9: 《一般質問》
【
政木りか委員】
本県は、昨年度から自動走行実証推進事業を本格的に開始し、昨年度は県内15か所、本年度は10か所と大規模な実証実験を行ったが、どういった成果と課題が得られたか。また、本定例議会の高桑敏直議員の一般質問に対し、複数台の車両を同時に走らせる実証実験を行うとの答弁があったが、その成果を踏まえて、来年度の事業はどのように考えているか。さらに、遠隔型自動運転システムの実証実験における通信が途切れない大容量のネットワークや通信遅延が生じない通信環境などの高度化をどのように図っていくか伺う。
10: 【
産業振興課主幹(
自動車・
基盤産業)】
本県は、昨年度と本年度を合わせて、県内25か所の路線で、総実走距離3,500キロメートルを超える自動運転の実証実験を成功させている。昨年度は、市街地や住宅街、山間地域、離島などの様々な道路・交通環境下での実証実験を行った。本年度はETCやトンネルの通過などレベルを上げた実証実験を行い、昨年12月には、幸田町で、全国初の一般公道での遠隔型自動運転システム、いわゆるレベル4の実証実験を成功させたことが最大の成果である。
制度面でも、全国に先駆けた遠隔型自動運転システムの実証実験の取組が、道路運送車両法の車両保安基準の緩和認定制度を創設するという国の自動運転関連の規制緩和につながったことも、大きな成果の一つである。
課題としては、遠隔型自動運転時の高度な通信環境の確保が重要であることが明らかとなった。具体的には、遠隔型自動運転システムの実証実験に当たっては、車外の遠隔地に設置した運転者席から運転手が自動運転車両を遠隔で監視し、操作を行うが、遠隔地の運転手が車両の周辺状況を映像で確認し、ブレーキ操作を行い、車両が停止するまでに1秒弱程度の通信遅延が発生していることから、安全性確保を最優先に考え、時速は15キロメートル以下に設定した。
遠隔型自動運転システムの実証実験が成功したことから、来年度事業では、実用化を見据え、地域の輸送ニーズを踏まえた異なるタイプの遠隔型自動運転車両を用いて、1人の遠隔操作者が複数台の自動運転車両を操作する、いわゆる1対N型の、社会実装に近い実証実験を行う。
来年度の実証実験実施事業者の公募に当たっては、高度な通信環境の構築が可能な通信事業者の参画を条件とする考えであり、通信途絶等が発生しないよう回線能力を向上させるなど通信システムの増強を図っていきたい。
11: 【
政木りか委員】
自動運転の推進に当たっては、単なる実験ではなく、社会実装を想定して走行しなければならないと考えている。
昨年12月の
産業労働委員会で、市町村にある供用開始前道路や廃道などの閉鎖空間を、自動運転の実証実験のコースとして活用することを提案したが、あいち自動運転推進コンソーシアムに参画している市町村に対して行った、自動運転実証実験のための専用空間の調査結果はどうだったか。
12: 【
産業振興課主幹(
自動車・
基盤産業)】
あいち自動運転推進コンソーシアムに参画している35市町村に対し、自動運転実証実験のための専用空間となり得る供用開始前道路、廃道、廃線跡などの有無と、その活用の可能性について調査を行った結果、供用開始前道路が3か所、廃道が1か所、その他公営公園や公共施設内等の道路が18か所あり、廃線跡は該当箇所がなかった。
実際の活用に当たっては、市町村と個別に条件等を調整する必要があるが、回答があった市町村はいずれも実証実験の受入れに前向きであり、今後、あいち自動運転推進コンソーシアムに参画している企業や大学等から実証実験の要望があった際には、県としてしっかりとマッチングを図っていきたい。
13: 【
政木りか委員】
今後、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、県内各地域が抱える様々な課題を解決するためにも、自動運転は有効な手段だと考える。
自動運転システムを地域づくりに活用する先進的な事例として、自動運転車両や歩行者支援など、春日井市の高蔵寺ニュータウン内で行われた複数の交通機関を連携させる取組が紹介されたが、市町村以外にも、大学等における取組事例は出てきたか。
14: 【
産業振興課主幹(
自動車・
