことしの1月中旬、紀伊半島沖から四国沖にかけての南海トラフで、陸海のプレート境界の浅い部分がゆっくり滑る現象、スロースリップを7地点で検出したと、海上保安庁の石川火山調査官と東京大学の横田講師により発表されました。 四国周辺のスロースリップは、平成9年から平成10年にかけてと平成15年から平成16年にかけて豊後水道周辺で観測されており、当時から南海トラフ地震への影響が危惧されておりましたが、さらに平成21年後半以降に愛媛県南予から幡多地域にかけての広い範囲でも観測されております。次いで、今回の発表です。 今回スロースリップが検出された7地点は、強い固着が推定される領域の周辺にあり、変動幅は5センチから8センチ程度、このうち紀伊水道沖の2地点は、平成29年から30年にかけ同時にゆっくり滑っていたようです。スロースリップ現象の近くにある固着域では、急に滑らせようとする圧力が高まるおそれがあるそうです。プレート境界型地震とスロースリップの関連性はまだ明らかではありませんが、東日本大震災の本震が起きる前の約1カ月間に、岩手・宮城沖のプレート境界の震源域でスロースリップ現象が2回起きていたことがわかっています。 さきの発表が直ちに次の南海トラフ地震の発生につながるとは申しませんが、本県として、このスロースリップ現象の確認、発表をどのように考えるのか、危機管理部長の御所見をお聞かせください。 ◎危機管理部長(堀田幸雄君) スロースリップは、プレート境界が、人が感じられない程度にゆっくり動く現象です。今回、東京大学と海上保安庁が発表した情報は、海底の地殻変動の観測データを解析したところ、過去に海底でもスロースリップが発生していたことを検出したというものです。スロースリップ自体が直接被害を発生させるものではないものの、南海トラフ地震など巨大地震の発生メカニズムの解明のため注目すべきものだと考えています。 なお、南海トラフ沿いで通常とは異なるスロースリップが発生したと評価された場合には、気象庁が南海トラフ地震臨時情報を発表することとなっています。 ◆2番(上田貢太郎君) ありがとうございます。 続きまして、災害時におけるライフラインの応急復旧及び緊急対応に関して御質問いたします。一昨年7月に発生した西日本豪雨、このとき広島県のあるエリアで上水道の配水管が破損し、そのエリア、災害拠点病院も含む地域全体が断水になり、本来1日140トンを必要とするところを45トンまで切り詰めて病院運営を維持しておりましたが、いよいよ限界となった病院は、隣接の自治体に給水支援をお願いしましたが、依頼を受けた自治体は、おたくにだけ供給することはできないと断られたそうです。その後、病院は県に依頼し、国の承諾を得て、自衛隊による給水活動で何とか病院を維持できたということがあったそうです。 高知でも、次の南海トラフ地震が発生すればどこでも起こり得るライフラインの途絶問題は、水は不可欠なものである病院にとっては死活問題です。まして災害拠点病院にあっては、平時以上に必要です。 災害時においては、自治体庁舎、医療機関、避難所、高齢者や障害者施設など、水の供給が欠かせないことから水道の復旧が急がれる施設が多数ございます。そのため、どのような優先順位で水道の復旧を行っていくのか、健康政策部長の御所見をお尋ねいたします。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 災害時においては、やはりまずは医療機関や避難所、福祉施設、防災拠点など、人命や災害対策に直結する機関、施設につながる基幹管路などを優先して復旧すべきだと考えており、これは各市町村も同様の考え方だと認識しております。 他方、その中での優先順位については、水道施設の耐震化の状況も異なりますし、また発災後、例えば時間的余裕がないところには、しばらくは給水車による給水を行うといった対策も必要となります。したがって、一律ということにはならず、各市町村がそれぞれの地域の状況を踏まえ、いわゆる水道BCPを策定しておく必要があると考えております。 現在、水道BCPを策定している自治体は2市にとどまっておりますので、県としては、今年度末に策定する高知県水道ビジョンに基づきまして、水道BCPの策定に必要な検討項目などを具体的にお示しするなどして、市町村の取り組みを支援してまいります。 ◆2番(上田貢太郎君) よろしくお願いをいたします。 もう一つ、医療に関する質問をいたします。人工透析患者を抱える病院では、水と電気は患者さんの命に直接かかわる問題です。以前、私の知人が、透析患者の移送を含む問題を県に問い合わせたところ、県からは、その問題は透析医会が対策をしている旨の回答だったと聞いております。 本県の透析患者数は既に2,200人を上回り、同州内では1万2,000人を超える勢いで、L2クラスの地震が発生すればそれらの患者さんは命の危険にさらされるわけで、透析医会としても、受け入れ先の確認や確保などは平時の関係性から容易に収集できる情報と考えますが、移送となりますと専門外の分野でもあり、県として自衛隊への要請などが必要となります。また、切迫した状態で透析を必要とする患者さんも出てくる可能性もあり、人工透析の拠点となる施設も県内に確保していく必要があろうかと考えます。 患者さんの移送方法や受け入れ先、病院や自治体との関係構築に関し、健康政策部長の御所見をお聞きします。 ◎健康政策部長(鎌倉昭浩君) 災害時の透析患者の搬送につきましては、県内を5つのブロックに分けて、まずブロック内や県内の他のブロックの透析医療機関での対応が可能な場合には、災害透析コーディネーターが調整をしまして、患者自身や御家族に連れていっていただく、あるいは医療機関や市町村が搬送するということを基本としています。また、県外の透析医療機関に搬送する場合には、ブロックごとに数カ所設ける集合場所に集まっていただいて、バス等の大型車両で搬送を行うということにしております。 この県外への搬送については、現在患者の居住分布状況や発災時の県内での透析台数などの調査結果がまとまりましたので、それらの結果を踏まえ、庁内の危機管理部門や交通運輸部門と、各ブロックの集合場所や、県外搬送者の整理、振り分けの想定など、具体的な搬送手順の検討を進めているところです。あわせまして、県外の受け入れ先との調整という点で、まず隣県の愛媛県の透析災害対策会議に昨年度から参加をさせていただいて、情報共有や意見交換を行っております。 今後も、災害時に透析患者がしっかりと透析医療を受けられるよう、災害透析コーディネーターはもとより、県内の透析医療機関や市町村などと連携をして取り組みを進めてまいりたいと考えております。 ◆2番(上田貢太郎君) 発災時には、当然のことながら、負傷者を含めた患者の搬送も加わってきます。しかしながら、透析患者の移送方法や受け入れ先は、平時から想定できること、そして、しておかなければならないことですので、早急に具体的な対策を形にしていただくよう要請を行います。 次に、今議会、坂本県議から多目的トイレについて質問がございましたが、避難所のトイレに関してお伺いいたします。一昨年、元千葉県浦安市長の松崎さんとお会いしまして、東日本大地震の際の浦安市の避難所のトイレに関するエピソードを伺いました。浦安市は、津波の被害はなかったものの、液状化による家屋など建物の傾きや沈下により、多くの市民の方々が避難所生活を余儀なくされました。 御承知のとおり、東日本大地震は東北から関東までの極めて広いエリアにさまざまな被害をもたらし、発災翌日から避難所生活が始まったわけですが、予想を上回る避難者が集まった場合に最も苦慮する問題がトイレ問題です。浦安市でも、避難所開設とともに、関東近県の資材レンタル会社に仮設トイレの依頼を行いましたが、数に限りがあり、結局関西エリアから取り寄せて設置しました。ところが、その多くが和式仮設トイレであったことから、利用者からの、特に高齢者からの苦情が多かったことで、別の手段での洋式化を順次行ったとのことでした。 本県でも、多くのイベント会場で見かける仮設トイレは、8対2の割合で和式が主流であり、県民の多くがふだん使いなれている腰かけ型洋式トイレと異なる形状で快適なトイレタイムをとることができるか極めて疑問です。私は、こうした仮設トイレ問題も、次の大地震に備える重点課題だと考えております。 県として、仮設トイレの洋式化を加速するべく市町村に働きかけるとともに、県下資材レンタル会社などにも申し入れを行うべきではないかと考えますが、林業振興・環境部長に御所見をお伺いいたします。 ◎林業振興・環境部長(川村竜哉君) 災害時の仮設トイレにつきましては、県と仮設トイレの全国規模のメーカーとで協定を締結しておりまして、市町村から支援要請があれば、その要望を県が取りまとめて、協定先から被災市町村へ供給をしていただくこととしております。この協定の中では、供給いただく仮設トイレについては、原則として、和式を洋式に改修したものを含めて洋式で供給していただくこととしております。 また、市町村に対しましても、高知県災害廃棄物処理計画におきまして、仮設トイレの洋式化の検討など、バリアフリー化に向けて可能な限りの資機材の備蓄を求めているところでございます。引き続き、災害時の仮設洋式トイレの確保に向けて取り組みを推進していただくよう、市町村のほうに周知を図ってまいりたいと考えております。 あわせて、県内の資材レンタル会社等の事業者に対しまして、仮設トイレの保有状況等を把握する中で、仮設洋式トイレの取り扱いを拡大していただくよう申し入れをしてまいりたいと考えております。 ◆2番(上田貢太郎君) 高知市では、来年度予算案において、津波浸水区域外での避難所39カ所にマンホールトイレを整備するための設計費やトイレトレーラー購入費が計上されています。こうした県内市町村の状況も見ながら、引き続き、いざというときの備えに努めていただきたいと思います。 次に、災害時におけるドローンの利用に関して質問いたします。現在、国交省を初めとし、さまざまな機関、団体から、災害時におけるドローンの活用方法に関する報告書や提言書が出されております。本県においても、さまざまな分野でドローンの活用が浸透してまいりました。土木建設業界では、工事現場における状況把握、不動産業界では、大型土地取引に伴う現状把握、また一部消防でも、人が立ち入れない災害現場の被害状況の把握などのため、導入が始まっております。 国土交通省の発表による飛行許可申請数は、月平均で2016年度1,128件、2017年度1,650件、2018年度は3,000件を大きく上回りました。反面、2017年11月に岐阜県大垣市で開催されたイベント中の事故においては観客3名が負傷するなど、事故の発生件数も年々増加しており、安全対策の強化が課題となっており、法律の規制も強化されております。とはいえ、災害時におけるドローン活用の優位性はこれまでの被災地でも立証されており、本県におきましても本格検討を行う必要があると考えます。 そこで、県におけるドローンの導入状況について、危機管理部長にお伺いいたします。 ◎危機管理部長(堀田幸雄君) 県におけるドローンの導入状況につきましては、災害箇所の調査などを行うため土木部に19機、林業振興・環境部に21機、農業振興部に9機など、全庁合計で65機導入しています。また、操縦できる県職員は約150名という状況です。 ◆2番(上田貢太郎君) 最後、ドローンに関します災害時の協力要請を行う仕組みにつきましては、時間の関係上、要請とさせていただきますが、ドローンを用いる災害時の初動に関しては、こうした既にあるドローンを使える団体や個人と事前協定を締結し、自治体及び警察、消防などから速やかな要請を行い、いち早く状況が把握できる仕組みづくりが必要かと思いますので、今後災害時に協力要請を行う仕組みをぜひ御検討いただきたいと思います。 最後になりますが、本日は、外国人材の受け入れ拡大、観光振興、IoPプロジェクト、南海トラフ地震対策についてお伺いいたしました。特に、外国人材の受け入れは、今後自治体間競争も激しくなることが考えられる分野です。本県には他県に誇れるさまざまな資源がありますので、そうした強みを生かして積極的に取り組んでいただきたいと思います。 以上で、私の一切の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手) ○副議長(弘田兼一君) 以上をもって、上田貢太郎君の質問は終わりました。 ここで午後2時5分まで休憩といたします。   午後1時59分休憩-----------------------------------   午後2時5分再開 ○副議長(弘田兼一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 一問一答による議案に対する質疑並びに一般質問を続行いたします。 依光晃一郎君の持ち時間は50分です。 16番依光晃一郎君。 ◆16番(依光晃一郎君) 本日は、南海トラフ地震対策について質問をさせていただきます。 濱田知事は、令和2年度予算における南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化について、これまでの取り組みの結果明らかとなった課題を踏まえ、対策を充実強化するという方針を示されました。知事は、東日本大震災のときに消防庁の課長として指揮をとられ、また大阪府副知事時代には大阪府北部地震も御経験されたとお聞きをしております。私は、知事の災害現場で指揮をとられたという御経験に大変期待をしております。南海トラフ地震対策において、県内でどういったことが起こるのか、また災害対応に当たる職員がどういった状況に置かれるかについて、大規模災害を経験したからこその経験に基づいたイメージを持たれているだろうと考えるからです。 私は今回の質問で、県庁職員の皆さんが災害対応を行うときに、時間の経過とともに肉体的にも精神的にも厳しくなっていく状況になることを前提にして質問させていただこうと思います。行政を動かす行政職員も生身の人間であって、当然ながら、大規模災害に遭遇すれば動揺もするし、肉体的・精神的影響からふだんどおりの仕事ができない場合だってあるはずです。しかし、現在の復旧・復興計画においては、行政職員はふだんの訓練と同じように仕事ができるという前提で計画が練られていることと思います。 本日は、県庁の皆さんから見れば、これまでの計画に、私が本当にできるのと疑ってかかるという嫌な質問ばかりですが、決してこれまで積み上げてきた議論を否定するものではなく、県民の命を守り、早期の復興をなし遂げるために、職員の肉体的・精神的負担についての想定をも盛り込む、災害対応の精度を上げるための質疑だと思っておりますので、お許しをいただければと思っております。 まず最初に、平成30年3月に改定された高知県南海トラフ地震応急対策活動要領から見ていきたいと思います。この応急対策活動要領は、平成25年に策定され、県庁職員が地震後に行う業務について各部署ごとに整理をしております。平成30年の改訂では、熊本地震の教訓やこれまでの訓練などを通じて見えてきた課題に対応すべく、バージョンアップを行ったということです。 この平成30年の改訂で、まず初動対応についてのスピード感が増しました。やるべきことの着手時間が短縮されたのです。具体的には、初動の72時間について、6時間、72時間という2つのフェーズが、3時間、24時間、72時間と3つのフェーズに細分化され、全体としては4段階から5段階のフェーズへと、よりきめ細かな対応に改訂されました。加えて、昨年からは国が南海トラフ沿いで異常な現象を観測し、地震発生の確率が高まった場合に発表する南海トラフ地震臨時情報への対応も準備が進んでいるところです。 私は、南海トラフ地震に対する初動の一番最初は、地震発生後大きな揺れが到達する数秒から数十秒前に警報が発せられる、緊急地震速報であると思います。地震の数秒から数十秒前の情報で何ができるかという疑問があるかもしれませんが、重い家具が倒れるなどの危険のある部屋から移動したり、机の下に隠れて頭を守るなど、命を守るための時間を確保するとても大事な情報です。 この緊急地震速報については、誤報などのトラブルが全国ニュースで流れることもありますが、技術の進展によって、今後は改善されるものと思います。特に、令和5年度には高知県と九州をつなぐ海底ケーブル式の地震・津波観測システムN-netが整備される予定で、これまでに整備されているDONETに加え、観測範囲が広がるため、さらに精度が上がるのではと期待をしております。 まず、高知県が長年にわたって国に政策提言してきたN-netの稼働後の効果について知事にお聞きをいたします。 ◎知事(濱田省司君) お話がございましたDONETあるいはN-netと言われますような地震・津波の観測システムについては、地震あるいは津波を海底でリアルタイムに検知することができるシステムでございまして、大いに期待をしているところでございます。 現在、南海トラフ地震の震源域でございます熊野灘沖から室戸岬沖まではDONETがお話にありましたように整備済みでございまして、空白エリアとなっております高知県沖から日向灘海域において、N-netが昨年度から整備に着手されたという状況にございます。このN-netの運用が開始されますと、地震の発生を今まで以上に迅速に捉えることが可能となります。