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参考人意見
◯間野参考人 おはようございます。それでは、30分という短い時間ですけれども、もしも皆様に参考にしていただければ大変ありがたく存じます。
スポーツの
成長産業化、これからの
スマート・ベニューということで、お話しさせていただきます。
ことし、2019年は、
ラグビーワールドカップがやってまいります。この
ラグビーワールドカップというのは、世界3大
スポーツイベントの第3位でありまして、夏の
オリンピックの前年に必ず、4年に1回開催されていますが、
オリンピックと連続して開催されるのが同一国というのは初めてであります。
オリンピック・パラリンピックは世界第2位の
スポーツイベントで、この3位と2位が連続して来る。そして、
スポーツの世界最高の祭典、ワールドマスターズゲームズも4年に1回、夏の
オリンピックの翌年に開催されるのですが、同一国で開催されるのは世界で初めてなのです。偶然、この招致活動したものが3つ並びまして、これを
ゴールデン・スポーツイヤーズと名づけたわけですけれども、これを契機に、終わった後にもう1段
暮らし向きがよくなるような
レガシーをどうつくるのかというのが課題だと考えております。
レガシーというのは、もともと英語では遺産とか先人の遺物という意味があるのですけれども、語源はラテン語のレガタスでありまして、
ローマ教皇の特使が、
ヨーロッパ各地で
キリスト教を普及する際に教会を建てて聖書を置いてミサをするのですけれども、当初なかなか
キリスト教が普及しなかった。しかし、当時最先端であったローマの技術や文化や知識を同時に伝えることによって、
ローマ教皇の特使が去った後でも、さらに
暮らし向きがよくなったということが語源でございます。
つまり、
ゴールデン・スポーツイヤーズというのは、スタートであって通過点であってゴールではなくて、それが終わった後にさらに何か
暮らし向きをよくする、そういう
レガシーをつくり、残す必要があるというふうに考えております。実際、
国際オリンピック委員会──IOCも、
オリンピックは単なる
メガスポーツイベントではなくて、よりよい
レガシーを
開催都市並びに開催国に残すことを推進するということを、IOCの憲法とも言える
オリンピック憲章にうたっています。
実際、日本では、1964年に
東京大会、夏の
オリンピックをやって、その後、冬を2回やっています。例えば
東京大会であれば、東海道新幹線、首都高速ができた、無形の
レガシーとしてはNHKが衛星放送の技術を開発したり、警備員が足りないので警備会社ができたり、あるいはファミリーレストラン、ほかにも選手村のお風呂をつくるときに左官屋さんが間に合わないというので、プラスチックを成形して
ユニットバスをつくるという新しいビジネスが生まれたりしています。ほかにも、1972年の札幌大会では、地下鉄、地下街、
道央自動車道、
高度経済成長と相まって、スキー、スケートが国民に普及、浸透した。1998年の長野大会でも、新幹線や高速道路、無形なものとしては一校一国運動といいまして、小中学校で特定の国を定めて、その国の歴史と文化を勉強して応援するということが行われました。いわゆる
国際理解教育のはしりです。これは非常にすばらしい取り組みだということで、その後の
オリンピックでは、必ず
開催都市に引き継がれているものであります。
では、この2019~2021年の
ゴールデン・スポーツイヤーズにどんな
レガシーが考えられるか。リニアモーターカーも間に合いませんし、水素社会も間に合いません。しかし、多分、いろいろな新しいことが生み出されると思います。その一つが、
スポーツの
成長産業化であると、政府では考えております。
2015年に
スポーツ庁ができたこともありまして、
スポーツ未来改革会議というところで
スポーツの
成長産業化を平成28年から議論してきております。その中で、一つ、
スポーツ市場規模の拡大ということで、現在5.5兆円のものを2025年までに15.2兆円まで引き上げるという数値目標が出されました。なぜかといいますと、例えば一つのマクロの理由としましては、EU諸国と日本の
スポーツ産業を比較した場合、全産業に占める
スポーツ産業の割合がEU平均よりも日本ははるかに低くて、下から数えたほうが早い。さらに、
スポーツ産業で雇用している人数を見ますと、日本は
最低レベルである。つまり、逆に言うと、伸び代があると判断したわけです。まだ未着手、未開拓な領域だということであります。
では、この5.5兆円を15.2兆円にしていく、その内訳を見ますと、まず、1丁目1番地で議論をしたのが
スタジアム・
アリーナ、
スタジアムを核とした
まちづくりです。現在の5.5兆円の中で、この
スタジアム・
アリーナが2.1兆円で一番割合が高い。ここを最初にキックして、
