▼最初のヒットへ(全 0 ヒット) 出 席 議 員
大 山 一 郎 君 西 川 昭 吾 君
松 岡 里 佳 君 鏡 原 慎一郎 君
氏 家 孝 志 君 高 木 英 一 君
白 川 和 幸 君 岡 野 朱里子 君
秋 山 時 貞 君 斉 藤 勝 範 君
松 本 公 継 君 山 本 悟 史 君
米 田 晴 彦 君 木 村 篤 史 君
新 田 耕 造 君 佐 伯 明 浩 君
松 原 哲 也 君 谷 久 浩 一 君
樫 昭 二 君 山 田 正 芳 君
香 川 芳 文 君 三 野 康 祐 君
森 裕 行 君 五所野尾 恭 一 君
花 崎 光 弘 君 十 河 直 君
高 城 宗 幸 君 有 福 哲 二 君
広 瀬 良 隆 君 辻 村 修 君
石 川 豊 君 高 田 良 徳 君
竹 本 敏 信 君 綾 田 福 雄 君
尾 崎 道 広 君 宮 本 欣 貞 君
山 本 直 樹 君 黒 島 啓 君
都 築 信 行 君 鎌 田 守 恭 君
平 木 享 君
欠 席 議 員
な し
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地方自治法第百二十一条第一項による出席者
知 事 浜 田 恵 造 君
副 知 事 西 原 義 一 君
病院事業管理者 太 田 吉 夫 君
審 議 監 安 松 延 朗 君
政 策 部 長 大 山 智 君
総 務 部 長 東 田 晃 拓 君
環境森林部長 木 村 士 郎 君
健康福祉部長 安 藤 照 文 君
商工労働部長 浅 野 浩 司 君
交流推進部長 新 池 伸 司 君
農政水産部長 国 分 伸 二 君
土 木 部 長 片 山 秀 樹 君
知事公室長 淀 谷 圭三郎 君
危機管理総局長 土 岐 敦 史 君
文化芸術局長 佐 藤 今日子 君
子ども政策推進局長 小 川 秀 樹 君
会計管理者 宮 武 卓 朗 君
病 院 局 長 岡 内 浩 二 君
教 育 長 工 代 祐 司 君
公安委員会委員 泉 雅 文 君
警察本部長 岡 部 正 勝 君
代表監査委員 三 谷 和 夫 君
監 査 委 員 亀 井 孝 行 君
事 務 局 長
人事委員会委員 平 尾 敏 彦 君
人事委員会 岡 田 総 一 君
事 務 局 長
労働委員会 山 本 浩 司 君
事 務 局 長
政策部次長 椋 田 那津希 君
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議 事 日 程(第四号)
令和元年七月一日(月)午前十時開議
第 一 県の一般事務に関する質問
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◯議長(大山一郎君)ただいまから本日の会議を開きます。
本日の日程は、配付のとおりであります。
日程第一、県の一般事務に関する質問を行います。
岡野朱里子さん。
(
岡野朱里子君登壇、拍手)
◯岡野朱里子君 さて、一般質問に入ります前に、新たな任期をいただきましたことを県民の皆様に心から感謝を申し上げます。
東京大学の入学式での上野千鶴子さんの祝辞が話題になりました。これまでの結果は、「あなたたちの努力の成果ではなく、頑張ったら報われる環境のおかげだった」とおっしゃいました。裏返すと、頑張ったら報われる環境のない方々が、諦める方々がたくさんいらっしゃるということです。だからこそ、私は、頑張る意欲をつくり出せる社会を引き続きつくっていきたいと思います。
また、「女性学を生んだのは
フェミニズムという女性運動ですが、
フェミニズムは決して女も男のように振る舞いたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。
フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。」とおっしゃいました。私は、引き続き弱い立場に置かれがちな方々の課題にともに向き合い、誰ひとりも取り残さない社会の実現のため、努力を続けていきたいと思います。
それでは、一般質問に入らせていただきます。
まず最初に、不妊治療における治療と仕事の両立についてお伺いをいたします。
今回、この質問原稿を書いているタイミングで、
厚生労働省が本年度中に不妊治療と仕事の両立支援のために企業向けの
マニュアル策定を行うとの報道がありました。
厚生労働省が
マニュアル策定に至った経緯には、平成二十九年に行った不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合調査がございました。この調査は、女性の
活躍推進企業データベースでデータを公表している七千九百九社のうち、従業員が十人以上の四千社を対象に
アンケート調査と
ヒアリング調査を行うと同時に、約二千人の男女労働者に
アンケート調査をしたもので、その結果、全体の九%の企業においてのみ、「不妊治療中の従業員に対する支援制度がある」と回答があった一方で、両立が困難なため退職をした人が約一六%、また、治療を諦めた人が約一一%に上りました。
女性活躍推進企業としてデータを公表している企業であってもこの結果ですので、それ以外の企業についてはもっと厳しい数字が出るかもしれません。
また、同年に不妊治療を受ける方を支援する
NPO法人Fineが行った調査でも、不妊治療を受けたうち、九五%以上の方が「両立は困難」と回答し、そのうち四割の方が「働き方を変えざるを得なかった」上に、さらにその四割のうちの半数が「退職をした」と回答しました。また、同じ時期に株式会社F Treatmentが運営する「
不妊治療net」が行った不妊治療と仕事についての実態調査では、不妊治療を経て妊娠した人の五二%が、治療に際して退職・転職・休職をするなど、働き方を変えたという結果が出ています。妊娠しなかった人のうち、働き方を変えていたのは三二%にとどまっていることと比べると、不妊治療を成功させるためには、現在の働き方を変える必要性があるようにも思われます。
これらの調査で、どのような支援策を企業に求めるかという設問に対する回答は、ほぼ同様で、一、不妊治療のための休暇制度、二、不妊治療のための休業制度、三、再雇用制度、四、不妊治療に係る費用等を助成する制度の導入などでした。
このような
不妊治療経験者の方の声や
厚生労働省の動きなどを背景に、先進自治体においては、不妊治療と仕事の両立支援に対し、積極的な施策が始まっています。一般的には、企業を対象に、不妊治療と仕事の両立支援に関するセミナーや講演会を開くことが多いのですが、さらに踏み込んだ取り組みをしている自治体もあります。例えば、三重県津市では、平成二十七年度から
不妊治療休暇奨励金制度を導入し、市内で不妊治療を行うための入院や通院を目的とした休暇制度を就業規則等で定めて、
労働基準監督署に届け出を行った中小企業などにおいて、従業員が
不妊治療休暇制度を利用して休暇を取得した場合、対象事業者に一人当たり二十万円の奨励金を支給しています。この三年間で約百社が制度を新設し、そのうち五社で休暇取得の実績がございます。
また、東京都は、昨年度から不妊治療と仕事の両立可能な社会の実現に向けて、働く人の
チャイルドプランサポート事業を開始しました。事業内容の一つに、不妊治療と仕事の両立支援をする企業に対し、最大四十万円の奨励金の支給がございます。
さて、御承知のように、不妊治療を行うカップルの数は著しく増加傾向にあり、二〇一五年調査によると、五・五組に一組が治療を行っていて、同年に生まれた赤ちゃんのうち五・一%、五万一千一人が不妊治療により誕生しています。
私は、少子化対策として子供を産んでほしいとは思わない立場ですが、それでも子供を産み育てたいと思う方々の選択をしっかりサポートしていく体制整備は必要だと考えます。また、実際に会社の退職を余儀なくされたり、望まないけれどパートタイムへと働き方を変えなければならなかったという方々のお声を聞きました。一方で、高額の治療費を払うために、心身ともに苦しいけれど、働かなければいけないんだというお声もお聞きします。
県では、独自の助成金などを通じ、不妊症に対する支援の枠を広げていっていただいているところではありますが、これからは県内企業の皆様にも、ともに不妊に苦しむ方々の、そして不妊治療をしながら働く女性、男性への応援隊になっていただく必要があると考えます。また、不妊治療をしている方々は、主に三十代から四十代前半の働き盛りであり、貴重な戦力を離職に追い込まない仕組みは、企業にとっても有益だとも考えます。
厚生労働省が企業に対し
両立支援マニュアルを策定するというこのタイミングは、本県におきましても、両立支援の取り組みを進める好機であると思います。
そこで、お伺いをいたします。
まず最初に、事業主体としての香川県が、率先して不妊治療の休暇制度及び休業制度を導入するお考えについてお聞かせください。
次に、企業が不妊治療と仕事の両立に果たすべき役割についてのお考えと、本県としても、先進自治体のような不妊治療と仕事の両立支援に積極的に取り組む企業の表彰制度や奨励金制度の創設について知事のお考えをお示しください。
続きまして、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者への支援についてお伺いをいたします。
県子ども女性相談センターの発表によると、二〇一八年度に配偶者からのDVの相談件数は七百八十八件、前年比二二・四%増で過去最多になりました。高齢者からの相談は九十一件で増加傾向にあり、前年比一七六%増となっています。全体の相談内容は、身体的暴力が約五〇%、精神的暴力が約四〇%、性的暴力が約二%。同センターで一時保護されたのは、前年比七人増の四十八人に上り、
うち子供連れが二十六ケースありました。
平成二十八年度の全国調査「配偶者間における犯罪被害の性別割合」によると、総数六千八百四十九件のうち、暴行が四千三十二件で女性の被害割合が九一%、障害は二千六百五十九件で女性の被害割合が九三・五%であるにもかかわらず、殺人となると百五十八件のうち、女性が加害者となるケースが五五%と被害と加害が逆転します。この数字から、ぎりぎりまで我慢して、我慢して、どうにもならなくなり、重大犯罪に至ってしまう家庭内の様子が想像できる気がします。
また、香川県から目黒区に転居した結愛ちゃんの事件、沖縄県から千葉県に転居した心愛ちゃんの事件など、
重大虐待事件が発生した家庭内には、父親や内縁の夫から母親への精神的暴力、身体的暴力があり、そのことにより無気力化、無抵抗化した母親が、子供に対する父親の支配の暴走をとめることができなかったという背景が明らかになっています。