揺れは最大で約20秒、津波は約20分、従来よりも早く検知できる見込みというふうに聞いております。 この結果、ただいまお話がありました緊急地震速報の配信がこれまで以上に早くなることが期待できまして、その時間を生かして、早い時点から揺れから身を守ることが可能になるということでございます。また、津波情報の配信につきましても、より迅速化、高精度化につながりまして、津波からの避難をさらに早く呼びかけることが可能になることが期待されるということでございます。 そういう意味で、県民の皆さんの命を守る対策として絶大な効果が期待をされますので、今後もN-netの早期完成に向けまして、引き続き国に対して働きかけを続けてまいりたいと思います。 ◆16番(依光晃一郎君) 次に、緊急地震速報を多くの県民に伝えるための受信機の整備状況についてお聞きをいたします。多くの方は、緊急地震速報を携帯電話の緊急速報メールという形で受け取り、次にテレビやラジオなどから情報を得る方が多いのだと思います。一方で、携帯電話を持たずに外出することもありますし、自宅にいてもテレビやラジオの電源が入っていない場合もあります。そのため、全ての県民が緊急地震速報の情報を受け取るためには、あらゆる状況を想定して、できるだけ多くの場所に緊急地震速報受信機を整備することが必要です。 そこで、県や市町村の公共施設、学校、屋外スピーカーなどへの緊急地震速報受信機の設置状況についてどれだけ進んできているのか、危機管理部長にお聞きをいたします。 ◎危機管理部長(堀田幸雄君) 緊急地震速報の受信機につきましては、携帯電話の使用が制限される学校や病院を初め、一般に開放している施設に設置を進めてきました。県の施設においては、県立学校や県立病院の全てが受信機を設置済みであり、その他一般に開放している施設も含めて、97の施設が既に受信機を設置しています。市町村の施設においては、全ての小中学校が受信機または緊急地震速報の放送設備を設置済みであるとともに、保育所や図書館、公民館などのその他の施設についても、1,241の施設中875の施設が設置をしてございます。 また、緊急地震速報は、全国瞬時警報システム、いわゆるJアラートによっても配信されますことから、市町村の防災行政無線とつながっている全ての屋外スピーカーや戸別受信機でも住民に知らせる仕組みになってございます。 ◆16番(依光晃一郎君) ありがとうございます。質問をつくりながら、危機管理部の皆さんが頑張っていただいて非常に進んでいることがわかりました。 次に、県庁の本庁に設置される災害対策本部についてお聞きをいたします。災害対策本部は、地震発生と同時に自動設置される、災害対応のための唯一の司令塔です。この災害対策本部が発生後にやるべきことは、先ほど述べた高知県南海トラフ地震応急対策活動要領にまとめられており、平成30年の改訂で時間が短縮され、加えて第2フェーズでは、24時間以内に着手すべく3つの業務を明確にしました。それは、1、避難所・在宅被災者を合わせた被災者の状況把握、2、応急救助機関の活動拠点の確保及び拠点での活動調整、3、災害等従事車両証明書発行の調整の3つです。簡単に言えば、県民の命を守るための情報収集、医療体制整備、人、物を運ぶための基盤整備を、災害対策本部が司令塔となり24時間以内に立ち上げるのです。 私は、この災害対策本部について、8年前の平成23年6月議会の初登壇時に質問して以来、同じ心配を申し上げさせていただいております。同じ心配を申し上げてというのは、高知県庁3階の防災作戦室及び本庁内で、活動要領に書かれた司令塔業務全てを行うのは今のままでは無理があるのではという心配です。昨年の選挙で、知事が災害対応の経験豊富な濱田知事にかわられましたので、改めて質問をさせていただきたいと思います。 まず最初に、人員についてお聞きをいたします。高知県は、最大クラスの地震・津波という条件下で、県職員に対して、応急対策業務をすべき職場にどれくらいの時間で参集できるかというアンケートをとっております。結果は、3時間以内に参集が34.8%、1,256人、24時間以内が46.6%、1,682人、72時間以内が67.5%、2,434人という回答です。多くの職員が、地震後の大混乱の中で、県庁での仕事のために、困難を乗り越えて自宅から高知県庁に参集するのです。私はこのアンケートを見て、県職員の皆さんの業務に対する責任感に頭の下がる思いです。 この地震後の参集については、大きな課題である高知市の長期浸水問題があります。高知県の防災マップによれば、最大クラスの地震が発生すれば、県庁の西側は1メートル以下の浸水、東側は2メートル以下の浸水となっております。当然、これまでの堤防の強靱化などにより、想定よりも水位が上がらない可能性や、近傍待機職員は出勤するまでの時間には浸水していないという時間的余裕もあるでしょう。しかし、参集して業務に取りかかることができれば浸水の問題は今後は考えなくてよいということではなく、災害復旧の長期的な闘いを継続していく中において大きなハンディとなり続けます。 防災マップの示す地図から私が連想するのは、豊臣秀吉による備中高松城の水攻めで、城の周りが池となった落城寸前の姿です。私の連想は悲観的な想像かもしれませんが、最大クラスの地震が起こった後、県庁に登庁するため、また家に帰るために安全に移動できる道の指定など、浸水のハンディを乗り越える準備をしていくことが重要ではないかと思います。このことは、職員の安心につながるはずです。 また、アンケートでは、参集途上に津波浸水域がある場合は参集に支障が出るため、一律に参集時間を2時間余分にかかるものとしたということが書かれていますが、例えば小学校区ごとに通勤ルートなどをシミュレーションしておけば、もう少し正確なアンケートとなり、初動対応の人員予想の精度が上がるのではと考えます。 そこで、高知県防災マップにある津波予想図、予測時間、液状化可能性予測図をもとに、県庁職員の通勤ルートについて、例えば小学校区ごとのルートについて事前に検討し、職員に周知しておくことができないか、危機管理部長にお聞きをいたします。 ◎危機管理部長(堀田幸雄君) 職員一人一人が、南海トラフ地震が発生した直後における自宅から参集場所までのルートを、津波の浸水予測区域や到達予測時間などのリスクも含めて考え、あらかじめ検討していくことは重要なことだと考えています。各職員には、毎年年度当初に、大規模地震発生時の参集可能場所を登録してもらっていますが、その際津波浸水予測区域などを踏まえた参集ルートを各自に検討してもらっています。 県では、勤務時間外に南海トラフ地震が発生した場合でも、災害対策本部会議を発生1時間後に開催することを目指しています。そのため、勤務時間外に実際に職員が参集して本部会議を開催してみる参集訓練を来年度は実施することとしています。その結果も踏まえ、各自が考えている参集ルートなどが適切かどうか検証してもらい、必要に応じて参集ルートを見直すよう取り組んでいきたいと思います。 ◆16番(依光晃一郎君) ありがとうございます。訓練をするということで、非常に有効だと思います。それで、アンケートをとるときに、自分がどういうふうに移動するかと考えながら答えた職員さんもいれば、気合いで入れた、ある意味そういう方もいるかもしれないです。そういう意味でいくと、イメージしやすい情報提供をした上でアンケートに答えてもらうと非常にいいと思います。 それと、通勤時間が歩いて1時間を超えてくると、これはなかなか大変じゃないかなあと思います。往復、1時間1時間で2時間、毎日歩かんといかんということになると、一番最初に述べましたけれども、やっぱり体力的なこともあろうかと思いますので、ぜひともそういうところも含めて訓練をやっていただきたいと思います。 次に、災害対策本部の運営に支障のない人数の確保についてお聞きをいたします。県の応急対策活動要領では、各所属ごとに必要最小限人数、必要適正人数を設定しており、万が一職員が不足する場合は、人事課を通じて職員の補充を要請することになっております。また、退職者等の活用も検討するとあります。 私は、初動対応においては、かなめとなる災害対策本部、保健医療調整本部については他の部署に優先して、経験のある人員の確保が行われなければと思います。例えば、危機管理部など災害対応の部署で仕事をし、その後他の部署に異動になった職員で、5年未満の職員は、自動的に以前の災害対応部署に所属することを明確に決めておくべきだと思います。また同様に、退職された方も、5年以内であれば、災害対策本部立ち上げ後速やかに知事が臨時的任用職員として採用するような仕組みも必要ではないかと思うところです。頭数をそろえれば業務が遂行できると考えるのではなく、経験を重視した質の人員確保です。 そこで、初動対応において経験豊富な人員を確保するための職員補充のルールを退職者も含めて検討しておくことはできないか、総務部長にお聞きをいたします。 ◎総務部長(君塚明宏君) 発災直後の初動時におきましては、事前に定めた職員配置計画に基づく参集や指揮命令を行う職員の近傍居住などによって、人員確保の確実性を高めております。その上で、人員が不足する場合には、人事課が災害対策本部事務局等と調整して、他の部署からの人員の補充を行うこととしております。 経験を有する職員を補充するためのルールにつきましては、今後他県の例も参考にしながら、御提案のような過去5年以内に異動した経験者をリスト化し優先的に補充するなどの方策を関係部局と検討してまいります。また、退職者につきましては、本県では過去5年間の退職者に対しまして年2回文書をお送りし、大規模災害の復旧・復興活動において臨時的任用職員などとして協力いただきたい旨を呼びかけているところであります。 ◆16番(依光晃一郎君) 前向きな御答弁だったと思います。経験のある職員さんが戻ってきてくれるというのは非常に心強いことだと思います。 熊本地震を聞いたときに、何が困ったかというと、地震が平成28年4月14日に起こったということで、異動した直後だったと。で、全く経験していない中で災害対応せんといかんとなったときに、職員さんが帰ってくる仕組みがあったので助かったというお話を聞いて、高知県庁の職員さんも、5月、6月になれば本当にハンディなくやられる能力はあると思うんですけれど、そういった直後のことを考えると、やっぱり3月に起こるのと4月に起こるのとで対応能力に差があってはいかんと思います。退職者も含めた形でと御答弁いただきましたので、ぜひともよろしくお願いします。 次に、災害対策本部の能力が継続して維持されるための準備についてお聞きをいたします。質問冒頭に、県職員も生身の人間であり、ふだんどおりの能力で災害対応に長期間対応できるかには疑問があるということを述べさせていただきました。県職員はスーパーマンであるという前提への疑問です。 例えば、東日本大震災や熊本地震の対応に当たられた方のお話をお聞きする機会がありましたが、48時間全く休息をとることができなかったという壮絶なお話、また人は寝ずに仕事をし続けるとあり得ないようなミスが出るといったことをお聞きいたしました。高知県でも同じような状況が予想されますが、私が懸念するのは、休息のための交代要員がいるのか、また休息する場所がどこなのかということが明確になっていないのではないかということです。 他県の事例では、忙しい災害対応ではあっても、災害対策本部のある県庁周辺は津波や地震の被害は比較的小さく、高知県のように震度6強の地震が来た後に浸水被害で陸の孤島となるような場所ではありません。他県の当たり前を高知県の前提にしてはいけないのではと思います。例を挙げれば、災害対策本部長は濱田知事ですが、知事公邸も浸水区域にあることから、休息のために知事公邸に戻ろうとしても、戻ることだけでも一苦労となります。 また、責任感のある県職員の方々の休息は、強制的に休息をとらせるような仕組みをつくらなければ、みずからの意思で、疲れたから自宅に一旦帰ってきますというようなことは自分から言い出せないのではと思います。また、食べ物の調達やトイレが当たり前に使えるのかということも、個人的には心配です。 高知県の災害対策本部の業務は長期化が予想されますが、現状の計画において、災害対応に当たる職員の交代体制がどうなっているのか、危機管理部長にお聞きをいたします。 ◎危機管理部長(堀田幸雄君) 長期間に及びます応急対策業務を遂行するとき、職員の心と体の健康を維持するためには、健康管理と疲労の予防が重要でございます。 高知県南海トラフ地震応急対策活動要領では、大規模災害が発生し、長時間の対策が必要と判断された場合には、職員の勤務のローテーション計画を策定することとしています。ローテーション計画の策定に当たっては、1日の作業時間は12時間、1週間の作業時間は60時間を超えないようにすることとなっています。そして、原則として、1週間に最低1日は休みを確保するとともに、1人の職員が帰宅しない日が3日を超えて勤務することがないようにすることとしています。 ◆16番(依光晃一郎君) 御答弁いただいたローテーション計画があるということですので、それに基づいてですが、これはもう精度を上げていただくしかないと思います。一応、いろんな気配りがあるということがわかりましたので、また計画を通じて訓練などをやりながら精度を高めていただきたいと思います。 次に、災害対策本部のスペースについてお聞きをいたします。私は、災害対策本部のある防災作戦室などのスペースは余りにも小さいのではと考えております。先日、熊本県にお伺いして当時の状況をお聞きしましたが、高知県よりもずっと大きなスペースにもかかわらず手狭であったと教えていただきました。そこで、熊本県は、新たな防災拠点施設の建設を計画しているようです。どういった部分について手狭であったのかとお聞きすると、国や自衛隊から派遣された連絡員の方々のスペースが追加で必要となったこと、また全国からのマスコミの皆さんが殺到したことも手狭になった理由とのことでした。 私は、他県からの応援の方々に災害対策本部に入ってもらって業務を助けてもらうことは非常に有効だと思いますが、そのためには、その方々のための活動スペースが必要です。また、他県から来るマスコミの方々を想定したスペースも必要です。現状の県庁2階の記者クラブのスペースで十分なのか、事前に情報交換を行っておくことも必要ではないかと思うところです。ちなみに、熊本の新たに整備される防災拠点施設にはマスコミ用の控室も設けるとのことでした。 そこで、全国の災害対策本部機能と比べた場合、高知県庁の災害対策本部のスペースについてどういった課題があると考えているか、危機管理部長にお聞きをいたします。 ◎危機管理部長(堀田幸雄君) 災害対策本部の事務局が災害対応を行うスペースとしては、本庁舎3階の防災作戦室がメーンとなります。防災作戦室は、台風や豪雨災害の場合には十分な広さでありますが、南海トラフ地震の場合には手狭となります。そのため、防災作戦室の隣の共用会議室も事務局が使用することとしており、これら2室で一定の広さは確保できる状況でございます。 しかし、毎年実施している南海トラフ地震を想定した訓練でこれら2室を使用していますが、大変混み合った状況になることから、もう少し広いスペースが欲しいというのが正直な思いでございます。また、各都道府県の災害対策本部が使う業務スペースの平均面積と比べても若干狭くなっているという状況でございます。このため、平時に職員が執務しているスペースも活用するなどの工夫も今後検討してまいりたいと考えています。 一方、国から派遣されてくる職員の執務スペースについては200平米程度が必要であると国から示されていることから、本庁舎1階の正庁ホール約400平方メートルを使っていただくようにしており、十分な広さを確保して受け入れができる状況にあります。 ◆16番(依光晃一郎君) 作戦室に関してですけれども、別に建物が--お金のある都道府県なりは別のスペースを構えるということもできるかと思うんですけれど、高知県においては県庁で対応されるということなので、いろいろな訓練とか見直しも含めて、何とかやっていくしかないんだと思います。後にもありますけれど、やっぱり効率化することで人を減らしていくということも可能性があるんではないかなと思います。 それに関連して、次に情報収集の効率化についてお聞きをいたします。私は、これまでの議会質問でも、被災状況などの情報収集業務は県庁本庁にある必要はなく、いわゆるコールセンターのような業務として、津波の被害のない地域、例えば高知工科大学のような場所で行えばよいのではと提案をさせていただいておりました。情報収集の拠点で整理された情報を県庁本庁に集め、災害対策本部は意思決定に特化すべしという趣旨です。 その前提となるのが、情報収集の効率化を担う情報システムです。高知県の情報システム活用については、高知県の総合防災情報システムが発注される前の平成25年3月定例会予算委員会において、静岡県の、ふじのくに防災情報共有システムという当時日本で最も進んだシステムをそのまま活用することができれば、多大な費用もかからず、性能においても実証されたシステムとして運用できるのではと提案をさせていただきました。 結果は、自前で高知県総合防災情報システムをつくりましたが、高知県の豪雨災害でも活用され、すばらしい効果を上げていると評価をしております。