平成26年 11月 定例会(第350回) 第三百五十回宮城県議会(定例会)会議録 (第一号)平成二十六年十一月二十六日(水曜日) 午前十時開会 午後一時三十一分散会 議長 安藤俊威君 副議長 渥美 巖君出席議員(五十九名) 第一番 太田稔郎君 第二番 天下みゆき君 第三番 三浦一敏君 第四番 境 恒春君 第五番 堀内周光君 第六番 石川利一君 第七番 長谷川 敦君 第八番 佐々木幸士君 第九番 村上智行君 第十番 すどう 哲君 第十一番 遠藤いく子君 第十二番 吉川寛康君 第十三番 伊藤和博君 第十四番 渡辺忠悦君 第十五番 細川雄一君 第十六番 高橋伸二君 第十七番 菊地恵一君 第十八番 寺澤正志君 第十九番 只野九十九君 第二十番 石川光次郎君 第二十一番 外崎浩子君 第二十二番 岸田清実君 第二十三番 佐藤詔雄君 第二十四番 菅原 実君 第二十五番 坂下 賢君 第二十六番 菅間 進君 第二十七番 庄子賢一君 第二十八番 川嶋保美君 第二十九番 佐藤光樹君 第三十番 中島源陽君 第三十一番 本木忠一君 第三十二番 中山耕一君 第三十三番 長谷川洋一君 第三十四番 池田憲彦君 第三十五番 佐々木征治君 第三十六番 安部 孝君 第三十七番 皆川章太郎君 第三十八番 小野 隆君 第三十九番 岩渕義教君 第四十番 本多祐一朗君 第四十一番 ゆさみゆき君 第四十二番 藤原のりすけ君 第四十三番 内海 太君 第四十四番 坂下やすこ君 第四十五番 横田有史君 第四十六番 小野寺初正君 第四十七番 石橋信勝君 第四十八番 齋藤正美君 第四十九番 安藤俊威君 第五十番 中村 功君 第五十一番 渥美 巖君 第五十二番 畠山和純君 第五十三番 千葉 達君 第五十四番 仁田和廣君 第五十五番 藤倉知格君 第五十六番 相沢光哉君 第五十七番 中沢幸男君 第五十八番 渡辺和喜君 第五十九番 今野隆吉君
-----------------------------------説明のため出席した者 知事 村井嘉浩君 副知事 三浦秀一君 副知事 若生正博君 公営企業管理者 橋本 潔君 総務部長 岡部 敦君 震災復興・企画部長 山田義輝君 環境生活部長 佐野好昭君 保健福祉部長 伊東昭代君 経済商工観光部長 犬飼 章君 農林水産部長 吉田祐幸君 土木部長 遠藤信哉君 会計管理者兼出納局長 宮原賢一君 総務部秘書課長 平間英博君 総務部財政課長 齋藤元彦君 教育委員会 委員長 庄子晃子君 教育長 高橋 仁君 教育次長 吉田 計君 選挙管理委員会 委員長 菊地光輝君 事務局長 冨田政則君 人事委員会 委員長 小川竹男君 事務局長 谷関邦康君 公安委員会 委員長 鎌田 宏君 警察本部長 横内 泉君 総務部長 吉田邦光君 労働委員会 事務局長 武藤伸子君 監査委員 委員 工藤鏡子君 事務局長 土井秀逸君
----------------------------------- 議会事務局 局長 菅原久吉君 次長兼総務課長 西條 力君 議事課長 菅原幹寛君 政務調査課長 泉 洋一君 総務課副参事兼課長補佐 菅原 正君 議事課長補佐 菅原敏彦君 政務調査課長補佐 諸星久美子君 議事課長補佐(班長) 布田惠子君 議事課長補佐 菅原 厚君
----------------------------------- 議事日程 第一号 平成二十六年十一月二十六日(水)午前十時開議第一 会議録署名議員の指名第二 会期の決定について第三 決議案 第三百五十回宮城県議会記念決議第四 議第三百三十一号議案 平成二十六年度宮城県一般会計補正予算第五 議第三百三十二号議案 平成二十六年度宮城県
流域下水道事業特別会計補正予算第六 議第三百三十三号議案 平成二十六年度宮城県水道用水供給事業会計補正予算第七 議第三百三十四号議案 平成二十六年度宮城県工業用水道事業会計補正予算第八 議第三百三十五号議案 平成二十六年度宮城県地域整備事業会計補正予算第九 議第三百三十六号議案 地域医療介護総合確保基金条例第十 議第三百三十七号議案 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準等を定める条例第十一 議第三百三十八号議案 行政機関設置条例の一部を改正する条例第十二 議第三百三十九号議案 職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例第十三 議第三百四十号議案 特別職の職員の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例及び県教育委員会教育長の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条例の一部を改正する条例第十四 議第三百四十一号議案 行政手続条例の一部を改正する条例第十五 議第三百四十二号議案 職員の退職手当に関する条例の一部を改正する条例第十六 議第三百四十三号議案 個人情報保護条例の一部を改正する条例第十七 議第三百四十四号議案 情報公開条例の一部を改正する条例第十八 議第三百四十五号議案 産業廃棄物税条例の一部を改正する条例第十九 議第三百四十六号議案 事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例第二十 議第三百四十七号議案 申請等の受理の特例に関する条例の一部を改正する条例第二十一 議第三百四十八号議案 児童福祉法の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整理に関する条例第二十二 議第三百四十九号議案 母子福祉資金貸付金、父子福祉資金貸付金及び
寡婦福祉資金貸付金償還免除条例の一部を改正する条例第二十三 議第三百五十号議案 当せん金付証票の発売限度額について第二十四 議第三百五十一号議案 市町の境界変更について(大崎市と美里町)第二十五 議第三百五十三号議案 指定管理者の指定について(宮城県母子・父子福祉センター)第二十六 議第三百五十四号議案 指定管理者の指定について(松島公園(駐車場))第二十七 議第三百五十五号議案 指定管理者の指定について(気仙沼漁港の駐車場)第二十八 議第三百五十六号議案 指定管理者の指定について(泊(歌津)漁港の指定施設)第二十九 議第三百五十七号議案 指定管理者の指定について(伊里前漁港の指定施設)第三十 議第三百五十八号議案 指定管理者の指定について(磯崎漁港の指定施設)第三十一 議第三百五十九号議案 指定管理者の指定について(塩釜漁港の指定施設(釜の渕泊地))第三十二 議第三百六十号議案 指定管理者の指定について(岩沼海浜緑地)第三十三 議第三百六十一号議案 指定管理者の指定について(宮城県総合運動公園(宮城スタジアム、宮城スタジアム補助競技場、投てき場、総合体育館、総合プール、テニスコート及び合宿所並びにそれらの周辺の公園施設並びに宮城県サッカー場以外の施設))第三十四 議第三百六十二号議案 指定管理者の指定について(加瀬沼公園)第三十五 議第三百六十三号議案 指定管理者の指定について(宮城県長沼ボート場)第三十六 議第三百六十四号議案 県道の路線変更について(払川町向線)第三十七 議第三百六十五号議案
地方独立行政法人宮城県立こども病院の定款変更について第三十八 議第三百六十六号議案 公立大学法人宮城大学が達成すべき業務運営に関する目標を定めることについて第三十九 議第三百六十七号議案
地方独立行政法人宮城県立病院機構が達成すべき業務運営に関する目標を定めることについて第四十 議第三百六十八号議案
地方独立行政法人宮城県立こども病院が達成すべき業務運営に関する目標の変更について第四十一 議第三百六十九号議案 工事請負契約の締結について(荒浜第一排水機場機械設備工事)第四十二 議第三百七十号議案 工事請負契約の締結について(吉田西部地区区画整理工事(その二))第四十三 議第三百七十一号議案 工事請負契約の締結について(名取地区農地災害復旧及び区画整理工事(その二))第四十四 議第三百七十二号議案 工事請負契約の締結について(名取地区農地災害復旧及び区画整理工事(その三))第四十五 議第三百七十三号議案 工事請負契約の締結について(漁業取締船建造工事)第四十六 議第三百七十四号議案 工事請負契約の締結について(
主要地方道築館登米線中田道路改築工事)第四十七 議第三百七十五号議案 工事請負契約の締結について(一般県道石巻工業港矢本線定川大橋災害復旧工事)第四十八 議第三百七十六号議案 工事請負契約の締結について(
大谷川地区海岸等護岸等災害復旧工事)第四十九 議第三百七十七号議案 工事請負契約の締結について(戸花川護岸等災害復旧工事(その一))第五十 議第三百七十八号議案 工事請負契約の締結について(戸花川護岸等災害復旧工事(その二))第五十一 議第三百七十九号議案 工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤建設工事(その三))第五十二 議第三百八十号議案 工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤災害復旧及び建設工事)第五十三 議第三百八十一号議案 工事請負契約の締結について(仙台塩釜港塩釜港区防潮堤等建設工事)第五十四 議第三百八十二号議案 工事請負契約の締結について(仙台塩釜港塩釜港区物揚場等災害復旧工事)第五十五 議第三百八十三号議案 工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤災害復旧工事(その三))第五十六 議第三百八十四号議案 工事請負契約の締結について(雄勝港防潮堤災害復旧工事)第五十七 議第三百八十五号議案 工事請負契約の締結について(気仙沼港護岸等災害復旧工事)第五十八 議第三百八十六号議案 工事請負契約の締結について(都市計画道路門脇流留線魚町道路改築工事)第五十九 議第三百八十七号議案 工事請負契約の締結について(宮城県気仙沼警察署庁舎災害復旧及び新築工事)第六十 議第三百八十八号議案 工事請負変更契約の締結について(宮城県
原子力センター庁舎災害復旧工事)第六十一 議第三百八十九号議案 工事請負変更契約の締結について(宮城県拓桃医療療育センター及び宮城県立拓桃支援学校新築工事)第六十二 議第三百九十号議案 工事請負変更契約の締結について(石巻漁港岸壁災害復旧工事)第六十三 議第三百九十一号議案 工事請負変更契約の締結について(石巻漁港雨水管渠工事)第六十四 議第三百九十二号議案 工事請負変更契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤建設工事(その一))第六十五 議第三百九十三号議案 工事請負変更契約の締結について(石巻市
筒場地区等災害公営住宅新築工事)第六十六 議第三百九十四号議案 工事請負変更契約の締結について(
七ヶ浜町代ヶ崎浜地区災害公営住宅新築工事)第六十七 議第三百九十六号議案 工事請負変更契約の締結について(宮城県登米総合産業高等学校(仮称)校舎等新築工事(その二))第六十八 報告第二百七十一号 専決処分の報告について(宮城県保健環境センター本庁舎等災害復旧工事の請負契約の変更)第六十九 報告第二百七十二号 専決処分の報告について(宮城県拓桃医療療育センター及び
宮城県立拓桃支援学校新築衛生工事の請負契約の変更)第七十 報告第二百七十三号 専決処分の報告について(宮城県拓桃医療療育センター及び
宮城県立拓桃支援学校新築空調工事の請負契約の変更)第七十一 報告第二百七十四号 専決処分の報告について(
宮戸地区海岸堤防等災害復旧工事(その三)の請負契約の変更)第七十二 報告第二百七十五号 専決処分の報告について(五ヶ村堀排水機場建設工事の請負契約の変更)第七十三 報告第二百七十六号 専決処分の報告について(名取地区区画整理工事(その三)の請負契約の変更)第七十四 報告第二百七十七号 専決処分の報告について(吉田南部地区区画整理工事(その二)の請負契約の変更)第七十五 報告第二百七十八号 専決処分の報告について(吉田南部地区区画整理工事(その三)の請負契約の変更)第七十六 報告第二百七十九号 専決処分の報告について(名取地区農地災害復旧及び区画整理工事の請負契約の変更)第七十七 報告第二百八十号 専決処分の報告について(岩沼地区農地災害復旧及び区画整理工事(その一)の請負契約の変更)第七十八 報告第二百八十一号 専決処分の報告について(岩沼地区農地災害復旧及び区画整理工事(その二)の請負契約の変更)第七十九 報告第二百八十二号 専決処分の報告について(岩沼地区農地災害復旧及び区画整理工事(その三)の請負契約の変更)第八十 報告第二百八十三号 専決処分の報告について(高屋・鳥屋崎地区農地災害復旧及び区画整理工事の請負契約の変更)第八十一 報告第二百八十四号 専決処分の報告について(
大曲浜林地荒廃防止施設災害復旧工事の請負契約の変更)第八十二 報告第二百八十五号 専決処分の報告について(
大曲浜林地荒廃防止施設災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第八十三 報告第二百八十六号 専決処分の報告について(
長須賀林地荒廃防止施設災害復旧工事の請負契約の変更)第八十四 報告第二百八十七号 専決処分の報告について(万石浦沿岸漁場整備工事(その二)の請負契約の変更)第八十五 報告第二百八十八号 専決処分の報告について(泊(歌津)漁港防波堤等災害復旧工事の請負契約の変更)第八十六 報告第二百八十九号 専決処分の報告について(荒浜漁港導流堤災害復旧工事の請負契約の変更)第八十七 報告第二百九十号 専決処分の報告について(閖上漁港岸壁等災害復旧工事の請負契約の変更)第八十八 報告第二百九十一号 専決処分の報告について(荒浜漁港護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第八十九 報告第二百九十二号 専決処分の報告について(塩釜漁港桟橋等災害復旧工事の請負契約の変更)第九十 報告第二百九十三号 専決処分の報告について(
浦の浜漁港桟橋等災害復旧工事の請負契約の変更)第九十一 報告第二百九十四号 専決処分の報告について(鮎川漁港防波堤災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第九十二 報告第二百九十五号 専決処分の報告について(一般県道大島浪板線二ノ浜一号トンネル工事の請負契約の変更)第九十三 報告第二百九十六号 専決処分の報告について(
主要地方道気仙沼唐桑線東舞根トンネル工事の請負契約の変更)第九十四 報告第二百九十七号 専決処分の報告について(一般国道三百九十八号大和田川橋(仮称)新設(下部工)工事の請負契約の変更)第九十五 報告第二百九十八号 専決処分の報告について(一般国道三百九十八号真野川橋(仮称)新設(下部工)工事の請負契約の変更)第九十六 報告第二百九十九号 専決処分の報告について(
主要地方道塩釜亘理線亘理大橋橋梁耐震補強(下部工)工事の請負契約の変更)第九十七 報告第三百号 専決処分の報告について(
一般県道大島浪板線小々汐道路改良工事の請負契約の変更)第九十八 報告第三百一号 専決処分の報告について(長浜地先海岸堤防災害復旧工事の請負契約の変更)第九十九 報告第三百二号 専決処分の報告について(高城川護岸災害復旧工事の請負契約の変更)第百 報告第三百三号 専決処分の報告について(追波川護岸等災害復旧工事(その三)の請負契約の変更)第百一 報告第三百四号 専決処分の報告について(追波川護岸等災害復旧工事(その四)の請負契約の変更)第百二 報告第三百五号 専決処分の報告について(北上運河護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百三 報告第三百六号 専決処分の報告について(富士川護岸等災害復旧工事(その四)の請負契約の変更)第百四 報告第三百七号 専決処分の報告について(北上運河護岸等災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第百五 報告第三百八号 専決処分の報告について(追波川護岸等災害復旧工事(その五)の請負契約の変更)第百六 報告第三百九号 専決処分の報告について(五間堀川護岸等災害復旧工事(その三)の請負契約の変更)第百七 報告第三百十号 専決処分の報告について(五間堀川護岸等災害復旧工事(その六)の請負契約の変更)第百八 報告第三百十一号 専決処分の報告について(南貞山運河護岸等災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第百九 報告第三百十二号 専決処分の報告について(北上運河護岸等災害復旧工事(その三)の請負契約の変更)第百十 報告第三百十三号 専決処分の報告について(五間堀川護岸等災害復旧工事(その八)の請負契約の変更)第百十一 報告第三百十四号 専決処分の報告について(七北田川護岸等災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第百十二 報告第三百十五号 専決処分の報告について(
新井田川等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百十三 報告第三百十六号 専決処分の報告について(八幡川等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百十四 報告第三百十七号 専決処分の報告について(
清水田地区海岸等堤防等災害復旧工事の請負契約の変更)第百十五 報告第三百十八号 専決処分の報告について(
東名地区海岸護岸等災害復旧工事(その四)の請負契約の変更)第百十六 報告第三百十九号 専決処分の報告について(五間堀川護岸等災害復旧工事(その九)の請負契約の変更)第百十七 報告第三百二十号 専決処分の報告について(沖ノ田川護岸等災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第百十八 報告第三百二十一号 専決処分の報告について(長清水川護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百十九 報告第三百二十二号 専決処分の報告について(青野沢川護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百二十 報告第三百二十三号 専決処分の報告について(大川等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百二十一 報告第三百二十四号 専決処分の報告について(神山川等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百二十二 報告第三百二十五号 専決処分の報告について(港川護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百二十三 報告第三百二十六号 専決処分の報告について(桜川護岸等災害復旧工事(その二)の請負契約の変更)第百二十四 報告第三百二十七号 専決処分の報告について(
水戸辺川等護岸等災害復旧工事の請負契約の変更)第百二十五 報告第三百二十八号 専決処分の報告について(金華山港防波堤等災害復旧工事の請負契約の変更)第百二十六 報告第三百二十九号 専決処分の報告について(仙台塩釜港仙台港区護岸災害復旧工事の請負契約の変更)第百二十七 報告第三百三十号 専決処分の報告について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤等災害復旧工事の請負契約の変更)第百二十八 報告第三百三十一号 専決処分の報告について(
都市計画道路大手町下増田線名取中央高架橋新設(上部工)工事(その一)の請負契約の変更)第百二十九 報告第三百三十二号 専決処分の報告について(
都市計画道路大手町下増田線名取中央高架橋新設(上部工)工事(その二)の請負契約の変更)第百三十 報告第三百三十三号 専決処分の報告について(仙塩流域下水道仙塩浄化センター汚泥処理施設監視制御設備改築工事の請負契約の変更)第百三十一 報告第三百三十四号 専決処分の報告について(石巻市黄金浜地区災害公営住宅新築工事の請負契約の変更)第百三十二 報告第三百三十五号 専決処分の報告について(七ヶ浜町菖蒲田浜地区災害公営住宅新築工事の請負契約の変更)第百三十三 報告第三百三十六号 専決処分の報告について(石巻市新蛇田南A-一街区地区災害公営住宅新築工事(その一)の請負契約の変更)第百三十四 報告第三百三十七号 専決処分の報告について(石巻市新蛇田南A-一街区地区災害公営住宅新築工事(その二)の請負契約の変更)第百三十五 報告第三百三十八号 専決処分の報告について(石巻市新蛇田南A-二街区地区災害公営住宅新築工事の請負契約の変更)第百三十六 報告第三百三十九号 専決処分の報告について(南三陸町伊里前地区災害公営住宅新築工事の請負契約の変更)第百三十七 報告第三百四十号 専決処分の報告について(南三陸町戸倉地区災害公営住宅新築工事の請負契約の変更)第百三十八 報告第三百四十一号 専決処分の報告について(和解及び損害賠償の額の決定)第百三十九 報告第三百四十二号 専決処分の報告について(県営住宅の明渡請求等に係る訴えの提起)第百四十 報告第三百四十三号 専決処分の報告について(交通事故に係る和解及び損害賠償の額の決定)第百四十一 議第三百五十二号議案 指定管理者の指定について(宮城県介護研修センター)第百四十二 議第三百九十五号議案 工事請負変更契約の締結について(宮城県登米総合産業高等学校(仮称)校舎等新築工事(その一))第百四十三 議第三百九十七号議案 平成二十六年度宮城県一般会計補正予算第百四十四 再生可能エネルギー等調査特別委員会調査結果報告第百四十五 子ども・子育て環境調査特別委員会調査結果報告第百四十六 安定雇用・地域経済活性化調査特別委員会調査結果報告第百四十七 スポーツ振興調査特別委員会調査結果報告第百四十八 大震災復旧・復興対策調査特別委員会中間報告第百四十九 大震災復旧・復興対策調査特別委員の辞任許可について第百五十 議会運営委員の選任第百五十一 常任委員の選任第百五十二 予算特別委員会の設置----------------------------------- 会議に付した事件一 日程第一 会議録署名議員の指名二 日程第二 会期の決定について三 日程第三 決議案四 日程第四ないし日程第百四十 議第三百三十一号議案ないし議第三百五十一号議案・議第三百五十三号議案ないし議第三百九十四号議案・議第三百九十六号議案・報告第二百七十一号ないし報告第三百四十三号五 日程第百四十一 議第三百五十二号議案六 日程第百四十二 議第三百九十五号議案七 日程第百四十三 議第三百九十七号議案八 日程第百四十四 再生可能エネルギー等調査特別委員会調査結果報告九 日程第百四十五 子ども・子育て環境調査特別委員会調査結果報告十 日程第百四十六 安定雇用・地域経済活性化調査特別委員会調査結果報告十一 日程第百四十七 スポーツ振興調査特別委員会調査結果報告十二 日程第百四十八 大震災復旧・復興対策調査特別委員会中間報告十三 日程第百四十九 大震災復旧・復興対策調査特別委員の辞任許可について十四 日程追加 大震災復旧・復興対策調査特別委員の選任について十五 日程第百五十 議会運営委員の選任十六 日程第百五十一 常任委員の選任十七 日程第百五十二 予算特別委員会の設置-----------------------------------
△開会(午前十時)
○議長(安藤俊威君) 第三百五十回宮城県議会を開会いたします。-----------------------------------
△開議
○議長(安藤俊威君) これより本日の会議を開きます。 本日の議事日程は、お手元に配布のとおりであります。-----------------------------------
△会議録署名議員の指名
○議長(安藤俊威君) 日程第一、会議録署名議員の指名を行います。 会議録署名議員に、十番すどう哲君、十一番遠藤いく子君を指名いたします。-----------------------------------
△表彰状伝達
○議長(安藤俊威君) 御報告いたします。 十月二十八日に開催されました全国都道府県議会議長会定例総会において、永年勤続功労者として表彰された方々がおられます。 心からお祝いを申し上げます。 ただいまから表彰状及び記念品の伝達を行います。
◎議会事務局議事課長(菅原幹寛君) それでは、表彰状と記念品の伝達を受けられる方々のお名前を申し上げますので、御登壇をお願いいたします。 小野隆殿。 〔小野隆君登壇〕
○議長(安藤俊威君) 表彰状 小野 隆殿 あなたは宮城県議会議員として在職十五年以上に及び地方自治の発展に努力された功績はまことに顕著であります よってここにその功労をたたえ表彰します 平成二十六年十月二十八日 全国都道府県議会議長会 (拍手)
◎議会事務局議事課長(菅原幹寛君) 皆川章太郎殿。 〔皆川章太郎君登壇〕
○議長(安藤俊威君) 表彰状 皆川章太郎殿 以下同文であります。 (拍手)
◎議会事務局議事課長(菅原幹寛君) 安部孝殿。 〔安部 孝君登壇〕
○議長(安藤俊威君) 表彰状 安部 孝殿 以下同文であります。 (拍手)
◎議会事務局議事課長(菅原幹寛君) 坂下賢殿。 〔坂下 賢君登壇〕
○議長(安藤俊威君) 表彰状 坂下 賢殿 以下同文であります。 (拍手)
◎議会事務局議事課長(菅原幹寛君) 佐藤詔雄殿。 〔佐藤詔雄君登壇〕
○議長(安藤俊威君) 表彰状 佐藤詔雄殿 以下同文であります。 (拍手)
◎議会事務局議事課長(菅原幹寛君) 岸田清実殿。 〔岸田清実君登壇〕
○議長(安藤俊威君) 表彰状 岸田清実殿 以下同文であります。 (拍手)
○議長(安藤俊威君) 以上をもって、伝達を終わります。-----------------------------------
△諸報告
○議長(安藤俊威君) 御報告いたします。 地方自治法第百二十一条の規定により、お手元に配布のとおり、議場出席者の通知がありました。…………………………………………………………………………………………… 議場出席者名簿 第350回県議会(平成26年11月定例会) 知事 村井嘉浩 副知事 三浦秀一 副知事 若生正博 公営企業管理者 橋本 潔 総務部長 岡部 敦 震災復興・企画部長 山田義輝 環境生活部長 佐野好昭 保健福祉部長 伊東昭代 経済商工観光部長 犬飼 章 農林水産部長 吉田祐幸 土木部長 遠藤信哉 会計管理者兼出納局長 宮原賢一 総務部秘書課長 平間英博 総務部財政課長 齋藤元彦 教育委員会 委員長 庄子晃子 教育長 高橋 仁 教育次長 吉田 計 選挙管理委員会 委員長 菊地光輝 事務局長 冨田政則 人事委員会 委員長 小川竹男 事務局長 谷関邦康 公安委員会 委員長 鎌田 宏 警察本部長 横内 泉 総務部長 吉田邦光 労働委員会 事務局長 武藤伸子 監査委員 委員 工藤鏡子 事務局長 土井秀逸-----------------------------------
△会期の決定
○議長(安藤俊威君) 日程第二、会期の決定についてを議題といたします。 お諮りいたします。 今回の会期は、本日から十二月十六日までの二十一日間といたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、会期は二十一日間と決定いたしました。-----------------------------------
△議長発言
○議長(安藤俊威君) 一言申し上げます。 本日ここに第三百五十回宮城県議会の開会を迎えましたこと、県議会史上まことに意義深いものがあり、感慨ひとしおであります。 これまで県勢の発展に尽くされました先人の御努力に敬意と感謝を申し上げますとともに、私ども県議会に席を置く者一同は、県民の代表として、地方自治の確立と東日本大震災からの復興、県勢のより一層の進展に向け、最大限努力する決意を新たにするものであります。-----------------------------------
△決議案
○議長(安藤俊威君) 日程第三、決議案、第三百五十回宮城県議会記念決議を議題といたします。…………………………………………………………………………………………… 決議案 第三百五十回宮城県議会記念決議 右事件について宮城県議会会議規則第十五条第一項の規定により別紙決議案を提出します。 平成二十六年十一月二十六日 提出者 議員 中山耕一 賛成者 議員 藤原のりすけ 岩渕義教 小野寺初正 横田有史 堀内周光 吉川寛康 齋藤正美 宮城県議会議長 安藤俊威殿…………………………………………………………………………………………… 第三百五十回宮城県議会記念決議 平成十六年二月に第三百回宮城県議会記念決議を行ってから、十年余りが経過した。 地方分権一括法の制定以降、地方分権改革が進展し、議会制度についても数度にわたる地方自治法の改正により、議会の権限、機能が強化されてきた。本県議会でも議会基本条例を制定し、その具現化に取り組むなど、議会改革を精力的に実施し、全国的に高い評価を受け、本県議会への期待と役割はますます高まっている。 一方、県政を振り返ると、市町村合併による新たな自治体の誕生、仙台空港アクセス線の開通、東北楽天ゴールデンイーグルスの誕生や自動車関連産業の県内誘致など、県民の生活に深く関わるさまざまな出来事があった。この十年間に本県は発展し、本県議会も大きな役割を果たしてきた。 他方、岩手・宮城内陸地震を初めとする自然災害も相次ぎ、特に平成二十三年三月十一日に発生した東日本大震災では、最大震度七の揺れと巨大津波により死者・行方不明者が一万人を超し、これまで営々と築き上げてきた郷土が一瞬にして壊滅する未曾有の大惨事となった。 県民一丸となって、復旧・復興に当たってきた結果、徐々に復興が進捗しつつある。しかし、いまだ多くの県民が仮設住宅での生活を余儀なくされるなど、復興への道のりは、未だ道半ばの状況である。 東日本大震災からの復旧・復興には、今後とも更なる困難な課題の発生が予想されるが、本県議会は、被災者・被災地に寄り添いながら、復旧・復興を一刻も早く成し遂げるとともに、県民の負託と信頼に応え、我が郷土をさらに発展させるため、憲法に定められた地方自治の本旨に立ち、全力を尽くすことをここに決意する。 第三百五十回宮城県議会に当たり、右、決議する。 平成 年 月 日 宮城県議会……………………………………………………………………………………………
○議長(安藤俊威君) 決議案を書記に朗読させます。議事課長菅原幹寛君。 〔議事課長朗読〕
○議長(安藤俊威君) お諮りいたします。 本決議案については、提出者の説明を省略することにいたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、提出者の説明を省略することに決定いたしました。 これより質疑に入ります。 本決議案に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。 お諮りいたします。 本決議案については、委員会の審査を省略することにいたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、委員会の審査を省略することに決定いたしました。 これより採決いたします。 決議案、第三百五十回宮城県議会記念決議を原案のとおり決することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、本決議案は、原案のとおり可決されました。-----------------------------------
△議第三百三十一号議案ないし議第三百五十一号議案
△議第三百五十三号議案ないし議第三百九十四号議案
△議第三百九十六号議案
△報告第二百七十一号ないし報告第三百四十三号
○議長(安藤俊威君) 日程第四ないし日程第百四十、議第三百三十一号議案ないし議第三百五十一号議案、議第三百五十三号議案ないし議第三百九十四号議案、議第三百九十六号議案及び報告第二百七十一号ないし報告第三百四十三号を一括して議題といたします。 知事から提案理由の説明を求めます。知事村井嘉浩君。 〔知事 村井嘉浩君登壇〕