また、多くの場合、お金を渡さないなどの経済的暴力や社会との接点を切られる社会的暴力もともにあることをつけ加えます。
冒頭申し上げましたが、昨年度、本県でセンターが保護した方は四十八人。一方で、相談件数は七百八十八件に上り、もしかしたらこの四十八人以外にも、本来は逃げるべきケースもたくさんあるのかもしれないと推察できます。長い年月をかけて、自分の自尊心や生きる力をそぎ取られてきた
DV被害者に、その人らしく人生を歩んでもらうため、また、暴行や殺人、または虐待死など悲しい事件を発生させないためには、私たち行政には、相談に乗ったり逃がすだけではなく、これらの思い込みや不安を払拭し、自尊心や生きる力を取り戻してもらう丁寧な作業が求められています。
具体的には、平成二十八年に策定された第三次香川県
配偶者暴力防止及び
被害者支援計画の五つある基本方針の中でも、特に三番の「安心・安全な保護を受けられる
体制づくり」、四番の「被害者の自立を支える
体制づくり」、五番、「被害を繰り返さない
仕組みづくり」は、まだまだ改善の余地があるし、着手できていないものすらございます。
政府は五月三十一日、DV被害に対応するため、先進的な取り組みを行う
民間シェルターへの
財政的支援を発表しました。検討委員会の報告書では、
DV被害者支援において、
民間シェルターは地域社会における不可欠な資源であり、SDGs(持続可能な開発目標)の「誰一人も取り残さない社会」の実現とジェンダー平等と女性のエンパワーメントの観点からも、
民間シェルターの果たす役割は大きいと評価をしています。
一方で、課題として、財政の脆弱さや、人材不足、高齢化、専門性、地域偏在、加えて行政機関との連携不足などが挙げられており、これらの課題に対する支援を国が行政と一緒に進める必要があるという報告書になっています。
民間シェルターが必要な背景には、公的一時保護所が満員だからという理由より、むしろ公的一時保護所には行きたくないという声があります。なぜなら、公的一時保護所は規制が多く、携帯が持てないとか、仕事などでも外出ができないとか、また、入居者と自由に会話ができないなどの理由と、連れて逃げる子供の年齢によっては母子分離が必要になるなど、精神的に不安定な中でさらに孤立化を高める可能性があるということです。
さて、ことしに入り、本県におきましても新たな
民間シェルターが有志の方々の思いによって始動しました。私も応援している一人ですが、既に警察や
児童相談所からの連絡により入所したケースもあると聞いています。平成二十七年度の全国調査によると、二十二都道府県において、
民間シェルターに対して、家賃補助のほか運営補助として、委託費、研修費などに対する支援を行っています。平成三十年の調査でも同様の結果が出ています。
残念ながら、香川県では、これまで
民間シェルターに対する
財政的支援の実績はありません。部屋を借り、最低限の電気製品や生活用品をそろえ、送迎をし、食事を用意し、自立に向けた支援をする。それら全てを寄附とみずからの持ち出しで行っていらっしゃいます。本当に頭が下がります。
冒頭にるる述べましたDV対策は、本県の抱える喫緊の課題であること、また、
民間シェルターに対するニーズが高まっていて、本県からも保護の依頼をしている現状、政府の方針決定などを受けると、本県におきましても
民間シェルターに対する何らかの
財政的支援とともに、連携強化が必要だと考えます。
知事のDV対策、そして
民間シェルターに対する御認識と、
民間シェルターへの
財政的支援と連携強化に対するお考えをお伺いいたします。
また、先ほども申し上げました計画の基本方針三の安全な保護のため、逃げるための交通費の支給を御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。中には小さな子供や身の回りのものを抱え、お金もなく、公共交通の利用ができない人がいることを私も承知していますので、ぜひよろしくお願いをいたします。
最後に、計画の基本方針四、被害者の自立、五、被害を繰り返さない
仕組みづくりには、被害者・加害者への効果的な
精神的支援プログラムが必要不可欠です。早急に充実されることを求めます。知事の御所見をお聞かせください。
続きまして、
児童虐待防止法等の改正についてお伺いをいたします。
今国会において、全会一致で
児童虐待防止法等の改正が成立をしました。この改正に向けての動きは、ふえ続ける児童虐待の中で起こった本県から目黒区に転居した結愛ちゃんが虐待死した事件が一つの契機になっていて、当事者県である私たちは、改正内容をしっかりと落とし込み、着実に施策推進をしなければいけません。
来年四月一日から施行される改正法において、主には、しつけという名の体罰の禁止、
児童相談所の機能強化のための医師や弁護士の配置及び
児童福祉司等専門職の増員、転居時の引き継ぎの徹底、個人情報の保護の徹底等が盛り込まれました。そして、SNSでの
相談体制づくりや、一時保護の受け皿の増設や中核市や特別区での
児童相談所の設置など、異例の二十四項目もの附帯決議がつけられました。
改正法の中で、私が改めて本県において検討を重ねる必要があると考えるのは、一、
児童相談所職員の適正配置、専門性の向上及びそのための人事の配慮、二、虐待をした保護者への
再発防止プログラム実施の努力義務、三、子供の意見が尊重される仕組みを施行後二年をめどに検討という部分です。
先日、結愛ちゃんの主治医であった四国こどもとおとなの
医療センターの木下医師にお話を聞きにお伺いをいたしました。年間三百ケース近い虐待案件に対応しているそうです。だからこそ、結愛ちゃんの体のあざやお母さんの心理状況に敏感になり、常に
児童相談所に警鐘を鳴らしてくださっていました。また、目黒区に転居する前、一時的に加害者の夫と距離を置いたことで、お母さんも結愛ちゃんも少しふっくらし、声も大きくなり、心も安定しているように見えただけに、虐待ケースとして引き継がれた目黒区が、その重篤さを見落とすかもしれないという危機感から、直接目黒区にもコンタクトをとってくださった。それでも命は救われませんでした。
この教訓を生かすために、本県では、事件後すぐに転居後の引き継ぎの徹底を図り、この春から弁護士の配置拡充と現役警察官の児相への配置、児童福祉司の大幅増員、さらには支援と介入をする部署の分離などにより、
児童相談所の機能強化を図りました。
しかし、木下医師と話す中で、人をふやすことは大前提とし、二年、三年でかわる通常人事と同じように
児童相談所の人事を行うと、人の命や人生にかかわる専門家は育ちにくいのだなと納得できました。また、一時保護をしている最中、そして、もし一時保護を解除したとしても、虐待をした親に対し、
継続的かかわりを行い、
虐待防止プログラムを実施しなければ、虐待は繰り返される実態があること。さらには、結愛ちゃんのケースでも、事件の報告によると結愛ちゃんが家には帰りたくないと言ったとか、一方で帰りたいと言ったとか、相反する言葉が残されています。もちろん、小さな子供だから気持ちが揺れるのは仕方がないのですが、それでも、もっと丁寧に子供が発言する環境に考慮し、一時保護の解除等のタイミングにおいて、子供の意見がさらに尊重される仕組みをつくる必要性も感じています。
そこで、知事に、
児童虐待防止法の改正の受けとめと、特に、一、
児童相談所職員の適正配置、専門性の向上及びそのための人事の配慮、二、虐待をした保護者への
再発防止プログラムの実施、三、子供の意見が尊重される
仕組みづくりに対する今後の本県の取り組みに対するお考えをお聞かせください。
最後に、児童虐待などで子供を保護する一時保護のあり方についてお伺いをいたします。
さて、先ほど申し上げました改正法では、附帯決議において、一時
保護所等受け皿の整備の必要性が盛り込まれました。また、これまで本会議において議論をされ、今議会の
文教厚生委員会におきましても、同会派の山本委員と新田委員より、県内における一時保護所の増設、再整備について質問があり、たびたび検討してまいりたいというやりとりを繰り返してきました。
さて、昨年、
厚生労働省は、平成二十八年に出された新しい
社会的養育ビジョンの提示を受けて、一時保護は子供の権利擁護が図られ、安全・安心な環境で適切なケアが提供されることが重要であるという前提のもと、現状、一時保護について指摘されている問題の解決に向け、実効ある見直しを進めることを目的とした一時
保護ガイドラインを作成しています。その中の「一時保護の環境及び体制整備等」という項目におきまして、一、適切な定員設定、二、委託一時保護の活用、三、ほかの自治体が管轄する一時保護所との連携、四、混合での支援を回避し、全ての子供に適切な支援を行う、五、開放的環境で、子供の安全確保や必要なアセスメントが可能な場合には、子供の地域での生活を可能な限り保障するため、外出や通学について可能な限り認める、六、原籍校への通学が可能となるよう、一時保護の場の地域分散化を進める、七、施設への一時保護委託については、措置により入所している子供と混在しないよう配慮する必要があるため、
施設保護定員枠を別で確保するとあります。しかしながら、本県でそのような
体制整備状況があるのかというと、疑問を感じざるを得ません。
一時保護には、児相が所有する施設での一時保護と、乳児院や
児童養護施設、または里親などに委託する一時保護委託があり、平成三十年度本県で一時保護をした子供は二百五十九人、施設などに一時保護委託をした子供は二百五十一人、合わせて五百十人です。そして、一時保護した子供のうち、一定期間内に再保護をした子供が五十五人、一時保護委託により再保護した子供は五十六人。つまり全体で五百十人中、百一人、実に五人に一人の子供たちが、家庭と施設を行ったり来たりしています。全てが虐待案件ではないにせよ、自分の暮らす場所がたびたび変わる子供の心や生活が安定するとは到底思えません。だからこそ、一時保護施設は、少しでも子供たちが安心できる場所に改善をしていかなければいけません。
また、私は、この間、県が一時保護委託をしている施設を四カ所回りお話を聞きました。どの施設も子供たちのために努力をしてくださっています。しかしながら、一人につき一日二千円にも満たない委託費では、なかなか十分な環境を子供たちに提供するのは困難だと感じておられます。どの施設も人員的にはいっぱいいっぱいの中で運営をしていますから、夕方から急にお願いしますと委託をされた子供のために人を加配することは、人員的にも財政的にも困難な状況のように見受けます。
また、一時保護委託されている子供たちが、自身の在籍する幼稚園や学校に通うか、それとも施設内で一日過ごすかもその施設ごとの対応になっていて、特に決まりはなく、