一方で、多大な予算と性能がつり合っているのかといえば、疑問も持ち続けています。 余談ですが、多大な費用を要するコンピューターシステムの発注に関しては、昨年度高知県の監査委員を務めさせていただいた際に、全国的な課題となっていることを知りました。高度なコンピューターシステムについて、高いのか安いのかなど、予算が適切に執行されたのか判断する知識が監査委員事務局には乏しいという問題です。個人的には、専門的な知識を持った人材を監査委員をサポートする形で配置できないかと思います。 また、平成27年度の高知県歳入歳出決算審査報告書において、平成28年の決算特別委員会からの指摘として、総合防災情報システムについては発災時に他県から派遣される救助機関等や市町村が利活用しやすいものが望ましい、ついては発災時に円滑なシステムの運用が可能となるよう市町村等と連携した訓練を行うとともに、システム改修の際にはシンプルでわかりやすいものになるよう留意することを望むということが述べられています。あわせて、令和元年8月の中国四国九県議会正副議長会にて、平成30年7月豪雨からの復旧・復興についての具体的な事項として、全国の自治体が災害対応のためにおのおので開発、運用している総合防災情報システムのほか、被災者台帳システム、物資調達システム等について、国が主導して全国統一システムを導入することという事項が議決されました。 最近では、防災科学技術研究所が無償提供しているSIP4Dという災害時の情報共有システムが、大阪府北部地震、平成30年7月豪雨、北海道胆振東部地震などで活用されています。 そこで、総合防災情報システム、被災者台帳システム、物資調達システムなどの情報システムは災害対策本部の業務を効率化し人員を削減する効果があると思いますが、デジタル化を進展させていく濱田県政において、災害対策のための情報システムをどのようにバージョンアップしていくおつもりか、危機管理部長にお聞きをいたします。 ◎危機管理部長(堀田幸雄君) 現在運用しています各種の防災関係システムを統一化することは、県や市町村における災害対策本部の業務の効率化に非常に有効であると思います。そうしたことから、全国知事会では、国が主導して全国統一のシステムを導入するよう提言を行っています。今後も粘り強く提言活動を続けていくことになろうと思いますが、既に各自治体が独自のシステムを導入している現状から考えますと、統一化には年数を要する面もあるかと考えられます。 一方で、本県が独自に整備しました高知県総合防災情報システムにつきましては、これまで実際の台風や豪雨災害などにおいて、県と県内全ての市町村が毎年何度も活用してきており、防災担当職員の間で使いなれたものとなっています。このため、今後は新たな課題に対応するためのニーズやシステム技術の進展動向を注視しつつ、必要に応じて一部を改修するといったバージョンアップを図ることとして、当面は可能な限り現在のシステムを継続して活用したいと考えています。 ◆16番(依光晃一郎君) ありがとうございます。全国統一システムということで、これからどうなるかはわからないですけれども、国がやるんであればそっちに乗って、それで訓練を通じてなれていくということが自分はいいのではないかと思います。他県から応援される方々が来たときに、全国の共通フォーマットであったりとか、いろいろな面で助けてもらうことを考えたら、高知だけで独自にガラパゴス化して進化するよりは全国のほうがいいのかなと思いますので、またこれは検討もしていただきたいと思います。 次に、県民の不安を解消させる情報発信、問い合わせへの対応についてお聞きをいたします。大災害の発生後の災害対策本部の大切な業務として、知事メッセージ及び対応方針の発信があります。この災害対策本部からの情報提供は、県民に被害の状況を説明し、その被害に対して行政が迅速に対応している、だからもう少しの辛抱で大丈夫という安心を与える大切な情報です。また、災害発生後は状況確認のために、県庁や市町村役場に県民からのいろいろな問い合わせがあると思いますが、知事の状況説明はその問い合わせを減らすことにもなり、災害対策本部のマンパワーを確保することにもつながります。 また、多くの災害現場では、マスコミとのコミュニケーションをうまくできるかどうかも鍵で、マスコミの問い合わせに対応するために、例えば静岡県では危機報道官という専任の職員を置いています。この職員は、災害対応の経験が豊富な人が人選され、マスコミにとっては、災害対策本部がどういった対応をしているか詳しく聞くことができます。また、テレビ局のインタビューなどにも知事などにかわって対応できることから、知事や部長、課長などが業務に集中することができます。 しかし、県民からの問い合わせはゼロになるわけではありません。そこで、県民からの問い合わせに対しては、インターネット上でAIを活用した自動回答システムなどが効果を発揮するのではと思います。要するに、重要な情報や問い合わせにだけマンパワーを割くことができる情報のトリアージとなるのです。 そこで、災害時にネット上でのAIを活用した自動回答システムを導入することについてどのように考えるか、総務部長にお聞きをいたします。 ◎総務部長(君塚明宏君) AIを活用した自動回答システムは、事前に質問と回答を入力しておいて、質問があった際にキーワードをもとに最適な回答を表示するというシステムです。キーワードと回答の適合率を高めるためには、大量のデータと検証をAIに学習させる期間が必要となります。このため、災害時において刻々と変化する状況に関する質問には対応が難しく、事前に準備ができる一般的、定型的な質問に限られてくるものと考えております。 新年度からは、消費生活相談などの分野でよくある質問をAIを用いて自動的に回答するシステム、AI-FAQシステムを導入していくこととしておりまして、ここで得られる知見も踏まえて、災害時における活用について研究をしてまいります。 なお、AIの活用を前提とせずにマンパワー確保や県民の方の利便性の向上につなげるという観点からは、第1段階として、その時点で想定される質問と回答をネット上に掲載する、第2段階としまして、キーワード検索などによって質問と回答の絞り込みを行えるようにする、こういったことが考えられます。こうしたことであればシステム改修以外には技術的な課題は少ないことから、発災時にはこういったことができないか対応を検討してまいります。 ◆16番(依光晃一郎君) いろいろな想定のもとで事前に対応しておくことで、重要でない問い合わせが減るということはすごい大事なことだと思います。 それで、去年総合防災訓練を香美市のほうでやられましたので、見させていただいたときに、中央東福祉保健所でひたすら電話をかけ続ける部隊をつくって、ひたすら担当の方が電話をとり続けるということを見させてもらったんですけれど、1時間とか2時間でへろへろになるというふうな状況でした。だから、やっぱり電話をとるという作業は、なかなか大変な業務で、それを災対本部で持ち込むとかなり大変なんじゃないかなということもあるので、今回質問はしなかったんですけれど、電話対応についてもまた検討も進めていただければと思います。 次に、受援力にかかわる事前準備についてお聞きをいたします。知事は議会冒頭の提案説明において、受援体制の強化などのソフト対策にも一段と力を入れて取り組みますと述べられ、加えて、本県では現在消防や警察、自衛隊などの応急救助機関の受け入れや活動調整、物資受け入れのための計画などを定めており、これらについて、より実践的な訓練などを通じて検証や見直しを行い、実効性をさらに高めてまいりますと表明をされました。 私は、他県から助けてもらうことを積極的に肯定し、他県から来るプロ集団がその能力を発揮できるような事前準備をこれまでとは違った決意で実行していくと表明されたと受けとめました。他県に頼ることを表明するということは、みずからやるべき行政の仕事を放棄することとして受けとめられるおそれもありますが、私はむしろ、できないことはできないと素直に表明することで、他県のプロ集団の能力を発揮してもらうためにどうしたらよいかという発想に転換して、災害からの復旧・復興で御苦労されたプロ集団の経験を高知県の防災力として余すことなく取り込むことができる効果的な方法だと思います。 さて、他県からの応急救助機関や職員派遣、一般ボランティアに高知県、市町村が助けてもらわなければならない業務は、医療・保健・福祉関係の事務、ライフラインの復旧、被災者対応に関する業務、被害調査業務、さまざまなボランティア活動などが考えられます。こういった方々に能力を発揮してもらうためには、業務だけに集中してもらうための準備が不可欠です。災害支援業務の割り当て、宿舎の確保、食料の供給、実際の業務地までの移動手段の確保などの事前準備です。 最も大事な災害支援業務の割り当てについては、土地カンがなく仕事のやり方が違う方々と、どうやって効果的に業務を処理していくかということになると思いますが、他県との合同連携訓練などを通じて今後改善されていくと思いますので、本日は、宿舎の確保、食料供給、移動手段についてのみ議論をさせていただきます。 現状のプランでは、例えば東部の広域総合防災拠点である県立青少年センターが、応急救助機関が活動する拠点の一つになり、受け入れ人数は210名ということです。私は、こういった整備はもっと必要だと思っていますし、活動拠点から遠いベースキャンプ地も有効ではないかと考えるところです。一般的には、自衛隊以外の組織は自前で宿舎、食料、移動手段を持たないので、高知県側が事前に準備できる量に応じて他県からの災害支援部隊の人員が決まることになります。そうであるならば、災害時に災害支援部隊を受け入れるためのベースキャンプ拠点がもっと立ち上がれば、他県からの応援部隊を最大限受け入れることができて効果的です。 このベースキャンプについて、私は、それなりの人数が災害対応業務で疲れた体を癒やし、食料も提供できる体制が整ったもので、津波の被害があった場所からは遠い場所を想定しております。中山間地域の廃校となった学校や、香美市でいえば甫喜ヶ峰森林公園などの県立公園も有望ではないでしょうか。当然、医療、救護などを担う応援部隊は活動拠点と近いところが便利だと思いますので、場所を確保できるなら近い場所がよいのは間違いありません。しかし、現実には、応急救助活動が継続して行われ、実際には体を休めることができないのではと思います。 消防や警察、自衛隊などの応急救助機関に加え、他県の行政職員や災害ボランティアセンターを窓口とした一般ボランティアなどさまざまな人が県外から応援に入ってくれたときに、その方々が体を休める場所としてどういったところを考えているのか、危機管理部長にお聞きをいたします。 ◎危機管理部長(堀田幸雄君) まず、応急救助機関に関しましては、既に策定をしています高知県応急救助機関受援計画の中に、消防や警察、自衛隊の各部隊が体を休め、宿営などを行う活動拠点の候補地を定めています。具体的には、県立青少年センターなど7カ所の総合防災拠点を初め、学校のグラウンドや公園なども、管理者の御理解を得て活動拠点の候補地として定めており、現在県内に58カ所を選定しています。各応急救助機関からは、これら58カ所の活動拠点により、十分なスペースを確保できているとお聞きをしてございます。また、活動中の休息については、活動拠点に戻るか、大型車両の中などでとることを基本としています。 次に、他県からの行政職員やボランティアの方々に関しては、発災から一定期間が経過してから応援に入ってきていただけるものと考えています。その際、まずは自己完結型の応援をお願いすることとなりますが、休息するスペースについては、議員から御提案のありました公園なども含め、使用できる施設が確保できれば、そちらを利用してもらうよう、市町村と連携して調整してまいります。 ◆16番(依光晃一郎君) 58カ所あるということで計画を練られているということですけれども、後で話をさせていただくんですけれど、グラウンドであるとかいろいろなスペースというのが、例えば災害廃棄物であったりとか仮設住宅を建てたいという市町村の要望とかもあって、現実に運用できるのかということもあろうかと思います。また、自己完結でといったときに、いろんな地域というのは、先ほども述べたように県庁所在地で例えば泊まれるホテルがあったりとか、例えば熊本地震においても泊まれるところがあってそこから移動したということを聞くんですが、高知県内で泊まれるところがあるかというと、多分厳しいだろうということも想定するので、ちょっとそこら辺もぜひ今後検討していただければと思います。 次に、高速道路を有効に活用するための事前準備についてお聞きをいたします。高速道路は、高知県内に整備が進んでおり、災害時には物資や人員の輸送に大きな効果を発揮すると期待されるところです。私は、この高速道路を有効活用するには、災害時に一般道と往来できる箇所をふやすなど、より使える仕組みを事前に構築しておくことが大変有効であると思います。 しかしながら、新たに高速道路と一般道をつなぐ道路を整備するには、関係機関の協議や用地取得などに時間がかかることに加え、大きな費用を要します。このことから、まずは高速道路の整備に使用していた工事用道路などで現在は市道等として供用している道路や、高速道路会社が重大事故等への備えとして管理している避難通路などを活用することが効果的と考えています。 例えば、繁藤地区には、さきに述べた応急機関のベースキャンプや物資の荷さばき拠点として活用ができる、香美森林組合がストックヤードとして利用中の秋ノ谷工業団地や繁藤わかふじ団地などの広場が整備されていますので、災害時に高速道路と繁藤地区をつなぐことができれば、広域防災拠点をバックアップする拠点となるのではと思います。 そこで、災害時における高知自動車道の緊急開口部の活用について、県と西日本高速道路株式会社の間で、大規模災害発生時における相互協力に関する協定が平成24年に結ばれていますが、繁藤地区において災害時に緊急車両が一般道と高速道路を出入りできる体制の構築についてどのような取り組みがされているか、土木部長にお聞きをいたします。 ◎土木部長(村田重雄君) 大規模災害発生時に高知自動車道と隣接する一般道との間を出入りできる緊急開口部の活用につきましては、平成24年に県と西日本高速道路とで協定を締結し、県の要請による緊急車両の通行が確保されている状況です。また、沿線地域の消防や警察、陸上自衛隊高知駐屯地などと西日本高速道路でも、緊急用開口部の使用に関する協定を締結し、緊急開口部の鍵がそれぞれの組織に貸与されており、大規模災害発生時などに緊急開口部を使用できる体制が構築されております。 大規模災害発生時などに活用可能な緊急開口部は、大豊町から土佐市の間で18カ所ございます。そのうちの一つがある繁藤地区では、香美市消防本部や陸上自衛隊高知駐屯地と西日本高速道路とで緊急開口部の開閉訓練が実施されるなど、実効性の確保に向けた取り組みが行われております。 県としまして、今後関係機関と訓練を積み重ね、地域の防災力の向上につなげられますよう取り組んでいきたいと考えております。 ◆16番(依光晃一郎君) 一般道と高速道路をつなぐ道というと、インターチェンジだけじゃなくていろいろな道がすぐ使えるということなので、そういったところを、訓練を通じてちょっと道を広げるとか、そういうことをやっておくといろいろな意味で役立つんではないかなと思いますので、ぜひよろしくお願いします。 また、防災の道の駅とか、国土交通省もいろんな取り組みをやっているんで、そういうところもしっかり受け入れてやっていただけるよう要請をします。 次に、市町村の災害廃棄物の仮置き場の確保についてお聞きをいたします。災害後の道路啓開は、災害復旧に取り組む際の前提条件であり、道路啓開が迅速に行われるかどうかは、高知県民の命にかかわる重大事項です。負傷者の救急搬送の道、救助救援のための道、水や食料を運ぶための道、つまり命の道と言えます。 道路啓開の災害後の業務を減らすためには、主要道路に面していて倒壊する可能性がある建物を耐震化する、または事前に取り壊し撤去しておくことが考えられます。そのためには、耐震改修促進計画が市町村において策定され、計画に基づいて実行されていることが重要です。 しかし、現状では、県と市町村で計画が策定され、地震時に通行を確保すべき道路に関する事項も計画の中に盛り込まれていますが、沿道の建物の耐震診断の義務化にまで踏み込んで当該道路を計画で指定しているのは、県と大豊町のみにとどまっています。県は、耐震改修促進計画改定基礎調査事業費補助金による計画策定のための調査について市町村を応援していますが、できるだけ早急に対応していただきたいと思います。 しかし、その準備にもかかわらず、津波などによって瓦れきが運ばれたり、予想外の建物の倒壊などで、道路は必ず通れなくなります。道路を塞いでいる廃棄物を撤去する道路啓開業務は必ず発生するのです。 この業務を迅速に完了させるためには、道路を塞いでいる災害廃棄物をどれだけ早く移動できるかが鍵となります。多くの場所において、災害廃棄物を最終的に処分する廃棄物処理場は遠いでしょうから、廃棄物の中継場所として災害廃棄物仮置き場が設置されます。そうであるならば、道路啓開のスピードの肝は、優先順位の高い道路の近くにどれだけ多くの仮置き場が確保できるかとなります。