基盤産業)】
自動運転システムを地域づくりに積極的に活用する市町村以外の代表的な取組として、名古屋大学のCOI事業がある。COI事業は、文部科学省の革新的イノベーション創出プログラムとして、名古屋大学とトヨタ
自動車株式会社などの民間企業が中心に活動しているもので、本県も参画機関の一つとして事業協力している。COI事業では、高齢者が元気になるモビリティ社会の構築を目指し、ゆっくり自動運転という名称で、自動運転システムの地域社会への導入を進めている。
本年度は、豊田市足助地区と春日井市の高蔵寺ニュータウンで、トヨタ車体株式会社の超小型電気
自動車やヤマハ発動機株式会社のゴルフカートを自動運転車両に改造し、地域内に走る路線バスの停留所から自宅までなど、ラストワンマイルとなる路線を走る実証実験を行った。
こうした大学を中心とした自動運転システムの社会実装の成果も、あいち自動運転推進コンソーシアムを通じて県内市町村への展開を図り、県内における自動運転システムの導入を促進していきたい。
15: 【
政木りか委員】
これからは、実証実験を超え、社会実装に向けた取組を進めていかなければならないと思う。県は、2020年代初頭に、愛・地球博記念公園内にジブリパーク(仮称)を開業することを目指して取り組んでいるが、私は、ジブリパーク(仮称)内の巡回バスに、となりのトトロで登場したネコバスの自動運転車両を導入してはどうかと考えている。そこで、来年度、ジブリパーク(仮称)の整備に向けた取組が進む愛・地球博記念公園で自動運転の実証実験を実施してはどうかと考えるが、今後の実施地域の選定方法について伺う。
16: 【
産業振興課主幹(
自動車・
基盤産業)】
来年度の自動運転実証実験事業の進め方は、現在、実施地域の選定方法も含めて検討を行っている段階であるが、少なくとも、実証実験の実施には地元市町村の事業参画や協力体制が不可欠であるため、本年度と同様、来年度事業の実施地域の選定に当たっては、協力が得られることを前提として、市町村に対して公募を行う考えである。その後、応募してきた市町村の中から、道路・交通環境や解決すべき行政課題等を勘案し、事業実施効果の高い地域を選定する。
17: 【
森井元
志委員】
昨今、自動運転をめぐる競争は世界的に激しくなっており、海外ではアメリカのゼネラルモーターズ、グーグル、中国のバイドゥ、国内では日本郵政株式会社、日産
自動車株式会社、株式会社ディー・エヌ・エーなど、国内外で企業提携や実用化に向けた実証実験の取組などが実施されており、市場規模は700兆円ともいわれている。
昨年、愛知県の自動運転を実現化させる組織として立ち上げた、あいち自動運転推進コンソーシアムは、どのような出口戦略を持って活動し、そのために、今後、どのような取組を計画しているか。
18: 【
産業振興課主幹(
自動車・
基盤産業)】
あいち自動運転推進コンソーシアムの出口戦略は、自動運転システムを活用した新しい地域づくりへの展開と、自動運転システムに係る新しい事業・ビジネスの創出である。
出口戦略を具体化するために、新しい地域づくりに向けては、春日井市や幸田町などが実施する、自動運転システムを活用した新しいモビリティ社会の形成を積極的に支援し、成果を県内市町村へ展開していく。また、新事業・新ビジネス創出に向けては、センサーやソフトウェアなどの部材・システム、通信基盤などのインフラ・データ、高齢者の移動サービスやシェアリングサービスなどのモビリティサービスの三つの分野の研究会を明日立ち上げる予定であり、来年度から本格的に展開させていく。
研究会は、新しいビジネスの展開に関心を持つ有志企業等を中心に、テーマごとにビジネス環境の最新情報を把握する中で、ビジネスとしての妥当性や具体化に向けた課題等を検討する事業化可能性調査を行うなど、新ビジネスの創出を着実に図っていきたい。
19: 【
森井元
志委員】
地域づくりは都道府県が行うことに大きな意味があるため、是非、積極的に進めてほしい。一方で、産業振興はトヨタ
自動車株式会社など世界中の名だたる企業が多くの研究費を投資して開発を行っている。県がやるべきところとそうではないところをしっかり区別して進めてほしい。
20: 【
犬飼万壽男委員】
