長野県議会 2021-11-30
令和 3年11月定例会本会議-11月30日-02号
令和 3年11月定例会本会議-11月30日-02号令和 3年11月定例会本会議
令和3年11月30日(火曜日)
出席議員(57名)
1 番 望月義寿 27 番 寺沢功希
2 番 小林君男 28 番 両角友成
3 番 小林あや 29 番 清水純子
4 番 清水正康 30 番 小池久長
5 番 加藤康治 31 番 酒井 茂
6 番 川上信彦 32 番 堀内孝人
7 番 山田英喜 33 番 石和 大
8 番 大井岳夫 34 番 依田明善
9 番 丸茂岳人 35 番 山岸喜昭
10 番 花岡賢一 36 番 小島康晴
11 番 池田 清 37 番 小林東一郎
12 番 熊谷元尋 38 番 毛利栄子
13 番 百瀬智之 39 番 和田明子
14 番 山口典久 40 番 諏訪光昭
15 番 小山仁志 41 番 丸山栄一
16 番 竹内正美 42 番 小池 清
17 番 竹花美幸 43 番 宮本衡司
18 番 宮下克彦 44 番 清沢英男
19 番 大畑俊隆 45 番 垣内基良
20 番 共田武史 46 番 鈴木 清
21 番 丸山大輔 47 番 高村京子
22 番 髙島陽子 48 番 宮澤敏文
23 番 荒井武志 49 番 西沢正隆
24 番 埋橋茂人 50 番 風間辰一
25 番 続木幹夫 51 番 佐々木祥二
26 番 中川博司 52 番 向山公人
53 番 平野成基 56 番 服部宏昭
54 番 本郷一彦 57 番 望月雄内
55 番 萩原 清
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説明のため出席した者
知事 阿部守一 農政部長 小林安男
副知事 関昇一郎 建設部長 田下昌志
企画振興部長 伊藤一紀 公営企業管理者
総務部長 玉井 直
企業局長事務取扱 小林 透
県民文化部長 中坪成海 財政課長 矢後雅司
県民文化部こど 教育長 原山隆一
も若者局長 野中祥子 警察本部長 安田浩己
健康福祉部長 福田雄一 監査委員 田口敏子
環境部長 猿田吉秀
産業政策監兼産
業労働部長 林 宏行
観光部長 渡辺高秀
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職務のため出席した事務局職員
事務局長 小山 聡 議事課担当係長 矢島修治
議事課長 百瀬秀樹 議事課主事 松橋高志
議事課企画幹兼 丸山俊樹 総務課課長補佐 川村亜由美
課長補佐 兼庶務係長
総務課担当係長 青木武文
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令和3年11月30日(火曜日)議事日程
午前10時開議
行政事務一般に関する質問及び知事提出議案に対する質疑
知事提出議案(日程追加)
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本日の会議に付した事件等
諸般の報告
知事提出議案
行政事務一般に関する質問及び知事提出議案に対する質疑
午前10時開議
○議長(宮本衡司 君)これより本日の会議を開きます。
本日の会議は、行政事務一般に関する質問及び知事提出議案に対する質疑であります。
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△諸般の報告
○議長(宮本衡司 君)次に、諸般の報告は、お手元に配付したとおりであります。朗読は省略いたします。
〔議案等の部「2 諸般の報告」参照〕
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△知事提出議案の報告
○議長(宮本衡司 君)次に、知事から議案の提出がありましたので、報告いたします。
〔職員朗読〕
令和3年11月30日
長野県議会議長 宮 本 衡 司 様
長野県知事 阿 部 守 一
令和3年11
月長野県議会定例会議案提出書
議案を別紙のとおり提出します。
第 35 号 人事委員会委員の選任について
第 36 号
教育委員会委員の選任について
〔議案等の部「1 議案 (1)知事提出議案」参照〕
○議長(宮本衡司 君)以上であります。
ただいま報告いたしました知事提出議案を本日の日程に追加し、その順序を変更いたします。
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△知事提出議案
○議長(宮本衡司 君)本件を一括して議題といたします。
お諮りいたします。本件については、それぞれ会議規則第44条の規定により提出者の説明を省略いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(宮本衡司 君)御異議なしと認めます。よって、本件はそれぞれ提出者の説明を省略することに決定いたしました。
これらの議案は、本日から行う質疑の対象に供します。
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△行政事務一般に関する質問及び知事提出議案
○議長(宮本衡司 君)次に、行政事務一般に関する質問及び知事提出議案を議題といたします。
お手元に配付いたしましたとおりの議員から行政事務一般に関する質問及び知事提出議案に対する質疑の通告がありましたので、報告いたします。朗読は省略いたします。
順次発言を許します。
最初に、宮澤敏文議員。
〔48番宮澤敏文君登壇〕
◆48番(宮澤敏文 君)おはようございます。新型コロナの感染の影響が続き、ここ2年間は対策に明け暮れする日々でありました。医療関係者をはじめそれぞれの立場で献身的な対応をされた全ての皆さんに感謝と敬意を申し上げ、質問に入ります。
この歴史に残るだろうパンデミックは、今後の私たちの生活に大きな教訓と新たな展望を教えています。ウィズコロナ、アフターコロナの時代をどうするかは長野県政の最大の課題となりました。
最初に、中山間地を多く抱える長野県、子供や若者が地域にいない、過疎指定市が増えるなど急速に進む少子時代、山は荒れ、里には空き家が増え、獣のすみかとなっている。とりわけ財政力の弱い基礎自治体では、上下水道、公共交通網の維持に限界が来ています。様々な変化が予測される
アフターコロナ時代、長野県の中山間地の地域はどう変化すると分析しているのか、まず知事にお伺いをいたします。
出生率の低下で地域に子供の声がない、若者がいない、消防団が組織できない、祭りや行事もできないという現実。県外に進学した学生のUターン率は30%台の低水準が続いています。生徒がいないから高校を統廃合したが、数年後にはまた新たな高校と統廃合しなければならない。関わられた多くの皆さんの中にわだかまりがあることは事実であります。とりわけ、卒業後多くの生徒が社会人となる専門高校は、出口の地域企業が望む人材を立派に育成するという責務があると思います。現在進む専門高校の統廃合は、その意味で大変デリケートで、将来の長野県の産業、そして担い手に直結することを、とりわけ教育関係者を含め認識し合わなければなりません。
「長野県産業立地ガイド「信州」という選択。」の中で、本県は勤勉で豊富な人材と特色を位置づけ、高校生就職者の90.1%が県内就職、これは全国で8位、製造業従事者がうち50.1%と位置づけ、ものづくり産業の担い手としての高校生人材を挙げています。本県に進出を願う企業がものづくり人材に何を求めているかを担当部長としていかに認識し、教育委員会と論議を深め、現場に反映しているのか。産業労働部長にお伺いいたします。
商工会が地元企業に行った「就職する高校生に求めるもの」と題したアンケートの中で、企業者の多くは、高校生が何よりも欲しいが、専門性を高めてほしい、せっかく育て上げた若者が途中で辞めないでほしいと指摘しています。
今年4月の
松本商工会議所会報で、日銀松本支店長は、製造業には、長い時間をかけて蓄積した技術と、何よりも人が重要とし、人材の確保を第一に掲げ、自前で時間をかけた技術職の教育と地元に就職できる循環が必要と述べています。全く同感であります。蓄積された技術の継承と地元就職の循環づくりのためにどのような取組が必要とされるか、知事の認識をお伺いいたします。
南信工科短大は、IT技術を導入した時代に合った教育体制を実行しています。現に、卒業者への企業の求人率は5倍と、高く評価しますが、入学者は40名定員の60%で、なぜ長野県の高校生はものづくりに対して興味がないのかと学長も首をかしげていました。
長野県のものづくり産業を担う人を育てる教育が初等中等教育でどう行われているのか。現状とその成果をどう分析しているのか。また、高校教育の中で地域と共に歩むことの大切さをどのように教えているのか。併せて教育長にお伺いいたします。
企業のニーズを授業に取り入れようと、企業と高校現場をつなぐ企業出身の
コーディネーターを、県下で初めて地元と県の
元気づくり支援金制度を使って池田工業高校が設置して2年がたちました。過日も、この
コーディネーター氏から産業労働部の産業人材育成課と
教育委員会高校教育課の関係者に取組内容や実績を説明する説明会を持ちました。説明を受けた関係者は、
企業コーディネーターの意義を理解され、必要性を述べていました。
臨時の県職員で企業出身の
コーディネーター制度を導入した事例は、
大手自動車メーカーの
生産拠点を誘致した岩手県にあります。県が工業高校に企業が望む2年制の専攻科を創設し、
コーディネーターを活用して高校と企業を結び、生徒の地元就職率を100%、3年後までの離職率はゼロ%を達成しています。どうすれば地元企業が繁栄し、新たな産業立地ができるか、人材の育成と確保がキーだと多くの企業者が指摘していますが、その意味で、産業振興を最重点課題に取り組む本県の
企業コーディネーター制度の導入を提案しますが、知事の見解をお伺いいたします。
産業振興は産学官の連携にあることは論をまちません。先ほど引用した長野県
産業立地ガイド誌の中に振興局ごとの高等教育機関の一覧が載っています。残念ながら、北信地域振興局、
北アルプス地域振興局の掲載がありません。県教育委員会が準備している統廃合案で、これらの地域の中に専門高校もなくなろうとしています。地域で学び、地域で働くことを掲げる阿部県政として、県土の均衡ある発展のためにも全ての広域で郷学郷就は大切な課題だと思いますが、知事の見識をお伺いいたします。
高校を受検する生徒がいないから高校再編が必要だと県教育委員会は苦労しています。安曇野市長、池田町長、両議会は、10月、この地域の専門高校3校の単独存続の陳情を知事と教育委員会にされました。今年度中には統廃合案を提案すると聞いていますが、仮に統廃合するとした場合、他の事例を参照し、決定後何年後に開校予定と提案する準備でいるのか、教育長にお伺いいたします。
建設行政についてであります。
「はじめに砂防ありき」、この名句は、世界的レベルの山岳観光地、白馬村長の、何をやるにしても住民の安心と安全が何よりも優先される、砂防事業への感謝の言葉であります。数々の実績を誇る「SABO」は世界の言葉となりました。改めて、山岳県、長野県知事として、砂防事業の功績についての評価をお伺いいたします。
先日、日本三大崩れと命名される富山県の立山鳶山崩れと静岡県の大谷崩を訪問してきました。歴史に残る大地の猛威とそれに向かう人の英知と情熱、これらの地では、世紀の事業を国と県、そして地元が役割を分担して後世につなげ、砂防事業の功績と必要性が分かりやすく説明される。見学する中高生や観光客が感動していました。
日本三大崩れのもう一つは小谷稗田山であります。現在も
国土交通省松本砂防事務所を中心に技術の粋を集め、丁寧な工事が進められていますが、残念なことに、稗田山には、他の三大崩れの現地と異なり、中高生や観光客が訪問し砂防事業の英知と情熱を体感する拠点施設はありません。
全国で四つの県砂防事務所のうち三つを有する長野県は、自然の猛威と対座する砂防事業の大切さを多くの人たちに知らせる責任があると考えます。例えば、富山県の立山や静岡県の大谷のように、国が実施している事業を公開し、観光施設として整備して県が砂防ミュージアム的な施設を建設し、地元が周辺整備を担当するなど、自然の猛威と砂防事業の重要性を子供たちや一般の人たちに伝え、学ぶ場所をつくるべきだと提案いたします。
作家幸田文さんも注目された稗田山崩れの現地を国の砂防のトップは既に何回も視察し、松本砂防は、先日、立派な案内板を設置いたしました。砂防王国長野県の先頭に立って事業展開を図ってきた田下建設部長の所見をお伺いいたします。
次に、
地域高規格松本糸魚川連絡道路の現道利用区間に絞り建設部長にお伺いします。
財政が厳しい中で、現道利用として、高瀬川の堤防を
地域高規格道路として約10キロほど活用することとしています。過去に何回も氾濫した暴れ川、高瀬川の堤防安全度は、お願いした強度調査の結果、すこぶる脆弱と報告されています。異常気象での河川災害が多発している時期に、将来的に国の重要物流道路となるであろうこの
地域高規格道路が河川の護岸を使用するためには強靱な整備が必要だと思いますが、堤防利用の道路をどう改善するのか、お伺いいたします。
県道上生坂松川停車場線と松川村交差点部分は、国土交通省が発表した高瀬川流域の災害基準値48時間雨量741ミリでは水没して通行不可となります。また、この
地域高規格道路は、当初から地元の建設要望として命をつなぐ道を掲げてきました。入院医療施設のない白馬小谷地域の皆さんは、この地域にある
北アルプス医療センターあづみ病院への通院のため、車やバス利用の停車場をずっと希望していますが、いまだこの要望に対応した明確な改修の説明がありません。同様に、約2万人が居住する町村の主たるインターになるこの出入口での交通事故の多発を心配し、現行をどう改修するかに関心が集まっています。現地調査をされ、要望を受けた田下部長に整備計画と完成後の姿をお伺いいたします。
小谷村塩水地区は、最近も急なカーブで死亡事故が発生しています。既に地域高規格の計画区間にも入っており、田下部長の判断もあり、現在、高規格に対応する施工計画づくりに入り、今年度中にも計画を発表するとしていますが、その進捗状況についてお伺いいたします。
国が整備した小谷道路に連絡する外沢トンネルは、狭隘で古く、平成7年災害時に多くの災害を受け、傷み、
地域高規格道路の基準にはそぐわないと感じます。新たなトンネルの建設の必要性を感じますが、外沢トンネルの今後の方針をお伺いいたします。
農業問題についてであります。
ここへ来て、米消費の低迷と新型コロナの影響もあり、農協の米仮払金は、昨年度より長野県では2,000円ほど下落し、千葉県では3,000円も低価格が示され、60キロ当たり1万円を割りました。このまま推移しますと、県農政部の資料では、10ヘクタールの米単作農家の収入は約350万円が140万程度となります。米の生産のほかに新たな園芸品目の導入を図らなければ米農家は生活していけない局面に立たされます。現在、県内の農家の平均年齢は65歳で、その多くは、資金もなく、後継者もいないのが現状で、スマート農業に取り組むこともできずにいます。
国家の独立は食糧の自給率にあり。将来の食の動向を考え、生産基盤を含め、上越市旧清里村が村とJAが新たに工夫し見事な成果を上げたように本県の中山間地の農地の維持に真剣に取り組むときだと考えますが、決意をお伺いするとともに、稲作農家に対してどう対策していくのか、併せて農政部長にお伺いいたします。
長野県は、日本一の園芸王国を目指し、
全国ビッグスリーに入る実績を誇ってきました。ここ数年は、食と農業農村の振興条例に基づき、工夫はしているものの、キノコを除く園芸分野の生産額は残念ながらいま一つの状況であります。
中山間地の多い本県農業は、勤勉で工夫する心を持った生産者と、生産者と共に誠実に歩く長野県農協、そして、生産者を大切にする農産物加工業者で支えてきましたが、国の
大型経営農家中心の農業政策、生産者の高齢化、農協改革でJA組織は合理化を余儀なくされ、21世紀最も可能性のある産業の一つに数えられる農業に取り組む環境は、本県においては右肩下がりと言わざるを得ません。
日本農業が変わるとき、本県の生産額の大宗を占める園芸分野の振興のために、使い勝手がよく希望者が多い県単の
信州農業生産力強化対策事業費の増額を含め、生産者、農業団体が期待する本県の園芸政策の拡充をどう図るか、知事にお伺いします。
最後に、商工会の問題であります。
県下の商工会は、ここ数年、豪雨災害やコロナ禍で苦悩する小規模事業者に寄り添い、信頼を増し、存在感は高まるばかりであります。69の市町村商工会の職員給与は、5年ごとに実施される経済センサスの結果を算定基礎に決定され、県から職員の人件費の80%から85%程度が経営支援事業費として各商工会に支払われています。田中康夫知事以前は、人件費補助で昇給分も加味されておりましたが、田中知事の政策で事業費補助となり、現在に至っています。事業費補助ですから、当然給与の自然増はなく、各商工会の運営は大変な状況であります。
本来、市町村に一つの商工団体が基本方針であります。市町村合併が少ない本県は、小規模事業者と結びつきが強い商工会の役割を大切にし、不足分は市町村等の支援で何とかやってきていますが、それも限界になろうとしています。商工会や
商工議員懇談会等の要望を受け、知事の判断で補助額を工夫されていることには大いなる敬意を表しますが、5年ごとの経済センサスの結果職員の給与が決定される不安定の中に置くことは何としても改善しなければならないと思います。可及的速やかに検討に入るべきだと思いますが、
小規模事業者対策を重要視する知事にお伺いいたしまして、1回目の質問とさせていただきます。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)宮澤議員の御質問に順次お答え申し上げます。
まず初めに、長野県の中山間地域は今後どう変化していくと分析しているのかという御質問であります。
地理的条件等が不利な中山間地域におきましては、特段の政策を講じない場合には、今後とも都市部への人口流出、出生数の減少等が進行して、地域社会や産業分野の担い手不足による活力の低下等、現在各地域が直面している課題が一層深刻化することが懸念されます。
他方で、今回のコロナ禍を契機として、田園回帰、地方回帰の動きが出てきています。テレワーク等の普及によります場所を選ばない働き方の浸透も含めて、中山間地域にとって言わばチャンスとなり得るような動きも出てきています。
今後とも、医療、教育、交通、こうした安心して暮らし続けるための基盤の確保に県として努めるとともに、コロナ禍で生じた社会の動向ということを的確に捉えながら、中山間地域が持つ価値や資源を最大限活用して、創造的で豊かな生き方が実現できる地域、クリエーティブフロンティアと我々は呼んでいますけれども、そうした地域としての転換が図られるよう県として取り組んでいきたいと考えております。
続きまして、製造業を繁栄させるため、技術継承と地元就職の循環をつくることが必要と考えるが、どういう取組が必要かという認識についての御質問であります。
製造業を含む様々な技術伝承が必要な分野では、やはり早い段階から若い方たちが地域の企業や産業についてしっかり意識していくということが重要だというふうに思っています。
そういう意味で、先ほどの御質問の中にもございましたように、例えば、学校と企業との連携をもっと強力にしていくということが必要だと思いますし、また、そのためにも、これは県庁の中も縦割りであってはいけませんので、教育委員会と産業労働部がしっかり問題意識を共有して取り組んでいくということが大変重要だと考えています。
これまで、県としては、キャリア教育の充実やインターンシップの促進など様々な取組を進めていますが、例えば、上伊那地域では、
郷土愛プロジェクトということで、地元の関係者が協働して各学校をサポートする形でのキャリア教育等を産業界も一緒に取り組んでいる事例もありますので、こうした地域ごとの特色も踏まえながら、それぞれの地域において、企業と学校、学びの場がよりしっかり連携できるような取組を進めていくことが重要だというふうに考えております。
それから、企業出身者の
コーディネーター制度の導入についての見解という御質問でございます。
先ほどの池田工業高校の事例、これは、池田町に積極的にお取組をいただいているいい事例だというふうに思っております。一方、県としても、地方創生の交付金を活用して、学ぶ、働くを連携させた新たな人材モデルという事業をこれまで幾つかの地域で行ってきました。これは、地域振興局等に
コーディネーターを配置して学校と地元企業を連携させようという取組であります。この事業自体は終了しているわけでありますけれども、現在もそうした事業の取組を踏まえて各地域において連携事例が継続している部分もあります。
私としては、先ほど申し上げたように、学校と企業との連携は、企業側からすると人材が足りないという極めて深刻な課題がありますし、学生側としてもでき得れば地元の企業にしっかり就職していきたいという若者が大勢いらっしゃいますので、そういう意味で、企業と高校をよりしっかりと連携させていくことが重要だというふうに考えています。
この池田工業高校の事例や、今申し上げた県としてモデル的に行った取組もございますので、そうしたことをもう一回しっかり検証して、どういう形で企業と高校をつなぐことが望ましいか。その適切な在り方について検討し、具体的な連携の在り方を考えていきたいというふうに思います。
それから、地域によっては高等教育機関もなく、また、高校再編も行われる中で郷学郷就をどうしていくのかという御質問でございます。
私は、問題意識として、今、人口構造を見ますと、長野県は二十歳前後の人口が少なくなっているという状況です。これは、高校を出て高等教育機関に進学するときには、選択肢としてどうしても県外を選ばざるを得ないという状況がありますし、また、一度県外に出てしまうと、なかなか全ての子供たちに戻ってきていただけるような環境になっていないという問題意識の下で、これは、もちろん本人の希望を尊重するわけですけれども、長野県で学び、長野県で働ける、そうした環境をできるだけつくっていこうということで郷学郷就をキーワードに取組を進めています。
県としても、高等教育振興や
Uターン就職支援に力を入れてきているところでありますけれども、宮澤議員の御質問にあったように、もう少し身近な地域での郷学郷就ということもしっかり考えるべきではないかという御指摘だと思います。
人口減少社会の中で、全てのサービスを各地域で満遍なくというのは難しい環境にありますが、地域の皆さん、地域にお住まいの子供たちや市町村からすると、もう少しミクロの視点でも考えてほしいという御意見も当然あるところだと思います。
県全体の視点でこれまで取り組んできていますけれども、一人一人の若者、あるいはそれぞれの地域ということを中心とした視点も大切にしながら、引き続き若い世代が学びやすい、そして働きやすい環境づくり、これを全県を視野に入れて取り組んでいきたいというふうに考えております。
それから、砂防事業の評価でございます。
私は、これまで、本当に度重なる災害に向き合ってまいりました。南木曽町の梨子沢や飯山市の井出川では土石流災害が起きました。また、最近では、東日本台風災害、あるいは8月、9月の災害、こうした中で、多くの土砂災害を目の当たりにし、土砂災害の恐ろしさと、その一方で砂防事業の重要さということを改めて認識しているところでございます。
本県においては、先人たちがいろんな取組を重ねて地域の安心、安全を確保してきておりますし、また、日本全体としても、先ほど宮澤議員の御質問にありましたように、SABO、これは全世界に通用するワードということで、世界に誇れる技術を有しているわけであります。
本県における砂防事業は、これまでも大きな効果が上がってきているというふうに考えています。三六災害で大きな被害を受けた伊那谷においては、砂防施設を着実に整備してきておりますので、当時を上回るような最近の異常降雨に対しても災害が減少している状況でありますし、また、今年8月の大雨の際には、岡谷市小田井沢川において、平成18年の災害で整備した砂防堰堤が土石流を捕捉し、下流への被害を食い止めたという実例もございます。「はじめに砂防ありき」というお言葉がありましたけれども、やはりこうした安全、安心を守る砂防施設の整備の上で県民の皆様方の安心した暮らしが成り立ってきているというふうに考えております。
