新宿区議会 > 2014-09-16 >
09月16日-10号

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  1. 新宿区議会 2014-09-16
    09月16日-10号


    取得元: 新宿区議会公式サイト
    最終取得日: 2021-08-13
    平成26年  9月 定例会(第3回)        平成26年第3回定例会会議録(第1日)第10号平成26年9月16日(火曜日)出席議員(35名)   1番   中村しんいち     2番   井下田栄一   3番   北島敏昭       4番   桑原羊平   5番   鈴木ひろみ      6番   久保広介   7番   佐藤佳一       8番   川村のりあき   9番   豊島あつし     10番   野もとあきとし  11番   池田だいすけ    12番   吉住はるお  13番   ひやま真一     14番   佐原たけし  16番   なす雅之      17番   平間しのぶ  18番   志田雄一郎     19番   あざみ民栄  20番   阿部早苗      21番   鈴木ゆきえ  22番   赤羽つや子     23番   おぐら利彦  24番   下村治生      25番   深沢としさだ  26番   宮坂俊文      27番   のづたけし  28番   えのき秀隆     30番   根本二郎  31番   近藤なつ子     32番   沢田あゆみ  33番   有馬としろう    34番   小松政子  36番   かわの達男     37番   田中のりひで  38番   雨宮武彦---------------------------------------欠席議員(なし)---------------------------------------説明のため出席した者の職氏名  区長       中山弘子    副区長      野口則行  区長室長     橋口敏男    総合政策部長   針谷弘志  総務部長     寺田好孝    地域文化部長   加賀美秋彦                   子ども家庭  福祉部長     小池勇士             吉村晴美                   部長                   みどり土木  健康部長     髙橋郁美             野﨑清次                   部長  環境清掃部長   柏木直行    都市計画部長   新井建也  会計管理者    高橋麻子    企画政策課長   平井光雄  財政課長     大柳雄志    総務課長     山田秀之  教育委員会            教育委員会           酒井敏男             中澤良行  教育長              事務局次長  選挙管理  委員会      濵田幸二    常勤監査委員   猿橋敏雄  事務局長  監査事務局長   野田 勉---------------------------------------職務のため出席した議会事務局職員  局長       名取伸明    次長       大野哲男  議事係長     濵野智子    議事主査     臼井友広  議事主査     佐藤公彦    議事主査     氏家あふゆ  議事主査     松尾安広    書記       浅野美智子  書記       山崎友之---------------------------------------  速記士      橋口仁子---------------------------------------9月16日    議事日程 日程第1 代表質問 日程第2 第56号議案 平成26年度新宿区一般会計補正予算(第4号)--------------------------------------- △開会・開議 午前10時00分 ○議長(おぐら利彦) ただいまから、平成26年第3回新宿区議会定例会を開会します。 本日の会議を開きます。 会議録署名議員は、  13番 ひやま真一議員  36番 かわの達男議員 を指名します。--------------------------------------- ○議長(おぐら利彦) 本日の会議時間は、議事進行の都合により、あらかじめ延長します。--------------------------------------- ○議長(おぐら利彦) 次に、事務局次長に諸般の報告をさせます。 ◎議会事務局次長(大野哲男) 区長から、 1、平成26年第3回新宿区議会定例会の招集について 2、第56号議案など18件の議案送付について 3、同意第1号など2件の議案送付について 4、平成26年中における新宿区議会に説明のため出席させる者の変更について 5、平成26年中における新宿区議会に説明のため出席させる者の変更について 6、平成26年中における新宿区議会に説明のため出席させる者の変更について 7、法人の経営状況を説明する書類の提出について 8、平成25年度新宿区財政の健全化判断比率について(報告) 9、平成25年度新宿区各会計歳入歳出決算審査意見書及び新宿区基金運用状況審査意見書の提出について 10、平成25年度新宿区財政の健全化判断比率審査意見書の提出について 11、専決処分の報告について 監査委員から、 1、平成25年度新宿区歳入歳出例月出納検査の結果について(出納整理期間5月分) 2、平成26年度新宿区歳入歳出例月出納検査の結果について(5月分・6月分・7月分) 3、平成26年度定期監査の結果について 4、平成26年度行政監査(建物の保守・点検について)の結果について---------------------------------------                           26新総総総第1552号                           平成26年9月4日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                           新宿区長  中山弘子        平成26年第3回新宿区議会定例会の招集について このことについて、本日裏面写しのとおり告示したので通知します。 (別紙)(写) 新宿区告示第449号 平成26年第3回新宿区議会定例会を9月16日に招集する。  平成26年9月4日                           新宿区長  中山弘子---------------------------------------                           26新総総総第1553号                           平成26年9月5日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                           新宿区長  中山弘子               議案の送付について 平成26年第3回区議会定例会に提出のため、下記議案を送付いたします。                   記 1 第56号議案 平成26年度新宿区一般会計補正予算(第4号) 2 第57号議案 平成26年度新宿区一般会計補正予算(第5号) 3 第58号議案 平成26年度新宿区国民健康保険特別会計補正予算(第1号) 4 第59号議案 平成26年度新宿区介護保険特別会計補正予算(第1号) 5 第60号議案 平成26年度新宿区後期高齢者医療特別会計補正予算(第1号) 6 認定第1号 平成25年度新宿区一般会計歳入歳出決算 7 認定第2号 平成25年度新宿区国民健康保険特別会計歳入歳出決算 8 認定第3号 平成25年度新宿区介護保険特別会計歳入歳出決算 9 認定第4号 平成25年度新宿区後期高齢者医療特別会計歳入歳出決算 10 第61号議案 災害に際し応急措置の業務等に従事した者の損害補償に関する条例の一部を改正する条例 11 第62号議案 新宿区家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例 12 第63号議案 新宿区特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営に関する基準を定める条例 13 第64号議案 新宿区放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例 14 第65号議案 新宿区学童クラブ条例の一部を改正する条例 15 第66号議案 新宿区保健衛生事務手数料条例の一部を改正する条例 16 第67号議案 新宿区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例 17 第68号議案 新宿区立の小学校、中学校及び特別支援学校の非常勤の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する条例の一部を改正する条例 18 第69号議案 町の区域及び名称の変更について---------------------------------------                           26新総総総第1739号                           平成26年9月12日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                           新宿区長  中山弘子               議案の送付について 平成26年第3回区議会定例会に提出のため、下記議案を送付いたします。                   記 1 同意第1号 新宿区教育委員会委員任命の同意について 2 諮問第4号 人権擁護委員候補者の推薦に関する意見の聴取について---------------------------------------                           26新総総総第1042号                           平成26年6月30日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                           新宿区長  中山弘子 平成26年中における新宿区議会に説明のため出席させる者の変更について(通知) このことについて、平成26年6月30日付け人事異動により、下記のとおり変更しましたので通知いたします。     〔巻末諸報告の部参照〕---------------------------------------                           26新総総総第1057号                           平成26年7月1日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                           新宿区長  中山弘子 平成26年中における新宿区議会に説明のため出席させる者の変更について(通知) このことについて、平成26年7月1日付け人事異動により、下記のとおり変更しましたので通知いたします。     〔巻末諸報告の部参照〕---------------------------------------                           26新総総総第1631号                           平成26年9月1日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                           新宿区長  中山弘子 平成26年中における新宿区議会に説明のため出席させる者の変更について(通知) このことについて、平成26年9月1日付け人事異動により、下記のとおり変更しましたので通知いたします。     〔巻末諸報告の部参照〕---------------------------------------                           26新総総総第1483号                           平成26年8月18日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                           新宿区長  中山弘子         法人の経営状況を説明する書類の提出について このことについて、地方自治法第243条の3第2項に基づき、下記のとおり関係書類を提出いたします。                   記 1 対象となる法人   新宿区土地開発公社     〔以下は省略〕---------------------------------------                           26新総総総第1669号                           平成26年9月3日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                           新宿区長  中山弘子      平成25年度新宿区財政の健全化判断比率について(報告) このことについて、地方公共団体の財政の健全化に関する法律第3条第1項の規定に基づき、別紙のとおり報告します。     〔巻末諸報告の部参照〕---------------------------------------                           26新総総総第1673号                           平成26年9月3日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                           新宿区長  中山弘子   平成25年度新宿区各会計歳入歳出決算審査意見書及び新宿区基金運用状況審査意見書の提出について 地方自治法第233条第3項及び同法第241条第5項の規定に基づき、本区監査委員の「平成25年度新宿区各会計歳入歳出決算審査意見書及び新宿区基金運用状況審査意見書」を提出します。     〔別紙は省略〕---------------------------------------                           26新総総総第1672号                           平成26年9月3日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                           新宿区長  中山弘子    平成25年度新宿区財政の健全化判断比率審査意見書の提出について 地方公共団体の財政の健全化に関する法律第3条第1項の規定に基づき、本区監査委員の「平成25年度新宿区財政の健全化判断比率審査意見書」を提出します。     〔別紙は省略〕---------------------------------------                           26新総総総第1706号                           平成26年9月9日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                           新宿区長  中山弘子              専決処分の報告について このことについて、地方自治法(昭和22年法律第67号)第180条第2項の規定に基づき、別紙のとおり報告します。     〔別紙は省略〕---------------------------------------                             26新監査第209号                             平成26年6月24日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                        新宿区監査委員  山岸美佐子                           同     猿橋敏雄                           同     岩田一喜                           同     赤羽つや子 平成25年度新宿区歳入歳出例月出納検査の結果について(出納整理期間5月分) このことについて、地方自治法第235条の2第3項の規定に基づき、下記のとおり報告します。     〔巻末諸報告の部参照〕---------------------------------------                             26新監査第210号                             平成26年6月24日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                        新宿区監査委員  山岸美佐子                           同     猿橋敏雄                           同     岩田一喜                           同     赤羽つや子    平成26年度新宿区歳入歳出例月出納検査の結果について(5月分) このことについて、地方自治法第235条の2第3項の規定に基づき、下記のとおり報告します。     〔巻末諸報告の部参照〕---------------------------------------                             26新監査第250号                             平成26年7月25日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                        新宿区監査委員  山岸美佐子                           同     猿橋敏雄                           同     岩田一喜                           同     赤羽つや子    平成26年度新宿区歳入歳出例月出納検査の結果について(6月分) このことについて、地方自治法第235条の2第3項の規定に基づき、下記のとおり報告します。     〔巻末諸報告の部参照〕---------------------------------------                             26新監査第288号                             平成26年8月25日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                        新宿区監査委員  山岸美佐子                           同     猿橋敏雄                           同     岩田一喜                           同     赤羽つや子    平成26年度新宿区歳入歳出例月出納検査の結果について(7月分) このことについて、地方自治法第235条の2第3項の規定に基づき、下記のとおり報告します。     〔巻末諸報告の部参照〕---------------------------------------                             26新監査第301号                             平成26年9月11日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                        新宿区監査委員  山岸美佐子                           同     猿橋敏雄                           同     岩田一喜                           同     赤羽つや子           平成26年度定期監査の結果について 地方自治法(昭和22年法律第67号)第199条第9項の規定により、平成26年度定期監査の結果に関する報告を決定したので、次のとおり提出する。     〔以下は省略〕---------------------------------------                             26新監査第312号                             平成26年9月11日 新宿区議会議長  おぐら利彦様                        新宿区監査委員  山岸美佐子                           同     猿橋敏雄                           同     岩田一喜                           同     赤羽つや子    平成26年度行政監査(建物の保守・点検について)の結果について 地方自治法(昭和22年法律第67号)第199条第9項の規定により、平成26年度行政監査の結果に関する報告を決定したので、次のとおり提出する。     〔以下は省略〕--------------------------------------- ○議長(おぐら利彦) 会期についてお諮りします。 本定例会の会期は、本日から10月10日までの25日間にしたいと思います。これについて御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○議長(おぐら利彦) 異議なしと認めます。 会期は、本日から25日間と決定いたしました。--------------------------------------- ○議長(おぐら利彦) これから本日の日程に入ります。 日程第1、代表質問を行います。 質問の通告を受けましたので、順に質問を許します。 最初に、9番豊島あつし議員。     〔9番 豊島あつし議員登壇、拍手〕 ◆9番(豊島あつし) 公明党の豊島あつしです。平成26年第3回定例会に当たり、新宿区議会公明党を代表して区長並びに教育委員会に質問いたします。誠意ある御答弁をよろしくお願い申し上げます。 ここ最近の相次ぐ地方議員の不祥事により、地方議会並びに地方議員に向けられる国民の視線は極めて厳しくなっております。地方議会は何のために存在しているのか。住民のためにあるという、その原点を見詰め直し、襟度を正していかねばなりません。新宿区議会も例外ではありません。何としても区民の負託に応えられるよう、開かれた議会へと議会改革を推進していくべきです。 ところで、私ども公明党は、本年11月17日に結党50周年の佳節を迎えます。「大衆とともに語り、大衆とともに戦い、大衆の中に死んでいく」との立党精神のまま、どこまでも現場に入り、庶民の声に耳を傾けてきたのが公明党の歴史です。大衆直結の使命を自覚し、私は、地域社会に尽くし抜く区民党という立場で区民に信頼される議員活動を展開する決意を申し上げて、具体的な質問へ入ります。 質問の第1は、中山区政3期12年についてお伺いいたします。 中山区長は、さきの第2回定例会において今期限りでの御勇退を表明されました。3期12年間、本当にお疲れさまでした。 中山区長は、「現場現実を重視した柔軟かつ総合性の高い区政」、「公平かつ透明性の高い区政」、「区民との協働と参画による区政」の3つを基本姿勢に、「暮らしやすさも賑わいも一番のまち新宿」の実現に向けて全力を尽くしてこられました。また、厳しい社会経済状況の中、区民生活を懸命に支えられてきたことに敬意を表します。 区民生活を支えるという視点から、私どもは子ども・高齢者・障害者「誰もがいきいきコミュニティタウン新宿」の取り組みを大変高く評価しています。 3期12年間、中山区政の福祉政策を見ますと、1点目に高齢者施策については、誰もが人として尊重され、ともに支え合う地域社会を目指すという理念のもと、新宿いきいき体操などにより健康づくりや介護予防を推進されるとともに、高齢者の総合的な生活支援の窓口として区内10カ所に高齢者総合相談センターを設置し、認知症担当者医療連携担当者を配置するなどの機能強化、体制整備を図ってこられました。また、新宿けやき苑やマザアス新宿特別養護老人ホーム神楽坂など介護保険サービスの基盤整備も着実に進められました。 2点目に障害者施策については、障害者が尊厳を持って生活できる地域社会の実現を目指し、障害の種別にかかわらず相談支援に関する業務を総合的に行う基幹総合相談支援センター障害者福祉課に設置するなど、地域の相談支援事業者と連携し、相談支援体制の充実が図られます。また、保健、医療、福祉、教育等の連携強化や多様な就労ニーズへの支援を推進されるとともに、高田馬場福祉作業所の新築移転やグループホーム等の整備を進められたほか、現在も入所支援施設シャロームみなみ風や精神障害者の地域生活移行を支援する区立障害者生活支援センターの建設が行われており、障害者福祉サービスの基盤整備が進んでいます。 