IoT、ビッグデータ、AI等によって産業や社会の在り方が大きく変革しつつある状況を踏まえ、本県でも、新たなIoTビジネスモデルの創出やIoTプラットフォーマーの発掘・育成を図り、新たな成長の原動力にしていくことが必要である。そこで、昨年度に本県が立ち上げた愛知県IoT推進ラボの目的や体制について伺う。
21: 【
次世代産業室長】
愛知県IoT推進ラボは、地域企業のIoTプロジェクトの創出を支援する取組として、国がこれまで募集した地域版IoT推進ラボの第一弾選定地域である29地域のうちの一つとして、平成28年7月に選定されたものである。IoTを活用した先進的なビジネスモデルや社会的課題の解決に資する新たなビジネスモデルの創出及び県内の中小企業におけるIoTの導入及び活用を支援することを目的としている。
愛知県IoT推進ラボの事務局は産業労働部次世代産業室が担っているが、新たなプロジェクトの組成やサポート、現場へのIoTの導入に向けた相談や実証実験の支援などには専門的な知識が必要となることから、実施機関を公募し、愛知県立大学に業務を委託している。また、IoT推進ラボの取組方策に関する助言やプロジェクトの磨き上げに対するアドバイスなどをもらうため、愛知県立大学情報科学部の小栗教授を始め産学の有識者6人で構成する愛知県IoT推進アドバイザリーボードを設置している。さらに、名古屋市などの県内市町が設置したIoT推進ラボや、公益財団法人科学技術交流財団を始めとする支援機関と連携して企業支援に取り組むために、本年2月に県主導であいちIoT支援機関連絡会議を立ち上げ、今後の連携方策の在り方の検討にも着手した。
22: 【
犬飼万壽男委員】
企業が集積する本県から、IoTを活用した新たなビジネスモデルが生み出されることが期待されるが、本年度の取組実績はどうなっているか。また、IoTを利用した新しい技術は、大企業はもとより中小企業への活用が期待されるが、どのような取組を行っているか。そして、産学官の連携も踏まえ、県内大学との連携はどのような状況か。
23: 【
次世代産業室長】
本年度は、高齢者向け見守りシステムの開発と、既存製造設備に対する低コストなIoTの導入の二つのテーマに対して、新たな製品開発のニーズを持つ企業と技術シーズを持つ企業などをマッチングするセミナーを開催した。両テーマとも製品開発のニーズを持つ企業を中心に、課題を解決するための技術シーズを持つ企業や開発に協力を得られる企業でコンソーシアムを組成し、開発・実用化に向けた検討を進めている。あわせて、有識者で構成する愛知県IoT推進アドバイザリーボードによるプロジェクトの磨き上げなどを通じて、優れたプロジェクトは、成績上位者に対して資金や規制改革などの支援が受けられる国の表彰制度である先進的IoTプロジェクト選考会議への応募や、国や県の助成制度の獲得にもつなげていきたい。
次に、中小企業では、IoTの導入に関心はあるが、どのような効果が得られるのか分からない、どのようなものを導入したらよいのか分からないという声を聞く。そこで、製造現場へのIoTの導入・活用に向けた取組として、愛知県立大学内に愛知県IoT相談窓口を設置し、専門コーディネーターによる相談対応や情報システム事業者とのマッチングを行うとともに、相談内容によっては企業に出向いて実証支援なども実施している。これまでに42件の相談があり、実際に導入につながった案件もある。
こうしたきめ細かい支援を実施していくためには、IoTに関する専門的知識や実証実験を実施・評価できる場が必要となる。そこで本年度は愛知県立大学に業務委託し、愛知県立大学が持つ専門人材の知見や施設・設備などを活用して企業への支援を実施している。また、愛知県IoT推進アドバイザリーボードには、愛知県立大学のほか名古屋大学からも参画してもらい、指導・助言を得ている。
24: 【
犬飼万壽男委員】
AIやIoT等関連のソフトウェアの開発のような新ビジネスは、今後、大きな可能性を持った産業となる。本県も時代のニーズに即応できる体制を整え、2027年のリニア中央新幹線開通を活用し、鉄道を中心とした交通基盤を充実させることにより、名古屋市内のみならず、県内各所でIT関連を中心とした産業の誘引や創造を図ることができると考えている。本県が中心となり、県内各自治体や産業界に対し、より新しい情報を提供し、より有効的な施策を打ち出すことを要望する。