しかし、平成31年3月に改定された高知県災害廃棄物処理計画Ver.2においても、いまだに仮置き場の選定は進まず、早急な対応が求められるところです。 まず、災害廃棄物の仮置き場についてどういった場所が適しているかといえば、災害廃棄物の仕分けをしっかりやったほうが処理スピードが速くなることから、仕分けができる大きなスペースが必要であること、また仮置き場の撤去後の原状復帰の際に土壌汚染などがないような事前対策できる場所を選ぶことが必要です。 また、災害廃棄物仮置き場が足らないとどうなるかといえば、近所の公園などがいわゆる勝手仮置き場となり、分別されない生ごみなども含む災害廃棄物が高く積み上がり、異臭と倒壊の危険などで新たな問題を引き起こします。こういったことを解決するための準備には、災害廃棄物仮置き場の確保に向けて、市町村が空き地を災害前に取得するなどしておくことが必要ではないかと思います。 そこで、市町村が公有地や空き地、耕作放棄地などを災害廃棄物仮置き場として確保していくに当たっての県としての取り組みについて林業振興・環境部長にお聞きをいたします。 ◎林業振興・環境部長(川村竜哉君) 災害廃棄物の仮置き場につきましては、議員の御指摘のとおり、南海トラフ地震の最大クラスの被害想定--L2の場合、不足することが想定されてございます。このため、現在県内に6つのブロックで設置しております災害廃棄物処理広域ブロック協議会におきまして、ブロック内での仮置き場の候補地確保の取り組みを推進しております。その中では、公有地や空き地、耕作放棄地はもとより、仮置き場として利用できる可能性のある土地を幅広く抽出する作業を進めております。 引き続き、大規模災害時の前例や専門家の助言などを得ながら、市町村とともに、抽出した候補地を実際に仮置き場として使用する際の課題の洗い出しや、災害時に廃棄物の適切かつ迅速な処理ができるよう、事前の対策に努めてまいりたいと考えております。 ◆16番(依光晃一郎君) ここで要請をさせていただきたいんですが、なかなか仮置き場が市町村において整備されないということで、市町村が土地を事前に確保しておくことは災害に備えた大切なことだというのはどの市町村もわかっていることと思いますが、災害時のみに使う土地ということで、ふだんは必要性がないことや、予算も必要なことから、なかなか進まない現状であると思います。 そこで、ふだんは公園として住民の憩いの場や健康づくりの場となる防災公園として整備できないでしょうか。市町村が国の補助をもらって整備し、いざというときには災害廃棄物仮置き場や仮設住宅用地となる防災公園を整備するのです。 現状の仕組みでは国の補助要件にはならないということですので、市町村の防災公園整備に関する要件緩和を国に提言していただくよう要請をいたします。 次に、災害時に発生する土砂の処分場の確保についてお聞きをいたします。高知県では、南海トラフ地震の際には、津波の被害だけではなく、山津波と言われる土砂崩れなど、山間地域においても事前の対策が必要です。特に、孤立集落を解消するためには、道路を塞ぐ土砂の撤去が不可欠で、先ほどの災害廃棄物仮置き場の事前確保と同様に、私なりに名前をつければ防災土砂処理場という、土砂を処理する場所の事前確保が重要ではないかと考えるところです。 そこで、市町村と連携して、災害時に発生する土砂の処分場として使用可能な候補地を土木事務所ごとに事前調整しておくお考えはないか、土木部長にお聞きをいたします。 ◎土木部長(村田重雄君) 南海トラフ地震や大規模豪雨災害が発生した場合には、災害発生土を処分する場所の確保が必要になります。しかしながら、発生する災害の場所や規模、時期などを特定することが困難であり、事前に処分場を確保することは難しいと考えております。 そのため、まずは各土木事務所におきまして、地形条件などを考慮して、災害発生土の処分場として利用できる候補地を抽出する作業につきまして、市町村とともに行い、情報共有する仕組みを検討いたします。 ◆16番(依光晃一郎君) ありがとうございます。候補地を探すということですけれども、自分は構えれないかという思いが強くあります。 令和2年度から6年度までの緊急浚渫推進事業費、これは非常に有効なものですし、これを有効に活用するかどうかというのは、南海地震対策にもいろいろな意味で、豪雨災害についても意味があることだと思うんですけれど、5年間で掘ることがもうわかっているんですよね。そうすると、どれだけ掘ってそれをすぐ処分できるかというところが肝であると思います。 実際、香美市とかに聞いてみると、この5年間の予算をとるに当たって、捨てる場所を構えるために初年度は用地を買うなりせんといかんという話とか、現状でいえば、今香南市のほうとか安芸市のほうの海岸のほうに持っていったりしているんですよ。だから、距離が長ければ長いほど税金の無駄遣いとは言いませんけれど、何かロスがあるような気がします。事前確保ということは難しいという御答弁でしたけれども、何か知恵を使ってやっていただけないかなあということを要請いたしまして、以上、一切の質問といたします。ありがとうございました。(拍手) ○副議長(弘田兼一君) 以上をもって、依光晃一郎君の質問は終わりました。 ここで午後3時15分まで休憩といたします。   午後2時55分休憩-----------------------------------   午後3時15分再開 ○議長(桑名龍吾君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 一問一答による議案に対する質疑並びに一般質問を続行いたします。 西内健君の持ち時間は40分です。 13番西内健君。 ◆13番(西内健君) さて、長い2月議会も、私とあと森田議員を残す2人だけとなりました。執行部の皆様には、あとしばらくおつき合いをいただきたいと思います。 まず、県立病院についてお伺いをさせていただきます。 国におきましては、全ての団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる、いわゆる2025年問題を見据えて、地域医療構想の策定や医療介護総合確保推進法などを通じた医療制度改革を進めています。また、総務省は平成27年に、医師不足などの厳しい環境が続く中、人口減少や少子高齢化の進展による医療需要の大きな変化に対応する医療提供体制の再構築の必要性から、新公立病院改革ガイドラインを策定されています。これらを踏まえ、高知県においても、平成29年度から32年度までを計画期間とする高知県立病院第6期経営健全化計画を策定しました。 公立病院のあり方としては、もう策定が進んでいます地域医療構想や、また地域包括ケアシステムの構築に向けた動きとの整合性が求められています。一方、県立病院においては、救急医療や小児、周産期などの不採算部門、またがん診療など民間病院では限界のある高度先進医療を担うことも求められているわけであります。 これらの地域医療構想の策定が進んだ中で、県立病院の役割としてそれぞれお伺いをしたいと思います。まずは、幡多けんみん病院について、公営企業局長にお伺いします。 ◎公営企業局長(北村強君) 幡多けんみん病院は、開院以来、急性期医療を中心としまして、民間病院と役割を分担し、地域で完結する医療を提供してまいりました。地域で完結するということで、人口減少の影響をまともに受けまして、急性期の患者が減少しており、地域医療構想においても幡多医療圏の急性期病床数は200床を超える過剰となっております。こうしたことから、本議会に休床中の一般病床33床を削減する条例改正案を提案しておるところでございます。 今後も、主に回復期や慢性期を担う地域の民間病院と連携しながら、救急医療やがん治療などの急性期医療を中心に、地域医療を支える中核病院としての役割を果たしてまいります。 ◆13番(西内健君) 続いて、やはり同じ役割が--少し地域として特性があると思いますが、あき総合病院について公営企業局長にお伺いします。 ◎公営企業局長(北村強君) あき総合病院は、平成24年に新しい病院となりまして、それ以降、急性期医療を充実させるとともに、医療資源の少ない東部地域におきまして回復期も担うなど、ほぼ地域で完結できる医療提供体制が整ってまいりました。東部地域でも人口減少が進んでおりますが、これまで中央医療圏へ4割流出していました入院患者を地域にとどめることによりまして患者数は増加しており、病床が不足する状況も出てきております。 地域医療構想においても、安芸医療圏は必要病床数が100床ほど不足をすることになっておりますけれども、現在の県の保健医療計画で定められました基準病床数にあきがなくて、増床が不可能な状況となっております。 このため、引き続き東部地域の地域包括ケアシステムの中心的な役割を担いながら、地域医療を支える中核病院としての役割を果たしていくとともに、今後の地域の医療ニーズや病床数の動向も踏まえまして、医療提供体制を検討してまいります。 ◆13番(西内健君) 今後も、それぞれの県立病院の各医療圏域での役割というのは重要になってくると思います。 そういった中で、厚生労働省から昨年9月に地域の公立424病院についての再編統合に関しての発表が行われ、物議を醸しているわけであります。しかしながら、民間医療機関では利益が出にくい、そういった分野を公立病院というのは担っているわけで、特にそこには必要なら一般会計から繰り入れが必要であり、地域の医療を守るために税金投入が行われているわけであります。そして、総務省で定める基準に基づいた地方交付税措置がそれらの繰入金になされているわけであります。 経営健全化計画は来年度が最終年でありますが、現在の両病院の経営状況について公営企業局長にお伺いしたいと思います。まずは、幡多けんみん病院についてお伺いします。 ◎公営企業局長(北村強君) 幡多けんみん病院では、救急医療やがん診療などの高度で質の高い医療を提供しておりまして、診療単価は上昇している一方で、人口減少の影響を受けまして、病床利用率は70%台で推移しております。そして、昨年度は想定以上に患者数が減りまして、4億円の経常赤字となっておりました。 このため、本年度、地域の医療機関との連携をさらに強化することで患者数の増加につなげ、1月末時点での医業収益は昨年度比で6億円の大幅な増収、経常収支でも3億円の改善を見込んでおります。ただ、ここに来まして新型コロナウイルスに対する院内の感染防止対策や感染症患者の受け入れのために受診を抑制いたしておりまして、経営面への影響を懸念しているところでございますが、来年度病床再編により経営の効率化を図ってまいります。 ◆13番(西内健君) 同じく、あき総合病院についてお伺いをさせていただきたいと思いますが、公営企業局長よろしくお願いします。 ◎公営企業局長(北村強君) あき総合病院では、常勤医がいない診療科の解消や複数配置を進めまして、心臓カテーテル治療や脳の血栓治療などの高度な医療を充実させてきており、診療単価が上昇するとともに病床利用率が90%を超えるなど、患者数も増加しております。医業収益も順調に増加しておりまして、平成29、30年度と、この2年間は経常黒字となっております。今年度も現時点では黒字を見込んでおりまして、来年度以降も安定した経営状況が続くと考えておりますが、幡多けんみん病院と同様に、新型ウイルスによる影響を懸念いたしております。 ◆13番(西内健君) 数字についてお伺いしてきたわけでありますが、収益改善のためには、一般には、費用の上昇以上に収益を上げていくか、落ち込み以上に費用を削減する必要があるわけです。一般に行政が行う場合には、収益向上よりも経費の削減、いわゆる人員抑制策に意識が向かいやすいという傾向があります。国の診療報酬政策は、かつては薬価差益への重点配分であったわけですが、現在は技術や医療提供の質に対して配分が重点的に行われているわけであります。 そういった観点から、職員定数の抑制一辺倒ではなく、病院職員の採用を積極的に図ることで収益を高めたケースも見られます。逆に、医療提供能力が落ちると、入院・外来患者の流出を招き、収益を悪化させるケースもあるわけです。医師や看護師などの職員をしっかりと確保し、医療提供能力を向上させ、入院単価、また入院患者数、外来単価などの増加を実現することで収益改善を図ることが有効だと思われます。例えば、内科医が不足すれば手術件数が減って、病床もあくことになり、収益も下がるわけで、やはり医師の確保が収益に対しては大きな影響を及ぼすわけであります。 これら医療スタッフの確保が収益改善に向けた取り組みにおいては重視されるわけですが、本県において、医師を初め看護師その他の医療資源の偏在が見られているところであります。それらの中、幡多、安芸、それぞれの医療圏域においても、人材確保には苦労される面が多いと思われますが、医療スタッフの確保について、公営企業局長にお伺いします。 ◎公営企業局長(北村強君) 医師に関しましては、あき総合病院は、高知大学の協力もいただき、近年増員が図られておりまして、医療機能の向上により、診療単価も上昇しております。一方、幡多けんみん病院は、地理的な要因もありまして、特に指導医等の中堅医師の確保に苦労はしておりますが、何とか維持できている状況でございます。 今後、両病院とも、奨学金を受けた地域枠の医師がふえてくることが見込まれておりまして、積極的に若手医師を受け入れ、育成してまいりたいと考えております。医師以外のスタッフにつきましては、ほとんどの職種で確保できておりますが、薬剤師や助産師の採用が困難となっておりまして、引き続き採用試験を複数回実施するとともに、大学への訪問や就職説明会へ参加するなど、受験者の確保に努めてまいります。 ◆13番(西内健君) そして、医療人材の定着という意味では研修制度などの充実が挙げられるわけですが、専門性の高い医師及び看護師などは、その知識やスキルを維持・向上させるために、やはり研修や研究会への参加が重要になってまいります。 それぞれ日常業務が多忙の中、これらの会合への出席を促す仕組みが必要であると考えますが、そのための労働環境や職場環境の整備の状況について公営企業局長にお伺いします。 ◎公営企業局長(北村強君) 医師や看護師の専門性の向上を図ることは重要なことでございます。医師につきましては、最新の症例の情報収集や高度な医療技術の習得のため、学会や研究会への参加について必要な予算を計上するなど、積極的に後押しをしております。 看護師につきましても、がんや救急などの分野におきまして専門性の高い看護を提供するために、資格取得や研修に公務として派遣しております。長期派遣研修の場合には、意欲ある職員が研修への参加をちゅうちょすることのないよう代替職員を配置するなど、今後も研修等に参加しやすい職場環境づくりに努めてまいります。 ◆13番(西内健君) しっかり対応が図られているのではないかなという答弁でありました。 そして一方で、その労働環境に関しましては、5年間の猶予が与えられてはいますが、2024年には医師の働き方改革に向けた取り組みを行う必要があるわけです。大学病院での必要数が足りなくなった場合は、公立病院の現場から引き抜きが行われる可能性も高くなるんではないかと考えられています。このことは、2004年の新医師臨床研修制度が始まったときよりも大きな影響を及ぼすのではないかという懸念もあります。 対応として、医師の勤務体制の見直し、そしてタスクシフト、タスクシェアなどが挙げられています。また一方で、住民や患者の皆様の適切な受診を促す仕組みづくりなども必要と考えられていますが、今後のこの医師の働き方改革に向けた取り組みについて、公営企業局長にお伺いいたします。 ◎公営企業局長(北村強君) 医師の働き方改革は、医師の健康保持はもとより、医師の確保や安全で質の高い医療の提供の観点からも極めて重要なことでございます。これまで、医師の負担軽減のために、カルテの記録などを行う医師事務作業補助者の配置や、医師が作成した手順書により特定行為を行う看護師の育成に取り組んできました。 来年度は、医師の労働時間短縮計画の策定に着手する予定をしておりまして、これまでの取り組みを強化するとともに、医師の確保はもちろんのこと、勤務間のインターバルの導入を検討するなど、医師の勤務環境の改善に努めてまいります。 ◆13番(西内健君) また、新たな公立病院改革ガイドラインにおいては、職員の採用の弾力化などの取り組み強化や、事務職員の能力向上の必要性も挙げられています。事務職員に関しては、外部人材の活用、プロパー専門職員の採用、また専門的なスキルを持った職員の計画的な育成などが挙げられています。 職員の能力向上というのは、例えば入院体制加算をどうやって稼ぐのか、また機能評価係数Ⅰ、Ⅱの加算、そしてさまざまなそういった診療報酬上の加算を獲得するためには、やはり専門職の育成、またプロパー化というものが求められているわけであります。 今期間中における事務職員の採用等の取り組みについて公営企業局長にお伺いをいたします。 ◎公営企業局長(北村強君) 病院経営や医療に関する幅広い知識を有する病院事業に従事する職員の役割は大変重要であり、平成13年度からプロパー職員の採用を段階的に進めておりまして、計画期間中にも1名採用し、現在22名が在職いたしております。