愛知県議会 2019-10-03
令和元年農林水産委員会 本文 開催日: 2019-10-03
これまで県は、トレーサビリティーが難しいとか価格下落の問題があると説明してきたが、これらの問題は解決したか。また、国の対応を受けてワクチンの接種をどのように考えているのか。加えて、今回、国はなぜ方針変更したと考えるか。
8: 【
家畜防疫対策室長】
まず、今回の豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針改正で、食肉や内臓の流通制限を行わないと示された。まだ風評被害の懸念はあると思うが、これにより、大幅な価格の下落は少なくなったと考えている。
県としては、今後、生産者、食肉流通業界の意見を集約して、検討したい。
国の今回の方針転換は、昨日の説明では、イノシシの感染拡大が広がっていることが主たる理由だった。また、その中で生産者は、飼養衛生管理基準を守ってほしいと、消毒の徹底や防護柵の設置を指導していたが、イノシシの感染地域ではこれだけでは防げないため、ワクチン接種に踏み切ったと考えている。
9: 【
山田たかお
委員】
ワクチン代や接種費用などは誰の負担となるか。また、今後生まれる子豚にはどう対応するか。
10: 【
家畜防疫対策室長】
今回のワクチン接種は、予防的ワクチン接種といい、国の責任で行って蔓延を防止する緊急ワクチンではなく、県の自治事務として行うワクチン接種となる。
国はワクチン代の2分の1等を負担すると示しているので、全額国の負担ではない。したがって、何らかの持ち出しはどこかがしなければならず、最終的な受益者が生産者にあるので、今後まだ検討の余地はあるが、何らかの生産者負担を求めていくべきと考えている。
また、ワクチン接種は哺乳豚を除く全頭が対象となり、今後生まれる豚も接種する必要があるため、ワクチン接種の費用はかかってくる。
11: 【
山田たかお
委員】
ワクチンを接種しても、10パーセントから20パーセントは効かない豚がいる一方で、接種後に新たに豚コレラが発生した場合は殺処分することとなるが、ワクチン接種後の管理をどのようにしていくのか。
12: 【
家畜防疫対策室長】
個体差や親からの抗体の影響など、いろいろな状況の中で、ワクチンを打ったが思ったように抗体ができない豚は幾らか存在すると考える。ワクチン接種以前に、消毒等の飼養衛生管理基準を徹底してもらい、まずは農場の中にウイルスを入れさせないための対策をしっかりすることで、感染のリスクを下げることを考えている。
また、ワクチン接種した豚の流通への影響は、昨日の説明会でも風評被害の影響に対する懸念の声があったので、しっかり対応したい。
13: 【
山田たかお
委員】
価格に影響があった場合の対応やその責任の所在についてどう考えているのか。
14: 【
家畜防疫対策室長】
今回9県がワクチン接種の推奨地域と指定された。9県が足並みをそろえて打つかわからないが、ある程度広域な範囲となっており、周辺の静岡県や栃木県からもワクチン接種の要望がある。広域になったので、大きな影響の有無について今後の推移を見守りたい。
風評被害はマスコミ対策をしっかり行いたい。また、価格下落は、県単独で対応することは非常に難しいため、国に引き続き何らかの対策を要請したい。
15: 【
山田たかお
委員】
今後もイノシシが減らない限り根本的な解決とはならないと思うが、どう対応するか。
また、ワクチン対応できないと言われているアフリカ豚コレラも海外ではかなり広がっている。国内へ持ち込まれる可能性があるが、こちらの対応はどう考えているのか。
16: 【
野生イノシシ対策室長】
野生イノシシ対策は、捕獲強化、経口ワクチンの散布、検査の3本柱で行う。
捕獲強化は、愛知県全域、特に渥美半島の根絶を目指し、大きく六つの対策を行う。一つ目が捕獲料金の引き上げであり、1万3,000円上乗せしている。二つ目が捕獲者の増加を目指し、わなや狩猟の免許の試験を2回から3回にふやす。三つ目がわなの増設で、くくりわなは550基、箱わなは116基増設している。四つ目が狩猟者の育成。五つ目が渥美半島野生イノシシ捕獲根絶協議会の設立。六つ目が渥美半島の侵入防止策の策定。その他、渥美半島における野生イノシシの生息調査等を行う。
17: 【
家畜防疫対策室長】
アフリカ豚コレラは、現在、東ヨーロッパで発生したほか、昨年8月から中国、本年9月には韓国でも発生している。韓国ではわずか2週間余りの間に9件程度増加しているので、非常に危機感を持っている。豚コレラと同じように、日本では海外悪性伝染病として、特定家畜伝染病に指定されており、鳥インフルエンザや口蹄疫と同様に重要疾病に位置づけている。
アフリカ豚コレラは、ワクチンがないので、万が一国内に入ってしまうと手に負えなくなる。一義的には、海外から入ってくるものは、検疫で対策している。昨年は、約9万件の違反事例があった。本年は70件程度アフリカ豚コレラのウイルスが見つかっており、中部国際空港でも感染力を持ったウイルスが2例入ってきている。
検疫では、探知犬をふやしたり、質問をふやしたり、警察への告発を強化したりしているが、県としても、イノシシからの感染を防ぐための防護柵の設置、飼養衛生管理基準の徹底的な遵守を行っている。
18: 【
山田たかお
委員】
ワクチンを接種する場合、生産者を含めて防疫に関する意識が低くなる可能性もあるので、万が一のことが起こらないようにしてほしい。
岡崎
市にある愛知県畜産総合センターの試験場で母豚を供給しているが、母豚の供給はそこしか行っていない。リスク管理として、それ以外の畜産総合センターの施設や農業高校などで維持増殖を行うことはできないか。
19: 【
家畜防疫対策室長】
畜産総合センターでは、系統豚の維持を行っているが、系統豚自体は血縁が近い豚なので、掛け合わせたときに斉一性が高い。系統豚の維持は、血縁係数、近交係数が高いため、掛け合わせによっては、血縁が非常に高くなる。奇形や障害が出るため、掛け合わせ管理をしっかり行っており、これを民間や高等学校で行うのは難しい。
