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2019-02-22 平成30年度予算特別委員会(第2日) 本文
2019-02-22 平成30年度予算特別委員会(第2日) 名簿

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  1. 広島県議会 2019-02-22
    2019-02-22 平成30年度予算特別委員会(第2日) 本文


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    トップページ 検索結果一覧 使い方の説明 (新しいウィンドウで開きます) 平成30年度予算特別委員会(第2日) 本文 2019-02-22 文書・発言の移動 文書 前へ 次へ 発言 前へ 次へ ヒット発言 前へ 次へ 文字サイズ・別画面表示ツール 文字サイズ 大きく 標準 小さく ツール 印刷用ページ(新しいウィンドウで開きます) 別窓表示(新しいウィンドウで開きます) ダウンロード 表ズレ修正 表示形式切り替え 発言の単文・選択・全文表示を切り替え 単文表示 選択表示 全文表示 発言者表示切り替え 全 5 発言 / ヒット 0 発言 すべての発言・ヒット発言表示切り替え すべての発言 ヒット発言 選択表示を実行・チェックの一括変更 選択表示 すべて選択 すべて解除 発言者一覧 選択 1 : ◯間野参考人 選択 2 : ◯北村参考人 選択 3 : ◯岩崎参考人 選択 4 : ◯鳥栖参考人 選択 5 : ◯杉浦参考人発言者の先頭へ 本文 ↓ 最初のヒットへ (全 0 ヒット) 1: 7 会議の概要  (1) 開会  午前10時31分  (2) 記録署名委員の指名        尾 熊 良 一        狭戸尾   浩  (3) 理事会決定事項の報告   1) 総括審査の日程   2) 配席について   3) 発言時間の計測    ア 委員長席及び質問席の残時間表示計により、持ち時間が終了すると、質問席のラ     ンプが点滅する。    イ 原則として、ランプが点滅したときをもって、発言を中止する。    ウ 持ち時間を超過した時間については、理事会に諮って、翌日以降の同一会派の持     ち時間から差し引く。   4) パネルや資料等の使用は、事前に申し出て理事会で了承を得ること。   5) 参考人発言順位  (4) 各常任委員会に調査を依頼した各会計予算の調査結果  (5) 休憩  午前10時33分   (再開に先立ち、委員長が、参考人に対し、挨拶を行った。)  (6) 再開  午前10時35分
     (7) 参考人意見 ◯間野参考人 おはようございます。それでは、30分という短い時間ですけれども、もしも皆様に参考にしていただければ大変ありがたく存じます。  スポーツ成長産業化、これからのスマート・ベニューということで、お話しさせていただきます。  ことし、2019年は、ラグビーワールドカップがやってまいります。このラグビーワールドカップというのは、世界3大スポーツイベントの第3位でありまして、夏のオリンピックの前年に必ず、4年に1回開催されていますが、オリンピックと連続して開催されるのが同一国というのは初めてであります。オリンピック・パラリンピックは世界第2位のスポーツイベントで、この3位と2位が連続して来る。そして、スポーツ世界最高の祭典、ワールドマスターズゲームズも4年に1回、夏のオリンピックの翌年に開催されるのですが、同一国で開催されるのは世界で初めてなのです。偶然、この招致活動したものが3つ並びまして、これをゴールデン・スポーツイヤーズと名づけたわけですけれども、これを契機に、終わった後にもう1段暮らし向きがよくなるようなレガシーをどうつくるのかというのが課題だと考えております。  レガシーというのは、もともと英語では遺産とか先人の遺物という意味があるのですけれども、語源はラテン語のレガタスでありまして、ローマ教皇の特使が、ヨーロッパ各地キリスト教を普及する際に教会を建てて聖書を置いてミサをするのですけれども、当初なかなかキリスト教が普及しなかった。しかし、当時最先端であったローマの技術や文化や知識を同時に伝えることによって、ローマ教皇の特使が去った後でも、さらに暮らし向きがよくなったということが語源でございます。  つまり、ゴールデン・スポーツイヤーズというのは、スタートであって通過点であってゴールではなくて、それが終わった後にさらに何か暮らし向きをよくする、そういうレガシーをつくり、残す必要があるというふうに考えております。実際、国際オリンピック委員会──IOCも、オリンピックは単なるメガスポーツイベントではなくて、よりよいレガシー開催都市並びに開催国に残すことを推進するということを、IOCの憲法とも言えるオリンピック憲章にうたっています。  実際、日本では、1964年に東京大会、夏のオリンピックをやって、その後、冬を2回やっています。例えば東京大会であれば、東海道新幹線、首都高速ができた、無形のレガシーとしてはNHKが衛星放送の技術を開発したり、警備員が足りないので警備会社ができたり、あるいはファミリーレストラン、ほかにも選手村のお風呂をつくるときに左官屋さんが間に合わないというので、プラスチックを成形してユニットバスをつくるという新しいビジネスが生まれたりしています。ほかにも、1972年の札幌大会では、地下鉄、地下街、道央自動車道高度経済成長と相まって、スキー、スケートが国民に普及、浸透した。1998年の長野大会でも、新幹線や高速道路、無形なものとしては一校一国運動といいまして、小中学校で特定の国を定めて、その国の歴史と文化を勉強して応援するということが行われました。いわゆる国際理解教育のはしりです。これは非常にすばらしい取り組みだということで、その後のオリンピックでは、必ず開催都市に引き継がれているものであります。  では、この2019~2021年のゴールデン・スポーツイヤーズにどんなレガシーが考えられるか。リニアモーターカーも間に合いませんし、水素社会も間に合いません。しかし、多分、いろいろな新しいことが生み出されると思います。その一つが、スポーツ成長産業化であると、政府では考えております。  2015年にスポーツ庁ができたこともありまして、スポーツ未来改革会議というところでスポーツ成長産業化を平成28年から議論してきております。その中で、一つ、スポーツ市場規模の拡大ということで、現在5.5兆円のものを2025年までに15.2兆円まで引き上げるという数値目標が出されました。なぜかといいますと、例えば一つのマクロの理由としましては、EU諸国と日本のスポーツ産業を比較した場合、全産業に占めるスポーツ産業の割合がEU平均よりも日本ははるかに低くて、下から数えたほうが早い。さらに、スポーツ産業で雇用している人数を見ますと、日本は最低レベルである。つまり、逆に言うと、伸び代があると判断したわけです。まだ未着手、未開拓な領域だということであります。  では、この5.5兆円を15.2兆円にしていく、その内訳を見ますと、まず、1丁目1番地で議論をしたのがスタジアムアリーナスタジアムを核としたまちづくりです。現在の5.5兆円の中で、このスタジアムアリーナが2.1兆円で一番割合が高い。ここを最初にキックして、スポーツ成長産業化を回していこうということを政府では議論いたしました。  実際、総理を本部長とする日本経済再生本部が立てた日本再興戦略は、日本の最上位計画でありまして、毎年ローリングされています。この2016年版に、初めて、新たな有望成長市場の創出として、スポーツ成長産業化が挙げられました。それまではスポーツのスの字も出てきたことはなかったのですけれども、今言いましたようにゴールデン・スポーツイヤーズがやってくる。そして、2015年にスポーツ庁ができて新しい政策づくりが始まった。加えて、諸外国と比べておくれている、つまり、それぐらい伸び代がある。とりわけスポーツ産業に関して言いますと、ドメスティック産業です。それによって、例えば外資だとか国際的な知的財産といった、いろいろな問題がなくて、例えば広島に新しいスタジアムをつくったとしても、そこに何か外資が入ってくるわけではないのです。純粋に内需として成長していける可能性があるということで着目しています。  その中でも、まず、スタジアムアリーナ改革です。これまでのコストセンター──税金を支出するものから、プロフィット──稼げる施設に変えていこうということが最初にうたわれています。その中で、スマート・ベニューの考え方を取り入れた多機能型施設を整備していこうということです。ベニューというのは、英語で人が集まる場所という意味です。スマート・スタジアムアリーナでもよかったのですけれども、スタジアムアリーナワンワードで置きかえて、ベニューと表現しております。  このスマート・ベニューそのものは、日本政策投資銀行の中で研究会がつくられて生まれた言葉であるのですけれども、これからの人口減少少子高齢化社会の中でコンパクトシティーを目指していく、その中核に多機能・複合型のスポーツ施設を置いて、まちづくりにおけるさまざまな悩み、課題を解決していく施設にしていく。これが多分、日本のスポーツ成長産業化につながるとともに、日本のさまざまな諸課題の解決にもつながる。  これまで、ともするとスポーツ施設は、少し離れた、やや不便な場所にありました。しかし、2011年以降、その考え方が少しずつ変わってきています。というのは、日本におきまして、さまざまな自然災害があって、非常時には体育館やさまざまなスポーツ施設避難施設になり得る。体育館があるから避難ができた、あるいは、グラウンドがあるから仮設住宅が建てられたといったことがあって、余り離れた場所につくると非常時に有効に使えないのではないか、なるべく町なかにつくっていこうという動きが出てきております。  では、このスマート・ベニューなるものに、欧米ではどのような事例があるのか、お示ししたいと思います。  多機能・複合型と言いましたが、多機能というのは、同じ場所でいろいろなことができるということです。これはポーランドの首都、ワルシャワにあります国立競技場の例ですけれども、2011年に5万8,000人を収容するスタジアムが、国別サッカー大会であるユーロを2012年に開催するための会場としてつくられたのですが、そこではバレーボール世界選手権もやるし、オートバイのレースもやるし、何と、インドアでウインドサーフィンの試合もやる。普通、これは信じられませんね。どんなからくりがあるか、ちょっと参考映像をごらんください。   (動画を再生)  これは模型でありますけれども、ポーランドの国旗にちなんで赤と白、外壁が全部LEDパネルでつくられているのです。これはサッカーをやっているときの映像です。上にセンタービジョンがあります。これは音楽コンサートをやっているときのものでありまして、ロビーとか、ビジネスラウンジとか、ファンクラブのラウンジとか、こういったいわゆるVIPルームも非常に充実しています。ここは、音楽コンサートもやりますので、屋根が必要だということで、開閉式の珍しい、センターから周りに広がっていく幕屋根構造をとっています。屋根をつけることによって、多機能化できるということです。  それで、なぜウインドサーフィンもできるのかというと、床に理由がありまして、これがそうなのですけれども、周りが灰色に見えていますが、実はここは全てコンクリートのスラブで打ちっぱなしになっています。サッカーをやるときは、天然芝のビッグロールを持ってきて、それを引いて養生してサッカーをやる。バレーボールをやるときはバレーボールのコートを置く。オートバイのレースのときはオートバイレースコースを置いて、ウインドサーフィンをやるときは柵をして水を張って、片側から巨大な扇風機で風を起こすのです。つまり、スタジアムイコール芝と思い込んでいますけれども、こうすることによって多機能化ができているという例であります。   (動画を再生)  ほかにも、これは、南部のアトランタにあります、アメリカで今最も新しいスタジアムです。ここでも、当然、屋根が必要だということで、通常スライド型が多いのですけれども、ここはカメラのシャッター型の開閉式の屋根を使っています。このシャッター型の屋根は、もともと上海のテニスセンターで日本人が設計したものを採用したものです。こんなことをすることによって、スポーツ以外に、コンサートやその他のことでも使える。   (動画を再生)  ほかにも、これは、ドイツの可動式屋根と、スライド式の芝のピッチです。これは、コンクリートの上に芝がスライド式に入ってくるのです。屋根も開閉式にしておりまして、これでずっと押していくようなスタジアムもあります。  