児童相談所が施設の、そして委託中の子供一人一人の状況について把握できていないことも大変不安です。県の一時保護所で保護した場合は、講師が子供たちの勉強を教えるなど、一定の学習権が守られていることから、私は、委託中の子供で学校に行けない子供がいる場合、施設にも講師の派遣なのか、それに見合った人件費支給なのか、どちらかの方法で一時保護中の子供たちの学習権の確保もしていく必要があると考えます。
これまでは、質の改善について述べてきましたが、次は数的・地理的問題について考えたいと思います。
さて、本県には現在定員二十名の一時保護所が高松にあるのみです。昨年度の一時保護所における一日当たりの平均保護人数は十三・五人で、増加の傾向にあると聞いています。また、一時保護所が一カ所のみの県は、本県を入れて十六県しかないとも聞いています。現在も一時保護委託をたくさんお願いしている状況を考えれば、一時保護所の整備は喫緊の課題と改めて感じます。また、本県には、西部子ども相談センターもあり、西部の抱えるケースから乳児院や
児童養護施設に一時保護委託されているケースも目立ちます。先ほど触れた善通寺にある四国こどもとおとなの
医療センターにおいて、たくさんの虐待ケースを取り扱っていただいており、医療機関との連携強化のためにも、中讃もしくは西讃地域において、自前で建てるのか、それとも既存施設等に常時委託のための整備をするのか、そろそろ最終判断しなければいけない時期であるように考えます。
また、委員会の議論の中で、昨年国から示された児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策において、将来の見込みを踏まえた整備に加え、施設などにおける家庭的養育、里親への委託の推進が求められているという答弁がなされましたが、現実を見てください。里親がふえないことと里親の高齢化は、何年も前からの本県の懸案事項です。里親をふやす努力は必要ですが、一方で毎日十三・五人の子供たちが保護されている。そのこととまずは向き合い、早急な整備が求められております。
そこで、質問をいたします。
一時保護のあり方として、
厚生労働省が出した一時
保護ガイドラインにのっとるためにも、施設などへ子供たちを一時保護委託する際に、委託費の増額や学習権の確保など、行政が今すぐできることを行うべきだと考えますが、一時保護の役割、ガイドラインの受けとめと現状が必ずしもガイドラインに沿ったものとなっていないという御認識が知事にあるのか、施設などへの委託費の増額等に対する知事の御所見をお聞かせください。
最後に、安定した一時保護所があってこそ、子供たちも親御さんたちも次のステージに進めると考えます。一時保護所の数的・地理的現状について、知事の御認識と中讃・西讃地域への一時保護所の整備について御所見をお聞かせください。
以上で一般質問を終わります。(拍手、降壇)
◯議長(大山一郎君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)岡野議員の御質問にお答えいたします。
まず、不妊治療と仕事の両立についてであります。
県職員の不妊治療への支援につきましては、平成三十年職員の給与等に関する報告と勧告において
人事委員会から、国及び他の都道府県の状況を注視しつつ、不妊治療を受けやすい職場環境の醸成等を図っていく必要があるとの報告を受けており、不妊治療のための休暇制度等を含め、職員への支援のあり方について検討してまいります。
また、議員御指摘のとおり、働きながら不妊治療を受ける方が増加傾向にある中、企業が、仕事と不妊治療の両立について職場での理解を深め、従業員が働きやすい環境を整えることは重要であり、有能な人材を失わないという点で、企業にもメリットがあると考えております。
議員御提案の表彰制度については、柔軟な働き方や働きやすい環境整備などに取り組む企業等を表彰するかがわ働き方改革推進大賞を昨年度創設しており、企業の取り組み項目の一つに、「病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立」を掲げ、不妊治療と仕事の両立もこの項目の対象としておりますが、より明確になるよう、具体的に記載したいと考えております。
さらに、企業に対する助成制度については、昨年度から社内労働環境の整備や在宅勤務の導入等の柔軟な働き方を推進する中小企業等のうち、すぐれた取り組みを行うものに対し、その取り組みに要する経費の一部を助成しており、テレワークの導入など、不妊治療を行う従業員が働きやすい環境づくりにも活用できることについて啓発してまいります。
私といたしましては次代を担う子供たちを安心して生み、健やかに育てることができる子育て県かがわの実現を目指す中で、議員御提案の他県等の先進事例の導入効果も調査するとともに、企業向けセミナーの場を通じて啓発に努めるなど、職場における不妊治療への理解が一層深まるよう取り組んでまいります。
次は、
DV被害者への支援についてであります。
DV、ドメスティック・バイオレンスは重大な権利侵害であり、その対策は社会全体で取り組まなければならない喫緊の課題であると考えており、県では子ども女性相談センターにおいて、休日・夜間も含めた相談対応や一時保護、さらには被害者の自立に向けた支援を行っているほか、講演会の開催等による啓発にも取り組んでいるところであります。
御指摘の
民間シェルターにつきましては、公的機関と比較すると先駆性や柔軟性などの強みがあると考えており、本県においても本年五月に開設されたところであることから、御提言の
財政的支援と連携強化について、今後、
民間シェルターの運営者の御意見等も伺うとともに、先進的な取り組みについての情報を収集するなど、その必要性も含め検討してまいります。
また、保護を必要とする方の避難に当たっては、警察や各市町等と相談し、これらの機関の支援を受けて避難できるよう連携を図っているところであり、御提言の避難に要する交通費の支給については、他県の事例も参考にしながら研究してまいります。
被害者の自立等に向けた支援につきましては、心のケアが必要な被害者に対しては継続的なカウンセリングを行うとともに、個別面接やグループワークの方法により、心理面からの教育を行っているほか、必要に応じて精神保健福祉センターや精神科医などとも連携して支援に努めており、引き続きこれらの取り組みの充実を図ってまいります。
なお、加害者に対する指導につきましては、被害者を加害者から隔離する必要があることから、現在、子ども女性相談センターでは取り組んでおりませんが、被害者の安全・安心を確保する観点からは有効であると考えられるため、加害者更生プログラムの実施基準等の作成に向けて検討を行うこととしている国の動向を注視しながら、効果的な実施方法等について幅広く研究してまいります。
次は、児童虐待対策についてであります。
今回の法改正は、
児童相談所の体制強化や関係機関の連携強化等について定められたものであり、私といたしましては、今後、二度と痛ましい事件が発生することのないよう、法改正の趣旨を踏まえ、児童虐待対策を一層強化していく必要があると考えております。
児童相談所職員の適正配置、専門性の向上につきましては、本年四月に児童福祉司等を新たに十五名確保し、人員面での体制を強化したほか、対応に当たる職員の専門性の向上を目的として、介入的な対応を円滑に進めるための研修等も今年度新たに実施することとしております。
なお、人事面の配慮につきましては、新規採用時から計画的な人事ローテーションを行うとともに、一定の経験を積んだ後は、本人の適性を見きわめた上で、異動サイクルを長くすること等により、専門性の高い職員の育成も図っているところであります。
また、虐待をした保護者への
再発防止プログラムについては、これまでも
児童相談所において施設入所した児童の家庭復帰に向け、親子双方が段階的に課題を解決しながら、お互いの関係の改善を図るための取り組みを実施してきたところでありますが、今回の法改正により、当該保護者への再発防止のための指導が努力義務とされたことを踏まえ、民間団体等で実施されている治療的なプログラム等も参考にしながら、取り組みをより一層充実してまいります。
さらに、子供の意見が尊重される
仕組みづくりについては、改正法の施行後二年を目途として、政府において必要な措置を講ずるものとされていることから、
児童相談所において法改正の趣旨を踏まえた対応に努めるとともに、国の検討状況を注視してまいります。
私といたしましては、こうしたさまざまな取り組みを積極的に進めることにより、虐待の未然防止、早期発見、早期対応に向けて全力で取り組んでまいります。
次は、一時保護のあり方についてであります。
一時保護については、児童の安全の迅速な確保を図るとともに、安心感を持って生活できる環境の中で、保護者等との関係調整や生活の再構築を行う役割を担っているものと認識しております。国のガイドラインについては、一時保護所がこうした役割を果たせるよう、体制整備や環境整備に関し作成されているものであり、このガイドラインによると、一時保護の場の地域分散化などを進めることが望ましいとされておりますが、本県の現状では地域分散化が十分でないことから、必ずしもガイドラインに沿ったものとなっていない点もあると認識しております。
お尋ねの、施設に一時保護を行う際の委託料については、国の定める単価に基づき支出しているところでありますが、施設からは増額の要望もあることから、財政措置の拡充について、引き続き国に対して要望してまいりたいと考えております。
一時保護所については、高松市内に一カ所設置しておりますが、西部子ども相談センターが一時保護所での保護を行った場合には、訪問により児童の状況確認等を行うほか、電話やテレビ会議システムを活用し、一時保護所の職員と情報共有や連絡調整を行うなど、工夫しながら対応しているところであります。
こうした中で、御提案の中・西讃地域における一時保護所の整備については、施設整備に要する経費や職員の確保等の課題もありますことから、他県の状況等を調査するとともに、関係者の御意見を伺いながら検討を進めているところであり、できるだけ早期に結論を得られるよう努めてまいります。(降壇)
◯議長(大山一郎君)一般質問を続行いたします。
米田晴彦君。
(米田晴彦君登壇、拍手)
◯米田晴彦君 早速一般質問に入らせていただきたいと思います。
まず、初めに、介護事業所の育成方針について伺います。
