愛知県議会 2016-12-01
平成28年12月定例会(第4号) 本文
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ウィンドウで開きます) 平成28年12月定例会(第4号) 本文 2016-12-07 文書・発言の移動 文書 前へ 次へ 発言 前へ 次へ
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発言者一覧 選択 1 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 2 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 3 : ◯三十九番(
久野哲生君) 選択 4 :
◯農林水産部長(加藤正人君) 選択 5 : ◯教育長(平松直巳君) 選択 6 :
◯建設部長(
市川育夫君) 選択 7 : ◯三十九番(
久野哲生君) 選択 8 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 9 : ◯四十七番(
安藤正明君) 選択 10 :
◯健康福祉部保健医療局長(松本一年君) 選択 11 :
◯建設部長(
市川育夫君) 選択 12 :
◯防災局長(加藤慎也君) 選択 13 : ◯四十七番(
安藤正明君) 選択 14 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 15 : ◯三十番(
新海正春君) 選択 16 :
◯建設部長(
市川育夫君) 選択 17 :
◯健康福祉部長(長谷川洋君) 選択 18 :
◯建設部建築局長(尾崎智央君) 選択 19 : ◯知事(大村秀章君) 選択 20 : ◯三十番(
新海正春君) 選択 21 : ◯四十一番(中根義高君) 選択 22 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 23 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 24 : ◯議長(鈴木孝昌君) 選択 25 : ◯五十七番(浅井よしたか君) 選択 26 : ◯県民生活部長(川島毅君) 選択 27 : ◯振興部観光局長(加納國雄君) 選択 28 : ◯知事(大村秀章君) 選択 29 : ◯議長(鈴木孝昌君) 選択 30 : ◯四十三番(藤原宏樹君) 選択 31 : ◯振興部観光局長(加納國雄君) 選択 32 :
◯建設部長(
市川育夫君) 選択 33 :
◯防災局長(加藤慎也君) 選択 34 : ◯知事(大村秀章君) 選択 35 : ◯四十番(石塚吾歩路君) 選択 36 : ◯議長(鈴木孝昌君) 選択 37 : ◯議長(鈴木孝昌君) 選択 38 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 39 : ◯七十三番(中村すすむ君) 選択 40 : ◯環境部長(菅沼綾子君) 選択 41 : ◯産業労働部長(吉澤隆君) 選択 42 : ◯総務部長(篠田信示君) 選択 43 : ◯七十三番(中村すすむ君) 選択 44 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 45 : ◯五番(田中泰彦君) 選択 46 : ◯産業労働部長(吉澤隆君) 選択 47 : ◯教育長(平松直巳君) 選択 48 : ◯五番(田中泰彦君) 選択 49 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 50 : ◯四十一番(中根義高君) 選択 51 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 52 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 53 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 54 : ◯六十番(長江正成君) 選択 55 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 56 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 57 : ◯四十番(石塚吾歩路君) 選択 58 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 59 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 60 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 61 : ◯八十七番(三浦孝司君) 選択 62 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 63 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 64 : ◯四十一番(中根義高君) 選択 65 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 66 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 67 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 68 : ◯四十番(石塚吾歩路君) 選択 69 : ◯副議長(
森下利久君) 選択 70 : ◯副議長(
森下利久君) ↑ 発言者の先頭へ 本文 ↓最初のヒットへ (全 0 ヒット) 1: 午前十時開議
◯副議長(
森下利久君) おはようございます。
ただいまから会議を開きます。
直ちに議事日程に従い会議を進めます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
日程第一 一般質問並びに第百四十四号議案平成二十八
年度愛知県一般会計補正予算から第百八十一号
議案愛知県スポーツ会館の指定管理者の指定に
ついてまで
2: ◯副議長(
森下利久君) 第百四十四号議案平成二十八年度愛知県一般会計補正予算から第百八十一号議案愛知県スポーツ会館の指定管理者の指定についてまでを一括議題といたします。
これより一般質問並びに提出議案に対する質問を許します。
通告により質問を許可いたします。
久野哲生議員。
〔三十九番
久野哲生君登壇〕(拍手)
3: ◯三十九番(
久野哲生君) おはようございます。
それでは、通告に従い、以下三項目を順に質問してまいります。
初めに、耕作放棄地対策について伺います。
先般、私たち民進党愛知県議員団は、平成二十九年度施策及び当初予算に対する提言を知事及び県当局に行いました。
その提言の中では、耕作放棄地の発生を抑制するとともに、農業の生産性を高め競争力を強化していくため、農地中間管理機構の取り組みの普及啓発を積極的に行い、貸借による担い手への一層の農地集積と集約化を推進することとしています。
一方、国は、昨年六月に発表した日本再興戦略二〇一五において、今後十年間で全農地の八割が担い手によって利用されるという目標の達成に向け、鍵を握るのは農地中間管理機構であるが、その活用についても新たなステージに入るとともに、遊休農地等に係る課税の強化、軽減等についても検討し、農地集積・集約化に全力を挙げることとするとしています。
その後、耕作放棄地に対する課税強化を盛り込んだ平成二十八年度税制改正大綱が昨年十二月に閣議決定され、ことし四月一日に地方税法等の一部を改正する等の法律が施行されたことにより、農業振興地域内の耕作放棄地に限ってではありますが、平成二十九年度から固定資産税を増額する対策を実施することになりました。この手続の流れについては、農業委員会と農地中間管理事業が大いにかかわっています。
農業委員会は、農業者の代表が非常勤の公務員として農地行政を担う市町村の行政委員会です。また、平成二十六年度からスタートした農地中間管理事業は、地域内に分散し、複雑に入り組んだ農地の利用を整理するため、県から指定を受けた農地中間管理機構──以下、機構と言います──が農地を借り受け、まとまりのある形で担い手に貸し付ける制度であります。
さて、耕作放棄地の固定資産税がふえることになる流れについては、これから述べるとおりです。
農業委員会では、その区域内の全ての農地を対象に、農地法三十条に基づき、毎年一回利用状況調査を行っています。これは、地域の農地利用の総点検である農地パトロールの一環として行われるものであり、調査の結果、一年以上にわたって耕作されておらず、今後も耕作されないと見込まれる農地、周辺農地と比べて低利用となっている農地、耕作従事者が不在または不在となる見込みが確実な農地について、所有者に対し、農地法三十二条に基づく利用意向調査を行います。
次の段階となる利用意向調査では、みずから耕作する、農地中間管理事業を利用する、権利の設定、移転を行うなどの所有者の意向を調査しますが、意思表明から六カ月経過しても耕作されないとき、所有者等に耕作の意思がないとき、利用意向調査から六カ月経過しても意思表明がないときは、所有者に対し、農地法三十六条に基づき、機構との協議を勧告します。
ただ、協議の勧告の対象となる農地は、農業振興地域内のものに限られ、また、所有者が機構に貸し付けを行う意思表示をし続けている場合は対象外となります。
そして、以上の過程を踏まえて、来年度からその年の一月一日時点において勧告の対象となっている農地の固定資産税が一・八倍に増額となるわけです。
農地の固定資産税は、全国平均額で十アール、約三百坪当たり約千円とのことですので、仮に二十アール分が勧告を受けた場合、現行の二千円から一・八倍で三千六百円となり、千六百円程度の増額になります。所有者の中には、報道などで急に固定資産税がふえると知らされ、大変驚いている方もおられると思います。
また、国が公表している二〇一五農林業センサスによりますと、耕作放棄地を抱えている農家、土地持ち非農家の内訳はおよそ半々ですが、土地持ち非農家の方々は、比較的農地関連の法改正などに関心が薄いと想像され、たとえ農業委員会による状況調査、意向調査が行われたとしても、即増税につながる場合があると気づかない可能性が高いのではないかと考えます。
そこで伺います。
耕作放棄地に対する課税強化について、これまでどのような周知が行われているのか、お聞かせください。
さて、耕作放棄地のデメリットをざっと挙げてみますと、雑草や木が生い茂ることで農地としての再開が難しくなるばかりでなく、景観が悪化する、火災発生の原因となる、不法投棄の対象となるなどが考えられます。
また、荒れ地の増加により、地域で中心となって農業を担う経営者への農地集積・集約化の妨げになるなども考えられます。つまりは、周辺地域の営農環境、地域住民の生活環境、いずれに対しても耕作放棄地は悪影響を与えるものとなるわけです。
現在、全国の耕作放棄地の総面積は琵琶湖二つ分に匹敵すると聞き及んでいます。一体、なぜこれほどまでの規模になってしまったのでしょうか。
そこで伺います。
本県の耕作放棄地の状況、そして発生の背景についてお聞かせください。
国民、県民の食生活の源であり、農家にとって財産である農地の一部が、草木が生い茂り、放置されていることは全くもってもったいない状況であると言えます。
また、御承知のとおり、農地は極めて多様な要素を持っており、農産物の産出という役割以外に、安らぎの場の提供、洪水の防止、土壌侵食の防止、水源の涵養、気温上昇の緩和といった機能も兼ね備えています。
農地の本来の役割と機能を損なうことになる耕作放棄地については、その再生、解消に努めなければなりませんが、発生を未然に防いでいくことも並行してしっかりと取り組む必要があると考えます。
そこで伺います。
本県では、今後の耕作放棄地対策をどのように考えているのか、お聞かせください。
次に、学校における薬物乱用防止についてお尋ねします。
ことしは、特に有名人の薬物乱用が相次いで発覚しており、二月に元プロ野球選手が、七月には元俳優が覚せい剤取締法違反で逮捕されており、それぞれ有罪判決を受けております。
さらには、十月に元女優が大麻所持の容疑で逮捕されたことは記憶に新しいところですし、つい最近も、二年前に覚醒剤事件で有罪判決を受け、執行猶予中の人気ミュージシャンが再び同罪の容疑で逮捕されました。
本県での薬物乱用について調べてみますと、過去五年間における薬物事犯の検挙人数は毎年千人超えという高い水準で推移しており、昨年も約一千百人が検挙されています。なお、全国では約一万三千八百人が検挙されており、そのほとんどが覚醒剤と大麻によるものです。
薬物乱用の問題は、青少年の生涯を通じる健康を考える上でも極めて重要な課題となっています。また、近年乱用される薬物が、覚醒剤、大麻のほかにも、コカイン、向精神薬、シンナー、危険ドラッグなど多様化しており、若者への広がりが懸念されています。
こうした中、ことし九月に、県内の中学三年生の女子生徒が覚醒剤所持、使用の容疑で逮捕されるという非常に衝撃的かつ残念な事件が起こりました。
青少年への薬物の広がりを示す事件としては、昨年十一月には、京都府で小学生が大麻を吸引していたことが発覚した際、高校生の兄の部屋から大麻が発見され、兄は所持の容疑で逮捕されましたし、ことし一月には、岐阜県で高校生が覚醒剤と注射器を持って警察に出頭し、逮捕されました。さらに、十一月には、茨城県で高校生ら少年四人が、コンビニの駐車場において大麻所持の容疑で逮捕されているなど、この種の事件は後を絶たない状況にあります。
また、近年では、若者の間で合法ハーブと称して販売された危険ドラッグが流通しており、使用した者が周囲の人たちに危害を加える事件が起こり、社会的問題にもなりました。
青少年期は、喫煙や飲酒行為に通じることで薬物の使用にも抵抗感が少なくなり、つい気軽に手を出してしまうというきっかけが起こりやすい時期だと言われています。また、心身の発達段階にある青少年期は依存状態に陥りやすく、薬物の影響がより深刻な形であらわれるそうで、将来が危惧されます。
薬物乱用の背景としては、小学生段階では、保護者や兄弟など家族の影響、そして、中学生、高校生においては、交友関係の影響が強いと指摘されています。
また、乱用のきっかけとしては、自分の体を大切にする気持ちや社会の規範を守る意識が低下したときに、身近な人からの誘いを断れなかったり、インターネットやSNSによる、ダイエットに効果がある、眠くならなくなるといった誤った情報に接して興味を持ってしまったりしたことなどが挙げられています。
この自分の体を大切にする気持ちと危険行動の関係については、かねてから多くの研究がなされており、自分を大切にする気持ちが低いほど、喫煙や飲酒、薬物乱用などの危険行動をとってしまう青少年が多いとのことです。
平成二十五年に小学校五年生から高校三年生を対象に文部科学省が行った薬物乱用に対する意識等調査の結果によりますと、覚醒剤などの薬物は絶対に使うべきではないと答えた児童生徒が九割を超え、平成九年度の調査以降、経年的に高くなっています。
つまり、薬物乱用はよくないとわかっていても、実際には、身近な人からの誘いを断れなかったり、誘惑に負けてしまったりといったことが起こっているわけです。
薬物は、たとえ一度でも使用すると、体がその快楽を覚えてしまい、依存から抜け出すことが非常に困難で、生涯にわたり身を滅ぼす危険性を強くはらんでいると言われています。
実際、十一月に公表された犯罪白書によりますと、平成二十三年に刑務所を出所した人の追跡調査を実施したところ、五年以内の再入所率は、覚せい剤取締法違反によるものが特に高く四九・四%で、ほぼ半数が再び同罪に手を染めてしまった実態が示されています。
また、警察庁によりますと、同罪で昨年一年間に摘発された一万一千二十二人のうち、再犯者は七千百四十七人で六四・八%を占め、平成十九年以降九年連続で高い水準でふえ続けています。
我が国の将来を担う子供たちが、広がる薬物乱用によって健康的な生活を失い、夢や希望が持てなくなるようなことがあってはなりません。大人には、子供たちが薬物に興味を持たないように、また手を出さないように、危険性、有害性の知識を繰り返ししっかりと植えつける責務があると思います。
既に学校でも薬物乱用防止教室を開催していると聞いておりますが、薬物に関する専門的な知識を有する警察や保健所等の関係機関と連携して、より充実した取り組みにすることが重要であると考えます。
そこで、教育長に伺います。
学校では、児童生徒の薬物乱用防止のためにどのような取り組みを行っているのでしょうか。また、九月の中三女子の逮捕事案に対し、県教育委員会は学校へどのような指導を行ったのでしょうか。
次に、児童生徒を指導する教員みずからも、薬物の危険性、有害性についての知識を身につけるとともに、指導力向上に向け取り組むべきと思いますが、県教育委員会として何か策を講じているのでしょうか。また、今後についての考えをお聞かせください。
最後に、無電柱化対策について伺います。
無電柱化対策は、生活を営む上で欠かすことのできない電気や電話、さらにはインターネットなど、情報通信サービスの経路として張りめぐらされた電線を地中に埋設して、道路から電柱をなくしていく取り組みです。
我が国では、戦後の高度経済成長期に急増を続けた電力や通信の需要に応えるため、国土を網羅した道路のネットワークを利用して電柱を建て、電線を張りめぐらせてサービスを行ってきました。
この結果、国道や県道などの幹線道路から生活道路に至るまで、全ての道路に電柱が建ち並び、電線の間から空を見上げるのが日本のまちの原風景になっています。
一方、海外に目を向けてみますと、ヨーロッパの主要都市では、電線類は全て地中に埋設され、電柱が全くない町並みとなっています。国土交通省のホームページでも、ロンドン、パリ、ベルリン、そして香港では、無電柱化率は一〇〇%と紹介されています。
その歴史をたどってみますと、例えばイギリスでは、十九世紀末に首都ロンドンで街路灯の整備を行った際に、古いガス灯と新しい電灯が競合することになり、当時、既に地中に埋設されていたガス管に比べ費用の安い電柱と電線による電灯では公正な競争性を保てないということで、電灯もガス灯と同じように地中化を義務づけたのが始まりのようです。
この結果、電線の地中化が広く社会に普及し、今では世界中から観光客が訪れる、美しく開放的な町並みがつくられました。我が国でも、こうした美しい町並みを再生しようという視点から無電柱化の取り組みが始まりました。
例えば、埼玉県の川越市では、小江戸と呼ばれてきた古い町並みを守るため無電柱化が進められ、電柱や電線に隠れていた蔵づくりの町並みがよみがえり、多くの観光客が訪れるようになりました。
また、本県でも、国宝の犬山城を持つ犬山市で、歴史的な町並みの再生に向け、城下のメーンストリートである本町通りで電線の地中化に取り組んだ結果、犬山城への視界が広がり、江戸時代の風情を楽しめるようになり、戦国ブーム効果も相まって、お城を訪ねる観光客がふえ、平成二十三年には十九年ぶりに四十万人を突破、昨年は過去最高の五十三万人が来城したとのことです。
このように、道路を無電柱化することでまち全体の景観が美しい町並みへと生まれ変わり、かつての歴史や伝統を感じることができるようによみがえることで、地域の経済をも活性化する効果が生み出されています。
また、電柱は主に歩道や路肩に建てられていますので、歩行者や自転車など、いわゆる交通弱者にとっては、安全・安心な歩行空間が狭められていることで危険性が高く、一方で、自動車のドライバーにとっても、視認性を妨げる要因になっており、交通安全上の課題も多いと言えます。
このため、歩行者はもとより、ベビーカーや車椅子、シニアカーまで、全ての人に優しいまちづくりの視点から始まったバリアフリー対策を推進していく上でも、また、交通安全の上でも無電柱化は大きな効果をもたらすと考えます。
加えて、近年大きくクローズアップされているのが防災機能への貢献です。
平成二十三年の東北地方太平洋沖地震、ことし四月の熊本地震など、近年相次いで大きな地震が発生し、災害が引き起こされました。東日本大震災では、約五万六千本の電柱が倒壊して電力の供給がとまり、通信が途絶えるなど社会機能が麻痺したことに加え、発災後最も重要となる消防活動や救急活動に当たる緊急車両の通行が阻まれたと聞いています。
道路の無電柱化を進めることは、大規模地震等の救急・救命活動、復旧活動をより迅速に進めることにつながりますし、電柱に比べ地中線の被災率は半分以下にとどまると言われていますので、電力や通信など発災後の社会機能を維持していくことができるなど、社会的な防災性を大きく向上させることができ、南海トラフ巨大地震のリスクが高まっている本県においても、重要な取り組みになると考えます。
このように、無電柱化対策は、さまざまなメリットからその重要性が再認識されていますが、一方で、デメリットが指摘されていることも事実です。
第一に、コストの問題です。
電力業界によれば、地中化に要する費用は一キロメートル当たり約五億円、一メートル当たり実に五十万円と、電柱方式に比べ約二十倍の費用を要すると試算されており、電力事業者や通信事業者、さらには一般ユーザーが新たにサービスを受ける際に大きな負担となっているようです。
また、社会インフラで近年大きな課題となっているメンテナンスの視点から見ると、目視点検や補修が容易な電柱方式に比べ、地中線の場合は、劣化や損傷の進行状況を直接監視することが難しく、また、大規模地震時の地盤の変化などで、一旦被災すると復旧作業に大きな費用と期間を要すると言われています。
これらの課題は、新しい技術の開発などにより徐々に改善が進められているようですが、無電柱化がなかなか進まない要因となっていることも確かであります。
実際、電柱の本数の推移を見てみますと、平成二十四年度までに全国で約九千キロの道路で無電柱化が行われたにもかかわらず、平成二十年度からの四年間で電柱の本数は逆に二十七万本増加しており、平成二十四年度時点で約三千五百五十二万本の電柱が建てられているとのことです。
この結果、国土交通省の統計では、平成二十五年度末の無電柱化率は全国平均で一%、首都東京二十三区でも七%にとどまっている状況にあり、国も防災性の向上など、無電柱化対策の持つ多くのメリットに着目して、新たな法制度の整備や民間資金を活用した事業制度の検討を進めているようです。
本県としても、町並み再生による地域の活性化、誰もが安全・安心して利用できる歩行空間の確保、南海トラフ巨大地震への対応など、無電柱化の持つ多くのメリットに改めて注目し、デメリットを克服しながら一層の普及に努めていくべきと考えます。
そこで伺います。
本県における無電柱化対策の取り組みの現状はどのようになっているのか、また、この無電柱化対策に対し、どのように取り組んでいくのか、考えをお聞かせください。
以上で壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
4:
◯農林水産部長(加藤正人君) 耕作放棄地対策に関するお尋ねのうち、まず、耕作放棄地に対する課税強化の周知についてであります。
平成二十八年四月一日に地方税法等の一部を改正する等の法律が施行され、市町村教育委員会から農地中間管理機構との協議の勧告を受けた遊休農地について、平成二十九年度から固定資産税の評価額が引き上げられることとなりました。
これを踏まえ、国から都道府県には、平成二十八年五月二十五日付の文書で、市町村農業委員会による耕作放棄地所有者に対する周知や、耕作放棄地の判定方法等について通知がなされたところであり、本県では、六月に市町村農業委員会に対し、県内七カ所にある農林水産事務所を通じてその内容を通知いたしました。
市町村農業委員会では、これを受け、ホームページ等による周知や、農地所有者に利用意向調査を実施する際に注意を促す文書等を添付して周知を行っており、市町村によっては、農業委員が戸別訪問を行い、耕作放棄地に対する固定資産税評価額の引き上げが実施される旨を説明しているところであります。
今後とも、国が新たに作成した引き上げの要点をわかりやすくまとめたパンフレット等を活用し、県農業会議や市町村農業委員会と連携して周知に努めてまいります。
先ほどの答弁の冒頭のところで、平成二十八年四月一日に地方税法等の一部を改正する等の法律が施行され、市町村教育委員会からと申し上げましたが、市町村農業委員会からの間違いでございます。申しわけございません。
次に、本県の耕作放棄地の状況と発生の背景についてでございます。
二〇一五年農林業センサスによりますと、本県の耕作放棄地面積は八千五百十三ヘクタールで、耕地面積の一一・一%に相当しております。地域別に見ますと、海部地域、西三河地域ではその割合は非常に低く、一方、新城・設楽地域といった中山間地域や畑地、丘陵地の多い知多地域などでは割合が高くなっております。
また、本県の耕作放棄地面積の割合は全国の九・四%を上回ってはおりますが、状況が大きく異なる北海道を除いた都府県平均の一二・一%と比べますとやや低い値であり、割合の低いほうから全国二十番目となっております。
こうした耕作放棄地発生の背景には、耕作者の高齢化や労働力不足に加え、農地の資産的保有の意識が強く、農地の貸し付けに消極的なことや、鳥獣被害による生産意欲の減退、不利な耕作条件により生産性の向上が図りにくい農地があることなどが考えられるところでございます。
最後に、本県の今後の耕作放棄地対策についてであります。
対策といたしましては、耕作放棄の状態になった農地の再生と耕作放棄地の発生防止の両面から取り組むことが重要であると考えております。
このうち、耕作放棄地の再生につきましては、行政と農業関係団体で耕作放棄地対策協議会を設置し、国の交付金を活用して、農業者等が行う農地の再生作業を支援するとともに、市民農園や牛の放牧地としての活用など、多様な形態の農地利用を推進しているところでございます。
このような取り組みの結果、平成二十三年度から平成二十七年度までの五年間で一千六百二十五ヘクタールの耕作放棄地が再生されたところでございます。