さらに、病院経営のノウハウを習得させるために外部研修へ参加させるとともに、診療情報管理士などの病院経営に有用な資格の取得を支援するなど、能力の向上にも取り組んでまいりました。 また、広い視野で病院事業を捉え、経営の視点を持って業務に当たれるよう、今年度からプロパーの事務職員をチーフ職に登用いたしまして、所掌事務のマネジメントを経験させており、将来県立病院の経営を担っていける職員に育成してまいりたいと考えております。 ◆13番(西内健君) なかなか事務局長という職に一般の方というかプロパーを充てるというのは難しいと思いますが、今後はしっかりとそういった人材の育成にも努めていただきたいなと思っています。 それでは最後に、この県立病院に関しまして、病院給食についてお伺いをさせていただきたいと思います。病院だけに限らずさまざまな分野で人材不足というのが掲げられているわけでありますが、今給食業務においても、プロポーザルで委託先を探してもなかなか複数社が手を挙げるわけでもなくなってまいりました。そして、人件費の高騰から、今プロポーザルを受けている委託先でも、今後の事業の継続というものが難しいんじゃないかという声も聞こえてきております。 今後、給食に関しましては、病院内での内製化、直営になるかと思うんですけれども、そういったことを再度検討する時代がやってきたのではないかと思うところでございます。確かに経費は大きくふえることとなるわけでありますが、一つの考え方として、今日本の地方においては、こういった医療とか介護の分野というのは雇用の受け皿として大きな役割を果たしているわけであります。そして、一つの--病院給食を担う職員さんを雇うということは、地域地域でそういった雇用が生まれる効果も多いわけであります。そして、そのことによって支払った税金が、税金といいますか--投入された税金が地域地域で経済を回していく、そういう仕組みづくりの一つになるんではないかなと考えるところでございます。 そういった点も踏まえまして、県立病院における今後の給食の取り組みについて公営企業局長にお伺いしたいと思います。 ◎公営企業局長(北村強君) 病院給食につきましては、経営改善のために費用対効果の観点から民間に委託してまいりましたが、近年委託先が人材確保に苦労しておりまして、契約に際しては委託内容の見直しも行いながら対応してきているところでございます。できるだけ多くの事業者が参加できるよう、引き続き業務の範囲や委託期間等を検討してまいります。 さらに、おっしゃいましたように、雇用の創出や地域での経済の循環というのは大事な視点でございます。また、現実問題として、給食業務の受け手がなくなるとたちまち病院運営に支障を来すことになりますので、経営状況も勘案しながら、直営化の可能性について検討してまいりたいと考えております。 ◆13番(西内健君) 例えば、病院給食なんかで地産の食材を使う、こういったことも一つの地域の経済に貢献することだと思います。地産地消を県立病院で行う、こういった事例もほかの公立病院なんかでも見られている地域もあると思いますので、こういった点もぜひ、地域経済を活性化するという意味では必要な観点となってくると思いますので、検討をよろしくお願いしたいと思います。以上、県立病院についてお伺いさせていただきました。 次に、観光分野について質問をさせていただきます。 それまでは企画部や文化環境部、商工労働部の課として位置づけられていたものが、平成19年度に観光部に、そして平成21年度から観光振興部となりました。尾崎県政においては、産業振興の一つの柱として非常に大きなウエートが置かれていたわけであります。 その間、「土佐・龍馬であい博」やリョーマの休日キャンペーンなどを通じて観光資源の磨き上げを図り、観光商品づくりとセールスに官民協働で取り組んでまいられました。その結果、観光客入り込み数は、長い間続いた300万人台から、平成25年以降は400万人を超えています。第3期高知県産業振興計画の目標であります435万人観光の定常化が実現されつつあり、第4期計画では県外観光客入り込み数を令和5年に460万人にすることを目標に掲げています。 そこで、これまでに取り組んできたキャンペーンや龍馬博などの博覧会の成果をどのように捉えているのか、観光振興部長にお伺いします。 ◎観光振興部長(吉村大君) 本県の観光分野では、これまでキャンペーンや博覧会の勢いを生かしながら、観光地としての地力を高め、観光客の増加に取り組んでまいりました。成果としましては、食や歴史、自然という本県の強みを生かすことに重点を置いて、観光資源の創出や磨き上げを図り、これらを連動させた周遊ルートづくりに取り組んだことで、高知ならではの観光基盤の整備が進んだことだと考えております。また、旅行会社に対する切れ目のないセールス活動に加えまして、全国メディアなどを活用した多くの観光客誘致につながるプロモーションのノウハウが蓄積できたことも成果だと考えています。 ◆13番(西内健君) 確かに大きな成果が上がってきたんだと思いますが、これらのキャンペーンを今後も毎年何らかの形で継続していくことが高知県の観光業界にとっては求められていることだと思いますし、プロモーションとして必要だと思いますが、今後キャンペーンや博覧会をどのようなテーマで継続していくのか、観光振興部長にお伺いします。 ◎観光振興部長(吉村大君) 今後とも、県内外の時流をつかみながら、整えてきた観光基盤を生かしたキャンペーンや博覧会を企画したいと考えております。現在の自然&体験キャンペーンは、来年3月までとしております。その後のテーマや展開につきましては、改めて、関係する皆様の御意見も伺い、手順を踏みながら、ことしの夏ごろをめどに方向性を示させていただきたいと、そのように考えております。 ◆13番(西内健君) 一方で、私は観光に関しては、今後量から質への転換を図る時期にも来ているんじゃないかなと考えるところでありまして、また先ほどのキャンペーンなどを行って、県内各地域の一定のPRも行ってまいりました。そして、歴史博や龍馬の活用というのもいずれ限界が来るのではないかなと考えるところでございます。 また、量から質への転換が必要であると考えるのは、観光を支える側の人材、これも人手不足に陥ってくることから、一定のおもてなしといったことを継続する意味からも、今後は大量の観光客の受け入れだけを図るのではなく、やはり観光の質の向上を図るべきだと考えます。質の向上によって、観光客のリピート率や1人当たりの観光消費額の向上も図れると思うわけであります。 キャンペーン等によっての誘客は、高知を知ってもらうことには大きな効果があると思われるところですが、リピーターの増加や1人当たり観光消費額へのこれまでの効果とか、そういったことを取り組むことによって質の向上が図られるわけでありますが、まず観光客のリピート率のここ数年の推移について観光振興部長にお伺いします。 ◎観光振興部長(吉村大君) 県が実施しました県外観光客の入り込みや動態に関する調査で、直近の平成30年までの5年間の推移を見ますと、本県を2回以上訪れた方の割合はおおむね75%となっています。また、3回以上の方は60%台で推移をしております。 ◆13番(西内健君) 結構意外とリピート率が高いなという印象を受けるところでございますが、なかなかそういった意味では高知のこのキャンペーンが大きな成果を上げていると思われるところでございます。 次に、1人当たりの観光消費額の推移についても観光振興部長にお伺いします。 ◎観光振興部長(吉村大君) 同じく先ほどの調査で過去5年間を見ますと、1人当たりの観光消費額は、2万6,000円台から2万5,000円台へと推移をしておりまして、直近の平成30年は2万5,233円となっております。 ◆13番(西内健君) わかりました。 今後の質の向上には、そういった意味で、地域のブランド化や魅力ある観光地づくり、そういったイメージを観光される方々にどうやってしっかりと送っていくかというのが大事だと思っています。リピート率が高い、食やグルメ、癒やし、温泉といった分野が重要になってくると言われていますが、高知県はやはり何といってもカツオのタタキであります。カツオの水揚げ高は全国でもトップスリーに入っていないにもかかわらず、全国でカツオのタタキといえば高知のイメージが一番でございます。 また、今回の自然&体験キャンペーンなども、仁淀ブルーといった青がイメージとして一つの打ち出しの戦略となるのではないかなと考えているところでございます。自然というのは全国どこへ行ってもあるわけで、そしてまたそんな中で、高知にはたくさんのものがありますからぜひ高知に来てくださいといっても、なかなか情報を受け取る側にとってはインパクトの弱い部分があるのではないかなと考えているわけであります。 行政がかかわることから、一つの部分に焦点を絞るのは公平性の観点から難しいのはわかりますが、観光のマーケティングにおいて質への転換を図るためには、やはり何らかのものに焦点を絞ることも大事かなと考えます。これらの魅力ある観光地域というのは、やはり地域地域で一つつくっていかなければいけないわけでありますが、それには地域の観光振興協会であるとか商工会議所、商工会、こういったものの取り組みが必要になってくると思います。 これまで地域博覧会が行われてきたわけでありますが、広域観光組織の枠組みができ上がってきた中で、これらの組織の今後の取り組みについて観光振興部長にお伺いします。 ◎観光振興部長(吉村大君) 広域観光組織には、これまで培った観光地づくりのノウハウを生かしながら、体制も強化をして、地域が主体となった外貨を稼ぐ仕組みづくりのかじ取りをしていただくこととしております。このため、広域観光組織におきましては、市町村や商工団体、宿泊・飲食・体験施設などの幅広い事業者と一体となって、地域として思い入れのある観光資源の魅力を引き出した滞在型の周遊ルートをつくり上げることで、観光消費額の増加やリピート率の向上を目指していくこととしています。県としましても、こうした取り組みをしっかりと支援してまいりたいと考えています。 ◆13番(西内健君) ぜひよろしくお願いしたいと思います。 あと、今回の新型コロナウイルスによる団体旅行のキャンセルなどを考えますと、今後は個人旅行者に対してのアプローチが非常に重要になってくるんだと思います。特に、海外の重点市場における個人旅行者の獲得に向けては、SNSなどによるデジタルプロモーションやマーケティングが必要であると考えます。 インスタグラムなどでの共感により、観光地を訪れる動機につながるわけでありますが、デジタルを活用した今後のインバウンド誘致の取り組みについて観光振興部長にお伺いします。 ◎観光振興部長(吉村大君) デジタル技術を活用したプロモーションやマーケティングを、訪日旅行に関心を持つ重点市場の方々に向けて実施したいと考えています。具体的には、インターネット上で食や自然体験などをテーマとしました動画を配信し、閲覧者の国や年代層、趣味などについての分析を行ってまいります。この分析で絞り込んだターゲットに向けましてウエブ広告を配信することで、本県の外国人向け観光情報サイトに誘導し、より詳細な観光情報の閲覧につなげてまいります。 このように、マーケティングとプロモーションを組み合わせる手法で、高知を観光地として認識してもらうことから旅行先として選んでもらうことへと訪日関心層の意識を段階的に高めながら、本県への個人旅行を誘発したいと考えています。 ◆13番(西内健君) 本当に、プロモーション、マーケティング、そして最後にターゲティング、これによって質の向上が図られてくると思いますので、しっかり今後の取り組みに期待したいところでございます。 さて、少し話題がかわりますが、観光という文字は、観に行くと書くのではなく、光を観るになっているわけであります。その語源の一つのいわれとしては、中国の古典の中に、時の皇帝の治世のすばらしさ、これを見に行く、すなわち光を観るというところがあるわけであります。 尾崎県政においては、集落活動センターなど全国に先駆けた事例が多くありまして、県外から視察も数多く受け入れていることだと思いますが、これら集落活動センターなどの取り組みに対する視察の現状について中山間振興・交通部長にお伺いいたします。 ◎中山間振興・交通部長(川村雅計君) 集落活動センターなど本県の中山間対策の取り組みにつきまして、これまで地方創生担当大臣を初め、総務省、農林水産省、国土交通省などのほか、国の審議会の委員や地方自治体議会議員など、幅広い分野の方々に視察にお越しいただいております。当部で把握している視察の受け入れ回数は、令和元年度では現時点で23回で、近年は約20回程度となっております。 ◆13番(西内健君) 結構多いんだと思いますが、その一方、我々も県外視察に行きますと、視察先で、資料代などといった名目の必要経費の支払いがある場合がほとんどでございます。地域観光という意味では、やはりこういった細かい経費も稼いでいかないとなかなか継続するのが難しいんだと思いますが、事業所の活動資金などになるこういった--集落活動センターにおいても同じお金が落ちる仕組みがどういうふうに構築されているのか、中山間振興・交通部長にお伺いします。 ◎中山間振興・交通部長(川村雅計君) 県内58カ所の集落活動センターのうち53カ所で、視察を受け入れている、もしくは要望があれば受け入れるとお聞きをしております。53カ所のうち、資料代などの名目で視察料を設定しているのは20カ所で、センターが運営するレストランでの食事代やピザ焼きの体験料としていただくケースもございます。 議員のお話のとおり、視察料の徴収は集落活動センターの自主財源の確保につながり、地域にお金が落ちる仕組みでもございます。今後は、全てのセンターが構成員であります高知県集落活動センター連絡協議会の総会や地区別連絡協議会の意見交換会などの場で情報共有を図り、こうした仕組みづくりを進めてまいりたいと考えております。 ◆13番(西内健君) 高知県の場合は、おもてなしという言葉のもとで、非常に皆さんがお接待するんですけれども、意外とそういったお金を稼ぐことに抵抗があるのか、なかなか日銭を落としてもらう仕組みづくりが下手なんじゃないかなと感じているところでございます。これは観光振興に向けて、観光振興部にもお願いをしたいところでございます。よろしくお願いいたします。 さて、この項最後になりますが、大きなテーマになりますけれども、近年建設部門を初め多くの分野で人材確保難などが起こっているわけであります。公共が担う分野というのは、土木にしてもそうですし、そして警察、教育、こういった分野があって、それらが社会インフラをしっかりと支えているところでございます。一方、観光、製造業、そして卸や小売、こういったものは、社会インフラの上で活動するスープラといいますか、事業分野になってくるわけであります。 そういった意味で、公の我々行政が行う分野というのはこういった社会インフラを担う分野に対して積極的に投資されるべきではないかなというのが私個人の考え方でございます。今後、先ほども述べたこれらの社会インフラを維持していくためにも、行政の役割というのは明確になってくるんじゃないかなと考えているところでございます。また一方、これらの観光など、民間がもっと発想を豊かにできる分野というのもあろうかと思います。行政が、いかに、いつまで手を加えていくのか、というのも限界があるんじゃないかなと考えるところでございます。 そういった面で、観光など経済活動への行政の支援については、一定の時期が来ればその役割を終えるといいますか、考えなければならない時期が来ると思うんです。民間の主体性に任せるべきだと考えるところでございますが、知事の御所見をお伺いします。 ◎知事(濱田省司君) お話がございましたように、高知県の経済活動実態を見ますと、産業面では、本県は非常に小規模で零細な事業者が多いという特色がございます。また、産業あるいは技術の集積が少ない、資本の蓄積も少ないということがございまして、民間の力だけではなかなか新しい事業に乗り出していく、挑戦していくことが難しいというような事情もありまして、今まで行政が一定支援をし、官民協働という形で取り組んできたケースが多かったことは事実だと思います。 具体的に、例えば県経済の牽引役となるような産業を育成するというような意味で、防災関連の産業ですとかCLT、あるいはIT・コンテンツ関連産業、こういったところは県がリードするという形で進めてまいっております。また、別の形で申しますと、川上から川下までの一連の流れを意識いたしまして、ボトルネックとなっているところを支援していくという意味では、県版のHACCPあるいは担い手の確保、こういったようなところに重点を置いて県の産業政策を展開してきたという流れがあると思います。 一方で、御指摘がありますように、一定の役割を終えました施策でございますとか、それなりに軌道に乗って民間が自力で実施できるようになった事業、そういったものにつきまして、関連施策はスクラップをした上で、より県としては困難な、あるいは高度な分野にチャレンジをしていくというのが大きな流れだと思います。 例えば、地産外商の外商でいいましても、以前の国内中心から、より海外への輸出にシフトしていく、これをだんだんとそういった形でシフトしていくということもあろうと思います。