香川県議会 2022-06-03
令和4年6月定例会(第3日) 本文
▼最初のヒットへ(全 0 ヒット) 出 席 議 員
高 城 宗 幸 君 新 田 耕 造 君
鏡 原 慎一郎 君 松 岡 里 佳 君
白 川 和 幸 君 岡 野 朱里子 君
秋 山 時 貞 君 斉 藤 勝 範 君
松 本 公 継 君 森 裕 行 君
米 田 晴 彦 君 木 村 篤 史 君
山 本 悟 史 君 谷 久 浩 一 君
氏 家 孝 志 君 高 木 英 一 君
樫 昭 二 君 山 田 正 芳 君
香 川 芳 文 君 高 田 良 徳 君
竹 本 敏 信 君 三 野 康 祐 君
西 川 昭 吾 君 十 河 直 君
松 原 哲 也 君 広 瀬 良 隆 君
石 川 豊 君 尾 崎 道 広 君
宮 本 欣 貞 君 山 本 直 樹 君
黒 島 啓 君 五所野尾 恭 一 君
花 崎 光 弘 君 大 山 一 郎 君
都 築 信 行 君 平 木 享 君
欠 席 議 員
鎌 田 守 恭 君
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地方自治法第百二十一条第一項による出席者
知 事 浜 田 恵 造 君
副 知 事 西 原 義 一 君
病院事業管理者 太 田 吉 夫 君
政 策 部 長 淀 谷 圭三郎 君
総 務 部 長 椋 田 那津希 君
危機管理総局長 田 中 一 裕 君
環境森林部長 木 村 士 郎 君
健康福祉部長 三 好 謙 一 君
商工労働部長 寺 嶋 賢 治 君
交流推進部長 佐 藤 今日子 君
農政水産部長 新 池 伸 司 君
土 木 部 長 安 西 愼 君
文化芸術局長 小 川 剛 君
知事公室長 尾 崎 英 司 君
子ども政策推進局長 井 元 多 恵 君
会計管理者 小 川 秀 樹 君
病 院 局 長 岡 田 総 一 君
デジタル戦略総室長 井手下 慶 博 君
教 育 長 工 代 祐 司 君
公安委員会委員 岡 みゆき 君
警察本部長 今 井 宗 雄 君
代表監査委員 木 下 典 幸 君
監査委員事務局長 田 井 慎 二 君
人事委員会委員長 関 谷 利 裕 君
人事委員会事務局長 森 岡 英 司 君
労働委員会事務局長 河 内 一 裕 君
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議 事 日 程(第三号)
令和四年七月五日(火)午前十時開議
第 一 県の一般事務に関する質問
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◯議長(高城宗幸君)ただいまから本日の会議を開きます。
本日の日程は、配付のとおりであります。
日程に入るに先立ちまして、諸般の報告をいたします。
職員に朗読させます。
(職員朗読)
諸般の報告
一、監査委員から、地方自治法第百九十九条及び第二百三十五条の二の規定に
基づく報告三件を受理いたしました。
◯議長(高城宗幸君)以上で諸般の報告を終わります。
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◯議長(高城宗幸君)日程第一、県の一般事務に関する質問を行います。
氏家孝志君。
(氏家孝志君登壇、拍手)
◯氏家孝志君 議長のお許しを得ましたので、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
質問に入るに先立ち、一言申し述べさせていただきます。
今、物価高対策が大きな争点となっておりますが、今回の物価高は内需の拡大による賃金の上昇、設備投資の増大といった国内景気の好循環によるものではなく、行き過ぎた脱炭素の流れによる原油価格の高騰や、不安定な国際情勢による農産物の価格の上昇及び内外金利差による円安が主な原因となっております。
このような中、内外金利差を縮小させるための国内金利の上昇、すなわち金融政策の引締めを訴える意見もありますが、今般の物価高に対する円安の影響は一部分であり、景気の好循環が達成されていない状況の中で、仮に国内金利の引上げを実施した場合には、住宅ローンや奨学金、企業の借入金利の上昇、さらには自動車産業などの輸出企業における経営悪化による設備投資の意欲の減退や雇用情勢の悪化など、
デフレスパイラルに陥ることは明白であると考えております。すなわち、現状における最良の物価高騰対策は国内金利を引き上げるのではなく、今般の物価高の大きな原因であるエネルギーや食料価格の高騰に対して、個別の財政出動によりしっかりと対処していくことが重要であることを申し述べさせていただき、一般質問に入ります。
質問の第一点目は、中小・
小規模事業者におけるデジタル化の推進についてであります。
我が自由民主党の岸田内閣では、主要施策の一つに
デジタル田園都市国家構想を掲げており、私自身も本年二月定例会において、農業分野におけるデジタル技術を活用したスマート農業の推進や、建設業におけるICT化の推進について、知事の考えをお伺いしたところですが、本県経済をより一層発展させるためには、今後、このような人手不足分野に限らず、広く県内の事業者全体がデジタル化の恩恵を享受することが必要であり、とりわけ県内事業者の九割以上を占める中小・
小規模事業者にデジタル化を浸透させ、県内産業の成長につなげていくことが必要であります。
こうした状況において、県といたしましても、
産業技術センターやかがわ
産業支援財団に相談窓口を設けるとともに、デジタル技術と企業経営の専門知識を有する
ITコーディネーターが中小企業等を個別に訪問するなど、プッシュ型の
コンサルティング支援を行っていることは承知しておりますが、これらの事業には事業者からの申込みが必要なため、もともとデジタル化に関心のある事業者しか申し込まないといった課題も想定されております。
本来、中小・
小規模事業者におきましては、資金面や人材面の不足からデジタル技術の導入が進みにくい状況にあり、二〇二二年
版小規模企業白書におきましても、
小規模事業者がデジタル化に取り組む際の課題として、「費用対効果が測りにくい」、「デジタル化を推進できる人材がいない」の順に回答が多く、「適切なITツール・システムが分からない」、「相談できる相手がいない」などといった回答も寄せられております。
さらに、中小企業等の場合、デジタル化の目的・目標が不明確なままITツールやシステムの導入に踏み切った結果、不要なツール・システムを導入し、無駄な投資に終わってしまったなどの事例が散見されていることなどからも、中小企業等に親身に寄り添い、各企業の問題点を細かく掘り起こしながら解決策を提案していく伴走型の姿勢が求められております。
私は、このような県内の中小・
小規模事業者のデジタル化を推進するためには、まずは中小企業等のデジタル化に対する抵抗感を払拭し、アナログな文化・価値観を解消し、できることから取り組んでみるといった意識改革を進めることが必要であると同時に、中小企業等の経営者の方々と日頃からお付き合いのある地域の商工会や商工会議所の役割が重要であり、商工会等の経営指導員がこれまで築き上げてきた密接な人間関係を活用しながら、企業経営者の方々に親身に寄り添った支援を行うことが有効であると考えております。
このような中、国におきましては、本年六月に閣議決定された
デジタル田園都市国家構想基本方針の中で、地域の産学官金が参画して地域ぐるみで中小企業等のデジタル化をサポートする
支援コミュニティーを立ち上げる方針が示されましたが、県におきましても、より一層きめ細かなサポート体制を構築する必要があるものと考えております。また、そのためには、商工会等における経営指導員のデジタル化に関する教育の強化や専門人材の確保、息の長い伴走型支援、さらには、それらを支援するための財政的な支援が欠かせません。
そこで、私は、中小企業等にとって身近な存在である地域の商工会や商工会議所等を含めた幅広い支援機関が連携し、中小企業等のデジタル化を支援していくべきと考えますが、今後、具体的にどのように取り組むおつもりなのか、知事にお伺いいたします。
質問の第二点目は、四国の新幹線の整備推進についてであります。
現在、新幹線は全都道府県の約三分の二において整備されており、本年九月には西九州新幹線の武雄温泉・長崎間が開業を迎えるとともに、令和五年度末には北陸新幹線が福井県の敦賀まで、令和十二年度末には北海道新幹線が札幌まで延伸される予定であるなど、全国において新幹線の整備が着々と進んでおります。
このように、新幹線はもはや高速道路と並ぶ基礎的な社会経済基盤でありますが、一方で、四国におきましては、大阪市を起点として徳島市、高松市、松山市を経由して大分市に至る四国新幹線と、岡山市を起点として高知市に至る
四国横断新幹線の二つの基本計画が昭和四十八年に決定されたものの、いまだ基本計画にとどまっており、全国で唯一の
新幹線空白地帯となっております。
このような中、四国四県では、
リニア中央新幹線が新大阪まで延伸され、スーパー・
メガリージョンが誕生する二〇三七年を一つのターゲットとして四国の新幹線の開業を目指しているところであり、四県の官民組織で構成する
四国新幹線整備促進期成会を中心に、国等に対する要望活動を積極的に行っておりますが、一日も早く四国の新幹線を実現するためには、「四国に新幹線を」という地元の熱意が最も重要であります。
本県におきましても、本年三月に開催したシンポジウム「四国の新幹線の意義・効果とまちづくり」にオンラインを含め約四百名の参加者にお集まりいただくなど、四国の新幹線の整備促進に向け、県民の機運も高まってきているように感じておりますが、二〇三七年の開業目標に向けては、整備についてより具体的な検討が必要な時期となっております。
四国の新幹線は、岡山から瀬戸大橋を経由して、四国四県の県庁所在地を結ぶルートにおいてBバイCが一を超えることが示されておりますが、岡山・宇多津間の整備には、岡山県の理解と協力が必要であります。また、四国内の整備には、各駅の配置について検討が必要となりますが、本年六月に
四国新幹線整備促進期成会により公表された新幹線と四国の
まちづくり調査では、四県における新幹線駅の候補地として、愛媛県では松山駅の一か所に絞られておりますが、他県では複数の案が提示されており、本県におきましては高松駅、栗林駅、伏石駅及び高松空港の四か所が提示されております。このうち最も有利であると考えられる高松駅周辺では、新県立体育館の建設や徳島文理大学の移転、外資系ホテルの誘致計画等が進んでおり、早急に検討しなければ、新幹線駅の建設用地の確保自体も難しくなると懸念をされております。
そこで、四国の新幹線の駅をめぐる本県の検討状況は現在どのような状況にあるのか、また、四国四県、岡山県など近隣県と連携した誘致活動の現在の取組状況、そして、今後においてどのように取り組もうと考えているのか、知事にお伺いをいたします。
質問の第三点目は、
ポストコロナを見据えた観光振興についてであります。
県の
観光客動態調査結果によりますと、令和三年に本県を訪れた県外観光客入り込み数は約五百八十二万人となり、
新型コロナウイルス感染症の影響を受けた昨年から二年連続の減少となりましたが、私の地元である琴平でも昨年の実績から三六・五%の減少となり、県内の主要観光地のうち最も大きい下落幅となりました。とりわけ、本県の観光振興として重要な位置づけを占めるインバウンドの受入れにつきましては、平成十五年の
ビジット・ジャパン・キャンペーン開始以降、国を挙げて推し進められてきた結果、令和元年には日本全体で三千百八十八万人を数えるまでに拡大しておりましたが、このたびの
新型コロナウイルス感染症の影響により二年以上にわたって停止しており、本県の地域経済に大きな打撃を与えてきたところであります。
しかし、国内外の感染状況の改善に伴い、現在、
外国人観光客の入国制限の緩和が進められており、六月十日からは添乗員つきの
パッケージツアーによる受入れが開始されました。さらに、これまで成田や羽田、関西などの主要空港に限られていた国際線の発着について、岸田首相から、仙台空港、広島空港に加え、高松空港でも再開するという方針が示されたとの報道がなされたところであります。
新型コロナウイルスの水際措置により、長らく
外国人観光客の受入れが停止した状態であったことから、高松空港の国際線が再開するとなれば、改めて本県の観光情報を海外に向けて発信するとともに、久しぶりの
インバウンド客をお迎えする準備を整える必要があります。
そこで、今後の本格的な
外国人観光客の受入れを見通して、県としてどのような取組を進めていこうと考えているのか、知事にお伺いいたします。
一方、国内観光につきましては、令和四年版観光白書によりますと、
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、旅行者は密となりやすい主要観光地や都市圏を避けるなど、観光地の選択に変化が生じているほか、休日等、混雑する時期を回避する傾向にあるとされており、今後はますます団体旅行から個人旅行への移行が加速するものと考えております。
このような旅行形態や消費者ニーズの変化に対して迅速に対応するとともに、長引くコロナ禍から本県の観光産業を回復させるためには、
ポストコロナを見据えた持続的で息の長い観光振興の取組が必要であるとされております。例えば、これまでも全国では、大河ドラマや映画などの誘致や世界遺産登録を通じて県外からの誘客を図る取組がありましたが、観光施策としては一過性にすぎず、ブームが過ぎればすぐに下火になっていく事例が散見されております。このようなことからも、観光振興においては一過性のイベントよりも、息の長い、定期的な、地に足のついたイベント等の開催が必要であることが証明されていると強く考えております。
一方で、私の地元の琴平町では、
新型コロナウイルス感染症のため中止となった恒例の歌舞伎公演に代わり、本年五月に
四国金毘羅ねぷた祭りを開催し、延べ約三万五千人の観客を集める大盛況のイベントとなりました。このように本県の観光地では、観光客が何度でも訪れたいと思ってもらえる仕掛けづくり、観光地づくりが必要であり、景色、食、体験など地域にある身近な資源を掘り起こしながら、地域ならではの魅力あふれる観光商品として磨き上げていく工夫が何よりも重要であると考えております。
そこで、
ポストコロナを見据えた観光施策について、定期的で魅力的なイベント等の開催を含め、県としてどのような取組を進めていこうと考えているのか、知事にお伺いをいたします。
質問の第四点目は、米麦農家の経営維持についてであります。
本年二月に始まったロシアによる
ウクライナ侵略は、いまだ終戦への道筋が見通せず、長期化・泥沼化の様相を呈しておりますが、小麦をはじめとする食料価格の高騰や燃料価格、飼料・肥料価格、農業資材価格の高騰など、本県の農家にも大きな影響を与えております。
このうち小麦の国際価格につきましては、昨年夏からのアメリカ・カナダ産小麦の不作により上昇しておりましたが、このたびのロシア・
ウクライナ情勢によってさらなる価格高騰が続いており、また、世界的な食料危機への懸念から、世界第二位の小麦輸出国であるインドが小麦の輸出停止に踏み切るなど、この高騰に拍車をかける状況となっております。
本年四月に改定された輸入小麦の政府売渡価格は、海上運賃の高騰や円安相場の影響も加わり、一トン当たり七万二千円の水準を超え、この約一年間で約四割上昇いたしました。こうした小麦価格の高騰は、食品価格の上昇となって一般消費者の家計を直撃するとともに、本県の特産品である讃岐うどん店の多くが値上げに踏み切るなど、県民生活にも大きな負担となっております。
こうした昨今の国際情勢を踏まえ、食料安全保障の重要性が高まる中、国におきましては、国産小麦の
供給体制整備事業や
生産性向上事業等を実施しておりますが、本県におきましても、県産小麦・裸麦の生産確保と品質向上を図ることが重要であると考えております。また、麦は水田裏作の基幹作物であることから、米との二毛作の推進や、飼料用米、米粉用米、加工用米等の生産促進と一体となった米麦生産の拡大に取り組むことにより、米麦農家全体の収益力の強化と経営の安定化を図るべきであると考えております。
また、コロナ禍の影響が長期化する中、肥料価格や資材価格が高騰し、これらが米麦の生産コストの引上げに大きく影響しておりますが、特に、燃料価格の高騰につきましては、農業機械の
ランニングコストの上昇や農作業委託時の委託料金の上昇となって農家の経営を圧迫しております。
こうした中、小規模な一般農家におきましては、規模のメリットも働かず、厳しい経営環境に対応するための新たな投資も困難であり、経営が立ち行かなくなるおそれがありますが、実際に私の地元の農業経営者からは、「農家の経営が苦しい」、「農業機械が故障すれば、もう農業をやめざるを得ない」といった声が多く聞こえており、その対策はまさに待ったなしの状況であります。
そこで、このたびのロシア・
ウクライナ情勢の影響も踏まえ、食料安全保障の観点及び食料自給率の向上の観点、さらには環境保全や減災機能等の農業・農村の持つ優れた多面的機能の維持の観点からも、県内の米麦農家の所得向上による経営の安定化と米麦農家の維持が重要であると考えておりますが、今後、県としてどのように取り組んでいくのか、知事にお伺いをいたします。
質問の第五点目は、建設業における働き方改革についてであります。
県が公表している最新の毎月勤労統計調査によりますと、県内の事業所規模五人以上の事業所における平均月間総実労働時間は、全産業の平均が百三十九・四時間であるのに対して建設業では百六十六・八時間となるなど、建設業は他の産業と比べて労働時間が長く、依然として厳しい労働環境となっていることがうかがえます。
また、平成三十一年四月には働き方改革関連法が施行され、月四十五時間・年三百六十時間の時間外労働時間の上限規定が設けられましたが、深刻な人材不足に直面する建設業では、時間外労働時間の上限規定の適用が五年間猶予されております。しかし、令和六年四月からは、建設業におきましても、災害の復旧・復興事業の場合を除き、この時間外労働時間の上限規制が罰則つきで適用されることから、建設業界における二〇二四年問題として、その対策が強く求められているところであります。
こうした中、例えば、愛知県設楽町で建設中の設楽ダムでは、働き方改革に伴う時間外労働や休日作業の見直しを行った結果、当初のダム本体工事が三年延長されるとともに、総事業費が約十五億円増加するといった事態も発生し、全国の建設現場では、今後は働き方改革を理由とした工期延長や事業費増額が相次ぐことが懸念されております。
この二〇二四年問題への対応が迫る中、建設業における働き方改革の推進は、担い手の確保・育成の観点からも極めて重要であります。私は、令和四年二月定例会でも、建設業が若者の就職先として選ばれるためには、設計労務単価の引上げなど収入面での処遇改善が必要であると申し上げました。これに対して土木部長より、建設業における処遇改善に積極的に取り組んでまいりたいとの答弁があり、実際に令和四年の
県発注土木工事の設計労務単価では、普通作業員で五百円、特殊作業員で千百円の増額改定がなされるなど、一定の改善が進んでいるものと認識しておりますが、これに加えて働き方改革による労働時間の削減など、さらなる処遇改善が必要であると考えております。
現在、県におきましては、香川県週休二日制モデル工事を推進し、長時間労働の是正や計画的な休日の確保に努めておりますが、その実績は年々増加傾向にあるものの、年間百件程度にとどまっており、現場レベルではまだまだ週休二日は根づいていないものと考えております。
既に物流業界では、令和六年度からの働き方改革関連法の適用を見据え、中継運送の社会実験や配車・配送計画のデジタル化など様々な手法を駆使し、
トラックドライバー等の労働時間を削減する取組が進められておりますが、同じく危機的な人手不足にある建設業界におきましても、これまでの「きつい、汚い、危険」といったいわゆる三Kのイメージを払拭し、「給料がよい、休暇が取れる、希望が持てる」という新三Kの魅力ある職場に変わる絶好の機会として、働き方改革に取り組んでいく必要があると強く考えております。
そこで、県におきましては、行政機関として事業者や業界団体の働き方改革の取組を支援するとともに、発注者として県の公共工事における週休二日制の定着やICT施工を活用した生産性の向上を図ることが必要であると考えておりますが、建設業における働き方改革の推進に向けてどのような取組を行っていくのか知事にお伺いし、私の一般質問を終えさせていただきます。(拍手、降壇)
◯議長(高城宗幸君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)氏家議員の御質問にお答えいたします。
まず、中小・
小規模事業者におけるデジタル化の推進についてであります。
県では、昨年十二月に策定したかがわ
デジタル化推進戦略において、デジタル技術やデータを活用し、県内事業者の生産性向上や競争力強化を促進するとともに、新たなサービス・事業を創出する「産業分野のデジタル化」を推進することとしております。こうした中、議員御指摘のとおり、人材面や経費面等からデジタル技術の導入が進みにくい中小・
