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2003-02-05 平成15年_第1回定例会(第1号) 本文

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  1. 東京都議会 2003-02-05
    2003-02-05 平成15年_第1回定例会(第1号) 本文


    取得元: 東京都議会公式サイト
    最終取得日: 2023-06-14
    午後一時一分開会・開議 ◯議長(三田敏哉君) ただいまから平成十五年度第一回東京都議会定例会を開会いたします。  これより本日の会議を開きます。      ━━━━━━━━━━ ◯議長(三田敏哉君) まず、会議録署名議員の指名をいたします。  会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において    七  番 柿沢 未途君 及び    六十七番 真鍋よしゆき君 を指名いたします。      ━━━━━━━━━━ ◯議長(三田敏哉君) 謹んでご報告申し上げます。  大田区選出曽雌久義議員には、去る一月二十一日逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。  ここに生前のご功績をたたえるとともに、故人のご冥福をお祈りし、議会として深甚なる弔意を表します。  なお、曽雌議員の告別式に際しましては、議会を代表して議長より弔辞を贈呈し、深甚なる弔意を表しておきました。  ここで、故曽雌久義君に弔意を表するため、松原忠義君より発言の申し出がありますので、これを許します。  四十番松原忠義君。    〔四十番松原忠義君登壇〕 ◯四十番(松原忠義君) 追悼の辞。  大田区選出の曽雌久義議員には、去る一月二十一日午前二時四十分に急逝されました。  享年五十六歳、政治家として、今後一層の飛躍と熟達した政治手腕の発揮が期待されていただけに、惜しんでも余りあるご生涯であり、まことに痛惜の念にたえません。
     ここに私は、皆様のご同意によりまして、東京都議会を代表し、謹んで曽雌久義議員への哀悼の言葉を述べさせていただきます。  曽雌議員は、昭和五十四年、三十二歳の若さで、地域の皆様の強い支持のもとに大田区議会議員に当選され、政治家としての第一歩を踏み出されました。以後、区議会議員としての六年余りの間に、建設委員会委員長文教委員会委員長などの要職を務められ、まちづくりや地域の産業振興、さらには教育の充実などに尽力されました。  私も大田区議会議員として二年間、ともに仕事をする機会がありましたが、当時から、地元を愛する気持ちが人一倍強く、何事にも誠意を持って取り組む姿勢は、地域の方々はもとより、同僚の議員や職員からも大変に慕われておりました。  このような区議会議員時代の実績と豊富な経験を生かすべく、地元の方々の熱い期待に支えられ、昭和六十年、東京都議会議員に当選され、ご活躍の場を都政に移されました。  その後、都議会議員として五期連続当選を果たされ、十七年の間に、特に福祉の分野には若いころから大変な情熱を注がれ、都議会においても、福祉といえば曽雌とまでいわれるほど、福祉施策の充実に打ち込んでこられました。  その足跡は枚挙にいとまがありませんが、行財政改革などの推進により福祉財源を確保しつつ、乳幼児医療費助成事業高齢者サービス事業の拡充を図るなど、一貫して地域に根差した福祉の発展に力を注いでこられました。また近年では、厚生委員会委員長として、さまざまな困難を乗り越え、都の福祉制度の大改革を推進されたことも記憶に新しいところであります。  一方、曽雌議員が所属する都議会公明党におかれましても、政務調査会長や幹事長代行といった要職にあって、党務や若手議員の育成に尽くされたほか、公明党東京都本部の政策局長として、二十一世紀東京改革プランの改訂版をまとめられるなど、各方面に卓越した手腕を発揮してこられたと伺っております。  これら数々の業績に加えて、曽雌議員はお人柄が温和なことでも知られ、強い意思を内に秘めながらも、その穏やかで思いやりを持った話しぶりには、会派を超えて、多くのファンを持つ方でございました。  また、委員会の運営においても、委員の間や執行機関との間の調整にみずから進んで当たられ、裏方として困難な役回りでさえ真正面から受けとめ、黙々と務めておられました。また、ふだんの活動においても、自己の業績を殊さらに誇示することなく、むしろ異なる会派の私が歯がゆく思うほど、控え目な振る舞いをされる方でもありました。  さらに、昨年十月に開催された都議会開設六十年記念行事においては、ご自身でお調べになった資料をもとに、中学生からの質問に一つ一つ丁寧にわかりやすくお答えになったとのことであります。その際、相手の中学生に対しても、決して軽んじることなく、純粋であるがゆえに行き過ぎた意見には優しく諭しつつ、誠実に議論されたと聞いております。  このような曽雌議員は、ご家庭にあっても温かい思いやりを持って奥様に接してこられました。また、よき父として三人のお子様に限りない愛情を注がれて立派に育ててこられました。ご自身は、都議会野球部の名ショートとして鳴らしたスポーツマンでありましたが、高校の野球部で大活躍されていたお子様のことを初め、ご家族のことを話されるときのうれしそうなお顔が思い出されてなりません。  今、我々都議会議員には、知事とともに、都が直面する危機を一丸となって乗り切り、都民のための住みよい東京に再生していくことが強く求められております。こうした折に、曽雌議員のような得がたい都政の同志を失ったことは、極めて大きな損失でございます。  私たちは、曽雌議員の死を深く悼みつつも、曽雌議員が生涯をかけ情熱を傾けてこられた都政の発展に向けて、これを引き継ぎ、一層努力していくことで、その遺志にこたえたいと思います。  曽雌議員、どうか安らかにお眠りください。  最後になりましたが、ご遺族の方々がこの悲しみを乗り越えて力強く歩まれることを切望しつつ、曽雌議員のご冥福を心からお祈り申し上げまして、追悼の言葉とさせていただきます。   平成十五年二月五日 東京都議会代表 松原 忠義 ◯議長(三田敏哉君) 以上をもって松原忠義君の発言は終わりました。      ━━━━━━━━━━ ◯議長(三田敏哉君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。 ◯議事部長(稲熊明孝君) 平成十五年一月二十九日付東京都告示第五十一号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。  また、平成十五年一月二十九日及び二月五日付で、本定例会に提出するため、議案百四十四件の送付がありました。  次に、知事及び各行政委員会より、平成十五年中における東京都議会説明員及び説明員の委任について、地方自治法第百二十一条及び東京都議会会議規則第四十二条の規定に基づき、それぞれ通知がありました。  次に、東京都包括外部監査人より、平成十五年二月五日付で、平成十四年度包括外部監査報告書の提出がありました。  次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について、報告が二件ありました。  内容は、訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告について、並びに東京都高等学校・大学等進学奨励事業に係る貸付金の償還免除に関する報告についてであります。  最後に、監査委員より、平成十四年度各会計定例監査及び例月出納検査の結果について、それぞれ報告がありました。 (別冊参照)      ━━━━━━━━━━ ◯議長(三田敏哉君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。  平成十四年第四回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。    〔文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾    (一九ページ)に掲載〕      ━━━━━━━━━━ ◯議長(三田敏哉君) 次に、閉会中の常任委員の所属変更について申し上げます。  去る一月二十八日付をもって、お手元配布の名簿のとおり、各委員より常任委員の所属変更の申し出がありましたので、委員会条例第五条第三項ただし書きの規定により、議長において、それぞれ同日付をもってこれを許可いたしました。  お諮りいたします。  本件は、議長の許可のとおり承認することにご異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ◯議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、それぞれ議長許可のとおり承認することに決定いたしました。      ━━━━━━━━━━ ◯議長(三田敏哉君) 次に、閉会中の行財政改革基本問題特別委員の辞任及び選任について申し上げます。  去る一月八日付をもって、山下太郎君より、辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、同日付をもってこれを許可いたしましたので、ご報告いたします。  なお、ただいまご報告いたしました特別委員の辞任に伴い、欠員を補充する必要が生じましたので、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、同日付をもって小磯善彦君を指名いたしました。  お諮りいたします。  本件は、議長の指名のとおり承認することにご異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ◯議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、議長指名のとおり承認することに決定いたしました。      ───────────── ◯議長(三田敏哉君) 会期についてお諮りいたします。  今回の定例会の会期は、本日から三月七日までの三十一日間といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ◯議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、会期は三十一日間と決定いたしました。      ━━━━━━━━━━ ◯六十七番(真鍋よしゆき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。  平成十四年度包括外部監査結果の報告について、地方自治法第二百五十二条の三十四第一項の規定に基づき、包括外部監査人の説明を求めることを望みます。 ◯議長(三田敏哉君) お諮りいたします。  ただいまの動議のとおり決定することにご異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ◯議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、平成十四年度包括外部監査結果の報告について、包括外部監査人の説明を求めることに決定いたしました。  ここで、守屋俊晴包括外部監査人の出席を求めます。    〔包括外部監査人守屋俊晴君入場、着席〕 ◯議長(三田敏哉君) ただいまご出席いただきました包括外部監査人をご紹介いたします。  守屋俊晴さんでございます。    〔包括外部監査人あいさつ〕 ◯議長(三田敏哉君) 本日は、ご多忙のところ、監査結果報告の説明のためご出席いただきまして、まことにありがとうございました。      ━━━━━━━━━━ ◯議長(三田敏哉君) この際、知事より、平成十五年度施政方針について発言の申し出がありますので、これを許します。  知事石原慎太郎君。    〔知事石原慎太郎君登壇〕 ◯知事(石原慎太郎君) 平成十五年第一回都議会定例会の開会に当たり、都政の施政方針を申し述べ、都議会の皆様、都民の皆様のご理解とご協力を得たいと思います。  去る一月二十一日、曽雌久義議員が逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。  さて、我々の身の回りには、実に多くの物質がはんらんしております。昼夜の別なく、あるいは居住地に関係なく欲しいものを手に入れることができ、五年前、十年前と比べ、生活は確実に便利になりました。  しかし、豊かな生活を享受しているとの実感をだれも持つことができず、我が国は長期にわたり、大きな混乱と深い低迷の中に沈んでおります。依然として世界の総生産額の一割以上を占める経済大国でありながら、社会の中には不安、不満、不信、そして失望が増幅を続けております。これもひとえに、将来の目標を見失い、夢や希望を持てなくなったためであると思います。  このような事態を招いた最大の要因は、社会工学上最も力を備えているはずの政治が本来の役割を忘れ、惰眠をむさぼってきたためであります。とりわけ、政治の中枢である国政の場において、正当な現状認識がないため、政策の優先順位を決めることができず、外国からも自己決定のできない国とみなされております。そもそも、明治維新当時に太政官制度を開始して以降、一世紀以上にわたり本質を変えていない我が国の政治、行政のシステムは、もはや金属疲労に侵されているといわざるを得ません。  経済活動の主役である産業界においても似たような状況が生じております。油断と慢心で固まった企業からは倫理観が消え、偽装表示や事故の隠ぺい、システム障害など相次ぐ不祥事は、日常の生活にも重大な影響を及ぼしております。経済再生の足かせとなっている不良債権に至っては、いまだに全貌が明らかにされず、抜本的な対策は先送りされるばかりであります。  また、国民の間には、周囲や他人に対する無関心が蔓延し、社会への貢献や奉仕を忌み嫌う風潮が一般化しております。その反面、身勝手な要求だけは声高に主張する一方通行の関係が形成されております。いつしか我が国は、だれもが責任を認めようとしない非責任社会となってしまいました。その結果、一つの危機を解決できないまま、そこからさらに別の危機が発生する重層的危機に陥っております。  この事態を打開するためには、一人一人が現況を正確に認識し、責任ある行動を自主的に起こす必要があります。  我が国は、太平洋戦争での敗戦後、アメリカに依存することで現在の地位を築き上げました。しかし、それが見せかけの成功でしかなく、非常にもろい存在であることは、ここ十数年の手痛い経験でだれの目にも明らかになったと思います。他力本願になれた我が国では、危機にさらされたとき、社会や企業に責任をとる者が存在しないため、新しい決断を下すことができず、皆、萎縮するばかりであります。変化が激しく、何が起きても不思議でないこれからの時代を強く生き抜くため、それぞれがみずからの行動に責任を持つ、自己決定のできる社会を樹立する必要があります。それが独立した国家本来の姿でもあると思います。  まず改めるべきものは、気持ちの持ちようです。これから先、アメリカやEUに伍して国家社会における存在感を高めるには、一人一人が国家のアイデンティティーを自覚し、国家に対する愛情をはぐくむこと、自主独立の心を持つことが不可欠となります。その誇りある心こそが萎縮を消し去り、発展のエネルギーをつくり出すのだと思います。幸い、ワールドカップで見せた日本代表チームに対する心からの熱い応援や、一方、北朝鮮の拉致被害者を支える心が、国家民族を思う心を意識、無意識のうちに引き出してまいります。その上で、覚悟と責任を持てば、閉塞した事態を打ち破ることは十分に可能であります。  今の限りにおいて、我が国は停滞を続けておりますが、それは持てる力を発揮できずに不完全燃焼が続いているためであり、本来、日本人は高い能力を有しております。  政治に求められるのは、国民から付与された権能を正当に行使することで、国民の能力を十全に引き出すことであります。具体的には、円滑な活動を支える基盤の整備、安全の確保、時代の潮流に合わせた規制の見直し、経済の再生などに強い指導力を発揮することが求められます。この点については、国に任せるだけでなく、首都として東京も積極的にかかわっていく責務があると思います。  東京は、地方自治体の一つではありますが、世界各国に比べても十指に入る経済規模を誇り、国家に匹敵する影響力を保有しております。同時に、地方自治体であるがゆえに、国では到底持ち得ない現場感覚とスピード感覚をあわせて持っております。こうした特有の強みを最大限に発揮することで、ここ東京を日本再生の基点とし、新しいうねりを巻き起こしていきたいと考えております。  このような大きな認識のもと、ことしも新しい取り組みに積極的に挑んでいきたいと思います。  国は、東京都の働きかけにより、従来ないがしろにしていた都市に対する認識をようやく改め、おくればせながら都市の再生に乗り出しております。都市再生の中核をなすのは社会資本の整備であり、現況においては、環状道路と空港機能の拡充が最も優先度の高い事業であると思います。  整備がおくれている環状道路の中でも、外環道の関越道から東名高速を結ぶ区間は、高架方式による計画が三十年以上にわたり手つかずの状態となっております。並行する道路は慢性的な渋滞に悩まされており、過去の選択の過ちが大きな禍根となっている典型的な事例であると思います。東京都では、異常な事態の解消に向け、地元との協議会や有識者委員会を設けるなど精力的な取り組みを続けております。先月には、より具体的に踏み込んだ修正案として、新しい整備方針を公表いたしました。  国との間で合意した新しい方針では、我が国で初めて大深度地下を利用し、あわせてトンネル構造を小さくすることで、経費や工期を大きく圧縮しております。稠密な人口を抱える大都市においては、通常は使用しない四十メートルを超える地下の部分も貴重な空間であります。今回の事例は、大深度法適用の第一号としてこれからの大深度利用のモデルになると思います。今後、住民や地元自治体と合議を重ねながら計画を取りまとめ、早期に完成すべきであると考えております。  このほか、渋滞の解消に向けた独自の取り組みも実を結び始めております。京王線と鶴川街道の立体交差は、先般も視察してまいりましたが、平成十三年度に開始した踏切すいすい事業の第一号として、来月末には完成する予定であります。我が国初の画期的工法を採用、駆使することで、従来の半分以下となるわずか十カ月で工事を終了できる見込みであり、スピードの重視を大きな柱に据え、取り組んできた結果がここにもあらわれていると思います。  羽田空港の再拡張については、先月、首都圏七都県市の長と国土交通大臣による第一回目の協議会が開催されました。このメンバーが羽田の問題をめぐって一堂に会するのは今回が初めての機会であり、大臣には、地方負担の反対と早期着工について改めて強く申し入れました。会議を通じ、地方負担の白紙撤回が確認でき、再拡張並びに国際化の必要について共通の認識を持てたことは大きな成果でありました。正式な協議の場が整ったことを踏まえ、今後、国に対しては、横田基地も含めた首都圏の航空政策に関し、さまざまな建言を行いたいと考えております。  一方、都市再生特別措置法が施行され、都内では幾つもの大きなプロジェクトが動き出しております。しかし、東京全体の町並みを再生し、都市の魅力を向上するには、現在の取り組みに加えて、都民の意欲と創意工夫を生かしながら、身近な都市再生を進めることが必要となります。そのため、今定例会には、街区の再編と調和のとれた景観の形成を目指して、しゃれた街並みづくりを推進する新しい条例を提案いたしました。  東京の再生は、国家の再生に直結する極めて重要な取り組みでありながら、こうした再生策を進める上で大きな障害となっているのが、今なお中途半端な形で残る首都移転問題であります。そもそも首都移転は、バブル当時の国会決議を引きずった前世紀の厄介な残滓でしかありません。国民の支持も全くないため、国は三カ所の候補地を一カ所に絞り込むことさえできない状況にあります。  現在国では、費用面での批判をかわすため、規模の縮小案を検討しておりますが、居住のために必要な経費を意図的に削るなど、算定根拠には妥当性が全く見当たりません。現場を知らない者が勝手に描いた空理空論でしかなく、縮小案は移転を強行するための便法にすぎません。  また、移転候補地にバックアップ機能だけを先行して建設する案もありますが、仮に都心の官公庁が被災した場合でも、代替施設は七都県市の中だけで十分に確保することができます。既に七都県市では、既存の施設を活用することで首都機能を補完する具体的な案を持ち合わせており、首都圏を外れた遠隔の地にバックアップ施設を建設することは、一切不要であります。  移転論は、弁解や修正を加えれば加えるほど中身のずさんさが露呈する結果となっており、完全に自家撞着に陥っております。国は、現在開会中の通常国会で一定の結論を出すようでありますが、出すべき結論はただ一つ、首都移転計画からの当然の撤退であります。民意を踏まえた良識ある判断を強く求めたいと思います。  環境の危機は、大気汚染のように直接生命を脅かす問題から、温暖化のように地球の将来を左右する問題まで多岐にわたっており、これまでさまざまな機会を通じて警鐘を鳴らし、対策も講じてまいりました。  最も身近な危険である大気汚染に対しては、これまでの取り組みの到達点として、本年十月より、基準を満たさないディーゼル車への走行規制を開始いたします。昨年九月に違反ディーゼル車一掃作戦を開始して以降、粒子状物質減少装置の装着が大幅にふえているほか、百貨店協会を初めとする企業、業界でも自主的な取り組みが始まり、対策は着実に進んでおります。このたびは、ディーゼル車の買いかえを促進するため、既存の融資制度を活用できない小規模零細事業者にも利用が可能となる新しい融資制度を創設いたしました。円滑な実施に向け、今後さらに相談体制や広報活動を充実し、きめの細かい対応を図っていく予定であります。  ディーゼル車の規制が実際に始まることは、国を含めた多くの関係者に大気汚染の問題を再認識させるだけではなく、住民に対する強いメッセージの発信にもなると思います。  このほか、東京では、地球規模での温暖化と大都市特有のヒートアイランド現象と二つの温暖化が深刻化しております。温暖化の進行は、エネルギー消費の増加を招き、それがまた、さらなる温暖化へとつながっております。この悪循環は、まさに都市文明の弊害を象徴していると思います。  東京の温暖化に歯どめをかけるため、環境審議会では、二酸化炭素の削減策などについて検討を開始いたしました。年内を目途に答申を得た後、都民、企業、NPOなどの協力のもと、実効性ある政策を早急に立案したいと考えております。  また、この先、原子力発電所の稼働停止によって電力不足が懸念されることもあり、都庁は率先して省エネルギーの運動を実行いたしております。まずは、来月までの間、事業所を含め、これまでの取り組みをさらに強化した庁舎のエネルギー抑制運動を展開いたします。都民の皆様も、日々の生活を改めて見直し、エネルギーの節約にぜひ努めていただきたいと思います。