スポーツの
成長産業化を回していこうということを政府では議論いたしました。
実際、総理を本部長とする
日本経済再生本部が立てた
日本再興戦略は、日本の最上位計画でありまして、毎年ローリングされています。この2016年版に、初めて、新たな
有望成長市場の創出として、
スポーツの
成長産業化が挙げられました。それまでは
スポーツのスの字も出てきたことはなかったのですけれども、今言いましたように
ゴールデン・スポーツイヤーズがやってくる。そして、2015年に
スポーツ庁ができて新しい
政策づくりが始まった。加えて、諸外国と比べておくれている、つまり、それぐらい伸び代がある。とりわけ
スポーツ産業に関して言いますと、
ドメスティック産業です。それによって、例えば外資だとか国際的な知的財産といった、いろいろな問題がなくて、例えば広島に新しい
スタジアムをつくったとしても、そこに何か外資が入ってくるわけではないのです。純粋に内需として成長していける可能性があるということで着目しています。
その中でも、まず、
スタジアム・
アリーナ改革です。これまでの
コストセンター──税金を支出するものから、
プロフィット──稼げる施設に変えていこうということが最初にうたわれています。その中で、
スマート・ベニューの考え方を取り入れた多
機能型施設を整備していこうということです。ベニューというのは、英語で人が集まる場所という意味です。スマート・
スタジアム・
アリーナでもよかったのですけれども、
スタジアム・
アリーナを
ワンワードで置きかえて、ベニューと表現しております。
この
スマート・ベニューそのものは、
日本政策投資銀行の中で研究会がつくられて生まれた言葉であるのですけれども、これからの人口減少・
少子高齢化社会の中で
コンパクトシティーを目指していく、その中核に多機能・複合型の
スポーツ施設を置いて、
まちづくりにおけるさまざまな悩み、課題を解決していく施設にしていく。これが多分、日本の
スポーツの
成長産業化につながるとともに、日本のさまざまな諸課題の解決にもつながる。
これまで、ともすると
スポーツ施設は、少し離れた、やや不便な場所にありました。しかし、2011年以降、その考え方が少しずつ変わってきています。というのは、日本におきまして、さまざまな自然災害があって、非常時には体育館やさまざまな
スポーツ施設が避難施設になり得る。体育館があるから避難ができた、あるいは、グラウンドがあるから仮設住宅が建てられたといったことがあって、余り離れた場所につくると非常時に有効に使えないのではないか、なるべく町なかにつくっていこうという動きが出てきております。
では、この
スマート・ベニューなるものに、欧米ではどのような事例があるのか、お示ししたいと思います。
多機能・複合型と言いましたが、多機能というのは、同じ場所でいろいろなことができるということです。これは
ポーランドの首都、ワルシャワにあります
国立競技場の例ですけれども、2011年に5万8,000人を収容する
スタジアムが、
国別サッカー大会であるユーロを2012年に開催するための会場としてつくられたのですが、そこでは
バレーボールの
世界選手権もやるし、
オートバイのレースもやるし、何と、インドアで
ウインドサーフィンの試合もやる。普通、これは信じられませんね。どんなからくりがあるか、ちょっと
参考映像をごらんください。
(動画を再生)
これは模型でありますけれども、
ポーランドの国旗にちなんで赤と白、外壁が全部
LEDパネルでつくられているのです。これは
サッカーをやっているときの映像です。上に
センタービジョンがあります。これは
音楽コンサートをやっているときのものでありまして、ロビーとか、
ビジネスラウンジとか、ファンクラブの
ラウンジとか、こういったいわゆる
VIPルームも非常に充実しています。ここは、
音楽コンサートもやりますので、屋根が必要だということで、開閉式の珍しい、センターから周りに広がっていく幕
屋根構造をとっています。屋根をつけることによって、多機能化できるということです。
それで、なぜ
ウインドサーフィンもできるのかというと、床に理由がありまして、これがそうなのですけれども、周りが灰色に見えていますが、実はここは全て
コンクリートのスラブで打ちっぱなしになっています。
サッカーをやるときは、天然芝のビッグロールを持ってきて、それを引いて養生して
サッカーをやる。
バレーボールをやるときは
バレーボールのコートを置く。
オートバイのレースのときは
オートバイの
レースコースを置いて、
ウインドサーフィンをやるときは柵をして水を張って、片側から巨大な扇風機で風を起こすのです。つまり、
スタジアムイコール芝と思い込んでいますけれども、こうすることによって多機能化ができているという例であります。
(動画を再生)
ほかにも、これは、南部のアトランタにあります、アメリカで今最も新しい