誠実に利用者に寄り添い、熱心にケアに当たってきた居宅介護支援事業者が苦しんでいます。事業運営に必要な介護支援専門員の有効期間が切れていると思わず事業を継続してしまったのです。気がついてからの「ホウレンソウ」、報告、連絡、相談は機敏でした。そして、何より利用者への対応が一番ですが、これも連携している事業者に急ぎ引き継ぎ、利用者に大きな迷惑をかけずに済んだと安堵されていました。ですが、残った資格要件と人材のもとで事業を継続していく大変さを考えると、前途多難です。
国は、こうした必要な資格のないままの事業を防止するため、法律で「登録消除、五年間業務資格を失わせる」という厳しいペナルティーを科してきました。しかし、日常業務に追われて更新の手続を忘れるケースが発生しているという現状、「ケアマネジャーとしての能力・経験に関係なく更新手続を行わなかったというだけで業務ができなくなるというのは厳し過ぎる」、「小規模事業所では新たな人材確保の負担が大きい」、「新しい介護支援専門員との信頼関係を改めてつくらなければならず、利用者にとっても負担が大きい」との声を踏まえ、昨年、法律を改正、登録消除の判断が県に付与されました。これで資格を再取得するのに五年待たなければならない苛酷な罰則は改善されたのですが、それでも、再度必要な研修を受け直さなければならないのです。
私が相談を受けたケースの場合、主任介護支援専門員の研修を終えての出来事でしたから、同じ状態に戻るには介護支援専門員の再研修が十五日間、専門研修が二つで十三日間、そして主任介護支援専門員の研修十二日間の受講が必要で、早くて来年十二月以降です。その費用は十五万三千円。ここまでのペナルティーを科さなければならないのでしょうか。ちゃんと事業運営に必要な能力を担保する研修を受けているのにです。
経緯を聞いてみますと、本人は主任介護支援専門員の研修を受け、修了証明書をいただいた際、県から介護支援専門員証の有効期間とそろえるかどうかの希望が聞かれたので、「希望する」と回答したことをもって介護支援専門員の資格も延長したものと思い込んでいたのです。希望を聞いたのですから、それに沿う手続をその場で指示していれば、勘違いは防げたはずです。県にも事の重大さに対する認識に弱いところがあったのではないでしょうか。
必要な研修を受けないまま事業を行っていたのならいざ知らず、事業運営に必要な研修を受けている、ただ誤って理解していた、また、そのことを気づかせてくれるアプローチも機械的だと感じています。影響度を考えると、まだまだ処分が苛酷過ぎるのではないでしょうか。
法改正の通達には、介護支援専門員が更新研修の受講や更新手続をうっかり忘れたまま業務を行うことのないよう、「案内等の徹底については、引き続き遺漏なきよう期していただきたい」と行政の側も細心の注意を払うべきことが明記されています。
地域包括ケアシステムの構築に向けて、欠かすことのできない居宅介護支援事業所、地域で懸命に頑張っておられる良質な介護事業所を破綻へと追いやることのないよう、救済の道を考えるとともに、今後、このようなケースが起こらないよう、研修と更新手続の一体化や事業所が必要な免許が失効したまま運営するケースが起こらないよう、市町と連携してチェックできるシステムをつくるなど、対策を講じるべきと考えますが、知事のお考えをお聞きします。
次に、除草剤ラウンドアップの使用禁止等の措置について伺います。
ホームセンターなどで家庭用として市販されている除草剤ラウンドアップの人体への影響を心配する声が広がっています。主成分はグリホサートという化学物質です。販売しているアメリカのモンサント社は、日本語版でA4、四十ページもの冊子をつくって有益で安全だとしています。しかし、「食卓塩より安全」、「飲んでも大丈夫」、「動物にも鳥にも魚にも事実上毒ではない」という広告がうその広告だと二〇〇九年に有罪判決を受け、ニューヨーク州ではラウンドアップを安全な農薬と宣伝することは禁止されており、うのみにできません。
これまでグリホサートをめぐって「安全だ」、「危険だ」の攻防が繰り返され、今も続いています。発がん性の有無、思春期にラウンドアップにさらされると生殖の発達に障害を起こし、脳内ホルモンのバランスを崩すことで、体が思うように動かなくなったり、気分を自分でコントロールすることが難しくなったりする内分泌腺攪乱の可能性、母乳への蓄積、腸内環境を破壊することで、アレルギーなど自己免疫疾患などの原因ではないのか、精子の数の激減、胎児の発育に影響を与える可能性、肝疾患など、本当に多岐にわたっています。モンサント社は、これら全てを否定し、「健康へのリスクは無視できる程度だ」と言い切っています。
事実を押さえておきたいと思います。デンマークは、二〇〇三年、地下水を汚染していると散布を禁止しました。二〇〇八年、ラウンドアップ製剤とその分解された後の代謝産物が試験管の中でかなり低い濃度であっても人間の胚、胎盤、へその緒の細胞に死をもたらすという科学的研究での発表がありました。EUは「環境に危険であり、水生生物にとって毒である」としています。カナダでは、二〇一二年末までに、全州で芝生や庭での使用を禁止しました。二〇一五年に世界保健機関WHOの下部組織国際がん研究機関が、「恐らく発がん性がある」と発表、一七年には米国政府の研究で急性骨髄性白血病との関連が発表され、同年カリフォルニア州がラウンドアップを発がん性物質のリストに載せました。ことしに入って一月、フランスが一部販売禁止に、二月にはワシントン大学の研究チームが「グリホサートにさらされると発がんリスクが四一%増大する」との研究結果も公表しています。
また、アメリカにおける裁判の状況も、昨年八月、ことし三月と五月の三回にわたって、ラウンドアップを使用してがんになったとしてモンサント社を訴えていた原告が勝訴しています。同様の訴訟は一万三千件以上も起こされているといいます。直近の五月十三日には、カリフォルニア州の夫婦が、ラウンドアップが原因でがんを発症したとして賠償を求めた訴訟では、州裁判所の陪審は、モンサントに対し二十億ドル、約二千二百億円もの支払いを命じています。使用禁止、販売中止の動きは、世界三十カ国以上に広がっています。
しかし、日本政府は、世界の動きと逆行する動きを見せています。グリホサートの残留基準を二〇一七年十二月に緩和しました。小麦粉の残留基準で言えば、五ppmから三〇ppmに緩和です。これは、〇・二ppmと規定している中国の何と百五十倍です。トウモロコシは一ppmから五ppmに、ソバは〇・二ppmから三〇ppmというぐあいにです。
なぜ緩和したか。それはひとえにアメリカの事情でした。アメリカでは、作物の収穫直前に作物に直接グリホサートを散布して、作物の茎を枯らせて乾燥させ、収穫をスピードアップさせるハーベストエイドと呼ばれる使用方法が盛んになり、その結果、残留濃度が高くなりました。その事実を隠すため、アメリカは基準値を大幅に緩和、それに合わせただけというとんでもない事情でした。小麦の残留基準三〇ppmは、何と一九九三年の基準、〇・一ppmの三百倍です。ハーベストエイドを禁止したドイツ、それに引きかえ日本政府は、ここまで同盟国のために尽くすのでしょうか。
県の窓口は、「国において安全が確認されている」と言い切りました。事情をつかんだ上で言っているのでしょうか。安易な対応は、行政不信を募らせるだけです。謙虚に、「ひょっとしたら命よりもアメリカの国益が優先されているのじゃないか調べてみます」という態度こそが、何を信じていいかわからないと不安を覚える県民にとって、自分たちを守ってくれる最後のとりでだと位置を与えてくれるのではないでしょうか。
日本人は、明治以降、公害、薬害事件を繰り返してきました。足尾鉱毒事件、神通川イタイイタイ病、森永ヒ素ミルク事件、水俣病、サリドマイド、カネミ油症事件、スモン病、薬害エイズ、ダイオキシン、アスベスト。共通しているのは、まず企業側の否定、隠蔽。否定し切れなくなって謝罪、賠償。そして、行政は常に後手の対応でした。行政は一体どちらの側に立っているのか、民の側には立たない、根強い不信が横たわっています。
かけがえのない命は、一旦傷つけられれば戻ってきません。グリホサートの問題で私たちがとるべき態度は、疑わしきは使用せずではないのでしょうか。資本力をバックに専門性を前面に押し出して、素人は黙っていろと言わんばかりの企業の前に、民の立場に立って徹底して懐疑的に行動する、それが行政の役割ではないのでしょうか。行政の立ち位置が問われています。
そこで、知事に伺います。
グリホサートの危険性をどこまで認識されているのか、世界各国でラウンドアップの使用禁止や販売中止、輸入禁止が広がる中で、こうした各国の動きをどこまでつかんでいるのか、それらをどう見ているのかお答えください。
安全、危険が定まらない中では、県は安全性が証明できるまで使用禁止措置をとるべきと考えますが、県民の不安を払拭するために、どのようなことを行っていくのか、お答えください。
オリーブハマチの生産の中で、餌となる葉っぱへの農薬散布には敏感に対応されていますが、その周辺ではラウンドアップの使用はないのでしょうか。残留検査は行われているのか、お答えください。
さらに、県の公共施設等での使用状況はどうなっているのか、お答えください。
そして、幾つかの自治体で始まっている公共施設での農薬の使用指針を策定し、実施状況を住民に情報公開していくべきと考えますが、お考えをお聞かせください。
三つ目に、主権者教育のあり方について伺います。
文部科学省によると、主権者教育とは、「単に政治の仕組みについて必要な知識を習得させるにとどまらず、主権者として社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一人として主体的に担うことができる力を身につけさせること」とされています。言うとおり、知識として知るだけでは身につかないのです。なのに、我が会派の代表質問に対する答弁では、この文科省の定義をなぞるだけで、どうやって主権者であるという意識を芽生えさせ、主体的に社会に参画しようとする力を身につかせていくのか、全く見えてきません。
実際に主権者として尊重されたという実感、そして自分の意思表示によって物事が動いたという体験があればいいのです。それを本気で教師集団がつくろうとしているのかだと思うのです。今の学校にその用意が果たしてあるのか、また、それを実現しようとする教員の政治意識はどう見ておられるのか、まずお尋ねします。
子供は親の映し鏡だと言われます。子供たちを通じて、親の姿が、そして社会の姿が見えてきます。日々子供たちや家庭、地域から持ち込まれる問題こそが主権者教育の課題だと言えます。問題にふたをせず、ありのままに受けとめて、子供たちを交えて問題解決に向かう教員の姿こそが、生きた主権者教育だと思うのですが、いかがでしょうか。
