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  1. 山形県議会 2022-09-01
    09月26日-03号


    取得元: 山形県議会公式サイト
    最終取得日: 2023-06-17
    令和 4年  9月 定例会(第408号)  令和四年九月二十六日(月曜日)午前十時零分 開議議事日程第三号  令和四年九月二十六日(月曜日)午前十時開議第一   議第八十六号 令和四年度山形県一般会計補正予算(第三号)第二   議第八十七号 令和四年度山形県港湾整備事業特別会計補正予算(第一号)第三   議第八十八号 令和四年度山形県工業用水道事業会計補正予算(第一号)第四   議第八十九号 令和四年度山形県公営企業資産運用事業会計補正予算(第一号)第五   議第九十号 令和四年度山形県水道用水供給事業会計補正予算(第一号)第六   議第九十一号 令和四年度山形県病院事業会計補正予算(第一号)第七   議第九十二号 山形県職員等に対する退職手当支給条例の一部を改正する条例の制定について第八   議第九十三号 山形県職員等の育児休業等に関する条例の一部を改正する条例の制定について第九   議第九十四号 山形県手数料条例の一部を改正する条例の制定について第十   議第九十五号 山形県事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例の制定について第十一  議第九十六号 山形県建築基準条例の一部を改正する条例の制定について第十二  議第九十七号 山形県公営企業の設置等に関する条例の一部を改正する条例の制定について第十三  議第九十八号 漁港事業に要する費用の一部負担について第十四  議第九十九号 防災減災事業等に要する費用の一部負担について第十五  議第百号 地域用水環境整備事業等に要する費用の一部負担について第十六  議第百一号 都市計画街路事業に要する費用の一部負担について第十七  議第百二号 流域下水道の建設事業に要する費用の一部負担について第十八  議第百三号 港湾事業に要する費用の一部負担について第十九  議第百四号 急傾斜地崩壊対策事業に要する費用の一部負担について第二十  議第百五号 一般県道白滝宮宿線道路改築事業橋梁上部工工事請負契約の一部変更について第二十一 議第百六号 主要地方道米沢飯豊線道路施設長寿命化対策事業中津川橋橋梁補修工事請負契約の一部変更について第二十二 議第百七号 山形県立庄内中高一貫校(仮称)高等学校校舎増築その他(建築)工事請負契約の締結について第二十三 議第百八号 山形県立寒河江工業高等学校改築整備事業契約の一部変更について第二十四 議第百九号 パーソナルコンピュータの取得について第二十五 議第百十号 除雪機械の取得について第二十六 議第百十一号 除雪機械の取得について第二十七 議第百十二号 山形県産業創造支援センターの指定管理者の指定について第二十八 議第百十三号 蔵王みはらしの丘ミュージアムパークの指定管理者の指定について第二十九 議第百十四号 弓張平公園の指定管理者の指定について第三十  議第百十五号 酒田北港緑地の指定管理者の指定について第三十一 議第百十六号 酒田北港緑地展望台の指定管理者の指定について第三十二 議第百十七号 米沢ヘリポートの指定管理者の指定について第三十三 議第百十八号 山形県営駐車場の指定管理者の指定について第三十四 議第百十九号 権利の放棄について第三十五 議第百二十号 山形県教育委員会委員の任命について第三十六 議第百二十一号 山形県土地利用審査会委員の任命について第三十七 県政一般に関する質問本日の会議に付した事件 議事日程第三号に同じ。出席議員(三十九名)  二番 梅津庸成議員  三番 今野美奈子議員  四番 菊池大二郎議員  六番 高橋 淳議員  七番 遠藤寛明議員  八番 相田光照議員  九番 遠藤和典議員  十番 梶原宗明議員 十一番 関  徹議員 十二番 山科朝則議員 十三番 菊池文昭議員 十四番 松田敏男議員 十五番 青木彰榮議員 十六番 青柳安展議員 十七番 五十嵐智洋議員 十八番 柴田正人議員 十九番 渋間佳寿美議員二十一番 矢吹栄修議員二十二番 小松伸也議員二十三番 渡辺ゆり子議員二十四番 石黒 覚議員二十五番 吉村和武議員二十六番 高橋啓介議員二十七番 島津良平議員二十八番 加賀正和議員二十九番 森谷仙一郎議員 三十番 鈴木 孝議員三十一番 楳津博士議員三十二番 奥山誠治議員三十三番 小野幸作議員三十四番 木村忠三議員三十五番 金澤忠一議員三十六番 伊藤重成議員三十七番 舩山現人議員三十八番 田澤伸一議員三十九番 森田 廣議員 四十番 坂本貴美雄議員四十一番 星川純一議員四十二番 志田英紀議員欠員(四名)  説明のため出席した者知事          吉村美栄子君副知事         平山雅之君企業管理者       沼澤好徳君病院事業管理者     大澤賢史君総務部長        小林剛也君みらい企画創造部長   岡本泰輔君防災くらし安心部長   奥山 賢君環境エネルギー部長   安孫子義浩君しあわせ子育て応援部長 布川理枝子君健康福祉部長      堀井洋幸君産業労働部長      我妻 悟君観光文化スポーツ部長  西澤恵子君農林水産部長      地主 徹君県土整備部長      小林 寛君会計管理者       佐藤紀子君財政課長        相田健一君教育長         高橋広樹君公安委員会委員長    吉田眞一郎君警察本部長       丸山彰久君代表監査委員      松田義彦君人事委員会委員長    安孫子俊彦君人事委員会事務局長   大場秀樹君労働委員会事務局長   富樫健治君 ○副議長(加賀正和議員) おはようございます。議長所用のため私が議長の職務を行います。     午前十時零分 開議 ○副議長(加賀正和議員) これより本日の会議を開きます。 △諸般の報告 ○副議長(加賀正和議員) 日程に先立ち報告があります。 九月二十二日の小野幸作議員の代表質問に対し当局よりお手元に配付のとおり答弁書の提出がありましたので、報告いたします。〔参照〕 △(イメージ)令和4年9月定例会における小野幸作議員の代表質問に対する答弁書 △日程第一議第八十六号議案から日程第三十六議第百二十一号議案まで及び日程第三十七県政一般に関する質問 ○副議長(加賀正和議員) これより日程に入ります。 日程第一議第八十六号令和四年度山形県一般会計補正予算第三号から、日程第三十六議第百二十一号山形県土地利用審査会委員の任命についてまでの三十六案件を一括議題に供し、これら案件に対する質疑と、日程第三十七県政一般に関する質問を併せ行います。 質疑及び質問の通告がありますので、通告順により発言を許可いたします。 七番遠藤寛明議員。 ◆7番(遠藤寛明議員) おはようございます。自由民主党の遠藤寛明です。質問の機会をいただきました先輩議員の皆さんに御礼を申し上げます。 初めに、安倍元総理が演説中に暴漢から銃撃を受けお亡くなりになられてから二か月半がたちました。明日は国葬が行われます。世界中から数多くの要人たちが参列されますが、心からの御冥福をお祈り申し上げ、これまでの偉大な御功績をしのび、謹んで哀悼の意を表します。 さて、昨今の異常気象による豪雨災害に関して、本県でも、八月三日からの大雨により甚大な被害を受けました。被災された皆様には心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧を願い、早速質問に入ります。 まず、部活動の地域移行について質問いたします。 少子化社会の急速な展開により、様々な分野で大きな影響を受けていますが、部活動も例外ではありません。令和四年度学校基本調査山形県結果速報によれば、中学校生徒数は、平成二十九年度二万九千五百七十二人に対し令和四年度は二万六千三百六十二人と、生徒数の減少が深刻なものになってきました。生徒数減少により、自分のやりたいスポーツが学校の部活動にない、部員数が足りず試合に出られないといった一昔前では考えられなかった事態が生じており、子供たちの部活動の環境は、今後ますます厳しくなっていくものと考えられます。 そんな中、今年六月六日、スポーツ庁の有識者会議は室伏スポーツ庁長官に対し、休日の公立中学校の運動部活動を令和七年度末までに地域移行すべきという提言を行いました。国は、来年度から休日の部活動を段階的に地域に移行していく方針を示しています。これを機に教員の働き方改革も推進していかなければなりませんが、同時に、生徒にとって望ましいスポーツ環境の整備を進めていくことも重要であると考えます。 全国的に部活動の地域移行に向けた動きは加速しており、例えば、長崎県長与町では、令和五年度から休日の運動部活動全てを地域移行していき、休日の部活動に係る指導者や運動場所の確保、会費の徴収等といった運営は地域の受皿となる団体が行うことを表明しています。また、埼玉県さいたま市では、さいたまスポーツコミッションプロバスケットボールチームさいたまブロンコスが連携し、新しい放課後スポーツの在り方として、プロ選手がさいたま市内の中学校の部活動を請け負い、地域と一体となった活動を進めています。 さらには、民間企業も動き出しており、三井住友海上火災保険が、教員の代わりとなる指導者をサポートする認証制度を新たに創設し、認証を与えることで生徒や保護者に安心と安全を担保することを目的として実施しますが、こういった取組は、民間企業では初めての事例となります。 山形県においても、国の地域運動部活動推進事業を活用し、山形市立第六中学校と鮭川村立鮭川中学校で休日の部活動の地域移行を実施しました。また、天童市においては、市内四校の合同部活動を実施し、部活動指導者の負担軽減につながったと聞いております。今後、県内においても、部活動の地域移行はより加速していくものと考えております。 しかし、地域移行に向けた課題は多く、現場の声を聞いてみると、「受皿となる団体は総合型地域スポーツクラブスポーツ少年団、クラブチーム、大学などの候補があると聞くけど、受入れ態勢は整っているのか」「現時点でも指導者の確保は困難なのに解決できるのか」「練習場所はどう確保していくのか」「これまでも休日開催の大会運営は大変だったのに、地域移行して誰が責任を持つのか」、さらには「部活は基本的に無料だったけど、地域スポーツの場合は有料となることが多く、保護者の負担が増えるんじゃないか」などと、部活動指導教員だけでなく、保護者からも不安の声があり、課題は山積しているのが現状です。 今後、本格的に部活動を地域移行していくためには様々な課題がありますが、まずは、県としていつまでに何をやるという明確な目標を立てることが地域移行を推進していく第一歩になると思います。また、各市町村としても推進計画を作成しなければなりませんが、そのためにも、県全体の目標や計画が先にあってしかるべきと考えます。 山形県では、運動部活動と地域等の連携の在り方に関する検討委員会を設置し、部活動改革のイメージや部活動改革の推進に向けた取組事項を示していますが、具体的な状況が見えてきません。例えば、スケジュールの面だけに着目しても、令和四年度中に実施するもの、令和四年度以降段階的に実施するもの、令和五年度以降に実施するものと整理されていますが、国が地域移行の達成に向けて令和五年度から令和七年度末を改革集中期間と設定しているその三年間の県の計画は曖昧です。国の運動部活動の地域移行に関する検討会議の提言では、令和七年度末を目途に休日の地域移行の達成を目指すとされており、今後、ガイドラインの改定もなされると捉えています。 部活動の地域移行の達成に向けて大事な改革集中期間の三年間、山形県として、どのような目標、どのような計画の下で取組を進めていくのか、教育長に伺います。 また、今後、具体的な地域移行の取組を進めていくには、予算を確保することが大変重要であります。 これから県でも来年度の予算要求が始まります。国の令和五年度の概算要求では、地域スポーツクラブ活動体制整備事業等として約百二億円もの経費が計上されております。このうち、コーディネーターの配置等体制整備、運営団体・実施主体の整備充実、指導者配置支援等体制整備については、国・県・市町村の連携協力の下で着実に推進するとあり、そのためにも県として予算をしっかり確保していくべきと考えますが、教育長の考えを伺います。 次に、不登校児童生徒の多様な学びの確保について質問します。 昨今、不登校児童生徒数が増加しております。令和二年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査によれば、全国小・中学校の不登校児童生徒数は、平成二十七年度の十二万五千九百九十一人に対し、令和二年度には十九万六千百二十七人。山形県では、平成二十七年度八百六十九人に対し、令和二年度は千二百二十六人と増加傾向であり、文部科学省でデータベース化されている平成十四年度以降、過去最多の記録とのことです。不登校児童生徒の学校復帰への支援はもちろん重要ですが、不登校児童生徒数が八年連続増加している中で、学びの環境や機会を確保することもなおさら重要な施策と考えます。 少し前までの取組としては、当該学校と自宅の関係だけに限定され、保健室登校や別室登校などを経て普通教室に戻ることを支援するといった形でありました。その後、不登校の施策について整理しまとめた令和元年度の通知により、フリースクール等の民間団体で行った学びやICTを活用した学習活動が校長判断で出席扱いされることが改めて周知、確認され、学校以外の場での学習も広がりを見せております。 最近は、それに加えて、その中間点として、他の学校や公民館、図書館にまで範囲を広げ、少しでも不登校児童生徒の学びを完成させる取組を進めてきています。特に、学校という場自体を柔軟化する不登校特例校の取組は、平成十七年の特区措置全国化からも行われてきましたが、近年、その取組も進化してきており、文科省としては、特色ある不登校特例校を都道府県や政令市へ設置するため必要な予算を計上しております。 令和四年現在、不登校特例校を設置している都道府県は十都道府県の二十一校であり、東北では宮城県のみという現状です。これまでは、平成二十八年十二月に義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律が成立し、不登校特例校の整備に関しては努力義務にとどまっていましたが、今年六月の経済財政運営と改革の基本方針二〇二二の中で「不登校特例校の全都道府県等での設置や指導の充実の促進」が初めて明記され、格段に前進しました。 山形県では、令和二年八月に不登校児童生徒自立支援ネットワーク構築検討会議を立ち上げ、学校と民間支援団体教育支援センター等との連携した支援について意見交換を行い、令和三年三月には、不登校児童生徒とその家族を支えるため「不登校児童生徒相談支援ガイド」を発行し、そして、今年三月には、現場の先生や関係者の方のスキルアップのための「不登校児童生徒支援ハンドブック」を作成しました。また、国の事業を活用して、不登校の未然防止に向けた魅力ある学校づくりの取組、さらには現場の先生方による不登校生徒に対する熱心なサポートなど、様々な取組をされていると承知しております。 しかし、現場の声を聞いてみますと、不登校児童生徒の背景や要因は多様化してきており、適応指導教室に通える生徒の支援も必要だが、別室登校ですぐに帰宅する生徒、さらには学校にすら通えない生徒も増えてきていることが課題とのことでした。不登校児童生徒にとっては、適応指導教室は選択肢の一つで、学校に通えない生徒に対してどのように学びを確保していくかも重要になってきます。そういった意味で、GIGAスクールの推進によりICT教育環境が整ったことで、オンライン授業という選択肢も必要です。 広島県では、個別に最適な学びの環境を整えるとして、「SCHOOL“S”」を進めています。これは、広島県の不登校の小中学生を支援する県の教育支援センターでありますが、大きな特徴は、外出が難しい生徒でも自宅からオンラインでの授業参加が可能で、個々に応じた学びを支援していると聞いております。 こうしたことを考えると、様々な事情を抱える不登校児童生徒を学校復帰できるよう支援することはもちろん重要ですが、不登校生徒が増加してきている中で、これまで以上の新たな取組も必要と考えます。そういった意味では、生徒の実態に配慮した特別の教育課程を編成することが可能な不登校特例校を山形県として設置することや、広島県のようなオンラインによる学習の取組も重要ではないでしょうか。 多様な時代だからこそ、不登校児童生徒に合った多様な学びの学習環境を整えることも県として重要な役割と考えますが、山形県として今後どのように取り組んでいくのか、教育長に伺います。 次に、災害対応を踏まえた土地改良区の維持管理等の取組について伺います。 八月三日からの大雨による災害では、置賜地域を中心に大きな被害をもたらしました。この災害では、インフラ施設等の被害はもとより、農作物等の被害額が約十四億円に上るなど、我が県の基盤産業にも大きな打撃を与えるものとなりました。 こうした状況に対し、政府からは、八月七日の二之湯防災担当大臣の飯豊町等への被災地視察などを踏まえ、八月二十三日に激甚災害の指定見込みが公表されるなど、災害復旧に向けた支援策が講じられているところです。 また、県においても、市町村に対する人的支援をはじめ様々な策が講じられておりますが、私からは、こうした事後対応だけでなく、防災・減災に向けた日頃の取組も重要であるとの観点から幾つか質問したいと思います。 今回の災害において、特に農業用施設に着目すると、九月二十二日時点で千三百七十四か所、約四十九億円に上る甚大な被害が出ております。 農業用施設は、農業を営む上で不可欠な農業用水を供給するなど、農業県である山形県において重要な役割を果たしています。農業用ダムやため池などの施設は、利水のみならず、降水を一時的に貯留する役割も実質的に担っており、農業だけでなく、県民の安全安心な生活にも関わる公共的な施設であります。 これら施設は、主に土地改良区が日頃の維持管理によって機能を担保しているものです。こうした地道な取組は、今回の災害において、迅速な被災状況の把握や一部施設の復旧、さらには被害拡大防止につながっているものと考えます。 このように、土地改良区の日頃からの取組がしっかり行われていることは、農家が安心して農業を営めるだけでなく、今後の災害に備える上でも重要と考えますが、まずは、こうした土地改良区が行う施設の管理に対する県の考え方や支援について農林水産部長にお伺いいたします。 次に、農業用施設の中でも、特に農業用ダムについて質問いたします。 農業用ダムは県内各地に八か所ありますが、大規模な施設であるため、日頃の利水調整や施設の軽微な補修など、多大な労力によって維持管理されています。 上山市土地改良区の場合、県営で造成された農業用ダムである生居川ダムや菖蒲川ダムにおいて、長年にわたる土砂の堆積により農業用水の貯留量が減少していることが課題である一方、堆積した土砂は、通常の維持管理では除去できないため、対応に苦慮しているとのことでした。特に菖蒲川ダムにおいては、令和三年度の堆砂量は約十八万立方メートルと、計画上の堆砂量約十一万立方メートルを大きく上回っており、割合でいえば約一六五%と、大変懸念する状況です。 また、生居川ダムについては、令和二年七月豪雨の際に緊急放流を行うことで地域の洪水被害防止に貢献するなど、農業水利施設にとどまらない役割が実際に発揮されているところですが、やはり一定の堆砂量が見られるため、計画的な対応が求められます。 令和二年七月豪雨の後、上山市土地改良区の皆さんから農業用ダムの堆砂対策を国か県で実施できないかとの声がありました。流域治水の観点から、洪水調節可能容量を確保するには堆砂対策を進めていく必要がありますが、土地改良区が行う通常の維持管理では難しく、費用の面から考えても除去できないため、対応に苦慮しているとのことです。 そんな中、農業用ダムの堆砂問題については、国の令和三年度の補正予算の中で、農業用ダムの洪水調節機能の強化を含む流域治水対策の推進の補助事業により、国負担五〇%、県・市町村負担五〇%で農業用ダムの放流施設の堆砂対策を実施できるようになりましたが、県は、今年度から、県単独の事業で菖蒲川ダムの堆砂対策の実施の方向に向けて調査に入っており、地元としても大変喜んでいるところです。 例として上山の農業用ダムについて触れましたが、農業用施設に関しては、このように土地改良区だけでは解決できない維持管理上の課題に対し県が積極的に支援していく必要があると考えますが、こうした課題に対する県の対応について農林水産部長にお伺いいたします。 次に、農業用施設を守るための関係機関との連携に関する考え方について伺います。 農業用施設を適切に維持管理し、災害から守っていくためには、ハード対策をしっかり進めることもさることながら、土地改良区や関係機関と行政がしっかりと連携していくことも重要であると考えます。 今回の災害を振り返っても、独自に災害対策本部を立ち上げて速やかな被災状況の確認を自ら行えたところもあれば、被災状況の甚大さから県職員の応援を受け入れたところまで、土地改良区によって様々な対応状況であったと認識しています。必要に応じて県から支援があったことについては感謝申し上げますが、県民が安心して生活し、農家が安心して営農するためにも、今後に向けて行政が土地改良区と連携して支えていくことが重要だと考えます。 また、災害時の対応を想定すると、土地改良区単独の問題だけではなく、上部団体である山形県土地改良事業団体連合会との連携はもちろん、県や市町村をはじめとする各行政機関や関係機関との連携も重要です。 農業用施設を守るための行政機関と土地改良区や関係機関との連携に関する県の考え方について農林水産部長にお伺いいたします。 次に、航空路線の利用拡大について伺います。 