3点目に、子どもに対する施策については、次世代を担う子どもたちが健やかに育つ「子育てしやすいまち」を実現するため、子どもの生きる力と豊かな心を育むことや、多様な子育てニーズに対応できるサービスの充実に努められてこられました。「次世代育成支援に関する調査」の「子育てしやすいまち」と考える小学生の保護者の割合を見ても、平成15年度の16.6%が平成20年度には35%となり、平成25年度には54.9%と大きくふえています。保育園の待機児童解消対策を初め、きめ細やかな相談体制の充実や総合的な子育て支援を実施する拠点として子ども総合センターを設置されたほか、幼保一元化や幼稚園の公私格差の是正、幼児教育無償化への段階的な取り組みとして第3子以降の無償化など多子世帯に対する負担軽減も実施されました。 このような実績を踏まえ、区長にお伺いします。 この間の福祉施策に対する取り組みを振り返ってどのように評価されているか、御見解をお聞かせください。 また、今後の新宿区の福祉施策のさらなる充実に対する思いなどについてもお聞かせください。 以上、御答弁願います。 ◎区長(中山弘子) 豊島議員の御質問にお答えします。 3期12年の福祉施策の評価と、さらなる充実についてのお尋ねです。 私は、新宿に暮らす全ての人がともに支え合いながら心豊かに安心して生活できる地域社会の実現を目指して福祉施策に取り組んでまいりました。 福祉施策の取り組みに当たっては、区民の発信を敏感に感知し、現実に向かい合い、柔軟に対応することが求められております。また、多様な福祉サービスは区民の視点からわかりやすく使いやすいものであることが必要です。 このため、誰もが気軽に安心して相談できる場として、高齢者総合相談センターや子ども総合センター、障害者の相談を行う基幹相談支援センターなどを設置して、そこで伺った生活の課題や悩み事を解決につなげるとともに、さらなる施策の充実を図ることで区民ニーズに的確に対応してまいりました。 具体的な取り組みとして、高齢者施策については、住みなれた地域で安心して住み続けられるよう「地域包括ケアシステム」の構築に力を注ぐとともに、特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホーム、小規模多機能型居宅介護などの基盤整備を進めることで、高齢者とその家族を支えるサービスの充実を図りました。 また、障害者施策については、安定した地域生活と社会参加の充実を図るため、グループホームの設置促進や自立訓練等の通所事業、相談支援、就労支援などを充実するとともに、百人町の障害者生活支援センターなどの整備を進めてまいりました。 子育て施策については、保育施設の定員を就任以来約2,200人ふやしたほか、延長保育や病児・病後児保育の充実を図りました。また、家庭で子育てをしている方への支援として、一時保育の充実や子ども総合センターを中心とした子育て相談、親と子の居場所づくりなど、区民が安心して子育てできる環境整備を進めました。 そして現在、区では、平成27年度から始まる高齢者保健福祉計画・第6期介護保険事業計画、障害者計画・第4期障害福祉計画、次世代育成支援計画の策定に向けた検討を行っております。 地域には、健康な人や介護が必要な人、障害のある人、子育て中の人などさまざまな人々が暮らしています。人々にはそれぞれのライフステージやライフスタイルがあり、生活の実情もさまざまです。誰もが地域の一員として心豊かな生活を送ることができる地域社会を実現するためには、自助・共助の取り組みを進めるとともに、公助としての福祉施策のきめ細やかな充実を図ることが必要であると考えております。 ◆9番(豊島あつし) 質問の第2は、公共施設等総合管理計画策定の取り組みについてです。 1950年代後半以降の高度経済成長期に相次いで建設された道路や橋などのインフラとともに、学校や公営住宅等の老朽化対策が大きな課題となっています。国土交通省が所管する公営住宅を含めたインフラの維持管理費用は、今年度3.6兆円で、10年後は4.1兆円から5.5兆円程度に膨らむと試算しています。地方自治体においても、今後公共施設の統廃合を進めなければ厳しい財政運営を強いられる可能性があると指摘されています。 新宿区においては、これまで「財政非常事態宣言」からの脱出を初め、時代の変化を踏まえて行財政改革に取り組んでこられたことを高く評価しています。そうした中、本年4月、総務省から「公共施設等の総合的かつ計画的な管理の推進について」、その計画の策定の要請がありました。この計画は、早急に公共施設等の全体の状況を把握し、長期的な視点から更新、統廃合、長寿命化等を計画的に行うことを求めています。この計画の策定により、将来の財政負担の軽減と平準化を図る一方、区民の視点に立った公共施設等の最適な配置を実現することを要請しています。 そこで、この計画の策定についての新宿区の取り組みについて3点伺います。 まず1点目は、この計画策定に当たって、区として今後どのように取り組んでいかれるのかについてです。 計画策定については、建物の建築年次や改修履歴だけでなく、建物の劣化状況やライフサイクルコストの算定等を客観的かつ総合的に把握することが極めて重要です。それに基づいて整備対象の重点化や優先順位を考慮した実行計画を策定して、施設のマネジメントを行うことが肝要と考えます。区は、計画策定に対してどのように取り組まれるおつもりなのか、お伺いします。 2点目は、現在と将来の区有施設の維持管理経費等についてです。 人口減少や少子高齢化の進展、それに伴う税収減少の変化を踏まえ、公共施設の整備のあり方を再検討するときが来ています。ある特別区は「区有施設見直し方針」を策定し、175ある区有施設の維持管理費は年間約200億円に達し、特別区税などの経常的歳入の約36%を占めています。また、引き続き全施設を維持していく場合、大規模改修や建てかえなどで2013年度から10年間で約711億円かかると試算しています。新宿区における全区有施設の年間の維持管理経費と財政に占める割合はどの程度なのでしょうか。また、1960年前後を中心に集中的に建設された建物が一斉に更新時期を迎えることを考えると、計画的に財政負担の平準化を図るべきと考えます。御所見を伺います。 3点目は、具体的に本庁舎の建てかえ等あり方と新中央図書館の建設についてです。 本庁舎の建てかえ等あり方については、分散している庁舎機能の集約化や複合化、最適な配置等を検討する必要があります。そういう意味で、本庁舎の建てかえ等あり方問題は、今回総務省が打ち出した「公共施設等総合管理計画」と趣旨を同じくするものと考えます。 本庁舎の建てかえ等あり方について、区は免震工事完了後から検討を始めるとし、一方、総務省は、速やかな「公共施設等総合管理計画」の策定を求めています。同計画の策定は全公共施設等を対象にしたもので、本庁舎も例外ではありません。区は、免震工事の完了を待つのではなく、同計画の策定の中で連動して検討を進めるべきと考えます。御所見を伺います。 また、新宿区はこれまでも新中央図書館の建設について検討を重ねてきておられます。その上で、今回の総務省からの要請は、長期的な視点から公共施設等を総合的かつ計画的に管理することを求めています。この要請を受けて、公共施設の統廃合や配置等の計画策定を進める中で新中央図書館の建設も検討すべきと考えますが、現時点で区はどのように考えておられるのかお伺いします。 以上、答弁願います。 ◎区長(中山弘子) 公共施設等総合管理計画についてのお尋ねです。 初めに、区としての取り組みについてです。 公共施設等総合管理計画では、区有施設の現況や将来の見通し、総合的かつ計画的な管理や施設類型ごとの管理に関する基本的な方針を定めることとしています。このため、平成27年度に計画策定に向けた全庁的な検討組織を設置し、区有施設の現況、維持・更新等に係る経費及び充当可能な財源見込み等を明らかにし、これに基づく施設の再編の方向など、区有施設の管理に関する基本的な考え方を示していきます。また、平成28年度には施設類型ごとの更新、多機能化、統廃合など区有施設の管理に関する基本的な方針を、区民意識調査や区有施設のあり方に関するワークショップの開催などにより区民や学識経験者等の意見を反映して策定する予定です。 次に、現在と将来についての維持管理経費等についてのお尋ねです。 平成25年度決算では、区有施設の年間の維持管理経費は176億円で、経常的一般財源に対する割合は22.4%となっています。 次に、計画的な施設の更新についてです。 現在、区有施設のうち半数以上が築年数30年以上を経過したものとなっています。このため、老朽化が進行しつつある施設の更新を総合的かつ計画的に行うことにより、中長期的なコストの縮減、平準化を推進することは、区民の安全・安心の確保とともに、次世代に健全な財政と安全なインフラを残すために大変重要なことと認識しております。 こうしたことから、区では、建築物保全業務支援システムや、橋りょうの長寿命化計画、道路などの土木アセットマネジメントシステム等を活用して効率的なメンテナンスを実施し、施設の長寿命化や修繕経費の削減と平準化に取り組んできました。今後は、公共施設等総合管理計画を策定していく中で計画的な施設の更新についても検討し、財政負担の軽減、平準化を図ってまいります。 次に、本庁舎のあり方についてのお尋ねです。 本庁舎については、耐震診断の結果を受け、まずは現庁舎の安全確保を早急に実現することが喫緊の課題であると考え、現在、平成27年11月の完了を目指して免震改修工事を進めています。現在の本庁舎は、耐震診断においてコンクリート強度が確保されていることを確認していますので、適切な維持管理等を実施することにより免震改修工事後10年以上は使用可能であると判断しています。 新たな庁舎のあり方については、本庁舎が、質の高い区民サービス提供の拠点や区民生活の安全と安心を支える防災の拠点など多岐にわたる機能が必要なこと、また、庁舎機能の集約化などさまざまな課題があり、長期的な視点に立った慎重かつ広範な検討が必要です。こうしたことから、本庁舎のあり方については、平成28年度に策定予定の公共施設等総合管理計画とは別に検討を進めてまいります。 次に、新中央図書館の建設についてです。 新中央図書館については、平成22年11月に策定した新中央図書館等基本計画に基づき、これからの図書館サービスのあり方の検討を行う中で、現在の中央図書館で実現できることは積極的に取り入れているところです。一方、公共施設等総合管理計画では、公共施設の更新などに際し、民間の技術、ノウハウ、資金等を活用することも検討することとしています。 このため、新中央図書館についても、財政状況等見通しを踏まえ整備手法についての情報収集を行うとともに、早稲田大学の研究教育施設との合築の協議を行っていく中で、新宿の新たな知の拠点としての機能や区民サービスの充実、整備の手法などについて引き続き検討を行ってまいります。 ◆9番(豊島あつし) 質問の第3は、地域包括ケアシステムについてです。 超高齢化、人口減少という今まで経験したことのない急激な変化に直面している日本の社会。年々増大する社会保障関係費の財源確保、安心して暮らせる地域の医療と介護の整備、支え合いによる生活支援サービスの拡充、さらに安定した住まいの提供と、課題は山積しており、その解決が急がれます。 私ども公明党は、限られた財源を有効に活用し、住みなれた地域で安心して長生きができる社会を構築するためには、国が一律で進める公助としての福祉事業と共助としての保険制度による医療や介護の提供に加えて、地域の自主的な活動による自助と互助の取り組みをあわせた「地域包括ケアシステム」の重要性を一貫して主張してきました。公助と共助に加えて自助と互助を組み合わせながら、新宿区の実情に応じて創意と工夫を凝らし、都市部の先駆的なモデルを構築していくため、本定例会でも地域包括ケアシステムについて、以下6点にわたり質問いたします。 1点目の質問は、地域ケア会議への支援及び人材育成についてです。 地域包括ケアシステムを実現するための鍵は地域ケア会議にあると考えます。そのため、我が会派は前回の定例会でも、現在策定中の「高齢者保健福祉計画・第6期介護保険事業計画」(以下、次期計画)における地域ケア会議の位置づけや目的、効果、実施のための準備について質問しました。これに対して区長からは、次期計画における地域ケア会議の重要性を踏まえた答弁があり、私どもといたしましても深く賛同するものであります。 その上で、地域ケア会議成功の決め手は、新宿区の強みである、区内9カ所に展開し機能拡充された地域型高齢者総合相談センターの情報や能力を十二分に引き出していくことにあると考えております。そのため、起点となる地域型高齢者総合相談センターにとって個別の地域ケア会議の開催が負担にならず、地域課題の把握、地域づくりや地域資源の開発、さらには政策形成へとつなげる有効なツールとするために、区としても地域型高齢者総合相談センターに対する会議開催への支援や人材育成を図るなどの取り組みが必要ではないでしょうか。 中でも、高齢者の個別支援を通じて発見された課題解決に向けて関係機関等とネットワークを構築し、地域課題を集約して地域づくりや政策形成につなげるためには、広い視野や立場を持つゼネラリストが会議に関与すべきであると考えます。そして、私は、その役割を基幹型高齢者総合相談センターの職員に期待するものであります。そう申しますのは、基幹型高齢者総合相談センターの職員がスーパーバイザーのような存在として個別の地域ケア会議に参加し、新宿区全体としての地域ケア推進会議にその内容を集約することができれば、新宿区を俯瞰した上での地域別の選択と集中を促進することも可能であると考えるからです。ただし、そのためには基幹型高齢者総合相談センター職員の人材育成は必須です。 そこで伺いますが、地域ケア会議への支援について、区としてはどのように考えていますか。また、地域ケア会議の開催が負担とならないように、他の連携に関する会議体の統合や再編など、会議の効率化・活性化についてもお答えください。 さらに私は期待を込めて、地域ケア会議に参加するゼネラリストとして、基幹型高齢者総合相談センターの職員にその役割を担ってほしいと考えます。職員の人材育成への取り組みも含めてお聞かせください。 2点目の質問は、医療側からのケアマネジャーと医療現場の連携強化等についてです。 地域ケア会議が効果的に行われるためには、もう一方でケアマネジャーの存在が非常に重要であると考えます。それはとりもなおさず、地域ケア会議の主要な目的の一つがケアマネジャーへのケアマネジメント支援にあるからです。そのためには、ケアマネジャーが抱える困難事例を地域の関係者全体で検討し、課題解決やネットワークを構築することが重要で、中でも医療現場との連携は欠かせません。 新宿区では、他自治体に比べ医療現場との連携は推進されていますが、さらなる強化とレベルアップが必要です。特に福祉側からの呼びかけだけでなく、医療側からの主体的な働きかけが重要ではないかと考えます。 そこで伺います。地域ケア会議の開催やケアマネジャーとの連携強化、さらにはケアマネジャーの育成について、健康部としてはどのような取り組みを考えていますか。御所見をお聞かせください。 3点目の質問は、「生活支援コーディネーター」についてです。 去る7月28日、全国介護保険担当課長会議で「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン」が示されました。これは、要支援者の多様なニーズに、要支援者の能力を最大限活かしつつ多様なサービスを提供する新しい総合事業を実施主体である区市町村が創意工夫の上円滑に実施できるよう、厚生労働省が策定したものです。そのガイドラインの中に、『生活支援・介護予防サービスの開発・発掘のための取組』として「生活支援コーディネーター」の設置が推奨されています。この「生活支援コーディネーター」は、生活支援体制整備事業において地域に不足するサービスを提供する主体間の連携、体制づくり等が主な役割となっており、先ほどの質問で取り上げた地域ケア会議におけるゼネラリストの考えと相通じるものがあると思います。 なお、対象範囲や根拠法は異なりますが、生活困窮者自立支援法では、自立相談支援事業において生活困窮者へのアセスメント、支援計画の作成ほか、社会資源開発、ネットワーク構築等が相談支援員の主な役割になっており、機能的には「生活支援コーディネーター」と重複しているので、地域による支え合いの福祉の可能性を拡大できるとの研究もあります。つまり、高齢者が抱えるさまざまな課題解決に必要な地域資源は、生活困窮者が必要としている包括的な支援と重なる部分が多く、地域福祉という視点から捉えるならば、それぞれの事業がばらばらに展開するのではなく連携して取り組み、必要に応じては兼務も視野に入れた総合的な事業展開も可能だということです。 そこで伺いますが、ガイドランで示された「生活支援コーディネーター」について、区はどのように考えていますか。自立相談支援事業との連携や兼務といった総合的な事業展開の考え方がさらに進めば、高齢者福祉、生活福祉、障がい者福祉をまさに地域で包括的に支援していく仕組みが整うのではないかと考えます。少々話は大きくなりましたが、将来的な展望も見据えた上で、地域ケア会議が持つ「生活支援コーディネーター」的な機能の活用についても検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。御所見を伺います。 4点目の質問は、ニーズ調査についてです。 地域ケア会議と並列で地域包括ケアシステムを実現するためのもう一つの鍵は日常生活圏域ニーズ調査にあると考えます。それは、高齢者の「したい・欲しい」等の主観的な意思や要求より、高齢者の客観的な状況を把握することが正確な事実認識の前提となるからです。特に認知症対策においてはその実態把握が欠かせません。 そこで伺いますが、ニーズ調査についてはどのような考えをお持ちですか。また、認知症対策における実態把握についてはどのような取り組みを考えていますか。お聞かせください。 5点目の質問は、都営住宅における医療・介護拠点の整備についてです。 去る9月7日、NHKスペシャルで「新宿“人情”保健室~老いの日々によりそって~」という番組が放映されました。そこでは、我が会派がこれまでも取り上げきた戸山ハイツにある「暮らしの保健室」を舞台に、担当スタッフが高齢者一人ひとりに寄り添って「人生を充実」させることに心を砕いている様子が描かれていました。 番組の密着取材を受けたある方に私も別途お話を伺ったところ、「住みなれた環境で病と向き合えるのは“暮らしの保健室”のおかげ。地域の方々と日常的に触れ合うことができるので、気力を損なわないでいられる」とおっしゃっていました。ただ、この方がお住まいなのは戸山ハイツではなく、別の都営アパート。もちろん「暮らしの保健室」は戸山ハイツだけが対象エリアではありませんが、高齢化が著しい都営住宅の住民にとっては、自分の住んでいる団地内に医療や介護の機能があったら、というのが正直な思いであると推察します。 これまでも我が会派では、都営住宅の高齢化に対応するため、ソーシャルミックスや団地協議会などの提案をしてきました。また、去る6月2日の参議院本会議では、公明党の秋野公造参議院議員が「団地の建てかえに際して、医療・介護保険施設を誘致して、地域包括ケアシステムの構築に役立つよう再生すべきだ」と訴えたのに対し、安倍首相は、「高齢者が安心して生活できる住まいの確保は喫緊の課題」とし、団地の建てかえ時に医療・介護拠点の整備を進める考えを示しています。 そして、これを受けた国土交通省の重点政策には、「スマートウェルネス住宅・シティ」の新たな展開や、地域居住機能再生推進事業の拡充などが示されました。いずれの事業も事業主体は都道府県であり、基礎自治体ではありませんが、特に地域居住機能再生推進事業は、都営住宅の建てかえに限らず、住宅部分はそのままで医療・介護施設の誘致・併設も対象に含まれています。そのため、このスキームを使えば、「暮らしの保健室」のような機能をPFIに代表されるPPP等を活用して、高齢化が著しい都営住宅の敷地内に設置していくことも可能になるのではないかと考えます。 なお、区営住宅の高齢者対策に関しては、国土交通省よりも厚生労働省の事業スキームを活用したほうがよいと考えますので、また別の機会に提案したいと思います。 以上、高齢化の著しい都営住宅における医療・介護拠点の整備として、地域居住機能再生推進事業の活用を区としても都に働きかけるべきと考えますが、いかがでしょうか。御所見を伺います。 6点目の質問は、成年後見制度についてです。 地域包括ケアシステムを最終的に補完するものが、私は成年後見制度だと考えます。特に認知症高齢者の増加に対応するためには、高齢者の資産の適切な管理など成年後見制度の取り組みについて、市民後見人の育成や、その活動を支援する地域の権利擁護機関の整備が重要です。また、現時点での課題として、資力がないために成年後見制度を利用できない方への支援も急がれます。さらには、制度の活用を促進するため広報の徹底も重要です。 そこで伺いますが、地域における成年後見の担い手である市民後見人の育成についてどのように考えていますか。 また、現在、区長申し立て案件に限定している報酬助成制度については、親族申し立て等の案件まで早急に拡大すべきと考えますが、いかがでしょうか。同様に、申し立て時の負担を軽減するため申し立て費用助成制度を創設すべきと考えます。これら助成制度についてお答えください。 さらには、助成制度とあわせて制度の周知を徹底し、利用を促進すべきと考えますが、いかがでしょうか。御所見をお聞かせください。 以上、御答弁願います。 ◎区長(中山弘子) 地域包括ケアシステムについてのお尋ねです。 まず初めに、地域ケア会議への支援についてです。 地域ケア会議については、平成27年度の本格実施に向けて、現在地域型高齢者総合相談センターにおいて試行的に実施をしているところです。区では、この地域ケア会議への支援として、基幹型及び地域型高齢者総合相談センターの職員をメンバーとする地域ケア会議推進PTを立ち上げました。PTでは、地域ケア会議で取り上げるケースの選定方法などの情報交換を行うとともに、区が示した地域ケア会議運営マニュアルに沿った効果的な会議開催が可能となるよう支援を行っております。 今後は、地域型高齢者総合相談センターが主催する各種連絡会議の役割を整理して、地域ネットワーク構築を目的とする会議について、地域ケア会議への再編を検討してまいります。 次に、職員の人材育成についてです。 今年度は地域ケア会議開催のためのファシリテーター養成研修を実施し、職員の会議運営能力を高める取り組みを行っているところです。また、基幹型高齢者総合相談センターの職員は、OJTを通じて高齢者支援のスキルアップを図るとともに、多職種連携の取り組みを通じて関係機関とのネットワーク構築を進めております。地域ケア会議に参加する際には、これらのネットワークを活かすことにより個別ケースの課題解決への支援のみならず、発見された地域課題を区全体の地域包括ケアの充実につなげる役割を担うことができるものと考えております。 次に、医療職とケアマネジャーとの連携強化や育成への取り組みについてのお尋ねです。 区では、平成21年度から区立訪問看護ステーションに在宅療養相談窓口を設置して、医療に関してケアマネジャーからの相談を受け、サポートを行ってまいりました。また、医療職とケアマネジャーの連携強化や人材育成については、病院職員とケアマネジャーの連携や知識向上のための会議や研修を実施してきました。 今後は、在宅療養相談窓口を担う区立訪問看護ステーションを基幹型の訪問看護ステーションに位置づけて、地域ケア会議等に主体的にかかわり、在宅療養ニーズを的確に把握した支援を行ってまいります。 連携強化に関する具体的な取り組みについては、今まで急性期病院で実施してきた病院とケアマネジャー等介護関係者の連絡会を地域の一般病院や診療所も含めて実施します。また、ケアマネジャー、ヘルパー、医師、歯科医師、看護師、栄養士等、多職種が連携した摂食・嚥下機能支援事業等を実施します。 人材育成については、施設も含めた多様な在宅療養の場に対応していくため、医療知識や技術の研修を充実させ、ケアマネジャーの支援に努めてまいります。 次に、生活支援コーディネーターについてのお尋ねです。 生活支援コーディネーターには、高齢者の生活支援、介護予防サービスの体制整備を推進していくことを目的に、生活支援の担い手の養成やサービスの開発、ニーズとサービスのマッチング、関係者のネットワーク化などの役割があります。生活支援の担い手の養成やサービスの開発については、元気な高齢者を初め区民が担い手として参加する住民主体の活動への支援や、社会福祉協議会、NPO、シルバー人材センターなどの多様な主体によるサービス提供体制の構築など、地域の支え合いの体制づくりを区が中心となって推進していく必要があると考えています。また、ニーズとサービスのマッチングや関係者のネットワーク化などを図るためには、地域の中でコーディネート機能を持つ団体等が役割を担うことでより効果的な取り組みが可能であると考えているものです。 