本年度から
一般にも提供を始めましたが、
気象庁では、こういった
各種大雨に関連する
災害について、今、あるいはこの先1時間、数時間にわたってどのくらい危険になるのかを、
地図上に色で分けた
危険度として示した
情報を提供しています。
ここに御紹介した
各種の
情報は、
気象庁の
ホームページ等で
一般の人にも御覧いただけるようになっています。やはり一番のポイントは、こういう細かい
予測情報は、
行政としての国、県、
市町村の
防災担当部署で十分に活用いただくことも大事ですけれども、
災害時は
行政が
住民一人一人をサポートしきれない現実がありますので、こういった誰でも見られるようなものを
県民一人一人が御覧いただき、御自分のところの
安全状況、危険状況を確認して適切に
対応していただければと思っています。
気象関係の
防災情報はこれまでといたしまして、次に、
地震津波関係の
防災情報を紹介したいと思います。
地震が起こると、大体
テレビなどで何々
地方で
地震がありましたとテロップが出ます。時間がたつと、実際にどの辺でどのぐらいの震度であったか、さらに
地震がどの
場所でどのくらいの
規模、マグニチュードで起こったかという
情報も出てきます。これらの
情報が一連の順番で発表されるわけですが、それより前に
緊急地震速報が、いきなり普通の
画面に
効果音が
流れて
地図等で表示される場合もあります。そもそも
自然現象としての
地震はどういうものかという教科書に載っているような話ですけれども、
日本列島の地下には固い
岩盤があるわけですが、
大本のプレートの
移動により非常に大きな力が掛かり続けています。強固な
岩盤であっても、いつかその限界を超えた時、ひびが入って広
範囲にわたって割れますが、この割れたところを断層と名付けています。ある平面を境にその両側で
岩盤が食い違うことで
地震が発生し、それが地表まで伝わって我々の体に感じるような揺れになります。
地震波の性質にちょっと触れておきますと、
最初に初期微動、P波と呼ばれるガタガタという小さな揺れが到達し、しばらくして主要動、S波というグラグラという揺れが遅れて到達します。いろいろな
地震のマグニチュードは、大まかに言えば1違うとエネルギーが約30倍違います。断層面は、非常に簡略化して長方形で示した場合の長さや幅は、マグニチュードが1違うと3倍ぐらい違います。これは過去の大きな
地震の
規模に応じて長方形で表したものですが、例えば
平成23年の東日本大震災ではこのぐらいの面積の地下の
岩盤が破壊されました。これはマグニチュード9.0でしたが、もうちょっと小さい、例えば阪神淡路大震災を起こした
地震はマグニチュード7.3ということで、断層の大きさからするとこれほど違うわけです。エネルギーも恐らく500倍近く違うはずですが、非常に人口が密集したところの真下で
地震が起こった場合には大きな被害が発生するということです。
地震関係の
情報の話に戻して、
最初に震度
情報が出ます。昔は
気象庁の
職員が体感で震度3とか4とか5とか計っていましたが、今は計測震度計という機械で
観測していまして、現在
全国に4,000点以上の
観測点があります。これは常時
観測していて、
地震があったらすぐに
気象庁に
データが伝送され、
情報発表します。この4,000点以上の内訳ですが、多数を占めているのは
地方公共団体設置のものです。これは阪神淡路大震災の被害に鑑みて総務省消防庁が補助事業を創設し、自治体への普及が一気に進んだという事情がありました。
震度はある
場所で実際にどのぐらい揺れたかの
情報で、救援活動や発災後の緊急
対応、初動に関して非常に重要です。そのほか、
地震の起こった
場所、マグニチュードの
規模を正確に評価する必要もあるため、震度計
観測網とは別に
全国に300か所以上展開された
地震計の
データで震源とマグニチュードを算出しています。実際に
気象庁で処理している
作業画面がこちらです。左側の図は、横は時間軸、縦が揺れの幅を
観測点ごとに示したもので、心電図のような表示だと思っていただければよいです。先ほど
説明したP波やS波、あるいは揺れの大きさを各
観測点で計測し、それらの
データを突き合わせて、
地震はこの辺で起こった、マグニチュードはどのぐらい、という計算をしています。これらの
作業結果から
気象庁はいろいろな
地震情報を出すわけですが、震度速報が出て、
地震情報、震源、マグニチュード、それから各
市町村の震度
情報と、おおむね1分半から5分ぐらいかけて順次発表してまいります。一方で、
地震に伴う
災害として非常に重要な津波ですが、海で大きな
