愛知県議会 2011-11-01
平成23年11月定例会(第3号) 本文
寺西むつみ議員。
〔九番
寺西むつみ君登壇〕(拍手)
5: ◯九番(
寺西むつみ君) おはようございます。
通告に従い、順次質問をさせていただきます。
まず初めに、本県の新しい都市像とエネルギーについてお伺いをいたします。
私は、去る十月三十日から今月十一月六日までの八日間、平成二十三年度
愛知県議会海外調査団の一員として、アメリカ合衆国コロラド州の州都デンバー市、ボルダー市、ゴールデン市並びに同国カリフォルニア州の州都サクラメント市、サンフランシスコ市、バロアルト市、そして、現在、在留邦人人口がニューヨーク市を上回り、全米最多でありますロサンゼルス市、以上二州七都市を訪れました。
主たる調査の目的は、近年急速に議論が高まりつつある暮らしのエネルギーと新しい都市像についてであります。
特に、本年三月十一日に東日本を襲った大震災以来、我が国における原子力発電によるエネルギー供給に対する考え方の見直し、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー、再生可能エネルギーへのシフトなど、消費者、生活者の意識は急速に変化しています。
私たちの日々の暮らしにおける価値観がさまざまな視点で大きく変わろうとしている事実は、今日多くの日本国民が実感しているところであります。
我が国における次世代ライフスタイルのキーワードとも言えるスマートグリッド、スマートシティー、スマートコミュニティーなどの言葉は、まさに新しい都市像として、専門家や学識経験者のみならず、最近では、テレビや新聞などのマスメディアでもしばしば取り上げられるようになりました。特に、その傾向は東日本震災以来顕著であると言えます。
一般的に、スマートグリッド技術により、消費者は電力をいつ、どこで、どのように購入するのがよいか判断できるようになると言われております。
さらに、そのほかのメリットとしては、電力料金の低減、再生可能エネルギーの使用拡大、プラグインハイブリッド、電気自動車、エコ家電、スマート家電の利用など、多くの可能性が挙げられています。
本調査に当たり、我々
愛知県議会海外調査団は、渡航前に実施した国内での十二回に及ぶ事前の類似事例調査や自主研究会などの中から、全米初の試みとして選抜され、最も先進的なスマートグリッド実証実験モデル都市として取り組みを続けているコロラド州ボルダー市に着目しました。
全米中小規模都市の優等生と称されるボルダーは、我が国を代表する女子マラソンランナーの高橋尚子選手らを初めとするトップランナーが高地トレーニングのキャンプ地として利用することで知られていますが、ロッキー山脈の標高およそ千六百メートル地点、おおむね富士山の四合目付近に位置する人口約十万人の中小規模都市ボルダーでは、総人口のおよそ三〇%の市民が大学院を修了して修士号以上の学位を取得しており、平均年収が一千五百万円以上とも言われていることは、我が国では余り知られておりません。
さらに、このまちにあるコロラド大学が世界で最も多くの宇宙飛行士を輩出している高度な宇宙開発に関する研究所を有し、バラク・オバマ現アメリカ合衆国大統領が四年前、民主党内の大統領候補として全米での初めての演説会場の場所として選んだまちが、ここボルダー近郊だったということも我が国では知られておりません。ボルダーは、全米におけるスマートシティーの優等生なのであります。
ところが、渡航前の国内における事前調査が進むにつれて明らかになったことがありました。
二〇〇八年の導入当初は順調であったと言われていたボルダーのスマートグリッド実証実験が、近年、プロジェクト推進上で起きた合意形成プロセスにおける問題に端を発し、訴訟問題にまで発展し、住民投票が実施されるまでに至ったことがわかりました。
全米では、議会選挙のない時期における民意を反映するための手法として、郵送による住民投票が頻繁に行われます。我々調査団がボルダーを訪れた十月三十一日は、まさにその住民投票集計の前日でありました。
住民投票の結果は、市民団体が僅差で勝利しましたが、プロジェクトはいまだ停滞したままであります。全米で最も先進的なスマートグリッド実証実験都市の取り組みと言われているその光と影が現地での調査の中から浮き彫りになりました。
さて、一方で、日本国内に目を向けてみますと、渡航前の国内類似調査で訪れたまちが、実は全米のスマートグリッドモデル都市の最先端と言われるボルダーを既に凌駕していることが比較調査の上でわかってきました。
それは、本県の豊田市であります。
人口およそ四十二万人の中核都市豊田市では、第七次豊田市総合計画の将来都市像として、「人が輝き 環境にやさしく 躍進するまち・とよた」を掲げており、豊田市の強みである産業都市としての特性と、市民活力を生かした取り組みを重点的かつ優先的に展開して、活発な市民活動、強い経済活動と、水と緑の低炭素社会が両立する持続可能なまちづくりをトヨタ自動車グループと協力して推進し、ますます激化する国際的な地域間競争の中でも、持続可能な成長を目指していくことを見据えています。
こうした環境モデル都市への実現に向けた取り組みは、近隣都市や国内における類似都市にとどまらず、中国やインドなど急速に発展するアジア諸国に対して、産業都市の新しいモデルを提示し得る取り組みであります。
その豊田市における家庭・コミュニティー型の低炭素都市構築実証プロジェクトを推進する豊田市低炭素社会システム実証推進協議会は、エネルギーマネジメントシステムの実験用モデルハウス(スマートハウス)を完成させ、システムの試験運用を開始しています。
このプロジェクトは、経済産業省の次世代エネルギー社会システム実証事業として、二〇一〇年度から二〇一四年度の五カ年計画として実施されるもので、生活者を主体として、生活圏、コミュニティー単位でのエネルギー利用の最適化を目指すことにその特徴があります。
ことし六月から、豊田市東山地区、高橋地区での実証住宅の販売を開始し、実証実験は、九月から第一期十四棟の入居に合わせて開始しています。
この実証住宅内では、HEMSと呼ばれる制御システムによって、太陽光発電や燃料電池など家庭内の創エネ機器、家庭用蓄電池やエコキュートなどの蓄エネ機器、そして、プラグインハイブリッドや電気自動車などの次世代自動車、さらに、スマート家電をつなぎ、家庭単位での電力需給、機器制御の最適化と見える化を行っています。
HEMSに連携制御された蓄電池は、家庭の電力消費の低コスト化、低炭素化を促すとともに、災害時の非常電力源となります。
また、コミュニティーレベルでは、EDMSと呼ばれるエネルギー管理システムが、家庭、コンビニエンスストア、学校などを結んで、地域内での電力需給バランスを調整し、コミュニティー全体でのエネルギーの地産地消、自給自足を目指しています。
例えば地域内での太陽光発電量の不足が予測される場合、生活者に対して、エネルギー消費を控える行動をアドバイスし、それに従った生活行動にエコポイントを付与するなどのインセンティブ、さらに、専用端末やインターネット、スマートフォンから電力使用実績やエコポイント取得累計などの情報を提供し、無理のない継続的なエコ活動を支援することなども考えられています。
そして、家庭電力からプラグインハイブリッドや電気自動車への充電にとどまらず、車のバッテリー電力を家庭へ供給する実証実験にも取り組んでいます。
平常時は、家庭内、地域内の余剰電力を備蓄し、一層無駄のないエネルギー活用に貢献するとともに、災害時には、動く非常用電源として、地域のエネルギー自立化を支える働きが期待できると言われています。
豊田市のこうした取り組み以外にも、渥美半島に位置する田原市における風力発電やメガソーラーによる太陽光利用への取り組み、同半島沖海底に眠る新たなエネルギー源とも言われるメタンハイドレートなど、本県は、自然エネルギー、再生可能エネルギーによる新しい都市像の可能性にあふれています。
このような新しい都市づくり、まちづくりシステムは、物づくり愛知が生み出す、世界と競い合える、愛知県の新しい戦略的商品として位置づけることができるのではないでしょうか。
また、国の観光立国推進戦略の視点から考えてみましても、このように既に都市全体がショーケースとなっているとも言える実態は、国内のみならず海外からもこの地域へ人を呼び込むには十分な魅力あるコンテンツであり、世界のトレンドをリードする半歩先のMICEと言えるのではないでしょうか。
そこでお伺いいたします。
豊田市などに見られる地域特性を生かした新しい都市像、次世代ライフスタイルを模索するスマートグリッド、スマートシティーへの取り組みは、既に世界のトップクラスに位置しており、ごく近い将来、本県が世界に発信する新しいグローバルスタンダードの一つとなり得るものと考えられますが、こうした次世代エネルギーについて、新しい産業振興の視点から、本県としてどのように位置づけ、取り組んでいかれるのか、豊田市のプロジェクトに対する取り組みとあわせてお伺いいたします。
次に、国連ESDの十年最終年会合についてお伺いいたします。
本件につきましては、昨日の代表質問におきまして、我が党の中野治美議員らが、会議成功に向けた知事の決意と、開催県としての取り組みについて質問をし、知事から包括的な御答弁をいただいておりますが、私は、ことし三月まで二十年以上にわたり民間企業に勤める企業人として、国際博覧会や国際コンベンションなどの地域活性化プロジェクトの企画開発、誘致、実施、PR等に携わってきた民間ビジネスマンとしての視点から、国連ESDの十年最終年会合を基点とした本県の将来像についてお伺いいたします。
かつて愛知県が目指すべき未来の姿を、三点セットプラスワン、独特のキーワードで表現し、県民に夢を語り、未来を唱え、本県をリードしてこられたのは、鈴木禮治元愛知県知事でありました。
中部国際空港の建設、開港、第二東名・名神の建設促進、リニア中央新幹線の実現、そして、二〇〇五年日本国際博覧会(愛知万博)の開催、まさに時代の潮流と相まって、さまざまな愛知県の夢を形にされました。
四期十六年にわたる鈴木県政の後、神田真秋前愛知県知事は、我が党
愛知県議会議員団が提案した夢あいち21提言にのっとって、万博開催によってこの圏域に芽生えた地球環境への意識と行動をより進化させるために、生物多様性条約第十回締約国会議(COP10)を誘致しました。全庁が一丸となって、産学、NPO、NGO組織と協働し、世界各国が驚嘆する大成功をおさめたことはまだ記憶に新しく、私たち県民にとっても喜ばしいニュースでした。
実にその経済波及効果は約百十一億円と算出され、参加者数は、会議本体と連携・交流事業とを合わせ、九十三万二千四百四十三人に上りました。
また、夢あいち21提言において、経済による豊かさだけではなく、暮らしの中における芸術文化との融合を目指して構想された国際芸術祭は、あいちトリエンナーレとして三年に一度開催する質の高い文化事業として、昨年実現されました。
会期中七十二日間の総入場者数は五十七万二千二十三人に上り、特に海外を含む県外からの入場者数が全体の約三三%を占めていたことは、その経済波及効果産出額が約七十八億一千万円であったことと同時に、現在準備が進められている次回二〇一三年の開催が大いに期待され、そして、待たれるところであります。
さらに、夢あいち21提言において、県民の健康と地球環境に配慮した国際的なスポーツイベントの開催を目指した大都市マラソンは、世界初の開催となるウイメンズマラソンと同時に、来年二〇一二年三月九日から三日間にわたり、マラソンフェスティバルナゴヤ・愛知二〇一二として、総勢三万六千人のランナーが参加して開催されることになりました。
既に美ジョガーと呼ばれる女性ランナーをあらわす流行語も生まれるなど、まさに夢あいち21提言が目指した全県民参加型の国際スポーツイベントとして、国内外に広く愛知県の魅力が発信されることが期待されています。
さて、ことし九月、国連ESDの十年最終年会合は、国内候補七自治体の中から本県での開催が決定し、十月には、フランス・パリに本部を置く国連教育科学文化機関(ユネスコ)総会において、正式に二〇一四年秋の愛知・名古屋での開催が報告されたことは、まことに喜ばしいことであります。
まさに、本県の将来像を描くさらなる夢に向かう起点であり、新たなスタート地点であると言っても過言ではありません。
近年、こうした世界各地で開催されている大規模な国際会議の傾向として、その成功のための五つの必要条件があるとしばしば言われます。
まず第一に、民間企業との連携です。
これは、潤沢な予算の確保と民間レベルでの情報発信への期待、コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー、企業の社会貢献と言われる企業活動や企業広告、パブリックリレーションズなどを通じた日常的な企業活動における持続可能な支援と啓発の機会が成功への重要な条件になると言われています。
次に、NPO、NGO組織との協働と連携です。
草の根活動とも称される市民活動と協調を図ることで、会議での成果を具体的なアクションへつなげ、会議閉幕後もネットワークの継続的な発展を図ることが必要です。
次に、子供たち、次世代の声を会議にインプットすること。
声なき声と言われる子供たちの思いをどのように発信するかが昨今の国際会議の成功条件として特に重要視されています。
次に、組織体制の整備についてです。
特に、今回のテーマであるESDは、本県におけるそれぞれの部局の守備範囲を大きく超えるグローバルイシューであり、縦割り行政などとやゆされることのないよう、まず、全庁横断的に人材、スキル、ノウハウを総動員し、多様性と柔軟性のある愛知県庁内での組織体制の確立、チームづくりが必要不可欠であると考えます。
最後に、戦略的広報、PRの重要性です。
さきのCOP10では、特に国内において、会議に対する理解をどのように深め、認知度を高めるかという点で、開催日直前まで県民の認知度が全く上がらず、関係者は頭を悩ませました。効果的かつ戦略的な広報、PRは、情報化社会において、もはや欠かすことのできない最も重要な成功への必要条件であると言われています。
今回の国連ESDの十年最終年会合において、既に一部の民間企業などでは、ESDという言葉の意味がわからない。会議の趣旨がわかりにくく、企業としての協力の仕方が難しい。せっかくすばらしい会議を誘致しても、一部の専門家しか興味を持たないのではないかなどという声も聞かれ始めています。
そこで、まずお尋ねいたします。
本県の将来像に向けて、夢を描くその起点となり得る国連ESDの十年最終年会合を成功させるために、さきに述べました五つの必要条件について、どのように取り組んでいかれるのか、お考えをお伺いいたします。
この国連ESDの十年最終年会合が本県で開催されますのは、二〇一四年の秋、年度でいえば、その年度末の三月二十五日は、あの愛知万博開幕の日から数えてちょうど十年目であります。
私は、この国連ESD会議の十年最終年会合を愛知万博十周年記念事業として位置づけ、より広く国内外へ発信することを御提案いたします。
愛知万博十周年記念事業として位置づけられることにより、万博開催当時、協力、参加、賛同を得た多くの企業、団体、一国一市町村フレンドシップ事業等への協力自治体、NPO、NGO、大学等を初めとする教育機関、そして、何よりも当時万博会場を訪れたおよそ二千二百万人に及ぶ愛知県にゆかりのある人々からも、多くの賛同と参画を得られやすい環境を創出することにつながると考えます。
そして、それらは、国連ESD会議の十年最終年会合閉幕後も、本県が目指す将来像である環境首都愛知、環境先進県への大きな推進エンジンとして、環境教育のみならず、多文化共生、平和、貧困、ジェンダー、防災、エネルギー、国際理解など、ESDが持つ多種多様な可能性を十分に引き出し、県民を勇気づけ、次の新しい夢に向けて前進する力になると確信するところでありますが、知事のお考えをお伺いいたします。
あす十二月三日は、桑原幹根元愛知県知事が愛知県名誉県民顕彰をお受けになられて以来二十四年ぶりとなる顕彰式典が挙行され、本県の発展に卓越した功労のある四名の方々が顕彰を受けられます。
愛知県が誇る偉大な四名の賢人の方々、海部俊樹元内閣総理大臣は、二〇〇二年、国連による持続可能な開発のための世界サミット(リオ10)で、当時の小泉純一郎首相が日本政府として、ESDの十年の実施と愛知万博の開催を世界に向けて約束したその会場で、愛知をふるさととする元内閣総理大臣として、各国首脳に愛知への熱い思いを伝えておられました。
鈴木禮治元愛知県知事は、愛知県のリーダーとして夢を語り、未来に向けてその夢を一つ一つ着実に実現し、大愛知を牽引してこられました。
豊田章一郎トヨタ自動車名誉会長は、経済界のトップリーダーとして、我が国を牽引してこられただけでなく、二〇〇五年日本国際博覧会協会会長として、愛知万博を通じて、私たち県民に日本人としての誇り、そして、世界と交流する喜びを教えてくださいました。
野依良治理化学研究所理事長は、ノーベル化学賞受賞者として、世界の頭脳であることは言うまでもありません。研究拠点である名古屋大学が目指す人づくり、勇気ある知識人のお手本のような方であります。
夢ある愛知を築かれた偉大な先輩方の晴れの顕彰式典、その前日に、こうして
愛知県議会県政の壇上より県民を代表し、本県の将来像について質問する機会を与えていただいたその幸運に感謝をし、知事初め理事者各位の夢ある御答弁を期待し、質問を終わります。(拍手)
6:
◯産業労働部長(
木村聡君) お答え申し上げます。
まず、次世代エネルギーに関する新しい産業の振興についてでございます。
近年、地球環境問題が高まります中、スマートグリッドを含む環境・新エネルギーの分野におきまして、新たな産業を育成、振興することは、低炭素社会の構築に貢献すると同時に、今後拡大する内需を生かして、本県経済の持続的な成長を実現する観点から重要な政策課題であると考えております。
このため、県では、本年六月に策定したあいち産業労働ビジョンにおきまして、内需型産業育成プロジェクトの一環として、次世代エネルギー産業の育成、振興に重点的に取り組むことといたしたところでございます。
具体的には、このビジョンに沿いまして、常滑市に所在いたしますあいち臨空新エネルギー実証研究エリアにおきまして、引き続き、太陽光発電や風力発電など、県内企業の実用化に向けた実証実験を支援し、その成果の普及などを後押しいたします。
また、地域の産学官で構成いたします愛知県新エネルギー産業協議会のもとに、燃料電池、熱エネルギーなどに関します課題別の研究会を設置いたしまして、企業等が実施いたします実証プロジェクトの組成を支援いたしますほか、各種の技術セミナーを通じまして、人材育成や情報発信を行います。
また、本年からは、豊田市において実施されますスマートグリッド関連の実証実験にも参加したところでございまして、今後とも、こうした一連の取り組みを通じまして、次世代エネルギー分野におきます新たな産業の育成、振興にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
次に、豊田市のプロジェクトに対する県の取り組みについてお答え申し上げます。
現在、豊田市において実施されております低炭素社会システム実証プロジェクトは、家庭から通勤通学といった移動や、移動先での行動シーンごとに、また、それらを統合した生活圏全体でのエネルギー利用の最適化を目指すものであります。
このプロジェクトでは、将来のグローバル展開も視野に入れまして、例えば一般住宅において、太陽光発電や蓄電池などの機器を制御し、エネルギー利用を最適化する実証実験や、商業施設において、プラグインハイブリッド車の蓄電池を災害時の非常電源として活用する実証実験などが行われます。
県は、本年から豊田市低炭素社会システム実証推進協議会に参加したところでございまして、セミナー、見学会の開催を通じた普及啓発や、あいち臨空新エネルギー実証研究エリアにおきます実証実験との連携を促すことなどを通じまして、プロジェクト全体の発展、深化に貢献してまいりたいと考えております。
豊田市は、本年九月、国の地域活性化総合特区に関しまして、このプロジェクトを核といたします次世代エネルギー・モビリティ創造特区の指定を申請いたしました。この協議会の構成員であります県といたしましても、指定の獲得に向け、全力で支援してまいりたいと考えております。
このような各般にわたります取り組みによりまして、当面、プロジェクトの着実な進捗を図ります一方で、将来的には、仮称でございますが、産業空洞化対策減税対応基金を活用いたしまして、豊田市や関係企業との協力のもと、当地がスマートグリッド先進地であることにつきまして、内外からの視察を受け入れることも含めまして、広く情報を発信することも検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
7:
◯環境部長(
西川洋二君) 私からは、国連ESDの十年最終年会合の成功に向けた取り組みについてお答えさせていただきます。
議員が御指摘いただきました成功に向けた五つの必要条件、これはいずれも最終年会合の開催地である本県にとりまして、取り組むべき重要な事項であると考えておるところでございます。
そこで、おのおの取り組みについてでございますけれども、まず、民間企業との連携という点につきましては、先月の末でございますけれども、支援準備委員会を立ち上げ、名古屋商工会議所、中部経済連合会に加わっていただいておりまして、連携体制を整えたところでございます。
また、NGO、NPO組織との協働、連携という点でございますけれども、NPOなどステークホルダーの会合を行う岡山市と今後調整してまいりますけれども、県内のNPOとは、啓発、実践事業など、連携して事業を実施してまいりたいと考えておるところでございます。
そして、次世代の声をどのように会議にインプットするかという点でございますけれども、COP10のときには、御指摘もございました、国際子ども会議等での議論が全体会議で報告されまして、会議参加者からは高く評価されたところでございます。最終年会合でも、こうした子供の声を反映できないか、考えてみたいと思っているところでございます。
次に、県庁内の組織体制についてでございますけれども、会議支援の準備、ESDに対する県の取り組みを横断的に進めるために、知事をトップといたしました支援本部を先月立ち上げたところでございますし、その事務局機能を担う専任グループを、COP10を経験した環境部の職員、そして、関係部局の職員により設けたところでございます。
最後に、戦略的な広報・PR活動についてでございます。
COP10の場合を参考にいたしまして、今回は早い段階から、NPO、企業、学校、そして行政など、幅広い主体による繰り返しのPRと、節目節目によるイベントを実施することで、計画的、戦略的な広報を進めていきたいと考えております。
いずれにいたしましても、御指摘の五つの必要条件を頭に入れ、愛知万博、COP10の経験を踏まえまして、会議の成功に向けてしっかりと取り組んでまいります。
以上でございます。
8:
◯知事(
大村秀章君) 国連ESDにつきまして、私からもお答えを申し上げたいと思います。
前段、県庁内の組織体制または広報、PR、そして、取り組み、進め方などなどにつきましては、環境部長から申し上げましたが、私からは、国連ESDの十年最終年会合を愛知万博十周年記念事業に位置づけたらどうかという御提案につきまして、お答えをさせていただければというふうに思っております。