今度は、複合型ということで、スポーツ以外に、スタンド下やその他にさまざまなものを一緒に加えていくものを紹介します。  例えば、これはリコーアリーナというイングランド・コベントリーのアリーナでありますけれども、もともとサッカースタジアムでしたが、今はラグビーチームによる運営がされています。収入のうちラグビーは3分の1でありまして、それ以外にテナント、スタジアムスポンサー、カンファレンス、ホテル、エンターテインメント、コンサートなど、多様な収入源があります。さまざまなホールに加えて、ラウンジやスイートルーム、ホテル、レストラン、そして、カジノ──イギリスで一番床面積の広いカジノは、このピッチの下にあります。   (動画を再生)  これは、スイスの首都、ベルンの例でありますけれども、ここもスタジアムだけでなくて、教育やショッピングやいろいろなものが複合化しています。スイスは日本よりも気候が厳しいので、実はスイスリーグは人口芝で行っています。その結果、さまざまな、ここにあるような効果が出てきております。   (動画を再生)  ちょっとこれは、違和感を感じませんか。スタジアムで騒々しいところに高齢者の賃貸住宅が107戸あって、既に満室だというのですが、別にサッカー好きのお年寄りがここにいるのではないのです。居住者用の特別なラウンジがあって、そこから観戦でき、試合がある日に何が起こるかというと、子供や孫がやってくるのです。もちろん便利な場所にあるということもあるけれども、日本よりも核家族化が進んでいますから、それが嬉しいのです。つまり、意外とスタジアムとミスマッチしそうなものでも、組み合わせによっては、町なかで複合化していろいろな効果が得られるという例であります。  ほかにも、メキシコシティーでもデパートや小売店、映画館、レストラン、フィットネスジムなどと複合化している例が出たり、これは、野球場ですけれども、メジャーリーグのアトランタブレーブスの本拠地で、レストラン、ショップ、ホテル、シアター以外にもオフィスやマンションなど、エリア一帯で開発している例が出てきています。つまり、点ではなくて面──エリアで考え始めているということです。  これは、ヨーロッパ固有のものではなくて、お隣の韓国ソウルでも、2002年ワールドカップのときのスタジアムでは、既に映画館、ディスカウントストア、売店、スポーツセンター・サウナ、スポーツショップ、公共文化施設、食堂、結婚式場なども併設していますので、我々東アジアの文化の中でも、こういうものは決してできないわけではない。さらに言うと、東京ドームがもうあるわけです。これは多機能・複合化の世界最先端の例だと思います。水道橋のとてもいい場所にあって、プロ野球のジャイアンツのホームスタジアムなので特殊だと思っていますけれども、日本の風土や歴史や税制や法律の中でも、こういったものができないことはないのです。  政府がこれに注目している理由としては、実は、スタジアムアリーナの新設・建てかえ構想が全国に73件あります。これを、今までのようなただの体育館とか陸上競技場にするのではなくて、もっと稼げる、プロフィットセンターにしていく。そうすると、今、スポーツ成長産業化で名目GDPを600兆円まで100兆円上げようとしていますが、この100兆円のうちの10兆円ぐらいに貢献できるのではないのかと考えているわけです。とりわけ大切なのが民間との連携で、スポーツ庁の中に官民連携協議会というものをつくりまして、鈴木大地長官を会長として協議を進めています。既に、スタジアムアリーナの改革ガイドブックなるものを出しています。  我々も、通常は、都市公園法の制約を受けて、今言った多機能・複合化ができないと考えてきたのですが、今般、国土交通省も含めて法律を点検したところ、法律に瑕疵はなく、むしろ条例に問題がある。例えば、公園の中で花火やたき火は危ないから禁止、でも、限定列挙するのが難しいから裸火禁止というと、厨房でも火が使えなくなったり、安全なことに配慮し過ぎたために自由度を失ってきているということがわかってきています。  そして、さらに、民間資金をどう活用していくのかということについても、プロセスガイドというものを作成して提案しています。  今見ていただいたものをそのままやっても、ただヨーロッパ、アメリカに追いつくだけでありますので、追い越すには、やはり、日本が持っている最先端のIT技術を使ってはどうか。NTTやソニーやNHKなど、世界的な企業が今、ゴールデン・スポーツイヤーズということで、さまざまな技術をスポーツに向けて使い始めています。  3Dホログラムという立体映像で、鏡なしでも見られるようなものがありますけれども、こんなものがあると、スタジアムアリーナでも全く新しいエンターテインメントができる可能性があります。例えばの映像ですけれども、これは、ある体育館、アリーナでの3Dホログラムを使った例でございます。   (動画を再生)  子供たちが見ているのですけれども、こういうものが技術的にできる時代になってきていて、ただ単に昔からのスポーツあるいは音楽コンサート以外のものにもチャンスが出てきている。   (動画を再生)  ほかにもさまざまな技術がありまして、例えば、富士通がやっている技術は、体操の自動採点というもの。白井健三選手の4回転半ひねりが余りにも早過ぎて、肉眼で採点ができなくなってきている。それで、カメラ、ビデオ、AIによる同時測定を開発されています。2020年のオリンピックでは、体操競技は恐らく自動採点化されます。国際体操連盟会長の渡邊守成さんは日本人ですけれども、彼の国際連盟の会長選挙の公約が、この自動採点なのです。ここにありますように、わざを見ながら次々と人工知能で自動採点していっている例でございます。   (動画を再生)  ほかにも、障害者スポーツに関しても、パラリンピックに目が行きがちですが、パラリンピックでは動力は使ってはいけないのですけれども、一般の人たちは義肢装具に今、ロボティクス──動力を使うようになってきています。そういったことを前提とした競技会、スイスで始まったサイバスロンという新しい障害者スポーツも出てきています。   (動画を再生)  ほかにも、日本の中で新しいスポーツをつくろうという動きが出てきていまして、例えば、テクノロジー──バーチャルリアリティーやARを前提として、あるいはプロジェクションマッピングなどを使った新しいスポーツが、東大工学部、慶応大理工学部の先生たちを中心につくられ始めています。これはVRゴーグルをしているところ、これはボッチャのプロジェクションマッピングを使ったもので、新しいものです。   (動画を再生)  一方で、テクノロジーとは対極で、ゆるキャラならぬ、ゆるスポーツもつくられ始めています。ばかばかしいことなのですけれども、ハンドソープをつけて手をぬるぬるにしてやるハンドボールや、ボールにちょっと特殊な工夫をしまして、ボールを激しく扱うと赤ちゃんのように泣いてしまうもの。これは先進技術を使って舌の動きだけでやるコンピューター上のスカッシュ──スカッチュという名前をつけています。これは音声だけでやるお相撲ですが、お年寄りに人気で、ある会社から商品化されました。こんなものを使った運動会をやろうなどという動きも出てきています。   (動画を再生)  そして、eスポーツです。日本ではまだまだゲームだと言われていますけれども、世界には1億3,000万人以上のプレーヤーがいます。既にもう100億円を超える大会も出始めています。昨年のアジア大会では公開競技で、2022年のアジア大会では正式競技になりますし、ことしの茨城国体では都道府県別対抗戦が文化行事として行われます。IOCでも既にeスポーツを競技化するかどうかという検討が始まっているということであります。   (動画を再生)  そして、やはりアーバンスポーツです。広島県がいち早く手がけましたFISEは、昨年4月6日~4月8日に開催されまして、体操競技をストリート化したパルクール、スポーツクライミング、BMXなどが行われました。昨年、競技者が31カ国から399人来まして、来場者が8万6,000人あった。本場フランスでは、これは40万人を超えるという話を聞いたこともございます。  これからのスポーツ成長産業化の一つの例としてスタジアムアリーナを取り上げましたけれども、スポーツがある日にはCOI──コントラクチュアリー・オブリゲーティッド・インカム、固定収入を最大化し、スポーツがない日のほうが実は多いので、施設の多機能・複合化をして、エリアマネジメントにより全体の価値を上げていくことが必要だと考えております。その中でも、さまざまな大義と合意形成プロセスが重要であったり、町なかに一団の敷地を確保するとか、多目的利用可能なサーフェイスを導入していくことなどによって、スタジアムを核としたスポーツ成長産業化が促されるのではないかと思っております。  時間になりました。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手) 2: ◯北村参考人 北村と申します。よろしくお願いします。  本日はお招きいただきまして、どうもありがとうございます。私どもが今やっている事業を中心に、きょうはお話しさせていただきたいと思います。  まず自己紹介です。広島生まれだということを強調するような自己紹介で恐縮なのですけども、広島生まれ、広島育ちで、修道高校、広島大学医学部を卒業しまして、選んだ診療科が放射線科、放射線診断科という科になります。2000年に起業いたしました。きょうの話の中心ですけれども、遠隔画像診断の会社を起こしまして、2007年から代表を務めております。2015年からは霞クリニックという、検査を中心とするクリニックの院長も兼務しております。  では、まず最初に、弊社の事業内容を簡単にまとめたビデオがありますので、ちょっとごらんください。   (動画を再生)  グーグルとかGCPとかという言葉ばかりで、グーグルの回し者かと思われるようなビデオで恐縮なのですけれども、実は弊社はグーグルのテクニカル部門のパートナー企業に認定されまして、昨年、サンフランシスコと東京で開催され、サンフランシスコでは2万人~3万人参加したグーグルの基幹イベントである会議に、日本からは弊社を含め二つの企業だけ招致されました。東京で開催された会議でグーグルが弊社の事業を紹介する目的でつくってくれたビデオが簡単にまとめてあったので、御紹介しました。  では、これからもう少し詳しいところを御紹介してまいりたいと思います。  会社概要ですが、名前の由来は、メディカルネットワークシステムズの頭文字をとったエムネスになります。事業内容等はこれから御説明申し上げます。  きょうの話では付随になるのですけども、クリニックでは、広島大学病院の近くで、MRI2台とCTを1台置いて、大学病院あるいは地域の開業医から依頼を受けて、検査をしてレポートをつけてお返しするという仕事をしております。  ビデオの中にもありましたが、外観です。1階、2階がクリニック、3階に白衣を着ない医師が勤めています。  改めて、画像診断医とは、余り聞きなれない診療科の医師だと思います。X線、CT、MRIといった検査の画像を見て、病気があるかないか、あるいは、病気があったときにそれが良性であるか悪性であるかといったところを読み解く医師の集団です。当然のことながら、内科、外科の先生にも画像を見るのが得意な方がいらっしゃいますので、その先生方も画像診断医と呼んでおかしくはないのですけれども、最近では、専ら画像診断に専念する医師の集団が放射線診断科、放射線診断専門医ということになります。通常、治療をしたりして患者さんとお目にかかることは少ない診療科です。ですから、右のほうに書いてありますが、縁の下の力持ちとか、黒子のような存在であります。  この画像診断医が、実は、日本には圧倒的に足りない。これが1番の問題点であります。ちょっとわかりにくいスライドになっていますが、これは、OECD加盟国の分布を示しているグラフで、横軸が人口100万人当たりのCT、MRIの台数、縦軸が100万人当たりの放射線診断医の数です。日本は、圧倒的にスキャナー装置はたくさん入っていますけれども、放射線科医の数は圧倒的に少ない。1台当たりの放射線科医の数は、ある統計によると0.2人、ブービー賞である韓国の5分の1ぐらいしかいない。広島県も漏れることなくといったところになります。  アメリカと最もよく比較されるので、アメリカだけをとった対比ですけれども、CTの台数で言いますと、日本には約2倍ありますが、アメリカを1とした場合、放射線診断医の数は0.28になっています。  そういう状況下、どのように今、画像診断が行われているかというと、1番左ですが、放射線診断医がいる施設は、放射線診断医が見ています。いないところは、先ほど言いましたように、内科、外科、整形外科の先生等々が画像をごらんになっている。