また、耕作放棄地の発生防止につきましては、高齢のため農業をリタイアする予定の人や、相続後の農業継続が困難な人の農地の活用法を地域や集落で話し合い、今後の農地のあり方を定めていくことが重要であると考えており、その話し合いの結果を市町村が取りまとめる、人・農地プランが現在五十市町村百十七地区で作成をされております。
人・農地プランの作成や更新に当たっては、県の担当職員が参画するなどして助言、指導を行っております。さらに、農地中間管理事業を中心とした農地の集積・集約化を推進することや、中山間地域等直接支払制度により、中山間地域における地域ぐるみでの農地の保全管理に対する支援等を行っているところでございます。
これらの施策を今後とも継続して推進することで、耕作放棄地の再生と発生防止に努めてまいります。
5: ◯教育長(平松直巳君) 学校における薬物乱用防止について、三点お尋ねをいただきました。
初めに、学校での取り組みについてお答えをいたします。
学校における薬物乱用防止教育につきましては、小学校の体育、中学校及び高校の保健体育の授業はもとより、総合的な学習の時間や特別活動なども活用しながら、学校教育全体を通して、発達段階に応じて行っております。
小学校の授業では、薬物乱用が引き起こす健康被害や依存症などについて教え、中学校では、こうした内容をさらに深めるとともに、薬物乱用が人格の形成を阻害し、暴力や犯罪など社会に深刻な影響を及ぼすことについても学ばせております。さらに、高校では、健全な価値観や規範意識の育成などとともに、薬物乱用のきっかけとなる要因や社会的背景、法的な規制についても指導いたしております。
また、県内全ての中学校及び高校において、薬物乱用防止教室を年一回以上開催しており、薬物に関する専門的な知識を有する警察職員や保健所職員、学校薬剤師など外部講師による講話、薬物依存による健康被害に関するDVDの視聴、薬物の誘いに対する断り方のロールプレーなどを実施いたしております。
こうした取り組みにより、児童生徒に薬物乱用の有害性、危険性について理解させ、薬物に絶対手を出さないという規範意識の向上を図っているところでございます。
次に、県内の中学三年生が覚醒剤使用の疑いで逮捕されたことを受けての本県の対応でございますが、教育委員会といたしましても、今回の事案は絶対にあってはならない深刻な問題と受けとめており、逮捕翌日の九月三十日付で県立学校及び市町村教育委員会に対し、警察等関係機関と十分な連携を図り、児童生徒への薬物乱用防止に関する指導を徹底するように改めて通知をいたしました。
また、直後に開催された県立学校及び小中学校の校長会や全市町村の学校教育担当指導主事が集まる会議において、薬物乱用防止の指導の徹底を指示したところでございます。
今後も、さまざまな機会を通じて、薬物乱用防止の取り組みを推進するよう指導してまいります。
次に、教員の指導力向上の取り組みについてでございます。
児童生徒に薬物の危険性、有害性を指導するためには、教員自身が正しい知識を身につけ、指導力を向上させることが不可欠でございます。
このため、県教育委員会では、市町村教育委員会の生徒指導担当者を対象とした会議や、高校の教員を対象とする生徒指導研究会などで最新の情報や事例の共有を図ることにより、薬物乱用防止に関する知識の向上に努めております。
また、養護教諭や保健主事など学校保健を担当する教員を対象に毎年学校保健講座を開催し、薬物の危険性に関する講義や情報を正しく判断する力、誘惑を断る力の育成を目的とした演習などを行い、指導力の向上を図っております。
薬物乱用の根絶には、児童生徒に、薬物乱用は誰の身近にも起こり得る問題であるという危機意識を持たせることや、自分の心と体を大切にしてほしいというメッセージを繰り返し伝えていくことが重要であります。
このため、より多くの教員が薬物に対する正しい知識を持ち、学校全体で薬物乱用防止に取り組むことができるよう、各学校における薬物乱用防止教育の核となる教員を養成するための研修を新たに実施して、この教員を中心に教員全体の指導力の向上を図ってまいりたいと考えております。
6:
◯建設部長(
市川育夫君) 本県における道路の無電柱化対策の取り組みの現状と今後の方針についてであります。
道路の無電柱化対策は、良好な都市景観の形成、安全で快適な歩行空間の確保、さらには、災害時における防災性の向上など、多くのメリットを有する重要な取り組みであると認識しております。
本県におきましても、従来から国や市町村と連携して、歴史的な町並みの再生やまちの顔となる中心市街地の景観形成を目的として、電線共同溝による無電柱化を進めており、近年では、駅や病院など主要な公共施設を結ぶ経路のバリアフリー化においても、歩行空間を確保する手法として活用を図っているところであります。
無電柱化に当たっては、電線や電柱等を所有している電力会社や通信会社など、多くの電線管理者との合意が必要であるため、国においては、国土交通省や経済産業省など関係四省庁と電力・通信業団体で無電柱化推進検討会議を設置し、対策を促進する方策が検討されております。また、地方ブロックごとの無電柱化協議会や都道府県ごとの地方協議会におきましては、対策路線や区間などを定めた無電柱化計画を策定することとしております。
このため、本県においても、中部ブロック協議会のもとに愛知県電線地中化推進協議会を設置して、費用負担を含めた整備手法を協議するなど、対策の促進に努めてきたところです。
しかしながら、電線管理者の財政負担など課題も多く、昨年度末までの県内における無電柱化の進捗状況は、市町村道を含め総延長で二百三十四キロメートル、市街地の国道、県道に限ってみても九十五キロメートルであり、無電柱化率は五%にとどまっております。
こうした中、東日本大震災を契機に、道路の無電柱化は大規模地震時の避難活動や救援活動、緊急物資の輸送や復旧活動の経路を確保していく上で有効な対策として注目されております。
本県におきましても、南海トラフ巨大地震が想定、危惧されることから、無電柱化対策は道路の防災性を確保していく上で重要な対策と考え、第三次あいち地震対策アクションプランに県管理道路延べ十一・八キロメートルの無電柱化を位置づけているところであります。
一方、国においては、無電柱化の促進に向けて、本年四月、電線を埋設する深さの基準を緩和するとともに、欧米で採用されているケーブルを直接埋設する方法など、コストの縮減に向けた取り組みを開始しております。
また、今国会においては、無電柱化推進法案が審議されていると聞いております。本県といたしましても、国の動向に注目するとともに、新たな技術や制度を活用しつつ、都市景観の向上や歩行空間の確保といった地域のニーズに防災機能の向上を加味することにより、道路の無電柱化を一層付加価値の高い対策として推進してまいりたいと考えております。
7: ◯三十九番(
久野哲生君) 一点要望を行います。
無電柱化についてであります。
先ほど、国においても、無電柱化について検討しているというお話がありました。
今月一日開会の東京都議会において、小池都知事の所信表明で、無電柱化を日本の常識へと述べられ、都道での電柱の新設禁止を柱とする条例制定を明言、来年秋の施行を目指しており、もし条例が制定されれば、都道府県レベルでは初となるとの報道がありました。今後は、災害時の緊急輸送道路を初めとする防災上重要な路線などを無電柱化する場合、事業者への手厚い援助制度を設けることを検討するとともに、コストの縮減に向けた技術的支援にも取り組むとのことであります。
発信力と影響力にすぐれ、非常に注目度の高い東京都並びに都知事が無電柱化を日本の常識へと音頭をとれば、いずれはトレンドとして全国へ波及するものと考えられます。
本県におきましても、今後、決して他府県におくれをとることがないように、この有益なる無電柱化に積極的に取り組んでいただくことを要望して、質問を終わります。
8: ◯副議長(
森下利久君) 進行いたします。
安藤正明議員。
〔四十七番安藤正明君登壇〕(拍手)
9: ◯四十七番(
安藤正明君) それでは、通告に従い、順次質問をしてまいります。
まず初めに、アルコール健康障害対策についてお伺いします。
アルコール健康障害対策については、昨年の九月の定例会におきまして一般質問をいたしました。その際、アルコール関連問題に対する啓発活動の取り組みや、県のアルコール健康障害対策推進計画の策定に向けた取り組みについて御答弁をいただきましたが、今回改めてお伺いします。
アルコール中毒は、一日どの程度飲む人のことを言うのでしょうか。アルコールはどれくらい摂取できるかというのは個人個人決まっていて、多い、少ないで判断できないようです。ただ、アルコールは、一定以上摂取し続けると依存状態になり、その結果、アルコール依存症という病になります。
目安となるアルコール依存症の症状は、飲まないと眠れない、飲んだ翌日手が震える、または指先がこわばったようになり字が書きにくい、飲んだ翌日汗が出る、これらは離脱症状といって、アルコール依存症の重要な兆候だそうです。もちろん、これらの症状に当てはまるイコールアルコール依存症というわけではありません。
アルコール依存症者の口癖は、飲みたい、酔いたい、飲んで楽になりたい、俺の金だ、飲んで何が悪いなどと言うようになり、アルコール依存症者の日常は、朝昼晩、時と場所、場合を考えないで酒を飲む、大事なとき、飲んではいけないときほど飲まずにはいられなくなります。頻繁に二日酔いになり会社を欠勤する、月曜日になりますと葬式が、体調がと言いわけをするようになります。日常がものぐさ、だらしなくなる、お風呂に入らなかったり、歯を磨かない、服が乱れるなど、こうなると家族は酒さえやめてくれればと思ったり、そう言ったりします。
酒が悪いと思い、酒を隠したり捨てたりします。酔った本人の失敗の後始末、尻拭いをします。経済的な生活苦の穴埋めに奔走するなど、その結果、本人のことを知られたら格好悪い、困っていることを話せる相手がいない、もしかしたら自分にも責任があるのではないか、何を言っても、何をやっても、どんなに見張っていても無駄だ、絶望的だという状態になってしまいます。
この世の地獄を見たければ、アルコール依存症者のいる家庭を見よという笑えない言葉があります。これは、アルコール依存症は本人だけの病気ではなく、家族全体を巻き込んで苦しめるものであることを端的に表現しています。本人が病気から回復しなければならないのはもちろんですが、実は、家族もまた病気に巻き込まれた影響を受け、家族全体が病んだ関係になっているのです。
大阪府にある、あるアルコール専門クリニックの院長は、昭和五十一年に医学部を卒業した当時は、アル中と呼ばれた人たちが精神科病院に隔離、収容されていた、何年も退院できない人も多くいた、当時の教科書には、慢性アルコール中毒は治癒不能と書かれていたが、現在では、治癒不能ではなく回復できる病気に変わってきたと言っております。
しかし、回復への道筋は、本人が断酒をすることしかありません。そのためには、次の二つにつながりを持つことが重要であります。
一つは、アルコール依存症の専門的な診断、治療を行うことのできる医療機関で診察を受けることです。アルコール依存症と診断されたら、入院もしくは通院となります。
もう一つは、酒害相談などを行っている自助グループに連絡して、断酒に向けた支援を受けることです。自助グループの一つである断酒会は、同じ立場のアルコール依存症者、家族が集い、交流、相談を行う場です。
しかしながら、専門的な医療機関や自助グループにつながっても、すぐに全てが解決するわけではありません。なぜならば、断酒をし、それを継続することは容易なことではないからです。医療機関での治療後は、断酒会を初めとする自助グループの手をかり、お酒をやめ続けることによって、アルコール依存症者、家族全体が回復への道を進むことができます。
こうした依存症当事者への回復支援や家族への支援を初めとしたアルコール健康障害対策を推進するため、平成二十六年六月に施行されたアルコール健康障害対策基本法において、各都道府県は、アルコール健康障害対策推進計画を策定するよう努めなければならないとされ、本県では、今年度中に策定する予定であると聞いております。
そこでお伺いいたします。
師走に入り、平成二十八年度もあと四カ月足らずとなってまいりましたが、本県のアルコール健康障害対策推進計画の策定の進捗状況をお伺いします。
次に、県の推進計画の内容についてであります。
都道府県の推進計画は、アルコール健康障害対策基本法において、ことし五月に策定され、国の基本計画を基本として策定することとされております。
国の基本計画では、アルコール健康障害に関する予防及び相談から治療、回復支援に至る切れ目のない支援体制の整備を図るため、都道府県において、地域における相談拠点及びアルコール依存症に対する適切な医療を提供することができる専門医療機関をそれぞれ一カ所以上定めることを目標としております。したがって、本県の推進計画においても、この国の目標を踏まえた計画の策定が必要であると考えます。
そこでお伺いします。
本県におけるアルコール健康障害の相談拠点及びアルコール依存症に対する適切な医療を提供するための専門医療機関について、推進計画にどのように位置づけようと考えているのか、県の御所見をお伺いします。
次に、質問の二つ目、大規模水害時における応急対策についてお伺いします。
まず、堤防決壊など災害時における本県の応急体制についてお伺いします。
私の住む弥富市を含む海部地域は、日本最大のゼロメートル地帯にあり、常日ごろから伊勢湾や木曽川、日光川など、三方を地面より高い水面に囲われている天井川の地域であることから、本県の中でも、特に洪水など水災害に対しての備えが重要な地域と言えます。
近年、県内では、全国ニュースになるような大規模な浸水被害は幸いにも発生していませんが、全国的には、ことしの台風十号による岩手県や北海道における洪水被害など、毎年のように各地で大規模な水災害が発生しております。
これら全国の被害事例を調査研究し、当地域の水災害対策に生かすため、ことしの八月、海部地域の自民党議員有志で、昨年九月に堤防が決壊し、甚大な被害がありました茨城県常総市を縦断する鬼怒川の現地調査を行いました。
それでは、鬼怒川について少し御説明いたします。
鬼怒川は、栃木県と群馬県との県境近くに栃木県日光市山中の標高二千四十メートル、鬼怒沼を水源として、栃木県と茨城県を流下し、茨城県守谷市で利根川に合流する幹川流路延長百七十七キロメートル、流域面積千七百六十一平方キロメートルの一級河川であります。鬼怒川流域の土地利用状況は、山地等が約七九%を占めており、水田、畑地の農地が約一八%、宅地等の市街地が約三%となっています。
次に、鬼怒川の治水対策の一つを御紹介いたします。
利根川合流部から上流五十・五キロメートルから九十四・五キロメートルの区間に昭和六年から昭和四十一年にわたって築造された霞堤が二十二カ所あります。鬼怒川は、河床勾配が二百分の一から五百分の一の急勾配であるため、洪水時に堤防を途切れさせ、水流の一部を遊水させ、洪水の勢いを弱める急流河川の特徴的な治水対策が施されています。
鬼怒川における過去の主な災害は、昭和二十四年八月のキティ台風、平成十年九月の台風第五号、平成二十三年九月の台風第十五号で、床下浸水、床上浸水の被害が出ております。
今回の調査先の一つ、国土交通省関東地方整備局下館河川事務所では、堤防決壊という緊急事態に対して、一刻も早い堤防復旧のため、官民一体となり奮闘し、緊急工事を敢行した話を聞くことができました。
台風十八号は、平成二十七年九月九日、十時過ぎ、愛知県知多半島に上陸後、日本海に進み、同日、温帯低気圧に変わりました。
しかし、台風十八号や台風から変わった低気圧に向かって南から湿った空気が流れ込んだ影響で、特に関東地方では、線状降水帯と呼ばれる、積乱雲が帯状に次々と発生する状況となり、長時間にわたって強い雨が降り続き、五十里雨量観測所観測開始以来最多の二十四時間雨量五百五十一ミリを記録するなど、各観測所では観測史上最多雨量を記録しました。
鬼怒川では、流下能力を上回る洪水となり、七カ所で溢水し、常総市三坂町地先で九月十日、十二時五十分ごろ、左岸提二十一キロ付近で約二百メートルにわたり堤防が決壊しました。
関東地方の国管理河川の決壊は、昭和六十一年の利根川水系小貝川以来二十九年ぶりのことです。決壊から一時間を待たずに非常対策本部会議を開くとともに、施工業者へ出動要請を行い、堤防決壊から約九時間後の夜二十二時には、作業ヤード等の応急復旧工事の準備工に着手しています。
翌日から、国が事前に備蓄しておいた根固めブロックや砕石、土砂、鋼矢板など、河川防災ステーション等の緊急時用備蓄資材の活用により、九日後の十九日には決壊した堤防の荒締め切り工が終了、さらに、荒締め切り工に並ぶように設置した鋼矢板を二列に打ち込んだ締め切り工については、二週間後の二十四日に終了し、応急復旧工事は完了しました。
関東地方整備局下館河川事務所では、災害時に備え、建設会社、設計コンサルタント会社等と災害協定を結んでいたこと、また、定期的に会議を開き、災害時における対応のシミュレーションを行っていたことで、今回の復旧工事の早期対応や速やかな調査を行うことができたと伺いました。
河川堤防の決壊に伴う甚大な浸水被害は、私の地元海部地域においても、昭和三十四年の伊勢湾台風、昭和五十一年の台風第十七号により、日光川の支川、目比川で発生しており、鬼怒川の被害は決して対岸の火事ではありません。
水災害に対する対策は、河川改修などハード対策を着実に進めることが第一で、海部地域の中心を流れる日光川においても、日光川放水路整備や日光川水閘門の改築など、河川改修が着実に進められてきております。
しかしながら、近年、鬼怒川で起こったような施設の能力を超える、これまで経験したことのない大雨などが発生していることから、災害は必ず起こるとの認識のもと、水災害対策に取り組んでいかなければなりません。
この海部地域や三河地域沿岸部などの本県のゼロメートル地帯には約八十万人が暮らすとともに、全国の平均的な県とほぼほぼ等しい約六兆円の製造品出荷額を生み出しております。
万が一このゼロメートル地帯において、日光川や矢作古川、柳生川などの河川堤防が決壊した場合に、被害を軽減するには、浸水を防ぐため仮堤防等を迅速に復旧し、その後、速やかに地域の浸水状態を解消して、できる限り早く復旧・復興に着手できる体制づくりが必要であります。
そのため、海部地域においては、緊急時の輸送路として、日光川右岸堤防災道路や当地域の水防拠点としての日光川河川防災ステーションなど、順次地域の安全・安心、生命、財産を守る河川整備が進められてきていると認識しておりますが、あわせて鬼怒川での対処に劣らぬ迅速な体制の確保、災害用備蓄資材の確保が極めて重要であると考えます。
そこでお伺いします。
県の管理する河川における堤防決壊など、災害時の応急復旧体制の取り組みについてお伺いします。
次に、大規模な浸水被害が発生した際のゼロメートル地帯における防災拠点についてお尋ねします。
私たちは、関東地方整備局下館河川事務所での応急復旧体制調査後、常総地方広域市町村圏事務組合消防本部において、災害支援・援助活動について調査しました。
平成十八年、市町村合併により水海道市と石下町が合併して常総市が誕生しました。常総市の消防体制は、市の南部に位置する旧水海道市を管轄する常総広域消防本部と市の北西に位置する旧石下町を管轄する茨城西南広域消防本部があり、全国的にも一市に二消防本部といった珍しい体制がとられております。
鬼怒川決壊は、九月十日から十一日にかけて、線状降水帯の発生に伴う記録的な大雨により、鬼怒川と小貝川に囲まれた常総市では広範囲が水没し、死者二名、負傷者四十名以上の人的被害のほか、東日本大震災の教訓を取り入れて、二〇一四年に竣工したばかりの常総市役所本庁舎が浸水したのを初め、全半壊家屋五千棟以上という甚大な被害を受けました。
浸水域に取り残された方々の救助には、石下総合運動公園を拠点に、自衛隊、海上保安庁、警察、消防の各機関のヘリコプターによる救助活動により千三百三十九人の方々が救助され、ヘリコプター発着場では、消防団、消防職員によってトリアージが行われ、各避難所に搬送されました。自衛隊、消防、DMATによるゴムボートによる地上部隊救助活動を合わせると、四千二百五十八人の方々が救助されたと報告されています。
また、被災状況の迅速な把握、被害の発生及び防止、被災地の早期復旧、応急に対する技術的な支援を国として円滑かつ迅速に実施することを目的として、二〇〇八年に創設された緊急災害対策派遣隊TEC─FORCE、テクニカル・エマージェンシー・コントロール・フォースの活動を御紹介します。
浸水域の復旧においては、堤防決壊の当日から排水を開始し、全国の地方整備局の応援により、一日最大五十一台のポンプ車を投入し、十七地区、約七百八十万立米、東京ドーム約六杯分を十日間で排水し、宅地及び公共施設等の浸水がおおむね解消しました。
このほかに、緊急自動車の通行を確保するため、放置車両の移動、降雨による浸水対策として、流出土砂等の堆積により塞がれた市道の側溝清掃、全国の地方整備局から延べ一日約二千三百人のTEC─FORCEと災害対策用機械等、リエゾンを派遣し、地方公共団体を支援、河川等を通じて東京湾に流入した流木等漂流物の回収を行うため、港湾業務艇及び清掃兼油回収船べいくりんを派遣し、約二百六十三立米の漂流物を回収しました。
常総広域消防本部におきましては、対策本部の設置、発災直後から指揮命令、ヘリコプター、ゴムボートでの救助活動のほか、水田内の検索棒などを利用したローラー作戦など、九月九日深夜から続いた災害対応は、九月十七日に緊急援助隊・県消防広域応援隊解散式とともに終えました。
弥富市は、市内のほぼ全域が海抜ゼロメートル地帯の平たんな地形で、木曽川下流の低平地に人口が集中しており、このため、地震や台風などが発生した場合には、津波や高潮による浸水被害を受けやすく、昭和三十四年の伊勢湾台風では、三百五十八名のとうとい命が犠牲になるなど、広範囲にわたり浸水により甚大な被害を受けたところであります。
このため、弥富市では、この伊勢湾台風を教訓として、防災・減災対策に積極的に取り組んでいるところであり、その一環として、先月十一月六日には、県との共同開催で愛知県・弥富市津波・地震防災訓練を実施したところであります。
この津波・地震防災訓練は、東日本大震災を教訓に、沿岸住民等が津波からの早期避難行動の重要性を認識していただくため、平成二十三年度から県が沿岸市町村と共同開催で実施しているものであり、ことしの訓練は初めて海部地域で開催されたものであります。
特に、ことしの訓練では、発電機能を備えたトラックをヘリコプターで孤立地域に空輸し、仮復旧対応を実施する訓練、戦術輸送機による上空からの必要物資模擬投下訓練、また、本県と岐阜県、三重県及び名古屋市により、広域避難に関する関係自治体の基本的な役割や連絡手順等を整理した東海三県一市・県境を越える広域避難調整方針の検証を目的に、弥富市の住民をより安全な場所に避難させるため、岐阜県美濃加茂市へバスによる輸送訓練が初めて実施されるなど、一たび浸水被害が発生した場合に、長期間湛水するおそれのあるゼロメートル地帯を抱える弥富市でこうした広域避難の訓練が行われたことは大変意義のあるものと考えるところです。
また、県が弥富市をモデルに実施し、平成二十七年二月に公表した津波避難シミュレーションでは、原則自力で徒歩避難が可能な方、全ての方が徒歩による避難を行った場合、七二%の方が避難完了するのに対して、避難完了できなかった方が存在する地域に避難場所を十八カ所追加し、自力での徒歩避難ができない要配慮者を自動車による避難に変更したところ、避難完了率は八三%に上昇しました。
こうした結果を踏まえて、弥富市では、大規模地震に伴う津波による浸水被害から市民を守るため、避難体制の早期の確立が必要と考え、土地改良施設や小中学校などの公共施設の屋上での避難場所の整備や、民間施設を活用した避難場所の確保を進めているところでありますが、一方で、河川沿いの地域では、地震による堤防の沈下や破堤等により地震発生直後から浸水が始まることから、弥富市が指定する避難場所までの移動がままならない方々も存在することも明らかとなっています。
こうした方々に対して、近くの頑丈で高い建物に避難することが命を守る方策として極めて重要でありますが、避難をし終えた後には、できる限り迅速に避難場所など安心して避難生活を送ることができる場所に移動することが大変重要であると考えます。このため、鬼怒川決壊時に救助活動拠点となった石下総合運動公園のような広域的な防災活動拠点が必要であることから、本年七月には、弥富市長とともに、知事に年間約五十万人が来場する海南こどもの国での防災活動拠点の整備に関する要望を行ったところであります。
県では、こうしたゼロメートル地帯において、ヘリコプターやボートにより、孤立した被災者の方々の救出、救助を行うための防災活動拠点の整備をする方針を打ち出し、木曽三川下流域、西三河南部、東三河南部の三地域に合わせて四カ所の拠点を置くこととし、木曽三川下流域には、愛西市内の旧永和荘跡地に一カ所目の拠点を整備することを決定し、今後はさらに検討を進め、残る三カ所の整備地を決定していくこととしております。
そこでお伺いします。
今年度取り組んでいる海部地域を初めとするゼロメートル地帯における防災活動拠点の調査の進捗状況と今後の見通しについてお尋ねをし、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
10:
◯健康福祉部保健医療局長(松本一年君) アルコール健康障害対策についての御質問のうち、まず、県のアルコール健康障害対策推進計画策定の進捗状況についてお答えいたします。
本県では、推進計画を策定するに当たり、幅広い観点から御意見をいただくため、保健、医療、福祉及び教育の関係者や自助グループ関係者、お酒の製造・販売事業者等で構成する推進計画策定検討委員会を本年五月に設置して、検討を進めているところでございます。
七月に開催いたしました第一回検討委員会では、未成年者等への教育や啓発及び人材育成の重要性や地域連携の取り組みの必要性など、推進計画の方向性に関するさまざまな御意見をいただきました。