地震が起こった場合はまず大体3分ぐらいで津波
警報・
注意報を発表します。その後、細かい
予想の
内容や実際に津波がやってきたかどうかという
観測情報を順次発表していきます。いろいろな
情報が
テレビ等を通じて皆様の元に届けられるのは、このような
流れになっています。
テレビの
画面では、まず
警報が出ると沿岸に
警報や
注意報の
種類に応じて色づけで表示されます。その後、これは津波
予報区と呼んでいますが、原則各県
一つ以上の津波
予報区でどのぐらいの
規模の津波がいつ頃来るかを示します。実際にどのぐらいの津波が来たかという
観測データも示されます。
次に、津波
警報を出す
仕組みを簡単に御紹介いたします。海底の下の
岩盤で
地震が発生すると海底地形が変形し、その上に載っている海水もそれに応じて盛り上がったりへこんだりします。海面の凹凸が
周りに広がって沿岸に到達するのが津波です。この動き自体は、今は
コンピュータで計算、予測できるところまできていますが、
地震が発生してから計算しているのでは間に合わないので、あらかじめ
地震の起こりそうな
場所に断層を想定し、
一つずつこういった計算を行い、どのくらいの津波になるかという結果を計算機の中に全部ため込んでおきます。およそ10万通り以上のシミュレーションをやっていますけれども、実際の
地震の時には、発生した
地震に一番
対応する結果を引き出して、津波
警報を3分ぐらいで出すという
仕組みになっています。実際の津波の監視はいわゆる検潮所で行っていますが、
名古屋の検潮所は
名古屋港ガーデンふ頭にあります。この
建物の中に、導水管という管で海とつながった井戸がありまして、その水面の
上下を
電波式の
観測装置で測ります。この
観測結果は
気象庁のホームページで随時御覧になれます。なお、
名古屋検潮所は
昭和34年の
伊勢湾台風の高潮で国内最高潮位389センチメートルを記録した
場所で、その意味でもここは非常に貴重な検潮所です。
こういった一連の
地震情報、津波
警報等を発表する現場を御紹介します。
名古屋地方気象台では発表
作業自体は行っておらず、
東京の
気象庁本庁が
全国一括して行っています。ただし、
コンピュータや
データ伝送回線の性能が非常に良くなったことに基づきますけれども、
東京も御承知のように
地震に対して非常にぜい弱な
場所であり、
気象庁が潰れたら
情報が出せなくなるのを避けるため、大阪
管区気象台に本庁と全く同じ解析及び
情報発表のシステムを入れており、
地震発生時には
東京と独立して
作業しています。結果は2か所から出すことはできませんので、発表官署は
東京と大阪でひと月ごとに交替しますが、このような形でいわゆるBCPの強化を図っています。
緊急に国民の皆様にお知らせする必要がある大きな
地震のほかに、
日本列島では非常に多数の小さな
地震が発生しています。
地震活動といいますが、その
状況も
気象台で毎日解析しています。この図は東北
地方を上から見ているものですが、色の付いた雲のような
部分が小さい
地震が起こった
場所で、多数の
地震が起こっています。これは垂直に切った断面図で、東北
地方の太平洋側から斜めの線がありますけど、いわゆる太平洋プレートが潜り込んでいる
様子が非常によく分かります。この解析結果は大学等研究
機関に提供され、いろいろな研究に活用されています。この図は昨年9月27日の1日に日本周辺に発生した
地震を示すものですが、御覧のようにもう
全国どこでも起こっています。その数は726回で、うち震度1以上の身体に感じるようなものは僅か5回だけですが、知られずに起こっている
地震は
日本列島の地下ではこんなに多数、毎日あるということです。
愛知県も身体に感じる
地震は非常に少ない
地域ですけれども、やはり小さい
地震は起こっていますので、大きな
地震がいつ起こっても不思議ではないと、これは
全国どこでも言えることですが、私はそういう印象を持っています。
緊急地震速報は、皆さんも何回か実際に受信された経験があると思いますが、
地震波のP波、S波という性質を利用して、震源に近い
観測点でいち早くP波をキャッチして震源の
場所とマグニチュードを算出し、それを基に離れたところでの震度を推定、計算して発表するものです。
緊急地震速報は大体数秒から数十秒ぐらいで発表し、例えば列車の運行を制御するようなことが一番の活用方法としてありますが、
一般の人でも自分の身を守るために揺れる前に身構えてもらう、あるいは安全なところに退避してもらうという効果があり、10年以上前に導入されています。これは数秒の世界で発表する必要がありますので、全自動のシステムになっています。先ほどの