◎知事(村井嘉浩君) 本日ここに第三百五十回宮城県議会が開会され、平成二十六年度一般会計補正予算案を初めとする提出議案を御審議いただくに当たり、最近の県政の動きと議案の概要を御説明申し上げます。 説明に先立ち、今議会は、昭和二十二年五月に地方自治法の施行後初の県議会が開会されてから三百五十回目の節目に当たります。記念すべき議会の開会を迎えましたことをまず心からお祝い申し上げます。 この六十七年の間、我が県においては、戦災からの復興に始まり、その後、高度経済成長により目覚ましい発展を遂げるとともに、仙台塩釜港、東北縦貫自動車道、東北新幹線などの基盤整備や地域の特色を生かしたまちづくりが着実に進められてまいりましたほか、宮城県沖地震や東日本大震災などの大災害に見舞われながらも、力を合わせて苦難を乗り越えてまいりました。まさに議会と執行機関が県政の車の両輪としてともに手を携え、互いに切磋琢磨しながら歩んできた道のりにほかなりませんが、とりわけ県議会におかれましては、議員提案条例を数多く制定するなど、全国から注目される地方議会として輝かしい足跡を残してまいりました。私といたしましても、大変誇りに感じているところであり、県勢発展のために御尽力を賜りました歴代議員各位の熱意と努力に対し、心から敬意を表する次第であります。今後とも、議会とともに、震災からの復興をなし遂げ、県民一人一人が誇りに思えるふるさとづくりを進めてまいりたいと考えておりますので、なお一層の御指導と御協力を賜りますようお願い申し上げます。 また、ただいま議長から御披露と伝達がありましたとおり、小野隆議員、皆川章太郎議員、安部孝議員、坂下賢議員、佐藤詔雄議員、岸田清実議員には、長年にわたり地方自治の発展に尽力された御功績により、全国都道府県議会議長会から晴れの表彰をお受けになりました。ここに、県民の皆様とともに心からお祝い申し上げ、御功労に対し深く敬意を表するものであります。なお一層御自愛の上、県勢発展のため、今後とも御活躍いただきますよう御期待申し上げます。 それでは、御説明申し上げます。 初めに、東日本大震災からの復興の取り組み状況についてであります。 まず、災害公営住宅についてですが、このたび国から工事を確実かつ円滑に実施するための取り組みが示され、具体的には見積もり単価を予定価格に反映することや間接工事費の経費率引き上げなどが検討されることとなりました。これを受け、我が県としましても、応急仮設住宅などで今なお不自由な暮らしを余儀なくされている方々に、一刻も早く落ちついた暮らしを取り戻していただくため、円滑な施工確保対策に取り組み、平成二十九年度の全戸完成を目指して市町とともに整備を進めてまいりたいと考えております。また、防災集団移転促進事業については、計画されている百九十六地区のうち百九十三地区で工事に着手しており、このうち四十二地区では宅地の整備が完成して住宅建設も進んできております。 復興道路については、国などが三陸縦貫自動車道の延伸を図りながら、既存区間についても長距離にわたって四車線化の拡幅工事を進めているほか、県では、大島架橋やみやぎ県北高速幹線道路などの新路線を建設するとともに、沿岸部の多数の路線で大規模な道路改良を行っております。このうち、気仙沼の市街地と大島を結ぶ一般県道大島浪板線については、鶴亀大橋との愛称が決まった大島架橋の本体工事が始まり、橋につながる五カ所の新設トンネルがすべて貫通するなど、平成三十年度の全線開通に向けて順調に工事が進んでおります。 防潮堤については、県が整備を予定している二百七十六カ所のうち、二百四十四カ所で地元合意が得られ、このうち百五十五カ所では工事に着手しており、二十二カ所で完成しております。現時点において、三十二カ所で地元合意が得られておりませんが、その内訳としては、まちづくり計画と調整中のものが二十三カ所、防潮堤の高さで合意に至っていないものが八カ所、位置で合意に至っていないものが一カ所となっております。防潮堤は命や財産を守る基盤であり、まちづくりの出発点でもありますことから、地元と十分な調整を図りながら整備を進めてまいります。 その他の公共施設の復旧については、被災箇所数に対する完成箇所数の割合が、道路橋梁で九割、河川で八割、港湾で四割、漁港で二割などとなっております。このうち、国に代行を依頼していた石巻漁港、気仙沼漁港、亘理町荒浜漁港では、復旧工事が完了し、先月、引き渡しを受けました。今後、水揚げ量の回復はもとより、水産加工など関連産業への波及を通じて本県経済の回復が進むものと期待しているところであります。 農業関係では、被災した農地の八割で除塩を含む復旧工事が完了し、ことし作付された農地では、被災前と同じ水準の収穫量が得られました。また、畜産関係施設のほぼすべて、園芸施設の九割、排水機場の七割が復旧を終え、順調に稼働しております。 民間企業の回復状況については、これまで三千七百五十一事業者が中小企業等グループ補助金の認定を受け、このうち七割を超える二千七百三十一事業者が復旧工事を完了させております。県内では、商工会議所や商工会の会員だけでも一万一千以上の事業者が被災をしておりますが、その九割が営業を継続又は再開しているところであります。 指定廃棄物の処分場につきましては、国では先月から県内三カ所の候補地について現地での詳細調査を行っておりましたが、現在調査は中断しております。指定廃棄物は県内各地に分散して一時保管されたままの状況が続いておりますので、国の責任において早期に懸案の解決が図られるよう期待しているところであります。 なお、津波で全壊した防災ヘリポートの復旧整備については、これまで利府町内を事業計画地として進めてきたところですが、予想以上の大規模な造成を伴うことにより、整備に要する期間及び経費が想定を大幅に上回ることが判明したことから、移転先としては断念せざるを得ないものと判断いたしました。今後、できるだけ速やかに適地を選定し、その内容を議会及び県民の皆様に説明してまいりますとともに、整備を急いでまいりたいと考えております。 以上、御説明してまいりましたが、復旧・復興の歩みは一部におくれが見られるものの、全体としては着実に進んできております。今後も手綱を緩めることなく、被災された方々に一日でも早く復旧・復興を実感していただけるよう取り組みを加速してまいる所存であります。 次に、震災復興以外の県政の状況と主な動きについてであります。 経済情勢については、このところ、政府や日銀の景気判断が軒並み下方修正されているほか、ここに来て、県税収入の伸びもやや鈍化しており、先行きの不透明感がこれまでより増しているように感じられます。また、この秋に農業協同組合から農家に支払われた米の概算金は、期待に大きく反して過去最低レベルとなり、本県経済にも大きな影を落としております。さきの定例会でも、多数の議員から農業者への緊急支援を求める御意見をいただきましたが、農業経営の悪化を防ぐため、今般、県独自の新たな金融支援制度を創設することといたしました。県民生活を支える地域経済の動向については今後とも十分に注意を払いながら、各分野の実情に応じて必要な対応を検討してまいります。 今年度末で終期を迎える産業廃棄物税については、産業廃棄物の発生抑制や再生利用などに有効に活用され、震災後は被災した処理施設の復旧にも役立てられるなど、一定の成果が得られたものと考えております。今後、持続可能な循環型社会を目指した取り組みがますます重要となってまいりますことから、課税期間を五年間延長すべきものと判断いたしましたので、議員各位及び県民の皆様の御理解と御賛同をお願い申し上げる次第であります。 このほか、このところ、火山性活動の高まりが見られている蔵王山において、登山や観光に訪れる方々に注意を促す看板等を設置したほか、レストハウスや避難小屋にヘルメットや防じんマスクなどの防災用品を配備いたしました。先月末には、不測の事態に対応するため、宮城、山形両県の山ろくの六市町などで構成する蔵王山火山防災連絡会議を設置し、登山客の安全対策等を検討しているところでありますが、年度内に火山防災協議会を設立することも含めて作業を急いでまいりたいと考えております。 次に、今後の県政運営の基本的な考え方についてであります。 宮城県震災復興計画に定める再生期の二年目に当たる来年度の予算編成に先立ち、先月末に、平成二十七年度政策財政運営の基本方針を策定いたしました。さきの予算特別委員会でも御説明申し上げましたとおり、来年度も、迅速な震災復興を初めとした四つの政策推進の基本方向のもと、引き続き、震災からの復興に最優先で取り組むとともに、国の地方創生の動きに連動しながら、人口減少対策や地域経済活性化対策など新たな行政課題に対応した施策にも力を入れてまいります。 また、来年度予算の編成に当たっては、将来にわたって必要となる復興財源の確保に全力を挙げ、宮城県震災復興計画に掲げた施策の円滑な実施に万全を期すとともに、既存事業を厳しく見直した上で、政策推進の基本方向に沿った新たな施策や公共施設の適切な維持管理等に予算を重点配分し、財政規律との調和を図りながら、一層のめり張りをきかせてまいります。 人口減少対策など地方創生に向けた取り組みは、創造的な復興を進める我が県において極めて重要性が高いものと考えております。今月初めには、私を本部長とする宮城県地方創生推進本部を庁内に立ち上げたところであり、今後、各界の皆様から御意見を伺いながら、来年十月までに本県としての総合戦略を策定してまいります。 今回御審議をお願いいたします補正予算案の主な内容ですが、震災関連としましては、先月国に提出した東日本大震災復興交付金の第十回申請額を基金に積み立てるとともに、その一部を財源として、被災農業者に貸与する施設及び機械の整備費や矢本海浜緑地の設計費等を追加しております。また、ドクターヘリの格納庫等の整備に対し助成を行うほか、来年三月に開催される第三回国連防災世界会議の関連事業として、防災産業展やシンポジウム、被災地スタディーツアー等を実施いたします。 なお、昨年度の決算を踏まえた対応として、震災で親を亡くした子供たちのために全国からお寄せいただいた御厚意を東日本大震災みやぎこども育英基金に、また、昨年度受け入れた国庫支出金等の未精算分を地域整備推進基金にそれぞれ積み立てるとともに、復興関係基金事業において昨年度支出されなかった額を今後の事業に充当するため、基金に積み戻しいたします。 震災関連以外の事業としては、地域医療介護総合確保基金を設置して、国からの交付金等を積み立てるとともに、この財源を活用して、在宅医療の体制整備を進めるほか、医療従事者の確保、育成及び勤務環境改善を支援してまいります。また、今年産米の米価下落対策として、農業者の資金繰り支援を充実するとともに、エボラ出血熱対策や肝炎対策についても強化を図ってまいります。 一般職の職員の給与については、先月、人事委員会から、平成十九年以来、七年ぶりに月例給とボーナスを同時に引き上げることなどを骨子とする勧告があったところですが、その取り扱いを慎重に検討した結果、勧告どおり、本年四月に遡及して改定することとし、その所要額を計上しております。 このほか、地方財政法に基づき、平成二十五年度一般会計決算剰余金を財政調整基金に積み立てるとともに、除融雪や河川管理、道路区画線工事など、年度末から年度初めにかけて行う必要のある公共事業費や指定管理者制度による公共施設管理運営業務委託費について、債務負担行為を設定しております。 以上、補正予算案の主な内容について御説明申し上げましたが、今回の補正規模は、一般会計で六百四十八億五百余万円、総計で六百四十八億七百余万円となります。財源としては、繰越金二百八十一億八千七百余万円、国庫支出金二百六十四億七千七百余万円、繰入金九十七億八千二百余万円などを追加しております。この結果、今年度の予算規模は、一般会計で一兆五千三百四十七億二千五百余万円、総計で一兆九千百五十六億七千二百余万円となります。 次に、予算外議案については、条例議案十四件、条例外議案四十七件を提案しておりますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。 まず、条例議案でありますが、議第三百三十六号議案は、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための基金を設置しようとするもの、議第三百三十七号議案は、介護保険法の改正に伴い、指定居宅介護支援事業所等の人員及び運営に関する基準を定めようとするものであります。また、議第三百三十九号議案及び議第三百四十号議案は、先ほど御説明いたしましたとおり、一般職の職員の給与を改定するとともに、これに準じて、特別職等の期末手当の支給割合を引き上げようとするもの、議第三百四十一号議案は、行政処分及び行政指導に関する手続について、県民の権利利益の保護を充実しようとするもの、議第三百四十五号議案は、先ほど御説明いたしましたとおり、産業廃棄物税の適用期間を延長しようとするもの、議第三百四十六号議案は、知事の権限に属する事務の一部を新たに市町村が処理できるようにするものであります。 次に、条例外議案でありますが、議第三百五十号議案は、平成二十七年度における自治宝くじの発売限度額について、議第三百五十一号議案は、土地改良事業の実施に伴う市町の境界変更について、議第三百五十三号議案ないし議第三百六十三号議案は、公の施設の指定管理者を指定することについて、議第三百六十四号議案は、県道の路線変更について、議第三百六十五号議案及び議第三百六十八号議案は、
地方独立行政法人宮城県立こども病院の定款及び中期目標を変更することについて、議第三百六十六号議案及び議第三百六十七号議案は、公立大学法人宮城大学及び
地方独立行政法人宮城県立病院機構の中期目標を定めることについて、議第三百六十九号議案ないし議第三百八十七号議案は、工事請負契約の締結について、議第三百八十八号議案ないし議第三百九十四号議案及び議第三百九十六号議案は、工事請負変更契約の締結について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。 以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。
○議長(安藤俊威君) 補正予算案に係る各部局長説明要旨は、お手元に配布のとおりであります。 ただいま議題となっております各号議案中、議第三百六十九号議案ないし議第三百七十二号議案、議第三百七十四号議案ないし議第三百八十六号議案、議第三百八十八号議案及び議第三百九十号議案ないし議第三百九十四号議案についての質疑に入ります。 質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。 議第三百六十九号議案ないし議第三百七十二号議案、議第三百七十四号議案ないし議第三百八十六号議案、議第三百八十八号議案及び議第三百九十号議案ないし議第三百九十四号議案ついては、お手元に配布の議案付託表のとおり、それぞれ所管の委員会に付託いたします。…………………………………………………………………………………………… 議案付託表 第三百五十回宮城県議会(十一月定例会)平成二十六年十一月二十六日議案番号件名提出年月日委員会議第三百六十九号議案工事請負契約の締結について(荒浜第一排水機場機械設備工事)二六・一一・二六環境生活農林水産議第三百七十号議案工事請負契約の締結について(吉田西部地区区画整理工事(その二))同環境生活農林水産議第三百七十一号議案工事請負契約の締結について(名取地区農地災害復旧及び区画整理工事(その二))同環境生活農林水産議第三百七十二号議案工事請負契約の締結について(名取地区農地災害復旧及び区画整理工事(その三))同環境生活農林水産議第三百七十四号議案工事請負契約の締結について(
主要地方道築館登米線中田道路改築工事)同建設企業議第三百七十五号議案工事請負契約の締結について(一般県道石巻工業港矢本線定川大橋災害復旧工事)同建設企業議第三百七十六号議案工事請負契約の締結について(
大谷川地区海岸等護岸等災害復旧工事)同建設企業議第三百七十七号議案工事請負契約の締結について(戸花川護岸等災害復旧工事(その一))同建設企業議第三百七十八号議案工事請負契約の締結について(戸花川護岸等災害復旧工事(その二))同建設企業議第三百七十九号議案工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤建設工事(その三))同建設企業議第三百八十号議案工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤災害復旧及び建設工事)同建設企業議第三百八十一号議案工事請負契約の締結について(仙台塩釜港塩釜港区防潮堤等建設工事)同建設企業議第三百八十二号議案工事請負契約の締結について(仙台塩釜港塩釜港区物揚場等災害復旧工事)同建設企業議第三百八十三号議案工事請負契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤災害復旧工事(その三))同建設企業議第三百八十四号議案工事請負契約の締結について(雄勝港防潮堤災害復旧工事)同建設企業議第三百八十五号議案工事請負契約の締結について(気仙沼港護岸等災害復旧工事)同建設企業議第三百八十六号議案工事請負契約の締結について(都市計画道路門脇流留線魚町道路改築工事)同建設企業議第三百八十八号議案工事請負変更契約の締結について(宮城県
原子力センター庁舎災害復旧工事)同環境生活農林水産議第三百九十号議案工事請負変更契約の締結について(石巻漁港岸壁災害復旧工事)同環境生活農林水産議第三百九十一号議案工事請負変更契約の締結について(石巻漁港雨水管渠工事)同環境生活農林水産議第三百九十二号議案工事請負変更契約の締結について(仙台塩釜港石巻港区防潮堤建設工事(その一))同建設企業議第三百九十三号議案工事請負変更契約の締結について(石巻市
筒場地区等災害公営住宅新築工事)同建設企業議第三百九十四号議案工事請負変更契約の締結について(七ヶ浜町代々崎浜地区災害公営住宅新築工事)同建設企業-----------------------------------
△議第三百五十二号議案
○議長(安藤俊威君) 日程第百四十一、議第三百五十二号議案を議題といたします。 知事から提案理由の説明を求めます。知事村井嘉浩君。 〔知事 村井嘉浩君登壇〕
◎知事(村井嘉浩君) 提出議案の概要を御説明申し上げます。 議第三百五十二号議案は、地方自治法の規定に基づき、公の施設の指定管理者を指定することについて、議会の議決を受けようとするものであります。 何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。-----------------------------------
△議第三百九十五号議案
○議長(安藤俊威君) 日程第百四十二、議第三百九十五号議案を議題といたします。 知事から提案理由の説明を求めます。知事村井嘉浩君。 〔知事 村井嘉浩君登壇〕
◎知事(村井嘉浩君) 提出議案の概要を御説明申し上げます。 議第三百九十五号議案は、工事請負変更契約の締結について、議会の議決を受けようとするものであります。 何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。-----------------------------------
△議第三百九十七号議案
○議長(安藤俊威君) 日程第百四十三、議第三百九十七号議案を議題といたします。 知事から提案理由の説明を求めます。知事村井嘉浩君。 〔知事 村井嘉浩君登壇〕
◎知事(村井嘉浩君) 提出議案の概要を御説明申し上げます。 議第三百九十七号議案は、来月十四日に執行される衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査に要する経費を追加計上するための平成二十六年度一般会計補正予算案であります。 今回の補正額は、一般会計、総計とも十億六千万円であり、財源としては国庫支出金十一億五千百万円を追加する一方、繰入金九千百万円を減額しております。この結果、今年度の予算規模は、一般会計で一兆五千三百五十七億八千五百余万円、総計で一兆九千百六十七億三千二百余万円となります。 何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。
○議長(安藤俊威君) これより質疑に入ります。 質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。 お諮りいたします。 本案につきましては、委員会の審査を省略することにいたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、委員会の審査を省略することに決定いたしました。 これより採決いたします。 議第三百九十七号議案を原案のとおり決することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、議第三百九十七号議案は、原案のとおり可決されました。 なお、ただいまの議決により生ずる数字等の整理を議長に委任されたいと思います。 これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、さように決定いたしました。-----------------------------------
△再生可能エネルギー等調査特別委員会調査結果報告
○議長(安藤俊威君) 日程第百四十四、再生可能エネルギー等調査特別委員会調査結果報告を議題といたします。 本件について委員長の報告を求めます。再生可能エネルギー等調査特別委員長、二十二番岸田清実君。 〔二十二番 岸田清実君登壇〕
◆二十二番(岸田清実君) 再生可能エネルギー等調査特別委員会の調査結果について御報告申し上げます。 本委員会は、再生可能エネルギー等に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十五年十二月十三日に設置されました。 付議事件、再生可能エネルギー等に関する諸施策についてを受け、一、本県における地域資源を活用した再生可能エネルギー導入促進の可能性について、二、再生可能エネルギーの地産地消による地域づくりの取り組みについて、三、再生可能エネルギー関連条例の検証等について、以上を調査項目として、県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに、参考人からの意見聴取を行ったほか、県内・県外調査を実施して検討を重ねてまいりました。 その結果につきましては、お手元に配布の報告書のとおりでございますが、この報告が今後の関係施策に反映されることを期待して御報告申し上げます。…………………………………………………………………………………………… 再生可能エネルギー等調査特別委員会報告書 再生可能エネルギー等調査特別委員会の調査結果について報告する。 本委員会は、再生可能エネルギー等に関する諸施策について調査・検討するため平成二十五年十二月十三日に設置され、付議事件「再生可能エネルギー等に関する諸施策について」を受け、次の事項について調査した。 一 本県における地域資源を活用した再生可能エネルギー導入促進の可能性について 二 再生可能エネルギーの地産地消による地域づくりの取り組みについて 三 再生可能エネルギー関連条例の検証等について 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、我が国のエネルギー供給の脆弱性が明らかになり、再生可能エネルギーの重要性が改めて認識され、今後、再生可能エネルギーの導入促進により地域分散型エネルギーを確保し、これを活用した地域づくりや産業振興を図り、震災復興を推進していくことが課題となっている。 本委員会では、地域資源を活用した再生可能エネルギーの導入を促進するとともに、再生可能エネルギーを活用した地域産業の振興を図り、震災の復興とともに本県の再構築を進めていくため、本県の再生可能エネルギー導入促進の取り組みについて、県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに、参考人から意見を聴取し、さらに県内の先進事例や兵庫県、岡山県の取り組み並びに岡山県真庭市の先進事例について調査し、検討した。 その結果は次のとおりである。一 現状及び課題 本県では、エネルギー関連施策として、平成十四年に議員提案による「宮城県自然エネルギー等・省エネルギー促進条例」を制定し、これに基づき平成十七年度に「自然エネルギー等の導入促進及び省エネルギーの促進に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)」を策定し、化石燃料に由来するエネルギー消費量の削減に取り組んできた。しかしながら、東日本大震災によって基本計画を取り巻く状況が一変したことから、震災からの復興の取組を進めつつも、計画的な再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの促進に取り組むことにより宮城県を低炭素社会として再構築していくため、基本計画を平成二十六年三月に改定した。また、「宮城県震災復興計画」においても「再生可能エネルギーを活用したエコタウンの形成」を復興のシンボルの一つに掲げ、災害に強く環境に配慮したクリーンエネルギーを活用するまちづくりを推進することとしている。 平成二十四年六月には、本県の再生可能エネルギーへの取り組み姿勢を明確にして、再生可能エネルギーのさらなる導入拡大及び県経済産業の活性化を図るため、「宮城県再生可能エネルギー導入推進指針」を策定しており、「再生可能エネルギー大規模導入プロジェクト」、「住宅用太陽光発電普及加速化プロジェクト」、「スマートシティ推進プロジェクト」、「クリーンエネルギー産業集積プロジェクト」の四つのプロジェクトを推進している。 「再生可能エネルギー大規模導入プロジェクト」では、地域防災拠点となり得る公共施設などや事業所に対する再生可能エネルギーや蓄電池の設備導入経費に対する補助や、宮城県農業高校跡地など県有施設や遊休県有地を利用したメガソーラー事業の展開、風力、小水力、地熱エネルギー等の利活用に向けた調査、検討に取り組んでいる。小水力発電については、農林水産部においては、大崎市内川地区に農業用水路を活用した小水力発電のモデル施設を整備しているほか、県内の農業用水利施設への導入可能性調査を実施しており、企業局においては、仙南・仙塩広域水道の送水管を利用して小水力発電に取り組んでいる。 「住宅用太陽光発電普及加速化プロジェクト」については、住宅用太陽光発電システムの設置費用に対する補助や災害公営住宅の屋上を活用した太陽光発電の導入に取り組んでいる。 「スマートシティ推進プロジェクト」では、県と沿岸被災市町で構成する「みやぎスマートシティ連絡会議」で検討し取りまとめた「再生可能エネルギー使用の最適化」、「災害対応」、「地域・産業振興」、「ICTの活用」の四つビジョンに基づき事業が進められている。石巻市では、新蛇田地区等で地域エネルギーマネジメントシステム、太陽光発電、蓄電池を設置し、再生可能エネルギーを活用した災害に強いまちづくりを目指す「エコ・セーフティタウン事業」に、気仙沼市赤岩港地区では、水産加工団地内の地元水産加工業者九社によるエネルギーマネジメントでエコ化を目指す「赤岩港エコ水産加工団地プロジェクト」に取り組んでいる。また、環境未来都市の指定を受けた東松島市でのメガソーラー事業など、事業化が進められている。 「クリーンエネルギー産業集積プロジェクト」では、クリーンエネルギー関連産業の誘致について、誘致活動の成果としてソーラーフロンティア株式会社が大衡村に立地を決定している。クリーンエネルギー関連産業の人材育成を強化するため、東松島市では廃校を活用して太陽光発電専門校を誘致し、平成二十四年七月に開校している。また、クリーンエネルギー関連研究開発を推進するため、民間の技術開発や産官学連携も視野に、新製品実用化に対する補助や共同開発を支援している。 本県における地域資源を活用した再生可能エネルギー導入促進の可能性について、再生可能エネルギーの利用可能量を見ると、特徴としては太陽光や風力が多くなっている。太陽光発電については、東北地方の中でもポテンシャルが高く、冬場の降雪量が少なく晴天の日が多い平野部を中心として全県的に利用が見込まれる。風力発電については、東北地方の中では低いが、奥羽山系や北上山地の風力の強い地域で利用可能性がある。そのほか、バイオマス、水力発電、温泉熱を含む地熱エネルギーについても、奥羽山脈に近い中山間部を中心に、それぞれ一定のポテンシャルが見込まれ、様々なエネルギーの利用可能性がある。 再生可能エネルギーの導入状況については、平成二十二年度と平成二十四年度を比較すると、住宅用を中心として太陽光発電が大幅に増加しているが、熱利用バイオマスについては、導入量自体は多いものの、東日本大震災の影響で大口の施設が稼働停止になったことが影響して激減している。 再生可能エネルギー導入に向けた課題としては、太陽光発電については、固定価格買取制度による買取価格が引き下げられ、設備価格など経済面の要因で導入のハードルが高くなると考えられる。風力発電については、陸上風車は自然保護法等各種開発規制や猛禽類など希少生物の保護が課題となる。浮体式の洋上風力発電についても可能性は高いものの、設備の耐久性やコストなどの課題のほか漁業者の理解を得ることが課題となる。バイオマスについては、木質バイオマスを引き続き利用するほか、今まで未利用だった稲わらや生ごみなど使った発電などが考えられ、農林水産部を中心に実証モデル事業に取り組んでいるが、収集、運搬、前処理などエネルギーとしての活用に至るまでの過程が多いため、各関係者との協働による取り組みが重要となる。地熱については、自然保護法の開発規制のほか温泉法の掘削許可が必要となる場合が多く、また、資源調査や井戸採掘など初期投資費用が大きく、調査から操業まで長期間となるため、新たな開発は難しい状況となっている。 再生可能エネルギーの地産地消による地域づくりにおいて重要となるのが、地域内でエネルギーが回り、経済が回っていくことであり、その取り組み手法の一つとして県民出資や市民ファンドの活用がある。再生可能エネルギーによる発電事業や投資事業に県民が金銭を出資し、そこで得られる収益の配分を受ける仕組みを利用することで、地域内で事業資金を賄い、収益を特定の事業者ではなく、事業に参加した地域市民が享受する仕組みであり、県内では、加美町での太陽光発電事業や気仙沼市での木質バイオマス発電事業などの取り組みが行われている。二 参考人からの意見聴取 1 東北大学大学院工学研究科 教授 中田俊彦氏 原子力を含めたエネルギー供給の保全などエネルギー政策は国が行っており、日本は東京や大阪など大都市を支えなければならないため、大都市中心のエネルギー政策となっている。電力会社や大手ガス会社などに対する権限は経済産業省が持っており、地元自治体には権限がないので、自治体のエネルギー政策は、国ができないことで、かつ、地元にメリットがあるものを見つけ出して、その地元にあったスケールで提案していくことが必要となる。明治時代は地域の自給自足があったが、戦後、大規模集約型になり、その中で地域は創意工夫をしなくても済んでいた。しかし、大規模集約型だけに頼るのではなく、また、太陽光やバイオマスなどもそれだけで完結しようとするのではなく大規模なインフラ設備と協調して、地域自律・分散型の「グローカル」なエネルギー社会を宮城県として創意工夫してほしいと述べた。 一人当たりのエネルギー消費は東北地方が一番低いが、それは省エネが進んでいるということではなく、例えば住宅基準を見ても仙台は北関東の延長線上となるなど、東北は寒さにこらえて生活している。エネルギーに係る出費を見ても、東北は全国で一番高いと言われている。そういう状況から、東北、北海道で、寒い北国向けのエネルギーシステムをつくるのが理想だと考えている。ロンドンでは、百年かけて道路の中に温水や蒸気の配管を整備して、ごみ焼却熱や重油ボイラーから蒸気を送って、病院や学校などに簡単な熱交換器を設置して暖房しているが、日本ではそういった地域熱供給システムがあまり入っていない。市町村単位ではなく、市街地である程度人口が集中している区域であれば、エネルギー供給システムの導入に投資する価値があると述べた。 日本は木質について発電だけではなく熱利用しなければならない。日本は森林があるにもかかわらず木材が使われないで輸入している。東北地方と同程度の人口のオーストリアと比較すると、オーストリアの森林面積は日本の一六パーセントだが、木材生産量は一五五パーセント、木材輸入量は二二パーセントであり、また、オーストリアでは木材をエネルギーとして使っている割合が高く、発電ではなく熱利用されている。日本では、木質について固定価格買取制度では発電しかないが、送電線につなげば電気は上流側に流れていくので、東京の事業者が来て東京に電気を送るということになり、地元では発電所の煙だけという状況や、アユがいる川に温排水を流して地元の漁業協同組合から苦情が出るということになる。ただ熱利用するためには、熱を運ぶ配管が必要となるがそれがない。札幌市では札幌オリンピックを機に整備した経緯があるが、こういうインフラは国の投資が必要であり、震災をきっかけに仙台市などで整備されることを期待していると述べた。 2 サステナジー株式会社 取締役 三木 浩氏 再生可能エネルギーを活用した地域活性化のためには、信用金庫などの地域の金融機関と地域の企業が組んで、地産地消のエネルギーを創出する事業を立ち上げ、それにより雇用を創出すること、また、地域外からの石油の購入量を減らして、地域内で循環するお金を増やすことにより地域経済を活性化させることが必要となる。この事業の枠組みは、東日本大震災前から岩手県で行われていたが、東日本大震災以後、宮城県内では、石巻市での太陽光発電事業、気仙沼市の木質バイオマスガス化熱電供給事業、大崎市のメガソーラー事業で取り組まれている。問題点としては、発電事業者は事業経験がなく、金融機関でも融資実績が少ないため、太陽光発電事業などでは融資額が二億円から三億円になり、金融機関としては安心して融資できる事業かどうかの見極めが難しい状況があるため、金融機関自らがノウハウを積み上げていく必要がある。また、関係事業者間のパワーバランスは、特に急激に市場が立ち上がった太陽光発電事業において、EPC(設計、調達、施工までを一貫して行う事業者)の立場が一番強く、EPCは資材調達価格や日射量から発電予測など多くの情報を持っており、大体の事業収支がわかるので、建設費用を高めに提示される場合がある。また、太陽光の買い取り価格が下がっているため、プロしかできないような市場になっており、新規の経験がない地元の事業者では参入するのが難しい状況になっていると述べた。 事業者視点で見ると規制の問題があり、一ヘクタール以上の土地を使って太陽光発電事業を行う場合、土地の形質変更に該当するため開発行為となり、防災調整池の設置が必要となることから、設備条件など規制が厳しくなってしまうため、一メガワットを超える太陽光発電所の建設が実質的に難しくなってしまう。それは開発面積に太陽光のパネルとパネルの間の通路も算入されてしまうためであり、面積のカウントの仕方を見直すか、規制自体を見直してほしいと述べた。 木質バイオマスについては、小規模なバイオマス発電所を、分散型でそれぞれの地域につくるというのがこれからの事業のあり方だと考えている。採算ラインとしては一般的に五千キロワット、一万キロワットということになるが、大規模になると相当な量の木材が必要となり、地域内から集めるのが難しくなるほか、価格も高くなってしまう。また、安定的な供給が見込めない場合もあり、施設の稼働率が下がって、その結果うまくいかなくなる。気仙沼市の事例として、森林組合などから地域内で賄える量の木材を調達して、電気八百キロワット、熱九百九十キロワットの木質バイオマスガス化熱電供給事業がある。木材を蒸し焼きにしてガス化し、それでエンジンを回して発電している。電気は全量買い取りになり、熱は遠くに運べないので、熱を消費する施設の近くに、必要な熱量から逆算した大きさのプラントをつくることによって小規模でも採算が取れる計画となっている。また、出された木材は、価格も決めて全部買い取ることとしているので、林業家の方が生業として成立するようになる。また、木材調達先の多様化の取り組みとして、伐採講習を開催して、木材の安定的な調達を図るほか、木の代金等の一部を地域通貨で支払い、地元に直接還元される仕組みとしている。このように、地域内にある自然資本を生かして、コンパクトで効率のいい技術を選択し、地域内での経済循環を生み出す仕組みをつくることが必要であると述べた。三 県内調査 1 スマートシティ企画株式会社(気仙沼市) 気仙沼市赤岩港地区にある水産加工団地内の水産加工会社九社では、気仙沼市及びスマートシティ企画株式会社、荏原環境プラント株式会社が共同申請し、経済産業省のスマートコミュニティ導入促進事業の補助を受けて取り組んだ「気仙沼赤岩港エコ水産加工団地プロジェクト」により導入したシステムが、平成二十六年三月から稼働している。 この事業は、水産加工団地内におけるエネルギーマネジメントによるエネルギーコストの低減と災害に強いエネルギーシステムの構築を目的としている。ゴミを使って発電したバイオマス電力を新電力会社から購入し、団地内全体の電力使用を集中監視して、各工場においては設備機械や空調等の電力使用量の見える化を行っている。電力需給が逼迫した時には、各工場に節電要請をメールで通知し、団地内全体のエネルギー需給を最適化することによりコストを削減している。また、団地内に緊急時の非常用電源とするためエコカー十四台を配置しており、通常時においても、ピークカットのためエコカーから工場に電気を供給できるシステムを設置している工場もある。設備の導入に当たっては、各工場のニーズをよく把握して、必要なものを適切に導入して、その結果として、投資対効果が高いシステムが出来上がり、早いところでは単年度で、長くても五年以内に投資額を回収できると説明があった。 2 株式会社気仙沼市民の森風力発電所(気仙沼市) 株式会社気仙沼市民の森風力発電所は、地元企業三社の共同出資により平成二十四年四月に設立され、電力を地産地消するという考えのもと気仙沼市川上地区において風力発電事業を計画している。 総事業費は三十億円以上となるが、設備費の一部について国から補助を受け、また、気仙沼市復興計画プロジェクトにおける「気仙沼市再生可能エネルギー導入プロジェクト」の一つとして位置づけられ、県立自然公園気仙沼内の市有地に設置する計画となっている。今年度中に建設工事に着手し、平成二十七年度中の稼働を予定しており、ドイツ製の風力発電機四基を設置して、一般家庭四千世帯分の電気を賄うことができる七千四百八十キロワットの電力を発電する。事業期間は設備の耐用年数となる二十年間で、事業期間終了後の設備撤去費用も含めて収益が見込まれると説明があった。四 県外調査 1 兵庫県 兵庫県では、淡路島が持つ豊富な地域資源を活用して、人口減少や経済縮小など厳しい現状にある淡路島の地域活性化のため「あわじ環境未来島構想」を策定し各種事業に取り組んでいる。 あわじ環境未来島構想は、大都市中心の効率、利便性を重視した効率成長モデルから地方が主役の生活の質重視の持続成長モデルをつくること、また、住民や企業、行政が協働で社会実験として推進することにより、淡路島が神戸市に近接した絶好のロケーションであることを生かして、新しい地域社会の成功モデルを創出することをねらいとしている。