その前に、まず、この持続可能な開発のための教育、ESDという言葉につきましては、私もかねてから、私自身がなかなか、一般の方に説明するのに、何か舌をかんでしまいそうなところがありますので、正直言いまして、もう少し説明しやすい、内容もすぐわかるような、ぴんとくるような、そういったキーワードを使って説明し、広く県民の皆様に御理解をいただいていく、そして、親近感を持っていただくと、そういう努力が必要ではないかというふうに考えておりまして、これは引き続きしっかりと検討していきたいというふうに思っております。
その意味で、今、御提案をいただきました愛知万博十周年記念事業として位置づけるという御提案というのは、まさに新しい視点だというふうに思っております。
愛知万博は、持続可能な発展というESDの目指す目的と共通するテーマのもとで行われた、これは議員御指摘のとおりでございまして、多くの県民の皆様にごらんをいただいて、参加をいただいて、そして、まだ記憶も新しいというふうに思っております。
したがいまして、この愛知万博というキーワードを使うことで、より多くの県民の皆様に最終年会合のイメージを描いていただけたらいいのではないかというふうに思います。
そして、そのことがESDの理解、ひいては環境先進県初め求められる愛知の将来像の実現に向けて、人づくりにつながっていくとも考えるわけでございます。
この提案につきましては、国に話してみたいというふうに考えております。また、県が行う事業や地元支援組織が行う事業につきましては、そうした位置づけをぜひ考えてみたいというふうに考えております。
以上です。
9:
◯議長(
岩村進次君) 進行いたします。
西久保ながし議員。
〔十八番
西久保ながし君登壇〕(拍手)
10: ◯十八番(
西久保ながし君) 皆さん、おはようございます。
今、東北地方では、あの大震災からもう既に九カ月がたとうとしております。一日も早い復興を願うばかりですが、あの震災で被災をした子供たちが書いた作文が、『つなみ』という本になりました。
その一文に、「私は、今回の出来事を一生忘れることはできません。だけど、いつまでも引きずっていても前に進めないです。過去は変えられませんが、未来は変えることができます。一歩一歩、力強く歩んでいきたい」と精いっぱいの気持ちを表現した少女がいます。
そして、多くの子供たちがこの逆境の中で未来に希望を持って歩き出しております。私たち大人は、とりわけ政治家は、こうした子供たちの未来に責任の持てる、そういう政治をしなければいけないと改めて感じたところであります。
ぜひ愛知のトップリーダーである知事におかれましては、決して今さえよければいいという政治ではなく、将来をしっかりと見据え、そして、こうした子供たちが未来に希望を持てる、そんな愛知を実現するために、真のリーダーシップを発揮していただきたいことを冒頭お願いいたします。
きょうは、大きく二点、新人の目線から見た知事の県政運営と愛知の物づくりについて質問をいたします。
知事が就任をされ約十カ月がたちますが、就任直後、大震災という未曾有の出来事が起こる中、震災対応、中小企業の救済、円高対応など、スピード感を持って機動的に動かれたことについては、リーダーシップを発揮されたと思っていますし、ぜひ今後とも変わらぬ姿勢を貫いていただきたいと思っています。
しかし、一方で、何でもかんでもすぐに発信すればいいというものではありません。
例えば知事の公約であります中京都や減税など、将来ビジョンをしっかり持った上で発信しなければならないものもあります。この県議会は、県民の将来も含め、幸せを実現するための組織であります。
その組織のリーダーが将来ビジョンを持たず、県民に発信することはあってはならないことであります。そのあいまいな発信で、この数カ月、困惑、停滞したことは事実であります。
ぜひ知事には、もっと将来ビジョンをしっかり持って、トップリーダーとしての自覚、覚悟のもと取り組んでいただきますようお願いをいたします。
私も、知事の公約である中京都や減税について、委員会で何度か質問をさせていただきましたが、納得のいく答弁は得られませんでした。
私は、ポイントを申し上げるなら、中京都は、せめて議論ができる将来像、骨格を示すべきであります。将来、道州制を目指すのか、それとも副首都的なものなのか、それとも大都市構想なのか、一体どのような行政組織を考えているのか、全くわかりません。
目指すべき将来像により当然打つ手は変わってまいります。大阪都構想がいい悪いは別にして、少なからず議論ができる将来像は示されております。
そして、減税は否定はしませんが、将来及び現状の財政状況を十分に考慮する必要があります。今は、常識的に考えてもその環境下ではありません。そういう意味では、今回断念されたことは賢明な当たり前の判断だと思っています。
私は、ふえ続ける県債残高や、近年の財政状況を考えれば、思い切って一度減税の旗をおろし、当面は凍結すべきだと思っています。ただし、行財政改革はもちろん必要ですが、捻出した財源は、今は震災対応などに充てるべきであります。
改めて知事に、この二点について、簡潔にビジョン、考えを示してもらいたいと思います。
次に、中京都、減税絡みでもう一点申し上げたいことがあります。それは、自動車関係諸税の見直しの件であります。知事は、世界と闘える強い愛知を目指しておられますが、闘う前に倒れてしまっては元も子もありません。
今、日本、愛知の物づくり産業は大変な危機的状況にあります。とりわけ、基幹産業として物づくりを支え、リードしてきた自動車産業が、円高、震災、そして、直近のタイの洪水の影響もあって、海外だけでなく国内市場の縮小、低迷にまで追いやられていることは見逃せない事実であります。
このまま国内市場が縮小していけば、間違いなく世界と闘う前に倒れてしまいます。世界と闘うためには、基盤となる国内市場を立て直す必要があります。
私は、これだけ国内市場が縮小、低迷している大きな原因の一つに、生活必需品であり、社会インフラの一部になっている自動車に、いや、自動車だけに不公平な過重な税がかかっていると思っています。
例えば、なぜ自動車だけが購入するときに消費税と取得税の二重の課税がかかるんですか。なぜ道路整備のために創設された重量税が、一般財源化されたにもかかわらず、自動車ユーザーだけで負担するんですか。本来、公平公正であるべき税が余りにも不公平、理不尽な税になってしまっています。
将来の税制を議論している今こそ正しく見直さないと、それこそ秩序のない税になってしまい、税に対する国民不信はますます増大してしまいます。
そして、この過重な税は、とりわけ現在のような厳しい環境下、大きく消費行動の足かせになっているのは紛れもない事実であります。
貴重な地方財源の一つになっていることは十分承知をしておりますが、国内就業人口の約一割を占め、関係産業も非常に多い自動車産業のこれ以上の国内市場縮小は、地域の経済活力、雇用を喪失させ、法人事業税・住民税の減収にもつながり、これまで以上に地方財政が深刻化してしまいます。
この問題については、知事は、さまざまな団体からの要請を受けて、先頭に立って、七県の知事とともに、十一月二日に自動車二税廃止に向け緊急声明を発表し、その後、精力的に政府・与党に要請をしていただいたことで、一歩も二歩も前進をし、今まさに国の議論は最終盤に至っております。
私は、この問題は、日本の、愛知の将来がかかっている大変大きな問題であって、何としても実現しなければならないと思っています。
知事には、要請を受けたからだけではなく、物づくり愛知のトップリーダーとして、みずからの問題として、政府に対し、不退転の決意を持って実現に向け、最後の最後まで粘り強く押し込んでいただかなければいけない案件であります。知事の考えと決意をお聞かせください。
また、お願いをしておきながら大変恐縮ですが、知事が今回県民税減税を断念されたことは評価をいたしますが、この自動車関係諸税の見直しを減税と同じテーブルで扱っていることには少し疑問があります。
冷静に整理しておきたいことは、自動車関係諸税の見直しは、あくまで減税というよりも、先ほど申し上げたように、不公平かつ理不尽な税制を公平公正な税制に戻すということが原点であるということを申し添えておきます。
二点目は、物づくり愛知を将来にわたり盤石なものにしていくためのさまざまな取り組みについて、あいち産業労働ビジョンを中心に質問をさせていただきます。
ここ愛知県というのは、言うまでもなく、物づくりを通じて、成長、発展をしてきた地域であります。私は、もう一度、この物づくりを通じて元気な愛知を取り戻したいと思っています。
そのためには、企業がこれまで以上に努力するのはもちろんですが、私は、もっと政治や行政がやることがたくさんあると思っています。
例えば特区制度で規制の緩和や優遇税制などを行うということは、政治や行政でしかできない分野であります。物づくり愛知というふうに自負するのであれば、もっと政治や行政が企業とスクラムを組んで積極的に取り組んでいく必要があると思っています。
そうすれば、必ずもう一度元気な愛知を取り戻すことができると確信をしております。それができる土壌や風土、そして、人材がここ愛知には豊富にいるはずであります。
そして、目指すべきは、全国から、世界から、物づくりのことなら愛知に行けば何でもわかる、学べる、そういうふうに言われて、初めて物づくり愛知と自負できると思いますし、そういう姿を目指し、取り組まないとだめだと思っています。
ですから、さまざまな取り組みも、物づくり愛知ならではの、他県にはない、あるいは他県をリードする奇抜な発想があってもよいと思っています。
私は、小さいころから物をつくることが大好きな少年でした。将来は物づくりの仕事につきたいと思い、工業高校に進み、その後、希望どおり物づくりの会社に入ることができました。会社に入り、幸運にも技能五輪の選手として、全国の若者と技能を競うという大変貴重な経験をさせてもらいました。
その後、技能五輪の選手の育成や、あるいは少年少女発明クラブの指導員として、多くの子供たちに物づくりの楽しさやすごさを教えるということも経験をいたしました。
こうして長い間経験をしてきたことも含め、質問を何点かさせてもらいます。
まず、愛知の物づくりがなぜこんなに成長、発展をしてきたのか、その根幹は何なのか。私はこう思っています。
それは、一つのものができるまでには、できたものを見れば、簡単、当たり前に見えますが、そこにたどり着くまでには並々ならぬ努力の過程があるのであります。一つ一つのものを完成するには、技術、知恵だけではできません。そして、当然わざだけでもできません。その知恵とわざを組み合わせ、幾度となくトライ・アンド・エラーを繰り返し、長い過程を経た末に、どこにも負けない高品質、低コストのものができ上がります。
とりわけ、その核となる人の高度な知恵もたくみのわざもそんなに簡単にいくものではありません。長い年月をかけ、地道に積み上げてきたものなのであります。その鍛え続けてきた強靱な足腰で生み出した知恵とわざこそが、この愛知の物づくりを支えてきた根幹であります。
それだけ物づくりには人づくりが大切なことであります。知事はどうお考えか伺いたいと思います。
私は、物づくり愛知を将来に向けて盤石なものにしていくためには、三つの方策があると思っています。
一つ目は、これまで培ってきた物づくりの技術や技能をしっかりと伝承させていくこと。物づくりの人材育成であります。
そして、二つ目は、その物づくりをさらに進化、進歩させていくということであります。
そして、三つ目は、物づくりで蓄えたノウハウを新しい成長分野に生かし、波及をさせていくということであります。
きょうは時間も限られますので、一点目の技術、技能の伝承、いわゆる次世代の物づくり人材育成について、順次質問をいたします。
次世代人材育成プロジェクトにはさまざまな取り組みがありますが、個々の話は後にして、まずは全体論について申し上げたいと思います。
個々の取り組みにはそれぞれ担当部署がありますが、実際どこが全体をコントロールしているんでしょうか。人材育成室でしょうか。私は、それぞれの取り組みはそれなりのねらいはあると思いますが、それはあくまで行政側の思いであって、少しきつい言い方をすれば、行政はやっていますの単発的なものに思えてなりません。
見方を変えて、行政側からではなく、子供たちの成長過程という側面から見ると、おのずとつながりがないことがわかってまいります。一つ一つの取り組みがばらばらの点のようなもの。本来、点ではなく点を線で結ぶような、子供たちの成長過程に合わせた育成システムであるべきだと思っています。
例えば少年少女発明クラブの活性化というふうにありますが、ここで数年間学んだ、とりわけ中学生は、次のステップをどう考えればいいんですか。工業高校との連携などはあるんですか。
もう少しわかりやすいイメージを申し上げるならば、例えばスポーツの世界では、サッカーを例に挙げますと、小中学校でも体育の授業や部活でサッカーをやる子供たちはいます。そして、将来Jリーガーのようにプロになりたいと思う子供たちは、もっと専門的なクラブチームに入り、わざを磨きます。有名校は、常にクラブチームに目を向けて、有望な選手を獲得し、その後、その中からJリーガーが誕生していくという流れ、ステップがあります。
少し極端な例を申し上げましたが、私は、将来、物づくりを目指す子供たちにも、そういう将来に向けてのステップごとのつながりのある取り組み、育成システムが必要だと考えています。物づくり愛知だからこそ、こうした考えのもとで人材を育成しなければだめだと思っています。まずは、育成プロジェクト全体の将来ビジョンなり考え方を伺いたいと思います。
次に、個別の取り組みについて、順次質問いたします。
まずは、小中学生対象の少年少女発明クラブの活性化でありますが、発明クラブは、一九七四年にソニーの創業者である故井深大氏が、次世代を担う青少年に物づくりに親しむ環境を整え、人材を育成することが不可欠であると提唱され、誕生いたしました。
全国四十七都道府県に二百七クラブ団体がありまして、約八千五百人の子供たちが学び、愛知県には二十一団体二千八百人の子供たちが物づくりを学んでいます。愛知県の在籍者というふうに見れば、全国の約三割を占め、相当高い比率でありますが、愛知の小中学生が約六十五万人いる中で二千八百人、わずか〇・四%では少な過ぎます。
私は、キャリア教育の中で、さらに興味を持った子供たちの次のステップとして、この発明クラブは非常に大事なものだと考えています。子供たちは、好奇心が強く、いろいろなものに目を向け、いろいろな不思議を感じながら成長していきます。
そういう意味では、こうした大変重要な時期に、さらなる動機づけ、方向づけをしてあげることが将来にも必ずつながっていくものだと思っています。
そして、この発明クラブの活動内容は、学校の既成のものを組み立てるといった工作教室ではなく、個々人のアイデアや知恵を引き出すという発想教育を目指しております。
私が指導員をしていたときに感じたことは、子供たちの発想というのは、時に大人の考える枠を飛び越えた思わぬすばらしい発想をすることがあったり、あっという間に多くの知識を習得し、指導員を困らせるほどの能力向上を見せることがあります。
私は、こうした発明クラブを充実していくことは、必ず物づくり愛知の将来をより強くするものと信じておりますが、今、さまざまな課題もあります。
数十年ぶりに発明クラブを訪れ、一番驚いたことは、希望者が倍程度いるのに、クラブに入ることができないということです。理由は簡単です。受け入れる体制が整っていないということであります。それには根本的な課題があるわけですが、大きくは三つです。資金不足、施設・設備不足、事務局体制であります。
多くの発明クラブは、協賛企業の資金援助を受け、公共の場所を借りて、指導員をボランティアで雇い、運営をしております。隣の韓国では、政府が資金面を含め、相当援助しているとのことであります。
こうした団体への資金援助は難しいことは承知をしておりますが、何らかの支援が必要と考えますが、このプロジェクトにある発明クラブの活性化や強化とは、具体的にどのようなことを考えておられるのか伺いたいと思います。
次に、高校生の段階についてであります。
物づくり企業への就職一歩手前である大変重要な位置づけの工業高校、そして、十五年度開校予定の総合技術高等学校について伺いたいと思います。
今、企業では、即戦力となり得る人材を求めていますし、それに少しでも対応できるようにとさまざまな取り組みを進められていることは承知をしております。
その中で、本県の工業教育の中核となる総合技術高等学校の設置を目指しておられますが、私は、この総合技術高等学校だけが工業高校とは違い、特別なものと考えるのには反対であります。産業界が求める技術者、技能者の育成というのは、他の工業高校も同じはずであります。
言いたいことは、総合技術高等学校だけを何か特別な扱い、対応とするのではなく、総合技術高等学校を中心に工業高校全体が同じ進め方をしていくべき、そして、全体レベルを上げるような物づくり人材を育てることが重要だと思っています。
まず、総合技術高等学校と既存の工業高校との位置づけをどのように考えているのか、教育長に伺いたいと思います。
そして、現在、工業高校のレベルを上げるために、地域ものづくりスキルアップ講座を開催しているようですが、私は、もう少し企業の実践教育と連携するような手段を強力に進めるべきと思っています。今の取り組み状況や今後の取り組みについて、知事、教育長にそれぞれ伺いたいと思います。
次に、社会人の段階についてでありますが、技術、技能の伝承、いわゆる人材育成に欠かせないポイントがあります。そのキーワードは、熟練高齢者であります。退職されていく多くの高齢者が長年培ってきた知恵とたくみのわざは、日本の、そして、この愛知の宝とも言えるものであります。
私は、でき得る協力を仰ぐべきだと思っています。多くの方は、相当なプライドを持ってやってきております。きっと将来の物づくりのために一肌も二肌も脱いでくれるはずであります。
やり方はいろいろあると思いますが、私は、例えば知の拠点をつくるのに、なぜたくみの拠点をこの愛知につくらないのか不思議でたまりません。
高度な知恵とたくみのわざを持った熟練高齢者の方たちが指導員となり、特に社内教育の行き届かない中小企業の方たちを中心に、いつでも格安に研修できる場所や仕組みがあってもよいのではないかと思いますが、たくみの拠点についてどう思われるか伺いたいと思います。
最後に、技能五輪全国大会の開催について伺います。
十月の初めになりますが、第四十一回の技能五輪国際大会がイギリスのロンドンで開催をされ、日本は、韓国に次ぎ十一個の金メダルを獲得し、すばらしい成果を上げました。
こういった物づくりの原点である高度な知恵とわざを競い合う技能五輪は、物づくりの全体レベルを上げる大変重要なものであり、選手の育成は欠かせないものと考えています。企業が中心となりますが、サポートをよろしくお願いいたします。
まず、ここ愛知で技能五輪全国大会を開催する意義をどのように考えておられるのか伺いたいと思います。
私は、単に大会を開催するということだけでは、あえて愛知に誘致する意義は余りないと思っています。この大会を契機に、将来に向けて新たな物づくり愛知の転換点とすべき大会にしなければならないと思っています。
とりわけ、選手団はもちろんのこと、将来の物づくりを担ってもらえる小中学生などを、子供たちを中心に、主役にした周辺環境を整える必要があると思っています。
例えば一番大きな問題である会場は、一極集中か、あるいは地方分散かで意見が分かれるところだと思いますが、どうお考えになっているんでしょうか。
私は、今回、どうしてもより多くの子供たちにより多くの競技を直接見てもらい、おもしろさ、すごさを感じ、物づくりに興味を持ってもらうことを、大きなねらいの一つにすべきだと思っています。
そのためには、移動も少なく、一度に多くの競技を見られる一極集中がよいと思っています。仮に地方分散を考えておられるなら、何をねらいとされているのか伺いたいと思います。
この大会を通じて、子供たちに興味を持たすという大きなねらいに対し、プロジェクト内容である子供たち、若者向け関連事業は、具体的にどのような内容を検討されているのか伺いたいと思います。
ここで、興味を持った子供たちが次のステップに進めないでは、単なる打ち上げ花火、お祭りに終わってしまいます。そういう意味からも、先ほど申し上げたように、技能五輪を単なる点にしてしまってはだめだと思っています。点から線に結ぶ取り組みの一つとして、興味を持った子供たちが次のステップとして、例えば少年少女発明クラブに入り、さらに物づくりを学ぶということがあって、初めて技能五輪の開催意義があると思っています。ぜひ子供たちの成長過程に合わせた総合的な育成プロジェクトを考えていただきたいと思います。
最後になりますが、ここ日本という国は、本当に資源の少ない小さな島国であります。その日本が、そして愛知が世界の大国と肩を並べるまで成長できたのは、言うまでもなく、額に汗してまじめにこつこつ頑張ってきた我々の先輩たちがいたからであります。
国難とも言える今、私たちは、先輩たちが築いてきたこうした物づくりの強みである、まじめにこつこつ頑張って地道に築くという、こういう気質を決して忘れることなく、今こそ最大限に発揮しなければいけないときだと思っています。
パフォーマンスを否定はしませんが、その前提として、将来に向け、もう一度地道な努力で足腰をしっかりと鍛え直さなければいけないときであるということを知事には再度再認識いただきますことを申し上げ、壇上からの意見、質疑といたします。(拍手)
11:
◯知事政策局長(
中西肇君) 私からは、中京都についてのお尋ねにお答えさせていただきます。
中京都は、我が国に閉塞感が漂い、また、東アジアを中心に都市間競争が激化する中で、本県地域を対象エリアといたしまして、世界と闘える大都市を築き上げていくことをねらいとするものでございます。
この中京都の実現を目指しまして、本県及び名古屋市の職員で構成する六つのプロジェクトチームを設置し、現在検討を進めてございます。
具体的には、まずは地域活力の向上を図ることが必要でございますので、企業立地、観光プロモーション、リニア中央新幹線対応などのプロジェクトチームにおきまして、政策面での積み上げを図っているところでございます。
また、あわせまして、中京都のあるべき姿や行政体制のあり方等の明確化に向けました整理、分析の作業を進めているところでございますが、このうち、お尋ねの中京都の行政体制につきましては、さまざまな政策を展開していく中で、その効果を最大化できる体制のありようにつきまして、見定めてまいりたいと考えてございます。
そして、その検討に際しての考え方といたしまして、七月に開催いたしました三府県二政令市知事・市長会議において、愛知宣言として、大都市地域の自立性の向上、広域行政の強化、住民自治の充実及び実情に応じた多様性の担保、この四つの基本的な視点を取りまとめたところでございます。
こうした考えのもと、今後できるだけ早期に中京独立戦略本部を開催いたしまして、本格的な協議、調整を進めていく中で、具体的な方向性や姿についてお示ししてまいりたいと考えてございます。
12:
◯総務部長(
野村道朗君) 財政状況などを踏まえての減税に対する考え方につきまして、私からお答えを申し上げます。
