第3に、農業・農村対策について、1つ目は、
酪農家支援についてです。
酪農経営が危機的状況にあります。
輸入飼料価格が2倍になりました。
自給飼料生産も物価高の影響で、燃油、肥料、機械の修理代に電気代も上がり、大幅なコスト増になっています。生乳価格は、指定団体と
乳業メーカーの年1回の交渉で決まります。コストの大幅な増加が直ちに生乳価格に反映できない仕組みになっています。
昨年は生乳1キログラム当たり30円の赤字になりました。1日に1トンの生乳を生産する酪農家は毎月90万円、1年で1,000万円以上の赤字となります。11月に指定団体と
乳業メーカーの特別交渉が行われ、1キログラム当たり10円の
生乳価格引上げが行われましたが、差額はまだ20円あります。
先日、NHKで「白バラ牛乳がピンチ」という番組が放映されました。現状のままでは3年以上経営を続けられないとした酪農家は9割近くありました。牛のミルクは毎日出ます。赤字だからといって生産を止めるわけにはいきません。
私が聞いた酪農家の声は、「世界の急変、様々な要因で
生産コストが上昇したときの
セーフティーネットが酪農にはない。このままでは廃業せざるを得ない酪農家が出てくる。コストに見合った乳価に引き上げられないのなら、国が補助金を投入してほしい」とのことです。県の支援策でようやく息をつないでいる状態ではないでしょうか。今こそ国の政策の出番です。この緊急事態を乗り越えるために、国の補助金を投入するとともに、
生産コストが販売価格を上回ったときの
セーフティーネットを構築するよう国に要望していただきたいと思います。
また、輸入飼料が不足して価格が上がっているので、
自給飼料生産を増やすための支援制度を県としても設ける必要があるのではないでしょうか。知事の所見を求めます。
2つ目は、中山間地域にある
Aコープ関金店等の
JA系スーパーの閉店に対する対策についてです。
JA鳥取いなばのトスク全店舗の閉店に加えて、
JA鳥取中央のAコープ4店舗に直営のポプラJA3店舗の閉店方針が明らかになりました。閉店による住民への影響が小さい店舗、あるいは後継の事業者が見込める店舗など店舗ごとに状況は違うと思います。JAの閉店方針が変わらない場合、
Aコープ関金店や
トスク若桜店など、農村、中山間地域で商圏となる人口が少ないなど、条件不利な地域にある店舗については、代わりになるスーパーが近隣にありません。移動販売に移行するのは最後の手段だろうと思います。できれば他の事業者が営業を引き継ぐなど、店舗維持が求められます。
中山間地域等の買物環境を維持するために、県と地元市町で事業継承に必要となる経費に対して、
補助金交付等の支援を実施してはどうかと考えます。また、8月には閉店という方針も出ているので、スピード感を持って市町や関係者と協議をし、方向性を出して5月か6月の補正予算には必要な予算を計上していただきたいと思います。知事の所見を伺います。
第4に、
国際バカロレア開校についてです。
国際バカロレア教育、IB教育の開始と
教職員集団について伺います。倉吉東高で今春から
バカロレア1期生が入学し、令和6年度からIB教育の授業が本格的に始まります。IB教育は、知の理論や英語と数学の授業を英語のみで行うなど、特色あるカリキュラムにより、高度な
論理的思考力や表現力、
コミュニケーション能力が身につくとされています。世界の
大学入学者選抜に使われている
大学入学資格、IB資格が取得できます。IB教育の中から社会をリードする人材が輩出されるとともに、他の生徒にも好影響がもたらされることを期待いたします。
国際バカロレア教育が始まることについて、教育長としての所見を伺います。
IB教育を継続し、より充実させるためには、
教職員集団の人数・
年齢バランス・適性などが重要な要素となります。倉吉東高全日制は、1学年定員200名、5クラスの中規模校で、教員数が47人、このたびの
バカロレア開校に当たって
ネーティブ教員が1名増となり、2名になると聞いています。通常、教員は1人週18時間授業を受け持つようですが、
バカロレアの場合は授業準備等に時間を要するので、1人週12時間授業が適当とされているようです。
教職員集団の構成については、学校の状況を聞き取りながら、最大限の配慮が必要と思います。教育委員会としてどのように取り組むのか、教育長の所見を伺います。
以上で壇上の質問といたします。
◯議長(内田博長君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)興治議員の一般質問にお答えを申し上げます。
まず、
企業物価指数、あるいは
消費者物価指数、その数字を上げられまして、それでこの
企業物価指数の急激な上昇や、あるいはこの
消費者物価指数につきまして、低所得者の方々への対策が必要ではないかというお尋ねがあり、住まいる支援事業におきましても諸価格が上がっているので見直す必要があるのではないか、また、就職の観点で、人材不足を補う意味で、
未来人材育成基金というようなお話がございました。
とっとり住まいる事業等につきましてはくらしの安心局長の遠藤のほうから、また、
未来人材育成の基金につきましては
交流人口拡大本部長の中原のほうから、詳細はお答えを申し上げたいと思います。
議員のほうでお話がありましたように、今急激に
企業物価指数も、また
消費者物価指数も上がっているという状況でございまして、足元のことで言いますと、令和5年1月現在での対前年比でいきますと、
企業物価指数が9.5%の上昇、それから
消費者物価指数は4.3%の上昇であります。
企業物価指数はいっとき1割を超える上昇幅を見せていましたから、少し頭打ったかなという感じはありますが、それでも対前年1割近い伸びになっていますし、
消費者物価指数も上がり続けていて、かえって鎌首をもたげた形になりかけていると。少し警戒を要する状況ではないかという感じですね。
これの主原因は何かというと、やはり光熱水費、さらにたどれば
エネルギー需給の関係、そういうことで戦争の問題があったり、あるいは今のコロナ禍における世界情勢の経済のことがあったり、そうしたものが複合的にありまして、まずは光熱水費のところが大きい。特に
企業物価指数を見ますと、49%の上昇を電気だとかガスだとか水道の
料金値上げ、恐らく電気、ガスの
料金値上げというのが大きいということですね。これが直撃をして、こうした
企業物価指数の上昇につながっていますし、
消費者物価指数も一番大きなのはこの光熱水費の上昇のところであり、そのほか食料品とか、そうした値上げ分というのが続いている感じになっています。
そういう意味で、ここのところの対策の根幹は、一つはこの光熱水費のところにあるのだろうとも思えるところでございますし、また、企業の頑張りを何とか支えたり、低
所得者対策というのをしっかりやっていくということになるのではないかと思います。
そういう意味で、本県でもこの企業の対策につきましては、この原油資源高、あるいは物価対策の特別な対策事業を打っておりまして、融資面でも打たせていただきました。これにつきましては、無利子にもなる融資を出させていただきましたところ、今、好調に出ているところでございます。現状では264件、45億円という急激に需要があるという感じになっているところでございます。
あわせまして、なかなか資金の借入れが難しい企業さんもいらっしゃるわけでありまして、むしろどうやってこの例えば光熱水費が上がるのを抑えるかとか、あるいは新分野に進出をして、販路を拡大して収入を増やしていく、そういうチャンスをつくるかというのは焦点になると思います。そういう意味で、補助制度をつくり、議会の承認も得て、たび重ねて増やしてきているところでございます。合計で今20億円を超える予算額になっていまして、これもかなり需要の多い
補助メニューになってきました。
例えばバルコスさんであれば、こちらはLED化を進めることによって経費の抑制を図ろうというようなことをされていますし、また、同じ倉吉の久米製材所さんにおきましても、今までは通常の製材事業、事業者向け的なことだったのですが、ドゥー・イット・ユアセルフ、DIYに進出をしようと。そういう意味で、eコマースなども活用してやる方向へ展開しようと、こういうような様々な企業のチャレンジ、幾つも出てきていまして、これを今補助金で応援しようというふうにいたしているところであります。
また、低
所得者対策につきましても、いわゆる
生活困窮者対策、
自立支援事業というもののてこ入れを図らせていただいておりまして、これによって就業支援の支援員による助成であるとか、それから様々な生活等の相談支援、こうしたものも今、展開をしておりまして、これについては今議会にも出ていますが、市町村のほうで
生活困窮対策を拡充できるような人員の増ということも図らせていただいております。
また、特に光熱水費ということがあるものですから、その光熱水費に着目をしました
物価高対策で、市町村が助成をされる場合に私どものほうでも2分の1の支援をして、要はパー・パーでそれぞれ同じように力を入れてやっていく、そういうことを
市町村選択で行う事業を計上させていただいておりまして、これも全市町村で活用していただいているというような形になっております。
また、あわせまして、この本会議にも提案をさせていただいていますけれども、プッシュ型の給付金とか、それから5万円、10万円と言われるああいうメニューですね、これも県のメニューを通じまして今、提供させていただいているところであります。こういうふうに企業とか、それから
消費者向けの対策というのを取らせていただいておりますし、それから、問題の光熱水費につきましては、政府のほうで今ちょっと方向転換が出てきたように思います。
実は御案内のように、政府として補助金を出して、この
料金値上げ、電気料金の値上げやガス料金の値上げを抑えようという施策を打ち出しておられました。これによりまして、
企業物価指数は1.4%増、それからまた
消費者物価指数も1%増台に抑えられるだろうと。これは今年の経済見通しで政府が示している予測であります。こういう補助金を投入して、光熱水費を抑えてというもくろみだったのだと思いますけれども、ただ、御案内のように、中国電力も含めて、今値上げ申請を相次いでやっていまして、その値上げ幅が結構大きいと思います。
そういう意味で、この政府の助成というものが相殺されてしまうのではないかというような危惧を持っていたわけでありますけれども、2月24日に岸田総理が公式に発言をされておられまして、4月1日で電気料金の値上げをするというのをスケジュールありきでは考えないと。その電気料金の値上げが必要かどうかについては、丁寧かつ慎重に審査をしていくと。それで、3月中にこうした対策を取りまとめるということをおっしゃいました。
ちょっとこの趣旨はよく分かりませんが、額面どおりそれを受け止めれば、電気料金が上がるということがかなりあって、片方で政府が補助を入れてこれを抑えるということは言っても、結局突き抜けてしまいかねない状況だったものを、やはりそこは電気料金の値上げの審査をきっちりやって、それを調整するのだというふうにも聞こえるものでございまして、この点は注目したいというふうに思っております。
それだけでも収まるかどうかというのは、
正直現場感覚ではまだ力不足感があるかなと思っていまして、今、仲間の知事とも急遽、先週ぐらいから話合いを始めているのですが、
全国知事会としても様々な物価や、あるいは燃油高等の対策をもう一段やってくれと。そういう生活困窮や企業が追い込まれるような状況に対する緊急対策を
全国知事会として近々に求める必要があるのではないか。これで今、大体一致しているところでございまして、その取りまとめに入ったところであります。かなうならば、この議会中にでも政府に対する要請、あるいは政界に対する要請というものを我々としては緊急行動を起こそうかと、今こういうふうに考えているところであります。
いずれにいたしましても、私たちは今これで任期を閉じようとしていますが、この問題は残念ながら次の任期の皆様に引き継がれるべき課題となりそうでありまして、また新しいメンバーで、今回予算をまずは成立させていただければと思います。それによってかなりの対策ができますが、足らざるところについてはなお精査をしていく必要は残しているのではないかと思っております。
それで、とっとり住まいる事業等については遠藤のほうから申し上げますけれども、例えばNE-STは、実は、かなり好調です。今3割ぐらい新規着工のうち使っていただけていまして、これは皮肉なものでありますが、電気料金とかが上がってくるわけですね。そうすると、補助金を入れて、それで諸資材の価格が若干上がりますけれども、要は先に性能のいい家を買うわけですね。後々電気料金が要らなくなると。つまり、光熱水費、暖房代だとか冷房代が節約できると。これでペイするという
ビジネスモデルをつくって補助金を設定しているわけです。これが結局、電気料金が先々安くなるのが、電気代が高くなれば、それだけ実は回収できる年限が縮まるわけでありまして、補助金以上の効果がどうもあるようでありまして、好調であるという状況であります。
また、
未来人材育成資金につきましても、このたびお認めをいただければ理美容の皆さんとか、歯科技工士なども拡充をしてまいります。今後ともそうした意味で適切に対応してまいりたいと思っております。
結婚支援につきましてお尋ねがございました。これについて、えんトリーという我々独自の制度には、法人会という民間の
ネットワーク組織のほうでこの役割を担っていただいているという特徴があります。興治議員だったと思いますが、米子と鳥取だけでなくて倉吉でもこうした機能をということで、今全県的に東・中・西でも展開できていまして、200組というお話がございましたが、ある意味その手応えは出てきていると思います。
ただ、ここに来て、全国では出生数が79万9,700というショッキングな数字にこのたびなりまして、世の中は大騒ぎをしているところであります。本県も一応、全国で一番どうも頑張った県になったようで、数字は一番いい形にはなっていますが、それでもやはりパートナーと巡り会うところが最大のネックになっていると思います。このことは、やはり議員のほうでも御指摘がございましたが、もう一段力を入れるべき分野として今後の課題として残すべきマターではないかと思います。