あるいは、外部に委託する。読影というのは画像を読み解くことですけれども、これがまさに遠隔画像診断です。  言葉としては、最近、広まってきているのですけれども、実は、弊社の起業時は、フイルムを郵送してもらって、あるいは、私が医療機関に出向いて読影をしていました。これを圧倒的に便利にしたのがIT革命と言われるものだと思います。装置そのものから出る画像が、以前のフイルムをかけて見るところからモニターで見られるようになったことが一つ、それと、インターネットの普及、中でも光ファイバーが広まったことによって、どこでも遠隔画像診断ができるようになったということです。  ビデオの中にもありましたが、もともと私は、少し古いデータですが、広島県は山間部、島嶼部が多く、全国で2番目に無医地区が多いところで、その役に立てないかといったところで起業しました。フイルムで見始めたのですけれども、いざやってみると、山間部、島嶼部もそうなのですが、実は、都市部でも診断医が足りない。ですから、広島市の結構大きな病院からの契約もいただいております。これまで広島県内を中心に契約をしてきたのですが、きょう御説明するように、クラウドでデータを管理できるようになって、全国あるいは世界中どこでも画像診断できるという状況になってきております。  エムネスとはどういう会社かというと、画像診断をするのが根幹であります。常勤医──会社勤めの医師が11名、これは手前みそですけれども、全国最多のセンターになります。起業時は、遠隔画像診断センターは全国でも5~6つだったのですが、現在は70~80あると言われています。その中で、常勤医の数は1番で、かつ、今、非常勤医もこのぐらい抱えております。  もう一つ、弊社の根幹は、画像を見るために必要なツールを自社で開発し、提供している。これが、冒頭ありました、グーグルクラウドを使ったシステムということになります。医療機関で撮影された画像をクラウド上にためて、それを見る。見る画像がたくさんあって、1枚1枚開いていくようなことをしていると、本当に時間が足りませんので、ソフトウエアのようなものをつくりました。これも動画でお示しします。   (動画を再生)  今のは、画像枚数としては決して多くないのです。何百枚、多いときには2,000~3,000枚の画像を見ながら、我々は診断していきます。これを、クラウドがないときは、ローカルで、病院の中のシステムで動かしました。これを遠隔でやろうとすると本当に大変だったのですが、今のIT技術の進歩で可能になったというわけです。このシステムをルックレックと名づけて、いろいろ展開しています。  特徴は、グーグルですから、パブリックのクラウド上にあるということ。この最大の利点は、世界中のどこからでも見られるということになると思います。何がすごいかというと、先ほど言いましたように、従来の方法ですと、病院の中あるいは先生が使われるパソコンの中に独自にソフトウエアをインストールする必要がある。当然、パソコンの機器の更新のタイミングで、医療機関はまた別途費用がかかってくるのですけれども、クラウドを用いると、半永久的に、インターネット環境と、弊社の場合であればグーグルアカウントさえあれば使えるというところです。いつでもどこでもというところです。  最初に写真をお見せしたのですけれども、弊社の読影医の半数以上が女性です。今まさに働き方改革と言われていますが、在宅で、自宅で仕事をしている女性が半数おります。従来はVPNを組んで大変だったのですけれども、クラウドを用いることで簡単にできるようになりました。  当然、皆さんが1番心配されるGAFAの問題等もあります。グーグルは大丈夫なのかといったところです。ただ、我々がずっとやってきまして、むしろ、GAFAこそセキュリティーに1番気を使って、力もお金も使っているのではないかと思います。アメリカ等のいろいろな基準もクリアされていますし、医療というと壁を持たれがちですが、何より皆さん御自身が、日々の生活の中で、多くの方がGメールなどを使っていらっしゃいます。当然、ここに準拠して、我々もシステムを構築、運用しております。  このスライドは、従来のオンプレミスとクラウドとの比較です。いろいろなところで言われておりますので、あえてここで細かいところまでは述べませんが、一つ言わせてもらうならば、広島県もそうですし、昨日の地震等もそうですが、昨今、10年に一度、100年に一度といった自然災害が毎年のようにどこかで起こっています。病院が流されたりつかったり倒壊したりしたとき、データはなくなります。病院も困るでしょうけれども、1番困って不幸なのは患者さんです。そういった自然災害に対するというところ一つをとっても、クラウドのメリットはあるのではないかと思います。  もう一つは、AIです。まさに我々の業界の、放射線診断医が少ないといったところを補うための一つの手法としてAIがあると思うのですが、AIを開発していくには、教師データが必要となります。日本は医療大国、データ大国と言われていますが、オンプレミスでは病院ごとにデータがあって、残念ながら分散しているのです。これを1カ所で管理しようとすると、やはりクラウドのほうが大いにメリットがあるといったところで、弊社は3年ほど前から数社あるいは大学の研究機関等と共同研究、開発をして、最初に御紹介した霞クリニックのほうで、実験的に、日々AIを用いております。  その中の一つ、東京大学発ベンチャーのエルピクセルという会社は、画像診断領域では今、日本の中では最先端を走っている会社の一つです。早くから共同研究契約を結びまして、ごらんいただいた脳動脈瘤の診断、あるいは、後で御説明します乳腺とか、整形外科領域の半月板など、三つ、四つの分野で今、試験的に使っています。もともと私はAIについてはどちらかというと批判的な立場で、相手を非難するのであればそこを知らないといけないということでAIにチャレンジしたのですが、今ではもう、完膚なきまで打ちのめされたという感じで、AIに助けてもらっています。  例を一つ、これも動画でお示しします。   (動画を再生)  AIは、開発するにはたくさんのデータが要ると言われてきましたし、言われています。けれども、動脈瘤のAIは、今、8割5分から9割程度の指摘率、感度があります。これをつくるのに用いたデータは、500~600例です。従来言われていた何万、何十万というデータは必要としていません。何が大切かと技術者に聞くと、いかに正確な教師データを用いるかといったところのようです。単純に言いますと、画像だけが何十万あってもだめで、今ここでお示しした、正確な丸の位置、あるいはその大きさをAIに覚え込ませることができれば、より少ない症例でもAIを開発できる。ただ、医師は忙しく数が少ない中で、AIをつくるためだけに専念できる状況にありません。ですので、当社はこれを開発して、診断する過程でAIに助けてもらいながら、かつ、AIもブラッシュアップして、さらに精度を高めていくシステムを、今、動脈瘤だけでなく、複数のアルゴリズム作成にチャレンジしています。  もう一つ、簡単に御紹介しますと、社会的に大きな問題になっている乳がんです。マンモグラフィーあるいはエコー──超音波で検診はされますが、手術をする前に最近ではMRIを使って、造影剤を入れて、より詳しく検査されるのが一般的になってきています。乳腺を上下に20cmと仮定しますと、MRIは1mmの幅で画像が撮れますから、200枚撮れます。この200枚の画像を、そこに静脈に造影剤という薬を入れて、入っていく様子を経時的に撮っていくのです。左側にあるのがそうなのですけれども、入り始め、中間相、最後というふうに撮って、結局、800枚あるのです。これを我々は常に見ていかないといけない。人間ですから、やはりどうしても見落とし、見逃しが避けられません。  そこで、今開発中のAIですと、右のほうにお示ししていますが、ちょっと専門的になり過ぎるのですけれども、瞬時に病気がある部位だけでなくて、造影剤の入り方を見て、グレード1~5までの悪性度のクラス分け──世界的にしようという流れになってきていて、5になるほど悪性度が高いのですが、そこまでもやってくれる、かなり精度の高いものができつつあります。今、乳がんだけでなく肺がん等々も、グーグルのブレーンチームとも一緒になって開発しているところです。  以上のように、エムネスというのは、AIを気軽に簡単に利用できる、クラウド上のプラットホームを使って遠隔画像診断するということを日々やっているわけですけれども、ここで導入事例を二つほど御紹介したいと思います。  一つは、もしかしたら御存じの方もいらっしゃるかもしれません。1年少し前に東京銀座にメディカルチェックスタジオというクリニックがオープンしました。これは、脳ドックを専門とするクリニックで、マスコミでもかなり取り上げられているのですけれども、MRI2台を置いて、売りは、早くて安くて質が高いというところです。ちょっと下世話な話になりますが、2万円を切る価格で脳ドックをやっておられ、来院されてから病院を出るまでの時間は、最短で15分です。予約から結果配信まで全てウエブ上で完結するようなシステムになっております。これを可能にしているのが実は裏方で、先ほど来お見せしておりますルックレックを用いて診断するということです。  大事なのは質の部分です。なぜ質が担保できているかというと、ここに書いていますように、最初に私のような放射線診断医が読影します。脳ドックですから、脳外科医が2番目に読影します。最後に院長先生が確認する。これは、何度も言って恐縮ですけれども、クラウド上にデータがあるから、どこでも見られるということです。  ここのすごいところは、1日50人から、多いときで80~90人の検査をして、既に1年少したちますけれども、1万5,000人やっています。これだけ読むとなると、いかに遠隔でするとしても人が必要なのです。最初にお示ししたエムネスの非常勤医がふえています理由は、こういったところにあります。  このクラウドシステムができる前、まだインフラが整っていない状況では、弊社は、広島県に根差した、広島県の画像診断ということでやってきました。けれども、このシステムができ上がりまして、一気に非常勤医もふえています。先ほどもちょっと御紹介しました女性の医師、そして、定年退職された先生方、あるいは海外留学中の先生も既に4名ほど、世界で仕事をされています。  残念ながら、医療の世界も、患者の皆さんにとって本当に申しわけないのですけれども、縦割りです。横のつながりがありませんでした。やって初めて私も感じたのですけれども、脳外科の先生方との協力というのがなかなかなかった。これが可能になったというところで、現在は、脳外科だけでなく、乳腺外科であったり整形外科など、さまざまな診療科の先生と画像、クラウドをキーワードに、横のつながりをつくっていこうとしております。  もう一つ御紹介するところは、広島県としてJICAから請け負っていただいているプロジェクトで、当社も法人会員になっているNPO法人総合遠隔医療支援機構が昨年から3年間のプロジェクトを承認された、モンゴルの医療支援であります。病理診断と放射線診断でモンゴルの先生方の補助、支援をしようというプロジェクトで、昨年、お互いに医師の行き来があり、この1月に理事長であります井内康輝先生が現地に行かれて、弊社の技術者と一緒に装置を設置してまいりました。それで、モンゴルの支援が始まりました。  本当に、お互いに、全世界どこでもできるのがグーグルとくっついているメリットであります。現在、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、ネパールとの話が同時に進んできています。実現までは時間がかかるところもあると思うのですけれども、現状では、日本の医療は、まだ進んでいると思います。これを、海外に向けて手助けをするといったスタートを切っています。  これがルックレックのまとめのようなものになるのですが、ルックレックはデータを集めています。右側にあるように、集めたデータを誰がどのように見て、どのように使うかということだけだと思うのです。我々がやっていますのは、遠隔診断──診断依頼を受けて診断することですけれども、病院の立場に立つと、データのバックアップであり、今はバックアップですけれども、本システムにも十分なり得る。カルテの部分は、きょうはあえて触れておりませんが、霞クリニックは3年半ほどの電子カルテ全てをクラウド上で動かしています。延べ3万人以上のデータがあります。このデータが誰のものかという議論は尽きませんが、私どもは、医療機関のものではなく、患者さんのものだという視点で、いつでも患者さんに公開できるように準備をし、そういうアーキテクトでやっております。  ごらんいただきたいものがあります。   (動画を再生)  このサービスを、先ほど御紹介した東京のメディカルチェックスタジオにも採用いただいているのですが、あちらの施設は検診です。ですが、霞クリニックでは今週初めから、まさにこのタイミングで、受診された希望者には、検査が終わった後、バーコードリーダーを読んでいただいて結びつけるようにしました。若い方は、100%近く求められます。もう半永久的に御自身でデータを見られる。医師が見ているのと一緒なのです。ですから、転居しようと、出張先、旅行先で病気になっても、このデータがありさえすれば、ちゃんと診ていただくことが可能になりました。  夢の部分も入るのですが、ルックレックが今、目指しているところは、医療データの中で実は一番扱いにくい、データ量が重いものは何かといいますと、画像です。途中ありました、病理データが実は一番重たいのです。既に我々は一番難しかったところに遠隔画像診断というところからアプローチしたがゆえに、クラウド上で管理するものができ上がりました。あとの血液データであったり心電図であったりは、データ量としては画像データよりも軽いです。さまざまなサービスを展開されていますから、そのデータを一元管理すること。今まさにゲノムデータも出てきています。ウエアラブルでバイタルデータもとれます。そういったものを組み合わせることで、1人の個人として、包括的に、AIも利用すれば、さらに精度の高い診断が可能になるだろうといったところで、グーグル社と一緒にやっています。  以上になるのですが、最後に、少し残りの時間をいただいて、せっかくの機会なので、広島に育ちましたし、広島で何かができないかといったところで、先ほど来お話ししています脳ドックを一つ、トピックとしてお話しさせていただければと思います。  昨今、プロドライバー──バス、タクシー、電車の運転手さんが脳血管障害で、残念ながら乗客の皆さんが事故に巻き込まれるといったことがふえています。少し古いデータにはなりますが、このぐらいの数があります。どこから脳ドックを広めていくかというのは非常に難しいところでありますが、国土交通省もこのたびガイドラインにも載せられました。まさに、きょうですか、尾道市民病院で脳ドックを始められたという記事もあります。皆さんもよく御存じのウィラーというバス会社がありますが、メディカルチェックスタジオと提携されて検診をして、我々が診断します。  何が言いたいかというと、日々一番多く診断しているのが広島県の放射線科医であったり脳外科医であったりで、関東圏の診断をしているのです。広島にもたくさんMRIが入っています。診断医もいます。医師のほうのネットワーク、かつ、システム的なところはでき上がっていますので、ソーシャルインパクトボンド──SIB的な発想で、自治体として全国初の脳ドックといったところを御検討いただけると、県民にとっても幸せなのではないでしょうか。ちょっと大それた御提案で恐縮なのですが、以上で私の話を終わらせていただきたいと思います。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
     (8) 休憩  午前11時40分  (9) 再開  午後1時 3: ◯岩崎参考人 ただいま御紹介をいただきました、国土交通省中国地方整備局河川部長をしております岩崎と申します。  本日は、議長の御招待をいただきまして、このような意見発表の機会を与えていただきましたことに感謝申し上げます。また、改めまして、国土交通行政の推進に当たりまして、日ごろより御理解、御協力をいただいていることを重ねて御礼申し上げます。  本日は、国土交通省として、マイタイムラインへの支援状況、さらに、近年激甚化しております水害への取り組みといたしまして、最近の施策の動向について紹介させていただければと思ってございます。  まず最初に、マイタイムラインというのは、なかなか皆さんもお聞きになったことがないかと思いますので、簡単に概要を御紹介させていただきます。  3年前、平成27年9月に、関東・東北地方で鬼怒川の堤防が決壊いたしまして、常総市を中心として甚大な水害が発生したところです。このときに逃げおくれた方がかなりいらっしゃったこともございまして、住民のお一人お一人が水害に際して、いつ、どこに逃げるかとか、どういったものを避難のときに準備しないといけないのかといった行動計画を、事前に、堤防の越水などが起こる数日前あたりから時系列として定めるものがマイタイムラインでございます。  こういったソフト施策に、今回の平成30年7月豪雨を踏まえて、国土交通省としても支援を強化していこうと至ったわけでございますけれども、この背景について簡単に紹介させていただきたいと思います。  まず、水防災意識社会再構築ビジョンというものを、平成27年豪雨を受けて強力に進めています。先ほども御紹介しましたが、関東の鬼怒川で堤防が決壊し、かなりの方が逃げおくれて、人命、財産等が失われたということでございます。災害、特に降雨の激甚化が近年指摘されてございますけれども、大洪水、激甚化する水害に対して、施設だけでは守り切れない、こういう災害が起こり得るということを改めて認識する社会を構築していこうということです。再構築との再というのは、昔、治水対策が進んでいなかったときは、水害に対する意識を地域あるいは住民のお一人お一人が持たれていたと思いますが、その後、治水対策が進み、そういった被害が日常から少し遠ざかってしまったということがあって、正常性バイアスが働いたといいますか、逃げおくれることもあったということで、もう一度立ち返って水防災意識というものをつくり上げていこうという意味も込めまして、再という字がつけられていると考えてございます。  それで、ソフト対策とハード対策を一体的に進めていくということでございますが、特に、ハード対策で言いますと、堤防が越水しても、できるだけ決壊するまでの時間を長くする、逃げる時間を稼ぐための構造の工夫ですとか、住民の方々の避難にすぐつながるリスク情報を皆さんで共有しようとか、後ほど御紹介しますけれども、住民の方々のみならず行政機関の方々がどうしたら洪水に備えられるかということをまとめるタイムラインの策定だとか、そういったことを進めているところです。国が管理しております直轄河川は全国に109水系ございます。こちらにつきましては、水防災意識社会再構築ビジョンの取り組みをほぼ全てのところで進めているところでございまして、後ほど御紹介させていただきます。  平成27年の豪雨から毎年のように全国で甚大な被害が発生しております。平成28年は、北海道、東北に台風が4~5回と上陸するといった災害がございました。こういったことを契機としまして、水防災意識社会を再構築する取り組みを、水防法を改正しまして先ほど言った再構築ビジョンを制度化して進めていこうとしてまいりました。また、具体的な施策を緊急行動計画という形で取りまとめて、進めてきております。さらに、一昨年、平成29年の九州北部豪雨では山腹が崩壊いたしまして、土砂あるいは流木が下流に流れ込んで痛ましい災害となったわけでございますが、この土砂・流木対策も行動計画に追加し、さらに、昨年の7月豪雨も踏まえながら、順次、見直しを進めてきております。  ここで、ソフト対策の主なものを紹介させていただきます。従前から取り組んできているものもございますので、ざっと概要を説明させていただきます。  まず、我々河川管理者、自治体の方々、それから住民の方々といった形で実施主体が分かれるわけでございますけれども、洪水がいざ発生したときに、我々河川管理者がまず何をするかといいますと、洪水予報ですとか、○○川で今どのあたりまで水が来ていますとかといったことを自治体の方に周知して避難勧告等の参考にしていただく、あるいは、報道機関に対して住民の方々に今の危険な状況をお知らせするというようなことがございます。  また、最近の取り組みで申し上げますと、プッシュ型緊急速報メールと言いますが、氾濫危険水位などを超えたときには、携帯電話の電波網等を活用させていただきながら、プッシュ型で緊急速報メールを、危ない地域に発信することなどを行っておりますし、ホットラインと言いますが、実際に避難勧告などを出される自治体の首長がタイムリーに適切に出せるように、今の河川の水位の情報ですとか今後の傾向など、切実な状況を直接電話でお伝えして、避難勧告などの発令の参考にしていただいているところでございます。  また、平時からの取り組みといたしましては、ハザードマップというのはお聞きかと思いますが、洪水が発生したときに、どこまで、どのくらい浸水が広がるかという浸水想定区域図、あるいは、それをもとに避難場所とか避難経路などを示したハザードマップを自治体につくっていただくよう支援させていただいているところでございます。  このようなソフト対策を進めるに当たりましては、さまざまな機関が連携して取り組まなければいけないということで、大規模氾濫減災協議会というものを、水防法を改正して国管理河川については設置を義務づけしてございます。109水系全てでつくってございまして、河川管理者のほか、自治体の方々、防災関係の担当部局、さらにはマスコミですとか公共交通機関の方々にも入っていただいているところでございます。  この大規模減災協議会で進めております施策の主な代表例といたしまして、タイムラインというのがございます。冒頭申し上げたのはマイタイムラインといいまして、個人の方々、住民の方々を対象としてつくるものでございますが、タイムラインは、どちらかといいますと行政機関あるいはライフライン、公共交通機関等の方々を意識してつくられているものです。  きっかけは、平成24年、アメリカのニューヨーク州にハリケーン・サンディが上陸して、かなりの被害が発生いたしました。ところが、ニューヨーク州では、事前に被害の発生を前提とした行動計画をつくられておりまして、それをもとに住民の方々の避難を促す対策をとられていました。それを行うことで、被害を最小限に抑えたことが評価されてございます。翌年、国交省といろいろな学会の方々とで調査団を派遣いたしまして、取り組みの効果がかなりあるということを改めて確認させていただいて、翌年、さらに、省内に防災行動計画ワーキンググループを設置しまして、このタイムラインを順次つくっていこうという意思決定をさせていただきました。  タイムラインは、避難勧告に着目したタイムラインと、多様なセクターが連携する多機関連携型タイムラインというふうに大別されます。  まず、避難勧告の発令に着目したタイムラインは、河川管理者、市町村が主体でございます。水位がどんどん上がってくれば、それをもとに市町村が避難勧告、あるいは、その前の避難準備情報が発表されるわけですが、それを、少し細かいのですが、氾濫発生時点をゼロアワーといたしまして、例えば、台風が接近するとき、大体3~4日前から上陸が予想されるわけですけれども、その時点ぐらいから各関係機関が何をしなければいけないかをお互い確認しながら、台風が近づいてくるたび、それに伴って雨がどんどん降ってきた場合、事象がどんどん深刻化するところに合わせて、何をするのかということ──河川管理者であれば水防警報を出す、その指定管理団体である市では防災体制をとっていただいて水防団の派遣などを発令していただく。さらに水位が上がって避難の判断水位あるいは氾濫危険水位に達しますと、河川管理者からは自治体の方に対してその水位の情報をお伝えし、避難準備情報あるいは避難勧告等に出していただく、それを受けて住民の方々が実際の避難をされるといった流れを、タイムラインとしてまとめているものでございます。  多機関連携型タイムラインは、中国地方管内では今、岡山県の旭川流域、それから、鳥取県の日野川でつくっております。この多機関連携型は、防災関係の行政機関に加えまして、先ほど申し上げました上下水道の部局ですとか地下街、公共交通機関の方々、実際にテレビ等を通じて情報を出していただく報道機関の方々に入っていただいて、それぞれどのようなことをするのかという行動をまとめているものでございます。昨年の7月豪雨で氾濫危険水位を超えた水系が、中国管内では6水系ございまして、こちらの全てで来年度の出水期までには多機関連携型のタイムラインをつくろうとしておりまして、太田川におきましても、来月には水害と土砂災害と高潮というマルチハザードを対象としたタイムラインを作成する方向で、広島市、安芸太田町と連携させていただいているところでございます。  今申し上げたのは、行政機関等が連携するものでございますが、ここで、冒頭のマイタイムラインの話に戻ります。  7月豪雨の教訓を踏まえて、マイタイムラインの作成を強力に支援していこうと至ったわけでございますけれども、この7月豪雨で明らかになりました課題を、まず簡単に御紹介させていただきます。  