新型コロナの影響が長引き、鉄道、バス、航空路線などの公共交通機関は全体的に利用者数が減少しており、厳しい状況が続いております。中でも、長距離の公共交通機関である航空路線は、報道でもありますが、燃料費高騰の影響もあり、航空会社の経営も深刻な打撃を受けているとのことです。また、これも報道によれば、厳しい経営状況にある航空会社の声として、「ウェブ会議やリモートワークの浸透などにより企業における航空便のビジネス利用が減少しており、今後も新型コロナ感染拡大前の水準には戻らない」とのことであり、利用回復のみならず、利用拡大の推進や新規需要の創出に向けて、今後は、新たな発想の下、その取組を進めていく必要があるのではないかと思います。 本県の航空路線は、山形空港からは羽田、伊丹、名古屋、札幌へ、庄内空港からは羽田へと県外主要都市との往来を支え、地域経済や住民生活を支えてきた重要なインフラであり、観光の面では、国内のみならず、インバウンドにおける交流人口の拡大にも大きく寄与してきました。コロナ感染拡大前の令和元年の航空利用者数は、山形空港では平成十四年以降十万人台、二十万人台で推移してきましたが、三十三万一千七百十八人の利用、庄内空港では開港以来二番目となる四十二万九千四百四十二人を記録したと伺いました。それだけ航空路線の重要性は増してきていたと考えられます。 このように重要なインフラとして位置づけられている山形空港及び庄内空港の航空路線は、新型コロナによりどのような影響を受けているのか、現在の状況と明らかになっている課題について、みらい企画創造部長に伺います。 次に、今後の利用拡大・新規需要の創出に向けた展望について伺います。 先ほども申し上げましたが、北から札幌、羽田、名古屋、伊丹へと、本県両空港から四都市に就航しています。いずれも大都市であります。これからもこれらの都市への路線をしっかりと維持し、誘客・交流を拡大し、それが路線の定着・拡大につながり、さらなる交流人口の拡大につながっていくという好循環を創出していくことが重要であると考えます。 交流人口の拡大は、双方向いずれも重要であり、山形・庄内空港周辺の自治体だけではなく、県内全域から空港を利用してもらえるような取組や、就航先の都市から山形県への利用を促し、県全域に空港を起点として利用客が広がっていくような取組もしっかり進めていくべきと考えます。これらの取組を進めていく上で、二次交通の充実は欠かせないものであり、現在、山形空港、庄内空港からの二次交通では、主要な観光地などへの運行も進めているようですが、さらなる充実を含め、これからもしっかり進めていただきたいと思います。 さて、今回の補正予算では、新たな移住・定住施策の推進として、これまで首都圏を中心に展開してきた移住施策を関西圏及び中京圏に広げ本県への移住につなげるという新たな施策を打ち出しております。いずれも本県から就航している都市圏であり、いわゆる誘客ではないものの、就航先からの利用拡大に資する新たな視点からの取組ではないかと期待しております。 高速交通の一つである山形新幹線については、コロナ禍で落ち込んだ山形新幹線の利用回復、新規需要の創出に向け、特産品の貨物輸送やビジネス交流の拡大も期待されるワーケーションでの活用も視野に取組を進めていると伺っております。 先ほど、利用回復のみならず、利用拡大の推進や新規需要の創出に向けて、今後は新たな発想の下、その取組を進めていく必要があるのではないかと申し上げました。四都市に就航している航空路線の今後の利用拡大の推進や新規需要の創出に向けて、県ではどのような展望を持って取り組んでいくのか、今回の補正予算にある関西圏・中京圏における移住・定住の推進の視点や関係ビジネス人口の拡大の視点も含め、みらい企画創造部長に伺います。 最後に、国際交流拡大に向けた取組について伺います。 新型コロナがいまだ終息しない中ではありますが、少しずつ経済活動が再開し、海外との交流も今後ますます回復していくものと考えます。岸田総理大臣は、新型コロナの水際対策について、十月十一日から一日当たりの入国者数の上限の撤廃や個人旅行客の受入れ解禁、さらには、短期滞在に関してはビザなし渡航を認めるなど、大幅な緩和策を発表しましたが、これにより海外との交流の機会がより一層進んでいくことが予想されます。山形県は、他県に遅れることなく、国際交流の拡大に向けた取組を推進していかなければなりません。 そんな中、出入国在留管理庁によれば、今月二十日時点でウクライナ避難民の受入れ者数がゼロ人だった都道府県は山形県と愛媛県の二県との発表がありました。さらに、山形県内で受け入れている留学生の数も、令和三年五月時点の日本学生支援機構調査によれば全国四十六位、ワースト二位とのことでした。 この二つの数字だけが全てではありませんが、世界から見て山形県の認知度は低く、魅力もうまくPRできておらず、県の国際交流に対する取組が遅れているからではないでしょうか。世界から認知されているという国際交流の土台があって初めて山形の魅力を世界に発信し、企業や農産物の海外進出やインバウンドの拡大など各分野の国際交流が一層進んでいくものと考えています。 認知度を上げるためには、日頃からの地道な取組が実を結ぶものと考えています。これまでも山形県としては様々な国際交流を実施し、例えば、姉妹友好州省は、アメリカのコロラド州、中国の黒龍江省、インドネシアのパプア州であり、技術や青少年の交流を行ってきたほか、南米等の友好親善に貢献している県人会活動への支援を実施して、また、語学指導等を行うJETプログラムにより、将来を担う子供たちの国際理解の促進やコミュニケーション能力の育成を図っています。 さらには、今年度当初予算では、「YAMAGATA Youth Summit」の開催や留学生トータルサポート体制の構築、ビジネスパーソンを核とした外国人材の受入れ拡大が予算化され、グローバル化推進事業を進めていくことと思います。 新型コロナが落ち着いてくれば、国際交流は一気に進んでいきます。観光客や留学生など海外から山形を選んでもらうためには、まずは国際交流の機会を様々な場面で増やし、そして海外からの認知度を上げ、世界と山形がつながる環境づくりをすることが重要です。その上で、優秀な留学生や高度外国人材を本県に呼び込み、海外に対し山形の魅力を発信し、存在感を高めながら、本県のグローバル化の推進につなげていくべきではないでしょうか。 山形県におけるウクライナ避難民の受入れの実績がないこと、留学生の人数が少ない現状などをどのように捉えているのか、また、その結果を踏まえながら、今後、国際交流拡大に向けて、本県が世界とつながるための環境づくりにどう取り組んでいくのか、みらい企画創造部長に伺い、私の壇上からの質問にさせていただきます。 御清聴いただきましてありがとうございました。 ○副議長(加賀正和議員) この場合、答弁を求めます。 答弁の順は私から指名します。 岡本みらい企画創造部長。 ◎みらい企画創造部長(岡本泰輔君) 初めに、航空路線の利用拡大についてお答え申し上げます。 まず、航空路線の現状と課題についてでございます。 県内の航空路線は、新型コロナの感染拡大に伴う移動需要の減退により利用者が減少し、大きな打撃を受けております。令和二年三月以降、二年以上にわたって運休や減便が続いた影響が大きく、令和三年の利用者数は、山形空港では、新型コロナ拡大前の令和元年比で四〇%の十三万二千六百三十四人、庄内空港では、同じく二四%の十万三千百八十七人となっております。 今年六月からは、山形空港、庄内空港ともに全便が運航している状況であり、直近の利用者数は、山形空港ではコロナ前の八割程度まで回復してきており、庄内空港では、コロナ前の七割程度となっております。 コロナ前の状況まで利用者が戻っていない要因の一つがビジネス需要であります。新型コロナの影響が長期化し、オンラインでの会議等が定着してきたこともあり、御指摘のとおり、ビジネス需要についてはコロナ前までには戻らないとの予測もあることから、新たな航空需要の創出に取り組む必要がございます。 また、新型コロナの影響では、先々の状況が見通せないことから、航空路線の利用予約については、個人や小グループ単位で、出発間際の申込みとなる傾向が強まり、事前募集となる観光ツアーなどの団体利用が減少しております。 航空路線は、首都圏のみならず、県外の主要都市と本県を結ぶ高速交通機関として、新幹線と並び、本県の発展を支える重要なインフラであります。加えて、今年三月に発生した福島県沖地震の際には、山形・羽田便が、運休となった山形新幹線の代替機能を果たすなど、その重要性が改めて示されたところであります。 山形、庄内の両空港ともに、路線の維持のみならず、さらなる利便性向上のためにも、こうした需要の変化を捉えながら、利用拡大や新規需要創出の取組を進める必要があると考えております。 今後の利用拡大・新規需要創出に向けた展望についてでございます。 県としましては、これまでも、空港近隣の市町村などとも連携しながら、航空路線の利用拡大に向けて、リピーター獲得のための「おいしい山形空港サポーターズクラブ」や「おいしい庄内空港ファンクラブ」の運営、県内観光地等への二次交通の充実、航空路線のプロモーションや旅客商品の造成支援といった取組を行ってきており、コロナによる移動需要や行動様式の変化を踏まえ、取組をアップデートしていく必要があると考えております。 ビジネス需要については、減少傾向にある一方で、テレワークなど場所にとらわれない働き方が定着しつつあります。例えば、庄内空港において、航空会社や市町等と連携し庄内浜釣りケーションを企画するなど、新たな航空需要の創出に取り組んでおり、引き続きこうした取組を進めてまいります。 また、旅行商品の造成支援等においても、密を避け、自然に触れる旅を企画しているほか、県内二空港というメリットを生かし、到着は山形空港、帰りは庄内空港など、二次交通やレンタカーなどを活用しながら、空港の相互利用による県内周遊観光を促進する取組も行っております。今後、東北中央自動車道の開通に合わせ、最上地域からの山形空港利用を促進するためのプロモーションも実施予定であります。 加えて、航空機での移動や空港の利用に困難がある方にも利用していただき、全ての人が旅行を楽しめるようにするアクセシブル・ツーリズムやユニバーサルツーリズムにも取り組んでおり、今年十月に実施される、発達障がいのある方が空港や航空機での事前体験会を経て首都圏からのツアーとして本県での果物狩りなどにチャレンジするプロジェクトに協力しております。 御指摘のあった移住・定住の推進についても、航空需要の創出という点で重要であります。移住・定住の推進に当たっては、雪国での生活やテレワークの体験などを通じて移住に対するイメージの具体化を図り、本県への移住につなげたいと考えております。お試しテレワーク移住においては、交通費の支援も予定していることから、航空路線を使えば、大阪から山形までが一時間十五分、名古屋から山形までが一時間五分という時間的な近さも体験し、ある程度長期滞在していただくことは、交流人口や関係人口の拡大に向けて有効であると考えております。 県といたしましては、関係自治体や関係団体などとも協力し、官民一体となって、ポストコロナにおける観光やビジネスの移動需要のほか、移住・定住につながる交流需要の取り込みも図るとともに、本県と国内外との交流を支える基幹的交通ネットワークである航空路線の充実強化を図ってまいります。 次に、国際交流拡大に向けた取組についてお答え申し上げます。 グローバル化の進展など社会経済環境が大きく変化する中、戦略的かつ効果的に施策を展開することが必要であります。 このような中、ウクライナからの避難者支援につきましては、本県は全国的に早い段階で避難者の受入れを表明し、準備を進めてまいりました。 現時点で本県に避難してこられた方の実績はございませんが、これまでの間、県内の教育機関とも緊密に連携しながら、ウクライナから避難してくる学生や研究者等の支援について調整を進めてきたところであります。その結果、山形大学によるウクライナからの留学生二名枠の募集開始や、県内の公的機関の協力の下で研究者等の来県も視野に入れた受入れの動きも出てきているところであります。 県では、こうした動きに対応するため、九月補正予算案において、ウクライナからの避難者が県内で生活を送るための準備に必要な経費などを計上させていただいております。 次に、本県における留学生の現状についてでありますが、令和三年五月現在で二百八十人となっており、全国的にも少ない状況にございます。その主な理由といたしまして、人口規模や受入れ学校数が同じような他県と比較した場合、本県では、私立大学や専門学校での受入れが少ないことや情報発信が十分でないことなどが課題であると捉えております。 こうした点も踏まえ、県では、県内の大学などと連携し、やまがた留学ポータルサイトを立ち上げ、留学情報を一元的に多言語で発信する取組を始めましたほか、広く本県及び県内教育機関の魅力を紹介するオンラインフェアの開催にも取り組んでいるところです。 今後も、県内大学などとしっかり連携を取り、留学生の受入れ拡大に向けて取り組んでまいります。 今後の本県における国際交流の拡大に向けましては、今年度初めて「YAMAGATA Youth Summit」を開催し、山形を誇りに思い、グローバルな視点で活躍できる人材の育成を目指しているところです。具体的には、本年の十月末から約二週間の間、山形、尾花沢、米沢、酒田、鮭川を会場に、SDGsや伝統文化継承など、地域の持続可能性といったテーマについて、リアルとオンラインを組み合わせて議論するハイブリッドの国際会議となります。この会議では、女性実業家や国内外で活躍するアーティストなど様々な方々に登壇いただく予定であり、継続したユースサミットの開催を通じて地域の価値を高めるとともに、参加者が山形の地域資源や出会った人について発信し、山形が認知されることで、新たな交流へと結びつけてまいりたいと考えております。 ○副議長(加賀正和議員) 地主農林水産部長。 ◎農林水産部長(地主徹君) 災害対応を踏まえた土地改良区の維持管理等の取組について三つの質問をいただきましたのでお答えいたします。 初めに、土地改良区が行う施設の管理に対する県の考え方や支援についてです。 稲作などの営農に欠かせない農業用水を供給する農業用施設には、河川やダムなどから取水して農業用水路を通し、末端の農地に供給するまで一連の施設があり、その多くを土地改良区が管理しています。土地改良区では、農業用水を安定的に供給するため、日常的に取水施設に流入した土砂の撤去や繁茂したのり面の除草などを行うとともに、老朽化した箇所の修繕や、地震・豪雨後の緊急確認などの補修・点検を行っておりますが、これらに係る経費は、農家からの賦課金によって賄われているのが現状です。 このたびの災害において、農業用施設では千三百七十四か所で被害が確認されており、被害額は約四十九億円に上るなど、大きな被害となりました。市町村職員が住民の安全確保やライフラインの確認などに追われ、農業用施設の被害把握まで手が回らない状況が続く中、農業用施設を管理する土地改良区が、豪雨の翌日から直ちに施設の点検を行い、通常どおり通水できる区間と、被災して対策が必要な箇所の状況を速やかに把握し、被害情報を市町村や県に提供してくださいました。 このように、土地改良区は、本県農業を支える重要な役割を担っていることに加え、災害時にも力を発揮しておりますので、土地改良区の負担が著しく大きくなる場合には、県として支援を行うこととしております。 具体的に申し上げますと、今回のような災害発生時には、被災状況の確認や災害査定準備等に対して技術職員を現地に派遣するとともに、農業用施設災害復旧事業により災害復旧に対する補助を行うなどの財政的な支援を行っているところです。 また、災害時以外においても、高度な管理技術を要する基幹水利施設の点検や修繕等を行う際、政府の補助事業などを活用して費用を支援することとしております。加えまして、農業水利施設の長寿命化対策や農業用ポンプ場などの電気機器の省エネタイプへの更新など、土地改良区が抱える課題に対しても、可能な限り支援を行うこととしております。 今後も、現場のニーズに応えられるよう、県として必要な支援を行ってまいります。 次に、農業用ダム等の農業用施設の維持管理上の課題に対する支援についてお答えいたします。 農業用ダムの維持管理につきましては、県内には八か所の農業用ダムがあり、そのうち四か所は国営事業で、残り四か所は県営事業で造成されております。これらの管理については、各地区の事情に合わせて、県、市、土地改良区がそれぞれ管理を行っているところです。 このうち、水窪ダムや枡沢ダムなど国営事業で造成されたダムについては、政府の補助事業を活用して日常の維持管理を行っている一方、銀山川ダムなどの県営事業で造成したダムについては、県独自の事業によって、施設の計画的な点検・補修などにより適切な維持管理を図っています。 御質問にあります生居川ダムと菖蒲川ダムは、いずれも県営事業で造成した後、上山市土地改良区に譲与し、同土地改良区が管理しているもので、合わせて二千五百四十四ヘクタールの農地に農業用水を供給しています。 二つのダムでは、秋のかんがい期間終了後、降雨や雪解け水などを貯水して翌年の農業用水に備えておりますが、ダム建設から三十年以上が経過していることもあり、貯水池内に土砂の堆積が進行しております。特に菖蒲川ダムにおいては、計画量以上の土砂が堆積して、ダムに貯水できる量が減少しており、渇水時などは農業用水の需給が逼迫しやすいことから、農業用水の安定的な確保が心配になると伺っております。 上山市土地改良区からは、県に対して、堆積土砂の実態把握や対策に向けた検討の要望が出されたところであり、県では、今年度、堆積した土砂の量をより正確に把握するための調査を行っているところです。調査の結果、多くの量の堆積が確認された場合には、県と土地改良区が上山市や河川管理者などの関係機関と協議し、安定的な農業用水の確保を図るため、堆積土砂をしゅんせつするなど必要な対策を講じてまいります。 県としましては、今後とも、営農に欠くことのできない農業用水の安定確保を図るため、農業用ダムをはじめとする農業水利施設の管理を担っている土地改良区等に対し、必要な支援を行ってまいります。 次に、農業用施設を守るための関係機関との連携についてお答えいたします。 農業用施設が被災した場合は、通常、施設を管理する土地改良区の職員が、日常の管理で把握している脆弱な箇所や重要なポイントを中心に点検を始め、通水機能や施設の構造に異常が生じていないかを順次確認し、市町村に報告するとともに、最寄りの建設業者が応急対策を講じることとなります。 一方で、今回の豪雨災害のように、被災の規模が甚大で被災箇所が広範囲に及ぶ場合には、土地改良区が県や市町村、山形県土地改良事業団体連合会と今後の対応について協議を行っており、今回の災害では、実際にこれら関係機関が土地改良区に協力して現地調査を行っております。 また、今回の応急対策においては、大規模災害に備えて県と協定を締結している山形県土地改良建設協会の協力を得て、会員企業の応援により仮設のポンプや送水管を設置し、土地改良区とともに必要な用水量を確保するなどの対応を行ったところです。 県では、このように災害時に重要な役割を果たしている土地改良区に関して、持続可能な組織運営を確立し、農業用施設の管理を含めた土地改良事業の適正な実施を推進することを目的に、本年三月に山形県土地改良区運営基盤強化基本計画を策定しております。 この計画では、関係機関で構成する土地改良区運営基盤強化協議会を開催し、地域における土地改良区の実情や課題を踏まえ、様々な施策を年次計画に定め、推進することとしております。 具体的には、土地改良施設の適正な維持管理・更新等のための土地改良区の統合整備や新設等の推進、財務状況の視覚化などに必要な貸借対照表の作成への指導・助言、さらには県民への安全安心に対する期待に応えるための土地改良施設の安全管理対策の推進など、地域の実情や課題に応じて関係機関と連携し、個々の土地改良区への指導・助言を実施しております。 農業用施設を円滑に運用していくことは、県内の農業者が安心して営農を継続するために大変重要であります。県としましては、災害時においても農業用施設の機能がしっかりと発揮されるよう、土地改良区に寄り添いながら、市町村や関係機関と連携して取り組んでまいります。 ○副議長(加賀正和議員) 高橋教育長。 ◎教育長(高橋広樹君) 私には二問御質問をいただきました。 最初に、部活動の地域移行についてでございます。 部活動につきましては、少子化の進展や教員の恒常的な時間外勤務を背景といたしまして、将来に向けて持続可能な運営が困難となると言われており、政府におきましては、このような状況を打開するため、中学校における部活動を段階的に地域に移行することを内容とした部活動改革を打ち出しております。このことは、単に部活動を地域に移行するだけでなく、地域の実情に応じて地域スポーツの在り方を見直し、地域住民が将来にわたり持続的にスポーツに親しめる環境づくりを目指した取組であると捉えております。 中学校の部活動改革の実施主体は市町村となりますが、部活動改革の意義や目的について共有化を図り、様々な取組事例等必要な情報を収集・提供するなどにより、市町村の円滑な検討を促していくことが県の役割というふうに考えております。 このような中で、県教育委員会では、これまで部活動改革に関するリーフレットや説明動画を作成し、市町村や学校、関係団体等に広く周知を図ってまいりましたが、このたび、市町村の検討状況についてアンケート調査を実施いたしましたところ、指導者や財源の確保が難しいであるとか、市町村単独での移行が困難であるなどの具体的な課題のほかに、改革の必要性を感じながらも具体的なイメージが湧かないとして、検討が進んでいない市町村も多いことが分かりました。 