それでは、ただいま上程をされました平成25年度決算を中心とする諸案件につきまして、逐次、提案の趣旨とその概要をご説明申し上げます。
私の3期目の任期も最終年度を迎えましたが、これまでの間、市民の皆様、そして市議会の皆様を初めとする多くの方々のお力添えをいただきながら市政を運営してまいりました。この場をおかりいたしまして、深く感謝を申し上げる次第でございます。
3年前、歴史と記憶に強く刻み込まれました
東日本大震災の衝撃は、三たび、市政のかじ取りに臨まんとする私に、札幌の未来をつなぐ
子どもたちのため、来るべき困難を見据えた新しい時代の
札幌づくりに挑戦する決意と覚悟を与えたところでございます。
その思いを胸に、この3年余りの間、私は、将来の展望を描くことが困難な時代に、札幌の未来を切り開いていくために、これまで培ってまいりました市民自治の取り組みを積み重ね、さらに確かなものとしていく市民自治の推進と、札幌の持つ多彩な魅力を磨き、高め、世界へ発信する創造都市の推進、これを
まちづくりの基本理念として掲げ、全力で取り組んでまいりました。
昨年10月には、人口減少、超高齢社会の到来や新たな
エネルギー社会への変革を見据え、今後10年間の
まちづくりの基本指針となります札幌市
まちづくり戦略ビジョンを完成させたところであります。今年度は、このビジョンが掲げる目指すべき都市像の実現に向け、本格的に始動させていく年として、今後の
エネルギー施策の指針となります札幌市
エネルギービジョンの策定を進めているほか、都心の再開発事業など持続可能な
集約連携都市への再構築に取り組むなど、札幌の未来を創造する施策を着実に推し進めております。
また、昨年11月、
メディアアーツ都市として、
ユネスコ創造都市ネットワークへの加盟が認定をされました。そして、創造都市さっぽろの
象徴的事業として去る7月19日に開幕いたしました
札幌国際芸術祭2014も、いよいよフィナーレを迎えようとしております。札幌のまちがアートに彩られたこの2カ月間は、札幌、そして北海道の美しい自然と過去の歩みをアートの視点で見詰め直し、都市の未来を展望する機会を私たちに与えてくれました。芸術祭は、札幌が持つすばらしい創造性を世界に向けて発信する舞台となり、創造都市さっぽろを大きく飛躍させることができると考えております。
10月からは、かつて札幌を近代都市へと発展させた
冬季オリンピックを再び招致することの是非に関して、さまざまな情報を提供しながら市民議論を進めてまいります。
冬季オリンピック・パラリンピックの招致には、開催費用や施設整備、関係団体との連携といった課題がある一方で、その開催により、次代を担う
子どもたちの夢や誇りを持つ心を育み、また、札幌のまちが再構築される契機となり、札幌、
北海道経済の活性化につながるとともに、アジアにおけるウインタースポーツの牽引都市としての確かな地位を築くことが期待されます。
招致の是非については、市民の皆様の声、そして、市議会を初め、経済界や関係団体のご意見を賜りながら、年内に札幌市としての判断をさせていただきたいと考えております。
残されました任期もあとわずかとなりましたが、今後とも、市民の皆様や、ここにおられる議員の皆様と手を携えて、北海道の未来を創造し、世界が憧れるまち、そして、互いに手を携え、心豊かにつながる共生のまち、これを目指して全力を挙げて市政を運営してまいりますので、皆様方におかれましては、引き続き、一層のご協力を賜りますよう心からお願いを申し上げます。
それでは、平成25年度各会計決算につきまして、その概要をご説明させていただきます。
平成25年度は、私の施政方針でありますさっぽ
ろ元気ビジョン第3ステージに掲げる市民の力みなぎる、文化と誇りあふれる街の実現に向けて、札幌市
行財政改革推進プランに基づく取り組みなどにより所要の財源を確保し、第3次札幌新
まちづくり計画の目標達成に向けた取り組みを加速させるとともに、札幌市
まちづくり戦略ビジョンの策定を踏まえた中長期的な
まちづくりに資する事業に積極的に取り組む予算と位置づけました。そして、第3次札幌新
まちづくり計画に掲げる子どもの笑顔があふれる街、安心して暮らせるぬくもりの街、活力みなぎる元気な街、みんなで行動する環境の街、市民が創る自治と文化の街という五つの政策の柱に沿って積極的に予算を計上させていただきました。
この予算の執行に当たりましては、収入においては、常にその状況を把握し、増収に向けて鋭意努力するとともに、可能な限り早期収入に努め、支出においては、他部局や他団体との連携を図りながら、職員一人一人の創意工夫と努力により、効率的かつ合理的な執行と経費の節減に努めたところであります。この結果、各会計とも、予算に計上した事業につきましてはほぼ所期の目的を達成することができたと考えております。
しかしながら、札幌市の財政状況につきましては、本年1月に公表いたしました
中期財政見通しにおいて、平成27年度から平成29年度までの合計で564億円の財源不足が見込まれるなど、依然として厳しい状況が続いております。したがいまして、この先も持続可能な
行財政運営を行っていくために、従前までの手法や考え方にとらわれることなく、歳入・歳出、職員定数、機構等の一体的な改革を引き続き進めてまいりたいと考えております。
次に、主要な事業の執行結果につきまして、第3次札幌新
まちづくり計画の体系に沿いまして、その概要をご説明いたします。
第1に、子どもの笑顔があふれる街の実現に向けた施策の成果についてであります。
子どもを生み育てやすい
環境づくりにつきましては、保育所の新築、増改築や、既存の
私立幼稚園の改修等による
私立認定保育所の整備等により、
保育所定員を1,180人分拡大するとともに、
私立幼稚園が実施する
保育サービスへの支援を拡充するなど、多様な担い手による
保育サービスの充実を図りました。また、旧
真駒内緑小学校を、仮称でありますが、南区保育・
子育て支援センターや子どもの自主的な体験機会を提供する場として活用できるよう整備するための設計を行ったほか、
ミニ児童会館を7カ所増設するとともに、
放課後児童クラブの対象学年を小学校5年生までというこれまでの方針を6年生まで拡大するなど、放課後の