小規模事業者のデジタル化を推進するためには、事業者にとって身近な存在である地域の商工会・商工会議所の役割が重要であると考えております。
このため、情報化や金融、税務、労働等に関する巡回や窓口での相談・指導等を実施している商工会・商工会議所と、
ITコーディネーターなどの専門家派遣やIoT・
デジタル活用セミナーなどを実施している県やかがわ
産業支援財団が、
産業支援機関連絡会議などの場を活用して情報共有を行い、デジタル化に関する事業者のニーズを各種の支援施策に的確に反映させるとともに、その活用促進に努めてまいります。
また、商工会・商工会議所が継続的な活動体制を維持できるよう交付している県の
小規模事業者等経営支援事業費交付金を活用して、これまでも事業者のデジタル化を支援する経営指導員等の能力向上のための研修が行われておりますが、今後、こうした取組をより一層進め、事業者のデジタル化につなげてまいりたいと考えております。
このように、引き続き商工会、商工会議所や、かがわ
産業支援財団等と連携しながら、よりきめ細かなサポート体制を構築することにより、中小・
小規模事業者のデジタル化の支援に取り組んでまいります。
次は、四国の新幹線の整備推進についてであります。
まず、新幹線の駅の配置につきましては、整備計画を経て、新幹線の整備を担う鉄道・運輸機構が、線路の位置や延長なども盛り込んで作成する工事実施計画に記載され、これが国の認可を受けることで決定されるものと承知しておりますが、地域においては、二次交通や駅周辺の整備など、まちづくりの議論を進めることが重要であると考え、これまでシンポジウム等の開催を通じ、整備新幹線沿線自治体の事例を紹介するなど、先進事例の研究を行ってまいりました。
近隣県と連携した取組につきましては、これまで
四国新幹線整備促進期成会を中心に広報啓発や要望活動を積極的に展開してきたところであり、先月七日にも同期成会が東京大会を開催し、一層の機運醸成に努めるとともに、大会終了後には四国各県や経済界等と連携し、国等に対して整備計画格上げに向けた法定調査の早期着手を要望いたしました。
また、議員御指摘のとおり、四国の新幹線の整備には岡山県の御理解が不可欠であることから、本年三月の香川・岡山両県知事会議において意見交換を行い、岡山県知事からは、整備新幹線の前提となる法定調査については協力したいとの発言があったところであります。
今後は、先月公表された新幹線と四国の
まちづくり調査を活用した勉強会を開催し、新幹線整備を見通したまちづくりの議論を進めるほか、県内の民間団体等が行う四国の新幹線の機運醸成に資する活動を促進し、県民の皆様の関心が一層高まるよう努めるとともに、
四国新幹線整備促進期成会が、他の基本計画路線の整備を推進する団体と合同で行う要望活動に私も参加し、国政の動きを一歩でも前進、拡大させたいと考えております。
いずれにいたしましても、四国が将来にわたり全国唯一の
新幹線空白地帯となることは、あってはならないことであり、
四国新幹線整備促進期成会を中心に、岡山県の御理解・御協力も賜りながら、四国の新幹線の早期実現に向けて積極的に取り組んでまいります。
次は、
ポストコロナを見通した観光振興についてであります。
外国人観光客の誘客につきましては、コロナ禍においても、海外の主要市場に向け、継続的に営業活動やSNS等での情報発信を行っており、先月の岸田首相による高松空港国際線再開の方針表明を受け、今後こうした取組に加えて、海外のSNSで大きな影響力を持ついわゆるインフルエンサーを各市場から招聘し、県内の魅力ある資源や新しい観光施設等を巡る体験を通じて、現地の方々が具体的な旅行のイメージを抱けるような情報発信を行うほか、旅行博への出展や商談会の開催等を通じて一層の誘客促進を図るとともに、旅行会社へのツアー造成を強く働きかけてまいります。
また、受入環境の再整備を図るため、観光事業者に多言語コールセンターの利用を改めて促すほか、現在、規模を縮小して運営しているJR高松駅や高松空港の外国人観光案内所についても、
外国人観光客の入国状況に応じて体制を順次強化してまいります。
国内誘客の促進に向けては、議員御指摘のとおり、地域にある身近な資源を掘り起こし、多様化する旅行者に選ばれる持続可能な観光商品に磨き上げていく取組が重要であると考えております。このため、昨年度から、その土地ならではの特色あるイベントや体験型コンテンツの造成等への支援を行っており、今年度は、琴平町観光協会が地元飲食店と連携して実施する新たなうどん商品の開発をはじめ、天体観測に適した小豆島での星空観察イベントなど、継続的に開催するものも含めて九つの事業を支援することとしております。
今後、本格的なインバウンド再開を見通し、国の動向等を注視しながら、
外国人観光客の円滑な受入れに向けた準備を着実に進めるとともに、コロナ収束後に向けて、地域が主体となった魅力ある観光地づくりへの支援を通じ、本県への一層の誘客促進を図ってまいります。
次は、米麦農家の経営維持についてであります。
食料安全保障等の観点から、米や麦の国内生産の維持・拡大が求められる中、本県の基幹作物である米麦を生産する農家が、実需者の求める品質や生産量を確保し、収益性を高めることにより、それぞれの経営規模や実情に合った経営を継続していけることが重要であると考えております。
このため、米につきましては、県が策定した水稲の生産振興方針に基づき、「おいでまい」を核とした売れる米作りに取り組むほか、国の経営所得安定対策等を活用して、麦や野菜などと組み合わせた二毛作を推進するとともに、主食用米の需要の減少に応じて、飼料用米や加工用米、さらには今後の需要が期待できる輸出用米などの非主食用米への転換を図っております。
また、麦につきましては、気象条件等による品質や作柄の安定化が課題となる中、排水対策や施肥などの栽培管理方法のきめ細かな普及指導により、収量や品質の向上に向けた技術支援を行うほか、新たな需要が見込めるパン用小麦の導入を検討するなど、実需者が求める高品質な麦の生産拡大にも努めております。
加えて、こうした米麦農家の経営を維持・発展させるためには、生産や経営の基盤強化が重要であり、基盤整備による水田の汎用化や農地の集積・集約化、さらにはスマート農業技術や営農用機械の導入などにより、省力化や生産性の向上を図ってまいります。とりわけ、需要が高まっている小麦につきましては、国の対策を活用し、小麦作付の団地化の推進やスマート農業機械の導入などを支援するための補正予算を今定例会に御提案しており、本事業を通じて、その生産基盤の強化をより一層図ってまいります。
これらの取組を通じて、本県農業の根幹となる米麦生産を積極的に支援し、農業経営の安定化を図ることで、農業の持続的発展につなげてまいります。
なお、そのほかの御質問につきましては、土木部長よりお答え申し上げます。(降壇)
◯議長(高城宗幸君)安西土木部長。
(土木部長安西 愼君登壇)
◯土木部長(安西 愼君)氏家議員の建設業における働き方改革についての御質問にお答えいたします。
議員御指摘のとおり、建設業においては、時間外労働時間の上限規制の導入が予定されていることや担い手確保の観点から、長時間労働の是正や建設現場における生産性の向上を図り、働き方改革を推進していくことが重要であると考えております。
長時間労働の是正につきましては、県では週休二日制モデル工事に取り組んでおり、今年度からは緊急対応が必要な工事を除く全ての工事を発注者指定型で実施し、週休二日制導入の拡大を図っているところであります。また、建設現場の週休二日制の導入に当たり、円滑な施工を実現させるため、国のガイドラインに基づき、労務費や現場管理費などを工事費に補正計上するとともに、週休二日に対応した適切な工期設定を行っております。
生産性の向上につきましては、建設現場におけるICT施工の促進を図るため、建設事業者に対して基礎知識の講習会や施工現場の見学会を開催するとともに、三次元設計データ作成費やICT建設機械を用いた施工費などを工事費に計上するほか、機器購入費用の一部を補助する事業を拡大するなど、引き続き地元建設会社におけるICT施工の普及に努めてまいります。
このように、災害時の対応など重要な役割を担う県内建設業が、持続的かつ安定的に発展できるよう、その担い手の確保・育成に向けて、引き続き週休二日制の定着や生産性向上につながる建設現場におけるICT施工の推進など、建設業の働き方改革に積極的に取り組んでまいりたいと考えています。(降壇)
◯議長(高城宗幸君)一般質問を続行いたします。
松本公継君。
(松本公継君登壇、拍手)
◯松本公継君 議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、私からは四点、一般質問をさせていただきます。
質問の第一点目は、
新型コロナウイルス感染症に対する今後の備えについてであります。
新型コロナウイルス感染症については、変異株とされるオミクロン株による世界的な感染拡大により、国内でも今年に入り感染者数が爆発的に増加しました。二月初めには全国での新規感染者数が一日で十万人を超え、本県においても一日の感染者が五百人を超える日が出るなど、感染第一波から第五波とは比べ物にならない状況となり、三十六都道府県でまん延防止等重点措置が取られるなど、日々増加する感染者数に強い不安を感じたことを記憶しております。
私にも、家族間での感染や、保育所、学校、高齢者施設などでの感染について、不安の声や、感染後の対応についての相談などをいただく機会が増えており、その内容としては、「いつかは感染するかもと思っていたが、実際に感染した際に何からすればいいのか慌てた」といったものや、「濃厚接触者にはなっていないものの、身近で感染があり、念のため検査を受けたい」など、感染後の対応に関するものや、「個人で事業をしていて感染してしまい、自宅療養の期間、店を閉めていたが、再開後、お客様に感染させてしまわないか不安だ」といった声など、様々なものでありました。
現在、新規感染者数は減少傾向が続いており、二月上旬の全国的なピークから比べると大幅に減少しておりますが、それでも感染者が継続的に発生している現状を考えると、感染防止対策を講じながら社会生活を継続する必要性があると感じております。
ワクチンの接種についても、一回目、二回目の接種率は現在八〇%を超えるとともに、三回目、四回目の接種が進んでおります。本県においても、先月二十日から
新型コロナウイルス感染症に係る警戒レベルを感染警戒対策期に一段階引き下げたところでありますが、これまでの感染防止対策による閉塞感の反動もあり、新規感染者数の減少とともに、
新型コロナウイルス感染症に対する危機感が少し薄れてきている場面も出てきているのではないかと感じているところであります。
今回の感染第六波においては、それまでと比較して軽症者が多いとされるものの、一気に拡大した新規感染者に対応するために、医療機関では感染者や感染の疑いがある人への対応が増加し、保健所では各種相談や感染後の自宅待機者に対するフォローに加え、民間の医療保険の給付を受けるために必要な療養証明書の発行にも追われたとも報道されており、感染者の増加とともに関連する業務の量が爆発的に増えたのではないかと思っております。
国では、内閣感染症危機管理庁を創設し、今後、感染者対策を一元化するとされておりますが、今後の
新型コロナウイルス感染症の再拡大が懸念されることを踏まえれば、感染者数が減少傾向にある今、今回のオミクロン株の拡大に伴い新たに生じた課題等について整理をし、感染者数が急速に拡大した際の医療機関や保健所等行政機関における今後の対応について検討しておく必要があります。
そこで、オミクロン株を中心とした新規感染者の急速な拡大を経験し、自宅療養者が増加する中で、それぞれ医療機関や保健所などの感染者対応の最前線で、感染第五波までとは異なるどのような課題があったのか、また、今回以上の感染者ピークが発生する可能性もある中で、今回の課題を基にどのような対策が必要となると考えておられるのか、知事にお伺いいたします。
また、この感染第六波に関連して、共働き世帯を中心とした保育所等に子供を預けている方からは、「休園となった際に仕事を休んで対応しなければならないが、現実は急に仕事を休むことも難しく、対応に苦慮した」という声が多くあったほか、保育所等の関係者からは、「陽性者や濃厚接触者が発生した際に、休園するかどうかの判断に毎回苦慮している」といった相談を受ける機会も多くありました。
厚生労働省によると、感染第六波における保育所等の全面休園は二月三日時点で最大となる七百七十七園であったとされており、特に今回の感染第六波では、保育所等や学校、また、高齢者施設での拡大が確認されることからも、保育所等においてはその対応に悩まれたのではないかと思います。
国は、
新型コロナウイルスの感染拡大で保育所等が休園した場合に他の保育所等で受入れを行うなど、いわゆる代替保育に関する財政措置を実施していますが、現実は、人材の確保や受入れ体制の整備等の問題もあり、全国的に進んでいない状況であると伺っております。
新型コロナウイルス感染症が社会に及ぼす影響が大きい中で、社会活動を維持する観点や安心して働ける環境づくり、また、少子化対策の観点からも、この代替保育の制度については、今回の
新型コロナウイルスの感染拡大を契機に県としてもその確保に努めていただきたいと考えております。
そこで、今年に入ってからの本県の保育所等の休園状況についてお伺いするとともに、今後、
新型コロナウイルスの再拡大にも備え、代替保育の確保など、安定的な保育の受入れ態勢の整備について知事の御所見をお伺いいたします。
質問の第二点目は、風水害に備えた体制の構築と防災・減災対策の成果についてであります。
今年も七月に入り、出水期と言われる集中豪雨や台風による水害が発生しやすい時期となりました。高松地方気象台は、先月二十八日に四国地方が梅雨明けをしたと見られると発表しており、今年の四国地方の梅雨は、統計開始以来一番早い梅雨明けで、最も短い梅雨となりました。梅雨が早く明けるということで暑い時期が長くなるおそれがある一方で、梅雨の戻りなどにより雨が続くこともあることから、この出水期における気象動向については、特に注意をしておく必要があります。
天災は忘れた頃にやって来る。物理学者であり防災学者でもあった寺田寅彦の言葉とされております。今後、大規模地震の発生が高い確率で予想されております南海トラフを震源とする地震や、昨今では線状降水帯と呼ばれる大きな災害や集中豪雨をもたらす複数の積乱雲の連なりが発生しており、いつ発生してもおかしくない災害に対して備えることが重要であることから、防災・減災対策については引き続き注視してまいりたいと考えております。
この線状降水帯については、一九九〇年代から集中豪雨の際に、線状の降水帯が発生していることは言われていたようですが、私がこの言葉を災害関連の用語として認識したのは平成二十六年の八月豪雨の頃からではないかと思っております。西日本にも大きな被害をもたらした平成三十年七月豪雨では、七月五日から八日にかけて、東海地方から西日本で十五個の線状降水帯が形成され、うち九個は最大三時間積算降水量が百五十ミリを超えたとされるなど、長時間多量の降水が大規模な災害を各地で発生させた要因とされており、本県においてもいつ同様の災害が発生してもおかしくありません。
気象庁は、先月からこの線状降水帯の発生予測について、半日前から六時間前までに、全国を十一ブロックに分けて情報提供するとしており、現状では予測どおりに当該ブロックで線状降水帯が発生する確率は四回に一回程度であるとのことでありますが、このような情報が出されることは事前の備えのために有効な手段になると考えております。
本県においては、直近では出水期における大規模水害は発生していないところでありますが、昨年は七月に静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流災害によって、死者二十七人、行方不明者一人の被災者を出すこととなり、全国的には大規模災害が発生している現状の中、その都度、自治体による地域住民への避難情報等の適正な発令について、その是非が議論されるようになっております。
専門的な知見が必要とされる気象予測に関して、気象庁では気象の見通しを解説し、災害対応を助言する気象防災アドバイザーを再来年度までに全国で二百三十五名以上に増員する考えを示しております。気象防災アドバイザーは国家資格ではないものの、地域の気象と防災業務に精通する気象台退職者等に対して国が委嘱する者であり、平常時は住民や自治体職員に対する防災気象情報の解説を行ったり、災害時には自治体の防災業務を支援するなど、自治体のニーズに応じた活用が可能となっています。
本県は、災害における被害が比較的に少ないとされる中、県民の防災意識向上のためには、地域に精通した気象専門家として、集中豪雨が起こる仕組みなどについて、住民への周知啓発を行っていく必要があります。また、日頃からの訓練等により、その初動体制についても備えていただいていることは承知しておりますが、大規模な豪雨災害が予測される段階から災害発生直後の初動体制期においては、このような専門的知見を有する方からの助言が効果的となる場面もあるのではないでしょうか。
そこで、平時における防災業務のほか、災害発生時においては市町が行う避難情報の発令など高度かつ迅速な判断等が求められる中で、専門的知見により職員などをサポートする役割を担う気象防災アドバイザーなどの助言者によるサポート体制の必要性についてどのようにお考えか、知事にお伺いをいたします。
また、本県における防災・減災対策という点では、私が県議会議員として初めて一般質問をさせていただいたのが、知事が平成二十二年に御就任された翌年の平成二十三年六月議会でした。東日本大震災が平成二十三年三月十一日に発生したこともあり、地震に対する備えについて質問して以降、防災・減災対策については私の継続的なテーマとしており、これまで力を入れてこられた知事と同じく、本県の防災・減災対策の在り方を考えてきたつもりであります。知事もこれまでに県民の安全・安心の確保のために御尽力いただいてきたところでありますが、今後発生が予想されております南海トラフを震源とする巨大地震や集中豪雨の増加による風水害が危惧される中、最近の報道では、
新型コロナウイルス感染症の影響で自主防災組織等による防災訓練の回数や規模が縮小傾向にあるとされており、災害に対する備えについては、常に新たな課題に対してその対応を検討していく必要があります。備えあれば憂いなし。
そこで、明日発生するかも分からない大規模災害に備える防災・減災対策について、これまでの成果をどのように捉えているのか、また、
新型コロナウイルス感染症の影響等も踏まえ、本県の防災・減災対策における課題についてどのようにお考えか、併せて知事の御所見をお伺いいたします。
質問の第三点目は、動物愛護管理の推進についてであります。
先月、改正動物愛護管理法が施行され、繁殖を行うブリーダーやペットショップなどの業者には、販売用の犬や猫にマイクロチップを装着し、名前や性別、品種、毛の色のほか、業者名を国のデータベースに登録することが義務づけられるとともに、犬や猫を購入する際、飼い主も氏名や住所、電話番号などを三十日以内に変更登録することが義務化されました。また、既に犬や猫を飼っている人や譲り受ける人、保護団体などについては、マイクロチップの装着は努力義務となっているところであります。
環境省によりますと、迷子や飼育放棄などで自治体に引き取られた犬と猫は令和二年度には七万二千頭余りに上り、このうち八二%、およそ五万九千頭余りの所有者が分からないとのことです。そして、そのうち二万三千七百頭余りが殺処分されたとのことであり、全国的にもその対応が課題となっています。
このマイクロチップの装着については、迷子や災害時等において早く飼い主の元に戻れるという効果のほか、マイクロチップで飼い主を特定することで、迷子になったり、飼育放棄されたりした犬や猫の数を減少させ、殺処分を減らすことも期待されております。
本県では、平成三十一年三月にさぬき動物愛護センターしっぽの森を開所し、譲渡ボランティアの協力も得ながら、動物愛護管理の啓発と譲渡推進に取り組んでおり、令和二年度には犬猫を合わせた殺処分数が九百十二頭となり、開所前の平成三十年度比で五九・七%の減少となるなど、着実にその成果が出てきているところですが、まだ、その数は多く、犬についてはワースト上位となっているところであります。県内で捕獲・収容される犬や猫の多くは野外で繁殖したものであると伺っておりますが、そこに至るまでには飼育の放棄、無責任な餌やりなどの原因もあり、問題となっております。
また、近年、ペットやペット関連産業については、その販売額が増加傾向にあると聞いておりますが、一方で、警察庁によると、昨年、令和三年に警察が摘発した動物虐待の件数は百七十件で、統計が開始された平成二十二年以降で最も多かったとの報道がありました。
今回の改正動物愛護管理法では、マイクロチップの装着等の義務化のほか、動物虐待罪に対する罰則が引き上げられており、法改正を契機に社会全体で動物愛護に対する考えを浸透させ、命ある動物が飼い主の元で適切に飼育される社会が広がるよう、本県においても積極的に周知啓発を行っていただきたいと考えております。
