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  1. 山形県議会 2021-06-01
    06月21日-03号


    取得元: 山形県議会公式サイト
    最終取得日: 2023-06-17
    令和 3年  6月 定例会(第402号)  令和三年六月二十一日(月曜日)午前十時零分 開議議事日程第三号  令和三年六月二十一日(月曜日)午前十時開議第一  議第百五号 令和三年度山形県一般会計補正予算(第三号)第二  議第百六号 令和三年度山形県病院事業会計補正予算(第一号)第三  議第百七号 山形県職員等の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例の制定について第四  議第百八号 山形県手数料条例の一部を改正する条例の制定について第五  議第百九号 山形県過疎地域の持続的発展の支援に関する県税課税免除条例の設定について第六  議第百十号 山形県過疎地域自立促進県税課税免除条例を廃止する条例の設定について第七  議第百十一号 山形県県税条例等の一部を改正する条例の設定について第八  議第百十二号 山形県地域経済牽引事業の促進のための不動産取得税の課税免除に関する条例の一部を改正する条例の制定について第九  議第百十三号 山形県地方活力向上地域における県税の課税免除等に関する条例の一部を改正する条例の制定について第十  議第百十四号 山形県個人番号の利用に関する条例の一部を改正する条例の制定について第十一 議第百十五号 山形県防災基本条例の一部を改正する条例の制定について第十二 議第百十六号 山形県保護施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例の制定について第十三 議第百十七号 山形県児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例の制定について第十四 議第百十八号 主要地方道米沢飯豊線道路施設長寿命化対策事業中津川橋橋梁補修工事請負契約の締結について第十五 議第百十九号 鳥海南工業団地工業用地の処分について第十六 議第百二十号 山形県公安委員会委員の任命について第十七 議第百二十一号 山形県人事委員会委員の選任について第十八 議第百二十二号 山形県収用委員会委員及び予備委員の任命について第十九 県政一般に関する質問本日の会議に付した事件 議事日程第三号に同じ。出席議員(四十三名)  一番 阿部ひとみ議員  二番 梅津庸成議員  三番 今野美奈子議員  四番 菊池大二郎議員  五番 原田和広議員  六番 高橋 淳議員  七番 遠藤寛明議員  八番 相田光照議員  九番 遠藤和典議員  十番 梶原宗明議員 十一番 関  徹議員 十二番 山科朝則議員 十三番 菊池文昭議員 十四番 松田敏男議員 十五番 青木彰榮議員 十六番 青柳安展議員 十七番 五十嵐智洋議員 十八番 柴田正人議員 十九番 渋間佳寿美議員 二十番 佐藤 聡議員二十一番 矢吹栄修議員二十二番 小松伸也議員二十三番 渡辺ゆり子議員二十四番 石黒 覚議員二十五番 吉村和武議員二十六番 高橋啓介議員二十七番 島津良平議員二十八番 加賀正和議員二十九番 森谷仙一郎議員 三十番 鈴木 孝議員三十一番 楳津博士議員三十二番 奥山誠治議員三十三番 小野幸作議員三十四番 木村忠三議員三十五番 金澤忠一議員三十六番 伊藤重成議員三十七番 舩山現人議員三十八番 田澤伸一議員三十九番 森田 廣議員 四十番 坂本貴美雄議員四十一番 星川純一議員四十二番 志田英紀議員四十三番 野川政文議員  説明のため出席した者知事          吉村美栄子君企業管理者       高橋広樹君病院事業管理者     大澤賢史君総務部長        大瀧 洋君みらい企画創造部長   小林剛也君防災くらし安心部長   奥山 賢君環境エネルギー部長   杉澤栄一君しあわせ子育て応援部長 松田明子君健康福祉部長      渡邊丈洋君産業労働部長      渡辺将和君観光文化スポーツ部長  斎藤直樹君農林水産部長      高橋雅史君県土整備部長      前内永敏君会計管理者       泉 洋之君財政課長        後藤崇文君教育長         菅間裕晃君公安委員会委員長    柴田曜子君警察本部長       佐藤正顕君代表監査委員      松田義彦君人事委員会委員長    安孫子俊彦君人事委員会事務局長   佐藤紀子君労働委員会事務局長   富樫健治君     午前十時零分 開議 ○議長(坂本貴美雄議員) これより本日の会議を開きます。 △日程第一議第百五号議案から日程第十八議第百二十二号議案まで及び日程第十九県政一般に関する質問 ○議長(坂本貴美雄議員) 直ちに日程に入ります。 日程第一議第百五号令和三年度山形県一般会計補正予算第三号から、日程第十八議第百二十二号山形県収用委員会委員及び予備委員の任命についてまでの十八案件を一括議題に供し、これら案件に対する質疑と、日程第十九県政一般に関する質問を併せ行います。 質疑及び質問の通告がありますので、通告順により発言を許可いたします。 十七番五十嵐智洋議員。 ◆17番(五十嵐智洋議員) おはようございます。自由民主党の五十嵐智洋でございます。県民の幸せを願って、五項目について質問申し上げます。明瞭で誠意ある御答弁をお願い申し上げます。 長井市新庁舎がこの春竣工いたしました。フラワー長井線長井駅舎と一体であることが全国初と話題になり、上下分離方式で長井市に無償譲渡された鉄道用地を活用した、建物の横幅百七十メートルにも及ぶ「長ーい」市役所が話題となって、全国でも放送されました。コロナ禍が収束すれば全国から視察の方が見えることを期待しております。 旧長井市庁舎は昭和三十三年建築。六十余年経過した建物は老朽化が激しく、新庁舎の建設が待ち望まれておりました。平成二十八年四月に発生した熊本地震では、震度七の揺れに二度襲われ、八代市、人吉市、宇土市、益城町等、古い庁舎は甚大な被害を受け、罹災証明書が発行できないなど、災害対応に大きな遅れが出ました。これを教訓に、一九八一年以前に建設され耐震化が未実施の庁舎建て替えに国の市町村役場機能緊急保全事業が適用され、長井市新庁舎もこれに沿って計画に着手し、災害発生時の司令塔として十分な機能を備えた構造になっております。 私は、建設計画が具体化した当時、長井市議会新庁舎検討委員として、未来の庁舎はどうあるべきか具体的に提言を申し上げました。市職員に事前アンケートを実施したところ、昼食を自席で、休憩も自席との答えが九〇%を超えました。食後の歯磨きを洗面所前の通路でせざるを得ない、化粧直しをするスペースがないとの声もありました。古い庁舎には職員のプライバシーやメンタルへルスへの配慮はありませんでした。 私は、このアンケートを見て、これから五十年、六十年と使用する新庁舎には、ここで長く働く若い職員が快適に、能力を発揮できる新しい時代に合った発想が不可欠と感じ、設計段階から若い職員、特に女性の意見が取り入れられることを強く要望し、実現いたしました。一例として、お手洗い、洗面所は高級ホテルにも負けない造りになっていますし、昼食休憩時も午後の仕事に備えリフレッシュできる環境があり、職員の働きやすさを優先にした庁舎の考え方は、駅舎と一体と同じで、全国でも初かと思います。 私が職員に優しい、使い勝手のよい庁舎にこだわったのは、これから女性の視点に立った自治体運営をしていかないと地域からどんどん若い女性が減るとの危機感から、市役所がその先頭になるべきと考えたからです。おかげさまで、新庁舎効果もあって、長井市職員の採用は女性が男性を上回る状況になっているとお聞きしています。市民本位、職員目線の新庁舎が実現したことは、市の将来にとって大変有意義なことであり、私の主張は正しかったと自負しております。 一昨年、県議会議員に当選し、常任委員会で驚いたのは、部課長以下、出席者の多さでした。壁の間際まで立錐の余地なく職員が椅子に座り、奥のほうの顔はかすんで見えないほど。大人数は毎回必要なのかと聞くと、後ろの席は議会からの要請ではなく、いわゆる陪席、勉強のために自主参加しているとのこと。ひー、ふー、みー、よー、何人いるか数えてみると五十名を超えているでしょうか。六つの常任委員会だと三百人以上の職員が対応していることになるんだな。この方たちの一時間当たりのコストは幾らか、一人平均五千円以上。掛ける三百人、二時間だと軽く三百万円、午前中の委員会で三百万円以上の職員人件費、すなわち税金がかかっていると計算し、実際に答弁に立つ方は十人にも満たず、改善すれば半分程度の出席で済むのでは、部署に戻って仕事をしたほうが税金の有効活用ではないか、デジタル時代に随分アナログ、昭和の慣習だなと妙に感心した次第であります。 県庁は不夜城、ブラック企業とやゆする声も聞かれ、長時間労働が常態化している状況を憂い、時間外勤務手当を調べると、平成二十一年度から知事部局の決算額が前年度までをはるかに上回り、年平均十七億円程度にも上っています。 吉村知事就任以来、県職員出身者がこれまで三名副知事を務めてこられました。現在の県庁舎は五十年ほど前に建てられ、副知事経験者はその前後に採用され、県職員としてひたすら頑張ってこられたと思います。昭和は、今考えれば古きよき時代でしたが、休みは少なく、遅くまで働くのが美徳のように教えられ、上司の命令は絶対、こんな時代でした。私は、知事部局の働き方、議会対応を見ると、まさにこの昭和の時代、組織のために滅私奉公した、させられた猛烈サラリーマンと重なって見えます。特に議会事務連絡員の方はさぞかし大変だろうなと、定例会のたびに感じております。 私は、県庁舎の建物を長井市のように新しくしなくても、時代に合わせた職員の働き方改革は可能であり、その先頭に立つのが、長く県職員を経験した事務方トップ、副知事の一番の仕事と考えております。しかし、残念ながら副知事は自分たちが歩んできた昭和の働き方を後輩たちに引き継がせ、有形無形に踏襲させてきたのが今の知事部局の姿ではないでしょうか。 山形県の若年女性賃金は全国最下位のお寒い状況にあり、これが県外流出全国一の主因です。私は、昨年十二月の予算特別委員会で、若松前副知事に臨時職員の育児休業問題について尋ねました。平成二十三年、もう十年も前ですが、地方公務員育児休業法が施行されたにもかかわらず、山形県は平成二十九年度まで一人も取得者がいなかったことに対して、平成二十八年三月まで非常勤職員は十か月の雇用期間であったため、在籍期間一年の要件を満たさず、育児休業制度は適用されなかったと答弁されました。 国は、未実施の都道府県に平成二十三年以降も再三通知を出し、少子化解消と権利擁護のため非常勤職員の育児休業制度を適用するよう求め、多くの自治体は改善されました。しかし、山形県は後進県としてスルーを続けてきました。県独自の十か月雇用では、妊娠すれば翌年の雇用は打ち切られ、無職無収入で出産しなくてはなりません。制度があれば、出産後一年休んでも、前半六か月は給与の三分の二、後半六か月は二分の一支払われ、育休明けの仕事復帰が保証されていますから、あるとないでは雲泥の差になります。なお、休業中の給与は国から支払われ、県予算からの支出ではありません。 育児休業が認められない職場では、当然結婚をためらう、諦める。妊娠も同様で、非婚、晩婚、少子化にはっきりつながります。十か月雇用は、子供の数も若い女性の数も多く、初婚年齢も低く婚姻率も高いなど、現在とは全く違った何十年も前、戦後昭和の時代に雇用の調整弁として広く薄く仕事の機会を提供した古い古い制度です。労働者として福利厚生等の権利に制限があり、一年働いた給与の十二分の十にしかならない十か月雇用を長く改めなかったことは理解に苦しみます。 非正規雇用者は、フルタイムで懸命に働いても年収が二百万円にはるかに届かないケースが多くあります。十か月雇用ではもっと低く、夢や希望を語れたでしょうか。仙台市で正職員などのコマーシャルに触れれば、魅力的で蜜の声に聞こえ、山形県を離れたのではないでしょうか。十か月雇用は、結果として若年女性県外流出、低賃金を象徴するような制度だったわけです。 子育てするなら山形県、女性活躍、一人も取り残さない県政を目指すのであれば、吉村知事就任後、即刻一年雇用にし、育児休業が当たり前に取得できる子育て環境、無職にならず自立できる環境を、一丁目一番地、足元の県庁からつくるべきだったのではないでしょうか。 知事が気づかなければ、補佐役の副知事が社会の動きを未然に察知すべきでしたが、非常勤はあくまで非常勤と、何の問題意識も持たず、他県から大きく後れを取ったのだと思います。若松前副知事は人事課長も務められ、総務省からの通知などは機敏に対応し、県庁を支えてきた臨時職員の待遇改善を進めるべきお一人だったと思いますが、答弁には昭和のお役所仕事を感じました。 さて、六月十四日、二十時四十五分のNHK番組で、若松前副知事が警察から任意聴取のニュースが流れ、翌十五日朝刊には、「知事選巡り首長に働き掛けか」「県警 地位利用抵触疑い」との記事が掲載されました。夕方のニュースでは各社ともに放送しました。 任意であれ前副知事が数回警察で聴取を受けたとする内容は、県民にとって衝撃的なことであり、若松氏が議会の場で説明する立場にない以上、同氏を最側近として特命補佐に任命した吉村知事が責任を持って本人から聞き取り、県民、議会に真実を説明する義務があると考えますが、まず御所感を伺います。 若松氏が任意聴取を受けた理由は、昨年秋から冬にかけて県内複数の首長に対して吉村知事支持を要請あるいは中立でいることを働きかけ、場合によっては自治体への財政支援が困難などと発言した疑いがある。これが事実であれば、公職選挙法第百三十六条で禁止されている公務員等の地位利用に抵触します。この違反行為の処罰は、同法第二百三十九条で禁錮あるいは罰金と記されており、決して軽いものではありません。 各社の報道を見ると、若松氏の聴取は一月から複数回行われており、任意であれ、事情聴取は時間を要することですから、知事に何らかの報告や相談があってしかるべきと考えます。知事は、若松氏が聴取を受けていることを三月にある議員から漏れ聞いたとおっしゃっていますが、いつお知りになったのか。二月定例会前、つまり再任案上程前か、三月か、ここは大事なところですので、ぜひお聞かせ願います。 昨年十一月、若松氏は、県内各地の首長に自ら出向き、知事選に絡む話をしています。遠方の自治体にも足を運んでいますから、秘書課に記録が残されているはずです。訪問した市、町も、当然副知事来所を記録しています。コロナ対策で多忙な副知事が、平日に数日、何時間も不在であれば、用件を知事に報告するのが常識ですが、何も聞いていなかったのか、極めて疑問に思います。 自由民主党会派では、二月定例会前から若松氏が多くの首長に対して大変不適切な言動や行動があったことを、うわさではなく、確かな情報として承知していました。また、総合的に事務方トップとしての力量、部下からの信頼には疑問符がつくと私は感じていました。再任案否決後、森田幹事長のコメントは、人事案件ですので、「議会軽視」「市、町との連携不足」程度にとどめました。言うなれば惻隠の情、つまり相手を思いやる心を若松氏に向けたわけです。若松氏が胸に手を当てれば分かることですが、この大人の対応は知事には伝わらず、「軽視ですか、民意を軽視してほしくない」と、選挙で四十万票獲得したことに副知事人事も含まれるかのような不満をあらわにしました。 もし可決して副知事席におられれば、現職の副知事が知事選に絡み警察の聴取を受けたことになり、県民、県職員に与えるショックはもっと計り知れないほど大きなものだったはずであります。知事は、御自分の言動が適切だったのか振り返るべきではないでしょうか。実るほどこうべを垂れるリーダーであってほしいと思います。 一連の報道で若松氏は、そのような行為はしていないと述べ、知事は十五日、「一切言っていないと聞いている」と話しておられます。若松氏は否定していますが、複数の首長は知事選の働きかけがあったと聴取に答えていると聞いています。知事は若松氏の話をずっと信じているとしていますが、それでは複数の首長は間違ったことを言っていることになりますが、知事はどうお考えでしょうか、お聞かせください。 若松氏が複数回聴取を受けたことは事実で、若松氏も知事もその点は否定されていないように思います。また、一連の報道で、聴取が行われたこと自体を疑う県民はいらっしゃらない、ごく一部と考えるのが妥当と私は思います。つまり、焦点は、若松氏が知事選に絡み、複数の首長に対し地位利用が疑われる電話や言動や働きかけを行ったかにあります。