今後とも、防災・減災、国土強靱化加速化対策予算を活用しながら、この砂防事業も含めたハード面、それから逃げ遅れゼロを含むソフト面の両面から防災対策の充実を図って、安心、安全な県づくりに努めていきたいと考えております。
それから、園芸政策の拡充についてという御質問でございます。
本県の園芸作物は、全国上位品種でありますレタス、セロリ等の野菜、リンゴ、ブドウ等の果樹、あるいはカーネーション、アルストロメリア等の花卉と大変バラエティーに富んだ生産が行われておりまして、本県農業において重要な地位を占めているというふうに考えております。
これまで、県としては、国の対策も有効に活用しながら産地の集出荷施設の整備等に取り組み、園芸品目の収益力と競争力を高めてきました。さらに、各産地の特色ある取組をきめ細かく支援するという観点で、御質問にありました県単独事業での信州農業生産力強化対策事業に取り組んできています。信州農業生産力強化対策事業につきましては、地元の御要望も十分お伺いしながら来年度も必要な予算の確保に努めていきたいというふうに考えております。また、次期食と農業農村振興計画の策定に合わせて現場のニーズに応えられるメニューの見直しも行い、事業の充実を図っていきたいというふうに考えております。
このほか、園芸作物の支援としては、例えばシナノリップ等オリジナル品種がたくさんございますので、さらなる開発やこうした品種のブランド化、そして、モニタリングシステムの導入等スマート農業技術の推進、そして、ワインやシードル等農産物の付加価値を高めるための取組の推進、さらには、クイーンルージュをはじめとする様々な優れた作物を私自身がトップセールスで日本全体、あるいは世界にも売り込んでいきたいというふうに思います。こうした取組を総合的に進める中で、全国に誇れる園芸王国づくりに取り組んでいきたいと考えております。
最後に、小規模事業経営支援事業補助金について御質問をいただきました。
商工会や商工会議所には今回のコロナ禍でも非常に大きな役割を果たしていただき、また、県の取組にも連動、協力し、対応いただいていますし、また、平素からそれぞれの地域産業の活性化や地域の元気づくりに大きな役割を果たしていただいてきているところであります。そういう観点で、商工会や商工会議所の経営が安定していくということは、長野県の産業の発展や地域の振興にとって大変重要だというふうに考えております。
先ほど御質問にありましたように、今の制度では、事業所数に基づいて事業費が変動し、商工会等の運営が不安定になるのではないかという御指摘をいただいておりまして、そのことについては私も認識しているところでございます。
他方で、今後、各商工会、商工会議所がより専門性を発揮して経営支援に努めていただくことが重要だというふうに考えておりますので、私としては、例えば、商工会連合会におかれましては、広域化、組織人事の一元化にも取り組まれておりますし、また、地域の活力創出につながる体制の構築も検討いただいているというふうに考えております。そうした商工会、商工会議所の皆様方の検討に県としても協力していきたいというふうに思いますし、また、県のこの補助事業につきましては、安心して経営支援にお取組いただけるよう小規模事業経営支援事業費補助金の在り方について県としてもしっかり検討していきたいというふうに考えております。
以上です。
〔産業政策監兼産業労働部長林宏行君登壇〕
◎産業政策監兼産業労働部長(林宏行 君)私には、県内に進出を願う企業がものづくり人材に求めるものと教育委員会との連携についてお尋ねをいただきました。
まず、企業が求める人材像について、企業側からは、デジタル人材、技術の高度化に適応できる人材、持続可能な社会づくりに資する人材などとのお声をお聞きしているところでありまして、産業構造、社会環境の変化を踏まえたスキルが求められているものと認識しております。
このため、早い段階からのキャリア教育とともに、現場において仕事上のスキル、技術を再教育するリスキリングなど、イノベーションや価値創造を担う産業人材の育成確保に向けた取組が大変重要だと認識しております。
教育委員会との議論につきましては、長野県産業教育審議会はもとより、例えば、本年9月の長野県産業人材育成プラン2.0の策定に当たりましても、高等学校長に審議会委員として御参画いただき、企業ニーズを踏まえたキャリア教育やリカレント教育の在り方などについて積極的な御審議をいただいたところですし、こうした議論を現場に反映するべく、キャリア教育の実施に当たっては、企業経営者や熟練技能者等を中学校に派遣し地域産業の魅力を伝える地域と未来をつなぐゼミや、県職業能力開発協会が熟練技能者を職業高等学校に派遣し実技指導するものづくりマイスター派遣事業など教育現場と地域産業が連携して取り組んでいるところでございます。
今後とも、教育委員会と議論を深めつつ、産業人材の育成確保に努めてまいります。
〔教育長原山隆一君登壇〕
◎教育長(原山隆一 君)ものづくり産業を担う人を育てる教育について現状とその成果をというお尋ねでございます。
小中学校では、図工や技術・家庭科等でものをつくる面白さや達成感を味わい、ものづくりに対する興味、関心を高めることが大切であり、日々の授業の中でものづくりに携わる人材育成の基盤づくりに努めているところでございます。
さらに、県教育委員会では、小中学生を対象に、プログラミングを組み合わせて新たなアイデアを生み出し、様々なものづくりに挑むイベントを県内4ブロックで開催し、未来を創造する視点を持った人材の育成にも努めているところでございます。
高校では、そうしたものづくりへの興味、関心を持って進学してきた生徒たちに対し、学校の中だけでなく、地域の企業と連携、協働した取組を行い、実践的なものづくりの技術や先端技術の基礎、基本を体験的に学ぶとともに、職業人としての意識の涵養を図っているところでございます。
こうした取組の結果、直近5年間における工業科の卒業生の県内就職率を見ますと、全国の工業科の平均が72.9%であるのに対しまして長野県は85.4%と10%以上高くなっております。また、 卒業生の3年目までの離職率を見ると、最近の5年間の平均では19.0%と、高卒者全体の離職率が4割程度の中、かなり低く抑えられているところでございます。
次に、高校教育の中で地域と共に歩むことの大切さをどのように教えているかについてでございます。
高校では、教室での学びにとどまらず、地域と学校が連携し、体験的に学ぶ活動を通して、地域企業に対する理解と愛着を深め、地域と共に歩むことの大切さを実感していく取組を進めているところでございます。
幾つか御紹介いたしますと、例えば、池田工業高校では、池工版デュアルシステムの中で、地元企業3社と共同で特急あずさの模型を製作いたしました。2年間にわたって企業の高度な技術と知識を学んだ生徒たちの熱意を結集した力作となり、大変高い評価を得て、町に寄贈したところでございます。生徒たちは、企業や学校の枠を超えた地域としてのワンチームによるものづくりを実感したところでございます。
また、須坂創成高校では、須坂市が仲介する50社を超える地元企業の協力の下、1年次には地域産業を知るための講演を年6回、2年次には就業体験を年間2回、そして、3年次には3か月間の企業実習を毎週行うなどの取組によりまして、今年度も就職を希望する生徒の8割が地元企業に就職が内定したところでございます。引き続き生徒が地域の中で体験的に学ぶ活動を通して地域を支える職業人の育成に努めてまいりたいというふうに考えております。
続いて、統合新校の開校時期についてのお尋ねでございます。
今回の高校再編のプロセスについては、まず、地域からの意見提案を踏まえ、県教育委員会が再編計画案を策定し、地域に丁寧に説明して再編計画を決定いたします。
その後、さらに地域と意見交換を重ねまして、新校の校地など統合に係る基本的な事項を決定し、県議会に統合の同意を求めることとしております。県議会の同意をいただいた上で新校の環境整備等に取りかかることになりますけれども、各学校の施設の現況も考慮しながら新校の新しい学びに必要な施設整備を行う予定ということになります。こうしたことから、一概には言えませんけれども、再編計画の決定から開校までおよそ7年から8年程度は必要と考えているところでございます。
以上であります。
〔建設部長田下昌志君登壇〕
◎建設部長(田下昌志 君)初めに、稗田山崩れを通じた砂防事業の学びの場についてのお尋ねでございます。
日本三大崩れである稗田山やその周辺砂防施設を通じて自然の猛威や砂防事業を学ぶことは、県民一人一人の防災意識を向上させ、逃げ遅れゼロを達成させるために重要と認識しております。
小谷村におきましては、これまで、インフラツーリズムを通じて砂防事業を紹介しておりまして、現地を直接見る学びの場として多くの方々に御参加いただいております。さらには、稗田山等を題材とした観光活用やPRについて地元の小谷村や国と連携し、村を事務局とする協議会を設置して、今年度より具体的な方策の検討を始めたところでございます。
当協議会では、既存施設の有効利用も図りつつ、最新デジタル技術の活用や魅力ある体験ルートの設定など、より多くの情報を広く分かりやすく提供する学びの場の創出についても検討を進めており、県としましても、当協議会を積極的に牽引し、引き続き観光にも資するよう創意工夫を図ってまいります。
次に、松本糸魚川連絡道路に関しまして四つほど御質問をいただいております。
初めに、現道利用区間の強靱化に関するお尋ねでございます。
本路線の県内全線の整備方針は、
地域高規格道路としての機能を踏まえつつ、既存ストックを効率的に活用できることを基本として、バイパス案を含め、さらなる調査、検討を行う区間と現道活用を基本として検討を進める区間に分けて計画しております。
高瀬川の治水対策に関しましては、現在策定中の河川整備計画に基づき、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策の予算を最大限活用し、堤防、護岸の弱部に対し強化対策を順次進めていく予定としております。現道活用区間の道路整備につきましては、治水上の安全を考慮し、河川法の基準にのっとった上で災害に強い強靱な道路を整備してまいります。
次に、松本糸魚川連絡道路と
県道上生坂松川停車場線との交差部分に関するお尋ねでございます。
当箇所は、病院や駅等が近い上、周辺地域の利用者が多いことから、アクセス性の向上や治水安全上の観点に加え、利便性に十分配慮し、概略設計を進めているところでございます。主要なアクセスポイントとなる当該交差部の計画につきましては、
地域高規格道路としての機能を踏まえた検討を進めつつ、構造基準に照らし、道路利用者の安全性を十分検討し、安心、安全な道路となるよう計画を進めてまいります。今後、関係する町村や地域の皆様の意見を伺いながら計画の策定を進めるとともに、整備に当たっては、国の補助金を活用することにより整備が早急に進むよう取り組んでまいります。
次に、国道148号の小谷村塩水地区の整備に関するお尋ねでございます。
この箇所は、私も数回にわたり現地を確認しておりますが、カーブが連続し、特に冬期において通行が危険な状況となっており、早急な改良の必要性を認識しているところでございます。そこで、本年度、道路概略設計に着手したところであり、設計に当たりましては、豪雪地域であることを十分に考慮した上で改良計画の検討を進めております。今後、住民の皆様に計画について早期に協議できるよう鋭意努めてまいりたいと考えております。
最後に、国道148号の小谷村外沢トンネルの今後の方針に関するお尋ねでございます。
外沢トンネルは、路肩を含めた幅員が6.5メートルと前後のトンネルに比べて狭小で、老朽化も進んでおります。そのため、
地域高規格道路としての構造を満たしていないということで、改良の必要性を認識しているところでございます。将来的な松本糸魚川連絡道路としての整備を考慮する中で、トンネル拡幅の技術的難易度や交通管理の点から、バイパス計画も視野に入れ、整備手法について検討を進めてまいります。
なお、当面の措置といたしまして、今年度よりトンネル補修を行うことで安全な通行を確保してまいりたいと考えております。
以上でございます。
〔農政部長小林安男君登壇〕
◎農政部長(小林安男 君)中山間地域の農地の維持と稲作農家への支援について御質問をいただきました。
中山間地域を多く抱える本県において、中山間地域の農地の適切な維持管理は本県農業にとって大変重要な課題であると認識しております。このため、県では、中山間地域農業直接支払事業等により農地を維持する活動を支援しており、例えば、長野市芋井では、地元の生産組合で、組合長が中心となり、遊休農地で生産した大豆を豆菓子として加工、販売し、収益を上げ、組合員のやる気を高めることにより農地が継続的に利用されております。
こうした取組では、地域を牽引するリーダーの存在が不可欠となるため、市町村や農業団体と連携しながらリーダーの育成を図ることに併せ、半農半Xなど農ある暮らしへの支援を通じ、多様な人材の農地維持活動への参加を促し、中山間地域の農地を守ってまいります。
稲作農家に対しては、需要の見込める麦、大豆の拡大や新規需要米への取組などを進め、米の需給調整を着実に実施することにより適正な米価の維持につなげ、農家の経営安定を図ってまいります。
さらに、米に加え、駒ヶ根市での白ネギや安曇野市での夏秋イチゴなど需要が見込める園芸品目を導入し、所得向上につなげている事例もあることから、高収益作物の導入による複合化を進めることも大変重要だと考えております。
このため、県といたしましては、国の水田活用の直接支払交付金を活用して園芸品目等への作付誘導を図るなどソフト面の支援と、課題となっている排水対策や必要となる機械等の導入など、国の事業のほか県単独事業も活用したハード面の支援を併せて行い、将来にわたって稲作農家の経営安定と所得確保が図られるよう努めてまいります。
〔48番宮澤敏文君登壇〕
◆48番(宮澤敏文 君)中信地区の半導体の大手製造メーカーでは、130人の日本人労働者の働く者のうち約40人が大卒、大学院卒、そして、あとの残りは高専、高校卒の方々であります。これは技術者と呼ばれます。そして、180人の外国人技能者でその会社が今運営されています。これが企業からの雇用に対する目であります。どんな人が欲しいのか。企業は技術者が欲しいわけであります。この技術者が欲しいということで、先ほど申しました池田工業高校の
企業コーディネーターはマレーシア富士電機の総領事も務めた方でありますけれども、この方は、とにかく英会話をしっかりやらなきゃ困るよと。高校生のほうが社会に出てすぐに英語が必要になってくる。要するに、高校教育をそういう形に変えてもらいたい、そういう話をしているわけです。先ほど知事も言ってくださいましたけれども、それが私が言っている企業から学校を見る目なんです。ですから、そこをしっかりと理解した教育現場でないとなかなか前へ進まないんです。そんなに大きなお金じゃなくてもいい、少なくとも4地域に1人ずつの企業出身の
コーディネーターを合同庁舎の中に置くくらいの対応をしてほしい。知事、これが私の願いであります。
長野県商工会は、来年度から連合会と単会がそれぞれ痛みを分かち合いながら人事と給与の一元化に踏み出します。しかし、一元化をしても、将来この問題が行き詰まることは目に見えています。商工会の財産は人であります。前回の改革以来既に十数年がたとうとしています。大きく世の中が変わりました。新たな改革のときだと思います。群馬県では、定数を決めて、その中でもって工夫している。それぞれの県が様々な工夫をしているわけであります。どうか人件費補助も含めた知事の勇断によって一歩を踏み出してもらいたい。これを切に願うところであります。
20年後、本県の多くの市町村では、65歳以上の高齢者率はほぼ50%となるとデータは示しています。若者はもっともっと地域からいなくなります。高校を受ける生徒はもっといなくなるわけであります。現在進行している専門高校の統廃合は、平成27年実施の産業教育審議会の意見をベースに進められています。果たしてこの状況で第4次産業革命の激しい変化のときに対応した期待される専門高校になるでしょうか。
上記の安曇野市、池田町の陳情の席上、知事は、アフターコロナやICT社会の急激な変化を考慮し、慎重を期して進めなければと述べておられました。さすがだと思って聞いておりました。
今後、地元企業から頼りにされる技術者を育てる専門高校には、広く浅くではなく、より深い専門教育が求められてくると思います。この際、7年間も開かれていない産業教育審議会を開催し、将来の長野県の専門教育に求められる教育の在り方、構成を再検討することが重要なことと思いますが、教育長にお伺いいたします。
最後に、世界の人口は、こうしている今も増え続けています。全国で展開される平成の合併が実行されなかった長野県、若い世代の人口減少が深刻な県、それぞれの市町村にとって大変な課題であります。
減少し続ける若者人口のために地域が抱える諸問題をそれぞれ述べてきました。県下の均衡ある発展、県内どこに住んでも適正なサービスを享受できる生活の充実を考慮する阿部県政の人口政策をお伺いし、全ての質問を終わります。
〔教育長原山隆一君登壇〕
◎教育長(原山隆一 君)産業教育審議会の開催についてのお尋ねでございます。
前回、平成27年度の審議会では、ニューヨーク市立大学のキャシー・デビッドソン教授の、2011年にアメリカの小学校に入学した子供たちの65%は、大学卒業後、今は存在していない職業に就くだろうという言葉を引用しながら、社会情勢や産業構造が大きく変化する時代における望ましい産業教育の在り方について諮問し、未来の本県産業の振興を担う高校生に対する産業教育はどうあるべきかについて答申をいただいたところであります。
一方、デジタル技術の加速度的な進展や急速な脱炭素化への動きなど新たな社会課題に適応した産業や企業の変革が求められていることを踏まえますと、産業教育審議会を開催することは意義あることだというふうに考えております。
来年度には、県内の専門高校の廃止について一定の方向が定まる見込みでありますので、確定した後に、専門高校のさらなる学びの充実を図るため、産業教育審議会に諮問することを検討してまいりたいというふうに考えております。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)阿部県政の人口政策という御質問をいただきました。人口減少問題は、長野県にとっても、また、それぞれの県内各地域にとっても、今、非常に重要で、ある意味深刻な課題になっているというふうに考えています。
そうした観点から、我々は、県として結婚支援や子育て支援に取り組んできておりますけれども、やはり住民に身近な市町村の皆さんと連携して取り組んでいくことが大変重要だということで、先般、県と市町村の協議の場におきましても、この少子化対策、少子化の問題について率直な意見交換をさせていただきました。
その中では、例えば、広域における結婚支援の充実や出産支援もほかの都道府県に負けないエッジの利いた際立った施策を取ってはどうか。さらには、特に中山間地域等では子育てに非常に経費がかかる状況になっていますので、そうしたところへの支援は考えられないか。こうした様々な御意見をいただいているところでございます。
そういう御意見も踏まえて、これは聞きっ放しではいけませんので、私どもとしては、今年度中を目途に、市町村の皆様方と一緒に、この少子化対策に向けて県と市町村がどういう取組をするのか、そうした戦略を取りまとめていきたいというふうに考えております。
また、他方で、人口の社会増減の問題もございますので、引き続き移住したい県として選ばれている長野県の強みを生かした移住者の増加、また、地域を活性化させるためのつながり人口の増加、こうした取組にも全力を傾けていきたいというふうに考えております。
一方で、この人口問題というのは、市長会、町村会との意見交換でも出ましたけれども、各地域の人の取り合いみたいな話ではいけないと思いますので、国家的な課題として国にも正面から向き合っていただくことができるように、市長会、町村会の皆様方とも連携して要請をしていきたいというふうに考えております。
県としては、今、新たな総合計画の策定にも着手したところでございますので、この長野県における人口問題、少子化対策、それから社会増減の在り方、こうしたものも非常に重要なテーマとして位置づけ、検討を深めていきたいというふうに考えております。
以上です。
○議長(宮本衡司 君)次に、竹内正美議員。
〔16番竹内正美君登壇〕
◆16番(竹内正美 君)自由民主党県議団、千曲市・埴科郡区選出の竹内正美でございます。
最初に、長野県犯罪被害者等支援条例について質問します。
県は、犯罪被害者が受けた被害の早期回復や生活の再建に向けた支援を盛った犯罪被害者等支援条例の骨子案をまとめ、今月19日に公表しました。条例制定に向けては、専門家でつくる検討部会が5月から議論を重ね、10月に県人権政策審議会に結果を報告。報告を踏まえ、県が骨子案をまとめられました。
私が犯罪被害者等支援条例の制定に関して質問するのは今回で3回目です。初めて一般質問したのは昨年の9月議会でした。その4か月前に埴科郡坂城町で起きた殺人事件を機に、犯罪被害者支援の現状に関心を持ち、犯罪被害者を誹謗中傷などの二次的被害から守り、寄り添うことができる長野県でありたいとの思いが強くなりました。
本日は、その事件の被害者であり、現在は犯罪被害者支援の充実を願って活動されている市川さんも傍聴に来てくださっていますが、現在、私の地元、千曲市と坂城町では、不要となった本で犯罪被害に遭われた方々への支援活動に役立てるプロジェクト「ホンデリング」や、売上げの一部を長野犯罪被害者支援センターに寄附する寄附型自販機の設置が急速に広がっており、住民の皆様の意識の高まりを感じています。
そして、県が約1年間で条例の制定に向けて前進してくださったことに深く感謝しています。県は、被害者の日常生活を支援し、経済的負担の軽減や、住居や雇用の安定に取り組むと規定し、県民意見を募集した上で県会に条例案を提出する方針で、年度内制定を目指すとのことですが、他県と比べてより充実した支援が受けられる内容であることを願っています。
基本理念には、被害者が安心して暮らせるよう、必要な支援が迅速、公正に途切れることなく提供されることを掲げ、市町村や民間支援団体との連携や協力も深めるとあります。基本施策として、被害者の安全や住居の確保などに取り組み、情報提供や助言をするほか、心身に受けた影響からの回復のため、保健医療・福祉サービスを提供し、損害賠償請求や刑事手続に関する相談にも応じるとしています。
また、県の責務には、支援施策を総合的、計画的に実施し、市町村に必要な情報提供や助言をすることも盛っていただきました。これは、地元から要望が多かった部分であり、大変ありがたく思っています。
犯罪被害者支援条例の制定に向けて、私が特に大切に考えているポイントは二つあります。
一つ目は、犯罪被害者が犯罪で受けた悲しみ以上に二次被害で苦しむことがなくなることです。二次被害というのは、犯罪等による直接的な被害を受けた後に、周囲の者や犯罪被害者等に接する行政機関の職員、その他関係者による理解もしくは配慮に欠ける言動、インターネットを通じて行われる誹謗中傷、報道機関による過剰な取材などにより受ける被害のことをいいます。県民の皆様には、被害者が置かれた状況や支援の必要性に理解を深め、犯罪による直接的な被害後に受ける二次被害が生じないよう配慮するように条例で明確に求めるとのことですので今後に大変期待していますが、実際にはどのような対策を考えていらっしゃるのかが気になるところです。
二つ目のポイントは、経済的負担の軽減です。犯罪による直接的な被害を受けた後に、収入が減ったり、支出がかさんだりして経済的な困窮に直面する状況があることから、見舞金の支給が盛り込まれた条例が制定されることが重要だと考えます。
そこで、県民文化部長に2点質問します。
県人権政策審議会からの報告を踏まえ、制定済みの他県の条例と比較してどのような点を充実させたのでしょうか。条例骨子案では、二次被害の防止のために必要な施策を講じることとしていますが、現在県としてどのような施策を考えていますか。