御指摘いただきました島根県さんのケースでは、実は、えんトリー的なことはこちらのほうが先にやっていたと思います。あちらのほうでは、しまコというシステムを入れられたわけであります。それが平成30年だったと思います。ただ、それより前に、
はっぴぃこーでぃねーたー「はぴこ」というのをされていました。これはいわゆるお見合い型のやつですね。仲人さん的な
ボランティアで、この仕組みが早めに導入をされていまして、実は
カップル成立の状況を見ていますと、この「はぴこ」によってかなり数が稼がれていると。「しまコ」という、えんトリー的なものよりもそちらのほうがどうも効果があるのではないかということですね。
私どもではこのたび縁ナビという
ボランティアの活動が始まりました。これによりまして既にカップルも誕生していまして、269組カップルができて、最後にゴールインされた方も9組であります。まだ始まったばかりですけれども、やはりこういうような人が絡んだほうが多分いいのだろうと思うのですね。考えてみれば日本もお
見合いシステムというのがもう古来ずっとありまして、それによって結婚するかどうか迷っているところでも、出会いの場を周りがセットして、ある意味流されるように結婚していくということが日本社会の中ではあったわけでありますが、どうもそういう感性がやはり日本人の根底にあるのかもしれませんし、特に今草食系とか言われる若い方々、そういうような時代背景の中では、人が関与したほうをむしろてこ入れするというのも今後のやり方かなというふうに思います。
今、取り急ぎ、新年度向けにはコンシェルジュという仕組みをお願いしています。これは市町村でもいろんな
婚活イベントなどをされていまして、そういうものと、このえんトリーのシステマチックなやり方とを結びつけるものでありまして、まずはこれをやってみようかというふうに関係者も言っていますので、皆様のほうの御理解をいただければと思いますが、さらにそうした縁ナビ的なやり方を強化したり、いろいろと工夫をしていく必要があるのではないかと思います。これは御指摘のとおり、まだ足りない部分だろうと思います。
次に、酪農についてお話がございました。
これにつきましては、議員のほうでも現場の声も聞いていただいた、そうしたお話もあったわけでございますけれども、これは今、日本全国で何が起きているかというと、この間の「
クローズアップ現代」が非常に衝撃的で、その後、山陰のローカルニュースもNHKで取材番組が流れたりしまして、若干ちょっとこれは混同したところもあって、関係者の中には実は当惑もあるというのは、ぜひこの際、申し上げておきたいと思います。「
クローズアップ現代」で流れた全国の状況からしますと、北海道が取り上げられていたわけでありまして、生まれたばかりのぬれ子の牛まで殺さなければいけないと。そういったことで、今、国のほうも助成制度を始めて、1頭当たり15万円払うということですね。
生乳をそのまま捨ててしまうということが現実に起こっているのですが、北海道の生産規模は私どもの100倍ぐらいあります。もう桁違いに大きなところでして、それでこの間、政府のほうの農政の若干失敗ぎみなところだと思うのですが、割と拡大路線を取ったのですね。
クラスター事業が特にその典型だと思います。そういうもので、生乳の消費量はそんなに伸びない中で、片方で今、TPPもありまして、海外から一定程度入れてくる加工品なども考えなければいけない。そういう中で、ただでさえ難しいところに今餌代の高騰ということがのしかかってきて、経営が困難になったと。今、水準調整を全国的にしなければいけないという状況にまでなっているということです。これは北海道に限らず、全国報道でも千葉県だとかいろんなところでそうした悲鳴が上がっているということです。
本県も今年度の当初ぐらいから同じ悲鳴は上がっていまして、そのときに議会の皆様と御相談申し上げて、独自の救済事業というものをさせていただいたわけです。これは従来の支援に比べますと桁違いの支援になっていまして、これで議員がいみじくもおっしゃったように、取りあえずは経営がすぐに倒れるというところはまだ1件も出ていないというのが本県の状況です。ただ、非常にかすかすのところで、ううんというところも見え始めてはいますけれども、ただ、ほかの地域とは大分違った今、展開になっていて、その点はうちの酪農家団体もよそに行くと、どちらかというと羨ましがられるというのが実情だそうです。だから、これはうまくいっていますので、続けたほうがいいのだと思うのですね。
ただ、これで足りるかどうかということがこれからの課題になると。今、議員がおっしゃったように、当座、県も頑張って何とか支えているけれども、いつまでもこれはもたないだろうから、もう3年もつかどうかというお話が出てくる。その意味で、国のほうでも所得補償的なことを考えてくれるべきではないか。これは我々もそういうふうに思いまして、昨年末、11月でしたか、国のほうにそうした趣旨の要望もさせていただいております。
あとまた、配合飼料などの補償制度につきましては、新年度はそれが発動できないような状況に今なりかけています。というのは、価格は高止まりするものですから、要は価格が上がっているときに発動されるものであれば、価格が高止まりして一定になりますと発動されなくなるわけですね。この辺が実はいまだにちょっと農林省も明らかにしていなくて、国会でもこれは議論を呼び始めています。こういうようなことなどが新年度に向かって積み残されていく状況がありまして、先ほど申し上げました
全国知事会の横のネットワークでもこうした課題について取り上げて、やや国に申入れもしなければいけないのではないかというのが現状でございます。
また、飼料生産のことですね。これについては国のほうの
クラスター事業を活用しながら、今各地で取り組んでいまして、倉吉も含めてやっていただいているところでございますが、ただ、それについてさらに追っての政策を打つかどうかについてはまた現状も見て、今後の飼料価格の動向だとか、それから生産現場の実情なども見ながら検討していくべき課題として今まだ残っているというふうに御理解をいただければと思います。
最後に、Aコープ関金につきましてお尋ねがございました。これについては何らかの支援が必要ではないかというようなお話でございます。
まず、トスクで一斉に9店舗の閉店という報道が出まして、2月9日に私ども庁内での対策チームを立ち上げさせていただき、それからさらに中部のほうの鳥取中央についても同様の報道がございまして、まずは2月21日にJAさんにも入っていただく、それから地元の市町村にも入っていただく、そうやって一堂で話し合う場づくりをしようと、協議会を立ち上げさせていただきました。今は個別サイトごとに話合いが始まっています。正直申し上げて、それぞれで状況は大分異なると思います。それぞれに対応した対策というのを考えなければいけないわけでありますし、その一番の当事者になってくるのは、恐らくJAというよりも地元かもしれません。
JAさんの状況をこの間もいろいろと伺っていますが、かなり持ち出しをしながら、組合員の集まりでありますので、地元に必要ないろんな給食事業だとか福祉のことも含めまして対応していただいている中で、もう支え切れなくなったというのが現状のようでございまして、仮にJAが何らかの形でこのまま関与を続けられるとしても、やはりシステムを変えていかないと持続可能な形にはなりそうもないという状況であります。
それで今、市町村長さんのほうにも何らかの対応をそれぞれで考えるなら県のほうも協力していきましょうということを呼びかけているところでありまして、今それぞれの話合いが具体的な、例えばスーパーなどを経営する流通業者などとも一緒になりまして、流通小売と協議も始まっているということであります。決していい話ばかりでもないと思っていますが、ただ、出口はつくっていかなければいけないのだろうと思います。
興治議員も以前取り上げられましたけれども、なだて明るいノーソンという、そういう選択肢もございました。あの場合は平成29年にJAの生活センターですかね、店舗があったものが閉店をするということになる中で、地元の皆さんが言わば元気を出されまして、そういうものを続けていこうと。それで、半年余りたって8月頃に、店舗の形態を変えて再開をされるということになり、その際にコミュニティーセンター的な機能を併設されたわけであります。そうした事業展開につきまして、私どもの令和新時代創造県民運動などの助成制度も活用していただいたり、クラウドファンディングというようなことをされたり、いろいろと苦労をされて、今そうした機能の継続を図っておられる。こんなような例が、例えばあるわけですね。
また、湯梨浜町のゆるりん館というところは、事実上は町が第三セクター的に会社組織をつくられまして、店舗経営と併せてそのほかのコミュニティー機能なども併設をしながら形を変えて、ちょっと時間はたちましたが、再オープンされるということをされたわけであります。こういう様々なバリエーションも含めて、単純な事業承継以外のことも含めたことをそれぞれで地域のモデルをつくってもらう必要があるのではないかなと思っております。
非常に厳しい切迫した状況に一気に変転してしまったわけでありますが、ただ、幸か不幸か本県にはいろんな解決例もあるのも事実でありまして、そういうものをいろいろと参考にしていただいたり横展開したりしながら、そのとき広域団体としての我々県はどういう貢献役を果たすのかについて真剣に考えていきたいと思っております。これも残念ながら新年度に引き継がれるべき課題になりそうでありまして、新しいメンバーの方々にもこの解決にぜひ汗をかいていただきたいと思っております。
◯議長(内田博長君)遠藤くらしの安心局長
◯くらしの安心局長(遠藤淳君)住まいる支援事業と、とっとり
健康省エネ住宅、NE-STの補助単価の見直しについて、補足の答弁を申し上げます。
とっとり住まいる支援事業は、平成26年度に制度を創設しまして以来、業界の皆様の要望に応えながら、様々な制度拡充を行っているところでございます。現在、県内の新築戸建て住宅のうち約4割で活用されておりまして、県産材の需要拡大、県内工務店の受注拡大など、地場産業の活性化に大きく寄与しているところでございます。
平成27年度と比較しますと、県内の資材価格のほうが約3割程度上昇しておりまして、これに伴い住宅の床面積当たりの建設工事費も上昇しているところでございますが、令和3年度は空前の低金利を背景に、県内の新築木造戸建て住宅のほうが平成27年度以降で最多の着工戸数ということになっております。近年、家族構成等の変化によりまして住宅のコンパクト化が進んでおりまして、平成27年度と令和3年度を比較しますと、1戸当たりの床面積が1割程度減少をしております。その関係で、1戸当たりの工事費は約4%程度の上昇という状況になってございます。
こうした状況に工務店がどのように対応されているのかということについてもお尋ねがございましたが、大半の工務店では契約時の資材価格で契約をする、あるいは物価上昇分を予備費としてあらかじめ予算に見込んでおくなど、物価上昇によるコスト分は契約額に転嫁をしておられるという状況でございますが、中には着工までに期間が空いたり、あるいは予算超過ということで、予算の増分を工務店で負担をされたりというところもあるように聞いているところでございます。
また、とっとり
健康省エネ住宅、NE-STでございますけれども、先ほど知事からもお話がございましたが、取り組む事業者のほうも増えておりまして、昨年度、令和3年度には新築木造戸建て住宅のうちの2割でしたが、今年度は3割まで伸びてきているところでございます。このNE-STも資材価格の上昇によりまして断熱工事費のほうが上昇しておりますが、電気料金の高騰によりまして、令和2年度時点の試算では光熱費の削減により、断熱工事費の割増し費用を回収できる年数が15年でしたが、これは現在14年に短縮され、逆に優位性が高まっているという面もあるところでございます。
国は令和4年度補正予算、そして令和5年度当初予算で新たな省エネ改修に係る助成制度を創設されてきておりますので、こうした国の制度拡充を踏まえまして、引き続き業界の声を聞きながら、制度の利用拡大に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
◯議長(内田博長君)中原
交流人口拡大本部長
◯
交流人口拡大本部長(中原美由紀君)私のほうからは、
未来人材育成奨学金支援事業の周知徹底と制度拡充について、補足の答弁をさせていただきます。
未来人材育成基金は、平成27年度に県と産業界の出捐によりまして設置したものでございます。若者のIJUターンですとか、県の産業界を担う人材確保を目的としまして、県内に就職する大学生等の奨学金の返還金を助成しております。平成28年度以降、業界の要望を受けて対象業種を拡大するなどして運用してまいりました。この制度は国の要綱に基づきまして、特別交付税措置を受けて実施しております。大学等在学中の若者のIJUターン就職を決めるインセンティブとなるよう、原則として県内就職前の大学生を認定して支援対象とするスキームとしております。
今年度、制度を活用した方を対象にアンケートを実施しましたところ、回答者の7割以上の方が、当該制度が県内就職のきっかけとなったと回答されておりまして、この制度が県内就職の後押しになっているものと考えております。
議員から御提案がありました、県内で既に就職されている方への支援拡充についてでございますが、幾つか課題が考えられます。まずは国制度の対象外となってしまうために特別交付税措置が受けられなくなるということでございます。それから、就職後の方も対象とすることで、県内就職の決定のインセンティブとなるという制度効果が薄れるのではないかということでございます。これらについては、まずは制度改正の必要性などについて、連携しております産業界などの御意見も聞いてみたいと思います。