また、畜産総合センターでも農業総合試験場と同じように受精卵の保存を行っているが、万が一の発生に備えて、早急に保存を進め、対応したい。
20: 【
山田たかお
委員】
これまで発生した豚コレラの発生農家への手当金や支援金の支払い状況はどうか。
また、再開に向けては多額の資金を必要とするが、ほとんどの支援制度が融資であり、生産者の年齢や環境によってはなかなか再開に踏み切れないようだ。豚コレラのリスクをどちらがどの程度持つかや殺処分がどの程度影響するかはあるが、生産者が廃業すると生産規模が随分落ちるので、何とか再開してほしい。例えば、後継者の確保など、生産者が長期で生産の継続を検討するための対策はあるか。
21: 【
家畜防疫対策室長】
本県は8月31日まで継続的に豚コレラが発生しており、10月1日にようやく県内全域の移動制限が解除された。その中でなかなか手当金や支援金の支払いが進捗していないが、手当金は、農業総合試験場を除く29戸44農場のうち、1農場に支払われた。7戸は国と協議している。8戸は間もなく国の協議にかけられる。残り約10戸は、直近の発生の農家と、豚や餌の価格の違いから手当金の評価に納得していない農家である。
支援金は、11例目までで115戸影響を受けたが、そのうち47戸から助成希望がある。現在評価額を算定しており、今月中に額を確定して、来月交付したい。また、12例目以降は11月から調査したい。
再開に向けた現在の補償は、発生農場に対する手当金である。また、経営再開に当たって家畜防疫互助基金があり、これは県の基金ではなく、全国団体である公益社団法人中央畜産会、県域団体である公益社団法人愛知県畜産協会が事業主体となっている。国と生産者が積み立てた基金で、経営再開までの間の固定経費を見る保険制度があり、この加入者は、ある程度の支援がある。
今後の状況は、高齢化によって再投資が非常に厳しいという声もあり、数軒は再建できないと聞いている。できる限りいろいろな施策を考える中で、新たな対策があれば取り組みたい。
22: 【
山田たかお
委員】
まだまだこれから活躍できる生産者が諦めることは本人も非常に残念がっていた。何らかの対策に取り組み、再開できるようにしてほしい。
23: 【小山たすく
委員】
国がワクチン接種の方針を出したが、ワクチンを使うため、非清浄国になると思う。本県は、今まで防疫上の蔓延防止として、緊急ワクチンの接種を要望してきたと思うし、当然緊急ワクチンで対応すべきだと思うが、国の方針は予防ワクチンである。ここが県と国の危機感、意見の違いが大きいと思うが、少なくとも、国は緊急事態ではないとの認識で予防ワクチンの接種に踏み切ったという理解でよいか。
24: 【
家畜防疫対策室長】
国の説明では、各県から要望が多数あるが、家畜伝染病予防法上、緊急ワクチンの接種が規定されておらず、法令改正するよりも各県の条例改正でやったほうがスムーズに接種できるだろうと予防的ワクチンとの方針にしたとされている。
また、今回は基本的に養豚経営を続けながらワクチンを打つため、あくまでも予防的なものという認識を伝えられている。
25: 【小山たすく
委員】
その立場の違いが今後の施策に影響すると懸念している。国が予防ワクチンという方針を決めた。三重県や岐阜県でもワクチンの接種を早期に行いたいという話が出ている中で、緊急ワクチンに変わることは現実的にはないと思うので、より生産者や地域の声が反映されるように強く要望してほしい。
ワクチン接種は指針の改正案の中でかなり細かく書いてあるが、これから指針の改正案について、10月7日までパブリックコメントや都道府県との意見交換を行い、その後、食料・農業・農村政策審議会家畜衛生部会に答申して官報に掲載する。官報掲載が10月半ばぐらいと聞いているので、その中で知事がワクチンを打つ、打たないを判断して、接種プログラムをつくる。その協議があって、備蓄ワクチンの引き渡し、接種という流れになると思うが、一方で、指針では、9県のワクチン接種推奨地域の中の接種地域は、都道府県知事が決めることとなっている。これは例えば、知多半島は打たない、渥美半島は打たないなども知事の判断によって可能だが、ワクチン接種の趣旨から考えると、それが成り立つのかという疑問があるし、地域の生産者にも不安を与えると思う。県の基本的な考え方は、全県にワクチン接種するという方針でよいか。
26: 【
家畜防疫対策室長】
国がワクチンを接種することとしたのは野生イノシシによって飼養衛生管理基準だけでは豚を感染から守れないという考え方であるため、野生イノシシで陽性が出ている9県が対象となった。
愛知県の中でどう分けるかは非常に難しい問題だが、田原
市、西尾
市に感染した経緯がわからない中で、生産者は野生イノシシの有無にかかわらず、不安を感じている。したがって、広く意見を聞く必要があるが、最終的には県内一律でワクチンを接種すると考えている。
また、家畜防疫自体が基本的には県域で行うことを考えれば、まずは県内一律だと考えるが、長い目で見れば、飼養衛生管理基準を守れば感染拡大は防げるという地域の生産者がいれば、そういう声を反映して、地域指定も考えられる。
27: 【小山たすく
委員】
10月中旬に指針が改正されることを踏まえると、県としてワクチン接種の有無、あるいは対象地域を判断する時期のめどは、10月中旬と考えてよいか。
28: 【
家畜防疫対策室長】
そのとおりである。10月7日にはパブリックコメント及び県への意見照会の締め切り、その後、10月中旬ぐらいに官報掲載、指針改正が予定されているので、おくれることのないように準備したい。
29: 【小山たすく
委員】
他県がどんどんワクチンを接種する中で、例えば岐阜県や三重県といった近隣県が接種する場合に、愛知県だけ接種しないことは現実的には考えにくいと思うがどうか。