取り組みの三本柱として「食と農の持続」、「エネルギーの持続」、「暮らしの持続」を掲げ、平成二十三年十二月には地域活性化総合特区として「あわじ環境未来島特区」に指定されており、特区の仕組みを活用し、質の高い取り組みを行っていきたいと説明があった。 三本柱の一つである「エネルギーの持続」については、二〇五〇年までに島内でエネルギー(電力)自給率百パーセントを目標に掲げている。太陽光発電については、淡路島内の広大な未利用地と地域資源である長い日照時間を生かすとともに、地元電力会社の送電網の受け入れ容量に余裕もあるため、発電事業者の立地促進を進め、現在、建設中や予定のものも含めて二十七発電所あるとのことである。特に、住民参加型太陽光発電事業は、兵庫県が県民債(あわじ環境未来島債)を発行して、淡路島民を中心とした県民から四億円の資金を調達し、貸し付けを受けた一般財団法人淡路島くにうみ協会が、住民参加型くにうみ太陽光発電所の建設・運営を行い、売電によって得た収益を淡路地域の活性化に活用するという形で島民・県民が再生可能エネルギーの創出に取り組み、住民ぐるみで関わるあわじ環境未来島構想を推進している。その他、環境省による風力・太陽熱・バイオマスを組み合わせたバイナリー発電に関する技術開発の実証実験、洲本市における廃食用油や下水汚泥を利用したバイオマス発電の実証事業、淡路島西岸の良好な風況を活用した洋上風力発電の事業化の検討、明石海峡での潮流発電の実用化に向けた実証実験、スマートコミュニティづくりとして南あわじ市沼島での離島・漁村における直流技術による自立分散エネルギーシステム技術の実証研究の取り組みについて説明があった。 2 一般財団法人淡路島くにうみ協会(住民参加型くにうみ太陽光発電所) 一般財団法人淡路島くにうみ協会は、平成二十一年四月に、財団法人淡路二十一世紀協会と財団法人淡路花博記念事業協会が統合して発足し、淡路の活性化のための事業に取り組んでいる団体であり、兵庫県が県民債により調達した資金を借り入れて、住民参加型くにうみ太陽光発電所の建設・運営を行っている。 兵庫県立淡路島公園に隣接する県有地一・五ヘクタールに発電能力九百五十キロワットの発電所を建設し、平成二十六年三月から稼働している。発電した電気を固定価格買取制度により電力会社に売電している。当初は年間百万キロワットの売電を計画し、五年目で黒字になる見込みであったが、淡路は全国でも有数の日照時間があり、稼働開始から七月までの五カ月間で約六十万キロワット発電しており、今年度から黒字になる見込みであると説明があった。 この発電所は、停電時でも太陽光パネルで発電した電気を使って運転ができる自立運転機能を搭載したパワーコンディショナーを二台設置し、災害時の停電にも対応できるようになっている。また、県民債で建設した発電所として透明性を確保するため、インターネットで発電状況の情報提供をしていると説明があった。 3 真庭市(バイオマスツアー真庭) 真庭市は岡山県北部の中国山地のほぼ中央に位置し、山林が市の面積の約八割を占め、原木市場が三市場、製材所が約三十社、製品市場一市場が集積している林業・木材産業の集散地である。 真庭市における木質バイオマスへの取り組みは、平成五年に地域産業の衰退化への危惧から地元の若手経営者などが中心となって立ち上げた勉強会「二十一世紀の真庭塾」において、循環型社会の形成をテーマとしたゼロエミッション部会が設置され、地域にある豊富な木材資源の有効活用が検討されたことから始まっている。 平成十年には「木質資源活用産業クラスター構想」を策定し、それまで年間約七万八千トン発生していた製材時の屑や廃材などの木質副産物を、エネルギー供給や新たな木質製品の開発などに有効活用して、地域内に産業連携を構築して地域全体を活性化するため各種事業に取り組んだ。 平成十七年には「バイオマスタウン構想」を策定し、バイオマスを活用した地産地消・循環型社会の実現のため、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として「バイオマスエネルギー地域システム化実験事業」に取り組み、林地残材チップや製材チップを効率よく収集・加工して、建物の冷暖房や農業用ハウスなど各種産業用ボイラーの燃料として利用する仕組みを構築し、あわせて木質資源を安定的に流通させるため真庭バイオマス集積基地を整備した。これらの取り組みにより、石油代替量で一万六千キロリットルが地産のバイオマス資源に置き換えられ、金額にして約十四億円の経済効果が地域内にあった。木質バイオマスエネルギーの自給率は、平成二十四年度調査で一一・六パーセント。今後の目標としては二〇パーセントを目指し、いずれは一〇〇パーセントを賄えるよう利用を広げたいと説明があった。 平成二十六年三月には「バイオマス産業都市」に指定され、産学官連携によるバイオマス産業の創出に取り組んでいる。真庭市バイオマスリファイナリー事業として、産学官共同で真庭市バイオマスリファイナリー事業推進協議会を設立し、バイオマス産業創出の研究拠点として真庭バイオマスラボを設置し、木片を更に細かくしてプラスチックと混ぜたセルロースナノファイバーなど、バイオマスを利用した付加価値の高い商品の研究開発を行っている。また、地域の林業・木材産業関係者を中心に真庭バイオマス発電株式会社が設立され、平成二十七年四月の稼働を目指して木質バイオマスを燃料とした発電所が建設中であり、二万二千世帯の需要に対応する一万キロワットの発電を計画していると説明があった。 真庭市では、バイオマスタウン真庭の将来イメージを実感し次世代へ継承していくため、子どもを含めた市民を対象として、出前講座や体験学習、現地見学によるバイオマスの普及啓発活動を行っているほか、地域外を対象とした活動として、一般社団法人真庭観光連盟が主催し、地域の関係団体と連携して、バイオマスツアー真庭を実施していると説明があった。 3 岡山県 岡山県では、再生可能エネルギーの普及拡大について、地球温暖化防止だけではなく産業振興や地域活性化にも結び付けるための方策を、岡山発の新エネルギー政策として広く県民に示し、県民、市町村、民間企業等の多様な主体の協働による取り組みを加速することを目的に、平成三十二年を目標年次として、平成二十三年三月に「おかやま新エネルギービジョン」を策定している。太陽光発電、小水力発電、木質バイオマスの利活用、EVの普及と技術開発の四つの重点分野と、市場獲得戦略、地産拡大戦略、イメージアップ戦略の三つの戦略を掲げ各種重点プロジェクトに取り組んでいる。 メガソーラーについては、日照に恵まれ、年間の降水量一ミリ未満の日が日本一の「晴れの国おかやま」という特性を生かして、比較的早い時期から誘致に取り組んでいる。平成二十五年度までに県内十カ所の候補地を公表し、また、設置促進のための補助金制度を創設し、候補地全てに立地が決定し、うち七カ所が稼働中となっている。また、平成三十年には瀬戸内市の塩田跡地を利用して、二百六十五ヘクタールに二百三十メガワットの大規模メガソーラーが計画されている。地元電力会社とは、送電線の工事費の相談に乗ってもらっているなど、関係は比較的うまくいっていると説明があった。 市民共同発電事業については、平成十九年度に地元の備前グリーンエネルギー株式会社が、国の補助制度を活用して、市民ファンドを活用して太陽光発電所を設置している。平成二十六年三月には西粟倉村で「にしあわくらおひさま発電所」が稼働しているが、村民からの建設協力金(借入金)、寄付金、金融機関からの借入金を資金として、認定NPO法人おかやまエネルギーの未来を考える会が事業主体となり、売電収入の一部を村の環境教育活動や自然エネルギー関係機材の整備のための費用などで地域に還元することとしている。平成二十六年九月には県、市町村、NPO法人、金融機関を構成員として市民共同発電戦略会議を立ち上げ、取組を強化する予定であると説明があった。 電気自動車については、倉敷市の水島工業地帯に電気自動車の量産工場があることなどから、積極的に普及促進に取り組んでいる。平成二十一年度に、メーカー、経済団体、学識経験者、行政機関等で構成する岡山県電気自動車等普及推進協議会を設立し、また、平成二十二年度には鳥取県とともに国のEV・PHV構想の指定を受け、官民一体となって電気自動車の普及促進や技術開発、充電インフラの整備に取り組んでいる。主な取り組みとしては、急速充電器を県下全域に半径三十キロメートル円で県内をカバーできるよう配置できるよう候補地を選定し、平成二十六年までに二十カ所設置している。また、EVと給電機能付き充電器を併せて購入する場合に経費の一部を助成している。そのほか、鳥取県との連携事業として、平成二十六年十月に中国横断EVエコドライブ・グランプリを開催すると説明があった。 平成二十六年度から「岡山県再生可能エネルギー等推進基金」を設置している。岡山空港南側法面に企業局が設置している三・五メガワットのメガソーラーなどの売電収入のうち固定価格買取制度により増収となった額の二分の一を基金として積み立て、再生可能エネルギーの利用に関する研究開発の推進、環境教育の充実、エネルギー関連分野における産業の振興等に関する施策に充てることとしていると説明があった。五 総括 これらの調査結果を踏まえ、本特別委員会は、再生可能エネルギー等に関する諸施策について、次のとおり取りまとめた。 1 地域資源を活用した再生可能エネルギー導入の促進 国においては、現在行われている固定価格買取制度の見直しのなかで、太陽光偏重の再検討と他の再生可能エネルギー導入の促進策について議論が進められている。本県における再生可能エネルギーについては、導入が進んでいる太陽光のほか、奥羽山系や北上山地の風力が強い地域での風力や、奥羽山脈に近い中山間部を中心とした地域でのバイオマス、水力、温泉熱を含む地熱の各エネルギーについて一定のポテンシャルが見込まれることから、今後、バランスの取れた導入の促進が重要となる。 風力については、気仙沼市において地元企業による発電事業の取り組みが行われているが、導入を促進するためには、環境アセスメントの迅速化や各種規制の緩和、基準等の弾力的運用が必要となり、国に対して規制緩和等についての働きかけを強める必要がある。また、洋上風力について、福島県では国の「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」が行われているほか、秋田県や山形県においても事業が計画されており、本県においても導入可能性があることから、事業化の可能性について引き続き検討する必要がある。 バイオマスについては、地域において未利用となっている間伐材等などの森林資源や稲わら、生ごみ等を利用した発電や熱利用を促進することについて、原料の収集など関係者間の調整が必要となることから、関係機関の連携を強化し地域に根ざした主体による取り組みに発展させていくことが重要である。そのために、宮城県バイオマス利活用推進委員会の枠組み等を活用して、地域や事業者等に指導・助言等の支援や情報提供を引き続き行うとともに、専門家の派遣や相談体制の強化について取り組む必要がある。 小水力については、農業用水利施設を利用したモデル事業を実施しているが、それを基に多様な開発モデルを具体化して、地域にとって利点が見える形で市町村や土地改良区、水利組合等へ情報を提供し、導入を促進していくことが必要である。また、企業局における取り組みとして、平成二十六年八月に仙南・仙塩広域水道の送水管を利用して「馬越石水力発電所」が竣工し稼働しているが、今後も小水力を保有する施設へ導入することについて取り組む必要がある。 地熱については、初期の開発リスクや各種規制により事業化までの期間が長期となるなど課題も多いが、国が固定価格買取制度の見直しのなかで、電力会社に地熱発電からの電気を優先的に購入させる方針を検討していることから、事業の実施可能性について引き続き検討する必要がある。また、本県においては、温泉熱を利用したバイナリー発電の利用可能性もあることから、事業化の可能性について引き続き検討する必要がある。 再生可能エネルギーの導入を促進するためには、送電網等の基盤整備が必要となることから、機会をとらえて国や電力会社に対応を求めていく必要がある。 2 再生可能エネルギーによる地域づくり・地域活性化の推進 再生可能エネルギーを活用して地域を活性化するためには、地域資源を生かした地域で消費する取り組みを、行政や地元企業などの関係団体が一体となって推進する必要があり、さらにこの取り組みを、住民参加による地域ぐるみの取り組みに発展させていくことが重要である。そのためには、地域において、再生可能エネルギーの利活用について、市町村や地元企業、金融機関、NPO法人など関係団体が協議や情報共有を行う場として協議会等の設置が必要となることから、県は協議会等の立ち上げや運営について補助だけでなく、関係者に広く周知し利用促進を図るとともに、協議会等に積極的に参画していくことが必要である。 また、住民参加の取り組みとして、加美町において市民ファンドによる住民参加型太陽光発電事業が進められているが、より一層の推進を図るため、市民ファンドだけでなく、県民出資や県が住民参加型公募地方債を発行して資金調達に関わるなど、様々な手法のメリット・デメリットを研究・検討していくことが必要である。 さらに、気仙沼市では地域内の間伐材を利用したバイオマス発電事業において、調達した間伐材の代金の一部を地域通貨で支払うことにより地域内で経済が活性化する仕組みを構築しているが、本委員会で調査を行った岡山県真庭市など他の自治体の事例も参考として、県内の自治体においても地域経済の活性化策の導入が推進されるよう、手法の研究を行うとともに機会を捉えて県内の市町村等に情報提供してくことが必要であるとともに、再生可能エネルギーを利用した地域づくりの一環として、地域資源を持続的に活用するために、次世代を担う子どもたちに対して環境教育の更なる充実を図る必要がある。 スマートシティの取り組みについて、県と沿岸市町村等で構成する「みやぎスマートシティ連絡会議」においてビジョンが取りまとめられ、県内市町村において国の補助金等を活用して事業化が進められているが、災害時におけるエネルギーの確保を可能とするため、地域の防災拠点となる公共施設や民間施設への太陽光発電設備や蓄電池を設置するなど自立分散型システムの積極的な導入や、災害公営住宅の屋根に民間活力を活かした太陽光発電システムの導入を促進する必要があることに加え、構築後の事業性や継続性を確保するための出資や補助金等の支援が必要であることに加え、市町村が中心となって進められている新たなまちづくりには、全県的な取り組みや関係機関との連携など更なる県の支援が必要である。 3 再生可能エネルギー関連産業の誘致、人材育成、研究開発の推進 東日本大震災からの復興を確実に進めていくためには、再生可能エネルギー関連技術などを含めた研究開発の支援や企業誘致などを通じて県内産業の振興を図っていく必要があり、また、人材育成への取り組みや産学官の連携が重要となる。 再生可能エネルギー関連産業の誘致を促進するため、引き続き企業誘致活動を積極的に行うとともに、再生可能エネルギー関連産業に対する助成制度の拡充について検討する必要がある。 クリーンエネルギー・省エネルギー関連商品の研究開発については、補助制度の周知や充実を図るほか、産学官連携の枠組み等を活用して地元大学や宮城県産業技術総合センターなどの研究機関と一層の連携を図る必要がある。 今後展開していく様々な関連施策を効果的に推進するため、各種支援制度の情報や技術情報等を一元的に管理・提供するとともに、事業化のコーディネートや許認可手続きの指導等も行う部署や相談窓口を設置して、企業等の取り組みを積極的に支援していく必要がある。 以上、これらの調査結果が今後の本県における再生可能エネルギーの関係施策に十分に反映されることを期待して本特別委員会の報告とする。 平成二十六年十一月二十日 再生可能エネルギー等調査特別委員長 岸田清実 宮城県議会議長 安藤俊威殿……………………………………………………………………………………………
○議長(安藤俊威君) これより質疑に入ります。 委員長報告に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。-----------------------------------
△子ども・子育て環境調査特別委員会
○議長(安藤俊威君) 日程第百四十五、子ども・子育て環境調査特別委員会調査結果報告を議題といたします。 本件について委員長の報告を求めます。子ども・子育て環境調査特別委員長、四十二番藤原のりすけ君。 〔四十二番 藤原のりすけ君登壇〕
◆四十二番(藤原のりすけ君) 子ども・子育て環境調査特別委員会の調査結果について御報告申し上げます。 本委員会は、子ども・子育て環境に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十五年十二月十三日に設置されました。 付議事件、子ども・子育て環境に関する諸施策についてを受け、一、保育環境の充実と子育ての社会的支援について、二、東日本大震災被災地の子ども・子育て支援について、三、子ども・子育てに関する条例について、以上を調査項目として、県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに、参考人からの意見聴取を行ったほか、県内・県外調査を実施して検討を重ねてまいりました。 その結果につきましては、お手元に配布の報告書のとおりでございますが、この報告が今後の関係施策に反映されることを期待して御報告申し上げます。…………………………………………………………………………………………… 子ども・子育て環境調査特別委員会報告書 子ども・子育て環境調査特別委員会の調査・検討結果について報告する。 本委員会は、子ども・子育て環境に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十五年十二月十三日に設置され、付議事件「子ども・子育て環境に関する諸施策について」を受け、次の事項について調査した。 一 保育環境の充実と子育ての社会的支援について 二 東日本大震災被災地の子ども・子育て支援について 三 子ども・子育てに関する条例について 以上の項目について、県関係部局から県施策の概要及び県内の現状を聴取するとともに、参考人から意見を聴取し、さらに石巻市立門脇小学校、東松島市、富谷町の取り組みを調査したほか、他県の事例を参考とするため、滋賀県湖南市、京都府、京都府家庭支援総合センター、高知県の取り組みについて調査し、検討した。 その結果は、次のとおりである。一 現状と課題 1 保育環境の充実と子育ての社会的支援について 少子化の進行やライフスタイルの変化、地域のつながりの希薄化などにより、家庭や地域の子育て力が低下し、子育てに対する不安や負担が増大している。また、ひとり親家庭の増加や子どもの貧困が社会問題となるなど、子どもを取り巻く環境が大きく変化する中で、子どもたちが健やかに成長するためには、その親や家庭を社会全体で支えていくことが必要である。 本県では、安心して子どもを生み育てることができる地域社会を実現していくため、環境整備や県民運動など、子ども・子育てに関するさまざまな取り組みを行っているが、家庭の状況や地域の特性に応じて複雑化・多様化するニーズに対応するためには、子どもの生育状況に応じ、質・量ともに充実した切れ目のない支援が求められている。 保育環境の充実に向けた支援について、県では、保育基盤の整備拡充のため、民間保育所の新設、修理、改造及び整備に要する費用の一部を補助する民間保育所整備支援事業を実施している。また、認可外保育施設については、一定の補助要件を満たす場合に、低年齢児保育に対する支援を行っているが、安定的な運営を図るため、認可施設への移行に向けた誘導策を実施している。私立幼稚園においては、多様な保育ニーズに対応するため、通常の幼稚園の教育時間終了後に実施している預かり保育に加え、長期休業日や土・日・祝日などの休業日に預かり保育を実施するところが増加しており、県では、預かり保育を実施する私立幼稚園の負担を軽減するため、一定の補助要件を満たす幼稚園に対して、私立学校教育改革特別経費補助事業を実施している。さらに、市町村と連携して、延長保育、家庭的保育、小規模保育に対して支援を行っている。小学校児童の放課後活動については、市町村において放課後児童クラブや放課後子ども教室を実施し、子どもたちの居場所を確保するとともに、遊びや学びの場を提供している。 保育を支える保育士等の雇用環境については、非正規雇用の増大や低賃金などの処遇の問題に加え、入所児童の多様化による業務量の増加、保護者からの保育に対する様々な要求への対応等、困難性の高まりが雇用者の定着率低下の一因となっているとされていることから、県では、現場の具体的な課題に対応し得る高い専門的知識、技術の取得と資質向上を図るために現任保育士研修事業を実施しているほか、保育士等の雇用環境の改善と人材確保対策を促進するため、産休病休代替者雇用事業、保育士等処遇改善臨時特例事業等を実施している。 地域における子育て機能の充実を図る上で、保育施設と家庭と地域の連携が重要であるため、県では、母子保健指導者普及事業により子育て支援者に対する各種研修等を実施しているほか、子育てサポーターの養成を行うとともに、地域の子育て経験者、NPO、行政など子育て・家庭教育支援者に関わる人たちのネットワークを構築し、子育て・親育ちを支援するための参加学習プログラムの開発や活用を進めている。また、子育て中の労働者が仕事と育児を初めとする家庭生活を両立できる労働環境を整備するため、地域において育児に関する相互援助活動を行う会員組織であるファミリー・サポート・センターが県内十七市町に設置されており、県では、既設センターに対する運営支援を行うとともに、更なる設置促進を図っている。 平成二十七年四月には、幼児期の学校教育や保育、地域の子育て支援の量の充実や質の向上を進めていくことを目的として、子ども・子育て支援新制度の本格施行が予定されているため、市町村では地域のニーズに基づき、地方版子ども・子育て会議の意見を聴きながら、子ども・子育て支援事業計画を策定し、事業を実施することとされている。県は、市町村が策定する事業計画を踏まえ、市町村の事業計画を支援する計画を策定するなど、国とともに、新制度の実施主体である市町村を重層的に支えることとなっている。 子どもの虐待等の解決に向けた取り組みについて、県では、虐待防止のために各種の普及啓発を行うとともに、学校教育や社会教育の場において、子どもの人権に対する理解と認識を深めるための取り組みを行っている。また、虐待を受けている児童等、要保護児童の早期発見や適切な対応を図るため、県内では全市町村において要保護児童対策地域協議会を設置している。各要保護児童対策地域協議会に参画している児童相談所は、各種会議に出席してスーパーバイズ等を行っているほか、研修会の講師を務めるなどの後方支援を実施している。児童虐待への対応においては、家庭への支援も重要な課題となっていることから、各児童相談所では、児童相談所運営指針や児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン等をもとに、アセスメントや援助方針会議を行いながら、個々のケースの状況に応じた方針を決定し、支援を実施している。 障がいを持つ子どもたちへの支援については、平成二十四年四月の児童福祉法改正により、障がい児が利用できるサービス体系が再編されたため、一概に経年比較はできないが、放課後等デイサービスの事業所数や定員数は増加している。教育現場においては、障がいのある子どもが小中学校の通常学級に在籍し、共に学ぶ教育環境づくりの充実が求められていることから、県では、学習支援の担当教員を配置することなどにより、通常学級で学習を行うための指導・支援を行っているほか、地域の小中学校の児童生徒と共に学習活動を行う取り組みも実施している。一方で、特別支援学校については、仙台圏域を中心として狭隘化が進んでおり、今後も在籍児童生徒数の増加の継続が見込まれることから、現在、宮城県特別支援教育将来構想審議会において、特別支援学校の今後の在り方について議論が行われている。しかしながら、特別支援学校高等部の卒業生は、卒業時点で就労の技能が十分に身についていない場合があるとともに、受け入れる側の企業も障がい者雇用のノウハウが整備されていないことなどにより、希望しても一般就労につながらないケースがある。そのため、県では、関係機関のネットワークの構築、就労後のアフターケア、障がい者雇用の理解啓発等を行うとともに、県立特別支援学校に職場適応指導員、就労実践支援員を配置し、生徒一人一人の能力に応じた就労先の開拓を行うなど、就労の指導の充実を図っている。 2 東日本大震災被災地の子ども・子育て支援について 東日本大震災の被災により心に深い傷を負った子どもたちは、それぞれが置かれている生活環境や学校生活等においてさまざまなストレスを抱えながら生活しているため、就学の有無にかかわらず、成長に応じ、途切れることのない支援を長期間にわたり継続することが重要である。 子どもの心のケアについて、震災直後は、子どもの心のケアチームによる被災地での巡回相談が中心であったが、同チームの活動形態は現在、子育て支援センターを初めとする子育て拠点における保健師等への後方支援へと変化してきている。県では、子ども総合センターや児童相談所が、相互の役割・機能を生かしながら、相談者の状況に応じた支援を提供しているほか、庁内の関係部局による連絡会議や、児童相談所管轄ごとに設置している子どもの心のケア対策地域連絡協議会において情報の共有化を図り、中長期的な視点から連携した対応を実施している。児童生徒の心のケアについては、震災被害の大きかった地域の学校に加配教員やスクールカウンセラーを重点的に配置したほか、スクールソーシャルワーカーの拡充を図ってきた。しかし、スクールカウンセラーについては、不足する人員を県外スクールカウンセラーで補って対応する状況が続いており、今後も継続して安定的な配置が可能となるよう、人的・財政的支援の継続が望まれている。 子どもの心のケアについては、今後も継続して専門的な支援を行うことが重要であるが、そのためには、子どもを支える人も同様に支援していく必要がある。県では、子どもと直接関わる機会が多い保育士や教師等に対して、子どもの心のケアチームが相談に応じてきたほか、被災した子どもを受け入れている里親に対し、各児童相談所が配置した里親委託推進員による定期的な訪問、NPO法人との共催による研修会や、里親同士の交流の場である里親サロンの開催などにより専門的な支援を行っている。さらに、所得水準が低く、生活が不安定な状況にあるひとり親家庭対策としては、母子家庭等自立促進対策事業により、相談機関の整備や就労支援を行っている。 就学・学習に関する支援については、国の被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金等を活用し、震災の影響により就学などが困難となった幼児、児童生徒に対して必要な就学援助等を行った市町村を支援している。この交付金に関する国の予算措置は平成二十六年度までとなっているが、今後も就学困難な児童生徒等が相当数見込まれることから、県では国の支援の継続を求めている。 被災地では、震災前に比べ子どもの遊ぶ機会や遊び場が少なくなっているため、県ではこれらの機会を提供するNPO等に対して市町村を通じて助成し、被災地におけるきめ細やかな支援活動を促進してきた。また、落ち着いて家庭学習に取り組むことが難しい環境にある児童生徒の学習の場を確保するため、被災地において、放課後や週末、長期休業期間等に児童生徒の学習支援を行う市町村教育委員会に対し、学習活動のコーディネーター等となる人材の配置を支援する学び支援コーディネーター等配置事業を実施している。 被災した保育所の復旧については、国庫補助制度を利用して対応し、平成二十五年度末の復旧率は九十二・六パーセントとなっているが、被災市町の中には新たなまちづくりの方向性が定まらず、復旧が遅れている保育所がある。 3 子ども・子育てに関する条例について 少子化対策や子育て支援は、全国的にも重要な課題となっていることから、国においては、子ども・子育て関連三法の制定や、法に基づく子ども・子育て支援新制度の施行に向け、本格的な取り組みを進めている。しかしながら、それぞれの地域が抱えている課題はさまざまであるため、各地域では、その実情に応じた更なる対策を講じている。そのような中、住民意識の醸成や、少子化対策、子育て支援に係る施策の推進を図ることなどを目的として、多くの都道府県において、子どもや子育てに関する条例を制定している。 本県においては、知事提案による条例制定の動きはないものの、少子化対策や子育て支援を県政の最重要施策の一つとして位置づけ、知事を本部長とする「宮城県次世代育成支援・少子化対策推進本部」を設置し、労働、教育分野など部局の枠を超えて子どもに関わる施策を総合的かつ積極的に推進している。また、平成二十六年度には、子ども・子育て支援新制度への移行に向けて、子ども・子育て支援事業支援計画の策定や「新みやぎ子どもの幸福計画」の改定を予定している。二 参考人からの意見聴取 1 社会福祉法人なのはな会常務理事 加々見ちづ子氏 加々見氏からは、障がいを持つ子どもたちの療育環境の現状と必要な支援について意見を聴取した。 加々見氏が園長を務める仙台市なのはなホームは、親子通園型の児童発達支援事業所として、発達支援、家族支援及び地域支援に力を入れて取り組んでいる。発達支援では、就学前教育の充実を目指し、集団生活を通して自分を意識するようになるという、一対一指導では引き出せない部分を補うため、小集団の中での個別支援を実施している。また、家族支援については、子どもが基本的生活習慣を獲得することを目指し、子どもの発達支援を軸にした子育て支援を行っている。地域支援では、障がい児のみではなく、家族が地域で当たり前に暮らすことができるよう、他機関との連携を図りながら環境整備に努めている。 障がい児を取り巻く環境については、健常児と同様に、両親の離婚に伴うひとり親家庭が増加していることや、障がいがあることにより児童虐待が起こりやすいといった現状があるが、現状を打開するためには、相談機関及び療育施設の充実、親を孤立させないためのネットワークづくりが重要である。また、障がい児の親は通常よりも就労が困難であることから、障がい児の預かりに特化した保育所の整備を行うなど、就労支援を充実させてほしいと述べた。障がい児は特別な手だてがいる子どもであるという視点を大切にして、環境を整えていくことで障がいや生きづらさは軽減されると述べた。 2 独立行政法人国立成育医療研究センター研究所成育社会医学部長 藤原武男氏 藤原氏からは、被災地の子どものメンタルヘルスについて意見を聴取した。 厚生労働省の研究班による調査の結果、被災地の子どもの約三割が面接又は質問紙による調査で把握されるPTSD(心的外傷後ストレス障害)症状を有していたこと、トラウマ体験の数が多いとPTSD症状が出やすかったということなどが分かった。 子どものメンタルヘルスといった場合、いかに子供をケアするかということが注目されがちであるが、今回の調査でも、親にPTSD症状がある場合に子どもの問題行動が出やすくなることが分かっており、子どもを支援する場合には、支援する側として親も見ていく必要がある。また、地域のつながりは親のPTSD症状を下げる可能性があり、地域のつながりを高める介入によりPTSD症状を減じることができるか、さらに研究が必要である。 今後は、どのような子どもが震災のトラウマを乗り越え成長し、どのような子どもがPTSD症状を抱えたままなのかについて明らかにする必要がある。さらに、他人といるよりも一人でいることを好んだり、絶対にしゃべろうとしない、などといった子どもの内向的問題行動やPTSD症状への気づきをふやし、現場で対応できる仕組みをつくっていくことが必要であると述べた。 3 早稲田大学文学学術院教授 喜多明人氏 喜多氏からは、子ども・子育てに関する条例について意見を聴取した。 子ども・子育てに関する条例について、他の自治体においては、福祉、保健・医療、教育、青少年等の総合条例で、子ども支援を目的としたまちづくり・地域の再生条例が制定されてきている。今後、宮城県で子ども条例を考えていく場合、震災を受けて新しく復興していこうという視点を盛り込み、震災復興としての「子ども支援とまちづくり」を全県的に方向づけるようなものにすべきであり、震災を経験した地域だからこそ、そこで芽生えてきた子ども参加の実績を日常生活やまちづくりの中に生かしていくことが重要であると述べた。 また、近年、子どもの自己肯定感が低下し、能動的活動の意欲が停滞しているため、子どもが自己形成力を身に付けることができるよう、子ども参加の支援、子どもの居場所づくり、子どもたちのSOSを受けとめる相談救済機関の整備など、子どもを直接支えていく視点が必要である。特に、子ども支援においては、子どもが自分の力で問題解決し、達成感を得ることができるように「待つ」支援と、子どもたちの気持ちに寄り添い、そのつらさを共感できるような「聴く」支援が重要であると述べた。 さらに、今後の子ども支援に関しては、一人の子どもを丸ごと受けとめていくような仕組みをつくっていくことが重要であり、スクールカウンセラーだけではなく、スクールソーシャルワーカーの制度化も視野に入れた検討が必要であると述べた。 4 特定非営利活動法人チャイルドラインみやぎ代表理事 小林純子氏 小林氏からは、被災地の子どもの現状について意見を聴取した。 チャイルドラインでは、子どもの電話相談事業を実施しているが、震災後に宮城県内の子どもから受けた電話相談の内容を分析した結果、震災から一年目は、震災という思いがけない出来事に遭遇し、子どもたちは怒りやいらだちを募らせていた。二年目には、不安を抱えながらも支援に支えられ、少しずつ復興していくことに喜びを見出しており、三年目には、長引く震災後の生活に気持ちが落ち込みがちになることが多くなっていることが分かった。このような現状から、子どもたちは、大人が大変な状況であることを察して表面的には自分の感情を押し殺して暮らしているが、状況が落ち着いた頃に抑えていた感情が爆発し、様々な症状を現すのではないかと懸念されると述べた。その上で、今後の対応としては、子どもを評価せずに子どもの話を聴き、共感することのできる親、先生以外の第三の大人を増やすとともに、震災後に子どもを支えている団体の活動が継続できるよう財政的援助を行うことが必要だと述べた。 子ども・子育てに関する条例の制定については、既存の法律では子どもたちを守り切れていないという現状があるため、東日本大震災を経験した宮城県として子どもたちを乳幼児期から守り、育てていくということを県民みんなで決意表明するとともに、子どもたちが希望と誇りをもって宮城の復興と未来づくりに関わり、個人の幸福を実現できるような、子どものための条例づくりの推進を望むと述べた。三 県内調査 1 石巻市立門脇小学校 石巻市立門脇小学校では、被災地の子どもの現状について調査を行った。 震災によるストレス反応は年々収束傾向にあるが、現在でもイライラしやすかったり、眠れないなどの身体症状が続いていたり、避難訓練などの震災関連事項をきっかけにフラッシュバックし、新たに症状が出てきたりと個人差が見られる。これらのケースは、クラスの友達関係や親子関係などの日常生活のストレスが絡み合っていたり、夜更かしなどの生活習慣の乱れが大きく影響している。 震災後、同校では、学校を子どもたちにとって安心して過ごすことのできる心のよりどころとすることを教育活動を決める際の最も重要な基準として掲げ、心のケアや学校防災の充実に取り組んできた。心のケアについては、学級担任が子どもにしっかりと寄り添い、児童が安心して相談できる関係を築いているほか、養護教諭がコーディネーターとなり、配慮を必要とする児童や気になる児童を担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、保護者、関係機関と連携し、組織的にケアするシステムを構築して対応している。