     温暖化の防止に向け、省エネルギーと並ぶ重要な柱は、新しいエネルギーの開発、普及であります。その一つとして、臨海部では、来月の稼働を目指して、大都市では初めてとなる風力発電施設の整備を進めております。さらに、夏からは自動車メーカーなどの協力を得て、都営バスの路線で燃料電池バスの運行を開始する予定であります。  一方、丸の内など四カ所の地域では、モデル事業として保水性の舗装、街路樹の再生などを集中的に実施し、今後のヒートアイランド対策の強化につなげてまいります。こうした取り組みを通じ、都市における新しい環境対策の模範を示していきたいと思います。  東京が新しいうねりを起こす原動力を蓄えるには、都政の基盤を強化することが不可欠であります。現在は、昨年十一月に策定した重要施策を基本に、全庁を挙げて重点事業の具体化と構造改革に取り組んでおり、平成十五年度予算においては、この流れを確かなものとすることが必要であります。  現下の都政には都市の再生を初め、環境対策、中小企業対策など課題が山積し、待ったなしでの対応が迫られております。しかしながら、景気回復の兆しが遠のき、都税収入が八年ぶりに四兆円を下回る見込みとなるなど、都財政を取り巻く環境は一段と悪化しております。このような状況の中にあっては、政策の優先順位を明確にすることが不可欠であり、平成十五年度予算では濃淡をつけて財源を配分し、緊急課題、重点課題に集中的に対応いたしました。  緊急の対策が求められているのは、中小企業、雇用対策やディーゼル車対策などであり、中小企業制度融資については、過去最大規模となる一兆七千五百億円の融資目標を設定いたしました。雇用対策としては、求職者の多様化に応じ、新たに夜間駅前での職業訓練を開始する予定であり、ディーゼル車対策については、十月からの規制に向け、今後、五万台の買いかえを支援いたします。  このほか、基盤整備のような将来の東京に不可欠な事業や福祉、医療など都民生活に直結する分野にも、手厚く予算を措置いたしました。都市の骨格を形成するために、幹線道路や連続立体交差、公共交通網の整備を積極的に進めるほか、渋滞の激しい交差点で集中的に渋滞対策を実施いたします。また、認証保育所については、来年度九十カ所の開設を目指しており、障害者に対しては、地域での活動の場を今後三年間で三百カ所整備することを目標に特別の支援を講じております。このほか、小児医療を初めとする救急医療についても一層の充実を図る予定であります。  こうした施策の展開と同時に、財政構造改革をさらに進めることが重要な課題となります。来年度は歳出削減を徹底するため、職員定数の削減や監理団体に対する財政支出の見直しなど内部努力を強化したほか、施策の見直しや再構築をこれまで以上に厳しく進めております。  一方、将来の財政運営にも目を配り、七兆円近い残高を抱える都債については、新規の発行をできる限り抑制いたしました。その結果、都債残高は十三年ぶりに減少に転じる見込みであります。財源の半分近くを起債に頼り、しかもその八割を赤字債が占める国の放漫財政とは大きな違いがあると思います。  このようにして編成した平成十五年度予算は、前年度に比べ三%の減となりました。しかし、それでもなお二千五百億円の財源が不足したため、特別の対策をとらざるを得ませんでした。  果実活用型の五つの基金は、今日のゼロに近い低金利の中、運用の利益を見込むことができず、仕組み自体の存在意義が失われております。そのため、今回は、財源対策として地域福祉振興基金など三つの基金の元本を取り崩しております。国際平和文化交流基金など残る二つの基金については、今年度をもって廃止し、残高を財政調整基金などに積み立てる予定であります。  財政再建団体転落の危機を寸前に、平成十二年度予算から始めた財政再建推進プランは、来年度が最後の年となります。この四年間は、逆風が続いた苦難のときでありましたが、都議会の皆様の協力を受け、一貫して財政の健全化を志すことができたと考えております。  プランに着手する前の平成十一年度と十五年度予算とを比較すると、一般歳出は七千億円減少いたしました。また、プランで掲げた取り組みのうち、独力での対応が可能な部分は当初の目標を上回る成果を上げております。とりわけ職員定数は当初の計画を二割近く上回り、四年間で六千人近くを削減いたしました。  しかし、国からの税源移譲は一向に進まず、都税収入もプラン策定当時の見込みを大幅に下回っております。歳入と歳出の均衡を図りながら、同時に新しい施策の展開が可能となる強固な財政体質を実現するには、一層の歳出削減や自主財源の確保が不可欠であります。引き続き財政構造改革を強力に進める必要があると考えております。  一方、最近の我が国経済は、バブル崩壊の後遺症ばかりでなく、やむことのないデフレ、自由な活動を阻む各種の規制、時代おくれの経済政策など、複合的な事象に起因した負の連鎖が鮮明になっております。都内では、六割の中小企業が売上高の減少に直面し、企業の倒産件数は過去最悪の水準であります。  厳しい経済状況が続く中、東京都は、ものづくり産業の再生に向け、昨年九月に産業力強化会議を立ち上げ、企業の立地環境などについて検討を重ねております。会議では、東京都が定める立地規制が壁となって工場の拡張ができない事例などが報告されており、中小企業の経営者からは、規制緩和を求める声が数多く寄せられております。  こうした現場の声にこたえるためにも、企業の活力をそぐ一因となっている工場の立地規制については、早期に撤回すべきであると思います。現在、特別工業地区建築条例の廃止を含めた見直しについて、関係する地元自治体との調整を進めております。引き続き、規制緩和を初め、知的財産の活用や産学公の連携など企業の意欲を高める支援策を講じながら、産業競争力の強化に取り組んでいきたいと思います。  このほかにも、中小企業に対しては、金融機関から生きた資金が十分に回らないことから、東京都は直接金融の道を開いてきました。現在は、四回目の発行となるCLO、ローン担保証券とあわせ、国、地方を通じ初めてとなるCBO、社債担保証券の発行準備を進めております。東京都による担保証券の発行は、都内中小企業の新しい資金調達の手段として既にすっかり定着したものと思います。  また、制度融資については、質、量両面で過去をしのぐ対策を講じておりますが、今後の状況によっては、たとえ年度の途中であっても、さらなる融資規模の拡大に踏み込むべきと考えております。戦後最悪ともいわれる今日の不況を乗り越えるため、今後とも、切れ目のない中小企業振興策を展開していきたいと思います。  我が国は、経済の低迷ばかりでなく、社会生活でも混乱が続いており、その顕著な例が治安の悪化であります。特に東京では、この数年、犯罪の認知件数、検挙率に関し、戦後最悪となる記録の更新が続いており、都民は、不安と背中合わせの生活を強いられております。  このような現況を前に、安心を取り戻すには、犯人を検挙するだけでなく、警察を中心にしながら、都民、事業者、行政が一体となって、犯罪の発生を未然に防止する必要があります。現在、犯罪を防止するための総合的方策について、有識者の方々に検討を依頼しており、その結果を踏まえ、犯罪の抑止に向けた取り組みをさらに進めたいと考えております。  犯罪の取り締まりにも一層力を入れており、特にひったくりや強盗などの街頭・侵入犯罪、来日外国人グループや暴力団などの組織犯罪に対し重点的に対応いたします。都民が治安の回復を実感し、安心のできる生活を実現するため、引き続き対策を強化していきたいと思います。  都民の安全を確保するには、治安に加え、自然災害に対する備えも求められます。首都圏では直下型大地震の発生が懸念され、広域的な対応が求められているため、先月、七都県市、国、関係機関が合同した大規模な図上訓練を初めて実施いたしました。当日は、それぞれの現場での指揮官を中心に、千三百名を超える者がロールプレーイング方式の演習に参加し、初動対応や応急対応について訓練を行いました。  参加者は、事前の情報がない中で、瞬間的な判断力や分析力、情報収集能力が試されることになり、現場での実地訓練とは異なった経験を積めたと思います。結果を総括し、問題点を改善した上で訓練を繰り返し、関係機関と連携しながら防災能力の向上に努めていきたいと考えております。  一方、退避生活が長期化している三宅島の人々は、島を離れてから三度目の冬を迎えました。依然として火山ガスの噴出が続く中、火山の現状や健康への影響、安全確保策などについて、専門家による検討が続いております。一日も早い帰島を実現するため、引き続き、島の復旧と島民の支援に力を尽くしたいと思います。  戦後の教育界を支配した悪しき平等主義は、生徒を甘やかすだけの結果しか招かず、教育の荒廃の元凶となっております。今日、教育の現場では、鍛えれば大きく伸びるはずの生徒の才能の芽をつぶしており、都立高校では個性と魅力が消えてしまっております。現在進めている都立高校改革は、学校に競争原理を導入し、教育の質を高める取り組みであります。  学区制度が全廃される平成十五年度の入学選抜では、学力重視を打ち出した進学指導重点校や体験学習などを取り入れたエンカレッジスクールに多くの志望者が集まりました。学校を活性化し、魅力を取り戻す上で、横並びの廃止が極めて有効な手だてであることを明快に証明したと思います。  学校選択の幅が広がったことで、今後は校長に教育者、経営者としての資質が問われることになります。校長の責任のもと、経営計画、バランスシート、年間授業計画などの作成と公表を行い、広く都民に学校の活動状況を公開しながら、みずからの手で改革を推進いたします。同時に、校長が指導力を発揮できるよう、予算面で校長の裁量権を大きく拡大いたしました。さらに、改革の実績を上げた学校には、予算、人材などを重点的に配分し、成功に報いる仕組みを導入いたします。  また、健全な子どもを育成するため、家庭や地域での取り組みとして提唱してきた心の東京革命については、先月、行動プランを改定し、区市町村や民間団体に対する支援事業を充実いたしました。普及啓発や体験学習を進める地域の活動を重視し、積極的な支援を続けたいと思います。  いつの時代も、若者たちのユニークな発想や旺盛な好奇心が社会を動かす力の源泉でありました。我々の役割は、子どもたちが存分に力を発揮できる土壌を整えることにあると思います。来年度は、教育ビジョンを策定し、新しい教育のあり方を示す予定であります。戦後教育の失敗により、さびついてしまった日本人の感性が再び輝きを取り戻すよう、教育改革を積極的に進めていきたいと思います。  教育に限らず、福祉や医療に関しても、時代の変化に応じてサービスの内容を日々見直す必要があります。これからの福祉を考える際、柱とすべき改革の一つは、入所施設を中心とした対応から地域での生活を支える体制に改めることであります。東京都では、利用者本位の視点から、この方針を二年以上前に示し、グループホームなどを整備する一方、都立の入所施設の見直しに向け、改革に着手しております。国では、遅まきながら東京都の理念を取り入れ、昨年十二月に策定した障害者基本計画の中で、地域生活を重視する姿勢をようやく示しました。  福祉サービスの第三者評価制度も、国に比べ、東京都は大きく先行しております。来年度は、これまでの試行を踏まえ、対象サービスを大幅に拡大した上で、本格実施に踏み出します。試行部分の評価結果については来月公表し、その後、本格実施分の評価についても、福祉情報総合ネットワークの中で提供していきたいと思います。  医療においても、患者の立場を尊重した医療体制を実現する必要があります。診療情報を開示することは、患者と医師が信頼関係を築く第一歩となるものであります。その前提として、カルテの開示に威力を発揮する電子カルテの導入が不可欠となっております。しかし、都内では一%に満たない診療所でしか導入されていないことから、来年度、地方自治体としては初めて、診療所が共同で利用できる電子カルテシステムに対し支援を開始いたします。システムが構築できれば、医療機関相互で情報が共有化できるなど、患者と医療機関双方に利点があり、医療の質を高める大きな効果が期待できます。  都立病院においても、府中病院を皮切りに順次、電子カルテを導入する予定であります。こうした取り組みを契機として、電子カルテの普及を図り、東京から患者中心の医療の道筋を切り開いていきたいと思います。  東京は、世界屈指の大都市でありながら、ロンドン、パリ、ニューヨークなどと比べた場合、都市の活動の中でビジネスの占める比重が多く、観光あるいは文化といった面での存在が希薄であります。  しかし、観光が振るわないのは必要な資源がないためではなく、観光客を呼び込む創意工夫が総体的に不足しているためであります。この反省の上に立ち、東京都では観光を産業振興の成長分野と位置づけ、幾つもの策を立ち上げております。国も、ここへ来てようやく同様の認識を持ち始め、観光立国に向けた検討を開始いたしましたが、やはり対応が遅く鈍いとの印象をぬぐい切れません。  東京都は、さらに来年度、点在する観光資源を有機的に結びつける新しい取り組みとして、観光の視点に立ったまちづくり事業を展開いたします。まずは、歴史と伝統を持つ上野地区と若者に人気の高い臨海地区において、地域で一体となって観光客を受け入れる体制を整え、町全体の魅力を高めていきたいと思います。  上野地区では、大道芸人などヘブンアーチスト事業のために上野公園を引き続き開放するほか、七月から十二月にかけて、国立博物館本館など五つの施設をライトアップする予定であります。ライトアップについては、上野にとどまらず、皇居での実施も働きかけていきたいと考えております。  一方、臨海地区においては、水辺空間を持つ特性や未来志向の町である優位性を生かした観光振興に取り組む予定であります。早急に土地の貸付基準を緩和し、新しい店舗などを呼び込むと同時に、大規模なイベントを誘致し、観光客を引き寄せたいと考えております。お台場では、七月から海水の浄化実験を始める予定であり、小さな子どもでも安心して海で遊べる環境を整えたいと思います。観光を通じて町の魅力が向上することは、企業の誘致活動にも大きな弾みとなるものであり、臨海副都心部の一層の発展を図っていきたいと思います。  ところで、都議会の皆様、都民の皆様のご支援のもと導入した外形標準課税について、過日、控訴審判決がありました。この判決では、課税の根拠となる根幹の部分を初め、そのほとんどについて都の主張が認められ、東京都が先鞭をつけて前進させた地方分権の正当性が確認できたと思います。事実、東京都の行動は、外形標準課税導入の地方税制改正となって、国政の場においても結実しようとしております。  しかし、判決の中では、ただ一点、導入前の所得基準に基づく税負担と新しい外形基準に基づく税負担とを比較する、いわゆる均衡要件において、東京都の主張が十分理解されず、結果として敗訴となりました。  税を導入した当時、既に十兆円の公的資金の投入を仰いで、なおその後、経営状況が一向に改善しなかった銀行の今日の姿を予測することは、極めて困難であったと思います。税負担の水準について、条例制定後の状況も勘案すべきだとされたことは、やはり納得しがたいものであります。今回の判決に対しては、東京だけでなく我が国の将来のためにも、最高裁判所において、改めて司法の判断を受けたいと思います。皆様の一層のご理解とご協力をお願いいたします。  我が国は、波高い海に四方を囲まれた地勢的要件から、独自の社会を形成しております。閉ざされた空間の中で集団をつくり、成熟した文化を生み出す一方で、意思表示することをよしとせず、またその必要もさしてない風土をはぐくんでまいりました。  しかし、世界全体が時間的、空間的に狭小になり、もはやあいまいな態度は通用しなくなっております。異なった文化、文明を持つ人々と共存していくには、はっきりと意思表示をすることが必要であり、国民一人一人に意識改革が求められていると思います。  地方自治体においてもまた、意思表示が必要な時代を迎えております。本来であれば、地方分権が進むことで地域の個性ある発展も実現するはずでありました。しかし、国が主導する地方分権は、理念だけはまことに結構なものの、肝心の税財源に関しては移譲する兆しが全くなく、その実現は百年河清を待つがごとしであります。受け身の姿勢では、国の失敗のあおりを受け、自立すらおぼつかない状況が続くと思われます。このような中にあっては、地方がみずからの意思を表示し、それをてこに国を動かしながら発展を遂げる必要があります。  東京とて例外ではなく、発展に向かうには明確な意思に基づく行動が求められており、その一つが構造改革であります。従来のラインでは対応不可能な新しい仕事がふえる中、都政には、依然として時代おくれの制度や現実味のない計画に固執している事例が少なからず残っております。こうした障害を突破するためにも、施策と執行体制の両面から一層の構造改革を進めていきたいと考えております。  過去から現在、そして未来に連なる歴史の流れの中で、我々の乗っている船は、沈没する危険がいよいよ間近に迫ってきたようにも思えます。しかし、我々は、危機を前にして、ただ傍観し、流れに身を任せるのではなく、未来を切り開く努力を重ねる必要があります。  歴史をさかのぼって眺めると、強固な意志と行動力のある者だけが歴史に名を刻み、時代を変える先駆者となってきたことが理解できます。構造改革を通じて生まれ変わる東京が先頭に立って行動することで、新しい日本の歴史をつくり出していきたいと思います。  なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、予算案三十九件、条例案九十六件など合わせて百四十四件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。  ところで、都民から負託を受けた現在の任期は、この四月をもって終わりとなります。最後になりますが、この間の都政をともに支えていただいた都議会の皆様、都民の皆様のご支援とご協力に対し、改めて感謝を申し上げます。  以上をもちまして施政方針を終わります。  ありがとうございました。(拍手) ◯議長(三田敏哉君) 以上をもって知事の発言は終わりました。      ───────────── ◯議長(三田敏哉君) 次に、警視総監より、都内の治安状況について発言の申し出がありますので、これを許します。  警視総監石川重明君。    〔警視総監石川重明君登壇〕 ◯警視総監(石川重明君) 都内の治安状況についてご報告いたします。  まず初めに、東京都議会の皆様には、平素から警視庁の運営の各般にわたりまして格別のご高配を賜っているところでありまして、心からお礼を申し上げます。  