愛知県議会 2011-11-01
平成23年11月定例会(第4号) 本文
国におきましては、東日本大震災関係経費を主な内容といたします平成二十三年度第三次補正予算が十一月二十一日に成立をいたしました。
本県といたしましても、国の施策に呼応するため、関係省庁と連絡を密にしながら、情報収集に努めてまいりましたが、その内容が把握できましたものにつきまして、一般会計で総額六十三億六千二百七十二万余円の補正をお願いするものであります。
その内容でございますが、国の交付金による地域自殺対策緊急強化基金や、緊急雇用創出事業基金の増額のほか、防災対策としての道路、河川の整備や農地防災事業などの公共事業につきまして、所要の経費を計上するものであります。
また、あわせて、基金の存続期限を延長するための条例の一部改正、公共事業に係る関係市町村の負担金の変更につきましても提案をいたしております。
よろしく御審議の上、適切な御議決を賜りますようお願い申し上げます。
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〔議案は末尾付録に掲載〕
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5: ◯副
議長(
深谷勝彦君) これより一般質問並びに提出議案に対する質問を許します。
通告により質問を許可いたします。
安藤正明議員。
〔二十一番
安藤正明君登壇〕(拍手)
6: ◯二十一番(
安藤正明君) 通告に従い、順次お尋ねいたします。
まず、名古屋港の防災対策についてであります。
私は、
愛知県議会海外調査団の一員として、去る十月三十日から十一月六日まで北米へ調査に行き、そこでの私の担当は、一九五九年三月三十一日、名古屋市とロサンゼルス市の姉妹提携と同時に、名古屋港と姉妹提携したロサンゼルス港の港湾局において、港湾施設の整備、環境対策についての調査でありました。
日本は、現在、リーマンショック以降の長引く不況のあおりで経済が冷え込んでおりますが、コンテナ取扱量全米一位のロサンゼルス港でも同様で、昨年は、コンテナ取扱量世界第十位圏内から滑り落ち、ことしも上向く兆しは見えないとのことでした。
しかし、一方で、ロサンゼルス港が世界の港湾をリードする分野もあります。それは環境対策です。
二〇〇六年、ロサンゼルス港のお隣のロングビーチ港と共同策定したサンペドロ湾クリーンエア・アクションプランを打ち出し、船の減速運航や低硫黄燃料の使用の推奨、陸電設備の導入や、小さなトラックへのリプレース促進など、意欲的な取り組みを続けております。
私は、その中で、環境対策として注目度が高い陸電供給システムについて、特に調査をしてまいりました。
停泊中に船のエンジンを停止し、陸側から必要な電力を供給し、船の排出ガス、CO2を大幅に削減するシステムは、連邦政府や市民から、船舶からの排気ガスが大気汚染として健康面を害することを危惧した強い要望により、ロサンゼルス港で開発され、二〇〇四年にチャイナ・シッピング・コンテナ・ラインズが初めて導入し、日本郵船のYTIターミナルでも導入済みであります。各ターミナルでも順次導入中で、今年度中にはすべてのターミナルで整備されるとのことでございました。
この陸電システムは、船側に受電装置を設置し、船のケーブルと陸側の設備を接続するというものですが、船にその受電装置を装備していないとロサンゼルス港には入港できないという厳しいもので、ロサンゼルス港湾局は、国際海事機構に働きかけ、陸電を港湾における環境対策のグローバルスタンダードとすることを目指しています。上海や香港の港湾当局でも、陸電導入を検討している模様でございます。
ロサンゼルス港で陸電に使う電力は、港湾内で発電されたものか、また、その電力はクリーンエナジーかという私の質問に対し、港湾当局は、ロサンゼルスは盆地でCO2がたまりやすいため発電できないので、ユタ州から電力を送電しており、その電力は石炭等の化石燃料で発電したものということでした。
ロサンゼルス港でこれまでディーゼルエンジンが排出していたCO2が、陸電を取り入れたことによりユタ州で排出されているという結果に、環境と開発は互いに反するものではなく、共存し得るものとしてとらえ、環境保全を考慮した節度ある開発が重要であり、港の環境整備については、持続可能な開発、持続可能な発展であるべきだと率直に感じた次第であります。
また、津波等の防災対策について、ロサンゼルス航路入り口に高さ四メートルほどの防波堤が整備されておりました。
ロサンゼルスでの最近の災害は、一九九四年一月にノースリッジ地方で発生したロサンゼルス地震とも呼ばれるもので、マグニチュード六・七、震源は、十四・六キロと極めて浅い地震で、被害を受けた人は、死者五十七名、負傷者約五千四百名、入院患者千四百六十七名に上ります。
また、高速道路が崩壊するなど被害を受け、米国史上最も経済的被害の大きい地震だったということですが、名古屋港で心配されるような津波、液状化等の被害は記録にはありませんでした。
津波の心配について港湾当局に尋ねましたが、過去には数十センチの津波があった程度で、心配はしていないとのことでございました。
ロサンゼルス港の環境に対する取り組みはグローバルスタンダードとなるかもしれませんが、名古屋港におきましては喫緊の課題、それは防災対策であります。その防災対策について伺います。
名古屋港の高潮防波堤や防潮堤は、津波、高潮から人々の暮らしや、この地方の産業活動を守り、コンテナ貨物、バルク貨物や、完成自動車を扱う総合港湾としての名古屋港の発展に重要な役割を果たしてまいりました。
しかし、高潮防波堤は、昭和三十九年の完成以来およそ五十年が経過し、老朽化も進んでおります。昭和三十四年の伊勢湾台風時に、貯木場の木材の流出で亡くなられた方が多数おられることをいま一度思い起こすべきと考えております。
このような中、東海・東南海・南海の三連動地震に宮崎県沖の日向灘と南海トラフ沿いの海溝軸を震源域に加えた五連動地震の発生も心配されており、今回の東日本大震災を踏まえた名古屋港の防災対策をいかにスピード感を持って進めていくかが大きな課題となっております。
国の中央防災会議の専門調査会の報告では、東北地方太平洋沖地震のような最大クラスの津波に対しては、防波堤の整備などのハード対策だけでなく、被害の最小化を主眼とする減災の考え方に基づき、防災教育の徹底やハザードマップの整備など、避難することを中心とするソフト対策を重視しなければならないとしております。
東日本大震災発生時には、GPS波浪計は、沿岸に達する十分ほど前に巨大な津波をとらえました。気象庁は、この観測データを受けて、その津波の高さの予測を宮城県では六メートルから十メートル以上に、岩手県、福島県では、三メートルから六メートルに引き上げるなど、GPS波浪計は、津波警報のためのデータとして活用され、住民への情報提供に重要な役割を果たしてまいりました。
このことから、大規模地震による津波を早く観測し、住民が迅速かつ安全に避難するために、津波の発生が早い段階で観測できるGPS波浪計の設置は大変有効であると考えられます。
しかし、GPS波浪計は、東海地方においては、三重県尾鷲沖、静岡県御前崎沖には既に設置をされていますが、愛知県の沖合には設置をされていません。
国において、第三次補正予算で伊勢湾口へのGPS波浪計の設置に向けた調査費などが予算化されました。ぜひ早急に伊勢湾口へGPS波浪計の設置をし、避難時間の確保に役立てる必要があると考えますが、調査の内容や設置、運用の見通しについてお尋ねをします。
次に、鍋田ふ頭及び飛島ふ頭において、年間約二百五十万個が取り扱われているコンテナの流出防止対策について伺います。
平成二十一年十月に、台風十八号が知多半島付近に上陸し、三河港では高潮で埠頭が浸水し、多数のコンテナが散乱するという被害がありました。
さらに、東日本大震災では、仙台港でも約四千四百個のコンテナのうち、約二千個が巨大津波により流出したとも言われています。流出したコンテナは、航路や泊地など海底に沈んだり、広範囲にわたり海岸に打ち上げられ、人家などにも大きな被害をもたらしました。
名古屋港においても、一たび東日本大震災並みの大規模地震による津波が発生すれば、大量のコンテナが市街地へ流出し、多くの県民の生命、財産を奪うことになります。また、航路や泊地に流出すれば、港としての機能が奪われるなど、甚大な被害が発生すると予想されます。
こうした津波発生時でもコンテナが流出しないような対策を講じる必要があると考えますが、名古屋港におけるコンテナの流出防止対策はどのようになっているかお尋ねします。
次に、質問の第二は、木曽岬干拓地についてお尋ねをします。
木曽岬干拓地は、愛知県と三重県の県境に位置する木曽川河口部付近で、国営干拓事業として造成された土地であり、その面積は約四百四十ヘクタールと広大なものとなっております。
当初は、食糧増産の必要性から水田造成を目的として、昭和四十一年度に事業がスタートされました。その後、減反政策により畑地造成に目的を変更して事業が進められ、昭和四十九年度には、延長約六キロの堤防で締め切った、おおよそ長さ四キロ、幅一キロの区域が陸地化されました。
しかしながら、愛知、三重両県の境界線が確定せず、更地のまま放置された状況が続き、また、事業費等の増加に伴う農地の配分価格の上昇が想定されることなどにより、干拓地での農業経営が困難と見込まれることとなりました。
このため、平成二年、会計検査院は、早急に県境を確定するよう関係者に要請する必要がある、干拓地の利用について、多角的に検討する必要があるとの意見を取りまとめました。
これを受けて、国の事業は休止され、その後の両県初め関係者の調整の結果、平成八年九月に県境が確定し、愛知県側は約八十ヘクタール、三重県側は約三百六十ヘクタールとされたところであり、まさに湾岸戦争は終結したのであります。
また、土地利用に関しては、学識経験者、経済界、地元自治体等で構成された委員会により検討されました。
検討の結果、平成十一年六月、当面は現状の地盤高での利用を前提とした適切な利用を図りつつ、将来的には盛り土等を前提とした高度な形での都市的な土地利用に発展させていくという段階的な土地利用計画の策定が愛知県と三重県に対して提言されました。
その後、平成十三年三月、国と愛知、三重両県は、本干拓地に係る土地売買契約を結びましたが、契約では、この提言を踏まえ、野外体験広場や運動広場、自然体験広場等を整備し、供用開始後五年間はその用途で使用することとされています。
そこでお尋ねいたします。
国との売買契約後、本干拓地で具体的にどのように事業を行っており、その進捗率はどうなっているのかお聞かせください。
次に、本干拓地での新たな土地利用の可能性についてお伺いします。
ことし三月の東日本大震災に伴う福島での原発事故をきっかけに、再生可能エネルギーへの関心はこれまでになく高まっております。
ことし八月には、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法が成立し、来年七月からは、再生可能エネルギーでつくられた電力の固定買取制度が始まります。
そうした中、本県内では、武豊町で、ことし十月三十一日、現在運転中の太陽光発電では全国二番目の規模となるメガソーラーたけとよが発電出力七・五メガワットで運転を始めております。ここでは、一般家庭約二千世帯分の電力がつくり出されるとのことです。
また、田原市では、三井化学を中心とする企業グループが、これを上回る五十メガワットの太陽光発電事業を計画しております。さらに、知多市でも、大規模な太陽光発電が検討されていることが先日報道されました。
本干拓地については、さきに述べた提言では、将来的には高度な都市的土地利用を図るとされております。この提言を生かし、地域の発展を図っていくためには、名古屋大都市圏の中にあり、伊勢湾岸自動車道や名古屋港など交通・物流アクセスにすぐれた本干拓地の特性を生かし、工場や物流基地、さらには商業やイベント施設など、さまざまな業種を対象に企業誘致を行っていく必要があります。
しかしながら、最近の情勢を考えますと、臨海部への企業の誘致は大変厳しいものではないかと思います。企業の中には、東日本大震災での津波による大きな被害を見聞きし、臨海部への進出に二の足を踏む企業もあると聞いています。
また、この地方は、さきの質問でも申しましたが、五連動地震の発生が予想されており、本干拓地においても、津波や液状化現象の発生による大きな被害が心配されます。
こうした状況から、私は、本干拓地の用地を事業者に売却、あるいは賃貸して、メガソーラーを設置し、大規模な太陽光発電の拠点とすることを提案いたします。
今後、全国各地の原子力発電所の休止も想定され、ますます厳しくなると見込まれる我が国の電力需給を少しでも緩和するためにも、本干拓地での太陽光発電の実施は、まことにタイムリーな取り組みと言えるのではないでしょうか。
本干拓地の広大な用地を活用すれば、田原市での計画を上回るさらに巨大な規模での太陽光発電事業も可能であると考えます。
そこで、本干拓地でのメガソーラー設置による太陽光発電の実施について、どのようにお考えかお聞かせください。
質問の第三は、児童生徒の豊かな心をはぐくむ取り組みについてお伺いします。
本年三月の東日本大震災では、想像を超える被害が発生しました。そのような状況の中、被災地の避難所で小学生が壁新聞を発行して、避難生活を送る人たちを元気づけたり、中学生や高校生がみずから進んでボランティア活動に動き出したりするなど、地域を支える大きな力となっている姿が多く報道されました。
また、私も実際に被災地を訪れたとき、想像を絶する状況の中で懸命に活動する子供たちの姿を目にしました。未曾有の大震災に遭遇したにもかかわらず、被災した子供たちがそれぞれの避難所において秩序正しく生活するとともに、積極的にほかの被災者に対してお手伝いするなど、思いやりのある行動が随所で見られます。
子供たちが人と人との助け合いや、コミュニケーションの大切さをまさに身をもって体験し、成長していく姿を大変頼もしく感じています。
こうした姿に、復興に当たる多くの大人たちが励まされ、突き動かされたことでしょう。このようなたくましさや思いやりのある行動は、子供たちが家庭や地域、学校において、これまで受けてきた教育によるものも大きいのではないかと思います。
被災地の方々はもとより、あらゆる人たちが復興に向け懸命に努力を続けている、こんなときだからこそ、私たちもしっかりと将来を見据え、愛知の子供たちをたくましく、心豊かに育てていきたいと考えます。
子供が心豊かな人間に育つためには、保護者や地域の人たちの愛情を背に、安心して周りを見回し、人や動物などを含めたさまざまな事象とかかわっていける環境が必要であります。
特に小学生までは、五感を通じてのさまざまな疑問、感動、悲しみ、怒り、喜びなどの体験をちりばめ、そのやわらかい脳と心にさまざまな種を仕込み、人間としての土台をつくる時期であると思います。
例えば、幼少のころから兄弟や友達と一緒に遊んだり、話をしたりすることもある中で、時にはけんかやいじわる、あるいは言い争いをすることもあります。そんな経験を通じて、さまざまな人の気持ちや痛みがわかり、互いに感情を共有することができるようになり、ひいては思いやりが育ってくるのだと思います。
また、幼少期に動物と触れ合い、育てる体験をすることは、命の尊さを学び、思いやりのある心をはぐくむために有意義なことであると思います。
人間も動物の仲間です。幼少期の子供にとって、大事にすれば愛情を返してくれる身近な動物たちとのかかわりは、命を理解し、交流する喜びを与えてくれる、簡単な、そして、有効な体験となります。
多くの小学校では、ウサギや鶏などの小動物を飼っており、飼い方の指導や動物の健康管理など、地域の獣医師を初め、多くの人たちにも協力を得ながら、子供たちは世話をすることを通して、愛情を持って接することの大切さを実感しています。
また、飼っている動物の死や、新しい命の誕生などを経験することで、かけがえのない命の大切さを学んだりもしています。
しかし、私たちの身の周りに目を向けると、近年、外で遊ぶ子供たちの姿も少なくなり、都市化が進む地域では、自然や生き物と触れ合うことが難しくなっています。
また、核家族化や地域のつながりの希薄化による家族や地域の教育力の低下も懸念されており、そういった環境は、子供たちが豊かな心をはぐくみにくい状況にあるように思います。
本来、子供たちに豊かな心を育てる役割は、家庭や地域が中心となって担うべきものであると思いますが、このような状況の中で、学校は、地域や家庭とともに積極的に体験活動なども行い、子供たちに豊かな心をはぐくんでいくことが必要であると考えます。
学校によっては、地域の方々や保護者など、さまざまな人たちとかかわって活動を進めているところがあり、効果を上げているとも聞いています。
そこで、小中学校において児童生徒が命の大切さを学び、豊かな心をはぐくむためにどのような取り組みを進めていかれるお考えか、教育長にお伺いします。
以上、ソフト、ハード両面について質問をいたしました。
今回初めての質問でしたが、ある先輩議員経験者から、単なるイエスマンにしかすぎない議員になるなとアドバイスをいただきました。
したがって、答弁次第では、これから何度も質問に立つことを宣言して、壇上からの質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
7:
◯建設部長(
近藤隆之君) 名古屋港の防災対策についての御質問のうち、初めに、伊勢湾口のGPS波浪計の調査内容や設置、運用の見通しについてでございます。
GPS波浪計は、沖合での津波観測情報をいち早く把握できることから、名古屋港などで働く人々や、沿岸地域に暮らす多くの県民の皆様の迅速かつ安全な避難のために大変有効なものとなります。
しかしながら、これまで伊勢湾口に設置されていなかったため、ことし七月には、名古屋港管理組合を初め関係自治体とともに、高潮防波堤の機能強化とあわせて、GPS波浪計の設置を国に強く要請したところでございます。
今回、国の第三次補正予算で伊勢湾口へのGPS波浪計の設置に係る調査・設計費が計上され、具体的な設置場所の検討調査とあわせて、ブイ本体、観測機器や通信システムなどの設計に着手する予定と聞いております。
本格運用までには設置後約一年間の試験期間が必要とされておりますが、本県といたしましては、一日も早く運用が開始されますよう、引き続き国や名古屋港管理組合を初めとする関係機関と連携して取り組んでまいります。
次に、コンテナの流出防止対策についてでございます。
本県が平成十五年に公表した東海・東南海連動地震の被害予測調査では、名古屋港におきましては、津波の高さは約一・五メートルと予測されており、満潮時においても、コンテナターミナルの岸壁より約〇・九メートル低いため、これまで津波によるコンテナ流出の可能性は小さいと考えておりました。
しかし、東日本大震災による大規模なコンテナ流出による被害の大きさを目の当たりにし、港の機能の早期回復や、背後地域の人命と財産の保護のため、コンテナ流出による被害の軽減の必要性を改めて認識したところでございます。
このため、名古屋港管理組合では、コンテナ流出による航路の埋没や、建物への被害などを軽減するための他港での取り組み状況を調査することとしております。
コンテナ流出による被害の軽減策につきましては、中央防災会議や、本県が進める三連動地震に向けた被害予測調査などにおける検討の状況もにらみながら、有効な対策の実現に向けて、国や名古屋港管理組合、また、コンテナ関係事業者と検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。
8:
◯地域振興部長(
山田周司君) 木曽岬干拓地についてのお尋ねのうち、具体的にどのような事業を進め、その進捗はどうなっているかについてであります。
木曽岬干拓地につきましては、全体の約八割以上が三重県側の土地であり、本県部分は、南北に細長い土地の形状となっております。このため、本県単独では効率的な利用が難しいことから、三重県と一体となって整備を進めているところであります。
具体的には、国との土地売買契約に基づく土地利用計画に沿って整備を進めており、この計画では、本干拓地のおおむね北半分に当たるエリアを野外体験広場として先行して整備し、その後、南半分を運動広場や農業体験広場、自然体験広場として整備することとしております。
現在、野外体験広場を整備する区域に建設残土を受け入れて、盛り土工事を実施しているところであります。盛り土工事は、平成二十四年度末には完了する見込みとなりましたので、それ以降において、当初の計画どおり野外体験広場として利用できるよう整備に取り組んでまいりたいと考えております。
なお、野外体験広場の整備に当たり、環境アセスメントを実施したところ、チュウヒを初め希少な鳥類等が生息していたことから、事業実施においては、これらの鳥類等への保全措置が必要と判断されました。このため、これらの鳥類等の生息地確保のため、干拓地南端部に保全区を整備し、保全区への誘導を図っているところであります。
今後、本干拓地の残り部分についても、順次三重県とともに整備に向けて検討し、事業を進めてまいりたいと考えております。
次に、木曽岬干拓地での太陽光発電の実施についてお答えをいたします。
太陽光発電を初めとする再生可能エネルギーは、石油等にかわるクリーンなエネルギーとして、その導入と促進は、我が国のエネルギー政策上重要な課題とされております。
御提案いただいた本干拓地での太陽光発電ですが、直ちに実施するには幾つかの課題があると考えております。
まず、本干拓地に係る国との売買契約では、供用開始後五年間は契約に定められた用途で利用することとされており、メガソーラーを設置して太陽光発電を実施するためには、国との土地利用計画の変更について協議する必要があります。また、本干拓地の南のエリアに生息しているチュウヒを初め、希少な鳥類等への配慮措置も必要と考えております。
さらに、大量の電力を送るための特別な送電線が近くにないため、長距離の送電施設が必要となることや、メガソーラーの冠水対策が必要となる可能性もあることなど、事業採算上の課題もあります。