25: 【犬飼明佳委員】
若者の職場定着に対する県の取組について質問する。昨年2月定例議会の一般質問で、若者の職場定着にどのように取り組むか質問したところ、県からは、若者の早期離職と定着の実態調査と好事例集の作成、企業向けの若者の指導や相談に当たる人材養成の支援と交流会の開催及び職場定着に取り組む企業への専門家の派遣を本年度に新規事業として実施するとの答弁があった。
こうした中、昨年秋に厚生労働省が発表した、最新の新規学卒者の3年以内の離職率は、大学卒業者が32.2パーセント、高等学校卒業者が40.8パーセントとなっており、依然として高止まりの状態が続いている。大学卒業者の約3人に1人、高等学校卒業者の約5人に2人が、就職後3年という短い期間で離職している実態が、なかなか改善されていない。
企業では、若者の早期離職は、採用コストの増加や改めての人材養成が必要になるだけでなく、共に働く仲間や後輩が短期間で辞めたことで職場の雰囲気や同僚の意欲に悪影響を及ぼし、ひいては企業の業績にも大きく影響するという話も聞く。
離職した若者にとっても、売手市場とはいえ、新たな正規雇用を目指すことは容易なことではない。本年1月末に総務省が発表した、昨年の労働力調査の結果によると、役員を除く雇用者に占める非正規の従業員割合は37.2パーセントと前年より0.3ポイント低下したものの、依然として多くの人が非正規で働いており、こうした不安定な非正規雇用者の中には正社員として就職後に離職した若者も多くいるといわれている。
そこで、県が本年度実施した若者の職場定着支援事業の実績と企業からの評価について伺う。
26: 【労働福祉課主幹(勤労者福祉)】
本年度、若者職場定着支援事業は大きく三つの取組を実施した。
一つ目の若者の早期離職と定着の実態調査は、約1,700社の企業とその企業に勤務する35歳未満の若年従業員に対してアンケートを実施し、390社、330人から回答を得た。調査結果からは、従業員が回答した離職理由と企業側が把握している離職理由の違いや、企業が取り組んでいる定着対策と従業員が求める定着対策の違いなど、それぞれの認識の違いが明らかになった。また、定着の好事例として10社の具体的な事例を集め、調査結果と併せて若者職場定着取組企業事例集として、5,000部作成した。
二つ目の企業内の人材養成支援は、若者の指導・相談に対応できる人材養成のセミナーを2回、人材定着を目的とする企業間の交流会を3回開催し、合わせて延べ160社、200人が参加した。参加者からは、若者の考え方を知り、ふだんの自分の行動や
発言を見直すよい機会となった、職場定着をテーマに他社や異業種の人と意見交換する機会はこれまでなかったので大変参考になったなどの声があった。
三つ目の企業への専門家の派遣は、7企業に延べ13回派遣を行い、派遣を受けた企業からは、助言を受けて、人事考課制度や新しいメンター制度を本年4月から導入したい、採用・雇用・定着それぞれの取り組むべき点について専門家の意見を聴くことができて大変良かったなどの評価が得られた。
27: 【犬飼明佳委員】
若者職場定着取組企業事例集は、取組事例10社のうち8社が従業員300人以下の中小企業で、すぐに取り組めるような内容になっており、企業への波及効果も含めて良い内容だと思う。また、巻末に載っている実態調査の結果を見ると、いろいろ興味深いものがある。
離職原因として、従業員側が考えている理由は、給与に不満、仕事上のストレス、会社の将来性・安定性に希望が持てないが上位三つとなっている一方、企業側が把握している理由は、家族の事情、キャリアアップするため、職場の人間関係となっており、企業側は個人的な理由が大きいと捉えているのに対し、従業員側は企業の環境に大きな要因があると考えている。また、若者の離職原因となっているこれらの項目は、求職活動時には余り重要視されていなかったということも明らかになっている。若者の職場定着の取組に当たっては、従業員が考えていることとのギャップを、しっかりと数字を示して企業へ伝えていくことが必要であると考える。そこで、若者職場定着取組企業事例集を今後、どのように普及・活用していくのか伺う。