また、御指摘のあった制度周知徹底についてでございますが、こちらのほうはさらに強化をしてまいりたいと思います。例えば高校卒業時に制度周知を強化することによりまして、大学等の在学中に認定申請につなげていただく。それから、ふるさと鳥取アプリによりまして制度の視認性を高めて、積極的に制度の募集などを発信していくなどが考えられます。こちらを強化してまいりたいと思います。さらに各企業の人材確保のツールとしてより活用していただけるように、産業界との連携強化を図ってまいりたいと思います。
◯議長(内田博長君)答弁を求めます。
足羽教育長
◯教育委員会教育長(足羽英樹君)興治議員の一般質問にお答え申し上げます。
私のほうには倉吉東高校でいよいよ始まります
国際バカロレア教育につきましての所感、そして関連しましてその指導に当たる
教職員集団の在り方という2点お尋ねをいただいたところでございます。
倉吉東高校では、以前私も勤めていた学校ですが、その当時から主体的な学習者の育成並びに21世紀をリードする人材の育成、この学校ビジョンを基にしながら、国際高校生フォーラムですとか、あるいは上級生が下級生を指導するチューター制度でございますとか、それから地域に貢献する
ボランティア活動等、様々なビジョンに基づいた活動を進めてきたところでございます。
このたび導入する
バカロレア教育は12月議会で浜崎議員さんの御質問にもお答えをしたところではございますが、国際的な視野を持つ人間の育成をベースとしながら、世界標準規格の教育プログラムとして、このミッションはよりよい平和な世界の実現ということを大きなテーマとしており、そういう意味で倉吉東高の目指しているビジョンと
国際バカロレア教育の理念とがマッチするということで導入に踏み込んだところでございます。
ただ、前回も申しましたが、単なるグローバル化に対応する人材を育成するだけではなくて、この
国際バカロレア教育が目指しております10の学習者像という中に、常に探求し、研究し続ける、考える人づくりでありますとか、様々な今日的な課題をよく分析し、批判的に、かつ創造的にしっかり判断をして進めていく、そういうコミュニケーションが取れる人ですとか、総合的な人材育成を目指すことが教育の理念でございます。
そういう意味では、今後ますます高まっていくであろう多様化あるいは複雑化する、さらには共生社会の実現に向けた人材育成ということが大きな教育の理念となっている。まさしく本県にとっても必要となる、あるいは日本にとって必要となる、そうした将来の人材を育成する、大きな大きな仕掛けになるのではないかというふうに思っているところでございます。
昨年11月に開催しました国際
バカロレアフォーラムでも、もう既にその導入を目指して学習を取り組んでいる倉吉東高校の生徒さん方からも、「単に知識を覚えるのではなくて、知識をどう活用するかということの学びが非常に面白いです」とか、それから「相手の考え方をしっかり受け止めた上で、自分の意見を構築するということの大切さを学んだ」そんな声も聞かれたところでございます。令和5年度からスタートしてまいりますが、そうした
国際バカロレア教育の理念が実現できるような仕掛けをしっかりと施してまいりたいと思っております。
今年度初めて導入しました特色入試でも、
国際バカロレア教育を目指して中学校時代はこう頑張ってきた、それを私はぜひ生かしたい、そんな思いで向かってきた生徒さんもいらっしゃるというふうに思います。ぜひそうした単なる知識を覚える、知識を生かすだけではなくて、新たな知識や、そして理念を生み出していく創造的な学びの発信、そうした大きな仕掛けになるように、
国際バカロレア教育に期待をしているところでございます。
議員のほうからも大変期待の声をいただいたり、それから学校にも直接行っていただいて、校長からもいろいろお話を伺っていただいたことに感謝申し上げます。ぜひこれが大きな仕掛け、起爆剤となって県の教育の大きな推進に役立つ一助となるように取り組んでまいりたいと思います。
その意味で、それを指導していただく先生方の配慮をということでございました。これは残念ながら
国際バカロレア教育については国からの定数措置というのは全くございません。ですので、単県で何とかこれをフォローしていく必要があります。同じことを同じようにやっているだけでは本当におっしゃるとおり、教員も不足してまいりますので、
バカロレア教育の認定に向けましては、令和2年度から倉吉東高校と我々県教委のほうでもいろいろ協議を重ねてまいりましたカリキュラムの見直しを行うと同時に、そうした学校の運営に、教育活動に支障を来すことがないように、最大限の配慮を行ってきたところであり、この中核を担う教員が必要だというふうなことから、単県で複数の定数措置をさせていただいているところでございます。
さらに今年度には先ほども紹介いただきましたが、IB-国際
バカロレア-の数学を英語で指導する
ネーティブ教員を採用したり、そして新年度には同じく英語を指導する
ネーティブ教員も単県で採用するというふうなことを考えているところでございます。また、
国際バカロレア教育を指導いただく先生方には、
国際バカロレア教育機構独自の指導資格を取得していただくという高いこれもハードルがございます。科目をしっかり指導していくためには、常時大体約20名以上の資格取得者が必要というふうに見込んでいるところでございます。
当然、公立教員ですので人事異動もございます。そしてまた、5年ごとにこの資格は更新をする必要があること、そのためのワークショップへの参加、資格取得に向けた取組等についても県教委として参加費等について計画的に支援、予算措置をまた議会のほうにもお願いしながら、この教員集団がそうした資格を基に、先ほど申した新たな学びの創造に向けた、よりよき指導者となれるような仕掛けへの最大限の配慮は今後も継続してまいりたいと思っております。
◯議長(内田博長君)19番興治議員
◯19番(興治英夫君)ありがとうございました。
まず、NE-STの住宅については、電気代が高くなっているので、それを回収できる期間が短くなっているというのは分かりました。また、住まいる支援事業については、先ほど答弁の中にもありましたけれども、やはり材料価格の高騰等で、費用が増加した分を工務店が見ているというような状況もあるということでございますので、現場の状況、業界の状況をよく把握をしていただいて、また御検討をお願いしたいと思います。
未来人材育成基金については、就職後の申請であれば国の制度の対象外になるというお話は初めて聞きました。特別交付税措置の対象外になってしまうということなので、なかなかこれもやむを得ないのかなと思いますけれども、業界企業のほうでもこういう声がありましたので、先ほどいろいろ意見を聞き取っていただくということでしたので、また聞き取って御検討をいただきたいと思います。
それでは、
物価高対策について、改めて質問します。
昨年7月から実施をしております生活困窮者光熱費等支援事業については、生活保護世帯や住民税非課税世帯など、市町村の支給対象として認める世帯を対象に支給されております。倉吉市は生活保護世帯、児童扶養手当などの受給世帯を対象にしています。日吉津村、南部町は住民税非課税世帯を対象にしており、他の市町も同様ではないかと思います。
住民税非課税世帯には、昨年から今年にかけて国が電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金5万円を支給しております。また、コロナ禍で生活福祉資金の特例貸付けを借りた住民税非課税世帯は、その返済が免除されることになっています。食品やエネルギーに係る家計支出の割合が高い低所得世帯の中には、住民税均等割のみ課税世帯もあると思います。この所得層に対する給付金等の支援が現状ではないと思います。来年度新たに物価高騰支援として給付金を支給する場合、住民税均等割のみ課税世帯も対象とする制度設計を考えてはどうでしょうか。その際、市町村の負担が難しいようなら、市町村に対する県の補助率を2分の1から引き上げることも検討してはどうかと思います。知事の所見をお願いします。
◯議長(内田博長君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)興治議員から重ねてのお尋ねがございました。
先ほどもちょっと言及しましたが、光熱水費の支援事業、今も県のほうで市町村と協調する形でさせていただいております。今日御質問もあえてございましたので、そこの要件については私どもも緩やか、弾力的に対応するように運用してまいりたいと思います。正直申し上げて、それぞれの市町村で、どういう層の人たちに、どういう支援をするのが効果的かというのを選びながら、それぞれで要件設定をされるのが多分ベストな選択になると思います。そういう意味で、その選択を尊重しながら、県のほうではそこは緩やか、弾力的にその選択に従った支援をする形でやっていければというふうに思います。
なお、問題はその原資のところでありまして、その原資のところも今、実は使い切った形で私たちは予算提案している形になっています。したがいまして、先ほども申しましたが、政府に対して追加の対策というのを求めるしかないのではないかと今、話合いもさせていただいておりまして、できれば来週中ぐらいにも知事会としても要望を取りまとめようということでありますが、今日のお話も含めて、こうした地域における光熱水費対策の弾力的な執行ができる制度づくりを呼びかけさせていただきたいと思います。
◯議長(内田博長君)19番興治議員
◯19番(興治英夫君)よろしくお願いいたします。
それでは、
少子化対策の結婚支援のところでございます。
先ほど知事のほうから仲人の役割を担う
ボランティアの活動、そこのところが鳥取、島根でやはり違うのではないかというお話をいただきました。私もやはりそうなのだろうと思います。マッチングをサポートする仲人役の
ボランティアの人数を見ましたが、鳥取県は出会いサポーターが26人、縁結びナビゲーターが61人、これはダブって登録されている方もあります。先ほど知事は言われましたけれども、島根県の
はっぴぃこーでぃねーたー「はぴこ」は260人おられます。それと、マッチングをサポートする結婚相談会の開催頻度もやはり違っておりまして、鳥取県の場合は個別相談会を不定期に開催し、令和2年度が13回、令和3年度6回、令和4年度20回となっています。島根県は県内10の会場で、それぞれこの「はぴこ」が地域ごとにグループになって活動しているということで、11グループあるそうです。10の会場で、毎月1回、結婚相談会を開催しているということで、合計すれば120回程度にはなるのかなと思います。
このように、人数だとか地域ごとのまとまりだとか、あるいはきめ細かな結婚相談支援の実施で、学ぶべき点があるように思います。こういった取組を参考にして、一層充実をさせていただきたいと思います。もう一度、知事の答弁をお願いします。
◯議長(内田博長君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)重ねてのお尋ねがございました。
おっしゃるような趣旨で見直しをすべきかと思いますが、残念ながら我々の任期が迫っていますので、また新しいメンバーでこの議論をぜひ掘り起こしていただければと思いますし、そういう方向づけをして任期を終えさせていただければと思います。
やはり後押しをする人がいたり、また正直申し上げて、新生活をスタートさせるというのは非常に若者にとってハードルが高いわけですね。結婚というのは想像もつかない、独身時代の自分がいたことを思い出します。ですから、やはりそういう意味で、人が介在するシステムは古いですけれども、これが実は適切なのかもしれませんので、この縁ナビ方式を充実するのがテーマかなと思います。
あわせて、今風にいえば、バーチャル世界で出会うということも出始めています。今、一つはICTのマッチングによりまして、リモートで交わることもありますし、またそうした意味でお見合いみたいなことをするケースというのはやはりあるわけでありますし、さらにアバターをメタバースの世界の中に入れて、それでお互いに話し合うと。リアルでは会っていませんけれども、心を通じ合ったり、どんな人かというのを知るきっかけにはなるのかもしれません。もちろんその後リアルで会うということになるのだろうと思いますが、そういう様々な現代的手法というのも含めて、工夫すべきものがあると考えております。
◯議長(内田博長君)19番興治議員
◯19番(興治英夫君)それでは、酪農家の支援について追及したいと思います。
自給飼料生産にシフトしていくというのは一つの方法なのですけれども、ある酪農家の声を聞くと、自力で37ヘクタールのトウモロコシを生産している、これが生産の限界だということです。それでも全使用量の4分の1、25%ぐらいにしかならないとのことで、
自給飼料生産を増やすことも容易ではないようです。
自給飼料生産のために必要な機械の導入支援については、生産規模を維持することの困難さに着目して、補助事業の要件を設定してもらいたいとの切実な声がありました。国へ要望するとともに、単県で事業をつくる場合は要件緩和をぜひ考慮していただきたいと思います。次の検討課題だというお話だったのですけれども、知事の所見をお願いしたいと思います。
新たな課題ですけれども、倉吉市でも中山間地域のどん詰まり集落の奥地で荒廃農地が増えてきました。これらの農地にシイタケ原木となるクヌギやコナラなどを植林して土地の有効活用を図ってはどうだろうかという地元住民の声があります。まずは地元集落による合意形成が必要です。仮に合意できたとしても農業振興地域から除外をし、農地転用の許可を得ることが必要になりますが、農地の基盤整備が行われていれば、農地転用はほぼできません。
一方、地元農業委員会の荒廃農地調査により、再生利用が困難なB分類とされた農地について、非農地化が図られれば農地転用の手続が不要になり、植林ができるようになります。三朝町農業委員会、三朝町、それから中部森林組合、
