山梨県議会 2022-12-01
令和4年12月臨時会(第2号) 本文
和解案は、住民訴訟での議論でしたが、適正な対価とは何かという法的な決着を裁判所に求めることになったのは、和解案を認めなかった県議会の功績とも言えます。
当時、長崎知事は提案理由に際し、「訴訟代理人の弁護士からは、このまま訴訟を継続した場合には敗訴し、判決に基づき、県議会の議決を経ることなく、歴代知事や賃借人への損害賠償等を行わなければならなくなる可能性が高い旨の助言があった。県として受け入れる妥当な結論に導けるよう、甲府地方裁判所に和解の意向をお伝えした上で、甲府地方裁判所の関与のもと原告との和解交渉を行ってきた」と説明しました。
今回の判決を踏まえれば、県側の訴訟代理人弁護士の間違った法解釈によって和解案が提示されたとも言えます。
さらには、甲府地裁の当時の裁判長に、「裁判所として、和解を勧めていない」と指摘され、県当局で陳謝する事態も起きました。
振り返っても異例の和解案でありますが、結果として、和解案が議会で認められなかったことが今回の法律判断につながったと考えれば、二元代表制の一翼を担う議会としてチェック機能を発揮できたと評価できます。
いずれにしても今回の判決により、これまでの長崎知事の主張は、現時点で法律的には成り立たないことが判明しました。
それを踏まえて、以下、何点かお伺いいたします。
最初に、長崎知事は昨日の議案説明において、「山中湖畔県有地問題は、これまで県民の目に触れることなく、ひっそりと処理され続けてきました」と説明しました。
しかし、県有地問題は横内県政時代に本会議でも議論があったほか、専門家を含む森林総合利用協議会で検証がなされてきたと承知しています。議事録等を確認すれば、横内県政以前にも何度も県有地問題が議論となった事実は確認できますが、何をもって、ひっそりと処理され続けてきたとしているのか、見解を伺います。
また、長崎知事は、県有地問題に関する突然の方針転換は、「論理必然的に導き出された」としていますが、どのような議論によって導き出されたのでしょうか。県議会の特別委員会が意思決定に関わる会議録や記録の提出を求めた際、職員の手書きメモ三枚しか提出されませんでした。
県が全面敗訴した今こそ、議論の経過をしっかりと検証する必要があり、その上で控訴審に臨むべきではないでしょうか。
過去の検証がないままに、むやみに控訴審に臨むべきではないと考えますが、丁寧な説明と見解をお伺いいたします。
次に、訴訟代理人を務める弁護士の適格性についてお聞きします。
甲府地裁は、訴訟代理人弁護士の主張を全くと言っていいほど認めていません。当該弁護士の法解釈が間違っていたと言える状態で、控訴審に向かうことが最善なのでしょうか。
訴訟代理人弁護士は、従来の顧問弁護士ではなく、長崎知事の知人でもあった東京都内の弁護士を選任しました。山梨県内の弁護士事務所では能力的に対応できない旨の
発言が長崎知事からあり、物議を醸したこともありました。
このような判決が出た今こそ、適切な弁護士の選定だったのか、当該弁護士本人の責任及び任命責任についてどのように考えるのか、見解を伺います。
訴訟代理人をかえずに控訴審に臨んでも法的判断を覆せる可能性は低く、むしろ訴訟費用が、さらにかさむことで税金の浪費、無駄遣いになってしまうのではないかと危惧しています。
県はこれまで、方針転換した新たな主張が法的に正しい旨の説明を繰り返してきましたが、全面敗訴を受けて、本当に控訴審での勝訴が見込めるのでしょうか。さらに、控訴審で判決を覆すような新たな事実関係や証拠があるのでしょうか、いずれも見解を伺います。
次に、弁護士費用の妥当性についてお聞きします。
今回の判決を踏まえれば、県民の税金から支出された多額の訴訟関連費用の妥当性には疑問符がつきます。時給五万円、概算払いで支払われた六千六百万円の弁護士費用、調査業務委託費は、県民感覚からすれば高額です。
一億四千三百万円の着手金も専決処分という例外的手法で支払われ、いずれも議会から批判の意見が相次ぎました。
このまま控訴審に進めば、新たな訴訟関連費用二千八百七十一万円の県費がかかるだけでなく、仮に控訴審も敗訴となれば、双方の訴訟費用が県側の負担となり、さらに県民にとって不利益ばかりが残る格好となります。
これまで調査業務委託費を含む弁護士費用の支出は、適切かつ妥当だったのか、見解を伺います。
また、控訴審の着手金はゼロ円で、成功報酬のみの契約とのことですが、なぜそのような契約が実現できたのか、控訴審以前の契約では、なぜ実現できずに一億四千三百万円もの大金を支払うことになってしまったのか、見解を伺います。
最後に、多額の訴訟関連費用についての妥当性や手法を問題視する意見がある中、控訴審に突き進めば県民の不利益が増大するのではないかという懸念があります。
長崎知事は、県有資産の有効活用による収益確保を掲げていますが、現状は支出が膨らむばかりであります。
私は、分断を促し、県民負担につながるような裁判を継続するのではなく、これまでの主張の誤りを認め、必要に応じて改め、県民本位の県政になるような政策判断を行うべきと考えます。
今回の判決を受けた長崎知事の御自身の責任について、どのように考えるのか、お伺いいたします。
私は、歴代の県政において、先人の皆様が積み重ねてきた歴史や伝統に感謝と敬意の気持ちを持っています。
苦しく、暗い、先の見通せない停滞の時代と過去の県政を断じるだけでなく、綿々と続く歴史と伝統を引き継ぎつつ、県民と協働しながら新たな県政を創造する県政を心から求めて、私の質問といたします。
真摯な答弁をよろしくお願い申し上げます。
3
◯議長(
久保田松幸君)鷹野一雄君の質疑が終わりました。
これより、当局の答弁を求めます。知事、
長崎幸太郎君。
(知事
長崎幸太郎君登壇)
4
◯知事(
長崎幸太郎君)鷹野議員の御質問にお答え申し上げます。
初めに、今般の判決は、長年繰り返されてきた合意をもって山林素地価格を基礎とした賃料を是認しているものでありますが、これを容認することは、まさにその合意が、果たして県民利益を図る観点から、その是非がより問われることになろうかと思いますので、よくよくお考えいただければと思います。
その上で、提案理由の説明について申し上げます。
県有地問題は、森林総合利用協議会で検証がなされてきたとの御指摘についてですが、同協議会は、主として豊かで潤いに満ちた森林社会の創造に資する県有地の利用のあり方を協議する場であるため、貸付料算定の詳細な因子や手法の適正性まで踏み込んだ議論はなされておりませんでした。
さらに、県有林の賃料改定や契約更新の手続は、出先事務所の決裁で済ませており、また、山中湖畔県有地四百四十ヘクタールの広大な面積に係る貸付料については、不動産鑑定士による不動産鑑定評価を行わずに、価格等調査に基づき算定を行ってきたところであります。
今回の問題を通じまして、法廷だけではなく、県民の皆様から選ばれた県議会でも活発に論じられることになりましたが、これと比較いたしますと、これまでの対応では、貸付料の価格決定のあり方が県民の目に触れるということは困難と言わざるを得ず、これをもって「ひっそりと処理」と表現したところであります。
次に、請求棄却判決に対する評価についてです。
これまでの議論の経過を検証する必要についてですが、令和三年六月県議会における反訴の提起の審議の際に、要求が入れられないときの上訴を含めて議決をいただいており、今回の控訴は、その想定の範囲内であります。
なお、第一審判決では、県敗訴との判決になったとはいえ、住民訴訟に係る検証委員会において、法曹関係者が三名入り事実関係・法律関係について、つぶさに調査した上で一定の結論を得ているところであり、その結論は合理的なものと考えております。
次に、知事の責任について申し述べます。
県知事たる私といたしましては、県民の利益を図ることを第一に考え、あらゆる手段を尽くして県民利益の最大化に向け最大限の努力を払うことこそ、県民に対して果たすべき私の責務であると確信しております。
この点、議員が主張されるように、控訴せずに原判決を確定させ、県民が実勢価格であれば受け取ったであろう価値を、今後も賃借人企業サイドに帰属させ続ける結果になり得ることは、当該企業の利益を図るお立場の方には歓迎すべきことではあるでしょうが、県民利益の最大化を図るべき私の立場からは取り得ません。
また、分断、分断などとおっしゃいますが、県民利益の最大化と特定企業の利益を図る立場において分断はあるのかもしれませんが、その場合、私は誇りを持って県民利益の最大化の立場を取りたいと思います。
以上でございます。
5
◯議長(
久保田松幸君)総務部長、
市川康雄君。
(総務部長
市川康雄君登壇)
6
◯総務部長(