30: 【
家畜防疫対策室長】
現在意見を聞いている段階であり、今後、生産者や食肉などの関係者に意見を聞く中で、接種する、あるいは接種しない要望のどちらかに一致して傾くことがあれば、そちらに向くと考えている。他県は接種するところが非常に多くなっているが、本県としてはまだどちらの判断もしていない。
31: 【小山たすく
委員】
指針の改正案では、ワクチン接種後も農場で豚コレラが発生した場合は全頭処分との方針が示されているが、それぞれ専門家の中でも大きく議論が分かれていると思うし、生産者にとっても非常に大きな問題で、いろいろな思いがあると思う。国の方針は全頭殺処分だが、県はどう考えるか。
32: 【
家畜防疫対策室長】
今回の指針改正は全国一律のものなので、基本的には国の指針に基づいて進めていく。
33: 【小山たすく
委員】
今回は、基本的には生きた豚以外は流通を認めているが、一方で、生きた豚は、接種地域と非接種地域の間の移動が禁止される。接種地域と非接種地域にまたがって複数農場を持っている農家への支援策はあるか。
34: 【
家畜防疫対策室長】
現状では何もない。愛知県、静岡県で、接種地域に子豚を生産する農場、非接種地域に肥育する農場2軒を持っている場合に、その生まれた子豚はワクチンを打つために非接種地域に豚が移動できない農場があると聞いている。県内でもそういう農場が多数出てくる可能性も非常に高くなっている。実態を把握した上で、何らか対応できるのであれば考えたいが、現在まだ接種の有無、静岡県の状況もわかっていない状態なので、個別で対応したい。
35: 【小山たすく
委員】
指針では、予防的ワクチンの項の中の不適切な表示に対して適切な指導を行っていくことが、風評被害を抑えていく一つの方策として記載されているが、ワクチンを接種後に、ワクチンを接種したというラベルを張ることになれば価格の低下をもたらすという懸念がある。農林水産省へ確認したら、そんなルールはないとのことだった。今回は流通制限がないので、店頭でラベルを張ることは、不適切な表示に当たると思うがどうか。
36: 【
家畜防疫対策室長】
今回は流通制限をかけないので、例えばワクチンを接種していないという表示も不適切な表示だと思う。ワクチン接種の有無を明示することはない。
37: 【小山たすく
委員】
これから具体的な内容が決まっていく中で、生産者に対して細かく意見を聞き、説明を丁寧にしていく場が必要だと思うが、これから県としての方向性を出す前にそうした場を設ける予定があるか。
38: 【
家畜防疫対策室長】
生産者の意見は非常に重要であるので、今後、意見を聞きたい。まず、あす、西三河で説明会が予定されている。また、今月11日には知多半島で説明会を行う予定である。これは家畜保健衛生所の単位だが、そのほかの地区でも説明会の開催を打診している。
39: 【小山たすく
委員】
指針には経口ワクチンが追加されているが、本県は本年3月に既に経口ワクチンの散布が始まっている。これは、現在、犬山
市、瀬戸
市、岡崎
市、豊田
市で行っているが、現在の経口ワクチンの散布数と、経口ワクチンの散布の抗体の獲得率を伺う。
40: 【
野生イノシシ対策室長】
本年3月24日から25日にかけて、犬山
市、小牧
市、春日井
市で県内最初の散布を行った。それ以降、本年9月26日までに散布地域は瀬戸
市、岡崎
市、豊田
市下山地区を加えて、延べ529カ所に1万2,460個を散布している。今後は豊橋
市、岡崎
市、豊川
市、豊田
市、西尾
市、蒲郡
市、新城
市、田原
市、幸田町、設楽町、東栄町及び豊根村でも、地元と調整でき次第、合計約2万2,000個を散布する予定である。
ワクチン散布エリアのうち、犬山
市、小牧
市、春日井
市、瀬戸
市において、4月12日から8月6日に検査した陽性イノシシ42頭中31頭が豚コレラウイルスへの免疫を獲得しており、獲得率は74パーセントだった。これは、欧州
委員会が作成したガイドラインによると、豚コレラの感染拡大をとめるには少なくともイノシシの40パーセントが免疫を獲得する必要があるとされていることから、一定の効果が出ていると思う。
7月下旬以降に散布を開始した岡崎
市、豊田
市は、現在の免疫獲得率を算出するためには、まだ検査個体数が少ない状況なので、サンプル数がそろい次第公表する。
41: 【小山たすく
委員】
各農場での飼養管理基準を徹底することもあるが、イノシシをしっかり捕獲することも大事だと思う。本年のイノシシの捕獲目標は1万5,000頭と聞いているが、現在の進捗状況はどうか。また、地域別では、昨年比でどれぐらいふえているのか。特に、根絶を目指すとしている渥美半島での捕獲状況はどうか。
42: 【
野生イノシシ対策室長】
野生イノシシの捕獲頭数は、8月末現在の速報値は、全県で3,055頭である。これは、昨年度同時期の71.4パーセントである。これを市町村別に見ると、陽性イノシシが確認された犬山
市、春日井
市、瀬戸
市、豊田
市、
長久手市、日進
市の6
市では昨年度同時期の47.3パーセントの捕獲にとどまっている。一方、陽性イノシシが確認されていない6市町村以外の地域では、昨年度同時期の102.8パーセントと、捕獲頭数は増加している。
陽性地域で捕獲頭数が昨年度を下回っている理由は、野生イノシシが豚コレラに感染することで死亡するなど、生息数が減少していることが考えられる。市町村や猟友会に実施したアンケートでも、野生イノシシの豚コレラ陽性が確認されている地域では、本年度に入って死亡イノシシの目撃数の増加や、野生イノシシの目撃、生息数が減少しているとの回答があった。
なお、根絶を目指して特に捕獲を強化している田原
市と豊橋
市は、昨年度同時期の128.4パーセントと、3割ほど捕獲頭数が増加している。今後も野生イノシシの捕獲促進を継続実施し、目標頭数の達成を目指したい。
43: 【小山たすく
委員】