公人中の公人である当時の副知事が、それも知事選に関係したことで疑惑を持たれていることは、相当に重いことです。 火のないところに煙は立たぬ。知事選前に若松氏の市、町への訪問日時、首長との面談がはっきり分かっている以上、目的、趣旨を明らかにし、資料などあればそれも示して、そのような行為はしていないことを証明するべきではないでしょうか。 御自身の選挙に絡み、最側近である若松氏が疑われていることは、吉村知事も当事者であることを認識しなくてはなりません。近い時期に若松氏を伴い記者会見を開催し、県民に向け報道についての見解を述べるべきとお二人に進言いたします。 若松氏のグレーな情報がありながら、可決のめどがない再任案を提出し、否決後も「余人に代え難い」とする知事の姿勢は理解できません。副知事人事の混乱について、自民党の意趣返し、選挙のしこりとも報道され、県民もそのように捉えている方が多数おられるようです。 私たちは、知事との対立などではなく、県民のため、県勢発展を考え、熟慮の上、総合的な判断から「若松氏ノー」と意思表示いたしました。この正当性をしっかりと裏づけたのが、若松前副知事任意聴取、地位利用の疑いとするテレビ、新聞報道であります。どうぞ県民の皆様におかれましては御理解賜りますよう、切にお願い申し上げます。 知事は副知事人事について考え中とのことですが、疑惑のある若松氏にこだわったため、現在に至っても人選の当てがなく、ただただ時が過ぎ、副知事不在の状態が続いているのではないですか。副知事不在が三か月以上にも及んでいる混乱の責任の全ては、吉村知事、あなたにあります。良識ある声に真摯に耳を傾け、イエスマンではなく、知事に正しい意見が言えること、県民目線で広い視野があり、県職員からも尊敬される適正な人物を三顧の礼をもって迎える努力が必要と考えます。そのような方であれば、もろ手を挙げて賛成しますが、副知事人事についての考えはどうか、吉村知事の御見解を伺います。 ハラスメントの防止について伺います。 度重なる自然災害、昨年から続く経験したことのないコロナ感染症の対応等で、県はもとより各市町村も仕事の量が増え、職員にかかる重圧、疲労は厳しいものがあります。 私は、職員の時間外勤務が多いことを指摘し、健康を第一に考える点から、上司のために行っているような時間外を改めるべきだと、一昨年十二月の予算特別委員会で質問しました。三浦総務部長は私の意見を否定せず、上司へのレクチャーは終了時間を決める、時間外に行わないなどルールを設定した。職員の意識改革に努め、時間外勤務縮減に全庁一丸で取り組むと答弁されました。 不断の努力を期待しますが、長時間労働、過重負担等で心身に不調があり、休職中や通院している職員は直近でどれぐらいと把握しているか、また、サポート、復職に向けてどのような方法で見守っているかお聞かせください。 昨年六月、改正労働施策総合推進法いわゆるパワハラ防止法が施行され、大企業は防止措置が義務づけられました。県庁もさらなる努力を傾けなくてはなりません。 知事部局職員から人事委員会に寄せられたハラスメント関係の苦情相談では、令和二年度、パワハラ一件、その他いじめ・嫌がらせ二件、元年度パワハラ三件となっています。人事委員会では、相談があった場合、内容を担当課に伝達、状況確認の上で助言、担当課窓口の紹介などの対応を行っています。 各任命権者は、ハラスメント関係の法律に基づく相談窓口を整備とありますから、人事委員会に寄せられた以外にも苦情相談があるものと思いますが、特にパワハラについてどのような事例があり、事後の対処はどうされたかなど、具体例を挙げお聞かせ願います。 パワハラ防止法による定義は、一優越的な関係に基づいて行われる、二業務の適正な範囲を超えている、三身体的もしくは精神的な苦痛を与える、この一から三、三つ全てを満たすものをパワハラの概念とするとしていますが、私は、この概念にはかなり違和感、時代遅れを感じます。コロナ感染防止の三密回避は、当初、密閉・密集・密接でしたが、今は一つの密でも感染は起こり得ると注意を喚起しています。パワハラの概念も同じ、現代に合わせなくてはなりません。ちなみに、セクシュアルハラスメントの定義は、受けた側がセクハラと感じればセクハラ、これが大前提です。 私は、昭和の時代に通用した長時間労働、滅私奉公的な風土があるとすれば、若い世代はパワハラと感じると思います。上司が土日も出勤する、書類に目を通してもらうために部下は追随せざるを得ない、行かなければ出世の妨げになる、結果、休みの予定が立てられない、家族と過ごす時間が取れない。これは無言の圧力であり、パワハラと無縁ではありません。職場には上下関係があり、正規、非正規の立場の違い、性別、採用年次によりハラスメントに対する受け止め方、耐え方、流し方など様々な要素があり、苦情相談に表れない事例が多くあると考えなくてはなりません。 過去三年間、妊娠等に関するマタニティーハラスメントは人事委員会に寄せられていません。しかし、前段でも述べたように、臨時職員。会計年度任用職員の育児休業について調査していますが、一年雇用になった後も、常勤職員と比較し、かけ離れた数字で、育児休業を申し出にくい、所属部署の認識が足りないなど、実質マタハラ状態だったのではと疑われますが、見解はいかがですか。 育児休業については、一昨年から人事課に取得推進の重要性を重ねて申し上げ、令和二年度会計年度任用職員は女性四名が取得しました。同じく二年度、常勤職員は男性の育児休業取得者二十八名と、何と平成三十年度の三倍を超えました。認識もいい方向に変わったなと評価したいと思います。男性の育児休業取得者からは、「妻の大変さ、苦労が分かった」「育休を決断したことで妻から見直され、家庭が円満になった」「物の見方が変わって仕事にも生かされる」「二人目三人目はもっと長く取りたい」、こんな声が聞かれました。ベテラン職員からは、一昔前に男が育休など考えもできなかったが、必要性は五十嵐議員の言うとおりであり進めていきたいと、前向きな姿勢を感じました。 当たり前のことを当たり前に行えば、よい職場になります。ハラスメントのない環境をつくるには、企業は、トップ自らが研修を受け、最先端の知識を学び、防止の先頭に立つとする考え方が主流です。県庁は、知事を筆頭に、ここにいらっしゃる幹部の皆様です。人事委員会に苦情相談の申立てができる、任命権者の相談窓口がある、その程度でハラスメント対応ができているなどと思うべきではありません。 実際、直近三年合計で人事委員会に寄せられた苦情相談は僅か七件。職員約四千人、会計年度任用職員約千人、五千人も働く知事部局でこれはおかしい。仮に部下が上司から受けたハラスメントを同じ部、課の相談窓口に持ち込むことは相当に勇気が要ることであり、同僚、友人、家族にも言えず一人で抱え込んでいる例があると考えなければなりません。実態を直視し、ハラスメントをなくすには、全職員、会計年度任用職員を対象にアンケートを実施することです。 知事部局のハラスメントに対する認識と今後の対応について、総務部長の見解を伺います。 山形鉄道株式会社に対する経営改善支援について。 フラワー長井線長井駅が新庁舎内に新築されたことは冒頭申し上げました。昭和五十年代後半から六十年代にかけ、国鉄長井線は赤字路線となり、バス輸送が適当な路線とされましたが、通学、生活路線として不可欠であり、昭和六十三年、山形県、長井市、南陽市、川西町、白鷹町等が出資する第三セクターとして山形鉄道株式会社を設立、フラワー長井線として赤湯-荒砥間の鉄道事業を開業しました。以来三十余年経過し、年間延べ利用者は、平成二年度の百四十四万二千人から減少し続け、令和元年度は約五十三万人と、ピーク時の四割弱となり、令和二年度から現在もコロナ禍で厳しい状況にあります。 平成二十八年度から令和二年度まで五年の経営改善計画では、県と二市二町が年間八千四百万円を負担し、山形鉄道を支援しました。令和三年度から七年度までの新たな経営改善計画では、年間一億八百万円の枠組みとなりました。コロナの収束が見通せず、主要な乗客である高校生の減少が続く中での経営環境は厳しいが、長井市新庁舎効果を生かしたイベントの開催や、山鉄ファンを増やすなどの経営努力と沿線市町住民のマイレール意識向上により黒字化を期待するものです。 しかし、車両の老朽化が進み、購入するにしても中古でも車両一台一億円とも見積もられ、また、鉄道施設も更新が喫緊の課題であり、鉄道事業最大の使命である安全な運行には大きな投資が必要となっています。 山形鉄道は、県、二市二町の支援で、赤湯-荒砥間延長三十・五キロのフラワー長井線を三十余年運行し続けてきました。鉄道は道路と同じ公共交通網であります。県道であれば維持管理保全、長寿命化、除雪等に毎年予算をつける必要があり、仮に三十・五キロの県道を維持するには相当の費用がかかります。 比べてフラワー長井線は、車と比較し環境にも優しく、低コストで貴重な、特に高校生のためになくてはならない交通手段として地域に貢献してきました。沿線二市二町、中でも長井市、白鷹町は、フラワー長井線存続のため懸命な努力を重ねてまいりました。都度、県には支援をお願いしてきましたが、本来は、筆頭株主、三分の一の株を所有する山形鉄道経営の主体として山形県がリーダーシップを執り、持続可能な将来像を描くべきと考えます。 新庁舎の竣工により山形鉄道フラワー長井線は注目され、コロナ禍でも、乗り鉄、撮り鉄と称される鉄道ファンの姿が見られます。走る車中で行われたプロレスはチケットはすぐに完売、平常時は南陽市のワイン列車や団体向けの車両貸切りを行うなど、観光資源としても魅力は十分であります。 県が主体となった山形鉄道に対する経営改善支援についての考えを、みらい企画創造部長にお尋ねいたします。 置賜地域の新産業団地の整備について伺います。 米沢市長が会長を務める置賜総合開発協議会では、開発重要事業要望の中に、置賜地域の均衡の取れた産業集積と雇用を確保するため、新潟山形南部連絡道路と国道百十三号が交差する地域への新たな産業団地の整備に向けた支援を求めています。 コロナウイルス感染症による大混乱は、日本のものづくりがこのままでいいのか、大きく転換すべきではないかと問いかけています。マスクのほとんどがメード・イン・チャイナ、アルコールのボトルも同様。感染症予防、国民の命を守るために必要不可欠なものが国内で調達できない矛盾が一気に露呈しました。また、中国の新疆ウイグル自治区に対する人権問題に端を発し、強制労働の疑いが強い同地域の綿花を使用したユニクロ製品の輸入をアメリカ、ヨーロッパ諸国が差し止めるなど、今後、安いだけの原材料、人件費などに依存する国はもちろん、商社、メーカーに対する厳しい目が向けられることは必至で、潮流として生産拠点の国内回帰が進み、施設整備が活発になると予想されます。 候補に挙げた長井市今泉地区は、新潟山形南部連絡道路が全線開通した場合、新潟市、仙台市の中間に位置し、両市までの距離は百キロ程度、一時間強で到着できます。また、東北中央自動車道福島大笹生インターまで約六十キロ、日本海と太平洋側を結ぶ拠点として、首都圏とも時間・距離が縮まり、位置的にも最適地と考えます。 県内有数の産業団地である米沢八幡原中核工業団地は、新たに分譲する区画は僅かで、残る区画の面積も最大五千平方メートル程度と飽和状態にあります。候補地は主に田園地帯でありますが、平たんで面積も広く、豪雪地帯でもありません。また、工業用地に欠かせない上水道、工業用水については、長井市は水資源豊富な町であり、近くには置賜白川が流れ、飯豊連峰を望む自然環境はすばらしいものがあります。 国際社会、自由主義国の一員として、コロナ感染症を契機とした日本の危機管理の面からも、将来を先取りした置賜地域の新産業団地整備の推進を支援すべきと考えますが、産業労働部長の見解をお尋ねします。十八日の代表質問の答弁より少し早口でお願いできれば幸いです。 中小河川の維持管理についてお伺いします。 度重なる台風、豪雨、異常気象が常態化し、本県でも、平成二十五年からほとんど毎年のように県内各地で大規模な水害が発生し、昨年七月末の豪雨災害は被害額約四百三十二億円、過去最大の風水害となりました。 この令和二年七月豪雨と同規模の洪水に対する浸水被害を解消するため、令和二年度以降最上川緊急治水対策プロジェクト約六百五十六億円、県の治水対策約五百億円、国の治水対策約六百四十億円、計約一千七百九十億円の事業規模で最上川水系流域治水プロジェクトが公表されました。河道掘削、堤防整備等のハードに加え、内水被害抑制、警戒避難体制などのソフト対策も強化され、県民の命と財産を守るため大いに期待します。 私は、一昨年来、河川の真ん中に柳の木、ニセアカシアがびっしり繁茂し川面が見えないジャングルのような異常な状態を放置すれば大変なことになると、まず第一番に支障木伐採の必要性を訴えてきました。支障木、堆積土砂の放置は、川の流れを大きく変え、蛇行する水はぶつかり、護岸を浸食し、崩します。私の地域では、ようやく置賜野川、置賜白川、荒川などで堆積土砂と支障木の撤去が進められ、今後も継続的な対応を期待するところです。 最上川本川、支川下流部の流下能力向上、水害対策はもちろんですが、加えて、地域住民から切実に寄せられる声は、上流の中小河川を何とかしてほしい、きれいにしてほしいということです。 小さな川でも大雨が降れば濁流となり、家屋や田畑に流れ込む危険があります。以前は地区民が総出で草刈りや川ざらいを行い、作業終了後、公民館で懇親会などの風景が見られました。現在は危険があるため進めていないとのことですが、やむにやまれず川に出て作業し、けがをしたなどの事例もお聞きしています。 地域を回ると、支障木が繁茂しているところも多く、市町村と連携しながら、支川上流部を含めた堆積土砂や支障木の撤去などの維持管理を進めるべきと考えますが、県土整備部長の御見解を伺います。 熱心に耳を傾けていただきましたことに感謝を申し上げ、質問を終わります。ありがとうございました。 ○議長(坂本貴美雄議員) この場合、答弁を求めます。 答弁の順は私から指名します。 吉村知事。 ◎知事(吉村美栄子君) おはようございます。 ただいま五十嵐議員から貴重な御指摘、御意見を頂戴したと思っております。 県議会の常任委員会への職員の出席につきましては、令和元年十二月議会での議員からの御指摘を真摯に受け止め、職員の働き方改革と時間外勤務縮減の観点から、直ちに翌年の一月から陪席者数を二分の一以下にしたところでございます。その後、新型コロナ対策として、昨年四月の委員会からはさらに出席者を厳選しているところです。 今後とも、職員の働き方改革やコスト縮減に向けて不断の見直しに努めてまいりたいと考えております。 一方、御指摘にありました女性の賃金につきましては、本県女性の所定内給与額は、令和元年は全国四十六位、これは山形県と青森県が全国四十六位でありましたが、令和二年には四十二位に上昇したところであります。女性賃金の向上につきましては、今年度から新たに産業労働部内に女性賃金向上・県内定着推進室を設置したところであります。さらに力を入れて取り組んでまいります。 また、非常勤職員の育児休業制度につきましては、処遇改善という社会的な要請も踏まえ、平成二十九年四月に、一般職の日々雇用職員及び特別職の嘱託職員について、同時に育児休業制度を導入いたしました。その結果、平成三十年度は一名、令和元年度は二名、令和二年度は四名が育児休業を取得しております。県としましては、制度の趣旨を踏まえ、今後さらに育休取得が促進されるよう努めてまいります。 なお、県内の状況を見ますと、米沢市、鶴岡市及び酒田市が県よりも早期に非常勤職員の育児休業制度を導入しております。ちなみに、議員の地元の長井市はじめ、多くの市町村は令和二年四月から導入されているところです。 御質問のありました副知事の件に関してでありますが、昨年は、世界的な大災害とも言える新型コロナの感染が猛威を振るい、四月には全国に緊急事態宣言が発令され、本県でも、県境検温の実施をはじめ、医療提供体制の確保など、緊急を要する対策に終始追われておりました。また、七月の豪雨災害により最上川が氾濫し、県内各地で甚大な被害がもたらされ、復旧復興に向けてその対応にも追われたところであります。まさに有事とも言える未曽有の難局が続いた年でありました。 このため、県と市町村との連携を円滑に進めるための協議や調整においては、従前とは全く異なる対応を余儀なくされ、定例で開催していた市町村長会議がオンライン対応となるなど、コロナ禍の影響で私と市町村長とが直接お会いして意見交換できる機会が全般的に減少した一方で、県、市町村ともに、平時にはない喫緊の課題が山積していたところです。 