なお、地域ケア会議が持つ高齢者ニーズや地域資源の状況把握などの生活支援コーディネーター的な機能は、今後のコーディネート業務の実施に際して生活支援サービスの開発や関係者のネットワーク化に活用することができると考えております。 次に、ニーズ調査についてのお尋ねです。 ニーズ調査は、地域や高齢者の課題をより的確に把握するための手法として、特に日常生活圏域ごとに介護の必要な高齢者が抱える課題に対応したサービスを施策に反映させるなど、事業計画の策定に活用できるツールであると考えております。 認知症対策における実態把握については、次期計画の中で、認知症の方の症状の進行に合わせ、いつ、どこで、どのような医療・介護サービス等を受けることができるかを示した「認知症ケアパス」を作成する予定です。その際には、日常生活自立度別に認知症高齢者の介護保険サービス利用状況を把握するなど、日常生活圏域ごとに社会資源の利用状況について実態を調べてまいります。 次に、高齢化の著しい都営住宅における医療・介護拠点の整備として、区は、地域居住機能再生推進事業の活用を東京都に働きかけるべきではないかとのお尋ねです。 地域居住機能再生推進事業は、高齢化や人口減少などへの対応を目的として平成25年度に国が創設した補助制度です。この補助制度は、地方公共団体などが大規模団地の建てかえや既存住宅団地の活用にあわせて、在宅療養支援施設などの医療・介護拠点を整備するといった地域居住機能の再生に対する取り組みを支援するものです。区としては、高齢者が住みなれた地域で安心して暮らし続けられるまちづくりを進めるため、東京都にこの事業の積極的な活用を働きかけてまいります。 次に、成年後見制度についてのお尋ねです。 まず、市民後見人の育成についてです。 平成12年4月に成年後見制度が開始され14年が経過し、年間申し立て件数は全国で約9,000件から、平成25年には約3万5,000件と増加を続けています。こうした需要の増加に対して、制度の担い手である成年後見人をいかに確保していくかが大きな課題となっています。中でも、被後見人に身近な地域住民としての立場から、本人に寄り添ってきめ細やかな見守りと支援を担う市民後見人の育成がますます重要になってきています。 区では、市民後見人の育成について、制度に対する理解があり、成年後見人としての活動に熱意がある人材を発掘していくことが重要であると考え、本年度よりこうした人材を幅広く公募して市民後見人養成基礎講習を開始します。今後も基礎講習を委託する社会福祉協議会と連携して、計画的に基礎講習から受任後の支援まで一貫した市民後見人の育成に努めてまいります。 次に、区長申し立てに限定している報酬助成制度の拡充と申し立て費用助成制度の創設についてのお尋ねです。 現在、区長申し立て案件に限定した成年後見人、補佐人、または補助人に対する報酬額の助成制度として、特別養護老人ホーム等の施設入所者については月額1万8,000円を、その他は月額2万8,000円を限度に助成をしています。しかし、本人や親族による申し立て案件で成年後見人等に対する報酬の費用負担が困難なケースについて、成年後見制度が安心して利用できるよう、報酬助成制度を区長申し立て案件以外にも拡充していく予定です。さらに、申し立ての際にかかる諸費用及び家庭裁判所が必要に応じて医師に鑑定依頼する鑑定料の負担が困難な方に対し、申し立て費用を助成する制度を創設していきたいと考えております。 次に、成年後見制度の利用促進に向けた周知についてです。 本年度、制度利用に対する手続や費用負担について、パンフレットの内容をよりわかりやすく充実させ、制度の理解と事業の周知に活用しています。さらに出前講座をふやすとともに、入門講座や任意後見講座などを充実させ、多くの方の参加をいただいています。 今後も窓口相談や出張相談を含め、あらゆる場や機会を捉え、制度利用促進に向けた周知・普及に努めてまいります。 ◆9番(豊島あつし) 質問の第4は、新宿駅周辺整備についてです。 新宿駅周辺整備は、東西自由通路の工事が2012年9月から着工され、南口では新宿交通結節点とともにJRの(仮称)新宿駅新南口ビルが姿をあらわし、南口地区基盤整備事業が大詰めを迎えています。回遊性の向上と新たな交流拠点を備えた魅力あるまちづくりの全容に期待が高まります。 そこで、4点にわたり質問いたします。 1点目は、各事業の整備完了についてです。 東西自由通路は、使用開始予定が2020年、まさに東京五輪の年であり、南口地区基盤整備事業は2015年度内に完成予定となっております。工事の進捗状況は折に触れて伺ってはおりますが、それぞれが困難を伴う大工事であることや、近年、建設業界を取り巻く環境の激変もあり、工期のおくれなどが憂慮されるところです。新宿駅を利用する多くの皆様の期待に応えるためにも、予定どおりの完了を国やJRに強く要望していただきたいものです。南口地区基盤整備事業については、区から国土交通大臣に要望された旨聞き及んでおりますが、その状況もあわせてお聞かせください。 2点目は、観光交流拠点の設置についてです。 新宿駅周辺への観光案内所の設置についてはかねてより要望してまいりましたが、新宿観光振興協会も設立され、東西自由通路も視野に入れたコンシェルジュとしての観光拠点への検討が進むものと楽しみにしております。しかし、既に海外からの観光客も増加しており、早期の観光案内所の設置が待たれます。折しも南口地区基盤整備事業の完了に伴い、地元の皆様から、回遊性をより効果的にするためにも甲州街道跨線橋高架下に観光交流拠点の設置を求められております。高架下の有効利用は、地域活性化の起爆剤にもなり得るものです。高架下の観光交流拠点設置について御所見をお聞かせください。 3点目は、新宿駅東南口の喫煙所についてです。 東南口では、障害者や高齢者、乳幼児を連れた親子連れの方が利用するエレベーターの通路脇に喫煙所が設置されています。その副流煙に対する不安や心配の声が多数寄せられており、以前から撤去や移動なども含めて検討を要望してまいりました。区でも、植え込みによる仕切りに切りかえましたが、ほとんど効果は見られません。区は、国道管理事務所やJTと協議を重ねてこられたと思いますが、間もなく南口地区基盤整備事業の完了に当たり、国道用地の交渉など移転も可能かと思われます。喫煙所対策について御所見をお聞かせください。 4点目は、自転車駐輪場と自転車走行レーンの整備についてです。 近年、健康増進や環境に優しい乗り物として自転車利用者の増加は著しいものがあります。しかも、東京五輪では安くて移動手段の便利な自転車利用者がふえるであろうことは言うまでもありません。4月には、超党派国会議員で構成される「自転車活用推進議員連盟」が都知事を訪問して、東京五輪開催に向け自転車活用の環境整備を要請し、知事も前向きな姿勢を表明しました。 そこで、駐輪場対策について伺います。 区においては、駅に近い駐輪場に配置転換をしたり、一時利用や民間に委託するなど、年々利用しやすい駐輪対策を講じてきたことを評価いたします。新宿駅周辺においては、西口、東口とも整備台数を広げていますが、西口に比べて、今後開発が続く東口、東南口には自転車駐輪場の拡大の余地があると思われます。東京中に観光用のレンタルサイクルが増加すれば、一時的にせよ、その対策も課題になります。駅周辺の駐輪場対策について御所見をお聞かせください。 次は、自転車走行レーンについてです。 さきに述べた「自転車活用推進議員連盟」は、国や五輪開催の自治体に対して五輪会場周辺道路に自転車走行レーンを設けるなどを要請したところ、知事は走行レーン拡張や走行環境についても実現に向け意欲的な姿勢を示しています。そうした観点からも、国立競技場と主要駅である新宿駅を結ぶ走行レーンは重要なポイントです。社会実験などを行えば、あっという間に2020年を迎えます。早急に都と検討を行うべきと考えます。御所見をお聞かせください。 以上、御答弁願います。 ◎区長(中山弘子) 新宿駅周辺整備についてのお尋ねです。 新宿駅周辺では、現在、東西自由通路や南口地区基盤整備事業等が進められています。御指摘のとおり、東西自由通路は東京オリンピック・パラリンピックの開催と時を同じくする2020年に使用開始予定であり、南口地区基盤整備事業とJR新南口ビルは2015年度の完成と聞いております。こうしたプロジェクトは、新宿駅周辺の歩行者の回遊性や駅の交通結節機能を高めるとともに、にぎわいの拠点づくりに寄与するものであり、歩きたくなるまち新宿を実現するためには、予定どおり着実に整備していくことが不可欠です。 このことから、私は、7月10日に太田国土交通大臣にお会いして、南口地区基盤整備事業について、必要な予算を確保して予定どおり2015年度に完成することや、高架下空間を観光交流拠点づくりに活用できる基盤整備を行うことなどを要望いたしました。これらの要望に対して国土交通大臣からは、実現に向けて取り組んでいくとの回答をいただきました。 今後も引き続き、東西自由通路や南口地区基盤整備事業が安全に、かつ予定どおり完成するよう、国やJR東日本に強く要請してまいります。 次に、観光交流拠点の設置についてのお尋ねです。 新宿のまちの魅力をより多くの方々に発信していくためには、来街者のニーズにきめ細かく対応できる観光案内所の設置が必要です。区としては、最も来街者の多い新宿駅周辺に事務所と案内所を一体化した観光案内所を設置したいと考えており、現在進められている新宿駅東南口再整備にあわせ、建設可能な区域などの詳細について国道事務所と具体的な協議を行っているところです。東南口以外の観光案内所については、駅周辺の再整備に当たり、効果的な場所に展開できるよう、今後も関係者との協議を進めてまいります。 次に、東南口の喫煙所についてのお尋ねです。 御指摘のとおり、現在の喫煙所はエレベーターの通路脇に設置されているため、受動喫煙に関するさまざまな苦情が寄せられています。現在、植え込みによる喫煙区画の明確化や灰皿設置位置の変更など受動喫煙の防止に努めていますが、まだまだ十分とは言えない状況です。 このため、抜本的な対策として、現在行われている新宿駅南口地区基盤整備事業にあわせ、甲州街道跨線橋高架下への喫煙所移転に向けて国との協議を進めているところです。設置に当たっては、日本たばこ産業株式会社の協力のもと、十分な受動喫煙防止対策を講じ、喫煙所の設置に取り組んでまいります。 次に、自転車駐輪場と自転車走行レーンの整備についてのお尋ねです。 初めに、新宿駅周辺の駐輪場対策についてです。 区では、新宿駅周辺の駐輪場対策として、これまで路上自転車駐輪場や自転車等整理区画など、合計1,461台の駐輪施設を整備してきましたが、自転車総合計画で定めた整備目標量には達していない状況です。そのため、今年度は新宿駅西口の歩道上に一時利用ができる自転車駐輪場を135台整備する予定です。さらに、新宿駅東南口では、現在甲州街道新宿跨線橋のかけかえ工事が行われており、この工事によって創出される高架下空間を活用して駐輪場を整備することとし、関係機関と協議しています。 今後も区では、公共用地等を活用して駐輪場を整備するほか、駅周辺で開発等が行われる際には関係事業者に働きかけ、駐輪場を確保してまいります。 次に、自転車走行レーンについてです。 2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの際には、東京を訪れる多くの観光客などが自転車を移動手段として利用することが想定されます。このため、東京都は、本年6月から臨海部を中心に配置される競技場や東京スカイツリー、浅草・浅草寺などの観光地を結ぶ自転車走行ルートについて、国や関係区市、警察と検討を始めたところです。新宿区も国立競技場の地元区としてこの検討に参加しています。 御要望の国立競技場と新宿駅を結ぶ自転車走行レーンについては、現在のところ検討の対象となっていないことから、今後、検討の進捗状況を見ながら、必要な時期に東京都へ要望してまいりたいと考えております。 ◆9番(豊島あつし) 質問の第5は、JR新大久保駅のバリアフリー化の早期実現についてです。 新宿区は、平成17年4月に策定した交通バリアフリー基本構想に基づき、鉄道駅のエレベーターの設置に対して補助を行い、積極的にエレベーター等の設置を進めてきました。そして、平成20年から平成23年の第一次実行計画には、西武線下落合駅やJR大久保駅、新大久保駅の3駅のエレベーターの設置を計画しました。この計画期間内に西武線下落合駅やJR大久保駅のエレベーターの設置は完了したものの、JR新大久保駅のバリアフリーの実現には至りませんでした。 JR東日本は、新大久保駅のエレベーター設置までの代替措置として、平成23年3月に階段昇降機(エスカル)を設置しましたが、新大久保駅はJR山手線で唯一エレベーター設置によるバリアフリー化がなされていない駅であります。私のところにもエレベーターの早期実現に対する要望の声は日ましに強くなっています。 また、大久保地域は、区長就任以来一貫して多文化共生のまちづくりを推進し、今では全国でも有名な観光地となっており、乗降客の数も増加傾向にあります。また、JR新大久保駅はことしで開業100周年を迎え、大きな節目の年となり、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた都市のバリアフリー推進の機運も高まっています。我が会派も、JR新大久保駅を初め、区内の鉄道機関や道路、施設等のバリアフリー推進を繰り返し訴えてきました。 ここでお伺いいたします。これまでも区はJR新大久保駅のバリアフリー化の早期実現に向けて取り組まれてきたことは承知していますが、現在の進捗状況はどのようになっているのか。2020年東京オリンピック・パラリンピック開催までにバリアフリー化を目指すべきと考えますが、御所見をお聞かせください。 以上、御答弁願います。 ◎区長(中山弘子) JR新大久保駅のバリアフリー化の早期実現についてのお尋ねです。 区では、高齢者や障害がある方など、誰もが安心して駅を利用できる人に優しいまちづくりが大切であると考えており、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて区内の全ての駅でエレベーター設置によるバリアフリー化が実現するよう、鉄道事業者に強力に働きかけているところです。 新大久保駅については、JR東日本から、「敷地境界の問題が解決したため、駅舎の建てかえも含めエレベーター設置によるバリアフリー化をできる限り早期に実施するよう検討している。」と聞いております。区としては、JR東日本と具体的な協議、調整を行い、新大久保駅のバリアフリー化が一日も早く実現するよう取り組んでまいります。 ◆9番(豊島あつし) 質問の第6は、特別支援教室構想モデル実施についてです。 近年増加している発達障害のある児童への対応として、新宿区では、平成27年度に新たに開設される通級指導学級とあわせて、特別支援教室構想のモデル実施が行われることになりました。私ども区議会公明党は、これまでも東京都のモデル事業への応募、通級指導学級の地域バランスを考慮した増設計画や支援体制の強化、保護者への啓発活動など、発達障害のある児童・生徒への支援を一貫して主張しており、モデル実施に踏み切った区の決断に大きな期待を寄せるものであります。 しかし、御承知のように、この構想は新しい取り組みであるがゆえ試行錯誤が多く、幾つかの課題点も内在しております。それでも、モデル実施とはいえ、子どもたちの成長に大きくかかわることだけに絶対失敗は許されません。まして平成28年度からは東京都特別支援教育推進計画第三次実施計画にうたわれた特別支援教室構想が小学校において順次導入されるため、モデル実施の成否は今後の特別支援教育に大きな影響を与えるものです。 そこで、これまで幾つかの自治体での事例を視察し、懸念が持たれる事項について、以下4点にわたり質問いたします。 1点目の質問は、隣接校における通級指導学級の教員の所属意識についてです。 特別支援教室構想は、通級指導学級が設置されている拠点校の教員がブロックを形成している隣接校に派遣され、巡回し指導を行う体制になっています。仕組みが成功している事例を詳しく検証すると、隣接校での取り組みが非常に重要であるように思います。 そこで、順調に実施している隣接校を見てみると、幾つかの特徴がありました。その1つが隣接校に派遣された教員の所属意識です。拠点校と隣接校では、基本的には支援の内容について大きな差があってはならないと考えます。そうでなければ特別教室支援構想の「『子どもが動く』から『教員が動く』へ」というコンセプトを実現することは難しいと思うからです。もちろん機能の違いとして小集団指導など異なる部分は出てきますが、少なくとも教員の意識としては拠点校と隣接校で違いがあってはならないと考えます。そのため、ある自治体では、隣接校に派遣された教員は、その日だけは隣接校の教員として、当該校の名前の入った自身のネームホルダーをつけて当該校長の指揮系統のもとに巡回指導を行います。全ては子どものため、隣接校の児童が安心して指導を受けられるようにするためにも、教員の所属意識や指揮系統が小さいことのようで実は非常に大事な視点だと思います。 そこで伺いますが、拠点校から隣接校に派遣される教員の所属意識や指揮系統についてはどのように考えていますか。お聞かせください。 2点目の質問は、支援体制の見直し、組みかえについてです。 新宿区では、発達障害のある児童・生徒に対する教員の指導の補助やその他の必要な支援を行うため、区の費用負担で派遣する非常勤講師として特別支援教育推進員を設置しています。第二次実行計画では当初20名だった特別支援教育推進員を、平成27年度までに28名までの増員を目標に掲げ、着実に実施していることに対しては高く評価いたします。ただ、平成28年度に控えている特別支援教室構想の順次導入を鑑みると、28名の特別支援教育推進員の体制では不安が残ります。しかし、やみくもに体制を増員することだけが解決方法ではないことは十分承知しております。 そこで、特別支援教室構想の導入を円滑にするために、これまでの支援体制全てを見直して組みかえを行うことで、全体の規模をできるだけ変えずに再構築を図ることができるのではないかと考えます。今回、その視点から提案するのが、学習指導支援員と特別支援教育推進員を一体化させた支援体制の構築です。 学習指導支援員は、学校運営のさまざまな課題への対応を支援し、子どもの実態に応じたきめ細やかな指導を行うために、特別支援教育推進員と同じく区の費用負担で各学校に配置されている非常勤講師です。平成24年度から確かな学力推進員より名称変更し、また、平成25年度からは連携教育推進員の機能も統合して、現在58名が配置されています。もちろん、職務は全く同じではありませんが、これからのインクルーシブ教育を見据えれば、学習指導支援員と特別支援教育推進員を別々に配置するよりも同じ支援として一体化すれば、平成28年度からは86名の支援員を、中学校も含め1校当たり2名の支援員を割り当てることができます。これを仮に拠点校1校、隣接校2校の3校1ブロックで特別支援教育構想を小・中全校で実施した場合、1ブロックには合計6名の支援員がいるのに、このうちの半分、3名を巡回指導に同行するとすれば、通級の教員2名と合わせて5名体制で巡回・指導することができると考えます。 そこで伺いますが、特別支援教室構想における教員への支援体制についてはどのように考えていますか。学習指導支援員と特別支援教育推進員を一くくりにして柔軟な対応を可能とする再編成についての考えもお聞かせください。 3点目の質問は、教員間の連携と特別支援教育コーディネーターの支援・育成についてです。 所属意識のほか、成功している隣接校の特徴として、通級の教員が派遣される日を学校が上手に活用している点も挙げられます。例えば、教員が来る日をスクールカウンセラーが派遣される日に合わせて、その日は担任の先生も加わって三者で顔を突き合わせて毎回情報共有を行っている隣接校がありました。当然、このような取り組みができるのは、個別指導に教育相談室を充てていないなど施設の状況によるところが大きいと思いますが、スクールカウンセラーも含め、教員間の連携は、できるだけ顔の見える関係であることが理想であり、それは拠点校でも同じだと思います。 また、成功事例の特徴に、こういった教員間の連携が上手に行えている背景には、必ず優秀な特別支援教育コーディネーターが存在していることが挙げられます。優秀な人材を確保することは難しいかもしれませんが、十分な支援と育成を行えば効果的な教員間の連携は可能だと思います。 そこで伺いますが、拠点校及び隣接校における通常級の担任と通級指導学級の教員、そしてスクールカウンセラーなど、教員間の連携についてはどのように考えていますか。また、こういった連携の鍵を握る特別支援教育コーディネーターの重要性については、どのような認識を持っていますか。さらには、ブロックごとにスーパーバイザーのような役割を設置し、特別支援教育コーディネーターのサポートや育成を行ってみてはいかがでしょうか。私は、この機能を、巡回指導・相談を行っている専門家による支援チームに再編も含め、担わせることができるのではないかと考えます。この点についても御所見をお聞かせください。 4点目の質問は、啓発活動についてです。 モデル実施に当たって啓発活動が重要であることは言うまでもありません。しかし、啓発活動の対象がモデル実施のブロック内だけでは十分ではないと考えます。なぜならば、当事者の認識というものは、それを取り囲む周辺の認識に大きな影響を受けるからです。そのため、広告の世界では、あえてターゲット以外の対象に対しても訴求することがあります。特に流行のように社会現象となる事象は、全て当事者以外の認識によって形成されています。ここで私が言いたいのは、ブロック内の教員や保護者の啓発はもちろん、ブロック外の教員や保護者、あるいはブロック内の地域の方々など、周辺の認識をしっかりと形成することが大事であるということです。 先ほどまでは成功している隣接校の事例を紹介してきましたが、失敗している隣接校の事例では、地域や保護者の理解が乏しいため、在籍校では支援を受けずに拠点校にある通級指導学級に子どもを通わせている。そのため、隣接校で支援を受けている児童が非常に少ないというケースもあります。一方で、成功している隣接校では、地域や保護者の理解は深いのですが、それは地域内だけ特別に積極的な啓発活動を行ったからではなく、その地域の土地柄や歴史的背景に起因しているところが大きいとのこと。私は、この事例から、啓発活動はピンポイントで行うよりも周囲の認識の醸成が重要であるとの示唆を得ました。 そこで伺いますが、モデル実施における啓発活動についてはどのように考えていますか。私は、ブロック内の関係者はもちろん、新宿区全域での啓発活動も考慮すべきと考えます。もちろん、効果的に行うため、段階的にエリアを分けることも必要だとは考えますが、モデル実施の前に一通り新宿区全域での啓発は行うべきではないでしょうか。区のお考えをお聞かせください。 以上、御答弁願います。