このため、県教育委員会といたしましては、休日の部活動の在り方や教員の関わり方など改革の基本的な考え方を整理し共有するため、早急に市町村担当課長会議を開催いたしまして、今後、市町村や中学校が同じ考え方に立って検討を進めることができるよう土台づくりを進めてまいりたいと考えております。 それと併せて、人材や財源の確保、地域の受皿づくりや広域的な連携の在り方等の主要な課題につきましては、その検討の進め方や取組方法、留意点等を盛り込んだガイドラインを市町村と一緒になって作成し、それぞれの市町村が地域の事情を踏まえながら具体的な取組を進められますように道筋をつくってまいります。 また、予算につきましても、スポーツ庁において、検討組織の運営や人材確保等のための予算を要求しておりますので、それらについてしっかりと情報収集等を行い、市町村と連携しながら必要な予算を確保してまいります。 県教育委員会としては、市町村はもとより、関係団体等とも連携を密にしながら、地域の実情を踏まえた部活移行が着実に推進されますように、主体となる市町村をしっかりと支援してまいります。 続きまして、不登校児童生徒の多様な学びの確保について答弁申し上げます。 不登校児童生徒への支援につきましては、まずもって、学校や社会とつながる居場所を確保し、児童生徒とその保護者の方に寄り添った対応をしていくことが大切であると考えております。 子供の居場所といたしましては、教室に入れない児童生徒には保健室や別室での学習支援、市町村が設置する教育支援センター、NPO等民間団体が運営するフリースクールなどがあります。県教育委員会では、これら関係機関による不登校児童生徒自立支援ネットワーク構築検討会議を立ち上げまして、子供に寄り添った支援ができる環境づくりに努めてまいりました。 また、相談・支援機関につながっていない児童生徒につきましても、担任を中心に継続した家庭訪問等が行われており、県教育委員会といたしましては、専門的なサポートができますように、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等を配置しているところです。 学びの確保という面では、先ほど申し上げました別室学習支援、教育支援センター、フリースクールでも児童生徒の状況に応じた学びの支援が行われており、特に別室学習支援につきましては、本県としては、特に非常勤の教員を配置し、学びの充実を図っております。 不登校特例校は、通常の学校の教育課程より授業時間数や教育内容を削減したり、少人数指導や習熟度別指導など、個々の実態に即した柔軟な学びへの指導・支援等を行う学校です。先ほど申し上げました様々な支援体制がある中で、本県におきましては、今のところ設置の動きは見られませんが、教育委員会といたしましても、不登校児童生徒の学びの場の貴重な選択肢の一つといたしまして、政府の概算要求の内容なども含めて、改めて市町村に周知を図ってまいります。 一方、不登校児童生徒の学びにつきましては、ICTを活用した取組が広がりつつあり、例えば、一人一台端末を利用して別室や教育支援センター、家庭からオンラインで授業に参加し、クラスの仲間と同じ進度で学習に取り組んでいる事例や、学習アプリを活用し、理解度に応じた学習に取り組んでいる事例などもございます。 県教育委員会といたしましては、不登校児童生徒がそれぞれの状況に応じた学びができますように、ICTの活用も含め、他県の事例も積極的に情報収集等をしながら、引き続き、子供たちに寄り添った多様な学びの機会の確保に努めてまいります。 ○副議長(加賀正和議員) この場合、休憩いたします。 午前十一時十分再開いたします。     午前十一時二分 休憩     午前十一時十一分 開議 ○副議長(加賀正和議員) 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑及び質問を続行いたします。 四番菊池大二郎議員。 ◆4番(菊池大二郎議員) 加賀副議長の力強さに負けないように、はつらつと質問したいと存じます。 さて、本年中には村山本飯田インターチェンジから東根北インターチェンジまでが供用開始となり、一部県境区間を除いて、首都圏から北村山そして最上地域が直結する予定であります。 とりわけ、村山市における開通区間は、東北最大級の軟弱地盤と評され、事業進捗にも多大な影響を余儀なくされたわけでありますが、東北中央自動車道開通を契機に、東沢バラ公園、最上川三難所舟下り、居合道、そして村山市が推進する体験型農業を核とした「アグリランドむらやま」事業等による観光誘客の促進に一層弾みをつけていかなければなりません。 また、村山市が令和二年度に県から購入した旧県立楯岡高校も、このたび複合型施設「Link MURAYAMA」に生まれ変わり、市街地のにぎわい創造につなげていきたいところです。 加えて、村山市は、金谷工業団地を中心に輸送用機械器具製造業者が比較的多く、近年需要が増加傾向にあるキャンピングカーの製造工場も含め、関連部品の安定的な入荷と製品の供給が見込まれ、一層の地域活性化や雇用創出への期待が高まります。 かねてからの持論として、村山市を含めた北村山地域は、歴史的にも風土や文化に調和性を有する最上地域との接続により、新たな圏域が形成され、様々な分野においてこれまでなかった化学反応が期待できると考えてきましたし、村山市出身の私としては、「南へ」のみならず「北へ」、そして「西へ」が大きなテーマの一つであります。(発言する者あり)--後で触れます。 この点、このたびの東北中央自動車道の開通は、県民生活の利便性のみならず、産業分野においては物流や産業群の拠点及びネットワークの形成、医療分野においては、来年度開院予定の県立新庄病院を核とした最上地域の医療資源の活用や北村山公立病院等を含めた新たな医療ネットワークの形成が考えられます。 教育分野においては、以前、山科議員からも御指摘ありましたが、令和六年四月開学予定の東北農林専門職大学・仮称における県立村山産業高校等との連携、通学圏の拡大、実習地等の受入れに係る環境整備に加えて、実習地を有する地域に就職するということも期待され、人材確保の好機と言えます。 さらには、公共交通分野においても、山形空港を軸に北へ、そして北からといった人や物の流れがより円滑化し、観光・交流人口等の拡大にも期待が膨らみます。また、先ほど「西へ」と申し上げたとおり、庄内地域との連動もより重要かつ現実性を帯び、仙台圏も含めた大きな経済圏域にも着眼できるとすれば、「東へ」ということにもなろうかと考えます。 北村山地域はまさに飛躍のときであります。もちろん、本県においても大きな転換期にあると考える次第です。このような期待感を形に変えていくためにも、様々な資源の活用や資源への投資を促す政策の推進と地域ビジョンが不可欠であり、その一方で、いまだ顕在化していない資源や潜在性にも目を向けていく姿勢が本県の持続可能性を生み出していくものと信じます。 また、開通後においても、市町村と連動した相乗効果を発揮していく体制を確立し、将来を見据えた地域ビジョンの下、課題や可能性を各部局に着実に落とし込みながら政策を練り上げ、こうした施策・予算措置を誘発剤に民需を動かしていくことが重要であると考えます。 以上を踏まえて、東北中央自動車道の開通効果を沿線地域へ波及させるために、県として市町村等とどう関わり、取組を進めようとしているのか、県土整備部長にお伺いします。 なお、質問の結びに、県土整備部の若手職員を中心にユーチューブにて「県土ちゃんねる」という配信番組を開始しており、高速道開通などをはじめとした周知啓発を積極的に展開されております。こうした活動が明日の県政を担う人材の確保にも資するとの期待を申し添え、次の質問に移ります。 今年四月、東根市神町にありますとある住宅展示場を県当局の皆さんとともに訪問しました。こちらの展示場では、家庭でできるエコシステムや自立循環型モデルハウス等を見学でき、県内初、全国的にも珍しい、将来のゼロカーボンシティーに向けたイメージを提案する住宅の展示場となっております。 また、こちらの運営は、これまではライバル同士であった地元工務店六社が「叶える理想の家づくり」をコンセプトに設立された叶理家(かなりえ)協同組合というグループが行っています。大手ハウスメーカーが約三割を占める本県住宅市場において、やまがた健康住宅やカーボンニュートラルを見据えた次世代型の住宅を起爆剤に、地元工務店の需要や県産木材活用の機運を喚起し、若手大工の確保・育成や、やまがた森林ノミクスにつなげていく、そうした地域経済の好循環を生み出すことがこの協同組合が掲げる理念であります。 ここで、やまがた健康住宅の新築に対する補助制度は、平成三十年度から開始し、全国に先駆けて実施されてきた事業でありますが、こうした本県の先行事例を参考に展開されている鳥取県の取組が大変注目されております。具体的には、「とっとり住まいる支援事業」や「とっとり健康省エネ住宅『NE-ST(ネスト)』認証制度」により、地場産業の活性化や補助制度の充実、次世代を見据えた環境配慮の視点を色濃く取り入れ、昨今では、こうしたモデル事業が、先行した本県ではなく、「鳥取モデル」と周知されているようであります。 このような状況を受け、さきに述べた叶理家関係者の皆さんとの意見交換においても、「正直悔しい」「私たちも頑張らなくては」とのお声が聞かれました。また、「認証と補助金申請手続をより簡素化・円滑化してほしい」「事業年度にとらわれない予算執行をお願いしたい」などの御意見もありました。 こうした中、県は、昨年度末に山形県住生活基本計画を策定し、「省エネ・カーボンニュートラル強化」を基本方針に掲げています。加えて、やまがた健康住宅・再エネ設備パッケージ補助金として、やまがた健康住宅と併せて太陽光発電設備及び蓄電池設備等を設置する住宅を新築する際に最大約二百万円の補助を行うことを打ち出し、補助金の額もさることながら、申請手続がより消費者や実務に適した形に改良されるとともに、県内に本店を有する施工業者に限ることが要件化され、関係者からの声が反映されたものと評価する次第です。 このパッケージ補助は、今年度から五か年で総額約十億円分にも及ぶゼロエネルギー「やまがた健康住宅」普及促進計画として環境省から採択されたものですが、これまでの年間新築戸数の実績を踏まえ、当該事業を確実に実行していくためには、関係者はもとより、県内消費者に対する普及を一層促進していかなければなりません。 また、単なる周知活動のみならず、消費者がこれからの実生活をより具体的にイメージし得るように、高度化・専業化する分野をつなぎ、俯瞰的な情報を提供できるコーディネーターの育成にも力を入れていく必要があると考えます。 そこで、これまでのやまがた健康住宅の取組と実績、今後の普及促進に向けた考え方について、県土整備部長にお伺いします。 また、県では、前述の基本計画に基づき、県産木材の利用拡大や地元大工・工務店の需要拡大、若手技術者の育成に向けた取組を実施してきておりますが、ウッドショック及び国際情勢の変動を踏まえながら、住宅市場における地域経済の好循環やカーボンニュートラル社会の実現のために施策展開していかなければなりません。 そこで、既存の制度の改良のみならず、BELS(ベルス)、いわゆる建築物における省エネ性能の指標等を組み込みながら、次代を見据えた新しい制度や価値を創造していくことが求められると考えますが、本県における今後の住宅政策の展望について、併せて県土整備部長にお伺いします。 次の質問に移ります。 先日、本県での再生可能エネルギー発電に関する協働開発事業で実績のある大手証券グループ傘下のインフラ投資会社の役員及び県内温泉組合の皆さんと地熱・温泉熱発電事業の勉強会を開催しました。勉強会の中で出た意見の中には、コロナの感染状況等に経営が大きく左右される温泉施設を含む観光業において、もう一つの収益性を担保する事業展開の可能性を模索していきたいということ、温泉施設を守りながら、再生可能エネルギー発電への開発・投資により新たなビジネスモデルと地域振興策を考えていく必要があること、などが挙げられました。 この勉強会をきっかけに、村山市をはじめ近隣の温泉施設における源泉温度や源泉量などを調査しましたが、より明らかとなったのは、将来への投資以前に、コロナ禍の窮状に加えた電気料金高騰等による経費圧迫の実情でした。 そもそも、温泉施設は、コロナ禍で利用客が低迷している中でも全館を稼働しなければならず、規模の大小はあるものの、固定経費が重くのしかかる業態であります。 また、最低賃金がアップする一方で、温泉施設を含む観光業については、新型コロナの影響による将来的な不安に伴う就労意欲の減退などから、労働力の確保が極めて困難になっていくことが危惧され、収益の上昇が担保されていない中で人員不足と賃上げに対応しなければならない窮状であります。 加えて、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とする国際情勢の不安定化などにより、エネルギー資源の価格が高騰し、電気料金が大幅に値上げされ、足元だけでなく、来年度以降もますますの値上げが想定される事態となっており、この対応が喫緊の課題と言えます。 こうした中、今後も継続すると予想される電気料金高騰を見据え、自社で使うために発電事業に投資をして、少しでも電気料金を抑えたいと考える事業者もおります。 この点、本県における住宅政策においては、前述のとおり、電気使用量低減に寄与するやまがた健康住宅やカーボンニュートラル社会に資する蓄電池を備えた自立循環型住宅の需要を政策的にも誘発しています。 一方で、事業所単位では、自家発電事業を推進するビジネスモデルも全国的に顕在化してきており、政府においても、企業に対して、自家消費型太陽光発電設備等への補助事業を実施しています。 そこで、本県においても、電気料金の高騰で多くの事業者が窮している状況を鑑み、単発的な給付型支援だけではなく、政府の支援策を補完しながら、国際情勢等の外部環境に影響を受けない持続可能な企業経営の実現を後押ししていくことが求められると考えます。 以上を踏まえ、再生可能エネルギーを活用して、昨今の電気料金高騰の状況に県として今後どう対応していくのか、県の考え方を環境エネルギー部長にお伺いします。 さて、本県では、令和二年八月に「ゼロカーボンやまがた二〇五〇」を掲げ、アクションプランに基づく施策展開が着々と進められておりますが、地方における地域資源の利活用とそのための投資への機運が高まりつつあります。 こうした潮流において、本県におけるエネルギー政策により、企業誘致や産業群の形成を図るなど、本県エネルギー政策を地域振興の起爆剤にできないものでしょうか。例えば、電気料金高騰が経営を圧迫する中で、社会情勢、国際情勢等に影響を受けずに、低廉または一定の価格による電気の提供をインセンティブとして、企業誘致やモデルエリアの造成等を促していくことはどうでしょうか。 思うに、平成二十七年に県が出資して設立された株式会社「やまがた新電力」は、エネルギーの地産地消や供給基地化、災害対応力の向上、地域経済の活性化と産業の振興といった理念を掲げており、私が提案する政策やエリア構想の鍵になり得る拠点と考えられます。こうしたやまがた新電力が掲げる理念を遂行するため、大株主である県として、しっかりと目を向け、方策を検討していかなければならないと考えます。 この点、北海道では、エネルギー地産地消事業化モデル支援事業として、地域の有するエネルギー資源を活用した再生可能エネルギー電源を開発し、地域で消費する取組への補助が実施されています。 以上を踏まえ、本県におけるエネルギー資源の利活用を最大化していくとともに、開発した電源が新しい企業活動の基盤形成や地域振興等に足し算・掛け算となっていくような政策の立案と実行が求められていくと考えますが、これからカーボンニュートラルを推進していく県として、再生可能エネルギーを活用しながら地域振興をどう進めていくのか、環境エネルギー部長にお伺いします。 続いて、産業労働部長にお伺いします。 今年度、あまたある知事部局の中でも、名称を含め大きく組織改編されたのが産業労働部であります。昨年、十二月定例会にて、自動車のEV化によりガソリン車関連部品の三分の一、一万点を超える部品が不要になることに触れ、本県のものづくりや雇用に与える影響を示唆し、産業構造の転換期における県の施策展開の必要性を指摘した身としては、新たに次世代自動車参入促進プロジェクト事業に着手され、新体制の下で政策の推進が図られていくことを大いに期待する次第であります。 これからの産業界は、消費動向も含め、予想を超えるスピードとサイクルにより展開されていくものと思料いたします。見ているようで見ていなかったもの、価値のなかったものに付加価値をつけていくなど、気づきと出会いをより迅速に成果物として具現化していくことが不可欠であると思います。 この点、八月三十日に岩手県盛岡市で開催された北海道・東北六県議会議員研究交流大会において御講演を賜った株式会社ヘラルボニーの着眼点と取組は、こうした視点を再認識するに十分かつ目からうろこの内容でありました。 一言で言えば、障がい者の特徴ある美的感覚やその表現を、「障がい」ではなく、異なる彩り、「異彩」、つまりは新しい価値を有する商品として落とし込むビジネスモデルを確立したことです。障がいという言葉を耳にすると、福祉イコール支援といったイメージを持たれがちですが、障がいのある作家とライセンス契約を結び、新しい経済的価値、収益構造を創造し、持続可能なアートライセンスビジネスへと成長を続けています。作品の中には、本県の米沢織とコラボしたネクタイや大手企業との協働案件もあり、国内外で注目されています。作家である障がい者の収入も担保されており、御家族の方から「まさか自分の子供が扶養から外れる日が来るとは思わなかった」との逸話も大変印象的でした。 思うに、どれだけ有益なものであっても、その価値に気づき、実際に利用されなければ、経済的には価値のないことと一緒であると言えるかもしれません。通常であれば単に廃棄処分をして環境負荷をかけてしまうものに付加価値を見いだし、利活用してもらうビジネスパートナーとのマッチングにより、廃棄物や未利用資源が新たな商品へと生まれ変わるアップサイクルといった取組も既に始まっています。この事例のような、従来認識されていない価値を掘り起こすために、例えば、自由に情報や資源のマッチングを可能とする場をオンライン上に設けることも有効ではないかと考えます。 いずれにせよ、新しいビジネスチャンスや付加価値の創造を生み出す機会をいかにタイムリーに形成していくかが重要であり、未来志向に立って県内で新しいビジネスを起こしていく施策を展開していくことが必要だと考えます。 以上を踏まえ、スタートアップステーション・ジョージ山形を中心とした創業支援の状況と本県における新しいビジネスチャンス等の創出に資するソーシャルイノベーション創出モデル事業の現状を踏まえた今後の展開について、県の考え方を産業労働部長にお伺いします。 ポストコロナへの対応を加速化し、県内中小企業・小規模事業者のさらなる経営力等の向上と県内経済の活性化を図るためには、デジタルトランスフォーメーションいわゆるDXの推進や、最新のスキルを身につけたシステムエンジニアなどのデジタル技術の知見に富んだ人材の養成・確保とともに、新しい事業への挑戦、あるいは新しい製品・技術の開発といったイノベーション創出に向けた取組が必要であると考えます。 本県では、こうした先を見据えた県内企業の取組を支援することを目的とした、約六百件、約五億一千七百万円の中小企業パワーアップ補助事業を実施しております。このうち、今年度の新たな支援メニューとして新事業転換促進支援事業を設け、新分野展開や事業・業種転換、業態転換など、先を見据えた事業再構築に対する補助として二百五十件分、二億五千万円を予算化しており、一次公募により二百三十四件が採択され、これから二次公募分の採択が行われるところと聞いております。 加えて、企業の新たな成長の柱となる新製品や新技術の開発に対する補助として、イノベーション創出支援事業が実施され、想定を超える二十件が採択されています。 一方、これだけの技術の革新や開発を進める中において、県内企業がしっかりと稼いでいくためには、知的財産を保護し、活用することもますます重要となるものではないでしょうか。 以上を踏まえ、パワーアップ補助事業における新事業転換促進支援事業の採択状況と業種・分野の傾向を踏まえた現状の評価、イノベーション創出支援事業における技術開発・知的財産保護などの支援状況及び今後の取組について、産業労働部長にお伺いいたします。 次の質問に移ります。 九月六日、所属する県政クラブにて、八月三日からの大雨に係る災害復旧等に関する要望活動を野村農林水産大臣宛てに直接行うことがかないました。その際、私からも本県における被災状況を説明させていただくとともに、農業用ため池等の災害復旧につき、原則的な原形復旧に加えた機能強化等の再発防止策、改良工事等に係る地元負担分及び管理体制に係る経費への支援を訴えさせていただきました。 その際、同席された舟山康江参議院議員も、過去の国会質疑の中で災害復旧事業の定義につき、ただしておりますが、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律で言う災害復旧事業については、原形復旧が原則である一方、原形復旧が困難等の場合には従前の効用を復旧するために必要な施設とすることができるとされています。 ですが、被災前の利用上の機能及び安定度を回復する効用回復も認められている点につき、現場レベルまで理解が進んでいない部分もあると感じられますので、県としての対策を講じていくよう強くお願いいたします。 さて、大臣要望を実施した翌日、九月七日に、農林水産常任委員会で置賜地域を中心に被災現場を調査しました。飯豊町高峰地区の白川幹線用水路及び川西町上小松の通称鏡沼の被災状況もこの目で確認しましたが、とかく農業用水利施設においては、一か所の機能停止により非常に多くの受益者に被害が及びます。 