こうした中で、若松氏は、当時の副知事として、これらの状況を肌で強く感じ、例年とは別の対応として、県内市町村の現状や当面する課題、さらには県政への要望などを首長の方々から広くかつ丁寧にお聞きして関係部局につないだり、県の施策への参考とするために直接訪問するなどして意見交換を行ったと認識しております。 私は、今年の三月頃に、自民党のある議員の方からうわさとして一部の首長の方とのやり取りについてお聞きしましたので、若松氏本人に確認しましたところ、指摘を受けるようなことは全く言っていないと聞いたところでございます。 なお、議員からお尋ねのありました任意の事情聴取の件につきましては、県警で発表していないことを私からは申し上げることはございません。 また、副知事の人事につきましては、いろいろな方に御相談をしたり、お話をお聞きしたりしながら検討してまいりたいと考えております。 ○議長(坂本貴美雄議員) 大瀧総務部長。 ◎総務部長(大瀧洋君) 私からハラスメント防止につきましてお答えいたします。 まず最初に、職員のメンタルヘルス関係について申し上げます。 知事部局における精神疾患による長期病休者の数は、令和二年度は五十名で、ここ数年、同程度の人数で推移しております。職員のメンタルヘルスに関しては、メンタル面での不調を早期に発見し対応することが非常に重要でありますので、各所属において、いち早く職員の不調に気がつけるよう、昨年度から新たに、係や担当を横断したチームケアの取組を行っております。 また、復職に向けては、職場復帰プログラムを策定した上で試し出勤を行うなど、円滑に職場復帰できる取組を行っており、今年度からは、外部専門家のスーパーバイザーの方から個々の職員の状況に合わせた職場復帰について助言を得る仕組みを本格導入したところです。 次に、非常勤職員の育児休業について申し上げます。 本県では、先ほど知事も申し上げましたが、平成二十九年四月から非常勤職員の育児休業制度を導入しており、知事部局の取得者数は、平成三十年度は一名、令和元年度は二名、令和二年度は四名と、徐々にではありますが増加しております。 取得者数が少ない理由といたしましては、令和元年度までは雇用年限が基本的に三年までに制限されていたことや、女性のうち四十歳未満は約三割、男性の場合は一割以下と、そもそも適齢期の方が少ないこと、さらには育児休業期間は無給であることなどが考えられるところです。 なお、東北の他県においても、同様の理由により取得者数は少ない状況とお聞きしております。 こういった中ではありますが、先ほど知事からもありましたとおり、令和二年四月には、非常勤職員の処遇改善等を目的として会計年度任用職員制度が導入され、雇用期間が三年を超えることも可能となったほか、期末手当が新たに支給されるなど、大幅な処遇改善が行われました。こういったことから、今後、取得希望者が増えることが考えられますので、引き続き制度の周知を図ってまいります。 なお、常勤職員の男性の育児休業取得者数については、平成三十年度は九名、令和元年度は十一名であったところ、昨年度より、子の生まれた男性職員と所属長との面談を行う仕組みを構築するなど取組を強化し、令和二年度は二十八名と、大きく取得者数が伸びたところです。子の生まれた男性職員に対する育児休業取得者の割合は、令和二年度は四四・四%に達し、特定事業主行動計画において令和二年度までの目標値と定めておりました二〇%を大幅に超えました。 今後とも、男性職員や非常勤職員も含めた全ての職員が育児休業を取得しやすい職場環境づくりに努めてまいります。 最後に、パワーハラスメントについて申し上げます。 知事部局におけるハラスメント相談窓口への相談件数は、令和二年度は、パワーハラスメント関係が八件、セクシュアルハラスメント関係が二件、計十件の相談がございました。事案の詳細については差し控えさせていただきますが、内容を見ますと、言葉によるハラスメントを訴えるものが多い状況となっております。 職員からの相談等により事案の発生を把握した場合は、速やかに事実確認を行い、問題が確認されれば、当事者に対し必要な指導を行うほか、必要に応じて配置換えや懲戒処分等の措置を行うこととしております。 ハラスメントは、職員の個人としての尊厳や人格を侵害し、働く意欲や自信を減退させる行為であり、あってはならないことと認識しております。このため、本県においては、国が事業主に対しパワーハラスメントの防止措置を法律により義務づけるのに先駆けまして、平成二十六年四月に「職場におけるパワーハラスメントの防止等に関する指針」を策定し、所属長や職員一人一人がパワハラ防止のために留意すべき事項を定め、さらに、令和二年六月には、労働施策総合推進法の改正を踏まえ同指針を改定し、外部から、または外部へのハラスメント行為への対応等を新たに盛り込んでおります。 この指針を踏まえた具体的な取組としましては、職員一人一人がハラスメント防止の意識を高めるため、管理職から一般職まで全階層を対象としたハラスメント防止研修の実施、全職員を対象にハラスメントへの気づきや防止意識を促すための啓発チラシやセルフチェックシートの活用等を進めてきたところです。 さらには、ハラスメント事案に限ったものではありませんが、外部の弁護士へ相談できる公益通報制度の窓口を設けております。また、電話や面談、書面により職員が直接人事課長に職場の人間関係等に係る相談を行う仕組みも設けており、毎年一定数の相談があるところです。 これらの取組を通し、今後ともハラスメントの未然防止に努めるとともに、万一発生した場合は、その状況に応じた迅速かつ適切な措置を講じながら、職員が働きやすい職場環境づくりに努めてまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 小林みらい企画創造部長。 ◎みらい企画創造部長(小林剛也君) 私からは山形鉄道株式会社に対する経営改善支援についてお答え申し上げます。 フラワー長井線は、高校生や高齢者の方々をはじめ、地域の方々にとって欠かすことのできない生活の足であり、また、観光誘客、まちづくりを支える重要なインフラとしての役割を果たしています。 県ではこれまで、山形鉄道の経営改善推進委員会事務局として、山形鉄道株式会社や沿線二市二町等とも連携しながら、経営改善計画の進捗管理や具体的な施策の検討等を行ってまいりました。 また、平成二十八年度の上下分離方式の導入に際しましては、鉄道事業再構築実施計画の認定につきまして、計画案の取りまとめや政府との折衝などを主体的に行い、鉄道の維持・修繕等に係る有利な補助率の認定を得ることができました。 さらに、山形鉄道株式会社が担っているいわゆる「上」部分、運行部分の決算の推移を見ますと、平成二十八年度の上下分離方式導入から令和元年度までの四年間、毎年黒字経営を維持してきました。これは、山形鉄道株式会社の経営の御努力の結果であるとともに、県と沿線自治体とが連携し、例えば地域にお住まいの方がフラワー長井線を利用した旅行を行う際に補助を行うなど、利用拡大の取組も寄与しているものと考えております。 財政面につきましては、沿線自治体とともに、鉄道施設や車両の維持管理部分、いわゆる「下」部分に関してですけれども、令和二年度までは毎年合計八千四百万円、令和三年度以降は、それまでの約三割増となる一億八百万円の財政支援を行っております。これに加えまして、令和二年度におきましては、コロナ禍もございましたので、三セク方式では、山形鉄道株式会社が本来負担することとなる「上」の運行部分に対しても、沿線自治体と共同で合計一千四百万円の支援を行い、厳しい経営環境にあってもしっかりと運行維持が図られるよう措置したところでございます。 こうした経営維持のための財政支援に加え、今定例会に御提案しております六月補正予算におきましては、感染防止やポストコロナにおける観光需要の取組に向けた前向きな投資といたしまして、車両への交通系ICカード読み取り機設置のための予算も計上させていただいております。 以上のように、県としては、山形鉄道株式会社の上下分離の実施や運行支援、財政支援を沿線自治体とともに行ってきたところでございます。 ここで、今後を展望するに当たり、フラワー長井線の収益構造を見ますと、収益の柱であります通勤通学の定期収入は、令和元年度の七千四百万円に対しまして令和二年度の見込みは五千六百万円となり、二四%の減となっております。一方で、観光などの定期外収入は、令和元年度が四千万円であるのに対して令和二年度は二千七百万円、三二%の減となっております。 これらの収入減に対して、現在、それぞれ対応しているところであります。 まず、通勤通学利用につきましては、コロナ収束後の回復を確実なものとするため、令和三年三月に策定した経営改善計画に基づき、片道高校通学定期の導入なども検討を進めるほか、昨日の新聞報道でも報じていただいておりますように、沿線の高校と地元企業とが連携し長井線オリジナルスニーカーを開発して、高校生たちにフラワー長井線に愛着を持ってもらうといった取組も支援しているところでございます。 観光面につきましては、例えば、七月には長井ダムでの水陸両用バスとのコラボツアーの商品化、また、九月には、やまがたアルカディア観光局とも連携し、季節の山野草を取り入れて調理した薬膳料理を野草ソムリエの解説つきでお楽しみいただく「薬膳列車」などの企画列車も運行するなど、地域の魅力を生かした取組を展開しております。 こうした通勤通学や観光に加えて、新たな需要創出も重要だと考えております。現在、県では、県内の鉄道利用回復・拡大に向け、新幹線によるサクランボ輸送やワーケーションへの山形新幹線の活用など、新たな需要創出を図る取組を実施しております。こうした取組により新たな人の流れが生まれ、この人流を、先ほど申し上げた交通系ICカードの導入等とも併せ、フラワー長井線へと円滑にシームレスにつなぐことによって、沿線の観光・飲食業の皆様などに新たな需要創出の成果を行き渡らせていきたいと考えております。 以上のように、県としましては、フラワー長井線の経営、財務、そして利用拡大を沿線自治体の皆様とともに総合的に支援し、地域の活性化を図ってまいりたいと思います。 ○議長(坂本貴美雄議員) 渡辺産業労働部長。 ◎産業労働部長(渡辺将和君) 置賜地域の新産業団地の整備についてお答え申し上げます。 各種の災害やこのたびの新型コロナウイルス感染症など、企業の生産活動を維持・継続する上でのリスク分散の観点から、企業の立地をめぐっては、生産拠点の国内回帰やサプライチェーンの地方への分散配置などの動きが進んでおります。また、個人の働き方についても、テレワークの普及などにより地方で働くことへの関心が高まりつつあることから、企業からも個人からも選ばれる産業展開の場として、本県の魅力を高めていくことが重要であります。 このような考え方に立って、県では、今年度から、若者や女性が専門的な知識や能力を生かすことができる分野であるソフトウエア業やインターネット関連業等の立地に対する補助要件を緩和するとともに、デザイン業を新たに補助対象に加えるなど、戦略的な企業誘致に取り組んでいるところであります。 一方、経済産業省の立地動向調査による本県の現状を見ますと、高速交通網が整備され、物流の利便性が向上した効果もあり、昨年の立地件数は二十件で、東北では一位、全国でも十四位となるなど、本県への立地は順調に推移しております。置賜地域におきましても、米沢八幡原中核工業団地や長井北工業団地をはじめ、十九か所の産業団地が整備されてきておりますが、それぞれにおいて企業の立地が進んでいるところです。 このため、長井市では、新たな産業団地の造成を検討しているところであり、新潟山形南部連絡道路と国道百十三号が交差する交通の利便性の高い今泉地区を農村産業法に基づく産業導入地区に位置づけるため、産業導入実施計画の変更に向け準備を進めているとお聞きしております。 県としましては、実施計画の変更に関して丁寧にアドバイスを行うとともに、今後必要となる東北農政局等との協議についても調整を行うなど、新たな産業団地の実現に向けてしっかりとサポートしてまいります。 また、置賜地域には、多様な技術力を有するものづくり企業が数多く集積しており、山形大学工学部の研究開発機能や高度人材などの強みを生かせることから、地域産業の活性化や安定的な雇用の創出に資する企業の立地につながるよう、長井市と連携して企業誘致に取り組んでまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 前内県土整備部長。 ◎県土整備部長(前内永敏君) 河川の氾濫リスクを軽減するためには、河川の流下能力を確保することが重要であります。そして、流下能力の確保のためには、河川の堆積土砂や支障木の撤去などの維持管理が必要であります。昨年七月の豪雨においても、置賜野川をはじめ、流下能力を確保した箇所では浸水被害が発生していないことから、堆積土砂や支障木の撤去の効果があったものと考えております。 県では、平成二十四年度以降、河川の堆積土砂や支障木の撤去による流下能力の確保に計画的に取り組んでまいりました。特に、近年の度重なる出水を踏まえ、令和元年度から今年度までの三か年で、河川流下能力向上緊急対策事業として重点的に対策を実施しているところです。 具体的には、水の流れが阻害されている割合が五%以上となっている箇所のうち、氾濫した場合の影響が大きい箇所などから優先的に対策を進めております。これらの箇所には、支川上流部の小規模な河川も含まれております。 土砂は豪雨による出水で堆積し、また、年月を経て上流部から流下することで徐々に下流部に堆積するなどして水の流れを阻害します。さらに、堆積した土砂の上に数年で樹木が再び生い茂り、河川の氾濫リスクを高めます。このため、流下能力の確保に持続的に取り組んでいくことが必要です。 これらを踏まえ、県では、次の二つの課題に対応してまいります。 一つ目は財源の確保であります。堆積土砂の撤去などに充当可能な総務省の緊急浚渫推進事業債の今後のさらなる活用を検討してまいります。これは、交付税措置率が高く、県の負担が少ない有利な制度であることから、その拡充と恒久化を政府に要望しているところです。 二つ目は施工方法の工夫による効率化です。具体的には、樹木が再び生い茂り支障木となることを防ぐ効果が期待できるブルドーザーによる川底の整地のほか、河川区域内を含めた堆積土砂の有効活用など、施工の効率化につながるような工夫を進めてまいります。 なお、撤去した堆積土砂については、その有効活用先の確保について、引き続き市町村とも連携してまいります。 県といたしましては、これらの課題に対応するため、今後とも、様々な工夫をしながら河川の維持管理を進め、県民の安全安心の確保に努めてまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) この場合、休憩いたします。 午前十一時十五分再開いたします。     午前十一時四分 休憩     午前十一時十五分 開議 ○議長(坂本貴美雄議員) 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑及び質問を続行いたします。 三番今野美奈子議員。 ◆3番(今野美奈子議員) まず初めに、このように壇上での質問の機会を与えていただき、深く感謝申し上げます。これまで様々なことが身の回りに起きたときも、所属会派の皆さんからは、その都度温かく御指導いただきましたし、それぞれの場で御一緒している議員の皆さんからは、県民のことを思うからこそ交わされる議論や御自身の幅広い経験を基にした発言などから学ぶことが多く、当局の皆さんの御協力をいただきながらこうした環境の中で活動させていただけることに、改めて感謝いたします。 自分が活動する際、背中を押してくれるもう一つは、吉村知事が女性のリーダーとして積極的に公務に向かわれているその姿であり、このような女性のロールモデルの存在は本当に重要なのだと実感しております。一九四六年、女性は参政権を得ました。私は、女性が政治参画しやすくなる例えばクオータ制のような、そのような議論が本県においてできるだけ早く本格的に始まることを願っている一人であります。こうした女性が増えてくることを期待して、質問に入らせていただきます。 まず初めに、令和三年度の組織機構改正についてお尋ねいたします。 さて、本県の新型コロナウイルス感染では、さきに発生した高校でクラスターとなったことで、学校における感染拡大防止対策の難しさが改めて浮き彫りになり、日常の生活の中でも、三世代同居が多い本県においては緊張した日々を過ごした県民が多くいました。このようなときは、河北病院のような、PCR検査が自分たちの住んでいる近くでできると安心すると考えた人も多くいたことでしょう。 感染拡大防止について吉村知事は、適切でタイムリーなメッセージを発しておりました。