スタジアムです。ここでも、当然、屋根が必要だということで、
通常スライド型が多いのですけれども、ここはカメラの
シャッター型の開閉式の屋根を使っています。この
シャッター型の屋根は、もともと上海の
テニスセンターで日本人が設計したものを採用したものです。こんなことをすることによって、
スポーツ以外に、
コンサートやその他のことでも使える。
(動画を再生)
ほかにも、これは、ドイツの
可動式屋根と、
スライド式の芝のピッチです。これは、
コンクリートの上に芝が
スライド式に入ってくるのです。屋根も開閉式にしておりまして、これでずっと押していくような
スタジアムもあります。
今度は、複合型ということで、
スポーツ以外に、
スタンド下やその他にさまざまなものを一緒に加えていくものを紹介します。
例えば、これはリコー
アリーナというイングランド・コベントリーの
アリーナでありますけれども、もともと
サッカースタジアムでしたが、今は
ラグビーチームによる運営がされています。収入のうちラグビーは3分の1でありまして、それ以外にテナント、
スタジアムスポンサー、カンファレンス、ホテル、エンターテインメント、
コンサートなど、多様な収入源があります。さまざまなホールに加えて、
ラウンジやスイートルーム、ホテル、レストラン、そして、カジノ──イギリスで一番床面積の広いカジノは、このピッチの下にあります。
(動画を再生)
これは、スイスの首都、ベルンの例でありますけれども、ここも
スタジアムだけでなくて、教育やショッピングやいろいろなものが複合化しています。スイスは日本よりも気候が厳しいので、実は
スイスリーグは人口芝で行っています。その結果、さまざまな、ここにあるような効果が出てきております。
(動画を再生)
ちょっとこれは、違和感を感じませんか。
スタジアムで騒々しいところに高齢者の賃貸住宅が107戸あって、既に満室だというのですが、別に
サッカー好きのお年寄りがここにいるのではないのです。居住者用の特別な
ラウンジがあって、そこから観戦でき、試合がある日に何が起こるかというと、子供や孫がやってくるのです。もちろん便利な場所にあるということもあるけれども、日本よりも核家族化が進んでいますから、それが嬉しいのです。つまり、意外と
スタジアムとミスマッチしそうなものでも、組み合わせによっては、町なかで複合化していろいろな効果が得られるという例であります。
ほかにも、メキシコシティーでもデパートや小売店、映画館、レストラン、フィットネスジムなどと複合化している例が出たり、これは、野球場ですけれども、メジャーリーグのアトランタブレーブスの本拠地で、レストラン、ショップ、ホテル、シアター以外にもオフィスやマンションなど、エリア一帯で開発している例が出てきています。つまり、点ではなくて面──エリアで考え始めているということです。
これは、ヨーロッパ固有のものではなくて、お隣の韓国ソウルでも、2002年ワールドカップのときの
スタジアムでは、既に映画館、ディスカウントストア、売店、
スポーツセンター・サウナ、
スポーツショップ、公共文化施設、食堂、結婚式場なども併設していますので、我々東アジアの文化の中でも、こういうものは決してできないわけではない。さらに言うと、東京ドームがもうあるわけです。これは多機能・複合化の世界最先端の例だと思います。水道橋のとてもいい場所にあって、プロ野球のジャイアンツのホーム
スタジアムなので特殊だと思っていますけれども、日本の風土や歴史や税制や法律の中でも、こういったものができないことはないのです。
政府がこれに注目している理由としては、実は、
スタジアム・
アリーナの新設・建てかえ構想が全国に73件あります。これを、今までのようなただの体育館とか陸上競技場にするのではなくて、もっと稼げる、
プロフィットセンターにしていく。そうすると、今、
スポーツの
成長産業化で名目GDPを600兆円まで100兆円上げようとしていますが、この100兆円のうちの10兆円ぐらいに貢献できるのではないのかと考えているわけです。とりわけ大切なのが民間との連携で、
スポーツ庁の中に官民連携協議会というものをつくりまして、鈴木大地長官を会長として協議を進めています。既に、
スタジアム・
アリーナの改革ガイドブックなるものを出しています。
我々も、通常は、都市公園法の制約を受けて、今言った多機能・複合化ができないと考えてきたのですが、今般、国土交通省も含めて法律を点検したところ、法律に瑕疵はなく、むしろ条例に問題がある。例えば、公園の中で花火やたき火は危ないから禁止、でも、限定列挙するのが難しいから裸火禁止というと、厨房でも火が使えなくなったり、安全なことに配慮し過ぎたために自由度を失ってきているということがわかってきています。
そして、さらに、民間資金をどう活用していくのかということについても、プロセスガイドというものを作成して提案しています。