28: 【労働福祉課主幹(勤労者福祉)】
若者職場定着取組企業事例集は5,000部作成し、本年2月14日に公表した。調査に協力してもらった企業を始め、様々な機会を通じて県内中小企業へ配布している。また、県のホームページにも掲載しており、電子データでダウンロードできる。冊子では、実施した調査結果の主な概要を載せているが、ホームページでは調査結果全てが閲覧できる。
若者職場定着取組企業事例集は、企業の取組の実例を、採用、育成、定着の三つの段階に分けて、それぞれ好事例を載せているのが特徴である。企業にとって取り組みやすいところから一つでも進めてほしいと考えており、来年度も引き続き実施を予定している企業向けのセミナーや専門家派遣で、事例集の内容を十分に取り入れ、普及拡大に努めていきたい。
29: 【犬飼明佳委員】
本年度の若者職場定着支援事業は企業向けとのことであるが、企業側、従業員側双方のギャップを解消するためには、若者への直接的な働きかけも重要である。
また、入社前と入社後のギャップがあることも明らかになっている。若者が求職活動時に重視した点として多いのは、仕事の内容、勤務地・通勤の便、労働時間・休日・休暇となっているが、これらは退職理由の上位には一つも入っていない。採用説明会等ではこうしたことも踏まえて、企業は求職者に対してしっかり内容を説明していくことが重要だと考えるが、若者側への働きかけについてどのように取り組むのか伺う。
30: 【労働福祉課主幹(勤労者福祉)】
本年度、企業に対してセミナー等を実施する中で、多くの企業から、若手従業員に対しても県からセミナー等を実施してほしいと要望を受けた。このため、本年度実施した企業向けのセミナー交流会に加えて、来年度は同世代の若手従業員を対象に、職種、業種を越えて地域で交流を深め、互いに悩みや不安を相談できるようなセミナー交流会を新たに3回実施する予定である。
また、若者職場定着取組企業事例集の内容は、求職者にとっても、企業と従業員の考えていることが両方分かるものとなっているので、公共職業安定所等の就労支援機関や大学等にも配布し、若者への普及にもしっかり努めていく。
31: 【犬飼明佳委員】
来年度も引き続き若者職場定着支援事業を実施するとのことであるが、取組の裾野を広げていくことが何よりも大切である。本年度得られた成果を十分に活用するとともに、その成果をより多くの企業へ発信し、多くの企業で若者の職場定着の取組が進むよう、引き続き、きめ細かな支援の取組を要望する。
32: 【神野博史委員】
昨今、人手不足が大変深刻な状況であり、企業にとっても、働く側にとっても、働き方改革を行って今までの仕事のやり方を変えないと、長時間労働に拍車が掛かっていくのではないかと危惧している。
国は、昨年3月に長時間労働の是正や同一労働同一賃金の導入を盛り込んだ働き方改革実行計画を策定し、国会で働き方改革関連法案として議論されている。この法案は、労働基準法などの八つの法律の改正案であり、時間外労働に月100時間、年720時間の上限を設けて規制し、違反した場合には罰則を適用することになっている。そこで、県内の事業所における労働時間の状況を全国と比較して教えてほしい。また、長時間労働が疑われる事業所に対する労働基準監督署の監督指導状況を伺う。
33: 【労働福祉課主幹(労使安定)】
厚生労働省が実施した毎月勤労統計調査によると、本県における昨年度の労働時間の状況は、常時30人以上の常用労働者を雇用する事業所における、パートタイム労働者を除く労働者1人当たりの年間平均総実労働時間は2,053時間で、全国平均の2,006時間を上回っている。また、所定外労働時間は241時間で、全国平均の190時間を上回っている。
長時間労働が疑われる事業所に対する労働基準監督署の監督指導状況は、厚生労働省愛知労働局が昨年度1年間で実施した監督指導結果によると、対象とした2,468事業所のうち37.5パーセントに当たる926事業所で違法な時間外労働が確認されたと発表している。全国の数値は、2万3,915事業所のうち1万272事業所、43.0パーセントとなっている。