防災に関する取り組みとしては、「防災の時間」を設定して全学年一斉に防災教育に取り組むなどの防災教育の充実や、児童用、保護者用、教職員用の危機管理マニュアルを整備し、いかなる場合でも迅速な対応がとれるようにするなどの防災管理の取り組みのほか、全教職員の防災意識を高め、防災に関する知識を共有するために防災研修会を実施するなど、組織活動にも力を入れているとの説明を受けた。 2 東松島市 東松島市では、矢本東小学校区に開設されているサルビア放課後児童クラブにおいて、東松島市における放課後児童クラブの現状について調査を行った。 震災後、保護者が子どもを一人で自宅に置くのは心配であるという理由から、放課後児童クラブの利用を希望する児童は増加傾向にあり、待機児童も発生している。東松島市では現在九施設で放課後児童クラブを開設しているが、震災の影響により六施設がプレハブでの実施を余儀なくされている。平成二十七年四月の子ども・子育て支援新制度の本格施行に伴い、放課後児童クラブの入所児童基準が四十人程度となる一方で、対象児童が全学年に拡大することにより入所児童の増加が見込まれることから、現在の施設数、規模では需要に対応することが不可能な状況にあり、早急な施設整備が求められている。全国的には、空き教室を利用して放課後児童クラブを実施しているところも見受けられるが、東松島市では小学校自体も被災しており、余裕教室もほとんどない状況である。また、被災により新施設の開設に必要な用地の確保も非常に困難な状況である。 障がい児の受け入れに関しては、安全な運営のために専門の知識を有する保育士等の有資格者を配置して柔軟に対応しているが、全国的な保育士不足により指導員の確保が困難であるため、受け入れが難しくなっている。 3 富谷町 富谷町では、富谷中央公民館において、富谷町における放課後子ども教室と放課後児童クラブの連携について調査を行った。 富谷町では町内六公民館において、放課後児童クラブと一体化して放課後子ども教室を実施している。参加対象者は小学校の全学年の児童であるが、登録制ではなく、その都度申込みをして参加することとなっている。年間の開催回数は五十回以上にのぼり、月曜日から金曜日までの間で週一回又は二回開催するほか、長期休業期間にも開催している。放課後子ども教室は、放課後児童クラブとは異なるスペースで開催しており、外部講師を招いたり、公民館に登録しているサークルと共同の活動を実施したりと、子どもを呼び込むために内容に工夫を凝らしている。事業効果としては、子どもの安全で安心な居場所の確保、生涯学習社会の拡大、地域住民同士のきずなの強化等の実現が挙げられる。 今後の課題としては、居住地域等を理由として公民館に通うことが困難な子どもがいることや、活動の参加人数に制限を設ける必要があること等の理由により参加する子どもが限定されてしまっていることや、多くの子どもが参加するため、子どもの自由な活動を保障しながら安全管理を行う必要があることが挙げられる。四 県外調査 1 滋賀県湖南市 湖南市では、発達支援システムによる障がい者支援について調査を行った。 湖南市発達支援システムは、支援の必要な人に対し、乳幼児期から学齢期、就労期まで、保健、福祉、医療、教育、就労の関係機関の横の連携による支援と、学校等で作成する個別の指導計画や個別支援移行計画を引き継ぐことによる縦の支援を提供するシステムである。発達相談を行った後、相談支援事業所、医師、保育士等の専門機関で構成する就学前サービス調整会議においてその後の支援を調整し、早期発見のメリットが生かせるよう取り組んでいる。 就労支援については、就労に関する情報を一元的に集約・提供し、人と仕事とのマッチングを図ることで就労支援の効率化と企業の負担軽減を図り、障がい者の働く機会を拡大する目的で障がい者就労情報センターを設置し、仕事の開拓、情報提供、各機関との連絡調整等を行っている。 発達支援システムにより、それぞれの子どもに必要な支援を幼少期から継続して行うことができているため、自己理解力や自尊感情を高められるような関わりができているとの説明があった。今後の課題としては、就労へつなぐ訓練ができる場所の不足や成人期における自己理解を促す支援を行うスタッフのマンパワー不足、外国籍の子どもへの支援体等の地域課題を解決していくことが挙げられている。 2 京都府 京都府では、京都府子育て支援条例の制定経過と現状及び児童虐待防止に向けた取り組みについて調査を行った。 (一)京都府子育て支援条例の制定経過と現状について 京都府は、昭和の後半から合計特殊出生率が常に全国ワーストテンに入っており、少子化に関して早くから危機感を持っていた。また、児童虐待による死亡事例が発生するなど、児童虐待が大きな社会問題となり、条例を根拠として対策を進めていく必要が生じた。そこで、子どもを取り巻くあらゆる社会問題に対応する総合的な施策として条例が取りまとめられることとなり、平成十九年に京都府子育て支援条例が制定された。 条例の検討に際しては、検討委員会を設置して検討を行ったほか、パブリックコメント及び府内二箇所での府民との意見交換会や関係市町村とのブロック会議等を実施し、地域単位で声を聞いた上で条例を取りまとめていくという取り組みを行った。条例制定後は、検討委員会のメンバーを基本的な構成員としたフォローの委員会を設置し、条例に基づく基本計画の進捗状況を毎年一回又は二回点検している。 条例では、家庭が子どもの育つ基盤であり、父母その他保護者が子育てについての第一義的責任を負うということを共通認識にした上で、子育て家庭を支援する環境づくり、子育て支援に取り組む地域づくり、子育て支援に関する意識づくりの三項目を柱として行政及び地域の取り組みを進めていくという構成になっている。特に、地域での取り組みを重視し、子育て支援団体の役割を条例に明記している。また、総合的な施策を計画的に推進するため、条例に基づく基本計画として「未来っ子いきいき応援プラン」を策定している。 (二)児童虐待防止に向けた取り組みについて 京都府の児童相談所では、DVや児童虐待などの家庭内の相談をワンストップで受けており、児童虐待の総合対策については、未然防止、早期発見・早期対応、再発防止、市町村連携の四つを柱として取り組んでいる。 京都府の要保護児童対策地域協議会においては、児童虐待の未然防止・早期発見のため、市町村域を越える情報の共有や連携強化を図っており、平成二十六年四月からは、医療情報や私立学校へ通学している児童生徒の状況、地域における見守り活動の状況等について、各機関が情報共有することができるような体制をとっている。また、児童虐待について見識を有する医療機関を児童虐待対応協力医療機関として指定し、地域の医療機関に対して虐待が疑われるケースへの対応について助言等を行う児童虐待防止医療ネットワークモデル事業を実施している。早期発見・早期対応については、児童虐待協力対応員を配置して初期対応を強化しているほか、児童相談所職員等の専門性を向上させるための研修に力を入れている。再発防止については、保護者カウンセリングを実施しており、市町村との連携については、虐待防止アドバイザーの派遣により、市町村の対応力向上を図っている。 3 京都府家庭支援総合センター 京都府家庭支援総合センターでは、児童虐待防止に向けた取り組みについて調査を行った。 同センターは、京都児童相談所、婦人相談所、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所を統合し、家庭問題に関する総合的な相談機関として平成二十二年四月に開設され、家庭を取り巻く複雑・多様化するさまざまな相談に専門スタッフがワンストップで対応している。判断や対応が困難な相談に関しては有識者による専門家チームのバックアップを得ながら対応しており、京都府の機関だけではなく、警察の施設や母子生活支援施設なども一つの建物内に入っているという特色がある。 窓口を一本化したことのメリットとして、虐待、非行、DVなどへのトータルな支援や同一機関で生涯にわたる一貫した支援を継続することが可能となること、専門職員の集中配置により専門性が向上すること、福祉の中枢機関として市町村等との連携強化が図られることなどが挙げられる。一方で、精神保健関係や発達障がい関係等については窓口が別の場所にあり、完全なワンストップ対応ができていないことや、外部への情報発信が不十分であることが課題である。 児童虐待防止のための取り組みとして、平成二十四年四月に、児童虐待・DV被害者支援チームとして五人の職員を配置し、個別支援、退所後支援、保護者支援の三つの柱で寄り添い型家庭支援事業を実施している。個別支援としては、児童養護施設退所後も家庭に帰ることができず、外で一人暮らし等を始めた方が安定した生活ができるよう、家庭訪問や電話連絡を行うことによりニーズを把握し、個別的な支援を行っている。また、婦人相談機関の保護所に入所した被害者に対しても、地域での生活が定着できるよう同様の支援を行っているほか、DV被害者に同伴する児童に対しても心理的ケアを実施するなどの取り組みを行っている。児童養護施設退所後の児童に対する支援としては、退所者が気軽に集える場所を作るために関係機関との協議を行っている。保護者支援については、平成二十五年度から、児童虐待をした、又はするおそれのある保護者に対してセルフケアと自己解決の能力を身に付けさせるための教育プログラムを実施している。 4 高知県 高知県では、高知県子ども条例の制定経過と現状及び就学前の保育・教育の取り組みについて調査を行った。 (一)高知県子ども条例について 高知県では、子どもの権利を尊重し、子どもたちが健やかに育つ環境を作ろうという理念のもと、平成十一年から条例の検討を開始し、県民参加のプロセスを経て、平成十六年八月に「高知県こども条例」を知事提案により制定した。同条例は、子どもの立場に立つことを基本としており、文章の多くが子どもを主語としている。また、子どもへのメッセージを含んだ条例であり、子どもが見ても、ある程度内容が理解できるような文章表現としている。 平成十九年三月に、条例に基づいて「子どもの環境づくり推進計画」が五カ年計画として策定されたが、その後、平成二十三年度に作成された後継の計画案に対して、議員から、こども条例が施行された当時から社会的状況が変わってきている等の理由から、こども条例の必要性も含めて議論をすべきという意見が出され、平成二十四年十二月に、議員提案により、高知県こども条例の全面改正が行われ、「高知県子ども条例」が制定された。旧条例の制定から約十年が経過してもなお、子どもたちを取り巻く環境が十分に改善されたとは言えない状況にあることを受けて、改正後の高知県子ども条例は、子どもたちと日々接する大人が、それぞれの役割や責任を再認識することが不可欠であるという考え方に立ち、県、保護者、学校関係者、県民など周りの大人の責務と役割を明確にしている。 (二)就学前の教育・保育の取り組みについて 高知県では、「子どもの健やかな育ちのために、どこにいても質の高い保育・教育の提供を行い、小学校への円滑な接続を図る」ことを目的に、平成十五年四月に高知県教育委員会に幼保支援課を設置し、それまで別々であった保育所、幼稚園の行政窓口を一本化し、保育所、幼稚園の運営支援、幼児教育、親育ちの支援を実施している。平成二十六年四月現在、県内の六十四・七パーセントの市町村が同様に教育委員会に窓口の一本化を行っている。 運営支援については、保育士、幼稚園教諭の資質や専門性の向上を図るため園内研修を支援しているほか、園内で自らが日常的、継続的に研修を行うことのできる体制を整備していくため、一年間を通じて支援を行うブロック別研修会、園内研修を行うことのできる中核人材、ミドルリーダーの育成と園長、所長のマネジメント力強化のための研修などを実施している。 幼児教育については、高知県内の保育所・幼稚園・小学校の円滑な接続を促進するため、高知市内の保育所・幼稚園・小学校において作成された保幼小連携のモデルプランをもとに、各市町村の課題に合わせたプランを研究実践・策定するとともに、高知市においてモデルプランの実効性の検証を行うこととしている。 親育ち支援については、親の子育て力を高め、よりよい親子関係の構築を支援することで、子どもたちが健やかに成長し、県の教育課題の解決につなげるために、保護者や保育者に対して講話・ワークショップや研修を行う親育ち支援啓発事業、保育所・幼稚園等において日常的に親育ちの支援を行うことのできる環境を整えるため、親育ち支援の中核となる保育者を育成する親育ち支援保育者育成事業、保護者の一日保育者体験推進事業などを実施している。五 子ども・子育てに関する条例検討ワーキンググループ 子ども・子育てに関する条例を検討するに当たり、議論の進め方や条例の方向性等に関する議論を行うため、正副委員長を中心とする五名の委員によりワーキンググループを構成し、有識者との意見交換やアンケート調査等を実施した。 ワーキンググループにおいては、平成二十四年十二月に設置された「子ども・子育て環境調査特別委員会」の提言を基本として、現状や課題の整理を行うこととし、今年度までの五カ年を計画期間とする「新みやぎ子どもの幸福計画」の後期計画について、県保健福祉部から概要を聴取したほか、宮城県子ども・子育て会議の会長である宮城学院女子大学の足立智昭教授や仙台弁護士会子どもの権利委員会と意見交換を実施し、特別委員会の提言や子どもを取り巻く現状や課題、条例化を進めるに当たって調査が必要とされる事項、法的な留意点等について意見をいただいた。また、ワーキンググループの委員を中心として宮城県議会議員と有識者との意見交換会に参加し、東洋大学の森田明美教授や山梨学院大学の荒牧重人教授などと意見交換を行った。 条例の検討に際し、より多くの方から意見を聴くことが重要であるとの考えから、県内で活動する子ども・子育て関連の団体のうち五十六団体を対象として、子ども・子育てに関する施策のうち特に重要と考えている施策や各団体の課題等について聞くアンケート調査を実施し、四十八団体から回答を得た。六 総括・提言 これらの調査結果を踏まえ、本委員会は子ども・子育て環境に関する諸施策について、次のとおり取りまとめた。 1 保育環境の充実と子育ての社会的支援について 子どもは次代を担う大切な社会の宝であり、全ての子どもが安心して、心身ともに健やかに成長することができるよう、家庭・地域・社会がそれぞれの役割を果たし、社会全体で子どもの育ちを支えていくことは、県民生活の向上及び地域社会の持続的な発展のためにも非常に重要な課題である。子どもやその家庭が抱える問題が複雑化・多様化する中で、子どもを生み育てやすい環境を整備し、子どもに対する施策を充実強化するためには、ニーズを的確に把握し、きめ細かな支援を行うことが必要である。そのためには、ニーズに応えるだけの十分な財源の確保と、「子ども・子育て」を包括的に担当する部署の設置の検討など、施策を実行するための強力な推進体制を構築することが不可欠である。 よって、次の事項を実現するよう要望する。 (一)子どもへの支援 (1) 子どもが地域において自発的に活動し、社会の構成員としての役割を果たすことができるよう、社会における子ども参加の仕組みづくりを推進すること。 (2) 子ども自身が直接相談することのできる機関の整備等、相談体制の充実強化を図ること。 (二)親(家庭)への支援 (1) 親の子育て力を向上させるため、親の学びの場づくりを推進すること。 (2) 子育てに不安や悩みを抱える親が孤立することなく、安心して子育てを行うことができるよう、相談体制の充実強化を図るとともに、地域に子育てネットワークを構築するなど、親のネットワークづくりを推進すること。 (3) 子育て中の女性の仕事と家庭(子育て)の両立を図るため、雇用の継続を図るための制度の充実など、雇用環境の整備を促進すること。 (4) 子どもの養育、医療、教育等に係る親(家庭)の経済的な負担を軽減する取り組みを強化するとともに、国に対しても、これに必要な財源を確保するよう求めること。 (三)特別な支援を必要とする子どもやその親(家庭)への支援 (1) 病気や障がいを有する子どもや外国籍の子どもなど、特別な支援を必要とする子どもやその親(家庭)に対して、専門的な相談や情報提供など、状況に応じた適切な支援が行われるよう体制の整備を行うこと。 (2) 特別な支援を必要とする子どもやその親(家庭)を社会全体で支える仕組みをつくるため、啓発活動を推進するとともに、関係機関の連携を強化すること。 (3) 保健・福祉・医療・教育・就労の関係機関による連携を強化し、支援の必要な人に対して、乳幼児期から就労期まで、継続した支援を提供する仕組みを構築すること。 (4) 保育施設や放課後児童クラブ等における障がい児の受け入れが拡大されるよう、保育士や指導員の加配に対する支援を行うこと。 (5) 特別支援学校の在籍児童生徒数の増加に伴う教室不足を解消するため、特別支援学校を増設すること。また、国に対して特別支援学校の設置基準を策定するよう求めること。 (四)育ちの場の充実 (1) 多様な保育、教育、活動のニーズに対応した場を確保すること。 (2) 待機児童を解消するため、認可保育所、認定こども園、小規模保育等の保育施設の整備及び運営に対する支援を充実させること。 (3) 有資格者の配置や施設環境の整備により、保育の質の維持・向上を図り、全ての子どもに対して、格差のない安全・安心な保育を提供すること。 (4) 保育を支える保育士等の人材の育成確保を図るとともに、保育士の正職員化を促進すること。 (5) 保育士が産休等を取得しやすくなり、長期間にわたり安心して働くことができる雇用環境づくりを推進すること。また、代替保育士を確保する取り組みを行う施設に対する補助金の拡充を行うこと。 (6) 放課後児童クラブについて、保育を必要とする子どもの安心な居場所として確立し、放課後子ども教室とは独立した部屋の確保と指導員の配置を行うこと。 (7) 子ども・子育て支援新制度の施行による放課後児童クラブの対象児童の拡大及び入所を希望する児童の増加に対応するため、早急に施設整備を行うとともに、必要な指導員を確保すること。また、放課後児童クラブの指導員の処遇改善を図ること。 (8) 多忙な教師が教材研究や子どもたちに向き合う時間を確保するため、少人数学級や複数担任制を実現すること。 (五)子育てを支える社会基盤の充実 子育てを支援する地域社会づくりを促進するため、子育てサポーターや子育てサポーターリーダー等の育成・強化を図るとともに、地域において子育て支援を行う個人や団体に対する支援を充実させること。 (六)子どもの虐待等の解決に向けた取り組み (1) 虐待防止のため、妊産婦のうち虐待のリスクが高い方の早期発見・支援に向けた取り組みを充実させるとともに、児童虐待に見識のある医療機関等をあらかじめ指定し、地域の医療機関に対して虐待が疑われるケースの対応について助言等を行う仕組みをつくること。 (2) いじめや虐待等、子どもの人権侵害を防ぐため、弁護士の出前講座なども活用し、学校教育や社会教育の場において子どもの人権教育の推進を図ること。 (3) 虐待・非行・DVなどの家庭問題に関する相談をワンストップで行うことのできる体制を構築すること。また、貧困・DV・借金など、親が抱えている問題を支援する弁護士やNPOなどと相談機関とのネットワークを構築すること。 (4) 児童相談所の人員体制強化及び専門性向上のため、職員が知識や経験を蓄積できるような人事配置を行うこと。 (5) 児童相談所や家庭裁判所など、虐待を受けた子どもに関わる機関の連携を強化するとともに、子どもが十八歳を超えた後についても、就労支援や親になった際の支援を行うなど、継続的な支援の体制を構築すること。 (6) 虐待の再発を防止するため、児童虐待をした、又はするおそれのある保護者に対して、セルフケアと自己解決の能力を身に付けさせるための教育プログラムを実施すること。 2 東日本大震災被災地の子ども・子育て支援について 東日本大震災の被災体験と震災後の家庭、学び、遊び等の環境はそれぞれ異なっており、時間の経過とともに、各人が置かれている状況も変化し続けている。そのような状況において、子どもが震災体験を乗り越え、健やかに成長していくことができるよう、社会全体で子どもを継続的に見守り、支えていくことが重要である。また、子どもに対する支援の体制を強化するためには、子どもたちを支える人に対しても、継続的な支援を行う必要がある。そのためには、十分な財源の確保と支援体制の維持・拡充が不可欠である。 よって、次の事項を実現するよう要望する。 (一)心のケアの充実 (1) 子育て支援センターにおける活動の充実強化を図ること。 (2) 被災地の学校において、震災によるPTSD症状を有する子どもや気になる児童生徒に対して、長期にわたる継続した支援を行うため、震災後の人員体制を維持するとともに、教員の加配、養護教諭の複数化、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの常駐配置などを検討し、制度化すること。 (3) 地域で子どもを見守り、育てていく意識を高めるため、地域と子どもをつなぐ活動の充実を図ること。 (二)家庭への支援 (1) 家庭に対する支援を充実させるため、保健師やソーシャルワーカー等を中心として、学校と保健行政の連携体制を構築すること。 (2) 子ども総合センターや各児童相談所における相談機能の充実強化を図ること。 (3) 多様化する被災地での子育てニーズにきめ細かに対応するとともに、子育て家庭の孤立化を防ぐため、訪問型の支援体制を充実させること。 (4) 被災した子どもたちを受け入れている里親に対する相談や専門的な支援の体制を充実させること。 (5) 「被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金」の継続を国に対して求めること。 (三)支援する人や組織への支援 保育、学校等の現場において、子どもを支える人に対する心のケアに係る支援を充実させること。 (四)居場所の確保 子どもに対して遊び場の提供や学習支援等を行うNPOや団体等に対する活動支援を継続的に行うこと。また、そのために必要となる財源の確保を国に対して求めること。 3 子ども・子育てに関する条例について 本来、全ての子どもは愛情に包まれた環境の中で健やかに成長する存在である。子育てについての第一義的責任は親(家庭)が有しており、子どもと親(家庭)を支援する役割を社会全体が担っている。 しかしながら、少子化の進行やライフスタイルの変化、地域のつながりの希薄化などにより、家庭や地域の子育て力が低下し、子育てに対する不安や負担が増大している。また、ひとり親家庭の増加や子どもの貧困が社会問題となるなど、子どもを取り巻く環境が大きく変化している。そのような状況に対応するため、本県においても、少子化対策や子育て支援を県政の最重要課題の一つとして位置づけ、子どもに関わる施策を推進しているが、子どもが安心して、安全かつ健やかに成長していくための環境を総合的、継続的に保障し、向上させるためには、本県における子ども・子育て施策の基本姿勢や理念を明確に示し、施策を実施するための法的根拠となる条例を制定することが必要である。 東日本大震災を経験した本県では、その復旧・復興の過程において直面した多くの課題や問題に、県民一丸となって対応してきたが、そのような経験を踏まえて、後生に伝えるべき忘れてはいけない視点も条例に反映するべきである。 条例の制定に際しては、県民の意識啓発、理解を促進するとともに、家庭、学校、施設、地域、NPO、行政等の連携を具体的に進めていくため、県民参加のプロセスを経ることとし、これまでの調査・検討により明らかとなった課題をもとに、引き続き検討を行っていく必要がある。 以上、これらの提言が今後の県の関係施策に十分反映されることを期待して報告とする。 平成二十六年十一月二十日 子ども・子育て環境調査特別委員長 藤原のりすけ 宮城県議会議長 安藤俊威殿……………………………………………………………………………………………
○議長(安藤俊威君) これより質疑に入ります。 委員長報告に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。-----------------------------------
△安定雇用・地域経済活性化調査特別委員会調査結果報告
○議長(安藤俊威君) 日程第百四十六、安定雇用・地域経済活性化調査特別委員会調査結果報告を議題といたします。 本件について委員長の報告を求めます。安定雇用・地域経済活性化調査特別委員長、九番村上智行君。 〔九番 村上智行君登壇〕
◆九番(村上智行君) 安定雇用・地域経済活性化調査特別委員会の調査結果について御報告申し上げます。 本委員会は、安定雇用・地域経済活性化に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十五年十二月十三日に設置されました。 付議事件、安定雇用・地域経済活性化に関する諸施策についてを受け、一、雇用の安定化・創出に向けた諸施策について、二、地域経済の活性化策の充実強化に向けた取り組みについて、以上の二点を調査項目として、県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに、参考人からの意見聴取を行ったほか、県内・県外調査を実施して、検討を重ねてまいりました。 その結果につきましては、お手元に配布の報告書のとおりでございますが、この報告が今後の関係施策に反映されることを期待して御報告申し上げます。…………………………………………………………………………………………… 安定雇用・地域経済活性化調査特別委員会報告書 安定雇用・地域経済活性化調査特別委員会の調査・検討の結果について報告する。 本委員会は、平成二十五年十二月十三日に設置され、付議事件「安定雇用・地域経済活性化に関する諸施策について」を受け、調査項目を以下の二項目とした。 一 雇用の安定化・創出に向けた諸施策について 二 地域経済の活性化策の充実強化に向けた取り組みについて この項目について、県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに、厚生労働省宮城労働局及び一般社団法人宮城県建設業協会、独立行政法人日本貿易振興機構仙台貿易情報センターより参考人を招致して意見聴取し、さらに県内の実情を把握するため、宮城県松島高等学校、株式会社アップルファーム及び株式会社AZOTH(アゾット)の調査を実施したほか、他県の事例を参考にするため、岩手県及び青森県の取り組みなどについて調査を行った。 その概要は、次のとおりである。一 雇用の安定化・創出に向けた諸施策について 1 現状と課題 本県経済は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にある中で、震災復興事業の進捗により、景気回復の動きが見られるようになってきている。 雇用情勢においては、震災からの復興事業が本格化することに伴い、復興関連業種や水産加工業等において人手不足が慢性化している一方で、求職希望の多い一般事務の求人は大変少ない状況であるなど、求人ニーズと求職ニーズのミスマッチが発生しており、実際の就職に結びつかないケースが問題となっている。 また、沿岸地域で実施してきた震災廃棄物(瓦れき)処理業務が平成二十五年度で終了したため、事業終了に伴う離職による失業者が増加したが、建設土木関連等の求人数の高止まり増により、県全体としての有効求人倍率は、全国平均を大幅に上回っている。県では、ハローワークや関係市町と連携して、人材不足が生じている業種の人材確保や瓦れき処理業務離職者等の再就職支援を行っており、瓦れき処理業務離職者等に対する雇用の場の確保のほかに安定的な雇用への移行、求職活動に消極的な方へのキャリアカウンセリングなどによる就労意欲醸成のための支援も行っている。 厚生労働省宮城労働局が公表している建設業の有効求人倍率(平成二十五年十二月)は、建築・土木技術者が五・二五倍、作業員が四・一二倍及び技能労働者が九・六〇倍とともに高くなっている。県内建設業における人手不足が顕著であり、建設・土木技術者等の安定的な確保や有効活用、さらにこの需給ギャップを埋めるために工事現場における省力化・省人化も必要である。また、若年労働者の建設業への入職や定着、育成を図る必要がある。その背景として、建設投資の減少に伴うダンピング受注の激化と下請けへのしわ寄せによる技能労働者の賃金の低下や、法令上の最低限の福利厚生すら確保されていない企業の存在により若年労働者の減少が続いていることがあげられる。また、労働需給の逼迫傾向が顕在化して入札不調も増加している中で、適切な対策を講じなければ近い将来、災害対応やインフラの維持・更新に支障を及ぼすおそれがあるため、労務単価を適切に設定する等の対策を実施し、構造的な労働需給の逼迫の解消を図らなければならない。 新規高校卒業者に対する雇用支援について、復興需要の増大等による求人数の増加に伴い、平成二十五年三月卒の県内の新規高校生の就職内定率が九九・一パーセントと二十年ぶりの高水準となり、平成二十五年度十二月時点では前年度を上回る状況となっている。一方で、新規高校卒業者の就職後三年以内の離職率は、平成十八年から平成二十二年三月卒の五カ年平均で四五・六パーセントと全国平均の三九・五パーセントを上回っている。今後、復興需要の収束に伴い、求人数の減少が懸念されることから、求人数の確保・拡大により現状の高い就職内定率を維持する必要があるとともに、新規高校卒業者の職場定着率の向上のための取り組みが急務である。 若年者については、若年求職者(フリーター等)や若年無業者(ニート等)のキャリア経験やビジネススキル等の職業能力が不足し、また、高齢化が進行しているほか、全国的に若年者の完全失業率が全年代平均を上回るなど、厳しい雇用環境となっている。このため、県では雇用支援策として、若年求職者には「みやぎジョブカフェ」や「地域若者サポートステーション」における就職支援により、職業能力の向上を図るとともに就職先の確保、若年無業者には就労意欲の醸成と就労機会の拡大を図るなどの施策を推進している。 障がい者に対する雇用支援については、平成二十五年四月一日から法定雇用率が引き上げられ、民間企業では、二・〇パーセントとなり、障がい者に対する求人数の増加が期待されているが、企業の障がい者雇用に対する理解不足等により、本県の民間企業の障がい者雇用率は平成二十五年六月一日現在で一・七一パーセントと法定雇用率及び全国平均の一・七六パーセントを下回っているものの近年は精神障がい者を中心として求職者が増加している状況にある。障がい者の雇用を推進するためには、企業における障がい者雇用に対する理解の促進と就労先の確保を図り、障がい者に企業が求める職業能力の習得を進めるほか、特に、精神障がい者の企業に対する理解の促進及び特性に配慮した柔軟な勤務形態の整備に取り組む必要がある。 高齢者に対する雇用支援については、団塊世代が定年退職を迎えたことにより、働く意欲や培った経験・能力を有する高齢者が増加していることから、高齢者の多様なニーズに応じた就業機会の確保を図ることが必要である。 2 参考人からの意見聴取 (一)厚生労働省宮城労働局職業安定部職業安定部長 西部忠司氏 西部氏からは、宮城県における雇用情勢と雇用対策について説明を受けた。 県内の有効求人倍率は、平成二十四年四月以降二十四カ月連続で一倍台で推移し、有効求人数は、平成二十三年十二月以降、五万人台の高い水準を維持している。また、有効求職者数はリーマン・ショック以前の水準となっている。この状況を踏まえ、宮城労働局としては、東日本大震災の影響を受けた者への就職支援、新卒者・既卒者対策の推進、若者の安定的な雇用の確保、障がい者の就労促進、職業訓練の活用による再就職支援、人手不足職種の人材確保に向けた支援などを行っている。 震災の影響を受けた者への就職支援としては、県と連携して、「被災地雇用復興総合プログラム」の推進により雇用機会を創出するため、対象事業所へ周知し、求職者のニーズに合った求人開拓と積極的なマッチングを行い、被災地の復旧・復興へ向けた人材面からの支援を行う。東日本大震災により発生した瓦れきの処理が県内全域で終了したことに伴い、瓦れき処理業務離職者に対して在職中から集団説明会、就職面接会、事業所見学会を開催する等の支援を行い、離職後も雇用保険受給に係る集団手続き、職業訓練希望者に対する集団説明会等の支援を行っている。 若者の就職支援の充実強化としては、平成二十六年三月末現在、二百十五社に「若者応援企業」宣言を依頼し、各学校へ若者応援企業の情報冊子を送付し、面接会を複数開催する等の事業を積極的に展開するとともに、「わかものハローワーク・わかもの支援窓口」を設置し、担当者制による個別支援、就職支援セミナー、面接会等のメニューを充実し、新卒者・既卒者に対して、学卒ジョブサポーターによる職場定着支援を実施している。 人手不足職種の人材確保に向けた支援の強化として、福祉人材コーナーでの担当者制による相談・紹介、セミナー、施設見学会、面接会の積極的な開催による介護・医療の人材確保支援、保育所の整備を実施する自治体との連携による保育士の人材確保支援、建設技能職種の職業訓練の実施、新規学卒者の入職促進のための学校教諭向け業界セミナーの実施による建設関連職種及び水産加工職種の人材確保支援を行っている。 障がい者雇用の推進については、就職を希望する障がい者に対して、ハローワークにおいて地域の関係機関が連携し、就職から職場定着まで一貫した支援を行う「チーム支援」の実施等、きめ細やかな職業相談や紹介を実施するほか、就職後についてもハローワークやジョブコーチによる職場定着支援を実施している。また、障がい者の多様なニーズに応えるため、雇用・就職機会を提供するとともに、雇用促進を図るため企業との面接会を県及び仙台市等と連携して開催している。さらに、障がい者を雇用する企業に対しては、特定求職者雇用開発助成金、障害者トライアル雇用奨励金等の助成金を支給するほか、チャレンジ雇用事業として、知的障がい者が一般雇用に向けて経験を積むため、最大三年間雇用し、一般雇用に結びつくよう支援している。 子育て中の女性等に対する雇用対策の推進として、再就職支援を実施する専門のハローワークとしてマザーズハローワーク青葉を設置し、担当者制・予約制による職業相談・職業紹介、再就職に資するセミナーの実施、保育所や地域の子育て支援サービスに関する情報の提供を実施するとともに、子ども連れで来所しやすい環境の整備に努めている。 同氏からは、「地域人づくり事業」による建設業界の人材確保、「保育士・保育所支援センター」における潜在保育士活用支援の実施、沿岸部の水産加工事業所での事業所見学会等の開催による充足促進などに取り組んでいるが、人手不足職種の人材確保は非常に困難であるとの話があった。 (二)一般社団法人宮城県建設業協会専務理事 千葉嘉春氏 千葉氏からは、東日本大震災後の建設業における現状と課題について説明を受けた。 国内における建設業の現状として、建設投資額は、平成四年時の約八十四兆円から二十二年度の約四十一兆円まで落ち込んだが、その後、増加に転じ、平成二十五年度は約五十兆円に回復している。建設業者数は、平成二十四年度末で約四十七万業者で、ピーク時の平成十一年度末から約二二パーセント減っている。建設就業者数(平成二十五年平均)は四百九十九万人で、ピーク時の平成九年平均から約二七パーセント減少している。投資額の減少に伴い、建設業就業者数も減少しており、若年就業者の減少が著しい。さらに、就業者の年齢については、平成二十五年の実数ベースでは、平成二十四年と比較して、五十五歳以上が約十一万人増加、二十九歳以下が約五万人減少と建設業就業者の高齢化が進行している。 現在、県内における六十歳以上の建設技能労働者等は、全体の約一八パーセントに上る五十二万人が存在しているが、今後は高齢労働者の引退による労働者数の減少が続き、他の年齢層においても年齢の上昇が見込まれる。