    ◎教育長(酒井敏男) 特別支援教室構想モデル実施についてのお尋ねです。 初めに、教員の所属意識や指揮系統についてです。 特別支援教室モデル実施では、拠点校の教員が同じブロック内の隣接校を巡回し、対象の児童に対して指導を行います。巡回指導を行う教員の服務等の取り扱いについては、教員の任命権者である東京都教育委員会と協議しながら、所属や指揮系統などの具体的な事項を今後検討してまいります。 現時点では、巡回指導を行う教員は拠点校の所属となり、巡回の際には巡回先の校長の指揮系統のもとに指導を行うことを想定しています。巡回指導を行う教員自身が隣接校の一員であるという意識を持って指導に当たることはもとより、隣接校の教員に対しても巡回指導を行う教員が特別支援教育を行う同じ学校の教員であるという意識づけを促すよう指導をしてまいります。 次に、支援体制の見直し、組みかえについてのお尋ねです。 特別支援教育構想の実施に当たっては、巡回指導を行う教員が多様なケースに適切に対応できるよう支援していく必要があると考えています。そのために、今後はニーズに応じた専門家を拠点校に派遣し、多様な対象児童の特性に応じた課題設定、指導方法などについて助言を行う体制を整えてまいります。 次に、学習指導支援員と特別支援教育推進員の統合についてのお尋ねです。 学習指導支援員は、学校運営のさまざまな課題への対応を支援するために配置されています。少人数指導や習熟度別指導などを通して、特別な支援を要する児童・生徒に対してもきめ細かな指導を行っています。特別支援教育推進員は、学校が作成する個別指導計画に基づき学級担任の指導への補助を行っています。 巡回指導の実施に当たっては、特別支援教育推進員にも巡回体制に一部加わっていただくなどの見直しが必要であると考えていますが、学習指導支援員と特別支援教育推進員の役割分担と連携は、今後も円滑な学校運営に必要です。したがいまして、両者の統合は現在のところ考えておりません。 次に、教員間の連携についてのお尋ねです。 拠点校の教員による巡回指導の大きなメリットの一つに、対象児童の在籍学級担任と巡回指導を行う教員との連携がこれまで以上に綿密に行われることがあります。週2回程度の巡回の機会に、指導による児童の変容に関して直接情報交換をしたり、指導方針について細かく打ち合わせをしたりすることが可能になります。教員だけでなく、隣接校のスクールカウンセラーとも情報を共有し、児童の発達という視点から効果的な指導方法の話し合いを行うことができ、教員間の連携の上に、より効果的な指導が実現できると考えております。 次に、特別支援コーディネーターの重要性についてのお尋ねです。 特別支援教育コーディネーターは、校内委員会の企画・運営、関係機関との連絡・調整、保護者からの相談窓口など、校内の特別支援教育の推進に重要な役割を担っております。巡回指導の実施においても、拠点校と隣接校との連絡調整など、特別支援教育のコーディネーターの果たす役割はとても大きなものがあると認識しています。 特別支援教育コーディネーターがそれぞれの力量を十分に活かすためには、校長がコーディネーターの重要性を理解し、適切な人材を指名するとともに、校内においてリーダーシップを発揮することが大切であると認識しています。教育委員会としても、校長を対象とした研修体制を充実させるとともに、各校コーディネーター対象の「特別支援教育研修会」の内容の充実を図りながら、区全体のコーディネーターの資質向上に努めてまいります。 次に、特別支援教育コーディネーターのサポートや育成についてのお尋ねです。 特別支援教室の実施に当たっては、拠点校を中心としたブロックごとの研修体制の充実が重要であると捉えています。今後、現在組織されている「専門家による支援チーム」の見直しを行い、さきに述べたようなニーズに応じた専門家を拠点校に派遣し巡回指導を行う教員への指導・助言を行います。また、あわせて特別支援教育コーディネーターへのサポートや育成を行うことで、さらなる特別支援教育の充実に努めてまいります。 次に、モデル実施に当たっての啓発活動についてのお尋ねです。 特別支援教室への移行に向けては、教職員はもちろんのこと、特別支援教室の利用にかかわらず、全ての児童、全ての保護者が特別支援教室における指導内容や発達障害に対する理解を深めることが必要です。教育委員会では、区内小学校の校長、拠点校・隣接校の教職員、通級指導学級を利用している保護者を対象として特別支援教室の指導体制について説明を行いました。これに加え、教員を対象とした特別支援教育研修資料を作成し、各学校で特別支援教育の研修を進めていく体制を整えているところです。 今後は、発達障害についてわかりやすい資料を作成し、それをもとにPTA連合会などで説明することを初めとして、段階を踏んで保護者や地域住民の方々へ啓発活動を推進してまいります。 以上で答弁を終わります。 ◆9番(豊島あつし) 誠意ある御答弁、ありがとうございました。 最後になりますが、今期限りでの御勇退を表明されました中山区長、3期12年間、本当にお疲れさまでございました。 いただきました御答弁、さらに議論を深めるべく、この後ございます決算特別委員会、同僚議員にその議論を任せまして、私の代表質問を終わらせていただきたいと思います。御清聴大変にありがとうございました。(拍手) ○議長(おぐら利彦) 次に、8番川村のりあき議員。     〔8番 川村のりあき議員登壇、拍手〕 ◆8番(川村のりあき) 日本共産党区議団の川村のりあきです。第3回定例会に当たり、会派を代表して区長並びに教育委員会に質問します。よろしくお願いします。 8月20日に発生した土砂災害で、広島では死者・行方不明者74名、家屋の損壊や浸水も広範囲で起こるという甚大な被害に見舞われました。7月の長野県の土砂災害以降、全国各地で土砂災害や水害が発生しました。亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げ、以下、質問に入らせていただきます。 初めに、区長の政治姿勢について伺います。 私は8月6日、議会を代表して広島の平和記念式典に参加し、平和への思いを新たにしてまいりました。集団的自衛権行使容認の閣議決定後に開催されたことしの広島・長崎の両式典は、閣議決定に対する懸念や批判が表明され、安倍首相と被爆者との懇談で厳しい批判と閣議決定撤回を求められたことが特徴的でした。特に長崎の田上市長が憲法の平和主義に触れ、「『戦争をしない』という誓いは被爆国・日本の原点であり、被爆地・長崎の原点でもある」と述べ、「平和の原点が揺らいでいるのではないかという不安と懸念が急ぐ議論の中で生まれている」と語ったことは、十分な議論を経ないで憲法解釈を変更したことを痛烈に批判したものでした。 区長は、第2回定例会の我が会派の集団的自衛権行使に関する質問に対して、「国民の間でさまざまな意見があり」、「国の安全保障に係る重大な方針変更については、政府が国民に対して十分に説明責任を果たすとともに、広範な議論が喚起されるような状況をつくっていくことが大切」で、「丁寧かつ慎重な対応を図ってほしい」と答弁されました。 7月1日の閣議決定後に行われた新聞各社の世論調査では、安倍内閣の支持率が下がり、不支持は上昇しました。集団的自衛権の行使容認については、反対・評価しない・よくなかったが50%前後に対して、賛成・評価する・よかったが30%台でした。この数字は、国民が納得していない中で閣議決定したことを端的に示しています。区長は、政府が説明責任を果たし、丁寧かつ慎重な対応をした上で閣議決定したとお考えですか。前回の答弁も踏まえてお答えください。 区長の学生時代の恩師である一番ヶ瀬康子氏は、憲法9条を守る科学者の会の設立発起人の一人であり、同会は改憲反対の国民運動を呼びかけています。教え子である区長は、全国的に高い評価を得ている平和マップの作成、吉永小百合さんが出演した「平和のつどい」など平和行事の開催、平和首長会議に参加して「核兵器禁止条約の交渉開始などを求める署名」に取り組むなどしてこられました。区長なりの平和の願いの具現化と受けとめ、私どもも評価をしてきたところです。こうした取り組みは集団的自衛権行使容認とは相入れず、閣議決定に賛成することは大きな矛盾と考えます。改めて集団的自衛権行使に反対を表明すべきと考えますが、いかがでしょうか。お聞かせください。 第2に、国連人種差別撤廃委員会が出した最終見解に関する中山区長の認識を伺います。 2012年から新宿区内では、聞くにたえない人種差別的な言葉や暴力的な表現による反韓・嫌韓デモが繰り返され、人々に不安感や嫌悪感を与えています。また、インターネットの世界でも、韓国・朝鮮人に対する脅迫的な発言・人種差別的な言葉が数多く発信され、差別意識を助長する状況は、今や日本国中に蔓延していると言えます。また、慰安婦問題を否定したり疑問視する発言も、テレビやインターネット等、各種のメディアを通して繰り返されている状況にあります。 このような中、地方議員の組織である「慰安婦像設置に抗議する草莽全国地方議員の会」という組織が、昨年9月に米国内の慰安婦像撤去を求める「抗議文」をオバマ大統領などに送りました。「慰安婦は、当時世界で一般的であった公娼制度のもとで働いていたもので、高額な給与が払われていた」、「強制的に売春行為を強いられた歴史的な事実は存在しません」と書かれています。また、日本会議国会議連所属の国会議員が、慰安婦問題で旧日本軍の関与を認め公式に謝罪した1993年の「河野談話」の検証や見直しを政府に求め、政府は検証しましたが、6月20日、菅官房長官は検証結果を国会に提出し、河野談話の見直しは行わないことを表明しました。 こうした中、8月29日、国連人種差別撤廃委員会が日本における人種差別撤廃条約の遵守状況に関する最終見解を発表し、ヘイトスピーチの規制と慰安婦問題について日本政府に勧告してきたことは記憶に新しいところです。この最終見解は、ヘイトスピーチについて法的規制を行うことや、ヘイトスピーチを行った責任者や発言した政治家などへ制裁を加えることを言及しています。また、「慰安婦」問題についても、日本政府による実態認識や被害者への謝罪、補償が不十分だと懸念を表明した上で、人権侵害の責任者の処罰、謝罪と補償による「慰安婦」問題の永続的解決、「慰安婦」問題を否定する試みを糾弾することも日本政府に求めています。今や日本国内に差別的な意識は蔓延しつつあり、さきに述べた「抗議文」は、「慰安婦」問題を明確に否定する試みであると考えます。こうした動きが国内で繰り返されている中で国連人種差別撤廃委員会が出した最終見解について区長はどう評価しますか。見解を伺います。 ◎区長(中山弘子) 川村議員の御質問にお答えします。 区長の政治姿勢についてのお尋ねです。 初めに、集団的自衛権についてです。 今回の集団的自衛権行使の閣議決定については、その後の報道や世論調査を見る限りでは、丁寧かつ慎重な対応という点で十分でなかったと考えています。自治体の長として、今後国会で進められる法案審議を注視してまいりますが、さまざまな国民の意見がある中で、国の安全保障に係る重大な方針変更について、政府は引き続き国民にわかりやすく十分な説明責任を果たしていくことが必要であると考えます。 次に、国連人種差別撤廃委員会の最終見解に対する区の評価についてのお尋ねです。 御指摘のとおり、人種差別撤廃委員会の最終見解では、ヘイトスピーチに対して「刑法を初めとする法律改正を行う」ことや、「インターネット等、メディアを使ったヘイトスピーチに対して、適切な対応をとる」ことなどの勧告がなされています。 国籍や民族の異なる人々が互いの文化的違いを認め、理解し合い、ともに生きていく多文化共生のまちづくりを推進している中で、ヘイトスピーチが繰り返されることは残念なことです。人種差別撤廃委員会の見解を受けとめ、法規制を含めた国の対応についてしっかりとした議論が必要と考えます。 また、従軍慰安婦についてですが、従軍慰安婦問題は、多くの女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題と認識しており、深い反省に立ち、二度と繰り返してはならない問題と考えております。 8月に出された最終見解では、これらとあわせて移住労働者や人身取引、アイヌ民族の状況等、さまざまな人権問題に対する所見が述べられています。この最終見解には法的拘束力はないものの、人種差別撤廃条約の加入国として誠実に対応していくことが大切と考えます。 ◆8番(川村のりあき) 次に、2013年度決算と区民生活の支援について質問します。 第1は、2013年度決算の評価についてです。 2013年度は、安倍内閣が発足し、アベノミクス3本の矢のデフレ対策が打ち出されるもとで、一部大企業が収益を上げてはいるものの、多くの区民が景気回復を実感するにはほど遠い状況で、震災対策の強化や待機児童解消、高齢者施策の充実などさまざまな課題があり、区長は、将来にわたり健全な区財政の確保を基本に、直面する課題に重点的に取り組み、これからも区民が安心して暮らせる施策を着実に推進する予算として編成されました。 2013年度決算は、実質単年度収支が4年連続赤字から黒字へ転じ、経常収支比率も88.9%から86.5%と減少し、これまでも健全だった区財政はさらに財政力が増していると言えます。歳入が前年に比べふえた要因としては、1月1日現在の人口が3,100人ふえ、納税者人口も4,567人ふえたことなどにより特別区民税が9億2,000万円の増、特別区たばこ税が東京都からの税源移譲により5億4,000万円の増、利子割交付金、配当割交付金、株式等譲渡割交付金により6億円の増となっていますが、これはアベノミクスによる株価上昇と一部企業の収益のよさの反映です。納税者人口の増加も、都心回帰でマンション建設が進み、共働き世帯などが流入してきことが一因ですが、そのことは歓迎すべきこととしても、同時に保育園など新たな行政需要も生まれています。 区長は、2013年度決算についてどのように評価され、また、今後の財政見通しをどのように見込んでいるのかお答えください。 今後、安倍政権は、増税や社会保障制度の改悪を行おうとしており、区民生活は厳しさを増すことが予想されます。区財政が堅調であるならばなおのこと、区民生活の実態に沿った支援策を講じていくことが必要です。 そこで、第2の質問は、区民生活の実態についてです。 私ども日本共産党区議団は、毎年区政アンケートに取り組んでいますが、既に1,680通の回答が寄せられ、現在1,380通まで集計が進んでいます。暮らしに関する設問では「年金が引き下げられましたが、あなたの生活に影響は出ていますか」の質問に対し、「影響が出ている」が52.8%、「住民税や健康保険、介護保険の負担についてどう思われますか」には、「これ以上負担に耐えられない」が60.2%となっています。自由意見でも「年金の引き下げと消費税の増税により、今までとっていた新聞をやめたり食料の量を減らしたりしています(70代女性)」、「今後、30年から40年後の生活に影響があり、生活が保障されなくなることを懸念(20代男性)」、「そもそも年金が受け取れるのか心配。独身だからといって税金を高くされることは困る。お金がないので余計一人でじっとするしかない(30代女性)」など、切実な声です。区長は、区民生活の実態をどのように認識しておられるのか伺います。 第3は、消費税10%への増税をストップさせることです。 先日、私どもが商店会連合会の役員の皆さんと懇談させていただいた際にも、「消費税増税分を価格に転嫁できた商店は20%ぐらいではないか。増税で物が売れなくなっている」というお話を伺いました。 内閣府発表の4月から6月期の国内総生産(GDP)は、前期比年率マイナス7.1%で、特にGDPの6割を占める家計消費は年率マイナス19.0%と、前回の消費税増税直後、1997年4月から6月期、13.2%減を超え、過去20年で最悪でした。ことしの第1回定例会の代表質問に区長は、「安定財源の確保は避けられない課題であり、消費税の税率を引き上げる政府の決定については一定の評価をしています」と答弁されました。しかし、区民の声は、私どもの区政アンケートでも圧倒的に増税反対が多く、先日NHKが行った世論調査でも、「消費税増税について安倍首相はどのような判断をすべきか」という問いに、「予定どおり来年10月、10%に引き上げる」が21%、「引き上げの時期をおくらせる」が37%、「引き上げを取りやめる」が36%でした。こうした世論を区長はどう思われますか。区民生活を守るべき区長として、消費税10%への増税は中止するよう国に要請すべきと思いますが、いかがでしょうか。 第4は生活保護についてです。 生活保護には、2014年7月現在9,152世帯、1万527人、保護率31.6パーミルで、2010年は保護率28.7パーミルでしたから、この5年間を見ても生活の困窮度が増しています。昨年8月、生活保護基準の引き下げによる影響は、減額された世帯が95%で、保護の廃止、停止は7世帯でした。削減は3年間実施されることとなっており、来年度もさらに影響が広がることが懸念されます。削減による区民生活への影響の大きさを見るならば、これ以上の引き下げはやめるよう国に要請すべきと考えますが、いかがでしょうか。 第5は、クーラーの設置費用についてです。 ことしも30度を超える猛暑日が続き、熱中症で入院された方も多数いました。クーラーのない生活保護世帯にとって大変厳しい夏で、「昼はシニア館にできるだけ行くようにしている」などの声を聞きましたが、行くこと自体が困難な方もおられます。熱中症で救急搬送された方は、区内で昨年(5月から9月)、147名、ことしは76名(8月31日現在)となっています。 生活保護世帯に対するクーラー設置費用の貸し付け制度は2011年度から始まり、この間、実績は12件、借りられるのは保護費のほかに年金や就労などの収入がある世帯に限られていましたが、今年度からは制限がなくなり、誰でも借りられるようになりましたが、実績は2件です。この制度について周知すべきではないでしょうか。対象が拡大された反面、年金や就労などの収入を収入認定から除外し、事実上補助されていたのが実際に返済しなければならない制度になってしまったため、そもそも削減された保護費の中から毎月5,000円の返済は厳しく、借りられないというのも実態です。2011年に東京都が行っていた上限4万円のクーラー設置費補助を復活するよう東京都に求めるべきです。それが実現するまでの間、新宿区が助成すべきと思いますが、いかがでしょうか。 第6は、就学援助についてです。 生活の困難さは就学援助児童生徒認定数にもあらわれています。2014年7月31日現在、就学援助を受けている小・中学生は2,703人、約25%で4人に1人となっています。第2回定例会で「就学援助については、来年度以降も削減前の保護費を基準にするようにすべき」との質問に対し、「今後の就学援助の対象については、現行の基準をもとに景気の動向や社会状況などを踏まえて検討していきます」との答弁でした。来年度も引き続き削減前の基準を適用すべきですが、どのように検討したのかお答えください。 あわせて、就学援助の項目を追加することについての提案です。 文部科学省が行った2012年の調査で、子どもの視力低下が過去最悪となり、パソコンや携帯電話など電子メディアの利用時間がふえていることが要因と見られているとの報道があるように、眼鏡を使用する小・中学生がふえています。墨田区では1972年当時、カラーテレビの普及で子どもの視力が低下し、眼鏡を使用する子どもがふえたことをきっかけに、眼鏡の購入費を就学援助の対象とし、現在でも2万200円を限度として援助しています。新宿区の2013年度の検診結果によると、眼鏡の使用率は小学校6年生22.8%、中学3年生26.7%となっています。子育て世帯の支援策として、新宿区としても眼鏡購入費を就学援助の対象とすべきではないでしょうか。 以上、答弁願います。 ◎区長(中山弘子) 平成25年度決算と区民生活の支援についてのお尋ねです。 まず、決算の評価と今後の財政収支見通しについてです。 平成25年度は、震災対策の充実強化など緊急性が高い区政課題に的確に取り組むとともに、適宜予算の補正を行い、区民の健康や安全・安心の確保のため、緊急風疹予防対策や本庁舎免震改修工事等の防災対策の充実強化、保育所建設事業助成などの待機児童解消緊急対策など、緊急性が高く重要な課題に迅速に対応してまいりました。 予算の執行に当たっては、特別区税等の歳入確保や支出における経費節減に努め、第二次実行計画事業を初め、予定された諸事業の着実な推進を図ることができたものと考えております。 平成25年度の決算は、生活保護費などの扶助費が引き続き増となったものの、執行面での経費節減に加え、企業収益や雇用情勢が改善したことで、特別区民税や特別区交付金などの一般財源が増となり、実質単年度収支は5年ぶりに黒字に転じることができました。しかしながら、経常収支比率は依然として適正水準を超える86.5%であり、財政構造が硬直化していることを示しています。また、基金残高は平成20年度末の608億円から43%減となる346億円まで減少しています。財政構造の硬直化や基金残高が減少していることから、引き続き財政基盤の強化に徹底して取り組むとともに、効果的・効率的な行財政運営により、さらなる財政規律の確保に努めていくことが極めて重要であると考えています。 また、今後の財政見通しについては、消費税率10%への再引き上げや高齢化の進行に伴う扶助費等の増など、本区を取り巻く社会経済状況の変化が著しいことから、現段階で見通すことは難しいところですが、社会保障・税一体改革の状況や直近の景気動向等の情報をもとに平成27年度予算を編成するとともに、第三次実行計画を策定する中で計画期間中の財政収支見通しを明らかにしてまいります。 次に、区民生活の実態についてのお尋ねです。 8月の政府月例経済報告では、「景気は、緩やかな回復基調が続いており、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動も和らぎつつある」とする一方で、「駆け込み需要の反動の長期化や海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要がある」と指摘しており、我が国の経済の先行きは依然として不透明な状況です。また、原油価格の上昇や円安による原材料費の高騰に伴う食料品の値上がりなど、今後も区民の暮らしへの影響が懸念されます。このため、区民生活については楽観視することはできず、慎重に見きわめていく必要があるものと認識しております。 次に、消費税率の引き上げについてのお尋ねです。 内閣府が発表した四半期別GDP速報では、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動により、4月から6月期の景気が大きく落ち込みました。7月から9月期の景気についても、悪天候の影響等もあり、期待された回復よりも下回ることが想定されています。今回の消費税率の引き上げをめぐるNHKの世論調査の結果は、こうした厳しい経済状況に対する国民の意識が反映されたものと考えています。 少子高齢化の急速な進展や、国・地方ともに厳しい財政状況のもとで持続的な社会保障制度を構築し、その安定財源を確保する観点から、消費税率の引き上げを行うことは必要であると考えますが、再引き上げに当たっては、厳しい地域経済の状況に配慮するとともに、国・地方を通じて経済状況を好転させる必要があります。また、消費税の逆進性を踏まえた低所得者対策の必要性について全国市長会を通じて要望しているところであり、現段階で消費税率の再引き上げの中止を国に要請する考えはありません。 次に、生活保護についてのお尋ねです。 今回の生活保護基準改定のうち、生活扶助基準については、社会保障審議会生活保護基準部会の検証結果を踏まえ、年齢、世帯人員、地域差の3要素による影響を調整するとともに、平成20年以降の物価下落を勘案して見直されています。また、激変緩和措置として改定幅の限度が10%となるよう調整され、平成25年から3年間かけて段階的に実施されているものです。2年目に当たる本年4月の改定では、平成26年度の民間最終消費支出の見通しの伸び等も総合的に勘案し、プラス2.9%の改定率が盛り込まれました。 今回の生活保護基準の改定については、一般の低所得世帯と均衡を図る適正な判断がなされたものと考えています。したがって、生活保護基準の引き下げをしないよう国に要請することは考えておりません。 次に、クーラーの設置費用についてのお尋ねです。 ここ数年猛暑が続き、熱中症になる方が少なくない状況もあるため、ケースワーク業務の中で貸し付け制度をお知らせしています。 クーラー設置費用の補助制度復活については、昨年度東京都に対し補助協議を行いましたが、生活保護制度で保障される最低生活費については、国の責任において基準を定め、その基準に基づいて適正に支給すべきものであり、クーラーの購入設置費用についても導入と考えるとの理由で承認されませんでした。国に対しては、東京都を通じ毎年要望をしているところです。区独自の対策については考えておりませんが、国と東京都に対して引き続き要望してまいります。 ◎教育長(酒井敏男) 教育委員会への御質問にお答えします。 初めに、来年度に向けての就学援助の所得基準の検討状況についてのお尋ねです。 平成26年度の所得基準については、生活保護基準の引き下げが行われる前の基準額をもとに実施しており、生活保護基準の見直しの影響が及ばないよう配慮をしています。また、来年度以降の対応については、消費税の増税の影響を含めた景気の動向、生活保護基準の次回の改定の状況などをしっかりと把握し、社会経済の状況を踏まえて検討していく必要があると考えています。 次に、眼鏡購入費を就学援助の対象品目に加えることの御提案についてです。 就学援助の対象品目には医療費がありますが、これは感染性や学習に支障を生ずるおそれのある疾病について、その治療のための費用の援助を行うこととされている学校保健安全法に準じたものです。この学校保健安全法においては、視力低下は治療費の対象となる疾病に含まれておりません。こうしたことから眼鏡の購入費を就学援助の対象とはしておりません。 ◆8番(川村のりあき) 次に、国民健康保険について伺います。 第1回定例会の代表質問では、保険料率の値上げが区民生活に大きく影響することを指摘し、持続できる国民健康保険制度にするため広域化に反対するとともに、国と東京都への財政支出を求めました。さらに事態が一層深刻になっていることは、さきの質問で示したとおりです。保険料決定通知書を発送後、2週間の間に2,775件の問い合わせがあり、「保険料が高いのはなぜか」、「分割納付の相談をしたい」との声が多く出されています。厳しさを増す区民の暮らしに寄り添った国保行政を求め、以下、質問をします。 質問の第1は、資格証明書の発行と、「納付相談におみえにならない方」への働きかけについてです。 経済状況の悪化と保険料の引き上げで、平成25年6月1日現在の滞納世帯は3万3,757世帯であり、平成25年10月1日現在の資格証明書の発行は3,952人に上っています。昨年の第2回定例会で、国民健康保険料の資格証明書発行が一気にふえ、区民の健康や受診の権利を脅かす問題と質疑しました。その際、区長からは「相談に結びつけば、ほとんどのケースは分納や無収入の申告により、一般証や短期証に切りかえられたと手応えを感じております」としましたが、「納付相談にお見えにならない方の実態把握については課題の一つと考えており、今後どのような方法が効果的で効率的なのか検討してまいります」とのお答えでした。納付相談に来られない方の中には、ダブルワークやトリプルワークをしており相談に来られない方や、通知について理解できない方も、私が御相談を受けた方の中にもいらっしゃいましたが、深刻な生活実態の方も多く、区長のいう「いのちのネットワーク」を行き届かせなければならない方ではないでしょうか。 