さて、ここ数年来、全国的に犯罪が急増しており、首都東京もその例外ではございません。つい最近に至るまで、各種の世論調査において、我が国について誇るべきものを問えば、代表的な答えは、治安水準が極めて高いということでありました。しかし、今日、良好な治安はもはや過去のものであると論じる向きも少なくありません。  当庁では、このような厳しい情勢のもと、都民の皆様のご理解とご協力をいただきながら、首都東京の治安維持と都民生活の安全、安心の確保に取り組んでまいりました。  以下、その状況についてご説明申し上げます。  第一は、厳しい犯罪情勢とその抑止対策についてであります。  昨年の全国における刑法犯の認知件数は、前年を四・三%上回る二百八十五万三千七百三十九件であり、都内については三十万一千九百十三件で、前年に比べて三・二%増加しており、過去最多を記録いたしました。  都内の犯罪の内容を見ますと、殺人や放火等、一部の罪種は減少しておりますが、強盗が八・八%ふえるなど、そのほとんどが増加となっており、その手口も巧妙化し、かつ、大胆なものも多くなってきております。  都民に身近な侵入窃盗については、ピッキング用具を使用する事件が、機動隊の多角的運用等により大幅に減少した前年から、さらに減少したものの、針金等を差し込み解錠するサムターン回し等の新たな手口が出現するなど、全体で八%の増加となりました。  また、ATMで預金を払い戻した客の注意をそらして、そのすきに金品を盗む事件が急増しているほか、工事用の重機を用いて無人店舗を破壊し、多額の現金をATMごと運び去るという大胆な手口の事件も発生しております。  組織犯罪についても、近年、来日外国人を中心とする国際犯罪組織、暴力団、さらに銃器や薬物の密売グループ等が互いに結びついて犯罪を敢行する傾向を一段と強め、東京、ひいては日本の治安を攪乱する最大の要因となっております。  来日外国人全体の検挙件数は一万三十五件、検挙人員は五千七百五十五人で、前年に比べて、件数で七・八%、人員で一一・八%、それぞれ増加しており、その内容も、けん銃を使用した殺人事件を初め、パブ、スナック、エステ店などを対象とした緊縛強盗事件、コンテナによる密入国事件、通貨を初めとする各種偽造事件や薬物密売事犯等、悪質化、巧妙化、凶悪化の傾向がますます進んでおります。  とりわけ、薬物事犯では、暴力団はもとより、これと結託する来日外国人グループの暗躍が目立っており、密売手口も、街頭での無差別な密売に加えて、宅配便や郵便小包みを利用するなど、薬物乱用者のすそ野の広がりが危惧される深刻な現状にあります。  このような情勢のもと、外国人の被留置者は、その延べ人員が前年に比べて一二・三%も増加し、年間の留置延べ人員に占める割合は三二・七%で、実に三人に一人を占めるに至っております。  このように、都内における犯罪情勢は、検挙が犯罪の発生に追いつかないとでもいうべき、まことに厳しい状況にあります。しかし、警視庁は、これにひるむことなく、都民の身近な安全を確保し、また、犯罪組織の壊滅を図るため、敢然と諸対策を講じてまいります。  その一つは、年初から全国的な取り組みの一環として実施している街頭犯罪及び侵入犯罪抑止総合対策であり、これを組織の総力を挙げて推進するため、昨年末にその推進本部を設置いたしました。  本対策は、特に都民の皆様が不安を感じるひったくり、侵入窃盗、強盗、性犯罪を中心に実施し、都民の体感治安の回復を図ろうとするものであります。そのため、警察署協議会等を通じて住民の方々の要望、意見をお聞きし、これを踏まえ、地域の実情に即して、防犯と検挙の両面から、効果的な諸対策を強力に展開しているところであります。  また、国際犯罪組織や暴力団等が資金源拡大のために多種多様な犯罪を敢行している盛り場についても諸対策を推進しており、新宿歌舞伎町地区で運用し、効果を上げている街頭防犯カメラも、他の盛り場に順次設置してまいります。  さらに、子どもや女性を犯罪から守るため、道路や公園においては、現在、都内四地区に、緊急通報装置つき防犯灯を設置しており、今後も設置地区をふやしていくこととしております。  少年犯罪については、強盗、強姦等の凶悪犯が増加している一方で、少年を被害者とする少年の福祉を害する犯罪も依然として多発しており、これらの犯罪については、強力な取り締まりを推進しておりますが、とりわけ暴走族などの非行集団については、取り締まりや補導活動等を徹底して、これら集団の解体に努めてまいります。  加えて、少年に対する一声運動や社会参加活動、非行防止教室等を通じて、少年の規範意識の醸成を図るなど、総合的な少年非行防止対策に一層取り組んでまいります。  こうした活動と並行して、現在、学識経験者のお力添えをいただいている懇談会では、都民が安全で安心して暮らせるまちづくりを行うための有効な方策を検討いたしております。  当庁では、犯罪抑止総合対策の成果を一つ一つ都民にお示しすることにより、体感治安の向上に努めてまいりますが、同時に、空き巣やひったくりのような都民に身近な犯罪を抑止する上では、戸締まりの励行や自転車へのひったくり防止ネットの取りつけ、各種の防犯機器の設置といった、都民の皆様自身による防犯対策もまた極めて有効であります。  当庁としても、防犯面に対する関係機関・団体や地域住民の方々のご理解、ご協力を得るべく、今後とも防犯に役に立つ犯罪情報の積極的な提供などにより、相互の連携をさらに強化してまいります。  次に、組織犯罪対策についても、一昨年九月に、本部の関係七所属及び組織犯罪対策室による組織犯罪対策本部を設置するとともに、昨年十月には、本部に銃器及び薬物の捜査部門を統合した銃器薬物対策を、島部を除く管下全警察署に、組織犯罪対策を担当するをそれぞれ新設して、諸対策を懸命に推進しているところであります。  これをさらに進め、犯罪組織の壊滅を図るためには、組織犯罪対策を所掌する新たな部を構築し、指揮命令系統や情報の一元化を図るなど、取り締まり体制をさらに強化する必要があります。そこで、今定例会で、組織犯罪対策部の設置について、お願いをいたしております。  第二に、各種犯罪の捜査活動についてであります。  昨年、特別捜査本部を開設した事件は二十七件で、前年以前に開設した事件を含め、二十二件を検挙いたしました。上祖師谷一家四人強盗殺人事件を初めとする未解決重要事件についても、早期検挙に向けて、引き続き粘り強い捜査活動を展開してまいります。  凶悪犯の検挙率は、殺人が九九・二%、強盗が五四・九%、また侵入窃盗については四四・五%と、それぞれ前年を上回りましたが、多発するひったくりについては三一・四%で、前年に比べて三・二ポイント減少しております。  主要知能犯等については、多摩市長らによる贈収賄事件を初め、都市銀行元支店長らによる商法違反に係る特別背任事件、信用金庫支店次長らによる電子計算機使用詐欺事件等を検挙いたしました。  さらに、長引く経済の低迷を背景としたジー・オーグループ、八葉グループによる大型生活経済事犯や、やみ金融業者による悪質金融事犯を検挙したほか、東京都との合同捜査により、石油ブローカーらによる軽油引取税に係る巨額脱税事件も検挙しております。  ハイテク犯罪では、宇宙開発事業団に対する不正アクセス事件、インターネットを利用した詐欺事件や脅迫事件等、前年を二三%上回る百五十件を検挙いたしました。  暴力団については、都内に約六百四十の組織、約一万六千六百人の構成員等を有しており、山口組の東京進出や國粹会の内部抗争が続く中で、資金源を求めてさまざまな犯罪を敢行しております。  こうした状況のもとで、昨年は、大学病院集中治療室内において、医師や患者等の面前で暴力団幹部が射殺された事件や、都民をも巻き添えにしかねない白昼のオフィス街において、暴力団同士のトラブルでけん銃を使用した殺傷事件等、暴力団の絡むけん銃発砲事件が二十七件発生し、十人が死傷しております。  当庁では、暴力団の壊滅を期して、近時、東京進出の動向を強めている広域暴力団である山口組を最重点とした取り締まりを行い、六千八十九人の暴力団員等を検挙するとともに、暴力団保有の七十丁を含む百四十二丁のけん銃を押収いたしました。  また、暴力団対策法に基づいて、中止命令四百二十九件、再発防止命令八件を発出したほか、暴力団追放運動推進都民センターとの連携により、地域、職域における暴力団追放運動を強力に推進いたしました。  警備関係については、世界各地において、爆弾を使用した大規模かつ無差別な事件が相次いで発生し、多くの市民が犠牲となっており、国際テロ情勢は依然として厳しいものがあります。  当庁では、米国における同時多発テロ事件以降、重要施設の警戒強化等、各種対策を継続しておりますが、昨年四月には、新設された官邸の警備体制を強化するため、総理大臣官邸警備隊を創設いたしました。  また、十月には、国際テロ関連の情報収集及び捜査体制を一層強化するため、外事第三を新設し、昨年は、ミサイルの研究開発に使用可能な機材を不正に輸出した事件等を摘発いたしました。  極左暴力集団各派は、有事立法粉砕を掲げた反戦闘争や成田国際空港暫定平行滑走路の供用開始反対闘争の過程で、全国で八件、うち都内では、自衛隊駐屯地に対するゲリラ事件を引き起こしており、当庁では、昨年、極左暴力集団活動家三十六人を検挙いたしました。  また、「よど号」犯人グループによる日本人拉致容疑事件については、特別捜査本部を設置して捜査を進めた結果、犯人グループの一人を国際手配したところでありますが、引き続き拉致容疑事件の全容解明に向けて、強力な捜査活動を推進してまいります。  一方、右翼については、政局の動向や北朝鮮問題等、内外の諸情勢に敏感に反応して、関係機関に対する抗議、要請活動を活発に展開しており、昨年は、けん銃所持事件や公安条例違反事件等で、右翼関係者百六十三人を検挙しております。  アーレフと改称したオウム真理教については、本年一月二十三日、公安審査委員会が団体規制法に基づく観察処分の更新を決定しましたが、今なお、全国に二十七カ所の主要施設と約千六百五十人の信者を擁しており、うち都内には七カ所の主要活動拠点と約六百三十人の信者が居住しているものと見ております。  当庁では、昨年、免状不実記載事件や建造物侵入事件等で四人の信者を検挙し、延べ五十一カ所の教団関連施設の捜索を行いました。その結果から見て、同教団の反社会的体質と危険性に変化がないことは明らかであります。
     このような各種捜査の積み重ねにより、昨年の刑法犯の検挙状況は、件数が七万五千九百五十二件、人員が四万七千八百二十八人で、いずれも前年を上回っておりますが、認知件数の増加により、検挙率は〇・五ポイント減少し、二五・二%となっております。  一方、犯罪の被害者やそのご家族につきましては、その精神的、経済的な負担の軽減を図るため、各種被害相談業務や初期支援活動、被害事実の立証に必要な診断書作成費用等の公費負担などを積極的に実施しております。  今後も、被害者支援に関係する行政機関及び民間団体から成る東京都犯罪被害者支援連絡会や、昨年五月に、東京都公安委員会から犯罪被害者等早期援助団体の指定を受けました被害者支援都民センターとの連携を一層強化して、被害者支援の充実に努めてまいります。  第三は、交通対策についてであります。  昨年の都内における交通情勢は、前年に比べて、人身事故の発生件数及び負傷者数が減少いたしましたが、死者数が十七人増加して三百七十六人となっており、また、随所で交通渋滞や交通騒音、排気ガス等による公害が慢性的に発生するなど、依然として厳しいものがあります。  当庁では、従来以上に交通の円滑化に努めて、交通公害等の防止を図りつつ、質の高い交通安全の実現を目指して、前年に引き続き総合的な対策を講じました。  安全対策では、悪質、危険、迷惑性の高い違反に重点を置いた指導取り締まりの強化を図ったほか、地域実態に応じた参加、体験、実践型の各種キャンペーンの開催や都内全高等学校への交通安全教育用CD‐ROMの配布等を行いました。  さらに、日没時より早めに前照灯を点灯するトワイライト・オン運動や、目立つ服装の着用や反射材の活用を図るリフレクター運動の普及促進、消費電力が少なく、かつ、視認性が非常に高いLED信号灯器の整備など、各種施策を推進いたしました。  円滑化対策では、東京都との合同事業により、重点的な違法駐車対策、スムーズ東京21に継続して取り組んだほか、地域の交通実態に適合した右左折レーンの設置や、見やすく、わかりやすく、守られる交通規制を目的とした道路標識の簡素化等を実施しております。  交通公害対策では、関係機関と連携して、交通公害取り締まり検問車を活用した合同の指導取り締まりや、騒音、振動公害の主因となる過積載違反の重点的な取り締まり等を推進いたしました。  今後も、関係機関・団体や都民の幅広いご支援、ご協力を得ながら、社会情勢と都民のニーズに応じた諸対策を積極的に推進するとともに、各方面の交通機動隊等を効果的に運用して、死亡事故の抑止はもとより、二年続けて発生が減少している交通人身事故の減少傾向の定着化に努めるなど、安全で快適な交通社会の実現に最善を尽くしてまいります。  第四は、警察基盤の整備についてであります。  警察は、三百六十五日二十四時間体制で、あらゆる事象に迅速、的確に対処することが求められております。冒頭申し上げましたような厳しい犯罪情勢のもと、このような任務を全うし、都民の安全を確保するためには、各種警察施設の拡充や現場執行力の強化など、警察基盤の整備が必要不可欠であります。  特に、地域住民の方々の安全、安心のよりどころである交番、駐在所については、厳しい治安情勢のもとで、一層重要性を増しておりますことから、生活安全センターとしての特性をさらに発揮するため、都市型駐在所やハイテク交番の整備拡充を図っております。  また、留置場については、増加する犯罪に連動して、被留置者も増加を続け、昨年、留置場全体の定員を超えて留置した日数が、前年の九十四日から百四十日となり、ピーク時の留置人員は、定員を四百十人上回る三千二百五十三人となるなど、計画的かつ継続的な対応が必要であります。  当庁では、こうした留置場の収容問題に対処するため、各方面の留置場の整備拡張を図っており、平成十四年度は、多摩総合庁舎を改修して新たな留置場を開設したほか、城東や池上の各警察署に増設するなど、順次、計画的に整備を進めております。  今後も、被留置者の増加が予想されますので、引き続き留置場の整備拡充を図ってまいりたいと考えております。  このような警察施設の整備とあわせて、現場の執行力を強化するため、一一〇番システムのハイテク化を初め、時差出勤による地域警察官の弾力的な運用、犯罪多発時間帯等のパトカーの集中運用、さらには、元警察職員による地域警察の業務を側面から支援するシルバーポリス制度の拡充など、さまざまな対策を推進しております。  加えて、昨年、増員をした警察官百三十人を第一線の実働部門に配置する一方で、内部努力により必要な部署の体制強化を図っておりますが、犯罪の増加等により、一段と厳しさを増す都内の治安情勢に的確に対処していくためには、人的基盤の強化が極めて重要であります。  当庁では、今定例会におきまして、都民の身近で発生する犯罪や複雑多様化する犯罪への的確な対応、さらに留置管理体制の確立を図るため、昨年に引き続き、警察官の増員などに関する条例の改正をお願いしているところであります。  今後とも、可能な限りの内部努力を重ねて、警察力の効果的な運用を図り、第一線の執行力の充実強化に努めて、都民生活に密着した各種警察活動を強力に展開してまいります。  以上、都内の治安状況について、都民の皆様のご協力やご負担をお願いするものも含め、率直にご説明申し上げました。もとより警察の活動は、都民の信頼があってこそ成り立つものであり、そのため当庁では、警察改革要綱に基づき、さまざまな制度改革や組織改革を推進してきており、昨年十月には、職務執行における責任の明確化を図るため、警察手帳の形状変更を行うとともに、制服警察官に識別章の着装を開始いたしました。  今後も、犯罪の発生状況や警察の諸施策の効果等について、都民に適切にご説明することなどにより、都民の信頼確保に努めてまいります。  現下の治安情勢は、今まで申し上げましたように依然として大変厳しいものがあり、警視庁といたしましては、山積する多くの重要課題の一つ一つに真正面から取り組み、都民の視点に立った治安の確保に全力を傾注する決意であります。  東京都議会の皆様には、どうか警察活動を取り巻く諸般の状況をご理解いただき、今後とも、警視庁に対する一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、私の治安状況報告を終わらせていただきます。 ◯議長(三田敏哉君) 以上をもって警視総監の発言は終わりました。      ───────────── ◯議長(三田敏哉君) 次に、監査委員より、監査結果の報告についての発言の申し出がありますので、これを許します。  監査委員野田和男君。    〔六十四番野田和男君登壇〕 ◯六十四番(野田和男君) 監査委員を代表いたしまして、過去一年間に実施いたしました監査結果につきましてご報告申し上げます。  都は、財政再建推進プランに基づき、これまで財政の構造改革に取り組んできておりますが、都財政を取り巻く環境は、依然として極めて厳しい状況にあります。  私ども監査委員は、こうした状況を十分に認識しつつ、監査対象の事務事業を的確に分析、把握し、予算や事務事業の執行の適正性の観点はもとより、事務事業が、投下した経費に見合うだけの効果を上げているかという経済性、効率性の観点及び所期の目的を達成しているかという有効性の観点からも、積極的に評価、検証を行ってまいりました。  この一年間に実施いたしました監査の結果、予算及び各種事務事業は、全体としては適正に執行されているものの、なお一部に是正、改善すべき事項が見受けられましたので、これらにつきまして、指摘、意見等を表明してまいりました。  以下、各種監査の実施状況につきましてご報告申し上げます。  まず、定例監査でございます。  この監査は、都の事務の執行及び経営に係る事業の管理につきまして、予算の執行や財産管理などが法令等の趣旨に沿って適正に行われているかどうか、経済的、効率的、効果的に行われているかどうかを主眼として毎年度実施するものでございます。  さらに、平成十四年度の定例監査の実施に当たりましては、重点的に監査する事項といたしまして、内部検証システムを取り上げ、事務の管理体制が適切に整備され、かつ十全に機能しているかどうか、また、各局で行っている自己検査の体制はどのような状況かにつきまして検証を行いました。  この重点監査事項の主な結果につきまして申し上げますと、前渡しを受けた資金などの現金の取り扱いには特段の注意が必要であることから、現金に関する不適切な事態を防止するために、担当者以外の者によって、定期的に諸帳簿と現金残高とを照合するとともに、この管理の責任の所在を明確にするために、照合結果を記録するなど、管理体制を整備するよう求めました。  また、自己検査は、事務の適正性を確保するための統制機能として効果的なものであることから、改善を要するとされた事項につきましては、その事務を担当する部署だけの問題とするのではなく、速やかに局全体に周知徹底し、今後の事務の改善につなげていくようにするなど、その体制を一層強化し、適切な実施体制を整備するよう求めました。  このほか、各局に対しましては、不動産取得税に係る減額処理の誤っているもの、行政財産の使用許可に伴う使用料の取り扱いを誤っているもの、職員の利用が低調となっている事業所における給食業務の委託について検討すべきものなど、適正性、経済性、効率性、有効性の観点から、計五十七件を指摘いたしました。  次に、随時監査につきまして申し上げます。  この監査は、特別養護老人ホームの施設整備等に係る補助金の不正受給事件を契機といたしまして、地方自治法第百九十九条第五項の規定に基づき実施したものでございます。  所管局を対象といたしまして、国庫補助金の交付申請が適正に行われているかどうかを検証するとともに、社会福祉法人に対しましては、関係人として、補助に係る事業計画を適切に作成しているかどうか、補助金の受け入れ方法、時期、手続は適切かどうかを調査いたしました。  この結果、補助金の申請、交付に係る手続の透明性を確保するため、所管局は、社会福祉法人が留意すべき事項を明確にするとともに、設計業者の関与のあり方について検討を求めたもの、各施設設置者から提出される協議書の審査の適正性を確保するため、補助対象法人選定委員会について、議事録を作成するよう求めたものなど、五項目につきまして、意見を付しました。  次に、事業評価手法による行政監査につきまして申し上げます。  この監査は、都の事業を客観的に評価するために昨年度から取り組んでいるもので、今年度は十一の事業につきまして、効率性、有効性の観点から検証を行い、評価いたしました。  