本干拓地でメガソーラーによる太陽光発電を直ちに実施するためには、こうした幾つかの課題が想定されますが、広大な土地を有効に活用する方策の一つでありますので、本県としましても、三重県と連携してその可能性を探ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
9:
◯教育長(
今井秀明君) 小学校、中学校における児童生徒の豊かな心をはぐくむ取り組みについてお答えをいたします。
子供たちが命の大切さを学び、豊かな心をはぐくむためには、地域の方ともかかわり、さまざまな体験を積むことが極めて重要なことであります。
その一つとして、議員お示しのように、県内の多くの小学校では、地域の獣医師など多くの方々に御協力いただきながら小動物を飼っており、子供たちは世話をし、触れ合う体験を通して、命あるものを慈しむ気持ちをはぐくんでおります。
県教育委員会といたしましては、現在、県内すべての小中学校で心の教育推進活動を実施し、道徳の時間の授業を地域の方などに公開したり、命の大切さについて考える講演会を行ったりするなど、さまざまな活動に取り組んでいるところでございます。
また、平成二十一年度から進めております地域にはたらきかける学校づくり推進事業では、子供たちが地域の花壇の整備や、老人介護施設の高齢者との交流など、地域に貢献する活動を通して、学校内だけでは得られない多くの体験を積むことで豊かな心をはぐくんでおります。
さらに、本年六月に策定をいたしましたあいちの教育に関するアクションプランIIにおきましても、かけがえのない自他の命を大切にすることのできる人間を育てることを基本理念として掲げておりまして、子供たちが命の大切さを実感できる活動や、人や自然とかかわり合う体験活動を家庭、地域、学校が協働して進めることの重要性を示したところでございます。
今後も、各学校の取り組みを紹介し、啓発を図るとともに、引き続き家庭、地域、学校の連携を大切にして、子供たちの豊かな心をはぐくむ取り組みを進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
10:
◯知事(
大村秀章君)
安藤正明議員の御質問のうち、名古屋港の防災対策について、私からもお答えをさせていただきます。
東日本大震災を受けまして、現在、その検証や新たな被害予測調査を進めておりまして、防災対策の抜本的な見直しにつきましては、今後それを踏まえた上で行っていくこととしておりますが、先月開催をいたしました愛知県防災会議では、これまでの各機関の検証結果を踏まえた地域防災計画の改訂を行い、港湾における津波被害低減対策など、必要な対策を新たに盛り込んだところであります。
名古屋港の背後には約二百五十万人の人々が暮らし、港やその周辺には、我が国の経済を牽引する製造業を初め、さまざまな企業が立地しております。一たび津波など大規模な災害が発生をし、被害を受けた場合には、多くの県民の皆様の命や財産が危険にさらされるとともに、我が国経済への影響もはかり知れないものがございます。
こうした中、今回、国の第三次補正予算におきまして、伊勢湾口へのGPS波浪計の設置や、名古屋港の高潮防波堤の機能強化に向けた予算を確保することができました。
こうした取り組みを今後さらにしっかりと進めるとともに、ソフト対策とハード対策のとり得る手段を組み合わせて、名古屋港に面する地域全体の防災力を向上させていくことが大変重要であると考えております。
引き続き、名古屋港の地震・津波対策を着実に進めていくため、国、名古屋市、名古屋港管理組合と連携し、地域一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。
以上です。
11: ◯二十一番(
安藤正明君) それぞれ御答弁いただきましたが、一点要望いたします。
自然の猛威の前で人間は無力だという言葉があります。油断への戒めでもありますが、私は、自然の猛威から生命財産を守ることは可能だと思いますし、それができるのは科学や技術しかないとも思っております。
大村知事は、愛知県の将来像を世界と闘える愛知とよく言われます。一方で、愛知県は、愛と知恵の愛知とも言われております。
コンテナは、長さ約四十フィートの巨大な物体ではありますが、自然の猛威に立ちはだかるコンテナの流出防止対策を、愛知の知恵を結集して、一日でも早く二百五十万人の生命、財産を守るためにお考えいただくことを要望して、私の質問を終わります。
12: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 進行いたします。
岡江智子議員。
〔五十番
岡江智子君登壇〕(拍手)
13: ◯五十番(
岡江智子君) それでは、通告に従い、河川の護岸の整備について質問させていただきます。
ことしも、七月の新潟・福島豪雨や、九月に紀伊半島を襲った台風十二号など、台風や前線に伴う集中豪雨が全国各地で発生しています。
先日、県から「豪雨災害(速報版)」のパンフレットをいただきました。それによれば、県内においても、七月十九日から二十日にかけて、台風六号により西三河地方に大雨が降り、岡崎市では、乙川の堤防から水があふれるなど、二十三棟の浸水被害が発生しました。
また、八月二十二日深夜から二十三日未明に東海地方を襲った豪雨では、一宮市や江南市を中心に住宅千三百九十九棟が、四日後の八月二十七日未明には、同じく江南市を中心に時間雨量八十二ミリメートルを記録し、江南市で住宅二百五棟、一宮市で二十四棟がそれぞれ浸水被害を受けました。
さらに、記憶に新しい九月二十日の台風十五号では、尾張東部で大雨となり、庄内川や支川の八田川で越水するなど、県内で九百七棟が浸水する大きな被害が発生しました。浸水棟数は、いずれも平成二十三年十月二十五日現在のものです。
また、豪雨による被害は、このような浸水被害だけではありません。河川の場合、川岸や堤防護岸の崩壊などの被害も発生しています。
県に確認したところ、ことし、河川の災害として国へ復旧を申請した箇所は、台風六号による被害で二十一カ所、台風十五号による被害で二十九カ所、そのほか豪雨による被害も含め、これまでに五十六カ所に上っています。
地域に降った大雨が一たん河川へ流入すれば、その洪水を下流へ安全に流すことが求められます。そのためには、河川の改修において、洪水を流す断面を大きくすることに加え、河川沿いの地域の安心・安全のためにも、堤防の決壊や川岸の崩壊を防ぐ護岸工が必要であると考えます。
一方、河川の役割は、洪水を安全に下流へ流す、いわゆる治水だけではありません。昭和の時代は、治水と河川の流水を利用する、いわゆる利水が河川の役割とされてきました。
平成に入って、河川が持つ自然環境に配慮した川づくりが取り組まれるようになり、それまでのコンクリート護岸から植生を促すような護岸が試験的に施工されるようになりました。
平成九年の河川法の改正では、それまでの治水、利水に加え、環境の視点が導入されました。河川の担う役割として、新たに潤いのある水辺空間や、多様な生物の生息・生育環境としてとらえられ、また、地域の風土と文化を形成する重要な要素として、その個性を生かした川づくりが求められるようになりました。
さらに、平成十九年には、川の生き物や景観形成に配慮した多自然型川づくりがすべての川づくりの基本となりました。このような川づくりの考えの変化に伴い、生物の生息・生育環境に配慮した護岸工法で石積み工法があります。
お城の石垣でも見られるように、地震に対しても強く、古代から石と人類のかかわりは深く、人類の知能は石によって進化したと言っても過言ではありません。
しかし、河川構造物を石積みにするには、コンクリート構造物よりコスト的に高くなり、石材の確保や石積み作業の技能士に対しても、全国で五百人程度と非常に少なく、石工職人の確保が難しいなどの認識から、石積み構造物による護岸整備をあきらめてしまい、結果として、河川景観の形成、保全という視点から工夫、取り組みが不足している状況です。
しかし、震災地のニュースなどで新しい石積み工法が新開発されていることを知りました。特殊な施工技術ではなく、施工法の習得は容易であり、施工スピードが速く、工期短縮が可能です。
また、緊急時の災害や震災に対しての復旧対応上も、施工が容易で構築が早いため、災害現場の早期復旧が可能です。災害時に発生したコンクリート瓦れきの再利用が中詰め材料として使用が可能です。また、緊急避難用の高台構築や道路擁壁、防波堤への適用も可能です。
そこでお尋ねします。
河川護岸の施工にはさまざまな工法があるものと思いますが、どのような考え方で決めるのかお尋ねします。また、新工法の積極的な活用が必要と考えますが、県の考えをお尋ねします。
次に、県内中小企業の中国での事業展開に対する支援策についてお尋ねします。
リーマンショック後、世界経済をリードしてきた先進国が厳しい経済状況にある一方で、アジアを中心とした新興国経済は、その成長率、規模ともに世界経済の中で存在感を高めています。
中でも、二〇〇一年の世界貿易機関(WTO)加盟後、安い労働コストの強みを生かし、世界の工場として外国からの投資を集め、急速な躍進を続けてきた中国は、昨年、世界第二位の経済大国になりました。人口十三億人の巨大な市場が我が国のすぐ隣にあります。
本県の物づくり産業は、三十三年連続で日本一の製造品出荷額を誇り、これまで日本経済を牽引してきました。
しかし、グローバルなコスト競争が激化する中、本県産業も経済環境の変化への柔軟な対応を求められており、海外事業へ展開する必要に迫られております。そうした動きは、ことし三月の東日本大震災による国内の部品供給ラインの寸断、最近の超円高の直撃を受け、加速している感があります。
私は、成長を続ける中国市場と、そこで活動されている本県企業の現状をこの目で確かめるため、我が会派の有志の議員とともに、去る十月三十一日から十一月三日までの四日間、中国の上海を訪問いたしました。短い期間ではありましたが、上海市の御協力も賜り、本県と本県企業が出展している中国国際工業博覧会や、上海近郊の島で沖縄に近い面積の崇明島での環境に配慮しつつ進められている農業団地、工業団地の開発計画などを視察してまいりました。
躍動感あふれる上海を体感し、本県が物づくり県として現地でも高く評価されていることを知ることができ、貴重な勉強をさせていただきました。
この場をおかりして、中国国際工業博覧会について御報告させていただきます。
ことしで十三回目となるこの博覧会は、中国政府や上海市人民政府が主催する中国で最も影響力のある最大級の工業製品展示会です。
ことしは、工作機械と金属加工展、環境保護技術と設備など、八つの分野に分けて開催され、世界二十四の国、地域から千八百六十九の企業、団体と五日間で十万人を超える来場者が集まりました。会場内の商談場所では活発なやりとりが行われ、熱気にあふれていました。
愛知県は、「環境保護技術と設備展」内に設けられていたジャパンパビリオンの中で、県内企業十六社とともに愛知ブースとして出展し、金のシャチホコなど目立つ装飾を施し、そろいのはっぴを着てPRしておられました。日本で最も多くの企業が出典していた愛知ブースは、メーンポジションに位置づけられ、出品品目も、自動車部品や工作機械から、畳や屋根がわらなどの住宅製品まで幅広い内容で、常に来場者が絶えず、大変盛況でした。
自治体が出展企業を取りまとめているケースは本県以外にもありましたが、本県のこうした取り組みは、出展企業からは、商談を行うことも大事だが、県の出展企業間で情報交換を行い、ネットワークができることもこの博覧会の魅力であるとの声も聞かれ、出展企業間の一体感を高めるという意味でも大変有意義であると感じました。
本県は、愛知万博を契機として培ってきた環境技術を広く世界に発信することを目的として、万博後の二〇〇六年から、次の万博開催地である上海で開催されるこの工業博への出展を決めたと聞きました。こうした本県の取り組みは、工業博を主催する上海市から高く評価されています。
工業博の前日、上海市が主催する歓迎晩さん会に私も出席させていただき、上海市の市長を初め書記長と、また、幹部の方々のお話を伺いました。
幹部の方々からは、愛知県は、日本の物づくりの中心地として上海でも知られている。愛知のすぐれた技術を中国企業の技術革新や経営力の向上に生かしてほしい。そして、中国と一緒にアジアをリードしてほしいと言われ、大変誇らしく感じました。
また、我が国からの企業誘致や技術導入に中国が積極的に取り組んでいる状況を伺い、世界と闘える愛知を目指す大村知事が率いる愛知県なら必ずやお役に立てるものと確信した次第です。
県では、中国国際工業博覧会など展示会への出展を支援していますが、世界じゅうの企業が激戦を繰り広げる中国で、右も左もわからない中小企業の方々が事業活動を行うことは簡単ではありません。
そこでお尋ねします。
今後、県は、中国での事業展開を図る県内中小企業に対して、どのような支援策を講じていくのかお伺いします。(拍手)
14:
◯建設部長(
近藤隆之君) 河川の護岸の整備についてのお尋ねのうち、初めに、工法選定の考え方についてお答えをいたします。
河川の工事では、洪水で堤防の浸食や崩壊のおそれがある場合などに護岸の施工が必要となりますが、その際には、自然環境や景観にも配慮することとしております。
護岸工法の主な種類といたしましては、芝を張る植生工法、間伐材などを用いた木製ブロック、自然石の石積み、鉄線を編んだかごに石を詰めるふとんかご、コンクリートブロックなどの工法があります。
一般に、木や石など自然の素材を用いた工法は、自然環境との調和や良好な景観の形成が図れる反面、洪水への耐久性には限界があり、一方、コンクリートを用いた工法は、洪水への耐久性にはすぐれるものの、自然環境や景観の保全に工夫が必要となります。
このように、従来の工法には一長一短がありますので、近年では、植生が可能な環境保全型のコンクリートブロックなど、それぞれの長所を生かした製品が開発されております。
このため、護岸工法の選定に当たっては、川の流れの速さ、堤防の高さ、周辺の土地利用、自然環境、景観などを踏まえた上で、耐久性、経済性、施工性などを総合的に勘案して、適切な工法を採用しているところでございます。
次に、河川の護岸への新工法の活用についてお答えをいたします。
平成二年に、国から多自然型川づくり実施要領が出され、全国的に自然環境に配慮した川づくりの取り組みが始まり、このころから護岸の工法においても、自然環境の保全や河川の利用などのニーズが高まり、治水と環境を両立した新しい製品が開発されるようになりました。
このような中、平成十年に国土交通省において、公共工事などにおける新技術にかかわる情報の共有や提供を目的としたデータベースである新技術情報提供システムが整備されました。このシステムは、広く新技術の活用が図られるよう一般にも公開されており、本県におきましても、このシステムを活用しております。
河川の護岸への新工法の採用に当たりましては、環境への負荷低減の効果や、コスト縮減の度合い、また、これまでの施工実績などを総合的に勘案しながら活用してまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。
15:
◯産業労働部長(
木村聡君) 私からは、中国での事業展開を図る中小企業に対する支援についてお答え申し上げます。
国内経済が停滞し、かつてのような内需の拡大が期待できない中、高い経済成長を続ける中国を初めとするアジアの経済活力を取り込む観点から、中堅・中小企業のアジアでの事業展開を支援していくことは、本県経済の持続的な成長を図る上で重要な政策課題であると考えております。
こうした認識のもと、県では、従来から御指摘のありました中国国際工業博覧会への出展支援に加えまして、上海産業情報センターにおけます相談、仲介などを通じまして、県内企業の中国での事業展開を支援しております。
今年度からは、上海産業情報センターに現地のビジネスに精通いたしますマーケティングの専門家を配置いたしまして、中国各地で開催される展示会へ出展する県内企業に対し、販路拡大や商談成立に向けたアドバイスを行いますなど、実践的な支援を行っております。
このほか、インターネットを利用した中国の企業間取引サイトに愛知県コーナーを設けまして、中国企業とのダイレクトな取引の場も提供しているところでございます。
県といたしましては、今後とも、こうした取り組みを通じまして、本県の中堅・中小企業が中国において円滑に事業を行うことができますよう、企業ニーズを踏まえたきめ細かい支援に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
以上でございます。
16: ◯五十番(
岡江智子君) 御答弁ありがとうございました。
河川の生き物や景観形成に配慮した多自然型川づくりを基本として、生物の生息・生育環境に配慮した工法をぜひに取り入れていくことをよろしくお願いいたします。
防災だけではなく減災対策として、災害や震災に対して素早い対応を御尽力いただけますよう要望いたします。
次に、中国に対して批判や快く思われない方もありますが、歴史的に考えますと、飛鳥時代(西暦六三〇年ころ)から平安時代の二百年にわたり、日本から中国に遣唐使を送り、中国から惜しみなく、仏教を初め、政治、文化、芸術、農業などを教えていただきました。その上で今日の日本があると言っても過言ではありません。
しかし、いろいろな問題や危険性もあることを配慮しますと、愛知県が中国に進出する中小企業に対して、県のバックアップがさらに必要と考えます。
知事が言われる世界と闘える愛知として、販路拡大に進出していけるよう強く要望するものであります。ありがとうございました。
17: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 進行いたします。
山本浩史議員。
〔七番
山本浩史君登壇〕(拍手)
18: ◯七番(
山本浩史君) 通告に従いまして、大きく三項目について質問いたします。
初めに、東三河縦貫軸の整備促進について伺います。
リーマンショックに端を発した経済不況に追い打ちをかけるように、三・一一の東日本大震災と原発事故が発生し、さらに続いて、タイの洪水発生など、日本経済はかつてない逆風にさらされており、物づくりの愛知にとっても大きな影響が出ております。
このような状況下において、産業経済の建て直しを考えたときに、道路の果たす役割は大変大きなものがあります。
愛知県においては、厳しい財政状況の中、道路整備予算の確保に努力をされているところですが、一方、渥美半島においては、なかなか整備が進んでいない状況と言わざるを得ません。
東三河地域の工業出荷額は、都道府県の二十位前後に匹敵するものであり、また、農業産出額についても、愛知県の半分近くを占め、都道府県の二十位前後に匹敵するものでありますので、愛知県のみならず、日本経済をも支えていると自負いたしております。
新東名高速道路を初め、三遠南信自動車道や名豊道路などの広域幹線道路については、中部地方整備局や中日本高速道路などにより着実に整備が進んでいるものの、それらと地域をつなぐ主要な国県道の整備が追いついていない状況であり、特に、重点港湾三河港の物流関係につきましては、我が国の輸出入額上位十港湾の中で、高速道路までのアクセスに最も時間を要しているという状況がいまだに改善されておらず、これに伴う輸送コストの増大が企業経営にも大きな負担となっています。
一方、農産物についても、渥美半島は、先端経営と全国トップの産出額がありながら、主要地域から高速道路へのアクセスに一時間半以上要しており、新鮮さが求められる農産物の輸送等に大きなマイナス要素を与えている状況です。
また、観光につきましては、半島にすばらしい資源を持ちながらも、道路アクセスの悪さが足かせとなり、極めて厳しい状況となっております。
知事が言われるとおり、愛知県の発展のためには、東三河地域が元気であり続ける必要があり、そのためにも、東三河一時間交通圏確立の大きな柱となる東三河縦貫軸の早急な整備が必要です。
東三河縦貫軸は複数の路線で構成され、奥三河山間部から渥美半島まで東三河地域を南北に縦断し、地域の産業振興などに重要な役割を果たす幹線道路です。その中でも、主要地方道豊橋渥美線は、田原臨海地区から豊橋明海地区を通り、名豊道路へつながる路線で、臨海地区の産業活動や三河港の物流にとって大変重要な道路です。
しかしながら、いまだ田原臨海四区につながる一・三キロ区間が整備されておりません。
この道路は、平成四年に渥美半島縦貫道路として事業計画の説明会が行われ、平成五年には用地測量に着手したものの、その後、県の優先的な大規模重点事業などに予算が投資されたこともあってか、事業進捗のない状況が十年近く続いてまいりました。
そのような中、県を信じて待ったかいあり、平成十九年には事業が再開される運びとなりました。
事業の早期着手と早期完成のために、県と市で調整した結果、暫定二車線の平面交差での整備に変更し、完了まで十年ほどという県の説明でありましたが、既に東京製鐵も工場建設に取りかかっていたこともあり、田原市としては、一日も早い供用開始を期待しておりましたので、平成二十一年に、鈴木田原市長が県を初め、国等へも緊急要望を行いました。
その結果、一・三キロを一体的に進めるという県の回答をいただきましたが、現在、〇・五キロ区間のうちの浦片土地区画整理事業に関連する区間については、公共施設の管理者負担金の対応を行っていただいているものの、区画整理事業区域外の約〇・二キロ区間については予算措置されず、用地交渉に入れない状況となっており、残りの〇・八キロは測量も実施されておりません。
豊橋市の明海地区や田原市の臨海地区には、トヨタ自動車を初めとして多くの企業が操業しており、これまでにも出勤時間帯の調整など、企業としてできることは既に行っています。日本トップクラスの電炉メーカー東京製鐵の操業開始に続いて、日本最大規模のメガソーラーの進出も決まっています。
昨年、明海地区の信号交差点で発生した交通事故の際には、迂回路となるべき県道城下田原線などの整備が進んでいないために、半日ほどトヨタ自動車の製造ラインが停止してしまいました。
現在操業中の企業がこれからも継続して操業し、さらに伸びていくためには、まずは主要地方道豊橋渥美線の田原臨海四区につながる区間の整備を急ぐべきと考えますが、県の考えを伺います。
二番目に、新エネルギー施策について伺います。
