千代田区議会 1988-03-03
昭和63年第1回定例会(第1日) 本文 開催日: 1988-03-03
一方、区政をめぐる諸情勢は、御案内のとおり引き続く業務地化の進行や地価の高騰と、それに伴う税負担の重圧のもとで、区民を取り巻く生活環境は、より厳しいものとなりつつあります。
こうした状況は夜間人口の減少にも影響を及ぼし、基礎的自治体としての千代田区の基盤を揺るがしかねないものとなっております。このような中で区民の区政に寄せる期待も大きいものがあり、私は「活気と安らぎのある調和のとれたまち」の実現と区民福祉の総合的向上を目指し、諸施策の推進に全力を挙げて取り組んでいるところであります。特に区政の最重要課題である「人口対策まちづくり」をめぐる環境は一段と厳しさを増しております。しかしながら、区民の総意として策定された「千代田区街づくり方針」を千代田区を愛するすべての人々とともに一歩一歩着実に実践することによって二十一世紀への道程の中で展望が開け、必ずや解決が図れる課題であると信じるものであります。
私はこのかけがえのない都心千代田区を魅力ある都市として再生、発展させるため区政の総力を挙げて対処してまいる決意であります。
区議会におかれましても一層の御支援をたまわりますよう心からお願い申し上げます。
さて、今回提案いたしました議案のうち、主要議案であります昭和六十三年度東京都千代田区一般会計予算について御説明申し上げます。
まず、予算編成の基本的方針でございますが、第一点は、財源の重点的、効率的配分に努め、健全財政を維持しつつ総合的、計画的施策の推進を期するための予算として編成したものであります。
第二点は、千代田区実施三カ年計画事業の達成に向け、全事業にわたり予算化し、特に、昨年十月に策定いたしました街づくり方針の掲げる四つの都市像及び地域別まちづくりの目標実現に向けての施策と、区民に身近な福祉施策の一層の充実を図ることにより、区民生活の安定と向上を目指した予算編成に努力したところであります。
第三点は、改定基本計画を展望した施策の積極的展開と、長期的視点に立った財政運営を図るため街づくり基金と区民福祉厚生基金及び教育施設整備基金を昨年度に引き続き可能な限り積み立てを行い、区財政の弾力的な対応力を強化いたしたところであります。
次に、昭和六十三年度予算のうち主な事業について申し上げますと、まず初めに、人口対策まちづくりに関する施策といたしましては、前年度に引き続き街づくり協議会の運営経費等、関連経費を計上したほか、地区整備プランの作成、公共駐車場確保の検討経費、都市整備に関する第三セクターの設置、さらに道路修景事業の助成など幾つかの関連施策について予算化をいたしました。
次に、高齢化社会への対応、区民福祉の充実に関する施策といたしましては、ますます進行する高齢化の中で痴呆性高齢者のための入所施設建設助成、特養ホーム等設置関連の調査、また、巡回入浴サービスの大幅回数増、身体障害者のうち自動車運転者を対象にガソリン代補助を新設するとともに、生活実習教室の開設と福祉バスの運行など、区民福祉向上に向けてきめ細かな施策の充実を図ってまいります。
次に、地域に根差した教育と個性豊かな区民文化の創造に関する施策といたしましては二十一世紀の国際化を展望し、本区中学生を対象に海外交流教育を新規実施するほか、国際理解教育の調査、研究を実施いたします。さらに、全国でも例のない、幼稚園での長時間保育を、この四月から佐久間幼稚園で実施することに伴い、園児全員の給食も開始するなど教育文化の都市宣言にふさわしい施策を推進してまいります。
次に、商工業の発展、活力あるまちづくりに関する施策といたしましては、昨年に引き続き中小企業振興方針の策定経費を計上するほか、商店街近代化助成、千代田区勤労福利共済会の充実など関連施策の拡充を図り商工業の発展を進めてまいります。
次に、情報化社会への対応、区民参加に関する施策といたしましては、市民相互の友好や理解を深めるため市民交流、都市提携事業を進めてまいります。また、自治振興のためのコミュニティ活動費の充実を図ったところであります。
さらに、当面、緊急性があるアスベスト対策といたしまして、区有施設を対象に除去工事経費を計上いたしました。また、本年度の区民施設といたしましては、区民斎場の設置調査経費を計上したほか、かねてから、群馬県嬬恋村に建設中の自然休養村が、いよいよこの十二月のスキーシーズンから開設できる運びとなっております。
以上、これらの需要に対応する財源の確保につきましては、今後の区税収入及び国・都の動向を十分留意し計上いたしました。
この結果、昭和六十三年度一般会計予算の歳入歳出総額は、二百八十五億四千六百余万円となり、前年度と比較して一三・二%の伸びとなり、昭和五十七年度に次ぐ大幅なものとなっております。この伸び率は、神田東部の複合施設建設の完成に伴い関係経費が減少した一方で、街づくり基金等への積立金の増加が大きな要因となった結果であります。
次に、昭和六十二年度東京都千代田区一般会計補正予算第三号について御説明申し上げます。
今回の補正は、昨年十月に行われた職員の給与勧告等に基づく人件費の不足額と麹町四丁目の市街地再開発計画が確定したことによる再開発補助金の追加経費、さらに、国・都支出金返還金及び街づくり基金等の積立金を計上いたしました。
昭和六十二年度の財政調整の再算定でありますが、現時点での概算額では、普通交付金二十一億二千万円の交付が見込まれると同時に、既に二月まで、都に納付した納付金五億五千九百余万円が返還されることとなり、この歳入を本補正予算に計上いたしました。なお、今回の再算定において交付区となったのは、かねてより本区が主張していたまちづくり関連経費の算入について、区長会の緊急要望となり、臨時的な措置として、緊急都市整備対策費が基準財政需要額に算入されたことによるものであります。
この結果、今回の補正額は、七十二億五千四百余万円となり、昭和六十二年度一般会計予算の総額は、三百三十七億五百余万円となりました。
このほか、予算関係議案といたしましては、昭和六十三年度東京都千代田区国民健康保険事業会計予算、二十億六千七百余万円、昭和六十三年度東京都千代田区老人保健特別会計予算、三十三億二千余万円を計上いたしました。
次に、予算関係以外の議案について御説明申し上げます。
まず、東京都千代田区組織条例の一部を改正する条例であります。本案は本年二月に一部稼働した住民情報システムを初めとする総合行政情報システム構築の体制整備のため、企画部の所掌事務を改正するものであります。
次に、労働基準法の一部改正等社会経済事情の変化に伴い、職員の勤務時間を短縮するため、職員の勤務時間、休日、休暇等に関する条例の一部を改正する条例であります。
次に、事務処理の効率化に資するため、大気汚染障害者認定審査会を神田保健所から保健衛生部に移設するため、東京都千代田区大気汚染障害者認定審査会条例の一部を改正する条例であります。
次に、社会経済事情の変化に伴い、保険料の賦課限度額及び延滞金の切り捨て額を引き上げるため、東京都千代田区国民健康保険条例の一部を改正する条例であります。
その他、社会経済事情の変化に伴い、区立千代田荘並びに区立湯河原千代田荘の賄料を改定するとともに、区立千代田荘の年末年始の開設を図るため、東京都千代田区立千代田荘条例の一部を改正する条例並びに東京都千代田区立湯河原千代田荘条例の一部を改正する条例であります。
何とぞ諸議案につきましては、慎重御審議の上、原案どおり御議決賜りますようお願い申し上げ、昭和六十三年度第一回区議会
定例会の開会のごあいさつといたします。ありがとうございました。(拍手)
4:
◯議長(
吉成五郎君) これより、各会派の代表質問にはいります。
初めに、自由民主党議員団を代表して、三十番
内田茂君。
〔
内田茂君登壇〕
5: ◯三十番(
内田茂君) 昭和六十三年第一回区議会
定例会に当たり、自由民主党議員団を代表して質問を行います。
街づくり方針に関連しての方針の意義、基本方向、課題と基本方針については、我が議員団は、昨年の各定例議会において質問もさせていただき、御答弁をお伺いしてきたところでありますが、方針策定後半年にそろそろ達しようとしているこの定例議会で、いま一度異なった角度からお伺いをいたしてまいりたいと思います。
昨年十月、当区は他の自治体に類を見ない新しい発想と手段で、内外の注視を集めながら千代田区街づくり方針を策定しました。このことは、昭和二十二年に千代田区が基礎的自治体として誕生して以来、地方自治の本旨であるその地域の特性に立脚した自治の展開を模索した中での一つの到達点であり、また、新たな都心の自治体としての出発でもあったと思います。その意味でも関係各位の努力に感謝を申し上げる次第であります。
しかし、一方、この自治体宣言によって当区の果たさねばならぬ役割と責任は大変なものとなったのであります。議会としても、執行機関と一体となって千代田区の総意としてつくり上げたこの街づくり方針を現実のものとして実現をしていく決意であります。
街づくり方針を急激な社会経済情勢の変化に対応した自治の展開の到達点と申し上げましたが、これから先の道程は未踏の世界であり、予測と異なる状況にどれだけ直面するやもしれないのであります。私たちはこの方針を現時点で考えられる最良の策として確認をしながら、あるときは立ちどまり、あるときは歩を速め、実践の中で方針の肉づけをしながら進まなければならないと思います。いわば終わりのない旅への出発でありますから、一つ一つの積み重ね、経験を大事にして、その都度確認を行いながら歩を進める、そんな観点から、いま一度方針の確認を行い、数カ月経過した今、今後の具現化へ向けての執行機関の考え方をお伺いしていきたいと思います。
まず、千代田区街づくり方針の概略について、方針から抜粋をしながら確認していきたいと思います。
街づくり方針の必要性は、近年、中枢管理機能の一層の集積が進み、さらに国際化、情報化の波を受けて、業務地の拡大が続いている、この結果、居住環境が相対的に低下し、居住人口が減少している、このような都市としての変化に伴い、地域ごとの特色ある人々の営みや、街並みの特性も失われつつあり、居住環境が悪化し、地域社会が大きく変動し続けている。
これらの変化に対する区の取り組みは、昭和五十三年に千代田区基本構想を策定し、その中で千代田区のまちづくりの基本目標を「活気と安らぎのある調和のとれたまち」と定めた。昭和五十九年には「教育と文化のまち千代田区宣言」を行い、すべての施策をこの視点からフィルターにかけた。昭和六十年には千代田区改定基本計画を策定し、領域別計画に加えて、地域別計画を設けるとともに、区の行財政運営を住民、企業、行政による三位一体で推進することとし、基本計画から街づくり方針を一項起こして独立させることを定めた。
しかし、まちづくりの方針を定め、推進をしていく中で、千代田区が特別区であるために受けざるを得ない行財政上の制約と、現在の建築及び都市計画関連制度の中で、千代田区が持っている権限の少なさは、特性を踏まえたまちづくりに大きな障害となっている。しかし、まちづくりを阻む制度上の制約等も千代田区を構成するすべての人々の英知と勇気と力によって乗り越えていくべきであるという意識も高まってきた。まちづくりの方向性の確立についても、首都の中心にふさわしい世界に誇り得るまち千代田区として、適切な居住人口の回復とともに、居住と職域が調和した魅力的な都市として引き続き発展していくことが人間性豊かな活力ある都心形成につながる。
都心を人間的な活動空間として堅持していくことは、自治体としての千代田区に与えられた責務である。したがって、都心における活力の維持向上は、首都東京にとっても、全国的観点からも必要不可欠なものであるとの視点に立ち、都を初め他都市に対しても、ともに発展するという立場で千代田区のまちづくりについて理解と協力を求めていく必要がある。
千代田区街づくり方針は、千代田区としての主体的なまちづくりの方向性を示すために、千代田区に住む人はもちろんのこと、千代田区の街で働く人、そしてここに集う人を含むすべての人々の連帯と総意に基づいて策定する。そして住民、企業、行政が三位一体となり、みずからがまちづくりの主役であることを十分認識しながら、まちづくりを推進していくために、この千代田区街づくり方針を基本に据えて、それぞれが適切な役割を果たしていくものである。
まちづくりを進めていく上では、ハード、ソフト両面の対応が必要であり、ソフト面での対応は基本計画及びこれに基づく区の施策展開によって行うこととなる。したがって、この方針はハード面におけるまちづくりに関する全般的な方針として位置づける。したがって、方針の役割は、区のまちづくり施策展開の指針となる。区民の総意に基づく主体的なまちづくりの指針となる、企業等のまちづくり参画への誘導指針となる、国、都、関係機関等への働きかけの指針となる等である。
まちづくりを取り巻く状況では、都心部における土地利用の業務地化傾向は依然として継続している。高齢化社会への移行、高度情報化社会への進展、そして経済を中心とする国際化の中で、金融関係、先端技術関係等を初めとした内外企業の都心への進出は著しいものがある。そして、これに伴い、大規模事務所の需要がますます高まりつつある。そのため、住宅地や住商工混在地区へ大規模事務所が無秩序に立地し、区民の生活基盤としての居住環境に大きな影響を及ぼしている。
また、地価問題に対しては、都心部における事務所、事業所の進出意欲は極めて大きなものとなっており、こうした背景を受けて、地価が高騰し続けている。その結果、固定資産税や相続税などの税負担が上昇し、これが家賃、地代等を押し上げており、区民にとって大きな負担となっている。土地の有効活用についても土地の持つ公共性を勘案すると、これまでの、土地は所有するものという考え方から、生かして使うものという考え方に転換していくことが求められている。このため、国公有地の有効活用はもちろんのこと、近隣の連係によって土地の共同利用を促進するなど検討を行い、地域全体の中での土地の有効利用について十分論議を進める必要がある。
情報化、国際化、高齢化等の新たな潮流が挙げられる。千代田区が国内は言うに及ばず、国際的にも主要な立場と役割を果たしていくためには、このような新たな潮流に柔軟、かつ的確に対応していくことが必要であり、それらはそれぞれ光と影を内包しているが、これらが抱えている課題を克服しながら、新たな発展の可能性を引き出し、これを区民生活の向上と地域の発展につなげていくことが求められている。
目標とする四つの都市像については、多様な人々が住み活動する生活都心を第一目標に位置づけ、そこに人が住み、活動し続けることができるまちづくりを念頭に置いて進められるべきとし、自治体としての存立基盤は、定住人口が確保され、自治権が確立されていることにあり、当面五万人台の人口を維持し、これをさらに発展させていくためには快適な居住空間を創出していく必要があり、高地価の中で質の高い低廉な住宅を確保することが重要な課題となる。高齢者や障害者などハンデキャップを持つ人々はもちろん、千代田区で住み、活動するすべての人々にとって心の通い合うまちづくりを進める必要がある。
百万人を越える昼間区民と、その母体である企業を、生活都心形成のパートナーとして明確に位置づけて、その理解と協力を求めていく必要があり、住民との相互交流を促進する。そのためには、町会組織を初め企業及び在勤者を含んだ自治組織へと発展し、その基盤が強められていくことが期待される。そのことはまちづくりの推進にも大きく寄与できる土壌が形成される。
地域特性を生かした文化都心については、文化都心の形成は、物的豊かさと心の豊かさをあわせ持った総合的豊かさを、地域に住み活動する人々が享受できるものとしてとらえていく必要がある。そして、まちづくりそのものがこの宣言の趣旨でもある豊かさの創造、文化の発展につながるものとして進めていくことが必要。
地域再開発や建築物の更新に当たっても、これまでの良好な地域イメージを極力保存しながら、これと調和のとれた新しい都市機能を導入する手法を探っていく必要がある。そして、都市景観、都市美の実現を図っていくことも大切である。また、創造的な個性を持った人材の育成や文化に対する多様な情報のシステム化、そして文化的施設の整備なども行っていく。まちづくりそのものが新しい生活文化及び都市文化の創造につながるものとして進めていく必要があり、千代田区のまちづくりは文化の視点で組み立てられていくべきであることを十分認識していく必要がある。
活気とにぎわいのある商業都心については、時代の息吹に敏感に反応できる魅力ある商業活動こそが地域ににぎわいをもたらす。国際性やファッション性、そして文化性を持ったフレッシュなまちの感覚が求められるだろう。従来の線的な商店街形成のあり方から、周辺や後背地も含めた面的な商店街形成を目指す方策も考える必要がある。また、大企業と中小企業が共存したまち千代田区においては、両者がその経済的活力を維持しながら、均衡ある発展を遂げていくべきであり、地域商店街の振興発展のため、その組織化を強く推進し、共同化事業の実施を図ることが大切である。また、観光的視点に立った商業ネットワークを整備していくことも必要である。
国際的に開かれた情報都心について、現代都市は的確な情報をベースにして活動が行なわれるという側面があり、情報は生活都心、文化都心、商業都心を形成する上で極めて強力な支援者である。千代田区はこれまで中枢管理機能の集積の中で、他に例を見ない高度な情報の機能が積み重ねられ、国内外の情報結節点として役割を果たしてきた。
このような情報都市としての優位性を今後のまちづくりの過程の中で機能を更新して、国際化の進展に的確に対応し、これまでにも増して世界に開かれた都市として国際的な情報交換と人間的、文化的交流を進めていく必要がある。そのため、既存の事務所ビルのインテリジェント化等による機能更新を図るほか、プライバシー侵害等に対する安全性を確保するなど高度情報化社会における安全性、信頼性を守るための社会的ルールづくりを進めることが大切である。また、情報サービスのネットワーク化を進めるなど、住民サービスのさまざまな分野にそのメリットを生かす必要があり、その都市システムに十分に対応できる都市施設の整備を進めていくことが重要である。そして、人的には国際化に的確な対応をする人材の育成が必要であると、四つの都心像を位置づけており、地域の特性に合わせて調和のとれた四つの都心としての都市像の具現化を提唱している。
三位一体の一人としての行政の役割については、まちづくりの諸課題を解決していくために必要な制度の新設拡充や、現行制度の運用における特例の方策などについて調査研究を進める等行政本来の役割に加え、住民と企業の間に立って総合調整者としての機能を積極的に果たしていく決意を示している。
まちづくりの基本方針では、再開発の推進がまちに新しい息吹をもたらすとして、著しく都市化が進む千代田区においては、再開発の推進が極めて効果的である。オープンスペースや緑地等を確保しながら、住宅と商業、業務施設の調和のとれた共存を図る。そのため、特定街区や総合設計制度など各種の制度を活用して土地の有効利用の促進、良好な市街地環境の形成に向けて指導、誘導を図る。また、地価の安定など地価対策も極めて重要であり、その対策の強化を図る。質の高い計画的開発については、土地利用の高度化を促進し、必要に応じて地権者の権利調整を図る。表地と裏地の一体的整備を誘導し、面的整備によるメリットを十分に生かす。それぞれの街区の周辺の地域特性に基づき、適切な土地利用を図る。国民共有の財産である国公有地の有効活用については、それぞれの用地の活用方法の提案を行うなど国及び関係機関に強く働きかけ、その実現を図る。また、都市としての機能と施設を再考することでは、街路網の整備促進、特に細街路の計画的な整備を図る。都心の歩行者道路の整備として、コミュニティを主体とした歩行者空間の創設を図る。都市活動上、また、商業、業務活動上、極めて重要な都市施設である駐車施設を市街地の更新にあわせて整備促進を図る。地域社会の変化に即応して公共施設の適正配置を進める。街並み形成の方針として積極的に景観整備事業を推進する、歴史や伝統を伝える街並みの継承のほか、近代的な都市景観の創出と両者の調和が大切である。また、区も自ら区有施設の文化的デザイン化を図る。電線等の地中化やカラー舗装、街路灯、街路樹の植栽整備など道路修景を進め、街路景観の形成を図る。