市川康雄君)鷹野議員の御質問にお答えいたします。
まず、弁護士本人の責任についてであります。
弁護士はあくまで県の代理人として訴訟を追行しており、その主張についても、最終的に県の責任においてなされているものであることから、代理人である弁護士について、県とは別に独立した責任が生ずることはないものと考えております。
次に、弁護士の選任についてであります。
本件は、山中湖畔恩賜県有財産の貸し付けに係る長大な歴史的経緯の確認や複数の関係法令の解釈などが必要とされ、極めて困難な事件であることから、これらについて高い見識を有する弁護士に訴訟代理を委任する必要がありました。本件の訴訟代理人である弁護士は、平成二十九年に提起された住民訴訟の訴訟代理人を務め、山中湖畔恩賜県有財産の貸し付けに係る経緯について十分な知識を有し、関係する法令にも深く精通している者であったことから選任したものであり、その選任は適当であると考えております。
次に、控訴審での訴訟追行についてであります。
判決で当方の主張が認められなかった点については、補充説明を行っていくこととなります。具体的な内容については、今後の訴訟戦略にもかかわるので、この場での答弁は差し控えさせていただきます。
次に、これまでの弁護士費用は適切かつ妥当であったかについてであります。
控訴審の敗訴を前提とした費用の適正性については、お答えしかねます。
いずれにしても、調査委託契約の対象とした業務は、昭和二年から行っている極めて長大な歴史的経緯があり、その中で多岐にわたる争点や課題が複雑に絡み合っており、関係資料や調査のための作業量が膨大でありました。
さらには、地方自治法や借地法の解釈適用を初めとした複雑かつ難解な法的論点も数多く存在するものであったことなどから、調査に要した経費は妥当であると考えます。
また、第一審の着手金につきましては、厳しい交渉の結果、確認請求や仮処分申し立てを合わせ一本の契約とするほか、反訴を含めた内容といたしました。
加えて、住民訴訟と争点が一部共通することを考慮して、調査委託経費であります六千六百万円を控除するなど、最終的に旧日弁連報酬等基準で算定した場合、本来八億円余を要するところを、その五分の一を下回る一億四千万円余にまで大幅に縮減したものであり、適切なものと考えております。
次に、控訴審における着手金の額の経緯についてであります。
着手金につきましては、本来、審級ごとに支払う必要があり、一審では、訴訟代理人弁護士の選任及び報酬に関する指針に基づきまして契約を交わし支払いを行いました。控訴審におきましては、一審と同じ弁護士に委任すること、また、これまで議会において着手金を最少にすべきとの決議をいただいていたことを踏まえ、弁護士と交渉した結果、着手金を支払わない旨で内諾を得たところでございます。
以上でございます。
7
◯議長(
久保田松幸君)当局の答弁が終わりました。
以上で、鷹野一雄君の質疑を打ち切ります。
次に、臼井友基君の
発言を許します。臼井友基君。
(臼井友基君登壇)
8
◯臼井友基君 自由民主党新緑の会の臼井友基です。上程議案に対する質疑を行わせていただきます。
令和三年三月、富士急行株式会社が同社と県との間で締結している山中湖畔県有地に係る賃貸借契約の有効性の確認等を求め、県を提訴した訴訟の判決の言い渡しが十二月二十日にあり、県の敗訴という結果となりました。
この山中湖畔県有地を初めとする恩賜県有財産は、明治天皇より御下賜された県民全体の財産であり、その貸し付けに係る法的な問題は、県政にとって非常に重要な課題であります。
そして、この問題について、県議会の中でも賛否をめぐって激論が交わされた経緯もあり、公正中立な立場にある裁判所により司法判断が示されることが、この問題の解決を目指すに当たっては必要不可欠なものであると考えております。
そのため、第一審の敗訴判決を受け、県民の財産を預かる県の責務として、上級裁判所に控訴し、みずからの主張を尽くすことは、適切な県有財産の管理の観点からも必要なことであり、控訴については賛成の立場であります。
そして、この控訴において、県の主張が認められるよう、しっかりと対応していくことが重要となりますが、同時に控訴に係る費用については、県民負担を少しでも少なくする必要があります。
本件訴訟は、昭和二年に端を発した長期間にわたる事実経過があり、借地借家法、地方自治法など法律関係も複雑な案件であることから、その訴訟追行に当たる弁護士は、関係法令はもとより、本件の事実経過について精通する者を選任する必要があることは理解するものです。
しかしながら、議会の特別委員会や令和三年二月議会において、その費用が高額であるとして大変な議論となり、さらに、本件県有地に係る住民訴訟に関連した調査委託費や第一審の着手金については住民訴訟が提起され、現在、係争中と承知しております。
つきましては、このたびの控訴の訴訟追行に当たり、県民の関心の高い弁護士費用について、これまでの県議会等での議論を踏まえて、どのようにされるのか県の所見を伺います。
また、令和三年六月議会では、本件の反訴の提起に係る申し立て手数料として、一千五百万円余の予算を計上しておりましたが、今回の控訴に当たっての手数料について、どのように見積もられているのか、あわせて伺います。
以上です。
9
◯議長(
久保田松幸君)臼井友基君の質疑が終わりました。
これより、当局の答弁を求めます。知事、
長崎幸太郎君。
(知事
長崎幸太郎君登壇)
10
◯知事(
長崎幸太郎君)臼井議員の控訴の追行に必要となる弁護士費用及び申し立て手数料についての御質問にお答え申し上げます。
まず、弁護士費用につきましては、令和三年二月議会において、弁護士選任並びに報酬に関する基準を定め、透明性ある仕組みづくりに尽力するとともに、着手金を初めとして最少の経費となるよう努力することなどを求める附帯決議がなされました。
この附帯決議を踏まえ、同年三月三十一日の全員協議会における説明を経て、同年四月に訴訟代理人弁護士の選任及び報酬に関する指針を策定し、以降、この指針に基づいて訴訟代理人の選任などを行っております。
令和三年三月に富士急行株式会社から提訴された本件訴訟は、その経済的利益が大きいことに加え、昭和初期から九十年を超える歴史的経過や借地借家法や地方自治法等の複雑な法律関係を踏まえ、同指針の事件に係る経済的利益の額が大きい事件、その他の困難な事件に該当するものと判断しております。
この訴訟の第一審における訴訟委任契約では、着手金につきましては、旧日本弁護士連合会報酬等基準により算定すれば八億円余となるところ、交渉によりまして、一億四千三百万円までに縮減し、成功報酬は、反訴の勝訴により実際に確保した経済的利益を基準として、日弁連報酬等基準により算定した報酬の額の合計額から支払い済みの着手金を控除した額としたところであります。
そして、今回、訴訟追行を依頼する控訴審におきましては、裁判の最初の段階から第一審判決の問題点を的確に指摘することが最も重要であることから、住民訴訟及び本件訴訟を通じ、山中湖畔県有地に係る経緯や関係法令について最も精通している第一審の訴訟代理人弁護士を選任することが最適であると判断し、先日来交渉を行い、既に内諾を得たところであります。
交渉におきましては、同弁護士が、これまでの訴訟追行を通じて、控訴審において、なすべき県の主張について十分に精通していることや、第一審において一億四千三百万円のしっかりとした着手金を既に支払っていることなどの事情を踏まえ、着手金については、日弁連報酬等基準により算定すれば五億円超となるところを支払わないこととし、成功報酬については、第一審の契約内容に準じ、反訴の勝訴により実際に確保した経済的利益をもとに、日弁連報酬等基準により算定した着手金及び報酬金の額の合計額とすることで了解を得ております。
このように着手金の支払いはないことから、県民負担は発生せず、また、成功報酬については第一審と同様、反訴の勝訴により実際に確保した経済的利益、すなわち訴訟を通じて初めて回復することができた利益の中から支払うこととし、実質的に新たな県民負担が発生しないような契約内容となっております。
したがいまして、控訴審に係る弁護士費用は、交渉などの経費の削減の取り組みにより、新たな県民負担の発生を極力抑えたものとなっております。
次に、控訴に係る申し立て手数料は、控訴を提起するに当たって、民事訴訟費用等に関する法律により納付しなければならないとされている費用であります。
その算定方法は、第一審の訴えの提起の場合には、訴訟の目的の価額により定められ、控訴の場合は、訴えの提起の場合で算出して得た額の一・五倍の額と定められているところです。