東日本大震災の原発事故を受け、エネルギーのあり方が見直される今、過度な一極集中システムを見直し、身近で地域に根差した太陽光、風力、小水力、バイオマスなど、環境に負荷のかからない再生可能な資源からエネルギーを生み出し、地域で消費するという小規模分散型のエネルギー構造への転換に期待が寄せられています。
エネルギーを地域ごとにつくり出していくことは、各地域の自立にもつながっていき、エネルギーのみならず、食糧、水、資源、人材などの流出を防ぎ、それらを地域の中で有効に活用できる社会システムの構築にもつながるものです。
こうした観点から見ると、渥美半島は、半島沖のメタンハイドレート、臨海部に国内最大級のメガソーラー計画、四十五基の風力発電、住宅公共施設太陽光パネルの高普及率、菜の花エコプロジェクト等々、新エネルギーに深くかかわっている地域です。
次世代のエネルギー資源と期待されているメタンハイドレートは、燃える氷と呼ばれ、燃料として利用できるメタンガスが低温、高圧の海底地層で氷と結びついて、シャーベット状になった固体物質です。
経済産業省は、海洋産出試験を二〇一二年度から渥美半島沖約七十キロの海域で実施することを決めています。西日本近海を中心に埋蔵量は、国内の天然ガス消費量の約百年分に相当するとの試算もあるようです。
地中の氷を溶かしてガスを取り出す技術の開発も進んでおり、二〇一八年ごろの商業化を目指しています。国際情勢に左右されない純国産資源として産出試験が成功すれば、技術力も進歩し、将来展望にはずみがつきます。
渥美半島は、技術開発などの利活用が優位と考えますので、メタンハイドレートの開発拠点として地域産業に生かしていく方策が今後必要と考えます。
メタンハイドレートの実用化をにらんだ産業振興は、今後の検討課題でありますが、いずれにしても、こうした新エネルギーへの取り組みと、地域産業をいかにして結びつけていくかが愛知県政のこれからの課題であると考えます。その際には、多くのエネルギー施策について、大局的なビジョンと横断的な政策が求められています。
そこで、まず、今後の新エネルギー普及拡大に当たって、小規模分散型のエネルギー構造の確立や、地域産業振興の観点を含め、どのような考え方で取り組んでいかれるのか、基本的な考え方を伺います。
続いて、個別エネルギーごとに取り組みを伺います。
初めに、メガソーラーについて伺います。
本年十月二十一日に、三井化学を初めとする国内六社が田原市に国内最大の大規模太陽光発電所、いわゆるメガソーラーを共同で建設する計画を正式発表いたしました。計画では、平成二十四年六月ごろに着工、平成二十五年九月の稼働を目指し、地元の中部電力も事業化検討への参加を表明いたしました。
この事業は、三井化学が田原市臨海部に保有する約八十二万平方メートルに、発電出力五万キロワットの太陽光発電設備と、発電出力六千キロワットの風力発電設備を建設するものです。
太陽光と風力を合わせた年間発電量は六千七百五十万キロワット時と想定しており、これは、田原市全世帯数の九割に当たる約一万九千世帯分の使用電力量に相当すると言われています。
田原市は、日照時間や平均風速が国内トップレベルで、事業採算性が高いと言われていますが、買い取り価格及び買い取り期間が決定後、採算性を検討し、正式に事業決定するとのことです。
今回のメガソーラー事業により、再生可能エネルギーの技術革新や、愛知県内の関連企業の新たなビジネスチャンスといった効果も期待できます。このような点から考えても、行政が誘導、推進していく必要性が高いと考えます。
田原市臨海部に設置されるメガソーラー事業の進展には、愛知県の協力と支援が欠かせませんが、支援策についてどのようにお考えか伺います。
次に、風力発電、家庭用太陽光発電について伺います。
冬場の北西の風が強く、また、全国有数の高い日射量を誇る愛知県は、国内において風力発電や太陽光発電の設置に適した立地条件を備えております。
しかしながら、多くの資源がありながら、我が国における再生可能エネルギーの利用は、欧米と比較して大きく立ちおくれていると言われています。
停電がめったに起きない日本ではなかなか気づきませんが、現在の日本の電力供給は極めて高度な技術に支えられ、良質な電力の安定供給が行われており、停電時も、その復旧スピードは世界最高水準にあります。
風力や太陽光エネルギーの比率が低い場合は、良質な電力の安定供給にそれほど影響はありませんが、比率が上がった場合、風力や太陽光発電は、時間帯によって発電量が変化し、しかも、発電量の予測が難しいため、現在のままのシステムでは、良質で安定的な電力供給に支障が生じる可能性も出てまいります。
こうした問題解決の糸口がスマートグリッドです。
そこで、今回、私は、アメリカにおけるエネルギー施策の調査を目的に結成された
愛知県議会海外調査団に参加し、スマートグリッドや風力発電等、新エネルギーを考える上で外すことのできない分野の現地調査を行ってまいりました。
世界同時不況の引き金となったリーマンショック、また、今般のTPP交渉参加問題等々、超大国であり、世界経済の中心であるアメリカの動向や政策が世界に与える影響は極めて大きなものであり、環境やエネルギー施策を進める上でも、最も注目しなければならない国であると言えます。
現在、米国において、新しいエネルギー、再生可能エネルギーの利用促進、安定的なエネルギーの供給を目指し、スマートグリッドに関する最先端の研究や実証実験が国家レベルで推進されています。
アメリカ最古のウインドファーム、パームスプリングスは、ロサンゼルスのダウンタウンから約百八十キロ、車で二時間弱のところにあります。九十マイル西には太平洋があり、砂漠の荒野で熱せられた空気が太平洋上の涼しい空気を引き寄せ、その風が山に当たり、谷を通ってより大きな風となるため、風力発電に適した地域であり、現在三千を超えるタービンが稼働しております。
グリーンパワーインベストメントの坂木氏によれば、日本では、二十メガワット級で四十億円から五十億円のプロジェクトが多い。しかし、アメリカでは採算が合わず、最低でも百メガワット、二百億円の事業が必要であり、それでもトータルコストの三〇%が補助金であると言います。
また、坂木氏は、風量は統計的に十年間を通して見ると安定しているため、タービンの耐用年数二十年間の利益はある程度予測することができる。マーケットが成熟しているため、小さな会社でもチャレンジしようと思えば可能であると言います。
つまり、高コストな再生可能エネルギーがどれだけシェアを高めるかは、政策に大きく依存するということです。日本でも、再生エネルギー固定価格買取制度が固まれば、企業へのインセンティブが働き、急速な風力発電のシェア拡大も考えられます。
エネルギー自給の低い日本において、エネルギー自給を高める施策は、国家存亡にかかわる重要な課題ですし、物づくり愛知においても同様であります。
世界的に試験、開発が進められている新世代電力網(スマートグリッド)においては、技術大国である日本、そして、物づくり大国愛知が推進し、世界をリードすべき分野であると考えます。
将来を見据え、有限で国際情勢に影響される化石燃料から、風力発電や太陽光発電などのクリーンで無限の自然エネルギー利用へと転換を進め、かつ新世代電力網を駆使し、地域のエネルギー自給率向上を図っていく必要に迫られています。
一般住宅や事業所への太陽光発電システムの設置は、多くの企業や事業者がかかわり、景気対策においても効果的であり、将来的には税収アップにもつながるものと考えます。さらに、東日本大震災以降、災害時における自然エネルギーの利活用も求められるようになりました。
そこで、これからますます導入が図られるであろう風力発電、太陽光発電について伺います。
風力発電につきましては、今後、国の再生可能エネルギー固定価格買取制度が固まれば、一段と設置が進むと考えられます。
一方で、環境への影響も懸念されることから、これに対するガイドラインづくりも必要となってくることが予測され、市町村独自の取り組みにも限界があります。県としては、今後増加が予想される風力発電設備について、どのように対応していくのか伺います。
また、知事は、マニフェスト工程表の環境マニフェストの項目で、太陽光発電システムの普及支援を掲げております。愛知県の住宅用太陽光発電の設置数は日本一ですが、これは、県や市町村が個人住宅への太陽光発電システム設置に対する補助を行ってきた効果であると考えられます。
東日本大震災以降、自然エネルギーへの意識は急速に高まっており、太陽光発電の設置件数も急増しております。県として、そうした動きをさらに加速させるよう、今まで以上に支援を強化していくべきと考えますが、今後の住宅用太陽光発電の普及促進について、どのようなビジョンを持って取り組まれていくのか伺います。
最後に、津波対策について伺います。
本年三月十一日の東北地方太平洋沖地震では、地震動もさることながら、津波の破壊力、その恐ろしさを全国民に知らしめることとなりました。多くの犠牲者を出し、いまだ復興のめどが立たない被災地もあり、津波災害の恐ろしさを改めて痛感させられたところです。
また、本県に関係する東海・東南海・南海地震の発生が危惧されている中で、津波がもたらす被害は、物づくりの愛知県にとりましても、また、それを担う沿岸等市町村にとりましても、自治体そのものの存亡にかかわる共通の大きな課題を突きつけられた形となりました。
こうした中、田原市においては、本年度に入り、津波避難の徹底をすべく、ワークショップによる津波避難マップの作成や配付、それをもとにした市内一斉の防災訓練の実施、海抜標示の設置や避難路、避難誘導灯、防災行政無線の整備、また、企業防災として、先日もトヨタ自動車が製造ラインをとめて、約八千人規模の避難訓練の実施や、外海に面した小学校では、校区と一緒になり、津波避難の徹底や防災教育に取り組むなど、地域としてでき得る津波対策に関するハード、ソフト両面の対策を行っている状況です。
しかし、一方で、太平洋沿岸部の住民からは、安心して眠りにつけないといった声も聞かれます。
津波対策は、避難対策と施設整備が基本であり、その津波対策を講じていく上で、国、県、市町村の役割分担が大切であると考えております。その意味では、津波避難の徹底は、一義的に避難の責任を持つ市町村が、また、施設整備、とりわけ海岸防護施設等の整備は、県や国の役割であると考えます。
また、平成十五年十二月に中央防災会議がまとめた東南海・南海地震対策大綱によりますと、避難対策とあわせて、堤防の整備等の計画的な実施を掲げ、その中で、津波防潮堤等必要な施設整備の実施や、地域の孤立を防止する幹線道路の機能を担う規格の高い道路等の整備が位置づけられておりますし、本年九月末に同会議の専門調査会がまとめた報告書の中でも、今後二つのレベルの津波を想定し、甚大な被害をもたらす最大クラスの津波、つまり、一千年クラス、五・六連動の津波にあっては、命を守ることを最優先にした避難を軸とするソフト、ハード対策を、また、最大クラスの津波に比べ発生頻度は高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波、つまり、数百年クラス、三連動の津波にあっては、生命、財産の保護に加え、地域経済活動の安定化、生産拠点の確保の観点から海岸保全施設等を整備するとし、とりわけ、津波浸水軽減と避難のためのリードタイムを長くするため、多重防護としての道路盛り土等、交通インフラの活用等による二線堤の整備も位置づけております。
先般、名古屋市の防潮堤の整備に関する報道もなされましたが、同じ課題を持つ愛知県や三重県、沿岸等市町村の連携が大切であり、そういう意味では、東海四県三市の防災連絡会や、このほど設立された愛知県沿岸市町村等津波対策推進協議会には大変期待しておりますし、もし伊勢湾口で津波を防ぐことができれば、三重県を含む本県沿岸等の地域の防災、減災の解決策につながるものと考えます。
今回の東北地方のような津波が太平洋から一度伊勢湾、三河湾に浸入した場合、この地域には、製造品出荷額で三・三兆円の三河港や、三・二兆円の名古屋市を初め、十八兆円を超える沿岸等三十一市町村、そして、三重県九市町の約六兆円を含め、約二十四兆円もの出荷額に対して被害が予測され、被災地だけではなく、国内外の経済活動にも大きな影響を及ぼす事態となることは明らかです。
一方、ハード事業は、膨大な事業費や、完成までに長い年月を要するなど、直面する課題へは対応が難しいという側面もあります。巨大地震の発生は切迫していると言われており、着実に対策を進める必要があります。
そこで、国が述べているような避難対策としてのハード整備ではなく、まずは役割分担の中で、県としては、海岸防護施設等の整備や、孤立防止対策としての道路整備などの事業を行っていくべきと考えますが、いかがでしょうか。
以上で壇上からの質問といたします。(拍手)
19:
◯建設部長(
近藤隆之君) 初めに、主要地方道豊橋渥美線の田原臨海四区につながる区間の整備についてお答えをいたします。
主要地方道豊橋渥美線は、東三河縦貫軸を構成し、豊橋市から三河港臨海部を経由して、渥美半島の先端に至る主要な幹線道路であり、田原市の浦町から田原臨海四区方面への約一・三キロメートルのバイパス区間につきまして、現在、国からの交付金を活用して事業を実施しているところでございます。
このうち、西側の約〇・三キロメートルにつきましては、浦片土地区画整理事業と歩調を合わせ、調査や設計を進め、昨年度からは区画整理組合に対し、公共施設管理者負担金の支払いを始めたところで、今後も区画整理事業の進捗にあわせて適切に対応してまいります。
残る区画整理区域の東側約一キロメートルにつきましては、平成二十一年度に道路設計を実施し、一部区間の用地調査に着手をしたところで、今後も、バイパス区間全体の事業を着実に進めてまいりたいと考えております。
また、バイパスに接続する童浦小学校南交差点においては、平成十九年度から交差点改良事業に着手しており、今年度は、物件調査と用地買収を進めてまいります。
いずれにいたしましても、三河港臨海部に立地いたします企業の産業活動を支えるためには、各方面からのアクセスを強化することが重要でありますので、主要地方道豊橋渥美線を初めといたします幹線道路の整備に今後ともしっかりと取り組んでまいります。
次に、津波対策のうち、海岸防護施設等の整備についてでございます。
本県では、東海・東南海二連動地震の津波予測をもとに、背後が海抜ゼロメートル地帯で、人家が密集し、津波などにより大きな被害となる箇所を優先対策区間と位置づけ、海岸堤防の沈下対策を進めております。
また、田原海岸など老朽化が著しい海岸堤防につきましては、コンクリートの打ちかえなどを、さらに、池尻川を初め、津波の到達時間が短い水門では、地震後速やかに閉鎖できるよう、自動化や電動化などの対策を進めております。
引き続き、第二次あいち地震対策アクションプランの目標であります平成二十六年度の完成を目指し、対策を進めてまいります。
また、未曾有の被害をもたらした東日本大震災を教訓として、中央防災会議や愛知県防災会議では、東海・東南海・南海三連動地震などの被害予測の検討が進められております。本県といたしましては、これらの被害予測結果を踏まえ、新たな津波対策の検討を行ってまいりたいと考えております。
次に、孤立防止対策としての道路整備についてでございます。
大規模災害時においては、道路が寸断され、孤立する地域が多数発生することが懸念されており、こうした地域を少しでも減らすとともに、孤立状態を速やかに解消することが極めて重要であります。
そのため、道路自体の耐震性の向上を図るとともに、復旧・支援ルートの軸となる代替性にすぐれた信頼性の高い道路ネットワークを形成する必要があります。
現在、道路についても、地震対策アクションプランに基づき橋梁の耐震対策を実施しており、中でも、緊急輸送道路上の橋梁については、おおむね九割が完了しております。
さらに、この地域の基幹的な役割を果たします新東名高速道路や名古屋環状二号線、名豊道路などにはミッシングリンクがあることから、一日も早くつながるよう国などに積極的に働きかけるとともに、県において、これら広域幹線道路へアクセスする道路の整備を進めるなど、道路ネットワークの形成に努めております。
また、今回の東日本大震災においては、東北自動車道などを軸に展開されたくしの歯型の復旧・支援ルートにより迅速な救援活動が行われ、道路の防災面で果たす役割の重要性が改めて認識されたところであります。
このため、現在、中部地方整備局を中心に、中部圏内の五県三市などでつくる中部地方幹線道路協議会において、三連動などの地震を想定した復旧・支援ルートの選定や、通行確保の手順などについて検討を進めているところでございます。
いずれにいたしましても、大規模地震の発生時において被害を最小限にとどめるための海岸堤防や、地域住民の生活と産業活動等を支えるための道路などのインフラ整備に今後も全力で取り組んでまいります。
以上でございます。
20:
◯知事政策局長(
中西肇君) 私からは、新エネルギー施策についてのお尋ねのうち、その普及拡大の基本的な考え方についてお答えさせていただきます。
御指摘のございましたとおり、福島第一原発の事故を受けまして、エネルギー対策の抜本的な見直しが求められております中で、大規模集中型のエネルギーシステムのみに頼るのではなく、地域でエネルギーを生み出し、消費する小規模分散型のエネルギー構造への転換が重要な課題となってございます。
そして、将来への持続可能性をも考え合わせますと、そうした地産地消型のエネルギーの中心となりますのが、太陽光、風力といった再生可能な新エネルギーでございます。
その普及拡大に当たりましては、新エネルギー自体が成長産業でありますことから、技術開発支援を初めまして、地域産業の振興とあわせ、取り組みを進める必要があると考えてございます。
一方で、新エネルギーが地球環境問題にとっても有効な手段であり、日照に恵まれるといった当地域の特性を踏まえたエネルギー源を
選択しながら、県民、企業を巻き込んで普及していくことが有効であるというふうに考えてございます。
さらに、新エネルギーの利用において、従来の電力との役割分担や効率的な使用も視野に入れ、地域のまちづくり全体の中で考えるスマートグリッドも重要な視点となってまいります。
こうした視点を踏まえまして、総合的に新エネルギーの普及拡大に取り組んでまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
21:
◯産業労働部長(
木村聡君) 私からは、メガソーラー事業に対する県の支援についてお答え申し上げます。
御指摘のありました田原市におけるメガソーラー事業は、三井化学を初めとする六社がかつて企業庁から取得した用地を活用し、太陽光五十メガワット、風力六メガワットの国内最大規模となります発電事業を行おうとするプロジェクトでございます。
このプロジェクトの具体的な内容は、再生可能エネルギー特別措置法に基づきます買い取り価格などの条件が決定された後に明らかにされますが、これまでのところ、関係企業からは、通常の電力供給に加えまして、出資各社が製造する関連製品の技術的課題を確認し、開発を加速する実証実験もあわせて行いますほか、一般に公開する見学施設を整備し、広報啓発にも取り組む計画であると伺っております。
我が国のメガソーラー事業の象徴となりますこのプロジェクトの取り組みは、本県、そして、我が国における再生可能エネルギーの普及や、関連する技術の革新にも大きく貢献するものでございます。県としてもできる限りの協力、支援を行いたいと考えております。
つきましては、今後、関係企業から計画の詳細をお聞きしました上で、実証実験や広報啓発の取り組みに関しまして、どのような協力、支援を行えるのか、前広に検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
22: ◯環境部長(西川洋二君) 新エネルギー施策に関して、二点の御質問をいただきました。
まず、風力発電施設の設置に対する対応についてであります。
風力発電施設でございますけれども、固定価格買取制度が始まること、そして、太陽光や水力よりも発電コストが低いことから、今後設置の増加が見込まれるところでございます。
その一方で、低周波音、さらにはバードストライク、景観など、周辺環境への影響が顕在化しておりまして、苦情も出ている状況にあると承知いたしております。
このため、国においては、設置に当たって事前に環境に十分に配慮した施設となるよう、一万キロワット以上の風力発電施設を環境影響評価法の対象としたところでございます。
本県におきましても、本年七月に、今後の環境影響評価制度のあり方について環境審議会に諮問いたしておりますけれども、その中で、法対象規模以下の風力発電施設を条例の対象とすることについて御審議をいただいているところでありまして、今後、審議会の御答申をいただき、環境面からのチェックの仕組みを整え、風力発電施設の設置に適切に対応してまいりたいと考えておるところでございます。
次に、住宅用太陽光発電施設の普及に係るビジョンについてお答えいたします。
太陽光発電は、議員御指摘のとおり、全国的に見ても日射量が多い本県に適したものであり、CO2の排出がほとんどないエネルギー源として、地球温暖化防止の上でも有効な手段であると考えております。
このため、本県の地球温暖化対策を総合的に進めるビジョンとして策定いたしました現行のあいち地球温暖化防止戦略におきまして、住宅用太陽光発電施設の普及をしっかりと位置づけ、その設置促進のための補助を実施してきたところでございます。
また、現在、改訂作業中の新たな地球温暖化防止戦略におきましても、三月に行ったパブリックコメントの段階での案でございますけれども、二〇二〇年までに累計で現在のおよそ六倍に当たる四十万基の設置を目標に掲げ、大幅に増加しております家庭部門でのCO2削減に向け、その普及を最重要施策として位置づけることといたしております。
今後でございますけれども、東日本大震災後の再生可能エネルギーへの期待の高まりも踏まえ、年度末に策定することといたしております新たな戦略に基づきまして、県、市町村の補助制度、国の電力固定価格買取制度などの支援制度を活用いたしまして、その普及に努めてまいります。
以上でございます。
23:
◯知事(
大村秀章君) 新エネルギーの普及につきまして、私からも答弁申し上げます。
議員の地元であります田原市は、県内最大の風力発電の基地でありまして、また、観光資源、耕作放棄地対策にもなっている菜の花エコプロジェクトが成果を上げていることに加えまして、最近では、三井化学などが進める日本最大級のメガソーラー計画など、新エネルギーのトップランナーといってよい地域だと思っております。
