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  1. 岐阜県議会 2024-02-01
    03月06日-02号


    取得元: 岐阜県議会公式サイト
    最終取得日: 2024-09-08
    令和 6年  2月 定例会(第1回)…………………………………………………………………………………………… △議事日程(第二号)                   令和六年三月六日(水)午前十時開議 第一 議第一号から議第七十一号まで 第二 県議第一号 第三 議第七十二号 第四 請願第十八号から請願第二十二号まで 第五 一般質問…………………………………………………………………………………………… △本日の会議に付した事件  一 日程第一 議第一号から議第七十一号まで 一 日程第二 県議第一号 一 日程第三 議第七十二号 一 日程第四 請願第十八号から請願第二十二号まで 一 日程第五 一般質問…………………………………………………………………………………………… △出席議員 四十六人      一番   木村千秋君      二番   判治康信君      三番   平野恭子君      五番   今井瑠々君      六番   牧田秀憲君      七番   黒田芳弘君      八番   森 治久君      九番   山内房壽君      十番   森 益基君     十一番   小川祐輝君     十二番   中川裕子君     十三番   伊藤英生君     十四番   澄川寿之君     十五番   平野祐也君     十六番   所 竜也君     十七番   今井政嘉君     十八番   藤本恵司君     十九番   安井 忠君     二十番   恩田佳幸君    二十一番   若井敦子君    二十二番   広瀬 修君    二十三番   布俣正也君    二十四番   酒向 薫君    二十五番   野村美穂君    二十六番   水野吉近君    二十七番   国枝慎太郎君    二十八番   長屋光征君    二十九番   高殿 尚君     三十番   田中勝士君    三十一番   加藤大博君    三十二番   松岡正人君    三十三番   小原 尚君    三十四番   水野正敏君    三十五番   野島征夫君    三十六番   渡辺嘉山君    三十七番   伊藤正博君    三十八番   川上哲也君    三十九番   伊藤秀光君     四十番   平岩正光君    四十一番   佐藤武彦君    四十三番   森 正弘君    四十四番   村下貴夫君    四十五番   尾藤義昭君    四十六番   玉田和浩君    四十七番   岩井豊太郎君    四十八番   猫田 孝君…………………………………………………………………………………………… △職務のため出席した事務局職員の職氏名  事務局長         山田 恭 総務課長         桂川義彦 議事調査課長       若野 明 議事調査課管理調整監   森 信輔 同   課長補佐     西 直人 同   課長補佐     市川達也 同   係長       佐藤由子 同   主査       水野 恵 同   主査       遠藤俊輔 同   主査       横田直道…………………………………………………………………………………………… △説明のため出席した者の職氏名  知事           古田 肇君 副知事          大森康宏君 副知事          河合孝憲君 会計管理者        矢本哲也君 総務部長事務代理     平野孝之君 清流の国推進部長     長尾安博君 清流の国推進部デジタル推進局長              市橋貴仁君 危機管理部長       内木 禎君 健康福祉部長       丹藤昌治君 健康福祉部子ども・女性局長              村田嘉子君 商工労働部長       三木文平君 観光国際部長       丸山 淳君 農政部長         足立葉子君 林政部長         久松一男君 県土整備部長       野崎眞司君 都市建築部都市公園・交通局長              舟久保 敏君 教育長          堀 貴雄君 警察本部長        大濱健志君…………………………………………………………………………………………… △三月六日午前十時開議 ○議長(野島征夫君) おはようございます。ただいまから本日の会議を開きます。…………………………………………………………………………………………… ○議長(野島征夫君) 諸般の報告をいたします。 書記に朗読させます。    (書記朗読) 議案の提出について 知事から、本日付をもって、お手元に配付のとおり、議第七十二号 岐阜県職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例の一部を改正する条例についての提出がありました。 請願書の受理について 請願第十八号 公立学校に「一年単位の変形労働時間制」を導入するための条例制定に反対しますほか四件の請願書を受理しました。 職員に関する条例に対する意見について 人事委員会委員長から、令和六年二月二十八日付をもって、議第二十九号 地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整備等に関する条例について、議第三十一号 岐阜県職員退職手当条例の一部を改正する条例について、議第三十二号 岐阜県職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例の一部を改正する条例について及び議第五十七号 岐阜県職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例及び岐阜県教育職員の給与その他の勤務条件の特例に関する条例の一部を改正する条例については、異議がない旨の回答がありました。 損害賠償責任の一部免責等に関する条例に対する意見について 監査委員から、令和六年二月二十九日付をもって、議第二十九号 地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整備等に関する条例については、意見がない旨の回答がありました。 監査結果等の報告の提出について 監査委員から、お手元に配付のとおり、令和六年二月二十九日付をもって、地方自治法第百九十九条第九項の規定により定期監査、随時監査及び財政援助団体等監査の結果について、並びに地方自治法第二百三十五条の二第三項の規定により、例月出納検査の結果に関する報告の提出がありました。以上であります。…………………………………………………………………………………………… ○議長(野島征夫君) 日程第一から日程第四までを一括して議題といたします。 追加提出議案に対する知事の説明を求めます。知事 古田 肇君。    〔知事 古田 肇君登壇〕 ◎知事(古田肇君) おはようございます。 本日、追加提出いたしました議案につきまして御説明申し上げます。 議第七十二号は、県職員に支給する災害応急作業等手当などについて、準拠している国の規則が改正されたことを受け、手当の上限額を増額する条例改正であります。よろしく御審議を賜りますようお願い申し上げます。…………………………………………………………………………………………… ○議長(野島征夫君) 日程第五 一般質問を行います。あわせて議案に対する質疑を行います。 発言の通告がありますので、順次発言を許します。四十七番 岩井豊太郎君。    〔四十七番 岩井豊太郎君登壇〕(拍手) ◆四十七番(岩井豊太郎君) 皆さん、おはようございます。 議長のお許しをいただきましたので、県政自民クラブを代表し、通告に従い県政の各般にわたり、順次質問させていただきます。 質問に入る前に、このたびの令和六年能登半島地震により、お亡くなりになられた多くの方々に心から御冥福をお祈りいたしたいと思います。また、被害に見舞われ、厳しい日々を過ごしておられる被災者の方々には、心からお見舞いを申し上げたいと思っております。 今回の私の県政自民クラブの代表質問では、この大震災を踏まえた本県の震災対策の見直しをはじめ、担い手が希望を持てる農業・農村づくり、また地域格差のない医療供給体制の整備など、人口が減少していく社会においても市町村間の格差のない、豊かで安心できる岐阜県づくりという観点から、重要と考える政策課題について、五分割に分けて質問をさせていただきたいと思います。 執行部の皆様には、前向きな答弁を期待いたしまして、ただいまから質問に入りたいと思います。 令和六年の能登半島地震を踏まえた本県の地震対策として、四点お伺いをいたします。 まず、本県における震災対策の見直しについてをお伺いいたします。 本年一月一日、最大震度七を観測した令和六年能登半島地震は、石川県をはじめ富山県、新潟県、福井県など、広い範囲に大きな被害をもたらしました。 本県では、地震発生直後から消防や警察、医療チーム、その他の応援職員が現地に出発し、厳しい現況の中で救出活動や被災者の医療・健康支援、または避難所の運営支援などに懸命に取り組んでおられました。その活動と志の深い皆様方に心から敬意を表したいと思います。 さて、今回の地震については、発生以降、連日多くのメディアで様々な問題が報道されております。 その幾つかを御紹介いたしますと、想定を超える地震の発生、あるいは帰省シーズンと重なって住民以外が大勢巻き込まれたことで、避難所への避難者が想定人数を大きく超過しているということと、寒冷地であるにもかかわらず、毛布や燃料などの防寒対策の備蓄が不足しているなど、実に多くの問題が指摘されております。 また、今回の地震は、人口減少や高齢化に直面する中山間地域での災害対応の難しさを浮き彫りにいたしました。 今回、特に大きな被害を受けた能登半島北部の珠洲市と輪島市の六十五歳以上の割合を示す高齢化率は、それぞれ五二%と四六%で、全国平均の二九%を大きく上回っております。一方で、現行の耐震基準を満たす住宅の割合は、珠洲市が五一%、輪島市が四五%で、全国平均の八七%と大きな差が生じております。高齢化と後継者不足が相まって、住宅の耐震化が遅れていたと見られます。 また、能登半島北部は中山間地域を多く抱えていることから、土砂崩れなどにより道路が寸断され、生存率が大きく下がる発生後七十二時間以内の救助活動の障壁となりました。孤立集落は最大二十四地区で三千三百四十五人に上り、食料などの救援物資の輸送にも遅れが生じました。 さらに通信も断絶して、まさに陸の孤島となり、被害の実態把握にも時間を要しました。加えて、孤立集落では作業員が現地に入ることも難しく、電気、水道、通信などのインフラの復旧が大幅に遅れ、被災地が応急対応の段階から復興・復旧の段階になかなか移れないという問題も生じておりました。 翻って、本県の状況を見ますと、能登半島北部と同様に中山間地域が多く、過疎化や高齢化が進む集落が点在していることから、南海トラフ巨大地震など大規模地震が発生すれば、能登半島北部と同じことが起こり得ます。それゆえ今回の地震を詳細に分析し、本県の震災対策を見直し、今後に備えていくことが必要不可欠であると考えます。 そこで能登半島地震を踏まえ、本県の震災対策について、どう見直しを進めていかれるのか知事にお伺いをいたします。 次に、孤立集落を発生させないための道路の整備についてお伺いをいたします。 先ほども申し上げたとおり、能登半島北部と同様に、本県の中山間地域では陸路が限定される集落を多く抱えていることから、大規模震災発生時に孤立集落を発生させないための対策が強く求められます。 そのためには、緊急輸送道路の整備や斜面対策、また橋梁の耐震化が必要となります。また、こうした取組と併せて、被災することを想定した取組についても進めていく必要があります。 例えば、孤立集落が生じた際に、土砂等によって寸断された道路を速やかに緊急車両だけでも通行できるようにする、いわゆる道路啓開の体制を整えておくとともに、被災した箇所が早急に復旧されるよう、応急復旧に必要とされる資機材を備蓄する拠点の整備やデジタル技術を活用して道路等の被害状況を把握することなど、孤立状態を早急に解消するための取組も重要であります。 そこで、能登半島地震を踏まえ、大規模震災発生時に孤立集落を発生させないための道路整備の取組と、孤立集落が生じた際に道路の早期復旧を可能とするための取組について、知事にお伺いをいたします。 次に、学びの機会を確保するための取組についてお伺いいたします。 今回の地震では、発生当初、能登地域の多くの学校で再開のめどが立たない中、子供たち学習環境を確保するため、中学生の集団避難オンラインによる学習、また利用可能な周辺の研修施設での分散授業など、児童・生徒の年齢や状況に応じた取組が実施されました。 また今回、中学生の集団避難においては、子供たちが親元を長期間離れ、慣れない集団生活を過ごすことから、生徒に対する心のケアの重要性が指摘されております。同時に、様々な事情で地元に残ることを選択した生徒に対して、十分な学習機会を提供することの必要性も指摘されております。 二月上旬には、石川県内の全ての小・中・高等学校が再開しましたが、一部の児童・生徒は集団避難オンラインの受講を続けているとお聞きしております。 本県においても、こうした状況を丁寧に見詰め、大規模災害発生時においても子供たちが十分に勉強できる環境を提供できるように備えておく必要があると考えます。 そこで、能登半島地震を踏まえ、本県で大規模災害が発生した際に、児童・生徒の学びの機会を確保するためどのように取り組んでいかれるのか、教育長にお伺いをいたします。 次に、大規模地震の発生に備えた警察の取組についてお伺いをいたします。 警察は、今回の地震においても、災害情報の収集、被災者の救出・救助、また御遺体の調査や身元確認、被災地の交通対策に従事されたほか、パトカー等による警戒・警ら、また避難所における相談対応、防犯カメラの設置等、被災地における安全・安心の確保にも取り組まれるなど、幅広い役割を担っておられます。しかし、地震発生当初は、道路の状態や通信環境が復旧しない中での活動であったため、難しいものだったと報道されております。 本県で大規模地震が発生した際には、やはり警察が担う役割は非常に大きなものになります。そのため、その役割をしっかりと果たしていただくには、今回の地震も教訓にして、事前に備えを充実していただくことが必要だと考えております。 そこで、能登半島地震を踏まえ、大規模地震発生時に警察活動を円滑に行うため、どのように備えていかれるのか警察本部長にお伺いをいたしまして、一回目の質問を終わります。 ○議長(野島征夫君) 知事 古田 肇君。    〔知事 古田 肇君登壇〕 ◎知事(古田肇君) 二点、お尋ねがございました。 まず、最初の本県における震災対策の見直しについてでございますが、今回の能登半島地震の発生に際しまして、本県では一月二日に支援対策本部を立ち上げ、県内の全市町村、関係機関と連携して、まさにオール岐阜の体制で人的・物的両面から様々な支援に取り組んでまいりました。これまでに本県からの人的支援は、延べ一万一千人・日となっております。 こうした中、被災地での厳しい事態を目の当たりにし、行政の最大の任務は県民の命と生活を守ることと再認識させられるとともに、明日は我が身どころか今日の我が身の心構えで、震災対策の一層の強化・充実が必要であると受け止めております。 今回の地震は、御指摘にもありますように、主要道路の寸断、ライフラインの途絶、多くの建物の倒壊や火災による焼失、多数の孤立などが同時多発的に発生し、さらに元旦の発生で対応人員が不足していたことや、寒さや積雪といった厳しい条件も重なったことで、課題がより浮き彫りになってきております。 これまで明らかになった状況や被災地で支援活動に当たった職員などからの報告を踏まえ、大きく以下の四つのテーマから、震災対策の見直しを行ってまいりたいと思っております。 一点目は、孤立やライフライン途絶の長期化への対策強化であります。 能登半島を南北に走る幹線道路等が寸断され、孤立の解消やライフラインの復旧に時間を要したことから、緊急輸送道路孤立集落につながる道路の整備促進、水・食料など備蓄物資の拡充、給水タンクや運搬車両の追加整備などを進めてまいります。 二点目は、建物耐震化の促進であります。 古い木造住宅の倒壊が相次ぎ、とりわけ過疎化・高齢化が進む地域で多くの方が犠牲となったことから、住宅や緊急輸送道路沿いの建物などの耐震診断・改修の支援強化、空き家の除却の促進などに取り組んでまいります。 三点目は、避難所における生活・衛生環境の改善であります。 多数の家屋が倒壊し、多くの方が長期にわたる避難生活を余儀なくされていることを踏まえ、避難所における停電や感染症への対策、プライバシーの確保はもとより女性や要配慮者などの視点を踏まえた環境改善、冬場の厳しい環境下での避難生活に備えた防寒用資機材の整備などを実施してまいります。 最後に、災害対応における県・市町村間の連携強化であります。 大規模災害時には、一層の連携した対応が求められることから、今回の地震で発生した事態をシナリオに盛り込んだ実践的な共同訓練の実施や、被災市町村災害対策をサポートできる人材育成などを進めてまいります。 計画への反映についてお尋ねがございましたが、以上るる申し上げました事柄や、今後の議論で明らかとなる個別の課題への対応を県の計画に追加するほか、現行の強靱化計画に規定しております二十六の「起きてはならない最悪の事態」の設定に、同時多発的に発生する事態も盛り込む必要があると考えております。 既に有識者への意見聴取を始めておりますが、今後庁内に四つのテーマごとプロジェクトチームを設け、有識者も交えて議論を重ねてまいります。その結果を本年夏を目途に中間報告を取りまとめた後、市町村、関係機関の意見などを最終報告に盛り込み、来年三月の岐阜県強靱化計画や岐阜県地震防災行動計画など、各種計画の改定に反映させてまいります。 次に、孤立集落を発生させないための道路の整備についてお尋ねがございました。 今申し上げましたように、能登半島地震では、路面の陥没や橋梁のうねりなどにより道路が各地で寸断され、多くの孤立集落が発生し、物資供給などの応急活動が妨げられる事態に見舞われたわけであります。 本県では、これまでも緊急輸送道路や孤立が予想される集落につながる道路における斜面崩壊対策橋梁耐震化など、孤立集落を発生させないための道路整備を鋭意進めてまいりました。 しかしながら、今年度末の進捗見通しでございますが、緊急輸送道路では斜面対策が八割、橋梁耐震化が五割、また孤立予想集落につながる道路では斜面対策が六割、橋梁耐震化が四割にとどまっております。