知事に質問します。
犯罪被害者にとって、経済的負担の軽減が大変重要であり、県として見舞金を支給すべきと思いますが、どのように考えますか。
次に、稲荷山医療福祉センターについて質問します。
千曲市にあります稲荷山医療福祉センターは、県が指定する二つの民間医療型の障害児入所施設の一つであり、障害児が入所して福祉サービスを受けるとともに、県内で数少ない障害児医療を受けることができる東北信地域の中核的な施設です。また、障害児の医療及び障害児の生活、自立支援において専門性の高いサービスを提供していただいているなど、重要な役割を担っていただいております。
障害のある児童や障害者が日常生活の指導及び自立に必要な知識や技能の訓練が受けられる医療型障害児入所施設として70人の定員で運営されており、学齢に達した児童は、隣接する県立稲荷山養護学校に通いながら教育を受けることもできます。
県の健康福祉部障がい者支援課では、同センターが担う役割の重要性に鑑み、年に一度センターと直接意見交換を行う機会を設け、施設の整備や運営に関する要望などを聞いていただいており、大変感謝しています。
現在、ベッド数は80床、うち10床は医療法上の一般病床ですが、主に社会福祉事業として、医療型障害児入所、医療型児童発達支援センター、療養介護、生活介護、短期入所、障害児相談支援、計画相談支援の各事業及び公益事業としては、整形外科、リハビリテーション科、内科、小児科、精神科、そして障害者歯科の外来診療を行っていただいており、地元住民の皆様とも大変つながりの深い施設です。
また、児童相談所より虐待児及び障害のあるお子さんも入所されているなど、本県の医療福祉分野にとって欠かせない施設であることを再確認しています。
私は、以前、このセンターを訪問し、施設内を見学させていただきました。重い障害を抱えたお子さんたちが、それぞれ自分らしく懸命に生活している様子、そして、温かく寄り添う職員の皆様の様子を間近に見て、私はどんな言葉をかけてよいのか、言葉が見つかりませんでした。そんな戸惑う私にも、廊下で会った子供さんたちは、体は自由に動かないながらも元気にこんにちはと挨拶をしてくれたことがとても印象に残っています。
その際、社会福祉法人の関係者から当施設の歴史、沿革についてお聞きしました。昭和62年に当センターは全面改築されていますが、改築前の法人理事会において、県立移管については議会において採択されていると当時の県障害福祉課長より発言があったと聞いております。ところが、今になって、過去の話であるとか引き継いでいないと対応されてしまうのは、その言葉を信じてただならぬ使命感で御苦労を重ねながら稲荷山医療福祉センターを守ってきてくださった皆様には大変酷な話です。
職員の皆様が工夫して丁寧に使われてはいますが、改築から35年が経過し、建物の経年劣化と近年の気候変動に起因しての雨漏りや地下室への浸水、院内設備配管よりの漏水、蒸気の噴出など、大変老朽化が進んでおり、診療に支障を及ぼすだけでなく、入所・通所者、あるいは利用者、職員の生命の危険を及ぼしかねない事案が発生しています。私自身、施設整備に支援が必要であると強く感じていますし、地元では改築促進協議会が発足する動きがあるなど、機運が高まっており、地域住民の皆様からも強く要望を受けています。
そこで、健康福祉部長に3点伺います。
稲荷山医療福祉センターに対する本県の健康福祉分野での位置づけと同センターへの期待について伺います。
県と稲荷山医療福祉センターの間で定期的に行われている意見交換から、県が同センターに関して認識している課題について伺います。
稲荷山医療福祉センターの施設は老朽化していますが、県としてどのような支援が考えられるか、伺います。
次に、長期入院の高校生への学習支援について質問します。
疾病により長期間にわたり入院生活を送る児童生徒に対する学習支援として、義務教育である小中学生に対しては院内学級の制度があります。これに対し、長期入院の高校生に対する学習支援はいかがでしょうか。進級や卒業に必要な単位が修得できず、留年、退学というケースが全国的に生じております。
先日、難病を抱えて治療中の中学3年生のお子さんを持つ保護者の方が私の事務所にいらっしゃり、お子さんの高校進学後のことが不安であると相談を受けました。そこで、調べたところ、文部科学省が定める基準を満たすため、県教委、学校、医療機関、支援団体による努力により、教室と病室をつないだ遠隔授業が実施され、単位を修得し、進級することができている例が他県にあることが分かりました。
国の動向としても、2019年11月に、リモート授業を受信する側の病室に当該高等学校の教員を配置するとした従来の要件が緩和され、2020年4月には、36単位までに限られていた遠隔授業による単位修得数の上限も緩和されました。さらに、新型コロナの影響で、ICTを活用した授業の取組は各段に進歩しており、遠隔授業実施の障害は、技術的にも、人員配置といった運用面でも、大きく改善されたと言えます。
本県では、遠隔授業を望む高校生が常時多数長期入院している状況ではないかもしれませんが、本県も2年前から長期入院制度に対する支援をしているようです。本人が望み、医療的見地からも可能であるなら、学ぶ機会を保障することは重要であると考えます。
そこで、教育長に4点質問します。
長期入院により遠隔授業を望む高校生の現状について伺います。
入院の時期によっては、在籍高校のテストが受けられない場合があり、成績に影響することを心配する声があります。入院中のテスト受験はどのような配慮が考えられるのか、伺います。
長期入院が必要な高校生の遠隔授業を成功させた取組事例はありますか。また、成功事例があるとすれば、その成果を学校内にとどめるのではなく、県教育委員会としてノウハウを蓄積し、今後に生かすべきと考えますが、御所見を伺います。
長期の療養が必要な高校生の学習支援体制の確保に当たっては、医療機関や支援団体、教育現場との連携が不可欠であり、遠隔授業の実施に積極的に取り組んでいる医療機関や支援団体との情報共有、課題解決の連携がさらに進められることが必要と考えますが、御所見を伺います。
次に、発達障害など困難を有する子供たちへの学びの支援について質問します。
少子化で全国的に子供の数が減っているにもかかわらず、特別支援学級に入級する児童や生徒の数が急増しています。
長野県の場合は、特に自閉症・情緒障害学級は、小学校で全国2位、中学校で全国1位の在籍率となっており、特に顕著な状況を示しています。いわゆる発達障害等グレーゾーンの子供たちに対して、集団での生活が難しいとか周りとうまくいかないなどの理由で通常学級の子供たちとは分ける教育、つまり、分離する教育が進められている状況にあります。
数年前まで大阪の大空小学校の校長を務めていた木村泰子先生は、その著書の中で、どんなに手がかかる子供たちであっても、子供と話し合い、子供同士をつなげていくことで一緒に学ぶことができると主張されています。
校長や特別支援担当者の研修会でも、やみくもに入級させるのではなく、通常学級で学べる子供は通常学級で学ばせ、本当に特別支援学級での支援や指導が必要な子供たちだけを入級させるよう繰り返し指導がされているとのこと。県教委でも、特別支援教育課、義務教育課から適切な学びの場ガイドライン等のリーフレットを配付し、そこでも、今こそ通常学級における特別支援教育の充実をと通常学級における指導の見直しを図ってきています。
私は、県議になるまで町の教育委員をしていましたが、研修などで配付される資料やパンフレットから、教職員や市町村教育委員会職員の意識改革を図ろうとされているように感じていました。しかし、実際は、自情障学級へ入級する児童生徒は減少せず、増加の一途をたどっています。県教委が進めてきたこれらの対応がありながらも入級する子供たちが減らないのは、何か要因があるのではないかと考えます。
そこで、3点質問します。
発達障害と判定される子供たちが増加している要因をどう考えているのでしょうか。また、県教育委員会として、発達障害がある子供たちの教育上の課題をどのように捉え、どのように取り組んでいるのか、伺います。
教育委員会とこども若者局が連携して作成した「早めの気づき適切な学び」のリーフレットを教育委員会としてどのように活用していきますか。以上2点を教育長に質問します。
発達障害など困難を有する子供への支援についてどのように取り組んでいますか。こども若者局長に伺います。
〔県民文化部長中坪成海君登壇〕
◎県民文化部長(中坪成海 君)私には、仮称犯罪被害者等支援条例に関しまして2点御質問をいただきました。
まず、他県条例と比較して充実させた点についてのお尋ねでございます。
今回の条例の検討に当たりましては、人権政策審議会におきまして、他県の条例を参考に、本県の置かれた状況等に基づいて条例に盛り込むべき内容について御議論をいただきました。その内容を踏まえまして、特に次の2点を骨子案に盛り込んだところでございます。
1点目は、基本的施策として、日常生活の支援に取り組むこととした点でございます。犯罪被害に遭われた方は、被害直後から日常の家事すら手につかなくなることがございます。早期からのきめ細やかな支援が必要となってまいります。このため、日常生活の支援に関する情報の提供や助言、その他必要な施策を講じることとしたところでございます。
2点目は、大規模事案が発生した際における支援体制の構築でございます。本県におきましては、平成28年の軽井沢スキーバス転落事故のように死傷者が多数に上る事案が発生しております。このような場合に直ちに円滑な支援ができるよう、緊急時の支援体制の構築に取り組むこととしたところでございます。
次に、二次被害を防止するための施策についてのお尋ねでございます。
二次被害を防止していくためには、犯罪被害に遭われた方が安全に生活できる環境を確保するとともに、被害者等に対する理解の促進を一層進めていくことが必要であると認識しております。
まず、安全に生活できる環境を確保するための施策としまして、県営住宅への優先的な入居や緊急時に一時的に利用できる住宅の提供など、被害に遭われた方が二次被害を受けることなく安全、安心に暮らすことができる環境の確保に取り組んでまいります。
また、被害に遭われた方に対する理解の促進に向けた施策として、被害者が置かれている状況や支援の必要性について理解していただくための県民向け講演会の開催や、支援に携わる行政職員や企業経営者を対象とした研修の実施などを検討しているところでございます。
犯罪による直接的な苦痛を感じておられる被害者の方々にとりまして、二次被害はさらなる精神的苦痛につながるものでございます。その防止は極めて重要であると認識しておりまして、今後さらに具体的な取組について検討を進めまして、被害者等の安全確保と理解の促進に取り組んでまいります。
以上でございます。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)私には、犯罪被害者等支援条例(仮称)に関連して、見舞金の支給についてどう考えるかという御質問をいただきました。
犯罪等により被害に遭われた方やその御家族がとりわけ重大な被害を受けた場合には、身体的、精神的な苦痛はもとより、例えば、休職や退職をせざるを得ない状況で収入が減少してしまうといったこと、また、医療費や転居に要する費用といった支出の増加、こうしたことから、経済面でも多大な影響を受ける場合があるというふうに考えております。
こうした経済的負担を軽減するために、国として犯罪被害者等に対する給付金制度が用意されているわけでありますけれども、給付手続等に時間を要していることから、人権政策審議会からは、迅速な見舞金の支給等の支援が必要ではないかという御意見を頂戴しているところでございます。
県としては、こうした状況や他の都道府県における見舞金制度も参考にしながら、今後、こうした重大な被害を受けた方に対する支援の在り方について検討を深めていきたいというふうに考えております。
以上です。
〔健康福祉部長福田雄一君登壇〕
◎健康福祉部長(福田雄一 君)私には、稲荷山医療福祉センターにつきまして3点御質問を頂戴いたしました。
まず、健康福祉分野での位置づけとセンターへの期待についての御質問でございます。
稲荷山医療福祉センターは、御質問の中にございましたとおり、重度の障害があるお子さんが入所し、医療、保育、福祉サービスを受けることができる県内2か所の医療型障害児入所施設の一つでございます。通所により利用されるお子さんも含め、心身ともに健やかに育成され、有する能力に応じて自立した生活を営むことができるようにする拠点施設でございまして、肢体不自由など重度の障害のあるお子さんを支える大変重要な役割を果たしていると考えております。こうしたセンターの役割は今後も引き続き適切に果たしていただくことを期待しているところでございます。
次に、同センターの課題についての御質問でございます。
これも、お話がございましたとおり、県内二つの医療福祉センターと県の担当課が定期的な意見交換を行っております。
その中でお聞きしている稲荷山医療福祉センターの主な課題といたしましては、施設の全面改築から年数が経過していることから、耐用年数が過ぎた設備機器の更新、修繕等が必要であること、施設自体も大規模修繕や改築等が必要な時期が迫ってきていることなどであると承知しているところでございます。
それから、施設の老朽化に対する県の支援についての御質問でございます。
かつて、昭和40年代に県立移管をしてはどうかといった議論があったことは私どもも承知しております。重要な施設でございますので、設備や機器の整備に対する支援につきましては、これまでもセンターの御要望をお聞きしながら限られた予算の中でできるだけの対応をしてきたところでございます。近年では、平成29年度に自動火災報知設備や非常用発電機の整備など4事業に、令和元年度には空調機の更新に対してそれぞれ補助金を交付してまいりました。同センターが担う役割の重要性に鑑み、今後とも意見交換の機会を継続し、御要望をお聞きしながら、老朽化が進む施設の整備についても、支援の在り方について国等とも相談しながら検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
〔教育長原山隆一君登壇〕
◎教育長(原山隆一 君)長期入院高校生への学習支援についてのお尋ねでございます。
まず、長期入院により遠隔授業を望む高校生に対する支援の現状についてでありますが、昨年度は希望があった3名の高校生に、そして今年度は希望があった4名の高校生に対しまして遠隔教育システムを利用した学習支援を実施しているところでございます。
次に、入院中のテスト受験への配慮についてのお尋ねでございます。
テストの受験については、教員や保護者が自宅や病室に持参したテストを入院生徒がその場で受験するなど、状況により各校で柔軟に対応しているところであります。また、学校と同じようには実施できない実技系のテストにつきましても、課題に取り組むことでテストの代わりとするなど、病状などにも配慮しながらそれぞれの学校で工夫しているところでございます。
3点目、遠隔授業の成功事例についてというお尋ねでございました。
昨年度実施した生徒の中には、約1年間の入院期間中、治療期間を除きほぼ毎日、1日6時間の遠隔による授業に取り組みまして、同級生と同様に進級をした生徒もいたところでございます。引き続き各校での取組を把握し、医療機関等からのアドバイスも受けながら、教育委員会としてノウハウを蓄積し、それぞれの生徒のニーズに合った支援を行っていけるよう努めてまいりたいというふうに考えております。
遠隔授業の実施に積極的に取り組んでいる医療機関等との連携についてのお尋ねでありますが、県立高校における長期入院生徒への学習支援事業でありますけれども、現在、信州大学医学部附属病院と長野県立こども病院と連携して評価検討会を実施して、学習支援の在り方などについて情報を共有し、アドバイスを受けているところであります。この二つの病院以外でも治療を受けている生徒がいるわけでありますので、今後は、他の医療機関や支援団体とも連携を取って、長期入院生徒への学習支援がより進むよう取り組んでまいりたいというふうに考えております。
次に、発達障害がある子供に対する学びの支援についてのお尋ねであります。
まず、判定される子供が増加している要因をどう捉えているかというお尋ねでありますが、増加要因につきましては、発達障害者支援法の施行後、地域における支援体制が整備され、発達障害に関する社会的認知が広がり、従来は育てづらさを抱えていても認識する機会がなかった方々も相談支援等の機関につながり、必要な支援が提供されるようになってきたといったところが一般的に増加した原因であろうというふうに考えております。
発達障害がある子供の教育上の課題と取組であります。
発達障害のある児童生徒に対しては、個々の発達特性に関する周囲の十分な理解の下、ニーズに応じた適切な支援が行われることで、一人一人の持てる力を最大限に伸ばすこと、また、二次障害を防ぐことが重要だというふうに考えております。そのためには、適切な支援を受けられる場の整備と教員の支援力の向上が課題だというふうに考えております。
このうち、学びの場の整備につきましては、これまで全国と比べて設置数が少なかった小中学校のLD等通級指導教室を順次増設し、本年度は83教室設置するとともに、より身近な地域で支援が受けられるようサテライト教室を本年度53教室まで増設し、特別支援学級などとともに、本人のニーズに応じた支援が行えるよう取り組んでいるところでございます。
また、教員の支援力向上につきましては、発達障害のある児童生徒が抱える学習上、生活上の困難さを疑似体験することを通じて適切な支援方法を学ぶ研修を実施したり、あるいは、特別支援学校の自立活動担当教員を増員し、発達検査の結果や行動観察等に基づく認知特性に応じた最適な支援方法などにつきまして、小中学校を巡回し、学級担任等に助言を行うなどといった取組を強化してきたほか、昨年度作成しました適切な学びの場のガイドラインによりまして学校全体でチームとして取り組む体制の構築を進めるなど、取り組んできたところでございます。
それから、最後に、早めの気づき適切な学びのリーフレットの活用方法であります。
このリーフレットでありますが、読み書き等に困難さはあるが、知的な発達に遅れがないためにこれまで見落とされがちであったLDのある子供たちについて、より早期に気づくためのポイントやライフステージに応じて医療関係機関等と十分連携して支援を行う際の手順等について例示したものであります。
県教育委員会では、これまで、LDのある児童生徒に対しては、LD等通級指導教室の増設や各種研修会による教員の支援力の強化により個々のニーズに沿った支援を行ってきたところでありますけれども、このリーフレットを教員向けの研修会や支援会議、さらには発達障がいサポート・マネージャーの活動時等に活用することなどを積極的に行いまして、LDのある子供たちを見逃すことなく、支援体制の構築に努めてまいりたいというふうに考えております。
〔県民文化部こども若者局長野中祥子君登壇〕
◎県民文化部こども若者局長(野中祥子 君)私には、発達障害などの困難を有する子供への全般的な支援についてお尋ねをいただきました。
発達障害などの困難を抱える子供への支援に当たっては、乳幼児期から成人期までの各年代を通して、教育、福祉、医療など様々な分野の視点で取り組むべきと考えております。このため、県では、各分野の専門機関等の参画を得て長野県発達障がい者支援対策協議会を設置し、支援者の連携推進や能力向上、発達障害者の自立・就業支援、発達障害に関する知識の普及啓発、診療体制の整備という四つの支援の柱に基づき専門部会を立ち上げ、支援を検討、実施しているところでございます。
具体的には、各分野の支援者に対する総合的な助言や援助を行う発達障がいサポート・マネージャーを県内10圏域に1名ずつ配置するとともに、医療と福祉と教育の支援者の対応力向上や連携、推進に向けた研修会の開催、周囲の方々の理解促進を図るための発達障がい者サポーター養成講座の実施、早期受診・診断に向けた専門医の養成などの取組を進めております。
今後も、こうした連携体制の枠組みの下、様々な取組を通じ、子供たちの生活全般にわたった支援を行い、発達障害等の困難を抱えた子供たちが自分らしく生活していけるよう支援してまいります。
〔16番竹内正美君登壇〕
◆16番(竹内正美 君)犯罪被害者等支援条例については、被害者の方々と多く接していらっしゃる長野犯罪被害者支援センターの職員の皆様にお聞きしても、やはり関心が高いのは見舞金の支給でした。知事からも前向きと捉えられる答弁をいただきましたが、私から改めて見舞金の支給を強く要望いたします。
稲荷山医療福祉センターについてですが、ここに入所するのは自力での移動が困難な児童たちでありまして、隣接する県立稲荷山養護学校へ通学できるあの場所は代わりのない唯一の場所だと思っています。あの児童たちが行き場を失わないように何とか助けていただきたい。どうぞよろしくお願いいたします。
長期入院の高校生への学習支援については、既に7名の実績があるとのことでした。ですが、情報を知らないと、保護者の皆さんも児童生徒も必要以上に悩みを募らせてしまいますので、情報が今以上に行き渡るように工夫をしていただけたらありがたいと思います。
発達障害など困難を有する子供たちへの学びの支援ですが、近年、インクルーシブ教育が注目されていますように、障害の有無だけで学ぶ場所が分けられてしまうということではなく、部局が連携し、一人一人、それぞれの子供の能力や困り事が考慮される、全ての子供たちのための教育を引き続きぜひよろしくお願いいたします。それぞれ御期待申し上げまして、私からの一切の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(宮本衡司 君)この際、午後1時まで休憩いたします。
午前11時32分休憩
──────────────────
午後1時開議
○副議長(清水純子 君)休憩前に引き続き会議を開きます。
続いて順次発言を許します。
荒井武志議員。
〔23番荒井武志君登壇〕
◆23番(荒井武志 君)皆様、こんにちは。改革・創造みらい、千曲市・埴科郡区選出の荒井武志でございます。
知事は、過日の11月定例会における議案説明で、誰もが安心して暮らすことができる公正な社会づくりを実現するため、二つの条例案の検討を始めており、両条例とも、既に骨子案に対するパブリックコメントに取り組み、来年の2月定例会までには成案を取りまとめていかれると表明されました。県民をはじめ、各界、各層から多くの意見などが寄せられ、県民理解の高まりの中で条例制定が図られるよう期待をするところであります。
いずれの条例も、いよいよ詰めの作業に入ろうとしているところであり、順次それぞれの条例についてお伺いしていきたいと思います。
初めに、長野県障がい者共生社会づくり条例(仮称)の制定についてであります。
障害者基本法第1条では、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現であるとあるべき社会の姿をうたっておられます。
この実現のために、国は、障害者基本法の差別禁止規定に合理的配慮の提供を追加したほか、障害者の権利に関する条約を平成26年1月に批准、平成25年6月に成立した障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律は平成28年4月に施行され、障害を理由とする差別の解消に向けた施策が実施されてきました。
長野県では、障がい者差別解消推進員の配置とともに、出前講座を実施するなど周知、啓発に取り組んでこられたものの、県に寄せられる相談件数は年々増加傾向で、障害のある実態調査では、自分の障害に対して理解されていないと感じたり、障害があることで困ったり嫌な思いをした経験があるとする回答が半数を占めているとのことでした。
