長野県議会 2016-02-17
平成28年 2月定例会本会議-02月17日-01号
平成28年 2月定例会本会議-02月17日-01号平成28年 2月定例会本会議
平成28年2月17日(水曜日)
応招議員の席次及び氏名
1 番 佐久市 花岡賢一
2 番 諏訪市 今井愛郎
3 番 安曇野市 寺沢功希
4 番 長野市 山口典久
5 番 松本市 百瀬智之
6 番 佐久市 小山仁志
7 番 千曲市 小川修一
8 番 塩尻市 丸山大輔
9 番 伊那市 酒井 茂
10 番 下伊那郡高森町 吉川彰一
11 番 上田市 堀場秀孝
12 番 南佐久郡小海町 依田明善
13 番 東御市 石和 大
14 番 長野市 埋橋茂人
15 番 松本市 両角友成
16 番 佐久市 藤岡義英
17 番 長野市 髙島陽子
18 番 諏訪郡下諏訪町 浜 章吉
19 番 松本市 中川宏昌
20 番 上田市 清水純子
21 番 須坂市 堀内孝人
22 番 飯田市 小島康晴
23 番 中野市 小林東一郎
24 番 松本市 下沢順一郎
25 番 小諸市 山岸喜昭
26 番 千曲市 荒井武志
27 番 岡谷市 毛利栄子
28 番 長野市 和田明子
29 番 塩尻市 備前光正
30 番 諏訪郡富士見町 小池久長
31 番 長野市 太田昌孝
32 番 大町市 諏訪光昭
33 番 下伊那郡松川町 髙橋岑俊
34 番 茅野市 今井 敦
35 番 中野市 丸山栄一
36 番 長野市 竹内久幸
37 番 上伊那郡箕輪町 小林伸陽
38 番 上田市 高村京子
39 番 北佐久郡立科町 今井正子
40 番 木曽郡上松町 村上 淳
41 番 飯田市 小池 清
42 番 飯山市 宮本衡司
43 番 東筑摩郡朝日町 清沢英男
44 番 上伊那郡辰野町 垣内基良
45 番 長野市 鈴木 清
46 番 長野市 西沢正隆
47 番 長野市 風間辰一
48 番 駒ヶ根市 佐々木祥二
49 番 伊那市 向山公人
50 番 長野市 高橋 宏
51 番 北安曇郡池田町 宮澤敏文
52 番 上田市 平野成基
53 番 松本市 本郷一彦
54 番 須坂市 村石正郎
55 番 松本市 萩原 清
56 番 上水内郡信濃町 服部宏昭
57 番 安曇野市 望月雄内
58 番 飯田市 古田芙士
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出席議員(58名)
1 番 花岡賢一 27 番 毛利栄子
2 番 今井愛郎 28 番 和田明子
3 番 寺沢功希 29 番 備前光正
4 番 山口典久 30 番 小池久長
5 番 百瀬智之 31 番 太田昌孝
6 番 小山仁志 32 番 諏訪光昭
7 番 小川修一 33 番 髙橋岑俊
8 番 丸山大輔 34 番 今井 敦
9 番 酒井 茂 35 番 丸山栄一
10 番 吉川彰一 36 番 竹内久幸
11 番 堀場秀孝 37 番 小林伸陽
12 番 依田明善 38 番 高村京子
13 番 石和 大 39 番 今井正子
14 番 埋橋茂人 40 番 村上 淳
15 番 両角友成 41 番 小池 清
16 番 藤岡義英 42 番 宮本衡司
17 番 髙島陽子 43 番 清沢英男
18 番 浜 章吉 44 番 垣内基良
19 番 中川宏昌 45 番 鈴木 清
20 番 清水純子 46 番 西沢正隆
21 番 堀内孝人 47 番 風間辰一
22 番 小島康晴 48 番 佐々木祥二
23 番 小林東一郎 49 番 向山公人
24 番 下沢順一郎 50 番 高橋 宏
25 番 山岸喜昭 51 番 宮澤敏文
26 番 荒井武志 52 番 平野成基
53 番 本郷一彦 56 番 服部宏昭
54 番 村石正郎 57 番 望月雄内
55 番 萩原 清 58 番 古田芙士
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説明のため出席した者
知事 阿部守一 林務部長 塩原 豊
副知事 太田 寛 建設部長 奥村康博
副知事 中島恵理 会計管理者兼会
危機管理監兼危 計局長 石田訓教
機管理部長 野池明登 公営企業管理者
企画振興部長 小岩正貴
企業局長事務取扱 小林利弘
総務部長 原山隆一 財政課長 岡地俊季
県立大学設立担 教育委員会委員
当部長 髙田幸生 長 伊藤学司
県民文化部長 青木 弘 教育次長 小林資典
健康福祉部長 小林 透 教育次長 菅沼 尚
環境部長 青柳郁生 警察本部長 尾﨑 徹
産業政策監兼産 警務部長 西口 学
業労働部長 石原秀樹 監査委員 田口敏子
観光部長 吉澤 猛
農政部長 北原富裕
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職務のため出席した事務局職員
事務局長 大日方正明 議事課担当係長 倉石博之
議事課長 小山 聡 総務課担当係長 小山雅史
企画幹兼議事課
課長補佐 坪井俊文
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午後1時開会
○議長(西沢正隆 君)ただいまから第396回県議会を開会いたします。
知事から招集の挨拶があります。
第 57 号 一般国道403
号道路改築工事(新矢越トンネル)変更請負契約の締結について
第 58 号 一般国道406
号道路改築工事(西組バイパス2工区)変更請負契約の締結について
第 59 号
主要地方道飯田富山佐久間線道路改築工事(温田工区)変更委託契約の締結について
第 60 号 主要
地方道上高地公園線道路改築工事(上高地トンネル)変更請負契約の締結について
第 61 号 道路事業施行に伴う市町村の負担について
第 62 号
北陸新幹線建設事業の県負担金に対する市の負担について
第 63 号 急
傾斜地崩壊対策事業施行に伴う市町村の負担について
第 64 号
都市計画事業施行に伴う市町村の負担について
第 65 号
須坂創成高校管理商業科棟ほか
建築工事請負契約の締結について
報第1号 交通事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第2号 交通事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第3号 捜査中の事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第4号 交通事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第5号 交通事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第6号 交通事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第7号 道路上の事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第8号 道路上の事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第9号 道路上の事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第10号 河川隣接地の事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第11号 急
傾斜地崩壊危険区域における事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第12号 訴えの提起の専決処分報告
報第13号 訴えの提起の専決処分報告
〔議案等の部「1 議案 (1)知事提出議案」参照〕
○議長(西沢正隆 君)以上であります。
次に、お手元に配付いたしましたとおり、地方自治法第122条及び地方公営企業法第25条の規定に基づき知事から予算説明書の提出がありましたので、報告いたします。朗読は省略いたします。
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△知事提出議案
○議長(西沢正隆 君)ただいま報告いたしました知事提出議案を一括して議題といたします。
提出議案の説明を求めます。
最初に、阿部守一知事。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)ただいま提出いたしました平成28年度当初予算案を初めとする議案の説明に先立ち、新年度の県政運営に向けての所信などについて申し述べさせていただきます。
初めに、大北森林組合の補助金不適正受給事案に係る職員の懲戒処分等について申し上げます。
県では、これまで、有識者による検証委員会の最終報告も踏まえ、県職員の不適正な事務処理について徹底的な調査、検証を行ってまいりました。今回の事案は、大北森林組合が元専務理事のもと、極めて多数の不適正申請を長期にわたり主体的、能動的に行ってきたものですが、地方事務所職員の行き過ぎた助言や現地調査の未実施など、県側の事務執行にも大きな問題がありました。こうした認識のもと、昨年12月、今回の事案にかかわった職員に対して厳正に懲戒処分等を行ったところでありますが、私自身につきましても、県政の責任者である知事として責任を明らかにするため、給料を3カ月間、10%減額する条例案を今定例会に提出させていただきました。
今回の事案は、県政への信頼を著しく損なう、あってはならない極めて遺憾なことであり、県議会の皆様、県民の皆様に深くおわびを申し上げます。今回のことを教訓にして、今後二度とこうした不祥事が起こることのないよう、再発防止に向けた取り組みを徹底的に進め、県民の皆様からの信頼回復に努めてまいります。
県政運営に当たりましては、引き続き、県民の皆様との共感と対話の県政を基本とし、来年度においては、信州創生とコンプライアンスの推進、この二つに全力を傾注してまいります。
急激な人口減少に歯どめをかけ、人口減少下にあっても本県の活力を維持向上させるための信州創生を、「人口定着・確かな
暮らし実現総合戦略~信州創生戦略~」に基づき、県民の皆様の御協力をいただきながら、オール信州で積極的に推進します。また、行政経営理念に掲げるビジョンである「県民に信頼され、期待に応えられる県行政」の実現に向け、職員の意識や組織風土の改革に不退転の決意で取り組みます。
平成28年度の当初予算案におきましては、信州創生の新展開として、「個人の能力を活かす
郷学郷就県づくり」、「産業力で未来を拓く共
創躍動県づくり」、「住んでよし訪れてよしの
交流観光県づくり」の三つの観点から関連施策をパッケージ化して政策の方向性を明確にするとともに、新規拡充施策も数多く予算化いたしました。
先人たちの努力により物質的な豊かさがある程度達成された我が国にあっては、これまで以上に心の豊かさの重要性が増しています。そのため、一人一人の希望する生き方を応援し、人生を楽しみ生きがいを持つことができる地域社会をつくることが重要であり、こうした環境こそが人々を引きつける磁場となって人口の定着を図ることができると考えます。
そこで、来年度当初予算案においては、「
郷学郷就県づくり」というキーワードのもと、教育、人づくりと、就労促進のための政策を強力に推進し、「信州で学ぼう」、「信州で働こう」とのキャッチフレーズのもと、県内の学校や企業等への県内外からの進学、就職を促してまいります。
重要な視点は多様性です。成熟社会を迎え個人の価値観が多様化する中で、画一的な教育や就労形態では、一人一人のニーズや希望に応えることはできません。多様な学びと働きの場が存在し、誰もがその持てる能力を伸ばし、生かすことができる長野県を目指した取り組みを本格的に開始します。
こうした観点で、県内大学の魅力向上支援などを行う
信州高等教育支援センターの設置や、海外体験義務づけなどの特色を有する新県立大学の創設などにより、さらなる高等教育の振興を目指します。信州の豊かな自然環境を生かした幼児教育の充実、自立支援が必要な子供たちへの支援の拡充、個性を伸ばす教育のモデル研究など、多様な学びの場の創出を支援します。経済的に恵まれない子供たちのための給付型奨学金の創設や科学技術人材の育成などを通じて、子供たちの持つ多様な可能性が開花することを応援します。
南信工科短期大学校の開校、職業教育やICT教育の充実などにより、地域や世界に貢献できる多様な人材を育成します。
また、医療、福祉やものづくり産業、農林業や
地域づくり人材等、信州の暮らしを支えるさまざまな人材の確保に積極的に取り組むとともに、多様な働き方の推進による一人多役や人生二毛作社会の推進、若者の安定就労や自立の支援、障害者や子育て期の女性の就労支援、就労確保と一体となった人材の移住促進などを図ってまいります。
人口減少下において、地域の活力を維持し就労の場を確保するためには、県内産業が元気でなければなりません。しかし、人口が減少し、多くの産業分野で国内市場が縮小を余儀なくされる局面にあっては、これまでの産業政策の単なる延長線上に活路を見出すことは困難です。そのため、これまで本県が培ってきた産業の底力を生かし、産業の
イノベーション創出と、足腰の強い地域経済をつくるための地消地産の推進の二つの観点で産業政策を強力に推進し、県内産業の活力を増進してまいります。そのためには、企業間、異業種間の連携はもとより、産学官の連携、さらには消費者と生産者の対話と連携といった共創が極めて重要であることから、「共
創躍動県づくり」として政策をパッケージ化しました。