来月からイノシシ猟が解禁になると思うが、岐阜県は、狩猟することでかえって豚コレラの感染が広がることを理由として狩猟自体を禁止していると聞いている。まず、本県の解禁理由を伺う。その際、感染拡大防止に向けた施策も徹底していると思うが、その内容も伺う。
44: 【
野生イノシシ対策室長】
本年度の狩猟解禁は環境局が判断したが、豚コレラウイルスの拡大を防止するためには、野生イノシシの個体数の削減が必要であり、狩猟を解禁することで、狩猟者による野生イノシシへの捕獲圧の増大を期待したものである。国も、豚コレラ対策として、狩猟による野生イノシシへの捕獲圧の強化も必要であるとの考え方を示している。
狩猟の解禁に当たっては、狩猟者に対し消毒等の防疫措置の徹底を要請するとともに、野生イノシシの豚コレラ陽性が確認された地点から10キロ圏内を含む13市町村で野生イノシシの捕獲を実施した狩猟者に対して、陽性エリア外での狩猟行為を自粛するように要請している。
45: 【小山たすく
委員】
捕獲するわなについて環境省に話を聞くと、国では、くくりの箱も大型化して、ICT技術の導入などを進めていくようである。本県でもICT導入を進めていると思うが、捕獲者の負担軽減策について伺う。
46: 【
野生イノシシ対策室長】
野生イノシシの捕獲の多くはわなによるものだが、原則、毎日の見回り作業が必要になるなど、捕獲者の負担は大きく、負担軽減に向けて、ICTの活用を進めている。導入事例としては、県が開発した捕獲装置にICTを使用した大型捕獲わなを現在までに23台導入した。箱わなでは、獣の背の高さを感知して、自動で捕獲するICT機器を導入している。豊田
市には、昨年度は50台設置し、本年度は10台を設置する予定である。また、くくりわなは、作動すると捕獲者に無線で連絡が入る機器を本年度から導入する計画を立てている。
このほか、狩猟免許を持たない者でも捕獲補助者として日常の見回り作業を担うことができる制度の活用も啓発している。
今後も以上のような捕獲者の負担軽減を図ることで捕獲効率を向上させ、目標捕獲頭数の達成を図りたい。
47: 【小山たすく
委員】
最近、猟友会も含めて、狩猟者が減少している。高齢化が中期的に大きな課題になると思うので、狩猟者の育成の取り組みを伺う。
48: 【
野生イノシシ対策室長】
本年度環境局と協働で、わな免許取得後3年以内の狩猟初心者を対象に、わな捕獲技術向上研修を実施する。この研修は、わな猟による効果的なイノシシ捕獲技術の習得を主な目的とし、10月26日には愛・地球博記念公園で、11月9日には田原
市で開催する。
このほか、捕獲者や自治体職員等に向けた研修会を開催し、実績を上げている捕獲事例や地域ぐるみの捕獲の取り組み事例に基づいて研修を行う。さらに、狩猟免許試験の受験者をふやすため、2回だった狩猟免許試験を本年から3回実施している。これらにより、狩猟者の確保及び捕獲技術の向上を図る。
そのほか、くくりわなを550基、箱わなを116基配布して、1人当たりが仕掛けるわな数をふやす取り組みもしている。
49: 【神野博史
委員】
本県の平成29年の農業生産額は3,232億円で全国第7位だが、農業就業者数は平成27年度で6万9,000人と5年前に比べると10.3パーセント減少している。販売農業戸数も平成27年度で3万5,000戸と5年前に比べると20パーセントも減少している。
私は農業者の経営指導を行っているが、本県農業は、後継者の確保が一番大きな問題であるとともに、経営が大変で専業農家が少ない。後継者不足を解決するためには、所得が上がらないといけないが、所得を上げるためにはまず出口戦略が重要である。要するに販売価格に影響を与えられるように農業経営していかなければならない。農業協同組合や市場に出すと、需給バランスで価格が決まるので、作物の直売や契約栽培を行うとか、商業関係者と販売業者と提携するとか、価格をある程度自分で決める必要がある。
9月10日から12日まで、農林水産
委員会で宮崎県、鹿児島県に県外調査に行ったが、宮崎県では公益社団法人宮崎県農業振興公社がしっかりと6次産業に取り組んでいた。宮崎県で認定された総合化事業計画は107件とのことだが、愛知県の6次産業化の取り組みを伺う。
6次産業は、平成23年に地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律ができてからスタートして、愛知県でも平成25年度から愛知県6次産業化サポートセンター等を設置して進めている。農業所得を上げるには、6次産業化は一つの有効な手段であるが、愛知県における6次産業化の取り組み状況はどうか。
50: 【食育消費流通課主幹(需要拡大・六次産業化)】
本県では農業者等の6次産業化の支援を行うため、愛知県6次産業化サポートセンターを設置し、中小企業診断士やマーケティング等の専門家である6次産業化プランナーを派遣して、経営改善を図るための計画として国が認定する総合化事業計画の作成指導や、新たな商品づくり、販路拡大、販路開拓などの個別相談による支援を行っている。
また、経営感覚を持って6次産業化に取り組める人材を育成するため、人材育成研修会を開催し、総合化事業計画の国の認定を受けた場合は、新商品開発に向けたソフト面での支援や加工施設の施設整備等に対して助成するなどのハード面の支援を行っている。
現在の本県の総合化事業計画の認定件数は80件であり、全国で7番目に多い認定数である。その内訳は、ジャムや総菜等の農産物の加工や直売の販路拡大に取り組む計画が71件、加工と直売に加え、レストラン事業に取り組む計画が9件である。
51: 【神野博史
委員】
6次産業化に取り組んでいる農家は、生産から、加工、販売まで行うことから、とても大変と聞いている。総合化事業計画が80件とのことだが、当初の計画どおり進んでいるのか。また、どのように確認しているのか。
52: 【食育消費流通課主幹(需要拡大・六次産業化)】