この点、本県には千九十三か所に及ぶ農業用ため池があり、そのうち三百七十か所が防災重点農業用ため池に選定され、集中的かつ計画的な防災工事が実施されております。このたびの大雨により、十六か所の農業用ため池が被災し、うち決壊した四か所のうち二か所が防災重点農業用ため池でありました。まさに、これから工事に着手する計画途上のため池であったと理解しておりますが、それぞれの市町村等における費用負担は、財政上非常に大きいものと推察いたします。 現に、村山市においては、県内でも最大の三十五か所の防災重点農業用ため池を抱える一方で、将来への投資として基盤整備を進めており、ため池の耐震性強化など、緊急的な予算措置が厳しいのではないかと危惧いたしますし、他市町村においても同様の事情があるのではないでしょうか。関係者が横並びでしっかりと負担していかなければ、進めたくても進められないという状況です。 また、令和三年十二月定例会における農業用ため池の管理に関する質問でも触れましたが、実際に、水位計の設置や管理体制の強化に向けて、関係団体における理解や具体的なシステムの導入は進んでいるのでしょうか。地元の関係団体からの聴取においては、「ランニングコストの問題がある」「仮に導入してもその後の運用に課題がある」「そもそもため池は管理しづらい奥地にあるが、近隣の関係者が実際見に行けるため、費用対効果を考えると現状のままでよい」などの声が聞かれ、国のガイドラインや補助事業が果たして現場に理解されているのかとも感じます。 加えて、昨今の電気代高騰は、農業用水の取水を揚水機に依存する土地改良区においては死活問題であり、財政運営はより厳しさを増しております。 以上を踏まえ、今後の防災重点農業用ため池等の整備・維持・管理に関する県の考え方を農林水産部長にお伺いします。 県では、今年度より、やまがた田んぼダム推進事業を進めています。流域治水対策として、水田が有する雨水の貯留機能に着眼し、広域的な取組拡大を図るための事業であり、今年度は、最上川本川上流域に当たる置賜地域において、山形県田んぼダム推進情報連絡会が組織され、実証事業の取組が開始されておりますが、実際に取り組む方と受益者が異なる、取組農家のメリットが非常に薄いという最大の壁をどう乗り越えていくのかが重要な鍵であります。 また、関係者の話を伺いますと、「国の多面的機能支払交付金も地域の組織に入るため取組農家に直接的なメリットがない」「候補地においても基盤整備から間もない排水施設・機能を備えた場所でなければ十分な効果が得られないし、畦畔等が崩れる可能性もある」「取り組めば効果は得られるだろうが、地域的な理解や体制を組めるかどうか」という不安のお声が大きいようです。 今後は、最上川中流域による組織の設置や実証事業が予定され、現に、県から市町村を通じて候補地の検討もなされているようでありますが、国の長期計画に従い、本県における令和八年度までの目標取組面積六千三百七十七ヘクタールの実現に向けて、情報共有や意見交換の場を活用しながら、地域的な理解の醸成といった入り口部分と被災後の対応といった出口部分をしっかり行っていくことが不可欠であると考えます。 以上を踏まえ、現在の流域治水対策としてのやまがた田んぼダム推進事業の状況と課題並びに関係者の理解の向上と目標取組面積の確保に向けた県の考え方について農林水産部長にお伺いいたします。 最後の質問となります。 サクランボの品種は、世界的には二千五百十種類にも及ぶと言われています。木村議員から農林水産常任委員会でも紹介がありましたが、日本におけるサクランボの歴史は、プロイセン、現在のドイツのラインホルト・ガルトネル氏が現在の北海道七飯(ななえ)町を開拓し、六本のサクランボを試植した明治元年から始まります。その後、明治八年・一八七五年に本県に初めて植栽され、令和七年・二〇二五年は、本県でサクランボが栽培されて百五十周年となる節目の年であるとともに、国内では本県のみが栽培を継続してきた唯一の自治体であります。 また、初植栽の翌年である一八七六年に、三島通庸初代県令が北海道開拓使長からサクランボの苗木を取り寄せ、山形市香澄町に植栽されましたが、その年は、第二次府県統合により置賜県と鶴岡県が山形県として編入され現在の県域を形成した山形県政元年というべき年であり、サクランボ栽培百五十周年の歩みは、まさに山形県の歴史そのものと言っても過言ではありません。 そして、これまでの本県におけるサクランボの品種開発と育成には、多くの先人のたゆまぬ努力がありました。サクランボ栽培百五十周年を迎えていく今、先人に対する敬意と生産者に対する感謝を表し、サクランボの歩みと県政の歴史をたどりながら、これからの新しい時代に向けたレガシーを築いていく必要があると考えます。 一方で、サクランボをはじめとした果樹生産の現状といえば、先日のJAグループ山形と農林水産常任委員との意見交換会でも示されましたが、生産者の高齢化や減少により、担い手不足や耕作放棄園の発生が危惧されています。また、昨今の気候変動や災害の頻発化・激甚化も相まって、収量の維持が極めて困難となってきており、これらの状況が営農意欲を減退せしめ、さらに生産者や栽培面積の減少をもたらすといった負のスパイラルを予測し得る時代にあります。 こうした試練のときであればこそ、「果樹王国やまがた」の威信にかけて、サクランボをはじめとする貴重な果樹資源を守り、育み、新たな可能性や希望を見いだしていくために、生産者の確保、収量の維持拡大、交流人口・関係人口の創出や情報発信など、幅広い総合的な対策が不可欠となります。 この点、令和三年度二月定例会にて当初予算案として計上された果樹王国情報発信の拠点施設整備事業費について、議会への説明が不十分などを理由に県政史上初とも言える当初予算案の撤回がなされました。 このような結果に至った当該事業費に関する主たる論点を私なりに整理しますと、事業を実施する上でのプロセスと目的に対する事業規模等の妥当性であったと思います。箱物という言葉に注目が集まりましたが、決して箱物を造ること自体が悪いわけでもなく、あくまでプロセスと目的遂行のための妥当性、すなわちその手法が肝要であったのだろうと考える次第です。 こうした中、このたびの九月補正予算案にて、サクランボをはじめとする県産フルーツの情報発信等の強化に向けた考え方が新たに示されましたが、前述のとおり、当初予算案の撤回には、少なくとも提案に至るまでのプロセスが寄与していたと考えられる以上、その後の検討状況や今後のタイムスケジュールも含めたビジョンを丁寧に説明していくことが重要であります。 以上を踏まえて、令和五年やまがた紅王本格デビュー及び令和七年サクランボ栽培百五十周年の機運醸成に向けてどのように取り組まれていくのか、また、これらを契機とした県産フルーツの情報発信等に向けた今後の取組について、これまでの果樹王国施設整備に係る当初予算案の撤回以降、どのような具体的な検討がなされてきたのかも含め、県の考え方を農林水産部長にお伺いします。 以上、壇上からの質問といたします。御清聴ありがとうございました。 ○副議長(加賀正和議員) この場合、答弁を求めます。 答弁の順は私から指名します。 安孫子環境エネルギー部長。 ◎環境エネルギー部長(安孫子義浩君) 私には二問御質問をいただきました。 最初に、企業における再生可能エネルギーを活用した電気料金高騰対策について御答弁申し上げます。 ロシアにおけるウクライナ侵攻や急激な円安の進行による液化天然ガス価格等の高騰、国内における石炭火力発電所等の撤退による供給力不足などにより、卸電力取引市場の価格が高騰しまして、企業への販売電気料金について、燃料調整費、基本料金、それから従量料金の値上げなどが実施されております。企業によっては、前年度と比較して五割超の負担増加が見込まれるところも出てきていると聞いております。 このような中、企業が自ら太陽光発電設備等を所有する方法のほか、企業の設置費等の負担が不要で自家消費型太陽光発電設備等を導入できるビジネスモデルが注目を集めております。これは、企業が事務所や工場等の屋根などを貸し出し、それに発電事業者が太陽光発電設備を設置し、そこで得られる電気を当該企業に長期間、固定した料金で販売するというものであります。これにより、企業は、太陽光発電設備等に投資することなく、電気料金の負担を軽減することが可能となります。 政府においても、このビジネスモデルに着目し補助事業を実施しており、県としましても、このビジネスモデルや補助事業について、太陽光発電設備等を設置する発電事業者や電気を消費する需要家である県内企業の両方に向けて周知・広報し、認知度を向上させるため、来月、東北経済産業局等から講師を迎えまして、企業向けのセミナーを実施する予定としております。 県としましては、このビジネスモデルが、初期費用が不要なことで企業が導入しやすく、電気料金削減の可能性があり、加えてカーボンニュートラルの後押しにもつながることを周知しながら、県内企業における導入課題等についてヒアリングを行い、普及に向けた効果的な支援の在り方について検討を進めてまいりたいと考えております。 続きまして、再生可能エネルギーを活用した地域振興策について答弁申し上げます。 県では、平成二十四年に県エネルギー戦略を策定し、目指すべき本県の姿として、地域の中にエネルギー源を分散配置し、産業活動等に必要なエネルギーを生み出し、産業の振興・地域の活性化と持続可能な社会をつくり上げて次世代につなげていくこととしております。 この産業・地域振興に結びつくエネルギーの地産地消の手段としまして、エネルギー戦略では二つの供給体制を掲げております。一つ目は、地域新電力モデルとして、県が出資する形で平成二十七年に設立した県全体を対象エリアとする株式会社「やまがた新電力」です。二つ目は、より身近な単位で取り組む特定供給モデルで、これは、特定地域において、その特性に応じた再生可能エネルギー等による電力及び熱の自家発自家消費を前提とした仕組みでございます。 一つ目の県全体を対象エリアとするやまがた新電力では、これまで、県内の再エネ発電所から電気を調達して、県の公共施設をはじめとした県内事業所に電気を供給し、再エネの地産地消の拡大に取り組んでまいりました。 今後、本県の中小企業を含むサプライチェーン全体での脱炭素化への移行を見据え、企業が事業で使用する電力を一〇〇%再エネで賄ういわゆるRE一〇〇に対応した電力供給を推進するとともに、自らが再エネ発電事業者等への参入の検討を行うなど、エネルギー地産地消の取組をより一層強化してまいります。 二つ目のより身近な単位で取り組む特定供給モデルでは、住宅団地や公共施設等にバイオマスボイラーから温水や冷暖房を供給する取組や、温泉街全体で温泉熱を利活用する取組等を支援してきました。これに加え、企業のカーボンニュートラルへの関心が高まる中、再エネの活用を目的とした企業進出や産業集積も期待できることから、今年度は、工業団地での特定供給モデル構築に向け、企業の電力や熱の消費量、工場の稼働日数などに関するアンケート及び実地調査を予定しております。この調査結果を基に課題を抽出し、エネルギー地産地消のモデル工業団地の形成に向けて、産業労働部や関係機関と連携しながら検討を進めてまいります。 県としましては、今後とも、県内で生み出された再生可能エネルギーを活用した各種施策を着実に進め、県内産業の振興と地域活性化を図ってまいりたいと考えております。
    ○副議長(加賀正和議員) 我妻産業労働部長。 ◎産業労働部長(我妻悟君) 私には二問御質問をいただきました。 最初に、創業支援の状況と新しいビジネスチャンス等の創出についてお答え申し上げます。 本県産業の持続的発展には、新規創業や新たなビジネスチャンスの創出が不可欠であり、それを生み出す場の整備や、新たな交流を生み出す仕掛けづくりが極めて重要であると考えております。 このような考えの下、多様な人材の交流の場として、また、新規創業のための相談窓口やコワーキングスペースの拠点として、昨年十一月にスタートアップステーション・ジョージ山形を開設し、以来、多くの方々に御利用いただいております。今年八月末までの利用者は延べ四千二百二人、新規創業相談者は延べ百八十八人となり、サービス業や飲食業など十六件の創業につながるなど、着実に成果を上げております。 現在、このジョージ山形を核に、県内の複数のコワーキングスペースをウェブで常時接続し、様々なイベントの開催を通じて交流を進めておりますが、今後は、このネットワークをより充実強化し、各施設の相互利用や各イベントのオンライン参加など、利用者同士の多種多様なつながりや新たな交流を生み出すとともに、県外の大手企業等とも連携してスタートアップ企業の事業や新商品開発を支援するなど、ジョージ山形が持つオープンイノベーションの場としての機能をさらに追求し、利用促進につなげてまいります。 また、今年度から最上地域をモデルエリアに、ジョージ山形を拠点としてソーシャルイノベーション創出モデル事業を展開しており、現在、様々な地域課題を抽出した上で、百六の個人・企業・団体が参画し、新たなビジネス化による課題解決の方策を検討しておるところです。既に、最上地域の子供たちの起業家精神を育むことを目的とした一般社団法人最上イノベーションエクスキュートが設立されるなど、具体的な動きも出てきております。 県としましては、ジョージ山形を核とした様々な取組を通じて、業種等の垣根を越えた多種多様な人々が影響し合うことにより、本県において新しいビジネスが次々と創出され、社会環境の変化に対応した自律的で持続可能な地域の確立が図られるよう、引き続き、関係機関と連携しながらしっかりと取り組んでまいります。 次に、事業転換及び技術開発の現状と今後の取組についてお答えいたします。 県内事業者が持続的に発展し、存続していくためには、既存の事業や製品に固執せず、時代や環境に応じ、将来を見据えた新たな取組にも果敢に挑戦することが大事であり、県としても、このような取組をしっかりと支援していく必要があると考えております。 まず、今年度創設した中小企業パワーアップ補助金の新事業転換促進支援事業については、第一次公募で二百四十七件の応募に対し二百三十四件を採択し、さらに第二次公募では百三十一件の応募があり、近日中に採択予定です。一次と二次合わせて当初想定の二百五十件を大幅に上回る三百七十八件の応募があり、事業者の熱意を改めて認識したところでございます。 第一次公募の採択事業者の業種別割合は、宿泊業・飲食サービス業が二三・五%、卸売業・小売業が二三・五%、製造業が二〇・九%と、業種に偏りなく採択され、また、採択事業者のうち小規模事業者の割合が八二・九%となっており、主なターゲットとしていた小規模事業者への効果的な支援につながっているというふうに考えております。 次に、新技術・新製品開発などを支援するイノベーション創出支援事業については、平成二十年度の事業開始以来、これまで四百六十七件の新たな取組を支援しております。最近の支援事例といたしましては、測定機器メーカーが乳牛の胃のpHをリアルタイムで把握するセンサーを開発し、動物用医療機器分野への参入を果たした事例、それから設備工事企業が配管ロボットによる図面作成システムを開発した事例などがあり、企業の新たな収益の柱を生み出しております。 また、新技術や新製品の開発では、特許などの知的財産が事業者の競争力を高める「矛」として、また、権利を守る「盾」として極めて有用であることから、県発明協会内にワンストップ相談窓口を設置するとともに、県内五か所で出前相談を実施しており、昨年度は千五百二十五件の相談に対応したところでございます。 県としましては、県内産業の高付加価値化に向け、イノベーションの起爆剤となるよう、県内事業者が取り組む積極果敢かつ新たな挑戦に対し、関係機関とともに全力で支援してまいります。 ○副議長(加賀正和議員) 地主農林水産部長。 ◎農林水産部長(地主徹君) 初めに、防災重点農業用ため池等の整備・維持・管理についてお答えいたします。 防災重点農業用ため池の防災対策については、県が令和三年三月に策定した山形県防災重点農業用ため池に係る防災工事等推進計画に基づき、計画的に対策を実施しております。その際、劣化状況や豪雨・地震による影響度を基に優先度を判断しておりますが、今回、下流の住民が甚大な被害を受けたことを踏まえ、決壊時の下流域への被害の大きさも判断基準として考慮することを検討しております。 防災工事の財源については、政府の補助事業を活用することができ、令和七年度までは県と市町村の負担に対して九〇%の起債が可能で、償還時に二分の一が交付税措置される仕組みとなっています。これを踏まえ、県は、関係者の同意を得て、速やかな対策の実施に向けて準備を進めてまいります。 また、今回被災した施設については、計画的な改修の前に、施設の復旧を併せて進める必要がありますが、県は、九月一日に市町村職員などを対象に災害復旧事業の研修会を開催し、再度災害防止のための対策を周知徹底しております。特に被害の大きかった鏡沼については、今後の洪水に備えて排水能力を向上させる対策なども併せて助言したところです。 さらに、施設の維持管理については、ため池の監視体制の構築や豪雨時の避難の判断基準の提示など、ソフト対策についても取組を進め、万が一の際にも被害を最小限に食い止めるような対策を講じるとともに、施設を管理する土地改良区等が電気料金高騰で農業用ポンプなどの運転に費用が掛かり増ししている状況を踏まえ、省エネ機器への更新などの支援を通して負担軽減を図るほか、政府が行う支援の枠組みの活用も検討してまいります。 県としましては、緊急性の高い防災重点農業用ため池の防災対策を推進するとともに、対策事業に係る関係機関の費用負担や、維持管理に係るため池管理者の負担がなるべく軽減されるよう、政府の支援制度を最大限に活用して防災減災対策を進めてまいります。 次に、農地等の多面的機能を活用した流域治水の取組についてお答えいたします。 田んぼダムは、水田の排水口に流出量を抑制するための小さな穴の空いた調整板を取り付けることで、水田に降った雨水を時間をかけてゆっくりと排水し、排水路や河川の水位上昇を抑えるもので、流域治水対策の一環として取組を進めているものです。現在、県内では約二千六百ヘクタールで取り組まれており、県は、令和八年度まで六千三百七十七ヘクタールに拡大することを目標にしております。 この取組は、広い範囲の水田で大雨時に田んぼの水位が一時的に高くなることから、水稲など農作物への影響を踏まえる必要がある一方、田んぼダムの効果は下流の地域で発現して、水田を管理する農業者側のメリットが少ないという性格を持つものであります。 このため、水田の所有者や耕作者、土地改良区の理解を得ることや機運の醸成が、取組を前に進めるためのポイントとなります。 そこで、今年度より県、市町村、実践組織等で構成する山形県田んぼダム推進情報連絡会を組織し、先行地域での推進方策や現場が不安に思っている事項を関係者で共有しているところです。 特に、理解と協力を得るために土地改良区の職員の負担も心配される声が上がったほか、田んぼダムに詳しい新潟大学農学部の宮津助教からは、田んぼダムに適した排水調整板の設置などのハード面と、農家へのインセンティブの付与といったソフト面の両面からの取組が必要であることが示唆されたところです。 また、田んぼダムの効果を具体的な事例で明らかにしていくため、最上川上流域の置賜地域で実証圃場を設置して流量観測を行っており、今後、実際の湛水状況をシミュレーションして、その効果を多くの方に理解してもらえるようにしてまいります。 さらに、県内外の取組事例集を作成の上、県内全域でワークショップ等を実施し、取組の必要性と効果を周知してまいります。 あわせて、各地域の取組を加速させるため、排水調整板の設置などに活用可能な様々な政府の支援制度を周知しながら、関係者の理解の向上と目標取組面積の確保に努めてまいります。 次に、サクランボをはじめとする県産フルーツの情報発信等に向けた今後の取組と考え方についてお答えいたします。 歴史に学び、未来へとつなげていくことは、県政運営においても非常に重要なことだと考えております。 本県のサクランボの歴史は、明治八年、県庁の敷地内に植栽された三本の苗木から始まり、現在では全国トップの生産量、七五%のシェアを占めるまでとなりました。それまでの間、貯蔵性に乏しいサクランボの缶詰への加工や、生食に適した新たな品種の開発、裂果を防ぐ雨よけテントの導入などが行われてきました。今日の果樹王国の地位は、こうした生産・販売・流通の各分野における先人の挑戦や、官民一体となって、時代に合わせて取り組んできた知恵と努力のたまものであり、やまがた紅王はその集大成と言っても過言ではありません。 サクランボをはじめとする県産フルーツの生産・流通の持続的な発展はもちろんのこと、多くの方々に実際に山形県を訪れてフルーツを楽しんでいただくためにも、このような先人による挑戦の物語、チャレンジ・スピリッツ・ストーリーともいうべきものを県内外の方に認知していただき、県を挙げて新しい時代の果樹王国を展望していくことが必要ではないかと考えております。 来年のやまがた紅王本格デビュー、令和七年のサクランボ栽培百五十周年は、こうしたストーリーに焦点を当て、「果樹王国やまがた」を発信する絶好の機会です。県としましては、この期間にイベントやプロモーションを重点的に展開するとともに、約三百五十万人の訪日外国人を見込む令和七年大阪・関西万博も視野に入れ、県産フルーツの魅力を存分に発信したいと考えております。このため、県と農業・観光団体による新たな推進組織を立ち上げ、やまがた紅王のPRの準備を着実に進めるための所要の予算を今定例会に提案させていただきました。 また、こうした取組を一過性のものに終わらせず、継続して情報発信を行い、関係・交流人口の拡大につなげることが重要でありますので、生産・流通関係者や有識者などから幅広い観点で御意見を伺っているところです。これまで、例えば観光果樹園の関係者からは、「本県へのフルーツ狩り旅行を強力にPRするための全県的な組織が必要」との御意見をいただきました。