一定の能力を備えた技能労働者等を育成するためには、おおむね十年程度の時間がかかると言われていることから、若年者の就職確保が必要となってくる。しかし、建設業の人材確保・育成を取り巻く状況を見ると、工業高校や専門学校などへ入学する生徒が減少傾向にあり、また建設業界全体の人的・時間的な余力が低下し、これまで施工現場で行われてきた技能や技術の伝承が困難となり、若者が将来のキャリアパスや目標を抱けず、早い時期に離職するなど、人材の確保や育成が困難な状況となっている。 同氏は、建設業が直面する課題として、競争性・客観性・透明性の要請により発注側で個別工事の競争入札が進むことにより、元請け間の競争が激化して単価引き下げ圧力が増大し、その結果、真面目に人材育成を行う企業が不利になるという不公正な競争環境が生じるとともに、技能労働者の処遇が低下し、技能者の離職や若年者の減少につながっていると述べた。 3 県内調査の実施 (一)宮城県松島高等学校では、就職指導、就職状況及び観光科における人材育成について調査した。 同校では、生徒の進路のうち就職が全体の四三パーセントであり、県内の公立高等学校の普通科では最多となっている。就職指導は、進路指導部の教諭八人、就職支援員一人、キャリアアドバイザー(非常勤)一人の体制で行っている。平成十五年度から「松島ナビゲーションプログラム」を中心に、高校の三年間を通したキャリア教育を行い、職場体験・ふるさと学習・社会人講師による講義等実社会の中での体験を重視し、生徒の主体性を重んじ、地域・企業と連携した県の志教育に取り組んでいる。 就職状況について、平成二十三年度から就職内定率は一〇〇パーセントとなっているが、自分の希望と違う職業への就職の場合、離職してしまうことが多い。そのため、就職指導においては、就職意欲の涵養と離職者の減少を大きな目標として取り組んでいる。 平成二十六年に設置された観光科における人材育成の特色ある取り組みとして、二学年時にホテルにおけるインターンシップ勤労体験実習があり、一カ月間、国内外において実習を行う予定である。また、観光科の進学希望の生徒に対しても、観光系の学部・学科を有する大学への進学対策も行っている。今後の課題として、観光を専門に学んできた教員がいないため、学校内体制の充実と教員の研修が必要である。また、一層の地域社会・関係機関との連携推進のため、松島町・町教育委員会・町観光協会・商工会等で組織する観光科サポート委員会の活用を考えているとのことだった。 (二)株式会社アップルファームでは、六丁目農園における障がい者雇用の取り組みについて調査を行った。 同社は、障害福祉サービス事業所として指定され、ビュッフェレストラン「六丁目農園」を初め、牡蠣小屋や農園なども運営し、従業員百十五人のうち障がい者が六十四人となっている。これまでの経験から障がい者も適材適所で働きがいを感じると、自らが持つ能力を発揮できることを学び、「障がい者を納税者に」、「やり甲斐と生き甲斐の創造」を企業理念に、地域社会の課題を企業の力で解決することがソーシャルビジネスの本質であるとの信念で、障がい者を受け入れて労働力として戦力化し、経年成長を目指し取り組んでいる。 「六丁目農園」は、東日本大震災後の約一カ月後に営業を再開したが、余震が続く中での営業であったため利用客が激減した。しかし、一切広告宣伝等を行わず利用客の口コミで、半年後には震災前の利用客数に戻った。この震災で支援活動として実施した炊き出し、物資の供給を通して雇用の大切さ、働くことの意義を感じ、いわゆる六次産業化の本質は共存共栄と地域貢献にあると考え、六次産業化のベースは労働力であり、そこを高齢者、障がい者、そして震災で職を失った人達の雇用創出の場とすべく、一般社団法人東北復興プロジェクトでは理事長として百人の雇用創出に向けて取り組んでいると説明を受けた。 4 県外調査の実施 岩手県では、公契約条例に対する取り組み及び東日本大震災後の雇用状況について調査を行った。 同県は、平成二十四年九月議会における公契約条例制定に関する二件の請願採択に伴い、「公契約あり方検討チーム」を設置し、平成二十五年度から検討を行っており、各自治体の公契約条例の制定状況、条例等の規定内容を調査し、条例制定に当たっての論点として法律との関係等について検討を重ねたほか、先進自治体への調査、労使団体等からの意見聴取などを行い、平成二十七年二月議会に提案することを目途に条例案作りを進めているとのことだった。 今後については、条例を制定する場合、目的、対象とする契約の範囲、法律との関係等の整理をする必要があり、庁内の調整・検討を進め、既に条例を制定した自治体へ成果に関する調査を行い、法制面からの検討に主眼を置いて協議を重ねているが、条例の方向性を打ち出すところまでは至っていないとのことだった。 同県は、平成二十六年七月の有効求人倍率が一・〇五倍となり、十五カ月連続の一倍台となっている。また、沿岸部の有効求人倍率は一・二七倍と、内陸部の一・〇〇倍を上回る状況が平成二十四年六月以降二十六カ月続いている。東日本大震災以降、復興関連求人や事業再開に伴う求人増により、求人数は大幅に増加している。このため、人口が減少する中にあって、労働者数は震災前を上回り、求職者数は減少している。 特に、沿岸部の基幹産業である水産加工業の人手不足の解消のためには、意欲ある求職者と企業とのマッチング支援、水産加工現場のイメージアップ等を行い、地域内での労働力を掘り起こし、さらに、岩手県U・Iターンフェアの開催等の地域外からの労働力の確保にも努めている。また、瓦れき処理業務の終了や震災等緊急雇用対応事業の縮小に伴い発生した離職者については、離職者の意向を把握し、在職中から就職支援セミナー、就職面接会、事業所見学会の開催等の支援を行い、離職後も職業相談の状況に応じた個別求人開拓等の支援を行っていると説明があった。 5 提言 これらの調査結果を踏まえ、本委員会は、雇用の安定化・創出に向けた諸施策について、次のとおり提言する。 (一)安定的な雇用の創出に関する対策の拡充について (1) 安定的な雇用の確保及び雇用機会の創出について イ 地域の持つ特色や可能性、潜在力を最大限に生かした雇用創出策の推進及び強化を図ること。 ロ 成長産業となる先端的産業の誘致や集積化の促進により新たな雇用創出策を更に推進すること。 ハ 地域における事業環境の整備を推進し、事業者に対する新規創業及び新規事業の展開に向けた支援策の強化を図ること。 二 学卒者の地元への定着支援策、大量退職時代に対応した人材の活用、Uターン・Iターン希望者に対する就業支援など、労働力の確保対策を講じること。 (2) 人手不足職種の人材確保について イ 沿岸部の水産加工事業者等の被災事業者に対して、復興の進捗状況に応じた支援の強化を図ること。 ロ 求人需要の多い建設業、介護・医療分野及び保育士等への雇用については、処遇改善策等を講じるなどして、若年者の入職や潜在有資格者の就業促進を図ること。 (3) 公契約条例について 本県は入札制度の改善を積極的に進めており、施策の推進に応じた改善により公契約の活用が、労働者の雇用の安定、地元企業の育成等に寄与するよう更なる取り組みを行う必要がある。公契約条例の導入は県内市町村や企業等に及ぼす影響が大きいため、今後、引き続き課題等について検討することが必要である。また、求人需要の多い分野において、処遇改善策等による雇用の創出を図る上で、公契約条例の効果的な活用についても検討する必要がある。 (二)各年齢層における雇用対策の拡充について (1) 若年層の就労支援について イ 国、県及び教育委員会の関係機関が連携し、経済団体の民間機関を活用し、若年齢層の雇用の確保及び拡大を図り、若年者の就職希望ニーズ及び企業の人材確保ニーズを的確に把握し、適切にマッチングするなど、課題解決に向けた取り組みの一層の充実を図ること。 ロ 高校生や大学生等の就職予定者のみならず、小・中学生を含めた児童・生徒に対しても、保護者及び教育機関が一体となり、就業に係る意識の醸成を図るとともに、職業に触れる機会を増やす等のキャリア教育を更に推進し、就職のミスマッチを防ぎ、職場への定着及び離職率の低下を図ること。 (2) 中高年層、子育て中の女性及び震災の影響を受けた者への就職支援について イ 県及び国の機関(ハローワーク)等の関係機関が連携を図り、求職者の希望する就業形態に対応した雇用の拡大及び再就職支援の一層の充実を図ること。 ロ 勤務時間及び勤務場所の制約等がある子育て中の女性に対して、仕事と生活の調和のとれた労働環境の整備を促進するとともに、就労支援の取り組みを推進すること。 (3) 障がい者に対する就労支援について 県及び関係機関が連携を図り、県民及び企業等に対し障がい者雇用への理解を促進することにより、障がい者の法定雇用率の改定も踏まえた、雇用の拡大等の取り組みについて一層の充実を図ること。二 地域経済の活性化策の充実強化に向けた取り組みについて 1 現状と課題 県では、これまで宮城県震災復興計画により、経済基盤を再構築し、富県宮城の実現に向けた歩みを着実に将来につなぐために、地域の産業資源を活用した産業活性化の取り組みを強化することとしている。 こうした中で、地域自らが地域の実態に即した自立型の地域経済の活性化を図っていくことが求められており、そのためには、地域の実態に即した景気対策や中小企業対策、地域産業対策、また、新産業の創出や起業の促進など実効性のある取り組みにより、雇用の拡大及び創出を図る必要がある。 本県経済のさらなる発展のためには、海外との経済交流を一層推し進めるなど、産業構造の転換が必要であることから、本県の地域産業の競争力強化と、農林水産物や加工食品の海外販路開拓など海外展開への支援、東アジア諸国やロシアとの経済交流などの取り組みについても求められている。 平成十九年度の「宮城の将来ビジョン」の策定以降、本県の経済は、リーマン・ショックによる世界的な景気後退や東日本大震災の発災などから、大変厳しい状況が続いてきた。しかし、このような状況にあっても、震災前に株式会社東京エレクトロンなどの企業立地が実現したほか、震災後もトヨタ自動車東日本株式会社の発足やソーラーフロンティア株式会社の新工場建設の発表など、製造業の集積に向け、将来への「礎」が着実に形成されてきている。このような復興の礎となる動きを、ものづくり産業の完全復興と新たな雇用の創出につなげるためには、震災前からのみやぎ企業立地奨励金や、震災後に国から認定を受けた復興特区制度(宮城県民間投資促進特区)などの活用により、更なる企業立地の推進が求められている。特に、事業者数が大きく減少した沿岸部においては企業立地は喫緊の課題であり、平成二十五年度から創設された「津波・原子力災害被災地雇用創出企業立地補助金」の活用により、市町との連携によって雇用創出につながる企業立地を推進している。 本県の製造品出荷額等は、震災前の平成二十二年の三兆五千六百八十九億円から震災が発生した平成二十三年には大きく減少し、二兆七千六百七十三億円となった。平成二十四年には被災事業者の復旧等により、三兆四千二百四十二億円までに回復したものの、震災前の水準には至っていない。県内事業者は、震災等による販路の喪失と売上の低迷という厳しい状況に置かれており、被災事業者にとって「受注取引の確保」は大きな経営課題の一つとなっている。震災後の市場動向は、原子力発電の停止により、我が国のエネルギー政策が転換期にある中、太陽光発電を初めとした再生可能エネルギー等の重要性が増しており、環境関連産業への期待が高まっている。また、本県に集積が進んでいる自動車関連産業は、震災後の比較的早い段階から復旧が進み、平成二十四年七月には、トヨタ自動車東日本株式会社が発足されるなど、県内企業にとっては、自動車関連産業への新規参入・取引拡大に向けた大きなチャンスが生まれている状況である。 ものづくり人材の育成・確保については、本県では、ものづくり産業の企業立地が進んでおり、次代を担う環境関連産業などの新たな産業を含め、集積と振興に向けて全力で取り組んでいる。このため、県内では、集積が進んでいる自動車関連産業・高度電子機械産業や環境関連産業等の新たな産業分野を担う「ものづくり人材」の需要が高まっている状況にある。一方、ものづくり人材の需要の高まりに対し、企業ニーズに対応できる人材の供給不足が懸念されている。新規卒業者の県外への流出が見られることもあり、復旧に取り組んでいる被災事業者も、大きな経営課題の一つに「人材の確保・育成」を挙げている。さらに、教育の現場では、小・中学生の理科離れが指摘されており、将来的に理工系に進学する生徒の減少が懸念される。また、ものづくり産業と接する機会の不足などから、将来の「ものづくり」を支える人材の減少が懸念されている。本県産業が安定的で持続的な成長を遂げていくには、県内企業の競争力を高めることが必要であり、重要な経営資源としての人材の育成と確保が大きな課題となっている。このため、「みやぎ産業人材育成プラットフォーム」の産学官連携による人材の育成など、ものづくり産業振興に必要な技能者の育成と人材供給を図るとともに、本県において集積が進んでいる自動車関連産業の立地企業や県内産業を支える被災企業を初めとした中小企業のニーズを踏まえた産業振興分野の人材育成・確保が必要となっている。また、本県ものづくり産業の発展のためには、次代を担う若い世代のものづくり志向と産業理解の促進が求められている。このため、企業や教育の現場との連携により、県内小・中学生及び高校生のものづくり産業と接する機会の拡大を図るなど、本県の将来のものづくり産業の人材の確保に向けた若い世代のものづくり志向を促進している。 本県では、友好省州である中国吉林省及び米国デラウェア州、海外事務所のある中国大連、韓国ソウル、経済交流の実績がある台湾及びロシアなどにおいて、これまでに築いてきた交流基盤を活用し、海外販路開拓などの機会を創出しているが、具体的な成果は不足している。また、中国や韓国との関係は厳しい状況ではあるが、国際情勢にかかわらず友好県州との交流を継続している。このような中で、経済交流の成果につながる交流基盤の強化策として、海外自治体等との友好関係をベースに、経済交流につながる人的ネットワークを構築及び強化することが課題となっている。 本県産業の国際競争力強化と販路開拓の取り組みについては、県において、本県産業の海外での国際競争力を高めるため、商談会等による販路開拓の取り組みに力を入れてきたが、震災や原発事故の風評等の影響による各国の輸入規制により、従前の海外販路は大きな打撃を受けている。今後、成長が続き、富裕層が増加している東南アジアについて市場ニーズを把握しながら新たな市場としての販路拡大を行うとともに、本県の復興状況の発信や風評払拭のための積極的な情報発信をし、県内企業のニーズの掘り起こしや海外ビジネス人材の育成、海外市場ニーズに基づく商品開発を行う必要がある。 外資系企業誘致の取り組みについては、諸外国から日本への投資実績は低調であり、日本の対内投資残高GDP比率は諸外国と比べ低い水準となっている。震災によるネガティブな意味での知名度向上に対応するため、英語によるウェブサイト及びパンフレットを作成し、ジェトロなどが主催するセミナー等や企業訪問により、民間投資促進特区などの充実したインセンティブを紹介しているが、誘致実績にはつながっていない状況である。現在の海外からの注目度が高まっている機会を逃さず、グローバル企業を核とした本県の産業集積や交通インフラ、防災対策等の優位性を強みとし、これらの強みを生かせるターゲットを明確にして積極的に企業誘致に取り組んでいくことが求められている。 県産農林水産物等の海外販路開拓支援については、平成二十一年三月に「みやぎ国際戦略プラン」に基づき、「食材王国みやぎ農林水産物等輸出促進基本方針」を策定し、本プランで重点的に販売拡大支援を行うこととしている国・地域(香港、台湾、韓国、中国及びロシア等)を重点地域に位置付けている。人口減少に伴う国内消費市場の縮小や、震災で失われた販路の確保が急務となっており、海外市場に新たな販路を求める必要性が高まっていることから、輸出業者の掘り起こしとそのための情報提供が必要となっている。 2 参考人からの意見聴取 独立行政法人日本貿易振興機構東北地域統括センター長兼仙台貿易情報センター長 寺田佳宏氏 寺田氏からは、宮城県企業の海外展開支援の現状と課題について説明を受けた。 ジェトロでは、主に中小企業を対象として、海外販路開拓支援を行っており、農林水産品・食品の輸出支援を最重点課題として、すべての都道府県において例外なく一品目以上の農林水産物輸出を支援している。これまで輸出経験のない企業にも支援を行い、海外主要国のジェトロ事務所が制度情報を収集・提供し、個別の情報ニーズに対応するなど、独立行政法人中小企業基盤整備機構を初め、他の支援機構と連携して多面的な支援を提供している。 同氏は、ジェトロ仙台の宮城県内企業への支援事例をいくつか紹介し、外国資本の誘致における宮城県の強みとして、豊かな自然と文化を有している魅力的な地域であり、家賃水準や犯罪発生率等は全国平均や首都圏水準と比べても低く、新幹線・高速道路・空港・貿易港などの交通・輸送インフラが充実しており、東京からのアクセスも容易で、自動車関連産業などの産業集積が進んでいる点などを挙げた。県内や東北地域内で活動してきた企業は海外進出への強い逡巡があり、海外展開を行うには事業規模が小さな企業が多い。外国語や貿易実務は必須のものではなく、通訳や翻訳会社、商社などを上手に使って成功している企業もある。挑戦する意欲と成功まで頑張る決意を持ち輸出の企業内体制を整えるなど、自ら海外の売り先を開拓し、仕向け地に適合した商品改良を行い、年一回から二回は現地を訪問して情報収集し、販売促進に努める企業が成功できると述べた。 3 県内調査の実施 株式会社AZOTH(アゾット)では、海外販路開拓の取り組みについて調査を行った。 同社は、平成十六年十二月にガレージから営業が始まり、東日本大震災で本社工場が全壊したが、新社屋を再建し、平成二十三年十二月には、デザイン、製造、小売り部分を分社化し、現在はAZOTHグループとして三社の集合体により、生産性・効率性を高めた経営を目指している。 海外生産の進展による国内製造業の衰退、中国製品の質の向上、日本国内の職人の高齢化、若手職人の人手不足、加工賃の減少等の問題が顕在化していることから、今後、生き残る企業として「他社主導の下請けの受注体質から、企画・提案型の自立企業」を目指すために、「3Dプリント」と称する立体プリントの技術を生かした企画デザインを海外見本市へ出展した。海外バイヤーを招聘してジェトロが開催した商談会において英国や米国のバイヤーと商談を重ね海外ビジネスの経験を積んだ。さらに、ジェトロの支援を受け、パリの有名ブランドからコレクションのサンプル発注が入り、納品に向け取り組みを進めている。 今後のビジネス展開については、海外向けのデザインを販売するだけではなく、ファッション以外のインテリア、ホームテキスタイルなどのデザイン販売へ事業を拡大し、「宮城県から世界に発信する企業を目指し、国内外の仕事の起点、場を作る企業を目指す」とのことだった。 4 県外調査の実施 青森県では、国際経済活性化への取り組みについて調査を行った。 同県は、少子高齢化等に伴う人口減少を背景に、国内市場の縮小が避けられない厳しい状況の中、海外の成長市場に目を向け「青森県農林水産品輸出促進戦略」に基づくアジアをターゲットとした農林水産品の輸出促進を図るとともに、「青森県中華圏取組戦略」に基づく中小企業の中華圏における販路拡大を支援してきた。平成二十六年三月には「青森県輸出拡大戦略」を策定し、平成二十六年度から平成三十年度までの五カ年にわたる輸出拡大に向けた取り組みの指針を定めた。 この輸出拡大戦略の中では、三つの基本方針を掲げ、基本方針①の「分野ごとの戦略的展開」として、農林水産物及び加工品を最重点戦略分野に、工業製品、クール・ジャパン関連製品・サービスを重点戦略分野に設定し、最重点分野ではリンゴやリンゴジュース等に品目を絞り込んで海外展開を図るものである。基本方針②は「対象国・地域への戦略的展開」として、人的ネットワークが形成されている中国、香港、台湾等の東アジア、富裕層・中間層の拡大と経済成長が見込まれるシンガポール、タイ、インドネシア等の東南アジア、成熟した市場を有し情報発信力が高い欧米を取り組み対象地域に設定し、市場の状態に応じて、高級スーパー等への商品提案など段階的に取り組みを進めていくものである。基本方針③の「短中長期的視点を踏まえた戦略的展開」は、短期的視点からは重点的に取り組むべき分野、品目及び地域を明確にし、販路開拓と輸出拡大の実効性を向上させる取り組みを集中的に展開し、中長期的視点を持って、各分野・各品目・各地域の動向等を注視しながら、将来の県内輸出の取り組み拡大や活性化に寄与する基盤的な取り組みについて展開を図るものと説明を受けた。 また、県内中小企業向けの海外展開支援として、輸出の担い手の育成を図るため、ジェトロと連携しながら、専門家を講師に招いてフロントランナーによる輸出成功事例の紹介、貿易実務の研修や個別相談会を開催し、海外販路開拓を目指す県内企業の取り組みを支援する補助金制度を創設している。さらに、東アジアや東南アジアで開催される国際見本市に県がブースを借り上げて出展し、企業に無料提供するほか、商談通訳も無料で手配するなど海外の展示商談会及び見本市への出展支援を行っている。また、上海の輸入業者に業務委託し、上海、香港を拠点に中国への輸出支援を展開し、東南アジアでは、バンコク在住の日本人の貿易会社経営者を「東南アジアビジネスコーディネーター」として委嘱し、タイやシンガポール等での県内企業のビジネス展開を支援しているとのことだった。 貿易統計による日本の平成二十五年産リンゴの輸出量は、円安効果や食味、色、品質とも良好だったことから、平成二十六年三月までで前年同月期比一三三パーセントの一万八千九百二十八トンとなっているが、品質向上を背景にアメリカ産リンゴの台湾市場への輸出量が拡大している。一方、リンゴ産地では、生産従事者の高齢化や労働力不足等を背景に、食味や品質の低下が懸念されている。そのため、アメリカ産を初めとした外国産との差別化を図るために、輸出用リンゴの品質向上に向けて、生産者自ら台湾市場を視察し、現地の声を聞くなど意識の醸成を図り、台湾以外の海外市場の地域特性に応じた輸出拡大とリスク分散を図っていくとのことだった。 5 提言 これらの調査結果を踏まえ、本委員会は、地域経済の活性化策の充実強化に向けた取り組みについて、次のとおり提言する。 (一)地域経済活性化策への支援の拡充強化について (1) 沿岸部の水産加工業を初め、中小企業等の持つ多様性、柔軟性を活かした取り組みが新たな事業の創出につながることから、成功モデルの普及に力を入れる等の中小企業の育成強化により地域経済の活性化を実現すること。 (2) 本県産品の需要拡大を促すため、全国の主要都市等での物産展及びアンテナショップ等を活用し、販路確保及び拡大につながる支援策の強化を図ること。 (二)海外販路の開拓及び拡大の支援について (1) 本県産品の海外販路の開拓及び拡大の支援について イ 国内における本県産品全体の需要を喚起するための広報やマーケティング、本県産品の認知度向上、ブランドを確立するための取り組みを推進すること。 ロ 輸出条件や国内外の価格差を踏まえて、農林水産物や加工品等の輸出を重点的に取り組む国及び品目ごとに、個別に輸出促進に向けた方策を推進すること。 ハ 海外市場において本県産品のブランドイメージを浸透させ、他産地との差別化を図るなどのブランド確立を促進すること。 二 本県産品の定着、認知度向上を図るため、例えば東北六県で連携し共同で海外展開するなど、東北全体として取り組む方策も検討すること。 (2) 海外ビジネス展開に関する支援について イ 中小企業や生産者が海外展開を図る上で必要となる海外ビジネス情報について、企業や生産者の立場に立った情報提供、相談体制などについて、ジェトロ等の関係機関と連携しながら、一層の充実強化を図ること。 ロ 海外との取引においては、債権回収や相手国の社会情勢によるリスク等、国内取引とは異なるリスクがあることについて情報提供するとともに、リスク回避策の相談体制の強化を図るなど、企業等のリスク対策への支援を推進すること。 (三)輸出促進に向けた取り組みについて (1) 輸出に向けた機運の醸成について イ 本県の輸出の現状、輸出に取り組んでいる県内企業や農林水産業者の状況、潜在的ニーズ等を把握し、新たな輸出者の発掘、育成を図り、輸出に取り組む企業等の裾野を広げること。 ロ 海外市場の動向、貿易の基本知識等を紹介するセミナーや輸出相談会の開催等を継続的に実施するほか、海外ビジネスに進出する企業をモデル企業に選定して重点的な支援を行うなど、ジェトロ等の関係機関と連携しながら、新たに輸出に取り組む企業等の掘り起こしや機運の醸成を図ること。 (2) 輸出先のニーズにあった生産や供給体制の確立支援について イ 農林水産品の輸出を継続的に行うためには、高品質なものを安定的に供給することが必要であるが、輸出に向けた生産・供給体制を確立するための支援策の充実強化を図ること。 ロ 取引可能性のある企業を招聘してビジネスツアーを実施するなどの交流を図るほか、輸出拡大のためのビジネスパートナーの開拓を支援すること。 以上、これらの提言が今後の県の関係施策に関係部局連携のもと十分反映されることを期待して報告とする。 平成二十六年十一月二十日 安定雇用・地域経済活性化調査特別委員会 村上智行 宮城県議会議長 安藤俊威殿……………………………………………………………………………………………
○議長(安藤俊威君) これより質疑に入ります。 委員長報告に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。-----------------------------------
△スポーツ振興調査特別委員会調査結果報告
○議長(安藤俊威君) 日程第百四十七、スポーツ振興調査特別委員会調査結果報告を議題といたします。 本件について委員長の報告を求めます。スポーツ振興調査特別委員長、三十八番小野隆君。 〔三十八番 小野 隆君登壇〕
◆三十八番(小野隆君) スポーツ振興調査特別委員会の調査結果について御報告申し上げます。 本委員会は、スポーツ振興に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十五年十二月十三日に設置されました。 付議事件、スポーツ振興に関する諸施策についてを受け、一、オリンピック・パラリンピックの促進対策について、二、地域におけるスポーツ振興について、三、スポーツ施設の整備について、以上を調査項目として、県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに、参考人からの意見聴取を行ったほか、県外・県内調査を実施して検討を重ねて参りました。 その結果につきましては、お手元に配布の報告書のとおりでございますが、この報告書が今後の関係施策に反映されることを期待して御報告申し上げます。…………………………………………………………………………………………… スポーツ振興調査特別委員会報告書 スポーツ振興調査特別委員会の調査結果について報告する。 本委員会は、スポーツ振興に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十五年十二月十三日に設置され、付議事件「スポーツ振興に関する諸施策について」を受け、次の事項について調査した。 一 オリンピック・パラリンピックの促進対策について 二 地域におけるスポーツ振興について 三 スポーツ施設の整備について 以上の項目について、県関係部局から県施策の概要を聴取するとともに、参考人から意見を聴取し、さらに埼玉県内の取り組みや国等の動向及び県内の事例や取り組みなどについて、埼玉県、東京都方面や石巻市、利府町、仙台市泉区を訪問し調査・検討した。 また、調査・検討の過程で、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催決定による関心の高まりや東日本大震災の被災者にも大きな希望を与える「スポーツの持つ力」が再認識される中、当委員会では「二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた環境整備及び地域における取り組みへの支援を求める意見書」を平成二十六年六月定例会へ提案した。当意見書は全会一致で可決後、衆参両議長及び関係大臣へ送付されたほか、当委員会では、県外調査の機会に関係先へ要望趣旨の説明を行った。 その結果は、次のとおりである。一 現状と課題 昨年は、二〇二〇年のオリンピック及びパラリンピック競技大会の開催地として東京都が決定したほか、本県を本拠地とするプロ野球チーム「東北楽天ゴールデンイーグルス」が日本シリーズで優勝したほか、本年二月の冬季オリンピックソチ大会のフィギアスケート競技では、本県出身の羽生結弦選手が金メダルを獲得するなど、本県におけるスポーツへの関心は非常に高まっている中、東日本大震災の被災地においては、トップアスリートの支援活動などが被災者に大きな希望を与えているなど、「スポーツの持つ力」が再認識されている。 このような中で二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、東日本大震災の被災地の支援を前面に出し、サッカー競技が被災地である本県のひとめぼれスタジアム宮城(宮城スタジアム)での実施が予定されているほか、被災地を聖火リレーのコースとすることも検討され、県内の一部では聖火リレー出発地を誘致しようという活動も展開されている。さらには、県内の国際大会実施可能な既存施設を活用し射撃競技を誘致することや各国代表チームの事前合宿地としての選定を目指そうとする動きなどもみられるが、開催に当たっては、まさに県民総参加で対応することが求められ、実現までの道程は長く課題も山積していることから、組織体制を整え、拡充・強化を図りながら、課題に対して県内外への積極的な対策と取り組みを実施していくことが必要である。また、スポーツツーリズムの高まりや地域経済への波及効果が高いスポーツイベントの誘致に向けた組織づくりについても、早急な対応が求められる。 さらに、本県のスポーツ振興においては、県民の誰もが、いつでも・どこでも・いつまでも生涯にわたってスポーツをする活動の推進や競技力向上に向けたスポーツ活動の推進、スポーツ活動を支えるための環境づくりの充実に向けて、地域におけるスポーツ活動や障害者のスポーツ活動への支援、国体等における競技力向上のための指導者の確保、少子化への対策などに、さらなる取り組みが必要となっており、プロスポーツについては、野球のほか、サッカー、バスケットボールなどのチームが活躍し、年間を通じてプロのスポーツを間近に観戦できる環境となっているが、さらに地域にプロスポーツが定着するための取り組みも必要である。 なお、二〇一九年に日本でラグビーワールドカップが開催されることが既に決まっているが、試合会場や出場国のキャンプ地の誘致等県内自治体の動向について注視していくことも必要である。 一方、沿岸部などの被災地では、学校やスポーツ施設等も被害を受けたほか、学校のグラウンドなどに応急仮設住宅が建設されるなど、特に、東日本大震災以降のスポーツ環境は大きく変化している。東北電力名取スポーツパークについても、東日本大震災以降使用不能の状態が続いており、パーク内の愛島野球場の復旧・存続について求める請願が県議会に提出されている。 本県の競技施設については、新世紀・みやぎ国体を機に整備・使用されてきた各種施設や国際大会開催可能な施設などがあるものの経年劣化が進んでおり、また、東日本大震災により使用不能となっている施設やグラウンドなどもあることから、施設の充実や不足等への対策が必要である。さらに、オリンピックの競技会場候補地となっているひとめぼれスタジアム宮城(宮城スタジアム)においては、多数の来場者に対する会場へのアクセス対策や交通渋滞解消などが依然として課題となっている。 平成二十五年三月に、「スポーツを通して活力と絆のあるみやぎを創ろう」を理念とした宮城県スポーツ推進計画が策定され、これに基づく施策が展開されているが、スポーツは人類共通の文化であるとともに、その持つ力は震災からの復興に向けての大きな支えとなることから、本県のスポーツの振興に関して、当計画の推進を中心とした各種施策の強化・充実が、関係者の理解と協力のもとに推進されることが求められている。二 参考人からの意見聴取 1 仙台大学教授 鈴木省一氏(冬季オリンピックソチ大会ボブスレー競技日本選手団チームリーダー) 東京オリンピックについて、宮城県が宮城県スポーツ振興計画の目指す十年後の姿を実現するためのチャンスとして、どう活用していくかは非常に重要である。子供の体力の向上、国体の成績の向上、メタボリックシンドローム該当者の減少、健康寿命の延伸などの結果になれば、まさにこれは宮城県民にとっては、すごく幸せな景色になると思うと述べるとともに、聖火リレーが宮城県を走ればオリンピックロードができる、聖火は平和の祭典・復興のシンボルであり、県民に夢と勇気を与える道(復興オリンピックロード)でマラソン大会ができないかとの提案があった。 また、宮城県の国体総合成績(順位)を二十五位から十五位にを合い言葉に選手強化に努めているが、競技力の向上は子供からの積み重ねなので、ジュニアからの育成をどうするかということが重要な課題と述べ、四年生、五年生、六年生というのはゴールデンエイジと呼ばれており、この時期にいい遊び、いい運動、いい教育を受けるとすごく加速度的に運動能力が上がる。一方では、平成二十年の特定健診で四十歳以上のメタボリックシンドローム該当者は、全国で宮城県が一番多く、その後宮城県は二位になりここ四年間ぐらい全国ワースト二位で宮城県はメタボリックシンドローム該当者だらけだが、何かきっかけがあれば運動したいと考える人が七割いる、このきっかけをどう与えるかということが宮城県にとって非常に重要であり、スポーツの価値を共有することによって問題を解決するような策をとれないかと述べている。さらに、国際大会やイベントを誘致・企画する専門組織という、スポーツコミッションというのは、非常に今各地域で広がってきており、今全国で八カ所ぐらいできている旨の情報提供もあった。 2 日本ハンドボールリーグ(JHL)トヨタ自動車東日本監督 中川善雄氏(株式会社スポーツ&ワークス代表取締役) 地域スポーツの発展と指導者の確保等について、スポーツが教育や健康の観点からも非常に影響力を持つ時代になったとの認識のもとに、地域スポーツの中で、指導者として現役選手などのアスリートやトップチームをうまく活用するために、そこにかかわる人たちの生活のことをしっかり考えてあげるということが非常に大切であると述べた。具体的には、総合型スポーツクラブにトップアスリートをうまく在籍させた取り組みやアスリートが責任を持ってスポーツで収益を上げるような新たな仕組みづくりとして、トップアスリート派遣事業やスポーツコンシェルジュ(企画・運営)事業などを行う会社を立ち上げ、アスリートが持つ「人財」としての能力・資源を活用しさまざまな分野・地域で社会に貢献していくことを目指している自らの取り組みを紹介しながら、スポーツ産業発展の可能性とともに、そこにかかわる人たちの生活をしっかり考えてボランティアから脱却し、収入を得る仕組みを構築してしっかりその対価を支払っていくことも大切であると述べた。三 県外調査 1 公益財団法人埼玉県体育協会(埼玉県上尾市) 公益財団法人埼玉県体育協会においては、スポーツ振興に向けた埼玉県体育協会の取り組みについて調査した。 埼玉県では、「スポーツを通じた元気な埼玉づくり」を目指し、平成二十五年に策定された埼玉県スポーツ推進計画に基づいた諸事業を推進している中で、埼玉県体育協会では特に、スポーツを通じた次代を担う青少年の育成に力を入れている。