昼間
区民だけではなく、法人
区民である企業も同じことです。
千代田区に立地する多くの企業を抜きにしてはまちづくりすらできませんし、商業や産業の施策も立てられません。ほかにも、治安、交通政策、防災・減災、その他あらゆる政策や生活上のことで、私たちはたった約4万人の自治体ながらも、100万人があっての
千代田区であり、100万人の人たちも私たち約4万人が住んでいるからこその
千代田区であるのであります。正に、社会経済活動の全般にわたり関係するととらえることができます。
私は、約4万人と約100万人がお互いに手に手をとり合う共同体という意味でも、共生社会の実現が必要であると考えております。ただし、これは現代の地方自治制度に対する大いなるチャレンジであります。既存の自治制度では解決できない様々な問題が
発生しているからであります。しかし、これらの課題に果敢に挑戦することこそが「共生」へのかぎであり、新しい
千代田区の魅力を引き出す最大のポイントであろうと考えております。100万人との共生を模索することこそが、約4万人の生活の向上につながり、
千代田区から始まる新しい地方自治への最先端の挑戦であるのだと、私は確信を持ってここに述べているのであります。
第2は、経済と環境の「共生」であります。環境については、この4年間で私たち
千代田区民は忘れてはならない取り組みを行いました。歩きたばこに全国で初めて過料を課すなどした「生活環境条例」です。この条例は、歩行喫煙だけのためのものではありませんが、歩きたばこを規制するに当たっては、実は私たち
千代田区民は大きな決断をせざるを得ませんでした。何か良い方法はないかと随分悩んだものでありました。
私が条例化を決断したのは、ある休日、親子連れとすれ違ったときのことでした。「お父さん、このまちは汚いね」そう子どもたちが話すのが聞こえたのです。子どもの心は、私たち大人を映す鏡です。私たちがつくり上げた
千代田区というまち、そして、それを汚している大人が子どもの心にどのように映っているんだろうかと悲しくなりました。しかも、歩きたばこはこの子たちにやけどなどの危害を与えるかもしれないのです。私は、いても立ってもいられない気持ちになりました。
しかし、もちろんそうした私の思いだけでは、この条例が成就することはなかったことは
皆さんもご承知のとおりであります。条例に反対する側からは、「嫌煙者の感情論としか思えない」、「たばこは国の認めた商品で、吸う吸わないは自由意思に基づくものだから云々」といった意見が出る一方、賛成派からは「無神経さに腹が立つ。道路を灰皿と思い込んでいる」とか、「他人に迷惑をかけるものはいかなる者でも許されない」等、かんかんがくがくの論議があったところであります。
しかし、対立する立場を乗り越えてお互いの立場を認めながら、どうしたら「共生」していけるかという論議に発展し、「やはり良識のある社会を目指そうではないか」ということになり、この条例が成立、施行されたわけであります。
1本のたばこが社会を揺るがし、単に喫煙者と非喫煙者の対立ではなく、現代社会の抱える問題の断面を切り取って見せたのであります。「関係ない」、「知らない」では何も解決しません。他者を認めること、画一から多様性へという「共生」こそが解決の糸口になったわけであります。その意味では、正に「共生」が生んだ条例であったと思います。
そうしたことをなし遂げた我々
千代田区民であるからこそ、次のステップへ進めるのではないかと考えました。それは、同じ環境でも地球規模の「共生」につながる京都議定書は、1997年の国際
会議で採決された後、このほどようやく国際法として効力を持つことになりました。ところが、国内の温室効果ガスは削減目標を達成できるどころか、減少のめどさえ立っておりません。しかし、このままでは「共生」すべき生物、自然、そして地球が壊れ、私たち人間も滅んでしまいます。言うまでもなく
千代田区は日本の経済社会の活動の中心であり、日本をリードする経済活動が行われております。だからこそ、また率先してこれらの問題を共有し、解決する努力が必要であり、