今見ていただいたものをそのままやっても、ただヨーロッパ、アメリカに追いつくだけでありますので、追い越すには、やはり、日本が持っている最先端のIT技術を使ってはどうか。NTTやソニーやNHKなど、世界的な企業が今、
ゴールデン・スポーツイヤーズということで、さまざまな技術を
スポーツに向けて使い始めています。
3Dホログラムという立体映像で、鏡なしでも見られるようなものがありますけれども、こんなものがあると、
スタジアムや
アリーナでも全く新しいエンターテインメントができる可能性があります。例えばの映像ですけれども、これは、ある体育館、
アリーナでの3Dホログラムを使った例でございます。
(動画を再生)
子供たちが見ているのですけれども、こういうものが技術的にできる時代になってきていて、ただ単に昔からの
スポーツあるいは
音楽コンサート以外のものにもチャンスが出てきている。
(動画を再生)
ほかにもさまざまな技術がありまして、例えば、富士通がやっている技術は、体操の自動採点というもの。白井健三選手の4回転半ひねりが余りにも早過ぎて、肉眼で採点ができなくなってきている。それで、カメラ、ビデオ、AIによる同時測定を開発されています。2020年の
オリンピックでは、体操競技は恐らく自動採点化されます。国際体操連盟会長の渡邊守成さんは日本人ですけれども、彼の国際連盟の会長選挙の公約が、この自動採点なのです。ここにありますように、わざを見ながら次々と人工知能で自動採点していっている例でございます。
(動画を再生)
ほかにも、障害者
スポーツに関しても、パラリンピックに目が行きがちですが、パラリンピックでは動力は使ってはいけないのですけれども、一般の人たちは義肢装具に今、ロボティクス──動力を使うようになってきています。そういったことを前提とした競技会、スイスで始まったサイバスロンという新しい障害者
スポーツも出てきています。
(動画を再生)
ほかにも、日本の中で新しい
スポーツをつくろうという動きが出てきていまして、例えば、テクノロジー──バーチャルリアリティーやARを前提として、あるいはプロジェクションマッピングなどを使った新しい
スポーツが、東大工学部、慶応大理工学部の先生たちを中心につくられ始めています。これはVRゴーグルをしているところ、これはボッチャのプロジェクションマッピングを使ったもので、新しいものです。
(動画を再生)
一方で、テクノロジーとは対極で、ゆるキャラならぬ、ゆる
スポーツもつくられ始めています。ばかばかしいことなのですけれども、ハンドソープをつけて手をぬるぬるにしてやるハンドボールや、ボールにちょっと特殊な工夫をしまして、ボールを激しく扱うと赤ちゃんのように泣いてしまうもの。これは先進技術を使って舌の動きだけでやるコンピューター上のスカッシュ──スカッチュという名前をつけています。これは音声だけでやるお相撲ですが、お年寄りに人気で、ある会社から商品化されました。こんなものを使った運動会をやろうなどという動きも出てきています。
(動画を再生)
そして、e
スポーツです。日本ではまだまだゲームだと言われていますけれども、世界には1億3,000万人以上のプレーヤーがいます。既にもう100億円を超える大会も出始めています。昨年のアジア大会では公開競技で、2022年のアジア大会では正式競技になりますし、ことしの茨城国体では都道府県別対抗戦が文化行事として行われます。IOCでも既にe
スポーツを競技化するかどうかという検討が始まっているということであります。
(動画を再生)
そして、やはりアーバン
スポーツです。広島県がいち早く手がけましたFISEは、昨年4月6日~4月8日に開催されまして、体操競技をストリート化したパルクール、
スポーツクライミング、BMXなどが行われました。昨年、競技者が31カ国から399人来まして、来場者が8万6,000人あった。本場フランスでは、これは40万人を超えるという話を聞いたこともございます。
これからの
スポーツの
成長産業化の一つの例として
スタジアム・
アリーナを取り上げましたけれども、
スポーツがある日にはCOI──コントラクチュアリー・オブリゲーティッド・インカム、固定収入を最大化し、
スポーツがない日のほうが実は多いので、施設の多機能・複合化をして、エリアマネジメントにより全体の価値を上げていくことが必要だと考えております。その中でも、さまざまな大義と合意形成プロセスが重要であったり、町なかに一団の敷地を確保するとか、多目的利用可能なサーフェイスを導入していくことなどによって、
スタジアムを核とした
スポーツの
成長産業化が促されるのではないかと思っております。
時間になりました。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
2:
◯北村参考人 北村と申します。よろしくお願いします。