また、今回の地震では橋梁と道路の接続部で段差が生じ、通行が困難となる状況が生じていることから、こうした段差対策にも新たに取り組む必要がございます。 これら事前の防災対策を加速するため、令和六年度当初予算で公共事業費を昨年度から増額したところであり、国の補助事業なども積極的に活用しつつ、重点的に進めてまいります。 次に、孤立集落が発生した際の早期復旧に向けては、国や県建設業協会などと連携し、あらかじめ道路啓開を行う路線の順位や対応する業者などを定めて、道路障害物を速やかに除去することとしております。実際の災害を想定した訓練も毎年行っております。 また、建設関連団体ではBCP、いわゆる事業継続計画を策定し、有事の際にも確実に機能するよう日頃から社員教育や訓練などに取り組んでいただいております。 県としても、これまでに土のうなどの資機材の備蓄拠点を県内各地に十三か所整備するとともに、今年度迅速な被害調査のため、全ての土木事務所にドローンを配備したところであります。また、来年度には新たな備蓄拠点を白川村に追加整備するとともに、夜間作業ができる照明など資機材の拡充を図ってまいります。 加えて、災害査定前に工事に着手する査定前着工や、現場でコンクリートを流し込むのではなく、あらかじめ工場で製造された既製品の活用により、工期の短縮に取り組んでまいります。 ○議長(野島征夫君) 教育長 堀 貴雄君。    〔教育長 堀 貴雄君登壇〕 ◎教育長(堀貴雄君) 学びの機会を確保するための取組についてお答えをいたします。 大規模災害発生時における学校運営は、まず被災した児童・生徒や教職員の安否確認が第一であり、次に、学校施設・設備や通学路の点検による学びの場の安全と安心の確保が必要だと考えます。 その上で、子供の学習保障は、多くの学校が避難所になっていることや、電気・水道などのライフラインの被害状況や規模など様々な被災状況を踏まえて、今回の例にある集団避難、分散授業、オンライン授業の実施など、臨機応変に対応することが必要です。加えて、教職員が勤務できないことも想定し、県教育委員会が主体になり、地域を超えた支援体制を構築する必要があると考えております。 また、今回被災地に派遣した教職員からは、有事には県教育委員会がリーダーシップを発揮し、職員の物理的・精神的な負担の軽減を図るマネジメント業務の推進が必要であるとの知見を得たところです。 本県でも、学校教育の震災対応を我が事と捉え、まずは今回得た知見を踏まえ、市町村教育委員会と協議する場を設け、大規模災害時における子供の学習環境の確保について検討してまいります。 ○議長(野島征夫君) 警察本部長 大濱健志君。    〔警察本部長 大濱健志君登壇〕 ◎警察本部長大濱健志君) 大規模地震の発生に備えた警察の取組についてお答えいたします。 県警察では、地震発生当日からこれまでの間、広域緊急援助隊をはじめ多くの部隊を石川県に派遣し、発災時の救出救助活動のみならず、交通対策防犯パトロール、捜査活動といった被災地の治安維持のための幅広い活動を現在も行っております。 議員御指摘のとおり、大規模地震発生時におきまして、円滑に警察活動を行うためには、発生した事態に的確に対処できるよう平素から備えておくことが極めて重要でございます。 県警察におきましては、これまでの災害対応を通じて得られた様々な教訓を踏まえまして、県警ヘリの機動力を最大限活用するための訓練や、情報通信ツールなどによって被災状況を早期に把握するための仕組みづくりなど、災害対処能力の向上を図ってまいりました。 また、このたびの地震も踏まえまして、いかなる災害においても警察として期待される役割をしっかりと果たすことができるよう装備資機材のさらなる充実、教育訓練の反復継続、関係機関との緊密な連携など、災害対処体制の不断の見直しを図ってまいります。 ○議長(野島征夫君) 四十七番 岩井豊太郎君。    〔四十七番 岩井豊太郎君登壇〕
    ◆四十七番(岩井豊太郎君) それぞれ答弁いただきまして、ありがとうございました。 次に、大きく二項目め、今後の行財政運営として四点お伺いいたします。 まず、「清流の国ぎふ」づくりに向けた思い、意気込みについてお伺いをしたいと思います。 新年度は、古田県政五期目の締めくくりの年となります。 知事は五期目の選挙では、生命を守る、そして新しい日常を創るとの思いの下、公約としてコロナ対策のほか産業振興、DX、教育など八項目を上げ、それぞれ成果指標も盛り込まれました。 それから三年が経過いたしました。これまでのコロナ対応における知事の手腕は誰もが評価するところだと私は思います。また、同時に知事は、アフターコロナに向けて様々な種をまいてこられました。 そうした中、現在、日本経済は三十年ぶりに明るい兆しが見えるなど、国内外に様々な変化が生じております。そして、いよいよ新年度はアフターコロナの時代が本格的に到来します。 そこで、知事にお伺いいたします。 古田県政五期目の締めくくりの年における「清流の国ぎふ」づくりに向けた知事の思い、意気込みをお聞かせください。 次に、新年度予算について、二点お伺いいたします。 新年度の当初予算編成に当たり、我が会派からは現下の物価高騰への対策をはじめ、県政全般にわたる百六十一項目の要望を行いました。これに対して知事からは、全ての項目について推進するとの回答があり、県土の強靱化を図り県民の安全・安心を守るため、公共事業費が公共枠・県単枠とも増額となるなど、厳しい財政状況にある中、前向きな対応をしていただいたと考えております。 繰り返しになりますが、新年度は知事の五期目の任期締めくくりの年であり、「清流の国ぎふ」づくりに向けた節目の年でもあります。 今議会に上程されている県の新年度予算案は、新型コロナウイルスが感染症法上の五類に移行したことで関係費用が大きく減少する中、前年度を若干下回る八千八百六十一億円となっており、知事の意気込みを感じております。 予算案では、「清流の国ぎふ」づくり~確かな未来の創造~をタイトルにして、持続可能な「清流の国ぎふ」を目指して、暮らしやすい「清流の国ぎふ」の実現、「清流の国ぎふ」の魅力向上と発信といった県政を推進するための三つの政策群で構成されております。 また、国の新年度予算案では、地方財政については、今年度を六千億円上回る六十五兆七千億円の一般財源総額が確保されるとともに、地方交付税についても今年度を三千億円上回る十八兆七千億円が確保されており、六年連続の増加となっております。臨時財政対策債の発行額は過去最低の〇・五兆円まで抑制され、地方財政の健全化も図られております。 そこで、新年度当初予算案はどのような狙いを持って編成し、その実現のために具体的にどのような取組を展開していかれるのか、知事にお伺いいたします。 また、県の予算編成の前提となる一般財源の歳入見通しに関して、新年度の県税収入と地方交付税の交付額をどのように見込んでおり、また臨時財政対策債を含めた一般財源総額はどの程度確保できる見通しなのか、総務部長事務代理にお伺いいたします。 次に、県行政における生成AIの試験利用の評価と今後の展開についてお伺いいたします。 なお、今回この質問は、一部生成AIの一つであるChatGPTと会話しながら作成をしてみました。もしよろしければ、それがどこに使われているのかを注意しながらお聞きしていただければありがたいと思います。 さて、令和五年第四回定例会では、私は、県の業務の在り方を大きく変える可能性を秘める生成AIの行政における活用について質問いたしました。それに対する知事からの答弁のとおり、県では、昨年中に暫定的な生成AIの業務利用におけるガイドラインを策定し、本年一月十九日から各部局主管課等の職員を対象に生成AIを試験的に導入し、効果や課題について検証されているとお聞きしております。 生成AIの行政における活用方法については様々なものが考えられますが、一般的に言われているものを三つだけ例に挙げてみますと、まず文章作成の支援が挙げられます。 行政機関では多くの文章が作成されますが、生成AIを活用することで自動的に文章を生成したり、要約を作成することができます。これにより効率的な業務処理が可能となります。 二つ目は、情報の分析や予測の支援です。行政機関は大量のデータを取り扱いますが、生成AIを活用することでデータの分析や予測が容易になります。例えば、地域の人口動態や経済動向の予測、また政策の効果の評価などに活用することができます。 三つ目は、オンラインサービスの充実の支援です。生成AIを活用してオンラインでのサービス提供や情報提供を強化することができます。例えば、自治体のホームページやSNSでの自動応答システムの導入などが挙げられます。 これらの活用方法を通じて、行政機関は効率性やサービスの向上などを実現し、より効果的な行政活動を展開することができるとされています。そのため、その利用におけるリスクにも十分留意した上で、ぜひ県においても生成AIを積極的に活用していただきたいと思っております。 そこで、デジタル推進局長にお伺いします。 生成AIの試験利用開始から約一か月半が経過しましたが、試験利用で得られたこれまでの結果をどう評価されているのでしょうか。また、今後の展開についてお尋ねをいたします。 さて、ここまで質問を聞かれて、どこに生成AIが使われていたかお分かりになったでしょうか。実は、生成AIの行政における活用方法の例については、私からChatGPTに、生成AIの行政における活用方法についてどのようなものがありますかと話しかけて、すぐに返ってきた答えを私のほうで少し加工したものです。私も今回、その回答の速さと有用性に改めて驚きました。気軽に相談できて頼れる仲間が一人増えた思いであります。 こちらが聞き方を変えると、生成AIの答えも変わってきます。どのような質問をすれば求めている答えを生成AIから引き出すことができるのか、生成AIとの会話を楽しみながら見つけていきたいと思っておるわけであります。 以上で二回目の質問を終わります。 ○議長(野島征夫君) 知事 古田 肇君。    〔知事 古田 肇君登壇〕 ◎知事(古田肇君) 生成AIという大変強力な助っ人を得ての御質問をいただきました。 改めてこういう道具を活用する楽しさと、また道具を使いこなす難しさを感じながら承っておった次第でございますが、私の答弁はAIは一切使っておりません。 その上で振り返ってみますと、まずこの「清流の国ぎふ」づくりについての思いということで御質問がございましたが、私のこの五期目のスタートは、発生から約一年が経過した新型コロナ対策の真っただ中でございました。選挙期間中もコロナ最優先で対応に専念する中で、SNSなどを通じた県民の皆様の御意見に耳を傾けてまいりました。そこで特に感じましたのは、まずは感染の終息、当面の社会経済状況の下支え、そしてこれからの岐阜県の展望への強い御期待であったと思います。 結果として、この五期目につきましては、一年目、二年目は専らウイズコロナの年ということになりました。繰り返し迫りくる変異ウイルスとの大変困難な闘いが続きましたが、行動制限を余儀なくされた際の非常に高い時短要請の応諾率、全国トップクラスの高齢者のワクチン接種などに象徴されるように、全県民の皆様が一丸となって、オール岐阜の体制で困難を乗り越えることができたのではないかというふうに思っております。また並行して、コロナにより打撃を受けた経済を支えるため、機動的に補正予算を編成しながら迅速に対策を実行してきたところでございます。 そうした中で、二年目の令和四年度には、コロナ後を見越した五年間の新たな創生総合戦略を一年前倒しで策定させていただきました。「幸せと確かな暮らしのあるふるさと岐阜県をともに目指して」を基本理念に、人づくり、地域づくり、魅力と活力づくりという三本柱で岐阜県の未来づくりの方向性をお示ししたところでございます。 そして、三年目となった今年度は、新型コロナの五類への円滑な移行や経済の回復、再生に取り組むとともに、少子化対策など喫緊の課題や、インバウンドや国内観光の回復などに向けた支援、県内のDXの推進、スタートアップの創出と成長に向けた環境整備など、アフターコロナへの移行に向けた一年であったというふうに考えております。 四年目となる来年度は、本格的なアフターコロナの年ということになります。そこで、これまで一貫して進めてきた「清流の国ぎふ」づくりをさらに深化させていくという思いを込めて、来年度予算のタイトルを「清流の国ぎふ」づくり~確かな未来の創造~というふうにした次第でございます。 具体的には、まずSDGs、地域温暖化防止に向けたGX、新エネルギーの活用など、世界全ての人々が取り組むべき課題、すなわちグローバルアジェンダに一層積極的に取り組んでまいります。また人口減少、少子高齢化対策も待ったなしであります。 さらに来年度は、「清流の国ぎふ」文化祭二〇二四など、県民総参加で開催する文化イヤーでございます。清流文化の創造とその魅力の発信により県民の皆さん一人一人が輝く、また人と人がつながり、心の豊かさと地域で生きる幸せを発見する機会としたいと考えております。 そのような思いを巡らせていた中で、このたびの能登半島地震の発生を受け、行政の最優先の責務が県民の命と暮らしを守ることであることを改めて強く認識いたした次第であります。まさに想定外が常態化していることを前提に先手先手の対策を実行し、創造の基となる県土の強靱化も推し進めてまいります。 次に、新年度当初予算の狙いとその実現に向けた取組ということでございます。 今年度の当初予算では、今ほど申し上げました内外の環境と課題をしっかりと認識した上で検討を行い、持続可能な「清流の国ぎふ」を目指して、暮らしやすい「清流の国ぎふ」の実現、「清流の国ぎふ」の魅力向上と発信の三つの柱で取組を進めることとしております。 まず第一の柱、持続可能な「清流の国ぎふ」を目指してでは、冒頭御答弁申し上げましたような能登半島地震で顕在化した課題を踏まえた各般の震災対策、防災・減災対策をしっかり進めてまいります。 また、県内企業に就職する若者に対する奨学金返還支援制度の創設、物流二〇二四年問題の課題解決に向けたスマート物流の構築、県産農畜水産物の輸出拡大、森林を活用したビジネス創出など、人や産業への投資を進めてまいります。 このほか、本県独自のG-クレジット制度の本格運用の開始、デジタルインボイスを搭載した電子取引システムの利用無料化など、GX・DXの推進にも取り組んでまいります。 第二の柱、暮らしやすい「清流の国ぎふ」の実現では、国の対策と歩調を合わせた物価高騰支援の五月末までの延長、家畜伝染病の発生に備えた農場の分割管理に必要な施設整備の支援など、困難な状況にある生活者・事業者への支援を実施してまいります。 また、二十五歳時における子宮頸がん検診の無料化、ヤングケアラーに対するSNSを活用した相談窓口の開設など、暮らしの安全・安心対策を進めてまいります。 さらに、出産・子育て応援ギフトや第二子以降の出産祝い金の支給、私立高校などの授業料軽減支援に係る所得制限の緩和など少子化対策を強化するとともに、子育て世帯の移住支援金の拡充、東京都内に本部を置く大学の学生に対する県内企業選考面接に係る交通費の支援など、若者の移住・定住対策についても強化してまいります。 第三の柱、「清流の国ぎふ」の魅力向上と発信では、先ほど申し上げました文化イヤーを大いに盛り上げますとともに、地芝居などの伝統芸能、木工、和紙などの伝統工芸、県産品のPRなど、本県の様々な魅力を発信してまいります。 観光・交流面では、県内にもう一泊追加してもらうための新たな誘客プロモーションや旅行商品の造成など、インバウンド拡大に取り組むほか、これまで交流を深めてきた国・地域の文化を県内で紹介するなど、国際交流を深めてまいります。 さらに、奥飛騨ビジターセンターのリニューアルオープンに併せた中部山岳国立公園への誘客プロモーションなど、地域の新たな魅力の創出にも取り組んでまいります。 こうした政策課題に積極的に対応する一方で、事業見直しによる県費削減、国庫支出金などの財源確保に取り組むとともに、財政調整基金の残高を令和五年度当初予算時とほぼ同じ水準となる約九十六億円を確保したところであります。 他方、今後の財政試算では、激甚化・頻発化する自然災害に対する防災・減災対策、公共施設の老朽化対策などにより、公債費は当分の間増加を続け、これに伴い実質公債費比率も上昇することが見込まれております。 また、団塊の世代が後期高齢者に到達したことなどにより、社会保障関係経費も増加を続ける見込みであります。こうした構造的な財政需要の増加に対応するためには、基金の取崩しも避けられない状況であります。 このため、節度ある県債の発行や事業見直しの徹底などの効率化について、今後も丁寧に検討を行いながら、持続可能な財政運営に心がけてまいりたいと思います。 ○議長(野島征夫君) 総務部長事務代理 平野孝之君。    〔総務部長事務代理 平野孝之君登壇〕 ◎総務部長事務代理(平野孝之君) 新年度予算案における歳入見通しについてお答えします。 まず県税につきましては、国の定額減税の影響による個人県民税の減などにより、今年度当初予算から二十四億円減の二千五百六十二億円を計上しております。 また、地方消費税精算金は、輸入取引に係る全国ベースの地方消費税収入が減額となる見込みであることなどを踏まえ、七十九億円減となる九百八十億円を見込んでおり、県税との合計では、百三億円減となる三千五百四十二億円を計上しております。 このうち定額減税による減額分は、地方特例交付金で補填されることから、実質的には五十億円の減となります。 一方、地方交付税及び臨時財政対策債については、令和六年度の地方財政計画を踏まえ、今年度当初予算から微減の千九百八十七億円を計上しております。 この結果、一般財源総額としては、今年度当初予算比で六十億円減となる五千九百九十九億円を見込んでおります。 ○議長(野島征夫君) デジタル推進局長 市橋貴仁君。    〔清流の国推進部デジタル推進局長 市橋貴仁君登壇〕 ◎清流の国推進部デジタル推進局長(市橋貴仁君) 県行政における生成AIの試験利用の評価と今後の展開についてお答えいたします。 生成AIの試験利用については、これまで延べ約二百人が利用し、約二千二百件の質問文が生成AIに入力されました。主に挨拶文や企画書等の文案作成、アイデア出しに活用されております。 利用した職員からは、「生成AIの回答に少し手を加えるだけで簡易に文書作成ができた」「想定より多くのアイデアが出た」などの意見が寄せられ、業務に役立ったとした職員が約八割、今後の県業務への活用の可能性を感じるとした職員が約九割に上っております。 他方、「生成AIへの質問を工夫しなければよい回答を得られない」との意見もありました。これを踏まえて若手職員によるワーキングを開催し、優れた質問を作成できるようにするための事例集を作成し、配付したところです。 