加えて、障害当事者団体からは、障害者差別が解消されていないとして県に対して障がい者差別禁止条例の制定要望が寄せられ、これらを受けて、知事は、平成31年4月、県社会福祉審議会に県民が一体となって共生社会を目指すための条例の骨格について諮問を行い、これを受けた審議会は、具体的な検討を委員10名から成る障がい者権利擁護専門分科会に委ねました。分科会は、その後、6月から令和2年1月にかけ8回の会議を開催し、3月27日に県に対して報告書が提出され、そして、健康福祉部では、条例案の検討や施策への反映等について関係部局と調整を図りつつ今日に至ったものと理解しています。
そこで、伺います。
平成31年4月に県社会福祉審議会に諮問した条例案の検討を始めてから長時間が経過しておりますが、その課題や理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
次に、関係する団体は、障がい者共生社会づくり条例の早期の制定とともに、情報保障、コミュニケーション支援、情報バリアフリーを条文に明記することを要望していますが、見解をお伺いいたします。
三つ目に、障害者にとって、災害時における情報提供や避難所の在り方など災害への対応は極めて重要と考えますが、どのような施策を想定していくのでしょうか。以上3点について健康福祉部長に伺います。
さきに申し上げたように、長期間の検討の末ようやく条例化が図られようとしているところですが、知事の御所見をお伺いいたします。
次に、犯罪被害者等への支援についてであります。このことにつきましては、午前に竹内議員から質問があったところですが、重複しないよう質問させていただきたいと思います。
私は、去る10月23日に、長野市で開催された長野県弁護士会主催による「長野県のすべての市町村に犯罪被害者等支援条例を!~安心して暮らせる地域社会のために~」と題するシンポジウムに参加させていただきました。昨年5月、坂城町で起こってしまった銃撃事件で家族2人を突然亡くされた御遺族がお話しをされ、間違った報道や憶測によりネットなどで誹謗中傷にさらされたこと、行政職員からは理解できない発言があったこと、事件現場となった自宅は住める状況にはなく、公営住宅も含め住居探しに苦労したこと、近隣住民からはどなられ、自分の家に全ての責任があるかのように非難されたことなどなど、切々と胸のうちを語っていただきました。
加えて、去る9月には、同僚議員の御家族におかれましても悲惨な事件に突然遭遇されてしまわれました。この場をお借りし、両事件の被害者御家族や関係の皆様に心からお見舞い申し上げますとともに、お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表させていただきます。
犯罪被害に遭われた皆様におかれましては、たとえ身体上の傷は癒えたにしても、心に受けた傷は早々に消え行くものではないと思いますし、生涯付きまとわざるを得ない方もおありになるでしょう。被害者御家族にとことん寄り添い、安心して暮らせる地域社会実現のために、犯罪被害を受けられた方々に様々な支援をしていくとともに、条例の必要性を再認識させていただいたところであります。
さて、知事は、さきの議案説明で、犯罪被害者等支援の基本となる事項を定め、支援を総合的かつ計画的に推進することにより、犯罪被害者等の受けた被害の回復や軽減、生活の再建や権利、利益の保護を図ろうとして条例案を策定していくとされました。
そこで、お伺いいたします。
一つは、長野県犯罪被害者等支援条例(仮称)の骨子案でいう犯罪等にはどのようなものが含まれるのでしょうか。
二つに、犯罪被害者等の支援は、県をはじめ関係機関が連携、協力し、被害者にとことん寄り添っていくことが重要と考えますが、どのような支援体制を構築していきますか。以上2点、県民文化部長に伺います。
次に、犯罪被害者等の支援を総合的かつ計画的に推進するため、犯罪被害者等支援に関する計画、いわゆる推進計画を策定するとされていますが、推進計画はどのような手順でいつ頃までに策定していくのでしょうか。知事の御見解をお聞かせください。
〔健康福祉部長福田雄一君登壇〕
◎健康福祉部長(福田雄一 君)長野県障がい者共生社会づくり条例の関係で3点御質問を頂戴いたしました。
まず、検討における課題や長時間を経過した理由等でございます。
本年2月に知事からも御答弁申し上げましたとおり、実効性のある条例としていくためには、できる限り多くの県民の皆様との対話を重ねていくことが必要であると考えております。
障害のある方が感じる生きづらさを社会全体で解消していく障害の社会モデルの考え方を広めていくためには、障害を他人事ではなく自分事として捉えていただくことが重要でございます。このために、これまでタウンミーティングを含め県民の皆様との意見交換などを丁寧に行い、内容の検討を進めてきたところでございます。新型コロナウイルス感染症の拡大などもございまして、こうした準備に少し時間を要することとなりましたけれども、このたび、条例骨子案をお示しすることができたところでございます。
次に、情報保障やコミュニケーション支援などの条文への記載についての御質問でございます。
視覚や聴覚などに障害のある方にとって、情報コミュニケーション手段が確保されることは、基本的人権の最も重要な要素と考えております。障害当事者の皆様からも、こうした分野の重要性については、誰もが安心して暮らしやすい社会を実現する上では必要不可欠なものとして様々な機会に御要望をいただいているところでございます。
そういった御意見も踏まえまして、条例骨子案の中では、意思疎通手段を選択する機会の確保を基本理念の一つとして掲げるとともに、共生社会実現のために県が行う基本的施策の中に情報保障の項目を設けまして、コミュニケーションの支援や情報バリアフリーの実現に向けた必要な施策を講ずることを盛り込んだところでございます。
次に、災害対応に関する施策についての御質問でございます。
災害が発生した場合に、障害のある方の逃げ遅れを防ぎ、障害特性に応じた避難所での適切な配慮が極めて重要との認識の下、条例骨子案の中では、共生社会実現のための基本施策として災害時の対応の項目を設けております。
災害時の逃げ遅れゼロの実現に向けては、市町村が作成する要支援者の個別避難計画が極めて重要でございます。このため、個別避難計画の作成が円滑に進むよう、防災・避難マニュアルの策定に関するガイドラインについて見直しを行うとともに、長野市で実施されております個別避難計画モデル事業において得られた知見を全県で共有するなどの取組を行ってまいります。
また、障害のある方を地域全体で守る意識のさらなる醸成を図るため、障害のある方の避難に関する周知啓発や地域の防災訓練への当事者の参加促進などを市町村と連携し、進めてまいります。
以上でございます。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)私には2点御質問をいただきました。
まず、障がい者共生社会づくり条例(仮称)の制定に関する所見という御質問でございます。
これまでの間、障害当事者の皆さんの御意見を伺ったり、様々な障害者の支援に携わっている皆様方とも意見交換をさせていただきました。そうした中で、御質問にもありましたけれども、情報、コミュニケーションの格差や、社会生活を営んでいく上での様々な課題等について切実なお話をお伺いしてきたところであります。
私としては、これは障害当事者の方もおっしゃっていましたけれども、やはり、世の中、社会には多様な方々がいらっしゃるということを全ての皆さんが当たり前のこととして受け止められる、そうした世の中にしていくということが必要だというふうに思います。障害者という言葉がなくなっていくことが望ましいという御意見もいただいておりますので、そうした思いをしっかり受け止めて、今後も条例の制定に向けた取組をしっかり進めていきたいというふうに思います。
また、特に、行政機関としては、率先垂範して合理的な配慮を行うということが強く求められていると考えています。誰一人取り残さない公正な社会をつくるという強い思いを県庁組織全体で共有して取り組んでいきたいというふうに思います。
御質問にありましたように、現在パブリックコメント中でございますので、私としては、出された意見にできるだけ丁寧な対応を考えていきたいというふうに思いますし、県議会の皆様方には条例案の成案をしっかりと取りまとめて御審議に供したいというふうに考えております。2月県議会への提案を予定させていただいているところでございますが、御審議いただいた上で御議決を賜ることができるように引き続き努力していきたいと考えております。
続きまして、犯罪被害者支援に関する推進計画を策定する手順と時期についてという御質問でございます。
この犯罪被害者等支援条例についても現在策定中であるわけでありますけれども、できるだけ早くこの条例も制定させ、また、具体的な施策も具現化していきたいというふうに考えています。そうした観点で、条例はこれから御審議に供するわけでありますけれども、成立したら速やかに推進計画を策定していくということが重要だというふうに考えております。そうした観点で、現在、推進計画に盛り込むべき施策について、人権政策審議会からいただいた意見を踏まえて検討を行っている状況でございます。
今後、2月定例会に向けた条例案の取りまとめと並行しまして、この推進計画の基となる施策概要についても取りまとめを行い、これらの施策に対する県民の皆様方の御意見も広くお伺いしながら、条例の施行に合わせて計画に基づく施策が実施できるようにこの推進計画を取りまとめていきたいというふうに考えております。
以上です。
〔県民文化部長中坪成海君登壇〕
◎県民文化部長(中坪成海 君)犯罪被害者等の支援につきまして御質問をいただきました。
まず、犯罪等の定義についてでございます。
犯罪被害者等支援において対象とする犯罪等の範囲につきましては、平成17年4月に施行されました犯罪被害者等基本法において定義がなされておりまして、本県の条例骨子案における犯罪等の定義につきましても、この国の基本法が対象としている範囲と同じでございます。
具体的に申し上げますと、刑法をはじめとする刑罰を科せられる犯罪行為はもちろんのこと、犯罪に準ずる行為であって心身に有害な影響を及ぼすものも対象に含んでおります。また、個人の生命及び身体を害する行為のほか、財産を害する行為も含んでおります。幅広い行為を対象としているところでございます。
次に、支援体制の構築についてのお尋ねでございます。
犯罪被害に遭われた方に対しましては、被害の発生直後から平穏な生活に戻ることができるまでのそれぞれの段階に応じまして、関係機関が連携して、被害者等の状況に応じて切れ目なく支援を行うことが重要であるというふうに考えております。
これまでも、関係機関等における様々な支援策を網羅いたしました犯罪被害者等支援ハンドブックを毎年度作成いたしまして、関係者で共有することを通じて連携や協力に努めてきたところでございますが、条例制定を契機に、一層の体制の充実強化を図っていきたいというふうに考えております。
具体的には、県が中心となりまして関係機関による連絡会議を立ち上げまして、具体的な事案を想定した研修を行いながら、被害者の置かれた状況に応じて必要な相談窓口や支援機関に確実につなげていける体制を構築していきたいというふうに考えております。
また、県下市町村におきましても、現在、条例制定に向けた動きが広がってきております。関係者相互の連携協力の下で、被害者等にしっかり寄り添った支援ができる体制づくりに取り組んでまいります。
以上でございます。
〔23番荒井武志君登壇〕
◆23番(荒井武志 君)答弁をいただきました。
障がい者共生社会づくり条例(仮称)の制定に関わりましては、県当局におかれまして、これまで、障害者の自立や社会参加の促進、障害を理由とする差別の解消などに様々取り組まれ、相応の成果を上げておられたものと理解しておりますが、検討している条例制定によって、改めて、全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく、多様な在り方を認め合い、支え合える社会が実現できるよう強く望みたいと思います。
犯罪被害者等の支援ですが、犯罪等に遭われた御家族、関係者におかれましては、それぞれの事例ごとに様々な違いがあるものと思います。犯罪被害者等の皆様にしっかり寄り添いながら対処できる条例になるよう要望し、次の質問に移ります。
続いて、観光振興の推進についてです。
昨年の初めに発生した新型コロナウイルス感染症は、五つの大きな波を形成しながら断続的に2年近くに及びましたが、長野県では、ここ16日間新規感染者が発生しなかったということで、今後の経済・社会活動に明るい兆しが見え始めたと思うところであります。ヨーロッパや隣国の韓国ではコロナ感染症が再拡大しているとのマスコミ報道等もあり、加えて、新たな変異株、オミクロン株の急拡大を受けた水際対策の強化措置として、本日30日、政府は、当面1か月全世界を対象に外国人の新規入国を禁止しました。今後の感染拡大にしっかり対処しつつ感染患者を出さないための取組がこれまで以上に求められると思います。
そのような中ですが、去る10月31日と11月3日に沖縄発のチャーター便が初めて信州まつもと空港に就航し、沖縄との相互往来が実現しました。その際、関副知事が、市町村や商工団体、観光関係者などと共に沖縄を訪問され、観光商談会や教育旅行説明会、長野県の物産展などが行われました。
私も、長野県議会長野沖縄交流促進議員連盟の一員という思いで参加させていただき、それぞれの説明会や物産展への参加に加え、沖縄県議会、県立美術館、モノレール会社などを訪問し、それぞれ管理的立場にある方々と懇談させていただきました。とりわけ、松本空港、那覇空港とのチャーター便につきましては高評価をいただいたものと感じたところでございます。
そこで、お伺いします。
一つは、コロナ禍において、令和2年度の長野県の観光消費額や延べ宿泊者数が大幅に落ち込み、成果目標値の達成には大きく及ばなかったところですが、このコロナ禍における観光産業を取り巻く実態はどのような状況でしょうか。
二つに、アフターコロナを見据え、今後の観光振興についてどのような戦略を持って取り組んでいかれるのでしょうか。以上2点について観光部長にお伺いいたします。
次に、沖縄県での観光商談会や物産展の取組状況とその成果、今後の交流促進に向けた取組をどのように進めていかれるのでしょうか。御参加いただいた関副知事にお伺いします。
次に、松本空港と那覇空港との空路について、チャーター便の増発に取り組み、近い将来の定期便化を目指すことが重要と考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
続いて、水道事業の広域連携についてであります。
令和元年10月に改正水道法が施行され、持続可能な水道事業に向けた経営基盤強化のため、広域化の推進等が打ち出されました。環境部は、水道対策事業の主な取組として、水道事業の経営基盤強化に向けた広域連携の検討を掲げ、県内77市町村の各水道事業者から経営指標等の基礎データを収集し、水道事業者ごとの現状分析や将来設計を行っておられます。
また、企業局におかれましては、現下の水道事業の経営環境は、人口減少や施設、管路の老朽化等により急速に厳しさを増し、熟練職員の退職による技術力の低下や専門人材の不足、頻発する大規模災害への対応などの深刻な課題に直面していると窮状を憂える中、令和3年5月には、長野市、上田市、千曲市及び長野県企業局の給水区域を対象として厚生労働省による水道施設の最適配置計画の検討結果が示されたと伺いました。これを受け、関係市町及び企業局は、令和3年7月、新たに上田長野地域水道事業広域化研究会を設置し、検討を進めてきたと承知しております。
そこで、お伺いいたします。
一つは、県内水道事業者の経営状況等の把握に基づくデータからどのような課題が明らかになったのでしょうか。
二つに、それらの抽出された課題を踏まえ、今後、どのように広域連携を進めていくのでしょうか。以上2点、環境部長にお伺いします。
次に、県企業局が参画する3市1町の広域連携への検討状況はいかがか、公営企業管理者にお伺いします。
次に、広域連携を進める中でさらなる合理性が追及されていくと、全て丸投げの民間委託化が懸念されるところであります。料金が低廉でおいしい水の安定供給に徹した広域連携を進めるべきと考えますが、環境部長に見解をお伺いいたします。
〔観光部長渡辺高秀君登壇〕
◎観光部長(渡辺高秀 君)私には2点の御質問をいただきました。
まず、観光産業を取り巻く実態についてでございます。
緊急事態宣言等による県境をまたいだ往来の自粛や入国制限に伴うインバウンド需要の消失などにより、県内の昨年の延べ宿泊者数は、コロナ前の令和元年度と比べ約4割の大幅な減少となっております。
従業員の雇用や施設維持などの固定費が大きい宿泊施設では、減収や感染防止対策に伴う負担増も加わり、収益が悪化。土産物店、観光施設なども人流減少の大きな影響を受け、観光産業は厳しい経営環境と認識しております。
こうした中、県では、宿泊や日帰り旅行と観光クーポンをセットにした県民割を、第5波の中でも感染リスクを抑え、継続し、観光産業の下支えに努めてきたところでございます。現在は、全国的に感染状況が落ち着き、観光事業者からは、県民割による県内需要もありコロナ前の水準に戻りつつあるとの声も聞かれ、少しずつ回復傾向も見られる状況と受け止めております。
次に、コロナ後の観光振興についてでございます。
コロナ禍により、旅行の形態が団体から個人旅行、安全、安心への意識や自然志向への高まりなど、旅行ニーズが大きく変化しており、こうした変化への対応、また、本県ならではの泉質豊富な多くの温泉地や一年を通じたアクティビティー、郷土食などのコンテンツ、こうしたものを活用しながら新たな観光需要を取り込むことが重要と認識しております。
このため、安全・安心な観光地域づくり、長期滞在型観光の推進、信州リピーターの獲得の三つを柱とするAfterコロナ時代を見据えた観光振興方針を昨年9月に策定いたしました。今年度は、信州安全・安心な宿魅力向上事業を創設し、感染防止対策に加え、宿泊施設における露天風呂や貸切り風呂の改修、ワーケーションに対応した施設改修、イーバイクなどアウトドアアクティビティーの導入など、コロナ後を見据えた取組を支援しているところでございます。現在、来年の善光寺御開帳など大型催事を契機に、温泉地をはじめとする県内周遊や体験型などの旅行商品の造成が進められており、感染状況を見ながら誘客プロモーションを実施してまいりたいというふうに考えてございます。
今後も、先ほど申し上げました観光振興方針に基づき、ハード、ソフトの両面から、少しでも県内に長く滞在いただき、繰り返し訪れていただけるよう事業展開を図ってまいります。
以上でございます。
〔副知事関昇一郎君登壇〕
◎副知事(関昇一郎 君)観光振興の推進に関連しまして、今回の沖縄県での観光商談会などの取組状況と成果、今後の交流促進についてのお尋ねがありました。
今回、初めて双方向での沖縄チャーター便が10月31日と11月3日に運航されたことに合わせまして、沖縄との交流事業を実施いたしました。
まず、観光誘客につきましては、昨年のツーリズムEXPO等において知事のトップセールスを行ったところでありますが、本年度は、より具体的な商品造成につなげていくため、11月1日に那覇市内で観光商談会等を実施し、沖縄県側からは、大手旅行会社を中心に、15団体、27名に参加いただきました。商談会では、本県の観光事業者23団体、31名に参加いただき、沖縄県にはない山の魅力、豊富な温泉、食文化、かまくらやスキー体験等の冬のコンテンツを直接提案したところであります。また、来年開催される善光寺御開帳などの大型催事についても紹介させていただきました。
また、11月1日、2日には長野フェアを開催し、千曲市のアンズ生産者にも御参加いただき、アンズ加工品を販売したほか、ブドウ、リンゴ、日本酒、シードル、そばなどの特産品を販売し、PRを行いました。御購入いただいた方の中には、昨年とてもおいしかったのでまた来ましたとおっしゃるリピーターの方も複数いらっしゃり、販売した商品は完売することができました。
今後の交流促進に向けては、観光、物産にとどまらない幅広い交流を実施していくことを長野、沖縄の両県で確認しております。今回、沖縄県の謝花副知事と私が懇談した際に、沖縄県としても各分野できめ細やかに対応していきたいとの意向が示されたところであります。
今年度は、さらに、子供の第三の居場所を利用する子供たち相互の交流事業ですとか、沖縄県の環境フェアへの長野県ブースの出展、沖縄県の旅行会社の本県への招聘などを予定しておりまして、沖縄県との幅広い交流を展開してまいりたいと考えております。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)私には、沖縄との空路の今後についての所見についての御質問をいただきました。
まず、このたびの沖縄とのチャーター便につきましては、一般社団法人長野・沖縄交流促進機構をはじめ、航空会社、旅行会社等多くの皆様方の御尽力により、初めての双方向によるチャーター便という形で運航され、多くの皆様に御利用いただきました。関係の皆様方に心から感謝申し上げたいと思います。
沖縄との路線につきましては、教育旅行や観光旅行の誘致、さらには長野県産品の販路の拡大をはじめ、子供たちの交流や環境分野での連携等々様々な分野の交流を沖縄と進めていく上で極めて大きな意義があるものというふうに考えております。
さらに、新型コロナが収束した際には国際線も再開してくる形となりますけれども、那覇空港を経由して海外と往来するという形の活用の仕方も考えられるというふうに考えております。今後とも、関係者の皆様方と十分連携を図りながら、チャーター便の運航実績を積み重ねて、早期の定期便の実現を目指して取り組んでいきたいと考えております。
以上です。
〔環境部長猿田吉秀君登壇〕
◎環境部長(猿田吉秀 君)私には、水道事業の広域連携について3点御質問を頂戴いたしました。順次お答えいたします。
最初に、水道事業における課題についてでございます。
県では、水道事業の基盤強化に向けて水道事業経営基盤強化支援事業を実施しており、昨年度、市町村等水道事業者から提供された基礎データを用いて、水道事業者ごとに現状の分析、将来の見通し及び課題の抽出を行っております。この結果によりますと、おおむね50年後には給水人口、有収水量が大きく減少し、現行の水道料金水準を一定とした場合、収益的収入が約4割減少する見込みでございます。また、現行の施設を維持していくためには一定の固定費が必要となる上、老朽化や耐震化への対応に現状の1.7倍のペースでの支出が必要となってまいります。
こうしたことから、多くの水道事業者において、水道料金を大きく値上げしない限り損益赤字と資金不足が発生し、経営環境が悪化する見通しであり、広域連携などによる経営の効率化が不可欠であることが明らかとなっております。
次に、水道事業の広域連携の進め方についてのお尋ねでございます。
ただいまお答えしたような課題を踏まえまして、県内10広域のうち企業局が給水する上田・長野圏域を1圏域とした9圏域に県内を区分し、その圏域を基本に広域連携のシミュレーションを実施しております。広域連携には、例えば、資材の共同調達といった軽易なものから、施設の共同利用、さらには経営や事業の統合といった抜本的なものまで様々な形態がございます。それぞれの形態について、収支予測などのメリット、デメリットをお示しし、先行して取り組んでいる圏域の成果も踏まえながら市町村等水道事業者との協議を進め、水道広域化推進プランとして取りまとめてまいりたいと考えております。
3点目といたしまして、水道事業における民間委託と広域連携についてのお尋ねでございます。
水道事業の基盤強化を図る目的で一昨年施行されました改正水道法では、経営基盤強化の手法として、広域連携と官民連携を大きな柱としております。
このうち、官民連携につきましては、全国で初めて、宮城県においてコンセッション方式の導入が進められておりますが、これは、宮城県が所管する用水供給事業のほか、工業用水供給や流域下水道事業を一括して契約するものとなっております。
一般的に、採算面から、相当規模の事業でなくては民間の参入は困難と認識しており、長野県内の水道事業に関しましては、まずは水道事業者間の広域連携による基盤強化を進めることにより、水道法の目的である清浄にして豊富、低廉な水の安定供給を図ってまいります。
