• 廃校活用(/)
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  1. 山形県議会 2020-06-01
    06月22日-03号


    取得元: 山形県議会公式サイト
    最終取得日: 2023-06-17
    令和 2年  6月 定例会(第394号)  令和二年六月二十二日(月曜日)午前十時零分 開議議事日程第三号  令和二年六月二十二日(月曜日)午前十時開議第一   議第八十七号 令和二年度山形県一般会計補正予算(第二号)第二   議第八十八号 令和二年度山形県病院事業会計補正予算(第二号)第三   議第八十九号 山形県知事等の損害賠償責任の一部免責に関する条例の設定について第四   議第九十号 山形県職員等の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例の制定について第五   議第九十一号 山形県手数料条例の一部を改正する条例の制定について第六   議第九十二号 山形県公立大学法人の役員等の損害賠償責任の一部免除に係る額を定める条例の設定について第七   議第九十三号 山形県県税条例等の一部を改正する条例の設定について第八   議第九十四号 山形県地方活力向上地域における県税の課税免除等に関する条例の一部を改正する条例の制定について第九   議第九十五号 山形県事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例の制定について第十   議第九十六号 一般国道二百八十七号道路改築事業米沢北バイパス橋梁(仮称)桁製作架設工事請負契約の締結について第十一  議第九十七号 山形県立庄内総合高等学校特別教室棟改築(建築)工事請負契約の締結について第十二  議第九十八号 除雪機械の取得について第十三  議第九十九号 除雪機械の取得について第十四  議第百号 除雪機械の取得について第十五  議第百一号 排水ポンプパッケージの取得について第十六  議第百二号 化学消防車の取得について第十七  議第百三号 地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構の役員等の損害賠償責任の一部免除に係る額について第十八  議第百四号 県道路線の廃止について第十九  議第百五号 山形県公安委員会委員の任命について第二十  発議第十号 議会の議員の議員報酬の特例に関する条例の設定について第二十一 県政一般に関する質問本日の会議に付した事件 議事日程第三号に同じ。出席議員(四十二名)  一番 阿部ひとみ議員  二番 今野美奈子議員  三番 菊池大二郎議員  四番 原田和広議員  五番 高橋 淳議員  六番 遠藤寛明議員  七番 相田光照議員  八番 遠藤和典議員  九番 梶原宗明議員  十番 五十嵐智洋議員 十一番 関  徹議員 十二番 山科朝則議員 十三番 菊池文昭議員 十四番 松田敏男議員 十五番 青木彰榮議員 十六番 青柳安展議員 十七番 柴田正人議員 十八番 渋間佳寿美議員 十九番 佐藤 聡議員 二十番 矢吹栄修議員二十一番 小松伸也議員二十二番 島津良平議員二十三番 渡辺ゆり子議員二十四番 石黒 覚議員二十五番 吉村和武議員二十六番 高橋啓介議員二十七番 加賀正和議員二十八番 森谷仙一郎議員二十九番 鈴木 孝議員三十一番 楳津博士議員三十二番 奥山誠治議員三十三番 小野幸作議員三十四番 木村忠三議員三十五番 金澤忠一議員三十六番 伊藤重成議員三十七番 舩山現人議員三十八番 田澤伸一議員三十九番 森田 廣議員 四十番 坂本貴美雄議員四十一番 星川純一議員四十二番 志田英紀議員四十三番 野川政文議員欠員(一名)  説明のため出席した者知事         吉村美栄子君副知事        若松正俊君企業管理者      高橋広樹君病院事業管理者    大澤賢史君総務部長       三浦 隆君みらい企画創造部長  大瀧 洋君防災くらし安心部長  須藤勇司君環境エネルギー部長  杉澤栄一君子育て若者応援部長  松田明子君健康福祉部長     玉木康雄君産業労働部長     木村和浩君観光文化スポーツ部長 武田啓子君農林水産部長     高橋雅史君県土整備部長     角湯克典君会計管理者      泉 洋之君財政課長       後藤崇文君教育長        菅間裕晃君公安委員会委員長   吉田眞一郎君警察本部長      佐藤正顕君代表監査委員     武田一夫君人事委員会委員長   安孫子俊彦君人事委員会事務局長  佐藤紀子君労働委員会事務局長  沼沢弘幸君     午前十時零分 開議 ○議長(金澤忠一議員) これより本日の会議を開きます。 △日程第一議第八十七号議案から日程第二十発議第十号まで及び日程第二十一県政一般に関する質問 ○議長(金澤忠一議員) 直ちに日程に入ります。 日程第一議第八十七号令和二年度山形県一般会計補正予算第二号から、日程第二十発議第十号議会の議員の議員報酬の特例に関する条例の設定についてまでの二十案件を一括議題に供し、これら案件に対する質疑と、日程第二十一県政一般に関する質問を併せ行います。 質疑及び質問の通告がありますので、通告順により発言を許可いたします。 十番五十嵐智洋議員。 ◆10番(五十嵐智洋議員) おはようございます。自由民主党の五十嵐智洋でございます。しばらくの間お付き合いくださいますようによろしくお願い申し上げます。 コロナの影響で、花笠まつり、日本一の芋煮会も中止となりました。長井市のあやめまつりも残念ながら中止となって、でも、三密にならないようにお願いしながら、公園は無料で開放しております。ちょうど見頃となりましたので、この週末当たりはぜひ長井においでくださいまして、清楚なアヤメを堪能いただけましたらというふうに思います。 さて、ゴールデンウイークは私もステイホーム、歴史小説を読み返すなどして過ごしておりました。司馬遼太郎先生は、「この国のかたち」というエッセイを六巻出版されていて、日本を形づくった先人たちの数々のヒストリーを書かれております。 徳川時代、日本、国家という概念は誰も持ち合わせていませんでした。徳川の殿様が支配者、将軍であり、何々藩が国であり、藩主が社長、武士は代々藩主から給料をもらい、農民は年貢を払って他国の侵略から守ってもらうなどして国の形となっていました。鎖国をしていましたから世界の情報はあまり入らず、海の向こうで何が起こっているのか殿様でも分かりませんでした。その中で、欧米列強からの植民地政策から免れ、士農工商の身分制度を撤廃し、自由で独立した新しい国の形をつくろうとしたのが、土佐藩の下士だった坂本龍馬などの多くの志士であり、彼らは、倒幕と明治維新に強く関与し、近代国家の礎となりました。 コロナウイルス感染拡大を防ぐため、四月十六日に全国に緊急事態宣言が出され、都道府県の対応をめぐって各知事のマスコミへの露出が高まりました。毎日のように拝見したのが東京都の小池百合子知事です。 五月十九日の朝日新聞に、小池知事について元三重県知事の北川正恭氏の話が掲載されていました。表題は「『演出』思惑通りコロナ後語って」とあり、内容は、「新型コロナ対応で、東京都は全国の他自治体に先駆けて休業要請や協力金給付に踏み切った。政府との対立を『演出』することで、思惑通りに事を運んだ手法は評価できる。ただ、小池氏の動きは時に自分本位に映ることがある。知事選を知名度による人気投票の場にすべきではない。コロナ後の首都をどう描くのか。積極的に都民に語り、信を問う誠実な姿勢が求められる」。すなわち、コロナ後の東京の進むべき形をはっきり示せというもので、私も北川氏と全く同意見であります。 第二波を防ぎ、県内経済、県民の生活を必死に守ることが現在の最大の課題であることはもちろんですが、吉村知事も我々も、将来に向けたコロナ後の山形県をどうするのか語らなければならないと思います。 質問二の合計特殊出生率、質問三の二十歳代、三十歳代の人口減少対策で数字を申し上げますが、大変厳しい状況になっています。若い世代、特に女性の県外流出が止まりません。最大の理由は、これまでも述べてきましたが、地方に安定した雇用の場が少ないため、選択肢、チャンスを求めて都会を目指すわけです。 一九八六年、男女雇用機会均等法が施行され、職場におけるあらゆる男女差別を禁止し、女性の社会進出による新しいこの国の形をつくろうとしたのですが、平成の三十年間は、古い昭和の感覚が抜けない政治家、経済人があまりにも多かったため骨抜きとなり、令和の今に至っても改善していない状況にあります。東京は若い女性が増えていますが、子供を産み育てるパラダイスではないため、東京都の合計特殊出生率は都道府県最低、結果的に日本全体で少子化が進むことになります。 十一年半前、吉村知事が初当選なさったとき、私がもしブレーンであればこのようにアドバイスしました。「知事、若い非正規雇用者を毎年百人正職員に登用しましょう。一人百万円かかりますから一年一億円予算が必要です。毎年百人ずつ増やしてこれを十年間続け、新たに千人の正職員の雇用をつくるのに五十五億円かかりますが、この方たちは地元に定着し、消費し、納税し、地域の絆を守ります。結婚して子供も増えますから、投資した金額の何倍も返ってきます。ぜひ御決断を」。 しかし、具体的な政策を行わなかったため、在任中、若い世代が激減し、出生数の減少に歯止めがかからなくなりました。 二〇一〇年と比較し二〇四〇年に若年女性が五〇%以上減る自治体を消滅可能性都市と日本創成会議が定義しました。発表時の推計では、県内七つの自治体が減少率五〇%以内で消滅可能性都市を免れましたが、予測より早く減少が進み、県内三十五市町村全部が消滅可能性都市になりかねないのが今の山形県の実情であることを認識し、消滅県にならないため、必死の努力を実行しなくてはなりません。それには、十歳代、特に十五歳から十九歳の年代の層の方に、近い将来、多く県内に残っていただけるかが本県の最も大きな課題だと断言します。 今後、例えば年間二百人、五年間で千人分の正職員雇用を新しく生み出し、若者の山形離れを防ぐような大胆な取組を実行しなくてはなりません。県内二十二町村の昨年十月一日現在の五歳刻み人口構成を見ると、二十歳から二十四歳までの女性二千五百七十四人、二十五歳から二十九歳までの女性二千六百十五人に対し、十五歳から十九歳の女性は四千六百七人と、約一・八倍も地域で暮らしているわけですから、この方たちが十八歳時点でごっそり県外に流出することがないよう、緊急な手だてが望まれます。十五歳から十九歳人口の今後の維持政策が喫緊の課題です。 東京都人口は間もなく一千四百万人を超えます。うち二十三区人口は九百六十八万人。二〇一五年の国勢調査から四年半で四十六万七千人以上東京都の人口は増加し、増加分は二十三区が吸収し、とどまるところを知りません。東京二十三区の面積は約六百二十二平方キロ。これは山形市と上山市を合わせた面積とほぼ同じですが、ここに九百六十八万余の人が住み、二百万人を超える近隣県からの昼間人口が加わる世界一の過密都市東京都二十三区です。このままの状態であれば感染症のリスクは収まらず、また、コロナで隠れたようになりましたが、首都直下地震の危険性も再認識しなくてはなりません。 マグニチュード七を超える首都直下地震が三十年以内に七〇%の確率で発生すると発表されてから数年がたちました。十年以内、五年以内に起こっても不思議ではない深刻な事態であることを、都民はもちろん、国民全体で共有すべきです。被害想定は、全壊・焼失家屋六十一万棟、死者二万三千人。五割の地域で停電となり、道路は瓦礫で不通区間が大量発生、鉄道の運転再開に一か月もかかります。膨大な被災者が避難所に入れず地下鉄構内、地下街になだれ込み、政府関係機関は中枢機能が麻痺し、経済危機は全国、全世界に及びます。 東京の超過密を解消し、感染症のリスク、首都直下地震から都民、近隣県民の命を守るには、今から首都圏での生活に不安を抱える住民の移住、本社機能の移転、安全な避難先の確保などに着手しなければなりません。 私は、東日本の地理的条件、気候風土などを見るとき、山形県が東京の窮地を救うのに一番ふさわしいと考えております。土地は広く、水清く、食料生産能力があり、何より人情に厚い県民性。東京駅から米沢まで二時間十分、山形まで二時間半。滑走路は短くとも二つの空港があり、一時間以内で到着します。 かつて田中角栄氏は日本列島改造論を主張、中身は高速道路の建設が主でしたが、東北では、山形県、秋田県は全くその恩恵に浴さず、高速交通網整備は何十年も遅れています。しかし、高速道路が通った地域は皆発展したでしょうか。答えはノーです。逆に高速道路はストローのように大都市に人を吸い寄せ、地方消滅の危機にある市町村は数多くあります。山形県の潜在能力の高さ、県土の豊かさを自信を持って対外的に発信し、東京一極集中の弊害を打破し地方との均衡ある発展を目指す令和の列島改造が日本を救うと考えます。 コロナ後の山形は、次代を担う十五歳から十九歳世代県民の地元定着、列島改造に向けた山形県の魅力発信の二点が最重要と私は考えますが、吉村知事もコロナ後の山形県をどうするか構想があると思います。御見解はいかがか、お尋ねいたします。 次に、合計特殊出生率の知事公約について伺います。 六月五日、昨年一年間の全国合計特殊出生率の統計が発表され、山形県は、一昨年から〇・〇八ポイントダウンし一・四〇となりました。全国順位はツーランク下げ三十一位と低迷し、この記事を読まれた県民の多くは、少子化が一段と進んだ結果に落胆されたと思います。 平成二十九年一月十一日の毎日新聞にこのような記事があります。 「未達成の公約検証へ」「合計特殊出生率一・七〇実現強調」。吉村美栄子知事は三選後初の定例会見を行った。「『合計特殊出生率』を一・七〇にする公約の実現策について、『若者が安心して生活できる環境をソフト、ハードの両面から整える必要がある』と強調した。」「二期目は実現にほど遠い結果に終わっており、『達成できなかった理由』を自ら検証する考えを示した。」中略「『今後四年間で一・七〇を達成できると思ってやらなければならない。将来は二・一ぐらいを見据える』と語った。」 二期目に達成できなかった一・七〇の公約実現に臨む。もっと上に行けるよう頑張ると県民にはっきりと約束、指切りされたのですが、はるかに及ばなかったことになります。 公約の重さは政治家共通のものですが、まして、予算、人事を掌握する知事公約の責任の重さは言うまでもありません。全国で合計特殊出生率が一番高い県は沖縄県の一・八二。私は、合計特殊出生率は、子育てのしやすさ、総合力と考えています。本県は、子育てするなら山形県とうたっていますが、全国順位から、必ずしも評価されていないことを真摯に受け止めるべきと思います。 私は、達成できなかった理由は大きく二つの不足があると分析しています。一つは吉村知事の何が何でも県民との約束を守るんだとの情熱の不足、もう一つは知事公約を進めるスタッフの力不足、この二点です。 ビジネスの世界で社長が目標を達成するには、自ら陣頭指揮に立ち、人材が必要と考えれば他から引き抜いても優秀な人材、スペシャリストを充てます。県庁の組織だけに頼らず、例えば民間から優れた人材を少子化担当副知事に迎え、徹底した施策を展開するなどの手法を取るべきではなかったでしょうか。しかし、県庁内のいわゆるお役所仕事に終始し、ダイナミックな取組はできず、公約は単なる努力目標に終わったのではないでしょうか。人口千人に対して何人子供が生まれるかの出生率も全国平均にはるかに及ばず、四十七都道府県中四十三位と下位が定位置となり、人口減少、少子化に歯止めがかかりません。 吉村知事が最も重要視し、県民が期待した少子化の解消、合計特殊出生率一・七〇の公約を三期目も達成できず一・四〇の低い結果になってしまった理由をどのように検証されたか、御見解を知事御自身の言葉で県民に向けて語っていただきたいと思います。 次に、二十歳代、三十歳代男女の人口減少対策について伺います。 この質問を書いている六月十一日、日本経済新聞の大変ショッキングな記事を目にしました。総務省調べによると、山形県の十五歳から二十九歳までの若い女性の県外転出率が全国一であるというものであり、県から他地域に移る女性のうち、昨年、本県は十五歳から二十九歳までの年齢層が四千五百三十二人、五八・一%に上り、この比率が全国一であり、その大きな理由が女性の賃金が低い傾向にあると分析した内容です。 平成二十年から昨年までの十一年間で少子高齢化が一段と進み、二十歳から三十九歳までの若年男女の減少は極めて厳しいものがあります。二十歳から三十九歳までの男性はこの間、県全体で二三・一%、女性は二五・六%減少しました。二十歳から二十九歳までの二十歳代では、男性二六・六%、女性は三〇・九%も減少しています。一番減少が激しい二十歳代女性の人口は、平成二十年五万五千二百十三人から令和元年三万八千百四十三人に減少。