国は総合化事業計画の認定事業者に対するフォローアップ調査を行っており、その調査結果によると、総合計画の進捗状況については、計画以上またはおおむね事業計画どおりに事業を実施中が全国では30.3パーセントであるのに対して、本県では43パーセントとなっており、全国と比較して計画どおり進んでいる割合は高い。
53: 【神野博史
委員】
途中で事業をやめる者はいるのか。
54: 【食育消費流通課主幹(需要拡大・六次産業化)】
スケジュールどおりいかない場合もあるが、その主な理由は、天候不順による収穫量の減少や、加工等を担う人材の不足、販売先からの取引量の減少などである。
55: 【神野博史
委員】
取り組みの一つの事例として、国家戦略特区を活用した農業レストランが常滑にあると思うが、その状況はどうか。
56: 【食育消費流通課主幹(需要拡大・六次産業化)】
本県には、国家戦略特区を活用した農家レストランが、昨年1月に日進
市、同年の4月と6月に常滑
市に1軒ずつ、合計3軒ある。
常滑
市の農家レストランのサンセットウォーカーヒルは、レストランの隣接地にワインの醸造施設を整備して、みずから栽培したブドウからワインをつくって、そのレストランで販売することで、さらに事業を拡大している。
また、卵料理のレストランのレシピヲは、平成26年度に整備した卵の加工品、プリンや洋菓子を直売している施設との相乗効果により、多くのマスコミが取材に来るなど大変注目を集めており、平日でも行列ができるほど人気を博している。
57: 【神野博史
委員】
6次産業の推進に当たって、どのような課題があるか。
58: 【食育消費流通課主幹(需要拡大・六次産業化)】
主な課題は、6次産業化に取り組んだ結果、売り上げは伸びたものの、逆に収益が減少したとか、伸び悩んでいる事業者もあり、人件費の増加や施設整備による減価償却費の経費増が収益を圧迫しているケースや、商品開発したものの販路が見つからずに売り上げが思うように伸びないというケースが報告されている。
59: 【神野博史
委員】
みやざき6次産業化サポートセンターでは、個別相談事業や人材育成研究会、交流会の開催等を行っていたり、認定後の支援として、金融面の支援や、専門家の派遣などを行っていたりすると聞いたが、これらは国で決められた支援なのか。また、本県独自の支援はあるのか。
60: 【食育消費流通課主幹(需要拡大・六次産業化)】
国の交付金の要項に沿って6次産業化サポートセンターの設置、プランナーの派遣を行っており、それ自体は各県ほぼ同様であるが、プランナーの選定などは各県独自で対応している。
61: 【神野博史
委員】
本県は順調に進んで成功しているとのことなので、どんどんサポートしてほしい。
62: 【西川厚志
委員】
本年8月27日に、県内調査で西垣林業株式会社豊田工場へ、9月12日には県外調査で熊本県林業研究・研修センターの調査を行った。熊本県では説明者の熱い思いが伝わってきて、林業の魅力をかいま見た。そこで、幾つか質問する。
林業では、水源涵養、防災、二酸化炭素の吸収など森林の持つ多面的機能が語られるが、本県林業の特色及び本県産木材の特徴を伺う。
63: 【林務課主幹(林政)】
本県林業の特色は、古くから植林に努めた先人がおり、そうした先人の努力により、現在、地域森林計画対象森林に占める人工林の割合は63.6パーセントで、全国平均の45.6パーセントを大きく上回り、全国第3位となっている。さらに、杉・ヒノキ人工林のうち、建築等に利用可能な51年生以上の人工林の割合は7割を超えており、本格的な利用期を迎えている。
次に、本県の木材、特に杉、ヒノキの特徴について答える。
まず、見た目について、市場関係者や製材関係者によると、本県の杉は光沢のある赤みときれいな木目、ヒノキは艶やかな淡いピンクが特徴であり、住宅の内装等に好んで利用されている。
次に、強度について、木材の強度が高ければ、例えば屋根を支えるはりや桁は通常より小さなサイズで建てることができる可能性があり、経済的かつ合理的な建築が可能になる。平成26年度から平成28年度にかけて、愛知県森林・林業技術センターにおいて、県内の杉、ヒノキの強度を調査したところ、全国値と比べて非常に高いという結果が得られた。
次に、加工利用のしやすさについて、丸太を柱や板に製材した際に、反りやねじれが発生することがあるが、製材関係者や建築資材業者からは、本県の杉、ヒノキは比較的素直でねじれが発生しにくく、品質面ですぐれており、加工利用しやすいと評価されている。
64: 【西川厚志
委員】
本県産の杉、ヒノキも極めてすぐれた材質ということを初めて知った。こうしたすぐれた特徴を知ってもらい利用してもらうのは、大事だと思うが、本県の杉、ヒノキを利用してもらうために、どのように取り組んでいるのか。
65: 【林務課主幹(林政)】
本年6月2日に開催した第70回全国植樹祭の会場に県産の杉、ヒノキをふんだんに利用して、杉、ヒノキのよさや本県の木材利用をPRした。例えば、天皇、皇后両陛下がお座りになったお野立所には県産のヒノキを使っており、全国植樹祭のレガシーとしてそのまま残して活用を図っていく。
また、会場の愛知県森林公園では、老朽化していた案内所を建てかえ、本年3月に竣工した。その建てかえに当たり、新しい木質建材の直交集成板、いわゆるCLTを使用した木造施設として、先進的な木材の利用方法を広く発信している。
また、建築士がすぐれた強度を持つ県産の杉、ヒノキを設計に利用しやすくなるように、業界関係者や名古屋大学と協力して、愛知県産材利用の手引きを編集発行している。これは、住宅の設計のための構造計算を省略できる早見表等を掲載したものであり、本県の杉、ヒノキの強度や県産木材製品カタログも掲載している。これを設計にかかわる者に配付するとともに、県のホームページで公開して活用してもらっている。
さらに、住宅購入予定者や建築関係業者などの消費者が集まる住宅関連イベントで木材関係団体や企業と連携して、県産木材を利用した木造住宅の実物大の骨組みや内装、木材製品を展示し、県産木材のよさをPRしている。