この監査における評価結果の主なものを申し上げます。  リフトつきタクシー等整備事業は、タクシー事業者を対象として、事業者が購入した車両に、車いす利用者のためのリフト等を整備するものでございます。平成十二年度から平成十六年度まで、毎年度百二十両、合計六百両を整備する計画でございましたが、平成十四年七月末現在では百二十二両と、予定数を大幅に下回っておりました。  そこで、事業者に対して積極的に働きかけるなどして、整備計画の達成に向け、特段の努力を求めました。  さらに、この事業が区市町村の実施する福祉輸送サービスと相まって、その目的に沿って、より効果的、効率的に行われるよう一層の努力を求めました。  ダイオキシン対策事業では、所管局が、大気、水質及び土壌のダイオキシン類による汚染状況を調査測定し、結果を公表しておりますが、調査測定の結果、横十間川では、水質において、環境基準を上回るダイオキシン類が確認されました。  所管局では、水質と川底の土砂の汚染との関係に着目し、土砂の汚染の改善のため、汚染範囲確定調査を行い、河川管理者などと、この土砂の除去について協議を行うこととしております。  そこで、今後とも、横十間川についての必要な調査を行うとともに、管理者等に対して、汚染している土砂を拡散しない除去方法等について情報提供するなど、管理者等が円滑にこれを除去できるように努めていくことを求めました。  続きまして、決算審査について申し上げます。  決算審査は、知事からの審査依頼を受け、決算諸表につきまして、決算計数が誤っていないかどうか、予算執行が適正で効率的に行われているかどうかを主眼として実施するものでございます。  まず、各会計決算につきましては、財産に関する調書の一部に、債権三十一億六千万円の計上漏れがあったことなど、十局十七件の誤りが認められ、是正を求めましたが、それ以外の決算諸表は適正に表示されていることを確認いたしました。  また、総括的な意見として、事業執行に関し、都の財政状況を踏まえ、いち早く自主的な財政再建を成し遂げ、山積している課題を解決し、都民の負託にこたえるよう、さらなる努力を求めるとともに、各局所管事業につきまして、計五件の意見を付しました。  このうち、都道の上空に突き出して設置されている看板や日よけにつきましては、道路占用許可を受けて適正に設置されたものは五三%にとどまっており、道路占用料の収入未済額も年度末で約一億一千万円に達しておりました。  そこで、道路の無許可占用を削減するとともに、道路占用料の収納を促進するよう求めました。  次に、公営企業会計決算につきましては、審査に付された決算諸表が、各会計の経営成績及び財政状態を適正に表示していることを確認いたしました。  しかし、交通事業会計は約四十八億円の営業損失を計上しており、また交通事業のうち、路線バス事業は、運行一キロ当たりの乗車人員も年々減少しているなど、厳しい事業環境にあることから、経営計画を着実に実施し、効率的な経営に努めるよう求めたものなど、五会計につきまして意見を付しました。  また、今回初めて、公営企業各会計に属する六件の事業につきまして、費用対効果など効率性、有効性の観点から評価を行いました。  このうち、中央卸売市場会計では、場内環境の改善を目指し、平成四年度から、場内運搬用の小型特殊自動車の電動車化を推進してきたところですが、事業開始当初は一九・七%であった電動車の割合は、十年後の平成十三年度末で二四・七%と低調でありました。また、その間、効果の測定をしておらず、ほとんどの市場では環境の実態も把握しておりませんでした。  そこで、今後、電動車化を環境対策の一環として進めていくために、全市場での環境調査を実施し、現状を明らかにし、環境改善計画を作成するとともに、小型特殊自動車の新規導入、更新に当たっては、原則として電動車以外の登録は認めないことなど、実効性のある措置を講じるよう求めました。  次に、財政援助団体等監査につきまして申し上げます。  この監査は、都が補助金等を交付している団体が、補助等の目的に沿って事業を執行しているかどうか、また、都が資本金を四分の一以上出資している団体が、出資目的に沿って団体運営を行っているかどうか、さらに、団体を所管する各局が、団体への指導監督を適切に行っているかどうかを主眼として実施するものでございます。  まず、補助金等を交付している団体に対する監査結果でございますが、私立高等学校への都内生就学補助につきまして、都内在住生徒数の算定に誤りがあったとして補助金の返還を求めたもの、農林関係団体に対し、事務費として交付した補助金のうち、事業未執行に係る部分の返還を求めたもの、医療法人財団が補助金で整備した施設の利用が不適切であるとして改善を求めたものなど、計十八件を指摘いたしました。  次に、出資団体に対する監査結果でございますが、費用計上の際、実施年度に計上すべきところを、支出年度に計上したため改善を求めたものなど、計十六件を指摘するとともに、会社経営全般に関して計七件の意見を付しました。  主な意見を申し上げますと、子会社三社のうち債務超過となっている二社に対して債務保証や無利子貸付を行っている株式会社につきまして、累積欠損金の一掃と有利子負債の半減を目標に掲げた中期経営計画を着実に実施し、子会社を含めた会社経営の健全化に努めるよう求めました。  また、固定資産の取得等に要した資金の八四・一%を長期借入金が占め、多額の支払い利息がその経営を圧迫している株式会社につきまして、長期借入金が損益及び資金収支に及ぼす影響を軽減するための方策を検討するよう求めました。  次に、工事監査につきまして申し上げます。  この監査は、都が行う工事につきまして、計画、設計、積算、施工等の各段階において、不経済な支出や施工不良がないかどうかなど、当該工事が適正に行われているかどうかを主眼として、効率性、有効性の観点にも留意して、技術面から検証するものでございます。  この結果、都営住宅の圧力タンク給水装置の設計で、給水ポンプの設定を誤ったもの、コンクリート構造物取り壊しの積算で、より経済的な大型機械を使わなかったものなど、計八件を指摘するとともに、道路排水の水中ポンプの設計で特注品を設定しておりますが、工事費の低減につながる可能性のある汎用品のポンプの採用も検討の対象とするよう求めたものなど、計四件の意見を付しました。  以上述べてまいりました各種監査における実施箇所等につきまして申し上げますと、定例監査では本庁、事業所を合わせて四百七十七カ所、行政監査では公文書館の管理運営など十一事業、財政援助団体等監査では二百五十三団体及び所管局、工事監査では総務局など十八局の二千二百十六件の工事でございます。また、決算審査の対象は、一般会計及び十八の特別会計のほか、病院会計など十の公営企業会計でございます。  なお、各種監査におきまして指摘した収入不足や不経済支出等の金額を合計いたしますと、四千百五十七万余円となります。  次に、住民監査請求につきまして申し上げます。  住民監査請求は、住民が、執行機関や職員による財務会計上の行為に違法または不当な行為があると認めるとき、監査委員に監査を求め、必要な措置を講じることを請求するものでございます。この一年間に、公金の支出に関するもの二十八件、その他八件の合計三十六件の請求がございましたが、うち一件につきましては、請求人が請求を取り下げております。  三十五件の内訳につきましては、地方自治法の定めております住民監査請求の要件を欠いているために監査を実施せず、いわゆる却下したものが二十一件、監査を実施したもののうち、措置すべき事項を執行機関に勧告したものが三件、違法、不当とする請求人の主張に理由がないとして、いわゆる棄却したものが十一件となっております。  この一年間の監査の実施状況につきまして述べてまいりましたが、監査の結果、指摘した事項等につきましては、各局に対して、早急に是正、改善するなど、適切な措置を講じるよう求めております。また、執行部局におきましては、これらの監査結果に十分留意し、今後の事務の適正かつ効率的な執行に一層の努力を望むものでございます。  なお、平成十一年度、平成十二年度及び平成十三年度に実施した監査結果につきまして、執行機関に是正、改善を求めておりましたが、平成十四年度におきまして、措置を講じた旨の通知が二百八十六件ございましたことをご報告いたします。  最後になりますが、都民が都の行財政に関して正しい判断を下せるもととなる情報を提供することも、監査委員の重要な役割であると考えております。このため、「監査2002―都政を見つめて―」という都民向けパンフレットを作成し、配布いたしましたことを、あわせてご報告いたします。  以上、この一年間の監査結果を申し述べてまいりましたが、私ども監査委員は、監査委員の使命を重く受けとめ、今後とも、都の行財政の公正かつ効率的な運営を確保し、もって都民の信頼と期待にこたえるべく、監査業務に万全を期してまいることを申し上げまして、ご報告を終わります。  ありがとうございました。(拍手) ◯議長(三田敏哉君) 以上をもって監査委員の発言は終わりました。      ───────────── ◯議長(三田敏哉君) 次に、包括外部監査人より、平成十四年度包括外部監査結果の報告について説明を求めます。  包括外部監査人守屋俊晴さん。    〔包括外部監査人守屋俊晴君登壇〕 ◯包括外部監査人(守屋俊晴君) 平成十四年度包括外部監査人の守屋俊晴でございます。  本日、貴重なお時間を割いて、このような機会を設けていただきましたことを深く感謝いたします。  それでは、早速平成十四年度に実施した外部監査結果の概要につき説明させていただきます。  まず最初に、私が今回の監査の実施に当たりまして、常に念頭に置いてきましたことは、第一に、都の事業が、都民の目線に立って実施され、都民生活の向上に役立っているか。第二に、経済性、効率性及び有効性の視点に立って実施されているか。第三に、事業の成果や運営の実態を外部の目で見直すことにより、これまで気づかなかった問題点を発見し、是正の方策を提案すること、以上三点でございます。  次に、監査の対象とした三つのテーマと監査結果についてでございます。  第一は、道路の建設・管理運営についてでありまして、監査の結果は、指摘三件、意見四十二件となっております。第二は、都市公園等の整備・管理運営についてでありまして、指摘一件、意見五十六件でした。第三は、監理団体の受託業務等の管理運営についてでありまして、指摘八件、意見三十四件でした。  監査の結果は、三テーマ合わせて指摘が十二件、意見が百三十二件、合計で百四十四件になります。  以下、監査のテーマごとに、主な事項について説明させていただきます。  第一のテーマの道路の建設・管理運営について申し上げます。  まず、都市計画道路の整備についてであります。  都は、交通渋滞による経済的損失を四兆九千億円と試算しております。これは用地取得の交渉が難航したり、多くの路線を同時並行的に整備していることなどにより、都市計画道路の整備がおくれているからであります。
     例えば、主な地域幹線道路十路線の最近五年間の事業執行率を見ますと、六つの路線が一〇%以下の増加にとどまっております。  また、小金井街道と青梅街道が交差する付近の都市計画道路では、二つの路線を三つの工区に分割しておりますが、どの工区も虫食い状態のままで進められております。  交通渋滞の解消による経済的効果を高めるため、関係部署が一体となった推進体制を整備し、優先順位の高いものから効率的に用地取得を進める必要があります。財源や人員を重点的、集中的に投入し、都市計画道路の整備を促進していただきたいと思います。  次に、道路、橋梁等の維持管理についてであります。  現在、都が管理する橋梁の総数は一千二百七でございます。このうち阪神・淡路大震災を契機に、道路防災総点検を行った橋梁は六百四十九でありますが、その大部分は何らかの耐震対策が必要であるとされています。  今後は、東京オリンピックから高度経済成長期に架設された大量の橋梁を補修することが必要となってきます。  予防型維持管理による安全で快適なまちづくりのため、劣化予測に加えて、橋梁等の歴史的、文化的な資産価値の評価や、ライフサイクルコストの縮減に着目したアセットマネジメントシステムの導入を進めていただきたいと思います。  このほか、道路事業予定地の有効活用、無許可の看板等の道路占用の適正化や歩道の整備等について、指摘し、意見を述べました。  次に、第二のテーマの都市公園等の整備・管理運営について申し上げます。  まず、都市公園の整備についてであります。  都は、都民一人当たりの公園面積を七平方メートルとする目標を立て、公園整備を行っておりますが、現在のところ五・三平方メートルであり、計画的な取り組みが必要であります。  公園用地の取得は、これまで三十八カ所の公園事業認可区域で進められておりますが、結果として取得地が点在しており、公園全体の開園に結びついておりません。優先順位の明確化等により事業効果を上げていただきたいと思います。また、未開園の取得済み用地については、地域の住民サービスのために、有効活用していただきたいと思います。  次に、公園等の管理委託についてであります。  都は、浜離宮恩賜庭園等、九つの庭園を開園しております。平成十三年度の入園料収入は約三億円、事業経費は約四億円で、差し引き一億円の支出超過となっており、改善を図る必要があります。  都は、これらの庭園を含め、公園等の管理運営を、財団法人東京都公園協会に委託しておりますが、委託費は実費清算方式により算定されており、協会の経営努力の成果を反映する仕組みになっておりません。  公園等の管理運営について、協会に自己責任を持たせるとともに、経営改善に向けてのインセンティブが働くよう、利用料金制の導入などを進めていただきたいと思います。  このほか、庭園の開園時間の延長、動物園の独立行政法人による管理運営や、霊園別収支計算書の作成等につき、指摘し、意見を述べました。  最後に、第三のテーマの、監理団体の受託業務等の管理運営について申し上げます。  監査の対象といたしました監理団体は、財団法人東京都公園協会、財団法人東京動物園協会及び財団法人東京都駐車場公社の三団体であります。  第一に、財団法人東京都公園協会について申し上げます。  まず、会計処理についてであります。  協会は、売店施設等の設計料を委託費として会計処理をしております。設計料は、本体工事と合算して資産化されるべきものであり、建設仮勘定に計上し、竣工時に振りかえ処理を行うべきであります。  次に、備品等の財産管理についてであります。  協会は、固定資産台帳を備え、整理番号を付して財産管理を行っておりますが、備品等にはラベルが付されておりません。ラベルを用いた番号管理による実地棚卸しを定期的に実施していただきたいと思います。  このほか、東京公園文庫の販売促進や売店などの収益の改善などについて指摘し、意見を述べました。  第二に、財団法人東京動物園協会について申し上げます。  まず、会計処理についてであります。  協会の会計は、本会計、管理受託事業特別会計、事業特別会計の三会計ごとに貸借対照表等を作成しておりますが、これらを統合したものを作成しておりません。協会全体の経営状況を明瞭に把握するため、勘定科目総括表を作成していただきたいと思います。  次に、葛西臨海水族園の管理運営についてであります。  入園者数は、平成二年度をピークに、以後、逓減してきております。団体入園者のさらなる誘致とともに、年間パスポート、動物園との共通パスポートの導入や、魅力ある催事の企画等、効果的な経営改善を進めていただきたいと思います。  このほか、適格退職年金の運用や効果的な園内案内等につき、意見を述べました。  第三に、財団法人東京都駐車場公社について申し上げます。  まず、都営駐車場の運営についてであります。  公社が都から受託している駐車場は七カ所で、収容台数は約一千二百台であります。駐車場料金収入は、平成七年度には約十三億円でありましたが、平成十三年度には約十一億円となり、二億円ほど減少しております。設備の改修、直営駐車場との共通プリペイドカードの発行など、効果的な経営改善を進めていただきたいと思います。  次に、公社事業の再構築についてであります。  公社が都道の高架下や道路事業予定地等を利用して運営する直営駐車場は百八十七カ所で、収容台数は約一万一千台であります。  近年では、民間の経営による駐車場も多数開設されており、公社は、公益上必要な駐車場事業に特化するとともに、用地取得事務の受託など、関連事業の再構築を図る必要があると思います。  このほか、施設改修費充当金の算定方法や、新宿駅西口広場活性化事業などについて指摘し、意見を述べました。  以上、本年度の包括外部監査の結果の概要について述べてまいりましたが、執行部局におかれましては、外部監査の結果に十分留意され、事業の改善に取り組まれることを切に望みます。  以上をもちまして平成十四年度包括外部監査結果の説明を終わります。(拍手) ◯議長(三田敏哉君) 以上をもって包括外部監査人の説明は終わりました。      ━━━━━━━━━━ ◯六十七番(真鍋よしゆき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。  本日は、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、日程第百四十三を先議されることを望みます。 ◯議長(三田敏哉君) お諮りいたします。  ただいまの動議のとおり決定することにご異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ◯議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更して、日程第百四十三を先議することに決定いたしました。      ━━━━━━━━━━ ◯議長(三田敏哉君) 日程第百四十三、第百四十三号議案、東京都外形標準課税条例無効確認等請求控訴事件に関する上告及び上告受理の申立てについてを議題といたします。  本案に関し、提案理由の説明を求めます。  副知事福永正通君。    〔副知事福永正通君登壇〕 ◯副知事(福永正通君) ただいま上程になりました第百四十三号議案につきましてご説明を申し上げます。  東京都外形標準課税条例無効確認等請求控訴事件に関する上告及び上告受理の申立てについてでございます。  本件訴訟につきましては一月三十日、東京高等裁判所において、東京都敗訴の判決が出されました。本判決は、憲法及び地方税法の解釈、適用を誤った結果、一審原告らの東京都に対する請求を容認したものであるといわざるを得ないことから、東京都といたしましては、本判決の取り消し等の判決を求めて、上告及び上告受理の申し立てをするため、議会の議決をお願いをいたすものでございます。  以上で説明を終わります。よろしくお願いを申し上げます。 ◯議長(三田敏哉君) 以上をもって提案理由の説明は終わりました。 ◯六十七番(真鍋よしゆき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。  ただいま議題となっております第百四十三議案については、委員会付託を省略されることを望みます。 ◯議長(三田敏哉君) お諮りいたします。  ただいまの動議のとおり決定することにご異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ◯議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、第百四十三号議案については、委員会付託を省略することに決定いたしました。      ───────────── ◯議長(三田敏哉君) これより採決に入ります。  本案は、起立により採決いたします。  本案は、原案のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕 ◯議長(三田敏哉君) 起立多数と認めます。よって、本案は、原案のとおり可決されました。      ━━━━━━━━━━ ◯六十七番(真鍋よしゆき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。  本日の会議はこれをもって散会し、明六日から十一日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。 ◯議長(三田敏哉君) お諮りいたします。  ただいまの動議のとおり決定することにご異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ◯議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明六日から十一日まで六日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。  なお、次回の会議は、二月十二日午後一時に開きます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後二時四十九分散会    文書質問趣意書及び答弁書 一四財主議第五一九号 平成十五年一月二十七日           東京都知事 石原慎太郎  東京都議会議長 三田 敏哉殿    文書質問に対する答弁書の送付について  平成十四年第四回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。      記    河野百合恵議員    山口 文江議員    清水ひで子議員    かち佳代子議員    古館 和憲議員    丸茂 勇夫議員    吉田 信夫議員      ───────────── 平成十四年第四回都議会定例会