国立社会保障・人口問題研究所は、二〇二五年、五年後の山形県の二十歳代女性人口を三万六千五百四十一人と推計していますが、今年中にこの数字まで届く状況で、五年も前倒しで減少している危機的状況にあります。 若い世代が山形県を離れ首都圏に向かう要因は、日本経済新聞の分析にあるように、賃金が安いこと、すなわち、県内に安定した職場が少なく、特に女性の場合、臨時、非正規などの雇用形態の不安定な企業、団体等が多いため、ニーズに合わず選択肢から外れ、県外に向かうわけです。 二〇一七年一月六日の山形新聞では、無投票三選された吉村知事のインタビュー記事が掲載され、「やまがた創生 加速」「若者格差 是正し活気」と見出しがあります。二期八年の成果と課題を問われ、人口減少の社会減では「進学、就職の際の人口流出をストップし、県内回帰を図る」と述べ、三期目の最重要課題では、「若者の希望実現を挙げたい。若者の正社員化にも力を入れる。富裕層と貧困層に二極化しており、その分かれ目が正社員か非正規社員かになっている」と答えておられます。 私は、昨年六月の一般質問、十二月予算総括質疑で、県が深く関わる県立病院、県庁、社会福祉事業団等の雇用形態に非正規雇用者が多く、新卒者の受入先にはなっていない。チャンスを求めて辞めていく人が多いから改善を検討すべきと申し上げました。非正規の待遇は、フルタイムで働く多くの方が年収二百万円以下。正社員、公務員と比較し半分以下、三分の一程度の収入では、将来に希望が持てず、多くの県外流出予備軍がいると思います。三期目の最重要課題とおっしゃった若者の正社員化に力を入れるとの公約も成果は上がらず、若い女性の減少が止まりません。 吉村知事就任の前年十月から令和元年までの十一年間で、大蔵村では二十歳代女性が百四十一名から三十八名に、七三%も減少しました。小国町では二百五十二名から八十一名に六八%減少、鮭川村六四%、飯豊町六三%、尾花沢市五四%も減少しました。これら市町村では、九十歳以上の女性より二十歳代女性が少ない状態になっています。九十歳以上の女性より二十歳代女性が少ない町村はまだまだあり、県内三十五市町村のうち一市十三町三村が該当します。御高齢者の長寿は誠にめでたいことですが、若い女性が地域からどんどん離れ、地方消滅の危機が現実になっていることをこのまま見過ごすことはできません。 現在、全国の女性知事は東京の小池知事、吉村知事のお二人だけです。以前、ウーマノミクス推進を図り、女性の活躍で日本を元気にしようと意気投合されたとのことですが、東京は合計特殊出生率全国最下位、山形県は若い女性の県外流出ワースト一位であり、東京都、山形県、女性知事の都と県が女性の暮らしにくい自治体の代表のような皮肉な結果となりました。 若い女性の減少は、出会いのチャンスも少なくなり、当然男性も減ってきます。二十歳代、三十歳代の働き盛り、地域の中心となる年代が激減している現状をどう捉え、どのような対策を講じるお考えか、知事の御見解を伺います。 次に四番目、廃校舎の解体費用に対する財政支援について伺います。 少子化、人口減少により市町村立学校の統廃合が進み、元校舎はコミュニティーセンターなど地域の公共施設として活用されている例が多くありますが、老朽化、耐震強度の面から再利用が不可能な校舎も少なくありません。老朽化が著しく利活用困難な校舎を廃校舎として長期間そのままにしておくことは、建物の劣化による近隣住民への危険性、防犯・防火上、また、有害鳥獣のすみかになるおそれ、美観の問題などの点から早めの解体撤去が望ましいことは言うまでもありません。 小国町重要事業要望書では、喫緊の課題として、遊休施設の解体費用に対する財政支援の拡充として、特に廃校舎の解体費用への財政支援を求めています。 小国町には学校統合により廃校となった旧校舎が八校あり、うち六校は地元管理組合に委託、地域活動に利用されています。使われていない二校のうち、旧小国小学校校舎は町の中心部にあり、平成二十六年三月に廃校となってから既に六年経過し、昭和三十七年に建設され、五十八年経過した一部四階建ての校舎は、柱や壁には大きなひび割れが走り、屋根はさび、立入禁止のロープが風に揺れていました。平成二十六年当時の解体費用見積りは二億五千万円とお聞きしました。 小国町は、昭和三十年代には人口が一万八千人を超えていましたが、現在七千人を切るまで減少しています。今年度の一般会計総額は六十億三千百万円で、うち歳入に占める町税は一五・六%の約九億四千万円。同町の総面積は七百三十七平方キロで東京二十三区よりはるかに広く、住民サービスを維持するための財政運営は他の過疎自治体と同じく大変厳しい状況にあり、アスベストが使用されている大規模な旧小国小学校校舎を解体する体力は、現在も、将来も持ち合わせていません。 国からの財政支援がなければ、町の中心にある校舎は廃墟化が進み、豪雪により倒壊の危険性が増します。県内を視察して回りますと、旧何々小学校、中学校と統合や、人口減少によって使われなくなった校舎が見受けられます。平成二十六年度から解体費用について地方債の対象となりましたが、交付税措置はなく、解体経費や除却に係る補助制度もありません。 県教育庁は、十年来、廃校舎等の解体に対する財政支援の充実を文部科学省へ提案しています。昨年度は教育長自ら本省へ要望活動を行ったとお聞きしましたが、総論として現状は厳しいようです。 解体が必要な公立学校は県内に多くあると思いますが、その中でも、市街地にあって民家と隣接し、時間の経過により倒壊しかねない、住民の安全安心な生活に影響を与えることが危惧される建物もあります。強力に国からの支援を求めていくべきと考えますが、教育長の所感を伺います。 次に、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受ける介護事業所への支援について伺います。 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を大きく受けていた四月二十日時点で、県内介護事業所でサービスを休止したところは、村山六、最上十、置賜八、庄内四の計二十八事業所ありました。休止した事業者は、その間、介護報酬、利用料が入らず、経営に大きな打撃があります。 マスク不足は深刻で、通常一日で使い捨てにしていたものを三日間使用することにし、在庫がなくなるのを何とかもたせていたなどが多くの施設の状況でした。四月中旬頃からマスクは少しずつ出回り始めましたが、価格は高騰し、コロナ前と比較し、値段が五倍から中には十倍以上へと跳ね上がり、ゴム手袋、消毒用アルコールなども同様。経費の増加は各施設にとって大きな負担となっています。 介護報酬は二か月後に入ってくる仕組みで、多くの県内事業所は三月末まではほぼ通常どおり営業し、五月まではその分の報酬がありますが、四月休んだ分は六月、五月休んだ分は七月の収入減となり、経営に大きな支障が出ることが予測されます。 介護保険要介護認定にも影響があります。厚生労働省老人保健課では、二月に県に対し「新型コロナウイルス感染症にかかる要介護認定の臨時的な取扱いについて」との通知を出し、介護保険施設や病院等で入所者等との面会を禁止する等の措置が取られることにより、入所している被保険者への認定調査が困難な場合、当該被保険者の要介護認定及び要支援認定の有効期間については、従来の期間に新たに十二か月までの範囲内で市町村が定める期間を合算できるとの内容を示しました。 介護認定の有効期間が近づくと、一か月程度前から市町村の担当者等が施設の職員、家族の立会いの下、利用者の身体状況、精神状態などを調査し、主治医の意見書も踏まえて有効期間後の要介護度を確定します。感染予防の観点から本人との面会が困難な場合には、現状の要介護度のままで一年間延長してよいというものです。 制度上、こうした認定の際の調査を施設に委託できない認知症高齢者グループホーム等のサービスにおいては、面会制限が継続されている限り、恐らく全員の認定に係る有効期間も延長になるのだと思います。入所施設では、緊急時以外、家族の面会もできない状況にあり、現時点では妥当な対応とも言えますが、このことは、施設経営に大きな影響があります。 令和二年五月三十一日だった要介護認定の有効期間が自動的に一年延び、令和三年五月三十一日までになった利用者のいらっしゃる県内グループホームの例を確認しました。この一年間は、それまでの介護報酬と同じになります。要介護度が上がる入所者がそのまま据え置かれれば、施設では正当に受け取れるはずの介護報酬が毎月数万円、一年では数十万円も減収になる可能性があります。 新型コロナウイルス感染症拡大防止のためとはいえ、一年も延長することは施設の収入が減ることにつながることから、延長しても三か月、また、施設側から市町村に要介護度区分変更の申請があった場合は、速やかに応じるなどの対応が必要と考えます。 ほとんどの高齢者施設が日常的に懸命な感染予防対策を行っていますが、見えない敵のため、休止せざるを得ない事業所は収入減となり、資材の高騰で支出が増え、適正な介護報酬も入らない可能性があるなど、県内介護事業所は極めて大変な状況にあります。加えて、第二波、第三波に備えて介護事業所の感染予防対策を強化する必要があり、必要なサービス提供が継続できる仕組みづくりが必要になると考えます。 県では、これらに対しどのように取り組まれるお考えか、あわせて、介護事業所の経営について国からはどのような支援策があり、また、各事業所の実態をしっかりと把握し、国に適切な対応を早急に求めるべきと考えますが、健康福祉部長の見解を伺います。 次に、冬の感染症予防策について伺います。 六月に入り、新型コロナウイルス感染者の数は落ち着き、六月十二日、東京都は東京アラートを解除し、ステップ3の段階に入りました。カラオケ、ネットカフェ、遊園地等の休業を解除し、飲食店の営業も午前零時まで可能とするもので、休業要請の実質終了を意味し、自粛から自衛にかじを切り、経済を回す方針に転換しました。 六月十九日からは県をまたぐ移動も可能となり、八月から「Go To キャンペーン」が実施されます。同キャンペーンは、落ち込んだ国内観光産業を応援するため国民にお出かけをしてくださいとするもので、ゴールデンウイークはふるさとへの帰省や旅行がほぼできなかったこともあり、海外旅行はしばらく自粛が続くことを考えれば、かなりの国民の移動があると思われます。 しかし、自粛を大幅に緩和し、コロナ対策を国民の自覚、自衛に委ねることは、感染がある程度広がることもやむを得ないと国が判断したことにもなります。 コロナウイルスは夏場に弱い、紫外線が予防に効果があるなどの説もありますが、未知のウイルスに確たる証拠のないものはあくまでも風聞として真に受けず、慎重な行動が望まれることは言うまでもありません。ただ、冬期間、コロナウイルスが活発化するのではないか、第二波が来るのではないかとの懸念は大いにあります。 また、インフルエンザとダブルで来るのではとのおそれを指摘する専門家もおります。インフルエンザは高熱、悪寒、節々の痛みなどの症状が出ますが、新型コロナウイルス感染症の症状も、熱、だるさ、喉の痛み、せき、鼻水など似ています。 風邪やインフルエンザだと自己診断し、保健所や関係機関に連絡せず、かかりつけ医等の医療機関を直接受診したところ、実は新型コロナウイルス感染症だった場合には、クラスターが発生する危険が増し、重大な局面となります。当然、保健所等では、発熱があった場合には、直接受診するのではなく、まずコロナ感染を疑って新型コロナ感染症外来の受診を勧めるなど注意喚起を徹底すると思いますが、一〇〇%といかないのが世の常であって、さらなる啓発が必要と考えます。また、インフルエンザ罹患者を少なくするため、多くの県民が予防接種を受けるよう呼びかけることも重要になります。 冬期間の新型コロナウイルス感染拡大を防止するための適切な受診行動についての県民への働きかけの必要性、インフルエンザ予防接種の重要性についての認識を健康福祉部長に伺います。 次に、県産農産物の消費拡大について伺います。 先頃、山形新聞社の企画で「コロナ禍と闘う県議座談会」に出させていただきました。現状打開への提言として、地域雇用を守り抜き、納税者を減らさないため、中小、個人事業者が一社たりとも廃業、倒産に至らないよう、国、県の経済支援に加え、商工会議所・商工会、地元金融機関の強力な支援が必要であること、給与、賞与の削減が懸念されることから、特に若い世代が住宅ローン返済に行き詰まり、生計が破綻しないよう返済期限延長などの支援があることなど、正しい情報を届けるべきと申し上げました。 議員独自の構想があればそれも話してもらいたいとのことでしたので、以前から考え、農林水産常任委員会でも発言した、米沢牛、山形牛、サクランボなど、コロナによる自粛で消費が減り価格が低迷する価格帯の高い県産農産物を学校給食に提供することを訴えました。 県では、国庫事業を活用し、県内小・中学校等の学校給食にサクランボや牛肉等を無償で提供することを進めていますが、私の考えは、首都圏など県外の子供たちに食べていただいてはどうかというものです。また、今後、コロナの影響は長引くことが必至なことから、単年度のみの取組ではなく、三年、五年と実施し、首都圏の子供たちにおいしい牛肉、サクランボを食べて感動してもらい、家に帰ってその話をすれば、山形の食の価値は上がり、ふるさと納税に結びつき、山形県に観光に行ってみたいなどの効果が生まれます。 農家を支え、再生産の意欲につながることを考えれば、県産農産物の消費拡大に向けた取組として検討する価値は大いにあると思います。もちろん、一年で何万人もの大規模ではなく、区、市単位で息長く続けることも可能なのではないでしょうか。 この記事は、六月十一日、十二日の二日間掲載され、御覧になった米沢牛を飼育されている方から、ぜひ実現に向けて頑張ってほしいとお電話を頂きました。記事では、「首都圏の学校給食で食べてもらう投資的な試みも有効ではないか」とまとめていただきましたが、県内には、ほかにも、つや姫、雪若丸などの県産米、海産物、銘柄豚、メロン、リンゴ、ラ・フランス、ブドウなど、子供たちが大喜びする食材がたくさんあります。 農家を守り、ピンチを大きなチャンスにするため、市町村、JA、生産組織等と連携を図りながら、学校給食を通じ県産農産物を首都圏の子供たちに食べてもらうなど、さらなる消費拡大に取り組むべきと考えますが、農林水産部長のお考えはどうか伺います。 熱心に耳を傾けていただきましたことに感謝申し上げ、終わります。 ○議長(金澤忠一議員) この場合、答弁を求めます。 答弁の順は私から指名します。 吉村知事。 ◎知事(吉村美栄子君) おはようございます。五十嵐議員から私に三点御質問を頂戴しましたので順次お答え申し上げます。 まず一点目は、コロナ後の山形県についてでございます。 新型コロナ感染拡大により、大都市圏に過度に人口が集中している我が国の国土構造がいかに脆弱でリスクの高いものであるかが判明いたしました。日本の将来を考えて地方分散型の国づくりを進めていくことが喫緊の課題であることが改めて浮き彫りになったと思います。 新型コロナが発生する以前から、私は、本県における若者の県外転出が大きな課題であると考えており、今年度からスタートした第四次山形県総合発展計画において、人口減少を乗り越えていく様々な取組を力強く展開することとしたところであります。特に、若者の県内定着・回帰を進めることが重要であります。子供の頃から地域に対する愛着や理解、誇りを醸成するため、地域課題を探究する学習や県内企業でのインターンシップなどに力を入れて取り組むとともに、県内進学を促す情報発信を強化してまいります。 今般の新型コロナの感染拡大を機に、新しい生活様式としてテレワークが急速に普及し、働く場所ではなく暮らす場所を重視し、地方を志向する動きが高まっております。加えまして、今後の感染症の発生に備え、国内で必要な医療用資機材や部品などの安定供給が課題となっており、サプライチェーンの各地方への分散配置、企業の本社機能や人材の地方移転など、地方分散型の産業構造への転換が求められております。 本県は、豊かな自然や安全安心でおいしい食、地域に根差した精神文化、人と人とのつながりなど、人が幸せに暮らす場所として重要な資源に恵まれておりますほか、多種多様で優れた技術を有する企業が集積するなど、非常に高いポテンシャルを有しております。しかし、多くの人がそのことを若者に伝え切れていないのではないかと思っております。 この高いポテンシャルを最大限に生かして、若者の県内定着・回帰を進めるため、積極的に魅力を発信し、企業の本社機能、研究開発機能等の誘致を進め、さらには、政府関係機関の移転を政府に提案していくなど、首都圏にある様々な機能の受入れに向けて積極的に取り組んでまいります。 新型コロナをピンチではなくチャンスと捉え、地方分散の潮流を逃すことなく、多くの人がここ山形県で質の高い豊かな暮らしを営み、希望を実現することが、活力を生み出し、県勢発展につながっていくものと考えておりますので、第四次山形県総合発展計画の基本目標に掲げている「人と自然がいきいきと調和し、真の豊かさと幸せを実感できる山形」の実現に全力を尽くしてまいります。 