本日はお招きいただきまして、どうもありがとうございます。私どもが今やっている事業を中心に、きょうはお話しさせていただきたいと思います。
まず自己紹介です。広島生まれだということを強調するような自己紹介で恐縮なのですけども、広島生まれ、広島育ちで、修道高校、広島大学医学部を卒業しまして、選んだ診療科が放射線科、放射線診断科という科になります。2000年に起業いたしました。きょうの話の中心ですけれども、遠隔画像診断の会社を起こしまして、2007年から代表を務めております。2015年からは霞クリニックという、検査を中心とするクリニックの院長も兼務しております。
では、まず最初に、弊社の事業内容を簡単にまとめたビデオがありますので、ちょっとごらんください。
(動画を再生)
グーグルとかGCPとかという言葉ばかりで、グーグルの回し者かと思われるようなビデオで恐縮なのですけれども、実は弊社はグーグルのテクニカル部門のパートナー企業に認定されまして、昨年、サンフランシスコと東京で開催され、サンフランシスコでは2万人~3万人参加したグーグルの基幹イベントである会議に、日本からは弊社を含め二つの企業だけ招致されました。東京で開催された会議でグーグルが弊社の事業を紹介する目的でつくってくれたビデオが簡単にまとめてあったので、御紹介しました。
では、これからもう少し詳しいところを御紹介してまいりたいと思います。
会社概要ですが、名前の由来は、メディカルネットワークシステムズの頭文字をとったエムネスになります。事業内容等はこれから御説明申し上げます。
きょうの話では付随になるのですけども、クリニックでは、広島大学病院の近くで、MRI2台とCTを1台置いて、大学病院あるいは地域の開業医から依頼を受けて、検査をしてレポートをつけてお返しするという仕事をしております。
ビデオの中にもありましたが、外観です。1階、2階がクリニック、3階に白衣を着ない医師が勤めています。
改めて、画像診断医とは、余り聞きなれない診療科の医師だと思います。X線、CT、MRIといった検査の画像を見て、病気があるかないか、あるいは、病気があったときにそれが良性であるか悪性であるかといったところを読み解く医師の集団です。当然のことながら、内科、外科の先生にも画像を見るのが得意な方がいらっしゃいますので、その先生方も画像診断医と呼んでおかしくはないのですけれども、最近では、専ら画像診断に専念する医師の集団が放射線診断科、放射線診断専門医ということになります。通常、治療をしたりして患者さんとお目にかかることは少ない診療科です。ですから、右のほうに書いてありますが、縁の下の力持ちとか、黒子のような存在であります。
この画像診断医が、実は、日本には圧倒的に足りない。これが1番の問題点であります。ちょっとわかりにくいスライドになっていますが、これは、OECD加盟国の分布を示しているグラフで、横軸が人口100万人当たりのCT、MRIの台数、縦軸が100万人当たりの放射線診断医の数です。日本は、圧倒的にスキャナー装置はたくさん入っていますけれども、放射線科医の数は圧倒的に少ない。1台当たりの放射線科医の数は、ある統計によると0.2人、ブービー賞である韓国の5分の1ぐらいしかいない。広島県も漏れることなくといったところになります。
アメリカと最もよく比較されるので、アメリカだけをとった対比ですけれども、CTの台数で言いますと、日本には約2倍ありますが、アメリカを1とした場合、放射線診断医の数は0.28になっています。
そういう状況下、どのように今、画像診断が行われているかというと、1番左ですが、放射線診断医がいる施設は、放射線診断医が見ています。いないところは、先ほど言いましたように、内科、外科、整形外科の先生等々が画像をごらんになっている。あるいは、外部に委託する。読影というのは画像を読み解くことですけれども、これがまさに遠隔画像診断です。
言葉としては、最近、広まってきているのですけれども、実は、弊社の起業時は、フイルムを郵送してもらって、あるいは、私が医療機関に出向いて読影をしていました。これを圧倒的に便利にしたのがIT革命と言われるものだと思います。装置そのものから出る画像が、以前のフイルムをかけて見るところからモニターで見られるようになったことが一つ、それと、インターネットの普及、中でも光ファイバーが広まったことによって、どこでも遠隔画像診断ができるようになったということです。
ビデオの中にもありましたが、もともと私は、少し古いデータですが、広島県は山間部、島嶼部が多く、全国で2番目に無医地区が多いところで、その役に立てないかといったところで起業しました。フイルムで見始めたのですけれども、いざやってみると、山間部、島嶼部もそうなのですが、実は、都市部でも診断医が足りない。ですから、広島市の結構大きな病院からの契約もいただいております。これまで広島県内を中心に契約をしてきたのですが、きょう御説明するように、クラウドでデータを管理できるようになって、全国あるいは世界中どこでも画像診断できるという状況になってきております。