それからすると、ギャップのある出来事に遭遇いたしました。多度津高校のサッカー部が、コート全面を利用できずに半面で練習しています。理由を聞くと、土ぼこりがして困るという住民からの要望に応えての対応のようでした。どれだけ関係者の間で議論が交わされたのかわかりません。ですが、その決定に生徒はいません。学校が決定して生徒に伝えるだけ、異議を唱える生徒の動きもない、どこに一番の関係者として尊重されているという生徒の存在があるのでしょうか。これは運営であって、教育ではありません。
プロセスを省略して結論だけを押しつける、そんな経験しかない生徒に、急に十八歳になったからさあ政治参加だと選挙権を宛てがってもうまくいくはずがありません。そこには、みずから政治参画を求めるエネルギーがないのですから。そもそも権利というものは、虐げられ、差別され、人間社会の中で起こる理不尽なことを変革しようというエネルギーによって戦いとられてきました。それがないまま上から与えたって、うまくいかないのは当たり前のことです。日本における十八歳選挙権は、その成立のときから限界性を持っているのです。
ですから、主権者教育の課題は、どれだけ学校でみずからの問題はみずからが解決するという実地体験を積ませるかです。教師も生徒もです。できるだけ問題を起こさないでくれじゃなく、問題大いに結構、また勉強できる機会がふえたじゃないかという構え方こそが重要なのではないでしょうか。
先日、東京の世田谷区が、区立中学の
校則を全て学校のホームページで公開すると発表しました。親子で、地域で、学校で
校則の是非について考える機会を提供する、決して大人が勝手に決めるものではないということを保障する、いい取り組みが始まりました。私の小学時代、中学校男子は丸坊主でした。丸坊主が嫌だなあと思っていたら、私たちの学年から長髪が認められるようになり、喜んだ記憶が今でも残っています。その結論を出したのは、当時の中学の生徒会と学校でした。今、自治の体験こそが求められているのではないでしょうか。
主権者教育について、教育委員会の中で構え方について根本的に直す必要があると考えますが、教育長のお考えをお聞きします。
四つ目は、理容師の養成についてです。
香川県内から理容師を養成する学校が消えようとしています。ことし、坂出にあった県内唯一の理容学校が新年度の生徒の募集を停止し、学校自体も閉校する方向を打ち出したのです。近年、生徒の応募状況が芳しくなく、やむなく募集停止に踏み切ったようですが、閉校と知って関係者の間で心配の声が広がっています。県内で理容師を目指す道が絶たれてしまう、これから若者の理容師養成に向けて力を入れていこうとしていたやさきの出来事で、動こうにも動きがとれない。何とか香川県内での理容師の養成の道を残してほしい、切実な要望をいただいています。
理容業の現状は、
厚生労働省の衛生行政報告例によれば、理容所の施設数は、昭和六十一年に十四万四千九百九十四店をピークに微減が続き、平成二十七年度は十二万四千五百八十四店と率にして一四%低下しています。理容師の数も、平成二十七年度で二十二万七千四百二十九人と平成十五年度と比較して約一割低下しています。また、
厚生労働省が行った平成二十七年度生活衛生関係営業経営実態調査結果によれば、七割以上の施設が「後継者なし」と回答し、今後の経営方針については、二割弱の施設が「廃業」と、将来に悲観的な回答を寄せています。経営環境の厳しさに加え、今後の後継者問題、若い消費者の取り込みのためにも、若手の理容師の養成は喫緊の課題になっていると言えます。
国も調査結果をもとに、ことし理容業の振興指針を全面的に改正して、振興に力を注いでいく姿勢を見せています。理容業がこれまで地域の中で果たしてきた役割を評価し、さらに少子高齢化の進行の中で、共生社会を実現していく上でなくてはならない存在として、これまで以上に地域社会への貢献を求める姿勢を打ち出しています。これを具体化していくためには、行政の支援は欠かせないものと考えます。
そこで、知事に伺います。
県内の理容業の動向についてどのような認識をお持ちなのか、まずお聞かせいただいた上で、今回の理容学校の募集停止、閉校について、理容師養成の根幹にかかわる問題だと考えますが、県に対する相談はなかったのか、こんなに簡単に学校側の判断だけでできるのならば改善が必要と考えますが、今回の経緯と、どこが理容師養成に責任を持つものとお考えか、お聞かせください。その上で、今後、理容業の振興に県がどのような役割を果たしていくのかについてもお答えください。
最後に、職員集団の自治意識の醸成について伺います。
知事は、職員がどれだけ自治の気概を持って職務に向かっているとお考えでしょうか。私は、危機感を持っています。
私は四月の選挙で、県民を守るためには県が防波堤にならなければならない。そのための人材づくりが必要だと訴えてきました。働きがいをつくる人材、国際的な人権の基準を実現する人材、県民の命を守る人材、地域を再生する人材、民主主義を育てる人材を育てようと。本気で県民を守る集団にしていく必要があると。
それは、六年間の議員活動の中で一番感じてきたことだからです。種子法廃止の問題、TPPへの対応、インクルーシブ教育の問題、エネルギー政策の問題、農協法、漁業法改正の問題等々、どう考えても亡国の構図が広がっているにもかかわらず、県としての防御策が出てこない。「国がこういう結論を出しているから、まずはそれを信用してください」、「国、他県の動向を見ながら」、「それは市町の仕事」、何度このフレーズを聞かされたことでしょうか。国は間違いを犯さないのでしょうか。間違いを犯していたときにどう責任をとるのでしょうか。同調してもみずからの責任は免責されるとでも考えているのでしょうか。どこに顔を向けて仕事をしているのか、自治の気概のなさにぞっとしています。議会は、地方に不利な政策や立法には政権与党会派も加わる中で国に物申す決議をしてきています。
県民を守るためには、国で出された結論であったとしても、まず自分の頭で考えてみる。間違っていると思ったら声に出す、形にする、そんな姿勢こそが県行政への信頼を高めるものと確信しています。
私は、国の決定に唯々諾々と従うだけの自治へのこだわりが弱い行政集団になっていると考えますが、知事は職員集団の自治意識の現状と醸成をどのように考えておられるのか、見解をお聞かせください。
以上で私の一般質問を終わります。(拍手、降壇)
◯議長(大山一郎君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)米田議員の御質問にお答えいたします。
まず、介護支援専門員資格の更新手続等についてであります。
介護支援専門員につきましては、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識・技術を有する者として、介護支援専門員証の交付を受けて業務を行うことが定められており、その有効期間は五年となっています。この有効期間を更新するためには、介護保険法第六十九条の七の規定により、それぞれの実務経験等に応じた研修を受講し、更新交付申請手続を行うことが必要であり、有効期間が切れた場合には、再研修を修了して交付申請を行うことで、新たに交付を受けることが可能であります。
県では、介護支援専門員証の更新手続については、これまで県のホームページによる広報や更新研修の修了時における説明のほか、毎年五月には、翌年三月から一年の間に有効期間が満了する方に対し、更新研修を受講し、有効期間満了日までの一カ月前までに更新交付申請を行うよう文書で通知し、注意喚起を行ってきたところです。こうした中で、主任介護支援専門員更新研修の際にも、介護支援専門員の更新に係る申請の手続について一般的な説明はしておりますが、御指摘の事例もあることから、今後、ホームページや文書による通知での注意喚起をより一層わかりやすい内容にするとともに、更新研修の際に事前に受講者に更新交付申請書を配布し、研修修了日に提出できるようにすることにより、更新手続の案内等を徹底してまいります。
さらに、介護事業所に対しても、県が毎年実施している集団指導や各市町が行う居宅介護支援事業所への個別の実地指導において、所属する介護支援専門員の資格を適切に管理するよう、各市町とも連携し、周知を徹底してまいります。
次は、グリホサートを含む農薬の使用についてであります。
グリホサートについて、御指摘のような動きの概要については把握しております。こうしたことを受け、国会でも質疑がなされており、グリホサートを含む農薬について、国からは平成二十八年に内閣府の食品安全委員会による安全性評価が行われ、「農薬としての使用方法を遵守して使用する限りにおいて、発がん性は認められなかった」と評価をされていることから、直ちに評価や登録の見直しは行わないものの、引き続き農薬の安全性に関する情報収集に努めつつ、改正農薬取締法を踏まえ、二〇二一年度から全ての農薬について再評価を開始する旨の答弁がされております。県としては、今後ともこうした国の動向等を注視する必要があると受けとめており、当該農薬に関する情報収集に努めてまいります。
また、農薬の使用禁止については、農薬取締法に基づき、国による登録の取り消しにより行われることになっておりますが、県としては、引き続き使用者に対して定められた使用方法を遵守するよう、周知・指導を行ってまいります。
また、オリーブ園地で使用できる除草剤として、グリホサートを主成分とする農薬が登録され、使用されていますが、当該農薬の登録に当たって、農業試験場小豆オリーブ研究所が実施した残留農薬検査の結果では、国の残留基準値の十分の一以下の数値であったことを確認しております。県の公共施設等でも使用事例はありますが、農薬の使用については、関係部局に「国の住宅地等における農薬使用について」の通知や公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアルに基づき適切に対応するよう周知を図っているところであり、公共施設での農薬の使用指針の策定については、今後とも他県の状況等について情報収集に努めてまいります。
次は、理容師の養成についてであります。
平成二十七年度に国が実施した生活衛生関係営業経営実態調査によると、理容業における経営上の課題として、「客数の減少」や「後継者なし」が多く挙げられており、平成二十九年度の県内の理容所数は千百七十七施設で、十年前の十九年度と比較すると九十七施設減少し、従事している理容師数は二千二十一人で、十年前から百四十五人減少するなど、本県においても理容業は厳しい経営環境にあると認識しております。