このたびの控訴の主な対象は、令和三年三月、富士急行が県を提訴した山中湖畔県有地の賃借権を有することの確認等の請求と、同年七月、県が富士急行に対して起こした反訴における損害賠償等の請求の二つであります。
富士急行の提訴した賃借権を有することの確認等の請求については、訴訟の目的の価額は三十七億円余となります。また、県が提起した反訴の目的の価額は、損害賠償請求及び不当利得返還請求の九十三億円余であります。
これらを合わせて合計百三十一億円余を算定の基礎として機械的に算出すると、二千八百万円余となります。
以上をもちまして私の答弁といたします。
11
◯議長(
久保田松幸君)当局の答弁が終わりました。
以上で、臼井友基君の質疑を打ち切ります。
次に、宮本秀憲君の
発言を許します。宮本秀憲君。
(宮本秀憲君登壇)
12
◯宮本秀憲君 私は自由民主党・山梨の宮本秀憲です。自由民主党・山梨を代表して、控訴の必要性及び控訴の議決の必要性について質問いたします。
まず、控訴の必要性についてです。
山中湖畔県有地に係る契約に関する住民訴訟において、令和二年八月に県が方針転換を表明したことにより端を発した山中湖畔県有地の土地賃貸借契約をめぐる県と富士急行株式会社との訴訟は、第一審において県の敗訴という結果となりました。
この問題をめぐっては、県議会の中でも賛否がわかれ、多くの時間を費やし、執行部の主張内容の当否について議論が交わされてきたところです。
私は、過去から漫然と続けられてきた契約の法的適合性を吟味し、改めるべきは改めるとの姿勢のもと、批判を恐れず果敢にこの問題に切り込んだ知事の姿勢を高く評価しております。
また、この問題が県民生活の安定を願って、明治天皇より御下賜された恩賜県有財産のあり方にもかかわり、いやしくも県民全体の財産が各種法令に違反して一民間企業に利用され、そこで県民が享受すべき利益が還元されないといったことは断じてあってはならないものと考えております。
そこで、私は三審制を利用し、改めて上級審の判断を仰ぐべく控訴することは全く妥当な対応であると考えておりますが、知事自身の御所見を改めて伺います。
次に、控訴に係る議決の必要性についてです。
本件訴訟は、山中湖畔県有地という県民全体の財産に対するもので、そこから得られる利益は、県民全体に還元されるべきものであり、本件訴訟に関する判断は、今後の県政にとって極めて重大な影響を及ぼすものと考えます。
昨年六月議会における不法行為による損害賠償請求の一部及び不当利得を理由とする利得金返還請求の一部を求める反訴の提起には、県の請求が受け入れられない場合は上訴することもあわせて議決されていますが、今回改めて控訴に係る議案が提出され、その中で山梨県敗訴部分の取り消し及び相手方の請求の棄却等を求めるとあります。
県政に重大な影響を及ぼす点では、反訴に係る部分とそうでない部分で何ら異なることはなく、控訴に係る議決に反対すべき理由はないものと考えますが、反訴で議決済みの部分と重複することはないのか、なぜ改めて議決が必要なのか、お伺いいたします。
以上です。
13
◯議長(
久保田松幸君)宮本秀憲君の質疑が終わりました。
これより、当局の答弁を求めます。知事、
長崎幸太郎君。
(知事
長崎幸太郎君登壇)
14
◯知事(
長崎幸太郎君)宮本議員の控訴の必要性及び控訴の議決の必要性についての御質問にお答え申し上げます。
まず、控訴の必要性でありますが、判決日にコメントしたとおり、県の主張が認められなかったことは極めて残念であると考えております。
しかしながら、このままこの判決を受け入れた場合には、私が目指してきた県民全体の財産である県有地から得られる利益を県民に還元するという目標の達成が危ぶまれることとなります。県民資産の管理を適正に行う責務がある私としては、最大限の努力を行うべきとの観点から上訴し、さらに議論を深めることは当然のことであると考えております。
また、逆に富士急行の立場からしても、株主利益の観点から、確定した第一審判決にもかかわらず、支出をふやすような話合いに応じるのは難しくなるのではないかと推察するところでもあります。
したがいまして、控訴をして初めて話合いも可能になるであろうと考える次第であります。
いずれにしろ控訴審におきましては、県の主張が認められるよう全力を尽くしてまいります。
次に、控訴に係る議決の必要性についてですが、富士急行株式会社が提起した訴え、県の反訴のいずれも同社の賃借権の有無を基礎としており、県の反訴につきましては、令和三年六月議会で上訴を含め議決をいただいているところであります。
このため今回の甲府地方裁判所判決のうち、富士急行の請求に係る部分についても争点が同一である以上、改めての議決は必要ないとの解釈も成り立つ可能性があるところではあります。
しかしながら、富士急行側から提起された請求に関し上訴するには、議会の議決を得ることが原則であるとの指摘もあり得ることから、念のため、訴えの提起につきまして、改めて議会の御判断をいただくこととしたところであります。
以上をもちまして、私の答弁といたします。
15
◯議長(
久保田松幸君)当局の答弁が終わりました。
以上で、宮本秀憲君の質疑を打ち切ります。
次に、佐野弘仁君の
発言を許します。佐野弘仁君。
(佐野弘仁君登壇)
16
◯佐野弘仁君 県有地裁判控訴の件について、幾つかお尋ねいたします。
初めに、判決に対する評価と県民への周知についてであります。
十二月二十日判決、甲府地方裁判所令和三年(ワ)第二百三十八号損害賠償等請求反訴事件における、裁判に関する財政支出は、賠償金請求額からすれば当然高いものだと考えられますが、今回の判決で、支出の妥当性が問われるところであります。
今裁判の結果は、県の主張は棄却であり、富士急行株式会社の主張が認容され、県の主張は通らなかったことが司法の判断であります。
我々議会も、地方議会たりと言えども立法府の立場として、日本国憲法における三権分立をしんしゃくしなければならず、今回の司法の判断を尊重すべき立場にあります。
控訴に係る訴訟手数料は、民事訴訟費用等に関する法律により、訴え提起時の一・五倍を要するとされております。この結果、今回の県敗訴判決に控訴するには、実に二千八百七十一万円もの費用を要することになります。
県民の貴重な財産を使って控訴をするに当たっては、まず甲府地方裁判所で行われた判決の内容を子細に分析し、県としてどのような点が至らなかったのかを評価することが欠かせないものと考えます。
そこで質問します。県では、その請求棄却との判決に対し、どのように評価しているのか御所見をお伺いします。
また、第一審判決では、山中湖畔県有地に対し、県がこれまで行ってきた道路等のインフラ整備等土地の価値向上に向けた貢献が全く評価されなかったと承知しております。
こうした裁判所の判断や判決に対する疑問点は、県民にも周知する機会が設けられるべきものと考えますが、当局の御所見をお示しください。
次に、訴訟代理人弁護士についてであります。
本件の訴訟代理人弁護士である足立弁護士は、議会の県有地の貸付に関する調査及び検証特別委員会において、参考人として招致された際、過去からの経緯など綿密に調査・確認した上で証拠物もそろい、裁判に臨む論拠も正しく、確証がある旨を述べられていました。
今回、この県の主張が司法の場で棄却されるという厳しい判断を受けたことを県は重く受けとめ、法制担当部署の責任者は、裁判結果が相異なった理由について、これをただし確認を行ったのか、お伺いします。
また、その上で、当局の判断により説明に妥当性がなく、曖昧と少しでも判断された場合には、弁護士の更迭の模索、または、委任契約した弁護士をそのままにして、人数の補完を行うことも必要であるものと考えますが、当局の御所見をお伺いします。
また次に、足立弁護士の弁護士費用について、第一審では高額な着手金が問題となりました。
今後も訴訟を継続するのであれば、弁護士費用が適切であることについて、県民や県民の代表である議会に対し丁寧に説明をする必要があると思いますが、当局の御見解をお示しください。
反訴については、議会として議決している以上、上訴としては妥当性が明確にされれば理解できることであります。
議決されれば当然、手数料は必要でありますが、前県有地特別委員会での
発言内容や委員会での弁護士主張との相違をまず確認しなければなりません。
結審した後となるかとは思われますが、今回の結果とあわせ、知事並びに議会に対して相異なった情報等が確認された執行部説明内容についても、政治的正当性を担保しなければならない観点から、今後、必要であれば、県民のための県有地特別委員会から提案して、百条委員会を設置させ、説明をさせなければならない義務が議会にはあるものと考えます。
以上で、令和四年十二