       文書質問趣意書             提出者 河野百合恵 質問事項  一 緊急地域雇用創出特別基金事業の拡充に   ついて 一 緊急地域雇用創出特別基金事業の拡充につ  いて   東京の完全失業者数は毎年増加し、今年も九月までの統計では、前年比一五%増となっています。総務省の調査によれば、失業期間の長期化が目立ち、二〇〇〇年以降は完全失業者の四人に一人が失業期間一年以上で、その中でも、二年以上も失業している人の方が多くなっています。しかも、完全失業者の過半数が無収入という状況です。さらに、企業の多数が非正規雇用者の比率を高め、失業と短期雇用をくりかえさざる得ない不安定雇用の労働者が増大しています。   今度、小泉内閣が「不良債権処理の加速」を強行すれば、新たに職を失う人は、厚生労働省の試算で六十五万人、民間の研究所の試算では三百三十二万人にのぼるとされています。   わが党は、本会議代表質問で、知事が、「不良債権処理の加速」の中止と、交付金事業の基金の大幅積み増しを、小泉首相に対して求めること、また、都として、交付金事業の基金の上乗せなどによる事業の抜本的拡充と、継続的な失業対策事業の創設などを提案したところです。   そこで、私は、緊急地域雇用創出特別基金事業にしぼって質問します。   緊急地域雇用創出特別基金事業は、一九九九年に緊急地域雇用特別基金事業としてはじめられたもので、現在、二〇〇四年度までの期間で、総額三千五百億円の事業費で実施されているものです。東京都には区市町村分をあわせて、二百三十八億円が基金に積まれ、そのうち今年度もふくめ、八十六億円が予算化されていますが、その運用については、関係団体や都民から改善を求める声が多くあげられています。  1 予算を増やし、基金事業の拡充を    基金事業は「実施要領」では、原則として「事業で雇用する労働者の雇用・就業期間は六ケ月未満、一回限り」とされており、一部事業で雇用期間が一年間に改善されたものの、実際の就労期間は二~三月未満の雇用が多数であったと言われています。実際に、東京都の直接実施事業の中には、仕事につけたのは六日間だけだったというものもありました。    こうしたなかで、関係者からは、「基金事業の雇用期間は一年間に改善して欲しい」「せめて実労働日数で六ケ月にしてほしい」という切なる声があげあられています。この要望に応えていくためには、事業の予算を増額し、事業量そのものを拡大していく必要があります。    今年十一月、国は、二〇〇三年、二〇〇四年の交付金の残額を前倒しで使うと発表しました。合わせて、厚生労働省は今年度補正予算で、緊急地域雇用創出特別交付金の拡充・効果的活用のためとして積みましするとしています。    また、「実施要領」は、都道府県は、「自らの財源により、事業の上積みに努めるものとする」と記されています。    あらためて、都として予算を上積みして、事業規模を拡大すること、その際、東京都自らが雇用する直接実施事業を増やすことを強く求めます。答弁を求めます。  2 地域の特性を生かし、都民の参加で効   果あるものに   ア 「実施要領」では、事業計画の策定及び実施にあたって「必要に応じ関係者の意見を聞くこと」を規定しています。これは、旧基金事業にはなかった規定であり、この間、事業を実施するなかで、事業を生きた役立つものとするために、欠かせない仕組みとして、関係者から強く要望されていたものです。    そこで、失業者、住民、行政が共同して、雇用創出事業を検討・計画する「事業企画委員会(仮称)」をつくることを提案するものです。答弁を求めます。   イ このような委員会がつくられれば、各自治体が、失業問題を地域の問題としてとりくんでいくうえで、力を発揮するものと考えるものです。見解を伺います。  3 非営利のNPO法人などへの発注拡大を    都は、事業の委託契約・発注のほとんどを、一般の事業の発注方式と同様に、一般競争入札で契約をおこなってきました。このため、入札のたたき合いと、低価格での受注が日常化、結果的に、就労者の労務費が切り下げられるという事態が生まれています。    こうした事態にたいして、厚生労働省は、今年の十月一日に、「基金事業の入札に際して、著しく低い金額で落札し、賃金が低い水準に抑制されるケースが散見」されるとして、各都道府県の交付金基金事業担当者あてに「事務連絡」を出し、賃金水準の設定、競争入札の場合の改善をもとめるにいたっています。    実際に、全日本建設交通一般労働組合が行なった一般競争入札の「公園清掃、除草等維持管理委託に関するアンケート調査」(二〇〇二年十月実施、回答百十一社)によると、維持管理が大幅に減っているもとで、その対策として、複数回答で七割が「会社役員の報酬を引き下げた」、「賃金、労働条件の見直し、人減らしで対応せざるを得なかった」と答え、二六%が「常用労働者をパートからアルバイトに切り替えた」と答えています。    また、NPO団体など非営利団体が不利な状況におかれていることも改善がいそがれています。それは、指名については実績が重んじられ、失業者を組織している新たに業者登録した団体などは不利となります。また、NPO団体の中には、そもそも業者登録してないところも少なくありません。    東京都は、二〇〇一年八月に発表した「東京都における社会貢献活動団体との協働の推進指針」では、「行政が単独で行うよりも、社会貢献活動団体と協働し、その特性を活かすことで、多様化する都民ニーズに効果的に対応できる場合がある」としているように、NPO法人との協働の積極的な推進を表明しています。    事業の目的である「失業者の仕事確保、生活保障」として役立つような委託事業にしていくために、一般競争入札を見直し、NPO法人や失業者のネットワークなどの団体が委託しやすい仕組みに改善すること、契約価格の設定についても、仕事にふさわしい賃金の保障がされるようにすることが必要です。同時に区市町村に徹底することを求めます。お答えください。  4 事業の取り組みの調査と情報公開について   ア 事業の状況を掌握し、事業の改善に役立てるとともに、都民に知らせることも大切です。この点では、広島県、三重県、静岡県、岡山県などが、基金事業の委託契約先、委託契約先種別まで分類して、事業実績をまとめていることがわかりました。    雇用就業者数を延べ人日で集計している岡山県の実績によると、直接実施事業とNPO法人への委託が雇用効果を高めています。    広島県では、これまでの事業を検証して、雇用効果の高い事業は「IT化の進展に対応した業務やデータ入力」「環境美化・訪問調査」とまとめており、また、研修事業については、「福祉人材育成事業、情報関連人材」の研修事業の再就職率が高いとしています。    東京都においても、これまでの事業の雇用効果を検証することが必要です。    そこで、まず、これまで実施した基金事業について、委託先種別、雇用効果、事業費など実績はどうなっているのか、その効果はどうなのか、明らかにして下さい。  イ 基金事業は、実施要領によれば「都道府県は、基金事業にかかわる担当窓口を明確にし、基金事業を周知し、広報すると共に、各事業の委託や労働者の募集に関する問い合わせに対応するものとする」とされています。    「基金事業の求人情報を、職安だけでなく都としても積極的に広報してほしい」という要望もよせられています。    都民に向けて、東京都の広報などへの掲載、告知ポスターの作成など、広く知らせることがいそがれていると思いますが、お答えください。  ウ また、他府県では、ホームページなどで、委託先企業名、募集人数、募集時期、就業地域、問い合わせ先などを広報するなど、積極的な対応もおこなっています。    ところが、都のホームページについては、「都の基金事業について、数ヶ月も更新されない」と言う批判も寄せられています。    都のホームページのメンテナンスをきちんとおこなうこと、委託先企業名、募集人数、募集時期、就業地域、問い合わせ先なども掲示するなど改善が必要ですが、答弁をもとめます。       ………………………………… 平成十四年第四回都議会定例会    河野百合恵議員の文書質問に対する答弁    書 質問事項  一 緊急地域雇用創出特別基金事業について   1 緊急地域雇用創出特別基金事業の予算を上積みし、事業規模を拡大すること、その際、都自らが雇用する直接実施事業を増やすことを求める。見解を伺う。 回  答   国の平成十四年度補正予算においては、緊急地域雇用創出特別交付金として八百億円が増額されており、各都道府県に追加交付されることとなります。   都といたしましては、この追加交付を受け、現下のきわめて厳しい財政状況を踏まえつつ、本基金を十二分に活用して、雇用創出効果の高い事業を実施するよう努めてまいります。   なお、直接実施事業につきましては、今後とも事業内容に応じ、適切な事業形態をとってまいります。 質問事項  一の2 都民参加について     ア 実施要領では、関係者の意見を聞くことを規定している。失業者、住民、行政が共同して雇用創出事業を検討・計画する「事業企画委員会(仮称)」を作ることを提案するが、見解を伺う。 回  答   基金事業は、地方公共団体が地域ニーズを踏まえ、独自に創意工夫を凝らした事業を実施し、緊急かつ臨時的な雇用の創出を図るものです。   都といたしましても、実施要領を踏まえつつ、必要に応じて、関係者の意見を聞くなど、適正な事業の実施に努めており、「事業企画委員会(仮称)」を設置する考えはありません。 質問事項  一の2のイ このような委員会が作られれば、各自治体が、失業問題を地域の問題として取り組んでいくうえで、力を発揮すると考えるが、見解を伺う。 回  答   基金事業の実施に当たりましては、各自治体が様々な地域ニーズを踏まえるとともに、必要に応じて関係者の意見を聞いています。今後とも、こうした取組を通して、効果的に雇用の創出を図ってまいります。 質問事項  一の3 事業の委託契約・発注について、一般競争入札を見直し、NPO法人や失業者のネットワークなどの団体が、委託しやすい仕組みに改善すること、契約価格の設定についても、仕事にふさわしい賃金の保障がされるようにすることが必要である。同時に、区市町村に徹底することを求める。見解を伺う。 回  答   基金事業の執行に当たっては、都及び各区市町村においてそれぞれの契約事務手続きに基づき、適正かつ効果的に実施しています。 質問事項  一の4 事業の取り組みの調査と情報公開について     ア これまで実施した基金事業について、委託先種別、雇用効果、事業費などの実績及び効果について伺う。 回  答   緊急地域雇用創出特別基金事業は、平成十四年一月から開始したところであり、平成十三年度における実績は、事業額が二億九千百万円、事業件数が五十六件、事業の従事者数が八百七十五人、そのうち新規雇用の失業者数は七百三十六人となっています。   直接実施事業を除く委託先別の件数は、民間企業が三十五件、シルバー人材センターが十三件、その他が七件となっています。委託先別の新規雇用の失業者数は民間企業が三百六十四人、シルバー人材センターが二百二十五人、その他が百三十三人となっています。   平成十三年度については、実質的な事業期間が二か月程度と極めて短期間である中で七百人を越える新規雇用を生み出しており、一定の効果をあげていると考えています。 質問事項  一の4のイ 基金事業の求人情報を都民に向けて、広報、ポスターなどで広く知らせるべきだが、見解を伺う。 回  答   基金事業については、都の労働施策に関する情報提供を行う「TOKYOはたらくネット」に、基金事業の概要、都及び区市町村が平成十四年度に実施する事業名、事業期間及び事業担当窓口を掲載し、都民のみなさんに広くお知らせしています。   事業実施に伴う求人情報につきましては、東京労働局と連携の上、所管のハローワークを通じ、求職者にみなさんに、適宜お知らせしています。 質問事項  一の4のウ ホームページについて、メンテナンスをきちんと行うこと、委託先企業名、募集人数、募集時期、就業地域、問い合せ先なども掲示するなど改善が必要だが、見解を伺う。 回  答   「TOKYOはたらくネット」につきましては、労働施策に関する最新の情報を提供するため、常に内容の更新を行っています。   また、基金事業に関するページについても、平成十四年三月に掲載して以降、事業計画の変更等に対応し、随時、内容の更新を行うとともに、必要に応じ掲載事項の見直しを行っています。      ───────────── 平成十四年第四回都議会定例会    文書質問趣意書             提出者 山口 文江 質 問 事 項  一 住民基本台帳ネットワークシステムにつ   いて 一 住民基本台帳ネットワークシステムについ  て   住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」)は、九九年八月に改正住民基本台帳法が成立し、多くの反対や疑念の声が国民からあがる中で、本年八月に施行した。改正法の附則に「個人情報の保護」について所要の措置を講ずるものとするとあるにもかかわらず、なんら具体的な措置がとられることなく施行された。このような中で、都内の自治体を含めて複数の自治体が住基ネット接続を拒否し、また、横浜市にあっては、個人の住基ネット参加についての選択権を保障する対処をとったが、私はこうした対応を評価すべきと考える。  1 このように、住基ネットのセキュリティや情報の漏洩などの不安を感じている都民の世論を背景として、「個人情報保護法」が制定されるまでは住基ネット不参加との対応をとっている各自治体の動きは、国の対処に起因するわけであり、その一点においては、都の立場としては、とりわけ都内各自治体の自治権を尊重した対応をすべきと考える。政府は、「個人情報保護法案」を今臨時国会で廃案とし、次期通常国会で修正した法案を再提出すると聞いているが、都の見解を伺う。  2 住基ネットは、法定事務の従事者などアクセス権限を与えられた担当者であれば、全国民の本人確認情報にアクセスが可能なシステムである。法定の行政機関等において、ネットワークで結合されていれば、どの機関からでも情報を参照することができるわけである。    国民からは、自分の情報がいつどこに提供されたか、また、法定された目的以外に提供されていないかなどを確認したいとの要望が多く、アクセスログの開示は住基ネットの不正利用防止にも役立つものと考えるが、アクセスログに関する検討状況について伺う。  3 都としては、都民の個人情報保護のため、住基ネットの事務を委任している財団法人地方自治情報センターに対する調査や監督は不可欠だと考える。どのような場合に調査・監督を行うのか、都の見解を伺う。また、都内自治体や都民から調査等を行うよう要請された場合を含め、見解を伺う。
     4 「オンライン化関係三法案」が本年十二月六日に国会で成立した。これにより、住基ネットで利用できる事務に百七十一件の事務手続きが加わり、九十三事務から二百六十四事務へと大幅に拡大された。    都道府県においても、条例を定めることにより、独自の事務に住基ネットを利用できるとされているが、都の見解を伺う。  5 住基ネットは、電子政府・電子自治体構想実現のための基盤とするため、全自治体、全国民参加でなければ、事務の効率化も望めないこともあってか、個人の参加・不参加の意思が保障されていないシステムである。    全員参加の方式は、福祉サービス等において、自己選択・自己決定の個人の意思が尊重されつつあること、また、地方分権の流れにも逆行するものであると考える。    そこで、横浜市が実施している個人の意志で住基ネットへの参加を決定できる選択方式(横浜方式)についての都の見解を伺う。                   以上      ………………………………… 平成十四年第四回都議会定例会    山口文江議員の文書質問に対する答弁    書 質問事項  一 住民基本台帳ネットワークシステムにつ   いて  1 住民基本台帳ネットワークシステム不参加の各自治体の動きは、国の対処に起因する。都の立場としては、各自治体の自治権を尊重した対応をすべきである。    政府は、個人情報保護法案を今国会で廃案とし、次期国会で修正した法案を再提出すると聞いているが、見解を伺う。 回  答   都としては、個人情報保護法は必要と考えています。そのため、個人情報保護法案及び関連法案の早期成立について、内閣総理大臣及び総務大臣あてに要請しており、次期国会での修正案の早期成立を期待します。 質問事項  一の2 住民基本台帳ネットワークシステムのアクセスログの開示は、不正利用防止にも役立つものと考えるが、アクセスログに関する検討状況について、伺う。 回  答   住民基本台帳ネットワークシステムのアクセスログについては、障害の原因解析や内部の不正操作、外部からの不正アクセスの防止のために用意された機能であり、個人別の開示請求にも対応できるよう、その是非やシステム変更について、全都道府県で構成する住民基本台帳ネットワークシステム推進協議会において、検討しております。 質問事項  一の3 個人情報保護のため、財団法人地方自治情報センターに対する調査や監督は、不可欠だと思うが、どのような場合に調査・監督を行うのか、見解を伺う。また、自治体や都民から調査等を行うよう要請された場合を含め、伺う。 回  答   指定情報処理期間(財団法人地方自治情報センター)に対する委任都道府県知事の調査・監督については、住民基本台帳法第三十条の二十二及び第三十条の二十三の規定により、必要な指示、報告の聴取及び立入検査の実施を行うことができるとされています。   都としては、指定情報処理期間で記録・保存している都民の本人確認情報が漏えいするおそれがある等の事態が生じた場合には、この規定を適用する考えです。   都内自治体や都民から調査等を行うよう要請された場合においても、都としてその必要性を検討の上、対応します。 質問事項  一の4 「オンライン化関係三法案」が成立し、住民基本台帳ネットワークシステムを利用できる事務が、大幅に拡大された。都道府県においても条例を定めることにより、独自の事務に利用できるとされるが、見解を伺う。 回  答   住民基本台帳法第三十条の八の規定により、都道府県知事は、条例を定めることにより、住民基本台帳ネットワークシステムを利用することができるとされています。   都としては、今後、都民サービスの向上や費用対効果等を総合的に勘案し、このシステムの利用を検討します。 質問事項  一の5 横浜市が行っている、個人の意志で住民基本台帳ネットワークシステムへの参加を決定できる選択方式(横浜方式)についての見解を伺う。 回  答   住民基本台帳法では、住民基本台帳に記録されている全ての住民に係る本人確認情報について、都道府県及び指定情報処理機関において記録し保存することとされており、「住民選択制」は認められていません。      ───────────── 平成十四年第四回都議会定例会    文書質問趣意書             提出者 清水ひで子 質 問 事 項  一 乳幼児医療費助成の拡充について 一 乳幼児医療費助成の拡充について   乳幼児医療費助成の拡充について質問します。  1 東京都が九四年度から実施してきた乳幼児医療費助成制度は、今年から対象が就学前まで拡充され、若い親たちの子育てへの大きな支援となっています。    現在では、全国のすべての自治体で、入院、通院を含め広がってきました。少子化が大きな社会問題となり、子育ての経済負担の軽減が求められているとき、この制度への期待は一層強くなっています。    子供の病気の罹患率は、とりわけ就学前までが高いことがさまざまな調査から明確になっています。厚生省の報告でも、一歳から四歳児では風邪とアトピーだけで八三・六%になっており、アレルギー性ぜんそくやアトピーなどが増え、早期発見と早期治療が、とくに、この時期が大切な時期であることが強調されています。    