本県の財政は、来年度も県税収入の大幅な回復が見込めないことに加え、義務的経費が確実に増加いたしますことから、多額の収支不足が見込まれる厳しい状況にございます。このため、第五次行革大綱に基づき、一層強力に行財政改革を進めていく必要がございます。
一方、減税は、この地域の経済を活性化させるための政策として、来年度からの実施に向け、庁内プロジェクトチームにおいて検討いたしてまいりました。しかしながら、東日本大震災の発生に加え、最近の想定を超える円高により国内産業の空洞化が現実のものとなりつつございます。
既に代表質問におきまして知事からもお答えをいたしておりますけれども、まずはこうした状況に対応することを最優先課題として、当面、産業空洞化対策に県として全力で取り組むこととし、来年度の個人県民税の減税は見送ることとなったものでございます。
個人県民税の減税につきましては、県経済と県税収入の動向を踏まえながら、引き続き検討してまいりたいと考えております。
13:
◯産業労働部労政担当局長(
小島邦裕君) 愛知の物づくりについて、まず、その成長、発展の根幹についてお尋ねをいただきました。
本県産業は、古くからの織物、あるいは陶磁器などから、繊維機械、工作機械、自動車、ロボット、ファインセラミックスなどへ、時代の流れに合わせ、技術、技能を進化させ、新しい分野に挑戦しながら、成長、発展してまいりました。
それを支えたものといたしましては、道路、港湾、空港など交通基盤の整備、工業用地の造成、企業誘致など、地域が一丸となって取り組んできたことがございます。
また、世界的に発展した企業でも、本社が工場の近くにあるなど、生産現場の技術、技能者を大切にする企業風土、それにこたえる現場の技能者のたゆまぬ努力も、物づくり産業の発展に大きな役割を果たしてきたと考えられます。
今後も、本県が発展していくためには、長い年月をかけて醸成されてきました愛知の物づくりDNAをしっかり受け継ぎ、生かしていく必要があると存じます。
次に、今年度策定いたしましたあいち産業労働ビジョンの中で、次世代人材育成プロジェクトの推進についてであります。
このプロジェクトには、キャリア教育の推進から始まって、次世代の人材づくりなど、本県が産業人材を育成していく上で重要な事業が盛り込まれております。
本県は、技能検定に合格した技能士の人数が日本一、中でも、特にすぐれた技能を有する特級技能士は全国の二六・四%を占めておりますが、こうした厚い産業人材の集積を将来的に維持、発展させていくことが、このプロジェクトの大きなねらいとなっております。
このプロジェクトは、関係部局が多岐にわたりますので、その推進には連携が求められますが、特に産業労働部が担当しております技能振興施策と学校教育との連携は、とりわけ重要と考えております。
そのため、高等技術専門校での工業高校の実習の受け入れ、毎年、吹上ホールで開催しておりますあいち技能プラザへの工業高校の出展参加など、教育委員会と連携した取り組みを積極的に進めているところでございます。
今後は、さらに部局間の連携を図っていくため、庁内に部局横断的な次世代人材育成プロジェクト推進チームを設置いたしまして、産業人材の育成をしっかり進めてまいりたいと考えております。
次に、愛知の物づくりに関連し、熟練技能者が指導者となるような中小企業向けの研修施設について、たくみの拠点ということでお尋ねをいただきましたが、中小企業における技能の伝承は、愛知の物づくりの継承、発展にとって大変重要なことだと考えております。
中小企業にお勤めの技能者の研修の場としては、現在、業界団体などが設置している認定職業訓練施設が県内各地に三十四カ所ございます。また、県が設置している愛知県職業訓練会館を活用して、業界団体が板金、プラスチック加工、金属プレスなどの職業訓練を実施いたしております。
これらの訓練施設では、各業界の熟練技能者の方々が企業の枠を超えて指導者となり、新入社員や中堅社員の訓練も行われておりますが、ベテラン指導者の中には高齢の方も少なくございません。
これらの訓練施設には、技能分野に応じてさまざまな訓練機器が設置されておりまして、施設を集約した拠点化は困難かと存じますが、たくみのわざの伝承は大切なことだと存じますので、各訓練施設の状況を伺いながら、退職された熟練技能者の指導者としての活用について検討してまいりたいと考えております。
次に、技能五輪全国大会に関し、まず、本県で開催する意義に関しての御質問でございます。
この点につきましては、愛知大会の誘致に際して策定されました大会開催基本構想において、愛知県において、技能五輪全国大会を開催することは、団塊の世代の大量退職による技能継承の問題や、若者の物づくり離れ、さらには、少子化による若年労働者の減少などが懸念される中、次代を担う青年技能者に努力目標を与えるとともに、子供たちに、技能者の物づくりへの思いやその技能のすばらしさを体感してもらい、技能者を目指す人材のすそ野を広げることが期待できますとされているところでございます。
このように、本県といたしましては、次代を担う青年技能者に努力目標を与えることと、技能者を目指す人材のすそ野を広げることなどが大会の開催の大きな意義ととらえているところでございます。
次に、会場配置についてでございます。
会場配置については、昨年度開催された神奈川大会では、メーンとなる三つの競技会場に加え、競技の特性に応じて六つの小会場を配置し、合わせて九つの会場が設定されました。
こうした会場配置となっておる理由といたしましては、まず、技能五輪の競技種目の中には、厨房設備ですとか、車体塗装ブースなど、競技会場に特殊な設備が必要な職種があること、また、騒音の激しい職種や、使用機器の据えつけ、調整のために一カ月を超える会場借り上げが必要になる職種があることなどが挙げられます。
愛知大会の会場配置につきましては、現在までに、中央職業能力開発協会や専門機関などの意見を聞きながら、候補施設を洗い出すとともに、市町村の意向なども調査いたしております。
今後、これらの調査結果を学識経験者、経済団体、競技関係者などで構成する大会の開催準備委員会で総合的に御検討いただき、選手に良好な競技環境を提供するとともに、大会参加者や応援、見学者などが来場しやすい適切な会場計画を作成してまいりたいと考えております。
技能五輪に関しまして、最後に、子供たち、若者向け関連事業についてお答えいたします。
開催基本構想には、技能五輪の併催事業について、小中学生を中心に、物づくり体験やたくみのわざに身近に触れる機会を提供し、物づくりへの関心を深めるため、技能フェスティバル、物づくり体験教室、物づくりコンテストの開催、あるいは工業高校生を初めとした技能を学ぶ高校生及び県内に多数ある職業訓練施設や企業内学園の若者が技能習得意欲を高めるような交流の場の提供などといたしております。
これらの併催事業に関する構想の具体化につきましては、現在、社団法人愛知県技能士会連合会を初め、教育委員会、職業訓練機関などと連携して検討を進めているところであります。
お尋ねのありました少年少女発明クラブについても、今後検討に加わっていただき、技能五輪を契機に、この地域の子供や若者の物づくりに関する活動が活発となるよう努めてまいりたいと存じます。
以上でございます。
14:
◯産業労働部長(
木村聡君) 私からは、少年少女発明クラブについてお答え申し上げます。
少年少女発明クラブは、科学技術に対する夢と情熱をはぐくむことを目的といたしまして、社団法人発明協会の主導のもと、昭和四十九年から本県を含む全国各地で設立されました。
県といたしましては、その活動は、創造力に富む人材の育成を通じまして、物づくりの振興にも貢献するとの認識のもとで、これまで工作教室を開催する、あるいは指導者を派遣するなど、設立の支援を行ってきたところでございます。
地域における協力企業・団体の御尽力と、こうした私どもの取り組みの成果が相まって、本県で設立されたクラブの数は、本年九月末時点で全国一の二十一クラブとなっておりますが、その一方で、厳しい経済環境の中にあって、一部のクラブは、運営資金や人材不足などの問題を抱えていると承知をいたしているところでございます。
このため、県では、本年五月に新あいち知的財産プランを策定し、クラブの活性化に取り組むことといたしました。
具体的には、希望するクラブに対しまして、企業の知財担当OBを派遣し、知財の重要性について理解を深めていただきますほか、特許技術を使用した工作教室を開催するなど、活動支援を行います。また、クラブのメンバーの作品を展示いたしますあいち少年少女創意くふう展を開催したところでございます。
今後とも、愛知県発明協会との協力のもと、先駆的な指導事例の普及や、クラブ間の指導者交流を図ることによりまして、少年少女発明クラブの活性化をしっかりと後押ししてまいりたいと考えているところでございます。
以上でございます。
15:
◯教育長(
今井秀明君) 愛知の物づくりに関しまして、まず、総合技術高校と既存の工業高校との位置づけについてお答えをいたします。
総合技術高校は、愛知工業高校と本年三月に閉校した東山工業高校の二つの工業高校を統合し、これら二校の伝統を継承するとともに、本県の次代の物づくりを支える人材育成の新たな拠点といたしまして、本科三年課程に加え、二年課程の専攻科を設置し、平成二十七年度の開校を目指しております。
この専攻科では、県内すべての工業高校から意欲あふれる生徒を幅広く集め、技能五輪レベルの高度な技術、技能を習得させるとともに、企業の協力を得て長期間の企業実習を取り入れるなど、最先端の物づくり産業の第一線で即戦力として活躍できる人材の育成を目指しております。
この専攻科のレベルを上げることが本県工業高校全体のレベルを引き上げることにつながると考えておりまして、魅力ある専攻科の設置に向けて、産業界の意見も伺いながら、教育課程等をさらに検討してまいります。
また、総合技術高校には、その最新の施設、設備を活用し、工業教育の研修センターとしての機能を持たせ、県内すべての工業高校を対象に、比較的高度な資格取得を目指す生徒の実習や教員の研修を行うことで、工業教育全体のレベルアップを図ってまいります。
さらに、既存の工業高校の施設、設備の整備についても、計画的に進めていくことにより、総合技術高校を中核としつつ、本県工業高校全体の充実を図ってまいりたいと考えております。
次に、地域物づくりスキルアップ講座の成果と今後の取り組みについてでございます。
この講座は、すべての県立工業高校で地元企業と連携し、企業の施設、設備を利用させていただきながら、熟練技能者から直接指導を受けることにより、地域産業の担い手の育成を図ることを目指して実施いたしております。
今年度は、六十一社で約二百名の生徒が参加しており、この取り組みを通して、地元にあるさまざまな企業のよさを知り、地元の中小企業にも積極的に就職するなどの成果が出ております。
また、生徒が難易度の高い資格を取得するだけでなく、引率する教員も地元企業のすぐれた技術、技能に触れる機会となり、学校と企業との連携が強化されるなどの成果が上がってきております。
今後は、各地域の商工会議所とも連携しながら、受け入れ企業をふやすことで、さらに実践的な技術、技能の習得ができる工業高校として、地域産業の担い手育成に貢献できるよう努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
16:
◯知事(
大村秀章君)
西久保議員の御質問のうち、中京都に関しまして、私からもお答えをさせていただきます。
中京都の行政体制につきましては、世界と闘える愛知・名古屋づくりという中京都の目的に向けまして、広域自治体である愛知県と全国有数の大都市機能を有する名古屋市とがベクトルを共有して、同じ方向でさまざまな政策を積み重ねていく中で、そうした政策の効果を最大化し得る行政体制はどういうものかといった観点から、そのあり方を検討してまいりたいと考えております。
具体的に大きな方向性をお示しいたしますと、まずは、独自の裁量を持って必要な産業経済政策等をやっていけると。そして、国からの権限、財源の移譲、獲得を目指していく。そして、自立性、主体性の高い行政体制を構築していくということでございまして、七月三十一日に、この愛知、この名古屋で、私、そして河村市長、そして、大阪の橋下、当時の知事、そして、新潟市長が集まってやりました愛知宣言、その中で打ち出した方向性ということでございます。
そうしたことで、県の広域行政機能を強化するとともに、あわせて県内の市町村への権限移譲を進めまして、県域全体の国際競争力のパワーアップのみならず、きめ細かな県民サービスの充実を図っていきたいというふうに考えております。
もう一つの方向は、大都市地域の行政体制には、必要に応じた多様性を認容すべきだということでございまして、一口に大都市地域といいましても、我が国の政令指定都市、戦前は六大市といいました、東京も含めて。東京は東京都になりましたから五大市。五大市というのは、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸ということでございますが、そういった歴史のある大都市と、それから、戦後、今、政令市が十九、今度二十になりますけれども、そういった形でふえてきたところとは、おのずと歴史的な経過、そして、地域でのウエートが異なってこようかと思っております。
また、あわせて、大阪のように長期にわたり府と市が対立構図にあった、そういったところと、私どもこの地域のように、愛知、名古屋、協調関係を続けてきたというところとは、おのずとその検討の仕方も違ってくるのではないかというふうに思っております。
いずれにいたしましても、厳しい国際情勢の中にあって、世界と闘える中京都の実現は大変重要な課題だというふうに思っておりまして、その実現に向けまして、こうした方向性に沿って行政体制の構築ができるように、大阪などとも連携しながら、この機運を盛り上げて、しっかりと国に対してさらに強く働きかけていきたいというふうに思っております。
そして、もう一点、自動車関係諸税の抜本的な見直しにつきましての考えと決意を述べよということでございました。このことにつきましてお答えを申し上げたいと思います。
本県の基幹産業である、本県というよりも日本の基幹産業である自動車産業が、ピーク時に国内販売八百万台あった、ちょうど二十年ぐらい前のことでございますが、それから毎年四、五%ずつ国内市場が縮小し、現段階では五百万台を割り込む水準になってきております。
そういう中で、さらに最近の歴史的な超円高によりまして、輸出面で利益を確保することが難しい、そういう状況でございます。すそ野の広い自動車産業の空洞化が進めば、この地域の経済活力や雇用が失われ、愛知県の財政、そして県、県だけではなくて市町村の財政にも大変深刻な影響が及ぶということは懸念をされるわけでございます。
これからさらに本体の自動車メーカーだけではなくて、部品産業の空洞化が大変懸念をされる、私は大変危機感を持っております。
そうした危機意識を抱いている中で、十月三十一日に、名古屋商工会議所、中部経済連合会、そして、連合愛知、そして、全トヨタ労連初め経済界、労働界の皆様が一緒になって私のところにお越しになり、自動車取得税、重量税の廃止などの自動車税制の抜本的な見直しを通じた内需拡大の要請をしていただきました。
そういったことを踏まえ、私自身、この自動車税の抜本的な見直しということを決断することになったわけでございます。
自動車諸税は、県を初めとする地方にとって大変貴重な財源ではありますけれども、その負担軽減が実現をいたしますれば、関連産業を含め、大きな需要や雇用の創出が見込まれるだけでなく、家計の可処分所得の増加や消費の拡大にもつながるものと考えております。
そういう中で、私は、自動車産業が集積をする各県知事、十数県の知事に、私のほうからお声がけをさせていただいて、七県の知事さんから御賛同いただいて、十一月二日、この七県有志知事の連名で、自動車税制の抜本的な見直しによる超円高・国内空洞化対策の実現を求める緊急声明を発表させていただきました。その後、さらに働きかけをし、三県の知事さんからも賛同するというメッセージをいただいております。都合、今、十県の知事で、こうした動きを今させていただいているところでございます。
引き続き、そういう中で、十一月十七日に、東京でございますが、民主党の中で自動車ワーキングチームの会合があり、地方団体としては私、それから、JAFの会長、そして、自動車工業会の志賀会長、自販連の会長、そして、自動車総連の西原会長、合わせて五名で、今の切実な要望を申し上げさせていただきました。
その結果、それからいろいろ御議論いただいて、この民主党さんの税制調査会の方向では、今回の自動車税制の見直しは最重点、最優先事項と位置づけていただいておりまして、今、政府との折衝をしていただいているところでございます。
私も、一昨日、総理官邸に参りまして、藤村官房長官に強くこの実現を申し上げてまいりました。引き続き、また強く働きかけをしていきたいというふうに思っております。
いずれにいたしましても、十二月中に決定をされる予定の政府の税制改正大綱の中での決着に向けまして、引き続き、こうした私どもの愛知県の県内の政労使が一体となり、また、全国の有志知事とも連携をし、そして、関係の同志の頑張っていただいている国会議員の皆さんとも十分連携をしながら、実現に向けて最大の努力をこれからも続けていきたいと考えております。
以上です。
17: ◯十八番(
西久保ながし君) 答弁、いろいろとありがとうございました。
納得のいかない部分もありますが、きょうは二点だけ、最後に知事に要望を申し上げて終わりたいと思います。
一つは、自動車関係諸税です。
知事は、一生懸命やっていただいていることはよくわかっています。本当に元気な愛知を取り戻すためには、これは必達項目だというふうに思っています。ぜひ実現できるまで、知事の最重点取り組み項目としていただいて、実現まで頑張っていただきたいと思います。それが一つ。
それから、もう一つは、ここ議場の中は、我々議員がいて、そちらに理事者がいます。我々議員は、それぞれ会派を持っています。当然立場、役割は違いますが、目的は一つです。県民の幸せを実現するということであります。
県民の皆さんというのは、どこかの市議会のように対立など望んでおりません。そして、国のように党利党略で事が前に進まないということも望んでいません。県民のために汗をかいて、いい仕事をしてほしいというふうに思っていると思います。
そういう意味では、知事にはしっかりとした将来ビジョンを持って、我々に提案していただいて、それについて、みんなでけんけんがくがくと議論をして、知恵を出して、事を前に進めるということが私は大事だと思っています。
知事には、ここ愛知に骨を埋める覚悟で、もう一度物づくりを通じて元気な愛知を取り戻す、そして、将来の子供たちに元気な愛知をプレゼントするというぐらいの気概を持って、ぜひやってほしいなというふうに最後に要望します。
私は、是々非々でしっかり対応していきたいと思っています。
以上で終わります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
18: ◯三十九番(
川嶋太郎君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
19:
◯議長(
岩村進次君)
川嶋太郎議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
20:
◯議長(
岩村進次君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午前十一時三十六分休憩
━━━━━━━━━━━━━━━━━
午後一時開議
21: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
峰野修議員。
〔六十一番峰野修君登壇〕(拍手)
22: ◯六十一番(峰野修君) 通告に従い、順次質問をさせていただきます。
まず初めに、電気自動車の普及支援について質問いたします。
去る十月三十日から十一月六日まで、
愛知県議会海外調査団の一員として、アメリカ西海岸の七都市へ行ってきました。次世代エネルギーの開発と普及、その取り組みを調査する目的で精力的に参加してまいりましたので、まず、その報告をさせていただきます。
調査団十二名が事前にセクションごとに担当者を決めて調査するということといたしました。現在、全体報告書を取りまとめ中でありますので、もうすぐ
文書、ネットで公表されます。
今議会の一般質問でも、参加した議員による報告が予定されております。私は、電気自動車──ここからEVと呼ばせていただきます──の担当ということで、まず、事前調査の一環として、団員八名でトヨタ自動車のEV営業担当、小早主幹と、総務部企画室、植村主幹からトヨタ本社事務所で説明を受けてきました。
トヨタとしては、EVを普及していく上で、1)航続距離が短い、2)バッテリーコストが高い、3)充電時間が長い、4)充電専用インフラが未整備等諸課題があり、当面は近距離用のセカンドカー的な需要が主ではないかと考えています。
来春発売予定のプラグインハイブリッド──以下PHVと言わせていただきます──を、当面の次世代自動車の主力車種として位置づけ、もう一つの次世代自動車、水素ガスの燃料電池自動車──これを以下FCHVと言わせていただきます──は、中長距離用で高出力なので、トラックなど営業車に向いており、二〇一五年ごろからの発売を検討しています。
また、トヨタ初の本格的量産型EV、RAV4EVは、テスラモータースの電動パワートレインを載せて、来年半ばから、北米限定ではありますけれども、販売が開始されます。
トヨタは、近距離はEV、主力はPHV、長距離はFCHVと三タイプを用意して、ユーザーの多様なニーズにこたえようとしております。
以上の事前調査の後、調査団は、十一月一日、カリフォルニア州シリコンバレーの一角、バロアルト市にあるテスラモータース──以下テスラと呼ばせていただきます──の調査をしてきました。
テスラの二人の副社長からいただきました説明は、次のようでありました。
二〇〇三年、電気技術者によって設立されたテスラは、その五年後、二〇〇八年にスポーツカーロードスターを発売し、一台千二百万円以上という高額にもかかわらず、二千台を販売しております。
中途半端なものではなく、最初から最高のスペックのEVを世に送り出すという方針のもとで、時速ゼロから百キロメートルまでを何と三・九秒というポルシェ並みの性能、航続距離は三百五十キロ、一時間で充電可能、七年十六万キロの設計寿命という高性能モデルであります。
今後の戦略として、一般消費者向けの低価格EVを来年発売いたします。モデルSと名づけられたセダンタイプのEVは、初年度、来年度五千台生産予定で、既に予約で完売だそうであります。トヨタとGM合弁会社NUMMI、ヌーミーと呼ばれますけれども、工場跡を買い取り、翌、再来年二〇一三年から年二万台の生産体制をとっております。
そのEVモデルSの電池は、パナソニック製のリチウムイオンバッテリーパックを直列につなぎ、畳一枚分ぐらいにして床下に据えておきます。駆動装置はスイカぐらいの大きさで、テスラ製のモーター一個を中央に据えて、コンピューター制御して走ります。