JA鳥取中央が連携して、モデル事業として三朝町大谷地区で荒廃農地への植林が行われました。農業委員会が農地の非農地化を進めて造林補助金を活用して、分収造林により森林組合が一連の施業を行うことで、所有者の初期投資なく事業に取り組め、成長した木は
JA鳥取中央が原木として活用します。
コナラや和紙の原料となるミツマタを植えたようですが、このモデル事業の検証を行い、必要な施策を検討した上で、地元の思いがある県内他地区に普及することを考えてはどうでしょうか。地元の意欲があるうちに進めることが肝要と思います。知事の所見をお願いいたします。
◯議長(内田博長君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)酪農家によります飼料生産につきましては、国のほうの
クラスター事業も簡素化した要件になっていまして、大抵対象にはなるようであります。
ただ、武本代表が頑張っておられるような倉吉コントラクター組合のような組織化されたものですと、要件が若干厳しいことになっているようでございまして、その辺は政府のほうにも緩和できないか働きかけ、要望するのかなと思っています。
また、あわせまして、これは新年度以降の課題ではありますけれども、そうした酪農家の飼料生産、こういう状況でありますので、追加支援ができないか、これは検討課題として残していきたいと思います。
また、荒廃農地につきましては、三朝町で先行例ができましたが、荒廃農地を分類して、これは農地化するのは難しいというふうに判定を農業委員会はすることができます。この仕組みを活用しまして、非農地として認めた上で、平成30年に植林をされました。コナラを植えてシイタケづくりをしようという構想だったわけです。ただ、残念ながら、見事に鹿に食われてしまいまして、苗木がどこへ行ったか分からなくなったということだったのですが、その後、工夫をされて、ミツマタを植えると。ミツマタは鹿が嫌いなのだそうでありまして、それをやってみたり、それからカヤなどの下草で隠すという、ちょっと子供じみた感じもしますけれども、そういうことをやって、実際にコナラも生育し始めたということであります。
ですから、これが有効なのではないかと今、関係者は見ていまして、どういう樹種が適当なのかとか、この農地転用は可能なのかについて林業試験場のほうでも新年度から3年ぐらいかけた研究をしています。つまり、農地の場合、水はけの問題とかがいろいろあって、下に若干のちょっと仕掛けがしてあったりします。どうもその辺が邪魔をして、根を張るのが難しくなるとかいろいろありまして、その辺の隘路をやはりほどいていかなければいけないところがありまして、林業試験場によるそうした調査研究もさせていただき、実証化から実用化へ向けていければなと考えておりますので、関係者にも情報を共有してまいりたいと思います。
◯議長(内田博長君)19番興治議員
興治議員に申し上げます。総時間が少なくなっておりますので、その辺りを考慮してお願いします。
◯19番(興治英夫君)はい、分かりました。
それでは、次に、親元就農者への支援について伺います。
認定新規就農者に対する支援としては、毎年150万円の交付、あるいは農業機械の購入費に対して5年間で最大800万円が助成される制度もあります。一方、親元就農者に対しては、親元での就農研修に対して月額10万円を最大2年間助成する制度があります。現行制度では、支援の手厚い新規就農より、親の持っている機械が小型で老朽化しており大型機械を購入せざるを得ない親元就農のほうが経営的には厳しいという声を聞きました。また、親元就農を支援する交付金があることを知らなかったという声もありました。農家の高齢化が進み、農業後継者の確保がままならない中にあって、親元就農者を養成、確保するのは非農家の新規就農者を確保するより近道ではないでしょうか。親元就農支援を今以上に手厚くすることにより、農業後継者を確保し、就農後の経営と生活の安定に資することが大切ではないかと思います。知事の所見を伺います。
また、親元就農の際の機械購入等の補助制度について、親が使っていた農業用機械等の減価償却が済んでいれば、就農時に必要な機械購入に対して補助する制度を設けたらどうかと思います。知事の所見をお願いいたします。
◯議長(内田博長君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)詳細につきましては、農林水産部長のほうからお答えを申し上げたいと思いますが、独立した自営で就農される新規就農者の4割は親元就農の形態でございまして、大きなウエートを持つボリュームゾーンだと思います。
ただ、いろいろと親元就農なりの隘路もあるわけでありまして、そういうものに寄り添った支援の在り方というものを今後も検討してまいりたいと思います。
◯議長(内田博長君)西尾農林水産部長
◯農林水産部長(西尾博之君)親元就農者に対する支援の在り方について、補足の答弁をさせていただきます。
現在、親元就農者については、そもそも親の経営基盤があると。経営初期における機械施設の確保、農地の確保、農外からの参入者と比較して、そのリスクは小さいというふうに考えられることから、新規就農者の機械施設等整備の支援施策である就農条件整備事業の対象とはしていないところでございます。
親元就農で子弟が経営に入られる場合、一人役、要は社員が増加するというふうになります。それに応じた所得の確保をまず考えるのだろうというふうに思います。通常の経営体であれば、その段階で経営改善計画というのをまずつくっていかれるのではないかなというふうに思います。その際、必要となる機械施設等の整備をこれまでもがんばる農家プラン事業等で支援しているところでございます。
親御さんが使っておられた農業用機械の減価償却が済んで耐用年数を超えているからというキーワードだけで機械購入に対する補助制度を新たに創設するというのは、やや経営面からいっても持続性を支援することにはならないのではないかなというふうに思います。当然、経営体個々でいろんな御事情もあるというふうに思います。どのような経営発展を目指されるのか、じっくり相談を受けた上で、適切な支援等を示してまいりたいというふうに思っております。
◯議長(内田博長君)19番興治議員
◯19番(興治英夫君)すみません、もう時間がなくなりましたので、教育長に簡単に聞きます。
国際バカロレア教育について、県内外で生徒募集、直接説明できる機会をつくる必要があるように思いますが、どのように取り組むのか伺います。また、県外生等のために住居の確保が必要だと思います。どのように行っていくのか、教育長に伺います。
◯議長(内田博長君)答弁を求めます。
足羽教育長
◯教育委員会教育長(足羽英樹君)興治議員から重ねてお尋ねをいただきました。
国際バカロレア教育をこれからスタートしていく上で、県内外への発信ということは本当に必要なことだと思っております。先ほど申しましたフォーラムでも、県内の学校、あるいは市町村教育委員会だけではなくて、県外の指定地域の学校等にも案内をしたところであり、今後もYou Tubeですとか、あるいは今回当初予算にもお願いをしているところでありますが、セミナーを様々な形で学びの姿を発信していく、そういう取組をしたいと思います。
そして、住環境につきましては、中部地区では倉吉北高さんにお世話になって、その寮の活用ということで今、取り組んでおります。倉吉北高さんの寮もまだ活用できるという状況にはありますが、その集まり具合等によってはふるさとファミリー制度ですとか、新たな下宿制度等を考えていく必要はあろうかなというふうに思っておりますので、その辺り、状況を見ながら柔軟に対応してまいります。
◯議長(内田博長君)暫時休憩いたします。
11時25分より再開いたします。
午前11時16分休憩
────────────────
午前11時25分再開
◯議長(内田博長君)再開いたします。
引き続き、一般質問並びに議案に対する質疑を行っていただきます。
5番由田隆議員
◯5番(由田隆君)(登壇、拍手)無所属の由田でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
鳥取県の人権課題のうち、いまだに解決を見ないハンセン病元患者について質問をいたします。
鳥取県人権尊重の社会づくり条例の前文では、すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ尊厳及び権利について平等であり、人間として尊重され、基本的人権の享有が保障されなければならない。これは、人類普遍の原理であり、自由と正義と平和の基礎であり、かつ、法の下の平等及び基本的人権の保障を定めた日本国憲法の精神にかなうものである。この理念の下に、お互いの人権が尊重され、誇りをもって生きることができる差別と偏見のない社会が実現されなければならない。ここに、我々鳥取県に暮らすすべての者は、豊かな自然に抱かれ、歴史と文化を育んできたふるさと鳥取の地で、共に力を合わせてこの使命を達成することを決意し、真に人権が尊重される社会とするため、この条例を制定する。この条例の前文をまず確認した上で、鳥取県出身のハンセン病元患者の現状と今後について伺います。
初めに、ハンセン病の元患者の現状について、何人の方がどちらで暮らしているのか伺います。
次に、これまでのハンセン病元患者に対して行ってきた交流事業について、その成果と課題について伺います。
1964年、昭和39年11月に全国初の鳥取県里帰り事業が開始されています。また、1997年、平成9年7月には、ハンセン病ふるさと交流事業が新しく開始をされました。これらについて、どのような成果があったのか、まず伺います。
また、2001年、平成13年には遺骨里帰り支援事業が実施をされています。この事業について、その目的と成果について伺っておきたいというふうに思います。そして、この事業は平成13年、14年の2か年で終了をしたと伺っています。その理由についても伺います。
次に、人口減少対策と中山間地の課題について伺います。先ほどの興治議員と同様に、関金のAコープの問題を取り上げたいというふうに思いますが、重複するところがあると思いますので、割愛をしていただいて結構ですので、よろしくお願いをいたします。
初めに、7年ぶりの出生数増加は明るいニュースと喜ぶも、関金地区のAコープ閉店問題では買物難民も予想される。せっかく移住者も増えつつある中で、「まちの魅力が失われていくことを危惧する」と、市民の声も大きくありました。改めて、行政の役割について所見を伺いたいというふうに思います。
特に倉吉市の中山間地においては、関金地区ではありませんが、一方で医院の閉院、あるいはガソリンスタンド、あるいは小さな商店も多く閉店をしている現状にあります。そして、先ほど指摘もいたしましたが、関金には結構な割合で移住者も多くいます。せっかく来た移住者の中には、このような状況になることとはついぞ知らずに来た、買物を市内まで足を運ぶことに30分も40分もかかるという声も伺いました。これらについて、県の役割はどのようなところにあるのか伺いたいというふうに思います。
次に、移住定住の施策について伺います。
県の補助金制度、移住定住推進交付金制度の活用状況について伺って、壇上での質問といたします。
◯議長(内田博長君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)由田議員の一般質問にお答えを申し上げます。
ハンセン病の患者様の件につきまして、何点かお尋ねがございました。今、私どもの人権尊重社会づくり条例のほうでうたわれている考え方についてお述べになられまして、これまでの交流事業の状況や成果等々、お尋ねをいただいたわけでございます。
このハンセン病につきましては、明治40年に、癩予防に関する件という勅令が出されまして、それ以来、我が国挙げて一つの運動を起こしてしまったということがございました。この件につきましては昭和5年になりまして、長島愛生園が誕生し、それからその翌年にこの癩予防法という旧法ができるわけであります。これはその後、平仮名のらい予防法に新法で改まるわけでありますが、こういう長島愛生園のようなところを各地に造りまして、そうしたところで言わば隔離をしていくということによりまして、このらい病と当時言われたハンセン病を言わば封じ込めようということだったわけでございます。
こうした運動の中で、新しいらい予防法ができる中、鳥取県もその行政として国の政策の一翼を担うことになりまして、無らい県運動というのを全国的に展開していますが、本県においてもそうした時期があったということであります。そういう中、昭和39年になりまして、議員がおっしゃいました、全国で初めての里帰り事業というのを行ったわけでございます。当時そうした一つの反省に基づいて、ふるさとに帰ってきていただくと。さらにこれが交流事業ということに発展をしていきまして、こちらからも長島愛生園や邑久光明園などに行くということが年々行われるようになりまして、今年度もこちらから出かけるという一行があるわけであります。
ただ、残念ながら大分、高齢化が進んできまして、平均年齢も本県関係で90歳を超えるということになってきてあります。そういうようなことで、現状どうかということでありますが、現在は4つの園に6名の方がなお、生活をされておられます。お三方は、先ほど申し上げました長島愛生園のほうにいらっしゃるわけであります。そのほかにも多摩全生園という東京のところ、それから群馬県におきます栗生楽泉園、それからあと熊本県におきます菊池恵楓園、これらに1名ずついらっしゃるわけであります。
私どもとしては、そうした人権尊重社会づくり条例の趣旨というものを我が県のテーゼとしているわけでありまして、こうした病気ということに基づく差別行為が行われたことを深く反省をし、こうした皆様が、言わばふるさとの時間を失ってしまった、人生の大切な価値というものを失ってしまったことに対して、誠意を持って接していかなければならないのだというふうに思います。