7月豪雨では、岡山県倉敷市真備町で小田川が決壊して、50名余の方々がお亡くなりになったわけでございますけれども、左側にありますブルーの少し濃いところがかなり浸水したところでございます。情報として、住民の方々には浸水想定区域あるいはハザードマップで浸水範囲をお知らせしておりました。今回、堤防が決壊して、実際に浸水したエリアもほぼこの浸水想定区域図と一致してございます。一方で、ハザードマップの中身を知っていた方々、理解されていた方がどれぐらいいらっしゃったかということなのですが、知っていた方はかなり多いのですが、まだ中身について正確に理解されていなかったのです。24%程度の方が、内容をしっかり理解されていなかったということでございます。  避難に関する情報の伝達状況はどうだったかということなのですが、先ほど申し上げた洪水予報、あるいは、河川管理者から自治体の首長に状況をお伝えするホットラインも、水位の上昇に応じて随時、発表していたわけでございます。一方で、なかなか避難されなかったということがございます。なぜ避難をしなかったのかということを静岡大学の牛山先生がアンケートされたところ、自分の家は水害に対する危険性が低いと思っていた、あるいは、自宅周辺等が浸水などしていなかったなどを理由としておられます。こういう災害のリスクが事前の段階で十分に理解されていなかったということもあって、避難行動に結びつかなかったのではないかという考察がなされております。  こちらも同じようなことなのですが、自宅以外に逃げなかった理由として、2階に逃げれば大丈夫だと思ったということです。このとき真備地区は、軒下あるいは2階まで水が来ているような状況でございまして、いろいろ声かけはされたけれども、まさかこういったことには至らないだろうという正常性バイアスというものが働いたというようなことも考察されているところでございます。  避難のきっかけでございますけれども、周辺の情報が時々刻々変わってくること、あるいは、消防とか警察の呼びかけといったところがきっかけになっていて、事前あるいはリアルタイムに出てくる情報が、余り参考にされていないところがあったということでございます。  そういった課題あるいは教訓を踏まえまして、国交省は昨年、有識者委員会を立ち上げて年末に答申をいただいたところです。水防災意識再構築の基本的な考え方は、施設能力を上回る洪水は必ず発生するということであります。そういうことを前提として、人命を守る取り組みを、ソフト対策、それから避難を支援するハード対策、あるいは被害を未然に防ぐ事前のハード対策といった3本の柱で答申をいただいたところです。  特にソフト対策では、住民主体のソフト対策が明記されております。地区単位で個人ベースの避難計画をつくるとか、メディアの御協力もいただきながら情報発信を多様化させていくことなどが位置づけられてございます。これまでの大規模氾濫減災協議会などは、どちらかというと行政を中心として対策を進めてきたわけでございますけれども、これからは、多様な主体──交通事業者、マスコミなども入れながら一体として取り組んでいこう、また、住民の取り組みとしましても、自主的なものから地区単位あるいは個人で取り組みが強化されるような施策を打っていこうということが、方向としてございます。その中に入っておりますのがマイタイムラインです。冒頭御説明させていただきましたが、住民お一人お一人に災害を我が事として認識していただくために、地区単位、家庭単位あるいはお一人お一人でマイタイムラインというものをつくっていただくものです。  先進事例を少し御紹介させていただきたいと思いますが、茨城県常総市のモデル地区でマイタイムラインをつくられたところです。いきなり住民の方々につくってくださいと呼びかけてもなかなか効果的ではございませんので、地区の代表者であります自治会の区長、班長といった方々に、地区単位で作成していきませんかという呼びかけをさせていただきながら、実際にワーキングを設置して住民の方々に参加をいただき、2~3回、繰り返しながら、マイタイムラインをつくっていただいています。  きっかけとなった茨城県の鬼怒川流域では、約6割の市町で取り組みが進んでおります。全国のほかの状況を見てみますと、鬼怒川以外には六つの水系で始まったというところでございます。中国地方の管内では、まだまだ取り組みは始まっておりません。ただ、先ほど御紹介した岡山県倉敷市真備地区では、倉敷市が復興ビジョンを掲げる中でマイタイムラインをつくっていこうという動きが出てまいりまして、それをこれから我々として御支援させていただくことを予定しております。  常総市の例では、小中学生向けの防災教育に役立つような教材をつくられていたり、地区単位での取り組みにはやはりリーダーが必要となりますので、マイタイムラインリーダーという認定制度なども設けて取り組みを進められているところでございます。  こういったマイタイムラインへの取り組みにつきましては、1月31日の衆議院の本会議で、斉藤鉄夫先生からマイタイムラインの取り組み状況についての政府の取り組みに関する御質問がございました。安倍総理から、「住民による的確な避難行動を担保する上で有効であると承知しており、政府としても自治体等と連携し、全国への普及に努めてまいります」といった答弁をされておりますので、国交省中国地方整備局としましても、今後、各地で自治体の取り組みをしっかりとサポートできるように取り組んでまいりたいと思っております。  以上が、マイタイムラインの関係でございます。  あとは、住民の方々の声ですが、やはりこういうものをつくることで、ふだんから防災意識を持つべきだということとか、自分自身の危機意識の低さへの気づき、あるいは、リスク情報をしっかり認識しておくことの重要性といったことも意見や感想として挙げられているところでございます。  最後に、昨年の7月豪雨も含め、近年激甚化しております水害への取り組みを紹介させていただきたいと思います。  こちらに平成4年以降の全国の治水事業費の予算がございますけれども、平成9年をピークに減少しております。最近は8,000億円強ということで、横ばいというところです。  一方、雨の降り方が明らかに変わってきてございます。地球温暖化に伴う気候変動の影響というレポートもございます。30年前に比べますと、50mmを超える雨の頻度が1.4倍に増加し、もう明らかに変わってきているということは、皆さんも肌感覚としておわかりなのではないでしょうか。  こういった豪雨に対する被害の推移ということで、こちらは昭和20年、戦後以降の水害・土砂災害でお亡くなりになられた、あるいは行方不明の方の数でございます。字が不鮮明で申しわけございません。戦後、まだ治水対策がそれほど十分でなかったころには、大型の台風──枕崎台風ですとかカスリーン台風あるいは伊勢湾台風などが頻繁に来襲して、そのたびに1,000名を超えるような水害も頻発していたわけでございます。それから大きな台風が来ていないということもありますし、治水対策の進展もあって、人的被害については減少傾向にはあるように見えます。ただ、平成20年代以降には、そういったことも言っていられない、だんだんふえてきている傾向もあるのではないかということもございます。  平成30年7月豪雨は232名の方が亡くなられたり行方不明ということで、昭和57年以来の水害だったということでございます。治水対策の進展が降雨の激化になかなか追いついていないあらわれという評価もできるのではないかと思います。平成30年7月豪雨は、西日本を中心として、かなりの被害になったわけです。  時間もないので少し飛ばさせていただきますが、かなり甚大な被害はあったわけですが、一方で、しっかりと治水対策を行ったところは守られているということも、実態としてございました。  こちらは岡山県岡山市を流れます旭川です。旭川も広島の太田川と同様に、放水路の整備を進めているところです。この旭川放水路も昭和49年以降、事業を推進してきて、順次、堤防を広げたり、河口の水門を増設したり、分派するところの堰を切り下げたりといったことをやってきました。完成に近かったということもありまして、昨年7月豪雨では適正に本川から放水路に分派することができまして、市街地の被害を免れることができたという評価がございます。  また、芦田川は、府中市あるいは福山市を流れる一級水系でございますけれども、上流の八田原ダムですとか河川の改修によりまして、被害も、堤防からの越水はなかったということです。一方で、下流の福山市を中心として、芦田川の水位が高いものですから、市街地に降った雨をはき切れなくて、内水被害というものが発生しております。こういう対策はしっかりとまた連携して取り組んでいかなくてはいけないと思います。  また、太田川のほうに目を転じてみますと、太田川の東側の流域に雨がかなり集中して降ったのが今回の特徴です。4年前の平成26年8月のときには、太田川の西側を中心に、数時間で200mmぐらい降ったわけですが、それとは対照的に、今回は東側で2日間にわたって400mmぐらいの雨が降り、エリアが少しずれたということと、雨の降り方が違ったということで、被害の状況がかなり変わっております。平成26年8月のときには太田川の支川の根谷川で越水して被害が生じましたが、それを契機に堤防の改修等を行った結果、今回は前回を上回る雨が降ったわけですが、越水もせず、堤防の一部決壊等はありましたが、浸水被害等は生じなかったということでございます。一方で、安佐北を流れております三篠川では、県の管理されている区間を含めて、縦断的に越水、浸水被害が発生してしまったということでございます。  あと、土砂災害の関係で申し上げますと、広島県のほうで進められておりました平成3年に完成した砂防堰堤ですけれども、今回の7月豪雨では土石流あるいは流木を捕捉したということです。  このように、水害あるいは土砂災害対策をしっかりやってきたところでは効果が出てきている一方で、まだ整備途上にあったもの、あるいは、まだ整備水準が足りなかったところについては被害が起きてしまったということで、事前防災の重要性が改めて認識されたところでございます。  この事前防災について、最近の動向を簡単に御紹介させていただこうと思います。  「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」が昨年12月14日に閣議決定されまして、政府一丸となって大規模な浸水対策等を進めているところでございます。こちらは3カ年で進めるということでございまして、初年度の予算が先般成立した2次補正予算で充当されたところでございます。代表的なところを御紹介させていただきます。広島県内で言いますと、太田川の改修ということで三篠川の浸水対策ですとか、芦田川の堤防強化対策に予算を充当して進めております。さらに、広島県におかれましても、瀬野川のほうで河道掘削あるいは樹木伐採を進められるということでございます。  このように、事前防災を、ハード・ソフトそれぞれしっかりと進めていくことが大事だということは皆さんも理解されていると思いますが、この災害の対応は、初動体制が大事だということを最後に申し上げて終わりたいと思います。  7月豪雨のとき、災害直後から被災状況の全貌がわからない中で、まずは、どこがどれだけ被災しているのかを把握しなければいけないということで、国土交通省ではTEC-FORCEというものを編成しております。こちらには地方整備局の職員が任命されておりまして、全国から延べ1,361人が派遣されたところでございます。被災の状況ですとか、河川あるいは土砂災害関係の調査をさせていただきながら取り組ませていただきました。また、今回、安芸南部を中心として土砂災害が多く発生し、市街地あるいは河川とか道路を土砂が埋塞した状況が至るところでございました。呉市とか坂町の要請もいただきながら、道路の警戒、河川の土砂の撤去もTEC─FORCEの活動としてさせていただいたところです。  職員のみならず、実際に現場で対応されるのは、地元の建設企業の皆さんです。昼夜を分かたず24時間体制で対応をとっていただきました。国、県、市町の行政機関のみならず、調査、測量、設計を含めて実際の対応を最前線で行っていただく建設現場の皆さんの御協力があって初めて、緊急復旧、応急復旧がしっかりと行えるということで、こういう連携体制もしっかり構築していかなければいけないと思っております。  そういうことも含めた事前対策、事前防災ということかと思っておりまして、これからも我々中国地方整備局といたしましては、広島県、それから関係する自治体の方々と、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。  少し長くなりましたけれども、これからまた事前防災をしっかり進めてまいりますので、県議会議員の皆様あるいは広島県執行部の方々の御理解と御協力をお願い申し上げまして、私からの意見発表とさせていただきます。  