居場所づくりの取り組みをしてまいりました。
次に、子どもが健やかに夢や希望を持って育つ環境の充実につきましては、
市立札幌開成中等教育学校の校舎等の工事に着手したほか、不登校の子どもなどの
社会的自立を支援するための心のサポーター、
スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの配置を拡充するとともに、白石区のリフレサッポロ内に不登校の児童生徒のための支援施設を設置いたしました。また、子どものいじめ問題への対応として、
児童生徒用の副教材や教師用の指導書を作成するなど啓発、指導等に取り組みました。
今後とも、子どもを安心して産み育てることができる
まちづくりを目指し、
子育て支援体制を充実させるとともに、未来を担う全ての
子どもたちが健やかに夢や希望を持って育つ
環境づくりを進めるため、民間とも積極的に連携しながら、子どもの育ちや学びを支える環境を整えてまいりたいと考えております。
第2に、安心して暮らせるぬくもりの街の実現に向けた施策の成果についてであります。
市民とともに災害に備える
まちづくりにつきましては、
改築予定校を除く全ての学校施設の耐震化に着手するなど、市有施設の耐震化を進めるほか、区役所、病院等に非
常用発電設備を整備いたしました。また、地域住民の避難場所となります
学校体育館につきましては、
窓ガラス等の非構造部材の耐震化を進めるとともに、
飲料水確保や
暖房機能維持などの災害対策を進めたほか、
東札幌小学校体育館は、その改築に合わせまして屋根や外壁等の高断熱化を行いました。さらに、国の
緊急経済対策の積極的な活用等により、全ての
緊急輸送道路について
路面下空洞調査を実施するとともに、道路、橋梁に加え、地下鉄、水道、下水道といった
社会基盤施設の耐震化、長寿命化を進めるなど、災害に強い安全な
まちづくりの取り組みをいたしました。
次に、地域で支え合う、健やかでぬくもりあふれる生活への支援につきましては、地域の
保健福祉体制について、市内の3地区において、地域のニーズや課題を
アンケート調査等により把握しつつ、地域の支え合い活動を強化するとともに、
担当保健師の
地域保健活動を強化いたしました。また、地域にある医療機関と介護関連の機関の連携を推進したほか、
地域包括支援センターを増築するとともに、
基幹相談支援センターの新設等により、障がい
者相談支援事業の充実を図ってまいりました。さらに、
特別養護老人ホームの整備に対する補助によりまして240人の定員増を図るとともに、常に介護が必要となる重度の障がいのある方に対する
介護サービスの利用時間を拡大し、他の
日中活動サービスとの組み合わせによります24時間の支援体制を構築したほか、急病時の市民相談に24時間365日対応する救急安心センターさっぽろを開設いたしました。
次に、安心のある暮らしの確保に向けた環境の充実につきましては、長期間、未就労等の状況にございます
生活保護受給者が就業体験的な
ボランティア活動に参加する機会を拡大したほか、
高速電車事業では、乗客の安全を確保するために、東豊線において
ホーム柵設置に向けた実施設計を行いました。
今後とも、災害に強い
まちづくりのために、
東日本大震災の災害規模などを踏まえて、計画的な災害対策の強化と
地域防災力を高めるための取り組みを推進していくほか、高齢者と各世代が支え合うぬくもりあふれる
まちづくりを進めるために、福祉・介護・
医療サービスの充実を図ってまいりたいと考えております。
また、改善傾向にあるものの、依然として厳しい雇用状況が続く中にあって、安心して働ける
環境づくりを進めるために、雇用創出や就業支援の取り組みを推進してまいりたいと考えております。
第3に、活力みなぎる元気な街の実現に向けた施策の成果についてであります。
札幌の経済を支える企業・人の支援につきましては、事業活動に必要な資金を供給する
中小企業金融対策資金貸付制度について、
金融円滑化法による措置の終了を踏まえて設けました
経営力強化支援資金等により、
企業ニーズを踏まえたさまざまな資金需要に対応してまいりました。また、商店街の活性化に向けまして、空き店舗の活用や高齢者への対応といった商店街の取り組みを引き続き支援するとともに、
地域コミュニティーの担い手であります商店街が行う地域課題の解決に向けた取り組みを一層促進するため、新たにコーディネーターの派遣による支援を行いました。
次に、札幌の強みを活かした産業の育成と企業の誘致につきましては、北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区を活用いたしまして、企業が行う輸出仕様食品の開発に対する支援制度や、大型設備を整備する企業に対する新たな利子助成制度を創設するなど、食関連産業の海外への販路拡大等の支援を行うとともに、地域活性化総合特区であります札幌コンテンツ特区を活用いたしまして、海外からの映像撮影の誘致や映像を活用した観光産業の振興を推進してまいりました。また、企業誘致につきましては、職員体制を強化しつつ、食関連産業やIT・コンテンツ産業、本社機能等の誘致を図りました。
次に、文化芸術や地域ブランドを活かした観光・MICEの推進につきましては、創造都市さっぽろの象徴的な事業であります国際芸術祭の準備を本格化させたほか、近年、成長が著しいタイなどの海外の有望市場をターゲットとした取り組みを進めるなど、戦略的な観光客誘致を推進してまいりました。
次に、将来を見据えた魅力ある都市の整備につきましては、苗穂駅周辺の
まちづくりに関して駅機能移転関連の実施設計等に着手したほか、(仮称)市民交流複合施設の整備を予定しております北1西1地区の再開発の事業化を推進するとともに、都心における新たな地区の民間再開発事業を支援するなど、民間活力を活用した安全で快適な都市環境の整備を進めました。また、路面電車について、西4丁目停留場とすすきの停留場をつなぐ路線のループ化に向けた準備工事に着手するとともに、低床車両2両を新たに購入したほか、官民連携による沿線の魅力アップなどの取り組みを推進しました。