さらに、観光や官民連携に詳しいシンクタンクの研究員からは、「財政負担を抑えながら効果的に情報発信する観点から、誘客や発信の拠点を県が自ら整備するのではなく、民間の資金やノウハウを最大限生かせるような官民連携手法を取り入れてはどうか」との御意見をいただきました。 県としましては、様々な関係者や有識者の御意見、全国の事例も参考にしながら、今後数年間の情報発信の施策をまとめた実行計画を年度内に策定する予定です。それに基づき、県議会の皆様にも御議論いただきながら、しっかりと取り組んでまいります。 ○副議長(加賀正和議員) 小林県土整備部長。 ◎県土整備部長(小林寛君) まず、高規格道路の開通に関する御質問についてお答え申し上げます。 東根北インターチェンジから村山本飯田インターチェンジ間が間もなく開通し、最上地域までが首都圏と高規格道路ネットワークでつながることとなります。 これまでは、東根まで東北中央自動車道がつながったことにより、東日本大震災以降令和元年度まで、沿線地域の新たな企業進出や観光入り込み客数の増加など、高規格道路の整備効果が現れてきております。 開通効果を最大限に生かした地域づくりの推進を図るためには、開通前からの取組が重要となります。このため、県では、追加インターやインターチェンジアクセス道路の整備を行ってきました。また、平成二十七年度には、国土交通省や沿線自治体とともに東北中央自動車道の利活用促進による地域活性化協議会を設立いたしました。 協議会では、整備状況、開通による効果事例や産業、観光振興に向けた沿線自治体などの取組事例等についてプロジェクトマップとして取りまとめ、おのおのが必要な情報を活用することで、様々な取組につながってきたところでございます。 例えば、このたびの開通を見込み、村山市では、村山インターチェンジの開設と連携したアクセス道路の整備や道の駅「むらやま」の移転計画を含む駅西エリアの開発など、開通に向けた取組が進行しています。 さらに、今後は、産業や観光分野だけでなく、教育や医療など、より広い分野への効果の波及を見据えた取組や、誘客ポテンシャルが高い首都圏等に向けた情報発信の強化も必要と考えています。 県といたしましては、これまで取り組んできた関係部局の連携による広報活動に加え、先ほど菊池議員からも言及いただきましたけれども、幅広い層をターゲットとした「やまがたけん☆県土ちゃんねる」といったユーチューブ等のSNSを活用した情報発信にも努めてまいります。また、地域活性化協議会においては、新たな分野における活性化策を探るため、関係する機関との情報共有も図りながら、引き続き、沿線自治体などと連携した取組を進展させてまいりたいと考えております。 加えて、県全体へのさらなる効果発現に向けては、高規格道路ネットワークの早期形成が重要でありますので、政府等への働きかけなどもしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。 続きまして、やまがた健康住宅の普及促進と今後の住宅政策についてお答え申し上げます。 本県で取り組んでおりますやまがた健康住宅は、県内事業者が設計・施工し、国の基準を上回る高気密・高断熱性能を持つ住宅を県が認証するものとして平成三十年度に導入した制度であります。 やまがた健康住宅の普及に向けては、これまでも、住宅の新築に対する助成や、完成内覧会など事業者と連携したPR等に取り組みましたが、今年八月末までの建設戸数は二百七戸と、普及が十分とは言えない状況にあると捉えているところであります。 今後、普及促進を図るためには、県民、住宅事業者双方に対して、省エネ効果だけではない多面的な効果・機能を伝えるための新たな取組が必要であると考えております。 県民向けといたしましては、これまでは省エネやヒートショック防止等の性能的な効果を訴求してまいりましたが、今後は、県産木材の使用や、長寿命、ゼロカーボンといったSDGsに関心のある層などもターゲットとして、環境親和性の視点に立ったアピール手法も取り入れていきたいと考えております。住宅事業者向けには、やまがた健康住宅のよさをエビデンスに基づき顧客にしっかりと伝えていただくための手法やそのための人材育成、また施工技術力の向上のための勉強会などを開催することで、多くの県内住宅事業者の参入を促してまいります。 また、大きく本県の住宅施策を捉えますと、令和四年三月に山形県住生活基本計画を改定いたしました。中でも「省エネ・カーボンニュートラル強化」を基本方針の一つに掲げ、高気密・高断熱住宅の建設加速、再生可能エネルギー設備の導入促進に取り組むこととしております。 今後は、既存住宅の環境性能の向上を図る改修を促進させるほか、住宅寿命トータルで二酸化炭素排出量の収支をマイナスにする脱炭素化住宅の導入を検討をしてまいります。これらの施策を実現していくため、それを支える県内住宅事業者の持続的な発展に向け、担い手を育成する取組も進めてまいります。 県としましては、住宅のライフサイクルといった視点を踏まえて住宅施策を進めることで、県民の暮らしの質の向上につなげたいと考えております。 ○副議長(加賀正和議員) この場合、休憩いたします。 午後一時再開いたします。     午後零時十四分 休憩     午後一時零分 開議 ○議長(坂本貴美雄議員) 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑及び質問を続行いたします。 二十三番渡辺ゆり子議員。 ◆23番(渡辺ゆり子議員) 日本共産党山形県議団渡辺ゆり子です。 七月からの新型コロナウイルス感染急拡大、八月の豪雨災害、続いている物価高騰など、県民生活や地域経済に大きな影響を与えている時期の一般質問となりました。地域経済、人権とジェンダー、教育に関わる課題を取り上げますので、誠実に答弁してくださるよう述べ、質問に入ります。 物価高騰対応と賃金向上について。 まず、賃金向上施策に係る認識と今後の取組について質問します。 現在、物価の高騰が暮らしと営業を脅かしています。八月の消費者物価指数は、前年同月比二・八%上昇で、上昇率は三十年ぶり以上の高さです。民間の調査によれば、十月から値上げが予定されている品目がさらに多くあると報道されています。 また、多くの事業者が、原料や資材、燃料費、運送費などのコスト上昇分を販売価格に転嫁できずに経営を圧迫されています。年金は既に四月から〇・四%の減額、十月からは後期高齢者医療費の二割負担の導入、労働保険料の引上げが実施されます。 一方で労働者の賃金は上がらず、実質賃金はむしろ下がっていること、物価上昇に追いついていないことは周知の事実であり、実感の声としても上がっています。物価高騰が続く中で、賃金向上は、より重要な課題となっていると思います。 山形県の最低賃金は、審議会を経て、十月六日から時給八百二十二円から八百五十四円へと三十二円アップとなります。しかし、月収約十四万円前後にしかなりません。最低生計費試算調査によると、全国どこでも約二十四万円以上かかるとの結果が出ています。見合う最低賃金は時給千五百円以上です。 地域間格差も課題です。最高額Aランク東京都の時給千七十二円、Dランク山形県との差額は二百十八円で、昨年より格差が一円小さくなりました。この調子でいくと、格差解消に二百年以上かかります。最低賃金全国一律千五百円へ、早期に千円に、の要求は当然であり、重要な課題です。消費が伸びない中で、経営者側からも、中小企業支援と一体で最低賃金引上げを求める声が多くなっています。 知事はこれまでも、政府への施策提案の中で、中小企業支援と一体に全国一律の最低賃金制度、地域間格差解消を求めてきましたが、なお改めて国への提言を含めた賃金向上策への取組を強化する情勢ではないでしょうか。 吉村知事の認識と今後の取組への積極的な答弁を求めます。 次に、特に医療、介護、保育、障がい者福祉等の現場で働く労働者、いわゆるケア労働者の賃上げについて取り上げます。 コロナ禍で、社会保障に関わるケア労働者の必要性や重要性が再認識されています。これらのマンパワーがなければ社会経済活動は成り立ちません。安心して医療や介護が受けられる、子供を預けられる社会のセーフティーネットです。しかし、その労働実態は苛酷です。「仕事は大変なのに低賃金で、子供を遊びにも連れていってやれない」と離職した方もいるとのお話を聞きました。一般社会で行動制限が解禁されても、ケア労働の現場ではそうはいかない実態も見えています。 介護や保育のケア労働者の賃金は、二〇一九年度で全産業平均より月七ないし九万円低くなっています。看護師は全産業平均より高いと言われていますが、夜勤手当などの変動給を含むことを考えれば、もっと引き上げるべきものと思うものです。 政府は、経済対策に基づき三%の賃上げを実施するとして、二月から介護職員、保育士等について月九千円、看護師については、段階的にまず一%の賃上げとして、月四千円の引上げを実施しました。現場からは、「現状から見て少な過ぎる」「賃上げの対象職種が限定的で分断を招く」などの声が上がり、実情に見合った賃金引上げを求める声が強くなっています。 また、男女の賃金格差の解消という点から見ても切実な課題です。ケア労働の現場は、圧倒的に非正規を含む女性が多い分野です。ここの賃上げなくして男女の賃金格差解消はあり得ません。保育士として希望を持って働いていた男性が、結婚を機に家庭生活に入るときに低賃金でやっていけないと職替えをする男性の寿退社の話も聞こえてきました。 ケア労働は、診療報酬、介護報酬、公定価格など国の関与が大きいところで、根本的には社会保障分野の国費投入、予算充実を優先して望むものです。ケア労働者を専門職として位置づけた賃上げが必要と思いますが、知事はどのように考えているかお答えください。 第二項目としてインボイス制度導入の影響について取り上げます。 二〇一九年の消費税一〇%への引上げに伴い、政府は、来年十月からインボイス制度・適格請求書等保存方式を実施しようとしています。さらなる消費税増税を実施するための地ならしとも指摘されています。 事業者間の取引において、インボイス、税務署の登録番号がついた領収書、請求書が発行されないと、仕入れ、経費の消費税控除ができなくなります。免税事業者はインボイス発行事業者にはなれません。そのため、インボイス制度は、免税事業者が課税事業者になって新たに消費税を納めるか、免税事業者と取引する課税事業者が肩代わりして納めるかを迫る制度となっています。 インボイス制度は、売上げ一千万円以下の免税事業者の益税解消に有効という主張がありますが、そもそも消費税法では一〇%上乗せを保障しているものではなく、損税を生じている場合もあり、零細事業者には、経済実態的にも消費税による利益はありません。 インボイス制度導入について、国会答弁で財務省が試算を示していますが、全国で約四百八十万者が免税事業者と推計し、そのうち約百六十一万者が課税事業者になるだろうと見ています。少なめに見ているようですから、県内でも数万の個人や事業者に影響が及ぶと思われます。商店、町工場などの自営業者、一人親方の建設事業者、農家も農協特例以外の販売事業が対象になります。雇用契約によらない場合は、労働者でなく事業者として消費税課税対象となり、フリーランスの方も対象となります。 山形市シルバー人材センターでは、会員約千三百人で、一人平均四、五万円の収入となりますが、事業者扱いです。それぞれが免税事業者ですが、インボイス発行はできず、このままですと、その消費税相当額をシルバー人材センターが新たに納税しなければなりません。経過措置はあっても、令和十二年に納税する消費税額は約四千二百万円と試算しており、理事長は「死活問題」と語っていました。センターでは、財政支援や制度適用除外を要望しているとのことでした。 同様のケースは、農産物を農家から集荷して販売する産直センターやJリーガーを抱えるサッカークラブでも見られ、対応を迫られています。 日本共産党県議団は、特例を増やすより、インボイス制度導入中止が一番だと考えています。低所得者に重い消費税はむしろ減税を、税財源は応能負担を原則に、そして中小企業支援について予算を含めて強化すべきとの立場です。 地方議会から国に対しては、制度導入中止や延期も含めたインボイス制度に関する意見書が昨年九十七件でしたが、今年は七月までに四百二十三件に上っているとの報道があります。 小規模事業者の方々から話を聞くと、益税など出ない零細な免税事業者に課税事業者になるよう誘導し、事務的負担も含めて新たな消費税負担が出てくることに怒りの声が寄せられています。また、免税事業者のまま課税事業者と取引すれば、その消費税負担について金銭トラブルになるのではないか、結局、零細事業者が弱い立場になるのではとの不安も出されました。 また、多くの事業者が口にしたのが、この間の消費税一〇%増税直後のコロナ禍、そして原油・資材高の物価高騰です。「必死になって経営継続してきたのに、さらにインボイスか」との声が寄せられています。県の創業支援事業にも影響し、地域経済を落ち込ませる大打撃になるのではないでしょうか。 県は、このような事業者の声を把握しているでしょうか。県内中小企業・小規模事業者が受けるインボイス制度導入の影響をどう考え、どう対応しているのでしょうか。中小企業支援を思い切って強化すべきと思いますが、どうお考えですか。 まだ認識されていない免税事業者も多く存在すると聞きました。このまま導入されれば、混乱が起こることは必至です。県として、インボイス制度導入に対する事業者の懸念や不安をしっかり受け止め、国にもインボイス中止を働きかける立場に立つよう求めて、産業労働部長の答弁を求めます。 次に、統一協会と県の関わりについて取り上げます。 統一協会・世界基督教統一神霊協会、現在名は世界平和統一家庭連合と政治に関わる報道が行われ、県民の関心事となっています。布教・伝道の自由を含む信教の自由は無条件に保障されるべきであり、いかなる公権力の介入も許されないと同時に、政教分離の原則は固く守らなければならないと考えるものです。 しかしながら、全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、統一協会の霊感商法、高額献金の被害は、一九八七年から二〇二一年まで把握しているだけで三万四千五百三十七件、被害相談額は千二百三十七億円に上り、実際の被害額はこの百倍とも指摘されています。統一協会の正体を隠しての勧誘手法そのものが信仰の自由を侵害しているおそれがある違法行為とする最高裁での決定が出ています。人生が破壊され、被害者が加害者となり被害を広げている状況は現在も続いています。 県内でも、地方議員の下に、高額献金、合同結婚式を経てDVに苦しむ女性の相談などがありました。結婚相手が見つかるなどと近づき入信、高額献金させる手口、反社会的活動は、現在も続けられているのです。 このような被害をもたらしている統一協会やその関連団体と政権党、政治家が持ちつ持たれつの関係にあることに厳しい批判の目が向けられています。統一協会と関連団体の講演会、イベントなどを後援したり、寄附を受けたりしていた地方公共団体などでも調査や見直しが始まっています。 本県では、県が関与する県国際交流協会の賛助会員として統一協会関連の団体名が同団体のホームページに記載されていたことが明らかになりました。自治体や公的団体が統一協会や関連団体の行事等に後援・助成・参加したり、寄附を受けたりすることは、その活動にお墨つきを与え、広告塔になり、被害を拡大させるおそれがあります。 そこで、知事に質問します。この一連の統一協会問題についてどのように認識されているのかお伺いします。政治家としての吉村知事は、統一協会とその関係団体との関係はなかったのか、今後についても考えをお伺いします。 また、自治体としての県と統一協会については、これまでの関係はどうだったのでしょうか。私は、今後も関与すべきではないと思いますし、厳格な調査とチェックが必要と考えますが、どう対応するのかをお答えください。 また、県としては、被害者の方の相談、救済、被害防止や啓発に取り組むことが重要な課題と考えます。現在、国では、旧統一協会問題の相談集中強化期間として、関係省庁で合同電話相談窓口を開設しており、多くの相談が寄せられているとの報道があります。 県では、従来から開運商法などを扱う消費生活センターの窓口がありますが、これまで潜在化して、どこに相談してよいか分からず苦しんできた被害者もおられると思います。金銭トラブルや家族関係、心の悩みなど、多岐にわたることも考えられます。 県としても、実態把握と被害者に寄り添った相談対応の強化、今後は特に被害防止の啓発が重要と考えますがどう考えますか、お答えください。 次に、ジェンダー平等の実現についての項目に移ります。 女性の人権をめぐる課題が近年クローズアップされています。女性を含む市民社会が声を上げ行動していることが背景にありますが、コロナ禍で、女性の貧困の深刻さ、自殺の増加、生理の貧困、DVや性暴力の問題などが浮き彫りになりました。つい最近は、統一協会の教義や合同結婚式などを挙げて、女性の人権の視点から批判する指摘も出ています。 国際的な人権意識やジェンダー平等社会実現の機運は高まっていますが、この分野での日本の立ち後れも多く指摘されているところです。国連では、一九七九年、女性差別撤廃条約が採択され、日本も一九八五年に批准しました。法律から慣習まであらゆる女性差別を禁止し、政府に差別撤廃を義務づけた条約で、子育てや家庭における養育への男女と社会の責任の明確化や、平等・開発・平和を一体に位置づけています。各国政府がその実現のための措置や法整備を行ってきましたが、日本では、ジェンダー平等に対する攻撃・バックラッシュがあり、取組が停滞している間に国際社会から水をあけられたというのが実態です。 例を挙げれば、選択的夫婦別氏いわゆる選択的夫婦別姓導入の議論です。法制審議会が民法改正を答申してから四半世紀が過ぎました。姓は、名前と同じく個人の尊厳に関わる重要な要素です。夫婦いずれか一方に姓の変更を強制する現行制度は、個人の尊厳や平等、基本的人権の尊重を明記した憲法の理念を満たしているとは言えません。理不尽な思いを抱えているカップルが存在します。もはや同姓を強制している国は世界で日本だけとなっています。私は、早く選択的夫婦別姓を導入すべきと思うものです。 山形県男女共同参画計画では、目指す社会として、互いを認め合い、誰もが希望する生き方で輝ける社会を掲げています。そして、県内の女性や若者も多様な暮らし方や生き方を求めていることが県の調査に表れています。多様な選択肢を提示、広げる環境づくりは、行政の重要な役割と考えるものです。 吉村知事は、選択的夫婦別姓導入の議論を含め、女性の人権、基本的人権をめぐっての動きをどのように認識されているでしょうか。今年は、困難な問題を抱える女性を支援する法律が成立し、二〇二四年施行とのことです。これも遅れていた法整備の一つです。 知事は、全国知事会の男女共同参画プロジェクトチームリーダーとして国への政策提言や県の施策推進に奮闘されていますが、土台となる女性の人権を含む基本的人権尊重をなお一層重視して、今後の取組や施策推進に当たられるよう答弁を求めるものです。 以下は、教育の課題について取り上げていきます。 まず、学校給食の無償化についてです。 コロナ禍や物価高の中、家計の経済的負担を軽減する立場から、学校給食の無償化の動きが広がっています。小規模自治体から比較的人口の多い都市部に広がっていることが報道されています。千葉県市川市、群馬県太田市、東京都葛飾区をはじめ、保護者の運動もあり、中核市として初めて青森市も十月に市立小・中学校の無償化実施に踏み切ります。国の交付金活用も含めて広がっています。 県内を見ると、二〇一七年度には学校給食完全無償化自治体は鮭川村のみ、学年や第三子以降、米飯代などを内容とする一部助成自治体が十一自治体でしたが、二〇二二年度、今年度は、完全無償化三自治体、一部無償化は二十四自治体に広がっています。 学校給食費については、食材費を保護者負担とし、準保護世帯については自治体が給食費を援助している現状にあります。しかし、保護者からは、そもそも義務教育費は無償にすべきではないかとの声が強まっています。 一九五一年、政府委員は、義務教育の無償の考え方を国会で問われ、憲法に定められている義務教育の無償をできるだけ早く広範囲に実現したいということは政府としての根本的な考え方として、その内容について、現在は授業料だが、教科書と学用品、学校給食費、できれば交通費と答えています。七十年以上経過しましたが、教科書止まりで、学校給食費の無償化はいまだ実現していません。 家庭における教育費負担問題に詳しい福嶋尚子千葉工業大学工学部教育センター准教授は、教育新聞で、「給食は栄養価が高く、材料費のみが家庭負担で、家庭の調理負担も減らすものとして、私費負担の中では無駄が少ない。これを公費で負担することは方向性として望ましい。自治体による給食費無償化の流れが急速に拡大していることは歓迎したい」と評価しながら、無償化の範囲のばらつきや自治体間の差があることを指摘し、自治体の決断や財政力に依存するのではなく、国も負担する形で全国的な給食費の無償化を進めていく必要があると強調しています。 県教委としても、義務教育費無償化、教育の機会均等を進める立場で、市町村とともに強力に学校給食費無償化を国に働きかけることが必要と考えますがいかがですか、教育長の答弁をお願いします。 また、千葉県は、県としては全国で初めて、今年度、一月から第三子以降の小・中学校の給食費を無償化する補正予算案を提案しています。本県でも、国に学校給食費無償化を求めながら、当面無償化に向けた支援をすべきと思いますがいかがですか、お答えください。 学校給食については、農薬の心配のない地場産の食材や有機農産物活用の声も大きくなっています。農林分野で関連する補助制度もありますが、現在、みどりの食料システム戦略の自治体での議論も始まりつつあります。