二点目は、二十歳代、三十歳代男女の人口減少対策についての御質問であります。 本県において進行する人口減少は、個人の価値観や家族観という社会的要因、所得などの経済的要因、そして大都市圏と地方圏の就業機会・生活環境などの格差、また、長年にわたる少子化の影響など、様々な要因が重なった構造的な課題であります。 私は、人材は、県民一人一人の希望を実現し、本県が持続的に発展していくための基礎、源泉であると考えており、第四次山形県総合発展計画におきましても、人材の資質向上と裾野拡大を県づくりの推進力の一つとして掲げたところでございます。 このため、若者、特に女性の県内定着・回帰の促進を重視し、やりがいや相応の所得が得られる仕事の創出、暮らしのゆとりや楽しさを享受できるワーク・ライフ・バランスの取組などを一歩一歩着実に進めてまいります。 具体的には、県内への就職率が低い大卒者や女性などの志向に応じ、企画・研究開発部門の充実など大卒者等の専門・高度な知識や能力を生かせる就業の場を拡大してまいります。加えまして、非正規雇用や低い賃金に対応することが大きな課題でありますので、県内企業における正社員化や処遇・勤務条件の改善・向上を図るとともに、キャリアパス制度の導入を進めるなど、良好な就業環境づくりを進めてまいります。 また、新しい生活様式に応じて、テレワークの促進などライフスタイルに応じた多様で柔軟な働き方を拡大するとともに、独り親家庭の自立支援など、安心して妊娠・出産・子育てできる環境づくりや、待機児童ゼロに向けた保育環境の整備など子育てと仕事の両立に向けた取組を強化いたします。 新型コロナ後の地方志向の高まりを踏まえ、本県で働くことや暮らすことの魅力を首都圏等に住む若者に発信していくことも重要でありますので、SNSを活用して県内高校卒業者に出身地や進学先などの属性に応じたきめ細かな山形県の情報を発信するほか、オンラインによる県内企業の説明会、面接会や移住相談等を展開してまいります。 このように、山形県内で働くこと、暮らすことの価値を高め、若者が希望を持って県内に定着し、生き生きと活躍できるよう、若者の県内就業の促進に粘り強く取り組んでまいります。あわせまして、少子化対策にもしっかりと取り組むことで人口減少を乗り越えてまいりたいと考えております。 本日、議員から大変有意義な御提案を頂戴いたしました。議員御提案も含め様々検討しながら、正社員化の促進や処遇改善など、今後の若者の減少対策に粉骨砕身取り組んでまいります。 三点目は、合計特殊出生率の知事公約についてであります。 私は、本県を取り巻く様々な課題を踏まえ、ここ山形県で暮らし続けたいという県民の皆様の願いや思いを何よりも大切にしながら、公約を掲げてまいりました。その公約につきましては、それを達成することはもちろんのこと、あえて目標を高く掲げて、それを旗印として県民の皆様と一致協力して取り組んでいく姿勢が何よりも重要だと考えております。 とりわけ少子化対策を県政運営の最重要課題の一つと位置づけてまいりました。人口を維持できる合計特殊出生率の全国水準は二・〇七とされており、県では、その通過点として、県民一人一人の希望を反映した水準として一・七〇を目標に掲げてきたところです。 前計画であります第三次総合発展計画短期アクションプランや、やまがた子育て応援プランにも目標の一つに盛り込み、結婚支援をはじめ、若者や子育て中の女性の就労支援や保育サービスの充実、子育て家庭の経済的負担の軽減、地域における子育て支援体制の整備などを拡充しながら継続実施してまいりました。今年度、保育所待機児童数ゼロを四年ぶりに達成したことは、その成果の一端であると捉えております。 このような中、令和元年の合計特殊出生率が前年の一・四八から一・四〇へと低下し、改めて危機感を抱いたところであります。低下した理由としまして、未婚化や晩婚化、晩産化が一層進行したことや、女性の県外転出超過数が増加し、若年、若い女性人口がさらに減少したこと、また、いわゆる団塊ジュニア世代が四十五歳以上に移行したことなどが考えられます。加えまして、子育てに関する経済的・心理的な負担感も解消されていない状況にあると考えております。 一方、人口千人当たりの婚姻率の上昇や女性の平均初婚年齢の低下が見られますことから、これまでの結婚支援策の効果も現れてきている、そういう側面もあると捉えており、昨年十月からの幼保無償化の効果も期待しながら、今後の出生動向を注視してまいりたいと考えております。 こうした状況の下、県では、本年三月に新しい「やまがた子育て応援プラン」を策定したところであります。その中では、数値目標としまして、引き続き合計特殊出生率一・七〇を設定しております。あわせて、第一子が産まれなければ第二子以降につながらないことから、合計特殊出生率が一・七〇の長崎県などを参考に、通過目標としまして、第一子の合計特殊出生率〇・七一を新たに追加したところであります。 私は、これまでも「県民視点」「対話重視」「現場主義」を基本姿勢とし、県政運営に取り組んでまいりました。職員の皆さんも同様の姿勢で日々の業務に当たっております。 このたびの新型コロナのように、社会状況が大きく変わったことで若者のマインドにもプラスとマイナスの両面の変化が出てきていると思います。将来を担う多くの若者が希望をかなえられる社会を実現するため、若い世代の様々な声をしっかりとお聞きしながら、市町村や関係機関と一丸となって、実効性ある施策に果敢に取り組んでまいりたいと考えております。 ○議長(金澤忠一議員) 玉木健康福祉部長。 ◎健康福祉部長(玉木康雄君) 私には二問御質問をいただきました。 初めに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受ける介護事業所への支援についてお答え申し上げます。 県内では、四月以降、介護サービスの休止や高齢者による介護サービスの利用控えなどが見られ、介護事業所によっては、大変厳しい環境下での経営が続いたものと考えております。 このため、政府の支援策として、通所事業所が電話で行う安否確認や規定の時間より短時間で行うサービスでも特例的に介護報酬を請求できるといった弾力的運用が認められたほか、政府系金融機関による無担保・無利子での経営資金の融資等が行われております。 県では、これら政府の支援策が確実かつ速やかに活用できるよう、各事業所との間で構築しているメーリングリストによるネットワークを活用し情報提供や個別相談等を行ってきたところであります。 六月に入り、介護サービスの休止や利用控えは解消しつつありますが、依然としてマスク等の衛生資材の不足や高騰が続いているほか、第二波、第三波に備えた感染防止対策の徹底や、仮に感染が発生した場合でもサービス提供を継続できる体制の構築が求められるなど、新たな経営課題への対応も必要となっております。 こうした中、政府の第二次補正予算においては、介護従事者に対する慰労金の支給や、感染対策を徹底したサービスを提供するために必要な経費への支援などが盛り込まれたところであります。 県では、これら支援策の効果的な活用を検討するとともに、県独自に感染防止対策についてチェックリストの形で取りまとめ、各事業所が自主的に点検できるようにし、その上で計画的な訪問指導を行ってまいります。さらに、取組が不十分な事業所へは、専門家による現場での指導や相談を実施するなどの支援を行ってまいります。また、感染症発生時を想定し、各介護事業所における事業継続計画・BCPの策定を支援するとともに、相互に職員を派遣し合える事業者間の連携の仕組みづくりを進めてまいります。 県といたしましては、引き続き現場の声を丁寧にお伺いし、必要となる対策に取り組むとともに、機会を捉えて政府への働きかけを行うなど、各介護事業所が安全で安定した経営を行えるよう支援してまいります。 続きまして、冬の感染症予防対策についてお答え申し上げます。 まず、季節性インフルエンザの状況ですが、昨年、本県では、例年より早く十一月中旬から患者の増加が見られ、大きな流行となることが懸念されました。しかしながら、三月中旬にはほぼ終息し、結果的には患者報告数が少ないシーズンとなりました。これは、二月から新型コロナの感染予防対策を呼びかけてきたことが大きいものと考えられ、手洗いやマスクの着用が非常に効果的であること、また、予防法としていわゆる三密の回避が重要であることが分かりました。 新型コロナについては、今後、第二波、第三波の襲来の可能性が懸念され、その時期が季節性インフルエンザが流行する冬季であった場合には、患者の心配や不安が増すばかりでなく、院内感染の可能性など医療の混乱も危惧されるところであります。 感染症予防の有効な対策としてワクチン接種が挙げられますが、新型コロナに対するワクチンの早期実用化が望まれる一方、インフルエンザワクチンは毎年多くの方が接種しており、その効果として重症化の防止が期待できるとされております。新型コロナとインフルエンザの同時流行による混乱を少しでも抑制するためにも、特に重症化しやすい高齢者にあっては、インフルエンザのワクチン接種の徹底が重要と認識しております。 また、現在、新型コロナの感染が疑われる患者につきましては、医療機関における院内感染防止の観点から、直接医療機関を受診せず、事前の相談を受けた保健所が受診する医療機関を調整するという体制を整備しております。この受診体制を基本として、新型コロナに加えてインフルエンザの流行にも対応できるよう、しっかりと準備してまいります。 加えて、新型コロナとインフルエンザの両感染症に有効となる手洗いの励行、マスク着用等のせきエチケットの徹底、さらに三密を避けることなどの基本的な感染予防対策の周知を冬季に向けて改めて徹底してまいります。 ○議長(金澤忠一議員) 高橋農林水産部長。 ◎農林水産部長(高橋雅史君) 県産農産物の消費拡大についてお答え申し上げます。 県産農産物の消費拡大を進めていくためには、農業者の皆様が生産した農産物を着実に消費者の方々の元に届け、おいしく食べていただき、評価され、次の購入につながるという好循環を拡大していくことが重要であります。 このような観点から、本県では、県と農業関係団体が一体となって組織している「おいしい山形推進機構」を中心に、様々な手法による県産農産物の消費拡大に向けた取組を進めております。 こうした消費拡大への取組は、御指摘のように、将来への投資としての側面もあり、特に学校給食については、子供の頃からおいしい県産農産物に親しみ、将来の本県の農産物ファンを育てる見地からも有効であると考えられます。 そのため、県では、長年にわたり、県内小・中学校の学校給食における県産農産物の利用拡大に学校の設置者である市町村とともに取り組んでおり、さらに、このたびの新型コロナウイルスによる需要減への対応として、国庫補助を活用しながら、総称山形牛やサクランボ、さらには庄内浜の水産物を提供することとしたところです。 また、おいしい山形推進機構においても、首都圏や関西圏の小学校を対象に県産農産物を提供するとともに、出前授業を実施し児童からお礼の手紙を頂くなど好評を得ております。 県内のJAや市町村においても、食農体験を主とした首都圏小学校との交流を深め、地元産の農産物に触れ、味わってもらう取組が継続して行われております。 御指摘のような他県の学校給食に係る取組を大規模に行う場合、予算上の課題や引き受けていただく市町村学校給食との調整など課題も見られるところですが、県内外を問わず、学校給食における県産農産物の利用拡大に向けた取組を幅広く実施するとともに、おいしい山形推進機構の様々な取組の充実などを含め、県産農産物の消費拡大が図られるよう、JAをはじめとする農業団体等とも連携しながら取組を進めてまいります。 ○議長(金澤忠一議員) 菅間教育長。 ◎教育長(菅間裕晃君) 廃校舎の解体費用に対する財政支援についてお答え申し上げます。 人口減少に伴う児童生徒数の減少から学校の統廃合が進み、廃校となる施設が全国的に増加しております。これら廃校となった施設は、地域の中で再び役割を与えられ活用してもらうのが最善と考えており、実際に、本県で平成十四年度から二十九年度までの間に廃校となった二百二施設のうち、百二十九施設が利活用されております。 しかし、耐震性の有無や老朽度合いによっては、活用せずに解体し、跡地の利用を目指す選択が必要になり、この場合、解体に要する高額な経費が障壁となります。 解体経費に対する財政的な支援を望む声は、これまで複数の市町村から継続していただいており、県としましても、平成二十一年度から政府の施策等に対する提案において継続して働きかけてまいりました。昨年度は、「解体経費への補助制度や除却に係る地方債への交付税措置を創設」という内容の提案を行ったところであります。 文部科学省では、施設を他の用途に転用する際の財産処分手続の簡素化、補助金相当額の納付免除などの支援を行っているものの、教育財産から外れた廃校に対しての支援は難しいとの見解でありました。一方、地方債につきましては、現在、公共施設等適正管理推進事業債と、それから過疎対策事業債のソフト事業が解体に充当できます。前者は交付税措置がなく、後者は交付税措置はあるものの、発行限度額という制限がある中で、大半を解体だけに充当することが難しいという課題がございます。 なお、現在、政府においては、従来の過疎地域の「自立促進」という理念を尊重しつつも、過疎地域の「持続的発展」という理念を新たに位置づけ、令和三年度以降の新しい過疎対策に向けた検討が進められているとお聞きしております。その中で、財政支援についても大きく拡充されることを強く期待しております。 いずれにしましても、解体経費に係る財政支援の拡充に向けて、引き続き本県として、また、本県も所属する全国公立学校施設整備期成会など様々な団体の要望機会も活用しまして、粘り強く現状や必要性を関係省庁に訴えてまいります。 ○議長(金澤忠一議員) この場合、休憩いたします。 午前十一時十五分再開いたします。     午前十一時三分 休憩     午前十一時十五分 開議 ○議長(金澤忠一議員) 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑及び質問を続行いたします。 四番原田和広議員。 ◆4番(原田和広議員) おはようございます。県政クラブ所属の原田和広です。 まずは冒頭、新型コロナウイルス感染症に罹患して今なお苦しんでいる県民の皆様、五月十四日に本県では緊急事態宣言が解除されたとはいえ、三月以降続いている県民生活の自粛によって今なお経済的な打撃を受けている個人及び事業者の皆様に心からのお見舞いを申し上げます。 また、感染のリスクが高い医療現場でまさに命をかけて日々の治療に向き合っている医師・看護師をはじめとする医療スタッフ、及び介護・保育など、不可欠な社会インフラを維持するために、三密のリスクを抱えて疲弊しながらも我々の暮らしを支えてくださっているケアワーク従事者の皆様にも心からの御礼と感謝を申し上げます。 ノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥教授は、新型コロナとの闘いを長いマラソンに例えられました。ワクチンが開発されるか、あるいは社会の中に永続的な集団免疫が確立されるまで、ウイルスが完全に終息することはあり得ません。恐らく、これからも我々の社会は厳しい状況のままで一進一退を繰り返しながら、当面、新型コロナと折り合いをつけていかなければならないのでしょうが、そのために必要なのは、確かな情報を取捨選択しながら、社会全体で進むべき道しるべを共有することであると思います。そのためにも、これまで県民のために様々な施策を打ち出され、未曽有の感染症対策に奮闘されてきた吉村知事をはじめとする執行部の皆様には、より一層のリーダーシップを発揮していただくとともに、科学的な根拠に基づく政策形成を今後も続けていただきたいと強く願っております。 では、早速質問に入らせていただきます。 私は、東北電力の初代会長であり、吉田茂元総理の側近として日本国憲法の起草にも深く関わった白洲次郎の著作である「プリンシプルのない日本」を座右の書としています。白洲が常々口にしていたプリンシプルを社会生活において実践するのが政治家であるというのが私の考えだからです。 「プリンシプルは何と訳してよいか知らない。原則とでもいうのか。日本も、ますます国際社会の一員となり、我々もますます外国人との接触が多くなる。西洋人とつき合うには、すべての言動にプリンシプルがはっきりしていることは絶対に必要である」と白洲は指摘していますが、私は、自らの政治家としての行動原理すなわちプリンシプルを、今回、この一般質問で県民の皆様に対して明らかにしたいと思います。 