月臨時会での質問を閉じさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
17
◯議長(
久保田松幸君)佐野弘仁君の質疑が終わりました。
これより、当局の答弁を求めます。知事、
長崎幸太郎君。
(知事
長崎幸太郎君登壇)
18
◯知事(
長崎幸太郎君)佐野議員の御質問にお答え申し上げます。
初めに、判決に対する評価と県民への周知についてです。
山中湖畔県有地の賃料は、現況と異なる昭和二年当時の開発前の山林原野をもとに算定されたものであり、これは地方自治法第二百三十七条第二項に定める適正な対価とは言えないことから、県は富士急行株式会社との契約が違法無効であり、賃借権は存在しない旨を主張してまいりました。
これに対し、判決では、過去において、開発前の山林原野をもとに継続賃料で算定するとの合意があり、その合意が繰り返されているがゆえに今回の賃料水準となるという判断が下されたところです。
賃借人の開発への貢献を踏まえつつも、周辺環境に見合った現実的な適正賃料、すなわち現況を基礎として、県民資産の実勢価格を反映した賃料を求めるという本県の趣旨がくまれない判決内容となったことは大変に残念であります。
今般の判決の論理をそのまま受け入れれば、一度貸してしまうと低廉な賃料を是正することが極めて困難となり、将来においても、適正な県民利益を確保できない状態が固定化するおそれがあります。
今後の訴訟追行内容にかかわる部分でもあるため詳細は差し控えますが、甲府地裁の御理解を得られなかった点について必要な主張立証を補充し、県民資産の実勢価値を反映した賃料を求めるという県の主張が認められるよう全力で対応してまいります。
また、議員御指摘の判決における裁判所の判断内容や疑問点に関する県民の皆様への周知につきましては、今後、控訴理由書における県の主張を固めた上で、その主張を県ウエブサイトに掲載するなどの対応を検討してまいります。
次に、訴訟代理人弁護士についてです。
県ではこれまでの訴訟追行において、決して弁護士だけに任せきりにしていたわけではなく、積極的に関与し、ともに取り組んでまいりました。したがいまして、県が弁護士を正すという認識ではなく、県としても今般の厳しい判決を重く受けとめているところであります。
今後、法律の専門家である弁護士とともに、裁判所が今回の判決を下すに至った理由や県の主張に何が足りなかったなどかについて、まずはしっかりと分析・検討を行い、控訴審において適切に主張立証してまいります。
また、控訴審におきましては、最初の段階から第一審判決の問題点を的確に指摘することが肝要であることから、控訴審において、なすべき県の主張に十分精通した第一審の訴訟代理人弁護士を再び選任することといたしました。
さらに、第一審での敗訴を踏まえまして、控訴審における訴訟追行の体制を強化するため、訴訟代理人弁護士の復代理人を四名に拡充することとしております。
一方、契約に向けた弁護士との交渉に際しましては、これまで議会において着手金を最少にすべきとの決議をいただいてきたことも踏まえ、弁護士と協議した結果、旧日弁連報酬等基準により算定すれば、五億円超となる着手金を今回は支払わない旨で内諾を得たところであります。
加えて成功報酬につきましては、第一審と同様、反訴の勝訴により実際に確保した経済的利益、すなわち訴訟を通じて初めて回復することができた利益の中から支払うこととし、実質的に新たな県民負担が生じることがないように配慮いたしました。
今後も、県民全体の財産である県有地から得られる利益を県民に最大限還元するということを念頭に、可能な限り県民負担を少なくするため、弁護士費用の縮減に努めてまいります。
以上でございます。
19
◯議長(
久保田松幸君)当局の答弁が終わりました。
以上で、佐野弘仁君の質疑を打ち切ります。
次に、小越智子さんの
発言を許します。小越智子さん。
(小越智子君登壇)
20
◯小越智子君 県有地訴訟の件についての質疑を行います。
山梨県からすると全面敗北、完敗の判決でした。双方合意のもとに結ばれた契約を違法無効、過去にさかのぼって損害賠償、不当利得を支払えという県の主張は、非常識で社会通念上あり得ないもので、そもそも勝利の見込みがない裁判であり、控訴しても勝利の見込みはないと思われます。県民の最大の利益を確保するためにも、違法無効などという主張は取り下げ、謙虚に話合いによる賃料交渉を進めるべきです。見解を伺います。
控訴するには理由があると思いますが、この判決のどこが県の主張と異なっているのか、次の裁判の争点をどう考え、県の主張をどのように補充していくのか伺います。
知事は記者会見で、「実勢価格に対して低廉過ぎる賃料を事実上、未来永劫に甘受せざるを得ない」と述べていますが、これはどういうことでしょうか。判決文のどこを根拠に
発言しているのか、具体的に説明してください。控訴しなければ賃料が上がらないと断定する
発言は、県民に誤解を与えるもので不適切ではありませんか。
判決文では、山梨県が貸付料適正化調査や三年ごとの不動産鑑定士による賃料の相当性の検証と知事宛てにその調査報告書の提出、また大学教授や弁護士等による森林総合利用協議会で貸し付けについて検証を行うなど、賃料決定を山梨県が主体的に進めてきたと述べています。富士急行と山梨県の合意のもとに継続賃料が連綿と続けられてきたのです。
富士急行側の主張として、地方自治法第二百三十七条第二項の適正価格とは、一般の概念により公正で妥当と認められる取引慣行に従い定められる価格が対価だと指摘しています。
すなわち、取引慣行に従い山梨県が賃料交渉を富士急行と進めていれば賃料引上げを見通すことができたのではありませんか。違法無効だと主張したことで富士急行からの裁判を惹起させ、本来話合い合意で賃料交渉すべきところを山梨県みずからその道を放棄してしまったのではありませんか。
話合いによる賃料交渉を放棄した長崎知事の責任は重大であり、県民の利益を最大化するどころか、逆にその道を閉ざしてしまったことになります。
控訴すれば、ますます賃料交渉のハードルが高くなることは明らかです。この責任をどう取るつもりか、伺います。
また、富士急行からも県民からも説明が求められているのは、なぜ突然、県の主張が百八十度方針転換となったかです。
方針転換についてメモ三枚などではなく、全てを明らかにするべきです。全面敗訴を引き起こしたのはこの方針転換にあります。
違法無効、損害賠償請求、不当利得請求という方針がどういう経過で決められたのか、誰の提案だったのか、詳細を示してください。
弁護士費用について伺います。
知事は、「県民感情を考慮して弁護士費用はゼロとした」と述べました。これは、一億四千万円は高いという県民感覚を認めたということです。
しかし、県として決めたルールに沿っていないとも言えます。知事の思い一つで変更できるとしたら、それは恣意的な運用とも指摘できます。
みずから定めた弁護士報酬基準が県民感覚からずれていると認めたのであり、巨額弁護士報酬基準そのものを改めるべきだと思います。お考えを伺います。
そもそも着手金一億四千万円の弁護士費用は不適切であり、旧日弁連報酬基準を導入し、得られる経済的利益を巨額に見込んだことで弁護士費用が自動的に引き上げられてしまいました。巨額弁護士費用を県が誘導したとも言えます。
そして、その弁護士の選任は、知事の専属的権限、裁量権だと知事は述べています。
巨額を支払い、全面敗訴した足立弁護士の任命責任について知事はどう考えるのか、伺います。
今後の見通しについて伺います。
議案が否決された場合には、再議にかけたり、反訴は議決済みとして高裁費用を専決処分したり、また今回の反訴は県が主張するところの損害賠償請求権のうちの一部請求となっているので、ほかの期間の損害賠償請求を提起することなどの検討はあるのですか。
また、訴えの提起の議案は上訴も含むとあります。最高裁まで争うことを考えているのですか。今回の裁判費用二千八百万円ですが、最高裁までとなれば、さらに金額は増すのではありませんか。
県の主張が最高裁まで行っても、敗訴となったとき、巨額弁護士費用は誰が責任を取るのか。県の信頼失墜の責任は誰が取れるのか、伺います。
以上です。
21
◯議長(
久保田松幸君)小越智子さんの質疑が終わりました。
これより当局の答弁を求めます。知事、
長崎幸太郎君。
(知事
長崎幸太郎君登壇)
22
◯知事(
長崎幸太郎君)小越議員の御質問にお答え申し上げます。
初めに、控訴審での見込みについてです。
控訴審で県の主張を認めてもらえるよう全力で対応してまいりたいと思います。
次に、判決に対する県の補充説明についてですが、判決で県の主張が認められなかった点については当然、補充説明を行うこととなります。その具体的な内容につきましては、訴訟戦略もあることから答弁は差し控えさせていただきます。