お尋ねの理容学校につきましては、一般社団法人が開設している専修学校であり、数年前から生徒数の低迷が続く中、今年度の昼間の課程の入校希望者が皆無であったことなどから、在校生の卒業にあわせ、令和三年九月に閉校することを本年五月の総会で決定したとのことでありますが、それまでに、このことに関し相談は受けておりません。
県は、理容師法等に基づき、養成施設の指定、変更、廃止等に係る承認を行う立場にあり、県内に養成施設がなくなることは、理容師の確保に影響があると思われますが、入校希望者がいないという状況を踏まえると、廃止に係る承認を行わないことは難しいと考えます。また、理容師の養成に係る責任については、法律等では明確にされておりませんが、理容業の振興のためには、人材育成は不可欠であることから、今後、県理容生活衛生同業組合など業界の御意見を伺いながら、養成施設がない他県における取り組み等も参考に、どのような対応が必要か検討してまいります。
さらに、理容業の振興に当たりましては、県が出資している生活衛生営業指導センターと同業組合が連携し、個々の事業者を対象に、経営相談や融資のあっせん、研修会の開催等を実施しており、県といたしましては、今後ともこうした事業を支援するなどの役割を果たしてまいります。
次に、県職員の育成についてであります。
厳しい経済状況や急速な人口減少、少子高齢化が進む中、高度化・多様化する県の行政課題を解決するためには、高い使命感を持ち、県民本位・地域本位の視点に立って業務を遂行することができる職員を育成することが重要であると考えております。このため、県においては、職員育成の基本的な考え方をまとめた人材育成方針において、求められる職員像として、「明日の香川づくりに情熱を持ち、県民本位で行動するプロフェッショナルな職員」を掲げ、政策立案や地方自治に関する研修のほか、階層別に行う意識改革についての研修を行うなど、人材育成に努めているところであります。また、職員による政策立案の過程で、国に対し制度の創設や見直しを求める必要がある場合には、政策提案や要望を行っております。
私といたしましては、県庁は、職員一人一人が香川県にとって何が必要かを真剣に考えながら、責任を持って職務に取り組んでいる組織であると認識しておりますが、引き続き職員の意識改革や資質・能力の向上に努めるとともに、御指摘のような県行政への信頼を高めるため、行政課題に主体的に立ち向かい、みずから解決することのできる組織づくりを進めてまいります。(降壇)
◯議長(大山一郎君)工代教育長。
(教育長工代祐司君登壇)
◯教育長(工代祐司君)米田議員の主権者教育のあり方についての御質問にお答えいたします。
原子力規制委員会は四月二十四日、原発の新規制基準で設置が義務づけられているテロ対策施設、特定重大事故処理施設、特重施設が期限までに完成していない原発の運転を認めないことを決めました。四国電力の伊方原発三号機は、再来年三月の設置期限に間に合わず、約一年おくれると言われています。基準不適合なら、当然運転停止となりますが、県として四国電力に対する対応はどうなっているのでしょうか、知事にお伺いをいたします。
かつて、東芝で原子炉格納容器の設計を担当していた後藤政志工学博士は、「特重施設の設置は、福島原発事故を受けた二〇一二年の施行の新基準で義務づけられたものであり、その安全施設が完成していないのに原発を運転させるのはもってのほか。備えを怠った福島原発事故の教訓を無視していいのか」、「そもそも特重施設が重大事故のときに本当に機能するかどうか、何ら実証されていない」と述べていますが、こうした専門家の指摘をどのように受けとめておられるのでしょうか。私は、原発はゼロにする以外に国民の安全は守れないと思いますが、知事の御所見をお示しください。
さて、私は、伊方原発の危険性については、南海トラフ巨大地震が発生した場合、伊方原発の下約五キロメートルの中央構造線が動く可能性が指摘されており、放射能漏れの重大事故に対する対応を何度となく求めてきましたが、今回は、米軍機事故による対応を求めたいと思います。
米軍機の低空飛行訓練が全国各地で行われ、被害が深刻になっています。四国はオレンジルートと呼ばれる米軍機の低空飛行訓練ルートが設定され、和歌山県沖から徳島、高知、愛媛を通り、米軍岩国基地に向かうようになっています。人家の屋根すれすれに飛び、窓ガラスや家具が振動するほどの騒音で、百デシベルを超えています。高知県では、一昨年、防災ヘリとニアミスを起こしています。
問題なのは、伊方原発の上空を飛ぶ危険です。原発は上空から目立つので、訓練の標的にされやすいと言われています。一九八八年六月二十五日、伊方原発の真上を通った普天間基地所属のCH53Dヘリが山に激突し、米兵七人全員が死亡する事故が発生。機体がバウンドしなかったら、原発敷地内に落ちて大惨事になっていたと言われていますが、日米地位協定を盾に、関係者の立ち入りは認められませんでした。一九七九年から二〇一二年の間に、伊方原発周辺の米軍機事故は八回も発生し、危険きわまりない状況となっていますが、知事はこの事実をどのように受けとめておられますか、お尋ねをいたします。
沖縄県がヨーロッパ諸国に置かれた米軍基地を調査した結果、米軍に国内法が適用されない、基地への立入調査権もなく、訓練・演習の規制ができないのは日本だけであったことが明らかになりました。米軍にこのような植民地的特権を保障した日米地位協定が一九六〇年の締結以来一度も改正されていないことは、まともな主権国家とは言えない異常なことではないでしょうか。全国知事会も昨年八月、国に対し日米地位協定の改定を求める要望を行っていますが、知事の御所見をお示しください。
次に、公正な教科書の採択についてお尋ねをいたします。
安倍首相は、二〇二〇年を新しい憲法が施行される年にすると公言し、自民党がまとめた九条改憲の条文案は、九条二項の後に自衛隊の保持を明記し、自衛隊の行動は、法律で定めると書いてあります。一たび自衛隊を憲法に明記し、後は法律で定めるとなると、時の多数党と政府が、法律さえ通せば、自衛隊の行動を無限定に拡大できるようになってしまいます。戦争する国への歯どめなき暴走は許されません。
安倍政権によって教育基本法が改悪され、教育現場に対する干渉が強まっています。それによって、ことしの夏に新学習指導要領にのっとった小学校全教科(道徳を含む)と現行の旧学習指導要領にのっとった中学校全教科(道徳を除く)の採択が行われます。八年前、四年前の採択では、唯一、香川県立高松北中学校で育鵬社の教科書が採択されました。この歴史教科書は、日本の侵略戦争を自存自衛、アジアの解放のためと描き、日本の戦争は正しかったという主張が貫かれ、戦争放棄などは連合国に押しつけられたものとして否定的に描き、平和主義の項目の大半を自衛隊の説明に割く異常なものです。
安倍政権の目指す戦争する国には、進んで戦争に行く国民が必要です。かつては軍国主義教育が国民を戦争に駆り立てました。日本は正しい戦争をしたと教えることで、再び同じ過ちを繰り返してはなりません。私は、平和主義に基づく教科書の採択こそ、今、強く求められていると思います。
このような中、六月十九日、香川の教育をよくする県民会議など四団体が、教育長に対し、香川の未来を担う子どもたちにふさわしい平和憲法を生かした教科書採択を求める要請書を手渡し、申し入れを行いました。その内容は、一、県教委を初め、県内十八の教育委員会が独立性を保ち、採択に当たっては、現場の教員の声が採択に反映される仕組みとすること。二、採択地区の選定委員会答申調査員の研究調査報告書には、教科書の長所・短所を記述し、公開するなど選定過程の透明化。三、教科書採択時の教育委員会の審議の公開、議事録への発言者氏名の明記。四、県立高松北中学校で採択されている育鵬社教科書の他社への変更。五、小学校道徳教科書は、愛国心の強調ではなく、憲法の理念に基づいた平和、人権、共生などバランスのとれた教科書採択とすること。六、教育勅語を賛美するモラロジー研究所の道徳教育研究会の後援をやめ、教育長を初め、教育委員会関係者の参加を中止することであります。
以上、六点について教育長の御所見をお示しください。
最後に、LGBT、SOGI(性的指向・性自認)に関する差別のない社会の実現についてお尋ねします。
社会の全ての構成員が、個人の尊厳を大切にされる社会にするためには、同性婚を認める民法改正案や野党共同提出のLGBT差別解消法案の国会での成立が強く求められています。
六月二十四日、茨城県の大井川知事は、LGBTのカップルを夫婦同様のパートナーとして認めるパートナーシップ宣誓制度を七月一日から実施すると発表しました。都道府県では初めてです。
LGBT当事者が、互いをパートナーとして生活することを届けると、県が宣誓受領書を交付し、県営住宅への家族としての入居申請、県立病院での親族同様の扱いも受けられることも可能となります。また、県は、職員採用試験の申込書や各種申請書などで性別記載欄を見直すほか、LGBT当事者向けの相談窓口も開設、関係団体を通じた当事者の実態調査、県民への普及啓発なども行うとしています。
私は、本県としても同性パートナーシップ条例を制定し、社会のあらゆる場面で権利保障と理解促進を進めるべきと考えますが、知事の御所見をお示しください。
以上で質問を終わります。(拍手、降壇)
◯副議長(西川昭吾君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)樫議員の御質問にお答えいたします。
まず、私の政治姿勢についてであります。
議員から三つの御提案をいただきましたが、「八時間働けば普通に暮らせる社会をつくる」のうち、最低賃金につきましては、いわゆる骨太の方針二〇一九において、より早期に全国加重平均が千円になることを目指すとされているところであり、私としましては、県経済を支える中小企業の生産性向上や経営改善を積極的に支援することにより、賃金水準の向上を図ってまいります。
また、高度プロフェッショナル制度につきましては、自律的で創造的な働き方を希望する方々が、高い収入を確保しながら、めり張りのある働き方ができるよう導入されたものと認識しており、非正規雇用労働者の正社員への転換につきましては、私としても積極的に取り組むべき課題であると考えております。介護職員や保育士の賃金につきましては、それぞれ一定程度の改善が図られてきているものの、より一層の処遇改善が行われる必要があると考えております。
次に、「暮らしを支える社会保障を築く」につきましては、我が国が直面している急速な少子高齢化と人口減少の同時進行という状況において、国民健康保険や医療制度、年金制度など、国民生活を支える最も重要な社会基盤である社会保障制度は、受益と負担の均衡がとれた、将来にわたって持続可能で国民の皆様から信頼されるものになることが必要であると考えております。