国体では常に総合順位三位以内を目標にしており、昨年も男女とも第三位で、昭和四十二年の埼玉国体以来、入賞していないのは(三十五年前の)宮崎国体だけで、平均すると三.八位くらいで推移しているとのことであった。 主な事業としては、競技力向上や次代を担う青少年育成に向けて、彩の国ジュニアアスリートアカデミー事業及びプラチナキッズ発掘育成事業を県の委託を受けて実施している。プラチナキッズ事業では九十名の募集に約四十三倍の応募があったとのことである。この事業は種目ごとのトップアスリートを発掘するのではなく、底辺や奥行きの能力を早期からしっかり鍛え育成することを主な目的としており、中学に進んでから自分やりたい種目を選ぶ例も多い。また、東京都北区にあるナショナルトレーニングセンター利用のフォローアップも行っているとのことである。また、生涯スポーツ振興事業の日本マスターズ二〇一四埼玉大会を開催してスポーツの魅力をアピールしていると説明があった。 施設運営面では、県立武道館の指定管理者として県の委託を受けて以降、年間十七万人の利用があり、県から譲渡されたスポーツ総合センターとあわせると、年間三十三万人が利用している。武道館では、武道学園の各教室で武道の基本理念をしっかり教えるほか、次代を担う子どもたちに社会規範や伝承といったものもしっかり教えていく取り組みを行っているとともに、食育や熱中症対策など保護者と一緒になった対応をしているとのことであった。また、利用するスポーツ現場の方の意向を酌み、例えば、条例では朝九時開館のところ、柔道の大会で体重別の検量のために六時半から使いたい場合、県と調整の上利便性を図るなど、スムーズな大会運営に配慮し感謝されている。借りる側に感謝の気持ちを持ってもらえるよう最大限の利便性を図りながら関係者が手を携えて協力してもらい各種健康増進事業などを実施していると述べた。 なお、収益事業として、十一月のオープンを目指し、通年型国際規格リンクの(仮称)埼玉アイスアリーナを都市公園内の隣接地に新たに建設中であり、実質的な管理運営は企業側が設備を持ち込んで運営という変則的な形で設置許可を受けたが、県有地の都市公園内への設置許可に協会が絡んだ格好となっている。他自治体の成功事例を参考にしており、ランニングコストや需要面で経営的に問題ないなどと説明があった。 2 公益財団法人日本オリンピック委員会(東京都渋谷区) 公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)においては、JOCにおける東日本大震災復興支援への取り組みについて調査した。 JOCでは、平成二十三年に東日本大震災が発生した際に約半分の六十の各種スポーツ大会が中止となった中、スポーツを通じて、友情、連帯、フェアプレーの精神を培い、相互に理解し合うことにより世界の人々が手をつなぎ、世界平和を目指す運動であるオリンピックムーブメントの理念を通じた独自の活動として、東日本大震災復興支援事業を実施した。被災県に在籍する若手選手を第一回ユースオリンピック冬季競技インスブルック大会へ派遣及び第三十回オリンピックロンドン大会へ被災地の子どもたちを招待して日本選手団とのコミュニケーション事業や現地の子どもたちとのふれあい事業を実施したところ、子どもたちが非常に笑顔になり、スポーツの持つ力を再認識したとのことであった。それをきっかけに、一人でも多くの被災地の方々に「笑顔」になってもらいたいと、「オリンピックデー・フェスタ」に取り組み、三年間でこれまで六十会場(宮城県では最多の二十一会場)で開催し、延べ三百十七人のアスリートと約一万三千人の地元選手が参加する盛況ぶりで、社会貢献活動ができていることに大変感謝している。アスリートには研修を通じてオリンピックムーブメントやスポーツの持つ力・価値などをしっかり認識して参加・活動してもらっているが、ふれあいの中でアスリート自身が成長していく部分もあることから、今年度も十五会場で約二千人の参加者のもとに活動を継続していると説明があった。 3 独立行政法人日本スポーツ振興センター(東京都北区・国立スポーツ科学センター) 独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)では、スポーツ振興に向けたスポーツ振興センターの取り組みについて調査した。また、JSCが管理している、国立スポーツ科学センター及び味の素ナショナルトレーニングセンターの施設を視察した。 JSCは、「未来を育てよう、スポーツの世界で」をコーポレートメッセージに掲げ、スポーツの振興、国民の心身の健全な発達に寄与、児童生徒等の健康の保持増進を目的にスポーツの未来を担う中枢機関としての役割を担っており、国立競技場等スポーツ施設の運営や国立スポーツ科学センター・ナショナルトレーニングセンターを拠点とした国際競技力向上のための研究・支援業務、スポーツ振興基金とスポーツ振興くじ(toto)を活用したスポーツ振興助成業務、学校安全支援業務などを行っている。平成二十五年度からの新たな事業としては、スポーツ開発事業推進部を立ち上げ、ハイパフォーマンス(国際競技力向上)を通じたアスリートやコーチング、スポーツ、医・科学サポートの各開発と支援を行っているほか、ハイパフォーマンス事業に関する連携推進会議を設置して、進捗状況の報告や今後の取り組みについて情報交換を行っている。また、法改正により本年四月から加わった、ドーピング問題や暴力問題、スポーツくじ違法賭博等調査、スポーツ団体ガバナンス強化の支援等に取り組むため、スポーツの健全性・高潔性を守っていく組織体制としてスポーツインテグリティ・ユニットを設置した。さらに、関係機関との連携・協働を図るため、ジャパン・スポーツネットワークを昨年七月に立ち上げ、現在、宮城県を初め全国五百六十五の地方自治体の賛同のもとにネットワークを構築してメール等による情報提供・好事例紹介やセミナー研修等の開催、調査研究などの事業を行っているとの説明があった。 なお、JSCが管理する国立競技場の聖火台について、現時点では公表されているとおり、一旦代々木競技場に保管することになっている。JSCでは、宮城県からの要望も承知しているが、さまざまな方からさまざまな要望を受けているので、日本のスポーツ界の宝という認識のもとに、今後さまざまな検討がなされるものと承知しているとの話であった。 4 東京都(東京都新宿区) 東京都では、オリンピック・パラリンピック準備局から説明を受け、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催効果の波及について調査した。 初めに、東日本大震災最大の被災地である本県の議会が、第三十二回オリンピック競技大会及び第十六回パラリンピック競技大会の東京招致に関する決議を行った経過に触れ、開催が決定した今、これら理解と応援に対し謝辞が述べられた。 全体的な概要説明の中で、大会開催の意義の一番目に、「大会を通じて被災地や子どもたちに希望」が掲げられ、東日本大震災からの復興ができなければ大会の成功はありえず、スポーツの力によって希望に輝く人々の姿を全世界に向けて発信していくこと及び大会を通じて次代を担う青少年に夢と希望を与えることを目指していくことが述べられた。また、誘致段階でまとめられた「復興専門委員会報告書~オリンピック・パラリンピック開催を被災地復興の力に~」の諸事業については、東京都が実施するスポーツを通じた被災地支援事業において、スポーツ招待交流事業やスポーツ観戦招待事業、東日本千キロ縦断リレーなど、既に実施されているものがあるほか、そのほかの事業についても、被災三県と組織委員会により本年七月に設置された、被災地復興支援連絡協議会を活用しながら、地域の復興支援関連事業に連携して取り組んでいく旨の説明があった。 また、地方への波及効果のための取り組みについては、開催地の東京都だけでなく宮城県初め全国各地においてスポーツの振興と国際交流の推進、文化の発信等に絶好の機会ととらえ、全国の地方公共団体と連携して取り組んでいくことが述べられた。 5 文部科学省スポーツ・青少年局(東京都千代田区) 文部科学省スポーツ・青少年局では、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取り組み等について調査した。 まず、配布資料をもとに概要説明があり、続いて、平成二十六年六月定例会で当委員会から提出して可決され、文部科学大臣等関係大臣あて送付された、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた環境整備及び地域における取り組みへの支援を求める意見書についてコメントがあり、事前合宿の国内誘致については、大会組織委員会が候補地をリストアップして各国のチームに提供することになっており、大会組織委員会において作業スケジュールや選定要件等の確認をしているところであるとのことであった。最終的には二〇一六年のリオディジャネイロ大会で各国のチームが集まった際に合宿地リストを提示し、そこからアプローチが始まるが、姉妹都市を結んでいる場合など、提示の前に既に視察に来ていたという事例もかつてあったので、姉妹都市などのつながりを活用しながら接触していく手段もあるとのことであった。また、パラリンピック選手も利用できるスポーツトレーニング拠点施設を地方へ設置との要望については、パラリンピックは二十六年度から文部科学省に所管が移管され、課題であった強化の拠点に係る予算もついてオリンピックと一元的に強化していくことになったが、ノーマライゼーションの観点から健常者との共同利用が好ましいとも考えられるため、さらに有識者などから意見を求めて検討したいとのことであった。子どもから高齢者まで健康で生きがいの持てる社会を構築できるよう地方公共団体が進めるスポーツを活用した「まちづくり」や「地域づくり」に対し支援を行うことについては、重要な課題であるとの認識のもと、生涯スポーツ社会の実現に向けた環境の整備を推進することとしており、例えば、地方公共団体が地元の大学や企業、団体等と連携し、それぞれが所有する施設や人材を活用して地元住民のスポーツ活動を支援するほか、スポーツコミュニティの活性化なども促進していきたいなどと説明があった。 なお、聖火リレーのコンセプトについては、来年以降組織委員会が定め、二〇一七年八月までに国際オリンピック委員会の承認を得ることになっており、最終的には大会本番前年の二〇一九年にコースが決定される予定とのことであった。前回の東京大会や冬季の長野大会では分火されて全国をリレーされたが、近年は分火してはならないという規定が出来て、しかも、アテネから到着後百日以内で聖火台に点火することになるのでどういうコースをとるか非常に難しいことから、被災地の聖火リレーについては関係機関の方々と組織委員会が調整しながら進めていきたいと説明があった。 続いて、スポーツ基本計画の全体像について、配布資料をもとに説明があった。平成二十三年六月に制定されたスポーツ基本法に基づいて策定されたスポーツ基本計画について、従前との相違点は、スポーツを通じた新しい社会像を目指すこと及び新たなスポーツ文化の確立であり、十年間の基本方針と五年間の計画、五年間で取り組むべき七つの施策について解説があった。 6 さいたまスポーツコミッション(埼玉県さいたま市) さいたまスポーツコミッションでは、さいたまスポーツコミッションの事業概要等について調査した。 初めに、スポーツコミッション設置の背景と経緯について、スポーツコミッションは、観光による内需拡大の必要性の高まりを背景にスポーツ資源を最大限活用したインバウンド拡大と国内観光振興の起爆剤として注目され、さいたま市では、市長のリーダーシップのもと、スポーツ振興まちづくり条例の制定やさいたま市スポーツ振興まちづくり計画を策定するとともに、スポーツコミッション基礎調査の実施や基本計画策定作業を進めた。新たなスポーツ観光市場の創造に向けた観光・交流分野の戦略施策として、さいたま市の特徴のひとつである「スポーツの盛んなまち」としての特徴を生かし、国内でまだ本格的な事例のない組織を他に先駆けて創設することで、スポーツを通じた新たな観光客の拡大を図り地域経済を活性化させることを目的に、平成二十三年十月、さいたま観光国際協会内に設置された旨の説明があった。 スポーツコミッションの具体的役割としては、地域活性化につながるような大規模スポーツイベントの誘致プロモーターと、主催者をサポートするコーディネーターを挙げ、サッカーを軸にした特定競技やカテゴリー(種別)のメッカ(聖地)づくり、より高い経済波及効果が見込まれる女性やシニア、保護者同伴のジュニア層等ターゲットを明確にした誘致活動、市民の施設利用を意識しながら、スポーツ施設を利用しない、マラソン・自転車などのエコロジカルスポーツの振興といった三つの戦略を立てて、四人の専任職員が業務に当たっていた。 今後の課題としては、市民スポーツとのバランスを考えて、スポーツ施設を使わないスポーツイベントの情報収集と誘致を積極的に展開していくことと、スポーツイベント誘致の先駆的優位性確保を挙げ、全国で続々とスポーツコミッションが設立されて都市間競争が生まれてきている中、戦略方針に基づいてさいたま市が先行事業化したことを最大限活用し、スポーツ都市としてのブランド化をさらに図っていくことと述べていた。四 県内調査 1 東京オリンピック・パラリンピック聖火リレー出発地・聖火台誘致委員会(石巻市) 石巻市の東京オリンピック・パラリンピック聖火リレー出発地・聖火台誘致委員会では、二〇二〇東京オリンピック・パラリンピックと震災復興の取り組みについて調査した。 東京オリンピック・パラリンピック聖火リレー出発地・聖火台誘致委員会は、石巻市長を最高顧問に、石巻商工会議所会頭が委員長に就任しており、石巻市長からの挨拶のあと、事務局長であるNPO法人石巻市体育協会会長から、設立の背景と活動状況について次のとおり説明があった。 戦後復興の象徴であった昭和三十九年開催の東京オリンピック主会場の国立競技場の聖火台を石巻市に誘致し、南浜地区に建設が予定されている鎮魂の森のシンボルにしたいと考え、これが実現すれば東日本大震災に遭遇したすべての人のこころを癒やし、勇気と感動、何よりも前向きに生きる強い気持ちを持たせるものと信じているとのことであった。また、聖火リレー出発地を石巻市に誘致する活動について、オリンピック発祥の地ギリシャから運ばれた聖火が被災地の一つである石巻市鎮魂の森の聖火台に灯り、そこから聖火リレーがスタートし全国各地に受け継がれることは、復興オリンピックの趣旨になじむものと考えられるため、この二つの誘致のため誘致委員会を今年二月に立ち上げ、三月に村井知事へ要望書を提出したのを手始めに、四月には大会組織委員会会長と日本スポーツ振興センターの理事長に要望書を提出した。また、五月に独立行政法人日本スポーツ振興センターに現地視察の要請を文書で行ったとのことであった。 なお、誘致委員会では聖火リレー出発地の誘致に関連して聖火は分火できるとの認識をもっていたため、質疑応答の中で、県外調査での情報をもとに、近年は分火してはならないという規定が出来て一つの聖火が一筆書きで回る形になる。また、アテネから到着後百日以内で回って聖火台に点火することになるためどういうコースをとるか非常に難しくなっている旨の情報提供を行い今後の誘致活動の参考にしてもらうことにした。 2 ひとめぼれスタジアム宮城(宮城郡利府町) ひとめぼれスタジアム宮城では、公益財団法人宮城県スポーツ振興財団から説明を受け、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックと震災復興の取り組みについて調査した。 当施設は、新世紀・みやぎ国体の主会場として供用開始されてから十四年が経過し、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会の年に節目の二十周年を迎えるが、施設の経年劣化が進んでいるため施設の総点検と改修が必要となっている。さらに、オリンピックサッカー競技開催に向け、照明施設や大型映像装置及び芝生等について、組織委員会からまだ施設の基準が示されていないが、少なくとも公益財団法人日本サッカー協会のスタジアム標準に基づく改修整備が必要と思われる。緊急性を要するものについては、施設所有者である県に予算追加を要請したり自ら捻出したりしながら利用者に迷惑がかからないよう適切な施設運営に努めていると説明があった。 また、交通アクセスの課題については、昨年のサッカー日本代表戦や五万人規模のコンサートにおいて、シャトルバスの運行やパークアンドライド、ホームページでの広報、誘導員の配置や誘導看板の設置、ボランティアの協力などソフト面の対策を講じて一定の成果を収めたが、主催者及び利用者に過大の負担をかけていることから、今後、比較的短期間に実現可能性が高いと考えられる総合公園と既存道路を結ぶ出入り口の拡幅改良及び新設について施設所有者である県と協議を予定しているほか、一般道路と高速道路及び鉄道軌道を含めた総合的なネットワーク整備などハード面の改善も必要との認識が示された。 このほか、東京オリンピックサッカー競技開催に係る大会運営等の諸課題については、これまでに開催された新世紀・みやぎ国体や二〇〇二FIFAワールドカップサッカー同様、県と大会組織委員会初め関係機関が連携をとりながら数年前から専門の組織を整備して準備が進められるものと理解しているが、指定管理者としての準備をしっかり進めていきたい旨の話もあった。 3 アイスリンク仙台(仙台市泉区) アイスリンク仙台においては、施設経営と競技人口拡大の取り組みについて調査した。 当施設は、平成十八年に荒川静香選手が金メダルを獲得したときに閉鎖状態だったが、県と仙台市の働きかけに応える形で、平成十九年にオープンし現在に至っている。東北では唯一の通年リンクであり、東日本大震災では営業できない期間もあったが、最近一年間の利用者数は前年比約一万人増の六万人を超え、特に羽生結弦選手が金メダルを獲得して以降の今年三月期には前年比二倍から三倍の入場者があった。特に、他のリンクが氷を落とす夏場は、岩手・青森からの選手の利用もあって大変混み合う。このような中で、運営には選手の利用のみならず一般市民にも親しみやすい利用を心がけ、より多くの人にスケートへ関心を持ってもらえるように日々さまざまなサービス提供するとともに、選手と一般利用者と施設管理者が三位一体となったバランスのよい運営をしているとの説明があった。 競技人口拡大の取り組みとしては、未就学児から大人まで、クラス分けのスケート教室を開講してまずは親しんで楽しんでもらうということをメインにし、その上で将来競技者に進んで行きたいという意欲のある子や素質に恵まれた子を発掘し、県内のスケート競技団体に紹介するというシステムをとっている。今年度は、羽生結弦選手の金メダル効果もあって、すべての教室で定員をオーバーしている状況、今後は、フィギュアスケート以外でもアイスホッケー、スピードスケート、カーリングの利用でもこうした取り組みをアレンジしながら、継続した運営をしようと考えているとのことであった。五 総括・提言 これらの調査結果を踏まえ、本委員会はスポーツ振興に関する諸施策について次のとおり取りまとめた。 スポーツを通して活力と絆のあるみやぎを創ろうを理念とし、県民一人ひとりがさまざまな形でスポーツを楽しみ、家族や地域社会が強い絆でつながり、東日本大震災を乗り越え、活力に満ちた幸福で豊かなみやぎを目指す姿として平成二十五年三月に策定されている「宮城県スポーツ推進計画」の実効ある推進のため、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催のこの機会を前向きにとらえ、計画の諸施策や施設整備等を時宜を逸することなく、着実かつ強力に展開していくことが求められる。 国立競技場の聖火台については、調査後の九月三十日になって、新国立競技場が完成するまでの間、震災からの復興のシンボルとして石巻市に無償で貸し出される旨の覚書が独立行政法人日本スポーツ振興センターと石巻市との間で交わされ、誘致活動に一定の成果がみられたが、今後、取り組みを強化すべき施策は次のとおりである。 1 ひとめぼれスタジアム宮城(宮城スタジアム)でサッカー競技の試合を開催すること及び聖火リレーの出発地を宮城県内とすることの決定を確実なものとするための手立てを講ずるとともに、それが決定し実現した場合には、震災から復興した我が県の姿を人類共通の文化であるスポーツを通じて世界へ発信し、世界中から寄せられた支援に対する謝意を表する機会づくりを積極的に行っていくこと。 2 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの各国代表選手の事前合宿地やラグビーワールドカップ二〇一九出場国のキャンプ地としての要件等の情報を早期に入手するとともに、県内誘致や食と観光に関するPR、各種施策を実施していくことについて、県内市町村や関係機関、関係団体等と緊密な連携をとりながら誘致を実現させ、競技大会開催時における誘致実現後の経済効果が波及するよう努めること。また、スポーツ観光の推進とスポーツ大会の誘致を促進するため、スポーツコミッションの設置実現について前向きに検討すること。 3 オリンピック・パラリンピック等国際大会の開催を契機としたスポーツへの関心の高まりを背景に、本県からもメダリストを輩出するようジュニア期からの一貫した強化を図るとともに、障害者も含めた競技力向上に向けた指導者の育成と支援について、国立スポーツ科学センターや県内大学の研究機関と連携を強化するなど、体制を整備していくこと。 4 二〇二〇年東京オリンピック競技大会でサッカー競技の実施が予定されているひとめぼれスタジアム宮城(宮城スタジアム)の大会実施に必要な設備等の設置はもとより、経年劣化している設備等で利用者の利便に支障が出るものについて早急な手立てを講ずること。また、多くの集客が見込まれる国際大会やコンサート開催時の渋滞緩和対策として、グランディ・21と既存道路を結ぶ出入り口の改良及び新設等必要な対策を早期に行うとともに、一般道路と高速道路及び鉄道軌道を含めた総合的なネットワークの整備について関係先と協議し課題解決に努めること。 5 スポーツの持つ多様な効果を活用し、子どもから高齢者まで健康で生きがいの持てる社会を構築できるよう生涯にわたるスポーツ活動をさらに推進するとともに、県内各自治体及び関係団体等が進めるスポーツを活用した「まちづくり」や「地域づくり」に対し、さらなる支援を行うこと。 6 県営及び市町村体育施設の老朽化が進んでいるほか東日本大震災の影響でスポーツ施設や運動スペースが不足していることから、練習や大会開催のための施設・グラウンド等について、東北電力名取スポーツパークの再開も含め、その確保・充実を図り、スポーツ活動を支える環境づくりに配慮すること。また、フィギュアスケートやスピードスケート、アイスホッケーの競技大会の開催が可能な常設のスケートリンク整備に向けて、財政負担の伴わない整備手法を研究するなど検討すること。 以上、これらの提言が今後の関係施策に十分反映されることを期待して、報告とする。 平成二十六年十一月二十日 スポーツ振興調査特別委員長 小野 隆 宮城県議会議長 安藤俊威殿……………………………………………………………………………………………
○議長(安藤俊威君) これより質疑に入ります。 委員長報告に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。-----------------------------------
△大震災復旧・復興対策調査特別委員会中間報告
○議長(安藤俊威君) 日程第百四十八、大震災復旧・復興対策調査特別委員会中間報告を議題といたします。 大震災復旧・復興対策調査特別委員長から、これまでの調査結果についての中間報告の申し出がありますので、許します。大震災復旧・復興対策調査特別委員長、五十二番畠山和純君。 〔五十二番 畠山和純君登壇〕
◆五十二番(畠山和純君) 大震災復旧・復興対策調査特別委員会のこれまでの調査活動の経過について御報告を申し上げます。 本委員会は、東日本大震災からの復旧・復興対策について、県議会として一元化を図り、被災地域や県民生活の再生に向けた活動策について調査・検討するため、平成二十三年十二月二十一日に設置され、調査活動を継続してまいりました。 付議事件、東日本大震災からの復旧・復興の総合的な対策及び活動に関する諸施策についてを受け、特に津波による甚大な被害をこうむった沿岸被災地域を中心に、復旧・復興に係る課題について重点的に調査を行ったほか、東京電力福島第一原子力発電所事故に起因する、県内産業における風評被害の実態及び放射性物質汚染廃棄物への対応について精力的に調査を実施してまいりました。また、これらの調査結果を取りまとめ、現状の課題の解消に資するべく、意見交換や要望活動を通じた国等への働きかけを重点的に行ってまいりました。 その結果につきましては、お手元に配布の中間報告書のとおりでございますが、特別委員会として、引き続き積極的な調査活動により、被災地が抱える課題の把握に努めるものとし、また、県議会として、課題の解消に向け、国等への働きかけを継続し、本県の震災からの早期の復旧・復興に資するべく全力を傾注するものといたします。 以上、今後の特別委員会における被災地に根差したより効果的な調査活動を期して報告といたします。…………………………………………………………………………………………… 大震災復旧・復興対策調査特別委員会中間報告書 大震災復旧・復興対策調査特別委員会の調査・検討の状況について、これまでの経過を報告する。 本委員会は、東日本大震災からの復旧・復興に関する諸施策について調査・検討するため、平成二十三年十二月二十一日に設置され、付議事件「東日本大震災からの復旧・復興の総合的な対策及び活動に関する諸施策について」を受け、調査活動を継続してきた。直近の中間報告を行った、平成二十五年十一月二十二日から現在に至るまでの調査活動の経過については、次のとおりである。一 はじめに 本委員会は、平成二十四年十一月二十二日に設置要綱を改正して以降、活動の方針として、震災からの復旧・復興に係る諸課題について、県内市町村や関係団体等を対象とした調査活動により実態把握に努め、調査結果をもとに、課題の解消に資するべく、国等への要望活動を重点的に行う旨を決定し、委員十五人の体制にて調査活動を実施してきた。直近の中間報告を行った、平成二十五年十一月二十二日以降も、右の活動方針を承継し、調査活動を継続している。二 活動内容 1 委員会の開催 本委員会は、活動方針に則し、調査活動に関する協議、検討を行うため、計七回にわたり委員会を開催した。このうち主なものについて、次のとおりである。 (一)調査活動についての検討及び実施決定 平成二十五年十二月十八日に開催した委員会において、以後の調査活動についての検討を行い、前年に引き続き、特に沿岸被災地域が抱える震災からの復旧・復興に係る課題について調査するため、県内調査として沿岸市町議会を訪問し、意見交換を実施する旨を決定した。また、東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、「原発事故」という。)に起因する県内風評被害の状況について、引き続き本委員会において重点的に調査に当たることを決定した。さらに、県内で大きな問題となっている、放射性物質汚染廃棄物への対応に関し、委員会として調査に当たる旨を決定した。 平成二十六年二月十日に開催した委員会においては、沿岸市町を対象に実施した県内調査により把握した震災からの復旧・復興に係る諸課題について、調査結果として取りまとめた。さらに、これらの諸課題について、被災地の現状として国に伝えるとともに、対応状況を確認し、課題の解消に向けた国への働きかけを行うべく、前年に引き続き、主要な課題をテーマとして設定し、宮城復興局との意見交換を実施する旨を決定した。また、原発事故に起因する県内風評被害に関する調査について、前年に引き続き、生産組合等の団体を対象とした調査を実施することを決定した。併せて、東京電力株式会社との意見交換(要請活動と合わせて実施)、長野県松本市長との意見交換を実施するとともに、首都圏における大規模災害時の帰宅困難者への対応等を把握するため、県外調査を実施することを決定した。 なお、県外調査については、平成二十六年四月十四日に開催した委員会において、調査先の詳細や行程等について協議した。 平成二十六年十月八日に開催した委員会においては、本年九月に復興庁長島忠美副大臣が新たに宮城県担当として就任したことを受け、現状を国に伝えるとともに、認識を共有するべく、県議会として本年七月十一日に復興庁等に提出した要望事項をテーマに設定し、宮城復興局との意見交換を実施する旨を決定した。 (二)要望活動の実施決定及び要望項目の検討 平成二十六年五月十五日に開催した委員会において、本県産農林水産物の風評被害に係る実態調査として、生産組合等三者を招致し実施した参考人意見聴取、及び風評被害に係る損害賠償の進捗状況、福島第一原子力発電所における放射能汚染水への対応状況を把握するため、東京電力株式会社を招致して実施した参考人意見聴取を踏まえ、調査結果を取りまとめるとともに、県内の風評被害に係る被害者の救済及び風評被害の早期払拭に資するべく、東京電力株式会社福島復興本社に対し要請活動を実施することを決定した。また、要請事項について、風評被害に係る迅速かつ十分な損害賠償の実施、原発事故の早期完全収束の二点を柱に要請項目を決定した。 平成二十六年六月二十六日に開催した委員会においては、これまで本委員会において実施してきた多岐にわたる調査活動の結果を踏まえ、東日本大震災からの復旧・復興に係る現状の課題の解消に資するべく、復興庁等に対する要望活動を実施する旨を決定した。また、要望内容について協議、検討し、重大かつ喫緊の課題十項目を取りまとめ、要望することを決定した。 (三)執行部概要説明の聴取 平成二十六年二月十日に委員会を開催し、平成二十四年度で終了した被災者の医療費等窓口負担金免除の再開の動きについて、保健福祉部より説明を聴取した。 市町村の国民健康保険(以下、「国保」という。)における窓口負担金の免除については、平成二十五年十二月に国から市町村国保に対する財政支援維持・拡充策が示されたが、平成二十六年一月下旬に本委員会が実施した沿岸五市町を対象とした県内調査において、市町議会より、被災者の一部負担金免除に係る県内市町村の対応について、県の調整、支援を求める旨の意見が多く寄せられた。 保健福祉部の説明によると、国の支援拡充の概要は、一、医療費増が著しい被災地の市町村国保への財政支援を拡充する、二、収入減が著しい被災地の市町村国保に対する財政支援を実施するという内容であり、平成二十五年度から平成二十七年度までの三年間の措置との通知があったとのことであった。この点、県からは、平成二十六年一月八日に開催された市町村国保主管課長会議において、一、県議会・県の要望活動があった結果として新たな支援策が得られたこと、二、国会での質疑や請願採択の趣旨を踏まえた要望活動など、国の支援拡充に係る経緯やその内容、三、国から市町村に直接支援されるものであることから、活用については市町村の判断となること、四、国の通知は国保財政を支援する文面となっているが、県の意向としては被災者支援の検討も含めた有効活用を願う旨、伝達した。これを受け、平成二十六年一月二十九日付けで、市長会、町村会の連名により、国保、後期高齢者医療制度、介護保険の一部負担金等の減免措置について、対象者を限定しない形で免除再開するための県の一定の財政支援、また、免除再開を検討するに際し、対象者の限定等を行う場合、市町村だけでは判断できないため、県での調整を求める旨の要望がなされた。これに対し県からは、翌一月三十日付けで、対象者を真に支援が必要な方とすれば、今回の国の追加的財政支援により、県全体として必要額は確保されていると認識しており、県の財政支援は困難である旨、国保については、所得の程度等対象者を限定しても市町村間に財源の格差が生じた場合に、県の調整交付金を活用した調整を検討する旨回答した。市町村の動きとしては、仙台市及び石巻市、気仙沼市、東松島市、南三陸町、女川町の北部沿岸五市町においては、追加支援を活用し、対象者を限定するなどして、国保に係る一部負担金免除の再開を目指すとの意向が表明されており、市長会として統一的な基準を調整し、町村会についても足並みを揃えたいとの意向とのことであった。また、後期高齢者医療制度については広域連合において前向きに検討しており、介護保険については、各自治体においてそれぞれ検討を行っていくとのことであった。 以上の説明と、本委員会の県内調査において沿岸市町議会から寄せられた意見を踏まえ、平成二十六年二月二十日、県議会として、以下の三点について、保健福祉部に対し口頭による申し入れを行った。 一、県内全市町村の国保において、医療費の一部負担金免除措置が確実に実施されるよう、調整交付金による市町村間の財源格差の是正をはじめとする必要な支援策を確実に講じること。 二、県内市町村の国保においては、恒常的に厳しい財政状況の中、医療費の一部負担金免除措置の実施に向け、前向きに調整を進めているものであり、今後とも市町村国保財政の動向を注視すること。 三、後期高齢者医療広域連合においては、国からの追加的な財政支援が示されていないにも関わらず、医療費の一部負担金免除措置の実施について、前向きに検討しているところであり、市町村や広域連合との調整、必要に応じた財政支援の検討など、当該措置の実施に向け、必要な手立てを講じること。 2 県内調査 本委員会は当初の活動方針に則し、前年に引き続き、被災地域における震災からの復旧・復興に係る課題、及び県内で大きな問題となっている、放射性物質汚染廃棄物への対応状況について調査するため、平成二十六年一月二十二日、二十三日、二十八日の三日間にわたり、計七市町を対象に県内調査を実施した。その実施状況については、次のとおりである。 ・ 一月二十二日 東松島市、気仙沼市 ・ 一月二十三日 南三陸町、石巻市、登米市 ・ 一月二十八日 女川町、蔵王町 沿岸市町における震災からの復旧・復興に係る課題については、津波により特に甚大な被害を被った沿岸五市町(東松島市、気仙沼市、南三陸町、石巻市、女川町)を対象に調査を実施し、放射性物質汚染廃棄物への対応については、汚染稲わらを中心に大量の汚染廃棄物の抱える登米市、農林業系廃棄物に関し、処理の推進に向け独自の取り組みを行っている蔵王町を対象に調査を実施した。 沿岸五市町の調査においては、各市町の震災復興担当部局より、震災からの復旧・復興の進捗状況及び現状の課題について、概要説明を聴取したのち、各市町議会との意見交換を実施した。その主なものとして、復興まちづくりに関連し、防災集団移転促進事業の移転跡地の活用や震災により地盤沈下した土地の嵩上げに係る現行制度上の制約に苦慮している旨の意見が寄せられたほか、応急仮設住宅の供与期間の延長に伴うプレハブ仮設住宅の集約化など、入居者の責めによらない応急仮設住宅間の転居を要する場合に、移転費用の支援を求める意見が多く出された。東日本大震災復興交付金制度による各種事業については、平成二十七年度までとされている適用期間を延長するとともに、市町の復興まちづくりの実態に即した柔軟な制度運用を求める旨の意見が出された。また、膨大な復旧・復興事業を迅速に進めるため、不足する自治体職員の確保について、国の支援を求める旨の意見が多く寄せられた。 被災市町における産業再生については、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業(以下、「グループ補助金」という。)に関し、用地等基盤整備の遅れを勘案し、制度を継続するとともに、採択済みの補助金については、県が基金化し管理することを可能とするなど、被災地の実態に即した柔軟な対応を可能とするよう求める意見が出された。 