66: 【西川厚志
委員】
熊本県では早生樹種であるセンダンという木の育成と利用に先駆的に取り組んでいる。センダンは成長が非常に速く、家具などに利用が見込まれるため、昭和61年から育成方法や植栽適地などの研究を行ってきたとのことであった。
調査では、伐採した10年育った木の輪切りを見せてもらったが、直径が40センチメートルもあり、また、20年で収穫が可能とのことであった。普通の杉、ヒノキは、10年生だと直径は10センチメートル前後、収穫適齢期も50年程度ということを考慮すると、極めて早い成長である。
そこで、愛知県内の早生樹種に関する取り組みは、どのような状況か伺う。
67: 【林務課主幹(林政)】
愛知県内では、昨年度に早生樹種のうちセンダンの植栽を豊田市内で試験的に実施しており、その面積は0.53ヘクタールで、211本を植栽している。
県では、林業普及指導員がセンダンを真っすぐ育てるために必要な、不要な芽を摘み取る作業方法などを森林所有者に助言指導し、植える場所によって成長量に差が出ることから、植栽に適した場所を把握するための調査を行っている。
豊田市内の事例では、植栽してから1年4カ月後の調査によると、成長のよいもので高さが植えたときの約1メートル程度が4メートルに、地際の直径が約1センチメートルが4センチメートルに成長しており、熊本県の事例と比べても遜色ない成長状況である。
今後も成長量の調査を継続して実施し、植栽事例をふやしていけるように取り組む。
68: 【西川厚志
委員】
西垣林業株式会社豊田工場は、地域林業の発展を目的としており、稼働開始から約1年が経過した。原材料である杉、ヒノキの丸太の調達も製材加工も順調であり、近い将来には年間4万5,000立方メートルの生産を目指す県内最大規模の製材工場とのことだった。
そこで、主に建築用途である本県主力の杉、ヒノキも、早く収穫ができるものがあれば、森林所有者の意欲が高まり、林業の振興に資すると期待するが、そのようなものはあるか。
69: 【林務課主幹(林政)】
杉やヒノキ、カラマツは、国の森林総合研究所林木育種センターが全国各地で選抜した優良な品種同士の交配によって開発した、成長が早くて品質のすぐれたエリートツリーがある。その特徴は、通常の杉、ヒノキに比べて幹の体積がおおむね1.5倍以上の早さで成長することから、例えば通常は植栽後60年で収穫していたものが、エリートツリーであれば40年程度での収穫が期待されている。
また、苗木を植栽した場合、植栽木の成長の支障となる雑草を除去する草刈り作業を、植栽後7年程度実施する必要があるが、エリートツリーであれば5年程度で済む。
70: 【西川厚志
委員】
エリートツリーとは魅力のある名前だと思うが、エリートツリーについて、どのように取り組んでいくのか伺う。
71: 【林務課長】
エリートツリーは新しい取り組みであり、現在は苗木生産に向けて、森林総合研究所林木育種センターなどから情報提供を受けているが、今後は、森林総合研究所林木育種センターから親となる苗木の提供を受け、種子や苗木の生産を進めたい。
これまでの一般的な林業は、苗木を植えてから相当な年月をかけて収穫できるようになるものであり、自身の代に植えた苗木が子供、孫の世代になってようやく収穫できるのが今までの常識だったが、エリートツリーでは植えて育てて収穫するまでのサイクルが短いため、植えた者自身が収穫できる点で、新しい林業の可能性を秘めており、積極的に取り組みたい。
72: 【西川厚志
委員】
エリートツリーは、大きな可能性を秘めていると思う。この可能性に向かって、愛知県の稼げる林業としてチャレンジしてもらいたい。
73: 【朝日将貴
委員】
名古屋競馬場の弥富トレーニングセンターへの移転は、2022年4月の開業へ向けて、既に基本設計も終え、弥富
市に提示されている。敷地の木の伐採等も進んでおり、地元の人から見ても、既に大分進んでいるので、不安と期待の意見が寄せられているが、本年8月9日に行われた地元説明会での意見、要望の内容について伺う。
74: 【畜産課主幹(管理・競馬)】
主な意見、要望としては、新競馬場の詳しい情報や建設計画を提供してもらいたい、交通量に関する考え方を説明してほしい、現在の名古屋
市港区の名古屋競馬場の運営状況と比較して説明すべきである、地元にとってよいことを提示してほしい、地元から要望等を出したい、小まめな情報交換を希望する、今後の情報交換のペースを知りたいなどがあった。
75: 【朝日将貴
委員】
地元の意見、要望に対する愛知県競馬組合と県の意見を伺う。
76: 【畜産課主幹(管理・競馬)】
説明会当日は、詳しい情報や建設計画、交通量に関する考え方、名古屋競馬場の運営状況との比較は、次回以降の地元説明会でより具体的な資料を用いて説明すると回答している。
地元にとってよいこととは、いわゆる地元貢献だが、PFI事業者と競馬組合が協議している内容等を今後開催される地元説明会で示す。
地元からの要望は、競馬組合も県も真摯に耳を傾けたい。
情報交換の場は、ある程度の方針や実施設計の形が出てきた段階で説明する予定であり、それ以外の項目についても地元と相談の上で適宜開催する予定である。
77: 【朝日将貴
委員】
実施設計の時期はその説明会で示したか。
78: 【畜産課主幹(管理・競馬)】
説明会では具体的な工期は説明していないので、今後機会があれば、スケジュール感も説明したい。
79: 【朝日将貴
委員】
地元から地元貢献の意見が出たと聞いているが、金銭面の期待が一番多いと思う。そのほかに、駒野エリアが以前のように復活して、人が集まり、消費されるような場所になってもらいたいとの声もあったと聞いている。
弥富
市は、金魚の街というイメージがある。最近、金魚もきれいな照明を当てて鑑賞を中心とした展示を行うことも全国的にかなり広まっている。長島温泉から刈谷ハイウェイオアシス、レゴランド・ジャパンがある延長の中で、弥富