県内市町においては、犬や猫に装着するマイクロチップについて、今回の法改正に併せて、既に飼育している犬や猫を対象に装着費用の一部を補助する制度を検討しているところも出てきており、県としても各市町とも情報共有を図りながら、行方の分からなくなった犬や猫の飼い主への速やかな返還や遺棄の防止につなげていただきたいと思っています。
そこで、今回の動物愛護管理法の改正に伴い、県として、ブリーダー、ペットショップ、飼い主に対してマイクロチップ装着等をどのように推進していくお考えか、知事にお伺いするとともに、今回の法改正も契機として、改めて命ある動物を飼い主に責任を持って飼育していただくという動物愛護管理の考えを、さぬき動物愛護センターしっぽの森での活動も踏まえて、広く県民に周知し、今後の犬や猫の殺処分数の減少につなげていくお考えか、知事にお伺いをいたします。
質問の第四点目は、小・中学校におけるICT環境の活用状況と指導力の向上についてであります。
小・中学校におけるICT環境の整備については、国のGIGAスクール構想によって、その整備が全国的に進み、校内通信ネットワークの整備や児童・生徒が使用する一人一台端末の整備が行われ、県内の公立小・中学校においても令和二年度末までに一人一台端末の整備が完了しました。
新型コロナウイルス感染症の影響により、小・中学校の運営については非常に難しい時期となっておりますが、ここ二年間は感染拡大を防止するための対策を講じながら授業を行ってきており、その中において、一人一台端末を試行的に家庭に持ち帰らせるなど、ICTの活用に積極的に取り組んでいる市町もあったと伺っております。
一人一台端末では、紙では伝えきれない情報を動画によって視覚的・聴覚的に受け取ることや、インターネット等での情報収集、また、オンラインでの交流や議論の場に広がり等が期待されているところでありますが、その活用を、どの授業の中で、どの程度行っていくのかについては明確に決まっているものではないため、地域間や学校間、教員間により、その活用方法や頻度等は異なっているのではないかと考えております。画一的な教育がよいのかどうかという議論はあろうかとは思いますが、義務教育の課程ということもあり、うまくいっている事例、その活用に課題や問題がある事例を広く共有し、現場での指導にフィードバックしていく必要があり、県教育委員会においても、ICT活用に関する検討委員会の中で活用状況等に関する情報交換が行われていると伺っております。
今月下旬からは夏休みとなりますが、小・中学校における夏休み期間中の宿題や生活状況の把握、また、クラスミーティングの開催等、これまで紙媒体や対面形式で実施していた内容について、一人一台端末を活用して実施するようになっている事例も全国的に出てきていると伺っており、本県においても、その利用時間などについても注意しながら効果的に活用していただきたいと考えております。
そこで、本県において一人一台端末の導入が小・中学校で完了して以降、どのような活用事例があり、地域間や学校間、教員間による活用の格差が生じないようにしながら効果的な活用ができるよう、どのような検討がされているのかについて教育長にお伺いするとともに、夏休み期間中における一人一台端末の活用方針について、教育長に併せてお伺いをいたします。
また、これに関連し、昨年十月に文部科学省が公表した令和二年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果の概要の中では、ICT環境の整備状況や教員のICT活用指導力が各県別で公表されており、本県はICT環境の整備状況についてはおおむね全国平均を上回っておりますが、教員のICT活用指導力については全国平均を下回っている項目が多く、ICTを活用した指導に関連する研修を受講した教員の割合では全国平均より五ポイント低い全国三十三番目となっております。
ICTを活用した教育については、現在、模索しながら進められているところでもあり、その結果について過度に反応する必要はないと考えておりますが、先ほども申し上げましたとおり、今後、ICTによって教育環境が加速的に変化することなどが予想されることから、児童・生徒に対して適切な指導ができるよう、教員の指導力向上にも学校現場の声を聞きながら取り組んでいく必要があります。
そこで、ICTを活用し、より楽しく分かりやすい授業づくりのために必要な教員の知識や指導力などの向上に、今後どのように取り組まれるのか、併せて教育長にお伺いをいたしまして、私の一般質問を終わります。(拍手、降壇)
◯議長(高城宗幸君)岡野議員、マスクをしてください。
理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)松本議員の御質問にお答えいたします。
まず、
新型コロナウイルス感染症に対する今後の備えについてであります。
今般のオミクロン株は感染力が高い一方、重症化率は低い特性を有しており、保健所において疫学調査や自宅療養者の健康観察等の負担が大きくなるとともに、医療提供体制の面では、出産を間近に控えた妊婦さんなど、自宅療養が困難な方の入院先の確保に苦慮する事態も生じたところであります。
このため、保健所においては、全庁的な動員をはじめ、会計年度任用職員の増員、保健師等人材バンク(IHEAT)の活用、各市町の保健師の御協力に加え、本年四月からは正規職員の保健師五名を増員するなど体制を強化し、対応しているところであります。
医療提供体制につきましては、これまで様々な機会を通じ、医療機関に対し自宅療養が困難な患者さんの受入れをお願いしており、先般、妊婦の対応が可能な病床の増床もあり、確保病床数は今月四日時点で二百七十一床となっております。
議員お尋ねの今後の感染再拡大への備えにつきましては、引き続き部局横断的な体制や、今定例会に御提案している外部委託などの手法を柔軟かつ機動的に活用しながら保健所機能の維持に努めるとともに、変異するウイルスの特性等も踏まえ、必要な医療提供体制の構築を進めてまいります。
また、県内の保育所等の休園状況につきましては、本年一月から先月までに全面休園をした施設は延べ二百五十二園、一部休園をした施設は延べ三百九十四園となっておりますが、先月以降は休園件数は大幅に減少している状況であります。
保育所等が休園した場合の代替保育につきましては、二次感染への不安や保育士さんの確保などが難しいなどの課題もあり、県内では実施している市町はありませんが、議員御指摘のとおり、地域における安定的な保育機能の確保は重要であると考えており、県といたしましては、地域の実情も踏まえ、保護者のニーズや保育の実施主体である各市町の御意見もお伺いしながら、代替保育の確保などに向けた支援に努めてまいります。
このような対策を推進し、今後の感染再拡大時にも必要な保健医療提供体制等を確保して、県民の皆様の健康、暮らしを守れるよう全力で取り組んでまいります。
次に、風水害に備えた体制の構築と防災・減災対策の成果についてであります。
議員御指摘のとおり、激甚化・頻発化する風水害に的確に対応していくためには、平時から専門的な知見を有する者からの助言等を受けられる体制を構築しておくことも非常に重要と考えております。このため、県では、警察や消防のほか、気象に関する専門機関である気象台や災害現場での豊富な経験を有する自衛隊と日頃から情報交換を行うなど、連携体制の構築を図っており、加えて、令和元年度からは学識経験者二名を香川県防災・減災対策アドバイザーに委嘱し、県の防災・減災対策や危機管理体制強化のための取組に対して助言をいただいております。
御指摘の気象防災アドバイザーにつきましては、地域の気象や防災に精通しており、特に、避難情報の発令等を行う市町での活用が有益でありますが、十分に認知されていないことなどから、全国知事会を通じ、国に対し、より一層の制度周知と人材の確保を要望することとしており、その活用については、今後、各市町とともに検討を進めてまいりたいと考えております。
私は、知事に就任した翌年に東日本大震災が発生したこともあり、災害から県民の皆様の命を守ることが県にとって最大の責務であるとの考えの下、災害に強い香川づくりを推進してまいりました。具体的には、香川県国土強靱化地域計画や香川県南海トラフ地震・津波対策行動計画を策定し、必要な見直しを行いながら、河川・海岸堤防の整備、県有施設の耐震化、自主防災組織や消防団の充実強化、関係機関と連携した訓練の実施など、ハード、ソフト両面から防災・減災対策に取り組んできたところであり、それぞれ事業の目標に対しておおむね順調に進捗しているものと捉えております。
一方、今後の課題としては、議員御指摘のとおり、
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、防災イベントや地域における防災訓練などが縮小傾向にある中、県民の皆様お一人お一人の防災意識のより一層の向上を図ることや、ハード対策についても、優先度の高い箇所から重点的・集中的な整備を進めることが重要であり、引き続き各市町や防災関係機関等と連携して取り組んでいく必要があると考えております。
次は、動物愛護管理の推進についてであります。
本県では、動物の愛護及び管理に関する法律の改正に伴い、昨年三月、香川県動物愛護管理推進計画の改正を行い、規制が強化されたペットショップ等の動物取扱業者が法律を遵守するよう指導・監視の強化を図っており、その一つとして、販売される犬猫への業者によるマイクロチップの装着等の徹底について指導しております。
飼い主については、マイクロチップの装着は努力義務とされておりますが、飼い主としての責任意識の向上、遺棄の防止が期待できることから、関係団体等と連携し、また、各市町を通じてマイクロチップ装着の有用性を引き続き飼い主に広く周知してまいります。
また、さぬき動物愛護センターしっぽの森では、譲渡ボランティア等の御協力も得ながら、犬猫の適正な譲渡に積極的に取り組んでおり、マイクロチップについても、開設当初から、譲渡される犬猫に装着することで所有明示の必要性の啓発を図っております。
そのほか、推進計画では、しっぽの森を動物愛護管理の拠点と位置づけており、動物愛護教室や校外学習の受入れ、市町、地元企業、関係団体等と協力したパネル展示など、様々な機会を捉え、飼い主の責任としての終生飼養やマイクロチップを含む所有明示、不妊去勢手術の実施などの適正な飼養等についての啓発を県内各地で実施しております。
このように飼い主が責任を持って最後まで適正に飼養するよう取り組むとともに、各市町等と連携し、地域住民の皆様が主体となった野犬や野良猫を増やさない地域づくりを促進することが、保健所への犬猫の収容を減らし、殺処分数の減少につながると考えており、今後とも動物愛護管理に関する様々な施策に積極的に取り組むことで、殺処分数の減少と、人と動物との調和のとれた共生社会の実現を目指してまいります。(降壇)
◯議長(高城宗幸君)工代教育長。
(教育長工代祐司君登壇)
◯教育長(工代祐司君)松本議員の小・中学校におけるICTの活用状況と指導力の向上についての御質問にお答えいたします。
ICTの活用事例については、一人一台端末の導入当初は、端末になれ親しむことができるよう、比較的取り組みやすいウェブでの情報検索やAIドリルなどの活用が多く見られました。現在では、体育のマット運動で自分の演技を端末で撮影して修正点を考える事例、個々の考えを電子黒板上に表し、友達の考えに学び合う事例など、授業づくりにおいて重視している自分の考えの形成や協働的な学びに向かう活用が増えてきております。
県教育委員会では、地域や学校、教員間で格差が生じないよう、教育の情報化モデル校等における取組について、学習への効果を検討の上、研修会等を通して各学校へ伝達し、ICTのメリットを生かした活用方法の横展開に努めております。
夏休み期間中における端末の活用については、六市町一組合で持ち帰りの実施を検討しており、「自由研究のまとめを端末で行う」、「端末にアプリを保存することにより、Wi─Fi環境のない家庭においても使用できるようにする」など、取組の内容や方法についても、現在検討が進められております。県教育委員会としても、全国の好事例を市町教育委員会に紹介し、端末の利活用の促進を働きかけてまいります。
教員の知識や指導力の向上については、県教育センターにおけるICTの研修を、従来の希望者に対する研修に加え、昨年度からは初任者研修や中堅教諭等資質向上研修においても実施したり、学校の要望に応じて指導主事を派遣し、端末の活用方法を紹介したりしており、より幅広く教員のスキルアップを図っているところであります。
県教育委員会といたしましては、こうした取組を通して全ての教員のICT活用に関する知識や指導力を高め、子供たちの発達段階や教科の特性に応じた、楽しく分かりやすい授業づくりを推進してまいります。(降壇)
◯議長(高城宗幸君)一般質問を続行いたします。
都築信行君。
(都築信行君登壇、拍手)
◯都築信行君 議長のお許しをいただきましたので、早速質問に入らせていただきます。
まず最初に、物価高騰の影響に対する取組についてお伺いをいたします。
昨年来の物価高に加えて、ウクライナ危機と円安が追い打ちをかけ、原油や原材料が高騰し、県内でも今年四月の消費者物価指数が昨年より二・三%アップするなど物価上昇に歯止めがかかっておりません。ガソリンや電気代、食料品など、生きていく上で欠かせない品目の値上げも顕著で、その影響は長期化が予想され、急速に進む円安の影響とも相まって、さらに幅広い商品・サービスの値上げが予想されております。
そうした現状を把握するため、公明党は三月に国民生活総点検・緊急対策本部を設置し、生活や事業経営に苦しむ方々に聞き取り調査を実施してまいりました。その結果を集約し、政府に緊急提言を二回実施しております。今回の補正予算案の基となる政府の総合緊急対策には、その内容も多く盛り込まれたところであります。
原油高に苦しむ農林漁業者やタクシーなどの交通事業者、観光事業者、資材の不足や高騰などにより苦慮している建設事業者、また、介護・福祉サービス事業者からも、食材費や光熱水費の高騰で苦しんでいる声が寄せられております。加えて、中小企業をはじめとする下請企業は、原材料費の上昇分を適切に価格に転嫁できず、従業員の賃上げもおぼつかないとのお話も多く伺いました。
国と連動して、県においても現場の状況をつぶさに認識し、きめ細かな政策を打つべきと考えます。その財源として、国も
新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金に新たにコロナ禍における原油価格・物価高騰対応分を設け、本県にも約四十二億円の交付金が配分されると伺っております。
我が会派も、このほどコロナ禍における原油価格・物価高騰に関する生活者支援十二項目、事業者支援に関する十一項目を知事に緊急要望をさせていただいたところであります。ウクライナ危機の本格的な影響は、この夏以降に及んでくるとも言われております。早期の具体的な取組が必要です。
また、同様に、その影響は学校で提供されている学校給食の値上げにつながることも懸念をされております。学校給食の食材費は、保護者負担が原則の考え方ではあるものの、それは維持しつつ、臨時的対応として自治体の判断により、保護者負担を増やすことなく給食が実施できるよう配慮できないものかと思います。
内閣府の地方創生推進室から示された「
新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用が可能な事業(例)」の中に、「物価高騰に伴う学校給食等に関する負担軽減」が追加をされております。また、各教育委員会等の対応を促進するため、四月五日に文部科学省より事務連絡も発出されたと伺っております。
給食を提供している県立学校は特別支援学校など九校ありますが、学校給食の食材調達の現状や今後の見通しはどうなのか気になりますし、具体的な財源措置も先ほどのように可能でもあり、高松市は六月補正予算で高松市学校給食会へ補助を行うとのことであります。加えて、一部、輸入食材に頼る状況から、より地域・地元産の食材を採用することによって供給の安定化が図られるとともに、地域農漁業の振興や食育の観点からも有用と考えます。
つきましては、県下における物価高騰の影響をどう認識され、その対策として今後どのように取り組んでいかれるおつもりなのか、知事の御所見をお伺いいたしますとともに、併せて学校給食への対応について教育長にお伺いをいたします。
次に、行政サービスの利便性の向上についてお伺いをいたします。
昨年十二月に策定されたかがわ
デジタル化推進戦略では、行政サービスの利便性の向上のため、行政手続等のデジタル化に、より一層取り組むこととされております。
このうち、行政手続のオンライン化については、これまでもインターネットを利用して申請や届出などの行政手続ができる電子申請・届出システムや、公共施設予約決済システムのほか、物品や公共工事等の入札手続がオンラインで行える電子入札システムの運用などに鋭意取り組んでいただいており、評価をいたしております。
また、この戦略の中では、公金収納のキャッシュレス化についても取り組むこととされておりますが、まずお尋ねしたいのは、証紙収納の在り方についてです。
県の証紙収入については、地方自治法改正に伴い昭和三十九年に制度化されており、自動車運転免許の更新や納税証明、建設業許可申請など八百三十九種目の手数料等で活用していると承知をいたしております。この証紙は、香川県庁消費生活協同組合や香川県交通安全協会など約百か所で販売していますが、どこで売っているか一般の県民に分かりにくく、購入場所と申請場所が同一でないため、不便さも指摘されておりました。また、県の証紙による収入は、令和二年度は約二十六億円でしたが、証紙の印刷費や売りさばき手数料等に約五千万円必要で、一定のコストもかかっております。
このような中、他県においては、収入証紙を廃止し、県庁内に決済管理機能を備えた、いわゆるPOS(販売時点情報管理)レジを配備して、手数料を現金やキャッシュレス、クレジットカードなどでの決済を可能とした自治体も増えており、隣の岡山県や京都府、埼玉、神奈川の各県が、今後証紙の廃止を予定しているそうであります。
そこで、支払い方法を多様化し、県民の利便性向上につなげていくため、証紙の廃止も早急に検討していくべきと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、電子契約の導入についてであります。
県の土木工事や備品の購入、賃貸借、サービスの受注など、主に事業者との契約では、依然、紙ベースでの作成の上、印鑑や収入印紙のほか、本庁や出先機関へ赴くことも必要で、事業者にとっては経費的にも労力的にも負担は大きいとの声があります。
そこで、デジタル化の一環から、クラウド上で契約を結べる電子契約システムの導入を進める自治体が全国でも増えてまいりました。これまで電子契約は、地方自治法施行規則で契約書と電子証明書を併せて用いる必要がある当事者型でのみ認められていましたが、電子証明書の取得には費用や手間がかかるため、浸透もはかばかしくありませんでした。
これについて、茨城県が契約当事者の電子証明書を必要としない立会人型を地方自治体で利用できるよう国に要望、それに応じて国も昨年一月に同規則を改正。それにより、パソコンやスマートフォンなどインターネットに接続できれば、日時や場所を問わず契約することが可能となっております。
今年五月に導入した高知県での契約手続は、事前に事業者側が県に契約締結承認者の氏名とメールアドレスを伝え、県は契約書にアクセスするためのメールをアクセスコードとともに事業者へ送信。契約書の作成は県が行うため、事業者は契約書を確認して承認ボタンをクリックするのみとなります。手続が大幅に簡素化され、県費も低く抑えられて、年間予算は約八十三万円とのことです。気になるのがリスク管理ですが、契約書の原本をサービス提供事業者が用意したインターネット上のクラウドに保存し、契約書の原本にアクセスできる人を県職員に限定するとともに、契約書の改ざんが行われた際には、改ざんされた箇所が分かるようになっているそうであります。
つきましては、電子県庁にふさわしく、県と契約業者との間の契約に伴う作業時間や経費を縮減し、県民サービス向上や業務効率化につなげる電子契約の導入について、知事の御所見をお伺いをいたします。
次に、
新型コロナウイルスの後遺症対策についてお伺いをいたします。
新型コロナの新規感染者数が全国的に再度増加傾向を見せている中、懸念されるのが感染症の後遺症で苦しむ人の急増であります。仕事ができなくなり失職する人もいるなど、日常生活に影響を及ぼす後遺症について、国や行政も実態把握や分析、支援の強化を始めております。
国立国際医療研究センターが行ったコロナ回復者への電話調査では、回答した六十三人のうち、発症二か月後の人で四八%、四か月後も二七%で何らかの後遺症が残り、特に呼吸困難と倦怠感、嗅覚障害については四か月後も約一〇%の方に認められました。脱毛に悩む人も二四%に上り、同様の後遺症が海外の調査でも報告されております。