そこで区長に伺います。「納付相談におみえにならない方」へのこの間の検討・働きかけの取り組みの状況についてお聞かせください。 質問の第2は、差し押さえについてです。 資格証明書の発行の次に来るのが差し押さえです。差し押さえについては、2013年11月27日の広島高裁の判決で、いわゆる児童手当差し押さえ事件の判決確定がありました。これまで1998年の最高裁の判例で、これは国民年金等でしたが、銀行口座に振り込まれた時点で金融機関に対する預金債権に転化して受給者の一般財産となり、差し押さえ禁止債権としての属性は承継しないという判決がありました。これは新宿区を含め全国の徴税・徴収業務における差し押さえの錦の御旗とも言える判例でしたが、今回の広島高裁の判決では、自治体側が依拠していた最高裁判決を踏まえた上で、「児童手当は預金となった後も差し押さえ禁止債権としての性質を引き継いでいる」という明確な論理で違法が確定となりました。当時の新藤義孝総務大臣からも、「本判決後、本事例の概要等については、地方団体における事務の参考になるよう直ちに情報提供をいたしまして、高裁判決の内容についての周知を図っております」との参議院予算委員会での答弁がありました。差し押さえを禁止する財産としては児童扶養手当や年金なども含まれます。 そこで区長に伺います。広島高裁の判決についてどのように受けとめますでしょうか。また、広島高裁の判決に基づいて差し押さえについては慎重を期し、「納付相談におみえにならない方」への配慮など事前の相談をもって対応すべきと考えますが、区長の考えをお聞かせください。 ◎区長(中山弘子) 国民健康保険についてのお尋ねです。 まず、納付相談におみえにならない方への対応についてです。 区では、これまでもさまざまな御事情から保険料の支払いについてお困りの方に対しては丁寧な対応を心がけてまいりました。保険料をお支払いいただけない場合、まず督促状を送付し、その後、電話番号のわかる方へは電話催告センターから「お支払いのお願い」の連絡をしています。また、職員による年4回の夜間電話催告を実施し、さらに年3回催告書をお送りして納付をお願いしています。 平成26年度から、平日は仕事でお忙しい方のために休日納付相談日をふやし、相談日も休日開庁日に合わせるなどの工夫をした上で毎月実施し、納付相談環境の整備に努めております。 次に、広島高裁の判決と差し押さえについてのお尋ねです。 広島高等裁判所松江支部の判決については、滞納処分を行う際、十分配慮しなければならない司法判断であると認識をしております。また、滞納処分については、これまでも滞納者の方々の生活状況に配慮し慎重に行っているところです。 差し押さえについては、滞納者の方々の日常生活に大きな影響を及ぼす場合がある一方で、被保険者間の負担の公平性を確保する点からも重要な取り組みです。したがって、今後も滞納者の方々の生活実態に配慮し、より丁寧に取り組みながらも、国民健康保険制度の安定的・継続的な運営を確保するために必要な取り組みとして進めてまいります。 ○議長(おぐら利彦) ここで、議事進行の都合により休憩いたします。 △休憩 午前11時58分--------------------------------------- △再開 午後1時15分 ○議長(おぐら利彦) ただいまから、会議を再開します。 質問を続行します。 ◆8番(川村のりあき) 次に、医療介護総合法と高齢者福祉の充実についてです。 安倍政権は、さきの通常国会会期末寸前の6月18日に、いわゆる「医療介護総合法」を強行成立させました。この法律には高齢者を介護サービスから外す問題点があり、全国210の自治体から異議ありの意見書が出されていました。 医療介護総合法の最大の問題は、要支援者向け介護サービスの切り捨てです。5月末現在、区内の介護認定者は1万2,522人、うち要支援1・2の方は4,232人で約3分の1になります。そして、要支援認定された方のうち69%に当たる2,933人が介護予防サービスを利用しています。その要支援者の8割近くが利用している「訪問介護」と「通所介護」を保険給付から外し、市区町村が行う地域支援事業に移行させることに批判が集中しました。 そこで、最初に要支援者の介護サービスについて伺います。 第1に、要介護認定の申請権を確保することについてです。 新宿区では要支援者がふえる傾向ですが、厚生労働省は、要支援者の数を減らせば「専門的サービス」を受ける人の割合を減らせると考え、そのためのツールとして考えられたのが「基本チェックリスト」です。新規の認定申請や更新の際に、区や高齢者総合相談センターの職員に「要支援相当」と判断されると、「基本チェックリスト」の簡易な25の質問項目への回答だけで要介護認定を省略し、地域支援事業サービスを割り振ることが可能となります。要は、認定申請の機会を奪い、水際作戦で要支援者を減らすための対策です。区としては、仮に「基本チェックリスト」を活用するにしても、認定の申請権があることを明確に伝え、申請の権利を奪うことがないようにすべきです。見解をお聞きします。 第2に、「地域ケア会議」についてです。 区は、高齢者保健福祉計画及び第6期介護保険事業計画案の中で、「地域ケア会議」は、「個別事例の検討を通じて多職種協働によるケアマネジメント支援を行うとともに、地域ネットワーク構築につなげるための会議」と位置づけています。また、新宿区のように事業者に運営を委託している場合は、任せっぱなしにならないよう、区が委託方針を示すことが法により義務づけられています。 ところで、厚生労働省が2012年度、2013年度の2カ年で全国13の自治体で実施したモデル事業では、「地域ケア会議」が要介護2以下の介護計画に介入し、「同意」の形をとりながらリハビリ・体操などの予防事業に切りかえ、事実上の介護サービスの縮小、停止を促しました。これは、「地域ケア会議」が自立支援に名を借りて組織的に介護サービスの打ち切りを促し、要支援者、要介護者を保険から追い出す仕掛けです。 新宿区では、今年度から庁内にある基幹型を除く全ての高齢者総合センターで「地域ケア会議」を試行的に年3回程度開催するとしています。運営マニュアルでは、「地域ケア会議」で取り上げる5つのケースの中に、「支援が自立を阻害していると考えられるケース」がありますが、モデル事業のように無理な自立を促して介護サービスの取り上げにならないか心配です。区としての「地域ケア会議」の設置意義をお示しください。 第3に、地域支援事業の担い手についてです。 区は、移行後の地域支援事業の担い手について、既存の介護事業所を軸にしながら、家事援助等はシルバー人材センターや社会福祉協議会等に移行しようとしています。国は、介護ヘルパーが行う「専門的サービス」を、2回に1回はボランティアによる掃除・洗濯等の家事援助にする「効率化」案を示して給付費の抑制を図ろうとしています。これでは専門職の仕事が減り、在宅介護サービスの中心的担い手であるヘルパー事業者の経営とヘルパーの生活が脅かされると思いますが、区は、この点についてはどのように見通しているのか伺います。 もう一方の担い手と期待しているボランティアはどうでしょうか。次期計画の作業部会で、「シルバー人材センターの活用はあり得るが、新宿区のシルバーは男性の登録比率が多く、家事援助などが本当に担えるのか」という疑問が出されましたが、当然の懸念です。区としてボランティアなど人材を確保する見込みや保証はあるのでしょうか。 要支援者の保険外しによる介護給付の抑制策がこのような矛盾を起こします。区は、国に対し、制度の実施撤回を要求すべきと思いますが、以上3点お答えください。 次に、特別養護老人ホームについて伺います。 第1に、特別養護老人ホームの申し込み要件についてです。 5月末現在の特養ホーム入所者数は1,001人で、そのうち92人が要介護1・2の方です。また、5月末現在の区内の待機者は966人で、そのうち261人が要介護1・2の方です。国は、申し込み要件を現在の要介護1以上から3以上にしようとしています。さすがに既存入所者の追い出しはなくなりましたが、今後は真に入所が必要な人が申し込みすらできなくなります。国会の質疑で、要介護1・2でも、知的・精神障害、虐待被害者、認知症で常時見守りが必要など、「やむを得ない事情」がある場合は「特例入所」できることを認めていますが、あくまで例外です。千代田区では、今後も現行どおり要介護1以上の申し込みを受け付けるそうですが、我が区も現行どおり行うべきです。お答えください。 第2に、特別養護老人ホームの増設目標を明確にすることです。 5月末の特養ホーム待機者は、要介護1・2を除いたとしても約700人です。現在開設予定の1カ所だけでは到底待機者は解消できません。区議会も、国や東京都に対し、施設建設のための用地確保補助拡大を要請してきましたが、東京都は9月2日、特養ホームについては、国有地・民有地の借地料補助により整備する事業に対し、新規に初期費用軽減のため借地料の2分の1を5年間補助することと、都有地については7月31日に貸し付け条件の負担軽減策を打ち出しました。これら都の拡充した支援策を活用し、次期計画中に新たな特養ホーム建設計画を持つべきと考えますが、いかがですか。また、例えば戸山一丁目公務員宿舎跡地の国有地や児童相談センター跡の都有地などの情報をしっかり把握し、土地を取得して特養増設を進めるべきと考えますが、以上2点、お答えください。 第3に、特養建設に当たって低所得者対策として多床室を整備することです。 区が整備を進めてきた個室ユニット型の特養ホームは、月に20万円前後の経費がかかり、低所得者は入所できません。低所得者や生活保護受給者には特別の負担軽減があるから入所できるかのように言っていましたけれども、実際に生活保護世帯で個室ユニット型に入所している方はいません。居住費と食費を補足給付するための負担限度額証は、3月末現在805人分発行されていますが、所得区分3の場合でも多床室なら2万9,100円ですが、個室ユニットなら5万8,800円かかり、多床室を待つ方も少なくありません。 北区や渋谷区では、多床室のある特養ホームの新規建設を実現してきています。北区の場合、100床の特養の3割、30床を多床室で対応することを盛り込んだ公募を行い、不足分の建設予算は区が支出しています。新宿区も、今後整備する全ての特養ホームに多床室を整備すべきです。見解をお聞かせください。 ◎区長(中山弘子) 医療介護総合法と高齢者福祉の充実についてのお尋ねです。 初めに、基本チェックリストの活用と要介護認定申請権についてです。 区では、平成28年度から法改正に伴う新しい介護予防・日常生活支援総合事業を実施します。その利用手続の際に基本チェックリストを活用する予定です。基本チェックリストは、相談窓口において必要なサービスを利用できるように本人の状況を確認するツールであり、決して要介護認定申請を制限するものではありません。新しい総合事業の実施に当たっては、その内容や申請手続についての周知に努めるとともに、特に要介護認定が必要な場合には御本人の状況に合った適切な相談を行ってまいります。 次に、地域ケア会議についてのお尋ねです。 地域ケア会議の設置意義は、高齢者への個別支援の検討を通じて課題解決や関係者間の連携強化を図るとともに、高齢者が可能な限り地域で生活し続けるためのネットワークを構築することです。 会議における個別ケースの検討は、介護サービス抑制のためではなく、高齢者それぞれの状況に寄り添って地域ネットワークによる支援を行うために実施するものです。 次に、地域支援事業の担い手についてのお尋ねです。 今回の制度改正に伴う予防給付から地域支援事業への移行については、利用者や介護サービス事業者の混乱を来さないよう段階的に行っていきます。また、新たな地域支援事業においても専門性や経験を持つ介護サービス事業者の役割は大きいものと認識しています。 御指摘の介護サービス事業者やヘルパーの仕事の見通しについては、今後の高齢者数の増加に伴い介護給付の需要増が見込まれることや、地域支援事業においては、提供されるサービス内容に見合った適切な単価を定めていくことで、引き続きサービス提供の担い手として活動してもらえるものと考えます。 次に、ボランティアなどの人材の確保についてのお尋ねです。 新たな地域支援事業においては、元気な高齢者が調理、掃除、買い物代行などの生活支援の担い手となって社会参加する機会をふやしていくことを想定しています。事業推進に当たっては、ボランティアなどの担い手が求められるサービス内容に応じることができるよう、研修の受講機会を設けたり資格取得を奨励するなど資質向上を図りながら、社会福祉協議会、シルバー人材センター等と連携して人材を確保してまいります。 次に、国に対し制度の実施撤回を要求すべきとのお尋ねです。 新しい地域支援事業は介護保険制度内の事業であり、国からの財源措置のもと、多様なサービス提供主体により地域の実情に応じた柔軟なサービス提供をより可能にするものと考えておりますので、国に対し制度の実施撤回を要求することは考えていません。 次に、特別養護老人ホームの申し込み要件についてのお尋ねです。 新たな申し込みの要件では、原則要介護3以上の方を対象とし、要介護1、2の方は特定の条件を満たす場合に限り利用できることになります。現時点での特例入所要件の案は、認知症、知的障害や精神障害、家族等による虐待、単身世帯などにより特別養護老人ホーム以外での生活が著しく困難な状態にあると認められることです。区としては、要介護1、2であることだけで受付をお断りすることはなく、御本人や御家族の状況を丁寧に伺い、特例入所の要件に該当すると思われる場合は申し込みを受け付ける方向で検討をしております。 次に、特別養護老人ホームの増設目標についてのお尋ねです。 平成26年3月実施の「新宿区高齢者の保健と福祉に関する調査」における要支援・要介護認定者調査によれば、「可能な限り自宅で生活を続けたい」との回答が85.6%ありました。このような区民の声も踏まえ、現在、区は、介護が必要になっても住みなれた地域で暮らし続けられるよう、在宅サービスを中心とした「地域包括ケア」のさらなる推進を図っているところです。 一方、特別養護老人ホームについては、これまで「新宿けやき園」、「特別養護老人ホーム神楽坂」、「マザアス新宿」などの施設を積極的に整備してきました。 次期計画期間中の整備については、下落合駅前に定員130人、ショートステイ20人の特別養護老人ホームを建設中であり、平成27年6月に開設予定ですが、そのほかの計画は現在なく、土地の取得も考えておりません。今後、在宅生活が困難になった方のセーフティーネットとしての特別養護老人ホームの整備に当たっては、公有地の活用も視野に入れながら、財政面も含め総合的に考えていく必要があります。 次に、今後整備する特別養護老人ホームに多床室を整備すべきとのお尋ねです。 区は、特別養護老人ホームを在宅生活の延長として捉えており、利用者の尊厳を守りプライバシーを確保する観点から、これまで個室ユニットケアを推進してきました。御指摘の多床室については、現在区が協定を結んでいる多摩地区の特別養護老人ホームと区内の特別養護老人ホームの定員に占める多床室の割合は全体の8割近くであり、新たに整備する予定はありません。 ◆8番(川村のりあき) 次に、待機児童解消と子ども・子育て支援新制度について質問します。 2012年に成立した子ども・子育て支援新制度は、関係者の運動を反映して児童福祉法第24条1項が維持されることとなり、保育に欠ける乳幼児の保護者から申し込みがあれば、区市町村はそれらの児童を保育所において保育しなければなりません。 そこで、第1に待機児童解消について伺います。 保育所のニーズが増大し、待機児童がふえるもとで、区は昨年度4所の認可保育所を増設しましたが、ことし4月も待機児童は昨年並みに生じました。区長がこれを残念に思われていることはさまざまな場で伺いましたが、退任に際しては課題解決の道筋をつけていただくことが必要と思います。区長は、この点についてどのようにお考えか、お聞かせください。 既に来年4月も認可保育園を4所増設する予算が成立しており、新栄保育園建てかえ等による定員増が見込まれていますが、7月の次世代育成協議会に出された資料では、区が3つに地域分けした2つの地域で来年1歳児の需要を満たせない見通しであり、再来年以降は東南地域で全年齢において大量の待機児童が見込まれています。まず来年度に向けた短期的な緊急対策として、小規模保育事業、保育ルームを待機児童が多い地域に早急に複数箇所開設すべきと思いますが、いかがでしょうか。 また、2016年以降の中長期の対策では認可保育園の増設が不可欠です。私どもは幾度も公有地を活用して認可保育園整備を求め続けてきましたが、東京都は本年7月31日に、認可保育所と特別養護老人ホーム整備のための都有地の貸し付け状況を見直して事業者負担の軽減策を打ち出しました。さらに9月2日には、認可保育所設置のために定期借地権の一時金補助の対象を国有地にも拡大し、国有地・民有地への補助基準を引き上げる補正予算案を発表しました。この機を捉え、不足している地域に認可保育園整備のために早急に公有地・民有地を確保して、来年度以降の待機児童をゼロにすべきと考えますが、区長の御所見を伺います。 ところで、ことし4月に賃借物件を活用して開設した3つの認可保育園は、私も委員会視察をしましたが、オフィスビルの2、3階で、窓が閉め切ったまま、中には換気がよくないところもあり、閉塞感は拭えません。園庭もなく、夏のプール遊びはできたのでしょうか。今後開設する認可保育園は園庭を確保し、子どもたちが外で伸び伸び遊べる施設にすべきです。幸い、これから開設される2カ所の認可園は、園庭もしくは目の前に公園がありますが、今後の事業者選定においては園庭の確保を重視すべきと考えます。いかがでしょうか。 第2に、幼稚園の待機児童対策と区立幼稚園廃園計画の白紙撤回について伺います。 保護者、関係者や地域の強い反対で区立幼稚園4園の廃園計画は中断され、区は来年度以降に結論を出すとしています。廃園対象の4園中、戸塚第一幼稚園は今年度4歳児クラスが成立しませんでしたが、早稲田、余丁町の両園は、4・5歳児とも定員に対して8割前後在籍しており、ニーズの高さを物語っています。大久保幼稚園は、戸山幼稚園の休園、東戸山幼稚園の子ども園化で地域唯一の区立幼稚園になり、4園廃園計画はいよいよ理屈に合わないものとなっています。 区が行ったニーズ調査では、3歳児のニーズに対して幼稚園の受け入れ不足が著しく、このまま対策を講じなければ、2017年以降は100名前後の3歳児の待機児童が発生する見込みです。今も区立幼稚園11園中9園が3歳児の定員枠いっぱいの17名が在籍しており、3歳児定員の拡大が求められています。教育委員会は今後、3歳児の幼稚園ニーズにどのように応えていくのか、解決の方向をお聞かせください。 この点では、既設の大久保幼稚園のほか、廃園計画が示された3つの幼稚園に3歳児クラスを増設することを真剣に検討することが迫られていると考えますが、このことも含めてお答えください。 その上、さらに、区立幼稚園でも預かり保育を実施すれば、どこの園でも入園希望者がふえて定員を満たすことは確実です。文京区では、預かり保育の実施により30%程度園児がふえたとのことです。預かり保育を実施することこそ保護者の多様なニーズに応える道だと考えますが、いかがでしょうか。 第3に、子ども・子育て支援新制度の移行について伺います。 1つ目は、区民・保護者への新制度の説明についてです。 区は、区報で3回にわたり新制度の説明をすると文教子ども家庭委員会に報告があり、1回目は8月5日号で主に認定について説明しました。これを読んだだけで新制度を理解できる方がいるとはとても思えませんし、逆に疑問や不安が生じるのではないでしょうか。さまざまな紆余曲折を経て成立した新制度は複雑な内容であり、新しい言葉や定義もあり、全体像を把握するのは容易ではありません。子育て施設ごとに保護者に説明するとともに、区民向け説明会も開催していただきたいと考えますが、区長の見解を伺います。 2つ目は、学童クラブについてです。 学童クラブの設備や運営に関する条例案では、支援員の資格と職員数について国基準に上乗せをし、それ以外は国基準どおりとなっています。現状は、1人当たりの面積基準に照らして定員がオーバーしているのが26カ所中12カ所、在籍児童数がオーバーしているのが12カ所と、二重の条例違反が顕著です。3年生までだった対象を6年生まで広げる条例案ですから、違反がより深刻になることは間違いありません。ニーズに見合う施設整備に早急に着手しなければ、この自己矛盾は解決しません。 新宿区が今回提案している条例案の附則では、1つの支援単位、「おおむね40人以下」を当分の間「60人以下」に据え置くとして、無制限の経過措置が提案されています。条例で定める基準と定員やニーズ量との乖離についての対応も検討中とのことです。これまでも指摘してきましたが、26ある学童クラブ中14が定員超過状態です。この期に及んでもなお解決を先延ばしにするなど断じて許されません。 9月4日付読売新聞都民版では「港区が3施設を新設、既存施設の改修により来年度から定員を908人、約6割増員する。2019年度までにさらに260人以上拡大する」と報道されています。これと対照的に、区は、次世代育成協議会の資料中「学童クラブニーズへの対応について」で、ニーズと定員が大きく乖離しているので、定員の確保方策を検討すると言っています。期限も定めずにこれから検討すると言って誰が納得するでしょうか。港区のように早急に施設整備を決断して事態を解決すべきです。明確にお答えください。 その際、例えば中町児童館は定員30名に対して在籍数59名と、今でもほぼ2倍であり、6年生まで対象が広がればますますオーバー館になることは必至です。愛日小学校建てかえにより、あいじつ子ども園2階の体育館スペースがあくので、ここを学童クラブ室にすれば来春からすぐに定員をふやすことが可能と考えますが、いかがでしょうか。 また、来年4月開設予定の落合第四小学校内学童クラブについては、保護者から防災倉庫活用などニーズ見込み量に見合うスペース確保の要望が出されており、直ちにスペース拡大を図る必要があると思いますが、いかがでしょうか。 保育園の待機児緊急対策では、部や課の枠を超えて全庁的に施設整備の取り組みを進めてきました。学童クラブに関しても同じ位置づけで対策を講じる必要があります。あわせて御答弁願います。 また、同じ資料で、放課後子どもひろばに付加機能をつけたサービスの仕組みを検討するとしています。せいが学童クラブの待機児対策として、落合第四小学校の放課後子どもひろばに付加機能をつけておちよんクラブにして急場を乗り切ろうとした経緯をほうふつとさせます。議会や保護者には、「学童クラブ事業は学童クラブ事業としてしっかりとやっていく」、「学童クラブに入りたい方は全て学童クラブに入っていただきたい」と言いながら、その実、学童クラブをふやさずに、学童の希望者が放課後子どもひろばに行くように仕向ける姑息なやり方との声を聞きます。遊びの場であるひろばと、保護者が就労している児童の生活の場である学童は性格が全く異なり、安易なすりかえのために付加機能をつけるべきではないと考えますが、区長の見解をお聞かせください。 ◎区長(中山弘子) 待機児童解消対策と子ども・子育て支援新制度についてのお尋ねです。 初めに、待機児童解消の課題解決の道筋についてです。 私は、区長就任以来、一貫して待機児童解消を重点施策に掲げ、今年度までに保育所定員を2,200人ふやしたほか、保育ルームや定期利用型一時保育など多様な保育ニーズに対応する事業も拡充してきました。出生数や共働き家庭の増加等により、待機児童ゼロの達成は年々高いハードルになっていますが、待機児童解消緊急対策部会を中心に、年度当初の待機児童数に即応する体制を構築したことは課題解決の道筋の一つとなったと考えます。 今後は、現在作成中の子ども・子育て支援事業計画で、人口推計と次世代育成支援に関する調査、地域別の待機児童の分析等に基づき、平成29年度までに待機児童数をゼロにするという目標を立て、その達成に向けた保育の確保方策を具体的に定めていくことで待機児童の解消を実現することになります。 次に、来年度に向けた短期的な緊急対策としての保育ルームの整備についてです。 区は、来年4月の待機児童ゼロを目指して今年度も認可保育所の追加整備を予定しているところですが、現時点では追加分の開設場所と定員が確定していない状況です。保育ルームの開設については、現在進めている緊急対策の進捗状況を踏まえて判断してまいります。 次に、中長期の対策として、認可保育園整備のために国有地・民有地を活用することについてです。 保育所整備のための土地利用については、このたび国有地や都有地活用の際の減額率が大幅に引き上げられたことや、民有地の賃料補助が手厚くなったことは、区としても好機と捉えております。必要な地域に適切な土地等がある場合には積極的に活用し、保育施設の整備に努めていくことにより、来年度以降の待機児童解消を目指してまいります。 次に、ことし4月に賃貸物件を活用して開設した認可保育園の夏のプール遊びについてのお尋ねです。 保育園の開設に当たっては、十分な採光を確保することはもちろん、建物の構造上、窓が開かない場合には自然換気装置などにより良好な室内環境を保っています。また、近隣の公園での屋外活動なども行っています。