本日はこのような場をいただきまして、まことにありがとうございました。(拍手) 4: ◯鳥栖参考人 御紹介いただきました鳥栖です。よろしくお願いします。  お話を始める前に、自己紹介をさせていただきます。私は都市プランナーとして仕事をしていますが、今お呼びいただきましたように、名簿にマスター都市プランナーと書かれています。マスター都市プランナーというのは今までなかったのですが、去年の11月に、日本都市計画学会という都市の分野の学会を初め4つの都市計画関連団体が連携して設けた称号です。要は長年の経験と実績を踏まえて都市計画の分野で社会奉仕しなさいということで、称号を与えられたので、以後はマスター都市プランナーと名乗っております。  実は私は、広島県には長らくお邪魔しております。東は福山市、府中市、西は広島市、廿日市市など、あちらこちらの計画に参画してまいりましたが、きょうは、県都広島市に焦点を絞って、気になることや期待することを申し上げたいと思います。  きょうは世界都市・広島を目指してという、少し大げさなタイトルをつけましたが、期待を込めてそのようにつけました。  内容としては2つ申し上げたい。極めて具体的な話で、長い間おつき合いしてきた立場から、都市づくりで非常に気になったことがあって、それを提言することにしました。  1つは、この目次にあります「平和大通り改造の提案」ですが、前から非常に気になっていることで、これをお出ししようと考えました。要するに、広島市を象徴する都市空間としてせっかくつくったのだから、もうちょっと何とかならないのかと前々から思っていまして、現在の都市の課題を重ねて提案させていただくということです。  もう1つは、「都市拠点づくりプロジェクトの提案」をします。広島市を元気にすることが急がれていますが、都市づくりでカンフル剤の効果を持つプロジェクトの導入により方向を見出そうというものです。  初めに、広島市の都市づくりの課題を私なりに整理したいと思います。  第1の課題は、活力ある都市づくりです。  広島市あるいは県の構想のどこを見ても、平和都市とともに県都広島に活力ある世界都市づくりと書かれており、その実現のあり方を考えてみました。産業、経済を初めいろいろな方策は出ていてその具体化に期待しますが、都市づくりでも強いイメージを湧かせるものの必要性を感じます。  平和都市づくりはすごく立派に実現されて、世界遺産になっているわけですけれども、活力ある都市づくりについては、多くの課題が残されています。これに関連していろいろな都市の比較評価を見ると、広島市は魅力はあるけれども都市の成長力が低いというような調査があり、都市間競争の時代ではとても気になります。  2番目は、世界に向けてインパクトのある情報発信の必要性を書きました。8月6日は、世界中に放映しますから、世界から関心が集まります。けれども、それを過ぎると、日本の中ではカープとサンフレッチェの話は出るのでしょうが、広島が世の中に対して情報発信が少なく、都市の存在感が高くない。あちらこちらで聞いてみると、やはり低いと言われます。これは、けなしているのではなくて、頑張らなくてはいけない課題として申し上げているわけです。  3番目に、よく出ている話ですけれども、選択と集中が広島の場合にも当てはまると思います。気になっているのは、広島市は八方美人的な都市のように思えます。そうならざるを得ない歴史的な経緯があると思いますが、そろそろ福岡市とか、ああいう何か突破力、突進力のある都市づくりを、ある一定期間頑張ったほうがいいのではないか、それで、のし上がっていって、また何かをやるということがあってもいいのではないかと思っております。そこは、都市政策で大いに頑張るべき話ではないかと思いました。  平和大通りについて提案したいと思います。  平和大通りは世界に知られた平和都市の象徴であり、この通りと沿道のまちをブラッシュアップして、広島のイメージチェンジにつなげることが可能であり、都市の課題に幅広く応えることになると思います。  広島城から平和公園の南に至るまでの、南北の平和文化環境はもう誰もが認めるところで、未来永劫、これは広島の記憶として残るものであります。  もう一つ、平和都市のシンボルである平和大通りがあり、この2本でつくる十字型のインフラが広島の基本的な都市構造だと思います。100mもある大通りは、余りありません。あるのは札幌市とか名古屋市です。結局、日本人は余り大通りをつくった経験もないし、使った歴史もないから、何か庭木の生えた公園みたいなものがつながっているというので、余り生きた通りになっていない。平和大通りも、通りを中心にできているまちも、きれいなホテルがちょんちょんと並んでいるのですが、平和大通りを歩いたときに寂しいのです。これは何か考えたほうがいいのではないかと思います。具体的には、今の平和大通りの姿や使われ方が、ちょっと時代に合っていないのではないかと思います。  私の恩師・丹下健三先生が、広島の復興計画に中心的にかかわったことを思い、新しい時代に向けたシンボル道路の再生を期待したいものです。  はっきり言って、平和大通りは経年劣化したということです。昔はもっと簡素だったけれども、それなりに精神性のあるところで、南北軸に負けずにいろいろな平和の活動があるし、それはそれでいいのではないかと思っておりました。それが魅力の低い道路空間になってしまって、お花のお祭り等があるし、カープが優勝したらにぎやかになりますけれども、多くの時間で余り生きていません。それでよしとする見方もあるのですけれども、都心にせっかくここまで大きな土地を出してつくったのですから、世界に誇れるようなものをもう一回シェイプアップしたらどうだろうと考えます。それには、平和大通りに新しい時代にふさわしい役割を担わせることがよいのではないかと思います。平和大通りが都心を通る道路として都市活性化のシンボルとなることがふさわしいと考えます。そのためには、大通りと沿道のまちが活力のあるまちに生まれかわる必要があります。  どういう姿にするかというのはいろいろあると思いますが、世界の大通りだと言うのだったら、広く世界から知恵を集めてはどうだろうか。今はどこだって世界からコンペでもって知恵を集めて、それを具体化していくのが世界の潮流です。  世界からいろいろ知恵や方法をかりてやっていこうということです。これを決断するのが一つの段階ではないか。具体的には、平和大通りと沿道のまちについて、国際コンペを実施して、世界から提案してもらおうというものです。AI時代だし、車離れの時代です。車のまちなのに車離れになったらどうなるのだろう、そのときには平和大通りはどうなるのだろうということなど、いろいろなことを考えて、22世紀に向かって提案してもらおうということです。  一番大事なのは、これで平和大通りのリフレッシュにインパクトを与えようということです。役所がつくった計画を延々とやっていくと、予算の都合だ何だと言って、なかなかうまくいかないのです。期限を決めて、ゴールも決めて、世界注視の中でこれに進むことが必要です。  普通のやり方では実現しにくいので、国際コンペ方式で具体化する必要があります。相当抵抗があるとは思いますけれども、ぜひ、お考えになってはどうでしょうかという提案なのです。  世界の大通りとしてすぐ出てくるのが、パリのシャンゼリゼとかプラハのバーツラフ大通りなどですけれども、彼らは習慣で、通りと沿道がにぎやかです。文化も違いますから、革命などの折には、写真のように人が集まったのです。  しかし、平和大通りは非常に静かで、端正な通りである。端正でいくというのもあります。端正でいくのだったら徹底的に端正にするというのもあると思います。ただし、都市活性化の課題が残ります。  大通りといえば、札幌雪祭りがありますけれども、大体、日本の祭りは完結的ですから、いつも通りがにぎやかになっているということはないのです。それでもいいのかもしれませんけれども、余りにも幅があり過ぎて、がらんとした寂しい大通りがあるということになってしまいます。  フランスとかスペインなどでは、こういう歩道が広い通りで、日常的に楽しく生活的に使われる。それぐらいまちの側に明け渡してもいいのではないかと思っています。  とはいえ、平和大通りに都市づくりのシンボルになってもらうためには、コンペをやって提案してもらい、これがいいではないかという案を選ばなくてはだめだと思います。その選ぶ行為が世界の関心を集め、市民もお役人も企業もみんなを本気にさせるのではないか。だから、平和大通り改造国際コンペというのをやったらどうかというのが、私の提案です。  ここにお示しする2002年に市がおつくりになった案です。時代の要請に応えていて、これを基本に考えるのがよいと思います。歩道がどんとあって、真ん中に車道がちょろちょろとあって、これは人が中心となる現代のテーマをよくあらわしています。このまちがにぎやかになって、道とまちが一体になって使われているというようなことになると、平和大通りのまちということで広島の新名所になって、インバウンドがやってきても広島の新名所になるというようなことが期待できます。そういう意味で、平和大通りは広島の活動のシンボルとも言えます。  そんなことをやったって金がかかるだろうと言われます。この平和大通りを含めて沿道の敷地と一緒になってまちづくりをやり直すということです。今は、大きな再開発はみんなこれです。こういう中心部の再生事業ですから、単純な道路整備とは違って大きな効果もあるので、実現性が期待できます。そのことを示すために平和大通りを含んでピンクの区域が書いてありますが、これは平和大通りを挟んでもう少し大きな区域でまちづくりをやったらどうかという意味です。時間がかかるとは思いますけれども、計画はコンペで方向を決め、沿道と一緒にまちづくりを進めることで、沿道の人々の参加を促進します。そんなに簡単にできないと言われるのはよくわかるのですけれども、全日空のホテルもあそこでいつまでも安穏としていないでそろそろ建てかえるかもしれません。あるいは、敷地の奥行きが20m程度で非常に狭い所が多く、建築が大型化しているので区画の奥行きを大きくしたり、区画全体を大型化することが出てきて、再開発するという動きを起こすことです。これは、民間の事業化の力によるところが大です。  これを国内の資本だけでやろうと思ったら、無理も感じますが、お金を出したいという企業は世界にいっぱいいます。しかも、事業の勲章がほしいという地域も国もあるわけですから、いっそのこと、国際的な事業提案コンペにしたらどうかと思います。市の中心部は都市再生緊急整備地域に指定されており、再開発事業に大きな支えをするはずです。その機会を捉えれば、さらに可能性はふえるでしょう。  これは恐らく官民でやるのでしょうけれども、旗振りは官がやって、事業は民がやっていくというように、チームをつくってやっていったらどうだろうか。東京のディベロッパーも、2020年の後の仕事をどうしようかと思って、今、あちらこちらに動いていると聞きます。こちらへもう来ていると思いますけれども、そういう連中に仕掛けていくということもあるのではないかと思うのです。  久しぶりに広島に来て気になることがありました。具体的には、海田─府中間の連続立体交差事業がまだできていないので、驚いたのです。難しい問題があると思いますが、このインフラはいろいろな経緯があって現在の計画になったと思いますが、必要だからといってジェットコースターみたいにちょこちょこ鉄道を上げていったのでは連立にならなくて、連立が持っている本来の両側のまちをつなげてにぎやかにするというような事業にできないと思います。今後の市街地の成熟を考えると、都市の中のジェットコースター的連立は残念だと思って、一言つけさせていただきました。  話題は変わり、二つ目の話題になります。  都市拠点プロジェクトですが、都市に強いインパクトを与える拠点を導入してはどうだろうかということです。具体的には、成長する産業やサービスの中核拠点をつくり、これからの市のポテンシャルアップにつなげることを考えました。ミッテラン大統領のパリ大再開発は、7つの拠点を国際コンペで具体化した好例です。それには、2つ考えました。一つは国際医療交流拠点、もう一つはロボット産業開発拠点です。  初めのほうは、さっきお話しいただきました北村先生のお話とも関連するのですが、今、広島に多くの外国人観光客が来ます。どこから来るかというと、大体中国やアジア地域から来ています。それで、どこに行くかというと、県内の名所、旧跡を回って、おみやげをどっさり買って帰るというパターンが全国的にも多い。  このような中で日本に来ているインバウンドの中に、旅行のついでに医療サービスを受ける人々も結構います。中でも、検査医療が多いのです。検査医療は時間が短くて済むからです。