イノベーションとは、オーストリアの
経済学者シュンペーターによって初めて定義されたもので、創造的活動による新製品開発、新生産方法の導入、新マーケットの開拓などが典型的なものであり、人口減少下における経済発展には不可欠な概念です。さまざまなイノベーションにより信州産業が一層発展することができるよう、航空、宇宙や健康、医療など地球規模での成長が期待される産業分野への県内企業の新たな展開や、農林業を含む幅広い産業分野における生産革新、技術革新や海外展開を、人材面、資金面、研究開発面で積極的に促進してまいります。また、創業支援資金のさらなる利率引き下げや県独自の税制優遇措置などにより、創業や企業立地を強力に推進するほか、日本酒、ワインや伝統的工芸品など、長野県ならではの特色ある産業を重点的に支援してまいります。
経済がグローバル化する中にあって、安定した社会を築くためには、足腰の強い地域経済が重要です。そのため、県内で生産されるモノを県内で消費する地産地消に加えて、県内で消費されるモノを県内で産出されるものに置きかえる地消地産の取り組みを推進し、地域内経済循環を促進します。例えば、観光客が消費する県外産の魚を、コイやワカサギなど県内で従来産出されてきた魚に置きかえることに加え、信州サーモンや信州大王イワナのように積極的に新品種を開発して置きかえていくことも地消地産が意図するところです。
県産農畜産物や加工食品の地消地産の拡大や、木材資源の循環利用の仕組みづくりを推進するとともに、自然エネルギーの普及拡大等により、
エネルギー自立地域の確立を目指してまいります。また、県民の皆様が県産品を積極的に購入、活用しようという機運の醸成とそのための仕組みづくりを進めるため、「
しあわせバイ信州運動」を推進するほか、県としても率先して県産品の利用を図ってまいります。
昨年の新幹線金沢延伸は、東北信地域を中心に長野県に新たな交流を生み出しました。新幹線の金沢以西への延伸、
リニア中央新幹線の工事着工、
中部横断自動車道や三遠南信自動車道の整備促進など、長野県は全国の中でもとりわけ高速交通体系の飛躍的な充実が見込まれる地域です。
また、ことしの長野県は、大勢の皆様を全国はもとより世界からお迎えする行事がめじろ押しです。NHK大河ドラマ「真田丸」の放送が既に始まり、この春には、飯田お練りまつりや諏訪大社御柱祭、天皇・皇后両陛下の御臨席を賜る全国植樹祭、国民の祝日「山の日」のスタートにあわせて行われる名誉ある第1回「山の日」記念全国大会、主要先進国の大臣が集うG7交通大臣会合など、大きなイベントが次々に開催され、来年にはJR各社と共同で行うデスティネーションキャンペーンも控えています。こうした好機を県民の皆様の暮らしの充実や観光のさらなる振興に生かしていくため、住んでよし訪れてよしの
交流観光県づくりを推進します。
高速交通ネットワークを暮らしの充実や交流の拡大につなげるため、それぞれの事業の一層の促進を図るほか、県民全体の財産としての信州まつもと空港の活性化や、県内における円滑な移動を確保するための関連道路の整備、2次交通の充実などを進めます。また、コンパクトシティーや小さな拠点づくりといったまちづくりと地域交通の確保とを一体的に推進することにより、持続可能な暮らしの基盤をつくるとともに、ICTの活用や周遊観光ルートの開発などにより、観光振興にもつなげてまいります。
長野県は国内有数の観光県です。観光庁統計によると、一昨年の長野県の宿泊者数は延べ1,790万人であり、ビジネス客の存在が多いと思われる首都圏及び大阪府を除くと、北海道、静岡県、沖縄県に次いで第4位となります。また、海外からのインバウンドの宿泊者数も着実に増加し、昨年11月までの時点で前年同期比45%増の延べ87万人となっています。美しい自然環境や、歴史、文化に恵まれた本県は、県内どこをとっても観光地であると言っても決して過言ではなく、観光の振興による県全体の活力向上が大変重要です。
そのため、観光行政の質的な大転換を行い、全国、そして世界から大勢のお客様をお迎えし、御満足いただける観光大県づくりに取り組みます。具体的には、県及び各地域の観光戦略を担う組織としてのDMOの設立支援や、庁内一丸となって観光戦略を推進するための長野県観光戦略推進本部(仮称)の設置、統括ディレクターの起用による地域ブランド力の強化、SNSの活用等によるプロモーション手法の抜本的見直しなどを進めます。また、観光地域づくりを担うリーダーの育成や、登山道整備を初めとする観光客の受け入れ環境整備等による世界水準の山岳高原観光地づくりを推進するほか、海外における長野県の認知度アップや事業者と一体となったプロモーション活動などにより、外国人旅行者の倍増を目指します。
このたびの大北森林組合の問題を深刻に受けとめ、本年をコンプライアンス元年として、県庁全体で意識改革や組織風土の改革に取り組んでまいります。
コンプライアンスとは、単なる法令遵守という受け身的な対応にとどまらず、社会の環境変化に敏感に反応し、県民の皆様の期待に応えるため、必要とあらば法令等のルールを変更するための行動を起こしていくなど、主体的、能動的なものでなければなりません。そのため、上意下達ではなく、職員同士の討議や対話を通じて、私たちは何を大事にし、どう行動するべきかという行動規範を組織全体で共有するなど丁寧なプロセスで取り組みを進めてまいります。
コンプライアンスの推進に当たっては、まずは今回の契機となった林務部の徹底的な再生から始めます。昨年策定した林務部コンプライアンス推進行動計画に基づき、人と組織づくり、事務事業の仕組みの構築などにしっかりと取り組んでまいります。これまで、私も出席した林務行政再生車座集会、職員同士で再発防止策を検討するワークショップなど、既に具体的な取り組みを始めました。来年度には、コンプライアンス推進・フォローアップ委員会を林務部改革推進委員会(仮称)に拡充改組するとともに、林務部内に林業技術職以外の職員を増員して外の風を吹き込むなど、改革を着実に進めてまいります。
なお、大北森林組合に対する補助金の返還請求につきましては、これまで、法令に基づき金額を精査した上で4回にわたって行ってきております。今後、組合みずからが徹底した改革を行った上で計画的な返還を行うよう求めてまいります。一方で、国庫補助金の国への返還については、できるだけ早期に金額を確定できるよう、現在、国と調整しているところです。補助金返還等の対応に当たりましては、今後とも法令に基づき適切な対応を行うとともに、関係者に対する損害賠償請求の可能性を検討するなど、県としての負担が最小となるよう引き続き努力してまいります。
県組織全体につきましては、今月取りまとめたコンプライアンス推進取組方針に基づき、意識改革、組織風土改革、しごと改革の三つの改革を一体的に推進してまいります。
まず、意識改革については、職員一人一人が目的をしっかりと意識すること、自分の意見を明確にすること、タイミングを逸することがないよう時間軸を意識すること、この三つの点を共有した上で改革の取り組みを速やかに進めてまいります。コンプライアンス委員会を部局ごとに設置するとともに、職員意識調査を継続的に実施し、PDCAサイクルによる改善体制を確立してまいります。
組織風土改革については、風通しのよいオープンな職場づくりのため、コミュニケーション能力向上のための研修を導入するほか、任期付職員など外部人材の積極的活用を行います。また、不適正な事案を未然に防ぐ取り組みとして、コンプライアンス推進参与による相談窓口などを整備してまいります。
しごと改革については、効率的な働き方を推進するとともに、社会の要請に的確に応えられるよう業務上のルールなどを不断に見直していくことが必要です。このため、全庁一斉で業務上のルールを見直すための棚卸し日を設けるとともに、テレビ会議やサテライトオフィスなどICTを積極的に活用し、恒常的な超過勤務の削減や業務の徹底した効率化を進めてまいります。
これまで、林務部職員との車座集会や現地機関の見直し検討の中で、私や副知事も職員と率直な意見交換を行ってまいりました。多くの職員が仕事に対する前向きな問題意識を持ってくれていることをとても心強く感じています。こうした職員の声を私や副知事を初めとする管理監督職員がしっかりと受けとめ、職員一丸となってコンプライアンス推進のための取り組みを着実に実施してまいります。
昨年の経済情勢を顧みますと、原油安や円安による輸出関連企業の業績改善などもあり、国内、県内とも緩やかな回復基調が続きました。一方で、中国など新興国経済の減速の影響などから、生産が横ばいの動きを示しております。年明け後は、株価下落、円高、マイナス金利導入など経済情勢が大きく変動していることから、引き続き先行き等を十分注視してまいります。
先月、希望を生み出す強い経済実現に向けた緊急対応策に基づき、地方創生やTPP関連施策などを盛り込んだ国の補正予算が成立しました。
今定例会に提出した補正予算案は、国の補正予算も最大限活用し、平成28年度当初予算案と一体で編成したところであり、農業を初めとする産業振興など、県内経済の活性化に資する事業や地方創生加速化のための取り組みを進めてまいります。
TPP協定は、本県の農林業のみならず農山村の暮らしに大きな影響を及ぼしかねない重要な問題です。そのため、関係者の不安や懸念に応えるべく、今月8日、「農林業への影響の緩和」、「攻めの農林業を展開するための体質強化」、「県産農産物等のブランド化と輸出・地消地産の促進」の三つの視点を基本としたTPP協定に係る農林業分野対応方針を取りまとめました。
TPP協定の県内農林業分野への影響について、国が用いた分析手法等を参考に農林産物19品目の試算を行ったところ、本県の平成26年農林業生産額約2,834億円に対し、約24億円の減少が見込まれるとの試算結果となりました。主な内訳としては、畜産が約12億円、野菜が約5億9,000万円、果樹が約4億5,000万円となっています。この試算結果はあくまでも国内対策を十分に行うことが前提とされていることから、今回の対応方針に基づき、農林業の生産性の向上、県産農産物等のブランド化や地消地産、輸出を含めた販路開拓などに県として全力で取り組んでまいります。
具体的には、まず品目別の対応として、米、果樹、野菜、畜産、林業の品目別に、生産面、流通面、販売面の対策をそれぞれ強化いたします。比較的影響の大きい畜産については、施設整備のための予算を大幅に増額し、経営規模の拡大等に向けた生産体制の整備をしっかりと支援します。また、本県の主力品目である野菜、果樹については、共同利用施設の再編整備を推進し、効率的な生産・流通体制を構築するとともに、収益性の高い果樹オリジナル品種の生産拡大を図るため、先進モデル産地の育成支援や生産者を対象とした技術講習などに力を入れてまいります。さらに、農業用機械や高性能林業機械の導入を支援し、農林業の生産性向上を図ります。
農業の競争力強化を図るために必要な生産基盤の整備については、国の補正予算を活用し、農地の大区画化や高収益作物への転換を促進する畑地かんがい施設の整備を推進します。また、担い手への農地集積や集約化を進めるため、農地中間管理機構を活用した団体営土地改良事業の県補助率を引き上げます。
流通と販売の強化については、県産農産物等の市場競争力を高めるため、大都市圏でのトップセールスやメディアを活用したPRの展開により、信州プレミアム牛肉やナガノパープルなど県オリジナル品目のブランド化を強力に推進します。また、農産物等輸出額の飛躍的な増加を目指し、新たに海外販路開拓支援ネットワーク会議(仮称)の設置や、食のグローバル展開推進員の配置を行うとともに、海外市場向けの販路開拓支援や販売促進イベントの開催などにより、長寿世界一NAGANOの食を世界に対して積極的に売り込みます。さらに、食材の生産、加工、流通の各分野において、県外産農畜産物にかえて県内産を活用していただくための取り組みを展開するなど、地消地産にも力を入れてまいります。
国の平成28年度予算案は、平成27年度補正予算とあわせて、地方創生の本格展開、保育や介護サービス等の充実に資する施策に重点化が図られています。地方財政への対応については、地方創生の推進に向けたまち・ひと・しごと創生事業費の存続や臨時財政対策債の縮減が図られるなど、一定の評価ができるものではありますが、引き続き、地方分権の推進と地方財政の健全性を確保する観点から、安定的な地方税体系の構築、臨時財政対策債の廃止などを国に求めてまいります。
今定例会に提出いたしました平成28年度当初予算案及びその他の案件について御説明申し上げます。
予算総額は、一般会計8,756億9,178万5,000円、特別会計2,757億4,556万5,000円、企業特別会計156億2,574万1,000円であります。特別会計は公債費特別会計など12会計、企業特別会計は電気事業及び水道事業の2会計であります。
景気の回復傾向や国の地方財政計画等を反映して、法人関係税を中心に県税収入は増加するものの、地方交付税等の減少により主要一般財源全体では約30億円の減少が見込まれます。一方で、高齢者人口の増加などにより社会保障関係費と扶助費が合わせて約29億円増加する見通しにあるなど、引き続き厳しい財政状況が見込まれます。このため、信州創生の新展開に係るものなど真に必要な事業に重点的に財源配分を行い、めり張りのある予算編成を心がけました。