そして、当局の担当者は、感染経路の把握に努め、感染者の療養、治療施設先についても適切に指揮を執り、皆、休日返上での作業に敬意を表したいと思います。そうしたことに県民の皆さんからの協力を得て、本県では、第三波の感染拡大の時期をようやく乗り越え、少しずつ減少の兆しが見えてきたように思います。 全国の都道府県のある県は六月上旬から期間限定で医師や看護師が出向いて沖縄県に協力したり、本県からはオリ・パラの開催に向けて警備担当としての職務遂行のために近々派遣されたりするなど、越境による協力体制への動きも活発となってきているように感じられます。感染拡大地域に派遣され貢献してきた人々が山形へ帰ってくる際には、適切な温かい対応策で、心からのねぎらいの言葉を添えてお迎えできる態勢を整えておきたいものです。 今のこの状況になくてはならないものを見落としてはいないか、ふさわしいものは何かを見極め、育ってきた時代背景が違う人々と共に生きているという謙虚さと、違う人格を持つ相手を尊重し、誹謗中傷することなく、有事とも言えるこの状況を皆で乗り越え、県政がさらに前に進むことを願っています。 このような中で、令和三年度の組織機構が改正され、そのポイントとなることが示されました。 新型コロナウイルス感染症に関連した新型コロナワクチン接種総合企画課及び雇用・コロナ失業対策課、ほかには保健師の増員や災害対応など、「県民の命と健康を守る」と常に言葉にされている知事の熱意と覚悟、そして、今必要と思われることは全てやるという、まるで災害時の真っただ中にいる家族を守る母親のように、温かくも強い、心からのメッセージと受け止めたところです。さらに、農林水産部には新たに専門職大学整備推進監が配置されるなど、複数の部署に推進課、推進室といったものが新しく設置されていることからも、特に今年度は、誰一人取り残さないという県政運営の姿勢を感じることができます。 先ほども申し上げましたとおり、経験したことのない新型コロナウイルス感染拡大の防止に取り組む中においての改正であり、県民の生活にとって最重点項目を遂行するための改革と推察いたします。また、改正された組織機構の全ては、SDGsにかなう質の高い新しい県政の発展につながるものと期待できるものであります。県民が求めていることや困り感に寄り添おうとすればするほど、改善したいことはほかにももっとあったはずです。 このたびの機構改正は、単に部署名が変わったのではなく、県政運営において重要な位置づけとなっているものと認識していますが、そのポイントとなる狙いや意図について総務部長にお尋ねいたします。 次に、児童相談所の機能・人材強化について伺います。 本県における障がい福祉施策は、第五次山形県障がい者計画、第六期山形県障がい福祉計画及び第二期山形県障がい児福祉計画に基づいて推進されています。これらの計画は、社会経済環境の複雑・多様化に伴って、法改正などを受け改定されてきたと思いますが、私は、現計画を、誰もが住み慣れた地域社会において、自分の人格、特性が尊重されて生活できる共生社会の実現を目指していると理解しております。まさに、今日的普遍性の原理原則を示しているのです。 県民の心イコール精神としてこの普遍性を定着させるためには、計画策定者である県があらゆる機会においてこの基本である原理原則に立ち返り、お互い理解し合い、支え合い、途切れなく県行政を継続していく姿勢が最大のポイントであると認識しております。特に、比較的新しい福祉分野として整備されてきた「心、精神」の福祉関係は、新しいだけに、もはや従来の手法では対応できず、教育から医療、労働、場合によっては司法の分野にまで及ぶ事例もあり、それぞれの専門的な手法や分野を互いに認識しながら進めていく体制が望ましいものと理解しています。新たな要望を求められることも少なくなく、当事者である家族やそれぞれの現場の苦労が顕著になっています。 一例ですが、住まいの場として整備されているグループホームがあります。県内には数多くありますが、利用者の自立に向けた達成目標の相違、生活観の多様性から家庭的雰囲気の醸成が難しく、施設利用をためらう声も多く寄せられています。また、服薬管理の難しさなどから長期入院を余儀なくされている状況もあり、家族ゆえの悩み、不安が潜在化しております。 発達障がいという障がいもまた、その成長過程で人それぞれの様々な障がいの実態と向き合わなければならず、家族は孤立しがちであります。 発達障がいは、生来のことといっても、就学時健診でも気づかないこともあります。保育園や入学などで集団生活に入り、その障がいの特性から、自閉、多動、こだわり、反発などが顕著になってくる場合が多く、学齢が進むとゲーム依存症、昼夜逆転、不登校、高校入試など、家族にとっては心配事が深刻化します。その場合、家庭が頼る最初の公的機関は、場合によりますが、多くは学校です。やがて児童相談所、病院、警察などのように関わる機関が増えていきます。家庭にとって初めてのことなので、不安、戸惑いを感じるものです。 このような場合、特に児童相談所はとても重要な立場にあるわけですが、近年、その機能の一部を市町村が担当することとなり、相談内容を県と市町村で振り分けし、家庭との調整、連携がおろそかになっているのではないかといった声が届いています。さらに、市町村の担当に対しては、きちんとそのノウハウを指導しているのだろうかといった不安な声もあります。 児童相談所には、「いつでも来所してください」といった温かく迎える余裕と姿勢がもっと必要であり、また、職員が三年サイクルで替わるなどの事情から信頼関係づくりが難しいとの声もいただいております。 この問題の根源は、児相の機能、専門的な人材の不足に課題があるのではないかと認識しています。専門職員を強化して、関係機関や家族関係を総合的に調整、連携できるキーパーソンを育てる、あるいは増やす必要があります。これからますます多様化する社会変化を見据え、児相をスペシャリスト集団にすることが求められるのであります。 県が先頭に立って、県民の知恵を結集する観点から、市町村はもとより、専門機関をはじめ当事者やその家族、各事業所などの参加を得て調査研究をするなど、現場の声を確かに聞く体制づくりが必要ではないかと認識しています。特に、発達障がいや障がいのある方が生活しやすいように、関係機関の連携環境の改善と、そしてスペシャリスト集団としての児童相談所の新たな体制強化についてどのようにお考えか、しあわせ子育て応援部長に伺います。 三つ目は、子供を産み育てやすい社会の実現についてお尋ねいたします。 昨年、山形西高等学校の生徒代表の皆さんとの交流会に出席させていただきました。近年の若者の自殺者の増加の理由、投票率向上の取組、そして女性活躍など、幅広い内容の質問でありました。自分の高校時代とは大きく違い、社会への関心の高さを感じた次第であります。そうした生徒さん皆さんに、将来のなりたい職業の夢の一つにぜひ議員というものも加えていただけたらうれしいと添えた次第であります。 ところで、近頃「生理の貧困」という言葉が話題になっています。災害時の備蓄用品には生理用品は必須であることを公の場で言えるようになった社会を歓迎するし、これは、時代の流れであると同時に、教育の成果であるとも認識しています。 いつの時代も、自分たちより若い世代が受けてきた教育と自分たちのそれとは違うことがあることを謙虚に受け止めなければならないと常に自分に言い聞かせていますが、この言葉は、どの世代の女性であっても、多くの人は人前で話題にすることをちゅうちょする言葉でありました。まして男性側から取り上げるといったそのタイミングはなかなか難しいものがあったと思います。 男女共同参画が進み、時代が味方したのでしょうか、国会で女性議員が初めて発した言葉でありました。このようなことからも、私は、片方の性だけで社会の課題を解決する場の設定はできるだけ控えたほうがいいのではないかと感じています。 さて、若者が生活する上で、喜び楽しむ、そして充実感を持って過ごすためには、どのような環境がふさわしいのでしょうか。ふるさとのよさを知らなければ、地方という不便さばかりが表に出ることでしょう。まして賃金も低いとなれば、県外で就労した若者を呼び戻すのは容易なことではないということは共有されている事実であります。 私たちは、山形の魅力に魅了されたり、あるいは長男長女であることや、または家の跡継ぎであるなど、様々な事情で住み続けることを選択しました。今年、若者たちが本県に住むことを決めた主な理由は何だったのか、とても気になるところであります。そして、こうして本県に来た若者を、先輩である私たちは、社会であるいは職場で、地域で温かく迎えているでしょうか。社会からのメッセージは温かいものとして届いているでしょうか。 若い女性を大切にしましょうという議論がある一方で、女性の賃金が低いことがコロナ禍で表面化しました。少子化を理由にして若い女性を増やそうという議論には、多くの女性が自分たちは出産要員として歓迎されているのかといった違和感を覚えているようです。 最近、知人の紹介で拓殖大学准教授の佐藤一磨先生の論文を拝見する機会がありました。それは、公益財団法人家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」を用いて検証した女性の幸福度に関わる論文でありました。この調査の第一回目は、一九九三年時点における二十四歳から三十四歳の女性千五百名を調査対象とし、第二十二回目調査の二〇一四年までの調査結果の全データを使用して研究した論文でありました。 今回は、配偶者が就業している有配偶者女性を対象に、子供や仕事の有無、雇用形態などを組み合わせた場合、女性の幸福度に違いはあるのかといった研究でありました。研究調査結果によると、最も幸福度が高いのは子供のいない専業主婦で、次いで子供のいない働く妻、そして子供のいる専業主婦、子供のいる働く妻の順番でありました。 私個人としては、子供がいない人のほうが幸福度が高いという結果には複雑な思いを抱きますが、子育てへの夫からの協力があまり得られない場合や経済的な事情、あるいは子育ての支援の不足が結果に影響しているのではないかということは想像に難くありません。しかも、「子育てがこんなに大変なこととは思わなかった」や「誰にも褒めてもらえない」など、子育てしている若い女性からは、子育ての喜びというよりは苦しみにも似た思いが聞こえてくるようになり、子育てへの女性の向き合い方や心構えが時代とともに変化していることも敏感に受け止めなければなりません。 この調査結果をどう読み取るかは人それぞれでありますが、総合的に判断すると、女性の子育てへの大きな負担による女性の幸福度の低下が新たな出産の抑制につながり、少子化に影響しているかもしれないということを認識して政策を立てる必要があるのではないかと改めて学んだ次第です。 このように、結婚さえ考えることができない環境の女性が増え、まして子供を育てることがもっと負担になるといった声が公になっている現代は、必ずしも女性にとって住みやすいとは言えない社会環境、社会情勢であると言えます。 新型コロナウイルス感染症の中にある今の状況に限らず、子供を産み育てやすい社会の実現をどのように進めていくのか、しあわせ子育て応援部長にお尋ねいたします。 四つ目は、デジタル化社会に向けた若者定着について伺います。 行財政改革推進プラン二〇二一の取組内容には、多様な主体との連携強化が掲げられ、研究開発や人材育成、人材確保の観点から大学等との連携・協働の推進をするとしています。 デジタル化の推進が叫ばれ、今や急速に発展し、なくてはならない技術として社会から求められている中、本県において、ICT等の情報環境整備が、教育分野をはじめ公共交通機関等にも活用する準備などが進められています。しかし、それらに関する最先端の研究や技術を県内で学んだ後、どれくらいの方が本県で活躍しているのでしょうか。 例えば、国立鶴岡工業高等専門学校は、ICT分野において産学連携する企業とともに研究を深め、高いレベルの内容を学んでいる学校であります。就職すれば即戦力として発揮する力を蓄えて卒業する工業系の学生たちが、就職率が一〇〇%であるにもかかわらず、鶴岡高専の学生が県内に就職する割合は、二〇二〇年のデータによると、就職先企業二百九社のうち県内は四十三社の約二〇%であります。山形大学工学部の卒業生に至っては例年九%ということであり、今年三月の卒業生は八%であったと聞きました。また、山形大学工学部では、二〇二一年四月よりAIデザイン教育研究推進センターを設置し、地域貢献できるようなAIを使いこなす人材の育成を進めています。 このように、県内外の企業と研究分野等で連携して最先端の学びを得ている理系女子あるいは男子学生の皆さんに本県に定着して活躍していただくためには、まずは就業の場づくりが大変重要なことと考えています。しかし、残念ながら、魅力ある職場、生きがいを持って学びを生かせる就労の場が本県に十分あるとは言えないと認識しています。 ものづくりの高度化やICT活用、デジタル化などの社会形成のために、本県で学んだ若者にはぜひ本県で活躍していただきたいものですが、就労あるいは新たな企業誘致など、就業の場づくりについてどのように取り組んでいかれるのか、産業労働部長に伺います。 最後に、歴史的ストーリーを生かした観光戦略の進め方について伺います。 文化庁と全ての日本遺産協議会が加盟する日本遺産連盟は、国民の日本遺産に対する理解と関心を高めることを目的に、令和元年に、毎年二月十三日を「日本遺産の日」と定めると宣言しました。国では、この日に有識者が日本遺産の可能性や魅力について語り合い、日本遺産認定地域による演舞などを披露するシンポジウムを開催しています。 本県の日本遺産は、平成二十八年度に「自然と信仰が息づく『生まれかわりの旅』~樹齢三百年を超える杉並木につつまれた二千四百四十六段の石段から始まる出羽三山~」、平成二十九年度に「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」と「サムライゆかりのシルク日本近代化の原風景に出会うまち鶴岡へ」、そして平成三十年度に「山寺が支えた紅花文化」の以上四つが認定されています。中でも、サムライゆかりのシルクの鶴岡市の松ヶ岡は、今年開墾百五十周年を迎え、記念行事の準備を進めているところであります。 これからの地方が発展していくためには、時代の流れに乗って流行を素早くキャッチして生かしていくことはもとより、地域の歴史、文化の伝承者である住民が行政と一体となって主体的に先人に学び、創意工夫する地道な努力を軸にしていくことも重要なことであることを忘れてはなりません。こうした観点から、この四つの日本遺産は、まさに先人から引き継ぎ、今を生きる我々がこの時代に即したやり方で、人々に愛されるように工夫し、生かし、守り育ててきたものだと認識しています。 地域の特色を生かすとは、本県に限定されるプレミアムとなるものを見いだし、それが人々に愛されるものとなることと理解しています。こうした観点から歴史をひもといていくと、この松ヶ岡には、今を生きる地元住民が大切に守り育てているものの、まだ世に出ていない事実がありましたので、少し紹介させていただきます。 既に御存じのように、松ヶ岡は、武士が刀をくわに持ち替えて、生活の糧となる蚕を飼育した地域です。その桑畑の間作として進められてきたのが、驚くことにお茶栽培でありました。 大規模な開墾と桑園造成が始まった明治四年以降、生糸に続く輸出品としてお茶の栽培がなされました。このお茶は緑茶ではなく紅茶です。当時は、宇治から茶種を購入し、遠州駿河国八坂村から職人を招き、指導を受けていました。やがて、手塩にかけられたお茶は、深い温情を受けてきた西郷隆盛の元へ届けられ、西郷隆盛はそのお茶に六つの茶銘を与えてくれました。林の月と書いて「林月(りんげつ)」、ほかに「水蓮(すいれん)」「都山(とやま)」「敦本(あつもと)」「原泉(げんせん)」「白露(はくろ)」の六つであります。 しかし、残念ながら、僅か九年余りでその取組は終了してしまいました。それは、気象条件として適地とは言えないというのが主な理由であります。お茶は寒い地域での栽培が非常に難しいとされ、近年、秋田で栽培されるまでは、ここが日本最北のお茶畑でありました。当時の気候、そして技術では苦労の連続であったにもかかわらず、九年もの歳月をかけて育てた先人の努力を想像すると、子孫である私たちが最新の技術をもってできるなら、それは価値あることではないかと思います。平成二十二年からは場内で試験栽培が行われ、栽培に関する講習会開催や育成方法の調査研究がなされていると聞いております。 