この先進的な取り組みが実現をしている背景には、日照や風力に恵まれるといった地域の特性を生かしていることはもちろんですが、盛んな製造業、農業といった産業との連携、連動がうまく生かされていることや、住民の意識の高さも大きな要因であると考えております。
先ほど、局長、部長の答弁にもありましたように、新エネルギーの普及拡大は、エネルギー対策としてはもとより、産業振興の重要な分野として、また、省エネ型の社会システムやまちづくりとの連動など、多面的な要素を含んでいると考えております。
こうした視点を持ちながら、国の再生可能エネルギーの固定価格買取制度の動向、これは大変重要なポイントであると思いますが、その動向、これは全国知事会を通じても、この新エネルギーを普及、促進するような形で決めてもらいたいということを強く申し上げておりますが、そういった動向をにらみながら、太陽光、風力など、県内それぞれの地域が有する資源を活用しながら、次世代自動車の開発普及と連動したスマートグリッドなど、愛知らしい産業振興、まちづくりを十分意識しながら、新エネルギーの普及に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
以上です。
24: ◯七番(
山本浩史君) 数点要望いたします。
まず、道路整備についてですが、道は血管でありまして、道を通って、人、物、金、情報が循環をいたします。ぜひ愛知県のポテンシャルを生かす道づくりをお願いいたします。
次に、新エネルギー施策についてですが、新エネルギーの動向は国の政策に大きく影響されます。しかしながら、地方分権の流れの中で、これからは地域の実情に合わせた県独自の政策も重要性を増してくると思われます。
先ほどの知事のお言葉にもありましたように、国の政策をぜひとも愛知県がリードできるように力を注いでいただきたいと思います。
最後に、津波対策につきましては、より精度の高いシミュレーションをもとに、しっかり県としての役割を果たしていただきますよう要望を申し上げて、質問を終わります。ありがとうございます。
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25: ◯三十八番(神戸洋美君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
26: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 神戸洋美議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
27: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午前十一時五十分休憩
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午後一時十分開議
28: ◯
議長(岩村進次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
浅井よしたか議員。
〔三十五番浅井よしたか君登壇〕(拍手)
29: ◯三十五番(浅井よしたか君) 通告に従い、順次質問してまいります。
初めに、中学校における武道必修化について伺います。
平成十八年の教育基本法改正を受けて、平成二十年三月に中学校学習指導要領が改訂され、来年度から中学校で武道が必修化されることとなりました。これまでは
選択制であったダンスと武道が、中学一・二年の男女全員に必修となり、三年生では、武道と球技のどちらかの
選択となります。
ほとんどの中学校が剣道か柔道を
選択する予定ですが、指導者や施設、用具などの制約もあるため、生徒ごとではなく学校単位での
選択となります。
私ごとで恐縮ですが、私も柔道三段の免状をいただいており、現在、豊橋市柔道会の顧問を仰せつかっております。みずからの経験を振り返っても、武道必修化の目的である、武道の学習を通じて我が国固有の伝統と文化により一層触れるという趣旨自体には、大いに賛同するところであります。
ただ、武道必修化実施に向けて、とりわけ柔道については解決すべき課題も山積しており、マスコミでも、安全対策の必要性について多くの報道をしているところであります。
テレビや新聞、専門誌等で、柔道の安全対策の重要性について警鐘を鳴らしておられる方々の中には、あちらにお座りの本県病院事業庁長の二村雄次先生もいらっしゃいます。
二村先生は、御存じのように、世界的な外科の権威でいらっしゃいますが、現役の柔道家でもあり、現在、財団法人全日本柔道連盟医科学委員会の副委員長や、母校名古屋大学の柔道部師範をお務めであり、日本マスターズ柔道大会や、全国柔道高段者大会等の公式戦で優秀な成績をおさめておられる柔道六段の達人であります。
全国で安全指導講習会の講師をお務めになっている二村先生も、現状の安全対策のまま始まる中学校での武道必修化については大変憂慮していらっしゃいます。
二村先生のほかにも、多くの有名柔道家が一層の安全対策の必要性について
発言しておられますし、中学校の現役保健体育教師の皆さんの中からも、特に柔道を専門にされる先生方から、さまざまな御指摘や要望が聞かれるなど、柔道に精通し、柔道を愛している人ほど、深刻に事態をとらえているように思います。
多くの柔道関係者が危惧されるとおり、過去のデータを見ても、剣道に比べて明らかに柔道のほうが重大事故が多く発生しておりますので、今回の質問では、柔道の指導体制に絞った質問をさせていただきます。
まず、柔道における事故の発生状況を御紹介しますが、名古屋大学大学院の内田良准教授の調査などによれば、一九八三年度から現在までの間に、中学、高校での柔道練習中に死亡した生徒数は全国で百十七人にも上るとされ、障害の残る重大事故も二百七十件以上発生しているとのことです。
これらは、部活動中の事故と授業中の事故とに分けられます。練習時間や練習内容の違いから、部活動中の発生割合が高いのは事実ですが、死亡例の約一三%が、そして、重大な後遺障害例の約三〇%は、体育の授業中に起きています。事故にあった生徒の約半数は、中学、高校とも一年生の初心者が占めています。
死因の多数を占める急性硬膜下血腫は、投げられたときや受け身の練習中に、頭を畳にぶつけるなどして起きていますが、頭を直接打たなくても、振り回されることで血管が切れるという指摘もあります。
しかしながら、これまでは、事故原因究明に向けて医療事故のような第三者委員会も設置されていないため、発生原因が不明確な事例も多く、防止策が確立されているとは言えない状況です。このような状況にもかかわらず、来年度から必修化が実施されるということに私は大きな不安を覚えます。
ところで、この武道必修化に対して、本県が果たすべき役割は何なのでしょうか。これにつきまして、私は、一昨年の文教委員会で質問をさせていただきましたが、その際の答弁によれば、武道場などの施設整備は市町村の責任であり、県教委の役割は、指導者の養成並びに確保であるという御答弁でありました。
そこで、私は、先日、私の地元の豊橋市における準備状況をヒアリングさせていただきましたが、武道場整備につきましては、既にすべての豊橋市立中学校で整備済みとのことでした。
指導者についてはどうかといえば、豊橋市立中学校における保健体育教員の総数は現在七十七名であり、そのうち柔道有段者数は十五名、そして、これまで柔道の指導経験が全くない保健体育教員は二十名だそうであります。有段者の人数や、柔道の指導未経験者の割合は、市町村によってもかなりばらつきがあるようです。
こういった現状を考えますと、県として早急に取り組むべきは、まずは現場の実態把握であります。そして、その結果を踏まえた現場の先生方への適切な支援施策が必要であるとの思いから、以下順次質問をしてまいります。
一つ目の質問です。
文部科学省の学習指導要領改訂で武道必修化が決まってから既に三年半が過ぎ、実施も目前に迫っていますので、県教委として、県内の市町村及び公立中学校三百四校の準備状況の実情把握は不可欠なはずです。
私の調査では、名古屋市で柔道を
選択する公立中学校数は、柔道の指導者不足のためか、一割に満たないそうですが、名古屋市以外の公立中学校の柔道
選択率は五割を超える見通しとのことです。
そこでお尋ねいたします。
県内の公立中学校の武道場整備状況や、県内八百五十一名の保健体育教師の段位取得状況並びに柔道指導の未経験教師の人数などはどのような状況でしょうか。あわせて、それらの実態を踏まえた県教委としての今後の方針もお聞かせください。
次の質問に移ります。
御存じの方もおみえになると思いますが、柔道の段位取得にはさまざまな手段が存在をいたしますので、仮に同じ段位であっても実力には差があるのが現実です。そのため、段位と指導者としての力量は決して直結せず、有段者が必ずしも安全に柔道を指導できるわけではないと言えます。
やはり大学の教職課程でしっかりと指導方法を学ぶことは極めて重要ですし、今回の武道必修化という指導要領改訂に対応して、保健体育教師を養成する大学の講義内容も見直しが必要なはずであり、従来以上に安全対策への配慮に重点が置かれるべきと考えます。
ここで参考までに、安全な指導についての外国の取り組み状況を御紹介いたしますと、我が国の三倍以上のおよそ六十万人の柔道人口を誇るフランスでは、柔道を教えるためには国家資格が必要です。その資格を得るためには、最低でも二年以上の競技経験を積み、実技試験だけでなく、医学的な知識についての学科試験にも受からなくてはならない仕組みだそうです。
そんな厳しさのおかげからでしょうか、ここ十年間以上、中高生の柔道練習中の死亡事故は一件も報告されておらず、四十歳代から五十歳代の中高年の方が、柔道の練習とは直接関係のない心筋梗塞などで亡くなった例がほんの数例あるのみとのことです。
私は、フランスの取り組みには学ぶ面が多々あると思います。特に、頭部を打撲した際に発生する脳震とうへの適切な対処法を初めとする、いわゆるセカンドインパクトシンドロームなどの医学的知見を学ぶことは、日本の柔道指導者にも求められるべきだと考えます。
そこで伺います。
県教委によるこれまでの安全指導への積み重ねを土台にして、一層安全な指導体制を確立するためには、保健体育の先生方を輩出されている各大学と教職課程の講義内容に関しても連携したり、全柔連が本年六月に改訂した柔道の安全指導第三版を中学校の指導現場における教材として徹底した活用を推進すべきと考えますが、県教委のお考えをお聞かせください。
また、現在、県教委主催で指導者の資質向上を目指し、武道指導者養成講習会や、学校体育実技武道認定講習会などが隔年で実施されていますが、参加枠が少なく、枠の拡大を望む現場の声を耳にします。加えて、先ほど来申し上げているような医学的な知識を学ぶ講習も今後より充実させるべきだと考えます。
こういった講習会は、県教委の大切な責務だと思いますが、講習内容や参加枠などの見直しも含めた今後の方針をお示しください。
次の質問が、武道必修化に関する最後の質問です。
私は、今のままでは、市町村ごとで指導者確保にかなりの格差が生じてしまうのではないかと心配をしています。この問題が国会でも取り上げられたこともあって、文部科学省も同様の懸念を持っているようです。
そこで、文部科学省スポーツ・青少年局からは、改善策として、外部指導者の活用の有効性が示されており、例えば武道の専門的指導が可能な元警察官の方を授業における外部指導者として協力いただくという案が本年四月に各都道府県教育委員会に提案されています。言うまでもなく、単独の指導は教員免許が必要なため不可能でありますが、チーム・ティーチングなどの形での補助的な指導は可能ですから、検討に値する案だと思います。
市町村教育委員会や各中学校任せではなく、県教委として主体的に実態把握を行った上で、現場の先生方の御理解を十分に得ながら、警察官OBのみならず、柔道の指導に秀でた中学、高校の体育教師OBの方々にも御協力をいただくという取り組みを進めるべきだと考えます。
同時に、そのことは、必ずしも柔道の専門家ばかりではない、保健体育の先生方御自身の柔道技術向上にも貢献すると考えますが、御所見を伺います。
私は、これまでの我が国の柔道教育には、残念ながら安全対策の面で不十分な点があったと思います。しかし、本来柔道は、適切な指導を徹底すれば決して危険なスポーツではありません。今回の武道必修化導入を機に、そしてまた、何よりも悲惨な事故が現実になってしまう前に、ぜひ本県が全国の先頭に立って、より安全な指導体制を確立していただきたいと心から願うものであります。
同時に、そういった安全対策がこれまで以上に学校現場に浸透していくことで、結果として、部活動における悲しい事故の減少にもつながると確信をいたしますし、柔道人口の拡大にも貢献をするはずです。県当局の具体的で前向きな御答弁をお願いいたします。
続いて、家畜伝染病の防疫体制についての質問に移ります。
本日、この問題を取り上げますのは、私の地元豊橋で過去二度にわたって発生した高病原性鳥インフルエンザも、いよいよ発生のおそれのある冬の時期に入ってまいりましたし、口蹄疫に関しましては、いつ発生するかは予測できないわけですから、一刻も早く県としての防疫体制を確立してほしいとの思いからであります。
また、本年四月に改訂された家畜伝染病予防法も、去る十月一日より完全施行されましたので、現時点での本県の取り組み状況を確認させていただきたいと考え、以下、何点か質問をいたします。
今回の家畜伝染病予防法改訂のポイントは、家畜伝染病の発生の予防、早期の発見、通報、そして、迅速、的確な初動対応のための義務の明確化と違反者への罰則措置が盛り込まれた点です。具体的には、家畜の所有者の消毒設備の設置義務の新設や、患畜、疑似患畜以外の家畜に対する通報届け出義務の創設、予防的殺処分の導入などです。
法律本文以外でも、本年九月に改定された特定家畜伝染病防疫指針には、国、都道府県、市町村の役割や責務が明確にされています。その指針によると、国の防疫方針に即して実際の防疫措置を迅速、的確に実行するのはあくまでも都道府県であり、市町村や関係団体は、都道府県の行う防疫措置に協力することが基本方針とされています。
つまり、徹底したシミュレーションなどにより具体的な予防策や初動対応策を確立するという、まさに法律の理念に魂を入れていくことが都道府県の役割だと言えます。
さて、御存じのように、本県は、全国でも有数の畜産県ですが、そんな本県でも、大変残念ながら、先ほども触れましたが、一昨年二月と本年一月の二度にわたり、東三河地方で鳥インフルエンザが発生し、約百七十六万羽ものウズラと鶏が殺処分されました。
先日も、ウズラ農家から御意見、御要望を伺う機会がありましたが、感染源として有力視される渡り鳥の季節が近づいてきたため、大変不安な思いをお持ちの様子でした。
一方、口蹄疫については、幸いにして、現在のところ、本県では発生しておりませんが、発生原因が明確に特定されていない現状を考えると、万一に備えていくことは大変重要でありますし、その防疫対応の基本は鳥インフルエンザとも共通いたしますので、先日、宮崎県と都城市に伺い、調査を行ってまいりました。
口蹄疫で大変な被害を出してしまった宮崎県ですが、その中でも、都城市は、畜産日本一の大集積地にもかかわらず、前回の大流行においても一カ所のみの発生で食いとめ、他農家への感染を完全に封じ込めた自治体です。
では、ここで、宮崎県と都城市での調査内容に簡単に触れさせていただきますが、昨年四月二十日の都農町での口蹄疫発生確認から、八月二十七日の終息までの間の経緯につきましては、おおむね御承知のことと存じますので、ここでは、特筆すべきことや、極めて特徴的な点に絞って御報告させていただきます。
宮崎県では、最終的に牛が六万九千四百五十四頭、豚が二十二万七千九百四十九頭、そのほか、ヤギ、羊、イノシシ、水牛が四百五頭も殺処分されるほど感染が拡大してしまいました。
その原因を分析してみますと、まず第一に、指揮命令系統や、具体的な活動についてのシミュレーションが不十分であったため、当初準備していた口蹄疫対策本部がほとんど機能せず、口蹄疫発生が確認された後で対策本部の組織図の大幅変更を余儀なくされたとのことでした。
県の担当者の説明では、実務部門は同じフロアの同じ部屋に集まって情報を共有して対応に当たらなければ、刻々と変わる事態には十分に対応できないともおっしゃっていました。
また、不幸にも鳥インフルエンザや口蹄疫などの伝染病が発生してしまった場合には、獣医師や建設業者などから成る先遣隊を現地に送り、状況把握を行った後に埋却等の作業に入りますが、その先遣隊のリーダーである獣医師の経験や力量によって、相当作業効率に差が出てしまったとも述べられました。
埋却地に関しても、そもそもその確保に手間取った上、やっと確保できたと思っても、わき水などによって不適切な土地が多かったため、思うように作業が進まなかったとのことでした。
次に、都城市の事例ですが、こちらは対照的に、大変綿密な準備と迅速な対応がなされています。都農町での最初の発生を受けて、即座に緊急対策会議を開催したのを皮切りに対策本部を設置。また、JAや獣医師会などで構成される口蹄疫防疫対策会議を開いたり、防疫体制の充実と迅速な対応のため、業務を消毒班や農家支援班などの九つの班に細かく分担されたとのことです。そして、それらの作業進捗状況を把握するために、毎日連絡会議を開催して、いざという際に備えたとのことでした。
このほかにも、市内へのウイルス侵入を防ぐために、消毒ポイントの設置や、市民及び畜産農家への徹底した啓発・広報活動なども実施されました。
しかし、そこまでしても都城市への感染を完全には食いとめられずに、六月九日の十四時四十分に、開業獣医師から都城家畜保健衛生所に、口蹄疫の症状を疑う牛を確認したとの連絡が入りました。そして、その農家が飼育する牛二百八頭の殺処分が終了したのは、家畜保健衛生所に第一報が入ってからわずか十二時間後の六月十日の午前二時五十分であり、全頭の埋却が終了したのは、その十二時間後の午後二時四十五分であったとのことです。
これほどまでにスピーディーな対応が可能であったのは、ただいま御紹介した事前の徹底したシミュレーションのたまものであると言えます。加えて、長峯誠都城市長の決断も大変すばらしいものがあったと思います。
といいますのも、長峯市長は、症状を確認し、これは口蹄疫に間違いないとの確信を持ち、当時の山田農林水産大臣に直接電話をかけ、検体の検査結果を待っていたら、ほかの農場施設へも感染が広がるおそれがあるとの意見を述べて、陽性反応の最終確定を待たずに、一刻も早く殺処分を行うべきだとの強い意思を示しました。
本来、殺処分実施に関しては知事の命令が必要なわけですが、それまでなかなか明確な方針を示さなかった宮崎県知事も、市長の決意に引きずられるようにして、ようやく殺処分命令を出すに至ったとのことです。その結果、先ほど述べたとおりの極めて迅速な対応がなされ、一カ所での封じ込めに成功したのであります。
宮崎県と都城市のこの二つの事例からは、徹底したシミュレーションのあるなしと、自治体トップのリーダーシップが防疫対応の成否に大きな影響を与えるということがよく理解できます。同時に、県と市町村との明確な役割分担や連携の重要性も改めて認識させられたところであります。
このことを踏まえて考えますと、本県が取り組むべき課題も明確になってまいります。
まず大切なのは、言うまでもなく、伝染病を発生させない予防措置の確実な実施です。家畜の所有者ごとの所在地や、飼育家畜の種類及び飼育数の把握などはもちろんのこと、原則年一回以上の県による立入検査の徹底も重要です。
それと同時に、完全な防御策が確立されていない以上、万一の発生に備え、徹底した対応シミュレーションを積み重ね、極力想定外を排除した防疫マニュアルの策定を急がなくてはなりません。
例えば、国から派遣される緊急支援チームの受け入れも想定に入れた実践的な対策本部の組織編成や、先遣隊による事前現場把握、あるいは消毒ポイント設置場所の事前調査、事前決定なども、現在のような平時にこそ行っておくべきであります。
また、埋却地の確保及びその支援に加え、実際に埋却地として使用できるのかどうかを調べるための事前地質調査も必要ですし、鳥インフルエンザの場合には、焼却手段や焼却施設の確保など、多くの角度からの詳細な検討が平時において求められます。
そして、当然のことですが、そのマニュアル策定は県庁の担当課だけでできるものではなく、万一伝染病が発生した際も、迅速な対応には、現地を熟知する市町村や道路管理者、愛知県警、県内家畜保健衛生所、農林水産事務所などとの緊密な調整、連携が欠かせません。
九月議会での答弁にあったように、県単独でマニュアル改訂を行い、その内容を市町村に説明をするだけでは不十分だと考えます。
そこで、まず、鳥インフルエンザについて伺います。
ただいま申し上げたような平時におけるシミュレーションの実施状況や、本来多くの関係機関と協働して進めるべき本県防疫マニュアル改訂作業の進捗状況及び市町村との連携状況をお示しください。
また、県内の市町村でも独自に防疫マニュアルづくりに取り組んでいる自治体もあるようですが、その内容は自治体ごとにかなりのばらつきがあるようです。
そこでお尋ねします。
私は、市町村にも独自の対応マニュアルが必ず必要であると考えますので、早急に市町村への策定要請を行って、その上で、県としてもマニュアル策定の支援や指導を行うべきと考えますが、御所見を伺います。
加えて、口蹄疫につきましても同様に、防疫マニュアルの整備などが必要と考えますが、どのような進捗状況かお尋ねします。
次の質問は、既に農林水産省の家畜伝染病に関する会議や説明会などでも触れられていることですが、家畜伝染病担当職員の専門化の必要性についてであります。
このことは宮崎県でも伺ったことですが、まさに戦場のような状況下での対応においては、経験者とそうでない防疫員との間で、対応力において大きな差が出てしまったとのことでした。
豊橋市においても、本年一月に発生した二度目の鳥インフルエンザの発生の際には、前回担当した東部家畜保健衛生所の職員が異動してしまっていたことに対し、一部の農家から対応への不安の声が出たのも事実です。獣医師職員の確保そのものに関しては、これまでの議会でも答弁があったように、本県の努力は評価できますが、万一の家畜伝染病発生時には効果的な人材活用が極めて重要です。