県債については、可能な限り子供たちの世代にツケを回さないという観点から、引き続き発行の抑制に努めました。建設事業債を含む通常債の発行額を、長野県行政・財政改革方針を踏まえて約565億円としたことにより、平成28年度末の通常債残高は前年度比で約305億円減少する見通しです。また、いわゆる赤字地方債である退職手当債などは引き続き発行せず、臨時財政対策債の発行額も約77億円減少することにより、平成28年度末の県債残高全体も前年度比で約127億円減少する見込みです。これまでの財政改革の結果、財政の健全化指標である実質公債費比率は平成28年度には12.3%、財政調整のための基金残高も平成28年度末に約488億円と、それぞれ平成21年度と比較して3.3ポイントの改善、約218億円の増加となる見通しですが、引き続き県債残高の縮減と財政の健全化に努めてまいります。
以下、信州創生の新展開の三つの柱に沿って、具体的な施策について順次御説明申し上げます。
「個人の能力を活かす
郷学郷就県づくり」のうち、「学びの郷信州の創造」については、信州高等教育の充実、多様な学びの場の創出支援、子供の希望を実現できる学びの場の提供、次代を担う人材の育成に取り組んでまいります。
高等教育に関しては、高等教育機関が知の拠点として多様な人材の育成に取り組むことを、これまで以上に積極的に支援してまいります。まず、県内高等教育に対する支援の方向性などを盛り込んだ長野県高等教育振興基本方針を本年度中に取りまとめるとともに、
信州高等教育支援センターを新たに設置して、学生の県内就職促進や学びの場の誘致のための支援を強化します。また、産業界と連携して県内学生の海外インターンシップを助成する制度を創設するなど、学生の県内定着を促してまいります。
新たな県立4年制大学については、平成30年の開学に向け着実に準備を進めています。これまで県内3カ所で高校生や保護者等に向けた大学説明会を開催し、新大学の教育方針などを直接説明するとともに、外国人教員等による英語の模擬授業なども実際に体験してもらいました。今後も、金田一真澄学長予定者を初め教員予定者による高校訪問などを通じて、大学の特徴を広くPRしてまいります。今春には入学者選抜方法などを決定し、来年度には三輪及び後町キャンパスの校舎工事等に着手してまいります。なお、安藤国威理事長予定者には、新大学の産学官連携の取り組みに関し、県内企業等との対話を既に行っていただいているところです。学生やその保護者のみならず、県民や企業等の期待にも応えることができる大学づくりを目指して取り組んでまいります。
本県の豊かな自然環境などを生かし、多様な学びの場の創出を支援してまいります。全国的にも先駆的な取り組みである信州型自然保育「信州やまほいく」については、シンボルマークやPR動画を活用して県内外の子育て世代や教育関係者等への発信を行うほか、自然保育の実地研修を拡充して自然保育の質の向上を図ります。また、私立幼稚園への助成単価を子供1人当たり1万1,000円増額することにより、教員の資質向上や自然保育など多様な学びの創出を支援します。さらに、こうした自然保育や白馬高校国際観光科、県内各地の山村留学など、信州ならではの学びの場や魅力ある子育て環境を全国に向けて発信することにより、移住者の増加にもつなげてまいります。
不登校やひきこもりの子供がふえている中、困難を有する子供、若者への支援を強化します。まず、不登校やひきこもりの子供たちの社会的自立を促すため、自立支援の場を提供しているNPO等への助成制度を創設するとともに、子供や若者の社会的自立支援を行う子ども・若者支援地域協議会を新たに2カ所設置します。発達障害のある児童生徒を含めて、全ての子供、若者が持つ能力を開花させるため、個性を伸ばし、自信や自尊心を育む教育(ギフテッド教育)の研究に着手します。
子供たちが、その希望を実現できる学びの場を充実することも重要です。学力定着のためのPDCAサイクルを再構築することなどにより、子供の学力向上を図ります。また、科学技術人材養成のため、中・高校生を対象とした講座や合宿を新たに実施します。本県の特色を生かして探究的な学習に取り組む信州学については、研究モデル校の取り組みも踏まえ、来年度は全県立高校に導入します。特別支援学校については、自立活動担当教員を来年度もさらに20人増員するとともに、中信地区特別支援学校再編整備計画に基づく教育環境の整備を進め、特別支援教育の一層の充実を図ります。
地域社会や産業等で必要とされる能力を備えた次代を担う人材の育成にも力を入れてまいります。本年4月に開校する長野県
南信工科短期大学校においては、産業界のニーズに対応した高度な技能・技術を習得するための教育・研究を行い、信州のものづくり産業を牽引する人材を育成してまいります。また、ICT事業者が県内で行う短期実践開発型ワークショップの開催支援など、多様な産業分野で活躍できるICT人材の育成を推進します。農業分野においては、果樹経営を始めようとする新規就農者が将来にわたって安定的な経営ができるよう、研修中に行う樹園地の整備に対する助成制度を創設します。
高齢者人口が増加する中で、質の高い医療や介護を安定的に支える人材の重要性が高まっています。このため、看護師の訪問看護などの資質向上研修を新たに行うとともに、介護人材のキャリアパス構築などに取り組みます。
また、「地域に飛び出せ!元気づくり実践塾」を引き続き開催するとともに、全国一の数を誇る公民館を生かした地域力向上のため、専門アドバイザー設置による公民館活動への新たな支援を行います。
「信州ならではの働き方推進」については、信州の暮らしを支える人材の確保、多様な働き方の推進、就労と一体での人材の移住支援に取り組んでまいります。
まず、新規学卒者等の県内就職のための支援を充実します。これまで、銀座NAGANOを活用した企業説明会等の開催、Uターン就職促進のための協定校との連携などにより、県内企業の採用活動を支援してまいりました。来年度は、こうした取り組みに加え、県内企業へのインターンシップに参加する県外学生の交通費等を助成する制度を新たに設けるとともに、企業訪問や採用担当者との意見交換などを盛り込んだ就職準備合宿を開催し、県内企業への就職を一層促進してまいります。
医療分野については、特に喫緊の課題である産科医療の確保に向けて、産科の専門研修医に対する研修資金貸与制度を創設するほか、信州大学で実施する病院助産師の育成研修事業に対する助成を新たに行います。また、若手医師の定着を図るため、医学生や研修医と医師との交流会を新たに開催するとともに、育児中の医師が安心して勤務できるようベビーシッターに要する経費への助成などを行います。福祉分野においては、介護事業者の経営基盤の強化を図るための経営専門家派遣事業を新たに実施するほか、認定介護福祉士の養成研修や、介護施設内保育所の運営に対する助成制度を創設し、介護分野の人材確保・定着を促進します。このほか、保健師や保育士等の人材を共同で確保するための具体的な仕組みづくりについて、市町村と検討を行ってまいります。
若者や女性、障害者、高齢者など県民誰もが生き生きと働き、暮らしを楽しむことができるよう、多様な働き方の推進に努めてまいります。今月4日、国や経済団体、労働団体等と連携して働き方改革・女性活躍推進会議を設置し、一人多役など長野県ならではの多様な働き方の推進や、仕事と子育てが両立できる職場環境づくりに向けた検討を開始いたしました。来年度は、多様な勤務制度を導入、実践する職場いきいきアドバンスカンパニー認証企業の拡大を図るとともに、女性就業支援員を5人から8人に増員し、女性の就職活動をきめ細かく支援してまいります。さらに、人生二毛作社会の実現に向けては、長野県長寿社会開発センターに配置したシニア活動推進コーディネーターを3名から6名に増員し、関係機関との連携体制を強化するほか、生活の中に農業を取り入れた「農ある暮らし」を始めるために必要な農業用機械購入費等の借り入れに係る利子補給制度を創設し、一人多役の実践を支援します。
若い世代の安定就労を支援するため、ジョブカフェ信州における相談員の増員や、東信地域への相談拠点の設置等により、県内全域での就労相談体制を強化します。また、パーソナル・サポート事業の相談拠点となる生活就労支援センターに家計相談支援員を増員し、生活困窮者の生活面での自立支援を充実します。
平成26年度にスタートした農業就労チャレンジ事業により、本年度も前年度実績を上回る37件の農業法人等と障害者との就労のマッチングが成立しております。来年度は、新たに障害者が生産した農産物等の展示販売会を開催するなど、引き続き障害者の農業分野への就労拡大に努めてまいります。
長野県は、移住専門誌の移住したい都道府県ランキングで10年連続第1位、また、ふるさと回帰支援センターの平成27年移住希望地域ランキングでも第1位に返り咲くなど、移住先として全国から注目を集めています。人口の社会増への転換に向けて、新たに楽園信州・移住推進室を設置し、移住者の受け入れ体制を強化します。本年1月には、東京に加え、名古屋、大阪に移住の専任相談員を配置し、都道府県で唯一3大都市圏での相談体制を整えました。来年度は、ふるさと回帰支援センターに長野県専用の移住相談スペースを確保し、相談体制のさらなる強化を図ります。また、ひとり親家庭の移住を促進するため、市町村が行う仕事、住居、子育てなどをセットにした相談会やお試しツアーなどの取り組みを支援するほか、ICT事業者などに対して活動場所等を提供する助成制度を拡充し、多様な人材の移住促進を図るとともに、産業の活性化にもつなげてまいります。
大都市圏に比較的近いという強みを生かした2地域居住の推進も重要です。2地域居住セミナーの開催など情報発信を充実するとともに、週末信州人(仮称)登録制度を創設し、企業等とも連携して2地域居住に係る負担軽減策の検討を行ってまいります。また、市町村が行う2地域居住者向けモデル住宅の建設を支援します。
「産業力で未来を拓く共
創躍動県づくり」のうち、「信州産業の
イノベーション創出」については、次世代産業の育成、企業誘致と創業・起業支援、生産力向上・海外展開支援、日本酒、ワイン及び伝統的工芸品の振興に取り組んでまいります。
次世代産業の育成については、長野県産業イノベーション推進本部を中心として、航空・宇宙、健康・医療などの成長期待分野への展開支援や、ICT産業の集積などに取り組んでまいります。航空・宇宙分野については、アジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区を有する飯田・下伊那地域の企業と他地域の企業とのマッチングを行うコーディネーターを長野県テクノ財団に配置し、航空宇宙産業を全県的に広げてまいります。また、医療機器等の開発支援を担当するコーディネーターを配置し、信州ACEプロジェクト等とも連携して、健康課題を解決するための製品開発を促進します。また、ICT関連企業の立地を促進するため、ICT産業等立地助成金制度の助成要件を緩和します。
日本一創業しやすい長野県の実現に向け、自己負担額が現在でも全国一低い創業向け資金の利率をさらに引き下げ1.1%とするとともに、創業間もない中小企業者等の経営安定のための専門家派遣事業を拡充するほか、シニア専門指導員を9名増員し、中小企業の経営下支えを図ります。
ものづくり産業のさらなる生産性の向上を図るため、東京大学と連携して、工場等において品質向上やコスト削減などのカイゼン活動を行うための指導者を育成してまいります。
海外展開の強化については、県内中小企業等の新市場開拓、販路拡大を図るため、成長が見込まれるASEAN諸国や中南米における展示商談会への出展を支援します。また、本年7月に松本市等で開催する国際フラワーフォーラム2016を契機とし、県産花卉の輸出拡大や新たな需要創出にも取り組みます。
県内のワイン用ブドウ生産量は、平成24年度5,445トンで全国第1位、日本酒については平成26年度の県内酒蔵数は81で全国第2位と、日本酒・ワイン産業は全国的に見て重要な位置を占めています。また、日本酒、ワインは地域内の経済循環を促す有力な資源でもあり、代表的な6次産業でもあります。このため、県議会において制定された信州の地酒普及促進・
乾杯条例も踏まえ、産業労働部に日本酒・ワイン振興室を設置して、信州の地酒の一層の振興を図ることといたしました。県内酒蔵等が行う若者向け新商品の開発支援や、ワイナリーや酒蔵をめぐるバスツアーの実施などに取り組みます。また、より品質の高いワインを生産するため、ブドウの成分分析機器の導入などを支援し、信州ワインバレー構想をさらに推進します。
伝統的工芸品については、魅力発信や技術の継承のためのこれまでの支援に加え、来年度は新たに産地組合等が行う新商品開発や販路開拓などの取り組みを支援するとともに、産地職人との交流セミナーの開催や産地でのインターンシップの実施、若手就業者の育成費用に対する助成制度の創設などにより、後継者の育成確保に関する支援を強化してまいります。
地消地産の推進については、地消地産の展開に向けた具体的な仕組みづくり、信州農畜産物の活用拡大、信州の木自給圏の構築、
エネルギー自立地域の確立に取り組んでまいります。
まずは、県民の皆様が県産品を積極的に購入し、御利用いただけるよう、「しあわせ×2(buy)信州運動」を展開します。今後、生産、流通、販売、消費、観光など、各現場の御意見等を踏まえ、具体的な仕組みづくりに着手します。また、県としても今後試行を行った上で、県産品の認定や県産品優先調達制度を創設し、率先して県産品の利用を推進してまいります。