一方、昨年度の東京都社会福祉基礎調査報告書「都民の生活実態と意識」によると「生計中心者の平均収入額」は、世帯の生計中心者の、二〇〇〇年中の平均収入額は調査以来初めて減少し、収入が「三百万円未満」の割合は増加し、「三百万円以上」の割合は減少している」と報告され、若い親たちの医療費負担はとりわけ重いものになっていることが伺えます。    八王子市が九八年に実施した児童実態調査でも、「子育て支援事業として市民が望む施策」の第一位は、「子育てに係る経済的な負担の軽減」となっています。切実な要望が列挙される中で一位をしめるのは、どの親たちにも共通の要望となっていることがわかります。    これらの調査がしめしているように、乳幼児期は病気にかかりやすく、早期発見・早期治療が重要であり、また育てる若い親の家計の実態はこれまで以上に厳しくなっていることから、乳幼児医療費助成制度の役割は、ますます重要になっていると思いますが、このことをどのように受け止めますか。  2 東京都の制度は、全年齢に国の児童手当の基準に準拠した所得制限をもうけているため、就学前の人口は六十二万八千五百人余であるにもかかわらず、医療費の助成を受けている乳幼児は四十二万五千八百人余。補助率六七・七%で、全都で十九万人以上が補助対象外となっています。そのため、これまで繰り返し、補助を拡大してほしいという声が、東京都にも都議会にも出されてきました。    年齢制限については、都が就学前に引き上げたことにより多摩格差はなくなりましたが、所得制限は自治体間の格差が残され、所得制限が残されている自治体住民にとってその撤廃は切実な願いになっています。現在、区部で二十地区、市町村では三地区と都内では二十三区市が所得制限なしとしていますが、特に、区部と多摩では大きな差となっています。これまでもさまざまな施策で多摩格差があるといわれていますが、乳幼児医療費の所得制限の実態は、新たな三多摩格差というべきものになっています。    その結果、市長会からは毎年東京都に要望が出され、来年度の予算要望でも「子育て環境の充実について-子供と家庭をとりまく環境が大きく変化し、子育てに関する不安を抱える親が増加し、児童虐待につながることや、子育て費用の負担の増大などから、今、子育て支援の充実が強く求められている。都においては乳幼児医療費助成の所得制限の撤廃および補助率の引き上げなどの財政措置など積極的支援策を講じること」との要望が出されています。    さらに、毎年一回開かれ、今年も十月に開かれた、多摩地域の市長と、多摩地域選出都議会議員との懇談会でだされた資料でも、「多摩地域の現状」として、四項目あげた主な指標でも、乳幼児医療費助成制度の所得制限の状況が示され、「各団体の方針が異なっているとしても、市民への影響は大きく、子育て支援を充実しようとする視点からは、是正が必要」と強く求めているのです。    多摩の市長会から繰り返し要望が強く出されていますが、その要望をどのように受け止めていますか。  3 十一月十九日の厚生委員会事務事業質疑で、乳幼児医療助成の所得制限撤廃を求めるわが党議員の質問に対し、保険部長は二つの理由から所得制限をなくす考えはないと答弁しました。    ひとつは、都の老人医療費助成や障害者医療費助成も所得制限があるといった諸制度間の「負担の不公平」論ですが、実際はどうでしょうか。    制度間の公平というなら、第一に私は本来、老人医療費助成も障害者医療費助成も、乳幼児医療費助成も、いずれも所得制限をなくすべきだと考えます。    第二に、老人医療費助成と障害者医療費助成は都が直接実施している制度であり、東京全域、どの自治体も同じ制度で実施されています。ところが乳幼児医療費助成は、区市町村に対する都の補助事業となっているため、先ほど述べたとおり、自治体間のはっきりした格差が生まれているのです。この格差(不公平)の解消こそ切実に求められているのです。    第三に、若年世帯の実態です。高齢者の場合は、大多数が低所得層に集中しているのに対し、ひとにぎりの非常に高額所得の層が形成されています。これは長年にわたる資産形成による格差がはっきりあらわれるためです。しかし若年世帯はこれと大きく異なり、どの所得層もほぼ均等に分布している特徴があります。つまり所得基準の前後でそれほど大きな差はなく、現在の所得基準を採用する明確な根拠はありません。    八王子市内で、二歳、四歳、七歳の三人の子供を育てる母親は「所得制限で医療費助成はうけられていないと友人にいうと、お金持ちね、と嫌みを言われます。しかし所得基準を少しこえただけで、児童手当も、幼稚園の利用料軽減助成も受けられず、生活は厳しいのが実情です、そしてそういう気持ちは実は自分だけでなく、友人の中にもたくさんいるのです。今月は歯医者にかかり、嘔吐の風邪で三千三百円以上も負担をしました。上の子の風邪には下の子の薬を残して飲ませました。こういうことをやっているのも私だけでなく、何人ものお友達がやっている。皆、ボーナスカットなどで、前年度の収入とも変わっている人もたくさんいるのです」と話していました。助成対象外となっている世帯でも十分に医療を受けさせることができない場合も少なくないのです。そして、せめて子供の病気の時ぐらいは十分な医療を受けさせたいと思うのは、どの親も同じではないでしょうか。    こうした実態があるからこそ、区部では二十区が所得制限をすでに撤廃し、多摩各市でも所得制限の撤廃を市単独で行う動きが次々と広がり始めているのです。多摩市では、四歳未満まで所得制限を撤廃しており、また、狛江市でも三歳未満児まで拡充しています。    都は所得制限は必要だと言いますが、実際にはこのように多くの自治体が所得制限の撤廃にふみだしている理由は、どういう事だと考えていますか。  4 以上見てきたように、都が所得制限が必要だという理由にしている「制度間の公平」論、「負担の公平」論というのは成り立たないと考えますが、都の見解を伺います。  5 もうひとつの、都が所得制限の撤廃を拒否している理由は、今年度予算ベースで六十四億円もの新たな費用負担がかかる、財源がない、ということです。    しかし、これは過大な見積もりです。今年度は所得制限の緩和が実施された初年度で、その影響が予算では過大に見積もられていたため、実績をふまえ来年度予算にむけた局要求では大幅に下方修正されているからです。局要求をもとに試算すると、来年度、所得制限を就学前まで撤廃した場合の必要経費はおよそ四十億円、三歳未満まで所得制限をなくした場合、およそ十五億円ではないではないでしょうか。    一方、今年十月からの医療保険制度改定により、三歳未満児の患者負担は三割から二割に軽減されましたが、これにより乳幼児医療費助成にたいする都の費用負担は、来年度の平年度ベースで十四億円軽減されることが、十一月の厚生委員会でのわが党への答弁で明らかにされています。    つまり、三歳未満児までの所得制限撤廃であれば、国の医療保険制度の改定により生じた財源を生かすだけで、都として特段の新たな財源措置を必要としないで、すぐにも行うことができるのです。所得制限をなくしていく方向にふみだし、当面、三歳未満児までの所得制限を直ちになくすことを求めるものです。お答え下さい。    子育てにともなう経済的負担の軽減は、少子化対策の重要課題のひとつであることは、都も認めています。乳幼児医療費制度の拡充―所得制限撤廃にむけた一歩を都がふみだすなら、経済的負担の削減による支援という直接的な効果にとどまらず、乳幼児期の病気の早期発見、早期治療を促進し、さらには若い親たちの中に、子育ては大変だというマイナスイメージの材料がたくさんある中で、明るい希望あるメッセージとなり、大きな励ましとなるに違いありません。  乳幼児医療費助成のいっそうの拡充にむけた決断を改めて求めて、質問を終わります。      ………………………………… 平成十四年第四回都議会定例会    清水ひで子議員の文書質問に対する答    弁書 質問事項  一 乳幼児医療費助成の拡充について  1 乳幼児期は、病気にかかりやすく、早期発見・早期治療が重要であり、また、若い親の家計の実態は、これまで以上に厳しくなっていることから、乳幼児医療費助成制度の役割は、ますます重要になっていると思うが、見解を伺う。 回  答   乳幼児医療助成制度については、出生率が低下し、少子化が進行している中で、子育て家庭に対する経済的支援策として重要な施策であると認識し、義務教育就学前までへの対象年齢の拡大や所得制限の緩和などをすでに実施し、制度の充実に努めています。 質問事項  一の2 乳幼児医療費助成の所得制限の撤廃及び補助率の引き上げなど子育て環境の充実について、多摩の市長会から繰り返し要望が強く出されているが、どのように受け止めているのか、見解を伺う。 回  答   乳幼児医療費助成制度について、都は、これまでも対象年齢の拡大や所得制限の緩和を行うなど、実施主体である区市町村と連携して、その充実に努めてきました。   一方、東京都市長会からは、平成十五年度予算要望として、「国の医療制度として乳幼児医療費助成制度を創設すること」について都から国への働きかけを要望されており、都としては、この趣旨も踏まえ、国に対し、乳幼児に係る医療保険制度の充実について要望しています。   なお、乳幼児医療費助成制度は、子育て家庭への経済的支援策であるため、一定の所得制限は必要であり、また、地域における子育て環境の充実を図る区市町村を支援するという本制度の趣旨から、現行の補助率は適正であると考えています。 質問事項  一の3 都は、乳幼児医療費助成の所得制限は、必要だと言うが、多くの自治体が所得制限の撤廃に踏み出している理由は、どういうことだと考えているのか、見解を伺う。 回  答   一部の区市町村に所得制限撤廃の動きが見られるのは、子どもの数が減少し少子化が進行しているという状況の中で、各区市町村がそれぞれの地域の実情や財政状況等を勘案しながら、独自の判断で取り組まれているものと理解しています。 質問事項  一の4 都が、所得制限が必要だという理由にしている「制度間の公平」論、「負担の公平」論は、成り立たないと考えるが、見解を伺う。 回  答   都が実施している老人、心身障害者、ひとり親家庭及び乳幼児に対する各医療費助成制度は、いずれも受給対象者の医療を受ける機会を確保し、健康の維持・増進を図ることを目的とした経済的支援策です。   この都制度の中で、実施主体が区市町村である乳幼児医療費助成制度については、一部の区市町村が独自の判断で所得制限の緩和等を図っていることは承知しています。   しかしながら、都の制度としては、所得制限の設定等について、各制度間の均衡を図ることは必要であると考えています。 質問事項  一の5 三歳児未満児までの所得制限撤廃であれば、国の医療保険制度の改定により生じた財源を生かすだけで、都として新たな財源措置を必要としないで行うことができる。所得制限をなくしていく方向に踏み出し、当面、三歳未満児までの所得制限を直ちになくすことを求める。見解を伺う。 回  答   乳幼児医療費助成制度における所得制限は、本制度が子育て家庭への経済的支援策であることから設定しているものであり、これを撤廃することは考えていません。
         ───────────── 平成十四年第四回都議会定例会    文書質問趣意書             提出者 かち佳代子 質問事項  一 老人保健施設と地域でのリハビリテーシ   ョンの拡充について  二 特別養護老人ホームの整備促進と入所手   続きの改善について  以下の内容について文書質問を行いますので、答弁をお願いいたします。 一 老人保健施設と地域でのリハビリテーシ  ョンの拡充について  1 基盤整備の促進について    日本の疾病構造は、脳血管疾患がトップクラスです。後遺症対策やリハビリテーションの充実によってADLの拡大はもちろんQOLの向上、さらにノーマライゼーション社会の実現をすすめることは、医療や福祉関係者ばかりでなく、広く行政としての責務ではないかと考えます。    また、高齢者が脳血管障害や骨折などで一度倒れたとしても、回復し寝たきりにならずに暮らすことは、高齢者本人と家族にとっても、また社会的な介護費用を軽減するためにも重要なことです。    そのためには、急性期からの病院でのリハビリに続いて、退院してから地域や在宅でのリハビリが継続されるようにすることが必要です。    ところが介護保険制度が導入されて以降、「施設から在宅へ」とか「地域ケアの充実」が合言葉にされてきましたが、東京では通所リハビリや訪問リハビリのサービス提供と、病院から在宅につなぐ「中間施設」として地域でのリハビリの拠点的役割をもつ老人保健施設の整備が大きく立ち遅れていることは、重大な問題と言わねばなりません。    しかも介護保険になってから、それまで高齢者在宅サービスセンターなどでも行われていた通所リハビリが、介護保険の対象になるのは、老人保健施設と病院・診療所などの医療系事業所だけになってしまったため、逆に後退した地域も生まれています。    老人保健施設は、全都で現在百十一か所、二十三区では五十五か所にすぎず、高齢者人口にたいする整備率は全都道府県のなかで最低です。そのため、地域でのリハビリの場がなかなか見つからないというのが実態です。    品川・大田区あわせた区南部二次保健医療圏で、約百三十八万人の高齢人口に対して、通所リハビリはわずか六か所であり、そのうち病院・診療所が四か所、老人保健施設は二か所にすぎません。老人保健施設の整備の遅れが、通所リハビリの遅れに直結しているのです。今年の春、大田区内の七十歳の男性が脳梗塞で入院治療後、当初は車いす生活になると宣告されたのですが、本人の努力もあり、杖歩行が可能となり左手の後遺症を残すまでに回復しました。都立病院で二週間の通院リハビリの後、地域で通所リハビリをすすめられましたが、在宅介護支援センターやケアマネージャーに相談し、手を尽くしましたが、大田区内では見つからず、結局、品川の事業所に通うことになりましたが、電車を乗り継いで一時間もかけて通わなければなりません。    老人保健施設は、地域でのリハビリの拠点であり、家庭復帰、在宅ケア支援などの重要な役割をもっています。ところが東京都の整備状況は依然として全国最低であり、今後の計画を見ても、「介護保険事業支援計画素案(中間のまとめ)」では、高齢人口に対する整備率は二〇〇七年度になっても〇・六七%で、国が示した整備量の目安一・一〇%にも遠く及ばない状況です。    都は「福祉改革STEP2」で、「施設から地域へ」という方向の新しい福祉をつくると言いますが、このような老人保健施設整備の深刻な遅れをそのままにしておいて地域でのケアを支えることはできません。ところが「STEP2」では「重装備施設偏重の従前の画一的な福祉を改革」するなどと、ことさら施設の役割が否定的に描かれており、老人保健施設の整備はまったく位置づけられておらず、整備目標も示されていないのです。   ア 東京都は、老人保健施設の役割について、どう考えているのですか。   イ 老人保健施設整備の遅れと、今後も国の整備量の水準にも遠く及ばないことについて、どのように認識していますか。   ウ 遅々として進まない老人保健施設の増設を急ぐため、少なくとも全国の平均水準にいつまでに到達するのかという目標を明確にし、その実現にむけ都として老人保健施設の緊急整備事業にとりくむ必要があると思いますが、所見を伺います。   エ 増設の緊急性と、老人保健施設は地価の高い二十三区もふくめ身近な地域への整備こそ必要であることから、用地費への助成や公有地の貸与などの具体的な整備支援策を新たに講じることを提案するものです。お答え下さい。  2 老人保健施設の機能強化について   ア 足立区のある老人保健施設では、通常は二週間程度の入所で家庭にもどし、その後は訪問介護や訪問看護などの在宅サービスと通所リハビリ、ショートステイ(短期入所療養介護)で、きめ細かい対応をすすめています。こうした家庭復帰、在宅支援の役割をはたすために、この老人保健施設では、国の職員配置基準を大幅にこえて、定員五十人に対し二人の作業療法士を常勤で配置しています。    国の配置基準は入所者百人に対し、作業療法士または理学療法士どちらか一人でよいことになっています。リハビリは個別的であり、対象にあわせ、また症状によっても個別的に配慮した対応が求められます。百人もの対象に一人の療法士ではとても、十分なリハビリはできません。実際、私は通所リハビリを利用している方から「先生が足りなくて十分なリハビリがうけられない」という相談を受けています。    これに対し、たとえばデンマークの長期療養病棟では、百人の入所者に二十人前後の理学療法士あるいは作業療法士が配置されています。不十分な国の配置基準をおぎなうために作業療法士や理学療法士の加配をしている施設は、自らの持ち出しになっています。基本的な介護・看護職員で見ても、スウェーデンのナーシングホームでは、百人に対し七十人の看護職員を配置しているのに対し、日本の基準は百人に二十八人の介護・看護員であり、あまりにも低い基準です。    また老人保健施設本来の家庭復帰や在宅支援の機能をはたすには、医療ケースワーカー(MSW)の役割も重要ですが、国の基準では必置義務はありません。    国に対し、老人保健施設の作業療法士、理学療法士などリハビリの職員、介護・看護職員、医療ケースワーカーなどの配置基準の抜本的な改善をつよく働きかけることを求めるものです。   イ 私は、開設十二年のキャリアをもつ、東京で最初にできた老人保健施設で伺いましたが、介護保険制度のもとでは、リハビリなどの手厚い対応を行い、利用者の状態が改善すれば、介護報酬が下がってしまう。「これでは職員の意欲にも影響する。努力がむくわれるようにしてほしい」と事務長さんはつよく訴えていました。    都として、リハビリ職員の増配置や医療ケースワーカーの配置などに対する補助や、利用者の要介護度の状態が改善した場合、その努力がむくわれる支援を行うなど、「老人保健施設の機能強化推進補助(仮称)」の創設を提案するものです。これにより、家庭復帰や在宅支援の機能を強化した都市型老人保健施設のモデルを全国に発信すべきと考えます。見解を伺います。   ウ 東京都国民健康保険団体連合会によせられる介護保健サービスにたいする相談・苦情の状況によると、老人保健施設(短期入所療養介護、通所リハビリテーションをふくむ)は、他の施設に比べて著しく高い数値となっています。介護サービス全体を通じて見ても、同様の結果となっています。    東京都国民健康保険団体連合会は、九八年度以降に開設した施設への苦情が多いこと、従事職員の技術が未熟であるとともに、高齢者の自立、尊厳、平等の理念にのっとったていねいな対応をするという姿勢が定着していないこと、苦情調査の結果、職員の研修が十分に行われていない実情が認められたことを指摘し、1)新規開設時の開設者への指導の充実、2)施設長および従事職員の研修の充実を提言しています。この提言を直ちに具体化し、老人保健施設におけるサービスの改善を図る必要がありますが、都としてどう対応するのか伺います。   エ 老人保健施設の機能強化とサービス水準の向上を推進するために民間施設への支援をつよめるとともに、板橋と東村山に設置されている都立老人保健施設の役割が重要です。東京全体の水準を引き上げるための先駆的先導的役割をはたすという都立施設としての役割を位置づけ、機能強化を図るよう求めるものです。   オ その一環として、わが党が提案してきたパワーリハビリについて都立老人保健施設で実施し、普及促進にとりくむことを提案します。お答え下さい。  3 訪問リハビリテーションの拡充について    全国的に訪問リハビリの基盤整備とサービス利用は遅れた分野となっていますが、東京の現状は低い全国水準をいっそう大きく下回り低迷しています。老人保健施設や訪問看護の事業所からは、「訪問リハビリにとりくみたいのは山々だが、人材が確保できない」という悩みが共通して出されています。    訪問リハビリは未開拓な分野であり、訪問先では通常のリハビリと違い、いちいち医師の指示を受けることはできないため、経験ゆたかで専門性の高い人材が求められているのですが、そういう人材が確保できないというのです。この問題の本格的な打開なしに、介護保険事業支援計画で、サービス提供の目標だけ示しても実現することはできません。   ア 理学療法士、作業療法士にたいする研修を充実強化し、訪問リハビリをはじめ地域でのリハビリをリードし得る専門性の高い人材の育成が緊急課題ですが、見解を伺います。   イ 都の方針では、地域リハビリ支援センターでの研修を行うとしていますが、肝心の支援センターは現在一カ所で、来年度も一カ所増の計画しかありません。これでは十二の二次医療圏すべてに整備するだけで十年以上もかかるではありませんか。先行している兵庫県や三重県では、短期間の間に一気にすべての二次医療圏に整備を完了しています。地域リハビリ支援センターの整備を急ぐ必要があると考えます。