観光の面でも、本日も御質疑いただきましたけれども、国内観光から、よりインバウンド、国際観光であったり、お話もありましたような観光客の人数というところから、より質が高い売り上げといったものを目指していく、こういった形で、達成状況に応じて、より高度化を図っていく必要もあるというふうに考えております。 一定上昇傾向にあります本県経済を持続的な発展につなげていくためには、民間の持つ潜在力を引き出しまして持続的な成長を後押しするということが重要だということもございます。その意味では、産業振興計画も第3期計画から、いわば手とり足とりではなくて、例えば事業戦略をつくって自分で考えて動いて行動していくというところを後押しするというようなこと、あるいは新たな付加価値の創造を促すようなプラットフォームをつくっていくといったことに乗り出していくと。こういった形で、支援の仕方もより高度化をして、シフトしていきつつあるということであると思います。 そんな意味で、今後も民間の主体性を意識いたしまして、民間によります自立的な発展を促していくという観点からの施策の展開を強化していきたいと考えてございます。 ◆13番(西内健君) 行政におけるマンパワーというのも限られていますし、今後どういった施策に重点を置くのか、ぜひ検討をお願いしたいと思います。 さて、最後になりますが、BCP策定に関してお伺いします。 今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けた自粛の動きによって、県内でも幅広い業界において大きな影響が出ています。特に、先ほどの話ではないですが、観光業におけるキャンセルの急増など、この状況が長期化すれば県経済に大きな打撃となるわけであります。 さて、商工業者においては、南海トラフ地震の発災時を初め、こうした危機に対してBCPを作成していることが有効だと考えますが、まずは県内商工業者における南海トラフ地震を想定したBCPの策定の状況について商工労働部長にお伺いします。 ◎商工労働部長(近藤雅宏君) 商工業の分野におきましては、南海トラフ地震対策行動計画に基づき、製造業と卸・小売業の事業所を中心にBCP策定支援に取り組んでいます。具体的には、実際にBCPを策定していくような実践型の講座を県内3カ所で開催するとともに、民間の損害保険会社などの協力を得て、BCP策定推進プロジェクトという形で、個々の事業者への普及啓発などを行ってまいりました。また、今年度からは、BCPの実効性をより高めていただくため訓練講座を開催しまして、策定したBCPを改善していくようなBCM--事業継続マネジメントの支援にも取り組んでいるところです。 こうした取り組みの結果、行動計画において目標に掲げる製造業及び卸・小売業の従業員50人以上の事業所のBCP策定率は、前月末時点で今年度の目標60%を上回る69%となっています。 ◆13番(西内健君) 今回、コロナウイルスのこの騒動を受けて、私のもとにも多くの事業者、飲食業者などから相談、そういった電話が多くあるわけでありますが、やはり一番困っているのは何かというと資金繰りなわけであります。それは、日ごろから銀行といかにして数字の話をしていくかというのが大事なことでございます。事業承継も同じで、銀行との日ごろからのつき合いが大事だと。そういった意味では、商工業者にとってはどうやって関係を銀行、商工会議所とつくっていくかが大事だと思っているわけであります。 そこで、南海トラフ地震対策と同様、今回のコロナウイルスの対応といったことからも、事業者が日ごろからそういった事業継続に向けた取り組みというものを考えるのは難しいかもしれませんけれども、こうした危機に備えるための事業者の取り組みが有効だと思いますが、商工労働部長にその辺の御所見をお伺いいたします。 ◎商工労働部長(近藤雅宏君) 県内事業者におきましては、今回の新型コロナウイルス感染症の影響により、宿泊業や飲食業を初めさまざまな業種で売り上げの減少や資金繰りの悪化等の影響が既に出始めております。こうした状況の中で事業を継続していくためには、従業員の感染防止策、事業継続に必要な人員の確保、マスクや消毒用アルコール製剤などの日ごろからの備蓄、サプライチェーンの毀損に伴う代替のサプライヤーの確保、おっしゃるような通常の状態に戻るまでの間の運転資金の確保などといった点に、事前にしっかりと検討を加えておくということが非常に重要になってまいります。 感染症につきましては、平成21年に国から新型インフルエンザ対策のBCP策定指針が示されており、一部の事業所ではそれに沿った形で感染症対策を盛り込んだBCPを策定されておりますけれども、事業者全体としては非常に少ないのではないかと考えています。このため、この策定指針なども活用しながら、ほかの業種や小規模事業者も含め、より多くの事業者にできる限り必要な事前対策を行っていただけるよう、他部局や市町村とも連携をして、危機管理に関する啓発の場などにおいて事業者に周知を図ってまいります。 ◆13番(西内健君) 南海トラフ地震が実際に発災した場合には、今回のこういった状況よりももっとひどいことが予想されると思います。ぜひ、商工事業者の方にはBCP対策というか事業継続の観点からしっかり取り組みを進めていただけるよう、周知をお願いしたいと思います。 さて、最後になりますが、今回新型コロナウイルス対策で執行部の皆様方が本当に御苦労されていることに対しての感謝を申し上げたいと思います。 ただ、こういった危機というのは、先ほどのITであるとか過去のデータ、そしてAIなどが解決してくれるわけではなく、それぞれの、今までに起こったことがない事象に対しては、執行部といいますか、こういったマンパワー、人的組織というのがどうやって機能するかが重要だと考えています。そしてまた、この危機を乗り越えることが、この新たな門出となりました濱田県政にとって、この危機に取り組むことで一体感が生まれ、その取り組みが今後の県勢の発展につながっていくものだと思います。 災い転じて福となすではないですが、この危機をしっかり乗り越えて、県庁が一体となって今後の県勢の発展に向けて取り組まれることをお願い申し上げまして、私の一切の質問とさせていただきます。(拍手) ○議長(桑名龍吾君) 以上をもって、西内健君の質問は終わりました。 ここで午後4時まで休憩といたします。   午後3時55分休憩-----------------------------------   午後4時再開
    ○議長(桑名龍吾君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 一問一答による議案に対する質疑並びに一般質問を続行いたします。 森田英二君の持ち時間は50分です。 19番森田英二君。 ◆19番(森田英二君) それでは、お許しをいただきましたので、早速質問に入ります。私でいよいよ最後となりました。お疲れだと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。 これまで、知事初め執行部の方々には、多くの議員から新型コロナウイルス対策も含めまして多岐にわたる質問や提言があり、令和2年度の予算や施策の改めがなされているところでございます。濱田知事におかれましては、昨年暮れの知事選挙において県民に訴えられた公約を果たすため、存分の活躍をしてほしいと願っています。私たち自由民主党会派としては、もちろん県民目線を忘れることなく、全力で、県民の幸せのために力いっぱい頑張る濱田県政を支える覚悟でございます。 令和2年度は、知事として、政策も予算も人事も初めて全てフルスペックで手づくりをされた年度となります。私の頭の中にある濱田県政の柱は、尾崎県政の産業振興計画を踏襲し、さらに発展をさせる、そして5年後の大阪・関西万博に沸く大阪の活気を副知事時代の縁を使って高知に引っ張る、そして最後に、若者たちが喜んで帰ってきたくなる、そんな高知にすることだったように受けとめております。どうかそうした方向で存分の御活躍をされることを心から願っています。 では以下、私からは、本県の3世代同居・近居施策について御質問をいたします。 本題です。以下全て、いかにして本県の人口減少に歯どめをかけるかという観点で、3世代同居・近居の施策を軸に質問を進めてまいります。今、本県が抱える最重点課題の一つで、御存じのとおり今回も質問が相次ぎましたが、人材不足、人口不足、それにまつわる就労の困難さの御発言が続きました。そこで、県は移住やUターンなどに熱心に取り組まれているところでございます。 この人口の減少は、消費や生産に直結し、県の活力にも大きな影響を与えますから、喫緊の課題であります。だからこそ、この人口問題にできるだけ早く手を打たないといけません。そこで、この人口減少の歯どめとしては、じわっときいてくることが間違いない以下述べる3世代同居・近居施策だと私は信じています。しかし、現実は単身世帯が年々増加していく時代です。若者も高齢者も世帯規模をどんどん小さくしていき、そのことで家族の支え合いも年々弱くなっているように思えてなりません。 そうしたとき、一見3世代を同居に仕向ける施策は時代の流れに逆らう古臭い施策のようにも見えますが、実はとても理にかなっているんです。血のつながった家族が一緒に住み、互いを大事にし合うということは、生き物の本能とも言えますし、幼少期の子育ての原理原則だからであります。 この3世代同居・近居のメリットは、人口減少問題だけにとどまりません。祖父母と一緒に暮らすことは、子育ての手が足りることから、県がいつも言う子供を産み育てやすい環境の重要な家族形態の一つなんです。産み育てやすい環境としては、産婦人科が多くあることも、また広い公園があることも必要でしょうが、3世代同居・近居はもっと直接的な効果があります。 一緒に暮らせば、祖父母が保育の送り迎えもしてくれますし、小児科にも連れていってくれます。そのことで、若いお母さんは正規就労にもつけますし、収入もふえます。時間的にも経済的にも余裕ができることで、もう一人次の子供の出産を決心することも多いと聞きました。 また、東北、北陸などの3世代同居率の高い地域で合計特殊出生率が高いのは、その証左とも言えるんではないでしょうか。実際、私が直接調査をしてきた北陸やその他の地域では、この3世代同居・近居施策にとても熱心に取り組まれておりました。また、国も内閣府を中心にして、ずっと以前から、若い夫婦に対し、祖父母の支援をもらうための3世代の同居、近居を積極的に推進しています。 そこで、私は本県の施策の実態を調べてみました。すると、本県の3世代同居への取り組みは、他県が取り組んでいる中で、手つかずの状態なんです。ですから、この施策については、本県は他県から大きく水をあけられています。少子化や人口減少が著しい本県だからこそ、この3世代同居・近居施策にはもっと素早く本気で取り組むべきだったと思います。国も、そうした効果があるからこそ、都道府県に向けて積極的にこの施策を呼びかけているんです。何度も言いますが、他県はもう既に取り組んでいます。 本県の現状はどうなっているのか、このことについて、まず地域福祉部長にお聞きをいたします。 ◎地域福祉部長(福留利也君) 本県では、未婚者の割合が全国と比べ高いなど、未婚化、晩婚化が進行している状況にございます。また、女性の有業率が高く、共働き世帯が多いといった状況もございます。 こうした状況を踏まえまして、少子化対策として、まずは出会いの機会の創出や働きながら子育てしやすい環境づくりなど、出会い・結婚・妊娠・出産・子育てといったライフステージの各段階に応じた支援の強化に取り組んでいるところです。このため、3世代同居・近居を促進するまでには至っていないところでございます。 ◆19番(森田英二君) ありがとうございました。 そこで、今回の質問に際し、この3世代同居・近居について国内ではどんな取り組みがされているのかと考え、弘田兼一副議長とともに、富山県と石川県の県庁や市町に直接調査に伺いました。このうち、富山県の砺波市の事例を御紹介します。 砺波市の人口は約4万9,000人、世帯数は約1万6,200世帯、3世代同居・近居の世帯数は3,119世帯で、3世代の同居率は19.3%、おおむね5軒に1軒の割合ということになります。一方、富山県の全体の3世代同居率は13.2%であり、全国の平均は5.7%、ちなみに本県は4.5%なんです。この高知県の4.5%は、砺波市の資料の中に、全国の同居率の低い県として大きく書き込まれておりました。 この砺波市では、3世代同居・近居を牽引する事業として、3世代が同居の上で3年間孫世代を育児すれば10万円の給付金があったり、絵本などを買うためのクーポン券をくれたりします。また、新しく3世代同居・近居を始める家族には、増改築工事費として上限はあるものの、建築工事費の10%が助成されます。これは非常に大きい支援であります。 そしてさらに、空き家バンクを活用して3世代同居を始める人には、改修費用の4分の3を市が助成してくれます。その上、3世代同居の高齢者にも、5年に1度の節目の年齢で1万円の飲食支援が、ねぎらいという名目で支給をされます。このほかにも、祖父母を外に連れ出すきっかけ事業として、孫とお出かけする場合にいろいろな支援サービスがあります。 翻って、高齢者を多く抱える本県について調べてみましたが、こうした孫とのきっかけづくりを活用するソフト支援などは一切ありません。もっともっと県内の市町村も知恵を絞り、効果的な施策に取り組むべきだと思うんですが、県内ではまだ聞いたことがございません。 なぜ本県では取り組まれていないのか、地域福祉部長にお聞きいたします。 ◎地域福祉部長(福留利也君) 市町村においては、それぞれの地域の実情に応じたさまざまな少子化対策に取り組んでおられるところでございます。県内では、支援を希望する方への出会い・結婚支援や、子育てに関する経済的な負担の軽減、子育て支援サービスの充実といった施策に重点を置いて取り組んでいる市町村が多い状況でございます。 こうした中で、4市町において移住・定住対策として、3世代同居などに係る住宅の新築やリフォームへの助成事業などが実施されていることを承知しているところでございます。 ◆19番(森田英二君) そこで私は、高知県そのものが3世代同居施策になぜ一切取り組んでいないのかということに気がつきました、その問題に。県が率先していろいろな3世代同居・近居施策のメニューをつくれば、県内の市町村でもさらに工夫を加えて、それを超えるアイデアが出てくるはずです。そうすれば、親、子、孫の3世代がつながった温かい大家族支援メニューも容易に考え出されたと思います。 県内の市町村のこうした前向きの取り組みを鼓舞する意味でも、本県はもっと他県や他の市町村の先進事例に倣い、そして研究もするなどして、もっと早くこの施策に取り組むべきだったと思います。国がここまで推し進めている3世代同居施策にこれまで取り組まれてこなかったことが、本当に残念でなりません。3世代同居・近居の施策の効能は、はかり知れなく広く深いんです。その上、本県の積年の課題をことごとく解決の方向に向かわせてくれる絶大な効果が期待できます。 市町村への支援なども含めて、3世代同居・近居に関する事例にどのような感想を持たれたのか、ここでもう一度地域福祉部長にお聞きします。 ◎地域福祉部長(福留利也君) 富山県の砺波市では、3世代同居・近居を人口対策事業に位置づけて、独自のさまざまな支援策に取り組まれております。また、富山県では、住宅の取得やリフォームの資金融資制度の3世代同居・近居世帯への優遇などに取り組まれております。富山県や砺波市においては、富山県が3世代同居率全国5位といった地域性などを踏まえて、少子化対策の一つとして3世代同居等を促進されているものと推察をしております。 少子化対策は、こうした地域の強みを生かした施策が推進されることで、より細かく対応できるものと認識をしてございます。このため、県としまして、各市町村の実情や御意見を踏まえながら、市町村の取り組みへの支援を強化していく必要があると考えているところでございます。 ◆19番(森田英二君) そのとおりなんですね。県がやっているから、市町村も本当に知恵を絞っているんですよ。 私は、この北陸2県の調査訪問を済ませた後に、今度は東京、永田町の内閣府の子ども・子育て本部を訪ねました。そこで、国の少子化社会対策大綱の御説明を受けましたが、まさにここが国の子ども・子育て本部の本丸でした。 この施策は平成27年度から取り組まれているものなんですが、そこには多様な子育ての一つとして、祖父母等の支援による孫育てという具体的な施策がしっかりと位置づけられていました。その中で、家族において世代間の助け合いをしながら子や孫を育てることができるようにするために、3世代同居・近居を希望する者にはその希望が実現できるように、3世代同居・近居を支援するための優遇策の検討もすると、きちんと書かれています。そして、その一環として、3世代が同居するための住宅の支援策なども引き続いて行うと、5年前の、きめ細やかな少子化対策の推進の中に書き込まれています。 加えて、同じ平成27年の、一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策の中でも、子育てしやすい環境を整備するため3世代同居・近居を支援すべきだと、そこでもまた指摘をしています。