そういう意味で、今、交流事業ということも続けていたり、それから職員が出かけていったりしますが、地元の新聞とか、特産物を懐かしいものとしてお持ちをさせていただいたり、私自身もそうした園を訪ねたこともございますし、そうしたところで既に亡くなられた方への献花をしたり、植樹をしたりということをいたしたこともあります。やはりそうした意味で、県人として今もふるさとへの愛情を持って生きておられる方々の存在というのを私たちは忘れてはならないのだと思いますし、そうした皆様がふるさとに対してこうあってほしいとか、こういうことをしたいということにやはり寄り添っていく必要があるのだというふうに思います。
議員のほうから御指摘がございました遺骨の里帰り事業については、過去、行おうとした時期がありますが、ただ、御遺族の方も含めて、結局そういうお話としてはまとまらなかったということでございます。私どもも職員が訪問をしたり、今もいろんな意向をお尋ねさせていただいていますが、現在御存命の方々等も含めまして、最近も改めてお伺いをさせていただいていますけれども、こういう遺骨の里帰り支援事業については利用の意向はないというのが現状であります。
結局、新しい人生を長くされて、もう90歳というところに届くような形になった中で、残念ながらお骨を持って帰ってもらうほど、鳥取県のほうに動いていくというところまで意思がないということだと思います。これも一つの言わば人生観なのだろうと思いますし、そうした当事者の皆さんや御家族の皆さんのお気持ちというものを私たちも尊重しなければいけないのではないかと思います。
ただ、やはり機会をいろいろとつくりながら、大切なのはこういう事象があったことを子供たちなどにもきちんと伝えていくことであったり、県民の皆様にも啓発といいますか、しっかりと認識していただく機会というのを今後も変わらず持っていく必要があるのではないか。ここに私どもの人権尊重の社会づくりの原点があるのではないかと考えております。
次に、人口減少社会につきまして、何点かお尋ねをいただき、それから移住定住推進交付金の措置につきましてもお尋ねをいただいたところであります。
議員も御指摘ございましたけれども、幸い今、出生数につきましては子育て王国でやってきたことが成果を見たのかもしれませんし、また併せて移住定住促進策によって子育て世代に選んでいただけた結果が今数字に現れているのではないかと思います。直近で出てきた速報値によれば3,945名ということで、外国人などを除いた確定値ベースが恐らく秋までにまとまってくると思いますが、これはさきの推計値と同様に、対前年度で増えるのではないかというふうに見ているところでございます。
こういうような全国とは違った流れをつくることができて、79万9,700人のショックのあった各地とはちょっと様子を異にはしていますが、決して問題は解決していないということを忘れてはいけません。やはりこれはまた挑戦し続けなければならない課題でありまして、移住定住とか、あるいは関係人口とか、いろいろな形でこのふるさと鳥取というものを盛り上げていただいたり、また愛着を持って交流をしていただくことが我々の目標ではないかと思います。
それが結局は出生数の増ということにつながっていったり、様々な地域の活力、例えば中山間地における農業支援ということもありましょうし、
ボランティアというような形とかですね、それから観光交流を通じて所得が増えていき、なりわいにつながっていくということもありましょうし、なかなか高齢者中心になっている社会の中で、そうした外の方々が入り込むことで新しい知恵が社会を変革していく力にもなっていくというふうにも考えられます。
そういう意味で、今後も移住定住政策等は中核に据えてやっていく必要があろうかと思いますし、そういう中で、議員が冒頭御指摘いただいたような買物機能の失われていくような状況など、そういうところも守るべきは守っていく。知恵も地域の中から生み出していかなければいけないのではないかと思います。
そういうようなことで、県下の市町村それぞれに工夫をされています。例えば県も応援をして、先ほど移住定住推進の交付金などを出しまして、お試し住宅というのをやるわけです。こういうものが仮に住んだ疑似体験をしていただいて、後々不適応を起こすことがないようにしたり、また本当の意味での地域の豊かさや潤いというものも感じていただくチャンスにもなるわけでありますし、非常に効果的だと。こういうものをモデルとしてやってみて、うまくいったのでまた各地でやってみようというのが今、広がってきているところであったり、さらには
ネットワーク組織によりまして、そうした移住定住者は、時にやはり地域のいろんなことが分からないわけですね。
先般もキャビンアテンダントの方々が10名鳥取県に引っ越してこられて、1年間生活をされました。また、グランドのオペレーションをしておられる重鎮でもいらっしゃる木村さんという県職員になってくださった方、この方も2年間、こちらのほうに住まいをされたわけであります。そうした方々から率直なレポートをしていただく会を設けさせていただきました。そこでやはり外の目から見てこうだなというのを我々もよく聞かされる話ですが、改めてそういう言葉に出会ったところであります。
住んでみないと分からないことがあるわけですね。非常に身近なことで申し上げれば、雪が降って大変ということが分かった。駐車場から出すのに1時間半かかった。こういうことは誰も教えてくれなかったということですね。これは多分、我々住んでいる者としては常識でありまして、雪が降ったなと、きれいだなと思って浮き浮きして朝を迎える人はあまりいないわけでありまして、どうやって家から出ようかという算段から考えるわけであります。
ただ、そういうようなことは、やはり住んでみないと分からないことで、言わば既住者、既に住んでおられる先輩たちの話が入るネットワークというのは必要なのだろうと思うのですよね。そうしたことはいろいろあるわけでありまして、例えば村の行事がこんなものがあるとかいうことから始まって、いろいろと見えにくいことがあったりする。だから、外から見ていて分かりやすいのは、例えば
子育て支援の政策はこんなものがあるというのは比較的分かりやすいのですけれども、本当に生きていく上で、例えばごみはどうやって出すのかとか、何曜日だとか、そんなことも含めて、やはり住んで初めて分かるところがあったりします。
意外にやはり声が大きかったのは、例えばお店のことをおっしゃっていましたね。いいお店があるのでホームページで調べて行ってみると、なぜか閉まっていたとかですね。これもよく我々経験することでありまして、私も先日、家内と一緒にフルーツサンドのお店に行ったのですが、当然のように臨時休業と貼ってありまして、それで買えずに別のフルーツサンドのお店に行ったのですけれども、そういうのに我々は実は慣れていると思うのですね。ただ、都会の常識からすると、まめにホームページぐらい更新していただいたり、SNSで発信もされているお店なので、今日は休みですと一言入れてくれればいいとか、そういうのはやはりあるわけでありまして、この辺は私どもと全国標準とのちょっとギャップがあるのかもしれません。
社会的に刺激になるようなことがもっと欲しいとか、何より仕事場が必要だとか、そういうようなことは、これまでも身にしみて分かっていることですが、改めて問題提起もいただいたところです。こういうものを一つ一つ解決をしながら、それでも選んでくれる方々も当然いらっしゃって、そういう方々が移住定住につながっていくわけでありますので、深く理解をしながら、そうした我々の世界に入ってきていただくということが必要であります。
幸いなことに、ここ14年ぐらい真剣に移住定住対策をやってきた関係で、それぞれの地域のノウハウもでき始めているわけですね。鹿野あたりでは、まちづくりの協議会の皆さんがそうしたもののネットワークをつくっていただき、お一人お一人の例えば家探しから始めて、それから実際に入居された後の暮らしなども導いていただく、こういうことをやっている地域ほどうまく移住定住が進んでいるわけであります。その辺は私たちのほうでもしっかりとフォローしていく必要があるのだろうと思います。そういう意味で、いろいろと例えばシニアの移住アドバイザーというものを設置したり、それから相談窓口をつくったり、全国でのイベントをやったり、県のほうでも県でできる部分というものをやってまいりました。
それで、移住推進の交付金でありますけれども、例えば最近そういう意味で、倉吉の中でも彩菜家というのを安藤さんという方がされておられるわけです。これは倉吉の社のところで古民家を活用されまして、そういうものを開設された。ちょっとコロナで展開はもくろみどおりにはいっていない面もあると思うのですが、本来であればそうしたお試し住宅だとか、ゲストハウスだとか、いろいろと念頭に置いてされていたのだと思うのですが、現在は住民交流のサロンとして主に使っておられるということでございます。こういうような拠点をつくることの応援であるとか、様々なソフト事業であるだとか、そういうものを私どもで市町村のほうでも使いやすい形でやっていただけるように、移住定住に向けました推進交付金というものもつくらせていただいているところであります。
いずれにいたしましても、やはり地域と協力してしっかりと人口が減らないような対策をやっていくことが要になってこようかと思っております。
◯議長(内田博長君)5番由田議員
◯5番(由田隆君)ありがとうございます。
初めに、ハンセン病について再質問をいたします。
私が気になるのはこの交流事業です。私の勘違いなのかも分かりません。そもそも交流事業は今、元患者が鳥取県に帰るある意味体を慣らす準備期間、情報を収集する、そういう場面だと思っていたのですよ。昭和にいずれの方も10代、20代、30代で鳥取県から約180人が愛生園に行っています。その人たちが病気が治癒して、でも知事が言われた、あの無らい県運動、感染者の患者だけではなくその家族、その周辺、サーベルを持った警察官、そして市町村の吏員、いわゆる職員ですね、それらが野良で働く人をも捕まえて、強制収容所に運んでしまう。その後の家屋は家中真っ白になって、あたかも見せしめるように、そういう行為を行う。ましてその当時は感染症という認識ではなしに、これは遺伝病だということさえも言われていた時期、患者は当然のことながら、家族、その周辺の親戚等もみんながそこから避けていった。それらの施設に行った人は、もう二度と帰ることはできない。今もってそうなのですね、今もって。そして、残された家族は偏見と差別の中で生きることすら厳しい、そういう世の中をずっと何十年も生きてこられた。
平成13年、ハンセン病を取り巻く様々な状況が改善をされた。これは熊本地方裁判所で国家賠償法の判決が出た年であります。本県の前知事、行かれて謝罪をされた片山知事です。そのときに、このように言っておられます。多くの方は「故郷に帰ってきたい」、「ふるさとの今を自分の目で見たい」、これは患者さんと交流の中で伺ったことだそうです。親戚、友達にも会いたいと望んでおられることと思います。しかし反面、強制隔離政策により郷里を追われ、家族、親類からも縁を切られた過去を思い起こすと、果たして郷里に帰ってその友人、知人に会うことができるのかどうか。また、再び家族から疎遠にされる、そういうことがよみがえってくる。帰る勇気がない。この患者の気持ちをここまで変えてしまったのは国の隔離政策であって、鳥取県は無らい県運動の中では優等生と言われた。時として民族浄化の政策であると、そこに鳥取県も加担をしていた。愛生園に鳥取寮という県民から6万円の寄附を募って、7棟の病棟をそこに建てた。それは決して患者のためではなくして、鳥取県かららいを一掃しようとする強い意思の表れであるというのがこの「風紋のあかり」の中に書かれているわけですよね、「あかり」ということで。
片山知事は、その反省に立って二度と同じ過ちは繰り返さない、そして名誉の回復まで言われています。今、知事の答弁では、患者の方はどうも帰る意思がない。僕に言わせたら、そんな軽い言葉なのですか。平成13年、14年、2年間で諦めたということでありますが、どういう努力をされたのでしょうか。たった2年間の努力で、過去何十年その愛生園に、あるいはその周辺の家族がどれだけの苦しみを持って生活してこられたか。その思いがあれば、2年ですか。そこの溝を埋めるための努力が2年ですか。それは納得できないのですよ。私はですよ、私は。
この6名の患者は平均年齢が90歳以上と言われました。もうそう遠くない時期に亡くなられますよ。それで風化なのでしょうか。風化してしまっていいのでしょうか。そして、今の努力は何もしなくていいのですか。鳥取県に帰ってきて住まれることは難しいと思います。でも、あの遺骨堂には、これからも含めて言えば、180人以上の方の遺骨があるわけですよね。それが鳥取県に帰ってこれない。簡単に諦めていいのでしょうか。その努力と今後について、再度御答弁をいただきたいと思います。
◯議長(内田博長君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)改めて、由田議員からお言葉があり、お問合せがありました。若干ちょっと私の表現が少しドライに聞こえたのかもしれませんが、いろいろと御質問の趣旨に沿って答弁を申し上げたつもりでありますが、詳細な経緯につきましてはまた人権局長のほうから申し上げたいと思います。
平成13年、14年のお話がございました。そこでやめられたのも片山知事です。ですから、そのことはよく分かっていただきたいと思います。みんな、私も歴代の知事の一人でありまして、平成25年にも参りまして、本当に残念といいますか、胸に迫るものがありますし、実際に県民の方にもお会いをしますが、この方々の別の人生ということを頭に描きながらお会いをするわけであります。どんなにつらいことか、それはこちらもよく分かってくるのですが、ただ、その県人の皆様も、ただお会いできたことを非常に喜んでもくれるのですね。この辺の心理だと思うのです。
由田議員もお分かりだと思うのですが、とても許されることではないと。それが現実に起きたのはなぜか。それは昭和18年にプロミンという薬ができます。これはアメリカの療養所で証明をされました。現に日本でも昭和23年にそれは本格的に全面使用ということになってくるわけですね。ところが、その後に、平仮名のらい予防法ができる。それで、無らい県運動は続くわけであります。このことは何を意味しているかというと、その治療で治るということを言わば無視した実態がこの国にあったということです。