次に、話合いによる賃料交渉についてですが「話合いによる賃料交渉すべき」「取引慣行に従って賃料交渉すればよかった」との御指摘ですが、第一審判決をそのまま認容し、控訴しなければ、未来永劫、周辺環境に見合った実勢価格を反映した賃料を実現できなくなるおそれが大きいと考えております。
また、富士急行の立場からしても、控訴せず第一審判決を確定させてしまえば、株主利益の観点から当該確定判決にもかかわらず支出をふやすような話合いに応じるのは難しくなるのではないかと推察されるところであります。
のみならず、令和二年十二月議会において住民訴訟における和解を提案いたしましたが、残念ながら可決していただくには至りませんでした。このことから、今回の控訴は、このときに示された議会の御意思にも沿うものと考えております。
以上をもちまして私の答弁といたします。
他につきまして、部長からお答え申し上げます。
23
◯議長(
久保田松幸君)総務部長、
市川康雄君。
(総務部長
市川康雄君登壇)
24
◯総務部長(
市川康雄君)小越議員の御質問にお答えいたします。
まず、方針転換の経過についてであります。
住民訴訟で提起された県有林の貸し付けにおける適正な価格につきましては、これにしっかり真正面から向き合い、予断なく積極的な真実発見に努めることが県有財産を管理するものとしてのあるべき姿であり、当然の責務であると考えております。
こうした考えのもと、専門家の意見を踏まえながら、改めて山林原野として土地価格を評価するという従来の県の方針を検証した結果、現在の利用形態を基礎として土地価格を評価することが適正であるとの結論に達したところであります。
県として、県民全体の財産から得られる適正な利益を県民に還元できない状態が継続することは到底容認できないことから、県の主張を転換したものであります。
なお、住民訴訟の方針転換の経緯につきましては、県有地の貸付に関する調査及び検証特別委員会に会議記録のメモなど全ての資料をお示ししております。
次に、訴訟代理人弁護士の選任及び報酬に関する指針についてであります。
まず、同指針は、令和三年二月定例県議会におけます附帯決議を踏まえ、同年三月三十一日の全員協議会における説明を経て同年四月に策定したものであります。
そして、本件は同指針における訴訟の困難な事件に該当すると判断しており、同区分の着手金につきましては、旧日弁連報酬等基準に基づき算定した額を上回らない額としているところであります。
これに照らせば、第一審の契約内容なども踏まえて、着手金を支払わない旨を交渉により相手方弁護士と合意することは、何ら指針に反するものでもなく、むしろ令和三年二月議会の附帯決議にも沿うものであり、適当と考える次第であります。
また、同指針につきましては、我が国の弁護士費用を算定する基準として実務上広く用いられております旧日弁連報酬等基準によることとしていることから、改める必要はないと考えております。
次に、弁護士の任命責任についてであります。
本件は、山中湖畔恩賜県有財産の貸し付けに係る極めて長大な歴史的経緯の確認や複数の関係法令の解釈などが必要とされ、極めて困難な事件であることから、これらについて高い見識を有する弁護士に訴訟代理を委任する必要がありました。
訴訟代理人である弁護士は、平成二十九年に提起された住民訴訟の訴訟代理人を務め、山中湖畔恩賜県有財産の貸し付けに係る経緯について十分な知識を有し、関係する法令にも深く精通している者であったことから選任したものであり、その選任は適当であると考えております。
次に、着手金についてであります。
着手金につきましては、厳しい交渉の結果、確認請求や仮処分申し立てを合わせて一本の契約とするほか、反訴を含めた内容とするなど最終的に旧日弁連報酬等基準で算定した場合、本来八億円余を要するところ、その五分の一を下回る一億四千万円余にまで大幅に縮減したものであり、適切なものと考えております。
次に、議案が否決された場合の対応についてであります。
再議及び専決処分といった議案が否決された場合の対応について御質問いただいておりますが、県といたしましては御議決いただけるよう説明を尽くすのみであります。
また、議案が否決された場合におけます反訴で求めた期間以外の期間に係る損害賠償等の請求につきましては、控訴しない場合、判決が確定するため、他の期間に対する損害賠償請求や不当利得返還請求を行うことはできなくなることとなります。
次に、裁判手数料についてであります。
最高裁判所の裁判手数料や弁護士費用についてのお尋ねでありますけれども、控訴審について議論・審議がなされているこの段階におきましては、上告についての仮定の話については差し控えさせていただきます。
以上でございます。
25
◯議長(
久保田松幸君)当局の答弁が終わりました。
以上で、小越智子さんの質疑を打ち切ります。
次に、飯島修君の
発言を許します。飯島修君。
(飯島 修君登壇)
26
◯飯島 修君 リベラル山梨の飯島修です。リベラルの立場から甲府地裁の判決を受けた控訴の必要性について質問します。
甲府地裁の判決から一週間が経過し、新聞、テレビ等を通じて県内各地から、さまざまな声が届いています。
「結果的に県民の不利益となった」「県の主張に無理があったのでは」など、県の全面敗訴を受けて当然の結果とは思いつつショックを隠せない県民の率直な声であります。
甲府地裁は、「造成前の素地価格を基礎として算定された賃料額が地方自治法第二百三十七条第二項の適正な対価に当たらないなどということはできない」とはっきり判決を下しました。
そこで、改めてお伺いします。
長崎知事が、突然、違法無効と主張を転換したことで引き起こされた今回の訴訟でありますが、過去の契約が知事が指摘するように本当に違法無効であるなら、当然契約を結んだ当時の知事、県議会にもその責任を問われて当然だったと思います。ところが、当時の知事、議会はおとがめなしで、契約相手だけにその責任を押しつけてきた県の考え方には、当初から県民の間に不信感が広がっていました。
新聞報道からも、県が見解を百八十度転換した意思決定過程は不透明で、貸し付けた側の歴代の知事には賠償責任がないが、借りた側には故意過失があるとするなど、一般常識から考えても首をかしげることが多かっただけに、判決には納得させられたとの記述があります。
改めて、このことについて知事の見解をお伺いします。
そして、今回の司法の判断です。いわゆる違法無効に当たらないと白日のもとに明らかになりました。改めて、県の指摘する違法無効の根拠をお示しください。
また、知事は、令和二年の十一月議会において、「最終的に裁判所で判断を仰ぐべきではないか、こういう考えも一理あろうかとは思いますが、この問題に関しては、この山梨県である議会の先生方と私ども執行部こそが、この山梨のさまざまな県民の皆様の思い、あるべき姿を肌で感じている。我々以上に山梨について真剣に考え、真剣に取り組んでいる存在はこの世の中にいない」とおっしゃっています。
このとき、知事は、日本国の裁判制度を否定したと私は受け取りましたが、このことについて知事の御所見をお伺いします。
また、この論理に従うのであれば、今回は、いっそ司法の手に委ねないで、控訴ではなく山梨について真剣に考え、真剣に取り組んでいる議会と執行部あるいは契約者との真摯な話合いで円満に解決することが、今までの県の言動と一致する結果だと思いますが、知事の御所見をお伺いします。
以上であります。
27
◯議長(
久保田松幸君)飯島修君の質疑が終わりました。
これより当局の答弁を求めます。知事、
長崎幸太郎君。
(知事
長崎幸太郎君登壇)
28
◯知事(
長崎幸太郎君)飯島議員の御質問にお答え申し上げます。
初めに、私の
発言が司法制度を否定するものであるという議員の感想に対する私の所見についてお尋ねをいただいておりますが、どこをどう解釈すれば、そのような奇異な感想が導き出されるのか全く理解できません、というのが私の所見です。
次に、司法に委ねず話合いで解決することについてです。
司法に委ねずに話合いで解決すべきとの御指摘についてですが、第一審の判決をそのまま認容し、控訴しなければ、未来永劫、周辺環境に見合った実勢価値を反映した賃料を実現できなくなるおそれが大きいと考えております。
また、他方において富士急行の立場からしても、株主利益の観点から、確定した一審判決にもかかわらず支出をふやすような話合いに応じるのは難しくなるのではないかと推察されます。
御指摘のとおり、円満な解決は望むところですが、現時点におきましては、控訴して初めてその話合いも可能になろうと考える次第であります。
以上をもちまして、私の答弁といたします。