〔公営企業管理者小林透君登壇〕
◎公営企業管理者(小林透 君)企業局が参画する3市1町の広域連携への検討状況についての御質問でございますが、議員御指摘のとおり、長野市、上田市、千曲市及び坂城町の地域を対象として、全国的なモデル事業として実施されました水道施設の最適配置計画の検討結果が本年5月に厚生労働省により示されたことから、7月にこの3市1町の首長の皆様から知事に対して水道事業の広域化に係る要望書が提出され、その趣旨を踏まえて、3市1町と企業局で上田長野地域水道事業広域化研究会を設立し、これまで3回開催いたしました。このたび、その検討経過を中間的に取りまとめ、去る11月17日に開催した上田長野地域水道事業広域化に関するシンポジウムの場において報告させていただいたところでございます。
具体的な研究内容につきましては、広域化の形態として、事業統合、経営の一本化、用水供給事業の新設、施設の共同化を抽出するとともに、この3市1町の地域において考えられる水道事業の経営形態として8パターンを想定し、それぞれのメリット、デメリットを比較いたしました。
その結果、現時点での論点整理といたしましては、浄水場の統廃合などを内容とする広域的な水道施設の最適配置計画を進めて、水道事業経営の基盤強化を図る上では事業統合により広域化を進めることが最も大きなメリットが得られるものと考えられるとし、研究会といたしましては、事業統合による広域化についてさらに研究を進めることとしたところでございます。
そこで、今後研究会において事業統合による財政シミュレーションを実施するとともに、地域住民や議会の皆様などへの説明と意見交換の場などをできるだけ多く設けて、より丁寧な情報共有に努めていくこととしてございます。
以上であります。
〔23番荒井武志君登壇〕
◆23番(荒井武志 君)答弁いただきました。
観光関係につきましては、本当にオミクロン株がどうなるかが分かりません。そしてまた、外国人が入ってこれないというような実情も出てきておりますので、そういう意味では、国内需要をどう喚起するか、これが大変重要かと考えております。
また、水道関係では、今、上田・長野地域のお話がありました。広域化形態の整理という面もちょっと見させていただきましたが、人材確保が項目として挙げられております。関係職員等の身分保障にも十分配慮しつつ、事業を推進するための職員体制をどのように進めていくのか、公営企業管理者に改めてお伺いをして、質問を終わります。
〔公営企業管理者小林透君登壇〕
◎公営企業管理者(小林透 君)事業を推進するための職員体制についての再質問にお答えいたします。
将来的には、人口減少以上の労働人口の減少が見込まれる中、現在は、3市と企業局の四つの水道事業体ごとの組織体制を事業統合により一つの事業体とすることで一定の職員数を確保することが可能となります。
そこで、当初は四つの事業体からの派遣などで必要な人材を確保することが考えられますが、事業統合による新たな事業体において、例えば、独自に職員を採用して人材育成に努めることで職員の専門性を高め、先端技術の活用などによる効率的な経営や危機管理を含めた職員体制の強化を図ることができるよう検討を進めてまいりたいと思います。
以上でございます。
○副議長(清水純子 君)次に、小山仁志議員。
〔15番小山仁志君登壇〕
◆15番(小山仁志 君)文部科学省は、本年9月、特別支援学校の教室不足を解消するため、設置基準を初めて制定しました。これにより、特別支援学校の設置者である都道府県は、在籍者数に応じた教室の確保や施設の整備に取り組むことになります。
特別支援学校の学びを支える教育環境の整備、改善につきましては、本議場におきましても多くの議員が課題を提起され、各特別支援学校からも切実な要望が寄せられてきました。
少子化が進む一方で、県内特別支援学校に在籍する児童生徒は2,000人を超え、設立当初の定員を大きく上回る子供たちが学び、教室の不足も深刻化しています。特別教室や職員室の普通教室への転用や、廊下や教室を段ボールで区切っての個別自立活動への対応、プレハブによる校舎の増築などにより何とかしのいできた状況が続いており、学びへの影響が生じています。
国の設置基準では、小中学部が6人以下、高等部が8人以下とし、教室や職員室のほか、自立活動室や図書室、保健室なども備えるとしており、既存施設改修事業への国庫補助率の引上げも行うこととなり、環境改善に積極的な取組が急務であると考えます。国の設置基準に対し、県の特別支援学校の実態はどのような状況と理解したらよいのか、伺います。
また、教育委員会では、国の設置基準に基づき、特別支援教育推進計画と本年策定したばかりの特別支援学校整備基本方針との整合性をどのように図り、機能向上と最良の教育環境の実現を図っていくのか、対応方針について伺います。
特別な支援を必要とする子供の多様化する個々の教育的ニーズに対応し、一人一人に寄り添った個々の支援や指導計画の下、個別、小集団学習に応じられる学びの環境、空間整備を実現しなければなりません。そのためには、身近で専門的な教育が受けられるように、人口減少によって生じている地域の空き教室や公共施設の積極的な活用を推進していくこと、そして、市町村立による特別支援学校の設立も念頭に置いていくことが重要と考えます。
教育委員会では、これまでも分教室の設置に取り組まれてきましたが、その役割と成果についてはどのように捉えているのでしょうか。また、新たな分教室設置に対するニーズについての認識と今後の対応策についてのお考えとともに、市町村立特別支援学校設立に対する希望の状況や支援についての方針も併せて、以上、これまでを教育長に伺います。
特別支援学校における教室不足が深刻化する背景にあるのが、知的障害と診断を受ける子供の増加です。障害の多様化、重複化が進み、個々の願いや障害の特性、発達の状態等に応じた細やかな指導がますます必要とされ、また、発達障害の診断等のある児童生徒もここ十数年の間に急増してきました。
こうした傾向の中で不安となるのが、知的障害の方と同様のしんどさを感じ、特別な支援が必要ながら気づかれない子供の潜在性です。障害者白書によりますと、在宅の知的障害を有する方は2016年に96万2,000人とされ、2011年と比較し約34万人増加となっています。これは、知的障害に対する認知度が高まり、療育手帳取得者の増加が要因とされていますが、裏を返せば、支援が必要なのに気づかれない知的障害者の方の潜在性の高さでもあります。
また、発達障害の中でも、学習障害や軽度知的障害、境界知能の子供の診察に慣れていない医師を受診した場合、医療的には問題がなく、様子を見ましょうとされる可能性が高くなります。そして、発達相談等において実施されるWISCなど主流の知能検査は大ざっぱな傾向を把握するのみで、一度知的に問題がないと判定されると、問題行動や何事も続かないといったことが、怠けている、性格に問題がある、親の育て方が悪いなどと捉えられて、子供へ厳しく叱り、親を責めてしまうといった事態も生じてしまうことから、個々の適切な福祉に結びつけていくことや、教育面での具体的な方針を立てていくことが不可欠であります。
気づかれないことによって必要な支援が届かず、取り残されてしまう状況を防いでいく。生きづらさやしんどさに適切なサポートを行っていくため、県ではどのように取り組んでいくのか、また、こうした方の潜在性への認識はどのように持っているのか、こども若者局長に伺います。
さて、発達障害の児童生徒が増加し、医療分野における支援のニーズが高まる一方で、外来を申し込んでから受診するまで数か月、または数年を要するケースもあるのが現状です。教育や福祉の領域で必要な支援を迅速に届けるためには、まずは必要な医療へのつながりやすさ、多岐にわたる発達障害について専門的な診断ができる医師の養成が欠かせないものと思われます。そこで、自閉スペクトラム症やADHD、LDなど様々な種類があるとされる発達障害を診断する医師の養成について県ではどのような対策を講じていくのか、健康福祉部長に伺います。
教育相談では、漢字を覚えるのが苦手、黒板が写せない、計算が苦手等によって勉強についていかれないという課題が特に低学年において寄せられますが、背景にあるのが、認知機能の弱さと言われます。形を認知する力や数を量として見る力、写す、見つける、数えるといった基礎的認知能力の弱さがあると学習についていくのが難しくなるわけです。こうした学習の土台となる基礎的な認知能力をアセスメントし、そこに弱さがある児童に対しトレーニングさせるといった系統的な支援が重要と考えますが、どのように対策を行っているのか、教育長に伺います。
特別支援学校の児童生徒が持てる力を最大限発揮し、共に学び合うインクルーシブ教育とともに、卒業後の多様な自立につながるキャリア教育の充実も図らなければなりません。また、多様化する一人一人の教育的ニーズに応じた専門性の高い教育と支援をするための自立活動の充実も喫緊の課題です。
県の特別支援学校高等部卒業生が一般就労する割合は2割から3割で推移しており、全国平均は下回っていますが、現場実習実施者の就職率は年々上昇を続けており、平成28年以降70%台で推移しています。
生徒が希望する進路の実現に向け、産業現場等での実習や生徒の様々な関心に対応した作業学習の場の拡充、デュアルシステムの積極的な実施などのため、ネットワークのさらなる充実を図っていかなければなりません。卒業後の多様な自立につながるキャリア教育の充実に向けた企業や産業現場等からの理解と協力が不可欠と考えますが、産業労働部としてはどのように協力を図っていくのか、林部長にお伺いいたします。
また、多様化する生徒の教育的ニーズに対し、生徒の実態に応じた進路指導や就労支援に当たっては、そのマッチングを図っていく就労
コーディネーターの果たす役割はますます高まっており、強化していかなければなりません。生徒の進路指導や就職後の定着支援の充実に向けた就労
コーディネーターの取組の強化をどのように図っていくのか、期待していく役割とともに教育長に伺います。
今月は、児童虐待防止推進月間でありました。ここ数年、児童虐待相談対応件数は上昇が続いています。発達に全般的な遅れがある知的障害児や発達障害の子供たちに対し適切な支援が届かないどころか、虐待や不適切な養育を受けやすいリスクも心配されます。社会的ルールの理解、課題をクリアしていくことが難しい中で、年齢が上がり、関わる世界も広がる中で、養育者だけでなく、学校で、社会で、本来必要な支援の下で守ってあげなければならない方が、知的ハンデに気づかれずに傷つけられたり、虐待を受けたり、社会の荒波に適応できず引き籠もったりする。あるいは、加害者になってしまうことも心配されます。知的障害や発達障害の子供たちに対する虐待のリスクについて、県の実態と課題に対する認識をこども若者局長に伺います。
また、虐待をしてしまう親の中には、気づかれていない知的ハンデを持った方がSOSを出しているのではないかということも心配されます。心理カウンセリングなど、養育者の能力面にも焦点を当てた支援が重要と考えますが、県の対応策についてのお考えをこども若者局長に伺います。
〔教育長原山隆一君登壇〕
◎教育長(原山隆一 君)特別支援学校の整備についてのお尋ねでございます。
まず、国の設置基準に基づく本県の実態はいかがかというお話でございます。
国が示した特別支援学校設置基準では、特別支援学校の学級編成、教諭数等の基準とともに、校舎等の面積基準についても、障害種や児童生徒数に応じ、地域の実態を踏まえた対応が可能となるように定められているところでございます。
この特別支援学校設置基準が本年9月に公布されたことを受けまして、県としては、現在、各特別支援学校の施設台帳等を基に、対象となる施設の内容や算定方法等につきまして国に確認しながら鋭意算定作業を進めているところでございます。
続きまして、特別支援学校整備基本方針等と整合を図った教育環境実現のための方針というお尋ねであります。
本県では、令和3年3月に、県特別支援教育推進計画に基づきまして特別支援学校整備基本方針を策定いたしました。老朽化する特別支援学校については、建築年数や建物の劣化状況等を踏まえ、必要性の高い学校から個別計画を策定し、順次整備することとしております。
県の整備基本方針は、特別支援学校の老朽化や狭隘化といった課題がある中、充実した学びとそれを支える環境整備についての基本的な考え方を示すものでありまして、今後、この県の整備基本方針と国の基準を踏まえまして、計画的に改築を進めてまいりたいと考えております。また、設備の老朽化等に対しましても計画的に修繕を行い、児童生徒一人一人の可能性が最大限伸びる教育環境の実現に努めてまいりたいというふうに考えております。
次に、分教室の役割と成果についてのお尋ねです。
県教育委員会では、児童生徒の著しい遠距離通学の負担を解消し、身近な地域で専門的な教育が受けられることを目的に、市町村と連携して、地元の小中学校の空き教室等を活用して分教室を設置してきたところであります。
成果でありますが、現在、県教育委員会が小中学校に設置している佐久穂町と駒ヶ根市の四つの分教室では、遠距離通学の負担の解消、身近な地域で専門的な教育が受けられるといった本来の成果のほか、休み時間や運動会、文化祭等で設置校の友達と交流し、お互いに学び合うよい機会となり、社会性が養われるなどの成果も見られているところでございます。
続きまして、新たな分教室設置や市町村立特別支援学校設置に対する要望、対応についてでございます。
分教室の設置に当たりましては、社会性を育む上で重要となる一定規模の学習集団が継続的に形成される見通しがあるか、また、設置場所や地域との連携などに関する地元自治体の理解や協力が得られるかなど丁寧に検討する必要があるところであります。
これまで、幾つかの自治体から要望を受けて検討してきたところでありますけれども、最終的に、分教室を希望する児童生徒の人数が少ないことなどによりまして分教室の設置には至っていないケースもございます。また、須坂市以降、市町村立の特別支援学校設置に対する希望は今のところないという状況であります。
今後とも、義務教育段階の特別な支援を必要とする児童生徒が身近な地域で専門的な教育を受けられるよう、個々の状況や地域の実情をしっかり把握しながら、分教室の設置や市町村立特別支援学校設立の要望に丁寧に対応するとともに、スクールバスの増便等様々な方策も含め、市町村と共に必要な支援の在り方を検討してまいりたいというふうに考えております。
次に、発達障害を抱える児童生徒の認知評価と系統的な支援についてのお尋ねでございます。
議員御指摘のように、発達障害のある児童生徒に対して個々の認知特性に応じた適切な支援を行うことは、一人一人の持てる力を最大限発揮することや二次障害を防ぐ上でも大変重要であるというふうに考えております。
学校現場では、県教育委員会が作成した実態把握のためのチェックシートを用いて、学習上や生活上の困難さを早期に把握し、一人一人のニーズに応じた個別の指導計画を作成して系統的な支援を行っているところであります。その際、必要に応じて、医療関係者等の外部専門家との連携による丁寧な実態把握にも努めているところであります。
特に、全ての学習活動の基盤となる読む力につきましては、低学年児童の読みに関する困難さをアセスメントし、適切な支援につなげることができる科学的な指導モデルを用いて評価を行いまして、読みの習得段階に応じた個別指導等を行っているところであります。
こうした支援が着実に行われるためには、担任一人に任せるのではなく、学校全体がチームとして支援に取り組むことが必要でありまして、昨年度、こうした校内体制の構築のポイント等を示した「適切な学びの場」ガイドラインを作成しまして、小、中、特別支援学校の全ての教員に配付し、周知を図っているところであります。
今後とも、特別支援教育
コーディネーターの研修を通じたガイドラインの浸透等によりまして支援体制を整備するとともに、発達障害に関する研修等を通して教員の支援力の向上を図り、児童生徒一人一人が持てる力を最大限伸ばすことができるように取り組んでまいりたいというふうに思っております。
最後に、就労
コーディネーターの取組強化等についてのお尋ねであります。
期待する役割ということでございますけれども、企業やハローワーク等での勤務経験に基づいた豊富な人脈や情報量に基づきまして、生徒個々の特性や希望に応じた実習先、就労先を確保し、一般就労に結びつけることとともに、就職後の定着を支援することが役割でございます。
県内の特別支援学校では、現在、5校に就労
コーディネーターを配置し、学校の進路指導担当教員等と連携し、例えば、昨年度、コロナ禍にあっても、実習先として新規開拓した222事業所を含む1,020の事業所を訪問し、そのうち266の事業所で実習に結びつけているところでございます。また、就労後3年間をめどに就労先を巡回し、相談支援を行っているところでございます。
今後の取組の強化の方向性としては、社会のデジタル化の進展に合わせた就労先企業の開拓や、ICTを活用した企業と生徒との就労マッチング支援を進めていく必要があると考えております。また、定着支援としては、引き続ききめ細かく就労先を巡回し、企業や福祉関係者と連携を強め、離職を防ぐ取組等を充実させてまいりたいと思っております。
具体的には、在宅ワークで就労が可能な企業など、新たな実習先や就労先を開拓したり、マッチングに当たっては、オンラインや動画などを活用し、生徒のできることや関心を企業側に伝え、また、企業側からは、具体的な仕事の内容や働く場面で期待することを生徒に伝えるなど、従来の実習方法によるマッチングに加え、より幅広い取組を推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。
〔県民文化部こども若者局長野中祥子君登壇〕
◎県民文化部こども若者局長(野中祥子 君)私には3問御質問をいただきました。
まず最初に、生きづらさを抱える子供に対する適切なサポートとその潜在性への認識についてという御質問でございます。
県においても、議員御指摘の、特別な支援が必要であるが気づかれないまま生きづらさを感じていらっしゃる方が少なからずいらっしゃると認識しており、課題であると考えております。
そこで、県と県教育委員会では、気づかれにくく適切な支援を受けにくい学習障害、LDを取り上げ、長野県発達障がい者支援対策協議会の検討を経て、LDのあるお子さんに対する支援「早めの気づき適切な学び」というリーフレットを作成いたしました。これは、学習障害のあるお子さんが適切なタイミングで必要な支援が受けられる参考にしていただくため、小学校から高等学校までの支援の例を記載したものでございます。このリーフレットをきっかけに、地域の発達障害児支援の体制を整えていただき、必要な支援が届かず、取り残されてしまう子供が生じないように関係者への周知に努めてまいりたいと考えております。
また、気づかれないまま生きづらさを感じるということがないよう、子供と接する機会が多い保育士や教員に対する研修や、地域の身近な理解者である発達障がい者サポーターの養成を進めるなど、発達障害についての理解が進むよう引き続き取り組んでまいります。
次に、知的障害や発達障害を抱える子供に対する虐待リスクについて御質問をいただきました。
虐待の要因は、子供の特性に限らず、保護者側の問題や家庭における様々な問題など複合的であることが多く、子供の知的障害や発達障害がどの程度虐待の発生に影響を与えているかは明らかではありませんが、これらの障害を抱える子供は、その特性から保護者が育てにくさを感じることがあり、それが虐待のリスク要因となり得るものとは考えております。
このため、保護者が子供の特性や障害を十分に理解して適切な接し方を学ぶことや、関係機関による適切な支援を受け子育ての負担感や不安感が軽減されることが、虐待の発生予防や再発防止の観点からも重要であると考えております。このことを引き続き関係機関や支援者に周知して、必要な支援につなげていくことが必要であると認識をしております。
最後に、虐待をしてしまう親自身の能力面に焦点を当てた支援についての御質問でございます。
児童虐待ケースにおいて、保護者との面接などを通じ、保護者自身に支援が必要な特性があると判断した場合には、その特性を踏まえた分かりやすい説明を心がけるとともに、家庭で養育を行う際の家事・育児支援など必要な福祉サービスを適切に受けることができるよう市町村と連携して支援を行っております。
また、親自身に対する心理面、精神面での支援については、児童相談所の職員などが必要に応じ医療機関につないだり、障害の程度に応じた医療・福祉サービスを御案内するなど、親自身が適切な支援を受けられるよう対応しているところでございます。
県では、知的に支援等を必要とする保護者が適切に子供の養育を行えるよう引き続き支援してまいりたいと考えております。
〔健康福祉部長福田雄一君登壇〕
◎健康福祉部長(福田雄一 君)私には、発達障害の診療のための人材育成について御質問をいただきました。
発達障害につきまして専門的な診断ができる医師を育成していくことは非常に大きな課題であると考えております。この課題に対しまして、県では、平成30年度より発達障がい診療人材育成事業を信州大学医学部に委託しておりまして、子どものこころの発達医学教室におきまして、長野県独自の認定資格でございます長野県発達障がい専門医及び診療医の育成を行っており、現在までに専門医43名、診療医2名を認定しております。また、地域のかかりつけ医が発達障害等に関する診療の知識、技術等を学ぶための研修なども毎年実施しているところでございます。
医師の人材育成には長期的視点が必要でございます。県として、今後とも発達障害を診療できる医師の養成に力を尽くしてまいりたいと考えております。
以上でございます。
〔産業政策監兼産業労働部長林宏行君登壇〕
◎産業政策監兼産業労働部長(林宏行 君)特別支援学校におけるキャリア教育の充実についてのお尋ねでございます。
県では、ハローワークに求職申込みをしている障害者を対象に、希望する職業に必要なスキルと技術を身につけるための職業訓練を民間教育訓練機関等に委託して実施しており、昨年度は中途就職者を含む49名が就職されたところであります。当事業には、特別支援学校早期訓練コースを設けており、今年度は、高等部等の卒業予定者20名を対象に、企業等を実習先とした訓練を計画しております。
また、生徒の皆さんが地域の企業や産業現場を知り、勤労観や職業観を育めるよう、障害者の技能競技大会の指導者等を講師に迎え、ものづくり等の体験をする地域と未来をつなぐゼミ事業を実施しており、本年度は7校で106名を予定しております。
さらに、障害者の職業能力の向上とともに、企業や社会の障害者雇用への理解と就労環境の充実も欠かせません。このため、経済団体等の協力を得て、ながのアビリンピックを毎年開催しており、本年度は、特別支援学校の生徒の皆さん20名がオフィスアシスタントやフラワーアレンジメントなどの競技に参加されました。
議員御指摘のとおり、障害者の自立や社会参加には、企業や産業現場の理解、協力が大変重要となります。今後とも、障害者の勤労促進に向け、教育委員会や関係機関等と連携を図りながらきめ細かな支援をしてまいります。
〔15番小山仁志君登壇〕
◆15番(小山仁志 君)何かしらの課題を抱えながら、はっきりとした診断がなく、原因や状態が分かりにくい子供たちが、軽度であるとか見分けがつきにくいということによって支援の機会を逃し、生活や学習にしんどさや困り事を抱えている。可能性に向き合っていく体制、理解をし合っていくということが脆弱な状況にあるのではないかという不安の中で質問させていただきましたが、大変幅広い角度から取組をいただいているということが理解できました。
本来は大切に守られるべきハンデを持った子供たちが、気づかれないまま、適切な支援を受けられないどころか、いじめや虐待を受け、取り残されてしまうような状況をいかに防いでいくのか。医療、福祉、教育面、様々な分野からの細やかな対応策や体制整備のニーズはこれからも多様化してくるというふうに思います。そんな観点からの取組を期待いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○副議長(清水純子 君)この際、15分間休憩いたします。
午後2時11分休憩