また、七月と十一月には、警察本部、教育委員会を初めとした関係部局の担当職員を構成員とするアルコール健康障害対策連絡会において、具体的な取り組み等について意見交換を行っております。さらに、自助グループである断酒会の活動の場に伺い、スタッフや回復者の方々からも御意見や御要望をお聞きしております。
これらを踏まえ、現在、推進計画の素案の作成作業を進めており、今月二十日に開催予定の第二回検討委員会において、素案に対する御意見をお伺いすることとしております。その後、来月にはパブリックコメントの募集を行い、二月に開催を予定しております第三回検討委員会での最終的な審議を経て、三月に推進計画を決定し、公表してまいりたいと考えております。
次に、アルコール健康障害の相談拠点とアルコール依存症の専門医療機関の推進計画への位置づけについてお答えいたします。
推進計画では、重点目標を二つ掲げることとしており、第一には、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を徹底し、将来にわたるアルコール健康障害の発生を予防すること、第二には、アルコール健康障害に関する予防、相談、治療、回復支援に至る切れ目のない支援体制を整備することでございます。
その中で、相談拠点につきましては、県の精神保健福祉センター及び保健所を地域における相談の拠点として明確に位置づけ、当事者やその家族の皆様が適切な相談から治療、回復支援につながるよう、その周知を図ってまいりたいと考えております。
また、アルコール依存症に対応する専門医療機関につきましては、国の基本計画を踏まえ、治療の拠点となる医療機関を指定するとともに、一般医療機関と精神科医療機関との連携強化など、適切な医療提供体制の整備に取り組んでまいりたいと考えております。
今後、こうした点も含め、策定検討委員会で幅広い角度から御検討いただきながら、実効性のある推進計画を策定し、関係者と一丸となって、誰もが健康で安心して暮らすことのできる社会の実現を目指してまいります。
11:
◯建設部長(
市川育夫君) 県の管理する河川における堤防決壊など、災害時の応急復旧体制の取り組みについてお尋ねをいただきました。
堤防決壊など大規模な自然災害時には、その後の県民生活や経済活動を早期に回復できるよう、平常時より災害発生を想定した応急復旧体制を整えておくことが重要であります。
本県では、東海豪雨を教訓に、平成十三年度より河川堤防などの応急復旧工事等について、地元の建設業者と個別に協定を締結しております。これにより、現在、県管理の二百八十四河川、延長約千八百キロメートルについて、相当程度の災害の発生が予測される場合、または災害が発生した場合には、建設業者による巡視や応急復旧工事が速やかに行われる体制を整えているところです。
また、地元の建設業者だけでは対応することが難しい大規模な災害が発生した場合に備えて、建設業団体との包括協定を締結し、地域を越えた広域的な連携体制を確保しております。
さらに、災害時の復旧活動がより円滑に実行できるよう、毎年定期的に県と地元の建設業者や建設業団体との間で情報伝達などの訓練を実施しております。
一方、応急復旧工事に必要な資材等については、一昨年完成した日光川河川防災ステーションに大型土のうや土砂を備蓄するとともに、県内における土砂の新たな備蓄拠点の検討など、災害を想定した対策も順次進めております。
また、中部地方の五県三政令市と中部地方整備局との間で、中部地方における災害時の相互協力に関する申し合わせを結んでおり、排水ポンプ車や照明車、通信機器など、国の保有するさまざまな災害対策用機材の貸与を受けることが可能となっております。
さらに、広大なゼロメートル地帯を含む日光川流域においては、仮に浸水しても、復旧用の大型土のうや土砂を効果的かつ効率的に運搬できるよう、日光川右岸堤防災道路を延伸するとともに、日光川河川防災ステーションと連結するなど、本県独自のネットワークの強化に取り組んでおります。
これからも、県管理河川における水害対策として、河川改修の促進や住民避難のための河川情報の提供とともに、平常時より災害を想定した応急復旧体制をしっかりと整え、県民の皆様の安全・安心の確保に努めてまいります。
12:
◯防災局長(加藤慎也君) ゼロメートル地帯における防災活動拠点に関するお尋ねについてお答えをいたします。
ゼロメートル地帯における防災活動拠点の整備につきましては、昨年度、木曽三川下流域において二カ所、西三河南部及び東三河南部においてそれぞれ一カ所、合計四カ所の拠点を整備することとし、木曽三川下流域の一カ所目を愛西市の旧永和荘跡地に整備することを決定したところであります。
現在、旧永和荘跡地における現況地盤や各種の制約条件を調査し、適切な工法を検討しながら整備計画の策定を進めているところであります。今年度中には旧永和荘跡地の拠点の整備計画を策定し、来年度以降、工事の実施設計、既存の建築物の撤去等を行い、できる限り早期に拠点として整備することとしております。
また、今年度は、昨年度に引き続き、学識者や自衛隊、警察、第四管区海上保安本部などの救助機関及び関係市町村を構成員とするゼロメートル地帯における広域的な防災活動拠点の確保に関する検討会を開催し、旧永和荘跡地における今年度の調査検討内容を協議するとともに、関係市町村から提案いただいた他の候補地について救助機関からの意見を伺うなど、選定に向けた検討を進めているところであります。
今後は、旧永和荘跡地における拠点の工事が終わり次第、次の拠点の工事に着手できるよう、地元市町村やそれぞれの候補地の管理者などと協議を進め、できる限り早期に候補地の選定を行ってまいりたいと考えております。
13: ◯四十七番(
安藤正明君) それぞれ御答弁ありがとうございました。
大規模水害時における応急対策についてでございますが、関東地方整備局管内では、河川が決壊した場合、そこから六十キロメートル圏内に緊急用資材を備蓄する防災ステーション等が数カ所あります。今回の鬼怒川決壊二百メートルの応急復旧に充てた資材のほか、防災ステーションにはまだまだ資材のストックがあるとのことでした。
本県におきましても、河川に対する水害対策、河川改修など、ハード面の対策を第一に進めることはもちろんではありますが、万が一の場合、施設の排水能力を超える災害が発生した場合、早期に復旧・復興に着手し、被害の軽減に努めなければなりません。本県におきましても、国と連携を図り、緊急時用資材を備えていただきますよう強く要望いたします。
それから、広域災害拠点についてでありますが、海南こどもの国を市長と知事のほうに要望させていただいております。伊勢湾岸道は災害時の輸送道路であります。そこから西尾張中央道、そして県道の新政成弥富線と通り、海南こどもの国へと通ずるわけでございまして、そちらのほうの県道の耐震改修等もあわせて要望するところでございます。よろしくお願いします。
そして、アルコール健康障害対策についてでございますが、アルコール依存症で治療が必要な人は国内に約百九万人と推定されており、本県の人口比で割り出しますと約六万人と推計されます。これは、ほぼほぼ愛西市の人口、六万三千人と一緒であります。また、県内には自助グループの一つ、断酒会が二十七団体ありますが、残念ながら、その断酒会につながっているアルコール依存者は約九百人で、率にして一・五%であります。
アルコール健康障害については、切れ目のない支援体制が回復につながるわけでございまして、特にアルコール依存症予備軍で、アルコールでお悩みの方、また、御家族が相談する場所、地域における相談拠点、また、そこにアルコール依存症専門のソーシャルワーカーの配置が必要であると思います。
先ほど保健医療局長のほうから、相談拠点をしっかり配置していくという御答弁をいただきました。ぜひ、そこにアルコール専門のソーシャルワーカーの配置も要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
14: ◯副議長(
森下利久君) 進行いたします。
新海正春議員。
〔三十番
新海正春君登壇〕(拍手)
15: ◯三十番(
新海正春君) 通告に従い、大きく三点について質問させていただきます。
まずは、身近な道路施設の維持管理についてお尋ねいたします。
道路施設といいますと、橋梁やトンネルなど地域のランドマークにもなっている大きな建造物を思い浮かべると思います。これらは、主に自動車交通の利便性を確保するために建設され、近年では、急速に進む高齢化に対し、計画的に点検や修繕を行って、その機能を維持する長寿命化対策が進められています。
一方で、道路は、我々が日常生活を営む上でなくてはならない身近な暮らしの道でもあります。子供たちが毎日学校の登下校に利用している通学路や、我々が出勤時に使う歩道、買い物や散歩で歩く道など、道路は最も身近な生活インフラとして利用しています。このため、全ての人が安心して快適に利用することができるよう、関連する施設をしっかりと維持管理していくことも重要です。
そこで、ここでは、身近な生活道路の施設である街路樹と横断歩道橋を取り上げて、歩行者の視点からその維持管理のあり方をお尋ねいたします。
まず、街路樹の維持管理についてであります。
何度となく取り上げられてきたテーマではあると思いますが、課題は日々変化していますので、改めてお聞きしたいと思います。
街路樹は、美しい緑の町並みをつくり、豊かなまちの景観を生み、住民の方々にとっても身近な緑として潤いを与え、親しまれています。また、車道と歩道を分離して歩行者の安全を確保したり、暑い夏には厳しい日差しを遮って歩行者に日陰を与えてくれますし、多様な樹種は四季の変化を演出して、人々に季節の移り変わりを感じさせてくれるなど、我々の暮らしに多くの恩恵を与えています。
街路樹の歴史は古く、紀元前にヒマラヤ山麓の都市を結ぶ街道に並木を植えたことが始まりと言われております。我が国では、奈良時代、旅人の食料を兼ねて果樹を植えたという記録が残されており、時代の移り変わりとともに街道や寺社の参道などに並木が植えられていきました。
現在では、高度成長期のモータリゼーションを背景に、多くの道路ネットワークが急ピッチで整備されましたが、道路やまちの景観の美化や、自動車の排気ガスに対する環境対策の観点から多くの街路樹が植えられ、まちのシンボルにもなってきました。
また、自然環境が少ない都市域では、公園や寺社の森などの拠点をつなぐ緑の回廊として、生き物の移動の経路となったり、都市域の生態系ネットワークの形成に重要な役割も担っていることも注目されています。
このように、街路樹は、豊かなまちづくりを進める上で大きな役割を果たしていることから、本県では、平成二十三年から平成三十二年の十年間を計画期間とする第五次愛知県緑化基本計画、あいちのみどり二〇二〇においても、沿道環境に配慮して、道路に植樹帯を設置するなど、道路の緑化に取り組む方針が示されています。私も、多様な機能を持つ街路樹を美しい並木道として育て、守っていくことに大賛成であります。
しかし、一方で、街路樹がもたらす弊害もまたよく耳にいたします。道路に直接面している人と離れて住んでいる一般市民では、街路樹に対する感覚が大きく異なることもしばしば実感いたします。
沿線で生活している人からは、落ち葉による民家のといの詰まり、落ち葉が庭や玄関に吹き込み、毎日の清掃が大変であること、落ち葉が道路の排水ますを詰まらせて、道路の冠水を発生させていること、根が歩道を持ち上げて歩きにくいなどと多くの苦情をいただいております。
また、街路樹にとまった鳥の鳴き声やふんなどにより大変な迷惑をこうむっているので何とかしてほしいと、住民ばかりか、歩行者からも強い要望をいただいております。
また、駐車場や脇道から幹線道路に出る運転手からは、木の幹や枝葉が視界を遮って大変危険であるとの切実な話も寄せられ、強く剪定されたかわいそうな木が目立ちます。木の自然な姿からはかけ離れており、木が成長したときの姿をしっかり想定したのか、狙いどおりなのか考えさせられます。
高度成長期に十年から十五年ほどの樹齢で植えられた街路樹は、半世紀を経た今、六十年の樹齢となり、高齢化が進んでいるものも多くなっています。老朽化が進む橋梁やトンネルなどのインフラ構造物で長寿命化対策が進んでいるように、生きている街路樹についてもしっかりとした対策を行っていくべきときを迎えているのではないでしょうか。
道路に植えられた街路樹は、公園や寺社に植えられた樹木に比べ、はるかに苛酷な状況に置かれています。歩道には植樹帯が確保されてはいるものの、周囲はアスファルトやコンクリートで固められ、地中には水道やガス管などが埋設されていますので、思い切り根を張って水分や栄養を吸収することができません。加えて、常に車の排気ガスを浴び、背が高くなれば枝や葉を切られる、幹も車などによって傷つけられることもあります。
このように、苛酷な環境の中で生育していますので、外見は健康そうでも、過度な剪定により幹が異様に太くなって、内部が病気に冒され空洞化し、太い枝が折れて落下したり、幹自体が傷んで倒木しやすくなっている街路樹も多くなっているのではないかと思います。
私の地元、岡崎市内においても、ケヤキなどの大きな街路樹が育っておりますが、ムクドリ、スズメなどの群れがねぐらとして集まり、沿道の皆さんが迷惑しているとの相談が寄せられています。
早速現場を見させていただきましたが、集まったムクドリの鳴き声は想像以上に大きく、ムクドリなどが落としたふんで歩道一面が汚れ、滑ったりにおいを放つなど、歩行者の皆さんや沿道にお住まいの皆様にとって、環境や衛生面でお困りになられている状況がよくわかりました。また、鳥で問題になっている木の枝を強く剪定しても他の木に移動するだけで、根本的な対策になっていないのが実情であります。
さて、この十二月議会には、道路の設置または管理の瑕疵に起因する六件の事故に関する賠償が報告されております。そのうちの一件は、街路樹の枝が折れて落下し、車道を通行していた乗用車のフロントガラスを直撃して破損させた事故であり、過去をさかのぼってみても、平成二十三年から平成二十七年までの五年間で、倒木や枝折れなど街路樹に起因する事故で賠償を行った案件は八件発生している状況にあります。
その多くは自動車の損傷にとどまっていますが、歩行者や自転車の利用者を直撃すれば大きな事故につながる可能性もありますので、道路管理者として植樹帯を整備し、街路樹を育てていくだけでなく、草刈りや剪定など、日常の管理をしっかりと行っていくことが必要だと思います。
また、樹木の高齢化も進んでおりますので、橋梁やトンネルで取り入れられている近接目視点検と同様に、街路樹についても定期的に点検を行い、樹木の健康状態をしっかりと診断して早期に異常を見つけて治療したり、困難な場合には伐採を行うなどの対策を進めていくことが必要だと考えます。
少し前になりますが、東京の千代田区でイチョウなどの街路樹の伐採に対して市民団体が反対を訴え、ネット上で大きな議論が展開されました。数十年もかけて育てられた街路樹は地域から愛されているものも多く、維持管理のしやすさだけを考えて安易に伐採することは難しい時代でもあり、やむを得ず伐採を行った際には、後の維持管理も考慮して補植するなどの再生にも取り組んでいくことが重要だと考えます。
そこでお尋ねします。
県として、街路樹の維持管理にどのように取り組んできたのか、また、六十年が経過し、老朽化やさまざまな弊害も出ている中で、今後どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
次に、横断歩道橋の維持管理についてお聞きします。
平成二十四年、京都府の亀岡市で、登校中の児童の列に自動車が突っ込み、お母さんを含めて三名が亡くなられる事故が発生しました。また、本年十月には、一宮市と横浜市で同じく通学中の児童の命が奪われる悲惨な事故が発生しています。このような痛ましい事故から子供たちを守っていくことの重要性に議論の余地はなく、最も身近な生活道路である通学路の安全性を確保していくことの必要性を痛感した次第です。
このような中、横断歩道橋は、子供たちが多くの車が走行している幹線道路を横断する際に、自動車と完全に分離した歩行空間を提供する大変重要な施設であり、少子化によって児童数が減少した現在でもその役割は変わることがなく、生活に密着した道路施設となっています。
我が国では、モータリゼーションの進展によって自動車交通が急増した高度成長期に歩行者を交通事故から守る手段として歩道橋の整備が始まりました。
当時、戦後復興によって回復した日本の経済は、神武景気と呼ばれるほどの活況を呈しましたが、同時に自動車輸送が急激に拡大し、かつて経験したことのない交通事故の急増を招きました。昭和三十年代の初頭には、全国の交通事故件数は十万件を突破し、昭和三十四年には死者数が一万人を超え、交通戦争と呼ばれる事態に至りました。
このため、交通安全対策は社会的な課題となり、歩行者を自動車から守るために歩道の整備が加速され、幹線道路を安全に横断する対策として横断歩道橋の導入が開始されました。我が国で最初に整備された横断歩道橋は、本県の清須市、当時の西枇杷島町が国道二十二号に設置した学童専用陸橋が第一号であります。
当地では、道路を隔てて小学校と中学校があり、児童と生徒など延べ約四千人が道路を横断していましたが、県下有数の交通量であったため、子供たちを交通事故から守るために、地元のPTAが中心となって活動を行い、歩道橋の建設にこぎつけたと言われております。学童専用陸橋と名づけたことに、この当時の人々の切なる思いが込められていると思います。この横断歩道橋の効果は絶大で、学童の死者はゼロという結果を生んでいます。
国も、交通戦争と呼ばれるに至った深刻な交通事故への対策として、昭和四十一年、交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法を定め、対策の一つに横断歩道橋の建設を奨励したことで、全国的に横断歩道橋の建設が普及していきました。
この取り組みにより、昭和四十二年からの三年間だけで全国で約四千橋の歩道橋が整備され、その効果もあって、交通事故者数は昭和四十五年の一万六千七百人をピークに減少するなど、大きな効果を上げております。
本県においても、まさにこの時期に多くの横断歩道橋を設置しており、その多くは通学路と指定され、約半世紀を経た今も、登下校する子供たちを交通事故から守っています。
私の地元岡崎市においては、多くの小学校で児童の登下校時に見守り隊が交通安全活動を行って、一般の道路を含めて児童の安全を図っていただいております。
そして、子供の安全確保に御尽力をいただいている方からは、通学路として利用している横断歩道橋の傷みが激しく、大事な施設として早目の修繕を求める声が多く寄せられています。私も状況を見させていただきましたが、階段の傷みや歩行部分のれんが状の敷板が外れてがたがたするようなところもあり、子供ばかりでなく、高齢者の方が利用する際につまずきはしないかと心配になりました。また、本体がさびて塗装面が傷んでいたり、雨水を排水するパイプが砂で詰まっている状況も見受けられ、老朽化が徐々に進んでいることを実感した次第であります。
高度経済成長から半世紀、当時建設された横断歩道橋は一斉に五十年を経過しつつあります。このまま放置すれば、塗装だけでなく、歩道橋本体の補修や更新の必要が生じてしまい、維持管理費が増大していくことが懸念されます。
本県におきましては、平成二十七年三月に道路構造物長寿命化計画を策定し、老朽化対策を進めているところです。橋梁やトンネル同様、子供たちを守る横断歩道橋もまた我々の生活を支える重要な道路施設として、この計画に基づいてしっかりと維持管理を行っていくことが必要だと考えます。
そこでお尋ねいたします。
本県における横断歩道橋の維持管理にどのように取り組んでいるのか、また、今後どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。
次に、軽度・中等度難聴児に対する支援についてお伺いいたします。
今までにも多くの議論がされてきましたが、制度の創設には至っておりません。障害者に優しい愛知県としての取り組みを改めてお聞きしたいと思います。
聴覚障害は、聞こえの程度に応じて区分されており、全く聞こえない、あるいはかなりの音量でなければ聞き取れない状況を重度、大声で話せば何とか聞きとれる程度であれば高度の難聴とされており、今回取り上げた軽度・中等度難聴とは、普通の会話が引き取りづらいか、あるいはやっと聞き取れる状態をいい、聴力レベルとしては七十デシベル未満とされております。
静かな場所や一対一であればどうにか聞き取れても、学校や保育園など集団の中や広い場所では、子供たち同士の会話や先生の話を聞き取るのが難しいというのは想像できるところであります。特に幼少期は、言語の発達や周囲とのコミュニケーション能力を高め、さまざまなことを学んでいく大変重要な時期であり、聞こえづらいことが放置され、その後の言語発達のおくれによって、学力や社会生活に支障を来すことが大いに懸念されているところであります。
実際に、軽度・中等度難聴児に対して早期に補聴器を使うことの有用性は、小児耳鼻咽喉科学会でも指摘されているところであります。近年、新生児聴覚スクリーニング検査が普及し、高度難聴だけでなく、軽度や中等度難聴児も早期に発見されるようになっているため、検査結果を有効に活用して早期に対応すべきと思います。
現在、高度・重度難聴であれば、身体障害者手帳交付の対象となり、補聴器の購入費に対して公的な助成を受けられるようになっていますが、軽度・中等度難聴の場合は、補聴器を使う効果が高いものの、支援がなく、全額自己負担という障害者支援制度のすき間になっていると言っても過言ではありません。
補聴器は一台四万円程度から十数万円と高価であり、さらに、成長に応じた部品の取りかえや故障に対応していくことは、子育て家庭にとっては経済的負担は決して軽いものではありません。
また、先日、聾学校の先生にお聞きしたところ、ほとんどの子供が両耳に装着しているため、二台分の費用が必要とのことでした。
平成二十四年に、岡山大学が岡山県で実施した軽度・中等度難聴児の保護者へのアンケート結果によれば、早期の補聴器使用がされない理由として、聞き返すことが多少あっても会話に支障がないとか、よくしゃべるからといったことで補聴器の使用を先延ばしにしたり、経済的負担が大きいためちゅうちょしてしまうことなどを挙げています。子供たちの将来のことを考え、早期の補聴器使用を促すためにも、保護者の負担軽減を図っていくことが大変重要ではないかと思います。
現在、県内では、私の地元岡崎市を初め二十市町が独自に補助制度を設けているものの、規模の小さな市町村など、独自に制度を設けることが難しい市町村も多くありますし、昨年には、市長会や町村会、町村議会議長会からも、県に対して補聴器購入費の助成制度を創設し、県下統一の基準による支援策を講ずるように要望があったと聞いております。
愛知県は、国に対して制度変更を要望してまいりましたが、具体化しない中で、他のほとんどの都道府県においては、既に補助制度が設けられていると聞いております。
そこでお伺いいたします。
軽度・中等度難聴児が学校や地域で楽しく学び、安心して暮らせるようにするために、身体障害者手帳の交付対象とならない軽度、中等度の難聴児に対する支援について、県としてどのようにお考えか、お尋ねをいたします。
次に、県営住宅の集会所の整備について伺います。
本県の県営住宅は、平成二十八年十一月一日現在で二百九十七団地五万八千七百七十三戸あります。そのうち、二百八十団地に三百三カ所の集会所があり、入居者相互の親睦及び入居者全体の福祉の増進を図るための諸行事に使用することを目的として設置されていると伺っております。
現在、県営住宅では、昭和四十年代に建てられた古い住宅を中心に建てかえ事業が進められており、集会所についても、住棟にあわせて建てかえが行われています。
私の地元岡崎市にある県営上和田住宅は、昭和四十年代中ごろに建設された十六棟六百六十戸の団地でした。エレベーターのない五階建ての住宅で、高齢者の方々は大変であったかと思われますが、平成二十六年度から順次建てかえ事業が進められており、この九月に最初の一棟がエレベーターつきの八階建て、五十六戸で完成して入居が始まり、それにあわせて集会所も建設されたところでございます。
岡崎市では、良好な景観及び環境の保全及び形成に資するまちづくりを推進するため、平成二十四年に岡崎市水と緑・歴史と文化のまちづくり条例が施行されております。この施行規則では、五十戸以上の大規模共同住宅を建設する場合には、その規模に応じた集会施設の整備を義務づけており、県営上和田住宅でも、この基準に従って立派な集会所を建設していただき、県営住宅の住民はもとより、周辺住民の方々に大変喜ばれています。
ところが、この集会所ですが、立派な建物は県が建設していただきましたが、エアコン、給湯器、テレビ、冷蔵庫、椅子、机などの什器備品は、入居者の負担により自治会で設置しなければならないと聞いております。
しかし、テレビ、冷蔵庫はともかく、エアコンは集会所が高齢者や小さな子供さんのいる住民の交流の場であることを考えれば、当然設置されていなければならない必須の設備ではないでしょうか。
近年の地球温暖化による猛暑の影響で、夏場になりますと、エアコンなしの建物の中にいた方が熱中症になり搬送されたり、ひどいときにはお亡くなりになったりという報道をよく聞きます。県営住宅の集会所で高齢者や子供さんが熱中症で倒れたり、暑さを我慢して体調を崩すようなことがあってはならないと思います。
最近の集会所は、単なる入居者の会合の場にとどまらず、高齢者の居住支援の場、外国人入居者との交流の場としての役割を果たす等、地域活動の拠点として極めて重要な役割を担っています。
県営上和田住宅においては、六十五歳以上の入居者の割合が二九%、外国籍の入居者も二〇%を占めており、地域コミュニティーの形成の場としてこの集会所に寄せる期待も極めて大きいものがあります。
そこで質問ですが、県においては、どのような考え方で県営住宅の集会所の整備を進めているのでしょうか。お伺いをいたします。
以上で壇上からの質問を終了いたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
16:
◯建設部長(
市川育夫君) 身近な道路施設の維持管理についてのお尋ねのうち、街路樹の維持管理に関する取り組みの状況と今後の方針についてであります。