アメリカ国内での販売価格は四百六十万円ぐらいから、航続距離は二百五十五キロ、八〇%充電なら三十分で可能とのことで、重心が中央床下部に来ますので、重力バランスがとりやすく、空気抵抗も少なく、操縦性と安定性にすぐれ、室内空間も広くなるとのことでした。
デトロイトではなくシリコンバレーから生まれたEVメーカーテスラは、ベンチャー企業特有の活気と自信にあふれ、その雰囲気を肌で感じ取ってきました。また、一方、同社屋にある組み立て工場では、少し雑然としていて、品質管理は大丈夫かな、ちょっと心配な面もございました。それで調査を終えてまいりました。
今、全世界では、毎年七千六百五十万台の新車が販売されております。日本国内では四百九十五万台、約五百万台の販売、九百六十三万台の生産、約一千万台の国内生産がなされております。
今のところ、EVの生産販売台数は極めてわずかでありますけれども、石油埋蔵量等を考えますと、自然エネルギーの電力転換とあわせて、次世代の自動車を開発し、普及に取り組まざるを得ないという時代の転換点に突入したと思います。
百年前にガソリン自動車、T型フォードの出現で消え去ったEVが、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池の画期的な性能の向上により、今再び新しい機能をつけ加えてよみがえろうとしているのではないかと思います。また、次世代電池と言われる次の電池、水素燃料電池、金属空気電池の開発、実用化も今既に始まっております。
もちろん、電気自動車が一気に普及するとはだれも予測しておりませんが、ガソリン自動車産業のネットワークが張りめぐらされている愛知県におきましては、他県よりもその受ける影響は何倍も大きいのであります。
二〇〇九年の工業統計調査によりますと、愛知県製造品出荷額三十四兆円のうち、自動車関連産業は四六%、十六兆円を占め、従業員数でも製造業全体の三二%を占めており、県内の産業、雇用の重要な柱となっています。
ちなみに、次世代産業と期待されている航空機産業が中部五県で四千四百億円、ロボット産業が五百五十億円であります。
また、自動車産業は、その強固なピラミッド構造でも知られており、大手メーカーがその下請の部品製造中小企業をしっかりと保護し、技術支援や経営支援を行っているため、まさに製造業の最優等生として、行政の支援を必要としない自立した産業として発展してきたと思います。
しかしながら、昨今、リーマンショック、東日本大震災、タイでの水害など、予期せぬ大きなアクシデントにより、その生産量を大きく減らしている中で、さらに、歴史的な円高の進行による輸出の減少、海外生産の拡大等により産業空洞化、さらには、産業そのものの崩壊という懸念が日に日に大きくなってきております。
全体としては持ち直しの傾向にあるものの、多くの県内自動車部品中小企業は受注が減少し、売り上げや収益が軒並み減少しており、非常に厳しい苦境に立たされております。まさに、愛知県の自動車産業の危機に直面していると言えます。
そうした中で、もう一つの大きな課題として、EV、PHVといった次世代自動車への転換、自動車の電動化といった対応が必要となってきております。
自動車の電動化により自動車の役割は大きく変わります。単なる移動の手段として、走る、曲がる、とまるという機能だけではなく、スマートグリッドの中で蓄電池としての活用、ITSの中での情報端末、さらには、一般住宅と結びついて、情報端末としての機能など、多様な役割が期待されています。
電子的な制御機能が進めば、事故そのものの撲滅、事故を起こさない自動車、交通事故のない社会も夢ではありません。高速道路での縦列走行、自動操縦の実証実験も始まっております。
しかしながら、次世代自動車への転換は、未来への大きな夢を描く反面、ガソリンエンジンが必要でなくなります。自動車部品産業にとって非常に大きな産業構造の転換をもたらすことになります。
ガソリンエンジン車からEVへかわることで、自動車部品の点数は三万点から一万二千点減って、二千五百点ふえるということで、総計二万点ぐらいになるであろうと言われております。とりわけ、ガソリンエンジン、トランスミッション、燃料タンク、マフラーなどの部品がなくなるわけであります。
もちろん、当面の電動化の主役は、その走行距離の問題から、ガソリンエンジンも併用するPHV(プラグインハイブリッド)にあると見られておりますけれども、直ちに部品点数が大幅に減少するわけではありませんが、現在の円高等の国内生産の減少と相まって、質、量両面から自動車産業全体に与える影響は非常に大きく、まさに自動車産業は百年に一度の大転換期に直面しているところであります。
こうしたときにこそ県がリーダーシップを発揮し、自動車産業を支援していくことが重要であり、まさに今、行政の質が問われていると思います。
県は、本年六月、あいち産業労働ビジョンを策定し、中小企業力の強化や、次世代成長産業の育成、振興を掲げられておりますが、まだ自動車産業に対する具体的な支援の姿がはっきり見えているとは言えません。もう一歩踏み込んだ意思表示が必要であると考えます。
また、現在、次世代自動車産業振興アクションプラン──仮称でありますが──の策定が進められております。産業労働部だけでなく、環境部、地域振興部にもまたがる施策でありますので、これを有効に実施できるような県庁内の体制について、早急に整備していくべきと考えます。
そこでお伺いいたします。
県は、今後の自動車産業をどう振興していくつもりなのか、その方針についてお伺いいたします。
また、次世代自動車にかかわる施策を取りまとめ、推進していく体制をどのように考えているのかお伺いいたします。
次に、次世代自動車の関連技術開発についてであります。
EV、PHVの走行性能の向上は、すべてリチウムイオン電池等二次電池の開発にかかっていると言っても過言ではありません。
各自動車メーカーが開発競争を激化させる中、電池の分野では、この愛知県は、その集積がまだまだ弱いと言われております。この地域において、企業、大学が関連する研究開発を強力に推し進める必要があります。
そうした中、私は、県が整備している知の拠点、シンクロトロン光施設の活用に大きく期待しているところであります。
そこでお伺いいたします。
次世代自動車の二次電池の開発に関し、知の拠点をどのように生かしていくつもりかお伺いいたします。
最後に、EVの普及に向けた取り組みについてお尋ねします。
電気自動車の利用としては、私の地元である新城、北設楽地域など山間地域においても、その移動のほとんどが自動車に依存しておりますので、最近、ガソリンスタンドが減少し、給油が不便になる中で、どこの家庭にも来ている電気で走り、充電できるEVは大きな魅力であります。
また、EVの蓄電池は、災害時、停電時等に家庭用のバッテリーとして活用が可能であり、復旧がおくれがちな山間地域では大きな役割を果たせるのではないかと考えております。
現状では、まだEVは電池性能の問題から長距離の移動は困難ですが、今後、電池性能が向上すれば、重要な移動手段となると考えております。
そこでお伺いいたします。
県として、電気自動車の普及をどのように進めるのかをお伺いいたします。
続いて、二番目の質問に移ります。
三河山間地域の道路の安全確保について質問いたします。
ことし八月二十一日に、東栄町と豊根村を結ぶ国道百五十一号の太和金トンネル内が、老朽化が原因と思われますけれども、自然落盤が発生いたしました。三台の通行中の車が物損事故となりましたが、幸いにも人身事故には至りませんでした。
また、そのちょうど一カ月後、九月二十一日には、台風十五号の豪雨の影響により、新城地区、作手地区を結ぶ国道三百一号で道路の路肩が崩落いたしました。
山間地特有の道路事情で、近くに迂回路がなく、太和金トンネルでは、東栄―豊根間で五キロのところを十五キロの迂回、通行には三十分余分にかかるようになりました。また、国道三百一号では、新城―作手間で十七キロのところを三十九キロの迂回で、通行に一時間余分にかかるようになりました。
それぞれの迂回路が狭いことで、大型トラックは通行に大きな支障を来し、乗用車もふなれな道の通行ということもあって、特に高齢者の方の運転への不安は強く、日々の生活、地域の経済活動に多大な影響が生じています。
太和金トンネルの通行どめの影響で東三河―浜松方面からの観光客が激減し、茶臼山高原では、利用者、売り上げともに対前年比でマイナスの六七%、それから、豊根の道の駅ではマイナスの四〇%、さらに離れた長野県の道の駅、温泉施設でもマイナスの三〇%、大変厳しい状況に陥っております。
長野県知事から愛知県知事に、一日も早い復旧の要望があったとも伺っております。まさに三遠南信(三河、遠州、南信州)の広域連携のチェーンが寸断された状態であります。
また、国道三百一号通行どめの影響により、作手地区と新城地区間の通勤通学には大変不便な状況になっております。母親が、また、生徒が一時的にアパート住まいするといった事態まで起きております。
作手に唯一ある高校も生徒が通えなくて、一時臨時休校となりました。新城に通う作手の生徒さんも、路線バスが大変遠回りになったために、部活ができない、早朝通学などの不便を強いられています。迂回路が狭いこともあって、ふなれな道、自動車の接触事故も頻発しております。
作手にある道の駅手作り村も、売り上げが六〇%減であります。職員の給与も賄えない大変な事態であります。
また、作手地区の方が新城に勤務した帰りに買い物ができないといったこともあって、下の新城の商店街でも売り上げの二割減、そういったお店も結構出ております。
また国道三百一号は、今、下山地区に予定されておりますトヨタのテストコースをつなぐ唯一のアクセス道路でもあります。
今回の災害を通じ、改めて身にしみてわかったことは、山間地においては、道路がいかに生活と経済を支える重要な役割を担っているかということであります。まさに、一本の道が私たちの命をつないでいるのであります。
これは、都会の平たん部で暮らされる網の目のように道路が張りめぐらされた地域の皆様には御理解いただきにくいことではございますけれども、大変そういう山間地の特殊な事情をぜひとも御理解いただきたいと思うのであります。
県税収入が大きく減少する中で、山間道路緊急整備事業費を確保し、山間部の道路整備を促進していただいていることは十分承知しておりますが、まだまだ未改良道路も多く残っております。地形も急峻であります。整備には多くの予算を必要とします。なかなか整備延長が延びていきません。
そこで、まず、国道百五十一号太和金トンネルと国道三百一号、二カ所の復旧の見通しについてお伺いいたします。
次に、再び今回のような重大な災害が起きないように、道路の安全確保、橋梁も含めてでありますけれども、しっかりと実施していく必要があると思います。今後どのように取り組んでいかれるのかお伺いいたします。
本日、私の地元からも多くの方が傍聴に駆けつけていただいております。また、ここへ来るのに三時間以上かかる豊根、作手の方もお見えになっております。
県当局の誠意ある御答弁と、ゆっくりと大きな声で御答弁いただいて、御高齢の方にもしっかりとわかるような御答弁を心から期待いたしまして、壇上からの私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
23:
◯産業労働部長(
木村聡君) お答え申し上げます。
まず、今後の自動車産業振興の方針についてでございます。
本県の基幹産業であります自動車産業は、歴史的な円高に伴う海外への生産シフトや、地球環境問題の高まりを背景といたします次世代自動車の普及など、大きな転換期に直面をいたしております。
県といたしましては、こうした環境変化を踏まえまして、自動車生産の基盤を支える部品関連の中堅・中小企業に対する支援施策を抜本的に見直し、強化する必要があると考えております。
そこで、県では、自動車産業振興に関します基本方針や施策の方向性を明らかにいたします部局横断型のアクションプランを策定することとし、現在、外部有識者の御意見をお聞きしながら、その策定作業を進めているところでございます。
これまでの議論では、多様化する国内・海外市場の動向に応じ、中堅・中小企業が取り組みます新製品開発、販路開拓や海外展開に対するきめ細かい支援、スマートグリッドと連動いたします新しい社会システムの構築、高齢社会に対応した安心・安全で快適な自動車の開発に資する社会実験といった取り組みの必要性が指摘されているところでございます。
県といたしましては、本年度内をめどといたしまして、そうした一連の施策をアクションプランとして取りまとめ、新たな時代に対応する自動車産業のイノベーションを全力で支援してまいります。
また、県庁内の推進体制といたしましては、産業労働部内に自動車産業全般を所管する担当グループを設置いたしまして、各部にまたがる関連施策の取りまとめや総合調整を行いながら、アクションプラン全体を強力に推進してまいりたいと考えております。
次に、二次電池の開発における知の拠点の活用についてお答え申し上げます。
二次電池のうち、プラグインハイブリッド車や電気自動車の動力源といたしましては、リチウムイオン二次電池が主流となりますが、その高出力・大容量化や長寿命・低コスト化を図るためには技術的な課題が多く、それらを解決するかぎとなるのは、電極などを構成いたします素材に関する研究開発であるとされているところでございます。
太陽光の百億倍の明るさを持ち、これを材料に照射することによりまして、ナノレベルで物質の組成等を解析することが可能となりますシンクロトロン光を利用した計測分析では、長時間にわたって充電、放電を行った際の電池性能の劣化原因が原子レベルで解明され、二次電池の電極の改良に寄与するなど、既に一定の研究成果を上げている事例がございます。
現在、知の拠点で整備を進めておりますシンクロトロン光利用施設につきましても、電極の性能向上に必要な元素の構造や、安価な材料への代替可能性を明らかにすることなどを通じまして、既存の二次電池の改良、あるいは機能、コストの両面ですぐれた新たな二次電池の開発に貢献できるものと考えております。
県といたしましては、このようにシンクロトロン光利用施設がリチウムイオン二次電池に関する研究開発を行います上で有益な
ツールとなり得ることに関しまして、企業向けの研究会や講演会を通じまして、具体的な先行事例や利用方法の啓発、普及に努めますほか、知の拠点に専門のコーディネーターや大学などの研究者を配置いたしまして、利用者となります企業と事前相談を行いながら、当該企業が期待する二次電池の改良、開発にとって最適な計測分析方法を提案いたしますなど、きめ細かい支援を行ってまいりたいと考えているところでございます。
以上でございます。
24:
◯環境部長(
西川洋二君) 私からは、電気自動車の普及に向けた取り組みについてお答えいたします。
本県は、自動車の保有台数が全国一位でございまして、自動車の排出ガスの低減が重要な課題となっておりますことから、環境性能の高い電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)といった次世代自動車の普及を重要な環境施策としても位置づけておるところでございます。
このため、自動車メーカー、充電設備のメーカー、電力会社、百貨店、そして、コンビニなどの小売業者、県内の自治体など、現在では八十を超える幅広い分野の関係者で構成いたしますあいちEV・PHV普及ネットワークという組織を設立し、初期需要を創出するための率先導入でありますとか、環境性能の高さを啓発するための試乗会の開催といった取り組みを進めます一方で、EVの普及に必要不可欠でございます社会インフラである充電設備の整備に力を入れてまいったところでございます。
その結果でございますけれども、平成二十二年度末までに、県内におきまして、EV、PHV合わせて五百八十台、うちEV五百台の導入を進めてきたところでございまして、また、充電設備については、自動車販売会社、そしてコンビニエンスストアなど、都市部を中心に二百基を整備したところでございます。
一方で、購入に対する支援といたしましては、国は、EVの購入に対する補助やエコカー減税を実施しておるところでございまして、県といたしましても、これらの制度の周知とともに、事業者に対しましては、購入費用の一部を国と協調して補助することによりまして、普及に努めているところでございます。
今後は、EVの市場動向、そして、地域ごとの普及状況も踏まえまして、産業労働部とも連携し、普及ネットワークの取り組みをより一層推進いたしますとともに、現行の補助制度を活用することにより電気自動車(EV)の普及を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
以上でございます。
25: ◯建設部長(近藤隆之君) 三河山間地域の道路の安全確保についてのお尋ねのうち、初めに、国道百五十一号太和金トンネル及び国道三百一号の復旧の見通しについてでございます。
太和金トンネルにつきましては、トンネル全線にわたり詳細な調査を行った結果、落盤箇所以外にも空洞があることが判明したため、すべての箇所について対策工事を実施し、来年三月末には復旧させたいと考えております。
なお、新しいトンネルを含みますバイパス事業につきましても、できる限り早期の整備に努めてまいります。
また、新城市内の国道三百一号につきましては、崩落を免れた一車線の安全を確保するための工事を進めており、年内には交互での通行ができる見通しで、来年の夏には全面的な復旧をさせたいと考えております。
通行どめにより、関係地域の皆様方には多大な御不便と御迷惑をおかけしておりますので、一日も早い復旧に向けて、さらに努力をしてまいります。
次に、道路の安全確保の取り組みについてでございます。
橋梁やトンネルなどの道路施設の老朽化を防ぎ、地震や異常気象などから道路を守り、通行の安全を確保するためには、定期点検により損傷を早期に発見し、速やかに対策を行うことが重要であると考えております。
このため、山間部の落石などの危険箇所につきましては、平成十年度より斜面などの状況を経年的に記録した防災カルテを用い、二年に一回の頻度で定期点検を行っております。
橋梁につきましては、平成十九年度より点検を開始しておりまして、五年目に当たる今年度に県が管理する約四千橋について点検が完了いたします。来年度以降も継続的に五年に一回の頻度で定期点検を行ってまいります。
また、トンネルにつきましては、太和金トンネルの落盤を契機に、県が管理する五十八カ所のトンネルについて、職員により緊急点検を実施し、変状が見受けられた二十七カ所について、今年度、詳細点検を行うこととしております。さらに、今後五年間ですべてのトンネルの点検を完了させ、その後も継続的に実施をしてまいります。
特に、山間部の道路は災害などにより通行どめが生じますと、長距離の迂回を余儀なくされ、地域に与える影響は多大なものとなりますので、橋梁やトンネルなどの定期点検を確実に行い、県民の皆様に道路を安心して使っていただけるよう、今後も取り組んでまいります。
以上でございます。
26: ◯六十一番(峰野修君) それぞれ御答弁いただきました。
産業労働部長からは、新しい部局横断的なアクションプランをつくって、担当のグループをつくってやっていくという力強い答弁をいただいたと伺いました。
私、いろいろ県のアクションプランを読まさせていただいていまして、本当にまとめるのはうまいんです。だけど、これをどう実効あるものにしていくかというのが本当の宿題でありまして、ぜひその点を踏まえながら取り組んでいっていただきたいと思います。
それから、あしたから東京モーターショーが開催されます。トヨタ自動車の豊田彰男社長のプレゼンテーションの中で、トヨタは、「FUN TO DRIVE’AGAIN.」と、いわゆる車の楽しみをもう一度呼び戻そうと。それから、「NEVER GIVE UP」というふうにプレゼンをされました。
まさに車の楽しみをもう一度見詰め直そうというような力強い前向きの気持ちを発信されたと思います。
我々もそれを受けまして、やはり今、シンクロトロン光の活用と、こういうことも核といたしまして、愛知県の中で二次電池の活用、二次電池の技術開発ということにもかなり力を入れて取り組んでいっていただきたいということを要望いたしまして、終わります。
27: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 進行いたします。
荒深久明臣議員。
〔二十八番荒深久明臣君登壇〕(拍手)
28: ◯二十八番(荒深久明臣君) 通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。
世界と闘える愛知。私は、このキャッチフレーズをとても気に入っております。今後、愛知県が向かうべき方向性を端的にあらわしていると思うからであります。また、闘うという言葉を自治体がキャッチフレーズとして使うことは余りないと思われますので、他の都道府県との差別化にもなっていると思うからであります。
私は、愛知県以外の四十六都道府県のホームページで、知事のメッセージが掲載されているトップページをすべて見てみました。予想どおり、闘うという意味合いのメッセージを発信している都道府県は一つもございませんでした。
常に闘う姿勢を前面に出されている石原東京都知事も、橋下前大阪府知事も、不思議に他の知事と同様に、こうしたメッセージを発信されておられません。
単純な私はうれしくなりました。今の日本の置かれた状況から脱出すべき方向性を、県民、そして、県の職員に対するメッセージとして、短くわかりやすいキャッチフレーズで発信しているのは愛知県知事だけだからです。このメッセージの意味するところを理解した上で行動していけば、愛知県は、他の都道府県より一歩先を行き、国内の競争には打ち勝っていけるようになると思うからであります。
なぜそんなことが言えるのか。
まずは、そのことについて、私の意見を述べさせていただき、その上で順次質問をさせていただきたいと考えます。
さて、最初にちょっと恐ろしい話をさせていただきます。エコノミストの藻谷浩介さんが著した『デフレの正体』に書かれてあるような話で、日本の人口減少が引き起こす問題についてです。
国立社会保障・人口問題研究所発行の日本の将来推計人口(平成十八年十二月推計)に日本の将来推計人口が報告されています。出生率と死亡率について、それぞれ高位、中位、低位の三仮定を設けて、三掛ける三の九パターンの推計を行っているものですが、きょうは話を単純にするために、出生率、死亡率ともに真ん中の中位パターンで説明させていただきます。
同報告によりますと、西暦二〇〇五年の日本の総人口は一億二千七百七十万人でありましたが、これ以降長期の人口減少過程に入り、十年後の二〇一五年ではマイナス二百三十四万人、ほぼ名古屋市人口に匹敵する人口が消え、二十年後の二〇二五年ではマイナス八百五十万人、これは大阪府と同数が消え、三十年後の二〇三五年ではマイナス千七百九万人、北海道と中国地方五県と四国地方四県分が消え、四十年後の二〇四五年ではマイナス二千七百三十三万人、二〇三五年に消えた分に福岡県を除く九州地方七県分の人口、減少率でいいますと、二〇〇五年の総人口の二一・四%の人口が消えることになります。
これは単純計算をしますと、例えば一般消費者向けの小売店の年間一億円の売り上げが八千万円以下になってしまうと、そういういうことです。日本の産業を引っ張る自動車産業にいたしましても、国内で乗る人、買う人の数が減っていくわけですから、国内売り上げは下降線の一途です。売るネタも、売り方も、そして、売り先、売る場所も、今のままで変えようとしないならば、商売が成り立たなくなるということです。