信州農畜産物の地消地産を推進するため、県オリジナル品種の振興協議会が相互に連携する地消地産推進連絡会を設置し、実需者が求める食材の生産振興に努めるとともに、ホテルや旅館等のニーズに対応したマッチング商談会やオリジナル食材を活用したメニュー提案会などを開催いたします。また、信州ジビエや水産試験場で開発した信州大王イワナなど、信州ならではの特色のある食の振興にも力を入れてまいります。
また、信州の木材の地消地産を進め、持続可能な林業・木材の自給圏を構築するためには、県内の建築物、エネルギーなどに県産材を積極的に活用していくための体制整備が必要です。このため、流域ごとの住宅メーカー、工務店、流通、製材加工、木材生産関係者が連携し、木材の循環利用の仕組みづくりを進め、採算性の向上につなげてまいります。
これまでも自然エネルギーの普及拡大や省エネルギーの促進に鋭意取り組んでまいりましたが、地消地産の観点から
エネルギー自立地域の確立に向けた取り組みをさらに強化します。具体的には、地域コミュニティーによるエネルギーを活用した地域づくり計画の策定を支援するとともに、小水力発電など地域主導の自然エネルギービジネスを拡大するため、地域における中核的な担い手の育成に取り組みます。
「住んでよし訪れてよしの
交流観光県づくり」のうち、「観光大県づくり」については、観光行政を大きく転換するとともに、世界水準の山岳高原観光地づくりの推進、大規模イベント等を生かした誘客促進、インバウンド施策の強化に取り組んでまいります。
観光行政の転換については、観光を軸として地域経営を行うための体制を整備いたします。まず、信州・長野県観光協会をDMOに移行させ、専門人材によるマーケティングをもとにして観光業の稼ぐ力を高めるとともに、効果的な旅行商品造成やプロモーションを実施してまいります。また、有識者等も交えた長野県観光戦略推進本部(仮称)を庁内に設置し、観光施策を総合的に推進する体制を整えます。さらに、戦略的なブランド展開を図るための統括ディレクターを起用し、信州ブランドの再構築と発信を行ってまいります。
世界水準の山岳高原観光地づくりに関しては、山の安全対策に特に力を入れて取り組んでまいります。長野県登山安全条例に基づき、指定登山道の選定、登山口の看板設置や登山計画書の提出のためのシステム整備などを行います。山岳環境の整備については、本年度から全国に先駆け、五つの山域で行っている山岳環境整備パイロット事業に、新たに二つの山域を加えて登山道の整備などを進めてまいります。さらに、長野県アウトドア推進協議会が実施するリスクマネジメント研修や認証登録制度の導入を支援し、アウトドア・アクティビティーの普及とあわせて安全対策にも取り組みます。
大河ドラマ「真田丸」や第67回全国植樹祭、第1回「山の日」記念全国大会などさまざまなイベント等を生かし、新たな旅行商品の造成や観光資源の発信を行ってまいります。特に、来年夏には「世界級リゾートへ、ようこそ。山の信州」をキャッチフレーズとするデスティネーションキャンペーンが実施されることから、本県の山岳高原の魅力を前面に出して取り組んでまいります。また、北陸圏や関西圏からの誘客拡大を図るため、北陸最大の旅イベントMRO旅フェスタに出展するなど、引き続き新幹線沿線各県と連携した観光PRを行ってまいります。
本県観光の課題の一つは2次交通の充実です。そのため、県内鉄道駅を起点として観光地を周遊するバスの運行を新たに支援するとともに、長野県公式観光サイトに2次交通情報やルート検索などの観光交通情報案内機能を追加し、信州の旅の利便性向上を図ることといたしました。このほか、来るラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックを本県の活性化につなげるために、スポーツコミッションを設立して、国際的なスポーツ大会やスポーツ合宿の誘致に力を入れてまいります。
日本への外国人旅行者が大幅に増加している中、インバウンド対応も急務です。世界に誇れる健康長寿や山岳高原をテーマとした滞在型ツアーの造成支援や、冬季オリンピック・パラリンピックの開催を控えた韓国や中国をターゲットとしたスキーツアーの誘致などを推進します。また、訪日旅行者の増加が見込まれる東南アジアに関しても、旅行会社と連携したタイアップ広告や、旅行商品の造成などに積極的に取り組んでまいります。
「交通ネットワークを活かした県土づくり」については、高速交通網の整備を一層促進するとともに、2次交通の整備など円滑な移動環境の形成や暮らしを維持するための地域の足の確保に取り組んでまいります。
リニア中央新幹線については、県内初の工事となる南アルプストンネル長野工区の施工業者が決まるなど、建設に向けた動きが加速してまいりました。JR東海に対しては、引き続き、昨年4月に締結した基本合意書等に基づき、地元へのきめ細かな説明やさまざまな意見に対する誠実な対応を求めてまいります。
リニア中央新幹線の整備効果を、伊那谷のみならず広く県内全体に及ぼすことが県の役割です。先週開催した伊那谷自治体会議においてリニアバレー構想を決定いたしましたが、引き続き地元市町村や経済界の皆様と方向性を共有しながら、この構想の実現やリニア関連道路の整備に全力で取り組んでまいります。
中部横断や中部縦貫、三遠南信自動車道など本県にとって重要な高規格幹線道路の整備促進にも引き続き取り組みます。地域高規格道路松本糸魚川連絡道路については、公表した計画案について地域の御理解を得ながら早期事業化を目指して調査を実施します。また、本州中央部広域交流圏構想の実現に向け、昨年12月に取りまとめた交流圏の結節機能強化に向けた方針に基づき、中信地域と東信地域を結ぶ国道143号青木峠トンネルの整備に向けた調査の実施や、有料道路の割引時間帯の拡大などを進めてまいります。
信州まつもと空港については、本県の交通体系の中でより大きな役割を果たすことができるよう、本年度中に取りまとめ予定の国際線を含む新規就航可能路線や空港施設のあり方などに関する調査結果を踏まえ、路線拡充と空港機能強化に向けた基本方針を策定し、具体的な取り組みに着手してまいります。
まちづくりと地域交通の確保の両面から、人口減少社会においても持続可能な暮らしの基盤づくりに取り組んでまいります。まず、空き家など遊休不動産の再生等を促進するためのリノベーションセミナーの開催や、公共交通を生かした駅周辺の活性化の検討などにより、コンパクトシティーの実現を図るとともに、生活に必要なサービスを集約し、地域内外の交流の場となる小さな拠点づくりを市町村と連携して進めます。また、定住自立圏など国の広域連携の支援制度が適用されない地域において、連携・共同の取り組みを進める市町村を支援します。
鉄道事業者が行う安全性向上のための設備整備や、赤字が見込まれる乗り合いバス路線の運行経費等を引き続き支援するとともに、県有民営方式によるバス車両の導入を進め、地域公共交通の充実に努めてまいります。また、地域交通の新たな仕組みづくりに取り組む市町村に対する交通アドバイザーの派遣や、実証運行等に要する経費の助成により、地域の足の確保を支援します。
次に、今後取り組みを加速化する重点施策のうち、先ほど申し上げたTPP関連対策を除く五つの政策パッケージについて申し上げます。
子供の貧困対策について申し上げます。
全国の子供の貧困率は、平成24年度には16.3%と年々上昇傾向にありますが、長野県においても、約1割の子供たちが生活保護世帯等を対象とした就学援助制度の対象となっており、その割合は年々増加しています。また、昨年実施したひとり親家庭実態調査や子供たちへのアンケートでは、「家にお金がないので、進学を諦めなくてはいけないかもしれず不安」、「塾に行きたいがお金がないため行けない」、「子供が常に夜まで一人でいるので非常に不安」、「子供は進学を希望していたが、就職に変更してもらった。申しわけない」など、子供やその保護者からの切実な声が寄せられています。
子供の貧困は看過できない問題であり、いわゆる貧困の連鎖は断ち切らなければなりません。県として、あらゆる手段を講じて子供の貧困対策に取り組んでまいります。
まず、教育費負担の軽減、家庭養育の支援など取り組むべき施策をまとめた長野県子どもの貧困対策推進計画を本年度中に策定するとともに、行政、経済団体、子供支援団体などで構成する長野県将来世代応援県民会議(仮称)を設置して、長野県の未来を担う子供たちが夢と希望を持って暮らすことができるよう、オール信州で子供や家庭を支える運動を展開してまいります。
具体的な取り組みとしては、企業局が発電により得た利益の一部等を原資として、長野県こどもの未来支援基金を創設するとともに、経済的に困難を抱える子供たちの大学進学を支援する給付型奨学金制度や、就職、大学への進学等により児童養護施設を退所した子供たちの学費や生活費に対する支援制度を創設します。さらに、子供たちの学校生活に影響を及ぼす貧困などの家庭環境の改善を図るため、スクールソーシャルワーカーを8人から18人に大幅に増員いたします。
家庭養育の支援については、貧困家庭の子供たちに安価で安定的に食事を提供できる仕組みを構築するとともに、経済的な理由等で学習機会が制約されている子供たちに対してボランティアによる学習支援を行うなど、家庭機能を補完する子供の居場所づくりを進めます。このほか、児童相談所における高度で専門的な事案に対応するため、児童相談所広域支援センターを設置して相談・支援体制を強化します。
子供を性被害から守るための取り組みのうち、条例制定の是非に関しては、昨年10月以降、条例モデルをもとに、県民の皆様との意見交換を精力的に行ってまいりました。これまで、県民運動を担ってきた27団体のほか、子供の相談支援を行う団体など26団体と個別に意見交換を行うとともに、保護者や若者を含む延べ447人の県民の皆様との県政タウンミーティングなどを行ってまいりました。
団体や県民の皆様の御意見は多岐にわたりましたが、総括いたしますと、条例制定そのものに関しては一部否定的な御意見もあるものの、肯定的な御意見が大半でありました。また、条例の内容に関しては、性教育の充実と県民運動の活性化が必要であるとの御意見が多数出されたところです。
一方、威迫等による性行為等を処罰規定を設けて規制することについては、一部、「冤罪が生じる可能性がある」、「罰則を設けても性犯罪抑止、再犯防止につながらない」との慎重・反対意見がありましたが、「処罰規定が限定され過ぎている」、「他都道府県と同様の包括的、網羅的な規制項目がある青少年保護育成条例が必要」など、むしろ条例モデルより踏み込んだ規制を設ける必要があるとの御意見も少なからずありました。
こうした県民の皆様の御意見や、これまでの子どもを性被害等から守る専門委員会の検討経緯などを踏まえ、県として、今月1日に、子どもを性被害から守るための条例に関する基本的な方針を決定し、条例モデルを基本とした子どもを性被害から守るための条例を制定することが必要であると判断いたしました。
これは、県内における子供の性被害が増加し看過できない状況にあること、子供の性被害は一過性のものではなく長期間にわたって心身に重大な影響を及ぼすおそれがあること、県民運動として青少年健全育成活動を行ってきた関係者自身が、県民運動のみで子供たちを守ることの限界を指摘し、県民運動と車の両輪としての条例制定を要望されていることなども踏まえ、総合的に判断したものであります。
また、法律の専門家によって整理された条例モデルにおいては、性行為等に関する規制に関し、構成要件の明確化や、立法事実の確認を踏まえた処罰対象の限定化が図られていること、子供に対する威迫等による性行為等の規制により、当該行為を大人として行ってはいけないものであることを県民全体の共通認識とする必要があることなどから、一部罰則つきの規制についても条例で規定することが必要であると判断しました。
意見交換の中で、多くの団体や県民の皆様から重要であるとの御指摘をいただいた、性教育等の充実や被害者支援、県民運動の活性化といった取り組みについては、これを条例に位置づけることで、安定的、継続的に推進していくための担保とすることができ、また、条例の内容を子供を性被害から守ることに特化することにより、これまで青少年の健全育成を県民運動中心に取り組んできた本県の伝統と特性を生かした新たな仕組みをつくることができると考えます。
今定例会において、条例についての御議論をさらに深めていただくことが肝要と考え、条例の骨子案を取りまとめさせていただきました。子供を性被害から守るために何が必要であるのか、御審議いただきますようお願い申し上げます。
一方、子供を性被害から守るための取り組みのうち、条例以外の予防の取り組み、被害者支援の取り組み及び県民運動の活性化への支援の取り組みについては、本年度から既に具体的な取り組みに着手いたしておりますが、来年度も県民の皆様から出された御意見等も踏まえ、施策のさらなる充実を図ってまいります。
具体的には、予防の取り組みとして、学校における人権教育及び性教育の充実を図るため、教員等に対する研修や指導資料の提供を行うほか、県民運動として、子供だけではなく保護者など大人に対する人権や性についての学びの機会の提供も行ってまいります。加えて、長野県青少年インターネット適正利用推進協議会が行うネットトラブルに関する相談窓口の開設を支援するなど、性被害の予防に向けた取り組みを強化します。