子供たちによりよい給食が提供できるよう、また、食育の観点からも農林水産部との連携を強化するよう述べておきます。 次に、教員不足について。 教員不足が深刻です。文部科学省は、昨年五月一日時点で、小学校九百七十九人、中学校七百二十二人の教師不足の状況と発表しましたが、今年はより深刻になっていると報道されています。 昨年調査時点では、県内の教師不足はゼロとされていますが、今年は欠員が出ているとのことです。その内容は、代替教員の不足です。講師登録者も余裕がなくなり、産休・育休・病休の代替教員を確保するために校長が苦労しています。学校現場からは、「代わりの先生が見つからないので予定していた手術を延期した」とか「間もなく産休に入るが代わりの人が見つかるか不安」などの声が聞かれ、子供たちに支障が出ないように奮闘する姿がうかがえます。 現場教員の今年の実感は、「代替教員は来ないものだ」となっているそうです。校内でやりくりして、教務主任や担任外の教員が当たっているわけですが、本来業務もある中で担っており、働き方改革に逆行するような負担増です。生徒の学習に支障が出ないのか、生徒と向き合う時間が確保できるのか、影響が懸念されます。 県教委としては、教員不足の現状の把握や要因をどう捉え、どう解決しようとしているのでしょうか、お示しください。 教員は、免許が必要な教育の専門職です。採用の在り方、若手退職者の復帰、今後の定年延長も考慮したベテラン教員の確保など、教員の年代アンバランスの調整も含めての対策になると考えられますが、併せて働き方改革を進めなければ、学校が魅力ある職場になりません。 教職員の育休取得状況の現状はどうなっているでしょうか。昨年度の育休取得は、女性一〇〇%、多くは一年以上。男性は一〇%、十四人で、一か月未満が半数です。まだまだ低い水準ですが、県教委の法に基づく特定事業主行動計画によれば、令和七年度までに男性職員の育休取得率三〇%、男性職員の配偶者の産前産後期間の合計五日以上の休暇取得率一〇〇%の目標を掲げています。育休取得が進めば進むほど代替教員が必要になってきます。 そこで、教職員の定数に触れたいと思います。 教員定数は、学級数や加配による算定で決められており、病休の突発事例や育休取得増加などに対応できる仕組みになっていないのではないでしょうか。県の教職員定数については、実情に沿った正規教員で増員を図る見直しが必要と思いますがどう考えますか。都道府県によって多少の違いはあっても、これは全国共通の課題ではないでしょうか。 国の責任として働き続けられる環境づくり、ジェンダー視点に立った定数改善、負担割合を二分の一から三分の一に引き下げた義務教育費国庫負担率を元に戻すよう強力に提起していくべきと考えます。政府は、防衛費の大幅増額を目指していますが、軍事費増加より、もっと教育に振り向けるべきです。現状のままでは、学校に欠員が生じて、現場の負担が一層増す悪循環が起き、児童生徒の困り事や変化に対応できないおそれがあります。正規教員を増やす抜本改革が必要です。 県の正規教員を増やすこと、国の教員定数改善へ向けて、ぜひ前向きな答弁を求めます。 最後に、子どもの権利条約を踏まえた校則見直しについての項目です。 国の生徒指導に関する基本文書、生徒指導提要が十二年ぶりに改訂されます。改訂版が間もなく公表予定です。注目されるのは、初めて子どもの権利条約の重要性が強調されたことです。日本は一九九四年に条約を批准しましたが、取組の消極性を国連子どもの権利委員会からの勧告で指摘されてきましたので、前向きの変化です。 新しい提要では、校則について、制定の際の少数派の意見の尊重、守らせることばかりにこだわらない、理由を説明できない校則は本当に必要か絶えず見直す、校則で悪影響を受けている子供がいないかなどの検証、子供や保護者の意見聴取、見直しの手続の公開などに言及しています。子どもの権利条約の四原則の一つである「意見を表明し参加できること」が反映されたものと思いますし、背景には、ブラック校則をなくそうという市民運動もあったと思います。校則は各学校が決めるものですが、新しい提要は大いに参考になると思います。 今年二月、女性団体が山形市に対して、「下着の色を指導するのを禁止してください」などの要望書を提出しています。市教委は、山形市立の中学校十五校のうち十校が下着の色について特定の色を指定または推奨していること、校則については社会環境の変化を踏まえたものになるよう生徒指導担当者を通じて指導していくと回答しています。服装や髪型など個人の自由に関することを強要されたら、誰しも尊厳が傷つきます。人権の問題です。 新しい生徒指導提要では、学校の教育目的に照らして校則が適切か絶えず見直す必要があると指摘し、加えて、校則は最終的には校長によって判断される事項としながら、生徒の学校生活に大きな影響を及ぼすことがあるから、児童生徒や保護者等の学校関係者から意見を聴取した上で定めていくことが望ましいと説明しています。校則を議論する場の設置や校則の策定と見直しに関する手続を示しておくことも重要としています。 本県は、前倒しで県立高校の校則の見直しに着手して、高校生を含めた関係者から歓迎の声が寄せられていますが、今後は、新しい生徒指導提要の子どもの権利条約の重要性を踏まえた見直しの取組を大いに進めるべきと思いますがいかがでしょうか。 また、市町村教育委員会は、本格的にはこれからの段階のところが多いようです。それぞれの学校の取組が子どもの権利条約を踏まえたものになるよう、県教委による新しい生徒指導提要の普及、情報提供、よい事例の共有などで、校則の見直しが進むような支援を求めるものですがどう考えますか、お答えください。 以上、壇上での質問を終わります。 ○議長(坂本貴美雄議員) この場合、答弁を求めます。 答弁の順は私から指名します。 吉村知事。 ◎知事(吉村美栄子君) 渡辺議員から私に四問御質問を頂戴しましたので順次お答えいたします。 まず、賃金向上施策に係る認識と今後の取組についてでございます。 最低賃金の地域間格差は、都市部への人口流出を招く大きな要因であり、地方創生に逆行する構造上の問題でありますので、県では、平成二十九年度以降、政府の施策等に対する提案において、最低賃金のランク制度を廃止し全国一律の適用を行うとともに、最低賃金の引上げによって影響を受ける中小企業・小規模事業者への支援の充実を図るよう提案してまいりました。さらには、私がリーダーを務める全国知事会男女共同参画プロジェクトチームにおきましても、政府に対し地域間格差の是正について提言を行ってまいりました。 これまで粘り強く政府に働きかけてきたことにより、昨年度から、経済財政運営と改革の基本方針いわゆる骨太の方針におきまして、最低賃金について、地域間格差にも配慮しながら引上げに取り組むとの文言が盛り込まれたところであります。 加えて、事業場内の最低賃金引上げを目的とした政府の業務改善助成金におきましても、今月一日から最低賃金が相対的に低い地域の事業者に対する助成率が引き上げられるなど、徐々にではありますが、政府において最低賃金の地域間格差の是正に向けた動きが進みつつあります。 しかしながら、本県の状況を見ますと、来月六日に改定される山形県の最低賃金は八百五十四円と、この十年間で二百円引き上げられたものの、この額は十年前の東京都の最低賃金にも届いていない状況です。地方からこれだけ訴えてきたにもかかわらず、依然として大きな地域間格差が存在しておりますので、引き続き、様々な機会を捉えて政府に強く働きかけてまいります。 また、世界的な資源価格の高騰や急激な円安の進行など、現下の経済状況では企業活動も厳しい情勢にあり、本県の大部分を占める中小企業・小規模事業者においては、賃金を上げたくても余裕がないという企業もありますので、まずは、企業がしっかりと収益を上げ、賃金向上が図られる環境づくりを進めていくことも大変重要であると考えております。 現在、県では、相対的に男性よりも低い女性の賃金向上のため、女性非正規雇用労働者の正社員化や賃金アップを行った事業者に支援金を支給するなどの事業を行っておりますが、このような賃金アップの直接的な支援策に加え、生産性向上の観点から、デジタル化に資する設備投資等への支援のほか、付加価値を高めるための事業転換や新商品開発・新分野進出など先を見据えた取組を支援するなど、企業の収益力向上について鋭意取り組んでいるところであります。 県としましては、最低賃金制度の見直しについて、引き続き政府に粘り強く働きかけるとともに、県内中小企業・小規模事業者が付加価値を高めて、事業活動を維持・発展できるようしっかりと支援することにより、県民の所得向上と県内経済の好循環を実現し、県民誰もが安心して暮らし続けることができる県づくりを進めてまいります。 二点目は、いわゆるケア労働者の賃上げについての御質問です。 コロナ禍においては、生活基盤を支える職業に従事されているエッセンシャルワーカーの方々の重要性が改めて認識されることとなりました。とりわけ、医療・介護従事者や保育士など、人と人との接触が仕事の中心であり、感染リスクが高い業務の最前線で従事されている皆様には、コロナ禍が長期化し、身体的・精神的な負担と責任が重くのしかかる中、日々、利用者の命と暮らしを守り、社会経済活動の維持に御尽力いただいておりますことに、まずもって心から感謝を申し上げます。 県としましては、こうした医療や介護、保育などの現場の最前線で働く方々、いわゆるケア労働者の方々の職責や負担に見合った処遇改善は極めて重要であると考えております。 政府においては、昨年十一月に閣議決定されたコロナ克服・新時代開拓のための経済対策に基づき、賃上げ効果が継続される取組を行う医療機関や福祉系事業所を対象として、臨時の報酬改定が行われております。具体的には、地域でコロナ医療などの役割を担う医療機関に勤務する看護職員及び介護・障がい福祉職員や保育士等の収入をそれぞれ三%程度引き上げるための加算措置が令和四年十月から講じられることとなります。 なお、これらの職種に対する処遇改善は、令和四年二月分の給与から、国庫補助金を財源にして既に前倒しで実施されており、本県におきましては、八月末時点で、医療機関や福祉系事業所に対し約十六億円を交付決定しております。 加えまして、県単独の取組として、政府の加算措置の対象とならない軽費老人ホームの職員につきましても、加算措置の対象となる介護事業所と同様の処遇改善を行うための補助を令和四年四月分の給与から実施しているところです。 診療報酬及び介護報酬の増額につきましては、被保険者はもとより、政府や自治体の負担増を伴うこととなります。その効果や影響等につきましても、政府において様々な角度から検討されるものと捉えており、今後も引き続き政府の動向を注視してまいりたいと考えております。 県としましては、医療や介護、保育等の現場の最前線で働く方々の処遇改善が円滑に実施されるとともに、必要な財源の確保や公平性を損なわない適切な制度設計について、今後も政府に対し、全国知事会等あらゆる機会を通して引き続き強く要請してまいります。 三点目は、統一協会と県の関わりについての御質問です。 初めに、旧統一教会に関する認識等について申し上げます。 一般論として申し上げますと、議員御指摘のとおり、日本国憲法第二十条におきましては、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」とされており、内心における信仰の自由及び政教分離の原則が規定されているところであります。このように、信教の自由は最大限尊重されるべきとされている一方で、宗教団体も、宗教法人法などの関係法令等の遵守が必要とされているところです。 これらを踏まえ、いわゆる旧統一教会をめぐる議論に関する認識としましては、社会的に指摘されている問題に関し、国会でも様々議論がなされていると承知をしております。県としましては、政府や他県の動きなども踏まえた上で、慎重に対応してまいります。 二つ目に、私と旧統一教会との関わりにつきましては、私自身の記憶では、これまで面識がないこと、そして、今後とも同団体との関わりを持つ考えはないことを申し上げたいと思います。 また、県と旧統一教会との関係についての御質問でありますが、まず、県内の団体や個人等に対する県の後援や協賛、補助事業等につきましては、各事業の要綱などで事業の趣旨に沿いながらそれぞれ判断し、適切に対応してきているものと考えております。 また、宗教法人と県との関わりについて、網羅的な検証などを行うことにつきましては、信教の自由といった憲法上の論点や個人情報・法人情報の取扱いなど様々な法的課題を含んでおり、慎重な検討が必要であると考えております。 なお、県と宗教法人との関わりについて、今般、法律相談をいたしましたところ、法律の専門家からは、「特定の宗教団体について調査することは、県がその団体に対して一定の評価を実施するに等しいことから慎重に判断すべき」「仮に調査を行ったとしても、その結果を公表する場合には、特に個人や法人の情報などに配慮する必要がある」などの御助言もいただいているところであります。 県としましては、こうした専門的見地からの御助言や政府の判断、他県の状況なども踏まえ、慎重に判断する必要があるものと考えているところです。 三つ目に、悪質商法などの不法行為の相談、被害者の救済に係る措置等について申し上げます。 政府においては、八月十八日に「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議を設置し、九月五日から三十日までを「旧統一教会」問題相談集中強化期間として、合同相談窓口を開設して集中的に対応するなど被害者の救済に取り組んでおり、こうした政府の動きについて、県のホームページで周知をしているところであります。 県におきましては、旧統一教会に限らず、悪質商法などによる商品や役務の提供等に関する消費者トラブルの相談が寄せられた場合には、県消費生活センターにおいて消費生活相談員が解決の助言をしたり、事業者との間に入って交渉のお手伝いを行っております。また、相談内容や消費者トラブルにとどまらない場合には、弁護士による無料法律相談や警察の相談窓口など、ほかの相談機関を御紹介するといった対応も行っているところです。 悪質商法などによる消費者被害の未然防止や早期解決を図るには、できるだけ早期に最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口に相談していただくことが重要となります。県としましては、今後とも様々な媒体を活用し、「消費者ホットライン一八八」の一層の周知や、悪質商法についての注意喚起に努めるとともに、市町村、警察、関係機関と連携し、消費者トラブルの未然防止と拡大防止に取り組んでまいります。 四つ目に、ジェンダー平等の実現についての御質問をいただきました。 選択的夫婦別氏制度、一般的には選択的夫婦別姓制度と言われておりますが、これは、夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度であり、改氏により生じる職業や日常生活での不便・不利益、アイデンティティーの喪失などの指摘や、国連の女子差別撤廃委員会からの是正勧告を踏まえ、制度の導入を求める議論があることを承知しております。 法務省によりますと、夫婦の氏に関する制度は国によって様々でありますが、結婚後に夫婦同氏を義務づけているのは日本だけであります。また、政府が令和三年に実施した調査では、約三割の方が選択的夫婦別氏制度の導入を肯定しております。 選択的夫婦別氏制度は、国民全体の問題であり、男女共同参画社会の実現に向けて大変重要な事項でありますので、政府や司法の判断、世論の動向を踏まえながら、制度の導入に向けて、社会に開かれた議論が進むことを心から期待しております。 男女共同参画の推進につきましては、私は、知事就任以来、誰もが性別に関わりなく個人として尊重され、その個性や能力を十分に発揮できるよう積極的に取り組んでまいりました。特に政策決定過程への女性参画を推進するため、審議会委員への女性登用を進めてきており、本県では、多くの審議会で女性委員が半数以上を占めております。 しかしながら、昨年開催したオンライン百人女子会において、県内外の女性に本県で暮らし働くことについて考えをお聞きしましたところ、「多様性を認めてほしい」「家庭責任が女性に偏っている」「性別役割分担意識や慣習に違和感を感じる」といった声があり、こうした固定観念や無意識の思い込みがジェンダー平等や女性の活躍を妨げる要因となっていることを改めて認識したところであります。 このため、県としましては、誰もが働きやすく暮らしやすい山形県の実現に向けて、女性の声やニーズを丁寧に捉え、経済界や市町村、県民の皆様と共有しながら、あらゆる世代に対してジェンダー平等への気づきや理解を促してまいりたいと考えております。 また、私は、全国知事会男女共同参画プロジェクトチームリーダーとして、政府に対しジェンダー平等を訴え、雇用等における男女の均等な機会・待遇の確保や女性活躍による経済活性化、政治分野におけるクオータ制の導入、あらゆる暴力の根絶、女性をめぐる様々な困難の克服などを提言してまいりました。社会において男女双方の視点を公平公正に反映していくためには、政策・方針決定過程への女性の参画をさらに進めていく必要がありますので、今後とも、地方が一体となって、政府に対し実効性ある取組を働きかけてまいります。 日本国、山形県には、女性と男性が半分ずつ存在しております。申し上げましたような取組を通して、お互いを認め合い、女性も男性も生き生きと輝いて活躍できる山形県を実現してまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 我妻産業労働部長。 ◎産業労働部長(我妻悟君) インボイス制度導入の影響についてお答えいたします。 適格請求書等保存方式いわゆるインボイス制度は、平成二十八年度の税制改正で決定され、令和五年十月に開始することとなっております。これは、令和元年十月から消費税の軽減税率が導入され、一〇%と八%の複数税率が混在することとなり、消費税額の把握が複雑となったため、取引における経理ミスや不正を防ぎ、透明性を確保することを目的として、軽減税率導入後四年間の準備期間を設けて導入されることになったものです。 このように、インボイス制度は、消費税に関する透明性を確保することを目的として導入されるものであり、多くの事業者に関係する制度改正でありますので、県といたしましても、県内事業者が制度の趣旨を理解し円滑に導入が図られるよう取り組んでいく必要があると考えております。 商工会・商工会議所などを通して県内の中小企業・小規模事業者の対応状況をお聞きしたところ、昨年は数名程度の参加にとどまっていた説明会や相談会も、今年に入り三十名以上が参加するなど、徐々に関心が高まっておりますが、依然、制度自体を認識していない事業者や、認識はしていても自ら関係があるとは考えていない事業者も多く、特に小規模事業者に対する制度の周知がまだ進んでいない状況であり、一層の周知徹底を図っていく必要があります。 制度の周知に向けましては、現在、国税局・税務署が中心となって事業者に対する説明会や登録申請相談会を開催しているほか、商工会・商工会議所においても説明会等を繰り返し開催し、加えて事業者からの個別相談にも応じるなど、事業者への制度周知に取り組んでおります。 また、事務の複雑化や負担増を懸念する声もあり、制度への対応を推進するには、デジタル化による経理事務の効率化や負担軽減を図る必要があるため、これまでも政府のIT導入補助金や小規模事業者持続化補助金、また、県の中小企業パワーアップ補助金などにより助成をしておりますが、今後も事務等の効率化に向けた支援を行ってまいります。 県といたしましては、県内事業者の円滑な制度への対応に向け、引き続き商工会・商工会議所等の関係機関としっかりと連携しながら、制度導入に向けた県内事業者の取組を支援してまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 高橋教育長。 ◎教育長(高橋広樹君) 私には三点御質問をいただきました。 最初に、学校給食の無償化についてでございます。 学校給食は、児童生徒の健全な発達に資するほか、食に関する正しい知識を培い、望ましい食生活を養う上で重要な役割を果たしております。 学校給食は、戦後、貧困により学校に弁当を持参することができない児童生徒が多く見られたことから、学校の設置者と保護者が負担し合って給食を提供することを規定した学校給食法が昭和二十九年に制定され、現在に至っております。学校給食法では、経費負担について、学校給食の実施に必要な施設・設備や学校給食の運営に必要な経費は義務教育諸学校の設置者が負担し、食材費などは学校給食費として保護者が負担すると規定されております。 そのような中、現在、生活が困窮している家庭に対しましては、生活保護法では、教育扶助として学校給食費の全額が援助され、学校給食法の就学援助制度では、三分の二を上限に援助がなされております。 本県の学校給食費に係る令和四年度の市町村による支援の状況につきましては、二十四の市町村が学校給食費の全部または一部を助成しておりますが、これは、少子化を背景とした子育て支援や移住・定住の促進、物価高騰への助成等を目的として実施されているものと承知しており、千葉県につきましても、物価高騰対応として第三子以降に係る学校給食費の一部を助成する予定と伺っております。 このような中で、県教育委員会では、学校給食に係る原材料費の高騰に伴い、これまでどおりの分量や栄養を安定的に供給することができないことが懸念されることから、六月補正予算において、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、県立学校に対しまして保護者負担となる食材費の上昇分の援助を実施しており、市町村におきましても県と同様の対応がなされていると承知をしております。 