今後も利用した職員の意見を聞き、その効果や課題を検証するとともに、職員のリテラシー向上を図りつつ、来年度における生成AIの全庁展開を検討してまいります。 ○議長(野島征夫君) 四十七番 岩井豊太郎君。    〔四十七番 岩井豊太郎君登壇〕 ◆四十七番(岩井豊太郎君) それぞれ御答弁ありがとうございました。 次に、大きく三項目め、人口の定常化に向けた取組に関して、三点お伺いしたいと思います。 人口定常化とは、人口減少のスピードを緩和させ、最終的に人口を安定させることを指しております。 さて、昨年十二月、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が都道府県別・市町村別の推計人口を公表し、大きく報道されました。それによりますと、本県の総人口は二〇二〇年から五十一万人減少し、二〇五〇年には百四十七万人になると推計されております。人口減少率は二五・八%で全国平均の一七・〇%を大きく上回っております。 少子高齢化の進展により、働き手の中心となる十五歳から六十四歳の生産年齢人口の減少の幅はさらに大きく、減少率は三五・七%で、これも全国平均の二六・二%を大きく上回っております。 県内の市町村別では、全ての市町村で人口が減少しておりますが、その減少の程度には大きな差がありまして、減少率が最も高いのは加茂郡白川町の五八・二%、また減少率が最も低いのは美濃加茂市の四・八%となっております。 続いて、本年一月には、経済界有志や有識者らでつくる人口戦略会議が定常化戦略と強靱化戦略の二つの戦略を柱とする提言、人口ビジョン二一〇〇を公表されました。 提言では、まずこれまでの対応において欠けていた基本的課題として、国民の意識の共有を指摘しております。私も人口減少について、将来一体どのような重大な事態が起こり得るのか県民に正確に理解していただくことが、今後の人口減少対策の出発点だと考えております。 その上で、提言では第一に定常化戦略として、合計特殊出生率を二〇六〇年に二・〇七に回復させ、二一〇〇年の日本の総人口を八千万人で安定させるシナリオを目指しております。そのことにより、人口急降下に伴い社会が急速に縮小していくような事態を回避し、国民が人口減少がどこかで止まるという確固たる将来展望を持てるようにすることを目標としております。 そして、第二の強靱化戦略では、質的な強靱化を図り、現在より小さい人口規模であっても多様化に富んだ成長力のある社会の構築を目指しております。 今回この提言を拝見して私が驚いたのは、私から見ると極めて野心的な目標を掲げているにもかかわらず、少なくとも二十一世紀の間は人口が減少していくことが示されているということです。つまり、この議場の中にいらっしゃるほとんどの方にとっては、生きている間は人口減少が続くということになります。それゆえ私は、冒頭にも申し上げたとおり、人口減少を前提として、その中においても経済が縮小することなく、活力があり、そして市町村間の格差のない豊かで安心できる岐阜県をつくっていくことが重要だと考えております。 それでは、この大項目では、まず人口の定常化に向けた取組について、自然面と社会面の両面からお伺いしたいと思います。 まず、自然減対策についてお伺いいたします。 コロナ禍で少子化が加速し、現在もその傾向が継続しております。 厚生労働省が先月末に公表した人口動態統計の速報値によりますと、二〇二三年の全国の出生数は、前年比五・一%減の七十五万八千六百三十一人となり、過去最少でした。国立社会保障・人口問題研究所の想定より、十二年早いペースで少子化が進んでいるということであります。 本県の出生数も減少傾向が続いており、二〇二三年の出生数は全国と同じく前年比五・一%減の一万一千三百七十八人でした。 こうした中、政府では昨年十二月、今後五年程度の子供政策の方向性を定めるこども大綱を閣議決定し、全ての子供・若者が身体的、精神的、社会的に幸福な状態で生活を送ることができる「こどもまんなか社会」を目指すとしました。また同時に次元の異なる少子化対策の実現に向け、児童手当の拡充などを盛り込んだこども未来戦略を閣議決定し、新年度以降、財源確保を図りながら段階的に戦略を実現させ、少子化傾向の反転につなげていこうとしております。 県としても政府と歩調を合わせ、「こどもまんなか社会」の理念の下、子供・若者や子育て当事者の意見を聞きながら、子ども・子育て支援をさらに強化していただきたいと思います。 また、婚姻数も減少傾向にあります。先ほどの人口動態統計の速報値によりますと、二〇二三年の本県の婚姻数は、前年比六・三%減の六千三百七十五組と大きく減少しました。 県が今年度行った少子化に関する県民意識調査でも、独身者のうち「一生結婚するつもりはない」と答えた割合は一七・〇%と五年前の調査の一・八倍に大幅に増加し、顕著な変化が見られました。「一生結婚するつもりはない」と回答した理由として、男女とも約六割が「結婚する必要性を感じない」を選択しておられますが、男性では「異性とうまく付き合えない」を選択した人が三四・七%おられました。また、「いずれ結婚するつもり」と答えた人の約半数が独身でいる理由として、「適当な相手にまだ巡り会わない」を選択しておられます。男性の独身者全体を見ると、独身でいる理由として、「経済的な余裕がない」を選択しておられる方が三八・五%おられます。こうした若者の価値観の変化や多様なニーズに寄り添った取組が必要となります。 そこで、コロナ禍で加速した少子化のスピードが減速する兆しを見せない中、自然減対策にどのように取り組んでいかれるのか、知事にお伺いしたいと思います。 次に、社会減対策についてお伺いをしたいと思います。 コロナ禍においては、オンライン会議の普及などにより地方回帰の機運が高まりましたが、アフターコロナの時代が到来し、現在は再び都心へ集中する流れが強まっております。 総務省が本年一月末に公表した二〇二三年の住民基本台帳人口移動報告によりますと、東京都の転入者数から転出者数を差し引いた転入超過数は、前年比八〇%増の六万八千二百八十五人でした。一方で、本県の転出超過は四年ぶりに拡大し、前年比一九%増の四千五百十六人の転出超過でありました。 また、企業も東京に再び集まり始めておりまして、日本経済新聞社の調査によりますと、二〇二三年一月から八月に東京二十三区内へ本社機能を移した企業数は前年から一三%伸び、転出超過の幅は四年ぶりに低水準となっています。 県には、こうした社会情勢の変化もにらみながら、より一層本県の魅力を高め、人や企業を呼び込んでいただきたいと思っております。 他方、近年、関係人口への注目が高まっております。関係人口とは、移住した定住人口でもなく、観光に来た交流人口でもなく、特定の地域に愛着を持ち、その地域と多様に関わる人々を指す言葉です。その関わり方には、継続的にふるさと納税をしたり、通ってイベントやお祭りを手伝ったりするなど様々な形が考えられます。都市には都市の魅力があり、地方には地方の魅力があります。どちらか一方ではなく都市と地方の間を揺れ動き、一人で何役も担うということであります。人口が減少する社会において、そういった観点もさらに重要になってくると考えられます。 そこで、東京一極集中の流れが再び強まる中、社会減対策にどのように取り組んでいかれるのか、知事にお伺いをいたします。 次に、各論として、新たな岐阜県男女共同参画計画に基づく若者に選ばれる地域づくりに向けた具体的な取組について、お伺いをいたします。 本県では、二十代の若者が、主に職業上の理由により県外へ流出する傾向が続いております。特に女性においては、その傾向が顕著になっております。 令和四年岐阜県人口動態統計調査の結果によりますと、二十代では男性が三百八十一人の転出超過、女性が千三百八十八人の転出超過となっております。そのため、二十代の若者にターゲットを絞った取組が重要となってきます。 現在、県が策定作業を進めておられます第五次岐阜県男女共同参画計画においても、その点に着目し、新たに重点項目の一つとして若者に選ばれる地域づくりを位置づけておられます。そして、若者にとって魅力的な地域をつくり、その希望に応じて仕事と家庭を両立することができ、また個性と能力を十分発揮できるよう、若者が活躍できる地域社会を構築するとされております。 ぜひ、そのために真に必要なことは何か、しっかりと若者の意見を聞いた上で、実効性のある取組を進めていただきたいと思います。 そこで、現在策定中の第五次岐阜県男女共同参画基本計画に基づき、若者に選ばれる地域づくりのため具体的にどのような取組を進めていかれるのか、子ども・女性局長にお伺いをいたしまして三回目の質問を終わります。 ○議長(野島征夫君) 知事 古田 肇君。    〔知事 古田 肇君登壇〕 ◎知事(古田肇君) 議員からは、人口減少について大変強い危機感をおっしゃっていただきました。 このところ人口減少、あるいは少子化という問題は、大災害あるいは戦争と並ぶ危機としてしっかり捉えるべきだという議論をしばしば耳にするわけでありますが、議員がおっしゃっておられますように人口の定常化といいますか、いつどのレベルで人口が安定するかという先行きがまだまだ見通せないというのが現状でございます。 そこで、自然減対策と社会減対策についてお尋ねがございましたが、まず人口動態統計によりますと、本県における出生数は、一九七三年以降半世紀にわたり減少し続けております。また、出生数から死亡数を差し引いた自然動態は二〇〇六年に減少に転じ、以降十七年連続のマイナスであり、かつその減少幅は年々拡大しております。 直近の二〇二二年は一万三千七百三十人の減少、前年に比べた減少幅は過去最大となり、その傾向に歯止めがかかるどころか拍車がかかっており、人口定常化への見通しは非常に厳しい状況と言わざるを得ないわけであります。 本県でも、これまでも積極的に少子化対策に取り組んでまいりましたが、婚姻数や女性一人当たりの出生数の低下により自然減が進行し、さらに若年女性の県外流出がこれに拍車をかけるという状況になっております。 今年度の県民意識調査では、独身でいる理由について、「適当な相手に巡り会わない」「経済的余裕がない」との意見が多く、また理想の子供数を持つことをためらう要因としては、「子育てや教育にお金がかかり過ぎる」「働きながら子育てできる職場環境がない」などの回答が多数でありました。 もとより結婚や子育てを含めた人生設計は、それぞれの方の自由な意思決定によるものではありますが、行政も含めて社会全体を挙げて持続的な努力により、若年層の結婚、子育てに対するネガティブなイメージや不安を何とか解消していかなければならないのではないかというふうに思っております。 こういうことから本県としては、まずこれから進学、就職、結婚、出産、子育てなど、様々なライフイベントを迎える若い世代への支援をさらにきめ細かく強化してまいります。 例えば学校現場と連携し、中・高生が自らの職業選択や人生設計を考えるセミナーを開催するとともに、大学生や若手社会人が子育て家庭に滞在し、夫婦の家事、育児の実情や仕事との両立を見聞きする体験型の事業も新たに立ち上げてまいりたいと思っております。 次に、結婚を望む方に対する支援にも引き続き取り組んでまいります。県内各地での独身者の交流イベントの開催、当事者に寄り添った相談支援に加えて、新婚世帯に対する引っ越し費用や新居の家賃補助などの経済支援も行ってまいります。 また、体外受精などの特定不妊治療費に対する助成、妊娠・出産された方に対する応援ギフトの支給、第二子以降を出産された方に対する祝い金など、経済的支援を引き続き実施してまいります。 さらに、子育て中の御家庭に対しましても、国が実施する児童手当の拡充に加えて、県としても私立高等学校授業料に対する補助対象要件を拡大するほか、第三子以降の保育料や病児・病後児保育利用料に対する補助、高等学校進学等を控えた中学三年生に対する準備金の支給などを進めてまいります。 加えて、結婚や子供を持つことをちゅうちょする要因を取り除くことも重要であります。 まず、若い方が独身にとどまる理由である「経済的な余裕のなさ」「経済的リスク、コスト」を解消するためには所得面での対策が必要であります。とりわけ女性については、出産を契機に退職したり、非正規雇用となる場合が多いのが実態であります。また、出産によってキャリアを中断せざるを得ないことも賃金に大きく影響し、男女間における賃金格差を引き起こす要因となっております。 一方で、多くの企業では、今や人手不足という喫緊の課題に直面しており、女性の活躍を確保する観点からも、女性社員の賃上げや正規職員化といった処遇の改善や昇任時期の見直しなどの対応が望まれるわけであります。 このため、中小企業に女性活躍推進アドバイザーを派遣し、企業の個別課題に応じたアドバイスや取組の提案を行うなど、女性の登用・キャリア継続や再就職に対する支援にも取り組んでまいります。 さらに、例えば岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業の認定において、男性の育児休業取得率、女性管理職比率がその業界における平均値を上回っていることをしっかりと評価するなど、誰もがワーク・ライフ・バランスを推進できる職場環境づくりについても積極的に推進してまいりたいと思います。 次に、社会減対策でありますが、二〇二三年の住民基本台帳に基づく人口移動報告によりますと、本県は四年ぶりに転出超過数が増加に転じました。 年齢別・男女別では、男女ともに十代から三十代前半までの年齢層が転出超過となっており、中でも二十代の転出超過が突出しております。また、各都道府県への転出超過数では、東京都が千六百六十七人と二年連続で最多となりました。 合計特殊出生率が全国最低の東京への一極集中が再び進むことは、日本全体の人口減少にさらに拍車をかけるとともに、本県における社会減の加速をもたらすものであり、非常に強い危機感を持っております。 このような状況を踏まえて、本県としては若い世代の社会減の状況を改善するべく、転出抑制、転入促進の両面から対策に取り組んでまいります。 第一に、働く場の創出であります。直近二〇二二年の本県における工場立地件数は五十六件で、全国第三位、リーマンショック以降では最多となりました。 来年度からは、新たに脱炭素効果が高い製品などの工場の設備投資に対し補助金の要件を緩和するなど、企業立地をさらに促進いたします。加えて、スタートアップ関係者との幅広いネットワークを持ち、多様な相談に対応できる専門コンシェルジュを新設し、県内でのスタートアップの創業・育成支援を強化してまいります。 あわせて、若い世代に県内に定着していただくためには、より高い所得が得られることも重要なポイントであります。各企業における賃上げ努力を促すため、生産性向上に対する支援や適正な価格転嫁措置のための環境づくりなどを進めます。さらには、賃上げをした小規模事業者に対する補助率引上げなど、後押しをしてまいります。 第二に、県内就職の促進であります。人材を県内に呼び込んで定着していただくため、一定期間以上県内で働いていただくことを条件に奨学金の返済免除などの仕組みを設けるとともに、その対象を医学生・専門研修医から県出身大学生、教員、さらには看護師へと順次拡大してまいります。また新年度は、都内に本部を置く大学の学生が県内企業の選考面接に参加する際の交通費支援も創設し、若者の県内就職への動きを促進してまいります。 第三に、移住・定住の促進であります。二〇二二年度の県内への移住者数は、千五百三十一人と調査開始以来三番目に多く、高い水準を保っております。十八歳未満の子供がいる子育て世帯への移住支援金の増額などにより移住・定住の促進を図るとともに、地域の豊かな自然の魅力を生かしたワーケーションや、農業体験とボランティア活動を組み合わせた新たな農泊プログラムなどにより、地域と関わる関係人口の創出・拡大にも取り組んでまいります。 第四に、地域の魅力の発信であります。本県を移住先として、あるいは地域に関心・ゆかりのある応援先として選んでいただくためには、何よりもまず本県の魅力を知り、体感していただく必要があります。 このため、世界で認められる持続可能な観光地域づくり、地域の歴史・文化・伝承などの地域資源の魅力創出に取り組むとともに、移住フェアや観光プロモーションなど、あらゆる機会を捉えて本県の魅力を積極的に発信してまいります。 ○議長(野島征夫君) 子ども・女性局長 村田嘉子君。    〔健康福祉部子ども・女性局長 村田嘉子君登壇〕 ◎健康福祉部子ども・女性局長(村田嘉子君) 新たな岐阜県男女共同参画計画に基づく若者に選ばれる地域づくりに向けた具体的な取組についてお答えいたします。 若者に選ばれる地域づくりには、十分な所得の確保や、やりがいが得られ働きやすい職場の創出が必要です。そのために、賃上げをした小規模事業者に対する補助率の引上げのほか、相対的に女性の賃金水準が低い状況にあることから、ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業の認定に当たって、男女の賃金の差異を把握することを必要項目に加え、賃金格差の解消を促しているところです。 一方、創業意欲のある若者に対して、県内でのスタートアップの創業・育成に向けた支援に取り組んでまいります。また、先進事例を紹介する業種別の勉強会やウェブ講座のほか、コンサルタント等を派遣することにより、企業の働き方改革を促してまいります。 このような取組を行う企業の情報を学生に発信するとともに、奨学金返還支援制度や東京の大学生に対する県内企業の面接参加に要する交通費の支援などにより、若者に選ばれる地域づくりを進めてまいります。 ○議長(野島征夫君) 四十七番 岩井豊太郎君。    〔四十七番 岩井豊太郎君登壇〕 ◆四十七番(岩井豊太郎君) それぞれ御答弁ありがとうございました。 先ほどは、大項目では人口の定常化に向けた取組についてお伺いをいたしました。 次は、人口減少下における活力ある地域づくりについて、五点お伺いしたいと思います。 まず、地域経済の持続的な成長に向けた取組について、お伺いをいたします。 現在、日本経済は、三十年間続いたデフレ経済から完全に脱却し、物価と賃金が循環的に上昇する構造に転換できるかどうかの正念場に立っていると言われております。 昨年は、約三十年ぶりの高水準の賃上げが実現しましたが、世界の主要先進国の中では、いまだ最低水準に位置し、実質賃金はマイナスが継続しております。 岸田政権では経済再生を最大の使命と位置づけ、その中でも特に賃上げを喫緊の課題と位置づけて、政府による公的賃上げの実施、また中小企業や非正規労働者の賃上げに向けた税制の拡大強化、また政労使の意見交換の場での賃上げの呼びかけなどの取組を進めておられます。知事においても、先頭に立って「賃金が上がることが当たり前だ」というような前向きな意識を社会全体に定着させていただきたいと思っております。 