まちづくり推進の条件整備として、千代田区における今後のまちづくりは、千代田区に住み、働き、集うすべての人々の総意に基づいて策定されたこの街づくり方針を、地域においてより具体的に実践していくことにより進めていく。そのためには、地域におけるまちづくりの基本的検討組織である街づくり協議会とまちづくりの検討組織である街づくり懇談会を継続して設置していく。また、個別、具体的なまちづくり計画を推進するために計画推進協議会の設置を推進する。また、必要に応じて第三セクター方式等を利用するなど民間活力の導入を図っていく。国、都、関係機関に働きかけることとして容積率指定の幅の拡大と、これに応じた建築物形態規制の緩和を国に対し要請する。立体用途規制、複合住宅地区の創設を要請する。限定業務地区の創設、高度業務地区の創設を要請する。そして、最後に、首都の中枢として、さらに発展するために、国、都、関係機関との連携を図り、都心区千代田の実情を十分に理解してもらう。
以上概略とは申せ、大変長くなりましたが、大切なものとして、何度も何度も確認し、頭の中にたたき込むつもりで街づくり方針から抜粋させていただきました。
六十三年度当初予算案を拝見いたしますに、各部各課ともこの街づくり方針の具現化に向けて現時点で施策に盛り込めるものは、でき得る限り頭出しをしておるようであり、街づくり方針を十分意識した予算案であることが感じられます。
各論につきましては予算審査にまつことにして、本論に入りたいと思います。
都市とは、社会生活の中心地、中枢であり、都市問題とは、都市の混乱現象一般を指して言う。かの後藤新平翁が東京市長であった大正末、注目すべき警告を発している。「いかなる社会も、いかなる国も、その中枢が腐蝕されてなお健全なるものはあり得ない。この意味において、都市問題は社会問題中の社会問題であり、国家問題中の国家問題である。特に商工化の過程にある我が国においては、都市問題の社会意識なお判明ならざるにかかわらず、その社会危険は、他の文明諸国に比してさらに急激に増進しつつある。これ我が国においては他の諸国よりも都市問題の研究が必要なゆえんである。」、その都市問題への対応を中央集権排除、都市自治に求めて、「余は、諸般の社会政策は、これを国家にゆだねるよりも、自治の機能に任ずるをもって、その効果の一層適切なるものあるを信ずるがゆえに、いわゆる国家社会政策なるものに対して自治社会政策のことの必要なるゆえんを強説せざるを得ぬ」と論断しております。それに触れて、昭和通りを、当時の常識からすれば気違いざたと言われながらつくり上げたエピソードで有名な後藤新平翁の時代に対する先見性に改めて驚きを禁じ得なかったと同時に、多大なる尊敬の念を持ったのであります。
昭和六十年五月、世界大都市サミット会議における東京宣言で、都市経営の理念と政策について次のとおり合意するとして、要約、「都市は文明の集約的表現である。とりわけ、大都市は政治、経済、文化活動の中枢を担っており、各国や世界発展の原動力となっている。また、大都市問題は全地球的な視点からともに手を携えて解決すべき問題である。それには、交流の努力を積み重ねることが、大都市問題を解決し、相互理解と友好を深めることに大きく寄与する。市民の安全幸福を確保するための前提条件として、正義に基づく世界平和を維持することの必要性を深く認識した。」と、大都市の都市問題は世界的規模で考える問題と位置づけられております。
専門用語では、都市化とは農村が都市に移行する形態を言い、都市が大規模化することを大都市化と言うそうであります。まさにサミット宣言で言う大都市化は当区の現状そのものであり、国際的な規模での大都市ということになると、欧米の先進都市に幾つかあるものの、国内では都心部の数区を除き他に例を見ないものであります。街づくり方針にも政治、経済、文化の中枢を担い、先進都市としての歩みを続けてきたが、近年中枢管理機能の一層の集積が進み、さらに国際化、情報化の波を受けて、都市としての規模がさらに進展し、居住環境が相対的に低下して、本来的な都市の機能が悪化しており、国及び都に具体的な施策がない以上、千代田区という特性を踏まえて、自らの責任で街づくり方針を策定したものであり、泉下の後藤新平翁に幾らかでもはなむけができたかなあと思う次第であります。
方針の中から幾つかの施策について取り上げながらお聞きをしていきたいと思います。
都市再開発という言葉についてお聞きをいたします。
都市再開発法は、昭和四十四年六月、都市の再開発に関する総合的な法律として制定されて以来、昭和五十年と五十五年の二度の法律改正を経て今日に至っていますが、昨今の都市の再開発に対する社会的要請と相まって、ますますその重要性を高めています。特に都市問題が深刻な状況にある既成市街地において、建築物、公共施設等の総合的整備により、土地の高度利用と都市機能の更新を図ることが緊急の課題となっております。その課題を解決して、都市を快適な生活の場、生産の場として、計画的な意図のもとにつくり変えることを広い意味で都市再開発と呼ぶことができるであろうと考えます。
一方、海外における都市再開発の定義としては、一九五八年にオランダのハーグで開催された都市再開発に関する国際会議において、都市再開発の内容として、再開発、修復及び保全の三つの内容が含まれているものとして位置づけられて今日に至っております。当初のスラムクリアランス等の改良事業から広義の都市再開発が再開発法の中で改正を重ねながら位置づけられておりますが、しかし目標とする四つの都市像を具現化してく上で、都市再開発法に基づく諸制度だけの対応で果たして解決ができるかどうか、非常に当区の街づくり方針に対処して心配であります。このことについて、これらの現行の都市再開発法に基づく諸制度の弾力的な運用でもって、果たして四つの都心像を具現化していくことができるかどうか、それについてまずお聞きをしておきたいと思います。
次に、都心型住宅についてお尋ねをしたいと思います。
いわゆる四つの都心像のうちの、一番目の、生活都心を主張することでございますが、いわゆる大都市化の中で、多種多様な人々が居住するスペースのいわば創造であります。これはこの地価の高騰とも相まって大変難しい事業として位置づけられて、これからの本当に知恵を絞っての施策の推進が期待されるわけでございますが、この生活都心を第一義に置きながら、四つの都心像を調和のとれた形の中で具現化していくに当たっては、やはり一番難しいと言われる居住用スペースの創出についていろいろお聞きをしていきたいと思うのであります。
千代田区としては、今まで公営住宅と、そして区立住宅の二つの住宅政策の中で、区民に政策的な家賃をもととした中での住居提供をしてまいりましたが、しかし、このことは、この都心の中での居住の拡大につながることにはならなかったわけでございまして、一定の歯止どめ策としては稼働したかもしれないけれども、ほかの公営住宅関連の進出に対しての呼び水としての位置づけということで今まで位置づけられていたわけでございます。しかし、街づくり方針を策定する議論の中でやはり都心型住宅というのは一体どういう住宅を指すのか、そして、果たしてこの街づくり方針の中で、民間、そして公共という二つの供給自体が都心型住宅を、今までの住民の願うところで供給をできるのかどうか、これは大変難しい問題であると思います。
私は、千代田区の特性を踏まえてのこのたびの街づくり方針、そういう中での生活都心の形成についてでありますから、やはりほかの自治体と多少異なる、例えば賃貸住宅にしても分譲住宅にしても、一定の、ここに住む利便性を享受するとともに、多少の高負担もやむを得ないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
このことは、街づくり方針を策定する中で、各街協の議論の中、いろいろとさまざまの議論に分かれておりましたが、しかし、いまもって、この方針を策定した中で、このことについてはどういう都心型住宅をつくり上げていくのか、また、公共と民間のそれぞれの居住スペース創出のための役割分担についてはどうなっているのか、そして、この居住する人たちの賃貸料は大体どのくらいを想定しているのか、これらについて意外とはっきりしてない、そういう現状の中で、改めてこの時点でどのようにお考えになっているか、お聞きをしていきたい、こういうように思っております。
次に、具現化に対する取り組みの姿勢の一環として、一つの例として、都市基盤の整備ということで一つお尋ねをしたいと思います。
御承知のように、二月一日、都市整備部の組織改正がなされ、そういう中で、新たな組織が出発したわけでございます。いわゆる自治体としては、この方針を定める中で、三位一体の中の総合調整者という、いわば当事者としての役割も含めながら、総合調整者という役割の中で、積極的にこの街づくり方針の具現化に向けて努力をするという重要な決意をされたわけでございますが、しかし、今までのいわゆる我々の思う役所の組織、それの行政の展開を見ておりますと、なかなかもって心配でならないところがあるわけでございます。
御承知のように、この三位一体の中の当事者としての役割というのは、自らが調整者であると同時に、自らが事業者であるという考え方に立っていただいて、積極的にまちに出ていただく、こういう姿勢が必要であると思います。そういうところでの考え方からすると、いわゆる方針を策定して、これを具現化していくには、大変な、今までにない未踏の世界に踏み入る形で行政の積極的な姿勢が問われるわけでございます。
そういう意味で、例えばの話、一つ公共の駐車場に例を挙げるならば、確かに、先ほどの街づくり方針の概略の中でも、積極的にこの街協の多くの区民の皆さんの意見、また、事業所の皆さんの意見を取り上げて、公営駐車場の設置の希望が非常に多いということから、方針の中に盛り込んだわけでございますが、しかし、今まではやはり駐車場については、それぞれの商店街、そして事業所ビル、そこの責任において、なるべくその処理をしてもらえるような形でこの駐車場問題は進んできたわけでございます。
しかし、今回の当初予算に示されるごとく、いわゆる公営駐車場の設置ということで今回調査費を計上しているわけですが、例えば私の一つの試案として、また、自民党としてこの本会議の中で今までに御提言を申した中で一言話させていただきますが、紀尾井町の清水谷公園を利用し、なおかつ、弁慶橋から紀尾井町のT字路にかかる区道、そして喰違見附、このいわば紀尾井町地区における交通の渋滞と、そして、駐車問題を解決するという大きな位置づけの中で、三位一体が、もうなくなりましたが、公害交通対策特別委員会で位置づけられたのは、たしか五十六年ごろのことだったと思うのであります。そして、その中で、この弁慶橋の橋の拡幅は、行政の努力によりまして無事竣工を見て、その一定の、千代田としての西側の出入り口に当たる、港側の出入り口に当たる、いわゆる窓口の拡幅がなされて、大変便利な形で今自動車交通、また、人道の交通等行われているわけでございますが、しかし、やはり、あそこらにおける事業所、また、ホテル群のますますの進展の中で、この問題は、交通問題として再び紀尾井町のT字路がネックとして行われておるところであります。
そういうときに、私どもの提唱する、表面で処理できない紀尾井町地区の交通渋滞、また、駐車問題を、地下道路また地下駐車場、それによって、地下と平面の道路を使うという二面処理によって、また、司法研修所の建設計画と合体しての地下駐車場の通路をつくるとか、そういうバイパス的な機能も兼ね備えながら、あの地区の駐車場構想を推進していくのが一番いいんじゃないか、こういうふうに我々として思うわけでございますが、しかし、そういう問題も、区としてやはりこの紀尾井町地区の都市基盤の整備というところでこの公共駐車場問題を位置づけるならば、本当に三方、四方の解決になっていく、いわば区の施策を生きた形でまちの中で使うと、このことが本当にこれからの街づくり方針を具現化していく上で非常に大切なことになるだろうと思います。
そして、例えば紀尾井町地区の駐車場が、近隣の民間の方々との合同の中でもしできるならば、それは新たな民活であり、第三セクターの設置として千代田区の適切な指導のもとの、新たな事業として展開されていくと期待するものでありまして、この今回の予算実現に当たりまして、さらなる御勉強をして、どうぞこの施策の中で実現をしていただきたい、こういうふうに思う次第でございます。
大変いろいろ長くなりましたが、要は、この街づくり方針を持った今、いわゆる行政は三位一体の中での総合調整者として非常に大事な役割を持ったんだということ、それから、住民と企業とが共存共栄を図るのがこの街づくり方針なんだということ、そして、要は、街づくり方針を四つの都心像で御提示しましたが、その地域の特性に合わせて、調和のとれた形で具現化していくのがやはり理想的であり、こういう結びを御提言申し上げまして、この項の質問を終わりたいと思います。
次に、都議会議員の定数問題について申し上げたいと思います。
昨年十二月の二十四日でありました。東京都の都議会議員定数等検討委員会のメンバーが当区を訪れまして、行政側の川又助役以下、また、区議会の吉成議長以下各幹事長が出席をする中で、区の意見聴取という形で、非常に形としては民主的であったのでありますが、意見聴取がありました。
そして、その際、私ども議会は、議長とも図りながら、加藤区長とも相談をして、行政も区議会も一体となってこの問題には対処しよう、また、議会においては、超党派でこの都議会議員定数問題について、千代田の主張を守り抜いていこう、こういうふうな決議をして席に挑んだわけでございまして、それらは皆様、全員傍聴の中で行いましたので十分御承知のことと思います。
その後、この都議会議員の定数等検討委員会の小委員会が二月の二十六日に開かれました。我々も新聞報道を見ながら、また、さらには資料をも取り寄せて、いろいろ検討をさせていただいたのでありますが、大変残念ながらこの千代田区の昨年暮れの主張は、またその小委員会において全く反映をされない形になっております。私は、この都議会議員定数の問題について、やはり千代田の主張というのはこの際はっきりさせておく必要があるんじゃないか、いわば、千代田区として本当にほぞを固めて、不退転の決意を示しながらこの問題に対処しないと、本当にこの千代田の自治権がどこかに吹っ飛んでしまう、そういう事態になりかねないと、大変憂いを持つものでございます。
二十六日の各会派の、いわゆる代表の意見の中では、いろいろ意見があったようでございます。しかし、基本的にいろいろの論旨を見ますと、例えば千代田区の扱いについて、特例区並みにして何とか残そうじゃないかと、大変親切な御提言もいただいておりますが、私たちは本当にそういう意味でのこの千代田の定数問題に決して取り組んでいるんではないのでありまして、本当の意味での千代田の自治権を、兄弟の関係にある東京都がどうしてしっかりと見詰めて真剣に考えてくれないのか、何か自分たちの選挙が近づくと泥縄的に定数の格差の問題を云々という形で心配しながら寄り集まっている、大変寂しい限りであります。
ましてや、ある二、三の党につきましては、新宿との合区を提唱している、全く一体地方自治というのをどういうふうに考えているのか、本当に都議会議員というのはどこまでこの自治問題というのを勉強しているのかなというふうに、全くあきれるところであります。なおかつ、その主張する政党は、少なくとも住民自治を強く訴え、そして、真の自治権確立のために闘っているんだという政党がこういうことを言っているわけですから、本当に私としては悲しい思いがする次第であります。
この議員定数の問題を考えるときに、まず考えなくてはいけないというのは、いわゆる最高裁判所の判断というのは、現行自治法をもとにしての判断であるということであります。そういう中では違憲という判決も、これは厳粛な事実として受けとめなくてはいけないかもしれません。しかし、この当事者である東京都並びに東京都議会は、やはりみずからの自治権はいかにあるべきか、真剣にこのことを考えていただきたいわけでございます。
そういう意味では、戦後二十二年から約四十数年を経過してこの地方自治の進展があったわけでございますが、その間、いわゆる全国を一律に地方自治でくくっておるというか、規定をしておる、東京都の中には、この二十三特別区という特別な行政区がございますが、しかし、一般的には、いわゆる全体の自治をやっている、こういうことでございます。
そして、この間、地方と都市という中で、この二つの相入れない自治の存在が出現してきたわけでございまして、このことはやはり改めて自治の、その地区の特性に合ったというのが地方自治の本旨なら、やはりそのことの原点に立って、改めて地方自治法の見直しを図ることが先議であろうというふうに私は考えるわけでございます。
それから、いま一つ、時間が大変長くなりましたけれど、いわゆる千代田区が基礎的自治体として、特別区という中でも存在をしている、そういう中であって、例えばこの問題が、東京都の都議会において、また都政の中に、千代田区の意見が反映されないままにそういう改正がなされるということは、やはり千代田区を選挙区として、いわゆる市として認めながら選挙区として定めてきたんだと思いますが、定めてきた中で、その一名を、合区とかそういう形で消すという重大な行為は、これはやはり基礎的自治体に対する地方自治の大きな侵害でありまして、同じ地方自治の仲間である東京都がなぜそのような形をとるのか、私には本当に理解をできないというところであります。
そういう観点からして、区長におかれましては、この問題を、やはり千代田の大きな自治権の一環として取り上げていただいて、不退転の決意でこの問題に対処していただきたいと、早急なる対処をお願いいたしたいと、このことをお願いいたしまして、御答弁をお願いしたいと思います。
大変長くなりましたが、これで代表質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
〔区長
加藤清政君登壇〕
6:
◯区長(
加藤清政君) 内田議員のまちづくりについての御質問についてお答えいたします。
私は、街づくり方針の発表に当たり、この方針が、区民各層の熱い思いを基盤にしながら、千代田区の総意として策定されたものであり、いわば、今後の千代田区のまちづくり憲章とも言うべきものであると申し上げました。この方針の発表以来、区民の方々はもとより企業関係者を初め国、他の地方自治体から寄せられる期待、そして反響は、非常に大きいものがございました。御説にもありますが、改めて都心千代田区の基盤的自治体の責務を痛感し、新たな出発でもあると考えるものでございます。
次に、方針では、「人の住むまち・住めるまち」を基本としながらも、情報化、国際化等二十一世紀へ向けた大きな潮流の中で、高度な都市機能、都市環境の整備が求められている状況を踏まえて、首都東京の中心に位置する千代田区の発展方向を、四つの都市像として指し示したところでございます。
この中で、「多様な人々が住み活動する生活都心」を第一に掲げておりますのは、歴史的に築かれてきた千代田区のそれぞれの地域特性に見合うように、現在まで良好な住宅地として、あるいは住商混在地して形成され、発展を続けてきた地域については、今後も居住と職域が調和し、各種機能が共存できるようなまちづくりを進めていくという基本を明らかにしようとするものでございます。
しかしながら、このことは、住民の力だけでなし得るものではありません。また、大きな潮流の中で、居住と業務の共存を図るには、現在の諸制度は必ずしも千代田区の置かれた課題解決に即応するものになっておりません。