街路樹は、親しみと潤いのある道路環境を創出するとともに、都市の生態系ネットワークを形成するなど、多様な役割を担っており、本県においても、都市部の幹線道路を中心に植樹帯を設置して、低木や高木の植栽を行ってきたところです。
現在、本県が管理する国道、県道約四千六百キロメートルのうち、約一七%に当たる七百七十キロメートルについて植栽を行っており、高さ一メートル以上の中木や高木は約五十五万本に達しております。
これらの維持管理に当たっては、道路景観の美化はもとより、通行する車両や歩行者が信号や標識を視認することができるよう、道路パトロールの一環として日々の点検を行い、三年に一度の割合で剪定作業を行っているところです。
また、街路樹の高齢化に伴い、樹木の傷などから侵入した菌が幹や根を腐らせる腐朽病の感染が広がりつつあり、本県におきましても、平成二十五年九月に街路樹が倒れ、走行中の車を直撃する事故が発生したところです。
このため、本県では、街路樹の枝落ちや倒木による事故の防止に向け、平成二十六年度に街路樹簡易診断マニュアルを定め、高さ三メートル以上の高木、五万六千本を対象に、街路樹剪定士による診断を実施いたしました。
この結果、五%に当たる約二千九百本で異常が確認され、治療が困難な約一千三百本については、やむを得ず伐採を実施いたしました。
平成二十七年度からは、構造物の長寿命化対策と同様に、三年に一度の簡易診断を実施するとともに、判定が困難な場合には、専門の樹木医による詳細診断を行うなど、適切な管理に努めているところです。
一方、平成二十一年度にあいち森と緑づくり税の基金を活用した美しい並木道再生事業が創設され、この事業を活用して、生育状況の悪い樹木や根上がりなど、通行に支障のある樹木等を植えかえる取り組みが進められております。これまでに市町村が事業主体となり、県管理道路を含め十九市町、延べ百九路線で並木道の再生を行ってまいりました。
さらに、街路樹の植栽や植えかえに際しては、剪定等の維持管理や倒木等の事故防止を考慮し、日照りや病害虫に強い中低木を主体とするなど、地域の特性に適した樹種の選定に努めているところであります。
今後とも、街路樹が身近な緑として地域から愛されるように、日常の管理はもとより、定期的な点検と診断を継続実施し、治療や再生にも取り組むなど、適切な維持管理に努めてまいります。
次に、横断歩道橋の維持管理に関する取り組みの状況と今後の方針についてであります。
県が管理する横断歩道橋は四百十四橋あり、交通事故削減に向け、昭和四十一年から昭和五十年までの十年間に五割以上が建設されております。今後二十年で建設後五十年以上経過する横断歩道橋が全体の約七割に達するなど、高齢化が進んでまいります。
平成二十五年の道路法等の改正により、横断歩道橋が橋梁やトンネルと同様に法定点検施設として五年に一度の近接目視点検が義務づけられたことから、本県においても、平成二十六年度から定期点検を実施しており、平成三十年度末までには全ての点検を終える予定でございます。
昨年度までの二年間の点検によれば、通行どめが必要となる緊急措置段階の損傷はなかったものの、早期に措置を講ずべき段階にあるものを約三割確認しております。このため、点検により早期措置段階の損傷が認められたものについては、本年度から直ちに修繕に着手し、今後五年で完了させる集中治療に取り組んでまいります。
この取り組みを終えた後は、軽微な劣化や損傷の段階で修繕を行う予防保全型の維持管理を一層推進し、大規模な修繕や更新を極力回避することにより、ライフサイクルコストを軽減していきたいと考えております。
さらに、修繕工事の実施に際しても、部分塗装による機動的な修繕や雨水が集中し、腐食の原因となる箇所の防水処理による劣化の予防など、より効率的な修繕に努め、長寿命化を図ってまいります。
また、現在も八割以上の横断歩道橋が通学路として利用されていることから、児童など利用者が安全に通行できるよう、五年に一度の定期点検に加え、平成二十七年度から職員や委託業者により年一回実施している歩道の点検パトロールにおいて、横断歩道橋の通路部分の破損や段差などを確認し、きめ細かに補修を実施しているところであります。
このように、横断歩道橋がこれからも身近な道路施設として安全に利用されるよう、適切な維持管理に努めてまいります。
17:
◯健康福祉部長(長谷川洋君) 軽度・中等度難聴児に対する支援についてお答えをいたします。
軽度・中等度難聴児に対する早期の補聴器装用は、言語・コミュニケーション能力の発達などに効果があると言われているものの、身体障害者手帳の交付対象ではないため、障害福祉サービスの給付対象とはなっておりません。
県といたしましては、身体障害者手帳の交付対象とならない方の支援につきましては全国的な課題であり、国が全国一律の基準を設けて実施することが望ましいと考え、これまで国に対して、軽度・中等度難聴児を支援する全国的な制度の創設を要望してきたところでありますが、現在のところ、制度を創設するといった動きには至っていない状況であります。
また、県内の市町村におきましては、独自に軽度・中等度難聴児の補聴器購入に対する助成を実施する市町がふえてきており、県による助成制度の創設について、昨年度、市長会、町村会、町村議会議長会から御要望をいただき、さらに、この十二月議会におきましても、町村会、町村議会議長会から陳情をいただいているところであります。
今後の対応につきましては、市町村の要望の内容をよくお聞きして進めてまいりたいと考えております。
18:
◯建設部建築局長(尾崎智央君) 県営住宅の集会所の整備の考え方についてお尋ねをいただきました。
県営住宅の集会所につきましては、自治会のさまざまな活動や入居者の方々の交流の場として利用していただくため、住戸数に応じた整備面積を定めるなど、一定の基準に基づき整備を進めているところでございます。
また、近年は、壁等の内装に県産の木材を積極的に使うとともに、住宅棟とは別に単独で建設できる場合には、屋根を三州瓦ぶきとした木造で建設することとしております。
さらに、県営住宅の集会所は、単に入居者だけでなく、周辺地域を含めた住民の生活支援やコミュニティー活動の場としても多く利用されております。
例えば、高齢者が気軽に立ち寄ることができるふれあいサロンを開催したり、子育て支援活動を行うNPOと協力して、絵本の読み聞かせなどの活動をしている集会所もあります。こうした活動を支援するため、高齢者用団らん室や授乳室を設けるなど、利用目的に応じた部屋や設備等の整備も行っているところです。
このように、集会所は、住宅によりさまざまな使われ方がされており、それぞれの目的に応じて自主的に運営をしていただくことが重要なことから、管理については自治会で行うこととしております。
今後とも、県営住宅の集会所につきましては、市町村の福祉施策等と連携するとともに、自治会の意向や地域の活動に応じた整備に努め、地域コミュニティーの活性化につなげていきたいと考えております。
19: ◯知事(大村秀章君) 新海議員の質問のうち、軽度・中等度難聴児に対する支援について、私からもお答えをいたします。
軽度・中等度難聴児ができるだけ早期から補聴器を装用することは、乳幼児期における言語の発達や聞こえづらさからくる小中学校での学習の困難さを解消するために大変有効であると認識をいたしております。
また、本県では、この十月に手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例を制定いたしました。この条例では、共生社会の実現を目的として、障害のある方との意思疎通を円滑に行う環境づくりを推進していくことといたしております。
補聴器の早期装用は、難聴児の方々にとりまして、コミュニケーション能力を格段に向上させ、意思疎通を円滑にするものと考えられますので、軽度・中等度難聴児に対する支援制度の創設について、市町村と連携、協力しながら、改めてしっかりと検討してまいりたいと考えております。
20: ◯三十番(
新海正春君) 知事初め丁寧な御回答をいただきましてありがとうございました。
それぞれについて要望させていただきたいと思っております。
まず、街路樹につきましては、緑の大切さというのは本当に言うまでもありませんが、街路樹についての従来の考え方にとらわれずに、六十年の経験、また課題を織り込んで、県民の声、また造園業者や野鳥専門家などを交えて、あるべき姿を検討していただけたらと思っております。
歩道橋については、今年度から集中治療に取り組んでいただいているということで、大変感謝を申し上げているところでございます。
長寿命化計画の中に明記されておるんですが、修繕費の急速な増大という課題があるということでございます。ただし、八三%が通学路という現実を考えますと、待ったなしの状態でもあると考えております。
私は、少しでも横断歩道橋自身の働きで財源の確保に取り組み、より一層の整備促進が図られないか、そして、その可能性があるのはネーミングライツの積極的な活用ではないかと考えております。募集ビラには明確に、収益は歩道橋などの道路施設の維持管理に活用するとありますので、もし本県管理のコンクリート橋を除いた歩道橋四百十二橋全てに採用されれば、単純計算で年間八千万円以上の追加収入になるということでございます。
ただし、現実として、今は十七橋、四%にすぎません。岡崎市内の歩道橋を見て回りましたが、塗装面が汚れていて、会社名を宣伝するのをちゅうちょしそうなものも多くありました。また、逆に塗装面がきれいだし、場所もよいのに活用されていないものも見受けられまして、ちょっと理由がわかりませんでした。
歩道橋の整備促進の追加財源として民間協力をいただくためにも、塗装面の更新初め整備方針や規則などについて、ネーミングライツユーザーの率直な考えをお聞きするアンケートをやったり、また聞き取りの機会をぜひ設けていただいて、利用の促進を図っていただけたらと思っております。
また、長く維持するためには、やっぱり日常の管理、これは小まめにやることが大切であると思いますが、地域住民も御協力をいただいておりますが、ネーミングライツの会社が地域貢献活動として、自分の歩道橋という意識を持って清掃していただくという大変よい副効果もあるということですので、この面でもぜひ進めていただきたいと思っております。
軽度・中等度難聴児への補聴器購入助成制度ということで、今、知事さんのほうから、本当に市町村と協力しながら前向きな検討をしていただけるというお話がございました。早期の実現をよろしくお願いしたいと思っております。
次に、県営住宅集会所のエアコン設置についてでございますが、県は長い間、一貫性を持って整備基準を運用していただいていますが、やはり時々の状況の変化に合わせて定期的に見直すことも大切であると思っております。
県内の市の中には、温暖化の進展による健康問題を考慮し、既に市営住宅集会所にエアコンを設置しているところもあります。急速な温暖化を考えれば、優先順位の高いものになっているというふうに考えております。
予算の問題もあるとは思いますが、必要なものはしっかりと予算化して、健康で住みやすい県営住宅の整備に取り組んでいただきますようお願いをいたします。
以上で一般質問を終了いたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
21: ◯四十一番(中根義高君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
22: ◯副議長(
森下利久君) 中根義高議員の動議のとおり決しまして御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
23: ◯副議長(
森下利久君) 御異議なしと認め、暫時休憩をいたします。
午前十一時五十六分休憩
━━━━━━━━━━━━━━━━━
午後一時十分開議
24: ◯議長(鈴木孝昌君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
浅井よしたか議員。
〔五十七番浅井よしたか君登壇〕(拍手)
25: ◯五十七番(浅井よしたか君) 通告に従い、順次質問してまいります。
我が国では、二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピック開催が予定され、また、本県が中心となって開催する国際的イベントとしては、つい先日、本県での二〇二〇年十月開催が決定した第一回ワールドロボットサミットや、同年秋の招致を目指すFIFAフットサルワールドカップ、同じく誘致を目指している二〇二三年の技能五輪国際大会、さらには、二〇二六年のアジア競技大会と、三年ごとにビッグプロジェクトの計画がめじろ押しであります。二〇二七年には、リニア中央新幹線の東京─名古屋間の開業も予定されており、これからの十年間は、愛知を世界に発信し、大きな飛躍をするためにも大変重要な期間であります。
同様に、私の地元の豊橋、東三河地域にとっても、東京オリンピック・パラリンピックに向けた観光振興や、リニア開業後の交通ネットワークの変化への対応、人口減少対策等の地域活性化に取り組む重要な十年間となります。
そこで、本日の質問では、東京オリンピック・パラリンピック開催からリニア開業後を見据えた愛知の観光戦略・地域づくりについて、愛知、東三河に人を呼び込むという視点から質問してまいります。
ことしの二月に策定されたあいち観光戦略二〇一六─二〇二〇にも、こうした視点に立った施策の方向性が盛り込まれており、今回の私の質問は、その具体化を促し、さらに実効性を高めることを願うものであります。
初めに、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う文化プログラムを生かした本県の魅力発信についてであります。
リオデジャネイロオリンピック・パラリンピック閉幕から既に約四カ月が過ぎ、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた準備も待ったなしの段階となりました。多くの解決すべき課題が山積し、決して順調な進捗状況とは言えないわけですが、オリンピック開催までには何としても、競技会場や選手村などのハード整備を終えなければならないわけであります。
オリンピックは、そういった施設で行われるスポーツの祭典であるとともに、文化の祭典でもあります。オリンピック憲章では、オリンピズムの根本原則にスポーツと文化の融合を掲げており、組織委員会は、複数の文化イベントのプログラムを計画しなければならないと規定しています。
我が国でも、去る十月十九日から二十二日に、キックオフイベントとして東京と京都で開催された国際会議、スポーツ・文化・ワールド・フォーラムを皮切りに、五輪文化プログラムの全国展開へのスタートが切られたところです。
この文化プログラムへの取り組みで成功例として注目を浴びているのが、二〇一二年のロンドンオリンピック・パラリンピックであります。大会開催四年前の二〇〇八年から、カルチュラル・オリンピアードと題した大規模な文化プログラムがイギリス全土千カ所以上で開催され、二〇一二年までの四年間で約十七万七千件もの多彩な文化イベントに約四千三百万人が参加したとのことです。
まさにイギリス全体を文化のショールームにしたわけで、こうした取り組みによりイギリスへの観光客はオリンピック閉会後も増加を続けています。
日本における現時点での取り組み状況はどうなっているのかと思い、十月中旬に文化庁に伺い、調査を行ってまいりました。
昨年五月に閣議決定された文化プログラム推進の基本方針では、全国の自治体や芸術家との連携のもと、地域の文化を体験してもらうための取り組みを全国各地で実施するとされていますが、率直に言って、まだ全国的な広がりを見せていないと感じざるを得ませんでした。
文化プログラムのメニューには、東京二〇二〇大会の機運を醸成し、オリンピック・パラリンピックムーブメントを裾野まで広げるために、地方公共団体が実施する事業を対象とする東京二〇二〇応援プログラムや、二〇二〇年以降のレガシー創出に資する、全国津々浦々で実施されるイベント等を対象とするbeyond二〇二〇プログラムなども既に用意されており、それらの認証に係るスケジュール等も示されています。
ただ、残念ながら、現時点で国の方針を意識した取り組みを推進している都道府県は、静岡県や大阪府、大分県など、ほんのわずかな都府県にとどまっているのが現状のようです。
そんな状況の中、お隣の静岡県では、二〇一二年ロンドン大会における文化プログラムの成果に関する調査団をイギリスに派遣するなど、五輪文化プログラムを活用した地域の文化発信に向けた取り組みを精力的に進めているとお聞きしましたので、十月下旬に静岡県文化・観光部の文化政策課を訪れ、取り組み内容や準備状況について伺ってまいりました。
静岡県では、昨年十月に文化プログラム県準備委員会を発足し、ことしの一月から三月には、プログラムの活用を想定した文化資源調査が実施されました。五月には、正式に文化プログラム県推進委員会が設置され、さらに国に先行する形でモデルプログラムの公募も行われました。
モデルプログラムとして選定された十一の事業は、いずれも文化芸術の要素があることを前提に、地域振興や社会福祉につながる多様性のある取り組みとなっています。
静岡県の文化政策課の担当者は、県内各地の多様な資源を活用し、一過性ではなく、二〇二〇年以降にも活用できる仕組みやネットワーク等を形成し、文化振興につながる取り組みになればよいと話してくれました。
文化イベントといえば、本県でも十月二十三日に閉幕したあいちトリエンナーレ二〇一六や、今月三日に閉幕した第三十一回国民文化祭・あいち二〇一六、さらに九日から始まる第十六回全国障害者芸術・文化祭あいち大会などのすばらしい文化事業が展開されておりますし、それらは、文化庁において、文化プログラムの取り組みの一つに位置づけられているようです。
しかし、そういったことはほとんどの県民に認知されていないのが実情で、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、スポーツと文化を融合させ、大会機運を高めていくという趣旨が十分浸透していないと思います。
来年度からの五輪文化プログラムの本格展開を見据え、本県としても、例えば、次回あいちトリエンナーレや、県内各地の文化芸術イベントの開催時期や開催方法等を柔軟に検討し、効果的にオリンピックと連動させ、本県文化の発信を行うことで地域の魅力を伝え、本県への誘客につなげていくことが大いに期待されます。
そこで伺います。
愛知県の五輪文化プログラムへの取り組みの現状と今後の進め方についてお聞かせください。
次に、東京オリンピック・パラリンピックに向けた愛知県の役割や可能性についてであります。
オリンピック期間中やその前後には、成田空港、羽田空港等の混雑が想定される中、ここ愛知県は、国際定期便のほか、海外からのプライベートジェットも受け入れが可能な中部国際空港セントレアや県営名古屋空港を擁しており、海外からの選手団や、ほとんどのオリンピックに大挙して訪れるスポンサーグループ、また、観戦者や観光客たちに、東京以外の日本の玄関口として大いに利用していただかなくてはなりません。
また、先ほど取り上げました五輪文化プログラムのほか、東京オリンピックに向けて地方が準備に力を入れていますのがオリンピック選手の事前合宿誘致であります。愛知県でも、現在のところ、十六市町が事前合宿誘致の意向を表明しております。本県は、スポーツも盛んな地域であり、スポーツ施設も充実しておりますので、事前合宿を受け入れる条件は十分整っていると言えます。
さらに、オリンピック開催中の東京都内の宿泊施設は、現在の見通しでは不足することが予想されていますが、本県は、名古屋市内のみならず、県全体で見ても、海外からの宿泊者を受け入れるホテル、旅館などの収容力は十分備えているほか、これまでに多くの国際会議などの開催実績もあります。さらに、オリンピック開催に間に合うように、中部国際空港隣接地に大規模展示場の整備計画も進行中であります。
以上、申し上げたように、愛知県は、東京オリンピック開催前から期間中にわたり、訪日外国人の東京圏にかわる受け皿として十分力を発揮すべきと思われますし、二〇一九年のラグビーワールドカップ開催支援や、東京オリンピック閉幕後の開催を目指すFIFAフットサルワールドカップなど、今後のスポーツの世界大会開催に向けても、外国人の受け入れ体制の一層の強化が欠かせません。
そこで伺います。
東京オリンピック開催に向け、本県空港の利用促進や受け入れ体制の整備、事前合宿誘致や宿泊者の対応など、東京圏にかわる受け皿としての愛知県の役割や可能性について、どう捉え、今後どのように取り組んでいかれるのか、お聞かせください。
また、東京オリンピック・パラリンピックを最大限生かし、愛知の観光振興などの取り組みを円滑に進めていくためには、スポーツ振興と観光戦略を一体的に所管する組織体制が必要と考えます。
さらに、五輪文化プログラムに関しても、文化芸術所管の課だけで抱えるのではなく、スポーツ振興、観光振興の視点も同時に対応できる一本化した体制が不可欠ではないでしょうか。
本県のホームページでも、観光・文化・スポーツを一つのカテゴリーとしてまとめ、発信しているわけですから、この際、東京オリンピック・パラリンピックにかかわるさまざまな取り組みを総合的に扱う実務担当部署を設置し、戦略的に準備を進めていくべきではないかと思います。
そういった体制づくりが、ひいては、その後のアジア競技大会の開催県としても、スポーツに限らず、観光、文化、交流など、さまざまな分野での事業展開に柔軟な対応を可能とするはずです。
そこで伺います。
東京オリンピック・パラリンピックを本県の観光振興及び地域づくりに最大限生かすためには、部局横断的で実務的な戦略担当部門の設置が必要と考えますが、御所見をお聞かせください。
最後に、東京オリンピック・パラリンピックを契機とするインバウンド戦略と、二〇二七年予定のリニア開業後を見据えた愛知、東三河の観光戦略・地域づくりについてであります。
現在、リニア開業に向け、名駅のリニア新駅が今月十九日に着工の予定となるなど、名城非常口に続いて名古屋駅周辺の整備が始まりましたが、その他の地域でも、それぞれの特性を踏まえて、リニアインパクトを生かした取り組みを進めていくことが重要です。
二〇一四年三月に本県が作成したリニア中央新幹線対応検討調査を見ますと、五つの基本方針の中に、リニアを生かした観光・交流の拡大を目指す、リニア開業に向けて県内各地域が魅力と活力ある地域づくりを目指すとあります。
また、昨年三月のリニアを見据えた鉄道ネットワークの充実・強化に関する方策案では、東海道新幹線駅の利活用の促進が方策の一つにあり、名古屋駅からの四十分交通圏に含まれていない西三河南部地域や東三河南部地域においては、リニア開業後も引き続き東海道新幹線が広域的な移動を支える交通手段になる見込みであることから、東海道新幹線駅へのアクセス向上のための取り組みを促進するとあります。
観光、交流の拡大や、魅力と活力のある地域づくりを戦略的に行う取り組みとして注目されているのが日本版DMOです。DMOとは、デスティネーション・マネジメントまたはマーケティング・オーガニゼーションの略称で、地域の多様な関係者を巻き込みつつ、科学的アプローチを取り入れた観光地域づくりを行うかじ取り役です。
観光庁は、二〇二〇年までに、世界水準の日本版DMO百組織の形成、確立を図るビジョンを掲げています。この日本版DMOは、観光地域づくりの対象エリアによって三区分に分けられており、複数の都道府県にまたがる広域連携DMOや、複数の地方公共団体にまたがる地域連携DMO、さらに、原則として、単独の市町村を対象区域とする地域DMOがあります。
観光庁が昨年十一月に創設した日本版DMO候補法人の登録制度によれば、現時点で広域連携DMO候補法人は、島根県と鳥取県という隣接する二つの県による一般社団法人山陰インバウンド機構を初め四件で、地域連携DMO候補法人としては全国で五十二件が、また、地域DMO候補法人としては五十五件が登録されている状況です。
こういったDMOの取り組みは、今後、国内外から多くの観光客を受け入れる上で、地域みずからによる観光マネジメント力の強化策として欠かすことのできないものであると考えます。
このDMOについては、九月議会の一般質問で、主に国内観光に関する取り組みの観点で取り上げられましたが、私は、DMOを、東京オリンピックを契機とした広域連携によるインバウンド拡大の視点で捉え、以下、質問を続けてまいります。
日本版DMOについては、あいち観光戦略二〇一六─二〇二〇においても、取り組みの推進が明記されていますし、あいち観光戦略は、重点プロジェクトとして広域観光の推進を掲げ、具体的な施策として、近隣県と連携した広域観光の推進や、リニア中央新幹線開業を見据えた沿線都府県との連携に関する研究も挙げており、その方向性は広域連携DMOの考え方と一致するものであります。
私がこういった広域連携の必要性を痛感する要因の一つは、いまだに人口の増加が続く愛知県において、私の地元東三河では、ほぼ十年前から人口減少が始まっていますし、加えて、二〇二七年にリニアが開業すれば、東京─名古屋間の人の流れが大きく変わりますので、これまで以上に交流人口の減少が進んでしまうと危惧するからであります。
リニア開業十年前の今から将来を見通した対策を着実に打っていかなければ、あっという間に時が過ぎ、地域として置いてきぼりになってしまわないかという危機感を持つからであります。
これまで本県では、二〇一二年から、中部・北陸エリア九県の協働によって、外国人観光客を誘致する昇龍道プロジェクトへの取り組みが進められ、プロジェクト全体としては、中国人観光客の増加を初め、着実に成果を上げつつあるのは、皆様御存じのとおりであります。
しかし、東三河地域を初め、県内全域への波及効果に関して言えば、残念ながら、まだ限定的と言えるのではないでしょうか。
もちろん言うまでもないことですが、東三河地域の観光振興は、まずは地元関係者みずからがこれまで以上に観光資源を磨き上げ、発信していくことが欠かせませんし、推進組織としての東三河地域連携DMOの設立も早急に取り組むべき課題です。