その面で、日本の評判は高い。検査は彼らにとっては非常に重要で、自分の国では機械があってもいじれないとか、読み取れないとか、その先に送り出す病院がないとかということで、日本の大都市に来るので、検査機関は満員の状況です。もちろん、観光せず、検査だけで帰ってしまうケースも多いようです。これには特別なビザは要りませんので、短ければそれで帰ってしまう。  それで、今、世界中で大騒ぎになっているのは、医療観光をやろうというのです。日本でも、医療ツーリズムと称して、国が先導して始まっています。でも、医療観光はちょっと問題になっていて、自由診療ですからお金が桁違いに入ってきます。そうすると、現在やっている病院が非常に迷惑をこうむるというので、反対の声も出ています。日本医師会も反対の声を出しました。それに対して、厚生労働省も外務省も経済産業省も手を打って制限を加えています。しかしながら、適正にやれば、日本の持っている知見、技術を世界の人に与えられるという意味で、世界に貢献できますから、1つの流れになりつつあります。  実態的には、医療機関、観光ツアー等をコーディネートする人が事前に計画を立て受け入れます。今はこれをインターネットで簡単にできますので、一段と広がっています。病院ではなくて、そういう検査機関をつくって、そこで国際的に人を受け入れて、診断をすることは、旅行中に結果がわかることもあり、需要はとても大きい。その後、治療が必要になったときには、大学病院などの高次な医療機関への紹介を、国の資格を持ったコーディネーターがあっせんできるということで、広島にはこれがあることが広まれば、多くの国から人が集まってくるし、集まっていいと思うのです。  医療関係の方々だけではなくて、観光の方々にもよいのではないでしょうか。これは広島市のみならず、ちょっと時間があるときは半日のリゾートに船で行って帰ってくるとか、山のほうに行ってくるとかということをやりながら、楽しんで検査を受けて安心して帰るか、悪いところを治して帰る。こういうものをおやりになったらどうか。これが物すごい勢いでふえていまして、こういう検査の拠点をつくるということで、地域の活性化につながるのではないかと思います。形体的には、ホテルと合体した施設、リゾートと一体的なものなど、さまざまです。  これにはいろいろな問題がありますので、そこは注意しないといけないと思いますが、結果的に、広島に行くと元気になる、安心して帰ってこられると評判になれば、インバウンドは、爆買いインバウンドから健康インバウンドにかわるという意味で、私は真っ当だと思います。これからはインバウンドの行動パターンを改良して、この地域も元気になっていただきたいと思ったわけです。これが一つ目の話です。  データで見ていただくと、医療滞在ビザを必要とする人が最近の5年間で全国で19倍もふえました。国が目標に掲げる、年間に4,000万人来て、そのうちの1.5%ですから、30万~40万人ですごい数です。広島県には今、年間150万人でしょうか。話は外れますが、今、こういう人、特に富裕層を狙って、利益目的の検査機関が広まっているのに驚きます。要するに、東京大学とか京都大学とかの医学部が医者を派遣あるいは契約したり、検査を自由診療として請け負ってやったりすることを看板にしています。公的医療機関の役割、健康保険の意味に大きな問題を投げかけています。特に、地域の人々へしわ寄せにならないよう、地域医療への悪影響は排除すべきです。  次の話は、ロボット産業開発拠点をやっていただいたらどうかということです。  ロボット産業で世界のトップを走る日本ですが、広島県にはマツダがある。写真で見ていただくように、マツダのロボットは非常にすごくて、おにぎりを握る機械、仕分けして詰める機械、広島弁で「はい、こんにちは」と言うロボットをつくったりしています。もともとロボットを車の中に入れているのですから、お手のものです。一方で、広島大学と広島市立大学に4人の先生がいらして、非常に高度なロボットの研究をされていますが、まだ協働、連携されていなければ、せっかくの機会だから連携して、ロボットの産業拠点をつくったらどうかというのが私の思いつきです。  幾つかの資料で見ると、マツダが進んでいることがわかりました。こういうことは、各メーカーも必死ですから、企業と大学の協働で先端的なロボット開発をして、産業地域をつくることは、次世代に向けての策だと思います。どこにつくるかは後で考えればいいのですが、広島大学はちょっと遠いのですけれども、海田町のほうにマツダの研究所もありますし、メーカーもありますので、そのあたりに、ロボット研究の拠点をつくって連携してはどうかと思います。こういうことを通じて元気になるというのは、非常に部分的な話なのですが、結構目玉になるのではないかと思っています。  広島が元気になるにはどうしたらいいかということをじっと考えていたら、余り知恵もないのですけれども、成長力のある分野を思い切ってバックアップし、大きくすることが特に大切だと思い、提案しました。つまらない話で失礼しました。(拍手)
    5: ◯杉浦参考人 皆様、こんにちは。私は、東京都渋谷区役所、経営企画部の庁舎建設室長をしております杉浦と申します。行政の職員でございます。  本日は、このような場にお招きいただきまして、どうもありがとうございます。分不相応な身分ではありながら、渋谷区が庁舎を建てかえるに当たりまして取り組んだ事業のスキームについてお話しさせていただきまして、何かの参考にしていただければと思っております。それでは、よろしくお願いいたします。  まず、題が、民間のノウハウを最大限に引き出す庁舎建てかえの取り組みについてということなのですが、渋谷区は、昭和39年に旧庁舎が建築されました。ちょうど東京オリンピックが開催されるときに竣工し、同じ敷地内に渋谷公会堂というホールがありまして、こちらが東京オリンピックのときの重量挙げの会場になって、それがこけら落としだったというところで始まった建物なのです。  それが、関東地方にございます庁舎は、平成7年の阪神・淡路大震災のとき、揺れも震度1か2ぐらいだったので特段、被害はなかったのですが、その震災のときの様子を見て、庁舎の耐震機能を検討した結果、全然耐震機能が足りていないというところで、実は、都合9年間くらいをかけて補強工事をしたのです。ただ、旧庁舎の建物の形状がちょっと変わっていまして、少し平たい馬蹄形のような形をしていて、補強工事を簡単にできない構造だったので、9年もかけて巨費を投じてやったのですけれども、庁舎にとって必要な構造強度をとることはできませんでした。  一旦やりましたというところで、そのままもうしばらく使うつもりでいたのですけれども、そこに来て平成23年の東日本大震災がありました。補強工事が終わった後の庁舎でガラスが何枚も割れて、ちょうど震度5強の揺れに見舞われたのですが、一部の構造部材が破損するような、かなりの被害がありました。それをきっかけに建てかえの議論が割と急に高まったというところです。  東日本大震災までは、補強工事もやったし建てかえをしようという機運は余りなかったのですけれども、そのころは築50年近くたって、設備の老朽化という話もかなり進行していました。そこに来て地震に見舞われて、庁舎の建てかえという話が急遽浮上してきたというような背景がございました。  そのような状況でしたので、実は基金の積み立ても全くなく、予算を一体どうしようという問題があり、また、敷地の中に庁舎と公会堂が1棟扱いで建っていたから、庁舎に手を入れようとすると公会堂もやらないといけないといういろいろな条件もございまして、かなりの経費を必要とするという中で、民間企業のノウハウを引き出せば、少しでも安く建てかえができるのではないかというような話が出てまいりました。  事業公募、提案プロポーザルみたいなものは、当時からいろいろな自治体でも施行されてきたと思うのですけれども、どちらかというと、事業プロポーザルというよりはコンペのような向きのものが割と多かったと思っています。特に庁舎というのは、こういう面積でこういう用途でこういう部屋が何平米で何室あって職員が何人いてと、すごく細かい設計基準を持って提案を募集することが多いのですけれども、そのときはとにかく、民間企業のノウハウを引き出すことで一体どのぐらいの財政負担が軽くなるかを見たいというような話もありまして、民間側の知恵を最大に持ってこれるように、こちらから余り条件をつけないで出してみたらどうかということで、渋谷区役所の建てかえ事業手法のスキームの公募というのをやりました。  ちょうど平成24年12月に募集要項を公表し、2月に提案の締め切りをしたところ、5者の応募がありました。今申し上げました、条件をできるだけ緩いというか、付加しない形で、できるだけ民間の提案を自由に出せるようにするために、が最低限守ってもらいたいことというところで提案の条件を検討し、この公募の条件というところに記載したような大項目を出したのです。普通、この大項目の下にいろいろ細目が入る場合が多いのですけれども、渋谷区は今回、本当にここに書かれているだけの条件で出しています。  実は、区役所の位置が、ここに配置図を出しているのですが、ア、総合庁舎・公会堂とある図の1番上にある1番大きなまとまりが区役所と公会堂があった敷地です。約1万2,000m2あったのです。そこに、ちょうど敷地の地続きで、今もあるのですけれども、渋谷区立神南小学校があります。さらに、その敷地の向こう側には区役所の分庁舎があったということで、実は、ここに渋谷区が保有する土地が、都合2万m2を超えるぐらいあったのです。  当時、その土地の有効活用ということで、容積率の緩和という、例えば公開空地をつくって高いものを建てるという規制緩和のほかに、隣の敷地の余った容積を持ってくることができるというような制度がちょうど始まったころで、それが使えるのではないかという発想があり、せっかく有地がここに3つ並んであるのだから、これも1回検討してもらってみようということで、このときの公募の条件として、アからウを合計した容積は全体で使ってもいいという条件を出しました。ただし、庁舎と公会堂はアの中に入れてくださいというようなことです。  庁舎の設計条件としては、6つです。免震構造、省エネルギー、環境負荷低減、維持管理費──コスト縮減、BCPの確保、規模は旧施設と同等です。本当にこれだけで出していきました。  その結果、さっきも申し上げましたが、5者応募がありました。不動産系の大手のディベロッパーと設計事務所という企業グループが5団体という形での公募でした。  実際にこのうちから1者を選んでいるのですが、きょうは、こういう事業提案の公募をかけると、どういう提案が出てくるのかを御紹介するといいと思って、とりあえず5案の概要を御説明したいと思います。  まず、A社というところは、お隣の小学校の容積移転ということで、学校というのは、校庭があって物すごく容積が余っているのです。中心市街地においても、公立の小中学校の設置が求められますから、かなり便利な場所にもたくさんあるのですけれども、ここでは、その土地の使える容積に比べると随分余っているので、まずこの小学校の容積を移転します。さらに、土地を有効に活用するために、飛び地になっていた分庁舎の土地をつけかえた形で敷地を大きくして、面積を確保するというような提案がA社の提案でした。このことによって、46階建ての高層マンションをつくります、の財政負担はゼロでいいですということでした。財政負担というのは、庁舎と公会堂を建設する費用のことなのですけれども、それは事業者側が全部出しますという内容でした。  2つ目のB社については、土地のつけかえだけで33階建てのマンションができますという提案でした。さっきのA社は容積も移転するので46階建ての住宅棟ができます、次のB社は33階建てですというのはどういうことかというと、高いマンションができればできるほどディベロッパーの利益といいますか、事業収支の収入のほうが大きくなるわけですから、当然それだけのものが提供できることになり、たくさん持ってきたほうが多くの住宅がつくれるわけで、その分お貸しする土地の価値が上がってくるということになるのです。金額は控えますが、A社とB社の提案の中で、やはり、住宅の分譲床の多いほうが定期借地権の提案の価格が高くなるという構造になっています。ただ、ここのいいところは、ちょっとコンパクトになっている分、工期が短いのです。当時、庁舎は早くつくりたいという希望もすごくありましたので、そういったところはB社のポイントだったというところです。  次に、C社は、使ってもいいと言った区立神南小学校と分庁舎の分は使いませんという提案で、5者の中では最も工期が短かったのですけれども、庁舎と公会堂の規模も最も小さかったです。かつ、建築計画はすごくシンプルで、庁舎と公会堂と住宅が、ほぼ縁が切れた別棟の提案でした。  