そこで、街づくり方針では、住民だけではなく、企業に対しても、地域の重要な構成員との位置づけから、まちづくりへの協力と参加を呼びかけ、総合調整者としての行政とともに、住民、企業、行政が三位一体となって協働していくという、他に例を見ない画期的な方針を打ち出したのであります。区の権限は決して大きいものではありませんが、区が総合的な指針を指し示し、総合調整者としての立場から、必要な誘導や規制を行っていくことによって、住民、企業と協力して、質の高い良好なまちづくりを進めることができるところでございます。
また、そのことが千代田区の自治基盤を強固にし、区の自治能力を内外に闡明することができるようになると確信しております。
こうした基本理念のもとに、今般二月一日付をもって、地域別担当組織の設置を中核とする都市整備部の執行体制の整備を行いました。
また、
定例会開会ごあいさつにて申し上げましたが、区の調整機能を充実し、全庁を挙げて街づくり方針の具体化の実践のために邁進する決意でございますので、御了承のほどをお願い申し上げます。
次に、都心型住宅についての御質問でございますが、本区において、都心地域の特性の中で、よりよい住環境と、良質な住宅を供給していくことの必要性、また、事業の推進に当たって、住民、企業及び行政がその責任と役割を果たし、まちづくりを推進していくことの重要性につきましては、全く同感であり、御趣旨のとおりでございます。
このことは、街づくり方針が示す都心像の一つとする生活都心を目指し、都心にふさわしいまちづくりを推進していく上で、また、区政の基本目標である「活気と安らぎのある調和のとれたまち」を実現していくためにも、総力を挙げて取り組まなければならない緊急な課題と認識しております。
私は、そこに多様な人が住み、活動し、生活の息吹を感じるまちがあってこそ、活力ある地域社会が生まれ、本来の都市、都心の姿であると考えます。
幾多の社会変動を乗り越えて今日のコミュニティを築き上げてこられた人々、そして都心という機能を支えている活動層も含めともに住み、住み続けることができるまち、心の触れ合いのあるぬくもりの感じるまちを構築していくためには、御指摘のとおり、今こそ、住民、企業、行政が相携え、力を結集していかねばならないときと考えます。今後とも区民の方々の総意のもとに、「人の住むまち・住めるまち」の実現に向けて総力を傾注してまいる所存でございますので、よろしく御了承のほどお願い申し上げます。
次に、都議会定数の御質問にお答えいたします。
都議会定数是正につきましては、現在、都議会定数等検討委員会において審議されておりますが、私は、この問題は都市型自治の根幹にかかわる、極めて重大な問題として受けとめております。
都議会議員の定数算定に当たりましては、御指摘のとおり、単に夜間人口のみで算定することは、地域特性を基盤に運営されなければならない自治の精神から見ても、千代田区を取り巻く現在の社会情勢には適合せず、昼間需要指数ともいうべき昼間人口や、歴史的経過等を十分に加味し、定められるべきものであります。
こうした状況を総合的に判断すれば、基礎的自治体としての区政の総力を挙げて都心区の行政需要に対応してきた当区が、都議会に代表を持つことは当然の権利であります。また、本区が区を挙げて取り組んでいるまちづくりは、東京の都心部をいかに再構築し、都心居住人口を確保していくかという事業であり、都心の空洞化に対応する極めて重要な取り組みとして、都にとっても見過ごすことのできない大きなかかわりを持つ課題であります。したがいまして、今後も当区の特性を十分主張し、区議会との連携のもとで、現行定数が確保できるよう最善の努力をしてまいりたいと考えております。
なお、詳細については、関係理事者をもって答弁いたさせますので、御了承いただきたいと存じます。
〔助役
川又元彦君登壇〕
7:
◯助役(
川又元彦君) 内田議員の御質問のうち、街づくり方針の策定に関連いたしましてお答えを申し上げたいと思います。
御質問のとおり、街づくり方針は、急激に変化していく社会経済情勢の中での現時点におけるところの大きな到達点でございます。
方針の具現化へむけての実践の中で、より一層的確に状況に対応できるよう方針の肉づけをしながら、弾力的、かつ機動的に千代田区のまちづくりを進めていく必要があると考えております。
こうした趣旨から、総論編と地域別街づくり方針について分冊といたしまして、社会経済情勢と地域の実情の変化に応じて弾力的に対応できるよう担保したところでございます。
街づくり方針の具体的実践に当たりましては、時代の要請に的確に対応できるよう、こうした点に十分に留意し、機動的な運用に努めてまいりたいと考えております。
次に、街づくり方針策定後の具体的取り組み体制としての第三セクターの設立についてお答えを申し上げます。
街づくり方針は、御指摘のとおり住民、企業、行政による三位一体のまちづくりを基本理念といたしまして、それぞれの役割分担を位置づけております。
そこで、この街づくり方針の理念を具現化していく一つの手段として、民間の活力を導入し、公民一体のまちづくり推進機構としての第三セクターの設立を考えているところでございます。
第三セクター設立の方向性は、株式会社方式も含め、多様なものが考えられますが、当面、その設立の基本的方向といたしましては、公共、公益的立場からまちづくりを支援し、住民、企業等と一体となって取り組む区行政を補完していくことを目的とする公益法人組織としての「街づくり公社」の設立を考えております。
そのため、当初予算に二億円、区としての出捐金を計上しているところであり、三位一体で設立、運営するという考えのもとに、民間からの出捐も予定しております。
また、民間出捐のほか、賛助会員制度による住民や企業の参画、さらに、都市基盤整備事業の推進を図るなどの幅広い事業内容等、当区独自の公社にいたしたいと考えているところであります。
今後、出捐企業の要請、設立許可手続等を急ぎ、条件が整ったところから事業展開が図られるよう早期設立に向けて取り組んでまいりますので、御了承賜りたいと、このように思います。
〔都市整備部長
望月章司君登壇〕
8:
◯都市整備部長(
望月章司君) 内田議員の御質問のうち、都市再開発法関係、都心型住宅については、区長の答弁を補足し、そして、最後に公共駐車場について御答弁申し上げます。
街づくり方針におきまして、再開発はまちづくりについての有効な手段であるとうたわれているところでございます。このたび、都市再開発につきましては、建設省が今国会に改正法案を予定しているところでございます。
現在の都市再開発につきましては、個人や再開発組合、あるいは市街地再開発事業を実施する組合などが実施する場合に、固定資産税や不動産取得税の軽減といった税制優遇措置のほか、道路や公園の整備に対する国や自治体の費用援助を受けられるというすぐれた法律でございまして、また、都市再開発をする場合、これが根拠になっているわけでございます。
しかしながら、すべてにこれが対象となるわけでございませんで、このたびの改正法案については次のような禁止条件を緩める内容のものになっております。
それは、現行の再開発事業の基準が木造密集地の建てかえを主眼とした制度で、鉄筋コンクリート造や鉄筋鉄骨コンクリート造などの耐火建築物がふえた都心の再開発が必要である場合に、現状にそぐわなくなっている。そういった状況のために、昨年、臨時行政改革推進審議会から答申を受けまして、建設省が今回の改正の準備をしているところでございます。
建設省の説明によりますと、今回、この緩和によりまして、都心で細長いペンシル型のビルが密集している場所や、高層ビル街の中で、その谷間の中で取り残されている民家などの再開発などが活発になるというようなことを考えておるわけでございます。
今回の改正案は、私ども本区のまちづくりを幅広く進められるものと考えておりますので、御了解いただきたいと存じます。
次に、都心型住宅の建設についての御質問でございますが、都心千代田区にふさわしい住環境を備えた住宅の建設を促進していくことは、夜間人口の流出抑制と定住性を確保し、また、本区の人口まちづくり対策を推進していく上での最重要課題と認識しております。
申すまでもなく、都心部を中心とした異常なまでの地価の高騰や過密化した土地利用実態等のもとにおいて、住環境を整備し、住宅を供給していくことは、極めて厳しい状況にございます。
したがいまして、必要な生活居住空間を新たに創出し、住宅を建設していくためには、都心の限られた貴重な資源である土地と空間を最大限に、高度かつ有効に活用していくことが大切と考えております。
そこで、建物形態は、必然的に高層あるいは超高層を前提としての共同住宅が基本といえますが、単に、建物そのものを直接的にとらえるのみでなく、周辺環境や景観にも配慮し、住みよい住環境を備えている必要もあり、例えば、集約された一定のパブリック・スペースを敷地及び住宅棟内に確保され、居住者や周辺住民の憩いの場、交流の場も都心型住宅の用件の一つとすることが重要と考えます。
また、入居者の形態につきましても、都心というメリットを生かし、職住接近に注目し、都心活動層や、所得、年齢の各層を視野に入れるとともに、多様なライフステージ、ライフスタイルに対応した新しい視点からの都心における住宅として位置づけていくとともに、都心という地域環境の中で、これからの住宅供給を推進していく上での方向性として特に都心型住宅を構想する場合、地域特性に応じ、また、住民、企業、行政の役割分担を整理し、その管理運営も含め、新しい発想に立って検討することが必要と考えております。
現在、建設省、東京都並びに都心三区におきまして、大都市都心部における住機能の確保に関する調査研究を共同で行っており、その中で、さらに、都心においての住宅のあり方、その理論形成及びその具体的方策等につきまして明らかにし、法制度の整備を図っていくことになっております。
いずれにいたしましても、都心型住宅の建設につきましては、これからの本区における住宅政策を展開していく上での重要な柱として位置づけられるものであり、市街地機能の更新、都市計画手法等の積極的な活用を図っていくとともに、国公有地の有効活用、さらには、都心実態を踏まえた関係法制度の弾力的な運用や改革につきましても、国、関係機関等に対し、強く理解と協力を要請し続けてまいりたいと考えております。
また、地域別街づくり方針に示す地域目標を実現していく上でも、地域の特性に適応した都心型住宅の建設促進が極めて重要なウエートを占めており、具体的な事業の推進に当たりましては、地域の方々や
関係地権者の発意を尊重することはもちろんのこと、地域の構成員としての企業の理解と協力、そして総合調整者としての行政の強力なリーダーシップが求められるものと認識しております。
このことは、まさに住民、企業及び行政がおのおのの役割と責任のもとに三位一体となって取り組むことにより、安全で快適な生活環境を創出し、街づくり方針が示す四つの都市像の実現を確かなものにしていくものと考えております。今後ともよろしくお願い申し上げたいと存じます。
次に、公共駐車場の重要性と必要性についてお答え申し上げます。
本区における駐車場設置の重要性及び必要性につきましては、昨年策定いたしました街づくり方針におきまして、「駐車施設は、都市活動上、また、商業、業務活動上、極めて重要な施設であり、その整備が都市としての機能向上に直接結びつく施設である。」と位置づけております。
今日のように成熟した車社会におきましては、車庫と駐車場の確保が必要であることはもちろんでございますが、特に駐車場につきましては、単に車を保管し管理をするという機能のみではなく、円滑な道路交通のターミナル機能を有し、的確な立地は、良好な居住環境の維持、都市景観の保持、商業活動の活性化等をもたらす機能をも有する、公共性に富んだ都市施設と考えるものでございます。
現在の駐車場設置は、御指摘のように、設置の必要性から、駐車場法等の法令により一定規模以上の建築物に対し、一定割合以上の駐車スペースを確保するよう義務づけをしています。
しかし、都心の旺盛な諸活動に対応し、一般公共の利用に対応できるまでのスペース確保には至っておらず、路上駐車、違法駐車等の街の機能を阻害する結果ともなっております。
したがいまして、都市計画上必要な位置に適正な規模で永続的に駐車スペースを確保し、その対象とする駐車需要も広く、一般公共の用に供すべき基幹的なものは、都市計画駐車場、公共駐車場として整備する必要があると考えます。
本区における車に係る諸状況を勘案いたしますと、この公共駐車場の設置は、早急に対応すべき施設であると考えております。
そこで、明年度、区内全域における駐車場の需給関係を調査し、公共駐車場設置に向けて鋭意検討を進めてまいる所存でございますので、御了承のほど、よろしくお願い申し上げます。
9:
◯議長(
吉成五郎君) この際、会議時間を延長いたします。
議事の都合により、暫時休憩いたします。
午後四時二十一分休憩
午後四時四十四分開議
10:
◯議長(
吉成五郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
代表質問を続けます。
日本共産党議員団を代表して、三十五番
野口つた子君。
〔
野口つた子君登壇〕
11: ◯三十五番(
野口つた子君) 昭和六十三年第一回
定例会に当たり、日本共産党区議団を代表して質問を行います。
二月二十八日投票の参議院大阪選挙区補欠選挙の結果は、文字どおり大接戦の末、日本共産党の候補者が、自民、社会両党候補を抑え、勝利いたしました。この補欠選挙は、激動する情勢のもとで、大型間接税導入問題、補欠選挙のきっかけとなった政治腐敗問題、社会、公明、民社のなれ合い政治、浜田幸一元委員長問題に象徴される自民党の横暴、さらに同和問題などをめぐって激しく戦われました。一般マスコミでの解説でも「竹下首相が今秋成立を目指している新型間接税の行方を占う今年初の国政選挙で共産党の当選は税制改革の柱として、新型間接税の導入を目指す政府自民党にとって手痛いものとなった」と論じているように、共産党が正々堂々の論戦を展開し、あらゆる卑劣な攻撃を撃ち破って勝利したことは公約違反の大型間接税導入に反対、自社公民なれ合いの密室政治に審判を下したことであり、今後の国会の動向に重要な意義を持つものであります。しかし、竹下内閣は国会で「大阪の選挙は新型間接税影響なし」と言い張り。あくまで導入する姿勢を強めております。国民の声をまともに聞こうとせず、そして、いわゆる竹下流と言われるだましの手法を用いられたのではたまりません。国民にとって都合の悪いことは黙っている。そして選挙で勝てば、国民に支持をされた結果だと言われたのでは国民はたまったものではありません。
既に中曽根内閣以来、臨調行革、そして地方行革の押しつけで地方財政、事業や区民の生活を圧迫してきている中、さらに大増税計画は許せません。昨年の売上税は、国民の声で廃案に追い込みましたが、導入を前提とした予算が組まれました。今回の大型間接税について、まだ具体的なものは出ておりませんが、直間比率を五対五に変えると十兆円の税収がふえるというのですから、地方財政への影響は大きいと言わなければなりませんし区民への影響も重大だと言わなければなりません。
大型間接税についての質問は一般質問で行いますので詳細は省きますが、地方財政への影響は大きなものであるという点での大型間接税導入問題について区長にお伺いしておきたいと思いますが、このことについては区長としてもきっぱりとした態度をとっていただかなくてはならないのではないかと思います。区長の御見解をまずお尋ねをしたいと思います。
来年度の東京都の予算は、「アクセル予算五兆円、ニコニコ暮らせるハッピー予算」と呼ぶそうですが、一方では「五兆円でも都民には冷たく苦しめるアンハッピー予算」とも呼ばれております。自民党政府や財界が要求してきた臨海部副都心開発、幹線道路建設を初め、東京への一極集中を突き進める東京改造最重点型予算になっております。
このような状況の中で、国や都の影響をいち早く受ける都心区の千代田区が、千代田のまちを、そして千代田の区民を守る上で重要な区議会であると思います。区長がいつもいわれている「活気とやすらぎ、調和のとれたまちづくり」「区民が住み続けられるまちづくり」ができるかどうかがかけられてきていると思います。
それでは、六十三年度予算編成についての質問を行います。
日本共産党区議団は六十三年度千代田区予算編成に当たり、百二十項目にわたる予算要望書を昨年十二月区長に提出いたしました。予算要望書は、一、狂乱地価を抑え、住民本位の民主的まちづくりを進め、千代田区の真の活性化を図る。円高不況と産業の空洞化から、中小企業、地場産業を守り、住みよい生活環境づくりのための民主的再開発を進める。二、公約違反の大増税と住民犠牲への地方行革をやめ、暮らしを守り、福祉、医療の充実を図る。三、教育の反動化、軍国主義化に反対し、区民の期待にこたえる教育を進め、文化、スポーツの発展を図る。四、千代田区を非核・平和の国際都市に。非核、平和都市宣言を行い、世界の非核、平和を求める大きな流れに合流を。五、千代田区の自治を守り、発展させ、清潔、公正、民主、住民本位の区政を確立するの五つの柱からなっております。
千代田区は狂乱地価や大企業の横暴な開発、底地買い、住民追い出しなど直面する深刻な事態にどう対応するかが大きく問われております。区民は激しい底地買いや立ち退き強要に遭い、住み続けていたいという強い要求があるにもかかわらず、千代田区から追い出されてしまう状態が続いています。地価の高騰に伴う固定資産税、都市計画税、相続税は追い出し税と呼ばれるほど高くなっています。住んでいる区民は土地、家屋を売ればお金になりますが、住んでいるだけでは税金が高くなるだけで、ますます生活や営業が圧迫されてきていると言っています。だからこそ固定資産税の評価がえストップ、都市計画税や相続税の減税要求はますます強くなっております。
このような中で、東京都は都市計画税の軽減案を提案しました。この中に法人事業税の超過税率見直しによる大企業減税が抱き合わせになっていることは問題ですが、都市計画税の軽減案を都が提案したことは、多くの都民の強い減税要求に押されたものであります。それでは、千代田区民にはどのようになるのか、定住対策と打ち出しながら、千代田区民がビルを建てて住み続けていくという千代田の定住対策にどれだけ減税されるかといえば問題があると思います。
今日の地価暴騰は、区民の生活を根底からくつがえすものであり、このような事態を生み出した原因と、その責任を明確にするとともに具体的な対策を立てる必要があります。今、財界や大企業の横暴はだれの目にもはっきりしてきています。竹下内閣は内需拡大を口実に、大企業中心の大型公共事業を拡大し、民活や技術開発を名目とする補助金や融資を拡大するなど徹頭徹尾大企業奉仕を貫く積極財政になっています。
こうした悪政にストップをかけ、土地投機の禁止、地価凍結を実施することが住民本位の千代田のまちづくりを進めていく上で決定的に重要だと思います。千代田区民が本当に住み続けられるまちづくりを進めることがいまほど区に求められているときはないと思います。「千代田区街づくり方針」をよりどころとし、政府、財界による大企業奉仕の都市政策に毅然と立ち向かい、大企業の横暴を民主的に規制すること、底地買い規制やすべての土地取引の規制、再開発についての指導要綱などをつくり、住民本位のまちづくりを進めるべきではないかと思いますが、このことについて区長の見解をお尋ねしたいと思います。
竹下内閣は、中曽根内閣に引き続き福祉の切り捨てをどんどん進めています。政府は六十年度から一年限りと補助金の一割削減をしました。区長の開会あいさつでも述べられているように、これが一年でとまるのではなく、六十一年度も、六十二年度も、さらに来年度六十三年度と削減し、地方自治体や住民にそのしわ寄せをしてきております。六十三年度は国保の制度改悪や生活保護費の削減など、竹下内閣のもとで国民の生存権を脅かすような福祉の切り捨てが進められてきております。本来ならば、当然、国が負担すべきものを地方自治体や住民に肩がわりさせ、さらに、臨調「行革」を進めていくために、地方自治体へも人員の削減や事業見直しなどによる福祉などの切り捨てを迫ってきています。このような国の福祉切り捨てを前提として予算編成するならば、区民と密着している自治体として、区民の暮らしや福祉を守らなければならない立場なのに、逆に区が苦しめることに手をかす、そういう結果になってしまうのではないでしょうか、こういうことについての見解をお尋ねをしたと思います。