同時に、東三河の枠組みだけにとらわれることなく、リニア開業後も、東三河南部地域と同様、東海道新幹線が引き続き広域的移動を支えていくことになる静岡県などの沿線地域と連携した魅力の発信も、従来にも増して重要になると考えます。
そこで、先月上旬、静岡県文化・観光部観光政策課にお邪魔し、観光振興への取り組み状況について伺ってきました。
まず、DMOへの取り組みについては、県内を五つのエリアに分けて、それぞれの地域の観光振興のための地域連携DMOを今年度から順次設立していく計画だそうです。
さらに、インバウンドに特化したDMOとして、静岡県全域を対象エリアとする静岡ツーリズムビューローも今年度中にスタートさせるべく、民間からマーケティングなどの専門家を募集し、現在、最終選考中とのことです。
この全県域DMO設立の狙いは、これまで主流だった団体パッケージツアーから、今後は、海外個人旅行、いわゆるFITの増加が見込まれる中、広域エリアで捉えたほうが効率的に全域の観光資源を提供できますし、何といっても、オール静岡県としての観光戦略に取り組むための体制づくりであるとのことでした。
ちなみに、静岡ツーリズムビューローのような全県域DMOは、長野県や山梨県などを初め、全国で既に十六道府県で進んでいます。本県においても、進捗中である全県域DMO設立への取り組みをさらに前進させていただきたいと思います。
静岡県での調査内容をもう少し御紹介しますと、静岡県の二〇一五年訪日外国人延べ宿泊客数は約百七十四万人で、これは前年比二・二倍以上の伸び率であり、伸び率では全国一の実績となっています。一方、昨年の愛知県への訪日外国人延べ宿泊客数は約二百三十五万人で、両県を合計した約四百九万人は、京都府の約四百五十万人と比べても遜色ない数字と言えます。
ただ、その数字の中身はといえば、私の地元豊橋市においても、外国人旅行客は、夜間、豊橋市内のホテルに到着し、翌日の朝には次の観光地に向けて出発してしまうため、地元への経済効果はほとんどないのではないかとの声がよく聞かれますし、実際に観光庁の二〇一四年の統計で本県の平均滞在日数を見ても、かなりの割合を占めるビジネス客を含んでも一・四四日にとどまっています。
同様の話は、静岡県の観光政策課でもお聞きいたしました。静岡県では、昨年秋、県内に宿泊した中国人旅行者を対象に独自調査を実施されたそうで、その調査結果によれば、県内の平均宿泊日数は一・三泊にとどまっているとのことです。
さらに、その調査結果を見て私が感じたのは、静岡県を訪問先に含む人気ツアーにおいて、静岡県を訪れる前後の行程で本県にも訪れるコースが意外に少ないということです。具体例を挙げますと、日本で四泊するコースで最も件数が多かったのは、静岡、神奈川、東京、東京の順に宿泊するルートですし、同じく五泊コースの場合で最も人気のルートは、静岡、神奈川、京都、奈良、大阪という行程でした。
この調査結果から考えられることとして、まず一つは、愛知県、静岡県ともに、観光目的地としての宿泊というよりも、単に通過点としての宿泊が想像以上に多く、宿泊者数の割に地元にお金が落ちていないのが実態のようです。
二つ目としては、せっかく静岡県を訪れた外国人旅行客を隣接する本県にも誘客するには、まだまだ工夫や努力の余地があるのではないかということです。
そういった現状を改善するためのツールの一つとして、今以上の活用が期待できると考えられるのが、ここ数年、利用者数が増加しているジャパン・レール・パスという特別切符です。御存じの方も多いと思いますが、原則として、外国人旅行客向けにJRグループ六社が共同発行している乗り放題の特別乗車券のことで、JRグループ全線のひかりとこだまなどの新幹線のほか、特急列車、急行列車、快速列車、普通列車、JRバス、フェリーなどが乗り放題の対象となります。このパスには、グリーン車用と普通車用があり、さらに、それらが七日間、十四日間、二十一日間用のパスに分かれています。
ちなみに、価格は、為替レートによって若干の変動はありますが、本年三月現在で、こだま号やひかり号の普通車などに七日間乗り放題のパスが日本円で二万九千百十円と大変格安となっています。
ただ、このパスの弱点は、新幹線ののぞみやみずほには乗車できないため、長距離移動には不向きな点で、利用者の多くから不満の声も聞かれます。
そこを逆手にとって、例えば、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック開催期間中においても、競技会場の近くに宿泊場所を確保しづらい東京都内や東京都近郊ではなく、こだまやひかりが停車する愛知県や静岡県内の都市に泊まり、この乗り放題パスで、連日、東京の競技場に通うことも十分可能であるということもPRできるのではないでしょうか。
また、こだまでも短時間で移動できる愛知県や静岡県内を主な舞台に、ピークを過ぎたと言われる爆買いにかわって、徐々に人気が出てきている日本文化や暮らしに実際に触れられる着地型、体験型中心の新たな観光商品を、東京オリンピック・パラリンピックを契機に集中的に提案すべきであると考えます。
さらに、リニア開業後を視野に入れれば、東海道新幹線ルートと、東京から名古屋までのリニアルートとを組み合わせて周遊する新たな広域観光ルートの研究を初めとして、リニア開業後の鉄道や道路ネットワークを生かした多彩な観光ルートの検討も今から進めていく必要があると考えます。
その検討に当たっては、先ほど触れた静岡県全域のDMOを初め、長野県全域DMO、山梨県全域DMOなどとの県境を越えた広域連携も欠かせないはずです。
これからの愛知県、そして東三河のインバウンド振興に向けては、本県全域を対象エリアとするDMOや、東三河地域全域を対象とするDMOの設立を加速するとともに、本県が音頭をとって静岡県や長野県などとの広域連携を強化し、いわゆるウイン・ウインの関係を構築することで、さらなる誘客につなげていくことが極めて重要だと言えます。
そこで伺います。
県境を越えた広域連携推進に向け、県全域DMOや広域連携DMO設立への取り組みを初め、リニア開業後も見据えた愛知県の観光戦略・地域づくりにどのように取り組んでいかれるのか、お聞かせください。
また、東三河地域の観光振興については、東三河全域のDMO設立支援やジャパン・レール・パスを活用した誘客などに今後どう取り組んでいかれるのか、お聞かせください。
以上、東京オリンピック・パラリンピック開催からリニア開業後を見据え、愛知、そして東三河の観光戦略・地域づくりについて伺ってまいりました。県当局の明快で意欲的な御答弁を期待して、壇上での質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
26: ◯県民生活部長(川島毅君) 愛知県の五輪文化プログラムへの取り組みの現状と今後の進め方についてお答えをいたします。
東京オリンピック・パラリンピックにおける文化プログラムは、大会組織委員会による公式プログラム、東京二〇二〇参画プログラムと、政府全体で推進をするプログラム、beyond二〇二〇プログラムにより進められております。
本県が参画する可能性の高いbeyond二〇二〇プログラムの詳細はまだ明らかになっておりませんが、東京オリンピック・パラリンピック開催というまたとないチャンスを捉え、文化プログラムを全県的に実施することで、本県の文化面の魅力を大いに発信したいと考えております。
文化プログラムを進めるに当たりましては、県内のさまざまな文化を把握することが求められる中、本県は、平成二十四年度から二十六年度までのあいち地域文化創造戦略の取り組みにより本県独自の文化の発掘等を行ってきたところであり、その成果も踏まえて、本年度開催した第三十一回国民文化祭・あいち二〇一六において、地域に古くから伝わる伝統文化や、地域の特色を生かした事業による展開をしたところです。
今後は、文化行政を全庁的に進めるために設けている文化行政推進会議を本年度末を目途に開催し、有識者の意見も聞きながら、東京オリンピック・パラリンピックの文化プログラムとして位置づける事業や、効果的な展開方法等について検討してまいります。
こうした検討を踏まえ、東京オリンピック・パラリンピックの開催機運が盛り上がる期間にあわせ、開催前年度に予定しているあいちトリエンナーレ二〇一九を初めとした愛知の多彩な文化事業をオリンピック・パラリンピックの文化プログラムの枠組みを活用して展開するとともに、愛知の観光地とタイアップした広報を行うなどして、県内外、さらには海外から多くの方々にお越しいただき、愛知の文化の多様な魅力を発信できるよう進めてまいります。
27: ◯振興部観光局長(加納國雄君) 私からは、初めに、東京圏にかわる受け皿としての本県の役割、可能性についてお答えします。
あいち観光戦略は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される平成三十二年度までを計画期間とし、訪日外客誘致に向けたプロモーションと受入態勢の強化及びスポーツ大会を通じた誘客促進を戦略の柱に位置づけております。
具体的な取り組みとしては、中部国際空港における観光PRとニーズに応じた観光情報、宿泊情報などの提供や、オリンピックの合宿誘致にも積極的に取り組み、外国人観光客の受け入れ体制の充実強化などを推進しているところです。
また、オリンピック開催時には、航空機や宿泊者の受け入れが首都圏のみでは逼迫することも見込まれます。本県には、海外からの定期便やプライベートジェットの受け入れが可能な空港、また、多くの宿泊施設がありますので、このような優位性を海外に向けて、これまで以上に情報発信してまいります。
こうした受け入れ体制の充実、本県の持つ優位性や、産業観光、武将観光などの豊富な観光資源の魅力を高め、東京オリンピック・パラリンピックに向けて着実に準備をしてまいります。
次に、東京オリンピック・パラリンピックを本県の観光振興及び地域づくりに生かすための県庁横断的な戦略担当部署についてお答えいたします。
スポーツ大会や芸術文化イベントを活用した誘客は、観光振興及び地域づくりにおいて、大変重要な視点と認識しております。
昨年四月一日に、産業労働部に所属していた観光担当課を振興部に移管し、観光局として充実強化し、また、スポーツ振興課が振興部内に新設されたことから、観光とスポーツについては、組織的にも密接な連携による推進体制が整っております。
オリンピックの開催を契機として、本県に海外から誘客を図っていくためには、観光、文化、スポーツなどの関連する部署が連携の意識を一層高めていく必要があると考えております。
実効性のある取り組みを戦略的に推進していくため、知事を本部長とする観光振興推進本部を通じ、関係部署が相互の協力を図るとともに、機動的にプロジェクトチームを設置するなど、実務的な連携を強化してまいります。
最後に、リニア開業を見据え、東三河を含めた本県の観光戦略・地域づくりについてお答えいたします。
あいち観光戦略は、リニア開業を展望し、中長期的な視点から策定したものであり、まずは、東京オリンピック・パラリンピックが開催される平成三十二年度までに、本県観光の競争力を強化することを当面の目標として、訪日外客誘致、観光資源の充実、愛知県観光協会のDMO化などに積極的に取り組んでおります。
県境を越えた広域連携の推進につきましては、これまでも、岐阜、三重、静岡の近隣県と設立した東海地区外国人観光客誘致促進協議会や、中部九県が参画する中部広域観光推進協議会により、主に海外からの観光客誘致に取り組んできております。
また、中部広域観光推進協議会のDMO化や、近隣県におけるDMO設立の動きがあることから、本県においても、来年の六月ごろをめどに、愛知県観光協会のDMO候補法人としての登録申請ができるよう準備を進め、広域及び近隣県のDMOとの連携も検討してまいりたいと考えております。
東三河地域につきましては、東海地区外国人観光客誘致促進協議会において、海外の旅行会社の招請事業の中で、愛知、静岡を周遊するコースを設定し、その魅力のPRに努めてきており、さらに、ジャパン・レール・パスの活用による東三河地域の優位性をPRするなど、今後も静岡県との連携を強化してまいります。
現在、本県では、県域DMOの設立準備及び県内市町村のDMO設立の支援として、ICTを活用したマーケティング調査、着地型旅行商品コーディネーターの育成等に取り組んでおり、東三河地域の行政、観光関係事業者の皆様にも多数御参加いただいております。
今後も、DMO関連事業を通じ、東三河地域におけるDMO設立に向けた動きを支援してまいりたいと考えております。
28: ◯知事(大村秀章君) 浅井よしたか議員の質問につきまして、私からもお答えいたします。
東三河を含めた本県の観光戦略・地域づくりについて申し上げます。
リニア開業を見据え、本県が持続的に国内外から多くの観光客が訪れる地域として発展をしていくためには、東京オリンピック・パラリンピックが開催される二〇二〇年までの間は、観光の礎を築く上で重要な時期であると認識をいたしております。
これまで、産業観光、武将観光などの観光資源の磨き上げ、首都圏でのプロモーション及び海外での観光説明会の開催などを大規模に展開して、国内外における本県の認知度向上に努めてまいりました。
特に、首都圏プロモーションでは、豊橋市出身の松平健さんを起用して、東三河の手筒花火やシバザクラのPRを行い、幅広くマスメディアに取り上げられ、その認知度向上と観光集客に貢献できたものと考えております。
平成二十九年度からは、JRグループとタイアップした大型観光キャンペーンを三年間にわたって展開してまいります。全国規模での本県の観光PRを実施していくものでありますので、本県はもとより東三河地域にとっても、観光集客のための旅行商品の造成や、受け入れ体制の整備を充実させる上で絶好の機会であります。
二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック、二〇二六年のアジア競技大会の開催、さらには、二〇二七年度のリニア中央新幹線の開業を見据え、東三河を含めた本県に多くの人を呼び込むため、県内市町村や企業、NPOなど、観光関係者としっかりと連携をし、取り組みを進めてまいります。
29: ◯議長(鈴木孝昌君) 進行いたします。
藤原宏樹議員。
〔四十三番藤原宏樹君登壇〕(拍手)
30: ◯四十三番(藤原宏樹君) それでは、通告順に従い、一般質問をさせていただきます。
まずは、ハラル認証制度についてであります。
去る九月議会にて、八月末に訪問したマレーシア政府関係等視察の内容を、我が党、青山議員を初め、寺西議員、山下議員がそれぞれ質問で触れておりましたが、このマレーシア訪問団に私も同行させていただきました。
訪問団として、二〇二六年のアジア競技大会の開催、二〇二七年のリニア新幹線の開通や、愛知県産農産物など物づくり愛知の魅力と、今後の相互交流の可能性について、意見交換をさせていただきました。
図らずとも、昨日、本県の観光振興に係るムスリム文化圏との相互理解に関する取り組みについて記者発表されましたが、特に私からは、観光立国日本を目指す我が国においても最近注目され、その対応が急速に進み始めているハラルフードについて、調査に訪れたマラッカハラルハブを事例に、二つの視点から質問いたします。
そもそも、ハラルとは何か。ハラルとは、イスラム教の教えに基づき、合法的なもの、許されているものを意味します。ハラルの反対は、ハラムまたはノンハラルとされ、禁じられているものをあらわします。許されているものは、野菜、果物、魚、卵、牛乳などを指し、逆に、禁じられているものは、酒、アルコール、豚肉、豚由来製品、ラードや豚肉を原料としたソーセージ、コンソメ、また、食品だけでなく、化粧品、サプリメント等の製薬などが指定されております。
一方、牛肉や鶏肉、羊は、食べることが許された食品でありますが、厳格なルールがあり、餌が厳密にチェックされ、飼育方法にもルールがあること、食肉解体処理の方法も定められており、お祈りを唱えながら儀式を行います。
そこで、本当にハラルなのか否かを判断するのがハラル認証機関であります。
我が国でこのハラルというキーワードを耳にするようになったのが、二〇一三年の七月からASEAN友好協力四十周年に合わせて外務省が行った訪日ビザの免除と緩和により、東南アジア五カ国の観光ビザ発給要件が緩和され、イスラム教徒の多い国々から観光客が急増したことが要因であります。
さて、マレー半島の最南端、マレーシア発祥の地であるマラッカ州に設置されているマラッカハラルハブは、マレーシア政府の方針で、各州に設置を進めた企業団地、ハラルハブの一つであります。ムスリム社会において、ハラル対応に基づいた製品やサービスを基準化し証明させる、ハラル認証を目的とした、いわゆる企業団地であります。我が国でいえば、ハラルフードに関するビジネス特区と考えることができると思います。
マレーシアは、イスラム教六一%、仏教二〇%、キリスト教九%、ヒンドゥー教六%、儒教一%とわかるように、多民族国家であります。そのうち、約六〇%を占めるイスラム教徒、ムスリムの方々のために、イスラム教徒のルールを守ったハラル対応が必要になってまいります。
ハラル認証には、各国それぞれ認証機関がありますが、マレーシアは世界で唯一、国の直轄機関が審査し認証するものであり、世界でも最も厳格かつ信頼性が高く、マレーシア以外の世界の国々においても利用されております。
このマラッカハラルハブには、日本から食品大手のキューピーが二〇一〇年に進出しており、ハラル認証を取得した製品を、マレーシアのみならず、インドネシア、シンガポールにも輸出されているそうであります。
実際、現地で訪れたマレーシアの地元のスーパーでは、食品や調味料に至るまで、認証を受けた製品にはハラルロゴが印刷してあり、このロゴは世界中でも認識され、広く受け入れられるようになっているということでありました。
ハラル文化をハラルフードマーケットとして捉えて考えると、大きな市場であることがわかります。観光客として急増したイスラム教徒の人口に注目すると、世界で十六億人以上に上り、世界総人口の約二三%に当たり、そのうち東南アジアには二・四億人が集中しております。また、ブランド総合研究所の調べでは、世界のハラル食市場は六十五・八兆円であり、東南アジアはその三分の一を占めており、二十一・六兆円と非常に大きな市場であります。
さらに、この先、二〇三〇年には、イスラム教徒の方が約二十二億人となることが予測されており、世界人口の四分の一を占め、まだまだ伸びるマーケットであると考えられます。
また、現地において、マレーシア政府関係者との会話で、ハラルとは、日本の皆さんが意識している宗教的な意味合い的なものだけでなく、実は、食品衛生上の安心・安全性を示す意味合いでの意識もある。だから、世界で評価が高い日本食の安心・安全性を鑑みれば、マーケットシェア拡大に向けたハラルフードへの理解促進は必要不可欠であると考えます。
しかしながら、ハラル食市場を国別で比較すると、一位のトルコは十一兆円に比べ、我が国は六十四位の一千億円となっており、ハラル食市場に大変おくれをとっていることが御理解いただけると思います。
こうした中、昨日までの本県の取り組み状況を見ると、ムスリムフレンドリータウンの冊子を作成し、ムスリム旅行者の方々に施設の紹介や飲食店の紹介をしておりますが、冊子を拝見すると、ムスリム対応の飲食店が県内で十数件と非常に少なく、ムスリムの方が本県に訪れた場合に、食事で困ることは避けられない状態であります。
本県では、この先、アジア競技大会、FIFAフットサル、ラグビーワールドカップなど、東京オリンピック・パラリンピックに次ぐスポーツのメジャー国際大会の開催を予定しております。
特に、二〇二六年のアジア競技大会では、当然多くのアジア諸国から選手を迎えるホスト自治体として困らないように、県として今から問題意識を持つべきでありますし、あわせて、ハート・オブ・ジャパンを掲げる愛知県の観光施策の一環としても真剣に取り組まなくてはならないと考えます。
ここで、私からの提案としては、アジア競技大会開催県として、先進的に観光特区を申請し、ハラルフードに対するサポートを確立するなどの考え方が必要ではないかとつけ加えさせていただきます。
そこで、二点お伺いいたします。
イスラム人口も多い東南アジア主要六カ国から、近年、インバウンドで我が国並びに愛知県へ訪れている観光客数の推移についてお伺いいたします。
二点目として、今後、本県の観光振興の施策などを鑑みると、ムスリムの方々の観光客がふえることが予測されますが、食に対するハラルの厳格なルールや礼拝の習慣など、異文化理解、多文化理解を踏まえた受け入れを行う必要があります。
そこで、本県では、さらなるムスリムの来訪者の受け入れに対して、どのように取り組んでいかれるのか、お伺いいたします。
続いて、二項目めとして、東三河の基盤整備について質問いたします。
我々が住む東三河地域は、豊川や三河湾、奥三河の山々の恩恵を受け、豊かな恵みを受けた地域ということで穂の国が存在した地域と言われます。
この東三河地域の持つポテンシャルについては、製造品出荷額等は約四兆円、都道府県と比較しても大分県に相当する規模であり、農業産出額は約三千億円と全国六位と、本県においても突出しております。
こういった可能性を感じていただき、大村知事は、東三河地域の発展なくして愛知県の発展はなしと強い思いの中で東三河県庁の設置をし、東三河振興ビジョンを掲げ、毎年、具体的な施策が次々と展開されているところでありますが、そこで鍵となってくるのが東三河地域の基盤整備であります。
現在の東三河地域の基盤整備の状況は、大きく捉えると強みと弱みに分けることができます。
まず、基盤整備の強みとしては、ことし二月に、待ち望んでいた新東名高速道路の豊田東ジャンクションから浜松いなさジャンクションまでの約五十五キロが開通をいたしました。これにより、東名高速道路と二百キロに及ぶダブルネットワークが形成され、人、物の移動を支え、日本経済の成長を支える大動脈ができ上がりました。
東三河地域にとっては、産業を大きく後押しするとともに、奥三河地方の観光産業においても、その活性化を大きく加速させるものであり、この地域のさらなる発展のため、強力な推進力になっていくと考えております。
一方、基盤整備の弱みとして考えられるのが、地域の東西軸となる東名、新東名高速道路のような広域的な幹線道路ネットワークを最大限に生かすための南北軸が整っていないこと、また、東西軸も、名古屋と豊橋を結ぶ地域高規格道路の名豊道路が全線開通ができていないことであります。
具体的には、愛知県の東西交通の軸となる名豊道路蒲郡バイパス、東三河一時間交通圏の基軸となる国道百五十一号線や、さらには、この地域の環状道路機能を持つ東三河環状線が挙げられます。
まず、全長約七十三キロの名豊道路については、平成二十六年三月に、幸田芦谷インターから蒲郡インターまでが開通をし、いよいよ名豊道路の未開通区間は、蒲郡インターから豊川為当インターの蒲郡バイパス東部区間九・一キロだけとなりました。この影響により、市内のこの区間の国道や県道が慢性的な渋滞になっており、通学路や生活道路にまで抜け道として多くの自動車が入り込み、地域として大きな問題となっております。
そして、何よりもこの道路は、西三河や東三河の生産拠点と三河港を結び、物づくり愛知の物流を支える大動脈であることから、本県にとってなくてはならない道路であり、少しでも早い開通を切望しております。
また、この蒲郡インターと豊川為当インターの間に金野インターが計画をされておりますが、金野インターについては、山に囲まれており、南にはラグーナ蒲郡、北には県営ふるさと公園があり、北に抜ける県道豊川蒲郡線の豊川市街地方面へは、現在、通行不可能区間であり、このインターと国道一号線を結ぶ都市計画道路金野御油線の整備が行われると、豊川市街地へのアクセス機能が格段に向上すると思われます。
また、ラグーナ蒲郡方面を結ぶ大塚へ延長させることも望まれており、都市計画道路大塚金野線の重要性も受けとめていただきたいと思います。
今回は要望にとどめますが、ぜひこの区間の整備にも取り組んでいただきたいと考えます。
また、名豊道路の前芝インターから東名豊川インターまでの区間は、世界と直結する三河港からの物流ルートとして重要な路線であります。この区間には、信号が連続しているため時間がかかり、加えて、ことし三月に小坂井バイパスが無料化されてから交通量が増加していることから、円滑な輸送の妨げとなっております。
地域としては、地元、小林功議員を中心に国へ要望活動など、積極的に取り組んでいるところでありますが、まずは小坂井バイパス無料化の影響を強く受ける国道一号線の宮下交差点までの立体化の早期事業着手が必要であると考えます。
次に、豊川市を中心に、豊橋方面と新城方面を結ぶ国道百五十一号線一宮バイパスは、現在、用地買収が進められておりますが、この地域が新東名高速道路の整備効果を強いものにするため、必要であります。
あわせて、奥三河と豊川市市民病院へのアクセス道路となる命を守る道の意味合いも強く、豊川市側からの事業着手はもちろんでありますが、新城バイパスの延伸工事が川田地内で約二十年事業がとまっている状況であり、新城側からも事業着工し、十年以内の開通が地域の思いであります。
最後に、東三河環状線は、豊川市と豊橋市の市街地の外周を結ぶ重要な環状道路であります。
豊川市内では、現在、大崎、三蔵子地区においてバイパス整備が進められておりますが、用地買収率八割から九割まで進んだものの、ここ数年、進展が感じられない状況であります。
一方、豊橋市内では、ことし三月に乗小路トンネルが開通し、牛川工区から東名高速道路豊川インターへ向かう豊川を渡る橋梁の区間が未整備であることから、牛川工区の北側の現道との交差点で新たな渋滞が発生している状況であります。
道路は、つながってこそその効果を発揮すると言われている。これまで述べてきた路線の早期開通を切に望んでおります。
以上、東三河地域の基盤整備について触れさせていただきましたが、私が考える東三河地域の基盤整備とは希望の光であります。現在、事業着手していただいている幹線道路が整備されると、道路網が整って、ただ渋滞が緩和され、便利になってよかったねということではなく、我が地域の新たなまちづくり、新たな可能性が間違いなく生まれてまいります。