第3子以降を持ちたい人のネックになっていることの一つに経済的負担の重さがあるということを、国では既にその時点で分析をされていました。その上に立って、大変意義のある子育ての形態の一つとして、3世代同居・近居が重点課題として内閣府の施策の中にきちんと位置づけられているのであります。 ここまで国が旗を振っているというのに、こうした国の施策を本県はこれまでどのように聞いておられたのか、再び地域福祉部長にお聞きします。 ◎地域福祉部長(福留利也君) 国の少子化社会対策大綱では、家族の支え合いにより子育てしやすい環境を整備するため、3世代同居・近居を支援すると記載をされております。このため、国において、3世代同居に対応した良質な木造住宅等の整備や3世代同居などのためのリフォーム工事等を支援しているものと認識をしてございます。 こうした中で、本県では、先ほど申し上げましたとおり、本県の課題を踏まえた少子化対策の取り組みを行っておりまして、3世代同居・近居を促進するまでには至っていないところでございます。 ◆19番(森田英二君) そこで、内閣府の調査によりましたら、子供が小学校に入るまでの間は祖父母が育児や家事の手助けをすることが望ましいと考える国民が79%、調査の結果いたと報告書にあります。そして、祖父母との同居・近居を理想とする国民が32%もいたそうです。しかし実際、3世代の同居率の実態は32%とは大きく乖離していて、国の平均が5.7%、高知県はわずか4.5%なんです。 こうしたことを踏まえて、3世代同居を前提としたリフォーム工事には、先ほど部長もおっしゃいましたが、最大250万円を限度に助成するメニューが具体的に書かれています。さらに、その場合には、3世代同居のためのリフォーム対応ということで、税制の優遇特例なども構えてくれているんです。こうした国の方針に呼応して、各県、各自治体においては5年前から既に取り組みを進め、細やかに施策を研究し、メニューを開発してきています。 ではここで、こうした国や先進他県の施策を踏まえた今、これからの子育てのありようを本県はどのように描かれているのか、地域福祉部長にもう一度お聞きします。 ◎地域福祉部長(福留利也君) 子育ては、保護者が第一義的に責任を有しており、家族や学校、地域社会などが協力して行うものと認識をしてございます。ライフスタイルが多様化する中で、3世代世帯や核家族世帯、ひとり親世帯など、それぞれの家庭の置かれている状況もさまざまになってございます。このため、それぞれの家庭の状況に応じて、保護者が子育ての助けを必要とする部分に関しては、祖父母を初め世代を超えた家族や身近な地域、そして社会全体で支援していくことが必要であると考えております。 ◆19番(森田英二君) それでは次に、今議会の初日の知事の提案説明の中から何点か順にお伺いをしていきます。知事は、子育て項目の後段で、本県の少子化対策に触れています。その中で、出会いや結婚支援にもやっと力を入れ始めたことに触れられています。そして、妊娠・出産・子育てに始まり、共働き家庭の子育て環境の改善にも力を入れていることがわかります。 しかしここでは、市町村と連携してファミリー・サポート・センターの機能を充実させるとか、子育てしながら働く女性を社会全体で支える仕組みづくりのことなどが語られています。私は、そのように制度がたとえ整ったとしても、それらはどうしても無機質な支援のように思えてなりません。 少子化問題を議論しようとしているのであれば、まず私は一番に家族とか家庭という文字が出てこなくてはならないと思うんです。しかし、そうした文字は一カ所もありません。少子化対策というのであれば、まずは家族や家庭から始まるのが当然だと思います。少子化問題の根底である家族や家庭に一言も触れずに少子化を嘆くなんてナンセンスですし、たとえそれで効果が出たとしても、クオリティーの面では不十分だと心配をします。 そこで、何度も言いますが、3世代以上で同居、近居すれば、子育ても非常に楽になり、祖父母の応援があれば、また楽しくもあります。祖父母が加わることで、子育てが一層にぎやかになりますし、家庭全体が明るくなります。その祖父母が時折見せる笑顔は、何よりも家族に安心感を与えてくれます。 こうして3世代で暮らせば、若い親にとって、生活費の援助は目に見えませんが、効果は絶大です。家事も家計も大助かりだし、そのことで若いお母さんは生業にもつけます。そして、経済的にも豊かになります。そうなると、若い夫婦としても、こうして祖父母の支援をもらうことで、もう一人子供をもうけてもいいかもという気持ちになるかもしれません。 そこで、この3世代同居・近居施策が出生率の向上に果たすであろう役割について地域福祉部長にもう一度お聞きします。 ◎地域福祉部長(福留利也君) 3世代同居・近居は、議員のお話にありましたように、祖父母世代から支援を受けられるなど、子育て負担感の解消や仕事と子育ての両立への一助になると考えられます。 議員のお話のあった富山県では、平成28年度から3世代同居への支援策を実施しておりまして、合計特殊出生率が平成27年の1.51から平成30年は1.52と、0.01上昇しているところでございます。出生率は、個人の意識や価値観、景気や就業環境などさまざまな要因に影響を受けるため、3世代同居等の出生率への効果は明確にははかり知れないものの、出生率を高めるプラスの効果はあると考えております。 ◆19番(森田英二君) よう答えていただきました。多分必ず、そういう方向に効果が出ていくんですよ。 3世代での同居、近居は、出生率もおっしゃったように上げますし、少子化解消には効果が絶大だと思うんです。働き手不足の解消には即効性はないとしても、今からでも早急にこの3世代同居・近居施策に取り組むことを、ぜひお勧めいたします。 そこで、本県がこの3世代同居・近居施策を先進他県のように取り入れたとすれば、この後の県内の子育て環境にどのような変化が起きると想定をされておられるのか、もう一度地域福祉部長にお聞きします。 ◎地域福祉部長(福留利也君) 核家族世帯が3世代同居または近居となった場合には、子育ての支え手が身近にふえるなど、働きながら子育てしやすい環境づくりにプラスの効果が考えられるところでございます。 ◆19番(森田英二君) ありがとうございました。ほとんどプラスの効果が必ず出てくるんですよ、ありとあらゆる方向に。 そこでまた、次の質問でございますが、これも知事の提案説明にかかわる項目でございます。提案説明の中の第4期産業振興計画の中で、まず本県の大きな懸念材料として、ここでもまた人口の減少の問題に触れられています。知事は後段で、各産業の分野で担い手不足を懸念され、そのための移住促進を進めるべきだと話されています。農業の分野でも、生産を支える担い手の育成が急務とあります。そして、水産の分野でもまた、担い手の確保の重要性に触れられています。 そして、まとめとして、県経済の成長を支える取り組みの中で、人手不足や後継者不足は今後の重要な県政の課題だと位置づけられています。そして、そのための方策として、移住の促進や大卒の新人の確保などで強化するとあります。さらに、その移住は人材確保センターや市町村と連携することでもっと増加させていきたいとしています。また、先ほど上田貢太郎議員からも、逼迫する人手不足に対し、外国人労働者の話があったばかりであります。 このように、県は、人手不足解消の手段として、新規の人材確保を移住や新卒者の争奪戦で賄おうとしています。私から言えば、ここばかりに頼るのは余りに他力本願に過ぎますし、本県の将来を見通した施策とはとても思えません。また、長期展望に立った上での人手不足解消ビジョンとも思えません。こんなことでは、高知県の将来がいよいよ不安になります。次の時代の高知県を背負う人材はみずからの手でつくり出して賄うんだ、そういう気概を持ってほしいものです。みずからの手で、つまり県内の人材を使って、少し時間はかかっても、今こそ出生率を上げることに本気で取り組むべきでしょう。 そこで、出生率が高くなると言われる3世代の同居や近居の施策にもっと積極的に取り組み、先進地に倣って進めるべきではないかと思うんです。県民の手による県勢の永続的な発展を目指して、他力本願ではなく県内由来の人材で、もっと努力をするべきだと思います。 そこで、知事にも聞いておいていただきたいと思うんですが、人口増加策のいろいろです。県内外の市町村の中には、出産祝い金として、福島県の矢祭町のように、第5子以降、出産のたびに子供1人に150万円くれるところもありますし、3人目から100万円くれる北海道の福島町もあります。県内でも、先ほどおっしゃいましたが、室戸市で3人目以降30万円、土佐町や本山町では15万円や10万円を支給しています。このように出産を促す制度を、各自治体ではなりふり構わず、厳しい財政事情の中にあっても取り組んでいるのが実態なんです。地域の将来を背負ってもらう若い人材を自前で確保しようと、このように必死で取り組んでいます。 今はまだ、都道府県ではこうした出産祝い金の施策こそ見当たりませんが、どこの県も多様な施策で人口増加への取り組みを急いでおります。市町村でのこうした出産祝い金などの施策の背景には、逼迫した財政事情であっても背に腹はかえられないところまで、人口減少が自治体存亡の大きな問題になってきているからであります。県が直接祝い金をしないのであれば、県からは取り組むそうした自治体に対して助成をする手もあるんではないかとも考えます。 そこで、将来の高知県を担う人材は本県の人材で、つまり自力で、長期展望のもとに取り組まなければいけないという時期に来ていると私は思います。この人口減少の問題は、本県の永続的な発展のことを考えると、一年でも、いや一日でも早い取り組みが急がれます。 そこで、知事は先日、横山議員や田中議員への答弁の中でもその決意を述べられていましたが、大変重要な課題ですので、私からも改めて、本県の人口減少に立ち向かう思いをもう一度お聞かせいただきたいと思います。 ◎知事(濱田省司君) 本県の人口構造を見ますと、65歳以上の高齢者の方々の人口は15歳未満の若者の2倍以上多いという構造にあります。したがいまして、この人口構造が大きく変わらないということを前提といたしますと、いわゆる自然減の形で人口減少が続くということ自身は当面避けられない大変厳しい環境にある、状況にあるというふうに考えております。 こうした中におきましても、多くの若者が帰ってくることができる高知にする、また県外に出ていかなくても誇りを持って定住ができる高知にする、そうしたためにいわゆる社会増減の均衡を当面目指していくというのが、高知県としての目指す姿でございます。そうしたことで、さらには結婚・妊娠・出産・子育ての希望をかなえられる魅力ある高知県にしていくと、こういうことが私の使命であるというふうに考えております。こうしたことを実現していくことで、2060年の本県人口、いわば自然体での推計ですと40万人の大台を割るというところを、何とか55万7,000人という水準にとどめておくということを目指して、さまざまな施策を動員してこれを達成していきたい思いでございます。 具体的には、まち・ひと・しごと創生の総合戦略として4つの基本目標を掲げております。1つは、地産外商により魅力のある仕事をつくっていくということ、2つ目は、新しい人の流れをつくっていくということ、3つ目は、先ほど来地域福祉部長が申しておりますが、結婚・妊娠・出産・子育ての希望をかなえる、また女性の活躍の場を拡大していくということ、4点目が、高齢者の暮らしを守り、また若者が住み続けられる中山間地域をつくる、こういった4本の柱を立てまして、関連する施策を総動員して、本県の人口の減少対策に精いっぱい取り組んでまいりたいと考えております。 ◆19番(森田英二君) ありがとうございます。知事が高知県の若い者を呼び戻すんだと。その延長線上に高知県の人口政策も多分あるだろうと思いますので、ぜひ力を入れて、若い人に帰ってきていただける県政づくりをお願いしたいと思います。 次も知事提案の中の、子供たちを守り育てる環境という項目でお伺いをいたします。その高知版ネウボラの項目の中で、県は安心して県内で結婚・出産・子育てができる高知県を目指すとあります。この項目の中には、地域の子育て支援センターの機能を強化するとか、民生・児童委員のボランティア同士の連携を強める必要性などが述べられています。 しかし、ここでもまた子育ての基本であるはずの家族や家庭という文字が一文字も見当たりません。それどころか、子供や家庭を支援する外からの拠点を促進する言葉が多くあります。でも、子育てというのは、そんな外からばかりのシステム的な支援では、ぬくもりに敏感な時期、大切な心が抜けてきます。もっと、子育ての主体である家族や家庭を常に基本とした育て方を中心に据えた取り組みでなければならないと思うんですよ。 子供のころ家族の深い愛情の中でどっぷりと育った子は、将来まで違います。例えば、もし3世代や4世代が一緒に、あるいは近所で暮らせば、私は心も通うぬくもりのある子育てが自然にできると思うんです。しかし今は、合理的な生活を追い求める風潮の中で、核家族になり、個人主義となり、利便さや快適さばかりが求められる社会ができ上がっています。 そりゃあ3世代が一緒に暮らせば不自由や不便も多くありますが、大家族の中では心が通い合い、優しいぬくもりも感じ合うという、何事にもかえがたいよさがあります。今、社会問題となっている悲惨な事件なども、こうした暮らしの中であればある程度は解決されると思うんですが、どうでしょうか。祖父母や曽祖父母の存在がクッションになるんです。 しかし、県民の皆が皆、こうした選択をしたくてもできないこと、またそれぞれの家庭のあり方があることも理解をしていますので、そのことを尊重した上で、国も進める本来望ましい家族のあり方を行政は示していく。3世代、4世代の中でおおらかに育てば、子供たちもきっと心優しく、そして伸び伸びと育ってくれます。 ちなみに、卑近な例で申しわけありませんが、私は四十数年前に、結婚の当初は5世代、12人で一緒に暮らしていました。そして、今も4世代、7人で暮らしています。4人の子育ては大変だったこともありますが、多くの面で本当に助けられました。今では感謝の思いでいっぱいでございます。 さて、高知県としては、お年寄りや子供のためにも、また経験の浅い若い、経済的にも弱い若者のためにも、本来の望ましい家族、家庭の姿をどのように選択してもらうのか。経験や実績を蓄えた国や県のデータとともに、多方面に効果、効能の大きいこの3世代同居・近居スタイルをもっと広く知らせてあげるべきだと思います。 一朝一夕に答えは出にくいかもしれませんが、知事は家族のあり方についてどのような見解をお持ちでしょうか、お聞きいたします。 ◎知事(濱田省司君) 議員から御指摘ございましたように、3世代が一緒に同居をする、あるいは近居をするということによりまして、親の子育ての負担感の軽減につながる、そういう面があるというのは確かであると思います。しかし一方で、国勢調査のデータを見ますと、本県の3世代の世帯数は、平成2年に2万8,000世帯ございましたのが、最近の平成27年調査では約1万4,000世帯、この四半世紀で半減をしているというのが実際のデータでございます。 こうした状況は、我が国全体といたしまして、ライフスタイルが変わってきたというようなこと、あるいは第1次産業就業者が減少してきたといった産業構造の変化があったこと、こういったことを受けまして、家族の形態のあり方そのものも変わってきたことが反映されているということであるかと思います。 今後とも、こうした社会の変化が見込まれる中でありますが、いろいろな条件あるいは状況を判断の要素として勘案をして、最終的にはお一人お一人が望む家族のあり方、そうした形に一歩でも近づいていくということが望ましい姿だというふうに考えております。 ◆19番(森田英二君) ありがとうございました。知事もそこのナイーブなところで言葉を迷いましたが、実際そういう流れにあることは事実なんですね。小さい家族・家庭形態ができていますけれど、だけどその流れをそのまま追認、是認するんじゃなしに、本来、国も進めている中身の内容がある3世代・4世代家族にはこんないいところ--日本の将来にまで影響する、こういう施策なんですよ。チョイスをしてもらう材料をお示しする、その中でお選びをいただく。私は、そういうことがいいからぜひやりましょうと、こういうことなんですね。 そして、次も知事の提案説明の中の、日本一の健康長寿県づくりの中にこんなくだりがあります。希望する高齢者に対しては、地域で支え合い、訪問介護のサービスを受けながら、住みなれた地域で高齢時代を乗り切ろうとあります。また、その施策の中には、福祉サービスの提供とか、医療や福祉・介護の協議体をつくって連携・支援をしましょうとあります。 こうしたスタイルは、今ではごく一般的になってしまって違和感なく聞こえますが、私はここでもまた最も大事なことが抜かっていると思うんです。どこを探しても、一向にその高齢者の方の家族とか家庭といった文字が見当たりませんし、当人の第一義的な身内である家族の立場が見えてきません。 私は、要は第一義的にはまず家族の主体性があって、それを社会が補完をしていくのが筋だと思うんです。