千代田区としてもこれらの対策に積極的に取り組む必要があります。
第3は、今日その重要性が叫ばれている男女共同参画社会の課題についてでありますが、豊かで活力ある社会を維持・発展していくためには、
区民の一人ひとりが社会に参画し、男女がお互いにその人権を尊重し、喜びも責任も分かち合い、個性と能力を十分に発揮することができる社会づくりが必要であります。これも男女の「共生」にほかならないものであります。今、区議会でも積極的な論議を行っていただいている新庁舎に「男女共同参画センター」を併設する考え方も、男女共生社会の構築に向けた取り組みのシンボル的存在であります。
第4は、次世代育成についてであります。個人と企業の「共生」のあり方の問題があります。「働き方を変えないと子どもが産めない」というのは、もうサラリーマン世帯を中心にして常識となりつつあります。このままの働き方を続けていけば、子どもを産んだり育てたりすることはさらに厳しい社会になっていくでしょう。当然子どもたちに輝かしい未来は見出しにくくなります。私たちの将来、人類の未来にもかかわる話であります。こうした今だからこそ企業と個人の「共生」のあり方を見直さなければならないと思います。これについては、多くの企業が本社を構える
千代田区で実践し、全国に発信する施策として、私の2期目の最重点施策の1つとして取り組んでいく所存であります。
第5は、地方分権の問題であります。地方分権改革は、多様な地域社会づくりに欠くことのできない課題であります。この地方分権は、それぞれの自治体にふさわしい地域づくりをお互いが尊重し合う社会づくりであり、正に共生社会づくりであるとも言えます。しかし、私たち
区民にとっていまひとつぴんとこないのが実情であります。中には、国と地方の権限争いだと言う人までいます。なぜそのように言われてしまうのでしょうか。それは、本当の意味での地方分権改革が行われていないからであると思います。
例えば、福祉、教育、医療などの分野では、地域特性だけではなく個人に着目したきめ細かなサービスが求められております。しかし、全国一律の制度や時代にそぐわない規制が温存されている限り、住民にとって分権改革の果実を実感することはできません。そうした仕組みを変え、私たち自治体自身が決められるようになれば、様々な問題解決への糸口がつかめるのではないでしょうか。
第6は、地縁組織の力であります。共生社会を実現する上で重要な役割を担う舞台として、ご近所の底力、身近な近隣でのきずな・つながりが大切であります。幸い
千代田区では、他の地域に見られないほど町会等の地縁団体の活動が活発であります。町会等がお互いに助け合う組織として機能しているからであります。
確かに地域と余りかかわらない生活を好む傾向が強くなっているせいか、こうした地縁団体よりも行政にその役割を求める
区民が多くなってきているのも事実であります。しかし、先の新潟県中越
地震において、隣近所の助け合いの大切さ、「遠くの親戚より近くの他人」ということを再認識させられましたが、これからの超高齢社会にあっては、高齢者だけの世帯やひとり暮らしのお年寄りが多くなってまいります。地縁団体の役割はますます重要性を増すのではないかというふうに思います。加えて、子どもたちの健全育成や安全・安心な地域づくりでの礎としても、その役割が増すと思っております。
千代田区には、「江戸しぐさ」に代表される江戸時代からの気遣いや思いやりがまだまだ残っております。こうした社会的・歴史的資源としての
区民風土を生かし、潤いのあるコミュニティをつくることができるのではないでしょうか。このように
千代田区の歴史と伝統ある身近な地域に根差した地域組織が、いわゆる社会的弱者をみんなで支えていく地域の実現に向けて大きな推進力になっております。この推進力を背景として、地域社会における高齢者見守り事業や、障害者がまちの中に積極的に入っていく就労支援事業が展開できるようになったのであります。高齢者も障害者も、健常者とともに同じ地域社会の中で同じように豊かな生活を送ることができる。これもまた共生社会であります。