高速道路のインターから十分が条件とされる企業立地にも間違いなく拍車がかかるでしょうし、働く場所、新たな雇用も確保ができる。また、東三河から自動車で西三河や名古屋まで通勤が可能になれば、我が東三河地域に家を建てて、定住促進にもつながる。そうすれば、この先、避けては通ることができない人口減少に歯どめをかけることができるかもしれない。我が地域の将来の明るい兆しを確かな光にすることができるのが道路整備の促進であることを御理解いただきたいと思います。
そこでお尋ねいたします。
現在、事業着手している重要路線道路の名
豊道路蒲郡バイパス東部区間、国道百五十一号の一宮バイパス及び宮下交差点の立体化及び東三河環状線について、現在の状況と今後の取り組みについてお伺いいたします。
次に、三項目めとして、防災について質問させていただきます。
防災については、一昨年、平成二十六年の九月議会でも取り上げ、災害時の救援物資の受け入れと搬送についてと、被災後直ちに確保しなければならない道路交通の啓開対策、中部版くしの歯作戦についてお聞きをしましたが、その後、二年が経過をし、計画等がより具体的になっていると思いますので、進捗についてお伺いしたいと思います。
まず、災害時の救援物資の受け入れと搬送についてであります。
前回、防災局長の答弁では、大規模災害時において、国や他の自治体から届く多くの救援物資の受け入れと搬送については、マニュアルにより、愛・地球博記念公園を初めとする県内六カ所に広域物資拠点を開設して物資を受け入れ、仕分けを行い、各市町村で定める物資集配施設に搬送するとの答弁がありました。
その後、国においては、平成二十七年三月に、国が地方公共団体に対して実施する南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画を策定したところであります。
この国の計画では、救援物資については、食料、毛布、育児用調製粉乳、おむつ、簡易トイレの六品目の必要となる量をあらかじめ算出し、地震発生から三日目までに愛・地球博記念公園を初めとする広域物資拠点に、被災県からの具体的な要請を待たずに、いわゆるプッシュ型で輸送することとしております。
このため、本県では、国の計画に基づく応援を円滑に受け入れ、適切な災害応急対策を進めるため、平成二十八年三月に、南海トラフ地震における愛知県広域受援計画を策定しております。
この県の計画では、県内全市町村に一カ所以上、合計八十二カ所の地域内輸送拠点をあらかじめ定め、市町村から具体的な要請を待たずに輸送することとし、輸送に当たっては、愛知県トラック協会等に要請することとされております。
一方、熊本地震では、国によるプッシュ型の物資の支援が行われましたが、我が党代表質問で石井議員からも指摘があったように、当初は各避難所まで輸送する具体的な計画がなかったため、適切に救援物資を被災者に届けることができない状況に陥ったと聞いております。
実際、国からの救援物資を迅速に避難者の手元まで届けるためには、物流事業者等、民間のノウハウを活用することが賢明であります。とりわけ、南海トラフ地震のような大規模な災害が発生した場合、発災当初は、他の災害応急対策業務への対応も相まって、県や市町村の職員だけでは到底十分な救援物資の支援が実施できないことが予測されます。
そこでお尋ねいたします。
発災後、国からの救援物資が拠点に山積みになっているのに、必要とされている方々の手元に物資が届かないということがないようにするため、さらに、被災者の方々におくれがなく救援物資を届けるため、全庁的な取り組みと、民間の力を活用した物資支援の体制の構築について、県ではどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
次に、啓開道路についてであります。
実際に巨大地震が発生した場合、救助活動や物資輸送を行うためのルート確保は必須であり、県民の生命を守り、社会機能を維持していくため、直ちに対応をしなくてはならない取り組みであります。
前回質問の答弁では、中部版くしの歯作戦については、くしの軸となる高速道路や直轄国道は発災後一日で、くしの歯となる人命救助ルートを三日で、被災区域内を貫く緊急物資輸送ルートを七日で確保することを目標としているとお聞きをいたしました。
熊本地震では、過去に類のない直下型の地震によって、高速道路や国道など地域の幹線道が寸断され、多くのまちが孤立し、救助活動や救援活動に必要な経路が絶たれたばかりか、長期にわたり、地域の社会経済活動に深刻な影響を与えたことは記憶に新しいところであります。
まさに、被災後直ちに必要となる道路の啓開対策は、被災地域の命の道を切り開く対策であることを痛感したところであります。
本県においても、さまざまな取り組みを通し、有効な啓開道路の計画を定め、その実効性を高めていくことが不可欠だと認識いたしました。
本県では、新東名高速道路が開通し、東名高速道路とのダブルネットワーク化によって代替性が確保されるなど、道路網の強化も進んでおり、それらを啓開道路に反映していくことも求められております。
また、啓開道路対策を実行するためには、まず、被災情報を収集し、被災状況に応じて、作業に当たる人員はもとより、資材や重機を機動的に投入していくことが重要であります。
このため、必要となる作業量や資機材を想定し、事前に備蓄を行うなどの準備を進めていくことも、啓開道路の実効性を高めるため、極めて重要な取り組みだと考えます。
そこでお尋ねいたします。
本県において、中部版くしの歯作戦の実効性を高めるために、どのような取り組みが進められているのか、お伺いしたいと思います。
また、本県として、県管理道路の啓開対策として、どのような取り組みを進めているのか、お伺いいたします。
以上、大きく三項目質問をさせていただきました。理事者各位の明快な答弁を期待し、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
31: ◯振興部観光局長(加納國雄君) 私からは、東南アジア主要六カ国からの近年の来訪者数の推移及びムスリムの来訪に対する受け入れの取り組みについてお答えいたします。
まず、東南アジア主要六カ国からは、二〇一三年が約百十五万人であったものが、二〇一四年には約百六十万人、二〇一五年には約二百七万人と増加しております。このうち、本県には、統計のある二〇一四年は約十五万人、二〇一五年は十八万人強と増加しております。
ムスリム旅行者の受け入れには、ハラル食の提供、祈祷場所の確保、生活習慣などへの配慮が必要であると認識しております。本県では、モスク所在地やハラル認証の飲食施設など、情報を取りまとめ、Muslim Infomationとして、愛知県観光協会のホームページ、Aichi Nowに掲載し、英語で情報を発信しております。
また、昨年十一月には、食品製造、物流、飲食、宿泊、旅行の各事業者などを対象として、食やハラル認証等について紹介するセミナーを開催いたしました。あわせて、食、礼拝、習慣、マナーなどについて取りまとめたムスリムおもてなしハンドブックを作成し、観光関係者に配布しております。
さらに、来年二月に、蒲郡市内で宿泊、観光事業者や観光関係団体等を対象に、ムスリム旅行者への対応方法や他地域での先進的な取り組み事例を紹介するセミナーを開催いたします。
今後とも、あいち観光戦略に掲げた外国人来県者数四百万人の達成に向けて、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会などで増加が期待されるムスリム旅行者が安心して本県に来訪していただけるよう取り組んでまいります。
32:
◯建設部長(
市川育夫君) 東三河地域の基軸となる幹線道路についてお尋ねをいただきました。
まず、名
豊道路蒲郡バイパスの東部区間についてであります。
国が整備を進めております名
豊道路約七十二・七キロメートルのうち、蒲郡インターから豊川為当インターまでの蒲郡バイパス東部区間約九・一キロメートルが唯一の未開通区間となっており、現在、用地買収とともに、トンネルや橋梁の工事等が進められております。
用地の取得率は、本年九月末までに約九割に達しており、工事につきましては、本年八月の蒲郡市内の五井トンネルの貫通に続き、十月には、蒲郡市と豊川市との境にある国坂トンネルの掘削工事に着手いたしました。
また、東部区間内の三つのトンネルのうち、豊川市内に残る豊沢トンネルも、年度内の工事発注が予定されており、さらに、今年度の第二次補正予算も活用し、橋梁等の工事も順次進められると聞いております。
名
豊道路は、全線がつながることでより大きな効果を発揮するため、県としても一日も早く開通できるよう、地元自治体や経済界とともに国に強く働きかけてまいります。
次に、国道百五十一号の一宮バイパス及び国道一号との宮下交差点の立体化についてであります。
まず、一宮バイパスは、東名豊川インターと新東名新城インターを結ぶ幹線道路であり、事業延長は約七・九キロメートルと長いことから、事業効果を早期に発現するために、豊川インター側からJR飯田線を越えて、豊川市道まで約三・六キロメートルについて、先行して整備を進めております。
このうち、JR飯田線北側の一宮大木土地区画整理事業区域内では、区画整理事業によって必要な用地がほぼ確保されておりますが、その他の区間の用地取得率は約五割であることから、引き続き用地の買収に努め、まずは先行整備区間の早期完成に向けて、事業の進捗を図ってまいります。
次に、宮下交差点の立体化は、三河港と東名豊川インター間の物流円滑化を図るものであり、小坂井バイパスから連続して、宮下交差点を越える延長約〇・八キロメートルの道路橋で計画しております。
現在、公安委員会を初めとする関係機関との協議を進めつつ、道路橋の設計を取りまとめており、来年度から国の交付金で事業化できるように取り組んでまいります。
最後に、東三河環状線についてであります。
この路線は、豊川市及び豊橋市の市街地外周部を環状に結ぶ幹線道路であり、現在、豊川市内及び豊橋市内において、三工区で整備を進めております。
このうち、豊川市内の三蔵子工区約一・五キロメートルについては、用地取得率が八割を超えており、引き続き残る用地の買収を進めてまいります。
また、周辺道路の渋滞緩和に効果がある東側約〇・四キロメートルの早期部分開通に向けて、準用河川を渡る橋梁工事を進めるなど、事業進捗を図ってまいります。
次に、同じく豊川市内の大崎工区約一・七キロメートルについては、既に用地取得率が九割を超えておりますが、用地買収難航箇所があるため、市の協力も得ながら、引き続き鋭意交渉を進めてまいります。また、これまでに用地がまとまって確保できた区間から工事を進めてきており、今年度も道路築造工事などを進め、事業進捗を図ってまいります。
さらに、豊川を挟んだ豊橋市石巻本町から豊川市当古町までの工区約二・四キロメートルについては、今年度から国の交付金により事業を実施しており、豊橋市内から用地買収を開始できるよう、現在、地元調整を進めているところであります。
東三河地域の観光や産業、経済を活発にし、この地域が持続的に発展するためには、幹線道路ネットワークの整備が重要でありますので、引き続き各路線の事業進捗に努めてまいります。
次に、防災に関するお尋ねのうち、道路の啓開対策についてお答えをいたします。
初めに、中部版くしの歯作戦についてであります。
中部ブロックの国、県、政令市及び高速道路会社などの道路管理者で構成する幹線道路協議会では、東日本大震災における道路啓開の実績を踏まえ、平成二十四年三月にくしの歯作戦を策定し、その実効性を高める幾つかの取り組みを進めているところであります。
まず、新たに整備した幹線道路をルートに組み込むことによりくしの歯作戦の見直しを進めており、本年二月に供用した新東名高速道路につきましても、くしの軸に追加するなど、ルートの強化に努めているところです。
また、これらのルートごとに、啓開作業に当たる建設業者や必要となる資材や重機を想定し、参集場所や備蓄基地などを実行計画として定め、事前に体制を整えておくことも重要であります。
このため、愛知県内における十九のくしの歯ルートのうち、まずは、平成二十七年度に、尾張、西三河、東三河を代表する三ルートについて、実行計画を策定いたしました。
本年度は、新たに知多半島、渥美半島を含めた五ルートについて策定を進めており、今後、引き続き全てのルートに拡大を図ることとしております。
さらに、実行計画に基づき啓開作業を効率的に実施するためには、発災後、速やかに被害状況を把握し、道路管理者と啓開作業に当たる建設業者で情報共有を図り、優先的に啓開を進めるルートを決定することが必要であります。
このため、カメラとGPS機能を持つ携帯電話などの端末を用いたくしの歯防災システムを構築することとし、本年一月には、開発したシステムを用いた伝達訓練を通して機能を検証し、本格運用に向けて改良を進めております。
次に、県管理道路における啓開対策の取り組みについてであります。
本県では、従来から、災害時の応急復旧体制を確保するため、県管理の国道、県道約四千六百キロメートルについて、路線と区間を定め、地元の建設業者と個別に防災協定を締結してまいりました。
本年四月一日からは、緊急維持修繕業務や、冬期の道路雪氷業務を含め、防災安全協定として統合し、年間を通した道路維持活動を行うことで、担当区間に対する習熟度の向上を図っております。一定規模以上の地震が発生した場合などには、この協定に基づき、建設業者が直ちに巡視活動を実施するとともに、道路啓開や応急復旧に当たることとしております。
また、地元の建設業者だけでは対応することが難しい大規模な災害が発生した場合に備えて、建設業団体との包括協定を締結し、地域を越えた広域的な連携体制を確保しております。
さらに、災害対策基本法の改正により、道路管理者による放置車両等の移動が可能となったことを踏まえ、JAFを初めとするレッカー業団体と啓開活動に関する協定を年度内に締結できるよう、現在協議を進めているところでございます。
今後も、緊急輸送道路網の整備と耐震補強などの事前防災対策を推進するとともに、大規模災害発生時に中部版くしの歯作戦のルートはもとより、県内全域の緊急輸送道路における道路啓開を迅速に実行する体制の構築に向け、しっかりと取り組んでまいります。
33:
◯防災局長(加藤慎也君) 大規模災害時における救援物資の支援体制についてお答えをいたします。
大規模災害時に被災された県民の皆様に救援物資をお届けするため、本県では、知事を本部長とする災害対策本部に防災局職員をリーダーに、総務部、県民生活部、農林水産部、産業労働部、会計局など各部局の職員で構成する緊急物資チームと、建設部職員をリーダーに、防災局、振興部、県警察の職員で構成する緊急輸送チームを設置いたします。
緊急物資チームでは、県職員のほか、自衛隊、中部運輸局、愛知県トラック協会、東海倉庫協会の職員も加わっていただき、物資の確保、仕分け、輸送に関する業務を行うとともに、国などからの救援物資を受け入れる広域物資輸送拠点等において、実際に物資を仕分けし、トラックへ積み込む作業を行うことといたしております。
一方、緊急輸送チームでは、中部地方整備局の職員も加わっていただき、市町村が定める地域内輸送拠点への通行可能な輸送ルートの選定業務を行うことといたしております。
また、救援物資の円滑な提供には、倉庫業者やトラック業者などの民間事業者のお力をおかりすることとしており、災害時の具体的な業務の手順について検討を進めております。
加えて、県及び市町村が適切に物資を受け入れる体制を整えていく必要がありますので、本県の災害時の物資の受け入れ等を定める愛知県広域受援計画を見直すとともに、物資支援体制を定める市町村の受援計画の策定を支援してまいります。
34: ◯知事(大村秀章君) 藤原宏樹議員の質問のうち、大規模災害時における救援物資の支援体制について、私からもお答えをいたします。
大規模災害が発生した際は、被災された県民の皆様に救援物資を迅速かつ的確にお届けするため、民間の事業者の御協力も必要となってまいります。
このため、十月に、愛知県トラック協会と災害時の物流を円滑化するための協定を締結し、続いて、十一月には、JAグループ愛知と生活物資の供給等に関する協定を締結いたしました。
さらに、被災した市町村の支援を効果的に行うため、現在、愛知県市長会や愛知県町村会の協力を得て、県と被災地以外の市町村が一体となって、オール愛知で支援する仕組みづくりを進めているところであります。
このように、大規模災害時には、救援物資の支援体制の強化を進め、私が県の災害対策本部の本部長として陣頭指揮をとって、国、市町村、民間事業者が一丸となって、被災された県民の皆様に救援物資をお届けできるよう全力で取り組んでまいります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
35: ◯四十番(石塚吾歩路君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
36: ◯議長(鈴木孝昌君) 石塚吾歩路議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
37: ◯議長(鈴木孝昌君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午後二時三十分休憩
━━━━━━━━━━━━━━━━━
午後三時十分開議
38: ◯副議長(
森下利久君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
中村すすむ議員。
〔七十三番中村すすむ君登壇〕(拍手)
39: ◯七十三番(中村すすむ君) 通告に従いまして、一つ目に、温室効果ガス対策と水素エネルギーの活用、二つ目に、中期財政健全化に向けて、順次質問をしてまいります。
地球温暖化対策の新たな国際ルールであるパリ協定がこの十一月四日に発効いたしました。これは、京都議定書にかわる二〇二〇年以降の国際的枠組みを取り決めたもので、京都議定書では、先進国だけが排出削減の義務を負った内容でありましたけれども、このパリ協定では、既に九十カ国を超える国と地域が協定を締結しており、世界全体の取り組みに発展しております。
その中で、排出量が世界一、二位で、全体の四割を占める中国とアメリカが早々に批准を発表したのに対し、我が国は、対応が出おくれたために、世界の潮流に乗りおくれたとか、あるいは今後のルールづくりに影響力を行使することが難しいと指摘する報道もございました。
パリ協定は、今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指しておりまして、各国は達成に向けて動き出しております。EUは、一九九〇年比八〇から九五%削減とする低炭素経済ロードマップ二〇五〇を発表して、電力のほとんどを再生エネルギーで賄うとしております。また、フランスは、国全体の排出量に上限を設けて、段階的に削減する仕組みをつくっております。
一方、我が国は、二〇三〇年度までに二〇一三年度比二六%削減という目標値を掲げております。今後、この国際公約を確実に実行していくことが求められるわけでありますけれども、深刻なのが、エネルギー部門での削減だというふうに言われております。福島の原発事故以降、老朽した原発の停止、あるいは原発再稼働にめどが立っておりません。CO2排出量の多い石炭火力発電所への依存が高まり、再生可能エネルギーに力を注ぐ世界の潮流にも乗りおくれている現状が指摘をされております。
さて、本県の取り組みでありますけれども、本県は、あいち地球温暖化防止戦略二〇二〇の中で、排出量を二〇二〇年度に一九九〇年度比一五%削減を目標に掲げて、活動を進めてきているところでございます。
先ごろ、二〇一三年度の削減実績が発表されましたが、県全体の排出量は八千三百六十九万トン、これは、基準となります一九九〇年度に比べて一五%削減という目標値どころか、逆に八・七%の増加になってしまっております。二〇二〇年度に一五%削減という目標達成は非常に厳しいと思われます。
先ほど申し上げましたように、東日本大震災による火力発電へのシフトなどがこうした状況に拍車をかけたものだと思いますけれども、排出量の部門別推移の状況を見ますと、産業部門では、工場の省エネなどの対策に取り組んできた結果としまして、排出量は削減されております。
ところが、オフィス、店舗などの業務部門、家庭部門での排出量は、それぞれ四四・八%増、三九・七%増と、削減どころか大きく膨らんでしまっております。このことは、ことしの六月議会での答弁にもありましたけれども、ビル建設や大型店舗、コンビニの進出によって床面積が大きく増加していること、また、家庭においては、世帯数が増加していることが起因しているというふうに考えられるという答弁でございました。
こうした状況を受けて、県は、温室効果ガス排出量の七割を占める産業と業務部門における取り組みに力を入れること、そして、パリ協定を受けて、本県としても現行の温暖化防止戦略二〇二〇の見直しに着手して、この二十九年度にあいち低炭素社会づくり戦略を新たに策定するというふうに方針を定めております。
そこで、まず、現在の温暖化防止戦略二〇二〇の取り組みの中間総括についてお聞きをいたします。
直近の温室効果ガスの排出量は、先ほど申し上げましたとおり、目標達成は非常に厳しい状況にあるということでありますが、そこで、戦略二〇二〇のロードマップに示された数値目標に対する現時点での評価についてお伺いをいたします。
例えば、住宅用の太陽光発電四十万基、先進エコカー二百万台という二〇二〇年度目標に対して普及は進んでいるのかなど、ロードマップに示された数値目標に対して具体の取り組みがどう進捗しているのか、あわせて、その進捗状況をどのように評価しているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
次に、平成二十九年度に策定するあいち低炭素社会づくり戦略についてお伺いをいたします。
国が決定した二〇三〇年度までに二六%削減という目標値を踏まえて、本県の戦略も策定されていくのだろうというふうに思われますけれども、二〇三〇年度に至る本県の情勢を考えてみますと、従来の延長線上の対策だけでは、とてもとても目標達成は難しいと考えます。
二〇二七年のリニア新幹線開業に伴う駅前を初めとした大規模な工事が続きますし、大型ビルの建設もめじろ押しです。また、二〇二六年のアジア競技大会に向けた社会インフラの整備も始まります。こうした整備事業に伴うCO2排出量の増加が見込まれる中で、これまでにも増して厳しい環境下で目標達成が求められるということになります。
ただ、一方で、この地域には、環境問題を乗り越えながら世界市場で闘う企業が幾つかあります。そういった企業では、二〇五〇年に工場からのCO2排出をゼロにすることを発表したり、エネルギー消費ゼロのビル、住宅を売りにする企業も出てきております。こうした環境先進企業の取り組み内容がこれからの難しい環境を切り開いていく大きな原動力になるのではと期待をするところであります。
例えば、環境先進企業に関連企業群を含めたサプライチェーンの仕組みや、地域分散型エネルギーの育成、あるいは住居にHEMSを設置することで、県民みずからCO2排出量を見て確認して行動に移す、そういう運動の展開とか、従来の延長ではない取り組みが戦略づくりの上で重要なポイントになるのではというふうに考えます。
加えて、パリ協定以降の世界の進む方向は、低炭素社会から脱炭素社会に変わったとの論評があるとおり、脱炭素社会に向けた新たなスタートになるものだというふうに考えます。
そこで、県では、今後どのような視点を持って、この低炭素社会づくり戦略の策定を進めていかれるのか、基本的な考えをお聞かせいただきたいと思います。
さて、脱炭素社会に向けた取り組みを進めるに当たって、水素エネルギーの活用についてお聞きをしたいというふうに思います。
化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を加速していく上で、水素は重要なファクターであります。本県では、全国トップの水素ステーションの設置数、FCVやFCフォークリフトに対する補助、知の拠点での水素エネルギー研究開発など、多岐にわたる水素エネルギー普及策に取り組んできていることは大いに評価されると思います。
しかし、他県も新たな水素事業の取り組みを加速させて、将来ビジョンを示して事業を進めている自治体も出てきております。
二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの選手村を水素エネルギーで運営する方針を出している東京都、多くの化学コンビナートが集積する港湾エリアで水素の製造から貯蔵、運搬、活用を一貫して取り組む川崎市、こういった先進事例を調べてまいりましたので、紹介をしたいと思います。
東京都は、平成二十六年五月に、水素社会の実現に向けた東京戦略会議を立ち上げております。有識者、企業代表なども交えた会議を重ねる中で、昨年の二月に、東京戦略会議のとりまとめというものを発表しております。
その中で、水素が将来の低炭素社会の切り札になること、化石燃料からも、そして再生可能エネルギーからも水素を製造することができ、エネルギー構造の変革につながること、また、水素の貯蔵、運搬などに関して高度な技術力が求められ、新たな経済波及効果が期待できること、そして、災害時の非常用電源としての活用が見込めることといった水素事業に取り組む意義を明確に位置づけております。
二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックでは、選手村において、水素社会の実現に向けたモデルを提供し、大会後のレガシーとなるよう具体的な整備目標も掲げて事業を進めております。
そして、本年三月に発表した東京都の環境基本計画の中では、二〇三〇年までに温室効果ガス排出量を二〇〇〇年比で三〇%削減するという独自の目標値を掲げて、省エネ、再エネを一層加速させるとともに、水素エネルギーを低炭素社会の切り札として位置づけている点が特徴であります。
次に、川崎市です。港湾エリアに多くの化学コンビナートを有する地域特性を持っております。ここでは、化学製品を製造する過程で発生する水素を利用する企業は従来からあったわけでありますけれども、それらをパイプラインでつないで、新たな川崎水素戦略のエリアを形成して、水素を活用した臨海部のまちづくりを総合計画の中で位置づけ、行政と企業が強く連携した取り組みを進めております。