次は、D社です。こちらはA者のやり方にかなり類似していて、学校の容積を移転して、かつ、区役所の分庁舎の土地をつけかえて、住宅を超高層化するという提案でした。  最後にE社は、3敷地を連続して容積を移転するという手法も可能なので、この会社は、3つの敷地を全部使い切って、建物の規模としては最も大きい規模だったのですが、庁舎と公会堂とマンションが同一の建物で巨大化するということで、最も高度利用が図られるというような提案でした。これは、住宅の階数もさることながら、その他の施設も最も大きい規模で、かつ、定期借地権の提案の価格も一番大きいものであったということです。  結論は、一番何も使わないC社の案を選んでいます。これは、の中に、この提案を選ぶに当たって外部専門家を交えた庁舎問題検討会という専門家の会議を立ち上げたのですが、その中で議論した内容を踏まえて、一番コンパクトで他の敷地の容積も使わないというところを持ってきました。最後は渋谷区の考え方ということになるのですが、物すごくわかりやすくこの提案の結果を解釈するとすれば、より多く容積を差し出したほうがより高価な見返りがある、定期借地権の価格は容積を上げれば上げるほど当然高くなっている、ただし、今回のように隣地の有地を使うということは、そこの容積を先に持ってきてしまっているわけですから、その学校や分庁舎を将来建てかえるときには当然制限になるというようなことで、より高い価値で資産を処分していくのか、あるいは、将来隣地の活用を考えるのかということを比較検討していくべきであるというような御意見をいただきました。  ちなみに、このときに御意見をいただきました外部の専門家というのは、こちらにも書きましたが、経営コンサルタント、公認会計士、弁護士、あとは建築意匠の専門家と構造の専門家と環境分野の専門家という形でやっていただきました。この方々は、庁舎はもうできているのですけれども、庁舎と公会堂セットの建てかえの中では公会堂の建設が終わるまではアドバイスをいただくような形で参画していただいています。  それで、結果としては、公募からちょうど1年後に、C案で事業者を決定いたしました。選定の過程では渋谷区議会の中に特別委員会が設置されまして、その特別委員会への説明や質疑等でやりとりがあった結果、議会がちょうどその選定の前の平成25年9月に、庁舎の建てかえを求める決議という形で、意見を議会から頂戴いたしまして、この決議が決定打になりまして、としては建てかえをやっていくことを決めたという経緯がございます。どの案を選ぶかは、もちろんが検討し、選んでいったのですけれども、建てかえを本当にやるかやらないかについては、この特別委員会の設置とその中での決議を受けたところです。ちなみに、この特別委員会は、名称を庁舎問題特別委員会といいますが、設置の段階では建てかえは決まっていなくて、さらなる補強工事をするのか、建てかえをするのか検討するというたてつけで設置されたものでした。  簡単に申し上げますが、このような形で公募した事業者とは、その後どうやって事業を進めていったかという御説明をさせていただきたいと思います。  平成25年12月に優先交渉権者として事業者を選定し、三井不動産を代表企業とする企業体なのですけれども、平成26年3月、予算議会であります第1回の定例会議でと事業者の基本協定について議案として御議決をいただきまして、協定を締結しました。協定の内容は、が定期借地権を設定し、事業者がそこを借りるのですが、事業者が庁舎、公会堂、分譲マンションを整備する。この庁舎と公会堂は事業者の費用負担で建設し、竣工後、へ引き渡す。定期借地権の面積が約4,500m2で、定期借地は約70年。借地の上に建つのは民間の分譲マンションであるというもので、転定期借地権というものをつけた分譲マンションを建てています。定期借地権の評価額は、当初154億円ということでした。この154億円で当初は庁舎と公会堂を建設するというスキームです。  今の話を図式化したものが、事業の流れにありますので、簡単に順を追って御説明します。フェーズ1で、まず、が敷地の一部に4,500m2の定期借地権を設定します。定期借地権の設定については、議会の議決をいただきました。  フェーズ2として、貸し付け契約をするわけですが、そこから民間事業者がマンションと同時に庁舎、公会堂を建設する。は、この建設工事には一切関与しないで、全て民間事業者が建物を建てる。  フェーズ3として、庁舎と公会堂ができ上がりますと、庁舎と公会堂の建設費用をがもらってが建設費を支払うのではなくて、はでき上がった建物の引き渡しを受けるというスキームです。新庁舎は昨年の10月に引き渡しを受けています。ちなみに、公会堂は、今度の5月に引き渡しを受ける予定です。それを合わせて、現在は定期借地権の価格が211億円ですので、211億円分の定期借地権の権利金と土地代の合算211億円を物として受け取るというスキームをとっています。これは、私ども、いろいろな方々に御説明するときに、代物弁済類似の手法というふうに説明させていただいています。PFI法とか市街地再開発事業とか法的手法には基づかず、事業者との協議をした結果、代物弁済方式をとるということで、まず、債権債務は借地契約なのです。一般定期借地権契約を結ぶ。そこで211億円の70年分の定期借地権の借地料が決まる。その地代の支払いを物納する契約を結ぶという内容が、今回の渋谷区役所の建てかえプロジェクトの事業スキームになっています。  フェーズ4は、一般的な話ですが、定期借地権というのは、借地借家法で期間終了後は返還が原則ですので、今回、渋谷区の土地も70年後に更地で返還するという内容になっています。ちなみに、マンションは分譲マンションで区分所有になりますので、区分所有者の管理組合が積み立てた解体準備金でマンションの解体をしていただき、最終的には土地を借りている三井不動産から土地を返還していただくという内容になっています。  今のが事業のスキームです。この事業のスキームで、やっていていろいろ苦労したのですけれども、やはり入り口の公募の段階で物すごく雑というか、物すごく大ざっぱに、規模は前と同じくらいで構造機能とか環境機能とかを考えてつくってくださいと言っているだけだったので、結局、その協定を結んだ後に事業者と行政とでやりとりをして設計を積み上げていく段階で要求水準というものを締結していくのですけれども、ここのところで、事業者は当然といえば当然ですが、できるだけ安いものをつくりたがりますので、としてはこれが欲しいというものを言いつつ、事業費の中での協議をしてまとめていきました。順番が普通と逆ではないかと思いますが、そういうことをやっていく必要がありました。  また、この手法をとると、まさにこの場が予算特別委員会ということですが、現金の歳入歳出が発生しないので、予算について議会に諮る機会がないのです。決算議会で、借地の部分が資産で少し出てくるぐらいなのです。事業の導入の段階で議会とも随分協議をさせていただいたのですが、やはり、適宜、経過を報告する必要があるだろうというところで、基本協定の中に定めたのですが、はこの事業の進捗にあわせて、事業契約を定めるためにその内容を議会に報告するということで、議会の御審議をいただくようなスキームをとりました。  それから、事業リスクというところで、今回の建てかえのやり方としては、全て事業者が建設費を持っていただくというスキームをとるところから、リスクは原則事業者負担ということを決めました。社会常識的に、地中障害とか土壌汚染とか地主の責務があるものは当然、が負担しなければならないのですが、そうではない多少のインフレあるいは想定外の建設費の増については、全て事業者が持ちなさいということにしています。それを担保するためにも、ここに書いてあります事業取引の妥当性、庁舎の評価額が定期借地権の評価額と等価であることを第三者が評価するというところで担保をとり、最後のところにありますが、定期借地権の評価額が庁舎の評価額を上回った場合、差額をに支払うという定めをとりました。これは、先ほどの代物弁済の話に戻るのですが、あくまでもは公有地を適正に処分するという責務を負う中で、借地料が契約時よりも安くなるとまずいのです。当然、借地分をしっかりいただかなければ、その公有地の処分という点で大きな瑕疵になってくるのです。もし、安い庁舎と公会堂に仕上がってしまった部分は、不足分は現金を払っていただきますというような内容の取引をし、かつ、その価格をお互いに勝手に取り決めないように、第三者機関にその価格を評価していただくという形をとって進めることにしました。  この事業の特徴として、スキームの根幹となるつくり方については、こういった先例がなかったので、事業者と行政でかなり密な協議をしました。取引の妥当性のあたりは事業者の反発も非常に大きく、はあくまでも公有地を処分するからこういうたてつけが必要だというところで再三協議を重ねてつくり上げました。そして、そのスキームについて議会に報告して御理解いただいたという運び方をしました。その部分は、定型のスキームにのっとってやるよりも苦労の多いところではあったのですが、結果的に、私はこのスキームをとったことで、は随分もうかったと思っていまして、今回の建てかえ事業についてはうまくいったのではないかと思っています。  当初、建てかえを急にすることになり、そこから庁舎ができるまでの事業期間が非常に短かったことも、今回の事業の特徴ではないかと思います。議会の決議をいただいて建てかえにかじを切ったのが平成25年とすると、ここから5年間で新しい庁舎ができたというところでは、意思決定を早くしようという組織をつくってきたこともあるのですけれども、の公契約のしがらみがない中で民間がどんどん契約を進めることができるといったところも、この事業の迅速化には多分かなり役立っていまして、簡単に言えば、は協定を結んで定期借地権契約をとっているだけなのです。それ以外の資金の調達であったり工事の発注であったりを民間企業のスピード感で進めることができたというところで、相当にスピード感のある事業を図られたことも評価の一つだと思います。  最後に、可能な限り自由な提案を求めるということで公募をとり、その結果、苦労した部分もあったのですけれども、より迅速で、遅延リスクや延期リスクのない事業化が図られたというところは、民間企業のノウハウを最大限に生かしたと言えるところかと思うところです。また、民間企業は設計段階で安くしようとすると言いましたけれども、民間企業は民間事業者としての収支計画がある中で、少しでも事業をスムーズにやるために取りやめたい部分が多い中で、行政側がくい下がって、これはどうしても必要な機能だという交渉を重ねていくためには、行政が偉い顔をし過ぎてもだめですし、全て民間に丸投げでもやっぱりだめで、このあたりは事業者と信頼関係を構築して話し合い、そして、最終的にはいいものをつくろうという目的を達成していくのがいいというところがあります。  先ほど申し上げたとおり、ともすると議会の関与が薄くなりがちな民間主導の事業ですけれども、これは後から議会への説明が不足していたとか、結果的に住民への説明が不足していたということになると、事業の停止リスクがあると思いました。ここは説明責任というところで、行政が民間事業者と一緒にやっていくときの一つのポイントかと思っていまして、やはり丁寧で正確な説明を適宜やっていくことが重要です。基本的には、説明しないよりは、して反対を受けてもこうやりたいと言っていくことで、結果的に事業をとめることなく進めていくことができるということを実感として持っております。  区役所は無事にこの1月に開庁しました。余談ですが、今回の建てかえ事業に建設費がかからなかった分、区役所内部のインフラに随分公費を投じました。大きいものがICT基盤を全面的に刷新したことと、もう一つは、全て新しい什器──事務用の机やカウンターなどを入れかえたことです。合算すると50億円ぐらい投じているのですが、それによって働き方改革にこれからどんどん力を入れていこうというところで、働く場所を選ばない仕事づくり、仕事ができる環境を整えて今後の行政課題に対応していくというところで、のワークスタイル改革にも貢献できたと思います。このスキームをとった結果、そういったことにも予算を振り向けることができたということも、もう一つ、副次的なところで事業の評価となると考えております。  本日は、このような機会を与えていただきありがとうございました。事業の紹介ということで、発言とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)   (閉会に当たり、委員長が、御礼の挨拶を行った。)  (10)閉会  午後2時43分 発言が指定されていません。 広島県議会 ↑ 本文の先頭へ...