区民要求の強い特別養護老人ホームの区内設置は急がれております。昨年九月
定例会で区長は特別養護老人ホームの区内設置を図ることを答弁されました。そして六十三年度の予算案に初めて調査費が計上されました。痴呆性老人のためのベッド確保も予算化されました。かつてないことであり、一日も早くと願っている区民からとても喜ばれております。しかし、これだけ区民から待ち望まれている施設ですから、予算上の表現についても、内容についても、もっと積極的に打ち出すべきではないかと思います。用地確保についても一生懸命取り組んでおられると思いますが、では区民は早くつくってほしいと願うと同時に用地確保のために何をすればよいのか、用地確保を早く進めるためにはどのように力を合わせて取り組めばよいのか、明確にわかるようにすべきであると思いますが、いかがでしょうか、区長の見解をお尋ねしたいと思います。
区民が住み続けていくためには区営住宅建設など住宅対策が急がれております。今、民間のアパートやマンションを借りて千代田区に住もうとしても、とても払える家賃ではありません。飲食店で働いている若い人が、これから結婚をして千代田に住みたいと思っているそうですが、公営住宅でないととても住めないといって、区営住宅をもっとつくってほしいと言っておられます。住みたいけれど現状は住めないということで、若い人を始め区民が他地区へどんどん出ていくのを何とか食いとめたいと思います。それには区の住宅対策を区民に示すことが必要です。このことについての区長の見解をお尋ねしたいと思います。
ことしこそ「非核、平和都市宣言」を行うべき年ではないでしょうか。昨年は、米ソ間でINF全廃条約が調印されるなど、核兵器廃絶は現実的課題となってきました。日本で、世界で核廃絶を願う勢力は大きく広がり、世界の流れとなってきました。しかし、核兵器にしがみついている勢力も依然としており、人類の生存にとって有害な核兵器をなくすための世論や運動は重要になってきております。千代田区が国際都市を目指すならば、国際的にも緊急の課題である非核、平和都市宣言の実施が求められていると思いますが、このことについては繰り返し共産党は質問しております。いかがでしょうか、区長の見解をお尋ねをしたいと思います。
次に、都区財政調整問題についてお伺いいたします。
昭和六十二年度の都区財政調整については六十二年度都区財政調整決定方針に基づき区別算定が行なわれましたが、その後、新たな財政需要が生じたとして再調整が行われました。基準財政収入額については、特別区民税の決算増収見込み等に伴う基準財政収入額の再算定を行うものとすること。基準財政需要額については、特別養護老人ホームの運営及び整備に要する経費や緊急都市整備対策に要する経費等十四項目に係る経費については、既定の基準財政需要額に加算するものとしております。六十二年度の再調整において、超過財源は千八百五十四億円、追加需要額は千七百四十九億円で、この中で東京都は緊急都市整備対策費として九百八十九億円を各区に配分する措置をとりました。算定額は標準区で四十三億円であり、千代田区には三十四億円の配分となっております。そしてこのお金は各区とも基金に組み入れる、つまり貯金をするよう都の指導が行われております。それでもなお、六十二年度都区財政調整の再調整をやっても残金が生じるほど財源にゆとりがある状況であります。このように財源に余裕があるにもかかわらず十四項目のレベルアップ等にとどめてしまうことは、真に区民の要求にこたえる内容になっていないと言わざるを得ません。固定資産税など千代田区民などが支払う税金、調整三税に対する区民の貢献度は他区と比べても大変高くなっております。土地の高騰など、住んでいるものにとって好むと好まざるとにかかわらず税金は容赦なくかかり、支払っております。千代田区はお金が余っているとか、いっぱいあると町の中で話されているのも、こういう実情だからこそ財源調整で他区へ配分される財源になっているなど知らなければ、当然、千代田区はお金持ちだという話が出ても当然ではないでしょうか、千代田区は六十二年度は都区財政調整の再調整により、納付区として決定されていたものが交付区にかわりました。
納付金がなくなったことについては大変喜ばしいことだと思います。しかし、交付区になっている各区で、区民の要求に沿った施設を建設することなどを見て、千代田区は都心だから土地も高く、手に入りにくいし、物価も高いし、仕方がないとあきらめていては、区民が住み続けられる千代田区をつくることはできません。
今回の財調の再調整でも金余りになっている財源を、区民のために使えるよう要求すべきではないでしょうか、もちろん千代田区がこのことについて何もしていないということではなく、いろいろな努力をされてきていると思いますが、再調整に当たって、区はどんな要望を出していたのか、このこともお尋ねをしたいと思います。自主財源をふやすこと、財政権の拡大や区民、中小企業の人たちの当面する要求実現のために、都心区独自の要求を強く主張して、実現のために奮闘すべきではないかと思います。区長、いかがでしょうか、御答弁をお願いいたします。
六十三年度の財調では、人件費の見直しが行われ、全体で二千百十三名に上る職員定数の削減が打ち出されていることは重大問題であると言わなければなりません。特に保育所、学校関係、土木、保健衛生関係などに働く職員が対象になっており、区民サービスに重大な支障を来するものであり、認めるわけにはいきません。これは国の臨調「行革」路線を財調上からも一層進めるという内容であり、重大問題であります。既に昨年十二月東京都区職員労働組合は、鈴木知事に対し、要求書を提出しております。その内容は、東京都及び特別区は昭和六十二年度都区財政調整方針に基づき、経常的経費における人件費等の算定法の見直しについて協議を行っているが、私たちは民主、公開の立場を貫くことや、二十三区相互間の調整に当たっては、特別区の自主権を強化する方向で実施すること、さらに協議、財調の手法を通じて東京都の意思を特別区に押しつけるようなことがあってはならないことと考えていると述べ、一、都区財政調整方針による人件費の算定方法の変更は特別区における政策の意思形成及び特別区における労使交渉に大きな影響を及ぼします。したがって、経常的経費における人件費等の算定方法の見直しにかかわる財調協議会での協議経過及び協議内容を明らかにすること。一、保育所の職員配置について、測定単位を定員数から措置児童数に変更する、かかる提案を撤回することと要求しています。職員定数の削減は区民サービスを低下させるものであります。千代田区は区民サービスの充実、職場の労働条件の改善を進め、保母などの人員削減は行うべきでないと考えますが、区長の答弁をお願いいたします。
六十三年度の主な新規事業及びレベルアップ事業の中で用地単価の改定があります。これは一平米当たり五十万円を九十一万円に引き上げる用地単価の改定が行われているのですが、これでも実際の取得価格とはまだ大きな差があります。用地単価については実態に見合った内容に改めるように要求すべきではないかと思います。区長会では、六十二年度都区財政調整再調整で区側提案事項として、用地費算定額等需要額と実態とが著しく相違するものについていえば算定内容を見直すべきであると述べておりますが、要望した立場から、今回の用地単価の改定について、どのように受けとめておられるのか区長にお尋ねをしたいを思います。
最後に、保育料の条例化問題について質問をいたします。
二十三特別区長会は、二月十六日の区長会総会で保育料の徴収を条例化することを決めるとともに、保育料の値上げについても検討することを明らかにしました。二十三特別区の保育行政については、長い間徴収事務を機関委任事務として取り扱ってきましたが、機関委任事務整理合理化一括法成立により、六十二年に団体委任事務となりました。そして保育料徴収事務は市町村の仕事であり、自主的に保育料を賦課し、徴収できることになりました。機関委任事務と違って、区長は区民の生活や営業を守る立場を貫くこともできますし、区長みずからが保育料を抑えることもできることになったのです。しかし、国からは臨調行革路線の押しつけで保育料を国基準まで引き上げよという指導も強力であると聞いております。そうであっても区民の暮らしや福祉を優先するならば、それらを払いのけることはできると思います。また、財源の不足を理由に保育料の値上げを出しても、現実は金余りの状態であるから、財政的に見ても緊急性は全くないと思います。二十三区の保育料については、特別区児童福祉審議会の答申が出されており、定期的な見直しを打ち出しております。そして、区長会は保育料の条例化とあわせ保育料の値上げを提案しております。しかし、保育料の条例化と保育料の値上げは一体のものでなく、両方合わせて進めようとする区長会の姿勢は問題であります。
保育料の値上げとセットにせず、保育料の条例化については二十三区一体でなく、区独自で区民の生活実態に見合ったものをつくるべきではないかと思いますが、区長はこの問題についてどのようにお考えでしょうか、答弁をお願いいたしまして私の代表質問を終わります。(拍手)
〔区長
加藤清政君登壇〕
12:
◯区長(
加藤清政君) 野口議員の御質問にお答えいたします。
新型間接税と地方財政への影響についてでございますが、現時点では税体系、税率、地方税との関係等基本的事項も具体化されていない段階であります。したがって、地方財政に対する影響についても不明であります。私は、今後の税制改革について、地方財政に対して大きな負担と影響を与え、行政水準の低下を招くような改革であってはならないものと考えております。
いずれにいたしましても、この税制改革の検討に当たっては、国政の場等を通じて、広く国民の理解と納得が得られるような合意形成が必要であると存じております。
次に、住民本位のまちづくりについてお答えいたします。
私は、常々まちづくりは、すぐれて総合的な行政であり、地域の自治そのものであると申し上げてまいりました。その意図するところは、まちづくりはこのかけがえのない千代田区を愛するすべての人々の心意気をもまちづくりを支える大きな柱として組み立てていくことにあります。このため、街づくり方針は、街づくり協議会や懇談会を始め、区民各層からの街づくりに対する熱い思いを基盤にし、区議会とともに千代田区の総意として策定したものであります。したがいまして、この方針は、区を初め千代田区を構成する区民、企業が共通に認識すべき重要な指針であり、いわば憲章と意義づけられるものと考えております。
お尋ねの住民本位のまちづくりということでありますが、区政の基本は人の住むまち・住めるまちの確保であり、街づくり方針もこのことを基本としております。また、街づくり方針では、住民を街づくりの主役として位置づけるとともに、千代田の街づくりを進めるに当たっては、住民だけでなく、企業も地域構成員としての自覚をもって街づくりに協力し参加することを求めていく、その際、区が総合調整者として、適切な誘導や規制を行っていくことを明らかにしているところであります。
したがいまして、街づくり方針の的確な実践、住民、企業、行政の三位一体による街づくりの推進こそがお尋ねの趣旨と一致するものと考えますので、御了承賜りたいと存じます。
次に、非核・平和都市宣言の御質問についてお答えいたします。
我が国の憲法は平和主義を基本理念としており、安全で自由な社会の実現は国民共通の願いでもあります。また、伝統ある千代田区を活気と触れ合いのある平和なまちとして継承していくことは区の責務でもあります。
御指摘の千代田区における平和都市宣言につきましては、再三御答弁申し上げておりますように、区民の平和に対する総意と区議会の意向を踏まえて行うべきと考えておりますので、御了承賜りたいと存じます。
なお、詳細及び他の事項については関係理事者をもって答弁いたさせますので、御了承賜りたいと存じます。
〔助役
川又元彦君登壇〕
13:
◯助役(
川又元彦君) 野口議員の御質問のうち都区財政調整に関する御質問についてお答え申し上げます。
まず第一の御質問の六十二年度の再算定に当たっての区側の要望についてでございますが、これにつきましては都心区特有のものとして土地取引適正化事務費の追加を初め、緊急都市整備対策費の算入を強く求めてきたところでございます。また、旧国鉄用地取得費あるいは公共施設大規模改修経費、さらには緊急的なものとして公共アスベスト対策費等を新たに算入するよう提案をしてまいりました。これにつきましてはいろいろ折衝があったわけでございますが、最終的には十二月の二十五日に特別区長会として臨時的用地取得に関する財源措置ということで六十二年度の再調整についての緊急要望を受けましての結果でございます。本区にとりましてもまだまだの感がなきにしもあらずでございますが、大枠においては了解され、今回、新たな需要として算入されたところでございます。この点につきましては、現在、都議会におきまして特例条例として審議中のものでございます。
次に、人件費の算定の経過はどうかというような御質問でございますが、これにつきましても、財調協議会において数次にわたる協議によりまして復活を求め、二百三十三人の復活があったわけでございますが、基本的には人件費の算定等、本区におけるところの職員数との関係については都区財政調整制度におけるものとしては、財源配分上の考え方、あるいは基準に基づいて行われているものであり、各区における職員配置数をそのまま拘束するものではないというふうには理解しているわけでございます。
したがいまして、本区における職員配置数の決定に当たりましては、本区の実態及び行政需要等の変化を踏まえまして、絶えず見直しを行い、各職場に必要な職員数を自主的に適正配置してまいりたいと、このように考えております。
次に、用地単価の改定問題でございますが、当区におきます地価の高騰は非常に顕著でございまして、現行用地単価は御指摘のとおり、いまだ実勢単価とは大きな乖離がございます。
かねてから区といたしましては、この点について大幅な改定を強く主張してきたところでございますが、今回の改定、これは全く一〇〇%満足すべきものではございませんが、八一・九%ということはかつてない、もちろん地価そのものも高騰しているわけでございますが、財調措置としてはかつてない措置がなされたわけでございます。これは一定の効果があったんではなかろうかと思います。しかし、十分な満足すべきものではございませんので、今後とも引き続き都心区、とりわけ、本区の実情を強く訴えまして、用地単価の改定を強く要望して対応してまいりたいと、このように思いますので、御了承のほどをお願いいたします。
〔企画部長
井澤一弘君登壇〕
14:
◯企画部長(
井澤一弘君) 野口議員の六十三年度予算編成についての御質問のうち、補助金削減問題について、私から御答弁させていただきたいと思います。
補助金削減の問題につきましては、区長の招集あいさつにもございましたように、残念ながら復元することなく、昭和六十三年度も継続されたことは御指摘のとおりでございます。
次に、福祉施策についての国と地方との役割分担等につきましては、社会経済情勢の変化によって適切な見直しが必要になる場合もございます。しかしながら、国の一方的な財政負担の転換のみが目的では住民福祉の後退につながるおそれもある、この点も御指摘のとおりだと思います。
区長会では、このようなことのないよう関係省庁に対し強く要望すると同時に、当区におきましても六十三年度の予算編成においては、本区の自主的な立場からも区民福祉の向上のため意を用いたところでもございますので、御理解、御了承のほどいただきたいと存じます。
〔福祉部長
斎藤喬君登壇〕
15:
◯福祉部長(
斎藤喬君) 野口議員の御質問のうち、保育料の条例化問題につきましてお答え申し上げます。
保育料の条例事項化を初め、保育所の設置運営の充実につきましては、昭和五十一年以来特別区長会から国に要望を重ねてまいったところでございます。その結果、昭和六十一年十二月、団体委任事務化が実現し、保育所への入所措置につきましては、昨年四月、条例の制定施行を見たところでございます。
また、保育料に関する賦課徴収事務につきましては、入所措置と表裏の関係にありますところから、その条例化につきましても、区長会から厚生部長会に検討が下命され、去る二月十六日に、「東京都特別区保育所措置費徴収条例準則」案として報告され、了承されたものでございます。
次に、この徴収条例と保育料の関係でございますが、保育料につきましては、保育事業を運営する上で基本となるものであり、かつ、保護者に負担していただくものでありますから、その額につきましては、区議会の御審議をいただく、条例で定めることが適切であると考えております。
さらに、保育料の額につきましては、公私の負担の範囲、所得階層の区分是正の問題、定期的な見直しの必要性など特別区児童福祉問題審議会の答申の考え方も踏まえ、検討する必要があるのではないかということから、条例化に含めて、見直しの検討を進めることになったものでございます。
次に、条例化に際しては、区独自のものをつくるべきではないかとの御質問でございますが、保育サービスの水準を維持向上する観点から種々論議され、二十三区の一体性を保つことも必要であるとの区長会での考えもあり、条例準則として定められたものでございます。
したがいまして、今後、条例化に当たりましては、これを基準としつつ、当区の特性にあわせ検討してまいる所存でございますので、よろしく御理解を賜りたいと存じます。
〔都市整備部長
望月章司君登壇〕
16:
◯都市整備部長(
望月章司君) 野口議員の御質問のうち住宅対策について、私から御答弁申し上げます。
夜間人口の流出を抑制し、定住性を確保していくことにより、人の住むまち・住めるまちの実現を図ることは、区政の最重要課題でございます。そのためにも御指摘のございました区営住宅の建設など、住宅対策の総合的な推進を図ることにつきましては、その重要性を強く認識しているところでございます。しかしながら、公営住宅の建設に当たり最大の課題は、既に過密化した土地利用の実態や、近年の地価高騰などにより、適地に建設用地を確保することが極めて困難となっております。このような状況のもとにおいて、よりよい住環境と良質な住宅を供給していくためには、有限な資源である土地と空間を高度かつ有効に活用していくことが重要と考えております。
そのためには市街地住宅総合設計制度などの住宅供給に関する現行制度の積極的な活用を図り、生活空間を創出していくことが大切と考えます。
御質問の区営住宅の建設につきましては、今後とも可能な限り追及していくとともに、都営住宅、公社公団住宅などの公的住宅の誘致等に努め、さらに、民間住宅の建設促進に当たっては、行政の責務として適切な誘導に努めてまいりたいと考えております。
なお、民間住宅における建築につきましては区民の方々が主体になることが多いのですが、その際、実態としては建築計画の面などで困難な場面に遭遇することが多々あると思われます。そこで、制度面でのPRを初め積極的な働きかけをし、さらに、相談に努めて対応してまいりたいと考えております。
次に、都心という特性を踏まえ、これからの住宅を考える場合、年齢、所得や職業の各層の方々がともに住み続けていくことができる住宅を供給し、さまざまなライフスタイルに対応した対策が必要かと考えます。現在、建設省、東京都及び都心三区が共同し、都心を人が住み、活動していくための場として位置づけ、都心における住宅の必要性や、そのあり方、そして法制度の整備充実を図るための調査研究を行っているところでございます。この調査研究の成果を踏まえ、国と関係機関との連携をさらに強め、都心千代田区にふさわしい住環境を備えた良好な住宅をこれからの住宅政策の基本に据えていく考えでございます。