この夏、園庭のない保育園でも、自園の敷地や近隣の児童館を活用してビニールプールを設置し、子どもたちがプール遊びを楽しんだとの報告を受けています。 次に、今後の事業者選定において、園庭の確保を重視すべきとのお尋ねです。 区が待機児童解消の緊急対策として進めてきた賃貸物件を活用した保育所整備は、立地や開設可能時期が重要な条件でしたが、同じ条件であれば園庭が確保できる事業案を優先しています。都心において十分な園庭を確保することは簡単なことではありませんが、保育事業者の保育内容の質とあわせて、今後も保育所整備の重要な判断要素としてまいります。 次に、子ども・子育て支援新制度の区民・保護者への説明についてです。 平成27年4月から施行予定とされているこの制度では、新たな仕組みや改正される事項が多岐にわたることは確かですが、利用者の視点から見た場合には直接影響のある部分は限られています。 主な変更点としては、保育園等の入園申し込みとは別に保育の必要性等の認定を受ける必要があることが挙げられます。ただし、例えば保育園の場合、認定の申請は入園申し込みと同時に受け付ける予定で、必要な書類もこれまでと基本的に同じであり、手続の負担が大きくふえるということはありません。利用する保育園等の決定もこれまでどおり、各家庭の状況や希望を踏まえ、区が行います。このような観点から、8月5日号の広報しんじゅくでは利用手続の案内を中心とした記事を掲載したところであり、今後改めて説明会を開催する予定はありません。 なお、既に保育園等を利用されている保護者についても認定の申請は必要ですので、園を通じて具体的な説明を行ってまいります。これから広報しんじゅくに掲載する入園申し込みの案内や窓口で配布するパンフレットの説明もわかりやすく工夫するとともに、窓口での案内も丁寧に行い、利用を希望する方々が戸惑うことなく手続ができるよう努めてまいります。 次に、学童クラブについてのお尋ねです。 学童クラブについては、総在籍数が総定員数を下回り、区全体では需要を満たしていますが、地域偏在があるため、定員を超過している学童クラブが恒常的に発生している状況があります。また、昨年度実施した次世代育成支援に関する調査から、今後も現在の定員を上回る学童クラブ需要があると見込んでいます。 一方、同調査では、「放課後子どもひろばの利用時間が学童クラブと同等に拡大された場合の利用希望」について、「学童クラブを利用したい」と回答した人の3分の1以上の方が「低学年の間も利用したい」と回答しています。また、同調査で高学年児童についても、長期休業中の学童クラブの利用希望が一定以上あることが把握できました。 そうした状況を踏まえ、需要に的確に対応していくため、3年生までの利用希望者が定員を超える見込みの学童クラブの近隣小学校の放課後子どもひろばで午後7時までの利用時間の延長等を検討しています。また、通常利用に加え、学校長期休業中のみ利用できるスポット利用の新設も検討しています。そうした新しい仕組みにより、保護者に多様な選択肢を提供した上で、なお定員に大きく乖離があり、今後も需要増が見込まれる地域については、学童クラブの改修や増築等を含め、定員の確保方策を検討してまいります。 次に、愛日小学校の体育館の学童クラブ室への転用及び落合第四小学校内学童クラブのスペースの拡大についてです。 中町学童クラブ及び落合第四小学校内学童クラブは、3年生までの利用希望が定員を超えることが想定されています。そのため、愛日小学校については放課後子どもひろばの機能の拡充を検討しています。また、今年度、学童機能つき放課後子どもひろばを実施している落合第四小学校についても、午後7時までの時間延長等については継続していくことを考えています。こうしたサービス拡大により、どの程度学童クラブニーズに応えていくことができるかを見きわめながら、必要に応じて各学童クラブの専用スペースの拡大も検討していきます。 次に、保育園の待機児童解消緊急対策と同じ位置づけにする必要性についてです。 学童クラブについては、できる限り多くの友達との交流の中で成長できるよう、単独の施設ではなく児童館や小学校内に併設する形で整備しています。そうしたことから、これまでどおり次世代育成支援推進本部会議で全庁的に情報共有しながら、教育委員会とも連携して取り組みを進めてまいります。 次に、放課後子どもひろばの付加機能についてです。 学齢期の児童の放課後の居場所については、子どもの個性や成長、発達段階並びに保護者の就労状況等に応じて選択できることが大切です。次世代育成支援に関する調査結果や、落合第四小学校の放課後子どもひろばで実施している時間延長、連絡帳などを付加したサービスが好評をいただいていることなどからも、さまざまなニーズがあると認識しています。そのため、平成27年度からは放課後子どもひろばの機能拡充を含めた多様な選択肢の提供を検討します。これにより、就労等で保護者が昼間家庭にいない児童の安全・安心な居場所として、学齢期の一人ひとりの子どもの成長に見合った適切なサービスを保護者が選択できるよう準備を進めてまいります。 ◎教育長(酒井敏男) 教育委員会への御質問にお答えします。 初めに、3歳児の幼稚園ニーズに対する対応についてのお尋ねです。 昨年度実施しました「新宿区次世代育成支援に関する調査」の結果によると、3歳児の幼稚園ニーズに対する受け入れ枠は4、5歳児に比べて少ないことに加え、就学前の子どもの人口が増加していくことから今後も不足していくことが想定されます。 教育委員会では、こうしたニーズや昨年度実施しました区立幼稚園の保護者懇談会でいただいた意見などを踏まえ、幼稚園教育における公私立の役割と今後担うべき役割についても整理をし、私立幼稚園協議会とも意見交換を行いながら、区立幼稚園のあり方について再検討を行っています。この検討の中で、廃止対象となっている園も含めて3歳児クラスの増設について検証してまいります。検討結果については、今年度中に「区立幼稚園のあり方の見直し方針の素案」として取りまとめ、地域説明会などの中で丁寧に説明し、平成27年度の方針決定に向け、保護者や地域の皆様との合意形成に努めてまいります。 次に、区立幼稚園における預かり保育の実施についてのお尋ねです。 幼稚園の預かり保育についても、「新宿区次世代育成支援に関する調査」の結果から、ニーズとしては一定の量があると認識しています。預かり保育のニーズに対する対応については、「区立幼稚園のあり方の見直し方針の素案」を取りまとめる中で検討してまいります。 ◆8番(川村のりあき) 区長並びに教育委員会から御答弁をいただきましてありがとうございます。 国連の人種差別撤廃委員会最終見解に対する評価についてのお答えでは、区長から従軍慰安婦の問題を含めてしっかりとした答弁が伺えたというふうに思っております。 また、あと、待機児童の解消ということでは、御答弁は今のようなお話でしたけれども、新宿区次世代育成支援協議会のホームページなどを見ましても、保育ルーム、認可保育園の増設というのは、本当にもう計画の俎上に乗ってくるというところまで本当に切迫した状況だというふうに思っております。 昨日、私ども日本共産党区議団主催で新制度の講演会というのを行ったんですけれども、その際も非常に多くの参加者の方がございまして、個別の相談をその終了後もやったんですけれども、非常に待機児童を抱えて深刻な状況というのをお伺いもしまして、改めて、区長も任期中に2,200名の定員拡大をしていただいたということで御答弁いただきましたけれども、やはりさらに計画の充実、待機児童の解消というのは待ったなしだという思いで、さらにこの定例会も取り組んでまいりたいというふうに思っております。 また、区立幼稚園3歳児定員の拡大や預かり保育という点では、先ほどの答弁で伺いまして、年来の保護者の方の御要望実現というところにあと一歩まで来ているのかなというふうに受けとめましたので、また詳細な質疑につきましては決算特別委員会で同僚議員が質疑をさせていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。 御清聴いただきましてまことにありがとうございました。(拍手) ○議長(おぐら利彦) 次に、18番志田雄一郎議員。     〔18番 志田雄一郎議員登壇、拍手〕 ◆18番(志田雄一郎) 平成26年第3回新宿区議会定例会に当たり、民主・無所属クラブを代表して区長に質問いたします。 ことしの夏は天候不順で、後の質問でも触れますが、広島での土砂崩れを初めとして各地で大きな被害が発生しました。気象庁の異常気象分析検討会は、西日本各地で記録的な大雨となった今夏について、偏西風が南北に蛇行し、南からの湿った気流が本州付近に停滞したことによる影響と分析した上で、数十年に一度の気象状況だったとして、今夏は異常気象だったと結論づけました。このほか、検討会では、近年のゲリラ豪雨がふえていることについて、地球温暖化の影響で大気中の水蒸気の量がふえていることが関連しているとの見方が示され、今夏の西日本での豪雨のようなことは近い将来再び起こる可能性があると注意を呼びかけています。 以前も申し上げましたが、災害は忘れぬうちに次々とやってくるというのが昨今の状況です。災害への備えをより一層進め、区民の生命と財産を守る取り組みに残された任期の7カ月余りも全力を傾注することを申し上げ、質問に入ります。 初めに、中山区政の総括と今後の区政運営についてお伺いいたします。 区長は、さきの第2回定例会において、「前々から区長として3期12年を大きな区切りと考えていました。それは長い間行政に携わってきた経験の中からの実感であり、新宿区政の持続的な発展を図るためには、行政としての一定の継続性を担保しつつ、清新な息吹を吹き込んでいくことが大切と考えています。そうした思いから、本年11月23日の任期満了をもって退任する決断をしたものです」と、今期をもって区長の職を退かれる決意を述べられました。 思えば12年前、区長は、区政に起こった一連の出来事が発端となり、急遽行われた区長選挙によって当選され、今日まで区政を担ってこられました。「23区初の女性区長」ということで話題を集め、区長就任当初は区民を初め各方面から、区や行政に対して失われた信頼をどう取り戻すのかということに多くの努力と時間を費やされたのではないかと思います。一度失った信頼を取り戻すのは、それこそ容易なことではなかったはずです。 区長はこの間、首都直下地震の切迫性が叫ばれる中、待ったなしの状況で時間と競争しながら取り組んでいる減災社会へのさまざまな対応、待機児童解消対策や幼保一元化施設の開設などの子育て支援施策、建築紛争の防止や景観を守るために建築物の絶対高さ制限を定めたこと、区内全域での路上喫煙禁止、近年多発している犯罪から新宿のまちを守り、誰もが安心して暮らすことのできるまち、訪れる人にとっても心から愛着の持てるまち新宿を、区民、事業者、区が互いに連携・協働し、一体となって創造していくことを決意して定めた「新宿区民の安全・安心の推進に関する条例」の制定、繁華街において区民、事業者、区、警察などと協力して客引き行為等をなくし、誰もが安全で安心して楽しめるまちの実現を目指す、「新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例」の制定など、ここに掲げたのはほんの一部ですが、このほかにも多くの先進的な施策を展開されました。その中で、私どもからも幾つか注文をつけさせていただいたこともございましたが、そういったことにつきましてもきちんと耳を傾けていただきました。 また、区長は、労を惜しまず現場に足を運ばれ、多くの区民の声に耳を傾けていらした姿を私どももよくお見かけしました。ほんの少しの時間であったとしても、区民等と直接対話をされていました。その中で貴重な情報を得て、それをさまざまな取り組みへのヒントとされていたのではと思っています。 そこで1点目の質問ですが、私は、「現場にこそ真実がある」と思いますが、区長にとって現場とはどのような位置づけであったのか、お聞かせください。 2点目に、区長が任期中の区政運営に当たって特に心がけたことはどのようなことだったのでしょうか。お聞かせください。 3点目に、この12年間を振り返り、御自身が担われた区政をどのように総括しているのか、お聞かせください。 4点目に、多くの先進的な取り組みをされてきましたが、一方で、まだ道半ばという施策も幾つかあろうかと思います。積み残した課題についてはどのようなものがあると考えられ、新たな区長にはそれらについてどう取り組んでほしいと考えていますか。 5点目に、新たな区長には今後どのような区政運営を望んでおられるかお聞かせください。 以上、御答弁を願います。 ◎区長(中山弘子) 志田議員の御質問にお答えします。 3期12年の総括と今後の区政運営についてのお尋ねです。 初めに、「現場」とはどのような位置づけであるかについてです。 私は、区民に最も身近な基礎自治体の長として、常に地域の声に耳を傾け、生活者の視点を持って取り組むことが大切であると考えています。現場は、区民が生活を営み活動する場であり、まさに課題に直面する場です。このため、区長就任から一貫して「現場」を重視し、積極的に地域に出かけ、現実に向き合い、課題や解決策を明らかにすることに努めてきました。 次に、区政運営に当たり特に心がけたことは、「現場現実を重視した柔軟かつ総合性の高い区政運営」、また、「公正かつ透明性の高い区政運営」、そして「区民との協働と参画による区政運営」の3つの基本姿勢であり、この基本的な考え方のもと、「暮らしやすさも賑わいも一番のまち新宿」の実現に向けて全力を傾けてまいりました。 12年間の総括としては、私は、この間、議会の皆様に御協力、御支援をいただき、また区民、事業者の皆様と信頼関係を築きながら、さまざまな施策を推進することができました。具体的には、減災社会の実現に向けた災害に強い逃げないですむまちづくり、待機児童解消を初めとした子育て支援、高齢者や障害者が安心して暮らせる基盤整備や社会参加の促進、新宿クリエイターズ・フェスタを初めとした新たな文化の創造、おとめ山公園の拡充などの緑と水辺の創出などが挙げられます。私は、これらさまざまな施策を実施することにより、基本構想や総合計画で示した新宿区の目指すまちの姿への取り組みを着実に推進することができたと考えております。 次に、積み残した課題についてのお尋ねです。 待機児童解消対策では、保育施設の定員を就任以来約2,200人ふやしたものの、新宿区の出生数や共働き家庭の増加等により待機児童解消に至っておりません。また、方向性を示し現在取り組んでいる施策としては、東西自由通路を起爆剤とした新宿駅周辺の整備や一般社団法人新宿観光振興協会を中心とした新宿の魅力発信とにぎわいづくり、歌舞伎町ルネッサンスによる安心して誰もが楽しめるまちづくり、(仮称)「漱石山房」記念館の整備による文化・歴史の発信などが挙げられます。こうした取り組みについては、今後の新宿のまちづくりと、新宿のまちを支えているビジターズ産業の振興に大きく寄与していくものと大いに期待しています。行政の仕事は継続していくものであり、現在、達成に向けて取り組んでいる施策については新たな区長にしっかりと引き継いでまいります。 そして、新たな区長に望むことは、新宿区の持続的な発展を図るために、区政へのビジョンと志を持って清新な区政運営を行っていただけるよう願っております。 ◆18番(志田雄一郎) 次に、平成25年度決算についてお伺いいたします。 今月1日、平成27年度予算の見積もりについての依命通達が副区長名により出されました。この中で、平成25年度の決算についての現状と、将来にわたり安定した行政サービスを提供できる財政基盤を確立するための職員一人ひとりが取り組むべき姿勢について述べられています。 その中では、平成25年度決算について、「生活保護費などの扶助費が引き続き増となったものの、企業収益や雇用情勢が改善したことで特別区民税や特別区交付金などの一般財源が増となり、実質単年度収支は5年ぶりに赤字から脱却することができた。しかしながら、経常収支比率は依然として適正水準を超える86.5%であり、2.4ポイント改善したとはいえ、財政構造が硬直化していることを示している。また、基金残高は、この間の景気の低迷を下支えしてきたことなどにより、平成20年度の608億円から43%減となる346億円にまで減少している」とあります。 そこで1点目の質問ですが、経常収支比率については一般的には70%から80%の範囲が適正水準と言われていますが、本区では平成21年度から4年続けて適正水準を上回っています。この原因については、区税等の一般財源収入が改善しない中で生活保護費などの扶助費が伸びるなどして、本区を取り巻く財政環境が厳しくなったことが考えられます。ただ、平成25年度決算において特別区税が前年度比14億6,000万円増の405億円余、特別区交付金が前年度比3億円増の269億円余となり、一般財源収入に多少の改善が見られたことから、財政の硬直化傾向に一定の歯どめがかかればと期待していますが、どのような見通しを立てているのかお聞かせください。 2点目に、区財政を取り巻く財政環境が厳しくなったことにより、財政調整基金からの繰り入れを行うなど、今まで培ってきた財政対応力を活用しながら財政運営を行ってきましたが、基金残高は346億円と前年度比37億円の減で、5年連続減少しています。「今後も年当初と年度末に資金が枯渇しがちな本区の資金収支の状況を考慮すると、今後も基金の繰り替え運用をせざるを得ない状況が継続するものと考えられる」と監査委員による決算審査意見書でも述べられており、今後も基金に頼らざるを得ない状況ですが、基金残高の現状における御見解と、今後の適正な規模の基金の確保と運用についてどのように考えているのか、お聞かせください。 3点目に、同様の決算審査意見書では、「収入未済及び不納欠損の発生は、税や保険料負担などの公平性の観点や、行政サービスの受益と負担の観点から大きな問題がある。今後とも、負担の公平性の確保、財政負担の軽減という観点から、徴収率の向上など、歳入確保に向けて引き続き取り組まれたい」と述べられており、区長も以前「区民生活を支える施策を着実に推進して、喫緊の課題や新たな行政需要に的確に対応した施策を展開するためには健全な財政の確保が欠かせない。増収対策で収納率の向上を図り、歳入確保に向けた取り組みを推進する」ということをおっしゃっていました。これまでにもコンビニ収納、電話催告センターの設置、区税滞納整理業務の強化、国民健康保険料の収納体制の強化として東京税務協会からの専門員の配置など、さまざまな徴収努力をされてきました。決算審査意見書において「大きな問題がある」と記述があるのは恐らくここだけであり、それだけに歳入確保については総力を結集して取り組まなければならない課題ですが、特別区税、国民健康保険料、それぞれについて御決意をお聞かせください。 そして、最後に、依命通達において「将来にわたり安定した行政サービスを提供できる財政基盤を確立するためには、職員一人ひとりがこれまで以上にコスト意識を高め、徹底して経費を削減し、施策の重点化を図ることで、限られた財源を有効に活用していく必要がある」と述べています。 そこで4点目の質問ですが、職員一人ひとりがこのような意識を持って日々の職務に取り組むことが、財政基盤を強化し、良質な行政サービスを提供することになり、ひいては区民等の幸せの実現につながります。一人も欠けることなく全職員にこのような意識の醸成を促していただきたいと思いますが、お考えをお聞かせください。 以上、御答弁を願います。 ◎区長(中山弘子) 平成25年度決算についてのお尋ねです。 まず、硬直化傾向にある区財政の今後の見通しについてです。 平成25年度決算では、生活保護費などの扶助費が引き続き増となったものの、企業収益や雇用情勢が改善したことで特別区民税や特別区交付金などの一般財源が増になったことに加え、定員適正化計画による人件費の削減や執行面での経費節減に取り組んだことにより、実質単年度収支は5年ぶりに黒字に転じました。しかし、経常収支比率は依然として適正水準を超える86.5%であり、財政構造が硬直化していることを示しています。 歳入の根幹である特別区税や特別区交付金などは、現在、回復傾向にありますが、区の財政構造は景気に左右されやすく、また、平成26年度税制改正における法人住民税の一部国税化に加え、法人実効税率の引き下げなど、本区の一般財源が減少することも考えられます。また、高齢化の進展に伴う扶助費や繰出金等の増が懸念されていることから、引き続き財政基盤の強化や行財政改革に取り組む必要があると認識をしています。 次に、基金残高の現状と今後についてです。 平成25年度末現在の基金残高は、この間の長い景気の低迷を下支えしてきたことなどにより346億円にまで減少しています。将来にわたり財政負担となる区債残高と債務負担行為額の合計額346億円に対し、取り崩しを前提としない公共料金支払基金などの資金運用基金を除いた基金残高は343億円となっており、3億円の負担超過となっていることから、従来にも増して限られた資源の有効活用と財政対応力の強化に取り組む必要があると認識しています。 今後の施設の更新需要なども見据えて積立額を確保するとともに、また先行き不透明な中で、年度間の財政調整を目的とする財政調整基金は、年間の資金収支に不足が生じないようにするためにも標準財政規模の1割以上、100億円程度を確保することが必要と考えており、適正な規模の基金確保と運用を行ってまいります。 今後の経済変動などにも柔軟に対応するため、計画的な基金の積み立てと活用を図ることにより健全な財政運営の確保に努めてまいります。 次に、国民健康保険料についてです。 国民健康保険特別会計においても歳入の確保は重要な課題と認識しています。コンビニ収納については、平成18年6月の開始以来取扱額はふえ、現在、収納額全体の約3割を占めるようになっています。また、平成23年10月には電話催告センターを設置し、平成24年度には従来の徴収員制度を納付推進員制度に変更しました。納付推進員に簡易な納付相談を担当させ、職員は困難な相談ケース対応や差し押さえ等の滞納処分の強化に対応するなど、公平性の確保の観点からの取り組みを進めてきました。さらに、東京税務協会の専門員から徴収技術の助言を受けることにより、従来にも増して、不動産差し押さえなど、より複雑な手続が必要な差し押さえにも取り組んでおります。 今後も、社会の変化や区民意識の変化にいち早く対応し、収納率の向上につながる取り組みも一つ一つ着実に進め、歳入の確保に努めてまいります。 特別区税の歳入確保は、税負担の公平性の確保と健全な財政を維持していく上で重要な課題と認識をしています。このため、調定額が大きい特別区民税現年課税分の年度内収納を重点的に推進してまいります。 これまでも納税催告センターでは初期滞納者に対して電話での納付案内を行い、平成25年度の納付実績は約5億6,800万円と大きな成果を上げています。今後も対象者へ電話する時間帯などを工夫し、その成果を向上させてまいります。また、職員による滞納整理の早期着手により現年課税分の徴収強化を図ってまいります。さらに、累積滞納者についても、高額優先で滞納整理を進めるなど徴収努力を着実に積み重ねることで増収を図り、収入未済、不納欠損の縮減に努めてまいります。 次に、職員にコスト意識を醸成させることについてのお尋ねです。 将来にわたり安定した行政サービスを提供するためには、職員が常にコスト意識を持ち、限られた行政資源を効果的・効率的に活用する能力を身につけることが必要です。 区では、行政評価の過程を通じて各部の職員が施策・事業の現状把握や効果の検証、今後の取り組み方針の検討などを行っています。また、平成25年度からは経常事業評価に合わせて「事業別行政コスト計算書」の作成に取り組んでおり、現金収支では見えない減価償却費などの隠れたコストを含めた総行政コストを明らかにするとともに、区民1人当たりの区税等投入額なども「見える化」しています。本年10月には、こうして作成した「事業別行政コスト計算書」の活用について、新地方公会計に詳しい公認会計士を講師として職員研修を予定しています。さらに、同じく平成25年度から各部で取り組んでいる「データブック」の作成や財政課の「新宿区財政白書」の公表などを通じて、日々の業務の経費や区財政の状況を明らかにする取り組みも行っているところです。 このように、職員は日常の職務を通じてコスト意識を獲得し、また研修などでそれをサポートすることで限られた行政資源を有効に活用し、区民視点で効率的かつ質の高い行政サービスを実現してまいります。 ◆18番(志田雄一郎) 次に、AEDの使用についてお伺いいたします。 このことについては、昨年の決算特別委員会のしめくくり質疑でも取り上げさせていただきました。その後、本年3月の予算特別委員会でもひやま議員からも同様の質疑がありました。 AEDは、平成16年には医師や看護師等の資格がない一般の方でも使用できるようになりましたので、それからことしでちょうど10年が経過し、一般の人の間にもAEDはかなり認知されてきたように感じます。 平成25年の総務省による「救急・救助の現況」によりますと、目撃された心停止者数2万3,296人に対して一般の人がAEDを使用したのは738件と、わずか3.7%にすぎません。この低い使用率を裏づけるかのように、NHKの調査では「人が目の前で倒れた場合、AEDを使うことができるか」との問いに、53%が「できない」とし、その理由の53%が「使い方がわからないから」という結果が出ています。 