このように、先人の思いを今に開花させようとしている住民の姿に私は深い感銘を覚え、ぜひ成功してもらい、山形県のこうした地方力を全国に発信していただきたいと期待している一人であります。 現在は、埼玉県入間市のお茶の研究所の指導をいただきながら、松ヶ岡開墾場の有志の方たちの手入れの下、育成が進んでいますが、東京からお茶をお土産に欲しいと声がかかるほど一部では注目されながらも、私物を活用しての作業も多く、保存するだけで精いっぱいで、販売するまでは至っていないのが現状であります。 開墾百五十周年記念行事期間には、遠路からおいでになった方々に西郷隆盛が名づけた銘柄のお茶の試飲や茶摘みの体験などを楽しんでいただくなどの計画があると聞いています。今はかなわないことでありますが、全国のあるいは世界中の西郷隆盛ファンなどにリピーターとしておいでいただけるなら、交流人口が増え、県の発展につながるものと期待するところであります。 住民の熱意に支えられ、守られているこうした歴史物語のある遺産は、本県の観光資源として有効なものであります。県内のあらゆる地域の文化財等にまつわる歴史をいま一度掘り起こし、景観のみならず、そうしたことを発信したアフターコロナを見据えた今後の観光戦略について、県のお考えを観光文化スポーツ部長にお尋ねいたします。 また、このような文化財は、歴史があるだけにそのほとんどが木造建築であり、経年劣化、老朽化による保存修理及び災害から守るための設備整備は必須であります。近年は沖縄の首里城の火災が記憶に新しいところでありますが、自然災害等による文化財建築物等の倒壊破損なども懸念されるところであります。 特に鶴岡市には、本県の中でも国指定文化財建造物が多いことから、毎年のように保存修理事業が行われている状況です。主なものとしましては、先ほど述べました国指定史跡の松ヶ岡開墾場の蚕室は平成十年度から長期計画で、また、国宝建造物羽黒山五重塔ほか二棟の防災施設整備事業を令和二年度から二か年計画で、さらに、ちょうど二年前に発生した山形県沖地震により被災した重要文化財が耐震補強工事を実施しているという状況が続いています。 防災施設等整備について県としてはどのように進めていくのかお尋ねいたします。 また、保存のためには担い手も必要であります。文化財保護法を一部改正する法律が平成三十一年四月一日に施行されたことに伴い、県では文化財保存活用大綱の策定を進めているようです。県指定の文化財所有者などからの実態調査により、担い手についてはどのような状況が見えてきたでしょうか。実態調査をされて、有形無形文化財ともに長期保存のための担い手育成についてどのように進めていくのか、併せて観光文化スポーツ部長にお尋ねいたします。 御清聴誠にありがとうございました。 ○議長(坂本貴美雄議員) この場合、答弁を求めます。 答弁の順は私から指名します。 大瀧総務部長。 ◎総務部長(大瀧洋君) それでは私から令和三年度の組織機構の改正につきまして答弁申し上げます。 今年度の組織機構については、新型コロナウイルス感染拡大の影響により社会経済情勢が大きく変化している中、第四次山形県総合発展計画を踏まえ、令和三年度県政運営の基本的考え方に示した五つの施策の展開方向に沿って、変化に柔軟に対応しながら将来にわたり持続的に発展し続ける質の高い新しい県づくりを着実に進めるための体制を整備したところです。 主なポイントについて施策の展開方向に沿って申し上げますと、まず一つ目の「ふるさと山形力の向上」といたしまして、「子育てするなら山形県」の実現に向けまして、若者が将来に希望を持ち、子育て世代が幸せを実感できるような環境整備を推進するため、子育て若者応援部につきまして「しあわせ子育て応援部」に改組するとともに、新たに「しあわせ子育て政策課」ということで、政策的な機能を持つ課を新設いたしました。現在、保育料の段階的無償化に向けた取組や出産費用の負担軽減事業などの子育て関連の施策を総合的に推進しております。また、近年のデジタル技術の進展に対応して「やまがた幸せデジタル推進課」をみらい企画創造部に新設いたしまして、デジタル技術専門推進員を民間から招きまして新たに配置するなど、利用者目線に立ったデジタル化の全県展開を推進しております。 次に、二つ目の柱でございます「保健・医療・福祉の充実」といたしまして、新型コロナウイルス感染症の相談対応や積極的疫学調査などに従事する保健師の増員により保健所の体制を強化し、新型コロナ感染症対策に全力で取り組んでおります。さらには、今年二月に、通常であれば四月に設置するような組織につきまして前倒しで設置いたしまして、「新型コロナワクチン接種総合企画課」を設けております。当該課におきましては、市町村ワクチン接種事業に関する総合的な相談支援や医療従事者等に対するワクチン接種の実施、新型コロナウイルス陽性患者に対しまして入退院の調整などにつきまして積極的に行っているほか、大規模接種の実施や職域接種事業の支援などによりまして、県内における新型コロナワクチン接種のさらなる加速化に向けた取組を推進しております。 次に、三つ目の柱として「産業経済の振興・活性化」でございます。若年女性の県内への就職・定着を拡大していくことが喫緊の課題となっていることから、新たに「女性賃金向上・県内定着推進室」を設置したところであり、女性の賃金向上や県内定着に向けた施策に取り組んでおります。また、四月二十六日付ということで、こちらも年度当初ではなく年度途中での設置でございますが新設いたしました「新型コロナ対策認証課」におきましては、新型コロナ感染対策と経済再生の両立を目的とした認証制度の創設・運用によりまして、県内外の方々が安心して飲食できる環境整備を推進していくため、連日、飲食店や宿泊施設の現地調査、認証ステッカーの交付業務などを鋭意進めているところです。 次に、四つ目の柱といたしまして「農林水産業の振興・活性化」として、本県発の東北、日本を牽引する農林業経営者の育成などを目的とした東北農林専門職大学の開学に向けて、部長級の専門職大学整備推進監を新設し、強力なマネジメントの下、円滑かつ着実に開学準備を進めております。 最後に、五つ目の「やまがた強靭化」といたしまして、防災力の強化を図る観点から、「最上川流域治水推進室」を新設するとともに、総合支庁関係課の職員を増員することなどにより、災害復旧や強靭化に向けた各種施策に取り組んでおります。 新型コロナウイルス感染拡大による未曽有の事態が続く中、今後とも、将来の県づくりを見据えた組織体制を整備するとともに、喫緊の行政課題や県民ニーズに適時的確に対応できる、柔軟で効率的な組織づくりに努めてまいります。
    ○議長(坂本貴美雄議員) 松田しあわせ子育て応援部長。 ◎しあわせ子育て応援部長(松田明子君) 私に二点御質問を頂戴いたしております。 まず初めに、児童相談所の機能・人材強化についてでございます。 児童家庭相談への対応につきましては、児童福祉法では、一義的に市町村が応じ、児童相談所は専門的な知識及び技術を必要とするものに応じることとされております。また、厚生労働省の指針では、児童相談所における相談援助活動は、常に子供の最善の利益を考慮し、子供とその家庭等を援助するため、一つ目として子供の権利擁護の主体として、二つ目として児童家庭福祉に関する高い専門性を有し、三つ目として地域住民や子供に係る全ての団体や機関に信頼され、四つ目として関係する全ての機関、団体、個人との連携が十分に図られている必要があるとされております。 本県の児童相談所では、まず一つ目の子供の権利擁護につきましては、子供の安全確保を最優先とするため、保護者の意向に反して一時保護を行う場合もあります。一方で、子供の健やかな成長のためには家庭ごと支援することが重要であり、子供及び保護者と信頼関係を築くことを心がけ、発達障がいなどの事情にも配慮しながら、それぞれの意向も踏まえた上で支援方針を決定していかなければならないと考えております。 二つ目の専門性の確保についてですが、近年の県内の虐待通告件数が五年前の平成二十八年度の七百三十四件から令和元年度は千五百三十四件と増大し、また、複雑で困難なケースも増加しておりますことから、県では、計画的に専門職員を採用しているところでございます。平成二十九年度から今年度までに、児童福祉司を十六名、児童心理司を二名増員いたしました。 あわせて、高度な知識や新しい援助技法の習得、県民視点の対応などの研修を行うほか、若手職員と中堅職員をチームとする地域担当制の実施や、新任職員が担当するケースに上司が同行するなどして職員のレベルアップを図っているところです。さらに、今年度は、児童相談所OB職員を人材育成指導担当職員として配置し、若手職員をきめ細かく指導することとしております。 三つ目の信頼と四つ目の連携についてですが、子供や家庭をめぐる問題は早期発見と早期のきめ細かな対応が大事でありますので、児童相談所は、児童家庭福祉の専門機関としてその信頼を得ながら、子供や家庭にとって身近な市町村や、保育所、学校、警察、医療機関などの関係機関と適切に連携して層の厚い支援を行う必要があると考えております。 そのため児童相談所では、まず、市町村に対しまして相談担当職員への研修を実施するとともに、子供と家庭への支援に関わる関係者間の調整や具体的な支援の方法について助言・指導を行うなどして、相談対応力の強化を支援してまいりました。昨年度からは、児童相談所に関係機関連携のキーパーソンとなる市町村支援専任の児童福祉司を配置し、市町村のケース検討会の開催回数を増やすなど、支援を充実させております。また、関係機関に対しましては、要保護児童対策地域協議会など様々な機会を活用し、情報と支援の方向性を共有しているところであります。 児童相談所は、子供の権利擁護の最後のとりでとして、常に子供の命と人権を守ることを最優先に、お困りの方々の声を丁寧に受け止め、市町村や関係機関との信頼の中でしっかり連携しながら、子供と御家庭への支援に努めてまいります。 続きまして、子供を産み育てやすい社会の実現についてでございます。 若者がここ山形で学び、働き、暮らし続けたいと希望を持っていただけるよう社会全体で応援することは、本県の発展にとって大変重要なことと考えております。 内閣府の調査によりますと、特に若い女性が東京で暮らし始めた理由として、「地元に希望する仕事がなかったから」「地元や親元を離れたかったから」などが挙げられております。若い女性の県内回帰と移住を促進するためには、やりがいや十分な収入が得られる多様な仕事の創出や働き方を支援するとともに、地域に根強く残る固定的な性別役割分担意識や偏見を解消し、職場や地域、家庭など様々な場面において女性の意見も反映され、活躍できるような社会づくりを進める必要があります。 あわせて、若者が将来に希望を持ち、子育て世代が幸せを実感できる子育て環境の整備も進める必要があります。県政アンケートにおきましても、議員のお話しのように若い世代が子育てを大変なものとして受け止め、子供を持つことや子育てに対する不安感と負担感、拘束感が大きいことがうかがえます。 このような状況を踏まえ、令和二年三月に策定したやまがた子育て応援プランでは、「結婚や出産への希望を持ち、安心して子供を生み育てられる社会」を目指す社会の一つに掲げ、各種施策を進めているところでございます。 具体的に、子育て家庭等に対する経済的支援として、政府や市町村と連携して各種手当の支給や医療費への助成を行うとともに、保育や就学に係る経費への支援の充実を図ってまいります。 また、妊娠から出産・子育て期までの切れ目のない支援として、全市町村に設置されている子育て世代包括支援センターや子育て支援センター等において、情報提供や相談、交流、育児支援など、子育てに不安や孤立感を抱える方に寄り添う形での支援を行っております。さらに、地域や企業も含め社会全体で子供を育てる機運醸成を図るとともに、家庭と仕事の両立支援と男性の育児・家事への参画を促進してまいります。 本県は共働き率が全国トップクラスで、育児をしている女性の有業率は約八割となっている中、平日の育児・家事にかかる時間は男性の三倍と、女性に負担が大きく偏っている状況にあります。男性の育児・家事への参画を促進することは、子供を産み育てたいという若い世代の希望をかなえることにつながるものと考えます。 六月九日に、男性の育児休業を取りやすくするための改正育児・介護休業法が公布されたところです。県では、今年度新たに、男性の育児休業取得促進に向けた機運醸成を図るとともに、男性の家事・育児等への参画に関する講座を開催するなど、男女ともに育児と仕事を両立できる環境整備を進めてまいります。同時に、企業向けトップセミナーを開催するなど、企業経営者層の意識改革を図る取組も進めてまいります。 県としましては、やまがた子育て応援プランを基本に、現下の社会情勢を踏まえ、子育てに関する負担と不安、孤立感を解消する施策を進め、幸せな育ち、幸せな暮らしを実感できる社会の実現を目指してまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 渡辺産業労働部長。 ◎産業労働部長(渡辺将和君) デジタル化社会に向けた若者定着についてお答え申し上げます。 県民の誰もがデジタル技術の恩恵を受け、暮らしや仕事の質を高めることができる社会を実現するためには、山形大学や鶴岡工業高等専門学校など、県内の大学等で高度なデジタル技術を学んだ人材の活躍が重要であります。こうした高度なデジタル人材を県内就業・定着につなげるためには、魅力ある就業の場を数多く創出することが必要不可欠であると考えております。 本県において、高度なデジタル人材の県内就業が進まない背景には、こうした人材が大学等で学んだ高度なデジタル技術を生かして働きたいと感じる就業の場と、県内企業の現状とのミスマッチがあると思われます。 このミスマッチの解消には、県内企業のデジタル化による高度化が不可欠でありますので、県内企業のデジタル化をリードする情報サービス産業に対して、より高度な情報サービスを提案・提供できるよう支援するとともに、ものづくり産業においては、IoT、AI、ロボットなどを活用し、製造工程の効率化や品質の安定化等につなげる製造現場の高度化を進めるため、経営者の理解を深めるセミナーの開催やコーディネーターによる指導・助言などの支援を行ってまいります。 こうした本県企業の高度化を通して、高度なデジタル人材が活躍できる就業の場を拡大してまいりたいと考えております。 加えて、女子学生をはじめとする若者は、就業先の選択に当たって職場環境も重視しているため、今年度から新たに、社会保険労務士を職場環境改善アドバイザーとして県内企業に派遣することとしており、若者にとって働きやすい職場環境の改善にも取り組んでまいります。 こうした取組のほか、企業誘致により魅力ある就業の場を新たに創出することも重要であります。このため、若者や女性が専門的な知識や能力を生かせるソフトウエア業やデザイン業などソフト産業の誘致に力を入れるとともに、理工系学生の受皿となる研究開発型企業には山形県企業立地促進補助金の補助率を上乗せするなど、戦略的な企業誘致活動を行ってまいります。 一方で、こうした就業の場の創出とともに、県内企業の情報を県内大学等の学生にしっかりと届け、県内就業・定着につなげる取組も重要であります。このため、本県独自の山形県就職情報サイト等により、県内企業の就職情報等を強力に発信するとともに、総合支庁による学生と管内の魅力ある企業をつなぐ機会を創出するなど、県内大学等と連携した取組を進めてまいります。 県としましては、新型コロナの影響による地元回帰のニーズの高まりを若者の県内定着のチャンスと捉え、県内で学ぶ高度なデジタル人材がその学びを生かして働くことができる魅力ある就業の場を創出することによって、若者が本県で生きがいを持って働き、暮らし続けることができるようにしっかりと取り組んでまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 斎藤観光文化スポーツ部長。 ◎観光文化スポーツ部長(斎藤直樹君) 私に二問いただいております。 初めに、日本遺産及び文化財等を活用した観光戦略についてお答えいたします。 先人から大切に受け継がれてきた歴史や文化を掘り起こし、魅力ある地域資源として磨き上げていくことは、本質的な価値を求める旅行者に高い訴求力が期待されるなど、本県の観光振興に資する重要な取組であると考えております。 本県には四つの日本遺産が認定されておりますが、御紹介いただいた松ヶ岡開墾場をはじめ、県が事務局を担っております「出羽三山『生まれかわりの旅』」「山寺が支えた紅花文化」などでも、これまでも、国内外に向けた情報発信や地域の受入環境整備のほか、関係市町村や地域の方々と一緒になって、それぞれの地域資源を生かした取組を進めてきたところです。 