人は誰でも年齢を重ねていきます。高齢者は特別な存在ではないのです。自分自身の問題であり、自分の家族の問題であります。障害者や何らかのハンディキャップのある人が暮らしにくい社会は、誰もが暮らしにくい社会でもあります。すべての人が利用しやすいように配慮するという「ユニバーサルデザイン」の思想に基づいて、区の施策は進めていかなければなりません。高齢者、障害者、幼き者、小さき者に多くの人々がごく自然に手を差し伸べることができる共生社会が実現すれば、お年寄りや子どもが悲惨な事件の犠牲になることはないと私は信じております。
今述べた「共生」の視点をキーワードに、2期目の任期4年間の
区政を、地域を構成する人々とともに運営してまいりたいと存じます。
次に、主要施策について申し上げます。
まず、高齢者施策について申し上げます。住み慣れた地域で個人が尊厳を持って、その人らしく自立した生活がいつでも送れるように、自助・共助・公助のバランスのとれた地域社会の実現が求められております。社会を構成するすべての人がお互いに助け合う共助とともに、誰でも、いつでも必要とする福祉サービスを利用できるように、個人の自立・自助を支えていくことが重要な要素となります。このような観点から、従来の現金支給を一部見直し、
平成17年度当初予算では
平成13年度対比で1億9,000万円、率にして29%の伸びとして、具体に必要とされるサービス給付事業を大幅に拡充したところであります。
私の今後4年間の取り組みの中でも、高齢者施策については最も力を注いでいく施策の1つであり、これまでの施策を継続しつつ、今後も必要な方に必要なサービスを提供する、いわゆる「高齢者のための生活必需品」をお届けし、誰もがサービスを実感できる施策展開をしてまいります。
高齢者施策の中で重要な位置を占める介護保険制度の全般にわたる改正が来年度予定されております。制度の基本理念である高齢者の自立支援と尊厳の保持の徹底を図り、区市町村は従来以上に保険者としての重責を担い、その機能を高めていく必要があります。
見直しの基本的視点の1つとして特に重要なことは、明るく活力ある超高齢社会の構築であります。すなわち、要介護状態になってからの事後的対応の考え方から、要介護状態にならないための予防や状態の改善に重点を置く予防重視型システムへの転換であります。世界一の長寿社会となった我が国は、100歳人生を明るく活力あるものにするための介護予防システムの確立を目指しております。
千代田区では、健康寿命日本一を目指して、
平成16年度から介護予防事業を大幅に充実させております。
平成17年度からは、介護予防の効果を実感できるよう、介護保険の新予防給付、従来の老人保健事業や介護予防・地域支え合いの事業の再編による地域支援事業の創設など、介護保険制度改革との関係を整理しながら、総合的・体系的な
千代田型の介護予防システムを確立してまいります。
介護予防システムの確立と並んだもう1つの柱は、要介護状態になった場合の支援であります。岩本町ほほえみプラザをはじめ、かんだ連雀特別養護老人ホーム、ジロール神田佐久間町グループホームなど、一連の介護関連施設が整備され、介護サービスの供給が大幅に充実いたしました。今後も住み慣れた地域での自立支援を基本に在宅ケアを推進してまいりますが、介護者の介護負担を軽減する施策も充実してまいります。
在宅で介護をされるご家族がより良い介護をするためには、介護をする人ご自身が心身ともに健康であることや、要介護高齢者と介護者との良好な関係が欠かせません。このためには、介護者を一時的に介護から開放することによって、介護者の日頃の心身の疲れを回復していただくことが必要であります。そこで、在宅ケアを強化推進するため、ジロール神田佐久間町において介護保険外の施策として「緊急対応型ショートステイ」を実施してまいります。