被害者支援については、被害者の心身の負担を軽減し、その健康の回復を図るためのワンストップ支援センターの設置に向けて関係団体と協議を行ってまいりました。被害者の気持ちに寄り添いながら必要な支援を提供し、また、緊急避妊等の救急医療に確実につなぐことができるよう、本年7月の開設を目指して準備を進めてまいります。
また、新たに青少年育成コーディネーターを配置して県民運動の事務局体制充実を図るとともに、青少年サポーターの活動支援を行うなど、県民全体で青少年を支えるための体制を強化してまいります。
健康長寿は長野県の誇りです。健康寿命を延伸させ、健康長寿県長野を確固たるものとするべく、信州ACEプロジェクトのさらなる推進を図ります。また、超高齢社会の到来を見据え、増加する医療需要に対応し、県民の皆様が安心して良質な医療サービスを受けられる医療提供体制をつくるため、地域医療構想の策定を進め、来年度中に取りまとめてまいります。
信州ACEプロジェクトについては、関係機関との連携を強化し、県民総ぐるみの運動となるようさらなる展開を図ります。まず、従業員の健診受診や運動促進に取り組むモデル企業を支援するとともに、従業員の健康の維持増進を企業価値の向上につなげる健康経営を経営者団体や保険者等とともに推進します。また、総合型地域スポーツクラブと連携した市町村や企業に対する運動アドバイザーの派遣や、地消地産にも配慮したACEメニューの提供店舗の拡大などにより、健康地域づくりを進めます。小中学校における栄養教諭の増員による食育推進や、長野県歯科保健推進センター設置による歯科保健施策の総合的な展開も進めてまいります。
地域医療についても一層の充実を図ってまいります。がん、心疾患、脳血管疾患の3大死因に対する診療機能を向上させるため、地域医療介護総合確保基金等を活用して、高度・専門医療機関の施設、医療機器の整備を支援いたします。また、住みなれた地域で必要な医療・介護サービスを受けられるよう、リハビリ病床の拡充などの施設整備や、在宅医療への移行調整に取り組むための専任職員配置を行う病院を支援します。地域包括ケア体制の構築については、本年度、全ての市町村が地域ケア会議を設置したところですが、引き続き理学療法士や弁護士といった専門職の派遣支援を行うことなどにより、会議の定着化を図ります。
文化芸術の振興については、県内各地域で育まれてきた伝統文化を継承し、その魅力をさらに高めるとともに、多くの県民の皆様がさまざまな文化芸術に親しむことや自己表現することができる環境を整備し、心の豊かさを実感できる社会を実現してまいります。
本年度は、文化振興元年という位置づけのもと、新たに造成した長野県文化振興基金を活用し、「アーティスト・イン・レジデンスin信州モデル事業」などに着手するとともに、昨日グラミー賞受賞という大変うれしいニュースが飛び込んできた小澤征爾氏率いるセイジ・オザワ松本フェスティバルに対する支援の強化など、従来からの文化事業の拡充を行いました。
来年度は、文化振興基金の積み立てを決算剰余金の1%から3%に引き上げ、長野県全体の文化芸術振興のための支援を一層充実してまいります。まず、長野県文化振興事業団に、音楽、演劇、美術、プロデュース、各分野の第一人者からなる芸術監督団を設置し、先駆的で魅力ある文化プログラムの企画から公演の開催までを担っていただきます。また、本年度着手した信州ミュージアムネットワークの取り組みとして、夏休み期間中の子供の入館料無料化キャンペーンとあわせて、山をテーマとした共同企画展を開催します。長野県信濃美術館については、新たな美術館の管理運営のあり方などについての御提言を有識者による検討委員会から今後いただき、それを踏まえて基本構想を取りまとめてまいります。
県土強靱化の推進について申し上げます。
一昨年、本県は、大雪、土石流、火山噴火、地震とさまざまな大災害に相次いで見舞われました。県では、これまで、道路等の公共施設の復旧はもとより、住宅の確保や産業の振興、暮らしの再建など被災地域の復興のため全力で取り組んでまいりました。今後とも、御嶽山噴火災害で大きな影響を受けている木曽町や王滝村、神城断層地震で大きな被害が生じた白馬村や小谷村を初め、災害で被災した市町村と連携して、被災された皆様の支援に取り組んでまいります。
こうした災害から得られた教訓も踏まえ、現在取りまとめ中の長野県強靱化計画に基づき、災害が発生しても犠牲者を出さず、被害の最小化により迅速に復旧・復興できる社会の実現を目指してさまざまな取り組みを進めてまいります。
地域防災力の向上については、市町村における災害時住民支え合いマップの策定を支援するとともに、防災指導員による出前講座の充実を図ります。建築物等の耐震化対策については、民間の大規模建築物等の耐震改修を引き続き支援するほか、災害拠点施設となる高等学校のつり天井の落下防止工事などに新たに着手します。土砂災害の防止については、平成28年度中に県内の土砂災害警戒区域の指定を完了させ、警戒避難体制の強化を図ってまいります。
御嶽山噴火災害を教訓とした火山対策については、火山ハザードマップ作成のための助成制度や、火山噴火時に避難施設としての役割を担う山小屋の屋根等を補強する助成制度を創設し、警戒避難体制の整備や登山者への安全対策の強化を図ってまいります。
次に、社会資本の整備、子育て・結婚支援、国際交流の推進などについて申し上げます。
まず、住民生活に身近な社会資本の整備についてであります。
老朽化した高等学校や特別支援学校の校舎等の修繕については、本年度の当初予算と比べて3倍以上となる約9億5,000万円の事業費を確保し、今後3年間で集中的、計画的に事業を行ってまいります。特に、特別支援学校については、修繕に加え、校内の環境整備にも力を入れて取り組みます。
公共事業については、補正予算案に計上した道路や河川、砂防等の防災対策事業なども含め着実に推進してまいります。また、新たに地域の課題解決やビジョンの実現に向けて部局横断で取り組む地域戦略推進型公共事業を実施してまいります。来年度は、諏訪湖を生かしたまちづくりを進めるため、観光振興や健康増進の視点も踏まえ、サイクリングロード等の整備を行うとともに、水質浄化に向けた水辺環境の改善工事などを市町村等とも連携しながら一体的に推進します。
公共工事設計労務単価については、今月から国の改定に合わせて平均4.3%引き上げたところです。また、長野県の契約に関する条例に基づく取り組み方針等を踏まえ、建設工事等に係る委託業務の失格基準価格の算定に用いる率を上限値、下限値とも5%引き上げるなど、引き続き建設関連産業の経営の安定化と労働環境の整備に向けた取り組みを進めてまいります。
次に、子育て・結婚支援についてであります。
子育て支援については、子育てに伴う経済的負担の軽減、子育てと仕事の両立支援、子育ての孤立化の防止及びさまざまな困難を抱える子供や家庭への支援を柱とする長野県子育て支援戦略に基づき、引き続き充実を図ってまいります。
本年度は、第3子以降の子に対する保育料の軽減支援や、子供の医療費助成の対象拡大を行ったほか、新たに設置した長野県子ども支援センターにおいて、いじめや子育ての悩みなど、幅広く子供や保護者等からの相談への対応に当たっているところです。来年度は、新たに子育て支援員研修・認定制度を創設し、ファミリー・サポート・センターや一時預かり保育など、地域におけるきめ細かな子育てを支援いたします。また、保育士養成施設での修学や潜在保育士の再就職を支援するための返還免除型貸付金制度を創設し、保育士の確保を図ります。さらに、信州母子保健推進センターに母子保健推進員を新たに2名配置することにより、市町村の保健師に対する技術支援体制を一層強化します。
結婚支援については、県内の結婚支援ネットワークの拠点となる婚活支援センター(仮称)を新たに設置し、結婚情報の一元化を図り、市町村や企業等と連携して多くの御縁がつながるように取り組んでまいります。
次に、国際交流の推進についてであります。
グローバル化の進展に伴い、地方といえども世界の国々との関係を抜きにさまざまな政策を語ることができない時代となっており、産業の振興、地域の活性化など、本県の発展を図る上で、世界の国々との連携強化がますます重要となっています。こうしたことから、戦後70年という大きな節目である昨年を国際関係再構築年と位置づけ、中国、アメリカ、オーストリア、台湾、韓国など、さまざまな国や地域と学術や文化、経済など多くの分野での交流を一層深化させました。
来年度は、これまでの取り組み成果を生かしながら、海外とのさらなる交流連携を推進するため、庁内に有識者も交えた国際交流戦略推進本部(仮称)を設置するとともに、国際担当部長を新たに配置して部局横断で国際的な業務に対応する体制を強化いたします。
中国については、昨年12月に河北省及び北京市を訪問いたしましたが、河北省の張慶偉省長を初めとする方々との懇談も踏まえ、今後は大学間の学術交流や北京オリンピック・パラリンピック開催を見据えた冬季スポーツ関連の連携、中国からの大学生のインターンシップの受け入れ拡充など、幅広い交流に取り組んでまいります。
アメリカについては、姉妹提携を結んでいるミズーリ州などが参加する米国中西部会などを通じた交流連携を推進するとともに、新たに県内経済団体等とも連携して、北米における次世代産業集積地域等との経済交流の促進を検討してまいります。
オーストリアについては、県内音楽科の高校生18名をウィーンに派遣するなど音楽を通じた交流を推進するほか、林業技術者の招聘など林業分野での実践的な交流、連携を進めます。
台湾については、昨年、彰化県と締結した覚書に基づき、観光や訪日教育旅行の取り組みを積極的に進めてまいります。
韓国については、昨年の訪問を契機に、冬季スポーツや観光面での交流促進を図るほか、成長著しい東南アジアについては、インバウンド誘致、農産物や加工品の販路開拓などに力を入れてまいります。
次に、スポーツの振興についてであります。
本年度は、上松町出身の御嶽海関の幕内昇進等の活躍、大町市出身の奥原希望選手のバドミントン世界大会における日本人初の優勝、冬季国体のスケート競技会における男女総合及び女子総合優勝など、私たち長野県民が元気になるうれしいニュースがたくさんありました。今後も、スポーツを通じて長野県を元気にするべく、スポーツの振興に取り組んでまいります。
本年8月には全国中学校体育大会の陸上競技と剣道の競技大会が、そして、平成29年1月から2月には9年ぶりの冬季国体であるながの銀嶺国体が本県で開催されます。大会競技施設の整備や選手の育成強化などに取り組み、万全の準備を進めてまいります。
県立武道館の設置に向けては、昨年、有識者で構成する県立武道館基本構想検討会議から、武道館の望ましい機能、規模を取りまとめた報告書が提出され、県教育委員会において基本構想の策定に向けた方向性が整理されたところです。今後、教育委員会における検討結果を踏まえ、県立武道館の基本構想を策定してまいります。
最後に、県民生活の安全、安心の確保についてであります。
佐久警察署の建設など警察関連の施設について、地域の安全、安心を担う拠点施設として機能強化を図るほか、本年開催されるさまざまな大規模イベントの警備に万全を期するため、装備機材等の充実を図ります。
先月、軽井沢町で発生した多くの若い命が失われた大変痛ましい大型バス事故等を受け、県内に交通死亡事故多発警報を発令いたしました。引き続き広報啓発活動を推進するとともに、通学路の安全対策を進めるなど、ハード、ソフト両面で交通安全対策を進めてまいります。
次に、平成27年度の補正予算案について申し上げます。
補正予算案は、一般会計84億3,554万2,000円であります。
補正予算案には、先ほど申し上げた農業の振興、防災・減災事業、「長野県人口定着・確かな
暮らし実現総合戦略~信州創生戦略~」を推進するための地方創生加速化交付金を活用した事業などに要する経費を計上いたしました。
一般会計補正予算案の財源としては、国庫支出金45億9,395万5,000円、県債30億6,200万円、その他繰越金など7億7,958万7,000円を見込み、計上いたしました。
本年度の一般会計予算は、今回の補正を加えますと8,851億8,999万8,000円となります。
条例案は、新設条例案4件、一部改正条例案22件の合わせて26件であります。
新設条例案のうち、長野県手話言語条例案は、手話の普及等に関し県の責務や県民等の役割、施策の基本となる事項などを定めるものであります。今後、この条例に基づき、手話が言語であるとの認識のもと、聾者と聾者以外の者がともに生きる社会の実現に向け、具体的な取り組みを進めてまいります。
来年度は、県民向けの手話講座の開催、長野県手話ガイドブックの作成などにより手話の普及を図るほか、新たに聾者の相談員を配置し、聾者の立場に立って生活相談などにきめ細かく対応いたします。また、聾学校の教員に対する手話の専門的な研修により技術の向上を図るとともに、児童生徒の手話に対する理解を深めるため、小中学校、高等学校向けの学習用資料を作成します。
事件案は、
包括外部監査契約の締結についてなど23件であります。
専決処分の報告は、交通事故に係る損害賠償の専決処分報告など13件であります。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
○議長(西沢正隆 君)次に、伊藤学司教育委員会教育長。
〔教育委員会教育長伊藤学司君登壇〕
◎教育委員会教育長(伊藤学司 君)平成28年度の教育委員会関係の議案につきまして、その概要を御説明申し上げます。
最初に、最近の教育をめぐる状況を踏まえ、教育長としての所信の一端を申し述べさせていただきます。