そこで伺います。
鳥インフルエンザや宮崎県での口蹄疫に実際に携わった本県職員の貴重な経験をいざというときに最大限生かすためには、獣医師職員の配置の活用などが必要であると思いますが、どのようにお考えかお伺いいたします。
以上、中学校における武道必修化、そして、家畜伝染病の防疫体制の二点について伺ってまいりました。県当局の明快な御答弁を期待して、壇上での質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
30:
◯教育長(
今井秀明君) 中学校における武道必修化について、何点かお尋ねをいただきました。
まず、必修化に向けた準備状況についてお答えをいたします。
来年度から必修となります武道においては、柔道、剣道または相撲のうちから一種目を
選択して学習することとなっておりますが、現状を申し上げますと、平成二十二年度は、名古屋市以外の県内の公立中学校のうち、男子で二百八十八校、九五%、女子で二百十三校、七〇%において武道の授業が実施されておりまして、そのうち、剣道は百七十校、柔道は百五十三校で学習しているところでございます。
そこで、まず最初に、武道場の整備状況についてでありますが、県内の公立中学校三百四校のうち二百六十校、八六%に、体育館とは別に武道場が設置されており、武道場のない学校は体育館を使用しているところでございます。
次に、教員の段位の取得状況と武道の指導経験についてでございますが、教育委員会といたしましては、昭和五十九年度以来、講習会等の開催により指導者の資質向上を図ってまいりました。その結果、本年五月現在、中学校保健体育担当教員八百五十一名のうち、有段者は柔道二百十五名、剣道百八十一名、相撲五名の延べ四百一名となっております。
こうした実態を踏まえ、来年度の完全実施に向けて、校内において武道の専門性の高い教員が指導経験の浅い教員に指導方法の研修を行ったり、県の講習会に参加した教員が受講内容の伝達をするなどして準備を進めているところでございます。
指導経験等の状況については、現在のところ把握しておりませんが、新学習指導要領が完全実施となる来年度には、課題等とあわせ調査をし、その結果などを踏まえて、武道指導の充実に向けた対策を講じてまいりたいと考えております。
次に、武道指導体制の確立についてであります。
指導者の資質向上については、県教育委員会が開催する武道指導者養成講習会等において、武道指導の経験の浅い教員を対象に実技研修を行い、基本的な技能の習得を図り、段位の取得を促進してまいりました。
こうした講習会の開催に際しては、講師として大学関係者の協力を得るなどして、医学的な見地から見た武道固有の動作に起因する事故の予防を含めた安全に配慮した指導や、けがや事故が起きたときの対応を盛り込んだりしておりますが、今後とも内容の充実に努めてまいります。
特に、柔道の安全対策については、文部科学省から、全日本柔道連盟が作成した安全対策の手引きなどを参考にするとともに、事故の防止や事故の際の対応について適切な措置を講ずるよう通知があり、各市町村教育委員会に対し、周知徹底を図ったところでございます。
また、講習会の参加人数については、講習会会場の規模や講師数等により制約がありますが、可能な限り拡大できるよう努めてまいりたいと考えております。
なお、お示しの大学との連携については、本県では、教育委員会と県内にある大学との連携推進会議を設置し、定期的に意見交換をしておりますので、新学習指導要領の実施に伴う課題について現場の意見を聞きながら、必要に応じ協力を求めてまいりたいと考えております。
次に、外部指導者の活用についてであります。
武道の指導に専門性の高い外部の指導者を活用することは、授業の充実、教員の指導力の向上に有意義なことと考えております。
本県では、これまでも体育の授業や運動部活動などにおいて、外部指導者の活用を図ってまいりましたが、今回の学習指導要領の改訂を受け、平成二十一年度からは、武道団体の協力を得て、中学校武道必修化に向けた地域連携指導実践事業を実施し、中学校における武道の授業に専門性の高い外部指導者の派遣を行っているところでございます。
また、学校が外部指導者を活用しやすくするため、その相談窓口となる武道団体の連絡先を年度当初に各学校に周知しております。
今後とも、武道団体の協力を得て、各学校で外部指導者の活用が図られるよう働きかけてまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。
31: ◯農林水産部長(小出茂樹君) 家畜伝染病の防疫体制についてのお尋ねのうち、初めに、鳥インフルエンザに対するシミュレーションについてお答えいたします。
国は、鳥インフルエンザの発生を想定し、全国一斉の図上防疫訓練を平成二十二年度から実施しております。その内容は、農場などを事前に知らせないブラインド方式で、訓練当日に各県に発生農場を一カ所示し、殺処分、焼埋却方法の決定及び消毒ポイントの設置などの防疫活動を迅速に行うというものでありまして、今年度は十月二十八日に行ったところであります。
さらに、本県独自で家畜保健衛生所が中心となりまして、十万羽以上を飼育している大規模養鶏場ごとの鶏舎構造の確認や、消毒ポイントなどのシミュレーションを実施しているところでございます。
続きまして、鳥インフルエンザ防疫マニュアルの改訂作業の進捗状況についてでございます。
本県では、過去二回の発生事例を踏まえ、関係機関の意見も反映させた上で、十一月三十日にマニュアルとしての鳥インフルエンザ対策実施要綱を改訂したところでございます。
今後とも、マニュアルに基づく初動防疫体制を市町村及び関係団体の方々に十分理解してもらうため、県内全域で防疫訓練を実施いたしまして、御意見をいただきながら連携強化を図り、万全な防疫活動を行っていきたいと考えております。
続きまして、市町村単独の対応マニュアルについてでございます。
市町村単独の対応マニュアルにつきましては、あらかじめ準備されることが望ましいので、各市町村に対しまして、県としても作成をお願いしてまいります。
また、作成に当たりまして、県のマニュアルとの整合性を図るとともに、地域の特性に合致した市町村マニュアルとなるよう支援してまいりたいと考えております。
次に、口蹄疫の防疫マニュアルについてでございます。
本県では、平成二十年三月にシミュレーションの基本になる手順を示した口蹄疫発生時防疫対応マニュアルを策定したところでございます。
今回の家畜伝染病予防法などの改正に伴い、現在、大幅な改訂作業を進めておりまして、年度末をめどに完成させたいと考えております。
続きまして、獣医師職員の配置についてでございます。
家畜伝染病予防法などの改正に伴いまして、二十四時間以内の殺処分、七十二時間以内の焼埋却処理といった、より迅速かつ的確な防疫対応が規定されたため、発生の際には、本県での鳥インフルエンザや、宮崎県での口蹄疫を経験しました獣医師職員を積極的に活用することは非常に重要であると考えております。
万一、家畜伝染病の発生があった場合には、県内各地に配置している経験豊かな獣医師職員を発生地域に速やかに参集させまして、機動的な防疫活動を実施し、蔓延防止に努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
32:
◯知事(
大村秀章君) 浅井よしたか議員の質問のうち、家畜伝染病の防疫体制について、私からもお答えを申し上げます。
ことし二月の新城市における高病原性鳥インフルエンザが発生した際には、私は知事に就任したばかりでありましたが、当日の午後、現地に赴きまして、状況の把握と速やかな収束に向けて陣頭指揮をとらせていただきました。
そのときの経験から、家畜伝染病の発生に際しては迅速な防疫活動が重要であるということは言うまでもありませんが、そのためには、地元の市町村、そしてまた、関係団体の皆さんの協力が不可欠であるということも改めて経験をいたしました。
御指摘をいただきました家畜伝染病の防疫体制の強化につきましては、畜産経営や地域の経済活動への被害を最小限に抑えるという観点から非常に重要であると考えておりまして、議員の御指摘を踏まえまして、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
33: ◯三十五番(浅井よしたか君) それぞれ御答弁をいただきました。残りの持ち時間もわずかでありますので、簡潔に要望を申し上げたいと思います。
中学校の武道必修化と、そして、家畜伝染病の防疫体制に、双方に共通して感じますのは、やっぱり本県がもう少し危機意識を持ってほしいなと、それから、現場と十分意思疎通をしてほしいなということであります。
学校現場の生の声がストレートに県教委に届く仕組みに本当になっているんだろうか。そして、そういった仕組みになっていないから実態把握が十分できていないんじゃないかというふうに思わざるを得ません。そして、家畜伝染病対策につきましても、初動対応の成否に大きく影響する市町村との連携がまだまだ不十分だと思います。
私は、常に、やっぱり現場に答えがあると、解決策があると思っています。ですから、適切な施策を立案して、スピーディーに解決をする、実施をするには徹底した現場主義というものが欠かせません。
しかし、率直に申し上げて、従来の愛知県政には徹底した現場主義が十分に根づいていないというふうにかねてから思っております。
大村知事におかれては、ぜひとも民間では当たり前の現場主義を愛知県政に根づかせるために、一層力強いリーダーシップを発揮していただきますことを強く要望して、私の
発言を終わります。
以上です。
34: ◯
議長(岩村進次君) 進行いたします。
伊藤辰夫議員。
〔五十七番伊藤辰夫君登壇〕(拍手)
35: ◯五十七番(伊藤辰夫君) 通告に従いまして、順次質問をいたします。
質問の第一は、県立学校の施設整備についてであります。
現在、本県の県立学校については、東海地震など大規模な地震による建物の倒壊や崩壊を防ぎ、子供たちの命を守るばかりでなく、災害時には地域住民の避難場所としての役割を果たすため、建物の耐震化を平成二十七年度までに完了させるとした目標達成に向けて、重点的な対応がされています。
さきの東日本大震災では、人的、物的な被害が広範囲かつ極めて甚大であり、今なお大きな傷跡が残るものの、復興に向けた取り組みが進んでおります。
多くの被害の中で、学校建物の倒壊などによる死亡報告はなかったようでありますが、耐震補強がなされていない建物では、柱や壁の崩壊など、大きな被害が発生している例が見られた一方で、耐震補強がされた建物や新耐震基準による建物では、おおむね小規模な被害、あるいは被害がなかったとのことであります。
この震災を受けまして、文部科学省では、東日本大震災の被害を踏まえた学校施設の整備についての緊急提言を本年七月に取りまとめ、その中で、子供たちの安全を確保する上で、学校建物の耐震性を確保することの重要性が改めて明らかになったとして、学校建物の耐震化の一層の加速が必要であるとしています。
県立学校の耐震化については、本年六月議会において、我が自由民主党の代表質問でも取り上げたところでありますが、平成二十七年度までの耐震化完了という目標を確実に達成されることを改めてお願いしておきたいと思います。
さて、本日、私が伺いたいのは、耐震化とともに課題となっている学校施設の老朽化への対応であります。
学校の耐震化は、子供たちの命を守るという意味で大変重要なものではありますが、日々、子供たちが勉強をするための教育環境の整備という観点からは、耐震化だけでは不十分であり、施設の適切な維持管理もおろそかにできません。
本県の県立学校は、高等学校が百四十九校、特別支援学校が二十七校、合わせますと百七十六校であり、建物やグラウンドなど施設の全体規模は膨大なものであります。
これらの施設は、昭和四十年代から五十年代の生徒急増期に建設されたものが多いことから、老朽化が進み、修繕を必要とする施設が数多くあります。
私の地元にあります県立高校でもその例に漏れず、施設の老朽化が進んでおり、必ずしも快適な学習環境であるとは言えないと感じています。その県立高校では、計画的に維持修繕を行っていると聞いておりますが、修繕箇所が多く、予算面の制約からなかなか手が回らないのが現状のようであります。
こうした状況は、県立学校全般に共通した問題で、例えば、教室で雨漏りの水をバケツで受けながらの授業、手洗い場の排水管が詰まって、使用禁止の張り紙、体育館や武道場では、床のささくれをガムテープでふさぎ、外に出てみれば、グラウンドの水はけが悪いため、雨が降ると次の日も使えないといったことは珍しくありません。
なお、学校施設の老朽化は本県に限ったことではなく、全国の公立学校を対象とした文部科学省の施設整備基本方針の中にも、耐震性の確保など安全性の確保はもとより、老朽施設の機能改善を行い、教育環境の質的な向上を図ることが必要であるという記載があります。
また、同じく文部科学省が定めている施設整備指針では、学校施設を常に教育の場として好ましい状態に維持するためには、日常の点検、補修及び定期的な維持修繕が必要であるとしています。
さらに、本年六月、本県が策定したあいちの教育に関するアクションプランIIでは、教育環境の整備として、学校における教育の学習効果を高めるため、児童生徒が学習する学校の施設、設備を整備し、快適な環境づくりを進めていく必要があり、今後は、学校の耐震化を一層推進したり、必要な設備を計画的かつ効果的に整備したりするなど、学校の快適な環境づくりを促進するとあります。
このように、国、あるいは県当局においても、学校施設の老朽化の現状を十分認識をされておられますが、その対応は、先ほども述べましたように、不十分なものであると言わざるを得ないところであります。
今後、県立学校の耐震化とあわせて、本県の工業教育の中核となる総合技術高等学校や、知的障害養護学校の過大化解消のための尾張地区新設養護学校の整備に多額の予算が必要であることは承知をしています。
しかし、それだからといって、愛知の、そして、日本の将来を担っていく若者たちが長い時間を過ごす学校の教育環境がないがしろにされていいものではありません。学校の施設が汚れたままであったり、壊れていたりすれば、気持ちよく勉強するのは難しいのではないでしょうか。また、教える側の先生方のやる気にも影響が出ることが心配であります。
今後、よりよい教育環境の中で学習意欲を損ねることなく勉強ができるように、また、先生もその力を十分に発揮できるように、学校施設の整備には十分な配慮が必要であると考えるところであります。
そこで、このような状況の中で、老朽化した県立学校の施設整備を今後どのように行っていかれるのか、教育長にお伺いいたします。
次の質問は、新卒者の就職支援対策についてであります。
今春の県内大学・短大卒業者の就職率は九〇・二%で、県が調査を開始した平成六年度以降三番目の低さであり、リーマンショック前の平成二十年三月卒業者の就職率が九七・〇%であったことと比較しますと、大変厳しい結果となりました。
また、先日、来春の卒業予定者の一〇月末時点の就職内定率が県から発表されましたが、前年同時期をわずか一ポイント上回っているものの、リーマンショック前の状況には遠く及ばず、依然厳しい状況が続いております。
新聞報道などによりますと、回復基調にあった景気を背景に、東日本大震災後も大企業を中心に採用計画を変えていないことがプラス材料とはなったものの、今後、採用活動が本格化する中堅・中小企業では、円高や欧州危機による景気減速の影響が出るのではないかとの懸念が示されており、厳しさは変わらず、底を打ったとは言えない状況と考えております。
既に十二月一日からは、再来春卒業の学生、大学であれば三年生に対する企業の広報活動が解禁となり、大企業を中心に会社説明会などを開始されているようであります。
こうした動きを横目に、何社エントリーをしても内定が得られない四年生は焦り、精神的にも肉体的にも疲れ切り、自分の進むべき道を見失っているのではないかと心配しております。
かつての就職氷河期においては、卒業時に安定した正規雇用での就職先を得ることができず、アルバイトなど一時的な不安定就労に甘んじ、フリーターとなった若者も少なくありませんでした。
毎年、学卒者を一括採用し、社内で人材育成を図ることが一般的な日本の企業において、こうした若者は、年齢に応じた職業能力を身につける機会を逸し、さらに職業能力が不十分なため、いつまでも正規の仕事につけないという悪循環に陥らざるを得ません。
これは、本人にとっても不幸であると同時に、社会全体の未来、活力の維持といった観点からも大きな損失であります。本来であれば、希望と意欲を持って社会人としての生活をスタートさせるべき若者たちが、その入り口でつまずくことのないよう、こうした新卒者の就職支援に万全を期すべきと考えておりますが、今後どのように対応していくおつもりか伺います。
続いては、県職員の人材確保について伺います。
先ほども申し上げましたとおり、来年春に向けた就職戦線は大変厳しいものがあります。欧州の財政問題や、これと関連した歴史的な円高で、製造業などの国内立地が困難となる中、若者は就職に大変苦労しております。
全国の状況について申し上げますと、この十一月十八日に文部科学省及び厚生労働省は、来年春卒業予定の大学生の就職内定状況を公表しましたが、それによりますと、就職内定率は、十月一日現在、五九・九%であり、前年同時期より二・三ポイント上昇したものの、就職氷河期とされる二〇〇〇年代初めごろを下回る過去二番目の低水準となっております。
大学生の就職活動が長期化する中、内定を得られない学生の焦る気持ちを考えると、何とか内定をかち取ってほしいと思わざるを得ません。
一方で、こうした民間企業の厳しい求人状況は、優秀な人材が民間企業志望から公務員志望に振りかわる可能性もあり、本県としても、全国から人材確保できる大きなチャンスということもできます。
現在、民主党政権は、平成二十二年六月に閣議決定された地域主権戦略大綱に基づき、義務づけ、枠づけの見直し、国の出先機関の原則廃止、補助金等の一括交付金化などに取り組んでおりますが、地方分権が進めば、地方のことは地方で考えて決定し、実行していかなければなりません。
すなわち、県に対して国の権限が移譲され、国の出先機関が移管されるということは、これまで国の職員が政策立案していたことや事業執行していたことを県職員が行っていくということになります。県職員には、これまで以上の政策立案能力や事業執行能力、個々の事業に対する高い専門性が求められると思います。
また、大村知事は、マニフェストの中で、世界と闘える愛知・名古屋とするため、強い大都市をつくるとして、愛知、名古屋市による中京都創設を掲げております。その性格、仕組みがどのような姿になるのかについては、今後大いに議論する必要があると思いますが、地域が主体になる社会が現実のものとなったとき、優秀な人材がいないと、その組織や事業はうまく機能しないということになります。
このようなことを考えますと、新たな行政課題にも着実、迅速に対応でき、地域をリードしていけるような優秀な職員、人材が必要であります。このためには、在職する職員の人材育成はもちろんのことでありますが、将来を見据えて、優秀な人材を確保することが極めて重要であります。
このような中、本県の職員採用の状況を見てみますと、本年六月に実施した大学卒業程度を対象とした第一回愛知県職員採用候補者試験の採用予定数は約二百四十五人であり、これは、昨年度実施した同じ試験の採用予定数約二百二十人よりも一〇%増の募集であり、過去十五年間では最多の募集数でもあります。
さらに、類似府県の大学卒業者を対象とした採用試験のことしの採用予定数を見てみると、神奈川県が二百二十人、大阪府が六十人、兵庫県が約百二十人、福岡県が約百十五人であります。こうして見てまいりますと、他府県と比較しても、本県が非常に積極的に職員の採用を行っていることがわかります。
しかしながら、採用する人材の質も大切だと思います。また、民間企業の厳しい求人状況のときにこそ、県がさらに積極的に職員の採用を行っていくことは、優秀な人材を確保するチャンスであるとともに、若年層の就職難にも幾らかの貢献をしているものと認識しております。
そこでお伺いします。
事業は人なりといいますが、これまで述べてまいりましたように、本県が将来にわたってこの地域をリードしていくには、優秀な人材が間違いなく必要であります。民間に例えると、従業員一万人規模の大きな会社に匹敵する本県においては、どのような考えで人材を確保し、そのためどのような取り組みをしているのかについてお伺いをいたします。
以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)
36:
◯教育長(
今井秀明君) 県立学校施設の老朽化への対応についてお答えをいたします。
学校施設の整備につきましては、東海及び東南海・南海地震の発生が危惧される中、さきの東日本大震災も踏まえまして、子供たちの安全確保と非常災害時の地域住民の避難場所としての役割を果たすため、建物の耐震化を早急に進めているところでございます。
その一方で、議員お示しのとおり、県立学校の施設は、昭和四十年代から五十年代前半にかけて整備され、建築後四十年以上経過したものも多いことから、老朽化による機能低下が年を追うごとに目立ってきております。
そのため、現在重点的に進めております耐震改修を行う際には、予算の許す限り、外壁や屋上防水などの改修をあわせて行い、施設の機能低下を防いでいるところでございますが、細かな維持補修が年々増加しており、日常の小修繕だけでは施設の老朽化に追いつかない状況でございます。
また、今年度から三カ年間にわたり、全県立学校におきまして、建物の外壁の全面打診点検を初め、体育館の天井材や照明器具など、いわゆる非構造部材の点検を行うことといたしており、その点検結果によっては、建物の耐震化とあわせ、安全確保のために優先的に実施しなければならない整備が新たに生じる可能性もございます。
したがいまして、三連動地震に備えた整備を終えるまでの間は、県立学校の老朽化に抜本的な対応をすることは困難な状況でございますが、そうした中でも、引き続き限られた予算の効果的な執行に努めるなど、できる限りの工夫をいたしまして、子供たちの学習活動に大きな支障が生じることのないよう対応してまいりたいと考えております。