学校給食の無償化につきましては、昼食が日常生活においてふだんに食するものである中で、学校給食法により食材費のみ保護者の負担とされており、さらに、生活困窮家庭にはしかるべき援助がなされていることを踏まえますと、義務教育制度の中で給食費を無償化することは難しいものがあると考えております。 続きまして、教員不足についてお答え申し上げます。 近年、教員の大量退職に伴いまして採用も大幅に増えており、令和四年度採用者数は、小学校教諭につきましては、十年前の三倍を超える百九十名を採用しており、中学校教諭につきましても、二倍近い八十五名を採用しております。 これにより若い世代の教員が増加しており、産前産後休暇や育児休暇などの取得者数が増え、代替教員の必要性が高くなってきております。昨年五月一日時点における小・中学校の教員の未配置数はゼロ件でしたが、今年の五月一日時点では、産休代替等の未配置数は八件となっており、代替教員の確保が課題となっております。 代替教員の確保に向けましては、県のホームページで募集したり、各教育事務所、各市町村教育委員会及び県立学校間で講師登録の情報を共有することに加えまして、今年度から新たにコンビニに募集ポスターを掲示するなど、様々な手段を講じて代替教員の登録を呼びかけております。また、今年七月から教員免許更新制度が廃止され、期限切れとなっておりました免許状が一定の手続により有効となりますことから、市町村教育委員会等と連携しながら、対象となる退職教員に直接声がけをするなど、教員免許保有者の掘り起こしを行ってまいりたいと考えております。 さらに、家庭の事情等で常勤としての任用が困難な場合には非常勤として任用するなど、様々なニーズに応える働き方ができるよう、状況に応じて柔軟な対応をしているところであります。 現場に必要な教員定数の配置は、学校運営の安定や教員の働き方改革という意味でも重要ですので、休暇を必要とする教員が安心して取得できるよう、代替教員の確保に一層努めてまいります。 そのような中で、産休代替教員の確保につきまして、どのような教科の担当教員が、いつ産休を取得するのか等予測することが困難なことから、正規教員を事前に確保するということは極めて難しいものと考えております。必要な人員の確保につきましては、政府に対し、学校現場の課題に応じて加配要求を行ってきており、令和五年度政府の施策等に対する提案の中でも、加配定数の一層の拡充について要望してきたところであります。 今後も、全国教育委員会教育長会議等と連携を図りながら、教員定数の改善について、政府に対し、引き続きしっかりと働きかけを行ってまいります。 最後に、子どもの権利条約を踏まえた校則見直しについて答弁を申し上げます。 校則は、児童生徒が健全な学校生活を送り、よりよく成長・発達していくために、生活上の規律として各学校で定められております。そのような中で、必要かつ合理的な指導の範囲を逸脱すると思われる校則、いわゆるブラック校則が問題となったことから、昨年六月、文部科学省は、「校則の見直し等に関する取組事例について」という通知により校則の見直しに取り組むよう周知をいたしました。 県教育委員会では、国に先駆け、昨年四月から高等学校長会等各種会議において校則を見直すよう要請し、県立高校における校則見直しを進めてまいりました。見直しに当たりましては、以前は大切な指導事項だったが現在は風化、矛盾しているものや、時代の進展から判断して合理的でないもの、社会の常識とは異なる内容のもの、生徒の人権を侵害する懸念があるものを見直すことや、生徒が校則等を自分たちのものとして守っていこうとする主体性を養うため生徒総会等で話し合う機会を設けることなど、県教育委員会として視点を示したところです。これに対し、各県立高校では、生徒会が中心となって見直しに取り組むなど、多くの学校で生徒主体の取組がなされたところであります。 一方、生徒指導提要は、生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書であり、小学校段階から高等学校段階までの生徒指導の理論・考え方や実際の指導方法等を時代の変化に即して網羅的にまとめたものとして、平成二十二年に文部科学省で作成されました。現在、その改訂が進められているところですが、改訂案には、子どもの権利条約やこども基本法の趣旨が明記され、児童生徒の基本的人権に十分に配慮し、一人一人を大切にした教育が求められており、具体的には、児童虐待やインターネット上のトラブルへの対応、性や発達障がいへの配慮など、時代の変化に応じた生徒指導上の内容が新たに盛り込まれる予定となっております。 県教育委員会では、生徒指導提要の改訂の趣旨を踏まえ、児童生徒が主体となって絶えず校則の見直しが図られますよう、各県立高校に対して引き続き指導してまいります。 また、各市町村教育委員会に対しましても、各教育事務所主催の会議・研修会等、機会を捉えまして生徒指導提要改訂の趣旨について周知を図り、適切な対応がなされますよう取り組んでまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) この場合、休憩いたします。 午後二時十五分再開いたします。     午後二時四分 休憩     午後二時十五分 開議 ○議長(坂本貴美雄議員) 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑及び質問を続行いたします。 三十九番森田廣議員。 ◆39番(森田廣議員) 県政一般につき質問させていただきます。 八月三日から置賜地域を襲った豪雨は、かつてない甚大な被害をもたらしました。現段階で判明している被害は羽越水害を超え四百七十四億円と、本県では過去最大の被害になっております。被害を受けられた皆様にお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興を心から願うものであります。 ところで、コロナのオミクロン株は感染力が強く、本県ではまだ高止まり状況です。十四日から感染者数の全数把握を簡略化したため、市町村別の新規感染者数の発表は行われなくなりました。オミクロン株はエアロゾルで感染するので、換気と不織布マスク着用で感染リスクが抑えられるとの知見もあります。さらに、オミクロン株対応の新型コロナワクチンの接種も二十日から開始されています。本県でも、若年者も含め効果的な手段を選択し、感染抑止が着実に進むよう望むものであります。 さて、議会制民主主義の根幹をなす参議院議員選挙の遊説中に安倍元総理が凶弾に倒れました。痛恨の極みです。元総理の御功績をたたえ、衷心より御冥福をお祈りいたします。知事は、明日二十七日、武道館で行われる安倍元総理の国葬に公務として参列する予定と聞いておりますが、山形県民を代表して安倍元総理の御霊に対し弔意を表明してきていただきたいと思います。 また、イギリスでは、多くの国民に敬愛されたエリザベス女王が九十六歳でお亡くなりになり、日本からは天皇皇后両陛下が参列され、十九日にロンドンのウェストミンスター寺院で盛大な国葬が執り行われました。心からの御冥福をお祈りいたします。 質問の機会に感謝を申し上げ、質問に移らせていただきます。 初めに、飛島の特定有人国境離島地域への追加指定についてお尋ねします。 国では、日本の領海や排他的経済水域等の保全等に寄与することを目的として、超党派の国会議員十六名の発議により、有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法が平成二十八年四月二十七日に公布され、平成二十九年四月一日から施行されております。この法律は、十年間の時限立法になっており、これから約四年半後の令和九年三月三十一日にその効力を失うものとなっております。 この法律により、有人国境離島地域は、自然的経済的社会的観点から一体をなすと認められる二以上の離島で構成される地域内の現に日本国民が居住する離島で構成される地域、また、この地域のほか、領海基線を有する離島であって現に日本国民が居住するものの地域とされ、現在、二十九地域百四十八島が該当しており、本県の飛島がその一つになっております。 さらに、この有人国境離島地域のうち、継続的な居住が可能となる環境の整備を図ることがその地域社会を維持する上で特に必要と認められるものについては、特定有人国境離島地域として十五地域七十一島が法律で指定されております。「特に必要と認められるもの」については、法令等に指定の基準が明示されているものはなく、人口減少率がピーク時と比較して四〇%以上減少していることや、本土からの距離がおおむね五十キロメートル以上であることが、法律を所管する内閣府での「議員からの伝聞」として説明されているようです。 この特定有人国境離島地域に指定された場合、離島航路の運賃の低廉化や、生活または事業活動に必要な物資の費用負担の軽減等に必要な支援を受けることができるようになります。こうした支援制度のため、国の予算規模として、令和四年度においては年間五十億円程度確保されております。 しかし、本県唯一の離島である飛島は、人口が昭和十五年・西暦一九四〇年の一千七百八十八人をピークに減少し令和四年八月末日現在では百七十四人と、九〇%を超える減少率となっているものの、本土からの距離が三十九キロメートルであり、残念ながら、この特定有人国境離島地域には指定されない状況にあります。 こうした中、飛島に住む飛島の将来を担う若者たちからは、住み続けることができる島とするため、自分たちが頑張ってできることであれば頑張るが、特定有人国境離島地域に飛島を追加することについては、民間でできることではないので、何とか山形県と酒田市から頑張ってもらいたいとの声があります。 酒田市では、飛島が特定有人国境離島地域に指定されるよう、議員立法という性格から、主要な国会議員に要望を行っているほか、国や県の関係部局への要望や、県市長会の要望案件にも上げております。 ついては、県においても、この法律を所管する内閣府海洋政策担当大臣並びに超党派で法案を発議された議員十六名の代表者を含め、国に対し地元首長と連携した要望活動を行い、飛島に住む方々の要望をかなえていく必要があると考えますが、飛島の特定有人国境離島地域への追加指定について、県では今後どのように対応していくおつもりなのか、知事のお考えをお伺いいたします。 次に、県内在来線の利用拡大に向けた取組についてお尋ねします。 去る七月二十五日に取りまとめられた国土交通省の鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会の提言では、利用者が大幅に減少し、危機的な状況にある線区について、鉄道の地域における役割や公共政策的意義を再確認した上で、鉄道事業者と沿線自治体とが相互に協働して必要な対策に取り組むことが提示されています。 また、JR東日本は七月二十八日、利用の少ない線区の経営情報を初めて発表しました。本県では六路線十区間が開示対象となり、いずれも営業費用が運輸収入を上回り赤字であることが判明しました。 近年は、人口減少に加え、道路の整備に伴い車を利用する人が増え、鉄道の利用客は減っています。それにコロナ禍が加わり、通勤での利用や内外の旅行者の減少により、鉄道利用がさらに減ってしまいました。県内の在来線においても大変厳しい状況になっているとの認識を持っております。 しかし、九月五日、山形県奥羽・羽越新幹線整備実現同盟促進大会において、中川大(だい)京都大学名誉教授の「高速鉄道整備と地域の未来-鉄道の時代に進む世界の動向を踏まえて-」というテーマの講演をお聞きしながら、世界標準公共交通政策の目標は、社会全体の利益の最大化であり、カーボンニュートラル、SDGs、都市の活性化が最重要要素であるとの教授の指摘を受け、視点を変えた見方も必要であると思います。 日本では、JRなど民間企業に任せきりの鉄道政策を取っているため、地方鉄道のサービス水準は世界に比べ遅れています。一方で、EUをはじめとする海外の国は、鉄道を公的サービスと考えています。 そこで、鉄道を公的サービスという世界標準の考え方で捉え直し、ダイヤの見直しなど利便性の向上により、現在の鉄道ネットワークを最大限生かして活性化を図るのも一つの方法であると考えます。 内外旅行者も団体旅行から小グループに変化しつつあります。レンタカーでの旅は外国人にとっては難しく、おのずと列車を選択することになります。来るべきインバウンドの回復等に備え、他県に先駆けて県内在来線の利便性を高めておくのもよいと思います。 利用客が減少している県内在来線の利用拡大に向けて、今後どのような方策を取って活性化していくおつもりなのか、みらい企画創造部長にお尋ねします。 次に、陸羽西線の運行再開に向けた取組についてお尋ねします。 地域高規格道路、仮称・高屋トンネルの工事に伴い、同トンネルが陸羽西線のトンネルと近接して交差することから、鉄道輸送とトンネル工事双方の安全確保のため、本年五月から列車の運行が休止され、令和六年度中まで代行バスが運行されることとなります。 現在、代行バスは、新庄方面への上り十便、酒田方面への下り十三便、このうち上り二便、下り三便で快速が運行されております。新庄-酒田間の所要時間は、各駅停車が列車の二倍程度の約二時間、快速は約一時間半となっていることから、利便性の低下により、利用者が今後ますます減少していくのではないかと懸念しております。 また、JR東日本が今年八月一日に発表した「路線別ご利用状況」二〇一七年度から二〇二一年度によりますと、陸羽西線新庄-余目間の平均通過人員は、二〇一七年度・平成二十九年度の四百一人から、二〇二一年度・令和三年度は百九十二人に大きく減少しております。加えて、七月二十八日にJR東日本が公表した利用の少ない線区の経営情報によりますと、コロナ前の二〇一九年度・令和元年度は六億九千三百万円の赤字、二〇二〇年度・令和二年度は七億三百万円の赤字となっております。このようなことから、沿線自治体や利用者からは、「廃線や鉄道運行再開後の運行本数の減少につながるのではないか」という心配の声も多く聞かれています。 県として、令和六年度中の陸羽西線の再開に向けて、今後どのような対応を取っていくおつもりなのか、みらい企画創造部長にお伺いします。 次に、遊佐町沖及び酒田市沖洋上風力発電の導入促進についてお尋ねします。 昨年十月に閣議決定された第六次エネルギー基本計画において、洋上風力発電は、大量導入やコスト低減が可能であるとともに、経済波及効果が非常に大きいことから、再生可能エネルギー主力電源化の切り札として位置づけられております。政府は、この洋上風力発電を、二〇三〇年までに全国で一千万キロワットの導入目標を設定し、そのうち東北地方だけでも四百七万キロワットから五百三十三万キロワットの導入を目指すとしております。東北沿岸部のポテンシャルは極めて高いと言えます。 こうした中、去る八月二十五日に経済産業省資源エネルギー庁と国土交通省港湾局は、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律、いわゆる再エネ海域利用法に基づく「促進区域」の指定の案として、「長崎県西海市江島沖」「新潟県村上市及び胎内市沖」「秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖」の三区域について公表されました。これは、自然的条件が適当であることや、漁業や海運業などの先行利用に支障を及ぼさないこと、系統接続が適切に確保されることなどの要件に適合した一般海域内の区域を「促進区域」として指定するものであり、促進区域に指定された場合には、この区域内において長期的・安定的・効率的な事業実施の観点から最も優れた事業者を選定し、洋上風力発電の導入を促進する仕組みとなっております。少しずつではありますが、着実に洋上風力発電の導入に向けた動きが進んでおります。 本県に目を移してみますと、遊佐町沖と酒田市沖は、着床式洋上風力発電に求められる、風況が良好であること、沿岸海域の海底環境がおおむね遠浅の砂地と推測されることなどの条件が整っており、洋上風力発電の適地として複数の事業者から注目されております。 このような状況の中、遊佐町沖については、促進区域の指定に向け、政府が主宰する第一回目の法定協議会が本年一月に、第二回目が九月二日に開催されたところであります。想定する海域の先行利用者である漁業者への洋上風力に対する理解も少しずつ進み、促進区域指定に向けた環境は着実に整ってきていると考えております。 また、酒田市沖については、促進区域の一つ手前の段階である「有望な区域」を目指し、山形県地域協調型洋上風力発電研究・検討会議の第二回酒田沿岸域検討部会を今月の十三日に開催したと聞いております。酒田市沖についても、漁業関係者などをはじめとした地域との共生を図りながら、地域経済の活性化に結びつけることが重要であることは言うまでもありません。 そこで、カーボンニュートラル社会の実現の鍵を握る洋上風力発電について、現在、再エネ海域利用法に基づく促進区域の検討が進められている遊佐町沖と、その次に期待される酒田市沖が現在抱えている課題と今後の展開について県としてどのように考えているのか、環境エネルギー部長にお伺いします。 酒田港のカーボンニュートラルポート形成の促進についてお尋ねします。 遊佐町沖と酒田市沖が洋上風力発電の促進区域に指定されますと、洋上風車の建設に向け準備が進むことになります。洋上風車は大型化が進み、建設には、風車の組立てに必要な広大な土地と強固な地盤を持つ岸壁があり、維持管理の拠点にもなる、いわゆる基地港湾が必要になってきます。基地港湾は国土交通省から指定されるものですが、当然、遊佐町沖と酒田市沖の基地港湾には酒田港が適当であると思っていますし、知事も今年三月、国土交通省へ直接要望するなど、酒田港の基地港湾指定に向け御尽力いただいていることは承知をしております。 このように、酒田港は、脱炭素化社会実現のための主力となる洋上風力発電の促進に貢献することが期待できます。 また、酒田港近辺には、現在、五事業者十八基の陸上風車が既に稼働しています。太陽光発電も、酒田港メガソーラーパーク合同会社が大規模な発電事業を行っています。さらに、バイオマス発電についても、サミット酒田パワー株式会社が平成三十年度から稼働しています。鳥海南工業団地では、鳥海南バイオマスパワー株式会社が酒田港で輸入する木質ペレットを主燃料とする計画で県内最大級のバイオマス発電所を建設中であり、令和六年度中の運転開始を目指していると聞いています。 このように、酒田港周辺には様々な再生可能エネルギー発電施設が稼働し、新たな立地も見込まれています。酒田港は、山形県のエネルギー供給拠点としての役割を担うとともに、脱炭素化社会の実現に向けて大きく貢献するものと考えております。 しかしながら、酒田港には、二酸化炭素の排出量が多いと言われる船や、トラックなどによる物流活動が行われ、二酸化炭素を排出する発電事業や産業部門の企業も多く立地しています。 こうした中、国土交通省では、港湾において、新しいエネルギーを輸入する環境の整備や、港湾機能の脱炭素化、臨海部産業との連携により、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルポートの形成を進めることとしています。これは、港湾が、輸入や輸出など国際物流を行う際の海と陸との結節点であり、日本の二酸化炭素排出量の約六割を占めるとも言われている発電所、製鉄、化学工業等の多くがこの港湾地域に立地している中で、例えば、水素・燃料アンモニア等の新たなエネルギー源の輸入や、産業施設から排出される二酸化炭素を削減する取組を進める上で港湾が重要な役割を果たすことが期待されているからだそうです。 また、県では、令和二年八月、「ゼロカーボンやまがた二〇五〇」を宣言し、二〇五〇年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指すこととしております。私は、このゼロカーボンやまがた二〇五〇を効果的・効率的に達成するためには、山形県の物流と産業、エネルギーの拠点である酒田港が重要な役割を果たすものであり、そのためには、酒田港のカーボンニュートラルポート形成が不可欠であると考えています。 今回提案された予算案には、カーボンニュートラルポート形成に向けた検討のための基礎調査の予算が計上されておりますが、今後、酒田港のカーボンニュートラルポート形成に向け、県としてどのように取り組んでいくお考えなのか、県土整備部長にお伺いします。 次に、酒田港へのローロー船等の新規航路誘致についてお尋ねします。 ローロー船は、ロールオン・ロールオフシップのことで、貨物を積んだトラックやシャーシ・荷台ごと輸送する船舶のことをいいます。 岸壁側の荷役設備の必要がなく、スピーディーかつ貨物への衝撃も少ないことなどのメリットがあります。また、令和六年度から時間外労働時間に対する規制が運輸業界にも適用され、トラックドライバー不足が懸念されておりますが、ローロー船による輸送は、ドライバーの労働時間の削減にもつながり、運輸業界の人手不足解消への効果も期待されているところです。さらには、環境面において、同じ重量の貨物を運ぶ際のCO2排出量が、海上輸送はトラックに比べて約六分の一に低減されると言われており、環境に優しい貨物輸送の転換・モーダルシフトが急務となっています。 現在、日本海側のローロー船は、博多-敦賀、敦賀-苫小牧の二つの航路しかなく、東日本の日本海側は空白地域となっております。敦賀-苫小牧の途中で酒田港にローロー船が寄港できれば、大消費地である札幌、京阪神、福岡などとつながることになり、山形県が誇る農林水産物の販路拡大や工業製品の物流の効率化など、本県の産業振興に大きく貢献するものと考えます。 酒田港にローロー船の定期航路を誘致するためには、ローロー船航路を有する船会社に対して、年間を通じて安定した貨物需要があることを示す必要があり、そのためには、荷主側の潜在的な需要を把握することが不可欠です。