場所、時間、人という環境の変化は、認知症高齢者に大きな不安をもたらし、症状が悪化する可能性が指摘されております。デイサービスと緊急ショートステイを一体的に提供したことで、認知症高齢者の生活リズムや健康状態の改善、身体機能の向上、精神的安定が見られるなどの効果が確認されております。介護家族からも介護負担が軽減され、精神的にも身体的にも楽になったとの感想が寄せられており、介護保険制度改革の目玉でもあり、地域密着型サービスの先行事例として注目されております。
また、要介護高齢者を介護しているご家族等がともに会食しながら語り合うなど、介護者同士の交流の機会を提供し、日常の介護負担からのリフレッシュを図る「介護者リフレッシュ事業」を実施いたします。
さらに、「高齢者入浴支援事業」も実施いたします。これは、一番町及び岩本町の高齢者在宅サービスセンターの運営法人に対する入浴援助助成を行うことにより、希望者全員に入浴サービスを提供し、在宅での要介護者の介護負担の軽減を図ります。
次に、(仮称)高齢者サポートセンターについて申し上げます。
これからの高齢者は、社会的弱者のイメージではなく、プラチナ世代として他の世代をリードしていくようになりつつあります。すなわち、活力ある超高齢社会を築くため、高齢世代の持つ活力、知識、経験を社会に生かしていくことが求められており、従来の「交流・生きがいづくり」から大きく変化をしております。
総合サポートセンターでは、就労からボランティア活動など幅広い社会参加の拠点としての機能、高齢者自身の活力を生み出す場としての機能、在宅高齢者特有の問題に応えていけるような機能を加え、24時間365日、高齢者の生活を総合的にサポートできる場として整備することを鋭意検討してまいります。
次に、障害者施策について申し上げます。
障害者福祉の目標はノーマライゼーションの実現であり、雇用・就労は障害者の自立と社会参加を進めるための重要な柱になっております。障害者基本計画においても、障害者がその能力を最大限発揮し、働くことによって自立と自己実現が図れるように支援することが強く求められております。こうした背景のもと、私は「障害者にやさしいまち
千代田」の実現を目指し、新たな障害者施策の充実に努めてまいります。
平成19年度に竣工予定の新庁舎3階に、現在外神田にあります区立の福祉作業所の規模を拡大し、機能を充実して、新たな知的障害者通所授産施設を設置いたします。併せて、新庁舎1階に、障害者が働くことを通じて社会参加を図ることができるようパン工房等を設置して、障害者の就労を支援してまいります。さらに、昨年4月に設置した「
千代田区障害者就労支援センター」を新庁舎内に移転し、障害者の就労支援と生活支援を併せて行ってまいります。このように、新庁舎を
千代田区におけるノーマライゼーション推進のシンボル的な存在として整備を進めてまいります。
次に、障害者福祉の中核的な施設として、仮称ですが「障害者福祉センター」の設置に向けた具体的な検討に入ります。障害者が地域で安心して自立した暮らしができるには、就労支援を行う通所授産施設、共同生活の場を提供するグループホーム等の個別施設の設置と、地域での障害者の生活を支えるネットワークづくりが重要であります。このため、就労支援や生活支援を担う地域の障害者関連施設等と連携し、一人ひとりの障害者のニーズに合わせた様々なサービスを調整し、総合的に提供する拠点施設として整備をしてまいります。
次に、子育て施策について申し上げます。
子どもは、私たちの未来を担う宝であります。健やかに育ってほしいと願わない親はいませんし、それは社会全体の願いであります。人はそれぞれ個性を持って生まれてきております。子育てとは、正に「個」を育てることだと思います。私は、子どもたちが「きらきらと輝く個人」として生きていけるよう、それぞれの発達段階に応じて社会が全体としてきめ細かく支援していくことが大切だと考えております。
本区では昨年10月、「次世代育成支援行動計画」を策定いたしました。この行動計画には、「子どもと親の育ちを地域全体であたたかく支えるまち
千代田」を基本理念に、子育てがしやすく、子どもたちが伸び伸びと育つことができる地域社会づくりを目指して、新規事業・拡充事業を含む84事業を盛り込んでおります。