長野県教育委員会では、平成25年3月に策定した第2次教育振興基本計画に基づき、次代を担う子供たちに安心して学べる教育環境を提供するため、さまざまな施策を講じているところです。
平成28年度は、計画の終盤を迎える年度であり、これまでの取り組みにより徐々に成果があらわれてきている施策について着実に遂行することによって、しっかりと成果に結びつけられるよう取り組んでまいります。
また、施策の推進に当たっては、本年度からスタートした新たな教育委員会制度のもと、長野県総合教育会議などの場を通じ、今後も、知事と教育委員会が円滑に意思疎通を図り、本県教育の課題や目指す姿等を共有しながら、一層連携し取り組んでまいります。
以上を踏まえ、新年度においても、引き続き、「学力の向上」、「すべての子供の学びの保障」、「体力向上とスポーツの振興」の三つを柱に据え、それを支える信州教育の推進体制づくりを着実に整備することを基本とし、重点的に施策を展開してまいります。
まず、学力の向上について申し上げます。
信州の未来を担う子供たちの確かな学力の定着を図るため、児童生徒の学力実態を継続的に捉えるとともに、PDCAサイクルによる授業改善や家庭学習の充実などの施策を推進してまいりました。
今後は、本年度設置した、有識者や市町村教育委員会等で構成する学力向上外部検証委員会による客観的な評価も活用しながら授業改善をさらに進めるなど、児童生徒の確かな学力の定着を図る施策の一層の充実に取り組んでまいります。
信州に根差し世界に通じる人材の育成につきましては、引き続きスーパーグローバルハイスクール指定校の運営に取り組むとともに、県独自に高校生の留学を支援してまいります。また、地域の特色を生かしながら探究的な学習に取り組み、ふるさとに誇りと愛着を持ち大切にする心を育む信州学を全県立高校に拡大して実施してまいります。
また、新たな取り組みとして、将来の長野県を担う科学技術人材を育成するため、中学生、高校生を対象として、科学オリンピックなどの科学分野の大会出場者の実力養成講座を実施するほか、大学や企業等と連携して高校生が実験、実習等の実践的な体験学習を行える機会をつくるとともに、全国の中学生が都道府県を代表して集い、科学の思考力、技能を競う科学の甲子園ジュニア全国大会の本県への誘致を進めてまいります。
次に、全ての子供の学びの保障について申し上げます。
いじめ、不登校、暴力行為などの背景にある貧困などの家庭的な課題に対応するため、社会福祉や精神保健福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーの配置を現行の8人分から18人分へと大幅に拡大し、地域や専門機関等と連携協力して、困難を抱える児童生徒を取り巻く環境の改善を図ります。
また、困難や悩みを抱える児童生徒が安心して学校生活を送ることができるよう、児童生徒の悩みに適切かつ迅速に対応するため、臨床心理士等の心理の専門家であるスクールカウンセラーによる相談体制を維持してまいります。
子供を性被害から守る取り組みにつきましては、高校生向けのリーフレットに加え、新たに中学生向けのリーフレットを作成して指導に活用するほか、情報通信や情報モラル教育の専門家などで編成するキャラバン隊を全ての県立高校と希望する中学校、私立高校などへ派遣し、性被害防止に向けた指導を充実させるとともに、指導資料や研修の充実により教員の指導力を向上させ、学校における効果的な性に関する指導を行ってまいります。
経済的な困難を抱える生徒への支援としましては、高校在学中の教育費負担の軽減を図る奨学給付金や、県独自に創設した県内の大学、短期大学へ進学するための入学金等の給付を引き続き実施するほか、学習がおくれがちな中学生を対象として、市町村が地域住民等の協力を得て原則無料で学習支援を行う地域未来塾への支援を充実させてまいります。
いじめ防止に向けた取り組みにつきましては、昨年3月に制定された長野県いじめ防止対策推進条例に基づく取り組みとして、24時間体制の学校生活相談センターを開設し相談体制の充実を図ってきたほか、いじめ防止啓発リーフレットを県内全ての児童生徒に配布するなど啓発に努めてまいりました。
また、児童生徒の主体的かつ自主的な取り組みを推進するため、いじめ防止子どもサミットNAGANOを本年度初めて開催し、いじめ防止に向けた子供たちのメッセージを広く県内に発信しているところです。
今後も、条例に基づき、相談体制の充実やさまざまな啓発活動を展開するとともに、児童生徒がいじめの問題をみずからの問題として捉え、未然防止等に取り組むなど、いじめの防止等の取り組みを推進してまいります。
特別支援教育の充実につきましては、特別支援学校への自立活動担当教員の配置を本年度に引き続き20人増員し、障害の特性に応じた専門的な教育の充実や特別支援学校のセンター的機能の充実を図ってまいります。また、理学療法士等の専門的な人材を活用して教員への実践指導を引き続き行うことにより、学習面と生活場面における児童生徒の自立活動に係る指導の充実を図ってまいります。
特別支援学校の再編整備につきましては、長野地区、中信地区において再編整備計画に基づく取り組みを進めてまいります。長野地区では、須坂創成高校の須商キャンパス内に長野養護学校高等部分教室を開設し、長野養護学校の過密化解消を図ってまいります。また、中信地区では、松本盲学校へ松本養護学校高等部分教室を開設するとともに、寿台養護学校の重度重複障害部門を拡充し、松本養護学校の過密化解消と中信地区特別支援学校の教育環境の向上を図ってまいります。
このほか、高等部生徒の就労に向けた支援につきましては、県内4地区の特別支援学校に就労コーディネーターを引き続き配置し、一般就労率の向上を図ってまいります。
次に、体力向上とスポーツ振興について申し上げます。
本県における小中学校の児童生徒の体力、運動能力は、先ごろ取りまとめられた平成27年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果を見ると、全体的に昨年度より向上し、小学校男女及び中学校男子は全国平均を上回りました。また、中学校女子については、これまで大きく全国平均を下回っている状況でしたが、本年度はその差をわずかとするところまで向上いたしました。これまで取り組んできた体育授業や運動部活動指導の改善などに一定の成果があらわれてきたものと考えておりますが、今後も一層の授業改善等を図り、運動好きな児童生徒をふやす取り組みを推進してまいります。
また、県民誰もがスポーツに親しむことができる生涯スポーツ社会の実現に向け、総合型地域スポーツクラブへ指導者を派遣するほか、公民館などのコミュニティースペース等を活用して新たに地域スポーツ活動に取り組む市町村を支援し、県民が気軽に参加できる身近なスポーツ環境の整備を進めてまいります。
さらに、地域スポーツの振興を図るため、長野県内の企業に就職して競技を継続したいと希望するアスリートと県内企業とを結ぶ双方向型就職マッチングシステム「長野県版アスナビ」を構築し、アスリートの県内就職を促進してまいります。
平成28年度は、5月から8月にかけて開催される第37回北信越国民体育大会を初め、8月には全国中学校体育大会の陸上競技と剣道の競技大会、また、平成29年1月から2月にかけては第72回国民体育大会冬季大会「ながの銀嶺国体」が本県で開催されます。これらの大会を円滑に実施するとともに、競技団体が行う特別強化事業等を支援し、競技力の向上を図ってまいります。
武道を振興するための施設につきましては、平成26年度から有識者による検討を重ねた結果として、武道振興の中核的拠点となる県立の武道館が必要との提言をいただき、これを受け、長野県教育委員会定例会において施設の機能や規模を示した県立武道館基本構想の策定に向けた今後の方向性をまとめたところです。今後は、この方向性について広く県民の皆様から御意見を伺うとともに、知事部局とも連携しながら基本構想を策定してまいります。
最後に、信州教育の推進体制づくりについて申し上げます。
県教育委員会では、教育に対する県民の皆様の信頼回復に向け、信州教育の信頼回復に向けた行動計画に基づく施策を着実に推進してまいりました。今後も、長野県教員研修体系に基づいた教員研修や匿名性を担保した授業評価、学校評価などを継続して実施し、教員の資質向上を図ってまいります。
学校と県民の協働による地域に開かれた信頼される学校づくりの推進につきましては、信州型コミュニティスクールの全県への拡大に引き続き取り組んでまいります。
県立高校と特別支援学校の施設における安全性の確保と教育環境の改善に向けた取り組みとしましては、体育館等のつり天井落下防止などの耐震対策に早急に着手してまいります。また、老朽化した校舎等の修繕につきましては、平成28年度当初予算案において、本年度当初予算の3倍以上となる予算額を確保して、今後3年間で集中的、計画的に進めてまいります。特に、特別支援学校におきましては、修繕に加え、障害種に対応したトイレ等の改修や教室へのエアコン設置を行うなど、バリアフリー化や学習環境の改善を強化してまいります。
高等学校の再編につきましては、地域の皆様の深い御理解をいただきながら、第1期高等学校再編計画に基づき、魅力ある高校づくりと高校の規模と配置の適正化を着実に進めてきているところです。
再編により開校した須坂創成高等学校、佐久平総合技術高等学校及び2次統合を行った飯山高等学校の3校については、本年度も引き続き計画的に施設整備等の教育環境の充実に取り組んでいるところです。また、本年4月に開校を迎える大町岳陽高等学校につきましては、教室棟や体育館の施設整備を進めるとともに、深い思考力、探究力等を養う学究科を新たに設置し、確かな学力を有し、地域や社会に主体的に貢献できる人材の育成を行ってまいります。
また、地方創生のモデルとなる新しい高校づくりとして、この4月から白馬高等学校に国際観光科を開科し全国から生徒を募集するとともに、地域の観光資源を生かした特色あるカリキュラム編成を行い教育内容の充実を図ります。
平成30年以降の高等学校の将来像については、今後のさらなる少子化や社会情勢の変化を踏まえ、有識者などで構成する長野県高等学校将来像検討委員会を設け、今後の長野県の高校の望ましい将来像について報告を取りまとめるべく検討を重ねていただいているところですが、新年度にはパブリックコメントの実施や地域における懇話会等を開催し、高等学校将来像の骨子案の策定に取り組んでまいります。
以上、教育委員会の施策の概要について申し上げました。これらの施策を推進するため、一般会計1,929億2,853万6,000円、高等学校等奨学資金貸付金特別会計1億8,820万円の予算案を提出しております。
平成27年度
一般会計補正予算案は、国の補正予算対応分のうち、地方創生加速化交付金を活用するものとして、白馬高校に国際観光科を開科し全国から生徒を募集する事業及び児童生徒みずからが生まれ育った地域を理解し、大切にする心情を育む信州学を推進する事業に要する経費並びに文部科学省の補正予算を活用するものとして、学習がおくれがちな中学生を対象に地域住民等が学習支援を行う地域未来塾の学習環境向上のために行うICT機器等の整備に対する助成に要する経費として6,159万9,000円の増額補正をお願いするものでございます。
条例案は、長野県学校職員の給与に関する条例の一部を改正する条例案及び学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整備に関する条例案の2件であります。
事件案は、
須坂創成高校管理商業科棟ほか
建築工事請負契約の締結について1件であります。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
○議長(西沢正隆 君)次に、尾﨑徹警察本部長。
〔警察本部長尾﨑徹君登壇〕
◎警察本部長(尾﨑徹 君)本県議会で御審議をいただく警察本部関係の議案について、その概要を御説明いたします。
議案説明に先立ち、県下の治安情勢と県警察の運営重点などについて御説明させていただきます。
初めに、1月15日、軽井沢碓氷バイパスにおいて発生しました、死者15人、重軽傷者26人という多数の死傷者を出したツアーバス転落事故に関しまして、亡くなられた方々の御冥福と、負傷された方々の一日も早い御回復を心からお祈り申し上げます。
県警察では、本件発生直後に捜査本部を設置し、現在、事故原因の究明に向けて所要の捜査を進めるとともに、御遺族や被害に遭われた皆様の支援及び再発防止対策に努めているところでございます。
それでは、昨年の治安情勢について御説明させていただきます。
平成27年中の刑法犯認知件数は1万1,502件、前年比マイナス12.9%であり、平成14年以降続いている減少傾向を維持しておりますが、検挙率は38.8%と前年と比較して1.7ポイント低下しております。殺人や強盗等の重要犯罪の認知件数は136件で、前年と比較して7件増加したものの、検挙率は70.6%と前年より4.7ポイント上昇しております。
また、凶悪事件に発展する可能性の高いストーカー行為や配偶者暴力などの人身安全関連事案は、前年よりも減少はしましたが、依然として高水準で推移しております。