市町村国保における医療費の一部負担金免除については、平成二十五年十二月に国から市町村国保に対する財政支援維持・拡充策が示されたことを受け、免除措置の再開に係る県内市町村の対応に差が生じないよう、県による調整、支援を求める旨の意見が多く寄せられた。 インフラの復旧、整備に関しては、被災したJR路線について、早期復旧のため、被災市町のまちづくりと一体となった復旧に関し、国によるJR東日本への支援を求める意見のほか、津波襲来時に沿岸部から内陸に円滑に退避するための避難道路について、整備に向けて国の支援を求める旨の意見が多く寄せられた。 以上のとおり、沿岸被災地においては、発災から三年近くが経過してなお、復旧・復興に係る様々な課題が山積しており、また時間の経過とともに、新たな課題が出現し、市町において対応を求められる窮状が窺えた。本委員会は、沿岸市町から寄せられた意見を調査結果として取りまとめ、これをもとに現状の課題の解消に資するべく、以後国等への働きかけを重点的に行うこととした。 登米市においては、放射性物質汚染廃棄物への対応について、市産業経済部より説明を聴取するとともに、汚染稲わらの保管庫を視察した。 指定廃棄物(汚染稲わら)について、登米市では、本県における発生量約四千八百トンの半分に当たる約二千二百三十五トンを抱えている。汚染稲わらについては、健康被害に対する不安の解消と誤給与防止のため、集落説明会により理解を得られた地域については、一時保管庫を設置しての保管に取り組んでおり、一部理解を得られなかった地域については、やむを得ず農家の個別保管としている。保管状況については、集合保管として市内十五箇所に約二千四十一トン、個別保管として九箇所に約百九十四トンとなっている。一時保管については、国の処理期間を見据え、期間を二年とし集落等への説明を行ってきたが、最終処分場設置の遅延により、期間を延長せざるを得ない状況となっており、環境省、宮城県同席のもと、保管期間延長に係る説明会を開催している。保管期間が明確ではない中での期間の延長により、永久保管に繋がりかねないと危惧する意見も多く、地域住民に不安が広がっており、市においては、国に対し最終処分場設置に係る新たな工程表を早期に公表するよう要請しているとのことであった。 一般廃棄物のうち汚染牧草について、市内では約二千七百四十八トンを抱えているが、汚染稲わらの一時保管庫に加えて汚染牧草の保管庫用地を確保することが難しく、農家の畜舎敷地や草地の一角に保管しており、ラップの劣化や牧草の収穫による新たな保管場所の確保に苦慮しているとのことであった。市においては、保管に係る農家の負担を軽減すべく、市単独事業として、保管牧草の再ラップ、新たな保管場所への運搬、被覆シートの配付による支援を実施している。事業実施前の調査において、保管牧草を農地に還元した農家もあり、事業量は五十七戸、千八百四十三トンを見込んでいる。汚染堆肥については、市内三箇所の有機センターと畜産農家五十一戸で約三千三百三十三トンを保管している。畜産農家においては、他者への譲渡が不能であるため、自作地に還元しており、有機センターにおいては、フレコンバックに詰め、処理方法が決定するまで敷地内で保管することとしている。このほか、汚染ほだ木について、約三十万本(二千六百五十九トン)を一般廃棄物として抱えており、生産者四人が十三万六千本をほだ場から撤去し、周辺に集積、仮置きしているほかは、依然ほだ場に残されている。 これらについては、いずれも放射性物質汚染対処特措法において、一般廃棄物として市町村等が処理することとされているが、既存施設における一般廃棄物との混焼は、長期の処理期間を要するとともに汚染焼却灰を増大するなど効率的でなく、また、施設周辺の住民理解を得ることも難しいため、実施の目処が立っていない。このため、市においては、これらの一般廃棄物について、国が設置する最終処分場において、指定廃棄物と一体的な処理を可能とするよう要望しているとのことであった。 蔵王町においては、放射性物質汚染廃棄物への対応として、町及び蔵王町放射性物質汚染物処理対策協議会の取り組みの状況について、町担当課より説明を聴取するとともに、汚染牧草及び汚染ほだ木の保管場所を視察した。 蔵王町における主な農林業系の一般廃棄物は、汚染牧草が約千百十一トン、汚染ほだ木が約十一万五千本(約五百七十五トン)の保管量となっている。同町においても、登米市と同様に、汚染牧草、汚染ほだ木などの一般廃棄物について、有効な具体的処理方法が定まらないため、一向に処理が進まず、やむを得ず農家の敷地等に再ラップ等を行った上で一時保管されている。一般ごみとの混焼処理については、仙南地域広域行政事務組合の既設の焼却場では、混焼処理を行う余裕がないことや処分場の埋設量の問題から、実施が難しいとの結論に至っているとのことであった。 このような状況に対処すべく、蔵王町においては、早急に有効な処理方法を模索、検証するための実証試験の実施と結果の公開、処理の推進を目的に、町及び汚染廃棄物保有団体並びに生産者、宮城県内の大学と地域の農業協同組合や専門農協、学識経験者、計十一人の委員で組織する蔵王町放射性物質汚染物処理対策協議会を平成二十五年八月に設立した。実証試験は、協議会の構成員である宮城大学食産業学部、富樫千之教授の協力を得て、放射能汚染物を炭化炉で無汚染の副資材と混焼し炭化することにより、セシウムを炭に吸着できるとの試験結果が既にある炭化事業を採用し、ランニングコストの試算、セシウムの炭への吸着率、排気の測定を目的に実施された。 実証試験の結果については、汚染牧草と無汚染もみ殻との混焼による炭化(炭化温度が四百度から五百度の場合)により、九十一パーセントから九十九パーセントのセシウムが炭化物に吸着されたことが確認された。人件費及びイニシャルコストを除く炭化処理費用のランニングコストについては、一キログラム当たり約五十八円(一立方メートルあたり約一万千六百七十四円)であった。また、炭化により、汚染廃棄物の減容化、減量化が可能であることが確認され、炭化時の排ガスについても、セシウム濃度は基準値を下回っており、一定の安全性が確認された。以上の試験結果から、同協議会においては、汚染牧草等の処理に炭化装置を利用することは、セシウム濃度のコントロールと空中飛散を含めた安全性の観点から、有意義であると結論づけている。 同協議会は、右の実験結果をもとに、濃度調整した炭化物を道路や防波堤等の盛土材に活用することにより、汚染廃棄物の処理を進めるべく、国に対し国庫補助対象事業(農林業系廃棄物の処理加速化事業等)としての採択を提案しているが、最終処分先が不明との理由から、補助事業による実施が難しい状況となっているとのことであった。 3 意見交換会 県内沿岸五市町を対象に実施した県内調査を踏まえ、震災からの復旧・復興に係る課題について、現状を国に伝えるとともに、国の対応状況等を確認するべく、平成二十六年四月十四日に復興庁宮城復興局を招き意見交換会を開催した。当日は、谷公一復興副大臣をはじめ宮城復興局の職員が出席した。その概要は、以下のとおりである。 復興まちづくりに関する課題としては、震災により地盤沈下した土地の嵩上げに関し、対応する国の支援メニューが限られている点、また、既存の支援メニューについて、制度上の各種制約により活用が難しくなっている点を取り上げ、制度の拡充及び柔軟な運用を求めた。 生活・住宅再建支援に係る課題としては、応急仮設住宅の供与期間の延長に伴うプレハブ仮設住宅の集約化など、入居者の責めによらない応急仮設住宅間の転居を要する場合、入居者の移転費用について、国による支援を求めたほか、津波被害の特殊性に鑑み、被災者生活再建支援制度による支援を拡充するよう求めた。 復旧・復興に係る財政支援・制度運用に関する課題としては、東日本大震災復興交付金について、平成二十八年度以降の制度継続を求めるとともに、被災地の実態に即した各種事業の運用の柔軟化、効果促進事業の一括配分の活用に係る自治体の自由度の一層の向上を求めた。 沿岸自治体の職員の不足に関しては、膨大な復旧・復興事業の円滑な執行のため、事業に従事する市町職員を確保するための国による継続的な支援を求めた。 産業再生に関する課題としては、グループ補助金に関し、基盤整備の遅れに鑑みた制度継続の早期明示及びグループの組成等に係る要件の緩和を求めるとともに、安定的な事業実施のため、採択済みの補助金について、県が基金化し管理することを可能とするなどの柔軟な対応を求めた。 インフラ等の復旧・整備に関する課題としては、沿岸市町より特に強い要望があった、東日本大震災復興交付金を活用した避難道路の整備の推進、又は活用が難しい場合の社会資本整備総合交付金事業による確実な対応を求めた。また、被災JR路線について、早期復旧のため、被災市町のまちづくりと一体となった復旧に関し、国によるJR東日本への支援を求めた。 復旧・復興事業の施工確保に関する課題としては、入札不調の要因となっている人件費や資材価格高騰への十分な対策を確実に講じるよう求めた。 平成二十六年五月十五日に岩手県議会東日本大震災津波復興特別委員会より、委員長ほか委員八人が県外調査として来県した際に、両県の特別委員会が一堂に会し意見交換を実施した。両県の特別委員長より、東日本大震災からの復旧・復興に係る両県議会の取り組みの状況について説明した後、委員間で意見を交わした。その主なものとして、放射性物質汚染廃棄物の処理状況や東京電力による原子力損害賠償の進捗状況、被災JR路線の鉄路による早期復旧に向けた国やJR東日本への働きかけ、震災により地盤沈下した土地の嵩上げに係る国の支援事業活用などの対応状況、集中復興期間の延長と特例的な財政支援を国に求めるに当たっての所要額の精査などについて、意見が交わされた。 平成二十六年九月の内閣改造に伴い、長島忠美復興副大臣が宮城県担当として新たに就任したことを受け、本県の現状等を改めて国に伝えるとともに認識を共有すべく、平成二十六年十月二十二日に同副大臣同席のもと、復興庁宮城復興局との意見交換会を開催した。意見交換については、同年七月十一日に県議会として復興庁等に提出した要望書をもとに、各要望事項を対象項目として設定し、意見を交わした。このうち、特に重要な事項として、復旧・復興関連予算の確保に関し、集中復興期間の延長と特例的な財政支援の継続、東日本大震災復興交付金事業の継続及び弾力的な運用、被災した鉄道各線の早期復旧への支援、被災地の産業再生に対する支援、原発事故への対応の五点について、本県の現状を伝えるとともに、実態に即した十分な対策を講じるよう求めた。 4 参考人意見聴取 (一)環境省 本県において大きな課題となっている、放射性物質汚染廃棄物への対応に関し、現況及び処分に向けた国の取り組みの状況について確認するため、平成二十六年一月三十日に環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長を招致し、参考人意見聴取を実施した。その概要のうち主なものについて、以下のとおりである。 原発事故により大気中に拡散した放射性物質については、基本的にはほとんどが放射性セシウムとされており、放射性物質汚染廃棄物のうち、一キログラムあたり八千ベクレル(以下、「八千ベクレル」という。)を超える指定廃棄物については、当該指定廃棄物が排出された都道府県内において環境省が処理することとされている。本県においては、平成二十五年八月三十一日現在で、稲わらなどの農林業系副産物や浄水発生土(上水)を中心に、約三千三百トン弱の汚染廃棄物が指定廃棄物として指定されており、未指定の廃棄物千七百トン弱と合わせて、概ね五千トン程度が保管されているとのことであった。保管状況については、地域により状況が異なるが、一般廃棄物の焼却灰や下水汚泥、農林業系副産物、上水発生土などについて、建物の中で保管したり、シートで被覆し水との接触や流出を防ぐなど、環境省が策定したガイドラインに則して保管されているとのことであった。 指定廃棄物の今後の処理方針としては、宮城県、栃木県、茨城県、千葉県、群馬県において保管が逼迫していることから、国が各県に必要な処分場を集約して設置する方針を立てている。そのプロセスとして、市町村長会議の開催を通じて共通理解を醸成するほか、地域の実情に応じて考慮すべき具体的な事項についても、選定作業において十分に配慮するとのことであった。また、施設の安全性の確保や候補地の選定手順、評価項目・評価基準について、専門家で構成される有識者会議において評価を実施し、市町村長会議で報告の上、意見を集約しながら候補地の選定を進めるとのことであった。本県においては、これまで五回にわたり市町村長会議が開催され、本年一月二十日には詳細調査の候補地として、栗原市深山嶽、大和町下原、加美町田代岳の三カ所が示されたところであり、以後選定の経緯などについて説明していくとのことであった。 最終処分場については、厚さ三十五センチメートルのコンクリート構造による半地下方式の施設とし、焼却により減容化した指定廃棄物などを埋めるが、多重の安全策を講じることが肝要との専門家の指摘により、指定廃棄物をフレコンバックに入れ、土壌で覆うとともに、その外側を樹脂等でシールされたコンクリート壁で囲い、処分場への水の浸入を防ぐほか、外側に管理点検廊を設け、さらにその外側に樹脂等でシールされたコンクリート壁をつくり、雨水等を完全に遮断する。監視期間経過後は、管理点検廊をセシウムを吸着するベントナイト混合土で充填し、万が一汚染物質が漏洩した場合に備えるとのことであった。 モニタリングについては、工事中はもとより、埋め立て終了後長期にわたり地下水、敷地境界等の空間線量率を測定し、埋め立て終了後は累積追加線量が年間十マイクロシーベルトを超えないよう管理する。計算上は、十分な遮蔽を行うことにより、実際の追加被ばく線量はバックグラウンドと比べても十分に小さな値となるものと考えられているとのことであった。 指定廃棄物の焼却施設における排ガス処理については、農林業系副産物は腐敗するため、焼却処理により減容化してから埋め立てることとなるが、放射性セシウムは比較的気化しやすいため、排ガス処理として、冷却によりばい塵に吸着し、バグフィルターを設置することでほぼ完全に除去するとのことであった。 最終処分場の県内候補地については、自然災害のおそれがある地域や自然環境の保全、歴史・名勝・天然記念物の保護に影響を及ぼすおそれがある地域を除き、さらに、地域特性に配慮すべき事項として、年間入込客数五十万人以上の観光地を除外した上、必要面積(二・五ヘクタール)を十分に確保できるなだらかな地形の土地を抽出し、さらには、生活空間等の近接状況、水源との近接状況、自然度から評価し、先に提示した三カ所となったとのことであった。 八千ベクレル以下の汚染廃棄物のうち、特に農林業系廃棄物については、従前のような飼料や堆肥としての循環利用が困難となったために発生したものであり、廃棄物処理法に基づき一般廃棄物として市町村等が処理することとされているが、処理が進捗せず、やむを得ず農家の敷地等に一時保管され問題化しているほか、腐敗や火災のおそれがあり、処理そのものが困難となるおそれがあることから、市町村等による処理を促すため、農林業系廃棄物の処理加速化事業を実施している。当該事業においては、一般廃棄物である農林業系の廃棄物を処理する際に、国が当該費用の二分の一を補助することとし、地方負担となる残二分の一についても震災復興特別交付税により措置される。現在、岩手県、福島県、群馬県の十二市町において、約六千五百トンの焼却処理を今年度末までに実施する予定で事業を進めているとのことであった。八千ベクレル以下の農林業系廃棄物の処理については、岩手県一関市において放射性物質を含む可燃性廃棄物焼却実証事業を実施しており、八千ベクレルを超えるものを含む汚染牧草を、既存の焼却処理施設を活用し一般ごみと混焼処理している。排ガスについて、バグフィルターの出口及び煙突部で測定を行ったが、いずれのケースにおいても放射性セシウムは検出されておらず、焼却灰(飛灰)については、最大で約四千ベクレルであり、既存の管理型最終処分場において処分された。また、焼却施設及び最終処分場における空間線量率については、汚染牧草の処理開始前後において上昇は見られず、最終処分場における浸出水、放流水についても放射性セシウムは検出限界値以下であり、既存の廃棄物処理施設を用いて、八千ベクレルを超える汚染廃棄物であっても、その処理を行うことが可能であることが、確認されている。 (二)宮城大学食産業学部教授 富樫千之氏 放射性物質汚染廃棄物への対応については、平成二十六年一月二十八日に蔵王町での県内調査において、一般廃棄物である汚染牧草の処理促進に向けた独自の取り組みについて、説明を聴取したが、炭化処理に係る実証試験の概要、結果について改めて確認するため、平成二十六年一月三十一日に宮城大学食産業学部教授の富樫千之氏を委員会に招致し、参考人意見聴取を実施した。 実証試験は、汚染牧草を用い、連続炭化処理により、炭化物における放射性セシウム濃度の任意調整の可否、汚染牧草の減量、減容の可否、処理に際しての放射性セシウムの大気中への飛散の有無、汚染牧草の処理費用について確認することを目的としている。実験の流れとしては、汚染牧草をセシウムの沸点以下の四百度から五百度で炭化することにより、気化させず、大気中に飛散する条件を押さえ込むほか、汚染牧草単独で炭化処理することは湿度や含水率の兼ね合いから難しいため、もみ殻もしくは炭化もみ殻と混合することで作業効率を向上させ、炭化物の放射性セシウム濃度をコントロールしつつ炭化する。排出口から出てくる混合炭化物のセシウム濃度を計測し、投入した汚染牧草のセシウム濃度と比較することで、処理による放射性セシウムの大気中への移動、炉内への滞留の有無について類推することができる。 実験例としては、汚染牧草三十七・五キログラムについて、一キログラムあたり二千六十三ベクレルのセシウム濃度であり、投入前のセシウム総量は七万七千三百六十三ベクレルとなり、これを炭化もみ殻十二・五キログラムとともに炭化処理する。この場合、実験値から炭化処理により汚染牧草は六十六パーセント、炭化もみ殻は三十四パーセントの炭化減量が生じるため、混合炭化物が二十一キログラム発生し、放射性セシウムが全て混合炭化物に吸着された場合、混合炭化物の想定濃度は一キログラムあたり三千六百八十四ベクレルとなる。この想定に基づいて実証実験を行い二回測定したところ、一回目のデータとして三千六百八十五ベクレル、二回目のデータとして三千四百九ベクレルとなり、平均して九十六パーセント程度の放射性セシウムが混合炭化物に吸着されることが確認された。 また、投入する汚染牧草と炭化もみ殻の比率や炭化もみ殻の代わりに未炭化のもみ殻を投入するなど、条件を変えて検証実験を実施したが、いずれも計算上の想定セシウム濃度に対して九十一パーセントから九十六パーセントの実測値となり、混合炭化物のセシウム濃度を混合する材料により任意に調整することが可能であることが確認された。 さらに、減容について、汚染濃度の低い七十ベクレルの汚染牧草を用い、質量二百二十四キログラム、容量〇・九七四立方メートルについて、単体での炭化処理により、質量について八十五パーセント減の三十四・四キログラム、容量について四十七パーセント減の〇・五一三立方メートルに減じることができたが、計算上の想定セシウム濃度一キログラムあたり四百五十六ベクレルに対して、実測値は四百五十ベクレルとなり、九十九パーセントの放射性セシウムを炭化物に吸着することができた。 以上の実験結果から、汚染牧草の放射性セシウムについては、炭化処理により炭化物に封じ込め、質量、容積ともに減じることが可能であり、今後炭化利用できる可能性に加え、保管する場合にも保管容積を小さく抑えられ、減量によりハンドリングも容易になることが確認された。汚染牧草の炭化時の排気ガスについては、汚染濃度の低い牧草を用いており、大気汚染の専門業者に依頼して測定、分析しているが、基準値に照らして問題はないとの分析結果を得ているとのことであった。今回の実証試験においては、やや古い形式の炭化炉を用いており、炭化処理に係る費用については、試算の結果、一キログラムあたり約五十八円、一立方メートル当たりに換算すると約一万千六百七十四円となったが、新規に炭化装置を製造すれば作業能率の向上を期待でき、処理費用の圧縮が見込めるとのことであった。 右の取り組みについては、炭化により処理することは有用であると認められるが、排出される炭化物をどのように処理するか定まっておらず、この点が課題となっており、事業として進める場合、地域における合意形成を図っていく必要があるとのことであった。 (三)宮城県漁業協同組合、宮城県農業協同組合中央会、宮城県水産加工業協同組合連合会 原発事故に起因する風評被害については、平成二十四年十一月以降、本委員会において重点的に調査に当たることとしていたものであるが、収束が見通せない大変厳しい状況が続いている点に鑑み、平成二十五年十一月以降も引き続き本委員会において調査に当たることとした。県産農林水産物に係る風評被害の実態及び原子力損害賠償の状況について調査を行うため、平成二十六年四月二十五日に宮城県漁業協同組合、宮城県農業協同組合中央会、宮城県水産加工業協同組合連合会の三者を委員会に招致し、参考人意見聴取を実施した。聴取した意見の概要は次のとおりである。 本県水産物の風評被害について、宮城県漁業協同組合によると、原発事故後、溶融燃料の冷却のために発生した汚染水を数回にわたり海洋放出したことにより、水産物から放射性物質が検出されたことや、原子炉建屋から空中に拡散した放射性物質による影響が、消費者に対し、本県産品についての不安感を広く与えたことにより、被害が拡大したとのことであった。また、科学的な検証や十分な議論が尽くされないまま、平成二十四年四月に放射性セシウムの新たな基準値(一キログラム当たり百ベクレル)が設定されたこと、さらに福島第一原子力発電所における度重なる汚染水対応等の不手際が報道され、本県産品は危険であるとの認識が消費者に植え付けられ、量販店の過剰な反応と相俟って、深刻な消費停滞を余儀なくされている。漁業者が営漁再開に向け意欲を高めている中で、以上のような状況により生産者価格が下落しており、漁業経営が安定しない大変厳しい状況にあるとのことであった。 本県においては、これまで七魚種で放射性セシウムが検出され、このうち現在もスズキとクロダイの二魚種が出荷規制の対象となっているが、一方で、イサダや銀ザケなどは、放射性セシウムがほとんど検出されていないにもかかわらず、風評により売り上げが減少しており、東京電力との折衝により、それぞれ賠償を受けるに至っている。規制魚種となっていないイサダ、銀ザケを除く出荷規制などに伴う実損害額は、平成二十六年四月現在二十億二千八百十六万五千円となっているが、養殖のカキやワカメなどについては未賠償となっているため、賠償請求に向け、今後東京電力と折衝するとのことであり、漁協本部に三人の専属職員が配置され、実務を執っている。また、宮城県漁業協同組合においては、平成二十六年四月十四日現在、東京電力に対し約三十四億七千七百万円の賠償請求を行い、東京電力からは約三十三億八千九百万円の支払いを受けており、約九十七パーセントの支払率となっている。 水産物における風評被害の払拭に向けては、様々な魚種について毎日のように検査を実施し、結果を仲買人や消費者に向け発信しているが、風評が根強く、払拭するまでに至っていないとのことであった。国や東京電力などにおいては、本県産品の消費拡大に向け、食堂などでの本県産食材の活用が図られているほか、文部科学省においては、学校給食食材の選定に際し、風評の拡大に繋がる被災地産品活用の自粛を行わないよう周知しているとのことであった。宮城県漁業協同組合においても、風評被害の払拭、販路の回復に向け、試食会やイベントなどを精力的に開催しているが、報道機関等に取り上げられる機会が少なく、苦慮しているとのことであった。 福島第一原子力発電所における放射能汚染水への対応については、これまで度重なるトラブルに関し、東京電力に抗議するとともに、国及び東京電力に汚染水対策の徹底、風評被害の未然防止、賠償請求権の消滅時効に係る特例的な対応について要請しており、本年四月には、経済産業省及び東京電力に対し、放射能汚染水の海洋漏洩防止、新たな風評被害の未然防止、風評被害が発生した場合の早期収束と迅速な損害賠償の実施の三点について要望したとのことであった。 本県農畜産物の風評被害について、宮城県農業協同組合中央会によると、サンプリング検査の結果公表などにより、県内消費者における本県産品の買い控えについては沈静化の傾向が見られるが、一部の直売所などにおいては、売り上げの減少が続いているほか、関西方面においては、根強い風評により、依然として消費者において本県産品の購買を忌避する傾向が見られることであった。宮城県農業協同組合中央会では、本県農畜産物に対する消費者の不安を払拭するため、様々に取り組んでいるが、消費者の理解を思うように得られない状況にあるとのことであり、震災後の全国的な被災地応援ムードも下火になりつつある中で消費を拡大するためには、食品と放射能に関する正しい知識の涵養により、消費者理解の増進を図ることが重要であり、生産者はもとより、国、行政の継続的な取り組みが求められるとのことであった。また、県産品のピーアール及びリスクコミュニケーションのため、首都圏などを中心に、農産物フェア等を開催しており、この点、県の協力に期待しているとのことであった。 本県農畜産物の風評被害に係る損害賠償について、JAグループでは二十四団体で協議会を組織し、東京電力に対して賠償請求を行っているが、本年三月末時点で約三百八億円の請求に対し支払額が約二百二十九億円となり、請求比七十四・四パーセントの進捗で請求者延べ人数は五万八千人余りとなっている。請求額に対する賠償金支払率について、本県は他県と比して特に低い状況にあったが、一定程度の改善が見られ、前年と比して賠償が進捗しているとのことであった。 一方で、米の流通保管については、安全性を担保するため隔離保管した米が最終的には出荷制限に係る基準値を下回ったため、隔離保管に要した経費が賠償の対象とされていないほか、園芸(野菜、ブルーベリーなど)について、平成二十三年八月に原子力損害賠償紛争審査会により東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針(以下、「中間指針」という。)が発表される以前の損害であることを理由に賠償金が支払われていないとのことであった。また、証憑類の提出が困難であるために賠償金が支払われない事例が散見されるほか、請求から三カ月以内に賠償金を支払うとの取り決めが履行されないケースがあり、結果として品目により支払率にばらつきが生じているとのことであった。これまで、東京電力に対しては、誠意ある対応を求め、働きかけてきたが、実際には支払率が依然低い状況にあり、業界団体として、今後も粘り強く対応していくとのことであった。 本県水産加工業の風評被害について、施設・設備が復旧した企業において、売り上げに関し、震災前と比して四十パーセントから五十パーセント程度の減少が見られ、宮城県水産加工業協同組合連合会においては、この半分に当たる二十パーセントから二十五パーセントを風評によるものと推定し、風評による被害額を全体で約五百六十億円から七百億円程度と推計しているとのことであった。本県の風評被害については、前年一月の原子力損害賠償紛争審査会による中間指針の第三次追補により初めて賠償の対象とされたものであり、これにより事業者の救済が遅れたとのことであった。また、風評被害を避けるため、県内の漁港への水揚げを避ける動きもあり、原材料の仕入れが困難となり、水産加工業の経営は、いずれの地区においても厳しい状況となっているとのことであった。さらに、風評により製品の海外への輸出も難しい状況にあり、各港の流通業者も業績が落ち込んでいるとのことであった。 水産加工業の風評被害に係る損害賠償については、渡波地区、石巻地区、塩竈地区などにおいて、弁護士を介し東京電力との交渉を進めているが、実感として大きな進展がなく、大変厳しい状況と認識しているとのことであった。また、風評被害については、売り上げの減少等に関し、どこまでがその影響によるもので、実際にどの程度売り上げが落ちているか、明確な数字を把握することが難しいことから対応に苦慮しており、今後経営を立て直していく上での課題と認識しているとのことであった。 (四)東京電力株式会社 平成二十六年五月一日に東京電力株式会社新妻常正常務執行役ほか三人を委員会に招致し、原発事故に起因する損害賠償の進捗状況及び福島第一原子力発電所における放射能汚染水への対応等について、説明を聴取した。その概要は、次のとおりである。 東京電力においては、特別支援金援助に係る新・総合特別事業計画の認可により、政府による交付国債枠が五兆円から九兆円に増枠されたことなどを受け、一、最後の一人まで賠償貫徹、二、迅速かつきめ細やかな賠償の徹底、三、原子力損害賠償紛争解決センターから提示された和解仲介案の尊重の三つの誓いを掲げ、全社を挙げ損害賠償に取り組んでいるとのことであった。原子力損害賠償の全体像について、仮払いを含めた支払総額は、約三兆六千百四十一億円となっており、前年六月の参考人意見聴取における報告時(約二兆三千七百五億円)と比して三十四パーセント進捗した。宮城県における支払状況については、約四百八億円となっており、前年六月の参考人招致での報告時(約二百七十九億円)と比して、三十二パーセント進捗したとのことであった。原子力損害賠償の体制については、現在も社員約二千九百人を含む約一万人の体制で賠償を実施しており、引き続き賠償の進捗に即して、必要な体制を弾力的に整備していくとのことであった。東北補償相談センターは、平成二十三年十月一日に約四十人の体制でスタートしたが、現在は約百二十人の体制で福島県を除く東北五県を担当している。 JAグループ東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策宮城県協議会(以下、「JA協議会」という。)について、主な請求品目は、稲わら、牧草、肉牛、子牛、ほだ木、山菜類があり、当初支払が遅れているものがあったが、現在は全体で約七十四パーセントまで進捗しており、前年六月の報告時と比して十ポイント程度向上している。森林組合連合会については、主な請求品目は、原木しいたけ、きのこ原木等の出荷制限指示及び利用自粛要請に係る損害、汚染ほだ木等撤去集積事業に係る損害について、賠償を継続している。直売所からの請求では、出荷制限指示及び風評被害に係る損害として、手数料収入等の減収分を賠償しているほか、直売所を通じた個人生産者の出荷制限指示及び風評被害に係る損害についても賠償している。直売所からの請求においては、証憑類の確認が難しい状況にあるが、東北補償相談センターにおいて請求者のもとに足を運び、請求に際して補助を行っているとのことであった。個人生産者の請求については、山菜類、原木しいたけ等、出荷制限指示及び風評被害について、賠償している。 漁業協同組合への賠償については、出荷制限指示がなされた魚種の賠償を継続している。風評被害に係る損害賠償については、平成二十四、二十五年の養殖銀ザケ、イサダ、平成二十四年のメロウドに関し、損害を賠償しているほか、ワカメ、カキの養殖については、本年年明けに漁業協同組合と調整しており、個別品目ごとに賠償する方向で大筋合意する見込みである。遊漁船漁業者については、釣り客などの予約状況を踏まえ、平成二十三年十二月以降の遊漁船収入の減収分、あるいは釣り客からの要請により実施した検査の費用などを賠償している。内水面漁業協同組合については、平成二十四年四月以降、県内の各河川において、出荷制限指示もしくは採捕自粛要請が出されており、これに伴い、各河川の内水面漁業協同組合に対し、規制以降の釣り客の減少による遊漁券収入の減収分等を賠償している。水産加工・流通業者については、風評被害による減収分を従来から賠償しているが、中間指針には、五十パーセント以上の原材料について、国産品を用いなければ風評被害と認められない旨の記述があり、賠償請求に当たり事業者は苦慮していた。この点については、地元関係者等との協議の結果、一部の輸入魚を国産魚と同様に扱う新たな賠償の枠組みをつくり、本年三月、四月には、石巻、気仙沼、塩竈で説明会を行っており、賠償の進捗に向け取り組んでいるとのことであった。 観光業に係る賠償については、現在は毎月一、二件程度の請求を受けている状況であるが、引き続き丁寧に対応するとのことであった。地方公共団体への賠償については、当初より個人への賠償を優先してきたため、大分遅れている実態がある。現在のところ、平成二十四年度分までの請求を受け付けており、近々平成二十五年度分の請求も受け付けを開始することとし、関係自治体に案内しているとのことであった。中間指針第三次追補への対応について、説明会の場を設け、新たに賠償対象となった方々への説明、相談対応を実施しており、宮城県主催の説明会のほか、JA協議会、各漁業協同組合とも風評被害に関する協議を進めている。 東京電力としては、各請求者の業務の内容を把握するのに大変苦慮しているとのことであった。賠償を適切に行うには、各請求者の業務の内容を掘り下げて把握する必要があるが、業種が幅広く、対応する職員も経験がないため、内容を理解することが難しい面があるとのことで、現在は東北補償相談センター内に地域別、あるいは事業機能別にグループを分け、極力精通者を育成し対応している。また、証憑類の提出について、賠償金を公平に支払うためには不可欠であるが、一方で、請求者は、賠償請求を予定して証憑を保管しているわけではなく、時間の経過とともに散逸するケースが多く見られるとのことであり、請求手続の簡素化などに取り組んでいるが、一定の証憑の確認をせざるを得ず、現場では苦慮しているとのことであった。 福島第一原子力発電所における放射能汚染水への対応について、雨水を汚染源に近づけない対策として、雨どいの設置によりタンクの天板に溜まった雨水をコンクリート堰の外に導いている。また、建屋に流入する地下水の大部分は発電所敷地内に降った雨水であるため、地面を舗装し地下水の発生を防ぐ対策を講じることとしているとのことであった。 基準値を超過した雨水を外に漏らさないための対策としては、コンクリート堰の嵩上げ、構内排水路の暗渠化(土砂の流入防止)などの対策を講じているほか、排水路に放射能の連続監視モニターを設置し、排出先についても、これまで外洋へ行っていたものを、港湾内に変更する工事を進めている。 汚染水に係る抜本対策としては、「海洋流出の阻止」、「汚染水増加抑制・港湾流出の防止」、「原子炉建屋等への地下水流入の防止」の三つの対策を講じることとしている。海洋流出の阻止については、本年九月を目途に護岸への海側遮水壁の設置を完了することとしているとのことであった。汚染水の増加抑制・港湾流出防止については、陸側遮水壁(凍土方式)を設置することとしており、工事の準備を進めている。原子炉建屋等への地下水流入の防止については、事故前からある原子炉建屋周辺の井戸(サブドレン)を復旧し揚水することで、地下水の建屋への流入を直接抑制する対策を講じることとしており、工事を進めている。 汚染水に係る緊急対策としては、港湾への流出防止、汚染源除去、汚染水増加の抑制の三点について、順次実施している。港湾への流出防止対策としては、汚染エリア(建屋と護岸の間)の地盤改良により囲い込み(水ガラスを打って壁をつくる)、汚染地下水をくみ上げるとともに、雨水が浸透しないように地表面を舗装する対策を講じている。汚染源除去については、トレンチ内の高濃度汚染水を直接除去する対策であり、現場で工事を進めている。汚染水増加の抑制については、地下水バイパスによる対策であり、揚水した地下水の海洋への排水に当たっては、一時貯留タンクにて水質測定を実施し、排水の都度運用目標値(自主基準)未満であることを確認する。また、揚水井、一時貯留タンクについて、定期的により詳しい水質確認を実施することとしている。本年四月九日より、揚水井から水のくみ上げを行い、一時貯留タンクに保管している。貯留水について、測定を実施し、運用目標を満たすことを確認後に排水する予定である。 