まず、保育サービスについてでございますが、都心における保育需要の増加とニーズの多様化に対応するため、認可保育園の定員弾力化や認証保育所の定員増を図り、保育園入所待機者ゼロを続けてまいります。
また、かねてからご要望の多い病後児保育を、認証保育所ポピンズナーサリー一番町において実施することといたしました。病後児保育は、保育園・幼稚園に通園しているお子さんが、病気の急性期を過ぎ回復期に入ったものの、集団保育はまだ困難な時期にゆったりと過ごし、無理なく体調を取り戻せる、子どもの立場に立った保育を行うもので、長期間の看護休暇のとりにくい保護者の状況にも配慮した制度であります。延長保育、長時間保育、一時保育、年末保育等、これまで取り組んできた事業とともに子育てと就労の両立を支援してまいります。
次に、すべての小学生が放課後の時間を豊かに過ごすことができるように、学校施設を活用した子どもの居場所づくり、のびのびスクールを行います。広くて安全・安心な遊びや活動の場として、小学校の校庭、体育館等を提供し、保護者や地域の人々の見守りとかかわり合いのもとで、子どもたちの健やかな成長を図ってまいります。3年間で全8小学校に拡大しますが、
平成17年度は3校でスタートできるよう取り組んでまいります。
なお、子育て施策につきましては、今
定例会に「
千代田区子育て施策の財源確保に関する条例」をご提案させていただきました。この条例の趣旨は、1970年代前半に生まれた第2次ベビーブーム世代の女性が、30歳代前半の出産期に当たる今後5年間を「少子化の流れを変える好機」と位置付け、
平成17年度を初年度とし、
平成21年度までの5年間で各年度の特別
区民税歳入見込み額の1%程度、概ね1億円の予算を子育て環境の整備・充実に要する新規・拡充事業の経費に充てることで、子育て支援に関する先進的な施策を発信してまいりたいと考えているからであります。
次に、子育てにもかかわる教育施策について申し上げます。
教育は人格形成の基礎であり、次代を担う社会の形成者としての資質、豊かな人間性と感性を育むとともに、健やかな身体を育成することが必要かと考えます。ここで豊かな人間性と感性を育むということは、基本的な知識を身につけ、その上に物事を論理的に組み立てる力を育て、自らの考えを持つことであると私は考えております。
先頃新聞報道された日本地理学会の「世界認識調査」においても、日本の大学生の10人に1人が北朝鮮の位置を示すことができない。100人に3人が米国の位置を間違えるという報道がなされました。確実に基礎的な知識の低下を招いていることは否定できないのではないでしょうか。このことは、単に最近の子どもの知識、学力が低下しているということにとどまらず、社会の動きに関心を持たなくなったということにもつながると思います。こうした現代の子どもたちの現状を踏まえ、学校教育のあり方を見直す時期に来ているのではないかと考えております。
本区では、児童・生徒の学力低下に関する懸念や不安を解消するため、
平成14年度から基礎的・基本的な内容を確実に身につけ、「基礎学力向上プラン」を全校で実施し、一定の
成果を上げているところであります。
平成17年度からは、子どもたちの「知・徳・体のバランスの良い発達」を目指し、従来の基礎学力の向上に加えて「心豊かな人間性の育成」、「健康や体力の向上」などに関する事業を「
千代田区E-SIDOプラン」として再編し、学校教育の一層の充実を進めてまいります。
特に、特別養護老人ホームなど福祉施設での中学生の社会体験を新たに教育課程に取り入れ、体験学習を通じて道徳観や社会性などの規範意識をはじめとした、豊かな人間性を育む心の教育を展開してまいります。また、芸術家を授業に派遣し、感動体験を通して豊かな感性を育てる「アーティスト・イン・スクール」事業の拡充を図るとともに、子どもと保護者を対象に教育施設を活用して、子育て支援事業「子育て塾」などを新たに実施してまいります。
また、