一方で、地域の経済を支えている中小企業の中には、業績の改善が十分でないものの、人材を確保するために、いわゆる防衛的な賃上げをしているところも多いのが現状です。 昨年末に岐阜商工会議所が実施されたアンケートでも、今年の賃上げを実施する予定だとする企業が大勢でありましたが、その内容は業績改善ではなく、人材確保のための防衛的な賃上げだとする企業は七割強だったとお聞きしております。 現在、今年の春闘の真っただ中ではありますが、県は中小企業に賃上げを求めるだけでなく、中小企業が賃上げの原資を確保し、持続的に賃上げをすることができるように、中小企業が適切な価格転嫁をしやすい環境づくりや、IoT、AI等のデジタル技術の活用による生産性の向上、また社員の学び直しによる生産性の向上といった中小企業の稼ぐ力の強化に向けた取組に対するこれまで以上の支援が必要になってくると思います。 また、スタートアップによる創業や事業承継による第二創業に対する支援、また企業誘致等により新たな雇用の場を生み出していくことも重要であります。 そうした取組により、人口が減少していく中、人が少なくても地域経済が持続的に成長し、県民が豊かさを実感できる社会を実現することが求められております。そして、それを実現することが県税収入の増加にもつながると思います。 そこで、人口が減少しても地域経済が持続的に成長するため、どのような取組を進めていかれるのか知事にお伺いをしたいと思います。 また次に、農業を取り巻く課題への取組についてもお伺いいたします。 私たちが生きていく上で欠かすことのできない食料を生産・供給する農業と農村地域は、国の基であるとともに、国土や環境を保全する重要な役割を果たしております。 今回の質問に当たっては、その農業・農村を守り活性化するため、県内の農業生産の現場から農業・農村を取り巻く課題をお聞きいたしました。 まずは、やはり農業・農村を支える人材不足の問題を多くお聞きいたしました。水田農業の担い手や園芸農家、また和牛繁殖農家など農家の高齢化が進み、五年後、十年後の生産基盤の縮小は現実的なものとなってきております。また、中山間地域の営農組合では、農業機械のオペレーターの高齢化により組合の解散もしくは耕地面積の縮小を選択せざるを得ない状況にまで追い込まれておられるということです。 こうした状況を改善するためには、新規就農者の育成や定着に向けた継続的な取組が必要なことは言うまでもありませんが、また、生産性の高い農業経営や作業の省力化といった観点から、ロボット、AI、IoTなどの先端技術を活用するスマート農業に挑戦してみたいと考えている農家も多くおられます。県には、そのチャレンジをしっかりと後押しすることも期待されております。 本県農業を担う人材の確保・育成は、一朝一夕にはできない重要かつ喫緊の課題であります。 また、現在、肥料や飼料などの生産資材の価格は高止まりを見せ、生産現場は厳しい状況が続いております。農家の高齢化と相まって、このままでは廃業せざるを得ないという農家の悲痛な声もお聞きしております。 新規就農においても、パイプやビニール、工賃の高騰により、特に施設園芸の新規就農における初期投資費用は大幅に上昇しており、就農を諦めてしまう新規就農希望者もいるとお聞きしております。 当面、物価高騰の影響緩和や食料生産の拡大など、食料の安定供給に向けた取組を継続的に行っていくことが必要であります。 また、環境に配慮した持続可能な農業に対する意識も高まりつつあります。県では、ぎふ清流GAP制度の普及に取り組まれております。しかし、環境に配慮することに伴うコスト上昇分を価格に反映することが難しい現状がある中、どのようにしてGAPに取り組む農家の拡大とGAP農産物の消費拡大に取り組むのかが課題となっております。 また、アフターコロナの反転攻勢が本格化する今こそ、飛騨牛をはじめとした県産農畜水産物のブランド化の取組を加速させることも必要であります。 来年は大阪・関西万博が開催され、二〇三二年には全国和牛能力共進会岐阜県大会が控えております。この機を逃さず、ブランド展開を強力に推進することが大切だと考えます。 農村地域に目を向けますと、農地を守り地域の魅力を発見・発信することで、活力ある農村づくりの実現につながっていきます。 そこで、こうした農業を取り巻く様々な課題がある中で、新年度、県としてどのようなことに取り組んでいかれるのか、知事にお伺いをいたします。 次に、持続可能な観光地域づくりに向けた今後のインバウンドの誘客についてお伺いをいたします。 全国的には、インバウンドがコロナ禍前の水準に回復し、今年は過去最高の三千三百万人となることが予測されております。さらに政府は二〇三〇年にインバウンド六千万人、消費額十五兆円の目標達成を目指しております。 しかし、本県のインバウンドは、全国と比べて回復が遅れているとともに、一部地域への偏在の傾向も見られます。そこでインバウンド誘客を強化するとともに、県の全域にインバウンドを誘客する取組が必要です。 また、今後インバウンドがさらに増加した際には、過度の混雑やマナー違反などにより、住民生活や自然環境に悪影響が出るオーバーツーリズムの発生も懸念されます。 オーバーツーリズムについては、政府も重要課題として位置づけ、昨年十月に対策パッケージを取りまとめ、観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応、地方部への誘客の推進、地域住民と協働した観光振興に取り組んでいるところです。 県内市町村においても、例えば高山市では、日本の文化や習慣に不慣れな訪日外国人に日本の文化を理解し、マナーを守ってより一層旅行を楽しんでいただくために、市長も出演するマナー啓発動画を作成し、ユーチューブで公開するなど取組を始めていただいております。 そこで、オーバーツーリズムの未然防止を含め、持続可能な観光地域づくりに向けた今後のインバウンド誘客の取組について知事にお伺いをいたします。 次に、関ケ原古戦場を核とした周辺地域を巻き込んだ戦国武将観光の推進についてお伺いをいたします。 昨年は、大河ドラマ「どうする家康」が放送され、その追い風を受けて、岐阜関ケ原古戦場記念館の来館者数は前年比五七%増の約十九万五千人で、過去最高を記録いたしました。これは知事をはじめ関係者の皆さんがチャンスをうまく利用した成果であり、大変すばらしいことだったと考えております。 一方で記念館の周辺には、石田三成が入城して西軍の本拠地となった大垣城や、三法師の幼名で知られる織田秀信が城主として攻防戦を繰り広げた岐阜城など、関ケ原合戦や戦国武将ゆかりの史跡が多数点在しております。そうした周辺地域を巻き込み、地域全体また県全体への誘客を図ることが重要だと思います。 昨年末に「どうする家康」は最終回を迎え、今年は大河ドラマの効果は期待できません。そのため、古戦場記念館やフィールドミュージアムとしての関ケ原古戦場、そして県全体の戦国武将観光の本当の実力が試される勝負の年ではないかと思います。 そこで、観光国際部長にお伺いをいたします。 昨年、古戦場記念館の来館者数が過去最高を記録しましたが、周辺地域にどのような波及効果があったのでしょうか。また、過去最高の来館者数を記録した要因の一つである大河ドラマの放送が終了し、今後、関ケ原古戦場を核として周辺地域も巻き込んだ戦国武将観光の推進にどのように取り組んでいかれるのか、お尋ねいたします。 次に、文化イヤーにおける取組とレガシーについて、お伺いいたします。 コロナ禍において、パンデミックの中、文化芸術活動は人々に安らぎや生きる喜びを与えてくれる存在であることが再認識されました。その一方で、文化芸術イベントや地域の祭りの中止や縮小、また文化芸術の鑑賞活動の減少などが多く見られ、文化のもろさが浮き彫りになりました。 そうした中、新年度は本格的なアフターコロナの時代が到来します。知事は折に触れて、新年度はアフターコロナにおける「清流の国ぎふ」の新たな未来を創る政策の本格展開に取り組み、その一環として、新年度を言わば文化イヤーとして位置づけて、「清流の国ぎふ」文化祭二〇二四や清流の国ぎふ総文二〇二四をはじめとした様々な文化交流イベントを展開すると言っておられました。 新年度は、知事の五期目の総仕上げの年でもあります。その節目の年を知事は文化イヤーとして位置づけ、県では多彩な文化交流事業に取り組まれるわけでありますが、それらの取組を通じて、レガシーとして岐阜県に何を残そうとされているのでしょうか。 そこで、文化イヤーとなる新年度、本県の文化をどのように創造・発信し、レガシーとして何を残そうとされているのか知事にお伺いをいたしまして、四回目の質問を終わります。 ○議長(野島征夫君) 知事 古田 肇君。    〔知事 古田 肇君登壇〕 ◎知事(古田肇君) 四点、お尋ねがございました。 まず人口減少下においても、地域経済の持続的成長をどう実現していくのかとお尋ねでございました。 まさにおっしゃるとおり人口減少下で労働力の減少が避けられない中で、地域経済がどのように持続的に成長し、かつ豊かさを実感できる社会をつくっていくかということは県政の大きなテーマでございます。 そのために、まずは一人当たりの生産性の向上ということが第一であります。このため企業のさらなる省人化・省力化に向け、DX推進コンソーシアムを中心に業務の自動化、技術革新への取組を強く支援するとともにDX成功事例の横展開を進め、県内企業に広めてまいります。また、組織を改編し、機能を強化した各務原のテクノプラザものづくり支援センター、こちらではものづくり産業の高度化、省人化を支援するとともに、DX人材の育成やものづくり産業におけるリスキリングを強化してまいります。 加えて、イノベーションを牽引するスタートアップを育成し、新たな産業活力を創出していく必要があると思っております。このため事業化に向けた補助制度を拡充するほか、新たに専門知識とネットワークを有するコンシェルジュを設置し、支援を強化してまいります。 また、県の試験研究機関において、半導体関連部材の製造技術の開発を進めるなど、県内企業のイノベーション創出を支援してまいります。 一方で、将来にわたって人手不足が慢性的に生ずるとともに、国内市場そのものが縮小していくという現実に向き合い、対策を講じていかなければなりません。 このため、先ほども御答弁申し上げましたけれども、各種の奨学金制度により若者の県内就職を促進するとともに、大学・高校と連携したキャリア教育を推進し、人材の確保・育成を図ってまいります。さらに外国人材の活用とともに、障がい者、女性、高齢者など様々な潜在的労働力の活用に向け、短時間勤務や在宅勤務など、多様な働き方改革を企業に提案してまいります。 また、国内市場の縮小を見据え、グローバル・アンテナ・ショップの拡大を図るなど、県産品や県農畜水産物の海外展開を強化し、海外需要の開拓を進めてまいります。 こうした地域経済の持続的な成長とともに、県民生活、企業活動における幸せと豊かさを実現することで、地域社会の活力を生み出せるような環境をつくっていくことが重要でございます。 この点に関しては、この後の答弁で詳しく述べますが、観光、文化など多面的な観点から県の魅力を高めることで、人や企業が集まる地域づくりを進めてまいります。 次に、農業についての県の取組についてお尋ねがございました。 世界的な異常気象や国際情勢の緊張に伴う食料生産・供給の不安定化、人口減少・高齢化に伴う担い手不足の深刻化や国内市場の縮小など、農業・農村を取り巻く環境も大きく変化をしておりまして、大変厳しい状況が続いております。 このため、昨年三月には、食料安全保障の強化を重点施策に追加するなど、ぎふ農業・農村基本計画の中間見直しを行ったところでございます。来年度は、この基本計画の四つの基本方針に基づいて、課題に一つ一つ丁寧に対応してまいりたいと思っております。 まず第一の課題が、農業・農村を支える人材育成であります。多様な担い手の確保に向け、生き生きと働く女性農業者をモデルにしたキャリアパス事例集の作成や、繁忙期が異なる産地間で連携した外国人材の有効活用の仕組みづくりを進めてまいります。また、農畜産公社内にぎふ農福連携推進センターを四月に開設いたしまして、新たな担い手の確保にこれをつなげてまいりたいと思っております。 第二に、安心で身近な食づくりでございます。食料安全保障の強化に向けて、海外から国内転換へつなげるため、例えば米粉用米や飼料用米の生産拡大を進めるとともに、トマトハウスなどの高温対策技術の開発を進め、気候変動にも対応してまいります。 また、農業の生産工程管理を評価するぎふ清流GAP制度につきましては、販売フェアを拡大し、消費者や仲卸業者への認知度向上を図ってまいりたいと思います。 さらには家畜伝染病対策として、新たに農場を分割管理する施設整備への支援を行い、畜産物の供給の安定を図ってまいります。 第三に、農畜水産物のブランド展開でございます。アフターコロナの反転攻勢を加速させるため、県独自の海外プロモーションに加えて、新たに他県とも連携した輸出戦略を展開してまいります。飛騨牛については、令和九年度開催の全国和牛能力共進会での日本一奪還に向け、肉量の改善につながる飼料の開発を進めてまいります。 また、清流長良川の鮎を守るため、電気ショッカーボードを追加導入し、関係機関と連携してコクチバスの完全駆除を目指してまいりたいと思います。 第四に、地域資源を生かした農村づくりでございます。自生の薬草を活用した薬草の里づくりプロジェクトを展開するとともに、農泊プログラムの開発など都市農村交流の取組を強化してまいります。 あわせて、農業生産の基盤となる農地の大区画化を進めるとともに、能登半島地震を踏まえて、農業用ため池の耐震化にも取り組んでまいります。 次に、今後のインバウンド戦略についてでございますが、本県のインバウンドは、当面首都圏や関西圏などの急速な回復と比べますと緩やかではありますが、昨年一年間の外国人延べ宿泊者数は百十万人を超えるということで、着実に回復してきております。 先月の春節期間には、アジア最大級の旅行予約サイトによる旅行先順位で、本県は東京、大阪、北海道、京都に続く全国第五位となっておりまして、これまで実施してきた海外誘客プロモーションが実を結びつつあるというふうに実感をしております。 今後は、飛騨地域に比べ入り込みが少ない美濃地域にもインバウンドを呼び込み、県内での観光消費を拡大させるべく、次の三つの視点で取組を強化してまいりたいと思っております。 第一に、県全域への誘客促進であります。まずは定番の中部国際空港経由に加え、今月には敦賀まで延伸する北陸新幹線を活用した北陸からのルート、大阪・関西万博を意識した関西からのルートなどにも着目し、外国人旅行者の誘客を進めてまいります。 その上で海外の現地旅行会社と連携し、定番の飛騨高山・白川郷に加えて、岐阜未来遺産の飛騨小坂や恵那岩村、東海環状自動車道の全線開通により今後利便性が増す関ケ原や大垣など、県南部地域でさらにもう一泊していただく旅行商品を集中的に造成し、県全域への誘客を促してまいります。 第二に、高付加価値化による消費拡大であります。本県のインバウンド一人当たりの消費単価は、観光庁の直近公表値で令和五年七月からの第三・四半期が四万一千円と、コロナ禍前の令和元年同期の二万五千円から大きく上昇しております。 この傾向をさらに進めるべく、県内の宿泊施設において食事の品質向上、おもてなしなどにより単価を高めるとともに、薬草料理体験や滞在型の美濃手すき和紙体験など、地域ならではの高付加価値旅行商品の造成を進めてまいります。 第三に、オーバーツーリズム、いわゆる観光公害の未然防止でありますが、現在県内でも白川村など一部地域でそうしたことが問題視されております。今後美濃地域も含めて、こうした問題の広がりも懸念されるところであります。 そこで、持続可能な観光地域づくりに向けて、観光客受入れの進め方についての住民参加による勉強会、観光客向けマナー啓発、交通渋滞緩和対策、集客イベントでの事前チケット制の導入など、地域ぐるみでの取組を支援してまいりたいと思います。 こうした取組により、令和九年には、二百万人を超える外国人延べ宿泊者の獲得を目指してまいりたいと思っております。 次に、文化イヤーにおける取組についてでございます。 以前読んだ民俗学者の柳田國男の説でありますが、全国にあまたある祭りは似通っている部分はあっても全く同じものは一つとしてないと、長年にわたって地域で受け継がれ、培われていく中で、地域独自のものになっていくものだというふうに理解できると言われております。言い換えれば、祭りは地域のアイデンティティーを確認することができるものというふうに考えられておるわけであります。 このたびの「清流の国ぎふ」文化祭二〇二四と清流の国ぎふ総文二〇二四を開催する来年度は、まさに岐阜県にとっての文化イヤーであり、本県のアイデンティティーである清流文化、言わば川で県民、地域、自然、歴史、伝統がつながっている文化を改めて確認するとともに、さらなる創造・発信を展開してまいりたいと考えております。 具体的には、「ともに・つなぐ・みらいへ」とのスローガンの下で、大きく五つの柱で取組を進めてまいります。 一つ目は、地域の発見・発信であります。県民の皆様が自ら地域文化の担い手として共に参加し、自らの地域の魅力を見つけ創造する清流文化地域推し活動、愛称「ちーオシ」と言っておりますが、これを進めてまいります。 二つ目は、文化が持つ力の検証であります。文化がもたらす人の心と体の健康への影響に関する岐阜大学と東京藝術大学の共同研究にのっとった「文化的処方プログラム」、あるいは立場や環境、障がいの有無に関わらず共に生きる社会の在り方を創造する「文化芸術共創プログラム」といったことに取り組んでまいります。 三つ目は、自然と文化の関わりであります。自然、歴史、文化など様々な地域資源を掘り起こし、アートの力によって地域に新しい価値をもたらすアートプロジェクトを、例えば飛騨と美濃の結節点である下呂市の自然の中で展開してまいりたいと思っております。 四つ目は、伝統技術の保存・継承であります。 「匠の国ぎふ」を支える伝統技術を継承するに当たり、調達が困難になっている道具の確保などについて、調査、相談、展示、ワークショップなどを実施してまいります。 最後に、世界に開かれた交流であります。これまでの取組の成果として、陶芸、音楽、舞踏などをテーマに、ハンガリー、フランス、リトアニア、ポーランドなどと様々な交流事業を展開してまいります。 「清流の国ぎふ」文化祭二〇二四はこれらの取組の集大成であるとともに、未来へのスタートとして開催いたします。 また、昨年、この国民文化祭を開催した石川県が本年一月に発生しました能登半島地震により甚大な被害を受けておるわけであります。したがって、「清流の国ぎふ」文化祭二〇二四は、石川県の馳知事にも御賛同いただきましたが、石川県にも参加していただいて、震災からの一日も早い復興を祈念する文化祭ということで開催してまいりたいというふうに思っております。 