海域モニタリングの状況について、発電所港湾内のシルトフェンスの外側、港湾境界付近、周辺海域の水質に関しては、放射性物質濃度はほぼ検出限界値未満であり、汚染水の影響については、一ないし四の各号機護岸の前面(シルトフェンス内)に限定されている。モニタリング結果については、会社ホームページにて分かりやすくデータを示しているほか、原子力規制委員会のホームページにおいても、関係各所が実施したモニタリング結果を取りまとめ、公表している。 5 県外調査 (一)東京電力株式会社福島復興本社、東京湾臨海部基幹的広域防災拠点、長野県松本市、神奈川県 本委員会は、付議事件について調査に当たるため、平成二十六年五月二十七日から二十九日にかけて県外調査を実施した。その概要については、以下のとおりである。 (1) 東京電力株式会社福島復興本社 本委員会は、平成二十六年五月二十七日に東京電力株式会社福島復興本社に対し、風評被害に係る迅速かつ十分な損害賠償の実施及び原発事故の早期完全収束を求める要請書を県議会として提出し、当該要請の内容等について、福島復興本社石崎芳行代表出席のもと、引き続き本委員会の県外調査として意見交換を行った。その概要は、以下のとおりである。 石崎氏によると、本年四月一日には、廃炉推進カンパニーを立ち上げ、国と一体となり、汚染水への対応をはじめ廃炉作業に全力を尽くしているとのことであった。福島第一原子力発電所四号機においては、使用済み燃料千五百体中九百体のプールからの取り出しが既に完了し、年内には全ての取り出しが完了する予定であり、また、三号機のガレキの撤去もほぼ終了し、今後は一号機のガレキの撤去に着手する予定であり、いずれ三号機、二号機、一号機と使用済み燃料プールからの燃料取り出し及び溶融燃料の取り出し作業に入ることとなるとのことであった。 原発施設内での度重なるトラブルについては、その要因の一つとして、敷地内に高線量地域があり、作業時に全面マスクの装着を要するところがほとんどであるため、コミュニケーションをうまく図れない点が挙げられ、この作業環境の悪さがヒューマンエラーを招いてきた。現在、この点を改善するべく、敷地内の除染を急いでおり、除染が完了すると敷地の四分の三程度までは全面マスクを着用せずに作業できるようになることから、ヒューマンエラーが減るものと期待しているとのことであった。また、現場において作業員に温かい食事を提供できるよう、給食センターを設置するなど、様々な作業環境の改善を同時並行で進めているとのことであった。 廃炉については、長期の年数を要するものであり、また世界初となる作業が目白押しの厳しい状況であり、今後とも安全第一で作業を進めるとのことであった。 原子力損害賠償については、部分的に遅れているものがあり、請求者が満足を得られない部分がある点は十分承知しており、本年夏に定期異動に合わせて賠償業務に従事する職員を増やし、丁寧、親切な対応により、最後の一人まで賠償を貫徹するための体制を更に強化するとのことであった。また、個人への賠償を優先して進めた結果、団体や自治体への賠償が遅れているが、早期の賠償を可能とするよう、体制を整備しつつ取り組んでいくとのことであった。 (2) 東京湾臨海部基幹的広域防災拠点(有明の丘地区) 本県においては、東日本大震災の発災以降、国に対し、大規模災害発生時に東北エリアをカバーして現地の司令塔となる中核的な広域防災拠点の設置について、継続的に要望しているところであるが、国が整備した基幹的広域防災拠点の概要について把握するため、平成二十六年五月二十八日に東京湾臨海部基幹的広域防災拠点(有明の丘地区)を訪れ、調査を実施した。その概要は、以下のとおりである。 平成七年の阪神・淡路大震災時、行政機能の麻痺、情報網の寸断、救援物資をさばくための保管場所の不足等、様々な課題に直面したが、これを踏まえ、首都中枢機能が集まる関東圏においても、大規模災害発生時に国及び地方公共団体が協力して応急・復旧活動を行えるよう防災拠点を整備することが、平成十三年の都市再生プロジェクト第一次(小泉内閣時)において決定された。その後も協議が継続され、当該施設は平成十八年に建設に着手し、平成二十年六月に運用を開始した。 東京湾臨海部基幹的広域防災拠点は、東京都江東区の有明の丘地区と神奈川県川崎市の東扇島地区に分かれており、有明の丘地区では応急・復旧活動の調整を行い、東扇島地区では救助物資の搬入・搬出の物流コントロールの一部を担うこととされている。 首都直下地震発生時の応急対策活動要領(東京湾北部でマグニチュード七・三の地震発生時の被害想定に基づく地域ごとの活動計画)が定められているが、政府の活動態勢としては、首相官邸に緊急災害対策本部が設置され、総理大臣を本部長に震災被害の全容把握、国、政府としての方針決定がなされる。被害が大きいとして閣議決定された場合には、緊急災害現地対策本部(以下、「現地対策本部」という。)が設置され、内閣府防災担当副大臣又は大臣政務官が本部長となり、被災自治体と密に連携をとり、各地の被害情報の取りまとめ、現地レベルでの応急・復旧活動の調整を行う。現地対策本部は情報収集の面から被災地の近くに設置されることとなり、首都直下地震発生の場合は有明の丘地区に置かれることが定められている。現地対策本部で調整される主な応急対策活動は、救助活動、食料等の調達、緊急輸送路の確保などが挙げられ、各省庁が協力しながら業務に当たる。首都直下地震応急対策活動要領に基づく具体的な活動計画については、被害想定に合わせて物資の調達量、応援部隊の派遣規模、広域医療搬送の目標患者数が具体的な数値として計画されている。現地の被害情報が伝達されてから応急・復旧活動を行ったのでは対応が遅れるため、計画に則し、発災直後から準備を進めることができる。ただし、計画はあくまでも被害想定に基づいたものであり、実際の被害とはギャップが生じるため、これを埋めるため、現地の声を聞きながら被害情報を取りまとめ、計画と実被害との差について調整を行い対応するのが現地対策本部の役割となる。 現地対策本部の下に指揮命令を発する総括部門、情報集約を行う情報部門、物資、救助活動、緊急輸送路の確保を調整する事案対処部門、通信、広報支援を行う総務部門の四部門が置かれる。ここに関係省庁、地方公共団体、指定公共機関の各連絡要員を含め、全体で百五十人程度で構成されることとなる。 発災時の運用イメージについて、本部棟向かいのがん研究会有明病院は、三十ほどの診療科を有する総合病院であり、東京都が災害時に連携して医療活動を行える施設として公募して誘致したものである。通常は七百床ほどのベットがあるが、発災時には一階ロビーに仮設ベットを二百床ほど追加し、後方医療支援として被災者の救済に当たる。本部棟とがん研究会有明病院の間のエントランス約一ヘクタールは災害時医療支援用地となり、軽傷者の手当、トリアージなどを行う。ヘリポートは大型二機、中型五機の計七機が駐機できる。また、広域支援部隊のベースキャンプ場などとして使われるスペースも設けられている。 平常時と災害時の対応は不可分との観点から、公園施設は、平常時は防災訓練や学習、災害体験などの機能を有している。公園は国営公園と都立公園の各部分があり、都と国が協力して整備し、国営公園側に本部棟、ヘリポートなど防災に関わる部分を整備したとのことであった。 (3) 長野県松本市 平成二十六年五月二十八日に長野県松本市を訪れ、チェルノブイリ原発事故後に医師として現地にて医療活動に従事し、健康被害等について見識のある長野県松本市の菅谷昭市長より、原発事故への対応について、意見を伺った。その概要は、以下のとおりである。 イ 子どもへの健康被害に関する考えとその対応について チェルノブイリ原発事故後においては、被ばくとの関係性は分からないが、子どもの免疫力が低下し、感染症からの回復が遅れるなどの症状があり、また貧血などの症状も出ているとのことであった。さらに、出生児の低体重や死産、早産、先天異常などが出ていることも報告されているとのことであった。福島県においては、福島県立医科大学の報告で五十人の子どもに甲状腺がんが確認されており、現時点において原発事故に伴う放射線の影響は否定されているが、個人的見解として、早期の断定は難しいものと考えるとのことであった。また、健康被害については、早期発見、早期治療が肝要であり、甲状腺がんの原因について論ずるより、マンパワーを増やして子どもを対象とした定期的な検査を長期間継続し、保護者の不安を取り除くことが重要であると考えられるとのことであった。 ロ 被災地産品(特に食品)の安全性に関する考えについて 食品の安全性については、基準値が定められており、基準を満たすものであれば摂取してもよいと言わざるを得ない状況であるが、個人的には子どもへの影響は未知数と考えている。子育て世代を中心に、消費者において、基準を満たすものであっても、放射性物質を含む食品の購入を避けることは、消費者個人の問題でもあり、やむを得ない部分があると考えられる。当分は、食品の汚染状況の継続的な検査を行うべきであると思われ、こうした検査による安全性の確認が、国民が被災地産品を購入する際の一つの指標になると考えられるとのことであった。 ハ 風評被害の払拭に向けた対策について 国及び東京電力の対応の不手際から国民が不信感を抱いていることは、相当大きな問題であると思っており、風評被害に関しては、国、東京電力、行政が消費者に対して、懇切丁寧に説明し、それぞれの方々に寄り添った形で対応すれば、ここまで被害が拡大することはなかったと考えている。また、海洋流出した放射性物質についても、今後海産物にどのような影響を及ぼすか未知数であり、この点は、宮城県にも大きく関係する問題であることから、風評被害の払拭のため、県議会としても国、東京電力はもとより、企業などにも働きかけるべきであると考える。また、海外においては放射性物質の海洋流出を相当懸念しており、今後厳しい対応をとる可能性があると予想されることから、輸出等を含め、海外に対し迅速に働きかけるべきであると考える。消費者の信頼を得るためには、それぞれの食品について継続的に検査を実施し、汚染状況を適切に公表していくことが肝要であり、チェルノブイリにおいても、事故から二十八年が経過するが、食品の検査を実施している。検査の継続的な実施について、更に重点的に取り組むべきと考えるとのことであった。 ニ 放射性物質汚染廃棄物の処分等(処理対策)について チェルノブイリにおいては、原発の三十キロメートル圏の高度の汚染地には、いまだに人が住めない状況にあり、一昨年にベラルーシを訪問した際、政府関係者からは、発生した汚染廃棄物を原発の三十キロメートル圏に集約、処分していると聞いている。この点については、指定廃棄物等に関し、排出都道府県内での処理とする日本との対応に大きな差があると感じている。日本では、最終処分場の建設地が決まっておらず、保管がひっ迫する大変厳しい状況であり、個人的見解として、この問題を解決するには、原発周辺の帰還困難区域への汚染廃棄物の集約を含め、あらゆる可能性を検討し、政府が責任をもって対応するべきであると考える。ベラルーシは右のとおり、大統領令などで厳しく対応しているようであるが、善し悪しは別として、汚染廃棄物の処分については、最後は国が判断し対応するべき問題であると考えているとのことであった。 (4) 神奈川県 平成二十六年五月二十九日に神奈川県を訪問し、県及び防災首都圏ネットにおける大規模災害発生時の帰宅困難者への対応、民間企業等との協定の締結状況、県と市町村の連携等について調査を実施した。その概要は、以下のとおりである。 神奈川県においては、東日本大震災の発災を受け、県全体の地震災害対策について、基本部分から見直しを進めるため、有識者の協力のもと検証委員会を設置し、約一年間にわたり検討した。この結果、県民、事業者とともに防災力を高める必要があるとの検討委員会の報告を受け、合わせて、これを進める手段として条例の有用性についても提言がなされたため、県としては、提言を踏まえ、神奈川県地震災害対策推進条例を平成二十五年一月十一日に公布し、同年四月一日から施行した。条例においては、東日本大震災の教訓を受け、第十五条に津波対策の実施、第十七条に帰宅困難者対策の実施を規定し、対策の具体的な内容を盛り込んでいる。特に、帰宅困難者対策については、事業者あるいは県民の責務の意味合いを込めた規定となっている。当該条例の施行から一年あまりが経過したが、県民、事業者の取り組みを更に進めるため、普及、啓発活動を中心に様々な活動を進めながら県民運動としての災害対策、地震対策を推進している。 災害時における県と市町村との協力については、従前そのスキームがなかったわけではないが、主に市長会及び町村会より、県と更に連携し、被災地の支援も各市町村、県が一体となって総合的に取り組むことにより効率的に成果をあげるべきとの提言を受け、県において市町村と協議の上、新たに県と市町村の相互応援に関する協定を締結し、平成二十四年四月一日から適用された。神奈川県内の各地域県政総合センター(地方事務所(四カ所))を核として、各地域ごとの相互応援、地域間をまたぐ相互応援について、県が主体となり調整する仕組みを作った。神奈川県では三つの政令指定都市(横浜市、川崎市、相模原市)があり、相模原市については他の二市とは経緯が異なり、地域県政総合センターの枠の中に入れ込んでいるが、横浜市、川崎市については、県としての地方事務所がなく、別スキームとして横浜市、川崎市自体を一つのブロックとしている。相互応援協定に基づく応援体制のイメージについて、局地的な災害については、各ブロック内において、県が前面に立ち、地域県政総合センター(現地災害対策本部)を中心に市町村間の応援を調整する。大規模災害により当該ブロック全体が被災した場合には、ブロック内での応援が難しいため、県内の他の被災していないブロックにおいて、支援の調整のみを目的に調整本部を立ち上げ、管内の市町村間の調整をとりながら、他のブロックへの応援について調整する。ブロック相互間の連携ではあるが、間に県の安全防災局(本庁)が入りブロック間の調整を行い、ブロック間の調整が終わった後に具体的な相互応援の調整を進めていく。当該協定については、右のような従前からあったスキームを協定という形で明確化し、それぞれの役割、手続等を明記したのが主な特徴である。また、市長会、町村会の要請に応える形で、県外被災自治体への対応について、県が中心となり全体の支援を調整する仕組みを合わせて作った。神奈川県においては、県が被災県との連絡調整に当たり、県として支援を調整する。このために、広域災害時情報収集先遣隊をつくり、被災地に派遣し情報収集のうえ県に情報を集約することとし、県としては、当該情報を市町村と共有し、ブロック単位を中心にそれぞれどのような分担で支援を進めるか、調整する。 首都圏の九都県市で構成される防災首都圏ネットの九都県市防災・危機管理対策委員会については、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成八年四月に立ち上げて共同の研究を進めてきた。防災全体については、平成二年の段階で総合防災訓練を実施するなど、連携の取り組みは早くからあったが、首都圏における共通課題として、帰宅困難者対策が挙げられ、特に東京都において公共交通機関が麻痺した場合、都内に集まった方々の安全を確保し、帰宅を進める方策について、東京都を中心に問題提起があり、東京都が独自に帰宅困難者対策として検討を進めてきた。このような東京都の問題意識について、首都圏全体で認識を共有し、改めて対応を考えようとしたのが九都県市における帰宅困難者対策である。平成十年から検討を始め、これまで協働して帰宅困難者対策を進めてきている。帰宅困難者対策については、発災直後は行政として対応できることがさほどないため、まずは普及啓発のためのホームページをつくった。この中で、大規模災害時には、被害の状況を把握しないままに移動することは非常に危険であり、ターミナル駅に一斉に集まることによる混乱を避けなければならず、まずはむやみに移動しないことを示している。ただし、これには家族の安否について確認がとれることが前提となるため、安否確認手段として災害用伝言サービスの活用や家族内で予め連絡手段を定めること、公共交通機関が麻痺した場合の帰宅経路の確認などを促している。さらに、徒歩による帰宅者に対応するため、休憩のための施設を確保するなどの取り組みを九都県市全体で行っている。交通機関等運行情報について、ほとんどの交通機関(鉄道)は震度四以上で点検のために運行を停止するが、運行の再開については、それぞれの交通機関が様々に対応するため、集約した形で情報を受け取ることができない。このため、九都県市においては、早い段階から交通機関の運行情報(道路、空港を含む)を確認できるよう、鉄道各社のリンクをつくり、ホームページから全て確認できるようにした。 九都県市災害時相互応援に関する協定については、平成二年に六都県市で締結したのが最初であり、平成二十二年から現在の形となった。自治体間の相互応援であり、他の相互応援と特に差異がある訳ではないが、救出・救助というよりも、むしろ物資、人的派遣などを中心に、被災自治体に対応した応援調整都県市を定め、これが調整の中枢機関となり全体の調整を進めるスキームとしている。関西広域連合と九都県市との災害時相互応援協定について、今や自治体連合も含めて、日本中様々な形で広域的な協定、取り組みが進められており、特に東日本大震災以降、カウンターパートの考え方に基づき、相手先を明確に決めた形での支援が進んできている。九都県市としても、お互いに日本経済の大きなウエイトを占めており、ある程度距離も離れているため、相互応援をすることは非常に有効であるとの考えのもと検討を進め、平成二十六年三月六日に関西広域連合との災害時相互応援協定を締結した。 防災協定の締結状況について、大規模災害発生時には被災自治体単独での対応には限界があり、東日本大震災においても、この点が明らかとなった。このため、自治体間、或いは民間事業者との間で様々な協定を締結しており、不足が見込まれる資機材、人員、物資等の確保に努めている。協定は庁内のそれぞれの局が各分野ごとに締結しているが、平成二十五年九月一日現在の締結数は計六百二十四件となっている。 神奈川県の帰宅困難者対策について、東日本大震災発災時は平日昼間であったことから、内閣府の推計では、首都圏で約五百十五万人、東京都で約三百五十二万人、神奈川県では約六十七万人の帰宅困難者が発生した。首都直下地震については、平日昼に発生した場合、首都圏全体で約六百四十から八百万人の帰宅困難者が発生すると推計され、神奈川県地震被害想定調査では、県内で最大約七十七万人と推計している。対策として、神奈川県地震対策推進条例第十七条において「帰宅困難者対策の実施」を規定しており、具体的な対策として、神奈川県、九都県市が連携し、災害時帰宅支援ステーションを設置している。これは民間企業と連携し、徒歩帰宅する際の水やトイレ、一時休憩場所、情報提供の場を設置するものである。現在、神奈川県内で約七千八百店舗が災害時帰宅支援ステーションとなっている。このほか、地域県政総合センター(県央部、湘南、県西部)において、市町村と協力し、帰宅困難者対策訓練を行っているが、帰宅困難者の一時滞在場所への誘導が主な内容となっているとのことであった。 (二)復興庁 本委員会は、平成二十六年七月十一日に復興庁等に対し、東日本大震災からの復旧・復興対策に係る要望書を県議会として提出し、当該要望の内容等について、根本匠復興大臣同席のもと、引き続き本委員会の県外調査として意見交換を行った。その概要は、以下のとおりである。 東日本大震災からの復興加速については、安倍内閣において最重点課題の一つと位置付けられており、全閣僚が復興大臣と認識を共有するとともに司令塔機能を一元化しており、また、被災地を積極的に訪問し、現状把握に努めているとのことであった。それぞれの被災地においては、多様な課題を抱えていることから、現場主義を徹底することが肝要であり、これまで復興大臣の指揮のもと、関係省庁の局長を束ね、用地取得手続の抜本改革、人材不足への対策などを講じており、住宅再建、まちづくりに関しても九十項目以上の改革を実施した。今後も国、県、市町村の協調のもと復興の加速化に取り組んでいくとのことであった。 要望事項のうち最重点事項となっている、集中復興期間の延長と特例的な財政支援の継続に関しては、集中復興期間の最終年度となる平成二十七年度までに、いかに早く復興事業を進捗させ、復興を加速させるかに重点を置き取り組むこととしており、集中復興期間終了後については、その時点の事業の進捗状況を踏まえて、財源のあり方を含めて検討することとなっているが、復興期間は十年間とされており、真に必要な事業はしっかりと実施していくとのことであった。 6 要望活動 (一)東京電力株式会社福島復興本社に対する要請活動 本委員会は、原発事故に起因する風評被害の状況について、前年に引き続き、農林水産物等の被害に関して、関係三団体及び東京電力株式会社を招致して参考人意見聴取を実施し、課題の把握に務めてきたところであるが、これらを整理し、風評被害に係る迅速かつ十分な損害賠償の実施及び原発事故の早期完全収束の実現に関し、東京電力株式会社福島復興本社に対する要請活動を企画、実施決定し、平成二十六年五月二十七日に県議会の要請活動として実施した。要請事項については、次のとおりである。 (1) 風評被害に係る迅速かつ十分な損害賠償の実施 イ 賠償金の迅速かつ十分な支払 ロ 請求手続の一層の簡素化 ハ 被害の実態に即した損害賠償の実施 ニ 自治体や生産組合等において風評被害防止のために要した経費の補償 (2) 原発事故の早期完全収束の実現 イ 放射能汚染水に係る抜本対策及び緊急対策の確実な履行 ロ 地下水バイパスにおける安全性の確保 ハ 発電所内におけるトラブル、周辺環境のモニタリング結果等の迅速な公表と丁寧な説明 (二)復興庁等に対する要望活動 本委員会は、これまで県内外への調査や参考人意見聴取、意見交換会の実施などを通じ、被災地が抱える震災からの復旧・復興に係る多岐にわたる課題を把握するに至った。これを受け、課題を整理するとともに、被災地における現状の課題の解消に資するべく、復興庁等への要望活動を企画、実施決定し、平成二十六年七月十一日に県議会の要望活動として実施した。要望事項については次のとおりである。 (1) 復旧・復興関連予算の確保 イ 集中復興期間の延長と特例的な財政支援の継続 ロ 平成二十七年度における予算確保 (2) 東日本大震災復興交付金事業の継続及び弾力的な運用 イ 平成二十八年度以降の制度継続 ロ 復興交付金による支援の拡充及び弾力的な運用 ハ 効果促進事業の一括配分に係る自治体の自由度の一層の向上 (3) 被災自治体における職員確保に対する支援 (4) 被災者の生活・住宅再建に係る支援の拡充 イ 被災者生活再建支援制度の拡充 ロ 応急仮設住宅の集約化等に伴う入居者の移転費用に係る支援 (5) 被災した鉄道各線の早期復旧への支援 (6) 被災地の産業再生に対する支援 (7) 海中へ流出した震災ガレキの処理に対する継続的な支援 (8) 地域医療再生臨時特例基金による支援の充実 (9) 被災地における復旧・復興事業の施工確保 (10) 東京電力福島第一原子力発電所事故への対応 イ 原発事故に起因する風評被害に係る迅速かつ十分な賠償の実現 ・ 賠償金の迅速かつ十分な支払 ・ 請求手続の一層の簡素化 ・ 被害の実態に即した損害賠償の実施 ・ 自治体や生産組合等において風評被害防止のために要した経費の補償 ロ 原発事故の早期完全収束の実現 ・ 放射能汚染水に係る抜本対策及び緊急対策の確実な実施 ・ 地下水バイパスにおける安全性の確保 ・ 発電所内におけるトラブル、周辺環境のモニタリング結果等の迅速な公表と丁寧な説明 ハ 風評被害払拭のためのリスクコミュニケーションの充実、強化ニ 放射性物質汚染廃棄物の処理三 今後の取り組みの方針 本委員会は、前年に引き続き、県内外における調査活動や参考人意見聴取を通じ、本県における震災からの復旧・復興に係る様々な課題について、把握に努めるとともに、これらを取りまとめ、現状の課題の解消に資するべく、国や関係機関への働きかけを重点的に実施してきた。 発災から三年八カ月が経過し、特に津波による甚大な被害を被った沿岸市町においては、防災集団移転促進事業や被災市街地復興土地区画整理事業等のまちづくりに関わる事業が本格化し、徐々にではあるが、目指す復興の形が具現化しているほか、災害公営住宅の整備などについても進捗が見られ、今後被災者の生活再建が一層加速するものと期待される。また、県内の産業についても、グループ補助金を初めとする各種支援施策が継続的に実施され、復興に向けた着実な歩みを進めているところである。 一方で、復旧・復興関連事業が本格化する中、自治体における職員の不足、資材の高騰や労働者の不足等の要因から施工確保の困難が懸念される状況が依然として見られるなど、被災地においては、時間の経過に関わらず様々な問題を抱えており、震災からの復旧・復興の進捗を阻害する要因ともなっている。また、東日本大震災復興交付金やグループ補助金など、復旧・復興に係る各種支援施策については、これまで被災地の求めに応じ、国において柔軟な制度運用が図られてきたところであるが、被災地においては、依然として事業実施に際しての各種要件の緩和や支援の拡充などを求める声も多く聞かれ、復旧・復興の加速に向け、実態に即した更なる運用の柔軟化が求められている。 原発事故に起因する風評被害に関しては、昨年九月に深刻の度を増す放射能汚染水への対策について、国が前面に立ち主導的な役割を担うことが表明され、対策が講じられているところであるが、その後も人的過誤に起因するトラブルや汚染水対策の難航が取り沙汰されており、全国の消費者において、農林水産物を中心とする本県産品に係る放射能汚染への不安が払拭されず、風評被害が長期化している。こうした風評被害の払拭、防止に向けては、本県のみならず全国の消費者等において、食品と放射能に関する正しい知識の涵養により、安全性についての理解を増進することが極めて重要であり、本県はもとより国等による全国を対象とした継続的な取り組みが求められている。 県内で大きな問題となっている放射性物質汚染廃棄物の処分に関しては、八千ベクレルを超える指定廃棄物について、国が本年一月に示した最終処分場建設に係る県内三カ所の候補地において、住民や関係団体等の強い反対により、一部で詳細調査に着手できないなど、進捗が危ぶまれる大変厳しい状況となっている。また、八千ベクレル以下の農林業系廃棄物を中心とする一般廃棄物についても、周辺住民の理解を得ることが困難であり、また既存施設の処理能力を超えるなど様々な要因から、市町村等において一般ごみとの混焼処理が進捗せず、自治体や農家において保管がひっ迫する大変厳しい状況にあり、慎重に推移を見守りつつ解決策を探る必要がある。 また、本年は宮城県震災復興計画に定める四年間の再生期の初年度に当たり、今後、復興まちづくり、被災者の生活や住宅の再建に係る支援、産業の再生に向けた支援などに関し、事業の一層の進捗、充実が求められる。さらに、本県においては、東日本大震災の教訓を踏まえ、宮城野原地区への広域防災拠点の整備を初め、復興に向け大規模な事業が計画されているところであり、その実効性を担保するべく、県議会としても十分に議論を尽くすとともに、国や市町村との連携など、今後の動向を注視する必要がある。加えて、発災後の行政機能の低下を補完する民間企業等との災害時応援協定や仙台市中心部などにおいて大きな混乱が生じた帰宅困難者への対応など、引き続き十分な対策を講じていくことが強く求められている。 このような現況のもと、委員会として、刻々と変化する被災地の状況に対応するため、引き続き積極的な調査活動を通じ、本県の東日本大震災からの復旧・復興に係る課題の把握に努めるものとする。また、県議会として、時間の経過とともに多様化する課題の解消に向け、継続的に国等への働きかけを行うこととし、要望活動等に重点的に取り組むものとする。さらに、被災地の復旧・復興の進捗に対応し、多岐にわたる課題について、より精緻な調査活動を展開するため、委員会として、より効果的な調査活動のあり方について絶えず検討を行うものとし、本県の早期の復興に資するべく全力を傾注するものとする。 以上、今後の特別委員会における、被災地に根ざしたより効果的な調査活動を期し、報告とする。 平成二十六年十一月二十日 大震災復旧・復興対策調査特別委員長 畠山和純 宮城県議会議長 安藤俊威殿……………………………………………………………………………………………
○議長(安藤俊威君) これより質疑に入ります。 委員長報告に対し、質疑はありませんか。--質疑なしと認めます。-----------------------------------
△大震災復旧・復興対策調査特別委員の辞任許可について
○議長(安藤俊威君) 日程第百四十九、大震災復旧・復興対策調査特別委員の辞任許可についてを議題といたします。 堀内周光君から、大震災復旧・復興対策調査特別委員の辞任願が提出されました。 お諮りいたします。 堀内周光君の大震災復旧・復興対策調査特別委員の辞任を許可することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、堀内周光君の大震災復旧・復興対策調査特別委員の辞任を許可することに決定いたしました。-----------------------------------
△大震災復旧・復興対策調査特別委員の選任について
○議長(安藤俊威君) お諮りいたします。 この際、欠員となりました大震災復旧・復興対策調査特別委員の選任についてを日程に追加し、直ちに議題といたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、大震災復旧・復興対策調査特別委員の選任についてを日程に追加し、直ちに議題とすることに決定いたしました。 大震災復旧・復興対策調査特別委員の選任についてを議題といたします。 お諮りいたします。 大震災復旧・復興対策調査特別委員が一名欠員となりましたので、境恒春君を指名いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、さように決定いたしました。-----------------------------------
△議会運営委員の選任
○議長(安藤俊威君) 日程第百五十、議会運営委員の選任を行います。 議会運営委員の選任につきましては、宮城県議会委員会条例第七条の規定により、お手元に配布のとおり指名いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、さように決定いたしました。…………………………………………………………………………………………… 議会運営委員名簿 平成二十六年十一月二十六日(水) 太田稔郎君 すどう 哲君 遠藤いく子君 伊藤和博君 菊地恵一君 外崎浩子君 菅間 進君 池田憲彦君 皆川章太郎君 藤倉知格君 相沢光哉君 中沢幸男君……………………………………………………………………………………………
△常任委員の選任
○議長(安藤俊威君) 日程第百五十一、常任委員の選任を行います。 常任委員の選任につきましては、宮城県議会委員会条例第七条の規定により、お手元に配布のとおり指名いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、さように決定いたしました。…………………………………………………………………………………………… 常任委員名簿 第三百五十回宮城県議会(十一月定例会)平成二十六年十一月二十六日総務企画委員会(十人)
境 恒春君
長谷川 敦君
石川光次郎君
坂下 賢君
本木忠一君
安部 孝君
藤原のりすけ君
小野寺初正君
畠山和純君
藤倉知格君環境生活農林水産委員会(十人)
太田稔郎君
遠藤いく子君
渡辺忠悦君
細川雄一君
佐藤光樹君
長谷川洋一君
岩渕義教君
渥美 巖君
仁田和廣君
渡辺和喜君保健福祉委員会(九人)
天下みゆき君
石川利一君
寺澤正志君
岸田清実君
ゆさみゆき君
石橋信勝君
安藤俊威君
中村 功君
中沢幸男君
経済商工観光委員会(十人)
堀内周光君
すどう 哲君
吉川寛康君
菊地恵一君
只野九十九君
菅原 実君
川嶋保美君
皆川章太郎君
本多祐一朗君
今野隆吉君建設企業委員会(十人)
三浦一敏君
村上智行君
高橋伸二君
庄子賢一君
中山耕一君
佐々木征治君
小野 隆君
内海 太君
齋藤正美君
千葉 達君文教警察委員会(十人)
佐々木幸士君
伊藤和博君
外崎浩子君
佐藤詔雄君
菅間 進君
中島源陽君
池田憲彦君
坂下やすこ君
横田有史君
相沢光哉君……………………………………………………………………………………………
△予算特別委員会の設置
○議長(安藤俊威君) 日程第百五十二、予算特別委員会の設置を議題といたします。 お諮りいたします。 県予算を審査又は調査するため、議員全員で構成する予算特別委員会を別紙要綱案により設置することに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(安藤俊威君) 御異議なしと認めます。 よって、さように決定いたしました。…………………………………………………………………………………………… 予算特別委員会設置要綱(案)第一条 県予算を審査又は調査するため、宮城県議会に予算特別委員会(以下「委員会」という。)を設置する。第二条 委員会は、議員全員をもって構成し、委員長及び副委員長は、委員会において互選する。第三条 委員会の円滑な運営を図るため、委員会に理事会を置く。2 理事会は、委員長、副委員長及び理事をもって構成する。3 理事は、委員会で選任し、十二人とする。4 理事会は、委員長が招集する。第四条 委員会に六分科会を置く。2 分科会は、現に設置されている常任委員会の委員をもって構成し、県予算のうちその所管事項に関する部分を審査又は調査する。3 分科会に主査、副主査及び主査職務代行者を置くものとし、主査には常任委員長、副主査には同副委員長及び主査職務代行者には同委員長職務代行者をもって、それぞれ充てる。第五条 委員会は、設置の日から翌年の最後に招集される定例会の開会日の前日まで存続し、閉会中も審査又は調査を行うことができるものとする。第六条 この要綱に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、理事会に諮って委員長がこれを定める。……………………………………………………………………………………………
○議長(安藤俊威君) 議会運営委員会、各常任委員会及び予算特別委員会の委員長及び副委員長互選のため、暫時休憩いたします。 午前十時五十五分休憩----------------------------------- 午後一時三十分再開
○議長(安藤俊威君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。 御報告いたします。 議会運営委員会、各常任委員会及び予算特別委員会の委員長及び副委員長は、互選の結果、次のように決定いたしました。 議会運営委員会 委員長 池田憲彦君 副委員長 菊地恵一君 総務企画委員会 委員長 石川光次郎君 副委員長 長谷川 敦君 環境生活農林水産委員会 委員長 佐藤光樹君 副委員長 細川雄一君 保健福祉委員会 委員長 寺澤正志君 副委員長 石川利一君 経済商工観光委員会 委員長 只野九十九君 副委員長 菊地恵一君 建設企業委員会 委員長 庄子賢一君 副委員長 村上智行君 文教警察委員会 委員長 中島源陽君 副委員長 佐々木幸士君 予算特別委員会 委員長 長谷川洋一君 副委員長 菅原 実君 以上のとおりであります。-----------------------------------
△散会
○議長(安藤俊威君) 以上をもって、本日の日程は全部終了いたしました。 明日の議事日程は、追って配布いたします。 本日は、これをもって散会いたします。 午後一時三十一分散会...