例えば、「出羽三山『生まれかわりの旅』」では、途絶えた西山和紙を源流とする月山和紙の紙すきを他地域の皆様との交流拡大により地域経済の活性化につなげる取組や、古くから出羽三山への参詣者が利用した六十里越街道を舞台としたトレイルランニング大会の開催などを通して街道の認知度向上や新たな魅力の創出を図る取組を行っておりますし、「山寺が支えた紅花文化」では、かつての最上川舟運による上方との紅花交易を背景に、今なお県内各地に残る蔵座敷に光を当て、歴史文化資産としての価値・魅力を広く発信する取組を進めてきたところです。 また、これ以外にも、本県の特徴である精神文化を基にした観光振興に取り組んでおり、「やまがた出羽百観音」をテーマに、本県に古くから深く根づく観音信仰や、最上、庄内、置賜の各三十三観音におきまして、県内外から巡礼者が訪れる特徴を生かし、その魅力を高めながら、三つの霊場会や県内外の旅行会社と連携し、県内周遊の拡大に結びつけていきたいと考えております。 さらに、今年展開されております東北デスティネーションキャンペーンに向けた新たな素材といたしまして、置賜地域に残る伊達家ゆかりの山城跡に着目し、関係市町の観光部署や教育委員会と連携して実地調査を行った成果といたしまして、地元ガイドと巡るウオーキングイベントを実施するなど、地域資源の再発掘や新たな視点による磨き上げも行っており、これらの取組に対しては、旅行会社などからも歴史的ストーリーによる観光者の満足度向上につながるものと高い評価をいただいているところです。 今後は、これらの取組に加え、山形ならではの歴史物語や地域の暮らし、文化の価値を活用した取組をさらに進めてまいりたいと考えております。また、こうした地域の歴史や文化に根差したストーリーによる交流を進めるには、地域にいてそれを企画し伝える人材の育成が特に大切でありますので、地元の方々に加え、市町村や観光協会、観光事業者、地域DMOと連携して進めることが重要であると考えております。 加えて、こうしたストーリーを観光客のニーズを捉えて効果的に発信していくため、今年度から、県の観光情報ポータルサイト「やまがたへの旅」を活用したデジタルデータの収集と分析に基づいたマーケティングを行っており、その結果を基に、本県ならではの歴史や文化、伝統などに興味関心があるターゲット層に向け、個々のニーズに合った情報を適時適切に発信し、観光誘客に努めてまいりたいと考えております。 次に、文化財の保存についてでございます。 文化財である建造物の防災対策につきましては、その大半が木造であるということもございまして、防火対策が基本であるとされており、平成三十一年四月のフランスのノートルダム大聖堂、同年、令和元年十月の首里城の火災を契機に、文化庁におきましては、国宝及び国指定重要文化財の今後五年間の重点的な防火対策が進められ、本県でも、昨年度から羽黒山五重塔の消火ポンプや自動火災報知設備等の更新工事が、今年度は上山市の旧尾形家住宅の放水銃などの更新工事が進められているところです。 一方、文化財の耐震対策につきましては、平成七年に発生した阪神・淡路大震災を契機に本格的な取組が始まり、平成二十五年度から二十九年度にかけ、旧鶴岡警察署庁舎において解体修理工事に併せて耐震補強工事が実施され、また、今年度は、旧西田川郡役所で災害復旧工事に併せ耐震補強工事が進められているところです。 これらの文化財の防災対策や耐震対策につきましては、それぞれの施設の修繕計画などに併せて進められているところですが、自己資金の調達など所有者の経済的負担が伴うことから、対策が進まない施設もあります。 県では、施設ごとに所有者のニーズや実情に応じ、計画的に必要な対策を進めるとともに、支援の在り方や所有者に対する文化財防災の重要性についての効果的な意識啓発などについても検討してまいります。 次に、文化財の保存のための担い手育成についてですが、県では、文化財保存活用大綱の策定に向けて準備を進めているところであり、昨年十月に県指定文化財の所有者や市町村への実態把握のための調査を行ったところでございます。それによりますと、市町村などからは、過疎化や高齢化による地域社会の衰退や、地域の歴史・文化に対する関心が希薄になっていることなど、文化財を取り巻く地域社会の課題を指摘されております。 また、多くの所有者からは、建造物や美術工芸品などの有形文化財について、維持管理の負担が大きいことと、その継承につきましては、相続などにより行う見込みとの回答が多かったものの、中には、自治体や博物館、美術館への寄贈や売却を検討している例も見られました。 また、伝統芸能などの無形民俗文化財につきましては、保存団体構成員の高齢化が顕著になってきており、ほとんどの団体で後継者の確保が課題となっていることが将来の活動継続に向けて不安材料になっているという実情が明らかになっております。 こうした文化財を取り巻く実情を踏まえ、文化財の継承や担い手の確保に当たりましては、所有者や保存会だけでなく地域全体で取り組んでいくことが必要であると考えており、現在策定を進めている大綱においても、重要な視点として取組方針の一つに位置づける方向で検討してまいります。 また、今後、県の大綱策定とともに、各市町村の文化財保護に向けた地域計画の策定を促し、その取組を具体化していくことによって、地域全体による文化財の継承につなげてまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) この場合、休憩いたします。 午後一時再開いたします。     午後零時十八分 休憩     午後一時零分 開議 ○議長(坂本貴美雄議員) 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑及び質問を続行いたします。 二十二番小松伸也議員。 ◆22番(小松伸也議員) 自由民主党小松伸也です。このたびは、思いがけず一般質問の機会をいただくことができましたことに、まずもって感謝を申し上げたいと思います。 初めに、新型コロナウイルス感染症対応に関わる全ての皆様方に感謝と敬意を表したいと思います。 「窮地のときにこそその真価が問われる」、そう言われますが、コロナ禍の今、私たちにとってもそうしたときであるというふうに考えます。 イギリスの経済危機を立て直した鉄の女、初の女性首相マーガレット・サッチャー氏は、こんな言葉を残しています。「不一致があれば、私たちは調和をもたらしたい。誤りがあれば、私たちは真実をもたらしたい。疑念があれば、私たちは信頼をもたらしたい。絶望があれば、私たちは希望をもたらしたい。」。私もそうあるべきだと思います。そうした姿勢を尊重する議論になるよう思いを込めて、さきに通告いたしました質問をさせていただきます。 初めに、県と市町村との意義ある連携の在り方についてです。 県と市町村の関係性については、地方自治法の規定の中に原則が示されています。例えば、第五条二項により、都道府県は市町村を包括するものとされていますが、市町村の区域の全部を合わせたものという意味であり、市町村の上位に立つ地方公共団体となっているのではありません。都道府県は、広域的な地方公共団体として位置づけられており、市町村とではその機能面において差異があります。第二条五項に、都道府県が処理する事務は、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの、その規模または性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものとされており、限定的に規定されています。同六項において、都道府県と市町村は、その事務を処理するに当たっては相互に競合しないようにしなければならないとされています。 県民が望む私たちが目指す山形県を創造し続けるために、多くの課題を乗り越え続けなければいけないことは御承知のとおりです。その状況は、コロナ禍を経て一層顕著なものになっているように感じています。県と市町村それぞれの立場での責任と役割、何よりも権限を尊重し合いながら協力していくことが必要です。そして、そうした互いへの尊重を維持していくために必要不可欠なプロセスが対話だと思っています。 県と市町村の連携の推進は、人口減少問題の克服と成長力の確保を図り、将来にわたって活力ある地域社会を維持・形成していくため、また、それぞれの地域創生の実現に向けて、地域の特性を生かした積極的・効果的な取組を実現するためになくてはならないものです。 しかし、さきの二月定例会で提出された保育料段階的無償化事業をきっかけとして、山形県市長会から困惑の声が上がり、県と市町村との連携の在り方に課題があると指摘される状況が生じました。 こうした中、五月十四日に総務常任委員会と山形県市長会の首長方とのリモート意見交換会が開催されたとのことで、渋間総務常任委員長から、山形県市長会から提出された「県と市町村の『連携』に係る課題について」と題された資料を頂きました。 資料の冒頭に、保育料段階的無償化事業を一例とした五つの課題が挙げられています。「一、基礎自治体の財政自主権について」「二、県からの予算支出は継続して行われるのか」「三、市町村への説明のタイミング」「四、完全無償化へのロードマップが示されていない」「五、制度設計の詰めが不十分である」。そして、この五つの項目でそれぞれに課題の論拠が記述されています。 資料の中で、「県が無償化すると表明すれば住民からの追従要望は高まる。結果として、市町村が独自で行いたかった事業やサービスを削ってこれに充てざるを得なくなる」「持続可能な形で広く行政サービスに努めているが、事前協議なく保育の無償化のような事業が決められていけば市町村の財政自主権の侵食につながる」「無償化事業として県が発表するのであれば県が全額を負担すべきであり、今回のように費用の半額のみ支出する枠組みを貫くのであれば事業名を保育料の半額補助事業と命名すべき」などの意見が述べられていました。資料の結びの記述では、「保育料段階的無償化事業以外の事業においても様々な課題がある。こうした課題を解消し、本来あるべき意義ある『連携』の姿を模索したいと、市長会では考えている。」と述べられています。 それぞれの課題の論拠の賛否はともかく、住民の幸せを共通の目的としているこの連携事業が市行政に対して困惑と苦悩をもたらしているということが何よりも大きな課題であり、市と県との連携への信頼感が揺らいでいることを感じました。 そもそも、本来あるべき意義ある連携とはどのようなものでしょうか。市長会の考えを改めてお聞きしたところ、「県と市町村は対等・協力の関係にあり、地域が抱えている課題について役割分担を図りながら取り組んでいる。県と市町村の役割分担を含め、市町村に影響を及ぼすと考えられる県の施策の企画立案及び実施について、県と市町村が対等・双方向の立場で十分な協議を行い、もって県と市町村の施策全般を効果的かつ効率的に推進していくことが本来あるべき意義ある連携と考えている」とのようなことでした。 県の考え方は、平成三十年に策定された「山形県 県・市町村連携推進方針」に示されています。この冒頭の今後の連携推進の基本的な考え方の中で、市町村の自立的な行政運営を確保するとともに、市町村それぞれの「地域創生」を実現するため、これまでの地域内はもとより、地域の枠を越え、さらには分野の枠も越えて、市町村とのさらなる連携を推進することとしています。 具体的な展開のイメージは、県と市町村との間で連携すべき課題やニーズを把握・共有した上で連携テーマを決定し、新たな取組を一体となって検討・実施し課題の解決につなげるとしており、市町村の思いに寄り添ったものだと読み取れます。 そして、展開のスケジュールもイメージとして記載されており、四月に市町村への連携課題・ニーズ調査を行い、六月から七月頃、県・市町村連携推進会議において調査結果の共有と新たな連携テーマの協議を行い、その後、連携テーマについての具体的な連携方策について実務者レベルで検討を行う。年度末に再度連携推進会議を開催し、連携の取組について共有し、協議・意見交換を行うとしています。 こうした自らの方針にのっとって事業策定が進められていたならば、今回のようにはならなかったのではないかと考えます。 県と市町村の連携テーマ実現のための個別の協議は、各部局と市町村でなされるとのことですが、保育の無償化のように個別の案件であったとしても、恒久的で市町村財政に対する負担が大きい案件については、方針に示されているスケジュールに沿って進められることが大切であると考えます。 市長会総会後に山形市長が述べた「逆の立場で考えてほしい。各市の首長が、ある利用費を無料にするとの公約を掲げ当選し、その後、事業費の半分を県に負担してほしいと言ったときに、県はそれを受け入れられるのか」との指摘に課題の本質をかいま見た思いでした。 県と市町村は、住民のために様々な行政サービスを展開しています。その目的は、究極的には住民の幸せであり、両者は、異なる団体であっても共通の目的を持っています。だからこそ、政策については、県と市町村が共に財政負担をしながら実施するものも出てくることは当然あり得ることです。そうした前提が共有されているとした上で、今回の山形県市長会の困惑をどのように捉えているのでしょうか、また、不十分とされている対話の機会の強化を図る考えはあるでしょうか。 これまで紹介した山形県市長会の課題提起を踏まえて、本来あるべき意義ある県と市町村との良好な連携の在り方についてどのように考えているのか、吉村知事に伺います。 次に、保育料段階的無償化事業推進に伴う新たな課題への対応についてです。 保育の無償化を実現することは、県民の多くが歓迎することだと私も思います。子育て負担の軽減について異論はありませんし、首長方もできればそうしたいという方がほとんどだと思います。しかし、保育対象人口や潜在需要数、財政状況や負担感の差、また受入れのための施設のキャパシティーや保育士の確保などなど、自治体ごとに違った事情を抱えています。 今回打ち出された保育料段階的無償化事業に対しても、その受け止めは一様ではありません。私の選挙区の町村においては、この事業に対してよい反応があります。首長方からは、「既に単独で事業を実施している」とか「まさにこれから町単独であっても事業化したいと思っていた」とか、「県が負担してくれることはありがたい」などの声が聞かれました。 しかし、同時に、新たな課題を懸念する御意見もいただきました。地元の町長からは、以前同様の事業を展開したとき、申込者数が急増し待機者が発生してしまったとのことでした。公費負担により無償であるにもかかわらず、望んでも保育を受けられない方々にとっては、税再分配における不平等が発生していることになることから、今回の段階的無償化についても、それに伴って増加する保育需要にどのように対応していくのか検討しているとのことでした。財政措置が必要になるのは、無償化のための保育料の負担分だけでなく、施設の拡張・拡充や保育士確保のための財源の検討も必要となります。こうした負担増に対しても連携した財政措置を検討してほしいとのことでした。 保育の無償化の実現には、費用負担という被保育家庭への直接的な支援だけでなく、市町村においてはほかにも様々な課題を解決しなければいけないとのことであります。こうした課題の解決に向けて、例えばですが、保育料段階的無償化事業をスタートさせる数年間は緩和期間を設け、保育料の補助としてだけでなく、各市町村の事情に沿って保育料段階的無償化の目的を達成するための準備を含めてフレキシブルに執行できる交付金のような形にしてはどうでしょうか。 現場の課題の顕在化を基に、県として市町村の負担を把握し、事業の在り方を検討するためにも、市町村との事前協議は必要であると考えます。 このたび、しあわせ子育て応援部では、全市町村に出向いてヒアリングを実施し、市町村の様々な事情を考慮し、事業内容を調整しているとのことでした。 そこで、市町村の状況をどのように捉え、潜在化している新たな保育需要を踏まえた保育所の人員確保、施設整備などの課題への対応を含め、どのような内容をどのようなスケジュールで市町村に提示していくのか、また、保育を望む方々全員が保育料段階的無償化の恩恵を享受できるよう、市町村とどのように連携していくのか、しあわせ子育て応援部長に伺います。 続いて、移住定住・関係人口創出拡大の推進についてです。 コロナ禍は、私たちの生活に多くの変容を強いています。それは容易なことではありません。しかし、これまでの多くの変容を、しなければならないと考えるのではなく、することができると考えられるかどうか、地方行政の力量が試されています。