同様に、厚生労働省研究班が昨年一月から今年二月に陽性が確認されて入院した男女五百二十二人を対象に実施した調査の中間報告でも、
新型コロナウイルス感染症と診断されてから半年が経過しても心身の不調が続くケースがあるほか、高齢者に限らず若い人にも見られることや、その上感染時の症状の重さには関係しないとの中間報告がなされております。
地方でも調査が行われておりまして、広島県や静岡県の調査でも同様の結果が見られ、特に後者での就業状況の結果では、コロナ後遺症が仕事に影響したと答えた人の約四割が仕事内容の変更や退職、休職、転職をしていることが明らかになっております。
このように後遺症により仕事や学校を長期間休まざるを得なくなったり、周囲に理解されず孤立感を深めることによるさらなる悪化も見られるようです。国内ではコロナ後遺症に対する認知度がまだまだ低く、専門外来を設けている医療機関や相談窓口を開設している自治体は少なく、静岡県の調査では、医療機関を受診しなかった人の半数が「受診先が分からなかった」と答えております。大事な情報が必要とする人に届くよう、一層の周知に努める必要があります。
このような中、東京都では八つの都立・公社病院にコロナ後遺症相談窓口を開設し、電話による相談を無料で受け付けております。相談窓口の利用者の中には、後遺症のつらさが周囲に理解してもらえず苦慮していたが、相談を通し、自分以外にも同じような症状の人がいると知って安心したとする方もおられ、患者の悩みに寄り添うような支援が大切であります。
福岡県も二月に後遺症診療相談窓口を開設しましたが、看護師が二十四時間体制で対応し、かかりつけ医への受診勧奨のほか、症状や住んでいる地域に応じて医療機関を紹介しております。大阪府も同様に、相談受付を開設し、新型コロナ受診相談センターにおいて、府民からの電話相談に二十四時間体制で応じており、オペレーターが医師監修の想定問答に従ってアドバイスを行い、必要に応じてセンターに常駐する看護師が対応しているそうです。患者に分かりやすく、気軽に電話をかけられる相談窓口があれば安心であります。
また、コロナ後遺症は治療法が確立しておらず、対症療法が基本となっております。中には治療が長引いたり完治の見通しが立たないことが原因で、精神面に影響が出るケースもあるそうです。後遺症を専門に診る医療機関は全国的には少ない状況ですが、岡山大学病院は二月からかかりつけ医の紹介制による専門外来を実施しており、院内の多様な診療科と連携した診察に取り組んでいるほか、埼玉県では、昨年十月から七医療機関で後遺症外来を開設、今年一月末までに受診した四百二十二人の症例を基に、県と県医師会が診療の指針となる症例集をつくり、後遺症外来の開設を医療機関に呼びかけた結果、多くの医療機関が開設し、地域の診療体制整備が進められております。
今年一月以降、
新型コロナウイルスがオミクロン株に置き換わり、感染者が急増し、本県では令和三年十二月末までの感染者数が四千七百五人であったのに対し、令和四年一月以降だけで約四万五千人の方が感染しております。つまり、今後後遺症で悩まれる方も以前に比べ増えることが容易に予測され、そのニーズも高まるものと考えます。本県においても、罹患した県民の方から、「療養解除になったが味覚・嗅覚異常が残っている」、「今も関節痛や倦怠感があるがどうすればよいか」、「頭痛や目まいがあり悩んでいる」などといった相談や、どこへ受診すればよいのかといった相談が寄せられていると伺っております。
そこで、知事にお伺いいたします。
本県における県民からの後遺症の相談についてどのように対応しておられるのか、また、今後増加すると思われる後遺症を抱えた方々に対してどのような支援を講じようとされるのか、お伺いをいたします。
最後に、不妊治療への支援についてお伺いをいたします。
長引くコロナ禍が少子化に拍車をかけております。厚生労働省が六月三日に発表した人口動態統計の概数値によると、二〇二一年の出生数は八十一万一千六百四人と六年連続で過去最少を更新し、二〇二〇年に比べ約三万人、三・五%の減少となっております。我が県においては、二〇二一年の出生数は六千二百二十三人と、二〇二〇年に比べ四十四人増となっているものの、長期的には減少傾向には歯止めがかかっていない状況であります。また、二〇二一年の婚姻件数は五十万一千百十六組で、二〇二〇年より二万四千三百九十一組減り、戦後最少となったことも影響しているのではないかと考えます。我が県においても減少しており、二〇二一年の婚姻件数は、二〇二〇年より百十八組減少となる三千六百六十八組となったそうです。
少子化の加速は社会や経済の活力を低下させ、社会保障制度の維持にも影響を及ぼすだけに、県を挙げて取り組むべき課題にほかなりません。その背景には、晩婚化や経済的な事情のほか、家事・育児の負担が依然として女性に偏っていることなどもその要因として指摘されており、誰もが安心して子供を産み育てられる環境整備を引き続きお願いをしたいと思います。
出産、育児、そして教育に係る支援策は自公連立政権下で大きく前進し、出産育児一時金や児童手当、待機児童対策の拡充、幼児教育・保育の無償化など、現場の声に基づく多くの施策が実を結んでおります。四月からは、男性や非正規労働者の育休取得を促進する改正育児・介護休業法が施行されているほか、子ども政策の司令塔となるこども家庭庁を設置する法案が今国会で成立しております。少子化対策の一層の拡充につながるよう、強い実行力を持った体制となることが期待されます。
また、子供を望みながら不妊に悩むカップルを支援することも、大事な少子化対策の一つです。日本では、不妊の検査や治療を経験している夫婦は約五・五組に一組と言われています。日本産科婦人科学会によると、二〇一九年に体外受精といった高度な治療で生まれた子供は過去最多の六万五百九十八人。これは、同年の出生児のおよそ十四人に一人に相当します。
これまで不妊治療は、原因の検査や一部の治療に公的医療保険が適用される一方、一回数十万円の治療を繰り返すこともある体外受精などは、その対象外でした。そこで、経済的負担軽減の一助として、国と自治体が不妊治療のうち、保険診療対象外の体外受精等の治療を行う夫婦に対して、費用の一部を助成してきた経緯があります。このたび四月から、体外受精や顕微授精のほか、人工授精、精子の採取などにも待望だった保険が適用されることとなり、窓口の自己負担は原則三割に、一か月の自己負担額に上限を定める高額療養費制度の利用も可能となりました。
長年、不妊に悩む当事者を支援してきたNPO法人Fineの松本亜樹子理事長も、保険適用拡大に対し、次のような評価を寄せていただいております。
保険適用の対象に人工授精や体外受精などが加わることにより、特に課題とされてきた経済的負担が軽減されることになった。また、不妊治療は限られた人が受けるものというイメージが付きまとっていたが、今回の制度改正を契機に、不妊治療が、「特別ではない」、「保険適用されるくらい受ける人がいる」という風潮になり、治療と仕事を両立しやすい環境の整備などがさらに進むのではないかと、期待を寄せていただいております。
さて、保険適用により、多くの不妊に悩むカップルの様々な負担が軽減されていくわけでありますが、先日、ある不妊治療中の方から御意見をいただきました。その方は、先進医療により治療を進めておられましたが、保険適用前には助成制度により賄われていた治療費が、保険適用により助成制度が廃止され、治療費の負担増となったというものです。また、保険外治療を組み合わせた場合は混合診療となり、適用部分の治療費を含めて全額自己負担となってしまうケースもあるというものでありました。
こうしたケースをカバーしようと、不妊治療助成を新設する自治体も出てまいりました。三重県では、子供が欲しくて苦しんでいる方に寄り添って対応したいとし、保険外診療となった先進医療についても、不妊治療の選択肢を増やしてもらおうと、受精卵を撮影して培養の状況を調べるタイムラプスなど、厚生労働省が本年四月時点で認定する七種類の先進医療について助成制度の新設を決定し、治療費の七割を上限五万円で助成するほか、体外受精や顕微授精は保険適用後も年齢や回数に制限があることを受け、第二子以降の不妊治療に対する県独自の助成も継続。保険適用の上限を超えてから通算八回目までの治療費用を助成するとしております。
また、秋田県は、保険適用治療と併用した先進医療の費用などを対象として、二〇二二年度六月補正予算案に関連経費一千四百万円が計上されております。具体的には、先進医療分の費用の全額を対象に、十万円を上限に助成。先進医療として認められていない治療についても、三十万円を上限に全額助成をするそうです。同県も少子化が進む中、制度を利用してできるだけ負担を少なく妊娠・出産を迎えてほしいと、手厚い制度とされているようです。
こうした動きは県内でも見られ、高松市は保険診療に対しては治療一回当たり上限五万円、また、保険診療との併用が認められていない治療を併せて行う混合診療の場合など、保険適用とならない特定不妊治療に対して、一回の治療につき三十万円を上限として助成することとしており、丸亀市も保険診療に対しては治療一回当たり三万円、保険適用外の治療を含む混合診療の場合は治療一回当たり十万円を助成することとしております。
県では、「みんなでつくるせとうち田園都市・香川」実現計画において、妊娠・出産の希望をかなえるよう支援を行い、少子化対策をさらに進めていくとしております。本年四月からの不妊治療の保険適用拡大後も保険適用対象外となっている治療も含めて、その負担の軽減は、それに資するものと考えます。ぜひ本県も、不妊治療へのさらなる支援をお願いしたいと思いますが、知事の御所見をお伺いいたしまして、私の一般質問を終わります。(拍手、降壇)
◯議長(高城宗幸君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)都築議員の御質問にお答えいたします。
まず、物価高騰の影響に対する取組についてであります。
原油などのエネルギー価格や食料品価格等の物価の上昇を背景に、経済・雇用ワーキングチームの報告による本県の各種経済指標、民間調査機関の企業意識調査や経済団体からの聴取調査の結果等からは、消費者マインドの低下や企業業績見通しの厳しさがうかがえ、物価高騰等は、事業活動をはじめ県民の皆様の生活に大きな影響を与えていると認識しております。
このため、今般、
新型コロナウイルス感染症対策、コロナ禍における原油価格・物価高騰対策を決定し、補正予算議案を今定例会に御提案したところであり、その編成に当たっては、国の交付金などを活用しつつ、可能な限り大胆かつ幅広く、地域の持続的な発展にも資する早期の取組が必要と考え、雇用の維持や事業の継続、生活支援、地域経済の回復・活性化について、総合的に対策を講じることといたしました。
具体的には、雇用の維持・事業の継続支援として、国の雇用調整助成金等への県独自の上乗せ支援や制度融資メニューの創設による資金繰り支援、中小企業者への経営相談支援体制の強化などを、また、生活支援として、本県独自の県民生活支援事業や生活に困窮する方への相談支援体制の強化、ひとり親世帯生活支援特別給付金の支給などを、さらに、地域経済の回復・活性化として、物価高騰等を乗り越える事業者を応援する総合補助金や国産小麦の安定供給体制等を促進する緊急対策、畜産農家への緊急支援、公共交通事業者等の燃料高騰・利用回復対策への支援などを計上したところであります。
こうした補正予算議案を御議決いただければ、対策の効果が一日も早く発現できるよう早期執行に努めるとともに、引き続き事業者の方々や県民の皆様の御意見等も丁寧にお聴きし、県内経済の状況等の的確な把握に努め、必要に応じて効果的な対応を検討してまいりたいと考えております。
次は、行政サービスの利便性の向上についてであります。
県では、昨年十二月に策定したかがわ
デジタル化推進戦略に基づき、デジタル技術を活用した行政事務の効率化を図ることはもとより、県民の皆様や事業所の方々が、時間や場所にとらわれず、迅速かつ容易に行政手続を行えるよう、行政手続のオンライン化、公金収納のキャッシュレス化などの行政手続等のデジタル化に鋭意取り組んでおります。
証紙を含めた公金収納のキャッシュレス化につきましては、業務プロセスの見直しを進める中で、幅広い決済手段の確保に努めることが重要であると考えており、昨年十月に庁内ワーキンググループを設置し、キャッシュレス化に係る課題やその解決策について検討しております。県民の皆様や事業者の方々の利便性を向上させるためには、申請等から手数料等の納入までの手続をデジタルでも完結できることが必要と考えており、今後は、これらの手続のオンライン化を進めるに当たって、約八百種目ある証紙収納のうち、原本の添付や手数料等の算定が複雑といった支障がなく、円滑に移行できると考えられるものから、まず電子決済を導入し、その効果や課題等を検証した上で、利便性向上の観点を重視しながら、証紙の廃止を含め、公金収納の在り方について検討を進めてまいります。
電子契約につきましては、議員御指摘のとおり、インターネット上で契約を締結することから契約書の郵送や押印が不要となり、手続の迅速化や経費縮減が図られるなどの効果が見込める一方、契約当事者の意思確認や電子データの取扱いなどに留意する必要があることから、今後、他県の先行事例等の情報収集も行いながら、各種検討を進めてまいりたいと考えております。
こうした取組によって、デジタル技術をより一層活用することにより、行政事務の効率化を図ることはもとより、行政サービスにおける県民の皆様や事業者の方々の利便性の向上が図られるよう、積極的に取り組んでまいります。
次に、
新型コロナウイルス感染症の後遺症対策についてであります。
県では、保健所や
新型コロナウイルス健康相談コールセンターにおいて、
新型コロナウイルスに感染し療養解除された後も、病状の不安や悩みを抱える方からの相談に対応しております。本年一月から五月末までの間では、後遺症に関する約八十件の相談があり、具体的には、療養解除後もせきが止まらない、倦怠感や味覚異常、嗅覚異常、目まいや不眠が続くといった内容の相談が寄せられております。
新型コロナウイルス感染症については、いまだ回復後の経過について不明点が多く、疲労感・倦怠感、せき、味覚・嗅覚障害などに悩まれている方の症状は様々であることから、身近なかかりつけ医を受診し、さらに専門的な治療が必要となる場合は、症状に応じた専門の医療機関への紹介を受け、受診することを勧めております。
また、今後も
新型コロナウイルスについては、療養時だけでなく、療養解除後の相談も多くなることが予想されることから、県と県医師会で作成した自宅療養者健康観察・診療ガイドブックに後遺症を訴える患者に対する診療の流れを記載したページを新たに追加し、かかりつけ医に配布することで、専門医療機関との連携をより一層円滑にしてまいりたいと考えております。
このほか、かかりつけ医などを対象に、国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院から講師を招き、患者から相談があった場合のアプローチやフォローアップの手順について、オンライン形式で研修を実施してまいります。
今後とも県医師会をはじめ関係機関と情報共有を行い、連携して後遺症による不安や悩みを抱える方への支援に取り組んでまいりたいと考えております。
次に、不妊治療への支援についてであります。
近年、全国的に、晩婚化やストレスなど様々な原因により、不妊に悩み、不妊の検査や治療を受ける夫婦の割合が増えており、県ではこれまで、妊娠・出産の希望をかなえる支援として、専門的知識を有する医師や看護師らによる相談指導等の充実に努めるとともに、不妊治療について、国の制度に基づく助成等を行ってまいりました。
本年四月から始まった不妊治療への公的医療保険の適用につきましては、不妊治療を従前の自由診療という形ではなく、有効性等が確認された一般的な診療として受けられるようになり、診療を受けることへの心理的・経済的負担が一定程度軽減されたのではないかと受け止めております。一方で、選択する診療内容によっては、公的医療保険制度に基づく自己負担が、昨年度までの助成制度を活用した際の自己負担と比較して増額となるケースもあることから、医療保険適用による三割の自己負担や、医療保険適用外の治療を含むことで全額自己負担となる混合診療などに対して、新たな助成を行うこととした自治体もあると承知しております。このような状況を踏まえ、経済的な負担を理由に不妊治療を諦めることがないよう、国に対しては先月十三日に、自己負担額を軽減する制度の創設や独自の助成を行う自治体への財政的支援の実施を求めたところであります。
今後につきましては、中央社会保険医療協議会における公的医療保険制度に関する協議など国の関係機関の動向を踏まえるとともに、不妊・不育症相談センターにおける相談支援等を通じ、不妊に悩む方の実態を把握しつつ、引き続き子供を持ちたいと望む方が安心して不妊治療に取り組める環境づくりに資するために、県としてどのような対応ができるのか検討を急ぐ必要があると考えております。(降壇)
◯議長(高城宗幸君)工代教育長。
(教育長工代祐司君登壇)
◯教育長(工代祐司君)都築議員の物価高騰の影響に対する取組についての御質問にお答えいたします。
県立学校の給食で使用する食材の調達については、学校設置者である県教育委員会が、食材を選定するための委員会を設け、関係者等の意見も聞きながら、安全な給食を提供するための基準を満たす食材や調達先等について決定しているところです。
また、保護者に負担いただく食材費については、県教育委員会が食材価格の変動等を考慮して定めており、今年度は一食当たり年平均で、高松北中学校は三百二十五円、特別支援学校の中学部は三百三十円と設定し、栄養教諭は、この金額の範囲で献立を作り、受託事業者が食材を調達して調理しております。現在、食材価格が高騰していることから、献立や食材の組合せの工夫を行いながら、一定の栄養価と質を確保した給食を提供しているところです。
こうした中、今以上に食材価格が上昇した場合、食材の工夫等だけでは献立が限定されるなど、現行の食材費では適切な給食の提供が困難になることが想定されることから、食材価格の動向等を注視し、保護者負担の抑制にも配慮しながら、栄養価や質を落とすことなく、子供に喜ばれる給食を提供できるよう方策を検討してまいりたいと考えています。また、その際には、食育などの観点から、地域の食材の活用についても併せて検討を行いたいと考えています。
県教育委員会といたしましては、学校給食は、子供の健康の保持増進や望ましい食習慣の習得を図っていく上で重要なものであることから、今後とも、その安定的な供給に一層努めてまいります。(降壇)
◯議長(高城宗幸君)理事者の答弁は終わりました。
暫時休憩いたします。
午前十一時五十一分休憩
午後 一時 七分開議
─────────────────────────────
出 席 議 員
新 田 耕 造 君 鏡 原 慎一郎 君
松 岡 里 佳 君 白 川 和 幸 君
岡 野 朱里子 君 秋 山 時 貞 君
斉 藤 勝 範 君 松 本 公 継 君
森 裕 行 君 米 田 晴 彦 君
木 村 篤 史 君 山 本 悟 史 君
谷 久 浩 一 君 氏 家 孝 志 君
高 木 英 一 君 樫 昭 二 君
山 田 正 芳 君 香 川 芳 文 君
高 田 良 徳 君 竹 本 敏 信 君
三 野 康 祐 君 西 川 昭 吾 君
十 河 直 君 松 原 哲 也 君
広 瀬 良 隆 君 石 川 豊 君
尾 崎 道 広 君 宮 本 欣 貞 君
山 本 直 樹 君 黒 島 啓 君
五所野尾 恭 一 君 花 崎 光 弘 君
大 山 一 郎 君 都 築 信 行 君
鎌 田 守 恭 君 平 木 享 君
欠 席 議 員
高 城 宗 幸 君
─────────────────────────────
地方自治法第百二十一条第一項による出席者
知 事 浜 田 恵 造 君
副 知 事 西 原 義 一 君
病院事業管理者 太 田 吉 夫 君
政 策 部 長 淀 谷 圭三郎 君
総 務 部 長 椋 田 那津希 君
危機管理総局長 田 中 一 裕 君
環境森林部長 木 村 士 郎 君
健康福祉部長 三 好 謙 一 君
商工労働部長 寺 嶋 賢 治 君
交流推進部長 佐 藤 今日子 君
農政水産部長 新 池 伸 司 君
土 木 部 長 安 西 愼 君
文化芸術局長 小 川 剛 君
知事公室長 尾 崎 英 司 君
子ども政策推進局長 井 元 多 恵 君
会計管理者 小 川 秀 樹 君
病 院 局 長 岡 田 総 一 君
デジタル戦略総室長 井手下 慶 博 君
教 育 長 工 代 祐 司 君
公安委員会委員 岡 みゆき 君
警察本部長 今 井 宗 雄 君
代表監査委員 木 下 典 幸 君
監査委員事務局長 田 井 慎 二 君
人事委員会委員長 関 谷 利 裕 君
人事委員会事務局長 森 岡 英 司 君
労働委員会事務局長 河 内 一 裕 君
選挙管理委員会委員長 藤 本 邦 人 君
─────────────────────────────
◯副議長(新田耕造君)再開いたします。