34: 【神野博史委員】
長時間労働が疑われる違法な事業所は37.5パーセントと全国平均より低くなっているが、そのうち時間外労働が100時間を超える事業所はどれくらいあるのか。
35: 【労働福祉課主幹(労使安定)】
監督指導結果の中で、違法な時間外労働のあった926事業所のうち、月100時間を超えるものは
538事業所であった。
36: 【神野博史委員】
そういった事業所を含め、できるだけ早く働き方改革を進めて、よりよい職場環境を作っていくことが必要である。そうしないと、人手不足によって倒産する会社も出てくるのではないかと危惧している。こういった傾向は、大企業よりも中小企業の方が顕著ではないかと考える。
県は、本年度の新規事業である職場環境改善支援事業で、働き方改革普及員が県内企業100社を個別訪問して、働き方改革の内容や長時間労働の是正などを普及啓発したり、中小企業の働き方の見直しを促進するために、企業内における環境改善の取組を支援する働き方改革アドバイザーを派遣したりしていると聞いている。そこで、働き方改革アドバイザーの派遣実施状況と、派遣を受けた企業からの声を伺う。また、今後どう取り組んでいくか。
37: 【労働福祉課主幹(勤労者福祉)】
働き方改革アドバイザーの派遣は、本年度、公募により派遣先企業を15社選定、8か月間で各社5回派遣し、専門家が2人1組で継続的にコンサルティングを行った。
派遣を受けた企業からは、社内に働き方改革の必要性を浸透させることができ、特に女性社員の業務を平準化し、時間外労働の低減を図ることができたとか、今まで働き方を変える事務的な取組は考えたことなかったが、日々の業務の中に様々な問題が内包されていることに気付いたとか、作業人員が1人減っても月曜・金曜は定時帰宅することを目標に掲げ、作業工程の無駄の洗い出しや改善に取り組んだ結果、定時帰宅の割合が30パーセントから70パーセントに増加したといった声があった。
今後は、本年度派遣した企業の成果をできるだけ広く波及させるために、広報や情報発信に力を入れていきたい。
中小企業からは、働き方改革について、何から始めたらよいか分からないとか、考えたこともなかったという声もある。本年度の成果を踏まえて、働き方改革は中小企業でも可能であるということを、ほかの企業にしっかりと伝えていきたい。
働き方改革アドバイザーの派遣は、本年度の15社から、来年度は5社増やし、派遣企業を20社として
予算を計上し、引き続き行っていきたい。
38: 【神野博史委員】
私の事務所でも、働き方改革の一環として、多様な働き方を選べるようにしている。たくさん働いて、たくさん給料が欲しいという人もいれば、年金が満額もらえる範囲内でよい人や、家庭を大切にしたい人、子育てを中心に考えながら技能を磨きたい人、資格を取りたいから給料にはこだわらない人などいろいろな人がおり、相手の自立性や意向を聴くことによって労働生産性は高まると思う。企業は、多様な働き方の推進、従業員の処遇改善、福利厚生の充実や給与面の改善など様々な知恵を絞って働き方改革を実現しなければならないし、中小企業は生き残りを懸けて働き方改革を進めていかなければならない。そこで、来年度行う、働き方改革を普及啓発するための事業の内容と目的を伺う。
39: 【労働福祉課主幹(労使安定)】
来年度、新規に実施する働き方改革推進キャラバン事業では、県民各層に働きかけ、本県における働き方改革の機運の醸成を図り、企業の働き方改革の取組を推進していく。
企業の経営者層に対しては、働き方改革に先進的に取り組む企業経営者等を招いたシンポジウムを開催し、取組の必要性や意義を理解してもらい、トップダウンでの取組推進を促す。
企業の人事労務担当者等に対しては、働き方改革関連法案の理解促進とともに、長時間労働の是正、多様な働き方の推進や生産性向上などをテーマとしたセミナーを開催し、現場で具体的な取組を進めるきっかけとしてもらう。また、個別具体的な相談が必要な企業に対しては、セミナー終了後に開催する相談会で専門家による助言・指導を実施する。
また、県民に対し、企業が進める働き方改革への理解促進を図るため、県内各地で街頭啓発活動を実施する。
40: 【神野博史委員】