次に、「お金の心配がなく、学び、子育てができる社会をつくる」につきましては、国において本年十月から幼児教育・保育の無償化が、来年度から経済的な理由で進学を諦めることのないよう、高等教育の無償化がそれぞれ実施される予定でありますが、子育て・教育の負担につきましても、将来にわたって持続可能な制度とすること、税負担も含め、全体として公平感のあるものとすることが重要であると考えております。
なお、学校給食費を初めとする義務教育に係る費用につきましては、現在、経済的理由により就学が困難と認められる児童・生徒の保護者に対し、就学援助や教育扶助の制度が設けられていると承知しておりますが、その無償化につきましては、地域の実情等に応じて、各学校の設置者が判断すべきものと考えております。
私は、人口減少や少子高齢化が進む中で、諸課題に対応していくためには、バランスのとれた安定した税収入の確保や成長の好循環による税収入の拡大を図る一方で、限られた財源を有効に配分していくことが重要であると考えております。こうした考えのもと、消費税につきましては、所得、資産、消費による課税のバランスの中で、あらゆる世代が広く負担し、景気や経済の影響を受けにくい貴重な財源であり、その税率引き上げは、現在の国と地方の危機的財政状況や社会保障の充実等の観点からは避けて通れないものと考えております。
なお、マクロ経済スライドを含めた年金についての重ねてのお尋ねにつきましては、基本的な考え方として、先ほども申し上げましたとおり、将来にわたって持続可能で国民から信頼されるものになることが必要であると考えております。
次に、国民健康保険制度についてであります。
現在、国民健康保険には給付費の五割以上、計四・六兆円、協会けんぽには給付費の一六・四%、計一・二兆円の公費負担があり、健康保険組合には公費負担がない中で、国民健康保険財政における公費負担につきましては、国、地方を通じた厳しい財政事情のもと、国保の財政基盤の強化を目指した今回の制度改革において、国の財政負担を含め、さまざまな議論が行われ、平成二十七年二月に国と地方間で公費で三千四百億円拡充することで合意したものと承知しております。このため、まずは、この財政支援を今後も国の責任において確実に実施することを国に求めているところであり、こうしたことから、県が一般会計から繰り入れを行うことは考えておりません。
御指摘の各市町の一般会計からの繰り入れのうち、決算補填等を目的とする繰り入れにつきましては、本来、解消または削減すべき対象であると認識しており、国からも法定外繰り入れ等の早期解消が促されておりますが、その解消に当たっては、保険料水準が急激に変化しないよう、各市町において計画的に対応することとされていると承知しております。
また、骨太の方針二〇一九では、保険者努力支援制度において、加減算双方向での評価指標の導入などめり張りを強化するとされておりますが、その内容は、交付金の総額を減額するものではなく、配分に当たっての評価点数の見直しが検討されているものと承知しております。いずれにいたしましても、その見直しが制度本来の目的である財政面でのインセンティブが働く仕組みとなるよう、機会を捉えて国に申し入れしたいと考えております。
次に、子供の医療費についてであります。
子供の医療費につきましては、子育て家庭への経済的支援の充実を図るため、国において全国一律の制度とする必要があると考えており、国保の減額措置につきましても、国保財政に重大な影響を及ぼしていることから、国においての制度化や減額措置の全面的な廃止をするよう、全国知事会からの要望に加え、本県からも要望しているところであります。
乳幼児医療費支給事業につきましては、平成二十三年八月に対象年齢を就学前までに引き上げるなど、制度の拡充に努めており、県内各市町におきましては、それぞれの判断により、独自に上乗せを行っているものと承知しております。その対象年齢の引き上げにつきましては、さまざまな観点から検討した結果、それまでの年齢を継続した上で、平成二十六年度に、各市町が地域ごとのニーズに応じて創意工夫を凝らした事業を実施できるよう、本県独自のかがわ健やか子ども基金事業を創設し、各市町の取り組みを支援することとしたところであり、この基金事業につきましては、全ての市町から、有益であり、活用しやすいとの御意見をいただいております。
お尋ねの対象年齢を引き上げた場合の県負担額につきましては、平成二十六年度の実績額をもとに試算しますと、入院、通院とも小学校卒業までとした場合は、毎年度約六億三千三百万円が、中学校卒業までとした場合は、約八億八千五百万円がさらに必要となります。
御提案の中学校卒業までの引き上げについては、国において全国一律の制度とする中で検討されるべきものと考えておりますが、県単独での実施につきましては、厳しい財政状況のもと、単年度の決算剰余金をもって恒久的な制度の財源とすることは適当ではなく、難しいものと存じます。
次は、原発ゼロと日米地位協定についてであります。
県では、これまで四国電力に対して、伊方発電所の安全対策に万全を期すよう意見を申し述べるとともに、国に対しても、全国知事会や四国知事会を通じて、原子力施設の安全対策等にあらゆる対策を講じるよう、提言等を行っているところであります。
議員お尋ねの伊方発電所における特定重大事故等対処施設の設置につきましては、四国電力から、丁寧かつスピード感を持って原子力規制委員会の審査に対応するとともに、工事についても工期短縮が図られるよう、最大限の努力を継続すると伺っておりますが、今後とも伊方発電所の安全対策に万全を期すよう、国や四国電力に対して意見を述べるなど、県民の安全・安心を確保する観点に立って対応してまいりたいと考えております。
また、原子力発電所の稼働の是非につきましては、新規制基準に基づき、原子力規制委員会等の専門家による徹底的な安全性の検証や十分なチェックがなされ、基本的には国の責任において判断されるべきことであり、その際には、安全性を最優先としなければならないと考えております。
次に、米軍機の低空飛行訓練等による事故は、決してあってはならないことであると考えており、安全性を最優先に、国の責任において対応していただきたいと考えております。
また、日米地位協定につきましては、議員御指摘のとおり、昨年八月、全国知事会として、日米両政府に対して抜本的な見直しをするよう提言を行ったところであり、私といたしましても、全国知事会の提言も踏まえ、国民の生命・財産や領土・領海等を守る立場から、政府において一層積極的に取り組んでいただきたいと考えております。
なお、そのほかの御質問につきまして、総務部長よりお答え申し上げます。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)東田総務部長。
(総務部長東田晃拓君登壇)
◯総務部長(東田晃拓君)樫議員のLGBTに関する差別のない社会の実現についての御質問にお答えいたします。
LGBTなど性的少数者の方々は、偏見や無理解のため、学校や職場などで心ない好奇の目にさらされるなど、不当な差別を受ける場合もあり、こうした方々が安心して暮らせるよう、人権尊重の観点からの配慮が必要であると認識しております。このため、本県におきましては、昨年八月から性的少数者電話相談窓口を開設するとともに、じんけんフェスタ等の機会を利用して、周知啓発に努めているところであります。
お尋ねの性的少数者のカップルがパートナーであることの証明書を発行する制度、いわゆるパートナーシップ制度につきましては、性的少数者に対する社会的理解が広がり、多様性を認め合う共生社会が実現することから、その導入を望む声がある一方で、婚姻のあり方にかかわるものであるため、その導入に慎重な対応を求める声もあるものと認識しております。
いずれにいたしましても、性的少数者の方々への差別のない社会の実現に向けて、パートナーシップ制度を含め、その支援のあり方につきましては、他県の動向も参考にしつつ、引き続き幅広く研究してまいります。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)工代教育長。
(教育長工代祐司君登壇)
◯教育長(工代祐司君)樫議員の教科書採択についての御質問にお答えいたします。
教科書採択については、文部科学省通知において、外部からのあらゆる働きかけに左右されることなく、採択権者の判断と責任において、公正かつ適正に行うこととされており、県教育委員会といたしましては、この通知の趣旨の徹底について、各市町教育委員会に周知しております。
教科書採択に当たっては、多くの現場の教員が調査員となり、綿密な調査研究を行っております。各採択地区の答申や調査研究資料については、調査結果を数値であらわすなど、特徴が客観的に示されており、その公表については、各市町教育委員会において、それぞれの実情に応じて適切に判断するものと考えております。
採択に係る会議の公開については、静ひつな審議環境の確保等の観点から、各教育委員会が公開・非公開を判断することとされており、それぞれにおいて適切に対応しているところであります。
議事録への発言者の氏名の記載については、県教育委員会においては実施しておりますが、市町教育委員会においては、それぞれの実情に応じ、適切に判断されるものと考えております。
県立高松北中学校の教科書採択に当たっては、選定審議会の答申や調査委員会の調査研究結果とあわせ、校長や保護者代表の意見も十分に聴き、慎重に審議し、採択してまいります。
小学校道徳の教科書については、文部科学省が示す検定基準に基づいて検定に合格したものの中から、各市町教育委員会の判断と責任により、適正に採択されるものと承知しております。
公益財団法人モラロジー研究所の道徳教育研究会の後援については、県教育委員会の基準に基づいて申請内容を審査し適当と認めたものであり、当該研究会への参加要請への対応については、教育委員会職員が県の教育施策の概要について説明しているところであります。
県教育委員会といたしましては、今後とも公正かつ適正な教科書採択に努めてまいります。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)再質問の通告がありますので、発言を許可いたします。
樫 昭二君。
(樫 昭二君登壇、拍手)
◯樫 昭二君 再質問を行います。