平成17年度の新学期から、一橋中学校、今川中学校、練成中学校は、神田一橋中学校として名実ともに新たな一歩を踏み出します。これら3校はいずれも60年に近い歴史を有し、地域の
皆さんに支えられ発展してきた由緒ある学校でありますが、新たに神田一橋中学となりましてからも、地域に支えられ期待される学校としてまいりますので、皆様の熱いご支援をお願いいたします。
さらに、区立で初めての中等教育学校の開設準備をしておりますが、この中等教育学校におきましては、6年間を生徒の発達段階によって2年ごとの基礎学力養成期、充実期、発展期の3段階に分け学習手法を学び、多くの体験を通して自己の進路意識を高め、進路実現を可能にすることを目指してまいります。
分権の時代である今日、教育の領域においても住民に最も身近な自治体が責任を持ち、学校ができるだけ創意工夫を発揮してその充実に努め、教育に関し長い歴史と伝統を有する
千代田区が、地域の課題を踏まえつつ時代の要請を先取りした独創的で先進的な学校づくりを進めてまいります。
次に、景観まちづくり施策について申し上げます。
千代田区は、400年にも及ぶ歴史と伝統のもと、我が国の政治、経済、文化の中心としての役割を担いつつ、区内の各地域がそれぞれの特色を生かしながら個性豊かな地域の魅力を育んできました。
このたび、いわゆる「景観緑三法」が制定され、昨年12月に施行されました。景観法では、その基本理念として、良好な景観は現在及び将来における国民共通の資産であり、地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動との調和により形成されるもので、適正な制限のもとにこれらが調和した土地利用がなされる必要があること、また、地域の個性を伸ばすような多様な景観形成が図られなければならないことなどが定められております。さらに、事業者、住民は、自らが良好な景観形成に向けて積極的な役割を果たし、国、地方公共団体は良好な景観形成に向けての施策を推進することの責務を明らかにしております。
千代田区では、これらの動きに先行して
平成10年度から景観まちづくり条例を制定し、区と
区民・事業者等が対話と協働のもとに
千代田区の地域特性に合わせた景観行政の推進に努めてまいりました。また、まちづくりにおいては、地域が個々に育んできた歴史や文化をはじめとした様々な魅力を生かし、地域が主体となって進められるよう、
平成15年に「まちづくりグランドデザイン」を作成し、地域ごとのまちの将来イメージをその地域の
皆さんと共有しながらまちづくりを展開しているところであります。
これからの再開発を含むまちづくりは、景観を維持し、伝統を保存し伝えていくという二面での調和を図ることが重要であると考えております。今後、これまでの区の取り組みに加えて、景観法に基づく景観行政団体として、総合的な見地からの景観まちづくりの方針について検討を行ってまいります。また、
平成18年度を目標に周辺と調和した建物のデザインや色彩、街並みに調和した広告物の誘導や、憩いと潤いのある道路、公園、河川の整備の方針などを盛り込んだ景観計画を策定し、景観まちづくりに取り組んでまいります。
次に、「千鳥ヶ淵四季の道」道路整備事業への取り組みについて申し上げます。
千代田区は、皇居を中心に公園などと一体となった、水、緑、石垣などと調和した施設が整備され、そこを訪れる人々に歴史や文化と触れ、潤いなどを提供する、東京だけではなく日本を代表する景勝地となっております。特に本年1月には、歴史や自然、地域文化などを歩きながら感じとれる全国の「美しい日本の歩きたくなる道500選」に「皇居ぐるっと巡るみち」として選定され、その重要性は一段と高まっており、これからの環境行政を進める上からも欠くことのできない重要な施設であります。
一方、この皇居の景観を構成する千鳥ヶ淵緑道につきましては、毎年春には100万人余の人々が訪れ、桜をめでるなど、都心の貴重な潤いや安らぎの散策路として多くの方々に愛されております。しかし、この都心のオアシスである千鳥ヶ淵緑道は、緑道本体も整備後約30年が経過し、施設の老朽化や歩きにくさなど数々の課題が山積しております。このため