また、本区の住宅対策につきましては長期計画におきまして体系化を図り、その総合的な推進に努めているところでございますが、厳しい状況下において都営住宅の更新とあわせた個数増の計画や、民間住宅の共同化など、その成果を得ているところでもございます。今後とも住民、企業を始め国、東京都等との理解と協力を得つつ、あらゆる方策を探り、安全で快適な住環境と良質な住宅の供給に総力を上げて取り組んでまいる所存でございますので、よろしく御了承のほどをお願い申しあげます。
〔都市整備部参事
玉井勇美君登壇〕
17:
◯都市整備部参事(
玉井勇美君) 野口議員の御質問のうち、用地に関してお答えいたします。
都心部の国公有地、特に国鉄清算事業団の処分予定地につきましては、昨年秋以来政府の緊急土地対策要綱に基づき、処分の凍結がなされているところでございます。
したがいまして、今後、その動向を注視していくと同時に、臨機応変に対応できるよう東京都の協力も求めていきたいと考えておりますので、よろしく御了承のほどをお願いいたします。
18: ◯三十五番(
野口つた子君) 自席から再質問させていただきます。
千代田区街づくり方針をよりどころにして千代田区を再生していく、つまり人の住むまち・住めるまちをつくり上げていくということなんですが、区長の招集あいさつにもありますように、引き続く業務地化の進行や、地価の高騰、それに伴う税負担の重圧のもとでという形で夜間人口減少という状況があるからこそ、ここのところをどう見るかというのが大変重要になっていると思うんです。区民が追い出されてしまっている、出たくないが出されてしまう、そして区民が出た後にだれが来るかと言えば企業が入ってきているわけです。こういう状況をもっと、主人公である区民が残れるようにしていきたいというものがやはり街づくり方針であると思いますし、千代田区の方向も、そういう方向を目指しているんだと思います。ですから、そこのところでもう少し千代田区として打ち出していかないと、大企業は金を持っていますし、本当に力で押し切ってきているわけですから、その辺に民主的な規制を加えていかないと、もうどうにも歯どめがかからないという状況になってきちゃうと思うんですね、ですから、そこのところで区が本気になってそういうことをやる姿勢をどう持つか、その姿勢を具体的な形で幾つか挙げましたけれども、規制条例みたいな形で述べましたけれども、その辺のところをやはりきちんとしていただきたい、そういうこととやはり、だからこそ残れる住宅もどうしても必要だということになると思います。そういう点で、この問題について再度御答弁をいただきたいと思います。
それから、財調の人件費の見直し問題ですが、復活を求めて頑張っていただいたということは結構なことだと思うんですが、しかし、実際には昨年、見直しという形で職員定数を減らしていく、人件費をお金の面でも減らしていくという形をつくっていけば、結果的にはその中で進んでいかざるを得ないというふうな、やはり国の地方行革の中に実際にははめられてしまう中で進んでいかなければならないというふうになってしまうと思うんですが、そこのところは今の千代田の区民へのサービスなどを含めて、職員のこのような形での見直しはやはりやめるべきだというふうに私は思いますし、反対の意見を述べておりますが、この点について、相手のペースで動いていくという形での人件費の見直しじゃなく、やはり区がそれだけの職員が必要なんだというそういう点での頑張りはもっと持っていただかなくてはいけないんじゃないかと思いますので、その点についての御答弁をお願いします。
それから、保育料の条例化の問題ですが、団体委任事務化して、そして区独自でこの条例がつくれるようになったということですが、今の御答弁ですと、二十三区一体でやろうということになっているというわけですが、本当に区長が独自で条例をつくることができるということならば、やはり区民の生活実態に見合った条例にしていくという点では、二十三区といっても、それぞれいろいろな状況があるというふうに見てもいいんじゃないかと思うんです。ですから、やはり千代田区は千代田区なりの保育料についての条例化、これは目指すべきではないかと思いますし、それと同時に、保育料の値上げをセットすること自体、これはごまかしだというふうに思います。ですからこれは切り離して、保育料の条例化、区独自でつくるということをまずやるというふうにすべきだと思いますので、その点についての御答弁をお願いして、再質問を終わります。
〔助役
川又元彦君登壇〕
19:
◯助役(
川又元彦君) 野口議員の再質問にお答えいたします。
第一の、人の住めるまちについて取り組んでいく、特に千代田区、都心区の特殊性というようなものをおとらえいただいての再質問かと思いますが、今、これからというよりも、先般、二月に組織改正をいたしまして、その対応体制を整えたことも、まさにこれから区がやろうとすることは、まちへ出て行って、ご指摘の点がまさにこれからやらなくちゃならない仕事でございます。したがいまして、執行機関といたしましても、どうしたら住めるまちになるか、それから企業との両立した千代田区になるかということについて、これから街づくり方針に基づいた動き出しをしようとするところでございます。したがいまして真剣にこれに取り組むということが基本姿勢でございまして、既にこれが動き出しているというふうにおとらえをいただきたいと、このように思います。
それから、財調の定数の問題でございますが、これは決して最初に行革ありきではございません。やはり数次の真剣なやりとりの中で定数問題については、論議の末、得た結果でございます。今後におきましても必要な人員は確保する、しかし、必要でないと思われるような客観的なものについては見直しをしていかなくちゃならない、この使い分けを十分にしていきたいと、このように思います。
それから、保育料の問題でございますが、これはやはり条例ということになると、各区が独自にするのが建前ではないかということが区長会、助役会等でもかなり議論の中心になりました。しかし、保育所のあり方、措置、保育料の取り扱い、そういったものは長い歴史の中で、二十三区の共同の中できたものでございますので、機関委任事務から団体委任事務になったといえども、その方針というものの中で取り扱うのが妥当ではないかということをまだ区長会の中で、あるいは助役会の中で論議をしている最中でございます。
したがいまして、これもまた値上げが先にありきということではなくて、今後、十分に二十三区で詰めまして、そして議会の場にも乗せていくような形に相なるのではなかろうかと、このように思いますので、御理解をいただきたいと思います。
20:
◯議長(
吉成五郎君) 次に、公明党議員団を代表して、九番
川島ひろゆき君。
〔
川島ひろゆき君登壇〕
21: ◯九番(
川島ひろゆき君) 昭和六十三年第一回定例区議会に当たり、公明党議員団を代表して、当面する諸問題について具体的に質問をいたします。
今、区政並びに区民を取り巻く諸情勢は、以前にも増して、殊のほか厳しいものがあります。引き続く円高基調で推移する経済環境は、輸出関連産業を中心に依然として厳しい対応を迫られ、合理化に次ぐ合理化による懸命な企業努力によって、日本経済が支えられている状況であります。一方、政府の緊急経済対策に基づく内需主導による景気上昇は、昭和六十二年度の実質経済成長率が当初予測三・七%を上回る四%台が確実視されるなどの結果となり、一定の明るさも見られるが、しかし、為替相場や株式相場の乱高下等々の不安定、あるいは国際協調体制の先行き不安に重ねて、内需拡大策の限界論もあって、今後の景気動向は予断を許さないものがあると思います。さらに、社会環境に目を転ずれば、経済の国際化、高度情報化の進展、世界の類を見ない急激な高齢化社会の進行等々、その変動は目まぐるしく、特に、大都市東京の中心千代田区はそれが特に顕著に表面化し、問題化していることは言うまでもありません。
こうした諸情勢の中で、人口の減少問題、あるいは都市基盤整備、教育、福祉、中小企業育成等々、区政のさまざまな分野での対応が緊急な課題として、今、区政に求められております。昭和六十三年度はこうした緊急かつ重要な課題に、区政がどうこたえ、どのように対処していくかが問われる年であり、当初予算に対し、区民は重大な関心を寄せていると思います。
そこで、昭和六十三年度予算に対し幾つかについてお伺いをいたします。
まず第一点は、街づくりについてお伺いをいたします。
本年年頭のあいさつで、区長は、「今年は街づくりが始動する年として、人の住むまち、住めるまちの実現に向け、なお一層の努力を重ねていく所存であります」と言われております。街づくり方針が昨年十月に策定され、二月には、都市整備の組織改革が実施されたところであります。また、来年度にはいよいよ都市整備に関する第三セクターが設立されるべく予算も計上され、いよいよ街づくりを実行に移す幕明けの年の到来と、区民は期待しているところであり、行政側の体制も整いつつあると思います。これからの街づくりに行政が区長を先頭にどう対応し、区民の期待にどうこたえていくかが問われる第一歩の年であると思います。現実の困難な問題は依然として大きく横たわっています、しかし、諸問題を乗り越えて限られた権限、財源の中での街づくりを推進していくのは、行政が総合調整者として街づくりのあらゆる場面でイニシアチブをとって積極的に推進していくことは三位一体の街づくり推進にとって最も重要なことではないかと思います。四つの都心像を具体的にどう実現していくのか、検討を重ねながら、区民の前に行政の姿勢、考えを明らかにし、取り組んでいくべきであると思います。
さらに、都市整備部の組織改革に関連していよいよ第三セクター設置に向けての担当部門が設置され、第三セクターの街づくりのなかでの位置づけは民間活力導入による区の街づくりを具体的に進めていく方針の中で記述されております。民間活力の導入を資金面だけでなく、民間のノウハウや、人材の導入も考えていくことも重要であります。この第三セクターが行政との役割分担を踏まえつつ、街づくりの具体化に向け、文字どおり三位一体で街づくりの諸課題に取り組むことによって、あすの都心千代田の再生と発展への道が開けてくると思います。
こうしたこれからのまちづくりの推進に向けて行政の姿勢あるいは体制の整備とあわせて、もう一つ重要な要素は資金の裏づけであります。今
定例会の最終補正予算によれば、都区財調再調整による大幅な算定残の配分内容として、緊急都市整備対策経費が配分されることによって、懸案であった納付金が消えるのみならず二十一億円余の交付金が歳入計上されました。この交付金に繰越金等を加えた財源をもとに、街づくり基金に三十四億円が積み立てられ、さらに当初予算で十七億円が積み立てられることになっており、六十三年度当初の街づくり基金残高は利子を別として九十四億円となります。この街づくり基金は今のところ順調に積み立てられていますが、区財政の今後の見通しの中で、さらに積み立てが可能なのか、日本経済動向及びそれに連動する財政政策によっては、必ずしも明るい材料ではないように思われます。
そこで、これから具体的に進めば進むほど必要となってくる街づくり基金について、区長は今後どのような見通しをお持ちなのか、次の三点についてお伺いをいたします。
第一に、今後、昭和六十七年までの基本改定計画終了、すなわち五年間に総額幾らぐらい積み立てることを考えていられるのか、具体的にお伺いをいたします。
第二に、今後五年間に予想される主な使途及び取り崩す予想額はどれくらいか、見解をお伺いいたします。
第三に、街づくりの具体化に欠かせない国公有地の購入問題が考えられます。例えば、一番町総裁公館跡地では、当然、財調でも考えられますが、当区の基金の対応範囲はどの程度まで考えておられるのか、見解をお伺いいたします。
次に、婦人問題についてお伺いいたします。
婦人問題解決のために千代田区において婦人総合計画を、昭和五十六年九月に体系化策定しておりますが、二十一世紀に向けて、この婦人総合行動計画に従って、婦人問題解決へ向けてのさまざまな施策の推進が期待されるのであります。我が国の憲法は個人の尊厳と男女の平等を理念とし、性の差別を否定し、国民一人一人が自由と平等のもとに人間らしい生活をする基本的人権を保障しております。一九七五年を国際婦人年に指定し、平等、発展、平和の三大テーマのもとに、各国及び国際レベルで婦人問題についての行動を起こすよう呼びかけが行なわれ、国際婦人年を契機に、婦人問題を具体的に解決するための世界行動計画が採択されたことは御承知のとおりであります。
このように国際社会の動きに呼応して、日本政府も国内行動計画を策定いたしました。また、東京都も婦人問題解決のため行動計画を策定したのであります。東京二十三区においても、婦人の地位向上のためにさまざまな施策が実施されておりますことは、大変喜ばしいことでありますが、婦人問題は社会全般にわたって人々の意識とかかわり合っているため、その解決には長い時間と総合的な施策が必要であるとの観点から、婦人関係行政の体系化をまず図り、効果的な施策を進めるための行動計画を各区も実施しているところであります。この間に、女性差別撤廃条約を初め、男女雇用機会均等法などが批准され、制定されましたが、これで問題が解決されたわけではありません、我が党は婦人問題についていろいろの場面で質問しておりますが、答弁の中で区長は、千代田区基本計画及び各種施策を体系化し、より一層事業の推進に努力いたしたいと申しております。
そこでお伺いいたします。
当区は昭和六十年七月に改定基本計画が発表されておりますが、婦人問題解決のため、体系化は主として社会福祉の中に位置づけられております。昭和五十六年策定の婦人総合計画とのかかわりと、施策展開の方向性についての御見解をお伺いいたします。
第二に、昭和五十六年に策定された施策の体系化を、現在の社会情勢に即応した体系化として改定をすべきと考えますが、その見解をお伺いいたします。
第三に、広く民間有識者及び婦人関係団体などにより構成された仮称千代田婦人問題会議を設置して、速やかに婦人問題解決のための千代田区行動計画を推進すべきと思いますが、見解をお伺いいたします。
次に、国際化時代の対応についてお伺いをいたします。
目まぐるしく変貌する国際社会の動向の中で、国際化時代の到来を避けて通ることのできない日本の首都東京、その東京の中心地として、極めて重要な位置にあると言える国際都市千代田の来るべき将来に対して、国際化時代に区政がいかに対応していくかが重要になっていると思います。このことは単に国際交流など海外に目を向けるということだけが国際化の対応ではなく、もっと地道にこの千代田区が直面している国際問題に、どう対処すべきかが問われるべきと考えます。現に千代田区には多くの外国人が居住し、仕事をし、学び、また往来しております。こうした外国人に対する諸問題は、今後、重大な問題になってくると考えられます。
そこで、国際化時代への対応した千代田区における国際問題への取り組み姿勢について具体的に四点についてお伺いをいたしたいと思います。
昨年、横浜市の男性会社員が厚生大臣の指定伝染病であったラッサ熱に感染していたことが判明し、都立荏原病院の高度安全病棟に収容されたとの記事が大きく報道されていました。この男性は、昨年二月末から三月上旬にかけて西アフリカのセラレオネに滞在し、三月十四日に帰国し、二日後に発熱し、入院していましたが、不明のまま退院し、七月末に至り心不全を発病したため、その病状からラッサ熱との診断であったとのことであります。また最近、エイズ、後天性免疫不全症候群の感染が新たな段階に入ったことから、文部省は小中高校先生向けの「エイズに関する指導の手引」を配布するなど、大変恐れられて、国もその対策に苦慮しているところであります。これらの外国で主に発生する病気に対しては水際作戦で撃退することが最良の予防対策でありますが、国の防疫体制も確立されていない今日、赤痢、コレラ等の法定伝染病の予防対策についても、私ども国民にとって大いにその感染が危惧されるところであります。
これらの病気の感染経路は、第一に日本人が国外に出た際と、外国人が日本に入国したときが、主な経路と思うのであります。日本人がこれらの病気に感染して帰国した場合、国内の保健衛生対策が一応確立されていることから、エイズ等の特定の病気を除き、第二次感染の予防は可能でありますが、新たに入国した外国人が日本の国内において、第二次、第三次の感染源になることは極めて心配されるところであります。特に、近年、外国人労働者、留学生が非常に多くなる傾向にあることは御承知のとおりであります。本区におきましても、区内在住の外国人登録者数は昭和六十三年一月一日現在で二千一名であります。中でもアメリカ四百五十三名、韓国、朝鮮で四百五十名、中国三百六十三名、イギリス百十六名、フランス百十一名、その他五百八名であるとのことです。また、国の数は約五十カ国に上っているそうです。未登録の外国人も、特に中近東、東南アジア、アフリカ等の国々が最近顕著にふえている状況でございます。御承知のとおり、この登録数は外国人登録法により、我が国に入国して九十日以内に登録することになっており、我が国に滞在する外国人について、その居住、身分関係を明らかにするものです。
以上述べた以外区内のホテル等には、未登録の外国人も不特定多数、すなわち観光や短期的業務出張、乗員等の上陸、学術、芸術、スポーツ、短期留学等相当数滞在していると想像します。
こうした外国人について、最近注目すべき出来事が区内で発見されました。それは区内の三校の日本語学校での健康診断結果であります。生徒数は三校で約三百人ほど学習しておりますが、その中の一校より、結核予防のための検診依頼を受けました。そこで、所轄の神田保健所と打ち合わせし、検診を実施していただくことになりました。費用は無論受検者負担であります。その結果、日本の最新結核罹患率は二千人に一人の割合ですが、今回の日本語学校における結果は百五名に四名ということで、日本人の何と七十五倍という高率で患者が発見され、すぐ入院が必要とのことであります。原因については継続調査しておりますが、今回の検診で、学校からも外国人からも大変喜んでいただいたわけであります。神田保健所の全面的な協力に対し、この場をおかりして感謝申し上げるものであります。
今後は結核予防法第五条により、定期外検診は無料の対象となったわけであります。今回たまたま学校側の配慮によって外国人に対する健康診断の機会が持たれ、このような結果が出たわけでありますが、伝染病予防の見地からはもちろんのこと、外国人の健康の保持増進の観点からの対策も、全く不十分であることが明らかになりました。外国人登録者は国保への加入、給付が可能でありますが、短期滞在者には行政の手が差し伸べられていません。来年度の予算にも国際化に対応すべく新たに国際理解教育に関する予算、あるいは中学生を対象とした海外交流予算、あるいは海外視察予算等々が組まれております。まさにこれらの施策も大切であり、当然と思います。しかしながら、当区に現に滞在する外国人に対する行政サービスをどう対処すべきかが重要ではないでしょうか、外国人向けの広報紙の発行や、区行政のガイドブックの発行などは今すぐにでもできることではないかと考えます。現在、当区に在住している外国人との交流を図りつつ、留学生等短期滞在者に対する援助を実施したならば、まことに国際親善にも役立ち、まさに国際都市千代田区の誇りになると思います。
そこで、具体的にお伺いいたします。
現在、本区で外国人登録されている外国人の保健衛生対策の現状と実態はどうなっているのか、また、前述した未登録の外人の現状と実態はどうなっているのか、大変難しい問題も含まれていると思いますが、お伺いをいたします。