その他につきまして、担当部長からお答え申し上げます。
29
◯議長(
久保田松幸君)総務部長、
市川康雄君。
(総務部長
市川康雄君登壇)
30
◯総務部長(
市川康雄君)飯島議員の御質問にお答えいたします。
まず、歴代知事の責任を否定していることについてであります。
過去の裁判例などに照らし、歴代知事の法的な責任を追及するには、故意または重過失と評価し得る程度の過失がなければならないとされているところ、住民訴訟に係る検証委員会の中間報告におきましては、歴代知事の責任については落ち度はあったものの重過失と評価し得る程度の過失があったとは言えないとの結論を得たところであります。
他方で、同報告におきましては、富士急行株式会社は造成前の素地価格を基礎として適正賃料額を算定すべき事情が存在しないことを認識していたにもかかわらず、造成前の素地価格を基礎として算定された賃料額に合意していたことから、不法行為上の故意または過失が認められるとの結論も得ているところであります。
純粋な法的議論を踏まえた結果でありまして、何ら不合理はないと考えております。
次に、違法無効の根拠についてであります。
地方自治法第二百三十七条第二項におきましては、県有地の貸し付けは、条例または議会の議決がない限り、適正な対価によらなければならないと規定されております。
そして、富士急行株式会社が主張する賃料は、周辺環境に見合った現実的な適正賃料とは到底言えない水準のものです。
同項に違反する行為につきましては無効と解するのが裁判例及び学説ですので、無効である旨を主張しているところでございます。
以上でございます。
31
◯議長(
久保田松幸君)当局の答弁が終わりました。
以上で飯島修君の質疑を打ち切ります。
これをもって質疑を終結いたします。
───────────────────────────────────────
32
◯議長(
久保田松幸君)次に、議案の付託について申し上げます。
ただいま議題となっております第二百三十五号議案及び第二百三十六号議案については、お手元に配付の議案付託表のとおり、総務委員会に付託いたします。
───────────────────────────────────────
令和四年十二
月臨時会
付 託 表
総務委員会
第二百三十五号 令和四年度山梨県一般会計補正予算
第二百三十六号 訴えの提起の件
───────────────────────────────────────
33
◯議長(
久保田松幸君)ただいま付託いたしました議案は、お手元に配付の委員会日程表によって審査を願います。
───────────────────────────────────────
委 員 会 日 程 表
┌─────────────┬─────────┬───────┬────────────────┐
│ │ │ │ │
│ 委 員 会 名 │ 月 日 │ 委員会室名 │ 備 考 │
│ │ │ │ │
├─────────────┼─────────┼───────┼────────────────┤
│ │ │ │ │
│総 務 委 員 会│ 十二月二十七日 │第一委員会室 │総務 │
│ │ │ │ │
└─────────────┴─────────┴───────┴────────────────┘
───────────────────────────────────────
34
◯議長(
久保田松幸君)この際申し上げます。
本日の会議時間は議事の都合により、あらかじめこれを延長いたします。
暫時休憩いたします。
午後二時四分休憩
───────────────────────────────────────
午後五時十分再開議
35
◯議長(
久保田松幸君)休憩前に引き続き会議を開きます。
日程第二、報告をいたします。
会議規則第七十六条の規定に基づき、総務委員長から、第二百三十五号議案及び第二百三十六号議案にかかわる審査の結果について、お手元に配付の委員会報告書のとおり提出がありました。
───────────────────────────────────────
総 務 委 員 会 報 告 書
本委員会に付託された事件は、審査の結果左記のとおり決定したので、山梨県議会会議規則第七十六条の規定により報告します。
記
┌────────┬──────────────────────────────────┬─────┐
│ 事件の番号 │ 件 名 │審査の結果│
├────────┼──────────────────────────────────┼─────┤
│ │ │ │
│ 第二百三十五号│令和四年度山梨県一般会計補正予算 │ 可 決 │
│ │ │ │
│ 第二百三十六号│訴えの提起の件 │ 可 決 │
│ │ │ │
│ │ 附帯決議 │ │
│ │ │ │
│ │ 県議会の議決を受け、県が控訴する場合、甲府地方裁判所による判決の内│ │
│ │ │ │
│ │容を十分精査し、控訴における請求の内容については、同判決に対する反論│ │
│ │ │ │
│ │を適切に行いつつ、県民の利益の最大化を図り、具体的な経済的利益を確保│ │
│ │ │ │
│ │するため、必要に応じて、従前の県の主張を繰り返すことに固執することな│ │
│ │ │ │
│ │く、訴訟方針の見直しを検討すること。 │ │
│ │ │ │
└────────┴──────────────────────────────────┴─────┘
令和四年十二月二十七日
総務委員長 卯 月 政 人
山梨県議会議長 久保田 松 幸 殿
───────────────────────────────────────
36
◯議長(
久保田松幸君)次に、日程第三、知事提出議案、第二百三十五号議案及び二百三十六号議案を一括して議題といたします。
本案に対する委員長の報告は、会議規則第四十条第三項の規定に基づき、委員会報告書は配付いたしましたので、これを省略いたします。
これより、委員長の報告に対する質疑に入ります。質疑はありませんか。
(「なし」と呼ぶ者あり)
37
◯議長(
久保田松幸君)質疑を打ち切ります。
これより討論に入ります。
発言の通告がありますので、順次
発言を許します。
まず、志村直毅君の
発言を許します。志村直毅君。
(志村直毅君登壇)
38
◯志村直毅君 自民党誠心会の志村直毅です。
第二百三十五号議案及び第二百三十六号議案に反対討論を行います。
問われてきた論点は、貸し付けている県有地の賃料が適正な対価に当たるのか、契約は違法無効なのかということでありました。
判決は述べています。「本件賃貸借契約は、原告、富士急行が本件各不動産において別荘事業等の事業を行うことを目的になされたもので、賃貸借契約締結後、たまたま別荘事業等が軌道に乗り、造成に要した費用を償却することができたとしても、造成後の現況を基礎とした賃料に改定・変更することは、昭和二年の貸し付け時や本件賃貸借契約締結時における当事者の合理的意思にかなうものとは認められない」。
さらに「被告、県は一定の賃料収入を得るという利益を得るものであるところ、それを超えて価値の上昇に伴う利益を享受する経済合理性は認められない。そして仮に造成費用の償却が完了していたとしても、そのことを理由に造成後の現況を基礎とした賃料への改定・変更を認めることは、何ら造成に伴うコスト及びリスクを負っていない賃借人である被告、県がみずから寄与していない本件各不動産の価値の上昇に伴う利益を享受することを意味し、およそ不相当であって経済合理性を欠く」と述べています。
加えて、「被告、県は本件各不動産に関し、固定資産税に相当する市町村交付金について、現行賃料を市町村交付金として適正な相当額が上回っているなどとして、現行賃料は適正な対価とは言えないと主張しているが、実際の金額ではなく、被告、県の想定に基づく市町村交付金相当額を前提とした上で、それとの比較において現行賃料が下回っているとするものであり、およそ失当であると言わざるを得ず、採用できない」と断じています。
そして結論です。「平成九年契約及び平成二十九年契約の賃料は、本件各不動産の時価としての賃料に当たるものというべきであり、同賃料に基づく貸し付けは適正な対価のない貸し付けに当たるなどということはできないというべきである」。
常識的な判決でした。
私たち自民党誠心会がこれまで指摘してきた問題点、恣意的とさえ思われる不動産鑑定をもとに適正な賃料は六倍であるとの主張。ゆえに適正な対価でないため、契約は違法無効であるとの主張。和解の勧試はなかったのに、あたかもなされたかのような提案理由の説明を行ったこと。職員給与費からの予算流用で、あっという間に訴訟の調査業務委託費六千六百万円を支出。専決処分で一億四千万円以上の弁護士費用を支出。