──────────────────
午後2時28分開議
○議長(宮本衡司 君)休憩前に引き続き会議を開きます。
続いて順次発言を許します。
酒井茂議員。
〔31番酒井茂君登壇〕
◆31番(酒井茂 君)伊那市選出、酒井茂でございます。私は、今回は行財政改革について大きく2項目につきまして質問をいたします。
まず最初は、県の行財政改革についてであります。
さて、10月の末には衆議院議員選挙が実施されました。選挙期間中は各党とも様々な公約を掲げ、激しい選挙戦が展開されたところでございます。公約の中には、コロナ対策として各党とも巨額な財政支出を行うというものが多く見られたところであります。これについてはいろいろと議論があるところでありますけれども、実はこの巨額な財政支出について、この財源をどうするのか、あるいは、コロナ禍によりまして危機的な状態にある国家財政の再建をどのようにしていくのかという議論が少なかったように感じるところでございます。
あるマスコミが衆議院選挙の投票を終えた人に出口調査を行ったところによりますと、財政運営につきましては、いわゆる財政の危機的な状況をしっかりと捉えるべきだという回答が多かったというふうに報道されたところでございます。選挙戦におきます各党の議論とは対照的に、有権者の皆さんが財政運営について危機的な意識を持っているということが明らかになったわけでございまして、国民の意識の高さというものをうかがい知ることができたと思うわけであります。
また、選挙の前の10月に発売されました月刊誌「文藝春秋」では、財務省の矢野財務事務次官の論文が掲載されまして、最近の政策論はばらまき合戦のようだと批判したことが議論を呼んでいるわけであります。論文によりますと、「財務次官、モノ申す「このままでは国家財政は破綻する」」というタイトルで国家財政の危機的な状況に触れまして、国庫には無尽蔵にお金があるかのような話ばかりが聞こえてくると、衆議院選挙をも念頭に置いて疑問を投げかけたところであります。高級官僚があえて国の財政再建に関しまして持論を展開するということは大変珍しいことであります。
国は、コロナ対策として、これまで大規模な予算を組んで対応してまいりました。想定外のコロナへの対策とはいえ、昨年度からの補正予算の財源は全て赤字国債であります。子供のためにお金を配るとしても、借金の返済は60年にわたり、将来の子や孫の世代が負担することになるわけであります。
赤字国債は、建設国債と違いまして、例外的に認められるものでありますが、平成8年度から毎年度発行されておりまして、しかも、毎年度、建設国債を超える額が発行されております。そして、発行額は年々増加し、現在700兆円もの残高となっているわけであります。建設国債は300兆円の残高であり、国債残高の総額は実に1,000兆円と、先進国では群を抜いて巨額となっております。
コロナ発生の前には、国は財政の健全化を目指しておりましたが、コロナにより大幅な見直しを余儀なくされてしまいました。国家財政の悪化によりまして、地方財政への影響が懸念されております。
国は、国税を財源といたしまして地方交付税を交付しておりますが、財源不足の特例措置として、地方に臨時財政対策債という地方債を発行させ、地方の財源を確保しているわけであります。2001年から毎年度発行されており、地方が起債を償還するときに国から補填されるものの、赤字地方債とも言えるもので、借入残高は54兆円と巨額に上っております。
令和3年度の地方財政計画を見ますと、地方交付税は17兆4,000億円、臨時財政対策債は5兆5,000億円となっておりまして、本来交付されるべき交付税は4分の1カットされております。地方交付税は、家計に置き換えますと、子供への仕送りに例えられておりますが、親の収入が確保されなければ仕送りの額は減ってしまいます。長野県の臨時財政対策債の残高は7,100億円で、県の地方債残高の実に4割を占めるに至っております。
そこで、知事にお聞きいたします。
国は、巨額の借金を抱えて危機的な財政状況にあり、これが今後の地方財政に大きく影響することから、国家財政の健全化を計画的に進めるべきと考えるものでございますが、国の財政状況についてどのように認識し、今後どのように対応していくべきとお考えでしょうか。
次に、県の行財政改革について質問いたします。
10月の下旬に県は令和4年度当初予算編成方針を決定し、公表したところであります。この中で、県財政の現状認識につきましては、厳しい財政運営を強いられることが懸念されるとしております。
また、新時代の行政運営への転換と財政構造改革については、行財政基盤の持続可能性を維持するために行財政改革をさらに推進することが不可欠であるとしております。さらに、予算編成方針の中で公表した令和4年度一般会計財政見通しによりますと、145億円の歳入不足が生じると試算をしているところであります。
さて、行財政改革につきまして、私は、昨年9月の議会定例会で一般質問を行ったところであります。私は、財政状況が悪化している中で、これまでにない行財政改革の断行が求められている。県では平成24年に策定した行政・財政改革方針を見直して、平成29年に行政経営方針を策定したが、構造改革を進める上での指針としては取組が弱いと考える。コロナを契機として、現状の行政経営方針は、行財政改革の視点を中心として大幅に見直しをし、新たな行財政改革方針を策定すべきと提案したところでございます。
これに対しまして、知事は、行財政を取り巻く環境が大きく変化していることから、行政経営方針の見直しについて検討したいと答弁しております。
こうした経過も踏まえる中で、県では、今年2月から、新たな行政・財政改革方針の策定に向けた作業を開始したと承知しております。現在、県では新たな方針の策定作業を行っており、年度内に策定することを目指しております。
一方、政府は、今年6月にいわゆる骨太の方針を閣議決定いたしました。この中で、2025年に基礎的財政収支の黒字化を堅持するとしております。しかし、感染症でいまだ不安定な経済財政状況を踏まえ、本年度内に感染症の経済財政への影響の検証を行い、その検証結果を踏まえて目標年度を再確認するとしており、現状においては一体いつ黒字化を目指すのかということは不透明な状況にあります。
このため、全国の地方公共団体の歳入歳出の総額を定めます地方財政計画の規模や、一般財源や地方交付税などがどの程度確保されるのか見通せない状況にあります。個々の地方公共団体の予算編成の基本となります地方財政計画の見通しが不透明な状況では、地方が今後財政見通しを立てていくことは困難であります。こうした状況の中で、具体的な数値目標を掲げます行政・財政改革方針を県が今年度中に策定することは困難ではないかと考えるものであります。
さて、県の予算編成方針を見ますと、大変重要な視点が記述されております。事業構築・見直し5箇条の中に「選択と集中」の項目があり、その中に、「やめるものはやめる。」と記述されております。予算編成に当たっては、事業のスクラップ・アンド・ビルドの原則を重視すべきでありますが、スクラップ、つまり廃止することは容易ではありません。事業を廃止したり縮小すれば、事業者や団体等から激しい抵抗を受けることも予想されるわけであります。
一方、市町村で耳にすることでありますが、事業見直しの中で職員が高齢者に関する事業について事業費の縮小を提案すると、首長からそんなことをしたら年寄りいじめだと言われてしまう。選挙に影響が出るから現状維持にせよとの指示が出ると言います。首長の選挙への影響を考慮して事業や施策を検討するようでは行財政改革や事業の見直しなどはできるものではありません。
また、県の予算編成方針の中に、当面新規の施設の建設は行わないことを原則とするという重要な記述があります。私は、市役所に勤務していたときに、市町村合併後の新市における行財政改革プログラムを策定するチームリーダーを務めたことがありました。その中で、合併時に作成しました新市建設計画に掲載されていない箱物については今後一切建設しないという方針を定めました。これくらいの思い切ったことをしないとなかなか行財政改革はできないと考えます。
一方、全国に目をやりますと、一体この事業は行政の事業なのかと疑問を抱くものも存在しております。行政でなければできないことや行政で行うことが適当なことに限って行政が行うことが原則であり、それ以外は行政以外の民間などが主体で行うことが適当と考えます。民間の分野まで行政が手を出していたのでは効率的ではありませんし、民間は育たないと考えます。
さて、昨年、コロナ対策として、特別定額給付金として全国民に一律10万円給付され、事務費を入れると約13兆円が投じられたところであります。給付金の使途を見ますと、トップが貯蓄で、実に4割が貯蓄に回ったと報道されております。緊急経済対策として実施されたものの、消費に回らず、多くが貯蓄に回されたことは、施策の成果としてどうであったのか検証する必要があると考えます。また、こうした施策が分配の方法として適切であるのか改めて考えてみる必要があると考えます。
私は、コロナ対策は必要と考えます。しかし、施策の目的、効果、財源、施策の将来の姿などを国民に明確に示すべきと考えます。コロナ対策の一環としての経済対策としてプレミアム商品券の発行や給付金の支給が行われるとありがたいという声が聞こえてきますが、誰に対してありがたいと思うのか、私にはよく理解できません。財源は全て赤字国債であり、言い換えると、将来の自分の子や孫の世代が負担する税金であります。
自分が納めた税金は、国や地方公共団体のものではなく、国や地方が一時的に預かっているだけで、再配分されて自分に返ってくるものであることを正確には理解していない人がいるのではないかと感じます。多くの人々がありがたいと言うから、私は要りませんとは言いにくいし、議会としても施策には反対しにくくなります。
これまでのコロナ対策では、国の交付金を利用して意外な使い方をした自治体があったと報じられております。例えば、巨大イカのモニュメントであります。制作費3,000万円であります。また、この施策の財源は100%国からの交付金であり、自治体の負担はゼロだから、住民の負担はありませんと説明する首長がおりますが、私は誤解ではないかと思います。国の交付金も元をたどれば国民の税金であります。
私は、必要な人にはお金は給付されるべきと考えますが、問題は、対象者の設定、つまり制度設計の中身だというふうに考えております。給付対象を本当に困っている人や事業者などに限定して給付すべきではないかと考えるものでございます。
私は、行財政改革を行う上では、民間ができることは民間に任せる、ばらまき的な事業、パフォーマンス的な事業は行わない、新規の箱物建設は行わない、やめるものはやめる、見直しは先送りしないなどの視点が非常に重要ではないかと考えます。事務事業を見直す上で大切なことは、県民ニーズに合致したものであるか、県民福祉の向上につながるものか、県民の幸福実現につながるものかという視点であります。
そこで、以下2点、知事にお聞きいたします。
一つ目。現状において、コロナの影響による経済、財政への影響が見通せず、今後の地方財政計画の概要が把握できないなど、地方財政を取り巻く環境は不確実性を増しておりますが、新たな行政・財政改革方針を今年度中に策定する方針は変わらないのか、今後のスケジュール感を伺います。
二つ目。行財政改革を行うには、利害関係にある関係機関や団体等からの強い抵抗も予想されますが、新たな行政・財政改革方針の策定の考え方や方針を実行するに当たっての決意をお聞きいたします。
以上で大きい1項目めの質問といたします。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)行財政改革に関連して3点御質問を頂戴いたしました。
まず、国の財政状況についてどう認識し、今後どう対応していくべきと考えているのかという御質問であります。
政府が公表している数字によりますと、今年度予算、第1次補正後における基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスは、41.4兆円の赤字という形になっています。また、国債を含む国の長期債務残高は今年度の当初予算段階で1,019兆円、GDPの約1.8倍という状況でありまして、先週閣議決定された補正予算によりましてさらに拡大する見込みという状況であります。酒井議員の御指摘にもありましたように、国の財政状況は非常に厳しい、厳しいというふうに簡単に言えるようなことをもう通り越している状況だというふうに考えています。
一方、こうした状況下でも、新型コロナウイルス感染症への対応等で、今はある意味国の非常時でありますので、コロナ対策、産業や暮らしの支援には積極的に取り組んでいただく必要があります。国民の声もそうした声が非常に強い状況でありますし、我々都道府県としても、例えば地方創生臨時交付金の交付をはじめとした地方に対する強力な支援をこの間要請してきております。こうしたことを踏まえて経済対策、補正予算ができたということは、提案説明で申し上げたように、我々地方としては歓迎しているところでございます。
しかしながら、長期的に同じような財政運営のスタンスでいいかというと、全くそんなことはないというふうに思います。国も、いわゆる骨太方針におきまして、2025年度に国、地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化といった目標を掲げておりますように、やはり将来世代に過度な負担を負わせない持続可能な財政運営を行っていただくということが政府においても重要だというふうに思いますし、これは我々都道府県や市町村、税金で運営させていただいている行政全体に共通する課題だというふうに考えております。
そうしたことを考えますと、もちろん歳出の適正な中身の精査を行っていく必要はありますけれども、今は非常時でありますので、通常であれば行わないような施策も財政活用して行っております。コロナの後は、この財政をどうしていくかということについて国民的な議論が必要になってくるというふうに思います。
地方公共団体の首長の立場とすれば、国や地方がやっているいろいろな仕事で必要性がないものなど全くないわけでありますので、やはり優先順位をしっかりつけていかないといけない状況になっています。そういう意味で、私としては、国に対して、国が本来果たすべき役割、国にしか果たせない役割にぜひ集中してもらいたいというふうに思います。
その反面、国と地方の役割分担というものを改めて明確にし、それと併せて、税財源の配分の在り方についても見直しをしていただく、そうしたことを通じてより効率的な財政運営を国と地方を通じて行えるような体制をつくっていってもらいたいというふうに思います。
国からの財政支援は、率直に言えばあればあるだけありがたいという部分はありますけれども、先ほど酒井議員の御質問にもありましたように、例えば10分の10の補助金であると、どうしても全体的に財政の規律を乱す方向になりがちな傾向がありますので、そうしたことを考えれば、我々地方政府も自律的な財政運営という覚悟をしっかり決めていかなければいけないというふうに思います。
国においては、赤字国債に依存しない財政構造への転換、そして、地方公共団体においては、臨時といいながら非常に長く続いている臨時財政対策債は廃止してほしいということを国に対して求めてきていますけれども、こうした赤字国債や臨時財政対策債に依存しなくても運営できる財政構造への転換ということを考えていく時期に来ているというふうに強く考えております。
それから、行政・財政改革のスケジュール、策定スケジュールについての御質問をいただきました。
行政・財政改革に関する方針につきましては、これまで、私が知事になってから、いずれも総合計画の前の年に策定いたしております。県組織、県財政の方向性を確定させて、政策推進の基盤をつくった上で総合計画をつくるという形になっておりました。しかしながら、先ほど来申し上げているように、今はコロナ対応、あるいは本県の場合は災害からの復旧・復興である意味非常時対応をしています。財政も平常時と違う予算編成を行わせていただいています。本年は、補正、補正ということで対応させていただいている状況でありますし、また、コロナ対応、災害対応など平時と違う人の配置を行いながら対応している部分もございます。こうしたことを踏まえますと、当面、我々長野県としても、新型コロナの再拡大に備えた体制整備、また、本当に県民、事業者にはコロナの中で苦境に立たされている方々が大勢いらっしゃいますので、コロナ禍からの復興、再生、こうした平時とは異なる対策に当面は全力を上げていかなければいけないというふうに考えております。
また、前にも申し上げたように、国の財政運営は今極めて積極財政をとっていただいている状況でありますけれども、今後の国の財政運営の動向も見極めていかなければいけないというふうに思います。
また、長野県も、来年度が現行総合計画の最終年度になっておりますけれども、コロナ後の社会情勢の変化にどう対応していくかということをしっかり考えていかなければいけないというふうに思っております。
こうしたことから、この新たな行政・財政改革方針の策定時期についても、令和3年度末を予定しておりましたけれども、総合計画と時期を合わせて令和4年度中の取りまとめを目指して取り組んでいきたいというふうに考えております。
それから、3点目でございますけれども、行政・財政改革方針の実行に当たっての決意を伺うという御質問でございます。
先ほど来申し上げているように、財政状況は、国、地方を通じて非常に厳しい状況でございます。ある意味、こうした状況が常態化しているような事態が続いているわけでありますけれども、将来世代の負担ということも考え併せますと、まずは行政改革にしっかり取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。持続可能な財政構造をどうつくっていくかということにしっかり知恵を絞り、またその具体化を図っていかなければいけないと思います。
その一方で、DXの推進等社会環境が大きく変わっていく中で、県組織や県職員の能力を最大限に生かすことができるような行政経営の在り方ということもお示ししていかなければいけないというふうに考えております。
こうしたことを方針に盛り込んだ上で具体化していかなければいけないわけでありますけれども、とりわけ持続可能な財政構造の構築という部分におきまして、これまで財政支出をさせていただいていたけれども、大変申し訳ないけれども縮小します、あるいは廃止しますといったような事業も出てくることになろうというふうに思います。
酒井議員の御質問にもありましたように、県の予算は県民の皆様方の税負担で成り立っているわけでありますので、県民全てが関係者であります。そういう意味では、広く県民全体の合意、コンセンサスを得る努力をしていく一方で、特に具体的な事業の関係者の皆様方とは丁寧な対話を行い、多くの皆様方の御理解と御協力を得ながらこの行政・財政改革を進めていくということが大変重要だというふうに思っています。
ミクロの場面で見ると、やはり補助金は多いにこしたことはないというふうに多くの方々は思われると思います。しかしながら、例えば、県財政全体のことを考えたり、もう少し時間軸を取って考えたときには、本当にそうしたものが優先されるべきものなのかという問いかけ、投げかけを県民の皆様方にもさせていただき、長野県に暮らす皆さんが本当に安心して暮らし続けられるために、そして、将来世代が過度な負担を負うことなく長野県に暮らすことができるように、行政・財政改革方針策定後はその実現に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
〔31番酒井茂君登壇〕
◆31番(酒井茂 君)知事からは前向きな御答弁をいただきました。
いずれにしましても、国難の時期、コロナ対策についてはあらゆる知恵を絞り、効果が上がるような対策をとっていただくことを要望いたすわけであります。
行財政改革については、単に経費を削減するというものではないと私は考えます。住民ニーズは複雑多様化し、社会経済構造も急激に変化している。そうした中でこの課題に対応していくためには、やはり財源というものも生み出していかなければならないと考えるわけであります。
新たな行政・財政改革方針につきましては、少し時間をかけても内容のあるしっかりしたものをつくっていただくように要望いたしまして、次の大きな2項目めの質問に入りたいと思います。
二つ目は、上水道の広域連携についてであります。
大きい1項目めの質問は県の行財政改革でありましたが、市町村にとりましても、上水道の広域連携は、行財政改革を進める上で大変重要な課題であります。自然災害が発生するたびに痛感させられますが、何よりも優先されるべきは水の確保であります。人は水なくしては生きていけませんし、社会経済活動が成り立ちません。
人口が減少して水需要が減少し、料金収入が減少していくなど、地方自治体の水道事業を取り巻く環境が悪化しております。また、水道事業の職員の高齢化が進み、施設が老朽化しております。県内を見ますと、50歳以上の職員の構成比率は35%と高齢化が進んでおります。高齢化が進めば、技術の承継が困難になってまいります。
また、県内の水道施設の耐震化の状況を見ますと、基幹管路は36%、浄水場は25%、配水池は35%と、それぞれ大変低い状況であります。県内の水道管で耐用年数を超過しているものが13%にも及んでいると言われております。長野県水道ビジョンでは、令和8年度までに基幹管路の耐震化適合率を50%とする目標が掲げられておりますが、現状では達成は極めて困難な状況にあると考えます。
10月には和歌山市の水道橋が崩落いたしまして、6万戸が1週間にわたり断水するという事故が発生いたしました。橋のつり材が腐食していたことが原因と見られますが、この水道橋は2年後には法定耐用年数に達する予定だったといいます。
また、同じく10月には、首都圏で起きました地震で、千葉県市原市にあります水道橋から激しく水が噴出するなど、各地で水道施設への影響が出ました。こうした事故は全国のどこの自治体で起きてもおかしくないと考えます。
水道事業は、事業収入で経費を賄う独立採算が原則でありますけれども、実際には収入の不足分を一般会計から補助して何とか帳尻を合わせているケースも見受けられます。今後、料金収入が減少し、水道施設の更新費用がかさんでいけば、独立採算を維持することが困難になり、赤字を埋めるべく一般会計からの補助が増えていけば、今でも悪化している自治体財政をさらに悪化させてしまいます。
厳しさを増す水道事業の経営強化を目指し、国は2018年に水道法を改正いたしました。改正水道法におきましては、都道府県に対し、広域連携の推進役としての責務が明確化されたところであります。また、2019年には、国は都道府県に対して2022年度末、来年度末までに水道広域化推進プランを策定するように求めております。
これらを受けまして、県では、昨年10月に長野県水道事業広域連携推進協議会を設置しました。この協議会は、県、市町村、三つの企業団が参加し、県内の水道事業の広域連携の推進や将来的な水道の在り方などを検討することになっております。また、県が推進役となりまして、現在水道広域化推進プランの策定に向けた作業を行っております。昨年度は、分析、推計、課題抽出などを行ったところでありますが、多くの自治体においては、今後、水道料金を大きく値上げしない限り、赤字と資金不足が生じ、経営環境が悪化すると分析しております。しかし、料金の値上げを住民の皆さんは反対いたします。本年度は広域連携のシミュレーションを行うことになっておりまして、今年度中に各広域圏において取り組むべき広域連携策を検討する予定であります。
広域連携の形態としては、一つとしまして管理の一体化、二つとしまして施設の共同化、三つとしまして事業統合の三つのパターンとなっております。そして、来年度は、シミュレーション結果に基づきまして、広域連携策、つまり三つのパターンのうち一つを決定する予定となっております。