また、こうした外国人のすべての健康管理を区が実施することは困難でありますが、登録されている外国人の皆様には、千代田区の保健所、もしくは指定医療機関での一般検診を受けられるよう英文パンフレット等でPRすべきではないかと思いますが、見解をお伺いいたします。
次に、こうした外国人の国民健康保険の加入、国民年金への加入等も積極的に推進、充実を図っていくべきと思いますが、加入の用件と加入状況はどうなっているのか、お伺いいたします。そして区内外国人に対する区政の総合的PRの考え方と、交流機会のあり方について、区長の基本的な見解をお伺いいたします。
次に、今後の問題でありますが、多様な外国人のニーズにこたえるべく、拠点施設として、仮称国際会館か、国際交流センターのようなものが必要と思いますが、都庁跡地の国際フォーラムの建設の中で、当区の地域ニーズに沿って、その機能を組み込ませるべく都に要請してはどうかと考えますが、見解をお伺いいたします。
次に、福祉の充実についてお伺いをいたします。
現在の社会保障制度が昭和二十年ないし三十年代につくられたものが多いことから、二十一世紀の高齢化社会に向かって、今日さまざまな観点から、その制度の見直しが図られ、再構築が行なわれております。
また、ここ十年余りの期間が我が国の人口の動態と、構造から見て、生産年齢人口の層が比較的厚く、高齢化社会への進展に対しての制度改革や、資本蓄積が実施されやすい条件にあると思います。社会保障制度の再構築に当たっては、国の経済、社会の活力維持、自助、互助、公助の役割分担、社会的公平と、公正の確保、公と私の役割分担と、制度の高率的運営の四つが一応基本として位置づけられております。その上に立って、高齢化社会の柱となる施策は、年金制度、健康保険制度、社会福祉サービスの三つであります。そして今、社会福祉サービスの充実が強く求められていると思います。
このような中にあって、当区の地域福祉サービス、あるいは社会福祉サービスに対する区民のニーズは、量的に拡大するとともに質的にも高度化あるいは多様化しているものと予想されます。例えば、寝たきり老人に対する施策は保健、医療、福祉の各分野を越えて密接不可能な関係にあり、したがって、本格的な福祉サービスのあり方を検討していくには、従来の個別の分野にとらわれることなく、高齢者や障害者のための住宅、就労、あるいは街づくり等も含め、幅広く社会福祉サービスという観点からとらえていく必要があります。そのためには地域の自主性に応じたサービスの供給であり、各種サービスの連携と総合化、施設サービス、あるいは在宅サービスの総合化、新しい施設体系の創設、治療から予防、健康づくりへのサービスの流れの確立、あるいは民間活力の導入という方向で、社会福祉サービスを総合的に提供できる体制づくりに努めなければならないとかんがえます。
このような総合的な観点から、千代田区の福祉対策の総合化、体系化が必要とされ、福祉部はかねてから検討中とのことでありますが、まず、その策定状況と発表の時期について見解をお伺いいたします。
また、この総合体系をもとに、これを具体化していく取り組みの一環として、学者を含めた有識者、区内代表者による福祉総合計画懇談会のような機関を設けるべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
また、来年度の予算案に、区民福祉厚生基金への積み立てとして十億円計上され、総合基金は八十九億円になると伺っておりますが、ただ適当に積み立てているのではなく、計画があるとおもいますので、目標は幾らぐらい積み立てるのか、今後、計画的に何を目的に使う予定か、具体的な見解をお伺いいたします。
次に、具体的な福祉の問題についてお伺いをいたします。
まず差額ベッドの解消についてお伺いをいたします。
毎年行われる区政に対する世論調査の結果、上位にランクされている問題の中に健康と医療の問題があります。またわれわれのところに来る相談の中でも医療の保険外交費用の問題が多くあります。入院患者を抱える家族にあっては付き添い看護料、室料、差額ベッド料等の費用負担が家計を圧迫し、生活を破壊しかねない深刻な問題となっている場合が多いのであります。いわゆる差額ベッド、この問題は社会問題となり、厚生省はその解消に通達を出して指導に当たっているのでありますが、いまだ解消されていません。六十五歳以上の人が入院した場合は老健法の適用を受け、一日四百円で済みますが、それ以上に差額ベッドの負担が高額になる場合があります。六十五歳以下の人が入院した場合は、医療費と差額ベッドのほかに付き添い看護料と、三重の負担となっているのが実態であります。このように入院患者を抱える家族の家計は、深刻な問題となっております。
そこで、このような問題を少しでも解消するために、区内病院の差額ベッドの実態調査をしてはどうかと思います。
また、区は区内病院の差額ベッド解消のために、医師会と話し合いをしてはどうか、このことについてお伺いをいたします。
また、差額ベッドの負担に対する応急小口資金貸付制度の利用については、いまだ区民に余り知られておりません。区民に積極的にPRをすべきと思いますが、見解をお伺いいたします。
次に、寝たきり老人、重度障害者の歯科診療制度の実施についてお伺いをいたします。
在宅寝たきり老人の歯科診療に既に二十三区の中で文京区を始め数区で、歯科医師会の協力で実施をされており、大変に喜ばれております。また、寝たきり老人の歯科調査では、その四割が歯科検診、治療を望んでいるとのことです。当区でも老人実態調査を実施しておりますが、歯科診療についての調査項目はありません。高齢者の入院、通院で病気の第一位は目、耳、鼻、歯となっており、高齢者の病気の傾向については、予想がつくのではないかと思います。多くの寝たきり老人や、重度障害者は、適切な歯科診療が受けられず、一人で歯の痛みに苦しみ、自分の歯がなくて義歯も入れられず、食事も満足にできない悩みを抱えております。歯が治療されれば全身の健康につながることが間違いないと思います。我が党もさきの代表質問でこの問題について取り上げ、高齢者の多い当区で、ぜひとも早期に実施することを強く要請してきたところでありますが、答弁の中で、今後、調査し、検討すると答弁されておりました。
そこで伺いますが、第一に、その後どのような調査をし、検討されてきたか、実施に際しては歯科医師会の協力が必要であると思いますが、医師会との協議は行われたのか、見解をお伺いいたします。
第二に、区内の寝たきり老人の歯科診療に対しての実態調査が必要と考えますので、来年度予算の老人実態意向調査の中に含んではどうかと思いますが、この点についてもお伺いいたします。
第三に、重度障害者の歯科診療については特別スタッフ及び特別な歯科医療器具が必要となろうと思いますので、飯田橋にある都立心身障害者口腔保健センターで治療されるよう区で各個人にPRし、普及すべきだと思いますが、見解をお伺いいたします。
次に、寝たきり老人に対する貸しベッドについてお伺いをいたします。
当区の高齢化人口は一四・三%とか全国平均や都市平均の高齢化を上回る速度を示すなど、高齢化社会の対応を十分にしていかなければなりません。よって、特別養護老人ホームの早期建設が望まれておりますが、当面、在宅福祉の充実の一環として、貸しベッドを充実すべきと考えます。現在、本区の寝たきり老人は三百人以上いると考えられます。今後もこの人たちもさらにふえると思います。当区では貸しベッドを実施しておるとのことですが、低所得者のみとのことであります。家庭にあっては寝たきりの老人がいるだけで苦労が多いわけでありますので、温かい施策を実施すべきと考えます。また、貸しベッドについてはリースもありますので、そのようなものを検討してはどうか、お伺いいたします。
次に、社会福祉を受けなければならない弱者を抱えた家族の問題であります。家族の方々が介護上、大変なことと同時に困っていること、悩んでいることは、知られたくない、精神的に疲れる、肉体的に疲れるということであります。ボランティアあるいは家庭奉仕員等に相談しているとは思いますが、行政の目の届きにくい家庭に対しても、積極的に定期的に相談に伺い、当区の福祉施策をPRして、家族の方々及び本人も喜んでいただく施策を考えるべきだと思いますが、見解をお伺いいたします。
以上、大きく四点について質問いたしましたが、区長並びに関係理事者の明解なる答弁をお願いいたしまして、私の代表質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔区長
加藤清政君登壇〕
22:
◯区長(
加藤清政君) 川島議員の国際化への対応についての御質問にお答えしす。
今日我が国に押し寄せている国際化、高度情報化など、時代の大きな潮流は急速な勢いで都市の姿を変貌させようとしております。交通、通信手段の飛躍的進歩によって、世界の国々はますます相互依存の度を深めております。
こうした中で、東京は世界の大都市としての国際的地位と役割が著しく増大し世界の人々の期待も高まっております。
昨年十月、私は東京の中心に位置する千代田区の国際的な人間的、文化的交流等の重要性を認識し、国際化の進展をも踏まえた四つの都心像からなる街づくり方針を策定したところであります。また、昭和六十年十二月に十一カ国、三百余人の外国人の方々の参加を得て、IYY国際交流を開催し、さらに、現在作成中の区政概要に街づくり方針等区の重要施策の英文併記を行うなど御理解を深めていただくよう努めているところであります。そして昭和六十三年度においては、中学生の国際交流等も図ってまいるべく御提案しているところであります。
一方、区内に在住する外国人の方々も二千人を数え、その国籍も東南アジアから欧米諸国までと広い範囲に及んでおります。国際化の進展に伴い、乗り越えなければならない課題が多々あります。
したがいまして、国、都との連携、役割分担を十分踏まえ、昭和六十三年度実施計画におきましては国際化の進展に伴う諸課題に、どのように対処したらよいのかを調査してまいりたいと考えておりますので、御了承賜りたいと存じます。
なお、詳細及び他の事項については、関係理事者をもって答弁いたさせますので御了承願います。
〔企画部長
井澤一弘君登壇〕
23:
◯企画部長(
井澤一弘君) 川島議員の御質問のうち、まず街づくり基金及び区民福祉厚生基金について、私から御答弁させていただきます。
まず一点目の街づくり基金につきましては、街づくり方針の策定等に伴います都市基盤の整備及び市街地再開発に関する事業に要する財源を先行的に確保することを目的として、六十一年度に設置されたものでございます。
主な使途でございますけれども、改定基本計画に基づく道路、橋梁、公園の整備、再開発事業関連事業、都市計画事業、街づくり関連公共用地の取得等でございます。
六十三年度の取り崩し予定は第三セクター設立関係で二億円、それからコミュニティ道路整備で一億円を予定しております。
今後の積立予定額でございますが、この点ずばりどのくらいを目標とするかというお尋ねでございますが、現在、秋葉原地域整備構想の策定していたり、あるいは公共駐車場確保の調査等の段階でございますし、不確定な要素が多く、一定の目標額を設定するのは非常に困難な状況にございます。御案内のとおり特に目標設定を困難にしている大きな要因といたしましては、地価の高騰を上げることができると思います。例えば、一平方一千万円の基準地価格といたしましても、一千平米で百億円というような形になりますので、当然、地価の高騰というのが目的別に基金はつくっていても、どの程度かというところを非常に難しくしている、この辺はぜひ御理解いただきたいと思います。
したがいまして、本区での基金の対応範囲については、そのほか財調算入の可能性、あるいは起債の活用等財源確保について総合的に検討する必要があると私どもは認識しております。
次に、区民福祉厚生基金につきましては、区民施設、福祉施設及び保健施設の整備に要する財源確保を目的としておりますけれども、基本的な考え方は街づくり基金と同様でございます。
六十三年度は自然休養村の建設のため一億円を取り崩す予定でございます。
いずれにいたしましても、両基金とも長期的計画的な財政運営を行う必要性から設置したものでございますので、可能な限り諸条件を整備し、計画的な運用が図られるよう努力してまいりたいと考えておりますので、よろしく御了承いただきたいと思います。
次に、国際化への対応についての御質問につきまして区長答弁に補足してお答えいたします。
国際交流施設としての国際フォーラムの機能についてでございますけれども、昭和六十一年十一月、東京国際フォーラム建設等審議会におきまして、千代田区はフォーラムが備える機能として立地環境にふさわしい機能、そして地域の実情を踏まえた機能等をあわせ持つ国際都市にふさわしい施設の建設を図るよう意見開陳したことは御案内のとおりでございます。
また、昨年十二月、審議会がフォーラムが持つべき機能として、国際交流の拠点、総合的な情報の交流と創造の拠点、それから、総合的な文化活動の拠点とするよう答申が出たことも御案内のことと存じます。
したがいまして、これら機能が十分具現化されるよう、都に対して今後とも機会をとらえながら働きかけてまいりたいと、このように考えておりますので、御了承いただきたいと存じます。
〔総務部長
土子勤君登壇〕
24:
◯総務部長(
土子勤君) 川島議員の御質問のうち、婦人問題解決について私からお答えいたします。
千代田区における婦人関係施策については、昭和五十六年に女性をめぐる生活全般にわたって設定した課題を施策の方向と、具体的施策に体系化し、その施策の推進を図ってまいってきたところでございます。また昭和六十年度に改定された改定基本計画においても、各領域の体系に施策を反映させているところでございます。その後、男女雇用機会均等法並びに労働基準法等の改正もあり、女性にかかわる社会的な基盤整備も進んでまいりました。このような面から必要な制度面などの基本的枠組が改善されましたので、国並びに東京都においては、婦人行動計画を整備して推進していることは御指摘のとおりでございます。
千代田区といたしましても、こうした現状認識のもとで、女性に関する施策の体系化を見直し、男女平等と婦人の地位向上を図るための施策をさらに充実してまいりたいと存じます。
なお、婦人問題会議の設置については、貴重な御提言として受けとめさせていただきたいと存じますので、よろしく御理解、御了承のほどをお願い申し上げます。
〔福祉部長
斎藤喬君登壇〕
25:
◯福祉部長(
斎藤喬君) 川島議員の国際化への対応についての御質問のうち、外国人の国保及び国民年金への加入に関してお答えいたします。
まず、国保につきましては、加入資格は千代田区に住所を有し、外人登録をしている方で一年以上居住する方、ただし会社の健康保険等に加入している人を除くということになっております。現在、外人登録のある方のうち、国保に加入している方は約五百名で二四%の割合となっております。手続といたしましては、外人登録で戸籍課に来訪された方に対し、加入の指導を行うこととなりますが、言葉の問題がありますので六十三年度に国保の英文パンフレットを作成し、戸籍課にも御協力をいただき、窓口に備えるよう現在準備を進めておりますので、御了承をお願いいたします。
次に、国民年金についてですが、外国人の年金への加入は、昭和五十七年一月一日から国民年金法におきましても国勢要件が撤廃され、日本人と同様の取り扱いが行なわれるようになっております。したがいまして、保険料を最低二十五年納付いたしますと、老齢基礎年金の受給資格を確保することができます。
加入届出の促進につきましては、日本国内居住予定期間の長短の関係もございますので、当面、一般広報による制度の周知にとどめております。
現在、外国人の被保険者数は本区で二十七人となっております。
今後ともこの制度についての周知を図ってまいりますので、よろしく御了承願います。
次に、高齢者福祉対策についての御質問にお答えいたします。
福祉行政検討委員会の検討についてでありますが、本区における地域福祉の推進と在宅福祉の充実という観点から、今後の本格的な高齢化社会に向けて、福祉施策の総合的体系化と基本計画の具体化を図るために、部内検討会として一年間検討を続け、昨年の九月に報告を得たところであります。この検討結果をもとに、特別養護老人ホーム等の設置につきましては、庁内のコンセンサスを得まして、昨年の第三回
定例会におきまして区内設置に向け早期に具体化を図りたいと、区長から御答弁申し上げたところでございます。また、六十三年度予算案の中にも、この検討結果を踏まえ、計上させていただいたものも多くありまして、今後の福祉施策を展開していく上で、一つの大きな目標となるものと考えております。
今後、この報告をもとに、全庁的な論議を得まして、関係部門との連携を図りながら福祉施策に反映させてまいりたいと存じます。次に差額ベッドの負担に対する応急小口資金の貸付制度の利用についてでありますが、現在、区で実施しております応急資金貸付制度の中の療養資金の対象となりますので、PRに当たりましては御指摘の点を十分に配慮してまいりたいと存じます。
次に、寝たきり老人に対するベッドの利用につきましては、現在、日常生活用具の給付事業の中で対応しているところであります。しかし、御指摘のように給付対象範囲が低所得世帯ということで大変限定されておりますので、貸しベッドの普及やリース制度の導入などを図り、利用対象者の範囲の拡大を検討してまいりたいと存じます。
また、福祉施策の推進に当たりましては、行政はもちろんのこと、区議会の議員の皆様を初め、福祉関係団体や町会など地域の方々の御協力を得まして、各方面から福祉サービスの普及、PR、相談に当たっていただいているところであります。
しかしながら、要介護者を抱え、家族だけで悩み苦労されえている家庭もあろうかと考えられますので、このようなことのないよう、障害者施策や高齢者施策をまとめた小冊子を作成し、また、各事業を実施する際も事業案内をつくるなど、周知の徹底に努めておりますが、なお一層きめ細かに対応して、一人でも多くの方々に福祉サービスが提供できるように努力してまいりたいと存じますので、御了承願います。
〔保健衛生部長石井桂子君登壇〕
26: ◯保健衛生部長(石井桂子君) 川島議員の御質問のうち、保健衛生部の所管に係る事項についてお答えいたします。
まず、国際化への対応についてのうち、本区における外国人登録者に対する保健衛生対策についてでありますが、登録されている外国人については、伝染病予防、成人病予防並びに母子保健などすべて一般区民と同様に対処しております。例えば、成人病予防として地域医療の協力により定期的に実施しております区民健康審査についても一般区民と同様に利用していただき、健康管理と適切な医療の確保に役立てていただいているところであります。
次に、未登録の外国人については、その方々の所在の把握が困難である関係もあり、行政サイドからの個別的な保健対策は実施できないのが現状でありますが、保健所における一般健康審査については、在勤者と同様に対応できることになっております。
また、御提案のありました外国人に対する保健所あるいは医療期間のサービスの周知についての英文パンフレットの作成につきましては、今後、早急に対処してまいりたいと存じます。
次に、高齢者福祉対策についてでありますが、まず、最初に、入院医療による差額ベッドにつきましては、厚生省が六十二年七月に発表いたしました六十一年度調査によりますと、全病床数の一〇・七%が差額ベッド代として特別料金を徴収しているとのことです。この差額ベッド代は医療保険制度で認められている基準を越えるサービス料として、それぞれの医療施設で決定するものであり、その適正化については国の指導に期待せざるを得ない部分が多くありますが、区の保険行政サイドからもその実態について地区医師会との会合の際、話し合いを持ちたいと考えております。