お答え下さい。 二 特別養護老人ホームの整備促進と入所手続きの改善について   わが党が提案してきた特別養護老人ホームの希望者実態調査が行われた結果、入所を希望して待機している人が、二万五千人をこえ、介護保険実施前の二・六倍に急増していることが明らかになりました。都民の切実な願いにこたえて、特別養護老人ホームの希望者が一日も早く入所できるようにすることは、行政の重要な責務です。  1 そのために第一に必要なことは、特別養護老人ホームを希望して入所できない待機者の解消という目標を明確にし、整備目標を引き上げて、とりくみを強化することです。  2 また特別養護老人ホームへの運営費補助の大幅後退は、社会福祉法人の増設への意欲を後退させています。経営支援事業の存続と拡充を求めるものです。お答え下さい。  3 希望者が急増しているもとで、サービスを利用する必要性の高い人が優先的に入所できるようにするしくみづくりも、重要な課題となっています。その際、透明性、公平性を確保するため、自治体と関係団体が協議し、入所に関する具体的な指針を共同で作成し、公開することが必要です。    都として、東京都社会福祉協議会や区市町村と協力し、必要性の高い人が優先的に特別養護老人ホームに入所できるようにするための、透明性、公平性を十分に確保した入所に関する指針を、早急に整備する必要があると思いますが、いかがでしょうか。  以上、答弁を求め、質問を終わります。      ………………………………… 平成十四年第四回都議会定例会    かち佳代子議員の文書質問に対する答弁    書 質問事項 一 老人保健施設と地域でのリハビリテーショ   ンの拡充について  1 基盤整備の促進について   ア 都の老人保健施設の役割についての考えを伺う。 回  答   老人保健施設は、介護保険制度における介護保険施設の一つであり、病状が安定期にある要介護者を対象に、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理下における介護、機能訓練、その他必要な医療及び日常生活上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることとともに、居宅における生活への復帰を目指すことを目的としています。 質問事項  一の1のイ 老人保健施設整備の遅れと、今後も国の整備量の水準にも及ばないことについての認識を伺う。 回  答   都においては、老人保健施設の整備を促進するため、施設・設備整備費の上乗せ補助、建設資金の医療・福祉事業団からの借入に係る償還利子の補給など、全国に例のない手厚い独自の補助を実施しています。  これらにより都内の老人保健施設の設置数は、平成十四年十二月末現在で百十二か所、定員一万七百六十一人となっており、前年同期と比較し、施設数で八か所、定員で八百五十一人増加しています。さらに、来年度においても、定員で一千人を超える施設整備が見込まれています。 質問事項  一の1のウ 老人保健施設の増設を急ぐため、少なくとも全国の平均水準にいつまでに到達するのかという目標を明確にし、その実現に向け老人保健施設の緊急整備事業に取り組む必要があると思うが、所見を伺う。 回  答   既に、都は、一床当たり四百万円の整備費補助の上乗せなど全国に例のない手厚い独自の補助を実施しています。  老人保健施設の整備目標については、平成十四年度末に改定予定の東京都高齢者保健福祉計画において定めることとしています。 質問事項  一の1のエ 増設の緊急性と、老人保健施設は地価の高い二十三区も含め身近な地域への整備こそ必要であることから、用地費への助成や公有地の貸与などの具体的な整備支援策を新たに講じることを提案するが、見解を伺う。 回  答   都においては、老人保健施設の整備を促進するため、前述のとおり、全国に例のない手厚い独自の補助を実施しています。   また、都有地や区市町村有地などの貸付等、公有地の有効活用による介護老人保健施設の整備促進に努めています。 質問事項  一の2 老人保健施設機能強化について     ア 国に対し、老人保健施設の作業療法士、理学療法士などリハビリの職員、介護・看護職員、医療ケースワーカーなどの配置基準の抜本的な改善を強く働きかけることを求めるが、見解を伺う。 回  答   老人保健施設の配置基準については、介護報酬のあり方と連動するものです。   介護報酬については、現在、社会保障審議会介護給付費分科会においてとりまとめられた「介護報酬見直しの考え方」を踏まえ、国において検討中であり、都としては、今後、国の動向を見守っていきます。 質問事項  一の2のイ リハビリ職員の増配置や医療ケースワーカーの配置などに対する補助や、利用者の状態が改善した場合、その努力が報われる支援を行うなど「老人保健施設の機能強化推進補助(仮称)」の創設を提案する。これにより、家庭復帰や在宅支援の機能を強化した都市型老人保健施設のモデルを全国に発信すべきと考える。見解を伺う。 回  答   老人保健施設は介護報酬の範囲内で事業運営をすることが基本であり、職員の増配置についても、事業者自らの工夫の中で行うべきものであります。   都としては、老人保健施設の運営に対する新たな補助の創設は考えていません。 質問事項  一の2のウ 都国民健康保険団体連合会は、1)新規開設時の開設者への指導の充実、2)施設長及び従事職員の研修の充実を提言している。この提言を直ちに具体化し、老人保健施設におけるサービスの改善を図る必要があるが、都の対応を伺う。 回  答   都は、従来より、老人保健施設におけるサービスや職員の質の確保の観点から、開設を許可するに際して、職員に対する研修方針や研修計画の提出を義務づけるとともに、その研修内容を含めた実績を報告させています。 質問事項  一の2のエ 老人保健施設の機能強化とサービス水準の向上を推進するために民間施設への支援を強めるとともに、板橋と東村山に設置されている都立老人保健施設の役割が重要である。東京全体の水準を引き上げるための先駆的先導的役割を果たすという都立施設としての役割を位置づけ、機能強化を図るよう求めるが、見解を伺う。 回  答   都立老人保健施設において、ご提案いただいたようなことを実施する予定はありません。 質問事項  一の2のオ パワーリハビリについて都立老人保健施設で実施し、普及促進に取り組むことを提案するが、所見を伺う。 回  答   都立老人保健施設は、病院での急性期医療を終えたばかりの利用者が多く、特殊な機器を使ったトレーニングよりも、一般的な徒手的リハビリテーションを主体に機能回復訓練を行っています。
    質問事項  一の3 訪問リハビリテーションの拡充について     ア 理学療法士、作業療法士に対する研修を充実強化し、訪問リハビリをはじめ、地域でのリハビリをリードし得る専門性の高い人材の育成が緊急課題だが、見解を伺う。 回  答   リハビリテーション医療の質の確保には、医療従事者の知識や技術の向上が重要であり、都は、平成七年度から理学療法士や作業療法士に対し、専門職にふさわしい幅広い知識の研さんを図るため、卒後研修を実施しています。 質問事項  一の3のイ 都の方針では、地域リハビリ支援センターでの研修を行うとしているが、支援センターは、現在一カ所で来年度も一カ所増の計画しかない。地域リハビリ支援センターの整備を急ぐ必要があると考えるが、見解を伺う。 回  答   地域リハビリテーション支援センターについては、指定基準に則り、東京都リハビリテーション協議会等の意見を聴取の上、都が指定を行っています。   現在、東京都リハビリテーション病院一か所を指定していますが、十四年度内に更に一か所の指定を予定しています。   指定に際しては、指定基準とともに支援センターとしての事業の継続性等も考慮する必要があり、都としては、これらを総合的に判断しつつ、支援センターの着実な整備に努めていきます。 質問事項 二 特別養護老人ホームの整備促進と入所手続きの改善について  1 特別養護老人ホームの待機者の解消という目標を明確にし、整備目標を引き上げ、取組を強化すべきだが、見解を伺う。 回  答   特別養護老人ホームの整備目標については、平成十四年度末に改定予定の東京都高齢者保健福祉計画において定めることとしています。 質問事項  二の2 特別養護老人ホームへの経営支援事業の存続と拡充を求めるが、見解を伺う。 回  答   特別養護老人ホーム経営支援事業のうち、円滑に介護保険制度に移行するための支援(II類)については、当初より三か年の経過措置であり、平成十四年度末をもって廃止します。   利用者サービスの充実を図るための支援(I類)については、平成十五年度も実施していく予定です。 質問事項  二の3 都として、都社会福祉協議会や区市町村と協力し、必要性の高い人が優先的に特別養護老人ホームに入所できるようにするための、透明性、公平性を十分に確保した入所に関する指針を早急に整備する必要があると思うが、所見を伺う。 回  答   特別養護老人ホームへの優先入所に関しては、基本的には特別養護老人ホーム経営者と区市町村が協力し、指針等を作成することが必要です。   現在、都は、入所希望者の状況を十分握して必要性の高い方が優先的に入所できる仕組みについて、特別養護老人ホームの経営者及び区市町村が協力して構築できるよう、広域的立場から指導・助言しています。      ───────────── 平成十四年第四回都議会定例会    文書質問趣意書             提出者 古館 和憲 質問事項  一 三宅島島民の支援について 一 三宅島島民の支援について  1 先日、私のもとに三宅島から避難されている女性から手紙が届きました。この方は杖を頼りに歩行している方ですが、酸素ボンベを装着した九十歳を越える母親と一緒に避難生活をおくっています。手紙には「私たちは何とかやりくりしていますが、生活実態は本当に厳しいものがあります。・・・あとわずかで正月を迎えます。このままでは生きる力も衰えてしまいます。お餅代にあたいする援助の手だてはできないものでしょうか」と綴られていました。    NHKが今年七月に行った避難島民調査では、「収入が減った」が七二%に達し、避難後の生活の変化については、「預貯金を取り崩して生活費にあてている」が五六%、「借金をしたり融資を受けて生活費にあてている」が一三%など、島民の生活は深刻な事態においこまれています。都は生活支援を求める島民に対しては、「生活保護が受けられる」と言っていましたが、実際には利用できず、生命保険や、帰島後のための住宅補修に備えた預貯金などがある場合は対象外とされ、到底、避難島民の現状を救済しきれておりません。    そこでまず、生活支援対策について質問します。   ア 第一は、生活保護で実施されている生活扶助や住宅扶助、家賃扶助、医療扶助などを内容とした、『災害保護』を目的とした制度を国に要求するとともに、都独自でも早急に具体化すること。   イ 第二は、正月を目前にして、せめて「お餅代だけでも」との島民の切実な願いに応える支援対策を緊急にとること。   ウ 第三は、国民健康保険税、介護保険料の軽減についてです。とりわけ介護保険料の負担は、現在三千二百六十五円が、来年度は八千三百三十円と大幅に引きあがると推計されています。こうした事態に対して十二月四日、参院特別委員会で、わが党の井上美代参院議員が、軽減対策を要求したところ、厚生労働省の中村秀一老健局長が、財政安定化基金からの借り入れ返済の延伸と離島などの保険者にたいして助成する「広域化事業支援費」を来年度予算で要求していることを明らかにしました。同氏は「これらの対策で、十月段階で保険料が五千四百円程度にまで下げることができるが、これでも相当に上げ幅が大きく、さらに引き下げるための手立てを、東京都と相談しながら考えたい」と答弁しました。この国会答弁を、結実させるためには、東京都の決断が決定的に重要です。都が積極的に支援を行い、保険料の引き下げを実現させることを強く求めます。   エ 第四は、来年一月から、八丈便の三宅島寄港が実現することになりました。さらに、来年四月からは一時帰島に際して、宿泊が可能になるとのことですが、問題は、船賃などの運賃、宿泊費用などが、さらに重い負担になってしまうことです。復興にむけて、ふるさとへの宿泊をともなう一時帰島が、金銭的理由で断念したり、困難になることなどは絶対あってはならないことです。災害復興へと向かうこれからの時期に、一時帰島の期間延長にともなう渡航費補助、宿泊費補助は不可欠です。その実現を強く求めます。  2 次に、全面帰島にむけた対策についてです。   ア いま島民が強く求めているのが、被害状況の実態調査を早急に実施することです。今年四月からの日帰り帰宅で、三回帰宅した人が、「帰宅のたびに家の傷みが進んでいる」「住まいとしての家屋にするには、どのような処方箋が必要なのか」「改修で済むものなのか」などが、頭から離れないとのことです。都として、改めて実態調査を実施するとともに、その情報を島民に知らせること。これらの実施を強く求めます。   イ 第二は、島民からは、各集落ごとに「先遣隊」を編成し、先行帰島して、全島帰島にむけての課題の条件整備などに力をつくしたいとの声があがっています。三宅村と共同してこうした方策について検討することを求めます。   ウ 第三に、三宅村復興計画にある「復興基金」の創設についてです。この基金の創設については、すでに雲仙災害にさいして創設され、大きな成果をあげたもので、政府関係機関も注目をしているところです。この基金の創設にむけて、東京都としても全面的にバックアップし、国としても対応するように、強く求めるべきと考えるが、見解を求めます。      ………………………………… 平成十四年第四回都議会定例会    古館和憲議員の文書質問に対する答弁    書 質問事項  一 三宅島島民の支援について   1 生活支援対策について    ア 生活保護で実施されている生活扶助や住宅扶助、家賃扶助、医療扶助などを内容とした「災害保護」を目的とした制度を国に要求するとともに、都独自でも早急に具体化すること。見解を伺う。 回  答   三宅島島民への生活支援については、都として、これまで避難直後における生活再建のための支援金の支給や島民に対する離職者支援資金の貸付特例の適用など、様々な支援策を実施してきました。   なお、生活困窮者に対しては、「災害保護」を積極的に適用してきており、帰島後の島民の自立を支援する観点から、預預金の保有枠の拡大など生活保護の弾力的運用を、国に提案要求しています。   さらに、島民の生活状況を踏まえ、三宅村と連携しつつ、災害保護に関する新たな支援について準備を進めています。 質問事項  一の1のイ 正月を目前にして、せめて「お餅代だけでも」との島民の切実な願いに応える支援対策を緊急にとることに関して所見を伺う。 回  答   東京都は、避難島民の方々の自立への努力を支えるため、住宅の無償提供をはじめ、公共事業への就労の確保、「ゆめ農園」や「げんき農場」などの緊急地域雇用創出特別基金を活用した雇用機会の創出、拡大に取り組んでいます。   また、種々の事情で自立が困難な世帯には、災害保護の観点から生活保護を受給するよう働きかけています。   今後も、三宅村や国と連携して、避難生活自立のための支援に取り組んでいきます。 質問事項  一の1のウ 国民健康保険税、介護保険料の軽減について、都が積極的に支援を行い、国に保険料等の引き下げを実現させることを強く求める。見解を伺う。 回  答   三宅村の介護保険料については、避難生活が続く島民の過大な負担とならないよう、介護保険料の適正化への支援を国に提案要求しているところですが、引き続き、国に対して可能な限りの方策を講じるよう強く要請するとともに、都としても、必要な財政支援について検討していきます。   次に、国民健康保険税についてですが、三宅村の一人当たり国民健康保険税は、平成十二年度には四万八千九百五十円であったものが、平成十三年度には二万五千四百五十九円、平成十四年度は九月現在で二万四千五百十一円と低下しています。 質問事項  一の1のエ 災害復興へと向かうこれからの時期に、一時帰島の期間延長に伴う渡航費補助、宿泊費補助は不可欠である。その実現を強く求める。見解を伺う。 回  答   避難生活が長期化する中、住民の帰島の日に備えて、島内における個人財産の保全、修繕及び財産の持ち出しを目的として、三宅村では、東京から八丈島までの航路の三宅島寄港便の就航に伴い、平成十五年一月から三月までの期間において、日帰り帰宅事業を実施しています。   この事業の実施に係る個人負担については、参加者が住民基本台帳に登録された者である場合に限って、往復の船賃は無料になっています。   なお、滞在型一時帰宅事業の費用負担については、現在、三宅村で検討しています。   都として、今後とも三宅村と十分協議し、一時帰島への対応を検討していきます。 質問事項  一の2 全面帰島に向けた対策について     ア 都として、改めて被害状況の実態調査を実施するとともに、その情報を島民に知らせることを強く求める。見解を伺う。 回  答   都は、三宅村の家屋等の被害状況について、平成十二年に調査を実施しており、調査結果は被害世帯や三宅村に提供するとともに、村が被災者生活再建支援法の適用を受ける際の基礎となっております。   また、三宅村が平成十四年四月から実施した日帰り帰宅により、村民の方々は、家屋等の状況について、概ね把握し必要な保全措置を取られていると認識しています。   さらに、三宅村は、本年一月から三月までを期間とする日帰り帰宅事業を実施しています。また、四月からは開設予定のクリーンハウスを使用した短期滞在事業を実施する予定です。   これらの事業により、家屋等の財産の確認及び保全対策が、さらに可能になると考えています。 質問事項  一の2のイ 島民からは、各集落ごとに「先遣隊」を編成し先行帰島して、全島帰島に向けての課題の条件整備などに力をつくしたいとの声があがっているが、三宅村と共同して、方策を検討することを求める。見解を伺う。 回  答   都としては、現在、都と国とで「三宅島火山ガスに関する検討会」を設置し、火山ガスの現状や人の健康に与える影響及び安全確保対策等について、検討しています。   島民の全面帰島については、平成十五年三月に予定している検討結果を踏まえて、都の対応を検討していきます。 質問事項  一の2のウ 三宅村復興計画にある「復興基金」の創設に向けて、都としても全面的にバックアップし、国にも対応を強く求めるべきと考えるが所見を伺う。 回  答   避難生活が長期にわたっていることから、帰島後の生活再建には特別の支援が必要であると認識しています。   このため、島民が円滑に生活再建できるように、特段の措置を講じるよう、国に提案要求しています。   都としても、どのような措置が有効か検討を進めるとともに、必要な支援策について、引き続き国に強く働きかけていきます。      ───────────── 平成十四年第四回都議会定例会    文書質問趣意書             提出者 丸茂 勇夫 質問事項  一 商店街振興策について