今後とも、足腰の強い経済の活力みなぎるまちを目指し、地域の事業者への支援や戦略的な企業誘致を推進するとともに、芸術文化が経済を牽引するという創造都市さっぽろの理念を具体化するために、国内外への積極的な情報発信により、観光客の誘致促進を図るほか、都市の魅力を高めて持続的に発展していくために、地域の拠点ごとにその特性に応じた
まちづくりを進め、将来を見据えた都市の整備を進めてまいりたいと考えております。
第4に、みんなで行動する環境の街の実現に向けた施策の成果についてであります。
低炭素社会の推進と循環型社会の構築につきましては、原発に依存しない社会の実現に向けて、数値目標を盛り込んだ札幌市
エネルギービジョンの策定を進めるとともに、将来を見据えた総合的な施策大綱の検討を進めました。また、省エネ型のライフスタイルの定着に向けた取り組みや、太陽光発電といった次世代エネルギーシステムの普及拡大などの取り組みを進めたほか、産業部門の電力使用量の抑制に向けた工業団地での実証実験を行いました。
次に、多様で豊かな自然を守り、育てる
まちづくりといたしましては、都心部の緑のボリュームアップにつながる新たな助成制度の運用を開始するとともに、円山動物園について、アフリカゾーンの整備や新しいホッキョクグマ館の設計を実施いたしました。
今後とも、環境首都・札幌として、原発に依存しない社会を目指し、市民や事業者が環境行動を実践する
まちづくりを推進し、再生可能エネルギーの普及や省エネルギー、ごみの減量・資源化などにより、低炭素社会の推進と循環型社会の構築に取り組むほか、豊かな自然環境や生物多様性を守るために動植物の保全や市民が動物に親しむ機会を充実するとともに、緑の保全と創出に取り組んでまいりたいと考えております。
第5に、市民が創る自治と文化の街の実現に向けた施策の成果についてであります。
市民の主体的な地域づくりと多文化共生を推進する
まちづくりにつきましては、区の
まちづくりにかかわる区民協議会がその検討内容を具体化できる仕組みを構築するとともに、町内会活動への理解を広げ、参加を促進するための取り組みを拡充いたしました。また、白石区複合庁舎の実施設計を行うとともに、市民主体の活発な
まちづくり活動を促進するために、その拠点となる地区会館の改築・改修を進めました。
次に、多彩な文化芸術の創造とスポーツを楽しみ健康づくりを推進する
まちづくりにつきましては、老朽化した中央体育館を札幌市の新たなスポーツ交流拠点として移転改築するための基本設計の検討を行うとともに、大倉山、宮の森の両ジャンプ競技場について、国際競技規則の改正に合わせた改修を行いました。また、平成29年に札幌で開催いたしますアジア冬季競技大会に向けまして、公益財団法人第8回札幌アジア冬季競技大会組織委員会に対しまして補助及び貸し付けを行うなどによりまして大会の開催準備を進めてまいりました。
今後とも、市民の社会的活動への支援や地域活動の拠点整備を推進するとともに、市民が気軽に文化芸術やスポーツを楽しむ
環境づくりというものを推進してまいりたいと考えております。
札幌市を取り巻く状況には依然として厳しいものがありますけれども、引き続き、市民が主役の
まちづくりを進め、市民自治が息づく
まちづくりを
まちづくりの理念の根本に据えて、市民の力みなぎる、文化と誇りあふれる街の実現に全力を傾けてまいりたいと考えております。
以上、平成25年度各会計の事業執行の概要についてご説明いたしましたが、議案第1号から第7号までの各会計決算につきましては、決算書のほかに、歳入歳出決算事項別明細書、決算説明書、その他の決算に関する書類及び監査委員審査意見書を添付しておりますので、詳細につきましては、これらを対照、検討の上、ご認定をいただきたいと存じます。
以上で、各会計決算の説明を終わりまして、次に、補正予算その他の諸案件の説明に入らせていただきたいと思います。
初めに、議案第8号は、平成26年度札幌市
一般会計補正予算であります。
歳入歳出予算の補正項目の第1は、市政の喫緊の課題に対応するものでありまして、まずは、待機児童の解消を図るものについてであります。
本年5月に公表いたしました札幌市の待機児童数は、昨年4月と比較いたしまして75人減少し、323人になったところでございますが、来年4月時点での待機児童数ゼロを目指し、保育を望む全ての保護者が安心して必要なサービスを受けられる環境を整えるため、賃貸物件を活用した私立保育所の整備費補助や小規模保育事業の実施により、774人分の
保育サービスを追加するものであります。
次に、地域経済の活性化に寄与するとともに、市民の安全・安心に資するため、緊急対応が必要なものについてであります。
昨年度の雪害などにより破損した公園遊具・設備の修繕に係る経費や、この冬の降雪に備えた道路の予防保全及び雪解け後の事後修繕を実施するための経費を追加するほか、平岸プール可変床の補修に係る経費を追加いたします。また、昨年度実施いたしました
緊急輸送道路の
路面下空洞調査の結果を受けまして、陥没の危険性が高い箇所の補修を行うとともに、新たに基幹避難所等に連絡いたします経路の
路面下空洞調査を実施するための経費を追加いたします。さらには、これまでの節電の取り組みを拡大させるために、街路灯のLED化に要する経費を追加するほか、将来の観光誘客を見据えて、インドネシアにおけるシティプロモートをさらに展開するための経費を追加いたします。
補正項目の第2は、そのほかに年度内に新たに予算措置の必要が生じたものでありまして、来年1月に開催予定のFISノルディックコンバインドワールドカップ2015札幌大会への補助や、除雪経費について労務単価の引き上げ等に対応するための経費を追加するほか、介護保険制度の改正に伴い、システム改修が必要となった介護保険会計への繰出金を追加するものであります。
以上によります一般会計歳入歳出予算の補正総額は23億5,787万円となり、この財源といたしましては、国庫支出金等の特定財源7億8,041万1,000円を充て、差し引き15億7,745万9,000円の一般財源につきましては繰越金を充てるものであります。
次に、債務負担行為の補正でありますが、白石区複合庁舎整備について、労務単価、資材価格の上昇に対応するため、債務負担行為の限度額の変更を行うものであります。