国際会議も開かれました。その中で、もうこのハンセン病というのは早期発見で早期治療すれば治る。少なくとも感染性とか、先ほど遺伝のお話もありましたが、いろんな誤解というのは既に解けているわけであります。しかし、らい予防法が廃止されたのは平成8年です。それまで一体この政府は何をやっていたのか。何を守ろうとしていたのか。やはりこのことは、残念ながら指弾されざるを得ない実態だったと思うのですね。そういう中で、熊本で判決が出て、国賠訴訟で決着がつく形になりました。政府も諦めるという形になる。
そこでようやく口を開いたのが鳥取県ではないのです。その前の西尾知事の段階で、その里帰り事業ということ等をされておられるわけですね。私もそうでありますが、現地にも参りまして、この事を起こした構造的なものがあって、それは自分たちの心の中のことかもしれない。また、仕組みの話かもしれない。これについては真摯に反省をしなければいけないし、繰り返してはならない。それで、何でもできることはしてさしあげたいと、こういうことを申し上げに行くわけです。
結局、人間社会の一つの病理のようなものが逆にハンセン病の患者さんではなくて、社会全体にあったのだと思うのです。そちらのほうをただすべきが、私たちが本来これからもやっていくべきことであって、議員が冒頭御指摘いただきましたような人権尊重の社会づくり条例というのは、これはちょうどらい予防法の廃止の時期と重なってできてくるわけでありますが、その条例をつくった意味というのは、同和問題のこともございますけれども、当然ながらこのハンセン病の問題ということも含めて、病気についても記載をされてきたわけでございます。
私たちはそういう意味で、もう一度自らの在り方を問い直し、これはハンセン病の患者の問題よりも、社会全体の問題、人間の心の中にたださなければならないことがあるということを痛切に考え、それをまた後世にも伝えなければいけない。そういう重みのある課題だというふうに考えております。
この問題というのは非常に厄介でありまして、里帰り事業を通じて、また帰ってきやすい環境づくりがあったということは否定できないし、若干は帰ってきたのではないかと記憶していますけれども、ただ、ほとんどの方がやはり継続して住まわれることを選択されたわけですね。それと同じように、私は平成13年、14年の片山知事の判断がどうだったのかよく分からないところはありますけれども、やはり当事者の意識に基づいて、こういう事業というのは考えなければいけないこともあるのだろうと思うのです。そういう意味で、始められたけれども中断されたということなのかなというふうにも思うところであります。
今回、由田議員のほうからの問題提起もありましたので、実は改めて関係者にお話を聞いているのです。そのときに、いや、それは結構ですと、残念ながらそういう答えが返ってくるのです。そのときに、では私たちが、いや、我々の思いがあるので、とにかく遺骨はこちらに戻してくださいという交渉をするかというと、私はそれもまた社会の中の一つの硬直性の表れになるように伝わるのではないかなと思います。
ですから、こうしたことは心の中に非常に大切なものをそれぞれの人間は持っていると思いますので、それぞれの方々の考えに即して、もしやろうという方がいらっしゃるのであれば、それはもう一も二もなくやるべきだと思いますし、いや、ちょっとというふうなことがあるのであれば、それはそのお考えに沿って判断していくべきことなのではないかなというふうに思います。
いずれにいたしましても、今日、非常に風化してはいけない課題につきまして由田議員から提供していただき、多くの県民の方々にもこの議会中継を通じて共有していただけたことはよかったと思います。ぜひまた折に触れまして、こうしたことを私どもとしても議論してまいりたいと思います。
経緯につきましての詳細や今回の当事者の皆様、御家族の皆様も含めました考え方の調査などにつきましては、局長のほうから御答弁申し上げたいと思います。
◯議長(内田博長君)丸山健康医療局長
◯健康医療局長(丸山真治君)遺骨の里帰り事業等々の経緯につきまして、補足の答弁をさせていただきます。
遺骨の里帰り事業につきましては、平成13年、14年ということで、2か年で終わっておりまして、その後は行われていないという状況でございます。ちょうどこの平成13年、14年ですが、この遺骨の里帰り事業以外にもハンセン病問題人権学習会は平成13年から始めておりますし、県民交流事業も平成14年から開始。また、パネル展等も平成13年から始めているということで、詳細な資料はちょっと残ってはおりませんけれども、この時期に様々なハンセン病の問題に対する事業をやってきたということでございます。
遺骨の里帰り事業につきましては実績がなかったということでの2年間ということではありますけれども、その当時から県の職員が全国の療養所を訪れて御意向等を確認する療養所訪問事業はずっと継続して行っておりまして、例えばその場でそういった話があれば、改めてその事業を再開ということはあったかとは思うのですけれども、そういった話がなかったということで今現在も行われていないというふうに理解しておるところです。
毎年、今でも訪問しておりますし、今御存命の6名の方々がどのようなものを望まれるのかというのを確認した上で、皆さんの意向に寄り添った事業を今後もやっていきたいというふうに思っております。
◯議長(内田博長君)5番由田議員
◯5番(由田隆君)今、丸山さんからお聞きをいたしました。それはそうでしょう。この13年は国家賠償法の判決が出ているのですよ。国民的な世論が深まっていく時期ですよ。それは当然です。いろんな事業が始まった。それは分かります。
ただ、私は今回のことを質問する上で、いろいろ文献を読んだり、「風紋のあかり」も熟読したりして準備を進めてきました。確かにここで先ほど紹介したように、改めて今、鳥取に帰るということはなかなかできない。先ほど紹介したように、また嫌な目で見られ、また嫌な記憶がよみがえる、そういって帰ることを拒んだ方もいらっしゃいます。そのように書かれていました。
でも、私はそこがかわいそうという言葉が適切かは分かりません。この「風紋のあかり」には、あの愛生園の浜辺で郷里を思ってたたずんでいる人の姿が見える、そのように書かれています。その方が、時がたつ、今度はもう二度と帰りたくない、薄情な差別、偏見の中で、そういうところに身を置いて生活するのは嫌だ、そういう気持ちに変わっていった。それもハンセン病のなせる業なのでしょ。そこを私は考えないといけないというふうに思うのです。そこをね。これは、知事が言われたように、ある意味、私たちの問題だと思います。らい菌に感染した患者に何の罪もない。そこに予断と偏見と差別で、御本人もその周辺の家族も生きていくことがこんなにつらいものか、ずっと書いてあります。
今回のことでいえば、片山知事も、そして平井知事も、この碑文に知事は投稿されています。ちょっと一文を紹介しますけれども、先ほど言われた、「戦後ハンセン病は治癒する病気となり、鳥取県は全国に先駆けて、里帰り事業、知事の謝罪、遺族のもとへの遺骨引取り支援などを実施したが、故郷に帰ることができた人は殆どなく、多くの本県出身者の遺骨は、全国の療養所の納骨堂に眠ったままである。県民の保健、衛生という大義の名のもとに、終生隔離され、遺骨になっても故郷に、また家族のもとに帰れないという不条理があってはならない。ハンセン病問題を教訓とし、二度と再びこのような重大な人権侵害が繰り返さないよう全ての県民が誓い、ここに「ハンセン病強制隔離への反省と誓いの碑」を建立する。平成二十年六月 鳥取県知事 平井 伸治」
今ここに書いてあることを申し上げましたけれども、確かに交流事業は近年やられているというふうに思うけれども、本当に今回の質問の冒頭、いまだ解決していないハンセン病問題について質問しますというふうに言わせていただきました。これからずっと、今の状態でいえば、ずっと将来にわたって愛生園の納骨堂に遺骨が安置をされる。ここに書いてあった、「風紋のあかり」に書いてあった名誉回復とは何だったのでしょうか、知事。患者の、そして、御家族の名誉回復、そのすべを、この隔離政策に鳥取県も率先して取り組んだ苦い過去がある中で、この名誉回復を成し遂げたいとする片山知事、そして平井知事のこの碑文、共通するものがあると思っていますよ。
ハンセン病患者の名誉回復とはいかなることなのか、伺っておきたいというふうに思います。
◯議長(内田博長君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)重ねて由田議員からお尋ねをいただきました。
やはり人間の尊厳が傷つけられる、そのことを回復しなければいけないということであり、これは病気といっても、それが人から隔離されて遠ざけられる、それで一定の場所に持っていかれてしまう、人生を奪われてしまう、このことが不条理であった。実際に治るべくして治る病気であったり、それほど極度に恐れる感染症でもなくなっていた、その段階でも、なお国家を挙げて、地域を挙げて、そうした無らい県運動に取り組んでしまった。そのことが結局、人間として人格のある扱いを受けなくなったという事実だと思うのです。それを、だから、誤解があったし、やはり同じ人間として、光る存在なのだということをお互いに認め合うことから始めて、過去にこういうことがあったけれども、それは間違っていた。それをきちんと社会全体としてお伝えをし、さらには、一つの表現としては賠償問題もあったと思います。最近も国家賠償ということで、家族のことも決着をし、補償法も令和元年に制定されたばかりでございますけれども、国としても名誉回復という言葉を使っておられますが、そこに最終的なゴールはないかもしれませんが、こういうことを一つ一つやっていくことが、してしまった過ちを正す道のりなのだというふうに考えます。
これについて、今のお話を聞いていて、若干ちょっとまた要らぬ話になってしまうかもしれませんけれども、私は、私自身もお会いしたこともあったり、愛生園や邑久を訪ねたりもし、それで、その県民の皆さんの交流も実は拝見をさせていただいています。そういうところで率直に感じるのは、やはり心がつながっているということは、ぜひ由田議員にも御理解をいただいたほうがよいかなというふうにも思うのです。
例えば平成20年に、私が就任して間もない頃、野の花診療所の徳永さんが来られまして、今御紹介いただいた碑文は多分当時、私が書いたものだと思いますが、ハンセン病患者に対するこういう過ちがあったこと、それを後世に残すべきだと考えている、県も協力してくれる気があるかという感じで来られたのですね。恐らく当時お見えになった方々は期待していなかったかもしれませんが、全面的に協力しますよと当然申し上げて、どこに建てるのですかという話になって、建てるのだったら、県民の皆様が一番見る一丁目一番地に建てるのがいいではないですかと。県はそれを提供しますよといって、当時申し出たのが県民文化会館の前のところです。あそこは、要は一番花形の場所ですよね。そこに碑文を建てようではないですかと。県のほうで提供しますよと。実は徳永さんたちはびっくりしたのですよ。今でもあのときのことを覚えていますが、多分、もしかすると平井を試しに来たのかしれないと思ったぐらい、そのときにすっと表情が変わった感じがいたしました。
それで、実際にそこに碑文を建てて、愛生園の方角を向くように石をしつらえる。県も協力するということもありまして、多くの資金も浄財が集まりました。では、そこに建てようというときに、徳永さんはもちろんですけれども、長島愛生園から加賀田さんがお見えになりました。当時、県人会長をされていたのですね。それからまた、石田さんという方、この方は、当時、愛生園の自治会長だったですけれども、実は境港で発症している兵庫県の方です。そういう意味で、鳥取県とは非常に交流もあるし、来られる機会も度々ある方でありました。こういう方々がお見えになられまして、非常に喜ばれたですね。私は悔いてやまない、そういう記憶があって、お会いをするのもいろんな思いでお会いしたのですけれども、まさにふるさとに帰ってきて、ここに心がつながったということを喜んでおられる形でありました。多くの方々がお集まりになられましたが、今の交流事業などで培ってきた、その人間関係の下で集まられた方々でありまして、また、皆さんでその瞬間を喜び合ったことは鮮明に覚えております。
同じような体験を最近もしました。おととしでありましたけれども、ちょっと新聞に投書が載りまして、この里帰り事業の言わば功績者でもある西尾邑次さんが山陰・夢みなと博覧会をやられたときに、実は交流の一環でお呼びされたのですよね。来られた方々の中にそういうことをされる方がいらっしゃって、備前焼のつぼを贈られたわけです。それの行方が分からなくなっているということで、その交流事業に携わられた方がそれを問題視される投稿が新聞に出ました。それは実は県庁の中にあったのですね。それを私どもは発見をしまして、では、これを展示しましょうと。それで、あの県庁の玄関に当たる県民室のところにそのつぼを置いて、長島愛生園の皆様、このハンセン病で結局そうした強制隔離に遭った方々に対する我々の謝罪とか反省の意味もありますし、また、実は恐らく、ここはぜひ押さえていただきたいと思うのですが、その方々、県人の皆さんも故郷に対するもう限りない思いを持っておられるのですね。憧憬とか、愛着だとか、深い愛情を持っています。それは引き裂かれた後も持ち続けておられて、その結晶としてのつぼがここに置かれるというような瞬間でもあったのですね。