一般質問を続行いたします。
白川和幸君。
(白川和幸君登壇、拍手)
◯白川和幸君 議長のお許しを得ましたので、通告に従い質問させていただきます。
質問の第一点目は、瀬戸内海を囲む観光振興についてであります。
本年六月一日より、各国・地域の
新型コロナウイルス感染症の流行状況などを踏まえ、日本へ感染を持ち込むおそれの低い国や地域から来日・帰国する場合の入国時のPCR検査や自宅などでの待機が免除されるとともに、一日当たりの入国者数が一万人から二万人へと引き上げられるなど、我が国の水際対策が大幅に緩和されました。それに先立ち、国内においても、五月のゴールデンウイークは三年ぶりに行動制限がない大型連休となり、多くの観光客が香川県に訪れました。コロナ禍により宿泊事業者や飲食店は大変な打撃を受けていただけに、感染予防に留意しつつも観光需要を取り込むことは、経済の活性化に大きく寄与するものと期待が膨らんでおります。
三豊市で民泊事業を営む経営者の方にお話を伺いますと、広島県の飲食事業者と連携し、瀬戸内海を船でつなぎ、利用者には飲食、観光、宿泊を広域的に楽しんでもらおうというプロジェクトが動き出したそうです。穏やかな瀬戸内海は多島美も相まって国内外から注目を浴びており、これまでの
パッケージツアーや団体による旅行とは異なる個人での旅行や体験型、滞在型といった今まで経験したことがないような体験ができる新しいコンテンツが生み出されようとしています。今を好機と考え、新たな成長に資する取組を推進する必要があるとの思いを強くしております。
このような中、私は、瀬戸内海を囲む観光振興は大きな可能性を秘めていると感じます。一方で、フェリーやチャーター船、海上タクシー等の離島への海上交通手段には、輸送能力や体制上の制約、初めて利用する方には申込みのハードルが高い等の課題があります。
このため、今般開催されている瀬戸内国際芸術祭二〇二二の期間中、芸術祭実行委員会では、既存航路の増便や臨時航路の開設、フェリーの共通乗船券の導入等を行うとともに、船の乗換え案内や作品までのルート検索等の機能を搭載した公式モバイルアプリを開発・提供し、利便性の向上に取り組んでいるところです。また、芸術祭の春会期には、四国地方整備局などから構成される瀬戸内洋上都市ビジョン協議会に県も協力しながら、高松港で海上タクシーの予約効率化に向けた実証実験を行ったと聞いております。
こうした取組が芸術祭の終了後も継続し、今後、旅行スタイルに合わせた海上交通手段が利用者に分かりやすく提供されれば、乗り継ぎに必要な手続に要する時間や待ち時間が短縮され、周辺施設や店舗の利用、訪問先の拡大にもつながるため、利用者はもとより、関連産業にも大きなメリットが生まれるものと期待します。また、コロナ禍で利用客が減少し、収益が落ち込んだ海上交通事業者にとっても、コロナ禍前よりも収益性を高める機会につながるのではないでしょうか。
本県は、せとうちDMOの構成県として瀬戸内全体を一体的に捉えて交流人口の拡大に取り組み、コロナ前には周辺県七県で四百万人を超える外国人延べ宿泊者数があったところです。コロナ後も引き続き瀬戸内のブランド化を進め、国内外からの誘客を促進する必要がありますが、瀬戸内海の海上交通の利用を促進することで、新たな観光需要を取り込むことにつながると考えます。
そこで、瀬戸内海を囲む観光振興、特に瀬戸内海の海上交通を利用した観光振興について、どのような可能性があると考えているか、知事にお伺いをいたします。
また、観光客等による海上交通の利用を促進するため、県としてどのように取り組むことができると考えているのか、お伺いをいたします。
質問の第二点目は、学生等に向けたSetouchi─i─Base(セトウチ・アイ・ベース)の取組についてであります。
私の母校である詫間電波工業高等専門学校、現在の香川高等専門学校の在校生の親御さんから相談を受けることがあります。学校では高度で専門的な知識を学べる一方、それが社会に出てどのように役に立つのかがイメージできなくなっており、将来への不安から学業への情熱を保つことが難しくなってきているとのことです。学校内の閉じたカリキュラムだけではなく、実社会との接点を持ち、学んだ知見を社会にフィードバックする体験が必要とされていると思います。
県が令和二年度に開設したSetouchi─i─Base(セトウチ・アイ・ベース)では、地域のデジタル化を支える人材の育成と若者に魅力ある情報通信関連産業の育成・誘致に向けて、アプリ等の開発に必要となるプログラムスキルを短期集中的に習得するかがわコーディングブートキャンプなど情報通信技術に関する実践的な講座のほか、実社会の課題の解決をビジネスに変えるための講座等が実施されています。事業創造に必要となる意識づけ・動機の可視化からビジネスモデル構築までを一体的に学ぶかがわアントレプレナーシップ養成講座、県内での起業を目指す方を対象にしたビジネスプランコンテストである瀬戸内チャレンジャーアワードの開催、さらには世界で活躍する本県出身の起業家の方を講師に招いたセミナー開催や多様な人材が交流する場の提供などに取り組んでおり、これまでに県内の大学生や高校生が参加し、社会人と一緒に学びを深めることもあったと聞いています。
日本はかつて、造船、自動車、家電の製造で、その品質と価格の優位性を武器に世界を牽引してきました。しかしながら、ここ三十年のGDP、つまり、ものやサービスに対する付加価値は伸び悩み、そのため、その対価となる労働賃金は全く増えていませんし、物価上昇により実質の賃金は低下していると言わざるを得ません。日本が再び世界の経済に影響を与えるような中核となる産業を創出しなければ、我々の未来は暗いものとなるでしょう。先進国としての誇り、そして経済的な安全保障を強固なものとするため、これからの社会に欠かすことのできないデジタル分野の人材育成によって、単なるデジタル機器を使えるという利用者目線ではなく、社会課題を解決するために必要なオピニオンリーダーを生み出すという重大な使命があると思います。
そのためにも、より若く、そしてより多くの子供たちに創造性の高い教育を受ける機会を提供し、おのおのの持つ才能を掘り起こす機会を増やすことが必要だと考えます。それには、たくさんの人と出会い、学び、そして社会に触れ、考える、そういった取組がこの国を大きく変えてくれることでしょう。松下幸之助氏、本田宗一郎氏、盛田昭夫氏など戦後の高度成長を支えたリーダーを、今こそ発掘しなければいけません。
私は、そういった機会は学校教育だけでなく、実践的で生きた知識を得ることができる場を提供することが、学びの質を高め、ひいては県内で若者が活躍でき、活力ある香川の実現につながるのではないかと考えます。特に、都市部に比べてデジタル分野の人材が不足する中で、デジタルへの関心を持った高校生・高専生が生き生きと学べる場として活用され、デジタルを活用して地域課題の解決に取り組んでもらえる人材となってもらえればと願うところであります。
そこで、知事にお伺いいたします。
Setouchi─i─Base(セトウチ・アイ・ベース)が開設されて一年半余が過ぎ、地域のデジタル化を支える人材育成に取り組む中で、手応えや課題を感じられていると思います。これまでの取組を踏まえ、高校生・高専生を含む若者が本県で学び、活躍できるようにするため、どのようなことが重要と考えているか、知事のお考えをお伺いいたします。
また、そのために、例えば、前述の高校生・高専生等の若者も参加できるプログラムを拡充させるといったことも考えられますが、Setouchi─i─Base(セトウチ・アイ・ベース)において、今後どのような取組を行おうとするのか、お伺いをいたします。
質問の第三点目は、農産物の新たな流通ルートについてであります。
コロナ禍による中国のロックダウン、ロシアによる
ウクライナ侵略などの社会情勢により、世界の資源や物流に大きな障害が発生しております。また、今年記録的な熱波が襲ったインドをはじめとし、世界各国で異常気象が報告されており、干ばつや高温障害で世界的な食料危機の不安が高まっております。
我が国の食料自給率はカロリーベースで三七%。自給率の高い米の消費が減少し、飼料や原料を海外に依存している畜産物や油脂類の消費が増えたことから、長期的な低下傾向で近年推移し、この自給率の低下がかねてより問題視されておりました。
コロナ感染拡大前、世界はグローバル化が着々と進み、貿易での不均衡な障壁をなくそうと様々な経済的な枠組みが模索されていました。しかしながら、世界の枠組みは今大きな転換点に差しかかっています。また、金融緩和を継続する日本とインフレ対策に真剣に取り組むアメリカ。アメリカの金融政策により、自国の通貨を防衛するために各国が利上げを敢行し、日本の円が各国の通貨に対して下落しています。通貨の行き過ぎた下落は、すなわち外国からの資材調達価格の上昇を意味し、低い食料自給率は食料価格を上昇させていくことが予想されます。今こそ自給率を上げ、国民の食料不足不安を払拭するべき重要局面が来たのではないでしょうか。
食料自給率の向上には、農業生産の担い手の育成・確保や農地の集積・集約化、生産基盤強化といった生産面の取組や、食育や地産地消等の消費面での取組が必要と言われますが、私はそれらに加え、生産と消費をつなぐ農産物流通の在り方が大きく関わっていると考えます。これまでの流通は、卸売市場を経由する市場流通が中心でありましたが、産直や量販店との直接取引をする市場外流通も広がってきており、青果物の約四割が市場外流通になっていると聞いております。また、最近では
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、通信販売による食品流通の令和三年度販売実績が前年比二〇%増となるなど、流通の多様化が進んでいます。
こうした流通の多様化の例として、ある大手スーパーを展開する流通事業者は、価格重視の取引形態を改め、生産者の顔が見える、安全・安心の確保による商品力の高い農産物を集めるための取組に力を入れ始めたそうです。私がこれまでも様々な機会に提案しています生産工程管理の電子記録による農業者から実需者までの情報の共有やGAP認証取得の取組も、安全・安心の確保につながり、農産物の商品力を高めるものであると思います。
また、静岡県に本社を置くやさいバス株式会社は、ECサイトを活用し、地域の生産者と小売店のそれぞれのニーズを少量からきめ細やかに結びつけ、輸送トラックだけでなく、公共交通や旅客事業者の車両の空きスペースを利用し、集荷施設をバス停と見立てて定期的に巡回することで、物流コストを下げながら、新鮮な野菜を地域の小売店等に短距離・短時間で届けるサービスを日本各地で展開し始めたそうです。
そのほか、インターネット販売や農業者が自ら直売所を設けて販売を行うなど、農業者が消費者と直接つながる直販も増加していると聞いています。
本県でも、このような新しい流通体制や消費者ニーズに合った商品力の高い農産物の流通が増加すれば農業者の収益向上に寄与するものと思いますし、農業者の中には新たな流通ルートを開拓し、収益向上に取り組もうとする方もいるのではないかと思います。
そこで、収益の向上を図るため、新たな流通ルートの開拓に意欲的に取り組もうとする農業者に対し、県としてどのように支援していくのか、知事にお伺いをいたします。
質問の第四点目は、県内中小企業の現在の課題への対応についてであります。
信用調査会社の報告によりますと、令和三年に全国で設立された新設法人は十四万四千六百二十二社で、前年比一〇・一%の増加となったということです。これは二年ぶりの増加であり、調査開始以降、過去最高の件数であったようです。また、休廃業・解散は四万四千三百七十七社で対前年比一〇・七%減少、倒産は六千三十社で対前年比二二・四%減少と二桁の減少率となり、コロナ禍の手厚い資金繰り支援で倒産が抑制され、休廃業、解散も判断が先送りされたとの見方を示しています。
既存の法人数に対する新設法人の比率を都道府県別に見てみますと、トップは沖縄県で八・三三%、以下東京都七・〇七%、福岡県六・〇三%、大阪府五・八〇%、千葉県五・三九%と続きます。一方、新設法人比率が低いのは青森県、山形県などとなっており、人口が増加する沖縄県は十二年連続の伸びを示しているのに対し、人口減少率が大きいほど比率が低いという結果になっているようです。我が香川県は三十九番目と下位に沈んでおり、人口の減少対策や流出防止に積極的に取り組む必要があると思います。
県の創業支援や設備投資の借入れに対する利子補給など手厚い支援は、お会いした事業者の方から評価をいただいており、その窓口となる商工会議所、商工会、地域金融の担当の方々の小まめな企業訪問によるところも大きいのではないかと思うところであります。
しかしながら、そのような中でも、中小・零細企業を取り巻く環境は非常に厳しい状態が続いております。労働生産人口の減少による人手不足や人件費の高騰に加え、ロシアのウクライナ侵攻による天然ガス価格の上昇、原油高や円安による輸入資材の高騰が重なり、業績への影響は大きくなっております。支援策が失われると、休廃業や解散を思いとどまっている事業者もその背中を押されることになるでしょうし、倒産も増えることは間違いないでしょう。一件の倒産は、事業主だけではなく、従業員やその家族、また、関連事業者など多くの人々の生活に影響を及ぼします。倒産の連鎖が起こると、社会経済への影響は二次関数的に拡大することが危惧されます。厳しい経営環境下で先行きが見通せず、新たな事業展開や生産性向上に向けた取組をちゅうちょする事業者も散見され、担い手のいない会社のM&Aや廃業を直接耳にする機会も、今年になって増えたように感じます。これは、経済の大きな転換点に差しかかったのではないでしょうか。
これまで我が国は、デフレ経済の中、頑張ってもなかなか事業収益が改善されない状況が続いていました。現在の原油価格・物価高騰、これは今は痛みを伴うものではありますが、今こそ、五年、十年先を見越して事業を見直したり、生産性を高める設備投資をしたりすべきではないでしょうか。そして、その結果、そこで生まれる製品が適正な価格で取引され、利益循環が生まれることにより、物価上昇を緩やかに抑えながら、この国難とも言うべき経済状態から脱却できるものと信じています。
そこで、県内中小企業の現在の課題をどのように受け止め、今後の社会経済の先行きについてどのような認識を持たれているのか、課題解決にどう対処していくことが県の発展に寄与していくとお考えか、知事にお伺いをいたします。
質問の第五点目は、コロナ禍における健康増進についてであります。
私たちが生涯を健康に過ごすには、適度な運動をする習慣を持つことが欠かせないと言われています。例えば、十分程度の散歩を一日に数回行うだけでも、肥満や糖尿病、がんや心疾患等の生活習慣病を予防する効果が高まるそうです。病気になってから治療するのではなく、規則正しい生活習慣や運動習慣によって病気を予防すること、また、定期的に健診を受診し、病気の早期発見を心がけることが重要であり、将来の日本の社会保障制度の維持にもつながります。
二年を超えるコロナ禍で、私たちの日常生活は大きく変化しました。行動自粛が長期化する中で、当たり前のようにできていた知人・友人との飲食や旅行、スポーツ観戦といった社会活動は制約を受け続けています。このことは、経済的な影響のみならず、私たちの健康面にも影響を及ぼしている可能性があります。
スポーツ庁の体力・運動能力調査では、小学生、中学生から大学生、成年、高齢者の四つの年代別で体力を測定していますが、令和三年度は、コロナ前の令和元年度と比較すると、ほとんどの年齢で低下していました。体力の低下そのものも問題ですが、外出自粛等による運動不足が長期化することで、生活習慣病にも悪影響を与えることが懸念されています。
また、高齢者は、日常生活で体を動かすことで筋肉の衰えや認知機能の低下を防いでいると言われています。高齢者は重症化リスクが高いため、感染不安から外出を控える方も多いかもしれませんが、必要な運動をして体力を維持すること、社会と接点を持ち、人と関わることがほかの世代以上に大事と考えられます。私の周囲でも、老人会の方々が感染対策を取りながら屋外スポーツをすると、久しぶりの再会で参加者が非常に生き生きとされているのを感じました。体を動かすことにより代謝は上がり、自己免疫強化にもつながります。体調管理に気を配ることで、毎日の体の変化、食欲にも気を遣うことになります。どうも疲れが取れにくいとか、味覚が変わってしまったとかささいな変化にも気がつくことがあるでしょう。
私たちは、もっと自分自身の体に注意を払うべきです。そのことが、がんをはじめとする脳卒中や心筋梗塞などの三大疾病予防にもつながります。そして、健診の重要性を再確認する必要があると思います。早期発見により重症化を予防し、生存日数の延命にもつながることはよく知られています。健診の受診は、患者本人だけでなく家族の不安を和らげるとともに、社会全体の医療費の抑制にもつながる重要なものでもあります。
国立がん研究センターの調査によると、全国のがん診療連携拠点病院などのがん登録データから、
新型コロナウイルス感染症が流行した令和二年に全国でがんと診断された人数が前年に比べて四・六%減少したとのことです。この理由として、厚生労働省の担当者によると、がん患者が減少したのではなく、コロナ禍の影響で、早期がんを中心にがんの発見数が減少した可能性が高いということです。日本対がん協会による調査でも、全国の関係団体が実施したがん検診の受診率はコロナ前に比べて低下しており、受診控えが起きていることが懸念されます。
そこで、このような状況を踏まえ、知事にお伺いをいたします。
コロナ禍における運動不足等による生活習慣病への影響や、健診の受診控えによる影響については、今後注視すべき問題と言えますが、問題が顕在化していない現段階から適切な対応を講じる必要があると考えます。まず、県として現状をどのように把握しているのか、お伺いいたします。
また、コロナ禍で生活習慣病の予防や健診の必要性についての理解を広め、県民に適切な行動を取っていただくには、これまで以上に効果的な周知啓発が必要だと考えられます。市町や企業とともに連携しながら、県として県民の健康づくりに向けて、どのような取組を進めるべきか、お伺いをいたしまして、私の一般質問を終わります。(拍手、降壇)
◯副議長(新田耕造君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)白川議員の御質問にお答えいたします。
まず、瀬戸内海の海上交通を利用した観光振興についてであります。
多島美が織りなす美しい瀬戸内海の風景は、これまでもニューヨークタイムズをはじめ世界的なメディアで紹介されるなど、国内外から高く評価されており、本県の重要な観光資源であります。この世界の宝石とも称される瀬戸内海の海上交通を利用した観光振興には大きな可能性があると考えており、県公式観光サイト「うどん県旅ネット」や瀬戸内の七県などで構成するせとうち観光推進機構の公式サイトで、主要な港を起点とする島旅の魅力を国内外に向けて積極的に情報発信しております。また、瀬戸内国際芸術祭二〇二二の開催に合わせ、首都圏や関西圏の旅行事業者に対して、瀬戸内海の風景をはじめ、島の歴史や文化など多様な観光資源やモデルコースなどの情報を提供し、旅行商品の造成や送客を強く働きかけているところであります。
観光客等による海上交通の利用促進につきましては、民間事業者による瀬戸内海の魅力を観光振興につなげる取組や官民連携による利便性向上に向けた取組が行われており、今後も継続利用が図られるよう、利用者への情報提供に努めてまいります。
また、この先見込まれる地方への本格的なインバウンドの回復による新たな観光需要を取り込むことで、島嶼部への観光客のより一層の増加や、それに伴う航路事業者等の収益改善が期待できることから、瀬戸内海や島々の魅力を海外に向けてさらに効果的に情報発信するとともに、旅行事業者に対して、航路を活用した旅行商品の造成を働きかけてまいりたいと考えております。
県におきましては、引き続き第一級の観光資源である瀬戸内海を活用し、海上交通の利用促進にも資する観光誘客に積極的に取り組んでまいります。
次は、学生等に向けたSetouchi─i─Base(セトウチ・アイ・ベース)の取組についてであります。
県では、若者の働く場を創出し、県内定着と県経済の活性化を図るため、令和二年度にSetouchi─i─Base(セトウチ・アイ・ベース)を開設し、人材育成やビジネスマッチング支援など、情報通信関連産業の育成・誘致に取り組んでまいりました。Setouchi─i─Base(セトウチ・アイ・ベース)は昨年度末までに延べ一万四千四十九名の方が利用し、その中から起業や就業をされた方が四十五名、このうち一名は学生の起業であります。
今後も、Setouchi─i─Base(セトウチ・アイ・ベース)を利用する中学・高校生、高専・大学生などの若者が、その学びを生かし、地域で活躍できるようにするためには、実社会で活躍する幅広い人材との交流の機会の提供や、それぞれの思いの実現に向けて伴走する質の高い支援が重要と考えております。