次に、議案第9号 平成26年度札幌市
介護保険会計補正予算は、先ほどご説明いたしました介護保険制度の改正に伴うシステム改修に要する経費のほか、平成25年度に概算交付をされた国庫負担金等の額が確定したことに伴い、その超過受け入れ分について返還金を追加するものであります。
次に、議案第11号 平成26年度札幌市
下水道事業会計補正予算は、公共ますの設置要望数及び設置単価が当初の想定を上回る見込みとなりましたことから、その経費を追加するものであります。
なお、このたびの一般会計及び下水道事業会計の補正並びに平成25年度からの予算の繰り越しに伴う市債の整理を行うために、議案第10号 平成26年度札幌市
公債会計補正予算を提出しております。
次に、議案第12号及び第13号は、いずれも附属機関の設置に係る条例案であります。
附属機関は、法律または条例の定めるところにより、普通地方公共団体に設置される、調停、審査、諮問または調査のための機関でありますが、札幌市を取り巻くさまざまな課題が複合化、多様化している中にありまして、有識者、市民等の意見を札幌市の行政運営に反映させる仕組みとして、その担う役割はますます重要なものとなってきております。このことから、現在、札幌市が設置しております附属機関その他の合議体について改めて見直しを行い、附属機関として位置づける機関についてそれぞれの所掌事務、委員等の定数及び任期などを条例で定めるものであります。
次に、議案第14号は、札幌市情報公開・
個人情報保護審議会及び札幌市情報公開・
個人情報保護審査会条例の一部を改正する条例案であります。
これは、いわゆるマイナンバー法等の制定に伴い、札幌市の各実施機関は、個人番号をその内容に含む個人情報ファイルを保有する場合には、一部の例外を除き、情報の漏えい等の危険性等に関する自己評価をし、さらに、一定の場合には学識経験者等により構成されております合議制の機関等の意見を聞くこととされているために、この実施主体を札幌市情報公開・
個人情報保護審議会とするものであります。
次に、議案第18号から第22号までの条例案5件は、いずれも、質の高い幼児期の学校教育、保育の総合的な提供等を目的といたします、いわゆる子ども・子育て関連3法の制定に伴うものであります。
まず、議案第18号 札幌市子ども・
子育て支援法施行条例案は、子ども・子育て支援法の制定に伴い、特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営に関する基準その他の同法の施行について必要な事項を定めるものであります。
次に、議案第19号
札幌市立幼保連携型認定こども園条例案は、就学前の子どもに関するいわゆる認定こども園法の一部改正に伴い、清田区保育・
子育て支援センター及びしんえい幼稚園を統合し、新たな
幼保連携型認定こども園として札幌市立認定こども園にじいろを設置するとともに、その管理運営について必要な事項を定めるものであります。
次に、議案第20号 札幌市
幼保連携型認定こども園の設備及び運営の基準に関する条例案は、認定こども園法の一部改正に伴い、新たに
幼保連携型認定こども園の設備及び運営の基準を定めるものであります。
次に、議案第21号 札幌市
児童福祉法施行条例の一部を改正する条例案は、児童福祉法の一部改正に伴い、新たに放課後児童健全育成事業及び家庭的保育事業等に係る設備及び運営に関する基準を定めるほか、一部の児童福祉施設に関する基準を改正するものであります。
次に、議案第22号 札幌市保育の実施基準に関する条例を廃止する条例案は、児童福祉法の一部改正に伴い、保育の実施基準が同法に規定されたことから、重複する条例を廃止するものであります。
なお、議案第18号、議案第20号及び第21号のうち、設備及び運営の基準につきましては、おおむね参酌し、または従うべきとされる府省令と同様の内容を定めることとしておりますが、より高い保育、施設の質を確保するために、一部について独自に上乗せを行うこととしております。
次に、議案第23号は、
札幌市区保育・
子育て支援センター条例案であります。
これは、区保育・
子育て支援センターを札幌市の区における子育て支援の中心的役割を担う施設として改めて位置づけをするとともに、旧
真駒内緑小学校の一部を活用し、新たに南区保育・
子育て支援センターを設置するものであります。
なお、当該センターは、地域子育て支援拠点事業、子ども・子育て支援新制度のもとにおける小規模保育事業等を実施するものとし、その供用の開始は来年4月を予定しております。
次に、議案第24号 札幌市墓地条例の一部を改正する条例案は、平岸霊園内の合同納骨塚の埋蔵スペースの増設工事に伴いまして、その使用料を適正な額に改めるなど、所要の改正を行うものであります。
次に、議案第25号 札幌市
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営の基準等に関する条例案から議案第27号 札幌市
地域包括支援センターの
包括的支援事業の実施に係る基準等に関する条例案までの条例案3件は、いずれも、地域の自主性及び自立性を高めるためのいわゆる第3次一括法による介護保険法の一部改正に伴うものでありまして、これまで省令で定められていた基準等を条例で定めるものであります。
次に、議案第28号は、札幌市
火災予防条例の一部を改正する条例案であります。
これは、火災予防のために市民が主体的に行動するための基本的事項及び重大な消防法令違反のある防火対象物に係る新たな公表制度について規定するほか、消防法施行令の一部改正に伴う規定整備を行うものであります。
次に、議案第30号及び第31号は、いずれも工事請負契約締結の件であります。
まず、議案第30号は、市営住宅の新築に係る主体工事でありまして、建物の規模は壁式鉄筋コンクリートづくり地上5階建てで、戸数は40戸、延べ面積は3,584平方メートルであります。
次に、議案第31号は、市営住宅の耐震改修、全面的改善に係る工事でありまして、現在のライフスタイルに対応するため、戸数を減らし、室内の空間を確保するとともに、住戸タイプをふやすなどのほか、耐震補強をするものであります。