何よりも法的な手続からすれば民法上の賃料増減請求権の行使が正しい手段であり、信義則の原則からすれば契約の当事者間で賃料の見直しについて、まず協議するところから始めるべきであったこと。こうしたことも、はっきりとした判決結果でしょう。
契約は有効、賃料は適正。これが判決の結果です。
長崎知事と足立弁護士の主張が入り込む余地のない、みじんの隙間もない全面敗訴。そして大きな大きな税金の無駄遣いです。
過去の知事にまで損害賠償を請求しようとし、職員を傷つけ、議会も傷つけ、県行政への信頼を傷つけ、何をしたいのでしょうか。失われた利益と主張している内容は、捕らぬ狸の皮算用ではないでしょうか。
これまで県有地の活用に御尽力してこられた全ての先人の方々、すなわち、井戸を掘った人たちに対する恩を仇で返すような暴挙とも言える無謀な反訴に対して、判決は明確にノーを突き付けたのです。
この結果を受け、直ちに控訴するとの長崎知事の姿勢には、県民の皆様から疑問の声が巻き起こっています。
「一審で百対ゼロの明確な結果が出た。三権分立の観点からも議会は司法の判断を尊重するべきだ」「知事は公権力で私怨を晴らそうとしているのではないか。いじめをしているに等しいのではないか」こうした声が議員各位に届くでしょうか。県民は見ています。議員の賛否もしっかりと見ています。
議員各位の賢明なる判断を祈念して、反対討論といたします。
39
◯議長(
久保田松幸君)次に、長澤健君の
発言を許します。長澤健君。
(長澤 健君登壇)
40
◯長澤 健君 自由民主党新緑の会の長澤健です。
私は第二百三十五号議案の一般会計補正予算及び第二百三十六号議案の訴えの提起について、原案に賛成の立場から討論を行います。
私が議員になる前でありますが、訴訟の追行に必要な弁護士費用については、令和三年二月議会において附帯決議を行い、弁護士選任並びに報酬に関する基準を定め、透明性ある仕組みづくりに尽力するとともに、着手金を初めとして最少の経費となるよう努力すること等を求めました。
県においてはこの附帯決議を踏まえ、令和三年四月に訴訟代理人弁護士の選任及び報酬に関する指針を策定し、これまで、この指針に基づき訴訟代理人の選任を行い、着手金を最少にするために努力を重ねてきているものと承知しております。
今般の第一審における敗訴の判決を受け、長崎知事は、県民全体の財産である県有地から得られる利益を県民に最大限還元するためベストを尽くすとし、控訴の決断をされました。
私もこの考えに賛同するものでありますが、控訴審においては県の主張が認められるようしっかりと対応していくとともに、訴訟に関わる費用については、県民負担を極力少なくする必要があることは言うまでもありません。
控訴審では、最初の段階から第一審判決の誤りを的確に指摘することが極めて重要であります。
したがって、先ほど知事が質疑に対する答弁で述べたように、控訴審においてなすべき県の主張に十分精通した第一審判決の訴訟代理人弁護士を再び選任するという県の判断は妥当なものであると考えます。
また、県は契約に向けた弁護士との交渉に際し、第一審において十分な着手金を既に支払っていることも踏まえ、日弁連報酬等基準により算定すれば五億円超となる着手金を今回支払わないこととしました。
さらに成功報酬については、第一審と同様、反訴の勝訴により、実際に確保した経済的利益、すなわち訴訟を通じて初めて回復することができた利益の中から支払うこととし、実質的に新たな県民負担が発生しないよう努力したことも大いに評価できます。
なお、控訴を提起するため裁判所に納付する手数料については法律の定めにより訴訟の目的の価格から機械的に算出されるものであり、請求内容も十分に精査されているものと認められ、必要最小限のものとなっていると考えます。
以上のことから、今般の控訴に伴う補正予算は必要不可欠なものであると考え、賛成討論といたします。
41
◯議長(
久保田松幸君)次に、小越智子さんの
発言を許します。小越智子さん。
(小越智子君登壇)
42
◯小越智子君 富士急行からの債務不存在等確認請求裁判の高裁へ控訴する訴えの提起、並びに控訴費用の補正予算に反対の討論を行います。
完膚なきまでの全面敗訴判決で高裁への控訴は勝訴の見込みがありません。そもそも山梨県の主張は非常識で、社会通念上もあり得ない主張で、全面敗訴は当然の結果であり、負けるべくして負けた裁判です。
控訴は税金の無駄遣いであるとともに、富士急行との賃料交渉をさらに困難にさせるものです。
控訴ではなく判決を受け入れ、これまでの山梨県の、ずさんな県有林管理こそ検証し、富士急行と真摯に向き合い、賃料交渉を要請するしかありません。ここで控訴をすれば、賃料交渉の道をさらに難しくします。
判決文では「適正な対価とは、当該普通地方公共団体が損失をこうむることがないと客観的に評価し得る価額のことを指し、原則として当該財産の時価を言うものと解すべき、そして当該財産が不動産である場合の時価とは、その価額が客観的な算定方法に基づいて算出された金額であること」と述べています。
客観算定方法は不動産鑑定評価基準によるものです。富士急行とは契約によって連綿と賃料が双方合意のもとに決められてきました。
契約当事者間で合意しており、継続賃料です。「継続賃料は、直近合意時点以降、近隣地域や類似地域の賃料や契約内容を総合的に勘案し、契約当事者間の公平の留意の上に決定する」と述べられています。つまり、賃料増減の検討について、当事者間で検討され、合意がなされるとされる、一般常識的には疑う余地もない当然の帰結です。
山梨県は近隣地域や類似地域との賃料も勘案して富士急行と交渉してきたのかが問われます。
富士急行の転貸について容認してきました。低すぎる賃料は山梨県の責任です。
山梨県において貸付料適正化調査が行われ、三年ごとに不動産鑑定士による賃料の相当性が検証され、知事に調査報告書が提出され、森林総合利用協議会で貸し付けについても検証が行われています。つまり、山梨県が主体的に賃料額の相当性を検討した上で、富士急行と合意に至っているのであり、違法無効、損害賠償請求など到底言える立場ではないのです。
正当な賃料交渉をしてこなかった県の責任こそ追及されるべきです。
ところが、県の責任は棚上げにして裁判に訴え、非常識な主張を繰り返し、賃料交渉の道を閉ざしたのです。
長崎知事の責任は重大です。知事の言うところの県民の最大の利益どころか、長崎知事によって巨額弁護士料を支払い、全面敗訴し、賃料交渉の道も困難になった県民の利益を損なう大事態です。
山梨県が突然の方針転換をすることは、県内企業や進出企業に不安を与え、信頼関係を損ねることになります。
今回の判決は、過去の賃料算定をめぐるものであり、未来永劫賃料引き上げできないのだと判決には書かれていません。控訴しなければ県民の利益が得られないという主張は到底納得できるものではありません。何を争点にするかも示さず、ただ控訴ありき、白紙委任です。
巨額弁護士料について「優秀な弁護士だから高額だ」「経験したことがないほどの経済的利益を得られるのだから」と
発言があったことも記憶しています。
弁護士料は県民感覚とずれています。違法無効という方針転換は足立弁護士の提案だと答弁がありました。その結果、巨額が山梨県の利益にもたらせると言われ、そして巨額弁護士料に導かれました。
弁護士の選定は、知事の専権事項だと述べ、長崎知事が足立弁護士を任命したのです。任命責任が問われます。トップダウンでリスクと責任を一手に引き受けるのであれば、責任をとっていただきたいと思います。
県有地をめぐる検証特別委員会の廃止に当たって、何人かの議員から「司法の判断、訴訟で決着をつけることが一番」と述べられました。反訴には私だけが反対しました。
反訴で司法の判断を待つとして議決したのであれば、今、司法の判断は下されたのです。
控訴に賛成することは二億五千万円の費用、多くの県民からの「控訴はやめよ」の声を聞き入れず、唯々諾々と税金をつぎ込むことを認めることになります。
双方の合意の下に契約を結んだことも一方的に突然、過去にさかのぼって六倍の賃料を支払え、こういう主張は理不尽、非常識、傲慢な主張です。こんな主張が可とされたら日本の契約社会は成立しません。
県民は見ています。負ける裁判にこれ以上税金をつぎ込むのか、不条理な理不尽な主張をこれ以上続けるのか、知事の提案に何でも賛成するのか、県議会議員の良心に立ち、議会としてすっぱりと否決することを願い反対討論とします。
43
◯議長(
久保田松幸君)次に、浅川力三君の
発言を許します。浅川力三君。
(浅川力三君登壇)
44 ◯浅川力三君 私は、第二百三十五号議案の一般会計補正予算及び第二百三十六号議案の訴えの提起について、原案に賛成の立場から討論を行います。