先ほど、科学的根拠に基づく政治判断を執行部にお願いしたところですが、政治学を含む社会科学は、本来全ての判断・行動が何らかのエビデンスに基づかない限り、妥当性が担保されません。昨今、社会科学の領域において、エビデンスベーストプラクティス・EBPという科学実践の在り方が徹底されてきています。 アメリカ心理学会は、EBPとは、「対象者の特徴、文化、優先傾向に照らして、最良の利用可能な研究成果・エビデンスを臨床技能に統合することである」と定義していますが、もともとこのような科学の実践形式は、エビデンスベーストメディスン・EBMとして医療の分野で生まれ、その後、看護、心理、社会福祉などの医療と近接する様々な対人援助の領域に波及した概念です。以来、EBPの実践は、政治学や行政学にも及んでおり、エビデンスベーストポリシーメーキング・EBPM、すなわち科学的根拠に基づく政策形成の重要性が昨今強く指摘されています。 日本においては、二〇一七年八月に政府がEBPM推進委員会の初会合を行うなど、その意義は徐々に重要視されつつありますが、残念ながら、まだまだ日本においては、その本質が議論され、欧米のようにそれが実践されているとは言い難い状況です。同年、日本経済新聞は、高度な計量分析などを行える人材の不足と良質な統計的なデータの欠乏という日本が抱える二つの大きな課題を指摘し、日本の現状を「政策評価途上国」であるとやゆしています。 翻って今回の新型コロナ対策の一連の流れを見ても、日本政府の対応は当初から場当たり的で、著しく科学的根拠を欠くものでした。 WHOは一貫して、未知のウイルスに対して明確にエビデンスが示せる対策は、古典的ではあっても物理的な隔離以外にないと警鐘を鳴らしてきました。三月十七日、WHOは公式ツイッターにおいて、我々が全ての国に求めるのは単純に検査、検査、検査であると検査の重要性を重ねて強調し、疑わしい患者にはすべからくPCR検査を実施し、検査によって陽性が確認された場合は、発症の二日前に遡って濃厚接触者全員にも検査を施し、迅速に全ての陽性患者を隔離するよう求めています。 一方、日本政府は、この段階において、人口百万人当たりの検査数は僅か百十七・八人で、韓国の六千百四十八人、オーストラリアの四千四百七十三・四人、イタリアの三千四百九十八・七人、ドイツの二千二十三・三人など、主要国と比べて大きな乖離がありました。その後、「検査」と「隔離」というWHOの勧告に多くの主要先進国が従う中で、日本政府だけが、なおも検査を著しくないがしろにしました。 さきに山中教授の言葉を引用しましたが、教授は、全人類にとって初めての事態であり、新型コロナに対する明確なエビデンスなどどこにもないともおっしゃっています。しかし、それは従来の感染症に対するエビデンスが全て無効であるという意味ではありません。まして、政策形成に関して何一つ科学的根拠は必要なく、場当たり的に為政者が思いつきで政策を実行していいなどと理解すべきでもありません。 当然、政治をつかさどる者が人類にとって初めての脅威に対して戸惑い、過ちを犯すこともあるでしょう。事実、EBPMの実践が徹底されているイギリス政府ですら、当初、集団免疫を目指すためにあえて学校に一斉休校を要請しないという政治判断を下しました。ただ、日本と異なるのは、その際の会見において、ジョンソン首相の隣に政府緊急時科学諮問グループ・SAGE代表のパトリック・バランス主席科学顧問が同席し、「私たちが導入したあるいはこれから導入する全ての施策は、最高の科学的エビデンスに基づくものだ」とその判断に至った根拠を丁寧に国民に対して説明したことです。 集団免疫獲得のために死者が三十万人を超えるというSAGEの想定は到底受け入れ難いとして、政府の集団免疫戦略に対して方向転換を行うように国内の二百人を超える科学者たちが連名で直ちに反論書を示した際も、単に想定される死者数の多さを批判しただけでなく、「行動科学を参照し、エビデンスに基づくアプローチは全面的に支持する。しかし、『行動的疲労』に関する知見の蓄積はまだ不十分だし、現在の特異な状況にそれがどの程度あてはまるのかも納得できていない」と政府の方針に対立する科学的根拠が主張されました。 結果的にイギリス政府は、他国同様の封じ込め戦略にかじを切りましたが、別の科学的な根拠が示され、最初の政策の妥当性が覆された場合は、速やかに過ちを認めて方向転換するという政府の柔軟さは、イギリスにおけるEBPM実践の成熟を感じさせるものでした。明らかにイギリス政府の行動原理には、何よりもエビデンスを重要視するという一つの明確なプリンシプルが存在します。 一方、日本政府の対応に目を転じると、白洲が指摘したように、やはり今もなおこの国にプリンシプルは不在です。四百六十六億円をかけて全世帯に布マスクをたった二枚配布することを唐突に決定し、「アベノマスク」と世界から失笑を買った、安倍総理の費用対効果を全く考慮しない政治判断、あるいは一年後にパンデミックが収束するというエビデンスが何もないにもかかわらず、オリンピックの開催日取りをリスケジュールし、その実現可能性を問われた際に、「神頼みみたいなところはある」と、科学どころかついには神に頼ってしまう五輪組織委員会会長の政治判断等、こうした何一つ科学的根拠に基づかない政策形成の在り方は、本来絶対にあってはなりません。 五月の大型連休を乗り切り、感染の第一波は辛うじて乗り切った可能性はありますが、まだまだ本県においても新型コロナの危険性は完全に収まったとは言い難く、ここで政治判断を誤れば、現在第二波に襲われている北九州市のような事態に陥る可能性があります。 そこで、本県における新型コロナ対策において、これまでどのようなことを重視して各種施策に取り組んでこられたのか、吉村知事にお伺いいたします。 次に、WHOの「検査」と「隔離」というプリンシプルに沿うならば、現状まだまだ十分ではないと考えられる検査体制と検査後の隔離政策の運用に関して質問いたします。 PCR検査の数が増えれば軽症の患者が医療機関に殺到し、医療崩壊が起こり得るという日本のマスメディアの懸念は、世界的には全く実証されていません。軽症者は、単身者の場合は自宅、それ以外は旅館やホテル等に隔離すれば医療資源を圧迫することはありませんので、世界の趨勢に従って、今後も検査体制は一層拡充すべきだと考えます。検査体制の充実と隔離施設の確保こそが感染の第二波への備えであり、かつ疲弊している本県経済を再生させるための手段でもあるからです。 新型コロナが終息するまで、しばらくの間は何度も緊急事態宣言の発動と自粛が繰り返される可能性がありますが、その際、なぜそのレベルの市民生活の自粛が必要なのか、なぜこのタイミングで自粛が解除されるのかを、県民が納得できるよう県としては説明責任を果たす義務があります。そして、そのためには絶対に科学的な根拠が必要です。 パンデミックが宣言されてから三か月が経過し、新型コロナに関しては、ゲノム解析の結果や治療薬の成果等、世界中で日々様々なエビデンスが蓄積されています。エビデンスが全くなかった時期は過ぎ、今は、新型コロナに関しても、ある程度科学的根拠に基づいて対策が語れるフェーズに移行したと言っても過言ではないでしょう。であるならば、政策を構築する土台として、山形県の感染実態を正確に把握することが求められているはずです。 東京都の慶應義塾大学病院は四月二十一日、新型コロナ以外の治療目的で来院した無症状の患者六十七人に対してPCR検査を行ったところ約六%の人が陽性だったと発表しました。六十七人は統計学的に有意な数ではありませんが、これは、当時東京都の人口の六%に市中感染が広がっていた可能性を示す重要なエビデンスです。 実際にそれを裏づけるデータもあります。過去に新型コロナに感染したかを調べることができる抗体検査を千駄ケ谷インターナショナルクリニックが行った結果、百十一人のうち九人が陽性となり、約八%の人に感染歴があったことが示唆されました。同じくナビタスクリニックが行った二百二人の抗体検査では、五・九%に感染歴が見られました。これらの事実が示すのは、東京都では第一波のピーク時に人口の六%前後が新型コロナに感染していた可能性があるということです。 また、神戸市立医療センター中央市民病院の研究チームが五月二日、外来患者千人に行った血液検査で三・三%が抗体を持っていたと明らかにしました。木原院長は、「神戸市で四万人が感染していれば死亡率は随分低くなる。評価は変わってくる。国策としてこれからどの時期に緊急事態宣言をどう解除するか、根拠は何かということに関して一石を投じるデータではないかと思う」「今置かれた環境の客観的データが増えるほど、私たちはより科学的な武装ができる。ニューヨークや東京のデータとは違い、足元のデータは極めて大事というのが医療者としての認識」と述べていますが、同様に山形県の医療従事者も科学的な武装のために足元のデータを必要としているのではないでしょうか。 六月十六日の山形新聞によれば、山形大学医学部が千九人の外来患者を対象に抗体検査を行った結果、陽性者は五人、陽性率は〇・五%でした。しかし、サンプルが村山地方に偏っているため、本県の感染者は最小で六百七十人、最大で約一万人と、統計学的にはかなり幅がある推計結果になっています。 同様に、東京都や神戸市のケースも無作為に抽出されたサンプルでないため、いずれも統計データとしてはバイアスがかかっており、慶應義塾大学病院の六%や神戸市立病院の三・三%をその地域全体の数値に一般化することはできません。調査結果を一般化するためには、あくまで統計学的に正しい手順を踏む必要がありますが、それが母集団からのランダムな抽出です。疫学調査として実態に近い統計学的数値を得るためには、調査対象を性別、年齢階層、地域別にランダムに抽出する作業が必要となりますが、私は、それを山形県の四つの圏域において適切に実施すべきと考えます。 現在の感染の有無を調べるPCR検査、そして過去の感染履歴を調べる抗体検査の二種類の調査を実施することで、都道府県ごとに新型コロナの感染状態を統計学的に把握することが可能です。そしてそれは、今後再び緊急事態を宣言し、それを解除する際、極めて有効なエビデンスになります。 都道府県によって感染状況が著しく異なる現状、政府の判断に一律に従うのではなく、各都道府県が独自の判断基準において独自の政策を立案・運用するほうが、はるかに現状に即した対応になるはずです。既にPCR検査における独自の指針として「和歌山モデル」が、自粛解除の指針としては「大阪モデル」や「東京アラート」が存在しますが、どのようなプリンシプルであっても、その背後には科学的根拠が必要です。そして、その土台となるべきものが正確な現状分析です。 WHOの「検査」と「隔離」というプリンシプルに従い、EBPMに基づいて合理的な政治判断を下すためには、まず山形県が置かれた現状を統計学的な数値によって可視化すべきです。それを「山形モデル」として全国に発信することが県民の安全安心につながると私は確信しております。そして、検査によって県内の現状が明らかになれば、それに即した具体的な出口戦略が描けるようになり、隔離政策も運用がしやすくなります。 仮に市中感染の目安となるPCR検査の陽性率が著しく低ければ、過度な県民生活の自粛は必要ないはずです。また、感染歴を示す抗体検査にそれなりの数値が確認できたのであれば、想定される新型コロナの死亡率はかなり低くなる可能性があります。であれば、第二波に向けて医療体制を整え、病院や高齢者施設、基礎疾患を持った方々に十分な配慮を行えば、過度な「新しい生活様式」の実践は本県では必要ないかもしれません。 各種調査の結果から安全性が科学的に確認できた際には、経済活動の正常化を堂々と宣言すべきです。そうして県民の不安を取り除かない限り、一度自粛によって刷り込まれたウイルスに対する恐怖と不安は簡単には消えることなく、幾ら行政機関が自粛を解除したところで、県民生活は萎縮したままになり、結果的に本県経済は深刻な打撃を受け続けることになります。 感染の第二波への備えと本県経済の自粛解除の科学的な根拠として、今すぐにでも各種調査を検討すべきと考えますが、その是非と、今後第二波が発生した際の具体的な隔離政策の運用方針に関して、健康福祉部長にお伺いいたします。 次に、本県における社会的な孤立に関して質問いたします。 新型コロナへの対策として広がった言葉に「ソーシャルディスタンシング」があります。日本語では「社会的距離の保持」と訳されますが、最近、海外ではこの言葉を「フィジカルディスタンシング・物理的距離の保持」という言葉に言い換える動きも出てきました。三月二十日、WHOの会見で専門家が、「あえて言い換えているのは、人と人のつながりは引き続き維持してほしいから」と述べているように、物理的距離が心理的な距離につながり、結果的に新型コロナによって悪い意味での社会的距離が個々人の間に生まれてしまい、関係性が絶たれ、全世界に孤独が蔓延しつつあるからです。そして、この孤独は、明確なエビデンスを持って、社会の中にはあってはならないことが昨今指摘されています。 再度イギリスの取組に触れますが、二〇一八年一月、メイ前首相は、赤十字社などと連携し約一年間かけて孤独に関する調査を行っていた「ジョー・コックス孤独問題対策委員会」から多くの勧告を受け入れ、新たに孤独担当大臣を新設しました。委員会は、「孤独が人の肉体的、精神的健康を損なう」と警告し、肥満や一日に十五本のたばこを吸うよりも有害であるとする啓発活動を実施するとしました。また、委員会は、孤独がイギリスの国家経済に与える影響は年間三百二十億ポンド、約四・九兆円に上ると推計しています。 孤独という非物質的なものは、肉体という物質的なものに対してたばこ以上に悪影響を与え、国家の実体経済に五兆円規模の悪影響を及ぼすのです。そして、この事実は、「健康長寿日本一」を目指す本県においても決して避けて通ることはできないものだとも感じます。 私は、日本でも同様の省を設置し、国家的な大損失を防ぐためにも、直ちに孤独を解消する取組を国策として始めるべきだと考えますが、まずは、「あったかい県政」をうたう本県において、全ての県民の孤独に向き合う施策が必要なのではないでしょうか。その際、SNSは極めて効果的なツールであると考えられます。 二〇一七年に長野県の教育委員会がLINEによるいじめ・自殺相談を開始したところ、二週間で一千五百七十九件の問合せがありました。それに対して十人の専門相談員が対応し、アクセスの三分の一に当たる五百四十七件の相談に乗ったといいますが、これは、前年度一年間の電話相談二百五十九件を軽く上回る件数です。その後、東北では二〇一九年に宮城県の教育委員会もLINEによる相談を始めており、昨今、LINEや他のSNSによる各種の相談事業は全国に波及しています。 本県の取組としては、新庄市がLINEを使った子育て相談を既に始めていますが、社会的な孤立がもたらす甚大な心身及び経済的損失を鑑みれば、山形県においても直ちに先行する他県同様の取組を始めるのみならず、対象者を特に定めず相談内容も限定しない、SNSを用いた包括的な支援枠組みの構築を検討すべきと考えます。 本県における社会的な孤立の現状認識と、その解消に向けて、特に相談しやすい環境づくりについて今後どのように取り組んでいくつもりなのか、健康福祉部長にお伺いいたします。 SNSは、人々のつながりを促進し、とりわけロックダウンが行われているような苛酷な環境下においては、かけがえのない社会的紐帯として機能します。しかし、その一方で、SNSは人間の心の闇を増幅し、可視化させる危険な側面も併せ持っています。 さきに触れた長野県の取組が始まった背景には、神奈川県座間市の住宅で九人の遺体が見つかった事件があります。SNSで自殺願望を発信していた十代を含む若者たちが被害に遭い、SNSの危険性がマスメディアで大きく取り沙汰されるとともに、昼夜を問わずそこにあふれる日本社会に蔓延する深刻な孤独の問題が改めて浮き彫りにされたのです。そして、この問題は、その後も本質的には何も改善されることなく、今なお日本社会の宿痾となっています。 古くは秋葉原通り魔事件、昨今では相模原障害者施設殺傷事件の犯人たちは、座間九遺体事件同様に、いずれも犯行前、インターネットにおいて心の闇を大量に投稿していました。インターネット技術やそれを活用するSNSは、正しく用いればかけがえのない人と人との絆に変わり、悪用されれば、ヘイトクライムや自殺幇助の手段あるいは無差別殺傷事件のきっかけにもなり得ます。 科学が日進月歩で進化し、経済は右肩上がりで成長を続け、今日の幸せは明日の繁栄に確実に上書きされて、人々はよりよい未来に夢と希望を抱くことができた時代、これが十八世紀後半から十九世紀にかけてヨーロッパで確立された「近代」という楽観的な進歩史観に支えられた幸福な時代です。 一方、今我々が生きている「後期近代」あるいは「ポストモダン」と称される不確実性の時代においては、近代社会を支えたイデオロギーや社会制度、国民国家のシステムは制度疲労を起こして何一つ信頼に値せず、社会の成員全てがよんどころない不安を抱えざるを得ません。