冒頭申し上げましたとおり、祭りは一夜限りで終わるものではなく、後世に受け継いでいくことで地域のアイデンティティーとなっていくものであります。 したがって、県民の皆様と共に次の世代へとつなぎ、明るい未来へ向かってまいりたいと考えております。 ○議長(野島征夫君) 観光国際部長 丸山 淳君。    〔観光国際部長 丸山 淳君登壇〕 ◎観光国際部長(丸山淳君) 関ケ原古戦場を核として周辺地域を巻き込んだ戦国武将観光の推進について、お答えいたします。 昨年は、岐阜関ケ原古戦場記念館での大河ドラマ展、関ケ原合戦ゆかりの史跡や戦国武将のPR、愛知県、静岡県と連携した広域周遊ラリーなど、多彩な事業を展開いたしました。その結果、古戦場全体には過去最高の約三十万人の方が来訪され、記念館来館者の二割が大垣城や岐阜城を訪れるなど、周遊観光につながりました。 今後は、こうした成果を持続発展させるため、県内二十二の市町による岐阜戦国・武将観光推進連絡会とともに、関ケ原古戦場とゆかりの史跡や武将、山城などを全国の武将イベントや首都圏等のメディアを招聘したPR活動などにより、全国へ訴求してまいります。 加えて、冠山峠道路の開通効果を生かし、福井県の一乗谷朝倉氏遺跡博物館との連携など、西濃を玄関口とした広域周遊観光を促進してまいります。 また、先月には、アメリカ最大の国際旅行博において、「サムライ」をテーマに甲冑の展示や着用体験と併せて関ケ原古戦場をPRしたところ、多くの来訪者から好評を得ました。引き続き関係市町とも連携し、インバウンド誘客を推進してまいります。 ○議長(野島征夫君) 四十七番 岩井豊太郎君。    〔四十七番 岩井豊太郎君登壇〕 ◆四十七番(岩井豊太郎君) 知事さんから心温まる答弁ありがとうございました。 最後に、持続可能で安全・安心な暮らしの確保について、四点お伺いいたします。 まず新品種・生産技術の開発に向けた、農業系試験研究機関の体制強化についてお伺いをいたします。 現在、農業系試験研究機関が取り組むべき課題として、気候変動対策、ブランド力の強化、また環境負荷低減対策等が挙げられます。 まず、気候変動については、近年農業に大きな影響を及ぼしております。例えば稲作では、昨年夏の猛暑により高温障害が発生し、農林水産省によると、二〇二三年産の米の一等米比率は全国平均が昨年十二月末時点で六一・三%となり、現行調査が始まった二〇〇四年以降で最低となる見通しです。その中で本県は、五三・一%で、全国平均を下回っております。現場からは、特にコシヒカリにおいて、高温障害による品種劣化が顕著になっているとお聞きしております。 また、夏秋トマトでは、高温でも収量性が高い品種への切替えが進められているとお聞きしております。 このように生産現場からは、米をはじめとした作物全般について、暑さに強い品種の育種や対策技術の開発を強く求める声をお聞きしております。 次に、県産農畜水産物のブランド力の強化については、付加価値が高い新品種・新品目の育成が欠かせません。県内各地域の気象条件に適した品種や生産技術が必要であります。 さらに環境負荷低減対策については、化学肥料や化学農薬使用量の低減を図っていくためには、対応する技術開発も必要であります。 こうした研究を進めていくためには、農業系の試験研究機関の体制強化が必要であります。 品種改良や生産技術の開発等には長い年月が必要となります。このため研究に関わる職員を育て、また研究機関として技術水準を維持・向上していくことが求められております。 そこで、農業系試験研究機関において、人材育成をはじめとして体制強化に向けてどのようなことに取り組んでいかれるのか、農政部長にお伺いをいたします。 次に、木材需要の変化に対応した林業改革についてお伺いをいたします。 人口減少により新設住宅着工戸数も減っていく見通しの中で、木材の新たな活用の糸口として、木質バイオマスへの対応が重要になってくると考えられます。 民間の研究所の予測では、今後全国の住宅着工戸数は、二〇二二年度の八十六万戸が二〇四〇年度には五十五万戸になると言われております。 一方で、二〇二二年の県産材五十七万五千立方メートルの活用割合は、製材用が四五%、また合板用が一二%、製紙用が一一%、燃料用が三二%となっており、燃料用の需要が大きなウエートを占めております。 さらに二〇二三年度には、県内で木質バイオマス発電施設が新たに二か所稼働したことで、間伐材等の未利用材による燃料材の需要が約九万八千立方メートル増えております。製材用の需要が減少する中で、安定的に大量の木材を消費する木質バイオマス発電施設は、大口需要先となってきております。 縮小していく住宅需要に頼っていては林業の仕事も少なくなり、携わる森林技術者が減少していくことになります。その結果、森林を適切に管理できなくなり、山地災害の発生が危惧されます。地球温暖化防止のためにも、切って植える林業を持続していく必要があります。製材用材の生産を目的とする林業だけでなく、木質バイオマス燃料の生産を目的とした林業にも取り組むことを真剣に考える時期になっているのではないかと思います。 そこで、カーボンニュートラル社会と持続可能な林業を実現するためにも、木材需要の構造が大きく変化している中、県としてどのようなことに取り組んでいかれるのか、林政部長にお伺いをいたします。 次に、地域格差のない医療提供体制の整備に向けた取組について、お伺いをいたします。 本県は、医師偏在指標が四十七都道府県中三十五位で医師少数県であり、県内において医師の地域偏在が問題となっております。 また、県内には、無医地区や準無医地区と呼ばれる容易に医療機関を利用することができない地区が、二〇二二年十月現在、それぞれ六か所と十一か所存在しております。 さらに今後、医師の残業規制の影響や人口減少の進展による医療従事者の減少により、県民の医療へのアクセスに関し、地域間の格差が拡大することが懸念されます。 県としては、これまで岐阜県保健医療計画に基づき、僻地を含めた地域医療の充実に向けて、医師確保対策として様々な取組を進めていただいておりますが、近年スマートフォンのビデオ通話機能などを用いたオンライン診療への期待が高まっております。オンライン診療であれば、近くに診療機関がない地域にお住まいの方でも、自宅や施設等にいながら医師の診察を受けることができます。 コロナ禍においては、非対面で行えるオンライン診療の利用が広がりましたが、国においてはオンライン診療をさらに推進するため、昨年僻地等において、医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設を特例的に認めるなど、診療報酬を含めて制度の拡充を進めております。 高齢者には、スマートフォンなどの情報通信機器の使い方に慣れていない方も多いことから、その点をどうサポートしてオンライン診療を利用していただくかなど、まだまだ課題はありますが、そうした課題を一つずつ解消しながら、医師不足に対応する手段の一つとして、県においてもオンライン診療を一層推進していただきたいと考えております。 現在県では、保健医療計画の改定を進めておられます。新しい保健医療計画に基づき、オンライン診療などデジタル技術を活用しながら、僻地の問題も含めて地域医療の充実を図り、医療の面からも地域間の格差をなくして、県民の皆さんに岐阜県に生まれてよかったと思っていただける、そのような医療体制の構築を期待しております。 そこで、県内のどこに暮らしておられても県民が安心して医療を受けられる体制の整備に向けて、次期岐阜県保健医療計画に基づき具体的にどのような取組を進めていかれるのか、健康福祉部長にお伺いいたします。 最後に、次期岐阜県がん対策推進計画が目指す姿と、その実現に向けた取組についてお伺いをいたします。 日本人の二人に一人はがんにかかり、四人に一人はがんによって亡くなっており、がんは日本の国民病とも言われております。さらに今後高齢化の進展により、がんに罹患する方の数は増加していくことが見込まれております。 一方で、医療技術は進歩が著しく、全てのがんの五年生存率は上昇しております。そのため県内のどこに住んでいても、そうした適切ながんの治療を受けることができる医療体制を構築することが重要であります。 また、県内では、がん患者の約二割が二十歳から六十四歳までの就労可能な年齢でがんに罹患しておられます。そうした方々が、がんにかかった後も働きながら治療を受けることができるように、しっかりと支援していくことも重要だと思われます。 丹藤健康福祉部長は自らのがん闘病の経験を生かし、誰もががんと共生できる社会をという考えの下、県のがん対策推進計画の策定に力を入れているとお聞きしております。 そこで、次期岐阜県がん対策推進計画の推進によって、どのような社会を目指すのか、またその実現に向けて新年度具体的にどのような取組を進めていかれるのか、健康福祉部長にお伺いをいたします。 以上、県政各般にわたり質問させていただきました。御清聴ありがとうございました。    (拍手) ○議長(野島征夫君) 農政部長 足立葉子君。    〔農政部長 足立葉子君登壇〕 ◎農政部長(足立葉子君) 新品種・生産技術の開発について、農業系試験研究機関の体制強化について、お答えいたします。 現在、研究員の半数が五十歳以上であり、今後ベテラン研究員の急速な減少が見込まれる中、これまでに蓄積した技術やノウハウをいかに若い世代に継承するかが課題となってまいります。 このため、若手研究員を対象とした人材育成計画を作成し、専門分野に関連する幅広い知識・技術を短期間で習得できるよう、ベテランの研究員や普及指導員が計画的に研修を行ってまいります。また、知的財産管理や研究倫理など共通する知識については、研究機関が連携して研修できる仕組みを整えてまいります。 さらに、ゲノム解析やAIなど複雑化・高度化する課題に対応するため、国や大学などとの共同研究や研修により、高度な研究スキルの習得と人的ネットワークの構築を図ってまいります。 これらにより将来の試験研究を担う人材を計画的に育成することで、気候変動や環境負荷低減などに対応した品種や生産技術などの研究開発に継続して取り組む体制づくりを進め、研究機関の技術水準の向上を図ってまいります。 ○議長(野島征夫君) 林政部長 久松一男君。    〔林政部長 久松一男君登壇〕 ◎林政部長(久松一男君) 木材需要の変化に対応した林業改革について、お答えします。 県内の木材生産量に占める木質バイオマス発電などに使われる燃料材の割合は、平成二十六年の一割未満から令和四年は三割へと大幅に増加しており、需要の変化に柔軟に対応して森林づくりを進める必要があると考えております。 このため、来年度から新たに木質バイオマス産業担当部署を設置し、燃料材の植栽から利用までを一元的に取り組んでまいります。 燃料材は、品質は問いませんが、製材や合板用に比べ価格が安いことから、できるだけコストをかけずに、短期間でより多くの量を生産する必要があります。 このため、まずは早く大きく成長する早生樹の試験植栽などの調査・研究を拡充し、施業体系を構築してまいります。あわせて、スマート林業の導入による省力化や低コスト化、技術者の育成を一体的に進める中長期的なロードマップを策定し、燃料材主体でも収益が期待できる多様な森林づくりを目指してまいります。 ○議長(野島征夫君) 健康福祉部長 丹藤昌治君。    〔健康福祉部長 丹藤昌治君登壇〕 ◎健康福祉部長(丹藤昌治君) 地域格差のない医療提供体制の整備に向けた取組について、お答えを申し上げます。 これまで県では、医師総数の確保とともに地域偏在対策にも取り組んでまいりましたが、全国的に見ると本県は依然として医師少数県であり、地域差もあります。こうしたことから、次期保健医療計画では、県内どこで暮らしていても安心して医療を受けられる体制を目指して、様々な取組を進めていくこととしています。 具体的には、医学生修学資金の貸付け等による医師確保・偏在対策をさらに進めるとともに、僻地医療拠点病院等による中山間や僻地の医療機関への医師派遣を支援してまいります。 また、デジタル技術を活用した取組として、医師が常駐しない僻地診療所や無医地区の集会所で、看護師のサポートを受けながらオンライン診療が実施できるよう既に支援を行っております。 加えて来年度からは、医師不足地域の医師を中核病院の専門医が支援するため、ICTを活用した遠隔画像診断等を行う医療機関を支援するなど、地域格差への対応をさらに進めてまいります。 次に、次期岐阜県がん対策推進計画が目指す姿と、その実現に向けた取組についてお答えを申し上げます。 県では、現在策定中の第四次岐阜県がん対策推進計画において、三つの柱に沿って様々な対策を進めていくこととしております。 一つ目、がん予防では、がんを早期に発見し治療につなげるため、県民公開講座や広報紙による啓発に加え、市町村と連携して、がん検診の自己負担の無料化などに取り組みます。 二つ目、がん医療では、県内どこに住んでいても適切な医療が受けられるよう、ゲノム医療や希少がんなど、各拠点病院が得意な分野への機能集約を進めるとともに、連携を強化してまいります。 三つ目、がんとの共生では、がん相談支援センターと連携した相談対応や情報提供、普及啓発のほか、労働局等と連携して、がん患者と企業を対象に仕事と治療の両立支援セミナーを開催いたします。 これらの取組を通じて、がんに罹患しても住み慣れた地域で安心して暮らしていける社会の構築を目指してまいります。 私自身もがんの治療中の身でありますが、患者としての視点も生かしつつ、こうした対策に取り組んでまいりたいと考えています。…………………………………………………………………………………………… ○議長(野島征夫君) ここでしばらく休憩いたします。 △午後零時休憩 …………………………………………………………………………………………… △午後一時再開 ○副議長(田中勝士君) 休憩前に引き続き会議を開きます。…………………………………………………………………………………………… ○副議長(田中勝士君) 引き続き一般質問並びに議案に対する質疑を行います。十三番 伊藤英生君。    〔十三番 伊藤英生君登壇〕(拍手) ◆十三番(伊藤英生君) 議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、県民クラブを代表して質問させていただきます。 まず、令和六年能登半島地震で亡くなられた方にお悔やみを申し上げるとともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。余震が続く中、不安な思いで過ごされている方も多いと存じます。県民クラブといたしましても執行部や関係機関と連携を取りながら、被災者支援、復旧復興に全力で取り組んでまいります。 それでは、最初にさらなる持続的賃上げに向けた取組について、二点お聞きいたします。 一点目は、賃上げに対する知事の思いと今後の県の取組について、知事にお尋ねいたします。 今、本県経済における最も重要な課題は賃上げだと思います。 賃金が上がれば、単純に所得が上がり、それをもって貧困の軽減、企業の生産性向上、地域間格差の縮小、社会福祉の向上などの本県が抱える様々な課題が直ちに解決するとまでは言いませんが、少なくとも明るい方向に導く力になると思っています。 前回二〇二三春闘では賃上げ率三・五八%と三十年ぶりの高水準を実現しました。これは四半世紀余り続いた、企業が価格を据え置き賃金も上がらないという慢性的なデフレサイクルから脱却した転換点となったと受け止めております。しかしながら、その賃上げが急激な物価上昇に追いついていない現状があります。 本県の二〇二三年十月までの一年間の名目賃金の増加率は三・一%でしたが、物価変動率と比べて正味の購買力を示す実質賃金の増加率はマイナス一%となっています。 そうした中、昨年二月、与党と国民民主党は国会内で賃上げに関する実務者会議を開き、政府、経済界、労働団体による政労使会議の早期開催が望ましいとの認識で一致しました。政労使会議とは、政府、経済界、労働界の代表者によって、総理官邸で開かれる会議のことで、三者が雇用をめぐる課題などについて話し合います。 そうした流れを受けて、昨年三月に八年ぶりに政労使会議が開催され、岸田首相と連合の芳野会長、経団連の十倉会長らが賃上げに向けた環境整備の必要性などで認識が一致し、自動車や電機といった大手企業が労組要求に満額回答するなど、高水準の賃上げが相次いだのは記憶に新しいところです。 続く十一月の第二回会合で、連合の芳野会長は地方版政労使会議を春闘に合わせて開催することを提案しました。二〇一五年度から開始されたこれらの会議では、これまで特定の議題を設定せずに労働環境の改善等について話し合われてきましたが、先般、厚労省は賃上げを議題に含めるよう全国の労働局に通達しており、二〇二四年の春闘では賃上げを促進する機運が全国的に高まっています。 本県におきましても、本年一月十五日に経済界・労働団体などから成る岐阜県経済・雇用再生会議が開催され、県からの提案で県内企業の賃上げ、価格転嫁の取組状況と対応について意見交換を行い、知事も出席されたとお聞きしております。この会議が事実上の岐阜県版政労使会議と位置づけられるものと承知しておりますが、その中での議論がどのように、今議会に上程されております二〇二四年度予算案に盛り込まれたのか気になるところです。 先ほど、大手企業で高水準の賃上げが相次いでいるとの話題を出しましたが、中小企業においてはその限りではありません。 岐阜県産業経済振興センターが行った賃上げに関する特別調査の結果によると、従業員三百人以上を抱える企業の中で賃上げを実施した企業の七一・四%がベースアップを行い、これは前年比で約二十六ポイントの大幅な増加を示している一方で、従業員数が一人から十九人の企業では、賃上げを行った企業の五二・二%にとどまり、増加率は約三ポイントにとどまっています。 現在、事業者においては原材料費、エネルギーコストのみならず、賃上げの原資である労務費の転嫁が急務となっており、とりわけ雇用の七割を占める中小企業においては、賃上げ原資を確保できていない傾向にあることから、取引環境の整備等が喫緊の課題となっています。 また、二〇二〇年五月に、関係閣僚と経団連会長、日商会頭、連合会長をメンバーとする未来を拓くパートナーシップ構築推進会議において、パートナーシップ構築宣言の仕組みが創設されました。パートナーシップ構築宣言とは、サプライチェーン内の取引先や事業者と協力し、連携及び共存共栄を目指して新たなパートナーシップを構築する意志を、発注者側の立場から企業代表の名で公に表明するものです。 この趣旨に賛同し、岐阜県内においても七百を超える事業者が登録するなど、その取組の輪は確実に広がっております。 しかし、公正取引委員会と中小企業庁の最近の調査によると、宣言を行った事業者数の増加にもかかわらず、宣言の本旨が自社の調達部門や取引現場に完全に浸透していない企業が存在することが問題として指摘されており、宣言の実効性を高めることが急務となっております。 