エムネスとはどういう会社かというと、画像診断をするのが根幹であります。常勤医──会社勤めの医師が11名、これは手前みそですけれども、全国最多のセンターになります。起業時は、遠隔画像診断センターは全国でも5~6つだったのですが、現在は70~80あると言われています。その中で、常勤医の数は1番で、かつ、今、非常勤医もこのぐらい抱えております。
もう一つ、弊社の根幹は、画像を見るために必要なツールを自社で開発し、提供している。これが、冒頭ありました、グーグルクラウドを使ったシステムということになります。医療機関で撮影された画像をクラウド上にためて、それを見る。見る画像がたくさんあって、1枚1枚開いていくようなことをしていると、本当に時間が足りませんので、ソフトウエアのようなものをつくりました。これも動画でお示しします。
(動画を再生)
今のは、画像枚数としては決して多くないのです。何百枚、多いときには2,000~3,000枚の画像を見ながら、我々は診断していきます。これを、クラウドがないときは、ローカルで、病院の中のシステムで動かしました。これを遠隔でやろうとすると本当に大変だったのですが、今のIT技術の進歩で可能になったというわけです。このシステムをルックレックと名づけて、いろいろ展開しています。
特徴は、グーグルですから、パブリックのクラウド上にあるということ。この最大の利点は、世界中のどこからでも見られるということになると思います。何がすごいかというと、先ほど言いましたように、従来の方法ですと、病院の中あるいは先生が使われるパソコンの中に独自にソフトウエアをインストールする必要がある。当然、パソコンの機器の更新のタイミングで、医療機関はまた別途費用がかかってくるのですけれども、クラウドを用いると、半永久的に、インターネット環境と、弊社の場合であればグーグルアカウントさえあれば使えるというところです。いつでもどこでもというところです。
最初に写真をお見せしたのですけれども、弊社の読影医の半数以上が女性です。今まさに働き方改革と言われていますが、在宅で、自宅で仕事をしている女性が半数おります。従来はVPNを組んで大変だったのですけれども、クラウドを用いることで簡単にできるようになりました。
当然、皆さんが1番心配されるGAFAの問題等もあります。グーグルは大丈夫なのかといったところです。ただ、我々がずっとやってきまして、むしろ、GAFAこそセキュリティーに1番気を使って、力もお金も使っているのではないかと思います。アメリカ等のいろいろな基準もクリアされていますし、医療というと壁を持たれがちですが、何より皆さん御自身が、日々の生活の中で、多くの方がGメールなどを使っていらっしゃいます。当然、ここに準拠して、我々もシステムを構築、運用しております。
このスライドは、従来のオンプレミスとクラウドとの比較です。いろいろなところで言われておりますので、あえてここで細かいところまでは述べませんが、一つ言わせてもらうならば、広島県もそうですし、昨日の地震等もそうですが、昨今、10年に一度、100年に一度といった自然災害が毎年のようにどこかで起こっています。病院が流されたりつかったり倒壊したりしたとき、データはなくなります。病院も困るでしょうけれども、1番困って不幸なのは患者さんです。そういった自然災害に対するというところ一つをとっても、クラウドのメリットはあるのではないかと思います。
もう一つは、AIです。まさに我々の業界の、放射線診断医が少ないといったところを補うための一つの手法としてAIがあると思うのですが、AIを開発していくには、教師データが必要となります。日本は医療大国、データ大国と言われていますが、オンプレミスでは病院ごとにデータがあって、残念ながら分散しているのです。これを1カ所で管理しようとすると、やはりクラウドのほうが大いにメリットがあるといったところで、弊社は3年ほど前から数社あるいは大学の研究機関等と共同研究、開発をして、最初に御紹介した霞クリニックのほうで、実験的に、日々AIを用いております。
その中の一つ、東京大学発ベンチャーのエルピクセルという会社は、画像診断領域では今、日本の中では最先端を走っている会社の一つです。早くから共同研究契約を結びまして、ごらんいただいた脳動脈瘤の診断、あるいは、後で御説明します乳腺とか、整形外科領域の半月板など、三つ、四つの分野で今、試験的に使っています。もともと私はAIについてはどちらかというと批判的な立場で、相手を非難するのであればそこを知らないといけないということでAIにチャレンジしたのですが、今ではもう、完膚なきまで打ちのめされたという感じで、AIに助けてもらっています。
例を一つ、これも動画でお示しします。
(動画を再生)