以上でございます。
37: ◯産業労働部労政担当局長(小島邦裕君) 私からは、新卒者の就職支援対策についてお答えいたします。
来春大学等卒業予定者の就職環境につきましては、引き続き厳しさが見込まれます。このため、本県では、本年十月、経済団体や学校関係者などを構成員とする新卒者就職支援協議会を開催し、地域を挙げた対策を協議し、順次実行に移しているところであります。
まず、学生と中小企業等との出会いの場として、就職面接会や企業説明会の開催であります。本日も、大学四年生など未内定学生を対象とする企業説明会を開催しているところでありますが、これを含め、今後、二月までに合計十回、延べ約二百社の企業の参加を得て開催する予定であります。
また、学生の中には、職業意識やコミュニケーション能力などが十分でない方が見受けられること、一方、中堅・中小企業の中には、現時点でも来春の採用計画が充足できていない企業が相当数あるものの、こうした企業の情報が的確に学生に届いていないことなどを踏まえまして、緊急雇用創出事業基金を活用した新たな取り組みといたしまして、十一月から学生就職サポートモデル事業を開始しております。
具体的には、大学の協力のもと、未内定の大学四年生を対象に、まず、就職に向けた個別指導や実戦的研修を集中的に実施いたします。並行いたしまして、新卒採用が未充足の中堅・中小企業を掘り起こし、先ほど申し上げました十回の面接会に加え、さらにマッチング機会を提供することにより、一人でも多くの学生が就職できるよう支援してまいりたいと考えております。
以上でございます。
38: ◯総務部人事担当局長(戸田正彦君) 本県職員の人材確保についてお答えいたします。
県政を取り巻く環境が大きく変化する中にあって、さまざまな行政課題に的確に対応できる人材として、多様な視点を持ち、みずから考え、チャレンジする意欲が旺盛なすぐれた人材を積極的に採用してまいりたいと考えております。
こうした人材を幅広い階層から採用するため、新卒者のほか、民間企業などで有用な職務経験を積んだ者についても、平成十九年度から採用試験を実施しており、採用チャネルの多様化も図りながら、人材確保に努めているところであります。
このうち、民間の職務経験者については、試験の受験上限年齢を三十四歳から五十九歳に拡大し、より幅広く人材の確保が図れるよう、平成二十三年度の試験から改めたところであります。
また、優秀な人材を確保するためには、できるだけ多くの方に受験していただくことが重要でありますので、県職員の実際の職務内容について理解を深めてもらうことを目的として、愛知県職員ガイダンスや職場見学会を平成二十年度から毎年十二月と一月に人事委員会と共同して開催しており、この結果、第一回採用試験においては、昨年、本年と二百数十人の募集に対して、二年続けて受験者が二千人を超え、一定の成果も得られております。
一方で、採用数については、第五次行革大綱に基づく定数削減を着実に進めながら、将来の職員の年齢構成のバランスを考慮し、一どきに大量採用するのではなく、継続的に一定の採用数が確保できるよう努めているところであります。
今後とも、一定の採用数を確保しつつ、受験者をふやす取り組みにより優秀な人材を確保し、さらには、政策立案能力や専門能力を高める人材育成方策についても充実させてまいりたいと考えております。
39: ◯五十七番(伊藤辰夫君) それぞれ御答弁をいただきましてありがとうございました。
一点要望させていただきます。
県立学校の老朽化についてでありますが、やはり耐震化に関する整備が終わるまでは、抜本的な対応がどうも難しいというお答えであるというふうに受けとめました。
確かに、老朽化に対しては、全面的なリニューアルを行うような整備を行うことが難しい状況であるのは理解できるところでありますけれども、やはりやらなければならないことがそのままになっている部分がかなりあるのではないかなというふうに感じております。
現在でも努力はされているようでありますが、さらに努力を重ねていただいて、あすを担う子供たちの学習意欲を損なうことのないように、よりよい教育環境の整備を図っていただくことを要望いたします。
以上で私の質問を終わります。
40: ◯
議長(岩村進次君) 進行いたします。
中村すすむ議員。
〔五十三番中村すすむ君登壇〕(拍手)
41: ◯五十三番(中村すすむ君) 私は、今回、愛知県のエネルギー政策、そして、重点改革プログラムの公開ヒアリング、この二つについて質問をいたします。
まず、一つ目、愛知県のエネルギー政策についてであります。
三月の東日本大震災で福島第一原子力発電所が大きな被害を受け、原子力発電の安全神話が崩れるとともに、これまで我が国の発電電力量の約三割を依存し、CO2排出もなく、環境にも適しているとされた原子力発電ですが、今、この代替エネルギーを模索する動きが始まっております。
これまでも、再生可能エネルギーを導入する動きはあったものの、原発に比べて発電コストが高かったことなどから、遅々として進まなかった経緯があります。
しかし、国は、原子力発電への依存度を二〇三〇年には五割とするという現行のエネルギー基本計画を見直して、再生可能エネルギー等のいわゆるグリーンイノベーション関連の戦略を強化、前倒しするとの方針を示しております。
また、来年には、再生可能エネルギーの固定買取価格が決まり、七月から制度がスタートするという動きもありまして、ビジネスチャンスとして企業の活発な動きが出てくるのは報道のとおりでございます。
もう一つ、エネルギーにかかわる議論で新たに注目されていることは、原発のような大規模なエネルギー基地を地方に置く大規模集中型から地域分散型への転換であります。
これは、電力の需要地に中小型の発電設備を設置し、近隣地域で融通し合って電気を使うシステムをいいます。ことしの夏の首都圏における電力不足のとき、天然ガスを燃料とする自家発電設備を地下に持つ六本木ヒルズでは、電力不足にならずに、余剰電力を東京電力に販売していたという実績があるそうであります。
そうした地域分散型のシステムは、今後は、太陽光や風力、地熱、あるいは小水力といった地域資源を生かした再生可能エネルギーにシフトしていくことが想定をされます。
幸い、ここ愛知県は、再生可能エネルギーの資源に富んでおります。メガソーラー発電が武豊で十月から運転が開始され、田原でも三井化学の敷地を活用したメガソーラーの計画がされておりますし、住宅用太陽光発電の設置実績も日本一であります。
こうした資源エネルギーは、産業としても本県の新たな成長戦略として育てていける分野であることも念頭に置いて、総合的な政策をまとめていくことが必要となります。
こうした新たなエネルギーの供給側の動きがある一方で、今度は、エネルギーの利用者である私たちユーザー側、需要側もエネルギーを賢く、効率よく利用していく生活スタイル、企業スタイルに適応していく動きが出始めております。エネルギーの需要側の構造的見直しを目指した県民運動にしていくこともこれからの愛知県の大きな役割となるでしょう。
以上のことを踏まえて、本県のエネルギー政策について、順次質問をしてまいります。
まず、一つ目の質問は、エネルギープロジェクトチームのこれまでの議論状況についてお伺いをいたします。
本県は、中京独立戦略本部の設置に先行して、六つのテーマから成るプロジェクトチームをスタートさせております。その中の一つに、エネルギープロジェクトチームがあります。
その設置目的には、こううたわれております。エネルギーリスクに強い社会システムへの転換に向けて、愛知県と名古屋市が連携して、主に中長期的な観点から、新エネルギーの導入や省エネルギーの推進をさらに加速するための具体的な方策を検討するということであります。
五月のチーム発足以来、計三回の会議が開催されております。その検討項目として大きくは五点。
一つ、新エネルギーの導入促進。
二つ、建築物などの省エネ対策の一層の促進。
三つ、分散型の地域エネルギーシステムの構築。
四つ、エネルギー関連の研究開発の促進。
そして、五つ目に、次世代自動車の普及促進。
この五点であります。
そこで、まず、このエネルギープロジェクトチームのこれまで三回の会議の議論内容についてお聞きをいたします。
これまでどのような議論がなされたのか、あるいはどのようなポイントに絞って議論を進めていくべきかといった議論がありましたら、かいつまんでポイントをお話しいただきたいというふうに思います。その上で、本県が担うべき役割、本県の独自性を生かした施策について踏み込んだ
発言等がありましたら、あわせてお聞きをしたいと思います。
次に、地域分散型エネルギーシステムの構築に向けた愛知県の取り組みについてお聞きをいたします。
今回の原発事故を契機に、幾つかの自治体において、新たなエネルギーシステムの構築を目指した独自のエネルギー確保に向けた動きがもう出始めております。
東京都では、電力の大量消費地である都がみずから行動を起こして、地産地消の東京産エネルギー確保に取り組むとして、百万キロワット級の天然ガス発電所の建設を目指して、プロジェクトチームでの検討が進められております。九月には、その立地候補地五カ所を発表しております。
また、大阪堺市、ここもシャープと組んで、メガソーラーによる発電をスタートさせて、蓄電池による電力の安定的な供給の実証実験に着手したり、あるいは泉北ニュータウンの中にある小学校跡地に、すべての使用エネルギーを太陽光発電で賄うネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの実現を目指した住宅街区を形成するエコモデルタウン事業を進めております。
こうした動きを見ておりますと、これまで大規模集中型のエネルギー政策で進めてきた都市運営のあり方を、自治体の特性を生かして独自に進めようとする、まさに地域主権の台頭を感じます。こうした自治体主導による地域分散型のエネルギー政策として、愛知県としてはどのように取り組んでおられるのかお聞きをします。
三つ目の質問は、本県の再生可能エネルギーの可能性についてであります。
本県には、先ほど申し上げた武豊や田原のメガソーラー、あるいは名古屋駅前の地域冷暖房システムや、企業の持つ自己発電能力、さらには、全国一の住宅用太陽光発電設置などの先進的事例がありますが、本県の持つ再生可能エネルギーの可能性はほかにもあるのではないでしょうか。
先日、資源エネルギー庁に行ってまいりました。本県の再生可能エネルギーの導入ポテンシャルについて、可能性について話を聞いてまいりました。
そこで伺った話、あるいは国の調査結果についてかいつまんで申し上げますと、一つには、本県のポテンシャル量としては太陽光発電が最も大きい。県内の全体の半分以上を占めるということでありました。その中でも、工場等の屋根については全国一のレベルであるということでした。
本県は、太陽光発電についての実績もありまして、これは予想どおりだったという感がありますが、意外なことに、小水力発電、その中でも農業用水を使った小水力発電は、愛知県のポテンシャルが全国一なのだそうであります。
そこで、まず、私がお聞きしたいのは、小水力発電の可能性についてであります。
小水力発電とは、大規模なダム式の水力発電ではなく、農業用水や河川など、継続した水流の高低差を利用した小規模の発電のことをいいます。場所は郡部に限定されておりますし、発電量という意味でも、太陽光、風力に比べると、わずかなものでありますけれども、設備投資も少額で済みますし、まちおこしなど地域の活性化に結びつけることのできる可能性を持ったエネルギー源であります。愛知県の地域性にかなったものであり、エネルギーの持つ複合的な政策の中では十分検討に値するものだというふうに考えます。
国の調査でポテンシャルが高いと示された農業用水を利用した小水力発電の愛知県での実績及び可能性について、どのように考えておられるのかお聞きをいたします。
四つ目の質問として、本県の太陽光発電施設の設置についてお聞きをいたします。
太陽光については、先ほどの調査結果で示されているように、本県の再生可能エネルギーの中では最も可能性が大きいものでありまして、中でも、住宅用太陽光発電施設の設置基数は全国一位という実績であります。
住宅用太陽光発電施設をさらに普及させていくことは、家庭単位で賢いエネルギーの使い方を学ぶことにつながり、賢いユーザーを育てることに発展します。設置基数をさらに普及させていくためには、本県の補助金を受けられるよう、県下の全市町村に補助制度を設けること、そして、県の補助基準、つまり、出力一キロワット当たり五千円という現行の上乗せの補助額をアップさせること等々が考えられると思いますが、一層の普及に向けて、県はどのような取り組みをされるお考えかお聞きをします。
最後の質問として、エネルギープロジェクトチームの今後の進め方についてお伺いをしたいと思います。
本県のエネルギー政策を進めていくに当たっての基本は、エネルギー供給側のベストミックスと、需要側の構造の見直しという需要、供給両面からの対策だと考えます。
供給面では、これまで質問してきましたとおり、本県の地域性、独自性を生かした地域分散型エネルギーにシフトしていき、原子力発電に依存してきた部分を少しずつでも再生可能エネルギーで代替していくこと、また、その過程で新たな成長産業を育成することが重要であります。
その一方で、需要面では、スマートグリッドを初め、賢くエネルギーを使う仕組みや考えを普及、浸透させることによって、効率的な利用が進む社会全体のシステムの構築を目指さなければなりません。こうしたエネルギー政策を総合的、複合的にとらえ、政策立案に結びつけていくためにエネルギープロジェクトチームの役割が大きいと考えます。
この項の最初の質問で、エネルギープロジェクトチームの議論状況をお聞きしましたが、プロジェクトチームはいつまでに、どのような成果を取りまとめていく予定で運営されているのかお聞きをしたいと思います。
大きく二つ目の質問、重点改革プログラムの公開ヒアリングについてお伺いをいたします。
十一月四日、六日の両日、重点改革プログラムの四十六項目のうちの八項目について、改革素案の方向性について、有識者からの提言を受ける試みが公開の場で実施をされました。
これまで私たちが執行部に対して提言してきました、いわゆる事業仕分けとは少し異なるアプローチでありますが、外部の有識者の声も聞き、県民の前で議論がされるといった場を持ったということは大きな前進だと思いますし、今後、こうした緊張感のある中で本県の行革を進め、その成果を次年度事業に反映させる取り組みを積み重ねていただきたいものだというふうに感じました。
以下、公開ヒアリングを傍聴させていただいたときに感じた点を挙げながら、県のお考え、今後の進め方について質問をしていきたいと思います。
私が傍聴させていただいたのは、八事業のうちの環境調査センターの組織運営見直しという事業、それから、高等技術専門校の見通しという二つの事業だけでしたので、これから指摘する課題が八事業すべてに共通したものではないということは、最初にお断りをしておきたいと思います。
まず、有識者の皆さんの表決の結果を申し上げますと、八つの事業のうち、改革の内容について再検討を要すると結論づけた項目が八つのうち七つあったということです。残りの一つも、妥当、それと再検討を要すというのが同数だったということでありましたので、いずれも、今、執行部が進めようとしている改革の内容が再検討しなさいというふうに結論づけられたというふうに理解していいと思います。
さて、公開ヒアリングでは、外部有識者から具体的にどのような指摘や質問があったのか、少し紹介をさせていただきます。
まず、環境調査センターの組織、運営の見直しについて。
この事業は、大気や水質、化学物質など多岐にわたる情報収集、分析、検査、これをする業務を担っておりまして、これまでその調査業務は民間への委託を順次進めてきておりまして、行政検査とか苦情処理の検査といった行政が手がけなければならない業務を中心にとどめておると。
一方で、COP10の開催地として、今後新たに生物多様性分野の調査研究業務が加わりまして、業務拡大の要素もあるということでありました。
そうした中で、課題として、財政的、人的な資源が限られる中で、より効果的、効率的に機能を果たすことができるよう、組織、運営を見直すべきとの改革の切り口が示されまして、平成二十三年度中にその中期計画を策定するという改革方針を今回執行部側が提示されております。
そのような執行部側の説明に対しまして、外部有識者の表決は、取り組み内容を明確にしなさいという声が四件、それから、新たな改革の視点が必要だという声が三件上げられておりました。
私も聞いておりまして、執行部として既に外部委託などのコスト削減策を講じてきている中で、では、具体的にさらに何に取り組むのかというような方向性が示されていないこと、また、COP10を受けて、新たな業務量の拡大が想定される中では、拡大する業務に対してどんな手法で対応していくのかといった新たな視点、これも明示されていないことなど、なかなか議論が散漫になりやすいのではないかといったところを感じました。
また、改革によるコスト削減額や、改革実施後の体制の変化など、改革によって予測される効果が不明確なところも気になったところであります。
傍聴した二つ目のテーマ、高等技術専門校の見直しについても同様の指摘がされると思います。
外部有識者七名の表決結果は、再検討を要す。その中で、改革の取り組み内容を明確にしなさいというのが四件、それから、改革には新たな視点が必要だというのが二件、スピードアップが必要だというのが一件という御指摘がありました。
御存じのように、高等技術専門校は、名古屋、岡崎、一宮、瀬戸など県内に六校ありまして、中学・高校卒業者を対象とした二年間の普通課程訓練と、離職者、在職者を対象とした短期課程の訓練を実施しておりまして、普通課程の就職率はほぼ一〇〇%、短期課程の就職率が六八%という実績で、訓練内容も、機械金属加工、造園、窯業、それから木造建築など、多岐にわたっております。
そうした中で、施設は老朽化する、それから、指導者も高齢化している。また、最近のリーマンショック以降の国の緊急雇用対策も受けて、新たにOAや介護医療事務などの委託訓練も加わって、役割が多様化してきている実態。それから、二十二年度から指定管理者制度の導入ができる環境となって、県内六カ所の施設体制のあり方も含めて、物づくりを核とした訓練体制へシフトを目指すというような改革を二十四年度末までに行うというふうに執行部側は改革の方向性を打ち出しておられます。
こうした説明に対しまして、外部有識者から指摘されたことが、指定管理者導入の可能性、あるいは六カ所ある訓練校の共通した事務部門を統合すべきだといったような指摘がされておられました。
以上、傍聴した事業の概要と改革の方向性について、議論状況について、ざくっと紹介をいたしました。
そこで、以下四点についてお伺いをいたします。
まず、今回初めて公開ヒアリングを実施してみて、全体の評価について、総括部としてどのようにお考えかお聞きをします。
私なりに感じた点は、いわゆる事業仕分けとは違って、今回の公開ヒアリングは、重点改革プログラムというあらかじめ改革が必要とされる事業と、その改革の方向性まで俎上に上げて議論をするわけですから、事業仕分けのように、費用対効果、あるいは天下り人事など、無駄の要因をめぐってちょうちょうはっしの議論をするたぐいではなくて、説明側も質問側も改革するという点では一致しているため、そもそも事業の必要性、あるいは無駄な予算使途といったような一般傍聴向けの基本部分の論議が非常に薄く感じました。
一方、準備された資料は、事業内容、予算規模、現状と課題が簡潔にまとめられておりまして、傍聴者もこの辺は理解がしやすかったのではというふうに印象が残っております。
次の質問として、今回対象とした八事業の選定理由についてお伺いをいたします。
四十六項目から対象となった八項目は、県立病院のあり方や福祉医療制度の見直しといった、予算規模でいいますと数百億の単位のものから、生涯学習センターの見直しの千二百万円まで、いろいろのレベルでございました。
見直しの効果額、あるいは波及効果を考えれば、規模の大きな事業がふさわしいというふうに思いますし、対象事業の所管部署を見ても、少し偏りがあるように感じましたが、外部有識者からの指摘事項を持ち帰って、部局単位で広く展開させるねらいがあるならば、数多くの部局の事業を
選択するという考えもあると思います。今回の事業選定に対する考え方をお聞きいたします。
次に、今回、外部有識者からの指摘事項をどのように反映させていくかについてお伺いをいたします。
対象となった八事業のうち七事業が、再検討を要するというふうに指摘されております。再検討するに当たっては、改革の取り組み内容を明確にしなさいとか、あるいは改革の取り組みに新たな視点が必要ですというものが大勢でしたが、このことから、指摘を受けた担当部局は持ち帰って、改革の方向性について文字どおり再検討するわけですが、傍聴して感じましたことは、改革の取り組み内容を明確にすべきといっても、公開ヒアリングの議論の中では、それが何なのかという、そういう結論が出ていたわけではないということであります。あるいは、新しい視点が必要だという指摘があったとしても、その視点が何かということについて、結論が出ていたわけではないということであります。
ですから、担当部局が今回の一時間足らずの議論を踏まえて、外部有識者の意向に沿った十分な修正ができるのかどうかというのは非常に疑問に感じました。どのように取り組まれようとしているのか、環境調査センターと高等技術専門校を所管するそれぞれの担当部局長にお伺いをしたいと思います。
次の質問は、今回の公開ヒアリングを経験して、今回の反省も踏まえて、どのような点を改善し、次回はどういうスタイルで実施するか、考えをお聞きしたいというふうに思います。
どういうスタイルと言いましたのは、今回のように改革の必要性があらかじめ決まっている事業を俎上にのせるのか、あるいは費用対効果、無駄のありなしといった事業そのものの必要性を議論するのかという進め方が、公開ヒアリングとしてどちらがなじむのか、そして、傍聴される一般県民の皆様へのわかりやすさといった点ではどうなのかといった点も含めて、お考えをお聞きしたいというふうに思います。