さて、水道の広域連携に関しまして、私は、令和元年9月の定例会で一般質問をし、広域連携を進めること、そして、広域連携における県のリーダーシップの発揮の方向性についてお聞きしたところでございますが、これに対して、知事は、水道法の改正により、都道府県の責務として、水道事業者との広域的な連携を推進するように努めなければならないとされている。これまで、どちらかというと、水道事業は市町村や事業者の主体的な判断で取り組んできているが、県としても問題意識を持って水道事業に向かい合っていかなければならない。まずは広域化推進プランを策定する。広域化推進の方針や具体的な取組を水道事業者の皆さんと一緒になって取りまとめていきたい、これからも県として積極的に役割を果たしていきたいと答弁されております。
水道事業を取り巻く課題が山積する中で課題を解決していくには、広域連携は多くの自治体が取り組むべき有効な手法と考えます。国家財政が悪化し、少子化が進む中で、市町村は今後ますます厳しい財政状況に置かれていくことから、早期に広域連携などの有効な対策をとるべきと考えます。
さて、私の地元、上伊那広域圏では、県及び5市町村により長野県上伊那広域水道用水企業団が昭和55年に設置され、平成4年10月から5市町村に水道用水を供給しております。
一方、平成3年4月には、圏域内の市町村と企業団による上伊那圏域水道水質管理協議会が設置されまして、共同により水質管理センターが設置され、平成4年10月から圏域内の全市町村の水道事業の水質検査を実施しております。また、上伊那広域連合には土木関係の技術職員を擁する土木振興課が設置されております。こうした状況を見ますと、まさに上伊那広域圏は広域連携を進めるには環境が整っているのではないかと考えるものでございます。
そこで、以下3点について環境部長にお聞きいたします。
一つ目。現在水道広域化推進プランの策定作業が進められておりますが、市町村により取組姿勢に温度差があるとお聞きいたします。策定作業を進めるに当たっての課題をどう捉え、課題をどのように解決していく方針でしょうか。また、プラン策定に向けてのスケジュール感をお聞きいたします。
二つ目。県内の水道事業経営が大変厳しい状況に置かれていることや、広域連携の必要性について県民の関心が低いのではないかと感じますが、今後どのように県民に向けて啓発活動を進めていく方針でしょうか。
三つ目。上伊那広域圏は、水道の広域連携を進めるには様々な環境が整っていると考えますが、今後、広域連携を進めるモデル地域として、県が推進役となって他の地域に先行して連携を進めることを提案いたしますが、いかがでしょうか。
次に、知事にお聞きいたします。
上水道の広域連携を進めるには県の強いリーダーシップの発揮が不可欠であります。水道広域化推進プランの策定と策定後のプランの着実な実現に向けての意気込みをお聞きいたします。
次に、下水道の広域連携について質問いたします。
下水道の広域連携につきましても、上水道と同様、重要な政策課題であると考えます。そこで、現在設置されております公益財団法人長野県下水道公社に着目して広域連携について質問を進めます。
この公社は、長野県と県内の全市町村が参画して平成3年に設置されており、理事長は県の副知事であります。主な事業は、下水道の調査、設計、施工管理、下水道の維持管理などとなっております。維持管理業務については、32の市町村と組合の59の終末処理場及び一部市町村の管渠の維持管理を受託しております。
さて、近年の下水道事業を取り巻く環境は悪化しており、職員の大量退職に伴う職員数の減少、人口の減少に伴う料金収入の減少、処理場や管路の老朽化に伴う更新需要の増大などが課題となっております。このため、現在の経営形態を前提とした経営改革の取組では、将来にわたり住民サービスを確保することは困難であるため、抜本的な改革を進めていくことが求められていると考えます。
私は、経営改革の手段として、大いに広域連携を進めるべきと考えており、中でも、現在設置されております県下水道公社に業務委託するという選択肢が非常に有効ではないかと考えます。
そもそも、下水道公社は、県と県内全市町村の出捐により設立された組織であります。出捐とは、会社に対する出資と同じものでありますが、市町村の義務といたしましても、市町村の終末処理場などの維持管理をこの公社に委託すべきと考えるものであります。
構成市町村独自の判断により公社へ委託する、あるいは直営管理するということは、公社設立の背景からしても本来避けるべきではないかと考えるものであります。直営といっても、維持管理は民間への委託が実態であります。公社は市町村が資金を出し合ってつくった組織であります。自分たちの組織を効率的に運営し、市町村のために役立つ組織へと育てていかなければならないと考えます。
各事業体の運営に要する費用を縮減し、将来不足する専門職員の確保を図るためにも、専門家集団であります下水道公社に施設の管理を委託するメリットは大きいと考えます。下水道公社へ維持管理業務の委託を進めることにより、将来、複数の自治体の終末処理場から出る汚泥の共同処理化にもつながると考えます。
そこで、環境部長にお聞きいたします。
市町村の下水道事業の将来にわたる安定的な経営の継続のためには広域連携など様々な改革を進めていかなければなりませんが、県としてどのような役割を果たしていく方針でしょうか。
次に、副知事にお聞きいたします。
長野県下水道公社の経営力の強化を図るためにも、市町村の下水道事業の経営改革を図るためにも、下水道施設の維持管理業務を直営で行っている市町村に対して可能な限り下水道公社に委託することを要請すべきと考えますが、公社の理事長でもあります副知事に所見を伺います。
以上で大きい2項目めの質問といたします。
〔環境部長猿田吉秀君登壇〕
◎環境部長(猿田吉秀 君)水道及び下水道の広域連携につきまして4点御質問を頂戴いたしました。順次お答えいたします。
最初に、水道広域化推進プランの策定に関しまして、課題とスケジュールについてのお尋ねでございます。
水道広域化推進プランの策定作業を進めるに当たっての課題は二つあると考えております。
一つには、水道事業を担うそれぞれの市町村に危機感を持っていただくことであり、そのため、これまで、検討の各段階において、全体、圏域ごと、あるいは個別にも市町村への丁寧な説明を行ってきたところでございます。
もう一つの課題は、連携により、例えば圏域全体ではメリットがあっても自らの市町村にはメリットが少ない場合にその連携の方向性に賛同いただけるかという懸念でありまして、現在作業中のシミュレーション結果が出た段階で、まずは詳しい説明に努めてまいりたいと考えております。
今後のスケジュールといたしましては、シミュレーションを年内を目途に完了させ、その結果を1月以降に水道事業者にお示ししていく予定でございます。その後、広域連携の方向性について協議及び検討を進め、令和4年度中に水道広域化推進プランとして取りまとめてまいります。
続きまして、県民に向けての啓発についてのお尋ねでございます。
水道事業の基盤強化を進めていくためには、市町村等水道事業者と住民の皆様が問題意識や解決の方向性について共有していただくことが不可欠となります。
そのためには、水道事業者ごとの現状分析と将来予測、さらには広域連携した場合のシミュレーションの結果を水道広域化推進プランとして分かりやすく公表していくことが必要と考えております。
国におきましても、プランを策定した場合には積極的に公表し、住民の皆様に周知を図るとともに、都道府県及び市町村等の議会へ説明することとされており、公表の方法や内容について国や市町村とも協議した上で実施してまいります。
続きまして、上伊那圏域における広域連携についてのお尋ねでございます。
上伊那圏域では、県と受水5市町村が参画する長野県上伊那広域水道用水企業団による用水供給事業が実施され、企業団から用水供給を受けるエリア内では、既に市町村間の基幹施設が接続された形となっております。このため、他の地域と比べて大きな費用をかけることなく施設の統合を行うことが可能となりますので、用水供給といわゆる末端給水との垂直統合型の連携が有力な選択肢になると考えております。
一方で、現在企業団に参画していない市町村もございますので、それらの市町村とどのように連携するかといった課題もございます。これらの点を踏まえ、上伊那圏域においてモデル的な広域連携策が打ち出せるよう、シミュレーション結果に基づき市町村並びに企業団と十分に意見交換を行ってまいります。
4点目といたしまして、下水道事業等におけます県の役割についてのお尋ねでございます。
生活排水などの汚水処理は、公共下水道のほか、農業集落排水施設、浄化槽などにより行っておりまして、エリアを区分してこれらを計画的に整備することで、汚水処理人口普及率が98%と全国トップクラスの水準となっております。
生活排水対策における県の役割は、水質汚濁防止法におきまして広域にわたる施策の実施及び市町村が行う施策の総合調整に努めるとされており、平成7年の厚生省、農林水産省、建設省連名の通知に基づき、汚水処理施設の整備等に関する総合的な計画といたしまして「水循環・資源循環のみち」構想を策定し、その中で経営の安定化に向けた取組について位置づけているところでございます。
具体的には、この県構想に基づき、所管省庁の垣根を越えて農業集落排水施設と公共下水道の統廃合などを進めてきており、これまでに約1割の処理区を統合し、一部では年間数千万円の維持管理費の削減につながるなどの効果が見られております。
本構想は、現在、市町村と協議しながら令和5年度を目途に見直しを進めており、地域の特性を踏まえつつ、さらなる施設の統廃合、流域下水道との連携、市町村を超えた広域化、共同化などを位置づけ、下水道事業等におきましても持続可能な経営につなげてまいりたいと考えております。
以上でございます。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)私には、水道広域化推進プランの策定と策定後のプランの着実な実現に向けての意気込みを問うという御質問をいただきました。
水道事業は市町村の皆様方が中心になって事業経営いただいているわけでありますけれども、人口減少によります料金収入の減少、施設や管路の老朽化の進行や耐震化の遅れ、技術職員の不足等大変多くの課題に直面しており、広域連携による基盤強化が待ったなしの状況だというふうに考えています。
広域連携に当たりましては、管理の一体化、施設の共同化から経営統合まで様々な形態がございますが、水道事業者ごとに地理的・社会的条件、施設の状況等事業を取り巻く環境が違うことから、適切と考えられる連携の在り方も地域によって必ずしも一律ではないというふうに受け止めています。
水道事業の実施主体であります市町村が様々な課題を乗り越えて水道事業の進むべき方向性を見いだしていただくことができるよう、県としても積極的に水道事業者間の調整を図って、令和4年度中には水道広域化推進プランを取りまとめていきたいというふうに考えております。
また、プランの策定後におきましても、広域化が確実に推進されるよう、国からの技術的、財政的支援も活用しながら広域連携の推進役として県としての役割を果たしていきたいと考えております。
以上です。
〔副知事関昇一郎君登壇〕
◎副知事(関昇一郎 君)下水道施設の維持管理業務を直営で行っている市町村に対して可能な限り下水道公社への委託を要請すべきとのお尋ねであります。
下水道公社は、専門技術者の確保が困難な市町村から公共下水道の管路建設や供用後の処理場等の維持管理を受託しております。
現在、公社では、上伊那など県内4地域におきまして複数市町村の維持管理業務を受託し、その上で共同発注を行っております。さらに、受託市町村の拡大、薬品等の共同購入等に取り組んでいるところでもあります。
現在、県下の約半数の市町村から処理場の維持管理業務を受託しておりますが、今後、人口の減少や技術系職員の確保が困難となることが見込まれており、特に小規模市町村において下水道公社の必要性がさらに高まるものと認識しております。
先ほど環境部長から答弁申し上げましたとおり、県では、令和5年度からの新たな下水道に関する構想策定に向け作業を進めており、この策定過程において下水道公社の一層の活用について提案してまいりたいと考えております。
〔31番酒井茂君登壇〕
◆31番(酒井茂 君)下水道公社の今後の大いなる活用について期待したいと思います。
いずれにしましても、水道については、自治体がかつての夕張市のように倒産しても、水の供給を止めることはできません。福祉サービスを低下させてでも水の供給は最優先であります。
現在、ふだん何げなく使用している上下水道ではありますけれども、事業を将来にわたって安定的に運営していくために、広域連携など必要な取組を早急に実行していかなければならないと考えます。そのためにも、県が強力なリーダーシップを発揮するよう要望いたしまして、以上で全ての質問を終わりといたします。
○議長(宮本衡司 君)次に、清沢英男議員。
〔44番清沢英男君登壇〕
◆44番(清沢英男 君)初めに、来年度予算編成方針の重点テーマについて伺います。
しあわせ信州創造プラン2.0の総仕上げの年になる来年度予算の編成方針が示されましたが、その中から幾つか知事に伺います。
1点目。「新型コロナウイルス感染症から県民の命を守る」ですが、3回目のワクチン接種について、2回目接種から8か月後または6か月後という説もあるが、本当はどうなのか、また、ファイザーとモデルナの交互接種は安全なのか、そんな幾つかの不安があります。欧米や韓国での蔓延状況や、コロナの出口を塞いでしまうかもしれないオミクロン株を考慮に入れれば、県民の皆さんの心配を解消すべく、県が率先して明確な指針を出すべきですが、お答えをお聞かせいただきます。
さて、去る10月末、信毎の1面の大見出しは「命守る 公立病院の気概」、小見出しは「感染者受け入れ、現場に負担 一般患者は減り収益が悪化」というものでした。県内公立病院のほとんどで医業収益が前年度割れする中、減少率が最も大きかったのは松本市立病院で約16%減、入院患者は4分の1減少しました。コロナ以外の患者さんを制限したのが原因ですが、その分、他の病院に負担が生じていることも事実でしょうし、まさに県医療全体で命を守る気概にあふれていると受け止めました。
そこで、今年度の減収分は国の補助金で補填できたとしますが、今後についてはどう補償されるか分かりません。心配される第6波問題を含め、県としてのコロナ感染症受入れ病院の支援を今後どう考えておられるか、お聞きします。
また、第6波対策として、政府は第5波のピーク時の2割増の入院患者を想定するように都道府県に求めましたが、長野県の対応を見ますと、第5波ピーク時の1.72倍と全国5番目の高さで、病床は100以上増加させると報道がありました。全国比で多めに増やすことの根拠と、同時にまた感染症に対応できる医師、看護師などスタッフの増員も確保しなければなりませんが、感染症スタッフの増員は恒常的に対策すべきことでもあり、その対応策をお聞かせいただきます。
2点目。脱炭素社会の構築についてですが、私たちが負担する電気代はどうなっていくでしょうか。
再生可能エネルギーの電力買取り制度、FIT等により、日本の電気代は国際的にも高い水準で、1キロワット時当たり米国の14円に対し、日本は28円と2倍です。原油高騰を受け、来年は早速10%の値上げです。今後もゼロカーボンに向けて再エネが推進されると、電気代負担も際限なく伸びると予想され、県民生活や企業の国際競争力にも懸念が生じます。そこで、再エネだけでなく、例えば水素利用などに研究のベクトルを広げ、かかる事態を回避することなども県として目指すべきですが、お考えをお聞かせいただきます。
3点目。歳出についてですが、PPPやPFIなど民間の資金、ノウハウを活用するとしています。県では、これまでかかる事業化はなかったと思いますが、具体的にどの分野に考えておられるか、お聞かせいただきます。
4点目。予算編成方針から外れますが、教育長に伺います。
GIGAスクール構想に基づき、小中学校に学習用端末が1人1台配備されました。その中で、タブレットなどを使った誹謗中傷やいじめ、不正使用など、トラブルの発生が危惧されています。県の教育現場での実態はどうかという点と、ネットモラルの教育を今後どう進めていくかについて御所見をお聞かせください。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)私には5問御質問いただきました。
まず、新型コロナの関連3点でございます。
3回目のワクチン接種の時期や交互接種の安全性等県として明確な指針を出すべきと考えるがどうかという御質問でございます。
追加接種の接種主体は市町村でございますが、県としても、市町村と連携して、円滑、速やかな追加接種が行われるように取り組んでまいります。そのため、現在市町村と今後の取組の基本的な対応方針について協議を行っている状況でございます。
議員御指摘のとおり、接種間隔や追加接種の必要性や効果、さらには副反応、交互接種を行う場合の安全性、こうしたことについては、多くの県民の皆様方が関心をお持ちだというふうに思っておりますし、市町村からも、こうしたことについての丁寧な説明、広報について御意見をいただいている状況であります。
基本的な部分は国においてしっかり対応していただきたいというふうに考えておりますけれども、県としてもその役割、責任をしっかり果たしていくことが重要だというふうに考えております。専門家のアドバイザーチームにも呼びかけの内容、情報提供の内容を御相談させていただいた上で、正しい情報が分かりやすく県民の皆様方に伝わるように取り組んでいきたいと思いますし、具体的な接種の体制やスケジュールについては、市町村の皆様方と方向性をしっかり共有して共に取り組んでいきたいと考えております。
続きまして、コロナ患者受入れ病院に対する支援でございます。
今年度、新型コロナウイルス感染症の患者等を受け入れていただいている医療機関に対しましては、国の緊急包括支援交付金を活用して受入れ病床確保の補助金を交付させていただいているところでございます。
3か月ごとの実績で支払いをさせていただいておりまして、4月分から9月分までについては既に支払いを行わせていただいているところでございます。今後、10月以降の分についても速やかに支払うことによって経営を下支えしていきたいというふうに考えております。
また、来年度以降も地域医療体制を維持する観点から国からの十分な支援が必要だというふうに考えておりまして、こうした点について国に要望しているところでございます。今後とも、国の動き、早期情報収集に努めるとともに、県としても医療機関の経営支援をしっかりと行っていきたいというふうに考えております。
それから、今後の第6波に向けての病床数の確保についてでございますけれども、2割増を上回っているがその根拠は何かということでございます。
2割増というのは、最終的な結果としての2割増を国が求めているということでは必ずしもありません。今般、本県の推計している療養者数につきましては、国が提示した算定方法を踏まえて算定させていただいているところであります。
まず一つは、最大の療養者数について、5波より多くなるという見通しを立てています。これは、社会経済条件が近似する群馬県や山梨県等周辺県の状況も勘案させていただき、本県としての1日当たり最大新規陽性者数は第5波で158名でありましたが、これを226名というふうに見込ませていただき、それに合わせて、最大の療養者数についても、5波のときは1,107名でありましたが、1,583名ということで、この1日当たりの新規陽性者数や最大療養者数自体が5波よりも多くなるという見通しを立てております。
その上で、その療養者のうちどれぐらいの方が入院されるかという部分についてでございますけれども、この部分については、実は高齢者のワクチン接種の効果が減少していく可能性等を考慮して2割増で見込むことと国から方針が示されております。これを加味しますと、本県としての最大の入院者数が479人という形になります。
清沢議員に御指摘いただいたのは、279人、これは5波の最大入院者数でありますが、それと比較して1.2倍になっていないではないかということでありますが、今申し上げたように、最大療養者数についても第5波よりも増えるという前提で推計させていただいておりますので、入院者数については、結果的には1.2倍をかなり上回る数字が出ております。これは、長野県が独自の方法でやっているわけではありませんで、先ほど申し上げたように、国の考え方を踏まえて算定した結果こうした数字になるという状況でございますので、ぜひ御理解をいただければと思います。
それから、専門性を備えたスタッフ増の恒常的な対応策についてという御質問であります。
私も、今後の新興感染症の発生等を視野に入れたときには、医療関係者の専門性の高い人材育成が非常に重要だというふうに思っております。
そうした観点で、幾つか具体的な動きがございます。
一つは、8月30日に信州大学医学部附属病院に長野県医療教育研修センターが開設されました。これは、感染症に対応する医療人材を育てていこうというものでございます。県としても、研修会や講演会への感染症等の専門家派遣等によってこのセンターが実施する研修に協力していきたいというふうに考えております。また、県の看護大学におきましては、令和4年度から感染管理認定看護師教育課程を開設する予定にしており、感染症対応の専門知識と技術を持った認定看護師を養成してまいります。今後、新興感染症等の発生も懸念されるところでありますので、様々な感染症に対応できる医療人材の養成確保に関係機関と連携して取り組んでいきたいと思っております。
それから、脱炭素の関係で、今のままでは電気代等の増加が懸念されるので、水素利用等エネルギー研究のベクトルを広げてはどうかという御質問でございます。
御指摘のとおり、脱炭素社会の実現に向けては、再生可能エネルギー分野の拡充はもとより、様々な可能性を考えていかなければいけないというふうに思っております。
水素エネルギーに関連いたしましては、都道府県においては積極的に取り組まれているところもありますので、全国知事会としては、私が本部長をしております脱炭素本部においても、この水素エネルギーの活用について国への提案の中に入れさせていただいているところでございます。また、本県でも、企業局が、再生可能エネルギー由来の水素の利活用を推進するため、川中島水素ステーションにおいて実証実験に取り組んでいるところでございます。
今後、まずこの水素の活用については、再エネ由来の水素を利用したコジェネレーションなど、家庭や事業所における利用の可能性について研究していきたいというふうに考えております。また、本年度創設したゼロカーボン技術事業化支援補助金によりまして、幅広い再生可能エネルギー、エネルギー開発、新たな技術開発を支援していきたいというふうに考えております。
続きまして、PPPやPFIの活用を具体的にどういう分野で考えているかという御質問でございます。
PPPやPFIは、民間の資金や能力を公共施設の整備、管理運営に活用して、行政の効率化や質の高い公共サービスの提供を図っていこうというものでございます。県では、PPPの事例としては、現在27施設で指定管理者制度を導入しております。来年度から新たに施設を追加していきたいと考えております。
また、PFIについては、PPP/PFI導入指針をつくっておりまして、10億円以上の公共施設の整備等を計画する場合にはこのPPP/PFI手法の導入を優先的に検討することにしておりますが、現在まで検討を行ってきましたけれども、これまでのところPFIの導入事例はありません。
現在、松本空港の機能強化に向けた取組を進めているところでありますけれども、その中でもこの民間資金やノウハウをどう有効活用できるかという観点で検討していきたいというふうに思っております。
今後、大規模プロジェクトへの取り組みに当たりましては、効率的かつ効果的な施設整備、行政サービスの向上を図る観点でPPPやPFIの導入について検討していきたいと考えております。
以上でございます。
〔教育長原山隆一君登壇〕
◎教育長(原山隆一 君)学習用端末についてのお尋ねでございます。
学習用端末による誹謗中傷やいじめ等の実態についてどうかというお尋ねでありますが、県内の小中学校に配備された1人1台端末を使った誹謗中傷やいじめ、不正使用等のトラブルについて県教育委員会では今のところ相談や報告は受けていないという状況でありますけれども、引き続き注視してまいりたいと考えております。