AIは、開発するにはたくさんのデータが要ると言われてきましたし、言われています。けれども、動脈瘤のAIは、今、8割5分から9割程度の指摘率、感度があります。これをつくるのに用いたデータは、500~600例です。従来言われていた何万、何十万というデータは必要としていません。何が大切かと技術者に聞くと、いかに正確な教師データを用いるかといったところのようです。単純に言いますと、画像だけが何十万あってもだめで、今ここでお示しした、正確な丸の位置、あるいはその大きさをAIに覚え込ませることができれば、より少ない症例でもAIを開発できる。ただ、医師は忙しく数が少ない中で、AIをつくるためだけに専念できる状況にありません。ですので、当社はこれを開発して、診断する過程でAIに助けてもらいながら、かつ、AIもブラッシュアップして、さらに精度を高めていくシステムを、今、動脈瘤だけでなく、複数のアルゴリズム作成にチャレンジしています。
もう一つ、簡単に御紹介しますと、社会的に大きな問題になっている乳がんです。マンモグラフィーあるいはエコー──超音波で検診はされますが、手術をする前に最近ではMRIを使って、造影剤を入れて、より詳しく検査されるのが一般的になってきています。乳腺を上下に20cmと仮定しますと、MRIは1mmの幅で画像が撮れますから、200枚撮れます。この200枚の画像を、そこに静脈に造影剤という薬を入れて、入っていく様子を経時的に撮っていくのです。左側にあるのがそうなのですけれども、入り始め、中間相、最後というふうに撮って、結局、800枚あるのです。これを我々は常に見ていかないといけない。人間ですから、やはりどうしても見落とし、見逃しが避けられません。
そこで、今開発中のAIですと、右のほうにお示ししていますが、ちょっと専門的になり過ぎるのですけれども、瞬時に病気がある部位だけでなくて、造影剤の入り方を見て、グレード1~5までの悪性度のクラス分け──世界的にしようという流れになってきていて、5になるほど悪性度が高いのですが、そこまでもやってくれる、かなり精度の高いものができつつあります。今、乳がんだけでなく肺がん等々も、グーグルのブレーンチームとも一緒になって開発しているところです。
以上のように、エムネスというのは、AIを気軽に簡単に利用できる、クラウド上のプラットホームを使って遠隔画像診断するということを日々やっているわけですけれども、ここで導入事例を二つほど御紹介したいと思います。
一つは、もしかしたら御存じの方もいらっしゃるかもしれません。1年少し前に東京銀座にメディカルチェックスタジオというクリニックがオープンしました。これは、脳ドックを専門とするクリニックで、マスコミでもかなり取り上げられているのですけれども、MRI2台を置いて、売りは、早くて安くて質が高いというところです。ちょっと下世話な話になりますが、2万円を切る価格で脳ドックをやっておられ、来院されてから病院を出るまでの時間は、最短で15分です。予約から結果配信まで全てウエブ上で完結するようなシステムになっております。これを可能にしているのが実は裏方で、先ほど来お見せしておりますルックレックを用いて診断するということです。
大事なのは質の部分です。なぜ質が担保できているかというと、ここに書いていますように、最初に私のような放射線診断医が読影します。脳ドックですから、脳外科医が2番目に読影します。最後に院長先生が確認する。これは、何度も言って恐縮ですけれども、クラウド上にデータがあるから、どこでも見られるということです。
ここのすごいところは、1日50人から、多いときで80~90人の検査をして、既に1年少したちますけれども、1万5,000人やっています。これだけ読むとなると、いかに遠隔でするとしても人が必要なのです。最初にお示ししたエムネスの非常勤医がふえています理由は、こういったところにあります。
このクラウドシステムができる前、まだインフラが整っていない状況では、弊社は、広島県に根差した、広島県の画像診断ということでやってきました。けれども、このシステムができ上がりまして、一気に非常勤医もふえています。先ほどもちょっと御紹介しました女性の医師、そして、定年退職された先生方、あるいは海外留学中の先生も既に4名ほど、世界で仕事をされています。
残念ながら、医療の世界も、患者の皆さんにとって本当に申しわけないのですけれども、縦割りです。横のつながりがありませんでした。やって初めて私も感じたのですけれども、脳外科の先生方との協力というのがなかなかなかった。これが可能になったというところで、現在は、脳外科だけでなく、乳腺外科であったり整形外科など、さまざまな診療科の先生と画像、クラウドをキーワードに、横のつながりをつくっていこうとしております。