地震情報、津波
警報は、最後に
職員がチェックしてこれでオーケーというようにボタンを押すわけですが、
緊急地震速報は完全自動ですので、かなり品質には注意してシステムを作っています。それでも誤報が出るときもあり、4年前には奈良県周辺に非常に大きな揺れを
予想し、
緊急地震速報を発表して西日本を中心に電車が止まるなどいろいろな
影響がありましたが、結果として揺れなかった、誤報を出して世の中に大変な御迷惑をお掛けしたということで、直後に担当
部署の課長と部長が陳謝しています。当時の課長は私で、当時の部長は現
気象庁長官です。こういった予測技術はどんどん改善する必要がありますが、100パーセントでは当然ないので、まずは利用する人に、
各種情報がどのぐらいの成績、能力を持つものかを知っていただくとよいと思っています。
そろそろ話も最後になってきましたけれども、もう
一つ、最近発表している
情報として長周期
地震動に関する
情報があります。これは、高層ビルの上層階が
地上よりもより揺れる
地震動で、この
災害を軽減するためにどうしたらよいかということを、
気象庁は
関係機関と連携して行っています。
南海トラフの巨大
地震が心配されているところでもあり、今後は長周期
地震動に対する備えも必要と思います。
最後になりますが、これは
地震災害での死因で典型的なものを三つ並べています。
大正12年の関東大震災の死因の大
部分は火災による焼死、それから阪神淡路大震災では、強い揺れによる古い
建物の倒壊による圧死、東日本大震災では巨大な津波による溺死など、
地震によって様々な
災害の起こり方があります。
こういった被害を抑えるために、一番肝心なのは、大きな
地震が来る前に家を強くし、揺れた時に棚が倒れてこないよう固定するなど、自分がけがをしない部屋を作る。
地震が実際に発生したときは、
地震が過ぎるのを待つしかありませんが、できるだけ自分の身を守る行動をとる。
地震が終わった後は、その時の被害
状況によりますけれども、屋内にいることが危険な場合は外に出る、避難
場所に
移動するとか、津波が心配なときは速やかに海岸から高台に
移動していただく。このような心掛けを、本当に万が一大きな
地震があったときは忘れないようにしていただければ、相当の人的被害は抑えられるだろうと思います。大
地震は自分の一生のうちに何度も経験するものではありませんけれども、お話ししたようなことを常に意識してもらうためには、日頃からの周知広報・啓発、あるいは学校での防災教育などが非常に重要になってきますが、この
辺りはどこかの
機関が一人だけ頑張るというものではとても成り立ちません。いろいろな
行政機関、それから民間、
一般の国民を含めて意識を高く持ってもらうことが何よりも重要ではないかと思います。これは
地震に限らず、
気象関係の
災害でも全く同じことが言えます。これら非常に多岐にわたる
防災気象情報は
気象庁のホームページに誰でも見られる形で掲載していますので、どうぞ御利用下さい。
2: (主な質疑)
【
岩村進次
委員】
名古屋地方気象台として、今後の豪雨に備えるためにどの程度の河川整備が必要となると考えているのか。
3: 【
長谷川参考人】
名古屋地方気象台は河川整備についてのプロではないが、国土交通省や
愛知県との共同で指定河川の
洪水予報を出している。その
範囲で言えば、河川流量の予測はかなり難しいと聞いている。どのぐらいの雨が河川の上流、中流、下流で降るかによって変わるし、どういう経過で下流に
流れていくか、ケース・バイ・ケースだと思う。
近年、短時間で非常に激しい雨が降ることが増えてきているが、経験からこのぐらいの雨が降るだろうとは言えるものの、今後その
範囲内で収まるかどうかは予測が難しい。特に今後、
地球温暖化の
影響等も心配されており、そこまで全部考慮して河川改修をすることになると、専門家ではないが、堤防にかなりの強度を持たせなければならないと思う。
関係機関では十分考慮した上で河川整備を進めていると思う。
残念ながら
名古屋地方気象台としては質問に対する直接の答えは持ち合わせていないが、もし来年の夏に
大雨が降ったときには、
住民の被害を減らさなければいけないという意味で、
浸水被害は避けられなくても、人命だけでも何とか救うためには避難するに越したことはないので、
名古屋地方気象台が出す
情報や河川事務所等から出る
情報をうまく
住民にも使ってもらえるよう、今後とも力を入れていきたいと思う。
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