以上、大きく二点について質問をいたしました。いずれも、愛知県の先進性、独自性が問われる重要なテーマだというふうに思っております。執行部の皆さんの前向きな答弁を期待して、壇上からの質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
42:
◯知事政策局長(
中西肇君) 愛知県のエネルギー政策についてお答えさせていただきます。
初めに、エネルギープロジェクトチームにおける議論の内容についてでございます。
これまでの会議では、当地域におけます新エネルギー、省エネルギーの取り組みの現状や、他地域でのベストプラクティス、さらには、国におけますエネルギー政策の見直しの動向に関します情報の共有を図りながら、主に中長期的な観点からエネルギー政策の方向性について検討してきております。
その中で、今後のエネルギー政策のキーワードは、やはり分散型でございまして、特に自治体の役割といたしまして、太陽光発電等の導入を促進し、新エネ、省エネの機器や、さらに設備のマーケットを広げること、また、地域レベルでの面的な広がりを持たせることが重要であるとの共通の認識が得られたところでございます。
そうした認識のもと、具体的な検討課題といたしまして、例えば、今後のリニア中央新幹線開通に伴います名古屋駅周辺での都市開発などを踏まえた地域冷暖房システムの導入促進や、また、住宅用太陽光発電が全国一の設置基数を誇る中で、住まいや建築物単位の新エネ、省エネの取り組みを面的に広げますとともに、情報通信技術を活用して地域レベルでのエネルギー需給の最適化を図りますスマートコミュニティーの普及拡大といった方向性について、議論されたところでございます。
次に、分散型エネルギー政策に係ります取り組みでございます。
福島第一原子力発電所の事故では、電力の安定供給に適しているとされておりました大規模集中型の電力供給体制が、むしろ、大規模災害時に大きなリスクとなることが明らかとなりました。
今後は、災害や危機に強い電力体制の構築に向けまして、太陽光や身近な小水力など、分散型で小規模でも活用できる再生可能エネルギーによる発電をふやしていく必要があると考えてございます。
そのためには、まず、技術開発によりまして、再生可能エネルギーの発電能力を増大させますとともに、発電コストを下げることが必要でございます。また、天候や季節によって発電出力が大きく変わります再生可能エネルギーの課題を克服いたしまして、電力需給の最適な制御ができますスマートグリッドを導入する必要性が今後さらに高まるものと考えてございます。
こうした中で、本県では、中部臨空都市に整備いたしましたあいち臨空新エネルギー実証研究エリアにおきまして、太陽光や風力発電、燃料電池、電気自動車用の急速充電器など、分散型エネルギーシステムを構築いたします要素技術に関する実証研究を引き続き支援していくとともに、新エネ関係の技術開発を行っております中小企業に対する助成などにより、技術開発をさらに促進したいというふうに考えてございます。
また、豊田市内におきましては、国内四地域で実施されております国の次世代エネルギー・社会システム実証の一つといたしまして、今年度からスマートグリッドの本格的な実証実験が進められてございます。
本県といたしましては、推進母体でございます協議会の構成員として、セミナーなどの開催といった情報発信事業を行いますほか、あいち臨空新エネルギー実証研究エリアでの成果の相互利用などを図ることといたしまして、こうした地域独自の先駆的な取り組みを支援し、また、県内の他地域にも普及させてまいりたいというふうに考えてございます。
次に、エネルギープロジェクトチームの今後の予定でございますが、本県では、これまで新エネルギーに関する課題に対しまして、地球温暖化防止や環境保全といった環境面、また、次世代産業の育成といった産業振興面、さらには、農業用水を活用いたしました小水力発電など農業施設の活用面など、それぞれの観点から所管する各部局におきまして、さまざまな施策に取り組んできたところでございます。
エネルギープロジェクトチームでは、これまでの議論も踏まえながら、さらに検討を深めまして、本県が既に実施してございます取り組みや、今後新たに取り組む事業、さらには、中長期的な観点からの取り組み方向などを、エネルギー政策の観点から整理、体系化した政策パッケージとして、年度内をめどに取りまとめてまいりたいというふうに考えてございます。
以上でございます。
43: ◯農林水産部農林基盤担当局長(溝田大助君) 農業用水を利用した小水力発電の本県での実績と、今後の可能性についてお尋ねをいただきました。
本県では、古くから木曽川、矢作川、豊川の三大河川を水源として大規模な農業用水が数多く開削され、こうした農業用水を利用して、明治時代には、豊橋市の牟呂用水において、また、昭和の一時期には、豊田市の明治用水において小水力発電が行われておりました。しかしながら、その後、発電の主体が火力や原子力へ移行する中で、本県内での農業用水を利用した小水力発電は長年途絶えておりました。
こうした中、平成十四年に、電気事業者に一定割合で新エネルギーで発電される電気の利用を義務づける、いわゆるRPS法が制定されたことを受けまして、愛知用水の調整池である愛知池と下流幹線水路の約十四メートルの落差を利用した最大出力一千キロワットの東郷発電所が独立行政法人水資源機構によって計画され、平成十七年三月から運転を開始しております。
この発電所は、愛知用水総合管理所のすべての電力を賄い、また、余剰電力の売電収入は、ユーザーの維持管理費負担の軽減にも充てられております。
次に、本県における農業用水を利用した小水力発電のさらなる可能性でございますが、議員お示しの国の調査報告書で示されておりますとおり、本県は、非常に高いポテンシャルを有していることに加えまして、来年度スタートする固定価格買取制度によって採算性の向上も期待されるところでありますので、開発適地の調査や、事業化の検討に一層積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
44: ◯環境部長(西川洋二君) 二点についてお答えいたします。
まず、本県の住宅用太陽光発電施設の普及についてでございます。
県では、住宅用太陽光発電施設につきまして、平成十五年度から市町村と協調した独自の補助制度を、国が補助を中断した時期もやめることなく継続して実施し、その普及に努めてまいりました。その結果、現在までの累積設置基数は六万三千八百基余りとなっており、全国一位でございます。
そして、その普及に当たりましては、県の制度が市町村における補助制度の実施を前提としておりますことから、全市町村での実施が必要と考えております。このため、補助制度を設けていない市町村に対しまして、制度の創設を働きかけてまいりましたところ、今年度におきましては、五十四市町村中四十八市町村までが補助を実施する状況となり、来年度は、今年度に比べより多くの市町村で補助を実施していただけるものと見込んでおるところでございます。
また、普及を図る上で補助制度の充実も重要でございます。これまで補助申請件数の増加に対応し、ことし六月の補正予算におきましても、対前年比二〇%増という予算総額の充実を図ったところでありますけれども、議員御指摘の補助単価の増額という点につきましては、現行制度のもとで、補助申請件数が着実に伸びている状況を踏まえますと、補助制度がうまく機能していると思われますこと、さらには、設置にかかる費用が低下してきていることもありまして、増額は考えていないところでございますので、この点は御理解いただきたいと思います。
今後は、設置にかかる費用の動向を踏まえ、県、市町村の補助制度とあわせまして、国の補助制度や来年七月から始まる電力の固定価格買取制度を活用することで、さらなる普及に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
次に、重点改革プログラムの公開ヒアリングに関する御質問のうち、外部有識者の指摘事項にどう取り組むかについて、環境調査センターに関してお答えいたします。
環境調査センターの組織、運営の見直しにつきましては、センターのあるべき将来像を検討しながら、より効果的、効率的に機能を果たしていけるよう、組織、運営のあり方を含めた中期的な計画を二十三年度中に策定するという改革素案に対し、外部有識者の方々からは、見直し内容がはっきりしない、あるいは業務量の増加が見込まれる中、いろいろな観点から合理化を考えるべきといった趣旨の意見が述べられまして、最終的には、取り組み内容を明確にすべきという意見が四件、取り組み内容に新たな視点を加えるべきという意見が三件となり、改革素案には再検討が必要との御提言をいただきました。
このため、外部有識者の御意見、御提言を踏まえまして、現在の改革案には、環境をめぐる新たな課題への対応、技術研修等の人材育成機能の確保という点とともに、本庁、地方機関との役割分担の見直しによる一部機能の縮小、組織、運営のさらなる効率化という合理化の点を加えたところでありまして、これから策定する中期計画は、こうした合理化の方向性をより踏まえた内容にしてまいりたいと考えておるところでございます。
以上でございます。
45: ◯総務部長(野村道朗君) 重点改革プログラムの公開ヒアリングについてお尋ねをいただきましたけれども、まず、その評価についてでございます。
今回の公開ヒアリングは、十月に取りまとめた重点改革プログラム素案のうち八項目について、外部有識者から見直しの方向性について御提言をいただくことをねらいとして実施をいたしたものでございます。
これは、公開の場で外部の意見を多数決により提言を受けると、こういった点で事業仕分けの手法も参考にしておりますけれども、通常の事業仕分けのように、廃止や見直し等の判定ではなく、改革素案の見直しの方向性に対する提言という点では、本県独自の取り組みと、このように考えております。
また、この公開ヒアリングでは、延べ約五百名の方に傍聴していただきましたほか、新聞やテレビでも取り上げていただきました。テレビ報道の中には、公開ヒアリング会場での取材とあわせて、ヒアリング対象となった施設や関係者の取材を加え、改革の論点について広く報道していただいたものもございまして、県民の皆様に理解を深めていただくよい機会になったと、このように考えております。
提言内容につきましては、有識者から改革のスピードアップや、改革内容の明確化などの御意見をいただきましたが、特に有識者と本県事業課室との活発な質疑応答の中で、改革の具体化に踏み込んだ貴重な御示唆を数多くいただいたところでございまして、有意義なものであったと、このように考えております。
次に、公開ヒアリングの対象項目の選定に対する考え方についてでございます。
今回の重点改革プログラムでは、さまざまな立場の方々から御意見を伺いながら検討を進めることが大切と、このように考えまして、検討の初期の段階から改革項目と論点を公表し、県民の皆様や市町村の皆様方から広く御意見をいただくとともに、外部有識者には、改革素案の見直しの方向性について御提言をいただくなどの工夫を重ねてまいったところでございます。
このうち、公開ヒアリングで対象とした項目は八項目でございますが、四十六の重点改革項目から歳入に関するものなどを除いた上で、県民に身近な文化・スポーツ施設や補助制度などの中から、見直しの方向性をさらに明確にする必要があると思われたものを部局バランスも考慮しながら選定したものでございます。
最後に、次回に向けての考え方についてでございます。
今回の重点改革プログラムは、厳しい財政状況を踏まえた第五次行革大綱の深掘りとして、県民の皆様、市町村、有識者の方々などからさまざまな御意見をいただきながら取りまとめてまいりました。
もとより、引き続き厳しい財政状況が見込まれますことから、今後も不断の行革に取り組んでいく必要がございます。
この取り組みを進めるに当たりましては、第三者の視点を取り入れていくことや、県民の皆様にわかりやすくお伝えする工夫が極めて重要でございますので、国で新たに始まった提言型政策仕分けや、他自治体の事例なども参考にしながら、よりよい方法について工夫、研究してまいりたいと、このように考えております。
46: ◯産業労働部労政担当局長(小島邦裕君) 重点改革プログラムの公開ヒアリングに関し、ヒアリングでの指摘事項についてどのように対応するかとのお尋ねのうち、職業訓練を実施しております高等技術専門校の見直しに関する部分についてお答え申し上げます。
高等技術専門校の見直しにつきましては、公開ヒアリングに提出した資料では、事業実施体制の見直し検討を平成二十四年度末までに行うこと、この見直しに当たっては、現在の六校体制のあり方も含めて検討すること、また、指定管理者制度の導入についても、課題等を整理しながら検討していくことなどを改革内容として記述させていただいておりました。
公開ヒアリングの結果、この改革内容について、主に取り組み内容を明確にすべきという観点から再検討が必要との御提言をいただきました。
そのため、ヒアリングでいただきました御意見を踏まえまして、専門校の管理部門の集約化、統合の可能性を検討すること、また、中小企業からの職業訓練に関する聞き取りを行うことなどの趣旨を追加記述させていただきました。
公開ヒアリングでは、このほかにもさまざまな御意見をいただきましたので、今後、平成二十四年度末までに行う高等技術専門校の見直し検討の中でしっかり生かしてまいりたいと考えております。
以上でございます。
47: ◯五十三番(中村すすむ君) 要望を二点申し上げます。
まず、エネルギー政策で最後に質問をさせていただきました、プロジェクトチームがいつまでに、どのような成果を取りまとめていく予定かということにつきまして、今、部長から御答弁いただきました。
年度内をめどに整理していくという答弁をいただきましたので、ぜひまた、その期限を明示していただいたということを評価しつつ、この内容につきまして、中長期的な取り組み方向というふうに御
発言いただきましたけれども、質問の中でも触れましたように、複眼的な要素がありますので、ぜひそれをどうやってエネルギーリスクに強い社会システムの方向に収れんさせていくかという、県の役割をしっかり担っていただきたいということを要望させていただきたいというふうに思います。
それから、もう一点、重点改革プログラムの公開ヒアリングについて要望を一点させていただきますが、今、お二人、部局長から、私がたまたま聞きました事業についてはそういうことで、素案の段階から、今、答弁をいただいた内容を盛り込んでいただいて、最終案を提出いただいたというふうに認識をしておりますので、それはそれで外部有識者の指摘事項がしっかり反映されたなというふうに評価をしたいと思います。
ただ、残りの三十八事業がどのようにそれを反映させていただいたのかなということで、最終案をざっと見させていただきましたが、素案のままでスルーされているような事業がほとんどだったというふうに感じまして、非常に残念でした。
選定されたのは八事業ですが、それらに対する指摘事項がみずからの事業に当てはまるのかどうかということぐらいはしっかり意識を持って執行部の皆さんがやっていただかないと、今回の公開ヒアリングは、広がりのないパフォーマンスに終わってしまうなという感じがいたしました。
四十六の重点改革プログラムに選定されなかった事業も含めまして、従来どおりの改革の方向性に流されることのないように、管理職の皆さん、そして、総括部がしっかりフォローをしていただきますように強く要望したいと思います。ありがとうございます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
48: ◯三十九番(川嶋太郎君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
49: ◯
議長(岩村進次君) 川嶋太郎議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
50: ◯
議長(岩村進次君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午後二時五十八分休憩
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午後三時四十分開議
51: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
水野富夫議員。
〔百一番水野富夫君登壇〕(拍手)
52: ◯百一番(水野富夫君) 平成二十三年本会議の一般質問の最後ができることを非常に感謝し、通告に従い、愛知県心身障害者コロニーに付随する問題について質問をしてまいりたいと思います。
先日の我が党、中野治美議員の代表質問において、知事から、新しい枠組みが必要であり、コロニーの再編を地域医療再生計画に位置づけ、早期に再編と整備を進め、二十五年度中の着工を目指していくとの答弁がありました。
コロニーの再編、整備については、今後、医療支援部門や、短期の地域療育支援部門を中心に進めることになります。これは、障害者を抱える保護者を初め、障害者福祉に携わる多くの方々にとって長年にわたる懸案であり、今回の大村知事の決断に対して、大いに評価しなければなりません。
一方で、県当局に対しては、本来、コロニーについては、我が愛知が全国に誇るべき障害者医療の拠点として、地域医療再生基金の有無にかかわらず、もっと早い段階で改築をすべきではなかったのか、一言苦言も呈しておきたいと思っております。
ここで、コロニーのこれまでの経緯を振り返ってみたいと思います。
心身障害者コロニーが設立された昭和四十年代は、障害者、特に重度の心身障害者を社会で支援する体制はまだまだ不十分でありました。孤立した家族だけで障害のある方の面倒を見ることが主であり、障害者の福祉対策としては、入所施設での保護的支援を求める以外には十分な方策がありませんでした。
そんな中、心身障害者コロニーは、心身の発達に障害がある人が明るく幸せな生活を営むことができるよう、医療、療育、教育等を行うとともに、心身の発達障害の原因探求や、治療、予防のための研究を行い、障害の程度やライフステージに応じた支援を行う総合的福祉施設として、春日井市内の広大な県有地に昭和四十三年に誕生いたしました。
昭和四十三年六月に、重度心身障害児の入所施設であるこばと学園が開所したのを皮切りにして、知的障害児施設のはるひ台学園、知的障害者の更生施設である養楽荘、さらには、本県唯一の知的障害者を対象とした入所型の春日台職業訓練校、そして、知的障害者のための県立学校として初めて設立された学校教育法に基づく春日台養護学校が次々と整備され、そして、昭和四十五年の中央病院と昭和四十七年の発達障害研究所の開所により、コロニーの全体が完成したのであります。
これは、当時の桑原知事の大英断によるもので、国や大阪府、宮城県など、全国の地方自治体が競うように建設するようになったわけであります。障害者のための大規模施設であるコロニーの先駆けとして、本県の障害者福祉の中心的な役割を果たしてきたのであります。
その後、時代が経過し、養護学校教育の義務化と、それに伴う地域・在宅療育の進展、昭和五十六年の国際障害者年を契機として、ノーマライゼーションの理念の普及、さらには、医療技術の進歩による心身障害児の長寿命化や重度化など、心身障害児者を取り巻く社会情勢は大きく変化をしてまいりました。
そして、平成の時代に入ると、このような新しい課題に対応する必要性と、コロニー建設から四半世紀が経過して、コロニー内の各施設、設備の老朽化も次第に進んでまいりました。
このため、県では、コロニー全体が有機的連携のもとに総合的機能を発揮し、社会に開かれた総合的施設として再生を図ることが必要であるとの方針のもと、平成五年一月、新愛知県心身障害者コロニー基本構想を策定したのであります。
そして、この構想に基づいて具体的な再整備基本計画を取りまとめ、コロニーの全面的な改築方針を打ち出し、平成九年度には、第一期整備となるはるひ台学園、養楽荘など、知的障害者の入所施設の改築のための基本設計を実施し、その後、中央病院やこばと学園、発達障害研究所などの医療、研究施設を改築する第二期整備を進める予定でありました。
しかしながら、平成十年度に県の財政危機を受け、非常事態宣言が出されるという状況下において、これらの改築計画は凍結されてしまったのであります。
その後、障害者福祉は大きな変革を迎え、平成十四年一月に策定された国の障害者基本計画により、障害福祉のあり方は施設福祉から地域福祉へと大きく変化していくこととなりました。
平成十五年度から支援費制度が導入され、障害者福祉サービスが、従来行政が決定してきた措置制度から、障害者がサービスを
選択できる利用制度へと移行しました。さらに、平成十七年十一月の障害者自立支援法の成立により、施設入所サービスにおいても障害者本人の意向を尊重し、入所者の地域生活への移行の推進を図っていくことが重要とされ、施設のあり方自体の見直しが求められるようになったのであります。
このため、県では、再度、コロニーのあり方の見直しを進め、平成十九年三月に、入所者の計画的な地域生活移行の推進と、地域生活を支援する拠点センターへの転換を二つの柱とする愛知県心身障害者コロニー再編計画を策定するに至ったのであります。
このように、コロニーについては、昭和四十三年の開所以来、社会的情勢の変化に対応すべく、さまざまな検討が重ねられてきました。しかしながら、この再編計画の実現においても多くの課題が顕在化してきているのが実情であります。
第一点は、入所者の地域生活移行の問題であります。
再編計画では、常時濃厚な医療が必要な重症心身障害児者を除き、すべての福祉施設入所者を地域生活に移行するというものでありますが、その後、地域生活移行は必ずしも計画どおり進んでいるとは言えません。
計画を策定した直後の平成十八年度から二十年度のころまでは、コロニーの施設を退所して、出身地に近い施設やグループホーム、ケアホームに移るなど、地域生活移行もそれなりに進んでいるように思われましたが、中身を見ますと、知的障害児の施設では、平成十八年四月時点における入所者二百八十四人のうち、現在までに百四十六人が地域生活へ移行しましたが、重症の心身障害者が入所するこばと学園では、平成十八年四月における百七十四人の入所者のうち、現在までに十四人しか地域生活に移行しておらず、重度の心身障害児者の地域生活移行が極めて困難なことを物語っております。