そこで、知事にお尋ねいたします。 知事の賃上げに対する思いと、さらなる持続的な賃上げの実現に向けて、県としてどのように取り組んでいくお考えかお聞かせください。 続いて二点目は、中小企業における労務費の適切な転嫁を促すための価格交渉に対する支援について、商工労働部長にお尋ねいたします。 各事業者は、価格交渉に際して独自の資料を用意し臨んでいるのが現状ですが、それでは受注者にとっても発注者にとっても、そのエビデンスが適正なものか客観性に欠けるという課題があります。 公正取引委員会は令和五年十一月に、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針を発出いたしました。当該指針では、発注者として取るべき行動、求められる行動として、労務費上昇の理由の説明や根拠資料の提出を受注者に求める場合、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率など公表資料に基づくものとし、受注者が公表資料を用いて提示する希望価格については、これを合理的な根拠があるものとして尊重することなどが挙げられております。 ここで、自治体が公表資料のベースをつくり、価格交渉の支援を行っている事例がありますので、皆様にも御紹介したいと思います。 (資料を示す)お手元にも配っておりますけれども、埼玉県では企業の適切な価格転嫁を支援するため、価格交渉支援ツール及び収支計画シミュレーターを提供しております。 価格交渉支援ツールは、企業間で取引される様々な原材料やサービスの価格について、自由に選択し、価格の推移と増減をグラフ化することができます。 ちょっと似たようなものになりますけれども、またこの収支計画シミュレーター、こちらは価格転嫁の有無が今後の企業収益に与える影響をシミュレーションできるツールです。 価格交渉を行う際には、原材料価格の推移の根拠資料が必要となる場合があります。このツールは、表計算ソフトを使用して、主要な原材料価格の推移を示す資料を簡易に作成できる点がメリットでございます。 埼玉県が約一年前に開発し、日銀から新しいデータが提供されるたびに更新しており、ダウンロード件数はシステム上カウントできないものの、ダウンロードページのページビュー数は約三万五千件に上っているとのことでございます。 開発に携わった埼玉県の担当職員にお聞きしたところ、埼玉県内の企業から、発注元に価格交渉のエビデンスとなる資料を求められ苦労してきたが、県がこうした資料を公開してくれるのはとてもありがたいとの声や、価格交渉のみならず、社内会議資料にも利用しているとの声が寄せられているとのことでございます。 また、金融機関と連携して周知を図っている中で、様々なインプット価格の高騰を仮定して、収益やリスクをシミュレートしている、BtoBだけでなく、BtoC、具体的には、工事代金等の見直しに納得いただけないエンドユーザーのお客様にも利用しているとの声が寄せられているとのことでございます。 担当者は、このツールを幅広い皆様に御活用いただき、労務費を含めた価格転嫁につなげることで、持続的・構造的な賃上げにつなげていきたいと述べておられました。 この価格交渉ツール自体は、ありがたいことに全国誰でも自由に使うことができます。そのため、本県で同じようなものを重ねて開発する必要はないと思いますが、エビデンスを示すための岐阜県にカスタマイズした情報の提供を行うなど、取り入れるべき部分はあるのではないかと考えます。 そこで、商工労働部長にお尋ねいたします。 中小企業における労務費の適切な転嫁を促す価格交渉に対して、県としてどのように支援していくのかお聞かせください。 ここで一回目の質問を終わります。 ○副議長(田中勝士君) 知事 古田 肇君。    〔知事 古田 肇君登壇〕 ◎知事(古田肇君) 私には賃上げについてのお尋ねがございました。 御案内のように、日経平均株価がバブル期を超えて史上最高値を更新するなど、景気は回復の兆しを見せてはおります。一方で消費者物価指数が二十九か月連続で上昇するなど物価高騰が続いており、物価上昇分を除いた県内企業の実質賃金指数は、直近一年のうち九か月で前年比マイナスとなっております。この実質賃金の減少は、個人消費の落ち込み、経済の縮小にもつながっていくわけであります。 成長の果実を適切に分配し、消費拡大からさらなる成長へとつながる好循環をつくり出すためにも、物価上昇を上回る持続的な賃上げは喫緊の課題であるというふうに考えております。 県内の賃上げの状況を見ると、先ほども御紹介ありましたが、県産業経済振興センターの調査によりますと、二〇二三年の県内企業の賃上げ実施率でございますが、昨年十二月時点で七八・七%と、前年に比べて六・六ポイント上昇しております。ただし、規模別では一人ないし十九人の小規模事業者の実施率が六八・〇%、業種別では商業部門が六六・四%と相対的に低くなっております。 また、県の経営者協会による二〇二四年の賃金改定動向アンケートによりますと、昨年の賃上げを超える企業は三二・四%、同程度と回答しているのが五〇%と、総じて昨年以上の賃上げという見込みでございます。ただし、賃上げ原資の確保には、生産性の向上と適正な価格転嫁が必要との意見が多く見られております。御指摘の岐阜県経済・雇用再生会議におきましても同様の意見がございました。 そこで、県としては、まず、生産性向上に向けて、企業の設備投資やイノベーション創出を支援してまいります。このため、賃上げの実施率が低い小規模事業者の事業転換・業態転換に必要な設備投資などを支援する補助金を創設するとともに、技術の高度化や新製品開発のための機器導入を支援してまいります。また、県の試験研究機関において、県内企業と共同で生産性向上や競争力強化に向けた製造技術の開発を進めるなど、県内企業のイノベーション創出を支援してまいります。 さらに、企業の省人化・省力化や人材の育成により、一人当たりの生産性を向上することも重要であります。このため、テクノプラザものづくり支援センターやDX推進コンソーシアムが中心となりまして、業務の自動化・効率化を支援するとともに、DX人材の育成やものづくり産業におけるリスキリングの強化を図ってまいります。 一方で、県内の中小・小規模事業者からは、賃上げのために身を削る努力をしているものの、それにも限界があり、さらなる賃上げを実施するためには、価格転嫁せざるを得ないとの声が上がっております。こうした価格転嫁を円滑に進めていくためには、関係企業の適切な対応が不可欠であります。これに関しては、御指摘の岐阜県経済・雇用再生会議におきまして、企業の価格転嫁を促すため、関係団体による協定締結の提案がございました。これを県から広くお声がけしましたところ、近く二十三団体に及ぶ適正な価格転嫁の推進に向けた協定締結の運びとなっております。 また、県としても、企業間取引の適正化によるサプライチェーン全体の共存共栄を目指すことを表明するパートナーシップ構築宣言を行った企業に対して、県制度融資の最も低い利率を適用するとともに、補助金の加点措置を実施しております。 以上のほか、賃上げした小規模事業者への補助金の補助率を引き上げることや、県のプロポーザル方式の契約審査項目の一つにパートナーシップ構築宣言や賃上げの実施を追加することにより、賃上げの実効性の向上を図ってまいります。 ○副議長(田中勝士君) 商工労働部長 三木文平君。    〔商工労働部長 三木文平君登壇〕 ◎商工労働部長(三木文平君) 中小企業における労務費の適切な転嫁を促す価格交渉に対する支援についてお答えします。 県中小企業団体中央会が昨年七月現在で実施した調査によると、原材料の価格転嫁を行った、または行う予定の企業は約八割であったのに対し、人件費引上げ分の転嫁は約三割にとどまっています。 労務費の適切な価格転嫁の交渉に当たっては、昨年十一月、国において発注者・受注者の取るべき行動を示した指針が示されました。その中では、国や県が作成した統計結果などの公表資料を用いて価格交渉を行うことの合理性が認められています。この点、御紹介のありました埼玉県の支援ツールは、全て全国値ではありますが国の統計結果を用いて作成されており、本県企業にも有用なツールと考えております。 そこで、県では先日、このツールをはじめ、本県の各種統計指標をまとめたぎふ経済レポート、国が作成した価格交渉ハンドブックなどの公表資料と、国や県の賃上げに向けた支援策や相談窓口情報を掲載したホームページを開設しました。交渉に役立つ様々な情報をまとめたものであり、広く県内企業に活用を呼びかけてまいります。 ○副議長(田中勝士君) 十三番 伊藤英生君。    〔十三番 伊藤英生君登壇〕 ◆十三番(伊藤英生君) ありがとうございました。 続きまして、被災地への人的支援の経験を生かした本県の災害対応力の強化について、知事にお尋ねいたします。 今年一月に発生した能登半島地震から二か月以上が経過いたしました。この間、岐阜県からは多くの職員や関係者が被災地支援のため派遣されました。ここに、その献身的な努力に対し、深い敬意を表したいと思います。 さて、去る二〇二四年一月十五日、被災地支援のため郡上市一名、美濃加茂市二名、可児市二名、富加町一名、白川町二名、御嵩町一名、計九名の市町村職員が、県の中濃総合庁舎からバスで出発しました。私もその出発式に参加し、皆様に感謝を伝えるとともに、けがなどないように気をつけていただくと同時に、もし自分のまちでこの災害が起こった場合、どう対応するのかという視点で活動に当たってくださいと、大変上からのようで恐縮ではございますが、お願いを申し上げさせていただきました。 被災地での経験は、我々岐阜県にとって貴重な財産です。様々な支援活動を通じて、岐阜県が将来的に直面するかもしれない災害への対応策に関して、新たな課題やニーズが明らかになってきたと存じます。これらの課題を共有し、県の防災体制の向上に役立てていく必要があると考えます。 さて、近年、レジリエンスという概念が注目されています。これは、災害や気候変動などの危機に際して、地域社会が持続可能な発展を目指しつつ、回復力や適応力を発揮する能力を指しますが、我が国では、毎年のように大規模な自然災害に見舞われており、県民が迅速に元の生活に戻れるような体制を構築することが求められます。 レジリエンスの概念を自治体の政策に落とし込んだ場合、これはレジリエントシティーという概念になりますが、OECDが二〇一六年に出したレジリエントな都市という報告書によりますと、このレジリエントシティーの構成要素として次の七つの構成要素が挙げられております。 一つ目が適応力でございます。前例や現在の慣習を見直し、実証的に問題解決に取り組み、過去の経験から得た知識を将来の意思決定に応用することによって、不明瞭な要素を管理する能力。 二つ目が堅牢性でございます。ショックを吸収し、その機能に重大な損失なしに立ち直ることができる能力です。 そして、三つ目が冗長性でございます。予期せぬニーズや破壊的事象、極端なプレッシャーに対応する余力のことでございます。 四つ目が柔軟性でございます。個人、家庭、企業、地域社会と政府が様々な変化に迅速に対応するために、動作や行動を調整することができる能力でございます。 五つ目が豊富な資源でございます。危機または極度の制約条件下でも、手持ち資源で、効果的かつ迅速に必要不可欠なサービスやシステムの機能を復元する能力でございます。 六つ目が包括性でございます。多様な主体やコミュニティーが、草案段階を含む政策決定過程において、十分に意見を聴取され、参画することを保証する仕組みでございます。 そして、七つ目が統合性でございます。一貫性のある意思決定と効果的な投資を確保するために、協調的かつ理想的には共同作業または参加型のアプローチを通じ、セクターや行政の枠組みを超えた政策やプログラムを推進する力でございます。 レジリエンスを高めるためにはハード・ソフト両面での取組を進めていく必要がありますが、これらの構成要素を担うのはやはり人であり、職員や関係者のスキルであると思います。 そこで、知事にお尋ねいたします。 被災地へ派遣された職員や関係者が得た経験を、今後、どのように本県の災害対応力強化につなげていくお考えかお聞かせください。 続きまして、UPZ(緊急時防護措置を準備する区域)における孤立対策について、危機管理部長にお尋ねいたします。 令和六年能登半島地震では、志賀原発の一号機と二号機の変圧器が破損し、一部の外部電源が使用不能となる事案が発生しました。しかしながら、各電力会社は福島第一原発事故の教訓から外部電源の多様化・多重化を進めており、志賀原発は震度七の地震を受けながらも電源喪失を回避いたしました。電力会社の安全・安心に対する取組が実った事実と受け止めております。 一方で、この地震では、道路の寸断などにより多くの地域が孤立いたしました。その中でも、志賀原発の半径三十キロ圏内では、最大八地区四百人が八日間孤立状態になりました。これは、留意すべき課題であると考えます。内閣府によりますと、地震を受け、志賀原発の五から三十キロ圏内の輪島市の七地区と穴水町の一地区が一月八日時点で、道路の寸断などで車での人や物資の移動ができない孤立状態だったとのことでございます。九日以降順次解消されましたが、最長で二週間程度かかった地区もあったと見られます。なお、五キロ圏内での孤立はなかったとのことでございます。 原子力規制委員会が定める原子力災害対策指針では、原発事故が起きた場合、放射線の実測値に基づき屋内退避や避難を行うことが定められており、一月十七日の原子力規制委員会において、能登半島地震を受けて、防護措置におけるこの基本的な考え方を変えるものではないとの方針が示されたところです。 加えて指針では、五キロ圏は放射性物質の拡散前に避難する予防的防護措置準備区域(PAZ)、五から三十キロ圏は屋内避難し、状況に応じて避難する緊急時防護措置準備区域(UPZ)と定められております。 (資料を示す)細かい文字で大変恐縮ですけれども、このような形でUPZが定められておりますが、実は岐阜県内におきましても、原子力施設からおおむね三十キロ圏内に位置する緊急時防護措置を準備する区域が設定されている地域がございます。揖斐川町の坂内川上地区と藤橋地域の門入地区、塚地区のうち原子力施設から三十キロ圏内の地域であり、このうち川上地区のみに、五十人未満の住民がお住まいでいらっしゃいます。 令和五年二月に策定された岐阜県孤立地域対策指針によりますと、揖斐川町においても三十九の地域が孤立予想地域として示されており、川上地区もその中に含まれております。 今回の地震では、石川県内において多くの家屋が全壊したとのことですが、このように、地震などの災害によって家屋が倒壊した場合には、災害対策基本法に基づき、その地域の市町村長がその災害の状況、人口の状況等を勘案して、適切な避難所を指定するものとされております。 仮に、UPZにおいて地震による災害が発生した際に、屋内退避が困難な場合や、そもそもその地域にとどまっていては住民の方々の身の安全を確保できないような場合には、原子力災害対策指針で定める屋内退避を行うのではなく、地震に対する避難行動を最優先として、住民の方々には、市町村長が指定する避難所へ速やかに避難していただくことになります。 このため、こうした災害発生時には、いかにして住民の方々を迅速かつ円滑に安全な避難所へ避難させることができるか極めて重要となってくるのであり、特に今回の地震のように、道路が寸断され、地区が孤立状態となった場合を想定して、その備えをしっかりと行っていく必要があると考えます。 そこで、危機管理部長にお尋ねいたします。 UPZでの孤立の発生に備え、本県ではどのような対策を講じていくお考えかお聞かせください。 ここで二回目の質問を終了いたします。 ○副議長(田中勝士君) 知事 古田 肇君。    〔知事 古田 肇君登壇〕 ◎知事(古田肇君) 被災地への人的支援の取組を通じた本県の災害対応力の強化についてのお尋ねでございました。 御案内のように、一月一日に発生しました能登半島地震を受けまして、翌日には本県としては、私をトップとする支援対策本部を立ち上げました。そして、県内の全市町村や関係機関と連携をし、新型コロナ対策で培ったオール岐阜の体制で、総力を挙げて人的支援に取り組んでまいりました。 一月四日には、石川県中能登町の対口支援団体に本県が指定され、災害対策本部のマネジメント、避難所運営、給水、罹災証明書の申請受付・発行、災害廃棄物処理、下水管渠被害調査、被災建物の公費解体の申請受付など、中能登町からの要請に応じて幅広く支援を行ってきております。 また、一月十三日には、より甚大な被害を受けた輪島市の対口支援団体にも指定されました。本県から一日当たり三十名規模で、市内三か所の避難所の運営支援に注力しております。車中泊の方も含めた避難者名簿の整備、間仕切りを活用したプライベート空間の確保、支援物資の効率的な配置と在庫管理表の作成、清潔なトイレ環境の維持など、避難所の環境改善に努めてもらっております。 このほかにも、能登半島各地において、消防や警察による捜索救助、DMATやDPATなどの医療活動、保健師による避難者の健康管理、被災建築物・被災宅地の応急危険度判定、災害ボランティアの派遣用務、域外へ避難した児童・生徒への支援などを行ってきております。こうした本県からの人的支援は、延べ約一万一千人・日、発災当日から今日まで平均いたしますと、一日当たり約百六十人、発災から二か月を経過した現在でも一日当たり百人から百数十人のオーダーで取り組んでいただいております。 改めて、四十二の全ての市町村、そして対応可能な全ての関係機関に全面的に御協力いただきましたことに感謝申し上げる次第でございます。私自身としましても、本県から職員、関係機関の方々を被災地へ送り出す際には、被災された方々に寄り添い、必要な支援を行うこと、自らの健康と安全に十分留意することに加えて、明日は我が身どころか今日の我が身と心得て、本県で被災した場合にどう対処するかを考えながら活動することをお願いしております。また、被災地から戻った後の活動報告の場を設け、市町村や関係機関と共に、現地の実情や課題、活動で得られた知見などを共有してまいりました。 今後は、被災地で活動された職員や関係機関の方々が現地で得た知識や経験、的確な支援の在り方などを本県の貴重な財産として取りまとめ、これを来年度に改定作業を進める岐阜県強靱化計画などにも反映させてまいります。 これに加え、かつてない規模で行っている今回の支援活動を通じて、県内のどの組織に、どのような支援経験を持った人材がいるのかをデータベース化し、県内での大規模災害発生時に、支援ニーズに即した人材を被災市町村に即座に派遣するなど、オール岐阜での応援体制の強化につなげてまいります。 