以上2件の工事請負契約につきましては、地方自治法施行令第167条の5の2の規定による一般競争入札により、各議案記載の請負業者が契約の相手方となりましたので、このたび、それぞれ請負契約を締結しようとするものであります。
次に、議案第32号は、損害賠償及び和解に関する件であります。
これは、昨年12月に起きた札幌市の業務用の自動車による車両への追突事故につきまして、被害に遭われた方と示談交渉を行ってきたところ、このたび、損害賠償の額について約181万円とする内容で和解のめどが立ちましたので、議会の議決を求めるものであります。
次に、議案第33号から第35号までは、いずれも損害賠償及び和解に係る
専決処分承認の件であります。
まず、議案第33号及び第34号は、昨年10月に起きた札幌市のごみ収集車による車両への追突事故に関しまして、専決処分により、去る6月13日に被害に遭われました4名の方と示談を締結し、そのうち2名の方に対しては100万円以上の損害賠償金を支払いましたので、その2件について報告し、承認を求めるものであります。
次に、議案第35号は、本年7月に起きました暗渠河川の点検用マンホールによる車両の損傷事故に関しまして、専決処分により、去る8月13日に被害に遭われた方と示談を締結し、100万円以上の損害賠償金を支払いましたので、これについて報告し、承認を求めるものであります。
このほか、議案第15号から第17号まで、議案第29号及び第36号につきましては、いずれも議案末尾に記載の理由によりご了解いただけるものと存じますので、説明を省略させていただきます。
なお、報告第1号から第7号までは、いずれも平成25年度予算の繰り越しに係る計算書でありまして、報告第8号及び第9号は、平成25年度決算に係る札幌市健全化判断比率及び各公営企業資金不足比率に関する報告であり、報告第10号から第13号までは、市営住宅に係る訴えの提起及び調停、札幌市の業務に関して発生した事故に係る損害賠償及び和解並びに工事請負契約の金額変更に係る専決処分の報告でございます。
以上で、ただいま上程をされました各案件についての説明を終わります。よろしくご審議のほどをお願い申し上げます。
○議長(高橋克朋) お諮りします。
ただいま説明のありました議案36件のうち、議案第1号から第29号まで、第32号から第36号までの34件につきましては、議事の都合上、その議事を延期することとし、議案第30号、第31号の2件につきましては、これよりその議事を続行したいと思いますが、ご異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(高橋克朋) 異議なしと認めます。
したがって、そのように決定いたしました。
これより、議案第30号、第31号の2件に対する質疑に入りますが、通告がありませんので、質疑を終了します。
(こんどう和雄議員「議長」と呼び、発言の許可を求む)
○議長(高橋克朋) こんどう和雄議員。
◆こんどう和雄議員 委員会付託の動議を提出いたします。
ただいま議題とされております議案2件を、財政市民委員会に付託することを求める動議であります。(「賛成」と呼ぶ者あり)
○議長(
高橋克朋) ただいまのこんどう
議会運営委員長の動議に対し、所定の賛成者がありますので、本動議を直ちに問題とし、採決を行います。
動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(
高橋克朋) 異議なしと認めます。
したがって、ただいま議題とされている議案2件は、財政市民委員会に付託されました。
――
――――――――――――――――
○議長(
高橋克朋) ここで、日程に追加して、決議案第1号
金子やすゆき議員に対する議員辞職を求める決議、決議案第2号 金子快之議員に対し、一連の
アイヌ民族に対する発言の撤回・謝罪と猛省を求める決議の2件を一括議題といたします。
決議案第1号は、民主党・市民連合、公明党、日本共産党、市民ネットワーク北海道及び改革所属議員全員並びにみんなの党・木村彰男議員の提出によるものであり、決議案第2号は、自民党・市民会議所属議員全員の提出によるものです。
地方自治法第117条の規定により、
金子やすゆき議員の退席を求めます。
(
金子やすゆき議員退席)
○議長(
高橋克朋) ここで、お諮りします。
ただいま除斥されております
金子やすゆき議員より、地方自治法第117条ただし書きの規定により、会議に出席して発言したい旨の申し出がありますので、この申し出に同意することにご異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(
高橋克朋) 異議なしと認めます。
したがって、そのように決定しました。
金子やすゆき議員の入場を求めます。
(
金子やすゆき議員入場)
○議長(
高橋克朋) 最初に、提案説明を求めます。
まず、細川正人議員。
(細川正人議員登壇)
◆細川正人議員 ただいまから、自民党・市民会議により提出をいたしました決議案第2号 金子快之議員に対し、一連の
アイヌ民族に対する発言の撤回・謝罪と猛省を求める決議について、会派を代表いたしまして、提案の趣旨を説明いたします。
金子やすゆき議員の「
アイヌ民族はもういない」との発言や、国連宣言及び国会決議に対する否定的な見解などが大きな問題となっておりますが、このような発言は、平成19年の先住民族の権利に関する国際連合宣言、また、平成20年の、
アイヌ民族を日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族と認める国会決議、さらには、本年6月の政府によるアイヌ文化振興の拠点整備に係る基本方針の閣議決定とは相入れないものであります。
しかしながら、本市議会として一連の発言の撤回と謝罪を申し入れたにもかかわらず、
金子やすゆき議員はそれに応ずるつもりはないとのことであり、このような状況を放置することは、本市議会に対する市民の信頼を大きく損ねることになります。
よって、当該議員は、いま一度、考えを改め直し、一刻も早くこれら一連の発言を撤回、謝罪し、猛省すべきと考えます。
このような趣旨から、本決議案を提案するものであります。