特殊詐欺被害は、平成25年から2年連続で被害総額が10億円を超えておりましたが、昨年は約8億円に減少させることができました。これは、特殊詐欺急増に伴う緊急対策や特殊詐欺取り締まり・予防強化月間等、各種対策を強力に推進したこと、「特殊詐欺、ひとごとじゃない!」キャンペーン等により県民の特殊詐欺被害防止機運が醸成されたこと、金融機関等における水際対策が強化されたことなどによるものと考えております。
しかし、被害件数は297件で、前年と比較して107件増加していることから、引き続き県を初めとした関係機関・団体の皆様方と連携しながら各種抑止対策を強力に推進していく必要があります。
しあわせ信州創造プランの中では、数値目標として、平成29年末には犯罪発生件数1万5,000件未満、重要犯罪検挙率70%を掲げており、いずれも前倒しで達成し、一定の成果を上げておりますが、数値目標だけでなく、体感治安の向上に向けて、犯罪の未然防止とさらなる犯罪検挙力の強化を図ってまいります。
交通事故につきましては、平成27年中は、発生件数、死者数、負傷者数ともに前年より減少し、特に死者数は13人減少して69人となり、2年連続で大幅に減少させることができました。また、発生件数も8,867件と9,000件を下回り、11年連続で交通事故の減少傾向を維持することができました。これらは、交通取り締まりや交通規制を含めた事故分析に基づいてタイムリーかつ集中的に街頭活動を推進したことや、関係機関・団体の皆様が献身的に取り組みを行った結果であると考えております。
しかしながら、高齢死者数は42人で全体の事故死者の6割以上を占めており、また、高齢運転者が第1当事者となる交通事故の死者が31人で、前年と比較してプラス11人と増加に転ずるなど、運転者を含めた高齢者の事故防止が喫緊の課題となっております。さらに、本年に入り、軽井沢町におけるバス転落事故を初め交通死亡事故が連続発生したことから、長野県交通安全運動推進本部による交通死亡事故多発警報を発令し、緊急対策を実施したところであります。
しあわせ信州創造プランでは、平成29年末までに交通事故死傷者を1万人以下に抑止するとしておりますが、昨年の死傷者は1万1,023人であることから、目標達成に向け、引き続き各種施策を講じてまいります。県警察では、こうした治安情勢を踏まえ、県民の皆様の安全と安心を確保するため、平成28年運営重点を定め、諸対策を推進しております。
以下、6点の県警運営重点について申し上げます。
第1は、総合的な犯罪抑止対策の推進であります。
刑法犯認知件数は14年連続して減少したものの、高齢者等を対象とする特殊詐欺被害が深刻な状況にあります。特殊詐欺に対する県民の抵抗力向上を図るとともに、関係機関等とのネットワークを活用したタイミングのよい情報提供など、先制的、予防的対策を実施してまいります。
また、被害者の生死にかかわる事件に発展するおそれのある人身安全関連事案には、被害者等の安全確保を最優先とした迅速かつ的確な取り組みを推進してまいります。さらに、悪質、巧妙化するサイバー犯罪に的確に対処するため、人材の育成や違法行為の取り締まりの徹底など、サイバー空間の脅威への総合的な対策を推進してまいります。
第2は、犯罪検挙力の強化であります。
殺人、強盗等の重要犯罪、特殊詐欺、侵入窃盗等の発生が県民生活の大きな脅威となっております。また、6代目山口組、神戸山口組の対立に絡む暴力団による不法行為の発生が引き続き懸念されるところであります。こうした重要犯罪が発生した際には、迅速、的確な初動捜査を展開し、被疑者を早期に検挙して、県民の皆様の安全と安心の確保を図ってまいります。
あわせて、夏には参議院議員通常選挙が予定されていることから、不偏不党かつ厳正公平な違反取り締まりの推進に配意してまいります。
第3は、交通死亡事故抑止対策の推進であります。
事故死者の6割以上を占める高齢者に焦点を当て、運転者を含めた高齢者の事故防止に向けて、街頭活動や参加、体験、実践型の交通安全教育、生活道路の安全対策を効果的に推進するとともに、事故実態の分析に基づく交通取り締まりや関係機関・団体と連携した啓発活動を多角的に実施するなど、交通死亡事故の抑止と交通事故の総量抑制に向けた取り組みを強化してまいります。
第4は、テロ、大規模災害等危機管理対策の推進であります。
本年は、5月26日、27日に三重県において開催される伊勢志摩サミットを初め、関係閣僚会合が全国10カ所において行われます。本県においては、6月に全国植樹祭、9月にG7交通大臣会合が開催されます。これら重要警備の完遂は、長野県警察がその総力を挙げて取り組むべき当面の最重要課題であります。組織が一丸となって諸対策、諸準備を鋭意推進することはもとより、関係機関との連携を一層強化し、テロの防圧と警備の万全を期してまいります。
また、大規模災害の発生時には、より多くの県民の生命、身体及び財産を守ることが求められます。警察では、必要な初動体制を確立しておりますが、本年も、引き続き、これらが真に機能するのか各種訓練等を通じて検証し、盤石な危機管理体制の構築に努めてまいります。
第5は、地域社会の安全力を高める地域警察活動の推進であります。
交番、駐在所を中心に、街頭活動の強化による犯罪の予防と検挙、地域における問題解決活動、犯罪被害防止のための情報発信活動及び110番通報受理時の迅速な初動警察活動を強化して、地域社会の安全力を高め、地域住民の安全で安心な生活の確保に向けた取り組みを推進してまいります。
第6は、県民の立場に立った積極的な対応と警察基盤の強化であります。
安全で安心な長野県を確立するため、すぐれた人材の育成、治安維持の拠点となる警察施設の整備、さらに、職員みずからが考え、進化し続ける精強な組織の構築に努め、県民の立場に立った業務を推進し、複雑多様化する警察事象に的確に対応してまいります。本年は、厳しい諸情勢の中、重要な警衛・警備やイベントが実施されます。県警としましては、これら警備の万全を期するとともに、県民の安全・安心の確保に全力で取り組んでまいります。
それでは、本県議会に御審議いただきます議案等について御説明させていただきます。
県警察では、安全で安心な長野県の実現を目指し、運営重点として掲げた各種施策の推進及び重要警備の態勢確保に必要な経費等として、平成28年度当初予算案に443億2,300万円余を計上いたしました。
警察管理費には、増員される警察官17名分を含めた職員給与費のほか、佐久警察署及び交番、駐在所の建設経費など計405億6,500万円余を計上いたしました。
また、警察活動費には、G7交通大臣会合等や大規模災害への対応を見据えた警備対策に要する経費のほか、各種犯罪の抑止対策、初動捜査力の向上を図るための捜査資機材の整備及び交通事故抑止対策等に要する経費として計37億5,700万円余を計上いたしました。
次に、条例案についてでありますが、警察本部関係の条例案は2件を提出しております。
1件目は、人事委員会勧告に基づき、給料表の改定を行うほか、所要の改正を行う長野県警察職員の給与に関する条例の一部を改正する条例案であります。
2件目は、警察法施行令の一部改正により警察官の定数の基準となる定員が増加することに伴い、警察官の定数を現行の3,455人から17人増員して3,472人に改定する長野県
地方警察職員定数条例の一部を改正する条例案でございます。
最後に、専決処分報告についてでありますが、交通事故に係る損害賠償、捜査中の事故に係る損害賠償の2件について報告するものでございます。
以上、今回提出いたしました警察本部関係の議案につきまして御説明いたしました。御審議のほどどうかよろしくお願い申し上げます。
○議長(西沢正隆 君)次に、小林利弘公営企業管理者。
〔公営企業管理者小林利弘君登壇〕
◎公営企業管理者(小林利弘 君)企業局関係の議案につきまして、その概要を御説明申し上げます。
初めに、今定例会に御報告申し上げました長野県公営企業経営戦略について御説明申し上げます。
本経営戦略は、一昨年8月、国が全国の地方公営企業に対し、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を図るため、中長期的な経営の基本計画となる経営戦略を策定するよう要請したことを受け、長野県におきましては、平成28年度を初年度とする10カ年の計画として、全国に先駆け策定したものでございます。
今さら申し上げるまでもなく、企業局事業を取り巻く社会情勢は、まさに大きな転換期を迎えようとしております。電気事業につきましては、本年4月から電力の小売自由化がスタートするなど国の電力システム改革が着実に進展しており、従来の電力会社に加え、新電力と言われる新規事業者の数多い参入や、自然エネルギーに対する需要の高まりが一層見込まれるなど、我が国における電力事業の先行きには不透明な部分があります。
また、水道事業につきましては、人口減少社会の本格的到来を迎えるとともに、一方で、大規模災害への対策や、暮らしの根幹である水道施設の老朽化対策の推進が強く求められております。
加えて、企業局が、これまで半世紀以上にわたり、それぞれの地域において、県民の皆様初め、市町村、関係団体に支えられてきた歴史を踏まえ、地域との共存・共栄の観点から、地域への貢献という新たな役割を果たしていく必要があるものと考えております。
さらに、電気事業にあっては民営化協議により、また、水道事業にあっては市町村への移譲を前提とした協議を進めてきたことにより、本来必要である施設整備がおくれていることから、こうした社会情勢の変化を的確に捉え、今こそ新しい企業局の将来像を描く必要があるものと考え、これまで公営企業経営審議会における審議に加え、県議会、関係市町村並びに関係団体等の意見を伺うとともに、広く県民からのパブリックコメントを経て、このたび本経営戦略の策定をしたものでございます。
最初に、経営戦略の基本方針につきましては、「経営の安定と発展の礎づくり」といたしました。電気事業にあっては、これまでおくれていた施設整備、そして電力システム改革への着実な対応、さらに地域への貢献という新たな役割を果たすことで、新たな時代に挑戦する電気事業の礎づくりを目指します。また、水道事業にあっては、安全、安心を基本として、市町村とともに地域におけるよりよい水道事業を目指すとともに、災害へのしっかりとした対応も含めた安定を新たに加えた、水道水の供給体制の礎づくりを目指します。電気、水道両事業がそれぞれ礎を築くことにより、企業局全般の安定と発展の礎づくりにつながるものと考えております。
策定に当たりましては、国が求めている投資と収益のバランスがとれた「経営の安定」の視点はもとより、先ほど申し上げました「地域への貢献、地域との共存・共栄」という視点、そして、電気事業者として、また水道事業者として、住民の安全、安心の確保という責任を確実に果たすため、「リスクマネジメント」の視点を加えた三つの視点を基本的な柱として策定いたしました。
また、経営の安定の礎を築くためには、単に計画期間の10年だけでなく、さらにその先の10年も見据えた投資財政計画とするとともに、経営指標や数値目標を具体的に示し、目指す姿の「見える化」を図ったところでございます。
なお、経営戦略の具体的な事業につきましては、長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略、現在策定中の長野県強靱化計画等に適切に反映、位置づけし、公営企業として県政に貢献できるよう取り組んでいくこととしております。
それでは、経営戦略に位置づけました主な内容について御説明申し上げます。
まず、電気事業についてでございますが、所有する発電施設について、将来を見据え、基本的な役割分担を行うこととして、投資計画を策定いたしました。既設14発電所につきましては、経営基盤の安定と地消地産の役割を果たすこととし、今後の老朽化対策にあわせ、水の有効活用を図ることで電力の安定供給と収益の確保を図り、現在、県内9万9,000世帯への供給を10万2,000世帯まで高めることを目指してまいります。また、現在着工しております高遠並びに奥裾花第2など新規発電所につきましては、信州発自然エネルギーとして大都市へ売電し、その利益を県民に還元する大都市との未来志向の連携という地方創生の役割を担っていくことといたしました。
電気事業の経営の基本となる売電単価につきましては、これまで、中部電力と、いわゆる総括原価方式に基づき契約してまいりましたが、電力システム改革に伴い総括原価方式が廃止されることから、中部電力と料金交渉を重ね、現行1キロワットアワー当たり6円32銭から9円とすることで妥結いたしました。これにより、約9億円の増収となりますが、一方で、渇水によるリスクも大きくなりますことから、経営安定のため、新たに利益積立金を設けることといたしました。
なお、中部電力とは平成31年度まで供給するとの基本契約を結んでおりますが、それ以後につきましては、国の方針に基づき、一般競争入札を基本としてまいります。
投資財政計画につきましては、発電所の大規模改修期間中はどうしても減収になりますことから、新規発電所及び改修後の発電所に固定価格買い取り制度を適用することによる増収により影響を軽減できるよう、計画的な改修期間を設定し、収支のバランスを図ってまいります。また、企業債借入額は必要最小限とし、計画期間終了となる平成37年度の企業債残高を平成27年度と同じ水準に抑制いたしますとともに、平成37年度の繰り越し財源を平成27年度の約2倍強の50億円を確保し、次の10年の財源としての活用を見込んだところでございます。