単純な人口減少の問題だけではありません。もっと恐ろしい問題があります。それは、従属人口指数が悪化し続けるということです。従属人口指数とは、生産年齢人口の扶養負担の程度をあらわすための指標で、生産年齢人口に対する年少人口と老年人口の相対的な大きさを比較したものです。十四歳以下を年少人口、六十五歳以上を老年人口、両者を合わせて従属人口といい、十五歳から六十四歳までを生産年齢人口といいます。この値の二〇〇五年を基準とした将来推察を見てみることにいたします。
従属人口指数は、生産年齢人口の縮小傾向のもとで、二〇〇五年で既に五一・三%、すなわち働き手二人で年少者または老年者一人を扶養し、二〇三〇年で七〇・九%、一・四人で一人を扶養し、その後、二〇五五年に九五・七%、何とほぼ一人で一人を扶養するまで上昇します。
こうした時代が来ると、会社の売り上げが減って給料が下がり、さらに扶養負担としての社会保険料や税金が高くなって手取りが減るので、ますます働き手の財布のひもはかたくなり、一方、年少者と老年者はもともとお金を使わないので、内需はどんどん縮小していくことになります。
現在の物が売れにくくなっている状況を不況と呼ぶ人がいますが、不況という言葉には、いつかは景気がよくなるという期待感が込められているように思われます。
しかし、物が売れにくくなっている原因は景気の波ではなく、人口動態の変化による構造的な内需減少が原因ですから、売るネタ、売り方、特に売り先、売る場所を変えていかないとV字回復は望めないと思います。
国内で売れなきゃ海外で売る。外国人に売れそうなネタに売り物を変え、外国人が好む売り方に変えていく。海外から愛知県を目指してやってきていただく。外国人を雇って言葉の壁をなくす。現地の外国人は同じ外国人に管理させる。こういうことを当たり前のように考え、行動していける者だけが競争に打ち勝っていけるのではないかと考えます。
世界と闘える愛知を実現していくことこそが、他の地域との競争に打ち勝ち、この地域に人、物、金を呼び込み、元気で魅力ある地域にしていく唯一の道であると考えます。
県としては、県内企業が海外で活躍できるように支援して、企業には海外でもうけたお金を県内に持ってきていただき、もうけたお金で人をいっぱい雇っていただいて、法人税もそれなりに納めていただく、そんなモデルを構築していくしかないと思われるからです。
福祉、医療、教育の充実も、安心・安全の向上も、そして減税も、財源がなければ実現させることはできません。
それでは、どんなことを行っていけば、世界と闘える愛知の実現につながっていくのでしょうか。
以降で、一、企業グループ形成による海外進出支援について、二、海外から愛知県に人を呼び込む施策について、そして、三、中京都構想について、これら三点に対して考察し、質問させていただきます。
最初は、海外進出企業の支援施策についてでありますが、これについては、先日、減税日本一愛知の有志十人で行ってまいりました上海視察の同行メンバーである岡江議員が質問する予定ですので、私は、以前から関心があり、独自に調査してまいりました企業グループ形成に絞った内容で質問させていただきます。
なお、上海視察につきましては、質問内容にも関連いたしますので、ここで簡単に触れさせていただきます。
我々が行きました上海視察の主な目的は、十一月一日から五日まで開催されました中国国際工業博覧会の開幕前夜祝賀会への公式参加、これは一人だけ参加いたしました。それと、開幕式への公式参加。公式参加というのは、来賓として招待状をいただいて参加したという意味です。そして、同博覧会に出展している愛知ブース企業へのヒアリング、場所を変えまして、既に進出しておられる企業二社を訪問して、その成功要因や中国現場ならではの課題のヒアリング、さらに場所を変えまして、開発と自然保護を両立させると上海市が宣言しました島、崇明島という島を訪れまして、開発誘致に関するヒアリングを行いました。また場所を変えて、上海市農業科学院を訪問し、中国農業の現状と課題のヒアリング、そして、上海市政府との人的交流の促進です。
さて、企業グループ形成による海外進出支援についてに話を戻します。
中国国際工業博覧会の愛知ブースの一つに、ブース全体を和室に装飾し、浴衣を着たスタッフがアテンドしている企業がございました。一見しますと、畳かふすまか和室の装飾品の展示販売のブースですが、実は畳と畳製造機械の総合メーカーの出展ブースでした。
私は、その企業の担当の方に、畳、ふすま、欄間、こたつ、民芸調家具、そういった和室の構成要素のメーカーがグループをつくって、畳文化全体を表現できる展示会にすれば相乗効果があると思いますが、いかがですかと質問してみました。その方は、畳の認知度は年々高まっていると感じているし、実際、畳だけではなく、ふすまのことなんかも聞かれたりするので、そういう展示の仕方はおもしろいと思いますとの感想も述べられました。
同じような話をもう一つ。私は、十月一日に名古屋商工会議所で開催されました第三回なごや美酒欄という県内酒造会社が参集して行っている地酒の利き酒大会に参加しました。といいますのは、この催しが利き酒だけではなく、日本酒に合うさかなも同時に提供し、日本酒の楽しみ方を提案するというコンセプトを持っていることをチラシで知ったからでございます。
私は、会が開始される前の準備で慌ただしい中に入っていき、事務局から紹介された取りまとめ役の酒造会社の役員さんに次のような質問をしてみました。
日本酒の単品売りではなく、今回のように日本酒と酒のさかなの組み合わせ、それにとっくりとかおちょこといった酒器、それから、和食器等を組み合わせた日本の酒文化そのものを売り物とし、異業種で企業グループを形成して中国の富裕層に売っていくようなことは考えられませんか。その役員の回答は、県の後押しがあれば、ぜひとも検討したいというものでした。
私は、このように異業種の中小企業がグループを形成し、日本文化を表現できるような展示の仕方で海外に進出していくことを試みてもよいのではないかと考えます。
一方、同業種による企業グループの形成、水平分業による企業グループの形成も行われるようになってきています。
前者の例では、日経新聞二〇一一年八月九日に掲載されました愛知県食品輸出研究会がございます。このグループは、愛知県を中心とする中小食品メーカー十三社で設立され、情報交換や商談で提携していくというもの。
後者の例では、これも同じ日経新聞二〇一一年九月二十九日に掲載されましたチームエコラボでございます。このグループは、中小企業八社の出資で設立され、各企業が保有している技術や生産設備を使って、環境関連装置を製造し、販売していくものです。
海外では名もない中小企業が、単独かつ単一商品群で勝負することはリスクが大きいと思いますので、企業グループを形成し、集団で海外を相手にする方法もよいと考えます。
そこでお尋ねします。
県では、異業種または同業種の企業グループ形成について、どのように取り組んでいるのかお伺いします。
また、企業グループが海外に進出していくことに対し、今後どのように取り組んでいくお考えかお伺いします。
続きまして、二つ目の海外から愛知県に人を呼び込む施策についてに話を移します。
愛知県に人を呼び込むといいますと、真っ先に頭に浮かぶのは旅行ですが、旅行と一言で済ますわけにはいかない、ちょっと奥が深い話のようであります。
といいますのは、十月十一日に知事政策局主催で開催された愛知・名古屋の観光と地域振興というセミナー、前にも引用させていただきました藻谷浩介さんが講師を務められたセミナーですが、それに参加し、考えさせられたからであります。
藻谷さんは、どういう属性の旅客客が、なぜ他の地域ではなく愛知県に来て、しかも、お金を使って滞留するのか、これを明確にして、旅行客自身がこの地にお金を使うことに納得するように仕向ける必要があるといった内容の話をしてくださいました。自分の身に置きかえましても、どこかに旅をするときには、確かにお金を使う理由づけをして行っています。
ここで、旅について、ちょっと掘り下げて考えてみることにいたします。
旅には、名勝地や神社仏閣をめぐる旅、温泉と食事を楽しむ旅、祭りや文化行事に触れる旅、ハイキングやスポーツイベントに参加する旅、ひたすら買い物を楽しむ旅、農業や工芸を体験する旅、工場見学など産業に接する旅、そして、会議に参加する旅などいろいろあり、人が旅をする目的はいろいろあることがわかります。
目的ごとに人を引きつける要素は違いますし、民族、居住地、年齢、性別、人数、予算などによって、当然要求する内容やレベルは違ってきます。これらの要素を掛け算していくと物すごい数のパターンが出てきます。
こういったパターンは、業界は違いますが、アパレル専門店が、例えば都心近郊の、一戸建てに住む、六十歳以上の、裕福で、知的水準の高い、御婦人向けといったぐあいに、特定パターンに適したお店づくりをするといった場合に使いますが、旅問題は、個別店舗の問題ではなく地域の問題として考えなければなりませんので、そう簡単にはいきません。
簡単ではありませんが、得意な部分、強みと言いかえてもいいかもしれませんが、それを見つけて対策を練る必要があります。
ところで、海外から愛知県に人を呼び込むのに最も必要なことは知名度です。知らないところにはだれも行こうとはしないからです。信用できる都道府県別知名度ランキングが見当たりませんので、観光庁宿泊旅行統計調査報告に記載されている平成二十二年外国人延べ宿泊者数という統計値で見てみることにいたします。
外国人延べ宿泊者数では、総合で全国六位。観光といえば京都のイメージを持っていた私にとって、五位の京都府に肉薄していることには驚きましたが、これを観光目的での宿泊者数と観光目的外の宿泊者数に分けてみて納得しました。観光目的での宿泊者数は、全国で十四位。やはりといいますか、残念ながら、観光地としての知名度は高くありません。
一方、観光目的外の宿泊者数は、全国で三位。三大都市の面目を保っており、総合ランクで六位に押し上げた理由はこちらにありました。どうやら愛知県の強みは、名古屋市やトヨタの企業城下町への観光目的外の来訪者数が多いということのようです。
そんなわけで、強みである観光目的外の来訪者数を増加させることに的を絞り、実効性のある施策について考えてみることにいたします。
観光目的外の交流拡大策といたしまして、MICE推進という考え方があります。MICE、M・I・C・Eとは、ミーティングのM、インセンティブのI、コンベンションのC、イベントまたはエキシビションのEの四文字であらわした言葉で、それぞれ日本語に訳しますと、企業の会議、セミナー、優秀社員への報奨旅行、国際会議や全国規模の会議、そして、イベント、展示会のことです。
MICE推進は、世界じゅうで注目されている誘客の施策です。なぜなら、宿泊に伴う飲食や買い物、周辺地域への小旅行といった消費につながるからです。また、当地を気に入ってもらえれば、ブログ、ツイッター、フェースブックなどSNSで宣伝してもらえる可能性がありますし、プライベート旅行での再訪も期待できるからです。外国では、シンガポール、韓国のアジア勢、そして、アメリカ、オーストラリアが力を入れているようです。
観光庁では、内需縮小の打開策として、平成二十一年にMICE推進アクションプランを打ち出しました。これを受けて、京都市、札幌市等の自治体も、独自のMICE戦略を練り、人、金を呼び込もうと積極展開し始めています。
MICE推進の必要性を裏づけるような記事が十一月十六日の日経新聞で報じられました。その記事とは、名古屋市内の主要ホテルの稼働率が五カ月連続で前年同月比を上回っており、十月においては、五年振りに八六%を超えた。高稼働の理由の一つは、名古屋で大規模な学会の開催が集中したことという内容です。会議の参加者が宿泊すれば、食事や宴席、移動が伴いますので、飲食業やタクシーの売上増にも影響があったと考えられます。
しかし、当地域にとってうれしい事実だけではなく、残念な報告もなされています。
日本政府観光局の二〇一〇年国際会議統計の発表によりますと、当該年に本県では百三十八件の国際会議が開催されましたが、全国的には、東京、福岡、神奈川、大阪、京都に次ぐ第六位であり、福岡、京都に負けていることです。当地域のポテンシャルからいえば、誘致のさらなる取り組みが必要であろうと考えます。
今述べたような動きや事実を見てみますと、愛知県と名古屋市が一体となって他地域に負けないMICEを推進し、当地域に人、金を呼び込んでいくことが必要であると考えます。
そこでお尋ねします。
本県は、MICEの誘致について、今後どのように取り組んでいくお考えかお伺いします。
また、他地域との競合の中で、愛知への誘致を実現するためにどのように差別化を図っていくのかお伺いします。
それでは、三つ目の、最後の中京都構想についての話に移ります。
十一月二十七日、政令指定都市など大都市制度に変革を迫る大阪都構想を掲げた大阪維新の会が、大阪府知事・大阪市長選のダブル選で勝利いたしました。翌二十八日の日経新聞の記事に、昨年四月に維新を立ち上げた橋下氏らが掲げたのが、二重行政の無駄を省き、成長分野に集中投資するため、広域行政の指揮官を一本化する都構想だった。選挙戦で維新側は、都をつくって、人、物、金を集めると経済成長への道を訴えたとあります。
二重行政といいますか、重複行政の無駄を省く。そして、人、物、金を集めるとの訴えは、中京都構想に通じるものがあり、大阪の民意とはいえ、閉塞感に覆われている現在の日本の大都市住民共通の声であると私は考えます。
県においては、財源不足を理由に、来年度の県民税減税実施を知事が断腸の思いで断念されましたし、名古屋市においても、財源不足を理由に、河村市長が減税幅を一〇%から七%に縮小することを表明されました。
中京都構想に対する賛否は分かれるところであるかもしれませんが、愛知県と名古屋市、ともに財源不足に頭を悩ませている自治体にとっては、重複行政をあぶり出し、攻めの施策を行っていくために必要な財源確保に邁進することは必要であると考えます。
それには、無駄かどうか見きわめる必要がありますから、まずは名古屋市内で、愛知県と名古屋市がそれぞれ提供している類似の行政サービス、例えば、主に中小企業を対象とした産業振興支援を目的としておりますあいち産業振興機構と名古屋市産業振興公社、そして、主に国際交流の推進を図ることを目的としています愛知県国際交流協会と名古屋国際センター等について、統廃合の可能性の検討に着手しておく必要があると考えます。
しかし、名古屋市議会と名古屋市長の対立により、中京独立戦略本部が開催すらされていない現在、愛知県と名古屋市による類似サービスについて、統廃合等の可能性の検討すら着手されていないのではないかとの懸念が持たれています。
そこでお尋ねします。
本県は、名古屋市との重複行政の排除を初め、中京都構想の実現に向けて、今後どのように取り組んでいくお考えかお伺いします。
最後に、世界と闘える愛知の実現に向けて、他都道府県との競争に打ち勝つという意識を持って職務に当たるよう、大村知事持ち前の強力なリーダーシップを発揮され、県の職員の皆さんを導いていかれることをお願いいたしまして、私の壇上からの質問を終わらさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
29:
◯産業労働部長(
木村聡君) お答え申し上げます。
まず、企業グループの形成についてでございます。
技術や人材等の経営資源に制約がある中小企業の場合、単独で新商品を開発し、販路を開拓するといった新分野への進出を行うことが困難なケースがございます。
異業種または同業種の企業が交流し、グループを形成することは、おのおのが強みを持ち寄り、迅速かつ的確に技術課題を解決する、あるいは規模の経済性を生かし、効率的なマーケティングを行うことを可能にする有効な手段でありまして、県としては、そうしたグループ形成の取り組みを積極的に支援することが必要であると考えております。
このため、県では、関係機関との協力のもと、研究交流や共同受注などを目的といたします二十の異業種交流会の活動を支援いたしますほか、すぐれた技術を持つ製造業として認定した愛知ブランド企業同士の交流会を開催し、ネットワークづくりの機会を提供しておりまして、引き続き、これらの取り組みを着実に推進してまいりたいと考えております。
次に、企業グループの海外進出についてでございます。
県では、これまで本県に集積する製造技術の強みに着目をいたしまして、物づくり企業のグループによる中国での見本市への共同出展を支援してまいりました。
本年度からは、新たに農商工連携にも焦点を当てまして、県みずからが当地の農産品を利用した加工食品の展示会を現地で開催いたしまして、農業関係者と企業が協働する販路の開拓も支援をすることといたしております。
その際には、取引の相手方とのマッチングの場を設定するだけではなく、上海産業情報センターに設置いたしておりますマーケティングの専門家が、商談から契約成立に至るまで継続的にアドバイスを行いますなど、きめ細かい支援に努めてまいりたいと考えているところでございます。
続きまして、MICEの誘致についてであります。
国際会議や大規模なイベントなど、いわゆるMICEの開催は、交流人口の拡大に伴います消費支出などの経済的な効果に加えまして、地域の国際的な知名度、イメージの向上といった社会的な効果も期待されますことから、その誘致は重要な政策課題であると考えております。
このため、県では、本年六月に策定いたしましたあいち産業労働ビジョンにおきまして、観光客誘致強化プロジェクトの一環として、MICEの誘致に重点的に取り組むことといたしたところでございます。
今年度には、このビジョンの取りまとめと並行して、名古屋市と共同設置いたしました観光プロモーションPTで戦略を練りまして、経済界や教育界とも連携して誘致活動を展開いたしました結果、これまでに、二〇一四年に開催される国連ESDの十年最終年会合や、二〇一三年に開催されます宇宙技術及び科学の国際シンポジウム第二十九回ISTSの誘致を実現したところでございます。
今後は、このPTを中心といたしまして、当地のMICE誘致の基本方針となります──仮称でございますが──愛知・名古屋MICEアクションプラン、これを策定する中で、国際会議や大規模イベントに加えまして、企業、学会の会議、海外からの報奨・研修旅行などを含めまして、MICE全般を幅広く誘致する取り組みを強化し、当地が我が国を代表する開催地となることを目指してまいりたいと考えております。
その際には、県と名古屋市が一体となった体制を構築した上で、陸海空の交通の要衝であり、国際会議を支える万全のインフラが整っていること、あるいは物づくりや環境分野におきまして、世界に誇る産業、技術が集積していることなど、当地ならではの強みを積極的にPRし、他地域との差別化を図りながら、地域間の競争を勝ち抜いてまいりたいと、このように考えているところでございます。
以上でございます。
30:
◯知事政策局長(
中西肇君) 私からは、中京都構想への取り組みについてお答えさせていただきます。
世界と闘える愛知・名古屋を実現するためには、県市が同じベクトルのもとに、スピード感を持って施策を実行することが不可欠でございまして、そのための大きな方向づけを行うことが中京独立戦略本部の役割でございます。
本部会議につきましては、名古屋市側の調整がつき次第、本格的な議論を遅滞なくスタートできるよう準備しているところでございまして、既に優先度の高いテーマにつきまして、六つのプロジェクトチームを立ち上げて検討を進めているところでございます。
このうち、中京都プロジェクトチームにつきましては、中京都のあるべき姿や行政体制のあり方、また、重複行政の排除の観点から、効果的、効率的な行政サービスのあり方について検討を行っているところでございます。
今後も必要な検討をさらに進めました上で、中京独立戦略本部において御議論いただき、さらに取り組みを進めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
31:
◯知事(
大村秀章君) 荒深議員の質問のうち、中京都に関する質問につきまして、私からも答弁を申し上げます。
ここ愛知・名古屋を世界と闘える強い大都市地域としていくためには、愛知県と名古屋市がそれぞればらばらに対応するのではなく、互いの強み、持てるパワーを結集することが重要でございます。
そのため、県市がそれぞれ提供している行政サービスにつきまして、共同化したり、連携を深めたりすることで、さらなる相乗効果が期待できるものがないかどうか、利用者や経済界など外部の方の声もよくお聞きしながら、洗い出していく必要があると考えております。
現在、先行して進めているプロジェクトチームにおきまして、必要な検討を進めているところでございますが、しかるべきタイミングで中京独立戦略本部をスタートし、強い大都市地域をつくる見地から有識者の皆様に御議論いただき、取り組みをさらに深めていきたいというふうに思っております。
以上です。
32: ◯二十八番(荒深久明臣君) 御丁寧な答弁どうもありがとうございました。
二点御要望させていただきます。
まず、答弁の中で、具体的な当地域の差別化についての御回答が、余り具体的な回答が得られませんでしたので、常に他の地域よりも優位な施策を展開していく、競争に打ち勝つという観点で業務を進めていただきたいということをまずお願いいたします。
もう一点、中京都構想についてですが、名古屋市議会の十一
月定例会本会議の質疑・質問通告内容を見る限り、質問者三十人中だれ一人として中京独立戦略本部開催に関する質問を取り上げなかったようです。
名古屋市議会では、減税が議論の中心となっており、中京都構想への関心が薄れているのではないかという気がいたしますが、県といたしましては、この重要課題の検討を進めていただき、中京独立戦略本部の一刻も早い開催を要望して、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
33: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 進行いたします。
木藤俊郎議員。
〔六十八番木藤俊郎君登壇〕(拍手)
34: ◯六十八番(木藤俊郎君)
議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、私は、県民が安心して暮らせる社会の構築に向けて、愛知県が取り組むべき課題について、三項目お尋ねをいたします。
最初の質問は、不育症対策です。
妊娠しない不妊症については皆さん御存じですが、妊娠するけれども、流産や死産を繰り返し、結果的に赤ちゃんを持てない場合、不育症と呼ばれます。不育症については認知度が低く、また、専門としている病院や産婦人科医も少なく、どこで診てもらったらよいのか、どんな検査をすればよいのか、どんな治療があるのかについて、明確な情報が患者さんたちには伝わっていません。
厚生労働省不育症研究班の調査では、国内に百四十万人の患者さんがおり、年間に三万組が新たに発症していると推計されています。その原因は、子宮の形の異常や、血栓ができて胎児に栄養が届かないといった母体の問題のほか、カップルの染色体異常などがありますが、大半は原因不明です。