以上で、説明を終わります。
○議長(
高橋克朋) 次に、大嶋 薫議員。
(大嶋薫議員登壇)
◆大嶋薫議員 きょう、あすの2日間、国連本部で開催される先住民族世界会議に、
アイヌ民族2名が初めて政府代表団の一員として出席するとの報道がありました。
アイヌ民族を代表する発言が、
アイヌ民族の権利回復の歩みを進める大きな力となることを願い、
金子やすゆき議員に対する議員辞職を求める決議案の提出会派であります公明党、日本共産党、市民ネットワーク北海道、改革及び民主党・市民連合所属議員全員並びにみんなの党・木村議員を代表して、以下、提案理由を述べてまいります。
まず、
アイヌ民族が先住民族であることについて、私たちの歴史的な立ち位置を確認したいと思います。
明治時代の1899年に制定された旧土人保護法が
アイヌ民族を旧土人と定め、土地の没収、日本語教育の義務化、漁業、狩猟の禁止など、保護とは名ばかりでの同化政策のもと、土地や仕事を初め、独自の文化や言葉を奪い、差別を助長し、固定化する役割を果たしてきたことは、皆さんご承知のとおりです。不幸なことに、政治の怠慢から、新憲法の時代になっても旧土人保護法は廃止されることなく生き残りました。
1970年代からの
アイヌ民族による権利回復運動の広がりを背景に、1984年、当時の北海道ウタリ協会総会においてアイヌ新法制定に向けた基本案が了承され、1988年7月には、北海道議会において新法制定を求める意見書が全会一致で採択されます。そして、約10年の議論を経て、ようやく、1997年、旧土人保護法を廃止してアイヌ文化振興法が制定されますが、民族や先住性についての記述がなかったため、多くの批判にさらされました。
さらに10年、国会や有識者会議、国連での議論が積み重ねられて、2007年に先住民族の権利に関する国連宣言に我が国も署名して採択され、2008年には衆参両院において
アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議が全会一致で採択されます。決議には、「法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を、私たちは厳粛に受け止めなければならない。」と記され、先住民族としての権利回復のみならず、
アイヌ民族との共生社会を目指す新たな歩みが始まりました。
このような歴史を踏まえれば、「
アイヌ民族なんてもういないんですよね」との発言や、「国会決議が何の議論もなく通ってしまった」「旧土人保護法がアイヌの生活を向上させる役割を続けてきた」との主張の誤りは明らかです。金子議員の民族問題に関する理解は、極めてお粗末と言わなければなりません。
中国のチベット族やウイグル族問題を例に出して、民族には紛争という言葉がつきものですとしていますが、民族問題のあらわれ方は、歴史的背景や地理的、社会的な条件によって全く異なることが常識です。国民国家への移行の過程における同化政策や権利回復が問題とされている先住民族問題と、国家の統合や分離をめぐって衝突している民族問題を同列に扱う議論は、論理的に成り立たないと知るべきです。また、同じ日本人として平和に暮らしているのにという言いわけは、民族問題や差別問題に無理解か、意図的に目を背けようとする人が使用する常套句であることを指摘しておきます。
さらに、
アイヌ民族にかかわるさまざまな施策や事業を利権、特権と決めつけていることは、余りにも短絡的です。戦後も旧土人保護法が半世紀にわたって生き続け、就職や進学などで差別され、北海道が実施した生活実態調査においても平均的な道民との経済格差は解消されていません。憲法に基づき、格差是正のために積極的な措置を講ずることは、民主主義国家として当然であり、私たちの責務でもあります。
制度や事業の運用面で不備や不正と思われる点があれば、それを正していくことは当然のことと言えますが、利権、特権と断ずる根拠は何も示されていません。ましてや、「私も選挙に落ちたら〇〇〇になろうかな」との書き込みは、差別意識がそのままあらわされているものです。差別の再生産をやめようと言いながら、
アイヌ民族に対する憎悪や差別を扇動しているのは金子議員自身であります。
以上、金子議員が
アイヌ民族なんてもういないとするさまざまな説明に対して、その誤りを指摘してまいりました。滅び行く民族とされる苦難の歴史を強いてきたのは、ほかでもない私たちが住む日本という国家です。そして、
アイヌ民族であることを隠して生きなければならない社会が今も存在します。
国連人種差別撤廃委員会は、8月末、日本の人権状況の悪化に強い懸念を示し、日本政府に対して、国連人種差別撤廃条約に依拠して民族差別禁止のための包括的な立法措置をとることを強く求めています。また、国連人権委員会からは、アイヌ文化振興法を見直し、
アイヌ民族の政策立案や土地などに関する権利を保障すべきとの勧告が出されている国際社会の現実に、私たちは誠実に向き合う必要があります。
もとより、議会及び議員は、言論の自由のもと、さまざまな課題について議論、発言することにより、市民の負託に応えることが期待されています。しかし、何を言っても自由であり、許されるということではありません。誤りを認めずに、自分に都合のいい断片的事実や根拠のない言説をつなぎ合わせて自説に固執する態度をとり続けることは決して許されないとの姿勢を札幌市議会の決意として示すべきと考えます。
最後に、
アイヌ民族の権利回復と民族の誇りが尊重される共生社会の実現に向けてさらに歩みを重ねることを誓い、同僚議員の皆さんの賛同を心からお願いして、提案説明を終わります。ご清聴、ありがとうございました。(拍手)
○議長(
高橋克朋) 次に、
金子やすゆき議員の発言を許します。
金子やすゆき議員。
(
金子やすゆき議員登壇)
◆
金子やすゆき議員 このたびは、私の発言で札幌市民の皆様、国民の皆様に大変お騒がせしておりますことを、まず、おわびを申し上げます。
きょう、二つの決議案をいただきましたことを大変重く受けとめるとともに、このような発言の機会をいただきましたことに、議員の皆様にも改めて御礼を申し上げるところでございます。
これより、私の発言の趣旨などにつきましてご説明をさせていただきたいと思います。