次に、今後ネットモラル教育をどのように進めていくかというお尋ねであります。
現在、小中学校では、児童生徒の発達段階に応じまして、総合的な学習の時間等を活用して情報モラルについて学習しているところでございます。その際、教員だけではなく、有識者や企業関係者、警察の生活安全課の職員など外部人材を招きまして、様々なトラブルの事例や安全な機器の使用方法などについても学んでいるところであります。
これまでも、県教育委員会では、教員を対象としたネットを契機とする性被害防止のための指導方法研修会を開催しまして、児童生徒が被害者にも加害者にもならず、ネットを上手に活用していく力をつけることができるよう専門家による研修を実施してきたところでございます。また、希望する学校には、情報教育の専門家から成る子どもの性被害防止教育キャラバン隊を派遣して講演会を実施してきたところでもございます。
今後も引き続き研修会や講演会を実施するとともに、ネットトラブルの具体的事例や学校で活用できる指導案等の紹介を行いまして、家庭とも連携した情報モラル教育を進めてまいりたいというふうに考えております。
〔44番清沢英男君登壇〕
◆44番(清沢英男 君)歳出の中で、社会インフラは、当面新規県有施設の建設は行わないとしていますが、箱物について、これも必要に応じPFIなどを活用できないかという検討をお願いし、一方、県民の皆さんの命や住環境を守る道路や橋梁、また河川、砂防、治山施設など防災・減災上の県土強靱化については強力に推進してほしいと思います。
次に、ゲノム編集技術と県産農産物の展望について伺います。
これまで、農産品やその食品が固有に持つ性格を変換し、生産現場での効率を向上させようとする技術は、遺伝子組換え、以後GMといいますが、と呼ばれ、開発以来、今もって消費者の根源的理解を取得できず、例えば、スーパーの売り場では、これは遺伝子組換えではありませんという表示が刷り込まれ、危ない技術のように扱われています。結果、日本に輸入される大豆、トウモロコシ、菜種などのGM作物は、表示義務のない食用油、家畜飼料、清涼飲料の甘味料という目に見えない用途に使われるようになりました。
他方、昨年12月、筑波大学とその関連ベンチャー企業は、ゲノム編集技術で誕生したトマト、これは血圧を下げ、リラックス効果のある成分のギャバ、ガンマアミノ酪酸を多く含むといいますが、このトマトを厚労省と農水省に届出いたしました。さらに、消費者が家庭菜園で育てて体験するというマーケティング手法を採用し、ゲノム編集苗の無料配布を募ったところ、5,000人を超える申込みがあったとのこと、予想をはるかに超えたといいます。
ちなみに、遺伝子組換え食品とゲノム編集の食品の現状を比較した違いを見ると、一つに、ゲノム編集食品への反対運動がほとんどないこと。二つに、その担い手がGM作物は海外巨大企業が開発導入したのに対し、ゲノム編集食品は大学や公的機関の研究者であること。三つに、GM作物が農薬や労力削減など生産者のメリットしか見えないのに対し、ゲノム編集食品は消費者へのメリットが目に見えて分かることなどが挙げられています。
そこで、農政部長に伺います。
1点目。遺伝子組換え技術とゲノム編集技術につき、その技術的違いとは何か。また、安全性や課題について、これまでの経緯を含め双方の概要についての御所見をお聞かせいただきたいと思います。
2点目。ゲノム編集は、既に国内では、芽に毒のないジャガイモ、肉厚のタイ、高収量の稲、養殖場の網に激突しないおとなしい性格のマグロ、花粉症を防ぐ花粉のない杉などが誕生し、これら研究者の夢が生んだ日本の知的財産とも言われ、農水省も予算投入して世界に通用する国産ゲノム食品の普及を後押ししている点もGM作物と違って支援の材料となっているといいます。
私は、さきに申し上げたゲノム編集の無料苗に応募した5,000人の栽培後の評価について、配布した側のベンチャー企業に問合せをいたしました。返信を要約すると、一つに、非常に好評で、栽培やゲノム編集について疑問に思ったことをLINEでの交流やウェブセミナーを通じて皆で学び合えたことがよかった。二つに、長野県に関係することでは、農研機構の方がブドウの着色安定化に向けたゲノム編集の研究を行っている。三つに、ゲノム編集は気候変動や生産者不足といった日本の農業が抱える課題解決に必要な技術などの答えが返ってきました。
そこで、長野県の未来を形づくるかもしれない農産物を考えたとき、消費者の万全の理解が前提になりますが、ゲノム編集作物に県の農業試験場が研究や開発に乗り出してもいいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
〔農政部長小林安男君登壇〕
◎農政部長(小林安男 君)私にはゲノム編集関係で2点御質問をいただきました。
初めに、遺伝子組換え技術とゲノム編集技術についてでございますけれども、遺伝子組換えは農作物などに別の生物から取り出した遺伝子を導入する技術であり、遺伝子組換え生物につきましては、導入した遺伝子により生成される物質の安全性や環境への影響について国の審査を受ける必要があります。
一方、ゲノム編集は、農作物の遺伝子の一部を狙って切断するなどで変異を起こす技術であり、現在実用化されている手法で開発された農作物は、自然界で発生する突然変異と科学的に判別ができないものとして遺伝子組換え生物には該当しないとされております。
このため、国は、この手法によるゲノム編集農作物については、安全性について審査の必要がない届出制としており、食品表示基準も対象外とされておりますが、安全性などについて消費者への十分な説明と理解の促進が今後の課題と考えております。
次に、ゲノム編集作物の研究開発についてでございますが、本県試験場では、交配育種を中心に県オリジナル品種の育成を図ってきたところですが、育種期間の大幅な短縮が見込めるゲノム編集は有効な育種手法の一つと考えております。
一方で、ゲノム編集については、専用施設の整備や高度な機器が必要なことなどから、実用的な品種の開発に取り組んでいる研究機関は限られており、研究は進んでいるものの、ゲノム編集で育成された品種の国への届出は、先ほど議員からもありましたトマトを含め3事例となっております。
このような状況下において、本県試験場における対応としては、まずはゲノム編集を行っている大学や国研究機関等と連携し、開発された品種の栽培特性や品質評価等の現地適応性試験が実施できるか等について検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
〔44番清沢英男君登壇〕
◆44番(清沢英男 君)次に、国民スポーツ大会と関連する県道について伺ってまいります。
長野国民スポーツ大会及び全国障害者スポーツ大会に向けて、開閉会式のメイン会場となる今井陸上競技場をはじめとする環境整備も工程が整って動き始めようとしています。県内の主要道路である中部縦貫、中部横断、松糸、三遠南信、佐久松本、青木峠、158等々も、全国から大勢の人を迎えるだけの改良が促進されようとしています。競技場への主要なアクセス道路は松本環状高家線で、競技場の北側を走りますが、この4車線化で国体道路も大きく前進するものと思われます。
そこで、今日取り上げたいのは、このメインルートが何らかの理由で通行不能や危険な状態が切迫したとき、逃げ道ないしは代替道路として使用すべきルートを当然想定しておかねばならないことであります。その役割を果たす一つが、競技場の反対側、南側を東西に走る県道25号主要地方道塩尻鍋割穂高線についてであります。これの整備も同時並行的に進める必要があるという観点で質問してまいります。
建設部長に伺います。
1点目。奈良井川に架かる今村橋ですが、現在、本橋は長寿命化のため架け替え工事が行われているため、仮橋を通行します。その仮橋が、今年のお盆豪雨により護岸が洗われて通行止めを余儀なくされ、全面通行不可になりました。仮橋は現在使えるようになりましたが、待たれるのは、本橋がいつ完成し、本来の交通状況が復活できるかという点です。見通しをお聞かせいただきます。
2点目。松本市今井の集落内ですが、約1キロメートル家屋が連檐し、幅員が狭くなって、乗用車同士のすれ違いでも注意深く通行しなければなりません。ところどころに退避場所が設けられていますが、車の通行量が多く、十分とは言えません。集落の終わる赤坂橋付近は県道土合松本線の改良工事が予定されていますが、この工事を起点として集落内全般の県道拡幅に取り組んでいただきたいが、いかがでしょうか。
3点目。松本市波田の集落に入って間もなく、市道と交差する丁の字にぶつかります。この三差路交差点は誠に狭く、三方で停止しつつ進まなければなりませんが、拡幅改良は家屋連檐のため望めるかどうか、まずはお聞きします。
また、この県道は、上高地方面に向かう近道として県外車の通行量も多く、地域の皆さんの中には、危険な三差路や狭い集落内道路を回避するバイパス建設をしてほしいとの切なる声がありますが、お答えをお聞かせいただきます。
4点目。梓川に架かる通称丸田橋という梓川橋ですが、橋長217メートル、車道幅員5.5メートル、全幅6メートル、現在の橋の建設は昭和39年、東京五輪の高度成長期にできました。梓川地区の高校生は、梓川高校や電車通学で波田駅まで往来するには、徒歩または自転車に乗ってこの橋を渡らなければなりません。ところが、幅員が狭いため、ぎりぎり2車線でセンターラインが引かれていますが、歩道や自転車道が設けられているはずもなく、車と自転車が並走したり、徒歩の高校生が車に追い抜かれるときなど、再三にわたって肝を冷やす場面があると言います。よって、松本市や地元町会などから歩道設置を求められていますが、いまだ実現できていません。
今年6月の千葉県八街市の交通事故を受けて、市が歩道の緊急点検を実施しましたが、梓川橋は通学区の境になって通学路に指定されておらず、緊急点検箇所から外れてしまいました。しかし、車と歩行者や通学自転車との接触事故がいつ起きても不思議ではない状況を放置できないと思います。
また、この橋は、県の長寿命化計画により平成24年から3年にわたり補修が実施されましたが、今年のお盆豪雨で橋脚が被災し、梓川の水位が上昇すると、安全確保のため橋を予告なく通行止めにするという看板が立てられています。よって、車両通行量も大きいこの橋を人や自転車が安全に通行できるよう、しかも気候変動による河川の安全性のフェーズが変わりつつあることも考慮に入れて、梓川橋を抜本的に改良するために、橋の架け替えを視野に入れて一日も早く対策すべきと考えますが、御所見をお聞かせください。
以上、国体の開催時における危機管理であります。安心、安全に通行できる県道の改良を進めなければならないという建設部の意欲をお聞かせいただきます。
〔建設部長田下昌志君登壇〕
◎建設部長(田下昌志 君)初めに、今村橋の開通の見通しについてのお尋ねでございます。
今村橋は、老朽化が進行し、損傷の程度が激しいことから、ライフサイクルコストを考慮した中で架け替えが妥当であると判断し、平成26年度から事業を進めてきたところでございます。
本年8月の豪雨によりまして仮橋や護岸が被災したことから、一時通行止めとなりましたが、仮橋の応急対策を急ぐことで通行を確保しつつ、本体工事に遅れが生じないよう対応してきたところでございます。その結果、今村橋はこの12月に完成の見込みとなっており、以前にも増して安全、安心な通行に寄与できるものと考えております。
次に、松本市今井の集落内の拡幅に関するお尋ねでございます。
赤坂橋交差点付近の県道土合松本線における道路拡幅事業につきましては、早期完成を目指し、鋭意事業を進めているところであり、今年度より工事に着手してまいります。
県道塩尻鍋割穂高線の赤坂橋から人家が連なっている集落内は、幅員も狭く、見通しが悪いことから、拡幅の必要性については十分認識しており、従来から、地域と協議の上、局部的な道路拡幅や待避所の設置を行ってまいりました。全面的な拡幅に当たりましては、用地買収が伴うことから、地域の御協力が必要でありまして、整備の進め方について今後とも地域の皆様とよく相談してまいりたいと考えております。
次に、松本市波田の道路整備に関するお尋ねでございます。
この箇所は、人家が連なっている上、道路が屈曲していることから、見通しが悪く、円滑な通行の妨げになっていると認識しております。人家が連檐して拡幅が難しい状況であるため、これまでに、ガードレールやポール、路面標示による交通安全対策を実施してきたところでございます。
バイパスの整備につきましては、松本平南部と波田方面を結ぶ広域的な道路網を視野に入れる中で方向性について検討してまいりたいと考えております。
最後に、梓川橋の抜本的な改良についてのお尋ねでございます。
梓川橋は、今年8月の豪雨によりまして河床が洗掘され、橋脚の基礎部分が露出したことから、河川の増水に伴う通行の危険を回避するために、事前通行規制を行っている状況でございます。復旧に向けての設計が11月に完了したことから、復旧工事を速やかに行い、規制を解除してまいります。
橋梁本体につきましては、最新の橋梁点検では機能的には支障が生じていない状況でございまして、自転車や歩行者の安全確保をするために、地元との調整の中で路面にドットラインを施工し、スピード抑制を図っております。
今後は、松本波田道路の完成供用に伴う交通状況の変化も考慮しつつ、引き続き地元の皆様の御意見を聞きながら必要な対策を講じてまいりたいと考えております。
以上でございます。
〔44番清沢英男君登壇〕
◆44番(清沢英男 君)次に、信州まつもと空港と沖縄交流の展望等について伺います。
新型コロナ感染症第5波を乗り越えようとしている現在、落ち込んでいた経済を回復すべく、国の予算的手当てももくろまれている中で、その一端を担うのは旅行や観光で、コロナ禍で鬱屈した生活からの自由解放だと思うのであります。
信州まつもと空港は、これまで、北海道や九州、また関西へとウイングを広げてきました。FDAは、コロナ禍で痛めつけられても、耐え忍んで長野県の空を飛んで、回復を待ち望んできたと思います。徐々にではありますが、その時は近づいていると思います。長野県から全国への航路をバージョンアップする好機と捉えて政策を打っていくべきであります。
その一つが沖縄であり、長野県は、これまで、コロナ禍の中であっても先を見据えて、知事を中心にターゲットとして沖縄県にスポットを当てて、交流の翼を深めるべく、沖縄県知事はじめ当局と様々な連携と交流について積極的な懇談や交渉を続けてきました。緒に就いてから1年経過しますので、成果等につき、「チームおきなわ」を小岩前副知事から引き継いだ関副知事に総合的に伺ってまいります。
一つに、高校生の修学旅行について、長野県からは通常だと6割が沖縄を目指しますが、沖縄からもスキー学習を含め長野県への修学旅行に取り組んでいただくということでしたが、今年はどうか。交渉過程における先方の熱心さ、気持ちの部分を含め、成果をお聞きします。
二つに、物流についてですが、ハブ空港としての沖縄那覇空港は、世界でも有数の物流取引が期待されていますが、長野県の県産品をいかにして安く沖縄まで運び、台湾や東南アジア等に飛び立ってもらうか、そのために、一つのロットにするべく、県内事業者との相談や沖縄の商社との商談会セットなどを進めるとしたその結果を伺います。
三つに、今年の沖縄大交易会を含め、長野県の農畜産物が多くのリゾートホテルを抱える沖縄県にいかにアピールができて実績につながったのか、お尋ねします。
以上お聞きしてきた空の便は、信州まつもと空港を拠点とするものという共通認識が必要であります。物流で、コロナ禍の中、旅客便が少ないために沖縄に届けた物品が一旦羽田や成田に戻ってそこから送られるという現今のような事情が改善するときは当然やってくるわけで、そのときに向けて、松本空港と沖縄を結ぶ旅客便について厚みを増すことを考えていくべきだと思うのです。
チャーター便については、長野県が両県の旅行会社に働きかけ、インセンティブとなる助成制度も検討する中で旅行商品を造成してもらうなどの協力を得つつ、日本トランスオーシャン航空、以後JTAといいますが、といった航空会社、また旅行会社と長野県がつなぎ役となって実施するとしました。そこで、助成制度の内容を含め、チャーター便の結果につき詳細をお聞かせいただきます。
次に、長野県と沖縄の定期航空便についても思考を広げていくべきと考えます。週に2便でも3便でも、両県の交流や経済的連携などを本物にしていくためにはぜひとも実現方を模索するべきであります。
また、長野県に行って雪を見たい、スキーをしたい、季節を問わず松本城やアルプスにも行ってみたい、リンゴの花も見てみたい、そんな沖縄県の子供たちや希望者が例えば二、三十人もいれば、すぐにも定期便に飛び乗って行くことができるといった空の便があるべきです。もちろんその逆コースもあるでしょう。
信州まつもと空港を拠点とするFDAは、毎日2往復で福岡空港に飛んでいます。また、JTAは、那覇空港から福岡空港に1日6便乗り入れています。それらの中から各1便を選んで、那覇、福岡、松本というコースを長野県と沖縄間の定期航空便にすることも一考できるのではないでしょうか。副知事の御所見を伺います。
その場合、沖縄と長野県を結ぶ定期便として、当初は搭乗率も確保できるような旅行商品の開発やインセンティブを仕掛けることも大切だと思いますが、いかがお考えでしょうか。
また、空から離れて、長野県が沖縄の皆さんにアピールできる食文化についてですが、長野県の食の魅力は、野沢菜、そば、おやき、リンゴ、ブドウ、キノコ、酒、ワイン、みそなどのほかに、加えて桜肉はいかがでしょうか。信州では、昔、すき焼きといえば馬肉、キノコ鍋といえば馬肉でしたし、元気をつける馬刺しなど、桜肉は今も人気上昇中といいます。信州の味の一角に堂々と座ってほしいと思いますが、副知事の御意見をお聞かせください。
〔副知事関昇一郎君登壇〕
◎副知事(関昇一郎 君)信州まつもと空港と沖縄の交流の展望について私からお答えさせていただきます。
まず最初に、沖縄県からの学習旅行の誘致の取組と成果についてのお尋ねであります。
沖縄県からの学習旅行は、平成30年度にはスキー学習などを中心に13校で実施されましたが、本県からは、議員御指摘のとおり、6割の高校で沖縄へ行っているという実績と比べますと、今後の開拓の余地は大きいものと認識をしております。
昨年のツーリズムEXPOの際には、知事によるトップセールスにより、教育旅行の誘致に努めてきたところであります。今回、沖縄で開催した観光商談会に併せて教育旅行説明会を開催し、沖縄県の旅行会社6社14名に参加いただきました。説明会では、スキーなどの冬の体験に加え、高原での環境学習などのSDGs教育プログラムや城下町散策のモデルコースの紹介など、沖縄では体験できないコンテンツの具体的なPRを行いました。参加者からは、かまくらや雪合戦など雪に親しむことができる情報が得られたとの御意見や、3,000メートル級の山々や歴史文化の体験プログラムは沖縄にはない魅力といった評価もいただき、大きな手応えを感じているところであります。
こうした動きを見逃すことなく、来年2月には、沖縄県から教育旅行を扱う大手旅行会社を招聘し、本県の魅力を現地で体感していただく予定であります。
次に、ロットをまとめた流通や沖縄の商社との商談結果についてのお尋ねであります。
小ロット、高品質の長野県産品を沖縄国際物流ハブを活用して海外へ輸出していくためには、長野から沖縄までの輸送費が課題であります。このため、県内の複数の事業者の産品をまとめ、小ロットでも輸送費が軽減できる共同物流の仕組みを構築するため、沖縄県庁、宅配事業者とともに、沖縄県の商社と交渉を行っているところであります。
また、このような仕組みを構築しても、取り扱う県産品がないということにならないよう、併せて沖縄県の商社と県内事業者を結びつける商談会をこの10月26日に開催したところであります。おやきやみそ、日本酒などを取り扱う19の県内事業者の皆様に参加いただき、沖縄の貿易商社7社と53件の商談が行われ、それぞれ取引に向けて協議が進められているところであります。
次に、長野県産品をリゾートホテルを抱える沖縄県にアピールした実績についてのお尋ねであります。
11月3日に那覇市及び恩納村のリゾートホテルのゼネラルマネジャーやシェフを対象に県産品の食材提案会を開催し、20の施設から49名の皆さんに参加をいただきました。リゾートホテルでの取扱いが有望と思われる日本酒、ワイン、シードルと、そのおつまみになるチーズやワサビ、漬物などにターゲットを絞って提案をいたしました。
これに併せて、酒類については継続的かつ具体的な取引ができるよう、酒販免許を持つ長野県観光機構が沖縄県内の卸売業者との商談も実施いたしました。具体的な実績についてはこれからとなりますが、既に提案会でシードルのほか一部のおつまみについて取引希望もいただいているところであります。
次に、チャーター便の運航についてのお尋ねであります。
沖縄とのチャーター便につきましては、旅行商品の企画、造成に関わる経費、その商品のパンフレット製作や新聞広告等の広告宣伝に関わる経費への助成制度を設け、商品化に向けて皆様の御協力をいただきながらFDAやJTAといった航空会社、県内及び沖縄県の旅行会社との調整を行ってまいりました。
今年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、5月以降10月までに予定された13便が結果として中止となりましたが、感染が落ち着いたことから、10月31日にようやく双方向で初のチャーター便が予定どおり運航され、おかげさまで大変多くの方に御利用をいただきました。12月には6便の運航が予定されておりますが、今後のさらなる運航についても旅行会社等に働きかけ、チャーター便の運航拡大を図ってまいりたいと考えております。
次に、定期便の乗り継ぎについてのお尋ねであります。
議員御指摘の福岡経由のほかに、神戸空港を経由してJTAなどの航空会社の定期便を乗り継いで沖縄と往来することが可能となっております。
福岡空港で乗り継いだ場合、現在のダイヤでは、松本空港をFDAで13時5分に出発し、福岡でJTAの便に乗り継ぎますと、那覇空港への到着は17時30分となります。所要時間は4時間30分程度となり、直行便と同様、沖縄へのアクセスの一つの手段になり得るものと認識しております。今回沖縄で行った観光商談会でも、乗り継ぎダイヤをお示ししてアピールをしてまいりました。今後も、旅行会社や航空会社の御意見をお聞きしながら乗り継ぎを活用した旅行商品の造成を提案するとともに、広告宣伝費への助成などのインセンティブについても検討してまいりたいと思っております。
最後に、桜肉、馬肉のアピールについてのお尋ねであります。
議員御指摘のとおり、長野県には、中南信地域をはじめ、各地で桜肉、いわゆる馬肉を食べるという食文化があります。先般、沖縄から来県された方にも馬刺しをお勧めし、大変喜んで召し上がっていただいたというお話をお聞きいたしました。このような食文化の活用も、今後の長野県と沖縄県との交流において魅力的な一つのテーマとなるものと感じております。
長野県には、桜肉のほかにも、おやきや手打ちそば、さらにはイナゴのつくだ煮など多様な郷土食がありますので、沖縄をはじめ全国にアピールしてまいりたいと考えております。
以上であります。
〔44番清沢英男君登壇〕
◆44番(清沢英男 君)歳出の電気代のところで思うことでありますが、今、企業局は、FITに売電して、その収益を一般会計に繰り入れていますけれども、その繰入れ分を企業局マターの仕事の開発等に使ったらどうかというふうなことを思いますが、御検討いただければありがたいというふうに思います。
馬肉をなぜ桜肉というか諸説ある中、「咲いた桜になぜ駒つなぐ 駒が勇めば花が散る 察しておくれよ 花ならつぼみ 咲かぬところに味がある」云々という都々逸からというのも一興でしょうかということを申し上げて、質問を終わります。
○議長(宮本衡司 君)会議規則第13条第2項の規定により、本日はこれをもって延会いたしたいと思います。
次会は、明12月1日午前10時に再開して、行政事務一般に関する質問及び知事提出議案に対する質疑を日程といたします。書面通知は省略いたします。
本日は、これをもって延会いたします。
午後4時4分延会...