山中湖畔県有地をめぐり、平成二十九年の住民監査請求に端を発し、富士急行株式会社は県を相手として同社が賃借権を有することの確認及び不法行為及び不当利得による債務の不存在の確認を求めて訴えを提起いたしました。
これに対し、県も同社を相手として不法行為による損害賠償及び不当利得による利得金の返還を求めて反訴を提起し、これまで一年以上、六回にわたり訴訟で双方の主張が交わされてきました。
本件訴訟は、地方自治法第二百三十七条第二項に規定する適正な対価とは何か、それに違反した場合の契約の効果はどのように考えるべきか、適正な対価の算定に当たって基礎とすべき土地の現況ではないか、といった極めて高度な法律的解釈論を伴うものであり、見解が分かれることは当然あり得ることであります。
のみならず、山中湖畔県有地に係る可能な限りの措置を講ずることが今、我々に求められているというべきであります。
また、そうすることが法律に従い、行政事務を進めることを求める近代国家の大原則たる法律に基づく行政の原理にも合致するものであると考えます。
もちろん、控訴するにも費用がかかります。しかしながら、本件について控訴を見送り、第一審判決を確定させてしまえば、もし後になって県民利益の回復に資する新たな法的観点が発見されても、もはや争うことはできなくなります。その場合の県民がこうむる不利益は測り知れず、断じて容認できません。
今後、県有地の貸付事務を正確かつ確実に遂行するためにも今回、控訴を行うべきであるとの長崎知事の判断は正しく、まさにそのために、今回の上程議案を是が非でも成立させなければならないと確信し、賛成討論といたします。
45
◯議長(
久保田松幸君)次に、飯島修君の
発言を許します。飯島修君。
(飯島 修君登壇)
46
◯飯島 修君 リベラル山梨の飯島修です。
第二百三十五号議案及び第二百三十六号議案に反対の討論を行います。
私は県有地の賃料見直しには一貫して賛成の立場をとってきました。しかし、南アルプス市の男性から県が訴訟を起こされ、それを契機に県有地に関する特別委員会が議会に設置され、私もその委員の一人として議論を重ねてきました。
その中で、さまざまなことが明らかになりました。県の主張する和解条件の二十億円の妥当性について議論をする中で、別の不動産鑑定士から、それより以前に約六億九千万円の提示があったこと。
議会に提出された和解案提案理由に「裁判所から和解の試みがされた」との記述は、当時、甲府地裁、鈴木裁判長からは「裁判所としては和解を勧めていない」とその事実を否定する
発言があるなど、いままで議会には知らされていなかったことが次から次へ明らかになり、驚きの連続でありました。
何よりも、方針の大転換がされたにもかかわらず、それに至った会議の議事録が提示されず、手書きのメモ三枚という信じがたい事実も印象に残る一つの例であります。
知事が昨日、説明要旨の中で、「この県有地問題は法延だけでなく、県民の皆様から選ばれた県議会でも活発に論じられることとなり、県民の皆様の前に問題の所在が明らかになりました。このこと自体、歴史的な意義があるものと考えております」とおっしゃっています。まさにそのとおりであり、特別委員会での議論は、議会の真骨頂であり、県民に開かれた議会をお示しできたと思っています。
さて、配付された今回の判決要旨及び判決文に目を通しましたが、判決内容は常識かつ社会通念上に則り、新聞が報道しているとおり、まさに県の完全敗訴であります。県がこれまで一貫して、錦の御旗として主張してきた地方自治法第二百三十七条第二項の適正価格に当たらないとの主張は、きっぱりと却下されました。
これらのことを勘案し、県はこの判決を一審は通過点と捉えるのではなく、この結果を謙虚に受け取るべきであります。方針転換後の県有地問題に対する県の姿勢、考え方への司法からの警鐘だとも言えます。
一昨年一月の特別委員会に参考人として出席された元山梨県弁護士会所属の鬼丸最高裁判所元判事が「三権分立の民主主義の日本では、司法の手に委ねて裁判所の選定した中立公平な不動産鑑定士からの見解を聞き、解決していく方法が一番公正でスピーディー」と
発言しました。まさにその結果が今回の判決であります。
先日、ある炊き出しの会に行ってきました。寒空のもと、炊き出しを頼りに集まる方がこんなに多いのかと正直ショックを受けました。その日の食費に困窮している方の目には、約二億円の裁判費用はどう映るのでしょうか。全ての県民に豊かさを感じてもらうには、まず困窮している方々に手を差し伸べることが優先されるべきと思います。
控訴してもその結果は決して期待できず、貴重な時間と県民の血税を再び投入する今回の控訴並びに補正予算には反対です。
最後に、誤解されるといけないので申し上げます。
私個人は、長崎知事の発想力、フットワークのすばらしさを時に感じ、県民にとってプラスになると思われる施策にはこれまでも賛成し、拍手を送ってきました。
リベラルの立場は通すものの、何でもかんでも反対ではありません。当然、知事の人格を否定するものでもありません。
また、議会人として山梨県議会基本条例にあるように、「議会は地方公共団体の意思決定を行う議決機関としての役割と、知事
執行権に対する監視を行う機関としての責務を担っている」このことも県民の付託を受けた県議会議員が忘れてはいけない大切な使命であることを私自身、今一度肝に銘じ、釈迦に説法であるかとは思いますが、全ての議員の皆様に申し上げ、反対討論とします。
47
◯議長(
久保田松幸君)次に、水岸富美男君の
発言を許します。水岸富美男君。
(水岸富美男君登壇)
48 ◯水岸富美男君 私は、第二百三十五号議案の一般会計補正予算及び第二百三十六号議案の訴えの提起について、原案に賛成の立場から討論を行います。
令和三年六月議会において、県が富士急行株式会社に対し不法行為を理由とする損害賠償請求等を求めて反訴を行うべく、地方自治法第九十六条第一項第十二号による審議を求める議案が提出されました。
この反訴の可否を審議する議案を改めて確認しましたが、同議案には「反訴において請求が認容されないときの上訴を含む」との一文が付加されております。
我々は、この議案を賛成多数で承認しました。その際、表決者総数三十五名に対し、賛成者は三十四名であり、大多数が賛成しております。つまり、我々議会は、この山中湖畔県有地をめぐる紛争の解決を司法による判断に最後まで委ねることを
選択したのであります。
もう一度申し上げます。
我々はこの議案を賛成多数で承認しました。その際、表決者総数三十五名に対し、賛成者は三十四名であり、大多数が賛成しております。つまり、我々議会は、この山中湖畔県有地をめぐる紛争の解決を司法による判断に最後まで委ねることと
選択したのであります。
したがって、我が自民党勁草の会としては、議会人としての筋を通すべく、一事不再理と言わないまでも、当該議案は当時の議案を追認する議案であるとの結論に至りました。
仮に、反訴以外の部分に係る控訴の提起及び控訴に要する訴訟手数料の補正予算を認めないとすれば、事実上県は控訴ができないこととなり、我々自身が下した司法による解決との方針に反する結果となります。
もちろん、控訴に要する費用は決して少額のものではありません。しかし、執行部は令和三年二月に附帯決議した最少の経費となるよう努力することとの内容に従い、控訴において請求する内容も精査した上で、訴訟手数料を算出しており、補正予算額自体は必要最小限のものとなっていると認められます。
審判対象の価値が大きいからこそ、手数料も高額になるものであり、目先の金額の多寡のみにとらわれるべきではありません。
県有地の問題は、今後の県政に大きな影響を及ぼすからこそ、曖昧な決着をつけるべきではないのです。控訴の提起及びそれに要する費用を認めることが昨年度の六月議会において、みずから下した判断と整合するものであると考え、賛成討論といたします。
49
◯議長(
久保田松幸君)以上で、討論を打ち切ります。
これより、第二百三十五号議案及び第二百三十六号議案を一括して起立により採決いたします。
本案に対する委員会の報告は可決であります。
お諮りいたします。本案は委員会報告書のとおり可決することに賛成の諸君の起立を求めます。
(賛成者起立)
50
◯議長(
久保田松幸君)起立多数であります。よって、本案は、委員会報告書のとおり可決することに決定いたしました。
以上で、本臨時会に付議されました案件は全て終了いたしました。
これをもって、令和四年十二月山梨県議会臨時会を閉会いたします。
午後五時四十分閉会
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