もう一つ御紹介するところは、広島県としてJICAから請け負っていただいているプロジェクトで、当社も法人会員になっているNPO法人総合遠隔医療支援機構が昨年から3年間のプロジェクトを承認された、モンゴルの医療支援であります。病理診断と放射線診断でモンゴルの先生方の補助、支援をしようというプロジェクトで、昨年、お互いに医師の行き来があり、この1月に理事長であります井内康輝先生が現地に行かれて、弊社の技術者と一緒に装置を設置してまいりました。それで、モンゴルの支援が始まりました。
本当に、お互いに、全世界どこでもできるのがグーグルとくっついているメリットであります。現在、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、ネパールとの話が同時に進んできています。実現までは時間がかかるところもあると思うのですけれども、現状では、日本の医療は、まだ進んでいると思います。これを、海外に向けて手助けをするといったスタートを切っています。
これがルックレックのまとめのようなものになるのですが、ルックレックはデータを集めています。右側にあるように、集めたデータを誰がどのように見て、どのように使うかということだけだと思うのです。我々がやっていますのは、遠隔診断──診断依頼を受けて診断することですけれども、病院の立場に立つと、データのバックアップであり、今はバックアップですけれども、本システムにも十分なり得る。カルテの部分は、きょうはあえて触れておりませんが、霞クリニックは3年半ほどの電子カルテ全てをクラウド上で動かしています。延べ3万人以上のデータがあります。このデータが誰のものかという議論は尽きませんが、私どもは、医療機関のものではなく、患者さんのものだという視点で、いつでも患者さんに公開できるように準備をし、そういうアーキテクトでやっております。
ごらんいただきたいものがあります。
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このサービスを、先ほど御紹介した東京のメディカルチェックスタジオにも採用いただいているのですが、あちらの施設は検診です。ですが、霞クリニックでは今週初めから、まさにこのタイミングで、受診された希望者には、検査が終わった後、バーコードリーダーを読んでいただいて結びつけるようにしました。若い方は、100%近く求められます。もう半永久的に御自身でデータを見られる。医師が見ているのと一緒なのです。ですから、転居しようと、出張先、旅行先で病気になっても、このデータがありさえすれば、ちゃんと診ていただくことが可能になりました。
夢の部分も入るのですが、ルックレックが今、目指しているところは、医療データの中で実は一番扱いにくい、データ量が重いものは何かといいますと、画像です。途中ありました、病理データが実は一番重たいのです。既に我々は一番難しかったところに遠隔画像診断というところからアプローチしたがゆえに、クラウド上で管理するものができ上がりました。あとの血液データであったり心電図であったりは、データ量としては画像データよりも軽いです。さまざまなサービスを展開されていますから、そのデータを一元管理すること。今まさにゲノムデータも出てきています。ウエアラブルでバイタルデータもとれます。そういったものを組み合わせることで、1人の個人として、包括的に、AIも利用すれば、さらに精度の高い診断が可能になるだろうといったところで、グーグル社と一緒にやっています。
以上になるのですが、最後に、少し残りの時間をいただいて、せっかくの機会なので、広島に育ちましたし、広島で何かができないかといったところで、先ほど来お話ししています脳ドックを一つ、トピックとしてお話しさせていただければと思います。
昨今、プロドライバー──バス、タクシー、電車の運転手さんが脳血管障害で、残念ながら乗客の皆さんが事故に巻き込まれるといったことがふえています。少し古いデータにはなりますが、このぐらいの数があります。どこから脳ドックを広めていくかというのは非常に難しいところでありますが、国土交通省もこのたびガイドラインにも載せられました。まさに、きょうですか、尾道市民病院で脳ドックを始められたという記事もあります。皆さんもよく御存じのウィラーというバス会社がありますが、メディカルチェックスタジオと提携されて検診をして、我々が診断します。
何が言いたいかというと、日々一番多く診断しているのが広島県の放射線科医であったり脳外科医であったりで、関東圏の診断をしているのです。広島にもたくさんMRIが入っています。診断医もいます。医師のほうのネットワーク、かつ、システム的なところはでき上がっていますので、ソーシャルインパクトボンド──SIB的な発想で、自治体として全国初の脳ドックといったところを御検討いただけると、県民にとっても幸せなのではないでしょうか。ちょっと大それた御提案で恐縮なのですが、以上で私の話を終わらせていただきたいと思います。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)