ポストモダン社会に埋め込まれたこの不可避の不安を、社会学者であり、ポストモダン研究の第一人者でもあるアンソニー・ギデンズは「実存的不安」と呼びましたが、事実、バブル経済の崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災とそれがもたらした原子力事故、そして今般のコロナショックによって、我々日本人は、当たり前に思っている日常が一瞬で瓦解する現実を改めて認識し、自分たちが暮らしている社会の足場がいかに脆弱であるかを痛感させられました。 安全と安心が根底から揺らいでいるポストモダン社会においては、人間は希望を失い、時には自分自身の存在理由すら見失います。インターネットに蔓延する若者の自殺願望の正体はアイデンティティーの不在であり、それこそが座間市の事件を引き起こす原因であったと私は考えています。また、失業や疾病・障がい等の不測の事態によって自己の存在理由を喪失した者たちがルサンチマンを抱えてヘイトクライムや自傷・他害行為に及ぶこともあります。秋葉原通り魔事件や相模原障害者施設殺傷事件は、まさにそれを体現した事件でした。 アフターコロナあるいはウイズコロナと呼ばれる世界を、我々はこれから先何年も生き続けなければなりません。ギデンズが実存的不安と呼んだものは、既に不安のレベルを超え、耐え難い実存的な苦悩の次元に至っていると私は考えています。とりわけ、成人に比べて精神的に未熟な若者たち、疾病や障がいを抱えた人たち、心身の不調を抱えた高齢者、経済的に不安定な独り親家庭の母親たちや、ニート、ひきこもり、非正規雇用の労働者や長期失業者、LGBT等の社会的マイノリティーなど、社会的に不安定な地位に置かれた人たちにとっては、その苦悩の深さは計り知れないものがあります。 バブル経済の崩壊とリーマン・ショックという二度の不況時に、日本は三万人を超える自殺者数を記録した自殺大国です。今般のコロナショックにおいても、かつてのような自殺率の急上昇が今から懸念されるところです。それを防ぐためには、さきに提案したSNSを用いた包括的な支援枠組みの構築だけでは到底事足りず、根本的な解決手段として人間の実存を肯定するような実践が本県において求められていますが、私は、「オープンダイアローグ」がこの問題に対する希望のともしびになるのではないかと考えています。 オープンダイアローグは、もともとは統合失調症に対する治療的介入の手法で、一九八〇年代からフィンランドで実践されているものです。患者やその家族から依頼を受けた医療スタッフが二十四時間以内に治療チームを招集して患者の自宅を訪問し、症状が収まるまで毎日対話するというシンプルな方法で、入院治療・薬物治療は可能な限り行いません。患者を批判しないでとにかく対話するなどのルールがあります。 統合失調症は、他の精神疾患と異なり、絶対に薬物療法が必要だと精神科医療の現場で長年固く信じられてきました。しかし、オープンダイアローグの実践はそれを根底から覆しました。この治療法を導入した結果、フィンランドにおいて統合失調症の入院治療期間は平均十九日間短縮されました。薬物を含む通常の治療を受けた統合失調症患者群との比較において、この治療では、服薬を必要とした患者は全体の三五%、二年間の予後調査で八二%は症状の再発がないか、ごく軽微なものにとどまり、障害者手当を受給していたのは二三%、再発率は二四%に抑えられました。投薬治療を行った対象群が、それぞれ五〇%、五七%、七一%であることを加味すると、オープンダイアローグの治療技法としての優位性に関しては既にエビデンスが確立しています。 オープンダイアローグが優れているのは、これが単なる統合失調症の治療技法を超えて精神科医療全般に有効であり、さらに身体的な疾病や障がい、いじめやひきこもり、嗜癖、虐待、家庭内暴力の問題にまで幅広く応用が利くことです。オープンダイアローグの本質は、人間の実存、すなわち存在自体を無条件で肯定することにあり、ポストモダン社会で生きる意味を見失っている全ての人たちの苦悩に向き合う最も効果的な取組であると私は確信しています。 バーチャルなSNSの世界では解決できない苦しみは、結局のところは人間同士の直接的な承認を通してしか乗り越えることはできません。SNSによる支援体制の先に、このオープンダイアローグの実践の場を設け、全県を挙げて実存的な苦悩に向き合うことが肝要であると考えます。 オープンダイアローグの普及啓発に取り組んでいるオープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパンは、定期的に全国で研修会を実施しており、そこで専門スタッフの研修を行うことができます。オープンダイアローグに興味関心を持ったNPO団体等に助成金を準備し、県内で実践を積み上げた後は、その取組をいじめ、ひきこもり、DV支援、虐待支援、依存症支援などに携わっている県内の他の支援団体や自助グループに徐々に波及させることによって、山形県に実存的な苦悩に打ちかてる、承認をし合える共同体をつくり上げることが可能になります。したがって、オープンダイアローグの実践を促進する団体への助成制度を創設すべきと考えますが、それに対して健康福祉部長の考えをお伺いいたします。 最後に、対話に基づく実践「ナラティブベーストプラクティス・NBP」とリスクコミュニケーションに対する本県の考えについてお伺いいたします。 「『感染症パニック』を防げ! リスク・コミュニケーション入門」の中で、岩田健太郎医師は、感染症におけるリスクコミュニケーションの在り方を、臨床現場で実際に感染対策の専門家が担当するクライシスコミュニケーションと、事前や事後に関係者全員が集まり双方向性の対話を通じて行われ、合意形成のために実施されるコンセンサスコミュニケーションの二つに分類しています。 我々政治家や行政職員が関与するのは後者のコンセンサスコミュニケーションになりますが、ここで重要なのは、可能な限り全てのステークホルダーの意見を吸い上げることと、双方向的な対話です。 日々目まぐるしく事態が変わる中、執行部の方々が関係者全てと対話することは現実的に難しいと思います。しかし、単に相談窓口を設けてよしとするのではなく、県民に対して真摯に応答するという姿勢、要望に対する回答を丁寧に発信していく姿勢を保ち続けることが肝要です。関係者から寄せられる全ての要望に応える必要はありません。時間も資源も限られている中で、それが不可能なことはほとんどの関係者が理解していると思います。 しかし、コンセンサスコミュニケーションの原則からいえば、要望を無視したり、最初から受け付けないということだけはあってはなりません。それは直ちにリスクコミュニケーションの失敗を意味し、関係者に対して、ひいては全ての県民に対して信頼を失うことになります。県執行部と県民の間に確かな連帯と信頼がない限り、国難ともいうべきこのウイルス禍を乗り切ることは絶対にできません。 科学的根拠に基づく医療・EBMの重要性をこの一般質問の冒頭に述べましたが、医療においてEBMを実践すれば全て事足りるかといえば、決してそうではありません。EBMは、必要条件ではあっても十分条件ではないからです。EBMの追求は、科学としての医療の土台ではありますが、患者の最善の利益を考えたとき、もう一つの車輪が必要不可欠です。それが対話に基づく医療「ナラティブベーストメディスン・NBM」です。 欧米でEBMが広く普及した結果、えてして、医師は、それさえ意識しておけば医療行為は十分であるという錯覚に陥ってしまいました。時に患者の尊厳をないがしろにする形で医師の判断が最優先され、結果的に不満を抱えた患者の病状がストレスから一向に改善されないという皮肉な事態を招くこともありました。忠実にEBMを実践しているにもかかわらずエビデンスどおりの結果が出ないという、医療のおごりに対するアンチテーゼがNBMなのです。 オープンダイアローグは、NBMの実践であり、それが結果的に従来のEBMの常識を覆しました。人間の心と体は密接に関わり合っており、治ると信じる患者の希望が偽薬からもプラセボ効果を引き起こします。EBM同様にNBMは看護、心理、社会福祉などの近接諸科学に波及し、それらは、対話に基づく実践「ナラティブベーストプラクティス・NBP」と総称されます。 リスクコミュニケーションを機能させるには対話が不可欠だと申し上げましたが、政治を機能させるためにもやはり対話が、ナラティブベーストポリシーメーキングの実践こそが必要不可欠なのです。エビデンスと対話を車の両輪として政策形成を行うこと、これが政治家としての私の揺らぐことのないプリンシプルですが、今般のコロナショックから県民の命と暮らしの両方を守り抜くために求められているのは、車輪のいずれかではなく、両方であると確信しております。 本県におけるリスクコミュニケーションの一つとして、新たに「新型コロナ克服・創造山形県民会議」が立ち上げられましたが、県行政の運営に対する基本姿勢も踏まえ、今後の新型コロナ対策を進めるに当たり、対話に基づく実践・NBPにどのように取り組んでいく考えか吉村知事にお伺いいたしまして、私の檀上からの質問を全て終えさせていただきます。 御清聴誠にありがとうございました。 ○議長(金澤忠一議員) この場合、答弁を求めます。 答弁の順は私から指名します。 吉村知事。 ◎知事(吉村美栄子君) 原田議員から私に二点御質問いただきましたので順次お答え申し上げます。 まず一点目は、科学的根拠に基づく政策形成と新型コロナウイルス感染症対策についてでございます。 新型コロナウイルス感染症対策につきましては、県民の皆様の命と健康を守ることを第一に、検査体制や医療提供体制の充実のほか、積極的疫学調査による感染経路や感染者の早期把握と感染拡大の防止に取り組んでまいりました。県民の皆様には県域を越えた移動の自粛、事業主の皆様には営業自粛を依頼し、御協力をいただいたところであります。 こうした取組により、県内では、新型コロナの新たな感染者が一か月半以上にわたって確認されておりません。県民の皆様と一緒になって感染の第一波を乗り切ることができたと考えております。 新型コロナ対策を進めるに当たりましては、県内での感染状況はもとより、政府の基本的対処方針や新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の状況分析・提言を踏まえるとともに、県内の事情に詳しい県内の医療専門家から随時意見を伺ってきているところです。 本県では、県内で感染者が確認されていない段階から、既に感染が広がっている地域の状況を踏まえ、PCR検査体制の拡充や新型コロナ感染症外来の設置、専用病床の確保など、検査体制や医療提供体制の整備を進めてまいりました。 県内で感染者が確認されてからは、結核対策等で確立してきた手法としまして、積極的疫学調査により感染経路を明らかにし、濃厚接触者に対する健康観察や無症状者も含めたPCR検査を確実に実施して、感染の連鎖を食い止めることに全力を挙げてまいりました。この積極的疫学調査により、県内では、県外との往来者が感染の発端となり、家族や友人、職場の同僚などに感染が広がったと推定されました。 そのため、県外との人の往来を抑制することが重要と考え、特にゴールデンウイーク期間は、「県域を越えて県内に移動する方に対する啓発活動と任意の検温」に重点的に取り組みました。取組の検討に当たり、県内の医療専門家からは、「来県した人が感染源となり、そこから県内に感染が広がっていることを考えれば、意義のある取組である」との御意見や、活動を実施する上での留意点などのアドバイスをいただいたところです。 また、県内における感染拡大を防ぐため、人と人との接触機会を減らす観点から、県民の皆様に不要不急の外出の自粛をお願いするとともに、三つの密が起きやすい業態や県外からの人の移動等に関係する業態の事業所を対象に、休業などの営業自粛を要請いたしました。 営業自粛要請の解除や一部延長の検討に当たりましては、政府の基本的対処方針や専門家会議の現状分析・提言を踏まえるとともに、県内の医療専門家からは、営業自粛解除の範囲や解除後の感染防止対策などについて、「各事業所で感染リスクを下げる工夫を行いながら徐々に制限を緩めていくべきである」との御意見をいただいております。さらに、医療崩壊を防ぐために、軽症者を受け入れる宿泊療養施設も確保したところであります。 その後、五月二十五日に政府による緊急事態宣言が全国的に解除されたことを受け、本県では、六月以降の県をまたいだ移動の自粛を解除する方針を決定しました。 そのほか、今後、再び感染が拡大局面になり、外出自粛や営業自粛を協力依頼する場合の本県独自の判断基準として、「山形県新型コロナウイルス感染症注意・警戒レベル」を設定いたしました。 注意・警戒レベル設定の検討の際には、政府の専門家会議が示した緊急事態宣言の再設定に対する考え方などを参考にするとともに、県内の医療専門家の皆様から、レベルの目安となる指標や数値、レベルの移行に当たっての考え方など、様々な角度から御意見を頂いたところであります。その結果、注意・警戒レベルの各段階の適用に当たりましては、一定の目安を設けつつ、県内における感染の具体的な状況や、首都圏、近隣県の感染状況も踏まえ、総合的に判断することとしております。 新型コロナ対策を進める上では、積極的疫学調査や専門的な知見、状況の分析などを十分に踏まえることが肝要でありますので、今後もこうしたことに十分に意を用いながら、県民の皆様の命と生活を守るため、しっかりと取り組んでまいります。 二点目は、県政における「対話に基づく実践」とリスクコミュニケーションについてでございます。 私は、知事就任以来、「県民視点」「現場主義」「対話重視」を基本姿勢として、県民の皆様お一人お一人の幸せのために県政運営に邁進してきております。 県政運営を行う上では、県民の皆様との信頼関係が大切であり、そのためには対話を重ねることが重要だと考えております。このことは、これまでも特に意を用いてきたところです。具体的には、「知事と若者の地域創生ミーティング」や「知事のほのぼの訪問」などの事業をはじめ、自ら現場に足を運び、多くの県民の皆様の生の声を直接お聞きしてまいりました。 こうした基本姿勢の下、このたびの新型コロナウイルス感染症対策を進めるに当たりましては、県内の産業経済関係者や福祉関係者、教育関係者、市町村長など、各界各層の方々と積極的な対話を行ってきているところです。 新型コロナによる様々な影響につきましては、県議会からの提案や、産業経済、福祉、教育等の関係団体との情報交換会、また、市町村や関係団体からの県への要望の場などを通して、具体的な影響や課題等についてしっかりと傾聴し、意見を交わしてまいりました。 また、四月八日の県と県内産業・経済関係者等との連絡協議会には、各分野の関係機関・団体の方々にお集まりをいただきまして、それぞれから幅広く御意見、御提言を頂戴いたしました。 県・市町村懇談会や市町村長会議の場では、感染症対策や経済対策等について県の取組を説明するとともに、医療や子育て、経済対策や中小企業・観光業・農業への支援策など、様々な課題について意見交換しております。 五月十三日と六月十二日には、新型コロナに関する様々な課題を克服し、新たな地域社会をオール山形でつくり上げていくため、県議会をはじめ、市町村や県選出国会議員、経済団体など、県内各界各層の参画の下、「新型コロナ克服・創造山形県民会議」を開催いたしました。県民会議では、新しい生活様式の普及・定着と県内の産業経済活動の回復に向けて、県の施策や、それぞれの立場からの課題や対応、提言などについて、情報共有と意見交換を行ってきております。 さらに、各地域の県民の皆様の御意見をお聞きするため、県内四地域ごとに地域創生オンライン知事室を開催し、各地域の県民の方々と新型コロナウイルス感染拡大による影響を中心に意見交換をいたしました。その際には、仕事や学校、さらには芸術文化活動や地域活動などの現状と課題について、様々な声が寄せられました。 こうした対話を通してお寄せいただいた御意見や御提言をしっかりと受け止め、雇用の維持確保や経営の安定化、産業振興のための事業や山形県新型コロナ対策応援金の募集・活用など、様々な施策にできる限り反映してきたところでございます。 私は、今後の県政運営に当たりましても、引き続き「県民視点」「対話重視」「現場主義」、この三つを基本姿勢に、県議会をはじめ県民の皆様や市町村、関係機関・団体など、多くの方々との対話をできるだけ多く、積極的に重ねながら、新型コロナウイルス感染症対策をはじめとする各種施策をしっかりと進めてまいります。 ○議長(金澤忠一議員) 玉木健康福祉部長。 ◎健康福祉部長(玉木康雄君) 私には三点御質問をいただきました。順次お答えを申し上げます。 初めに、PCR検査、抗体検査に係るランダム調査と隔離政策の運用についてお答え申し上げます。 