ワクチン接種が進み元の状態のように戻ることは、誰もが願う私たちの希望ですが、発展的な変化をもう一つの希望として生み出していくことが今の私たちの使命であると強く感じています。 アフターコロナを迎えたときに、県政に携わる私たちが、そして県民が、「あのとき発展的に変容することができた」と結論づけることができるよう、コロナ禍の真っただ中にある今こそ、アフターコロナでの発展的ビジョンを示し、行動すべきであると考えます。 今回の変化の中で最も注目すべきは、密から疎への変容でしょうか。仕事も暮らしも首都圏へ集中し、多くの世代でそれは魅力と映っていましたが、今、起き出している分散へのプレッシャーは、新しいスタイルと新しい価値を許容しようとしています。地方への関心の高まりは、そうしたパラダイムシフトのプロローグとも言えます。 今年度の新規事業の中に、これまでの移住・定住を推進する事業とは一線を画す、仕事や山形の魅力等を通じたアプローチによる新たなコミュニティーづくりに挑戦する事業があります。それは、移住・関係人口創出拡大推進事業です。この新たなコミュニティーづくりには、二地域居住やワーケーション、副業などを検討する首都圏の方々にとって、必然的に山形県を選択するモチベーションにつながる可能性を感じました。 また一方で、創業希望者や県内で事業を起こそうと考えている若者、リスタートを目指す方々など、多様な人々の起業・創業を支援する拠点として、霞城セントラル内における創業支援センターの設置が新規事業とされています。このセンターを拠点に、産学官金等の関係機関が連携して、様々なビジネスアイデアの具体化による県内での事業創出や雇用拡大を促進するとされています。 まさに事業創出や雇用拡大は本県の喫緊の課題ですが、大切なのは、この施設をどうやって活用するのか、どうやって意欲ある方々の拠点として盛り上げていくか、そうした器の中身の仕掛けが重要となります。 そこで、私は、さきに申し上げた移住・関係人口創出拡大推進事業に着目しました。この事業による新しいコミュニティーが、新たな志向を持つ方々と山形県との絆を育み、器の中身となって活動する人を供給する役割の一翼を担うことができれば、面白い化学反応が起きるのではないかと考えました。パラダイムシフトが起こりつつある今の先のアフターコロナに向けて、魅力的なプレゼンテーションとなり得ます。 勝手な解釈を申し上げましたが、二つの事業は部局も違っています。しかしながら、連動を意識して進めることでシナジー効果が生まれると考えています。 この二つの事業についてどう連携していくのか、また、その先の発展方向について、みらい企画創造部長に伺います。 次に、自治体DX、デジタルトランスフォーメーション推進の取組についてです。 私は、地方が転出超過の状況に陥っている最大の要因について、大都市のほうが教育機会と勤務先の選択肢を豊富に提供できているからだと考えています。さらに、大都市圏では提供されるサービスや娯楽も豊富であり、企業としても、大都市圏に集積することが人材確保の面でも営業活動の面でも有利であるため、ますます大都市一極集中が進んでいく構造となっています。しかし、大都市圏に物理的に住む以外にもそうした選択肢や提供されるサービスや娯楽を享受する方法があったとしたらどうでしょうか。 前段の質問での取組もそうした方法の一つだと言えますが、コロナ禍を受けて発展的変容を成し遂げるために注目されるもう一つは、自治体におけるデジタルトランスフォーメーション、DXです。DXとは、単なるデジタル化ではなく、デジタル技術を活用し、組織内部はもちろん、組織外や社会全体で情報を共有し、ネットワーク化することを指すもので、かつ人々の生活をよりよいものに変革していくことの総体を指す用語です。 コロナ禍の中、感染防止のため、社会全体で書面の受渡しや対面による説明をできる限り避け、リモートワークやオンライン会議の導入が求められており、それは行政においても同様です。昨年七月に閣議決定された政府の「骨太方針二〇二〇」において、「『新たな日常』構築の原動力となるデジタル化への集中投資・実装とその環境整備」いわゆるデジタルニューディールの取組として、行政手続の抜本的なオンライン化やワンストップ化、手続の簡素化、書面・押印・対面主義からの脱却、国・地方を通じたデジタル基盤の構築、オープンデータ化の推進などが目標として掲げられました。 また、今回のコロナ禍や激甚化・頻発化する災害対応など、ライフスタイルの変化や人口構造の変化により、自治体が担わなければいけない新たな課題が生じている一方、それに対応する職員数の減少により、一人当たりの業務量は増加傾向にあり、業務負担が増しています。限られた人員で業務を回していくとすれば、従来の業務を効率化することが欠かせません。そのためには、紙媒体中心の業務プロセスを見直し、デジタル化を推し進めていくことが有効であり、重要です。 さらには、自治体や行政におけるDXとは、データ化された情報を公開し、官民が連携しながら社会課題の解決に役立てていくことを示しています。 例えば、三重県では早くからスマート改革を開始し、スマートガバメント--県庁改革として業務の生産性、住民サービスの観点からアップデートを図る取組、スマートワークスタイル--職員のみならず民間部門も含めた新しい働き方を模索する取組、スマートソリューションズ--テクノロジー活用による社会課題解決の実証を進める取組、これら三つの項目に整理して推し進められています。 こうしたスマート自治体への転換には、今のシステムや業務プロセスを前提とした改築方式ではなく、今の仕事の仕方を抜本的に見直す新築方式が必要だとしています。三重県の取組には、手間を省くための必要な手間を惜しまない、そんな意志を感じました。 当県では、今年三月に「Yamagata 幸せデジタル化構想」が示され、県民の幸せを中心に据えたデジタル化を目指すとしています。現状の生活の中でのデジタル社会に向けたビジョンが掲げられていますが、この場合、重要なことは、単にデジタル的なものを取り入れていることを殊さらにアピールするのではなく、誰でも理解できるビジョンを示し、住民一人一人にとってどんな変化があるのかを具体的に示すことだと思います。 政府は、デジタルニューディールの実行計画として、昨年十二月二十五日にデジタル・ガバメント実行計画を閣議決定しました。あわせて、総務省は自治体DX推進計画を策定し、二〇二六年三月までに情報システムの標準化や行政手続のオンライン化、マイナンバーカードの普及促進、AI・RPAの利用促進、テレワークの推進、セキュリティー対策の徹底などに重点的に取り組むとしています。総務省の令和三年度自治体DX推進関連予算は、令和二年度三次補正予算と合わせて約三十八億円余りとなり、前年度の五倍の予算を計上したことからも、政府が本気であることが読み取れます。 その中で私が何よりも注目しているのは、政府が全国規模のシステム基盤である共通クラウド「ガバメントクラウド」を二〇二五年までに構築し、自治体の基幹系十七業務システムについて、関係省庁が策定する標準仕様に準拠したシステムに移行することを求めていることです。これらの計画が進めば、今後、自治体DXは劇的に進行すると思われます。デジタル・ガバメント実行計画では、この標準準拠システムへの移行により、自治体のシステム運用経費の少なくとも三割を削減することを目指すとしています。 こうした自治体がDXを推進する際、ただ既存の業務をデジタル化するという意識では不十分であり、肝腎なのは、DXを組織の方針として落とし込むこと、自治体の施策として横断的な体制をつくること、職員のリテラシーの向上を図ること、この三つが重要になります。こうした事項に県ではどのように取り組んでいるのでしょうか。また、市町村への支援が不可欠となる新しく標準化される情報システムへの円滑な移行に向けて連携をどのように図っていくのか、みらい企画創造部長に伺います。 続いて、東北農林専門職大学の魅力創造の取組についてです。 コロナ禍を受けて教員の招聘活動が難しくなり、開学時期の延期を余儀なくされた東北農林専門職大学の第三回基本計画検討委員会が五月二十六日に開催されました。早ければ二〇二四年四月となる新たな開学目標のスケジュールが示されたとのことでありました。新設された専門職大学整備推進監に神山修氏が着任され、体制の強化がなされました。目標の開学時期まで三年を切りましたが、今後、準備の山場は、文部科学省への設置認可申請を目指す来年十月とのことでしたので、推進監におかれましては、魅力的な大学をつくるその一点において、妥協することなく進めていただきたいと思っています。 思いがけず得ることになったこの一年の時間を、一冬を雪の下に寝かせることで甘みを増し価値を高める雪室野菜のように、大学の魅力と価値を高めるための時間として、生きたものにしていただきたいと強く願っています。 今回の基本計画検討委員会では、大学の特徴的な科目として力を入れる臨地実務実習先の候補が示され、幅広い学生のニーズに対応できる内容であるとのことでした。また、懸案となっていた就農・就職支援として、キャリアサポートセンターを設置する案も示されており、認可申請に向けてより充実した内容になったと評価しています。 その上で、さらに求心力を増すために、職業実践を含む学びの魅力、地域から見た存在の魅力、これら二つの魅力の強化が重要だと感じました。 例えば、大学の学びの魅力を増すために、農業の分野においての最先端や革新の分野、生産だけでなく開発の視点のバイオやスマート農業、また、「実践からの探求」「探求からの実践」相互の視点でのアプローチ、そしてプロジェクトファイナンスなどの融資や行政補助、ファンドやベンチャーなど多様化している資金調達分野などの学びの提供、そうしたことの検討があってもいいのではないかと感じましたが、いかがでしょうか。 設定したカリキュラムに沿って教授を探すだけでなく、慶應先端研のように、注目される魅力的な研究課題を持つカリスマ教授のような方を招聘して、研究テーマに沿った科目を設定する組立て方もあるように思います。いずれにしても、学びの魅力を創出する上で魅力のある教授陣の選抜は重要だと考えますが、いかがでしょうか。 また、検討委員会の中で、「学生の視点に立つことが大切であり、アンケートを取ってみてもいいのでは」との意見が出たとのことでした。学生にとっての魅力が何なのか、意識や課題を調査した上で学びの魅力を検討することは必要なことだと思いますが、いかがでしょうか。 地域視点での魅力の強化については、地域創生につながる取組の強化となります。既にオール山形農林業専門職大学応援プロジェクト会議が立ち上がり、民間からの支援表明がされており、その枠組みの整備が検討されています。こうした取組により、市町村や地域政財界と協力して大学を育てていただいたその先には、大学で生み出された人材や技術が地域や地域企業の新たな可能性を育てていきます。その結果として新たな雇用を生み、企業の集積が始まり、元気な地域づくりにつながっていくことを実現することで地域創生がなされていく、そうしたビジョンを描けると感じられることが重要なことではないでしょうか。 検討委員会の委員の意見として「大学の周辺に市民農園を作るなど、学生と地域住民が交流できる仕組みが必要だ」との意見が出たとのことでしたが、地域住民との関係性もまた相互にとっての魅力となります。例えば、県と市町村が検討を行っている高規格道路に近接する道の駅と連携した取組を検討することも、プロダクツ、プロデュース、プレース、プライスを学びマーケティングを実践で体現する魅力的な学びの場を得ることにつながるのではないかと考えています。 現状に対して感じることを申し上げましたが、基本計画検討委員会で出された意見を踏まえ、県は、東北農林専門職大学の魅力を創出するために、魅力的な教授陣の招聘を含めどのような検討を進めているのか、そして大学の設置による地域創生をどのように考えているのか、農林水産部長に伺います。 最後に、県産木材の利用促進について伺います。 コロナ禍は、農林水産業の分野にも大きな影響をもたらしていると認識しています。例えば、私の地域で産地化されている促成栽培のタラノメやウルイは、首都圏の料亭などが主要な取引先であり、業務需要の減少により価格が下落し、深刻な影響を受けていました。このため、緊急支援対策として、青果物の価格安定事業の対象品目に追加するということで対応いただきました。また、飲食店などを中心に業務用米の消費が落ち込んだ結果、民間の在庫が増加しており、米価の下落も懸念されているところです。 このような中、木材の流通の状況はいかがでしょうか。 コロナ禍が木材の需給バランスにも影響を及ぼしていることが懸念されています。昨年の予算特別委員会では、適正な価格でA材を引き取る需要先が少ないことが木材価格全体を低迷させる要因となっており、生産量を高め、山の価値を高め、森林所有者の意欲を高めるためにも、A材の利用拡大を図ることが森林ノミクスを推進する上で必須の取組であることを詳しく論じさせていただきました。 しかし、今年度になって、世界的にウッドショックと言われるような構造用木材の逼迫状況が起こっています。コロナ禍を受けて、中国やアメリカで郊外への分散が起こっており、住宅建築需要が急激に増加しているとのことです。そのため、米松などの輸入材が入りにくい状況が発生し、構造材の品薄状況が発生しているとのことです。 このことは、県産材にとっても好機と捉えられるのではないでしょうか。実際に、酒田港から中国へ国内価格並みの高値で構造材用として丸太の輸出も始まっています。山主への還元価格も相場以上だったとのことでありました。 質問した当時、駒林農林水産部長からは、A材のさらなる利用拡大を図るため住宅支援の棟数を拡大して強化する、設計関係者や市町村の担当者を対象とした無垢材を効果的に利用した建築研修会を開催する、県外への販路を拡大するために市町村の姉妹都市制度等を生かし森林環境譲与税を活用した都市部との相互交流を通じて県産木材利用を推進する、酒田港からの製材品の試験輸出について支援する、などの答弁をいただきました。そうした施策に対して、コロナ禍による目まぐるしい木材の流通環境の変化はどのように影響しているでしょうか。ウッドショックと言われている現状への積極的な対応は検討されているでしょうか。 また、公共事業などで県産材による木構造化を模索する場合、年度内執行の壁を解決するための県産構造材調達の仕組みとして、小田原産木材調達基金を参考にした取組の検討を提案いたしましたが、その後の検討の状況はいかがでしょうか。 コロナ禍からアフターコロナを見据えた県産木材利用推進の今年度の取組について農林水産部長に伺います。 以上、この場での私の質問を終わります。 ○議長(坂本貴美雄議員) この場合、答弁を求めます。 答弁の順は私から指名します。 吉村知事。 ◎知事(吉村美栄子君) 小松議員から私に県と市町村との意義ある連携の在り方について御質問を頂戴しましたのでお答え申し上げます。 私は、県政運営の起点は県民、市町村であり、課題解決のためには、地域や現場の御意見を丁寧にお聞きすることが何より大切であると考え、第四次山形県総合発展計画におきましても、政策推進の基本姿勢として「県民視点」「対話重視」「現場主義」、さらには「市町村との連携強化」を掲げ、県勢発展に向けて取り組んでおります。 県と市町村とは、これまでも、道路や橋梁といったインフラや農業基盤の整備、さらには防災や福祉、観光振興などあらゆる分野で、様々な形で連携しながら政策を推進してまいりました。 こうした政策目的を有効かつ迅速に実現するため、これまで取り組んできた県と市町村による協調した財政支出も有効な連携手法の一つと考えております。協調して支出することにより事業規模が拡大し、県民や事業者の便益が高まるなど、県全体の発展に相乗効果を発揮することが期待できます。なお、国庫補助事業の多くは、国と地方とが協調して財源を支出する形式となっているものと認識しております。 次に、山形県市長会が「県と市町村の連携に係る課題」の一例として挙げている保育料段階的無償化事業について申し上げますと、本来、ゼロ歳から二歳までの保育の無償化は、政府が全国一律で行うべきものと考えております。この保育料無償化は、私が全国知事会の男女共同参画プロジェクトチームのリーダーとして他県の知事とともに提言をしてきております。さらに、県の総意として、令和四年度の政府への施策提案におきましても無償化を要請しているところでありまして、地方全体の大きな課題とも言えるものであります。 ここで重要なのは、本県の将来像であると思います。国立社人研の推計方法で推計しますと、本県の人口は二〇六〇年には五十九万人にまで減少するとされております。