患者さんの中には、妊娠の喜びから一転して悲しみのどん底に突き落とされる流産や死産を何度も繰り返すうちに、心の傷が回復しないまま、うつ状態に陥る人もいます。我が子を失って、さらに、うつの治療薬の服用のために次の妊娠ができないジレンマに苦しむ人もいます。
さて、身近にある調査結果を御紹介します。名古屋市立大学が、二〇〇七年から二〇一〇年に、愛知県岡崎市で健康診断を受けた三十五歳から七十九歳の女性二千七百三十三人に尋ねたところ、妊娠したことのある女性二千五百三人のうち九百五十三人、三八%の人が流産の経験があると回答しました。二回以上の流産を経験した人は百五人、三回以上は二十二人でした。しかし、不育症に該当したこの百五人のうち九割超の百人が出産をしています。厚生労働省の研究班の調査では、検査と治療を受けた八五%が出産できたという研究結果があります。
さて、どうすればよい結果に至るのか。それは、医師の処方による、ヘパリンなどの薬による治療やカウンセリング、不育症学級や自助グループの励ましなど心のケアなどが相まって出産に至っています。
不育症の原因が見つからなかった患者さんのうち、カウンセリングを受けた人の出産成功率は七八・三%で、受けなかった人より約二〇ポイント高かったと報告をしています。妊娠前の適切な心理ケアが流産率を下げるという海外の論文もあるそうです。
しかし、不育症の相談窓口は多くないのが現状です。不妊・不育とこころの相談室を設けている岡山大学病院には、全国から電話が寄せられ、県外からも相談に訪れる人がいると聞きます。
二〇〇八年から二〇一〇年に同病院の不育症外来を受診した九十一人を調べると、一四%に不安障害やうつ傾向が見られた。同病院のカウンセラーは、抱えるつらさの量は決まっていて、小出しに気持ちを出したほうがいいと指摘しています。
医療費の面から申し上げますと、薬による治療方法の普及や、カウンセリングが進んでいる状況はいいのですが、不育症の治療や医療機関が独自に設けている検査項目は、保険適用外の自費であることが多く、例えば朝晩自分で行うヘパリンの在宅自己注射も自費。月五万円前後かかります。また、専門医が少ないため、遠くから通院する患者さんにとっては、交通費など経済的な負担が重くのしかかっております。
今国会で我が党の議員が、特にヘパリン注射への保険適用を訴えており、野田総理は、ヘパリン療法は、現在、安全性などの評価を急いでおり、確認されれば速やかに保険適用をしていきたいと答弁しております。
そんな中、全国で初めて岡山県真庭市では、不育症の治療費に対する助成制度を設けました。その後も市町村を中心にこの動きが出ており、和歌山県が都道府県では唯一助成制度を設けました。
以上、不育症を取り巻く状況を述べてまいりましたが、そこで三点質問をさせていただきます。
一、愛知県は、現在、この不育症をどう認識しているのでしょうか。
二、不育症に対する相談窓口を設置する考えはありますでしょうか。
三、愛知県内の市町村の助成事業の動きはあるのでしょうか。県の助成事業の創設は考えておられるのかお尋ねをいたします。
二番目の質問は、脳脊髄液減少症についてです。
脳脊髄液減少症については、平成二十年十二月議会では我が会派の桂議員が、平成二十二年二月議会では米田議員が一般質問をいたしております。
愛知県議会では、平成十八年六月議会で、脳脊髄液減少症の治療法の確立と、医療保険の適用となるよう要請する意見書を全会一致で決議し、衆参の
議長、内閣総理大臣、厚生労働大臣あてに提出をいたしました。
その後の経過を踏まえて質問したいと思います。
そもそも脳脊髄液減少症は、交通事故、スポーツ障害、落下事故、暴力、その他頭部や全身への強い衝撃によって、脳脊髄液が慢性的に漏れ続け、その結果、脳が沈んでいくことでさまざまな症状が引き起こされていく病気と言われております。具体的な症状は、猛烈な頭痛、めまい、吐き気、そして、首や背中の痛み、腰痛、視力低下、耳鳴り、思考力の低下、うつ症状、さらに、睡眠障害や極度な全身倦怠感等々であります。
こうした症状に悩まされ、日常生活が大変な患者さんが日本全国で二十万人から三十万人以上いると推定をされております。今までは、医療現場においても認知度が低く、原因が特定できなかったことから、怠け病、あるいは精神的なものとされ、周りから理解されず、肉体的、精神的な苦痛はもとより、交通事故などの外傷で発症した人たちは、損害保険会社から補償を拒まれ、金銭的にも困窮してきました。
さて、交通事故などによって髄液が漏れた患者が多数いるおそれがあると主張され始めてから十年、厚生労働省研究班は、本年十月十四日、脳脊髄液減少症の原因の一つに髄液漏れを判定する画像診断基準を発表しました。この病の治療に大きな一歩を踏み出したと言えます。
研究班の嘉山孝正医師は、髄液漏れの診断に関して、世界のどの基準よりも科学的なものができたと思っていると語っています。
一方、治療には、自身の体液を採取して、腰や脊髄の硬膜外側に注入するブラッドパッチ療法が有効とされております。しかし、保険適用外のため、一回に約三十万円もの自己負担が必要となります。同療法への保険適用も検討されておりますが、まだめどが立たない状況です。
しかし、次善の策として、先進医療の申請が可能となるよう検討が進められています。このことにより、認可された医療機関では、ブラッドパッチに必要な検査や入院費用に保険が適用され、ブラッドパッチそのものには適用されませんが、一回三十万円という患者負担は大きく軽減されることになります。
しかし、冒頭述べた意見書にも書き込んだように、あくまで保険適用をかち取らねばなりません。それはなぜかというと、この保険適用を通じて、種々の国の制度を動かす突破口となるからであります。労災保険、自賠責保険、障害者手帳、障害年金など、患者さんが改定を望む制度はまだまだあるからです。
さて、今回私が質問する内容は、教育現場での問題です。
文部科学省は、平成十九年五月、学校におけるスポーツ外傷等の後遺症への適切な対応についてとする事務連絡
文書を出し、脳脊髄液減少症という疾患が起こり得るのではないかという報告をもとに、児童生徒にめまいなどの症状が見られる場合に、安静を保ちつつ医療機関に受診させるなど適切な対応を求め、また、必要に応じ養護教諭を含む教職員が連携して、児童生徒の学校生活のさまざまな面で適切に配慮をするように要請しました。
これを受けて、愛知県教育委員会は、六月に各学校へ、次の留意事項を徹底し、適切な対応を行うよう通知しました。
一、事故が発生した後、児童生徒等に頭痛やめまいなどの症状が見られる場合には、安静を保ち、医療機関で受診させるなど。
二、事故後の後遺症として通常の学校生活を送ることに支障が生じているにもかかわらず、周りの人から単に怠慢である等の批判を受ける場合があるなど。
以上のとおりであります。
さて、学校現場では、児童生徒の行動に常に注意を払っていることと思いますが、特に体調不良があると養護教諭の対応が重要と思われます。いずれにいたしましても、脳脊髄液減少症が学校現場に広く認知され、児童生徒を取り巻く人々が早く発見して医療的に適切な処理をすれば、その後、児童生徒がよりよい生活に改善していける環境が整うと思います。
そこで、質問ですが、体調不良の症状から脳脊髄液減少症が疑われる生徒児童に対して適切な助言が必要ですが、学校現場への周知徹底、研修はどのように行ってきたのかお伺いをいたします。
三番目の質問は、橋梁の管理について伺います。
まず、アメリカの話をいたします。
皆様は、荒廃するアメリカという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。アメリカは、ニューディール政策によって、一九三〇年代に多くのインフラを整備いたしました。道路、橋梁で見ると、一九三一年から一九三五年の五年間に二万五千橋、三十五年から四十年に三万橋もの橋梁が建設されました。一九二〇年代が一万橋、一九一〇年代が数千橋だったのに比べて著しい増加でした。
その後、第二次世界大戦時代の落ち込みを経て、一九六〇年代にはハイウエー整備の全盛期に入り、ピークの一九六一年から一九六五年の五年間には、五万五千橋の橋梁が整備されるなど、大量のインフラが供給されて、アメリカの経済成長を支えてきたとともに、長距離、大量の人々や物資の移動が安全に効率的に行えるようになって、地域における生活の安全や安心の向上に大きく寄与したのであります。
しかし、大量供給されたインフラは、やがて劣化が限界に達し、更新のときを迎えますが、管理費用には金が行かないというのは、いつの時代でも、どこの国でも同様で、アメリカは荒廃するアメリカと呼ばれる時代を迎えることになります。
その最初の事件が、今から四十四年前の一九六七年のウエストバージニア州とオハイオ州を連絡するシルバー橋の落橋です。クリスマスの買い物で混雑していたシルバー橋が突然落橋し、四十四名の死亡、二名が行方不明となりました。一九二八年に建設されたこの橋は、センタースパン二十メートルのつり橋でありました。つり部材が疲労を起こして、切断に至ったものであります。
シルバー橋の落橋を契機に、アメリカは、橋梁の維持管理に取り組むのですが、ガソリン税は一九五〇年から一九八二年まで据え置かれたままで、道路に十分な予算が投入されず、全米各地で橋梁や舗装の劣化が問題となりました。
また、二十八年前の一九八三年には、コネチカット州のインターステートハイウエーの一部であるマイアナス橋が崩壊しました。真夜中の午前一時の出来事であったことから、三名の死亡、三名の重傷であったわけですが、一日の交通量九万台で、片側三車線の幹線道路であったことから、昼間に崩壊していれば大惨事になるところであったと言われています。これも建設後わずか二十五年しか経過していないのに、十分な維持管理ができてこなかったことによる鉄製の橋の疲労、ひび割れが原因であったとされています。直ちに道路は閉鎖され、アメリカ北東部の経済が数カ月間混乱しました。
そして、記憶に新しい出来事として、二〇〇七年八月一日、ミネソタ州ミネアポリスで、ミシシッピ川にかかる高速道路の橋が崩落。夕方の六時のラッシュアワー時に走行していた約六十台の車両が川に転落し、十三人が死亡、百人以上が負傷した事故がありました。
『荒廃するアメリカ』の著者であるパット・チョート博士は、ある著書の中で、道路の利用価値を低下させれば、アメリカ経済のバイタリティーやアメリカ国民の生活水準も低下し、さらには、アメリカの国防態勢をも危うくすることになると述べ、道路の荒廃が及ぼす経済への影響を指摘しています。
社会基盤施設の適切な維持管理は、我が国においても重要な課題であります。国土交通省の調べでは、高度成長期の一九五五年から一九七三年に建設された道路構造物は、全橋梁の約四〇%を占めるとされ、国直轄の橋梁のうち、建設後五十年を超える橋梁は、二〇一一年で約四千三百、二〇一六年で約一万六百、二〇二一年で二万百とされ、日本の道路ストックの状況は、一九八〇年代の荒廃するアメリカと呼ばれた状況に近づきつつあると言われております。
さて、愛知県に話を移しますと、日本有数の物づくり県として、輸送機器産業や航空宇宙産業、工作機械メーカーが多く立地をし、陸海空の日本の中心部に位置していることから、これらの産業を支える動脈としての道路交通網が発達してまいりました。
また、我が県には、人口の密集した名古屋市を中心に広く人口が分布し、産業の集積も県内各地に見られます。それだけに、ひとたび交通網が遮断されれば、広範囲の産業や市民生活に大きな影響が出ることになります。また、災害の面でも、緊急輸送道路が寸断すれば、人命救助や災害復旧に大きな影響を及ぼす結果となります。
財政が厳しい折、アメリカよりもはるかに自然条件や使用条件の厳しい日本の橋梁がこのような事態を引き起こさないためにも、先ほど述べた例を引けば、荒廃する日本とならないためにも、県は、橋梁の維持管理には戦略的に予算を配分し、予防保全型の橋梁の管理をなすべきだと思いますが、以下、お尋ねいたします。
一、県が管理する橋梁の状況と老朽化の見通しについてお伺いいたします。
二、老朽化の進行に伴い、修繕やかけかえに係る多額の予算が必要となりますが、どのように対応していくのかお伺いいたします。
以上、お伺いをいたしまして、壇上からの質問といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
35: ◯健康福祉部健康担当局長(加藤欽一君) 不育症に関する御質問にお答えを申し上げます。
まず、不育症についての認識でございます。
不育症につきましては、学会の定義はございませんが、厚生労働省の研究班では、二回以上の流産、死産、あるいは早期新生児死亡の既往がある場合を不育症と定義しております。議員お示しの国内で百四十万人との患者数は、この研究班の分担研究として、議員御紹介の名古屋市立大学が実施いたしました岡崎市での調査結果をもとに推計されたものでございます。
複数回の流産を繰り返される、いわゆる不育症で悩む方の精神的な負担は極めて大きく、さらには、その負担が次の妊娠、出産にも悪影響を及ぼすものであります。
この不育症への取り組みは国においても始まったところであり、患者数やその実態の把握についての方法も現段階では明らかになっておりませんが、本県といたしましても、妊娠、出産に関する新しい課題であると認識をしております。
次に、助成事業につきまして、市町村の動きや県の考え方についてお尋ねをいただきました。
まず、県内の市町村の状況でございますが、現在のところ、不育症を対象とした検査及び治療への助成制度を設けている市町村はございません。また、新たに助成制度を設けるといったお話も伺っておりません。
次に、県の治療費助成事業の創設でございますが、必要な検査や治療の費用につきましては、医療保険で対応することが第一であると考えております。
県といたしましては、現在国が検討を進めております医療保険の適用の動きを注視してまいりたいと考えております。
以上であります。
36:
◯教育長(
今井秀明君) 脳脊髄液減少症に関しまして、学校現場への周知徹底、研修についてお答えをいたします。
県教育委員会では、議員お示しのとおり、平成十九年度に、脳脊髄液減少症についての文部科学省からの通知を受けまして、適切な対応をするよう県内のすべての学校に通知したところでございます。
さらに、学校保健活動の推進に当たり、中核的な役割を果たしている養護教諭や保健主事を対象とした研修会等で、専門医師による講義や啓発リーフレットを配付することにより、学校における適切な対応について周知するとともに、スクールカウンセラーに対しましても情報を提供してまいりました。
また、学校における児童生徒の健康管理については、養護教諭が中心となって行うことから、近年、複雑化、多様化している児童生徒の健康課題に適切に対応するために、日ごろから必要な情報収集を心がけるよう啓発しております。
今回、脳脊髄液減少症の原因の一つとして考えられている髄液漏出症の診断基準が厚生労働省の研究班から示されましたことから、十一月に開催しました県立学校の養護教諭を対象とした研修会において、改めて児童生徒が頭痛、めまい、倦怠、不眠などの症状を訴えた場合、その一因として脳脊髄液減少症が考えられること、そうした児童生徒や保護者に対して、専門の医療機関での受診を促すことなど、健康相談や保健指導に生かすよう周知したところであります。
小中学校につきましては、年明けて一月から二月にかけて地区ごとに開催される養護教諭対象の研修会において、周知することといたしております。また、スクールカウンセラーに対しても、最新の情報を提供してまいりたいと考えております。
今後におきましても、健康福祉部と連携を図りながら、脳脊髄液減少症を初めとするさまざまな健康課題について、学校全体での理解促進に努めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
37: ◯建設部長(近藤隆之君) 橋梁の管理についてのお尋ねのうち、初めに、本県が管理する橋梁の現状と老朽化の見通しについてでございます。
本県が管理する橋長二メートル以上の橋梁は、本年四月一日現在、三千九百九十九橋あり、このうち約半数の千八百十二橋が高度経済成長期と言われております昭和三十年度から昭和四十八年度に建設されており、中でも、昭和四十三年度には百四十八橋が建設されました。
この高度経済成長期に建設された数多くの橋梁が、今後、建設後五十年を経過し、いわゆる高齢化を迎えることになります。
本県における高齢化橋梁は、現在千百三十三橋で全体の二八%でありますが、十年後の平成三十三年度には二千二百五十五橋で五六%、二十年後の平成四十三年度には二千八百六十九橋で全体の七二%を占めることになり、今後急速に増加してまいります。
次に、これからの修繕やかけかえに係る対応についてでございます。
今後、橋梁の高齢化の進行に伴い、損傷や劣化が一気に増加し、それに伴う修繕費用が大幅に増加することが予想されます。
このため、損傷が大きくなってからの大規模な修繕やかけかえを行う従来の事後保全型から、議員御指摘のとおり、損傷が小さいうちにきめ細かく対応を講じ、橋梁の延命化を図る予防保全への転換を図ることが不可欠と考えております。
本県では、橋梁定期点検要領に基づく五年周期の点検結果から、損傷の進行具合を予測し、適切な時期に修繕を行うことにより、かけかえを含む修繕費用全体のコスト縮減と、各年度間における費用の平準化を図ることを目的とした橋梁長寿命化修繕計画を策定しております。
現在の計画は、橋長十五メートル以上の橋梁と跨線橋など重要な橋梁を含む約千七百橋が対象となっておりますが、本県が管理する約四千橋すべての定期点検が今年度中に完了することから、来年度には全橋梁を対象にしたものへの計画を更新してまいります。
今後も、長寿命化修繕計画に基づき、橋梁を適切に維持管理し、道路ネットワークの安全性と信頼性の確保に努めてまいります。
以上でございます。
38:
◯知事(
大村秀章君) 木藤俊郎議員からの質問のうち、私からも、不育症の点につきましてお答えをさせていただきます。
不育症の相談窓口の設置についてでございます。
不育症と言われる方は、二回以上の流産などを経験していますが、そもそも一回の流産でも女性の精神的な負担は大変なものであるわけでございます。これが数回重なる、いわゆる不育症で悩まれる方の心情は察するに余りあるものがございます。
さらに、その精神的なストレスは、次の妊娠、出産にも悪影響を及ぼしていると言われており、出産を望む方にとっては深刻な問題であると考えます。
不育症で悩む方の精神的なストレスを少しでも解消し、安心して妊娠期を過ごしていただくためには適切な相談窓口が必要であります。
本県では、平成十五年度から名古屋大学医学部附属病院に委託をして、不妊専門相談センターを開設しており、この中で、不妊相談の一環として不育症の相談にも一部対応はしておりますが、不育症の専門窓口としての体制は整っていないこと、また、不妊と不育の言葉の違いもあり、不育症で悩む方のための十分な相談窓口とはなっていないのではないかというふうにも受けとめております。
こうした点を踏まえ、現在、相談窓口の充実強化のため、カウンセラーの不育症に対する専門性の向上などにつきまして、名古屋大学と検討を進めているところでございまして、来年度の早い時期に不育症の相談窓口を整備してまいりたいと考えております。
また、この相談窓口につきましては、不育症で悩む多くの方に御利用いただけるようしっかりと周知をしてまいりたいと考えております。
以上です。
39: ◯六十八番(木藤俊郎君) それぞれ御答弁いただきました。
今の知事の答弁の中で、不育症の相談窓口を検討すると、これは大きな一歩だろうというふうに思います。ぜひ御検討いただいて、こういう皆様方の御要望に、相談に応じていただきたいと思います。御夫婦にとってかけがえのない命をどう守っていくのかと。日進月歩で進歩する医療技術、この生命尊厳ということにこの医療技術をどうつなげていくのかと。そこには頼れる医師、頼れる技術、頼れる制度がある。しかし、それを県民の皆さんが知らないというのは不幸なことになります。この辺の隔たりというものを埋めていく、つまり、周知をしていくということは、政治家や行政の責任だというふうに思います。県は、相談窓口をおつくりいただく、また、積極的にホームページや広報あいちなど、広く県民の皆さんに周知をしていただくよう要望させていただきます。
二番目が、脳脊髄液減少症。今回の質問で、学校現場の養護教諭の方の役割が大変大きいというふうに感じております。体調が悪い児童生徒をケアして、教師、保護者など、連携をとっていっていただきたい。また、教育委員会は、よくこの病気の実態把握に努めていただきまして、今後も子供たちが安心して学校生活が送れるようにしていただきたいと要望させていただきます。
三番目は、橋梁でございますが、耐震化ということも喫緊の課題だとは思いますが、きょうお示ししたように、じんわりじんわりと忍び寄る橋梁の耐久性の劣化、この長寿命化、こういうことが大事だというふうに今回取り上げさせていただきましたわけです。
予算を見て、聞いてみますと、大体毎年十億円強ではないかというふうに思います。しかし、毎年決まって十億円でいいのかということです。予算の枠の範囲内でやれることをやろうというふうにも見てとれるわけです。現実と向き合いまして、状況によっては、先ほど調査をするということでございます。調査が終わるというふうに聞きました。状況によっては必要な予算をしっかりとっていく。そして、安心・安全な橋梁を維持管理していただきたいというふうに御要望いたしまして、私の質問を終わります。
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40: ◯三十八番(神戸洋美君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
41: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 神戸洋美議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
42: ◯副
議長(
深谷勝彦君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午後二時四十二分休憩
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午後三時三十分開議
43:
◯議長(
岩村進次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
山下智也議員。
〔六番山下智也君登壇〕(拍手)
44: ◯六番(山下智也君) 通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。
初めに、防災拠点としての県営名古屋空港についてお伺いをいたします。
未曾有の被害をもたらした三・一一東日本大震災から九カ月がたとうとしております。この震災では、行方不明者を含め二万人近くの尊い命が犠牲となり、現在でも三十万人を超える方が仮設住宅や県外に避難を余儀なくされております。改めまして、心より御冥福とお見舞いを申し上げます。
被災地では、国や地方自治体、住民、企業など、それぞれが総力を挙げて復興に向けて懸命に取り組んでおりますが、被害が余りにも甚大で広範囲の地域にわたっていることや、福島第一原発の事故もあり、まだ相当の時間がかかるものと思われます。