まず、新型コロナに係るPCR検査及び抗体検査の特性について申し上げます。 PCR検査は、ウイルスの遺伝子の特徴的な部分を増幅して現時点におけるウイルスの存在を確認する検査であります。採取した検体にある程度の量のウイルスが存在する場合には増幅することにより検出できますが、感染直後などではウイルス量が少なく、検出できないという場合もございます。このため、濃厚接触者では、PCR検査が陰性の場合でも、接触から二週間程度の健康観察をしているところであります。 次に、抗体検査ですが、抗体は、免疫グロブリンというたんぱく質でできております。ウイルスが体の中に入りますと、そのウイルスに結合する抗体を作りまして、これがウイルスを排除するように働くものであります。免疫の中心的な役割を担っているものであります。抗体検査は、採血した血液に抗体と結合する物質を加え、結合した量を計測して抗体の有無を判断するものであります。 抗体検査は、過去に感染したかどうかを判断する目安になりますが、体内で抗体ができるまでは日数を要するために、PCR検査のように、現在の感染状況を確認するものではありません。 御指摘のありましたPCR検査を用いた調査についてでございますが、本県で疫学的調査を目的としてPCR検査を実施する場合、統計的に必要な検体は、少なくとも一千件以上というふうに考えられます。PCR検査は現時点での状況を検査するものですので、これらを短時間に検査する必要があります。 本県では、今年一月三十一日以来五か月弱の間に約二千五百人のPCR検査を実施してまいりましたが、PCR検査のために検体を採取する際には、医療従事者がしっかりと感染防止の装備を行った上で、対象者の鼻の奥の喉の上部のところから綿棒で採取する必要がありまして、医療機関や衛生研究所では多くの労力を必要としたところであります。 第二波、第三波の来襲を考慮した場合、現状では、疫学調査のためにそれだけの数の検体を採取し検査するということは困難な状況でありまして、県といたしましては、PCR検査は、まずは感染者の確認や感染の連鎖を止める手段として活用してまいりたいと考えているところであります。 次に、抗体検査を用いた調査でありますが、抗体は、過去に新型コロナに感染した可能性の指標でありまして、これまでの流行の規模や、感染症がどのように流行し、どのように抗体を獲得したかなどの疫学的な基礎データとして活用されるものであります。 山形大学医学部のほか、厚生労働省においても、六月一日から東京都、大阪府、宮城県において合計で約八千人を対象とした抗体保有調査を実施しておりまして、六月十六日にこの結果が公表されました。これによりますと、抗体を保有する人は、東京都は〇・一〇%、大阪府は〇・一七%、宮城県は〇・〇三%と、いずれも低い割合になっております。 山形大学医学部の森兼検査部長は、同大学での抗体検査結果について、「県内の感染者率は多く見積もっても一%に満たない。感染対策が引き続き必要である」とコメントしております。 この抗体検査は、全国レベルでのマクロな疫学調査として実施した場合に大きな意味を持つものでありまして、厚生労働省では、さらに調査を拡大するため、第二次補正予算に経費を計上しております。 県といたしましては、厚生労働省の実施する全国レベルの調査を注視し、その結果を活用してまいりたいと考えております。 次に、第二波以降への感染への対応でございますが、感染者が発生した場合には、積極的疫学調査により感染経路を明らかにするとともに、濃厚接触者に対する健康観察やPCR検査を確実に実施し、感染者には入院加療を行うことで感染の連鎖を断ち切ることが重要と考えております。 これまでも県では、感染のおそれがある方に対しては幅広に、また、濃厚接触者については症状がない場合でもPCR検査を実施し、感染経路を徹底的に洗い出し、封じ込めてまいりました。さらに、今後の第二波、第三波に備え、感染者の大幅な増加に備えてPCR検査機器を各地域の保健所や医療機関にも整備し、検査体制のさらなる拡充を進めているところであります。 また、感染者の入院加療に当たっては、引き続き、重点医療機関を中心に感染防止対策が施された専用病床を確保していくとともに、感染者が急増した場合に備え、軽症者及び無症状者用の宿泊療養施設も確保しているところであります。 これらの対策を感染者の発生状況に合わせて強化していくことにより、第二波、第三波に備え、安定した医療提供体制を確保してまいります。 続きまして、社会的孤立についてお答え申し上げます。 人と人との関わりは、人が生きる上で大変重要であると考えております。これまで、本県では、家族間の支え合いや地域内の交流などにより、地域内で気軽に相談できる場が提供され、また、互いに助け合う関係が構築されてきたところであります。しかし、少子高齢化の進行、高齢者単身世帯や未婚者の増加などに伴い、本県の強みである家族間の関わりや地域コミュニティー機能の弱体化も懸念されているところであります。 社会的孤立は誰もが陥るおそれがあり、こうした社会環境の変化に伴い深刻化し、心身に様々な影響を及ぼすことが懸念されております。また、こうした個人の問題だけでなく、心身の健康状態の悪化による医療費の増加や就業者の生産性低下等に伴う経済的損失など、社会生活の多方面に影響を及ぼしかねない大きな課題として認識しております。そのため、住民の社会的孤立の解消に向けて、社会全体でしっかりと取り組んでいくことが必要と考えております。 特に、誰もが相談しやすい環境づくりは重要な視点と考えており、県では、関係機関との連携の下、相談者に適した手法・ツールを選択できるようにするなど、社会的孤立を含む幅広い相談に対応するための取組を行ってきたところであります。 例えば、市町村の社会福祉協議会等が運営しております生活困窮者自立支援相談窓口では、面談や電話、メールなどの様々な相談手法・ツールをその特性とそれからその時々の事情、状況に応じて活用するとともに、相談内容を踏まえ、就業支援などのノウハウを持つ関係機関と連携いたしまして支援する取組を行っております。これらの取組により、この相談窓口への新たな相談件数は、平成二十八年度の二千三十四件から令和元年度は二千三百五十件と、ここ三年間で三百十六件、一五・五%増加しております。 また、今月からは新たに、スマートフォン等で、例えば「つらい」というキーワードで検索すると、表示される画面に「心の健康相談」等の関係する相談窓口を案内するなど、検索するワードから推測される悩みに応じた相談窓口をお知らせするという取組を始めたところでありまして、この中で、SNSにより相談できる窓口も御案内しているところであります。この取組を進めることで、漠然とした孤独感など、相談内容が明確でない方に対しても関連する相談窓口の情報を直接提供することができ、これまで相談につなげることが難しかった方からも相談を受けることができるものと考えております。 SNSは、若者層を中心に、身近なコミュニケーション手段として広く普及しており、相談等に対する抵抗感を和らげるなどの特性があるとされております。その一方で、SNSは文字情報が中心でありますので、情報量が少なくてニュアンスが正確に伝わりにくく、また、表現が端的と申しますか、極端な表現になりがちだということもございますので、互いの真意を的確に理解し合うためには、相手方の状況や事情等を思いやり、配慮することも必要となります。また、緊急性のある場合には、SNSよりも電話や対面による相談が適切であるなど、ツールごとの課題や特性等も考慮すべきものと考えております。 今後は、こうした点を踏まえ、関係する皆様の御意見もお聞きしながら、悩みを持つ方が自ら望む相談手法・ツールを適切に選択し、相談しやすい環境づくりに向けて取り組んでまいりたいと考えております。 あわせて、寄せられた相談に対して適切に支援していくことも重要な視点と考えております。そのため、本県の強みであります地域コミュニティー機能を生かして、住民の不安感の解消や課題解決を図る新たな支え合いの場など、地域の実情に即した支援の仕組みを拡充し、地域住民が生き生きと健やかに安心して暮らすことのできる地域社会づくりを進めてまいります。 最後に、実存的な苦悩と「オープンダイアローグ」の可能性について御質問をいただきました。 オープンダイアローグにつきましては、国内でも少しずつ認知されてきており、この新しい手法を取り入れようとする医療機関や団体なども見受けられます。 この手法は、これまでの薬物や入院を中心とした精神科医療とは異なり、対話を中心に治療を進めていくというものでありまして、統合失調症をはじめ、鬱病、PTSD、DV、依存症、ひきこもりなど、様々な問題に応用が可能であるという専門家の意見もあります。このため、最近、国内のひきこもり支援団体等の中にも、この手法を活用できないか、勉強しているところもあるようであります。 平成三十年度に内閣府が実施いたしました「生活状況に関する調査」によりますと、全国のひきこもりの方は六十一万人いらっしゃるとのことでありました。本県の独自調査では千四百人となっておりまして、ひきこもりへの支援は、重要な課題と認識しております。 このため、県では、これまで相談や訪問による支援、ひきこもり支援に携わる方の人材育成、支援団体が参加する連絡会議の開催などを行ってまいりました。しかしながら、ひきこもりの問題は様々な分野に関わることから、今年度、新たに庁内の関係各課で構成する「ひきこもり支援タスクフォース」を立ち上げ、全庁的に課題を共有し、連携して総合的なひきこもり支援策に取り組んでいるところであります。 また、本県のひきこもりを支援するNPOなど民間団体の中にも、オープンダイアローグのような対話を中心とした取組を取り入れた支援策を行っている団体もございます。ひきこもりや依存症など様々な課題解決に向けた知見や手法が日進月歩である中で、今後の支援の在り方などについて、お話しのオープンダイアローグのような手法も参考にしながら、また、県内で取組を実践しておられる関係団体の御意見等も伺いながら検討してまいりたいというふうに考えてございます。
    ○議長(金澤忠一議員) この場合、休憩いたします。 午後一時再開いたします。     午後零時十六分 休憩     午後一時零分 開議 ○議長(金澤忠一議員) 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑及び質問を続行いたします。 二十九番鈴木孝議員。 ◆29番(鈴木孝議員) 自由民主党の鈴木孝でございます。一般質問の機会をいただきまして誠にありがとうございます。一年数か月ぶり、久しぶりの質問となります。よろしくお願いいたします。 二〇一九年末に突然現れた新型コロナウイルスは、急激に感染拡大し、全世界をあっという間に覆い尽くし、人間の生命を脅かし、そればかりか、人類がこれまで築き上げてきた生活や経済などの社会活動も停止させ、いまだ世界的な感染拡大は止まりません。感染によって亡くなられた方々には心からお悔やみを申し上げますとともに、闘病中の皆様には一日も早い回復をお祈り申し上げます。 これからの時代は、利便性の追求や市場拡大だけではなく、地球環境も考慮した、日本の実情に合った日本独自の持続可能な社会環境の構築、そして、国、地方の在り方を考える必要性を感じながら、早速質問に入らせていただきます。 最初に、山形県の子育て支援策の新たな展開について吉村知事にお伺いいたします。 五月五日のこどもの日を前に総務省がまとめた人口推計によりますと、四月一日現在、全国の十四歳以下の子供の数は前年より二十万人少ない一千五百十二万人であり、三十九年連続して減少しているということです。加えて、年齢層が下がるほど数が減っており、こうした数値は、少子化、人口減少が進んでいることを示すものと、改めて危機感を持ったところです。 本県におきましてもまさに同様の状況で、十四歳以下の子供の数は十二万三千人、前年比四千人減であり、むしろ全国よりも先んじて少子化を伴う人口減少社会に直面していると言えます。 厚生労働省は六月五日、二〇一九年の人口動態統計を発表しました。出生数は八十六万五千二百三十四人と大幅に減少、一八九九年の統計開始以降最少を更新しました。また、合計特殊出生率については大幅に減少、八年ぶりに一・四を割り込み一・三六と、四年連続で低下。一方、我が山形県は、近年はおおむね横ばいで推移しておりましたが、令和元年は、前年と比べて〇・〇八ダウンして一・四〇と低下しております。全国順位も前年の二十九位から三十一位に後退しました。県の目標である一・七〇には程遠い数値であり、吉村知事はこの結果を踏まえ、「さらなる危機感を持った。詳細を分析し人口減少の克服に向けた実効性のある施策にしっかりと取り組む」との決意を表明しております。 これらの原因は、若い世代の減少や、結婚観・家庭観の多様化が進んだこと、それによる未婚化・晩婚化、そして若者の県外転出が大きく影響していると考えられます。 かつては、男女の初婚年齢も今より低く、若くして結婚した夫婦からは二人、三人と子供が生まれ、にぎやかな家庭生活が営まれることが多かったわけですが、現在は、五十歳時未婚者と言われる方の数が増え続け、結婚して子供を持つということが決して当たり前ではない世の中になりました。 そのような中でも、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、そして子供たちという、昔ながらの大家族が共に暮らしている家もまだまだ多く、三世代同居率が長年にわたって全国一位というのは、本県の誇れる特徴でもあると思います。 外で働く父母に代わって祖父母が小さな孫の面倒を見るといった家族の在り方は、子育てを家族全員で行うことで若い夫婦の負担を軽減し、お互いに助け合いながら、安定感・安心感の中で子供たちが育まれてきたと考えられます。 家庭や地域の高齢者の方々は、これまで培ってきた知識と経験を基に、働きながら、日々の暮らしのことはもちろん、地域社会活動やその土地に伝わる生活文化・伝統芸能活動、ものづくりの技や知識など、多岐にわたる有形無形のものが長い間引き継がれていく上で大きな役割を果たしてきたのであります。 これまでは、先人から譲り受けたものを次の世代にバトンタッチし、この先も脈々と受け継がれていくことが当然のように思っておりましたが、少子化、人口減少が進行する時代においては、これも危ぶまれるものとなりつつあります。 子供たちにとっても、家庭や地域に見守られながら健やかに成長することが大切なことであるにもかかわらず、少子化によって地域社会が衰退してしまってはそれがかなわなくなります。 子供や若者が生き生きと暮らし、未来に希望を持てる社会を実現するためには、昨今の家族形態や若い世代の生活環境の変化を踏まえた上で、これまでにはない新たな視点を盛り込んだ少子化対策や子育て支援策が必要となります。 このような中、県では、新たに「子育て応援プラン」を策定しました。これまでも少子化対策には県の最重要課題の一つとして取り組んできたものですが、新しいプランにおいては、どのような理念の下、今後の少子化対策を推し進めていくのか、吉村知事にお伺いいたします。 次に、有機エレクトロニクス関連産業の振興の現状と今後の施策の方向性について産業労働部長にお伺いいたします。 県では、山形大学発の世界最先端の研究である有機エレクトロニクスについて、関連産業の振興を図るため平成十五年度に有機エレクトロニクス研究所を開設して以来、多くの投資を行い、長きにわたりその取組を進めてきました。 この間、世界初の有機EL照明製造会社のルミオテックが米沢市に設立され、県の働きかけの下、県内企業が有機EL照明の開発に取り組み、公共施設等への有機EL照明の導入が進むなど、山形県が有機EL照明をはじめとする有機エレクトロニクス分野で山形大学を中心に世界をリードしてきたことは、山形県民の一人として非常に誇らしいことであり、携わった関係者に対して敬意を表するものであります。 また、最近では、スマートフォンや大型テレビへの有機ELディスプレーの採用が進んでいる中、一昨年、有機ELディスプレーの生産に必要な部材の製造に取り組む企業であるブイ・イー・ティーが本県に進出したことは大変喜ばしい出来事であり、その後の事業の進捗状況も大変気になるところであります。 一方、当初は有機EL照明分野から始まった有機エレクトロニクス関連産業の振興に向けた取組も、現在では、山形大学工学部がある置賜地方を中心に、昨年から販売が始まったシートセンサーに代表される有機トランジスタ、飯豊町で展開されている蓄電デバイス、そして有機太陽電池といった有機エレクトロニクス全般にその取組が広がっており、新聞紙面でその成果を目にすることも多くなりました。 私は、有機ELをはじめとする有機エレクトロニクスは、山形が世界に誇る技術分野の一つであり、山形こそが有機エレクトロニクスの一大拠点となり得る資質を備えていると認識しております。 