さて、まず、議場においでの皆様にお尋ねをいたしますが、ツイッターという言葉をご存じでも、実際にアカウントを持ってツイッターで発言をしたことがある方、どれくらいいらっしゃるでしょうか。私のツイッターでの発言を実際にパソコン、スマートフォンなどでごらんになった方がどれくらいいらっしゃるでしょうか。私の発言の謎を解く一つの鍵はツイッターのシステムであります。
アイヌ民族なんてもういない、このツイートは、私をフォローしてくれるフォロワーさん、つまり、政治的に言えば支持者との個人的なやりとり、いわば1対1の私信であります。このツイートは、広く世界に向けて発信したものではなく、支持者との個人的なやりとりにすぎません。ここを一部のマスコミがわざわざのぞき込んでけしからんと騒いでおられるのが実態であり、議員と支持者との個人的なやりとりにこっそり耳をそばだて、差別だと騒ぎ立て、さらに謝罪、撤回を求めるとは、いわば言いがかりに近いものだと私は考えております。
その上で、
アイヌ民族はいないというツイートの真意をこれからご説明いたします。
まず、ここにお集まりの皆様は何民族でいらっしゃいますでしょうか。私自身は、何民族という意識は持っておりません。一人の日本人という意識を持っております。北海道にアイヌの血を引く人々が大勢暮らしていることは、私も当然承知をしておりますけれども、アイヌの人々も同じように日本人として暮らしているはずです。民族を枕言葉にして続くのは対立や紛争という言葉であります。言語や宗教、文化や生活習慣、歴史が異なるため、同化しない集団が民族としてグループ化し、それぞれの権益を争い合う、それが民族であります。我が国の中で、アイヌの人々が独自の文化・経済圏を築いて民族紛争を繰り広げているということがあるでしょうか。近隣諸国のような民族紛争や少数民族の差別、弾圧、抑圧などが存在しないことは、我が国の誇りであります。
私のツイートは、
アイヌ民族を称した不透明な補助制度に問題提起をするものでありまして、アイヌの方々の歴史や文化を否定したり、あるいはその尊厳をおとしめたりするものではございません。道内のそれぞれの地域で誇りを持ってみずからの文化を大切に育んでおられる、こういうアイヌの方々に心より敬意を表するものであります。
アイヌの方々は、明治時代より、同じ帝国臣民として政府の手厚い保護を受けながら歴史を重ね、今日に至っています。独自の言語や文化・経済圏を持って民族の権利を殊さら主張するような
アイヌ民族は、現代の日本には存在しないのであります。
実際に、アイヌ出身の故知里真志保北大教授が、今から半世紀ほど前に平凡社の世界大百科事典にこう書いておられます。民族としてのアイヌは既に滅びたと言ってよく、厳密に言うならば、彼らはもはやアイヌではなく、せいぜいアイヌ系日本人とでも称すべき者であると。つまり、これは、決して私一人の特異な意見ではなく、学術的定説であると思います。今は、戸籍謄本にアイヌとの記載はございませんし、就職、進学の差別もなく、誰もが日本人として自由にひとしく平等に暮らしている現代こそが、知里先生の考える理想社会だったのではないでしょうか。
次に、平成20年6月6日の国会決議をないがしろにしたということで、二つの決議案が私を非難していることに反論します。
国会決議の直前まで、政府の方針は、アイヌの人々は国連宣言に言う先住民族ではないというものでした。なぜならば、そのような根拠が歴史的にないからであります。アイヌ文化期は13世紀ごろからと言われておりますけれども、札幌では旧石器時代から人が住んでいたことが明らかになっております。この人々は、もちろんアイヌではありません。日本書紀によりますと、7世紀、斉明天皇4年の時代には、既に朝廷が北海道の蝦夷から樺太の粛慎を平定し、後志地方に郡司を置いて支配していたとの記録があります。北海道内の史跡として、意冨比神社に平安時代の鰐口が残っておりますし、函館の船魂神社は1135年、知内町の雷公神社は1244年に創建されたものであり、これらの地ではアイヌの人々より先に和人が住んでいたことを示す証拠であります。
平成20年の国会決議は、衆参両院とも何の質疑も行われないまま、一瞬で簡易採決が行われ、これまでの政府の方針を一日で大転換するものでした。決議案の中身を聞いていなかったという国会議員が実際におられます。
アイヌ民族に関する定義がないまま、そして、アイヌの人々が本当に先住民族なのか、国民の中でも大きな疑問があるにもかかわらず、かくも重要な問題が自民党から共産党までそろって全会一致で仲よく可決されること自体に私は疑問を感じます。
百歩譲って、仮にその決議の内容が正しかったとして、時代の変遷や世論の変化に合わせて後世の国民が修正を加えるのは当然のことでありまして、決して国会決議が絶対の金科玉条となるべきではありません。国会決議に異を唱えただけで糾弾され、議員辞職を求められるのであれば、これはまさに恐怖政治であり、憲法が定める言論の自由はどこへ行ってしまったのでしょうか。言論の自由は人類が苦難の歴史の中で獲得してきた基本的人権であり、特に日本共産党さんは最もその苦しみをご存じだったのではないでしょうか。
国会決議が平成20年に可決をされた後、旭川アイヌ協議会は、過去の植民地支配というものを持ち出して、天皇陛下に謝罪と、政府に対して5兆円の賠償を求める要求書を国に提出しています。もちろん、我が国政府がアイヌの人々に植民地支配を行った事実はありませんし、アイヌ先住民族論はまさに歴史の歪曲にほかなりません。
決議案第1号では、
アイヌ民族のこれまでの苦難の歴史や権利回復を求める闘いを全否定する差別発言だと決めつけておりますけれども、私たちの先達がアイヌの人々を苦しめてきたとの考えは全く誤った歴史認識であります。むしろ、明治政府は、北方ロシアからの脅威が迫る中、アイヌの人々に農業を奨励し、文化的な教育、医療を施し、同じ帝国臣民として常に温かい支援の手を差し伸べてきたのであります。
アイヌ先住民族化を求める平成20年の国会決議は、河野談話や南京大虐殺などと同様に、日本国民の歴史と先達の名誉を不当におとしめる原因にもなっており、いずれも歴史的史実に基づいた検証が必要だと私は考えます。朝日新聞社による従軍慰安婦捏造問題も、34年もの歳月を経てようやく歴史が修正されたことは皆様ご承知のとおりであり、政治はたゆまぬ歴史の検証を恐れるべきではありません。