また、水素を使った事業も拡大させておりまして、港湾の荷役作業にFCフォークリフトを採用したり、市民に水素エネルギーを知ってもらうための試みとして、JRの武蔵溝ノ口駅に小型コンテナサイズの水素エネルギー供給システムを設置して、その駅の照明や表示盤、空調機器、これに水素を活用しております。
そして、将来に向けた戦略として、海外の未利用のガスなどから製造された水素を液化して、大型タンカーで運搬する技術も企業とともに進めております。港湾を持つ川崎市の地域特性を生かした水素の需要、供給両面の意欲的な取り組みがうかがえます。
国は、水素社会の実現に向けて、まず、水素利用の拡大をする第一段階から、水素発電の本格導入をする第二段階、そしてCO2フリーの水素供給システムを確立するという第三段階を踏むステップを提示しておりますけれども、最も具現性を持って将来方向を打ち出しているのは、川崎市だなという強い印象を持ちました。
そこで、本県の取り組みであります。
まず最初に、水素ステーション設置やFCフォークリフトへの補助といった本県の産業部門での取り組みの成果と課題について、まずお聞きをしておきたいと思います。
先ほど申し上げましたように、本県では、全国トップの水素ステーション設置を初め、廃棄物焼却炉の廃熱を利用して電気から水素を製造する試みや、知の拠点での水素エネルギー技術の研究開発など、水素の供給面での取り組みについては、目に見える形で進んできている感じがいたします。
しかし、水素社会実現の第一段階であります水素利用の拡大に向けては、まだまだ拡大の余地があると感じます。FCVやFCフォークリフトといった小規模の水素需要では、なかなか事業採算性を考える企業の進出や拡大は望めません。
公共施設での水素エネルギーの採用、家庭、集合住宅でのエネファームの普及促進、あるいは大型バス・トラックでの燃料電池車の促進、さらには、今後の大規模施設やアジア競技大会での水素活用など、需要の掘り起こしをさらに進めること、それに向けたフィールドを提供すること、そして、民間だけではコスト負担が難しい分野での補助の仕組みをつくること、これが今後の行政の役割だと思います。その上で、第二段階、第三段階へと発展させていくことができるものと思います。
そこでお聞きをいたします。
今後の水素社会実現に向けたビジョンを描く中で、水素の需要拡大の充実が必要と感じますが、今後の需要創出に向けた取り組みについて、お考えをお伺いいたします。
化石燃料に多くを依存しない低炭素社会、さらに一歩進めて脱炭素社会を目指す上で、水素エネルギーは大きな可能性を持っていると思います。しかも、災害時のエネルギー源としての活用も魅力的です。環境先進県である本県が脱炭素社会に向けて、全国をリードする取り組みが期待されます。その方向性を示す戦略と、その中で役割が期待される水素エネルギーへの取り組みについて、前向きな答弁を期待しまして、次の質問に移ります。
二つ目の質問は、中期財政健全化に向けてであります。
平成二十九年度予算編成についての方針が発表されました。歳入は、企業収益の減益や外形標準課税の拡大に伴う減収が見込まれる一方で、歳出は、社会保障コストの増加などが確実に増加し、財源不足が見込まれるという判断から、あらゆる事業の見直しを指示されておられます。
こうした厳しい財政構造の傾向は、二〇一五年の八月に示された財政中期試算の中でも、毎年一千億円を超える収支の乖離が継続的に発生すると指摘されていたところであります。
毎年一千億円の収支乖離を調整していくためには、従来のような各事業の見直しの積み上げももちろんベースとなりますけれども、加えて、思い切った発想の見直しが必要と感じます。
そのためには、地方税財源や社会保障制度など、国の制度に絡む構造的な問題に陥り、愛知県だけで改革が進み、成果が得られるわけではありませんが、しかし、目指す地域主権の流れをつくり出すためには、国、市町村も動かしながら、みずからできるところから改革を進めて、全国に波及させていくことが元気な愛知県の役割だと思います。
さて、大きな収支の乖離が継続的に発生するとの財政中期試算の中で、県は、今後の対応として二点挙げておられます。一つは、税源涵養、税収確保に向けて、経済産業基盤の整備を進めること、二つ目は、しなやか県庁創造プランに沿った歳入歳出両面の行財政改革を進めるという、この二点であります。
この対応策として取り組んできた事業の効果について、順次お尋ねをしていきたいと思います。
対応策の一つ目としました税源涵養、税収確保に向けた経済産業基盤の整備については、将来の税収確保につながる種まきが始まっております。特徴的な事業として、毎年五十億円の基金を活用した産業立地補助金及び研究開発補助金であります。
これまでに事業決定した産業立地補助金の総計は、対象案件が百九十四件、総投資額は三千七百七十五億円、三万七千人余の常用雇用者が維持、創出される効果が見込まれるという発表がございました。さらに、研究開発補助金では、これまでに三百六十件を採択したと伺っております。企業が投資しやすい環境をつくり、同時に、本県の物づくりの発展を通じて、将来の税源涵養につながる、本県ならではの種まきであります。
もう一つ、特徴的な事業が有料道路コンセッション事業です。民間ならではの付加価値の高い新たなサービス提供によって、企業活力と税収の向上が見込まれます。他県では、空港、水道事業などでもコンセッション方式が採用、あるいは検討されていると聞きます。行政の持つ資産の運営権を民間に譲渡する手法は、これからの行革の新たな切り口を見た思いであります。
また、本県では、民間の資金や経営能力、技術的能力を活用して、公共施設などの整備、管理、運営を行うPFI事業も積極的に導入してきております。
そこで、今紹介しました取り組みの期待される収益効果についてお聞きをしたいと思います。
まず、一つ目の産業立地補助金及び研究開発補助金については、税収として結果が出てくるのはまだまだこれから先のことだと思いますので、これまで採択した産業立地及び研究開発補助金の案件について、補助決定後の企業の稼働状況及び事業進捗状況、雇用の進捗状況など、どのようにフォローアップしているのか、まずお聞きをいたします。
次に、コンセッション方式を含め、PFI方式を導入した事業において、直営で行うのに比べて期待される効果額はどの程度あると算定しているのか、お聞きをいたします。
さて、対応策として挙げた二つ目は、しなやか県庁創造プランに沿った歳入歳出両面の行財政改革を進めるということでありますが、このことについてもお聞きをいたします。
第六次行革大綱しなやか県庁創造プランに至るこれまでの行革大綱の実践を通じて、大きな行革効果を引き出してきました。直近の平成二十二年から二十六年度、この五年間にわたる行革効果額としては千二百七十九億円、その前の平成十七年から二十一年度の第四次行革大綱では千二百七十三億円の行革効果額を上げております。
こうした長年にわたる量的削減の積み重ねは、一方で、今後の合理化余地を狭めることにつながっていると思われます。
こうした背景もあって、今回の行革大綱では、単なる数量を追うだけでなく、役割の見直しや経営資源、そして民間と地域の活力の活用に取り組む質的な改革にも挑む内容であると理解をしているところであります。
さて、この行革大綱では、百六十七項目の個別取り組み事項の進捗管理を掲げ、五十の進捗管理指標が設定され、行革効果をしっかりフォロー、チェックする仕組みが織り込まれておりますけれども、質問ですが、この大綱の達成年次である平成三十一年度までの五年間でどの程度の行革効果額を想定しているのか、まずお尋ねをいたします。
先ほど、今後は、社会保障関連コストが確実に膨らんでいくことが予想されると申し上げました。この社会保障関連コストに改革を加えていくことは、今後の重要なポイントだと考えます。しかし、現実には、県は、国が決めた制度、ルールを運営する部分が大きく、県独自で運営コストを改革していく余地は極めて少ないといった改革の難しさもお聞きをしております。
このように、なかなか行財政改革の間口が限られる中で、新たな発想、新たな取り組みで一千億円の収支の乖離を調整していくためには非常に厳しいものを感じます。
そこで、最後に改めて、中期的に財政状況を健全なレベルに維持していくための対応策として取り組むべき基本的考えをお聞きしておきたいと思います。
以上、執行部の前向きな答弁を期待しまして、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
40: ◯環境部長(菅沼綾子君) 温室効果ガス対策と水素エネルギーの活用に関するお尋ねのうち、私からは、温室効果ガス対策についてお答えいたします。
初めに、あいち地球温暖化防止戦略二〇二〇の取り組みの進捗状況とその評価についてでございます。
本県では、二〇一二年に策定いたしましたあいち地球温暖化防止戦略二〇二〇の進捗状況を把握するため、ロードマップを作成し、議員お示しのCO2の排出量のほか、再生可能エネルギーの導入状況や省エネ機器の普及状況など、二十一項目の数値目標を掲げ、毎年度、点検、評価を行っております。
このうち、再生可能エネルギーの二〇一五年度末の状況を見てみますと、事業用太陽光発電施設の導入量は、戦略策定時の基準として用いた二〇〇九年度の一万六千キロワットから百五万キロワットへと大きく増加し、目標の百二十万キロワットに向け順調に推移しているものの、市町村とともに補助を行ってきた住宅用太陽光発電施設の普及台数は、四十万基の目標に対し十五万三千基にとどまっております。
また、省エネ機能の高い先進エコカーは、目標の二百万台に対し、二〇一四年度末で百二十五万台に達しているものの、家庭用燃料電池は、十万基の目標に対し二〇一五年度末で八千基にとどまっております。
このように、ロードマップに掲げました数値目標につきましては、順調に推移しているものと達成が困難と思われるものがおおむね半々でありまして、今までの取り組みについて一定の評価ができるものの、今後一層の努力が必要と考えております。
一方、本年十月に実施いたしました県政世論調査によれば、省エネ製品等を選択して購入している人の割合は八割に達するなど、県民の皆様の意識の高まりや行動は着実に進展しているものと思われます。
こうしたことから、県としましては、県民や事業者の皆様に対し、引き続き温暖化対策の重要性を周知するとともに、公共交通機関の利用や再エネ設備、省エネ機器の導入といった具体的な行動につながるよう働きかけ、目標達成に努めてまいります。
次に、来年度策定予定の低炭素社会づくり戦略についての基本的な考え方でございます。
昨年十二月に合意されたパリ協定では、産業革命以前からの気温上昇を世界平均で二度C以下に抑えるため、今世紀後半には温室効果ガスの排出を実質ゼロとすることを目指すとされております。
また、国が本年五月に策定いたしました地球温暖化対策計画では、二〇五〇年までの温室効果ガス排出量を八〇%削減する長期的目標が盛り込まれたところでございます。
新たな戦略の策定に当たりましては、こうした世界や国の動向と、現行の温暖化防止戦略の評価を踏まえつつ、検討を進めてまいりたいと考えております。
また、本県には、愛知万博、COP10、ESDユネスコ世界会議などを通じて培われた県民、企業の皆様の高い環境意識や、世界有数の物づくりの拠点が持つ高度な環境技術がございます。さらに、エネルギーの地産地消を可能にする太陽光発電設備や、蓄電機能を持つ先進エコカーの普及台数は全国有数となっております。
こうした愛知の強みを生かした取り組みを進めていくという視点を新たな戦略づくりに取り入れてまいりたいと考えております。
また、温暖化対策を推進することは、事業活動におけるコストの削減や革新的技術の創出をもたらし、さらには、新たなビジネスチャンスの開拓や社会的評価の向上につながるなど、企業の成長、発展と両立するものであると思います。
あわせて、再エネ設備や省エネ機器の導入は、ゼロ・エネルギー・ハウスに代表されるような、豊かで快適なライフスタイルへの転換を促していくものと思います。
このように、温暖化対策が事業活動や日常生活において、さまざまなメリットを生み出すものであるという意識を社会に定着させていく視点も新たな戦略に反映していきたいと考えております。
県といたしましては、こうした基本的な考え方を念頭に置くとともに、今後多くのインフラ整備が予定されている将来の愛知の姿を見据えながら、新たな戦略を策定し、経済と環境の調和がとれた低炭素社会の実現に向けて、しっかりと取り組んでまいります。
41: ◯産業労働部長(吉澤隆君) 水素エネルギーの活用に関するお尋ねのうち、まず、水素ステーションや燃料電池フォークリフトに係る補助事業の成果と課題についてお答えいたします。
水素を日常生活や産業活動で利活用する水素社会の実現は、大幅な省エネルギーや環境負荷低減などに貢献できるのみならず、国際的に強い競争力を持つ燃料電池分野の産業振興につながることが期待されています。
このため、本県では、昨年度から、燃料電池自動車の普及に不可欠な水素ステーションの整備費と運営費に対する補助制度を創設したところであります。その結果、昨年度末の目標としていた二十基には達しませんでしたが、現在の県内設置数は、整備中と実証用を含め、十七基十八カ所で全国一であります。
また、本年度創設した、都道府県として初となる燃料電池フォークリフトの導入補助制度につきましては、これまで中小企業二社の支援を決定したところであり、水素社会実現に向けた機運が中小企業まで着実に広がっていると認識しております。
こうした本県の取り組み姿勢に呼応して、民間事業者や自治体で構成するあいちFCV普及促進協議会においては、今年度から県内全市町村が協議会に加入することとなり、オール愛知での推進体制が確立されたところであります。
このように、本県の取り組みの成果は着実にあらわれているところでありますが、今後への課題としては、燃料電池自動車の普及初期における当面の対応として、引き続き、水素ステーションの整備費や運営費を支援することで、事業者の下支えをしっかり行うことが重要であります。
また、水素ステーションの運営を、将来的に補助金に頼らずに自立したビジネスとして成立させるため、安全性を担保した上での規制の見直しや、技術開発などによる整備運営コストの削減を目指し、国への要請や、企業等への研究開発支援を行うことも必要であります。
燃料電池フォークリフト用の水素ステーションについても、事業者が円滑に導入可能な価格設定になるよう、製造コスト等の低減化に向け、研究開発等の支援が必要であるというふうに考えております。
次に、水素社会の実現に向けて、今後の需要創出に向けた取り組みについてお答えいたします。
本年三月に改訂をされました、国の水素・燃料電池戦略ロードマップにおいては、フェーズ一として、水素利用の飛躍的拡大が掲げられ、本県としても、それを踏まえた取り組みを最優先に進めております。
具体的には、水素需要が大きく期待できる燃料電池自動車と水素ステーション、燃料電池フォークリフト等の普及促進に努めることに加え、昨年三月に設置した水素エネルギー社会形成研究会において、民間企業などを構成メンバーとするワーキンググループを設置し、燃料電池バスなどの運用も視野に入れた、中部国際空港における水素ステーションの活用モデルの構築などの検討を進めております。
今年度は、水素の利活用分野のさらなる拡大を図るため、水素ビジネスへの参入意向などに関する企業ヒアリングやアンケートなどを行うことにより、名古屋港や三河港などの県内の港湾地域を想定した、トレーラーや大型コンテナを運搬する荷役用車両などの燃料電池化の実現可能性について調査し、ビジネスモデルを提示することとしております。
加えて、今年度より新たに知の拠点あいち重点研究プロジェクトにおいて、汎用性のある小型で高効率の燃料電池部材の開発を開始しており、これにより燃料電池の新たな用途への拡大の可能性が高まることが期待されます。
本県といたしましては、こうした幅広い取り組みをきめ細かく一歩一歩着実に進めることで、日本一の産業県である本県が水素社会の実現に向けて、引き続き全国をリードしてまいります。
続きまして、中期財政健全化に関するお尋ねのうち、産業空洞化対策減税基金に基づく産業立地補助金及び研究開発補助金のフォローアップについてお答えをいたします。
まず、産業立地補助金につきましては、採択後、投資が完了し、操業開始に至った企業に対して、その後五年間、毎年一回、投資された補助対象資産の確認を行うほか、売り上げ、雇用などの活動状況をヒアリングするフォローアップ調査を実施いたしております。
これまでに採択した百九十四件のうち、平成二十六年度までに操業を開始し、補助金を交付した七十三件に対する平成二十七年度の調査では、いずれの企業も当初計画どおりの事業運営が順調になされております。
さらに、認定時に比べまして、直近の売り上げが増加した企業は約七割の五十一社、常用雇用者が増加した企業は約八割の五十七社となっております。
研究開発補助金につきましては、補助企業に対し、研究開発の現況や、今後の雇用を把握するため、補助事業終了後五年間、アンケートや企業訪問によるフォローアップ調査を実施しております。さらに、必要に応じて、あいち産業科学技術総合センターによる技術指導や、知的財産の保護に関する相談を行っております。
平成二十七年度までの補助案件二百五十六件につきましては、事業化に至った案件が五十二件、試作品は既に完成し、事業化に向け取り組んでいる案件が九十二件あり、合計百四十四件、約六割の案件で既に成果が出ております。
事業化に至った案件の中には、例えば、患者の目の構造をより広範囲で鮮明に撮影できる白内障検査装置、介護食として利用可能な、やわらかく飲み込みやすい魚肉練り製品、航空機部品用切削工具に用いる高効率なコーティング技術の開発など、新商品や新技術を導入し、企業の売り上げ増につながっている事例も多く見られます。
県といたしましては、こうしたフォローアップ調査を通じまして、企業の活動状況や産業施策のニーズをしっかり把握することで、制度の適正な運用に努めるとともに、本県の産業基盤の維持、拡大につなげてまいりたいというふうに考えております。
42: ◯総務部長(篠田信示君) 中期財政健全化に関するお尋ねのうち、まず、PFI方式を導入した事業の効果額についてでございます。
本県では、現在、森林公園ゴルフ場整備等事業を初め、八事業でPFI方式を導入いたしております。また、愛知県道路公社において、全国に先駆けて、有料道路にコンセッション方式を導入しているところでございます。
なお、今議会に設置条例を提案している愛知県国際展示場につきましても、コンセッション方式により運営することといたしております。
本県におけるPFI導入による効果額といたしましては、まだ事業者の決定をしていない運転免許試験場整備等事業を除く七事業について、総額で約百二十二億三千万円となります。このうち、一般会計における事業の効果額を申し上げますと、産業労働センター整備・運営事業は約三十六億八千万円、環境調査センター・衛生研究所整備等事業は約四億三千万円でございます。
また、コンセッション方式による有料道路運営等事業の効果額といたしましては、民間事業者が運営等業務を実施した場合に、公社みずからが実施した場合の収支を上回る約百六十九億七千万円でございます。
なお、こうした効果額に加えまして、民間事業者からは、パーキングエリアでの附帯事業や道路区域外での任意事業が提案されておりますことから、こうした取り組みによる地域の活性化も大いに期待されるところでございます。
次に、しなやか県庁創造プランにおける行革効果額についてでございます。
本県では、厳しい財政状況が続く中、累次の行革大綱に基づきまして、職員定数の削減や公の施設の廃止、移管などの徹底した行財政改革の取り組みを積み重ねてまいりました。
特に、戦後初の赤字決算となりました平成十年度に策定いたしました第三次行革大綱から第五次行革大綱までの十六年間では、約六千百億円の行革効果を生み出したところでございます。
長年にわたる行財政改革において量的削減に取り組んできた結果、合理化の余地は狭まってきてはおりますが、厳しい財政状況が続く中で、地域の将来を見据えたさまざまな政策課題に的確に対応していくためには、持続可能な財政基盤の確立を目指し、不断の行財政改革に取り組んでいく必要があると考えております。
こうしたことから、しなやか県庁創造プランにおきましては、事務事業の見直し、自主財源の確保などによりまして、平成二十七年度から三十一年度までの五年間で計百億円以上の行革効果額を確保する数値目標を設定し、平成二十七年度、二十八年度の二年間で、合わせて六十四億円の実績を上げております。
今後とも、しなやか県庁創造プランで掲げます三つの視点、すなわち、県が持つ経営資源の最大限の活用、民間、地域の総力の結集、たゆまぬ見直しによる持続可能な財政運営、これらの視点をしっかりと踏まえ、さまざまな取り組みを進めてまいります。
最後に、財政健全化に向けた基本的な考え方についてでございます。
本県の財政状況は、義務的経費である扶助費が国の社会保障関係費と同様に年々増加することなどから、今後も厳しい状況が続くものと見込まれております。
このため、持続可能な財政基盤の確立に向けて、しなやか県庁創造プランに沿って、事務事業の積極的な見直しや自主財源の確保、さらには、民間活力の一層の活用などにより、歳入歳出全般にわたる行財政改革の取り組みを着実に進めていかなければならないと、このように考えております。
また、こうした取り組みに加えまして、安定した財源の確保を図るためには、議員御指摘のとおり、日本一の産業集積を誇る愛知の強みを生かし、産業経済の活性化を進めることで、地域の雇用を維持、拡大し、税源涵養、税収確保につなげていくことが大変重要であると認識いたしております。
さらに、現在の厳しい財政状況は構造的な面もございますことから、地方税財源の充実強化について、さまざまな機会を捉え、引き続き強く国に働きかけてまいります。
こうしたあらゆる取り組みを通じまして、安定的な財源を確保し、健全で持続可能な財政基盤の確立を図ってまいります。
43: ◯七十三番(中村すすむ君) 幾つか要望申し上げたいと思います。
まず、低炭素社会づくり戦略の策定につきまして、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、二〇二七年に向けては、環境に負荷がかかるような事業、あるいはイベントが多く続くわけですけれども、少なくとも県がタッチします公共事業においては、環境に配慮したチェック、フォローをぜひお願いしたい。そのことを県民、企業に広く広げていくというような運動にしていただきたいということ。
それから、新たな戦略づくりの中では、繰り返しになりますけれども、低炭素社会の先に脱炭素社会があるんだということを見据えた、そういう考え方を入れていただきたいということ。その中で、新しいライフスタイルだとか、新しい経済活動スタイル、そういったものにつながるような視点をその中に加えていただきたいなというふうに要望したいと思います。
それから、水素エネルギーの話でも、いろいろ需要創造に向けた各事業をやっていただいているということでお答えをいただきました。
お願いしたいのは、東京、川崎の事例も紹介しましたように、水素エネルギーの取り組みというものを戦略の中でしっかり位置づけていただきたいということであります。
今いろいろお聞きしましても、産業分野は産労、それから、主としてかかわるのが環境、それから総合エネルギーということでは政策企画局、これも関係してきますけれども、こういったところがしっかり連携をとって、推進体制をぜひ進めていただきたいというふうに思います。
それから、最後に、中期財政のところでもお答えをいただきました。
この財政問題に触れますと、なかなか無力感を感じます。国の制度にかなり縛られている部分が多いものですから無力感を感じますけれども、私は、いつも考えますのは、そうは言っても、現場に近いところにいるのが我々地方自治体のいいところだということを考えますと、この実態をしっかり国に対して申し上げながら、少しずつ現場から改革を進めていくことによって、権限と財源を地方に持ってくるという活動は切れ目なくやっていく必要があるかなというふうに思います。
引き続き強く国に働きかけるというお答えをいただきましたので、ぜひ一緒になって進めていきたいというふうに思います。ありがとうございました。
44: ◯副議長(森下利久君) 進行いたします。
田中泰彦議員。
〔五番田中泰彦君登壇〕(拍手)
45: ◯五番(田中泰彦君) 自由民主党の田中泰彦です。
通告に従いまして、質問をさせていただきます。十二月議会最後の一般質問となりますが、平成二十八年としても最後の質問となりますので、よろしくお願いいたします。
私は、愛知の伝統的工芸品の振興について、一、担い手育成、二、魅力ある製品づくりという観点から質問をさせていただきます。
まず、伝統的工芸品とは、長い歴史を持ち、地域に密着した生活用品として、それぞれの伝統や文化が色濃く反映されているものであり、そこには、人々の知恵や長年磨き上げられ、伝えられてきた技術が詰まったものであります。そして、国で伝統的工芸品産業の振興に関する法律に基づき、経済産業大臣が指定をした工芸品であります。指定をされるに至っては、幾つかの要件があり、要件のハードルは決して低くなく、どんな工芸品でも簡単に指定を受けられるものではありません。
また、伝統的工芸品に携わる方の中では、伝統工芸士として産地固有の伝統工芸の保存、技術、技法の研さんに努力をし、そのわざを後世に伝えることで、歴史や伝統、文化に大きく貢献する方々もおみえになり、中には、国から叙勲を受ける、さらには、人間国宝の認定を受ける方もおみえになるほどです。
その伝統的工芸品、この愛知県において指定を受けているのは、有松・鳴海絞、名古屋友禅、名古屋黒紋付染、赤津焼、瀬戸染付焼、常滑焼、名古屋桐箪笥、名古屋仏壇、三河仏壇、豊橋筆、岡崎石工品、尾張七宝の十二品目があります。この十二という数字は、全国的に見ても、京都、東京、新潟、沖縄に次ぐ五番目に多い県であり、全国に対しても大変誇らしい数字であります。