さらに、来年度には、県と市町村と共同で、今回の地震で発生した事態をシナリオに盛り込んだ実践的な訓練を実施するほか、避難所生活が長期化した想定での避難所運営に関する研修、迅速な罹災証明書の発行に関する研修なども実施をし、県や市町村の職員のスキルアップを図ってまいります。こうした訓練や研修には、被災地で活動された方々に参加していただいて、現地で培った知識や経験を継承していただきたいと思っております。 以上申し上げましたとおり、今回の経験を踏まえた取組を広く行うことにより、本県の災害対応力の強化につなげてまいりたいと思います。 ○副議長(田中勝士君) 危機管理部長 内木 禎君。    〔危機管理部長 内木 禎君登壇〕 ◎危機管理部長(内木禎君) UPZにおける孤立対策についてお答えします。 本県のUPZである揖斐川町坂内川上地区は山間地にあり、土砂災害が発生した場合には、避難経路も限られていることから、孤立対策は重要な課題であると認識しております。 このため、毎年の原子力防災訓練において、陸路が使用できなくなり同地区が孤立した場合を想定し、現場の情報収集及び自衛隊派遣の要請手順を確認する訓練や、県と自衛隊のヘリコプターにより住民の方を避難所に向けて移送する訓練を実施しております。今後もこうした訓練を継続し、万一の事態に備えてまいります。 また、最寄りのヘリコプターの臨時離着陸場が川上地区の外にあるため、これを地区内に設置できないか調査した結果を国に報告し、補助制度の創設を要望したところであり、今後、国と具体的な検討を進めてまいります。 一方で、避難経路である国道三百三号の土砂災害対策についても重要であり、道路への土砂流入を防止する設備の設置に関する調査結果を国に提出し、同様に補助制度の創設を要望したところでございます。 ○副議長(田中勝士君) 十三番 伊藤英生君。    〔十三番 伊藤英生君登壇〕 ◆十三番(伊藤英生君) 続きまして、教職員の働き方改革と一年単位の変形労働時間制の導入について、教育長にお尋ねいたします。 今定例会では、教員の働き方改革の一環として、一年単位の変形労働時間制の導入及び年次休暇の取得期間の規定整備に関する議案が提出されております。 公立学校の教職員の働き方改革を推進するため、休日のまとめ取りが可能となる一年単位の変形労働時間制を導入することと、年次休暇を暦年単位から年度単位に変更することと説明されております。つまり、学期中に多く働いた時間を、夏休みなどの長期休業中に休むことで補うという考え方でございます。 令和元年十二月に公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法、いわゆる給特法でございますけれども、これが改正され、教職員に対して一年単位の変形労働時間制を条例により実施可能とすることが決定されました。条例化が可能となってから数年が経過しておりますが、今、なぜ導入しようと判断されたのでしょうか。 文部科学省は国会答弁で、この制度の目的はリフレッシュ時間等を確保することであり、長時間労働の是正策ではないとの立場を取っています。 文部科学省の手引では、一年単位の変形労働時間制を導入するに当たっての前提として、次の五つの事項が示されております。 一つ目、対象期間には、長期休業期間等を含むこと。 二つ目、勤務日や勤務時間の設定に当たっては、通常の正規の勤務時間に比して短く設定する日には勤務時間を割り振らず、かつ、長期休業期間等において勤務時間が割り振られない日を連続して設定すること。 三つ目、育児や介護等を行う者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をすること。 四つ目、対象となる教職員の在校等時間に関し、指針に定める上限時間(月四十二時間、年等三百二十時間)の範囲内であること。 五つ目、服務監督教育委員会及び校長は、指針に定める全ての措置を講じること。 この制度を適用する教員にとっては、特に確保できる休日の日数を考慮すること及び在校等の時間を増加させないことがこの制度の要となります。 日本教職員組合の調査によれば、これは全国的な調査になりますが、出退勤時刻の把握方法に客観性が欠けると答えた教職員が約半数に上ります。さらに、多くの教職員が自宅での仕事を続けており、勤務時間の長さや休日の不足が問題視されています。本県の状況はどうでしょうか。 実際の教育現場では、夏休みの部活動や進路指導などで教員の業務が閑散期とは言えない状況にあり、一年単位の変形労働時間制の導入には問題があるとの意見もあります。そのため、具体的な導入手続や上限ガイドラインの遵守など、制度の枠組みの明確化が求められております。 県教育委員会は平成二十九年度から教職員の働き方改革プランを策定し、取組を進めておりますが、この休日のまとめ取りのための一年単位の変形労働時間制導入に当たっての前提条件がクリアされているかは重要なポイントになってくると存じます。 県教育委員会は令和二年に一年単位の変形労働時間制の導入に関して、県内の市町村教育委員会や県立学校からの意向調査を行い、導入に至っていない状況を明らかにしておりますが、そこから数年でどのような変化があったのか、導入できる状況にあると判断された根拠などについても気になるところでございます。 そこで、教育長に二点お尋ねいたします。 教職員の働き方改革の進捗状況をお聞かせください。 また、一年単位の変形労働時間制の導入を判断するに至った理由についてお聞かせください。 次に、飛騨牛繁殖研修センターの研修生確保に向けた取組について、農政部長にお尋ねいたします。 岐阜県は、飛騨牛生産の担い手育成と繁殖雌牛の増頭を目指し、県内に二か所の飛騨牛繁殖研修センターを整備し、研修事業を展開しています。特に、美濃加茂市に位置する施設では、岐阜大学、全農岐阜及び岐阜県が産官学連携の下に全国に先駆けた肉用牛繁殖研修の施設として、令和二年四月より研修を開始し、岐阜大学を中心に、研修生に対して講義及び実習を提供しています。 この研修事業は、令和二年度より開始し、毎年二名の研修生を確保し、研修内容の充実を図り、二年後の就農につなげることを目標にしています。しかしながら、昨年度は研修生の確保に至らず、令和六年度も同様の目標を設けていますが、現時点で研修生の確保には至っていません。 私は、昨年三月の定例会において同様の質問を行いました。その際、以下のような答弁をいただきました。研修開始から就農までの流れや住居対策、支援制度をまとめた研修ガイドを作成し、体験研修の実施、県ホームページやSNSを通じた情報提供、チラシの配布、就農フェアへの参加拡大、フリーペーパーを通じたPR活動を強化し、研修生の確保を目指すとのことでございました。 長引く飼料価格の高騰など肉用牛を取り巻く環境は厳しく、新規に肉用牛経営を開始するのが難しい状況であることは承知しておりますが、これらの施策の効果はどうだったのでしょうか。 また、これまでに五名の卒業生がおり、そのうち四名が県内で就農、一名が岡山県で就農したと伺っております。研修を修了した方々が今後どのような営農活動を送っていくのかは、この研修事業に興味を持つ方にとっても大きな関心事であると存じます。研修を修了した方々に対する切れ目ないフォローアップも引き続きお願いしたいと存じます。 そこで、農政部長にお伺いいたします。 飛騨牛繁殖研修センターの研修生確保に向けた今年度の取組の効果と、それを踏まえた今後の取組についてお聞かせください。 これで三回目の質問を終わります。 ○副議長(田中勝士君) 教育長 堀 貴雄君。    〔教育長 堀 貴雄君登壇〕 ◎教育長(堀貴雄君) 二点御質問がありました。 初めに、教職員の働き方改革の進捗状況についてお答えをします。 県教育委員会では、教職員の勤務時間の削減と業務負担軽減を図ることで、教職員が自らの人間性や創造性を高め、子供たちに対してよりよい教育を行うため、働き方改革に取り組んでおります。 具体的には、出退勤管理システムの導入や退勤時間を十九時に統一するなど勤務時間を意識した働き方の推進、デジタル採点システムや県内統一の校務支援システムの導入などICT化の推進、部活動での活動時間や休養時間等を定めたガイドラインの策定、教員業務をサポートする外部人材の積極的な活用などに取り組んだ結果、例えば、県立学校の一月当たりの時間外に在校した時間の平均は、令和元年度三十二時間から、令和四年度には二十時間と約十二時間減少いたしました。 また、今年度、WEB出願システムを導入した高等学校入学者選抜では、受験生のデータの正確性の確保と、中学、高校、県教委の事務局の事務量の大幅な削減が図られております。今後も、長時間勤務と多忙化の解消に向け、様々な手法を用いて教職員の働き方改革に取り組んでまいります。 次に、一年単位の変形労働時間制の導入についてお答えをします。 本制度については、教職員の働き方改革プランにおいて、令和二年度から検討する旨を記載しております。また、制度の活用の前提となる時間外勤務がおおむね月四十五時間以内の教員の割合は、例えば、県立学校においては、年間平均で令和元年度の約七〇%から令和四年度は約九〇%に増加している状況です。 こうした中、今年度、県内の公立学校に勤務する全教員を対象に、メリット及びデメリットを示すなど丁寧に説明した上でアンケート調査を行ったところ、七二%に当たる約一万二千人余りから回答を得、そのうち四四%に当たる約五千三百名が本制度を活用したいとの回答を受けており、今回の制度導入の判断に至ったところです。 本制度は、県全体や市町村、学校単位で行うものではなく、あくまでも個人で選択できるものであり、年次休暇の年度への期間変更とともに、教員が年度を通じて自身の働き方を考える契機となると考えております。今後は、制度の周知や運営マニュアルの策定など、令和七年度の施行開始に向け、一年間かけて丁寧に準備をしてまいります。 ○副議長(田中勝士君) 農政部長 足立葉子君。    〔農政部長 足立葉子君登壇〕 ◎農政部長(足立葉子君) 飛騨牛繁殖研修センターの研修生確保に向けた取組についてお答えいたします。 今年度は、新たに作成した研修ガイドと紹介動画によるガイダンスの実施、東京や大阪で開催される就農フェアへの参加の拡大や、地元フリーペーパーでのPR活動など取組の強化を図りました。これにより、相談件数は昨年度を上回る二十八件となり、体験研修にも至りましたが、現時点で入所にはつながっていません。 相談の中では、畜産業に携わることへの不安の声も多く、まずは牛に触れる機会を設けるため、就農フェアや全国規模の移住フェアなどに訪れた県外相談者に岐阜へ来ていただき、都会に近く豊かな自然に囲まれた生活と、飛騨牛の飼育現場を一泊二日程度体感する機会を設けてまいります。 また、県内の農業高校や農業大学校の生徒が肉牛農家となるまでの道筋をよりイメージしやすくするため、新たに研修修了生が牛を飼う喜びや研修の大切さを語る交流会を開催してまいります。 今後は、研修センターのパートナーである岐阜大学、全農岐阜県本部との連携を強化し、研修生の確保につなげてまいります。 ○副議長(田中勝士君) 十三番 伊藤英生君。    〔十三番 伊藤英生君登壇〕 ◆十三番(伊藤英生君) ありがとうございました。 続きまして、岐阜県指定金融機関の指定について、知事にお尋ねいたします。 本定例会に岐阜県の指定金融機関を来年四月から五年間、十六銀行に指定する議案と、それに関連する改修費四千三百六十六万円を含む予算案が上程されております。 現在、本県の指定金融機関は大垣共立銀行が担当しておりますが、可決されれば十年ぶりに十六銀行に交代することとなります。指定金融機関制度が始まった一九六四年から十六銀行が一貫して務めてきましたが、二〇一五年四月から二〇二五年三月までは大垣共立銀行が担当しております。 この指定金をめぐっては、この間、県議会において競争性や交代制などについて様々な議論が行われてきました。サービス向上のために競争原理を働かせるべきという競争性の議論と、災害やトラブル等で指定金が機能しなくなったときに代替できるよう交代で指定金の経験を積ませるべきという交代制の議論がありました。今回は交代制について触れられておらず、競争性の原理をもって選定されたものと受け止めております。 私たち会派県民クラブは、両行とも指定金を担うだけの能力と体力を備えた銀行であると評価しておりますので、どちらが選ばれても違和感はありませんが、そのような中で、今回知事が十六銀行を選定するに至った理由が気になるところです。 そこで、知事にお尋ねいたします。 今回の定例会において、指定金融機関を十六銀行に指定する議案が提出されておりますが、その判断に至った理由をお聞かせください。 続きまして、二点目、岐阜県TDMプロジェクトに対する県の取組状況について、県土整備部長にお尋ねいたします。 TDMとは、Transportation(交通) Demand(需要) Management(管理)の略であり、電車・バスへの転換や、自動車を利用する時間をずらすことなどによって交通量を平準化し、道路の交通渋滞を緩和しようという取組です。 現在、国道二十一号では渋滞解消や交通事故削減のため、岐阜市内立体事業が進められており、今後、工事が本格化してくるものと思われます。この事業は、平面六車線の道路を立体四車線、平面四車線、合計八車線の複断面にするもので、完成すれば渋滞対策にも大きな効果が期待できます。 しかし、工事はまだ始まったばかりで、完成時期は見えていませんし、今後工事が本格化した際には、現在の六車線道路も一部規制が必要となり、朝夕の通勤ラッシュ時には、現在よりもひどい渋滞が発生する可能性も否定できません。 そこで、効果を発揮するのがこのTDMという取組です。 TDMプロジェクトのリーフレットによりますと、この取組によって、通勤時間帯の渋滞緩和はもちろんですが、自動車の利用時間をずらす、つまり働く時間をずらすことで、子育てや介護など個人の抱える事情に応じて、多様な働き方が可能になることも期待されております。また、渋滞が減ることで二酸化炭素の排出量も削減できますし、通勤に要する時間が短くなり効率的な移動が可能となります。SDGs(持続可能な開発目標)の実現にも貢献し、地域の持続的な発展も期待できるのではないでしょうか。 昨年度まで、期間限定の試行的な社会実験として実施されているようですが、この岐阜県TDMプロジェクトには、県内の多くの関係機関が関わっており、まさに県を挙げての取組とも言えるプロジェクトです。 通勤ラッシュの時間帯の渋滞緩和は長らく本県の懸案ともいうべき課題であり、県民の痛切な願いでもあります。我々県議会議員も自分で車を運転して登庁している議員が多いのですが、今朝も大変渋滞をしておりましたが、今日のような本会議がある日は気をもむ方も少なくないのではないでしょうか。我々も時差で登庁するなど、何らかの協力が必要なのではないかとも感じております。 そこで、県土整備部長にお尋ねいたします。 国道二十一号をはじめとした道路の渋滞対策として実施されている岐阜県TDMプロジェクトに対する県としての取組状況についてお聞かせください。 続きまして、孤独・孤立対策地域協議会の設置における県の役割について、健康福祉部長にお尋ねいたします。 現代社会において、孤独・孤立は単身世帯の増加や高齢者人口の拡大に伴い、一層の深刻化が懸念されております。この問題に対しては、国と地方が協力をし、安定的かつ継続的な対策の推進体制の構築が急務となっております。 これにつきましては、県は早期から積極的な取組を展開してきました。私がこのテーマを取り上げるのは今回で四度目でございます。少ししつこいようでございますが、しかし、県の迅速な行動には敬意を表します。特に、国が推進する地域連携推進モデル調査事業にいち早く応じ、昨年二月には官民連携プラットフォームを設立し、東海地方における先駆けとなったことは高く評価されるべき点だと思います。 さて、そのような中、令和六年四月施行予定の孤独・孤立対策推進法では、地方公共団体は、NPO法人等が参画して必要な情報交換及び支援内容の協議を行う孤独・孤立対策地域協議会を置くことが努力義務化されております。 孤独・孤立対策をより強く推進していくために、地域内で官民それぞれが役割や主体性を持った連携体制を構築するに当たって、より具体的に取るべきアクションや地域ごとの工夫とは何かの検討を深める機会が求められています。 一方で、孤独・孤立対策と親和性が強い包括的な支援体制整備につきましては、社会福祉法において、基礎自治体である市町村が推進するものとされており、県の役割は市町村の支援と位置づけられております。 そのため、孤独・孤立に悩む方への個別具体的な支援も、基本的には市町村が主体になり行い、都道府県の役割は、そのバックアップであると考えております。 孤独・孤立対策推進法で、設置が努力義務化された地域協議会は、個々の課題を抱える方への具体的な支援内容を検討する会議であり、都道府県レベルの運用は現実的には難しいと思われますが、市町村との役割分担を決めておくことは必要であると考えます。 そこで、健康福祉部長にお尋ねいたします。 孤独・孤立対策地域協議会の設置において、県の果たす役割についてどのようにお考えかお聞かせください。 最後に、G-クレジット制度の本格展開について、林政部長にお尋ねいたします。 国は二〇五〇年カーボンニュートラルの目標達成に向けて、二〇三〇年までに二〇一三年度比で四六%の温室効果ガス削減を目指しています。企業を含む民間の排出削減努力に加え、残余排出量のオフセットや、森林を通じた環境への貢献への関心が高まっていることが背景にあります。 林業経営はその性質上、長期間に及ぶものであり、その収益は主に木材販売に依存しています。このため、安定した経営を実現するには、新たな収益源の創出が求められています。現在、森林の適切な管理による二酸化炭素吸収量をクレジットとして認証し、その売買から収入を得る国のJ-クレジット制度がこの新たな収益源として期待されています。しかし、この制度は森林経営計画策定森林に限定されており、手続の複雑さや審査等に係る費用負担が課題となっており、クレジット認証に取り組む事業者は限定的です。 この背景を受け、岐阜県はJ-クレジット制度の対象外となる森林でもクレジットを認証できる県独自の制度G-クレジットを創設しました。この制度は、山村地域への資金流入を促進し、さらなる森林の整備へとつながることを目指しています。今年度予算には、このG-クレジット制度の運用に関わるシステム管理費を含めた関連予算が計上されており、初回のクレジット認証が間もなく行われる予定とお聞きしております。 そこで、林政部長にお伺いします。 岐阜県独自のカーボンクレジット制度G-クレジットの本格展開に当たり、これまでの経過と、クレジットの活用促進に向けどのように取り組んでいくのかお聞かせください。 以上で今回の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。    (拍手) ○副議長(田中勝士君) 知事 古田 肇君。    〔知事 古田 肇君登壇〕 ◎知事(古田肇君) 岐阜県指定金融機関の指定についてのお尋ねがございました。 御案内のように、現在の指定金融機関の指定期間は、令和六年度末ということになっております。そこで、会計事務に支障が生じないように、前回と同様、期限の一年前に、次期指定金融機関を選定するということにしているわけであります。 このため、昨年七月に、県内に本店を有し、経営規模など一定の要件に該当する金融機関に対しまして、指定を希望する場合には所定の資料を提出するよう求めたところでございます。 これに対して、二つの銀行から資料が提出され、これらを基に経営の健全性・安定性、県民の利便性、指定金融機関業務の受入れ体制、地域経済への貢献といった観点から検討を行ってまいりました。 この結果、両行ともに、経営の健全性・安定性に問題がないこと、県内に広く店舗を設置するなど県民の利便性に優れていること、指定金融機関業務を問題なく担った実績があり業務を実施する能力・体制に問題がないこと、地域経済への貢献に積極的であることなど、いずれも指定金融機関業務を十分担うことができる金融機関であることを確認しております。 一方、ここ数年、国からも通知が出されるなど、全国的に公金取扱事務に係る経費の見直しに向けた動きが本格化しております。本県の指定金融機関の委託に際してもこれは例外ではございません。 この点に関して、今回の調査で両行の提案を比較しましたときに、公金取扱業務で見込まれる手数料の点で有意な差が認められたことから、このたびの結論に至ったものでございます。 ○副議長(田中勝士君) 県土整備部長 野崎眞司君。    〔県土整備部長 野崎眞司君登壇〕 ◎県土整備部長(野崎眞司君) 岐阜県TDMプロジェクトに対する県の取組状況についてお答えいたします。 国・県・市・警察などで構成する岐阜県道路交通渋滞対策推進協議会では、岐阜市内立体工事の着手に当たり、交通集中の分散を目的としたTDM社会実験を行っております。 昨年度の実験では、岐阜市内で発着する人を対象に、通勤時間や交通手段の変更などを呼びかけ、県からも三百五十名以上の職員が参加しております。その結果、国道二十一号の茜部周辺では通勤ラッシュ時の渋滞の長さが、三百メートルほど改善されております。 この結果を踏まえ、協議会では昨年十一月、県内全域の自治体や企業などに広く参加を募り、恒常的な渋滞緩和につなげる岐阜県TDMプロジェクトを開始いたしました。現在は十四の自治体と六十の企業が参加しており、県としても職員の時差出勤や利用経路の変更、公共交通機関や自転車通勤に継続的に取り組んでおります。 今後も、広報や各種会議の場において、広く参加を呼びかけるなど、多様な働き方やCO2の排出削減、ひいてはSDGsの実現にも貢献する本プロジェクトの実効性の向上に取り組んでまいります。 ○副議長(田中勝士君) 健康福祉部長 丹藤昌治君。    〔健康福祉部長 丹藤昌治君登壇〕 ◎健康福祉部長(丹藤昌治君) 孤独・孤立対策地域協議会の設置における県の役割についてお答え申し上げます。 孤独・孤立状態に陥っている方への具体的な支援内容を協議する孤独・孤立対策地域協議会については、基礎自治体である市町村が設置し、県はそのバックアップや未設置の市町村がある場合の広域的な設置が、おのおのの役割分担として国から例示されています。 これを踏まえ、県としては、まずは年度内にも市町村との意見交換を開始し、丁寧に意向を確認しながら必要な対応を検討してまいります。 その上で、市町村が協議会を設置する場合は、専門的・広域的な見地から、必要に応じて精神保健福祉センターや女性相談センターなど県の関係機関が参画し、活動を支援してまいります。 こうした取組に加えて、県や県内全市町村、NPO等から成る孤独・孤立対策官民連携プラットフォームを活用し、関係機関同士の情報共有や広域的な連携強化、さらにはシンポジウムなどの広報啓発に取り組むことで、孤独・孤立の問題を抱える方を早期に発見し、必要な支援につなげてまいります。 ○副議長(田中勝士君) 林政部長 久松一男君。    〔林政部長 久松一男君登壇〕 ◎林政部長(久松一男君) G-クレジット制度の本格展開についてお答えします。 昨年十一月の制度開始以降、まずはクレジットの創出に向け、林業関係者へのPRに努めてきた結果、これまでに四者から申請があり、七者が次年度の申請に向け検討を進めています。 一方で、クレジットの認証、販売については、昨年度試行的に取り組んだ二者の申請分について、今月開催する運営認証委員会での確認を経て、第一号となるクレジットを認証する予定です。 今後、クレジットが活発に取引されていくためには、クレジットの魅力や認知度を高めていく必要があります。 このため、まずは昨年十一月に条例に基づく温室効果ガス排出削減実績にクレジットを活用できるよう規則を改正しました。さらに、公契約においてクレジットの購入実績を評価する仕組みの導入について、関係部局と調整してまいります。 加えて、制度の普及やクレジットの購入に継続的に取り組む金融機関や企業を登録し公表する(仮称)G-クレジットの森・応援パートナー制度を創設し、本格的な運用を進めてまいります。 ○副議長(田中勝士君) 十九番 安井 忠君。    〔十九番 安井 忠君登壇〕(拍手) ◆十九番(安井忠君) 議長より発言の許可をいただきましたので、通告に従いまして、大きく二項目、三点について質問をさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。 まず初めに、物流の二〇二四年問題の対応について質問をいたします。 昨年六月定例会において、県政自民クラブの佐藤議員からも質問されましたが、この問題が目前に迫っている今、改めて取り上げ、新年度からの取組について伺いたいと思います。 日本の物流を支えるトラックドライバーですが、厚生労働省が行っている賃金構造基本統計調査によれば、年間労働時間は全産業の平均より約二割長く、年間所得額は五から一〇%程度低く、長時間、低賃金労働が常態化しており、慢性的な人手不足に陥っています。 こうした中、改正働き方改革関連法に基づき、今年の四月からトラックドライバーを含めた労働時間の規制が始まり、労働環境の改善が目的とされるものの、現行では、上限のない時間外労働を年間九百六十時間に規制し、拘束時間が短縮されることから輸送量が減り、労働時間が短縮されるため、長距離輸送が難しくなり、物流が混乱するのではないかと危惧されております。 例といたしましては、改正法の労働時間が適用されると、この四月から東京・大阪間を一人のドライバーが一日で輸送することが困難になり、複数の運転手が必要となります。 トラック輸送は、国内の貨物輸送量の約九割を占め、国民生活や経済活動、地方創生などに欠かせない重要な社会基盤です。 物流によって社会は発展、成熟し、私たちの生活も快適で豊かになってきました。物流の滞りは、消費者にも企業にも深刻な影響を及ぼし、産業界では、原料や材料がスムーズに調達できず、生産や出荷に支障を来します。このまま対策を講じなければ、二〇三〇年には全国の三〇%を超える荷物が輸送できなくなると言われております。 物流産業は、国民生活や経済活動を支える社会インフラであり、さらには、地震や大雨など自然災害時のライフラインとしても認識されています。この産業は、事業活動の多くを人の労働力、マンパワーに頼らざるを得ない業種であります。 そこで、商工労働部長に伺います。 一点目として、物流の二〇二四年問題の影響による人手不足に対し、今後、県としてどのように取り組んでいくのかをお伺いします。 次に、角度を変えて、消費者目線で物流の二〇二四年問題を取り上げます。 皆さんもオンラインショップで買物の経験をされたことがあるかと思います。注文した商品が、早ければ翌日、数日以内に届きますが、物流の二〇二四年問題の影響により、商品が指定日に届かなかったり、荷物を送るにも時間がかかったりと、宅配サービスの質の低下が考えられます。大変便利なサービスが、特別なものになるかもしれません。 さらに、身近なところに目を向ければ、ふだん何げなくスーパーに並ぶ野菜、果物、肉、魚といった生鮮食品が入手困難になる可能性もあります。 こうした想定される事態に対して、宅配業者団体は、消費者にインターネットでの注文回数や再配達の削減に協力を求めています。小売業者や運送業者も配送体制を見直しております。大手コンビニでは、店舗への配送回数を減らす取組を行っています。また、大手宅配業者は、一部地域では配達日を一日遅らせることを発表しております。 昨年六月に農林水産省、経済産業省及び国土交通省は、荷主や運送会社に対し、トラックドライバーの負担を軽くするために取り組むべきガイドラインを取りまとめ、改善を促しております。 この中には、集出荷場などで荷物を待つ荷待ち時間と、荷物を積み込む荷役時間の短縮が含まれており、大企業は、中間拠点の整備により集出荷場をまとめ、輸送効率の向上をさせ、荷待ち時間を削減する取組を進めております。さらに荷役時間の短縮のため、フォークリフトで荷積みできるようパレットやカーゴ便などの導入も進められております。加えて、鉄道やフェリーでの代替輸送手段も模索されております。 便利で快適な社会の裏で、トラックドライバーや郵便局の集配業務においても同様に、過度な負担を強いている現実を受け止め、自分たちの未来の暮らしや産業を顧みながら、物流の在り方を考える時期ではないでしょうか。 そこで二点目として、商工労働部長に伺います。 ライフラインとして持続可能な物流の実現のため、県民一人一人がインターネットショップでの頻繁な個別注文を控え、効率的なまとめ買いをすることや、再配達の削減により、配送回数を減らすことで、配送の効率化に取り組むことが必要です。 県として、消費者意識や行動の変化を促すため、今後どのように取り組んでいくのかを御答弁をお願いいたします。 最後に、ライドシェアの全面解禁を見据えた地域公共交通の確保に関する今後の対応方針について質問をいたします。 日本では、一般ドライバーが自家用車などを使って有償で運送する行為は、いわゆる白タク、無許可営業として原則禁止とされております。この規制緩和が現在議論されております。 ライドシェアは、一般ドライバーが空いた時間と自家用車を使って有償で人を運ぶサービスのことで、交通手段の不足が背景にあります。 特に地方では高齢者の交通手段の減少が深刻な問題となっており、近年、運転免許証の返納が推奨される中、少子高齢化や過疎化によって、鉄道や路線バスなどの公共交通機関が廃線や減便され、足となる交通手段が減少しております。 また、タクシー会社も採算が取れない地域には営業所と車両を配備できません。そうなれば、住民は買物や通院にも事欠くこととなってしまいます。また、訪日外国人観光客がコロナ禍前の水準に戻りつつあり、観光地ではタクシー不足が問題となっております。 全国の五千社余りが加盟する全国ハイヤー・タクシー連合会が調査した全国のタクシー会社で働く運転手の数は、コロナ前から約二〇%減少し、岐阜県においては、二四%と減っております。運転手の高齢化が進んでいる上、コロナ禍で収入が減ったことや車内での感染への懸念から、多くの運転手が離職したと見られております。 また、昨年十一月五日付の岐阜新聞によれば、各都道府県への取材で、全体の七割に当たる岐阜県を含めた三十三道府県は、タクシー不足を認識しつつも、ライドシェア導入には、安全確保やタクシー事業者の経営への懸念があるとしています。 こうした状況の中、もっと以前より、日本にはバスやタクシーでも補えない公共交通機関の空白地域での運送や福祉の確保を目的に運用されているのが、一般ドライバーの有償運送を可能とする自家用有償旅客運送という特例制度です。 この制度は、市町村やNPO法人などが運送主体となり、対価運賃はガソリン代など実費の範囲で、営利目的として実施してはならないということになっております。 しかしながら、バスやタクシーのドライバーの確保が困難になっていること、都市部や観光地ではインバウンド需要が急増し、タクシーの数が足りないといった課題から、この特例制度の見直しについて、国において議論が進められてきました。 苦境に立たされている地域の公共交通でありますが、国内では、昨年十二月に、この特例制度を部分的に見直す形で、四月からライドシェアを解禁する方針であることが、政府から発表があったところです。 解禁後は、タクシー事業者がタクシー事業の一環として、タクシー事業者の運行管理の下で、タクシー会社による配車アプリデータを活用し、都市部や観光地において、タクシーが不足している地域や期間、時間帯に限定し、地域のドライバーと自家用車によるライドシェアが認められます。 海外の多くのライドシェアサービスと、今回の解禁との違いは、運送サービスをタクシー事業の一環として提供する点です。つまり、運行管理や配車はタクシー会社が行い、責任もタクシー事業者が持ち、運賃もタクシーと準ずるということになります。 タクシー事業者以外の者がライドシェア事業の参入を可能とする全面解禁に向けては、早急に実施効果を検証しながら、必要となる法律や制度の創設などについて、六月までの取りまとめに向けて議論を進める予定となっております。 政府は、外国人観光客を二〇三〇年までに年間六千万人までに増やす方針を示していることもあり、国民の交通手段の確保との両立ができるか。さらに地域の公共交通機関やタクシーなど既存の交通手段を守り、活用しながら、ライドシェアの全面解禁について慎重に検討していく必要があると考えます。 ライドシェアの全面解禁には、輸送の安全性の確保や事故の補償など多くの課題があり、海外では、ドライバーが乗客に危害を加える事例も報告されております。 さらに言えば、タクシー事業者は運輸局の管理の下、厳しい一般自動車旅客運送法を遵守し、多くの人材と経費をかけ安全な運行管理を行っていることから、ライドシェア全面解禁はタクシー事業そのものを根底から覆すことにもなりかねないため、全面解禁ありきの議論ではなく、地域の公共交通の実情を把握し、丁寧な議論を行った上で制度設計がされることを望んでおります。 ライドシェアの導入は、地域社会に多くのメリットをもたらしますが、地域ごとに公共交通状況は異なることから、慎重な検討と適切な施策導入が不可欠で、これにより地域の発展と住民の利便性を高めつつ、安全かつ環境に配慮した新しい移動手段の提供ができるものだと思います。 人口減少時代において、将来にわたって持続的に地域交通を確保していくことは、本県にとって重要な課題の一つであります。 そこで、都市公園・交通局長に伺います。 国において議論が進むライドシェアの全面解禁を見据え、持続的に地域公共交通を維持・確保していくという観点から、タクシーの現況を踏まえつつ、地域ごとの課題に対応した対策を検討していくべきではないかと思いますが、今後の対応方針についてお伺いをいたします。 以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。    (拍手) ○副議長(田中勝士君) 商工労働部長 三木文平君。    〔商工労働部長 三木文平君登壇〕 ◎商工労働部長(三木文平君) 物流の二〇二四年問題に関して、二点御質問いただきました。 まず、物流産業の人手不足への対応についてお答えします。 従前からのドライバー不足に加え、四月からの時間外労働時間規制により、人手不足への対応は喫緊の課題であると認識しています。 これまで県では、運輸事業者が自ら実施する運送サービスの改善や、人材確保の取組を支援してまいりました。加えて昨年度には、荷物の発送情報とトラックの空き状況をマッチングさせる共同輸送配送サービスと、トラックの荷待ち時間を削減させる荷物積卸し場所の予約システムを構築し、物流の効率化を図ったところです。 さらに来年度は、ロボットを活用した梱包や積込みといった輸送前後のプロセスの効率化や、荷主企業が保有する車両や倉庫の空きリソースの有効活用など、デジタル技術を活用した荷主側の物流効率化に向けた実証事業を実施いたします。 あわせて、トラックドライバー等への就転職を図る就職促進フェアや、物流事業者と荷主が連携して二〇二四年問題に取り組むためのシンポジウムを開催してまいります。 次に、持続可能な物流の実現のための消費者の意識改革についてお答えします。 近年のECサイト利用者の急増などにより、昨年度の宅配便の全国年間取扱個数は五十億個を超え、この十年間で四割以上増加しています。また、再配達率は昨年十月時点で約一一%であり、国の物流革新に向けた政策パッケージでは、来年度には六%まで削減することを目指すとされています。 配送ドライバーの負担を軽減し、物流を効率化するためには、宅配便の利用者である消費者の意識改革・行動変容が大変重要であります。 このため、効率的なまとめ買いやゆとりを持った配達日の指定、置き配ボックスの設置の推進、そしてこれらを促進する国の新たなポイント還元制度などについて、消費者団体をはじめ業界団体とも連携し、幅広い世代の県民へ向けて情報発信を展開してまいります。 ○副議長(田中勝士君) 都市公園・交通局長 舟久保 敏君。    〔都市建築部都市公園・交通局長 舟久保 敏君登壇〕 ◎都市建築部都市公園・交通局長(舟久保敏君) ライドシェアの全面解禁を見据えた地域公共交通の確保に関する今後の対応方針についての御質問にお答えいたします。 全国でタクシーが不足する中、国では、第二種運転免許の取得にかかる期間の短縮等、タクシーの規制緩和のほか、自家用有償旅客運送制度の改善、さらにはタクシー事業者、またタクシー事業者以外の者によるライドシェア事業の制度導入が議論されております。 このうち、ライドシェア事業につきましては、安全性の確保、労働時間や賃金等の適切な労働環境の確保等の課題が指摘され、その対応も検討されているものと認識しております。 本県におきましても、昨年十一月に実施した調査では、二十八市町村がタクシーの不足を感じています。県としましては、これらの制度は、タクシーが慢性的に不足している地域や、時間帯等によって供給が不足する地域において、タクシー等の公共交通を補完するものとして活用することが望ましいと考えております。 このため、タクシーの供給状況等の地域の実情を踏まえ、各地域の移動の足が適切に確保されるよう、地域公共交通会議を通じて市町村とともに検討してまいります。…………………………………………………………………………………………… ○副議長(田中勝士君) 以上をもって、本日の日程は全て終了いたしました。 明日は午前十時までに御参集願います。 明日の日程は追って配付いたします。 本日はこれをもって散会いたします。 △午後二時三十四分散会 ……………………………………………………………………………………………...