そのため、今年度はシリコンバレーで活躍する本県出身の起業家を講師に迎え、自己実現のための新しい働き方を紹介し、将来を考えるきっかけとなるセミナーを本年五月に開催したほか、起業したいと考えている若者を対象に、アイデアを形にしていく過程を集中的に体験するスタートアップウイークエンド、議員御指摘のアイデアをビジネスモデルにし、発表する瀬戸内チャレンジャーアワードや、より深くビジネスモデルの動機を可視化し、具体かつ現実のビジネスに磨き上げていくかがわアントレプレナーシップ養成講座など、学びの段階に応じた講座を、起業経験等のある専門家のアドバイスとともに、切れ目なく展開することとしております。こうした講座については、一部の高校から生徒を参加させたいとの声も伺っており、今後、高校や高専、大学側のニーズの把握にも努め、講座内容の充実を図ってまいります。
私といたしましては、Setouchi─i─Base(セトウチ・アイ・ベース)が引き続き次代の香川を支えていく学生などの若い世代が集い、学び、交わり、共創する拠点となるよう取組を進めてまいりたいと考えております。
次は、農産物の新たな流通ルートの開拓に向けた支援についてであります。
議員御指摘のとおり、農産物の流通ルートは、卸売市場を経由する市場流通だけでなく、量販店等との直接取引や通信販売など、消費者や実需者のニーズに合わせて多様化しており、農業者が創意工夫の下、様々な流通ルートの中から効果的に選択できる環境を整備することが重要と考えております。
県内でも、市場流通のリスクを分散させるため、地域の農業者から農産物を集めて独自の商品づくりを行い、量販店や食品加工会社などと直接取引を行う地域商社の役割を担う農業者も出てきており、県としても集出荷施設等の整備を支援するなど、意欲的な取組の後押しを行っております。また、消費者との直接取引を希望する農業者に対しては、インターネット販売サイトの開設支援や県のポータルサイト「讃岐の食」でのPRを実施しているほか、さぬきマルシェの開催などを通じて、消費者と直接つながる機会を積極的に創出しております。
さらに、議員御指摘の生産工程管理の電子記録やGAP認証の取組につきましては、農産物の信頼性向上や付加価値の創出につながり、農業者が新たな流通ルートを開拓する上で強みになるものと考えており、引き続きその普及促進に努めてまいります。
このほか、かがわ
産業支援財団内に専門窓口を設け、生産者が自ら加工・販売に挑戦する六次産業化に向けた指導・助言を行うほか、商品開発や販売力の向上を目的とした研修会の開催や異業種交流会などのビジネスマッチング活動の充実を図るなど、農業者の経営を多角化・高度化する取組についても支援を行っており、農業者がそれぞれの特色や強みを生かし、戦略的に流通・販売ルートを拡大できるよう進めてまいります。
これらの取組を通じて農業者の新たな流通ルートの開拓を積極的に支援し、収益向上につなげてまいります。
次は、県内中小企業を取り巻く課題への対応についてであります。
議員御指摘のとおり、
新型コロナウイルス感染症の社会経済への影響が続く中、原油価格や物価の上昇が重なり、民間調査会社の調査によりますとコスト上昇分の価格転嫁が進んでいないことなどから、県内中小企業の経営状況は依然として厳しい状況にあると考えております。このような状況を乗り越えるためには、それぞれの事業者において、将来を見越して新たな事業展開や生産性の向上などの変革に取り組む必要があるものの、先行きが見通せないことなどから新たな取組に慎重になる事業者も少なくないものと認識しております。
このようなことから、今定例会に御提案している物価高騰等を乗り越える県内事業者を応援する総合補助金を創設し、事業者が実施する省エネ、コスト削減、生産性向上につながる設備投資や、社会情勢の変化を乗り越えるための新事業展開などの新しい挑戦を支援したいと考えております。
具体的には、固定費の削減につながる省エネ、高効率機器の導入や生産性向上につながる機械設備の導入などの「物価高騰等を乗り越える未来への投資」、またはコロナ禍における生活様式に適応するために新たに取り組むオンラインでの事業展開などの「社会情勢の変化を乗り越える挑戦」に該当する取組であれば、幅広く対象としたいと考えております。今後、御議決いただいた後は、より詳細な制度設計を進め、速やかに補助金の具体的な内容を公表した上で、今月二十六日からコールセンターを設置し、申請受付を開始したいと考えております。
このように、県内事業者の皆様が物価高騰等の影響を乗り越え、未来に向かって持続的に事業活動ができるよう幅広く支援することで、本県経済のコロナ禍からの速やかな回復・活性化を図ってまいります。
なお、そのほかの御質問につきまして、健康福祉部長よりお答え申し上げます。(降壇)
◯副議長(新田耕造君)三好健康福祉部長。
(健康福祉部長三好謙一君登壇)
◯健康福祉部長(三好謙一君)白川議員のコロナ禍における健康増進についての御質問にお答えいたします。
議員御指摘のとおり、
新型コロナウイルス感染症の影響により、外出を控えることなどから身体活動量が減少し、それに伴い健康上のリスクが高まることが懸念されております。
また、県独自に実施しているがん検診受診者数調査において、令和二年度の受診率は前年度に比べ低下しているほか、厚生労働省が発表した令和二年度の全国の特定健診実施率も低下する結果となっているなど、受診控えの影響も考えられることから、これらの実情に応じた対策が必要であると考えております。
このため、健康づくりの取組に対しポイントを付与するかがわ健康ポイント事業「マイチャレかがわ!」では、コロナ禍において仲間同士が離れていても、スマートフォンを通じて競い合いながらウオーキングに取り組むことで運動の実践を促すほか、先月からは十日間毎日ログインした場合にボーナスポイントを付与する機能を追加したところであり、習慣化を後押しする取組をより一層進めてまいりたいと考えております。
また、がん検診等の適切な受診につながるよう、協定を締結した十五の民間企業の御協力をいただきながら、がん検診の重要性を普及啓発するほか、産官学連携で生活習慣病を予防する健診の意義を伝える動画を作成し、SNS等を通じて発信することに加え、過度な受診控えは病気のリスクを高めてしまう可能性があること、医療機関や健診会場では換気や消毒でしっかり感染防止対策を取っていることなどの周知を行い、受診勧奨に取り組んでいるところであります。
今後は、引き続き
新型コロナウイルス感染症が県民の皆様の生活習慣に与える影響を考慮しながら、運動習慣の実践を促す環境づくりや健診の大切さの周知啓発に努めるなど、健康づくりの取組を総合的に推進し、健康長寿の香川の実現を目指してまいります。(降壇)
◯副議長(新田耕造君)一般質問を続行いたします。
米田晴彦君。
(米田晴彦君登壇、拍手)
◯米田晴彦君 それでは、早速質問に入らせていただきます。
一点目、介護の質の確保について伺います。
コロナ禍で介護現場はますます厳しさを増しています。介護スタッフに陽性者、濃厚接触者が増えたピーク時には悲惨な状況で、現場から悲痛な声をいっぱいいただきました。「十六時間労働している」、「二日に一回夜勤に入っている」、「スタッフ全員に自費で検査キットをあらかじめ配って、陽性者が出たら即休んでもらうんだけど、少ない人数でやりくりが大変」などなど。それでも私がすごいなと思うのは、「何が一番つらいかって、お年寄りがこうしてほしいっていう声に応えることができないっていうのが一番苦しい」なんて言うんです。人数が少ない中で施設ケアをやろうとすると、最小限のことをちゃんと保障するしかありません。食べて、出して、ちゃんと寝ているというこの最小限のことだけはちゃんとやろうと踏ん張っていただいています。デイサービスの場合も、人員が足りず、「お風呂ができなかったりレクリエーションもできないけれども、それでもいいですか」、「来ていただけるだけで助かります」といったやり取りが随所で聞かれ、切実なニーズに対し、扉を閉めずにつないでいただいています。訪問介護は、陽性者へも嫌がらず、マスクや防護服を自分で用意して訪問しているにもかかわらず、感染のおそれが強い介護職には何の手当も出ていませんでした。
また、コロナによって認知症が進んだという話をよく耳にします。私が相談を受けたケースは、特別養護老人ホームでレクリエーションがなくなり、十分なリハビリも行われない中、「体の硬直が進んでいるのを見てびっくりした。こんな状況ではなかったのに。「ちゃんとリハビリしてほしい」と言いたいけれど、預かってもらっている立場からはなかなか言えん」と辛そうに話してくださいました。レクリエーションはやらなければならないとなっています。にもかかわらず、行われない中で利用者の状態が悪化しています。ちゃんと把握されているのでしょうか。
介護が止まるということは、食事、排せつ、入浴といったことができなくなる。それはもう利用者の命に直結していく。家族にとっても、デイサービスが使えなくなるとたちまち仕事に行けなくなる。そうなると家計の負担が非常に増えてしまう。それだけじゃなく、デイサービスを利用していることによって保たれているという家庭もあり、家族関係にも大きな影響が出てきます。それは、行き着くところ、社会が崩壊するということにもつながっていきます。
介護は、利用者はもちろんのこと、その家族にとって、あるいはもっと言うと社会にとって必要不可欠なインフラ。水道や電気以上に大事な社会的インフラ。水道、電気を止めちゃいけないのと同じように、介護を止めるわけにはいかないという認識で介護体制を充実させていくことが必要ではないでしょうか。
ところが、現在、国では特別養護老人ホーム等の人員配置の基準を、現在、利用者三人に対して職員が一人という基準をデジタル化の導入で四対一にしようなんていう議論がなされているわけで、どこまで人を物扱いしたら気が済むんだろうと憤りに堪えません。今も、現場は過重労働が常態化しています。夜は大体三十人に一人、昼間は十人に一人なんていうのが現状です。デイサービスの現場では、女性一人で一日二十人から二十五人の入浴介助を強いられているという猛烈な実態にあるということもお伝えしてきたところです。介護現場からは、「韓国が今年から介護職員一に対し利用者二・五人を二・三人にしてスタートしているのとえらい違い」、「もうあきれてものも言えん、逆だろう。いざというときに対応もできないということがコロナで分かったんだから、むしろ二・五人に一人、あるいは将来は二人に一人ということで、またこういうコロナ禍のような危機が来たときにも何とか対応できるような体制をつくってほしい」と懇願されています。
そこで、伺います。
介護の質の確保のためには人的体制の強化こそが必要と考えますが、知事は介護現場の状況をどれくらい把握され、現場の求めにどのように応えようとしているのか。また、基準の改悪がされようとしている中、早急に現場を監督する立場から実情をしっかり国に伝え、人員配置の基準の改善に向け、意見具申や意思表明をすべきと考えますが、知事の御所見をお伺いします。
次に、インクルーシブ教育実現のビジョンについて伺います。
障害の有無などによって学ぶ場を分けられることなく、子供たちが共に学ぶことはインクルーシブ教育と呼ばれ、SDGsに掲げられています。「インクルーシブ教育は、障害のある子だけではなく、障害のない子にも有益です。障害のある子供も、適切な支援や配慮の下、通常学級に通うというのが原則であるべきです。」アメリカで長年障害者の社会運動に取り組み、インクルーシブ教育の重要性を訴えてきたジュディ・ヒューマンさんはこう語っておられます。
私たちは、香川県障害のある人もない人も共に安心して暮らせる社会づくり条例を制定し、障害者に対して持つ偏見や誤解などの意識を変え、障害のある人の社会参加を制約してきた物理的な壁を取り払い、分け隔てしてきた歴史を乗り越え、真の共生社会をつくろうと歩み出しました。そして、そのためには、現実の壁から目を背けず、建設的対話を通じて克服していくんだと宣言しています。
さて、この条例に照らして特別支援教育の現状を見た場合に、掲げる基本理念の方向で施策が展開されているのでしょうか。今、障害があり特別支援学校に通う子供が増えています。在籍する子供たちの急増で深刻になっているのが教室の不足です。香川丸亀養護学校も、この間増築したはずなのに、また足りないとお聞きしました。
文科省の統計によりますと、特別支援学校や小・中学校に設置された特別支援学級に在籍する障害のある子は急増し、特別支援学級では十年前に比べ倍増、特別支援学校に通う児童・生徒等は一・二倍になっています。背景には、発達障害がある子の増加や専門的な指導を望む保護者のニーズの高まりがあると言われていますが、果たしてそうでしょうか。かつてなら在籍していなかったような子も最近は特別支援学校に来るようになったとも言われています。
ある専門家は、小学校一年生の四月の段階で自分の座席にきちんと授業中に座っていられるとか、国語とか算数の学習が部分的にでも取り組めるのがいい子で、騒いでしまう子供がちょっとどっか普通と違っている子と選別が行われて、教室の中が排他的な空気が非常に強くなってきていると感じているとインタビューに答えておられました。
現に、幼稚園で地域の子供たちと一緒に通うことでうれしそうに身支度を整えるようになった子供の変化を見た親御さん、「みんなと一緒の通常学級に通いたい」と希望したが、学校や行政から、「この子のためには特別支援学校に行ったほうがいいよ」、「かわいそうじゃないか」、果ては「○○君のことを本気で考えましょうね」と心ない言葉を浴びせかけられたと言います。そして、「多様な学びの場の提供」と一見丁寧に聞こえますが、障害児を持った親にとっては、非常にその同調圧力というか、あなたの子供のためにああいう学校があるのに何であっちに行かないのという圧力を強烈に感じたと語っておられます。耳を傾けるべきではないでしょうか。
定めでは、障害のある子供の就学先は、本人と保護者の意見を可能な限り尊重した上で、障害の状態などを踏まえて教育委員会が決めることになっています。でも、不安だらけで情報を持たない親にしてみれば、それでなくても迷惑をかけているという負い目を持つ中、周りから畳みかけられたら、意見を言うことなどかなわないのではないでしょうか。
そこで、まず、教育長に伺います。
障害により特別な支援の必要な児童・生徒が香川県ではどのように推移しているのか、その現象をどう分析しておられるのか、お答えください。
また、特別支援学校へ誘導してはいないのかの指摘に対し、障害のある子供本人や保護者の意見をどれだけ丁寧に酌み取るよう対応されているのか、就学前診断の現状と課題についてお聞かせください。
「地域の子は地域の学校で」を合い言葉に一九七〇年代から障害児を地域の学校に受け入れ、実践してきた大阪府豊中市の例はあまりにも有名ですが、障害があっても特別支援学校ではなく通常学級に通う実践が運動団体の涙ぐましい努力で徐々に全国各地で広がり、多くの成果を上げていますが、どれだけ県教委はつかんでおられるのでしょうか。どのような研究をされているのでしょうか、教育長にお伺いします。
四十数年の実践に裏づけられた豊中市の小学校のある校長先生は、「クラスに二人から三人はいるけど、分かんないでしょう。だって、全然特別じゃないから。それなりの支援は要るけど、助けが必要だなと思うときはそばに寄るし、そうでなかったら離れる。教師がひっついてると他の子の壁になってしまう。離れて見守ってると子供たちが同士がつながる」と自信満々に語っておられました。また、医療的ケア児の受入れについても、「周りの友達と接することでケアの必要な生徒の何とも言えない表情が見れるし、周りの友達もすごい優しい心を持って育っているのが分かる。授業も、支援する教員が教科書を読み上げ、クラスの仲間たちが声をかけて一緒に学んでいるが、「先生、今こんなふうに言ってるよ」とか、「これ困ってるからこれしてあげて」とかって子供たちが教えてくれる。やっぱり長いこと小っちゃい頃から知ってるというのは、子供たちの中ですごい財産なのかなというのは感じる。」と言います。
実践されてきた人たちは口をそろえてこう言います。「案ずるより産むがやすし。何かあったらその都度話し合っていけばいい」、「大人の心配をよそに子供たちは普通に受け入れていく」、「周りの子供たちが優しくなる。お互いに教え合う雰囲気が全体に広がり、クラスの成績も上がった」、「存在を重荷でなく、まさに多様性として当たり前に受け入れていく」、「無理やりこっちに合わせようとするんじゃなく、障害のない側が合わせていくことで分かってもらえたという感じがあるのか、障害児が落ち着いていく」、「表情が豊かになる」などなど。幼い頃からともに学ぶ環境をつくり上げることの成果は計り知れないと、実践者の話を聞いてつくづく思います。
経験がなければ誰でも戸惑います。だからこそ、自分たち大人がたどってきた道のりを繰り返させるのではなく、新たなコースを用意すべき時期に来ているのではないでしょうか。試行錯誤を繰り返しながら、先入観なく当たり前の関係性を構築していっている現実をこそ伸ばしていくべきと考えます。
そこで、伺います。
最初にインクルーシブ教育について質問してから九年の月日が流れましたが、一向にインクルーシブの方向に向かっているような感じがないのですが、豊中市のようにどんな子も地域の学校に通うということを前提にして、学校の仕組みや一律の授業の在り方を見直していく、非常に創造的なわくわくする事業と考えますが、インクルーシブ教育の香川における現状と課題をどう認識しておられるのか、教育長にお伺いします。
また、どうやったら障害のある人もない人も共に安心して暮らせる社会をつくっていけるのか、そのロードマップについてどのように考えておられるのか、条例の理念実現の立場から知事に御所見をお伺いします。
三点目、物価高騰下の生活者支援策について伺います。
コロナ禍において物価高騰等に直面する生活者を支援し、地域経済の活性化を図るとして、国が整備したマイナポイント事業の基盤を活用して五千円相当のポイントを付与する二十九億円余りの予算が今議会に提案されています。この事業、果たして県民生活支援の名に値するのか、甚だ疑問です。付与ができるようになるのは十月中になるとのことです。物価高騰に苦しんでいるのは今なんじゃないでしょうか。即効性のある対策にすべきじゃないでしょうか。なぜ対象者をマイナンバーカード取得者に限るのですか。物価高騰に苦しんでおられるのはマイナンバーカードを取得した方だけなのでしょうか。
お聞きしましたら、六月一日現在でマイナンバーカード取得者は四三・八%、およそ五六%の人には恩恵が及ばない、制度設計の見積りでは取得が進んでも六割と見積もっておられますから、残り四割の人、約三十九万人には渡らなくてもいい制度設計になっています。マイナンバーは一律に付されているんですから、通知カード所持者だって対象にする設計に何でならなかったのでしょうか。県民全員にあまねく行き渡る制度を考えるべきではなかったのでしょうか。制度に乗っからないのはわがままだと言わんばかりの傲慢極まりないと思うのは私だけでしょうか。マイナンバーカードは、その取得に対して県民個々が意思表示をしているんです。その選択の意思を無視して、お上が決めたことに従え、従わないのならペナルティーがあって当然とお考えなんでしょうか。社会の効率化の流れに乗らない生き方は許されないのでしょうか。こんな不公平な設計が今後常態化することを危惧します。
この支援策は、対象、実施時期、手法において愚策というほかありません。例えば、水道料の基本料金の引下げが丸亀市から企業団に上がっています。支援策をあまねく行き渡らせようとするなら、県下一斉の水道料金の減免も一方策であり、そうすることで水道事業一元化のメリットを県民に感じていただけるのではないでしょうか。また、学校給食の食材の高騰にも悩まされていますから、こうしたところへ自治体に対して支援することも考えられます。手続も簡単なはずです。
いずれにしても、物価高騰対策として本気で考えておられるのか、甚だ心配になりました。今年度末までにマイナンバーカードをほぼ全国民に取得してもらうという政府の目標に協力するという考えが先にあっての制度設計ではと勘ぐってしまいます。
そこで、伺います。
どのような検討がなされて、この県民生活支援策なのか。この制度の内容を修正する気はないのか。また、今後も一部の人にしか恩恵がないような手法を展開するおつもりか、お考えをお聞かせください。
最後に、協同労働の定着発展策について伺います。
協同労働。なじみの薄い言葉ですが、今の競争、競争、そして効率重視の価値観が貫く社会の中で、置き去りにされてきた人々や地域の課題、人が生活を営む上で必要不可欠な仕事であるにもかかわらず、採算に合わないからと切り捨てられ持続できなくなりつつある状況を解決する希望の事業体として、今注目を浴びています。既に日本の中で、子育て・介護、清掃、物流、農業などの分野で約十万人が働き、事業規模は一千億円に上っているそうです。近い将来、さらに広がると各地で期待が膨らんでいます。それは、労働者協同組合法が成立したからです。二〇二〇年十二月四日、第二百三臨時国会において全会一致で成立、今年十月に法は施行されます。これまで協同労働はNPOなどの形で運営されて、扱える事業に制限があったわけですが、派遣業を除いて様々な事業を行うことが可能になります。健康保険や雇用保険なども適用され、労働者性も担保されます。法律により法人格も得られて、地域の需要と合致していくということであれば、多様な雇用の機会にもつながっていくということで期待されています。