心停止に対して3分以内にAEDが使用できれば生存退院率は70%と言われていますが、現在の日本では救急車が到着するまでに要する平均時間は7.9分で、この時間まで手を打たなければ生存退院率は20%程度にまで低下します。もしも適切に一般の人がAEDを使用できる環境が整えば、救える命は現状と比べて4.5倍にもなるとの試算もあるようです。 東京都のAED設置台数は平成23年末現在で4万504台と、これは全国でトップであり、人口10万人当たりの使用可能AEDの設置台数も322.1台で全国で3位となっています。東京都の面積からすると、1キロメートル圏内に19台のAEDがある計算になります。このような統計を見ると、東京都はAEDの設置が非常に充実しているように思われますが、実際のAEDの設置場所としては、公共施設や駅などの施設内に設置しているものがほとんどで、これらの施設は当然ながら早朝・夜間の時間帯は施錠しなければならないので、この時間帯に使用できるAEDは著しく減少してしまいます。 本区の施設には、つつじ荘、グリーンヒル八ヶ岳、ヴィレッジ女神湖の管外施設3カ所を含む146施設に150台のAEDが設置してありますが、24時間使用可能なAEDは、区役所本庁舎、四谷特別出張所、かしわ苑、あかね苑と、さきの3カ所の管外施設にある合計9台です。もちろん公共施設は閉庁時間があり、その後は施錠しなくてはならない。施設外への設置はいたずらや盗難の危険があるなどで、公共施設での24時間使用可能な施設をこれ以上拡大するというのはなかなかできないということは承知しております。しかしながら、病は時と場所を選びません。AEDはいつでも、どこでも、誰でも使用できることが望ましいわけで、そうなりますと、現状では24時間人がいる民間施設に依頼をする以外にないと思われます。以前に申し上げたコンビニエンスストアはうってつけの場所であります。 また、お隣の豊島区では、3年前に23区で初めて区内に設置されているAEDについて公共・民間施設を問わずに調査し、地図情報システムを活用した「AEDマップ」として区のホームページで公開しました。これには施設内での設置位置や使用可能な時間帯、小児用パットの有無など、きめ細かい情報が掲載されています。随時更新が可能なため、常に最新な情報を提供しており、今後も民間のAED設置施設に情報の提供を呼びかけ、随時最新の情報を提供していかれるということです。 そこで1点目の質問ですが、以前の質疑において、コンビニエンスストアへのAED設置について他自治体等の情報収集をされるという御答弁をいただきましたが、これまでにどのような情報を得られているのかお聞かせください。 2点目に、さきのいざというときの使用率の低さとその理由からして、AEDの設置場所の充実とともに、消防署や関係機関と連携してAEDを使える人をもっとふやし、救命率の向上に取り組むべきと思いますが、いかがお考えでしょうか。 3点目に、AEDが設置してある区内の民間施設や店舗について、区は把握されていないようですが、区民等へAEDが設置してある場所を公共・民間を問わず情報提供し、緊急時にはそれを速やかに活用することができる態勢を整える手段を検討されるべきと思いますが、いかがでしょうか。 以上、御答弁を願います。 ◎区長(中山弘子) AEDの使用についてのお尋ねです。 まず、コンビニエンスストアへのAED設置についての他自治体等の取り組み状況についてです。 例えば神奈川県大和市では、市内のコンビニ86店舗に市がリースしたAEDを設置しています。静岡県三島市では、同様に市内のコンビニ24店舗にAEDを設置するほか、コンビニのない地域ではファミリーレストランやガソリンスタンドなどにも設置しているとのことです。都内には4万台を超えるAEDが既に設置されています。東京23区内で区が用意したAEDをコンビニ等に設置している例はありませんが、御指摘のとおり豊島区では区全域でのAED設置場所をAEDマップとしてホームページに掲載しています。こうした安全・安心情報の発信について参考にしてまいります。 次に、AEDの設置場所の充実と、消防署や関係機関と連携してAEDを使える人をふやし、救命率の向上に取り組むことについてのお尋ねです。 AEDの設置場所の充実については、御指摘のとおり、コンビニエンスストアなど24時間いつでも誰でも使用できる場所への設置が効果的であることから、業界団体等を通じてAEDの設置について強く働きかけてまいります。また、AEDの使用方法については、これまでも消防署が行う中学校等での普通救命講習や避難所防災訓練などで周知してきました。今後も多くの人がAEDの使用方法を習得できるように、消防署と連携して各種イベント、高齢者や障害者施設の防災訓練など、さまざまな機会を通じて一層の普及に努めてまいります。 次に、区民等へAEDが設置してある場所を公共・民間を問わず情報提供し、緊急時にはそれを速やかに活用することができる態勢を整える手段を検討すべきとのお尋ねです。 厚生労働省ではAEDの設置情報の登録を働きかけており、登録された情報は一般財団法人日本救急医療財団が公共・民間を問わず区市町村別にホームページに掲載しています。これらの情報を区ホームページからも利用できるようにしていきます。 また、緊急時に速やかに活用できるように、詳細な位置情報や利用可能時間などを含むAEDマップなどの総合的な情報提供についても検討してまいります。 ◆18番(志田雄一郎) 次に、危険ドラッグについてお伺いいたします。 危険ドラッグの吸引による事件・事故が全国で発生し、大きな社会問題となっている、そんな中、本年6月24日には、豊島区池袋駅前の繁華街で危険ドラッグを吸引していた意識もうろうとした男性が運転する車が歩道を暴走し、8人の死傷者を出した自動車事故が発生しました。全く無関係で罪のない、失わなくてもよい命まで奪い、人を傷つけ、まちの安全・安心を脅かす加害者を許すわけにはいきません。 本区においても、7月には危険ドラッグが原因と思われる交通事故が2件も発生しました。11日には原町で軽自動車が信号待ちのタクシーに追突し、軽自動車の30代の男性は、意識がない中、危険ドラッグの吸引を認め、車内からは脱法ハーブによる植物片も見つかったようです。 2件目は、15日早朝に高田馬場でワゴン車が信号待ちのタクシーに追突するなど、計3台が絡む事故がありました。幸いにして、タクシーの運転手ら男女計4人の被害者は首を捻挫するなどの軽傷で済んだものの、ワゴン車を運転していた男は「脱法ハーブを吸った」などと供述し、車内からはポリ袋に入った脱法ハーブと見られる植物片が見つかったということです。 毎日新聞の調査によると、本年1月から7月までに危険ドラッグの吸引が原因と見られる交通事故が全国で少なくとも84件発生していることが判明しました。昨年の同様の調査では年間67件でしたので、既に昨年を大きく上回っています。都道府県別では、最多は愛知県で21件、以下、大阪府15件、東京都11件、神奈川県9件、千葉県、兵庫県、香川県の各県がそれぞれ4件となっています。また、被害者が死亡に至った事故は4件発生しました。この調査は全国の警察本部を対象に実施しましたが、統計をとっていないと回答した警察本部もあったようなので、実際にはもっとふえると予想されます。本当にとてもやり切れない気持ちになります。 厚生労働省は、このような悲惨な事故や事件を引き起こしている危険ドラッグを撲滅するために、8月27日から30日の間に東京都、大阪府、愛知県、福岡県の各都府県で危険ドラッグ取り締まり強化の一環として、警察や自治体と協力して販売店75店舗に一斉立ち入り検査を実施しました。このうち東京都内では、27日に厚生労働省と東京都が合同で新宿区、渋谷区、豊島区の3区34店舗が対象となり立ち入り検査を受けました。この結果、これらの都府県で指定薬物の疑いがある商品を確認した49店舗に対し、薬事法に基づく初の検査命令と販売停止命令を出し、そのうちの22店舗から廃業する旨が書面などで届けられたようです。失わなくてもよい命まで奪う危険ドラッグを撲滅するために取り組んだ効果が徐々にあらわれつつありますが、まだまだその手を緩めることなく取り組みを強化していただきたいと思います。 自治体においても、「全ての販売店を撤退に追い込むため、あらゆる手段を講じ、全国のモデルとなるような取り組みを行っていく」と強い決意を持って独自に取り組みを検討しているのが豊島区であります。さきの池袋における悲惨な事件を受け、豊島区では、指定薬物等を販売した店舗に対して賃貸契約を解除できる条項を契約締結時に盛り込むことを不動産業界に求める区独自の条例を制定する準備を進めているようです。 危険ドラッグを根絶し、決して悲劇を繰り返してはならないという思いから質問いたします。 1点目に、本区には違法な薬物を扱っていると思われる店舗が散見されますが、その実態を把握されているのかとの以前の私どもの質問に対し、そのような店舗が本区には15件あると把握しているという趣旨の御答弁をいただきましたが、先日の厚生労働省と警視庁と協力して行った一斉立ち入り検査において、該当する店舗に対してはどのような対応がされたのか、お聞かせください。 2点目に、危険ドラッグの乱用が低年齢化している現状を踏まえ、区としては、学校現場における児童生徒や青少年に対して非常に力を入れて取り組んでいますが、保護者を含めた区民全体に対する意識啓発が必要です。これについて今後どのように取り組んでいかれるのか、お考えをお聞かせください。 以上、御答弁を願います。 ◎区長(中山弘子) 危険ドラッグについてのお尋ねです。 初めに、危険ドラッグの一斉立ち入り検査についてです。 厚生労働省と東京都が、違法の疑いのある薬物を取り扱う店舗に対し8月27日に立ち入り調査を行い、区も同行しました。区内では8店舗に立ち入り調査を実施し、厚生労働省が店舗内にある指定薬物の疑いがある全ての在庫品に対して薬事法に基づく「検査命令」を行い、その結果が出るまでの間、販売停止を命じました。 今後とも、不正な薬物の販売店舗の取り締まりに関しては実態把握に努め、国や東京都と連携して対応してまいります。 次に、区民全体に対する意識啓発についてのお尋ねです。 本年7月19日に警視庁との共催で、「違法ドラッグ・脱法ドラッグ撲滅キャンペーン・in新宿」を開催し、広く区民に訴えてまいりました。8月には、区内の中学校、高校、大学、専門学校、地域センターなどの施設に対して啓発ポスターを配布しました。 今後、「はたちのつどい」や「若者のつどい」などのイベントにおいてパンフレットを直接配布するなど、さまざまな機会を捉えて区民を不正な薬物から守り、安易に手を染めることを未然に防止するための普及啓発活動を展開してまいります。また、危険ドラッグに関する注意喚起のリーフレットなどを中学校に送付し、学校を通して保護者にも啓発してまいります。さらに、11月に開始される薬物乱用防止キャンペーンにおいては、危険ドラッグに重点を置き、東京都薬物乱用防止推進新宿地区協議会や、その所属団体と連携し、地域を挙げて危険ドラッグの撲滅を目指してまいります。 ◆18番(志田雄一郎) 最後に、区内の急傾斜地についてお伺いいたします。 先月20日、広島市北部での土砂災害では73人ものとうとい命が失われました。いまだ行方不明の方が1人、重軽傷者は44人となっており、報道を見聞きするたびに、犠牲者の方々やその御家族のことを思うと本当に胸が苦しくなります。犠牲となられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、避難生活をされていらっしゃる方々にもお見舞いを申し上げ、一日も早く元通りの生活に戻ることができるよう祈らずにはいられません。 特にことしの夏は、局地的な集中豪雨が日本各地で何度も発生し、さきの広島以外でも47都道府県のうち40道府県が雨や土砂災害などで建物が全壊したり浸水したりしました。高知県では、2つの台風による大雨で2,000棟を超える住宅が浸水、京都府福知山市では2,500棟を超える建物が浸水しました。また、北海道礼文島では土砂崩れにより住宅が全壊し2人が死亡と、住宅の被害は合わせて9,000棟を超え、各地に深い爪跡を残しました。 さきの福知山市には、今月1日より被災者が生活再建へ向けた支援を受けるのに必要なり災証明書を発行する事務手続にかかわる業務に東京都と都内18区市の28人の職員が派遣され、本区からも職員が派遣されました。 土砂災害と聞くと、地方のことで都市部には関係のないことと思われがちですが、これはとんでもないことで、今回の広島でのことは本当に人ごとではありません。都市部では人口が多く、インフラやライフラインなど重要な施設が集中しているため、災害が起こると被害は大きくなります。23区内にも土砂災害の危険な箇所は約600カ所もあり、大雨でしばしば斜面が崩れる土砂災害が起こっています。本年6月29日には、渋谷区恵比寿の住宅街で高台にある空き地の土砂が崩れ、約15メートル下にあるアパートの敷地に土砂が流れ込みました。幸い、土砂はアパートの部屋には流れ込まず、大事には至りませんでした。 急傾斜地には、崖地の傾斜度が30度以上、高さ5メートル以上、かつ想定被害区域内に人家が5戸以上ある崖地として知事が指定した「急傾斜地崩壊危険区域」と、崖地の傾斜度が30度以上、高さ5メートル以上の崖地であり、崩壊した場合に人家、官公庁、学校、病院等に被害を生ずるおそれがある急傾斜地崩壊危険箇所があり、本区では急傾斜地崩壊危険区域の1カ所を含む急傾斜地崩壊危険箇所が46カ所となっています。ちなみに、23区で最も同様の箇所が多いのは港区の118カ所であります。私自身も、以前に33年間住んでいた自宅は、この46カ所のうちの1つになっていますので、非常に考えさせられる問題と捉えています。本区のような都市部では、人口の集中などによる新たな開発や近隣住民同士の関係の希薄化による防災上の弱点もあることから、住民、事業者、行政等が平常時から土砂災害に対して備えておく必要があります。 そこで質問いたします。 1点目に、先日NHKのテレビで、広島市北部で被災された方の中に、御自身の家が急傾斜地で危険のおそれのある場所としてハザードマップに掲載されていることを知らなかったという放送を見ました。どうやら、御自宅のポストに投函されていたハザードマップを、ほかの広告物と一緒に捨ててしまったようです。本区では、8月25日にハザードマップを新聞折り込みやポスティング等で区民に周知しましたが、本区内の急傾斜地崩壊危険区域である赤城元町の1カ所を含む急傾斜地崩壊危険箇所46カ所の近隣住民や崖地の所有者に対しての特別な周知と、それに伴う注意喚起はどのように行っているのかお聞かせください。 2点目に、赤城元町の一部を急傾斜地崩壊危険区域として知事が指定してから、かなりの年限がたっていると思います。知事が指定している区域ということは、東京都として何らかの対策をとられていると思いますが、どのような対策をとっているのかお聞かせください。 3点目に、46カ所の急傾斜地崩壊危険箇所について、区としても平成21年度から平成23年度にかけて調査をし、その結果を所有者に通知し、指導をされました。改修等支援事業なども紹介し、改修を促されたと思いますが、今後、改善が進むようにどのようなことをお考えかお聞かせください。 以上、御答弁を願います。 ◎区長(中山弘子) 区内の急傾斜地についてのお尋ねです。 初めに、急傾斜地崩壊危険箇所の近隣住民や所有者に対する周知と注意喚起についてです。 御指摘のとおり、近年多発する集中豪雨などにより、人命や多くの家屋を失う土砂災害が全国各地で発生しています。多くの擁壁や崖を抱える当区においても、いつ起きてもおかしくない災害です。擁壁や崖などの場所を周知すること及び擁壁等の日ごろの点検の実施や発災時の対応などを注意喚起することは、区民一人ひとりが災害に備える上で大変重要であると考えております。そのため、本年8月25日に擁壁等の安全確認などを掲載した「広報しんじゅく」とともに、急傾斜地崩壊危険箇所や擁壁等の位置を示したハザードマップ約13万部を区内の各世帯に配布したところです。 御指摘の急傾斜地崩壊危険箇所46カ所については、そのエリア内にある自然崖など、特に崩壊のおそれがある6件に対して、台風の接近などで大雨が予想される場合には所有者等に対して職員が擁壁等の状態の確認や崩壊につながる予兆などへの注意を喚起しています。また、平成21年度から3年間で実施した現地点検調査に基づき、個別に具体的な改修案や、その概算工事費などを示しながら、改修へ向けた安全化指導を順次進めているところです。 近隣住民に対する周知と注意喚起については、ハザードマップによる急傾斜地崩壊危険箇所の周知や「広報しんじゅく」による注意喚起を実施しているところですが、今後は個々の急傾斜地崩壊危険箇所の近隣住民に対する周知と注意喚起についても、そのあり方や実施方法を検討してまいります。 次に、赤城元町の急傾斜地崩壊危険区域について、東京都がどのような対策を行っているのかとのお尋ねです。 御指摘の赤城元町の急傾斜地崩壊危険区域は、高さ13メートルの自然崖で、崩壊のおそれがあったことから昭和49年11月に東京都が指定したもので、昭和50年3月に急傾斜地崩壊対策事業として延長80メートルの擁壁が設置されました。その後、東京都は定期的に擁壁の点検調査を実施し、平成22年9月にはひび割れや排水設備など経年劣化に対する補修工事を行っています。また、急傾斜地崩壊危険区域であることについては、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律に基づき、区域内の掲示板により公示されています。 次に、急傾斜地崩壊危険箇所について、今後改善が進むようにどのようなことを考えているのかとのお尋ねです。 擁壁や崖の改善を進めるためには、所有者が擁壁等の状態や崩壊に伴う影響を正確に理解するとともに、擁壁等の立地状況や改修方法などを考慮した現実的な改善策を検討する必要があります。そのため、現地点検調査の結果に基づく個別の安全化指導を進めるとともに、擁壁等の改善に向けたアドバイスを行うコンサルタント派遣や、擁壁等の改修に対する助成などの支援を実施しているところです。 擁壁等の改善をより一層進めるため、所有者に対して個別の安全化指導や区内全域の擁壁等を対象とする安全化啓発などの機会を捉え、擁壁等の改修助成制度やコンサルタント派遣制度の周知・普及に積極的に取り組んでまいります。 ◆18番(志田雄一郎) 区長、それぞれ御答弁いただきましてありがとうございました。 特にAED、それから危険ドラッグ、急傾斜地のことについては、人の命を守る、災害に備えると、先ほどお昼もちょっと大きな地震がありましたけれども、いずれも早急な取り組みが必要なことであると思います。この後設置予定の決算特別委員会で同僚議員から、ただいまの答弁をもとに改めて質疑をさせていただくことになるかと思います。 それから、区長、まだ2カ月ほど任期はありますけれども、12年間本当にお疲れさまでした。私どもの意見にもいろいろと耳を傾けていただきまして本当にありがとうございました。 以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手) ○議長(おぐら利彦) 次に、27番のづたけし議員。     〔27番 のづたけし議員登壇、拍手〕 ◆27番(のづたけし) 区民主権の会ののづです。新宿区議会第3回定例会に当たり、会派を代表して区長並びに教育委員会に質問いたします。どうか誠意ある御答弁をお願いいたします。 さきの区議会第2回定例会の場におきまして、中山区長は今期限りでの勇退表明をいたしました。個人的にはとても残念な気持ちではありますが、区長の長年にわたる新宿区政に対する貢献に敬意を表するとともに、現在まで大変お疲れさまと心から申し上げたいと思います。 私たちの会派は基本的に中山区政を支持してきた立場ではありますが、当然のことながら、個々個別の政策に関しては大いに評価する点もあれば、疑問を感じる点もありました。ここで改めて3期12年にわたります中山区政の検証を行い、次の時代に何を託していくのかという観点から包括的な質問を行いたいと思います。特に中山区政の中でも大きく評価する3つの点を挙げて、それらについて今後どのように継承していくべきかについての質問をいたします。 まず1つ目のテーマは、「新宿の住環境の改善」というテーマであります。 東京の中心に位置し、交通の便にも大変恵まれながら、かつての新宿区の住環境は必ずしも良好なものではありませんでした。私が最初に区議会議員になった小野田区政の末期には、区内の主要な公園や駅ターミナル近辺には大勢のホームレスがブルーテントを張りめぐらしておりました。また、まちの方々には大小いろいろな種類の不法投棄されたごみや放置自転車が数多く見受けられました。現在ではさまざまな対策が功を奏して、区内のホームレスの数は激減し、町並みも以前に比べて幾分かきれいに変化してきました。しかし、理想的な住環境を考えると、この問題の解決は道半ばと言わざるを得ません。防災や防犯などの「安全・安心のまちづくり」とあわせて、快適で生活な住環境の保全は何にも増して優先度の高い事項と考えられます。この点について区長のお考えをお聞かせください。 次いで2つ目のテーマは、「健全な財政運営の維持」というテーマであります。 かつては財政非常事態宣言を発するまでの状況に陥っていた新宿区の危機的な財政状況は、中山区政時代を通して徐々に改善されてきました。区有施設の再構築などの厳しい行財政改革の断行、積極的な民間委託や指定管理者制度の導入、さらには旧淀橋第二小学校跡地の土地信託による税外収入の確保など、健全財政に向けての不断の努力のたまものと言えます。 持続可能な財政運営に向けての質実さといった姿勢は、中山区政全般にわたる大きな特徴でありました。一例を挙げるのならば、老朽化した区役所本庁舎を安易に建てかえするのではなく、免震補修工事を施して使えるまでは使おうということにも、その堅実さはあらわれております。隣の豊島区や渋谷区のみならず、本来は財政的に苦しいはずの葛飾区までそろって本庁舎の建てかえを計画している中、あえて新宿区は慎重に判断したわけですが、東京オリンピックを控えて建設コストが上昇する昨今の現況においては極めて適切な判断だったと思われます。 しかし、今後の税制改革に伴う歳入構造の変化や、リーマンショック以降増大し続ける扶助費の動向などを考慮すると、現状維持でただ安穏としているわけにもいきません。この点に関して区長のお考えをお聞かせください。 最後に3つ目のテーマは、「誇れるまち、新宿の創造」というテーマです。 これまで広く定着していた、「新宿イコール怖いまち」、「特に歌舞伎町は危ない」というマイナスのイメージを、徹底した浄化作戦の実施や歌舞伎町ルネッサンスの展開により健全な繁華街というものに改善させました。また、マイナスのイメージを払拭するだけではなく、プラスのイメージを形成するような政策も推進されてきました。新宿クリエイターズ・フェスタの開催や、中村彝のアトリエ復元や、夏目漱石の漱石山房復元など各種の文化施策の試み、またはおとめ山公園の整備拡張事業など、「住んで誇れるまち、新宿」を創造する道筋をつけたことも大いに評価できます。この点に関して区長のお考えをお聞かせください。 以上、3点にわたって中山区政の最も評価すべきと思われる政策について検証してきましたが、このほかの政策で区長自身が特に自負するもの、または今後に向けて思い入れの強いものがございましたら、あわせてお聞かせください。 ◎区長(中山弘子) のづ議員の御質問にお答えします。 3期12年の区政の検証についてのお尋ねです。 初めに、新宿区の住環境の改善についてです。 私は、区民が安心して心豊かに住み続けられる新宿区を実現するためには、「安全・安心」や「まちの環境美化」は大変重要と考えており、そのための施策を進めてきました。 御指摘のように、私が区長に就任した当時、区内の公園や道路などで多くのホームレスがブルーテントで生活しており、また、町中では不法投棄されたごみや放置自転車が多く見られ、首都東京の中心である新宿のイメージを大きく損ねるばかりか、都市の安全・安心にもかかわる大きな課題となっていました。そのため、新宿中央公園では、東京都と共同でホームレスの自立支援を推進する「地域生活移行支援事業」を開始するとともに、「新宿区ホームレスの自立支援等に関する推進計画」を策定して、「拠点相談事業」など他の自治体に先駆けた事業を実施してきました。その結果、ブルーテントは現在なくなり、ホームレスも大きく減少しています。また、新宿駅東口のモア4番街ではオープンカフェの社会実験を行い、にぎわいの創出とごみの不法投棄や放置自転車対策に取り組み、安全・安心のまちづくりを実現することができました。 こうした取り組みの結果、まちの環境は大きく改善されていますが、まだまだ十分とは言えません。これらの課題を解決するためには、粘り強く取り組みを継続することが大切です。今後も一層の力を注ぎ、区民の皆さんが「これからも住み続けたい」、来街者の皆さんが「何度も訪れたい」と思う新宿のまちの実現を目指していくことが重要と考えております。 次に、健全な財政運営の維持についてです。 私が区長に就任した平成14年11月の時点での区財政は、さまざまな改革により一定の改善が図られていたものの、なお極めて厳しい状況にありました。