平成17年度にはこれらの課題解決に向けて広く
区民や識見を有する人々などから意見をいただき、検討を進め、順次整備を行ってまいります。歴史と伝統、文化に培われた皇居一体の景観に、四季を通じて新たな魅力と感動、そして潤いを与える千鳥ヶ淵の道として後世に継承され、
区民のみならず多くの皆様にご利用いただき、愛されるような施設として整備をしてまいります。
さて、私が就任以来、特に力を入れて取り組んでまいりました行財政改革につきましては、過去5年間で約69億円の行財政効率化額であり、そのうち職員の
人件費の削減だけでも約20億円、全体の効率化額の約3分の1を占めております。
人件費については、その削減効果が後年度にまで及ぶため、累積計算を行うと約63億円という巨額になります。この財源は、
平成13年度から17年度までの5年間で、新規事業325事業、64億円余、拡充事業214事業、29億円余に事業計上され、重点配分をいたしたところであります。
税収の伸びに期待できない社会経済状況の中にあって、総
人件費の削減をはじめとする区の厳しい内部努力により、新規・拡充施策のための財源を生み出し、こうした行財政改革の
成果を
行政サービスの形で
区民の
皆さんに還元してきたところであり、今後も一層の努力をしてまいります。
地方分権を名実ともに実現し、住民に身近な区が自己決定・自己責任のもとに施策に取り組むには、自らの不断の改革が不可欠であります。強固な
財政基盤を確立・維持するための内部努力を徹底し、財政支出の削減と業務の効率化を進めることはもちろんでありますが、行財政構造改革の最終目的は「
区民満足度の高い
区政運営を確立」するということであります。そのためには、区が提供しているサービス水準を維持・向上しつつ、より効果的な実施方法を
選択し、第三者の評価や利用者のご意見、ご理解もいただいた上で、これまで以上に
区民に満足していただけるサービスに転換していく必要があると考えております。
また、この4月から、現在あります3つの公社を1つの法人に統合し、まちづくり、産業振興、コミュニティ活性化に関する課題に総合的に取り組んでまいります。経営面でもできる限り自主的、弾力的な運営を図りながら、
区民が心豊かに暮らすことができる地域社会の構築に寄与できるような体制を目指してまいります。
なお、来年度以降、区としても本格的な取り組みを始めます観光施策についても、産業観光という観点から従来型観光資源の活用にとどまらない、
千代田区らしさにあふれた取り組みの先行事例を新法人で検討することにしております。
次に、今回提案いたしました予算案件7件以外の条例関係等の諸議案でありますが、新たに条例を制定するもの3件、条例の全部改正及び一部を改正するもの9件、その他、特別区人事及び厚生事務組合、東京23区清掃一部組合、東京23区清掃協議会の規約の一部変更3件で、今回の付議案件は合計22件であります。
何とぞ諸議案につきまして慎重なご審議の上、原案どおりご議決を賜りますようお願いを申し上げます。
さて、
皆さん、これから私の担当させていただく
区政の2期目がいよいよ始動しようとしておりますが、今回の招集あいさつの所信表明においては、あえて理念を述べることに重点を置かせていただきました。
新たに着手したい事業、取り組みを強化したい事業、改革を行いたい事業、地味であっても重視したい事業など、多岐にわたる
区政の中で、この際申し上げたい個々のテーマは幾つもあります。しかし、それに付随する幾つかの個別事業に絞った所信表明にさせていただいたのは、私自身の
区政に対する思いからであります。
書生論的な言い方になるかもしれませんが、人が生きていくには理念が必要であります。それと同じ理由で、
区政にも理念が必要ではないでしょうか。これから地方分権はどんどん進んでいくでしょう。
区民の
皆さんの
区政への期待もどんどん高まってまいります。そうした時代にあって、理念なき
区政は決して
区民の
皆さんの思いに応えられないと思います。
例えば、行政がやるべきこと、