市も名乗りを上げれば観光の一つの拠点となれると期待する。そういう位置づけで地元の要望を聞いてもらいたいが、PFI事業者の考えを伺う。
80: 【畜産課主幹(管理・競馬)】
PFI事業者は、地域住民の集いの場所の提供、子育て支援、NPOなどへのスペースの提供、フリーマーケットの場所提供といったイベント開催によるにぎわい創出を目指していると聞いている。
また、PFI事業者の代表企業はリース会社であるので、その特性を生かした観光事業プランは、十分検討に値すると考える。
81: 【朝日将貴
委員】
これから地元の要望をまとめて、弥富
市から正式に要望が上がってくると思うが、金銭面も含めた真摯な対応を要望する。
82: 【横井五六
委員】
台風等の自然災害により被災した農業者への支援について伺う。
近年、自然災害により各地で甚大な被害が生じている。県民の生命、財産を守ることは、行政の重要な責務の一つである。首都圏を襲った台風15号による千葉県内の農林水産業の被害は大きく、その総額は既に367億円を超えていると報道されている。今後調査が進展すれば、被害額はさらに大きくなる可能性がある。私が議長在任時に全国議長会が千葉県で開催され、千葉県の方々と交流する機会が何度かあったので、一刻も早い復興を願う。
愛知県でも昨年の大きな台風の影響により、県内各地に大きな被害があった。特に激甚災害にも指定された台風24号は、過去10年では2番目に大きい農業被害額をもたらし、今後も同様の被害が発生する可能性が常にあるが、県にはしっかりとした対策を講じてもらいたい。
そこで、まず、昨年の台風で被災した農業者に対する支援実施状況を伺う。
83: 【農業振興課主幹(農業共済・農村対策)】
昨年相次いで襲来した三つの台風の農業被害額は、農業用ハウスなどの施設被害が大変多い傾向にあり、その額は48億円と甚大だったため、国の制度を活用して、主に三つの支援策を講じた。
一つ目は、被災農業者向け経営体育成支援事業で、584人の農業者に対して、国の補助に加え、県と市町村も上乗せ補助を行い、ハウスや畜舎などの再建、修繕などに要する費用として約8億円の補助を行った。この措置では、これまで対象とならなかった被災施設の撤去や補強も補助対象としたほか、県と市町村の補助により自己負担なく再建、修繕などを受けられた農業者もいる。
二つ目は、農業用ハウス強靱化緊急対策事業で、将来の自然災害による被害を防止するため、ガラスハウスの外側に硬質プラスチックフィルムを張るなどの強化対策を必要とした32人の農業者に対し、約1億2,000万円の補助を実施した。あわせて、県域で農業用ハウスの補強や保守管理の強化に向けた講習会などを行い、台風などの被害防止策を周知した。
三つ目は、農業資金制度で、ハウスの建設などの災害復旧に対し、31人の農業者に約2億6,000万円の融資を行った。
こうした支援策を実施することで、被災した農業者や産地が営農意欲を失わないように努めた。
84: 【横井五六
委員】
次に、被災農家の支援策について伺う。
過去に愛西市で7月か8月にレンコン農家がひょうの被害を受けた際に、県に農家のための救済策はないかと聞いたが、レンコンは農業共済事業の補償の対象品目となっていなかったために、制度に加入できず、救済されなかった。
農業共済事業は対象作物が限定的であり、十分なセーフティーネットとして機能していないという声も聞こえている。こうしたことを受けて、本年1月から新たに収入保険制度が始まり、各県の共済組合が窓口となっていると聞いたが、その制度の内容を伺う。
85: 【農業振興課主幹(農業共済・農村対策)】
農業共済制度は対象品目が非常に限られており、また、自然災害による収穫量の減少のみを対象としているため、必ずしも全ての農家の要望に応えられる制度とはなっていない。国は、昨年4月1日に農業災害補償法を農業保険法に改正して、この法を根拠とする農業経営収入保険制度を本年1月から導入している。
収入保険制度は、農業者の青色申告が必要となるが、基本的に農業者がみずから生産販売するほとんどの作物が対象となる。価格の低下や収穫量の減少による収入減少も補填が可能になる。当年の収入が過去5年間の農業収入の平均である基準収入の9割を下回った場合に適用されるが、その下回った額の最大9割を補填する仕組みになっている。これまで対象でなかった野菜や花などの生産販売や複合経営に取り組む農家にもメリットが大きくなる保険となっている。
県としては、若手農業者の研修内容の一つとして位置づけたり、農業関連新聞に記事を掲載したりして、農業者への制度の周知に努めている。
86: 【横井五六
委員】
県も周知に取り組んでいるようだが、収入保険制度は始まったばかりで、農家に十分周知されてない。また、県は被災農家の支援だけでなく、自然災害の被害を最小限にとどめる取り組みも重要である。保険制度の周知にも取り組んでもらいたいが、本県での台風被害や千葉県での被害で得られた教訓を生かし、農業だけでなく、林業、漁業を含め、農山漁村の地域住民の生命、財産を守るという観点で被害防止と支援に取り組んでもらいたい。
本県は農業産出額が全国第7位であり、過去には5位の時期もあったが、徐々に下がっていると認識している。こうした状況を受けて、本県では国の産地パワーアップ事業などを活用し、農業の生産性を向上する取り組みを支援しているが、この事業では、規模の小さい産地や生産性向上の目標設定が難しい産地もあると聞いている。このため、意欲があっても国の補助制度を活用できなかった農業者に対して、産地の戦略に基づく施設の整備や機械の導入の支援を行う県独自の補助制度として、昨年12月補正予算であいち型産地パワーアップ事業を創設し、本県農業の生産力強化を図っている。
愛西市でも、13人の農業者に対してレンコンの収穫用機械などの導入や、4人の農業者にイチゴの施設の整備などに助成されており、農家からも大変ありがたいと言われている。