このときに、当時はもうコロナでありますので、なかなかお会いするというわけになりません。こちら側には、その交流事業の関係者の方々が集まられていらっしゃいました。誰が呼んだわけでもないと思います。多分自然発生的に集まってきた。そして、テレビでつなぎまして、向こう側に石田さんたちがおられるわけですよね。一緒に画面でつないで、そのオープニングといいますか、その記念式典をさせていただいたわけであります。私は、式典が終わって、そこから公務でちょっとよそに逃げさせてもらったのですけれども、そのときに自分は非常に印象に残ったのは、私が立ち去った後も、皆さんが非常に楽しそうにテレビ会議を通じて旧交を温め合っているのですね。ですから、私たちはとんでもないことをしてしまったわけでありますけれども、先方の方々は、ある意味、それを乗り越えておられるのかもしれない。それで、故郷に対する愛着もつながっている。それを我々が交流事業だとか、こちらの知り合いができて、また、仲よくなって、それでつながっていることで、体は長島にいるかもしれませんけれども、心はやはり鳥取の中にまだ息づいているのかもしれない。そういう何とも言えないちょっと説明の難しい関係性というのが生まれていて、ある意味、鳥取のそうした里帰り事業等々の成果はやはり生きているのだろうと思うのです。
そういうような意味で、その上で、では、遺骨をこちらに戻すかといったときに、いや、ちょっとそれはというふうに言われたら、それはやはりその深い思いの中で選択をされているのだと思うのですよね。もちろんこの辺は、また今後も皆様に寄り添って、先ほど申しました一人一人の御意思に沿った形で私は対応していくべきだと思います。何かこちらでこうすべきだとか、こうではないかとか、まして、恨まれて、今も恨んで、恨みは深くていらっしゃる方々なのか。実はそこはもうある意味乗り越えておられるということは、我々も理解をしたほうがいいのではないかと。ですから、そういうとんでもないことをしたけれども、時間とともに、今、別の方向にこれを動かしていく。ある意味、お互いの旧交を温めたり、本当に帰ってこられる機会があれば、来ていただきたいし、遺骨という形でふるさとに眠る選択をされるのであれば、それを支えてあげたいし、また、生きておられる限りは我々も向こうにいろんな情報を届けたり、何ができるかをお伺いしに行く。こういうことを丁寧にやっていくというのが、見えない遠隔地の中での心のつながりというパイプづくりなのかなというふうに思います。
ややちょっと抽象的になったかもしれませんが、結局そうして、鳥取県らしい一つの生き方を私たちは長いこのハンセン病問題を議論し、行動を重ねる中で、別のステージに来ているような気もいたします。ですから、この成果を基に、この人権ということに私たちは真摯に向き合っていければと思っております。
◯議長(内田博長君)5番由田議員
◯5番(由田隆君)ありがとうございました。
質問の最後にします。大変恐縮です。中山間地、あるいは人口減少は、次の機会があればさせていただきたいというふうに思います。
今、知事からお話しいただきました。私も自分の思いを前面に出して今回質問いたしました。当然、言葉でも先ほど発しましたけれども、恨みつらみや嫌なことをずっと抱えて亡くなっていった方もおられるのだろう。あるいは、今残された6人の方もそうなのだろうというふうに思っていましたが、知事のお言葉をいただきながら、ああ、そういう考え方もあるなというふうに私自身も変わりました。
前段に言いましたけれども、そう遠くないうちにこの6人の方も亡くなられます。鳥取県民の皆さんにこの事実を、そして、今、知事が言われたようなことも何か記念し、そういうものを作って、いわゆる人権問題の学習教材にも私はなると思います。そういうことをぜひ実現していただきたいという思いを述べさせていただいて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
◯議長(内田博長君)答弁はよろしいですね。
◯5番(由田隆君)はい。
◯議長(内田博長君)暫時休憩いたします。
午後の本会議は、1時25分より再開いたします。
午後0時26分休憩
────────────────
午後1時25分再開
◯副議長(広谷直樹君)再開いたします。
引き続き、一般質問並びに議案に対する質疑を行っていただきます。
15番山口雅志議員
◯15番(山口雅志君)(登壇、拍手)皆さん、こんにちは。鳥取県議会自由民主党の山口雅志です。最後の質問になりましたけれども、議員生活4年間を振り返って一言述べたいと思います。
雪がすごく降っておるのですけれども、思い起こせば50年前、父が議員になる前からですけれども、大雪に閉ざされた北村の実家まで、家族4人で北村の終点のバス停から約2キロ、雪の深い中、歩いて帰ったのを思い出します。実家には、祖父母が2人っきりで生活しており、家族4人なのですけれども、1週間分の食料をみんながリュックに背負って帰りました。道路は今のようにアスファルトの幅広い道路ではなく、車1台がやっと通れるほどの細い道で、深い雪の中を父を先頭に母、私、妹の順で、父の足跡をたどりながら帰りました。当時、子供ながらに、すごく何か貧しい風景だなと思いながら、美しいですよ、きれいだけれども、貧しいなと思いながら感じたことを思い出します。父を含めて、議員生活の根源は、貧しさをしっかりと認識し、その貧しさから脱却し、豊かになることを目指すところから始まっているように思います。
その頃から中山間地の直面している課題は、人口減少と活力の減退であり、その課題を解消することが一番の目標でした。問題解決のために必要なのは、経済的安心、労働環境の整備、育児環境の整備であり、それぞれ例示的に、子育て世帯の経済的安心のための十分な児童手当や子供医療無償化、労働環境の整備に当たっては、生産性向上、再就職支援、ワーク・ライフ・バランス、働く場所の確保、育児環境としては、待機児童ゼロ、保育料の無償化などが必要ですが、こうした条件や環境がそろわないと子供を産んで育てると思わないのが実情です。
鳥取県では、子育て環境に関しては、結果が示すように、高いレベルで達成できていると思いますが、労働環境の整備については、まだまだやるべきことが多いと思います。そのためにも、まずは産業振興であり、特に中山間地では産業振興の中でも地域の自然を生かした観光振興であると思います。鳥取県が誇る自然の豊かさをコアコンピタンス、強みとして、県内各地には、地域の宝となる観光名勝が数多くあり、地域のポテンシャルを最大限に引き出し、人と人とを結びつける地域産業活性化する素地が十分にあるのが、自然を生かした観光ではないかと思います。
中山間地の視点としては、もともとあるものを生かす、他との差別化、一番大事なのが地域住民のモチベーションを上げることができるの3つが上げられると思います。特にコロナ禍においては、夏祭りとか老人会とか、様々なイベントがなくなる中、地域住民のモチベーションを上げることは大事な要素です。僕が住んでいる河原町では、三滝渓、湯谷温泉、八上姫の賣沼神社、河原城、これに文化的要素である西郷工芸の郷を加えて、一体的に振興されておりますが、その中でも私が一番重要だと思うのは、扇の要である自然の滝を生かした県の名勝、三滝渓です。これは、地域の住民の方もそうおっしゃっています。
ところが、平成27年、だから、今から7年前ですね、大水以降、遊歩道が崩落したまま、遊歩道もそうですけれども、側面も崩落、崩壊したまま放置されており、実際にそこを所管するのは鳥取市ですが、要望を上げても観光への活用が検討されておらず、なおざりになっているのが実情です。地域住民の皆さんは、この観光名勝が廃れてなくなってしまうのを回避するために、春と秋に住民総出で観光イベントを開いたり、頻繁に管理清掃を行ったりしています。観光名勝が地域住民にとって単なる観光地ではなく、住民相互の結びつきのシンボルになっているという一例であると認識しています。
同様に、佐治町では、山王滝を中心とした周辺の自然環境が特に有名であり、その中にある宿泊施設、たんぽり荘と佐治町内で民泊をやっているのですけれども、盛んなのですけれども、県内外から今はやりの教育旅行を目的として多数の人が訪れていますが、この山王滝周辺も3年前の大水から遊歩道が崩落したまま放置されています。佐治町には、五しの里さじに代表される和紙、梨、佐治谷話、星、佐治石が地域の魅力として言われていますが、地域住民は、佐治の魅力を県外からの来訪者や子供たちに伝えることで、改めて地域の宝を再認識するとともに、地域住民相互に、より結びつきを強くしています。
コロナ禍や物価高高騰など生活を優先するために、観光資源の復興が後回しにならざるを得ないことは否定できませんが、地域の象徴たる観光資源が地域住民の心の支えとなり、地域住民の結びつきに大きな役割を果たしているという事実もあり、声がすごく大きいです。あわせて、道路や施設管理に当たっては、三滝渓のように、県が指定する文化財であっても、県としては予算を別々に管理されており、一旦大水のような災害が発生すると、なかなか修復は難しいというのがネックになっています。
先ほども言ったように、観光資源の一つ一つが有機的に結びつくことが地域の魅力の最大化につながると思います。地域にとってのシンボルが今現在、大水などの自然災害によって失われた状態であり、何とか観光資源の修復を目指すことが優先的課題ではないかと思います。
そのためにも、県と市町村と地域が融合した一体的なプロジェクト組成や予算管理が必要になってくると思います。これは県の予算だとか、これは市の予算だとか言っている間に、どんどん時間が経過していきます。先ほども言ったように、三滝渓などはもう7年間も放置された状態ですね。このことについて、どう考えておられるのか、知事の御所見を伺います。
以上、壇上での質問を終わります。ありがとうございました。
◯副議長(広谷直樹君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)山口雅志議員の一般質問にお答えを申し上げます。
まず、これまで4年間にわたりまして、大変なお力添えをいただきました山口議員に対しまして、心から県民を代表し、厚く御礼を申し上げたいと思います。
今、お話にございましたけれども、山口享県議と2代にわたりまして、この議場に大きな力をもたらしていただき、そして、県政の方向づけをしていただきました。その功績は長く残るものだと思います。
今、お話を聞いていて、確かに雪の深い北村なのかなと思いながら、昔の情景を思い浮かべておりましたが、図らずも、先般、享先生がお亡くなりになられた、そのときに訪れさせていただいた久方ぶりの山口先生の家でございましたけれども、折しも降り積もっていた大雪がございまして、踏み固めた中を家のほうへと上がっていったことを思い出すわけであります。
そんなような雪の中、貧しさから脱却するための政治というものがあるのではないか。そのためにどうやって地域を元気にしたらいいのか。そういうようにおっしゃる話でございまして、まさにそれこそが山口議員が4年間追求したものでありましょうし、また、山口享県議もそうした志で新風を吹き込んでいただいたのではないかと思います。
そんな中で、例えば産業振興の新しいテーマであるとか、今日はこうした地域起こしの要となるような地域の宝をどういうふうに生かしていくのかという観点であるだとか、あるいは、農業のこと、また、人を育てることなど、示唆深いお話をこれまでも数々いただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。
それで、今日お話しいただきましたのは、そうした河原や、あるいは佐治にまたがる地域の魅力ということでございました。三滝渓につきましては絶景であります。4~5キロにわたりまして、その渓谷美がつくられているわけであり、そこには中心となるような林間施設もあるわけでございます。ただ、残念ながら、平成28年10月の鳥取県中部地震において、これが傷つくという事態になり、その後も災害が重なりまして、今事実上入れない状態になったりして、通りにくいことになっています。ただ、そういう中でも、地元の皆さんがこの三滝渓を盛り上げようというふうに平成30年に会をつくっていただき、今、議員もおっしゃいましたけれども、今年度も夏やら、秋やら、お祭りをしたり、それから、施設の管理をされたり、清掃活動をされたり、非常に精力的にこの宝を何とか守り立てていこうと頑張っておられるわけでありまして、心から敬意を表したいと思います。また、山王滝のお話もございました。こちらも、やはり佐治のちょうどダムの上のほうになりますけれども、そちらのほうにある滝やら、遊歩道やらがあります。この山王滝も三滝渓も共通しているのですけれども、農林省の事業を通じて、佐治村とか、旧の河原町とかがそうした施設整備を行い、遊歩道の整備を行ってきました。ですから、その一帯につきまして、合併ということで鳥取市に引き継がれて、鳥取市が今その管理権を行使しておられるという状況でございます。
ですから、今もお話はありましたけれども、これは法律上一義的にはやはり、鳥取市のほうの所管事業としてなされるべき部分が多いのだろうと思いますが、ただ、結論から申し上げれば、議員がおっしゃるように、市だ、県だという以前に協力し合えることはいろいろとあると思いますので、胸襟を開いたお話合いを今後もさせていただいて、できるだけ地域の宝が今後も活用できるように、少なくともそうした災害から立ち直っていくことにつきまして、できる限り早くその日を見るように、私ども県のほうからも関心を持って、市と協議をさせていただければと考えております。
山王滝につきましては、一定の整理がつきかけているようで、いずれ、市のほうで事業に着手されるのではないかというふうに期待をいたしております。三滝渓につきましては、御案内のとおり、環境大学の先生をキャップにして、今その林間施設の在り方についての検討会を市のほうで始められておられまして、これに地元の方が入ったり、関係の方も入られまして、今どういうふうにこれをしていったらいいのかという協議を始められておられます。そうしたことの行方を私どももいろいろと見守らせていただきたいと思います。
県のほうも今、地域としてかぶっている部分が、若干県の名勝という地区があります。これは、正直、三滝渓の端っこの部分でありますけれども、そのところにつきましては、県のほうでもいろいろと、資金面も含めて、御協力すべきものなのだろうと我々も思っておりますし、あと、いろいろ技術的なこととか、そのほかの事業に関わることなどもいろいろありましょうから、この災害から立ち直る市の事業や計画づくりなど、私どももいろいろとお話を伺ったり、支援もさせていただきたいと思っております。