まずはローロー船航路の需要をしっかりと分析し、その上で、今後の定期航路の実現に向けて取り組んでいくべきだと考えます。 山形県において、県内企業におけるローロー船航路の需要を現在どのように分析しているのか、また、酒田港の取扱貨物量の増加に向けて、ローロー船をはじめとする新規航路の誘致・開設に今後どのように取り組んでいかれるのか、産業労働部長にお伺いします。 最後に、外航クルーズ船の誘致についてお尋ねします。 外航クルーズ船による外国人入国者数は、平成二十七年に百万人を突破し、平成二十九年以降三年連続で二百万人を超えるなど、近年急速に拡大し、訪日観光客の増加に貢献するだけでなく、寄港地をはじめとした周辺地域の活性化や経済効果をもたらしてきました。 酒田港への外航クルーズ船の寄港は、平成二十九年八月のコスタ・ネオロマンチカを皮切りに、平成三十年度は三回、令和元年度は五回と順調に寄港回数を増やし、令和二年度以降も複数の船会社による寄港が決定しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、全て中止となり、現在まで寄港が途絶えている状況です。 平成三十年七月に酒田港へ寄港したダイヤモンド・プリンセスの乗員乗客に対するアンケートでは、金沢や横浜を抑えて「感動した日本の港」の項目で一位に選ばれるなど、地元市民のおもてなしや入出港時のイベントが高い評価を得ています。私もダイヤモンド・プリンセスやコスタ・ネオロマンチカの乗員たちから直接話を聞く機会があり、酒田港のおもてなしについて大変お褒めの言葉をいただいたことを記憶しております。 酒田港は、江戸幕府の御用商人であった河村瑞賢が米の輸送のために西回り航路を開設したことをきっかけに繁栄しましたが、令和四年は西回り航路開設三百五十周年のメモリアルイヤーに当たります。その年に外航クルーズ船の寄港がないことについて、率直に残念に感じているところです。 このような中、今年に入り、政府の新型コロナウイルス感染症に対応した水際対策が緩和され、六月十日からは添乗員つきのパッケージツアーに限り観光目的の入国が約二年二か月ぶりに再開されました。さらに、九月七日からは添乗員を伴わないパッケージツアーの受入れが開始され、十月十一日からは個人旅行を解禁する方針が示されるなど、段階的に緩和が進んでいるところであり、訪日客の増加が今後ますます期待されるところであります。 また、国内クルーズ船については、令和二年九月、国土交通省監修の新型コロナウイルス感染予防対策等を定めたガイドラインが公表され、日本の船会社が、日本在住の方を対象に国内の港だけを巡るクルーズ船の運航を再開しております。酒田港においても、コロナ禍後初の国内クルーズ船として、今月十九日から二十一日の行程で酒田と金沢を往復する「ぱしふぃっく びいなす」が運航される予定でした。ガイドラインに沿って準備を万全に進められていたとお聞きしていたところでしたが、台風第十四号の影響により、直前で運航が中止されました。このたびは残念でありましたが、次は外航クルーズ船の再開が期待されるところです。 インバウンドの段階的な受入れ拡大や国内クルーズ船の運航再開が進む中で、我が国における外航クルーズ船の運航が再開した場合、直ちに酒田港にも寄港してもらえるよう取組を進めることが必要と考えますが、外航クルーズ船を取り巻く状況、誘致活動や受入れ態勢整備など、受入れ再開に向けた取組について観光文化スポーツ部長にお伺いいたします。 以上をもって一般質問といたします。ありがとうございました。 ○議長(坂本貴美雄議員) この場合、答弁を求めます。 答弁の順は私から指名します。 吉村知事。 ◎知事(吉村美栄子君) 森田議員から私に飛島の特定有人国境離島地域への追加指定について御質問いただきましたのでお答え申し上げます。 本県唯一の有人離島であります飛島は、周辺の海域に豊かな生態系があり、多種多様な魚介類と海藻などに恵まれた貴重な島であると考えております。また、水産業を基幹産業としてきた飛島では、従前より漁業者による違法操業の監視などを行い、島民自らが警察等への通報を行うなど、領海や排他的経済水域の保全等に関する活動の拠点としても重要な機能を果たしてきております。 そのような中、飛島の人口減少の進行に加え、島民の生活は、燃料や生活物資の輸送をはじめ、本土への通院などで航路を頼らざるを得ず、経済的な負担が大きい状況にあります。 平成二十九年四月に施行された有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法では、継続的な居住が可能となる環境の整備を図ることがその地域社会を維持する上で特に必要と認められる有人国境離島地域を特定有人国境離島地域としております。これには全国十五地域七十一島が指定されており、特定有人国境離島地域社会維持推進交付金により、航路運賃の低廉化や物資の費用負担の軽減等の財政措置が講じられております。 本州以南の日本海側で特定有人国境離島地域に指定されていないのは、飛島と新潟県の粟島のみとなっており、指定には同法の改正が必要となることから、本県では、政府の施策等に対する提案として、同法が施行されて以降三年度にわたって、飛島の特定有人国境離島地域への追加指定について要望しております。令和三年度提案以降は、新型コロナウイルス感染症に関する項目を優先し、要望を一旦留保しているところですが、全国知事会や北海道東北地方知事会の提案・要望におきましては、継続して追加指定を要望してまいりました。 飛島は、ほかの特定有人国境離島地域と同様、人口減少が著しく進行しており、地域社会を維持する上で、継続的な居住が可能となる環境の整備を図っていくべき状況にありますので、法律の趣旨からも飛島の追加指定はしかるべきものと考えております。 また、飛島では、UIターンした若者が立ち上げた「合同会社とびしま」がカフェや旅館の経営、お土産品の開発・販売、島巡りガイド、新たなコミュニティーづくりなどの多彩な事業を展開しているほか、昨年度、酒田市において光ファイバーが整備され、デジタル基盤も整ったところであります。特定有人国境離島地域への追加指定は、こうした飛島における地域振興の後押しにもなると考えております。 あわせまして、北朝鮮の弾道ミサイル発射や海洋進出を強める中国の動きに加え、ロシアのウクライナ侵攻など、近年の変化してきている国際情勢下において、領海等保全の観点からも飛島の重要性はますます増大しているものと認識しております。 そのため、今後の飛島の特定有人国境離島地域への追加指定につきましては、政府の施策等に対する提案として改めて要望を再開してまいりますとともに、酒田市や全国知事会等とも連携して対応し、島民の皆様が生き生きと暮らしていくことができるよう取り組んでまいりたいと考えております。 ○議長(坂本貴美雄議員) 岡本みらい企画創造部長。 ◎みらい企画創造部長(岡本泰輔君) まず、県内在来線の利用拡大に向けた取組についてお答え申し上げます。 鉄道は、通学・通勤や、車を運転することができない高齢者など地域住民の日常生活を支えるとともに、県内外の観光客等の移動手段としても必要不可欠なものです。また、他の交通機関と比較すると、二酸化炭素の排出量が少なく、環境負荷が低いという特性があるため、SDGsやカーボンニュートラルの観点からも重要であり、地方創生やデジタル田園都市国家構想の実現にも不可欠な社会基盤であります。 本県を含む地方部の鉄道では、人口減少や少子化の進展、高速道路をはじめとした道路網の充実、自家用車利用を前提としたライフスタイルの変化等により、利用者が大きく減少しております。 しかしながら、このような変化は今に始まったものではなく、これまで本県においても、地域住民の生活の足を守るために、例えば、フラワー長井線の第三セクターへの移行や利用促進の取組などに見られるように、官民で様々な工夫を凝らしてきたところです。 こうした取組の目的としましては、もちろん路線の経営収支の改善を図るという面もありますが、最も重視されるべきことは、利用者の利便性や沿線の魅力向上により、いかに利用者の拡大を図るかということであります。 特に、山形新幹線の通っている本県において鉄道の利用拡大を進めるに当たり重要な視点は、山形新幹線を含めた鉄道網の連結性であり、ネットワークとして県内各地域がつながることによって、鉄道網全体の価値が最大限に高まるものと考えております。 このため、路線別の状況ももちろん重要ではありますが、本県においては、コロナ前に年間約三百万人の利用があった山形新幹線の大きな旅客流動を、県内の各路線や、さらにはバス等の二次交通を通じて、いかに県内の津々浦々に波及させていくかということが重要であります。 これまで県としましては、米沢トンネル・仮称整備の早期実現に向けて、多種多様な荷物の新幹線輸送を行ったり、霞城セントラルにスタートアップステーション・ジョージ山形を開設するなど、鉄道輸送における付加価値向上や沿線におけるビジネスの活性化を図ってきたところです。 こうした取組を、今後在来線も含めてさらに進めることにより、旅客流動の少ない路線の廃止やバス転換といった縮小均衡の思考に陥ることなく、山形新幹線と県内各路線とのネットワークによる効果を最大限に高め、利用拡大につなげてまいります。 次に、陸羽西線の運行再開に向けた取組についてお答え申し上げます。 陸羽西線は、新庄方面や酒田・鶴岡方面への通学・通勤など、地域住民の生活を支えるとともに、庄内地域と内陸を結ぶネットワークとしても重要な路線です。さらには、陸羽東線と合わせて太平洋側ともつながることから、山形県と宮城県を結ぶ広域的な観光・交流ネットワークを形成する上でも必要不可欠な路線であります。 また、「奥の細道最上川ライン」の愛称がつけられているように、最上川両岸に山が迫る雄大な景観を誇る最上峡、庄内平野の田園地帯、鳥海山の遠望など、四季折々の美しい車窓風景が楽しめる魅力的な路線です。 今般、陸羽西線は、国土交通省が整備を進める新庄酒田道路の一部を構成する高屋トンネルの工事に伴い、当該トンネルの工事箇所が陸羽西線のトンネルと近接して交差することから、鉄道輸送とトンネル工事双方の安全確保のために、本年五月十四日から列車の運行を休止し、令和六年度中まで代行バスが運行されます。 これにより、鉄道より所要時間が長くなり、さらなる利用者の減少、あるいは将来的な廃線につながるのではないかといった心配の声があることは承知しております。 工事終了後の令和六年度中に列車の運行は再開される予定ですが、利用者が大きく減少している現状を踏まえますと、再開を見据えて今から利用拡大策を講じる必要があると考えております。 利用拡大に取り組むに当たっては、新庄駅で山形新幹線や奥羽本線と、余目駅で羽越本線と接続し、陸羽東線と合わせて太平洋側ともつながるといった、鉄道網の連結性の視点を持つことが重要であり、市町村やJR東日本とも連携しながら、観光などの交流人口拡大と住民利用の促進の両面から取組を進めてまいりたいと考えております。 具体的な取組内容は検討中でございますが、列車が運休している状況でもありますので、例えば、線路を活用した取組なども検討したいと考えております。また、バス代行輸送が行われておりますので、利用状況の分析を行うとともに、地域住民の声も聞きながら、令和六年度の運行再開を見据え、陸羽西線の活性化を行ってまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 安孫子環境エネルギー部長。 ◎環境エネルギー部長(安孫子義浩君) 遊佐町沖及び酒田市沖洋上風力発電の導入促進についてお答え申し上げます。 本県では、洋上風力発電について、政府のエネルギー政策の基本的な方針や庄内沖の良好な風況など自然的条件が適当であることも踏まえ、導入促進に向け取組を進めているところであります。 庄内沖での検討に当たりましては、漁業実態調査など、漁業に対する理解と認識を深めていくことから始め、平成三十年度には、地域と協調した洋上風力発電の在り方について研究・検討を進める会議を組織し、漁業関係団体をはじめ、県内産学官金の団体や有識者に参画いただき研究・検討を進めてきたところです。 さらに、検討の進捗を受け、遊佐町沖と酒田市沖での具体的な議論を行うため、それぞれに検討部会を立ち上げ、地域住民の代表者にも入っていただき、協議を進めております。 こうした中、遊佐町沖につきましては、昨年九月、政府から促進区域の指定に向けた「有望な区域」に選定されるとともに、本年一月に法定協議会が設置され、事業実施区域や事業者の公募に当たっての留意事項等について具体的な検討が始まっております。去る九月二日には第二回法定協議会が開催され、漁業関係者からは、「漁業への影響についてしっかり調査してほしい」「漁業振興策は非常に重要だ」などの意見が出されたところであります。 酒田市沖につきましては、風況や海底環境、酒田市からの要望等も踏まえ、本年二月に検討部会を立ち上げ、具体的な検討を進めております。九月十三日には第二回目の会合を開催したところであり、漁業関係者からは「風力発電事業者との共存共栄ができるような丁寧な議論をお願いしたい」、住民代表や経済界の関係者からは「スピードある取組をお願いしたい」「雇用創出など地域振興につながる形にしてほしい」などの意見が出されたところです。 こうした状況を踏まえ、今後、遊佐町沖につきましては、健康や環境への影響などの不安の声に対しても丁寧に説明するとともに、促進区域に指定されるための条件である法定協議会での合意に向け、地元の遊佐町や漁業関係者、学識経験者ともこれまで以上に連携を図りながら、漁業影響調査の在り方や漁業振興策・地域振興策について意見集約を行い、着実に協議を進めてまいります。 酒田市沖につきましても、漁業関係者や住民代表・経済界からの御意見を踏まえ、今後とも、酒田市と連携の下、関係者の理解を得ながら協議を進め、洋上風力発電と漁業との共存、地域との共生を図りながら、地域経済の活性化に結びつけてまいりたいと考えております。 ○議長(坂本貴美雄議員) 我妻産業労働部長。 ◎産業労働部長(我妻悟君) 酒田港へのローロー船等の新規航路誘致についてお答え申し上げます。 本県唯一の重要港湾である酒田港は、本県の物流の大動脈であり、本県経済の振興を図る上で、その取扱貨物量を拡大させていくことは極めて重要であります。そのためには、本県の貨物需要や物流の動向をしっかりと分析し、コンテナ船やローロー船などの多様な選択肢について、その実現可能性を幅広く検討していく必要があると考えております。 そのような中、内航ローロー船につきましては、その潜在的な需要を把握することを目的として、県と関係機関で構成する“プロスパーポートさかた”ポートセールス協議会におきまして、令和元年度に県内の主要企業を対象としたアンケート調査等を実施し、百二十社を超える企業から回答を得たところでございます。 この調査結果によりますと、北海道や関西、九州方面への陸送貨物自体は一定量存在するものの、リードタイムの条件に合致しないなどの理由により、現時点での内航ローロー船航路を利用したいとする企業は二社にとどまっております。また、想定される貨物量も定期就航に必要とされる量に満たないことから、船社に対して内航ローロー船の定期航路の就航を働きかけていくためには、さらなる貨物需要を発掘していく必要があります。 物流業界は、今後、「二〇二四年問題」と呼ばれる自動車運転業務に係る時間外労働の上限規制に対応することが求められますが、これにより、陸送から海運へ一部需要の転換が進む可能性もあります。このような流れも踏まえまして、今後も、“プロスパーポートさかた”ポートセールス協議会が一丸となって、企業訪問をはじめとする様々な機会を活用して県内企業の需要の把握及び発掘に努めるとともに、就航に向けた具体的な条件等について船社と継続的に意見交換を行うことで、内航ローロー船等の新規航路誘致の実現可能性について検討を進めてまいりたいと考えております。 県としましては、荷主企業が抱えるニーズの収集・分析を通じて積極的かつ戦略的なポートセールスを展開しつつ、酒田港を利用する企業に対する効果的な助成を実施することで、国際コンテナ貨物の増加に向けて取り組むとともに、内航ローロー船等の新たな輸送手段の検討を並行して進めるなど、あらゆる方策を駆使して、酒田港のさらなる利用促進に尽力してまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 西澤観光文化スポーツ部長。 ◎観光文化スポーツ部長(西澤恵子君) 私からは外航クルーズ船の誘致についてお答え申し上げます。 外航クルーズ船は、寄港地を中心に一度に多くの観光客が訪れ、地域での消費が生まれるとともに、外国人観光客との交流が進展するなど、地域活性化に大きく寄与するものと考えております。 外航クルーズ船の誘致に当たっては、平成二十八年度に国・県・市町等関係機関で組織する“プロスパーポートさかた”ポートセールス協議会に外航クルーズ船誘致部会を設け、官民挙げて誘致・受入れに取り組んできたところであり、山形らしい温かいおもてなし、魅力ある観光資源などは、寄港地として高い評価を得てきたところです。平成二十九年に本県への初寄港が実現し、毎年順調に伸びておりましたが、令和二年三月以降は、新型コロナウイルス感染症に関する渡航制限により、本県も含め全国的に寄港できない状況が続いております。 運航の再開には、水際対策の緩和と、運航や受入れのための政府によるガイドラインの発出が必要となります。水際対策については、今年に入り段階的に緩和が進められており、十月十一日からは個人旅行やビザなし渡航を解禁するなど、さらなる緩和の方針が示されました。ガイドラインの発出と併せて政府の動向を注視しているところであり、こうした動きを踏まえ、ポートセールス協議会を中心に再開を見据えた取組を展開しております。 まず、誘致活動については、今年六月、主に富裕層を対象に探検・冒険クルーズといった高付加価値な旅を提供している船会社の日本支社長を招請し、鳥海山・飛島ジオパークやサクランボ狩りなど、本県ならではの観光資源を視察・体験いただき、好感触を得たところであります。このほかにも、年内に船会社の運航決定権のある幹部を海外から招請することも予定しております。 次に、ポストコロナにおいては、受入れ態勢づくりも重要であることから、十月に、国土交通省や船会社・旅行会社から講師を招き、酒田市でセミナーを開催し、船内外における感染防止対策や安全安心な受入れ態勢などについて理解を深め、地域の皆さんと一緒になって、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期した受入れ態勢づくりを行ってまいります。 県といたしましては、精神文化や豊かな食など本県ならではの観光資源を生かした誘致活動に継続的に取り組むとともに、運航再開後、直ちに受入れができるよう、地域における機運醸成と態勢整備を図りながら、外航クルーズ船の早期再開を見据えた準備を進めてまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 小林県土整備部長。 ◎県土整備部長(小林寛君) 私からは酒田港のカーボンニュートラルポート形成の促進についてお答え申し上げます。 カーボンニュートラルポートとは、国際物流の結節点であり産業の拠点となる港湾地域において、温室効果ガスの排出を全体でゼロにすることを目指す施策です。具体には、水素・アンモニア等の新たなエネルギー源の輸入に利用する岸壁や貯蔵するタンクなどの整備、陸上から船舶への電力の供給機能整備や荷役機械の動力源の水素燃料化など港湾機能の脱炭素化の取組の促進、また集積する臨海部産業との連携等を想定しております。 県としましても、カーボンニュートラルやまがたの実現に向けて、物流、産業、再生可能エネルギーの拠点である酒田港において、カーボンニュートラルポートの形成に取り組むことが効果的、効率的であると考えております。このため、令和四年二月には、国土交通省酒田港湾事務所及び酒田市と共同で酒田港カーボンニュートラルポート形成方針を策定したところです。 一方、国土交通省においても、港湾管理者によるカーボンニュートラルポート形成のための計画策定を推奨しており、補助制度や計画策定マニュアルなどを準備しております。 このようなことから、酒田港においても、計画的にカーボンニュートラルポート形成を進めることが重要であると捉えまして、港湾管理者の県が主体となって計画を策定することを考えてございます。策定に当たりましては、学識経験者、港湾関連事業者、関係企業、国土交通省、関係市町及び県の関係部局から成る協議会を組織し、議論を進めていく予定です。具体には、港湾施設や港湾地域の立地企業から排出される温室効果ガスについて削減目標を定め、その削減目標を実現するための具体的な施策や、必要な港湾施設を議論してまいります。 今回の予算案では、その議論に必要となる温室効果ガスの現況排出量の推計や削減可能量の試算などの基礎的な調査について、補助制度を活用して行うものでございます。 県といたしましては、酒田港カーボンニュートラルポート形成計画を策定するとともに、その計画に基づき、国土交通省や関係市町、港湾関連事業者、関係企業等と連携して、カーボンニュートラルポートの形成による酒田港港湾地域の脱炭素化と酒田港の機能強化を計画的に進めてまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 以上をもって通告者の発言は全部終わりました。 質疑及び質問を終結いたします。 ○議長(坂本貴美雄議員) 以上をもって本日の日程は終わりました。 明二十七日から十月二日までの六日間は議案調査、委員会審査及び休日のため休会とし、十月三日定刻本会議を開き、予算特別委員長より審査の経過について報告を求めます。 本日はこれをもって散会いたします。     午後三時十七分 散会...