例えば、まずは3世代、4世代などの身内で支え合って懸命に暮らすなどして、高齢者を安心できる家族でまず取り巻くんです。その上で、家族で支え切れなくなった不足を公的な援助や共助で補うというのが本来のセオリーだと私は思います。ですが、今は家族のぎりぎりの支えを検討する前から、甘い支援の制度が周辺にでき上がり過ぎているように思えてなりません。 高齢者の本当の望みというのは、我が子や我が孫と一緒に暮らしたいというのが本音だと思います。朝御飯や晩御飯を子や孫に囲まれながら、そしていつも孫を見ながら、いつも孫たちと一緒に食事をしたいというのが切なる願いです。お年寄り向けの究極の施策とは、実はこんな簡単な、こんなささやかでつつましやかなことなんです。しかし、県が示す高齢者サービスの中には、家族、家庭という文字が一文字もなくて、機械的にシステムのようなケアサービスばかりに力を入れているように思えてなりません。 また今、南海トラフ地震を前にして、避難時の要支援者への対策が次の大きなソフト課題となっています。これも家族が一緒に暮らしていれば、どこの部屋に高齢者がいるのかなどは、若い者がお年寄りと同居しているんですから、個別計画などは大幅に軽減されます。3世代同居・近居の効能ははかり知れません。 このように、日本一の健康長寿を目指すときには、まず家族、家庭をもっと中心に据えて、その上でそれを行政や民間の医療・介護システムで補完をしていく。家庭や家族の文字が一文字も入っていない日本一の健康長寿県構想は、私には無機質に思えてなりません。 地域福祉部長の日本一の健康長寿県構想における家族、家庭の位置づけについてお考えをお聞きします。 ◎地域福祉部長(福留利也君) 議員からお話のありました、家族で支え切れなくなった不足を公的な援助や共助で補うということは、福祉施策を進める上での基本だというふうに考えてございます。こうした中、ひきこもりや認知症の人、医療的なケアが必要な障害児などの御家族は、家庭で対応できない課題を抱えている状況がございます。 このため、日本一の健康長寿県構想では、御本人に対する支援に加えて、こうした困難を抱えている家族への支援の充実に取り組んでいるところでございます。また、議員のお話にありました家庭内での支え合いにつきましては、非常に大事なことだというふうに思ってございます。 ◆19番(森田英二君) そして、次は教育についてであります。今議会の提案説明で、知事は冒頭、学力の話から始まっています。私の主張する3世代同居施策には、教育の面でも絶大な効果があることが実証されています。3世代同居率の高い北陸3県、そして東北の5県などは、どの統計資料によっても学力が上位にあります。これまで読んだ他の文献によっても、祖父母の存在が学力の向上に大いに貢献しているとあります。3世代同居率の高さと学力の順位は、このことを証明するかのように、ほぼ似た傾向を明快に示しています。 その3世代同居率の順位の一部を御紹介しますと、こうなっています。まず、同居率の1位は山形県、2位は福井県、そして3位、4位、5位は富山県、新潟県、岩手県となっています。そして、学力はこうです。1位が福井県、2位が石川県、3位が秋田県、4位が富山県、5位が愛媛県となっています。同居率の順番と学力の上位は、地域的にほぼ似た傾向を示しています。 ところが、学力の項での知事の提案説明では、教員と学校、つまりチーム学校に殊さら期待を寄せているように感じます。そしてさらに、市町村の教育支援センターとか地域との連携・協働などの言葉が連なり、中でも最も多く出てくる文字は学校と教員でした。以前は本県でも多く使われていた家庭教育とか家族ぐるみの教育力などの文字は、もう出てきていません。家庭での教育力が私は教育の原点だと思うんですが、その家庭という文字は一カ所もありませんでした。 翻って、3世代が同居していれば、小さいころから広い知識や教養に触れることもできますし、学習や学力以前に、本来備えておくべき人格の基礎、基本もその中で培われるのだと思います。きょう午前中の下村議員の質問にもありましたように、はがきや手紙の宛名も含めた書き方文化も、お年寄りとの生活の中であれば自然に学習されたことだと思います。チーム学校に過度に頼る前に、もっと各家庭の教育力を信じ、幼少期から3世代同居を核にして教育に取り組むことが真に学力の向上に着実につながるのではないかと私は思います。 本県の大きな課題である学力、教育の問題を、3世代同居や家族、家庭の果たす役割について教育長はどのように考えておられるのか、お聞きいたします。 ◎教育長(伊藤博明君) 3世代同居や近居は、子供たちが祖父母から基本的な社会生活のルールを教わったり宿題を見てもらったりする機会に恵まれ、子供にとって、学習習慣、生活習慣の形成、道徳性や規範意識の向上が期待できるというふうに考えております。また、子供たちが小さいころから3世代、4世代の多くの家族に見守られながら育っていくことは、長い生活経験に裏づけされた知恵に触れるだけでなく、年上の方を敬う心や優しさを育み、子供自身の心の安定や成長にとっても意義があるものと考えております。 ◆19番(森田英二君) ありがとうございました。 3世代同居・近居の家庭では、子供が親や祖父母に見守られながら安心して勉強や運動に打ち込める環境があると分析をされています。いわゆる幸福度日本一の福井県の取り組みを見てみますと、日ごろから家族や地域の密着度が高いことがわかります。その福井県での親たちは、学校にもとても協力的であり、また祖父母も子供たちの精神的な支えとなっていて、親にかわるしつけ役なども一役買っているといいます。 先日、調査に行った石川県の津幡町では、3世代同居の町の職員から、ことしの初詣でのとき、教えてもいないのに神社で参拝手順をしっかりこなす小学1年生の息子の様子に驚いたと聞きました。それは、同居している祖父母に教わっていたということでありました。というように、昔からの言い伝えや伝統文化なども、こうして3世代が同居することによって伝承をされていきます。畳のへりは踏むもんじゃない、北向きに服をつるすもんじゃない、靴の脱ぎそろえはその都度きちんとするように、また使った後の椅子はしっかりと押し込むことなど、それなりのわけがあって、地域の文化であり、礼儀や作法でもあるんです。こうしたことも、3世代が一緒に住むことで、あるいは近居することで、自然と引き継がれていくものです。 以上のように、伝統や文化の継承の面でも、3世代同居や近居の生活は大いに意義があるものと考えますが、文化生活スポーツ部長の御答弁をお願いします。 ◎文化生活スポーツ部長(橋口欣二君) 日々の暮らしの中での礼儀や作法などといったことも、古くから紡がれてきた日常の生活文化の一つだと考えております。また、そうしたことは、華道や茶道、そうした日本の伝統的な文化芸術の中にも盛り込まれているものと考えております。 人々の生活の様式が多様化しております現在、祖父母世代など人生の先達から学ぶことは意義があり、芸術文化も含めたさまざまな文化の継承にもつながるものと認識しております。 ◆19番(森田英二君) もちろん私は、この3世代同居・近居施策で、若い世代のみの生活を否定したり、祖父母と近居できない人にまで強制をしたりするものではございません。 さて、さきにも述べましたが、3世代が同居することのメリットの一つに、例えば県も含めて市町村の行政経費の負担軽減に大いに役立っている側面があるとも考えています。3世代が同居、近居する家庭では、例えば保育園の乳幼児保育にかわるものとして、じいちゃん、ばあちゃんが面倒を見てくれています。そのことで、保育園側としても、0歳児や1歳児の乳幼児保育、そして病児保育や延長保育などがそれなりに軽減されていると見ることができるんではないかと思います。そしてまた、家には祖父母が同居していることで、学童保育も不要となりますので、ここでも行政負担は減ります。このように、3世代、4世代が多く住み始めたら、保育園や学校に関しての市町村の行政負担は、人的にも財政的にもある程度軽減されるんではないでしょうか。 そして、一方おじいちゃんやおばあちゃんの側から見ても、保育の送り迎えを任されたり、少し熱のある孫の病院行きを頼まれたりすることで、若い者たちからまだまだ私たちも頼りにされているんだという生きがいも感じるんではないでしょうか。このように、孫を介して体や頭の若さを保つことで、介護のお世話になる時期を少しでもおくらせていると見ることもできるんではないでしょうか。 このように、ここでもまた3世代での同居、近居は行政の負担が軽減されますし、祖父母のほうでもまた健康の保持や日々の生きがいに通じる側面もあると思います。 3世代での同居や近居は、このように目には見えない多くの貢献をしているものと思うんですが、こうした視点から見た行政側の捉え方はどうなんでしょうか、地域福祉部長お願いします。 ◎地域福祉部長(福留利也君) 3世代同居・近居が進み、祖父母が孫の面倒を見ることによりまして、議員のお話にありましたように、乳児保育や延長保育、学童保育の利用ニーズが減ることで行政負担が軽減するといった側面もあると考えているところでございます。 ◆19番(森田英二君) ありがとうございました。 また、私は、この3世代同居・近居の件で山口県にも出向き、自身で調査をしてきました。山口県では、県内の同居率が全国平均に比べて低いことから、同居・近居と別居とを2つのグループに分けて、生まれた子供の人数を調べていました。その結果、同居・近居、別居とも、持ちたい子供の数では、92%から95%の家族が2人以上の子供を持ちたいと答えていましたので、その点では差はありませんでした。ところが、現実の数字は、同居・近居のグループでは67%の人が2人以上の子供をもうけていたのに対し、別居の家庭群では50%台後半となっていまして、約10ポイントの差が出ていました。 山口県でもまた、少しでも出生率を上げることで、人口減少に歯どめをかけ、あるいは人口をふやそうと、理想の家庭像を後押しして、知恵を絞っているところでした。山口県では、さきの内閣府の方針を踏まえて、3世代同居・近居のロゴマークまでつくり、同居・近居促進のキャンペーンを、タレントを呼ぶなどして、県民に広くPRしていました。また、そのときにあわせて、国の支援策である3世代が一緒に暮らし始めたら増築、改築の補助金制度があることなどの説明会も盛んにやっていました。 こうしたこともあって、山口県内では、137社もの建築に関連した会社が、民間独自で3世代支援のグループをつくっていました。そこで、県は、3世代が同居、近居していることを証明するパスポートをつくったそうで、私ももらいましたが、それを建築会社に示すと、県の補助金とは別に、その民間の支援グループから建築費用の大幅な割引が受けられるという仕組みでありました。とてもすばらしい、人気のある、民間の取り組みでした。私は、この民間グループの責任者にも会って話を聞いてきましたが、とても評判がよくて、利用者も多いと話しておりました。この制度を利用することで、3世代で住む県民も建築業者もともにウイン・ウインとなるんです。 またさらに、3世代が新しく同居、近居を始めることで大型の家電製品が必要となることを想定し、県内の家電業界もまた、同居する3世代の支援グループをつくって、パスポートを示した人には購入時に割引サービスを行っていました。そして、不動産屋さんなどの宅建グループもまた同様に、3世代同居者に対し割引する支援グループがつくられていたんです。このため、空き家バンクの利用が格段に多くなり、3世代同居向けの空き家改修支援制度が使われて、実際空き家の数が大幅に減っていると言っていました。 とにかく、県が積極的に3世代同居・近居を勧めるように音頭をとることで、市町村も動き出し、そして建築業界や家電業界のように民間企業までもが自主的に動き始めるんです。支援の輪が随分広がっていました。こうした効果は、恩恵を受ける若い夫婦だけにとどまらず、一緒にあるいは近くに住んでくれる祖父母たちにも、そして関連した民間業界にまで広がるんです。どうでしょうか。本県こそ、もっと本気でこうした3世代同居・近居施策を真剣に考えるべきではないでしょうか。 このように波及効果の広い、また県民を広く幸せにする、この3世代同居・近居施策について、今山口県の事例を御紹介いたしましたが、どのような感想を持たれたのか、知事にお伺いいたします。 ◎知事(濱田省司君) 山口県では、お話がございましたように、世代間の支え合いによる子育てしやすい環境づくりに向けまして、3世代の同居あるいは近居を施策として推進をされているということだと考えます。そうした中で、お話もございましたように、建築や住宅などの民間の事業者の方々が連携をして、その住環境整備を3世代の同居、近居の方々に支援をする事業といった形で、非常に特色ある官民の連携の取り組みが行われているというふうに感じたところでございます。こうした官民で協働した取り組みというのは、少子化対策を進める上で非常に大事な視点であるというふうに思います。 翻って、高知県の状況を考えますと、先ほど議員から御指摘いただいた3世代同居の比率が低いというのは私少々意外に感じました。と申しますのは、私自身の身の回りで感じますと、同居は必ずしも多くないかもしれませんが、近居をされている方は結構あるような感覚を持っておりました。この点は分析が必要ではないかなと改めまして思いますとともに、考えてみますと、そうした本来であれば祖父母の方々と一緒に暮らしたい、近くに暮らしたいのにかかわらず、もしそれが子育て世代の両親の仕事の関係でできないと、事情があるということだとすると、やはり産業振興計画などによりまして、魅力ある仕事づくりというのをしっかり進めていかないといけないという思いをいたしたところでございます。 いずれにしましても、他県の参考事例もしっかりと参酌をいたしまして、本県の少子化対策にしっかり取り組んでまいりたいと思います。 ◆19番(森田英二君) ありがとうございました。 最後の質問です。国の平成27年3月の閣議決定を踏まえてつくられた少子化社会対策大綱により、各都道府県と市町村は改めて少子化の危機感を共有して、全国一斉に具体的な対策に着手しています。今から5年前のことです。その内閣府がつくった3世代同居施策は、多くの優遇制度も盛り込まれてつくられていたんですが、同じ時期につくられた本県の高知家の少子化対策総合プランには、残念なことにそれは反映されていませんでした。 そして今、平成27年から5年がたち、国ではまた新しく次の第4次少子化社会対策大綱がバージョンアップして再び動き出そうとしています。もちろん今回も、その中には3世代同居・近居の施策が盛り込まれようとしています。高知県は、国のこの重要な施策を前回は見送っていますが、残念でなりません。来年度からはどう対応されるんでしょうか。 この第4次少子化社会対策大綱を踏まえて、本県は来年度以降3世代同居・近居施策に今度こそ乗りおくれることなく積極的に取り組まれることと思いますが、最後に知事にお尋ねをいたします。 ◎知事(濱田省司君) 3世代の同居あるいは近居といった取り組みは、世代間の支え合いによりまして子育ての不安感や負担感の解消などに資する施策の一つであるというふうに考えております。この考え方だけを押しつけるということではございませんけれども、一つの選択肢として、県民の皆さんあるいは移住を考える皆様方に提示をするということは意義があると考えております。 これをさらに支援をしていくという点では、まずは来年度県民意識調査の中で、3世代同居などにつきまして県民の皆様の声を詳細に把握をしたいというふうに思います。あわせまして、市町村の意見も聞きながら、この施策の費用対効果ということも考えながら、支援のあり方について検討を進めてまいる所存でございます。 ◆19番(森田英二君) 皆さんから前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございました。慰労の言葉をしっかり述べようかと思いましたが、時間がなくなりました。卒業される皆さん、本当にありがとうございました。(拍手) ○議長(桑名龍吾君) 以上をもって、森田英二君の質問は終わりました。 以上で、議案に対する質疑並びに一般質問を終結いたします。----------------------------------- △議案の付託 ○議長(桑名龍吾君) これより議案の付託をいたします。   (議案付託表配付) ○議長(桑名龍吾君) ただいま議題となっている第1号から第73号まで及び議発第1号、以上74件の議案を、お手元にお配りいたしてあります議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託いたします。   〔議案付託表 巻末491ページに掲載〕----------------------------------- ○議長(桑名龍吾君) 以上をもって、本日の議事日程は終了いたしました。 お諮りいたします。明11日から22日までの12日間は委員会審査等のため本会議を休会し、3月23日に会議を開きたいと存じますが御異議ありませんか。   (「異議なし」と言う者あり) ○議長(桑名龍吾君) 御異議ないものと認めます。よって、さよう決しました。 3月23日の議事日程は、議案の審議であります。開議時刻は午前10時、本日はこれにて散会いたします。   午後4時52分散会...