議員のほうでも御指摘がありましたけれども、三滝渓は本当に紅葉の名所でありまして、長く親しまれてきたわけでありますが、それをこのまま失ってしまうのはもったいないわけであります。同じようなことが実は各地でも起こっています。本当に鳥取県はある意味災害が多いのですよね。そういう遊歩道的なところほど、実は絶景の裏には災害に遭いやすいということもあります。一例を申し上げれば、岩美町のほうに、大谷のところなのですけれども、駟馳山の日本海側のほうですね、あそこに実は遊歩道があります。この遊歩道は海岸沿いについているわけなのですが、いろんな要因でこれはやられます。波浪災害を受けるようなことも当然あれば、このたびは、実はいわゆる山地の崩落が起きたのですね、地滑り。地滑りによります崩落がありまして、正直、修復不能な形になってしまいました。こちらの自然遊歩道なものですから、これは県管理であります。この県管理の自然遊歩道につきまして、地元の岩美町にも、地権者とか、地元の考え方の整理など、いろいろと汗をかいていただきまして、御協力をいただき、話をまとめて、従来、海岸の近くにあった遊歩道では復旧がどうも見込めないと。危険な状態というのは、どうしても残ってしまうものですから、それを付け替えまして、山の上のほうに法線を変えて遊歩道を通すというふうにしまして、これは令和2年頃ですかね、一応そういう復旧作業、復旧事業を完了したということもございました。
やはり関係市町や、県、あるいは国が関わる場合もありますし、協力をしながら、そうした道筋を開いて、従来どおり、全部そのまま復旧ということが自然災害の場合は難しいときもありますので、形を変えてでも機能を元に戻すということなどを工夫していければというふうに思います。今後もよく鳥取市と協議をさせていただきたいと思います。
◯副議長(広谷直樹君)15番山口議員
◯15番(山口雅志君)知事、丁寧な答弁をありがとうございます。
三滝渓でもあるのですけれども、表面的崩落があるのですけれども、先ほど岩美の大谷の話があったように、ルートを変えたり、地下へ潜ってトンネルを掘ったり、そういういろんなやり方があるそうです。なので、やはり一番よくないのがそのままほったらかしにすることだと思います。やはり地域住民は、県だとか、市の対応をしっかり見据えています。それがほったらかしにされることによって、自分たちが軽んじられているのではないのか、ほったらかしにされているのではないのか、それがやはり心の支えというのを失っていく一つの要因になっているのではないかと思います。ぜひとも前向きに、まずはその地域の名勝が、その地域にとってどれだけ有用なのかをまず検討した上で、その重要性が見てとれるのであれば、それをどうやって工夫して回復するかというのを順を追って対応していくべきではないかと思います。よろしくお願いします。
では、追及質問に移ります。文化振興というのは、市と県と分け隔てて振興するものではなく、一体的に取り組んでこそ、地域全体としての大きな成果が得られるものだと思います。現在のように、ここは県、ここは市というように、ばらばらで予算化していては、地域全体としての成果が得られないのではないかと思います。
事業を実施するのは市町村であっても、全体としての予算化の調整や管理の在り方、責任の所在を適切な体制構築とともに図られていかなければ、なかなか前に進むのが難しいのではないかと思います。知事の所見をお伺いします。
◯副議長(広谷直樹君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)山口議員から重ねてのお話がございました。
三滝渓につきましては、非常に難しい状況かと思いますが、我々、県側のいろいろなノウハウも確かに言われてみればあるわけでありまして、いろいろと協議もさせていただければなと思います。あそこでは、ちょうど千丈滝の前のつり橋、あれが一番何か絵になるし、観光のシンボルだったと思いますが、あれが地震の影響で被害が出たということでございまして、なかなか難しい中ではありますが、確かに議員がおっしゃるようにトンネルで抜くとか、いろいろと少し発想を変えてやっていくということなのかもしれません。私どもも今、難しいところの一つで、大山滝というのがありまして、これもやはり地震で壊れたりするし、埋まったりするのですね。ちょうど琴浦のずっと奥のほうに行くわけでありますが、これもやはり法線を付け替えながらやっていくなど、考えていかなければいけないのかなということを今しているところでございまして、そうした悩みながらということだと思います。
こうした自然系につきましては、自然、遊歩道の助成事業などもありますし、いろいろと事業の手だてもあろうかと思いますし、場合によっては県もある程度お手伝いをしながらということも今後、協議をしていければなと思います。
文化振興につきましても、一緒でありまして、山口議員の頭にあるのは、もしかすると、先ほどお話にあった西郷のことかもしれません。この西郷は今、あまんじゃくの会をつくられまして、非常に元気にやっておられるわけであります。ただ、もともとあそこは不思議なところだったと思っています。それは、意外なほどに芸術家が集まるのですね。前田昭博さんの人間国宝は言うに及ばずではあるのですが、前田さんが来られる前から、あのやなせ窯の前から民芸の流れがあって、それで、窯が幾つもあったと。そこにニシオさんという、抽象画を描かれる洋画家もいらっしゃったり、いろいろと不思議なほどに接点があって、それに引かれるのか、例えばガラス細工をする人とか、西郷に住まわれるという方が次々とあったところです。
そういう中で、前田昭博さんなども声をかけられて、地域の人もまとまられて、一層そうしたアーティストの村をつくろうということで動かれるわけですね。これを私どもでは、アーティストリゾート構想という県事業を持っています。これでいろいろと支援できるだろうということで、実際、支援に向かったりしてきました。また、市のほうも市のほうで、そうした地域起こし、そもそも西郷についてのまちづくりの協議会もございまして、そうしたところをベースにして活発に動いていかれました。こういうような事業をつくっていくには、こうした行政側でも県だとか、市だとかの境なく、一つ大きな目標を見ながら動いていくのが正しい方策なのだと思います。
こちらにつきましては、例えば商工会議所なども興味を持っていただきまして応援をしていただいたり、いろいろとそうした陶芸家のグループなど、応援団もおられまして、今では、物産展のようなことをやられるとお客さんが来られるわけでありますし、たび重ねて文化、芸術についてのフォーラムの開催を重ねてこられておられます。これがやはり地域の元気になるわけですね。最近はクラウドファンディングをされて、それでお店をつくられて、若い方々の言わば居住の契機にもなったりしています。私も思うのですけれども、こういうところが多分地域としては大化けしてくると思うのですね。単に何か交通の利便性がいいとか、そういうことだけではない、一つの文化の薫りや、あるいは地域の中の空気感、こうしたものが多分あそこの場所にはあって、それが人々を引きつける磁石のようになっているのだと思います。
こういうようなことを考えますと、文化振興の一つのモデルケースになり始めているのではないかなと思います。議員もおっしゃいましたけれども、こうしたアーティストリゾート的なところを私は県内に幾つも拠点ができるのではないかなと思っております。鹿野がその一つだと思っているのですね。鹿野に鳥の劇場ができて、これはしめたと思ったものであります。案の定、その後、展開をしていって、まちのほうも移住者を獲得をしたり、元気の元になっていますし、大山なども一種のスピリチュアルなものがあると引っ越してこられたアーティストもおっしゃっていましたが、そうしたものがあると。だから、鳥取県内には自然豊かで、人々の言わば温かい心の受皿があるのだろうと思います。そういう意味で、文化、芸術を育てていく、そういう地域づくりは私たちの一つ目指せる割と近い目標ではないかなと思っております。
◯副議長(広谷直樹君)15番山口議員
◯15番(山口雅志君)知事、ありがとうございます。
前田人間国宝は、一旦大阪に出ていったのですよ。だけれども、帰ってこられた。いろいろお話を聞くと、何もないから田舎を出た。だけれども、何もないから鳥取に帰ってきた。これは本人から聞いた話です。それだけ何もないというのは、何もないからこそ、豊かな自然が目に飛び込んでくる。それが芸術につながる。まさにアーティストリゾート構想の要ではないかなと思いますので、応援をよろしくお願いします。
あと、僕の実家の前に夫婦で、三々窯というのですけれども、子供がこの間、去年生まれました。芸術家も含めて人口も増える中、だんだんそういう自然と相まって、何か地域づくりがどんどん栄えてくる。こういうのを目にすると非常に頼もしく思いますので、ぜひとも応援をよろしくお願いしたいと思います。
応援をよろしくと言ったのですけれども、以前、過疎債の議論がありました。その中で言われているのが組織化なのですけれども、過疎ですから、やはり人材、リーダーが地域地域に、人がいないというのが悩みなのですよ。それをやはり市町村、でも市町村にもいない。県がバックアップすることで、いわゆる人材の側面で、しっかり支えていけるのではないかという議論がありました。その中でも、やはりそういったことで、県の果たす役割というのは非常に大きく思うのですけれども、その点について、知事はどう思われますか。
◯副議長(広谷直樹君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)山口議員から重ねてのお尋ねがございました。
こうした分野での県の役割ということでありますが、おっしゃるように、人間ということにつきまして、これは地域のなかなか得難い難しいところでもあるわけであります。ただ、地域には、今、議員がおっしゃったように、三々窯のお話も含めまして、いろいろと魅力的なところが実は隠れていたり、いろんな作品やいろんな物産があっても、それが評価されない、あるいは、販路につながらないといけないということがあります。多分鳥取県がそうした意味でずっと温めてきたのは民芸という分野だったのだろうと思います。
この民芸を鳥取県の中で一つの拠点性を設ける、そういう大きな役割を果たしたのが、吉田璋也先生であったと思います。吉田璋也先生は、そうした県内にある幾つかの窯を訪ねながら、デザイン性などの指導もされるわけですよね。それを、今度、東京の銀座のほうに店も開かれていまして、そちらのほうで販売するということもされるわけであります。そうした意味で、地域にいるたくみ、それから、民芸でありますから、用の美、日常性の中に、ふだん遣いの中に美しいものが隠れている。それを見いだして、ただ見いだすだけではなくて、そこにまた指導、味つけをして、言わばプロデューサーの役割を果たすわけです。そうした方がいて、それで多分今日まで、もう長く残る民芸のデザインだとか、商品性のある陶磁器が生まれてきているわけだろうというふうに思います。今この民芸も一つのブームになって、若い方々にもかわいいアイテムとして結構高い値段で取引をされてくる。その背景には、そうした吉田璋也という人がいたということです。
実は、こうした民芸を指導していくという意味で、県職員の中にも専門家を置いてきました。それで、これはもう吉田璋也よりずっと後ですけれども、例えばいろんなプロモーションをかけるわけですね。いろんなところに売り込みに行くわけです。もちろんこういうふうにしたらいいよという商品指導もする。そうしたつなぎ役を県のほうでして、それで生まれたのが若い人とのショップであるビームスというショップがありますが、ああいうところにパイプをつくったのは実は県職員であります。
こういうような役割というのは、やはりあるのだろうと思うのですね。一定程度、専門性を持って、それで言わば見る力といいますか、眼力といいますか、自分自身が作家ではないにしても、キュレーター的な役割を果たしつつ、こうしたらいいよということを指導する。それで、片方で、これが実際所得につながらなければ、その伝統工芸自体が廃れてしまいますので、その伝統工芸を振興していくという意味での販路開拓やPR戦略、こういうこともやっていく。こうした役割というのは、確かに県庁のほうの一つの機能なのかなと思って、今お話を伺っておりました。
ぜひそうした形で、それぞれの地域で行われる伝統的な技術の伝承であるとか、それから、工芸品、あるいは文化芸術の振興、そうした意味で、我々県庁のノウハウも人的にも総動員をしてまいりたいと思います。
◯副議長(広谷直樹君)15番山口議員
◯15番(山口雅志君)知事、ありがとうございます。
西郷谷の大きなイベントとして、西郷工芸祭りというのがあります。県の御支援もいただいています。中井というところなのですけれども、人がたくさん集まるのですね。であるのであれば、ずっと前からあるので、三滝渓であるとか、そういった自然の景勝に触れ合う機会をつくってみたらどうかという話を以前に鳥取河原支所の支所長の九鬼さんと話をしたことがあるのですけれども、なかなか予算の問題であったり、組織の問題があったりして、バスをピストン輸送するにも何か問題があったりして、要は一緒になって考えるということで、1足す1が2以上、3になったり、4になったりすることも十分ありますので、ぜひとも市と県と地域が一体になっていろいろ考えていただければと思います。
追及質問を行います。昨年、鳥取県が孤独・孤立を防ぐ温もりのある支え愛社会づくり推進条例をつくりましたが、その条例のエッセンスは、地域のコミュニティーを前提とした人と人とのつながりではないかと思います。ところが、昨今、コロナの影響で、人と人との結びつきが消失しているのが現状です。先ほど申し上げたように、地域の名勝は、長年引き継がれてきた地域のシンボルであり、その地域住民を結びつける原動力となっています。生きていくためには、心の支えやモチベーションが必要であります。