県内の重症心身障害児施設は国公立のみでありますが、他県においては、民間社会福祉法人による施設も増えつつあります。また、コロニー開設時と異なり、障害者の入所施設についても民間によるものが中心となっております。そのため、今後、県が責任を持って担うべき機能と、民間社会福祉法人に担っていただく機能とを合わせて、県全体の障害者福祉のレベルアップに取り組んでいくことが必要となってきております。
第二点は、中央病院の問題であります。
再編計画の中で、心身障害者に関する専門病院である中央病院は、周産期医療、遺伝診療、精神発達障害医療、在宅・地域支援医療の四つの分野について、より一層の医療体制の充実を図っていくものとされておりました。
心身障害の幾つかは、子供が母親の胎内にあるときや、産まれる前後の時期にかかった病気が原因とも言われており、特に周産期における対応が、心身障害の診断、治療の観点からも極めて重要な役割を果たします。
コロニー中央病院においては、NICU、新生児集中治療室の九床を有する新生児センターで、県の周産期医療のネットワークと連携し、未熟児などのハイリスク児に対する先進的な医療を行ってまいりました。
今日、一般的に行われている新生児の救急搬送が、愛知県産婦人科医会から寄贈された新生児専用救急車において中央病院で開始されたのは、昭和五十三年でありました。この新生児搬送は、ハイリスク児を速やかにNICUへ搬送し、入院させることができ、コロニーの新生児医療に重要な役目を果たしてまいりました。
平成十七年五月には、この救急車が交通事故に遭ったため使用できなくなるという時期もありましたが、産婦人科医の強い要請のもと、関係者の努力により、平成十八年三月には新たな救急車が配備され、従来どおりの二十四時間体制の新生児搬送が復活したということでありました。
さらに、新生児の救命率の向上と障害の早期治療のため、必要に応じた母体搬送も可能となるよう、平成二十年度には新たに産科が開始されたのでありますが、地域医療を取り巻く厳しい環境の変化による深刻な医師不足により、産婦人科医師が退職した後の補充ができず、母体搬送が停止いたしました。
また、その後も、新生児科医師や脳神経外科医師などの欠員が生じ、病院の看板であったNICUのある新生児センターを休止せざるを得ない状況にも追い込まれてしまったのであります。
こうしたことから、今後は、あいち小児保健医療総合センターとの役割分担を含め、コロニーが果たす役割を改めて考えていく必要があると思うのであります。
なお、先日の代表質問の答弁で、小児や周産期における救急医療への対応の中で、今後は、あいち小児保健医療総合センターに新生児集中治療室を整備していくこととあわせて、ハイリスク分娩にも対応していきたいとの考えが示されたわけであります。
産科医不足の中で、あいち小児保健医療センターにおいて、コロニーで充足できなかった産科の医師を簡単に確保できるのか、大いに心配であります。
コロニーであったように、医師不足による閉鎖を余儀なくされるようなことはもう絶対に許されません。あいち小児保健医療センターの関係者には、今後このようなことが二度とないように、不退転の決意で整備を進めていくよう強く要請をしておきたいと思います。
一方、地域に目を転じますと、心身に障害のある方々の地域生活への移行に伴い、地域におけるそれぞれの医療機関が果たす役割はますます大きくなっていると思われます。
しかしながら、障害者、特に発達障害を熟知し、適切に対応できる医師が不足しているため、必ずしも障害者が地域で安心して医療を受けられないのが実情であります。
今後は、地域で安心して医療を受けられるよう、障害者医療を担うことができる医師を養成していくことが必要であります。
第三点は、発達障害研究所の問題であります。
発達障害研究所は、コロニーの大きな特色であり、極めて重要な役割を果たしている施設であります。我が国で唯一の心身の発達障害を専門に研究する研究機関として誕生し、今日まで心身の発達障害の研究を推進するためのプロジェクト研究や産官学共同研究、大学との連携を推進するかたわら、県民講座や公開シンポジウムを開催するなど、さまざまな努力が続けられてまいりました。
しかしながら、研究用機器等の老朽化が進んでいるにもかかわらず、更新もままならないということも伺っております。
発達障害研究所は、中央病院と連携し、発達障害児に対する治療、予防、療育に関する研究を行い、中央病院を初めとする医療機関における最新の障害者医療の提供に一層貢献していくべきであります。また、こうしたことがひいては発達障害者医療に携わる医師の養成、確保にもつながってくるものと考えております。
こうした厳しい環境の中にあるコロニーではありますが、地域で生活する障害者やその家庭、さらには、県内の障害者福祉施設の関係者にとって、県立施設としてのコロニーに対する期待は依然として大きなものがあります。
私の地元では、重度の知的障害に行動障害を伴う子供を産んで育成されている家族がおられましたが、長年の介護が続く中で、このままでは母親も疲れてしまう、ひいては家庭崩壊にもつながりかねないとしてSOSが出されたことがありました。そこで、一時的にはコロニーでショートステイを行い、その結果、母親も一安心したということがありました。
こうした重度の障害者、とりわけ行動障害を伴う方は、福祉施設でさえも個室がなかったり、複数の職員をつきっきりにする必要があったりして、十分な対応ができないのが現実であります。また、服薬を必要とする障害者に対する服薬指導や、薬の管理なども大きな負担になっております。
こうしたときに頼りにされるのがコロニーであります。とりわけ地域で生活する障害者やその家族にとって、障害者への十分な理解があり、安心して医療が受けられる拠点として、コロニー、とりわけ中央病院が果たしてきた役割は極めて大きく、こうした役割はコロニーの再編や改築、整備後も決して後退させてはならないという考えであります。
そこで、本県の障害のある方々の最後の拠点とも言うべきコロニーの再編、整備を進めるに当たり、その内容や基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。
初めに、重度の障害者に対する医療については、県が最後のとりでとして担っていくべきであると考えますが、障害者医療に携わる医師不足の中で、再編後の柱となる医療支援部門について、どのような機能を持ったものとして進められるのか、考えをお伺いしたいと思います。
次に、福祉施設入所者について、今後はなかなか計画どおり地域生活移行が進みにくいという状況のもと、現在の施設入所者は、基本的に民間社会福祉法人が整備する新たな施設に移行させるお考えがあるようですが、今後どのように進めていかれるのかお伺いいたします。
三点目に、発達障害を専門に研究する我が国唯一の研究所である発達障害研究所について、今後どのような方向で運営していこうとされているのかお伺いをしたいと思います。
最後に、コロニーの再編、整備について、重ねて知事の決意をお伺いし、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
53: ◯健康福祉部長(
五十里明君) 愛知県心身障害者コロニーに付随する諸問題についてお答えをいたします。
初めに、再編後の医療支援部門の機能についてでございます。
本県では、コロニー再編計画策定後の地域医療を取り巻く環境の変化に対応いたしますとともに、あいち小児保健医療総合センターとの役割分担を明らかにするため、昨年度、県内の四大学における障害児者の医療にかかわる医療関係者と、目指すべき医療支援部門のあり方について改めて検討を行いました。
その結果、発達障害医療について知的障害を伴わない患者は、あいち小児保健医療総合センターで診断、治療を行っておりますが、再編後はそれを一元化し、新たな医療支援部門に発達障害を含む障害者医療の拠点としてまいりたいと考えております。
また、周産期医療につきましては、県内の周産期母子医療センターなどでNICUの整備が進む一方、入院が長期化し、新規患者の受け入れが困難となる場合がありますことから、長期入院患者を医療支援部門で受け入れ、これまで培ってまいりましたノウハウを生かし、在宅生活へ円滑に移行していくための支援を行ってまいります。
さらに、現在のこばと学園に入所しております重症心身障害児者の方々につきましては、常時濃厚な医療を必要とする方を引き続き医療支援部門で受け入れてまいります。
こうした機能に加え、今年度、地域医療再生基金を活用し、新たに名古屋大学に設置いたしました障害児(者)医療学寄附講座と連携して、障害者医療に携わる医師の養成を行いますとともに、地域の小児科医などに対して発達障害に関する教育研修を行うなど、障害のある方が地域で安心して医療を受けられるネットワークの構築を図ってまいります。
次に、施設入所者の地域生活移行に関するお尋ねであります。
施設入所者の方々の地域生活移行が計画どおり進まない要因といたしまして、地域での生活の場となる医療的ケアを伴うケアホームなどの整備が進まないことや、入所期間が長期化したことによる入所者の高齢化、重度化、さらには、保護者の高齢化が進んだことなどが考えられます。
県といたしましては、こばと学園に入所している常時濃厚な医療を必要としない重症心身障害児者や、養楽荘等の福祉施設に入所者している方の地域生活移行に向けた取り組みを引き続き進めるために、ケアホームなどの整備を促進してまいります。
また、開所から四十年余りが経過し、これらの施設の老朽化、狭隘化が進む一方で、知的障害児者の施設入所につきましては、コロニー建設当時と異なり、今日では民間によるサービス提供が中心となっております。
そのため、今後は、民間社会福祉法人による施設整備を行い、現在の入所者は、御本人や御家族の理解を得た上で一たんその入所施設へ移っていただき、そこでの支援を受けながら、最終的にケアホーム等の地域生活への移行を目指していくことも必要ではないかと考えております。
今後、施設整備や受け入れ等の条件を検討した上で、施設入所者の方々の移行先となる民間社会福祉法人を公募等により選定できるよう準備を進めてまいりたいと考えております。
次に、発達障害研究所についてでございます。
発達障害研究所は、コロニーの特色の一つとして設立以来、心身の発達障害に関する総合的な研究を進め、障害の発生予防、診断、治療に大きく貢献してきたものと考えております。
今後は、再編後の研究部門として、医療支援部門と連携した研究をより一層進めますとともに、大学や他の研究機関、地域の医療機関等との連携を図り、これまで以上に臨床、福祉現場に還元できる研究を重点に行ってまいります。
また、医療支援部門において臨床を行いながら、研究部門で研究もできることが大学から評価されておりますことから、こうした再編を進めることにより医師の確保にもつながっていくものと、そのように考えております。
54:
◯知事(
大村秀章君) 水野富夫議員の御質問のうち、愛知県心身障害者コロニーの再編、整備についての決意ということでございまして、私からもお答えをさせていただきたいと存じます。
医療、福祉行政は、県民の皆様の命と暮らしを支える極めて重要な分野でありまして、障害者福祉分野を含め、国会議員時代から私自身、ライフワークとして取り組んできたものの一つでございまして、今後も、これからもしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
御質問のありました愛知県心身障害者コロニーは、昭和四十三年の開設後四十年余を経過し、その改築整備が本県の障害者の医療、福祉における長年の懸案となっておりました。
近年、障害者福祉制度の見直しに関するさまざまな動きがありますが、その共通した考えは、障害のある方もない方も地域の一員としてともに支え合いながら暮らしていける社会をつくっていくことでありまして、議員御指摘のように、地域の福祉ということがまさに基本的な考え方でございます。こうした視点に立ちましてコロニーを見直し、地域で生活する障害のある方を支援する拠点として再編をしてまいりたいと考えております。
特に、障害のある方やその御家族にとって、必要なときに必要な医療が受けられる障害者医療の拠点の整備は、まさに県が担うべき重要な役割であると考えております。
そういう中で、このたび、国の地域医療再生基金を相当程度確保することができるということになりましたので、これを充てることといたしまして、早期に再編と整備に向けた準備を進めてまいりまして、平成二十五年度中の着工を目指して取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
55: ◯百一番(水野富夫君) 知事、そして、県当局から、コロニーの再編、整備に向けた答弁をいただいたわけであります。
今、知事からもお話があったように、地域の中で懸命に暮らしていただいている障害者やその家族の方々に一日でも、まず第一に早く安心していただけるよう、ぜひとも知事の強いリーダーシップをお願いしたいと思います。
それと同時に、健康福祉部長から、大学設置の寄附講座と連携して、障害者医療に関する医師の養成を行っていくことや、地域の小児科医等に対して発達障害に関する教育研修を行うことも、再編後の新たなコロニーばかりではなくて、地域でも安心して医療が受けられるようにしていくとの答弁がありました。
言うまでもなく、福祉現場や医療現場で一番重要なことは、人材の養成と確保であります。病院や福祉施設を新たにつくっても、優秀な職員の確保ができなければ現場が停滞いたしますし、十分な医療や介護、療育ができず、そのしわ寄せを結局患者や利用者に回すことになってしまいます。
県では、行革大綱に係る重点プログラムを策定し、さらなる行政改革を進めていくということですが、行政改革を進めるに際して、こうしたところにまでしっかり目が届いていかれるのか心配をしております。
もちろん、行政改革を進めることは必要ではありますが、行政改革の担当者を初め、事務方がそれぞれの現場の状況を十分に知っていった上で進めていかれるよう、机上の空論にならないよう、そして、机上の空論になった場合、それで困るのは現場であります。
コロニー再編に当たって、幹部職員が率先して障害者など社会的弱者の状況を十分見ていただき、現場が困らないような取り組みをしていただくよう、まず要望しておきます。
最後に、心身障害児者の皆さんは、だれ一人障害を望んで生まれた方はございません。生活している方は、家族が今、健康なうちでみえるときは大丈夫だ。しかし、一番大事なことは、家族なりがみえなくなったときに、障害児の皆さん方をだれが面倒を見ていただけるのか。これは政治でしょうか、地域でしょうか、家庭でしょうか。
家族の願いが、大村知事の強いリーダーシップで心身障害者に心温かい日が一日でも早く差し込むことを強く要請して終わります。ありがとうございました。
56: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 以上で質問を終結いたします。
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57: ◯三十八番(神戸洋美君) ただいま議題となっております議案は、さらに審査のため、それぞれ所管の常任委員会に付託されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
58: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 神戸洋美議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
59: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 御異議なしと認めます。よって、ただいま議題となっております議案は、それぞれ所管の常任委員会に付託することに決定をいたしました。
なお、議案付託表は議席に配付いたしました。
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日程第三 決算第一号平成二十二年度愛知県一般会計歳
入歳出決算から決算第十三号平成二十二年度愛
知県印刷事業特別会計歳入歳出決算まで
60: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 次に、決算第一号平成二十二年度愛知県一般会計歳入歳出決算から決算第十三号平成二十二年度愛知県印刷事業特別会計歳入歳出決算までを一括議題といたします。
本件については、一般会計・特別会計決算特別委員会において閉会中継続審査されておりますので、委員長の報告を求めます。
一般会計・特別会計決算特別委員長久保田浩文議員。
61: ◯八十五番(久保田浩文君) 一般会計・特別会計決算特別委員会に付託されましたのは、決算第一号平成二十二年度愛知県一般会計歳入歳出決算外十二件の決算であります。
各決算につきましては、十月三十一日、十一月一日、二日、七日、八日及び二十一日の六日間にわたって慎重に審査を行い、採決の結果、決算第一号から決算第十三号までは、いずれも全員一致をもって認定すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。
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62: ◯三十九番(川嶋太郎君) 一般会計・特別会計決算特別委員長の報告のとおり、決算第一号から決算第十三号までの十三件の決算は認定されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
63: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 川嶋太郎議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
64: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 御異議なしと認めます。よって、決算第一号から決算第十三号までの十三件の決算は認定されました。
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日程第四 決算第十四号平成二十二年度愛知県県立病院
事業会計決算から決算第十八号平成二十二年度
愛知県臨海用地造成事業会計決算まで
65: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 次に、決算第十四号平成二十二年度愛知県県立病院事業会計決算から決算第十八号平成二十二年度愛知県臨海用地造成事業会計決算までを一括議題といたします。
本件については、公営企業会計決算特別委員会において閉会中継続審査されておりますので、委員長の報告を求めます。
公営企業会計決算特別委員長高橋正子議員。
66: ◯七十一番(高橋正子君) 公営企業会計決算特別委員会に付託されましたのは、決算第十四号平成二十二年度愛知県県立病院事業会計決算外四件の決算であります。
各決算につきましては、十月十七日及び十八日の二日間にわたって慎重に審査を行い、採決の結果、決算第十四号から決算第十八号までは、いずれも全員一致をもって認定すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。
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67: ◯三十八番(神戸洋美君) 公営企業会計決算特別委員長の報告のとおり、決算第十四号から決算第十八号までの五件の決算は認定されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
68: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 神戸洋美議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
69: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 御異議なしと認めます。よって、決算第十四号から決算第十八号までの五件の決算は認定されました。
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日程第五 請願(三件)
70: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 次に、請願を議題といたします。
本議会に提出されました請願三件については、お手元に配付いたしました請願
文書表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
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71: ◯三十九番(川嶋太郎君) 本日はこれをもって散会し、明十二月六日から十二月十五日までは委員会開会等のため休会とし、十二月十六日午前十時より本会議を開会されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
72: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 川嶋太郎議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
73: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 御異議なしと認めます。
明十二月六日から十二月十五日までは委員会開会等のため休会とし、十二月十六日午前十時より本会議を開きます。
日程は
文書をもって配付いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後四時二十三分散会
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