このほか、発電所建屋の耐震化並びにダムの耐震性能照査を着実に進めるなど、10年間の投資額は約190億円を見込んでおりますが、経営の健全度を示す経常収支比率の見込みからも、安定した経営が維持できるものと考えております。
なお、企業局発電量の4分の1を占める春近発電所の大規模改修につきましては、多額の経費がかかることに加え、地域経済の活性化に寄与するため、全国に先駆けて発電施設へのPFI事業の導入を検討することといたしました。既に本年度、内閣府のPFI導入への支援対象として調査が進められておりますので、今後この調査結果を踏まえ、引き続き対応を検討してまいります。
地域への貢献、地域との共存・共栄につきましては、企業局の持つ技術力、信用力を活用し、市町村、団体等への技術的支援に努めますとともに、農業用水路を活用した小水力発電を計画する土地改良区に対し、設計から施工まで一括して行う、企業局版PFIともいえるモデル事業の実施に取り組んでまいります。
また、電気事業の利益を活用し、次世代に引き継ぐ信州の森林づくりを引き続き支援しますとともに、将来の科学技術を担う子供たちを支援するため、平成28年度を初年度とする長野県こどもの未来支援基金への繰り出しを行い、企業局としても学びの郷信州の創造に寄与してまいります。
なお、新規発電所の稼働に伴う利益還元につきましては、今後、具体的な活用方法を検討してまいります。
次に、水道事業についてでございますが、末端給水事業につきましては、水道料金について、まずは経営努力を着実に実行していくこととし、現行の料金水準を維持することといたしました。その上で、投資計画につきましては、経営健全化を図りつつ、投資額を最大にする観点から、企業債借入額を毎年度の償還額の範囲内とすること、新規取得資産の減価償却費が収益を圧迫しないようにすること、損益は黒字を確保することとの基本的な考え方のもとに、老朽管の更新につきましては、国の示す基準を参考に法定耐用年数の1.5倍で更新することに加え、長寿命化工事をあわせて実施することで、次の10年を見据えた経費の平準化を図ることといたしました。
また、基幹施設及び基幹管路、さらに、長野県独自に重要給水施設と位置づけました病院や避難所となる学校等に至る管路、これらの全ての施設について、計画期間内に耐震化を完了することを目指してまいります。また、これらの管路の改修に加え、漏水調査の抜本的改善に努め、有収率を全国平均以上に引き上げるよう取り組んでまいります。
地域への貢献、地域との共存・共栄につきましては、関係市町とともに、地域におけるよりよい水道の実現に向け、将来の広域化を見据え、共同、連携を進めるとの共通認識が初めて得られましたことから、水質検査の共同化など、事務の共同化に向けた具体的な検討を進めるとともに、災害時における役割分担の明確化や、合同の防災訓練の実施などを通して、災害協定の締結を目指してまいります。
また、避難所等における応急給水拠点となる安心の蛇口の整備を進めるとともに、住民参加による給水訓練を実施してまいります。さらに、企業局の持つ技術力、信用力を生かし、地方自治法の規定に基づく事務の代替執行制度を活用して、過疎自治体の水道施設整備を支援するモデル事例の創出に取り組んでまいります。
用水供給事業につきましては、引き続き現行の料金水準を維持するとともに、送水幹線を除き、全ての管路、施設の耐震化を計画期間内に完了させることといたしました。また、末端給水事業と同様に、関係する市村と事務の共同、連携を進めるとともに、災害時における役割分担の明確化並びに合同の防災訓練を実施し、災害協定の締結を目指してまいります。
ただいま申し上げました計画期間内における事業等につきましては、末端給水事業につきましては約161億円、また、用水供給事業につきましては約62億円を見込んでおりますが、経常収支比率の見込みからも、それぞれ引き続き安定した経営が維持できるものと考えております。
以上申し上げました電気、水道両事業を計画どおり推進するためには、効果的、効率的な組織運営とともに、将来にわたって持続的な安定経営を支える人材を確保育成していくことが不可欠でございます。とりわけ、電気事業につきましては、民営化協議を進めていた時期に新規採用を控えていたことから、欠員が生じるとともに、年齢構成に偏りが生じておりますことから、学生や学校に対する積極的な情報発信を行い、社会人も含め、計画的な採用を進めてまいります。また、過去に発電所建設に携わるなど豊富な知識と経験を有する退職者を技術指導員として任用し、若い世代への技術継承に取り組んでまいります。
このほか、経営戦略には、長野県企業局が全国における公営企業のフロントランナーとして、また、県内市町村の先導的役割を果たしていく取り組みを、長野県企業局オリジナルとして位置づけております。これにより、県民の皆様初め、市町村、関係団体の皆様にとって、企業局の取り組む方向性について御理解いただきやすくなったものと考えますと同時に、我々企業局職員にとって責任の重さを実感できるものと考えております。
以上、経営戦略の概要について御説明申し上げましたが、新年度からはこの経営戦略を着実に実現していく必要がございます。策定に当たりましては、全職員が参加をいたしておりますが、今後は、推進に当たっての取り組みの姿勢が強く求められるものと考えます。そのため、経営戦略には、企業局職員の業務執行に当たっての基本姿勢を位置づけたところでございます。顧客第一、活力、創造、スピード、やり抜く、この五つを基本とし、全職員が一丸となった取り組みを進めてまいります。
それでは、平成28年度企業局予算案の概要につきまして御説明申し上げます。
平成28年度は、ただいま申し上げました経営戦略の初年度となりますことから、経営戦略元年と位置づけ、三つの基本的視点とした「経営の安定」、「地域への貢献、地域との共存・共栄」、「リスクマネジメント」の3本を柱に据え、礎づくりへ向けて確かな一歩を踏み出す予算案を編成いたしました。
初めに、電気事業の予算案につきまして御説明申し上げます。
業務量につきましては、美和発電所以下14発電所の管理運転を行い、年間販売電力量については、来年度からの総括原価方式の廃止に伴い算出方法を見直したことから、本年度より約2,200万キロワットアワー少ない3億6,000万キロワットアワー余を予定しております。一方、電力収入は、市場価格を踏まえ、中部電力と合意した売電単価としたことから、本年度より8億2,000万円余多い38億円余を計上いたしました。収益的支出のうち、営業費用につきましては、発電設備の維持管理に要する経費及び業務の運営経費を計上いたしました。
また、資本的支出のうち、建設改良費につきましては、経営戦略に基づく施設設備の老朽化対策並びに新規発電所2か所の建設の本格化などにより、本年度の倍以上となる25億円余を計上いたしました。なお、この建設改良費の財源として、企業債の借入額17億4,000万円余を予定しております。
次に、電気事業の主な取り組みについて申し上げます。
経営基盤の強化を図るとともに、自然エネルギーの普及拡大に向けて現在建設を進めております、新規発電所となる高遠及び奥裾花第2発電所につきましては、平成29年度の本格稼働を目指して建設に取り組みますとともに、大都市との未来志向の連携という役割を果たすため、売電方法の検討を進めてまいります。
また、企業局が管理をするダムで唯一発電を行っていない湯の瀬ダムの開発可能性調査を、本年度、経済産業省の全額負担により行っており、その結果を踏まえて対応を検討いたしますとともに、発電を行っていない県管理ダムのうち、ポテンシャルが高い箕輪ダム、横川ダム、片桐ダムの三つのダムについて、建設部及び関係町とともに課題整理やその対応についての協議を進めてまいります。
老朽化が進んでおります西天竜発電所の大規模改修につきましては、平成31年度の完成を目指し、引き続き改修を推進してまいりますとともに、奥木曽発電所並びに小渋第2発電所について、国の補助事業を活用し、出力増強対策に取り組み、自然
エネルギー自立地域の確立に寄与してまいります。
地域への貢献、地域との共存・共栄に向けた取り組みにつきましては、県が取り組む自然エネルギーの普及拡大への支援のため、自然エネルギー地域基金へ繰り出すほか、奥山水源林の整備への支援に加え、将来の科学技術を担う子供たちへの支援のため、長野県こども未来支援基金へ新たに5,000万円を繰り出すとともに、全国植樹祭への支援に1,000万円を繰り出すことといたしました。
なお、企業局といたしましても、子供たちの電気事業に対する理解と関心を高めていくために、新たに国庫補助事業を活用し、見学会の開催など情報発信力の強化に取り組んでまいります。
このほか、企業局が蓄積した技術を活用し、小水力発電を計画する市町村、団体等に対する技術支援を引き続き行っていくほか、農業用水路を活用した小水力発電モデル事業の実施に向け、関係土地改良区と協議を進めてまいります。
リスクマネジメントの取り組みといたしましては、地域の安全、安心の確保のため、発電所建屋2カ所の耐震化を推進するとともに、集落に近い上水槽及び水圧管の耐震性能照査2カ所を実施することといたしました。また、電気自動車2台を導入し、災害時に備えるとともに、災害時における地域への支援に活用することを目指してまいります。
次に、水道事業の予算案につきまして御説明申し上げます。
業務量につきましては、末端給水事業では、長野市など3市1町の7万6,000戸余りに対し、年間給水量1,800万立方メートル余を予定し、水道料金収入は、本年度と同程度の34億7,000万円余を計上いたしました。また、用水供給事業では、松本市、塩尻市、山形村に年間給水量2,900万立方メートル余を予定し、用水料金収入は、本年度から微増の14億1,000万円余を計上いたしました。資本的支出のうち、末端給水事業の建設改良費につきましては、経営戦略に基づく老朽化施設設備等の更新及び耐震化を着実に推進するため、18億9,400万円余を計上するとともに、債務負担行為として、今年度より53%増の6億2,000万円を設定いたしました。また、用水供給事業の建設改良費につきましても、経営戦略推進のための所要額7億2,000万円余を計上いたしました。
なお、これら建設改良費の財源として、企業債の借入額16億円余を予定しておりますが、末端給水事業については、安定経営の確保を図るため、企業債の発行額を当年度の償還額の範囲内に抑制いたしました。
次に、水道事業の主な取り組みについて申し上げます。
末端給水事業につきましては、経営の安定に向けた取り組みとして、経営戦略に基づき、老朽化対策のための投資額の平準化を図った一方、基幹施設、重要給水施設並びに基幹管路の耐震化につきましては、今年度に比べ約40%増となる9億6,000万円余を計上したほか、やはり約40%増となる5億3,000万円余の債務負担行為を設定するなど、積極的に取り組んでまいります。
このほか、有収率向上に向け、先進的な技術を活用した漏水調査を今年度に続き実施し、その効果を検証してまいります。
地域への貢献、地域との共存・共栄につきましては、利用者の皆様のニーズに迅速に対応する体制の確保や、満足度の向上に引き続き努めてまいります。
また、過疎自治体の水道施設整備への支援につきましては、平成29年度からのスタートに向け、下伊那郡天龍村と具体的な整備のあり方を協議してまいります。
リスクマネジメントにつきましては、施設等の耐震化に加え、安心の蛇口1基を整備するほか、関係市町と共同の防災訓練を実施してまいります。
用水供給事業につきましては、耐震化推進のため、今年度浄水池増設工事が完了いたしますことから、新年度におきましては、既設の浄水池の耐震補強工事に着手するほか、関係市村と共同した防災訓練を実施してまいります。
以上、電気事業会計と水道事業会計を合わせた企業局全体の予算額は、収益的収入と資本的収入の合計額132億9,453万2,000円で、本年度より12.5%増加しております。また、収益的支出と資本的支出の合計額は156億2,574万1,000円で、本年度より4.7%増加となっております。
以上、企業局関係の議案につきまして、その概要を御説明申し上げました。よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
○議長(西沢正隆 君)以上をもって知事提出議案の口頭説明は終了いたしました。
ただいま説明がありました以外の部長の説明につきましては、議会運営委員会の意見を徴した結果、口頭説明を省略することとし、お手元に配付いたしましたとおりでありますので、御了承願います。
〔議案等の部「3 口頭説明を省略した部長の議案説明要旨」参照〕
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○議長(西沢正隆 君)これらの議案は、来る2月23日から行う質疑の対象に供します。
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○議長(西沢正隆 君)お諮りいたします。本日はこの程度で延会にいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(西沢正隆 君)御異議なしと認めます。よって、本日はこれをもって延会することに決定いたしました。
次会は、来る2月23日午前10時に再開して、各党派代表質問及び知事提出議案に対する質疑を日程といたします。書面通知は省略いたします。
本日は、これをもって延会いたします。
午後3時8分延会...