従来取り組んできた財政健全化に向けた取り組みの成果の上に不断の改革を積み上げて、新たな時代の課題に対応し得る行財政改革を進めていく必要があると考えました。 そうしたことから、高齢化等に伴い増大する行政需要への対応として事業の選択と集中に取り組むとともに、財政対応力を確保するため税や保険料等の早期納付勧奨や差し押さえなどの徴収対策も強化し、歳入確保に努めてまいりました。また、施策の再構築や事業の見直しについても、区民や関係団体などと連携・協働して区民サービスの向上を図るという視点を基本に、民間委託や指定管理者制度の導入など、さらなる「区政改革」を積極的に進め、区民の皆様に応える財政運営に取り組んでまいりました。 区財政は、平成14年度決算以降7年連続で実質単年度収支が黒字になるとともに、基金残高の確保など財政対応力を強化することができました。地方財政に大きなインパクトを与えた三位一体の改革や、平成20年秋のリーマンショック以降の長い景気の低迷、加えて東日本大震災の発生など、目まぐるしく変わる財政環境の中で、安全で安心なまちづくりや少子高齢社会への対応などに培ってきた財政対応力を有効に活用することができたものと考えています。しかしながら、基金残高は平成20年度末の608億円から43%減となる346億円まで減少しています。先行き不透明な経済状況の中、今後とも着実に必要な施策を展開するためには、不断の改革によりさらに効果的で効率的な区政運営を推進し、将来にわたり持続可能な財政構造の構築を目指していくことが必要であると考えております。 次に、「誇れるまち、新宿の創造」についてのお尋ねです。 最初に、歌舞伎町のまちづくりについてです。 私が区長に就任した当時は、御指摘のように歌舞伎町は怖いまちというイメージが強く、新宿区のブランド力を高めるためにも、歌舞伎町を誰もが安心して楽しめるわくわくするまちに再生することが必要と考えました。そこで、平成17年1月に「歌舞伎町ルネッサンス推進協議会」を設立して、地元を初め警察、消防など官民協働でさまざまな対策に取り組んできました。安全・安心はもとより、歌舞伎町タウン・マネージメントを設立して大久保公園やシネシティ広場を活用した各種イベントを行うほか、新宿クリエイターズ・フェスタの実施などのにぎわい創出に力を注ぎ、産業構造を変化させることに取り組みました。 現在、外国人観光客に人気のガイドブックには、歌舞伎町が「安全で楽しいまち」と紹介されており、人気の観光スポットになっています。平成27年春には歌舞伎町のランドマークとなる新宿東宝ビルがオープンし、これにあわせたセントラルロードの整備、続くシネシティ広場の再整備により歌舞伎町の町並みが変わります。同時にホテルの集積は2,000室を超え、産業構造も大きく変わり、国際観光都市としての機能も充実します。歌舞伎町ルネッサンスの取り組みを通して、誰もが安心して楽しめるまちの実現に大いに成果があったものと考えています。 2つ目に、文化芸術振興の取り組みについてです。 都市の大切な要素である「文化」や「芸術」は、まちの魅力を高める源泉であり、新宿のプラスイメージを形成していくためにも新宿における文化芸術の振興はとても重要です。 区では、まちの記憶を活かした文化施設として、これまで佐伯祐三アトリエ記念館や中村彝アトリエ記念館の整備を行いました。また、現在、夏目漱石生誕150年に向けて、平成29年2月開館予定の(仮称)「漱石山房」記念館の整備事業を初めとする文化芸術振興施策にも取り組んでいます。 3つ目には、都市の潤いと安らぎについてです。 水辺と緑は人々の生活に潤いと安らぎを与え、都市としてのブランド力を高めるものです。私は、区長就任以来、緑化の推進や水辺の保全整備にも積極的に取り組んできました。壁面緑化や「りっぱな街路樹運動」などを進め、平成22年度のみどりの実態調査では、これまで減少を続けてきた緑量が5年前と比べて7.31ヘクタールふえました。また、玉川上水をしのぶ流れや神田川親水テラスの整備など、人々が水辺に親しめる環境づくりに力を注ぎました。さらに、平成24年度に整備を始めたおとめ山公園の拡張整備も間もなく完了し、10月26日に全面開園します。落合斜面緑地の豊かな緑を拡充し、かつての谷戸地形の再生など、江戸時代のタカ狩り場として立ち入りを禁止されていたこの土地の歴史や記憶を伝える宝物として、未来の子どもたちに誇りを持って継承できる自然豊かな里山を目指しています。 このように、にぎわいの創出や新宿ブランドを高める取り組みを進めてきたことにより、「住んで誇れるまち、新宿」の創造に向けて着実に道筋をつけることができたものと考えております。 次に、御指摘の3点の政策のほか、私が取り組んだ主な政策について御説明します。 1点目は、災害に強い安全なまちづくりです。 いつ起きてもおかしくない首都直下地震に備え、災害に強い、逃げないですむまちづくりを目指し、木造住宅密集地域の不燃化の促進や建築物の耐震改修助成、災害時要援護者の支援や防災区民組織等の防災力の向上など、時間との競争の中で減災社会の実現に向けて力を尽くしてきました。 2点目は、誰もが地域の一員として心豊かな生活を送ることができる地域社会づくりです。 高齢者施策については、高齢者総合相談センターを核とした「地域包括ケアシステム」の構築に力を注ぐとともに、特別養護老人ホームや小規模多機能型居宅介護などの基盤整備を進めることで、高齢者とその家族を支えるサービスの充実を図りました。 障害者施策については、安定した地域生活と社会参加の充実を図るため、グループホームの設置促進や自立訓練等の通所事業、相談支援、就労支援などを充実するとともに、百人町の障害者生活支援センターなどの整備を進めてまいりました。 子育て施策については、保育施設の定員を就任以来約2,200人ふやしたほか、延長保育や病児・病後児保育の充実を図りました。また、家庭で子育てしている方への支援として、一時保育の充実や子ども総合センターを中心とした子育て相談、親と子の居場所づくりなど、区民が安心して子育てできる環境整備を進めました。 こうした施策に加え、区民生活に密着したさまざまな施策を実施することにより、基本構想や総合計画で示した新宿の目指すまちの姿への取り組みを着実に推進することができたと考えております。 ○議長(おぐら利彦) ここで、議事進行の都合により休憩いたします。 △休憩 午後3時09分--------------------------------------- △再開 午後3時25分 ○議長(おぐら利彦) ただいまから、会議を再開します。 質問を続行します。 ◆27番(のづたけし) 次の質問は、新宿区の観光施策についてです。 東京オリンピックの開催を間近に控えて、政府も我が国における観光施策を重点的に推進する方針であり、同時に、全国の各自治体レベルでもそれぞれが観光施策に力を入れ始めております。新宿区でも官民共同で新宿観光振興協会が設立されるなど、この分野での動きがにわかに活発化しております。 ふだん、日常生活を新宿のまちで過ごしていると忘れがちですが、実は現在においても新宿のまちは日本でも有数の観光地であります。特に外国人観光客にとっては、富士山や京都にも劣らず、イの一番に訪れたい観光地なのであります。特にアルタ前のビジョンや歌舞伎町は、まさしく東京を象徴する観光スポットであります。これは各種の最新データからも裏づけができる確かな事実であります。 例えば私たちがアメリカ一周旅行やイギリス一周旅行を企画する場面を想像してみましょう。アメリカ一周の旅ならば、まずハリウッドからグランドキャニオン、そして古きよきニューオーリンズ、フロリダなどと来て、最後に待望のニューヨーク、そこでは自由の女神やセントラルパークとともに、必ずタイムズスクエアには訪れるはずであります。イギリス一周の旅ならば、スコットランドからストーンヘンジの遺跡をめぐり、そしてリバプールと来て、最後にロンドン、そこではビッグベンや大英博物館とともに必ずソーホーには訪れるはずです。 翻って、多くの外国人観光客が日本の旅をするならば、京都、富士山、そして東京では浅草や皇居とともに必ず「新宿のまち」を訪れることもうなずける現象でしょう。実際に、この夏休みにも新宿歌舞伎町のまちには多くの外国人観光客があふれている光景を目にすることができました。このような喜ばしい現状をきちんと見据えて、より効果的な観光施策を着実に展開していくことが求められております。 以上のような観点から、以下、幾つか質問をいたします。 新宿観光振興協会では、観光マップや観光情報誌の発行、観光レポーターの育成、各種イベントの開催や支援など多くの事業を限られた予算の中で展開していく計画ですが、その中でも最も力を入れるべき活動は効果的なパブリシティー活動であると考えます。多様な情報を集積して、それで適切に選択または加工して、効果的に各種メディア--これには海外のメディアも含まれております--に提供していくことで、その情報の発信効果は限りなく増大していきます。ことイベントや話題や流行といった分野では、まさに情報を制する者が全てを制すると言っても過言ではありません。新宿区のように情報ソースに恵まれている地域においては、最も費用対効果が期待できる戦略と思われますが、いかがでしょうか。 そして、特に高度なPR活動には専門的なノウハウも必要と思われますが、この際、外部のプロや専門業者とも提携してでも、その効果は絶大なものと考えられますが、いかがでしょうか。 このような有効な情報戦略を展開するためにも、潜在的な観光客のニーズを的確にマーケティングしていかなければなりません。私たちが提供しようとする観光資源と観光客が求める観光資源との間にギャップが存在したのではいけません。特に外国人観光客を迎えるに当たっては、このギャップが大きなミスマッチにつながり、せっかくの貴重な観光資源を無駄にしかねません。 例えば、新宿区ゆかりの文学者といえば、夏目漱石のほかに小泉八雲や林芙美子などを私たちは思いがちですが、実は世界的に著名な日本の文学者といえば三島由紀夫、最近では村上春樹などが挙げられます。それでは、この2人の作家が新宿区と全く無関係かといえば、そうではありません。無関係どころか、三島由紀夫のゆかりは市谷の自衛隊でありますし、村上春樹のゆかりは早稲田大学です。 また、日本では単なるオタク文化として一くくりにされている漫画やアニメ、コスプレといった最近の我が国のサブカルチャーは、世界的に、特に欧州では日本の先端文化としてとても評価を受けております。さらには、現代におけます日本独自の食文化でありますラーメンやおにぎりなども注目すべき貴重な観光資源でしょう。このような潜在的な観光資源に関して、いま一度徹底的に調査、研究していく必要性があると思われますが、いかがでしょうか。 観光施策を効率的に展開するためには、新宿区単独で取り組むよりも、近隣の自治体と連携して行うことも必要であります。新宿区と同様に、他の自治体もこれから観光施策に力を入れていくものと思われますので、積極的な情報交換や共同の企画を試みることで、よりよい相乗効果が期待できるでしょう。そこで生活する住民と違って、外から来る観光客にとっては、行政区分は何の意味も持ちません。観光客の立場で考えるならば、より広域的な観光施策が求められております。 例えば、私の地元であります下落合は、目白通りを挟んで向こうは豊島区となります。新宿区が制作する落合のマップには、佐伯祐三や中村彝のアトリエ、おとめ山公園、日立目白クラブなどは掲載されていますが、豊島区側はグレーで何の記載もありません。逆に、同様の豊島区のマップを見ると、豊島区側には徳川黎明会や漫画のトキワ荘などは掲載されておりますが、新宿区側はグレーで何の記載もありません。このかいわいにはせっかく貴重なスポットが点在するのに、これではどうも不完全な気がしてなりません。このように無駄な不都合が生じないためにも、近隣自治体との連携強化は必要と思われますが、いかがでしょうか。 ◎区長(中山弘子) 観光施策についてのお尋ねです。 初めに、多様な情報を各種メディアに効果的に発信することについてです。 新宿観光振興協会では、ホームページを初めフェイスブック、ツイッターなどにより旬な情報を提供するように努めているところです。また、協会の新たな取り組みや「新宿芸術天国」、「森の薪能」などのイベントについて各種メディアでの情報提供を積極的に行っていますが、今後は会員企業の協力をいただき、海外メディアへの情報発信を行うなど、効果的なパブリシティーに努めてまいります。 次に、外部のプロや専門業者と提携してPR活動を行っていくことについてです。 世界的な視点で新宿の魅力をPRしていくには、御指摘のように、専門的なノウハウや各国が求めているニーズに対応していかなければなりません。会員企業には、旅行会社や百貨店などの広報宣伝部、海外店舗を持つ事業者など専門的なノウハウを持っている方々が多数います。このたび5言語で訪日旅行者向けに発行いたしました「新宿エクスプローラー」は、こうした企業の知恵や力をお借りして、アジアを中心とする海外で広く提供しているものです。今後も企業や会員の協力を得ながら積極的なPR活動に努めてまいります。 次に、潜在的な観光資源に関する徹底的な調査、研究の必要性についてです。 御指摘のとおり、私たちが提供しようとする観光資源と観光客が求める観光資源との間にギャップが存在してはいけません。戦後の日本を代表する作家であり、海外でも人気の高い三島由紀夫や、多くの著作が翻訳され世界中にファンがいる村上春樹は新宿区にゆかりの深い文学者です。今後は、こうした文学者の足跡を掘り起こし、発信につなげてまいります。また、アニメや食文化なども貴重な観光資源と捉え、新宿観光振興協会で発行する情報誌などに掲載してまいります。 このような取り組みにより、地域の潜在的な観光資源を観光客の視点からもう一度見直してまいります。 次に、観光施策の展開に際しての近隣自治体との連携強化についてのお尋ねです。 御指摘のとおり、観光客にとっては行政区分は大きな意味がありません。例えば落合地域に活動拠点を置いていた新宿ゆかりの漫画家・赤塚不二夫は、青春時代を豊島区にあったアパート「トキワ荘」で過ごしました。豊島区では、この「トキワ荘」の記憶を後世につなげる取り組みを進めています。目白通りを挟んで新宿区側には、「トキワ荘」の住人たちが集った喫茶店「エデン」の跡地もあります。このように、区境を意識せず足跡を訪ねることができるマップがあれば、相互の貴重な観光資源を楽しめ、観光客へ大きくアピールすることができます。 また、新宿区は「都電荒川線沿線4区地域活性化協議会」を、東京都、豊島区、北区、荒川区と連携して立ち上げ、スタンプラリー、都電さくら号の運行等の、荒川線やその沿線の観光資源を活用した事業を進めています。加えて、昨年度に新宿区は、千代田区、中央区、港区とともに4区で観光振興連絡会議を立ち上げ、幅広く意見交換を行っています。 このような取り組みを通じて、広域的な観点から、より多くの近隣自治体との連携をさらに深めてまいります。 ◆27番(のづたけし) 最後の質問は、幼児教育、特に情操教育についての質問です。 「三つ子の魂、百まで」とのことわざがあるように、幼い時代に影響を受けた価値観や道徳観は、その人のその後の人生を形成します。これは感性の分野でも同様であります。人間の感性や美意識といったものが幼いころに親しんだものに大きく影響を受けることは確かであります。美の黄金比でありますとか、色彩や光のバランスなど、人類が共通して受けとめる普遍的な感性も認められますが、主に一般的な美的評価というものは、その時代や社会状況によって形成されていくものとされております。これは平安時代のお姫様像、江戸時代の浮世絵、そして現代の美人画を比較すれば明白です。 また、以下のような心理学上の実験結果も報告されております。人間の美醜を判断するために、整った顔だちの人と不自然な顔だちの人の2種類のイラストやモンタージュ写真をつくり幼児に見せて、どちらが美しいかを判断させるという実験です。3歳児は、その正答率が50%程度であるのに対し、4歳から5歳児になると正答率は70%以上に上昇し、7歳児では成人の場合と同様にほぼ100%となるそうです。このことからも、幼児の時期に与えられた情報が、その後の感性や美意識を決定することがわかります。豊かな感性や美意識を培う上でも、幼児期の教育は重要な役割を担っているのです。 だからといって、私は、「ジェンダー」の概念を持ち出して、幼児期の男の子がブルー色のもの、女の子はピンク色のものといった区別はよくないなどというナンセンスな質問をしたいわけではありません。たとえ幼児期であっても、男の子は強くたくましいもの、女の子は優しく美しいものになれ親しんだほうが、社会的にも文化人類学的にも、さらには子どもたちの幸福な生涯のためにも好ましいと私は考えます。 話が脇道にそれてしまいましたが、幼児教育における豊かな感性を育むために、以下3点に留意すべきと考えます。 まず1点目は、新宿区という都市部の特性から、幼い子どもたちが自然や小動物に接する機会が少ないことが懸念されます。土や草のにおいや風の感触を感じることなく、物心ついたときに身近にいた動物が都会のカラスやハトだけだったというのでは余りにも寂しいと言わざるを得ません。この点についてはいかにお考えでしょうか。 次に、2点目として、テレビやインターネット、果ては町中に氾濫する広告物に至るまで、大量の通俗的な情報に囲まれる中、いかにして古典的な芸術や伝統的な美に触れる機会を確保するかということも大切です。本格的な芸術鑑賞とまではいかなくても、日常的に美しい絵画や音楽に接することは必要と思われます。この点についてはいかがお考えでしょうか。 3点目としては、感性の領域でもグローバルな視点を育む幼児教育も大切です。将来の多文化共生の教育の下地としても、幼いころからグローバルな文化に触れることも求められております。例えば、さまざまな人種の人物が描かれているような外国の絵本に親しんだり、いろいろなリズム感を持った音楽に触れたりすることで、自然と国際的な感性も育っていくでしょう。この点についてはいかがお考えでしょうか。 以上、3点にわたって現在の取り組みや今後の課題についてお聞かせください。 ◎教育長(酒井敏男) 幼児教育、情操教育についてのお尋ねです。 初めに、幼児教育において豊かな感性を育むために、園児が自然や小動物に接する機会についてのお尋ねです。 区内の幼稚園は、決して自然に恵まれた環境とは言えません。しかし、その中でも、近隣の公園に行き、虫や土、草花に触れる機会を設け、敷地内では金魚や亀、ウサギなどの生き物を飼育しています。また季節に合わせた野菜の栽培をしています。園児みずから育てた大根を家族と一緒に料理する取り組みを行っている園もあります。このように、各園では自然や小動物に触れ合う機会をつくり、さまざまな感動体験を通して子どもたちの豊かな感性を育んでいます。 次に、絵画や音楽に接する機会についてのお尋ねです。 ある園では、地域のボランティアなどの協力により、フルートやバイオリンの演奏会を開き、名曲に触れる機会をつくっています。また、全ての園で近隣小学校の展覧会を鑑賞し、小学生の作品に関心を持たせ、創造する意欲を向上させています。さらに、廊下に名画の複製画を飾るなど名画と親しむ環境づくりを工夫している園もあります。このように、各園では、古典的な芸術や伝統的な美に触れる機会を確保するなど、さまざまな取り組みにより豊かな感性を育んでいます。 次に、グローバルな文化に触れることについてのお尋ねです。 ある園では、学期1回程度、外国籍の保護者やボランティアにより中国や韓国のことを紹介してもらう取り組みを行っています。そのほかに、ヨーロッパを初め世界各国の代表的な食べ物を紹介した絵本の読み聞かせをしています。また、運動会でキューバの民族打楽器のボンゴを使い、「サンバ」のリズムに合わせて園児たちが表現活動を行っている園もあります。 このように、各園では、地域の方々や保護者の協力を積極的にいただきながら、幼児期の発達に合わせ豊かな感性を培うよう創意工夫しながら取り組んでおります。 以上で答弁を終わります。 ◆27番(のづたけし) 御答弁ありがとうございました。 まず観光施策についてなんですが、パブリシティーとか、そういった情報戦略が大切だというのは、多分新宿区だけじゃなくて、今後オリンピックに向けて東京都も国もいろいろなところが、もちろん民間企業を含めて莫大なお金とか人を使ってやるわけなんですね。そうすると、やっぱり一自治体として限られた予算を考えるならば、余りいろいろな企画をたくさんやるというよりも、徹底的にその分野に特化して、新宿区のこの場所に聞けば大体全ての情報は手に入るぐらいの、要するに特色を持たせてやったほうがよいんじゃないかなというふうに思って、その質問をさせていただきました。 あと、幼児教育に関しては、本当に私も重要だなと特に思ったことがありまして、最近の私の個人的体験というものでそういうことを感じたんですが、皆さん、御存じかどうか知りませんけれども、19世紀のフランスの天才詩人にランボーという詩人がおりまして、その人の問題作に「母音」という詩があります。音を色であらわしたものなんですね。「Aは黒、Eは白、Iは赤、Uが緑、Oが青。母音たちよ、いつの日かなんじらの出生の秘密を語ろう」という、そういう詩なんですが、要するに、このランボーという詩人は音を聞いて色をイメージしたということなんですが、ある研究者が、たまたまそういうふうに音から色彩をイメージするタイプ、脳の部分で感受するものがまざって、そういうふうなことになる人がいるということを研究していることがありまして、私も実はそうかなと思って、自分自身もそういうところがあったんですね。ただ、なぜか私は、これでいうと、Aというのは黒で、Eというのは白なんですけれども、私はぱっと音を聞いた場合、Aというのは赤というイメージがあって、逆に、Eというのは青というイメージがあるわけですね。「何でなんだろうな。この詩とは全然自分は違う感性だったな」というふうに思っていたんですね。 時たま実家に帰りまして押し入れを整理したんですね。本当に自分が言葉を勉強するか、覚えるか覚えないかぐらいの本当に小さいころに使った、あいうえおの書いたブロックがあったんですね。ちょうどそれが、あ行は全部赤なんですね。い行のところは全部青なんですね。そのときに私は、そんなものの存在なんてもうとっくに忘れていたんですけれども、やっぱりそのときに、ずっと毎日子どもの列で見て言葉を覚えたというものが、どこかもう潜在意識の奥底に入っていたんだなということを思いまして、特に感性の分野では、自分たちが意識しなくても、本当に小さいときに受けたものとか好き嫌いとか、おいしい、まずいとか、そういうものも含めて非常に影響を受けるものなんだなというのを最近自分自身の体験として知りましたので、そういった部分で、幼児教育というのもこれから研究開発される分野だと思いますけれども、やっぱりこういうものはすごく大切なことなんだなということを改めて思ったことがありましたので、今回質問させていただきました。 これにおきまして私の代表質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手) ○議長(おぐら利彦) 本日の代表質問は終了しました。--------------------------------------- ○議長(おぐら利彦) 次に、日程第2を議題とします。     〔次長議題朗読〕 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ △第56号議案 平成26年度新宿区一般会計補正予算(第4号)     〔巻末予算案の部参照〕 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ○議長(おぐら利彦) 提出者の説明を求めます。     〔中山弘子区長登壇〕 ◎区長(中山弘子) ただいま上程されました第56号議案平成26新宿区一般会計補正予算(第4号)について御説明いたします。 今回、歳入歳出予算を補正する額はそれぞれ1億4,784万8,000円です。 歳出予算から述べますと、健康費においては、予防接種に要する経費8,844万8,000円を計上するものです。教育費においては、旧中央図書館解体工事に要する経費5,940万円を計上するものです。 これらの財源としては、繰入金及び諸収入を充当するものです。 これを補正前の予算額と合わせますと、歳入歳出予算の総額は、それぞれ1,423億3,945万1,000円となります。 以上、御審議の上、御賛同いただきますようよろしくお願い申し上げます。 ○議長(おぐら利彦) 説明は終わりました。 ただいま議題となっています第56号議案は、お手元に配付しました議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託します。     〔巻末議案付託表の部参照〕--------------------------------------- ○議長(おぐら利彦) 以上で、本日の日程は終わりました。 次の会議は9月17日午前10時に開きます。ここに御出席の皆様には改めて通知しませんので、御了承願います。 本日はこれで散会します。 △散会 午後4時47分                  議長    おぐら利彦                  議員    ひやま真一                  議員    かわの達男...