そこで、実用化で先行する有機EL照明、ディスプレー分野の産業化について県ではこれまでどのような取組を進めてきたのか、また、現状と課題をどのように捉え、今後どのように取組を進めていくのか。これに加えて、有機エレクトロニクス全般にわたって県内で見られる動きに対して、県ではどのように関わり、産業の育成につなげていく考えか、併せて産業労働部長にお伺いいたします。 次に、防災減災対策。国土強靭化地域計画について防災くらし安心部長にお伺いいたします。 近年、大規模な地震や集中豪雨、台風など、全国的に自然災害が頻発化・激甚化しています。本県でも、約一年前の昨年六月十八日に本県の観測史上最大となる震度六弱を記録した山形県沖を震源とする地震が発生し、鶴岡市を中心とする庄内地域において屋根瓦の損壊など住宅の被害が多数発生したほか、道路や漁港・港湾、商工関係や観光関係の施設などに甚大な被害が発生しました。 また、昨年十月の東日本台風・台風十九号は、一都十二県に大雨特別警報が発令されるなど、東日本を中心に、広い範囲で甚大な被害をもたらしました。県内でも、全域で防風と大雨に見舞われ、住家の一部損壊や床上・床下浸水の被害が発生しました。 このような大規模な自然災害に備え、平成二十五年十二月にいわゆる国土強靭化基本法が制定され、事前防災や減災、迅速な復旧・復興につながる施策を計画的に実施し、強くてしなやかな国づくりや地域づくりを進める取組が推進されております。 この国土強靭化の取組を実効性のあるものとするためには、地方公共団体においてもそれぞれの地域の特性を踏まえた地域計画を策定し、安全安心な地域づくりに取り組むことが重要であります。 また、政府では、昨年、取組が遅れている市町村の地域計画策定を促進するため、地域計画に盛り込まれている事業に対する予算の重点化や要件化、見える化などを行う方針を示しています。 昨年十二月定例会の代表質問で伊藤重成議員が県内市町村の地域計画の策定状況について質問を行っております。その時点では策定済みの市町村はなく、幾つかの市町村が策定作業に着手したばかりとのことでありましたが、現在、市町村における国土強靭化地域計画の策定状況はどのようになっているのでしょうか。 一方、県では、平成二十八年三月に山形県強靭化計画を策定していますが、計画期間はおおむね五年間で、今年までとされております。県の強靭化計画では、危機管理や県土保全などの施策分野ごとに目標指標が定められていますが、令和元年度までの達成状況はどのようになっているのでしょうか。 また、今年度、次期計画を策定するに当たり、計画に基づき実施する事業に対して予算を重点化・要件化するとした政府の方針を踏まえ、これに対応した見直しをどのように行っていく方向なのか、併せて防災くらし安心部長にお伺いします。 次に、頻発化・激甚化する豪雨災害を踏まえた水害防止の取組について県土整備部長にお伺いします。 本県では、平成三十年八月の最上・庄内地域を中心とした豪雨や令和元年東日本台風による置賜地域を中心とした豪雨により、二年連続で県民生活に大きな影響を及ぼす被害が多数発生いたしました。 全国各地においても、近年、これまで経験したことのないような豪雨による深刻な水害や土砂災害が毎年発生しており、政府では、平成三十年度から三か年を対象期間とする防災・減災、国土強靭化のための三か年緊急対策を策定いたしました。これに基づき、国土強靭化に資する地方のインフラ整備に対する財政支援を実施しておりますが、この支援につきましては、今年度で終了するとお聞きしております。 来年度以降も河川整備にしっかりと取り組む必要があると考えますが、県では、防災・減災、国土強靭化のための三か年緊急対策終了後の財源確保も含めた、頻発化・激甚化する豪雨災害を踏まえた水害防止に向けどのように取り組んでいくのか、県土整備部長にお尋ねいたします。 次に、農林水産業の振興・活性化に向けたスマート農業の推進について農林水産部長にお伺いします。 昨年六月、政府から成長戦略が発表され、その中でスマート農業の推進が掲げられました。近年注目を集めているスマート農業ですが、これは、工場などが生産工程管理によって無理・無駄・むらを省いてきたことや、工業分野が進めてきた生産技術の標準化や自動化、マニュアル化の取組を農業分野でも取り入れて、省力化・効率化などの農業経営の改善につなげていこうとするものだと考えられます。 農業は、依然として人手に頼る作業や熟練者でなければできない作業が多く、省力化や人手の確保、肉体的負担の軽減が大きな課題となっていることから、スマート農業は、全国で進んでいる少子高齢化や担い手の減少の問題を乗り越えるための技術として、期待が大きく膨らんでいるようであります。 しかし、農業の生産方法を情報としていかに捉えて生産工程や機械で行う技術に取り入れていくかという技術的な課題があります。また、農業は、工業製品のようなものづくりとは違い、農地が重要な生産手段となっており、気象や土壌など人間の力ではコントロールすることが難しい自然環境の中で、その影響を受けて育つ「生き物」を扱うということから、ICT、AIなどの先端技術を適用することは簡単なことではないと思っております。 一方で、県では、今年の三月に、少子高齢化の進行による人口減少の加速やICTの飛躍的発展などの社会情勢を背景として捉え、県民と共に県づくりを進めるための新たな指針として第四次山形県総合発展計画を策定しました。 農業について見ますと、これまでの計画であった第三次山形県総合発展計画では、県づくり構想の柱である「産業・経済」の中の展開方向の一つに「日本の食を支える『食料供給県山形』の確立」として農業を位置づけておりました。それが第四次山形県総合発展計画では、大きな政策の柱の一つとして「競争力のある力強い農林水産業の振興・活性化」が掲げられており、農業に力を入れていくという県の姿勢が示されているものと受け止めております。 そこで、スマート農業に関する県の取組の進捗状況やこれまでの取組から見えてきた課題、少子高齢化、担い手不足など、本県を取り巻く社会経済情勢の変化の中で、第四次山形県総合発展計画の政策の柱として掲げている「競争力のある力強い農林水産業の振興・活性化」に向けてスマート農業をどのように展開していくつもりなのか、農林水産部長にお伺いいたします。 次に、地域を題材とし体験を重視する総合的な学習の時間の充実について教育長にお伺いいたします。 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため学校が長期間臨時休業とされたことに伴い、休業中の授業時数をいかに確保していくかが各学校において課題となっていると思われます。 一方で、休業中は極力外出を自粛し家にいる時間の長かった子供たちにとっては、いわゆる教科の学習ばかりではなく、様々な体験を通して学ぶことも重要なことと考えております。身近な地域の魅力を地域の人と一緒になって学ぶ取組やキャリア教育の一環として実際の地域の職場等において学ぶ体験は、児童生徒の人格の形成や郷土を愛する心の醸成など、子供たちの将来のためにも意義深いものと思います。 学校での体験学習については、総合的な学習の時間を中心に取り組まれております。例えば、私の住んでいる山辺町では、地域の小学生による町議会での施策提案や、地域産業であるニット製品を学び学習発表会を兼ねたファッションショーの開催、町の成人式において「婚活」についての研究発表をするなど、実に活発な学習に取り組んでおります。県内の各校とも創意工夫を凝らし、地域の実情も反映した総合的な学習の時間における学びが展開されてきていると思います。 今年は、前述のとおり、新型コロナウイルス感染症の影響で各学校とも授業時数の確保に苦労している実態にありますが、児童生徒の将来を考えれば、各教科の学習で培う力とともに、たくましく生き抜く力を身につけることは重要であり、小さい頃の体験は、将来のための大きな宝になると思います。そうした経験を通して、「個」だけでなく、「公」の考えや、社会の中での一員としての生き抜く力を身につけることにもつながります。社会がこういうときだからこそ、小・中学校の現場を、自立心を身につける、知・徳・体のバランスの取れた育成を目指す教育の場として充実させることが重要であり、各校の取組に任せるだけでなく、全県的に、総合的な学習の時間を中心に、学校と地域が連携し、一体となって体験学習のレベルアップを図るべきと考えます。 そこで、総合的な学習の時間のこれまでの取組状況を含めた現状と、今後どのように充実させていくかについて、教育長の考えをお伺いいたします。 最後に、特別支援学校におけるICT教育環境の整備について教育長にお伺いします。 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため学校が長期間臨時休業とされたことに伴い、児童生徒の学習保障のためのICT機器の様々な活用が求められています。教育現場でのICT機器の活用は、通常の学校のみならず、特別支援学校で学ぶ児童生徒にとっても、障がいによる困難さをカバーすると同時に、確かな学びの向上につながり、有効であることは言うまでもありません。 本県の特別支援学校におけるICT教育の環境整備は、平成十二年度より順次進められてきていると聞いておりますが、特別支援学校の教育においても、情報教育の重要性の高まりとともに取り組まれてきたものと受け止めます。 現在、県立特別支援学校においては、一千名余りの児童生徒が学んでおります。特別支援学校で学ぶ子供たちは、個々に障がいがあり、障がいの違いに応じた支援が欠かせません。そうした障がいの特性に応じてICT機器の活用が進められており、ICT機器の活用例としては、例えば、聴覚障がい教育においては聞こえにくさを補うためのコミュニケーションツールとして活用したり、肢体不自由教育においては腕を動かせる範囲に応じて入力できるようにスイッチ教材を導入したりするなど、これまでも様々取り入れられてきました。つまり、障がいによる困難さを補うことや、今持っている能力の維持のみならず、その人の持つ力を高めることが求められております。 この質問を考えているときに、日本機械学会誌六月号は「人間を拡張する機械」の特集号でありました。「人間拡張」とは耳慣れない言葉ですが、未来を開く先進的な研究です。ちょっと御紹介しますと、テクノロジーによってその人が持つ能力をサポートすることで、その能力を強化・増進・拡張させるニュアンスを持つ技術分野のことです。近年は、様々な人間拡張技術を用いて、人の身体、存在、感覚、認知に関する能力を拡張しようとする試みが国内外問わず多数されております。 国内では、二〇一八年十一月に、つくば市にある産業技術総合研究所に新しい研究組織として「人間拡張研究センター」が設立されました。ここでは、「人に寄り添い、人を高める技術」の開発と、その技術の社会実証研究を行っています。コンピューターをはじめ機器類の小型化により、機能性を持つ機器を身にまとい、身体的・認知的能力を高めることを可能にすることなどが期待されており、支援を必要とする子供たちにとって、様々な能力を高める可能性を感じます。 このような機械が人間を助ける技術分野は、これからも研究が進んでいくと考えられますが、そうした進んだ技術をいかに特別支援教育の現場においても活用できるか、適宜探っていくことが重要ではないでしょうか。 県においては、今後も、特別支援学校で学ぶ児童生徒一人一人のニーズに応じたきめ細かな支援をさらに行うため、このたびの国によるGIGAスクール構想を加速させる動きをチャンスと捉え、特別支援学校におけるICT教育に係る整備を進め、児童生徒の主体的な学びにつなげていく必要があると考えます。 そこでお聞きしますが、特別支援学校には、現在どの程度ICT機器が整備されているのか、また、児童生徒はICT機器をどのように活用して学習しているのか、今後どのように整備を進めていくのか、特別支援学校のICT教育環境の整備について教育長にお伺いいたします。 以上で壇上からの質問を終わります。御清聴誠にありがとうございました。 ○議長(金澤忠一議員) この場合、答弁を求めます。 答弁の順は私から指名します。 吉村知事。 ◎知事(吉村美栄子君) 鈴木議員から私に山形県の子育て支援策の新たな展開について御質問を頂戴しましたのでお答え申し上げます。 子供はいつの時代においても社会の宝であり、未来への希望であるとの理念の下、私は、ここ山形県で誰もが安心して子供を産み、幸せに子育てをしていただきたいと考えております。 そのため、県では、これまでも若い世代の結婚・出産・子育ての希望の実現に向けて、市町村や企業、民間団体と一体となって、全県挙げて取り組んでまいりました。しかしながら、依然として少子化に歯止めがかからない状況にあります。 こうした現状に大きな危機感を持ち、その解決に取り組んでいく方向性を示すため、本年三月に新たな「やまがた子育て応援プラン」を策定したところであります。 まず、少子化の大きな要因の一つが若い世代の人口流出であることを踏まえ、施策の一番目に若者の県内定着・回帰を掲げております。また、新プランに前後して、新型コロナにより、東京圏などでの感染リスクを減らし、地方での快適な暮らしを求める若者の希望を後押しするためにも、地方への人口分散は必須となっております。県内に生まれ育った方はもちろんのこと、首都圏や県外で既に子育てをしている家庭や独り親家庭、さらに海外からの留学生も含め、若い世代に積極的に働きかけ、本県への移住・定住を促進してまいります。 そのため、「やまがた暮らし」の魅力発信をはじめ、移住してきた独り親家庭への食や住宅の支援、移住・定住希望者と企業との就職マッチングや県外からの移住を視野に入れた県内の方々との出会い・結婚への支援、さらにはテレワーク向けの環境整備などに取り組んでまいります。 また、育児や家事が女性に偏っていることも少子化要因の一つでありますので、従来の企業を対象としたワーク・ライフ・バランスの取組促進策に加え、家庭における役割分担意識を改革し、男性の育児・家事への参画を促進してまいります。特に、新型コロナを経験して導入が大きく進んだテレワークや時差出勤などの多様で柔軟な働き方は、男性の育児・家事への参画を促進する観点からも、後戻りすることなく、強力に推進していくべきと考えております。 さらに、本県には、地域内での世代を超えた助け合いの中で子供たちが温かく見守られて育つという環境がありますので、シニア層の活躍や地域の多様な方々の連携協働により、社会全体で子育てを応援する機運を盛り上げてまいります。 そして、本県には、まず一つに美しい自然や豊かな食、人と人との絆などの暮らしやすさがあります。二つにはきめ細かな子育て支援体制があります。そして三つには公園や屋内型遊戯施設をはじめ子供の遊び場が充実していることなど、都会と比べて格段の優位性がございます。新プランでは、各種の数値目標の上位に総合的な成果指標として「子育て環境満足度」を上昇させるという大きな目標を新たに設定しております。その評価検証をしっかりと行いながら、子育て環境のレベル向上を図り、子供の幸せな育ちを支援してまいります。 県としましては、こうした施策・事業を重層的に展開することで、アフターコロナも見据え、プランに掲げる「子育てするなら山形県」の実現を目指してまいりたいと考えております。 ○議長(金澤忠一議員) 須藤防災くらし安心部長。 ◎防災くらし安心部長(須藤勇司君) 私には国土強靭化地域計画についてお尋ねをいただきましたのでお答え申し上げます。 全国では、平成二十三年の東日本大震災の後も、平成二十八年の熊本地震や平成三十年の大阪府北部地震、北海道胆振東部地震など大規模な地震が頻発しているほか、気候変動の影響などにより、大規模な水害が毎年のように発生しております。本県でも近年、豪雨や地震、台風などによる大きな災害が発生しているところでございます。 このように頻発化・激甚化する自然災害から県民の命と財産を守るためには、事前の防災対策を進め、被害を最小化し、迅速な復旧・復興を進めていくことが必要となります。 県や市町村が防災・減災などの取組を進めるに当たっては、強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法、いわゆる国土強靭化基本法でございますけれども、これに基づきまして国土強靭化地域計画を策定し、総合的かつ計画的に取り組むことが求められているところでございます。 しかしながら、県内の市町村では地域計画策定の取組が進んでいなかったことから、県では、昨年度より、市町村の地域計画策定を積極的に支援してきております。昨年十月には、内閣官房国土強靭化推進室の協力を得まして、市町村の関係職員を対象に地域計画策定のための説明会を開催いたしまして、策定事務の負担を軽減する支援ソフトを提供するなど、市町村の地域計画策定を支援してまいりました。 こうした取組もありまして、本年五月末の時点では十二の市町村で策定済みとなっておりますほか、五つの市町村で策定作業中となっておりまして、地域計画策定の取組が進んできているところでございます。