次に、在宅寝たきり老人の歯科診療についてでございますが、既に地区医師会の協力で実施している区の実情などを参考にして検討しておりますが、本区の地区歯科医師会との会合においても、研究課題として、その実現に努力していく旨を確認いたしました。ただ、在宅のまま歯科治療を実施するのは訪問歯科治療用の器具を使用することになりますが、歯科医師だけではなく熟練した介護者も必要であり、また、医療事故につながらないような技術面の特別な配慮も必要であるという意見を伺っておりますので、実施方法、財政負担などを含めての内部の検討と地区歯科医師会との協議をさらに進めていく所存でございます。
次に、区内の寝たきり老人の歯科診療に対する実態調査につきましては、福祉部における調査と協力して実施していきたいと思っています。
最後に、飯田橋にあります「東京都立心身障害者口腔保健センター」につきましては、広報千代田やポスターなどでPRしてきたところでありますが、引き続きそのPRの方法も含め、強化に努めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしく御了承のほどお願いいたします。
27:
◯議長(
吉成五郎君) 議事の都合により暫時休憩いたします。
午後六時二十六分休憩
午後六時四十五分開議
28:
◯議長(
吉成五郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
代表質問を続けます。
日本社会党区議団を代表して、十八番中村つねお君。
〔中村つねお君登壇〕
29: ◯十八番(中村つねお君) 本日のトリを務めさせていただきます社会党の代表質問であります。
我が党は、余り誹謗中傷、それらについては得意なほうではございませんので、中身の濃さをもって質問に入らせていただきます。
石が流れて木の葉が沈むと言われた中曽根内閣にかわりまして、竹下内閣が誕生いたしましたけれども、ふるさと創生論を掲げての登場でありますが、その内容はまだよくわかっておりません。中曽根首相ほど言動がはっきりしておりませんので、竹下内閣がこれからどういう役割を果たそうとしているのか、国民をどういう方向に持っていこうとしているのかについては非常にわかりづらいのでありますけれども、しかし、最近の国会の状況マスコミの報道を見てわかるように、ひとつこの竹下内閣の大きな仕事として考えているのが、いわゆる新型間接税の導入でないかというふうに考えるわけであります。まず、この新型間接税あるいは税制改革につきまして若干質問をさせていただきたいと思います。この問題につきましては、過去その内容を私ども指摘させていただきましたし、他の方々も本会議場で質問を繰り返してまいりました。あるいは当議会には特別委員会が設置されておりますので、内容そのものを細かく繰り返しません。ただ、税制改革全体を考えるために、若干の経過と問題点に触れてみたいというふうに思います。
昨年廃案になった政府税制改革案を構成していた基本的な考え方の特徴として、まず広くて薄い負担を求める税制への転換として一律五%の税率で間接税をかけようとしていたことが挙げられると思います。しかし、税の基本理念というのは、あくまで負担能力に応じて公平に負担をするということであり、これを大きく転換することが公平であるというのは、水平的な公平はあったとしても、垂直的公平という点では明らかに不公平性が拡大されてしまうという問題が生じてまいります。
また、重税感を除去する税制へ移行する発想として、直接税中心の税制から間接税に重点を移した税制への構造変革というのも特徴の一つです。政府関係者は、所得水準が向上して、所得格差が縮まっていることを強調し、税制の所得再配分機能を考慮する必要は過去に比べて相対的に低下していると言います。しかし、所得水準の格差の縮小は短期的なフローのみを見ているのであって、ストックの面から見ると、まだまだ相当に経済的格差は大きいというのが現実です。特に、税金というのはたとえ重く厳しいものであったとしても、納めることによってその税金がどう使われているかということに関心を持つ──言い方を変えれば政治意識を持つということになりますし、これが税という面での民主主義の根源だろうと思います。これを除去しようというのですから、民主主義の精神に反すると言わざるを得ません。また、ずるずると重税国家に陥る危険性を持つことになります。
三つ目の特徴は、所得税、住民税、法人税の税率引き下げをえさに売上税の導入を企てたということです。減税財源を口実にしての大型間接税の導入策動は中曽根前首相だけでなく、竹下首相も同様な手法をとろうとしているように見えます。しかし、後で申し上げるように、減税財源はほかに求めることができます。それにもかかわらず、現在の不公平税制の是正にはほとんど手をつけず、大増税路線を歩もうとすることは認めるわけにはまいりません。
大きく分けて以上の特徴があったと考えますが、売上税をめぐる論争の中で多くの国民は税に対する関心を持つことができました。取りやすいところから取るという政府の発想は国民によって過去を明確に否定されました。
一昨年のダブル選挙は七月六日が投票日でした。七月十六日の日本経済新聞によれば、政府税調が間接税について日本型付加価値税、製造業者売上税、事業者間免税売上税の三案を専門小委員会によってまとめて明らかにしたのが七月十五日です。非常なスピードですが、この辺の事情を昨年七月発行された講談社の出版物によると次のようになります。
中曽根首相が各地の遊説先で大型間接税は導入しませんと熱弁をふるっている最中に政府税調は専門委員会のメンバーを中心に四人の学者でマル秘グループを結成し、具体的な準備に入っていた、開票二日後の七月九日、吉野大蔵事務次官は、水野主税局長を伴って首相官邸に中曽根首相を尋ね、出撃オーケーの了承を取りつけている、まるで国民をペテンにかける行為であります。
選挙公約を守るのは民主主義のルールです。そうでなければ新型間接税導入をスローガンにして総選挙を行うべきであります。税金をどういう形で幾ら納めるのかについては主権者である国民がきめるのであり、その問い掛かけをせずに政府が勝手に判断すべきではないと私は考えます。ところが、今政府はまた同じことを繰り返そうとしています。しかも、以前とは違ってしたたかに準備を進めているというふうに思います。
ところで、税制改革の必要性については私も痛感している一人です。現在の直接税制には課税ベース、基礎となるべきものに脱落が多く、縮小化しているという重大な欠陥があります。その原因は、専門家の表現をかりると、タックスエロージョンの拡大、つまり課税の侵食化ということになります。本来的な課税対象の落ちこぼれが拡大しているということであります。また、タックスシェルター、課税の隠れ場の存在ということで、これらの是正によって減税財源は十分確保される計算になっています。
例えば配当課税です。個人の受け取り配当については一〇%、課税総所得が一千万円を越えるものについては五%の税額控除があります。この軽減措置は本当は、優遇されていいはずの勤労所得を、担税能力のある投資所得よりも相対的に重い課税とする不公平を招いています。有価証券のキャピタルゲインである譲渡所得については限定的に原則非課税となっています。これも大変な数字となります。
手持ちの資料によれば、全国上場株式の時価総額は、昭和六十一年度中に二百三十六兆円から百二十兆円も増加し、三百五十五兆円になっています。そのうち二五%が個人の保有となっていますが、個人のキャピタルゲインは約三十兆円にも上るだろうと推定されています。もちろんすべてが一年間で売却されるわけではありませんし、昨年の暴落ということもあります。しかし、仮にこの三十兆円に利子課税並みの二〇%の税率をかけるだけでも六兆円もの税金が増額されるということであります。
ちなみに、アメリカのレーガン政権はさきの税制改革によって税の抜け穴、ループホールと呼ぶようですけれども、これをつぶし、タックスエロージョンを解消しています。しかし、日本ではいまだこれが実現されようとしておらず、自民党の税制調査会でも相続税制改正、法人税、所得税の引き下げ、キャピタルゲイン課税などの改正は、すべてことしの秋に先送りしているというふうに聞いております。
また、土地の譲渡所得課税の改革という問題があります。六十三年四月一日から買いかえ特例を原則的に廃止して新方式を導入する方向にあるものの、庶民の手から土地が遠く離れ去ってからのスタートという批判の声と、従来に比べて譲渡所得税額がグーンと下がるために新たな土地成り金を誕生させたり、居住用財産を装っての節税の標的にされたりするおそれも出てきそうな気配という新聞報道もございます。
土地や借地権の売却については、以前私自身もこの場で取り上げたように、区外転出者の増大という形で千代田区が大きな被害を受けています。買いかえ特例は一部を除いて廃止される方向にあるものの、逆に譲渡課税が軽減されることによって、千代田区においてはまだまだ区外転出者が続くであろうという心配が残っています。
土地譲渡に関する課税を強化すると、土地供給が停滞するという見解の上に立ったこんかいの税制改革方針ですが、税負担の公平性に目をつぶってまでも土地政策上の経済効果が期待できるかどうかというと、この税制改革では必ずしもそうではなく、逆に土地の投資的魅力を増大させていくおそれがあるという心配の声が上がっております。これも十二月十九日の朝日新聞の報道であります。
いずれにしましても、ストック面における格差が急速に拡大していくことのおそれがあり、大変不幸な出来事だというふうに考えます。
法人税について言えば、日本を代表する九大商社のうち、七社までが昭和六十年度の法人税納税額をゼロとしています。これはあくまでも推定です。公表されておりませんので、専門家が推定するという状況であります。その他法人税額ゼロの企業がごろごろしています。
有価証券報告書には法人税、住民税の額が記入されていても、外国税額控除制度を活用し、実際の納税額をゼロにすることができるわけです。しかも、個人の場合には税務署は所得税額を公表しますが、法人は所得金額を公表しても税額は公にしませんので、私たち一般国民はこれだけ法人に所得があるのだから法人税をきちんと払っているだろうと勘違いをしてしまいます。海外のタックスヘイブンを利用しての税金逃れが大変活発で、国税庁の調査によると日本で規制対象にしている国または地域が三十三ありまして、そこに日本企業がこの三十三カ所だけでも二千九百九十九社、規制対象外の地域では野放しの状況であり、ペーパーカンパニーがごろごろしています。また調査の結果、九五・二%の大企業が税の申告漏れをしていたという最近のデータがあります。税の申告漏れは何も国会議員だけの問題じゃないようであります。
よく日本の所得税が高いとか法人税が高いとか言われますが、よく考えてみると、実際にはいわゆる税率が高いので有って、有産者が納めているところの税そのものが決して高いということではないと思います。もちろん、サラリーマンのように抜け道のない人たちはもろに税金がかかりますが、先ほど述べたようにタックスエロージョンと呼ばれる課税対策所得が侵食されている人たちの税金は相対的に見て、実際の税は非常に低いという不公平な状態にあるからです。そのほか、企業には各種引当金が認められていますので、大企業にとっては大変有利な仕組みとなっています。
以上述べたように、税制改革においては一部分を取り上げるのではなく、所得税そのものを是正することを始めとして、法人税、キャピタルゲイン、土地譲渡税など全般を多面的に見直すことによって減税もでき、税収は大幅にアップすることになります。したがって、不公平を拡大する大型間接税、今、新型間接税と言われておりますけれども、これを導入する必要は全くありません。アメリカの財政学者リチャード・グード氏の言葉をかりれば、世論をつくる人の所得は平均的に高いので、消費税に対しては累進課税的所得に対するほど腹を立てないようであるということですが、言い方を変えれば、高所得者が好ましいと考える税金は、私ども一般国民にとっては悪い税金ということになります。
少々理屈っぽいことを申し上げれば、平和憲法である日本国憲法のもとでは、憲法の意図する法規範に基づき租税が使用されること、つまり福祉目的のみを前提として、かつ、その限りにおいて納税の義務を私たちは負っているのであり、このことから当然の帰結としていかなる形の、いかなる名目の大型間接税をも導入する必要はないと考えます。昨年の売上税論議には一般国民も参加して反対の世論をつくってまいりましたが、新型間接税の導入が云々されている今日、私たちは区民生活を向上させる立場に立ち、新型間接税をストップさせると同時に、不公平税制改革に向けた世論形成を進めていく責任があると考えます。
そこで区長にお尋ねします。税のあり方は行政にとって関心の深いところだろうと思います。行政の責任者として税制改革について区長はどういうご意見をお持ちなのか、特に今日の段階において新型間接税をどう考えるのか、また区民生活の向上、千代田区政の発展を目指すという立場に立ったときに、千代田区政が将来地方税の課税権を持つことが大切だと思いますが、このことをふくめ、望ましい税制改革についてのお考えをできるだけ具体的にお示しいただきたいと思います。
次の質問に入らせていただきます。
土地臨調の中間答申が各界から強い批判を受けています。八六年六月にOECD、経済協力開発機構が日本政府に出した勧告を見ても、日本の都市基盤施設というのは欧米の主要先進国に比べて極めて貧弱な状況にあるということが明らかになっています。それにもかかわらず、土地臨調の議論のように、経済性の追及しか考えないということは、ますます住みにくい東京をつくっているということに強い懸念を持っております。
そこで、改めて千代田区における住宅と土地をめぐる諸問題を若干考えながら質問に入らせていただきます。
昨年十二月の千代田区世論調査の転出を考えるとき、転出をしたい理由の項には、当分はここに住むつもりの人に、将来自分や家族の生活、周りの環境にどのような変化があったら転出を考えるのかという質問に対する回答一覧があります。これを見ますと、相当数の区民が現在の住宅事情に不安や不満を持っていることがわかります。これは区外に転出したい、するつもりの人の理由に対する質問への回答とほぼ同じ傾向にあります。
ちょっと見づらいかもしれませんが、このグラフの緑の部分、これが当分は区内にすんでいようという方なんです。そして、赤い部分が転出を考えているという人たちの統計数であります。大体傾向としては、向かって左側、もっと広い住宅に住みたいということで不満を持っている方三三・三%、二七・五%、ほぼ同じ傾向があります。あるいは、もっと居住環境のいいところに住みたいという気持ちを持っている方も、とりわけ千代田区に当分住み続けたいという方の中には三四・五%ということで強い不満を持っていらっしゃいます。また当然のことだというふうに思います。
私が気になりましたのは、実は両方とも土地買収の持ちかけに応じて区外転出を考えるという数字が出ているわけであります。調査対象者が少ないということでありまして、これをもってすべてを判断するわけにはまいりませんけれども、しかし一つの傾向がここにあらわれているんではないか、千代田区に残ろうという人も、転出しようという人も、その理由として、住宅事情に不満を感じている、あるいは土地売却の働きかけに応じて転出を考えるということが現実にまだあるわけでありまして、今後も千代田区民が減少するというおそれがこのアンケート調査から読み取ることができます。
私ども居住条件を悪化させている弊害を除去することに、もっともっと努力する必要があると思います。
住宅問題について、国は一体何を考えているのかを知るために、第四次全国総合開発計画を読んでみました。
御承知のとおり、四全総は多極分散型国土をスローガンにしながらも、事実上は東京への事業所集中を目指しています。東京圏においては都心部に集中しがちな業務機能等を圏域全体で適切に受けとめよう、通勤の利便性の向上も図りつつ、良好な住宅の供給を図る等、東京圏の居住環境の改善を進めるとあり、第二節(3)の3には、良質な住宅、宅地の供給の項に、二十一世紀に向けて良質な住宅ストックの形成を図る、このため各種助成措置の活用等により住宅取得能力向上を図り、良質な持ち家取得を促進する、また、公共賃貸住宅について計画的建てかえや改善を含め、的確な供給を進める、金融上の措置等を活用し、土地取得者による良質な民間賃貸住宅の供給を促進するとともに、借地借家法の見直しによる権利関係の円滑化等を通じ、一層の質的向上を図るとあります。さらに、行き過ぎた開発者負担の是正を図るとして、土地信託、事業受託、借地方式等新たな供給方式の活用を図るとあります。東京圏においては既成の市街地において職住近接性の高い市街地住宅の供給を図り、昼間人口、夜間人口の適度な均衡と生活空間の確保を図るとともに、近郊部において必要な交通体系の整備とあわせた計画的な新市街地整備を促進すると書かれています。この読み方につきましてはいろいろ見解が分かれると思いますけれども、問題点は問題点として整理しながらも、特に千代田区にとって生かせる点は有利に活用し、展開していく必要があると思います。
住宅問題を意識しながら四全総を読んで感じることは、東京圏としてこの東京を考えていますので、交通体系の整備をもって通勤者が都心へ通いやすくする、都心の周辺に住宅を確保する、しかも公的住宅よりも民間レベルの住宅確保を重視して、公的住宅は建てかえをするだけという発想になります。現実に六十一年では都心から十キロメートル以内に新築供給された住宅はゼロという状況です。したがって、都心を生活の拠点にするという視点がどうしても弱くなります。これでは都心の空洞化を是認した上での発想しか生まれてきません。ただ、職住接近性の高い市街地住宅の供給を図るという文章については大変興味を引かれます。その具体的な方向性が示されていないだけに、あるいは私たちの努力いかんでは働きかけ次第では、都心部の住宅問題を解決するために政府からバックアップさせることができるかもしれない、そんな気持ちがわいてきます。特に現在、都心三区と建設省とで都心における住宅供給の調査研究が進められている中で、この内容いかんによっては一つのきっかけができるのではないかという気がします。そのためには、千代田区も独自の研究を深め、その成果を反映させていくべきでないかと私は考えます。
東京都の動向も気になります。ことし二月一日に、東京都住宅政策懇談会が発足しました。「週刊とちょう」によれば、東京における住宅問題を解決する方策について幅広い見地から検討を行うこととなっており、ことしの秋の中間答申、六十五年春の最終答申に向けて既に会合が開かれています。都市政策、いや都心政策を持っていない、とりわけ住宅政策を持たない東京都が、現象面ではようやく動きはじめたように見えます。ただ、国も東京都も広い地域、広い範囲で住宅を考えるでしょうから、都心に一般庶民の住宅がどうしても必要であるという前提にはなく、周辺地域をベッドタウンとして整備していこう、都心は業務地区機能を発揮するに必要な最低限の都心生活者向けの住宅を確保すればよいという方向に流れてしまう危険性が残っています。特に千代田区を始めとした都心の実情に通じている自治体の代表者がこの住宅懇のメンバーに入ってはおらず、ことしの秋には中間答申を出すという中にあって、どれほど都心区の声が、都心区の苦悩が答申に反映されるのか心配であります。
千代田区としては、都心各区と協力して東京都の住宅政策懇談会への働きかけを強めていく必要があるのではないかと私は考えます。もちろん、そういうわけで、住宅さえできればよいというものではありません。一般庶民が生活できる家賃、あるいは生活環境が整備されている必要があります。
六十一年は都心から二十キロ圏内での一戸建て住宅が平均価格四千六百万円を超して、平均的サラリーマン所得の七・八九倍、マンションでも六・二倍から七・一倍になっていますから、民間ベースの住宅供給は都心部での価格を想像しただけで一般の人はあきらめようということになります。したがって、連動した賃貸住宅も同じ状況だというふうに想定できます。