人口減少が急激に進行する中にあって、地域社会や産業の活力を維持向上させていく上で、多様な人材の活躍が不可欠でありますので、そのためには、子供を預けて働く共働き世帯への支援などの環境整備も急務であると考えております。 私は、県全体の発展を預かる者として、他県とともに政府への施策提案を行いながら、本県において急激に進む少子化への対応や女性活躍の推進が喫緊の課題であることから、保育料の段階的無償化を目指すこととしたところでございます。 この事業について、市長会からは財政自主権の侵食との御指摘もいただきましたが、先ほど述べた多くの国庫補助事業と同様、県の支出に対して各市町村が協調して支出をするか否かについては、市町村の意思、すなわち裁量に委ねていることから、この施策自体が財政自主権の侵食には当たることはないものと考えます。 ただし、県の本格的な予算編成が知事選の終わった一月下旬からとなり、市町村の当初予算編成終了後に提案する形となってしまいましたことから、県としては、市町村のお話を様々な形でお伺いし、先日、無償化に向けた段階的軽減策という形で案を改めて提示させていただいております。今後とも、市町村の御意見もお伺いしながら、丁寧に進めてまいりたいと考えております。 また、ほかに議員から御指摘をいただいた「県と市町村との対話の機会の強化」につきましては、県としても昨年度から検討を行い、県としての案を市長会、町村会に対し三月末にお示ししたところであります。現在、それぞれの組織において御検討いただいていると聞いておりますので、今年度一年間をかけて丁寧に御意見をお聞きしながら、より実効性ある協議の場の設定について検討してまいります。 今後とも、市町村の皆様とともに、より県民、住民の方々に寄り添った施策を展開することで、県民が真の豊かさと幸せを実感できる山形県を全力で実現してまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 小林みらい企画創造部長。 ◎みらい企画創造部長(小林剛也君) 小松議員から私に二点御質問を頂戴いたしましたのでそれぞれお答えいたします。 まず、議員御指摘の関係人口の増加策と、今般新たに設置する創業支援センター・仮称との連携は、その相乗効果により、本県を起点としたポストコロナの新たなコミュニティーを生む可能性があると考えています。 まず、関係人口の増加という観点からは、ワーケーション等の流れを取り込むことが有効です。本県には、豊かな自然や食、温泉など地域資源があり、最近では、施設面からも環境が整ってきているところです。例えば、鮭川村エコパークのWi-Fi完備のコテージ、また、大蔵村の「肘折いでゆ館」にもリモートワークスペースが設けられるなど、自然や温泉を楽しみながら仕事ができる場所も増えています。 これまで県では、首都圏の大企業等とワーケーションに関して意見交換を重ねてまいりましたが、その中の主な御意見としましては、ワーケーションで人々がある地域を訪れる際には、魅力的な複数の場所を移動するケースが多いこと、また、しっかりとしたビジネス機能を有するコワーキングスペースが不可欠であることなどの御意見が聞かれました。これを踏まえると、霞城セントラル内に設置される創業支援センターは、ワーケーション等で来県した方々の交流拠点として大いに活用できるものと考えます。 具体的には、霞城セントラルには既に企業振興公社やプロフェッショナル人材戦略拠点などビジネスに必要な各種支援機関等が入居しており、また、立地面からも、山形新幹線の山形駅に直結しているため、首都圏等から本県を訪れた方々が県内の起業家や経営者の方々と交流を行う上で最適な場所だと言えます。 また、霞城セントラルの一階には観光情報の発信拠点もございまして、来訪者に対して県内のコワーキングスペースや観光地を御案内することによって、平年では三百万人を超える山形新幹線利用者の中の特にビジネス利用者を県内各地に誘客することも可能となります。 現在、新型コロナの影響により、山形新幹線の乗客数は平年の二割から四割程度に落ち込んでおりますが、創業支援センターがワーケーションやビジネスでの来訪者の拠点となることにより、新幹線の利用回復にも寄与します。県では現在、JR東日本と連携し、貨物新幹線の実施や霞城セントラルを拠点としたオンラインセミナーを実施するなど協力関係を深めており、旅客流動などの増加による山形新幹線区の収支改善は、福島-米沢間のトンネル整備やフル規格新幹線の早期実現にも寄与するものと期待しております。 以上、県としましては、ワーケーションなど関係人口の増加と創業支援センターとの組合せにより県内のビジネス環境をより魅力的なものとするとともに、JR東日本等とも協力し山形新幹線の新規需要を創出することで、ポストコロナの活気ある県づくりへとつなげてまいります。 次に、自治体デジタルトランスフォーメーション推進の取組についてお答え申し上げます。 本県では、誰もが幸せになるデジタル化を推進するため、本年三月、「Yamagata 幸せデジタル化構想」を策定するとともに、山形県行財政改革推進プラン二〇二一においては、本構想を踏まえて、テレワークやペーパーレス化等を部局横断的に推進していくことといたしました。予算面でも、令和三年度当初予算におけるデジタル化関連予算は二十九億九千万円となり、昨年度の三倍以上に増額しております。 昨年度の取組を含めました主な成果といたしましては、職員のテレワーク推進のためモバイルパソコンを六百台追加導入したことなどにより、在宅勤務の令和二年度実績は元年度実績の約百倍、延べ三十一人日から三千二百七十四人日へと増加いたしました。行政手続のオンライン化では、従来、県民の皆様に押印・書面・対面を求めてきた行政手続の見直しを進めているほか、六月からは、県が保有するオープンデータを活用し、県民の皆様にとって有益なアイデアやアプリを募集するというコンテストも実施しております。 職員のデジタルリテラシー向上に関しては、県と市町村の職員が共に学び、切磋琢磨する場として、昨年十一月からほぼ毎月、山形デジタル道場をオンライン開催しております。これまでに、酒田市、南陽市などの市町村や、政府、民間企業など延べ十七団体から事例の発表などをしていただき、行政の効率化や住民サービスの向上につながる職員の能力向上に努めております。 これに加え、県庁に派遣いただいております民間のデジタル専門人材と連携し、例えばコロナ対策認証店のデジタル地図表示を短時間のうちに実現したほか、スマート農業などデジタル技術活用のユーチューブ動画を農家の方々向けに作成し、県庁職員自らが現場に赴き撮影し、動画編集し、配信しております。 さらに、コロナ禍で外国との往来が困難な中、若者の国際交流の機会を絶やさないように、イギリスの学生と本県学生とのオンライン交流会も実施しております。 また、質問の二点目にありました自治体における標準準拠システムの導入に際しましては、政府方針によって、令和七年度を目標として完全移行を行うこととされておりますが、市町村では移行作業の負担が大きくなることが見込まれております。このため、県では、市町村としっかり連携し、昨年十二月の山形デジタル道場でも概略説明を行わせていただいたほか、今後は、県内のITベンダーとの協力によって、円滑な移行作業が進められるよう、丁寧なサポートを行ってまいります。 デジタルトランスフォーメーションの推進には、組織の事業規模等に応じて、デジタルツールの取捨選択が不可欠であります。誰一人取り残さないデジタル社会をここ山形県で実現するため、市町村や県内企業、そして県民の皆様とともに幸せデジタル化構想の社会実装を進めてまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 松田しあわせ子育て応援部長。 ◎しあわせ子育て応援部長(松田明子君) 保育料段階的無償化事業推進に伴う新たな課題への対応についてお答え申し上げます。 本来、子育てに係る経済的負担の軽減は、政府が全国一律に行うべき施策と考えますが、保育料段階的無償化事業につきましては、働く女性の仕事と子育ての両立やキャリアアップを実現し、ひいては本県経済の活性化につなげるため、さらに、コロナ禍にあって若い方々が経済的な負担を感じることなく子育てができる環境整備を早急に進めるため、県と市町村が一体となって取り組み、「子育てするなら山形県」の実現を目指そうとするものです。 本事業を進めるに当たって、二月以降、市町村長の皆様方からも、また事務的にもいろいろな御意見をお聞きしてまいりました。さらに、先月十八日から二十六日に担当者が全市町村にお伺いし、それぞれの保育の実情や御意見もお伺いいたしました。実情を踏まえ、限られた保育資源の中で様々な工夫をして取り組まれていることや、市町村によって対象児童数、事務システムなどが異なること、さらには待機児童の問題など、具体的な課題についてお聞きしたところでございます。一方で、保育事業利用者が支援策を享受できるよう、建設的な御意見も頂戴してまいりました。それらを踏まえ、今月四日に改めて実施案を市町村に提示いたしました。 実施案では、開始時期を令和三年九月といたしまして、県費の支出方式は交付金としております。また、市町村の負担は任意としております。交付金の使途は、県の積算基礎に従い、第三、第四階層の負担を軽減するために充当することを基本といたしますが、市町村の実情に応じ、負担軽減策については柔軟な運用ができることとしております。 また、保育料の無償化は、政府に対して全国一律で行うべきであると機会を捉えて提案を続けているところでありますので、段階的負担軽減に係るロードマップとしては、令和六年度まで第三、第四階層の負担軽減を継続するとともに、事業開始後、政府の動向等も踏まえながら検討していくこととしております。 さらに、負担を軽減することで、子育てと仕事の両立支援を促進しますので、入所希望者が増えることが想定されます。その対応といたしましては、育児休業等の積極的な取得促進を図るとともに、施設整備や保育士人材の確保など、必要となる対応について併せて検討を行うこととしております。 現在、負担軽減の実施案と併せて、これらの必要となる対応について、市町村から再度御意見をお聞きしているところでございます。 県としましては、市町村の裁量を尊重いたしますとともに、県民の皆様の「幸せな育ち、幸せな暮らし」の実現に向けて、市町村と一緒に取り組んでいけますよう努力を重ねてまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 高橋農林水産部長。 ◎農林水産部長(高橋雅史君) 私には二点お尋ねをいただきましたので順次お答え申し上げます。 まず最初に、東北農林専門職大学の魅力創造の取組についてでございます。 東北農林専門職大学が、本県のみならず全国から意欲の高い学生が集い、地域にとっても魅力のある大学となるためには、理論に裏づけされた高度な実践力を養成するという専門職大学の特色を打ち出していくことが重要であると考えております。このため、大学の魅力創造に向け、以下申し上げます三点に重点的に取り組んでまいりたいと考えております。 第一は魅力あるカリキュラムの提供であります。令和元年度に実施いたしました高校生アンケート、具体的には、県内の全ての全日制高校、東北、新潟の各高校から計一万六千人を対象として行いましたアンケートの結果では、本県専門職大学に求めるものといたしまして、法人での実習の充実、県内の農林業現場での実習の充実など、農林業の実践的な学びの充実に対する要望が約三〇%と高くなっております。 こうしたニーズへの対応といたしまして、臨地実務実習を特に充実させてカリキュラムに組み込んでおります。これは、県内各地域の優れた農業経営体や林業事業体において、最新の生産技術や経営に触れながら、高度な生産・経営ノウハウを実地で学ぶ科目であり、実践的な農林業を学ぶ上での中核となるものであります。 また、今後の農林業経営者に不可欠となりますグローバルな視野の形成に向けましては、英語等の基礎的な教養はもとより、国内外の農林業事情やマーケティング等の経営理論、金融、観光、建築等、農林業と隣接・関連する分野の学びを充実させるなど、令和二年九月に取りまとめました専門職大学基本計画の中間報告でお示ししましたカリキュラムを土台にして、さらなる磨き上げを図ってまいります。 第二は優れた教員の確保であります。本学の魅力的な学びを学生に教授できる体制づくりに向け、他大学や政府等の研究機関で勤務されている方を最大で十五名程度教員として招聘する必要があります。本学の基本構想やカリキュラム等を理解いただいた意欲ある教員を確保するためにも、コロナの影響下にはありますが、関係機関とも連携協力しながら、様々なネットワークを活用し、優れた教員の招聘活動に全力を注いでまいります。 第三は地域にとって魅力のある大学づくりであります。例えば、大学発ベンチャーの創出や、地域住民と大学生の交流を推進することにより、専門職大学として「やまがた創生」に貢献していくことが重要であり、まずは、最上地域の市町村、JA等と最上総合支庁が参画する最上地域連携プロジェクトチームにおいて専門職大学設置を契機とした地域振興策の検討を支援し、他の地域にも順次拡大してまいりたいと考えております。 こうした取組によりまして、東北農林専門職大学が、学生・教員にとって魅力のある教育・研究を実践する大学となるよう、さらには地域にとっても魅力のある大学となり、大学起点の「やまがた創生」の風を起こしていけるよう、新設された専門職大学整備推進監の強力なリーダーシップの下で、開学に向けしっかり準備を進めてまいります。 二点目は、県産木材の利用促進であります。 本県における木材ニーズは、集成材工場の増設や木質バイオマス発電の拡大に伴いB材、CD材の需要が伸びている一方で、製材用のA材は住宅建築の伸び悩みから横ばいで推移しております。森林資源の循環利用を促進するためには、バランスのよい木材需要の確保が不可欠であり、A材の利用拡大が課題となっております。 また、長引く新型コロナウイルス感染症の影響により、木材関係者からは景気低迷に伴う建築需要の減退を懸念する声もあり、木造の民間建築物への支援の強化や、公共建築物での木材利用を促進する取組が求められているところであります。 こうした状況を踏まえ、県では今年度、県産A材の需要拡大に向けて、一つには製材品の需要に応じた安定的な供給体制の強化、二つに店舗等の民間建築物の新築に対する支援の強化、三つに中規模・大規模の木造建築の設計が可能な人材の育成に重点的に取り組んでまいります。 まず一つ目の製材品の需要に応じた安定的な供給に向けた構造材バンクの創設であります。これは、通常は受注生産で納入に期間を要する、はり・桁などの構造材のJAS製品を事業者が常時ストックし、木造建築の設計段階から納期が見通せる体制を民間ベースで創設するものであります。これは、小田原市の市有施設の木造化に向け基金を創設する形式で先行して木材を発注するようにした取組なども参考にしながら、この秋にも稼働させるべく準備を進めております。 次に二点目、民間の木造店舗等に対する支援につきましては、昨年度まで一棟当たり二十万円の定額補助でありましたものを、よりインセンティブが働くよう、「やまがたの木」認証材の使用量に応じた支援とするとともに、上限額を倍の四十万円に引き上げ、民間建築物での県産木材の利用促進に取り組んでまいります。 三点目の中・大規模の木造建築の設計が可能な人材の育成に向けましては、木造を提案できる建築士が少ないという現状に鑑み、設計に必要な知見・技術を習得していただくため、木造設計の基本となる樹木や木材の特性、一般流通材を用いた構造計算の基礎などを学ぶ講座を開設いたしまして、山形県建築士会と連携しながら、木造設計を行う建築士を育成してまいります。 さらに、今年春先から、新型コロナの世界的な蔓延に伴い、米国や中国の木材需要の急増とコンテナ不足に端を発し、木材需給が逼迫し木材価格が高騰するいわゆるウッドショックが起きており、県産木材の需要拡大に向けた好機と捉えるべきとの意見もございます。 県といたしましては、ウッドショックの動向やアフターコロナも見据え、市町村や関係団体等と連携しながら必要な施策を機動的に講じ、A材などの県産木材のバランスの取れた利用の促進と森林資源の一層の循環利用を図ってまいります。 ○議長(坂本貴美雄議員) 以上をもって通告者の発言は全部終わりました。 質疑及び質問を終結いたします。 ○議長(坂本貴美雄議員) 以上をもって本日の日程は終わりました。 明二十二日から二十七日までの六日間は議案調査、委員会審査及び休日のため休会とし、二十八日定刻本会議を開き、予算特別委員長より審査の経過について報告を求めます。 本日はこれをもって散会いたします。     午後二時三分 散会...