そもそも、平成19年の国際連合宣言が定める先住民族とは、独自の文化、伝統を有しながらも、侵略者により土地を奪われ、集団虐殺で民族の崩壊に至った人々、あるいは、基本的人権を剥奪され、植民地化された人々などを意味するのでありまして、国連宣言が定める先住民族と我が国のアイヌの人々は全く異なるものであります。具体例を挙げれば、国連宣言の先住民族とは、中南米のインディオであるとかオーストラリアのアボリジニ、中国のウイグルの人々、チベットの人々などを指すのであって、我が国におけるアイヌの方々はこの定義には当てはまらないわけであります。
もし仮にアイヌが国連宣言の先住民族と認められるならば、
アイヌ民族の自決権や領土の割譲のほか、アイヌ文化保護のためにアイヌ語による学校教育やアイヌ語による国営放送、アイヌ独自の司法制度など、常識では考えがたい要求を国際法に沿って我が国が受け入れることにつながりかねません。かような国連宣言は、我が国の内政に不当に干渉するものであり、我が国の安寧と秩序を守る立場からも誤りであると考えます。
実際に、かつて、北海道アイヌ協会札幌支部がアイヌの自主憲法制定や軍隊、警察、裁判所の設立などを議論していたことが判明しています。一国二制度につながる極めて反社会的思想を持つ団体に、札幌市や北海道が多額の公的補助を与えることの問題点にも改めて警鐘を鳴らすものであります。
そもそもアイヌの定義とは、北海道アイヌ協会によりますと、アイヌの血を引くと確認された者及びその家族、配偶者、子孫がアイヌであり、養子縁組などでアイヌの家族となった者も含まれるということで、しかも、これは自己申告制であります。つまり、アイヌの血を引かない人でも、家族になればアイヌになって政策的優遇が得られることにそもそもの問題があります。実際に、道内で暮らす1万人を超えるアイヌの方々の中で、札幌市や北海道の政策的優遇を享受している人は、ほんの一握りにすぎないわけであります。
差別がない社会を目指しながら、しかし、行政からの優遇を得るためには、みずから差別を演出しなければならない。これは、まさに差別の再生産にほかなりません。全て国民は法のもとに平等であるべきであって、理由なき差別、優遇策にはもはや終止符を打つべきだと思います。
さて、今回、札幌市議会が私に対する議員辞職決議案を出すことにつきまして、私の手元には、札幌市民だけでなく、全国、全世界の皆様から、やめるな、頑張れと、数多くの数え切れないほどの手紙、電話、メールなどをいただいております。数の論理で決議案をまとめ、たとえ私が辞職させられたとしても、それで私が述べた真理が消えるわけではありません。私の考えを支持する国民の考えが消えるわけでもありません。我が国には、言論の自由や思想、信条の自由が保障されております。
8月16日にこの問題が初めて毎日新聞社で報道されてから1カ月がたちますけれども、この間、
アイヌ民族は本当にいるのか、本当に先住民族なのかという根本的な議論に臨んできた方は、残念ながら、まだ一人もいないのが現実であります。良識ある言論の府として、市議会が数の力で一つの意見を封殺しようとするのは自殺行為だと私には思えます。一方通行の決議案に時間を費やすのではなく、ぜひ双方向で私の議論に答えていただきたいと思います。私の弁論を手続上聞いた後、ただ機械的に決議案を採決して終わりではなく、今の施策が本当にアイヌの人々のためになっているのか、このことをぜひ多くの皆様にも考えていただきたいと思います。
このことを最後に申し上げて、私の発言を終わります。どうもありがとうございました。
○議長(
高橋克朋) 以上で、
金子やすゆき議員の発言を終了します。
金子やすゆき議員の退席を求めます。
(
金子やすゆき議員退席)
○議長(
高橋克朋) これより、質疑・討論の通告がありませんので、採決に入ります。
この場合、分割して採決を行います。
まず、決議案第2号 金子快之議員に対し、一連の
アイヌ民族に対する発言の撤回・謝罪と猛省を求める決議を問題とします。
本件を可決することに賛成の方は、ご起立願います。
(賛成者起立)
○議長(
高橋克朋) 起立少数です。
したがって、本件は、否決されました。
次に、決議案第1号
金子やすゆき議員に対する議員辞職を求める決議を問題とします。
本件を可決することに賛成の方は、ご起立願います。
(賛成者起立)
○議長(
高橋克朋) 起立多数です。
したがって、本件は、可決されました。
ここで、
金子やすゆき議員の入場を求めます。
(
金子やすゆき議員入場)
○議長(
高橋克朋)
金子やすゆき議員に申し上げます。
ただいま審議されました決議案2件のうち、決議案第1号
金子やすゆき議員に対する議員辞職を求める決議につきましては、採決の結果、可決されましたので、本席から通知します。
――
――――――――――――――――
○議長(
高橋克朋) ここで、報告します。
本日、宮川 潤議員、
金子やすゆき議員及び木村彰男議員から、会議規則第62条第1項の規定による文書質問が提出されました。
理事者におかれましては、宮川 潤議員の質問につきましては9月29日までに、
金子やすゆき議員及び木村彰男議員の質問につきましては10月6日までに答弁書を提出されるよう求めます。
――
――――――――――――――――
○議長(高橋克朋) お諮りします。
本日の会議はこれで終了し、明日9月23日から9月28日までは議案調査等のため休会とし、9月29日午後1時に再開したいと思いますが、ご異議ありませんか。
(「異議なし」と呼ぶ者あり)
○議長(
高橋克朋) 異議なしと認めます。
したがって、そのように決定しました。
――
――――――――――――――――
○議長(
高橋克朋) 本日は、これで散会します。
――
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散 会 午後2時17分
上記会議の記録に相違ないことを証するためここに署名する。
議 長 高 橋 克 朋
署名議員 小 須 田 悟 士
署名議員 峯 廻 紀 昌...