そこで、あいち型産地パワーアップ事業のこれまでの取り組み状況を伺う。
87: 【園芸農産課主幹(野菜・果樹・花き)】
あいち型産地パワーアップ事業は、産地における生産力強化の取り組みを支援する本県独自の補助事業として、昨年12月補正予算で1億円の予算を措置し、その全額を本年度に繰り越している。
本事業は、地域の関係者が一体となって作成した産地戦略に基づく取り組み、具体的には収穫量の増加や労働時間の削減など、生産性の向上に向けた産地の取り組みに対して、栽培施設などの整備や改修、農業機械の導入など、これらに要する経費の3分の1以内を助成するものである。
これまでの取り組みとして、まず、昨年度の補正予算成立後すぐに農林水産事務所、市町村、農業協同組合などを対象として事業の説明会を開催し、制度の周知を図った。その後、各地域の農林水産事務所などと協力して、取り組みを希望する産地の事業内容の確認を行い、本年3月に第1回目として6市町8事業の承認と内示を行った。
本年度4月以降も引き続き取り組みを希望する産地の事業内容の確認を行い、本年9月下旬までに合計で8市町13事業について事業計画を承認して、予算額1億円の全額の交付内示を行った。
88: 【横井五六
委員】
あいち型産地パワーアップ事業は継続して実施する必要があると思うが、今後どのように進めていくのか。
89: 【園芸農産課主幹(野菜・果樹・花き)】
あいち型産地パワーアップ事業は、昨年度から2023年度までの事業実施期間としており、産地の10年後を見通し、5年間の取り組みを定めた産地戦略の実現に向け、継続して事業を実施していく。また、国の産地パワーアップ事業などの補助制度やソフト事業なども有効に活用しながら、地域における産地戦略に基づくさまざまな取り組みを支援する。
本年度は、予算額1億円全額について既に交付内示を行ったが、今後市町村や農業団体等と連携を図りながら、事業に取り組んでいる産地に対して生産性向上の目標達成に向けた取り組みが推進されるよう指導していく。また、来年度分の事業は、現在各地域から本年度予算額以上の実施の要望がある。このため、市町村や農業団体等と事業内容を確認しながら、あいち型産地パワーアップ事業よりも補助率の高い国の事業への誘導を図るなど、本事業を有効に活用できるよう調整を進める。
来年度の事業要望の中には、新たに施設野菜に参入する農家の施設整備を希望する産地もある。担い手の減少や高齢化が進む産地で、新規参入者を核として産地の活性化を図るような取り組みにも幅広く対応していく。
90: 【横井五六
委員】
本年7月19日の新聞に、徳島県の農業用水路などを管理している土地改良区が、管理している農業用水路に生活排水を流している地域住民に対し、水路の維持管理のための使用料を請求することが争われた訴訟の最高裁判決で、使用料を請求できないと判断されたとの記事があった。そこで、今回の訴訟の内容と県内の土地改良区における状況について伺う。
91: 【農地計画課主幹(管財・指導)】
土地改良区が管理する農業用水路は、都市化や混住化の進展に伴い、農地のみならず、地域全体の排水を担っている。特に公共下水が整備されていない区域では、宅地などの浄化槽からの排水を受けている場合も多くある。
一般的に農業用水路を維持管理している土地改良区は、管理権限に基づいて使用料を徴収する旨を規定し、排水する地域住民等の理解を得て、双方合意のもと契約を締結し、使用料を請求している。
今回の訴訟は、その契約を拒む住民約180人に対して、土地改良区が河川法第23条のかんがい用水を取水する水利権に基づき強制的な請求を行うために提訴したもので、判決では、かんがい目的の水利権は有するものの、第三者に対して農業用水路への排水を禁止することはできず、強制的な請求はできないとして、土地改良区が敗訴したものである。
県内の状況は、102の土地改良区のうち36の土地改良区が使用料を請求しており、請求している土地改良区は定款、規約等を定め、農業用水路の管理権限に基づき、地域住民等の合意を得た上で適正な手続により使用料を請求している。
92: 【横井五六
委員】
新聞では、農地が市街化して、農業用水路に一般家庭から生活排水が流されるケースがふえており、維持管理のための使用料を徴収する土地改良区に対し、この判決が一定の影響を与える可能性があると報じていた。そこで、県は土地改良区に対し今後どのような指導をしていくのか伺う。
93: 【農地計画課主幹(管財・指導)】
今回の判決は、河川法のかんがい用水を取水する水利権に基づく強制請求はできないとされたもので、土地改良区の農業用水路の管理権限に基づく請求に関しては、直ちに影響を及ぼすものではない。
しかし、裁判官からの補足意見として、土地改良区が維持管理を行っている農業用水路の管理権限が明確になっていないことが今回の紛争の原因の一つと思われるとの意見が出された。また、この判決後、国からも、管理権限が明確でない施設がある場合には、地域の実情を踏まえつつ、必要に応じて関係機関と管理権限に関する確認を行うなど、適切な対応をとるよう
文書が出された。
県としても、判決の内容を土地改良区に周知し、管理権限を十分に確認し、適切な対応をとるように指導を行う。
94: 【横井五六
委員】
実は判決の出る前日の新聞では、どういう判決が出るかわからないと書いてあって、私は土地改良区が勝訴すると思っていた。今の説明を聞いて、地域住民との合意が基本であることがよくわかった。
土地改良区が管理する水路は農業用用排水路として管理しているもので、これらの水路は農業者である組合員の賦課金などによって維持管理されているが、地域の排水も担っている重要な施設なので、維持管理に支障がないよう、適切に指導してほしい。
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