過疎化が進行し、効率重視の価値観だけでは地域社会が成り立たないということは皆さん感じておられることだろうと思います。地域課題の解決のツールになるのではないでしょうか。また、利益重視で細分化、分業化された労働に疎外感を感じ、離職、ひきこもったり悩んでいる方々にとっても、能力や成績主義に縛られず、一人一人が労働することに誇りと喜びを取り戻せる受皿になるのではないかと受け止めています。競争から協働へ、豊かな関係性の中で人間性を取り戻す。大量生産、大量消費、そして大量廃棄の現在の社会の状況を根本的に転換することを私たちは迫られていますから、それに代わる自治、人権、民主主義といったあるべき社会の原理を取り戻す挑戦として、この協同労働は持続可能な地域社会をよみがえらせるものと思っています。
法制定当時、知事会長を務めておられた徳島県の飯泉知事はこうおっしゃっています。労働者協同組合の制度は、職業選択を多様化し、SDGsやダイバーシティー、地域包括ケアシステム、新たな介護システム創設にも大いに貢献されるすばらしい制度だ。市町村、都道府県を問わず、地域それぞれの課題解決に大きく寄与し、地方創生第二弾になくてはならない制度であると。
今、法施行に向けて全国の自治体でその準備が加速しています。地域の活性化にどう生かせるのか、地域課題の解決に取り組んでこられた方々の勉強会や研修会の開催をするところ、PRのための予算を組んで県民への周知に取り組んでいるところ、法人立ち上げの支援を行政書士会に委託したところ、そして、協同労働プラットフォーム事業を二〇一四年から展開する広島市への詣でが盛んに行われています。
そこで、知事に伺います。
法の目指す理念が具現化する中で、どういう意義を持つと考えているのか。県の雇用政策の体系の中でも一つの大きな柱と位置づけることも必要と考えますが、どのような位置づけになるとお考えか、お考えをお聞かせください。
また、十月の法施行に向けてどのような準備をし、今後どのようにこの制度を定着発展させていこうとしているのか、必要な情報収集を行いながら準備を進めていると思いますので、知事の御所見をお伺いします。
以上で私の一般質問を終わります。(拍手、降壇)
◯副議長(新田耕造君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)米田議員の御質問にお答えいたします。
まず、介護の質の確保についてであります。
介護施設等の現場の状況把握につきましては、
新型コロナウイルス感染症の影響により訪問できる施設数が限られる中、実地指導により人員基準や感染症対策等を重点的に確認しているところであります。このほか、施設において
新型コロナウイルス感染症の陽性者が発生した場合は、現地確認や電話連絡を行い、逐次、施設の人員体制、介護サービスの内容や入居者の状態等を確認し、必要な助言等を行ってきたところでありますが、人員不足による一部サービスの休止や職員の負担増があったことも承知しております。
議員御指摘のとおり、人員体制の強化は介護の質の向上に資するものと考えられますが、介護現場においては全国的に介護人材の不足が言われて久しく、本県もまたその例外でない中、県といたしましては、まずは介護人材を安定的に確保できるよう支援することが重要であると考えており、介護職への新規参入、職員の資質向上、労働環境・処遇の改善を三つの柱として各種施策に取り組んでおります。
また、介護施設におけるデジタル化導入による人員配置の基準緩和につきましては、本年五月に国の規制改革推進会議から答申がなされたものと承知しておりますが、ケアの質の低下や職場環境の悪化につながる可能性もあるといった御意見もあり、国においてはこのような御意見も踏まえ、今後議論されていくものと思われますことから、県といたしましては、その動向を注視してまいりたいと考えております。
今後とも、介護施設等に対する実地指導等により適正な指導や助言を行うとともに、介護人材の確保など各種施策に積極的に取り組むことで、高齢者の方が安心して良質な介護を受けることができる施設環境づくりに努めてまいります。
次は、インクルーシブ教育の推進等についてであります。
障害のある人もない人も共に安心して暮らせる社会の実現に向けては、県民誰もが相互に人格と個性を尊重し、支え合う共生社会の理念の普及を図るとともに、障害及び障害者に対する県民の皆様の理解と権利擁護等を促進する必要があると考えております。
県では、昨年三月に策定しました来年度までを計画期間とする第六期かがわ障害者プランをロードマップとして、様々な機会を通じて県民の皆様の理解促進のための広報啓発を行っており、出前形式での説明会の開催や心の輪を広げる体験作文等の募集と入賞作品の展示など、普及啓発活動を推進するとともに、発達障害や高次脳機能障害など多様な障害についても、研修等により障害及び障害者に対する県民の皆様の理解を促進するほか、成年後見制度を利用した障害者の方々の支援や、障害者権利擁護センターを中心として障害者虐待防止に努めております。
また、子供の学びの場においては、障害のある子供とない子供の交流及び共同学習の機会を積極的に設けるとともに、学校などでの合理的配慮や基礎的環境整備の充実を図ることで、全ての子供たちが多様性を正しく理解し、共に尊重し合いながら共同して生活していく態度を育むための教育を推進しております。
さらに、障害者の方々が安心して生活できる環境づくりも重要であるため、障害児者等の家族支援の充実を図るとともに、各種障害者施策等の生活に必要な情報を容易に入手できるよう障害の特性に応じた情報提供を行うなど、障害者の方々の地域での生活を支援しているところであります。
このように、障害の有無にかかわらず誰もがお互いに支え合い、心豊かに過ごすことのできる共生社会の実現を目指し、第六期かがわ障害者プランに沿って、各種施策に積極的に取り組んでまいります。
次は、県民生活支援策についてであります。
議員御指摘の県民生活支援事業は、コロナ禍において物価高騰等に直面する県民の皆様に対する生活者支援や地域経済の活性化を図るため、事業化いたしました。
生活支援策の事業化に当たっては、県民の皆様の手続負担や市町職員の事務負担の観点、給付に係るコストの観点、事業開始後の迅速な給付の観点に加え、本人確認の確実性など、幅広く、その手法について検討したところであります。マイナンバーカードは申請すれば誰でも取得が可能であり、全ての県民の皆様が対象となる上、券面情報により本人認証も確実であることから、ただいま申し上げた検討の観点も踏まえ、効果的なものであると考えた次第であり、御理解いただきたいと存じます。
県におきましては、コロナ禍において物価高騰に直面する県民の皆様に対する生活の支援と地域経済の活性化を図るため、今定例会に御提案しております県民生活支援事業につきまして、御議決をいただけましたら着実に実施してまいります。また、今後とも施策を実施するに当たっては、事業の目的や効果を十分に考慮の上、最も効果的と考えられる実施方法を検討してまいります。
次は、労働者協同組合法の施行に向けた取組についてであります。
議員御指摘の協同労働は、働く人が出資をして組合員となり、それぞれの意見を反映させながら主体的に運営し、地域の多様な需要に応じながら、持続可能な地域社会づくりに向けて事業を行う働き方とされています。
この協同労働を行う非営利の法人である労働者協同組合は、従来の使用者の指示に従って事業に従事して賃金を得るという働き方とは異なり、組合員一人一人が働きがいのある働き方が実現できるものと認識しております。少子高齢化が進む中、子育て、介護・福祉、地域づくり関連事業など地域課題を解決する事業を労働者協同組合において取り組むことは、人手不足に悩む地域の新たな担い手となることが期待されるとともに、多様な働き方の実現や就労機会の創出といった雇用対策の一つにも位置づけられるものと考えております。
こうした中、国においては、本年十月一日の労働者協同組合法の施行に向け、労働者協同組合の具体的な運営に関する政省令や指針等を本年五月に策定し、組合
設立等に関する相談窓口の設置や専用ポータルサイトの開設、都道府県に対する説明会の開催などを実施しております。
県におきましても、これらの取組を県ホームページなどを活用し、広く発信するとともに、今年度、制度の概要や事例などを掲載した県独自のリーフレットを作成し、普及啓発を図ってまいることとしており、引き続き香川労働局等関係機関と連携を図りながら、労働者協同組合の設立を希望する方々への支援に努めてまいります。(降壇)
◯副議長(新田耕造君)工代教育長。
(教育長工代祐司君登壇)
◯教育長(工代祐司君)米田議員のインクルーシブ教育の推進等についての御質問にお答えいたします。
本県における障害により特別な支援の必要な児童・生徒の推移については、特別支援学級に在籍している児童・生徒は十年前に比べ約二倍、特別支援学校に通う児童・生徒は約一・一倍となっており、全国と同様な傾向が見られます。増加の要因については、特別支援教育に関する理解や認識の高まり、就学先決定の仕組みに関する制度の改正、多様な学びの場の充実などが考えられます。
学びの場の決定については、本人及び保護者から十分に意向を確認した上で行われることが重要であると考えております。県教育委員会では、市町教育委員会との就学に関する連絡会などを通じ、学びの場の決定について、より丁寧な合意形成が図られるよう努めてまいります。
子供が暮らす地域内で教育を保障しようとする取組については、議員御指摘の豊中市をはじめ、茨木市や芦屋市などでも進められており、これらの地域においても、本人、保護者の意向や教育的ニーズに基づき、通級による指導や特別支援学級、特別支援学校といった選択も可能とされております。
本県における障害のある子供の学びの場については、子供たちの自立と社会参加を見据え、一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場の充実・整備を着実に進めてきたところであります。今後も、障害の状態や教育的ニーズの変化に応じて柔軟に学びの場を変更できるような環境整備に、より一層努めてまいりたいと考えております。
県教育委員会といたしましては、インクルーシブ教育システムの理念の下、障害の有無にかかわらず誰もがその能力を発揮し、共に認め合い、支え合い、誇りを持って生きられる共生社会の形成を目指し、教育環境の充実に努めてまいります。(降壇)
◯副議長(新田耕造君)一般質問を続行いたします。
岡野朱里子さん。
(岡野朱里子君登壇、拍手)
◯岡野朱里子君 お許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
まず、県民生活支援事業と地域経済活性化についてお伺いをいたします。
政府が本年四月二十六日に閣議決定をいたしましたコロナ禍における原油価格・物価高騰等総合緊急対策においても言及されているように、
新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が緩和されつつあるものの、原油価格と物価高が国民生活に大きな打撃を与えています。こうした状況を踏まえ、今議会に補正予算案として県民生活支援事業が提案されています。この事業は、県民の皆様へ生活支援や地域経済の活性化を目的としてマイナポイントを付与するものであり、国が整備したマイナポイントの基盤であるマイキープラットフォームを活用した給付事業として、総務省の自治体マイナポイント事業のスキームに沿って実施すると伺っています。
この事業をより効果的なものとするためには、付与されるポイントがより多くの県民の方々にとって利用しやすいものであることが不可欠です。国が実施しているマイナポイント事業第二弾においては多くの決済事業者が参画しており、この中から自分自身にとって最も使いやすい決済サービスを選択してポイントの付与を受けることができます。県民生活支援事業への参画は各決済事業者の判断によるため、国のマイナポイント事業に参画した全ての決済事業者が参画するかどうかは分かりません。しかし、少なくとも参画しやすい環境を整えることにより、県民の皆様の選択肢を広げることが重要です。
しかし、決済事業者が参画するためには、それぞれ独自に持っているシステムをマイキープラットフォームに接続させるためのシステム上の対応が必要になってくる可能性も考えられます。こうした対応に多くの時間を要したり、経費負担の調整が遅れるようなことがあれば、参画を考える決済事業者にとって非常に高いハードルとなってしまうことが懸念されています。
そこで、知事にお伺いいたします。
県民生活支援事業を実施するに当たり、より多くの決済事業者に参画してもらうため、システム改修が必要な場合の詳細なスケジュールや経費負担について、自治体や決済事業者に対し早期に示すよう県から国に働きかけていくべきと考えますが、知事の御所見をお聞かせください。
さて、決済事業者の中には全国展開する大手事業者もあり、そうした決済サービスが選択された場合、付与されたポイントが県外で利用されるケースも出てきます。もちろん、第一の事業目的である県民生活への支援という観点からは、県外でのポイント利用も支援対象から外すべきではないと考えます。
一方で、もう一つの事業目的である地域経済の活性化という視点で見れば、その効果をより高めるためには工夫も必要であり、例えば、デジタル地域通貨の活用は有効だと考えます。デジタル地域通貨は地域の中でお金を回すためのもので、現金や大手ポイントと違い、地域外にはお金を流出させず、地域経済の活性化に寄与する効果が期待できます。県内でも、例えば、三豊市のMito Payや琴平町のKOTOCAなどのデジタル地域通貨が発行されていて、高松市では
デジタル田園都市国家構想のTYPE3での採択が確定しており、地域通貨アプリを活用したデジタル給付金を発行する取組が計画をされています。また、県外においても、既にデジタル地域通貨を用いた自治体マイナポイントの事例が数多くあり、実際に県内の地域通貨発行自治体の中には、県民生活支援事業に参画したいという意向をお持ちのところもあると伺っています。
そこで、知事にお伺いいたします。
デジタル地域通貨の流通拡大は地域経済の活性化に大きく寄与すると考えますが、知事の御所見をお聞かせください。また、県内地域で流通している地域通貨に決済事業者として参画してもらうことによって、地域経済の活性化の効果をより高めていくべきと考えますが、知事の御所見をお聞かせください。
次に、ひきこもり支援についてお伺いいたします。
本年六月に江戸川区のひきこもり実態調査結果が公表され、新たに約七千九百人ものひきこもり当事者が存在することが分かりました。これは人口約七十万人、世帯数約三十五万の江戸川区においては、約二十四世帯に一世帯でひきこもりの課題があり、不登校を含めると七十六人に一人が当事者ということになります。この調査は、給与所得に対する課税がある世帯や介護、福祉などのサービスを既に受けている世帯を除く約十八万世帯に郵送によるアンケート調査を行い、返信がない世帯には実際に足を運び、聞き取り調査も行いました。その結果、約十万世帯から回答が得られ、以前江戸川区が行った児童委員や民生委員を活用したひきこもり実態調査結果から約十倍もの当事者がいることが分かる、かつてない大規模調査となりました。この調査結果を受けて江戸川区長は、多くの世帯から回答を得られたことから、必要な支援メニューをそろえていけると思う一方で、それでも約半数の世帯からの回答がないことは懸念材料であり、声を上げないところにこそもっと課題があるかもしれないという思いで解決方法を考えたいという趣旨の発言をされていらっしゃいます。
この江戸川区の実態調査は、多くの示唆をしてくれています。ひきこもり実態調査を行っている自治体の約七五%は、江戸川区がかつて行っていたように、児童委員、民生委員を活用した調査でした。本県が行った平成三十年の実態調査も同様の手法で七百二十六人のひきこもりの当事者がいるとされ、当時から私の感覚とは乖離している数字でしたが、江戸川区と同様の丁寧な調査手法を取れば、もっと現実が見えるのではないでしょうか。また、本県も含め、一般的にひきこもりは男性に多いと言われていますが、江戸川区においては女性の割合が僅かに多くなり、また、短期的ひきこもり状態にいる人も想定以上に多い結果となりました。
さて、本県では、ひきこもりサポーターの養成や派遣、相談支援体制の拡充を図ってまいりました。また、令和元年から当事者の居場所づくりにも取り組んでまいりましたが、ひきこもり支援は息の長い支援が求められ、支援完結が目に見えにくく、その効果を数値で表しづらいという施策の性質上、常に、その予算確保に苦心をしています。しかしながら、ひきこもりの当事者や家族が社会につながる一歩として、居場所づくりは最も求められる施策の一つです。また、県内のひきこもりやその傾向にある当事者、その御家族を支援する団体は常に財政的に厳しい状況にあり、団体を支援する側面からも、この居場所づくり事業には大きな意義があると考えます。
そこで、知事にお伺いいたします。
今回行われた江戸川区のひきこもり実態調査手法は、より実態を把握するのに適していて、本県の実態調査よりも現実味のある数字だと感じますが、江戸川区の実態調査に対する御所見をお聞かせください。
また、ひきこもりの方の居場所づくりについて、来年度以降も積極的に進めていただきたいと考えますが、今後のひきこもり支援についてどのように取り組んでいくのか、知事のお考えをお聞かせください。
次に、丸亀病院の在り方についてお伺いをいたします。
まず、
新型コロナウイルス感染拡大に第一線で対応をしていただいている県立病院の医療従事者の皆さんに心から感謝を申し上げます。また、積極的なコロナ陽性者の病床確保と受入れをしてくださっているとの報告を受け、改めて公立病院の重要性や役割を考える契機ともなりました。
さて、かねてよりその在り方について議論されてきた丸亀病院ですが、コロナの影響もあり、議論が止まっていたように感じています。昨年度も約二億円の赤字、人件費比率は約一一九%、病床稼働率六〇%未満。また、国は精神疾患のある方を病院から地域へという方針であるため、今後、ますます長期入院患者は減少することが予想されます。政策医療を行っている、ほかが受け入れられないような患者さんを受け入れているなどということで、丸亀病院が抱える課題から目をそらしてはいけないと思います。ようやく、その在り方について検討が始まったと委員会で報告がありましたが、早急に取りまとめ、新たな取組をする必要があると思います。
調べてみたところ、香川県内には約一万四千床の入院ベッドがあり、そのうち精神科の入院ベッドは三千二百五十床にも上り、その割合の高さに驚きます。そして、本県には大規模な単科の精神科病院が多いこと、また、精神科病床が中讃地区に多いことも特徴的で、許可病床数二百十五床のうち、稼働病床数百五十六床を持つ丸亀病院もその一つです。
単科の精神科が多い香川の現状を考えたとき、私はかねてから総合病院の中の精神科は大変意義があると申し上げてきました。なぜなら、精神疾患のある患者さんの高度な身体合併症への対応が迅速に的確に行える医療機関が香川県には少ないからです。また、がん患者が増える中、急性期医療の中での緩和ケアにおけるチーム医療に精神科医師は欠かせません。
例えば、宮崎県では平成二十一年に県立宮崎病院精神科を閉鎖し、県立宮崎病院内にある精神医療センターを開設いたしました。ホームページには、「総合病院に付属する精神科であることにより、精神疾患に加えて身体疾患を合併する患者さんの入院治療に対応します。」、「緩和ケアチームに参加し、緩和医療に協力しています。」とあります。こういう方法もあるのだろうなとも思います。
また、たとえ地域が離れていたとしても、急性期の合併症患者さんを県立中央病院で受け入れ、症状がある程度落ち着いた後、丸亀病院で積極的に受け入れるなど、連携強化を図ることは丸亀病院の存在意義をより強くすると考えます。
そこで、
病院事業管理者にお伺いいたします。
丸亀病院の現状について、課題等どのようにお考えになられているのか、また、丸亀病院の今後の在り方に関する御所見、そして、検討が始まったとお聞きしましたが、その検討の今後のスケジュール感についてお聞かせください。
また、関連し、知事にお伺いいたします。
先ほど申しましたように、本県は単科の精神科が非常に多く、精神科入院病床も特に中讃地区に多く見られます。また、国の精神疾患のある方を病院から地域へという方針があるなど、精神科病院は今後も大変厳しい経営環境にさらされることが予想されます。そのような中、丸亀病院をどうするのか、これは病院部局だけで解決できる課題ではなく、香川県の医療の最適化の観点からも、知事のお考えや決断が大変重要だと思います。
そこで、改めて香川県全体の精神科入院病床数や身体合併症患者への救急や急性期、慢性期での医療提供体制について、知事の御所見をお聞かせください。