区民の
皆さんの自助・共助に期待することなどの取捨
選択は、理念がなければ場当たりで終わってしまいます。さらに、「やるべきこと」を選んだ後も、物の本質をとらえた理念がなければ事業としては中途半端に終わってしまうのではないでしょうか。様々な事業は、しっかりと地に着いた理念があってこそ成り立つものだと私は考えております。逆に言えば、理念さえしっかり持っていれば、事業は後からついてくる側面すらあります。であるならば、この新しい任期の始まりにおいて、私たちはどんな理念を持って、どのような
区政を目指していくか、十分な論議をいただきたいというふうに考えております。
私は今回、「共生」という考え方を
区政の理念に掲げて走り出したいと
皆さんにご提案を申し上げました。この「共生」という理念については、
皆さんからも様々なご意見があるでしょう。「共生」というからにはこのような視点を入れてはどうかというご助言、いや、別のこんな考え方も参考にしてはどうかというご提案、多くの知恵が
皆さんから出されることを期待しております。そして、揺るぎない理念と理想を持って、この分権時代に
千代田区から新しい自治の形を見出そうではありませんか。
以上をもちまして、
平成17年度第1回区
議会定例会のあいさつといたします。
4:
◯議長(
鳥海隆弘議員) これより日程に入ります。
日程第1を議題に供します。
────────────────────────────────────────
議案第23号
千代田区助役の選任の同意について
────────────────────────────────────────
5:
◯議長(
鳥海隆弘議員) 執行機関より提案理由の説明を求めます。
〔
区長石川雅己君登壇〕
6:
◯区長(
石川雅己君) 議案第23号、
千代田区助役の選任の同意について、ご説明を申し上げます。
千代田区助役の大山恭司君の任期が2月28日付をもって満了となります。つきましては、引き続き同君を助役に選任いたしたく、地方自治法第162条の規定に基づき、区議会の同意を求めるものであります。
同君は、この4年間、本区助役として
区政のトップマネジメントを担い、前例のない課題に果敢に取り組み、
区政改革推進のためその職責を十分に果たしてきました。また、
平成15年度からは助役会の副会長として、特別区全体が抱える困難な課題解決にも尽力をされてきたところであります。
区政運営全般にわたり優れた知識、経験を有する大山恭司君は、本区助役に適任であると考えております。
何とぞご審議の上、ご同意賜りますようお願いを申し上げます。
7:
◯議長(
鳥海隆弘議員) これより議案第23号、
千代田区助役の選任の同意についての採決を行います。
この採決は無記名投票をもって行います。
議場の出入り口を閉鎖します。
〔議場閉鎖〕
8:
◯議長(
鳥海隆弘議員) ただいまの出席者は25名です。お諮りします。投票については、
議長指名による開票立会人を4名置くことに
異議ありませんか。
〔「
異議なし」と呼ぶ者あり〕
9:
◯議長(
鳥海隆弘議員)
異議なしと認め、指名します。
1番林則行議員、8番小山みつ子議員、12番大串ひろやす議員、23番飯島和子議員、以上の方にお願いします。
なお、念のため投票の方法について申し上げます。投票は無記名、1人1票です。本案に賛成の方は緑の票を、本案に反対の方は赤票を投票して下さい。本件について
議長は投票をしませんので、ご了承願います。投票カードはただいまお手元にお配りします。
〔投票カード配付〕
10:
◯議長(
鳥海隆弘議員) 投票カードの行き渡らぬ方はありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
11:
◯議長(
鳥海隆弘議員) なしと認めます。
これより投票を行います。投票箱を改めさせます。
〔投票箱点検〕
12:
◯議長(
鳥海隆弘議員) 異常なしと認めます。三柳事務局長が点呼しますから、順次投票して下さい。
〔議会事務局長氏名点呼〕
〔各員投票〕