さて、この震災の発生当日ですが、岩手県遠野市では、市庁舎中央館が全壊する被害を受けながらも、西館に機能を移し、被害調査を開始するとともに、沿岸部の市町の窮状を知ると、食料や物資を送り始めました。また、同市には、自衛隊や警察、緊急消防救助隊、他県の支援部隊が集結し、前線拠点として迅速な支援活動が展開されました。
実は、この遠野市では、震災の四年前から大津波の発生を想定し、沿岸部にほど近い内陸部に位置する地理的条件などから、市独自に前線拠点として、ハード、ソフト両面からの体制整備に努めるとともに、自衛隊や警察などの関係機関との訓練や、市民のボランティア活動を通じ、官民で防災意識を高めていたとのことであります。
本県におきましても、東海・東南海・南海の三連動地震などで引き起こされる甚大な被害への災害対策上の拠点を事前に整備しておく必要があると考えます。
県営名古屋空港は、航空機やヘリコプターなどの空路を使用できることから、自衛隊、警察、消防及び被災していない他県からの支援部隊や救援物資を迅速かつ効率的に受け入れることができます。
さらに、県営名古屋空港には航空自衛隊小牧基地があり、近くには、中部管区警察学校、愛知県警察機動隊、陸上自衛隊守山駐屯地、愛知県消防学校、トラックターミナルなどの物流倉庫等、災害対策活動に活用できる施設がありますので、防災拠点としては最適であると考えます。
ところで、国の災害対策の拠点施設である基幹的広域防災拠点について、知事は、首都圏には整備がなされ、京阪神圏でも進められている中、三大都市圏の一つであるこの地域に整備が進まないことは問題であるとの認識のもと、国に対し、その整備を強く要請されるとともに、本県独自にも整備適地などの調査を進めてみえます。
私も、国や地方自治体、自衛隊などの防災関係機関が集結し、災害対策活動を行う基幹的広域防災拠点の整備は、本県のみならず、近隣県を含めた東海地域にとって、どうしても必要な施設であると思います。そして、その整備場所については、防災拠点として最適な県営名古屋空港ではないかと考えております。
そこでお伺いいたします。
県営名古屋空港の防災拠点としての意義をどのように認識されているのか、また、本県独自の調査の中でどのように位置づけて進められておられるのかお伺いをいたします。
次に、国際戦略総合特区への本県の対応についてお伺いをいたします。
国においては、新成長戦略の目玉として創設いたしました総合特区制度に基づき、年内にも第一次の指定をすべく作業を進められていると聞いております。
先月の十四日には、総合特区のうち国際戦略総合特区の指定を目指して、日本各地から申請のあった十一件について、専門家グループ及び事務局による書面審査と、複数の有識者から成る総合特別区域評価・調査検討会による総合評価の結果が公表されました。
本県を中心とした当地域から申請したアジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区は、十一件中第五位と評価をされ、国によるヒアリングの対象とされた七件のうちに入り、まずは第一関門をクリアしたところであります。
そして、四日後の十八日には、国によるヒアリングに臨まれ、また、つい先日ですが、三十日には知事も上京され、この特区のアピールをされたと伺っております。
さて、最近、当地域が申請した特区のテーマであります航空宇宙産業や、世界の航空機市場に大きなインパクトを与える出来事がありました。
日本の大手重工メーカー三社がリスク分担パートナーとして参画をした最新鋭中型旅客機ボーイング787が、先月、世界で初めて日本の空に定期便として就航を開始しました。日本の生産分担比率は過去最大の三五%、発注元のボーイング社と同率にまで高まっておりまして、ボーイング社が787をメード・ウィズ・ジャパンと称するように、日本の物づくりの力が結集されております。
今から二十年以上も前でありますが、一九八九年に、日本経済の飛躍的成長と米国経済の衰退に危機感を抱いて、ノーベル経済学賞受賞者を初めとするマサチューセッツ工科大学のグループが、米国経済再生の書として『メード・イン・アメリカ』という本を出版しております。その冒頭の言葉が、「一国の繁栄は、その国のすぐれた生産力にかかっている」でありました。つまり、国の成長には、製造業、物づくりが大きなかぎを握るということであり、一見当たり前のようでありますが、私は、我が国や地域の成長には物づくりが欠かせないということを改めて強調したいと思います。
そして、物づくりの中でも、日本の成長、発展に大きな役割を果たすのは、先端技術の粋を集める航空宇宙産業であり、それを担う地域は、日本最大の航空宇宙産業集積地である愛知だと考えております。
今議会の知事提案説明においても、超円高・国内産業空洞化対策や物づくりに関するさまざまな施策を進めていく旨を表明されており、大変心強く思っております。
ボーイング787にかかわる大手重工メーカー三社は、787をすべて本県内の生産拠点で製造していることからすれば、私は、メード・ウィズ・アイチと呼んでもよいのではないかと思っておりますが、いずれにしましても、愛知の物づくり、技術力が高く評価をされたことに違いはありません。この787は、既に八百機以上の注文を受け、今後、量産が本格化する予定であり、まさに我が国や本県の航空機産業にとって追い風となってまいります。
今や、グローバル市場で稼いでいる我が国の産業は自動車産業のみと言っても過言ではない状況の中、我が国の航空宇宙産業は、今後、国際競争の最前線で伍していける数少ない産業の一つであると考えます。
こうした航空宇宙産業を本県、さらには我が国の成長にしっかりと結びつけるとともに、自動車産業を中心とした産業構造に次なる成長産業の柱として加え、これを大きく育てていく必要があります。
これまで県では、県営名古屋空港隣接地において、飛行研究センターを整備し、地元経済界等と連携して、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の飛行研究拠点を誘致したほか、高度先端産業立地促進補助金による工場の新増設に対する支援、さらには、中小企業が航空機産業特有の品質認証を取得するための専門家派遣など、地域の自治体や企業、関係団体とも連携しながら、精力的に取り組んでこられました。
今回の総合特区制度は、こうした自治体等地域主体の取り組みや成長分野の企業活動など、地域の戦略的なチャレンジを規制の特例措置に加え、財政上、税制上、金融上の支援措置等をパッケージにして総合的な支援を行うものであり、この地域の航空宇宙産業の発展をさらに加速する有益な
ツールであると認識しております。
また、私の地元である小牧市の関係では、県営名古屋空港周辺地区や、三菱重工業名古屋誘導推進システム製作所も特区として想定される区域に位置づけられており、私は、地域活性化の観点からも特区の指定に期待を寄せているところであります。
ぜひとも、この地域が全国で五カ所程度とされている国際戦略総合特区に指定されることを願っているところであります。
そこでお伺いいたします。
国際戦略総合特区の指定に向け、本県では、これまでどのように取り組み、何をセールスポイントとして国に訴えてきたのか。また、今後指定された場合、特区制度の効果を最大限引き出すため、どのように取り組んでいこうとされているのかお伺いをいたします。
最後に、尾張北部地域の幹線道路についてお伺いをいたします。
尾張北部地域は、東名、名神、中央道を初め、名古屋高速や国道四十一号、国道百五十五号等の主要な幹線道路の結節点としての優位性を生かして、豊山町、小牧市、大口町といったエリアには、中央卸売市場北部市場、トラックターミナル、日本特殊陶業、東海ゴム工業、CKD、トヨタ紡績、オークマ、ヤマザキマザックなど、日本を代表する物流業、製造業の一大集積地として発展をしております。
とりわけ、県営名古屋空港周辺には、三菱重工業など我が国をリードする航空宇宙産業が集積しており、当地域は本県にとって大変重要な産業の拠点となっております。
航空宇宙産業は、これからの日本に欠かすことができない成長産業であり、先ほども質問をさせていただきましたが、本県が申請しているアジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区が指定されることを大変期待しているところであります。
こうした尾張北部地域の産業振興をさらに進めるためには、これらの成長を支えるための動脈となる幹線道路における円滑な交通の確保が不可欠であります。
しかしながら、当地域の幹線道路における交通状況を見ますと、南北の幹線道路である国道四十一号は、名神高速の小牧インターチェンジや、名古屋高速の小牧北出口の直近に位置する小牧インター交差点や、国道百五十五号と交差する村中交差点を初め、小牧市や大口町を中心として慢性的に渋滞が発生しております。
昨年夏には、村中交差点において国道百五十五号の立体化が完成し、東西方向の渋滞は多少緩和されましたが、国道四十一号側の渋滞は依然として改善が見られません。また、名古屋高速では、国道四十一号の渋滞が原因となって、小牧北出口を先頭に、朝夕のピーク時を中心に本線まで渋滞が延びる状況となっております。
私は、国道四十一号の渋滞は、この地域の産業経済に与えるマイナスの影響が非常に大きいと考えますので、まずは国道四十一号の渋滞対策を早期に行うことが必要であると考えております。
一方、尾張北部地域を東西に横断する国道百五十五号については、村中交差点の立体化が完了し、現在は巾下川にかかる芳池橋のかけかえ工事など、平面部の残工事が着々と進んできているものの、約一・五キロほど東側で事業中の原川付近から県道名古屋犬山線までの四車線化がなかなか進捗しておりません。また、両事業区間の間にある合瀬川から原川までの区間は四車線が確保されておりますが、ここには歩道がありません。
沿線には、小牧市スポーツ公園総合体育館、通称パークアリーナ小牧がありまして、バレーボールの世界大会やフットサルの大会を初め、ことしからイタリアの有名サッカーチームであるACミランによるサッカー教室などが開催されるなど、年間五十万人を超える利用者があります。
歩道がないため、歩行者や自転車が大型トラックの多い車道を通行せざるを得ず、交通事故が危惧される状況となっております。やはり車道、歩道がきちんとつながることで、幹線道路としての本来の機能を発揮できると思います。
そこでお伺いいたします。
小牧市から犬山市にかけての今後の国道四十一号の渋滞対策と
小牧市内の国道百五十五号の整備の見通しについて、県の所見をお伺いいたします。
今回、私の地元である小牧市にとりましても大変関連の深い質問をさせていただきました。当局の前向きな答弁を期待して、壇上からの質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
45: ◯防災局長(中野秀秋君) 防災拠点としての県営名古屋空港についてのお尋ねでございます。
まず、その意義をどのように認識しているかについてであります。
名古屋空港は、空からのアクセスとして、発災直後の応援部隊や救済物資の集結にはなくてはならない施設であります。また、東西南北に延びる自動車専用道路の結節点や主要国道などに近接しており、大型車両による人員の派遣や物資の運搬において迅速な対応が可能であります。さらに、内陸部に位置し、津波による被害の心配もないなど、地理的条件の優位性からも防災上の重要な拠点であると認識しております。
このため、国が平成十八年に策定した東南海・南海地震応急対策活動要領においても、食糧や救援物資の集結拠点の一つに指定されており、県としましても、航空広域防災活動拠点として地域防災計画に位置づけております。
次に、基幹的広域防災拠点に係る県の調査の中で、名古屋空港をどのように位置づけて進めているかという御質問であります。
今回の調査では、陸路、空路、海路のアクセス機能の優位性や、国有地、県有地を含め活用可能な土地などの面から、災害対策活動を行うにはどこが適地であるのか、また、一カ所集中型だけではなく、ネットワーク型の拠点整備の可能性についても検討を行っております。
名古屋空港につきましては、空路と陸路の連携ができる唯一の場所でありますので、有力な候補地の一つとして、この空港の持つ機能をいかに有効に活用するかにつきまして、調査、検討を進めているところであります。
以上であります。
46:
◯知事政策局長(
中西肇君) 私からは、国際戦略総合特区についてお答えさせていただきます。
これまで日本の成長のエンジンとして役割を果たしてまいりました本県が、引き続き日本経済をリードしていくため、日本の中でもこの地域が圧倒的な集積を誇り、また、厳しい国際競争の中でも伍していける航空宇宙産業をテーマに指定申請したところでございます。
申請後は、先月十八日に開催されました国のヒアリングに対応するとともに、また、一昨日開催されました民主党の特区・地域活性化・規制改革小委員会におきましては、知事を初め、名古屋市長、地元経済界など一体となりまして、当地域の提案の強み、セールスポイントをアピールしたところでございます。
具体的には、まず、ボーイング787の月産十機体制に向けた生産力増強や、また、MRJ、三菱リージョナルジェットの平成二十六年初号機の納入に向けた開発など、熟度の高い提案であることを申し上げてまいりました。
また、ボーイング787の機体軽量化に大きく貢献いたしました炭素繊維複合材について、航空機以外への用途拡大をにらんだ研究開発拠点づくり、さらには関税のフリーゾーン化、また、中小企業によります部品の一貫供給体制といった航空機業界で初となるビジネスモデルの構築など、ほかの地域にはないこの地域ならではの提案を行ってきたところでございまして、国際総合戦略特区の指定をかち取るべく、今後も全力で取り組んでまいります。
また、総合特区に指定された際におきましては、国と地方の協議の場が設置されますので、この地域の提案が実現できますよう、国と調整を強力に進めてまいりたいと考えてございます。
また、一方、中小企業の技術力向上や販路開拓に対します支援など、とりわけ地域の役割として期待される取り組みもしっかりと進めまして、特区指定の効果を最大限高めてまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
47: ◯建設部長(近藤隆之君) 私からは、国道四十一号の渋滞対策及び国道百五十五号の整備の見通しについてお答えをいたします。
国道四十一号は、尾張北部地域を南北に縦断し、岐阜県の中濃地方に向かう主要な幹線道路であり、国が管理する直轄国道となっております。
沿線には、航空宇宙産業を初めとした本県の将来を担う産業が集積しております。これらの産業が厳しい国際競争力に打ち勝っていくためには、さらなる物流の効率化が求められており、それを支える道路ネットワークの充実が不可欠であります。
中でも、国道四十一号は、尾張北部地域の物流を支え、ひいては物づくり愛知を支える大変重要な役割を担っていく道路であると考えております。
しかしながら、小牧市から大口町にかけての交通量は一日四万八千台近くに上り、四車線の道路といたしましては飽和状態で、朝夕には走行速度が時速十キロ程度まで落ち込む区間があるなど、渋滞が慢性化しております。
この渋滞の主な要因といたしましては、国道百五十五号と交差する村中交差点の北側で六車線から四車線に絞られていることが挙げられます。
このため、この地域の交通の円滑化に向けて、国道四十一号の六車線化事業に着手いただくよう、これまでも国へ要望しているところであり、今後も引き続き新規事業化に向けて国に強く働きかけてまいります。
次に、国道百五十五号につきましては、昨年八月に村中交差点の立体化が暫定二車線で完了しており、現在、平面部において、巾下川にかかる芳池橋のかけかえや周辺の歩道整備など、残る工事に全力を注いでいるところでございます。
さらに、原川付近から県道名古屋犬山線までの区間につきましては、平成十九年度に事業着手し、用地取得率は現在約五割となっており、引き続き用地買収を進めるなど事業推進に努めてまいります。
また、歩道が未整備の合瀬川から原川の区間につきましては、事業中区間に引き続き、この区間の拡幅事業に着手できますよう道路設計などの準備を進めてまいります。
いずれにいたしましても、尾張北部地域は、航空宇宙や工作機械などの厚い産業集積がある将来性豊かな地域でありますので、この地域のさらなる発展の基盤となる幹線道路の整備にしっかりと取り組んでまいります。
以上でございます。
48: ◯六番(山下智也君) それぞれ前向きな答弁をいただいたと思いますが、一点要望をさせていただきたいと思います。
尾張北部地域の幹線道路についてでありますが、国道四十一号の渋滞対策として、村中交差点以北の六車線化の実現は、この地域の念願でありますので、その実現に向けて、さらなる御尽力をお願い申し上げたいと思います。
また、あわせて、慢性的に渋滞をしております名古屋高速小牧北出口についてでありますが、これも地元から、国道百五十五号村中交差点の北まで数百メートル出口を延伸することでかなり渋滞が解消されると期待をされております。名古屋高速小牧北出口の延伸につきましても要望をさせていただき、終わります。ありがとうございました。
49:
◯議長(
岩村進次君) 進行いたします。
柴田高伸議員。
〔三十三番柴田高伸君登壇〕(拍手)
50: ◯三十三番(柴田高伸君) 私は、通告に従いまして、大きく二つの課題について質問してまいります。
まず、児童虐待に関する課題から。
今日、児童虐待に関する相談対応件数は増加の一途であり、特に子供の命が奪われる悲惨な事件が後を絶たない状況は、社会全体で早急に解決しなければならない、重要かつ緊急の課題であります。
厚生労働省は、二〇〇四年度から児童虐待防止法が施行された十一月を児童虐待防止推進月間と定め、社会全般に深い関心と理解が得られるよう、関係機関と連携して広報啓発活動を実施してまいりました。
虐待に関する報道は、一九八〇年代半ばまで、実は全くと言っていいほどなされませんでした。しかし、それは虐待がなかったからではありません。今日ほど社会的な注目が集まっていなかっただけであり、九〇年代に入って次第に児童虐待の存在が社会問題化していきます。メディアによる報道や、民間団体による防止活動が活発化したことや、九四年に子どもの権利条約を批准したことなどが社会問題化する原動力となりました。
厚生労働省によると、児童相談所における虐待に関する相談処理件数は、九〇年度に全国で千百一件──愛知県は三十三件です──であったものが、九十九年度は全国で一万千六百三十一件──愛知県は二百四十三件──と増加の一途であり、関係者からの、この事態に対応するための法律が必要だとする声が高まりました。
そこで、児童虐待の防止等に関する法律が二〇〇〇年五月に成立。〇四年及び〇七年に改正され、制度的な対応について充実が図られてきましたが、最新の統計値では、昨年度の相談処理件数は全国で五万五千百五十四件──愛知県は千百三十七件──で過去最多を記録しています。
さて、虐待の発生要因については、次のように二つの見解が指摘されています。
第一に、虐待者、被虐待児の持つ個人的な問題とみなし、個人や家族の心理的病理の面を強調する見方で、これを病理説といいます。
例えば親自身が子供時代に愛された経験が乏しいゆえに招かれる未熟、攻撃的、依存的といった性格上の問題、あるいは夫婦の不和などによる母親の家庭内での孤立、ストレスといった家族関係の問題など、総じて個人的な問題としてとらえます。
近年の核家族化の進行や近隣関係の希薄化によって、家庭や地域における養育機能が低下していることから、身近に相談できる相手を持たずに、育児に対する負担感や不安感を抱える親が虐待に至るケースなどを指し、現代家族ならどの家庭にも起こり得る問題とみなすのが病理説であります。
第二に、失業、低収入、ひとり親、社会的孤立など、社会経済環境の問題とみなす見解で、これを環境説といいます。
内閣府による二〇〇八年の青少年白書は、家庭、地域の変容と子どもへの影響という特集の中で、虐待による死亡事例の調査結果から、虐待が行われた家庭においては、ひとり親家庭、経済的困難、就労の不安定など、困難な状況が複合的に重なり合い、一層深刻な状況となっていることがわかると指摘。加えて、さまざまに困難な事情を抱えた家庭を孤立させないためにも、初めに相談ありきではなく、困っている状況をほうっておかない。温かく積極的な支援が求められると指摘しており、虐待の背景には経済的な問題があることを大きく取り上げております。
参考までに、厚生労働省による本年の国民生活基礎調査によると、十七歳以下の子供の貧困率は一九九一年の一二・八%から二〇〇九年の一五・七%へ約三ポイント増加しており、近年、子供の貧困が深刻化しているのがわかります。
我が国では、当初、病理説が主流でありましたが、環境説に立つ指摘は、八〇年代から九〇年代に実施された児童虐待の実態調査においてなされ、当時は生活保護率が低下傾向にあって、貧困問題への社会的関心は低調だったこともあり、虐待と貧困の関連性はさほど注目されませんでした。
ところが、最近になって、子供の貧困問題は子供福祉の主要問題として高い社会的関心を集めており、多くの有識者も貧困と児童虐待の関連を取り上げております。
環境説を唱える学者は、病理説が主流となる結果、家族や保護者個人の心へのケアのみが志向され、貧困などの社会的な要因や、それを改善できない行政や社会の責任問題がどこかへ消えてしまうことを問題視しております。
実際には、これら虐待の発生要因は複雑に絡み合っているケースが多く、児童虐待はどの家庭にも起こり得るという認識に立ち、一般家庭への子育て支援サービスを充実させていくことはもちろん、同時に医療、福祉、保健、あるいは教育関係者が虐待のリスク要因を持ち、養育支援を必要としている家庭かどうか、随時観察、判別し、早期に支援していくことが重要であります。
そこで、まず伺いますが、児童虐待の発生予防に向けて、リスク要因のある家庭の早期発見と支援について、どう取り組んでいくのかお答えください。
児童相談所は、すべての都道府県及び政令指定都市に──二〇〇六年からは中核市でも──設置され、本年四月現在、全国二百八カ所に設置されております。愛知県は十カ所であります。
相談所においてケースワークを行う児童福祉司は、人口五万人から八万人に一人の配置が標準と定められており、全国で二千六百六人が配置されています。愛知県は九十二人です。単純計算で一人当たりの年間児童虐待相談対応件数は全国で二十一・二件、愛知県は十二・四件。しかし、この数は、当該年度に新規に対応した件数にすぎず、それ以前から継続対応しているケースや、虐待以外の相談件数も加えると、福祉司の許容範囲を超える場合もあります。
また、児童福祉司の資格要件は、医師や保健師のような国家資格を必要とするものではなく、任用に当たっての基準が定められているにすぎない任用資格と緩く、人材育成体系も確立しておりません。そのため、全国的にその採用区分は、福祉等専門職が六四%、残り三六%は一般行政職で、専門性という点でも心もとないところが少なくありません。
こうした状況を踏まえ、国や自治体では、福祉司の増員などの体制増強を図ってきており、過去十年間で二倍の伸びとなっておりますが、相談件数がそのペースを上回って伸びを見せる現状から、相談所の役割や権限は強化されてきているにもかかわらず、体制が追いついていない構図が見てとることができます。