ここで住宅に関するコストを上げているのが土地価格の値上がりであることはだれもが認めているわけでありますけども、したがって、土地政策についても基本的には強く関心を持っていかなければなりません。この土地政策については、国も無策、東京都も無策、千代田区はこれから考えるということになると思いますが、今のところせいぜい不必要な埋め立てぐらいしか方策を持っていない国、東京都、それどころか地価狂乱を是認し、あおっていたという従来の経過があります。国有地の払い下げがその一つですし、いわゆる民活路線がそれであります。
一般的に言えば、物の生産と供給は民間レベルの市場原理に任せたとしても、土地利用や都市空間の利用については市場原理に任せてはならないものであり、社会共通の財産であるとの観点に立って、これを総合調整するのが行政の仕事であるはずです。
埋め立てを除いては再生産できない土地を商品として扱っていることが何より問題です。欧米とは異なり、日本の場合は土地所有主義と言われているように、上に何が乗っていようと、つまりどういう利用状況にあろうとも土地自体に価値があるとされて、その土地から収益に関係なく一律な固定資産税がかけられています。土地そのものではなく、土地の利用状態に価値を見出すという方向へ土地を所有する権利から利用する権利中心へと考え方を転換していく時期に来ているというふうに思います。私どもが訪問したヨーロッパ諸国は、この考え方が基本であり、日本とは大きく異なる点だと言えます。
土地は生活の基盤であり、私たちが生きていくためにはなくてはならないものとして社会性を持っています。アメリカ的に言えば、土地は収益を生んで初めて価値が生じるのであって、同じ土地でも開発内容によっては値上がりも値下がりもあります。そのことを考えたときに、取引価格を正当なものとして評価し、地価をつり上げる公示価格に何十億円もの税金を費やしているのは全くばかげた話に思えてきます。
これだけ日本の社会構造が複雑になっているのに、土地利用の許認可、都市計画に関する諸権限が地方自治体にないこと自体がまず無理があります。自治体側も、仕事が大変だからと言って諸権限を持つことに消極的になっているとしたならば、まちづくりを本気で考えていないということになります。
千代田区も三位一体のまちづくりを打ち出した以上、都市計画に関する諸権限を獲得するために一大運動を起こすべきです。住宅問題、土地問題は国は東京都だけに任せていては解決できないのです。
欧米諸国は自治体が都市計画に関する権限を持っていることは御承知のとおりです。地価が上がるとダウンゾーニング、つまり容積率を下げることもあります。サンフランシスコでは一四〇〇%を一〇〇〇%に、あるいは一〇〇〇%を六〇〇%に下げ、ボストンでも高さ制限を六百フィートから二百フィートに下げ、その決定には住民も参加していると報告されています。これらは基本的に自治体が判断して住民が参加して行っているわけであります。
この点を見ると、やはり容積率というのは地価に大きく影響するのがわかります。容積率を上げるだけの日本の経済主義は修正される時期に来ています。
私は、今元気盛んな宅地供給促進論や大規模プロジェクト論に賛成を示すことができません。相当な宅地があったにもかかわらず、現実にはどこかへ消えてしまっているからです。また、最近は事務所床も余るだろうという推測が出ている中にあって、臨海部の埋め立てなどの大規模開発が本当に今、必要なんだろうかと首をかしげざるを得ません。
ただ、千代田区の場合には諸条件が整備されていないもとにあって、区民がこのまちに住み続けるための再開発は必要だと思います。他の再開発論議と基本的に異なる点は、あくまで自治体が、つまり千代田区が区民のために実質的な主導権を担保できる再開発を推し進めるということであります。
以上のことを踏まえてお尋ねいたします。
住宅問題、土地問題を解決するために、また、まちづくりを推進するためには、千代田区が土地利用、都市計画に関する諸権限を持つ必要がありますが、区長はこのことに向けてどのような方策を持っておられるのか、また、都心三区と建設省で行なわれている都心における住宅供給の調査をバックアップするために、あるいは東京都住宅政策懇談会に区の意見、要望を正しく反映させていくための体制を整える必要があると考えますが、この点についてはどうか、さらに千代田区独自で専門家を含む土地問題調査会及び住宅問題研究会などを設置し、住宅と土地問題に本気で取り組む必要があるのではないか、諸データや理論上のストック、積み上げもなしに国や都に対して説得力を持とうとしても、どだい無理な話です。まず、千代田区が積極的にこの問題に取り組み、関係機関に影響を及ぼしていくべきだと思いますけれども、区長はこの点、どうお考えになっていらっしゃるのか。また、土地の公共性を明確にし、人が生きていくという権利、生存権と地方自治を基礎とした金融、財政、税制のあり方などの基本を定める土地基本法とも言うべき法律の制定が必要であり、これを国に働きかけていくべきだと思いますけれども、この点どうか、とりわけ、昨年の千代田区議会における意見書の採択を踏まえた上で、これらに対する考えをあわせて示していただきたいと思います。
以上をもってこの場での質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔区長
加藤清政君登壇〕
30:
◯区長(
加藤清政君) 中村つねお議員の新型間接税及び税制改革の御質問についてお答えいたします。
第百八国会に提案されました売上税法案を含む税制改革法案は、国民の間にさまざまの批判があり、廃案となりましたが、政府では改めて昨年九月、税制改革の一環として個人所得税の軽減合理化、利子課税制度の改組を内容とする法律案を提出し、所得税は昭和六十二年度、住民税は昭和六十三、六十四年度で実施されることとなりましたことは御案内のとおりでございます。
しかし、なお今後における経済社会の変化に対応するため、所得、消費、資産の間で均衡のとれた税体系の確立が必要であるとの認識のもとに、政府税制調査会に対しその具体案を諮問し、現在調査が進められており、国民各層の幅広い意見を聞くため、全国各地で公聴会が開催されているところであります。
私といたしましては、従来からしばしば申し上げておりますように、税制度は公平の理念に基づき、体系的かつ安定性なものであることが必要であり、また消費に対する課税については所得課税軽減の見地から、税体系全体の関連のもとにその是非について検討がなされるべきものと考えます。
次に、税体系の改革に当たっては、地方自主財源の一層の充実が要請されるところであります。いずれにいたしましても、税制度の抜本的改革は国民生活に深くかかわるところであり、十分な理解と合意のもとに実行されるべきものと考えますが、区政の責任者として区民福祉を守る立場に立って、今後とも重大な関心を持って対処する所存でございます。
なお、他の事項については関係理事者をもって答弁いたさせますので、御了承をお願いいたします。
〔都市整備部長
望月章司君登壇〕
31:
◯都市整備部長(
望月章司君) ただいま中村議員の質問のうち、住宅及び土地問題、千代田区独自の住宅研究会の設置、また、国等への働きかけについて、最後に土地基本法の制定について御答弁申し上げます。
まず、住宅及び土地問題についてでございますけれども、まちづくりを推進していくためには、区が広く諸権限を持つことが重要かつ必要でございます。特に土地利用、都市計画に関する諸権限については、御指摘のとおりであり、特別区の制度改革の中で権限の拡充につきまして努力しているところでございます。この中で、昭和五十年に十四項目昭和五十八年に新たに十五項目が都知事から権限が移譲されたところでございます。また、六十一年二月十九日の都区協議会において、特定街区の決定の一部及び都市施設のうち、地域冷暖房施設に係る都市計画決定が移管されることが確認されております。しかし、今後とも検討すべき点も多々残されておるところでございます。さらに街づくり方針において、その推進のための条件整備といたしまして、新しい制度の導入についてもうたっているところでございます。
本区は人口の空洞化を回避し、居住機能と業務機能との共存関係を維持していくことを区政の最重要課題としております。また、日本の中心地として国際都市として際立った特徴があるため、常に高水準のまちづくりが要請され、きめ組かな土地利用が期待されるという本区特有の課題を抱えております。このため、住居地域における居住施設をより多く確保するための容積比率指定の幅の拡大、特別用途地区の新しいメニューの創設、都心型住宅の開発と供給などについての新しい事業制度等の導入などでございます。
本区が住宅問題、土地問題、ひいては都市問題についてその解決に努力しつつ、まちづくりを推進するためには土地利用、土地計画に関する諸権限を持つことは重要であり、御指摘のとおりと考えます。したがいまして、これらの点につきまして、国、都に強力に要請してまいります。
今後とも区議会の御指導をたまわりながら、特別区制度の改革とともにその権限の拡充に努力してまいりますので、御了承のほどお願い申し上げます。
次に、都心千代田区にふさわしい住環境を備えた住宅の建設を促進していくことは、夜間人口の流出抑制と定住性を確保し、また本区の人口、まちづくり対策を推進していく上での緊急な課題と認識しているところでございます。このことは、本区の基本計画並びに街づくり方針において、行政執行上の再重要課題として位置づけられており、区を挙げて取り組んでいるところでございます。
こうした中で、夜間人口の減少や地価の高騰の現状を踏まえ、定住人口の確保の緊急性にかんがみ、このたび建設省等との連携のもとに大都市都心部における住機能の確保に関する調査研究を行っております。
この調査研究の目的は、都心部における住宅のあり方、その理論形成及び具体的方策等についてあきらかにし、土地利用や税制度などの法制度の整備を含め、共通の理解と認識を持とうとするものでございます。
現在世帯アンケート、有識者の面接、都心立地企業の社員住宅取得等に関するアンケートなどのほか、アメリカ、欧州諸国の都市整備や住宅供給促進等の調査分析が行われ、広範かつ綿密なものとなっております。
また、来年度はこの実態調査を踏まえ、本研究のメーンテーマとする都心部における住機能の確保に関する具体的方策を探り、確立していく予定となっております。
一方、東京都におきましても、本年二月東京都住宅政策懇談会を設置し、現在の高地価の中での住宅の確保といった緊急的な対策と同時に、質のよい住宅を確保していくための方策や公的分野の住宅政策、また、それに限らない民間住宅の供給に対する誘導や規制といった内容について、幅広く検討することを明らかにしております。
区といたしましては、政策懇談会の委員の方々に対し、本区の街づくり方針について御理解をいただくため、積極的に働きかけていきたいと考えております。
これらのことは、いずれにいたしましても大都市における住機能の確保並びに住宅政策の形成などを目的としており、なかんずく私どもと建設省とで進めている調査研究は、都心に焦点を当てており、大都市の抱える課題を克服していくための方策の確立が大きく期待できるものと考えます。
調査研究の過程におきましては、本区の実状並びに街づくり方針の趣旨や、そこにしめされている法制度の整備等の考え方につきましても、その意とするところを十分伝え、研究成果に反映させていきたいと考えております。また、この街づくり方針の考え方や、その進め方等につきましては、国、東京都及び他の自治体から大きな関心を寄せられており、改めて基礎的自治体としての都心千代田区の責任を痛感しているところでございます。
御提案の、本区において独自の専門家等の参加による研究会の設置につきましては、全く同感でございます。今後まちづくりについて幅広く御提案をいただいている街づくり懇談会の今後の方向並びに建設省等と進めている調査研究の動向を見きわめながら検討してまいりますので、よろしく御了承のほどお願い申し上げます。
最後に、土地基本法の制定でございますが、昭和六十二年第四回
定例会において、議員提出議案として可決された土地基本法の早期制定に関する意見書の趣旨については本区の土地問題等まちづくりの方向に沿ったものと考えておりますが、内容等検討の上、議会の御意向を踏まえて対処してまいりたいと考えますので、御了承賜りたいと存じます。
32: ◯十八番(中村つねお君) 自席から再質問をさせていただきます。
基本的に言葉のやりとりではそんなにかわらないんだろうというふうに思うわけでありますが、一つ大きな、千代田区がとにかく音頭をとってやるぞという雰囲気がほしいんでありますけれども、先ほどの自民党の質問でも後藤新平さんの話が出ておりました。彼のやっていた都市研究会、その中で佐野利器さんという学者は、まちづくりには公共センターなんだ、とりあえず自治体が指導的にやるべきだと言っているわけなんですね。あれから七十年もたっていますけれども、いまだに同じことを繰り返しているけれども実現できない。全国的には各地でそういう気分になって動いている地区もあるんです。東京では千代田区が三位一体でやるぞということを打ち出したわけでありますから、この中身を今後はどうつくっていくか、当面どうするかという問題と、将来を頭に描きながら取り組む問題といろいろあると思うんです。諸権限を獲得するということについては、これは一定の時間がかかる。例えばどこの地区を再開発していこうということについては当面の研究課題、それらを含めて、やはりともかく国がやらなきや、東京都がやらなきゃ、理論的な蓄積は我々がやって、都にも国にもきちんと働きかけ、巻き込んでいくという姿勢が必要なんだろう、このことを内外に明らかにしたんだろうというふうに思うわけです。そのためには、むしろ我々が提案する前に、理事者の方からこれをやる、あれをやるというものを打ち出していただくぐらいの雰囲気がなくてはならないわけですね。その辺は言葉としては共通しながらも、もう一歩やっぱり千代田自身がこの問題について研究を深めていく必要があるんじゃないかというふうに思うわけです。
住宅問題につきましては、四全総では民間の力をかりましょうということになっていますけれども、御承知のとおり千代田区でも、民間の住宅建設に任せるだけでは、なかなか住宅建設が進まないことはわかっているわけです。
ちょっと見づらいんですけども、これは最近の千代田区の西暦七八年から八五年、黒いところが商業の床面積ですね、グリーンが併用住宅、赤いのが専用住宅、ときの経済状況によってこの商業床というのはいろいろ動くわけですけれども、一貫して併用住宅、専用住宅というのが落ち込んでいる、減少傾向にある、これは七八年から九年問、今日までずっと見ても落ち込む一方なんですね。これを何とかしようというふうにお互いに思うんだけれども、千代田区が区営住宅だけで補おうというのは、これはランニングコストだけでパンクしちゃいますから無理だとしても、民間の力をかりることも一つ、あるいは先ほども答弁に出ておりましたけれども、いろいろ国や東京都の援助をさせるという働きかけがやっぱり必要ではないか。いずれにしてもやっぱり公共的な住宅というのは千代田区に確保していかないと、民間レベルではちょっとそれだけでは無理よということについては再認識をする必要があるんではないかというふうに思うわけです。確かに日本と外国では土地に対する考え方が違うから、また住宅政策に対する考え方も違うわけですけれども、もともと住宅政策というのは一般的な意味では、自力で住宅を確保することができない人たちのために、政府あるいは自治体が直接的に住宅を供給したり改善したりするということになるんだと思います。
ドイツでは、戦後、無利子の政府資金を百年返済で貸し付けたり、あるいはこれを賃貸住宅や分譲住宅の建設の援助の費用としたり、あるいはイギリスでは、この一九四五年から七八年にかけて建設された住宅の五八・六%が自治体や公団による賃貸住宅という実績があるわけです。これはもともと土地に対する、あるいは住宅に対する日本と諸外国との違いがあるにしても、いわゆるストックの経済と言われている外国、それに対して日本の場合はフローの経済、消耗してどんどんなくなっちゃう、この辺の違いはやっぱり転換する時期に来ているんではないか。これを東京都にも国にもその気にさせる働きかけを千代田区がまずやっていく、そういう気分になることが今必要ではないかというふうに思いますけれども、この点について、やりますということになるかどうか、若干不安なんですね、どうお考えになるかのみお尋ねしたい。つまり、国や東京都に要請するだけでは、これはだれでもできるんです。中身をつくっていかなきゃならないわけですから、ここをどう具体的にやっていくかについて再質問をさせていただきたいと思います。
〔都市整備部長
望月章司君登壇〕
33:
◯都市整備部長(
望月章司君) ただいまの中村議員の再質問にお答えいたします。
ただいま御質問は二点ございましたけれども、いずれも私ども同感とするところでございます。
まちづくりは、基本的には自治体が行うべきものと考えております。国や東京都は我々が進めていく基礎的自治体のまちづくりを支援していただく、また制度面でもカバーしていただく、当然財政援助もする、こういう姿勢でなくてはいけないと考えます。今後私どもはそういう姿勢で進めてまいりたいと考えております。また昨年十月に街づくり方針を発表して以来、大変な反響を呼んでおります。例えば、周辺の区においては本区における街づくり方針あるいは街づくり協議会の設置などについて準備をしようということで照会が多数ございます。また一方、国や都におきましても、千代田区のこうした努力を評価していただきまして、大変事情聴取も多いという状況でございます。
今後とも研究を十分深めながら、今、ご提言のお話のとおり、私ども積極的に千代田区が中心となってこのまちづくりを解決する努力を内外に示していきたいと、こう考えております。
それから、二番目でございますけれども、都市問題は土地問題である、また土地問題は住宅問題であるというふうに喝破されているところでございます。したがいまして、本区における大きな行政課題はこの住宅政策にあることは間違いないとことでございます。特に公共住宅の確保については十分意を用いなければいけないという状況がございました。
そこで、私どもはおくればせながら、昨年東京都特別区住環境行政連絡協議会という実務レベルの、実は、協議会を持ちました。また同時に、昨今、都心三区に住環境問題懇談会というものを設置いたしました。これによりまして実務レベルでの公共住宅確保についての研究を進めているところでございます。また、先ほど御指摘がございましたように、東京都の住宅政策懇談会においては公共住宅の確保についての視点から大きな論議をし、さらに、それ意外の住宅確保についての機能も研究していくこういうことでございます。
したがいまして、私どもは実務レベルで十分研究を詰めると同時に、住宅政策懇談会委員にそれぞれに個別にお願いをいたしました。千代田区の実情を申し上げて公共住宅確保について、特に都心部におけるそれらの点を十分御論議をし、政策を確立していただくために我々としては十分な努力と要請を続けていきたいと、こう考えております。
34:
◯議長(
吉成五郎君) 以上で各会派の代表質問を終わります。
お諮りいたします。本日はこの程度をもって延会いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
35:
◯議長(
吉成五郎君) 御異議なしと認めます。よって、本日はこれをもって延会することに決定をいたしました。
継続会は三月四日午後一時より開会いたします。ただいま御出席の方には文書をもって御通知いたしませんから、さよう御了承願いたいと思います。
本日はこれをもって延会いたします。
午後七時四十一分散会
会議録署名員
議 長 吉 成 五 郎
議 員 川 島ひろゆき
議 員 清 水こうすけ
発言が指定されていません。 Copyright © Chiyoda City, All rights reserved. ↑ 本文の先頭へ...