今後は、策定作業に着手していない市町村に対しまして、地域計画の策定手順や盛り込むべき内容などについて、県の関係部局が連携いたしまして助言をするなど、引き続き県内市町村の地域計画が早期に策定されるよう支援してまいります。 平成二十八年三月に策定いたしました県の地域計画では、今年度までの五年間を計画期間といたしまして、想定されます大規模災害につきまして、「起きてはならない最悪の事態」、例えば、地震等による建物、交通施設等の倒壊や火災に伴う死傷者の発生、あるいは大規模津波等による多数の死者の発生、ため池やダムなどの損壊、機能不全による二次災害の発生といった三十七の事態を設定いたしまして、こうした事態の回避に向けた各種の施策を推進しているところでございます。 各種施策の推進に当たりましては、行政機能や危機管理などの十一の分野、合わせて六十四項目の目標指標を定めております。このうち、令和元年度までに、新たな津波浸水想定設定に対応した津波ハザードマップの作成でありますとか、決壊すると多大な影響を与えるため池の耐震診断の実施率、孤立集落にアクセスする道路等の耐震補強対策の進捗率など、二十八の項目で目標を達成しております。今後、各分野の施策の進捗状況や推進上の課題を精査いたしまして、次期計画の検討に反映してまいります。 また、政府では、国土強靭化関連予算につきまして、地域計画に明記された事業に対して重点配分や優先採択する重点化、それから地域計画に基づいて実施する事業であることを交付要件とする要件化といったことを行うという方針を示しております。 本県といたしましては、今後、政府の国土強靭化関連予算の活用に必要となる地域計画への記載事項などについて情報収集いたしますとともに、来年度以降も国土強靭化関連予算を活用して各分野の施策が着実に推進できるよう、関係部局とともに次期計画の検討を進めてまいります。 ○議長(金澤忠一議員) 木村産業労働部長。 ◎産業労働部長(木村和浩君) 有機エレクトロニクス関連産業の振興の現状と今後の施策の方向性についてお答え申し上げます。 県ではこれまで、山形大学の世界最先端の研究を起点として、有機EL照明をはじめとする有機エレクトロニクスの産業集積を目指し、産学官が連携して取組を進め、国内外をリードしてきたところであります。 本県が実用化に向けいち早く取り組んだ有機EL照明につきましては、これまで、パネルメーカーのルミオテックを中心に県内企業七十五社が照明製品の開発等に関わり、現在は、商品化されたナースライトや検査用顕微鏡照明などの販路開拓に取り組んでいるところであります。しかしながら、本格的な市場形成には至っておらず、パネルの量産による低価格化と明るさの向上による照明市場の獲得が最大の課題となっております。 こうした中、ルミオテックは、平成三十年度に有機ELディスプレーの事業化を進めるブイ・テクノロジー社の傘下に入り、現在、量産化のプロセスを確立するため、巨大市場を有する中国で目に優しい光の特性を生かした学習スタンドの市場獲得を図ることにより、安価なパネルの量産化を目指しております。さらに、そのノウハウを生かして、国内で高効率なパネルのマザー工場を展開できるよう、県の支援により発光効率を約二倍としたLED並みの明るさのパネル開発に山形大学と共同で取り組んでいるところであります。 また、ブイ・テクノロジー社は、スマホ用有機ELディスプレー製造に不可欠な蒸着マスク--基板に発光材料を塗り分けるための部材になりますが、この量産に向け子会社ブイ・イー・ティーを設立し、本県の有機エレクトロニクス事業化実証施設において製造ラインを立ち上げ、先月には海外にサンプル出荷を始めるなど、着実に事業が進展しております。 県としては、これらの企業の取組をしっかりと軌道に乗せるため、引き続き山形大学や産業技術振興機構と連携しながら、照明パネルの量産化やディスプレーの事業拡大をサポートしてまいります。 また、県では、これまで有機エレクトロニクス関連産業全般に対し、山形大学と県内企業とのコーディネートや共同研究への助成を行ってきており、幅広い分野で事業化の動きが出始めております。具体的には、有機トランジスタ、集積回路になりますが、有機トランジスタでは、薄型センサーが介護分野で心拍数などを計測するベッドセンサーとして製品化され、蓄電デバイスでは、電気自動車をはじめとして用途が拡大するリチウムイオン電池の拠点が形成され、有機太陽電池では、薄くて光を透過する電池フィルムとして開発等が進められております。 こうした次世代有機エレクトロニクスの世界市場の規模は、調査機関の予測によれば、二〇三〇年には約九兆円に拡大すると見込まれ、将来性の高い分野でありますので、県としては、有機エレクトロニクスが本県の主要産業として大きく成長できるよう、山形大学や産業技術振興機構をはじめとした産学官金の連携をこれまで以上に強化しながら、有機エレクトロニクス関連産業の集積促進に取り組んでまいります。 ○議長(金澤忠一議員) 高橋農林水産部長。 ◎農林水産部長(高橋雅史君) 農林水産業の振興・活性化に向けたスマート農業の推進についてお答え申し上げます。 少子高齢化の進行により農業の担い手の減少が進む中にあって、省力化や労働力の軽減、さらには熟練技術の継承などにより収量や品質の高位安定にもつながるスマート農業の普及拡大は重要な課題であると認識しております。 スマート農業は、その技術の進化度合いに応じ、まず民間企業による基盤技術の開発と製品化、次に、それぞれの地域において現場でその効果を確認する実証・実装、その後の普及の各段階を経て広がってまいります。 本県におけるスマート農業の導入状況を見ますと、畜産、施設園芸など、周年型で労働集約性が高く、投資の回収が行いやすい分野などを中心にその実装、普及が進んでおります。具体的には、令和元年度までに導入が進んだ取組は、畜産の分野では、長時間の監視が必要となる牛の分娩について、体温などデータの変化から確認する装置が二十三件、これは前年度から十五件の増であります。牛の行動変化を遠隔監視する装置が六件、同じく三件増。施設園芸では、バラのハウス環境制御装置が六件、サクランボのハウスセンサーが四件導入されております。さらに、水稲でも、コンバイン等農業機械と連動したシステムを含む圃場管理などの農作業管理支援ツールが十九件導入されております。 スマート農業を今後一層効果的なものとして普及・定着させていくためには、二つの視点が重要と考えております。 一つは収益性の向上です。機器の機能を十分に活用し、実際に収益性を向上させていくためには、県では、トマトやキュウリなどの施設園芸を中心に、民間の機器導入による温度や湿度などの環境データの見える化に加えまして、生育状況をデータとして把握・診断し、適切な肥培管理等によって作物の能力を最大限引き出して収量・品質を向上させ、収益アップにつながる技術の開発及び実証に取り組んでおります。これらの取組を強化し、現場で活用できる品目や技術を増やしていくとともに、露地栽培のスイカ、リンゴ等でも気象観測に基づく効果的な病害防除対策の実証を進め、より収益につながるスマート農業の導入を支援いたします。 二つ目の視点は、スマート農業を十二分に使いこなす人材の育成であります。その高度な技術やツールを使いこなして、作業の進捗管理、労務管理、経費削減などができる人材を育成するため、農林大学校における学生や農業者を対象にしたスマート農業技術に関する講座の新たな開設や、農業経営実践塾における農作業管理支援ツールの実践的なカリキュラムの導入とともに、普及指導員等のレベルアップ研修による指導力向上に取り組んでまいります。 今後も、日々進展する民間技術開発の動向についての情報収集、全国の各種実証プロジェクト等への積極的な参画、さらには各種技術を統合した一貫体系の実証・構築に取り組み、将来を担う若者たちが希望を持てるスマート農業の導入を推進し、第四次総合発展計画の柱の一つである「競争力のある力強い農林水産業の振興・活性化」を図ってまいります。 ○議長(金澤忠一議員) 角湯県土整備部長。 ◎県土整備部長(角湯克典君) 頻発化・激甚化する豪雨災害を踏まえた水害防止の取組についてお答え申し上げます。 近年、想定を超える降雨により、甚大な自然災害が本県を含め全国各地で発生しており、今後も気候変動に伴う自然災害の頻発化・激甚化が懸念されております。これらを踏まえ、県では、「犠牲者ゼロ」及び「経済損失の軽減」を基本方針に据えた「やまがた水害・土砂災害対策中期計画」を平成三十一年三月に策定し、ハード・ソフト対策を一体的かつ計画的に推進しております。 このうちソフト対策としては、昨年度、洪水時の水位観測に特化した危機管理型水位計八十五基の運用を開始したことに加え、今年度、洪水氾濫の切迫度を映像で伝えるための簡易型河川監視カメラ九十一基の運用を開始するなど、住民の主体的な避難行動を促すための河川に関する情報提供の充実を進めてきております。 このほか、降雨の想定を千年に一度程度の規模、いわゆる「想定最大規模降雨」とした洪水浸水想定区域図の作成を、昨年度末までに対象となる七十河川全てで終えており、この区域図に基づき市町村が作成する洪水ハザードマップについても、未作成の市町村で早期に作成できるよう、必要に応じ技術的助言を行っております。 一方、ハード対策については、戦後最大規模の降雨である昭和四十二年八月の羽越水害規模の洪水などを安全に流下させることを目標とした河川整備計画に基づき取組を進めておりますが、その財源となる河川整備関係事業費が平成五年度をピークとして大きく減少していることから、整備計画に対する進捗率は約四割の水準にとどまっております。 このような中、政府では、平成三十年度に防災・減災、国土強靭化のための三か年緊急対策を策定し、これに併せて元利償還金の全額が地方交付税で措置される防災・減災・国土強靭化緊急対策事業債の創設等の地方財政支援策を講じており、県では、これらを積極的に活用しながら河川整備に取り組んでいるところです。 この三か年緊急対策については、令和二年度までの時限的な措置となっており、今後、県において防災・減災、国土強靭化に向け着実に河川整備を進めるためには、引き続き必要な財源の確保が不可欠であると考えております。このことから、全国知事会では、三か年緊急対策を見据えた財政支援を政府に要望しているところであり、今後、県としましても、令和三年度以降の防災・減災、国土強靭化に必要な財源の確保及び地方財政支援策の継続について、政府に対し強く働きかけてまいります。 県としましては、今後とも財源確保に努めるとともに、内水被害の軽減をはじめ、ダムの事前放流など、最近の水害における課題も踏まえた適時適切な対策を講じながら、頻発化・激甚化する豪雨災害にしっかりと対応してまいります。 ○議長(金澤忠一議員) 菅間教育長。 ◎教育長(菅間裕晃君) 私には二問御質問をいただきました。順次お答えいたします。 最初に、地域を題材とし体験を重視する総合的な学習の時間の充実についてお答え申し上げます。 総合的な学習の時間におきましては、地域における体験活動や調査活動を通して探究的に学びを深め、児童生徒がよりよく課題を解決する力を身につけさせること、それから自己の生き方を考えるための資質・能力を育成することなどを目標としております。 平成三十年度に本県が行いました調査では、総合的な学習の時間の学習内容については、小・中学校ともに地域の伝統と文化に関連するものが最も多く、小・中学校合わせて二百七十二校で実施しております。次いで多いのは、地域づくりやまちづくりに関するもので、小・中学校合わせて百五十九校で実施されておりました。 一例を挙げますと、県の花「紅花」を教材として取り上げた小学校におきましては、花の栽培や染物などを地域の方に教えていただく中で、地域の歴史や文化を学ぶとともに、地域の方々との関わりも深めております。また、中学校におきましては、地域の課題を見つけ出し、活性化させるためのオリジナルグッズの製作・販売、あるいは地域の魅力を伝えるCMの作成を行うなど、地域の一員として主体的に関わっている取組などがございます。 こうした学習について、各学校におきましては、自校の計画に基づき、地域と連携しながら取り組んでおりますが、その際、特に大切なのは、児童生徒が単に活動するだけにとどまらず、指導する側の教員が活動を通して子供たちにどんな力をつけていくのかということを見定めて取り組むことであります。 そこで、県教育委員会では、総合的な学習の時間においては、児童生徒の課題意識を基にしながら、各教科で身につけた基礎的・基本的な知識や技能を活用し、よりよく課題を解決する探究的な学びを実現できるよう指導助言を行ってまいりました。また、各学校を訪問して指導する際にも、子供たちにつけたい力を明確にした授業を行うように助言しております。 さらに、起業家精神の育成を目指す「子どもベンチャーマインド育成事業」や郷土への愛着や誇りを育むことを目的とした「郷土Yamagataふるさと探究コンテスト」などを行い、各校の取組やその成果を広く発信し、総合的な学習の時間の充実を推進しております。 今回のコロナ禍で、子供たちは外出を自粛し、制約の多い生活を余儀なくされました。その中で、人とのつながりや関わりのありがたさ、その意義や価値を実感したことと思います。学校が再開された今、改めて地域に目を向け、児童生徒自ら地域のために何ができるのかを考え、実践する機会をつくっていく必要があると考えております。 県教育委員会では、今後、この経験と学校での学びを生かし、学校と地域が一体となって児童生徒の課題解決能力を高めるとともに、郷土愛を深める体験活動の充実が図られるよう支援してまいります。 続いて、特別支援学校におけるICT教育環境の整備についてお答え申し上げます。 本県の特別支援学校のICT教育環境につきましては、これまで生徒用学習パソコンを中心に整備を進めてまいりました。今年度、政府のGIGAスクール構想の実現に向けた動きの加速を受け、義務教育段階の児童生徒に一人一台タブレット端末を整備するとともに、普通教室における無線LANによるネットワーク接続が可能となる環境を整え、さらには、障がいにより端末の操作が困難な児童生徒のための入出力支援装置の整備も行うこととしております。これにより、ICT教育環境のハード面の整備は大きく進むこととなり、今後は、活用の面がより重要になると考えております。 これまで、特別支援学校におけるICTを活用した学習につきましては、教室等の場所や機器の台数に限りがあったことから、制約された環境の下で行わざるを得ませんでした。今後、一人一台タブレット端末が整備されることに伴い、児童生徒の障がいの状態に応じて、入出力支援装置や専用のソフトウエアを導入し、個別に最適化された端末を使用することによって、それぞれに適した環境での学習が可能になると考えております。 例えば、委員からもございましたが、視覚に障がいのある生徒が調べる学習を行う際は、音声読み上げソフトを導入したタブレット端末を用いて、インターネット上の文字情報を音声情報として聞くことが可能になります。そういったことによって内容を理解しやすくなります。教室で自分用の端末を使用し、教師の支援なしで学習することも可能となることから、疑問に思ったことをすぐに調べ、新たな知識を身につけることができるようになり、児童生徒の知的好奇心を高め、主体的な学習へとつながると期待されます。 また、肢体不自由のある児童生徒の中でも特に重度の児童生徒につきましては、視線で文字を入力できる装置も開発されており、自分の気持ちを文字で入力し、表現することができるようになります。教師にとりましては、これまで意思の表出が難しいと思われていた児童生徒の思いや考えを理解することも可能になりますので、このように、ICTを活用した学習は、特別な支援を要する児童生徒の本来持っている力を引き出すことに非常に有効であると考えております。 さらには、タブレット端末を日常的に学習の中で使用することにより、児童生徒の情報を活用する力が育成されていくことが期待されますので、そのことが将来の進路選択の幅を広げ、社会的自立につながっていくよう実践を重ねてまいります。 県教育委員会といたしましては、様々な障がいのある児童生徒が学ぶ特別支援学校におきまして、ICTを有効に活用していくことは、一人一人の可能性を大きく広げることと考え、今後ともICT教育環境の整備を進めてまいります。 ○議長(金澤忠一議員) 以上をもって通告者の発言は全部終わりました。 質疑及び質問を終結いたします。 ○議長(金澤忠一議員) 以上をもって本日の日程は終わりました。 明二十三日から二十八日までの六日間は議案調査、委員会審査及び休日のため休会とし、二十九日定刻本会議を開き、予算特別委員長より審査の経過について報告を求めます。 本日はこれをもって散会いたします。     午後二時二分 散会...