    一 商店街振興策について   長引く消費不況と大型店やディスカウント店の進出と時間延長、さらには後継者不足などで、地域商店街では、あいついで店をしまうところが増えている。   都内の小売業の商店数や従業員数、年間販売額は全国を上回る水準で減少しており、また、個人経営の商店数では、八八年には五五・九%と過半数を占めていたものが、九九年には四五・五%と一〇・四ポイントも減少している。   そのうえ、小泉政権による「不良債権処理の加速」、銀行による貸し渋り、貸しはがしが追い打ちをかけている。   こうした中にあって、町の賑わいから治安に至るまで、地域のコミュニティの核となってがんばっている商店街に対する支援は、都政にとって重要な仕事の一つである。   そこで、わが党はあらためて、世田谷区の尾山台商栄会振興組合商店街と深沢坂上商店街、岐阜県大垣市の大垣駅前商店街振興組合などのとりくみの調査をおこなった。   それらの経験は、商店街振興を総合的にかつ柔軟に支援をすることの必要を示しており、その立場からいくつかの提案をおこなう。  1 一つは、商店街振興における産学公協同の取り組みの重要性とその支援策である。    約百三十の会員で構成されている尾山台商店街は、商店街のたゆまぬ努力と東京都や世田谷区の支援、近隣大学の協力が実を結び、空き店舗を生むことなく、商店もふえている都内でも数少ない商店街である。    直接、話しをうかがったなかで、効果をあげた一つとして紹介されたのが、九五年に都の援助を受けて実施した市場調査と、その調査結果にもとづく対策である。    この商店街は、八九年にショッピングプロムナード事業で商店街道路が完成し、にぎわいをみせたが、その後、バブルがはじけると、客足も減りはじめ、商店街にかげりが出はじめたとのことです。しかし、商店主から「何もしないでいいのか」という意見が出され、勉強会を開いたことから、今日にいたるとりくみがはじまりました。    専門家に依頼してはじめた市場調査では、「駐車場がない」「スタンプ事業への苦情」「商店街道路が石畳で歩きにくい」など、さまざまな顧客の要望がつかまれ、さらに、その後、一年かけて調査を継続し、事業の効果についてもコンサルを受けるなど、一過性にしないで取り組みをおこなったとのことだ。その際、専門家に、良いところのリストアップしてもらうだけでなく、弱点も指摘してもらったことも役だったとのことです。    また、同商店街は、お客さんのアンケートをとり、とくに自らの商店街の欠点をつぶさに明らかにし、消費者の目線で正面から、批判の大きい問題から順に時間をかけ、その解決にとりくんできたこと、さらに、PTA、法人会、幼稚園から老人会、福祉団体やボランティア、スポーツ同好会、武蔵工大など地域のさまざまな人々とのネットワークを結ぶことで、成功をおさめている。    また、大垣駅前商店街では、岐阜経済大学、駅前商店街、地域産業情報研究室の共同研究室として空き店舗に「マイスター倶楽部」を設置して成果をあげている。    これは、県が支援する空き店舗対策モデル事業を活用したものだが、県・市・大学・商工団体などで「街づくり市民活動支援研究会」を組織し、街づくり、地域振興と多方面にわたってとりくまれているところに特徴がある。大学との連携をすすめることで、学生約八十名がバリヤフリー体験調査や商店街との共同イベント開催、新商品開発などに協力してくれるなど、商店街だけでは困難な、事業も可能となっている。    ホームページの開設でも尾山台商店街では、近くの武蔵工大の学生の協力を得て、名称も公募するなど、三カ年計画でホームページを立ち上げた。大垣駅前商店街も岐阜経済大学の学生の協力でホームページを開設している。    そこで、都として、商店街が産学公協同の活性化にとりくむことができるように、そのシステムづくりを行うこと、また、実施にあたっての助成制度や相談窓口の設置などは、商店街に喜ばれると考えるがどうか。見解をうかがう。  2 二つには、ポイントカードや駐車場設置など商店街が実際に直面している問題への支援である。    まず、ポイントカードについてだが、尾山台商店街の場合、三十年にわたってスタンプ事業をおこなってきたが、実施するなかで、「店によってスタンプくれない」、「スタンプはお年寄りに喜ばれるが、若い人や男性には不評」など、必ずしも、顧客サービスにつながっていないことが明らかになった。    そこで、思い切ってポイントカード方式を導入し、そのことによって、「必ずポイントがもらえる」、「変えられる商品がふえた」、「銀行にも預けられる」などよろこばれている。    問題はポイントカード導入の費用負担である。現在、各店においてある子機は一台十万円するため、各店に運営費として月一千円負担してもらうことで、十年から十五年かけて償却することにしている。また、百万円かかる磁気カードの更新もおおきな負担になっている。    ポイントカードをすでに導入した商店街への設備及び運営費支援をおこなうとともに、小規模な商店街や単独では導入困難な商店街での共同事業など、都としてシステムづくりを提案するものだがどうか。答弁を求める。  3 商店街利用者の駐車場設置も重要である。尾山台では、商店街が地主の理解をまずとりつけて、実際の運営は民間の駐車場業者に委託し経営を任せることによって、実務的な負担を軽くし、利用者には、割引制度を導入して喜ばれている。    商店街への、公的用地の提供や、借り上げ支援なども必要と考えるがどうか。  4 三つには、都の商店街支援事業を使いやすくすることである。    産業労働局は、来年度予算要求で、わが党がかねてから提案してきた、法人商店街と未組織商店街の事業の統一、個店対策などをそれぞれ、「はばたけ!商店街事業」、「輝け!店舗支援事業」として実施する方向を明らかにしている。    これは、必死に生きのこりをはかっている商店街にとって喜ばれるものである。    そこで、この点で、いくつかの提案をおこないたい。   ア まず、これらの事業をすべての希望する商店街が利用できるように、予算を大幅に拡充することをもとめるものだ。どうか。答弁を求める。   イ 「元気を出せ商店街事業」は商店街がもっとも利用している事業で、尾山台商店街が、同事業を活用して開催している尾山台フェスティバルは、官製イベントを除くと世田谷区内でも第一位の人気を誇るイベントに成長している。    こうした、イベント、祭りが恒例の行事として、定着すると若い住民が里帰りとして参加したり、世界的なバイオリニストがボランティアで参加してくれるなど、商店街では、不況の折だからこそ「元気を出せ事業予報」が大きな役割を果たしていると強調されている。来年度予算局要求では、「元気を出せ事業予報」を「はばたけ!商店街事業」のなかの一事業としているが、これでは、他の事業の予算が不足すれば、しわ寄せを受けかねない。    そこで、「元気を出せ事業予算」として、事業対象を拡充すること、反復利用も可能とすることなどは当然だが、「元気を出せ事業予算」として予算枠を確保すること、すべての希望する商店街に対応できるよう大幅に予算を増やすことが欠かせないが、どうか。    それぞれ、答弁を求める。   ウ 空き店舗対策事業の復活も重要である。第三回定例会の文書質問で、わが党の秋田かくお議員が求めたが、大垣市商店街の取り組みを見るとますます必要性を感じた。    そこでは、ある空き店舗では、岐阜経済大学の学生が中心に開設するマイスター倶楽部として活用され、別の空き店舗では、一階が子育て支援施設で、親子が遊べ、相談が受けられる機能、二階は市民が趣味から講座まで多目的に利用できるスペースとして活用されている。そのほか、家具のリサイクル店、地場産の野菜をあつかう空き店舗などさまざまな取り組みがされていた。    都は都単独の空き店舗事業を今年度でとりやめたが、なぜ、うまくいかなかったのか、きちんと分析すること、さらには全国の成功例を参考にするなど、息長く取り組むことが必要だ。空き店舗の対象も、福祉から環境にかかわるさまざまな事業がとりくめるシステムにすることが欠かせない。    こうした視点から、あらためて都として空き店舗対策事業にとりくむことを強く求めるものだが、どうか。答弁を求める。  5 最後に、大店法改正後の商店街調査についてである。    世田谷区の深沢坂上商店街は、二年前に大型店が商店街の一角に進出し、一方、この商店街から三百メートルと離れていない、深沢坂下商店街にも大型店が出店し、二つの大型店に挟まれる格好となったことから、今年だけで十一店舗が店じまいをするという事態を迎えた。そのためスタンプ事業をこの十一月に辞めざるを得なかったという。    都の商店街調査でも、都内全商店街の約七割に大型店が存在し、その影響は、来街者が減少七六・六%、売り上げ減が八三・九%など大きく影響していることが明らかにされている。地域経済と地域社会にとって欠かすことのできない商店街の衰退をまねく、大型店の出店の規制は、共通した要望となっている。    そこで、商店街の生きのこりを支援していくうえで、出発となる、大店法改正後のさまざまな影響を調査することを提案するものだが、どうか。見解をうかがう。    また、その調査にもとづいて、問題点を明らかにし、必要な規制と支援策を都として実施することを強く要望するものである。      ………………………………… 平成十四年第四回都議会定例会    丸茂勇夫議員の文書質問に対する答弁    書 質問事項  一 商店街振興策について   1 商店街が産学公協同の活性化に取り組むことができるように、システムづくりを行うこと。また、実施にあたっての助成制度や相談窓口の設置について、見解を伺う。 回  答   商店街の振興に当たっては、地域の人々とのパートナーシップが重要であり、近隣の大学や学生等の協力を得ることも有用なことと認識しており、平成十三年三月に策定した「二十一世紀商店街づくり振興プラン」においても言及しています。   このため、都は、「活力ある商店街育成事業」等により、商店街が地域の人々と連携して行う、様々な意欲ある取組に助成するなど支援しています。   また、相談窓口は、各商工会議所や商工会に加え、(財)東京都中小企業振興公社や城東、城南及び多摩の各地域中小企業振興センターに設置しています。 質問事項  一の2 ポイントカードを既に導入した商店街への設備運営費支援を行うとともに、小規模な商店街や、単独では導入困難な商店街での共同事業など、都としてシステムづくりを提案するが、見解を伺う。 回  答   商店街におけるポイントガード事業については、「活力ある商店街育成事業」等によって、システム導入時に必要な設備、機器等を補助対象として助成してきましたが、継続的、定期的に発生する一般的管理経費については、本来、その構成員が負担するべきものとして、補助対象外としています。   なお、同事業では、法人商店街と未組織商店街とが共同して同一の事業を一体的かつ統一的に実施することを可能としており、ポイントカード事業においても、商店街が連携して事業に取り組んだ事例があります。今後とも、商店街が提案する自発的、意欲的な取組を支援してまいります。 質問事項  一の3 商店街利用者の駐車場設置も重要である。商店街への公的用地の提供や、借り上げ支援なども必要と考えるが、見解を伺う。 回  答   商店街の利用者のための駐車場整備については、「活力ある商店街育成事業」により補助対象としています。   また、用地難を前提とした商店街の駐車スペースの確保のために、パークアンドライド方式の導入など「商店街等活性化事業」による駐車対策事業を支援しています。 質問事項  一の4 商店街支援事業について     ア 商店街支援事業を全ての希望する商店街が利用できるように、予算を大幅に拡充すべきだが、見解を伺う。 回  答   長引く消費の低迷、商品の低価格化など商店街を取り巻く環境は、一段と厳しさを増しています。   今後とも、意欲ある商店街の取組に対する施策の充実と必要な予算の確保に努めていきます。 質問事項  一の4のイ 来年度予算要求では「元気を出せ事業予算」を「はばたけ!商店街事業」の中の一事業としている。「元気を出せ事業予算」として事業対象を拡充すること、反復利用も可能とすることなどは当然だが、「元気を出せ事業予算」として予算枠を確保すること、全ての希望する商店街に対応できるよう大幅に予算を増やすことが欠かせないが、見解を伺う。 回  答   意欲的な商店街が行う多種多様な取組を支援していくために、商店街にとって魅力のある選択の幅が広い施策に改め、イベント事業を核として、既存事業の統合及び充実を図る必要があります。   今後とも、必要な予算の確保に努め、商店街の活性化に向けて、支援してまいります。 質問事項  一の4のウ 都は、空き店舗事業を今年度で取りやめたが、なぜうまくいかなかったのか分析し、成功例を参考にするなど、息長く取り組むことが必要である。空き店舗の対象も様々な事業が取り組めるシステムにすることが欠かせない。あらためて、空き店舗対策事業に取り組むことを求めるが、見解を伺う。 回  答   「商店街空き店舗活用推進事業」については、モデル事業として実施していますが、平成十四年度をもって事業終了を予定しており、既に新規の指定を終了しています。   空き店舗の解消が顧客吸引力の上昇や売上げ増加などにより、商店街全体の活性化に寄与すると考えられるため、空き店舗対策については、今後も引き続き研究してまいります。 質問事項  一の5 商店街の生き残りを支援していく上で、大店法改正後の様々な影響を調査することを提案するが、見解を伺う。 回  答   商店街の実態については、三年に一度、「東京都商店街実態調査」を実施し、その動向を把握しており、最近では、大規模小売店舗立地法制定後の平成十三年度に、調査を実施しています。   今後も、こうした実態調査のデータを基礎資料として活用しながら、商店街振興策を推進していきたいと考えています。      ───────────── 平成十四年第四回都議会定例会    文書質問趣意書             提出者 吉田 信夫 質問事項  一 障害者福祉における支援費制度への対応   について 一 障害者福祉における支援費制度への対応に  ついて   来年の四月から、障害者福祉の措置制度が廃止され、契約を基本とした支援費支給制度に移行する。これにたいする東京都の対応について、文書質問する。  1 サービス水準の確保    第一に、現行サービス水準の確保の問題である。東京都はこれまで知的障害者の生活寮や重度脳性麻痺介護人派遣事業、施設サービスを充実するためのサービス推進費による都加算補助など、都独自の努力で、障害者福祉の拡充をすすめてきた。こうした事業について、支援費への移行に当たり都がどう対応するかが問われている。    現行のサービス水準は絶対に低下させないとの基本姿勢を、まず明らかにする必要があると考えるが、見解を伺う。  2 サービス推進費の継続
       第二に、サービス推進費についてである。わが党は、支援費対象の施設にたいし緊急のアンケート調査を行ったが、回答した施設の六割が支援費制度になると収入が減少すると答えている。とりわけ重度障害者の施設では年間一千万円をこえる減収となり、そのうえサービス推進費補助が廃止されたら、重度施設の多くが年間七千万から八千万円もの減収となることが明らかになった。    それだけにサービス推進費が廃止、縮小された場合九割をこえる施設から「施設運営への影響は大きい」との回答がよせられ、「廃止・縮小されたら入所者への現行のサービスが維持できなくなる」など、存続をつよく要望する訴えがよせられた。    また、ある重度障害者施設では、利用者の中には視覚障害や聴覚障害、重度重複の障害者が多く、表情などから相手の意思を理解することが必要であり、それだけに経験を積んだ職員の配置は不可欠だと訴えられた。    支援費制度に移行した場合も、サービス推進費補助の継続が必要であり、制度的にも抜本的見直しが必要というわけではない。    この問題についても現行のサービス水準は絶対に低下させないとの基本姿勢で臨むことが重要である。拙速な見直しはやめ、少なくとも来年度予算では現行の水準を確保し、支援費制度の実施状況を見極めつつ、関係者との十分な協議と合意をもとに慎重に対応すべきである。  3 利用者負担の軽減    第三に、利用者負担の問題である。障害者のホームヘルプサービスは、無料制度が縮小されてきたが、現状では都独自の利用料基準を設定しており利用者の八五%が無料である。ところが支援費制度をそのまま適用すると、無料の枠が狭くなり、多くの人が月数百円から数千円の有料となってしまう。    ホームヘルプサービスは障害者が生活するうえでなくてはならないものであり、これまで無料の人が、支援費制度の下でもひきつづき無料で利用できるようにすることが重要である。そのために都としての対応を伺う。    またショートステイやデイサービスについても、新たな負担増となる。区市町村と協議し、負担の軽減を図るよう求める。  4 サービス基盤の整備    第四は、サービス基盤の整備である。都内の自治体で五区四市三町村は、知的障害者の生活寮が一カ所もない。また共同作業所の連絡会である「きょうされん」の調査によると、都内の自治体で知的障害者のデイサービスを実施しているのはわずか九自治体、一四・五%、身体障害者のショートステイは十八自治体、二九%にすぎない。これでは「選べる福祉」などいう支援費制度のうたい文句は絵に描いたモチになってしまう。    知事は障害者施設の新たな緊急三カ年計画に取り組み、三年間で三百カ所三千人分の整備を行う方針を明らかにしたが、区市町村や障害者団体の意向をふまえて年次計画を示すよう求めるものである。    また知事は、施設から地域へという方向を強調しているが、たとえば知的障害者の生活寮は、入所更正施設とくらべて、職員体制はうすく一施設に世話人一人にすぎない。生活寮の数を増やすと同時に、質の充実も重要な課題である。    生活寮にたいし新たな家賃補助を実施し利用料の負担を軽減すると同時に、個室の確保、職員配置の増員などの本格的な検討を行う必要があると考えるが所見を伺う。 以上      ………………………………… 平成十四年第四回都議会定例会    吉田信夫議員の文書質問に対する答弁    書 質問事項  一 障害者福祉における支援費制度への対応   について   1 障害者福祉について、現行のサービス水準は、絶対に低下させないとの基本姿勢を明らかにする必要があると考えるが、見解を伺う。 回  答   障害者が必要なサービスを選択し利用する支援費制度においては、サービスの質と量の確保が重要な課題となります。   そのため、都は、支援費制度に移行する平成十五年度を初年度とした「障害者地域生活支援緊急三か年プラン」を重点事業として新たに策定し、障害者の地域生活を支えるサービス基盤の一層の拡充を図るなど、サービス水準の維持・向上に努めていきます。 質問事項  一の2 サービス推進費についても、現行のサービス水準は、絶対に低下させないとの基本姿勢で臨むことが重要である。拙速な見直しは止め、少なくとも来年度予算では、現行の水準を確保し、支援費制度の実施状況を見極めつつ、関係者との十分な協議と合意を基に慎重に対応すべきである。見解を伺う。 回  答   障害者施設については、平成十五年四月に措置制度が廃止され、支援費制度が導入されるため、国基準である措置費を前提として、その上乗せ補助という形で実施している現行のサービス推進費補助がよって立つ基礎がなくなることから、支援費制度との整合性を図る必要があります。   さらに、施設における利用者サービスの向上に向けた努力が真に報われるとともに、サービス内容に応じた補助の仕組みとなるよう、現行の補助方式について見直す必要があると考えています。   見直しに当たっては、円滑な移行について関係者との話し合いを踏まえながら適切に対応していきます。 質問事項  一の3 利用者負担の軽減について     ア ホームヘルプサービスは、障害者が生活する上でなくてはならないものであり、これまで無料の人が、支援費制度のもとでも引き続き無料で利用できるようにすることが重要である。都の対応を伺う。 回  答   都は、ホームヘルプサービスが、基本的なサービスとして広く障害者に利用されていること等を踏まえ、応能負担を原則としつつ、一定の所得以下の利用者については、利用者負担金を無料としてきました。   支援費制度における利用者負担の軽減については、今後、検討していきます。 質問事項  一の3のイ ショートステイやデイサービスについても、新たな負担増となる。区市町村と協議し、負担の軽減を図るよう求める。所見を伺う。 回  答   福祉サービスについては、サービスを利用する方と利用しない方との負担を公平を図る観点から、利用に当たって適切な費用負担を求めることは、妥当であると考えています。   支援費制度では、ショートステイ及びデイサービスについて、利用者の負担能力に応じて十八段階のきめ細かな単価を設定した上で、低所得者については無料とするとともに、一か月当たりの負担額に上限を設けるなど、利用者の負担に対する配慮がなされていることから、さらに都が負担軽減を図る考えはありません。 質問事項  一の4 サービス基盤の整備について     ア 知事は、障害者施設の新たな緊急三か年計画に取り組み、施設整備を行う方針を明らかにしたが、区市町村や障害者団体の意向を踏まえて年次計画を示すよう求める。見解を伺う。 回  答   都は、支援費制度を真に利用者本位のものとするため、「障害者地域生活支援緊急三か年プラン」を平成十五年度重点事業として新たに策定し、地域生活を支えるサービス基盤の整備促進策として、施設などの設置者の負担を軽減する特別助成を行うこととしました。   計画の詳細については、今後、明らかにしていきます。 質問事項  一の4のイ また、施設から地域へという方向を強調しているが、知的障害者の生活寮の数を増やすと同時に、質の充実も重要な課題である。生活寮に対し、新たな家賃補助を実施し、利用料の負担を軽減すると同時に、個室の確保、職員配置の増員等の本格的な検討を行う必要がある。所見を伺う。 回  答   生活寮は、自立を目指す知的障害者が、日中は就労し、又は授産施設等に通いながら共同生活を送る場であり、その家賃は自己負担が原則ですが、一定の所得以下の知的障害者に対しては、都が独自に家賃補助を行っています。   また、支援費制度に係る設備基準では個室が原則とされ、指定に当たっては個室を確保するよう指導するとともに、重度の知的障害者に対しては、職員配置を厚くした重度知的障害者生活寮の設置を進めています。...