そこで、児童相談所が現行の体制において抱える構造的な課題を順次指摘していきたいと思います。
一つ目、職員体制について。
さきに述べたとおり、児童福祉司など相談所職員が抱える担当件数は増加の一途であり、職員自身が各ケースに対して十分に対応できないと不安に感じるほど、過重負担の中で業務に当たっているのが現状であります。
また、相談所は、強制的な介入とその後の援助の役割をどちらも担っておりますが、その機能と役割のバランスを保ち、両機能を適切に遂行していくためには、豊富な経験と高度な専門性に裏打ちされた援助技術が不可欠であります。
さらに、虐待ケースには複雑な要因が背景にある上、迅速かつ適切な判断が求められるため、複数職員によるチームでの対応が必要です。
こうした現状を考慮すると、現行の組織、職員定数や配置などの見直しが早急に必要となってまいります。
二つ目、専門性向上への指導体制について。
全国の職員へのアンケートの結果、人手不足や仕事量の多さだけでなく、専門的な知識や技術の不足の問題が大きな課題であることがうかがわれます。職員は、日々、複雑なケースに対する判断の迷いや、ケースに適切に対処できているかどうかの不安を感じており、研修体制の整備や、専門家や上司からの指導と助言を求めています。
こうした職員の声が示すように、専門性向上への指導体制の充実や、外部専門家の活用なども緊急の見直し課題であります。
三つ目、精神的負担軽減への支援体制について。
虐待対応において、子供の安全を優先して保護者の意に反した分離や一時保護を行った場合など、保護者の怒りや暴言が直接職員へ向けられることも多々あるという実態が判明しております。虐待を認めない親への対応の苦慮や、苦情や攻撃を受けることによるストレスに悩むなど、職員の精神的な負担も増大しています。業務による精神的な負担の防止や軽減対策についても、早急に支援体制を整える必要があります。
四つ目、市町村における児童相談への対応体制について。
二〇〇四年の児童虐待防止法の改正により、市町村も児童虐待の通告先となりました。現在の整理としては、虐待の通告や相談の第一次的な対応窓口を市町村が担い、より専門的な支援が必要で、対応が難しいケースを児童相談所が担うという二層構造の仕組みとなっています。
近年、市町村においては、子供を見守る地域の関係機関のネットワークとして、要保護児童対策地域協議会の設置を進め、相談対応体制が強化されてきました。しかし、これらの体制についても課題が存在します。
市町村の主たる児童相談窓口に従事する職員の状況を見ると、非正規職員が全国で三二・九%、愛知県は四四・九%、兼任が全国で五八・四%、愛知県は三七・二%、特に資格を有しない一般事務職員が全国で二九・一%、愛知県は二八・六%というように、児童虐待という重要な問題を扱うには、責任や専門性という点でも不安な体制にある自治体が少なくありません。市町村に通告される相談件数も増加する傾向にある中、こちらも体制としては早急な見直しが必要であります。
そこで伺いますが、児童相談所と市町村における職員の配置や専門性の向上など体制の強化について、今後どのように取り組んでいくのかお答えください。
虐待は、子供の心に深い傷を負わせることになり、人格形成の過程に深刻な影響を与えます。虐待を受けた子供に適切な治療やケアを行い、安心して生活できる環境を提供することは、その後の子供の健全な発達と自立に不可欠であります。
また、虐待を受けた子供だけでなく、虐待を行った親への適切な指導を通じて、家族の養育機能の再生に当たることも必要であります。
そのためには、相談所を初め、市町村や児童福祉施設などの地域における関係機関が個々のケース状況に応じたきめ細やかなケアを行い、長期的な支援を行っていく必要があります。
そこで伺いますが、虐待に至った家族に対し、親子分離や在宅での支援を行う場合、家族の養育機能の再生に向けて、児童相談所が今度どう取り組んでいくのかお答えください。
続いて、多文化共生に関する課題について。
近年、国内の外国籍住民との関係をあらわす言葉として、多文化共生が使用されています。その意味は、国籍や民族の異なる人々が互いの文化的違いを尊重しつつ、対等な関係を模索しながら、地域社会の構成員としてともに生きていくことを表現しており、我が国独自の言葉であります。
従来、国際化といえば、海外からの観光客の呼び込み、姉妹都市提携、留学生の受け入れなどのテーマに目が向けられてきました。
また、国内に定住する外国人の比率が欧米諸国に比べて少なかったこともあり、これまで体系的な移民政策は不要とされてきました。
その一方で、グローバル化の進展とともに、ニューカマー、いわゆる一九八〇年代以降に来日し、定住した外国人、これらを中心とする事実上の移民は着実に増加していきました。
法務省入国管理局によると、昨年末時点の外国人登録者数は二百十三万人で、国内総人口の一・六七%を占めます。このような内なる国際化は静かに、かつ着実に進行しており、外国籍住民との共生、つまり、多文化共生のあり方について、真摯に検討しなければならない時期に来ていると思います。
本県の外国人も増加傾向にあり、その登録者数は二十万人で、県内総人口の二・七六%を占め、東京都、大阪府に次いで全国で三番目に多い数であり、中でも、ブラジル人の割合が二八・六%と最も多いのが現状であります。
ブラジル人を含む南米出身外国人の大半は、日系人とその家族であり、日本人の子孫として我が国と特別な関係にあることに着目して在留資格が認められ、活動内容に制限なく、自由に就労が可能な日系定住外国人であります。彼らは、一九八八年以降、入国が急増し、就労先のある一定の地域において集住するようになりました。
本県において、日系定住外国人の大半は製造現場の労働者として流入し、これまで主として、派遣や請負などの形態で雇用されています。労働者派遣事業者が彼らの生活全般の面倒も見てきたことにより、日本語を介した社会とのかかわりを持たなくても生活が可能であったため、日本語能力の不十分な者が多く見られます。地域への愛着が低いまま、日本人住民との共生意識が乏しい中で、結果的に何年も日本に滞在してきたのが実情でありますが、これからの多文化共生を考えるには、彼らとしっかり向き合っていかなければなりません。
そこで、近年増加した外国籍住民を取り巻く課題を順次指摘していきたいと思います。
一つ目、言葉の壁について。
日々の生活において、言葉の問題から、行政サービスの利用や住民としての義務の履行に必要な情報が得られなかったり、日本人住民とコミュニケーションが図れなかったりする場合が多く見受けられます。
近年、地域生活に必要な情報の多言語表記は進められてきてはいますが、十分とは言えない状況であります。また、定住化の進展に伴い、彼らが抱える問題は生活全般の多岐にわたりますので、このような幅広い問題に対応できる専門的な支援体制が必要であります。
また、地域社会で自立して日本人住民と共生していくためには、日本語でコミュニケーションを図ることができる能力を身につけるとともに、日本文化や慣習について理解を深めることが重要です。
これまで地域では、国際交流協会やNPO、NGOなどが中心となって、日本語学習の機会を提供してきましたが、行政情報や日本社会の習慣を学習する機会を含めて、いまだ不足していることから、職場や地域において、さらに充実させていく必要があると考えます。
そこで、まず伺いますが、外国籍住民が言葉の壁を乗り越えるために必要な支援を今後どのように行っていくのかお答えください。
二つ目、生活上の障害について。
近年、緩やかな定住化の傾向が見られる中、地域において安定的に生活する上で、さまざまな場面で困難に直面をしています。
その一、居住環境。
公営住宅への入居については、国土交通省からも、可能な限り日本人同様の入居資格を認めるよう通達が出されており、入居者数は増加傾向にあります。URについても同様の状況であります。一方、民間住宅については、外国人であることを理由とした拒否事例が多く存在しています。
その二、就労環境。
日系定住外国人の場合、日本での就労に制限はありません。このため、日本での生活の見通しや準備が十分に整わないまま入国した結果、不安定な労働環境に置かれることが多くなっています。また、社会保険に未加入の事例も多く存在しています。
その三、教育環境。
外国籍住民がその子供を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望する場合には無償で受け入れ、日本人と同様に教育を受ける機会を保障しています。したがって、公立小中学校には多くの外国人児童生徒が在籍しておりますが、日本語習熟度には差が見られます。高等教育への進学を希望する者もいますが、日本人と比べると非常に困難な状況にあります。また、いわゆる不就学、公立学校と外国人学校のどちらにも在籍しない子供が多く存在していますが、その実態把握は正確ではありません。
その四、医療・保健・福祉環境。
医療保険に加入していない者も見受けられ、適切な時期に受診しないために病状が重症化し、その結果、医療費が高額になったり、未払いになったりする間題が生じています。また、定住化が進展する中で、病気やけがだけでなく、妊娠、出産や子育てなど、より生活に密着した問題への対応や、疾病予防のための健康診断や感染症への対応、あるいは年金や介護の分野でも、日本人同様、適切な対応が必要であります。
その五、災害への対応。
外国籍住民は、災害発生時に特別な支援が必要な災害時要援護者でありますが、地域の防災計画や防災体制における位置づけは必ずしも十分ではありません。災害知識の少なさから緊急時への備えも不十分である場合が多く見られ、防災訓練への参加も十分でない状況であります。
その六、生活安全環境。
犯罪当事者となる事件をなくすため、警察による違法行為の取り締まりに加えて、自治体や地域社会が連携して、実態に応じた地域生活安全活動が必要であります。関係法規の違いによる理解不足も多く見られ、事件や事故も多く発生しております。
このような状況を踏まえて伺いますが、外国籍住民が地域で安心して生活を送るために必要な支援を今後どのように行っていくのかお答えください。
三つ目、心の溝について。
外国籍住民も地域経済を下支えし、日本人同様の納税義務を負っている現実を直視し、日本人住民も多文化共生の意義を十分に理解することがまず必要であります。さらに、地域社会に参画する仕組みが整備され、外国籍住民も地域の構成員として力を十分に発揮することが求められております。
しばしば、生活習慣や文化、価値観の違いや、言葉が十分に理解できないことによる誤解や、意見相違によるトラブルが生じております。
日本人住民は、外国人異文化にふなれであることから交流が十分に進んでいないのが現状であります。外国籍住民もまた生活者であり、地域社会の構成員として受け入れていくという日本人住民側の意識変革が必要であります。
一方、外国籍住民による町内会やPTA、ボランティア団体などへの参加は必ずしも多いとは言えません。地域のルールを守り、義務を果たしながら、地域社会に溶け込むという外国籍住民側の努力も必須であります。
そこで伺いますが、日本人と外国人の心の溝を埋めるために必要な支援を今後どのように行っていくのかお答えください。
以上、大きく二つの課題について質問してまいりました。理事者各位の率直な答弁を期待し、壇上からの第一問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
51: ◯健康福祉部長(五十里明君) 児童虐待防止に関する御質問にお答えをいたします。
まず、発生予防に向けた取り組みについてでございます。
児童虐待は、さまざまな要因が絡み合って起きるものであり、発生予防のためには、望まない妊娠や保護者の社会的な孤立などのリスク要因を有する家庭に対し、できる限り早い時期に支援を始めることが必要でございます。
現在、市町村においては、乳児家庭全戸訪問事業や乳幼児健診等の機会を活用して、リスク要因を有する家庭の把握と支援に努めておりますが、近年、出産前の妊娠期からハイリスク家庭を支援していくことも重要であると、そのように指摘されております。
このため、出産前の妊娠期からの虐待発生予防の一環としまして、今年度新たに本県独自で妊娠期から子供への親子のきずなの形成を促す教育プログラム、これを作成しておりまして、保健機関や医療機関で活用していただけるよう準備を進めております。
また、早期発見のためには、広く県民に児童虐待問題に関心を持っていただき、早目に相談、通報していただく必要がありますことから、十一月の児童虐待防止推進月間を中心に、テレビCMなどの啓発事業を実施し、相談窓口の周知などにも取り組んでいるところでございます。
次に、児童相談センターと市町村の体制強化についてでございます。
本県の児童相談センターでは、専門職として採用した職員を児童福祉司として配置しており、採用後も資質の向上を図るため、新任、中堅職員など、経験年数に応じた計画的な研修を実施しております。
また、国の定めた基準に基づき配置しております児童福祉司に加えまして、スーパーバイザーを十五名配置しており、児童福祉司の日常的な指導とともに助言等を行い、児童福祉司の専門性の向上と精神的な負担軽減を図っているところでございます。
一方、市町村の相談窓口の職員に対しましては、各児童相談センターによる事例検討や、虐待対応の基礎知識についての研修を実施するなど、市町村の相談体制の強化にも取り組んでおります。
複雑化、深刻化する児童虐待に的確に対応していくためには、さらなる専門性の向上と職員体制の強化が重要であります。
このため、児童福祉司や市町村職員に対する研修の充実に努めますとともに、国に対しまして、配置基準が明確になっていない児童相談センターの児童心理司や、市町村の専門職員の基準を定め、適正配置に伴う必要な財政的措置を行うよう、引き続き強く求めてまいります。
最後に、家庭の養育機能の再生についてでございます。
親と子が再び一緒に暮らすことが望ましいことは言うまでもありませんが、児童の心の傷や、虐待の再発の危険性のため、親子分離をした後に児童を家庭に戻す場合には慎重に行う必要がございます。
そのため、保護者の協力が得られた家庭に対しましては、平成二十年度に本県独自に作成いたしました家族再統合マニュアル、これに基づき、児童へは心理的ケアを、保護者へはどのような状況で虐待行為をしてしまったのかの振り返りや、適切な子供の育て方の習得など、家族再統合に向けた支援を行っております。
また、在宅での支援に当たりましては、行政や教育、保健医療等の関係機関で構成されます要保護児童対策地域協議会におきまして、定期的な状況把握と情報交換、支援方法の検討を行いながら、児童相談センターや市町村による家庭訪問を実施し、継続的な支援に努めております。
今後とも、関係機関との連携のもとに、個々の状況に応じたきめ細やかな支援に努め、家庭における養育機能の再生と、虐待の再発防止に向けて取り組んでまいります。
52: ◯地域振興部長(山田周司君) 多文化共生に関する御質問のうち、初めに、コミュニケーション支援についてでございます。
外国人県民の中には、日本語を十分理解できない人もいるため、外国人県民を対象とした交通安全や防災などの生活情報につきましては、出版物、ホームページ、映像などのさまざまな媒体において、多言語による情報提供を進めております。
また、外国人県民が地域社会で自立して共生していくためには、コミュニケーションのための日本語能力を向上していくことも欠かせないと考えております。
そのため、本県では、日本語を身近な地域で学べる多文化共生地域貢献教室を開催しており、これまで三年間で五十三教室、千人を超える外国人県民に学習をしていただいております。
さらに、外国人労働者の適正雇用等を促進するため、東海三県一市で策定した外国人労働者に関する憲章の中で、職場での日本語学習の推進を規定いたしておりまして、企業においても自主的に取り組んでいただくよう働きかけを行っております。
今後とも、市町村や関係団体とも連携を図りながら、日本語学習機会の充実に努め、日本人県民と外国人県民とのコミュニケーションがより深まりますようしっかり取り組んでまいります。
次に、外国人県民に対する生活上の総合的な支援についてでございます。
外国人県民の生活に関する課題は多岐にわたるため、各部局においてさまざまな取り組みを行っております。
具体的には、外国語対応可能な医療機関の
検索や、語学相談員の学校への派遣など、各部局においてさまざまな対策が進められておりますが、地域振興部におきましても、就学前の子供たちに就学に向けた指導を行うプレスクールの推進や、日本語学習支援基金による外国人児童生徒への日本語学習支援などを行っております。
また、災害時には、愛知県国際交流協会に外国人支援ボランティア本部を立ち上げ、通訳派遣や緊急情報の翻訳などを行うこととしており、関係部局とも連携、協力して対応することとしております。
さらに、生活支援につきましては、国の制度にかかわるものもあることから、国に対して繰り返し要望してまいりました。
その結果、昨年八月に日系定住外国人施策に関する基本指針が出され、本年三月には、具体的な施策を取りまとめた行動計画が策定されましたので、この行動計画が着実に実施されるよう、引き続き働きかけてまいります。
今後とも、庁内関係部局を初め、市町村、国際交流協会、NPOなど関係団体ともしっかりと連携を図り、外国人県民のニーズに合った的確な生活支援ができるよう努めてまいります。
最後に、多文化共生地域づくりについてでございます。
多文化共生の地域づくりには、地域住民全体の多文化共生に関する理解を深めると同時に、外国人県民も地域社会の対等な構成員として、地域のルールを守り、責務を果たしながら、地域社会を支える担い手として、さまざまな地域の活動への主体的な参加が重要となっております。
そのため、広く県民の皆様を対象とした多文化共生フォーラムを開催し、理解を深めていただくとともに、多文化共生にかかわる活動に積極的に取り組んでこられた方々の表彰も行っております。また、作文コンクールを行い、子供たちへの啓発を行うなど、幅広い意識啓発に努めております。
また、外国人県民が地域社会の一員として地域の活動に参加するきっかけづくりとするため、日本語学習とあわせて、地域の行事への参加を促す事業を実施しております。
こうした事業を通じて、清掃活動、あるいは夏祭りなど、地域の行事へ参加する外国人県民もふえており、中には、団地の自治会長など、コミュニティーでの重要な役割を担う方もおられ、外国人県民の社会参加も着実に進んでいる状況でございます。
今後も、こういった外国人県民の社会参画を一層促進し、日本人県民と外国人県民が同じ地域で暮らすパートナーとして、ともに安心して暮らせる地域づくりができるよう取り組んでまいります。
以上でございます。
53: ◯三十三番(柴田高伸君) 私からは、大きく二点について要望したいと思います。
まずは、児童虐待防止について。
くしくも、先日、もう皆さんも新聞報道で御案内のとおり、名古屋市では、市内で発生した虐待死事件の反省を踏まえて、本庁内に虐待対策の専門グループを来年度から設立する方針を明らかにしたところであります。
本県でも、過去の痛ましい事件を教訓に、十一年前、二〇〇〇年度を虐待対策元年として、これまで虐待対策の拡充が図られてきましたが、今日、虐待を食いとめるまでには至っていないのが現実であろうと思います。
私は、先日、あいち小児保健医療総合センターを視察いたしましたが、そのセンターの心療科──心の治療と書く心療科ですけれども──には、国内唯一の虐待専門外来と、子供の心のケアのための入院施設が存在をしています。
担当医師は、虐待は、子供の心を傷つけるだけではなく、脳と体が成長できる環境そのものを奪ってしまうと、虐待が子供に及ぼす深刻な影響を強く指摘しておりました。
虐待の発生要因については、先ほど質問でも申し述べましたように、複雑に絡み合っているがために、個別に特定することは大変困難でありますけれども、虐待の発生予防のために重要なのは、言わばグレーゾーンにある、虐待とは言えないけれども、不適切な養育と言える状態の家庭、あるいはイエローゾーンにある、養育をもう既に放棄して、軽度の虐待に至っている状態などの家庭を的確に把握すること。そして、その家庭が抱える問題を取り除くために、しっかり寄り添ってきめ細かやかに対応していくことが必要だというふうに思っております。
県当局には、今後、虐待の根絶に向けた施策の拡充と改善を行って、より積極的な取り組みを要望したいと思います。
続いて、多文化共生についてであります。
私の地元知立市は、七万市民のうち六・二%、ですから、四千二百人を超える外国人が居住をいたしております。その大半がURの賃貸住宅に入居しておりまして、入所者の過半を日系ブラジル人が占めています。したがって、団地内に所在します東小学校には、児童の過半が当然ながら日系ブラジル人であります。
外国人が集住する地域におきましては、これまで外国籍住民にかかわるさまざまな現場で、必要に迫られて、その対応を行ってきたと承知をしています。私が知る限りで、例えば外国人児童への日本語指導や適応指導は、学校現場の努力によって、また、外国人への防犯啓発活動や交通安全指導は、県警や自治会の努力によって、これまでそれぞれ大変大きな成果を上げてきたのが実情でありまして、多文化共生の推進に最も重要な主体であるべき市の体制は決して、実は盤石とは言えないのが現状だと思っております。
国における法律や制度などの環境整備が大変立ちおくれている中、市を先導する県の役割は大変大きなものがあるというふうに思っておりまして、特に、今回質問させていただきました多文化共生推進室には、関係部署間の補完的、調整的な役割にとどまらず、先導的で積極的な役割と取り組みを期待したいというふうに思っております。
本県が全国に先駆けて多文化共生に対峙しているモデル地域として、外国籍住民を地域社会の構成員として受け入れる体制をしっかりと構築して、外国人に対して門戸を開き、共生していくことは可能だと全国に示すことは、日本人の外国籍住民に対する意識変革、すなわち心の壁を大きく取り除くきっかけになると考えております。
県当局には、ぜひ今後、外国籍住民を取り巻く環境改善に向けて、より主体的な取り組みを要望したいというふうに思っております。
以上、大きく二点について要望し、私の質問を終わります。ありがとうございました。
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54: ◯三十九番(
川嶋太郎君) 本日はこれをもって散会し、十二月五日午前十時より本会議を開会されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
55:
◯議長(
岩村進次君)
川嶋太郎議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
56:
◯議長(
岩村進次君) 御異議なしと認めます。
十二月五日午前十時より本会議を開きます。
日程は
文書をもって配付いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後四時三十四分散会
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