次に、コロナ陽性妊婦及びコロナが疑われる妊婦の出産についてお伺いをいたします。
知人の外国籍の女性から、今月が出産予定日なのだが、コロナ陽性になり、自宅隔離をしている。そして、かかりつけの県立中央病院から、陽性なので出産は予定帝王切開に切り替えますと言われた。普通分娩を行いたいのだけど無理なのだろうかという御相談がありました。彼女は母国語が日本語ではないので、意思疎通にも課題があったのかもしれず、大きな不安を抱えていました。聞いた瞬間に、出産を経験した私としては大きな違和感があり、すぐに県立中央病院に確認すると、コロナ感染拡大の令和二年から、コロナ陽性または陽性の疑いがある妊婦は原則予定帝王切開をしているという回答がありました。厚生労働省にも確認しましたが、同様の回答でした。
出産という女性にとって大きなライフイベント、しかも幸せなイベントの一つであるはずの出産が、コロナ陽性になり、それだけでも何となく肩身の狭い思いをして、そして突然の帝王切開手術への変更に対する大きな不安。出産時の立会いが認められない上、子供への感染防止の観点から子供を抱くこともできない母子分離、そして授乳の制限。どれをとっても、とても苛酷な状況での出産と子育てのスタートに直面をしている妊婦の皆さんの気持ちを考えると、とても心苦しい気持ちになりました。
医師、助産師、看護師の皆さんの感染拡大防止の観点から予定帝王切開を行っているそうですが、コロナ感染拡大初期はコロナのことがよく分からなかったために、その取扱いでよかったかもしれませんが、それから二年以上もたち、普通分娩での感染拡大防止対策について検討がもっと進んでいてもおかしくないと思います。
例えば、大阪府泉佐野市にある地方独立行政病院りんくう総合医療センターでは、感染拡大当初はコロナ陽性妊婦さんの出産は、医療従事者への感染を避けるため、全て予定帝王切開を行っていたそうですが、医学的に自然分娩ができるのならばそのほうが望ましいし、母子の愛着形成の観点から、出産後すぐに赤ちゃんを抱けることが望ましいという考えから、感染症の専門医や助産師、小児科の医師と連携しながら普通分娩に踏み切っているそうで、同様の取組をしている医療機関は増加傾向にあります。また、滋賀県など、妊婦の精神安定のため、立会い出産を再開している自治体も増えました。諸外国でも日本同様の対応だったそうですが、今はもうほとんどの場合、立会い分娩や母子同室、母乳育児も認められ、妊婦さんが出産方法について選択できるようになっています。また、世界保健機関(WHO)やユニセフからは、昨年、不必要な予定帝王切開や母子分離に対し、母体の安全、母子の精神衛生上の問題や愛着形成の観点から警鐘が鳴らされています。
私は、出産という大きな出来事をその手法について当事者が選択できない状況は人権侵害と言われてもおかしくないとやはり思います。そのような声をまとめて、国や関係機関に要望をしている団体等もありますが、出産というとてもデリケートな話で、かつコロナ陽性を公にすることがはばかられる状況の中で、コロナ陽性になり帝王切開に切り替えられたことへの不安や不満の声を上げることはとても困難です。したがって、この問題は現在はあまり顕在化していないけれど、今後大きな問題になる可能性もあると思っています。
そこで、
病院事業管理者にお伺いいたします。
感染拡大から二年以上経過し、コロナについて分かってきたこともたくさんあります。また、妊婦や胎児のコロナ感染や出産について様々な研究が進められています。そのような中、諸外国のように、国内でも感染予防の徹底により帝王切開ありきから普通分娩に切り替えている病院もあったり、立会いを認めたり、母子ができる限り長く一緒に居られるようにする取組などをしている先進自治体病院も出てきている現状を踏まえ、香川県立中央病院の出産においても新たな取組を考える時期に来ているのではないかと考えますが、いかがでしょうか。また、妊婦やその御家族に寄り添った対応をするお考えについてお聞かせをください。
次に、若竹学園の分校化についてお伺いいたします。
若竹学園は、平成六年に設立された五色台にある県内唯一の児童心理治療施設です。児童心理治療施設とは、発達障害や知的障害、心の問題等により学校や社会に適応するのが困難な傾向にある二十歳未満の子供たちの生活支援、教育支援を行いながら治療する施設で、若竹学園の場合は入所児童は寮で生活し、敷地内の学校で教育を受けています。
平成三十年十一月議会の一般質問において、私は、若竹学園にある下笠居小学校、下笠居中学校の分教室を分校化することについてお願いをいたしました。そして、このたび、令和五年四月、分教室が分校化となることが決定し、校舎の建て替えを進めているところです。平成二十八年度に県内唯一の児童自立支援施設の斯道学園のみねやま分教室が分校化された後、生徒達の学習意欲が高まったという報告がありましたので、今回の分校化により若竹学園で生活する子供たちへの好影響が出るよう期待いたします。この分校化に対し、県も主体的に動いてくださったことに心から感謝をいたします。
さて、先ほども申し上げましたように、若竹学園に措置される子供たちは、心身に様々な課題を抱え、治療を必要としています。全国調査によると、ADHDや脱抑制型対人交流愛着障害、反応性愛着障害、自閉症スペクトラム等の診断がついているなど、心身に何らかの課題を抱えている子供たちが八割以上、また、保護者からの何らかの虐待行為があった子供が約七割。一方で、入所理由は子供本人の問題による監護困難が約四割を占め、それは虐待や育児放棄より高い割合となっています。
そういう状況にある子供たちの学習意欲を引き出したり、学力の向上を目指すことは大変困難であることは想像に難くありませんが、多くのケースで退所後は地域の学校に復帰するため、学習習慣を身につける必要があります。また、学びで得られる達成感や充実感が子供たちの回復を後押しすることも十分に考えられます。
これまでは小学校も中学校も分教室であったために教職員の配置も乏しく、複式学級になっていたり、十分な教育環境とは言い難かったのですが、来年春からの分校化に際し、建物以上に教員の配置において教育委員会には頑張っていただきたいと思っています。配慮や特別な支援の必要な子供たちばかりいる学校と言っても過言ではないわけで、特別支援教育学校教諭の免許を所有するなど、特別支援教育に精通した教員が必要不可欠です。
そこで、教育長にお伺いいたします。
若竹学園内の分校で学ぶ子供たちの特性を鑑みた場合、学びの場においてどのような支援が必要だと考えられますか。また、分校化に際し、これまで以上に専門性のある教員を大幅増員すべきと考えますが、御所見をお聞かせください。
最後に、障害のある方の選挙権の行使についてお伺いをいたします。
障害のある方の選挙権の行使につきましては、本年二月議会の一般質問において、私のほうから、障害のある方にとっては支援がなければ選挙権の行使は難しいのが実情であることから、必要な投票支援の取組についてお尋ねをし、代理投票制度等や知的障害者施設への周知について答弁をいただいたところです。
さて、去る五月三十一日、認定NPO法人日本障害者協議会は金子総務大臣に対し、「障害者権利条約、障害者差別解消法等に基づき、障害者の投票行為における合理的配慮を欠く問題事例の改善を」と題した要望書を提出しました。この要望書では、昨年十月の衆議院議員総選挙において、障害のある人々への合理的配慮を欠く問題事例が寄せられていると指摘した上で、そうした事例や要望を「二百一の事例・要望集」として取りまとめ、障害者の投票行為における合理的配慮、不当な差別的取扱いの禁止の徹底及び問題の早急な解消を要望しております。
その一方で、文字を書けない人は候補者名や顔写真を指さすことで選管に伝えればよいという指導を受けることで、投票に行ってみようという人が増えたという声もありました。
また、現在、NHKの公式ホームページには、今回の参院選の特設サイトが設けられていて、その中に「みんなの選挙」というコンテンツがあります。それは、「障害のある人が参加しやすい選挙に」というコンセプトの下、点字による投票や郵便投票、指定施設における不在者投票等の分かりやすい説明が掲載されています。その中で、「「代理投票」って?」という項目では、代理投票制度の概要に加え、候補者や政党の伝え方についても説明がなされています。具体的には、補助者への伝え方について、候補者や政党を指でさす指さしや、係の人が候補者の名前等を順に読み上げて、うなずきやまばたきで合図を送る方法などです。一方、この特設サイトにおいても、「「係の人から「投票したい人」を大きな声で確認された。誰に投票したか、周りにわかってしまったのではないか」という声も上がっていて、投票所の係の人の配慮が求められる」という指摘がなされています。
昨年の衆議院選挙後、障害のある方の選挙権の行使の機会の拡大についての議論が高まっていることを背景に、各自治体でも、例えば、投票所のバリアフリー化や投票所の候補者名を大きく掲示する等の新たな取組が進んでいます。
そこで、選挙管理委員会委員長にお伺いをいたします。
障害のある方々が選挙権を行使することについてどのように周知を行っているのか、また、実際に障害のある方が投票所に来られた場合の対応について、市町選挙管理委員会を通じて、事務従事者に対してどのように指導を行っているのか、お伺いをいたします。
また、先進自治体に倣い、本県においても障害のある方の選挙権の行使の拡大に資する新たな取組をする必要があると考えますが、いかがでしょうか。
最後に、さっきの妊婦の出産の件ですが、このコロナ禍において私たちが気づかないところで、独りで、また、御家族で心を苦しめている課題が様々にあるんだなということを改めて実感をし、これから議会で皆さんと行政と共に取り組んでいきたいなと思います。ありがとうございました。(拍手、降壇)
◯副議長(新田耕造君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)岡野議員の御質問にお答えいたします。
まず、県民生活支援事業と地域経済活性化についてであります。
県民生活支援事業は、コロナ禍において物価高騰等に直面する県民の皆様に対する生活者支援や地域経済の活性化を主な目的として、五千円相当のポイントを、マイナンバーカードを用いた本人認証の上、キャッシュレス決済サービスで付与するものであります。
議員御指摘のとおり、より多くの決済事業者に参画いただくことが効果的であり、これまでも決済事業者のシステム改修の有無やそのスケジュール、経費負担等、早期の情報提供を総務省に求めてきておりますが、引き続き国への働きかけを行いながら、決済事業者への情報提供に努めてまいります。
デジタル地域通貨につきましては、特定の地域やコミュニティー内だけで流通、利用できるという特性から、地域経済活性化の効果が見込まれるものと考えており、自治体マイナポイント事業への参画につきましては、総務省において今月には決済事業者の公募を行い、来月には自治体とのマッチングが行われる予定であると伺っております。本事業の決済事業者としてデジタル地域通貨に参画いただくことは、地域経済の活性化という事業効果を高める上で効果的であると考えており、参画を検討される地域通貨があれば、必要な情報提供や助言などを積極的に行うほか、可能な限り多くの決済事業者とのマッチングに努め、マッチング後はポイント付与に向けた具体的な調整を進めてまいります。
次は、ひきこもり支援についてであります。
ひきこもりは、家族、友人、地域等の本人を取り巻く環境の問題などが複雑に絡み合っているものと考えられ、個人や家族の力だけでは解決することが困難であることから、社会全体で支援していく必要があると考えております。
お尋ねの江戸川区の実態調査につきましては、支援に向けた行政とのつながりを持つきっかけとなるものであると認識しております。
また、県が平成三十年度に実施した実態調査は、地域の状況を把握されている民生委員・児童委員に対する調査でありましたが、一九・五%の方が二十年以上ひきこもりの状態にあるとともに、五二・一%の方が四十歳以上であるなど、江戸川区の調査と同様に、ひきこもりの長期化・高年齢化の傾向が見られ、また、三七・六%の方が支援を受けていない状況にあることから、その対策が必要と考えております。
このため、県では、これまで県民の皆様への普及啓発を各市町や関係機関と協力しながら進めるとともに、精神保健福祉センター内に設置したひきこもり地域支援センターにおける相談支援や、ひきこもりサポーターを養成・派遣するほか、令和二年度から中高年のひきこもりの方を対象にした居場所づくりのモデル事業に県内三か所で取り組んでおり、昨年度は延べ二千二百人ほどの利用があったところであります。
今後の取組といたしましては、モデル事業の成果や江戸川区の調査結果も参考にしながら、イベントなどで当事者が集まれる短期の居場所を検討するなど、ひきこもりの方がより参加しやすい多様な支援方法を検討し、安心して暮らせる地域づくりに努めていく必要があると考えております。
次は、丸亀病院の在り方についてであります。
議員御指摘のとおり、本県の精神病床数は中讃地域が全体の約四割を占める状況でありますが、県では第七次香川県保健医療計画において、精神科救急を除き、精神科医療提供体制について、県全域を一圏域として対応しているところであります。また、総合病院である回生病院を身体合併症拠点病院に指定し、身体合併症患者の受入れ体制を確保しているところであります。
お尋ねの県全体の精神科入院病床数や身体合併症患者への救急等の対応につきましては、今後の医療ニーズや丸亀病院の在り方の検討で示される方向性も踏まえながら検討していく必要があると考えております。
私といたしましては、県民の皆様に必要な精神医療が適切に提供されるよう、関係者等と十分な協議・検討を行う中で、よりよい精神科医療提供体制の構築を目指して取り組んでいくことが重要ではないかと考えております。(降壇)
◯副議長(新田耕造君)太田
病院事業管理者。
(
病院事業管理者太田吉夫君登壇)
◯
病院事業管理者(太田吉夫君)岡野議員の御質問にお答えします。
まず、丸亀病院の在り方についてであります。
丸亀病院については、精神保健福祉法により、県に有床の精神科の必置義務がある中で、入院医療中心から地域生活中心へという精神障害者に関する国の方針や、メンタルクリニックなどの外来受診機会の拡大、外来診療での投薬治療等による重症化予防効果の向上などにより、全国的に入院患者が減少傾向にあることや、一般医療と比べて診療報酬が低く設定されていることなど、その経営を取り巻く環境は非常に厳しい状況にあると考えており、令和三年度の稼働病床利用率は五九・五%となっております。
また、一方で、丸亀病院の建物については、これまでの病棟再編の結果、余剰スペースが生じているほか、新耐震基準は満たしているものの老朽化が進みつつあり、今後、施設・設備の修繕や更新に要する経費の増嵩が見込まれるところであります。
こうした状況を踏まえ、丸亀病院については、将来の医療需要を見据えた役割や機能、県内の精神医療上の課題への対応、安定的な精神科医師の確保といった観点から、今後の在り方について検討する必要があると考えており、まずは病院局内で課題の整理や基本的な考え方について検討を行うため、本年三月に内部検討委員会とワーキンググループを立ち上げ、調査、検討に着手したところであります。
病院局といたしましては、今後、将来にわたる医療需要の動向や県内外の精神科の運営状況等の調査・分析を行うとともに、精神科医師に係る関連大学や県内の精神科病院など関係者の意見も聴きながら、来年度中をめどに課題の整理や基本的な考え方について検討を進め、その上で、外部の有識者等による検討委員会を設けるなど、県議会の御意見も伺いながら、その在り方について基本的な方向性を決定していきたいと考えております。
次に、
新型コロナウイルス陽性の妊婦の出産についてであります。
中央病院では、
新型コロナウイルス感染症の感染拡大前においては、立会い分娩も含め、妊婦の希望する分娩方法に沿えるよう支援を行ってきており、お母さんと赤ちゃんの触れ合いが確保されるよう、母子同室や母乳育児の取組を進めてきたところです。しかし、感染拡大後は、国の手引き等を踏まえ、感染妊婦については出産に要する時間が長くなると、新生児への感染リスクのほか、妊婦自身の重症化リスクが高くなることや、産科・麻酔科の医師や助産師への二次感染が発生した場合には、他の妊婦への対応を含め、病院の医療提供体制に影響が生じることから、分娩方法は妊婦の同意を得た上で、原則として帝王切開としており、立会い分娩等についても実践しておりません。
中央病院の産科病棟の医療スタッフ等の現在の体制を踏まえると、現状以上の対応には一定の限界はあると考えておりますが、今後の国の動向等を注視しつつ、他の医療機関の先進的な取組についても情報収集しながら、
新型コロナウイルス感染症に感染した妊婦への対応について、改めて検討してまいりたいと考えております。
また、お尋ねの妊産婦やその家族への支援については、県の事業を活用し、保健師等の訪問など、妊産婦に寄り添った支援を行っているほか、中央病院独自に助産師による妊産婦のメンタルヘルスケアを行っております。
病院局といたしましては、今後とも医療の安全の確保と質の向上を図り、
新型コロナウイルス感染症に感染した妊産婦やその家族に寄り添った支援に努めてまいりたいと考えております。(降壇)
◯副議長(新田耕造君)工代教育長。
(教育長工代祐司君登壇)
◯教育長(工代祐司君)岡野議員の児童心理治療施設若竹学園の分校化についての御質問にお答えいたします。
若竹学園施設内学級は、高松市立下笠居小・中学校の分教室として平成十年四月に開設されており、現在、令和五年四月からの分校化に向けて、高松市教育委員会が検討委員会を設置し、県教育委員会も参加して協議を重ねているところであります。
若竹学園に入所している児童・生徒の指導や支援に当たっては、医師や心理職の専門家と連携し、きめ細かに心のサポートを行うとともに、学習指導においては、特別支援教育の視点を基に、苦手な面への取組方を支援しつつ、得意な面を伸ばして意欲的に活動できる子供に育成できるよう、障害の特性を踏まえた指導方法の工夫や合理的な配慮を行うことが重要であると考えております。
県教育委員会といたしましては、これまでも施設内学級の教育を充実させるため、特別支援教育に関する専門性や経験を踏まえた教員配置に努めてまいりましたが、今後、分校化に向けた高松市教育委員会との協議の中で、配置する教員に求められる資質や教員数について検討し、児童・生徒の実態や教育的ニーズに応じた教育の一層の充実を図ってまいりたいと考えております。(降壇)
◯副議長(新田耕造君)藤本選挙管理委員会委員長。
(選挙管理委員会委員長藤本邦人君登壇)
◯選挙管理委員会委員長(藤本邦人君)岡野議員の障害者の選挙権についての御質問にお答えいたします。
選挙は、民主政治の根幹をなすものであり、障害のある選挙人の投票機会の確保は極めて重要なことであると認識しております。特に、障害のある若年層の方の中には、投票所での投票方法を十分に御存じでない方もいるため、県選挙管理委員会では、市町選挙管理委員会と連携して行う特別支援学校での出前授業の中で、実際の選挙で使用する投票記載台や投票箱を使っての模擬投票や、文字を書けない場合の代理投票体験などを実施するほか、保護者の方に、障害のある方の投票に関して周知を図っているところです。このほか、点字版、音声版及び拡大文字版の選挙のお知らせを障害のある方へ郵送するとともに、各市町に一定数備え置いているほか、県のホームページでも選挙公報の音声データの公開や、代理投票や点字による投票ができることなど、若年層でない方も含め、広く一般の選挙人に対して候補者情報や制度の周知に努めているところであります。
投票所における障害のある方に対する事務従事者の対応については、これまでも投票事務を行う市町選挙管理委員会に対し助言に努めておりますが、今回の選挙の執行に向けた事務研修会では、先日、議員御紹介の東京都狛江市の投票支援マニュアルもお示ししながら、障害のある方に十分配慮した対応をお願いしたところです。
県選挙管理委員会といたしましては、先進自治体の事例を参考にしながら、障害のある方の選挙権の行使のさらなる拡大につながるような取組を検討するとともに、障害のある方の投票について適切な対応がなされるよう、市町選挙管理委員会に情報提供や助言を行い、引き続き障害のある方の投票機会の確保及び配慮の行き届いた丁寧な対応に向けて取り組んでまいりたいと考えております。(降壇)
◯副議長(新田耕造君)理事者の答弁は終わりました。
本日の一般質問を終局いたします。
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◯副議長(新田耕造君)以上で本日の日程は、終了いたしました。
次会は、七月六日午前十時本会議を開きます。なお、議事日程は、追って報告いたします。
本日は、これをもって散会いたします。
午後二時五十九分散会
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