私が住む名古屋市西区においても、技術を伝承し、伝統的工芸品を製造、販売されている方が、名古屋友禅と名古屋黒紋付染、それぞれおみえになります。
私は、地元西区の伝統的工芸品に関して少し歴史をたどってみました。享保元年から延享二年、第八代当主徳川吉宗のもと、質素倹約、緊縮財政が強化され、祭りや芝居事などの娯楽は控えるという政策をする中、享保十五年から元文四年、第七代尾張藩主である徳川宗春は、その規制緩和をし、より尾張文化を華やかに盛り上げるといった真逆の政策をとりました。幕府の引き締めが厳しいときに、江戸や京都から各種の職人が往来した際に技法が伝えられ、名古屋友禅が根づいたということです。
また、名古屋黒紋付染は、藩内の旗やのぼりなどの製造に当たる際の染めの技術に始まり、尾張藩主徳川宗春の規制緩和により、京都や江戸と肩を並べる工芸都市として尾張が発展していく中で、武士や町人まで多くの人々の衣服の供給をするために、その染めの技術が発展したものであります。
今挙げさせていただいたのは、西区内に会社、工房を構える伝統的工芸品二品目についてですが、全国それぞれの工芸品にもそれぞれの歴史背景があるようです。
そこで、私は、実際の声を聞くべく、十二品目全てではございませんが、県内幾つかの従事者のもとへ伺い、時には体験し、肌に触れながら、携わる方々のお話を伺ってきました。
まず、全ての場所で感じたことは、その作業の特殊さでした。素人がぱっと見ただけでも、簡単にできるはずがないと感じるような作業を目の前であっさりとこなす、または、苛酷な環境の中でも黙々と作業を続けるといったような職人の皆さんの姿には大変驚きましたので、御紹介をいたしたいと思います。
例えば、豊橋筆の工房では、筆の原材料であるミリ単位、細さでいったらミクロン単位の動物の毛を狂いなく扱い、一つの工程を難なくこなして、また次の作業に移る。その作業を一日何時間も座った姿勢で行うのだそうです。
また、そのとき使っている道具、例えば、毛を解くために使うくしは、何年、何十年と使い込んだ結果、真ん中だけが大きくすり減ってしまい、もとの形をとどめていない形状になっていました。どれほどの時間を使ったら、鉄のくしが動物の毛に削られてしまうのか、想像もできない世界です。職人さんにお伺いすると、ほかのくしでもできなくはないのですが、このくしでなければだめなんですとおっしゃい、微妙な感触の違いなどに製品が大きく影響をするそうです。
また、名古屋黒紋付染の作業場を拝見させていただいた際には、ただでさえ暑い夏のさなか、熱いお湯や蒸気のおかげでサウナのような作業所内で汗だくになりながらも、繊細に大事に染める作業を行っておられました。
また、水洗と呼ばれる水洗いをする作業の際には、たとえ真冬でも氷水のように冷たい水に、染め上がった生地を腕ごと入れて洗う豪快な作業をした後に、染め上がった反物を見た職人さんは、この黒は赤みのかかった黒だけれども、もっと青が欲しかった、こっちは黄色い黒だけど、本当はもっと赤みが欲しかったと言っておりましたが、素人の私が見る限りほとんど違いはわかりません。単純に同じ黒とは言えないというところに強いこだわりを持ってみえました。
そして、その職人さんは、僕は、一生自分が納得いくものはつくれないと思う、納得できないから納得できるものを追い続けていきたいし、もし納得いくものがつくれたときは、自分がこの仕事をやめるときだとおっしゃってみえました。
私は、作業体験もさせていただき、その難しさに直接触れることができました。また、各職人さんたちの作業を生で見て、お話を伺い、その作業や言葉に強い思いと、物づくりの原点、歴史、伝統、文化を重く感じることができました。
職人さんについての話をする中で、聞くところによると、作業ができるようになるまで五年、一人前になるまでには十年はかかると言われるほど、それぞれの技術は簡単ではなく、長い時間の中でわざに磨きがかかり、重みがあるものに変わっていくのであります。
そして、どの業種にしても、仕事に携わる方の中で、家業を受け継ぐ方が多いのは印象的でした。伝統的工芸品は、もともと特殊な技術を持った職人の世界なので、その技術を外部に出したり盗まれたりしたくない、だから、身内に伝承をしていくといった理由のところもありました。
しかし、最近では、日本、そして自分たちの地域の伝統を大事にしたい、または物づくりがしたいといった気持ちから、伝統産業に興味を持ち、その世界に飛び込む人たちも少なくないようです。各産業の人たちも、技術をつないでいくためにも、後に後継者として育っていく気持ちのある人がふえることは喜ばしいようです。
しかし、そこで多くの方から共通の問題点として出たのは、担い手不足ということでした。興味があり、その世界に入りたいという人はいるのに、なぜ担い手不足になるのか。
全国的に見ても、伝統的工芸品の多くは、時代の流れ、ニーズの変化に伴い、その市場は減少・縮小傾向であります。また、ライフスタイルの変化により、従来つくっていたものだけではなかなか販売に至らなくなってしまった商品も多く、やむを得ず廃業をしてしまった方々も多いそうです。
そして、先ほどお伝えしたように、作業ができるようになるまでに五年、一人前になるまでに十年はかかるというような世界の中、すぐに会社の利益を生むことができないために満足な収入が得られない。また、会社や工房でも、なかなか物が売れないという状況で、技術を身につけたくて飛び込んでくる人たちを支えられるだけの利益が上がりにくい。そのため、せっかく気持ちがあって続けたい若者でも、技術を身につけようとする過程で目の前の生活が苦しくなり、諦めざるを得ないという例も少なくないようです。
そして、ある伝統的工芸品の方に伺った内容で、この担い手不足の対応は喫緊の課題であるということを知りました。
その伝統的工芸品においては、愛知県内に会社または工房として存在しているのは残り三カ所。その中で、実際に技術を持って製品をつくることができる、一人前と呼ばれる職人さんは全部で五名。そのうちの二名は、六十代と七十代の方。実質現役でやってみえるのは、残りの三名のみということでした。
三名のうちの一人の方が、私たちの技術を継承するには、どれだけ見ても十年弱はかかる、仮に、もし僕ら三人に何かがあったら、誰が継承できるのだろうか、資料などはあるにしろ、つないできた歴史が限りなくゼロになってしまう、継続、継承をすることよりも、ゼロになってしまったものをまた一に戻すという作業は、何倍も大変で時間がかかることだ、もしかしたら、今の時代の流れでは、そもそも不可能かもしれないと大変懸念をされていました。
今お伝えしたのは、私が直接聞いた具体的な一例にすぎませんが、ほかの工芸品でも、そういった事例は各地にあるようです。
そして、原材料に対する問題を抱えているところも少なくありません。以前は、県内の各地域でとれていた資源がとれなくなってしまって、品質の確保ができなくなっているのです。国内では賄えないため、海外からの輸入に頼らざるを得なく、物が以前とは変わってしまったとか、つくれていたものがつくれなくなってしまったという問題もあります。
このように、伝統的工芸品の世界においては多くの問題点がありますが、問題点だけではなく前向きな課題にも出会いました。
柔軟な発想のもと、若者が手にとりそうなデザイン性の高いものをつくったり、自分たちが磨き上げてきた技術を現在のライフスタイルに沿うような和風を洋風になじませて、海外の人が見ても、その技術のすばらしさに触れやすくするような商品をつくったり、またはその技術を従来の自分たちの分野とは全く別の分野に反映させ、新商品を開発して売り出したりするなど、新しい可能性を模索する方々にも出会いました。
その例として、私も購入をさせていただいたものの中に、名古屋黒紋付染の技術を使って、ウールを色鮮やかに染めたストールや、有松・鳴海絞の形状記憶の技術を使ってつくられたちょうネクタイなど、まさに伝統工芸品の新しい可能性を感じさせる商品でした。
今紹介した商品は、もちろん市販されているもので、国内はもとより、実際に海外でも反応があり、実際に売れているものだそうです。
このように、つくり手の皆さんは、新しい物づくりの楽しみや、商売としての部分は当然あるにしても、根本には、技術を使って新しいものをつくり、お金もうけをするわけではない、自分たちの歴史、伝統、文化、技術を残すために何をしなければいけないのか、残すためには、売れるものをつくり、地域の皆さんにも、自分たちの地域にこんなものがあるということ、それは世界に向けてもすばらしいものだということを知ってもらいたいというものであり、自分たちの伝統やそれぞれの地域に対する愛情を強く感じました。
そして、冒頭にもお伝えしたように、伝統的工芸品には必ずその背景となる歴史があり、その歴史には物語があります。
現在の愛知県では、物づくり愛知として、特に自動車産業、航空宇宙産業を中心に、日本国内はもとより、世界からの注目を大いに集めているところであります。その物づくり愛知の礎にあるのは、この地に古くから伝統的工芸品を初めとした物づくりの歴史があり、それを失わずに守り育んできた結果が現在の物づくり愛知につながっているのではないでしょうか。
そこでお伺いをいたします。
さきに述べたように、県内の伝統的工芸品に従事する多くの皆様が抱える問題として、担い手不足というものがあります。
これは、各事業者の皆さん、関係の皆様の御努力やお気持ちが何より大事ではあると思いますが、時代の流れや業界の特色上、簡単に解決できることではないと思います。
さらには、歴史自体が途絶えてしまうかもしれないという喫緊の課題を抱える産業もある中で、愛知県として、具体的な担い手育成に向けての取り組みはどのようにされているのか、お伺いいたします。
また、愛知県各地に伝統的工芸品を初めとしたすぐれた産業が多くあり、それらは地域の皆様を支え、そして支えられ、愛されて発展してきました。しかし、私自身も当初知らないこともありましたが、まだまだ十分にその存在やよさを何より地元の我々に知らされていないようにも感じました。
愛知県の伝統的工芸品を初めとした歴史、伝統、文化に触れることは、地域の産業や歴史にも親近感を覚えることにつながり、そのよさを実感することで、各地域、そして愛知県に対するアイデンティティーも育まれるものだと考えます。
ことしの二月、愛知県の教育振興計画であるあいちの教育ビジョン二〇二〇では、未来への学びを充実させ、愛知を担う人材を育成するために、社会・職業人としての自立に向けたキャリア教育の推進を掲げています。特に、子供のころの経験というものは、後の成長にも大きく影響があると思います。小中学校の教育において、物づくり愛知の伝統を支えるとともに、新しい価値を生み出すことができる人材育成をしていくことは、愛知の発展にもつながるかと思いますが、教育長のお考えをお伺いいたします。
また、自分たちがつなぎ、育んできた歴史、伝統、文化を守るために、もしくはその伝統、文化、歴史に憧れ、新しい可能性を求めて取り組む方々がおみえになります。従来のことを突き詰めていくことはしながら、こういった次に向けた新しい魅力ある製品開発をしていく方々をどのように支援していくのか、産業労働部長のお考えを伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。御清聴いただきましてありがとうございました。(拍手)
46: ◯産業労働部長(吉澤隆君) まず、伝統工芸品の担い手育成の取り組みについてお答えをいたします。
県内では、有松・鳴海絞を初めとした十二の伝統的工芸品が経済産業大臣より指定を受けております。
陶磁器や石工品などの一部の産地では、県立窯業高等技術専門校などで職業訓練を行うとともに、市単位では、とこなめ陶の森研修工房や瀬戸染付工芸館染付工房で作家志望者対象の研修を行っており、これらの取り組みに対して、県として、産地を担う人材教育の実施や支援、協力に努めております。
一方、将来の担い手となり得る子供たちの関心を高めるため、産地の組合が主体となり、本県も出捐をしている一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会の助成事業を活用し、地元の小中学生向けに製作体験や教育を行う事業が行われております。平成二十七年度においては、名古屋友禅など九つの産地が六十一校で実施しております。
また、大学生に対しては、児童や生徒を教育する立場の美術教員の養成カリキュラムの中で、本県が仲介窓口となり、平成二十四年度より愛知教育大学において、伝統工芸士による製作体験授業を行っており、今年度も十一月から順次、三河仏壇初め八つの産地の伝統工芸士を派遣しております。
このような事業によりまして、若い世代が伝統的工芸品の担い手となる関心と意欲を高めていけるように努めてまいります。
続きまして、伝統的工芸品の魅力ある新商品の開発などの支援制度についてお答えをいたします。
県では、中小・小規模企業を支援するための公益財団法人あいち産業振興機構にあいち中小企業応援ファンドを造成して、その運用益により地域の特産物として相当程度認識されている鉱工業品や、農林水産物である地域資源を活用した中小企業者の製品開発を支援しております。
十二の伝統的工芸品も地域資源として指定されており、平成二十八年度は、瀬戸染付焼の伝統技術を生かした新商品開発及び伝統工芸有松鳴海絞の技法を用いた新商品開発の二件が採択をされ、伝統的工芸品としては、平成二十年度以降、これまでに合計十一件の商品開発等の支援を行ってきております。
また、地方創生交付金を活用して昨年度創設をいたしました地場産業販路開拓支援事業費補助金では、若手デザイナーを産地へ招聘する事業についても補助対象といたしております。
引き続き、このような事業を活用し、伝統的工芸品をベースとした新たな物づくりを支援することで産地の振興を図ってまいりたいと存じます。
47: ◯教育長(平松直巳君) 小中学校における物づくりの担い手育成についてお答えをいたします。
物づくり愛知の未来を担っていく子供たちに、授業等で地域の産業のよさを実感させることは、自分が住んでいる地域を愛し、その発展を願うことにつながり、自分の生き方について真剣に考えるよい機会になるものと考えております。
小学校では、三、四年生の社会科等において、豊橋筆や七宝焼などの伝統的工芸品にかかわる人々や、地域で働く人々について調べ、その方々の話を聞くことを通して、地域の発展に尽くした先人の働きについて理解させ、地域社会に対する誇りと愛情を育んできております。
県教育委員会では、こうした子供たちの学習経験を踏まえ、発達段階に応じて、体験活動を中心としたキャリア教育を推進いたしております。
小学校五、六年生においては、地場産業等の物づくりの達人を講師として招き、講話を聞いたり、体験活動をしたりすることで、子供たちが働くことや生き方に関する自分の考えを深める場としております。
さらに、中学校二年生を中心に職場体験学習を実施し、地域の会社や工場等での職場体験を通して、働くことの意義ややりがいを実感するとともに、新たな自分を発見したり、自分の今後の進路に向けて考えたりする場といたしております。
今後も、地域の産業の見学や体験、そこで働く人々とのかかわりを充実させることで、望ましい勤労観や職業観を養うとともに、物づくり愛知の伝統を支える人材の育成に努め、愛知の発展につなげてまいりたいと考えております。
48: ◯五番(田中泰彦君) 各御答弁をいただきました。
それでは、最後に、私のほうからは、また改めて現場の中で聞いた生の声を御紹介しながら、要望をさせていただきたいと思います。
まず、県外で修業をしてから愛知県に戻ってこられた方が、愛知県は伝統や文化が見えないということをおっしゃいました。かなり厳しいことを言われたなと思いましたし、私もそのときはショックでありましたけれども、逆にそれだけ本来であれば見せることができる伝統文化がこの愛知県にはたくさんあるということであると思います。
そして、従事者の皆さん、いろんな御意見がありましたが、先ほども申し上げて御答弁もいただきましたが、担い手不足というのは本当に大きな問題であります。
そして、改めてお伝えをいたしますが、今のままでは後継者がいない、担い手がないという理由で、もしかしたら一つの伝統工芸品が途絶えてしまうかもしれないということが本当に目の前まで来ているということが現実であるということを皆様にも知っていただきたいと思います。
そして、担い手不足を含めた多くの問題がありますが、この伝統工芸品に携わる多くの皆様は、ぜひ愛知県として、我々の地元にどれだけすばらしいものがあるのかを現場で直接聞いて肌で感じてほしいということが皆さんおっしゃってみえました。今後の課題にぜひしていただきたいなというふうに思います。
そしてまた、先日、知事提案説明、観光振興の中に、本県の観光資源の魅力を海外へ発信というふうにありましたが、この伝統的工芸品も私は十分にそのツールになり得ると思っております。
ほかに二つとないものや技術、これらを県外のみならず海外にも発信していくことは十分可能であると思いましたし、先ほどお伝えしました、愛知県は伝統や文化が見えないというものがもっと見えるようになれば、これもまた海外にも発信していけるんじゃないかなというふうに思っております。
そして、私は以前、金沢駅にお邪魔をしたことがあります。北陸新幹線開通の際に、世界で最も美しい駅十四選にも国内で唯一選ばれた駅でありまして、大変そのときに注目を浴びていたことを皆さん御承知かと思いますが、駅構内に、見せていただいたのは、金沢の伝統的工芸品をモチーフに使った壁だったりだとか、例えば、金箔をガラスに入れて、衝突防止のガラスに埋め込むとか、そういった工夫がありました。
そのような柔軟な発想を持って、これから先の二〇二七年、リニア開通に向けての新しい名古屋駅に対して、伝統的工芸品も含めたさまざまな愛知県の魅力をどんどんどんどん提案してみてはいかがでしょうか。
今回の質問では、振興の部分にはそこまで今回は踏み込むことはできませんでしたが、今後につながることを期待いたしたいと思います。
そして、最後に、先ほども申し上げましたが、現在の物づくり愛知、本当にすばらしく、愛知県の重要課題の一つであることは間違いありません。ただ、その礎には、何があって、どのような伝統や歴史があるのかということを、今後改めてスポットがその部分に当たることを期待して、終わりたいと思います。ありがとうございました。
49: ◯副議長(森下利久君) 以上で質問を終結いたします。
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50: ◯四十一番(中根義高君) ただいま議題となっております議案は、さらに審査のため、それぞれ所管の常任委員会に付託されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
51: ◯副議長(森下利久君) 中根義高議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
52: ◯副議長(森下利久君) 御異議なしと認め、よって、ただいま議題となっております議案は、それぞれ所管の常任委員会に付託することに決定をいたしました。
なお、議案付託表は議席に配付をいたしました。
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日程第二 決算第一号平成二十七年度愛知県一般会計歳
入歳出決算から決算第十二号平成二十七年度愛
知県県営住宅管理事業特別会計歳入歳出決算ま
で
53: ◯副議長(森下利久君) 次に、決算第一号平成二十七年度愛知県一般会計歳入歳出決算から決算第十二号平成二十七年度愛知県県営住宅管理事業特別会計歳入歳出決算までを一括議題といたします。
本件については、一般会計・特別会計決算特別委員会において閉会中継続審査されておりますので、委員長の報告を求めます。
一般会計・特別会計決算特別委員長長江正成議員。
54: ◯六十番(長江正成君) 一般会計・特別会計決算特別委員会に付託されましたのは、決算第一号平成二十七年度愛知県一般会計歳入歳出決算外十一件の決算であります。
各決算につきましては、十一月七日、八日、九日、十四日、十五日及び二十一日の六日間にわたって慎重に審査を行い、採決の結果、決算第一号から決算第十二号までは、いずれも全員一致をもって認定すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。
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55: ◯副議長(森下利久君) これより採決をいたします。
決算第一号平成二十七年度愛知県一般会計歳入歳出決算、決算第二号平成二十七年度愛知県公債管理特別会計歳入歳出決算、以上、二件の決算を一括起立により採決をいたします。
一般会計・特別会計決算特別委員長の報告のとおり、決算第一号及び決算第二号の二件の決算を認定することに賛成の議員の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
56: ◯副議長(森下利久君) 起立多数と認めます。よって、決算第一号及び決算第二号の二件の決算は認定をされました。
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57: ◯四十番(石塚吾歩路君) 一般会計・特別会計決算特別委員長の報告のとおり、決算第三号から決算第十二号までの十件の決算は認定されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
58: ◯副議長(森下利久君) 石塚吾歩路議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
59: ◯副議長(森下利久君) 御異議なしと認め、よって、決算第三号から決算第十二号までの十件の決算は認定をされました。
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日程第三 決算第十三号平成二十七年度愛知県県立病院
事業会計決算から決算第十六号平成二十七年度
愛知県用地造成事業会計決算まで
60: ◯副議長(森下利久君) 次に、決算第十三号平成二十七年度愛知県県立病院事業会計決算から決算第十六号平成二十七年度愛知県用地造成事業会計決算までを一括議題といたします。
本件について、公営企業会計決算特別委員会において閉会中継続審査をされておりますので、委員長の報告を求めます。
公営企業会計決算特別委員長三浦孝司議員。
61: ◯八十七番(三浦孝司君) 公営企業会計決算特別委員会に付託されましたのは、決算第十三号平成二十七年度愛知県県立病院事業会計決算外三件の決算であります。
各決算につきましては、十月十九日及び二十日の二日間にわたって慎重に審査を行い、採決の結果、決算第十四号から決算第十六号までは賛成多数をもって、決算第十三号は全員一致をもって、いずれも認定すべきものと決し、決算第十四号及び決算第十五号の剰余金処分計算書案は、いずれも賛成多数をもって原案を可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。
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62: ◯副議長(森下利久君) これより採決をいたします。
決算第十四号平成二十七年度愛知県水道事業会計決算、決算第十五号平成二十七年度愛知県工業用水道事業会計決算、決算第十六号平成二十七年度愛知県用地造成事業会計決算、以上三件の決算を一括起立により採決をいたします。
公営企業会計決算特別委員長の報告のとおり、決算第十四号から決算第十六号までの三件の決算を認定し、決算第十四号及び決算第十五号の二件の剰余金処分計算書案を原案のとおり可決することに賛成の議員の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
63: ◯副議長(森下利久君) 起立多数と認めます。よって、決算第十四号から決算第十六号までの三件の決算は認定をされ、決算第十四号及び決算第十五号の二件の剰余金処分計算書案は原案のとおり可決をされました。
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64: ◯四十一番(中根義高君) 公営企業会計決算特別委員長の報告のとおり、決算第十三号は認定されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
65: ◯副議長(森下利久君) 中根義高議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
66: ◯副議長(森下利久君) 御異議なしと認めます。よって、決算第十三号は認定をされました。
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日程第四 請願(十七件)
67: ◯副議長(森下利久君) 次に、請願を議題といたします。
本議会に提出をされました請願十七件については、お手元に配付してあります請願文書表のとおり、所管の常任委員会に付託をいたします。
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68: ◯四十番(石塚吾歩路君) 本日はこれをもって散会し、明十二月八日から十二月十九日までは委員会開会等のため休会とし、十二月二十日午前十時より本会議を開会されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
69: ◯副議長(森下利久君) 石塚吾歩路議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
70: ◯副議長(森下利久君) 御異議なしと認めます。明十二月八日から十二月十九日まで委員会開会等のため休会とし、十二月二十日午前十時より本会議を開きます。
日程は文書をもって配付をいたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後四時三十一分散会
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