一点目は、知事の政治姿勢についてですが、今の答弁は、安倍首相の言っていることと何ら変わらない内容だというふうに思います。アベノミクスで格差と貧困が大きく広がっています。一%の富裕層のための政治か、それとも九九%の国民のための政治か、これが今問われていると思います。だから、私は日本共産党の三つの提案、一つは大企業優遇税制を改める、二つ目は富裕層優遇の株などの証券税制を改めるなど大企業や富裕層に応分の負担を求める、そしてさらに、米軍への思いやり予算の廃止などを行う、そうすれば、消費税に頼らない財源確保ができる。具体的数字も挙げて質問いたしました。この点について知事はどのように思われるのか、私のこういった一番中心的な質問に対してお答えがありませんでした。これについて明確に答えていただきたいと思います。
それから、子供の医療費の無料化年齢の引き上げですが、私は医療機関への受診ができない事例をいっぱい聞いております。家庭の収入の違いで、命と健康に差がつく、これは絶対に許されないものなのです。だからこそ、中学卒業までの子供の医療費無料化、これを県の責任でやるべきではないか、こうお尋ねをしています。
先ほど知事の答弁の中で、中学卒業までであれば八億八千五百万円、これだけのお金があればできるということでございました。しかし、恒常的なこういった予算をつけるというのは難しいというお話なのですけれども、先ほど私も申し上げましたが、三十年度で四十億円以上の黒字になっているのであれば、本当に誰の立場で政治をするのか、格差と貧困を本当になくすということであれば、こうした点にこそ予算をつけるべきだと、こう思ってお尋ねを再度したいと思います。
三点目は、平和憲法を生かした教科書採択を求める要請書、これは一万八千人の署名を添えて提出されました。教育長の答弁は、県民の声を本当に受けとめた答弁とは到底思えません。
教育長、公正な教科書とは何ですか。それは、私は平和憲法を生かした教科書ではないかというふうに思っています。そういう立場で、本当にこの要請書というのを真摯に受けとめて、そしてもう一度答弁をしていただきたい、このことを強く求めまして、再質問を終わりたいと思います。(拍手、降壇)
◯副議長(西川昭吾君)再質問に対する理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)樫議員の再質問にお答えいたします。
税制につきましての重ねてのお尋ねがございましたけれども、先ほども申し上げましたとおり、人口減少、少子高齢化が進む中で、諸課題に対応していくためにバランスのとれた安定した税収入の確保、成長の好循環による税収の拡大を図るということが重要であろうと考えており、こうした考え方のもとに消費税につきましては現在の国と地方の危機的財政状況、社会保障の充実等の観点から、避けて通れないものと考えております。
二番目の乳幼児医療費の点につきまして、受療環境等についても御指摘がございましたけれども、この診療自体につきましては、各市町の判断において年齢が引き上げられていることによって、そうした問題に対処されているわけでありまして、いわゆる財源の問題になろうかと思いますけれども、この問題につきましては、市町の負担を県の負担にいわば転嫁する形に結果的になるわけでございまして、そうした点については先ほどもお答え申し上げましたとおり、県としてはそうした財政状況にもなく、また、いろいろないわゆる地単(地方単独事業)カットのペナルティー等の問題につきましては、国に対して県も要望しておりますけれども、こうした乳幼児医療の問題につきまして、県として制度を設けて、その制度につきまして、いわゆる基金につきまして市町からも評価をいただいているところでございますので、そうした方向でまた進めてまいれればと考えているところでございます。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)工代教育長。
(教育長工代祐司君登壇)
◯教育長(工代祐司君)樫議員の再度の御質問にお答えいたします。
香川の教育をよくする県民会議からの要請書はいただきました。私も目を通しております。私どもとしては、外部からのあらゆる働きかけに左右されることなく、採択権者の判断と責任において、透明性にも留意しながら、公正かつ適正に教科書採択を行ってまいりたいと考えております。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)一般質問を続行いたします。
谷久浩一君。
(谷久浩一君登壇、拍手)
◯谷久浩一君 議長のお許しを得ましたので、早速質問に入らせていただきます。
質問の一点目は、自動運転社会への対応についてであります。
先月の四国新聞の記事によりますと、内閣府が全国の六十歳以上の男女を対象に実施した調査において、六十歳から六十四歳までの七八・八%、八十歳以上でも二六・四%が車を運転しているとのことでありました。地域別に見ますと、東京二十三区や政令指定都市では五〇・〇%の人が外出時に「ほとんど毎日」運転をすると回答したのに対し、人口十万人未満の市で七二・九%、町村では七五・五%と都市部よりも小規模自治体において高くなっています。電車やバスなど公共交通機関が限られる地域では、自動車は生活の足として欠かせないものとなっていることが改めて裏づけられた形です。
そんな中、三月十八日、十九日に、私の地元小豆島において、自動運転の車を公道で走らせる本県では初めての実験が、香川大学、群馬大学、明治大学の合同で実施されました。さらに先月五日には、その公道実験の結果などを報告するシンポジウムが東京・神田駿河台の明治大学で開かれたと聞いています。この実験は、高齢化により運転免許証の返納率が高まる中、島内を運行する路線バスもドライバーの不足、高齢化の課題を抱えており、自動運転バスなどの需要が小豆島で高くなることを想定して実施されたものと伺っています。自動運転の実現は、高齢者の日常生活の足の確保、交通事故の防止といった課題の解消に向け、大きな効果が期待されることから、早期の実現が望まれるところであります。
一方、五月二十八日には、改正道路交通法が衆議院で可決されました。これは、自動運転システムの使用に関する規定が新設されたものであります。
自動運転は、技術レベルによりレベル一からレベル五までの五段階に分かれています。ハンドル、アクセル、ブレーキ操作のいずれかが自動となるレベル一、いずれも自動となるレベル二、条件つきで全ての動作を自動化し、緊急時は人間が操作するレベル三、交通量が少ない過疎地など一定の環境下に限定して無人運転するレベル四、人間が一切かかわらず、全ての運転を自動化するレベル五まであります。
国が策定した官民ITS構想・ロードマップ二〇一九では、例えば高速道路上での自動運転については、二〇二〇年を目途にレベル三、その後二〇二五年を目途にレベル四の導入を目標としています。このレベル三の実用化に向け、自動運転システムを使うドライバーが守るべきルールを新設したのが今回の道路交通法改正であります。レベル三は、道路の種類や車の速度など、一定の条件下でシステムが運転を担うものですが、緊急時にはドライバーが直ちに運転を引き継ぐことを条件に、テレビ視聴やスマホ操作を認める等のルールが設けられました。
このように、大学での研究や国における規定整備が着々と進んできていますが、県としての取り組みはどうでしょうか。昨年二月議会の代表質問において、我が会派の黒島議員から、自動運転社会を見据えた県の取り組みについて知事に質問をいたしました。知事からは、実証実験について、市町と連携して取り組んでいくこと、実証実験等で得られた知見や自動運転を支援する道路と車両の連携技術などについて研究していくことなど、自動運転社会の到来を視野に入れて、県としての対応や環境づくりに取り組んでいく旨の答弁をいただきました。それから一年余りたち、この間、小豆島での実証実験や国会での議論を通じ、自動運転を取り巻く状況は大きく進展してきていると感じます。自動運転が夢の技術と言われたのは、もはや遠い過去の話であります。その実現はすぐ目の前に迫っており、県としても変革への対応が求められると考えます。
そこで、自動運転社会の到来に向け、県としてこれまでどのような取り組みを行ってきたのか、また、現在どのような課題を認識し、その解決に向けどのように対応していくのか、知事にお伺いをいたします。
質問の二点目は、災害発生時の情報収集についてであります。
昨日、南九州、愛媛において、豪雨により被災された皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、新たな災害が発生しないこと、また、一刻も早い復旧を心からお祈りを申し上げます。
改めて申し上げるまでもなく、我が国は地震多発国であります。今後三十年間に七〇%ないし八〇%の確率で発生すると言われている南海トラフ地震は、最悪の場合、約三十二万三千人もの死者が出ると想定されています。巨大地震を初めとする災害は、いつ起こるかわからないだけでなく、我々が予想できなかった事態が生じることもあり、どんなに備えを充実させても、一〇〇%万全ということはないのであります。
スマートフォンの急速な普及により、災害発生時の情報収集手段は大きく変化してきています。総務省の調査によれば、発災時に情報収集に利用した手段として携帯電話を挙げたのは、二〇一一年の東日本大震災では一三%だったのに対し、二〇一六年の熊本地震では六〇%を超えています。携帯電話やスマートフォンを持っていれば、いつでも接続できるインターネットが、被災時にも多くの人が頼る情報収集手段となっています。
しかし、日常的に利用している手段や被災時に利用しようと思っている手段が実際に災害が発生した際に使えるとは限りません。昨年九月六日未明に発生した北海道胆振東部地震では、地震後に北海道のほぼ全域での大規模停電、いわゆるブラックアウトが起こったことで、日本中に大きな衝撃を与えました。電気は、その性質上ためておくことができないため、刻々と変動する電力消費量に合わせて供給する電力量を常に一致させ続ける必要があります。ブラックアウトが起こった原因は、この需要と供給のバランスが崩れたことにあります。北海道内で最大の火力発電所、苫東厚真火力発電所が停止し、周波数を維持できなくなった結果、道内二百九十五万戸への電力供給が停止するに至ったとされています。
電力業界においては、希頻度リスクへの対応を含めた供給力確保策が検討されていますが、しかし、そうした対応策を講じたとしても、ブラックアウトの可能性をゼロにすることは困難であります。また、ブラックアウトまで至らなくとも、停電が発生したり、通信網が切断されたりすれば、インターネットのみならず、テレビや電話などからの情報収集も著しい制限を受けることになります。